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after school

1 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月07日(木)22時15分41秒
ここの皆さんの作品を目にして書きたくなりました。
モー娘。の小説を書くのは初めてですが、最近お気に入りの、吉澤アンド石川で行ってみたいと思います。
2 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月07日(木)22時34分43秒
---1---

「ねえ、よっすぃーお腹すいたからどっかよっていこうよー」
学校の授業を終えいつもの通学路を吉澤と後藤は連れ立って歩いて行く。遊び盛りの食べ盛り。放課後は決まってどこかに寄り道がお決まりのパターンである。
「ん、いいけどどこいく?マックは昨日行ったし」
「結構強烈にお腹すいてるよー」
「じゃあ、カレー食べにいこ。いい?」
「マル!」
先月駅前にできたカレーショップはいわゆる牛丼屋タイプの回転の早いお店ではなくて、割合小奇麗でかつ良心的なお値段のお店である。また、トッピングが豊富なのも人気の秘密だ。
もちろん二人は早々にチェック済みで週に1回は必ず立ち寄る常連である。
後藤は勢いよく店のドアを開けた。
「いらっしゃいませー」
張りのあるきびきびした女性の声が二人を迎える。
「あ、毎度おおきに。また来てくれたんやな」
「ここのカレーは最高ですから。」
「んーなかなか口がうまいねーでも、うちはいつもにこにこ現金払いやでー」
オーナーの中澤裕子は20代にして人気店を手がけるなかなかのやり手である。
またそのキップのよさとトークの楽しさも人気の秘訣で、後藤と吉澤もそれゆえに通う節もあった。
二人は窓際の席に案内され腰を下ろした。
3 名前: 投稿日:2000年09月07日(木)22時38分41秒
いい感じです。こうゆうの好きです☆頑張ってください♪
(自分の心配しろ・・・・)
4 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月07日(木)22時54分46秒
---2---
「い、いらっしゃいませ・・・」
頼りなげな声とともに水の入ったグラスが二つ置かれる。
「あ、あの・・・ご、ご注文はお決まりでしょうか?」
座ったがとたん誰がどーしたこーした話している二人はそちらには視線を動かさず答える。
「あ、あたしいつもの!よっすぃーもいつものでいいよね?」
後藤はここのオリジナル「祐ちゃんスペシャル(何が入っているかは企業秘密らしい)」吉澤は中辛カレーにゆで卵のトッピングが大のお気に入りであった。
「え?あの・・・いつものって・・・」
「ん?」
ようやく声の主が中澤ではないことに吉澤は気がついた。視線をあげると不安げな表情の女の子がメモを片手にたたずんでいる。
胸についたプレートには「石川」と刻まれている。
「ごめんなさい・・・私今日からで、まだ・・・」
消え入りそうな声で続ける。
(だ、大丈夫なのかな・・・こんなおどおどして・・・でも、不安げな表情が・・かわいい)
「でねーよっすぃー・・・」
気づかずに話しつづける後藤に自分を見つめたまま何も言わない吉澤に石川は泣きそうになる。
「?よっすぃーってば、聞いてる?」
「え、あ、聞いてるよ・・じゃなくて、祐ちゃんスペシャルと中辛卵でお願いします。」
「は、はい。」
ほっとした表情を浮かべ足早にオーダーを入れに去って行く。その後姿を見て吉澤もなんだかほっとしてにっこりしてしまう。
「新しい人採用したんだね。このお店もお客さん増えてきたからね」
後藤がにやにやしている自分を見て不審に思わないよう慌てて話題をそらした。
5 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月07日(木)23時16分36秒
---3---
「こらー石川!!何回ゆうたらわかるねん!!」
がんこおやじのラーメン屋に一歩も引けを取らない声が店内を響き渡る。
「す、すみませんっ・・・」
「あらら、また始まっちゃったね。名物祐ちゃんのこらおじさん」
後藤は水をこくりと一口飲んで言う。普通こらーなんて怒声の響く店なんて居心地が言い訳がないのだがなぜか中澤のそれはイヤミがなくむしろ愛情さえ感じられたのでおおむねお客からは好評であった。
しかし、さっきのおどおどした表情の石川を目にしていた吉澤は心配になる。
「まあまあ、ねえさんそう怒らんといてや。ちゃんと言わなかった私もわるいんやし」
どうにも気になって吉澤が声のほうを見ると中澤の旧友らしいこちらも自分達と同じ常連の平家が中澤をまあまあと落ち着かせようとしていた。
「ようない!!いい?お客さんに卵って言われたら必ずゆで卵か生卵かきかなあかん。」
「ねえさんいつも聞いてないやないですか・・・」
「アホ言うな!私はお客さんの好みを覚えてるからええねん。覚えることで自分のことを考えてくれてる店やてお客さんも思うやろ。」
「お客さま・・・すいませんでした・・・」
「ええって、ゆでたんもすきやし。」
いつのまにか(本当にいつのまにか)カレーを食べ終え平家は席を立つ。
「ま、石川さん気ぃ落とすことないで。ねえさん若さに嫉妬してるだけやから。じゃ、ごちそうさまっ。」
「てゆうか、金払えー!」
「水臭いこといわないいわない。」
紙ナプキンで口をぬぐって平家は店を出ていった。
「食い逃げやろー!!」
6 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月07日(木)23時26分55秒
といった感じで導入。これからゆーっくりよしいしな展開にしてゆくつもりなので。
また明日にでも更新します。
>悠さん 早速のレスありがとうございます。コンセプトはほのぼの&ドタバタのお話にするつもりです
7 名前:名無し 投稿日:2000年09月08日(金)01時27分07秒
食い逃げ平家さんステキすぎ(ワラ

ちょっと「祐ちゃん」の誤字が気になりました。
娘。って間違えやすい名前が多いですからねー。
8 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月08日(金)14時21分42秒
>7さん
ご指摘どうもありがとうございます。気を付けますね。
9 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月08日(金)14時38分47秒
---4---
「ありがとうございましたー」
「石川、ちょっとまだ笑顔が固い。・・・て、今のはありがたくないお客やから言わんでええから。」
「はい・・・」

(普通だったら中澤さんのあの口調は愛情があるからって解るんだけど、あの子は本気で落ち込んじゃうタイプだろうな)
普段はいたってマイペースの吉澤だったが妙に一連のやり取りに注意を引かれた。
(あ、そういえば・・・)
「お待たせしました。裕ちゃんスペシャルと中辛カレー卵トッピングです。」
「やたっ。いただきまーす。」
よほどお腹がすいていたのか石川がお皿を置くと同時に後藤はスプーンを差し入れる。
(・・・・・・やっぱり・・・)
「以上でご注文のお品お揃いでしょうか。」
中澤に注意された直後ということもあって精一杯のスマイルを浮かべる石川であったがそれがかえってぎこちなさを感じさせる。
既に食べるのに専念している後藤はまるで聞いてはいない。
吉澤は自分の目の前の皿を眺める。
おいしそうな湯気をあげるカレーと、卵がコロンと1個はいった小鉢が置かれている。
(これって・・・やっぱり・・・どう見ても・・・・・・・・)
10 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月08日(金)14時59分44秒
---5---
たっぷり30秒ほどの沈黙が流れる。
「あ、あの・・・」
『中澤式接客マニュアル第17条、注文の品が全て揃ったかどうか必ず確認。お客さんとのコミュニケーションが鉄則』
石川の頭をよぎる。涙目になってしまっている石川に気づき吉澤は慌てて返答する。
「はい、揃ってます。」
「あ、ごゆっくりどうぞ!」
にこっと笑って去っていく。今みたいに笑えば良いのにと吉澤は思う。
(それはいいとして・・・でも、もしかしたら・・・)
と微かな希望を胸に小鉢の卵を手にとってみる。
「・・・・(やっぱり)(涙)」
手に持った感触はどう考えても生卵。それもそうだ。いつものゆで卵トッピングなら剥かれた状態でカレーの上にかわいくのっかっているんだから。
ここはやはりとりかえてもらうべきか!しかし・・・となるとまたしてもあの女の子は中澤に怒鳴られてしまい落ち込んでしまうことだろう。
(でも、ゆで卵食べたい・・・)
「あれーどーしたのよっすぃー?」
半分ほどを平らげて気分のゆとりの出てきた後藤が顔を上げる。
「え?ううん、なんでもない!」
とっさに吉澤は手に持っていた卵をポケットに隠してしまう。
「って、あれ?よっすぃー、卵はどうしたの?」
後藤が不思議に思ってたずねる。
「え?ああ、大好きだから最初に一口で一気食いしちゃったー!き、気付かなかった?」
「なーんだそっか。よっすぃー玉子大好きだもんね。」
「あはは・・・(涙)」
後藤はたいして気にとめず再びスプーンを口に運び始めた。
(家に帰ったらこの卵、ゆでて食べよ・・・)
11 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月08日(金)15時27分24秒
---6---
「ふあー、お腹いっぱい!ごちそーそまっ」
満足げな笑みをうかべて後藤が背もたれに身体を預ける。
「お水のおかわりはいかがでしょうか?」
「あ、くださーい。」
ピッチャーを手にした石川に後藤がグラスを差し出す。あの後はお客の入りも少なくなり中澤に怒鳴られる場面も無く、落ち着きを取り戻したようだ。
二人のグラスに水を注ぐと笑顔を浮かべ、丁寧におじきをしてテーブルの片付けに向かう。
その笑顔を見て吉澤は幸せな気分になる。卵なしのカレーもたまにはいいかもしれないなと思った。
「じゃ、そろそろいこっか。」
二人分の代金と伝票を手にレジに向かう。
「裕ちゃん、今日もおいしかったよ。」
「そかそか、ごっちんありがと。」
中澤は後藤の頭をいい子いい子となでる。
(休憩に行っちゃったのかな)
吉澤は石川の姿を追って店内をきょろきょろと見回す。
「どーしたん、忘れもん?探そうか?」
中澤が尋ねる
「いえ、なんでもないです。美味しかったです。ごちそうさまでした!」
「それならええけど。じゃ、また来てや!」
にかっと笑うと吉澤の腰のあたりをぽーんとはたく。
(グシャ・・・)
「あ、裕ちゃんセクハラー!」
「スキンシップ、スキンシップ!ありがとうございました!」
満面の笑みを浮かべて扉を開けると二人を見送る。
(・・・・・・)
「???よっすぃー・・・お腹でも痛いの?」
「ううん・・・じゃ、また明日ね。」
「大丈夫ー?ゆっくり寝るんだぞ。」
「うん。じゃあね・・・」
後藤の姿が見えなくなるのを確認すると、そっとポケットに手を突っ込んでみる。
「はうう・・・」
ねっとりした感触が伝わってくる。すぐに取り出さなかったものだから、しっかりスカートの布地に染み込んでいるようだ。
「昨日洗ったばっかりなのに・・・な」
やりばの無い思いを胸に、家へと向かうのであった。
12 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月08日(金)16時11分31秒
---7---
「ごめーん、今日はまっすぐ家に帰んなきゃいけないんだ。」
まっすぐ帰ってもやることないし、どうしよう。」
帰る前に解っていれば他の友人と遊ぶこともできたが時間も中途半端だし今から誰かに電話して会うのも面倒だ。
そうこう考えているうちに駅前まで来てしまった。視界にカレーショップが入る。
(昨日ゆで卵食べ損ねちゃったし、2今日はカラオケでも行こうかなと思って吉澤は後藤に声をかけてみたが、何でも家の用事があるらしく珍しく断られてしまい目的も無く街をぶらついていた。日連続になっちゃうけど、ま、いっか。)
あの子もいるかもしれないし、という淡い期待を胸にドアを開ける。
13 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月08日(金)16時13分20秒
---8---
「いらっしゃいませー」
「あっ!」
てっきりいつもの中澤の威勢のいい声が聞こえてくると思いきや、トーンの高い声が迎える。
「お客様、お一人ですか?」
「は、はい、お一人です。」
「ご案内いたします。どうぞ。」
昨日座った席と同じ所に案内される。
期待はしていたけれどまさか、いきなり石川が出てくるとは思わなかったのでおたおたしながら腰をかける。
そんな自分の様子を変に思われたのではないかと不安になる。変な間があかないように吉澤は尋ねる。
「あ、あの、中澤さ・・・店長は今日は?」
(話し掛けちゃったよ・・・)
口にした直後、忙しい時に無駄口をたたいて迷惑なのではと思いあたりをみわたす。幸い店内は落ち着いているようだ。
「お昼に予想以上にお客さんが入って、素材が何点か品薄になってしまったので買出しに行ってるんです。」
「あ、そうなんですか・・・」
もっと喋りたいなと思い吉澤は言葉を捜すがうまい言い回しが見つからない。すると
「あの、昨日も来て下さってましたよね。いつもありがとうございます。」
『中澤式接客マニュアル第28条。常連の顔はしっかり覚える。好みも覚える。固定客のハートをがっちりつかむ。』
昨日バイト終了後の中澤の言葉を思い出す。
「え、覚えててくれたんですかー!」
一気に吉澤の気分は高潮した。(うわー、覚えててくれたんだー。うれしー)
「はい。大切なお客様ですから。今日は何になさいますか?」
「もちろん、中辛カレー卵トッピング!!」
「かしこまりました。」
にっこり笑って去ってゆく姿を眺めながら吉澤はすっかり有頂天になっている。
「中澤式接客マニュアル第28条。えっと、常連の顔と好みをしっかり覚えるっと。」
石川は復唱しながら前日の記憶をたどり当然のように中辛カレーと生卵を小鉢に乗せた。
吉澤は知らず知らずのうちにしっかり「生卵カレーの好きな女の子」としてインプットされていた。
14 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月08日(金)19時25分36秒
これめちゃ面白い!
卵が割れたシーンは思わず、笑ってしまった。
なんかほのぼのしてていい。
15 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月09日(土)16時18分03秒
>14さん
ありがとうございます。ほのぼの気に入ってくださってうれしいです。
16 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月09日(土)16時18分46秒
---9---
(・・・・・・今日も言えなかった・・・)
昨日と同様ポケットに生卵を隠し今日は無事に持ち帰った。
なべの中でコトコトとゆれる卵を見つめながら吉澤はため息をついた。
とはいえ彼女が自分より一つ年上であるということと下の名前は梨華でバイトは火・木・金の週3回らしいということが分かった。
(今度は来週の火曜日かあ・・・ごっちん誘って行こうかな。)
そうこうするうちに出来上がったゆで卵はなかなかの美味だった。
17 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月09日(土)16時19分34秒
---10---
「いらっしゃ・・・・・・ってみっちゃんか。」
「あ、気い使わんといて。今日もご馳走になりにかましたで。」
「・・・何がご馳走やねん。今日は金払わな奥で皿洗いや。」
週は変わって火曜日。ドアのほうを見ると平家が女の子を一人伴って勝手に席につく。
「またまた、うちとねえさんの仲やん。こうして、新しいお客さんも連れてきてますし。」
連れの女の子が中澤ににかっと笑ってペコリと軽くおじきする。
「あ、矢口っていいます。今日は平家さんがチョー美味しいカレー食べさせてくれるって言うんでkちゃいましたー。」
小さな身体とは裏腹の元気一杯の様子のかわいさに中澤は思わず顔がにやける。
「ゆっくりしてきいや。よっしゃ、裕ちゃん腕によりかけたカレーを出しちゃうからね。」
上機嫌で中澤が厨房に向かおうとするところを手招きして呼び寄せ平家がささやく。
「・・・・・・どうです?ねえさんの好みでしょう?」
「みっちゃんもひとがわるいねえ・・・」
18 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月09日(土)18時18分58秒
---11---
「お待たせしました!!本日限定のスペシャルメニューや!!」
「うわお!」
「・・・・・・」
平家と矢口の前にカレーを置く。
「すんごーい。これ、全部矢口が食べちゃっていいの?」
矢口の前に置かれた皿には、ほかほかのご飯の上に大きめにカットされた野菜の入ったかレールーがたっぷりと注がれ、さっくりあげたカツが乗っかった上に、付け合せに香ばしいチップスまでのっている。
「熱いうちに召し上がれ。」
「よーっしいっただきまーす。・・・・おいしーい!!」
はぐはぐとカレーを食べる矢口を幸せそうに中澤は見つめる。
「・・・・あのう・・・ねえさん・・・」
「なんや、みっちゃん。ひとがええ気分のときに。いやーほんまかわいいわ。ヨーグルトも食べる?」
「うん!たべるー!」
「・・・・・・ねえさん、この差は・・・」
「もう、なんやのみっちゃん。」
平家の前には少しパサつき気味のライスに具が潰れてしまって形の見えなくなってしまったルー、申し訳なさそうにらっきょうが1個のっかったカレーが置かれている。
「ああ、それかー。」
中澤はわざとらしく今気づいたかのようにおおげさに声をあげる。
「いやー、ちょうどよかったわ。みっちゃんのおかげで中途半端に残ったもん全部さばけて。おかげで、今からくるお客さんには新しいなべのカレー出せるわ。」
「そ、そんな・・・・・・」
「あら、もしかして嫌がらせやと思うてない?人聞きの悪い事言わんといてや。カレーは二日目のほうが美味いんやで。みっちゃん、ほんまラッキーやなー。」
「ううっ・・・・・・(涙)」
19 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月09日(土)18時19分39秒
---12---
「よっすぃー、後藤シェイクが飲みたいんだけどなー。マックじゃだめ?」
「んー、カレー食べてその後行けばいいじゃん。」
「・・・・・・よっすぃーのおごりね。」
今年一番の猛暑とかいう気候のせいですっかりバテ気味の後藤を説き伏せカレーショップにやってくる。
ドアを開けると、中澤と平家とはもう一人女の子の前で談笑する姿が目に入る。
「あ、いらっしゃいませー!」
「ども。」
二人に気づいた中澤が顔を上げる。厨房のほうからぱたぱたと足音がして石川が出てくる。
「いらっしゃいませ。あ、サラダの仕込み終わりましたから、私前に出てますから」
「そぉ?悪いねえ。で、今度の週末なんかあいてる?」
再び中澤は矢口に視線を戻し語り掛ける。平家は最後の一口をなんとか水で流し込んでいる。
「いらっしゃいませ。」
もう一度、石川は吉澤のほうを見てにっこりと微笑む。つられて吉澤も口元が緩む。
20 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月09日(土)20時34分53秒
---13---
案内されると、後藤はよほど喉が乾いていたのか出された水を一気に飲み干し注文する。
「えーっと、裕ちゃんスペシャルひとつとー・・・何にする?」
(よし!今日こそ中辛とゆで卵っていうんだ!今日はそういう気分、ていえば別に不審には思われないよね?)
「中辛カレーと・・・」
「あとすいません!お水のお代わり!喉乾いて死んじゃいそう!」
吉澤が言い終わらないうちに後藤が叫ぶ。
「あ、はい!すぐお持ちしますね。」
「あ・・・・・・」
後藤に催促され、水の入ったピッチャーを取りに行く。
「あの・・・ごっちん・・・」
「ん?なあによっすぃー?・・・あ、そっかそっかごめんごめん。」
うんうんと後藤がうなづく。
「お水のお代りに来てくれたときにゆってあげるから。」
ピッチャーを手に戻ってきた石川に後藤がいう。
「すいません。さっきの中辛カレーのほうにゆで卵トッピングでつけてください。」
「え・・・?」
21 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月09日(土)20時36分04秒
---14---
一瞬、石川の動きが止まる。
「い、いやそのっ・・・」
「ん?どしたのよっすぃー?ゆで卵頼もうと思ったんでしょ?アレがないとカレーじゃない!とか力説してたもんねー。アハッごめんね、途中でお水のお代り頼んじゃって。」
「だ、だから、そのぉ・・・」
みるみる石川の表情が固まっていく。吉澤の顔が青ざめる。
「でも牛丼屋に行って卵、生じゃなくて茹でたのってないですか?って聞いたときは笑ったよぉ。普通無いって!アハハハッ。」
一人楽しそうに笑う後藤をよそに重々しい空気が流れる。
硬化した石川の表情が次第にどんどん暗くなり、瞳に涙が溜まる。とどめに
「ここに来るのは、裕ちゃん選りすぐりの卵で作ったゆで卵カレーを食べるためだって豪語してたもんね。」
「あは・・・は」
なんとかごまかそうと石川のほうを見る。
「私・・・私・・・・・・ごめんなさいっ!!」
「ああっ!!」
涙を流しながら石川は走り去る。
「こらこら、どんなに忙しくても走るのは厳禁やでー。」
いつもなら怒鳴るところが、機嫌が果てしなくいいため、ソフト気味の中澤の声が響く。
(ああああああああっ!!)
どんよりした空気を背負い込んだ吉澤に後藤が無邪気に問い掛ける。
「・・・うん?私なんかまずいこと言っちゃったのかなー?ま、食べたらシェイクおごりだったよね!」
22 名前:著者・P 投稿日:2000年09月09日(土)20時38分28秒
また夜に更新すると思います。
なんかよっすぃーをおばかにかきすぎかも・・・ファンのひとすみません。
23 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月09日(土)20時49分08秒
いや〜ここのよっすぃーうけるわ
更新楽しみにしてます
24 名前:F602 投稿日:2000年09月09日(土)21時45分44秒
良いと思います。
このごろ、吉沢にはまりまくってる自分が怖い・・・。
25 名前:たか 投稿日:2000年09月10日(日)00時34分12秒
仕事に忠実であろうとする石川に
萌えます〜
そして無邪気・無頓着な後藤が良い(W
26 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月10日(日)00時36分41秒
更新待ち〜♪
楽しみ〜♪
27 名前:名無し 投稿日:2000年09月10日(日)00時54分37秒
何気にスケープゴートされてる矢口がかわいくていいですね(ワラ
一生懸命な石川も萌えさせてくれます。
28 名前:著者・P 投稿日:2000年09月10日(日)01時14分53秒
---15---
久々に食べたゆで卵いりのカレー。大好きな味のはずなのに吉澤の気分は落ち込んでいた。
あの後雑談を終えて平家と矢口を見送った中澤が二人のカレーを運んできたときに、さりげなくたずねてみる。
「あの・・・石川さんは?・・・」
「うん?ああ、なんや気分が悪そうやったから休憩に行かせたんや。まだ仕事に慣れきってないから疲れもたまってるやろうし」
「そうですか・・・」
「ま、ああいう性格やから悩みも多いんやろう。しかも、小さいことでも尾を引くタイプやからなー。」
(ガーン・・・・)
吉澤の気分はさらにどん底へと落ちていく。
「お、なんや石川のことが気になるんか!隅に置けないねえ、このこのー」
「ええっ、よっすぃーってばそうだったの?」
「そういえば先週なんか金曜日も来てたらしいやん。裕ちゃんの留守を狙って!エッチやなー」
「いや、別に狙ってたわけじゃ……」
「聞いてないよー私。」
「そういえば、石川金曜に、今日はお客さんの好みと顔をばっちり覚えました!とかゆうてたしなー。」
「……」
おおよそ吉澤を喜ばそうと中澤が発した言葉にますます打ちのめされる。
(かなり……傷つけちゃっただろうな……)
29 名前:Endorphin 投稿日:2000年09月10日(日)01時24分58秒
平家と、中澤が絡むと楽しいね。
不幸な平家いいな〜。
30 名前:著者・P 投稿日:2000年09月10日(日)02時31分23秒
>23さん ありがとうございます。今日と明日はお休みなのでぼちぼち更新します
>24さん 怖くないです。よっすぃーのリーゼントなかなか素敵だし(笑)
>25さん 後藤の描写がかなり難しいのです、実は。
>26さん がんばります!
>27さん 中澤さんとのエピソードも書いてくつもりです
>29さん 平家さん書くのがかなり楽しいです。今後も登場予定。
31 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月10日(日)04時52分06秒
>>17
ここの二人は悪代官と庄屋のやり取りみたいだ。笑った。
しかし、マニュアル人間石川と思った通りにいかない吉澤の関係は面白い。
吉澤にエールを贈りたくなるね。

32 名前:F602 投稿日:2000年09月10日(日)16時24分57秒
今後の展開に期待してます。
どういう関係に発展していくのか
楽しみにしてます。
33 名前:著者・P 投稿日:2000年09月10日(日)22時17分30秒
---16---
木曜日。吉澤は散々悩んだがどうにもカレーショップに向かうことができずに、結局コンビニで軽くお菓子を買い込んで後藤の家でゲームをした。雑談しながらも心は上の空で、石川のことばかり考えてしまう。自分の下らない気まわしが余計に石川を傷つける結果になってしまったことに激しい後悔にさいなまれる。
(……よし!!明日は絶対行くぞっ!)

「やっぱ、明るい感じで言ったほうがいいかな。……全然、気にしないで!人間誰しも間違いはあるもの!!……なんかカルイなあ……とするとぉ……」
用事があるといって一人で返ってきた吉澤は駅前をすでに何往復もしていた。
「いっそ天然っぽくとぼけてぇ、えっ?あれって生卵だったの?気づかなかったぁ!……って上手くいったとしても今後の付き合いを敬遠されそうだし……」
「おーい……」
「中澤さんみたいなノリで、あんまり石川さんがかわいいからぼーっとなって卵のことはすっかり忘れてましたー……恥ずかしい……」
「裕ちゃんがどうかしたんか?」
「そう、裕ちゃんが……えっ!?」
振り返ると両手に食材を抱えた中澤が立っている。
「何をさっきからぶつぶつゆうてるの?端から見たらメチャ怪しいで。」
「ど、どうもっこんにちは!」
「なんやー暇そうやなー。」
「はあ……」
何も言わず中澤はにこにこと吉澤に笑いかける。
「……持ちましょうか……よかったら……」
「あ、悪いねえ、頼んでもいないのにー。じゃ、そこまで頼むわ。」
間髪入れずに手に持った荷物のやや大きいほうを吉澤に渡す。
「じゃ、いこか。」
34 名前:著者・P 投稿日:2000年09月10日(日)22時18分29秒
---17---
「そうそう、そういえば日曜日あいてる?」
「は…日曜ですか?」
「そう、日曜。」
「特に今のところ予定は無いですけど……」
成り行き上、5分後には石川にあってしまう。イマイチ返事に歯切れの無い吉澤に中澤は続ける。
「うちの新メニューの試食会やろうと思うてんねん。お客様代表って事でよかったら来てもらえんかな?」
「え……それはいいですけど……私なんか……」
「あ、そんなかしこまったもんじゃなくて極々内輪なものやから。ごっちんも誘って来てや。」
(極々、内輪なもの……)
それまで話半分だった吉澤が急に関心を寄せる。
「それって……もちろんお店の人は参加するんですよね……」
「?……そりゃそうやけど?」
「行きます!!いや、ぜひ参加させてください!!」
熱のこもった吉澤に満足げな表情を浮かべる。
「そーかそーか、そんなに裕ちゃんのカレーが食べたいんやな。じゃ、2時集合やから。」
「はい!!それじゃ!失礼します!!」
「あら、寄ってかへんの?」
店の前で荷物を中澤に渡すとあっという間にいなくなってしまう。
「……なんや、やっぱ急いでたんやなぁ。わざわざええ子やなー」
35 名前:著者・P 投稿日:2000年09月10日(日)22時19分03秒
---18---
「試食会!ってことはー、タダで食べれるって事だよね。」
日曜日、鼻歌交じりの後藤を伴って吉澤は時間どおりに店へと向かっていた。
タイミングの悪いこと続きだったのは、ほかからちゃちゃの入りがちな営業中だったせいだ。今日なら、ゆっくり話すチャンスだってあるはず。下手に金曜日に店に顔を出すよりも得策だ。時間をかけてゆっくり考えた台詞を頭の中で復唱する。
「よし!!ファイト!!」
思わず口に出てしまう。しまったと思ったが幸い後藤はいいほうに解釈してくれた。
「あ、よっすぃーってば気合入ってるねー。実は後藤も朝ご飯抜いてきたからおなかペコペコなんだよ。二人ともファイト!だね。」
36 名前:著者・P 投稿日:2000年09月10日(日)22時19分59秒
---19---
「でもぉ、私来ちゃってよかったのかなー」
「もちろんや!ホント来てくれて裕ちゃん幸せやぁ。」
「ねえさん……目つきが……獣化してるで……」
そもそも今日の試食会なんて半分は本当だが半分は矢口を呼び寄せる口実だということに平家は気づいていた。火曜日までは試食会の「し」の字も口にしていなかったくせに。
「あと誰が来るんですかー今日は。」
そうとも知らず矢口は無邪気に尋ねる。
平家の知る限り、今日は中澤とバイトの石川。自分と矢口に、常連客の後藤と吉澤の6人のはずだ。しっかり矢口以外の一般客も呼んで本当の目的をカムフラージュしているあたり、さすが抜かりが無い。
「ま、ええわ。今日もタダでご飯が食べれるってことで。」
これで、当分はフリーパスやなとほくそえむ平家であった。
「こんにちはー。」
入り口からきれいに揃った二人分の声が聞こえた。
37 名前:著者・P 投稿日:2000年09月10日(日)22時20分46秒
---20---
「どや?ルーの隠し味にちょっとした秘密があるんやけど、今までのより辛いのに食べやすいやろ。」
ま、何が入っているかは教えられんけどな!と高笑いする中澤。試食会といっても実際中澤は矢口の横にべったり。石川が一人であれこれ仕事をしているせいで、吉澤はなかなかきっかけが掴めないでいた。気のせいか石川もわざと仕事に没頭しているようにも見える。
(よしっ!)
意を決して席を立ち石川に近づいていく。
「店長、中途半端にあまっちゃったんですけど、どうしましょう?」
半人前ほどのカレーを手に困ったような顔で石川がたずねる。
「食べたい人おるー?」
「はいはいっ!!」
「食べるっ!!」
後藤と平家が同時に手を上げる。
「それじゃ、ジャンケンで!!といいたいところやけどぉ……やっぱ弱肉強食!早いもんがちや!」
「とおっ!!」
中澤が言い終わらないうちに若さに任せたバネで後藤は石川にとびかかる。
「キャッ!」
「あっ!!」
38 名前:Hruso 投稿日:2000年09月10日(日)23時40分12秒
んんっ?何が起こったんだ?
39 名前:ゴンザレス 投稿日:2000年09月11日(月)00時19分49秒
“後藤が石川にとびかかる”と見て
ビールのCMのトヨエツと山崎努を思い出したのは
おいらだけか???
40 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月11日(月)00時24分20秒
じゃあバレーボールはどっから飛んで来るんだ!?
41 名前:著者・P 投稿日:2000年09月11日(月)00時57分06秒
---21---
「…………」
驚いて思わず投げ出してしまったことで石川の手を離れたカレー皿はものの見事に後藤との中間にいた吉澤を直撃した。
「ア、アハッ。…よっすぃー…もしかして私のせいだったりするぅ?」
てへっと後藤がごまかし笑いを浮かべる。
突然の出来事に吉澤は絶句……が、
「あああああアツい!!!」
「ごっ、ごめんなさいっ!!」
皿をはねのけると水道のあるほうへ走り出す。ちかくにあった布をつかんで石川が追いかける。
「なんか拭くものありますかっ??」
自分も後に続こうと思い、後藤は中澤に問い掛ける。
「まあまあ。」
ぽむぽむと焦る後藤の肩を中澤は軽く叩く。
「ここは石川に任せて、お茶でも飲みにいこうや。」
「え…?でもぉ…」
「ほら、あとはお若い二人でってやつや。吉澤、石川のこと気に入ってるんやろ。」
「えっ?そうなの?キャー女の子同士なのに、ドッキドキだね!」
矢口が黄色い声ではしゃぐ。
「気をきかしてここは席はずしとこうや。さ、行こ行こ。」
右手に矢口、左手に後藤の肩を抱き店を出て行く。
「てゆうか、ねえさん単に厄介ごとから逃げたいだけやん……」
といいつつも食べ損ねたカレーのことを思いながら平家も後に続いた。
42 名前:著者・P 投稿日:2000年09月11日(月)01時02分13秒
本日はここまでにしておきます。読んでくださってる方々ありがとうございます。
一応明日で一区切りつけようかと思っています。
43 名前:著者・P 投稿日:2000年09月11日(月)22時46分55秒
>31さん よっすぃーも喜んでいると思います
>32さん 発展・・・するのでしょうか・・・私のかくよっすぃー要領悪そうなので(笑)
>38さん てゆうか結構ばればれの展開だったかも・・・
>39さん、40さん 読み返してみると自分でもそう思いました(笑)
44 名前:著者・P 投稿日:2000年09月12日(火)00時35分03秒
---22---
「ほんとに、ほんとにごめんなさい!!私、私こんなのばっかりで…」
半べそを掻きながら石川は懸命に吉澤の服にべったりとついたカレーを拭き取る。
「あ…そんな石川さんが悪いわけじゃ……」
「ううん!私が悪いの!この間だって一人でいい気になって勝手に勘違いして…」
「だから…全然気にしてないっていうか…ただタイミングが悪かったというか…」
あんなに色々台詞を考えてきたはずなのに上手く伝えられない。
「クリーニング出しても取れないかも…本当に…ごめ……んなさい……」
「本当に、気にしてないから……」
石川はとうとう泣き出してしまい顔を伏せたままブンブンと顔を横に振る。
「優しいからそういう風に言ってくれて…私、自分が気を使っているつもりで人に気を使わせてばっかり…」
「……」
吉澤は石川の肩にそっと手を置く。
「あの…ちょっとこっち見て。」
ゆっくりと石川が顔を向けると吉澤はまっすぐにその顔を見つめた。
「……この顔、怒ってるように見える?人相の善し悪しは別として。」
「え……」
予想外の言葉に石川は戸惑う。
「気を使って言ってるように……見える?」
もう一度問い掛ける。柔らかい笑みが口元に浮かぶ。
(だって、こうやって話せることだけでうれしいくてしょうがないんだもの。)
45 名前:著者・P 投稿日:2000年09月12日(火)00時35分45秒
---23---
しばらくじっと吉澤の顔を見つめていた石川だったがようやくゆっくりと首を左右に振りながら答えた。
「ううん……見えないよ。」
しばらく見ていなかった自然な石川の笑顔で吉澤は一安心した。
(よかった……散々ごっちんには振り回されたけど、今度ばかりは怪我の功名ってことで感謝しないと)
「でも……こんなに優しいといつも大変でしょう?」
「え?」
じーっと上目遣いで見る石川をみて心臓がドクンと大きく波打つ。
「あ……いつもっていうわけじゃなくて……そのなんてゆうか……」
「なあに……?」
鼓動が早くなっていくのを感じる。顔も真っ赤になっているに決まっている。
石川は視線をそらさず黙って吉澤の言葉を待つ。吉澤は思い切って口を開いた。
「他の人とは違って……石川さんだから……」
その時勢いよくドアの開く音で言葉の語尾はかき消された。
「お待たせー!よっすぃー!!着替えのTシャツ買ってきたよーん。」
「……ごっちぃん……」
(……前言撤回!ごっちんに感謝なんかするもんかーーー(涙))
46 名前:著者・P 投稿日:2000年09月12日(火)00時36分44秒
---24---
「はい!かわいいでしょ?これ、プレゼントするから許してね。」
無邪気にTシャツを差し出す後藤に何も言うことができず吉澤は素直に受け取った。
「みんなとね、ちょっとお茶しに行こうと思って駅ビルに入ったんだけど…あ、そういえば着替えがいるだろうなって思って私だけ帰ってきたの。」
「そう……」
はああと大きなため息をつく。
(やっぱり私ってタイミング悪いんだなあ……)
受け取ったTシャツに化粧室で着替える。話し声が増えたのが聞こえてきたのでどうやら全員戻ってきたらしい。
(これで、今日のところは解散かなぁ)
もう一度大きなため息をつきながら化粧室を出ると石川がドアのそばで待っていた。
「あ……」
「この後、何か用事ある?」
「ううんっ!ないっ、なーんにも。」
「じゃあ……」
石川は他の面々に見つからないようにそっと裏口のほうにうながす。
「気にしないっていっても、卵の代金分くらいはなにかご馳走させてほしいな。それに……」
「それに……?」
一呼吸置いて
「さっきの話の続きも、気になるし……ね。」
「ええっ!?」
「いこっ!」
なんだかこの頃誰かに振り回されっぱなしだなぁ、と思いながらもなんだか幸せを感じる吉澤だった。


〜Fin〜
47 名前:ぱな 投稿日:2000年09月12日(火)00時41分57秒
お、終わっちゃった・・・。
おもろくてついつい引き込まれてました。
それにしてもよっすぃがいいなぁ・・・。
48 名前:著者・P 投稿日:2000年09月12日(火)00時43分08秒
・・・・・・とりあえず終わりです。出会い黎明編てことで。
最近この平家さんがすごく好きなので多めに登場させてしまいました。よっすぃーが主役のはずだったのにあんま目立ってない上に幸せにもなっていない(笑)
続きもちょっと書こうかなと思ったりもしてます。雑文にお付き合いくださった方々ありがとうございました。
49 名前: 投稿日:2000年09月12日(火)00時47分41秒
面白かったです!めっちゃいいっすね、はい。
夜こっそり読んでました(笑)続き是非書いてください〜♪
50 名前:ゴンザレス 投稿日:2000年09月12日(火)01時24分22秒
後藤、タイミング悪すぎ〜〜。
いやがらせとしかおもえん。
51 名前:Hruso 投稿日:2000年09月12日(火)01時30分19秒
著者さんお疲れさまです。
不幸少女石川と、負けないくらい不幸だった吉澤。
そして相変わらずのマイペースごま。
その他脇役も良かったですね。
ラストの22,23あたりはジンと来てしまいました。
続編及び次回作、期待してます。
52 名前:名無し 投稿日:2000年09月12日(火)02時00分06秒
不幸なよっすぃ〜もなかなか萌えると始めて知りました(笑)
初々しい初デート編とか是非読んでみたいです。
53 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月12日(火)07時37分29秒
後藤にも相手作ってあげて欲しいなぁ。
出来れば市井を希望なんだけど・・・。
ダメっすか?
続編希望。
54 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月12日(火)08時40分14秒
マジ続編きぼ〜ん。
55 名前:名無し 投稿日:2000年09月12日(火)17時07分55秒
アナザーストーリーとして
やぐちゅーをお願いします。
話の流れから見て、ヤグチにその気は
まったくなさそうだし、
その後の中澤のどたばたぶりが見たいっす。

最近の話は、主役だろうが、脇役だろうが
中澤はお笑い担当っすね、ほとんどが。
56 名前:F602 投稿日:2000年09月12日(火)19時55分59秒
お見事でした。
ここの吉沢はクールさを抑えていて良かったと思います。
皆さん同様、続編・番外編、楽しみにしています。
57 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月12日(火)22時36分46秒
爆笑!!!
58 名前:著者・P 投稿日:2000年09月13日(水)18時53分47秒
たくさん感想を書いていただき、本当にありがとうございます!
お礼を色々書きたいのですが、今日から一週間弱ほど旅に出るので、帰ってきてからゆっくり読ませていただきたいと思います。
続編は現在構想中。その前にちょっとしたサイドストーリーをいれる予定です。
ご感想の中にズバリそのサイドストーリーにビンゴのものがあって驚き。読まれちゃいましたかね(笑)
それでは、いったん失礼いたします。

59 名前:著者・P 投稿日:2000年09月19日(火)08時03分36秒
たくさんのご感想ありがとうございます。
続編を書こうと思うのですが、なんだかこころもち長めになりそうな感じなのでその前に箸休め(?)ということでサイドストーリーをのっけます。
60 名前:Interval 1 投稿日:2000年09月19日(火)08時04分41秒
「今日もチョー美味しい。オイラ幸せだあ。」
「一杯食べて大きくなるんやでー。」
「あ、また背のこといったなーこいつう。」
(やれやれ・・・・・・)
平家はため息をつく。どうやら今度ばかりは本気らしいなねえさんも。かれこれ矢口をまじえてのカレーショップ訪問も2ヶ月になる。
中澤とは旧知の仲。一緒に歌手を目指す仲間だった。当時からなんでも器用にこなせた中澤の評価は高く、デビュー直前までこぎつけたところに突然の母親の入院。チャンスを放棄して実家に戻っての2年間の献身的な介護もむなしく他界してしまった。そのショックからなんとか自力で立ち上がると、母親の夢だったという飲食店を開いてみようかと思うと口にした。自分の夢はどうなるんやと問い詰める平家に向かって「歌も好きやけど裕ちゃんの才能はマルチやからな。いろんな方向に発揮せんとな。」と笑って答えた。以来、一見誰とでも打ち解けて接しているように見えるが、ふざけたりちゃかしたりして他人と一定の距離を置いている事を知っている。誰もいなくなったときに見せる、表情が頭から離れない。自分は・・・・・・未だ夢を捨てきれずにフラフラする毎日だというのに。
それが・・・・・・
61 名前:Interval 1 投稿日:2000年09月19日(火)08時05分57秒
「ごちそうさま。ちょっとヤボ用ありますんで先帰りますんで、矢口のことよろしくお願いしますわ。」
チャリンと小銭をテーブルにおいて席を立つ。
「あ、もういくんか。お?しかも珍しく金まで置いて・・・って当たり前やけどなぁ。」
「あれー、平家さん行っちゃうんですかー?」
「ねえさん、矢口に変なことしたらだめやからねー。」
「なに言うてんねん。するに決まってるやん!ねっ。」
「うひゃあっ。助けてー」
ほな、と後ろ向きのまま手を振りドアをあけて平家は出て行った。
(ゆっくりしてったらええのに)
平家は案外と繊細で人に気を使う気質である。こっちのほうが年上やねんけどなあと思いつつ平家の置いていった小銭を回収する。
「・・・・・・ってこれ100円やんか〜!やられたっ!」
チッと舌打ちする。
「じゃあ、今日は矢口が払っとくね。」
「あ、ええってええって。アイツに付けとくから。」
財布を出そうとする矢口の手を制す。
(ほんとに不思議な子やな。)
何かに夢中になるのに臆病になっていた。駄目になったときに傷つくのが怖かった。いつものらりくらりと本心をごまかしてばかりいた。なのに…
この子はまっすぐ、ただまっすぐ向かってくる。もっと、もっとやりたいことやろうよ!自由に生きようよ!って全身で伝えてくる。
もう一度、素直に生きてみたい。
62 名前:Interval 1 投稿日:2000年09月19日(火)08時08分21秒
「それに、矢口からはちゃんとお代は他から回収させてもろうてるから。」
「へっ?」
中澤はほうける矢口に唇を素早く重ねた。
「毎度!」
「こら〜っ!!」
「確かに頂戴しました。またのご利用を。」
「ってねえ……」
真っ赤になって矢口が言う。
「普通、口にはしないぞ口にはぁ。もお。」
「そお?」
とぼけた顔で中澤は答える。
(うーん困ったなあ……)
中澤のことは好きだ。友達同士ふざけてじゃれあったりするのもどっちかっていうと好き。で、でもなぁ……うーん……世間様の常識が矢口の頭をよぎる。
63 名前:Interval 1 投稿日:2000年09月19日(火)08時09分20秒
「あ、そやそや。ついでにみっちゃんの不足分ももろとこうかな。」
「ちょ、ちょ……」
ぐいーっと顔を近づける中澤の頭をなんとか押さえる。
「ダーメ!」
「何で?裕ちゃん矢口のこと好きや。矢口は?」
さらっと、けれども妙に真剣さを帯びた口調だった。
「そ、そりゃあ、好きだけどさぁ、その……私の夢……普通のぉ、お嫁さんになることだったりするわけで……それには…」
必死で弁明する矢口をきょとんとした顔で眺めるたかと思うと、あー大丈夫と言って中澤は笑う。
「その夢は矢口さえその気になればすぐ叶うで!」
有無を言わさず矢口を抱きしめる。
(裕ちゃん、まさか…矢口と海外で挙式でも挙げるつもりじゃないよね…)
難しいことはよく分からないけど日本では無理なはず、そのぐらい矢口だって知ってるよ。
「ええか?自慢やないけどこの店は賃貸やあらへん。」
「ふえ?」
予想のつかない展開に意味不明な音が発せられる。
「借金もしてへんし。」
「??」
「ま、つまり100%私のお店で私の掌中にあるわけや。ということはや……」
中澤は柔らかく矢口を両腕で包み込む。
「ここでは、私が法律や!!」
「ゆ、裕ちゃ……っ」
ぎゅっと腕に力をこめて抱きしめる。
「えー、この国は自由恋愛の国です!」
(何それ!……全く、裕ちゃんにはかなわないなあ……)
あまりにもの突拍子の無さに思わず吹き出して笑ってしまう。
「そして!」
「アハハ、なんだよう」
おかしさに身体を揺らせながら中澤を見上げる。
「王様の命令は絶対!入国者もこれに従うことや!」
「はいはい。」
「さっきの質問にもう一度答えよ。えー……と」
コホンともっともらしい咳払いを一つ。さっきまでの勢いはどこへやら、何とか言葉を模索しようとするかのように視線を泳がす。
「まあ…つまり、な………っ!」
中澤の首にくるりと両手を回す。
「矢口も大好きだよ!!」


(……トイレ借りてから行こうと思ったけど、駅まで我慢しよう……)
ドアノブにかけた手をそっと離しUターンする平家みちよだった。

-fin-
64 名前:55です〜 投稿日:2000年09月19日(火)11時58分22秒
いちごまかやぐちゅーかドキドキしながらサイドストーリーを
お待ちしていました。
良かったです。できましたら、続編の中にも
さりげなく、その後のやぐちゅーを少し混ぜてください。
65 名前:Hruso 投稿日:2000年09月19日(火)21時56分32秒
やぐちゅーはやっぱりいいですね。
最近ちょっとブームですかね。
著者さん、続編期待しております。
66 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月19日(火)22時13分21秒
いちごまも・・・お願い!
67 名前:ごん太 投稿日:2000年09月20日(水)01時25分34秒
平家がもっと幸せになれますように・・・。
68 名前:著者・P 投稿日:2000年09月22日(金)07時16分40秒
ふと、最初の自分の言葉を読むと吉澤と石川メインをうたっていながら石川の出番も台詞も少ないことに今気付きました。(笑)
続編は色んなキャラの心理描写もできればいいなと思っています。今のところあと二人ほど登場予定です。
>64さん 矢口と裕ちゃんをいれると雰囲気が明るくなるので今後も入れていきたいです。
>Hrusoさん 実は私もブームです。というより矢口ブームです。
>66さん もうちょっとお待ちを!
>ごん太さん ギャグ専(?)キャラと化してますがいずれ平家さんもしっかりかければ・・・・・・
69 名前:Interval 1 投稿日:2000年09月22日(金)07時20分49秒
after school 2
***1***
コトリという音とともに頼んでいないはずのアイスティーが二つ目の前に置かれる。
「あの・・・・・・」
吉澤が見上げる視線の先でシーッと人差し指を唇に当てる。
「サービス。店長にはナイショ、ね。」
「あ、ありがとう梨華ちゃん。」
「アリガトー。」
厨房のほうへ消えて行く石川の姿を眺めながらアイスティーを口に含む。
「2ヶ月もたつと梨華ちゃんもすっかりお店に馴染んだね。」
カレーを食べた後とあって喉がよほど乾いていたのか後藤は一口でグラス1/3ほどをのみほした。
「そうだね・・・・・・」
思わず口元を緩めて吉澤は答えた。知り合って2ヶ月。初めてゆっくり二人で出かけた日はすっかり舞い上がってしまって、いったい何を話したのやらさっぱり覚えていない。しかし、その後も何度か店で顔を合わせたり、後藤を交えてカラオケやショッピングに行ったり、といった付き合いが続きようやく「梨華ちゃん」「ひとみちゃん」と呼び合うまでにこぎつけた。とはいっても・・・・・・

70 名前:著者・P 投稿日:2000年09月22日(金)07時22分39秒
***2***
ドアの開く音がすると中澤が矢口を伴って現れた。吉澤の姿を見つけると開口一番
「お、妄想少女!いらっしゃい!今日も幸せそうやな。」
「・・・・・・その身も蓋も無い呼び方、やめてくださいよ!大体どっからその発想がくるんですか!」
「どっからって・・・・・・石川の後姿見ちゃあ、にへらにへらしてたらそら思うわ。一体何を妄想してるのかと思うと……いやぁお姉さん恥ずかしいわ!」
「ちょ・・・・・・!!」
慌てて周囲を確認する。幸い石川は厨房に引っ込んでいるようで胸をなでおろす。
「あはは、初々しくて結構結構。」
「裕ちゃん、それじゃまるでオヤジだよ・・・・・・」
矢口が呆れ顔で諭す。当初は平家とのセットでの来店がほとんどであったがこのところふらりと一人できては暇をつぶして帰って行く。その所為もあって吉澤たちとも親しくなっていた。
「ダメですよぉ、矢口さんにばっかり構っててお店をお留守にしちゃうと。」
ちゃっかりタダでアイスティーを飲んでいるというのにそんなことはお構いなしに後藤が突っ込みをいれる。
「いや、ちょっとコピー取りにいってたんや。」
ホラ、と差し出された中澤の手にはピンク色のチラシらしきものが数枚握られていた。
「えっと……アルバイト募集。短期1ヶ月間、時給応相談。原付免許取得者熱烈歓迎!!ってこれ……」
「そうや。夏休み中だけ、学生のお客さんが減る分デリバリーサービスやろうと思てんねん。私と石川だけじゃ無理やから。」
(アルバイトかあ……)
そうしたら一緒にいられる時間も増えるなという思いが吉澤の胸をよぎる。でも、免許持ってないし(というより取れない)

71 名前:著者・P 投稿日:2000年09月22日(金)07時24分10秒
***3***
「まあ、みっちゃんをタダでこき使うという手もあるんやけど後々倍返しで請求されそうやからな。中学生を無免許運転させて使う訳にもいかんし。あ、冗談やで冗談。」
とても冗談には聞こえなかった口調に言い出さなくてよかったと後藤、吉澤はともに一安心する。
「じゃ、アタシ貼ってきてあげるよ!」
ちゃんと店長なんだから石川さんばっかり働かせちゃダメよと中澤を諭すと、矢口はビラを手にする。店の前に回ると精一杯手を伸ばして高いところに貼ろうとする。ガラス越しに悪戦苦闘する姿に見かねて中澤が席を立つ。吉澤たちには見せないようなあどけない笑顔を浮かべて矢口の背後にまわり、腰に手を回す。矢口が驚いて飛び上がる。「お嬢さんお手伝いしますよ」「裕ちゃんのH!」というやり取りがガラス越しでも容易に伺える。
(いいなぁ……)
「いいなぁ……」
「えっ!?」
口に出したつもりは無いのに、驚いて声のしたほうを見る。
「以上、よっすぃーの気持ちを平家みちよが代弁してみました。」
「平家さん!いつの間に!!」
「奥でずっとたまねぎの皮むきさせられてたんや。全くなにがちょっとコピー取りにいってくる間だけ店番よろしくや。たっぷり1時間はたってるわ。矢口を一緒にいかせたのが逆効果やったな。」
よく見ると平家の目は涙で潤んでいる。
「まあ、お姉さんは応援してるから!」
勢いよく吉澤の肩を叩き一人満足そうにうなずく。
「何をですか、何をっ」
真っ赤になって否定するが内心自覚していた。自分の気持ちはただ単純に仲良くなりたいとか一緒に遊びたいとかいうものとは違うようだということを。周りがこんなものだから、最近ではさすがの後藤ですら「私は理解があるほうだから」などと言って来る。
「平家さん、すみません手伝っていただいて。」
ドリンクを飲み終わる頃合を見計らって、石川はグラスを下げに来る。礼をいうとどういたしましての代わりに軽く微笑んだ。
(私は……別に、これで十分満足。うん。)
72 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月23日(土)15時46分57秒
やぐちゅーは最高だ〜。続き待ってマース。
73 名前:著者・P 投稿日:2000年09月24日(日)04時23分41秒
***4***
「でね、でねっ。」
来週から夏休みということもあり今日は午前中のみの授業。他愛の無い話を無邪気に続ける後藤に相槌を打つ。
(いいなぁ、ごっちんはいつも楽しそうで)
「んんっ?よっすぃー、今、私のことなーんかバカにしたでしょお?」
いつもはお腹がすいた、疲れたと己の欲望に忠実に生きている後藤だったがときどき妙に勘のいいところがあって吉澤を驚かせる。
まだ時間も早い所為で食事に行く気分でもない二人はとりあえず街に出てウインドウショッピングにしゃれ込むことにした。女の子二人で暇そうに歩いていると声をかけてくる輩も多い。
「悪いけど間に合ってるからごめんねー。」
後藤は臆せずになれた口調でサラリとかわす。
「うーん小腹がすいたからクレープ食べようよ。」
「それじゃ、いつまでたってもお昼たべらんなくなっちゃうよ」
とはいっても吉澤も嫌いではないので強く否定はしない。後藤はそのルックスと天真爛漫な性格も手伝ってかなりもてるはずなのだが、目下のところ興味は恋愛よりもファッションや食べ物にあるらしい。おかげで吉澤もあれこれ突っ込まれず、助かっている部分もあるのだが。
(でも、いつかはごっちんと恋話したりする日もくるのかなあ……)
吉澤の杞憂とはうらはらにその『いつか』は遠くなかった。
74 名前:著者・P 投稿日:2000年09月24日(日)04時25分26秒
***5***
結局、後藤の押しに負けクレープ屋に向かったはいいが……既に注文してから20分以上が経過している。夏休み前で授業が半日で終わったのは自分達だけではなく同様な少女たちで大盛況。オマケにどうやら学校の先輩か誰かにパシらされているらしい大量購入の者がいるようでいっこうに出来上がってくる気配が無い。
「……だから、我慢しようって言ったのに。」
タダでさえ暑いというのに一箇所で立っているなんて耐えられない。吉澤はもういっそのことキャンセルして少し早めの昼食に行きたかったがどうしても、アイスクレープを食べたいと後藤はきかなかった。
「もうちょっとだけ待って見ようよ。あ、アタシ達の出来たみたいだよ!!」
アイスクレープとシナモンクレープのお客様という声に反応する。喜び勇んで足早に向かい吉澤の分も一緒に受け取って走ってくる。
「あ、ごっちん!慌てなくていいから……って…!!」
吉澤の言葉は空しく激しい衝突音にかき消された。
「イタタタ……」
さすがに完全に転んでしまうということは無かったがバランスを維持しようとしたせいで思いきり手に力が入ってしまった。気を付けろよな!と乱暴な男言葉で後藤とぶつかった同世代の少女が去っていく。
「大丈夫!?」
特に怪我をした様子も無いので吉澤はホッとする。が、後藤は両手にある物体を見てボーゼンとしている。吉澤のシナモンクレープは、皮の中にアーモンドとシナモンパウダーのみのシンプルなものだったので少しばかり形が崩れても十分食べられる状態であった。しかし、後藤のアイスクレープは無残にも皮が破れ、この暑さではや解けはじめていたアイスが後藤の指をつたっている。
75 名前:著者・P 投稿日:2000年09月24日(日)04時31分59秒
***6***
「う……アタシの……」
「とりあえず……手拭かなきゃ……」
「手拭いても、クレープは戻ってこないんだよぉ。」
半ベソ状態になっている後藤をなんとかなだめようとティッシュを取り出して拭きにかかるがポケットティッシュでは役不足で、半分も拭き終わらないうちに底をついてしまう。店員に言って何か借りてこようとした時にスッと横からティッシュが差し出される。
「使いなよ。」
クレープを手にしたキリリとした面持ちの少女が立っていた。ぶっきらぼうな物言いとはうらはらに温かみのある表情に安心してありがたく吉澤はその申し出を受け入れる。と少女は、手にしていたクレープを後藤のほうに差し出した。
「ちょうどよかった、食べない?これ。」
ずっと俯いていた後藤は驚いて顔をあげてはじめてその少女の姿を目にする。
「そんな!いいですよぉ。ほら、私のシナモン半分あげるから。ね!」
見ず知らずの自分達に親切にティッシュを差し出してくれた上にご馳走になるわけにはいかない。しかし、後藤ならもらいかねないと思い、慌てて吉澤が口を挟む。
「いや、どっちにしろ食べられなくなっちゃったんだ。予想外に待たされちゃったから時間無くなっちゃって。もう行かなきゃいけないから。」
「え、でもっ……」
バイクだから食べながら運転も出来ないしねと念押しをして後藤の手に握らせる。少々強引な手つきだったが嫌味の無い仕草に吉澤は同性ながら惚れ惚れしてしまう。
「じゃ、急ぐからこれで!」
本当に急いでいたらしく後藤に手渡すとすぐさま立ち去っていく。去り際に「今度は気をつけてね」とまるで子供にやるように後藤の頭をポムポムと叩いて笑って手を振った。
76 名前:著者・P 投稿日:2000年09月24日(日)04時33分02秒
***7***
「ありがとうございます!!ホラ!ごっちんもお礼いいなよ。」
一点を見つめたまま微動だにしない後藤に礼を促す。
「もう、もらうものだけもらって!お礼言わなきゃダメだよ、ごっちん。」
繰り返しあおるが一向に後藤は動く気配が無い。そうこうするうちに少女の姿はすっかり見えなくなってしまった。
「あーあ…行っちゃった。しょうがないな…じゃ、あっち座って食べよ。」
貰っておいて礼の一つも口にしない後藤にイラつきながら建物の影のほうをに促す。だが、依然として後藤は一点を見つめて硬直したままである。
「ごっちん?」
ようやく、様子がおかしいことに気が付いて吉澤は後藤の顔を覗き込んだ。無理やり後藤の視界に入ってみたがその瞳は吉澤の姿を移していない。目の前でひらひらと掌を泳がせてもまるで反応が無い。
「ごっちん、ごっちんてば!!」
声を荒げて両肩を掴んで揺さぶってみる。
「……ッコイイ……」
「へ?」
何かに取り付かれでもしたかのような焦点の合わない熱っぽい瞳で、吉澤に揺さぶられるがままになりながらつぶやく。
「ステキだね……今のヒト……」
後藤はさっきの少女が去っていった方角を見つめていた。
そして、吉澤は人生そう何度も巡り合うこともない誰かが誰かに人目ぼれしてしまう瞬間に居合わせてしまったことを自覚した。
しかし、さらに力強く握り締められた後藤の手にある自分のクレープは、もはや原型をとどめていないことに気付くのはそのもう少し後だった。

77 名前:著者・P 投稿日:2000年09月24日(日)04時57分33秒
すみません・・・人目ぼれ→一目惚れの誤字です。
>72さん ありがとうございます。がんばって書きます。
78 名前:ムーミン 投稿日:2000年09月24日(日)12時23分06秒
くはーーッ最高だあああッ。
いちごまはやっぱりイイっす!!
一目惚れバンザーーイ!!
79 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月24日(日)19時00分44秒
保田は出ないの?
80 名前:つき 投稿日:2000年09月24日(日)23時23分19秒
うわー。市井ちゃん、かっこいい。
それに優しいとこも良いですね♪
ごっちんが一目ぼれする気持ちわかるなー。
早く2人がまた出会えるの楽しみにしてます^^
81 名前:著者・P 投稿日:2000年09月24日(日)23時42分11秒
市井とは一言も書いていなかったのですがばればれですね。ああ、吉澤が主役なのにどんどん出番が減って行く・・・
>ムーミンさん 市井さんは皆さん上手に書いてらっしゃる方多いのでちとプレッシャーです。
>79さん この話は一応3部構成で考えてます。メインキャラはあともう一人登場予定です
>80さん 一目ぼれ、別名餌付けされてしまったような気がしないでもないです。
82 名前:著者・P 投稿日:2000年09月24日(日)23時44分34秒
***8***
「さっきの人なんて言う名前かなあ?」
「さあ?」
「何処にすんでるのかなあ?」
「さあ?」
「年、幾つだろ?」
「さあ?」
「……よっすぃーさっきから、さぁばっかりだよ!!」
「それ以外に答えようが無いんだけど……」
結局クレープを食べ損ねた吉澤は先ほどまではさほど感じていなかった空腹を抱えていたせいもあって曖昧に返事した。大体後藤が握りつぶしたんだから半分分けてくれてもよさそうなものだがあの人からもらったんだもん!ととうとう一口も貰えなかった。お詫びにカレーを奢るということで吉澤は承諾した。
「でも、やっぱりお礼はしなきゃいけないよね。よし!カレーを食べながら見つけだす方法を考えるぞっ!!『クレープの君捜索大作戦』だ!隊員の後藤、吉澤頑張ります!」
いつのまにかしっかり隊員にノミネートされている我が身を哀れんだ。
83 名前:著者・P 投稿日:2000年09月24日(日)23時45分32秒
***9***
後藤は勢いよく店のドアを開ける。
「いらっしゃい!ってグッドタイミングや!」
お昼時に丁度重なったせいで見渡すと空席はあとカウンターの2つだけだった。待ってましたと言わんばかりの表情で中澤が迎え出る。
「頼む!何も言わんとどっちかほんの10分だけ手伝ってんか?今度なんかおごるから。」
この通り!と両手を合わせて頼み込んでくる。しかし、忙しいとはいっても十分中澤一人でこなせる程度だと思えたので不思議に思って吉澤が問い返す。
「いや、夏休み前から石川のシフトを変則的にしたのを忘れててうっかりバイトの面接入れてしもうたんや。さっきから待たしてるから。お願い!ちょこっと面接する間だけ、どっちか、な、な。」
どっちかと言いながらも明らかに中澤の目は吉澤に注がれていた。確かに後藤よりは若干頼りになるかもしれないが。
「え…でも、そのレジとかわかんな…」
「悪いね!じゃ、頼むわ!」
有無を言わさずエプロンを吉澤に押し付ける。
「ちょっ…なかざわさ〜ん!」
「お姉さん!お水のお代わり頂戴!!」
「ほら、お客さん呼んでるで!」
「そんなぁ…」
「お姉さん!!お水―」
「……は、はい〜!」、
「あ、あと面接の子待たしてしもうたからこっちにもアイスコーヒー二つな。」
(中澤さん……容赦無い……)
84 名前:著者・P 投稿日:2000年09月24日(日)23時47分05秒
***10***
「よっすぃー、後藤もなんかやるよ。」
とりあえずお水のお代わりに行こうと思っていると一人で待っているのが退屈だと後藤も結局手伝うと言う。
「じゃあ、アイスコーヒー中澤さんとこ持ってってくれる。」
「OK!」
たかがアイスコーヒーとはいっても何処に何があるのかわからないので少々後藤は手間取る。さっさと水を入れてきて吉澤が帰ってきたときにやっとトレイに2つのアイスコーヒーがのっかっている。見るからに危なっかしいその手つきに不安を覚える。中澤のことだから話に花が咲いて10分どころか何十分も自分に任せられては大変だ。釘をさす意味もかねて一緒に持っていくことにした。後藤にアイスコーヒーを持たせ、後ろからガムシロップとミルクを持ってついていく。
「よっしゃ!条件ぴったりや!早速明日からお願いするわ。」
「よろしくお願いします。」
店内はあまり広くないので中澤達のやりとりがパーテーションごしに聞こえてくる。
吉澤の心配とは裏腹にすんなり採用が決まって話も一段落したらしい。さっさとアイスコーヒーを飲んで戻ってもらわなくては。2、3歩前を歩く後藤がテーブルに近づいた。
「お待たせしま……!」
「おお、悪いねーごっちん!」
後藤がアイスコーヒーを置いたら吉澤も小物を置こうとすぐ後ろに控える。しかし、後藤は電池の切れたロボットのごとくトレイを持ったまま固まっていた。
(ごっちん、早く置いてよ。)
小声でせかすが反応が無い。堪りかねて後藤の前に出て代わりにグラスを置こうとした。
「あれー、さっきのクレープコンビじゃん!」
後藤の視線の先にいる主が驚きの声を上げる。
「なんや、知り合いやったんか。」
中澤は勝手にトレイから自分と面接の少女のドリンクをとりテーブルに置く。
「明日からうちでバイトしてくれる市井さんや。二人ともよろしくな。」
後藤曰く『クレープの君捜索大作戦』はその発足約10分後に終了した。

85 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月25日(月)01時08分30秒
やっぱ市井はバイク乗っているのね(笑)
86 名前:ティモ 投稿日:2000年09月25日(月)01時14分20秒
うわ、続きめっちゃ楽しみ。
頑張ってください。
87 名前:ムーミン 投稿日:2000年09月25日(月)01時22分52秒
OH〜〜!!
YEAH〜〜!!(笑)
88 名前:著者・P 投稿日:2000年09月29日(金)21時02分27秒
>85さん いや、乗せたかったわけではないのですが、デリバリー専門の店員ていう設定にしたかったので。
>ティモさん はい、がんばります!
>ムーミンさん とりあえずよろこんでいただいてるのでしょうか(笑)

ドタバタ&ほのぼのがコンセプトなのですが(一応)すこーしシリアスな展開になるやもしれません・・・
89 名前:著者・P 投稿日:2000年09月29日(金)21時04分50秒
***11***
(……今日も来ることになってしまった。)
石川の勤務日なので本来なら楽しみにしているところだけれど吉澤は憂鬱だった。後藤の『クレープの君捜索大作戦』任務完了より2週間、カレー屋に通いづめだ。カレーは好きだけど流石にこれだけ続くと食欲もうせる。相変わらずの暑さも手伝ってすっかり吉澤はグロッキー状態だった。
「あ、いらっしゃい!アレ今日は珍しいね。一人なんだ。」
「どうもこんにちは。」
鬱な気分をふっとばすくらい爽やかな笑顔が出迎える。
後藤の圧倒的な押しのパワーで会ってからまもないとはいえすっかり市井とは打ち解けていた。後藤などは「いちーちゃん」とまで呼んでいる。今日も行くのかと思っていると予想外に後藤がどうしてもはずせない用事があるから、と言うので内心ホッとした。のもつかの間、「おねが!よっすぃー、後藤のかわりにこれ渡してきて」と半ば強引に小さな包みを渡され結局行かねばならない羽目になったのである。
(たまには、ハンバーガー食べたいよぉ……)

90 名前:著者・P 投稿日:2000年09月29日(金)21時05分46秒
***12***
「あの、市井さんちょっとだけいいですか?」
「ん?どしたの?」
とりあえず忙しくなってチャンスを失わないうちに渡しておこうと思い包みを差し出す。
「これ、ごっちんから渡してくれって。」
「え?私に?」
「お、モテモテやんかー。ごっちんに随分気に入られた見たいやな。」
ひょっこり中澤が顔を出す。デリバリーが入っていないときは石川、市井の2人に表をまかせてもっぱら厨房のほうにいる。
「いらっしゃい、ひとみちゃん。あ、市井さん何貰ったんですか?」
石川も吉澤に気付いて近付いてきた。市井が中身を空けてみるとクッキー……らしきものが入っている。
「うわあ、ブッサイクなクッキーやなー。」
覗き込んで中澤が声をあげる。市井は困ったように、しかし決して深いではない顔で苦笑いしながら包みについているカードを開く。
『大好きな市井ちゃんへ!クッキー焼いてみました。食べてね!ただし、味は保証しませーん 後藤より』
(味は保証してないところがごっちんらしいな……)
あまりにもストレートな愛情表現に当の本人でもないのに、気持ちよく受け取ってくれた市井を見て吉澤は嬉しくなった。
「ホントに好かれてしもうたなー。」
「ええ、妹が出来たみたいでかわいいですよ。」
いくら、色恋沙汰にはお世辞にも通じていない吉澤でも後藤の気持ちが単なる年上のお姉さんに抱く感情とは違うものだとは感じていた。それだけにその市井との気持ちのギャップに内心残念だった。せめて、喜んで受け取ってくれた様子を後藤に報告してあげたいともう少し市井と話したかったのだが新しい来客がありテーブルを後にした。
その後姿を見ながら中澤は沈んだ顔でつぶやいた。
「しかし、あんまり仲ようなると別れるとき寂しいなるからな。」
「えっ?」
91 名前:著者・P 投稿日:2000年09月29日(金)21時07分01秒
***13***
「どういうことなんですか?」
「まぁ、もともと夏休み期間中のみの募集ってことやったんやけどな。そしたらあの子が面接に来て、なんでも夏休み終わったら留学するらしくて、それまでに資金を少しでも稼ぎたいってことやったんや。それでお互い条件ピッタリってことで採用したんや。」
「留学……」
現実感の無い言葉に戸惑い、市井のほうを見る。吉澤の視線に気付いてにっこり微笑んでいる。
と、その後ろの入り口のドアが音も無く開き市井の肩越しにぬっと手が二本出てきて背後から市井を抱きしめる。
「わわっ!?後、後藤っ?」
「ごっちん!」
「アハハ!やっぱり来ちゃったぁ。」
ユーカリの木にしがみつくコアラのごとくしっかり市井に抱きつく。とびきりの笑顔を浮かべて。その、笑顔が、痛かった

92 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月29日(金)22時07分36秒
石川最高!
保田って出て来ないの?
93 名前:85 投稿日:2000年09月29日(金)23時08分30秒
>>88
 他の小説でもバイク乗っていたのがあったので、市井ってそういうイメージが
あるのか、と思いまして。デリバリーサービスなんてしてたんですね、中澤。
意外とやり手みたいだ(w
94 名前:ムーミン 投稿日:2000年09月30日(土)11時40分39秒
>88
 そりゃもう、喜びまくってますワ(笑)
 いちごまはやっぱり最高なのです。
 このまま、ラブラブボンバーだったらなおいいのに・・・。
95 名前:著者・P 投稿日:2000年10月01日(日)18時00分07秒
92さん 石川、出番少なくてすみません・・・一応準主役のはずだったのに。登場人物はあとひとりくらいかな?
93さん 不景気ですからね〜
ムーミンさん ・・・・・・不幸にするつもりはとりあえず無いのですが・・・
96 名前:著者・P 投稿日:2000年10月01日(日)18時01分50秒
***14***
「ゴメン、ゴメン。よっすぃーを信用してなかったわけじゃなくて、案外用事が早く終わったからさ、落ち着かなくて来ちゃったんだ。」
さすがに、仕事中なので後藤も遠慮して少しだけ会話すると、なんだかウキウキした足取りで吉澤の隣に腰掛けた。
「えへへ、でねーよっすぃー、もう一個お願いがあったりするんだけど。」
見ているだけで幸せそうなオーラを感じ、やりきれない思いになる。
(ごっちんは……知ってるのかなあ……)
とてもではないがそんな素振りは感じられない。いつまでも続く未来を予感させる笑顔だった。
「なに?お願いって?」
「あのね、バイト終わったら市井ちゃんちで一緒にクッキー食べようって。」
吉澤もさっきまではどこまでもその幸せが続いていくことを願っていた。しかし、知らないのならばあまりにも残酷ではないのだろうか。
話し半ばで後藤の意図を掴んで答える。
「OKOK。じゃ、バイト終わるまで付き合ってあげるよ。そのかわり、今日ごっちんのおごりね!お使い代も込みで」
自分の心の影を吹き飛ばそうとわざと明るく、快く了承する。
「もちろん!わーい楽しみー、市井ちゃんち初上陸!!」


97 名前:著者・P 投稿日:2000年10月01日(日)18時03分17秒
***15***
2時間あまり待って、店も閉店。着替えと片付けをして10分くらいでくるというので店の表で2人で待つ。
鼻歌まじりの後藤をみてやりきれない思いになる。何度も何度も言おうとしたけれど結局店内では他の人の目もあるので言えなかった。意を決して口を開く。
「ごっちん……」
「どしたの、マジな顔して。」
疑いのないキョトンとした眼差しに胸が詰まる。
「言おうかどうしようか、悩んだんだけど、知っちゃったから言うね。市井さん、夏休み終わったら……留学するんだって。」
黙って、後藤の言葉を待つ。帰ってきたのは意外な答えだった。
「……知ってるよ。この間ひとりで来たときに聞いた。」
「えっ?」
早くこないかなーとつぶやいて時計を見る。
「留学って……外国に行くってことだよ!」
「よっすぃ〜後藤だってそれぐらいわかるよぉ。」
後藤の気持ちがわからない。
「会えなくなるってことだよ?」
「……知ってるよ。」

98 名前:著者・P 投稿日:2000年10月01日(日)18時03分56秒
***16***
一瞬、ほんの一瞬後藤の表情に哀しい影が落ちる。が、吉澤がそう思ったときにはすでにもとの表情に戻っていた。
「でも、知ってても知らなくても私は、市井ちゃんが好きだから。」
吉澤はいつも天真爛漫な後藤に振り回されてきたけれどそんなところが好きだった。だから……傷ついた姿を見たくなかった。後でもっと傷ついて哀しむ後藤の姿を見たくなかった。
「さっき、市井さんにクッキー渡したとき……ごっちんのこと、妹みたいでかわいいって言ってた。」
自分の言葉がどれほど残酷かと思ったけれど「妹」とはっきり発音した。後藤の好きとは多分…違う、とは言わなかったけれどその意図するところは後藤に伝わったことを確信した。
「ごっち……」
「…………うん、わかってるよ。」
視線を店のドアのほうに移していたので後藤の表情は読めなかった。足音が近づいてくるのが聞こえ扉が開く。
「悪い!!お待たせっ。」
「待ってたよーっ!」
「こらこらっ!抱きつくなー。」
続いて石川も出てくる。後藤を軽くあしらいながら、市井がすまなそうに吉澤に手を合わせる。
「付き合わせちゃったみたいでゴメンね。それじゃ、あまり遅くならないように行こうか。」
石川と吉澤に別れを告げ腕を組んでバイクの置いてある所に向かおうとしたとき、後藤が一度だけ振り返った。
「よっすぃー、今日はホントゴメンね!…………それと、アリガト」
最後の一言は、ほとんど聞き取れなかった。
99 名前:著者・P 投稿日:2000年10月01日(日)18時05分35秒
***17***
「いやー、ホント熱々やなー。私も負けてられへんわ。」
最後の戸締りをしようと出てきたのかいつのまにか中澤が入り口に立っていた。
「せっかくやから、お茶でも飲んでったらどうや?」
手招きをして店に呼び戻す。断る理由も無かったので素直に厚意に甘えることにした。
「ほな、石川、私は帰るから戸締りだけ頼むわ。」
「え?あ、お疲れ様です。」
「中澤さん?帰っちゃうんですか?」
去り際に吉澤にウインクしていく。疲れていたせいなのか、気を使ってくれたのか分からなかったけれど、とにかく久しぶりに石川と2人でいるシチュエーションになった。
「……なんか2人っきりで会うの久しぶりだね。」
そんなことを考えていると寸分違わないことを石川が口にしたことに驚く。
久しぶりに石川とゆっくり話せること、自分と同じことを考えていたことは嬉しかった。
コーヒーを飲みながら他愛も無い話を続ける。
「あ、そういえば9月から公開の映画ですごい面白そうなのがあるから、一緒に見に行きたいな。」
「梨華ちゃん、映画好きなんだ?」
(9月…かぁ。その頃には市井さんもういないんだ。)
「うん、結構好き。お正月映画とかも必ず一本は見に行くかな。ひとみちゃんはお正月はいつもどうしてるの?」
(私は……会おうと思ったら、いつでも梨華ちゃんに会えるんだ……なのに……)
「うーん、友達と初詣行ったり、親戚にお年玉貰ったりって感じかな。」
「お年玉貰うんじゃなくて、ご挨拶でしょう?もぉ。」
(いつでも、会えるのに…………どんなことだって出来るのに)
「……ひとみちゃん?」
ふいに沈黙が流れる。
「…………ごっちん、知ってた。」
俯いて、膝に手を置く。その手が微かに震える。
「……知ってた…んだ。」
主語もなにもなかったけれど石川は即座に理解した。
「市井さん、いなくなるって、会えなくなるって知ってた……。」
吉澤の掌に雫が落ちる。1つ、2つとその数が増えて行く。
「私、多分ごっちんを傷つけるようなこと言ったのに……なのにごっちん……アリガトって…」
石川は、なにも言わずにその震える手の上に自分の手を重ねた。
どこにこんなに水分があるんだろうというくらい泣いた。
そして、どれくらいそうしていたのかわからなくなるくらいの時間、黙って、石川は吉澤の手を握りつづけた。

100 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月02日(月)00時56分22秒
今一番この小説好き。大期待!!めっちゃ楽し〜!頑張って下さいねー!!
101 名前:名無し 投稿日:2000年10月02日(月)01時35分26秒
シュミレーションの吉澤編のあと
これを読んだ…
なんか不思議だった
102 名前:著者・P 投稿日:2000年10月03日(火)00時01分05秒
>100さん なんとか先が見えてきたのでがんばります。
>101さん 吉澤さんの性格は多面的でどういう風にもとれたりするので難しいです。このお話の中ではかなりのヘタレっぷりを発揮してるのですが実際は多分、違うんだろうなと最近思います。
103 名前:著者・P 投稿日:2000年10月03日(火)00時03分21秒
***18***
次の日もその次の日も、市井の旅立ちの数日前になっても後藤は変わらずにいた。
そして。
「とうとう明日になってしもうたなあ。祐ちゃん寂しいわ。」
顔では笑っていたがその声には生気がない。明日が市井の旅立ちの日。中澤、石川、市井をはじめ吉澤、後藤、矢口、平家まで勢ぞろいしていた。
「ねえさんも人使い荒いなあ。何も出発の前日まで働かさんでも…」
「あはは……違いますよ、平家さん。私がお願いしたんです。ギリギリまで働かせてくださいって。」
「明日、午後2時ジャストの飛行機だよね!矢口見送りに行くよ。」
「私も行きたいけどお店あるからな……と思ったけど明日は臨時休業や!ということで石川も明日は特別休暇!」
「え?いいんですか?じゃ、私もお見送り行きますね。」
たった一ヶ月あまりの付き合いだったけれどこんなにも自分を思ってくれる人々に会って市井は幸せだった。ただ、先ほどから口数の妙に少ない後藤のことが気にかかった。
「ごとー!元気無いぞーっ!」
くしゃくしゃっと後藤の頭を撫でる。いつもなら「もぉ、市井ちゃん!」とじゃれてくるはずなのに反応が無い。後藤は、泣いていた。
「……こぉら、そんな顔されたらおかあさん心配になっちゃうでしょ?元気だすんだぞ。」
はじめて見る後藤の泣き顔に激しく動揺するが、もう時間も遅くあすの準備もあるからもう行かなくてはならない。気になりながらも、後藤には周りにこんなたくさんの暖かい人間がいる。仲良くなった分何日かは寂しいはずだけれどもともと自分はここにはいなかった人間なのだから。大丈夫。市井は自分にそう言い聞かせた。
「すみません。それじゃ……お世話になりました。」
最後にもう一度後藤の頭を撫でたがとうとう自分の方を見なかった。

104 名前:著者・P 投稿日:2000年10月03日(火)00時05分14秒
***19***
「……ほら、ごっちん!明日見送り一緒に行こうよ。ね!」
吉澤は精一杯明るく振舞って後藤の肩を抱いた。石川も「そうだよ。一緒にいこ」と同調する。
「そだ!矢口がこの間買ったばっかりのカメラ持ってってあげる!その場ですぐ見れちゃうすぐれものだぞ!」
周りを一瞬にして明るくさせてしまう能力の持ち主の矢口も加わる。何度も続くそんなやりとりを平家と中澤は、何も言わずただ黙って見守った。
「………私、見送りは、行かない。」
静かに、だがはっきりとした口調だった。
「い、行かないって!なんでっ?」
吉澤には理解できなかった。あんなに仲がよかったのにどうして?
「行っちゃヤダってきっと、きっと言っちゃうから……市井ちゃんそんなこと言われたら困っちゃうから……だから、行かない。」
「ごっちん……」
かける言葉が見つからなかった。それまで、しきりに行こうよと誘っていた石川も、そして矢口も同様だった。自分達の幼さを自覚した。誰も、何も言わなかった。沈黙を破ったのは後藤の「じゃ、帰るね。」だった
105 名前:著者・P 投稿日:2000年10月03日(火)00時05分52秒
***20***
「……私も、そろそろ失礼しますわ。」
そのすぐ後に後藤の後を追うように平家が出ていった。
「裕ちゃん……矢口、すごく無神経なこと言ってたのかな。」
唇をかんで涙をこらえながら矢口は中澤を見上げた。なんとか元気になってもらおうと、必要以上にはしゃいだ自分。小さな身体をそっと抱き寄せて、ゆっくり左右に首を振る。
「矢口は、矢口のやり方で、矢口にしかできないことを精一杯やったんや。なんで泣くのん?なんも泣くことあらへんで?」
何も、出来なかった。心の何処かで一番の親友だと自負していたのに。自分の意思さえはっきりさせることができなくて、あまりにも子供で。
「大丈夫……だよ。」
「梨華ちゃん……?」
「ちゃんと、伝わってると思うよ。私達の気持ち。少なくとも私はひとみちゃんの優しさが伝わってきたから。」
いつかと同じように掌をそっと握った。
「私達、多分まだ子供で、不器用だけど。ひとみちゃんがそう言ってくれないと、私も……自分の未熟さに耐えられなくなってしまうから。」
石川の言葉はたどたどしかった。けれど伝わってきた。だから、
「うん……うん……」
頷く事しか出来なかったけれど、でもちゃんと……伝わってるよね?
106 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月09日(月)12時18分04秒
待ってます。
107 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月09日(月)23時50分07秒
***21***
「おーい、ちょっと待ってや。」
何秒かもしないうちに店を出たはずなのに後藤の姿は随分遠くにあった。大声で呼んでみたが上の空で全く気付いていないようなので仕方なく小走りで追いかける。歌の為に多少の腹筋などはやっているけど本格的にやっているわけではないので息が切れる。
「はぁ〜やっと追いついたわ。」
「平家さん?」
「ちょっとコーヒーでものまへん?奢るから。」
目の前にある自動販売機を指差して、小銭を取り出す。
「すいません……今日は一人にしてもらえませんか?」
「別に何か意見する気はあらへんよ。ただ、聞いて欲しい話があるだけなんや。黙って聞いててくれればいいし。おんなじのでいい?」
後藤が頷いたのを確認するとコインを投入して2人分の缶コーヒーを買う。ベンチなんて都合のいいものがそうそうあるわけでもないので、ガードレールにもたれる。
プシュっという音を上げて開封される。一口飲んで喉を潤す。
「昔……な。」
平家に言われた通り後藤は黙って次の言葉を待った。
108 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月09日(月)23時51分35秒
***22***
「むちゃくちゃ仲のいい奴がおったんや。同じ夢を持って、頑張ってた。なんか、きっつい性格やったしそのくせお人よしで要領悪くて、意地っ張りで負けず嫌い、努力家で…不器用で……頼り甲斐があるのに間が抜けてて……私は……その人がダイスキやった。」
昔を懐かしむように空を見上げる。
「本当に好きで…まあ、恋愛感情…っていうのとはちょっとちゃうと思うけどな。全ての中心やった。いつまでも、一緒にいられたらって思ってた。ずっと、この関係でいられたらって思うてた。でもな……」
けたたましい音を立てたバイクが一台通り過ぎる。騒音がやむまで一呼吸置く。いつしか、後藤は平家の横顔をじっと眺めていた。
「その人にすごく哀しい出来事があって……突然、一緒に夢を追うことができなくなったって言われたんや。ショックやった。一緒に夢を追いつづけたかった。……いや、もしかしたら、そんときは夢よりもその人が大事になってて離れ離れになるくらいやったら一緒についていけたらって思った。でも……」
「……でも?」
「出来なかった。絶対に嫌だ!っていうことも、一緒にいたい!っていうことも出来たはずやのに。なんで?って尋ねることしか。夢はどうなるのか?って聞き方しかできんかった。……好きだから、離れたくないっていうだけやのに、そんなん自分のワガママやからって思って……」
上を見ていた顔をゆっくりと後藤のほうに向ける。平家を見つめていたその視線とあう。
「でも、ホントは拒絶されたときのことがこわかっただけかもしれへん。……自分の意思次第でどうすることも出来たはずやのにな……」
いまだに中途半端で引きずってるわと笑う。
平家が、一体誰を思い浮かべながら話しているのか、後藤は薄々理解していた。けれど、そんなことはどうでもよかった。
「……平家さん、ご馳走様でした。」
飲み終えた空き缶を捨てると丁寧にお辞儀した。
「ほな、引き止めて悪かったね。気ぃつけて帰り。」
「あの……さっきの……」
「……昔の話や………。内緒やで!!」
照れくさそうに後ろ向きになる平家の背中に向かってもう一度、絶対見えるはずなど無いのにお辞儀する。
「……ありがとう……ございます……みんなも…アリガト。」
109 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月14日(土)23時34分52秒
みっちゃんが好きだった人って・・・。
やっぱあの人なの?
続き期待!
110 名前:著者・P 投稿日:2000年10月15日(日)23時44分51秒
***23***
「ちょーっと!後10分しかないで!!ごっちん何しとんねん!!」
しきりに時計を気にしながら叫ぶ。吉澤は出掛けに電話したけれど留守だった。やはり、こないのだろうか……
「……来るよ!絶対来ると思う…」
石川は何度も繰り返したが当の本人ですら何の確信も持っていなかった。むしろ来て欲しいと言う気持ちだけだった。

……あと、5分。

「それじゃ……後藤には、よろしく伝えたいてください。」
既にスーツケースは預けてあるので手持ちのバッグだけを抱える。

111 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月15日(日)23時46分04秒
***24***
もう、来ないな。誰もがそう思った、その時。
「市井ちゃーーーん!!!!」
茶髪の少女が全速力で駆け寄ってくる。
「ごっちん!!」
来た!
一度手に持ったバッグを再び床に置いて後藤を待つ。
「遅いよっ!あっ、全員集合したからぁ、き、記念写真取らなきゃ!!ほら、みんな早く並んで並んで!!」
「アホ!」
一同を市井のほうに寄せようとした矢口を中澤が止める。「2人で話させたり。」と言い聞かせる。名残惜しそうにカメラをしまう。
「市井ちゃん……ごめんね。遅くなって、これ。」
一同から2、3m離れたところにいる市井に歩み寄り包みを渡す。
「この間のクッキー、おいしくなかったから……焼いたんだけどラッピングするものがなくて買いに行ってたら遅くなっちゃった。」
「ラッピングなんていいのに。」
「だって、それじゃ、最後まで後藤がだらしない奴だと思われるじゃん。後藤もやるときゃやる奴って知っててもらいたかったから。」
結局走るときに力が入ったのか形の崩れている袋を見て苦笑する。
112 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月15日(日)23時47分27秒
***25***
「……それとね、もうひとつ、知ってて欲しいことがあったから。」
「……なに?」
突然、後藤は市井のに半歩歩み寄ってその唇にキスした。
「好きです。市井ちゃん。」
吉澤と石川はあっけにとられて硬直する。「うっひゃあ」と叫び出しそうな矢口の口をかろうじて中澤と平家がふたりがかりで押さえつける。
後藤が離れた後の自分の口に手を当て市井は赤面する。今まで散々後藤が自分に対して発してきた「好き」の意味をようやく理解した。
「後藤……あ…の…」
「……大丈夫。正直に言ってよ。市井ちゃん。」
「……」
小細工を聞かせた言葉や、まわりくどい言い方はしたくない。
「正直……後藤のことはかわいい妹が出来てすごくうれしいなって、そう思ってた。」
「……うん。」
「今も……そう思ってる。」
「……うん。」
「今、すごく混乱してる。」
「……うん。」
「どう答えていいのかわからない。……ずっと、知らなかったから。」
「……うん。」
「きっと、まだまだ後藤のこと知らない。でも……」
登場時間までの残り時間を知らせる館内放送が流れる。後藤は市井の手荷物を握って、手渡した。
「これから、もっと知りたいと思う。」
113 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月15日(日)23時48分24秒
***26***
手渡すはずの荷物が後藤の手を離れ音を立てて落ちる。
「市井ちゃ……」
荷物を拾い上げて、いつものように頭をくしゃくしゃ撫でる。
「手紙書くよ。メールもあるし。……たくさん書く。」
「市井ちゃ……アタシも、いっぱいいっぱい書く!書くから!」
「なーんて顔してんだよぉ。」
「あは……不細工だろうなぁ。でもダメだ。」
涙と笑顔でぐしゃぐしゃになった後藤にむかって微笑む。
「その顔見たら絶対忘れられないって!」
「ひどいよーっ。」
さようなら、はお互い言わなかった。
涙でぐしゃぐしゃになった顔を拭こうともせず、見えなくなるまで手を振りつづけた。
114 名前:著者・P 投稿日:2000年10月15日(日)23時50分02秒
>109さん どうしても平家さんを登場させてしまう私・・・

次回で一応締めのつもりです。
115 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月16日(月)01時01分29秒
是非いしよしのラブラブを入れて下さい!!
平家さんキレイですよね〜
116 名前:著者・P 投稿日:2000年10月19日(木)23時19分25秒
***27***
次の日、どうしようかためらわれたが後藤の誘いを受け中澤の店に来ていた。
後藤はもう、泣いていなかった。むしろ、晴れ晴れとした表情でいた。
「ごっちんは、すごいね。」
別れる事が決まっていたのに、市井の気持ちはわかっていたはずなのに。
「そんなこと無いよ。ただね……」
飲み終わったアイスティーの中に入った氷をストローでくるくる掻きまわす。
「市井ちゃんが覚えてる私の最後の顔が泣き顔って嫌だった。」
結局不細工な顔になっちゃったけどねと自分で突っ込んで笑う。
「それにね……今しか言えないって、思ったんだ。例えこのままでも普通に手紙のやり取りしたりってことはできるかもしれない。けどこの気持ち持ってるのって今だけだって。なーんていうと小難しくなっちゃうんだけどさ。」
知らない間に後藤が自分より大人になってしまった気がした。
「だからね、こう思うことにしたんだ。」
「え?」
「飛行機落ちちゃって市井ちゃんが死んじゃって会えなくなったらどうしようとか、死なないにしても強く頭を打って記憶喪失になったらどうしようとか。」
「へっ?」
さっきまで大人ぶった口調で話していたかと思うといつもの後藤節になり奇声を挙げてしまう。
「明日が地球最後の日になったらどうしようって思ったの。そしたらね、言うぞ!って思った。」
前までなら「何それ」って笑い飛ばしてしまいそうな台詞。でも、後藤の澄んだ眼に惹きつけられる。
117 名前:著者・P 投稿日:2000年10月19日(木)23時22分15秒
***28***
「よっすぃーはさぁ、地球最後の日になっちゃったら誰に何て言うの?」
「……地球最後の日………」
茶化してごまかしたりする気分は何故かちっとも起こらなかった。恥ずかしいとかいう気分も起こらなかった。
「……梨華ちゃんに、大好き…って言う。」
「だってさ!!」
一際大きくなった後藤の声は自分の後方に向けて発せられていた。
驚いて振り返ると顔を真っ赤にして硬直する石川の姿が目に入る。
「……!!」
「さーって、ちょっと後藤トイレ行ってきマース。」
「ごっちん!!」
ポーチ片手に消えていく。残された二人の間になんともいえない空気が流れる。
「き、今日確か休みのはずじゃ……」
「中澤さんが…急に一人になると寂しいから…今日は出てくれって…」
なんとか発したぎこちない会話はすぐに終わってしまう。一体どこから聞いていたのだろうか。言い出せずにだまってしまう。
「……」
「……最後の、日にならないと言ってくれないんだ……」
ぽそりと呟く。
「……地球最後の日にならないと言ってくれないんだ。」
「それは……」
自分の言葉で、自分のカタチで、自分に出来ることを、しなきゃいけないから。
だから、私は私。
「……り、梨華ちゃんは……なんて言うの?地球最後の日に。」
「私?……」
しばらく、考えてやがてゆっくり口を開いた。
「そうね……私も……大好きって応えるわ。」
「……地球最後の日になんないと言ってくれないんだ。」
お互いの顔をまじまじとみて同時にぷっと吹き出す。自分達がおかしくて堪らない。

明日が地球最後の日って思ったけれど
どうか明日が地球最後の日になりませんように。

FIN
118 名前:著者・P 投稿日:2000年10月19日(木)23時30分50秒
というわけで第二章完結です。市井&後藤は上手く書いてる方が多いのでかなり苦労しました。
よっすぃ〜をもっとだしたかったです。
読んでくださっていた方々ありがとうございました。

>115さん すみません、あまりラブラブとまではいきませんでしたが。
119 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月20日(金)23時26分26秒
読後感がとても爽やかで良かったです。
希望が持てる最後だったし。
よっすぃーと梨華ちゃんの最後のセリフもとてもかわいくって好きです。
120 名前:Hruso 投稿日:2000年10月22日(日)00時31分34秒
お疲れ様でした。
>116
の後藤のセリフがすっごい良かったです。
121 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月22日(日)06時34分31秒
読ませていただきました。
平家さんがイイ感じでした。
面白かったです、感謝。
122 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月22日(日)12時56分17秒
すごくかわいらしくて好きなお話でした。終わってしまうのは少しさみしいかな。
ラストシーンのよっすぃーと石川さんのシーンがとてもお気に入りです。
上質のラブコメ、と感じました。失礼な言い方だったらごめんなさい。
次があれば、楽しみにしています。
123 名前:いずのすけ 投稿日:2000年11月10日(金)23時56分32秒
初めて読んだけど面白かったです。なんかまわりに私一人妄想暴走族とか言われてるんで読んでて楽しかった。 また面白いもの期待しちゃいます。よしいしもいいなあ。
124 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月03日(日)04時03分55秒
第3章はまだでしょうか?
保田が出てくるのを期待してます。
125 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月15日(月)04時35分20秒
うお〜〜〜!初めて読ませて頂きました。
いしよしにやぐちゅ〜にいちごま!すげー・・
三大カップルすね。
やはりいちごまサイコーでした。後藤のキャラがメチャメチャ良かったっす。
面白かったです!
126 名前:ここの作者。 投稿日:2001年01月20日(土)00時55分50秒
昔のほんとに一番最初の最初に書いた奴があがっててかなりびっくり。
今も下手だけど、それにしても文章といい人物描写といい稚拙だなあと思ってしまいました。
今更なんですがレス下さってるかたありがとうございます。
3章まであるといいつつ放置してはや○ヶ月。
今、ちょっと別のを書いてまして&書いてるうちにこの頃に考えてたこととズレを感じたりして・・・
整理が出来たら・・・ということで、すみません。
127 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月20日(土)03時00分53秒
ここの話も書き方も好きだよ。気長に待っていますので完結してください。
今はなんか書いているのですか?
128 名前:ここの作者。 投稿日:2001年01月20日(土)23時41分37秒
>127さん 書いてますよ。結構バリバリに(笑)

けど後にも先にもよし→いし、(いし→よしなら何回か書いたけど)
そしてまともにいちごま、やぐちゅーを書いたのはこれだけ。と思うと自分でも不思議。
なんとかもう一章かけるよう・・・ホントに気長にお待ち頂ければと思います。
129 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月21日(日)00時53分25秒
圭ちゃんが出てきたりするとうれしいな・・・。みっちゃんのお話とか。
3章も楽しみだけど、外伝的な物も出来たら読みたいな。
待ってますのでマターリと書いてください。
130 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月02日(金)23時43分07秒
作者さん。いつまでも待っていますので頑張ってください。
期待ageしてもいいのかな?とりあえずsageにしておきます。
131 名前:LVR 投稿日:2001年07月08日(日)16時41分54秒
ああ、ずいぶん下まで下がってる……。
2,3個分だけageる方法ないかなあ……。

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