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リング
- 1 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月01日(水)03時20分39秒
- 最も罪深い人間は、誰だったというのか。
いつになくスムーズに撮影が進み、予定を2時間も早めての解散となった。楽屋で身支度を整える吉澤をハイトーンの声が引き止める。
「今日、うちに来ない?」
「いや今日は、家にまっすぐ帰ろうかと思ってるんだけど。」
「何か用でもあるの?」
過密なスケジュールのなか過ぎていく毎日で学校に行くことすらままならない現状。よほどのことがない限り、通常仕事の後に何か約束したりなどしない。とはいえここのところ2日に1度は石川の家に泊まっているような気がする。確かに石川の家から直接仕事に向かったほうが何かと便利ではあるのだが、早く帰れるときくらいは帰っておきたい。久々に家族揃っての夕食が楽しみでもあった。
「でも、昨日もお邪魔したしさぁ……」
梨華ちゃんも帰って家族と食事したら、という言葉をぐっと飲み込んだ。なんでも姉とあまり上手くいってないらしくこのところ極端に家族の話題を嫌う。体育会系といわれてはいるけれど、その実争い事や揉め事、ゴタゴタといった類のものは苦手で極力避けてとおりたい
- 2 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月01日(水)03時22分10秒
- 「一緒にお買い物して帰ろうよっ。なんか作ってあげるよ。」
「あ、う…ん……。じゃ、ちょっと家に電話するから待ってて。」
結局石川に押し切られた形で家に連絡する。電話口にでた母に明日も仕事が早いから石川の家に泊まることを手短かに告げる。夕食をともにすることが出来ず残念そうではあったが、同期で娘に加入した石川には好意的であったし、一人暮しをしていることに対しても同情的な母は「石川さんにご迷惑かけないようにね。」と言って電話を置いた。
「梨華ちゃんに迷惑かけないようにって。」
「えー、迷惑なんかじゃないよ。」
立ちあがってするりと吉澤に腕をからませてくる。一つ学年が上だとはいえどこかしら幼いところがあり、反面妙に大人びた一面も覗かせる石川のアンバランスな人格は知り合った頃から感じていた。一人暮しをはじめてから、それが、なお顕著になったように思えた。とはいえ、人から頼りにされ、また必要とされることに嫌な気はしない。吉澤にしょっちゅうちょっかいをだして甘えてくる加護や辻にしたって可愛いことこの上ない。しかし、そういえばこのところ他のメンバーとあまり絡んでいないような気がする。せっかくだから、みんなで集まってミニパーティーもどきを開催するのもよいのではないだろうか。軽い気持ちで提案してみると、途端に石川の表情が曇った。
「……あたしと2人じゃ、つまらないから?」
「へ?」
何を言っているんだろうという驚きが先行する。さきほどまでの微笑がすっかり姿を消し一瞬、吉澤はゾッとした。
「な、なに言ってるのぉ?もう心配性だね、梨華ちゃんは!」
頭一つ分小さい石川を胸元に抱き寄せる。
石川の顔を、見ることが出来なかった。
- 3 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月01日(水)03時24分11秒
- 若干腰が重かったとはいえ来てしまえば概ね楽しい時間が流れ、吉澤の感じた石川に対するある種の違和感も薄れてきた。食事のときも終始石川は饒舌に喋りつづけ、風呂に入るとき以外は、吉澤にピッタリと体を寄せる。本当は石川の両親が来ることもあるので寝具は2組あるはずなのだが石川は一緒に眠りたがる。わざわざ布団を用意させるのも悪いので少し狭く感じるのは我慢する。一人暮しはやはり寂しいのだろうなと想像する。
「来てくれてありがとう……大好きよ……」
最近眠る前に必ず交わされるいつもの会話。
「うん……。」
早めに仕事を終えたとはいえ連日の疲れで強烈な睡魔が襲い曖昧に返事する。このまま眠ってしまいたいのに…毎回繰り返される会話。
「ねぇ……よっすぃーは?私のこと……好き?」
「う……ん……」
なんとか最後の意識を保ちながら応える。
「一番好き?」
「うん……好きだよ……」
- 4 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月01日(水)03時25分41秒
- 吉澤のその言葉を聞くと漸く安心した表情を浮かべる。重いまぶたを持ち上げうっすら目を開けるとゆっくりと石川の顔が近づいて来るのが目に入って再び目を閉じる。唇に柔らかい感触が起こる。初めのうち、中澤にキスされたときは大騒ぎだったけれど、すっかり感化されてしまった。今や仲間内では挨拶代わりにかわされている。ああ、そういえば今日は加護のバイバイのキス無かったなぁ……
ふいに、唇から伝わってくる感触にぴくんと体が反応した。いつも仲間と交わされるそれとは明らかに違う感触、あれほどひどかった睡魔が何処かにいってしまう。驚いて目を開ける。
「……おやすみなさい。」
目の前にいる石川はそれだけいうと目を閉じた。いつもと同じ会話。普段となんらかわることのないやり取り。何分もしないうちに静かな寝息が聞こえ始めた。手にはしっかりと吉澤のTシャツの端を握り締めている。ドロドロした世界とはまるで無縁といわんばかりの無邪気な寝顔。全てが同じはずなのに自分だけが違う気がして、石川の行為を、一瞬とはいえさっきのように思ってしまった自分をひどくいやらしく感じた。
- 5 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月03日(金)01時08分20秒
- 「よしいし」というより「いし→よし」なわけね。
重い話になりそうだすな。
今後に期待。
- 6 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月05日(日)13時55分38秒
- 翌朝目覚めると既に隣に石川の姿は無く人の動く気配が伝わってくる。なかなか眠りにつくことが出来ず、ようやくうとうとし始めたのは明け方近くになってだった。目だけを泳がせて時計を読むと9時前を指している。気だるい浮遊感にもうしばらく身を委ねたいけれどそうもいかない。なんとか体を起こすと、チーンというトーストの焼き上がりを示す音が響いてきた。
「あ、おはよ。今起こしに行こうと思ってたの。丁度よかった。」
トーストとゆで卵を手にした石川が迎えた。
「よく眠れた?」
まぁ、と言葉を濁す。十分に眠れていないせいなのか、気分が晴れない原因があるのか。カーテンから指し込む爽やかな光に反して心には影が宿っていた。
「眠そうだよ、よっすぃー。ほら、朝なんだからしゃきっとしなきゃ!お・は・よ!」
……キスされる。そう思った瞬間反射的に、ゆで卵を取って口に放り込んだ。
ガリッと殻が割れる音がして小さな破片が口内に散らばる。
クスクスという笑い声が響く。
「もぉ、よっすぃーってば食いしん坊だね。いくら好きでも殻は取って食べなきゃ。」
「あ……ははっ。」
かけらを口元から拭いながら、
なぜだかほっとしている自分がいた
- 7 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月05日(日)13時56分57秒
- 気掛りな事がある時、忙しさはそれを紛らわしてくれるということを初めて実感した。今日は、レギュラー番組の3本撮りなのでほとんど固定された座り位置で収録が進んでいく。
「よっすぃー、そぅとぅ疲れてる〜?」
「そぅとぅ疲れてるかも〜。」
同じだけ仕事をしているのだから自分だって疲れているはずなのに、加護は微塵もそんな様子を感じさせない。時には度が過ぎて少々はた迷惑なこともあるがこんなときは加護の明るさがありがたい。
「加護は元気だねー。」
「あ、梨華ちゃんお疲れ。」
別撮りの収録を終えた石川が戻ってきた。元々血色があまりよくない顔色が疲れのせいでますます沈みがちではあったが、表情自体は暗くない。
(……うん、全然普通じゃん。昨日から何、意識してんだろ私。)
努めて平静に対応する。気にしなければどうということもない、小さな小さな違和感。
「ほんと加護は元気だよぉ、その若さを分けてくれー。」
そうと悟られないように、加護のひとまわり小さな体を抱きしめる。
「じゃあねぇ、世界一加護様のことを大切にいたします。どうかその美しさをお分けくださいっていってみろー」
声色をさも女王様風に作る。今日はさしずめ女王様と従者ごっこでもやりたいらしい。吉澤もこういうじゃれあいは嫌いじゃない。
「へいへい、わかりましたよ〜。えーコホン!加護様加護様、私は世界一あなたが……」
「ダメ。」
- 8 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月05日(日)13時58分18秒
- ふいに、吉澤の口が掌で塞がれる。その掌の持ち主のほうを見る。
「簡単にそんなこといっちゃダメ。」
無表情な顔の唇の部分だけが動く。
「なんや、梨華ちゃん、マジんなってつまらんわ。」
遊びを邪魔された加護が不機嫌そうにそう言うとさっさと次の遊びを求めて辻の所へかけよっていった。
気まずい沈黙が流れる。
「……っていうかさ、梨華ちゃん、ふざけてるだけじゃんか。加護怒っていっちゃったよ。」
盛り上がっているときに的外れなことを口にしては、一瞬にして場を鎮まりかえしてしまうのはいつものこと。しかし、そうはいっても笑って「また梨華ちゃんは〜」といえるのに。加護にムッとされたことでさすがに吉澤も少々声を荒げていった。
「だって。」
石川は、笑った。
「加護のこと一番とか言おうとするんだもの。私のこと一番好きだって言ってくれたのに。そう思ったら冗談でも嫌だと思って。」
「え?」
増長していく小さな違和感。
「私は、いつでもよっすぃーの事が一番好き。だから、」
ダカラ?
「あなたも私のことだけ好きって言って。じゃないと……どうなるかワカンナイ……」
まだ形をなしていなかったものがムクムクと起き上がりどんどん増幅してゆく。
「私、もう随分前からよっすぃーだけなんだもの。」
コノヒトハナニヲイッテルンダロウ?
- 9 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月05日(日)21時48分40秒
- 一体なんだというのだろう。休憩の終了を告げる合図で会話はそこで終わりになったけれど頭の中を石川の声が埋め尽くす。
“私のこと一番好きって”
“私のことだけ好きって言って”
“どうなるかワカンナイ”
そんな意味で言ったんじゃない。日常的な会話じゃない?どこにでもある。女の子同士だって気軽に交わす。ましてや自分はまだ15歳だ。15の自分に何を求めてるんだろう。
そう思うと段々と腹が立ってきた。
- 10 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月05日(日)21時49分13秒
- 「ねぇ、今日は?」
吉澤の苛立ちに気付くことなく収録が終わるや否や話し掛けてくる。
「帰る。」
自然応対がぶっきらぼうになる。
「まだ、早いよ?ちょっとくらいなら……」
「気分、悪いんだ。」
言いきった後、流石に冷たすぎたかと思い、付け加える。
「……風邪ひきはじめかもしんないから、帰って寝るよ。」
「え?風邪?」
掌を吉澤の額に当てて心配そうに覗き込む。熱などあるはずないのだけれど。
「ん……まだ熱はないみたいだね。でも、こじらせる前になおさないとね。私、よっすぃーがいないと、寂しいから……」
- 11 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月05日(日)21時50分20秒
- 「よっすぃー!!かえろーでっ!!」
後ろから加護が満面の笑みを浮かべて飛びついてきた。強引に石川との間に割ってはいる。
「早く用意してよぉ。」
珍しく早々と荷物をまとめた加護が吉澤をせかす。
「なんだよ、加護ぉ?」
「ケーキ食べにいくんや。ほらこないだちょっと言うたやん。」
ほら、とポケットから小さな紙切れを取り出して吉澤の前にちらつかせる。
「ハロウィンの限定ケーキ、今週中までやねん。食べてこ。」
ああ、そういえば言っていたような気がする。
「よっすぃー、気分が悪いから今日は帰るって。他の人誘いなよ。」
吉澤が答えようとすると石川がそれを制した。加護はあからさまに顔をしかめる。
「……梨華ちゃんに聞いてへんやんか。ちょっと寄り道してケーキ食べるだけやん。これ逃したら次は来年まで食べられないし。それに……」
- 12 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月05日(日)21時51分14秒
- 「体調悪いってゆってるのに、そんな言いかたしたら……」
再び発言しようとした石川を無視して続ける。
「……あそこのケーキ、甘さ控えめでよっすぃーが好きやと思ったから……だから、よっすぃーと行かなきゃ意味無いねん……」
半ば諦めたような表情で俯く。吉澤は純粋に、自分の為を思ってくれた気持ちが嬉しかった。迷ったが本当なら断る理由なんてどこにもない。
「いいよ、いこっか。」
瞬間、加護の顔がパアッと明るくなる。咎めるような石川の声が飛ぶ。
「ケーキくらいなら1時間かかんないし……どうせ、食事はしなきゃいけないわけだし……」
ケーキが夕食になるはずも無く言い訳めいたことを並べ立ててカバンに荷物を詰める。
「じゃ、お先に。」
「よーし、今日は食うぞー。」
石川と視線を合わさないように加護と連れ立って出る。ドア口で吉澤の腕に加護がじゃれついてくる。
- 13 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月05日(日)21時51分57秒
- 「!?」
背中にゾクッと戦慄が走る。
後方からつきささる、視線。
今まで感じたことの無い強い視線。
これは、敵意だ。圧倒的な敵意。
加護は感じていないのだろうか?
屈託のない笑みを浮かべている。
この空間をとりまく異様な空気。
誰も気付いていないのか?
ゆっくり、振り返る。
瞬間、ついさっきまでの敵意が消える。
耳慣れた少女達の話し声。そして、
彼女は、静かに微笑んだ。
「お大事に。」
- 14 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月06日(月)01時19分54秒
- >5さん
遅レスですいません。重い話は初挑戦なのですが書いてみて初めて分かるシリアスの難しさをひしひし感じております。・・・
またよかったら読んでください。
- 15 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月06日(月)01時25分26秒
- こわっ!
- 16 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月06日(月)03時26分11秒
- “ねぇ、私、よっすぃーのことが好き。”
………
“よっすぃーの為ならなんだって出来るよ。”
……別に、してほしいことなんてないよ。
“なんだって出来るんだから……”
はじめ唇に感じたぬるりとした感触が口内、そして全身に及ぶ。
や……め……
乾いた笑いが響き渡る。
こんな事、して欲しくなんかない。
“興味あったんでしょう?少しは”
梨華ちゃんが喋ってるはずなのに笑い声はやまない。
ない、そんなの……ない。
“ウソ。”
突然、笑い声はやんだ。
“キスしたとき気持ちいいって感じたくせに……”
違う。
チガ……
- 17 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月06日(月)03時27分02秒
随分長い間眠ったような気がしたけれどまだ外は薄暗い。目が覚めてそこが自室だったことを確認して安心する。本当に風邪をひいてしまったのだろうか。頭が重い。もう、冬も近いというのに体中が汗でべたついている。
「……気持ち悪い。」
- 18 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月06日(月)03時27分43秒
- シャワーを浴びてもいまひとつすっきりしない頭を抱えてスタジオ入りする。早めに来て石川と顔を合わせるのに気が引けて今日はギリギリだ。
「遅いよー、吉澤。」
「すいません。」
そうはいってもメンバーの大半はこの数分のうちにかけこんできたのがほとんどだから中澤もあまりうるさくは言わない。
「あと一人やな、最近早かったから誉めたら気ぃ緩んだんかな。」
てっきり自分で最後だと思っていたので驚いて周りを見まわす。
「最年少でいい度胸してるよ。加護社長、重役出勤!」
スタッフの誰かが発した言葉で笑いが起こる。加護が、まだ来ていない。
ケーキを食べた後、結局食事もしてしまい予定より遅くなってしまったけれど寝坊してしまう時間でもないだろうに。
- 19 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月06日(月)03時28分29秒
- 「すいませーんっ。遅くなりました。」
スタジオの入り口のドアが開くとひょこひょこと加護が歩いてきた。
最初、ふざけて酔っ払いの真似でもしているのかと思われた。よく見ると右足首に真新しい包帯が巻かれている。
「どしたんや!!それ。」
慌てて加護に駆け寄る中澤。他の面々も集まり加護の周りに人垣が出来る。
心配する周りをよそにへらへらとした笑みを浮かべる。
「いやぁ階段から転げ落ちちゃいましたー。軽い捻挫です。矢口さんも気をつけたようがいいですよ。」
それそれ、と矢口の履いている厚底ブーツを指差す。
ゴツンと加護の頭に拳が落とされる。
「落ちちゃいましたちゃうやろ!ホンマ……それぐらいで済んだからよかったようなものの……気ぃつけなあかんで。」
げんこつの後、ぎゅうっと抱きしめる。中澤の腕の中で加護は素直に頷く。それを認めると漸く顔を緩ませて加護を離す。
「矢口も転ばんように裕ちゃんが支えたるわっ。」
「きゃあ〜。」
小さなトラブルがあったもののどうやら予定通り進められそうだと判断し、各々自分の持ち場に帰ってゆく。
- 20 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月06日(月)03時29分48秒
- 「歩ける?」
一人になった加護に吉澤は手を差し出した。その手を掴んでゆっくりと歩き出す。
「あ……のさ……よっすぃ〜……」
「うん?」
肩を借りてゆっくりと歩きながら真剣な顔で呟く。
「誰にも言わない?」
周りに聞こえないくらいの小さな声で吉澤に問う。
「え、あ、うん……。」
「さっき、階段から落ちたって言ったけど……」
「うん。」
「誰かに押されたような、気がしたんや……。」
「え……?それって……」
耳に入ってきた事実を確認したくてもう一度問いただそうとする。
「ま、帰りのラッシュで混んでたし気のせいやて思うんやけどねっ。」
自分の定位置まで着き、近くに人が来たのでいつもの加護に戻る。加護を座らせた後自分も後ろの席に腰掛ける。
(誰かに押された?私とわかれた後に……)
- 21 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月06日(月)03時30分42秒
- 「おはよ、よっすぃー。風邪はどう?」
「おはよ、梨華ちゃん。」
石川が隣に座ってくる。
「顔色、あんまりよくないね。」
「あ……そう?でも……たいしたことないよ。大丈夫。」
(誰が……加護のこと……)
上の空で石川の話を聞きながす。
「……大丈夫かなぁ。」
ああ見えていざとなると他人に心配をかけまいと無理をする子だ。本当はかなり痛いんじゃないだろうか。
- 22 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月06日(月)03時32分40秒
- 「病人を無理やり遅くまで連れまわすからバチがあたったんじゃないかしら。」
抑揚の無い口調で呟いた声が耳に入ってくる。
何?今何て言った?梨華ちゃん。
吉澤は、自分の耳を疑った。
まさかという思いが脳裏を掠める。
「今の……今の冗談だよね。梨華ちゃん。」
お願いだから。あ、また失言しちゃったよ、って笑っていってよ。間違い間違いって。
「本番始まるよ。」
吉澤の前髪をサラリと横に流して整える。
3、2、1……
カメラが回り始める。
皆笑ってる。
みんな、わらってる。
- 23 名前:読んでる人 投稿日:2000年11月06日(月)11時04分22秒
- こわいよ〜
- 24 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月06日(月)23時45分16秒
- こわ〜。でも石川ならしかねないな……
- 25 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月07日(火)22時47分25秒
- 「じゃ、お疲れ様です。」
「吉澤、今日も早いねー。」
「テスト前なんで………」
仕事が終わるとさっさと荷物をまとめて楽屋を出る。先週からこのパターンの繰り返し。付き合いが悪いと噂されているのは知っている。だけど。
恐い。
なにひとつ確信はなかったけれどこの恐怖だけは確かなものだ。早く、家に帰りたい。
早足に廊下を突き抜ける。
「よっすぃー!!」
自分を呼びとめる声。気付かないふりをするのは無理なほど無機質な壁に響いてこだまする。観念して振り返る。
- 26 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月07日(火)22時48分41秒
- 「帰っちゃうの?」
走ってきて乱れた呼吸を石川は息を大きくついて呼吸を整える。
「テスト前だから、帰って勉強しないと。」
「一緒にいてもいい?邪魔しないから。」
「今回のやつよくないとマジでやばいんだ、だから悪いけど……」
「わかった……テストいつ終わるの?」
「いつって……」
テストがあるのは本当だったけど英単語の小テスト。親切な友人のおかげでヤマはわかっているから勉強なんか1日で十分だ。
「来週…いっぱいくらい……」
語尾が小さくなる。
「いつ?」
「……木曜日。」
「じゃあ、それが終わったら一緒にいられる?」
「テストのお疲れ会とかあるかもしんないし……」
「じゃあ、その次は?」
- 27 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月07日(火)22時50分18秒
- ………いい加減にしてよ。
「そんな先までわかんないよっ!!」
自分でも驚くくらいに大きな声が出た。
はっとして石川の顔を見る。黒目がちな瞳一杯に涙を溜まっている。
「ご……めん……なさい。」
「梨華ちゃ……」
あまりにも頼りなく、儚い。
傷ついた姿に、堪らず抱き寄せる。
「ご…めん、梨華ちゃん……なんかさ、仕事忙しかったり、テストのこととかで気が立ってたみたいで……」
小刻みに震える小さな肩。吉澤の背にしっかりと腕が回される。あまりに強く抱きしめるので息苦しくなるほどに。
- 28 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月07日(火)22時51分24秒
- しばらくそうしていると段々と震えが収まってきて落ち着いた様子が伝わってくる。
「いいの、よっすぃーの事なら何でも許せるから。私こそワガママいってごめんね。最近冷たいから、ちょっと心配だったの。」
まだ涙の残った顔をあげて吉澤を見つめる。
「もっとよっすぃーの事わかってあげなきゃね。もっとあなたの事を見て、もっと、もっと。」
モット、モット、モット…………何度も繰り返す。
何回かの後ピタリとそれが止まる。
「でもね。」
動けない。か細いからだのどこにこんな力があるのか。
「ウソはイヤよ。ついたら……」
「ついたら?」
聞きたくない。
本来、音を遮断するために耳を塞ぐ腕は石川に絡めとられている。反射的に目をつぶる。
微かに香るコロンの匂い。
頬にふれる唇の感触。
「ダイスキ。」
私も帰るねといって去る石川を見送りながら、立ち尽くす。
その肩に手が置かれるまで微動だにできずにいた。
- 29 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月07日(火)22時52分33秒
- 「吉澤。」
置いた手を離しそのままほとんど金に近い髪を掻き揚げる。隣には保田がいる。石川と話しているうちに結局追い付かれてしまったようだ。
「……立ち聞きするつもりちゃうかったんやけど、なんか出て行きにくい雰囲気やったから、ごめんな。」
「はい?」
いったいいつからいたんだろう?
近くにいたのなら声をかけてくれればいいのに。
そのまま聞かなかったふりもできたはずなのに、なんでわざわざ?
「その……最近、あんまり喋らんし、メンバーとも付き合い悪いから心配なってな。」
様子からして石川との会話の内容が詳しく聞こえていたわけではないと吉澤は悟る。
「……やっぱり、元気無いやん…」
こんなとき、中澤はモーニング娘のリーダーの顔じゃなく保護者の顔になる。
「なんか……悩みでもあるん?」
懸命に事情を察しようと中澤が努力しているのが伝わってくる。
- 30 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月07日(火)22時53分19秒
- ああ……
いっそ何もかも話してしまいたい衝動に駆られる。
「まあ、そのなんや……裕ちゃん言うこと厳しいしな、旧メンの方をひいきしてる様に見えるかも知れへんけど……」
わかってる、中澤は表現が下手なだけなことくらい。
「吉澤や、石川のことも大切やからな。」
『大切な仲間』。重くその言葉がのしかかる。中澤がとめどない愛情を注ぐ仲間達。
その…大切なものに、波紋を投げかけるようなことを言ったら、
……どんな顔するんだろう。
「……考え過ぎですよ。」
(コワインデス……。)
「吉澤?」
上手に、私は笑えているだろうか?
「じゃ、今度こそさよならっ。」
「ちょっ………」
制止も聞かず吉澤は足早に2人を後にした。中澤は深いため息をついた。
「圭ちゃん……私なんかまずいことゆうたんやろうか?」
保田は、
ただ、ただ何も言わずその背を見送った。
- 31 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月07日(火)22時54分16秒
- ピンク色で統一された部屋。
自分のものではない異空間に身を置かれている。
「久しぶりだね。やっと来てくれた。」
半ば強制的に約束させられた訪問。
この息苦しさは。
一人暮しの部屋はあまり広くは無い。食事を済ませるとベッドに腰掛ける。
覗き込む石川の顔。疲れるとクマが出来やすいと前からいっていたが、それにしても、痛々しいほどのものだった。
「最近、眠れないの。」
吉澤の視線で意を察して答える。
原因が自分にあると責められているような気がして目を反らすとベッドのヘッドボードに置かれた錠剤の入った小瓶が目に入る。1/3ほどの量を減らしている。
- 32 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月07日(火)22時54分49秒
- 「……どこか悪いの?」
「違うよ。ああ、それ?」
手を伸ばして小瓶をとるとクルクルと弄ぶ。
「睡眠薬。眠れないって言ったら飯田さんがわけてくれたの。あまり、飲みすぎちゃいけないらしいんだけどね。結構キツイ成分らしいから…」
この間来たときは無かったはず。減り具合からみて、ほとんど毎日飲んでるんじゃないだろうか?
「飲みすぎちゃ………いけないんでしょ?」
「大丈夫。……何故かよっすぃーがいるとねぇ、よく眠れるの。」
瓶をもとの位置に戻す。
「だから、今日は飲まなくてすみそう。今日は、ね。」
今日は、のところがやけに強調されて聞こえた。
- 33 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月07日(火)22時55分33秒
- 息が詰まる。
「じゃあ、もう寝たほうがいいね……。」
会話を続けるよりさっさと風呂に入って眠りについてしまったほうがずっと楽だ。
「お風呂もうお湯、入ってるから。」
「そう……」
お客さんは先に入るもの、というのが口癖で吉澤が何と言っても先に入ろうとしないのを知っていたので無言で着替えを持って風呂に向かう。
後ろから石川がついてくる。
「先、入りたいの?」
「……一緒に入ってもいい?」
「……せまいじゃん。」
無視してさっさと衣服を脱ぎ始める。吉澤の回答をどう受け取ったのか石川は部屋のほうへ戻っていく。
- 34 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月07日(火)22時56分26秒
- 疲れた。
熱めに温度を調整してシャワーを頭から浴びる。
曇りガラスの向こうに人影が映ったのを横目で捉える。部屋には着替えを取りに戻っただけでやはり一緒に入る気らしい。
(勝手にすればいいや。)
かち合うと嫌なので手早く体を洗い流すと湯船に身を沈めた。
吉澤も大多数の日本人の例に漏れず体に熱はジーンと伝わってくる感覚は好きだった。
気持ちよさに身を委ねて目を閉じる。少し熱すぎる気がしたがこれくらいが今の気分には心地良い。
扉の開く音がして、ああ梨華ちゃん入ってきたんだと感じる。
流れ落ちるシャワーの音。
気付かないうちに相当疲れが溜まっていたのか目を閉じていると随分その音が遠くに感じられる。
しばらくしてシャワーの音が止まり、ドアが開いて外から流れ込んできた風を感じて目を開ける。
- 35 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月07日(火)22時57分38秒
- (………ん?)
石川の姿が無い。
もしかして、自分があまりにも気持ちよさそうに湯船に使っているから遠慮してシャワーだけで出て行ったんだろうか。だから、別々に入ればよかったのに。
そんな事を考えているうちに再びドアが開くと石川が戻ってきた。
「どうしたの?代わるよ?」
「ううん、そうじゃなくって。」
湯船に近づくとコロンと何かボールのようなものを入れる。
「肝心なもの忘れてた。この為に一緒に入ろうって言ったのに。」
「なに?これ」
浮かび上がって水面を漂うピンク色の球体を掴む。
「バスオイル。」
入れないことは無いけれど二人はいるにはかなり狭い浴槽に入ってくる。一度表に出たから体が冷えているだろうからと思い、出来るだけ体をはじによける。といってもどうしても体が密着して右腕のやりばに困り仕方なく石川を抱え込むような格好になる。
- 36 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月07日(火)22時58分21秒
- 「いい香りがするでしょう?この間ヘアメイクさんに貰ったんだ。」
吉澤の手から球体を指でつまむと顔に近づける。
水分で溶け出してきた華の香りがたちこめる。
ピン、石川の指にはじかれた球体は一端湯の中に落ちていってまた浮かんでくる。掴んでは、またはじく。
「肌、真っ白だね……」
廻された吉澤の腕をきゅうっと掴むと腕を絡ませる。
「ほら、こんなに違う。」
促されて吉澤もそれを見る。
石川の肌。
自分の肌。
白と、黒のコントラスト。
- 37 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月07日(火)22時58分59秒
- 「でも、不思議なの。こうして、目を閉じるとね。」
ピッタリ体をくっつけて吉澤に体重を預ける。
「……自分の体がどこからどこまでかわかんなくなっちゃうんだ。」
むせかえる、
むせかえるくらい強い華のカオリ。
浸食されていく感覚。
「ねぇ、まるで、ひとつになってるみたいでしょう?」
指先から溶け出していく感覚。
ザバンッ
突然大きな波音を立てて立ちあがる。
「……ちょっとのぼせちゃったみたい。先、あがるね。」
ろくに体も拭かず、逃げるように浴室を出た。
- 38 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月07日(火)23時06分22秒
- やっと、想定している主要人物を出せました・・・・・・(まだちょっとしか出てませんが)
恐い・・・ですか。ホラータッチのものあまり無いみたいなので少々不安だったりします。
目標としては、恐いだけじゃなく、プラスアルファのものが伝えられればと思って書いていきたいと思ってますので。
- 39 名前:読んでる人 投稿日:2000年11月08日(水)00時14分27秒
- いやぁ、なんと言うか、石川の何気ない行動が恐いです。何考えてるかわからないから。
吉澤がメンバーに迷惑かけまいと我慢してるのもよく分かります。
先が全く読めません。そういう意味でも恐いです。
- 40 名前:ばね 投稿日:2000年11月08日(水)01時17分22秒
- すごいなぁ。…としか言えないです、ごめんなさい。
今までこういうキャラはカオリが定番でしたが、見るからに
サイコっぽくない分、石川の方が恐いかも、なんて。
「プラスアルファ」の部分がどう表現されるのかも含め、か
なり期待しています。頑張ってください。
- 41 名前:ぉg 投稿日:2000年11月08日(水)19時56分33秒
- いやはや、おもしろいなぁ。
恐怖は感じないけど…読んでると妙な気分になる。
ホラーだけで終わらせて欲しくは無いですね。
- 42 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月08日(水)22時50分24秒
- なんかとても読み応えあります。
これから先がすごく楽しみです。怖いけど^^;
プラスアルファっていうのがただ怖いだけの話じゃなさそうで、期待しています。
- 43 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月11日(土)05時23分33秒
- ご感想くれている方々に、名無しというのもなんなので固定ハンドルにします。
>読んでる人さん 先が読めないっていわれるのはとても嬉しいです。といっても強引な展開にならないよう気をつけて書いて行きたいと思います。
>ばねさん 私自身かつて飯田にはサイコなイメージをもっていましたが最近いろんなコメントを聞くうちにこの人一番人間味あるひとだなって思うようになったもので。石川のほうが掴みづらい。
>ぉgさん(でいいんですか?) 妙な気分・・・面白いっていわれるよりある意味嬉しいです。ホラーはあくまで仕立ての要素として扱っていきたいんですけどね。
>42さん ありがとうございます。読み応えがだらだらと長いだけにならないようにしたいです。
- 44 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月11日(土)05時27分21秒
- 朝が来て、一緒に出てスタジオ入りしても「久しぶりに一緒に入れたんだもん」といってそばを離れない。昨日泊まったというのに相変わらず強く誘ってくる。
今は一人ずつの写真撮影の途中で順番待ちのメンバーが楽屋に控えている。
「あ、よっすぃー、いい香りするねぇ。」
吉澤のそばによってきた矢口が鼻をクンクンとさせた。
「薔薇の香りなんですよ。」
隣の石川が答えた。
「へえ……あ、梨華ちゃんもおんなじ香りする!ふーん……」
クスッと笑う。
「なぁんか、あやしいんだぁ………」
答えようが無くて、黙ったまま顔が紅潮していくのを感じた。吉澤の態度をどうとったのかますます可笑しそうに笑う。
「バスオイルなんですよ。メイクさんにもらったんで使ってみたんです。」
「あーいいな。矢口もやってみたいな、それ。」
ね、よっすぃー、と微笑みかける。自分の手を握っている石川の手に力が入ったのが伝わってきた。
「矢口さんは、」
「ん?なに?」
視界に入った石川の表情に矢口は反射的に体を硬くした。
- 45 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月11日(土)05時28分16秒
- (なに?この子……)
「これじゃないほうがいいですよ。」
(コレハワタシトアナタダケノモノナンダカラ)
「え……?」
「……柑橘系のイメージですから。」
「ああ、そういうことね。」
すぐさまいつもの笑顔を作る。
「オレンジの香りとか、矢口すきだからいいかも……」
「よっすぃーもどっちかっていうとそうじゃないのぉ?」
寝ぼけ眼を軽く擦りながら後藤はなにかをひらひらさせながらやってきた。
「よしこも柑橘系のほうが多分似合うよ。」
呼び方を代えてもう一度同じ内容を繰り返した。
そういったのに誰も同意も反論もしてこないので面白くない。
なんなのよ?素直に言っただけじゃん。梨華ちゃんにはお似合いかもしんないけど、よっすぃーはもっとさっぱりした香りのほうが絶対いいんだから。変なの。
- 46 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月11日(土)05時30分03秒
- (まあいいや)
気に入らないのでさっさと話題を変えてしまおうと後藤は用件を切り出した。
「これ。」
持ってきたものを吉澤に手渡す。
写真だ。頬を寄せ合っている吉澤と後藤。仲のよさそうな様子がひしひしと伝わってくる。
「いいでしょ?圭ちゃんにお願いして無理やりもらっちゃったんだ!」
この間のダイバーの収録時に撮られたきがするなと吉澤は思い出した。今日は最後、ダイバーの収録で終わりだ。
「いいね、ごっちんもかわいくうつってるしぃ。」
「なにぃ、それじゃよしこは当然いつもかわいいっていってるようにきこえるぞ!!」
口では怒っていてもへらへらと笑いながら吉澤を羽交い締めにする。
後藤さん、お願いしますというスタッフの声がかかる。
ふぁーいと気の抜けた返事をする。もう少しふざけていたかったのに……残念そうに吉澤から手を離して写真を受け取る。テーブルにおいていた自分の手帳にはさむ。
「後藤さん、お願いしますよ!!」
「はいはいっ。いま行きますってば。」
そのままポンとテーブルの上に手帳を投げ出し、渋々向かっていった。
- 47 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月11日(土)05時31分56秒
- 「ね、今日泊まってって。」
「だからぁ……今日最後ダイバーの収録だから一緒にいれないって。梨華ちゃんのほうがあがるのかなり早いでしょ?」
「待ってる。」
「……自分の仕事が無いときは早めに帰って体をやすめるようにってマネージャーさんに言われてんじゃん。怒られるよ」
「じゃあ、先に帰ってるから来て。」
埒があかない。知らず大きなため息をついてしまう。ダイバーの収録終わったら3人でお茶でもして帰ろうと思ってるんだけどなぁ。
「……ごっちんや保田さんと遊ぶの?」
このままでは堂堂巡りだ。質問に対し、肯定とも否定とも取れる無言でかえす。
「待ってるから、よっすぃー。何時でもいいから絶対来て。ね!」
「……次、私の番だから行くね。」
「待ってるから、ね?」
石川の方を振り返らずに楽屋を出た。
「……来てくれる………だってよっすぃーは私のことが一番好きなんだもの。」
- 48 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月11日(土)05時33分10秒
- 「プッチモニダイバーっ!!」
鬱蒼とした気分を振り払うように声を出す。
「お、よっすぃー今日はハイテンションですねー。」
「だねー。」
「だねー、じゃないでしょ!リスナーから最近の後藤さんはやる気が無さそうに見えますってハガキ来てるわよぉ?」
「え、まじぃ?ショック〜…後藤!がんばります!!」
滑り出しよくフリートークがはじまる。
曲を挟みながら順調に収録が進む。
「さてと、今日は全編フリートークということで……あ、別になんにもネタを用意してなかったから間に合わせってわけじゃないですよ!!あくまでもリスナーからのご要望にお答えして……」
「そうそう。っていっても何話せばいいんだろうねぇ……」
「だーかーらー後藤も考えなさいって!またハガキくるわよぉ?」
「まあまあ保田さんも抑えて抑えて………って、えーっと、そう!最近保田さん写真にはまってるんですよね!!」
「うん。メンバー撮るのが日課になってます。」
フリートークとはいっても台本に(保田のカメラの話)と書かれてあるのをちらっと見る。
- 49 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月11日(土)05時33分50秒
- 「収録の合間やあとに撮ったりしてるんだよね。後藤も一枚もらいました。」
「もらった、じゃなくて奪ったでしょうが!」
「だって欲しかったんだもん、よしことのラブラブショット。ほら……」
後藤は自分の手帳を取り出す。
「……ってあっれー?ここにはさんどいたんだけどなぁ。」
(え……?)
昼間に見たあの写真。後藤が手帳の間に挟んでいるのを確かに見た。
「おっかしいなー」
雑音が入るのもかまわずテーブルの上でカバンの中身を次々取り出して中を探す。
消えた写真。
薔薇の香り。
加護の足に巻いてあった白い包帯。
笑顔の後藤。
- 50 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月11日(土)05時34分59秒
- スーッと体温が下がっていくのを感じる。
ガサガサという音だけが響き奇妙な沈黙が流れる。
「ったくーほんとだらしないですねぇごっちんは。部屋もさぞ汚いんだろうなぁ。ね」
フォローに入って、と保田は吉澤をツンツンと指で突付く。
(ちょっと………どうしちゃったの?)
固まったまま動かない吉澤を訝しげに眺める。
「んー、やっぱないやー。」
中身を全部取り出しても見つからず、仕方なく後藤は諦める。
「ひゃー、えーリスナーの皆さんには見えないと思うんですけどぉ、ごっちんの荷物が今机の上におもいっきり散乱してすごい状態です。これは、ホント部屋も汚いよ、絶対!!」
「圭ちゃんひどいよー、でもほんとに入れたんだってば〜」
「はいはい、わかったわかった。」
保田のトークでなんとか雰囲気を持ちなおす。
「きっと私達のラブラブっぷりに神様がヤキモチやいて意地悪してるんだー。」
「まったく……後藤、反省しなさいっ。」
「あーあ、でもま、いいや。また撮ってもらうんだもん。ね、よーしこっ。」
- 51 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月11日(土)05時35分37秒
- 無邪気に微笑む後藤。
(懲りないわね……反省しろって!………)
遠くに聞こえる2人の会話。
「よしこと後藤の愛は不滅です!!」
マズイ。ヤバイ。マズイ。ヤバイ。マズイ。ヤバイ。マズイ。ヤバイ。マズイ。ヤバイ。
…………………………………
加速度的に吉澤を支配する。
「では、今週はこのへんで!だぁいばーい!!」
OKのサインが出て空気が緩む。
お疲れ様という声が飛び交う。
- 52 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月11日(土)05時36分09秒
- 「ちょ……っと待ってもらえませんか。」
吉澤は重々しく口を開いた。
「………トークのとこ撮りなおして欲しいんですけど」
「はぁ!?」
何を言い出すんだといわんばかりにスタッフのチーフは声を発する。
「なんで?どうしたの?」
「……ちょっと納得がいかなくて。」
「え、そぉ?ちょっとしたトラブルはあったけど3人の仲良さそうな雰囲気が出ててよかったと思うけどなあ。それに、ラジオはナマモノだからねぇ。」
周りのスタッフも同様に頷く。
「えー、やだよ、後藤もう帰りたい。」
後藤もあからさまに面倒くさそうな顔をする。
言葉一つで大勢の人間を動かすほどの大物のベテランならまだしも、デビューして1年にも満たない吉澤にそんな力があるはずもなく、
結局、それで解散となった。
- 53 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月11日(土)05時36分54秒
- 少々区切りが悪いのですが、本日はここまでにします。
- 54 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月11日(土)12時53分37秒
- と思ったのですが、区切りのいいとこまでかけたのでUP。
- 55 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月11日(土)12時54分35秒
- 「待ちなよ。」
建物の外に出た所で呼びとめられた。
「保田さん、何ですか?」
吉澤が振り返り立ち止まったのを確認すると、保田は大きなため息をついた。
「何ですか、じゃないでしょう。どうしたの?」
大抵周りに人がいて、仲が悪いほうではなかったが2人で話すのはもしかしたら初めてなのではと思う。
「なんでもないですよ。」
誰かといっしょにいるのが嫌だった。部屋で一人になりたい。これ以上余計な感情が湧き出さないように。
「なんでもなくないでしょ!あんたどれだけ迷惑かけてるとおもってんのよ、最近態度おかしいわよ。」
迷惑?
緊張しきった吉澤はその単語に敏感に反応した。
私のやってることが?みんなに心配かけまいとしてる私のやってることが?
……何も、知らないくせに。
- 56 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月11日(土)12時55分16秒
- 「保田さんにはわかんないですよ。」
ピシャリという音と共に頬を鋭い痛みが走った。
「わかるわけないでしょ!」
心の何処かで、優しい言葉が返ってくるのを期待していた。しびれの残る頬を押さえる。
「やすださ……」
「私は神様じゃないんだから。何も言わなくても相手にわかってもらおうなんてそれがガキだっていってんのよ。」
キツク浴びせられる保田の言葉には不思議と温かみを感じた。
「ったく……こういうの私のガラじゃないっつうの。」
一通り台詞を吐ききった後に照れくさそうに髪を掻き揚げる。
「私……」
押さえてきた感情が次々と溢れ出す。
次から次へと涙が溢れ出す。
子供をあやす様によしよし、と自分より背の高い少女の頭を撫でる。
大人になっても、声をあげて泣くことができることをはじめて知った。
- 57 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月11日(土)12時55分55秒
- どちらにしても泣きはらしたこんな顔で帰ったら何を言われるか分からない。
保田の厚意に甘え彼女のマンションにきていた。
「だと思う」「かもしれない」「みたいに感じる」といった凡そ中途半端で当を得ていない話を保田は黙って聞いた。話したところで自体が一転するわけではないが誰かにはなすことで心が多少なりとも軽くなるんだと吉澤は思った。
全てを話して、「考え過ぎだよ」って言われても、それでもあのまま黙っていたよりはマシだったろう。話を終えると吉澤は無心で保田の反応を待った。
「わかった。」
一言、保田はそう言った。
「え?」
「考えすぎ」でも「気のせいよ」でも「もうちょっと様子を見よう」でもなく。
自分で言っていても確信の無い話を保田は「わかった」といった。
「信じて……くれるんですか?仲間を疑ったりするようなことを……」
「あのねぇ………」
わかんないかなーといいながらテレビでレクチャーをやるように人差し指を立てて前後に振った。
- 58 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月11日(土)12時56分28秒
- 「信じるとか信じないとかじゃなくて、吉澤が不安に感じてるってことが問題なんだよ。仲間内にとっては、ね。」
立てた人差し指を吉澤の鼻に持っていくと上に向かってはじく。
「ま、もちろん私にとってもだけどさ。」
「保田さん……」
この人はこんな風に笑うんだ、と吉澤は思った。
「とにかく、逃げているだけじゃ駄目。とりあえず、ちゃんと自分の気持ちを石川に伝えてぶつかってみなよ。」
「でも……」
「大丈夫。それで、駄目なら駄目で……」
うーんと伸びをしながら立ちあがる。
「また、ここで話せばいいじゃん。」
吉澤にかろうじて聞こえる程度の音でそう言うと「お茶飲む?」と聞いてさっさと台所のほうに行ってしまった。
そんな保田の照れ隠しがおかしくって、
久しぶりに心から笑った。
- 59 名前:42 投稿日:2000年11月11日(土)21時51分41秒
- 圭ちゃんってばいい奴なのだー。
でも梨華ちゃんの標的にならないか心配・・・。(ごっちんも)
読んでて本当にドキドキします。
アップされてると、すごく嬉しいです。
- 60 名前:ぉg 投稿日:2000年11月11日(土)23時28分16秒
- >>43
ミスタイプではありませぬ。ご安心を。
すごく綺麗に書き出せてますね、心情とか。
石川にはサイコなままでいってほしくないですね。やっぱ少々歪んでいますが。(笑
- 61 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月12日(日)02時07分04秒
- うん、本当に緊張感が持続する。
- 62 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月12日(日)16時37分38秒
- 面白いです。
- 63 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月14日(火)01時12分41秒
- 久々のヒット作。
期待。
応援。
更新待ち。
- 64 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月15日(水)01時47分54秒
- レスありがとうございます。こういう作品はある程度まとめて更新したほうがいいかなと思っているのでややスパンがあくかもしれませんが、なるべく間延びしないように更新していきます。
- 65 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月15日(水)01時48分55秒
- 「よ、おはよ。」
「あ…お…はようございますっ!!」
あんな事を話した後だというのに翌日の保田はいたって平常どおりの態度だった。
吉澤はそんな保田の普通っぽさが心底嬉しかった。
面子が揃った所でマネージャーから今日のスケジュールを説明される。
(あ……今日は梨華ちゃんとは会わないんだ。)
内心ほっとしてしまった自分を叱咤する。逃げないって決めたはずなのに。その場しのぎの対応が自分も、相手も傷つけるって……理解ったつもりだったのにな。
一方で、昨日結局石川の家に行かなかったことが気がかりでもあった。
「あの……石川さんは?」
「石川?今日は、タンポポ別スケだっていわなかったっけ?」
「来てます?」
「来てなかったら困るでしょう。」
仕事には出てるんだ。とりあえず、一安心する。
そう、正直に自分の気持ちを話そう。逃げてちゃ……駄目だ。
- 66 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月15日(水)01時50分34秒
- 仕事が終わると吉澤は、石川のマンションの前まで来ていた。いざとなると足が鈍るものでかなりの時間を街中を行ったり来たりしたが、意を決してようやく辿り着いた。この分じゃ、話し終わったころは終電あるかないかってところだろうな。でも、
電話で話すことじゃない。会って……ちゃんと向き合って話そう。
エントランスを抜けてエレベーターに乗り込む。
(あ……昨日散々ぶちまけたのに、保田さんにお礼いってなかったな……)
目的階で降り廊下を進みドアの前に立つ。
(ちゃんと話せたら、保田さんに……)
プッシュホンを押す。
2回、3回……
ピンポーン……もう1回。
(留守……?)
何気なくドアノブを廻すといとも簡単にドアが開く。
「梨……華ちゃん?」
見覚えのある小瓶が、床上を転がり吉澤の足元で止まった。
- 67 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月15日(水)01時51分05秒
- (ったくしつこいなー)
電話の呼び出し音が響いている。ほんのシャワーを浴びる数十分の間だからと思い留守電にし忘れてしまった。そのうち諦めるだろうと思っていたのにいつまでたっても鳴り止まない。仕方なく、保田は体にバスタオルを巻きつけて受話器を取る。
「もしもし?」
早く戻らないと体が冷えてしまう。せかすような口調で問う。
「……だ……さぁ………」
「はぁ?」
ほとんど息の音しか聞きとれない。
散々人を呼び出しといていたづら?
「や……すだ……さ……」
(………!!)
聞き覚えのある声に只ならぬ気配を察する。
「吉澤っ!?」
「保田さ……ん……あ…た……」
「あんた、どうしたのっ!?どこにいんのっ!?しっかりしなさいよっ」
- 68 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月15日(水)01時51分49秒
- 保田が部屋に入ったとき目に入ったのは石川を抱きかかえたまま床に座りこんだ吉澤だった。
吉澤の腕に支えられた石川の体は全く力の入った様子がなく、首がだらんと垂れ下がっている。
「……梨…華ちゃんがっ……動かないんです……声かけても、揺さぶっても……」
駆け寄って、石川の呼吸を確認する。
(……よかった、息はしてる。)
見た所外傷も無い。落ち着いて周りを見ると空の小瓶が眼に入る。
「これは……?」
吉澤が何とか言葉を発する。
「……ック……睡眠薬…だと思います…こないだ…飯田さんに貰ったって…でもっ、まだ半分以上あった筈なのに……」
「カオリ?カオリに貰ったっていってたの?」
保田は自分の携帯電話を取り出す。
「いいから、とりあえず石川をベッドに運んで。」
泣きじゃくる吉澤に指示を与える。
どこかにダイヤルする保田の姿を見ながら、自分の心のいきどころを無くしていた吉澤は素直に従うしかなかった。
細身で自分より小柄だとはいえ女手で人間1人を運ぶのは困難だったが、なんとかベッドの上に横たえた。
高く、甘い声で自分を呼ぶ唇。自分を見つめる瞳。……唇は乾き、その瞳は瞼で閉じられている。
(あたし……あたしはっ……)
- 69 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月15日(水)01時52分56秒
- 電話を終えた保田が吉澤の肩に手を置く。小刻みに震えているのが伝わってくる。
「大丈夫。大量に飲むと、吐き気がしたり、頭痛がひどくなったりするらしいけど、命には別状無いみたいだから。ああ、カオリには詳細は伏せてあるからさ。」
安心させる意味で言ったのだが一向に吉澤は落ち着く様子がなく泣きじゃくっている。
「わ…たしのせいだ…私が昨日来なかったから…梨華ちゃん全然眠れなくて……今日もきっと眠れないから……無理やり……眠ろうと…私……サイテーだ。」
横たわる石川に覆い被さり嗚咽する。
「……誰のせいとかじゃない。サイテーでもない。向き合おうとしてたじゃない、少なくとも。遅すぎるなんて事ないわ。」
吉澤は大きく左右に首を振る。何かを追い払うかのように。
「いつも一緒にいなくたって石川のことちゃんと思ってるって気持ちが伝わればきっと……」
ブンブンと更に激しく左右に首を振る。
「……がうんですっ!!」
そう叫んだ吉澤の涙は一層激しくなっていた。
「ち……がうんです…。私…ホントに最低な奴なんです。」
激しさの後、何もかも捨てたかのように脱力した。
「梨華ちゃんを見たとき……ああ、どうしようって思ったんです。………大変なことになっちゃったよって……私……梨華ちゃんの心配より先に自分の保身を考えたサイテーな奴なんです。本当はすぐ病院に……連絡しなきゃいけないのに……」
保田は弱々しい少女の体をそっと抱きしめた
- 70 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月15日(水)01時53分28秒
- 甘かった。
解かってあげているつもりだった。
いや、あげているって今思ったこと自体おごりなのかもしれない。
『とりあえず、ぶつかってみろ』?
なんて向こう見ずで無責任な発言。
どれだけ、彼女達のことを理解していたというのだろう。
所詮、自己満足に過ぎなかった。
もう、ギリギリのところまで来ていたというのに。
彼女は限界だったというのに。
- 71 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月15日(水)01時54分04秒
- 「……泣き止まないと……水分無くなって、死んじゃうわよ。」
どれくらいたったのか、時間の概念が曖昧になるくらいたって保田はようやく口を開いた。
「いいんです。梨華ちゃんを追い詰めた……」
「…石川は死なないわよ。………あんたの事が好きなんだから。絶対死んだりしないわ。」
静かだけれど、はっきりと吉澤の耳に響いた。
「けどっ……それでも、私が……」
気付いてしまった知りたくなかった自分の負の部分。欺瞞に満ちた内面。
「あんただけじゃないから。」
私もそう。物分りのいい親切面してその実どうだ。自分が昔経験したある種の憧れと嫉妬から来る諍いの型にはめ込んで考えていただけだ。でも、
(あんただけじゃないから。あたしも……一緒に傷つくから)
- 72 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月15日(水)03時52分38秒
- なるほど、こんな感じで絡めていくのか。それで最初の一行ね。
改めて期待だなぁ。
- 73 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月17日(金)02時09分57秒
- 続き期待〜
- 74 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月19日(日)00時08分16秒
- しばらく、少し距離を置いたほうがいい。これが、保田の出した結論だった。
向き合わなければいけない。それは解っているけれど今の吉澤は自分自身のバランスを保つことすらままならない。石川、吉澤、双方にいいとは思えなかった。
これは、逃げではない。何度も自分に言い聞かせた。
「とりあえず、今日は眠りなよ………」
石川の容態が安定しているのを確認し、無理やり吉澤を石川から引き離し自宅へ連れ帰った。
「私……梨華ちゃんと……」
「いいから、眠って……」
「でもっ……このままじゃ……」
「……ゆっくりでいいよ……あせんないで、ね。」
同じやり取りを何度か繰り返した後、やがて泣き疲れて眠りに落ちた。
- 75 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月19日(日)00時09分36秒
- (ゆっくりでいい)
空回りしていた気持ちの行き場を保田が与えてくれた事で幾分気が楽にはなった。
「カオリも睡眠薬、続けて渡すはず無いし、そう簡単に手に入るものでもないから。
……あんな事言っといてなんだけどさ、しばらくは2人で……会ったりしないで、落ち着くまで待ったほうがいいわ。」
保田の優しさに自分は逃げている。
幸い飯田の言った通り薬自体は強いものではなかったらしく翌日も石川はきちんと姿を見せた。
(ゆっくりでいいんだ)
何度も繰り返し、極力普段どおりに接する。
「よっすぃー……」
すがるような石川の声。
「ごめん、今日は保田さんとCD見に行く約束してるから。」
(梨華ちゃん……もう少し、もう少し時間ちょうだい。)
自分はいい。拠り所があるから。でも、石川は?彼女の気持ちの行き場は?自分に向けられていた気持ちは果たしてどんな形で誰に向けられるんだろう。
何日かするとそう考える余裕が生まれてきた。
- 76 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月19日(日)00時10分35秒
- 「よっすぃー、待ってよ。」
昨日、おとといよりも強い口調で吉澤を呼びとめる。吉澤が一人になるのを待って声をかけてきたようで辺りには誰もいない。
「梨華ちゃん…」
「どうしてすぐに帰っちゃうの?なんか変だよ。」
すぅ、と息を吸い込む。密閉された室内の生暖かい空気が流れ込む。
「……しばらく、1人で考えたいことがあるから。」
言った。
「悩み事だったら相談にのるよ?……なんでも話して。」
いつのまにか唇が付きそうなほど接近した石川の顔をゆっくりどけると左右に首を振った。
「私、何か悪い事した?」
ううん。
「私のこと嫌いになった?」
ううん。
ただ、私達は近付き過ぎたから。このままじゃ、いつか窒息死してしまいそうだから。
「少し……お互い考えよ。」
・
・
・
“ワカンナイ。”
- 77 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月19日(日)00時11分12秒
- 「違うよ、よっすぃー。きっと忙しくなりすぎて、環境が変わりすぎて、ちょっとすれ違ってるだけなんだよ私達。いっぱい話そ?昔みたいに一日2人でどこかに遊びに行ったりしようよ。」
「わかってよ、梨華ちゃ……」
「そうだ!!明日オフだよね?ほら、気分変えて公園でものんびり散歩しない?」
「明日は……」
吉澤の言葉を遮って石川は続けた。
「よっすぃーの家の近くの公園でいいから。待ってる。遅れても、いつになってもいいから来て。」
強引に約束の時間を告げると吉澤が返答する前に部屋を出て行った。
やっと自分の今の正直な気持ち、距離を置きたいって伝えたのに事態は好転したように思えなかった。
それどころか落ち着きかけた自分の気持ちすら今の石川の態度で再び逆行し、どうしようもない不安が募る。この迷路の出口は一体……
- 78 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月19日(日)00時12分39秒
- “せっかくお休みなんだから何処か出かけたら?”
母親の勧めに「休みの日くらいゆっくりしたい」と答え部屋にこもった。
携帯電話をオフにする。
誰か来ても、電話も一切取り次がないで欲しい、
普段は友人にもこまめに連絡をとる吉澤なだけに少々は母不振な顔をしたが、付かれていると思ったのだろう。事実その通りにしてくれた。
眠りたいと思っても眠れない。
時間がたつというのはこんなに遅いものだったのか。
コチコチと音を立て進む秒針を眺めながら思った。
1時38分。
お昼過ぎ、1時には来てるって言ってたな。……
思考を中断させようと、買ったまま聞いていなかったCDのボリュームを上げる。
コチコチ
コチコチ
コチコチ……
時計の音ばかりが耳に入り全く音楽が用を足さない。
そうして外界を遮断するかのように布団を頭からかぶった。
- 79 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月19日(日)00時19分39秒
- もう、夜になっただろうか?
カーテン越しに射しこんでくる日差しは随分前に落ち、何時間も立った。
犬の声、車の排気音、遠くに聞こえるサイレンのような音。
暗闇は一層そんな雑音を吸収し、ノイズのように頭の中に入りこんでくる。
布団越しだというのに篭った音ではっきり聞こえる。
ドンドンとドアを叩く音。
「ひとみ」と自分を呼ぶ声。
食事はいらないって言ったのに。
寝たふりを決めこんで無視しつづけたがいつまでもやむことがない。
ふいに自分を呼ぶ石川のイメージが重なる。
“ねぇ……”
苦しい。
ドンッドンッ………
「とみ……っ。」
ドン!!
「ひとみっ!!」
起きたままぼさぼさの髪がうっとおしい。暗闇の中をだるそうに歩きドアをあける。
「調子悪いから、起こさないって言ったじゃんか。」
「電話よ。どうしても出してくれって。」
母親の様子が真に迫っていることにビクッとなる。
「……誰?……石川さん?」
恐る恐る口にするが母の口から出てきたのは意外な名前だった。
「中澤さん。」
- 80 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月19日(日)00時20分15秒
- 手にしたコードレスフォンを吉澤に手渡す。
階下におりてゆく母を目に止めながら電話を持って部屋に入り保留ボタンを押す。
「……もしもし。」
「ああ、中澤やけどっ。」
焦りを多分に含んだ声がこだまする。
「落ち着いて聞いてや……石川が、怪我して病院に運ばれてるんや。」
目の前が真っ白になった。
- 81 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月19日(日)00時20分54秒
- 「もしもしっ!!聞こえるんかっ!?」
「は……い……」
「……事故や無くてな……襲われたんや。その……」
電話口の中澤は最初の勢いが収まるといいよどんだ。
オソワレタ?
「なんであんなとこにこんな時間に1人でおったんかわからんけどな……」
聞きたくない。次に続くのが自分の予想と違うことを願った。
「あんたん家の近くの公園あるやろ?そこで男2人に襲われたらしいねん。」
公園。
こんな時間に?
まさか、
ずっといたのか?
「幸い人が通りかかったんで、最悪の事態は免れたんやけど……かなり抵抗したらしくてな擦り傷が結構あって病院に運ばれたんや。……」
中澤の言いたい事は判った。
なぜこんな時間に
自分の近くの公園になんかいたのか。
- 82 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月19日(日)00時21分25秒
- 吉澤が答えないのがわかると無理に聞こうとせず続けた。
「石川、何故か全然声あげんかったらしくてな……唇が紫になるまで歯食い縛ってたらしいわ。」
おかげでマスコミにかぎつけられる前に押さえられてよかったって事務所の人間はゆうたんや!はき捨てるように中澤は言った。
手術を要するような深い傷は無かったので処置を済ませると早々にマンションの方に帰した。こんなときというのに友人はおろか家族までも訪問を控えるように言われたらしい。
マスコミにつかれたら格好の餌食である。
「芸能人なんてやるもんやないわ……人の心より先にそんなもんに縛られて……」
普段は仕事をこの上なく大事にする中澤とは思えないほどの怒りと悲しみ憤り。
「とにかく……一応言うとこうと思ってな。」
黙って吉澤の答えを待つ。
(梨華……)
「……いいたくなかったらええんや。……とりあえず傷が癒えるまで事が事やし表向きは病欠っていうことになるらしいから。それと辻と加護はまだ子供やからなんも知らせてない。そこんとこはわかっといてな。」
最後になにか言いたそうな様子があったが中澤は電話を切った。
- 83 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月19日(日)00時21分57秒
- 私が行かなかったからだ。
そのせいで梨華ちゃんは怪我した。
最悪の事態は免れた?
違う。私のせいなんだ。
まだ、待ってるかもしれないって思っていたのに。
公園までいって、一言「今日はやめよう」ってなぜ言わなかった?
それだけのことだったのに。
ずっと、ずっと待ってたんだ。
私が来るのを。
暗闇の中
たった1人で。
今も、1人で。
- 84 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月19日(日)00時22分45秒
- トゥルルルルルルルル………
切ったばかりの電話が鳴り響く。
半ば機械的に通話のボタンを押した。
「はい……」
「もしもしっ?」
電話の主は相手が吉澤だとわかると声を荒げた。
「あんた、なんで携帯でないのよ。さっきから何回もかけてるのに……」
「……電源、切ってましたから。」
「………」
電話越しの吉澤の様子から既に誰か、恐らく中澤から知らされたのだろうと保田は推し量った。
「……家にいなさい。」
この状態で会いでもしたら間違いなく吉澤は崩壊してしまうだろう。
「いい?とにかく何も考えずに今は落ち着いて。起こってしまった事を悔やんでも仕方ないの。」
自分だって、石川のことは他のメンバー同様に大切だと思っている。
だが、
- 85 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月19日(日)00時23分46秒
- 「大体……予想はつくけど、いい?石川が怪我したのはあんたのせいじゃないの。わかる?襲った奴が一番悪い。そうでしょう?だから家にいるのよ。」
随分、声が遠くに聞こえる。
(保田さん……なんていってるんだろう?)
「わかった?返事して、返事!!」
(返事?何に対して?)
「わかったの!?」
(ワカッタ?何が?わかんないですよ……)
「ハイ……」
プチリと切ボタンを押した。
- 86 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月19日(日)00時24分17秒
- 呼び出しのベルも押さずにドアに手を掛ける。
ああ、やっぱり。
音も立てずに静かに開いた。
吸い込まれるように足を進める。
ベッドの上で、彼女は微笑んでいた。
「よかった……」
これは、自分が好きだった笑顔だ。あちこちに貼りつけられた白い布。痛々しい無数の傷。紫色に変色した唇。
「無事だったんだね。もし、あなたも襲われてたらどうしようかって心配してたの。」
苦痛の一片も感じさせたい微笑。
「どうして?」
自分でも一体何を聞いているのか解らなかった。
ベッドサイドにひざまずき乾ききっていない一文字の傷を携えた唇に触れる。
「だって、声を出してひとみちゃんが来ちゃったら危ないじゃない。」
『ひとみちゃん』、何も知らず、幸せだった頃彼女は自分をこう呼んでいたんだった
- 87 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月19日(日)00時24分58秒
- 「梨華ちゃん……」
自分の指が石川の傷口を押さえているのに気付き引っ込めようとするとその手を石川が制した。
「触ってて。」
掴んだ吉澤の手を引き寄せて傷口へ持っていく。
「さっきまでね、すごく痛かったんだけど……ひとみちゃんが触れたところは痛みがやわらぐの。」
導かれるまま熱に浮かされたようにベッドに倒れこむ。
「キスして。痛く無くなるように。」
生々しい傷を携えた唇にそっと唇を合わせる。
「もっと。」
鉄の味、これは血の味だ。
「ね……痛く無くなるんだよ……だから……」
ココモ、ココモ、フレテ、キスシテ、ヒトミチャン
意識と、感覚を切り離した。
- 88 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月19日(日)00時28分52秒
- 今日はここまでです。
思ったようにキャラがなかなか動いてくれなくて・・・
ちょ〜っとクドクなってきましたがなんとかラストまで引っ張れますように。
- 89 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月19日(日)01時37分28秒
- うわー。なんかすごいっす。
よっすいーと同じように梨華ちゃんの闇に引き込まれてしまいそう。
読んでてドキドキしました。
ラストまでドキドキさせてください。応援してます。
- 90 名前:ぉg 投稿日:2000年11月19日(日)01時48分33秒
- やってくれますなぁ…
石川がどう動いていくかな。
- 91 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月21日(火)13時48分20秒
- 続き期待〜
- 92 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月22日(水)23時19分20秒
- 「梨華ちゃんもその年でハシカって、子供みたい。」
2週間ぶりに仕事に復帰した石川に早速加護は茶々を入れた。
「私、小学校2年のときにかかったよ。」
辻が合いの手を入れる。
事情を知っている面々は黙って口を挟まずにいた。
「すいません。長い間休んでご迷惑おかけしちゃいまして。」
丁寧に1人1人に挨拶して回っている。
「保田さん、またよろしくお願いしますね。」
快活に笑う少女。
なんなんだろう、この自信は?
以前に感じられた不安定さが感じられない。
吉澤のほうにちらりと視線を送る。
保田のそれに気付かない振りをして視線を反らす。
なぜ?
ショックを受けてしばらく一人になりたいのだろうと思いそっとしておいた。
でも、明らかに接触することを避けている。
保田に対してだけでない。
「よっすぃ〜。」
保田をよそに移動した石川が吉澤に抱きつく。
それを拒絶する様子もなく受け入れている。
以前同様の当たり前の風景。
- 93 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月22日(水)23時19分57秒
- これでいいはず、なのに何かがおかしい。
ツカツカと吉澤に歩み寄る。
「保田さん……」
石川を抱いたまま振り返ると視線を下に落とす。
「何かいいたいことがあるんじゃないの?」
石川が何か吉澤に話しかけていたが保田は構わなかった。
「……いえ。」
「じゃ、なんで目反らすの?」
まっすぐに突き刺さる視線。
「気のせいですよ。」
「嘘。」
「気のせいってひとみちゃん言ってるじゃないですか。」
メイクで隠してはいるが至近距離で気をつけてみると唇にうっすら傷があるのが解る。
それだけじゃない、ちらりと覗いた肩口に痣のようなものが見えた。
目を奪われているうちに石川は吉澤を連れて何処かに向かった。
- 94 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月22日(水)23時21分26秒
- 話しがしたい。それも2人で。後を追うと丁度吉澤がスタッフに呼ばれ別室に行き石川は向かいの楽屋へと入っていった。
とりあえず、吉澤が出てくるのを待つために楽屋のドアにもたれて待つ。
ドン……ドン……
(……?)
規則的に何かがぶつかるような音が聞こえてくる。
(どこから……?)
ドン……
自分の後方、楽屋の中からだと気付く。
(何?)
音を立てず静かに楽屋のドアをあける。
ドン……
「何やってんのよ!!」
無表情に自らの肘をテーブルに打ちつける石川の腕を掴みあげる。
「馬鹿!!何やってるのかわかってんの!?」
掴んだ腕の肘は無残に赤くはれ上がっている。
- 95 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月22日(水)23時22分32秒
- 「……離してもらえませんか?」
「……馬鹿なことしないっていうんなら離すわ。」
「馬鹿なこと?何がですか?」
ピクリとも表情を変えない石川に保田は圧倒された。
「とにかく離してもらえませんか?」
強引に保田の腕を離すと再び肘を打付けようとする。
「いい加減にしなさいよ!!」
ピシャリと石川の頬を打つ。咄嗟の事だったので保田の思いのほかに力が入ってしまう。
「あ……」
クスリと石川は笑った。
「いいんですよ。もっと叩いてもらって。」
「な……」
「怪我してると優しいんですよ、ひとみちゃん。とっても……」
嬉しそうに打たれた頬を撫でる。
(狂ってる……)
危うく石川に引き込まれそうになる自分をかろうじて現実にとどめる。
「このままじゃ、2人とも駄目になるわ」
「何言ってるんですか?保田さん。ああ……」
合点がいったというように再び笑う。
その仕草が小馬鹿にされたように感じた。
「保田さんもひとみちゃんのこと好きなんですね。だから、邪魔するんですね。でも無駄ですよ。」
立ちあがり衣服をはだける。痛々しい傷が目に入ってくる。
「私達お互いのことで知らないことなんてないんですから。ひとみちゃんの知らないところなんてひとつもないし、ひとみちゃんも私の知らないことなんて何一つ無いんです……」
- 96 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月22日(水)23時23分12秒
- ガチャリと音を立ててドアが開く。
目の前に繰り広げられた異様な光景とそれを包む空気に立ち竦む。
「保田さん……梨華ちゃん!?」
真っ赤になった石川の腕に目を見張る。
吉澤の姿を目に留めるとゆっくり近づいていく。
「どうしたの!?これ……」
傍に来た石川の腕を取り肘の辺りを指す。
注がれた吉澤の視線を嬉しそうに受け取る。
「なんでもないよ……それより今日待ってるね。」
保田のことなどまるでいないかのように石川は吉澤に口付けた。
「ちょ…梨華ちゃん!!」
慌てて引き離そうとすると石川がスッと身を引いた。
「次、うち合わせ私だよね。行って来る。」
最後まで保田のほうにはチラリとも視線をくれずドアの向こうに消えた。
- 97 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月22日(水)23時24分06秒
- 残された二人の間を居心地の悪い緊張感が漂う。
肘の怪我のことを聞きそびれてしまった。
石川と保田は何を話していたのか
山ほどある疑問を口にするにはあまりにも後ろめたかった。
「今日、会う約束してるの?」
「え、まぁ自分の家に着替えとりにいってからですけど」
何て場違いな間の抜けた答えだろう。見ようとしても視線を合わすことすらままならない。
「会うなって言わなかったッけ?」
ビクン、身体が震えた。
保田の口調は淡々としていた。
だが、怒りとかそういったものは感じられなかった。
「……って言っても無理だったのかもしれないね。」
下を向いた吉澤の頭をふわりとした感触が包む。
保田の手だと気付いて顔を上げたときゆっくりとそれは離れていった。
残された視線の先には、自分を見つめる保田が居た。
「けどね、さっきの石川の怪我、あれ自分でやったのよ。意味、わかるよね?」
梨華ちゃんが自分で?怪我の理由?
(まさか)
全身から力が抜け落ちていく。
- 98 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月22日(水)23時24分40秒
- 崩れかけた吉澤の身体を保田が支える。
「優しいからね、あんたは。」
違います。優しいんじゃないんです。ただ、
「弱さも、優しさの1つだと思うよ。」
なぜこんなにも、この人は自分の欲しい答えをくれるのだろう。
この間から、保田さんの前で泣いてばかりだ。
「保田さん…なんでここまで優しいんですか?」
きっと理由なんてないって笑うんだろうな。
あなたは本当に優しいから。
「さぁ……」
やっぱりね、
「……よっすぃ〜に惚れてるからかな。」
「へっ?」
吉澤は目をまるくして固まった。
「とでも言って欲しかった?」
クスクスと笑いながら吉澤の頭をぐしゃぐしゃとやった。
つられて吉澤も笑った。
泣いたり笑ったり出来ること。
この世界にはそんないろんな感情があるんだ。
- 99 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月22日(水)23時28分58秒
- シリアスってやっぱ難しいですね。
なかなか思い通りにキャラが動いてくれない。
恐らく次でラスト、かな?
ああ、ほんと暗いのは時間かかりますね、かくの。
さ、アホなのでもかこう(笑)
- 100 名前:ぉg 投稿日:2000年11月23日(木)01時09分53秒
- ふむ。
つかもうラストか、寂しいなぁ。
自傷かぁ…あまり使わないな。
- 101 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月23日(木)13時07分24秒
- あるみかんって他にも何か書いてるの?
- 102 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月23日(木)23時11分32秒
- >ぉgさん 自分の書くものの中では長いほうなんですよ。これでも・・・
長いストーリー物書ける方を尊敬します。
が、今激烈に書きたいものがあるものの激烈に長くなりそうなので悩んでいたりする・・・
>101さん この板で書かせていただいてます。a little bitっていう短編を。
- 103 名前:42 投稿日:2000年11月23日(木)23時14分52秒
- 弱さも優しさのひとつかぁ・・・。
他人の気持ちを考えちゃうと優しさってむずかしいですよね。
でもやっぱりよっすぃーの優しさを責めることは出来ないです。
だって、私もよっすぃーに魅かれちゃいますもん。
圭ちゃんの優しさも好き。
梨華ちゃんも憎めないし。あー、一体どうなるんだろ。
- 104 名前:101 投稿日:2000年11月24日(金)15時36分14秒
- a little bitだねっ!
さっそく読みに行くよ。
- 105 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月25日(土)13時37分02秒
- いいねぇ。保田ファンにはたまらんよ。俺の中では『ガンバレ』と双璧ですわ。
- 106 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月26日(日)14時58分56秒
- >103さん 丁寧なレスありがとうございます。
私自身吉澤ファンなんでどうしてもひいきめに書きがちですが他のメンバーの心情もバランスよくだせれば・・・
続きは今日の夜更新します。
>104さん 向こうにも感想ありがとうございます。
>105さん キャストを考えるとき保田はどうしてもいれたかったんですよ。
- 107 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月26日(日)20時30分02秒
- ラスト、一気にアップ。
- 108 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月26日(日)20時30分35秒
- 保田のマンションで、1人吉澤はうずくまっていた。
「いい?あたしから連絡があるまでここに居てね、わかった?」
親が子供に留守番でも申し付けるかのように保田は諭した。
吉澤を強引に退けて出て行った。
(保田さん……)
- 109 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月26日(日)20時38分18秒
- 呼び鈴を押すとすぐさま足音がしてドアが開いた。
「いらっしゃい、待ってた……」
満面の笑みを浮かべて出てきた石川は目の前の人物を確認すると途端に表情を変えた。
「こんばんは、ちょっと話したいんだけどあがっていいかな?」
「話、ですか?」
あからさまに迷惑そうな表情を浮かべる。
「あがっていい?」
返事を待たずに身体をドアの内側に滑り込ませる。
ムッとした表情で後ろを向き、スタスタと室内に向かう石川の態度を肯定と受け取り室内に足を踏み入れる。
「人が来るから、手短かにお願いできますか?」
夕食の用意をしていたのか、テーブルには二組の食器が並んでいる。
コンロに掛かった鍋の様子が気になるのか、その前で石川は保田に背を向けたまま口を開いた。クルクルと中を掻きまわす。
「来ないわよ」
- 110 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月26日(日)20時39分07秒
- ピタリ、鍋を掻き回していた手が止まる。
「どうして……ですか?」
振り向かずに鍋をじっと見つめたまま立ち尽くしている。
「あんたとは会わないほうがいいから、来ないように言ったわ」
「ど……うしてですか?」
離れた位置からでもそうとわかるほど石川の身体が小刻みに震えている。
この部屋の空気も震えているようで保田は慄いた。
(私が、しっかりしなきゃ)
身体中が硬くなり本能的に身構える。
「少し、距離を置いたほうがいいわ、そうしないと2人とも駄目になる」
「どうして?」
「相手の重みと自分の重みで窒息してしまうから……だから少しでいいから吉澤を解放してあげて」
「どうして?」
「それがあなたたちの為だから」
「どうして?」
噛み合っていない。言葉だけが空回りしているように保田は感じた。
負けるものか。
力をこめる。
- 111 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月26日(日)20時41分16秒
- 「どうして………なんですか?保田さん」
「い……しかわ?」
振りかえった黒目がちな瞳は涙に濡れ、雫が滴り落ちる。
「私、ひとみちゃんが好きなだけなんです」
その肩があまりにも小さいことに保田は気付く。
「ただ、それだけなんです」
彼女も、まだ16歳の女の子なんだ。
いまさらながら、ひどく保田は石川が哀れに思えてきた。
「石川……」
押し寄せる感情に流されてしまいそうだ。
「ただ、ひとみちゃんと一緒にいたいだけなんです」
気持ちを落ち着かせなくては。
表の空気を少し吸おう。
身を返して、ベランダの方へ向かおうとした。
「それだけなのに……」
(え?)
「どうして邪魔するんですか?……」
- 112 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月26日(日)20時45分54秒
- ふいに鋭い痛みが後頭部を襲った。
(な………っ)
重心を失った体が床上に叩きつけられる。
同時にパリンと何かが割れる音が鳴り響く。
(油断しちゃ…駄目だって思ってたのに。)
這いつくばった床上を赤い液体が伝うのが目に入る。
(ヤ……バイ……)
後頭部を押さえ、背を向けたままの状態を逃れようと身体を反転させる。
急いでいるつもりなのに頭が朦朧とする。
「早くしないと、ひとみちゃん来ちゃうんですよ。邪魔しないでください……」
石川の右手に料理用の鋭い切っ先の刃物が鈍く光るのが目に入る。
右手が頭上に振り上げられる。
視界が霞む。
(結局……あたしは何も出来なかったの?)
恐怖よりも自責の念が貫いた。
意識が遠のいていく。
(ごめ……ん……よ…し……)
- 113 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月26日(日)20時46分56秒
- 胸騒ぎがした。
いつしか外に飛び出しその場所へと足を走らせていた。
ドアが開く。
目の前の光景を見た瞬間頭の中が真っ白になった。
無我夢中で背を向けた体にぶち当たる。
衝撃で右手に握られていたナイフがはじけとぶ。
それを掴みあげる。
床を伝う、真っ赤な血。
何かが壊れた。
よろめいた体を起こしてようやく視線があう。
近づいて来るその体に真っ直ぐ右手を突き出した。
「ひと…みちゃ……ん?」
鈍い感触。
物を通しているはずなのに生々しい感触。
手に伝ってくる生暖かい液体。
どうして?というような表情
そして
満足げに微笑んだ。
「これで、私のこと忘れられないね」
忘れられないよね?
ズット
ズット
一緒だね。
- 114 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月26日(日)20時48分13秒
- 意識が遠のいていく。
(ごめ……ん……よ…し……)
うすぼんやりした視界の中。
(………?)
「や…すださ……ん…、やすださ……」
断続的に私を呼ぶ声。
抱きしめる腕。
くしゃくしゃになった顔。
え……?
ああ。
馬鹿だね。来るなっていったのに。
私の言うことなんか聞きやしない。まったく。
ちゃんと家にいなさいっていったでしょ?
それに何、泣いてんのよ。
せっかく綺麗な顔してるのに涙か鼻水かしんないけどぐちゃぐちゃじゃんか。
ったく…痛いのはあたしだっつーの。
にしても……
頭痛いよ…
グラグラする。
ほら、グラグラ、グラグラ
揺れてる。
そのとき
世界が揺れた。
- 115 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月26日(日)20時49分27秒
- 掴み所の無い暗闇。
頭、痛い。
痛いけど、
ここに居たくない
起き……なきゃ……
一面に広がる白い壁。
私の家こんなだったっけ?
(……い……!!)
あれ……?
「圭ちゃん!!」
「ゆ、うちゃん?」
「よかった!!目ぇ覚めたんやな」
そう言うと裕ちゃんは子供のように泣きじゃくった。
「よかったぁ……ホンマ、ホンマよかった…」
何回も「よかった」を繰り返す裕ちゃん。ベッドに横になっている私を抱きしめる。
白いシーツ、飾り気の無い壁、薬品の匂い。
ああ、ここは病院なんだ。ようやく私は気が付いた。
- 116 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月26日(日)20時53分02秒
- 私は一体どうなったんだろう。
わからないことだらけ。
とりあえず、裕ちゃんが落ち着くまで待ってみる。
「ホンマ……もう駄目やと思ったで…」
「どうなったの?私……」
「地震や」
「は?」
あまりにも予想外の答えに私は驚いた。地震?じゃあ、意識を失う直前にぐらぐら揺れる感じがしたのは本当だったんだ。それにしても
「局地的にかなり揺れたんや。石川のマンションの辺りもすごくて…半壊状態になったところを助け出されたんや」
「そ……うなんだ」
私はその被害者としてここに運ばれたということらしかった。
やっと落ち着いてきた裕ちゃんは、深刻な表情になった。
「あのな、圭坊…あんたの怪我なんやけど……どうも事故にしては場所がおかしいって先生がいうてたんやけど」
「え?」
裕ちゃんの顔や声で現実感を取り戻してきた私は、頭の中が段々整理されてきた。
- 117 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月26日(日)20時53分55秒
- 何があったのか言って欲しい。
でも、何もあって欲しくない。
またすぐにでも泣き出しそうな、裕ちゃんの顔。
「やだなぁ」
「圭ちゃん?」
私は勤めて明るく言った。
「私の運動神経の悪さは知ってるでしょ。きっととてつもない転び方したのよ」
「そ、そうかぁ。ホンマ、ドジやなぁ。助かったからええようなもんを」
ホッとしたように裕ちゃんは肩を落とした。
しっかりして、強い人間のように思えるけど本当は人一倍傷つきやすい人間ということを私はよく知ってる。
しかし、周りが揺れたのが夢でなく現実だったとしたら、やはり。
私は思いきってたずねてみた。
「裕ちゃん……2人は?」
「え、ああ……」
- 118 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月26日(日)20時54分43秒
- 再び裕ちゃんは表情を強張らせた。
「無事は無事なんやけど……石川のほうは何故か腹部に刺し傷があってな」
「えっ!?」
状況から最悪の事態が頭を掠めた。
「幸い深くはなくて意識ももう回復してるんやけど……自分でやったって言い張るねん。いくら動転してたいうてもそんなことするとは思えんのやけど、本人がそうやいうたらどうしようもない」
「そう……」
考えたくは無いが、大体の事がそれを聞いて私には察しがついた。だが、とりあえずの無事を聞いてほっとした。けど、裕ちゃん表情はますます沈みこんでいく。
「それでな、吉澤のほうなんやけど」
「う……ん」
ごくりと自分が息を呑む音が聞こえた。
「外傷は全然ないし、意識も一応は戻ってるんやけど……よっぽど怖かったんやろうな。なにしても反応せーへんし、なんも口きこうとせんのや。もともと恐がりの子やったし…」
でもきっとしばらくすれば大丈夫や、と裕ちゃんは私に同意を求めるようにいった。
「そ……うだね」
力無く答えたのを疲れたからとでも受け取ったのか裕ちゃんは「すまんな、起きたなりこんな話ばっかして」といって布団をかけ直してくれた。
- 119 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月26日(日)20時55分21秒
- 裕ちゃんの帰り際に2人の病室を聞いて見送った。
こんなトラブルでスケジュールも大変だろうに見舞ってくれた裕ちゃんに満足にお礼一つ言えなかったことを後悔した。
「……痛ッ」
傷は頭部だけみたいだけど全身が鉛のように重たい。
ズルズルと引きずるように病室を出る。
「面会謝絶」の札を無視して、教えられた病室のドアを叩く。
返事が無いがかまわず中に入りベッドに近づく。
眠っているのか。
目を閉じたままでいる。
「……よっすぃー」
腰を落として顔の近くで小さく呼びかける。
ゆっくりと閉じられていた瞼が開く。
「保田さん」
その唇がはっきりとそう言った。
そうしてゆっくりと微笑した。
- 120 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月26日(日)20時56分03秒
- よかった!
「傷……」
私の包帯に目を止めると心配そうに手を伸ばしてくる。
「うん、大丈夫よ、私は」
安心させるようにそっと抱きしめる。
私の背中に廻された手がぎゅっと衣服をつかんでしがみついているのがわかる。
きっと、ずっと不安だったんだろう。
もう、大丈夫。
私はさらさらとした頭を撫でてあげる。
中途半端な姿勢だったので少し苦しい。態勢を変えようと思ったけど廻された手の力が強いので上手くいかない。
それに
いつまでもこうしているわけにもいかない。
まだ、何も終わっていないんだから。
これ以上同じ事を繰り返すわけにはいかない。
- 121 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月26日(日)20時57分38秒
- なんとかゆっくり体を離す。
「今度こそいい?落ち着くまで石川に会っちゃ駄目よ」
「はい」
笑顔で、いやに素直に返事をする彼女に拍子抜けした。
笑顔?
この子は、こんな反応をする子だったろうか。
「ええ、会いませんよ。保田さん」
もう一度そう言った。
迷いの無い
晴々とした笑顔で。
まるで何も他には無かったかのように。
「よっすぃ………?」
「もう、二度と……誰にも会ったりしません」
- 122 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月26日(日)21時00分58秒
- え?
「私、あなたが居てくれればそれでいいんです」
あ……
「あなたが居てくれれば」
……
「だから」
…………
ダカラ?
「ずっと傍にいてくださいね、ずっと、ずっと、ずっと。」
ズットズットズットズット
ずっと、一緒に。
END・・・・・・
- 123 名前:ぉg 投稿日:2000年11月26日(日)23時27分38秒
- なるほど…タイトルって重要ですなぁ…
感想…苦手だな。
欲を言えば、石川のトコをもう少し読みたかった。ぐらいかなぁ…
短篇のほうも読んでまっせ。
一応、当方も何本か書いてるんで、大変さはわかってますが、長いのが読みたいなぁ…
それでは。
- 124 名前:読んでる人 投稿日:2000年11月26日(日)23時51分24秒
- ええ!?なんか考えさせられてしまう終わり方ですね。
まだ自分の中で考えがまとまりません。う〜ん
- 125 名前:101 投稿日:2000年11月27日(月)00時09分38秒
- こえ〜っ!
まさにリングだぁぁぁ〜〜っ!!
やっぱあるみかん天才!!
超おもしろかったよ。
- 126 名前:ま〜 投稿日:2000年11月27日(月)23時39分41秒
- すげえ・・。ぞくっとする内容ですな〜。
面白かったっす!
- 127 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月28日(火)00時53分59秒
- はー、なんとか終わった・・・
おちゃらけたのしか書いた事無いのでかなりしんどかったですね。これは(w
なんか肩透かしかもしんない落ちですがタイトルと絡ませてこういう展開になりました。
読んでくださったみなさんありがとうございます。
>ぉgさん 私も作品楽しく読ませていただいてます。個人的には保田と石川の奴が好きです。圭ちゃんをしっかり書いてくれるのって嬉しいですね
長いのはですね、パラレルもので考えてる奴があるんですが、とりあえず今週は短いのをあげて来週辺りからぼちぼちはじめれればいいかなと思ってます。
読んでいただいてありがとうございました。
>読んでる人さん 最終的な展開は読んでる方の判断に委ねるといったある意味ずるい終わり方ですね。
読後感がいいものを次はやりたいです。
>125さん 誉め過ぎですよー。タイトルで最後のネタばれしてそうでひやひやもんでしたが。
ありがとうございました。
>ま〜さん ENDLESS END っていうことで。火曜サスペンス劇場のノリで(w
途中やや中だるみしちゃいましたけどね・・・(反省)
- 128 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月28日(火)02時06分31秒
- うー いいすねぇ よっしぃーと絡む圭ちゃんて少ないからいいねぇ
石川が妙にハマッテるし
圭ちゃんの場合は襲うほうが多いけどこれはさいご教われちゃう?
また圭ちゃんが絡む話書いてください。
- 129 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月28日(火)20時53分51秒
- 心理描写が丁寧で、共感する部分が多かったです。
いい子でいたい部分というのは誰しもあるもので。吉澤その他、配役もベストだったのではないでしょうか。
ただ、がんばっていたよっすぃーが、最後に川を渡っちゃったのがせつない。
加護の描写がうまいですね。ソンケー。
楽しませて頂きました。
- 130 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月28日(火)22時19分51秒
- まさにリング・・・。
上の方も書いてらっしゃいますが、よっすぃー頑張ってたのになぁ。
でも終っちゃって淋しいです。
また新作読めるのを楽しみにしています^^
- 131 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月29日(水)01時09分16秒
- >128さん 今度は圭ちゃんが幸せになるお話でも書いてみたいですね。もちろん主役で。
>129さん 他人から見れば違うかもしれませんが本人達にとって幸せの形、感じ方って違うと思うんですよ。
ある一線を超えたとき(石川にしても吉澤にしても)どうなるんだろう。っていう話が書きたかったんですよ。
>130さん リングっていうタイトル結構悩んだんですよ、ホント。
最後に登場人物の配役のスライドを行うのは楽しかったですが。
中澤ねーさんも結構キーパーソン。
なんか、こんなていねいに感想頂いて、ほんと書いた甲斐ありました。
- 132 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月29日(水)02時15分32秒
- 128です
圭ちゃんが幸せになる話楽しみにしてます。圭ちゃんが幸せになる話
殆ど無いから。あるみかんさんの表現の仕方好きです。
- 133 名前:あるみかん 投稿日:2000年11月30日(木)00時59分49秒
- >132さん 圭ちゃんの話はここでやらせていただいてるもう一個のスレで、今書いてる加護の話をもう一本かいたらやろうと思っています。
- 134 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月05日(火)00時22分20秒
- ワクワクドキドキしがなら読ませていただきました。
石川が次にどんな行動に出るのか?
どんどんエスカレートしていく石川とその石川に飲み込まれる吉澤、
そしてそれを止めようとする保田、
この3人が上手く描かれてグイグイ話に引き込まれました。
ただ少し残念なのは最後はなんだかあっけなくというか
スッと終わった気がします。でもタイトルとかけてあって
上手いと唸らされましたけどね。ってどないやねん!
ほんと面白かったです。次回作、期待してます。
- 135 名前:あるみかん 投稿日:2000年12月06日(水)23時41分04秒
- >134さん 丁寧な感想頂きありがとうございます。
常軌を逸した行動も悪意によって引き起こされている訳ではなく、人間誰でも持っている心の闇、弱さのため。
生きていく上で避けて通れないものを表現できればと思って書きました。最後はある意味書いてるほうとしては答えを提示していないので逃げかもしれませんね。
別スレで短いのを今やってますがなんだか短編の割に長くなってしまい(保田さんお誕生日記念なので)なかなか長編はじめられず・・・
どこかで見つけたら読んでやってください。
- 136 名前:いずのすけ 投稿日:2000年12月15日(金)19時23分22秒
- ここもすごいっす!!!
おいらすっかり、あるみかんさんのファンだよ。
- 137 名前:ミステリーの練習・・・・・・ 投稿日:2001年01月15日(月)23時56分13秒
- ちゃんと書けるかどうか自信ないですがときどき少しずつ書いてみようと思っております。
とりあえず、題名だけ。
タイトル『CAST』
- 138 名前:名無し読者 投稿日:2001年01月18日(木)09時31分32秒
- 楽しみです!
がんばってください。
- 139 名前:あるみかん 投稿日:2001年01月20日(土)00時59分40秒
- >名無し読者さん ありがとうございます。がんばります。只今、ネタを自分の中で消化中。
今書いてるのを終わらせてからやれー、といわれそうなのでひっそりさげでやろうと思っております。
- 140 名前:じゅーど 投稿日:2001年02月15日(木)03時51分01秒
- とても感動しました。本当の優しさとはなんなんだろう、と考えさせられました。
他の作品もこれから読んでみます。がんばってください。
- 141 名前:あるみかん 投稿日:2001年03月16日(金)07時05分33秒
- ミステリーを書くといいながら言っただけで書いていない今現在。。。すみません。
やっぱ今書いてるのがおわんないとどっちも中と半端になりそうなんで。。。
>じゅーどさん レスありがとうございます。リングは初のシリアス挑戦だったんで
薄っぺらな内容にならないように、ならないようにと思って書いたやつなんでそういう
風に言っていただけるとうれしいです。
やっとこさ保存庫もどき(本気でテキストしかありません)を作りました。
よかったらちらっとのぞいてやってください。
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