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マッドカプセルマーケッツ

1 名前:パスタ・パパ 投稿日:2000年09月29日(金)23時54分02秒
魔法のクスリはいらないか? 9つのカプセルを君にあげる。効果はカッキリ1時間。
ちょっとばかりキツいやつで、君の悪夢を終わらせてあげる。一人で闘う君の悪夢を。
2 名前:物書き屋 投稿日:2000年10月02日(月)03時22分23秒
放置されてます?
いろいろイメージ膨らむいい凄いいい出だしなのに(w
3 名前:パスタ・パパ 投稿日:2000年10月03日(火)00時14分33秒
>>2
ここは魔法のスレッドだからね。では、ひとつ目のクスリを君にあげよう。
効果はカッキリ1時間。1時間を過ぎるとトリップからもどれないからね。
この魔法の名前を知ってるかい? そう、そのとおり。『オン・ガク』だ。
4 名前:-最初の10分間- 投稿日:2000年10月03日(火)00時32分13秒
乾いた音を立てて頬が鳴った。
「ちょっとさあ! アンタ目障り! とにかく目障りなのよ! 今すぐやめてよ。ガッコーかゲイノー人かさ!」
理不尽な要求を真っ赤な顔で早口にところどころつまりながら一気に言ってのけた同級生を軽く見返した。怯んだように両方のてのひらを握りしめる。爪が白く変色するほど。バッカみたい。そんだけビビるんだったら最初からケンカ売ってこなきゃいいのにさ。
「アンタがガッコーやめれば?」
もう一度、頬が鳴った。校則違反のアクセサリがガツッて音を立てて頬の肉をかすかに削ぐ。鏡で見るとうっすらと白いセンになっていた。バカッ、あたしの顔はアンタのニキビだらけのバラバラな眉のうっすらと生えた産毛を放りっぱなしの、何の努力も払ってない安物と違って、商売道具なんだからねっ!
も、あったまきた。スカートのポッケに入れっぱなしになった録音再生可能なMDのRECスイッチをONにする。こっちだって黙ってやられてやってるってばかりじゃないんだよ。
「アンタみたいなバカでブスで男好きで頭んなかアレのことばっかりなアバズレに言われたくない!!」
──すごい台詞だった。アバズレだって。何語だよソレ? 日本語喋れよ。声も裏返っちゃって動物園の中の猿みたいなキーキー声だった。もうウンザリなんだよ、言葉が通じない子供よりも子供っぽいアンタらのレベルに合わせるのはさ。
「じゃあさ、アンタが芸能人になったらいいじゃん? 紹介しようか? 採用されるかどうかは向こう次第──」
さっきの台詞が全然応えてないみたいにして平然と、ごく普通に会話するようなトーンで言ったら、お腹にドカッと体当たりを喰らって、アタシの身体は綺麗に個室の壁にぶつかった。そいつ、名前も覚えてないクラスメイトは勢いよく扉を引いて閉めた。それから金属製のバケツが転がるようなガランガランってものすごい音と、木と木がぶつかるようなガツガツって音。
やられた。閉じこめられた。
モップの柄をつっかえ棒がわりに扉の取っ手に無理矢理に挟み込まれちゃった。
だけどさぁ、ねぇ、扉を閉めるとき泣くことはないと思わない?! これじゃどっちがイジメっこだよ、もう!
5 名前:-次の10分間- 投稿日:2000年10月03日(火)00時43分47秒
ガッコウにいる同い年の、あるいはもっと年下のやつらは子供っぽくって仕方なかった。
ついこないだまでアタシ最年少だったしさ、モーニング娘。の。今だって一緒に仕事してるスタッフはみんな大人で落ち着いていて色々なことをきちんと弁えている人たちだった。騒々しくてがさつで思いやりがなくて自分本位で嫉妬深くってないものねだりで恨みがましい、同じ人間と名乗るのも恥ずかしいほどの生き物たちとはまるで違った。
「やめれるもんなら、こっちだってやめたいんだよバカッ!!」
ドンと壁を蹴って、溜息をつく。チャイムの音が授業の開始を告げる。あーあ、5時限目サボりだよまったく。ただでさえ出席日数足んないのに勿体ない。あのバカに付き合わされたせいで昼休みもまるまる潰れちゃってお昼ごはんだって食べてない。お腹がすいた……
洋式のトイレの蓋を閉めて、スカートを整えて座ってみる(こうしないとママがうるさいんだ。あたしがパンチラばっか撮られてるから。ああもうくだんない。どうでもいいじゃんそんなこと)
おなかがぐうっとなった。
無いって解ってるけど、制服じゅうのポケットというポケットをパタパタとはたいて、チョコレートとかガムのかけらでも入ってないかと虚しい捜索を繰り返す。WANTED見かけたら110番を。賞金は一千万円と副賞にハワイ旅行──
ふと、右のてのひらを開けてみる。
いつのまに見つけたんだろう?
そこには青と白の二色のカプセルがひとつ乗っていた。
6 名前:-更に10分間- 投稿日:2000年10月03日(火)00時53分05秒
チカチカと明滅する蛍光灯にカプセルを透かしてみる。顆粒状の原色のクスリが半分ほど詰まっていて、カプセルのなかでサラッて音を立てて崩れた。
──なんのクスリだろ?
最初に浮かんだのは信田さんだった。コンサートとか控え室で会ってアタシが元気なさそうだと、必ずそっとビタミン剤を勧めてくれる。でもそれはカプセルじゃなくて錠剤だったんだけれども。
未練がましくあちらこちらをパタパタと制服をはたいてみたけれども食べられそうなものは何も発見できなかった。
ま、いっか。

あたしはそれを口に入れた。そしてなにげに奥歯で噛んだ。苦みと酸味が口の中に広がって目の後ろからチカチカと火花が飛んだ。赤青黄色の空よりももっと近い場所で行われる花火みたいな色の極彩色の。あれがふわふわと揺れて残像で文字がチラチラとチカチカと明滅する光で作られる文字の──

そして、あたしは気を失った。
7 名前:パスタ・パパ 投稿日:2000年10月03日(火)00時55分10秒
今日はここまで。魔法のクスリが欲しい方は、最初のカプセルの効果が切れる
までは大人しく待つといい。効果は君のほうから指定してくれたって構わない。
8 名前:undefined 投稿日:2000年10月03日(火)04時01分44秒
魔法のスレッドってだけあって、面白いね。
ひとまず、効果が切れるのを待つか。
それまで、大人しく待っていることにする。
9 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月03日(火)21時09分05秒
しゃれてるなあ。おとなしく待つよ。
10 名前:パスタ・パパ 投稿日:2000年10月05日(木)03時24分27秒
おっとっと。良い子はこのスレッドをageちゃダメだよ。魔法を使えなくなっちゃうからね。
11 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月05日(木)05時55分41秒
じゃあ俺もおとなしくsageて待つことにしよう。
まだ30分しか経ってないしな。
効果を指定するのはもうちょっと待ってみよう。
12 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月16日(月)02時42分16秒
一番下まで下がらないとだめなんかなあ。
まあ気長に…待つとするか。
13 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月16日(月)21時26分07秒
レスるんにめっちゃ気ぃつかうなぁ。(ワラ
今読んでる全部の娘小説ん中でこれが一番楽しみっす。
14 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月17日(金)17時07分17秒
sage
15 名前:パスタ・パパ 投稿日:2000年11月25日(土)01時11分50秒
終わらない魔法はないからね。
16 名前:-更に次の10分間っぽい- 投稿日:2000年11月25日(土)01時29分36秒
──うるさかった。低出力のアンプを最大ボリュームで酷使してるカンジ。音が割れきっちゃってる。聞くに耐えない。聞き覚えのあるもう何度聞いたかもしれないメロディがあたしを急かす。聞き覚えのあるフレーズ。聞き覚えのある歌詞。『LOVEマシーン』……
あれ?
ガクンとまるで遊園地のフライングカーペットのように意識が自分の中に戻ってくる。あたし、ずっとココにいたっけ? 頭がズキズキと鈍く痛んだ。暗い場所だった。チカチカと赤や青の光が明滅している。直前にクスリを飲んだことをなんとか思い出してヤバイって思った。これってバッド・トリップってやつ? LSDとかさ、ホラ、よく映画とか漫画とかであるじゃん? バナナ・フィッシュって漫画を前に、市井ちゃんに借りたことあって、なんかそのときやってた深夜番組の原作ってことだったんだけどさ、ちょっとあんまり面白くなくって適当にしか読んでなかったんだけど、それって確か麻薬の話で色々とやばげなことが書いてあったっけ。つまり、それ?
人がいっぱいいた。
みんな、あたしのコトなんか見てなかった。全然、それどころじゃないってふうだった。
視線を追うと悪趣味な色に照らされたステージが浮かび上がっている。
『disco!』
なんてくるって回って人差し指を天に向けたのは──あたし、だった。
あ、あれ?
どういうことさ?
17 名前:-たぶん次の10分間ってとこ- 投稿日:2000年11月25日(土)01時39分19秒
ステージでは当たり前のように市井ちゃんも彩っぺもいなくって。
当たり前のようによしコさんや辻ちゃんや加護ちゃんや石川サンがいて。
新しいフォーメーションで新しいパート割で始めっから市井ちゃんも彩っぺもいなかったんだよって、そんなフリして『LOVEマシーン』が歌われていて。
あたしもきっと、いつあの中から、目を間違えた編み物をほどくようにいなくなっちゃったとしても、きっと編み直して仕上げたセーターのように何の違和感もなくて。
きっと最初からいなかったかのように、それが当たり前のことで。
あたしが目を腕で覆ったのは、ライトがまぶしかったからで。
袖口は少ししけっているのは、熱気にあてられた汗のせいで。
自分なんてそれっぽっちのもので。
──わけもなく、すごくみじめな気分だった。
ここには、こんなにも人がたくさんいるのに、たったひとりっきりのあたしは、やっぱりずっとひとりっきりで。
18 名前:-これが最後の10分間?かもね- 投稿日:2000年11月25日(土)01時50分47秒
「悔しいなぁ、ああいうの」
「後悔してんの?」
「まさか──でもさ、そういうのない? あれ、あのパートあたしのだったのに!!ってさ」
「自分一人いなかったからって曲が封印されるってのも、あんまイイ気しないよ」
「どっちもどっちだよ。ってかそういうのが1曲ぐらいあってもいい」
「あるじゃん。乙女の──」
「ああ、あれね」
明瞭な会話だった。わぁわぁと日本語なんだかどこの外国の言葉なんだか光なんだか泡なんだかもはや区別がつかなくなった喚き声のなかで、その人たちの言葉だけが明瞭にあたしに届いた。
声のするほうを振り返った。
コンビニの棚に並んだ飲茶楼のマスコットみたいに、そのひとたちが目に入ってきた。
案の定だ。市井ちゃんと福田って人だった。
なんか猛烈に腹が立った。
リタイヤしたくせにって。自分たちは捨てたくせに好き勝手なこと言っちゃってさって。ステージの戦場じゃなくて客席なんかに座っちゃって。
ことあるごとに圭ちゃんは市井ちゃんのことを話題にする。目の前にいるあたしたちのことなんかまるで見えてないってふうにさ。
悔しかった。
闘ってるのはあたしなのにって。
19 名前:-ちょっとばかりのロスタイム- 投稿日:2000年11月25日(土)01時56分40秒
──嘘ばっかだ。めちゃくちゃだよ──
20 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月25日(土)03時57分49秒
おお、今日更新されてなかったら一回あげてみようと思ってたら・・・
まさか更新されてるとは(喜)。
21 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月31日(水)18時11分57秒
sage
22 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月30日(月)17時29分52秒
無駄かもしれないけど、この小説まだ続きを待ってる。
文体、そして後藤の内面描写がたまらなく好き。もし作者がまだここをチェックしてるんなら、
聞きたい。続きを書く気はあるのかどうか。
23 名前:パスタ・パパ 投稿日:2001年05月01日(火)21時42分27秒
>>22
そいつは、どうも。赤板のやつが終わったらね。
24 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月03日(木)12時37分12秒
うぎゃあ。返事サンキュす。あきらめかかってたからめっちゃ嬉しい。
赤か、どれだろ。。。あーでもほんと嬉しい。

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