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Yes,No,No,Yes!
- 1 名前:ゆうや 投稿日:2000年08月28日(月)02時39分01秒
- 王道のようでいて、あんまりないよーな、中澤矢口の話を書かせて頂こうかと思ってるんですが。
感想とか、茶々入れていただけると嬉しいです。
- 2 名前:ゆうや 投稿日:2000年08月28日(月)02時44分25秒
- 「じゃー、裕ちゃん。これから矢口が言う質問を、すべて『はい』か『いいえ』で答えてください」
「あ?」
思いきり怪訝そうな顔をした裕子にもめげず、真里は笑顔で言葉を続けた。
「性格判断だよぉ」
これこれ、と、真里は、持っていた雑誌をポンポンと叩く。
「性格判断?」
雑誌をのぞき込もうとした裕子から、真里は大げさに雑誌を抱え込んで隠す。
「見ちゃダメだって。いくよー。第1問!」
半ば呆れたように、それでもどこか嬉しそうに目を細めながら、裕子は頷いた。
「どぉぞー」
「はいっ!『肉より野菜が好きだ』」
「いいえっ」
「えーっと・・・、第2問。『友達と同じ人を好きになったら譲らない』。コレ、『はい』?」
「はい」
「だ、第、第3問」
「なにかんでんの」
「うるさいっ。第3問っ。『あまり本は読まない』」
「いいえ」
「第4問」
「何問あるんや?」
「答えによって違うんだよ」
「はいはい」
そうして、他愛もない質問が3つほど続く。裕子は少し手持ちぶたさそうに、指の腹で爪をいじりながら、答えを出していった。
- 3 名前:ゆうや 投稿日:2000年08月28日(月)02時50分22秒
- 「んじゃ、最後」
「ん」
「『矢口真里が好きだ』」
「・・・は、・・・ぃあ? なんやそれ。そんな質問、雑誌にのってるわけあらへんやろっ」
イスの背もたれにもたれていた身体を起こして、裕子は雑誌を掴む。真里は雑誌を取られないように、両手で雑誌を抱き抱えた。
「言った! 今、『はい』って言った!!」
「言ってへん!」
「言ったじゃん!」
指差されて、その手を押さえつけながら、裕子は思わずムキになって反論する。
「言ってませーんっ!!」
「なんだよぅ!」
「こっちの台詞や!」
「裕子の性格判断の答えは『素直じゃない』っ」
「ウソつけっ」
「ついでに『暴力的』っ」
「なんやそれぇ!」
雑誌を抱える身体にのしかかるように、裕子は真里を抱きしめた。
「裕子、重い、重い〜」
「愛があるから重いのっ」
「ウソッ」
「裕ちゃん、素直やないから、ウソ〜」
「なんだよぉ!」
- 4 名前:ゆうや 投稿日:2000年08月28日(月)03時12分06秒
- 「さーてと。そろそろリハの時間やな」
そう言って、裕子は、するりと真里を羽交い締めにしていた腕を離すと、すたすたと扉の方へ歩いていった。
「……なんだよ、バーカ……」
取り残される形になった真里が、裕子の背中を見ながら、ポツリと呟いた。
「矢口」
「!」
まるでその小声の独り言を聞き取ったかのように、裕子が足を止めて振り返る。
「早よ、おいで」
「……」
きゅっと唇を噛むと、真里は駆け足で裕子の隣までやって来た。
「今、聞こえたのかと思ってびっくりした」
そんなハズ、ないのに。
- 5 名前:ゆうや 投稿日:2000年08月28日(月)03時30分51秒
- 「なにがや?『裕子、バーカ』ってヤツか?」
「えっ。ホントに聞こえてた!?」
「……ほー、ホンマに言ってたんか」
「……げ」
素直に、しまった、という顔をした矢口に、裕子は吹き出す。
「なんだよぅ」
「べっつに」
クスクス笑う裕子を見ていると、なんとなく面白くないような、照れくさい気分になって、小さく上下している腕に、真里は右手を振り下ろす。
「いたっ」
裕子が大げさに逃げる。
「矢口、痛いやんかぁ」
「ふーんだ」
「待ってや、矢口。ちゃんと好きやって」
「ウソつけ」
「どっちやと思う?」
裕子が口の端を上げて不敵に笑う。真里はそれを見上げてから、小さく溜息をついた。
「……ホント」
「お。自信家ー」
「おう!矢口は自信家さぁ!」
そうじゃないと芸能界なんかやってられないもんねー、と続けながら、肩からぶつかるように裕子の腰に手を回す。裕子も、目を細めて笑うと、真里の肩に腕を回して、コツンと頭を軽くぶつけ返した。
END.
- 6 名前:ゆうや 投稿日:2000年08月28日(月)03時34分31秒
- ……こんな感じで。
- 7 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月28日(月)04時38分19秒
- いいじゃないっすか。なんか楽屋を盗聴して書いたみたいに、
実に想像がしやすかった。現実にこんな会話してそう。
おもしろかったっす!
他のメンバーのも書いてみません?
- 8 名前:読んでる人 投稿日:2000年08月28日(月)10時00分18秒
- ほのぼのしますな〜。他のメンバーのも読んでみたいっす。
- 9 名前:龍岩寺 投稿日:2000年08月28日(月)15時16分43秒
- 中澤と矢口は最近ブームなので、
かなり楽しく読ませてもらいました。
次も期待してます。
- 10 名前:ゆうや 投稿日:2000年08月29日(火)00時12分47秒
- 他のメンバーだと、どのあたりで?
- 11 名前:ちび太 投稿日:2000年08月29日(火)00時28分14秒
- 飯田×後藤を頼む。
ホンマ頼む。
- 12 名前:名無し中 投稿日:2000年08月29日(火)00時37分53秒
- よしいし辺りなんて……書きません??
ところで、題名には元ネタとかあるんですかね?
- 13 名前:ゆうや 投稿日:2000年08月29日(火)02時22分05秒
- ひとりしかいない楽屋の扉が、軽いノックの後に開いた。
そこにいたのは、圭織だった。
まだ眠いのか、それともぼーっと考え事をしているのか、イマイチ焦点の定まらない目で、MDウォークマンのイヤホンを外しながら、挨拶の言葉を呟く。
「おはよー……」
「おはよ」
返ってきた挨拶が、ひとつだけだったことに、圭織がきょとんとして楽屋を見渡す。
「あれ?後藤だけ?」
「うん。よっすぃとかもう来てるけど、みんなとコンビニ行った」
「ふうん」
とりあえずの相槌を打って、圭織はテーブルに鞄を置いた。
「後藤は?行かないの?」
「うん。来る途中で、寄ってきたしさ」
そう言いながら、飲みかけのペットボトルを振ってみせる。
「……ふうん」
鞄の中にMDウォークマンを片づける圭織の手元を、真希が覗き込んだ。
「何?」
「かぐや姫」
「ホントに好きだね」
あはっと笑った真希に、圭織は瞳を輝かせて、声のトーンを少しあげた。
「うん。いいんだよ、ホントに。後藤も聴いてみる?絶対、いいよぉ!」
「んー……。そのうち……。そのうち」
「うん。ホントにいーんだよ。泣けるよ?」
真希は苦笑いで返す。
ホントは、曖昧な苦笑いの返事なんて、圭織に通じるわけないことを、知ってはいたけれど。かといって、「興味ないから」と言えるわけもない。
── 全然、興味がないわけじゃないし。
「……」
少し考えてから思い浮かんだ答えに、真希は笑顔で頷き、そして口にした。
「んじゃさ、今度、一緒にカラオケ行こ?」
「ん?」
「聴かせてよ。圭織の声で」
「……あ、うん。いーよぉ」
嬉しそうに笑う圭織に、真希も満面の笑みで答えた。
END.
- 14 名前:ゆうや 投稿日:2000年08月29日(火)02時34分14秒
- 飯田×後藤は考えたことなかったので、なんというか、どーも中途半端すね。
すみません。
>12
タイトルの元ネタは一応、藍川さとるさんの「晴天なり」シリーズのマンガのタイトルからです。
うろ覚えなので違うかもしれませんが。
マンガは振られたその後の話なんですが、こっちのイメージとしては、素直じゃないねぇってカンジで。
(元ネタといってもいいんですかね(ニガワラ)。)
よしいしは次回に。
- 15 名前:名無し中 投稿日:2000年08月30日(水)02時29分52秒
- 元ネタ、どっかで聞いたことあるなぁと思って聞いたんですけど、
単行本持ってました(笑)
二巻目の「Yes,no no no,YES!!」ですね。
次回によしいし書いていただけるということで、
期待してます。
できたら甘めで……
- 16 名前:フーテンの寅さん 投稿日:2000年08月31日(木)02時27分44秒
- あまり見ないさやゆうキボン。
- 17 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月31日(木)04時54分46秒
- 市井と石川。ってほとんどないから書いてくださいな
- 18 名前:ゆうや 投稿日:2000年08月31日(木)22時50分58秒
- 「どしたの?」
きょとんとした目で顔を覗き込まれて、梨華は少し身体を引いた。
「なんか、・・・緊張してる」
そう言って、梨華は胸を押さえて、はー・・・と長く息をつく。
「・・・ひとみちゃんは緊張してないの?」
「してるよ?」
「ウソばっか」
「してるよ。緊張しないわけないじゃん」
「・・・そうかもしんないけど・・・。あー。もう、失敗したらどーしよう・・・」
「大丈夫だって」
ぽんぽんとなだめるように頭を叩かれて、梨華はひとみを見上げた。
「・・・うん」
「大丈夫だよ。ガンバロ?」
「・・・うん」
梨華は同じように微笑んだ。
やわらかいひとみの微笑みと、舌ったらずながらも揺るぎのない声に、安心させられる。
根拠はないけれど、ひとみが「大丈夫」と言って笑ってくれると、本当に大丈夫に思えてくる。
けれど、元気づけられたあと、いつも、胸に沸き上がるちょっとした痛さがある。
・・・くやしいんだ、ちょっとだけ。
- 19 名前:ゆうや 投稿日:2000年08月31日(木)22時51分57秒
- ふたりっきりになった楽屋で、いきなりドアが開いても構わないように、ドアから死角になった壁際でキスした。
── ほら、やっぱり。
キスしたあと、ドキドキしてるのは、私だけ。
「どしたの?」
「・・・なんでもない」
「なんでもないって顔じゃないと思うけど」
「なんでもないのは、いつもひとみちゃんの方だよね・・・」
「は?」
きょとんとした、いつもと同じ、綺麗な顔。
そんな顔に見とれながら、それでも心がチクリと痛む。
無意識のうちに俯いていた梨華に、ひとみはほんの少しだけ眉をひそめた。
「んー・・・。ん、梨華ちゃん」
「え?」
ひとみは、ぽん、と、梨華の肩に手を置いたかと思うと、そのままぎゅっと抱きしめた。
「ひ、ひとみちゃん?」
「ほらね?ドキドキしてるでしょ?」
「・・・・・」
ひとみちゃんの腕の中で、じっとして、耳を澄ませる。
トクントクンと、いつもより速い心臓の音が聞こえた。
「・・・わかんないよ」
自分の心臓の音なのか、ひとみちゃんのなのか。
「わかんないよ」
それでも、顔は自然に笑った。
自分のものなのか、相手のものなのかわからないけれど、同じ速さで脈打つ鼓動と、背中に回された暖かい手が、嬉しくて照れくさくて。
「なんで笑ってんの?」
見上げたひとみの顔も、ほんの少しだけ照れくさそうに、笑っていた。
END.
- 20 名前:ゆうや 投稿日:2000年08月31日(木)22時55分23秒
- >16
いや、このスレ、中澤矢口基本っすから、さやゆうはパスっす。すみません。
>17
市井と石川・・・は検討します。
- 21 名前:ゆうや 投稿日:2000年08月31日(木)23時01分32秒
- その前に、市井後藤の矢口裕(ニガワラ)。
- 22 名前:ゆうや 投稿日:2000年08月31日(木)23時09分21秒
- 『最初の第一歩』
第一印象は、・・・なんだったかな。
裕ちゃんとか、なっちとかは覚えてるんだけど。
・・・なんだったかなぁ・・・。
あれは、最初じゃなかった。多分、2回目か3回目。
「よろしくっ」
そう言って、差し出された右手。
そのときの笑顔は、すごくよく覚えている。
ニッと目を細めた、子供のような笑顔。
「よろしくお願いします」
自分より、少し背の低い彼女。
彼女を好きになるのに、時間はいらなかった。
でも、・・・彼女を、友達以上に好きになったのは、いつだったのかな。
それでもって、・・・彼女が私のことを好きになってくれたのは、いつだったのかな。
- 23 名前:ゆうや 投稿日:2000年08月31日(木)23時10分15秒
- 自分の気持ちに気付いたのは、ちょっとしたコトだった。
ある日楽屋で、市井さんが裕ちゃんにキスしたとき、思いっきり驚いた。
別にキスに驚いたわけじゃない。だって、裕ちゃんが誰かにキスしてることなんていつもの話だし。
圭ちゃんなんか、キスされても「はいはい」って感じで受け止めちゃってるから、裕ちゃんのほうが「つまらん」ってぼやいてるぐらいだし。
実際、私だってやられたことあるわけで、やぐっちゃんやなっちが必死で抵抗してるの見て、慣れないもんなのかなぁ、それとも騒ぐのを楽しんでるのかな、なんて思ったりしてる。
・・・まぁ、そんなことはいいんだけど。
市井さんからしたことに、驚いた。
その後、市井さんと裕ちゃんが交わしていた会話すら、ほとんど聞き取れないくらいに、呆然とした。
胸がチクチクした。
あの時、私は間違いなく「やだ」って思ってた。
理由は簡単。
私はもうあのとき、市井さんのコトを好きになってた。
- 24 名前:名無し中 投稿日:2000年09月02日(土)00時53分49秒
- よし×いしありがとうございました!
めちゃ甘で、幸せすぎて胸焼けしそうです(笑)
いちごまはまだ続くんですよね?
がんばって下さい。
- 25 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月02日(土)21時46分39秒
- 「ふーん」
たいして驚いた様子もなく頷く真里に、真希は苦笑いする。
「『ふーん』って」
「や。だって、見てりゃわかるよぉ」
屈託無く笑いながら、真里は、ぱく、と、真希の持ってきたピスタチオをひとつつまんで、口の中に放り込んだ。
「で?」
「『で?』って?」
「んで、どうしたのかなぁと思って」
「どうもしないよぉ」
「なんだぁ」
つまらなさそうにそう言う真里に、真希は声を大きくする。
「『なんだぁ』って何?」
「だって、もーちょっと、こーさぁ、おもしろい展開を期待するじゃん?」
「ヒトゴトだと思って〜〜」
「ヒトゴトだもーん」
「そりゃそーだけど。・・・協力してあげよーとか思ったりしない?」
「して欲しい?」
「・・・やめとく」
「しっつれいだな〜〜」
一旦、ぶう、と、頬を膨らませてから、真里は笑った。その笑顔に真希も笑い返す。
「やぐっちゃんは?」
「なにが?」
「裕ちゃんでしょ?」
「はい〜〜!?」
素っ頓狂な声を出した真里に、真希は目を細めて笑う。
「そんなの、すぐわかるよぉ」
「嘘っ!」
「あはっ」
「なに、その笑いはぁ〜〜!!」
「だって〜〜」
「いーの、矢口はべつにっ!」
「あははは」
真里の顔は、真っ赤になっていた。
「・・・でもさぁ、アレだよね」
「え?」
まるで子供みたいな笑顔で、真里は言葉を続ける。
「なんてーの? こーいうの、なんか、よくない?」
「はい?」
「だってさ、矢口、裕ちゃんがいなかったら、ぜーったい、今より生活つまんないもん」
「・・・・・うん」
ちょっと考えてから、小さく頷いた。
うん。もし市井さんがいなかったら、仕事、もっと辛く感じてる。
しんどくても、眠くても、仕事に向かう足取りは軽い。
仕事場に行けば、市井さんに逢える。
―― ただ、それだけで。
- 26 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月02日(土)21時47分40秒
- >24
ありがとーございます。
いちごまはもーちょっと続きます。
- 27 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月03日(日)21時32分42秒
「いちーさん」
「ん?」
どしたん?と続けながら、紗耶香は捲っていた雑誌から顔を上げて、真希を見上げた。
「いちーさんは、今の生活、楽しいですか?」
真希がそう言った瞬間、紗耶香の表情がきょとんとしたものに変わる。
「真希、楽しくない?」
「いえ、私は楽しいですけど!」
「うん。私も楽しいよ」
ふっと笑った紗耶香の笑顔に、真希の心がトクンとときめいた。
── 出会ったときよりも、もっとかっこよくなっていく人。
「・・・いちーさん」
「ん?」
「・・・私が、市井さんのこと、好きだって言ったら、どうしますか?」
また、きょとんとした表情。
ちょっとした沈黙の後、市井さんはまたさっきと同じように笑う。
「私も好きだって言う」
悪びれない、いつもと同じ笑顔。
そんな笑顔が少し痛い。
「・・・ごとーは、いちーさんのことが好きですよ」
私の気持ちになんて、少しも気付いていないように、市井さんはニッと、迷うことなく笑って答えた。
「市井も、真希のこと好きだよ」
・・・たとえ、それが、どんな意味の「好き」だとしても。
嬉しいけど、少し切ない。
- 28 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月03日(日)21時33分46秒
- 「・・・真希」
「え。あ、はい!」
無意識のうちに俯いていた顔をぱっとあげた。
「あのさ、私、真希の言ってる好きの意味、間違えてる?」
「え・・・」
まっすぐな瞳から、目がそらせない。
「意味・・・って」
でも、逃げ出したくなってる。
「あのさ、だから」
困ったような表情で、市井さんは髪を掻き上げる。
私はただ、きゅっと手を握りしめていた。
「・・・友達とか、仲間とか。そーいうことじゃなくて。私は、ホントに真希のこと好きなんだ」
・・・それって。
「いきなりこー言うのもなんなんだけどっ。よーするに、真希にキスしたいって思うし、・・・それ以上のこともしたいって、思ってる」
そのとき、初めて、市井さんの手が、微かに震えているのに気付いた。
「・・・いちーさん」
「だから、もし真希が、友達とか仲間とかの意味で好きって言ったんなら・・・うわっ!」
反射的に、私は、市井さんに抱きついていた。
「ちょ、ちょっと真希っ・・・、ちゃんと言ってること、理解したぁ!?」
こくこくと頷く。
そこまで言って貰ってわかんないほど、バカじゃないです。
「・・・いちーさん、大好きっ・・・!」
「・・・あ、うん・・・。市井も、好きだよ」
なぜだか、泣けてきて、涙が止まらなかった。
「ちょ、ちょっと、真希ぃ・・・」
困ったような市井さんの声が耳をくすぐる。
暖かい、市井さんの体。市井さんの髪の匂い。
きっと、幸せってこーいうこと、言うんだ。
ありがとうって、こういうときに使うんだ。
そう、素直に思った。
- 29 名前:誠螢 投稿日:2000年09月04日(月)21時43分07秒
- 中澤矢口も吉澤石川も市井後藤も、
すごく面白いです。
いちごまは、まだ続くのでしょうか?
なにはともわれ楽しみにしています。
- 30 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月05日(火)21時54分24秒
- 「んで?」
「・・・『んで』って何?」
「キスのひとつでもしたのかなぁと思って」
「してないよ!」
紗耶香は真っ赤になって反論する。
「なんだぁ」
「なんだぁ、ってね〜〜。もー、なんだよぉ。真里っぺには報告しとこうと思ったのにさっ」
「だって知ってたもん」
「え?」
「真希が紗耶香のこと好きなの、知ってたよ、矢口」
「え、え〜〜〜!!」
半分パニックを起こしかけている紗耶香に、真里はどうどうと肩を叩いた。
「知ってたんなら教えてくれたっていいじゃんかぁ!!」
「矢口の口から言うようなことじゃないっしょ〜」
「そりゃそうだけど」
「うまくいったんでしょ?ならいーじゃん」
「えへへへ〜〜」
にへらと笑う紗耶香に、真里はあきれたように苦笑いする。
「いや〜、いいよね、なんか」
「はいはいはい」
声に合わせて、ぽんぽんぽんぽんと紗耶香の肩を叩く。いてててて、と、逃げながらも、紗耶香の顔は笑っていた。
「矢口も頑張んなよっ」
「かーっ、自分が幸せな人は、世話焼きたがるね〜」
「なんだよぉ」
「矢口は矢口で頑張りますっ」
「何、頑張るん?」
「ひゃあ!!」
突然現れた人物に、真里と紗耶香は声を上げた。
「ゆゆゆゆ裕ちゃん!?」
「なんやの。人を幽霊かなんかみたいに」
「いいいいいつからそこにっ」
「今。なぁ、何頑張るん?」
「・・・ひみつです」
苦笑いの顔のまま硬直して、なんとかそれだけ言った真里の隣で、紗耶香は声を殺して笑っていた。
END.
- 31 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月06日(水)23時37分21秒
- >誠螢さん
ありがとうございます。
次はちょっとHくさいやぐちゅー予定です。
……ちょっとだけ(ニガワラ)
- 32 名前:誠螢 投稿日:2000年09月07日(木)16時17分39秒
- 楽しみにしています。
頑張ってください。
- 33 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月07日(木)22時56分31秒
- 『痕。』
「?」
怪訝そうに、裕子は真里の方を向こうとした。けれど真里がそれを押さえつける。
「なんやの」
「じっとしててよ」
「なにするん」
「ピアス」
「は?」
「ピアス、あけるの」
「はぁ!?」
裕子は身体をねじって真里から離れると、さっきまで真里に捕まれていた耳を手で覆った。
「じっとしててってば」
拗ねたようにそう言った真里の手には、穴開け用のピアッサーが握られていた。
「嫌やわ。痛いし」
「もーそんだけあけてたら、1個や2個、穴が増えたって変わんないじゃんか!」
「変わるわ!!」
- 34 名前:名無し中 投稿日:2000年09月08日(金)01時39分24秒
- い、痛そう……<ピアス
- 35 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月09日(土)01時08分22秒
- >34
い、痛いんじゃないかな(ニガワラ)。
- 36 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月09日(土)01時09分47秒
- 「なんでそんなこと……」
「だってさ」
「ん?」
「指輪だって、ピアスだって、衣装に合わせて変えるし」
「そりゃまぁ……。あたりまえやん」
「だから」
「なんで『だから』やの」
「1個くらい、矢口のもの、身につけといてよ」
「……それがピアスの穴なん?」
「ダメ?」
「……」
ダメとかそーいう話、違う気、するけどな。
「……わかった。えーよ」
ふう、と、小さく溜息をついて、裕子は肩の力を抜いた。そして、髪を耳にかける。
「痛くせんといてや?」
「……うん」
ピアッサーを耳たぶに当てて、裕子の様子を伺うように顔を覗き込む。
「このへん?」
「そんなん言ったかて、アタシ、見えへんって。矢口の好きなトコでえーよ」
- 37 名前:Unknown 投稿日:2000年09月09日(土)02時06分50秒
- ピアス・・・友達に開けてもらったら不発に終わり、
痛いわ血は出るわでかなり怖い目にあった経験が。
自分で開けた時はそんなでもなかったけど。
そのときのことが思い出されるなぁ。
がんばれ裕子!(笑)
- 38 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月09日(土)02時17分00秒
- やぐちゅー、大好き!
っつーか、姉さんが好きだから。
姉さん、女たらしだよね(笑
- 39 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月12日(火)23時03分47秒
- 「……っ」
当然あるはずの痛みに裕子が顔をしかめる。
「あ、ごめ……」
微かな動きに反応して、真里が手を止めて、裕子の顔を覗き込んだ。
「途中で止めたら、よけー痛いやろ」
「あ、う、うん」
ピアッサーを動かさないように、体勢を立て直して、真里は指に力を込めた。
- 40 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月12日(火)23時08分03秒
- >37
途中で情けをかける(?)とよけい痛いとか。
ピアスが定着するまでは布団針とかで開けてたって人もいるからけっこー怖いですよね(ニガワラ)。
>38
私も姉さん、好きです。女たらしって、……たしかに(ワラ。
- 41 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月12日(火)23時09分04秒
「痛かった……?」
「ちょっと」
眉を潜ませて、裕子が自分の耳たぶに触れる。
「……そんな顔せんでも平気やて」
そう言って、小さく微笑んだ裕子の親指には、うっすらと血がついていた。
「……うん」
少し俯いた真里の髪を軽くかきあげて、裕子はそっと頬に唇を寄せる。
「……アタシも、ええ?」
「え?」
「アタシにも、つけさせて」
「あ、いいよ。左でいい?」
「ん。左、やな?」
ふわりと裕子の手が真里の髪を掻き上げた。
「あ、でも裕ちゃん、ピアッサーない・・・」
真里の言葉を待たずに、唇が首筋に移動する。
「……裕……」
髪の境目に、チリッと微かに痛みが走った。
「……っ」
自分では見えない、── 他人にも、髪をかき上げて、よっぽど注意して見ないとわからないような場所につけられた、キスマーク。
「……消えちゃうよ、こんなの」
「えーよ」
ふっと裕子が小さく口元で笑う。
「何回でもつけたるから」
END.
- 42 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月12日(火)23時15分19秒
- ひとまずENDマーク。
そんなにHくさくもなかったか……。
- 43 名前:ゴンザレス 投稿日:2000年09月13日(水)01時36分42秒
- 幸せそうじゃのう。
- 44 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月13日(水)01時58分40秒
- そ〜と〜イケてますよ! やぐちゅーはいいねぇ♪
- 45 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月13日(水)02時23分59秒
- >43 ゴンザレスさん
そう思っていただけると、なによりです。
>44
ありがとーございます♪
- 46 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月13日(水)03時24分19秒
- このスレバンザイ!
- 47 名前:Unknown 投稿日:2000年09月13日(水)06時52分20秒
- ねーさんって右耳にいっぱい開いてるよね、ピアス。
左はしらないんだけど、いったいいくつ開いてんだろ。
まさか矢口の仕業か!?(笑)
- 48 名前:誠螢 投稿日:2000年09月13日(水)14時51分39秒
- 最後の裕ちゃんの一言が、めっちゃいい感じです。
いいっすね〜ラブラブ(死語)だぁ。
この続きが、あるといいな・・・。
- 49 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月17日(日)00時40分21秒
- 『I wish』
いつも彼女に花を買い与える男は、赤いバラを選ぶ。
彼女は、男に笑顔の報酬を。
けれど、本当に彼女の好きな花は、その隣にある、色とりどりのガーベラ。
だって彼女は、アタシが赤いバラを包んでいるとき、ずっとガーベラを見ている。
「これから出勤?」
「・・・そーだよ。おばさん、いい客、紹介してくれんの?」
「客・・・ねぇ。紹介したってもかめへんけど?」
「あたいは、高いよ?」
「えーよ。いくら?」
真里は黙っていた。怪訝そうに、裕子を見あげる。
「年上の花屋は、お気にめさへん?」
「・・・・・」
真里は口をつぐんで、目をそらせた。そして、ゆっくりと瞬きしてから、顔を上げる。
「・・・お金はいいよ」
「商売やないの?」
少し小馬鹿にしたように笑った裕子に、真里はあからさまにむっとした顔をした。
けれど、それはまるで拗ねた小さな子供のようにしか見えなくて、裕子の表情をさらに笑顔に変えただけだった。
「・・・かわりに、花、ちょうだい」
「花?」
「部屋を花で埋め尽くして。・・・そうしてくれたら、お金はいーよ」
「・・・わかった」
頷いて、裕子は手を差し出した。
「せやけど、これから一回でも『おばさん』言うたら、叩きだすで?」
- 50 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月17日(日)00時55分24秒
- えー、『I wish』PVネタです。ちょこっと遊ばせてください(ニガワラ)。
>46
ありがとうございます。これからもよろしくおねがいします。
>47 Unknownさん
だったら、すごいですね(ワラ)。>矢口の仕業
と、すると、そのたびに矢口の……(以下自主規制。ワラ)
>48 誠螢さん
>最後の裕ちゃんの一言が、めっちゃいい感じです。
そうですか?すごく嬉しいです。
続き……ですか。18歳未満立ち入り禁止?(爆)
「痕。」の続き、私も読みたいです。どなたか書いてくださいませんかね?(ワラ)
- 51 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月19日(火)00時33分42秒
- 部屋の中を少し見回して、真里はソファーの上に腰掛けた。
「よかったの? 休業の札なんか下げちゃってさ」
「変なコト訊くんやなぁ」
「・・・・・」
「今日は、もう全部売約済みやん」
「え?」
「部屋を花で埋め尽くすんやろ?」
そう言って裕子は、目を細めて笑った。
- 52 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月19日(火)00時37分16秒
- 「はい」
「え?」
目の前に差し出されたのは、まるで洗剤のCMに出てきそうなほど、真っ白なバスタオルだった。
きょとんとした真里に、裕子が言葉を続ける。
「シャワー」
「シャワー? 風呂場でやるの?」
返事の代わりに、裕子は少し乱暴に真里の頭にバスタオルを乗せた。
「化粧落として、付け毛も取っておいで。服はあとで持ってくから」
「あんまり変な服、持ってこないでよぉ?」
「あんたが思ってるよーなんは持ってこんから安心し」
そう言って、裕子はひらひらと手を振ると、部屋の奥へと歩いて行った。
頭の上からバスタオルを取って、なんとなく顔を埋める。
「・・・変なやつぅ」
柔らかなバスタオルは、甘くて、優しい匂いがした。
- 53 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月21日(木)21時16分12秒
- そして、真里が脱いだ服の上に置いた、白いバスタオルの上に、一輪の花。
オレンジ色の、ガーベラだった。
「・・・やっぱ、変なやつ・・・」
ガーベラをよけて、バスタオルを広げた。
髪を拭きながら、鏡に映った自分を見る。
「・・・・・」
あからさまに感じる、違和感。
化粧で、荒れた肌。
小さく溜息をついて、身体を拭いた。
「えーと・・・服・・・」
裕子がいつのまにか置いていった着替えは、淡いクリーム色のワンピースだった。
少し大人びた、シンプルなデザインと、綺麗なライン。そしてバスタオルと同じ、甘い匂いがした。
- 54 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月21日(木)21時17分01秒
- 着慣れない服とノーメイクに、体が緊張する。
真里がバスルームから出ると、裕子はソファーで雑誌をめくっていた。
いつのまにか裕子も、ジーンズと、ノースリーブのシャツというラフな格好に着替えていた。
真里の気配に気付いて、裕子が顔を上げる。
「似合うやん」
自然な微笑みに少し戸惑いながら、真里が笑い返す。
「・・・こーいうカッコさせるのがシュミなの?」
「せやなぁ。あんたのいつものカッコより、シュミやな」
雑誌を隣に置いて、裕子が立ち上がった。
「手伝って」
「え?」
「花を店から運ぶんや。一人でやるの、大変やもん」
「ワンピース、汚れちゃうよ?」
「かめへん、かめへん」
すれ違いざまにぽんと頭を軽く叩いて、すたすたと店の方へ裕子は歩いていく。
「・・・・・」
真里は小さく溜息をついた。
表情が、隠せない。
仮面が、かぶれない。
下手に笑おうとしても、見透かされる感じがする。
手に持ったオレンジのガーベラを、どうしていいのか分からなくて、ソファーに置かれた雑誌の上にそっと乗せた。
- 55 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月22日(金)23時50分41秒
- 「・・・ねぇ」
「ん?」
「なんでガーベラなの?」
「は?」
きょとんとして、裕子は、花をまとめていた手を止めた。
「オレンジのガーベラ、タオルの上に置いてたじゃない。・・・花言葉とか?」
「花言葉は、『神秘』とか『悲しみ』やけどな。そーいうんやなくて、あんたが好きなんちゃうかなと思て」
「・・・・・」
すっと、束になったオレンジ色のガーベラを、真里の前に差し出す。
「オレンジ、似合うやん」
「・・・・・」
「黄色とかも似合いそーやな」
そう言いながら、今度は黄色のガーベラを手にする。
「・・・なんで、わかったの?」
「なにが?」
「なんで、これが好きだって、わかった?」
オレンジ色のガーベラを両手いっぱいに抱えて、どこか怯えたような瞳を向ける真里に、裕子は微笑った。
「企業秘密や」
- 56 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月22日(金)23時51分24秒
- 「あー、これ全部運ぶとなると、けっこう時間かかりそーやなぁ」
はー、と、溜息をついて、裕子はトントンと腰を叩いた。
「これだけでいいよ」
「ん?」
「ガーベラだけで、いい」
「せやけど、それだけじゃ部屋なんか埋め尽くせんで?」
「・・・いい」
両手で抱えきれないほどの花束。
花を買ってくれた人は、たくさんいたけれど、こんなに優しい笑顔で、花を渡しくれた人は初めてだった。
「・・・・・」
「・・・どうしたんや?」
そう言われて、初めて、自分が泣いていることに気付いた。
- 57 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月24日(日)02時08分33秒
- ああ〜やぐちゅー。最高にいい〜。
- 58 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月26日(火)00時08分46秒
- さびしかった。
さびしかった。
ホントは、さびしかった。
ホントに欲しかったのは、お金でも花でもなくて、ただそばにいて、微笑んでくれる“誰か”。
ずっと、一緒にいてくれる、“誰か”。
「・・・ふぇ・・・」
悲しくて、さびしくて、ぼろぼろと小さな子供みたいに泣いた。
「な、なんやぁ・・・。どーしたんや?」
“誰か”になってくれないかな?
アナタが、矢口だけの、“誰か”に。
- 59 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月26日(火)00時10分13秒
- >57さん
ありがとーございます。
やっぱり、やぐちゅーはいいですよね。
- 60 名前:ゆうや 投稿日:2000年09月26日(火)00時10分43秒
- ようやく泣きやんだ真里の頬を、タオルで軽く拭いてから、裕子は真里の髪をそっと撫でた。
「そーいや、まだ聞いてへんかったな。名前、なんて言うんや?」
「矢口、真里」
「矢口?」
真里はこくりと頷いた。
「・・・あのな。アタシは、矢口よりずっと年上やし、そんな大金持ちってわけでもないし、あんまり冴えへんヤツかもしれんけど──」
「?」
「アタシと付き合ってみんか?」
「・・・・・」
それは、あまりにいきなりの言葉だったけれど。
「・・・就職先、紹介してくれる?」
「商店街の花屋は、お気に召さへん?」
裕子の言葉に、真里は、笑顔で返した。
END.
- 61 名前:名無し 投稿日:2000年09月26日(火)00時19分09秒
- お願いだー。ずっとやぐちゅーを続けてください。
オレの中ではいま、やぐちゅー=モーニング娘。
- 62 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月26日(火)01時22分09秒
- 最近やぐちゅ〜しか好きじゃないような、そんなような気がする・・。
それ以外だったらよしいしでしょう!!それかやぐなち。
お疲れさまでっすー。。次回作もやぐちゅー読みたいです。
- 63 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月26日(火)04時40分51秒
- や〜、いいっすねぇ、コレ。
PVネタは、ほかにも色々出来そうな気がするんですけど、
別のカップリングでもやってもらえませんか?
マダムに一目惚れするおまわりさんきぼ〜ん。
- 64 名前:ゆうや 投稿日:2000年10月02日(月)00時16分35秒
- 『I wish 2』
あふ、と、大きなあくびをひとつ。
「はぁ〜」
あからさまに退屈そうな声をあげて、後藤は公園のベンチにもたれた。
最近、事件どころか、イザコザも起きない。仕事といえば、道案内と「一応」のパトロール。
たしかに、平和なのは、とてもいいことなんだけれど。
「・・・ヒマだぁ」
こん棒で、とんとんと肩を叩いて、後藤は溜息をついた。
「こんにちは、おまわりさん」
声に反応して顔をあげると、いつもここですれ違う石川夫人がいた。
「あ、こんにちは」
挨拶し返して、少し姿勢を正す。
足下では彼女の愛犬が、はふはふと舌を出して、しっぽを思う存分振っている。
「いー天気ですね」
「ですね。お散歩ですか?」
「はい」
にっこりと笑った彼女に、苦笑いして、軽く頭を下げた。
- 65 名前:ゆうや 投稿日:2000年10月02日(月)00時24分48秒
- >61さん
>62さん
ありがとうございます。嬉しいです。
そういっていただけると、「やっぱり、頑張って更新しよう」ってやる気がでます。
感想いただけるのって、すごい活力になりますね。
>63さん
すみません。おまわりさん→マダムに見せかけて、やぐちゅーだったりします。>『I wish 2』
少しだけ、おまわりさんマダム風味、ってカンジで(ニガワラ)
- 66 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月02日(月)00時46分32秒
- むは〜っ(?)とはまる作品ですな〜。
- 67 名前:63 投稿日:2000年10月02日(月)03時37分26秒
- >作者さん
リクエスト受けてくれてありがと〜っ。
このやぐちゅー好きなんで、やぐちゅーでも全然OKです。
それにしてもマダムLOVE。
- 68 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月02日(月)04時28分22秒
- でもせっかくPVネタでやるんなら、
あの設定でいろんな組み合わせも見てみたい。
- 69 名前:61 投稿日:2000年10月02日(月)06時54分21秒
- >65 一瞬がっかりしたが、そのコメントを読んでにんまり。
楽しみにしてっるっす。矢口と中澤がでてくるの。
- 70 名前:ゆうや 投稿日:2000年10月05日(木)23時28分47秒
- 相変わらず、なんだか気の抜けるお方だ。
「パトロールですか?」
「はい」
「そうですか」
「そうなんですよ」
とりあえずそう答える。
やっぱり、気が抜けるお方だ。
「ここ、よろしいですか?」
「あ、いいですよ」
ベンチの端に寄ると、石川夫人は、おだやかに微笑んでから、後藤のとなりに腰掛けた。
ただでなくてもヒマな、のんびりとした時間が、さらに速度をおとしたように思える。
「平和ですねぇ」
「まったくです」
- 71 名前:ゆうや 投稿日:2000年10月05日(木)23時46分56秒
- 更新しました。
>66さん
>67さん
ありがとうございます。
のんびり楽しんでいただけると嬉しいです。
>68さん
気まぐれに遊んでみた『I wish』が2まで行くとは思ってもみなかったんで・・・。
いろんな組み合わせでてくるくらい、続くかな・・・(ニガワラ)。
>69さん
中澤さん、もーでてきます。矢口さん、もーすこしです。
これからもよろしくおねがいします。
- 72 名前:ゆうや 投稿日:2000年10月05日(木)23時47分40秒
- 「・・・どう、思う?」
クリーニング店のカウンターにもたれながら、まるで独り言のように呟いた裕子に、圭は仕事の手を休めることなく問い返す。
「なにが?」
「ちゃんと聞いててーやぁ」
「はいはい。── で?真里ちゃんがどーかしたの?」
「・・・時々なぁ、傷とか痣とか作ってきよんねん。最初は仕事で、どっかひっかいたり、ぶつけたりしてるんかなぁ、って思ってたんやけど」
「違うの?」
「傷出来るとしたら指とか手の甲とかやったりするんやけど、こー肩のトコにあったりするし、朝来たときに、新しい痣があったりするねん。・・・おかしーないか?」
「・・・それはちょっとおかしいね」
ようやく真面目に聞き出した圭は、アイロンを置いた。
「もしかして、あの話、あの子の家のことなのかな・・・」
「え?なんや?」
- 73 名前:ゆうや 投稿日:2000年10月05日(木)23時48分32秒
- 「あのね、私も母親から聞いたんだけど、10年近く前に近所に住んでた奥さんが、子供置いて出ていっちゃったことがあるんだって。その原因が夫の暴力だったっていう話を聞いたことがあるんだ」
その話に、裕子は眉を潜めた。
「・・・その置いて行かれた子供ってのが、矢口やって言うんか?」
「どうかな。それは、わかんないけど」
けれど、その可能性はある。
「・・・もし、矢口が父親に虐待とか受けてるっていうんやったら・・・」
「どーするの?」
「そんなん、決まってるやんか」
少し複雑そうな顔の裕子に、圭は微笑む。
「いーんじゃない?」
「ええかな?」
「うん。いいと思うよ」
── 大切な、あの子の事だから。
- 74 名前:ゆうや 投稿日:2000年10月12日(木)23時53分46秒
- 「こんにちはー」
「・・・あ。こんにちは」
元気よく挨拶されて、挨拶を返しつつ、後藤はきょとんとした。
肩にかかった茶色の髪と、大きな目。背が小さくて、抱えた花束が、やけに大きく見える。まるで、花に抱っこされているみたいだ。
・・・こんな人、いたかな?
一応、“警官”なんて職種にいる以上、こんな小さな町の住人くらい、把握しているつもりだったが、正直、見覚えがない。
「こんにちは。配達ですか?」
隣に座っていた石川夫人の言葉に驚いた。
「はい。3丁目の方まで」
「お気をつけて」
「はいっ。ありがとうございます」
子供のような笑顔を見せて去っていった彼女の背中を見送ってから、後藤は石川夫人を見た。
「・・・お知り合いですか?」
「そんなに親しいわけじゃありませんけど・・・。でも、おまわりさんも、ご存じでしょう?」
「え?」
「ほら、あの子ですよ。真里さん」
「・・・え?」
「今、花屋にお勤めなんでしょう?」
「あ。そうなんですか」
てっきり、貰った花束かと。
- 75 名前:ゆうや 投稿日:2000年10月12日(木)23時55分21秒
- 「真里さん・・・って、あの、こーいう髪型して・・・」
後藤がそう言いながら、指でウエーブを描くと、石川夫人は笑って頷いた。
「あの、前、ちょっとイザコザ起こした・・・」
「ええ、そういえば、圭織さんと。あのときはうちの主人がご迷惑おかけいたしまして」
「・・・いえ。そんなことは・・・」
軽く頭を下げた石川夫人に、つられるように、後藤も頭を下げた。
とりあえず、そのことよりも。
「・・・今の、ホントに真里さんなんですか・・・?」
「違うんですか?」
「・・・いや、私にもよく・・・」
だんだん自分が何を言っているのかわからなくなってきて、トントンとこん棒で軽く帽子を叩いた。
- 76 名前:ゆうや 投稿日:2000年10月12日(木)23時56分28秒
- 石川夫人の旦那に愛人がいることは、もうかなり知られた話で、当の本人がこの調子だから、今更何も口出す人もいない。
そして、この間起こったちょっとしたイザコザ。そのときに、真里が新たな愛人になったとばかり思っていたが──。
「・・・違ったのか」
「なにがですか?」
後藤の呟いた独り言を、石川夫人が耳に留めた。
「いえ、べつに。こう、イメージが変わったなと思いまして」
「それは、そうでしょう」
「なにかご存じなんですか?」
後藤がそう訊くと、石川夫人は柔らかく微笑んだ。
「好きな人が出来たら、それなりに変わるものじゃありませんか?」
「・・・はぁ」
「幸せになれるといいですね」
「そうですね」
なにがそうなんだか、よくわからないけれど。
- 77 名前:63 投稿日:2000年10月16日(月)01時01分40秒
- あ、更新されてる…気付くの遅すぎだ、自分。
真里の秘められた過去に、ぽえぽえなマダムですか(ワラ
これだけ色々人が出てくるのに上手くまとまってますねぇ。
- 78 名前:ゆうや 投稿日:2000年10月17日(火)23時16分24秒
- >63さん
いつもありがとうございます。
今回はちょこっとだけ更新です。
- 79 名前:ゆうや 投稿日:2000年10月17日(火)23時17分17秒
- 「ただいま帰りましたぁ」
配達を終えて、戻ってきた真里に、裕子は水道の蛇口を締めた。
「おかえり」
「水やりですか? 矢口、やりますよ?」
「ええよ。後少しやし。それより、お茶入れて?休憩しよ」
「はいっ」
素直に頷いて、真里は店の奥の方へ歩いていった。
そんな真里の背中を見送りながら、裕子は小さく溜息をついた。
前髪で隠してはいるけれど、微かに見える、目尻の痣。
昨日はなかったのに。
「・・・なんか、訊きにくいなぁ」
──「虐待でもされてるんか?」なんて。
きっと、アタシから訊かなければ、矢口はなにも言わないだろう。
「・・・でもなぁ」
訊かなければ言ってもらえないことも、ほんの少し、寂かった。
- 80 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月24日(火)21時19分55秒
- なぬ!?虐待ー!うむむ。
続き読みたいです。
- 81 名前:ゆうや 投稿日:2000年10月25日(水)00時55分51秒
- 「はい、どーぞ」
トンと目の前に、柔らかい湯気を立てたマグカップが置かれる。
「どーも」
イスに座る真里を見ながら、裕子はそっと縁を指の腹でなぞった。
「その痣、どうしたん?」って。
そう言えばいいのだ。そんなことくらい、口にするのは簡単なはずなのに、なかなかそのタイミングが掴めなかった。
「あ、そうだ。今日、公園で石川夫人に会いましたよ」
「そうなん?」
「ええ。おまわりさんと一緒でした」
「そらまた珍しいなぁ」
「ベンチでひなたぼっこ」
いつもと同じ笑顔で話す真里が、なんとなく現実感を失って見えた。
「・・・どうしました?」
「え?」
「なんか、ぼーっとしてたから」
「あ、いや、べつになんでもないよ?」
「・・・ならいいですけど」
それでもどこか不安そうな目を向ける真里に、裕子は小さく溜息をつきながらも笑ってみせた。
- 82 名前:ゆうや 投稿日:2000年10月25日(水)01時00分20秒
- >80名無しさん
ありがとうございます。
「虐待」の取り扱いはけっこう難しくて、どこまで書いていいのか、どこまで書かなければいけないのか、
思考錯誤中だったりします。
あんまり重い話にしたくないってのもあるので・・・。
- 83 名前:ゆうや 投稿日:2000年10月25日(水)01時01分12秒
- 「ホンマになんでもないって。それより、いー加減、敬語やめへんか?」
「でも、一応雇って貰ってる身ですし」
「なに言うてんの。初めて話したときはタメ口やったくせに」
「あれは・・・」
困ったように口をへの字にした真里のおでこをコツンと指でつつく。そして、裕子はそっと髪に手をやった。
真剣味を帯びた裕子の表情に、真里が素直にきょとんとした。
「・・・なぁ」
裕子の手で目尻の痣があらわになったことに気付いて、真里の体がぴくりと緊張する。
「・・・コレ、どーしたんや?」
真里の瞳が、怯えたように震えた。
- 84 名前:80です 投稿日:2000年10月25日(水)23時58分22秒
- お〜とうとう聞いてしまった〜!
「虐待」するやつの神経が分からない・・。なんで、んな事
- 85 名前:ゆうや 投稿日:2000年10月31日(火)23時40分47秒
- 「・・・な、・・・なんでも・・、ない・・・」
目をそらしながら呟いた言葉の語尾は、殆ど消えていた。
きゅっと真里が拳を握る。
「ちょっと、ぶつけたの」
顔をあげた真里は、不自然な笑顔を見せた。そんな真里に、裕子は眉を潜めて、小さく息を飲み込む。
「矢口」
裕子の冷たくも見える視線に、真里は何か言うどころか、視線もそらすことが出来なくて、ただそこに立ちつくすだけだった。
「・・・・・」
「・・・つまらん言い訳、せんといて」
低くそう呟いて、裕子はゆっくりと瞬きをした。
「・・・アタシのせいか?」
- 86 名前:ゆうや 投稿日:2000年10月31日(火)23時45分09秒
- 久しぶりに更新しました。
ちょっと遊んでみただけの「I wish」が何故、こんな話に・・・(汗)。
自分で書いてて、全然違う方向に行ってしまいました。
>84さん
>「虐待」するやつの神経が分からない・・。なんで、んな事
まったくです。でも世の中にはいるんですよね・・・。
- 87 名前:ゆうや 投稿日:2000年11月14日(火)00時19分03秒
- 「・・・そ、そんなんじゃない。そんなんじゃないよ!」
必死にそう言う真里に、裕子の心がきゅっと締め付けられる。
まるで置き去りにされた子犬みたいな目が、不安気に、裕子に何かを訴える。
── 何があったんや?
いったい、どうして欲しいんや?
「・・・矢口」
その目を見ていることが痛くて、そんな自分が、情けなくて。
裕子は真里の身体を抱き寄せた。
「・・・嘘は、つかんといてや?」
強ばった真里の肩を抱く手に力を込める。
「・・・父親に、殴られたんか?」
真里は、腕の中でうずくまるように、小さく頷いた。
- 88 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月14日(火)23時27分36秒
- やたっ!更新〜
- 89 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月14日(火)23時53分40秒
- 半月ぶりですな。
お待ちしておりました。
- 90 名前:ゆうや 投稿日:2000年11月17日(金)01時19分39秒
- 「稼いでくる金が少なくなったから、殴られたりしたん・・・?」
真里は首を振った。
「今までは、体が売り物だったから・・・。・・・でも、化粧で隠してたけど、時々顔に痣とかついてたんだよ?」
そう言って、口元で笑ってみせた真里の目に、僅かに涙が滲む。
「・・・そか」
裕子は、それに気付かない振りをして、ポンと真里の頭に手を乗せて、体を抱き寄せた。
「・・・一緒に、暮らそ?」
「・・・・・」
「アタシ、『幸せにする』なんて、偉そーに言えるほど、立派な人間違うけど。・・・一緒に、幸せになろ」
「・・・裕ちゃん」
「アタシとでも、ええやろ?イヤか?」
真里はきゅっと目を閉じて、ぶんぶんと首を振った。
「・・・イヤじゃないー・・・。・・・裕ちゃんとがいい・・・」
- 91 名前:ゆうや 投稿日:2000年11月17日(金)01時26分37秒
- >88さん、89さん
カキコ、ありがとうございます。
半月もほっておいたので、忘れられてるかなぁ、と思っていたんで(ニガワラ
すごく嬉しいです。
- 92 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月17日(金)02時12分41秒
- いや、忘れていないぞ
次の更新待ってます
- 93 名前:ジタン 投稿日:2000年11月26日(日)18時52分46秒
- やぐちゅ〜最高更新まってますね。
- 94 名前:ゆうや 投稿日:2000年11月29日(水)02時40分33秒
- ぼろぼろと真里の目から涙が落ちる。
その滴をすくうように、裕子はそっと目元に口付けた。
「・・・裕ちゃん・・・」
「ん?」
「・・・いいの?」
「なにがや」
「・・・矢口で、いいの・・・?」
至近距離で見上げてくる、不安そうな瞳。その瞳にやわらかく微笑むと、裕子は、ポンポンと頭を撫でた。
「アタシも、矢口がいいねん」
抱きしめて、頭ひとつ分小さい真里の髪に、顔を埋めた。
「・・・矢口やないと、嫌や」
小さな呟きが、真里の髪と心をくすぐった。
- 95 名前:ゆうや 投稿日:2000年11月29日(水)02時46分06秒
- >92さん
ありがとうございます。よろしければ、最後までおつきあいください^^。
>ジダンさん
レス、ありがとうございます。「やぐちゅ〜です」スレッド、いつも楽しみにしています。更新、嬉しいです!
- 96 名前:free dom 投稿日:2000年11月29日(水)15時51分00秒
- むは〜・・。いいな〜やぐちゅーは、ホントに。
ゆうやさん。読んで下さって、ほんとにありがとうございます。
また更新しましたので、よろしくお願いしますです。
- 97 名前:訂正(ジタン 投稿日:2000年11月29日(水)15時52分48秒
- ↑名前・・。更新したまま書いたので、すみませぬ。。
- 98 名前:ゆうや 投稿日:2000年12月02日(土)02時13分43秒
- ふう、と、後藤は溜息をついた。
いつものベンチに腰掛けて、やれやれ、と、こん棒で肩を叩く。
そんな後藤に声をかけたのは、石川夫人だった。
「こんにちは」
「あ、こんにちは」
後藤は慌てて姿勢を正して、ベンチの端へ寄った。
「すみません」
にっこりと柔らかい笑顔を向けてから、石川夫人は、後藤の隣に腰掛けた。
「お疲れですね」
不意にそう言われて、後藤はきょとんとする。そして、また溜息をつくと、ベンチへ深く腰掛けた。
「ちょっと昨日の夜、大変だったもんで」
「あら」
「えーと、ほら、真里さん」
「真里さんがどうかされました?」
「いえ、真里さんがどうかしたわけじゃないんですけどね」
「はぁ?」
「昨日の夜、真里さんのお父さんと・・・」
「裕子さんが一悶着起こしましたか?」
- 99 名前:ゆうや 投稿日:2000年12月02日(土)02時18分18秒
- >ジダンさん
読みに行かせて頂きます〜。今、展開がいしよし気味なんですよね(いしよし、すきなもんで)♪
- 100 名前:ゆうや 投稿日:2000年12月02日(土)02時20分47秒
- 「・・・よくおわかりになられますね」
後藤は少し眉を潜めたが、石川夫人は、ふふ、と、微笑んだだけだった。
「真里さん、花屋に居候することにしたみたいなんですよ。でも、真里さん、未成年じゃないですか。それで、誘拐だのなんだのって話にまで飛んでしまって」
「あら。大変でしたね」
「大変でしたよ」
はぁー、と、後藤は長い溜息をついた。
「・・・なんか、自分のコトばっか気にしてる父親みたいで・・・」
「なにかおっしゃいました?」
「あ、いえ。独り言です」
この一悶着は、裕子の気迫でカタが着いた。
「もぉ、真里はアタシのや! 父親だかなんだか知らんけど、あんたになんか渡さへん!!」
正直、ちょっとうらやましかった。
そう言ってしまえる相手がいることも、そう言ってくれる相手がいることも。
- 101 名前:ゆうや 投稿日:2000年12月02日(土)21時25分23秒
「・・・幸せになってくれるといいんですけど」
「大丈夫ですよ」
そう言って石川夫人は、柔らかく微笑んだ。
「好きな人に好きだって言ってもらえて、幸せじゃない人なんて、いないでしょう?」
「・・・・・」
ふわりと微笑むその笑顔にみとれてしまった自分に気付いて、思わず苦笑いする。
「・・・そうですね」
── あなたは、今、幸せなんですか?
そう聞きたかったけれど、なんとなく口に出せなかった。
そして、今、こうして隣に座っていることに、幸せを感じる自分に気付く。
「いい天気ですね」
石川夫人が穏やかな笑顔でそう言う。
「そうですね」
後藤はそう返して、照れくさそうに微笑んだ。
END.
- 102 名前:ゆうや 投稿日:2000年12月02日(土)21時28分10秒
- END.マークです。随分、かかった感じしますね(ニガワラ。
呼んでくださっていたみなさま、ありがとうございました。
- 103 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月02日(土)23時26分34秒
- ……何気に「ごまいし」っすか?
そのへんも気になるっす。
とりあえず、お疲れ様でした。
- 104 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月03日(日)02時45分02秒
- お疲れ様でした。見せ方がうまいなー。
後藤と石川の雰囲気もいいし、それがその中で語られるやぐちゅー
のハッピーエンドも表してる感じがしてすごくよかったです。
- 105 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月03日(日)03時42分08秒
- 石川夫人にはほんと幸せなんですかって聞きたくなりますね。
シリアスなやぐちゅーかなり良かったです。お疲れ様でした。
- 106 名前:ばね 投稿日:2000年12月03日(日)05時22分01秒
- やぐちゅー、シアワセで良かった。
ちなみに、お巡りさん×マダムをリクエストしたのは私でした。本人達があんまり仲良さそうじゃないんで(苦笑)書きにかったかもしれないですね。お疲れさまでした。
ごまいし「風味」なのが、逆に良かった気がします。聞きたくて、でも結局聞かなかった、っていうラストがすごく好きです。
- 107 名前:ジタン 投稿日:2000年12月03日(日)15時24分01秒
- 石川夫人と後藤もかなりよかったっす。ほんわか〜っとしてました。
やぐちゅー、もう最後の裕ちゃんが格好良かった〜!やぐちゅーばんざい
また、今度はごまいしが見たいですな。 お疲れ様でした。。
- 108 名前:ゆうや 投稿日:2000年12月06日(水)23時41分04秒
- >103 名無しさん
何気に「ごまいし」っす(笑)。
一応、ごま&いしで始まって、ごま→いしで終わるってことで。
>104 名無しさん
>見せ方がうまいなー。
>後藤と石川の雰囲気もいいし、それがその中で語られるやぐちゅー
>のハッピーエンドも表してる感じがしてすごくよかったです。
ありがとうございます。
話の中で、後藤と石川の存在をどう扱うか、苦労もして、逆に助けられもしました。
>105 名無しさん
>石川夫人にはほんと幸せなんですかって聞きたくなりますね。
きっと幸せなんだと思いますよ。
いつかまた石川夫人は書きたいです。
>106 ばねさん
ありがとうございます。63さんは、ばねさんだったのですね。
ばねさんのリクエストがなければ、なかった話なので、感謝してます。
>107 ジタンさん
いつもありがとうございます。
>石川夫人と後藤もかなりよかったっす。ほんわか〜っとしてました。
そう言っていただけると嬉しいです。
またそのうち、ごまいしにも挑戦したいです。
レス付けてくださったみなさん、読んでくださっていたみなさん、本当にありがとうございました。
- 109 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月08日(金)03時20分52秒
- 裕ちゃんかっこよかったー
101がなんだか切ない感じがするなあ。
「I wish」のほかの人々のエピソード読みたいです。
出来たら続き書いてください。
- 110 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月08日(月)23時51分30秒
- 今回のコンサートグッズには入浴剤があるそうだ。
事務所もいろいろ考えるなぁ。なんでも10種類の
入浴剤にそれぞれ「矢口の湯」とか「なっちの湯」とか
決まってるらしい。珍しく1人1箱ずつもらえることに
なった。
- 111 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月08日(月)23時52分15秒
- 「矢口の湯」は水沢温泉。
裕ちゃんが受け取ってしげしげと中身を確認してたと思ったら
「なあ、やっぱこの「矢口の湯」使ったら矢口の香りに包まれた
感じなんかなあ?」
って。顔にはいたずらな笑みが浮かんでる。オヤジかおまえは。
「裕子バーカ」
ペシっと腕を1発殴ってやる。
「あいたっ!なんやの、冗談やんか〜」
いつもと変わらない他愛ないじゃれ合い。
- 112 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月08日(月)23時53分04秒
- 翌朝、裕ちゃんは楽屋に入るなりアタシを見付けてうれしそうに
寄って来た。
「おっはよー、やーぐち〜♪」
「おはよー、ゆう…」
言い終わるより先にがばっと抱きしめられた。
「わぁっ、なんだよ、裕子! 朝っぱらから…ゆ、裕ちゃん?」
いつもなら「今日もかわいいなぁ」とかなんとか言いながら笑って
抱きしめるのに、今日はだまって裕ちゃんはアタシの髪に顔を
うずめている。アタシはだんだん顔が紅潮してくのがわかって、
しどろもどろになりながら訴えた。
「は、放してよ、裕ちゃん。みんな見てるし…」
実際のところは、いつものこととしてまわりのメンバーは見ては
いても気にはしてなかったのだが。
- 113 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月08日(月)23時54分15秒
- 「ん〜、やっぱ本物とはちゃうわ!」
「は?」
1分か2分か、アタシにはもっと長く感じたけど、実際には多分
それくらいで顔を上げた裕ちゃんが、なんだか満足げに息をついた。
何がなんだかわからなくて、アタシは抱きしめられたままボーゼンと
してしまった。
「いやな、昨日さっそくあの入浴剤使ってみてん、矢口の湯。
結構さわやかな感じがしたんやけど、やっぱ本物とはえらい
違ったわ♪」
そりゃそうだろう…。あまりのバカすぎる言葉にさらに放心状態と
なったアタシに、裕ちゃんは今度は耳元でさらっと囁いた。
「矢口の香りはアタシだけのもんやで、安心したわ」
そう言うと裕ちゃんは体を放し、真っ赤になったアタシを見て
余裕の笑みを浮かべた。その微笑みはこんな時でも悔しいほど綺麗で
アタシは照れ隠しも手伝って、いつも以上の声量で叫んだのだった。
「こっの、バカ裕子ーーーー!!!」
END
- 114 名前:名無し娘。 投稿日:2001年01月11日(木)18時20分16秒
- 放置スレで放置プレイ(氏
- 115 名前:名無し 投稿日:2001年01月12日(金)00時20分31秒
- おっ!
更新されていたよ。
さらしageされるまで気づかなかった(w
しかし、これって前と同じ作者さん?
書き方はそうっぽいが……
- 116 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月13日(土)01時14分47秒
- 「だーれが、ペットだ」
「あ?」
ぷう、と、頬を膨らませた真里に、裕子は満面の笑みでもって答える。
「なんや。裕ちゃんのラジオ、聴いてたん?」
「聴いてちゃ悪いかよぉ」
「悪いなんて一言も言ってへんやんか」
「・・・・・」
「なんでご機嫌ナナメなん?」
肩に置かれた手をちらりと見てから、真里は裕子を見上げた。
「ペットって言われて喜ぶヤツがいるわけないじゃんかっ」
吠えながら見上げてくる表情は、まるで子犬のようだ。思わず裕子はぷっと吹き出した。
- 117 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月13日(土)01時28分25秒
- 「なんだよっ!」
「だって、ホンマに犬か猫みたいやん」
「なんだとっ」
ぶんっと振り上げられた手を肩で受け止めて、裕子は真里を抱きしめた。強く抱きしめて、真里の髪に顔を埋める。
「ゆ、裕・・・」
「せやかて、矢口が嫌がっても、矢口のコト、ルームメートより彼女より、ペットにしたいんはホンマやもん」
「・・・なんだよ、それぇ・・・」
真里はきゅっ唇を噛んだ。
「好き」って言ってもらえるのは、嬉しい。
でも、その「好き」の言葉は、あまりにも自分の「好き」の想いと違いすぎる。
──“ペット”なんて。
“仲間”としても見てもらえてないんじゃないか。
- 118 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月13日(土)01時29分27秒
- 「だって、ペットやったら、アタシのもんやろ?」
「・・・え?」
裕子の言おうとしていることが、真里にはうまく理解出来なかった。腕の中で、ぎゅっと服を握りしめて、次の言葉を待つ。
「ルームメイトやったら、いつか別れるときがくるやん。恋人でも、別れるかもしれんやん。・・・でも、ペットやったら、どんなことがあっても、一生アタシのそばにいてくれるやろ?」
「裕ちゃん・・・」
「アタシのやって、堂々と言えるやん」
本当は、名目なんてなんでもいい。
ずっと、そばにいてくれるなら。
ずっと、アタシのものでいてくれるなら。
「・・・矢口、アタシのもんに、なってくれへん?」
閉じこめておくことなんて望んでいないけれど、アタシがいなければ、生きていくことすら出来ないくらいに。
- 119 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月13日(土)01時30分03秒
- 「・・・裕子のばーか・・・」
「耳タコや、そんなん」
「なんだよ、それぇ」
おかしくて、笑い出した。ぎゅっと裕子の背中にしがみつく。
「・・・いーよ、矢口、裕ちゃんのものになっても」
「ホンマ?」
「裕ちゃんが、矢口のものになってくれるんだったらね」
真里の言葉に、裕子は一瞬きょとんとしたけれど、すぐに笑って、「いーよ」と呟く代わりに、柔らかく頬に口付けた。
END.
- 120 名前:ゆうや 投稿日:2001年01月13日(土)01時32分02秒
- >しかし、これって前と同じ作者さん?
>書き方はそうっぽいが……
そーっぽいですかねぇ・・・(ニガラワ
- 121 名前:入浴剤ネタ書いたヤツ 投稿日:2001年01月14日(日)01時29分25秒
- 入浴剤ネタ書いてんのはゆうやさんじゃないっス。
やぐちゅーネタだったのでスレ使わせてもらっちゃいました。
邪魔だったらごめんなさい。
- 122 名前:115 投稿日:2001年01月14日(日)01時50分13秒
- >121
失礼しましたー。
まだまだ修行が足りませんな。
- 123 名前:やぐちゅ−大好き 投稿日:2001年01月14日(日)14時34分48秒
- ゆうやさんのやぐちゅ−最高!
やぐなちゅ−希望!ゆうなち(過去)VSやぐちゅー(未来)
お願いします!
- 124 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月14日(日)15時10分57秒
- やぐののー頼みますー。
- 125 名前:ゆうや 投稿日:2001年01月15日(月)08時28分00秒
- 116〜119までは私です。
やぐちゅーを読むと幸せになれるんで(ワラ、小咄系のスレは大歓迎です。
長編になると、ごっちゃになっちゃう可能性があるんで、「スレ立ててください」って感じですが。
これからもよろしくおねがいしまっす。
122さん
書き手の見分け方のポイントは「…」と「・・・」の使用の違いとか、語尾とかかと(爆)。
・・・その程度かい(ひとりツッコミ)
やぐちゅー大好きさん
>やぐなちゅ−希望!ゆうなち(過去)VSやぐちゅー(未来)
私が書くと、けっこうなっちが辛い話になっちゃうかと思いますが・・・。
頑張ってみますっ。
124さん
やぐののですかー。
やぐ←ののあたりならいけると思うんですけど・・・(苦笑)
- 126 名前:ゆうや 投稿日:2001年01月31日(水)02時30分16秒
- 『Winter Rain』
初めて会ったとき、裕ちゃんは、矢口なんか見ていなかった。
初めて交わした会話を、今でも覚えている。
「何時にきたん?」
「・・・し、7時です」
「そか」
── たった、それだけ。
たいした、興味もなさそうに。
けれど、あの時、裕ちゃんは、初めて矢口のことを見てくれた気がしたのだ。
- 127 名前:ゆうや 投稿日:2001年01月31日(水)02時33分47秒
- ゆうなち(過去)VSやぐちゅー(未来)、書いてみようと思います。
・・・あんまり「VS」って感じはしないかと思いますが。
- 128 名前:ゆうや 投稿日:2001年01月31日(水)02時39分09秒
- 「ゆーちゃんー」
明るい声が、楽屋に響く。
「なん?」
「あのね、へへっ」
「なんやぁ」
「昨日、コンビニでさ・・・」
他愛もない、くだらない話。
けれど、裕ちゃんはいつも、苦笑いしながらも、なっちの話をちゃんと聞いていた。
・・・ホントは、話なんて聞いていなかったのかもしれない。
裕ちゃんが見ていたのは、嬉しそうななっちの笑顔で、裕ちゃんが聞いていたのは、なっちの楽しそうな声。
それで、充分なんだ、きっと。
- 129 名前:ゆうや 投稿日:2001年01月31日(水)02時47分41秒
- 知っている。
ちゃんとわかってる。
裕ちゃんが、誰を見ているかぐらい、すぐにわかる。
裕ちゃんを、誰が見ているかぐらい、わからないわけない。
でも、自分の中の「好き」の想いに気付いちゃったものは、しょうがない。
だって、好きなんだよ。
気が付いたら、目で追っていて、存在を探してる。
隣に居てくれたら嬉しくて、おふざけのキスに、ドキドキしてる。
そんな自分を、否定したら、・・・かわいそうじゃんか。
- 130 名前:名無し 投稿日:2001年01月31日(水)11時23分30秒
- なんかいい感じですね!
楽しみにしているので頑張ってください!
- 131 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月01日(木)00時47分01秒
- 待っています!
- 132 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月02日(金)18時38分02秒
- ゆうやさんのやぐちゅー最高です!!
- 133 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月06日(火)19時22分20秒
- 待ってま〜す!!
がんばってくださいね〜
- 134 名前:ゆうや 投稿日:2001年02月16日(金)00時17分48秒
- その日は、夕方から雨が降ると、テレビで言っていた。そして、スタジオの玄関近くで、控え室に傘を忘れたことに気付いた。
「あっちゃー・・・」
しとしとと雨が降っていた。まだ小降りではあったけれど、傘なしで帰る気にはなれなかった。身体に溜まった疲れが、この短い距離を戻ることすら、めんどくさく感じさせたが、引き返すことに決めた。
もしかしたら、矢口は、このとき、雨に濡れて帰ってしまえばよかったのかもしれない。
そうしたら、もっと素直に、無邪気に、ただ、好きでいられたのだ。
控え室の電気は、まだついていた。矢口が控え室を出るとき、まだ裕ちゃんとなっちが残っていたから、まだその2人がいるのだろう。
ドアをノックしようとして、挙げた手を、一旦下ろした。
人の気配はあるけれど、話し声は聞こえてこない。
心が、ちくりと痛んだ。
裕ちゃんを好きななっちと、なっちを好きな裕ちゃん。
2人が、実際にどういう関係なのかは、知らないけれど。
- 135 名前:ゆうや 投稿日:2001年02月16日(金)00時21分20秒
- 久しぶりの更新です。
130さん、131さん、132さん、133さん、ありがとうございます。
相変わらず、放置プレイ気味ですが、のんびり付き合っていってくださると嬉しいです。
- 136 名前:ゆうや 投稿日:2001年02月16日(金)00時22分45秒
- 「・・・ごめんなぁ」
ドアの向こうから聞こえたのは、裕ちゃんの、声だった。
「アタシ、・・・やっぱり、なっちとは、一緒におれへん・・・」
小さな、掠れた声。
その後に、また、しばらく沈黙が続いた。
頭が混乱して、どうしていいのかわからなかった。
──「一緒にいられない」って?
もしかして、娘。辞めちゃうの?
・・・違うよね。
世間で流れる噂では日常茶飯事かもしれないけど、でも。そんな話、耳に入るたびに、裕ちゃんは、「辞めへんよ」ってそう言ってた。
・・・じゃあ・・・
「・・・うん。わかった」
努めて、明るく振る舞おうとしている、なっちの声が耳に飛び込んできた。
とくん、とくん、と、矢口の心臓の音が速くなっていくのがわかる。
「・・・でも、仲間としては、今まで通り、接してくれるよね?」
「・・・ん」
「ごめんね、裕ちゃん。・・・ありがと」
きゅっと唇を噛んで、ドアのそばを離れた。
- 137 名前:ゆうや 投稿日:2001年02月16日(金)00時24分03秒
- トイレの個室に駆け込んで、胸を押さえた。
喉が、痛いほど、乾いていた。
なっちの、「ありがと」という声が、耳に木霊する。
── なっちが、振られちゃったって、コト?
今まで、付き合っていたのか、それとも、なっちのほうから、告白したってことなのかは、あの会話ではわからないけれど。
「・・・・・」
自分を落ち着かせるために、ゆっくりと息を吐く。
「・・・矢口、これじゃ、ヤな子だよ・・・」
そーいう場面を盗み聞きしてしまったことに対して気まずさを感じている自分の隣に、紛れもなく喜んでいる自分がいる。
「・・・違ったんだ」
裕ちゃんは、なっちのこと、── 好きなわけじゃなかったんだ。
換気扇の音に重なって、雨の音が遠く聞こえた。
- 138 名前:ゆうや 投稿日:2001年02月16日(金)00時25分06秒
- 次の日、2人は、どこかぎこちなく見えた気もしたけれど、いつもと変わらない気もした。
裕ちゃんが、なっちの気持ちを知ったのは、いつなんだろう。
「矢口ぃ」
「あっ、な、なに、裕ちゃん」
「・・・いや、なんかぼーっとしてんな。具合、悪いんか?」
「へ、へいきっ。大丈夫。なんでもないよっ」
「そぉか? 最近、寒いからな。頑張るのはええけど、無理したあかんで?」
「・・・うん。ありがと」
矢口を見る、裕ちゃんの瞳が優しくて、なんだか、照れくさかった。
そして、なっちの存在が、少し、痛かった。
- 139 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月16日(金)04時09分22秒
- 更新されてる!
待ってました!
- 140 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月17日(土)05時49分12秒
- めちゃ待ってました〜〜〜〜
- 141 名前:ゆうや 投稿日:2001年04月05日(木)21時05分16秒
- あれは、あまりに突然のことだった。
TV収録の合間を縫って、不意に腕を捕まれた。
驚いて、振り返る。そして、裕ちゃんの表情に、また驚いた。
「・・・え? なに?」
いつものようにふざけて大きな声は出せなかった。裕ちゃんの見せた真剣な顔に、胸に詰まったような声を出すので精一杯だった。
「今日、一緒に帰ろ」
矢口達にしか聞こえないような、小さな声で、裕ちゃんはそう呟いた。
「え? な、なんで?」
「あかんか?」
「・・・そんなことはないけど・・・。でも、一緒に帰るって言ったって、駅までだけじゃん」
「かめへんよ」
「裕ちゃん?」
── いつもの裕ちゃんじゃなかった。
だいたい、いつもの裕ちゃんなら、「一緒に帰ろ」なんて言わない。
どんなにラジオやテレビで「好き」だって言ってくれても、プライベートじゃ、驚くくらい1人でいる人なのに。
「・・・ちょっと、話、あんねん」
「話? え? 今じゃダメなの?」
裕ちゃんは、苦笑いしただけだった。
- 142 名前:ゆうや 投稿日:2001年04月05日(木)21時07分46秒
- めちゃくちゃ久しぶりの更新です。
139さん、140さん、これ、読んでくれるのでしょうか?(苦笑)
もし読んでくださっていたら、1ヶ月半前の分も一緒にありがとうございます!
裕ちゃんの娘。脱退で、この話の内容、かなり変わりそうです。
- 143 名前:ゆうや 投稿日:2001年04月05日(木)21時18分55秒
- テレビ収録が終わって、裕ちゃんは「ちょっと待ってて」とそれだけ矢口に呟いて、どこかへ行ってしまった。
言われたその時は、裕ちゃんの背中を見ながら、トイレでも行くのかな、と、思っただけで、気にも留めなかった。
楽屋で、鏡の前のイスに腰掛けて、鞄の中を整頓する。
「お疲れさまでしたぁ」と、いつもの挨拶をして、みんなが帰っていったけれど、裕ちゃんはいつまでたっても戻って来なかった。
「矢口」
「ん?」
「帰らないの?」
なっちが帽子を深く被りながら、そう言った。
「うん、もうちょっと・・・」
その後の言葉は、上手く出てこなかった。
「そか。んじゃ、またね」
気にも留めていないように、さらりとそう言ったなっちにほっとして、笑った。
「ん。また明日ね〜」
努めて、明るい声を出す。
少し、心臓がドキドキした。
── 裕ちゃんを待ってる。
そんなことは言えない。
- 144 名前:ゆうや 投稿日:2001年04月05日(木)21時27分27秒
- 遅いな、と思いながら、後藤に借りたばかりのマンガ雑誌を広げた。
1人残って、シンとした楽屋の中で、小さく溜息をつく。
どうしたんだろう。
・・・矢口に話って、なんだろう。
「一緒に帰ろ」って言って、みんなが居なくなるまで待たせるなんて。
「・・・なんだよぅ、もぉ・・・」
不意に顔が熱くなる。
こんなの、まるで少女マンガみたいじゃんか。
・・・期待しても、いいのかな。
人気のない楽屋で。
「好きなんや」って真剣な顔して言われたら。
少女マンガだったら、きっと教室とかで、・・・関西弁なんて使わないんだろうけどさ。
でも、なぁ・・・。
頭の中で、期待してしまう自分とそれを打ち消そうとする自分が交差する。
火照った顔を、ぺちぺちと叩いた。
- 145 名前:nanasi 投稿日:2001年04月13日(金)01時41分16秒
- いやぁ嬉しいなぁ。待ってましたよ
- 146 名前:ゆうや 投稿日:2001年04月21日(土)14時07分39秒
- 裕ちゃんのコトを考えると、決まって頭に浮かぶのは、苦笑いのような小さな笑顔だった。
よく考えてみたら、怒った顔とか、とびきりの笑顔とかも、たくさん見ているはずなのに、なぜか、決まって矢口の頭に思い浮かぶのは、あの、 しゃーないなぁ、って言いたげに、目を細めて、口の両端を軽く持ち上げた、裕ちゃんの微笑み。
初めて矢口が「裕ちゃん」って呼んだとき、裕ちゃんはそうやって笑った。
その後、「なんやぁ」って言いながら、矢口の頭を軽くぽんぽんと叩いた。
・・・もう、その頃には、矢口は裕ちゃんのこと、好きになってたのかもしれない。
- 147 名前:ゆうや 投稿日:2001年04月21日(土)14時08分38秒
- >>nanasiさんへ
嬉しいです〜。ありがとうございます。
- 148 名前:ゆうや 投稿日:2001年04月21日(土)14時10分11秒
- 「・・・ぐち。矢口」
「・・・ん」
「矢口。こんなトコで寝てたら風邪ひくで」
「・・・あ、あれ、裕ちゃん・・・」
ごしごしと目を擦って、裕ちゃんの姿を確認する。
いつのまにか、机に突っ伏して、眠ってしまったらしい。
「跡、付いてるで」
「うそっ。ドコドコ!?」
「ココ。シャツの跡」
そう言って、裕ちゃんは、矢口の頬についたシャツの袖の線を指の腹でなぞった。
「うあ〜。目立つかなぁ〜」
裕ちゃんの辿った跡を、手の甲で擦る。ほんの少し、段差がついてる感じがした。
眉をしかめた矢口に、裕ちゃんはいつも矢口が思い浮かべてるのと同じように、笑っていた。
- 149 名前:ゆうや 投稿日:2001年04月21日(土)14時11分45秒
「あんま擦ったら赤くなってまうで?」
「あー、ん〜〜」
「そのうち治るって」
今度は、手の平がその頬に触れた。
ヒヤリとした感触が、耳のそばまで伝わる。
その感覚に、思わずドキリとして、身体が硬直した。
──こんなことくらい、たいしたことじゃないハズなのに。
いつも、裕ちゃんは、キスとか、平気でしてくるんだから・・・。
それでも心臓は、ドキドキと波打った。
裕ちゃんは、それを気付いているのか、いないのか、何も言わず矢口に向けられているその目が、少し、苦しかった。
- 150 名前:ゆうや 投稿日:2001年04月21日(土)14時13分17秒
- 心臓だけが時を刻む静寂に耐えきれず、少し多いめに息をすって、矢口は口を開いた。
「・・・裕ちゃん。・・・さっき、言ってた、話って・・・」
「あ、・・・ああ」
俯くように視線がそれて、裕ちゃんの手が離れた。そして、裕ちゃんは、小さく息を吐いてから、前髪をかき上げた。
「・・・あんな、矢口」
「・・・何?」
どこか、言い澱んでいる裕ちゃんを、促すようにそう呟く。
「・・・アタシな」
「・・・うん」
「・・・モーニング娘。、辞めようと思う」
- 151 名前:名無し娘 投稿日:2001年04月22日(日)02時45分25秒
- 更新されてる!
ありがとー
先がめっちゃ気になるところで・・・
待ってます
- 152 名前:ゆうや 投稿日:2001年05月26日(土)00時11分14秒
- 「え・・・?」
「もぉ、事務所の方には言ってあるんや。みんなにも、明日言うつもりで」
「・・・え・・・ちょ・・ちょっと待ってよ」
素直に頭が混乱した。
・・・辞めるって?
辞めるって・・・裕ちゃんが?
「矢口には、先に言っとこうかと、思って・・・」
「ちょっと待ってよ!!」
気がついたら、そう叫んでいた。
- 153 名前:ゆうや 投稿日:2001年05月26日(土)00時13分02秒
- >>151 名無し娘。さんへ
あいからわず、更新遅くてすみません。・・・見ていらっしゃいますかねぇ(苦笑)
スレ、ありがとうーございます。
- 154 名前:ゆうや 投稿日:2001年05月26日(土)00時25分15秒
- 「矢口・・・」
裕ちゃんの眉が僅かに歪む。
悲しそうに、矢口を見ている。
「・・・なんで・・・」
言葉を探すように、裕ちゃんの視線が泳いだ。その後、前髪をかき上げて、裕ちゃんは言葉を選ぶように、ゆっくりと口を開いた。
「・・・ちゃんと、自分で考えて決めたことなんや。娘。が嫌になったとか、そんなんやなくて・・・、今なら、自分1人でやっていくんやったら、今が1番ええかなって思ったんや」
苦笑いを浮かべる裕ちゃんに、苛立ちに似たもどかしさを感じる。
「もぉ、みんな、しっかりしてきたし、アタシがいなくても大丈夫やろ?」
その言葉に、頭に血が昇った。
「勝手なこと言わないでよ!」
- 155 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月26日(土)14時18分40秒
- 151です!
更新首を長くして待っておりました(w
もうちょっと更新してください!(w
哀願
- 156 名前:ゆうや 投稿日:2001年05月27日(日)13時22分01秒
- こめかみの辺りがキンキンと痛む。
困ったような、驚いたような裕ちゃんの顔が、こみ上げてきた涙で少し滲んだ。
「裕ちゃんなんか、なんにもわかってない! なんにもわかってくれてないじゃん!!」
「・・・矢口」
「矢口のこと、そんなに都合良く扱わないでよ!」
胸の奥から言葉がこみ上げてきて、止められなかった。
── それが、裕ちゃんを傷つけるものだと、わかっていても。
「・・・都合良くって・・・なんやそれ・・・」
「ホントはなっちのこと、好きなんでしょう!? だったら、なっちのとこに行けばいいじゃん!」
「ちょ・・・、矢口、なに・・・」
目元に溜まった涙が、一筋、頬を伝って、落ちた。
ポタッと床に落ちた音が、聞こえたような気がした。
すうっと、身体の力が抜ける。
「・・・そんな、勝手にわかってるようなこと、言わないでよ・・・」
『アタシ、・・・やっぱり、なっちとは、一緒におれへん・・・』
あの言葉の本当の意味が、やっとわかった。
裕ちゃんは、なっちが好きで、・・・でも、娘。を辞めることを決心して。
だから・・・。
「── 矢口だって、裕ちゃんのこと、好きなんだよ・・・?」
・・・こんなの、まるで、ピエロだよ。
矢口には、あってるかも、しんないけど・・・さ。
- 157 名前:ゆうや 投稿日:2001年05月27日(日)13時24分28秒
- >>151 as 155さん
ありがとうございます!
こんなトロくさいスレを見捨てずにいてくださって、すごく嬉しいです。
- 158 名前:ゆうや 投稿日:2001年05月31日(木)22時25分03秒
- 裕ちゃんは、なにも言わなかった。
俯くように、視線をそらせて、爪で鼻の下を軽く擦った。
── 裕ちゃんが、言葉を探しているときの癖だ。
「・・・・・」
しばらく、待ったけれど、結局裕ちゃんは、何も言わなかった。
裕ちゃんが顔を上げて、矢口を見る。
まるで、裕ちゃんの方が、矢口の次の言葉を探しているみたいに見えた。
けれど、矢口も、なにも言えなかった。
くるりと背を向けて、ドアの方に向かった。
追いかけてくる気配も、呼び止める気配もしないのに、裕ちゃんの存在感を痛いほど背中に感じる。 振り返りそうな衝動に負けないように、早足で歩く。
・・・何か、言ってよ、裕ちゃん。
好きだって、言ってるのに。
・・・振るなら、ちゃんと振ってよ。
心の中で呟いた言葉を、口にするべきだったのかもしれないけれど、声には出来なかった。
- 159 名前:俺も更新待ってます! 投稿日:2001年06月02日(土)00時52分00秒
- またまた、いいところで(w
ゆうやさんの作品大好きです!
- 160 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月22日(金)22時46分53秒
- 楽しみです〜
- 161 名前:読んでる人 投稿日:2001年06月27日(水)01時50分34秒
- もしかして放置?
- 162 名前:ゆうや 投稿日:2001年07月03日(火)23時12分38秒
- トイレの鏡の前で、自分の顔を見つめる。
「・・・あー・・・。赤くなってる・・・」
溜息のような、独り言。
ハンカチを少し濡らして、目尻に当てた。
「・・・バカだぁ、矢口・・・」
裕ちゃんの、困ったような顔が思い浮かぶ。
「・・・モーニング娘。、辞めようと思う」
・・・裕ちゃんは。
「矢口には先に言っとこうかと思って・・・」
裕ちゃんは、少なくとも、仲間としては、矢口を特別に見ていてくれたのに。
「・・・いつのまに、こんなに贅沢になっちゃったのかなぁ・・・」
自問自答しなくったって、わかっている。
裕ちゃんのことを好きだと自覚したあの瞬間から。
好きになって欲しくて。
矢口のことを、ちゃんと見て欲しくて。
・・・裕ちゃんのこと、欲しくて欲しくてたまらなくなった。
じわりと瞼が熱くなって、また涙が滲み出す。
・・・でも、裕ちゃんだって、悪いんだよ。
あんなに「好き」って言われたら、・・・期待しちゃうじゃんか。
廊下に人の気配を感じて、個室に逃げ込んだ。
- 163 名前:ゆうや 投稿日:2001年07月03日(火)23時13分58秒
- ・・・ある意味、放置スレですね。更新、あまりに遅くてすみません。
- 164 名前:ゆうや 投稿日:2001年07月03日(火)23時14分47秒
ドアの開く音がした。
それに続いて、トスンと立て付けのいい音がした。
あれ? と、頭に疑問符が浮かぶ。
その後、聞こえるはずの個室のドアの音が聞こえない。
少しして、コン、と、矢口の入っている個室のドアがノックされた。
反射的に、身体がビクリと反応した。
「・・・矢口?」
・・・え?
「矢口やろ?」
聞き間違えるはずがない。
・・・裕ちゃんの、声だった。
「・・・裕ちゃ・・・」
思わず声を出してしまって、慌てて口を噤む。
なにやってんだ、なにやってんだよ、矢口は〜〜!!
「・・・矢口。出てきて」
きゅっとハンカチを握りしめて、身体を縮こませる。
出られるわけがない。
どんな顔見せたらいいのか、全然わからない。
トン、と、もう一度ノックの音がした。
そして、その後、小さな溜息が聞こえた。
「・・・矢口」
どくん、と心臓の音が高鳴り出す。
「・・・なぁ、矢口」
ドア越しの、少し響く声が、やけに遠く聞こえた。
「もしかして・・・知ってたんか? アタシと、なっちのこと」
- 165 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月03日(火)23時25分38秒
- 待ってました!!!(w
- 166 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月05日(木)00時49分24秒
- 面白いです。
続きまたっりまっています。
頑張ってください!
- 167 名前:影 投稿日:2001年08月05日(日)08時56分47秒
- 答えることは出来なかった。
ただ、息を殺して、ドアを背に、じっと立ちつくしていた。
「・・・矢口」
ドア越しに、裕ちゃんの声がする。
「なぁ、矢口・・・」
懇願するような声に、胸が詰まる。
聞いても、後悔しない?
自分に問いかけても、くだらない答えしか出なかった。
後悔なんて、もう、してる。
好きだって言っちゃった時点で、もう後悔しちゃってるんだよ。
「・・・裕ちゃん」
「矢口?」
ゆっくりと目を閉じて、深呼吸する。そして、口を開いた。
「・・・裕ちゃんは、なっちと付き合ってたの?」
ちょっとした沈黙が流れる。そのあと、掠れた小さな呟きが聞こえた。
「・・・うん」
予想していた答えだったけれど、やっぱりそれは辛かった。
少し自嘲気味に笑って、質問を続ける。
「・・・で、娘。辞めるから、・・・別れたの?」
「・・・違うよ」
その声も、掠れていた。
- 168 名前:影 投稿日:2001年08月05日(日)09時05分01秒
- 「アタシが・・・なっちと別れたんは、そんな理由やないよ・・・」
コン、と、ドアが叩かれる。
振動が、背中を伝って全身に広がった。
「・・・矢口。アタシの話、ちゃんと聞いてくれるんやったら、・・・ドア、開けて」
裕ちゃんの言葉に、操作されるように、ドアから離れ、身体の向きを変えた。
ドアに向き合って、カギに手を伸ばす。
けれど、開けることは出来なかった。
指先が震える。
力無く、手を下ろした。
「・・・もう、どこかへ行って。・・・裕ちゃん」
突き放したのは、自分のほうだった。
- 169 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月17日(金)00時57分51秒
- 何度も読み返してます。ねえさん、矢口を頼んます・・
作者さん、面白いです。楽しみにしています。
- 170 名前:読んでる人 投稿日:2001年08月25日(土)09時40分27秒
- 続きまだかなぁ・・・
- 171 名前:ゆうや 投稿日:2001年08月28日(火)23時04分01秒
- 小さく裕ちゃんの溜息が聞こえた。
そして、裕ちゃんがやってきたときと同じように、ドアの開く音がした。そのまま扉が閉まる。
その間、息を潜めてじっと耳をすませて、立ちすくんでいた。
「・・・・・」
きゅっと自分の手を握りしめて、深呼吸する。
息を大きく吐いたとき、一緒に涙が溢れ出した。
「・・・っ、うっ・・・くっ・・・」
子供みたいに、声をあげて泣いてしまいたかった。
けれど、誰にも聞かれたくなくて、息を殺す。
喉の奥に詰まった声が、行き場をなくして、矢口を締め付ける。
「・・・っ、ゆ・・・ゆう・・・っ」
・・・本当に、好きで。
好きで、好きで、たまらなくて。
「・・・ゆう・・こ・・の、アホぉ・・・っ」
なんであんな人、好きになっちゃったんだろう。
「・・・矢口・・も・・・アホだぁ・・・」
あんな、ズルイ人。
・・・なんで好きになっちゃったのかなぁ・・・?
- 172 名前:ゆうや 投稿日:2001年08月28日(火)23時05分27秒
- 待っていてくださった方、本当にありがとうございます。
久しぶりに更新しました。
- 173 名前:ゆうや 投稿日:2001年08月28日(火)23時15分38秒
- 泣き終わって、時計を見てみると、30分近くたっていた。
こんなに泣けるものなのか、と思いながら、溜息をつく。
泣くのには体力がいるというけれど、本当にその通りで、身体が随分疲れていて怠い感じがした。
けれど、心はずっと楽になっていた。
また、明日には、裕ちゃんと一緒の仕事がある。
裕ちゃんにあったら、ちゃんといつもみたいに笑おう。
・・・うまく、笑えるかどうか、わからないけれど。
きゅっとハンカチで目尻に残った涙を拭って、個室のドアを開けた。
- 174 名前:ゆうや 投稿日:2001年08月28日(火)23時28分00秒
- 鏡に映る自分を見て、髪を直して、背筋を伸ばす。
瞼は、少し腫れているけれど。
「・・・ちゃんと冷やして寝ないとなぁ・・・」
・・・大丈夫。
「よしっ」
自分で気合いを入れて、トイレのドアを開けた。
「・・・もぉ、泣きやんだんか?」
ふいに耳に飛び込んできた声に、呆然とした。
- 175 名前:ゆうや 投稿日:2001年08月28日(火)23時51分22秒
- 「・・・え」
声をしたほうに顔を上げると、そこには、壁にもたれかかって天井を見上げている裕ちゃんがいた。
「・・・なんで、いるの?」
「なんでやろな」
「・・・ずっとココにいたの?」
「うん」
頭の奥が麻痺して、上手く感覚が掴めなかった。
「・・・なぁ」
ゆっくりと裕ちゃんが矢口の方を向いた。
「アタシのこと、まだちゃんと好きでいてくれてるんか?」
「・・・なんだよ、それ」
「・・・なんや、言われてもなぁ」
裕ちゃんが困ったように、前髪をかき上げる。そして、いつもよりずっと情けないような目で、矢口を見た。
けれど、目はすぐに逸らされて、代わりに、裕ちゃんは、矢口の肩に手を回して、ゆっくりと抱き寄せた。
その腕の力は、いつもよりもずっと弱々しかった。
- 176 名前:ゆうや 投稿日:2001年08月28日(火)23時58分28秒
- はー・・・、と、細く長い溜息が聞こえた。
「・・・ゆ、うちゃん・・・?」
「・・・なんか、抵抗されたら、どうしよかと思った・・・」
「・・・はぁ?」
安心したように、きゅっと抱きしめる腕に力がこもる。
なんだか、切ないとか、悲しいとか、そんなことよりも、面食らっている感じだった。
イマイチ状況が理解をこえていた。
「・・・ちょっと、裕ちゃん」
今、振ったばっかの相手捕まえて、おかしいってば、これは。
けれど、裕ちゃんが耳元で囁いた言葉は、もっと矢口を驚かせるものだった。
「・・・好きや」
「え?」
「・・・矢口が、好きやで」
- 177 名前:マイルドセブン 投稿日:2001年08月29日(水)02時53分16秒
- やったー!更新だぁー
- 178 名前:ゆうや 投稿日:2001年09月04日(火)22時10分31秒
- 「ちょ・・・、ちょっと、裕ちゃんっ!」
思わず裕ちゃんの腕から逃げる。
「・・・・・」
裕ちゃんの手は、行き場を失ったように、頼りなく宙に浮いた。
「・・・もぉっ・・・。やめてよ、そーいうの・・・」
笑って見せたけれど、自分でもおかしいくらい、ぎこちないのがわかった。
裕ちゃんとまともに目を合わせることなんて出来なかった。
- 179 名前:ゆうや 投稿日:2001年09月04日(火)22時24分59秒
- 「・・・矢口」
低く、掠れた声。その後に、小さな溜息が聞こえた。
「矢口」
次に聞こえたのは、裕ちゃんが、怒っているときの声だった。
まるで、出逢った頃みたいに、身体が反射的にすくんだ。
「矢口」
もう一度、名前が呼ばれる。けれど、やっぱり顔をあげることは出来なかった。
「・・・なぁ。もういっかい聞くけど。・・・アタシの話、ちゃんと聞いてくれへんか?」
もう、どうしていいのかわからなくて、ただ、小さく頷いた。
- 180 名前:ゆうや 投稿日:2001年09月04日(火)22時38分18秒
- 「・・・ここでつっ立ってるのもなんやし。どこか、場所変えて・・・」
そう言った裕ちゃんの声に重なって、不意に、
「あれ? 裕ちゃん?」
と、いう声が響いた。
その声に顔を上げると、裕ちゃんの肩越しに見えたのは圭織の姿だった。
「・・・圭織」
裕ちゃんも半ば呆然として、振り返る。
「あ、なんだ。矢口もいたの?」
「・・・圭織。まだ帰ってへんかったんか・・・?」
「ああ、うん。一旦帰ったんだけどさぁ、ちょっと忘れ物しちゃって、取りにきた。失敗、失敗」
明るい声でそう言いながら、圭織は矢口達の方へ向かってきた。
きゅっと手を握りしめて、矢口は、圭織の方へ歩き出した。
「やぐっ・・・」
慌てたような裕ちゃんの声がしたけれど、構わずに真っ直ぐに歩く。
「矢口?」
「・・・圭織、ありがと」
すれ違いざま、圭織にさえ聞こえるかどうか分からないような声で、小さくそう呟く。
「え? ちょ、ちょっと矢口!」
そのまま、振り返らずに、走り出す。
後ろで「ちょっと裕ちゃん、ケンカでもしたの?」と圭織の声が聞こえたような気がしたけれど、立ち止まることはしなかった。
- 181 名前:やぐちゅーすか 投稿日:2001年09月26日(水)18時52分36秒
- 続き……
めちゃ楽しみにしてます。
- 182 名前:ゆうや 投稿日:2001年10月23日(火)17時45分19秒
- 電車の中で、こつんとドアのガラスに頭をあてる。
(・・・なんで逃げちゃったんだろ)
心の中で、そう呟いて、目を閉じた。
頭の中が、混乱する。
モーニング娘。を、辞めると言った、裕ちゃん。
なっちと付き合ってた、裕ちゃん。
「好きや」って、言ってくれた、裕ちゃん。
・・・全部、同じ裕ちゃんのハズなのに。
「・・・わっかんないよ・・・」
自分のことも、わからない。
- 183 名前:ゆうや 投稿日:2001年10月23日(火)18時03分41秒
- 次の日、裕ちゃんは、集合時間になっても現れなかった。
「裕ちゃんの遅刻って珍しいね」
と、なっちが言ったけれど、それは違っていて、圭ちゃんが否定した。
「もー来てるよ。なんか上の人に呼ばれてった」
「呼ばれてったぁ?」
なっちが、「なんだろねぇ、こわいよね」と、冗談のように言ったけれど、矢口は笑えなかった。
・・・もう、知っているから。
しばらくして、裕ちゃんがドアを開けて入ってきたとき、ふと目が合った気がした。
「・・・裕・・・ちゃん」
喉元まででた声は、かすれて音にならなかった。
ただ、小さく唇が動いただけだった。
それでも、裕ちゃんは気が付いたのか、苦笑いするみたいに、小さく口元で微笑んだ。
- 184 名前:ゆうや 投稿日:2001年10月23日(火)18時13分50秒
- 裕ちゃんの微笑みを見たとき、心の中で、開き直りにも似た想いが、ストンを腰を下ろした。
・・・裕ちゃんが、好きなんだ。
矢口のこと、もっともっと見ていて欲しくて。
もっともっと、好きになって欲しくて。
でも、そんなことよりも、ただ、お母さんを独り占めしたがる子供みたいに。
・・・裕ちゃんが、欲しくて仕方ないんだ。
- 185 名前:ゆうや 投稿日:2001年10月23日(火)18時23分26秒
- 加護や辻がわんわん泣いて、圭ちゃんや圭織が切なそうに苦笑いして。
なっちや後藤が、どうしていいのか、わかんないような顔してるときに、こそっと裕ちゃんの後を追いかけた。
廊下を歩いている裕ちゃんを捕まえる前に、裕ちゃんは立ち止まって、振り返った。
「・・・矢口」
無表情に近い顔で、裕ちゃんはそう、ぽつりと呟いた。
「・・・驚かないんだ」
笑ってみせたけれど、ぎこちないのは、自分でもよくわかった。
「あんな足音たてるの、矢口くらいや」
そう言って、裕ちゃんは笑った。
「そっか」
つられて笑って、さっきより、まともな笑顔が出来た気がした。
- 186 名前:ゆうや 投稿日:2001年10月23日(火)18時30分56秒
- 「・・・あのね、裕ちゃん」
「ん?」
「・・・裕ちゃんが、娘。辞めるまで、独り占めしたいとか言わないから」
「え?」
きょとんとする裕ちゃんの目を真っ直ぐに見ながら、声を出すために、小さく息をすった。
「みんな、裕ちゃんのこと、好きだし。裕ちゃんと、いっぱい喋りたいって思ってるだろうから、その邪魔はしないし」
「矢口?」
腕を掴んで、ぐいっと引き寄せる。
そして、耳元で、誰にも聞こえないように、囁いた。
「だから、裕ちゃん。・・・矢口だけの裕ちゃんになって」
それが、矢口の、答えだった。
- 187 名前:ゆうや 投稿日:2001年10月23日(火)18時32分28秒
- >181 名前 : やぐちゅーすかさん
ありがとうございます。やっとこさ更新しました。
- 188 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月24日(水)01時43分28秒
やった!!更新されてますね〜
裕ちゃん…
続きが気になりますー!!
がんばってくださいね!!
ゆうやさんのペースでいいですから☆
- 189 名前:ゆうや 投稿日:2001年10月27日(土)23時52分55秒
- 裕ちゃんは、一瞬驚いたような表情をしてから、苦笑いのような、照れ隠しのような笑顔を見せた。
「・・・ありがと、矢口」
初めて会ったとき、裕ちゃんは、矢口なんか見ていなかった。
そんな裕ちゃんが、いつのまにか、矢口を見ていてくれた。
・・・それだけで。
きっと、忘れない。
最初に、交わした言葉も。
最後に、交わす言葉も。
矢口は、忘れない。
- 190 名前:ゆうや 投稿日:2001年10月28日(日)00時34分23秒
- 時間は足早に過ぎていった。
なにも変わらないような気もしたけれど、何かが少しずつ変わっていくような気もした。
裕ちゃんと2人きりになることは殆どなかった。
スケジュールは秒刻みで、ちょっとした待ち時間には、裕ちゃんのそばには必ずメンバーの誰かが側にいた。
それまで、あまり裕ちゃんと話していなかったはずの後藤や石川も、裕ちゃんの側に寄っていく。辻や加護にいたっては、付いて歩いているんじゃないかと思うくらい、裕ちゃんにべったりだった。
それはそれでよかった。
矢口は矢口で、なんとなく、裕ちゃんに近づくことを避けた。
── 邪魔はしない、と、自分で言ったんだし。
それに、ほんの少し、裕ちゃんとどう接していいのか、わからないところもあった。
- 191 名前:ゆうや 投稿日:2001年10月28日(日)01時20分55秒
- 午後から、雨が降りだした。
「あー。傘、持ってこなかったよ」
なっちが苦笑いしていった。
「矢口も持ってきてないや」
2人で「帰るまでに止むといいね」と言って笑った。
- 192 名前:ゆうや 投稿日:2001年10月28日(日)01時33分49秒
- 生憎、帰る時間になっても、雨は止まなかった。
エレベーターが来るのをなっちと待ちながら、なっちが裕ちゃんに振られた ── そう言うのが、正しいのかどうかはわからないけれど ── 日のことを思い出していた。
あの日も雨が降っていた。
・・・あのとき、もし、あの場面をみていなかったら。
もっと、素直に、裕ちゃんの言葉を受け入れられたんだろうか。
「モーニング娘。を辞める」と告げられたことも、「好き」って言ってくれたことも。
「矢口?」
なっちの声にハッと我に返る。
エレベーターの扉が開いていた。
「ご、ごめん。ぼーっとしてた」
慌てて、エレベーターに乗り込もうとしたとき、不意に腕を捕まれて、引き戻された。
「!?」
振り向くと、そこには裕ちゃんがいた。
- 193 名前:ゆうや 投稿日:2001年10月28日(日)01時47分59秒
- 扉が閉まりかけ、先にエレベータの中に入っていたなっちが慌てて開ボタンを押した。
半分閉まった扉が、ゆったりとした動きで開く。
「・・・裕ちゃん?」
なっちと矢口の声が、違うトーンながらも、綺麗に重なる。
裕ちゃんは、矢口の腕を掴んだまま、なっちの方をまっすぐに向いていた。
「ごめん、なっち。先、帰っといて。・・・アタシ、矢口に用あるねん」
そう言った裕ちゃんに、なっちは小さく頷いてから、小さく笑った。
「・・・うん。また明日ね、裕ちゃん、矢口」
「うん。気ぃつけて帰りや」
「うん」
「・・・あ、なっち・・・。また明日・・・」
「うん。じゃね、矢口」
なっちはいつもの笑顔で、閉まりかけた扉の隙間から手を振った。
もう、扉は開くことはなくて、エレベーターは静かに下降していった。
- 194 名前:ゆうや 投稿日:2001年10月28日(日)02時00分11秒
- 裕ちゃんの手が、すっと離れる。
人気の無くなったエレベーターホールで、裕ちゃんはゆっくりと矢口の方を向いた。
向けられたその表情は、裕ちゃんの怒っているときの顔だった。
「裕ちゃん・・・」
「・・・なに考えてるんや」
低く呟かれた言葉に意味がわからなかった。
「・・・なにって・・・」
「避けてるやろ!」
「え」
「なんか避けてるやろ、アタシのこと!」
「・・・あ」
なんだ、と、素直にほっとした。
「なんでや!」
「・・・なんでって・・・」
「娘。辞めるまで、独り占めせんとか、邪魔せんとか、言ってたやつか!?」
「・・・それもあるけど」
「あるけど、なんや」
- 195 名前:ゆうや 投稿日:2001年10月28日(日)02時18分03秒
- 「・・・・・」
うまく言葉が見つからなかった。
なんとなく、どう接していいのか、わからなくて。
矢口が言葉を見つける前に、裕ちゃんが先に口を開いた。
「・・・好きって言ってくれたん、嘘なんか?」
「ちっ・・・違うよ! なんで・・・」
「・・・違うんやったら、なんで避けるん?」
「さ、避けてるっていうか、そういうんじゃなくてっ・・・」
裕ちゃんの眉が潜められる。ふっと帯びた瞳の悲しい色に、反射的に焦った。
「・・・そういうんじゃなくて・・・」
- 196 名前:ゆうや 投稿日:2001年10月28日(日)02時30分08秒
- やっぱりうまく言葉が繋げなくて、いつのまにか俯いていた。
生まれた沈黙に、ゆっくりと雨の音が大きくなる。
「・・・なっちのこと、気にしてるんか?」
身体が、ビクリと反応する。
小さく、裕ちゃんが溜息をついたのが聞こえた。
「・・・矢口」
「・・・気になんないわけないじゃん・・・」
顔を上げて、腕を伸ばして、裕ちゃんに抱きついた。
なっちに対する、気まずさとか。
裕ちゃんのなっちに対する想いとか。
・・・いつか、矢口も、なっちが受け取った言葉を、同じように受け取るんじゃないかとか。
そんな思いが、重なり合って、矢口を混乱させていた。
- 197 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月01日(木)10時11分52秒
う〜気になる…
おもしろい・・・
読み直します。
やぐちゅー
更新がんばってください!
- 198 名前:ゆうや 投稿日:2001年11月01日(木)22時44分05秒
- 「矢口、アタシは・・・」
裕ちゃんが、明らかに困ったような顔をして、どこか苛ついたように前髪を掻き上げた。
そして、矢口の顔を見て、驚いたように目を見開いた。
「・・・矢口」
涙が、矢口の頬を流れて落ちる。細く長い溜息が、裕ちゃんの口から漏れた。
「・・・アタシ・・・、あんたまで、泣かせてばっかなんやな・・・」
──「あんたまで」。
その言葉が、胸に刺さる。
「・・・裕ちゃんは、なっちのこと、・・・大事だった?」
ちょっとした沈黙のあとに、裕ちゃんは、ゆっくり、けれど、はっきりと頷いた。
「・・・うん。大事やったよ」
「今でも?」
「うん。今でも、大事に、思ってる」
「・・・なっちのこと、傷つけたくないから、・・・別れたの?」
「・・・うん。これ以上、恋人として一緒にいても、傷つけるだけやと思ったから、・・・せやから、別れた」
なによりもはっきり聞いておきたかった言葉だった。
けれど、なによりも聞きたくなかった答えだった。
- 199 名前:ゆうや 投稿日:2001年11月01日(木)23時01分37秒
- 裕ちゃんの背中に回していた腕を、そっとおろす。
裕ちゃんから離れようとしたとき、裕ちゃんが、矢口の腕を掴んだ。
「アタシな、なっちに告白されたとき、・・・迷ったけど、まぁ、ええか・・・って思った」
裕ちゃんの手が微かに震えていたのが、腕の感触でわかった。
「なっちのことは、かわいいって思ってたし、大事やったし、・・・なっちに泣かれるのも・・・、ぎこちなくなるのも嫌やったから・・・。付き合ってもえーかな、って、思って、付き合いだした」
その手を振り払うことも出来ず、ただそこに立ちつくして、身体の中を通過していくような裕ちゃんの声を聞いていることしか出来なくなっていた。
・・・たとえそれが、どんなに聞きたくない言葉だったとしても。
- 200 名前:ゆうや 投稿日:2001年11月01日(木)23時10分49秒
- 「・・・でも、やっぱり、恋人としては、みてやれへんかった」
裕ちゃんは、自嘲気味に笑った。
「恋人のフリなんか、簡単やし。・・・17、8の子相手のキスなんか、造作もないことやったし・・・。軽蔑したか?」
なんて答えていいのか、わからなかった。
ただ、軽蔑なんて言葉は、思いも寄らなかったから、小さく首を横に振った。
裕ちゃんは、それを見て、今度は少し悲しそうに笑った。
「他に誰も好きなヤツおらんかったうちは、それでもよかった。ずっと、あんな関係が続くわけないとも思ってたけど、そのうちなっちにも、他に好きな奴、ちゃんと出来るやろって」
うなだれるように俯いてから、ゆっくりと顔を上げる裕ちゃんの動作を、混乱した気持ちのまま見つめていた。
視線を少し落としたまま、裕ちゃんが、言葉を繋げた。
「・・・でもな。矢口のこと、好きになったから、・・・もぉ、どうしようもなくなったんや」
- 201 名前:ゆうや 投稿日:2001年11月01日(木)23時30分54秒
- 「・・・裕ちゃん」
出した声は、掠れていた。
「なっちの側にいても、なっちが泣いてても、・・・もぉ、なっちのこと、見ててやれへん。・・・考えててやれへん」
視線が、ゆっくりとあがって、ぶつかり合う。
まっすぐに向けられた裕ちゃんの瞳に、矢口の姿が映っていた。
「・・・あんたが、好きや」
低く呟かれた言葉が、胸の奥に落ちていった。
「・・・矢口も、裕ちゃんが、好きだよ・・・」
「・・・ホンマに?」
不安そうな問いかけに、小さく頷く。
「裕ちゃんが、・・・どうしていいのかわかんないくらい・・・大好き」
「・・・矢口」
裕ちゃんが、きゅっと口を結んで、微笑んだ。
頬の涙の跡を、そっと裕ちゃんの指がなぞる。
「・・・ごめんなぁ、矢口・・・」
こつんと額がぶつかる。
「・・・ホンマに、アタシのこと、好きになってくれて、ありがと・・・」
「・・・こっちの、台詞だよぉ・・・」
裕ちゃんの手の温かさを感じながら、ホントの恋人になれた気がした。
- 202 名前:ゆうや 投稿日:2001年11月01日(木)23時41分18秒
- あなたが卒業する、そのとき、あなたに伝えよう。
あなたが、忘れないでいてくれるように。
── あなたに、会えてよかった、と。
END.
- 203 名前:ゆうや 投稿日:2001年11月01日(木)23時43分58秒
- ようやく、END.まで辿りつけました。
読んでいてくださったみなさま、ありがとうございました。
また、短編をちょこちょこ書いて行きたいなぁ、と思っています。
- 204 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)09時34分08秒
- おつかれさま。
おもしろかったです。
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