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スポーツ恋愛物?です(いちごま)
- 1 名前:O-150 投稿日:2000年11月03日(金)22時22分23秒
- 白板でマジ小説書いてる者です。
こちらで短編?のような長編のような、、書かせてもらいます。
市井ちゃんはスポコンみたいなの合うなって思ってたんで前から書いてみたかった作品っす。
読んだあと感想頂けたらとてつもなく嬉しいです!
- 2 名前:Oー150 投稿日:2000年11月03日(金)22時30分07秒
- 『天才』
桜舞い散る春。
期待と不安に胸膨らまし、新たな学校生活が始まる。
ルーズソックスも新たに買い換えた。
新しい制服に身を包み、いつもより念入りに髪を整え、化粧をし、ゆっくり朝食を、、と思い時計に目をやると既に予定の時間を20分以上オーバーしていた。
「あ゛あ〜〜!!!遅刻だ〜〜〜!!!!」
ガタンとコップを机に置き、零れ落ちた牛乳を無視して慌てて家を出た。
「行ってきま〜す!!!」
全速力でダッシュする。
「うわ〜〜初日から遅刻なんてヤバいよ〜〜!!しかも目立つじゃ〜〜ん!!」
泣きそうな顔で懸命に走っているこの少女、
中学から高校に上がったばかりの至って普通の15歳。
後藤真希である。
ハァハァ息を切らせて学校に到着。
試験と面接を受けに二回来ているので道はもう覚えた。
「あ゛あ〜〜〜どうしよう〜〜誰もいないじゃ〜〜ん!!」
生徒一人歩いていない門の前。
新学期早々遅刻する人はまずいない。
急いで校舎に走りこみ、靴箱の自分の名前を探す。
「え〜と後藤真希後藤真希・・・。
あったここかっ」
買ったばかりのローファーを投げ入れ、『新入生はこちら』とご丁寧に矢印で示されてる方向へと走った。
通り過ぎる教室からは、緊迫した雰囲気の中教師がなにやら話をしているのが見える。
「あ〜〜イヤだな〜こんな緊迫した中教室入るの・・」
そう思った瞬間、後藤の足が止まった。
「・・・サボっちゃおっかな・・」
後藤の中の中学時代に染み付いたサボり癖がまた目を覚まし始めていた。
どっちにしようか迷いながら、廊下の角で行ったりきたりしてウロウロしていた。
その時だった。
- 3 名前:Oー150 投稿日:2000年11月03日(金)22時31分04秒
- 突然角から現れた何かに正面から思いっきり追突し、ドンと尻餅をついて倒れてしまった。
「いっつ・・」
「大丈夫!?」
眉間にしわを寄せ、痛そうな顔をしている後藤の前に綺麗な手が差し出された。
驚いて顔を上げると、そこには端整で凛々しい顔立ちをした人が立っていた。
(うわっ・・カッコいい・・・・・)
一瞬ドキッとしながら無言でコクッと頷き、差し出された手を掴んだ。
ヒョイッと持ち上がる体。
こんなに華奢なのに見た目よりも力があるようだ。
「新入生でしょ?教室分かんない?」
「あ・・いや・・」
「ん?」
「遅刻したから教室入りづらくて・・・」
「アハハッ分かるな〜それ(笑)」
「、、う〜んじゃあ一時間目だけ一緒にサボっちゃう?」
「私もこれからちょっとサボる用事があるからさっ」
(サボる用事って何だ・・・?)
(う〜んでもこの先輩なら後藤は喜んでついていきますよ・・)
「い、いいんですか・・?私なんかついていって・・」
「いいよいいよっ。ただしこの事は絶対に秘密ねっ」
「秘密・・ですか・・。はい・・分かりました・・」
(秘密・・秘密・・ドキドキ・・なんかされんのかな後藤・・入学当日に先輩に犯されちゃうのか・・?女子校って・・そんなとこなの・・?)
様々な想像を頭に駆け巡らせながら、後藤はだた無言でその先輩の後をついていった。
- 4 名前:Oー150 投稿日:2000年11月03日(金)22時36分29秒
- 「はい到着っ」
そう言ってバッと開かれたそこは、広い体育館だった。
「え・・?体育館・・?」
「ちょい着替えてくるから適当にそこら辺転がってるボールで遊んでて?あっそれと誰か来たら隠れなきゃダメだぞ」
「はぁ・・」
(着替える・・?)
そう言って先輩はダッシュして体育館の隅にある更衣室と書かれた部屋に入っていった。
転がっているバスケットボールを手にし、何となくドリブルをしてシュートしていた。
(後藤・・何やってんだろ・・。新学期早々授業サボってバスケですか・・)
「へ〜上手いじゃんっ。中学時代バスケやってた?」
ジャージのチャックを上げながら先輩が出てきた。
(別に制服のまんまでいいじゃん。なんでわざわざ着替えるんだ?・・でも先輩ジャージも似合うな〜・・)
「あっいえ・・ほんの遊び程度です・・」
「ホントに!?へ〜〜運動神経いいんだね〜センスあるよ」
(センスって・・こんな軽いシュートで何で分かるんだろ)
「ねっ私走りこんだらゴール前でパス出してくれない?」
「はい・・いいですけど・・」
「、、な〜んかさ、緊張してる?テンション低いよ?(笑)」
(こんなとこでこんな事しててテンション高い方がおかしいよ・・。この先輩もサボってていいのかな〜・・常習なのかな・・。結構不良!?問題児!?)
- 5 名前:Oー150 投稿日:2000年11月03日(金)22時41分55秒
- 「まっいいや。とにかく始めよっ」
そう言って軽く走り出した。
言われた通り、先輩がゴール前に走ってきた辺りでパスを出した。
先輩はそのパスをタイミング良く取るなり、軽い身のこなしでフワッとジャンプをし、流れるようにシュートをした。
(うわ〜・・・すごい上手い・・・)
「お〜やっぱセンスあんねっ、タイミングばっちりじゃん!」
「、、先輩、もしかしてバスケ部ですか?」
「そうだよっ。ほらバッシュ履いてるじゃん。あ〜ゴメン自己紹介してなかったね」
「昭栄学園バスケ部キャプテン、市井紗耶香。宜しくねっ」
そう言ってニコッと笑ってシュッと片手でボールを後藤の方に投げた。
その笑顔に再びドキッとし、ボ〜ッとしながらパシッとボールを受け取った後藤は、市井を見つめながら自分でも無意識の内に言葉を発していた。
「・・先輩のプレー・・もうちょっと見たいです・・」
(うわっ何言ってんだろ後藤っ!なんかちょっと今の言い方危くなかった?!)
赤面して慌てて目をそらす後藤。
そんな後藤の動揺に全く気付かず、?と言う表情の市井。
「市井のプレー?、、別にいいけど?」
「じゃ〜お客さんはそちらにかけててねっ」
そう言ってまたニコッと笑った。
後藤は無言で体育館の隅にタタッと駆け寄り、ちょこんと座った。
「じゃ〜まずは何からいこっかなっ。う〜ん、、やっぱ基本からねっ」
そう言って体の周りを凄いスピードでクルクルとボールを回しかと思うと、足の間を交互にバウンドさせ、そして凄いスピードでドリブルをしだした。
キュッキュッとバッシュとコートがこすりあう音が体育館中に響き渡る。
一気にリングに向かって走りこみ、ドリブルから流れるように華麗にジャンプし、シュッとリングネットをこする音が響いた。
そしてタッと軽快に着地した。
「これが基本のレイアップ。でも市井あんまこれ好きじゃないんだよね(笑)ホントはドカッとダンクでもしたいとこなんだけどさっ(笑)身長たんね〜!!」
上を見上げて体育館中に響き渡る声で叫んでいる市井。
後藤はあまりの綺麗なフォームに感動し、ボ〜ッとしていた。
- 6 名前:Oー150 投稿日:2000年11月03日(金)22時45分10秒
- 「これは結構好きかな?」
市井はそう言って落ちたボールを拾い、ダムダムとドリブルをコート中央に向かって始めたかと思うと、キュキュッという音と共に突然クルッとターンしそのままバッとジャンプをして左手をボールに添え、右の手首のスナップをきかせてシュッと振ると、その手からボールは綺麗に離れ、弧を描いてリングの淵にこすりもせず中央を綺麗に通った。
(すご〜い・・・)
目をキラキラさせて市井を見つめる後藤。
「な〜んか、プレー見せてって言われても一人じゃやる事ないな(笑)こんなんでいいの?」
「じゅっ十分です!凄いです・・」
「別に凄くないよこんなの(笑)ねぇ名前聞いてなかったよね?」
「あっすいませんすっかり忘れてました!」
「ハハッいいよ別に(笑)緊張してるみたいだし」
「えと、後藤真希です!」
「後藤真希、、同性同名結構いそうな名前だな(笑)」
「はい・・有り触れた名前で・・イヤです・・。先輩は名前カッコイイですよね」
「市井?、、そうか?別に普通だと思うけど・・。」
そう言って指の先でくるくる回していたボールをピタッ止め、後藤の方を向いた。
「ねぇ後藤って呼んでいい?」
「え?!あ〜はい!もう好きにして下さい!」
(!?また危険な発言しちゃった!!まるで抱いてって言ってるみたいじゃん!!って考えすぎか・・。)
「じゃ〜後藤ね」
またドリブルを始める市井。
キュキュッダムッダムッダムダムダムダムッッキュッ シュッ
ボールのバウンドする音とバッシュの音、リングネットをこする音、その音のリズムがとても心地良かった。
何度も何度もドリブルしてシュートを繰り返す市井。
いつの間にか後藤は時間を忘れ、その綺麗なプレーに引き込まれていた。
- 7 名前:Oー150 投稿日:2000年11月03日(金)22時50分09秒
- 少し経って、ハッと我に返った後藤は、市井を見て一つの言葉が浮かんだ。
「・・先輩?」
「ん?」
立ち止まってドリブルを続けながら市井は後藤の方を向いた。
全く乱れていない呼吸。
「先輩みたいな人って、天才って言うんでしょうね〜・・」
「は!?天才!?」
「私バスケの事良くわかんないけど・・なんか、天才ってこういう人の事言うんだろうな〜って・・」
「ハハッ天才ね・・。」
苦笑しながら市井はその場でドリブルしだした。
「、、、市井は天才じゃなくて、誰にも負けないくらいバスケが好きなだけだよっ」
そう言って爽やかに笑い、シュッとスリーポイントシュートを放った。
ボールを放った手がゴールに入るのをジッと待っている。
そして鮮やかにリングを通ったボールを確認すると、
「ナイッシュッ!」
と言って嬉しそうにガッツポーズ。
(・・カッコイイ・・・・・)
「ねぇ、後藤はバスケ部入んないの?」
「バスケ部ですか!?、、って言うか私が部活入るんですか!?」
「いや〜市井に聞かれても(苦笑)」
「あっそうですよね!何言ってんだ後藤は・・」
(なんかさきから心臓のドキドキが止まんないよ〜〜。何でこんな緊張してるんだろ・・)
「部活、なんかやってなかったの?中学時代」
「あ〜・・努力とか、一つの事続けるのとか、苦手なんですよ。根性無いんで・・ハハッ・・」
「・・ふ〜ん・・だったら無理かもな」
ちょっと俯いてそう言うと、再びドリブルを始めた。
(え・・?ちょっと今の言葉、冷たかった気が・・)
キンコ〜ンカ〜ンコ〜〜ン
キンコ〜ンカ〜ンコ〜〜ン
「おっとチャイム鳴った。じゃ戻るとするかなっ」
リングを通り、ダムダムと音を立てて落ちるボールを無視して、市井は更衣室の方へと歩き出した。
そしてクルッ振り向いたかと思うと、
「付き合ってくれてどうもねっ。楽しかったよ」
と言って後藤の返事を待たずにそのまま更衣室へと走っていった。
「市井、紗耶香・・・」
まだ夢の中にいるような感覚の後藤は、ぼ〜っとその場で立ち尽くし、そう呟いた。
- 8 名前:Oー150 投稿日:2000年11月03日(金)22時59分12秒
- ―――――――――――――
―――――――――――――
休み時間、知らない顔ばかりの教室に入っていった後藤は、出席番号順に座っている席から自分の席を探し、座った。
普通なら不安でいっぱいなのだが、頭の中は先程の市井のプレーばかり駆け巡っていた。
(バスケか・・やってみようかな・・)
家に帰り、ドサっとベッドに倒れこんだ後藤は、やはり市井の事を考えていた。
あの笑顔、あのプレー。
頭から離れない。
市井と言う人間に胸ときめかせていたのか、バスケというスポーツにときめいたのか、どちらかは分からないが、とにかく魅せられたのは事実だった。
夜中じゅうその事を考えていた後藤は、次の日迷いもせず担任のもとへと向かった。
「おっバスケ部に入部するのかっ。偉いな〜根性あるな〜」
「え?まだ初めてもいないのに根性あるってなんで分かるんですか?」
「だってあのバスケ部だろ〜?入るって決めたって事は覚悟したんだろ?」
「覚悟?」
「いや〜偉い偉い。先生も応援するから頑張れよ!」
「・・?」
(?なんだ?意味分かんないな)
入部届を出した後藤は、ウキウキしながら体育館へと向かった。
(市井先輩にまた会える〜♪これからは毎日会えるんだ〜〜♪)
近づくにつれ聞こえてくるボールのバウンドする音とバッシュのこすれる音。
後藤の胸が高鳴る。
体育館へと到着した後藤は、キョロキョロと辺りを見回し、市井の姿を探していた。
まだ来ていないようだ。
15人程の部員。
(なんでこんなに人少ないんだ?まだ集まってないのかな?)
しょうがなく、近くにいた先輩に声をかけた。
「あの〜・・バスケ部に入部したいんですが・・」
「え!?進入生!?入部するの!?ホントに!?」
偉く驚いている先輩。
暫くして、市井はまだ到着しないものの、先輩達が進入部員を並ばせ、一人の副キャプテンだろう人が話を始めた。
「・・集まるもんだね〜・・。入部してくれたみんなはここの部活の事知ってて入ってきてるの?」
(部活の事?担任と言い、なんなんだろう)
20人程の新入生、お互いの顔を見合わせて?と言った表情をしている者と、真剣な面持ちで頷いている者がいる。
そう話し始めた丁度その時、静まり返った体育館に一つの足音が聞こえてきた。
- 9 名前:Oー150 投稿日:2000年11月03日(金)23時01分25秒
- 新入生が一斉に振り返る。
スタスタと無言で歩いてくる市井紗耶香だった。
心なしか昨日会った時のような穏やかな雰囲気が無い。
「・・市井先輩だ!キャ〜やっぱカッコいい・・!」
小さな声で騒ぐ新入生。
やはり市井目当ての人が多いのだろうか。
どうやらたった一日で市井に一目惚れした人が集結したらしい。
(・・ライバルばっかだ・・)
新入生の前に立った市井は、キリッとした表情で口を開いた。
「最初に言っとくけど、遊び半分で入部した奴は今のうちに体育館から出て行った方がいいよ」
(え・・?)
その市井のあまりに高圧的な態度に、新入生達が驚き、ざわつく。
「え・・なんか恐くない・・?市井先輩って恐いの・・?」
「なんか想像と違〜う・・」
そんなざわつく新入生を市井の一言が黙らせた。
「はい私語する奴もいらない。そこのあんた、残念だけど想像と違ってたみたいだね、じゃ〜求める先輩探して他当たってね、さようなら」
「!?・・・」
あまりの突然の市井の言葉に驚き、言葉を失ってその子は半泣き状態で小走りでその場を去って行った。
“酷い・・”と言う白い目で市井を見て、後に続いて去って行く新入生。
一人、二人、三人、四人、、、
市井のそのたった一言で次々と去って行き、結局残ったのは後藤を含める8人だけとなった。
後藤の場合正確には“残った”のではなく“動けなかった”。
あまりの昨日と違いすぎる市井の態度に頭が真っ白になって立ちすくんでしまったのだ。
後藤の方を見てニコッと微笑んで「後藤入部してくれたんだっ」と言って喜んでくれるとばかり思っていた。
それが微笑むどころか目を合わせようともしない。
全く会った事も無い他人のように振舞う市井。
あまりのショックで淡々と事務的にバスケ部の規則などを説明する市井の言葉が全く耳に入らなかった。
- 10 名前:Oー150 投稿日:2000年11月03日(金)23時02分12秒
- 「、、って事で大体の決まりはこのくらい。けどまだまだ細かい事はあるから。文句があったら不満を言う前に退部届けだしてね。
以上、説明終わり。じゃあすぐに着替えて、ランニング始めるから」
「あとの人は時間無駄だから先にランニング始めて!」
「はい!!」
そう威勢良く返事をした部員達はすぐに並んでランニングを始めた。
後藤以外の進入部員7名も駆け足で更衣室に向かった。
その場を動けない後藤。
「何やってんの?着替えてって言ったじゃん」
淡々とした口調の市井が声を掛けてきた。
その口調に耐えられず、潤む瞳をぐっと堪え、後藤は俯きながらその場を走り去った。
家についた後藤はベッドに倒れこみ、夕食も食べずに真っ暗な部屋の中で昨日の市井とのあまりのギャップのショックから抜けられずにいた。
(市井先輩・・昨日のあの先輩はウソ・・?どっちが本当なの・・?)
気付くと涙が頬を伝っていた。
- 11 名前:Oー150 投稿日:2000年11月03日(金)23時03分08秒
- 次の日、後藤は重い足を引きづりながら渋々登校した。
「おはよ〜・・」
「あっおはよ〜!」
「ねぇねぇ!後藤さんあのバスケ部に入ったってホント!?」
教室に入り席に着くなり、まだ全然親しくない同級生が興味深そうに話し掛けてきた。
「え・・!?いや・・入ろうと思ったけどやめる・・」
「やっぱね〜〜。あのバスケ部だもんね〜入んない方が身の為だよ」
「あのバスケ部って・・?」
「中学時代から有名だったよ。昭栄学園バスケ部って、地獄の特訓やらされるって」
「地獄・・?」
「そう。なんか顧問がバスケ未経験者だから、キャプテンがコーチもやってるらしいんだけど、、なんてったっけな〜、、いち・・」
「・・市井・・紗耶香・・」
「そうそう!もうあった?恐かったしょ?鬼らしいからね」
「鬼・・」
「でねっ、その人目が凄い冷たくて、マジ恐いから、それでついたあだ名があるんだよ」
「・・あだ名・・?」
「『氷の女』」
「・・・」
「いや〜辞めて正解だよ、うん。なんか宗教団体みたいで恐いもんあの部活。取り付かれたみたいに練習しててさ。私も昨日チラッと見たけど、あれはまさに地獄だね。どうしてそこまでやるんだかっ。大した強くもないのにさ」
「・・・」
- 12 名前:Oー150 投稿日:2000年11月03日(金)23時05分03秒
- ―
―
それから1ヶ月が過ぎようとしていた。
頭の隅に市井の存在が常にありはしたが、バスケ部の事は忘れ、それなりに普通に高校生活をエンジョイしていた。
学校帰り渋谷、原宿へと繰り出し、友達とただブラブラしてショッピングしたり写真を取ったり男の話をしたり、喫茶店で意味もなく時間潰しをしたり、、。
それなりには楽しかった。
しかし何かが足りなかった。
中学時代はこれで思いっきり満足していたのだが、何かが頭に引っかかっていた。
何度かナンパされたりしたが、喜んでホイホイついていく友達を見ながらも後藤はそれだけは頑なに拒否した。
友達がナンパについていった後はいつも一人ポツンと取り残される。
道端に座り込み、何となく友達にメールを入れたり電話したりしてみる。
しかし何かが違う。
腰を上げ、あてもなくブラブラと歩いていた。
すると電気屋に置いてあるテレビのブラウン管に映し出されたものを見て足が止まった。
高校生の女子バスケの試合のようだ。
後藤の頭に市井のプレーが再び浮かぶ。
(やっぱり・・先輩より上手い人はいない・・)
(全然・・違う・・)
- 13 名前:Oー150 投稿日:2000年11月03日(金)23時06分14秒
- それから、更にバスケへの、いや市井への気持ちだろうか、漠然としたものが膨れ上がって毎日モヤモヤしていたある日の事だった。
放課後教室の残って友達と長々と下らないおしゃべりをしていて、すっかり遅くなってしまった後藤は、学校から出て雨が降っている事に初めて気付いた。
「うわっどうしよ傘持ってきてないや!」
「う〜ん・・いいやっ」
カバンを頭に乗せダッシュして雨の中走り出した。
「うわ〜〜思ったより雨強いぃ〜〜!!」
ザーザーとバケツをひっくり返したように激しく降る雨。
体中もうベチャベチャだった。
そして猛ダッシュして公園の前を通りかかったその時だった。
ふと降りしきる雨の中、聞き覚えのある音が耳に入った。
ダムッダムッダムッ
「・・?」
その音に反応して足を止める後藤。
音のする方を向くと、雨でボヤける視界にぼんやりと映し出されたのは、公園のバスケゴールの前で一人バスケをする人影。
後藤はゆっくりと近づいた。
「・・!?」
「市井・・先輩・・・・」
そこにいたのは
ベチャベチャになり、髪から滴を垂らしながらバスケをする市井紗耶香だった。
その声に反応し、市井は驚いて後藤の方を振り向いた。
「・・後藤・・」
動きが止まる二人。
- 14 名前:Oー150 投稿日:2000年11月03日(金)23時09分00秒
- 〜〜一息スペース〜〜
ちょっと休憩です。続きは今日中に載せれると思います。多分・・。
- 15 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月04日(土)00時58分35秒
- お待ちしています
- 16 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月04日(土)01時33分48秒
- おもしろいですー。
更新、楽しみにしてます。
- 17 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月04日(土)02時08分42秒
- 第一印象が良い人に見えて次会った時は・・・・って新しいパターンでおもしろいです
期待してます
- 18 名前:Oー150 投稿日:2000年11月04日(土)02時12分13秒
- 「・・先輩・・何・・してるんですか・・?」
「・・何って見たら分かるじゃん・・。バスケ・・」
「・・・風邪ひきますよ?」
「・・大丈夫・・結構強いから・・」
下を向き、後藤と目を合わせずにボールをバウンドさせながら話す市井。
その姿は何処か負い目を感じているようにも見えた。
「っつーか・・後藤も風邪ひくから帰れよ・・」
「・・・見てます・・」
「は?!」
市井は驚いて顔を上げた。
「ここで見てますっ」
「何でだよ・・いいから帰れって・・」
「イヤです!」
「・・・勝手にしろ・・」
そう言ってまたドリブルを始め、リングの下辺りでジャンプしてシュートをする。
落ちてきたボールをまた拾い、ジャンプしてシュート。
何度も何度も繰り返す。
後藤はカバンを頭に乗せ、隅でただ市井のその姿を見ていた。
自分でも何故帰りたくないと思ったのかは分からなかった。
ただ、“先輩のプレーをまた見たい・・!”とそう切に思ったのだ。雨などどうでも良かった。
雨は激しさを増すばかり。
市井はベチャベチャの髪をかきあげた。
青いウィンドブレーカーももはや意味をなしてない。
目を開けているのがやっとと言った感じだった。
眉間にしわを寄せ、顔を打ち付ける雨をウザそうにしながらもボールを手から離さない。
リングから目を離さない。
その行為が後藤にはとても自虐的に見えた。まるで自ら苦行に挑む修行僧のようにも見えた。
何処か痛々しい。しかし目が離せない。
プレーはやはり、雨の中でもとても綺麗だった。
後藤の中には一つの疑問のみが浮かんでいた。
“どうしてここまでして・・”
- 19 名前:Oー150 投稿日:2000年11月04日(土)02時15分54秒
- 何時間経っただろうか。
突然後藤が
「ックシュンッ」
とクシャミをした。
バスケの手を止める市井。
「・・だから帰れって言ったじゃん・・」
「いやっ私は全然大丈夫です!」
「・・帰る」
「え!?・・私のせいですか・・?」
「いや、市井が帰ろうと思ったから」
「・・すみません・・邪魔しちゃって・・」
「・・あ〜もう後藤ベチャベチャじゃん!市井は一応ブレーカー着てるけどさ〜」
突然態度が一変した市井を疑問に思うが、なんとなくその意味が分かったきがした。
(・・先輩・・私に気ぃ使ってる・・?)
「先輩だってベチャベチャじゃないですか・・」
「市井はいいのっ」
そう言った瞬間、突然空がピカッと明るく光ったかと思うとゴゴゴゴというもの凄い音の雷が鳴った。
「うわっ!どっちにしろ帰らなきゃやばいよこれ!ナイスタイミングじゃん(笑)」
市井が後藤を方を向くと、後藤は目をギュッと堅くつぶって顔を強張らせて下を向いていた。
「あれ?雷恐い?」
コクコクと無言で強く頷く後藤。
「そっか、じゃ〜ダッシュで帰ろっかっ」
そう言って市井は後藤の手を引き、凄い勢いで走り出した。
- 20 名前:Oー150 投稿日:2000年11月04日(土)02時19分28秒
- 下を向いて片手で耳を抑えながら懸命に市井についていく後藤。
「後藤んちって何処〜!?」
雨の中後藤の手を引いてダッシュしながら市井が叫んだ。
しかし強さを増した雷の音でそれがかき消されてしまう。
しかも後藤はあまりの恐怖でそれどころじゃない。
「何処だよ〜〜!!分かんなかったら連れてけないじゃん!!あ〜〜もうしゃーないな!」
今何処なのかも訳分からず、とにかく市井に手をひかれるまま走り、30分くらい経っただろうか。
突然市井の足が止まり、
「こっちこっち」
と言って後藤の肩を抱き建物の中へと連れて行った。
建物に入り、ようやく顔を上げる後藤。
「っふあ〜〜すんごい雷!後藤大丈夫?」
「死ぬかと思った・・」
「ハハッ(笑)」
「あの・・ここ何処ですか・・?」
「、、市井のマンション」
「え!?」
「だって後藤家何処って聞いても答えないからさ〜」
「あ・・すみません・・それどころじゃなくて・・」
「まぁとりあえずこの雷じゃ外歩くのももう危険だから、市井の部屋行こ?」
(!?市井先輩の部屋!?・・・嬉しいような・・二人っきりになるの嫌なような・・。でも今はあの時の恐い先輩じゃないみたいだし・・雷恐いし・・)
「・・迷惑じゃなければ・・」
「はいじゃあ決まりっ」
そう言って二人はエレベーターに乗った。
「ここっす」
鍵を取り出し、ドアを開け市井はどうぞ、と後藤を中に入れた。
- 21 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月04日(土)02時51分43秒
- これはいいですね、体育会系出身としても非常に興味深いです。
頑張ってください。
- 22 名前:Oー150 投稿日:2000年11月04日(土)03時05分11秒
- 「いいんですか?後藤ずぶ濡れですよ?家汚しちゃう・・」
「何言ってんだよ市井だってベチャベチャだからいいのっ」
申し訳無さそうにとりあえずベチャベチャのルーズソックスだけを脱いで中へと入って行った後藤は、部屋の中を見て驚嘆した。
(うわっ・・凄い・・。高級マンションってやつですか〜!?)
凄く広いリビング。
家の中はガランとしていて、その広さの割に家具が全然置かれていない。
生活感がやけに無い感じがする。
ポツリポツリと置かれているテレビやパソコンやソファーやテーブルなどは、後藤でも分かる程の良い物、、と言うか相当高い物である事は分かる。
ベチャベチャのブレーカーの上着をソファーに投げ捨てた市井は、辺りをキョロキョロと見回して何か探しているようだ。
「モモ〜!モ〜モ!」
(モモ?・・桃?)
すると突然凄い勢いで市井に何かが飛びついた。
「お〜〜!!モモただいま!!」
「可愛い〜!先輩犬飼ってるんですね!」
「ヘヘッ可愛いしょこいつっ。お〜よしよし寂しかったか〜?」
「、、っていうかいいんですか?マンションで犬飼って」
「あ〜、、ダメらしいけどね、いいんじゃない?」
「・・意外と適当・・なんですね・・(苦笑)」
犬とじゃれ合う事に夢中で後藤の呟いた言葉が全然耳に入ってない様子の市井。
そんな市井の無邪気な笑顔を見て後藤は思った。
(・・やっぱり、本当は優しいんだ・・)
「先輩?」
「ん?」
犬に顔をペロペロ舐められながら後藤の方を向く市井。
「家族はまだ帰ってきてないんですか?お仕事?」
「あ〜、、父親は外国で仕事。母親はどっかいった。で、私一人っ子だから、いつもこんな感じ。ようは生活費ただの一人暮らしってやつ?」
市井は淡々とした口調でそう言った。
「・・え・・」
- 23 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月04日(土)04時36分32秒
- もう一つの方も読んでるけど、やっぱ心理描写がうまいね。
引き込まれたよ。
期待します
- 24 名前:Oー150 投稿日:2000年11月04日(土)05時41分59秒
- 「どっか行ったって・・・どういう意味ですか・・」
「・・・どっかに消えたの。失踪失踪。父親が向こうで女作っちゃってるみたいでさっ、帰ってこようと思えば帰れるんだろうけど、向こうの方が楽しいみたい。で、母親もやけになって男作ってどっかいった」
後藤は言葉を失った。
(・・・そんなのって・・・)
部屋の広さが逆に後藤の胸を締め付けた。
17歳の少女が一人で暮らすにはあまりに広すぎる・・。
市井のバスケへの異常な執着の理由がなんとなく分かったような気がした。
ネガティブな思いをバスケによって昇華させようとしてるのでは、、。
寂しさをそれによって埋めてるだけなのではないか、、と。
部員に対する態度も、偏屈してしまった何かが市井をそうさせているのではないかと思った。
一瞬の沈黙を破るように市井がすくっと立ち上がった。
「風邪ひいちゃうから、すぐに風呂入れるね」
「あ・・はい・・」
そう言って市井は風呂に向かった。
戻ってきた市井は、
「とりあえず、そんなカッコしてる訳にいかないから、、、ちょっとこっち来て」
と言って後藤を隣の部屋に連れて行った。
広いフローリングの部屋にベットと机がポツンと置いてある。
綺麗と言うより物が無い。
私の部屋の場合、親戚とか友達とか家族からもらったプレゼントだとか、友達とブラブラしてて見つけた可愛い小物だとか、買っては使わないでまた買ってとかで溜まった化粧品とか、小さい頃可愛がってた縫いぐるみが捨てれなかったりとかで、とにかく色んなものがゴチャゴチャと溢れてる。
そう言うのが全く無い市井の部屋。リビングを見た時に感じた違和感と同じものを感じた。
後藤はそれがただ単に余計な物を溜め込まない市井の性格的なものである事を切に願った。
- 25 名前:Oー150 投稿日:2000年11月04日(土)05時47分37秒
- 市井は収納式のクローゼットを開け、何やらゴソゴソ選んでいる。
「う〜ん、、、これかなっ。はいっ」
そう言って後藤に向かってポンと服を投げた。
「・・ありがとう・・ございます・・」
そして自分の服を脱ぎだす市井。
(!?)
ビックリして何故かクルッと後ろを向いてしまった。
(ドキドキドキ・・べっ別に先輩が脱いだからって目ぇそらす事ないじゃん・・ドキドキドキドキ)
(でも・・なんか・・ダメだ・・見ちゃいけない気がする・・。でも見たい・・。でもそれってなんか悪い・・)
「ん?なした?後藤着替えないの?」
(あっそっか自分も着替えなきゃっ。・・でも先輩の前では・・って何でだ!?後藤変だ・・)
「あ〜市井いたら着替えにくい?」
「え・・いや・・」
「恥かしがり屋さんだね(笑)」
「・・・・」
(・・先輩の前でだけです・・)
「じゃあ市井向こういってるからっ」
そう言ってパパッと着替えを済ませた市井は部屋から出て行った。
(っふ〜・・なんか緊張するな〜・・。なんでかな・・普段人見知りとか全然しないのにな〜・・)
息を吐きながら先程市井が投げた服を手にする。
(先輩のジャージだ〜。先輩が着たやつだ♪)
(・・・後藤・・市井先輩の事好きになっちゃったのかな・・・・。でも部活の時のあの冷たい先輩が忘れられない・・)
市井の事が頭の中で交錯する。
自分の気持ちがよく分からない。
頭を悩ませながら市井に借りたジャージに着替え、後藤はリビングに戻った。
- 26 名前:Oー150 投稿日:2000年11月04日(土)06時57分34秒
- 市井はリビングと繋がっているキッチンで何やらコップにお湯を注いでいる。
そして後藤の方に目をやった。
「そこ座ってていいよっ」
それを聞いて後藤はソファーにかけた。
「そのジャージ、バスケする時着てないから安心してね(笑)」
そう言って笑う市井。
「あっ別に何でもいいですよ(笑)」
(むしろバスケする時着てた方が嬉しかったりして・・)
「コーヒー飲める?」
後藤はコクッと頷いた。
市井はマグカップを二つ手にし、テーブルにそれを置いて後藤の隣に座った。
「砂糖とミルク入れまくっておいたからっ」
「!?私が砂糖とミルクいっぱい入れなきゃダメだってなんで分かったんですか?!」
「だってそんな感じじゃん(笑)」
「それって、、子供って事ですか〜!?」
「うん(笑)」
「先輩ひどい・・」
「アハハッ(笑)ウソウソ、見た目凄い大人っぽいよっ」
(え!?、、かなり嬉しかったりして・・)
そう言った後パッと立ちあがり、洗面所からタオルを持ってきた。
「はい頭出してっ」
「え?」
「えって、、頭拭かなきゃ風邪ひくじゃん」
「あ〜そっか・・はい・・」
後藤は言われるまま頭を市井の方に向けた。
後藤の頭をクシャクシャ拭く市井。
(ドキドキドキ・・先輩ってやっぱ優しいな・・。普通タオル渡して自分で拭かせるよね・・)
突然市井が髪を拭きながら後藤の顔を覗き込んだ。
ジ〜っと後藤の顔を見る市井。
「・・なっなんですかぁ・・?」
「いや〜ちゃんと見た事無かったけどさ、可愛い顔してんな〜と思って」
それを聞いて一気に顔が火照る。
パッと下を向く後藤。
「あれ?照れてる?(笑)」
「そんな面と向かって言われると照れますよ・・」
「ハハッ(笑)」
(先輩ってホントはよく笑うんだよね・・。部活の先輩からは想像つかないな・・)
- 27 名前:Oー150 投稿日:2000年11月04日(土)06時58分04秒
- 「ねぇ先輩?」
「ん?」
「・・どうしてですか・・?」
「?何が?」
「・・どうして・・部活ではあんなに・・・」
「あ〜・・」
市井は突然手を止め、ブランをその手を落とした。
「・・先輩、学校で何て言われてるか・・知ってます・・?」
「・・・知ってるよっ。氷の女でしょ?いや〜つけた奴センスあるね〜(笑)」
「・・・・私は・・先輩が本当は凄い優しいの知ってますよ・・・」
「・・優しくなんかないよ・・・」
「どうして・・どうして部活でも本当の先輩でいてくれないんですか・・!?自分から嫌われるような事・・どうしてわざとするんですか・・!!」
目から涙を零しながら後藤はそう声を上げた。
「嫌われてもいいんだ・・。優勝の喜び味あわせてあげれるなら」
「・・優勝・・?」
「・・・スポーツやるからには、勝たなきゃ意味無いじゃん。その為には捨てなきゃいけないものもある・・」
「・・捨てなきゃいけない物って・・・」
「・・大丈夫だって!市井は嫌われても何とも思ってないからっ。ねっ?後藤が心配すんなって!」
そう言ってクシャっと髪を撫でた。
「・・・・」
何故かすっきりしない。
とてつもなく込み上げてくるものがあったのだが、それが言葉にならなかった。
「もうお湯入ったと思うから、後藤先入んなよっ」
「・・・・はい・・」
- 28 名前:Oー150 投稿日:2000年11月04日(土)07時01分59秒
- 浴槽に浸かった後藤は「ふ〜っ・・」と大きく溜息をついた。
(・・先輩・・あんなにバスケ上手いのに・・どうしてあそこまでする必要があるんだろう・・)
(何かを捨てるって・・・。好きな事をするのに捨てなきゃいけないものなんてあるの・・?後藤には分からない・・)
風呂から上がった後藤は、頭を拭きながら真っ暗な窓の外を眺めた。
まだ雨は止む様子が無い。雷も先程よりは離れたが、時々ピカッと空を光らせていた。
後藤が風呂から上がったのを察し、部屋から出てきた市井は、
「じゃ市井入ってくっからっ」
と言って風呂場に向かって行った。
その後姿を見て、後藤はふと思った。
“市井先輩の事をもっと知りたい・・”
そう思ったら止まらなかった。
市井の部屋にゆっくり入り、机の周りに置いてあるものなどを物色し始めた。
机の横にある本棚にはバスケの雑誌や漫画、本、ありとあらゆるバスケ関係の物が並んでいた。
(・・バスケ・・ホントに好きなんだ〜・・)
(・・それにしてもバスケ関係の物ばっかりだな・・(苦笑))
(?これなんだ・・?)
雑誌の間に紛れ込んでるノートに目が止まった。
取り出して、中を開いてみる。
(・・・・先輩・・・・)
見た途端胸が熱くなった。
そこには毎日の部員一人一人の、コンディションやプレーに関する細かい事がギッシリ書きこまれていた。
それは堅苦しいものではなく、部員の成長の喜びを毎日書き綴っているような感じだった。
- 29 名前:Oー150 投稿日:2000年11月04日(土)07時03分29秒
- ―
―
3月4日
斎藤、ドリブルのバランスがスゴイ安定してきたのが分かった!
あとはフェイクの速さをつければ完璧!斎藤頑張れ〜!
西野、今日のあの左からのパスは絶妙〜〜だった!!う〜〜んディフェンスにしとくの勿体無いかな〜・・。
河村、相変わらず腕の力あるから手首のスナップがきいてて羨ましいっす!あともうちょっとコントロールついてくれればな〜・・。
市井、今日は全然ダメだった!体のキレがなかった!なんか重かった!やっぱもうちょい体力欲しいぞ!!
―
―
こんな調子で毎日ギッシリと書き綴られている。
後藤はベッドに座り込み、隅から隅まで目を通していた。
たまにクスッと笑っちゃうような書き込みもあったりして、、なんだか胸がいっぱいになっていた。
- 30 名前:Oー150 投稿日:2000年11月04日(土)07時13分45秒
- カチャッ
「?後藤何読んでんの?」
「!?」
ノートに夢中で市井が上がった事に全く気付かなかった後藤。
突然の市井の姿に驚き固まってしまった。
ノートを隠すにはもう遅い。
「あ・・・えと・・その・・・」
「・・・あ゛〜〜!!!市井の日誌!!」
「あっあの・・・・ごっごめんなさい!!!」
そう言ってバッと頭を深く下げた。
「・・いや別にいいんだけどさ・・。ちょっと恥かしかっただけっす・・。・・もういい?」
そう言ってノートの方に手を出した。
「はい!ホントごめんなさい・・勝手に読んじゃって・・・」
後藤はバッとノートを市井に差し出した。
「いいって別に(笑)これが愛の日記帳とかだったら怒ってたかもしれないけどさ(笑)」
市井はタオルで濡れた髪を拭きながら机に座り、スタンドの電気をつけた。
そしてそのノートを広げ、シャープを取り出した。
後藤はその市井のもとにタタッと駆け寄り、覗き込みながら横に立った。
「、、今日の分書くんですか?」
「うん。」
「、、後藤の事も書いてくれます?(笑)」
「なんでだよ(笑)バスケしてないじゃん(笑)」
「やっぱダメか・・(笑)」
「・・・いいよ。書いとく」
「ホント!?」
「うん。バスケ邪魔されたってね(笑)」
「何でですか〜!邪魔してないじゃないですか〜!あ〜やっぱホントは帰りたくなかったんだ!!」
「アハハッバレた?(笑)」
「・・・先輩?」
「ん〜?」
日付を書きながら返事する市井。
「・・・なんで、部活終わった後にまで練習してたんですか?しかもあんな土砂降りの雨の中・・」
その質問に、市井は迷いもせず答えた。
「なんでって?バスケが好きだからに決まってんじゃん」
そう言った市井の顔には、純粋なものしか浮かんでなかった。
- 31 名前:Oー150 投稿日:2000年11月04日(土)07時14分47秒
- 「市井さ、インターハイで優勝したいんだよねっ」
「インターハイ・・?」
「そう。目指すは全国制覇!!スラムダンクみたいでしょ?(笑)」
「・・夢・・大きいんですね・・」
「うんっ夢は大きく持たないとね!」
「・・市井に文句言わないでついてきてくれてる人はさ・・本気だと思うんだ。
これって凄い自己中な考えなんだけど・・市井は本気の奴とバスケがやりたいんだっ。それで、本気かどうかを見分けるのには、ああ言う方法でしか市井は分かんないんだよね・・」
「・・先輩・・」
「だからさ・・」
そう言いかけてノートに最後のページを開き、貼ってある写真を見て、市井は言った。
「こいつら絶対インターハイで優勝させてやるんだっ」
写真は、バスケ部の集合写真だった。
その嬉しそうな顔を見て、後藤は市井という人間の事をようやく理解した。
この市井の表情が全てを物語っていた。
後藤は確信できた。
市井はネガティブなものを昇華させてるんじゃない、
実は全く逆であると言う事を。
本当は、市井のバスケへの思いは驚くほどにポジティブで、単純で、そして純粋なのだ。
何よりもバスケを心から愛しているのが伝わってきた。
そう、モヤモヤしていた点と点が一つの線になると、後藤の気持ちの点も繋がった。
その瞬間、後藤の抑圧されていた気持ちが一気に込み上げてきた。
「先輩・・?」
「ん?」
顔を上げた市井に、目を潤ませた後藤の顔がゆっくりと近づいた。
驚いて固まる市井。
後藤の唇がゆっくりと、ゆっくりと市井の唇に近づく。
硬直していた市井も、目を閉じ、首を傾かせ、後藤の唇にゆっくりと近づいた。
- 32 名前:Oー150 投稿日:2000年11月04日(土)07時16分32秒
- そして触れる数ミリ前のところで、後藤の体がビクッと跳ねた。
ブルルルルル!!ブルルルルル!!
携帯のバイブ音だ。
音と共にハッと我に返った後藤は、赤面してバッと顔を離した。
市井も慌ててバッと机の方を向く。
そして後藤は携帯の入ってるカバンへと駆け寄り、電話に出た。
「はっはいもしもし!」
「お母さん!?あ・・うん帰るよちゃんと・・うん・・うん・・じゃあね」
そう言って電話を切り、カバンへとしまいこんだ。
「・・お母さん?」
「・・はい・・」
「・・・雨も止んだみたいだし・・帰ったほうがいいんじゃない・・?」
「・・・ですね・・」
「・・じゃあ送ってくよ・・」
「えっ!?いっいや大丈夫ですっ」
「送ってくって〜。心配だし・・」
- 33 名前:Oー150 投稿日:2000年11月04日(土)07時40分28秒
- 〜〜一息スペース〜〜
はい、『天才』更新しました。徹夜しちゃいました・・(ワラ
あ・・31で区切れば良かった・・悔しい。。。
今日中に全部載せれると思ったのに・・無理でしたすみませんです・・。
なのでちょっと半分くらいで区切っておきます。
つまり、、まだ半分くらいあります。
明日(ってか今日ですね)全部更新しようかな?できるかな?
一日でこんなにいっぱいレスついたの初めてなんで凄い嬉しいです!
ありがとうございます!
>15さん
お待たせしすぎちゃいました・・。
>16さん
ありがとうございます!
面白い・・良かった〜〜・・。
バスケ興味無い人には面白くないかな〜とかも思ってたんで・・。
>17さん
そっか、普通は逆ですよね!?
言われて気付きました(ワラ
>21さん
はい頑張ります!
僕も体育会系さんには是非読んで頂きたいっす!
>23さん
もう一つの方も着々と進んでます。こっちは一気に書き上げた物なんで、、。と言っても2日?3日?ですが。
一応心理描写を何よりも大切にしてるつもりなんで、そう言って頂けると滅茶苦茶嬉しいっす!ありがとうございます!
- 34 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月04日(土)09時41分45秒
- 全部更新激しくきぼんぬ。
- 35 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月04日(土)10時11分48秒
- 最高だぁーー!!
この一言に尽きるのですっ!!
- 36 名前:坊主 投稿日:2000年11月04日(土)13時42分10秒
- 後藤かわいいなぁ・・・
- 37 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月04日(土)16時10分18秒
- 「嫌われてもいいんだ・・・」っていう市井のセリフに後藤の教育係をやっていた
市井の姿が思い出されて、切ないなぁ・・・
その直後に萌えさせてもらえるようなシーンもあって、
マジでサイコーだよ。久々にのめり込める小説だね。
- 38 名前:読んでる人 投稿日:2000年11月04日(土)21時32分31秒
- 俺も元体育会系なのでこういう熱い話には引き込まれるものがあります。
おかげさまで今はヒキコモリです。
まあ、今もスポーツはしてるんですが。
熱い話期待してます。
- 39 名前:Oー150 投稿日:2000年11月04日(土)23時46分20秒
外に出ると雨はすっかり上がり、大きな水溜りだけが残っていた。
市井と肩を並べて歩く。
先程のキスしようとした光景が頭に何度も浮かぶので、後藤はどうしても声を掛けれないでいた。
そんな空気を破ったのは市井だった。
「あのさ」
「はっはい」
「・・部活・・入ろうとしてくれたの・・何で・・?」
「・・・バスケ・・してみたいと思ったから・・」
(そう、バスケに惹かれたのは事実だよ・・?一番惹かれたのは先輩だけどね・・。キスしようとしといて今更ウソつく事無いのにな・・)
(でも・・真剣にバスケしてる先輩に対してやっぱ失礼だし・・)
「・・そっか・・ゴメンね・・」
「え・・?」
「・・ゴメン・・」
「・・謝る事・・ないです・・」
何故謝るのか、、その理由が分かるだけに、後藤はそれ以上何も言えなかった。
きっとあれが市井の精一杯の強がりだったのだろう。
あの時の市井の気持ち、、。
厳しい自分をこれから入ってくる新入部員の前で崩す事は絶対に出来なかった。本当は素直に喜びたかったんだと思う。
それから二人は無言で歩き、ようやく後藤の家についた時に、
「それじゃあ・・今日はホントにありがとうございましたっ・・」
「・・うんじゃあねっ」
とだけ言葉を交わし、二人は別れた。
- 40 名前:Oー150 投稿日:2000年11月04日(土)23時47分53秒
- ―
―
そして次の日。
「昭栄〜ファイッ!ファイッ!ファイッ!」
いつものように体育館内を掛け声と共に並んでランニングするバスケ部員達。
30周目くらいに入った時だった。
部員達の視界に、体育館入り口から入ってくる一人の少女の姿が入った。
その少女が近づいてきた時、先頭を走っていたキャプテン市井が足を止めた。
同じく足を止めハァハァと息を吐く部員達。
少女はキャプテン市井の前に立つと、すっと市井を真剣な目で真っ直ぐ見つめ、威勢のいい声でこう言った。
「後藤真希と言います!!バスケ部入部したいです!!」
あまりの威勢の良さに驚く部員達。
そしてキャプテン市井がキリッとした顔で口を開いた。
「、、、すぐに着替えてランニングに混じってっ」
「はいっ!!」
- 41 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)00時15分55秒
- ―
―
こうして昭栄学園バスケ部に入部した後藤は、高校生活が大きく一変した。
放課後になると「今日何処いこっかぁ〜」「ってゆーか腰痛いからとりあえずマッサージでも行っとかな〜い」などと鏡を見て髪を触りながらダルそうに話しあってる同級生達に目もくれず、ダッシュで体育館へと向かう。
体育館に入ると同時に飛び交う威勢のいい挨拶。
夜遅くまで地獄のような練習。
一年なので勿論ボールに触れる事など殆どない。
市井とも私語などは全く交わさず、声を掛けると言ったら挨拶くらいだ。
それでも辞めたいとは一度も思わなかった。
この部活の空気は決して居心地がいいとは言えない。
中学時代の毎日ただ友達とブラブラしていた時のような心地良い馴れ合いなど全くない。
毎日死にそうになって家に着くと、ご飯を食べてお風呂に入ってバタンとベッドに倒れこむ毎日。
しかしそんな地獄の生活が、充実感へと次第に変化していく。
不思議な感覚。
部活内でのキャプテン市井はと言うと、やはり鬼に徹していた。
弱音を少しでも吐く部員がいたら、「じゃあ辞めたら?」の一言で片付け、決して取り合わない。
そして常に“私的感情”という言葉が無縁な態度だった。
後藤に対しての目と、他の部員に対しての目は全く変わらない。
冷たい目と人は言うが、後藤にはそれが真剣としか取れなかった。
暗黙の了解と言った感じで、後藤も市井に対して常にただの後輩として振舞った。
時々込み上げてくる感情を抑えきれなくなりそうな時もあるが、ぐっと堪えた。
“きっと自分のこの感情はバスケだけを見ようとしてる先輩に取って邪魔になる”
何度市井の家の前まで来ただろうか、何度その後姿を見つめ、“好きです”と呟いただろうか。
しかし“好き”という気持ちよりも“夢を叶えて欲しい”という気持ちの方が強かった。
ただただ、共に練習に励み、共に汗を流した。
後藤はそれだけで満足だった。
- 42 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)00時23分49秒
- そんな毎日を繰り返し、数ヶ月が経ち、、、
インターハイ予選が始まった。
昭栄学園は圧倒的強さを見せ付け予選で勝ち残った。
そして次々と強豪と対戦していき、
ついに、準決勝、、
強豪の中でも一番の強豪、優勝確実と言われているチームと、ここで対戦する事になった。
市井達にとってはある意味決勝だ。
全国各地から集結した強豪チームに混じり、緊迫した部員達を引き連れ会場入りした市井は、ロッカールームで着替えをしながらワイワイガヤガヤと緊張をほぐす為に喋り捲っている部員達をよそに、いち早く着替えを済ませ一人部屋から出て行った。
それに気付いた後藤は、後を追って部屋から出た。
見失わないようにしながら距離を置いて後を追う。
市井は人気の無い階段のところに行くと、そこに座り込んだ。
頭を膝につくほど低くして腕の間に埋め、目を伏せて手を組んでいる。
後藤は声を掛けるか迷った末、ゆっくりと近づき無言で横に座った。
パッと顔を上げる市井。
市井は後藤の顔を確認した後、また頭を下げた。
そしてゆっくり口を開いた。
「・・・手がさ・・震え・・止まんないんだ・・」
「・・え・・?」
組んでる手を見ると、その手は確かに震えていた。
「・・先輩・・」
「・・・カッコ悪いよね・・一番大事な試合でさ・・」
「・・・・・」
「!?後藤・・・?」
突然の温かい手の感触に驚き、市井は顔を上げた。
市井の震える手を、後藤は無言で優しく握っていた。
そして市井の目を見つめ、ゆっくり口を開く。
「・・・先輩なら大丈夫・・。絶対大丈夫です・・」
- 43 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)00時28分29秒
- ―
―
試合は観客全員が息を呑む大接戦を迎えていた。
お互い一歩も譲らない点の入れあい。
プレーをしている市井は、もういつもの『キャプテン市井』だった。
白熱するゲーム、プレーヤー全員体力の限界を超えている。最後は勝利への執着心が勝敗を分ける。
気力のみで戦うプレーヤー達。
積み重ねてきた練習の集大成をここで出し切るのだ。後悔だけはしたくない。
思い出すだけで吐き気がするきつい練習。
倒れて救急車で運ばれる部員も少なくない。
ランニングの後は必ず吐く者がいる。
そんなバスケ部の事を、人は『気違い団体』と言った。
白い目で見られながら、死にそうになりながらも何故そんな練習を続けるのか、バスケをやめないのか、周囲の誰もがそう疑問を持つ。
しかし答えはバスケ部の彼女達のみが知っていた。
―
市井紗耶香が入部する前、昭栄学園バスケ部は弱小チームとして有名であった。
練習試合ですら勝った事がない。負ける事にも何も抵抗を持たなくなっていたそんな部員達。
勝つ喜びなど味わった事もないので、それへの執着は無いに等しかった。
そんな昭栄学園が新学期を迎えたある春の事。
2年生に、一人の少女が転入してきた。
その凛々しく端整な顔立ちから、女子校と言う事もあり、噂は瞬く間に校内に広まった。
そんな彼女が転入した日に速攻入ってきた部活が、弱小バスケ部である。
彼女と近づきたいという安易な動機でそれまで廃部寸前だった人数のバスケ部に次々と入部者が現れた。
たかが練習でも常に体育館は満杯。観客の生徒から市井に対し常に黄色い声が飛ぶ。
- 44 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)00時29分40秒
この市井紗耶香、親の都合で止むを得なく転校したのだが、以前は雑誌に出る程有名な海星高校と言うバスケ強豪校のキャプテンだったのだ。
そんな強くて有名な高校のキャプテンを、まだ2年生で務めていたのだから、どれほど実力があったかが分かる。
誰もが陶酔してしまう流れるような華麗なフォーム。
市井が触ったボールはまるで生きているようにコートと一体化してバウンドの音を立てる。
もはやプレーそのものが一つの芸術だった。
そのプレーに誰もが酔いしれ、引き込まれる。
そのプレーに少しでも近づきたいと、部員達は真剣に、必死に練習に取り組んだ。
“この人と共にプレーをしたい”
“共に勝利の快感を味わいたい”
溢れる部員の中、その気持ちが誰よりも強い者がスタメンとなれるのだ。
その部員同士の競争心、市井への遇像が部員達の力をみるみると上達させた。
何よりプレー中、点数が越されていても、落ち着いた冷静な表情で、かつ真剣な眼差しでチームメイトに訴えかける一言が、彼女達の自信を確信へと変えさせるのだった。
ドリブルしながら人差し指を立て発する決まった一言、
「まず一本決めよう!」
その一言を聞くと、“この人がいる限り自分たちは負けない”
“この人についていけば自分たちは勝てる”
という不思議な自信が溢れてくる。
彼女はキャプテンをする上で、実力に加えて異彩の不思議な能力を持っていた。
その溢れでた部員達の自信、市井紗耶香と言う人間からかもちだされたオーラの前に、敵チームは気迫で圧倒されてしまう。
“弱小チームからの奇跡とも言える成長ぶり”が瞬く間に世間を賑わせ、昭栄学園は一気に有名校へと名を走らせていった。
そんな『奇跡の天才バスケ部』が『気違い軍団』と呼ばれ、『天才市井紗耶香』が『氷の女市井紗耶香』と呼ばれるようになったは、ある出来事がきっかけだった。
- 45 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)00時33分14秒
- バスケの知識など全く無い顧問が一人ついているだけの昭栄学園バスケ部。
そんな部活を支えているのは唯一『天才』と言われる市井紗耶香という一部員だけだった。
部員は市井の存在によりみるみる成長し、練習試合では負け知らずとなり、
それまで度々対抗試合を行い、全敗していた隣の県の高校には、試合にならない程の圧勝を見せつけるまでになっていた。
部員達も、そして市井自身も“自分達は最強だ”と信じて疑わなかった。
そして初めての秋の大きな大会に、市井率いる昭栄学園バスケ部は溢れ出る自信を持って臨んだ。
その彼女達の表情には以前のような自信無さげの面持ちは全く見えず、会場入りしただけでそのオーラに“噂の昭栄学園だ”と会場がどよめいた。
部員達の頭には『優勝』と言う二文字までも浮かんでいた。
そして、試合が開始され、昭栄学園は予想通り着々と勝ち進んでいった。
しかし、第四戦目、誰も予想していなかった事態が、市井達を襲った。
いつも通り、市井にボールを集め、確実にポイントしていく。
そして試合は後半へと進んだ頃だった。
いつも繋がるはずのボールが、市井に全く繋がらないのだ。
突然の異変に、力を抜いて淡々とプレーしていた市井は何が起きているのか理解できず、焦ってチームメイトを見回した。
当然勝つだろうと思っていたので、チームメイトの変化に全く気付かなかったのである。
目に入ってきたのは、青白い顔をし、足をふらつかせ、肩を上下に大きく揺らしながらなんとか呼吸をしている部員達。
現実を直視した市井はようやく事態を飲み込めた。
そして部員達に不足していたものがこの時初めて気付いた。
バスケをする上で致命的となるものが彼女らに欠落していたのである。
『体力』『持久力』
- 46 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)00時34分16秒
- それに気付いた時には既に遅かった。
市井一人でリバウンドをし、ボールを運び、ポイントする。
なんとか点数を稼ぐものの、バスケは一人では出来ない。
例えどんなに天才でも・・。
最後の方は足を進める事すら出来ない者もいた。
連続4試合というものが、市井一人に頼りきってプレーしてきた彼女らには不可能だったのだ。
コート内でたった一人で敵に抗う市井。
相手はそれ程強いチームではない。
自分が負けるようなチームではないのだ。
しかし6対1というのはあまりにも無力だった。
相手チームは一人一人の能力も実力も技術も全く無い。
しかし“確実に繋ぐプレー”で市井を翻弄された。
まるで『鳥かごゲーム』である。
左右へと振り回される市井。
追いついたと思ったらパス、パス、パス、
点差が開き勝ちを確信した相手チームは、初め自分達を子馬鹿にしたように力を抜いたプレーをしていた市井を、ここぞと言わんばかりあちこちに走らせ振り回し、ゲームを放棄し、いたぶり続けた。
その姿は天才と名を知らしめる市井にとってはあまりに無様すぎた。
市井を見に来ていた観客達も、市井のあまりの醜態に気持ちが興冷めしてしまい、次々と会場を去っていった。
『天才』という二文字がチームプレイをする上でこんなにも無力な物だとは、その時まで知るよしも無かった。
市井紗耶香、無様な惨敗を、16歳で初めて味わう。
試合終了後、ロッカールーム倒れこむ部員達、市井は淡々と着替えを済まし、先に会場を後にした。
ガタンガタンと規則的な音を立てる帰りの電車の中、市井はこの時バスケ生命で初めて涙を流した。
声にならないすすり泣く声が、電車の音に空しくかき消されていた。
- 47 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)00時35分53秒
- それからだった。
市井が部活で笑顔を見せる事が無くなったのは。
そして殺人的な練習メニューを部員達に突きつけた。
そのメニューを見た途端、案の定部員達から不満の声があがった。
「そんなの出来る訳ないじゃん!」
「私らのせいで負けたと思って嫌がらせしたいんでしょ!」
無言でそのメニューを提示した後、市井が無表情で言い放った言葉が一瞬静まり返った体育館に響き渡った。
「無理だと言うなら退部しな!勝利への執着心が無い者はこの部活にいらない!」
それからは地獄の日々だった。
部員の殆どがやめていき、市井の事を最後まで信じた者のみが残った。
鬼と化した市井。
鬼のようなトレーニング。
夏の炎天下のランニングの中、意識を失いフラフラと車道に飛び出し車に引かれた者もいた。
運良く車が減速していたので、足首の骨折程度で幸い大事には至らなかったが、その事件は教育委員会の耳にまで入り、廃部という話まで持ち上がった。
その時市井は学園から姿を消していた。
誰もが“きっと責任逃れで逃げたんだ”と言った。
しかし部員が事故ってから1週間後、完全に姿を消していた市井だったが、突然現れたのである。
後の話では、姿を消してはいたものの、毎日夜に病院をコソッと訪れ、綺麗な花束を持って見舞いに来ていたと言う。
その事故った生徒は、“怪我が治ったらまた部活に戻りたい”と切望したのだが、家族がそれを許さなかった。
そしてその部員が市井に言った。
「キャプテンは間違ってないです。お願いですから続けて下さい!私一人の為に夢を捨てないで!」
その次の日、市井は何かを吹っ切った顔で学園に現れた。
そしてキャプテン市井紗耶香の熱い説得により、廃部をとりとめたのである。
- 48 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)00時38分33秒
―
―
試合は勝敗を分ける瞬間へと差し掛かっていた。
残り5分。
55対53、昭栄学院、2点のリード。
しかし気は抜けない。
バスケは最後の一秒まで何が起こるか分からない。集中力を欠かす事は決して出来ない。
市井が提示した殺人的練習メニュー、あの無様な負けを味わってから、そのメニューに最後までついてきた者は、今共に戦っている市井を含めたたった6人なのだ。
一時期は50人近くにまで膨れ上がった部員数。
しかし、“キャプテンの考え方についていけません”
“こんな大事な体をボロボロにしてまで勝ちたいと思いません”
などと一言残して、次々と去っていった。
見るに耐えない練習風景、今では観客も全くいない。
市井虐待説などありもしない噂まで流れ、校内では、市井は白い目で見られるか恐いものを見るような目で見られるかのどちらかだった。
部員もまた、『気違い』という目で見られる。
その周囲の目に耐え抜いて、ある意味勝ち残ってきたのが、今のメンバー。
その結束力は計り知れない。
自分たちを、市井紗耶香という人間を最後まで信じて1年間死ぬ思いをしながらも続けてきた。
“絶対、絶対負けたくない”
- 49 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)00時39分40秒
- 以前は市井に繋げる事しかしなかった部員達も、今ではチャンスがあれば自らがどんどんポイントしていく程になっていた。
あの屈辱的ゲームから一年間の死にたくなるような練習、体力は絶対に何処にも負けない自信がある。
天才と言われていた市井の実力にだって磨きが掛かっている。
劣るものは無いはず。
唯一あるコンプレックスは経験年数、のみだろう。
他の高校の部員達は恐らく小さい頃からバスケに慣れ親しんできた人ばかりだ。
市井率いる部員は、市井以外全員高校からバスケを始めている。
そのコンプレックスにも、辛い練習がそれを打ち消す。
以前持っていた自信とは全く違う自信。
“負けない、絶対に負けない”
- 50 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)01時08分51秒
- ――――
――――
見方の速いパスを全力で走りながら高い位置でバシッと受けた市井は、流れるようなフォームで次々と相手を交わし、ドリブルを続ける。
180センチくらいの長身のディフェンダーが立ちはだかった。
体が大きい分、守備範囲が並外れて大きい。
足を止めながら、バウンドを続ける市井。
しかし迷っている時間は無い。
無理矢理サイドラインギリギリを重心を低くしスピードをつけて突破しようと体を突き出した。
するとその大きな体からは予想できないスピードでそのディフェンダーがピッタリとくっ付き、凄い力で体を押してきた。
押された市井の華奢な体は横に傾き、アウトラインを出ると誰もが思った。
その瞬間、傾いたその体のバランスを利用して、左足を軸にし、クルッと回転してディフェンダーの体をすり抜けた。
『バックロールターン』
一瞬何が起きたか分からないディフェンダー。
押される事を予想してわざと敵を誘ったのだ。
この素早いバックロールターン、高校生の女子では市井のロールターンの速さは群を抜いている。
その天性のボディーバランスから繰り出すロールターンはもはや芸術である。
そのボディーバランスに加えて、『マネウバリング・スピード』市井の場合これが並外れて速い。
『マネウバリング・スピード』とは、ストップ、スタート、ターン、方向転換を行う時のスピードの事で、バスケ選手などはこれが並み外れて速いのである。
市井のそれは『天才』の域にある。
- 51 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)01時16分03秒
- ディフェンダーをすり抜けた市井、抜けたと同時に軽いステップで体をふわりと宙に浮かせシュート体制に入った。
と同時に阻止しようとジャンプするディフェンダー。
手首を思いっきり振り、市井のボールを叩きつけようとする。
しかしディフェンダーの手が空を切った。ボールがあるべき位置にない。
それと同時に聞こえるシュッというゴールネットをかする音。
湧き上がる黄色い歓声。
審判員や参考として見に来ている実業団チームの監督達が目を丸くした。
難易度の高い技『フェイダウェイ』。
素人目からはそれは簡単に繰り出された普通のシュートに見えた。
しかし市井はシュートする時、相手のディフェンスを予想して、本来走りこんできた力を上へのジャンプ力に加担するのだが、そこをあえて押し殺して少し後ろに飛んだのである。
これは並外れた腕力が必要とされる。
よって女子でできるものはそうそういないのだ。
数々繰り出される身長をいかしたプレー。
バスケが分かる人達は皆、息を飲む。
後藤もこの短期間バスケの雑誌や本などを買い漁って勉強した為、それがどんなに凄いプレーかが分かる。
これだけ凄いプレーをする市井の前に、後藤は手を胸の辺りで組みながらひたすら祈るしかない。
“市井先輩・・頑張って・・!!”
しかし相手チームも市井のオンステージを指を加えてみている訳では無い。
全国に名を知られている有名校だ。プライドというものがある。
個人個人のレベルが桁外れに高い為、コンビプレーがやはり巧い。
そして身長が平均170以上ある長身チームなので、リバウンドがどうしても取られてしまうのだ。
リバウンドはゲームの流れを持っていく。
一点入れ、一点取られ、その繰り返し。
たった5分でお互い6点入れあっていた。昭栄学園2点リード。
そして1分を切り、20秒を切った。
“このままいけば、勝てる・・!!”
誰もがそう思った。
- 52 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)01時16分49秒
- その時だった、思いもしない展開が訪れた。
“相手チームのスリーポイントシュート”
ここに来て相手チーム一点リード、もう時間が無い。
焦りに焦る昭栄学園チーム。
急いで味方にパスを出そうとするが、完全にマークされていて何処にも出せない。
20秒、10、9、
“もうダメだ・・・!!”
そう誰もが思った瞬間、
マークをフェイクで交わし、凄まじいスピードでリングに向かって走りぬける一人の姿が目に入った。
昭栄学園キャプテン、市井紗耶香。
“紗耶香なら、やってくれる・・!”
そう思い、一か八か・・・全身全力でボールを放った。
コートの端から端へと飛ぶ凄いスピードにのボール。
その仲間の肩の力の凄さを、市井は誰よりも知っていた。
- 53 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)01時17分53秒
- ―――――――――
―――――――――
“紗耶香・・私もうダメ・・足遅いし、何より人と押し合ってファールギリギリのプレーって言うの・・出来ない・・。何でかな・・こんなにキツイ練習に比べたら、人を押しのける事くらい簡単なことなのに・・・笑っちゃうね・・。紗耶香、一緒に頑張ってきたけど、ゴメン・・・私・・今日で、バスケ・・辞める・・・”
“・・美香・・美香は誰よりも優れたもの、持ってるじゃんっ“
“え・・?”
“私知ってるよ、美香の肩、誰よりも強いの。その肩は、昭栄学園バスケ部に必要だよ?”
“肩が強くたって・・私、コントロール悪いし・・。何にも役に立たない・・”
“・・・・コントロールって、どうすればつくと思う?”
“練習でしょ・・?でも、なんか私・・いくらやってもダメだし・・才能ないみたい・・”
“練習も確かにそうだけど、それよりもね、もっと大事な事があるんだよ”
“・・?”
“気持ち。絶対味方に届けるんだっていう、気持ち。絶対リングに入れるんだっていう、気持ち”
“気持ち・・?”
“そう、それさえあれば、絶対ボールは思った通りに飛んでくれるよ?ボールに、相手に、リングに気持ちを伝えるんだよ。美香なら絶対出来るから、だからもう少し一緒に頑張ろうよ、ねっ?”
- 54 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)01時20分10秒
- ―――――――――――――
―――――――――――――
“気持ちを伝える・・”“気持ち・・”
“お願い・・!!紗耶香に届いて・・・!!!”
高く、凄い勢いを持ったボールが体育館の空中を大きく飛ぶ。
動きを止めて息を呑むプレーヤー達。
一人必死に市井を追いかけるが、あまりに速くて追いつけない。
凄まじいスピードのボールだがスローモーションのように会場にいる全ての人の目に写る。
胸の辺りで手を組み、
「市井先輩!!!」
目を見開いて叫ぶ後輩達。
“紗耶香・・頼む・・!!”
ただただその場を動けずに祈るのみのチームの仲間。
そして、後藤はそれを見る事が出来ず、頭を下げて組んだ手をおでこにあて、目を伏せて心の中で叫びながら祈り続けていた。
“市井先輩・・!!!頑張って・・!!!”
相手チームからも悲鳴のような声が上がる。
会場全体が今までに無くヒートアップし、揺れる。
残り5秒、4、3、2、1、、
その時だった。
突然シーンと静まり返る会場。
- 55 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)01時21分25秒
- ゆっくりと目を開くと、プレーヤーを含む会場全体の動きが止まっていた。
ダムッッッッダムッッダムッダムッダムダムダム・・・・
後藤の耳に、力なく遠ざかっていくボールのバウンドする音が入った。
そして、目線の先には、手を伸ばしたまま、微動だにせず凍りついた市井紗耶香の姿があった。
(え・・・?先・・輩・・)
長い沈黙を破るように、けたたましい笛の音が体育館に鳴り響いた。
ッピ―――――――!!!!
ゲームセット!!!
スコア、61対62
昭栄学園、インターハイ準決勝、
『敗退』
- 56 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)01時24分55秒
- キャ〜〜〜!!悲鳴と共に立ち上げって喜ぶ相手チーム応援団と
泣きながら抱き合って喜ぶプレーヤー。
そして、その場に泣き崩れるプレーヤーが5人。
ただ一人、市井紗耶香だけは呆然と立ち尽くしていた。
試合中、誰よりもコート内を動き回っていた市井。
絶対に負けたくなかった。
絶対に共に辛い練習に文句一つ言わず耐えてくれた仲間を優勝へと導きたかった。
誰よりも強く持っていた熱い気持ちの結晶である汗が、その市井の気持ちをあざ笑うかのように、無情にも手のひらのボールの摩擦を消し去り、ボールはするりと市井の手を通り抜け、コートの外へと逃げていったのだ。
市井の頭の中はもう真っ白だった。
涙すら流れない。
固まる昭栄学園の観客達。
そして、後藤は市井と同じく事態を受け入れられずに頭の中が真っ白になっていた。
礼をした後、昭栄学園のプレーヤー5人はお互いの肩を抱き、支えあって、泣き喚きながらヨロヨロとコートを去っていった。
昭栄の後輩や観客もまた肩を落として会場を去っていく。
コートにポツンとただ一人取り残された市井。
まだその場を動けずにいる。
後藤は、ゆっくりと近づいた。
俯き加減で一点を見つめぼーっとしている市井。
その市井の隣に立つ。
しかし何て声を掛けていいか分からない。
- 57 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)01時25分49秒
「・・先輩・・」
そう声を掛けた途端、うつろな表情で後藤の方を見もせずにゆっくりと足を引きずるように体育館の出口に向かって歩き出した。
どうしていいか分からず、ただ後ろをついていく後藤。
“こいつら絶対インターハイで優勝させてやるんだっ”
“なんでって?バスケが好きだからに決まってるじゃん”
“そう。目指すは全国制覇!!”
“嫌われてもいいんだ・・。優勝の喜び味あわせてあげれるなら”
“スポーツやるからには、勝たなきゃ意味無いじゃん。その為には捨てなきゃいけないものもある・・”
後藤の目から一気に涙があふれ出てきた。
運命というのは、時にあまりに残酷すぎる。
長い努力、死にそうな辛さを耐え抜いた強い意志、熱い気持ちを、たった一瞬でかたずけてしまう。
その気持ちを、どうやって整理すればいいんだろう。
その気持ちを、どうやって慰める事が出来るんだろう。
そんな術を、私は知らない。
神様、あなたはその術も教えずに、人に何を与えてるというのでしょうか・・。
残ったものは、一体何なんでしょうか・・。
教えて下さい・・。
無言で歩く二人。
通りかかった人が市井の姿を見てヒソヒソと耳打ちする。
“何もしてあげれない・・”
悔しさと悲しさが溢れ出てくる。
後藤は唇をキュッと噛んだ。
- 58 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)01時26分43秒
ようやくロッカールームにつき、ドアを開けようとした瞬間、中から聞こえてきた声が、市井の足を止めた。
同じく足を止める後藤。
「市井先輩ってさ〜。あんな偉そうな事いつも言っといていざとなったらあれだもんね〜。カッコいいからさ〜厳しいけど我慢してこの部活入ったけど〜、な〜んか拍子抜け〜。信じてついてきた他の先輩も可哀相だよね〜」
その言葉を耳にした瞬間、後藤の頭にカーッと血が上り、ドアをぶち開けようとドアノブに手をかけた。
するといきなりガッとその手を市井に抑えられた。
「どうしてですか!!あんな好き勝手な事言ってるのに!!」
「先輩の事何も知らないクセに・・!!許せない・・!!」
そう言って後藤はポタリポタリと涙をこぼした。
市井の腕に零れ落ちた熱い涙が、ゆっくりと手に伝って零れ落ちる。
その涙を見ながら、市井がゆっくりと口を開いた。
「・・いいんだよ。本当の事だから・・。頼むから、彼女らを責めないで・・お願いだからさ・・」
「先輩・・」
すすり泣く自分の手を市井はゆっくりと引き、人影のない校舎奥のらせん階段へと連れて行ってくれた。
いや、市井自身が何処か人のいないところに行きたかったのかもしれない。
階段に息を吐きながらドカッと重い体を落とす。
その隣にちょこんと座った後藤は、試合後渡そうと思っていたタオルを市井の肩にそっとかぶせた。
「・・ありがとう・・」
そう言った後、そのタオルで全身から止め処なく流れ出る汗を拭く訳でもなく、下を向き、頭にダランとのせた。
後藤に表情を見られたくないのだろう。
- 59 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)01時29分54秒
- ようやく涙が止まった後藤だが、やはりなんて声を掛けていいのか分からない。
ただ市井のタオルで見えない横顔と、汗で肌に張り付いたユニフォームの、4という番号を眺めていた。
暫くして、下を向きタオルを頭に被せて表情を隠したまま、ようやく市井がゆっくりと口を開き、ポツリポツリと話し出した。
「・・市井さ・・間違ってたかな・・」
「・・何が・・ですか・・・?」
「市井のやってきた事・・」
「間違ってなんか無いです!!ここまでチームを強くしたのは市井先輩ですよ・・!!
先輩がいなかったら絶対にここまで来れなかった!!
だから・・だからそんな悲しい事言わないで下さい・・!」
「・・・・」
その後藤の言葉の後に、無言で市井の肩が小刻みに震えだした。
「先輩・・・」
そんな市井の背中を見て、後藤は思わず首に腕を回し、頭をギュッと包み込むように抱きしめた。
後藤に身をよせ、胸に顔を埋めて肩を振るわせながら、声を漏らしてすすり泣く市井。
「ウッ・・クッ・・ヒックッ・・」
その日初めて先輩の涙を見た・・。
「先輩、カッコ良かったですよ・・?誰よりも一生懸命だった・・。凄い、カッコ良かったです・・。
私、バスケをする先輩が・・いつも一生懸命な先輩の事が・・好きです・・。ずっと、好きでした・・。
そしてこれからもずっと・・」
「・・後藤・・・?」
真っ赤な目をした市井がゆっくりと顔を上げた。
そしてパッと下を向き、鼻をすすり、涙を拭い、もう一度真っ直ぐに後藤を見つめた。
その目は赤く、まだ潤んでいるが、いつもの真剣な市井の目だった。
後藤の好きな市井の目。
その目に引き込まれる。
絡み合う視線。
そしてゆっくりと市井の顔が後藤に近づいた。
その視線は、後藤の唇へと向けられている。
静かに目を閉じる後藤。
そして、ゆっくりと重なった。
そのキスは少ししょっぱくて、涙の味がした。
止まる時間。止まる空気。
その中で激しく音を立てる鼓動。
そしてゆっくりと唇を離し、今度は市井が後藤をギュッと強く抱きしめた。
「・・・ありがとう・・。市井も・・好きだよ・・」
- 60 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)01時31分41秒
「先輩・・」
「・・ゴメンね・・みっともないとこ見せちゃって・・。後藤の好きな市井は、こんな弱い奴じゃないよね・・。」
「・・うっし、もうクヨクヨすんの止めた!」
「・・先輩?」
「・・ん?」
ゆっくりと市井が後藤から体を離した。
「後藤、上手くなるから・・」
「え?」
「後藤、バスケ上手くなって、先輩の夢、絶対叶えます!」
そう言って後藤は優しく微笑みながら顔を上げた。
「・・後藤・・」
「絶対に後藤が先輩に優勝の喜び味あわせてあげる!」
「・・まずその最近体につき始めた肉取んなきゃ無理だな」
市井が鼻をすすりながら悪戯っぽく笑った。
「肉〜?!先輩にバレてたなんて・・後藤ショックだ・・」
「いや〜、、今抱きしめて思った(笑)」
「抱きしめるのやめておけば良かった・・」
「アハハッ(笑)もう遅い〜〜」
「・・・久しぶりに見たな・・。先輩のその笑顔・・。ホントは凄い優しく笑うんだよね・・」
「・・照れるっす・・」
「後藤だけが知ってるんだ♪」
「今日だけね、特別サービスっ。慰め祝いって事で・・」
「今日だけなんて言わないで、ずっと見せて下さい・・。もう、恐い顔無理してする必要ないでしょ・・?」
そう言って、ゆっくり市井に顔を近付けた。
「無理・・?バレてたか・・」
再び市井の唇を後藤の唇が覆った。
- 61 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)01時35分30秒
- ―――――――――――――
―――――――――――――
そして二年後・・・。
インターハイ決勝戦、白熱する試合の中、一人圧倒的な力を見せ付けるプレーヤーがいた。
その可愛い顔からは想像できないような真剣な表情。気迫。
流れるようなプレー、少しも無駄の無い綺麗な動き。
その動きを見た、見学に来ていた一人の男が呟いた。
「以前これと同じ光景を見たような・・。間違い無い・・あの天才プレーヤーと動きが全く同じだ・・。まるで彼女が乗り移ったようだ・・・。これは・・」
試合は一人の天才少女の活躍により、大差をつけてそのチームが勝利を手にした。
抱き合って喜ぶチーム。そして泣き崩れるチーム。
チーム同士で一礼をした後、その天才少女はわき目も振らず会場の隅で目深に帽子を被り観戦していた、お洒落な風貌の人物の所に一直線にダッシュしていった。
先程のゲーム中の真剣な表情からは想像が付かない無邪気な顔で、満面の笑みを浮かべる天才少女。
その走った勢いのまま、飛びつきながら抱きついた。
その天才少女に会場中の視線が集まる。
「いちーちゃん!!!!」
そう叫び、強引にキスをした。
驚く観客達。
「え?!彼氏?」
「マジかよ〜ショックだ〜!」
芸能人顔負けの可愛い顔をした天才プレーヤーを一目見ようと会場に押しかけたファンの男達が一斉にわめく。
「え〜〜後藤先輩彼氏いたの〜!?ショック〜〜!!」
同じく泣き叫ぶ後輩達。
その中で、一瞬発した後藤の言葉から“まさか”という表情で顔を見合わせるバスケ部の後輩達。
「市井って・・・」
「ちょっおい人見てるじゃん!恥かしいからやめろって!」
「いいじゃん自慢したいんだも〜〜ん♪」
市井の隣にいる5人の少女は「やれやれ・・」と言った表情で、見ていた。
しかしその顔はとても穏やかだ。
あの昭栄学園初のインターハイ試合を市井と共に経験した5人だった。
5人は自分たちの夢を果たしてくれた後藤率いる昭栄学園バスケ部の後輩達に、なんとも言えない感謝と喜びで胸いっぱいだった。
そんな先輩方の気持ちに全く気付かず、後藤は市井にキスしながら目深に被っていた帽子を取った。
端整な顔立ちがそこから現れた、が後藤の顔が邪魔してはっきりとは見えない。
あまりの二人のラブラブぶりにただ呆然とする観客。
「やっぱり天才はする事が違うわね〜・・」
そう言って感嘆するオバチャン達。
- 62 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)01時37分22秒
- バスケ部の後輩達だけは、その人がこの昭栄バスケ部を育て上げた伝説のキャプテンであると言う事を理解した。
そして全く無名だった後藤が天才と言われるまでになった訳も、同時に理解した、、。
学園内では“鬼のような練習メニューを作り上げた人”、ではなく、
“この無名な昭栄学園を一人でここまで作り上げた人”と言うふうに、その市井紗耶香の名は学校に伝説となった残っていた。
その過酷な殺人的練習メニューは市井が去った後も尚、後藤が引き継ぎ、昭栄学園の伝統となって染み付いていた。
市井達がインターハイ準決勝まで進んだという事実により、生徒達のバスケ部に対する見方も一変し、噂が広まった学園にバスケの強者共が次々と入学してきたのは言うまでもない。
散々キスをした後、顔を離した後藤の頭を市井は撫でながら、本当に嬉しそうに優しく微笑みながら言った。
「ありがと後藤!!ホントにありがと・・」
そう言ってギュッと抱き寄せた。
「ヘヘッ。市井ちゃんと一緒に掴んだ優勝だよ!!」
抱き合ってる二人のもとに、突然ドカドカッと慌しく大勢の報道陣が押し寄せてきた。
「後藤さん!一言お願いします!」
「優勝した感想を聞かせて下さい!!」
シャッターを切る音とともにパッと眩しいフラッシュが何度も光る。
市井は「後藤あとでねっ」と耳打ちすると帽子を拾って再び目深にかぶり、サッと人ごみの中に消えて行った。
「え!?ちょっと待っ・・」
後藤も市井の後を追おうとするが完全に囲まれてしまって輪から出られない。
「今の人は誰ですか!?」
「え・・いや・・」
「後藤さん優勝した感想を一言!」
「まず誰にこの喜びを伝えたいですか!」
「バスケはいつ頃から始めたんですか!」
一気に色んな質問をされて混乱する後藤。
そんな中一つの質問だけがはっきりと聞こえた。
「後藤みたいな人って天才っていうんでしょうね〜!それについてはどう思われますか?!」
下向き加減でオロオロしていた後藤は、その質問を聞くと突然スッと顔を上げて、満面の笑みで無邪気な顔をして答えた。
『天才じゃないですよっ。誰にも負けないくらいバスケが好きなだけですっ!』
――― FIN ―――
- 63 名前:ま〜 投稿日:2000年11月05日(日)01時42分34秒
- おもしろかったっす!
感動したっす!
- 64 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月05日(日)01時59分54秒
- なんかサクサク更新されていっていいな
- 65 名前:Hruso 投稿日:2000年11月05日(日)02時08分14秒
- 白板の方と両方すごく面白いです。
体育会系の市井ちゃんかっこい〜。
- 66 名前:Oー150 投稿日:2000年11月05日(日)02時17分46秒
- うわっ!!ミスだ!!
最後のインタビューシーンでの、大事な質問のとこ・・
「後藤みたいな人って、、」とか呼び捨てしてますが、「後藤さんみたいな人、、」
の間違いです・・・(号泣)
鬱だ・・・・・・・。
- 67 名前:I&G 投稿日:2000年11月05日(日)02時57分08秒
- よかったです。
欲を言えば試合後の市井の態度の変化。(冷たい目をしていたのに優しく微笑む
ようになった。)に驚く生徒達っていうのと、またまた、ファンが増えてやきもち
をやく後藤って感じみたいなのを、番外編で書いてほしいです。
- 68 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月05日(日)05時01分10秒
- 67さんの意見に賛成。
俺もファンが増えてヤキモチ焼く後藤見てみたい。
う〜、でもマジ小説の方早く見たいしなぁ・・・。
ひとつ言えることは、あなたの作品が好きってことだけです。
- 69 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月05日(日)08時54分41秒
- 番外編、賛成! "先輩"から"いちーちゃん"に呼び方がかわる経緯とかも見てみたいッス。
- 70 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月05日(日)10時44分41秒
- うわー。マジ良かったっす。
一生懸命なごっちんいい感じ。市井ちゃんもいい感じ。
また作者さんのお話読みたいです。
- 71 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月05日(日)12時17分54秒
- おもしろいですー。
番外編も期待してます。
白版の方も更新お願いしますー。
あたしもあなたの作品好きです。
- 72 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月05日(日)12時47分13秒
- 最高だよ。俺のつぼをモロに突かれている。
市井の震えた手を握る後藤最高!!
- 73 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月05日(日)15時29分38秒
- おもしろかったです。ただ1つ言わせていただくと、
バスケは、5人対5人です。6人と勘違いしてるんじゃ?
みんな、ひたってるときに冷静な指摘でごめん。
- 74 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月05日(日)21時11分58秒
- ピンチランナーじゃなく、これが映画なら良かったのに、と
思う俺は市井ヲタ♪
- 75 名前:Oー150 投稿日:2000年11月06日(月)01時26分21秒
- あぁ・・レスが沢山・・(感涙)
ドライアイに負けずに書いたかいがあった・・・。
えと・・致命的なミスしちゃいました・・。
バスケ5人・・だ・・。そうだよな・・・。
何故だか6人と思い込んじゃってた・・・・。
本当は自分がやってたサッカー書きたかったんだけど、女の子扱うから二番目に好きなバスケにしたんです・・。
って言い訳するなってな・・。
ホントすみませんです・・・・。
あぁ修正してぇよぉぉぉ!
レスがむちゃむちゃ嬉しかったんできっちりお返し致します。
>34さん
激しく更新してみました。。
>35さん
ありがとうございます!一言につきられて僕も嬉しいっす!
>坊主さん
後藤・・可愛いっすよね〜・・(ワラ
今回はちょっと大人しいゴマなんですが、市井先輩の前だからって設定に一応してます。
キャラが違いすぎて後藤と被んないかな〜とか思ったんだけど、ちゃんと被ってもらえたようでよかったです。
>37さん
市井ちゃんて、なんとなく部活とかによくいる熱血先輩って感じしたんで、かなりスポーツと繋がるとこあるなっていう発想から突然書きたくなった話なんで、、。
実は関係ない話書いてるようで、実際の市井ちゃんとリンクさせてるつもりです。
発言の一つ一つとか、、。夢に一直線のとことか、、。なので気付いて貰えて嬉しいです!
>38さん
かなり熱い感じになったつもりですが、、どうでしょう・・。
う〜ん熱いっていうのかなこれ大丈夫かな・・。
>ま〜さん
更新後速攻の書き込みありがとうございます!(ワラ
凄い慎重に更新してったんでメチャメチャ時間掛かっちゃったんですけど、、もしかしてリアルタイムで読んでいて頂けたのかな??
>64さん
サクサク更新したっていうか、もう既に書きあがってはいたんですよ。
なんで更新が遅かったんです・・。
- 76 名前:Oー150 投稿日:2000年11月06日(月)01時33分18秒
- >Hrusoさん
板を超えて来て頂けて嬉しいっす!
あっちでもこっちでもホントありがとうございます。
>I&Gさん
リクエストには答えたくなっちゃう人なんで、それ書こうと思います。
まずはマジ小説更新して、それからになっちゃうと思いますが、、。
>68さん
告られたのと同じくらい嬉しかったっすその一言(ワラ
焼きもち後藤、僕も書きたくなってきたです。
>69さん
“先輩”から“市井ちゃん”に変わったっていうの、その間に二人の間で色んな事があったんだろうな〜って想像して貰えたら、、とか思ってたんだけど、そうっすね、書いちゃってもいいかな?
>70さん
ありがとうございます!
はい、貴重な“一生懸命なごっちん”書いてみました(ワラ
実はもう一個、これ面白いかも!っていうネタの話思いついているんですけど(ちょっと明かしちゃうと、王子系・・)、マジ小説の方も続き書きたいし、その続編で市井ちゃんの脱退後の現在の生活っていうリアルすぎるのも(苦笑)書きたいと思ってるんで(もう結構書いた)、載せた時は是非読んで頂きたいっす!
>71さん
ありがとうございます!
白板も更新しますんで待っててください!もう続きは書いてるんで。
実は僕も凄い楽しみにしてる小説があるから、それ更新されたら僕も載せて行こうかなって思ってるんですよ。
被っちゃって邪魔したら悪いなって思って。
予告しちゃうと、結構エロに突入します。いいのかな?ってくらい・・。
>72さん
嬉しいです!!
手を握るシーン、実は一番最後に書いたんす(苦笑)
この話、書き準が無茶苦茶なんすよ。
最後のインターハイ試合→出会い→中盤のごまの気持ちの変化
って書いていったというなんとも普通じゃない書き方してるんで・・。
でもそのお陰でテンションをいい感じで書けました。
>73
いえいえ指摘して下さらなかったらアホ丸出しで浮かれたレスをしてるとこでした!
ホントありがとうございます!
次からはもっときっちり確認してから慎重に書かないとダメだなっていう凄い勉強になりました。
>74さん
あっ市井ヲタスレッドから流れてきてくれた方かな?!嬉しいっす!
そういう僕も市井ヲタっす(ワラ
だからこそ書けるっていう部分があります。
市井ちゃん扱わなかったら絶対書けないっす。
- 77 名前:Oー150 投稿日:2000年11月06日(月)01時33分50秒
- 読んでくれた方本当〜〜にありがとうございました!
ホント、レス嬉しいんで、読んで頂けたら「つまんねっ」の一言でも、あったら嬉しいっす。読んでもらえたんだなっていう確認になるんで、、。
- 78 名前:FANTASISTA 投稿日:2000年11月06日(月)02時55分46秒
- 白板で「あの頃〜」を書いてます。板違いなんでハンドルも違います。
メチャ面白いっすね。バスケがスキなんで一気に読んで感動しました。
あえていちごまだけに絞ったところも読んでて面白かったです。
白板のほうも…続きがみたかったりする(w
- 79 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月06日(月)05時47分07秒
- 王子系というのも読みたいぞ。
- 80 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月07日(火)04時13分20秒
- 読みあげ♪
- 81 名前:元バスケ部 投稿日:2000年11月08日(水)00時22分36秒
- 毎日バスケ三昧だった頃を思い出した。
続編あるみたいなんで期待してるっす。
あと、白板も楽しみにしてるっす。
- 82 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月17日(金)23時31分44秒
- かなり良かったっす。
- 83 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月20日(月)15時11分30秒
- うざい
- 84 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月08日(金)17時47分18秒
- いいなぁいちごま・・・。
自分王子系のヤツも読みたいです〜。
- 85 名前:いずのすけ 投稿日:2000年12月11日(月)11時09分32秒
- バスケ好きだから面白かったよ。
おいらのともだちも日本リーグで頑張ってます。
- 86 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月11日(月)13時51分46秒
- >>83だれがでしょうか?
- 87 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月14日(水)23時43分23秒
- 今日初めて読んだけど、やっぱりいちごまいいっすね
また書いてください
- 88 名前:O-150 投稿日:2001年02月15日(木)04時33分00秒
- ばれんたいん
「ちょっと待って!そんなの絶対最後の方が有利じゃんズルいよ!1番なんて絶対イヤ!代わって!」
「ダメですよ〜ジャンケンで決めた事なんですから、いくら先輩でもそれは聞けませんよ」
「ちょっと!部活帰りいつも焼き鳥おごってやってるじゃん!」
「あ・・いやそんな事恩気せがましくされても・・・」
「そんな事!?あ〜そういう事言うんだ。もういいよおごってやんないから」
「え!?わっ分かりましたよ〜・・私最初でいいですよ・・」
「あんた後輩いびってんじゃないよ(笑)」
「こういう時に先輩の立場使わないでいつ使うのさ」
「ハハっ・・(苦笑)っていうか順番なんて全然関係ないと思うけどね・・」
「・・今まで成功した人いないって噂ですしね・・」
「「・・・・・」」
「いやでもさ〜分かんないじゃん。とにかく最初に言った約束だけは絶対守ろうね」
「「うん」」
「みんなホントに分かってる?」
「分かってるよ〜、、、、
『恨みっこなし!成功者を素直に祝福!靴の中に画びょう入れない!!』
「よしっOK」
「もう・・あとはとにかく当たって砕けろでしょ・・」
「砕けるんですか・・・。あたし明日学校休むから今日のうちに担任に言っときます・・」
「まぁまぁまだ分かんないって・・。ほらあんたみんなドンドンテンション下がってくから早く行ってきなよ・・」
「あ、すいません・・じゃ〜行って来ますね・・」
- 89 名前:Oー150 投稿日:2001年02月15日(木)04時35分59秒
―――――
「はぁ〜・・緊張するな〜・・なんせ面と向かうの初めてだし・・」
「もういいや。とにかくやるだけやろう・・」
ガラッ
「・・あっあの初めまして!1年C組の、、、
吉澤ひとみって言います!!」
- 90 名前:Oー150 投稿日:2001年02月15日(木)04時49分50秒
- 久々のレスが嬉しかったので、一日遅れですがバレンタインデー特別企画って事で、、短編やります。
一応この『天才』の続編です。
白も頑張ってますんで、、宜しくです(?
多分今日中には終わらなくて、明日に延長すると思いますけど・・。
- 91 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月15日(木)06時56分23秒
- 続き楽しみにしてます
- 92 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月15日(木)08時25分22秒
- 同じく期待待ち
- 93 名前:Oー150 投稿日:2001年02月15日(木)18時29分07秒
- 今までのどんな面接よりも緊張してるのが自分でも分かる。
心臓を高鳴らせながら顔を上げると、その人は小さな窓から入る光を背にしてくるっと振り返った。
光のシルエットだけが浮かび上がって、、。
「じゃーこの手紙書いたのって、、」
「はい、私です・・字ぃ汚くて・・すみません・・」
まるで、その人自身から光のオーラが出てみたいな錯覚を起こす。
―――いや、いつも見えてたそれは、間違いなくその人から出てるオーラだ。私にはいつも、いつも見えてた。
「そんな事いいけどさ〜こんな狭い更衣室にわざわざ呼び出したりして、なんの用?」
「・・・ええと・・」
表情一つ変えない冷たい喋り方。首を掻いたり下向いたりと落ち着きなくて、明らかにめんどくさそうな、迷惑そうな仕草。
必要以上に愛想を振り撒かない人だって事は知っている。
でも、この人の言動は必ず意味があるんだよって、この人を昔から知ってる先輩が言ってた。
「・・・・」
こんな日にこんなとこに呼び出されたら、誰だって何の用事かくらい分かるはず。
私の後ろ手に持ってるこの小さい紙袋も、気付かれてるに違いないし。
「なんだよ悪いけどさぁ、ちょっと今日そんな暇じゃないんだよね」
なのにこの突き放すような喋り方。態度。
もう、応えは出てる。
先輩は、私が言う前に返事を出してる。
正確には、出してくれてるのかな・・。
そんな風に言う前から冷たくされたら、普通の人は嫌になって引のかもしれない。
諦めるのかもしれない。
そうしたら、、、傷は浅くて済むのかもしれない・・。
「、、話無いなら帰る。じゃあね」
私は本当の先輩の姿っていうのを知らない。
だから、もしかしたら本当にこういう人なのかもしれない。
でも、、どうせなら、私が憧れた、尊敬した私の中のイメージのまま、綺麗な思い出として先輩とお別れしたい。
これがきっと、最初で最後だし・・。
だから、、、
「・・・・市井先輩が好きです!!」
- 94 名前:Oー150 投稿日:2001年02月15日(木)18時36分29秒
- これ今日中にも終わんない気がする・・(ニガワラ
バレンタインから何日遅れる気だ!(怒
( ´ Д `)<いちーちゃん今年はチョコもらえたのかなぁ・・
- 95 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月15日(木)20時45分58秒
- いちよし?!
- 96 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月15日(木)20時47分09秒
- イイトコで、切りますね〜♪
続きめっちゃ気になります。
- 97 名前:Oー150 投稿日:2001年02月15日(木)23時29分05秒
- ――――――
【吉澤ひとみ】
クラス:1年C組
容姿:顔はタレント顔負けの可愛さ。ひとみという名前だけあって、くりっとした目が印象的。女の子にしては身長が高く、割とガッチリしているので運動部のあちこちから声がかかるのだが、中学時代バレー漬けの日々を送ったので高校では遊ぶ!という決意を曲げずに今に至る。
性格:基本的にぼーっとしているが、熱くなったら一直線。
――――――
私が好きになったこの市井先輩は、バスケ部キャプテンで、その実力は去年のインターハイで証明されてる。
それまでは『氷の女』とかって呼ばれてて、とにかく凄い怖がられてた。
インターハイを境に先輩は変わったってよく耳にする。
先輩を知ってる人は、元に戻っただけだよって言うんだけど、、。
市井先輩との出会いは、、、
・・出会いっていう出会いはないな・・。
つまり、一方的に出会っただけで、向こうは知らないはず。
私的には、廊下で物をバタバタと落としちゃって、慌てて拾ってたら無言で誰かが一緒に拾ってくれて、顔を上げたらそこには市井先輩が・・とかそんなのが良かったんだけど・・
現実はそんなドラマみたいにはいかないんだよね。
そんな風な出会いをした二人は、元々結ばれる運命なんだよきっと・・。
、、私が先輩を初めて目にしたのは、去年の暮れ。
だから、好きになってホント数ヶ月しか経ってない。
正直こんな短期間にここまではまるとは、全然思ってなかった。
先輩の事は名前だけ聞いてたけど、それまではよく知らなくて、、、
- 98 名前:Oー150 投稿日:2001年02月15日(木)23時30分07秒
ある日、放課後友達とくだらないお喋りしながら残ってたら、廊下がやけに騒がしくて、バタバタと走っていく生徒達の姿が目に入った。
なんだろうって思って、友達と二人でその人達についていったそこは、『体育館ギャラリー』ってプレートがついていて、不思議に思いながらもドアを開けた私は、思わず驚嘆した。
凄い人数のギャラリー陣に、耳が痛くなる程の黄色い声。ここはライブ会場!?って錯覚しそうになるほどだった。
何が起きてるのか気になって、人波を掻き分けてなんとか手すりを確保した。
下を見下ろすと、ジャージを着て、ゼッケンを着けた人達の姿。
そして、黄色い声に紛れて聞こえてくる、ダムダムッキュッキュッという音。
その音に反応し、目をやる。
――――なんだ、単なるバスケ部の練習じゃん
- 99 名前:Oー150 投稿日:2001年02月15日(木)23時32分39秒
- まぁ、元気有り余る高校生な訳だし、女子校って事で普段そういうキャーキャー騒ぐ機会っていうか、胸高鳴らせる事が少ないだろうから、たまにこうやって発散したいのかもしれない。
私は、入学して1年くらい経つけど、どっちかっていうとキャーキャーいわれる側で・・・
あれって結構ウザかったりするんだよね・・。
なんかいつも自分の行動監視されてるようでちょっと怖いし・・。
告白とかされて、断ると泣かれたりとか、、かなりどうしていいか分かんない。
で、好きとか言ってたくせに、断ると次の日から態度が一変して、「吉澤さんってなんかムカつく」だとか訳の分からない愚痴を聞こえるように言ってきたり・・・。
「女って・・」って心の中で複雑な思いになる事がしばしある・・。
だから、キャーキャー騒がれる側の気持ちが分かる私は、
「バスケ興味ないし〜出よ〜よ!」
そう友達に耳元で叫んだら、、、
友達は少女漫画の主人公のように目をキラキラさせて、何かにくぎ付けになっていた。
無類の男好きの友達。「三度の飯より男!」そう豪語(?)していたこの子がこんなになってる姿初めて見たから、ビックリして、目線の先を追う。
そこには、ボールをまるで体の一部のようにドリブルしている一人の先輩の姿。
見て、第一に思ったのはやっぱ、
・・・・上手い・・・・・
それは、誰でも思うだろう。
バスケ素人の私が見ても、そのプレーがとてつもなく上手い事はわかった。
一年でボール触れる訳ないから、先輩だっていうのもすぐに分かる。
私もすぐにそのプレーに引き込まれた。
- 100 名前:Oー150 投稿日:2001年02月15日(木)23時33分40秒
- そしてそのうちに、色んな事が見えてくる。
距離があるから、表情までははっきりと見えなけど、整った顔立ちで、雰囲気が凄く大人っぽくて、熱くなってるのに落ち着いてる。
上手いのに、あまり自分で得点しなくて、ゴール前では味方にパスばかり出している。
それも、味方全員に均等に出してる感じ。
不思議に思いながら見ていると、私のその疑問の答えに繋がるヒントが、タイミング良く聞こえてきた。
「先輩のプレー見るのって久しぶりだよね〜」
「このプレーも今年で見納めかぁ〜〜」
「今年っていうか、次いつプレーするかもう分かんないよ。今日残ってた私ら運いいみたい」
あぁそっか、
――――もう自分は引退してるから、後輩に・・・
- 101 名前:Oー150 投稿日:2001年02月15日(木)23時34分40秒
- それが分かっちゃったのがまずかった。
恋愛の法則みたいなもんだろう。最初は、ただ無条件に惹き付けられる。
そして、次にその人の中身が少しでも見えちゃったら、、あとははまるか冷めるかのどっちかしかない。
私は運が悪かった。・・普通良かったって思うのかな・・。
先輩は、その華奢な体に似つかない程の存在感をかもし出していて、確かに輝きを放っていた。
私はオーラというものを、その時初めて見た。
- 102 名前:Oー150 投稿日:2001年02月15日(木)23時36分10秒
- それからはもう、今まで私がされて嫌だった事をそのまましていた気がする・・。
とにかく周りウロウロしてたから・・。
先輩は全然気付いてないと思うけど。
放課後毎日体育館を見に行って、先輩がいるかいないかをチェック。
いない日は、朝ゆで卵もベーグルも食べないで登校してきた時みたいに、一日やる気が出ない。
いた日はいた日で、一日ボ〜っとしちゃって、何も手に付かない。
この数ヶ月、私は完全に先輩にやられてしまっていた。
友達の方は、熱し易く冷め易い性格だったから、キャーキャー騒いでたのは最初だけで、ライバルが多すぎる事が分かるとすぐにジャニヲタへと転向していた。
休み時間になると、この行動的じゃない私が、意味も無く三年生の廊下、、つまり三階をウロウロする。先輩に偶然会いやしないかと期待に胸躍らせながら。
一度、どうしても間近で顔を見てみたくて、後姿見つけた時に急いで下の階から回り込んで前からすれ違った。
キリッとした意志の強そうな表情。一見「機嫌悪い?」って感じで、近寄り難い。
まぁ・・文句無しにカッコよかったけど・・・。
- 103 名前:Oー150 投稿日:2001年02月15日(木)23時38分29秒
- 私が先輩を見かけると、なんかいつも一人でいる。人気あるはずなのに、何故だろう。
そう思って、先輩と唯一仲がいいって言われてる人に、そこんとこを聞いてみた事があった。
先輩と正反対に凄い人懐こくて、話しやすい人だった。
なんでも、小さい頃先輩の家の近くに住んでたから、幼馴染とまではいかないけど、他の人よりは気心知れてるとかなんとか。
彼女の話によると、一人でいるっていうより、単独行動が好きらしい。
自分のやる事で色々忙しいから、人と行動を合わせない。そういう人だって言ってた。
他にも、彼女もしくは彼氏がいるかどうかとか、何が好きかとか、色々聞いたけど、
聞いてるうちに、その先輩の表情が曇ってきて、、
「・・私、紗耶香の事私なんにも知らないや・・・」
そう悲しそうに言って、ごめんって一言言って去っていった。
なんであんなに悲しい顔したのか、その理由は今日初めて分かったんだけど、、その先輩の事はその先輩に任せよう・・。
私にはどうにも出来ないし・・。
結局、先輩のファンクラブらしき人達に色々聞いたんだけど、
市井先輩はホントに不思議な人で、全くと言っていい程先輩の事は分からなかった。
ただ、あんまり人に興味無いみたいだっていうのは聞いた・・。
人よりバスケって感じらしい・・。
告白して成功した人も、いないらしい。
そんなんなのに、告白して、顔も知られていない私が成功する訳が無い。
それは、分かってる。
でも、このままでは気持ちの踏ん切りがつかない。
これは、告白と言うより、ショック療法だ。
はっきり振られれば、切りかえれるんじゃないかな。そう思ったから、私は告白するのをこの日に決めた。
平日にわざわざ呼び出して、手間かけさせてまでして振られるのもなんだし。
- 104 名前:Oー150 投稿日:2001年02月15日(木)23時40分57秒
- ――――――
――――――
“なんだよ悪いけどさぁ、ちょっと今日そんな暇じゃないんだよね”
案の定、先輩は私が言い出す前に私を振った。
けど、こんなものでは私の熱は冷めない。
はっきりと、あんたなんか興味無いって、そう言ってくれなきゃ・・。
「・・・・市井先輩が好きです!!」
私の決意は、自分が思ってた以上に強かったみたいだ。
私を見もせずに歩き出した先輩の動きが止まる。
「・・・・・」
一瞬の沈黙。私の中でのそれは、凄い長かった。
先輩の表情は、部屋が暗くて読み取れないけど、多分、言う訳ないと思ってただろうから、戸惑ってるんだろう。
――――先輩を戸惑わせただけでも収穫物かな?
そう思ったらなんだかちょっと嬉しくなって、どうせだったら想い全部吐き出してやるって気持ちになった。
どうやら私は基本的にプラス思考らしい。
「その・・先輩は私の事、知らないでしょうけど、、私は、先輩がバスケしてる姿を、いつも見てました・・」
「っていうと・・なんかストーカーみたいで怖いと思うんですけど・・ハハッ・・」
「先輩のバスケする姿って、すっごく、、なんていうか、いいですよね。見ている方まで楽しくなるっていうか、、」
「・・あっ私中学の時バレーやってたんですよ。でも、あぁ〜バスケやってりゃ良かったな〜って、そ〜〜と〜後悔しましたもん・・(笑)」
なんだろう。こんな明るくベラベラ喋りまくりながら告白する私って、ちょっと変だよね。
「・・だからその・・とにかくチョコ作ったんで、先輩甘い物好きかどうか分かんないけど、もしよかったら食べて下さい!」
―――もう、伝える事はない。っていうか、ありすぎて整理つかない。
だから、これ渡して、私は先輩に「なんだこいつ?」って思われたまま先輩の記憶から消えていけばいいや。
私は、後ろ手に持っていた小さい紙袋を、頭を下げて両手で先輩に突き出した。
- 105 名前:Oー150 投稿日:2001年02月15日(木)23時42分27秒
- 「・・・・」
先輩は、無言でそれを受け取ってくれた。
、、良かった・・。受け取ってくれただけで満足だ・・。
ショック療法はダメだったけど、でもなんか、気持ち吐き出したらすっきりしたな。
そう思いながら、私はクルッと後ろを向いて、ドアノブに手をかけ、ドアを開けようとした。
その瞬間、思いもしなかった言葉が、私の耳に入る。
「・・どうでもいいけどさぁ〜、、、、、」
「!?・・・・」
続いた言葉は、私の中で処理し切れなくて、グルグルとその言葉が錯乱状態で駆け回る。
・・・先輩って、意地悪だよ・・・やっぱ、好きになんなきゃ良かった・・・
- 106 名前:Oー150 投稿日:2001年02月15日(木)23時44分18秒
- ( ´ Д `)<いちーちゃん・・・
ちょっとここでストップです。
やっぱ結構長くなりそうだな・・・クソッ
- 107 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月16日(金)02時23分14秒
- 続きマジ気になります。
頑張って下さい
後藤は何処だ?!
- 108 名前:O-150 投稿日:2001年02月16日(金)03時01分03秒
パタン・・・
ドアが、力ない音を立てて閉まる。
私は、閉まったドアに背をもたれさせ、俯いていた。
「ちょっと!どうだったのさ!」
まるで就職試験の結果を知りたがってる人みたいに、凄い剣幕で聞いてくる。
それは間違っても、自分の事のように心配してくれてるんじゃない。
それが分かるから私は、
「ダメでしたよ」
他人に当たってもしょうがないのに、軽く睨みつけながら抑揚なくそう言った。
「・・そっか・・」
そう残念そうに言っている彼女と彼女達の顔は、明らかにちょっと嬉しそうだった。
(・・慰めてくれる人がここにいたら逆に怖いか・・)
私は更衣室の前の廊下で緊張した面持ちで鏡を見ながら化粧を直したり、落ち着き無くウロウロしたりしている人達の間にズカズカと入り込んで、
「っふ〜〜・・・・緊張したぁ〜・・」
と言って大きく息を吐きながらベタっと床に座り込んだ。
「あっ先輩にまだ人いるって言うの忘れてました。次の人早く行った方がいいですよ」
「・・次は私か・・じゃあ行ってくるね・・・」
黒くて長い光沢のある綺麗な髪を手で触りながら、普通にしててもちょっと怖い顔を更に強張らせてドアへと向かって行った。
- 109 名前:Oー150 投稿日:2001年02月16日(金)03時02分04秒
- 私は、さっきの先輩の言葉でまだここを動けそうに無い。
なんか体の力が抜けちゃって、気持ち悪い。
いや、気持ちいいのかな。
“・・どうでもいいけどさぁ〜、、、
吉澤ベーグル食べ過ぎじゃない?”
・・・なんで知ってるんだよ!!
確かに私はギャラリーでいつもベーグル片手に先輩見てたけど・・。
人が告白してんのにホンットにどうでもよさそうに“どうでもいいけどさぁ〜”って言ったあれは、その気は無いよっていう前置きだろうから、
結果的にやっぱり振られたんだけど・・・
ベーグル食べてたのは知ってるよって・・・
―――私の事ちゃんと知ってたよって教えてくれたのかな・・
先輩って振るの下手だな・・・。そんな事付け加えたら・・。
「忘れられないじゃん・・・」
私はは制服のポケットに入ってるベーグルを一つだし、口いっぱいに頬張った。
クソッ振られた後なのになんでこんなに美味しいんだよ!!
あ・・なんか視界がぼやけてる・・。
- 110 名前:Oー150 投稿日:2001年02月16日(金)03時04分16秒
- ―――――――
―――――――
ガチャッ
「ごめんねっ吉澤で終わりじゃないよ」
そう言って、無理矢理ニコッと笑った私の顔は、明らかに引きつってたと思う。
「・・・・・」
コートを着て、荷物を持ち上げ、帰る準備万端というところで私が部屋に入った。
私の言葉に紗耶香は何のリアクションもせず、ただ黙って荷物を下ろして部屋の隅に転がっているバスケットボールを手にした。
ダムッダムッダムッ
おもむろにドリブルを始める。
相変わらず無表情の紗耶香。
何考えてるのか分かんなくてちょっと怖いんだけど、それはそっくりそのまま私がいつも言われてる事か・・。
―――それにしてもダンディーだな〜カッコイイ・・・
溜息が出そうになったところではっと我に返った。
見とれてる場合じゃない・・。
ダムッダムッダムッ
「何、言いたい事あんならさっさと言ってよ」
「・・あっあのさ〜・・紗耶香は〜、、、、
カオリの気持ち気付いてたと思うんだけど〜・・」
- 111 名前:Oー150 投稿日:2001年02月16日(金)03時10分31秒
- ( ´ Д `)<後藤もちゃんと登場するんでしょうねぇ〜・・
もう展開見え見えですよね。こんな感じで進めていきます。
あくまで短編なので、日にち掛けないでなんとか今日明日中には終わらせたいな〜・・
- 112 名前:Oー150 投稿日:2001年02月16日(金)03時13分01秒
- ――――――――
【飯田香織】
クラス:3年B組(市井と同級生)
容姿:モデル並みのプロポーションに、黒く綺麗なロングヘアーが人目を引く。美人というのはどうしても性格がきつく見える。飯田の場合その典型で、無表情でいると、怒ってる?と誤解を受ける事もしばしば。
性格:容姿からは想像付かない程の天然。
ぼーっとしてるとどっかに行ってしまう事がよくあり、本人いわく宇宙と交信しているらしい。とにかく外見とのギャップが激しい。
盛り上がるととことんいってしまうので、恋愛はとくにはまると熱い。
――――――――
紗耶香がこの学校に転入してきた日の事を、私ははっきり覚えてる。
「市井紗耶香です。宜しくお願いしますっ」
そう言ってニコッと笑った紗耶香の最初の印象は、なんか明るくて元気な子って感じだった。
その頃カオリはと言うと、、、思い出したくも無いな・・
毎日がとにかく苦痛だった。
私は、女子校には付き物と言われている、、、
虐めに合っていたんだ。
- 113 名前:Oー150 投稿日:2001年02月16日(金)03時13分33秒
- やっぱここまで載せとこ
- 114 名前:Oー150 投稿日:2001年02月16日(金)05時12分02秒
- ――――――
「ねぇ〜ちょっとさ〜〜いつも思ってたんだけど〜あんたしょっちゅう私らの事ガンつけてるじゃん」
「え・・カオリ別に普通にしてるんだけど・・」
休み時間。私を取り囲むように5・6人のクラスメイトのヤマンバギャル達が席についてる私を見下ろしながら突然因縁をつけてきた。
それが、
全ての始まりだった。
2年になってすぐの出来事だった。
私自身に原因があったのか、運が悪かったのかは、今となっては分からない。
それまでの経過を話すと、、、
―――――
学年が上がり、それまで仲良かった友達とクラスが別々になってしまった私は、新たな友達を作るきっかけが掴めずにいた。
私って話し掛けにくい人みたいだから、自分から積極的にいかないと、友達を作るのは難しい。
それは分かっていたんだけど、たまたま新学期早々風邪を引いてしまい、何日か休んでから久々に入った教室は、私の居場所なんて無かった。
最初が肝心ってよく言うけど、ホント、こんな事なら体引きずってでも登校すればよかったって、その時は凄い後悔した。
人は、自分の居場所を確保したら、もう必要以上にその輪を広げる事はない。
よっぽどその人に魅力があれば、自分の輪に取り込もうとするだろうけど。
私は、話してみると凄い面白いってよく言われる。
それって、話さなかったら怖くて近寄り難い、、って事だろう。
じゃあ、、
――――話すチャンスを失った私はどうやって人を惹き付ければいいの?
- 115 名前:Oー150 投稿日:2001年02月16日(金)05時13分13秒
- よく、親戚の集まりなんかで、おじさん方に
「香織ちゃんは世渡り上手いだろ〜。美人は得をするって言うからね〜お母さんに感謝しなきゃな!アッハハハ」
とか勝手に盛り上がられるけど、
おじさん、そんな事全然ないよ。
「ねぇ〜ちょっとさ〜〜いつも思ってたんだけど〜あんたしょっちゅう私らの事ガンつけてるじゃん」
「え・・カオリ別に普通にしてるんだけど・・」
現に今、こうして困ってる。
「それで普通〜?だったら普通じゃなくしなよ」
「そんなムチャクチャな・・」
「何笑ってんの?あんたさ〜ちょっとばかり綺麗だからって私らの事ばかにしてんでしょ?」
「バ、バカになんかそんな!してる訳ないじゃん!!」
「その慌てっぷりがバカにしてますって事証明してるよ」
こうして、私への陰湿ないじめが始まった。
シカトは当たり前で、付け加えてお決まりの靴の裏の画びょう。体操着の紛失。ロッカーへの卑猥な落書き。
- 116 名前:Oー150 投稿日:2001年02月16日(金)05時13分55秒
- 私の中に浮かぶのは、悲しさよりも、疑問。
こんな事して何が楽しいの?
何が彼女らをそうさせてるわけ?
平凡な毎日を、無理矢理非凡にしようとしてるのかな。
刺激に飢えてて、自分らでそれを作ろうとしてるのかな。
悲しくは無かった。
でも毎日がとてつもなく、、、
寂しかった・・・。
そんな中、一人の転入生。
私は多分、クラスの誰よりもその子の転入を歓迎しただろう。
だってそうだよ。他の子は一部のヤマンバ軍団に怯えて、私に話し掛けようとしない。
けど、その子は何も知らない。
それに、転校当初って不安で心細いはずだから、優しく話し掛けられたら、私の事救世主みたいに見えるはず。
―――変な事吹き込まれる前に、話し掛けなきゃ!
- 117 名前:Oー150 投稿日:2001年02月16日(金)05時16分16秒
- ( ´ Д `)<転入生いちーちゃん登場だねぇ。
何人出すかな・・・
- 118 名前:Oー150 投稿日:2001年02月16日(金)06時01分49秒
- 先生がその生徒を紹介した後、すぐに授業が始まる。
次の休み時間が勝負だ。
私は1時間目、ずっとその子にどう話し掛けるかをシュミレーションしていた。
第一印象が大切。今の私は多分暗い。只でさえ第一印象がいつも“怖い人”な私は、相当の演技をしなければ彼女との距離を一瞬で縮める事は出来ない。
「ねぇ何処からきたの?」
想像の中の私は怖いくらいに笑顔だ。
失敗するわけにはいかない。もしそれが失敗したら、私の高校生活は終わるだろう。
もうこんな寂しい思いをするのは嫌だ・・!!
絶対に、
絶対に、、
絶対に転入生と仲良くなってやる!!!
斜め前に座ってノートを取っている彼女を、獲物を視界に捉えたライオンのように鋭い目で見つめながら、
私はその一人の転入生に怖いほどの執着心を燃やしていた。
- 119 名前:Oー150 投稿日:2001年02月16日(金)06時02分39秒
- 時計の針が少しずつ進んでいく。
10分経ち、20分、30分、40、41、42、、、
針は着々と進み、ついに、
―――あと1分・・・
ドックンドックンドックン
“ねぇどこから来たの?”
“ねぇどこから来たの?”
“ねぇどこから来たの?”
呪文のように何度も何度もシュミレーション。
ドックドックドックドック、、、、
キ〜ンコ〜ンカ〜〜ンコ〜〜〜ン
―――きた!!!!!
- 120 名前:Oー150 投稿日:2001年02月16日(金)06時03分18秒
- 「はいっ今日はここまでっ」
数学の担任がパタンを教科書と閉じる。
あ、数学だったんだ。
カオリ国語だしてた。
――――どうでもいい。
「きり〜〜つ。きょ〜つけ〜〜、れい」
ダルそうな日直の声。
私は起立だけはしたが、気をつけも礼も適当に済ませた。
心はそんなところにない。
“れい”と言う言葉と同時に誰よりも先に動き出した。
ガタンッと机に体がぶつかる音がしたけど、足も椅子にぶつかったみたいだったけど、
そんな事もどうでもいい。
もう、その子しか見えない。
当然ながらわき目もふる事無く、一直線の彼女の元に走った。
気持ちがあまりに先走ってしまい、彼女のところに行き着く前に言葉が出た。
「ねぇ何処から、、!!」
・・・・来たの・・・?
- 121 名前:Oー150 投稿日:2001年02月16日(金)06時11分01秒
- ( ´ Д `)<どこから来たの?
ヽ^∀^ノ <真似すんな!!
( ´ Д `)Σ <!?いちーちゃん!いるなら早く出てきてよぉ・・
(´ Д ` )( ´ Д `)<??い、いちーちゃん!?・・・今のは幻・・?
シリアスにしようと思ったのに・・飯田を使うとどうしてもコメディーになってしまう・・
頑張ってシリアスに戻します・・。
- 122 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月17日(土)00時48分11秒
- 前回の続きってことはこの時点でもう市井は後藤とできてるんだよね?
そのことはみんな知らないのか。
何はともあれ後藤の登場待ってます
- 123 名前:Oー150 投稿日:2001年02月17日(土)06時02分44秒
- やべっ!!!圭織って漢字間違えた!!!!!
飯田ヲタさんすみません・・・・・・重大なミスをホント・・・逝ってきます・・
- 124 名前:O-150 投稿日:2001年02月17日(土)12時27分49秒
- 「ねぇ何処から、、!!」
・・・・来たの・・・?
言葉が詰まった。目の前が真っ白になり、私はその場で固まってしまった。
彼女は私が彼女の席に辿り着く前に、凄い勢いで教室から出て行ってしまったのだ。
彼女が何の用があって飛び出していったのかは、もはや興味が無かった。
ただ単に緊張したからトイレに行きたくなったのかもしれない。
ただ、私はチャンスを逃してしてしまった。
気付くと私はあっという間にヤマンバ達に囲まれていた。
「転入生味方につけようと思ったんだ。分かり易いね〜」
彼女らはそろって私を嘲笑した。
私は悔しくて、唇をきゅっと噛んだ。
「っていうかあの子一人味方につけたからって何か変わるとでも思ったの?」
「甘いよね。思いっきり」
「・・・・・」
結局私は何も言い返せないまま、何も変わらないまま、毎日を送る事になった。
いや、、
―――なると思ってた。
- 125 名前:Oー150 投稿日:2001年02月17日(土)12時29分18秒
- ――――――
――――――
転入生市井紗耶香は、休み時間も、お弁当の時も、とにかく教室にいる事が無かった。
いつもいつも、休み時間になるとどこかへ姿を消して、授業が開始のチャイムと同時に息を切らせて駆け込んで来る。
それどころか始まってるのに来ない事もよくある。
うちの学校は授業開始から20分以内に入れば欠席扱いにならないから、それ計算してるかのように20分ギリギリだったり。
とにかく行動が謎に包まれた子。
私はあの一件以来、全く期待はずれだった転入生市井紗耶香に、少し怒りに似た感情を覚えていた。
休み時間はいないにしても、体育の時間だとか移動教室の時だとか、明らかに私がハブられてるのに気付かない訳がない。
ドッチボールの時なんて、私一人集中攻撃されてるし・・。
なのにその転入生は、私を見て見ぬふりしているようだった。
眼中に入れられてないっていうか・・。
他のクラスメイトのあからさまなシカトとは違うけど、なんか転入生にまでバカにされてるようで、腹が立った。
―――あれは、その子が来て丁度1ヶ月が経とうとしていた時の事。
いつものように4時間目が終わり、お弁当の時間が来た。
いつものように、転入生は速攻席を立って教室から出て行く。
私は、何を思ったか、その転入生の後を追った。
自分がこんな立場だから、これ以上敵増やしたくないと思ってその子の行動に関心持たないよう自分に言い聞かせてたけど、もう限界。
今になって分かった事だけど、その時の私は、自分を助けてくれない彼女に、苛立っていたんだ。
- 126 名前:Oー150 投稿日:2001年02月17日(土)12時30分46秒
廊下をダッシュで走っていく彼女に、私はバレないよう懸命についていった。
――よっぽど楽しみなものなのだろうか。後姿がやけに嬉しそう。
彼女は1階の奥の廊下へと向かって行った。
(え・・こっちって・・・)
突き当たりの大きな扉を勢いよくガラッと開けた彼女は、扉を開けっ放しで中に入っていった。
(あれ?やっぱそうだ)
―――――体育館じゃん
私は入り口のドアでその様子を隠れながら見ていた。
彼女は体育館隅の更衣室にダッシュで入っていったかと思うと、5秒と経たないうちにガラッと出てきた。
手に持ってるのは、、ジャージだ。
(?着替えるの!?体育館のど真ん中で?!)
(あ・・見たらマズいかな・・?って別にいっか)
制服のプレザーを脱ぎ、ネクタイをウザそうに取りながらYシャツボタンを3つ開け、脱いだ制服を体育館の隅に滑らせるように投げた。
そしてジャージのをスカートの下から履き、スカートを下ろす。
スカートも投げ捨て、ジャージの裾を膝まで捲り、Yシャツも腕捲りした。
Yシャツとジャージ下だけの格好となり、キョロキョロと周りを見渡す。
私は慌てて顔を引っ込めた。
(バレたかな・・?)
恐る恐る中を覗くと同時に、
ダムッダムッという音が聞こえる。
(ああなんだ、ボール捜してたのか)
(・・って、、、いつもいなくなってたのはこのため!?)
彼女がバスケ部員だって言うのは確かに聞いたことがある。
私は今友達いないから、直接誰かに聞いた訳じゃないけど、あれだけキャーキャー騒いでいれば嫌でも耳に入る。
なんか人気あるみたいだし。
彼女を暫く見ているうちに、何かが胸の奥から込み上げてきた。
私がいつも一人で寂しがってる時に、彼女はいつも一人で楽しんでた。
私がいつも一人を嘆いてる時に、彼女はいつも一人を楽しんでいた。
―――何故だか、腹が立った。
気付くと私は、ズカズカと体育館に足音を響かせながら彼女に向かって歩いていた。
- 127 名前:Oー150 投稿日:2001年02月17日(土)12時31分50秒
ダムッダムッッダムッ・・・
彼女が私に気付き、手を止める。
「あれ?確か同じクラスの、、」
「飯田香織!」
私は凄い挑戦的な目と口調でそう言いながら、彼女との距離を詰めていった。
1m近くまで詰め寄る。
彼女は「なんだ?」と言う顔で不思議そうに私を見ていた。
「ちょっとあんたさ!」
「・・何?」
「いっつも休み時間いなくなるじゃん!」
「、、だね」
「それって!これやるため!?」
「そう、、だけど。なんで?」
「いつもいつもこうやって一人でやってるわけ!?」
「うんまぁ」
「いっつもいっつも一人でこんな事して!楽しいわけ!?」
「楽しくなきゃやんないでしょ(笑)」
「真面目に聞いてるの!」
「、、楽しいよ」
「・・・・・・」
「?なしたの?」
「・・・・・・」
「・・ん?なんかおかしい事言ったかな」
「・・・なんで・・・?」
「なんで・・って?」
「・・ック・・カオリはぁ・・・ヒック・・」
「ちょっちょっとなんでそこで泣くんだよ!」
「カオリはぁ・・・ヒック・・ズッ・・」
「・・・・・」
私がいつも一人で寂しがってる時に、彼女はいつも一人で楽しんでた。
私がいつも一人を嘆いてる時に、彼女はいつも一人を楽しんでいた。
―――何故だか、涙が出た。
泣き出した私を、彼女は黙って肩を抱いて体育館の隅に連れていった。
ちょこんと体育座りをして、私は今まで溜まってた涙を全部出した。
自分でも知らないうちに、涙の貯金は凄い溜まってて・・。
鼻水と涙の洪水で、とにかく顔がメチャクチャになった。
私が泣いてる間、彼女は無言で隣にずっといてくれた。
ボールを指先で回したり、小さくバウンドさせたりして、ちょっと落ち着き無かったけど。
- 128 名前:Oー150 投稿日:2001年02月17日(土)12時32分51秒
- 何分泣いてたかな。もう予鈴も鳴り終わってて、本当は戻らなきゃいけないんだけど、、彼女は動き出す気配なくて、ただ側にいてくれた。
やっと泣き止んだ頃、彼女は突然立ち上がって、ドリブルを始めた。
ダムッダムッダムッ
キュッキュッ
体育館中央に向かってドリブルしてゆく。そして突然キュッとターンしたかと思うと、綺麗にボールを手から放った。
ボールは導かれるままゴールネットをシュッという音と共に潜り抜ける。
ダムッッダムッダムダムダムダム・・・
ボールが隅の方に転がっていく。
そしてバウンド音が無くなった時、彼女はクルッとこっちを向き、笑顔でこう言った。
「楽しい事やればいいじゃんっ」
- 129 名前:Oー150 投稿日:2001年02月17日(土)12時34分02秒
「え・・・?」
「だから〜、楽しい事」
また、ボールの元にかけていく彼女。
「楽しい事って・・・」
「なんでもいいよ。市井は、バスケ。えと、、名前なんっつったっけ・・」
「圭織・・」
「カオリね。カオリは何?何が楽しい?」
「カオリ・・なんにもない・・・」
「じゃ〜〜探せばいいっ」
ダムッダムッダムッ
「・・随分簡単に言うね・・」
「簡単だよ。例えばさ〜、カオリの、、好きな食べ物って何?」
ダムッダムッキュキュッダムッッシュッ
話してる間、ずっと手を止めずに、ドリブルとシュートを繰り返す。
「好きな食べ物・・?なんで・・?」
「いいから、何?」
キュキュッッシュッ
「・・カオリ、、ケーキが好き」
「ケーキかぁ、市井も好きだな。、、じゃあ、好きな事は?」
ダムッダムッダムダムダムッ
「好きな事・・・・」
「うん」
ダムッダムッキュッダムダムッキュキュッ
「・・・・・・」
「なんかあるでしょ。好きな事無い人なんていないよ」
ダムッダムッダムッダムッ
「・・・・・歌・・・」
「ん?」
私のその言葉に、彼女は手を止めた。ボールを持って、私の方を振り向く。
「だから・・カオリ歌が好き・・・」
「歌かぁ。、、、あるんじゃん」
そう言ってまた、その端整な顔からは想像もつかないような優しい笑顔を見せた。
私の心臓はその笑顔に素直に反応した。
(・・やっやだな・・カオリ何ドキドキしてるんだろ・・)
「でっでも〜、歌が好きだからって、何していいか分かんないし・・」
「それは、自分で見つけなきゃ」
、、ダムッダムッダムッ
遠いリングの方を見て、再びドリブルを始める彼女。
「・・・・・・」
- 130 名前:Oー150 投稿日:2001年02月17日(土)12時35分41秒
―――・・不思議な人だな・・
そう思った。
同い年のはずなのに、やたら大人びてみえた。
いつもいた、自分と自分の周りの空間は、なんて狭くて、小さかったんだろう。
そう思ったら、なんとなく、、
「ねぇ市井さん・・?」
「さんはやめてよ(笑)」
ダムダムッダムッ
「じゃあ・・紗耶香・・・」
「おうっ」
ダムッダムッダムッ
「・・なんで?」
「ん?」
ダムッダムッ
彼女が足を止めた。
「・・私が虐められてるの、知ってたんでしょ・・?何も話してないのに、私がなんで泣いてたか分かってるみたいだし・・」
「・・・・・」
ダムッダムッダムッ
「なのになんで・・なんで私を・・・・
助けてくれなかったの・・・?」
- 131 名前:Oー150 投稿日:2001年02月17日(土)12時38分05秒
案の定、さっきまでの彼女の明るい雰囲気は消えた。
凄くみっともない事を言ってる。
それは分かってた。
何故か私はこの人を攻撃したくなっていた。
恐らくこの感情に説明付ける事は、この段階では出来なかっただろう。
今なら、分かるんだけど・・。
「、、助けるって、何をすればよかったわけ?」
ダムッダムッダムッ
(え・・・今・・・なんて・・・・)
「市井がさ〜、『みんな虐めはやめて!!』って感情的に叫べば良かった?」
ダムッダムッダムッダムッ
こっちを見もせずにそういう。
(・・・バカに・・されてる・・・?)
「・・・そっか分かった。そうだよね。奴らの言ってた通りだ。あなた一人味方につけたからって何かが変わるわけないもんね」
お返しにと、私は少し嫌味口調で言ってやった。
そんな私の言葉に、彼女は表情一つ変えず、、
「この子なら大丈夫。そう思ったから」
「え・・?」
- 132 名前:Oー150 投稿日:2001年02月17日(土)12時39分09秒
手を止めて、彼女は話しを続けた。
相変わらず、こっちを見もせずに、視線はリングを向いてる。
「この子なら、自分で抜け道見つけれるって」
「なんでそんな事・・転入してきたばっかの紗耶香に分かるのさ・・」
「だってそうじゃん。白旗揚げる子は、学校なんて無理して来ないよ。それどころか無遅刻無欠席で、おまけに成績もいいし、実技も出来てる。普通、もっとボロボロになるよ」
・・・この人・・・・
「負けないぞって、お前らなんかに負けてたまるかって、闘志が見えた」
・・なんで・・そんな事、、
分かるの・・?
確かにそうだ。私は負けたくないって思ってた・・。
でも、そんな簡単に見透かされてるのは悔しいから、、
「・・買いかぶりすぎだよ・・現に、さっき大泣きしてたじゃん・・」
「うんでも現に今カオリは突破口少し見えてるしょ?」
「・・・・・」
やっぱ見透かされてる・・・
「そういう事。おっと時間だ。市井ちょっともう一個用事あるから、もう行くねっ」
そう言うと、彼女は脱ぎ捨ててあった制服を拾って、体育館の扉へと走っていった。
ポツンと体育館に取り残された私は、
心ここにあらずになっていた。
- 133 名前:Oー150 投稿日:2001年02月17日(土)12時40分50秒
―――もう一個の用事
その時の私は、その言葉に気にも止めなかった。
5時間目が終わるまで、結局彼女は教室に戻ってこなかったけど、とにかく私は、自分がどうすべきか、うっすらと見えてきたそれを捕まえようと必死だった。
ガチャッ
「・・・遅かったね・・・」
「ごめん。ちょっと・・」
「いいよ。それより・・・・好き・・。好きだよ紗耶香・・・」
「・・・・・・」
「・・・んっ・・」
私の中で、確実に彼女の存在が大きくなってしまっていた時、彼女は私の知らない所で、私よりも早く、、確実に愛を育ませていた。
それは、ひっそりと、誰にも知られる事なく・・。
- 134 名前:O-150 投稿日:2001年02月17日(土)13時03分32秒
- ( ´ Д `)<・・・・・いちーちゃん・・・・
なんかここでチキチキなんとかとか掛かりそうな勢い・・(ニガワラ
影響されて・・(略
まぁいいや。
えと・・すんませんまた圭織一回間違った・・氏のう・・
ここで、時系列?だっけ・・。これからますますゴッチャになってくると思いますので、少しおさらいを、、。
市井が転入してきたのは2年の春。屈辱的惨敗を味わって、人間が変わったのは(変わったように振舞いだしたのは)2年の秋。
後藤との出会いは、3年の春。
そして市井が引退した二年後(ごま3年生)に、ごまがインターハイ優勝しております。
そんな感じです。あと分かんない事あれば、挙手願います。
取り合えず、飯田の暗いシリアスなのはこれで終わりかな・・?暗いの苦手だなマジ・・。
- 135 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月17日(土)13時47分31秒
- だ、誰だ!
市井と愛を育んでいたってのは…。
- 136 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月17日(土)14時40分51秒
- 飯田のキャラがマッチしてて良いっすね。
人に関心なさそうで、大事な部分はしっかり見てる市井ってカッコイイ
続き期待してます。
総出演だよね?とりあえず、個人的に最近少ないいちなち楽しみだけど
市井が絡むならどれも期待!
- 137 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月19日(月)23時21分37秒
- 続きがすっげえ楽しみなんです…
- 138 名前:Oー150 投稿日:2001年02月20日(火)07時44分19秒
- うぅ・・レスありがとうございます・・
ヘタレなんてレスを気力にいつも書いてます・・(w
思った以上に飯田は難攻だ・・なんとか山越えたけど。
- 139 名前:Oー150 投稿日:2001年02月20日(火)07時45分14秒
- ―――――
―――――
ダムッダムッダムッ
紗耶香が狭い部屋でボールをバウンドさせる。
その姿を見ると、あの時の事を鮮明に思い出す。
バウンドに混じって聞こえてくる、紗耶香の声。
ドリブルしながら見せる、紗耶香の笑顔。
二人だけの空間。二人だけの世界。
“カオリ絶対歌手になれると思わない!?上手すぎてヤバイよねこれは”
“ははっ自分で言うなっつーの(笑)”
“なんでさ〜紗耶香もそう思ってるんでしょ”
“どうかな”
“絶対思ってるよ”
“歌手になったら感想言ってあげる”
“やだよ〜!いつになるか分かんないじゃ〜ん!!”
“じゃ〜頑張って早くなればいいじゃん”
“分かった急ぐ。来週デビュー”
“速すぎ!(笑)”
「・・・・・」
「何?言いたい事あんならさっさと言ってよ」
今では想像もつかないな・・。
それは、紗耶香が変わったのか私が変わったのか、、
「・・あっあのさ〜・・紗耶香は〜、、、、
カオリの気持ち気付いてたと思うんだけど〜・・」
「・・・・・」
ダムッダムッダムッ
- 140 名前:Oー150 投稿日:2001年02月20日(火)07時46分35秒
- ―――――
―――――
あの日を境に、私の高校生活は大きく一変した。
私はあの後、家に帰ると迷う事無くネットでバンド仲間を募集し、音楽に関する知識を深めようととにかく情報を集めた。
私は元々好きなことには一直線で、やり始めると周りが見えなくなるタイプだ。
そうなってくると不思議なもので、虐めの事なんて視野に全く入らなくなっていた。
バンドメンバーもすぐに集まり、本格的に活動を始めた私は、休み時間などはメンバーと携帯で打ち合わせしてるか、作詞作曲してるかのどっちかで、忙しくしている私に周りも“面白くない”といった感じで徐々に関心を持たなくなっていった。
歌は、漠然とではあるがもっと本格的にやりたいと前から思っていた事だ。
でも、学校での辛さを常に引きずっていた私は、そんな事頭の片隅に置き忘れて毎日を過ごしていた。
そんな私の事を全てをお見通しかのように、紗耶香は私に言葉を投げかけた。
“やりたい事やればいいじゃんっ”
頭をガツンと思いっきり殴られたような、そんな感じだった。
―――そんな事言って私の人生変えといて、何の感情も持たない方がおかしいよ・・。
まぁ、彼女は別に何も考えずにそう言っただけなのかもしれない。
私も別に、単純に彼女の笑顔に心を持っていかれただけなのかもしれない。
それは分かんないけど・・・
ただ一つ言える事は、
バスケをしてる彼女は、
とても明るくて、凄く楽しそうで、生き生きしていて、、、
彼女も私に負けずと目つきキツいし、普通にしてるとクールな印象が強い。
けど、バスケットボールを触ってる彼女は、まるでボール遊びしてるやんちゃな子供みたいだ。
完全に紗耶香に魅せられた事だけは、紛れも無い事実だった。
その時は、それを恋と呼ぶのかどうかは、
わからなかったけど、、、。
- 141 名前:Oー150 投稿日:2001年02月20日(火)07時48分10秒
- ―――――
私は紗耶香の事が気になるようになり、気付けばいつも目で追っていた。
授業中は殆ど寝てる。けど成績は良くて、やるべき事は一応やってるといった感じ。
運動も音楽も美術も一通りこなすし、、、
――こりゃ人気もでるわ・・
と、再認識。
それまで自分の事で精一杯だったから気付かなかったけど。
それでも安心して目で追っていられたのは、紗耶香が人に対して不必要に愛想振り撒かない人間だったから。
好意があるのバレバレで接してくる子なんかには、凄い冷たいし。
多分、気を持たせない為なんだろうけど。
私が見てる限り、紗耶香の方も好意的な態度で接してる相手っていうのはいなかった。
それってつまり、そういう相手がいないって事なんじゃないかな。
そう思ったから、私は気持ちを気付かれないようにしながら、徐々に紗耶香に近づいていった。
たまに体育館に行き、バスケをしている紗耶香と言葉を交わす。
紗耶香の方から話す事はなかったけど、私が一方的に話すそれに、ちゃんと相づちを打ってくれた。
私は紗耶香に色んな話をした。
歌手になりたいっていう夢の事とか、昨日あった下らないこととか、、。
一人でベラベラ話してるだけだったけど、そこには不思議な空気が流れてて、
紗耶香といると、凄く気持ちが落ち着いた。
紗耶香といると、本当の自分でいられた。
話せば話すほど、私はドンドン紗耶香の事が好きになっていった。
- 142 名前:Oー150 投稿日:2001年02月20日(火)07時49分49秒
- 強い想いがあると芸術活動が進むってよく聞くけど、それってホントで、作詞作曲の方も自分って天才じゃないかと思うほどスラスラ作れた。
当然作った曲は一番に紗耶香に聞かせた。
広い体育館のステージに立って、マイクスタンド隅から持ってきて熱唱する。
勿論紗耶香の事を想って作った曲だし、想いを歌で伝えてるつもりなんだけど、、
「季節を感じてサマーナイ いつも二人でいたいの〜
わがままなんかは言わない だけど二人でいたいの〜
何か変な感じ〜・・
去年はどの娘とサマーナイト どんな風に過ごしたの〜
ジェラシーなんかは感じない ただのヤキモチだから〜
Ah 矛盾だらけ〜・・
私の中に 私がいるわ カワイクなれない私〜
あなたの腕に 飛び込めなくて〜
スネたり泣いたりして〜〜〜っ
スマイル スマイル スマイル
くちびる見つめないで〜 心の中が読まれそう〜〜っ
大人ぶった下手なメイクじゃ〜 心かくせないぃ〜っ
大キライッ
大キライッ
大キライッ
大スキッッ!!
Ah〜・・・」
「・・何だよその歌(笑)」
「なんで笑うのさ〜!?カッコイイしょ!カオリが作ったんだよっ」
「最後のAhってとこのその振りは何?(笑)」
「カオリが考えた。よりセクシーにと思って」
「セクシーねぇ・・・」
「今紗耶香一瞬ドキッしたしょ」
「してないしてない」
ダムッダムッダムッ
「したしたぜったいした!」
「してないっつーの!」
ダムッキュキュッシュッ
はっきりと想いを口にする事は中々できなくて。
私がそんな曲ばっかり歌うもんだから、紗耶香が
「もっと市井のバスケが盛り上がるのにしてよ(笑)」
って笑う。
その笑顔見たらますます虐めたくなっちゃって、演歌歌ってやったり(笑)
- 143 名前:Oー150 投稿日:2001年02月20日(火)07時50分58秒
いつの間にか私は、昼休みになると欠かす事無く体育館に行くようになり、紗耶香との距離は確実に狭まっていった。
そしてそのうちに、普段クールな紗耶香がこんなに楽しそうに喋ってくれるって事は、
―――自分に気があるんじゃないか。
とまで思いだした。
そう思ったら、もう何も見えなくなってた。
それまで一方的に話したり歌ったたりしていたはずなのに、いつしか私は、
紗耶香に質問攻めするようになり、行動の一から十まで根掘り葉掘り詮索するようになっていた。
今思えば、私の質問攻めに紗耶香は明らかに困っていた。
言葉を濁らせて、まともに答えてくれてなかったから。
でもその時の私は、紗耶香のリアクションから何も察する事が出来なかった。
それくらい、紗耶香にはまっていた。
いや、狂ってたんだ。
- 144 名前:Oー150 投稿日:2001年02月20日(火)07時53分11秒
- 何も見えなくなっていた私は、それまで気にはなっていたがウザがられるのを恐れ聞かなかったそれを、
ためらう事なく口にした。
「ねぇ紗耶香、昼休みバスケが終わった後いつも何処にいってるの?」
が、後に私は、その一言をひどく後悔する事になる。
「・・・・・」
「いつも着替えるから先戻っててって言っておきながらその後教室に来ないじゃん」
「忘れないうちに反省点とか記録してんだよ・・」
「ふ〜ん・・」
何か隠してる。直感でそう思った。
私はその日、教室に戻る振りをして、廊下の影に隠れ紗耶香を待ち伏せした。
私が体育館を出て数分すると、紗耶香が制服に着替えて出てきた。
(やっぱ記録してるとかって嘘じゃん・・)
私は紗耶香の後を気付かれぬようにこっそりを追った。
紗耶香は体育館から真っ直ぐ伸びている廊下を突き進み、広いホールに出ると、水飲み場へと向かって行った。
そこで手を洗って数回うがいをし、制服のポケットから手に収まる小さいケースを出した。
目のいい私は、それが私もよく口にする市販の物だとすぐに分った。
(フリスクか。カオリも好き)
メンソールを口に運んだ紗耶香は、ガリガリとそれを噛みながらまた歩き出す。
私は物陰に身を隠しながら後を追う。
そしてようやく足を止めたそこは、、、
- 145 名前:Oー150 投稿日:2001年02月20日(火)07時54分07秒
―――保健室・・??
紗耶香は数回ノックし、「失礼します」と言う言葉と同時に入っていった。
(毎日保健室に行ってたの??何処か悪いのかな)
(まさかなんか重病抱えてるとか!?)
(・・重病ならバスケなんてしてらんないよね・・)
(・・なんだろう・・・)
(・・・・保険の先生と・・・いやそんな訳ない!紗耶香は今私の事好きなはずだし)
廊下の角で紗耶香を待つ事数十分。昼休みが終わる予鈴がなった。
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜〜ン
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜〜ン
それと同時に、ガチャッと保健室のドアが開いた。
カツッカツッ
ヒールの音が響く。出てきたのは保険の先生だった。
しかし続いて出てくるはずの紗耶香が出てこない。
保険の先生がいない保健室に何の用事があると言うのだ。
不思議に思い、先生が去っていった保健室へと近づいた。
突然、私の足が止まる。
「「あっははは!!」」
(!?・・紗耶香の声・・と、もう一人かぶってる・・)
「、、で、、だよね」
「ははっ!でもさ〜、、」
―――誰!?紗耶香と話してる相手は・・
私は足を進めた。
ドアの前に着くと、急にさっきまでの話し声が途絶え、無音になった。
突然二人の気配が全く途絶える。
不思議に思い、私はゆっくりとドアノブを回した。
カ・・チャ・・
―――え・・・・
ドアの隙間から見たの光景に、私の頭は一瞬にして真っ白になった。
- 146 名前:Oー150 投稿日:2001年02月20日(火)07時56分43秒
- 正面の窓の下に置いてあるソファー。そこに並んで腰をおろしている紗耶香ともう一人の人物。
しかし紗耶香に隠れて相手の顔は見えない。
正確には身を乗り出した紗耶香の頭で相手の顔が隠れていた。
確かにそこで、、
二人は唇と唇を合わせていた。
(うそだ・・・こんなのうそだよ・・・)
(だって紗耶香は私の事が・・・私の・・事が・・・)
紗耶香は左手を相手の肩を抱くように回し。
もう一方の手を相手の頬から耳にかけて髪の間に指を絡ませながら添えている。
そして首の角度を何度となくかえ、顔を離す様子は一向にない。
相手は足をぎゅっと閉じ、紗耶香の背中に手を回している。
その足は時よりルーズとルーズを擦りあわせ、じっとしていない。
無音の中続いているそれは、イヤらしさはなく、
嫉妬、怒り、悲しみ、様々な感情が交錯する私の意思に反して心臓が音を立てる。
こんな状況なのに反応してしまっている自分に嫌悪を覚える。
私は目を反らす事が出来ず、立ち尽くしていた。
- 147 名前:Oー150 投稿日:2001年02月20日(火)07時59分00秒
- そしてそれは長い事続き、ようやく紗耶香が顔を離した。
相手の子の顔が半分くらい視界に入る。
顔は離した紗耶香は、その子から目を反らそうとしない。
見つめ合う二人。
トロンとした目で紗耶香を見つめる相手の子に、私はこの時ははっきりと嫉妬でも悲しみでもなく怒りを覚えた。
私は唇をきゅっと噛んでその子に憎悪を込めた視線をぶつけた。
その刹那、相手の子が初めて紗耶香から視線を外した。
その子は一瞬にして我に返った表情に驚きを加える。
その子の視線の先は、私だった。
――マズイ
そう思った時には既に遅かった。
その子の表情に反応して紗耶香が反射的に凄い勢いで振り向く。
その振り向く様子も“マズイ”といった感じだった。
私と紗耶香の視線がぶつかる。
紗耶香が驚きの表情をしたのは一瞬で、その目は徐々に据わっていった。
- 148 名前:Oー150 投稿日:2001年02月20日(火)08時00分19秒
- 私は第一声で出るはずの“ごめん”が他の感情に抑圧されて出なかった。
紗耶香は何か言いたげな表情を浮かべたまま、何も言わなかった。
その時紗耶香が怒ってくれたら、何かが違っていたかもしれない。
何も言わない紗耶香と、ばつ悪そうに俯き加減の彼女。
気付くと私は、、、
「・・酷いよ・・・紗耶香酷いよ!!」
涙混じりで怒鳴っていた。
「どうしてさ・・・・・隠す事ないじゃん!!教えてくれてれば・・もっと早くに教えてくれてればカオリはこんなに・・」
「こんなに紗耶香の事、、!!」
「市井ってこういう奴だよ」
「え・・・」
私の言いかけた言葉を制するように、紗耶香が口を開いた。
「こういう・・奴だよ」
「・・・・・」
ばれんたいん
- 149 名前:Oー150 投稿日:2001年02月20日(火)08時06分18秒
- ( ´ Д `)<・・・こういう奴・・・・
やぱタイトル入れたほうがしっくりくる感じ
マジこんな短編タラタラやってたら短編でも無くなっちゃうんで(白が持ちネタなのに・・)頑張らなきゃ・・
飯田・・こんなに苦戦するとは・・・
キャラ強すぎぃ!!
- 150 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月20日(火)08時29分53秒
- 保健室にいた相手って誰だァーーーーーーーー????
気になるな。後藤とまだ出会ってない頃だよね?
ダムッダムッダムッ←関係ないけど、これ好きです(w
- 151 名前:Hruso 投稿日:2001年02月20日(火)12時29分05秒
- おおお、実は再開されていたとは!
他の娘。もまだまだ出てくるんすか?
- 152 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月20日(火)16時26分12秒
- つか、市井のファーストキスは、後藤じゃなかったのね…
- 153 名前:O-150 投稿日:2001年02月21日(水)09時06分30秒
- レスありがとうございます!
今日は嬉しいお休みDAYなんで頑張ろ
しかし昨日寝てないので取り合えず寝よか・・
- 154 名前:O-150 投稿日:2001年02月21日(水)09時09分59秒
- ばれんたいん
「市井ってこういう奴だよ」
「え・・・」
「こういう・・奴だよ」
「・・・・・」
私はその言葉で頭が真っ白になり、すぐにその場を走り去った。
全力で走り辿り付いたそこは、屋上だった。
私は2・3歩進むと、その場で崩れ落ちた。
いや、正確には泣き崩れた。
「ウッウゥ・・ック・・ウゥゥ・・ヒック・・ウゥゥゥ」
“市井ってこういう奴だよ”
私は騙されていたのだ。
そう思った。
その時の私は、自分の感情をコントロールする術を持っていなくて、
散々泣いて涙が枯れた頃、私の中に残った紗耶香に対する感情は、
虚無と絶望が屈折した、
どうしようもない、
憎悪だった。
紗耶香はいつも、笑顔の裏で私を馬鹿にしていたんだ。
私の気持ちをもてあそんで楽しんでいたんだ。
私は自分を騙していた紗耶香をどうしようもなく恨み、憎んだ。
数日間私は、バンドメンバーを無理矢理つき合わせて、飲めもしないアルコールを流し込み、酔った勢いで路上で歌い、見事に壊れまくった。
こうする事でしか私の中で紗耶香という存在が消化出来なかったから。
いや、消化は出来てないだろう。無理矢理抑圧したのだ。
じゃないとおかしくなりそうだった。
私はその後も音楽にのめり込んだ。
3年に上がった頃にはデビューの予定も決まり、デビューに向けての準備で学校に来る事も殆ど無くなった。
たまに行くと、それまで私を虐めていた奴らは手のひらを返したように私に媚びてくる。
なんてガキなんだろう、そう思って適当に相手しといた。
3年ではクラス変えがないので、紗耶香とは変わらず同級生だったけど、言葉を交わす事はなく、月日が流れていった。
- 155 名前:O-150 投稿日:2001年02月21日(水)09時10分53秒
- ――――――
――――――
そんな私が、
今、チョコを持って紗耶香を目の前にしている。
それは、時が経ってようやく、、、
自分も人の事なんか言えなくて、
どうしようもなくガキだった事に気付いたから。
ダムッダムッダムッ
「カオリの気持ち?そんなの知らないよ」
やっぱりつき離してきた。紗耶香、変わってないな。
でももう、その手には乗らない。
私はガムシャラに夢を追い、やっとでそれを掴み、変わったんだ。
やっと、紗耶香に追いついた。
私はもう、あの時みたいな子供じゃない。
「知らない訳ないよ」
- 156 名前:O-150 投稿日:2001年02月21日(水)09時12分36秒
- 「知らないって。前に言ったじゃん、、」
「「市井ってこういう奴だよ」」
私と紗耶香の声が重なる。
・・・ダムッダムッダムッ
「・・分かってるんじゃん」
一瞬手を止め、またボールをバウンドさせる。
その言葉に、私は迷う事なく返答した。
「ううん。分かってないよ」
私のその言葉でようやく紗耶香は手を止めた。
「紗耶香の言ってるこういう奴って、分かんない」
「・・分かんないなら分かんないでもどうでもいいよ」
「どうでも言い事無い!」
「・・なんでだよ・・」
「紗耶香は・・・紗耶香は・・・
私を変えてくれた人だから・・」
「・・市井は別に何もしてない。
市井はただ話し相手になるから付き合ってやってただけだし、彼女の事とかもカオリには関係ないし話したくなかったから話さなかっただけ。こういう奴ってそういう事。分かった?」
投げやりな口調で、視線も合わせようとしない。
「・・もういいよ。カッコつけないでよ。もうカオリ全部分かっちゃったんだから・・」
- 157 名前:O-150 投稿日:2001年02月21日(水)09時15分12秒
- 「・・分かったって何が・・」
「カオリは紗耶香の作戦にまんまと引っかかっちゃってたんだよね。大馬鹿だよホントに」
「作戦てなんだよ・・」
「私を怒らせて、自分を憎ませて、忘れさせる作戦。ついでに音楽にも専念させれる。凄いよね、完全犯罪だよ」
「・・そんな作戦知らない」
紗耶香はロッカーに寄りかかって、俯き加減で手にしているボールを見つめる。
「とぼけても無駄だよ。もうあの時のカオリじゃないんだから」
「・・・・・」
「一歩間違えば大惨事になりかねないのにね。もしかしたらカオリ自殺してたかもしれないし、、そうなったら夢も何もあったもんじゃないよ」
「だから市井は何も考えてないって言ってるじゃん」
私は紗耶香の言葉を無視して続けた。
「でもね、紗耶香はカオリの事全部お見通しだったわけだ。カオリ単純だから。悔しいけど・・」
「・・・・・・」
「紗耶香が彼女の事周りに隠してた理由も今になって分かったんだ」
「だからそれもさっき、、、」
「紗耶香、彼女の事大事にしてただけなんだって・・・」
今度は紗耶香の言葉を私の方が制してやった。
- 158 名前:O-150 投稿日:2001年02月21日(水)09時16分47秒
- 「・・・・別に大事になんてしてない・・」
「噂、広まると彼女がヤな目に合うからでしょ・・?」
「・・・・・・」
紗耶香が言葉を詰まらせた。
私は話を続けた。
「女子校のそういうのの怖さ、カオリが一番良く分かってるはずなのにね・・・。ホント鈍感だよ・・。
それに、話してくれるはずないよね。だって紗耶香と親しくなった頃には、カオリはもうどうしようもないくらい紗耶香にはまっちゃってた。あんなカオリには、危険で何も話せる訳ないよ。カオリももし聞いたら彼女に何してたか分かんない・・」
「・・・・・・」
「、、そういう事っ。これで紗耶香の心理推理はおしまいっ」
「勝手に推理すんな・・。なんだよそのムチャクチャな推理・・」
「まぁもしかしたら、カオリの推理は全然はずれてるかもしれない。でもどっちにしろ紗耶香は当たってても違っててもはずれって言うでしょ?だからね、いいんだ」
「・・・言いたい事はそれでおしまい?もう帰っていいかな」
そう言いながら紗耶香は荷物を持ち上げた。
「ダメだよまだ帰さない」
私は紗耶香の元に駆け寄って荷物を持ち上げようとするその手をぐっと掴んだ。
- 159 名前:O-150 投稿日:2001年02月21日(水)09時18分56秒
- 「・・なんだよ!なんなんだよ一体!」
紗耶香が初めて感情的になった。
「・・紗耶香、カオリがデビュー決まったの知ってるしょ?」
「・・それが何?市井には関係ないじゃん」
「で、、卒業したらもう会えなくなっちゃうと思うから・・だから・・卒業する前に一言だけ言わせてよ」
「・・・・何・・」
「・・・ありがとう・・・紗耶香・・」
「・・・・・」
「きょっ今日はね、告白しに来たわけじゃないんだ。それ言いに来ただけ」
言えた事は言えたけど、妙に照れちゃって、私は誤魔化すように言葉を続けた。
「で、お礼を込めて、、これ。チョコレートケーキ。紗耶香も好きって言ってたじゃん?
まぁ愛もこもっちゃってると思うけどね(笑)食べてよ。美味しいよ絶対。カオリの手作りだよ」
そう言って紗耶香に小さい箱を差し出した。
- 160 名前:O-150 投稿日:2001年02月21日(水)09時24分38秒
- 「・・・・・・」
無言のまま受け取ろうとしない紗耶香。
「はい!」
私は無理矢理紗耶香に突き出した。
「・・・礼も愛もいらないけどケーキだけ貰う・・」
そう言って、その箱を手にとってくれた。
―――全く素直じゃないな紗耶香は(笑)
「だめだよそんなの〜!(笑)ちゃんと気持ちも食べてくれなきゃず〜っとカオリの中に残るよ?それでもいいの?」
ま、そこがいんだけどね
「・・よくない・・」
「じゃーちゃんと気持ちも受け取ってよね」
最後の最後で紗耶香を思い通りにできた。満足満足。
ずっと紗耶香の思うままに操られてたからな〜。カオリは。
もう、思い残す事はない。
私は最後にもう一度笑顔を見せて、背を向けた。
それと同時だった。
「推理さ・・・」
「え?」
- 161 名前:O-150 投稿日:2001年02月21日(水)09時28分12秒
- 今日初めて紗耶香から声を掛けてきた。
私は立ち止まって振り返る。
「推理・・・」
「うん」
「ちょっと違うとこあるかもしんない」
「・・違うって・・?」
「あの時カオリに彼女の事話さなかったのは・・・・」
ダムッダムッダムッ
紗耶香がまたボールを床につきはじめた。
目線はボールにいっている。
「うん・・」
「もしかしたら、、言いたくなかったのかもしれない」
ダムッダムッダムッ
「・・うんだから、カオリの言ったのと一緒じゃん」
「そうじゃなくて」
ダムッダムッ
「・・・ん?」
「だから、そうじゃなくて・・・」
ダムッ・・ダムッッ・・ダムッ
・・紗耶香・・何言ってるの・・・?
「・・・それって・・」
「、、歌手、頑張れよ!」
突然、紗耶香はそう言って口をキュッと結んで私の目を真っ直ぐ見つめた。
あの、意志の強いキリッとした目で。
「・・・・うん」
言いかけた言葉は、飲み込んだ。
いや、飲み込まされたのかな・・
- 162 名前:O-150 投稿日:2001年02月21日(水)09時30分03秒
私は半分ぼーっとしたままその場を立ち去ろうとした。
しかし、最後の最後で、また紗耶香に、、、
「カオリの歌、メチャメチャいいよっ」
―――やられてしまった
あの時と変わらぬ笑顔で。
でも、、
「サンキュー!テレビ絶対チェックしてよね!!」
紗耶香も知ってるでしょ?
私って負けず嫌いだからさっ。
- 163 名前:O-150 投稿日:2001年02月21日(水)09時31分35秒
- ――――――
――――――
、、、バタンッ
「っふ〜〜・・・・・」
ドアノブを後ろ手にして、私は大きく息を吐いた。
「どうでしたかせんぱ〜〜い!!」
耳にキーンとくる甲高い声。
その声が私を一瞬にして現実に引き戻させた。
「あぁ・・うん成功したよっ」
「「え゛!?」」
その言葉でそこにいた全員がもの凄い声を上げる。
「あ〜違う違う!成功って別にOKだったとかじゃないよ」
「「・・・っほ」」
「じゃ〜次の人頑張ってね」
「はい次私です!」
「あんたかい・・。紗耶香こういうの苦手だからだと思うけど、なんかやたら帰りたがってるからとりあえずその声どうにかしてから行った方がいいよ」
「声は変えれませんよ〜!!」
「あ〜はいはい分かった分かった!!うるさいな〜も〜・・」
「だってだって・・・」
「とにかくカオリは帰る。じゃね〜みんな頑張ってね〜〜」
「・・・・なんでカオリあんなニタニタしてんだろ・・」
「ちょっと怖いよね・・・」
「「うん」」
- 164 名前:O-150 投稿日:2001年02月21日(水)09時34分16秒
- 紗耶香が言おうとしたあれって・・・
あれって・・つまり・・・
そういう事だよね・・
・・じゃあもしあの時カオリが・・・・・
・・・
・・・・
・・・・・ってそんな事今更考えてもしゃーないか!
「大ッキライッ
大ッキライッ
大ッキライッ
大好き!!」
私は廊下を飛び跳ねながら大声で叫んだ。
そう言えばこの曲は、後にミリオンを取る事になるんだよね。
その時は思いもしなかったけど・・。
〜Kaori's valentine story
- 165 名前:O-150 投稿日:2001年02月21日(水)09時37分01秒
- ―――――
―――――
ガチャッ
「し、失礼しま〜〜す・・・」
キャッキャ〜〜〜どうしよう先輩と二人っきりだ!
「・・なんだよまだ帰れないわけ・・?」
はぁ〜・・先輩のその不機嫌な顔、嫌いじゃないな〜・・・
「あ、あのその・・・すいません・・」
「いや謝んなくていいから早くしてよ・・」
「じゃあ単刀直入に・・・・
先輩・・・・・
好きです・・!!」
「、、あれ、知ってるんじゃなかったっけ?市井に彼女いるって。
石川はさ」
ばれんたいん
- 166 名前:O-150 投稿日:2001年02月21日(水)09時39分26秒
- ( ´ Д `)<いちーちゃん後藤はまだ・・・?
取り合えずここでくぎっとこう。ヤターヤトネレルヨー
- 167 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月21日(水)09時40分51秒
- リアルタイムで見ちゃいました。
石川が知ってる?気になるですね…。
- 168 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月21日(水)15時50分34秒
- 飯田のキャラが目に浮かぶようでおもしろかったです。
素直じゃないけど優しい市井っていいっすね。
石川楽しみです。ところで彼女って一体誰なんだろう。
- 169 名前:O-150 投稿日:2001年02月22日(木)00時36分13秒
- えと、ちょっと雑な文面が見えるかもしれないんで・・(すんません・・)
もしなんかあったら教えて下さい。意味伝わんないとことか。
メンバーのプロフィールも他メンの事あんまりよく分かんないんで、ちゃんと書けなくてヲタの方すみません・・。
- 170 名前:O-150 投稿日:2001年02月22日(木)00時37分19秒
- ――――――――
【石川梨華】
クラス:1年B組
容姿:華奢な体に一昔前のアイドルを彷彿させる可愛さ。とにかく声が特徴的で、人によって好き嫌いはっきり分かれる。
性格:ちょっと自信無さげで控えめ、、のように見えるが実際はその逆だったりしてあなどれない。
――――――――
市井先輩に彼女がいる事は知ってる。
その相手も、実は知ってる。
だってその子とは、
市井先輩よりも先に、出会ってるんだもん。
「お母さんご飯いらないもう間に合わない!!」
「いやね〜用意しちゃったじゃない!」
「ごめんなさい行ってきます!!」
(ヒャ〜〜どうしよ間に合うかなぁ〜〜!!)
(新学期早々遅刻する人なんて絶対いないよ〜・・)
(普段遅刻なんて絶対しないのに・・)
(でもだって昨日緊張して寝れなかったから、起きれなかったんだもん・・・)
その日は新学期初日だった。
高校生活第一日目。そんな大事な日に、私は大寝坊をしてしまった。
半泣き状態でダッシュして学校に向かった。
(どうしよもう絶対みんな席についてる・・)
- 171 名前:O-150 投稿日:2001年02月22日(木)00時38分17秒
- ようやく着いた学校は案の定シーンと静まり返っていた。
玄関に入り、靴を脱ぐ。私一人の足音だけが響き渡る。
そして、自分の靴箱を探してる時だった。
ガラッ
タッタッタッタッ
(!?誰か来た!)
その足音は一つ後ろの列の靴箱へと向かって行った。
(あっ同じ新入生だ)
私より先に自分の靴箱を見つけたらしく、ガタンという音と共にもの凄い勢い勢いで駆けていく後ろ姿が目に入った。
上靴のかかとは踏んだままで、この学校ルーズ禁止なのに履いている。
髪も金髪だったのを適当に黒染めしたのバレバレで、茶色の部分がまだらに目立ってて、、
いかにも遅刻しそうな子。
私なんか、ちゃ〜んとハイソックス履いてるし、髪は元々真っ黒だし、肌も地黒・・ってそんなの事はどうでもいいや・・
とにかくなんか同類には絶対思われたくない感じして、、
(あの子より先に教室入ってやる!!)
訳の分からない闘志が燃えあがった。
(ああいう子って絶対部活とか入ってなかったと思うし、私なんて三年間テニス部キャプテンだったんだから、足は負けない!!)
私も急いで上靴を履きその子を追いかけた。
階段を駆け上がり、1年生の廊下へと出る。
そして角を曲がったところで私は驚いて靴をキュッとならして止まった。
その子が立ち止まっていたのだ。
(、、とと。なんだろ)
私は何故かバッと角に隠れた。
その子はドアの小さい窓から見える教室の中を背伸びして遠くから何度となくチラチラ見て、中に入っていく様子が一向にない。
(あれ?もしかして・・入っていけなくて困ってる???)
ちょっと意外だった。
ああいうタイプの子って、そういうの全然気にしないと思ったから。
私は勿論、どんな顔して入って行こうか、、とか
先生に怒鳴られるかも、、とか
入った途端知らない顔が一斉に振り向くんだろな、、とか
とにかく凄い嫌な事色々考えてたけど。
- 172 名前:O-150 投稿日:2001年02月22日(木)00時39分57秒
- 散々ウロウロしたあげく、その子はその教室の前を通り過ぎていった。
(え!?え!?何処行くの???)
私は何故か気になって後を追った。
っていうか、私も入り渋っていたから、、なんとなく。
その子はその廊下の奥の角のところでウロウロしてた。
私は置いてある観葉植物に身を潜め、様子を見ていた。
(・・私何やってんだろ・・)
自分のかなり不審な行動にちょっと素になってしまう。
そしてこんな事しててもしょうがないやと思い、自分はいさぎよく教室に入ろうとした時だった。
突然その子が尻餅をついて倒れる姿が目に映った。
(え!?)
私が駆け寄ろうとすると、倒れたその子に手が差し出されたのが見えた。
そしてその子はその人の手を掴み、立ち上がろうと顔を上げた瞬間、、、
何かとてつもないものを見たような驚いた表情をしていた。
(・・あの顔は何・・?)
(知り合いだったとかかな?)
そして無言でコクッと頷いて、俯いたままモジモジしてる。
その様子は明らかに、、、
(照れてる・・・)
- 173 名前:O-150 投稿日:2001年02月22日(木)00時42分16秒
- その表情を見て直感で分かった。
(カッコイイ先輩か先生かだ。絶対)
(私の勘を甘く見ちゃダメよ。そういうのは分かるんだから)
私は会話内容が気になって、数メートル先の観葉植物までタッと移動した。
さっきまで聞き取れなかった会話がようやくはっきりと聞こえてきた。
「、、う〜んじゃあ一時間目だけ一緒にサボっちゃう?
私もこれからちょっとサボる用事があるからさっ」
(なっ何?一緒にサボるの!?私も混ぜてよ〜!!)
(でもここで“私も混ぜて〜!”って入っていくのはあまりに変か・・)
「い、いいんですか・・?私なんかついていって・・」
(うわっ近くで見るとあの子凄い可愛い・・)
(・・・私だって負けてないもん・・)
「いいよいいよっ。ただしこの事は絶対に秘密ねっ」
(え!?今なんて言ったの!?!?秘密!?)
(ひっ秘密って・・・秘密って・・・)
(あれしかないよね・・)
「秘密・・ですか・・。はい・・分かりました・・」
(!?OKした!!なんて軽い交渉なの!!!)
(でもあの子ならそういうのもう平気でやってそう・・)
(もしかして今の若者はそれが普通なのかな!?知らなかった・・・)
二人は言葉を交わした後、その角から消えていった。
私は、、
(これは新学期どころじゃない!!)
(新境地が切り開かれるチャンス!!)
とてつもない好奇心が込み上げてきて、後を追った。
- 174 名前:O-150 投稿日:2001年02月22日(木)00時43分40秒
- ドキドキしながら気付かれぬよう後を追う。
角を曲がると、その子に手を差し伸べた人の後姿が見えた。
(あの落ち着きようは新入生じゃないはず。やっぱ先輩だ)
(へ〜・・先輩ってこういう手を使って新入生を・・)
(女子校って凄い・・・)
そう思いながら後を付けていくと、先輩が大きな扉をガラッと開け、その後その子も中に入っていった。
私は駆け寄って扉の影から中を覗いた。
(え!!!体育館で!?体育館でそんな事・・!?)
(も、もしかしてドラマで見たことあるけど・・体育館倉庫で・・)
(やっやだ私・・なんか凄いドキドキしてきた・・)
私が一人であらぬ妄想を掻き立てていると、、
「ちょい着替えてくるから適当にそこら辺転がってるボールで遊んでて?あっそれと誰か来たら隠れなきゃダメだぞ」
先輩がそう言った。
(何?着替えるの??、、、コスプレ!??!最初から!??!?!)
ダムッダムッダムッ
(ちょっちょっとあの子もなんでそんなリラックスしてバスケなんてやってられるのよ!!)
(あの子・・・・・・慣れてる・・・)
私の背筋を何かがゾクッと走った。
- 175 名前:O-150 投稿日:2001年02月22日(木)00時44分41秒
- そして暫くしてようやく更衣室のドアがガラッと開いた。
ドッキドッキドッキ
(どっどんな服着てくるんだろう・・・)
(っていうかそれより学校にそんな物用意してあるなんて・・)
(女子校って凄い・・・)
「へ〜上手いじゃんっ。中学時代バスケやってた?」
(へ!?ジャージ・・・?)
ジャージのチャックを上げながら先輩が出てきた。
(ちょっとマニアックじゃない・・?)
「あっいえ・・ほんの遊び程度です・・」
「ホントに!?へ〜〜運動神経いいんだね〜センスあるよ」
(先輩リード上手いな〜・・流石・・)
(まずは相手を褒めてその気にさせるのかぁなるほどなるほど。勉強になる)
(こっこっからどうやって持ってくんだろ・・)
(やっぱ、、
“その運動神経・・・どれくらいいいのかもっと詳しく知りたいな・・”
とか言うのかな!!きゃ〜〜〜〜!!!えっちぃ!!!)
(それとも、、、
“こっちの方のセンスもやっぱいいのかな・・”
とか言って始まったちゃったりするのかな!!!きゃ〜〜〜〜!!先輩えっちすぎぃぃ!!)
(ハァハァ・・・一人で盛り上がっちゃった・・・)
(どっどうくるのかな・・・ゴクッ)
≪ドキドキドキドキドキ≫
- 176 名前:O-150 投稿日:2001年02月22日(木)00時45分59秒
- 「、、ねっ私走りこんだらゴール前でパス出してくれない?」
(え?)
(走る??ゴール??パス??)
(・・・・もしかして・・・・)
(・・・始まらない・・・・?)
(な〜んだ。、、って何ガッカリしてんだろ私・・)
(そっかぁバスケするんですかぁ〜・・)
(悪いですけど石川はバスケ興味ありません!)
(それじゃ〜〜二人の健闘を祈りつつ、、、
フェ〜〜ド、、!!
フェ〜ド・・・・・・
・・・・ちょっと待って先輩バスケ上手すぎ!!!!)
帰りかけた私は体制を立て直して扉にガバッとしがみついた。
- 177 名前:O-150 投稿日:2001年02月22日(木)00時47分21秒
- 「お〜やっぱセンスあんねっ、タイミングばっちりじゃん!」
先輩がパスを出したその子にそう言う。
(、、先輩もしかしてバスケ部?)
「、、先輩、もしかしてバスケ部ですか?」
(ナイスクエスチョン!!流石同い年。考える事は同じね)
「そうだよっ。ほらバッシュ履いてるじゃん。あ〜ゴメン自己紹介してなかったね」
(うんうんしてない)
「昭栄学園バスケ部キャプテン、市井紗耶香。宜しくねっ」
そう言ってニコッと笑ってシュッと片手でボールをその子の方に投げた。
≪ドッキン!!!≫
(ちょっと待って・・今心臓跳ねなかった・・?)
(ちょっと待ってちょっと待って・・そう言えば今初めてちゃんと顔見たけど・・・
め、め、、、、
めちゃめちゃカッコイくない!?あの先輩!!!)
- 178 名前:O-150 投稿日:2001年02月22日(木)00時48分51秒
≪ドッキンドッキンドッキン≫
(ウッ・・・今の笑顔でハート打たれたみたい・・。心臓痛い・・)
(せ、先輩のプレーもっと見たいな・・)
「・・先輩のプレー・・もうちょっと見たいです・・」
(!!!ナ〜〜イス同い年!!!)
(ツーカーじゃないっっもう!大好き!)
「市井のプレー?、、別にいいけど。
じゃ〜お客さんはそちらにかけててねっ」
そう言ってまたニコッと笑った。
(自分の事市井って言うんだ〜・・・カワイイッ!!)
- 179 名前:O-150 投稿日:2001年02月22日(木)00時50分35秒
- ――――
それからはもう記憶があやふや。
なんか結構会話交わしてたけど、あんまり覚えてないな。
その同い年の子の名前が
“後藤真希”って言う名前だっていうのは分かったけど。
とにかくボーっと目をハートにさせて夢見心地で先輩のプレーを見入っていた。
こうして私は、言うまでも無く完全に先輩に一目惚れしてしまった。
その時は、まさかその“後藤真希”が恋のライバルになるなんて思いもしなかった・・。
ばれんたいん
- 180 名前:O-150 投稿日:2001年02月22日(木)00時55分06秒
- ( ´ Д `)<後藤の登場だねぇ・・(テレテレ
毎度毎度レスほんとにありがとうございます・・。
石川編スタートです。コメディー入ってます・・(w
言葉遣いが相当難しい・・・。多分一番難しいだろな・・。
- 181 名前:O-150 投稿日:2001年02月22日(木)00時57分16秒
- あ、年齢おかしい事になってるけど・・気にしないでやって下さい・・
- 182 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月22日(木)01時15分21秒
- 石川おもしろすぎ(w
久しぶりに小説で笑った。言葉使いも合ってると思いますよ。
とにかく続き大期待!!
- 183 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月22日(木)06時38分56秒
- これってメンバー全員やってくれるんですか?だったら嬉しい
- 184 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月22日(木)13時24分06秒
- ついに後藤が登場ですか(嬉
- 185 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月24日(土)13時20分52秒
- 石川編、楽しみですはあと
- 186 名前:O-150 投稿日:2001年02月24日(土)16時31分52秒
- ばれんたいん
―――――
―――――
「ねぇ梨華ちゃんテニス部の入部届け一緒に出しに行こうよ」
「あ、私テニス部入らないの」
「え!?」
「ん?なんでそんなに驚くの?」
「だって梨香ちゃん高校でも一緒にテニス頑張ろうねって・・打倒伊達貴美子って・・・世界のプリンセス梨華になってヒンギスの人気をかっさらうって・・」
「う〜んでもほら、伊達さんって外人と付き合ってるじゃない?私外人には興味ないもん」
「いや別にテニスプレーヤーになったからってみんながみんな外人と付き合うとは・・」
「それにヒンギスと私じゃ年齢的に差があるから勝負する前から向こうが不利でしょ?それじゃあまりにヒンギスが可愛そうだなって思って」
「・・・・そんな訳の分からない理由で・・・・?」
「・・フフッ・・」
「なっ何その不敵な笑みは・・」
「実はね・・・」
「うん・・・・」
「もっと凄いスポーツ見つけたの・・」
「え・・?何・・・?」
「驚かないでね・・」
「うっうん・・・」
「、、、、ンベァスケットボォ〜ウル」
- 187 名前:O-150 投稿日:2001年02月24日(土)16時33分32秒
- 「・・な何でそんな巻き舌なの・・?っていうか思いっきりふつ〜〜なスポーツじゃない・・」
「なに言ってるの!バスケは至極のスポーツじゃない!」
「何処らへんが・・?」
「胸が高鳴る♪」
「胸・・?」
「目の保養になる♪」
「目・・?」
「女に磨きが掛かる♪」
「・・梨香ちゃんバスケを何かと勘違いしてない・・?」
「え?カゴに少しでも多く玉を入れればいいんでしょ?」
「玉入れみたいな言い方するね・・。まぁ・・大体はそんなとこだけど・・」
「とにかくねっ私はバスケするって決めたの!」
「カッコイイ先輩いるんでしょ」
「!?なっ何言ってるの!!そっそんなふしだらな動機でそんな、、!!」
「どんな感じの人?」
「目つき悪くて性格キツそうでキザでちょっとナルシスト入ってる感じ♪」
「・・・の・・何処が良いわけ・・?」
「でも笑顔が優しいの・・」
「ふ〜ん・・下手に触ると火傷しそうな人だね・・」
「燃える恋って事ね!?」
「いや危険って事・・」
「危険な恋・・・あぁますます燃える・・・」
「・・・・私テニス部入部届出してくる・・・」
「ちょっと〜!応援とかアドバイスとかしてよ〜!」
「・・・気をつけなね」
- 188 名前:O-150 投稿日:2001年02月24日(土)16時36分00秒
- 「そんな・・先輩を危険物みたいに・・。じゃー私がその危険物取り締まる!なんちゃって。きゃ〜〜!!恥かしぃぃ」
―――気をつけな
、、ってな〜に言ってんだか
その時の私は、友達のその言葉も全く気にしていなかった。
高校生活が新たに始まって、すぐにドキドキできるものが見つかった事が嬉しくて、ただそれだけで。
- 189 名前:O-150 投稿日:2001年02月24日(土)16時37分08秒
- ―――――
そして放課後、掃除当番を終えた私は急いで体育館に向かった。
体育館に行くと、丁度先輩が新入部員を集合させていた。
市井先輩の姿は見当たらない。
(あれ〜まだ来てないのかな〜)
市井先輩の事をキョロキョロ探しながらも急いで新入生の列に並んだ。
シーンと静まり返った体育館の中、ちょっと体格のいい先輩が話しを始める。
「・・集まるもんだね〜・・。入部してくれたみんなはここの部活の事知ってて入ってきてるの?」
(?ここの部活の事?知ってるわよ〜!素敵な先輩が約一名います!)
先輩が話しを始めた丁度その時、静まり返った体育館に一つの足音が聞こえてきた。
新入生が一斉に振り返る。
入ってきたのは、、
(きゃ〜〜〜!!市井先輩だぁ〜〜)
「・・市井先輩だ!キャ〜やっぱカッコいい・・!」
(!?私の心の声を誰かが叫んだ!)
驚いてパッと新入部員達を見渡すと、目をハートにさせている人が数名。
(え〜!?先輩目当てなのは私だけじゃないの!?)
(・・ってちょっと待って!あの子!!!なんでいるのよ!!)
20名程の新入部員。話を始めた先輩の前に横二列に並んで、私は前の列の一番右だった。
そして私が驚いたのは、後ろの列の一番左に見かけた顔。
童顔なのに妙に大人っぽいあの子。そう後藤真希だったのだ。
- 190 名前:O-150 投稿日:2001年02月24日(土)16時38分00秒
- (まさかあの子も昨日のあれで先輩の事・・・)
(いや〜〜ちょっとやめてよ!!そんな胸と顔を武器に先輩を誘惑しようなんてズルイ!!)
(しかも私より先に先輩に会ってるんだから、もう3馬身くらいリードじゃない!!)
頭の中でその子と私を競走馬に例えたレースを勝手に開始させている事数秒。気付くと先輩が私達の正面にキリッとした面持ちで立っていた。
その様子は、なんだかまるで戦場に行く前の指揮官みたい。
初めて間近で先輩の顔を見る。
やっぱり文句無しにカッコよくて、、思わず見とれていた私を一瞬にして我に返させたのは、
「最初に言っとくけど、遊び半分で入部した奴は今のうちに体育館から出て行った方がいいよ」
(え!?)
- 191 名前:O-150 投稿日:2001年02月24日(土)16時39分26秒
- ―――市井先輩だった。
そして新入生達がヒソヒソと声を出し始めた。
「え・・なんか恐くない・・?市井先輩って恐いの・・?」
「なんか想像と違〜う・・」
「はい私語する奴もいらない。そこのあんた、残念だけど想像と違ってたみたいだね、じゃ〜求める先輩探して他当たってね、さようなら」
その先輩の言葉で一人走り去っていき、続いてどんどんその場を後にしていく。
私はというと、、
(何よ、先輩は別に間違った事言ってないじゃない)
流石にちょっと昨日とのギャップに驚きはしたけど、でも先輩の雰囲気って私の中ではクールって感じだったし、
それに中学時代の私の部活も結構厳しかったから、先輩たるものこれくらいの態度でいいじゃないって感じで、
興ざめしてしまうようなショッキングな事ではなかった。
私はキャプテンやってたから先輩のその態度が理解出来たんだと思う。
実際私も後輩には厳しく振舞ってたから。
後輩に優しく接しても、ゲームの勝敗にはなんのプラスの影響も与えないし、厳しくされるのが嫌な人が、自分に厳しくなれる訳が無い。
そんな人はどっちにしろ強くはなれないの目に見えてる。
本当に後輩の事を思うなら、とことん厳しく接するべきなのよ。
なんだかんだいって中学時代の経験は大きかったのかな。
不純な動機で入部したのは認めるけど、でも私の先輩に対する気持ちは不純じゃない。
だって、、
―――もう既に本気なんだから
- 192 名前:O-150 投稿日:2001年02月24日(土)16時41分14秒
- そして私は、この先輩の普段と部活との切り替えっぷりにますます惚れてしまった。
知的で強くて怖くて、、でも本当は優しい。
(もう最高!!まさに理想の人じゃない!!!)
(ますます好きになっちゃった。こんな事ではこの石川、怖気づいたりしませんよ!)
(あ、そう言えばあの子は・・・)
気になってチラッと目線を向けた。
(な・・ちょっとなんで残ってるのよ!もう!)
(でもあの顔はひどくショック受けてる感じ。ふふっこんな事で先輩への思いが揺らぐんならその程度って事よ)
そして先輩が部活の方針などを何個か話し、最後に新入部員に指示をだした。
「あとの人は時間無駄だから先にランニング始めて!」
「はい!!」
私は威勢良く返事をし、すぐに更衣室の方へと駆け足で向かった。
その中に後藤真希の姿がない事に気付き、パッと振り返った。
真希は俯いて立ち尽くしている。
(あの子、見た目と違ってホント弱いんだ。よっぽどショックだたのかな)
その真希の様子に気付いた市井先輩が真希に近づく。
「何やってんの?着替えてって言ったじゃん」
(うわ〜・・先輩凄いな。キャプテンに徹してる・・。やっぱ素敵・・)
(これが果たしてあの子に耐えられるかどうか)
- 193 名前:O-150 投稿日:2001年02月24日(土)16時42分07秒
- 真希は俯いて返事もしない。
そして案の定、バッと振り返って走り去っていった。
(やっぱり無理だったか)
(良かった最大のライバルがいなくなった!!)
真希はレースの途中で投げ出した。
と言っても向こうは私と戦ってるつもりなかっただろうけど。
とにかくこれで私は先輩を落とす事だけに専念できる。
- 194 名前:O-150 投稿日:2001年02月24日(土)16時43分25秒
- “あの市井先輩が私に夢中になってバスケどころじゃなくなる”
それを想像しただけでもの凄い興奮する。
“先輩のあの強い意志は、果たして私のフェロモン攻撃を前にどれだけ揺らがずにいれるか”
それからはもうとにかく毎日がワクワクドキドキで、厳しい練習なんて全然辛くなかった。
こうして私の『先輩をメロメロにしてやる作戦』はジリジリと詰め寄るように遂行されていった。
でもそれが目的で入部したって事気付かれたら絶対先輩は私に見向きもしなくなるだろうから、、、
あくまで慎重に、
ジリジリと、
ゆっくり、ゆっくり・・
――――あの頃、私の目線の先にはいつも先輩がいた。
あらゆる誘惑に負けない意志の込もった、あの強い眼差しを持った、市井先輩が。
(気付いた時にはもう私から離れれなくなっているよっ
ねぇ市井先輩・・♪)
――――ばれんたいん―――
- 195 名前:O-150 投稿日:2001年02月24日(土)16時49分54秒
- ( ´ Д `)<後藤走ってどっか行っちゃったよぉ〜・・・
嗚呼・・また話を自ら膨らませてしまった・・
っつーか・・・もうバレンタインから何日経ったと思ってるんだゴルァ!!
って事でホント・・急げ急げ・・
白も同時進行しております。
レスありがとうございます。メンバーは全員は・・どうかな・・
だって加護辻なかざーは・・年が・・(w
でも一応色々考えてます。
- 196 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月24日(土)19時33分37秒
- 石川のトバシっぷりが笑える(w
飯田編に出てくる市井の彼女は時系列的には後藤じゃなさげだから石川も違うんだよね・・
マジおもしろいっす。
- 197 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月24日(土)23時26分49秒
- 石川がおもしろい。
中澤さんとの絡みに期待
頑張って下さい!!
- 198 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月25日(日)00時27分01秒
- マジで石川おもしろすぎ!最高です。
同じく中澤との絡みも見てみたいです。
無理にとは言えないですが、余裕があったら書いてもらいたいです。
- 199 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月25日(日)02時22分51秒
- 個人的にいちなちが楽しみ
作者さんがんばって
- 200 名前:Oー150 投稿日:2001年02月26日(月)00時53分25秒
- ばれんたいん
―――――
―――――
最近、私は部活が終わった後いつもしている事がある。
人知れず、こっそりと。
「ハァ・・ハァ・・ハァ・・・・んっ・・ハァハァ・・」
ギシッッギシッッギシッッ
イマジネーション。
自己実現を果たすために、生きる為に、人間に与えられた能力。
欲しい物のために、私はその能力を鍛える。
イメージを膨らまし、欲しいそれを想像する。
手に入れる経緯、手に入った瞬間を、想像する。
欲しくて欲しくてたまらない。その欲求を昇華させる為、私はこの行為を続ける。
そじ自体に意味なんてなくても。
「せん・・ぱい・・ハァハァハァ・・・んっ・・ぁっ・・」
ギシッギシッギシッ
先輩が、私に触れる。
“石川・・・”
私の耳元で言葉を囁き、目を見つめ、手に触れ、、、
ギシギシギシギシギシギシ
「ハァハァ・・・市井・・先輩・・!!」
「んっっ!!・先輩!!・・・先輩!!・・・」
「・・っ・・もう・・・だめぇぇぇ!!」
全身の気力体力を使い果たす。終わった後のこの脱力感がなんともいえない。
いつの間にか私は、この限界を超えた時の快感が体に染み付いて、やめられなくなっていた。
女の子はこういうのやりすぎると嫌われちゃいそうだけど・・・
でも・・仕方ないじゃない・・・
だって・・・それだけ先輩が好きなんだもん・・・
- 201 名前:O-150 投稿日:2001年02月26日(月)00時54分36秒
- 「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・終わった・・・何分してたかな・・・・」
「もう1時間経つよ」
「・・そんなに・・・?ハァハァ・・」
「はいこれ着なよ風邪ひくよ・・」
「ありがとう・・ハァ・・・ハァ・・」
「・・凄い持久力だね・・いくら先輩が好きとは言え・・・私には無理だな・・。っていうか私ここで見てる意味はあるの・・?見てるこっちはとてつもなく恥かしいんだけど・・」
「だって私人が見てる方が燃えるんだもん・・」
「・・・梨華ちゃんは恥かしくないの・・?」
「なんで恥かしいのよ」
「だって梨華ちゃん・・・普通さ・・・・、、、
ジムでトレーニングマシーン使いながら人の名前叫ばないでしょ・・」
- 202 名前:O-150 投稿日:2001年02月26日(月)00時57分17秒
- 、、って事で実は私、毎日毎日部活帰りに友達引き連れて直行でジムに向かい、体を鍛えてるんです。
先輩の事を思いながらやると、自分でもビックリするくらい凄い力が出る。愛の力ってやつかな・・
「いいじゃない別に。だってその方が頑張れるんだもん」
「だって梨華ちゃんが来た途端、みんな“あの変な子が来た”と言わんばかりの顔して速攻で帰ってくじゃん・・」
「私はその方がいいよ。器具独占できるから嬉しい♪」
「っていうか私テニスで疲れてるから帰って寝たいんだけど・・」
「も〜〜いいじゃない一緒に体鍛えようよ〜〜」
「いや遠慮しとく・・。だってムキムキになったら嫌じゃない・・?」
「だってだって・・」
「だって何よ」
「だって市井先輩が・・」
「何よそのデレ〜〜っとした顔は」
「あぁ思い出すだけでクラクラする・・」
- 203 名前:O-150 投稿日:2001年02月26日(月)00時58分26秒
- ―
――
―――
“石川、中学時代部活やってたってホント?”
“え?はっはい一応・・”
それは突然だった。
部活に入って1週間近く経った日の事。
市井先輩は、いつも部活が終わっても一人で体育館に残って練習してたりするから、帰るのは一番最後。
それを知ってる私は、部活が終わった後、先輩と二人っきりになれるチャンスがあれば何か・・何か間違いが起こるかもしれない・・(ドキドキ
と思い、いつもタラタラと着替えをする。
そしてその日、いつものようにタラタラ着替えを済ませ、シュート練習をしてる先輩に挨拶をして帰ろうとした私に、
突然先輩が声をかけてきた。
そして帰ろうとしていた私の近くまでダムダムと言う音を立てながら近づき、私の間の前に立って、ボールを手から落とした。
ダムッダムッダムッッ・・・
遠くへ転がっていくボール。それを無視して、先輩がおもむろに口を開いた。
「ジャージ脱いで」
「え゛!??!?!」
- 204 名前:O-150 投稿日:2001年02月26日(月)01時00分24秒
- いきなりすぎた。心の準備も何もしてなくて・・
あまりにいきなりだったから、私の心臓は飛び出そうな程強く音を立てた。
(先輩・・あなたは知らないだろうけど・・私はこの時を・・待ってました・・)
(いいですよ・・・私・・・先輩になら・・何をされても・・・)
私は何も聞かずに着ていたジャージを脱いだ。
そしてTシャツに手をかけようとしたところで、先輩が私の手を掴んできた。
(・・先輩強引・・・)
そして私の手をグイっと前に伸ばし二の腕を揉んでくる。
(先輩二の腕フェチ・・?)
私は思わず赤面して顔を背けてしまった。
いざとなると恥かしい。
そして思わず声が出そうになった時だった。
「これで部活やってたって言えんの?」
「え!?」
- 205 名前:O-150 投稿日:2001年02月26日(月)01時02分42秒
- 先輩が眉間にしわを寄せている。
「タプタプじゃん」
「タプタプ!?」
「全然使えない」
「つ、使えない!?」
「テニスやってたって聞いたから、他の部員よりは腕力抜き出てるかなって思ったんだけど、全然だね」
(あ・・・・私・・また勘違いしてた・・・)
(私って相当エッチなのかな・・・ちょっと自己嫌悪・・)
「部活引退してから体鍛えるの怠けてただろ」
「・・は、はい・・」
「3週間で取り戻せ」
- 206 名前:O-150 投稿日:2001年02月26日(月)01時06分04秒
- 「え!?」
(なっなんなのこの3段回驚かし攻撃は!!)
「3週間。その間に、石川の3年間培ってきたものを取り戻せ」
「そ、そんなの・・」
「無理じゃない。無理な事なんてない」
「・・・・」
「なんの為に3年間頑張ってきたんだよ。他の新入部員は何もしてきてない奴ばっかなんだよ。その子らと何も変わらないなんて悔しくないの?」
「・・・・」
(確かに・・。先輩の事で頭いっぱいで忘れてたけど・・)
「しかもキャプテンだったんだろ?だったら、人よりプライド高いんじゃないの?誰よりも頑張ってきたんじゃないの?」
「・・・・・」
真剣な、真っ直ぐな目で先輩は私にそう言ってくる。
変な事考えてた自分が、ちょっと情けなくなる。
「一度人の上に立って仕切ってきた奴は、人と同列に並べられてたまるかってぐらいの負けん気あるはずだけどな」
「・・・負けず嫌いです、私・・相当・・」
「、、やっぱね(笑)」
(え・・?先輩が・・私に・・・・笑いかけた!!!きゃ〜〜〜!!!)
(あ、そっか今部活外だから笑顔解禁なのかな?)
「だったら、出来ると思うけど?」
挑戦的な、でも期待してくれてるような、そんな表情。
先輩にそんな顔されたら、、
「・・・はい、分かりました!頑張ります!」
誰だってそう返事しちゃうよ・・・
―――
――
―
- 207 名前:O-150 投稿日:2001年02月26日(月)01時08分39秒
- 「・・で、頑張るって言っちゃった訳だ・・・」
「うんっ」
「まぁ、梨華ちゃんがやれると思ったならいいんじゃない?」
「う〜ん・・正直自信ないけど・・。でも、、なんか嬉しくて」
「何が?」
「だって〜先輩と約束事したんだよ!?」
「約束ねぇ・・」
「しかも新入部員私含めて7人いて、その中から私に、私だ・け・にそんな話してくれたの♪二人だけの秘密」
「っていうかそれは・・別に梨華ちゃんをそういう目で見たんじゃなくて、ただ単に、自分と同じキャプテン経験者だから・・そういうなんかじゃない?」
「そういうなんかって?」
「だからその、、まぁつまり期待してるんでしょ」
「ふっふ〜んそんな事分かってるよっ♪」
「期待ってバスケを、だよ・・?」
「うん。でもほら、期待されてるって事は、一目置いてるって事で、それって、、
一番お気に入りって事じゃない!!」
「・・・途中凄い飛躍してると思うんだけど・・」
私は先輩と約束との約束を守るべく、とにかく無我夢中でトレーニングをした。
筋肉痛でシャーペン持てなくなったり、和式トイレに入れなくなったり、梨華ちゃんて常にシップ臭いってクラスメイトに噂されたりしたけど、、、
でもこんな事で先輩のハートを射止めれるなら、全然苦じゃない!
- 208 名前:O-150 投稿日:2001年02月26日(月)01時12分06秒
- ―――そして時はあっという間に経ち、あれから丁度3週間、
ついに約束の日。
(あ〜〜〜どうしよ緊張する〜〜!!)
私は心臓をドキドキさせながらも急いでジャージに着替え、いつも通りキャプテンの前に整列する。
そして一礼して、すぐに並んで体育館の中をランニングし始める。
「昭栄〜ファイッ!ファイッ!ファイッ!」
ランニングしながらも、頭に浮かぶのはやっぱり先輩の事ばかり。
(先輩は約束の事覚えているのかな)
(私が人知れず努力してたこと知らないだろうな〜)
(タプタプだった二の腕もキュッと引き締まったし、腹筋も割れたし、完璧なはず)
(そしてこれを見た先輩が・・、、
“石川よく頑張ったね”
“はっはい”
“正直市井も、石川がここまで頑張れる子だと思わなかったよ”
“・・私が・・頑張れたのは・・・・私が先輩の事・・・先輩の事好きだからです!!”
“・・石川・・”
“大好きな先輩との約束だから・・だから頑張れたんです・・”
“・・・市井もだよ”
“え・・?”
“市井も、石川の事・・好きだよ・・”
“先輩・・・”
“石川・・・”
“・・んっ・・・”
とか言っちゃって!!きゃ〜〜〜〜〜〜〜!!!!)
「昭栄〜ファイッ!ファイッ!ファイッ!」
(はっ!また一人で突っ走っちゃった・・)
(あ〜〜しかも突っ走ってるのに一人だけ遅れてるぅぅ!)
そう一人だけランニングの列から数メートル遅れて走ってる事に気付き、ダッシュで追いつこうとした時だった。
- 209 名前:O-150 投稿日:2001年02月26日(月)01時14分46秒
ガラガラガラッ
ランニングの足音に混じって耳の届いた体育館の扉の開く音。
そして扉から入ってくる生徒が丁度視界に入った。
距離があるので、分かるのは生徒だと言う事くらい。
(・・・ん?なんか見覚えあるシルエット)
その生徒は私達の方に向かってゆっくり歩いてくる。
私達も丁度その子の方に向かって走ってる形となっていて、
その距離が徐々に縮まる。
そして徐々に顔が見えてきた時、私は言葉を無くした。
(え・・・・・な・・んで・・)
そして先頭を走っていた市井先輩が足を止めた。
同じく足を止めハァハァと息を吐く部員達。
その子は先輩の前に立つと、すっと先輩を真剣な目で真っ直ぐ見つめ、威勢のいい声で、、
「後藤真希と言います!!バスケ部入部したいです!!」
ばれんたいん
- 210 名前:Oー150 投稿日:2001年02月26日(月)01時32分51秒
- ( ´ Д `)<また後藤の登場だねぇ(テレテレ
はい・・自白します・・。今回のテーマは“読んでくれてる方を裏切ろ〜”でした・・
何回もしつこく裏切ってゴメンね・・
え〜レスありがとうございます!!!おかげさまでいい感じでノレてます。
普段から石川のボケっぷりはかなり好きなんで、そのイメージのまま突っ走ってるつもりです。
なかざーは、いちお〜〜入れる場合を考えて既に伏線張ってあります(ニヤリ
ので、もし書こうと思ったら書けますので、後は僕の時間とか気分とかです・・あしからず・・。
何も考えてないようでこんなショボイ小説でも一応あちこちに伏線張ってあるんです。
最初から張りながら書いてたんで。(後から書きたくなったら続編やろうともってた
なので、読み返してみたら、これからの事すこ〜し予想出来たりするかもしれません。
では続きガムバリマス!
- 211 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月26日(月)03時35分42秒
- まんまと引っ掛かっちゃった(w
伏せんがそんなに敷かれてたとは・・・
続きますます期待
- 212 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月26日(月)22時13分22秒
- このスレができたときからずっとみてます。
ぜんぜんショボくないよ。ほんといろんなとこに伏線張ってるね。
この話は前作読んでから見るべしやね。おもろさ倍増よ。
それから白のほうも頑張ってや…
- 213 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月10日(土)12時17分04秒
- 続き早く読みたいです。
大変でしょうが頑張ってください
- 214 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月12日(月)16時40分37秒
- 待ってまーす
- 215 名前:Oー150 投稿日:2001年03月14日(水)02時50分38秒
- ばれんたいん
「後藤真希と言います!!バスケ部入部したいです!!」
(なんでよ!!なんでこの子戻ってきたの!?あれから1ヶ月も経つじゃない!)
そして先輩がキリッとした顔で口を開いた。
「、、、すぐに着替えてランニングに混じってっ」
「はいっ!!」
真希は威勢良く返事するとすぐに更衣室へと走っていった。
(なんなの・・?あの何か吹っ切れたような顔は・・)
(それにお互い知ってるはずなのになんで改めて自己紹介してるのよ・・)
(何考えてるか全然わかんない・・)
こうして、後藤真希が私の前に再び現れた。
―――この真希って子だけは絶対恋敵にしてはいけない
この時私の第六感は、そう強く私に訴えかけていた。
なんでかはよくわかんないんだけど・・
(せっかく・・せっかく市井先輩とこれからいい感じになっていくはずだったのに!!)
(私の計画を崩すなんて・・いい根性してるじゃない・・)
(絶対、絶対先輩は渡さないんだから!)
- 216 名前:O-150 投稿日:2001年03月14日(水)02時51分56秒
- ―――――
真希は果たして市井先輩にどうやって攻撃を仕掛けていくのか、、
それが気になったから、とりあえず部活が終わった後私は真希の様子を伺っていた。
いつも通りノタリノタリと着替えをする私の横で、真希は特別ゆっくり着替えるわけでもなく、ジャージから制服に着替え終わるとそそくさと更衣室から出て行った。
慌てて更衣室から顔を覗かせ、体育館を通る真希を目で追う。
(絶対先輩と親しくなりたくて戻ってきたに違いないんだから、何か会話するはず)
ダムダムとリングを見つめてバウンドさせている市井先輩。
その先輩の後ろを通った真希は、、
「お疲れ様でした」
「お疲れ」
普通に挨拶をして去っていった。
(あ、あれ?先輩に何か仕掛けないの?)
(う〜ん・・なんでだろう・・様子見とかかな・・?)
(フッまぁいいわ。タラタラしてるうちに先輩を私のものにしちゃうんだから)
- 217 名前:O-150 投稿日:2001年03月14日(水)02時59分58秒
他の部員が着替えを済まし次々と帰っていく。
そしてようやく一人になった。
(よ〜し、ついに先輩との約束の日・・・)
(キャッどうしよドキドキしてきた・・♪)
(あ、歯磨きしてこようかな)
(って私ってば計算しすぎぃぃ!!!)
(髪の毛は、、うん完璧。昨日ヘアパックしたまま2時間程バスローブ姿で部屋ウロウロしてたせいでちょっと風邪気味なんだけど、でも髪さえ無事ならそれでいいのよ)
(眉毛も先輩に負けずとキリッとしてるし、、)
(匂いも、、うんイイ感じ。香水フェロモン系選んで正解ね。朝お母さんにあんた臭いって眉間にしわ寄せて言われたけど、、あの人は分かってないのよ。この私の奥底に眠っている大量のフェロモンを誘発するこの匂いを。まぁ分かったら怖いか)
(、、下着も勝負下着だしぃ、、履いたからには勝ちにいくわよ)
(よしっ・・・行こう・・)
(・・ってちょっとまって・・どうやって先輩といいムードにになるよう持っていくか考えてなかった・・)
(う〜ん・・・まぁいいや、自然とそうなるでしょう♪)
- 218 名前:O-150 投稿日:2001年03月14日(水)03時04分13秒
≪ドキドキドキドキ≫
ダムッダムッダムッキュキュッシュッ
「あ、あの〜・・先輩・・?」
ダムッダムッ
「まだ帰ってなかったんだ。何?」
ダムッダムッシュッ
(うわ〜・・ウザいって言ってるっぽいな〜・・)
(いや負けちゃダメよ・・)
「・・覚えてます・・・?」
「何を?」
ダムッダムッダムッ
「約束の事・・・」
「は?」
(やっぱり忘れてる・・・・)
(でもそんな人に無関心な先輩が好きっ♪)
(私にはもっと関心もって欲しいけど・・)
「あの・・3年間を3週間で取り戻せって・・」
「・・あ〜〜言ったねそういえば」
(言うより見せた方が早いわよね)
私はゆっくりとジャージのチャックを下ろした。
ジ――ッ
パサッ・・・
ジャージが床に静かに落ちる。
ちょっと誘惑気味に色っぽくTシャツ一枚になる。
別に思いっきりTシャツを着ているのだが恥かしそうに俯き加減でなんとなく両手で胸のあたりを覆う。
少し内股になり、頬を赤らめてみた。
(ムードよねムード・・)
ダムダムとドリブルしながら先輩が近づいてくる。
そして私の目の前に立ち、ボールを左手で抱きかかえながら右手を伸ばしてきた。
(き、きた・・)
- 219 名前:O-150 投稿日:2001年03月14日(水)03時06分22秒
その伸ばした右手が私の腕をさする。
「っ!!」
「?ごめん痛かった?」
私は先輩に触れられ、自分でも驚くくらいビクッと反応してしまった。
(やだ・・私これくらいで・・凄い感じてる・・・)
≪ドッキンドッキンドッキン≫
「あっあのその凄い筋肉痛なんで・・・」
「そっか。頑張ったんだね」
≪ドッキンドッキンドッキン≫
(先輩に・・褒められた!!もう心臓破裂しそう・・)
「うんやっぱ右手の筋力は凄いね。これは市井も適わないかもしんない」
「そっそんな事ないですよ・・・」
「とにかく、、石川の三年間、分かったよ」
「・・良かった・・」
「ん?」
「そのっ・・先輩には分かってて欲しかったっていうか・・」
(どうしよ告白しちゃおうかな・・)
チラッと先輩の表情を伺う。
(わっ先輩そんな真剣な目で私を見ないで!!)
「なんていうか!そのっ一応私もキャプテンしてたしっそのあの同類、、じゃないし公私混同、、って意味違うしその・・!!」
(どうしよ動揺して訳分かんなくなってきちゃった!!先輩その目は私には強すぎます!!)
「あぁ、、分かるよ」
「え!?」
- 220 名前:O-150 投稿日:2001年03月14日(水)03時08分12秒
- (まっまさか先輩私と同じ気持ち・・・、、)
「市井にバカにされたみたいで見返してやろうって思ったんでしょ?」
「へ!?」
「いやいいよ。そういう気持ちって大切だと思うから」
(違う!先輩違うわよ!!誤解にも勘違いにも鈍感にも程があるわ!!)
「でもさ、そう思うんなら頑張って市井追い抜かさなきゃダメだぞ」
(追い抜く!?追い抜けるわけないじゃない!!)
「待ってるから」
「え・・・」
ダムッダムッダムッダムッ、、
- 221 名前:O-150 投稿日:2001年03月14日(水)03時09分47秒
- ―――――
――――
―――
――
“待ってるから・・”
“待ってるから・・”
“待ってるから・・”
「待ってるから・・・・」
「あ〜うん分かったじゃあ9時すぎになると思うけど待っててね」
「え!?」
「えって・・だから今日一緒に勉強するんでしょ?」
「は!?何それ聞いてない!私の予定無視しないでよ!」
「いやだから今確認取ったら待ってるって梨華ちゃん言ったじゃない」
「違う違う!待ってるのは私じゃなくて、せ・ん・ぱ・い」
「は?先輩とデートの約束取り付けたの!?」
「いやんまさか〜。そんなんだったら今日学校なんてちっぽけな所に来てないわよ〜」
「ちっぽけって・・」
「こんな学食のたぬきうどんなんてのん気に食べてないわよ〜」
「梨華ちゃんの好物じゃん」
- 222 名前:O-150 投稿日:2001年03月14日(水)03時11分28秒
- 「はぁ〜〜〜・・でもなんて先輩ってあんなにカッコいい事サラっと言えちゃうかなぁ〜・・」
「無意識にキザな人っているよね。私は苦手だけど」
「“市井を追い抜かしてみろよ・・”“待ってるから・・”って一言言い残してドリブルして消えてったのよ〜〜!!も〜〜先輩カッッコ良すぎぃ!!!」
「消えてはいってないでしょ?思いっきりそこら辺でシュートしてたでしょ?捏造しちゃダメだってば梨華ちゃん」
「・・私の中では風の中消えてったのよ!!」
「ふ〜んまぁどっちでもいいけど、やっぱり罪な人だね」
「存在自体が罪よ・・」
「っていうか・・多分闘争心掻きたてさせる為に言ってるんだろうけど・・言われた本人違うもの掻き経っちゃってるからね〜・・それが罪っていうか・・鈍感っていうか・・」
「そうそうそう言えば前話した真希って子が現れたのよ」
「え!?そっちの方が重大じゃん!」
「私もそう思ったんだけどね、なんか別に先輩を落とす気はないみたい」
「ふ〜ん。あの子先輩方に結構人気あるみたいだからね〜気をつけないと」
「え!?そうなの!?」
「うん可愛いし、何考えてるか分かんないし、ちょっとカリスマ性みたいのあるじゃない?」
「ないわよ全然!!カリスマのカもないわ!!」
「でも実際あんなギャル軍団に入ってるのにバスケ部なんかに1ヶ月も経ってから入部しだす辺りちょっと行動が謎じゃない?」
「うっ・・・」
「とにかくマークしといた方がいいよ」
「分かった・・マークっていうかむしろ捕獲しとくわ」
「捕獲・・・・・」
- 223 名前:O-150 投稿日:2001年03月14日(水)03時12分28秒
- ―――――
―――――
それから私は、狂ったように練習に励んだ。
“待ってるから”
先輩にそんな事言われちゃったら、頑張るしかない。
追いつくしかない。無理だと思うけど・・
真希も何で入部してきたのかよく分かんないけど、でも本当にバスケをしたくなったのかもしれない。
―――だって、メチャクチャ真剣なんだだもん・・。
ちょっと意外だった。
真希とは廊下ですれ違ったりよくするけど、普段はボーっとしてて常にダルそうだし、トイレなんかでは「もういいじゃない!」っ突っ込んでやりたいくらい鏡見て髪いじってるし・・。
なのに部活では髪なんか汗で肌に張り付いても気にしない勢いで、真剣にやってる。
やる時はやる子なんだろうか・・・。
他の子では、市井先輩に色目使いながら質問しにいったりしてて、明らかに先輩狙いな子とかいるけど、真希は全然そんな様子もなくて、
先輩が目当てで入ってきたような感じでは無かった。
――――いや無いと思ってた。あの時真希のあの姿を見るまでは。
- 224 名前:O-150 投稿日:2001年03月14日(水)03時13分53秒
- あれは、真希が入部してきて数ヶ月が経ち、インターハイを目前に控えた日の事。
先輩方がコートでゲームをしているその脇で、私達一年は筋力トレーニングをしている時だった。
「紗耶香!!!」
突然尋常ではない先輩を呼ぶ声。
驚いて先輩方の方に視線をやると、そこにはコートの中央辺りでうずくまってる市井先輩の姿があった。
(え!?市井先輩!??!)
驚いて部員が一斉に先輩を取り囲むように集まる。
私は突然の出来事で驚き、立ちすくんでしまって先輩の元に駆け寄るのが遅れてしまった。
今大きな怪我したらインターハイに出れない事は目に見えている。
先輩のインターハイへの只ならぬ意気込みは誰もが分かってる事だ。
最悪な事態が私の脳裏をかすめた。
私は凄い勢いで先輩の下に掛けより、部員の輪を無理矢理割って入っていった。
市井先輩は足首を抑えて痛そうに顔をしかめていた。
「――っつ・・」
「先輩私の肩に捕まって下さい!」
急いで先輩の体を起こし、腕を自分の肩に回した。
「ちょっと何ぼーっとしてるんですか!!手伝ってください!!」
「あなたは骨折とかじん帯切ってるかもわかんないから救急車呼んで来て!早く!」
私は、突然の事態にどうしていいか分からないと言った感じで放心状態でつっ立っていた先輩と同期に指図をした。
「あ、うっうん」
そして私の言葉ではっと我に返った様子でその子が走り出した途端、、
「ちょっと待って救急車なんて呼ばなくていいから!・・大丈夫だから・・」
- 225 名前:O-150 投稿日:2001年03月14日(水)03時16分35秒
- その言葉でその子が足を止めた。
先輩はそう言いながら私の体をゆっくりと軽く突き放した。
「本当ですか!?無理しちゃダメですよ!治るものも治らなくなっちゃいますから!」
「ホントホント無理じゃなくて、自分の体は自分がよく分かるよ・・。多分軽い捻挫だから、1週間くらいで治ると思う・・」
そう言って片足を引きずりながら歩いて行こうとしたので、私は
「じゃあ保健室までだけでも・・」
と言って先輩の体をもう一度支えて歩き出した。
「サンキュー・・」
先輩を支えながら囲んでた部員達の輪を出て、ゆっくりと先輩の痛そうにしている足を見ながら歩いていると、突然先輩が足を止めた。
不思議に思いふと顔をあげると、、、
そこには真希の姿があった。
正確には目に涙を溜めた真希の姿が・・。
(え・・?泣いてる・・・・?)
広い体育館で、部員の輪から一人ポツンと遠く離れたところにいた真希の様子は、明らかに普通ではなかった。
(その場で立ち尽くして動けなかったっていうの・・?)
その様子を見て、私は確信した。
―――真希は先輩の事が好きだ。
それも、どうしようもないくらい・・・
ばれんたいん
- 226 名前:Oー150 投稿日:2001年03月14日(水)03時23分18秒
- ( ´ Д `)<ばれちゃった・・・・
レスありがとうございます・・ホントにホントに・・
はいあっちもこっちもそっちも頑張って飛ばしてきます!
ホント、勢い付いた僕は二つでもこれだけ書けるんじゃんかと自分に激励してます・・(w
同時進行は返っていいのかも。
- 227 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月14日(水)04時41分59秒
- おもしろい!!!!
「待ってるから」って言葉で時が錯誤する(ごめんなさい、うまく表現できない)場面とか
すごく書き方がうまいと思いました。
なんか映像としてドラマのように目の前に浮かびました。
石川のキャラもめちゃくちゃおもしろくて良いです。
やっぱいちごまも最高!!!とにかく続き期待してます。
- 228 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月14日(水)23時59分54秒
- 更新!楽しみにしてました!!
青春だぁ〜・・・。
後藤可愛い
- 229 名前:O-150 投稿日:2001年03月15日(木)05時50分43秒
- ばれんたいん
先輩と目が合った真希は、とっさに下を向き、目頭をジャージの袖口で押さえた。
先輩は無言でまた歩き出し、真希の前を通り過ぎる時に、小声で
「大丈夫だから・・・」
と言って真希の頭を軽くポンとたたいてそのまま通り過ぎた。
(・・・・・)
なんともやりきれない思いがあった。
体を支えているのは私なのに、先輩の心を持っていかれた気がした。
- 230 名前:O-150 投稿日:2001年03月15日(木)05時52分08秒
―――――
それから私は、それまで全然疑っていなかった真希を、注意深く常に観察しだした。
すると、今まで気付かなかった私はバカなんじゃないかと思うくらい、真希の先輩への想いはあからさまだった。
ふとした瞬間、ほんの一瞬だが、真希は度々先輩の後姿を愛おしそうに見つめていたり、他の子が先輩にフォームなどを教えてもらいに行くと、その様子を嫉妬めいた表情で少し頬を膨らませながら一瞬見て、見てられないと言った感じですぐに視線を外していた。
私の中に疑問が募る。
たった一度、先輩と印象深い出会いとしたと言うだけで、ここまで好きになるだろうか。
一度先輩の冷たい態度にあれだけショックを受けて走り去っていった人が、突然こんなふうになるだろうか。
普段の真希の性格や態度から見ても、やはりあの真希が突然バスケを真剣にやりたくなったとは思えない。
―――きっと、二人の間に何かあったんだろう。
“大丈夫だから・・”そう言って真希の頭に優しく頭に手を置いた先輩の様子も、今まで見た事のない何かを感じた。
先輩が真希に見せた優しさはその一瞬だけで、それからは変わらず鬼に徹していたけれど。
そして、もう一つ私の中に大きな疑問があった。
真希は何故先輩に近づかないのだろう。
真希が先輩に気持ちを見せたのはあの一瞬だけで、あの時以外先輩には普通に振舞ってる。
絶対に気持ちを気付かれないようにしているといった感じだった。
普通好きならなんらかのモーションをかけるだろう。
というか無意識にでも出るはず。
―――真希は何を考えているの・・・?
私の中には、とてつもない焦りが生まれていた。
真希のあれは、もしかしたら自信から来る落ち着きなのかもしれない。
―――早くしないと真希に先輩の心を持っていかれてしまう
私は何故かそんな不安でいっぱいだった。
どんどん積もっていく不安に耐えられなくなった私は、意を決した。
インターハイを目前に控えて、こんな事言っても多分相手にしてくれないだろう。
でも、もう想いを伝えずにはいられなかった。
―――真希より先に想いを伝えなければ
―――真希より先に私という存在を意識して貰わなければ
- 231 名前:O-150 投稿日:2001年03月15日(木)05時57分19秒
- ―――――
私は部活が終わった後、いつものようにノタノタと着替えを済ませ、全員帰ったのを見計らって、相変わらずシュート練習をしている先輩のもとにゆっくりと近づいていった。
ダムッダムッダムッダムダムダムシュッ
先輩はインターハイが近いためか、いつもよりも激しくシュート練習をしていた。
汗で濡れた髪を掻き揚げながら、ステップターンを繰り返し、変わらぬ綺麗なフォームでシュートを繰り出す。
そして、珍しくハァハァと肩で息をしながら膝に手をついてゴールネットを通ったボールを目で追っていた。
私はそのもとに近づいて、無言でタオルとスポーツドリンクを差し出した。
「ハァハァ・・サンキュー・・・」
先輩はそれを受け取ってその場にヘタリこんだ。
私も隣にちょこんと体育座りをする。
「・・・石川帰んなくていいの?」
「・・ちょっと・・先輩に話しがあって・・」
「話?・・なら手短にして。市井悠長に話してれる程余裕ないから・・・」
「あの・・こんな時期に凄い不謹慎なのは分かってますけど・・」
「・・何・・?」
「言わずにはいられなくて・・・」
「・・だからなんだよ・・・」
「じゃあ単刀直入に・・・
私・・先輩の事が・・
好きです・・」
- 232 名前:O-150 投稿日:2001年03月15日(木)05時59分22秒
- 自分でも驚く程すんなりと言えた。
先輩を目の前にしたら、絶対いえないと思っていたのに・・。
「・・・・・」
先輩は下を向いたままだ。
長い沈黙が流れる。
「不謹慎って分かってるって事は、市井の答えも分かってるんじゃないの?」
「・・分かってます・・。でも、言わずにはいられなくて・・」
「・・言って満足した?満足したなら、、悪いけど練習の邪魔だから」
そう言って先輩は立ち上がる先輩。
――ダメ。肝心な事を、ここで今聞かなきゃ・・
「真希は・・・後藤真希は先輩の何ですか!」
その言葉に先輩の動きが止まった。
「何って・・後輩だろ・・」
「真希の事・・好きなんですか・・?」
「は?なんでそうなるんだよ」
「ちゃんと答えて下さい。答えてくれるまで、私ここ動きません」
「・・・・・」
- 233 名前:Oー150 投稿日:2001年03月15日(木)06時46分59秒
- ――
―――
―――――
――――――
先輩に告白してから数日後、インターハイまで後3日という日の事。
インターハイが終わったら、先輩はもう引退してしまう。
その前に、私はどうしても真希と一度、先輩の事で話がしたかった。
あの日、先輩に思い切って告白した日から、思ってた事だ。
真希は部員同士と部活以外での付き合いがあまりなく、付き合いが悪いと陰口を言われ、あまり仲良くやっていない。
付き合いが悪いと言っているが、普段真希が濃いギャル軍団と付き合っている為、実は周りが敬遠しているだけだと言う事を私は知っているけど。
真希はああ見えて本当は凄いナイーブって言うか、弱い事を私は知っているけど、そんな真希のフォローをする義理も何もないので、放っておいてた。
真希の方も、敬遠する人等に自ら入っていこうとする意欲も見られなかったし。
適当に愛想を振り撒いて人付き合いを上手くやってる私とちょっと違う。
真希と私も、挨拶を交わす程度で会話といった会話をした事が無かった。
私自身真希の事好きじゃなかったし。恋敵だから当然だけど。
でもその日私は意を決して真希に話し掛けた。
「あの・・後藤さん・・?」
「ん〜?何〜?」
制服に着替えながら、真希がいつものダルそうな声を出す。
私の中では既に真希と呼び捨てにしてたが、全然親しくないので苗字で呼ぶ。
ちょっと違和感がある。
「今日・・この後なんか用事ある・・?」
「用事?ん〜〜ないよ」
「じゃあ・・ちょっと帰りにマックでもよってかない・・?」
「マック?いいけど今後藤金欠だから奢ってね♪」
「・・・・」
(・・マック食べるお金も無いっていうの!?幼児でも出せるお金なのに!!金欠にも程があるわよ!!それじゃ破産じゃない!!)
「ん?ダメ?」
(でもこの子なんか憎めない性格してるな〜・・・)
(ちょっと妬ける・・)
「うん・・分かった・・」
(もはや彼女にペースを持っていかれてるきがする・・)
- 234 名前:O-150 投稿日:2001年03月15日(木)06時48分48秒
- ―――――
―――――
「でね〜ここ見てここ!ここんとこの部分がほらちょっとクルクルしちゃってるでしょ?テレビ見ながらアイロンしてたからちょっとやりすぎちゃったんだ〜。アハッ」
「アイロン???」
「ストレートにするやつ」
「あっあ〜アイロンね!そっそうそうあれってやりすぎはまずいよね!」
(ビックリした服のしわ伸ばすやつかと思った・・。田舎もんだと思われちゃ負けよ梨華・・私だって地黒だしギャルの素質は十分あるんだから!)
「梨華ちゃんあんま食べないねぇ。少食なんだね羨ましいよ。後藤は食べても食べてもって感じだよ〜」
「食べ盛りだからいいんじゃない・・?」
(って・・そう言えば私奢ってまでマック来て何こんな世間話してるのよ・・)
(でもこの子ホント話してみると想像してたより子供っぽいな〜・・)
「あ、あのね後藤さん・・」
「ゴッチンでいいよ〜」
「ゴ、ゴッチン??」
「うんそう呼ばれた方が後藤は好き」
(何そのふざけたあだ名は!戦闘意欲を掻きたてられるのは私だけ??)
「じゃあゴッチン・・」
「イントネーション違うよ!(笑)」
「えっそっそう?」
「ゴッチンって下がんないでよ。ぶつかってるみたいじゃん(笑)真っ直ぐ真っ直ぐ。ゴッチンだよゴッチン」
「ゴッチン・・」
「そうそう」
(・・やっぱちょっと可愛いかもこのあだ名・・)
(って、そんな事どうでもいいのよ!)
「えと、あのね、今日はゴッチンに話したい事あって誘ったの」
「ん?話したい事?」
「・・・市井・・先輩の事・・・」
その言葉を口にした途端、それまで穏やかだった真希の表情が一変した。
咥えていたストローをから口を離し、急に大人っぽい真剣な表情を見せる。
「・・先輩がどうしたの?っていうか、後藤と関係ないじゃん」
「・・じゃあ・・いいの?
、、私が先輩もらっちゃっても」
- 235 名前:O-150 投稿日:2001年03月15日(木)06時52分09秒
「・・・・・」
案の定真希の表情が凍りついた。
「好きなんでしょ?分かってるから隠さなくてもいいよ」
「・・・・・」
先程までベラベラと喋っていた真希が、突然無口になる。
「私も好きなの。ゴッチンに負けないくらい」
その言葉でようやく真希が口を開いた。
「・・・・後藤の気持ちは誰にも負けないよ・・」
「・・やっぱり好きなんだ・・。まぁ確信してたけど・・。じゃあどうして?」
「・・?」
「どうして態度に示さないの!?どうして先輩に好きって言わないの!?」
「・・・・好きだから」
「え・・?」
「・・先輩の全部が好きだけど、その中でもバスケの事大好きな先輩が一番好きだから」
「そんなの・・、、」
「だから、、だから今は、後藤はバスケ一筋の先輩見てるだけでいんだ」
「・・そんなの、おかしいよ。好きな人には、自分の事一番に好きになって欲しいし、相手を手に入れたいって思うはずよ・・」
「う〜ん・・恋の矛盾ってやつかな・・。アハッ後藤臭いなぁ〜」
「・・・恋の矛盾・・?」
「気持ちが矛盾してるんだ〜色々と。自分でもよく分かんないんだけど」
「・・・・」
「けど、これだけは絶対だよ」
「・・何?」
「先輩は、、あげないよ」
「え・・?」
「バスケ以外には・・あげないよ」
「・・・・・」
私は言葉を無くす。
真希のこんな表情を、私はこの時始めて見た。
口調は穏やかだが、おっとりとした雰囲気の中に、とてつもなく強く、熱い何かを感じた。
見せた事のない威圧感と、強い意志、想い。
渡さないではなく、あげない、そうはっきり言う真希に、
私の先輩への強い想いが、一瞬、
握りつぶされてしまいそうになった。
- 236 名前:O-150 投稿日:2001年03月15日(木)07時08分28秒
- ―
―――
―――――
―――――――
「・・なんだよまだ帰れないわけ・・?」
(はぁ〜・・先輩のその不機嫌な顔、嫌いじゃないな〜・・)
「あ、あのその・・・すいません・・」
「いや謝んなくていいから早くしてよ・・」
「じゃあ単刀直入に・・・・
先輩・・・・・
好きです・・!!」
「、、あれ、知ってるんじゃなかったっけ?市井に彼女いるって。石川はさ」
「・・知ってます」
「っつーか前にもこうやって同じように市井に言ったよね」
「はい・・」
二度目の告白。私は一体何をやってるんだろうと、自分でもちょっと思う。
諦めが悪いと言うか、、なんなんだろうこれは・・。
「そん時市井なんて言ったかか忘れてないよね」
ロッカーに寄りかかっていた先輩が、手にしていたバスケットボールを床に置き、大きく息を吐きながらそのボールの上にゆっくり座った。
「忘れる訳ないじゃないですか・・・」
「じゃあなんでだよ。一度ちゃんと市井の気持ちは言ったし、今現在市井に相手がいる事も知ってる。なのになんで?」
「・・・諦めきれないから・・」
私は真希の先輩に対する強い気持ちと、先輩の私に対する無感情な気持ちを知っていながら、それでも尚、自分の想いを募らせていた。
そして想いを吐き出す場所は、やっぱり先輩しかない・・。
「・・・・あれだよ。女子校ってほら、相手が出来難いっつーか、男あんま知らない子が多いっつーか、中にいるから分かんなくなっちゃって、だから市井なんかにそうやって固執すんだよ・・。石川可愛いんだから、外行けば幾らでも他に、、」
「ダメです!!市井先輩じゃなきゃ・・市井先輩じゃなきゃ・・・んっ・・ヒック・・」
「・・泣く事ないだろ・・・・」
「・・んっく・・うっうっ・・」
「・・じゃ市井はどうすりゃいいんだよ・・」
「・・・・・・・・
・・・・・・キス・・して先輩・・」
ばれんたいん
- 237 名前:Oー150 投稿日:2001年03月15日(木)07時22分13秒
- ( ´ Д `)<・・・いちーちゃんしちゃだめぇ!!
途中でやたらとこう、、時系が飛んでて訳分かんなくなるかもしれないですが・・
わざと飛ばしてるので、、投稿ミスじゃないんで・・(w
後で繋がりますのでご了承下さい。飛ぶの好きなんです。。
―
―――
―――――
―――――――
↑↑この時は「ああ時間が飛んだんだな」と思って頂ければ・・
えと、、レス泣きそうに嬉しいです(泣
徹夜しちゃいました・・(w
- 238 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月15日(木)08時15分59秒
- すごい良いところで終わってる・・・
>「バスケ以外には・・あげないよ」
このセリフすごくしびれた!
続き早く読みたいけど、無理せずにがんばってください
( ´ Д `)<・・・いちーちゃんしちゃだめぇ!!
↑
ものすごくキャワイイ
- 239 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月16日(金)09時23分06秒
- さりげなく天然ボケな石川にも
笑いました
話しずれるけど 小説読んでるうちに
娘。ファン に なっちゃいました
昔は興味本位で覗きに来てただけだったのにな(笑)
- 240 名前:Oー150 投稿日:2001年03月16日(金)10時07分53秒
- ( ´ Д `)<後藤の台詞しびれてくれてありがとーございます!頑張ります!(テレテレ
ぬぉっし!!書いたぁ〜〜!!一気に行きます!!
ちょっとホント勢い野郎なんで、かなりミスとか心情的な流れとかなんか無茶苦茶で、読み返す度に色々後悔してるので・・
そのトラウマでまた載せるの怖いんですけど・・(w
また伏線問題とかで後悔するかもなぁ〜・・とか。
でも載せます。
迷ってる暇ナイシィ!分裂、乃至ヘタレだしぃ!
・・・分かり難いラップですみません・・明らかにテンション変です。
- 241 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)10時14分03秒
- おわっラップを考えてる間にレスが・・(涙
娘、好きになって下さい。深いです滅茶苦茶。中国の歴史より深いです。、、嘘です。
実は僕も小説から入って興味を持ちました。
では、、ホントに行きます。
- 242 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)10時18分11秒
- ばれんたいん
「・・・・・・・・
・・・・・・キス・・して先輩・・」
「・・好きでもないのに出来ない」
「好きじゃなくてもいいです・・」
「出来ない・・」
「それで、今までの思い出・・・・閉じ込めるから・・」
「・・・・・・・」
「・・今までの思い出・・全部・・」
「・・・・・・・」
下を向いてピクリとも動かない先輩。
表情こそ見えないけれど、その様子は明らかに戸惑っている。
先輩は恐らく、とてつもなく慎重に思考を巡らせているのだろう。
キスなんかしたら、想いを逆に膨らませてしまう可能性もあるし、真希に対する後ろめたさもあると思う。
でも、二度もしつこく告白してる私の想いを、閉じ込める手段がもしそれだとしたら、止むを得ないと考えるかもしれない。
先輩は、果たしてどっちを選択するだろう・・。
―――今までの思い出、、
そう言ったけど、実際のところ浮かんでくるのは、先輩の後ろ姿をただただ愛しそうに見つめていた頃の真希の姿と、インターハイ後に一転して楽しそうに先輩と2人でいる真希の姿ばかりだった。
“先輩後藤片手でシュートするのヤだよ〜”
“ヤだとかいうな”
“だって両手の方が力出るのにさっ”
“じゃーそうやってろよ。その代わり上手くならなくても市井のせいじゃないからな”
“ぶ〜・・分かったちゃんとやる・・”
インターハイを境に、先輩は変わった。
と言うか、役目を終えたから素の自分に戻っただけだろうけど。
それより何より、インターハイは真希と先輩の関係の転機でもあった事を、私は知っていた。
- 243 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)10時24分11秒
- ―
――
――――
―――――
インターハイが終わったその後ビッチリ2週間、私達バスケ部員は一年間で唯一の休みが与えられた。
私は先輩がインターハイで負けたあの瞬間を忘れられなくて、何も手がつかずにただダラダラと毎日を過ごし、
休み明け、なまった体を引きずりながら部活に行った。
(はぁ〜・・・体も心も重い・・・)
(先輩とはもう会えないし・・あんな負け方しちゃったし・・)
(私のこの重い想いはどこに向かっていくんだろう・・・)
先輩方は引退となったので、もう3年生はいない。
二年生の一番実力のある先輩にキャプテンが変わったが、市井先輩の事をえらく慕っていた人だったので、殺人的メニューは変わらず後継された。
いつものように、クタクタになって部活を終える。
もう先輩はいないのに、今までの癖でついノタノタと着替えをしてしまう。
(そう言えば先輩がいない部活にいる意味あるのかな・・)
なんて思いながら。
(まぁ部活動は嫌いじゃないから、今更変える気はないしやれるところまで続けよっか)
そう新たに意を決し、体育館へと出た。
、、と同時に、私は目を疑う光景を目にした。
- 244 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)10時26分03秒
ダムッッダムッッダムッッ
聞こえるはずの無い音。
そこには汗を流しながらドリブルとシュートを繰り替えす変わらぬ姿があった。
ただ違うのは、汗を流していたのは市井先輩ではなく、、、
後藤真希だった。
(真希!?・・がなんで・・!?)
「・・・・何・・やってるの・・・・」
私は立ち尽くして目を丸くしながら呟くと、10m程先でリングに向かってドリブルしていた真希がキュキュッという音を鳴らして止まり、私の方に視線を向けた。
ダンッッダムダムッ
「あ〜梨華ちゃん・・ッハァハァ・・・」
やはり先輩と違い、ボールのバウンドする音も心地良くなければ呼吸も大きく乱れてる。
「・・先輩はもういないんだよ・・?何の為にやってるの・・?」
インターハイのあの日、あの後真希が先輩のもとに行ったのは知ってる。
だからきっと、やり切れない悲しみを紛らわしているのかと思った。
でも、その答えは全く予想していないものだった。
「先輩の夢かなえるんだ」
- 245 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)10時27分21秒
- 真希は躊躇無くそう言った。
先輩の爽やかなそれとは正反対の、全く締まりの無い笑顔で。
けど、凄く純粋なものだけを浮かべ、その言葉に少しの偽りも感じられなかった。
「・・・そう・・なんだ・・」
悔しいけど、あのやる気の無い子がこんなに目を輝かせてそう言っているのを前にして、“そんなのあなたには無理に決まってるじゃない!”、、そうは言えなかった・・。
私はこの時真希に敗北を感じた。
先輩のあの負け方を目にした私は、先輩に対する同情心に埋もれ、何もやる気が起きなく、思考も想いもただ停止させていた。
認めてしまうと、確かに私は先輩から逃避していた。
真希も同じだろうと思っていた。
なのに違った。
真希は、こんなにも前を向いていた。
そして私は、この後もっと絶望的な敗北を感じる事になるなんて,
思ってもみなかった。
- 246 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)10時29分07秒
- ―――――
私は真希に「じゃあ頑張って・・」と一言告げて体育館を後にした。
(私完全に・・真希に負けてるよ・・・)
先程の真希の表情を見てちょっと鬱になった私は、靴箱までの廊下を俯きながらトボトボと歩いていた。
すると突然、ポンと肩を叩かれた。
驚いて顔をあげるとそこには、、
「おっす石川」
「!?市井先輩!!!!」
そこには何故か新しいジャージに身を包み、新しいバッシュを履いた市井先輩の姿があった。
髪をちょっと切ったみたいで前よりすっきりしていて、私の好きなちょっと顔に掛かった長めの前髪は変わってないけど、色が明らかに校則に引っかるくらい明るくなっていた。
気分転換の為か分からないけど、、変化のある先輩に私はとてつもなくドキドキしてしまう。
「そんなデカい声だすなよ〜。そこまで驚かなくたっていいじゃんか」
「えっだっ・・だってだって・・その・・・」
表情もやたらすっきりしていて、心機一転したといった感じだった。
「ん?何だよ市井がまだショックで寝込んでるとでも思った?」
「いやっ・・っていうか・・はい・・・」
「んな訳ないじゃん(笑)10日以上経つんだぞ?」
そう言ってあの入学初日に見た時と全く変わらぬ爽やかな笑顔を見せた。
(・・・先輩私の気持ち知ってるはずなのに・・その笑顔は毒だよ・・)
「っていうか先輩・・引退したんじゃ・・・」
「ああ昭栄学園バスケットボール部は引退したけどバスケは引退しないよ。ダメ?」
「ダッダメな訳ないです!!!」
(ダメ?とか言って・・・も〜〜〜先輩ったらカワイイ!!)
キャプテンをしてる時の先輩とは正反対に表情豊かで、面白い程コロコロ変わる。
(先輩って実は結構子供っぽい人だったりして、、。なんかやたら機嫌いいな。背負ってたものが降りてすっきりしたのかな?)
「んじゃー久々のバスケを楽しんでくっかなっ」
「はい、いってらっしゃいませ・・・」
(いやん夫婦みたい・・)
遊園地に行く前の子供みたいにウキウキした顔をしながら、先輩は体育館の方にダッシュで走っていった。
勿論私は、、
(は!!真希と遭遇するじゃない!!)
それを思い出して後を追った。
- 247 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)10時31分33秒
体育館の扉から、身を隠しながら中を覗き込む。
(入学初日を思い出すな・・・)
「おいっす後藤!」
「あっいちーせんぱ〜い!」
真希は先輩に気付くと瞳孔を大きくさせて、いつものダルそうな顔からは想像も付かないくらい顔をクシャクシャにしながらボールなんて見もせずにそこら辺に投げ捨て、先輩に向かってもの凄い勢いで駆けてきた。
「せんぱ〜い♪」
そして思いっきり飛びつく。
「おわっ!」
華奢な先輩はよろけてコケそうになりながらも抱きとめてよしよしと頭を撫でる。
(・・・・・・・な、何この光景は・・・・)
私はその光景に言葉を無くす。
(ふつーの先輩後輩じゃないわよねどう見ても・・・)
フニャっとした顔を浮かべながら先輩の胸に顔を埋めて離れようとしない真希。
顔をあげて先輩の顔を確認し、上目遣いで照れながらフニャッと笑ってまた顔を埋める。
先輩は扱いにちょっと困ってるようで、頭を掻きながら抱きついた真希を引きずってボールの方に歩き出した。
「お〜いいい加減離れろよ〜練習すっぞ〜」
それでも真希は離れようとはせず、歩き出した先輩の後ろに回り、首に抱きついて足が床についたままズルズルと引きずられていく。
「ぐるじぃ〜〜」
「アハハハ!」
無邪気に笑う真希。
首に回された真希の手を苦しそうに掴みながらも楽しそうな表情を浮かべる先輩。
―――二人はもしかして最初からずっと私らの知らない所で会っていた・・・?
「うっしやるぞ後藤」
ズルズルと真希を引きずりながらボールに辿り付いた先輩は、ボールを掴んで真希の方を振り向いた。
ヒョイっと顔を出した真希の視線と先輩の視線が至近距離でぶつかる。
一瞬二人の動きが止まる。
(え・・ちょっ・・・・・)
- 248 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)10時36分19秒
- 最悪な状況を想像してしまう。
が、、
「・・うん頑張る!!」
と言って真希が慌てた顔をしてパッと抱きついていた体を離した。
(・・やっぱ思い違いかな・・)
(真希の先輩への想いはバレバレだけど)
ダムッダムッダムッ
そして先輩は相変わらず綺麗なフォームでドリブルを始め、レイアップを繰り出す。
奥のリングでやってる為、距離がかなりあって先輩の顔が見えないのが悔しい。
「はい、とりあえず後藤はこのレイアップ50本」
「え゛!?無理だよそんなに〜!!!」
広い体育館に真希の叫び声が響き渡る。
「あれ?市井より上手くなるんじゃなかったっけ?」
「・・そーだけどぉ・・・」
「じゃーそんくらいやんなきゃ。市井はもっとやってたぞ」
「う゛〜・・・・・分かった・・・」
(先輩より上手くなる・・?)
(あぁやっぱり・・・・)
そのやり取りを聞いて、理解した。
やはり普段から会っていたか、、
―――もしくはインターハイのあの日・・・
体の力が抜けていく。
その場にペタっと座り込んだ。
そして半ば意識をボーっとさせながら先輩と真希の楽しそうな練習風景をずっと見ていた。
私は何をやっているんだろう。
時間はゆうに9時を超えている。
あの地獄の練習を終えた後で、何処にこんな体力と気力が残っているのだろうというくらい真希は元気で生き生きしていた。
電気も消され、真っ暗で静まり返っている校内。
その中でこの体育館だけが、オレンジ色の優しい証明を浴びながら二人の楽しそうな空気に包まれていた。
チャラけたり、かと思えば真剣な顔をしたりして、二人はボケたり突っ込んだりしながらもバスケットボールを間にずっと戯れていた。
―――好きな人と好きな事を好きなだけやる
それって多分一番幸せな事で・・・
- 249 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)10時41分06秒
こんな二人の幸せそうな光景を見てしまったら、いくら私でも横入りする意欲も失せてしまう。
なのに先輩への私の想いは少しも失せてくれない。
、、それが何より悔しかった。
―――――
何時間経っただろう。
レイアップをひたすらやり続けていた真希が突然へたり込んだ。
「ハァハァッ・・後藤眠くなってきた・・」
そう言ってゴロンと寝転がる真希。
「あはは!普通バスケしながら眠いとか言うかぁ!?」
先輩がお腹を抱えて笑いながら突っ込む。
疲れたなら分かるが、眠いと言う真希。まぁ真希らしいと言えばらしい。
ふと時計に目をやると、もう11時近くになっている。
結局私は二人の楽しそうな光景を2時間以上も意味も無くボーッと見続けていた。
二人が楽しそうにしてる所を見たかったわけはない。楽しそうな先輩の姿を見ていたかった。
しかしようやく素に戻り、私も親が心配してるだろうし帰ろうと思って立ち上がった。
ふと顔をあげると、先輩がボールを抱えたまま真希に近づき、手を差し出した。
「はいじゃー帰るから、ほら立って。ここに寝ちゃダメだって」
「ん〜〜〜眠いよぉ〜〜・・・・もう動けないよぉ〜〜・・」
ダダをこねる真希。
見ててちょっとイライラする。
「バカ学校に泊まる気かよ」
真希を無視して手を無理矢理引っ張る先輩。
すると真希が、、
「先輩となら泊まってもいいよ・・・」
(え・・・・)
- 250 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)10時44分58秒
グイッと先輩を引っ張った。
引っ張られた先輩はその勢いでガクっと膝をつく。
「「・・・・・」」
ボールを左手で抱え、右手は真希の手を掴み、真希の体を挟むように膝をついている。
仰向けの真希と、その真希を見下ろす先輩。
見つめ合う二人。
絶対に、見たくなかった光景。
そして先輩が、真希の手を離し、ゆっくりと頬に触れた。
スローモーションのように、顔を近付けていく。
やだ・・やだ・・・やだヤメテ!!!!
私の心の叫びも空しく、、、
先輩の髪に隠れた二人の顔が、静かに重なった。
・・・・・・ヤ・・メテ・・・・。
その瞬間、この時初めて先輩が、いつも肌身離さず大事に抱えていたバスケットボールから手を離した。
コロコロと二人から離れるように転がっていくボール。
そしてゆっくりと体を重ねる。
ボールを手放した先輩のその左手は、迷うことなく真希の体に触れた。
―――私は見ている事が出来ず、涙と共にその場を走り去った。
私の中には、二人の姿よりも、手放されて転がっていく悲しげなバスケットボールの残像が、妙に鮮明に残っていた。
- 251 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)10時47分41秒
- ―
―――
――――
――――――
あの時の転がっていったあのボールを、私は忘れられずに今に至る。
そのボールの上に座り、下を向いたままの先輩。
長い長い沈黙。
それが私の気持ちを逆に高ぶらせる。
狭く、暗い更衣室。
ボールや、使い切った空の清感スプレーや油取り紙のゴミ、ティッシュ、丸められたプリント、、ロッカーに書きなぐってある卑猥な単語。
汗臭くて、雑然としたこの汚い閉鎖された空間は、私の中のドロドロとした嫉妬心や欲求を、抵抗無く受け入れる空気を持っている。
何をしても許されるような、そんな錯覚を起こす。
積極性とかそんな域を越えて、獣と化してしまいそうな。
本能の前では私の理性なんて所詮こんなものなのだろうか。
散々真希と先輩の二人でいる楽しそうな姿を見せ付けられてきた。
今の私なら確実に、拒まれても強引に奪う。
もう止まらない。
止められない。
我慢できない。
―――限界だよ先輩・・・
- 252 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)10時49分50秒
私が先輩に近づこうとした瞬間だった。
先輩が、、、
ゆっくりと立ち上がった。
顔をあげ、真っ直ぐな視線で私を見る。
その目には、もう迷いは見えない。
半ば獣と化していたはずなのに、私のギラついた欲情はその瞳に、徐々に浄化され・・吸い込まれていった・・。
私の理性も本能も、先輩の瞳は簡単に支配してしまうんだ。
「・・・・・目ぇつぶれよ・・」
- 253 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)10時51分49秒
≪ドッドッドッドッ≫
騒ぎ立てる心臓をよそに、静かに、ゆっくり、まぶたを閉じる。
1年間の想いが、走馬灯のように駆け抜ける。
浮かんできたその中に、もう真希の姿はなかった。
純粋な、先輩への想いが溢れ出てくる。
先輩と私の、二人の思い出が、溢れ出てくる。
私に笑いかけてくれた先輩。
真剣な顔で怒ってくれた先輩。
思い出は少ないけれど、でも私にとっては凄く凄く深くて、大切な・・・。
≪ドッドッドッドッ≫
ゆっくりと閉じたまぶたは、とてつもなく力が入ってしまってピクピクとけいれんしてるのが自分でも分かる。
先輩の気配がゆっくり近づく。
私はぎゅっとチョコの入った小さい紙袋を強く握った。
≪ドッドッドッドッドッドッ≫
ふっと先輩の柔らかい匂いが鼻を掠めたその刹那、、
- 254 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)10時54分38秒
「っ!・・・・」
ビクッと体が跳ねた。
先輩の唇が私の唇に触れる。
その瞬間、電流が走ったみたいに体中がしびれた。
指先が小刻みに震えて、一瞬頭が真っ白になる。
触れるだけのキス。
こんな寒い更衣室にずっと閉じ込められてるせいで、先輩の唇は凄く冷たい。
反対に私の体は解けちゃいそうな程熱くて、心臓は張り裂けそうだった。
きっと、先輩の体中冷え切っているのだろう。そう思うと、温めてあげたくなる。
・・この場で押し倒しちゃいそう。
でも、しなかった。
だって、先輩は唇以外私に触れてくれなくて・・、、、
やっぱり大事そうに、両手でバスケットボールを抱き抱えていたから・・。
真希の時のように手を頬に触れてはくれない。
愛情の感じないキス。
でも、それはしょうがない・・。
- 255 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)10時57分12秒
「「・・・・」」
先輩がゆっくりと私の唇から離れた。
多分、時間にしてそれは凄い短かったんだろうけど、私に取っては1年分の時間を埋める程長いキスだった。
私はせめてもの先輩の存在を求めた。
私と先輩との距離が無くなる瞬間を求めた。
例え、心の距離は縮まらないとしても・・
それでも、、、
「・・・・憧れの先輩とのファーストキスは汚いロッカールームかぁ・・」
十分満足だよ・・先輩・・。
- 256 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)11時00分16秒
顔を離した先輩は、恐らく耳まで真っ赤であろう私の顔を見ながらちょっと困惑気味の顔をしている。
真希への罪悪感だろうか。
それとも、私への・・。
「・・ファーストかよ・・・いいの・・?そういうのって好き同士の方がよかっ、、、」
「いんです!一方的な想いでも!」
「ふ〜ん・・。っつーかそれより・・ズルイぞ泣くのとか・・・」
「・・い、言っときますけど嘘泣きじゃないですよ!」
「ホントかぁ〜?」
「ホントですってば!!」
「ホントにぃ〜?」
「ホントに・・」
「・・・・」
「うっ・・・・ちょこ〜っとだけ・・・」
「ほらみろ」
「ごめんなさい・・」
さっきまでのドロドロとしていた嫉妬と欲望は何処へやら。
なんだか私はもの凄くすっきりしていた。
「まぁいいや。思い出にしてくれて忘れてくれるんなら」
「今までの暗〜い思い出がこれでハッピーに変わりましたよ♪」
「・・暗いまんまの方が良かったんじゃないの・・?」
「ダメですよ〜!!思い出は綺麗に残さないと」
「・・・あのさ、一つ聞きたい事があるんだけど」
「、、はい」
「市井がさ、インターハイ準決勝で負けちった時さ、なんで側にいなかったの?」
「え?」
「あ〜いやいて欲しかったとかじゃなくて、ああいう弱ってる時ってその、、狙い目なんじゃないの?一般的に言うと」
「それは・・」
「結局、後藤が側にいてくれたけど・・なんで?」
「・・・・好きだからです・・」
「え?」
「先輩の事が、好きだから・・・」
「・・意味分かんないんだけど・・・」
「とにかく、チョコだけは受け取って下さい。はい先輩っ」
「・・・・」
先輩がちょっと眉間にしわを寄せ、疑問符を浮かべながら無言で受け取る。
―――・・しょうがない。言いたくないけど言いますかぁ
- 257 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)11時01分21秒
「えっとですね、恋の矛盾ってやつですよっ!じゃあまた!」
ガチャッ
「は??恋の矛盾?なんだそれ??ちょっ待てよ!」
バタン!!
「っつーか・・・じゃあまたって・・またって・・・」
「あっ今までの思い出閉じ込めるって!・・・これからのまた思い出作るって事・・?」
「・・・・騙された・・・」
- 258 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)11時05分09秒
インターハイのあの日あの後、私は準決勝で悲しい負け方をして絶望的にショックを受けていた先輩に、何も出来なかった。タオル一つ渡す事すら。
多分あの日を境に真希と先輩の2人の関係が変わったんだと思う。
あの時私が先輩の側にいたら、何か変わっていたかもしれないと思う事もある。
でも、あの時私は、何も出来なかった。
いや、出来なかったのではなく、正確には、、、しなかった。
マックで話をした時の真希のあの威圧感と強い気持ちにしりごみした訳ではない。
それも全く無いとは言い切れないけど・・でも私の中でもっと切実な理由がそこにあった。
切実で、自分でも驚く程、純粋な・・。
だって先輩はあの時・・・
“真希は・・・後藤真希は先輩の何ですか!”
“何って・・後輩だろ・・”
“真希の事・・好きなんですか・・?”
“は?なんでそうなるんだよ”
“ちゃんと答えて下さい。答えてくれるまで、私ここ動きません”
““・・・・多分・・・・好きだよ””
―――そう、先輩の中には、既に真希がいたから・・・
真希が言ってた『恋の矛盾』。
私もいざと言う時に結局同じ事をしていた。
何故だか私はあの時こう思ったんだ。
先輩がその時一番必要としているもの
それを、与えたいと・・・
〜Rika's valentine story
- 259 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)11時14分57秒
- ( ´ Д `)<しちゃった・・・・・後藤も・・(カオマッカ
やっと石川編終わった・・。ドンドン長くなってくな・・・。
思ったんですがいちごまって第三者視点で書くともんの凄く書き易い・・。
なのでまた入れます。以前希望があった焼きもちごまとか。。
石川編は終始明るくコメディータッチでいこうと思ったんですが、、やっぱネガティブな部分も入れたいなと思いましてこうなっちゃいました。
次のキャストはちょっと楽しみです。
- 260 名前:O-150 投稿日:2001年03月16日(金)11時16分27秒
- そうだ言い忘れてた・・
こっからちょっと白を飛ばそうと思いますので、ペースダウンしちゃうかも・・すいません・・。
でも休みなんで前よりは速いかと・・。
- 261 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月16日(金)14時20分44秒
- 次は誰なんだ!?
楽しみです。
白の方も頑張って下さい
- 262 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月16日(金)14時28分04秒
- ヤキモチ妬く後藤の話も楽しみだけど、それより次のキャストって誰だ!?
やっと、飯田編の時市井とキスしてた人が出てくんのかな…?
- 263 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月16日(金)14時47分30秒
- 石川編サイコー!
前半の石川のぶっ飛びっぷりには声を上げて笑ったし、後半のいちごまはこの上なく萌えました。
特に体育館で寝っこるがっている後藤が市井の手を引っ張った後のシーンはたまんない(w
転がっていくボールとか情景描写もうまくて、すごく綺麗なシーンのように感じました。
第三者視点のいちごまってかなり良いですね。
次は誰なのでしょうか?個人的には矢口かなっち辺りに嫉妬する後藤も見てみたいですが
とにかくどれも面白いので期待してます。
- 264 名前:まちゃ。 投稿日:2001年03月16日(金)15時45分07秒
- 石川編よかったけど個人的には吉澤か飯田のどっちかとくっついてほしいなー
なんて…。後日談とかでそーゆーの書いてくれませんか?
- 265 名前:Oー150 投稿日:2001年03月19日(月)16時14分49秒
- 感想レスありがとうございます・・(カンルイ
おかげ様でこんな気分屋な僕が投げ出さずに書けてます・・。
感想レス頂いたお礼っていうかなんていうか、、、一編終わるごとになんか載っけていこうかな。
とりあえず前に作ったこれupしときます。
ジャージにスニーカーの市井ちゃむってやんちゃな感じで無茶苦茶好きっす
膝っ小僧がキャワイイ!
http://up.e-chome.net/morning2ch_1025.jpg
- 266 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月19日(月)22時43分21秒
- ……っていうか、左上のちゃむは、誰が見ても惚れるよ…。
あんな鋭い目で見られた日にゃ!(w
- 267 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月20日(火)14時12分47秒
- 266さんに同感。
これは惚れてもしかたない!!
作者さん頑張って下さい
- 268 名前:O-150 投稿日:2001年03月28日(水)02時18分41秒
- 白で痛すぎて精神破綻しそうなんでいきなりですが甘いの書きます。
一応ここの番外編扱いです。
- 269 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月28日(水)02時20分50秒
- RPG
チャーチャーチャ〜♪チャチャチャーチャチャチャチャーチャ〜〜♪
「いちーちゃ〜ん、炎の剣がどうしても見つからないんだけど」
「まだ探してんの?さっき最大のヒント言ったじゃん」
「う〜・・・・・」
フローリングの床にベッタリと座り込んで、テレビに顔を近付けてドラクエをしている後藤。
目ぇ悪くなるからもっと離れなさいって言ったのに全然言う事効かないから、無視して市井はすぐ側のテーブルで勉強していた。
やりたくてやってるはずなのに、後藤は探しもしないで何でもかんでも聞いてくる。
そんなんだから市井の勉強が全然進まない。
けどなんとも悩ましげな表情をしてる後藤の顔が可愛いから・・怒るに怒れない・・。
「アハハッ歩き回ってるおかげでレベルだけはやたら上がってんね(笑)」
「む〜・・・もういい!後藤炎の剣なしでボスと戦う!!」
「・・後藤ちゃんそれは無理じゃないかな・・・」
「無理な事なんて無いっていちーちゃんいつも言ってるじゃん」
「いやっ・・それとこれとは・・」
「いいよ行く。後藤もう行く!」
「・・・まぁ頑張れ・・」
- 270 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月28日(水)02時21分55秒
- ――数時間後――
「いちーちゃ〜ん・・・」
「ん〜〜?」
「・・・・死んじゃった・・・・」
ドゥルドゥルドゥルドゥル ドゥンデン♪
「だから言ったじゃんかよ・・・」
「ふぇっ・・・」
「おいそんな事で泣くなよ・・?」
「ボスと戦う前に死んじゃった・・・」
「・・ぷっ」
「あっ今笑った!!いちーちゃん今後藤の事笑った!!!」
「笑ってない笑ってない」
「嘘だ!今絶対こいつバカだって笑った!!」
「ち〜がうよ!!」
「じゃーなんで笑ったのさぁ!」
「はぁ・・全く落ち着いて勉強も出来やしないな・・」
「あ・・しかも邪魔って言った・・・」
「言ってないじゃんかよ!」
「もういいよ・・炎の剣もいちーちゃんも、みんなみんな大嫌いだ・・・」
「・・あ〜もう分かった。市井勉強やめるから、一緒にクリアしよ?」
「ん・・?ホントに・・?」
「うんうん」
「やったぁ・・♪」
- 271 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月28日(水)02時29分16秒
―――数時間後―――
チャーッチャチャーチャーチャーチャー♪
「後藤・・後藤ってば・・・・」
「・・・ん〜・・・・」
「クリアしたぞ・・・」
「・・・いちちゃ・・・すごー・・」
「おい・・・・
寝るなよ・・・・」
・・・なんで市井が一人でクリアしてるんだよ!
意味無いじゃん!
一緒にやるとか言って結局市井がやってるのを後藤がただ見ていた。
市井がやってる間何故か意味無くずっと握り締めてたUコン(一緒にやってるつもりらしい)はしっかりと手の中にある。けども爆睡中の後藤。
市井が声を掛けるとカクッと頭が肩に落ちてきた。
・・市井の勉強時間を返せ・・・
「・・流石いちーちゃんだねぇ・・zzz」
・・・・・
・・・・・まいっか・・
「・・・後藤時間遅いしベッドいこ?」
「んっ・・いいよここで寝る・・・zzz」
「風邪ひくからダメだって」
「・・・・zzz」
「後藤!ごと〜〜ってば!おい!」
ペチペチ
軽くほっぺを叩いたけど反応無し。
「・・ったく・・・」
しょうがない・・・・
「よっこい・・しょっ・・・・ってやっぱ無理だ・・」
抱かかえてベッドに運ぼうとしたけど案の定無理だった・・
クソッ後藤重いよ・・・・
「ごと〜〜!ベッド連れてってやるから、はい背中乗って。、、乗れ〜〜!!」
「ん〜〜はいはい・・・・zzzz」
屈んだ市井の背中に寝ぼけながらもなんとか乗っかった後藤をおんぶして市井の部屋へと運ぶ。
「・・・いちーちゃ・・あったかいねぇ・・・zzz」
「・・・・」
後藤もあったかいよ・・・
「はい到着。後藤降りろ、降りろってば」
ベッドに着いたのに今度は市井から離れない後藤。
寝てるのになんでこんなに力あるんだ後藤は・・・
結局背中にしがみついた後藤とそのまま布団に入った。
「後藤・・?」
「・・スゥスゥ・・・zzz」
背中にぴったりとくっついたままの後藤。
寝てるから意味無いんだけど、なんとなく、、
「明日は一緒にクリアしようね」
「zzz・・・スライムなら・・・zzzz」
・・・・意味分かんない寝言言うな!
――fin――
- 272 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月28日(水)02時38分06秒
- ちょっと精神回復
甘いのって楽だなぁ〜・・・・パッパカ書ける・・
つーかこれは甘いのか?(w
よく分かんないけど書いちゃいました。
・・・・あっ!書き忘れハケン・・
「ボスと戦う前に死んじゃった・・・」
「・・ぷっ」
↑↑この噴出した理由は勿論ごまが可愛くてです。言うまでもないと思うけど・・バカにしたんじゃないよ>( ´ Д `)
- 273 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月28日(水)02時38分27秒
- ほぼリアルタイムで読んでしまった。ラッキー!
>市井がやってる間何故か意味無くずっと握り締めてたUコン(一緒にやってるつもりらしい)
めちゃくちゃ可愛い!!甘々もいいですね。
次のキャストが楽しみ。
- 274 名前:Oー150 投稿日:2001年03月28日(水)02時44分50秒
- あ、あれ??名無しになってるなんでかな。。
- 275 名前:Oー150 投稿日:2001年03月28日(水)02時47分17秒
- おわっレスはや!!(w
>>273
ありがとうございます。
精神の回復を図っておりますのでしばしおまちを・・(w
でももういけるかな。さて白ガンバロ。
ここは結構話決まってるんで、白終わったらガーっといけるかと。。
- 276 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月28日(水)04時22分53秒
- >白で痛すぎて精神破綻しそうなんで
読むほうも痛すぎて精神破綻しそう・・(w
ここ読んで復活、白もがんばってください。
- 277 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月28日(水)08時44分57秒
- ゴマがかわいいのれす
- 278 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月04日(水)15時33分31秒
- 番外編今読んだ。
やっぱ甘いいちごまは最高!
- 279 名前:Oー150 投稿日:2001年04月05日(木)02時10分40秒
- 白終わった終わった
すんげー気持ち軽い・・・
んで勢いに乗って、こっち行きます!
- 280 名前:Oー150 投稿日:2001年04月05日(木)02時13分24秒
- ばれんたいん
ガチャッ
「・・・・フフッ」
「ちょっと石川何その笑みは!!」
「いや〜・・・なんでも無いですよ〜・・・」
「なんでもないのになんでニヤけてんのよ!」
「まさか成功したの!?」
「いやっ違いますよ〜!!」
「じゃあ何!」
「え〜と・・・」
「ちょっとあんた!隠してないで言いなさいよ!!」
「・・・みなさんの健闘を祈りつつ、、フェードアウト!!」
「あっちょっ石川!!」
「・・・振られたのになんであんなニヤニヤしてるんだろ・・」
「っていうか出てくる奴みんなやたらいい顔して出てくるね」
「う〜んなんなんだろう・・」
「・・・更衣室の中で何が起きてるの・・?」
「しかも梨華ちゃんなんて赤面してたよ・・・」
「・・・まさか・・・」
「いやまさかね・・・」
「・・・・いやでも・・」
「・・いやそんなわけ・・・」
「「・・・ちょっと次の人早く紗耶香の様子見てきて!!」」
「・・うん・・・」
「・・?あんた何そんな暗い顔してんの?あんたがそんな暗い顔してんの初めて見た」
「・・・・・」
「・・緊張すんのは分かるけど、、それじゃあ告る前から門前払いされちゃうよ?」
「・・・そうだね・・・・うん頑張る!」
「言いたくないけど、取り合えず頑張れっ」
「おうっ」
「よ〜し・・・っふぅ〜・・・・」
ガチャッ
- 281 名前:Oー150 投稿日:2001年04月05日(木)02時15分57秒
- ―――――
―――――
「・・うっうっす」
「あれ?わざわざ待っててくれたの?悪いねこんな寒い中。よっし帰ろっ」
「・・・・・」
「ん?なした?、、あれ?何持ってんの?あっ!もしかして好きな人にチョコとかあげんの!?」
「ん・・ま、まぁね・・」
「好きな人出来たんだ。それで市井の事待ってたのか。いいよ付き会うよ、何処の誰?」
「・・・・・」
「・・?どうした?」
「・・・・・」
「・・・・何?そんな簡単に言えないような奴?」
「・・・・・」
「・・あ、もしかして体育の金子?別に笑わないよ。顔はあれだけど、、結構いいとこあるもんねあいつ」
「・・違うよ」
「・・じゃああれか!バイト先で知り合ったっつー妻子持ちの、んと・・なんつったっけ・・とにかくあいつだろ!ダンディーだって騒いでたもんね。いいじゃん奥さんいたって。そういうのってしょうがないじゃん。市井は応援するぞっ」
「・・・違う・・」
「・・・・じゃあ、、、よく行く歯医者んとこの、、」
「・・・・・やかだよ・・」
「ん?なに?」
「矢口は紗耶香の事が好きなんだよ!!」
「・・・・やぐ・・っちゃん・・・」
ばれんたいん
- 282 名前:Oー150 投稿日:2001年04月05日(木)02時18分41秒
- ( ´ Д `)<これで何人目かなぁ・・いちーちゃんモテモテだねぇ・・・・・
はい矢口登場です。
甘い番外編、レスありがとうございます!
読み返してみたらごまがやったら子供ですね・・・あんときの精神の破綻具合がよく分かる・・(ニガワラ
- 283 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月05日(木)03時25分41秒
- 告白した後にフラれても、みんな幸せそうな顔してるってさすが市井ちゃんの魅力だ!
次はさやまりですね。しかも設定が今までと違って市井も心開いてる親友って感じっすか?
この設定最高!めちゃくちゃ楽しみ♪
- 284 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月05日(木)04時14分33秒
- 待ってましたよ矢口〜〜!!
さやまりは、いちごまに並ぶくらい好きな組み合わせなんで、期待してますよ!!
あと、白板の方お疲れさまでした。あちらも最高によかったです!!
- 285 名前:某所の勝手に私設応援団 投稿日:2001年04月05日(木)05時58分17秒
- げげっ白にレスしてここにきたら、もう始まってる。
なんか、開幕戦に遅刻したみたい(あせっ
えー、いちおうまた、名無しに、もどりますけど。
何かあったら、かってに、広報担当になります。(笑
これからも、楽しい作品を読ませていただけることを確信して。
- 286 名前:ぷち 投稿日:2001年04月05日(木)08時56分33秒
- 矢口だぁ!!
さやまり・・・かなり楽しみっす♪
- 287 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月05日(木)20時25分26秒
- さやまりだ〜♪わ〜い。
楽しみだ〜。さやまり大好き☆
- 288 名前:Oー150 投稿日:2001年04月06日(金)03時42分01秒
- >>283
そこに気付いて貰えて嬉しいっす!
今回はちょっと、いやかなり複雑な心理模様です。
>>284
ありがとうございます。さやまりは僕もいちごまの次に好きです。
なので気合入ってます。
>>285
開幕戦すか(w
そうですね、ある意味戦いだぁ。
期待に答えれるよう頑張ります。
>>286-287
やっぱさやまりも人気すねぇ
あんまり無いんで、僕も気持ち的には書き易いかな?
それじゃあ行きます!
- 289 名前:Oー150 投稿日:2001年04月06日(金)03時54分16秒
- ―
【矢口真里】
クラス:3年C組
容姿:小柄な体に可愛い顔で、同性から可愛がられるタイプ。ギャル系だが持ってる素質の良さを生かしたメイクなので親近感があり、活発なイメージを与える。
性格:人懐こく明るいので人が常によってくる。気配りができ、実は頑張り屋。
―
- 290 名前:Oー150 投稿日:2001年04月06日(金)03時56分40秒
世の中には、好きになってはいけない人っていうのがいるらしい。
例えば、妻子持ち。
これが多分一番一般的な禁断の恋ってやつだと思う。
ダメだと分かっていても・・・ってよく聞くけど、矢口は経験無いから、
客観的な意見だけで言っちゃうと、奥さんと、何より子供を傷つけちゃうから、これはダメでしょう。
そして、教師。
好きになってはダメと言うか、殆ど世間体的な問題な気がする。
周りにバレなきゃ問題無いんじゃないかなって矢口は思うんだけど・・軽いかな・・。
一番確立低い、、肉親。
でも例えば、生まれた時からずっとず〜っといざと言う時に自分を助けてくれて、支えてくれて、側にいてくれて、、、優しくて、カッコよくて、とかそんなお兄ちゃんがいたりとかしたら、好きになる事もありえる気がする。
でもそんな完璧なお兄ちゃんなんて世の中中々いないからそういう事も起きない訳で、、。
だから取り合えず却下。
色々あるけど、、矢口の中で最近出た結論がある。
絶対に好きになっちゃいけない相手。
それは、、、
同性で、しかもそれが、、、
親友の場合・・。
――――ばれんたいん 〜BEST FRIEND〜 ―――――
- 291 名前:Oー150 投稿日:2001年04月06日(金)03時57分36秒
紗耶香との出会いを語るには、、、
まず矢口の幼き頃の事を話さなきゃならない。
――――
―――
―
「や〜いチビチビ〜!お前なんか幼稚園行けよ〜〜!」
「ここは小学校だぞ〜〜キャハハハ!!」
「うるさ〜〜い!!矢口小学生だもん!!!」
「お前ホントは5歳とかだろ〜年ごまかしたら警察に捕まるんだぞ〜!」
「違うもん!矢口小学生だもん・・!!・・・ヒック・・」
あの頃の矢口は、とにかく男の子たちの絶好の虐め相手だった。
今にして思えば、矢口の事好きだったのかな?テヘッとか思うんだけど、その時はとにかくチビだって事が凄い嫌で、その事で毎日からかわれるのももの凄く嫌だった。
毎日毎日、とにかく泣いていたきがする。
泣き虫矢口だった。
- 292 名前:Oー150 投稿日:2001年04月06日(金)03時58分59秒
そんな矢口が、ようやく小学校高学年に上がろうとしていた春の事。
男の子達の虐めが本領発揮しだすのは、
大体小学校3・4年生くらいからだ。
小さい頃は可愛い可愛いと言われていた男の子も、このくらいの時期からこ憎たらしい悪ガキへと発達していく。
「矢口の帽子返せ〜〜!!返せ〜〜〜〜!!!」
「うるさいな〜だから返したじゃんよ〜〜。ほらあそこ」
「届かないよ!!!」
「とにかく俺らはもう返したからな。よし帰ろうぜ〜」
「ちょっと待ってよ!!返してよ!!」
「聞こえませ〜んキャハハハ!!」
「かえしてよ・・!!矢口のお気に入りの帽子だよ・・ヒック・・ンック・・」
学校帰りの並木道で、背後から突然取られた帽子。
その帽子は男の子達の連携プレーにより、あっという間に矢口の手の届かない高い木の上へと乗せられていた。
男の子達は、やる事を終えると矢口の鳴き声も無視し、すぐに走り去っていっていく。
そして、その日も同じく、矢口はしゃがみこんで目を擦りながらただ泣いていた。
「矢口の帽子返せ・・・ヒック・・ング・・」
「・・・買ったばかりなのに・・・ンッ・・ヒック・・」
- 293 名前:Oー150 投稿日:2001年04月06日(金)04時03分18秒
ガサガサ
「・・・?」
暫く泣いていると、突然葉っぱが大きな音を立ててざわめきあい出した。
不思議に思い、目をゴシゴシ擦りながら上を見上げる。
「・・・・??」
ぼやけた視界の中で、誰かが何かの台の上に乗っかって木の棒で上を突っついてる。
「・・・・」
ようやく視界がはっきりとしてくると、そこにいたのは自分と同い年くらいのショートカットの活発な感じの女の子。
矢口は言葉が見つからなくて、目を擦りながらただその様子を見ていた。
すると、その子が突然口を開いた。
「ちょっとこれじゃ短いな。ねぇ近くにもっと長い木の枝落ちてない?」
「あ・・・えと・・・ちょっと待って」
何故だか涙が止まってた。
矢口は、慌てて回りの長い木の枝を探した。
「はいあったよ!」
急いでその子に渡す。
「サンキュッ」
「・・・・」
ニコッと笑いかけてその枝を握り、上を見上げる。
あんなに気持ちいい笑顔でお礼を言われたのは始めてだった。
大した事してないけど、なんだか凄い嬉しくなって、気付くと泣いていたはずの矢口も笑みを返していた。
ガサガサ
苦戦してる様子のその子をただぼーっと見ていた。
足元を見ると台にしているのはゴミ箱だ。
それを逆さにして乗っかっている。
どっから持ってきたのかなぁ〜なんて思ってた。
「ん〜〜〜クッソ〜あともうちょいなんだけどな〜〜!!」
すっごい悔しそうに地団駄を踏んでる彼女。
その様子があまりになんていうか、、可愛いっていうか面白いっていうか、、、とにかく気付くと矢口はニヤけてた。
「何ニヤニヤしてんだよ〜〜ちくしょ〜〜絶対取ってやる!!」
「・・・うん!」
その時はわかんなかったけど、多分矢口は凄い嬉しかったんだと思う。
頑張れ〜!頑張れ〜!って心の中で応援してた。
暫く彼女は一人で苦戦していた。20分くらいしていただろうか、そしてようやく、
「・・・あ゛〜〜ダメだ届かない!!」
「・・・・もういいよっ矢口諦めるっ。取ろうとしてくれてありがとう!」
ホントにもういいって思った。
諦めたっていうより、矢口の事全然知らないのに一生懸命取ろうとしてくれた彼女のそれが凄い嬉しくて、もう満足だった。
なのに、、、
「何言ってんだよ!せっかくここまでやったんじゃんか絶対諦めないぞ!」
- 294 名前:Oー150 投稿日:2001年04月06日(金)04時04分54秒
彼女は矢口のその言葉にちょっと怒ってた。
―――なんなんだこの人は。
それが率直な感想。
相当負けず嫌いなんだろうか、初対面の人の帽子をここまで執着して取る人って、、いないよね。
小学生の矢口でもそう思った。
「ん〜〜どうしよっかな。もうこれ以上長い枝ないよな〜・・」
そう言いながらキョロキョロしてたその子の視線は矢口の所に来てピタッと止まった。
「・・・なーに?」
上から下までじーっと見てくる。
な、なんだぁ〜?
そして、、突然何かをひらめいたようにニヤっと笑って、
「ねぇ矢口って言ったっけ」
「うん」
「じゃあやぐっちゃんだ」
「やぐっちゃん?」
やぐ・・っちゃん・・・かぁ・・・
―――ちょっと嬉しい・・
まともなあだ名を初めて付けられた気がする。
それまでチビとかばっかりだったから・・。
「やぐっちゃんちょっとここ乗って?」
「え?ここ?」
「うん」
指はゴミ箱を指してる。
二人乗るスペース無いよ〜・・って思ったけど文句言える立場じゃないので素直に従った。
「んしょっと・・・・わっ!」
案の定ぐらつく足元。
傾いた矢口は迷うことなくその子にしがみ付いた。
「大丈夫?」
「・・うん・・」
しっかりと抱きとめてくれる彼女。
それでちょっと安心して、しっかりとそこに立った。
「乗ったけども」
- 295 名前:Oー150 投稿日:2001年04月06日(金)04時06分43秒
「よっしそれじゃあ行くぞやぐっちゃん、ちょっとこれ持って」
「え?うん」
持っていた木の枝を手渡される。
「絶対大丈夫だからね」
そう言うと彼女はいきなり、、
「何するの?、、、おわっ!」
突然矢口の体がふわっと浮く。
「・・やぐっ・・ちゃん早く・・・・」
ぶるぶると震えた手が矢口の体をぎゅっと掴んで持ち上げていた。
「・・も・・もうちょっと上!」
慌ててその子に指示を出す。
「・・ック・・・どだ・・・」
ガサガサ
「・・ん・・・・・」
ガサガサガサ
「・・・取れた!!!」
「ホント!?!?」
「うん!!、、!?わ〜〜〜!!!」
突然視界がグルグル回った。
どたっと地面に叩きつけられる感触。
- 296 名前:Oー150 投稿日:2001年04月06日(金)04時07分53秒
「・・・・いったぁ・・・」
って口から自然と出てきたけど何処も痛くない。
あれ?って思って我に返ると、、
「・・っつ・・・」
「うわっゴメン!!!」
その子が矢口の下敷きになってた。
「だっ大丈夫!??!」
「・・・・うん・・・・絶対大丈夫とか言っててコケちった・・ゴメン・・」
そう謝って彼女が腰を押さえながらゆっくりと体を起こす。
「ううん矢口は全然平気だよっ」
「良かった・・・・で・・肝心の帽子は・・?」
「あっ待って!」
ガバッと立ち上がって帽子を取りに行く。
そして彼女の目の前に差し出した。
「はい!!」
「・・はいって・・それやぐっちゃんのじゃん(笑)」
「あ・・そだった・・・」
赤面して下を向く。
「あはは(笑)でも良かったね!」
「・・・・うん!!!」
その時の矢口は、とにかく凄い嬉しそうな満面の笑みをしていたと思う。
- 297 名前:Oー150 投稿日:2001年04月06日(金)04時08分56秒
矢口達は、どちらが言い出した訳でもなく、自然と木の下の草の上に並んで座った。
すると突然、、
「あっ忘れてた」
彼女がパッと立ち上がりキョロキョロと周りを見渡して何かをさがしだした。
「?なーに?」
「ん・・ちょっと・・、、、あった!」
凄い嬉しそうな顔と共に走り出す。
そして駆け寄って持ち上げたそれは、、、
「・・ぼーる?」
それもバスケットボール。
「危ない危ない、こいつ忘れるとこだった」
「なんでそんなの持ってるの?」
まるでペットのように愛しそうな顔をしてぎゅっと抱える。
「これはねぇ命の次に大切なものだから肌身離さず出来るだけ一緒にいるんだ」
「ふ〜ん・・・」
―――やっぱりこの人変わってる・・
そう思ったけど、後に彼女のプレーを見て、ホントに好きなんだとすぐに納得させられる事になる。
彼女はボールを抱えながら矢口の隣に座り、それから二人は取り留めの無い話をしていた。
小学生。喋りたくて仕方ない時期だ。
些細なことに喜びを感じ、些細なことで笑い合える。
彼女がバスケの話を楽しそうにしだして、それから連想ゲームのようにポンポン話題が弾んでいった。
好きなテレビ番組の話とか、好きなお菓子の話とか、、
とにかくくだらない話だった事だけは記憶してる。
実はその時の矢口、何故だか凄い興奮してて、何を話したかあまり覚えてない。
ただ、一つだけはっきりと覚えてるのがある。
- 298 名前:Oー150 投稿日:2001年04月06日(金)04時09分52秒
「矢口ねぇ、ちっちゃいからいつもこやって男の子達に虐められちゃうんだ〜」
膝を抱え、雑草をぷちぷち抜きながらそんな事を口走っていた。
初めて人にそんな話をした気がする。
人に愚痴を言うのはあまり好きじゃないし、
親には心配掛けなくないからそんな事言えなかった。
「ふ〜ん・・」
ボールを指先で転がしながら、ちょっと素っ気無い返事。
でも気にせず続けた。
「だから矢口さぁおっっきくなりたいんだよね〜」
「・・う〜ん・・」
「ん?何う〜んって」
何か言いたそうな表情。眉間にしわを寄せて、口をきゅっと結んでた。
「ん〜〜〜・・・」
「なになに?言ってよ」
「だってさぁ〜、、」
「うん」
「ちっちゃい方が可愛いくて似合ってるのになぁって思って」
「へ・・・?」
- 299 名前:Oー150 投稿日:2001年04月06日(金)04時11分50秒
顔に血流がどんどん上がってくるのが分かった。
「なっなに言ってるんだよ〜・・そんな事・・ないよ・・・」
初めてそういうなんていうか、、可愛いとか言われた。
思わずぱっと顔を背けてしまう。
「なんで?ちまちましてて可愛いよ」
「・・・・ち、ちまちまとか言うな〜!」
全然普通〜の顔をしてそう言ってくる。
顔から火が出そうだった。
「それにちっちゃいおかげで帽子とれたわけだし(笑)」
そう言ってポンポンと頭に手を置いてきた。
「・・・・・・」
「、、っとヤバイ親心配してるかもしんない。帰るね」
「え?」
散々矢口を動揺させて、突然彼女はそう言って立ち上がった。
もしかして名前も言わずに去ってっちゃうの・・?
「あっあの名前は・・?」
「へ?」
あ〜絶対言ってくれない・・・
「名前・・・」
「、、、名前?」
「うん・・」
きっと名乗る程の者じゃないよ、、とか言うんだろなぁ・・・
- 300 名前:Oー150 投稿日:2001年04月06日(金)04時13分29秒
「市井紗耶香」
「えぇ!?」
言うんかい!!!
「ん?なんでそんな驚くの?」
「あ、いやなんとなく・・」
「やぐっちゃんちってこの辺?」
「うんそうだけど・・」
「じゃあ市井んちと近いかも」
「ホント!?」
「うん。市井今日越してきたんだよね」
「え!?うそ!?」
「ホントだよ。さっき転入手続きしてきて、その帰り道なんだ」
「親は?」
「車で帰った。けどちょっと一人で歩きたい気分だったから」
「ふ〜ん・・」
今にして思うと、小学生で一人で歩きたいって・・って感じだけども、とにかく紗耶香はそんな子だった。
「ねぇ何年生?」
「今年から4年だよ」
「うそ!?」
「なんで?」
「矢口もだよ!!」
「ホント!?」
「うん!!!やったぁ!!」
「同じクラスかな?」
「どうかなぁ同じだったらいいなぁ」
「そうだね」
「・・ねぇさやりんって呼んでいい?」
「さやりん!?」
「うん」
「う〜ん・・・いいけど・・・」
「じゃあさやりんね♪」
「さやりん・・かぁ・・」
こうして、矢口と紗耶香は出会った。
あの時の紗耶香が、さやりんってネーミングに、あんまり納得いってなさげな表情してたのをよく覚えてる。
けどそのうち紗耶香は全然違和感なく、矢口の「さやりんっ♪」って呼びかけに笑顔で返事してくれるようになる。
矢口は、あの紗耶香の必死になって木の枝を振り上げる姿を忘れる事はない。
帽子が返ってきた事よりも、勿論彼女の行為が、言葉が、嬉しくてたまらなかったのをよく覚えてる。
あの時の紗耶香は、矢口の周りにいた男の子達の誰よりもカッコよく見えた。
すぐに惹かれて、ドキドキして、“この子と仲良くなりたい!!”って気持ちが沸々と湧き上がっていた。
- 301 名前:Oー150 投稿日:2001年04月06日(金)04時14分32秒
―――――
―――――
結局紗耶香とクラスは同じじゃなかったけど、矢口と紗耶香は矢口の積極的なアプローチにより徐々に仲良くなっていき、親友と呼べるような仲になっていった。
そして、紗耶香と仲良くなってから、自分をからかう男の子達も減っていった。
「矢口ぃお前ぜんっぜん身長伸びねーな〜」
「うるさ〜い!!」
「なんだよお前最近いつもそいつにくっ付いてるな」
「うるさい・・」
紗耶香の背中にしがみ付いて、盾にしながら男の子達に対抗する矢口。
紗耶香は男の子達のガキ臭いそれを決して相手にする事はなくて、
矢口のフォローとなる言葉を言ってくれるわけでもないんだけど、、
「・・・・いいよ行こうぜ」
男の子達は何故かしり込みして矢口にあまり悪口を言わなくなった。
それどころか逆にちょっとしたところで優しさすら振りまくようになってきた。
紗耶香の威圧感にやられたのかなって思ったんだけど、最近その男の子達の行動の謎が解けてきた。
凄い自惚れかも分からないけど、、多分男の子達は、紗耶香に矢口を取られるって思ったんだ。
矢口、紗耶香にべったりだったから、男の子達が矢口をからかう隙もあんまり無かったし。
紗耶香カッコイイし、優しいし、男の子達が危機感を感じるのも分からなくも無い。
- 302 名前:Oー150 投稿日:2001年04月06日(金)04時17分20秒
でも矢口は、その時は本当にただ純粋に友達として紗耶香の事が大好きだった。
紗耶香といると本当に楽しくて、素直な感情のままぶつかっていけて、、。
確かに紗耶香と矢口は、友達以上であったと思うけど、あくまで恋人未満だった。
けれども、、、
“紗耶香・・・お願い・・・”
“・・そんな事・・出来ないよ・・・”
あの日、あの瞬間、矢口は決して超えてはいけない柵を無理矢理飛び越えてしまった・・・
一度の過ちから生まれた、静かな歪。
あの頃の矢口は、その歪に気付かぬ振りをするのがやっとで、勇気なんて二文字、何処かに押しやってた。
ただ、どうしようもなく臆病な恋が、そこにあった事は確かで・・。
ばれんたいん
- 303 名前:15。 投稿日:2001年04月06日(金)04時20分26秒
- らっき〜、リアルタイムで読んじゃった。
さやまりはそんなに好きじゃないんだけど
0−150さんのだったら素直に読めてしまう・・・なぜだろう?
- 304 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月06日(金)04時21分56秒
- うーん、今回は生観戦(笑
作者さん落ち込まないでね、みんな必死になってるし。
- 305 名前:15。 投稿日:2001年04月06日(金)04時23分59秒
- あ、それとごめんなさい!
某スレをageちゃったの僕です・・・・
ほんとにすいません、今日一日中鬱入っちゃってました。
心から反省してます・・・
- 306 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月06日(金)04時32分16秒
- お、寝ようと思ったら更新されてる〜、ラッキ〜!!
それにしても、続きが気になる〜
矢口はいったいどんな柵を飛び越えてしまったんだあ〜〜!!
- 307 名前:ぷち 投稿日:2001年04月06日(金)12時44分56秒
- 矢口、超可愛いっす!!
てゆーか、メチャメチャ ニヤけてる俺って・・(w
やっぱ、さやまりはイイなぁ・・・・
- 308 名前:Oー150 投稿日:2001年04月11日(水)00時36分35秒
- >>303
さやまりもいちごまとは違った魅力があるんで是非好きになって下さい!(強要?
あと、間違って上げたのは気にしてないんでホント大丈夫っすよ。
レスしてくれた事のが嬉しいです。
多分、sageチェックしてから書き込み始めた方が、忘れる事ないかも。。
>>304
大丈夫っす。落ち込んでないです。そういう事では落ち込んだりとかないです。
でもありがとうございます。。
また生観戦お待ちしています(w
>>306
はい、続き行きます!
柵は、、どうかな。ちょっと思考錯誤。
いちごまで、さやまりで・・・でも・・
>>307
ちっちゃい頃の矢口ってめちゃめちゃ可愛かったでしょうね〜・・・
見たい気がする・・
ごまと違う魅力出せるように頑張ります。
さやまり初めてだからちょい嬉しい
- 309 名前:Oー150 投稿日:2001年04月11日(水)00時38分44秒
- ばれんたいん
―――――
―――――
紗耶香と親友と呼べるような仲になってから、3年近くが過ぎ、小学校卒業を目前に控えたある日の事。
それは、突然だった。
「え・・・・・さやりん何言ってるの・・・?」
「何って・・その通り」
「・・転校って・・・・・」
親の仕事の都合で、また転校する事が急遽決まったらしい。
いつもの学校帰りの並木道で、突然それを聞かされた。
「・・もう・・決定・・?」
「・・うん」
「・・・・近く・・?」
「・・いや、北海道だから、、・・遠いね」
「そんな・・いきなり・・・・」
「一緒に卒業出来なくて、ゴメンね・・」
「・・・さやりんが悪いわけじゃない・・し・・・」
「・・?やぐっちゃん・・・・泣かないでよ・・・」
気付くと矢口は、目から涙をボロボロこぼしていた。
そして紗耶香のその言葉で、気持ちが堪えきれなくなった。
「うっ・・うぁぁんさやりん行っちゃヤダよ!!矢口を一人にしちゃヤダよ!!!」
立ち止まった矢口は、紗耶香に思いっきり抱きつきながら、通行人も気にせずに声を上げて号泣した。
無理な事を言ってるのは分かってる。
でも小学生矢口は、言わずにはいられなかった。
「・・やぐっちゃん友達いっぱいいるじゃんか・・・」
「ヤダよ!!さやりんじゃなきゃヤダよ!!!」
まだ幼いこの時期の親友との別れは、あまりにも辛すぎた。
紗耶香は、返す言葉が見つからなかったらしく、ただ黙って俯いていた。
- 310 名前:Oー150 投稿日:2001年04月11日(水)00時41分04秒
―――――
そんな矢口に、紗耶香が残した、最後のお別れの言葉、、、
「大きくなったら、絶対やぐっちゃんの元へ戻ってくるからっ」
初めて矢口に笑いかけてくれた時の、
“サンキュッ”
あの笑顔が重なった。
紗耶香はそう言いながらポンポンと二度矢口の頭に手を置き、
そのまま振り向かずに親の待ってる車へと走っていった。
矢口は言葉が出なくて、一緒に見送りに来てくれたお母さんにしがみ付いてずっと泣いてた。
「真里、さやちゃん戻ってくるって。ちょっとの間だから大丈夫よ。きっとすぐだから、ねっ」
お母さんは、泣き喚く矢口をなだめる為にそう言ってくれた。
「ウック・・ウゥゥ・・ウァァァァン」
けれど矢口の涙は止まらなくて、お母さんのスカートは矢口の涙と鼻水でベチャベチャになってたと思う。
あの去っていくエンジン音と、車の後姿を忘れない。
紗耶香は車に乗り込んでから、手も振らずにそのまま行ってしまった。
紗耶香はあの時、泣いてくれたのかな・・
- 311 名前:Oー150 投稿日:2001年04月11日(水)00時42分59秒
―
―――
―――――
――――――
「好きな人出来たんだ。それで市井の事待ってたのか。いいよ付き会うよ、何処の誰?」
「・・・・・」
「・・?どうした?」
「・・・・・」
「・・・・何?そんな簡単に言えないような奴?」
「・・・・・」
「・・あ、もしかして体育の金子?別に笑わないよ。顔はあれだけど、、結構いいとこあるもんねあいつ」
「・・違うよ」
「・・じゃああれか!バイト先で知り合ったっつー妻子持ちの、んと・・なんつったっけ・・とにかくあいつだろ!ダンディーだって騒いでたもんね。いいじゃん奥さんいたって。そういうのってしょうがないじゃん。市井は応援するぞっ」
「・・・違う・・」
「・・・・じゃあ、、、よく行く歯医者んとこの、、」
「・・・・・やかだよ・・」
「ん?なに?」
「矢口は紗耶香の事が好きなんだよ!!」
「・・・・やぐ・・っちゃん・・・」
「「・・・・・」」
案の定、紗耶香は矢口の告白に固まった。
そりゃあ固まるだろう・・
長い沈黙が流れる。
紗耶香との親友としての付き合いは長い。
途中間は開いたけども、初めて会ったあの日から、もうかれこれ10年近くになる。
あの日、紗耶香と別れて、一度は過去の人となった紗耶香。
でも、再会した。
もしかしたら、紗耶香と再会したあの瞬間、既に二人の関係は以前と違っていたのかもしれない。
いや、矢口の中で違っていたんだ・・。
お互いが違う場所で成長し、違う時間を過ごした。
一度失った二人の時間。その時間を取り戻したとしても、やっぱり前とは少し違ってて・・。
でも一つ確かな事がある。
―――紗耶香と再び会えて、矢口は素直にとてつもなく嬉しかったと言う事。
- 312 名前:Oー150 投稿日:2001年04月11日(水)00時49分13秒
―
――
――――
―――――
あの日紗耶香と別れてからは、手紙や電話は、余計に会いたくなっちゃうと思ったから、しなかった。
大きくなったらなんて、そんな曖昧な、なのに期待させるような言葉、ホントは言って欲しくなかった。
大きくなったら、、、
―――いつ?
―――あと何年後?
矢口の背だって、おっきくなれなれって思ってても全然ならない。
大きくなったらなんて、そんな言葉・・信じれないよ・・。
あの頃の矢口は、そう思ってた。
だから、紗耶香の事は、忘れようと思った。
小さな小さな矢口は、そんな辛さしまいこむ場所なかったから・・。
中学に上がった矢口は、いっぱいいっぱい友達を作った。
紗耶香がポッカリと開けていった大きな穴を埋める為の友達・・。
そして、、、
“大きくなったら、絶対やぐっちゃんの元へ戻ってくるからっ”
紗耶香のその言葉を、笑顔を、記憶の片隅に追いやり、矢口の時間は過ぎていった。
―――――
―――
―
- 313 名前:Oー150 投稿日:2001年04月11日(水)00時50分39秒
―
――
―――
―――――
紗耶香と別れて3年半、矢口、高校一年生。
身長はやっぱあんまりおっきくならなかったけど、でもやっぱおっきい矢口なんて矢口じゃない!って思うようになったから、もうチャームポイントの一つになってた。
“ちっちゃい方が可愛いくて似合ってるのになぁって思って”
記憶の片隅にあったその言葉が、もしかしたら無意識のうちにちっちゃい矢口を好きにしていたのかもしれない。
それは、今でも分かんないけど。
髪はブロンドになってた。っていうかしたんだけども。
メイクばっちりして、ルーズ履いて、制服着る。
するといわゆるコギャルって感じになる。
でも高校時代は短いんだから一回くらいこれやっとかなきゃね♪
「行ってきま〜〜〜す」
いつものように制服に身を包んで学校に向かう。
居眠りしたり、ノート取ったりしながら長い一日の授業が終わる。
で、速攻友達と渋谷へと向かって、カラオケでいっぱい歌って、満足満足♪って感じでバイバイって友達に別れを告げ一人帰りの電車に乗り込んだ。
時間的にラッシュにぶつかったらしく、満員電車の中おじさん達に挟まれて死にそうになりながら乗ってた。
ガタンッ
ガタンガタンッ
電車の規則的な音が、立っていても眠気を誘う。
体がガッチリ支えられてるから立ったまま眠れちゃいそう。
カラオケで歌い疲れて、もう半目になってクタッとしてた。
ガタンッ
ガタンガタンッ
「ふぁっ・・・」
大きなあくびが一つ。そしてぼ〜〜っと半寝状態になっていた。
しばし夢見心地になってたその時だった。
- 314 名前:Oー150 投稿日:2001年04月11日(水)00時52分13秒
(・・・?なんだ・・?)
体に違和感を感じた。
(・・・なんか・・モゾモゾする気が・・・)
睡魔が邪魔して意識がはっきりしない。
しかし次の瞬間その睡魔が吹き飛んだ。
「!?!?!?やっ!」
瞬間的に声が出た。
おしりの辺りを撫でまわす感触。
それが故意なのはあからさまだった。
学校が家から近いから、普段は電車に乗らない。だから、満員電車の中の、こういう痴漢って初めてだった。
気持ち悪いとかよりも、とてつもない恐怖感が押し寄せてくる。
どうしていいか分かんなくて、足がすくんで声が出なかった。
後ろを振り向きたいんだけど、怖くて振り向けない。
ガタガタ震える体。
そして、その手がゆっくりとスカートをたぐり上げて来た。
(やっやだ!!やだよやめて!!!)
声にならない。
(やだ!!誰か、、誰か助け、、!!)
「こんなちっちゃい子にこんな事していんですか」
(え・・?)
ばれんたいん
- 315 名前:Oー150 投稿日:2001年04月11日(水)00時55分47秒
- ( ´ Д `)<・・・・お決まりの(略・・・
途中載せる順番間違いました。
でもなんとか話繋がりました(w
あんまり納得いかない順序だけど・・・(ブツブツ
なんか頭の調子悪いんで載せちゃうのためらいあったんだけど・・もう急がなきゃ・・
- 316 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月11日(水)01時15分32秒
- うーん。出番がおいしすぎる。(笑
- 317 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月11日(水)03時23分32秒
- 矢口が困っている時に必ず現れますな〜。
この〜、千両役者め!!(w
- 318 名前:Oー150 投稿日:2001年04月11日(水)06時41分00秒
- ね、ねみぃ・・・今日は徹夜か・・・
でも全然能率悪いなどうしよ・・
>>316
ベッタベタですがわざとそうしました。
何かあったの?>えと、ちょっとタイムリミットが近いもんで・・
>>317
狙ってんでしょうかね市井は(w
- 319 名前:Oー150 投稿日:2001年04月11日(水)06時45分17秒
- ばれんたいん
「こんなちっちゃい子にこんな事していんですか」
(え・・?)
突然矢口に触れていた手が離れた。
「なっ何すんだよ」
恐らく矢口に触れていたそいつの声だろう、想像してたよりもずっと若い声だった。
でもそんな事よりも、、
「あんたの方が何すんだって感じじゃないですか」
(・・・この声・・・・)
驚いて窮屈な中無理矢理後ろを振り向いた。
「!?さやりん!??!」
そこにいたのは、以前に増してキリッと整った顔に、更に鋭さを増した瞳、間違えるわけがない、
紗耶香だった。
紗耶香は一瞬矢口の方を見てニッて笑って、すぐにそいつの方を軽蔑の眼差しでみる。
華奢な体系は変わってなくて、身長は当然の如く前よりも伸びていて、矢口との差は広がっていた。
髪は以前より長めで、ショートというよりボブって感じだった。
顔に少しかかった長めの前髪と、メイクをしてるせいもあってか、とにかくすっごく大人っぽくなっていた。ホントに同い年なのかと思うくらい。
服装は、ジーンズにあれは多分ヒスだと思うけど、とにかくなんかモデルみたいで凄いカッコよくなってて、一瞬ドキッとしてしまった。
コギャルやってる自分にちょっと素が入る。
- 320 名前:Oー150 投稿日:2001年04月11日(水)06時45分56秒
矢口は紗耶香がそこにいた事でとにかくビックリで、痴漢にあってた事なんかもう吹っ飛んでしまっていた。
「何言ってんだよ・・俺は別に何も・・・」
しどろもどろになりながらモゴモゴ言ってるそいつの顔をよくよく見てみると、多分20前後だと思うけど、眼鏡掛けててデッカイ鞄しょってていかにも予備校帰りって感じの男。まぁなんとなくだけど。
とにかくなんか弱そうだった。
紗耶香に腕を捕まれて思いっきりガンつけられたその男は、俯いて挙動不審になってた。
その姿を見ていたら、紗耶香との再会で一気に興奮したのか分かんないけど、その男にいつの間にか、、
「なにもって今思いっきりあたしのおしり触ってたじゃん!!」
キレてた。
「言ってやれ言ってやれぇっ」
紗耶香がニッて嬉しそうに笑って矢口にそう言う。
「あんたね!電車ん中だからってこんなプチプチの女子高生にそんな事していいと思ったら大間違いだよ!!」
「プチプチじゃなくてピチピチでしょやぐっちゃん(笑)」
「矢口はプチだからプチでいいの!!」
昔と全然変わらない笑顔。すっごいすっっごい嬉しくなった。
次の駅まで、周りの人の視線を気にもせず、とにかく矢口はそいつにブチギレて散々言ってやった。
多分紗耶香に会って興奮してたせいだと思うけど。
- 321 名前:Oー150 投稿日:2001年04月11日(水)06時48分10秒
―――――
「あははは!!やぐっちゃんサイコー!!(笑)」
「も〜〜矢口ひっさびさにあんなにキレたよ」
電車を降りてから、お腹抱えて爆笑してる紗耶香とキレまくってる矢口、どちらが言い出した訳でもなく、真っ暗な道を並んで一緒に歩いていた。
なんだかめちゃくちゃ照れちゃって、とにかく矢口は照れ隠しにキレてた。
今思うと、ひょっとして紗耶香も照れ隠しに笑ってたのかな・・?
3年ぶりの再会は、とにかくとっても照れくさかった。
まともに紗耶香の顔を見る事出来なくて・・。
“大きくなったら、絶対やぐっちゃんの元へ戻ってくるからっ”
紗耶香は、ちゃんと約束を守ってくれた。
なのに矢口は、紗耶香の言葉を信じれなくて、紗耶香の事を忘れようとしていた・・。
まぁ実際、忘れた事はないけども。
その事で後ろめたさを感じていた。
だから、素直にありがとうって言えなかった。
逆に、ごめんねって言いたかった・・。
でも、それもいえなくて・・・。
(だって、さやりん登場の仕方があまりにカッコよすぎだよ・・・)
初めて会った時と同じだ。
紗耶香はまるで矢口のお助けマンみたいだ。
こう二度もやられると、嬉しさを通り越して恥かしくて素直にありがとうって言えない。
もしかしたら、矢口は紗耶香の変化のせいで、既に意識しちゃっていたのかもしれないんだけど・・。
- 322 名前:Oー150 投稿日:2001年04月11日(水)06時50分03秒
暫く一緒に歩いてて、二人とも無言になった。
聞きたい事とか、言いたい事は山ほどある。
でも、なんて切り出していいのか分かんなくて・・。
(やっぱ“久しぶりっ”とかかなぁ〜・・でもそれを言うには遅い気がする・・)
(・・ありがとう・・ごめんね・・・やっぱこのどっちかをちゃんと言わなきゃな・・)
そう決意し、勇気を振り絞って切り出した。
「あ、あのさぁ、、」
「・・・・・」
無言の紗耶香。「何ぃ?」とか普通に言ってくれればノリで言えたのに・・・
無反応なので矢口の緊張が増す。
「あ、あのその・・・」
(言っちゃえ!!)
「さやりんありが、、!!」
「ッッッニッキシ!!!!」
「!?・・・・・・ん〜〜っっ人が喋ってる時にクシャミするなぁ〜〜!!」
「ほぇ?あ〜ごめんごめん。つーかやぐっちゃんティッシュある?」
鼻をジュルジュルさせながら体を縮こませてそういう紗耶香。
「あるよ!!」
「センキュ〜♪」
怒ってる矢口に気にも止めずチーンって思いっきり鼻をかんでる紗耶香。
(もぉ〜!!せっかく言おうと思ったのにぃ!!)
(なんだよニキシって!そんな可愛いクシャミするなよ!!ムードぶち壊しじゃんか!!)
「っていうか矢口の話、、!!」
「やぐっちゃんあれだね、身長伸びたね」
またも矢口の言葉を止める紗耶香。
(もしかしてわざと・・?)
(矢口にお礼言わせないようにしてるのかな・・)
- 323 名前:Oー150 投稿日:2001年04月11日(水)07時05分18秒
「・・なんだよ〜さっき痴漢止める時“こんなちっちゃい子に何してるんですか”ってまるで小学生に悪戯してるみたいな言い方したくせに・・」
「いやぁあれはなんとなくだから大した意味は無いよ」
「・・まぁいいや・・。それよりさやりん・・ホントに戻ってきてくれたんだ・・・」
「ん?また親の転勤だよ。今度は千葉。で、今日たまたま渋谷に買い物しにきた」
「え゛!?、、矢口を追っかけてきてくれたわけじゃないの!?」
「あっあの約束覚えててくれたんだ」
「・・忘れてたけどね・・」
「ずっと会いたい気持ちはあったよ。でもこの年でそれは流石に無理っす・・。でもまぁ、ドラマチックな再会果たせた訳だし、いいじゃん」
「じゃああの電車にいたの偶然??」
「偶然」
「ホント!?」
「うそ」
「ん〜どっちだよ!!」
「買い物してたらさ〜やたらうるさくて派手なギャル軍団がカラオケボックスから出てきて、やっぱ東京のギャルは濃いな〜って見てたら、、ん?ってね」
「・・もしかしてそのうるさい派手なギャル軍団て・・」
「そう、よくみたらやぐっちゃんだった。最初“え!?あれやぐっちゃん!?”って思ったけど声で確信した」
「・・矢口これから外では静かにしよ〜・・。、、ってまってそんじゃあ電車で一緒だったのって、、」
「うん市井があとつけたの」
「なんですぐに声かけないんだよぉ」
「いやぁなんとなく。タイミングとか」
「で、、あのタイミング?」
「うん。バッチリだったしょ?」
「・・・・もっと早くに声掛けてくれてれば痴漢にあわなくて済んだかもしんないのに!!」
「だってまさかやぐっちゃんが痴漢に会うと思わないもん」
「どういう意味だよ!」
「あははうそうそ。あまりに可愛くなったやぐっちゃんに見惚れてた」
「なっ・・・何言ってるんだよ〜・・」
「なんてね」
「どっちさ!!」
「さぁどっちでしょう(笑)」
「くっそぉ〜久々の再会なのに矢口の事からかいやがってぇ〜・・」
「、、でもホントすごい大人っぽくなったね」
- 324 名前:Oー150 投稿日:2001年04月11日(水)07時07分41秒
「え・・?」
「やっぱり、中学時代の成長っておっきいよね。全然見ちがえたっつーかなんつーか」
「そっそんな事・・ないよ・・・」
「男できただろ」
「えぇ!?でできてないよ〜!!」
「うそつけぇなんか妙に色気づいてるじゃんか」
「紗耶香だってめっちゃ大人っぽくなってるじゃん・・やたらカッコよくなってるし。彼女出来たしょ?」
「なんで市井は彼女なんだよ!!出来てるわけないじゃん!」
「ほ〜んとかなぁ」
「つーかまぁこの時期に変わってない方が怖いって事で」
「あっ話反らしたな」
「でもやぐっちゃんがギャルになるとはねぇ・・」
「なんだよっ文句ある!」
「ちょっと意外っす・・」
結局この日は、自然と紗耶香が矢口の家に泊まる事になって、一晩中3年間の時間を取り戻すかのように喋りつづけてた。
次の日は二人して学校サボって、一緒にショッピングしたりカラオケしたりして遊んだ。
やっぱり、矢口いっぱい友達いるけど、ちっちゃい頃仲良かったせいか、紗耶香が一番気が合うなって改めて実感したし、一番気が許せるって事も分かった。
とにかく凄い楽しくてしょうがなかった。
こうして、二人の友情は復活した。
既に微妙にズレていた差異に、全く気付く事のないまま・・・
ばれんたいん
- 325 名前:Oー150 投稿日:2001年04月11日(水)07時11分44秒
- ( ´ Д `)<・・・ッッックシュンッ・・あ゛〜〜・・(ジュルジュル
・・進まない・・・(グシグシ
- 326 名前:Oー150 投稿日:2001年04月11日(水)07時20分01秒
- あ゛ぁぁ!!!矢口「紗耶香」って言ってる・・・・まださやりんなのに・・・・
最悪だ・・・やっぱ無理はするべからず・・
- 327 名前:ぷち 投稿日:2001年04月11日(水)14時33分48秒
- ニキシッ!!
あぁ・・・俺もくしゃみが・・・(w
市井かっこえ〜なぁ・・・・
- 328 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月11日(水)18時57分50秒
- 無理して・・・(笑)なんて、嘘です。(笑)
めちゃくちゃ楽しみにしているのでがんばって下さいね。
- 329 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)02時51分54秒
- 白に甘い短編書きました。もしよければそちらもどうぞ(宣伝
こっちもガンバロー・・
- 330 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月12日(木)04時42分35秒
- さやまりえ〜ですな〜!!
作者さん、何事も気合ですぞ!!気合でがんばってください!!(w
- 331 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)10時52分56秒
- やぁばい・・・体調崩した・・・けどもこれを気に・・・・体を休ませれる・・・♪
更新出来るし・・・♪
>>327
風邪流行ってますからねぇ・・・って俺だけか・・・
健康第一っす!!(説得力0
>>328
ありがとうございます!
無理しました!(w
頑張りますよ!!!
>>330
はい気合で気力で書いてます。
ありがとうございます頑張りますっ。
う・・・行きます・・・
- 332 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)10時53分37秒
- ―――――
―――――
「え゛!?ホント?!?!」
「うん。市井さんでしょ?ホントだよ」
「へ〜・・・世間て狭いもんだよね〜・・」
「ね〜私もビックリ。あの市井さんと真里が幼馴染だなんて」
「いや幼馴染って訳でもないんだけども」
紗耶香と再び仲良くなってからすぐの事だった。
たまたま矢口の仲いい友達に、昔の親友と再会した話をしたら、、
「市井さんね〜クラスは違ったけど凄い目立ってたから」
「目立つ?どんな風に?」
その友達も北海道から越してきた子なんだけど、紗耶香と学校が一緒だったらしい。
ホントに凄い偶然だった。
「まず顔でしょ」
「あ〜それは分かるな」
「あと何よりバスケがね、凄いから」
「凄いってそんな有名だったの?」
「そりゃ〜もう!男子の方が師匠とか呼んでたくらいだから(笑)」
「へ〜・・上手いのは矢口も見たから知ってるけども・・」
「ジュニアの、、世界のなんか、、よく分かんないけど海外まで行って試合してたよ?」
「え゛ぇ!?世界クラス!??!」
「っていうか真里そんな事も知らないで親友やってんの?」
「いやぁ〜中学時代音信不通だったからさぁ・・」
「雑誌とかも何回か載ったよ。そういうのもあって他校の生徒とかがわざわざ来て告白したりしてた」
「は?モテるの?」
「モテてたよ。めちゃくちゃ。両性から」
「男も女も?」
「うん」
「ほ〜・・・・」
- 333 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)10時54分18秒
「っていうかあの市井さんに親友がいたとはね〜・・・」
「いやぁ親友って言っても矢口が思ってるだけで向こうはどう思ってるかわっかんないよ」
「ねぇねぇ紹介してよ〜・・」
「えぇ〜?してどうすんのさ」
「仲良くなりたい♪色んな意味で・・」
「・・絶対紹介しない・・・」
「なんだっ・・大チャンスだったのに・・」
「相手にされないでしょ。紗耶香バスケ一筋っぽいじゃん」
「まぁね、でも真里も油断してらんないよ」
「?油断て?」
「恋人は無理だろうって諦めて友達の座狙ってる子だっていっぱいいるんだから」
「え・・・オイラなんてすぐにポイされちゃう・・?」
「さぁ、分かんないけど頑張らないとダメじゃない?」
「そうなのか・・・不安になってきた・・・」
「っていうか真里も既に惚れてんじゃないのぉ?(笑)」
「なっそんな訳ないじゃん!ただ・・ただ矢口は・・」
「ただ何?」
「ちょっと二回も紗耶香にお助けマンされちゃってるからさ・・・ほら、借りを返さないと・・・」
「とかなんとか言っちゃってまた(笑)」
「ほっほんとだってば!!」
友達の言葉で、とにかく矢口は不安になった。
考えてみれば、相手にされないかも分からない。
中学校三年間で紗耶香がどう変わったかなんて外見しか分かんないし・・。
- 334 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)10時55分32秒
でも、紗耶香はそれからもまた遊びに来てくれた。
わざわざ千葉から。
それが少しか矢口の不安を解かせた。
けどもやっぱり友達の言葉がきになる。
「・・・・さ〜やりん♪」
「ん〜〜〜?」
「、、、やっぱいい」
紗耶香は矢口の家に来るなりお菓子片手にゲームに熱中していた。
矢口はベッドの上で枕を抱きしめながらちょっと膨れていた。
ただでさえ最近紗耶香に対する不安とか募ってたのに、来て速攻でこれなもんだから、ゲームしにきただけ・・?とか思ってしまう。
「やっぱ聞いて!、、ねぇ紗耶香!聞け〜〜!!」
「ん〜〜何聞いてるよ〜〜」
「聞いてない!!もうゲーム没収!!」
「あ゛!!!もうちょっとで三面クリアで次ボスだったのに何すんだよ!」
「話終わってからにしなさい!!」
「ちくしょ〜・・・・」
「大丈夫切ってないよ」
「・・ほっ・・良かった・・・。で?話って何」
紗耶香の座布団を引っ張って無理矢理こっちに向かせた。
「あのさ、、」
「うん・・なに?」
「紗耶香ってモテモテなんだってね」
- 335 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)10時57分43秒
「は!?」
「色んな女の子にラブコールされてるって聞いた」
「そんなのどっから聞いたの?」
「まぁちょっと、裏ルート」
「何それ(笑)」
「どうなの!」
「どうって?」
「モテモテなの!」
「なんでそんな怒ってんの?(笑)、、あっさては妬いてる?」
「ばっなんで矢口が妬くんだよ!!」
「どうって聞かれても困るんすけど・・どうなのかな、モテるかもね」
「うわっ自分で言った!ヤっらしぃ〜・・」
「やぐっちゃんが聞いたんじゃん!分かったよモテないよ。ぜ〜んぜんモテません」
「じゃあ矢口以外との遊ぶ予定とかどうなの!」
「・・・・(笑)」
「だからなんで笑うんだよ!!」
「や〜なんか可愛いな〜と思って」
「か・・・可愛いとか言うな・・」
「やぐっちゃん以外ともそりゃ遊ぶよ」
「・・・へぇ・・・」
「でも言っとくけどふつ〜に遊ぼうって誘われて、ふつ〜に遊んでるだけだよ。そういう変なあれはないから」
「ふつ〜ってどんなさ・・」
「、、つーかさぁやめてくんな〜い?(笑)そういう彼氏の浮気調査みたいの(笑)」
紗耶香がそう冗談を言って笑う。
けども矢口は、
「・・紗耶香は普通な気持ちかもしんないけど向こうは本気だと思うよ矢口は」
その冗談に少しも笑う事無く、真顔でそう答えていた。
- 336 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)10時58分57秒
「・・・なしたの??なんか変だよ?誰かになんか言われた??」
「・・別に・・」
口を尖らせて視線を反らしながらそんな事言っても説得力ない。
“なんか変だよ”
そう言われて矢口は何故だか動揺してしまっていた。
そんな矢口の顔を暫くじっと見つめていた紗耶香は、、
「・・分かった。もうやぐっちゃん以外と遊ばないよ」
「べっ別にそんな限定してくれなくてもいいけど・・・」
「やっぱやぐっちゃんちのゲームソフトが一番市井のツボを捕らえてるし」
紗耶香は矢口の他の子への嫉妬心に気付いてくれたみたいだった。
勿論親友としての。
「ゲームする為にうちに来るな!」
「アハハ!ウソウソ。
やぐっちゃんと遊ぶのが一番楽しいよっ」
「・・・・」
そう言ってニコッと笑う紗耶香。
矢口は照れちゃって言葉を無くして俯いていた。
どうして紗耶香って矢口が中々いえない事をこうもさらっと言ってしまうんだろう。
どうしてこんなにも簡単に人の心を安心させてしまうんだろう。
やっぱり紗耶香は昔と全然変わってない。
チャラッチャッチャラ〜♪
「もうやっていいよね。うっしボス戦頑張るぞ!!」
・・・まぁその分よく不安にさせるけども・・。
- 337 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)11時04分02秒
「なんつーのかな、色んな子に誘われて遊びに行ったけど、みんなやぐっちゃんと違って口数少なくて会話弾まないんだよね」
せんべいをボリボリ食べ、画面を見つめながらそういう。
「・・・・」
だから紗耶香に惚れてるから緊張してんだっつーの!!
熟練された手つきでボタンを押しながら話を進める。
「高級ティーセットでもてなされたりしてさ〜こっちまで力入っちゃうし。市井は貴族じゃないっつーの」
彼女らにしちゃああんたは王子なんだよ・・・
あからさまに態度にされないと気付かないのかな?
鈍感だなぁ・・。
人の気持ち分かる人なんだか分かんない人なんだか・・・
「その点、やぐっちゃんちは駄菓子にお茶だもんね。いいねぇ日本の心を分かってるし市井のハートまでガッチリキャッチしちゃってるよ」
「そりゃどうも」
そう言って、暫く矢口は紗耶香の熱中してるゲームを何も言わず一緒に見入ってた。
一応、矢口とだけ遊ぶって約束してくれたし、、そのご褒美?って感じで。
「あ、もう時間ヤバイね。んじゃ市井帰るかな。セーブもしたし」
「え!?」
そう言って紗耶香は突然立ち上がった。
- 338 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)11時05分26秒
- 「だってもう遅いし」
「ちょっと待ってよ!久しぶりに遊んだのに紗耶香ゲームやってただけじゃんかぁ!!オイラただいただけじゃん!!」
「ん?じゃあやぐっちゃんは何がしたかったの?」
「・・ん〜・・・・話・・・」
「話?、、そっか。そんならそうと先に言えよぉ」
「だって・・」
「何モジモジしてんの?(笑)」
「・・・・・」
「じゃあいいよ。今日は思う存分喋ってけ!とことん付き合うぞ!」
そう言って矢口の頭をポンポンと叩いた。
「頭叩くなぁ!!脳細胞死んじゃうじゃんか!それに喋ってけってここは矢口の家だよ!!」
「ははっ(笑)」
やっぱり紗耶香の笑顔は好きだ。
なんかこの笑顔見るとイライラが全部吹っ飛んじゃう。
照れ隠しに怒ったふりしてるけど。
なんだかんだ言って紗耶香は矢口のわがままをいつも嫌な顔一つせずに聞いてくれる。
そこらへん全然変わってないな。
「、、でさぁ!隣の席の山口って奴が授業中矢口の方向いて寝るんだよね。もうっっ最悪!口半開きでヨダレ垂らしててさぁ〜。しかもたまにピーとか鼻鳴らしてんの!(笑)」
「アッハハハッ!!」
「しかも、、、」
「アハハハ!!マジでぇ!?」
話題はそ〜と〜くだらないんだけど、とにかく二人して手ぇ叩いて足バタバタさせて大爆笑の時を過ごす。
矢口に取ってはこの時間が至福の一時なんだよね。
この時矢口の中で浮かぶ言葉は、、
ずっとずっと続けばいい。
ただ、それだけだった。
- 339 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)11時08分16秒
- ―――――
―――――
それから矢口は、しょっちゅう紗耶香の家に遊びにいくようになった。
ちょっと遠いけど、でも行けない距離じゃないし。
幾らお金掛かっても、時間掛かっても、紗耶香に会えると思えばなんのそのって感じで。
紗耶香はバスケで忙しいから、バイトしてお金ある矢口の方からいつも行ってた。
紗耶香の時間の空いてる、土曜の夜とか、明日休みって日に押しかけて、無理矢理泊まってく。
だから大体週一のペースでは会ってたと思う。
そんなにマメにあってたのに、矢口の中で一つ不満があった。
それは、紗耶香があんまり自分の話をしてくれないって事。
学校違うから、紗耶香のプライベートっていうか、矢口意外んところでの行動とかはっきり言って全然謎だったし。
いつも矢口から色んな悩みだとか愚痴だとかベラベラ喋ってたけど、紗耶香はあんまり、、っていうか全然自分の事話したりしなかった。
まぁそういう性格だからしょうがないかって思ってたけど。
でも、そんな紗耶香の私生活を、初めて垣間見れた出来事があった。
あれは、千葉―東京を往復するようになって3ヶ月くらい経ったある日の事。
いつものように、ゲームをしてる紗耶香の横で雑誌読みながらゴロゴロしてた。
そして雑誌を読み終わった矢口は、暇だったので紗耶香の机に座って周り置いてある物をなんとなく物色してた。
と言ってもバスケ関連の物ばっかりなので、見てもあんまり楽しくない。
「ちょっとやぐっちゃ〜ん引出しん中とか見るなよ〜?」
「おうっ。ふんふんふ〜ん♪」
ふと、机の隅に置いてある携帯に目が止まった。
「ねぇ紗耶香ぁ」
「ん〜〜?」
「携帯見ていい?」
「へ!?なんで??」
「いや〜だって矢口暇なんだもん」
「え゛〜〜あんまヤダな・・」
「あんまヤダってなにさ(笑)」
「市井のプライバシーっす・・」
「おおっ!余計気になるなぁ〜〜。さては矢口に見られては困る何かがあるのかなぁ??」
ニヤッて笑ってふざけた感じでそう言ったけど、実はかなり見たかった。
- 340 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)11時09分47秒
「いやぁ・・別に無いけど・・・」
「じゃいいじゃんいいじゃん」
「ん〜・・・・んじゃやぐっちゃんも見せてよ」
「いいよ全然。ほいっ」
そう言ってためらいなくポイッと紗耶香に向かって携帯を放った。
自分のも見せればお互い様だから心置きなく見れると思ったし、矢口は紗耶香に隠すような事何もなかったから。
逆に興味持ってくれて嬉しかったりする。
「じゃぁ見させてもらいます」
「・・どうぞ・・」
「さやりんのプライバシー観察観察♪」
(まずは電話帳、、と、おっ結構あるな〜225件かぁ・・矢口のよか全然少ないけど、、でもちょっと意外。紗耶香全然遊んでないし、それに友達積極的に作る人じゃないと思ってた・・中学に上がってから変わったのかな〜・・)
「やぐっちゃ〜ん」
「ん〜〜?」
「結構イイ感じなんじゃ〜ん」
「なにがぁ?」
「片想い中の彼」
「はぁ!?なんで??」
「だってメールでラブラブじゃん」
「あ〜、、まぁね、最近結構ね、ちょっと、頑張ってる・・♪」
「これは絶対気があるって」
「ホント!?」
「うん。いけると思う」
「そ、そうかなぁ・・」
この時、矢口は好きな男がいた。
で、結構イイ感じになってきてて、そろそろ告白してもいっかなぁなんて思ってた。
まぁ・・のちのちこの男が原因で矢口は苦しむ事になるんだけど・・・その時は思いもしなくて・・。
「これはいけるって絶対。いっちゃえぇっ」
「え゛〜〜でもなぁ〜〜」
(って言うか今は彼より紗耶香の携帯携帯っと)
(ん〜〜紗耶香もメールけっっこうやってんだぁ)
(・・って・・なんだこのメール・・・・)
≪先輩お願いです・・。もう一度だけ、会ってくれませんか・・?もう一度だけでいいから・・≫
- 341 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)11時11分23秒
(・・・・なんか・・これは普通の会話じゃない気が・・)
(待って紗耶香の返事は・・?送信メール送信メール・・っと)
≪悪いけどもう会わない≫
(ってえぇぇ!!冷た!!この一言だけ・・?)
ちらっと紗耶香の方を見る。
「ん?なした?」
「・・いや・・・」
(紗耶香やっぱモテるんだ〜〜ふ〜〜ん)
(っていうか先輩?あ〜こっちに越す前のメールか。もしかして越す前に一度だけ会いたかったってやつかな・・)
(だとしたら・・・かわいそ〜だよ〜〜〜最後くらい会ってやりゃいいのにさっ)
この段階では、ただ楽しんでいたのを覚えてる。
矢口の知らない紗耶香、それが垣間見れたのがなんとなくドキドキした。
ますます好奇心が湧いてきて、次々にメールを見ていく。
- 342 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)11時12分35秒
(越す前は興味深いなぁ〜なんせ矢口全く知らないもんね)
(、、、うわっ何こいつ・・・・)
≪せんぱ〜〜い向こう言ってもミホの事絶対ぜっっったい×500忘れないで下さいね!!!ミホは永遠に先輩の事だけ想ってます電話もいっぱい×500するから≫
(・・・・・なんかムカつく・・・ミホって誰だよ・・大体一人称を自分の名前で言う女にろくなのいない・・・。っていうかなんで500に拘ってんのか分かんないし・・・)
(で、実際電話はしてるのかな??)
(・・・・・あははは紗耶香拒否ってる!!!)
「プッ・・・」
「・・何噴出してんの?」
「いや・・・」
(他は〜っと♪)
(・・・うわっ!!!何これ!!!)
- 343 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)11時14分04秒
≪好き好き好き好き好き好き好き好き隙好き好き好き好き好き好き好き≫
(・・・・・・やぁばいんじゃないのぉこれは・・・これ女かな男かな・・・)
(ちょっと待って途中一個好きって変換間違ってる!!)
「アッハハハハハ!!!」
「何なになんなの??」
「・・・・って待って笑い事じゃない・・・」
「なんだよ」
「・・・紗耶香あのさ・・・」
「ん?」
「・・いや、うんやっぱなんでもない」
「??」
(・・・・矢口の知らないところで事件は起きている・・・・)
(他の他の・・・・・んん?なんだこれは・・・)
≪先輩背筋100回終わりました≫
「・・・・・ブアッハハハハハ!!!!」
「だから何笑ってるんのってば」
「・・・・アッハハハハハ!!!なんか分かんないけどウケルこれ!!!状況が分かんない!!!アハハハ!!」
「何がだよ!」
「いやぁ別に・・はぁはぁ・・」
「くっそ〜見せるんじゃなかった・・・」
(いやぁ〜〜人のメールってこっちは意味分かんないから面白いなぁ〜〜)
- 344 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)11時16分10秒
- (う〜ん最近のも見るかな。、、、、やっぱ矢口からのメール多いな。ちょっと嬉しい♪)
(っていうか自分で送ったメールを冷静に見るとこっぱずかしい・・・矢口ってそ〜と〜アホだな・・・)
≪やっほ〜〜いとしのやぐりんだよ〜〜ん今矢口は宝くじ買おうか買うまいか悩んでます!おじさんばっかり並んでてけっこ〜恥かしんだこれがぁ!でも買うは一時の恥じ、買わぬは一生の悔いって感じだしぃ・・・。だって当たったらさ!もう外国でもどこでも一緒に旅行できるよ!!何処行く何処行く!?やっぱハワイだよね〜でもヨーロッパなんかも捨て難い・・。でもわざわざ並んで外れたらね〜・・・。紗耶香どっちか決めてちょんまげ!!≫
(・・・そういやこんなの送ったな・・オイラアホだ・・・)
(で、紗耶香なんて返事くれたんだっけ)
≪買うしかない≫
(短か!!!・・・まぁ的確なアドバイスだけども・・ちょっと愛を感じないなぁ・・さっきの子と大した変わんないじゃんか・・)
(でも紗耶香から電話したりメール送ったりしてるの矢口ばっかりだ♪なんか嬉しいな♪)
(あ、、待って何このメール)
- 345 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)11時18分20秒
≪こないだ電話してたやぐっちゃんって誰?≫
(関係ないじゃん!!誰だこいつ!!、、ん?矢崎先輩?・・こっちでは先輩にも目ぇつけられてんだぁ・・こりゃ紗耶香大変だぁ・・)
(紗耶香の返事は?)
≪友達です≫
(ほうほう。、、親友ですって言ってほしかったけども)
≪ホントにそうなの?どんな子?≫
(うわっ疑い深い先輩だなぁ・・矢口から電話でもしてやろっかな)
≪どんな子って、、いい子です≫
(・・・ヘヘ・・・♪いやぁて〜れるなこういうの・・)
「もうっ紗耶香ったらんっ」
「・・・なに・・?気持ち悪いよやぐちゃん・・・・」
(いい子、いい子かぁこの言葉に全てが込められてるね)
≪っていうか信じられないな。紗耶香に友達なんているの?≫
(え・・・・?・・どういう・・意味・・?)
- 346 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)11時23分21秒
- (・・紗耶香は返信してない・・)
≪バスケしか興味ないって感じだし、人に対してなんか距離持ってるし、態度も素っ気無いし冷たいし≫
(・・この人紗耶香の事何にも知らないからそういう事言うんだよ・・・・)
(それに、誰にでも冷たくしてる訳じゃないはずだよ。現に、矢口にはこんなに優しいし・・・色んな子と遊んだりしてたわけだし・・)
(紗耶香の事何にも知らない癖に・・許せないよ・・なんなんだこいつは・・)
(きっと紗耶香が振り向いてくれないからこんな事言ってるんだ)
≪なのにそのやぐっちゃんて子と話してる時だけは、別人みたいだった。普通の関係とは思えないんだよね≫
(・・・思いっきり疑われてる・・・)
(別人って・・・まさか紗耶香矢口の事・・・・ってそんな訳ないか)
(っていうかどんな学校生活送ってんだ〜?紗耶香は)
(・・・もしかして矢口以外には心閉ざしちゃってるのかな・・・)
(いやでも友達と遊んだりしてるって言ってたじゃん)
(友達・・・遊んだり・・・・・)
- 347 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)11時24分29秒
友達・・・・?
・・・遊んだり・・・・?
“なんつーのかな、色んな子に誘われて遊びに行ったけど、みんなやぐっちゃんと違って口数少なくて会話弾まないんだよね”
(・・・・・・)
“高級ティーセットでもてなされたりしてさ〜こっちまで力入っちゃうし。市井は貴族じゃないっつーの”
(・・・・紗耶香・・・)
紗耶香の言葉を思い出して、なんだか胸が締め付けられた。
―――紗耶香はどういう気持ちで言ってたんだろう・・。
いっぱいいっぱい努力して、まだほんの14・5歳で世界飛び回る程バスケが上手くなった。
でもその分失うものもきっといっぱいあって・・・
紗耶香が失ったものは・・・人との心の距離・・・・?
本当は、距離を置いてるのは紗耶香の方じゃなくて、、、
じっと、ゲームをしてる紗耶香の横顔を見つめた。
「・・・・・」
紗耶香は学校での話を一切しない。
友達の話とかも、聞いた事がない。
バスケの話は凄く楽しそうにするけど。
単に自分の事話すのが好きじゃないのかと思ってた。
でももしかして、好きじゃないんじゃなくて、話す事が無い・・・?
そういえばメールも、くだらないの送ってるのは矢口だけだった。
別に、矢口は一緒にいて特別楽しい人間って訳じゃないだろうし、特別何かをしてあげてる訳でもないし、役立たずだし、我がままばっかり言ってるし、悩み相談とか愚痴とかばっかりで、一緒にいてそんな楽しい人間だとは思えない。
でも、何も考えずに紗耶香にぶつかっていってるのは確かだ。
純粋に、紗耶香との時間を楽しんでるのは確かだ。
- 348 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)11時31分12秒
- ―――――
それから矢口は、意味無いメールをやたら送るようになったの覚えてる。
勿論同情なんかじゃなくて、なんていうか、矢口だけと仲よくしてくれてるっていうのが本当だとしたら、単純に、すっごく嬉しかったから。
紗耶香を独占できるんだって事が、凄く嬉しかった。
でももし矢口が紗耶香と違う出会い方をしていたら、他の人と同じように、心の距離を縮めるのは、難しかったかもしれない。
それは、分からないけど、、
でも運命ってあると矢口は信じてる。
あの日、あの瞬間、二人は偶然にも出会った。
それも、2度もその偶然は起きた。
紗耶香が矢口を少しでも必要としてくれるのならば、
矢口は喜んで何でもするよ。
紗耶香は矢口のお助けマンになってくれた。
次は、矢口の番なんだ。
だから、、いっぱいいっぱい頼って欲しい。
「ねっ紗耶香っ」
「ん??なに?」
「なんでもないよっ」
この時点では、矢口は紗耶香に対しての感情を説明付ける事は出来なかった。
この異常な独占欲はちょっと変かなとは思ったけど、でも誰でも親友に対してそんなよう感情は持つはずだ。
でも矢口は、更に自分の気持ちを分からなくさせる事を、
自らしてしまったんだ・・。
自分で自分の首をしめるとは、まさにこの事で・・・・。
ばれんたいん
- 349 名前:Oー150 投稿日:2001年04月12日(木)11時33分36秒
- ( ´ Д `)<お助けマン・・・・
あ、ばれんたいんって最初書き忘れた気がする。
っていうか展開なくてすんません・・・ジラしてばっかで・・・・・
う〜ん進まない・・・・・・・・
あ、白も見てね(つーか宣伝するくらいなら上げよっかな)
- 350 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月12日(木)13時24分38秒
- 風邪大丈夫ですか〜?!
更新が多くって、嬉しいんですけど(笑)、
ゆっくり体休めてくださいねー。
やぐっちゃん・・・。切ないですねぇ。キュンって感じで。
- 351 名前:ぷち 投稿日:2001年04月12日(木)13時28分31秒
- いっぱい更新されてるぅ♪(嬉)
作者さん、風邪こじらせない程度に頑張ってくださいね。
- 352 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月13日(金)03時14分32秒
- ロングな更新お疲れさまです!!
体調不良の状態でここまで書けるなんて凄いです!!
あまり無理はせず、ほどほどにがんばっていきまっ〜しょい!!
- 353 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月13日(金)06時13分16秒
- たくさん更新されてて嬉しい!
でも体調気を付けてくださいね。
全体の流れもさることながら、途中に入ってるギャグが小気味良くて最高です。
あと、個人的に「脳細胞死んじゃうじゃんか!」っていうのが矢口らしくて可愛い!
- 354 名前:Oー150 投稿日:2001年04月13日(金)10時58分40秒
- ご心配ありがとうございます。。小説かいてれるくらいだからそんなひどくありません(w
頭ぼーっとするけど返っていいのかも分からない。
>>350
ちょっとこの後一息ついて久々にガッツシ寝ますんで大丈夫です。
切ない矢口書くのは初めてなんでちょっと難しいっす・・
>>351
ありがとうございます。風邪こじらせてる場合じゃないんで頑張ります(w
勢いに乗って更新しないと・・・
>>352
どっちにしろ万全の精神状態でかけてる事って殆ど無いんで、そんな変わんないっす(w
安定しちゃったら多分書けないと思う。。
>>353
ギャグに目ぇ付けてもらって嬉しいっす。さやまりはギャグ入れれる空気持ってるんで、いちごまよりはそういう部分楽しいかも。
僕も個人的に矢口の怒ってる時と照れてる時が好きなんで、そんなイメージを使わせて貰ってます。
ちょっと頭やぁばい状態で書いてるんで文章とか変かもしんないけど、通じるとは思うんで・・。
- 355 名前:Oー150 投稿日:2001年04月13日(金)11時00分34秒
- ばれんたいん
―――――
―――――
月日は流れ、矢口はずっと片想い中だった彼とめでたく両想いになった。
バイト先で知り合った年上の人で、外見カッコイイし優しいしで矢口はベタ惚れだったから、両想いになれたのが夢みたいで、とにかく幸せ気分いっぱいだった。
けども、その幸せも長くは続かなかった。
何かが大きく狂いだしたのは、、、忘れもしない、あれは雷が鳴り響いてる土砂降りの雨の日だった。
『やぐっちゃん!泣いてるだけじゃ分かんないよ!どうしたの!?何があったの!?』
「ンッ・・ンック・・彼・・が・・ンック・・他・・・女・・いて・・・ンッンッック・・・」
『は!?それどういう事!?だって付き合おうって言ってきたの向こうじゃん!』
「ヒック・・・あれは・・ック・・・本気・・・で・・言った訳じゃ・・・ンック・・ないって・・・・」
『・・そんな・・・』
「ングッ・・・矢口が勝手に・・ンッンッ・・そう思い込んでただけ・・・ンッ・・だって・・・」
『・・・あんにゃろ・・・・矢口そいつの番号教えて!!』
「ヒックンック・・・も・・・いいよ・・・ンッンッ・・・矢口がバカだった・・だけだから・・ンッ・・」
『何言ってんだよやぐっちゃんは何も悪くないよ!!』
「矢口が勝手に・・・ングッ・・一人で浮かれて・・・ヒック・・一人で付き合ってるつもりになってて・・・・・」
『・・やぐっちゃん今何処にいるの!?』
「今・・・ンック・・・わかんない・・・・」
『分かんないってどういう事だよ!こんな土砂降りん中何処にいんの!!』
「もう何もわかんないよ!!ヒック・・」
『・・ちょっと待ってそこ動かないで!!市井今から行くから!!』
「来なくていい!!」
『いやだ行く!!』
「やだ来ないで!!」
『だったらちゃんと家帰れよ!!そんなんじゃほっとけないじゃんか!!』
- 356 名前:Oー150 投稿日:2001年04月13日(金)11時01分30秒
「ンック・・ンッンッだってもう・・・ヒック・・ここ何処だか分かんないんだもん・・・ンック」
『ほらだから市井が迎えに行くから・・』
「やだよ・・」
『なんでだよ』
「だって化粧落ちまくって・・顔・・ぐちゃぐちゃだし・・ングッ・・雨で髪とか体中ベチャベチャ・・だもん・・・」
『そんなのいいよどうでも・・。市井もスッピンで行くからさ、ねっお互い様じゃん。、、あっつーかもう無理』
「無理って・・?」
『もう電車のっちった』
「・ンック・・・バカ・・・」
- 357 名前:Oー150 投稿日:2001年04月13日(金)11時03分00秒
―――――
そして紗耶香は携帯での矢口の住所と周りにある物の説明だけを頼りに、息を切らせて迎えに来てくれた。
「ハァッハァッハァッ・・・・・・おっす・・・」
「・・・・何時間待たせる気だ・・・」
「ゴメン・・・っつーかやぐっちゃんがこんな訳分かんないとこにいるから悪いんだよ・・・」
一応傘さしてるんだけど、その傘は全然意味をなしてなくて、紗耶香の体は全身ベチャベチャだった。
新しく買ったって凄い喜んで気に入ってたスニーカーも、ドロドロになってて、、、。
そんなんなのに、紗耶香は無言で矢口に傘を差し出してくれた。
只でさえ精神不安定なのに、そんな事されたもんだから、矢口は感極まっちゃって、、
「ンッ・・・ヒック・・・・紗耶香ぁ!!!」
思いっきり抱きついて、泣きまくった。
雨が涙と混じって、雷が泣き声をかき消す。
もう化粧とかどうでもよくなって、ワンワン泣いた。
あんなに泣いたのって、小学生以来だったと思う。
- 358 名前:Oー150 投稿日:2001年04月13日(金)11時05分14秒
―――――
暫くして、ようやく泣き止んだ頃には、もう夜中の12時を過ぎていた。
「・・やぐっちゃん・・落ち着いた・・?」
「ん・・・」
「うっしじゃあ帰ろっか」
「うん・・・」
こうして、タクシーを拾って矢口の家へと帰った。
勿論もう電車ないから、紗耶香はその日矢口の家に泊まる事になった。
家族はもう寝静まっていた。
なるべく静かにしながら紗耶香を招き入れ、順番にお風呂に入った。
先に入れって言われて、矢口から入った。
そして上がって部屋に戻って、次に紗耶香が風呂場に向かって行った。
なんとなく、蛍光灯の明かりはその時の矢口には明るすぎて、スタンドのライトだけつけて、ベッドにただ座る。
いつもなら友達泊まりに来たら布団一つ敷くんだけど、そんな気力もなくて、ただぼーっとしてた。
そして暫くすると、紗耶香が戻ってきた。
ガチャ
「ふぅ・・・相変わらずやぐっちゃんちはいい湯だね」
「・・そう・・?」
「うん、気持ちよかった」
矢口のおっきめのジャージを着た紗耶香が風呂から上がってきて、ベッドの上に座ってる矢口の隣に座った。
矢口はまだ気持ち切りかえれなくて、無言のまま膝を抱えていた。
紗耶香もかける言葉が見つからなかったらしく、無言でただ横にいてくれた。
- 359 名前:Oー150 投稿日:2001年04月13日(金)11時10分13秒
「・・なんか頭ぼーっとする・・・」
「・・あんだけ泣けばそりゃするよ」
「・・そっか・・・・」
「・・・今日はもう寝た方がいいよ・・」
「・・うん・・・紗耶香ゴメン布団敷く元気ないや・・・狭いけど一緒でいい・・・?」
布団敷く元気がなかったのは確かだ。
けど、なんだか弱ってたから人肌恋しくて、隣で一緒に寝て欲しかったっていうのもあった。
いや、それが殆どだろう。
「うんいいよ布団なんてどうでも。つーか別に市井はそこら辺でザコ寝しても構わないよ?」
「あ・・・いや・・・」
普段の矢口なら素直になれなくて、多分「これは矢口のベッドだから紗耶香は床で寝ろ〜!」とか言ってたと思うんだけど、、
- 360 名前:Oー150 投稿日:2001年04月13日(金)11時11分27秒
「一緒に・・・寝よ・・・?」
ためらいなく、自然と口から出ていた。
「、、うん分かった」
二人とも、暗いと寝れないから、ベッドについてるオレンジ色のライトは付けたまま、布団に入り込んだ。
「大丈夫?やぐっちゃん狭くない?」
「うん・・・大丈夫・・」
ピッタリとくっ付いてる肘から、紗耶香の存在をめいっぱい肌で感じ、徐々に気持ちが落ち着いてきた。
そして、落ち着きと共に、なんだか切なさが込み上げてくる。
もっと温かい温もりが欲しいと体が欲求する。
つぶれちゃいそうな不安定な気持ちと戦う気力は、もう少しも残ってなくて・・・
「・・・紗耶香・・・」
「ん・・?」
「・・・・ぎゅ〜ってして・・?」
「・・・・・」
ちょっとためらいの間があったけど、紗耶香は矢口の方を向いてぎゅ〜〜って抱きしめてくれた。
「・・・・紗耶香あったかいね・・・・」
「・・・・風呂上りだからね・・・・」
何故か涙が溢れてくる。
凄い安心感。紗耶香ってこんなに包容力あったんだと今頃気付く。
- 361 名前:Oー150 投稿日:2001年04月13日(金)11時12分35秒
ぼーっとする意識のなか押し寄せてくる心地良さ。けどまだドロドロとした悲しみや怒りや苦しみのシコリはいっぱい残ってて、頭の中が処理しきれなくてグルグル回る。
もう全部忘れちゃいたいと本能が切望する。
その湧きあがる衝動を抑える理性は、その時の矢口には無かった。
気付くと矢口は・・・
「ねぇ紗耶香・・・・」
「ん・・?」
「・・・・もう矢口・・全部全部忘れちゃいたいよ・・・」
「・・・・・」
「だから・・お願い・・・・・」
「・・なに・・?」
「・・・・忘れさせて・・・?」
- 362 名前:Oー150 投稿日:2001年04月13日(金)11時16分41秒
「・・・やぐ・・っちゃん・・何言ってんの・・・?」
「もう・・何も考えたくないし・・・何も思い出したくないんだよ!!」
矢口は泣き叫びながら紗耶香に思いっきりしがみ付いた。
「ンッ・・・ヒック・・・」
「・・忘れさせるって・・・・・」
「・・・・分かるしょ・・?」
「・・・ホンキで言ってんの・・・・?」
「ホンキだよ・・・・」
「・・・・・・・」
「・・紗耶香・・お願い・・・今日だけでいいから・・・」
涙声で紗耶香の胸に顔を埋めながらそう言った。
でも紗耶香は、、
「・・・そんな事・・出来ないよ・・・」
冷静に考えれば当たり前の事だ。
幾ら弱ってるとわいえ、だからこそこんな普通じゃない時にそんな事をしたら、後で後悔しかねない。
大体弱ってるからって友達に慰めでするような行為じゃない。
でも矢口はもうおかしくなってて、そんな冷静な判断出来なくなってた。
「お願いだから・・!!」
とにかく紗耶香に、何も考えれない程メチャクチャにして欲しい、それだけだった。
涙目で哀願する矢口を、紗耶香は長い間見つめて思考していた。
そしてようやくゆっくりと口を開いた。
- 363 名前:Oー150 投稿日:2001年04月13日(金)11時18分50秒
「・・・・じゃあ、一つだけ約束して・・?」
「・・・なに・・?」
「・・・本当に全部忘れるって」
「ん・・?」
「そんな男の事、もう全部忘れるって。忘れれなかったとしても、忘れる努力して、いつものやぐっちゃんに戻るって・・」
「・・・・・分かった・・・」
「あともう一つ・・」
「・・・?」
「・・・・今日市井とのこの事も・・
全部忘れるって・・・・」
「・・・・・うん・・・」
「・・・じゃあ今日一晩は、市井がやぐっちゃんの嫌な思い出全部忘れさせてあげる・・・」
「・・・・・・」
「その代わり、その効き目は今日一晩だけだから、あとはやぐっちゃん自身が努力するんだよ・・・?」
「・・・・・・」
矢口は紗耶香の顔を見上げて無言で頷いた。
- 364 名前:Oー150 投稿日:2001年04月13日(金)11時20分45秒
頷いてから、長い間が訪れる。
そして暫くして紗耶香が意を決したらしく、ゆっくり矢口の上に覆い被さった。
紗耶香が真っ直ぐな瞳で矢口を見つめる。
自然と心臓が速くなり、瞼も重くなった。
ゆっくりと顔が近づき、矢口も目を閉じ、それを受け入れる体制に入った。
ふいに、柔らかい感触が唇を包んだ。
心臓が跳ね、体が硬直する。
その硬くなった体をほぐすかのように、紗耶香が唇の角度を変えながら優しく頬に触れる。
口内に溶け込むように触れ合うそれは、ぼーっとしてる頭を更に麻痺させる。
けど決してそのスピードは速まる事はなく、激しさを増す事もない。
とてもゆっくりと、優しく包み込むように舌を絡め、髪の間に指を滑らせる。
もの凄く速まる心臓をよそに、頭はクラクラして思考が鈍る。
瞼がとても重く目が潤み、顔を離した紗耶香をトロンとした目で見つめた。
それを確認した紗耶香は、再び顔を近付け、頬にキスを落とし、そのまま首筋へと下がっていく。
自然と仰け反る首筋を何度となく唇で包み込む。
次第に体中の力が抜け落ちていく。
そして着ているTシャツの上から優しく手をあてがい、さするように胸に触れる。
感じると言うより、安堵感を覚えた。
もっと触れて欲しい、全身を包み込んで欲しいと体が渇望する。
それに応えるようにゆっくりとTシャツを上げられたので、体を少し起こす。
寝る時なので勿論下着は付けてない。
それが合図のように、自然と二人の間を隔てている物を邪魔に感じ、紗耶香のジャージのチャックを下げた。
お互いに焦る事無く隔ててる物を取って行く。
そして、全てを取り去りったところで、ゆっくりと体を重ねられた。
「っ!!・・・・・」
- 365 名前:Oー150 投稿日:2001年04月13日(金)11時21分51秒
気が遠くなるような気持ちよい感触が全身を包み、暫くそのままぎゅっと包み込まれる。
ずっとこのまま、思考を閉ざして、こうして遠ざかる意識に身をゆだね、抱きしめられていれたらどんなに幸せだろうと、一瞬思った。
紗耶香は矢口の傷を癒すように時間をかけて優しく全身に触れ、優しく全身にキスしをして、全身で慰めてくれた。
下手な慰め文句とか、ありきたりの言葉で慰められるより、何百倍も癒された。
そしてその後、、
“全部忘れさせてあげる”
その言葉通り、矢口の望みどおり、思考なんて跡形も無く吹き飛ぶほど、快楽の波に溺れさせてメチャメチャにしてくれた。
「んっ・・はぁっっ・・っ!!ぁっあっ・・紗耶香っ!・・」
矢口を壊して、自分も壊れてくれた。
気付くと無意識に紗耶香の名前を呼んでいて、、
こういう愛の形もあるんだっていう事を始めて知った。
説明は上手く出来ないけど、でもきっとそれは単純で、
単純に大切な人を愛おしく想い、想われる。彼に抱いた感情とは全然ちがったけど、もっと確かなものだった。
愛し方が間違ってるとかどうとか、そんな事はもうどうでも良くて、自分を愛してくれる人がいるんだっていう実感から、自分の存在を確認する。
一人じゃないんだっていう喜びに震え、認識し、それを素直に表現する。
そこに意味なんてなくて、行為に説明なんていらない。
- 366 名前:Oー150 投稿日:2001年04月13日(金)11時25分41秒
恐らく矢口は、好きだった彼に騙された事に傷ついたんじゃなくて、それに気付かず浮かれていた自分に惨めさを感じ、自分を嫌いになっていたんだ。
そして自分を好きなってくれる人なんていないんじゃないかと、とてつもない虚無と不安で潰されそうになっていた。
もしかしたら、それを確認したかったのかもしれない。紗耶香は自分の事をどれだけ好きでいてくれてるのか。本当に好きなんだろうか、と。
それを察してくれたかどうかは分かんなかったけど、とにかく紗耶香は、夜が明けるまで何度も何度も愛してくれた。
でも、この時の矢口はまだ気付いていなかった。
紗耶香と交わした約束に込められた意味。
一晩中癒し、愛してくれたその行為の裏には、暗黙の了解と言えるルールがあったという事。
それは、ずっと親友でい続ける為の揺ぎ無いルール。
―――決して、本気になってはいけない。
ばれんたいん
- 367 名前:Oー150 投稿日:2001年04月13日(金)11時33分05秒
- ( ´ Д `)<・・・・・・・いちーちゃんごとぉも慰めてよ・・
・・・なんか今回は色々とチャレンジャーだな俺・・・
というかいちごま小説なのに・・・・・(凹
えと、やっと物語始まったって感じすね。おそっ・・・・あぁ全然進まない・・
- 368 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月13日(金)16時42分33秒
- ほんとO-150さん最高です!!
「先輩背筋100回終わりました」に大爆笑です。
風邪治して頑張って下さい。
- 369 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月13日(金)18時29分04秒
- なんか、とってもせつない・・・・・
- 370 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月13日(金)22時02分30秒
- っていうか、市井……
うらやましすぎ(ボソッ
- 371 名前:ぷち 投稿日:2001年04月13日(金)22時13分46秒
- 370サンに激しく同感(w
- 372 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月14日(土)03時34分32秒
- 俺も全部忘れさせて欲し〜い!!(w
- 373 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月15日(日)01時37分57秒
- 市井の技術はどこの誰で磨かれたんだ……
( ´ Д `)<・・・・・・いちぃーちゃん
- 374 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月16日(月)01時20分37秒
- 久々に「天才」の方を読み返してみた・・・・。
ばれんたいんの矢口偏の時には後藤はもう市井と出会っていたのか?
とても気になる。
- 375 名前:Oー150 投稿日:2001年04月16日(月)03時50分12秒
- んん・・やっぱエロ入れるのって色々と怖いな・・・・でもばれんたいんの設定上避けて通れぬ道だと思ってチャレンジしてみたんだけども・・
なんか色々ショッテしまうものが・・
とにかく書いたからには頑張らなきゃ。。
>>368
ありがとうございます!風邪は完治しました。
ちょっと休んでたのでガンガン行こうと思います。
>>369
せつないのは避けられないとこなんで・・・その中にも萌えとか笑いとかをなんとか入れて凹みっぱなしにしないようにやってきたいと・・オモテマス。
何故慣れてるかとかは、、んんん・・・(ニガワラ
>>370
知ヲタ捕獲・・(w
>>371
もう一人捕獲・・・(w
やっぱそういう風に思っちゃうのかなぁ・・・
>>372
で・・市井ヲタ捕獲・・・(w
>>373
(〜^◇^〜)<ホントだよさやりん・・・
>>374
えっとじゃあここでまた時系列おさらいを、、。
なんか市井の過去がゴチャゴチャしてしまってますが、全員と絡めるっていう設定上、止むを得ないって事でご了承下さい。。
- 376 名前:Oー150 投稿日:2001年04月16日(月)04時42分19秒
- 時系列おさらいしててミス発見した・・・ちょっとこれは・・・修正せざるをえない・・な・・・。
んと、飯田編で、飯田が虐めにあってた期間、、、
・・・伸ばしていい・・?
っていうか何を勘違いしたか、転入してきてからたった一ヶ月で市井誰かと付き合ってる・・・
それは速すぎだ・・・
飯田は市井が転入してきて一ヶ月後に市井に話し掛けに体育館に行ってますが、その一ヶ月ってとこ秋って書き換えてください(出来ないけど)。ストーリー的には別に違和感ないと思うんで。。
つまり、、、5・6ヶ月伸びます。
飯田の虐められ期間それだけ延びちゃうけど・・(飯田スマン・・)その予定で書いたつもりなのに一ヶ月ってなってる・・(鬱)
で、ここでホントに市井時系列いきます。
- 377 名前:Oー150 投稿日:2001年04月16日(月)05時21分59秒
- ≪市井時系列おさらい≫
【小4】矢口と出会う(東京)→→→→【小6】矢口と別れ(北海道へ)
→→【高1春】千葉に引越し、東京で矢口と再会→→→→【高1夏】矢口とbedin
→→【高2春4月】市井昭栄学園転入、飯田と出会う
→→【高2秋】飯田と親しくなる・試合で惨めな惨敗もこの時期(以降氷の女と化す)・そしてこの時期謎の彼女在り
→→【高3春】後藤、石川と出会う→→→→【高3秋】後藤と成就(氷の女氷解)
→→【高3卒業間近】バレンタインデーにいっせい告白襲撃。この時後藤とデキてる事を知っているのは石川のみ(?)
今のところ明かしてる情報ではこんな感じです。
こうして見ると分かると思いますが、高2の秋がこれからのちょっとしたポイントっすね。
これからこの軌跡にもっともっとゴッチャゴチャ入り組んできます。
分かってる事だから言っちゃいますが、あとは保田と安倍っすね。(なかざーつじかごは余裕があったら)
市井をタラシキャラにはしたくないんで、これらも絡ませねばならないとなると後は僕の筆力の問題すね・・・。
いちごま小説なのにごま以外とやたら絡んでるし、結局ごまは数ある女のうちの一人かい・・って人いるかもしれませんが・・
設定上こう・・全員と絡めるとなるとただモテるだけじゃ薄いんで・・・。
とにかく最後まで見捨てずに読んで欲しいっす・・・僕を信じて・・。
で、更新はまだですすんません。
ちょっと矢口の心理展開を進める前に今までのとこ整理しといた方がいいかなと思いまして、、。
矢口もまだどうなるかわかんないっす。僕自身迷ってるし(w
あと、僕の小説では「こうだったらいいなぁ」とか「もしかしてこうなのかな?」とか思ったら言っていいですよ。
それでストーリー詰まらせたりは無い自信あります(ヤラシッ)
保田と安倍に関しては予測できる事載せてないんで、(伏線は張ってるけど)僕がドキッとするような事はないと思うんで。
ダラダラ喋りましたけど、もうこんな喋りません(閉口)
- 378 名前:Oー150 投稿日:2001年04月16日(月)05時26分43秒
- ホント長い・・
ちょい補足。予測できる事載せてないとか言ってるけど、
高2の彼女は矢口保田安倍のどれかなのは確実ですよね。
とにかく僕も言ってる事滅茶苦茶って事で信じないで下さい(w
- 379 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月16日(月)06時46分35秒
- わかりやすいっすね。
- 380 名前:ぷち 投稿日:2001年04月16日(月)19時41分03秒
- なるほど・・・
じゃあ、今のところ矢口が一番最初か・・・・出逢ったの。
とりあえず矢口頑張れぇ〜
- 381 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月17日(火)03時32分48秒
- これで、時系列はバッチリです♪
- 382 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月17日(火)06時18分19秒
- 高2の彼女誰だろう・・・
- 383 名前:Oー150 投稿日:2001年04月17日(火)19時21分29秒
- ばれんたいん
―――――
―――――
「・・・んっ・・・・・・・」
午後の昼下がり。開いた窓からふっと流れ込んできた涼しい風にによって、とてつもない倦怠感と凄い汗に全身を包まれながら目が覚めた。
「・・・・?」
頭が極度にぼーっとしてて状況がつかめない。
体をゆっくりと起こした瞬間、
「いっ・・・つ・・・・」
腰に痛みを覚え、ようやく頭が働き出した。
(あっ・・)
何も着ていない事に気付き、完全に脳が起きた。そして、
(!?紗耶香は!?)
ばっと隣を見たが、ついさっきまでいた温もりと形跡だけを残して布団にはいなかった。
荷物は置いてあるので、帰ってはいないようだ。
(・・っていうか・・・・・・わっちゃぁ〜・・・・・)
昨日の事が突然記憶に流れ込んでくる。
(昨日の矢口・・・相当おかしかったな・・・・どうしよ・・・・)
あの後もし紗耶香が来てくれなくて、慰めてくれなかったらどうなっててか自分でも分からない。
だから行為自体に後悔はなかったけど、かなり動揺していた。
再びバフッと枕に顔を埋め、しばし考える。
(どやって顔合わそう・・・・・・恥かしくてまともに・・・・)
「・・あ゛〜・・・・」
昨日の自分とのギャップにどうしていいか分かんなくなる。
ふと、紗耶香の言葉を思い出した。
“・・じゃあ、一つだけ約束して・・?”
“そんな男の事、もう全部忘れるって。忘れれなかったとしても、忘れる努力して、いつものやぐっちゃんに戻るって・・”
“あともう一つ・・・
今日市井とのこの事も・・全部忘れるって・・・・”
(・・・・彼氏の事はおかげで忘れれそうだけども・・・・)
(えぇ〜・・・・昨日の事忘れるって・・・・・)
「・・無理だよぉ・・・・」
- 384 名前:Oー150 投稿日:2001年04月17日(火)19時23分04秒
(あぁぁぁどうしよ・・・・・・まぁ矢口が悪いんだけど・・・・)
(自分で泣いてせがんだんだもね〜・・・・・)
(いやでも・・どんな顔して合ったらいいか分かんないよ・・・)
(だってまだ・・・昨日の・・・温もりが・・・・)
思い出すとボッと顔から火が出そうになる。
とにかく考えてても紗耶香と顔を合わす事は避けれないのでベッドから出て服を着た。
(おはよ!って普通に言えればその後もなんとか普通に・・出来るかな・・・・)
(っていうかそういや紗耶香何処で何してるんだ??トイレにしちゃ長くない??)
(あ、家族もう誰もいない時間だから居間にでもいるのかな?)
(って事はやっぱ紗耶香も矢口とどんな顔してあったらいいか分かんなくて困ってるのかな・・・・)
(・・やっぱり後悔してる・・・・・?)
(するよねそりゃ・・・・あぁぁ悪い事しちゃったなぁ・・・・・)
(・・・今更ごめんとかは言えないから・・・せめて矢口が、わだかまり作らないように努力しなきゃダメだよね・・・)
(よっし・・・ガンバロ・・・・)
「ふぅ〜〜・・・」
大きく深呼吸して部屋から出て下に降りていった。
階段を降りてすぐ右にリビングのドアがある。
ためらわずに勢いよくドアを開けた。
- 385 名前:Oー150 投稿日:2001年04月17日(火)19時25分12秒
ガチャッ
「お、お、おはよ!」
(ヤバッ!思いっきり声上ずったうえにどもっちゃった!!)
紗耶香はリビングのソファーにあぐらをかきながら座って、テレビを見ていた。
矢口が動揺してんのバレバレの挨拶をすると、、
「あっやぐっちゃんおはよっ」
(?あ、あれ??)
ニコッといつもと変わらぬ笑顔を見せ、ソファーの前のテーブルに置いてある駄菓子に手を伸ばしながら再び口を開く。
「ゴメンやぐっちゃん。家の人誰もいないみたいだから勝手に風呂使っちった」
ボリボリと音を立てながらテヘッて笑う。
昨日の事なんてまるで何も無かったかのように。
「あっいやっそんなの全然構わないよ!」
けども矢口は心臓ドキドキしっぱなしで更に緊張を増していた。
昨日夜入ったばっかなのにまたシャワー、、、昨日の事を連想せざるをえない。
でも紗耶香はやっぱ全然普通だった。
「あのさ、朝食、、っつーかもう昼食だけど、市井なんか作っていい?お腹空いて空いてさっきからグーグーこいつ泣いちゃって(笑)慰めにお菓子食べてるんだけどやっぱ足んないみたい」
「えっうんうん全然いいよ。適当に冷蔵庫あさってなんでも作ってっ・・」
「ホント?んじゃあホントに漁るからね(笑)やぐっちゃん市井がなんか作ってる間にシャワー浴びてきていいよ」
「あ・・じゃじゃあお言葉に甘えて・・・」
「うん。よっしじゃあなんか作ろっと」
そう言って紗耶香は立ち上がった。
矢口は、紗耶香の様子があまりにもいつもと変わらない事に、思考が錯乱状態だった。
なんとなく足が動かない。
昨日の紗耶香と今日の紗耶香。昨日のあれは夢だったのだろうか。
そう一瞬思ってしまう。
無意識のうちにじーっと紗耶香の様子を昨日とシンクロさせながら見ていた。
「ん?どうした?」
平常の顔をして疑問符を浮かべる紗耶香。
一瞬にして我に返る。思わず赤面してしまい、
「あっいやなんでもない!」
そう言ってダッと風呂場に走っていった。
- 386 名前:Oー150 投稿日:2001年04月17日(火)19時26分04秒
―――――
シャワーを浴び、ようやく落ち着きを取り戻してきた。
そして暫く考えてるうちに、ようやく紗耶香のあの謎の言動の意味が理解出来た。
“市井とのこの事も全部忘れる”
(ってこういう事か・・・・)
実際忘れれるわけはない。
つまり、
―――何も無かった事として振舞おう。
その意味が分かった途端、何かが胸のあたりをきゅっと締め付けた。
それが何なのか、その時は分からなかった。
けども、約束は約束だ。
紗耶香はその約束をきちんと守ろうとしてる。いや、既に守ってくれてる。
わがままを言い出したのは自分。
わがままを聞いてくれたのは紗耶香。
ならば約束を絶対に守らなくてはならないのは矢口の方だ。
そう思ったから、、
「あ゛〜〜〜気持ちよかったっ。紗耶香ご飯作れた〜?」
「作れたってなんだよ!出来た?でしょ」
「ははっゴメンゴメン。出来た?」
「出来たよ。トーストに目玉焼きだけど」
「なんだよぉそんなの矢口でも出来るよぉ!もっと凄いの期待してたのにぃ!」
「凄いのったってやぐっちゃんち市井の腕がなるような食材が無いんだもん」
「何言ってんの!矢口んちは食材の宝庫だよ!!」
演技かもしれないけど、とにかく必死に普通に振舞った。
食事しながらもいつも通り下らないおしゃべりとかしまくった。
そのうちに意識しないで全然自然に出来るようになって、いつもと変わらぬ空気に溶け込んでた。
「そういや今日学校だったよね」
「そういやそうだね。そんなものもあったね」
「ん〜〜〜〜いや気のせいでしょ!」
「う〜〜んうん。絶対気のせいだと思う」
「、、気のせいだけど紗耶香親っぽい字で欠席届書いて(笑)」
「気のせいだけどやぐっちゃん市井のも頼む(笑)」
- 387 名前:Oー150 投稿日:2001年04月17日(火)19時33分29秒
それからも、二人は普通に合ったり電話したりメールしたりした。
彼氏の事は、やっぱりそんな簡単に忘れれるような事ではないけども、“忘れれなかったとしても、忘れる努力して、いつものやぐっちゃんに戻る”という約束を守るべく、カラ元気を続けていた。
そうしてるうちに、本当に元気も出てきて、2週間もすれば元の矢口に戻っていた。
あの日、あの夜、傷ついてボロボロだった矢口を癒してくれた紗耶香。
その後も、毎日のように電話くれたりメールくれたりして、励ましの言葉を言ってくれたわけじゃないんだけど、いつもと変わらぬ、普通の会話をしてくれた。
アフターケアまで付けてくれちゃって・・ホント至れり尽せりだよ・・・。
次こそは矢口がお助けマンになるって誓ったのに、また紗耶香にお助けマンされちった・・。
二度あることは三度あるって言うけど、ホントだな・・。
- 388 名前:Oー150 投稿日:2001年04月17日(火)19時38分57秒
けど、紗耶香は知ってるのかな。
昔から、変わる事のない決まり事。
正義の味方に助けられた女の子は、必ずと言っていい程、そのヒーローに・・・恋・・しちゃうんだよ・・・?
でも矢口は例外だったんだ。
大抵は、いつも側にいる仲のいい男の子が、実はいざという時に助けてくれてるヒーローだったりする。けども女の子はその事を知らない。
じゃあもし、知っていたとしたら?
きっとその子は、気付かない振りをすると思う。
だって大抵正義の味方っていうのは、正体がバレたら、自分の星に帰っちゃうか、組織の秘密がどうこうで上の人に消されちゃうかのどっちかだもん。
そんなの、ヒーロー物の常識だ。
多分矢口は、物語の中の女の子になりきっていたんだ。
理由は、その時は分からなかった。
ただ、本能が何かを感じ、そうさせた。
やたらリアルなヒーロー物。そのお話の世界に、迷い込んでしまった矢口。
その矢口は、何故かこう思いこむようにしてた。
お助けマン紗耶香と、親友紗耶香、
二人は別の人間なんだと。
ばれんたいん
- 389 名前:Oー150 投稿日:2001年04月17日(火)19時43分06秒
- ( ´ Д `)<いち−ちゃんは空も飛べるの?
更新少ないけど、
ちょっと先を考えて一旦区切ります。
ガンバロ。
- 390 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月17日(火)20時54分20秒
- やっぱりせつない……。
- 391 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月17日(火)22時53分46秒
- ・・・そばにいてくれる人を好きになる気持ちはよ〜〜くわかります。
せつないねぇ・・・
- 392 名前:Oー150 投稿日:2001年04月18日(水)00時33分03秒
- >>390
切ないっすね・・自分でもそう思う・・・・
>>340
切ないっすね・・・マジで・・・
>>341
切な・・・・あ・・・いなかった・・・・
- 393 名前:Oー150 投稿日:2001年04月18日(水)00時35分59秒
- あ・・・ちゅーか俺ヤバイ・・・
誰にレスしてんねん!!
と、一応突っ込んだところで間違えを晒したまま先進みます。
ボケまで間違ってる・・・ハズカシッ(赤面
- 394 名前:Oー150 投稿日:2001年04月18日(水)00時37分52秒
- ばれんたいん
―――――
―――――
それからも矢口は、親友紗耶香と今までと変わらぬ日々を過ごしていた。
会う回数も増えたと思う。
より一層仲が深まったっていうか、、まぁあたりまえだけど。
でも、深まったのはあくまで友情。
でも、、矢口の中の物語は気付かぬうちに動き出してたんだ。
それは、ほんとに些細な事がきっかけだった。
―――――
―――
―
その日は土曜で学校は休みだった。矢口は紗耶香とショッピングを楽しんでた。
で、こっちに来たついでって事で、その後紗耶香が久しぶりに矢口の家にきた。
「ごめんちょい散らかってる」
「いや別にいいよそんなの」
急いでバタバタと散らかってる物を片付けた。
「今お菓子と飲み物持ってくるから待っててね」
「うん」
下に駆け下りていって、コポコポとポットのお湯を湯飲みに注ぐ。
年より臭いけど紗耶香は好きって言ってくれてるから、とりあえず和菓子にお茶を用意した。
お盆に乗せて、慎重に歩いて部屋へと向かった。
その途中で、ふと思った。
- 395 名前:Oー150 投稿日:2001年04月18日(水)00時40分02秒
―――そう言えば紗耶香が家に来たのって、、、あの日以来だ・・・
(・・・・考えない考えない)
ブンブンと首を振って、気を取り直して部屋の扉を開けた。
ガチャッ
「お待たせ。、、ってまたすぐゲームやってる!!」
「ん?だって市井このソフト持ってないんだもん」
「そんなの貸したげるよ!」
「マジすか!?やったぁ!!」
「・・・そんなにやりたかったんだ・・。じゃあいいよ1時間だけやっても」
「ホント!?も〜やぐっちゃんサイコー!愛してるよ!」
「へ・・・?」
「ん??」
「あっいやっい一時間だけだぞ!!それ以上やったらオイラ本気で怒るからね!!」
「分かった分かった♪」
何故か、紗耶香がふざけて発した一言に、心臓が速まった。
(・・・どうしたんだろ矢口・・・)
- 396 名前:Oー150 投稿日:2001年04月18日(水)00時41分41秒
―――――
それから、矢口は、紗耶香がゲームしてる間、矢口は隣で漫画読んだり雑誌読んだりしてた。
ところが、まだ一時間後にセットしたタイマーが鳴らないうちに、、、
「・・・やぐっちゃん・・レベル上げつまんなくてやってるうちになんか眠くなってきた・・」
「へ?つまんないならやるなよ!!」
「いやこの試練を超えないと次のダンジョン進めないんだよね・・・けどもう限界・・・ふぁぁぁぁっ・・・っく・・ごめんちょっと・・・・・・」
あくびしながらそう言ったかと思うと、紗耶香はそのままゴロンと横になった。
「ってえぇぇ!?ちょっと紗耶香寝ないでよ!?紗耶香!!」
ユサユサと体を揺らしたけど、もうホントダメみたいで、無反応だった。
「・・もぉぉ・・しょうがないなぁ・・・・」
コントローラーを手放してじゅうたんの床に寝てしまった紗耶香に、タオルケットを被せた。
「くっそぉオイラ暇じゃんか・・・・」
膝を抱えてスースー寝ている紗耶香をぼーっと見ていた。
(・・・紗耶香ってまつげ長いな〜・・・)
なんて思いながら。
考えてみれば、紗耶香は眠くて当然だ。
今日あんまり寝てないって言ってた。多分、出かける前にバスケしてきたんだろう。
紗耶香は時間を無理矢理作っては、バスケをしている。
どうしてそこまで頑張るのかよくわかんないけど、彼女いわく、好きだから、、らしい。
矢口もバイトしてるけど、レジ打ちだし、そんな体力使うものでもない。
でもきっと紗耶香は連日バスケで体も疲れてるだろう。
もしかしたら本当は土日くらいゆっくり休みたいんじゃないかな・・大丈夫かな・・。
っていうか、どうしてそこまでして矢口と遊んでくれるの・・?
紗耶香に遊ぼうって言って断られた事がない。
(自分の事で忙しくて、本当はそれどころじゃないはずなのに・・・なんでかな・・・。)
矢口と遊ぶの楽しいから?
親友だから?大事な友達だから放って置けない?
それとも・・・・
“やぐっちゃんサイコー!愛してるよ!!”
―――そんな事を思っちゃったのがマズかった
- 397 名前:Oー150 投稿日:2001年04月18日(水)00時43分15秒
気付くと、矢口は・・・・
≪ドッキドッキドッキドッキ≫
(ダメ。ダメだよ矢口・・・何考えてるんだ・・・?)
体が言う事を聞かない。
(違う、違うよ。ここにいるのは、お助けマン紗耶香じゃない・・・)
思いに反して、体がゆっくりと紗耶香に近づく。
(ここにいるのは・・・・・、、、)
寝息を立てている紗耶香の唇に、徐々に吸い込まれていく。
10センチ、9センチ、8、7、6・・・
(ここにいるのは・・・親友紗耶、、、)
「んっ・・・」
「!?」
突然紗耶香が寝返りを打った。
(あ・・あっぶな!!!!)
≪バックバックバックバック≫
我に返ってバッと顔を離した。
心臓がバクバクと音を立てる。
ささっとその場を離れて、ベッドの上に座った。
カァーっと顔が熱くなる。
(なっ何やってんだろ・・・・危なくキスするとこだった・・・)
(オイラどうしちゃったんだぁ・・・・?)
クッションを抱きしめて顔を埋める。
この状況とさっきの紗耶香のあの言葉が、矢口の中で、フラフラとお助けマン紗耶香と親友紗耶香をシンクロさせそうになっていた。
ブンブンと何度も顔を振り、立ち上がってトタトタと下に降り、洗面所で顔を洗った。
鏡を見て、映った自分に言い聞かせる。
(しっかりしろ矢口・・・・・紗耶香は親友だよ・・・)
(お助けマン紗耶香はもういないんだよ・・・?)
顔を二三度ペチペチとはたいて、部屋に戻った。
相変わらず寝息を立てている紗耶香を横目に、無心になろうとヘッドフォンつけて音楽聴いていたら、そのうち矢口も睡魔に襲われていった。
- 398 名前:Oー150 投稿日:2001年04月18日(水)00時44分30秒
―――――
――――
――
―
「やぐっちゃん。やぐっちゃんてば!」
「・・・んっ・・・」
「起きた?」
「・・・あ〜さやりんだぁ・・」
「全くこんな寒いカッコして寝てたら風邪ひくよ?」
「ん〜〜じゃああっためて・・?」
「はぁ?、、しょうがないなぁ」
「・・・ふぅ・・・やっぱさやりんあったか〜い・・・」
「そう?」
「うんっさやりんだいしゅきぃぃぃ!!」
「市井も好きだよっ」
「じゃ〜〜チューしよっ?」
「いいよっ」
「さ〜〜やりんっ・・」
「やぐっちゃんっ・・」
―――――――
―――――
―――
―
「―――・・ちゃん。・・・ぐっちゃんってば。お〜いやぐちぃ起きろぉ」
- 399 名前:Oー150 投稿日:2001年04月18日(水)00時46分12秒
「んっ・・・・」
「起きた?」
「んん・・・・?」
「っつーかこんな大音量でヘッドフォンしてよく寝れるね(笑)」
体を起こしてゴシゴシと目を擦る。
ようやく視界が開けてきた矢口は、、
「わっ!!」
目の前の紗耶香のアップに驚いて体が倒れた。
「??なんでそんな驚くの?」
(はぁ・・・なんだ夢かぁ・・・・・・・・)
「いや・・ちょっとビックリした・・・」
(っていうか・・・なんちゅー夢見てるんだオイラ・・・・)
(あれは願望なのかな・・・・・やぁばいよ・・・・)
「なんかすっかり夜になっちったね。市井そろそろ帰るわ」
「え!?ちょっっちょっと待って久しぶりに矢口んち来たのに紗耶香ゲームやって寝てただけじゃん!!まだ終電まで時間もあるしそのっ・・」
「ん?じゃあやぐっちゃんは何がしたいの?」
(あ、あれ?なんか前に同じような・・・・)
- 400 名前:Oー150 投稿日:2001年04月18日(水)00時48分00秒
“ちょっと待ってよ!久しぶりに遊んだのに紗耶香ゲームやってただけじゃんかぁ!!オイラただいただけじゃん!!”
“ん?じゃあやぐっちゃんは何がしたかったの?”
―――何がしたい?
前はなんて答えたっけ・・・確か、、、
“・・ん〜・・・・話・・・”
―――何がしたい?
今の・・・矢口は・・・何がしたい・・・?
チラッと紗耶香の顔を見る。
「ん?」
バッと目を反らしてしまった。
(ダメだ・・・何考えてるんだホント・・・・最低だよ・・・)
多分もう、矢口の願望と言うか欲望と言うか・・・それは止まらなくなってた。
紗耶香にもっといてほしいって思ったのも、純粋に一緒にいたいって思ったんじゃなくて、矢口の下心なんだろうか・・。
そう思ったら・・・
- 401 名前:Oー150 投稿日:2001年04月18日(水)00時48分55秒
「・・・やっぱ帰って」
「へ?」
「帰って!」
「・・どうしたの?」
「なんでもないよ!ゲームしてた紗耶香が悪い!」
「つーかなんでいきなり怒ってんの?」
「いいから帰ってよ!!!」
「・・・・・」
バフッとクッションを投げつけて、矢口は下を向いた。
「・・・分かった帰るね」
「・・・・・」
紗耶香はそう一言言って、荷物を持って部屋から出て行った。
ガチャッ、、
バタン・・。
バイバイも言わないで・・・。
「ヒック・・・ンック・・・・」
矢口はすすり泣きながら、力なく閉まったそのドアをずっと見つめていた。
- 402 名前:Oー150 投稿日:2001年04月18日(水)00時50分13秒
矢口には分かるんだ。
きっと、物語の女の子は、二人が同一人物であることに気付いたら、こう言うよ。
“私が失うのが怖いのは、正義のヒーローの彼じゃなくて、、
いつも側にいてくれている、彼・・・”
ばれんたいん
- 403 名前:Oー150 投稿日:2001年04月18日(水)00時52分10秒
- ( ´ Д `)<・・ヒック・・・ンッ・・ヒック・・ングッ・・・
やぁばい俺まで切なくて鬱なんだけどどうしよ・・・・・
ガンバロ・・・
- 404 名前:Oー150 投稿日:2001年04月18日(水)02時11分35秒
- ばれんたいん
―――――
―――――
それから矢口が取った行動は、ホント最低最悪だった。
携帯の電源切って、家電に掛かってきても居留守使った。
酷い事だっていうのは分かってる。
でも、どうしていいか分かんなかった・・。
そして矢口の大事な大事な携帯は、引出しの奥に無理矢理閉じ込められたまま、月日は流れていった。
もう、このまま紗耶香とは会う事ないんだろうか。
こんな最低な別れ方をしたまま、ずっと・・・。
本当は、会いたい気持ちで張り裂けそうだった。
会いたくて、会いたくて、、、でも、会う訳にはいかなくて・・・
そんな気持ちを何ヶ月間も毎日引きずっていた。
そして、矢口は進級して2年生になった、そんなある日の事だった。
あれは矢口の強い思いが呼び起こした奇跡だったのかな・・。
「ねぇねぇ真里〜B組に転入してきた人知ってる?」
「え?知らないけど」
「すっごいカッコイイよ」
「カッコイイったって所詮女でしょ?知れてるよ」
「まぁまぁそう言わずに見るだけ見てみなってば」
「え゛ぇいいよぉ」
「だって真里去年の暮れからなんかずっとテンション低いじゃん。やっぱ恋でもしてこうぱ〜っと人生楽しまなきゃさっ」
「恋ぃぃ・・?ありえないからいいってば・・」
「だ〜めっほらとにかくいこっ?」
「あ〜〜こらっ離せぇぇぇ!!」
無理矢理友達に引きずられて、矢口はその転入生とやらの元へ連れて行かれた。
「もぉぉ!!離せって言ってるじゃんかぁぁ!!!」
「い〜〜からほらっ見るだけみなって!あっラッキー珍しく教室にいるみたい」
「へ?いつもいないの?」
「うんなんかどっかに消えるらしいよ。色々と謎が多い人らしい」
「そんな奴余計にどうでも、、!」
「??真里??真里〜〜?どうしたの?固まっちゃって。あっ稲妻に打たれた??(笑)」
「さ・・・・やか・・・・」
ばれんたいん
- 405 名前:Oー150 投稿日:2001年04月18日(水)02時13分20秒
- ( ´ Д `)<やっぱり来たねぇ
やっぱここまで載せとこ。
- 406 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月18日(水)03時21分47秒
- 読んでる最中は市井×矢口に夢中になるんだけど
小説の最後、( ´ Д `)←この顔見る度にやっぱ後藤が一番だと思い直します(w
- 407 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月18日(水)03時41分56秒
- 矢口にとって失うのが恐いのは、お助けマン紗耶香ではなくて、親友紗耶香・・・
矢口〜、せつないなあ〜
しかし、奇跡の再会!!続きが楽しみです。
- 408 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月18日(水)05時57分40秒
- せつな……。
- 409 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月18日(水)07時55分11秒
- 失うのが怖いのは正義のヒーローの彼じゃなく、いつもそばにいてくれている彼
↑
胸にきた!同じ感想で申し訳ないですが切ない。
暗黙の了解っていうのがいじらしくて溜息が出ちゃう。
とにかく続き期待してます。
- 410 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月18日(水)17時25分49秒
- さやまりはセツナ系・・・
- 411 名前:ぷち 投稿日:2001年04月18日(水)17時45分49秒
- 3度目の奇跡は訪れるのか!?(w
切ないなぁ・・・マジで。
- 412 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月18日(水)21時25分22秒
- さやまり最高…ってこれはいちごま小説でしたっけ。
いちごまなのが、残念なくらいステキなさやまりです。
これからも、頑張ってください。
そして、市井の謎の彼女はやっぱり矢口なのかなー。
なっちかも…とも思うけど。北海道に行ってたし。
- 413 名前:Oー150 投稿日:2001年04月19日(木)03時39分23秒
- 予定は未定ってホントっすね・・・
・・まぁいいや・・・。
>>406
( ´ Д `)<ありがとぉ。でもごとぉはねぇ〜いちーちゃんが一番だと思う・・(テレテレ
>>407
切ないっすよね・・なんでこんなに切なくしてるんだか自分でも・・よく・・
はい続き逝きまっす。
>>>408
ですね・・・どうしようマジ・・・
( ^▽^)<やっぱりポジティブにいかないと!
>>409
あ、ありがとうございます。。
良く分かんないけど矢口って僕の中でヒーロー物のイメージがあるんす。
良く分かんないんだけどホント・・。
>>410
かもしれないっすねぇ。甘いのはいちごまって感じだし、、。
>>411
奇跡は、、・・・
(〜^◇^〜)<続き見てちょんまげ
>>412
ありがとうございます。
えと、一応いちごま小説ですけど、ばれんたいんは、その話話で完全にカップリングはその登場人物のものです。
つまり、今は完全にさやまり小説です(?)
謎の彼女、さやまりなのかいちなちなのかK1なのか、、それぞれの画像探そっかな。
- 414 名前:Oー150 投稿日:2001年04月19日(木)03時41分25秒
- ばれんたいん
「さ・・・・やか・・・・」
「え?知り合い??」
「なんで・・なんでいるの・・・・?」
頭が真っ白になった。
どうして紗耶香がここにいるの・・?
その疑問ばかりグルグルと反復して、ドアのところで立ち尽くしていた。
すると、ぼ〜っと頬杖をついて窓の外を見ている紗耶香が、ふいに視線を横にずらし、、
「・・・・やぐ・・っちゃん・・・・・」
言葉を詰まらせた紗耶香と視線がぶつかる。
そして、ガタンと立ち上がり、ゆっくりと矢口の元に近づいて来た。
会いたくて会いたくてしょうがなかった人が、今目の前にいる。
矢口に向かって歩いてきてる。
なのに、言葉が見つからなくて、ただ動けなくなっていた。
そして、紗耶香が目の前まで来て、立ち止まった。
「・・・久しぶりだね・・・」
「・・・・・・」
「なっなんか私邪魔みたいだね。よくわかんないけど・・真里の友達だったんだ。・・今度紹介してよねっ。じゃあ私先戻ってるっ」
友達のその言葉も全く耳に入ってなかった。
なんて言っていいか分かんなかった。
あの時と同じだ。何にも成長してない・・。
会いたくて仕方なかった。けどそれよりも言うべき言葉がある。
ごめんねって・・・・。
でも、言えない。
そんな一言じゃ済まされない気がして・・。
自分のした事が、あまりに最低すぎて、すぐに言葉にならなかった・・。
- 415 名前:Oー150 投稿日:2001年04月19日(木)03時42分48秒
紗耶香は、ここじゃあれだからって言って、無言の矢口の手を引いてホールの隅の所に連れて行った。
手のぬくもりが凄く懐かしくて、何故だか涙が出そうになる。
人気の少ないところについた紗耶香が、壁に寄りかかっておもむろに口を開いた。
「また、親の仕事の都合で移ったんだ。多分もう、これが最後。市井がおっきくなったから、これからは家族みんなそれぞれ自分のやりたいようにやってくって事になったから」
「・・・・・」
「やぐっちゃん・・この辺の学校だろうなとは思ってたけど・・まさか同じだとは思わなかった・・。凄い驚いたよ・・」
「・・・・・」
(矢口だって・・・驚いたよ・・・・)
「・・・あのさ、なんか・・・訳わかんないままやぐっちゃんと連絡途絶えちゃって・・・」
「・・・・・」
(途絶えさせたのは矢口だよ・・?一方的に・・)
「・・・市井なんかやぐっちゃん傷つけるような事したなら、謝るよ・・・」
「え・・・?」
「・・ごめんね・・?」
「違う・・・違うよ!!紗耶香は何も悪くないよ!!」
「・・だって・・・」
「謝らなきゃなんないのは矢口の方だよ!ごめん・・ごめんね紗耶香・・!!ホントに・・ゴメン・・!!」
「えっ・・ちょっちょっと待って訳分かんないよ。やぐっちゃん泣かないでよ・・」
紗耶香は、ボロボロと涙をこぼす矢口をなだめようと、そっと包み込もうとした。
けど矢口は、、
「やっ!!」
- 416 名前:Oー150 投稿日:2001年04月19日(木)03時45分16秒
グッと突き放してしまった。
「・・やぐっちゃん・・?」
「もう・・矢口ダメなんだ・・・紗耶香にそういう事される資格ないんだ・・・」
「意味が分かんないよ・・」
「・・・紗耶香との約束・・・矢口・・・・結局守れなかったんだ・・・・」
「約束・・?」
「・・・紗耶香が・・矢口を慰めてくれた代わりに・・・交わした約束・・・・。あの夜の事・・・全部・・忘れるって・・・・」
「・・・・・」
「だからもう矢口ダメなんだ・・友達やる資格ないんだ・・・・・」
「・・・・・」
「ホント・・・最悪だよね・・・・・。散々紗耶香にお助けマンしてもらったのに・・・・矢口は・・・・恩をあだで返す事しかしてない・・・・」
「・・・つまりもう・・市井と友達ではいれないって事・・・?」
「・・・・・・うん・・・・」
「「・・・・・」」
凄い、長い沈黙が流れた。
矢口は、紗耶香の顔を見上げる事が出来なかった。
今までの時間返せって、そういわれるんじゃないかって思った・・。
長い長い二人の大事な時間。
それを、矢口は壊してしまった。
自分の、一方的なわがままによって・・・。
だからもう、顔を見ることなんて出来なくて・・・。
- 417 名前:Oー150 投稿日:2001年04月19日(木)03時51分46秒
暫く無言で俯いていると、予鈴の音が聞こえた。
急に校内がシーンと静まり返る。
けど、紗耶香はその場を動こうとはしなかった。
矢口は居たたまれなくなって、気付くと、、
「もう、これで分かったしょ?矢口ってさ、最悪なんだ」
涙を拭い、顔をあげ、開き直った口調で捲くし立ててた。
「紗耶香の事とか全然考えてなくてさ、土日になったら紗耶香の都合も考えないで遊ぼうとか騒ぐし、くっだらないメールとかもウザイくらい送るし、我がまま三昧だし、しまいには男に振られたから慰めに抱いてとか無茶苦茶言っちゃって、で今度は都合悪くなったからって勝手に連絡途絶えさせてさ、、、ホント、最低最悪なんだ」
「・・・・・」
「だから、もう紗耶香もこんな奴と離れた方がいいってっ。聞くところによると紗耶香と友達になりたがってる子めちゃくちゃいるらしいじゃん。なんもこんな使えない奴友達に置いておく事ないってばっ。ねっ絶対そうだよ。絶対・・」
「・・・・・」
「「・・・・・」」
紗耶香は、捲くし立てる矢口と目を合わさずに俯いてた。
こんな紗耶香の表情、初めて見たと思う・・。
そして・・
「・・・・・そうだよね・・・・。そうだよ・・考えてみれば酷いよやぐっちゃん」
「・・・・・」
そう言ってすっと顔を上げた。
やっぱり、怒ってる・・?
そりゃ・・そうだよね・・・・当然だ・・・。
でもいんだ・・。もう、嫌いになって、忘れてくれた方が・・・。
「市井もホント、見る目ないね」
「そ、そうだよ・・・無さ過ぎだよ・・・・」
嫌いになって・・・・忘れてくれた方が・・・・・
「散々振り回されて、それでポイだもんね」
「・・・・・」
“え・・・オイラなんてすぐにポイされちゃう・・?”
はは・・・逆に矢口がポイしてるのか・・・
ホントに・・・サイテーだ・・・・
「やぐっちゃん友達いっぱいいるし、まぁ市井なんていなくても問題ないだろうしね」
「う、うん。矢口の友達量は校内ナンバー1とも言われてるからね・・」
「市井だって、作ろうと思えば友達はいくらでも作れるし」
「そうだよ・・なんせモッテモテなんだからさ・・・」
「でもさ」
「・・・・・?」
「これじゃあまりにも市井まるで使い捨てって感じで酷くない?」
- 418 名前:Oー150 投稿日:2001年04月19日(木)03時53分14秒
「・・・気の済むまで・・・・ぶんなぐっちゃっていいよ・・・」
「殴る事は出来ないよ。来て速攻で退学になりたくない」
「・・・じゃ、じゃあどうすればいいの・・・?」
「・・・最後に市井からも頼みごと、一つしていいかな」
「・・頼みごと・・?」
「別に、いいじゃん。今まで散々聞いてきたんだからさ」
そう淡々とした口調で言う紗耶香の目は据わってて、本気で怖かった・・。
怒った紗耶香も初めて見た・・・。
まぁ・・怒って当然だ・・・・。
だから矢口も当然、
「う、うんいいよ・・・矢口の出来る範囲なら・・・」
そう答える。
けど紗耶香は更に強い視線で言った。
「いや、絶対聞いて貰わないと、割に合わないよ」
「・・・・わかった・・・なんでもする・・・・」
「市井の頼みごとは、簡単だよ」
「・・・何・・・?」
「・・・・・・」
- 419 名前:Oー150 投稿日:2001年04月19日(木)03時58分45秒
- ―――――――
―――――
―――
―
「あっ!お〜〜そ〜〜いぃよぉ!!!30分も遅刻だよ!!」
「ハァハァッ・・ゴメン・・・ちょっと寝坊した・・・」
「も〜〜お昼紗耶香のおごりだからね!」
「えぇ!?市井金ないよ!」
「じゃマックでもいいから」
「くっそぉ・・・」
「よっしじゃぁぁ行こっ?」
「金キツイのになぁ・・」
「ぶつくさ言うな!矢口だってギリギリなんだぞ!」
「ギリギリなら買い物しようとか言うなよぉ・・」
ヒーロー物の話だけど、、
そういえばこんな役もある。
正義のヒーローと一緒になって、悪を倒す、女の正義の味方。
パーマンで言うパー子とか、5レンジャーで言う、ピンクのお姉さんとか。
好きな人と、一緒に戦って、自分も役に立つ。そういうの。
「ねぇねぇさやりんこれオイラ似合う?」
「うんバッチリじゃない?」
「ヘヘッ・・♪」
「でも試着した方がいいよ」
「なんで?」
「だってサイズ」
「・・・そだね・・・」
それがきっと一番理想なんだ。
フィフティーフィフティーっていうのかな、、。
人は、与えられてるだけだと不安を感じる。
自分も与えたいと、そう切望するものだと思う。
一番の理想は、助けられるんじゃなくて、共に戦う事。
「着たけども」
「おっカワイイじゃんっ似合う似合う」
「♪♪じゃこれ買う・・♪」
あの時紗耶香は、矢口の前でマントとマスクを全部取ってくれた。
正体を自分で明かしてくれたんだ。
危険にもかえりみず。
- 420 名前:Oー150 投稿日:2001年04月19日(木)03時59分47秒
“いや、絶対聞いて貰わないと、割に合わないよ”
“・・・・わかった・・・なんでもする・・・・”
“市井の頼みごとは、簡単だよ”
“・・・何・・・?”
“・・・・・お願いだから・・・側にいて・・・・”
紗耶香は、矢口をそっと抱きしめて、耳元でそう囁いた。
その声と体は、かすかに震えていて・・・。
悪を恐れない強い強い正義のヒーローが、その時は抱きしめたら潰れちゃいそうなほど、凄くか弱く思えた。
- 421 名前:Oー150 投稿日:2001年04月19日(木)04時01分48秒
―――――
それからの二人の関係は、はっきり言って今でもよく分からない。
矢口は好きだけども、、勿論likeじゃなくてloveで。
でも紗耶香の好きはきっと違うと思う。
それは、言わなくても分かる。
なんていうか、、紗耶香に取って矢口はきっと、やっぱり親友以下でも以上でもないんだ。
でも、親友という枠を越えて、凄く必要としてくれてるのが分かった。
じゃなきゃわざわざあんな弱い面まで見せてまで、矢口と一緒にいる事を選ぶ訳ないと思うし、、。
なんで矢口なのかは分かんないけど・・。
で、じゃあ矢口の想いはどうなるのかって感じだけども、、
でも紗耶香はこう言ってくれたんだ。
“・・友達として一緒にいれないんなら・・・友達としてじゃなければいれるって事でしょ・・?”
“・・・そう・・だけどでも・・・・”
“・・・やぐっちゃんがそれを望むなら・・・、、いいよ・・・”
“え・・・?”
“嫌いになった訳ではないんでしょ・・?”
“当たり前だよ!嫌いになんか・・・なる訳ないじゃん・・・むしろ好きになっちゃったって言ってるんだから・・・”
“・・・・だったら・・・”
“・・・・・”
“・・今市井にとって一番大事な人は・・・やぐっちゃんだからさ・・・”
“・・・・ホントに・・・?”
“・・うん・・・”
- 422 名前:Oー150 投稿日:2001年04月19日(木)04時05分10秒
だから、それから矢口は紗耶香を恋人だと思って接してる。
紗耶香は、今までと愛情表現が違う矢口に戸惑いは感じてるみたいだけど、でも矢口のそれに応えてくれてる。
そして、ようやく分かってきた。
素直に、甘えていいんだなって。
我がままいっていいんだなって。
矢口はそれを、鬱陶しく思われるものだと決め付けていた。
でも考えてみれば、正義の味方だって、人助けを嫌々やってる訳じゃない。
それに遣り甲斐を感じて、そしてその喜ぶ顔を見てまた頑張ろうって、そう思ってるはずだ。
紗耶香のそれは、人助けでもないけど、でも与える事に喜び感じてくれてるみたいだった。
そして矢口も紗耶香に、もっと我がまま言ってって頼んだ。甘えてよって。
フィフティーフィフティーでいる為に。
だって矢口だってたまにはマントとマスクつけたいもん。
空飛んでみたいじゃん。
そう言ったら紗耶香は、「何それ(笑)」ってお腹抱えて笑ってた。
それに、市井の職業は正義のヒーローじゃなくてバスケ選手だって訳分かんない事で怒ってた。
そんな紗耶香を見て、可愛いなぁって思ってぎゅって抱きつく。
「さやりん・・」
胸に耳を当てても、ドキドキはしてくれてないんだけど、、
でも、心地良さそうな顔をしてくれる。
それだけでも満足だ。
だから、“好き”って言葉は言わなかった。
お願い事はなんでも聞けるかもしれないけど、でも心まで変える事は出来ないだろうから・・。
ずっとずっと、言わないつもりだった。
それまで求めたら、きっとこの関係は壊れてしまう。
そう思ったから・・・。
でも、矢口はもっと肝心なことを忘れていた。
肝心な、決定的な事を、、。
いや、きっと考えないようにしてたんだろう。
そして、紗耶香もその頃、もしかしたら同じように、その事に怯えていたのかもしれない・・・。
どうする事も出来ない、曖昧な、でも確かな、この二人の関係に・・・。
ばれんたいん
- 423 名前:Oー150 投稿日:2001年04月19日(木)04時08分32秒
- ( ´ Д `)<・・・・で、いちーちゃんは空飛べるの?
・・マジでいつ終わるんだろうこの小説・・・
ばれんたいんって・・遠い昔の記憶・・・。
二日で終わらすとか最初言ってたのに・・・
- 424 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月19日(木)04時24分24秒
- ある意味ハッピーエンドなんだけど。
本当に求めているベストの関係にはなれない二人……。
せつ……。
- 425 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月19日(木)05時10分50秒
- 何とも言えない二人の微妙な関係・・・
甘くそして、せつないですな・・・。
- 426 名前:Oー150 投稿日:2001年04月19日(木)07時00分12秒
- ばれんたいん
―――――
日がたつにつれ、矢口の不安は増していた。
紗耶香はうちの学校内で、知らない人いないってくらい凄い有名になってて、その人気ぶりは凄かった。
矢口も色んな子に二人の関係を尋問みたいに問いただされて、幾度となく汗かきながら一生懸命否定してきた。
二人の曖昧な関係を唯一知ってる仲いい友達は、そんな中途半端な関係じゃ絶対いつか誰かに取られちゃうよって言ってきたりして、、矢口の不安は増すばかりだった。
そして、そのうちに・・・
「紗耶香・・・好きだよ・・・・」
絶対口にしなかったその言葉を、発するようになってた。
伝えずにはいられなくなってて・・・。
そしてそれから、気のせいかも分からないけど、少しずつ紗耶香も矢口に対する態度が積極的になってきていたような気がする。
ばれんたいん
- 427 名前:Oー150 投稿日:2001年04月19日(木)07時01分04秒
- 入れ忘れ・・めっちゃくっちゃ中途半端だけど入れます。
こっから一気に行きたいんで。。
- 428 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月19日(木)08時09分36秒
- せつない・・・ところで矢口にとっては初恋だったのかな
続き期待してます
- 429 名前:ぷち 投稿日:2001年04月19日(木)15時15分37秒
- 切ない・・・
でも、メチャメチャ面白いっす。
続き気になるぅ〜♪
- 430 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月19日(木)18時27分33秒
- あー、もう後藤の存在は忘れてさやまりで突っ走ってほしい!!
マジでめちゃくちゃおもしろいです。
いつか、さやまり小説書いてほしいですねー。
- 431 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月21日(土)16時36分24秒
- いちーちゃんも矢口に対する態度が積極的になったって…。
一体どうゆうことだろう…?
続きすっげー気になる。
- 432 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月21日(土)22時28分32秒
- すごく面白い!
続き気になります!
- 433 名前:真理 投稿日:2001年04月24日(火)03時22分41秒
- うぅ、切ないよお。
胸がイテェっす。わけわかんなくて
暴れ出しそう、、、。
本物の娘。よりもむしろ「作者的娘。」
に惚れそう(w
これからも応援してますんで、
頑張ってね〜!(^-^)
- 434 名前:真理 投稿日:2001年04月24日(火)03時27分04秒
- ふと、思った。
何で名前の色って違いが
あるのだ?
オイラのは赤っぽいのに他の
名無しの人たちは緑、、、
青いのも見たことあったし、、、
- 435 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月24日(火)09時38分23秒
- さやまり、この切ない加減がイイですね。
作者さん、待ってるよぅ。
>>434
http://www.ah.wakwak.com/~yosk/cgi/hilight.cgi?dir=imp&thp=986141452&ls=50
ここをちゃんと見れ。
- 436 名前:真理 投稿日:2001年04月25日(水)21時19分08秒
- 434さん、サンクス!
深いんだね〜、ネットというヤツは!(謎
親切に教えてくれてありがとう!
O−150さん、急かすつもりは
毛頭ござらんので、マイペースに
ファイトっす!頑張って〜(^-^)
- 437 名前:Oー150 投稿日:2001年04月26日(木)02時17分57秒
- あぁレス全部消えた・・・・・(鬱
えと、更新じゃないですすいません・・。
ちょっとお知らせが、、、
でも先にもう一度(個人的に二回目)レスを。
>>424
ある意味そうなんですけどね・・ホント・・せつ(略
>>425
微妙ですね・・・そしてせ(略
>>428
、、、イヒッって感じです。ありがとうございます。。
実は皆さんのレスの何気ない一言が結構書く上でひらめきに繋がるんで感謝しております。
>>429
ありがとうございます。
せ(略 がどこまで続くか分かりませんが、最後までお付き合い願えたら嬉しいっす。
>>430
>後藤の存在忘れて
ちょっとオモロカタです(w
そうっすよねぇさやまり大好きさんもいますよね・・
でも僕も好きなんで、というか市井が絡めばなんでも好きなんで、どうなるかは僕も分かんないです。
>>431
ノタノタしててすいませんホント・・
切ないのは気持ちの持続が難しいっす・・極力鬱状態を保つよう生活を心がけてるんですが(w
ちょっと・・・人間のバイオリズムはそうもいかず・・(w
- 438 名前:Oー150 投稿日:2001年04月26日(木)02時37分00秒
- >>432
ありがとうございます!頑張りますよ。マジででじままじでじま・・・(これ誰だっけ加護だっけ)
>>433
作者的娘というか、、作品的娘って感じかもしんないす。
キャストのキャラに一番近い娘を置換してるっていうか、、。
色は分かってもらえたと思いますが、上げ下げで違うのと、あとフォントで色つけれるみたいっす。
僕ホントは黒にしたいんですけどね・・・物語の途中で視野に余計な色入ってない方がいいかなと思うし。
でもやり方がワカラナイ・・・・・・(凹
>>434
わざわざスレ貼って頂いてありがとうございます。
その行動力が嬉しいです。
あと、そのスレ活用して頂け(閉口
で、、お知らせですが・・・あの・・いきなりでホント申し訳ナインですが・・・先に言っておいた方がよさげなんで告知を・・・。
いちなちとK1、、、無理っぽいです・・・・・・・
無理っていうか、話とかは決まってるんですけど、このままのペースで行くと下手したら完結まであと3ヶ月とか掛かりそうなんで・・・それはヤバイっす・・
ちょっと今月がタイムリミットなんで・・・
不眠不休の勢いでやったんですが、焦れば焦るほど進まず・・・
楽しみにしてた方いたらホント申し訳ないんですが・・・焦っちゃってさやまりまでも書けなくなりそうで・・
で悩みまくった結果・・・
K1といちなちは断念と・・・・・言う事・・に・・・
本当にごめんなさい・・・。
いちなち書きたかったんだけど・・・新鮮っぽいし・・
でもこんなに書きたいんでいつか突然短編で載せるかも分かんないです。
- 439 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月26日(木)03時12分11秒
- 作者さん、そんなに気にする必要無いと思いますよ。
いちなちとK1が読めないのは、確かに残念ですけど、
作者さんには作者さんの事情があるわけですから。
あまり時間が無いみたいですけど、さやまりの方、完結までがんばって下さいね!!
- 440 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月26日(木)04時14分28秒
- タイムリミット……
大辞林 第二版 [time limit]
時間の限度。時間切れ。時限。
気になる………
- 441 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月26日(木)09時32分09秒
- 時間がないなんて、なんか作者さんが市井ちゃんみたいだな。
大丈夫ですか?
ちゃんと見守ってまっせ。
- 442 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月26日(木)23時41分47秒
- 個人的にいちなち見たかったんですけど、作者さんに無理させるのは嫌なんで。
さやまり完結に向けて頑張ってください!
- 443 名前:Oー150 投稿日:2001年04月28日(土)04時49分40秒
- >>423ヽ^∀^ノ <飛べるよ!!
・・・誰かにこれを言ってほしかったんだけど・・・
JJ空しい・・(w
いやそんな事より、温かいお言葉ありがとうございました・・
気持ちが楽になったんで、さやまり頑張れそうです。
タイムリミットつーか、、、言っちゃいますとその・・受験生なんです(晒
なので、小説家になる訳でもなれる訳でもなりたくもないんで(ニガワラ
今年一年はベンキョします・・・。で現実逃避しないように期限を自分で決めました(w
そんな訳です。執筆遅いせいで間に合わなかったんです・・。
えと、更新遅れてすみません・・やっとバイオリズムが整いました・・(w
ダダッといきたいと思います。
- 444 名前:Oー150 投稿日:2001年04月28日(土)04時52分06秒
- ばれんたいん
―――――
それからも、矢口と紗耶香の曖昧な関係は続いていた。
毎日学校が終わってから直行でバイトに行って、
バイトが終わるとすぐまた直行で学校に戻る。
勿論、部活の終わる紗耶香を迎えに。
紗耶香の家は、子供がもう大きくなったからという事で両親が二人とも自由にやってて、いつも家は紗耶香一人だ。
大きくなったって言ってもまだ16やそこらな訳だし、あんな広い高級マンションに一人ポツンと生活してるのかと思うと、矢口の方が胸が苦しくなる。
本当は同棲したいとこなんだけども、でも親にどう説明していいのか分かんないし・・っていうか男女だってそんな若さだったら反対されるだろう。
だから、いれる時間までいるようにしてた。
紗耶香バスケで疲れてるだろうから、ご飯作ってお風呂沸かして洗濯して、風呂あがった紗耶香に全身マッサージしてあげたりする。
なんか奥さんみたいで照れるんだけども・・
でもすっごい幸せい〜っぱいだった。
だって、この瞬間だけは、矢口はマントとマスクつけてる気分になれたんだ。
空飛んでる感じで、、凄い気持ちよくて・・
好きな人になんかしてあげるのってこんなに幸せ感じれるものなんだぁって初めて知った。
- 445 名前:Oー150 投稿日:2001年04月28日(土)04時54分31秒
そしてこっちで生活するようになってから、なにやら紗耶香の通帳には毎月大金が親から振り込まれるらしく・・(16でそんなに持ってていいのかと思うくらい)
二人でたまに家具とか電化製品見に行ったりとかする。これまたホントの夫婦ちっくでかなり矢口は嬉しい
で、その日は犬に破かれたソファーを新しいのに変えようって事で一緒にショッピングに来ていた。
「わぁこのソファー可愛いぃ!!」
「う〜〜んちょい派手じゃない?」
「若いんだからいいじゃんかぁちょっとくらい派手でも」
「でもだってピンクに花柄って・・・家のフローリング色暗いし合わなくない・・?」
「でもさやりんち家具とか暗いから一つくらいこういうの合った方が部屋明るくなるよ?」
「ん〜・・・」
「っていうかオイラこれがいい・・・」
「これがいいって・・市井のうちだよ(笑)」
「いいじゃんいいじゃん矢口も殆どいる場所じゃん♪」
「ん〜〜〜〜・・・・・うん・・・」
「やたっ!!すいませ〜〜ん!!」
「はい、こちらで宜しかったですか?」
「はいっ♪」
「あ〜ちょっと待って下さい」
「え?まだなんかあるの?」
「うん。すいませんまだみたいのあるので。ちょっと、おいでやぐっちゃん」
「ん??うん」
そう言って手を引かれて連れて行かれたそこは、、
- 446 名前:Oー150 投稿日:2001年04月28日(土)04時56分51秒
「??新しく変えるの?」
「うんちょっとね、変えよっかなぁってね」
「今のなんか問題あるの?」
「ん〜〜ないんだけど」
「こらっさやりん物は大事にしなきゃダメだよ!幾らお金いぱいあるからってさっ」
「いや違うよ。サイズ変えるの」
「へ・・?」
「こっちの、、、
ダブルに・・・・」
そう言ってちょっと恥かしそうに指差したそれは、
えとその、ダブルベッドってやつで・・・・
「な、なんで・・・?」
「もうちょいおっきい方が・・いいかなぁ・・って・・・」
「・・・・それって・・・矢口のため・・・・?」
「・・・かもね。っつーか・・・・そうだよ・・」
「・・・・・・」
「、、?なした?やぐっちゃん??」
「・・さやりんのバカ・・・・」
「は!?」
「そんなの・・・そんなの・・・
嬉しすぎるじゃんかぁ!!!」
- 447 名前:Oー150 投稿日:2001年04月28日(土)04時58分12秒
「ちょっちょっと店内でそういう・・ダメだってばやぐっちゃん人が見てるってば・・・ダブルベッドの前で怪しすぎるって・・」
あまりに嬉しくて思わずぎゅっと抱きついた。
そして抱きついたまま顔をひょこっと上げ紗耶香の顔を見上げる。
「・・ん?」
何か言いたげな矢口に紗耶香が何?という顔をする。
恥かしくて、顔をも一回埋めて・・
「・・・さやりんありがとう・・・」
モゴモゴとだけどちゃんとお礼言った。
「いつも色々してもらってるお礼っす。親の金だけど・・」
「ん〜でも嬉しい・・」
「今度はその・・・市井のお金でなんかかったげるね」
「ホント!?」
「うん」
「やたぁ・・♪」
「なんかほしいものある?」
「ん〜〜〜、、、プーさん」
「(笑)分かった」
「なんで笑うんだよぉ・・」
- 448 名前:Oー150 投稿日:2001年04月28日(土)05時01分09秒
ホントに少しずつだけど、確実に二人の関係は変化をみせていた。
でも紗耶香の気持ちは、やっぱりいまいち分からなくて・・
矢口の事好きになってきたのかな・・?とも思うんだけど、
でもただ単に毎日の矢口の奉仕ぶりへの感謝の気持ちかもしれないし・・。
慣れからくる愛着かもしれないし・・・。
ペット愛みたいなそんな感じかもしれないし・・・。
そんな疑問が、ベッドを買ってくれたことによってますます混乱して分かんなくなった。
矢口殆ど泊まれないし、お昼寝とか一緒にしたりするけど、その、そういう事はあの一度っきりでしてない・・し・・・。
流石にそれはお願いしてしてもらったところで空しいから・・。
せいぜいチューとかギュ〜〜とかで・・だからいまいち意味が分からなかった。
嬉しい事はめちゃくちゃ嬉しかったんだけども。。
そのベッドの一件で、矢口の中の“紗耶香の本当に気持ちを知りたい”っていう思いが聞きたくないっていう気持ちを上回った。
そして、勇気振り絞って、思い切って聞いてみる決意をした。
それまで怖くて、聞きたくても聞けなかった事を・・・。
「・・・あのさ紗耶香」
「ん?」
「・・聞きたいことあるんだけど・・・」
新しく買ったソファーの座り心地を味わって、二人でピョンピョン跳ねたり散々した後、
そのソファーの上に正座して、改まった感じで話を始めた。
「何?」
「・・・あ・・のさ・・」
「うん」
「・・・・・」
「ん?どうしたのやぐっちゃん」
- 449 名前:Oー150 投稿日:2001年04月28日(土)05時03分34秒
いざとなると言葉が出ない。
“矢口の事好き?”って言ったらきっと“好きだよ”って言ってくれるだろう。
でも、、
―――恋愛感情はあるの・・?
って聞いたら・・・・どう言うだろう・・。
一度も、そうはっきりと聞いたことがない。
お互いそういう事は口にしないで、ずっと一緒にいた。
矢口は好きって伝えてたけど、でも“愛してる”って言った訳じゃないし・・・
その言葉は、紗耶香の重荷になるだろうと思って・・
だから“好き”っていう、凄く凄く広い言葉を使ってた。
と言っても、表情とか態度は“愛してます”っていうの出まくっちゃってるだろうから・・意味ないんだろうけど・・。
紗耶香はいつも無言で、矢口からのその言葉と、それに続くキスを受け入れてくれてた。
紗耶香がもしそれに対して、ちょっとでも嫌な顔したら、多分矢口もう普通じゃいれなくて、どっか行っちゃってたと思う・・。
実は矢口・・する時はいつも紗耶香のリアクションがすっごく不安で怖くて、でもしたくてで、しばし自分の中で感情を戦わせて、本能が負けた時にしてた・・。
恐る恐るゆっくり慎重に、ビクビク怯えながらのキス。
成功すれば天国、でも失敗したらそこは地獄で・・・。
でも紗耶香は、キスした後いつもニコッてしてくれた。
その顔をみて毎回ホッて胸を撫で下ろす。
- 450 名前:Oー150 投稿日:2001年04月28日(土)05時12分12秒
本当は気持ち確かめる方法なんて簡単で、キスしてる時に紗耶香の胸に手を当てればいんだ。
でも、それだけは出来なかった。
その瞬間だけは、幸せな気持ちでいたかったから・・。
そんなキス一つでも怯えてしていた矢口が、今彼女の口からはっきりと気持ちを聞こうとしている。
怖さはキスの比にならない。
「紗耶香、、あのね・・?」
もし紗耶香の顔が曇ったら・・・
もし紗耶香がけげんな顔でもしたら・・・
絶対、絶対、矢口潰れちゃうよ・・・・
矢口はちっちゃいんだぞ・・・?
クチャって、潰れて無くなっちゃうんだ・・・・
見せかけだけのマントと、感情を殺すだけのマスク、
もう、飛ぶ事も出来なくて・・・・
「紗耶香は、、」
ばれんたいん
- 451 名前:Oー150 投稿日:2001年04月28日(土)05時19分34秒
- ちょっと今回はごま出さないどこ。
更新少ないっすね・・・・
ちょっと・・慎重にいかないと最後詰まったら嫌なんで・・。
3年のバレンタイン告白の事忘れてねーか?って思ってる方いるかも分かりませんが、
大丈夫です。
そして何が起きるかは僕も分かりませんので分かりません。
鬱(不安)と躁(期待)どちらもスタンバイ願います。
- 452 名前:Oー150 投稿日:2001年04月28日(土)05時25分44秒
- 訂正っす・・。
>しばし自分の中で感情を戦わせて、本能が負けた時にしてた・・。
↓
>本能“に”負けた時に
ですね。
- 453 名前:Oー150 投稿日:2001年04月28日(土)05時40分59秒
- あぁ載せ急ぐとやっぱダメだな・・
心理的なもの説明不測だった・・
なんとか察して下さい・・。
親友として見られてるって顕著に思ってて、それでも満足してたのに、
はっきり返事されたらもうダメだっていうその心理、、。
次からは落ち着いて載せよう・・
- 454 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月28日(土)06時02分52秒
- いや、充分、恋する乙女矢口の気持ちは伝わりましたよ。
しかし、ダブルベッドを買うとは市井ちゃん大胆だぁ(w
なんて答えるのか気になります。続き期待!!
- 455 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月28日(土)08時45分22秒
- ( ´ Д `)<いち−ちゃん、ふたりで飛んでっちゃうの?(涙
>>443 期待に答えられず申し訳ない。(笑
そっか、作者さんも飛んでっちゃうのか……
- 456 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月28日(土)09時30分51秒
- そーだったのか。受験ガムバレー!
・・・市井よ、高校生やのにダブル買うか(笑)
ソコが市井らしいつったら市井らしい(w
- 457 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月28日(土)10時13分11秒
- これからどういちごまとなるのか、楽しみにしています。
頑張ってください。
- 458 名前:ぷち 投稿日:2001年04月28日(土)18時03分58秒
- ん〜〜・・
やっぱり、さやまりはイイっすね〜♪
はぁ・・・紗耶香は矢口のコトどう思ってるんだろ・・・
- 459 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月29日(日)02時40分55秒
- 市井ちゃんの言葉を聞くのが恐い。
ちっちゃい矢口が潰れちゃわないことを願うだけっす!!
- 460 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月30日(月)08時01分07秒
- 4月いっぱい・・・頑張れ!
- 461 名前:かんかん 投稿日:2001年05月04日(金)14時57分03秒
- 応援してますよ。
頑張ってください☆
- 462 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月05日(土)17時16分49秒
- い〜や、ここまで一気に読んでしまいました。
いちごま、いちまり、最高ですね。
自分も高校時代部活やってたから違和感無くのめり込んでしまいました。
頑張って下さい。
- 463 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月05日(土)17時21分14秒
- い〜や、ここまで一気に読んでしまいました。
いちごま、いちまり、最高ですね。
自分も高校時代部活やってたから違和感無くのめり込んでしまいました。
頑張って下さい。
- 464 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月05日(土)21時02分40秒
- >作者さん
ほんとに4月いっぱいでここ卒業っすか?
- 465 名前:Oー150 投稿日:2001年05月06日(日)02時23分13秒
- すいません焦りすぎておかしくなってました(ニガワラ
大丈夫です頑張ります。。
気分転換に白書いたんでどうぞ。
- 466 名前:Oー150 投稿日:2001年05月19日(土)20時20分34秒
- ご、ご無沙汰です・・・・
お待たせしまくっちゃってすいません・・・
こいつもうダメなんちゃうかって思われた方いると思いますが・・(ニガワラ
放置したままでは心苦しくて勉強手に付きません・・・・
書き上げますよ!!!!(フーッフーッ
立ち直れたので嬉しくて興奮気味です(w
>>454
ホッ・・伝わってて良かったです。
期待に答えれるか・・・・心配ですがとにかく続きなんとか書きました。
>>455
ヽ^∀^ノ<ウッ・・・ご、ごとぉも飛べるようになったらね!(汗
レスありがとうございます(w
>>456
知も高校生なのにダブル買ったんで大丈夫です(w
娘カネモチだし・・・(ブツブツ
>>457
忘れないでいただけて嬉しいです。
そうなんですいちなちK1は断念したけどいちごまは残ってるんです。
- 467 名前:Oー150 投稿日:2001年05月19日(土)20時23分53秒
- >>458
市井の気持ち・・一ヶ月近くも待たせてしまってすみません・・・
答え出しますよ。
>>459
怖がりつつもブルブルなんとか読んで下さいませ(願
ちっちゃい矢口は・・どうなるかな・・・
>>460
ありがとうございます!!
あっちは、う〜ん・・・
>>461
ありがとうございます。いちごまの短編読みましたよ。
萌えました(w
>>462
おっ全部一気に読まれたんすか!?
じゃ多分色々違和感を感じたことでしょう(ニガワラ
僕も久々に全部読んだら凄い違和感を・・・
>>464
いえ、最後まで書き上げなければどっちも中途半端になるので・・
放棄だけは絶対しません。
じゃ逝きます。
知の気持ち忘れ気味の方は、ちょっと前に戻ってダイジェスト気味に斜め読み願いします(ペコリ
- 468 名前:Oー150 投稿日:2001年05月19日(土)20時26分11秒
- ばれんたいん
「紗耶香は、、」
「・・うん」
「紗耶香はさ、・・・矢口の事・・・好き?」
「?なんで?」
「なんかちょっと気になった・・・」
「好きじゃなかったら一緒にいないし、ベッド買ってあげたりしないよ(笑)」
「それは・・・分かってるんだけど・・・・その・・・」
ウザイって、思われるかな・・
やっぱお互い、踏み入っちゃいけない事なのかな・・
矢口だって、もし親友である事を紗耶香に求められたら、一緒にはいれない・・・
どうしてそんな無理な事言うの?って、そう思う・・
確かに矢口は、紗耶香の心と存在、両方が欲しい。
でも適わないのならば、存在だけでも欲しい。
でも本当は、両方が欲しい。
でも欲張ったら、両方とも失うかもしれない・・・
- 469 名前:Oー150 投稿日:2001年05月19日(土)20時28分11秒
小さい頃から、一緒にいっぱい思い出作ってきた親友紗耶香。
困った時は、いつも助けてくれたお助けマン紗耶香。
その紗耶香がいなくなるなんて、、、
やっぱり絶対嫌だ。
「・・いやっなんでもないなんでもないっ。あ〜そう言えば見たいテレビあったんだ!そうだそうだ・・見たいテレビが、、、」
「・・・ゴメン、やぐっちゃんの聞きたい事は分かってる」
「え・・?」
その瞬間、とてつもない後悔が走った。
- 470 名前:Oー150 投稿日:2001年05月19日(土)20時30分46秒
- 別に、紗耶香の気持ちなんて知らなくたって矢口は充分満足してたんだ。
十分幸せ感じてたんだ。
人間満たされるともっともっとって欲を出す。
そして皆、失敗して後悔してる・・・
凄い恐くなった。
全身から汗が噴出して、体がかすかに震える。
もし、“悪いけどそういう感情はない”
そう言ったら、絶対ギクシャクしちゃって、
これからはもう今みたいに出来ない・・。
“そういうのお互い訊かないっていう暗黙の了解のもとで、一緒にいたんじゃないの?”
そう言ったら、それはイコールウザイよって事で、矢口は潰れちゃう・・・
凄い凄い後悔した。
恋愛感情?そんなものくれなくたって、紗耶香はいっぱい愛情くれたじゃんか!
キスしたって、ニコッて笑ってくれたし、ギュ〜ってしたら、ギュ〜って返してくれた。
それ以外に何を求めるの?!
「市井は、市井は・・・」
「言わないで!」
「へ・・?」
「やっぱ、やっぱ言わないで・・・・」
「・・・やぐっちゃん・・?」
「えとその、いんだっ矢口は今のままで十分幸せだからっ!だから、紗耶香が矢口の事どう思ってようと、二人が幸せならそれでいいんだっ!なんか、なのに矢口いきなり何聞いてんだろ。ちょっと頭おかしいね!やぁばいよホント!ハハッ・・いやぁヤバイヤバイ・・」
「・・・・・・」
必死に誤魔化しながら立ち上がり、「あ〜喉渇いた」とか言いながらキッチンへと向かった。
グラスを取り、リビングから死角になってるキッチンへと立つ。
電気を付けずに暗い空間の中蛇口をひねった。
気付くと頬を温かいものが伝ってた。
矢口の脳裏には、ソファーから立ち上がった時に一瞬見た紗耶香の顔が焼き付いていた。
紗耶香は暗い面持ちでちょっと俯いてて、その表情には罪悪感みたいなものを浮かべていた・・。
矢口の必死の誤魔化しはきっと紗耶香にバレバレだっただろう。
それに対しての紗耶香のリアクションは、ウザイとか迷惑とかそんなんじゃなくて、、
悲しげだった・・・
それはどうする事も出来ない自分の感情に対するものなのか、矢口への同情心なのか分からないけど、
いずれにせよそれが答えなんだと思う。
―――やっぱり、気持ちには応えれないっていう・・・
- 471 名前:Oー150 投稿日:2001年05月19日(土)20時32分21秒
ズンと心が重くなった。
視界がグニャグニャと歪む。
分かっていた事だけど、矢口は心の何処かでそれを認めたくなかった。
心のどこかで期待していた。
いつか、もしかしたら両想いになるかもしれないって。
矢口がバカだったんだ。ベッド買ってくれたからって勝手に浮かれて、勝手に気があるかもとか思って、、
また同じだ。
大事だと思っていたものが、目の前から一瞬にして、消える・・・・・
夢から現実へと、引き摺り下ろされる・・・・・
けど紗耶香と一緒に見てきた夢は、あまりに長すぎた。
そして、あまりに楽しすぎた。
夢から覚めたら、きっともう二度と夢を見ることが出来なくなる・・
でももう、夢から覚める扉は開かれちゃったんだ。
紗耶香の気持ちがはっきり分かっちゃった以上、
もう、夢見心地ではいれない。
- 472 名前:Oー150 投稿日:2001年05月19日(土)20時35分03秒
「ねぇ紗耶香っ」
涙を拭ってリビングに戻った矢口は、精一杯いつもと変わらぬ矢口スマイルを作り出し、紗耶香の名前を呼んでみせた。
「ん・・?」
「あのねっ、、一つ頼みごとがあるんだけども」
タイムオーバーってやつかな・・・
「何?」
紗耶香もきっと、同じ事を思っただろう。
「・・・ダブルベッド」
やっぱり、決してしちゃいけない質問だったんだよね・・・
「へ・・?」
もう、逃げれない。
ちゃんと、話するしかない。
「せっかく買ったんだから、一緒にお昼寝したい♪」
「あ、あぁうん、そうだねせっかく買ったしね。じゃー昼寝しよっかっ」
「昼寝って言うかもう夜だけど・・(笑)」
「ハハッ、まぁね」
なんだか紗耶香の顔を見る事が出来なくて、目を反らしたまま、タタッとベッドに向かって走ってった。
その勢いに任せて大きなベッドにダイブする。
「うわ〜〜〜〜!フカフカだぁぁぁ!!♪」
ギシッといい音を立てて軋む。
無理矢理テンション上げて、何度もギシギシとスプリング音を響かせてみた。
「おいぃやぐっちゃん買ったばっかなんだから丁重に扱ってよ(笑)」
「いいじゃんいいじゃん♪紗耶香もピョンピョンしてみたいクセにぃ」
うつ伏せになって手足をバタバタさせたりゴロゴロ転がったりしてみる。
そんな事しながらも、頭の中では、気持ちをどう言葉にしたらいいのかを悩んでいた。
- 473 名前:Oー150 投稿日:2001年05月19日(土)20時35分35秒
「もぅやぐっちゃんマジスプリング壊れるからダメだって、、、言ってるじゃん!」
「うわっこらっやめろぉぉぉ!!(笑)」
紗耶香が矢口にダイブしてきて上から脇腹をくすぐってくる。
「キャハハハハハ!!!やっ離れろぉぉ!!!(笑)」
「だったらピョンピョンすんなぁ!このやろっ!(笑)」
すご〜〜く意地悪い、けども優しい、そんな矢口の大好きな悪戯な笑顔でニヤッて笑って、嬉しそうに矢口をくすぐってくる。
体中をくすぐられて、息が出来ない苦しい状態なのに、触れられてる事に凄くドキドキする。
嬉しくて楽しくて苦しくて切なくて・・
モウロウとする意識の中、紗耶香の笑顔をみながら、ふと脳裏に浮かんだのは、、
“お願いだから、そばにいて・・・・”
あの時の紗耶香の消えちゃいそうな声と、壊れちゃいそうな細い体だった。
矢口だって、そばにいたい。離れたくない。
ずっとずっと、この笑顔をそばで見ていたい。
でも、ダメなんだ・・。
それは無理だって、、
今頃気付いた・・。
いや、本当は気付いてた。気付かぬ振りをしていた。
紗耶香もきっと、それは同じで、、。
紗耶香が矢口に対して恋愛感情が無くても、確かに一緒にはいれる。
でも肝心な事に二人とも目を背けてる。
「キャハハハ!!し、しぬぅぅ!!!(笑)」
「へへへ、殺してやるぅ(笑)」
そう、この二人の物語は、あくまでキャストが二人だから成り立つんであって・・・
もし紗耶香に・・・
「うわぁぁぁ!!!ひぃ!!ヒャハハ!!(笑)苦しぃよぉぉ!!(笑)」
「このこのぉ(笑)、、、!?わっ!」
「はぁっ・・はぁっ・・・」
一瞬にして入れ替わる体。
気付くと、矢口は馬乗り状態で紗耶香の顔を上から見降ろしていた。
「・・・・やぐ・・っちゃん・・?」
「はぁ・・はぁ・・・
・・・苦しいよ・・・」
- 474 名前:Oー150 投稿日:2001年05月19日(土)20時38分42秒
正確には、涙声で、紗耶香の服の上にポツポツと滴を零しながら。
そしてギュッと紗耶香の羽織ってるシャツを握り締めていた。
淡い暖色ライトのみに照らされた部屋の中で、矢口の表情ははっきりとは紗耶香に見えなかっただろうけど、でもかすかに震えた唇はきっと気付かれていただろう。
紗耶香は両手を広げて無抵抗の格好で、眉をヘの字にして唇をキュッと結んで、上から見下ろす矢口の顔をみつめていた。
まるで罰を受けているかのうように、罪悪感いっぱいの顔で・・。
そんな顔で見ないでよ・・・
そんな顔で・・・
無言で、紗耶香のシャツのボタンを一つずつ外していく。
紗耶香は抵抗する様子もなく、矢口から視線を反らす事もない。
露になった鎖骨辺りにそっと口付けをし、暫くそのまま、痕がつくまで我を忘れて行為に没頭する。
そして、痕がついたのを確認し、ゆっくり顔を離す。
恐る恐る背中に手を回そうとすると、紗耶香はやはり抵抗せず、体を起こして自ら促してきた。
ゆっくりと背中に手を回す。
が、
「・・・・ご、ごめん・・・矢口・・・何やってんだろ・・・」
ハッと我に返った。
最低な事をしようとしてる事に気付く。
紗耶香の気持ち知ってて・・・こんなの、強姦と同じじゃんか・・・
紗耶香のはだけたシャツのボタンをいそいそと止める。
けど手が震えて上手く止めれない。
焦れば焦るほど、手が震えて、視界がボヤけて、涙がポツポツと溢れ出てくる。
「・・・ごめん・・・ホント・・ンック・・・めん・・・・」
「・・・・・もう、いいよ・・・・やぐっちゃん・・・」
ふいに、その手をキュッと握られた。
「・・・ごめんね紗耶香・・・・ヒック・・」
「もう無理しなくて・・いいって・・・」
「・・・ンック・・・」
「そばにいてって頼んだのは・・市井なんだから・・・やぐっちゃんは、何も・・我慢しなくていいよ・・・」
「・・紗耶香は・・・・」
「・・ん・・?」
「紗耶香は・・・優しすぎるよ・・・ヒック・・・」
「そんな事・・ないよ・・・」
「その優しさは・・・逆に・・結構・・・キツイんだぞ・・・」
- 475 名前:Oー150 投稿日:2001年05月19日(土)20時40分54秒
「・・・・・・違う・・」
「何が違うんだよ・・・」
「市井は、優しくなんかない・・・・」
「・・・優しいよ!」
「違う!!!」
「・・紗耶香・・・?」
「違うよ・・・。臆病者の卑怯者なんだ・・・」
「・・・そんな事ないじゃん・・」
「・・・我慢してたのは・・・・」
「・・・・?」
「我慢してたのは・・・
市井の方だ・・・・」
ばれんたいん
- 476 名前:Oー150 投稿日:2001年05月19日(土)20時43分18秒
- ( ´ Д `)<!?
ちょっと一旦区切ります。
また放置されるのかとか肩を落とさずに・・
大丈夫です書き上げます。21日までにはおわらせ鯛・・・
- 477 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月19日(土)21時56分34秒
- うおおおおーーーーー!!!!
待ってました〜。久々の更新うれしい〜!!
さやまり最高です。続きのかなり期待してます。
あ・・・、そういえばこれいちごまなんだっけ・・・。
- 478 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月19日(土)23時20分44秒
- 急展開にあせるごま(ワラ ( ´ Д `)<!?
- 479 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月20日(日)00時10分59秒
- いちごま好きだけど..いちごま大好きなんだけど....
く..苦しい....(笑)
- 480 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月20日(日)00時58分22秒
- 恋愛ばかりじゃなくて、たまにはスポーツ部分も書いて欲しいな。
- 481 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月20日(日)09時41分20秒
- よかった、更新されてた...ずっと、待ってました。でも勉強忙しそうだから、難しいかなって思ってたんですが。
紗耶香も矢口も、ホントいい子達ですね。読み返すと泣けてきます。
無理しなくていいですから、時間のある時に、ゆっくり更新して下さい。
- 482 名前:この板の下の方に埋まってるヤツの続きも気になる… 投稿日:2001年05月20日(日)10時59分42秒
- おおお、いいところで……
何を我慢してたんだ、市井は!
気になる。。。
- 483 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月20日(日)16時08分23秒
- 矢口が可愛すぎるんですけど・・・
- 484 名前:ぷち 投稿日:2001年05月20日(日)21時43分08秒
- い・・・言っちゃった・・・
どうなるんだぁ!?(ワクワク)
- 485 名前:Oー150 投稿日:2001年05月22日(火)01時30分27秒
- 白書いたんで、いちごま好きな方は気分転換にどうそ。
- 486 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月23日(水)23時51分20秒
- 続きが見て〜!っていうかこの小説のおかげでさらに市井と矢口が好きになりました。ありがと〜!
- 487 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月26日(土)23時07分15秒
- さやまり、楽しみにまってます!
- 488 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月27日(日)16時18分33秒
- いちごま…楽しみにまってます!
- 489 名前:Oー150 投稿日:2001年05月29日(火)04時29分50秒
- 放置しないとか言って10日も開けちゃった・・
ちょっと迷いまくってまして・・・
>>477
雄叫びありがとうございます(w
いきますよぉぉ!!
>>478
<あ、あせってなんかぜぜ全然・・・・
↑余談ですがこんな凄いの出来るようになったみたいです(総合案内より
>>479
んんっ・・好きだけど好きだけど・・
僕もそんな感じです(ニガワラ
>>480
暇があれば書きたいんですが・・すみません・・・
>>481
ありがとうございます!
でももうタイムリミットもいいとこなんで・・無理します。
でも気持ちばっか焦って・・なんとか終われそうだけど・・。
>>482
えと、、そっちは、、チェック続けてて頂ければ・・もしかしたら・・
いつかいきなり・・・
>>483
ホントすか!?凄い嬉しいです。
矢口可愛くかけてるかなぁって気になってたんで・・・
>>484
言っちゃいました・・
こうなります・・(ドキドキ
>>486
おぉぉ・・嬉しいです・・・マジで・・
さやまりは自分で魅力出せてるか全然分かんないんで・・・
>>487-488
ウッ・・・どっちもとはいかないとこが辛いです・・・
いちごまりでも俺はいんだけども(w
なんか・・もうとにかくいきます・・・
- 490 名前:Oー150 投稿日:2001年05月29日(火)04時32分13秒
- ばれんたいん
「・・・我慢してたのは・・・・」
「・・・・?」
「我慢してたのは・・・
市井の方だ・・・・」
「・・・へ・・?」
「・・やぐっちゃんへの気持ちさ・・・・市井自身もよく分かんなんだ・・・」
「良く分かんない・・って・・?」
「良く分かんないって時点で、それは恋とは言わないんだろうけど・・・もしかしたら愛着からくる擬似恋愛みたいなものかもしれないけど・・でも漠然と・・・・愛おしいって感情は・・あって・・・・」
「・・え・・・だって全然そんな素振り・・、、」
「でも中途半端に気持ちだして、それがもし違うって分かった後、その後の事考えちゃって・・・・きっと・・一緒にいれなくなるって、そう思ったらさ・・・・」
「・・・・・・」
「・・人は、親友から恋人になったりとかは、出来るかもしれない。けど、
恋人から親友には、戻れない・・・・・」
「そんなの・・・、、」
―――戻らなければいいじゃん・・・
けど違う、紗耶香の言いたいのはそういう事じゃない。
だから言葉を飲み込んだ。
紗耶香が言いたいのは多分、矢口が紗耶香を想う気持ちと、同じかそれ以上の気持ちを矢口に抱いてない事への不安だ・・。
そんな不確かな想いを懸けてみれるような小さなモノじゃないんだ。二人が築いてきた思い出は。
それを、失うのが恐い。それは矢口も同じだ。
紗耶香が欲しいという気持ちより、紗耶香を失いたくない、思い出を失いたくないって気持ちの方が強い。
- 491 名前:Oー150 投稿日:2001年05月29日(火)04時33分59秒
「だからさ、正直、どうしていいか分かんない・・・。ずっと、ずっと怯えてたんだよね・・やぐっちゃんに、もし気持ち聞かれたらどうしよう・・ってさ・・・」
「ごめん・・・矢口、全部壊しちゃったんだね・・・・紗耶香が一生懸命守ろうとしてたもの・・・」
「・・・・それも多分違う・・」
「へ・・?」
「壊したのは・・・市井の方だよ・・・」
「・・どうして・・?」
「あの夜」
「・・・・?」
「やぐっちゃんを慰めるとか言って抱いた・・あの夜・・・・」
「・・うん・・・」
「既に市井の中に、そんなような感情は芽生えてた・・・」
- 492 名前:Oー150 投稿日:2001年05月29日(火)04時34分52秒
「え・・・・」
「っていうか、あの夜、それを自覚した・・・ああやっぱりそうなんだ・・って・・・。で、その後いきなり恐くなった・・・凄い罪悪感にかられて・・・やぐっちゃんはそんなつもりで市井を求めたんじゃないのに市井はって・・・・」
「でも結局矢口も好きになっちゃったんだから同じじゃん・・」
「違うよ・・市井に全くそういう気持ちが無かったら、あそこでそういう事しなかったかもしれないし、そしたら二人ともそれまで通りずっとずっと同じようにやっていけたかもしんないじゃん・・・・。市井は、市井は利用したんだよ・・やぐっちゃんが傷ついてるのをいい事に・・・・心の隙間入り込んで・・・・」
「・・・そん・・事ない・・・そんな事ないよ!!矢口だって、矢口だってもっと前から紗耶香の事好きだったのかもしれないよ!だからあんな事言ったんだよ・・」
「・・・市井はサイテーなんだ・・・それを隠して善人ぶって逃げてたんだからホントに最悪なんだ・・、、」
「もういいよ!!もう・・いいから・・・!!自分責めないでよ!!」
俯いてうわ言のように何度もサイテーという言葉を繰り返してる紗耶香の頭をキュッと包み込んだ。
「もう・・いいじゃん・・・・もういいよ・・・・」
「・・・・・・・・」
紗耶香の体が小刻みに震える。
さっきの自分と紗耶香が重なった。
―――ああそっか・・
二人とも、全く同じだったんだね。
大事にしていたというより、怯えていた。
でももう、その必要はないんだ。
- 493 名前:Oー150 投稿日:2001年05月29日(火)04時36分45秒
「もう、大丈夫だよ・・・。思い出も・・・・矢口達の関係も・・・、どんな事があっても無くなったりしないよっ」
「・・・・・・」
「だってさ、二人ともこれだけ大事に思ってるんだよ?」
「・・・・」
「もうさ、それに縛られてお互い我慢するのやめようよ・・・矢口は、紗耶香がそんなに大事にしてくれてるんだって分かったから、もう何も怖くないよ?」
「ウッ・・・ック・・・・」
「紗耶香は多分、自分の気持ちが矢口程大きくない事に、なんていうか、不安とか後ろめたさとか感じてたんだと思う」
「・・・・・」
「でもね、いいよ?だってさ、良く分かんないけど、とにかく紗耶香は矢口の事いっぱい好きでいてくれてるって事でしょ?例えその恋愛感情と友情との比率みたいのが良く分かんなくても、愛情は愛情だしっ矢口は嬉しいぞ!」
「やぐっちゃん・・・・ズッ・・」
紗耶香の気持ちは痛いほど理解出来た。
だから、責める気持ちなんて全く起きなかった。
だってそうだよ、それまでの思い出を危険にさらしてまで関係を変えるには、それだけ強い想いが必要だ。
自分の気持ちに迷いとか少しでもあったら、絶対に踏み込めないだろう。
それほどまでに、二人の関係を大事にしてくれてたって事だ。
紗耶香はああ言ってるけど、あの夜の事を責めるつもりもやっぱりない。
“忘れさせて”そう矢口が言ってから、それを決意するまで、紗耶香は凄い迷ってた。
ホントに付け込むつもりなら速決するはずだ。
「ねぇ紗耶香・・?」
「・・・?」
紗耶香が矢口の腕の中で、目に涙を溜めて矢口の顔を見上げた。
「えと・・つまりその・・・キス・・・しても、いいの・・・?」
「・・いいよ・・・」
- 494 名前:Oー150 投稿日:2001年05月29日(火)04時39分11秒
タイムリミット。
それは、過去の思い出に捕われた二人の気持ちにだった。
大事な物に捕われすぎて、その場の感情に嘘ついてもしょうがないんだ。
そんな事しても、結局傷つけあっちゃうだけで・・
そっと紗耶香の頬に触れる。
熱のこもった目で、矢口を真っ直ぐ見つめてくる。
そう言えば、いつもは視線反らされてたっけ・・。
あれは、感情を隠す為だったのかな・・。
指先から足のつま先まで、体中がドクンドクンって脈を打つ。
ジンジンする人差し指で、つーっと紗耶香のキュッと締まった唇をなぞる。
矢口の腕の中にいる紗耶香の体が、小さくビクッとなった。
そっと紗耶香の顔に掛かったサラサラした前髪を撫で上げながら、顔を近付け、頬と頬を静かに合わせる。
髪の間に指を滑らせるように掻き揚げ、現れた耳元に頬を滑らせていく。
そしてそこに上気した熱い吐息を吹きかけ、、
「矢口もう・・・我慢しないからね・・・」
「・・・うん・・」
そう囁いて、耳たぶを軽く口に含んで甘噛みする。
「、、っつ!」
「わっゴゴメン!」
思わず力が入ってしまった。
ハッと我に返ると、心臓がバクバクと大きく音を立ててる事に気付く。
「・・我慢はしなくていいけどそういう・・市井が痛いのは勘弁してよ・・(笑)」
「・・う〜んまぁなるべくね」
「なるべくってちょっと・・・頼むよやぐっちゃん・・」
不安そうにしてる紗耶香の顔がなんか妙に可愛い。
ちょっと笑って、またすぐ真剣な顔に戻った。
「・・好きだよ紗耶香・・・」
そう言ってゆっくり顔を近付け、、
唇を重ねた。
「・・・っ・・・ん・・」
紗耶香のキスは、なんていうか、凄く凄く優しくて、それが欲心とかから来るものじゃないのは分かる。
でも、受け入れてくれてるんだって思うと、それだけで矢口はとてつもなく感情が高ぶる。
ゆっくりと舌を絡め、徐々に深いキスをしていく。
そして、そのままゆっくり押し倒した。
―――――
――――
――
―
- 495 名前:Oー150 投稿日:2001年05月29日(火)04時52分28秒
―
―――
―――――
――――――
「・・うっうっす」
「あれ?わざわざ待っててくれたの?悪いねこんな寒い中。よっし帰ろっ」
「・・・・・」
「ん?なした?、、あれ?何持ってんの?あっ!もしかして好きな人にチョコとかあげんの!?」
「ん・・ま、まぁね・・」
「好きな人出来たんだ。それで市井の事待ってたのか。いいよ付き会うよ、何処の誰?」
紗耶香はそう言って、大きな紙袋―――中身は多分、今日一日で貰ったチョコだのプレゼントだのの山だろう―――と通学バックを重そうに持ち上げた。
「・・・・・」
矢口は口を開かず、少し視線を落とした。
紗耶香はあくまで平常を装って、いつもと変わらぬ爽やかな顔でそう言ってるけど、
内心ちょっと心が乱れてるのが矢口には分かる。
だてに親友何年もやってない。矢口はもう騙されないぞ。
「・・?どうした?」
「・・・・・」
「・・・・何?そんな簡単に言えないような奴?」
「・・・・・」
暗い面持ちで俯きながら、上目遣いで紗耶香の顔をジッと見つめた。
「・・あ、もしかして体育の金子?別に笑わないよ。顔はあれだけど、、結構いいとこあるもんねあいつ」
矢口のその表情を見て、紗耶香の口調が速まった。
気付いたかな・・
「・・違うよ」
「・・じゃああれか!バイト先で知り合ったっつー妻子持ちの、んと・・なんつったっけ・・とにかくあいつだろ!ダンディーだって騒いでたもんね。いいじゃん奥さんいたって。そういうのってしょうがないじゃん。市井は応援するぞっ」
「・・・違う・・」
「・・・・じゃあ、、、よく行く歯医者んとこの、、」
「・・・・・やかだよ・・」
「ん?なに?」
「矢口は紗耶香の事が好きなんだよ!!」
「・・・・やぐ・・っちゃん・・・」
「「・・・・・」」
案の定、紗耶香は矢口の告白に固まった。
そりゃあ固まるだろう・・
長い沈黙が流れる
- 496 名前:Oー150 投稿日:2001年05月29日(火)04時54分19秒
「・・・なんで・・・?だってやぐっちゃんが言ったんだよ・・・?・・・市井の事もう友達としてしか見れなくなったって・・・・・」
「あれは・・・・嘘だよ・・・」
「・・嘘・・?」
「紗耶香が・・・紗耶香が好きな人出来たんだって気付いて・・それで・・・矢口お荷物になりたくなかったから・・・」
「・・え・・・じゃあ・・・・」
「・・・・そうだよ・・・ずっと・・・ずっとずっと!矢口は親友やってたけど、でもあれは全部演技で、ずっとずっと変わらず好きだよ!!」
「・・・・・」
紗耶香は言葉を無くし、持っていた荷物が力なく手から落ちた。
「・・・・ゴメンやぐっちゃん・・・全然・・気付かなくて・・・」
「でももう無理・・・もう限界・・・」
「え・・・」
「もう・・紗耶香とは、遊べないし・・電話も・・メールも・・・出来ない・・・・」
「・・・何・・言ってんの・・・?」
「で・・今日は・・お別れの挨拶しにきたんだ・・・」
「・・・そ・・んな・・・」
「・・・紗耶香・・色々・・ありがとね・・・・・
ばいばい・・・・」
- 497 名前:Oー150 投稿日:2001年05月29日(火)04時57分02秒
「!・・やぐっちゃんちょっと待ってよ!!!やぐっ・・・・、、、」
ガチャッ、、
バタンッ・・
「・・・待ってよ・・・そんな・・・そんなの・・・・」
「・・・なんで・・・なんでだよ・・・・・ウック・・・・ヒック・・・やぐっちゃん・・・・」
- 498 名前:Oー150 投稿日:2001年05月29日(火)04時59分52秒
ガチャッ
「!!やぐっちゃ・・・・」
「ごめんね。矢口じゃなくて」
「・・・・圭ちゃん・・・なんでここに・・?」
「ん、、ちょっとね。まぁあたしの事より、、いいの?矢口追いかけなくて」
「・・・出来ないよ・・・」
「なんで?」
「・・市井は今・・付き合ってる子がいる・・・」
「だから?」
「・・どう呼び止めていいのか・・分かんない・・・」
「まぁね、呼び止めるって事は矢口の気持ちに応えるって事だから」
「・・・・・・」
「じゃあ、、諦めるしかないね」
「・・・・でもやぐっちゃんは・・・やぐっちゃんは市井に取って・・凄い大切な・・・ック・・」
「・・・・・」
「ちっちゃい頃から・・唯一ずっと・・仲良くしてきた子で・・・・・」
「今でも変わらず大切に思ってるって言えるの?」
「当たり前じゃん!!」
「でもだって彼女いるんでしょ?」
「・・それとこれとは・・」
「矢口は過去の女でしょ?二人とも傍に置いておきたいなんて虫が良すぎるよ。どっちか捨てなきゃ」
「・・・・・過去の女じゃないよ・・」
「じゃあなにさ」
「そんな・・そんな物みたいな軽い言い方するなよ!!そんな軽い一言で済ませれるような関係じゃない!!」
「だって別に幼馴染とかそういう訳でもないんでしょ?年数的にも一緒にいたのは5・6年ってとこらしいじゃない」
「確かに・・そんな幼児から今までずっと一緒にいた訳じゃないし、時間的には浅いっていったら浅いのかもしれない。けど、やぐっちゃんはホントにちっちゃい頃からずっと一緒にいたみたいな感じするんだ・・・・・それだけ・・過ごした時間が楽しかったって事だと思う・・」
「・・つまり紗耶香は、二人とも違う意味で大切だって事?」
「・・・・欲張りって言ったらそうなのかもしれないけど・・・・大切だよ・・二人とも・・・」
- 499 名前:Oー150 投稿日:2001年05月29日(火)05時00分53秒
「もし矢口が気持ち冷めたとか言わなかったらどうなってた?」
「・・・それは・・・」
「って第三者の私が責めてもしょうがないか」
「・・・・・」
「、、ほらっもういいでしょ!いい加減入ってきなよ!」
「・・・?」
- 500 名前:Oー150 投稿日:2001年05月29日(火)05時04分41秒
・・ガチャッ・・
「・・・ごめん紗耶香・・」
「!?・・やぐっちゃん・・・と、、
吉澤・・・??がなんでいんの・・?」
「吉澤??ちょっと矢口、私も聞いてないよ。この子が今回のこれにどう関係あんの?」
「・・・えっと・・・・」
「いいですよ矢口先輩、私がいいます」
「ごめん・・お願い・・・」
「、、、すみません市井先輩、今日のこの更衣室での告白企画、、、
全部あたしと矢口先輩が仕組んだんです」
「・・仕組んだ・・・・?」
ばれんたいん
- 501 名前:Oー150 投稿日:2001年05月29日(火)05時08分53秒
- <仕組んだ・・・・?(ドキドキ
えと・・・なんか左脳で書いてる感じになってきたような・・・
多分次か次の次で最後です。
なんだかブラックぽい雰囲気になってきましたが・・・
・・・・・(閉口
- 502 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月29日(火)21時21分51秒
- おお!更新されてる!
おお?最後に来て、なんか急展開?
あいかわらず、期待もたせるウマイ書き方に脱帽です。
- 503 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月29日(火)23時50分25秒
- 仕組んだ・・・・?(ドキドキ
そーーーきましたか!おおーーーーー!
- 504 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月30日(水)00時48分38秒
- <仕組みました(モグモグ
作者さん、無理せずガムバッテ
- 505 名前:LVR 投稿日:2001年05月30日(水)02時23分17秒
- うぅ〜。
なんか、本編よりドキドキするんですけど……。
でも、吉澤が何でかかわっているのかが気になる。
- 506 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月30日(水)03時46分41秒
- 仕組んだっていったいどうゆうことだ〜??
<ごめんね紗耶香
- 507 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月31日(木)11時49分22秒
- 石川風に
どうなるんですか―――!?
気になる・・・
- 508 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月01日(金)01時05分38秒
- <し、仕組まれたの?(ビックリ
- 509 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月05日(火)23時01分30秒
- 続きはまだかな〜。
- 510 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月06日(水)21時36分25秒
- 続きまってます!
- 511 名前:Oー150 投稿日:2001年06月07日(木)19時17分34秒
- もうホントに終盤もいいとこ、、のはずです。
ダダッといけたらいいな・・。
>>502
急展開です。期待持たせてるクセに応えれる自信が無いのですが・・(ニガワラ
でももう取りあえず更新交信。。
>>503
そ―――きましたよ!!うぉぉぉ〜〜〜(狂
もう僕も頭オカシイです(w
>>504
お、動く顔文字(なんてんだろ)初登場っすねぇ。
<よっすぃーべーぐる食べ過ぎ!
>>505
あ、作者さんの読ませて頂いてますよ!板を超えはるばると、、恐縮でございます。
作者さんも頑張って下さい。影ながら応援させて頂きます。
>>506
<やぐっちゃんビーム痛い・・・
>>507
ありがとうございます。ガンバリマス!
あとちょっとあともう少しで終わるのに・・そこまでが長い・・。
>>508
<い、いちーちゃん・・・(心配
>>509-510
お待たせしました。かなりキニナルとこで区切ってすみません・・
ではいきます。
- 512 名前:Oー150 投稿日:2001年06月07日(木)19時19分36秒
- ばれんたいん
「、、、すみません市井先輩、今日のこの更衣室での告白企画、、、
全部うちらが仕組んだんです」
「・・仕組んだ・・・・?」
いつも毅然とした態度をしてる紗耶香が、不安そうに顔を歪ませた。
こんな弱気な顔してる紗耶香、初めて見た気がする。
恐らくさっきの矢口の言葉のせいだ・・
“ばいばい”そうはっきりと言ったはずの矢口が、今紗耶香の目の前にいる。
それも一人ではなく、ほんの何分か前に紗耶香に想いを告げたばかりの吉澤と一緒に。
その二人が、全ては仕組まれていたと言ったら、どんな人でも不安になるだろう。
全ては狂言で、
全ては騙されていたのではないかという不安。
何処までを信じて、何処までを疑えばよいのか。
そう錯綜するのが普通だ。
「?うちら・・?仕組んだ・・?意味が全然分かんないよ・・・」
困惑と不安の入り混じった表情、こんな紗耶香の顔を見てしまったら、もう後戻りは出来ない。
- 513 名前:Oー150 投稿日:2001年06月07日(木)19時21分15秒
“思い出も・・・・矢口達の関係も・・・、どんな事があっても無くなったりしないよっ”
ふと、自分で言ったその言葉を思い出した。
笑っちゃうな。どんな事があっても・・か・・・
そんな言葉、よくも簡単に言えたもんだ。
ごめんね紗耶香。
矢口はどうやら、自分が思ってた以上に、紗耶香の事が好きみたいだ。
「さっきやぐっちゃん言ったばいばいって・・・あれは嘘って事・・・?演技・・・?なんの為に・・・?」
「なんの為・・・?なんで分かんないの・・・?」
「・・・分かんないよ・・・・」
「・・・ああ言えば紗耶香が追っかけてきて・・・矢口のものになると思った・・・・」
「・・・・・・」
矢口のその言葉に、紗耶香は一瞬目を見開いて、すぐに伏せた。
「・・・あんな子の事忘れて、矢口だけのものになると思った・・・・」
目を合わせてくれない紗耶香。その表情は、垂れた前髪によって影になっていて、、ただ今まで見た事もないような暗さだけを醸し出していた。
「「・・・・・」」
重い空気の中暫く紗耶香のその姿を見ていたけど、紗耶香はやはり顔を上げてくれない。
体の奥から震えが込み上げてきた。
「だってそうじゃん・・・・あんな・・出会って何ヶ月とかの子より、紗耶香は矢口といた方が楽しいに決まってるよ!!
それにあの子は紗耶香の事何も知らないけど、矢口は、矢口は紗耶香の事なんでも知ってるよ・・? いっぱいいっぱい一緒にいたじゃんか・・・・。
もう二人とも気持ちに素直になろうってお互いの気持ちを解放したあの夜、あれからだってすっごい楽しかったし幸せいっぱいだった。
紗耶香だってそうでしょ・・?」
「・・・・うん・・・それは・・ホントにそうだよ・・・」
- 514 名前:Oー150 投稿日:2001年06月07日(木)19時24分40秒
「・・・じゃあ聞くけど・・・・」
「・・・・?」
紗耶香がゆっくりと顔を上げた。
「さっき圭ちゃんも言ったけど・・・・もし・・・矢口が・・・・
友達に戻ろうとかバカな事言い出さなかったら・・・・
どうなってた・・・?」
「・・・・・・」
案の定言葉を詰まらせる紗耶香。
矢口はこれが聞きたかったんだ。
今回のこの計画も、この一言を聞くために、わざわざこんな手の込んだ・・・・。
これに対する紗耶香の答えで、全部が決まる。
紗耶香を失うか、
―――取り戻すか。
矢口はもう、以前の矢口とは違う。
幸せだと感じながら、その一方で何かに怯える、そんな矛盾した自分はもう嫌だ。
紗耶香は口をキュッと結んで一点を見つめ、明らかに困惑の表情を浮かべている。
圭ちゃんとよっすぃーはこの空気の中、居たたまれなそうな感じでそわそわしている。
「・・・・それは・・・・」
紗耶香が徐に口を開く。
ゴクッと息を呑んだ。
バクバクと心臓が鳴る。
以前似たような不安を感じた事を思い出した。
不安を通り越した、恐怖を。
紗耶香の矢口への気持ちを確かめようとした時だ。
「・・それは・・・・」
もう、紗耶香は二人の関係が修復出来ない事を悟ってるだろう。
どう返答した所で修正は効かない。だからきっと本当の事言うはずだ。
- 515 名前:Oー150 投稿日:2001年06月07日(木)19時26分38秒
「・・・・・・変わらず、やぐっちゃんと付き合ってたよ・・」
「!?・・・・・・」
「「・・・・・・・」」
一瞬の静寂。
そして、長い沈黙となった。
・・・計画・・決行か・・・・
「・・今言ったの・・・ウソじゃないよね・・・」
ゆっくり顔を上げ、紗耶香の顔を見た。
「・・・うん・・」
紗耶香、気付いてる?
紗耶香はもう
矢口の罠にかかってるんだよ。
- 516 名前:Oー150 投稿日:2001年06月07日(木)19時28分15秒
「・・・今日のこの告白企画、うちらが仕組んだって、さっき言ったじゃん?」
今までの態度と一変して鋭い顔つきになった矢口に、紗耶香は更に不安に満ちた表情を浮かべる。
いつもなら話に割り込んでくる圭ちゃんが、今はこの緊迫した空気に圧倒されているようで、ただ黙ってそこにいる。
よっすぃーは多分もう少し矢口に任せる気だ。口を開く様子は無い。
「え・・?うん・・・意味分かんないけど・・・・」
「矢口一人じゃちょっと無理っぽいから、この吉澤に手伝ってもらったんだよね」
「・・な、なにを・・・?」
「紗耶香さ、この子がさっき紗耶香に告白した時、なんか気付かなかった?」
「・・別に・・・」
「言ったよね、、“初めまして、1年C組の吉澤ひとみって言います”、、って・・」
「・・・・・あ・・・」
「やっと気付いた?」
「・・・・・後藤と同じクラス・・」
「・・・だけ?」
「だけって・・・それが・・どう関係・・・・
・・!?待って吉澤って・・・もしかして・・・」
「多分、こう言ったら分かるかな。この子のあだ名。“よっすぃー”だよ」
「・・・・後藤の・・・唯一の・・・・
親友・・・・?」
- 517 名前:Oー150 投稿日:2001年06月07日(木)19時29分47秒
やっと気付いたか・・・。
紗耶香が言葉を無くし、圭ちゃんは目を大きく見開いた。
多分紗耶香も圭ちゃんも気付いただろう。
後藤の親友のよっすぃー、彼女が紗耶香に告白した時点で、、
全ては泥沼だという事に・・。
「やっと気付きました?そう、ゴッチンの親友・・・・だった吉澤です・・・」
「・・だったって何だよ・・・」
「・・・だって、もう無理ですよ・・・・
市井先輩の事好きになって・・・必死に情報収集してて、結局先輩の事何も分かんなかったんだけど、でもつい最近ゴッチンと話してた時に、ちょっとしたきっかけで、ゴッチンが両想いになれたって騒いでた、その相手が・・・市井先輩だって知って・・・・。
どうしていいか分かんなくなって・・・・だってその時には既に、先輩の事凄いはまっちゃってたから・・・素直に祝福する事なんて出来なくて・・・。
結局それから、あたしの方がよそよそしくしちゃって、なんとなく、今はあたしがシカトしてるっぽくなってます・・・ゴッチンはなんでか分かってないと思う・・・。
まさかあたしが騒いでた相手が市井先輩だなんて、ゴッチンも思ってないだろうし・・・」
「・・・・そんな・・・」
「・・・これで分かったしょ?紗耶香、うちらはさ、もう既に、どうする事も出来ない最悪な状況に置かれてるんだよ・・。そして、よっすぃーと矢口は、親友と好きな人を同時に失った・・。
だから・・・
二人だけ幸せになんかさせない」
「・・・・んで・・こんな事になっちゃうんだよ・・・・」
紗耶香はポツリと呟いて、ゆくりとその場に崩れ落ちた。
床にポツポツと滴が落ちる。
「・・後藤・・・吉澤の話しかしないよ・・・?」
「え・・・?」
「いつも、後藤の口から出てくるのは、よっすぃーがよっすぃーがってそればっかだよ・・・他の名前は聞いた事ない・・・
市井・・そのよっすぃーって奴に焼きもち妬いてたくらいだから・・・」
「・・・・」
下を向いて篭もった涙声で言う紗耶香のその言葉に、よっすぃーが不安そうに矢口の顔を見た。
でも矢口は首を横に振った。
もう、後戻りは出来ないよ。
- 518 名前:Oー150 投稿日:2001年06月07日(木)19時32分58秒
「そ、そんな事言ってあたしとゴッチンの関係を修復させようとしたって無駄ですよ。っていうかもう遅いです。
矢口先輩、いい加減タネ明かししましょうよ」
「、、そうだね。
紗耶香、今回のこの告白企画はね、一人の人物を誘き寄せる為に故意にやったものなんだ」
「一人の人物・・?」
「“バレンタインデー特別企画、市井紗耶香への告白大会開催”ってわざわざよっすぃーと二人で学校中にビラ配ったんだよ。しかも一人必ず恋人に選ばれますって絶好の文句付きで。
まぁ紗耶香はバスケしてたから知らないだろうけど。
でも集まったメンバーがメンバーじゃん?校内の目立ってる可愛い子集結しちゃったからさ、石川とか飯田さんとか、よっすぃーもそうだし、、だから結局その面子に怖気づいてみんなゾロゾロ帰っちゃったんだけどね。
でも目的の人物はやっぱり来たんだ」
「・・・だから誰だよ・・・」
「分かんない?こんな催し物やったら、不安になって真っ先に様子見に来る人がいるじゃん。
もしかしたらその子から紗耶香にバラされちゃうかもって思ったんだけど、でも言わないだろうって踏んでたんだよね。
だってきっと、その子も紗耶香の人気ぶりとか人間関係とか、色々自分の知らない紗耶香を直接知っておきたいだろうし、、。
そしたらやっぱりそうだった。ノコノコと来たよ。ホント分かり易いよね」
「・・・・え・・・まさか・・・」
「多分今頃このドアの裏で泣いてるんじゃないかな。彼女何も知らなかったから。
よっすぃーの事も、そして矢口と紗耶香の事もそうでしょ?」
「!?」
紗耶香が凄い勢いで立ち上がり、飛びつくようにドアを開けた。
ガチャッ!!
- 519 名前:Oー150 投稿日:2001年06月07日(木)19時33分31秒
「・・・・ごとぉ・・・・」
「言ったしょ?・・・二人だけ幸せにはさせない、、って・・・」
「・・・いち・・ちゃ・・・・」
ばれんたいん
- 520 名前:Oー150 投稿日:2001年06月07日(木)19時37分38秒
- ・・・今までに無くドロドロです・・・・
空白開き過ぎですね。でももう最後だしいっぱい使ってもいいかなって・・・
えと、多分あと1,2回・・?
- 521 名前:Oー150 投稿日:2001年06月07日(木)19時57分25秒
- あ、矛盾とか解決してない疑問とか、色々積もってる問題はちゃんと最後に全部埋まりますのでご安心下さい。
忘れては無いです。
- 522 名前:ぐれいす 投稿日:2001年06月07日(木)20時27分15秒
- きっつ!今回矢口きついっすね〜!
まさかこんな展開になるとは思いませんでした。
続きお願いします!
- 523 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月07日(木)20時57分22秒
- うっわーっ!
まさかこういう展開とは...
後藤、泣くな!O-150さんと市井ちゃんを信じて、待ってろ!ちゃんと最後に
まとまるはずだ!
- 524 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月07日(木)21時04分40秒
- あぁ・・泣いちゃいそう・・・
どうなっちゃうんだろう・・・・
>多分あと1,2回・・?
最後までつきあわせていただきます。
幸せになることを願って・・・・
- 525 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月08日(金)03時24分07秒
- まさかこんな展開になるとは・・・びっくりです!!
矢口がこの計画を悪意を持って行なったと思いたくないよ〜・・・
- 526 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月09日(土)03時47分56秒
- 読み終わって、最初の感想が、すごい!でした。
いや〜、どうなるのか楽しみです。
頑張ってください。
- 527 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月12日(火)15時16分56秒
- あー!続きが気になる!!!ハッピーエンドになればいいなぁ、、。
えっと、o-150さんの他の小説ってどこにあるのでしょうか??
とても読みたいのですが見つからなくて、、、。
よろしかったら教えてください。
- 528 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月13日(水)00時23分09秒
- >>527
このスレの1に書いてあるさぁ
あと、この板にももう一つ(略
- 529 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月14日(木)00時35分58秒
- >>528
あ、本当だ!(遅
ありがとう。早速読んでみます☆☆☆
- 530 名前:迷子です。 投稿日:2001年06月14日(木)02時59分15秒
- 作者さん。季節の変わり目です、お体に気を付けて下さい。
更新まってます。
小説は、この後どうなるんだろう
- 531 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月15日(金)23時34分44秒
- 久々にきたら更新してた〜
こういう展開になるとは予想できませんでした。
ごま、いちーちゃんを信じて頑張れ!
- 532 名前:読者 投稿日:2001年06月25日(月)04時24分19秒
- いい感じの所でまた次回っすね。
う〜ん超つづき希望!ダダッコの様になりそうなオイラ
よみた〜〜〜い!
- 533 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月25日(月)23時24分29秒
- 超期待!!
早く続きが読みたいっす!!
- 534 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)01時11分17秒
- だめだ・・もうこれ以上人様をお待たせするのは辛いっす・・
ホントは一気に更新して終わらせようと思ったんだけど・・・
いいや区切ろう。
>>522
初挑戦黒矢口です・・(w
書いてる僕もきっついっす・・
>>523
( ´ Д `)<ンッ・・ほ・・・ほんとに・・・・?(シクシク
そ、そうそう最後にまとまるはず・・・・
>>524
ありがとうございます。最後までお付き合い願います。
多分〜〜ホント次で終わります。
>>525
無茶苦茶な展開ですいませんホント・・・
続きで矢口が動き出すはずです。
>>526
す、すごい・・すか・・?かなり自信なかったんで嬉しいです。ありがとうございまっす。
>>527
見つかりましたか?全部で4つあります。この板が殆どです(w
是非是非読んで下さいませ。。。
- 535 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月26日(火)01時17分57秒
- >>528
ご返答ありがとうございます!
もう一つがいつの間にかもう(略 になっちゃってすいません・・(w
>>530
季節の変わり目、、を過ぎてしまってすみません・・(w
もう、、、夏ですね・・(遠い目
小説のおかげで煙草とコーヒーと寝不足で体がボロボロの今日この頃です(ニガワラ
>>531
( ´ Д `)<いちーちゃん・・信じていいの・・・?
ありがとうございます。ガムバリマス!
>>532
ホントいっつも変なとこで区切ってすいません・・・って謝ってばっかだな俺・・(w
ミスを犯してお得意先に謝罪しながら回る新米の心境です・・(w
>>533
はい、続きどぞ!!
えと・・僕の小説の、展開を起こして区切る区切り方ですが、、、
期待を持たせてるというかジラしてるだけな気がして、今更ながら自分の区切り方が凄くヤラシッ!!!って事に気付きました・・(オセーyo!
更新する時は次の日にも上げる気持ちでやってるんで、そこの所ご理解頂けたら・・・嬉しいカモ・・です・・。
ウジウジ言ってねーで更新しろやぁ!!って事で、逝きます。
- 536 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)01時20分49秒
- ばれんたいん
「・・・いち・・ちゃ・・・・」
切なげな消えちゃいそうなかすれ声。
そこには、予想通り目に涙を溜め、すがるような目で紗耶香を見つめている後藤の姿があった。
「ごと・・・ずっとそこに・・?」
いや正確には、紗耶香が畏怖している通り、後藤は初めからずっとそこにいたんだ。
「・・・いちーちゃん・・・・・ホントなの・・・?」
ずっと嗚咽を堪えてたのだろう。
紗耶香の問いに答えず、搾り出すようなやっとの声で、目を真っ赤にした後藤が呟いた。
「・・・なにが・・?」
「・・・・もし矢口さんが友達に戻ろうって言わなかったら、いちーちゃん・・後藤の事なんか見ないで、変わらず付き合ってたって・・・」
後藤は気持ちいいくらい思い通りに、矢口の張った伏線を埋めてくれた。
「・・・それは・・・」
こうなる事は初めから予想していた。
紗耶香とはあれだけ一緒にいたんだから・・・もう紗耶香の性格は熟知してるつもりだ。
これはある意味、矢口が紗耶香と共に過ごしてきた時間の濃度を確認する為の、テストみたいなものだ。
そして、矢口はどうやら合格点みたいだ。
「後藤はいちーちゃんに取って単なる開いた穴埋め役なの・・・?」
後藤の唇が微かに震えている。もう限界だろう。
溢れ出した涙も零れ落ちる寸前といった感じだ。
「・・そうなの・・・?」
「・・・・・」
紗耶香は言葉を詰まらせたまま微動だにしない。
やっぱり、予想した通りだ。
普通なら取りあえず弁解の一つの言葉でも吐くところだろう。
でも紗耶香はしないと予想していた。
いや、しないというより、出来ないだろう。
これはもう二人だけの問題じゃないんだ。
紗耶香が矢口とよっすぃーの事をここで簡単に放り出す訳がない。
多分まだ頭の中で処理しきれずに悩んで迷ってる。
紗耶香の事をよく分からないって言う人多いけど、掴んじゃえばこんなに分かり易い人いないよ。
まぁ掴むまでが長いし大変なんだけど。
この勝負、
矢口の勝ちだ。
- 537 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)01時23分00秒
いつまでも口を開かない紗耶香。
後藤が全てを諦めたように脱力してダランと首を垂らした。
後藤の足元にポツポツと滴が落ちる。
「・・そっか・・・あはっ・・そうだよね・・・・
・・・なんか・・変だとは思ってたんだ・・・
だってごとぉ・・いちーちゃんに好かれるような事した覚えないし、いちーちゃんと出会ってからごとーが好きって言うまで二人でした会話なんてほんのちょこっとだし、なんで告白OKしてくれたんだろうって・・・ずっと疑問に思ってたんだよね・・・
いちーちゃん、バスケしか見えてない感じだったのに・・なんでだろって・・」
「・・・・・・」
「でもそっか、ずっとずっと好きだった人がいて、その人にふられちゃったから、だからごとーの事・・OKしてくれたんだ・・・
全然・・・気付かなかった・・・・ごとーもバカだねぇ・・・一人で浮かれてたよ・・・・
一人で・・・いちー先輩と両思いになれた!って・・・。
その日なんかね、興奮して眠れなかったんだよぉー・・・
ホント・・・バカだよ・・・・」
ボロボロと涙を零しながら、途切れ途切れなんとかそこまで言うと、
ほんの一瞬愛おしそうに紗耶香を見て、後藤は踵を返してその場を走り去った。
「!?っごとぉ!!!」
計画は、矢口の予定通り遂行された。
- 538 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)01時23分56秒
紗耶香が後藤とデキてる事を知っていたのは、石川と圭ちゃんと矢口とよっすぃー、そしてカオリ。
そう、つまりこういう事。
あの場にいた人間は、うちらの輪から離れた所で不安そうに一人たたずんでいる子が、紗耶香の彼女である事を知っていたんだ。ただ一人、圭ちゃんを除いて。
圭ちゃんは学校が違うので後藤の顔までは知らなかった。
今回のこの企画、ビラを配って人を集めたって言うのは真っ赤な嘘で、
矢口とよっすぃーが、紗耶香の事を好きな人間に声を掛けて、協力してもらったんだ。
石川もカオリもそれぞれ紗耶香には伝えたい事があったらしく、そのいい機会だとすぐにOKの返事をくれた。
後藤を誘き寄せる役は石川に頼んだ。
市井先輩への告白大会というのが開かれるらしいよ、と世間話のように何気なく後藤に伝えたところ、案の定後藤は動揺を隠し切れない様子で詳細を聞いてきたらしい。
後藤は自分らの関係が誰かにバレてるとは思ってない。
うちら全員が実は知ってるなんて思いもしなかっただろう。
矢口の事は紗耶香から聞いてるかもしれないけど、でも付き合っていた事まではまだ言ってないって紗耶香言ってたし、それに矢口の顔も知らないはずだ。
つまり後藤は、更衣室前のうちらの意味の無い一喜一憂の猿芝居を、ずっと間に受けて傍観していたのだろう。
何を思って見ていたのかな。
もう私のものなんだから無理に決まってるじゃんって鼻で笑っていたのかな。
それとも、もしかしたら誰かのものになってしまうかも、と不安に思いながら鑑賞していたのかな。
いずれにせよ、あの場でよっすぃーを見かけた瞬間、自分が突然避けられだした理由を理解したのは確実だろう。
じゃなければ話し掛けるはずだ。
後藤はずっとチラチラとよっすぃーの事を離れたところから暗い面持ちで見ていた。
よっすぃーのあれは自分に対する当て付けで芝居していると思っただろう。
でも本当は違う。
あの場にいた全員が、後藤に対する当て付けの芝居していたのだから。
- 539 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)01時24分46秒
矢口とよっすぃーが知り合ったきっかけは、やっぱり紗耶香の事でだった。
紗耶香の事を必死に情報収集していたよっすぃー。情報を辿って行くうちに、必然的に矢口の元に辿り付いた。
そして矢口は話さなくてもいい事をよっすぃーに話してしまった。
紗耶香には既に好きな子がいるよ、と。
そして、そんな話を色々するうちに、今回の計画へと行き着いた。
紗耶香と別れたのは高3になって少し経ってからだ。
よっすぃーと出会ったのは高3の秋。
紗耶香と別れた理由はさっき言った通り、紗耶香に好きな人が出来たと感付いたから。
紗耶香は矢口の前では変わらず笑顔で接してくれていたけど、矢口と離れてる時は、遠くを見て何か思い悩んでるようだった。
その悩みが何かを理解するまで、そう時間は掛からなかった。
あれだけ一緒にいたんだ。気付かない訳がない。
紗耶香は多分、既に後藤への感情を押し殺す道を選択していただろう。そういう人だから。
だから変わらず一緒にいようと思えばいれたと思う。
けれども、問題は紗耶香の気持ちじゃなくて矢口の気持ちの方にあった。
矢口は紗耶香の気持ちを気付いてしまった。だからもう誤魔化せない。
いつかこういう日が来る事はわかっていた。それを承知でお互い付き合いだした。
けども実際直面すると、想像以上に辛かった。
恐らく紗耶香が悩んでいた以上に、矢口は相当悩んだと思う。
このまま気付かぬ振りをし、今の関係を限界まで続けてみるか、
それとも親友に戻って、紗耶香の唯一のベストフレンドとしてずっとずっと揺ぎ無い確かな関係を確立させるか、、。
散々悩みぬいた末、、、矢口は後者を選んだ。
今ならまだ親友に戻れると思った。
きちんと付き合いだしてまだ半年しか経ってない。
紗耶香は親友から恋人には戻れないって言ったけど、でも大丈夫って自信があった。
それは以前二人で話した通り、あれだけお互いを大事に想っているのなら、それを維持できない訳がないって思ったから。
だから世間話のような軽いノリで紗耶香に言えたんだ。
“いきなりだけど矢口紗耶香の事友達としてしか見れなくなったみたい。やっぱ元に戻ろうよ”
紗耶香は目を点にさせて “い、いいけど・・” と呟いた。
- 540 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)01時26分03秒
けどもよっすぃーと出会って、色んな事が一変した。
紗耶香に心にもない事を告げた直後、よっすぃーに会い、紗耶香について熱心に色んな事を聞いてくるよっすぃーのその姿をみていたら、なんだか急に全てを話したくなったんだ。
矢口は多分、共感者が欲しかった。
自分と同じような境遇に誰かを巻き添えたかった。
酷く自分が汚く思えるけど、でも湧き上がってくるその衝動には勝てなくて、結局話してしまった。
よっすぃーは案の定、落胆を通り越した傷心の色を浮かべた。
それから矢口は、その共感者と傷をなめあいつつ、紗耶香との友達関係も続けていた。
でも話はそれだけに収まらなかった。
暫く経ってから、よっすぃーの親友こそがうちらを苦しめたその紗耶香の相手だと言う、そんな皮肉な情報を得る結果となってしまった。
そして、やるせない思いを蓄積させた二人はこの計画を思いつき、今に至る。
- 541 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)01時26分41秒
カオリと知り合ったきっかけ。実はこれも紗耶香だ。
カオリと出会ったのは高2の秋。
いや、正確には出会ったというより、、、目撃された。
その頃、矢口は紗耶香と付き合っていた。
矢口の我がままで、紗耶香とは学校でも会ってて、人のいない場所を選んでは“好き”って言葉を繰り返してキスしてた。
まぁ、可愛いもんだ。
そしてその日は、たまたま体調が優れなくて矢口は保健室にいた。
紗耶香は矢口の体調を心配して見にきてくれて、保険の先生がいなくなった後、そういう雰囲気になっていつものようにキスしてた。
それをカオリに目撃されたんだ。
それからというもの、矢口はカオリに酷く鋭い視線を浴びまくったけども、最近になって突然笑顔で話し掛けられた。
カオリはもう大人になったからとか何とか言って。
そして親しげにちょこちょこ話し掛けられるようになって、仲良くなった。
だから今は後藤が彼女だって事も知ってる。
石川はよっすぃーの知り合いで、矢口はよく知らない。
二人は中学が一緒だったらしく、石川には中学時代結構しつこくラブコールされて困っていたらしい。
だから本当はあまり関わりたくは無かったようだけど、紗耶香の事なら石川が同じ部活だから詳しいだろうと思い、迷った末話し掛けたと言ってた。
けれども石川自身も紗耶香に惚れている事を知り、逆に情報を仕入れてくれと頼まれ、めんどくさい事になりそうだったのでそれっきりにしたらしい。
まぁ結果的にこういう形でよっすぃーは彼女の手を借りているんだけど。
- 542 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)01時29分28秒
そして圭ちゃん。
今日集まった人間は紗耶香の事が好きな人間だ。
そして実は、、、圭ちゃんもそうなんだ。
圭ちゃんはうちの学校のライバル校であるバスケ部キャプテン。
幼い時からの紗耶香のライバルだ。
試合会場とかで度々顔を合わせては、テレビドラマのワンシーンみたく、「今日こそは負けないよ」「こっちこそ」とニヤッて笑いながらパチンってハイタッチしてるのを見かけた。
矢口は紗耶香を応援しにいつも会場に足運んでるから、そのやり取りをカッコイイなぁ・・とか思いながら眺めてた。
でもまさかその圭ちゃんが紗耶香の事好きだなんて思いもしなかった。
矢口と圭ちゃんが友達になったきっかけは、、、
そう、あれは紗耶香がたまたま足怪我してて、それでも無理して試合に出て、結局圭ちゃんのチームに負けちゃった日だ。
試合が終わった後一人姿を消しちゃった紗耶香を必死に探してる時だった。
突然圭ちゃんに肩を叩かれて、、、
「紗耶香の友達?だったら責任持って立ち直らせてよね」
とか無茶苦茶な事を言われた。
それから、試合がある度にやたら話し掛けられるようになって、圭ちゃんとも仲良くなった。
勿論圭ちゃんは紗耶香と仲良くお喋りなんかしない。
だからいつも、紗耶香が試合中で自分が暇な時とか、そういう隙を見ては話し掛けられた。
矢口は応援したいのに、ウザイくらい紗耶香の事色々聞いてきて、、、
紗耶香って普段何してるの?とか、何が好きなの?とか。
「バスケばっかしてるしバスケ以外興味ないっぽいよ」と答えると、すっごい嬉しそうに「やっぱなぁ・・あいつほんっとバスケバカだね(笑)」
と笑ってた。
その笑顔見て、紗耶香の事好きなんだと察した。
その事をそれとなく聞いたら、「ははっバレちゃったか・・・」
って照れくさそうにはにかんでた。
- 543 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)01時30分11秒
- 圭ちゃんいわく、
いつの日からか、ライバル心が執着心へと変わり、紗耶香を打ち負かす事を一日中考えバスケに没頭していて、そして気付いたら頭に住み着いて離れなくなっていて、
恋愛感情に発展している事に気付いたらしい。
元々偶像とか尊敬みたいな気持ちも認めたくは無いけどあったらしく、もしかしたら最初から好きだったのかもしれないって、遠くを見ながら独り言みたいに呟いてたのを覚えてる。
でもライバルはライバル、永遠に変わる事はない、変えちゃいけない、だから想いを伝える気は無いよと言っていた。
紗耶香への想いは試合に勝てさえすれば昇華できるはずだって。
そこら辺の心境は、スポーツしてない矢口にはよく分からない。
けどとにかく、今回の話をしたら、協力してあげると快く引き受けてくれた。
ただ、圭ちゃんには今回の事は違う風に伝えてある。
圭ちゃん以外には計画の全てを話したが、圭ちゃんには“紗耶香が矢口の事まだ必要としてくれてるか、それが知りたいからちょっとカマかけるの手伝って”とそう伝えた。
そう、矢口は結局、何の関係もない圭ちゃんまでも騙したんだ。
- 544 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)01時36分17秒
- ―――――
――――
―――
―
「!?っごとぉ!!!」
紗耶香は涙を零して走り去っていく後藤を引き止めようと、体を乗り出した体制のまま、目の前を真っ白にさせたように呆然と立ち尽くしていた。
そして開けたドアにもたれ掛かるようズルズルとその場に崩れ落ちた。
床にへたり込んだ紗耶香の背中は小刻みに震えていた。
「・・ウッ・・・ック・・・な・・んでだよ・・・・」
圭ちゃんは話と全然違う成り行きに状況を飲み込めないのか、飲み込みたくないのか、さきからずっと言葉を無くしたまま固まっている。
きっと真っ先にキレるだろうと思っていたのに、、それだけが予想外だった。
もう遅い事だが、こういう形を取って初めて圭ちゃんの本当の気持ちを知った。
圭ちゃんは矢口が想像していたよりもずっと、ずっとずっと紗耶香の事を好きだったんだ。
だから、自分がこういう形で紗耶香を傷つける事に加担してしまった事に、酷く罪悪感を覚えてるのだろう。
いや罪悪感を通り越して、きっととてつもなく傷ついてるはずだ。
突然、視界がグラグラと揺れた。
「・・ちょっと矢口!!あんたこんな事を本当に望んでた訳!?こんな事して何になるのよ!!ねぇちょっと!!聞いてるの!?あたしは紗耶香を苦しめる為に協力したんじゃない!!あんたと紗耶香を・・・紗耶香を・・・・・」
圭ちゃんは矢口の肩を掴んでグラグラ揺らしながら、涙交じりにそこまで言うと、ガクガクと床に崩れ落ちた。
胸の奥に異物感のようなものを感じる。
頭にも同じような鈍痛。
矢口は鈍る思考の中走り去っていった後藤の残像を見つづけていた。
そして、
「・・・これで全員・・・・おあいこだよ・・・・これで全員・・・」
一点を見つめ口の端を上げながらそう呟いた。
自分の吐いてる言葉が頭の中をグルグルと回る。
紗耶香がゆっくりと矢口の方を振り返った。
「おあいこ・・・?何言ってんだよ・・・おあいこの訳ないだろ・・・。
やぐっちゃんは友達幾らでもいるじゃんか・・!!吉澤だってそうだろ!?いつも体育館に来る時色んな子と来てたじゃん!!
後藤は・・・あいつは・・・・
市井だって・・・・・・・・・・」
「紗耶香・・・」
圭ちゃんが紗耶香を痛々しい目で見つめる。
- 545 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)01時37分51秒
「・・・や、矢口先輩・・・?あの・・・もう・・・」
誰かが再び矢口の肩を揺らすのが分かった。
・・?揺らしてるのはよっすぃー・・?
耳元で不安な顔で何やら囁いている。
「もう・・計画・・――――・いい・・―――・か・・・?」
何・・?聞こえないよ・・・・
途切れ途切れで言葉が聞こえる。
視界に入るものがなんだか小さくみえる。
紗耶香が膝を抱えて顔を埋めている。
“どうして・・・”“なんで・・”そんな言葉を繰り返してる。
視界がグニャグニャと歪んできた。
矢口・・・なんの為にこんな事をしてたんだっけ・・・
あ・・そっか・・紗耶香と後藤を・・・・・
紗耶香と後藤を・・・・・・なんだっけ・・・
・・・・・?
- 546 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)01時39分36秒
- もうろうとする意識の中、うわ言を繰り返していた紗耶香が突然さっと顔を上げたのが視界に入った。
・・あれ・・・?紗耶香・・・泣いてたはずなのに・・涙は・・どこに・・・?
紗耶香の・・涙は・・・?
「なんてね」
え・・・?
「、、さ、どういう事だか話してくれるかな」
- 547 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)01時41分45秒
・・?何・・・?
紗耶香・・・?
紗耶香は表情を一変させて、パッパッとジャージについた埃を払いながら徐に立ち上がった。
その表情は、怒ってるわけでもちゃらけてる訳でもなくて、、
そう、まるで幼い子に隠し事を問いただすような、、、決して責めてるようではなく、でも確実に重みのある威圧感を醸し出していた。
「い、市井先輩??あの・・泣いてたんじゃ・・・」
「・・後藤の言葉にちょっとだけマジで泣いたけどね・・・。
で、どういうつもりでこんな事したのか教えてくんないかな。
やぐっちゃん、悪いけど悪役無理ありすぎるよ。無理してんのバレバレ。吉澤もソワソワし過ぎ」
・・・うそ・・・・バレてた・・の・・・・?
や・・っぱ紗耶香には適わないや・・・・・
矢口の・・・負け・・・だ・・・・
ふっと全身の力が抜けた。
「!?やぐっちゃん!!!」
「矢口先輩!!!!」
「矢口!!!!」
- 548 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)01時48分19秒
クラッと大きなめまいが起き、矢口の意識は一瞬遠くにいった。
足からガクッと崩れていく。
しかし床に崩れ落ちると思ったその体は、途中で柔らかい温もりに包み込まれた。
「――・・・大丈夫・・・・・?」
「・・・・さやか・・・ごめん・・・・・」
床に崩れる前に、瞬間的に紗耶香が矢口を抱かかえてくれていた。
「・・・悪役なんて柄でもない事やって、無理するからだよ・・・。
やぐっちゃんがここまで酷い事本気でするはずない・・・・。今のがホントの演技でしょ・・?」
・・・はは・・やっぱ矢口・・・紗耶香の事・・好きだ・・・
もうホントに・・・こんな矢口の事・・・信じてくれてるなんて・・・
嬉しすぎるよ・・・・・・
「演技!?な、もうどっから何処までがウソでホントだか訳分かんないわよ!!ちょっと何なのよみんなして!!」
再びキレる圭ちゃん。
紗耶香はそんな圭ちゃんをなだめるように、、
「・・なんか理由があってやったんでしょ?市井をこらしめる為とか、、。
この後の後藤へのフォローも考えてあるんでしょ?」
「あ・・えと・・・ごめん紗耶香・・もう大丈夫だから・・・」
矢口はそう言って紗耶香から体を離した。
「矢口先輩大丈夫ですか・・?あのホントに・・・」
よっすぃーが後ろからそっと支えてくれた。
そのまま体重を預けて、支えてもらう。
「うん・・だいじょぶ・・・」
- 549 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)01時49分09秒
- 心配そうなよっすぃーにそう言ってから、大きく息を吸って、吐く。
「ふぅ・・・なんだ紗耶香バレてたのかぁ・・・・矢口もう・・・途中で泣きそうになりながらも必死で頑張ったのに・・・・・
どこら辺で気付いたの・・?」
「え〜っと、、二人だけ幸せになんかさせない、、ってので。
世界中の人間の幸福を願うやぐっちゃんが、どんな理由があったとしてもそんな事思うはず絶対ないなって思って・・(笑)」
「ん〜そっか矢口のピュアソウルまでは誤魔化し切れなかったか・・・くっそぉ・・紗耶香じゃああれウソ泣きかよぉ・・・矢口のが騙されてたのか・・・・」
「ははっ・・いやなんか考えあってやってんだろうなって思ったから、、、。
でもちょっと・・・幾らなんでも・・・後藤かわいそうだよ・・・・
マジで途中で・・・ぶち壊そうと思ったけど・・・・けど実際・・出来なかった・・・。
やぐっちゃんが・・結局どう思ってるのか分かんなかったから・・
・・・。
・・やぐっちゃんが言ってたの・・・何処までが本心なの・・?」
「・・・二人だけ幸せになんかさせないっていうの、ホントだよ」
「え・・・?」
- 550 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)01時53分33秒
さてと、、そろそろホントに全てを明かすかな。
「二人だけ幸せになんかさせない、、、
四人で幸せになろうヨー!、、って事だよ」
いつもの矢口の調子で言ってみたけど、さっきまでの悪役が抜けなくて、笑顔が力ない。
そんな矢口の異変より、圭ちゃんと紗耶香は矢口の発した言葉に目を丸くしていた。
そう、今回のこれは、後藤を陥れる為のものなんかじゃない。
紗耶香に見抜かれた通り、悪役は演技。
更衣室前でみんなでやってたあれも、後藤に対する“当て付けの芝居”なんだ。
全てを上手くまとめる為の過程にすぎない。
誰も紗耶香や後藤を苦しめようなんて思っちゃいない。
とは言ってもどっちにしろ傷つけちゃった事には変わりないんだけど・・・必要悪?ってやつ・・??
、、本当の目的は、もっとめちゃくちゃピュアなものだ。
- 551 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)01時56分57秒
「・・・・四人で・・?」
「あんた何言ってんの!?もしかして紗耶香に三又させるつもり!??!」
「え、いやまさか!!そんなの矢口だって嫌だよ。
そうじゃなくて、えーとつまりね・・・
こういう・・・事なんです・・・」
「「は・・・・?」」
よっすぃーの腕をグイっと掴んで、その腕にぴたっと抱きついた矢口。
そして上目遣いでよっすぃーをちらっと見て、照れながらよっすぃーの腕に顔を埋めた。
よっすぃーは「事なんです・・」と矢口の言葉を復唱しながら照れ臭そうに頭をポリポリと掻いている。
圭ちゃんと紗耶香は案の定目を点にさせた。
「なな・・なにそれはどういう・・・・・」
「どういうって・・そういう事だよ・・・・」
「え・・・まさか二人はその・・・・・」
「・・そう。
・・付き合ってます・・」
「「え゛ぇぇ?!?!?!」」
ばれんたいん
- 552 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)02時01分30秒
- ( ´ Д `)<ごとぉ放置かよ・・・・・
あ、やべぇほしの色間違った・・・・一回月下の珠玉って書いてクリックしかけたとこでビビッて手を止めました(w
でも証拠が残ってしまった・・・(凹
えぇと・・・・謎ばかりを残しまくり、、伏線ばかりを更に増やし・・・・またしょーこりもなくヤらしい区切りをし・・・・・
・・・・僕は一体何をしてるのだろう・・・(半目
次の更新は絶対速いですからね!!(ギラギラ
- 553 名前:Oー150 投稿日:2001年06月26日(火)02時04分02秒
- あ、ごまがちっちゃい・・間違った・・・(フラフラ
( ´ Д `)<ホントはこっちだよ!(プンスカ
- 554 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月26日(火)02時04分59秒
- がんばっちください。
- 555 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月26日(火)03時37分38秒
- \(^▽^)/<マイペース、マイペース
- 556 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月26日(火)03時46分22秒
- やっぱり悪役は演技か。
しかしまたしても最後にビックリ発言!!
矢口、おまえは何がしたいんだ〜!!(w
最終話、楽しみにしております。
- 557 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月26日(火)11時04分37秒
- う〜ん、訳がわからん...しかし、引き込まれていることだけは確かだ。
いいようにo-150さんに引きずり回されている。だがこれも快感...
さ、エンディングどうなるのかな?タノシミ。
- 558 名前:ぐれいす 投稿日:2001年06月26日(火)18時11分22秒
- 更新待ってました。
なんか後藤がものすごくかわいそうな気がする。
市井と後藤の関係はこれからどうなるんでしょう。
最終話楽しみに待ってます!
- 559 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月26日(火)20時58分32秒
- なんか、よくわからないけど
矢口が悪人じゃなくてよかった!!
さいごまで付き合わせてもらいます。ガムバッテ!!!
- 560 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)05時58分42秒
- ん゛ん・・・更新します・・
>>554
ありがとうございます!頑張りました。。。
>>555
(`.∀´) <そうよ!人間マイペースが一番だわよ!
>>556
まだ楽しみにしてくれてるかな・・・
矢口が何をしたいのか、その謎は今回で解決しますです。。。
>>557
引き込まれてます・・?良かった・・・なんか滅茶苦茶なんてそれ聞けて嬉しいっす。
>>558
後藤がかわいそう、その通りっすね・・
は、はやく更新しなきゃ
>>559
矢口を悪人にするのは無理ありますからねぇ〜やっぱ
最後まで付き合って頂けたら嬉しいっす。ありがとうございます頑張ります。。
- 561 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時03分06秒
- ばれんたいん
「・・そう。
・・付き合ってます・・」
「「え゛ぇぇ?!?!?!」」
やっ・・ぱ驚くよなぁこれは・・・・
「ちょっ・・・待ってよやぐっちゃん!!二人がデキてんならなんの問題もないんじゃん!!!もう解決してるんじゃん!!だったら尚更なんの為に後藤を、、!!」
「あぁ〜〜違うんだよ・・」
「あいつ何も知らないで今頃一人で泣いてんだぞ!?市井後藤の事探しに行く!!」
「ちょっちょっと待ったちょっと待った!!」
「待って下さい市井先輩違うんですってば!!今ここで先輩に行かれちゃったらあたし達単なる極悪カップルで終わっちゃうじゃないですか!!」
「既に極悪カップルじゃんかよ!!!後藤ショックで自殺でもしちゃったらどうすんだよ!!!」
「ちょっストップ!!!聞いて!矢口の話を聞いてちょんまげ!!これはホントに4人のためにやったんだってば!!!!」
マジキレしそうになりながら走りかけた紗耶香を、よっすぃーと二人して頭を下げて両手を突き出して全身でストップかける。
そこに圭ちゃんが、
「とにかく話聞いたげなよ。紗耶香だってあそこで後藤にはっきり自分の気持ち言わなかったじゃない」
と冷静に紗耶香の腕を掴んだ。
荒い息をしながら「それはだって・・・」となんとも不満げな表情を浮かべてブツブツ言ってる紗耶香。
そう、それは言いたくても言えなかったんだろうから紗耶香は確かに何も悪くない。
肩で息をしながら矢口とよっすぃーが顔を上げる。
「ハァハァ・・・・違うんだよ・・・んとね・・・えとぉ・・・」
- 562 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時06分49秒
- 「、、確かに矢口はもう紗耶香の事はちゃんと友達として受け止めてるよ?
でも全っくそういう感情は無くなったのかって言われたら・・それは・・矢口紗耶香の事大大大好っきだったから・・よっすぃーの事好きになったからって・・そんな簡単に紗耶香への気持ちが消し去られたりとかは・・ん〜なんていうか・・・無くて・・・
今はよっすぃーが、紗耶香への想いを忘れさせてくれてるって言う方が正しくて・・でも別によっすぃーが紗耶香の代わりな訳じゃなくて・・・・」
「矢口先輩・・!話の論点が違いますよ・・もうそんな話してもしょーがないじゃないですか・・・」
矢口を突っつきながら耳元でヒソヒソと囁くよっすぃー。
「・・・・ん゛〜〜〜〜っっダメ!!オイラもうさっきのでもう頭いっぱいいっぱいで訳分かんない!!
・・・よっすぃー説明したげて・・・」
そう言って矢口はよっすぃーの背中の影にばつ悪そうに隠れた。
「え・・・・あ・・えーとですね・・・・」
突然の振りに困惑するよっすぃー。
そりゃそうだ。
だって予定と全然違う展開になっちゃってるんだもん・・・。
本当は後藤が部屋から出ていたらすぐにタネ明かしする予定だった。
でも矢口は後藤の予想以上の傷つきっぷりに・・胸が痛むどころじゃなくて・・頭おかしくなっちゃってた・・
「け、結論からいいますとぉ・・・今回のこの企画は、今後、4人全員で仲良くやっていく為に、うちらで無い頭絞って考えた企画なんですよ・・・」
紗耶香が更に怒った様子で何か言おうとしたが、それを制するようによっすぃーが続けた。
「で!で!それでですねっ、、じゃあ何故ゴッチンをあんな目にあわせたかと言いますと、、、四人仲良くしたいけど、でもほら・・その前に・・・
・・・・・ゴッチン矢口先輩と市井先輩との事知らなかったじゃないですかぁ・・」
「・・・・・・」
その言葉に、怒っていた紗耶香がゆっくりと縮んでいって少し影を落とした。
- 563 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時07分56秒
「市井先輩も、タイミングみていつかは言おうと思ってたと思うんですけど、、でも言って、その後実際それを受け入れてくれるかどうか分かんないじゃないですか・・・」
「・・・・・」
「ゴッチンと矢口先輩との溝埋まんなかったら、あたしだってゴッチンと仲良く出来ませんもん・・・・」
「あ、矢口は後藤と仲良くやってきたいって思ってるよ?ホントに」
よっすぃーの背後からひょこっと顔を出してそれだけ言って、矢口はまた引っ込んだ。
「それどころか、そんな矢口先輩とあたしが付き合ってるって知ったら、もしかしたらゴッチン、あたしの事も受け入れられなくなるかもしれないし・・・・それが怖くて・・・・
だから、ゴッチンにあたしからは何も話せなかったんですよ・・・避けてた本当の理由はそれです・・・・
矢口先輩と付き合ってる事を話すには、市井先輩と矢口先輩の事、知ってるクセに言わない訳にはいかないから・・・・」
「・・・・・」
よっすぃーがそこまで言う頃には、紗耶香は完全に俯いてしまっていた。
圭ちゃんは何も言わずに聞き入ってる。
そのままよっすぃーは続けた。
「今後、四人仲良くやってく為には、まずゴッチンに先輩二人の過去の事を知ってもらう必要がある。その上で、その事を受け入れてもらう必要がある。
その為には、、、」
「あ〜よっすぃーこっからは矢口話すよ。ありがとねっ」
「いえ・・」
矢口がそういうと、何故かちょっと嬉しそうにはにかむよっすぃー。
- 564 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時09分23秒
「えっとね、、、紗耶香」
「・・・うん・・・」
「矢口は、紗耶香の事好きだよ?」
「「へ!?」」
突然の告白に驚くよっすぃーと紗耶香。
「あ〜〜いやっそうじゃなくて!人間としてっていうか友達としてっていうか、、その・・やっぱり大事なんだヨ・・・矢口に取って・・凄い大事な人・・・・」
ほっと胸を撫で下ろすよっすぃー。
「だから・・ずっとずっと仲良くしていきたい・・・・」
「・・うん。市井もそう思ってるよ」
「それに・・いつまでも彼女に嫉妬したりとか・・なんか・・・そういうのもヤダ・・・・・。
そんなんで紗耶香と一緒にいる自分はヤなんだ・・・・」
「・・・・」
「でも今はまだ、完全に吹っ切れた訳じゃなくて・・・だから彼女に対して素直に祝福してあげれる自信がないんだ・・・
だから、紗耶香と後藤の関係を揺ぎ無い確かなものにしちゃえば、矢口の気持ちもふんぎりが、、、」
「あ、ちょっちょっと待って・・」
「ん?」
紗耶香がなんか申し訳無さそうに話しを中断させる。
「あの・・・吉澤の事好きになったから市井に友達に戻ろうって言ったんじゃないの・・?」
「あ・・・・いや・・・・」
「・・違いますよ。矢口先輩がさっき言った、先輩に好きな人出来たって気付いたから別れたっていうのはホントなんですよ・・・あたしと出会ったのその後です」
矢口が困ってるのを察してくれたのか、よっすぃーが変わりに答えてくれた。
「・・・・・」
紗耶香が言葉を無くす。
少し俯いて、そしてまた何か思い出したように顔を上げた。
- 565 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時10分45秒
「・・・じゃあさ、吉澤がさっき言った市井の事好きだとかなんとか・・あの告白は・・
・・・・・実際いつもギャラリー来てたじゃんかよ・・・・・
・・あ゛ぁぁもう!!市井も頭ゴッチャで訳分かんないよ・・・」
クシャクシャと頭をかきむしりながら頭を抱える紗耶香。
よっすぃーが口を開く。
「あれは〜、、、」
「嘘かよ・・・市井本気でさぁ・・・困ってたっつーのに・・・・」
「いえ、ホントです」
「んじゃ何だよ・・・やぐっちゃんも好きだけど市井も好きってやつかよ・・・そんなのやぐっちゃんかわいそうじゃん・・・・市井はそんな交際認めないぞ。やぐっちゃんの相手は軟派な奴は絶対、、、」
「市井先輩に言われなくないですよ・・・・」
「ちょっよっすぃー・・・・」
まるで喧嘩を売るかのような挑戦的なよっすぃー。
それを止めようとよっすぃーの制服の袖をを引っ張ったけど、矢口の言葉に耳を貸す様子はなく、、
「市井先輩だって、、、市井先輩だって矢口先輩に曖昧な態度取ってきたじゃないですか!!
一体矢口先輩がどれだけその事で悩んだか分かってるんですか!?」
「・・・・・・・」
興奮しているよっすぃーのその言葉に、紗耶香は視線を落とし俯いた。
圭ちゃんはこの緊迫した空気に居たたまれなさそうにソワソワしてる。
「よっすぃーもういいよ・・・矢口は・・・・矢口は・・・・」
よっすぃーを止めたいけど言葉が浮かばない。
なんて言っていいか分からない・・・
こんな時自分の柔軟性の無さを恨む・・・・
「・・確かにあたしは市井先輩の事好きです。でも矢口先輩に出会って気付いたんですよ・・・
・・憧れだったんだって。自分のこんなミーハーな気持ちなんて恋でもなんでもないって・・・
矢口先輩の、市井先輩の事想う気持ちは凄い真剣で・・真っ直ぐで・・・」
「・・・・・」
なんとなく恥かしくて矢口はよっすぃーの陰に隠れた。
- 566 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時11分35秒
よっすぃーはそこまで言うとふぅっと息を大きく吐いて、少し間を置いてから再び話し始めた。
「・・矢口先輩と知り合ったきっかけは、あたしが市井先輩の情報収集してる時なんですよ。
先輩の事色々聞いたら、矢口先輩なんかすっごい嬉しそうに先輩の事話すんですよね。
その姿がめちゃくちゃ可愛くて・・(笑)
それで・・・そんな矢口先輩に、惹かれていく自分がいて・・・・その感情は・・市井先輩に感じたのと全く違うもので・・・・
なんかもう・・気付いたらめちゃくちゃ本気ではまっちゃってました・・・」
凄い真剣にそんな話をしてくれた。
矢口は確かに、紗耶香と別れるって決意するまでもの凄く悩んだ。
でも、別れた後落ち込んだかと言うとそうでもなかった。
普通別れるとなったらもう会わないだろうけど、矢口らは違ったから。
ただ元のさやに戻っただけ。
けども気持ちがスッキリしたかというと、そうじゃなかった。
そう思い込んでただけだった。
そんな矢口の抑圧させた気持ちを素直にさせてくれたのが、よっすぃーだったんだ。
―――――――
―――――
―――
―
- 567 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時13分16秒
「あの、矢口、、先輩ですよね?市井先輩の事なんでもいいので教えて下さいっ!」
紗耶香の情報を求めて矢口のところに来たよっすぃー。
最初は色々あって、矢口は意地悪にも情報をあげなかった。
全くの他人だし、大体既に紗耶香に好きな人がいるのに、変に期待を膨らませてもしょうがない。
本当ならば、情報求めてきた紗耶香ファン全員に、「もう好きな子いるから諦めな」ってそう吐き捨てたかったくらいだ。
それをされると困るのは紗耶香だから、言わなかったけど。
でもそのくらい紗耶香ファンにはうんざりしてた。
そんな矢口に取って一紗耶香ファンに過ぎなかったよっすぃーが、ふとしたきっかけで仲良くなり、気が付くと紗耶香の事を何でも話せる唯一の友達となっていた。
矢口はよっすぃーに、ほんのちっちゃい事からもう全部、搾り出すように喋り捲った。
それまでそれほど紗耶香の事を人に話した事は無かった。
話し相手がいなかった訳じゃないけど、でも詳しくは話さなかったし、自分の心情まではさらけ出すのに躊躇いがあった。
だって頭では理解出来ても、“親友を好きになっちゃった”なんてあまりに非現実的で、実際のところ心までは理解しがたい事だろうし。
多分、よっすぃーは紗耶香の事好きだし、だから共感してもらえる部分が多いっていうのがあって、スラスラと話せたんだと思う。
紗耶香の話をすると、よっすぃーは凄い嬉しそうに聞いてた。
自分の知らない紗耶香が知れて嬉しかったんだと思う。
矢口も、紗耶香の話をするのはドキドキワクワクして凄い楽しかった。
でも、奥底にあった感情は、楽しいだけじゃなかったんだ。
- 568 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時14分06秒
よっすぃーに出会ったのは、紗耶香がインターハイを終えて暫く経った頃だった。
インターハイまでは、紗耶香はそれに向けて毎日真剣に汗を流していて、矢口とあったりする時間は無いに等しかったし、それに紗耶香のバスケへの意気込みは幼い頃から見てるとおり、半端じゃないから、
その子と進展したりは無いって事は分かっていた。
だから自分の中で、紗耶香への想いをゆっくりと消化する方向にもっていけた。
けどインターハイを終えた後の紗耶香は、背負ってたものが降りたって感じだけじゃなくて、なんか凄い明るくて、、
あぁ好きな子と上手くいったんだなぁってすぐに察しがついた。
矢口の感も夫婦並に鋭くなってたみたいで、、。
そしてやはり、何日かしてから紗耶香に改まってその事を告げられた。
不思議とそんなにショックでは無かった。紗耶香の事だから上手くいくだろうって思ってたからかな。
素直に祝福は出来なかったけど、でも勿論それを表情に出したりは絶対しなかった。
そしてその後に湧き上がってきた感情は、漠然とした不安だった。
確かにそれまでは、紗耶香は矢口の事を大切に思っていてくれたかもしれない。
けど他に好きな子が出来た紗耶香が、もしその子と上手くいったら、矢口の事なんてどうでもよくなるかもしれない。
そんな不安はいつもあったんだ。
よっすぃーに出会った頃、丁度矢口はその不安感を常に心のどっかに置いている状態で、、、
それで、徐々に自分の心情をさらけよっすぃーに話せるようになっていった矢口は、結局紗耶香に付き合ってる子がいる事をよっすぃーに伝えてしまった・・。
よっすぃーだって紗耶香の事好きなんだ、傷つくのは分かりきっていた事。なのに、話してしまった・・。
案の定よっすぃーはショックだったらしく、俯いていた。
でも、よっすぃーはすぐに顔を上げてこう言った。
「もっと先に言ってくれればよかったのに・・・」
「ゴメン・・黙ってて・・・」
「そうじゃなくて、」
「え・・?」
「先輩、一番話したかった事はそれでしょ・・?一番誰かに聞いて欲しかった事はそれですよね・・?
・・・もっと早くに、聞いてあげたかった・・・・」
- 569 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時14分57秒
矢口を責めるどころか、とても優しい口調で、そう言ってくれた。
矢口はそれまで張っていた糸がプツンと切れたみたいに、一気に何かが込み上げてきて、ワンワン泣いてしまった。
確かに、それから矢口とよっすぃーはよく会った。
学校とか、家に帰ってからとかも。
傷をなめあっているのだろうかと、なんだか自分が嫌になったりしながらも、よく会っていた。
でも、矢口はそう思ってたけど、よっすぃーは違った。
傷をなめあってるどころか、、矢口の事が好きだから会ってるんだって、真剣な顔でよっすぃーはそう言ってくれた。
正直、紗耶香に相手がいる事知ってそんな事言ってるんだろうって思った。
でもよっすぃー言わく、それを知る前から既に好きだったって・・・・紗耶香への思いは憧れだったって・・・
そんな事いきなり言われても、最初はどうしていいか分かんなかった。
けども、一方で素直に凄く嬉しかったのも確かだった。
よっすぃーは、急いで気持ちに答え出さなくてもいいから、市井先輩の事ちゃんと消化できるの何年でも待つからって、、そう言ってくれた。
そしてそんなよっすぃーに、ゆっくりだったけど、でも確実に惹かれていった。
紗耶香の時のような苦しい程の胸の高なりはないけど、でも押し潰されちゃいそうな不安もない。
凄く穏やかで、心地良くて、互いのペースで気持ちを伝え合えるっていうか、そういう感じだった。
今ではもう、この空気がたまらなく好きだ。そしてよっすぃーの事も。
- 570 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時16分23秒
―――――
――――
―――
―
「なんかもう・・気付いたらめちゃくちゃ本気ではまっちゃってました・・・」
真剣に紗耶香に話すよっすぃー。
こんな風に第三者を通して自分への想いを聞くのって、凄い恥ずかしぃ・・・
矢口は顔真っ赤になっちゃって下向いてた。
「・・そ・・っか・・・そうだよね・・市井が言えたギリじゃないや・・・ゴメン・・・。
・・やぐっちゃんむちゃくちゃ可愛いからね(笑)一緒にしたらそりゃ好きになっちゃうよ、うん」
よく言うよ・・・その可愛い子とず〜〜っと一緒にいながらマジにならなかったクセに・・・・
ちょっと口を尖らせて紗耶香を上目遣いで見る。
矢口の心の声に気付いたらしく、紗耶香は咳払いをしながらちょっと目を泳がせて、誤魔化すように続けた。
「あ・・えと・・・うん・・やぐっちゃんとよっすぃーの気持ちというか・・そういうのは分かった・・。
で・・?話それちゃったけど、結局こっからどうやったら四人仲良く、、ってなる訳・・・?市井と後藤の関係を揺ぎ無い確かなものにするって・・・・・・・」
「そうだよジラしてないで早く話しなさいよも〜〜アタシ疲れたなんか・・・かなり場違いな気がするし・・・」
圭ちゃんは独り言みたいにそう言いながら部屋のすみに移動してドカッと腰を落とした。
「市井は仲良くどころか後藤もう二度とやぐっちゃんの顔見たくないんじゃないかと思うんだけど・・・・・・・・」
「やっ大丈夫!それどころかごっつぁんは矢口ラブになるよ」
「ごっつぁんて・・・」
「矢口とよっすぃーが、紗耶香と後藤の為にわざわざこんなやっかいな芝居したって理解すれば、矢口の気持ちも受け止めてくれるん・・じゃないかなって」
「・・・だから市井と後藤の為って・・なんだよ・・・・。つーか早くしないとホントに後藤どっかに身投げとかさぁ・・・・あいつならしかねない気が・・・・・」
- 571 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時17分10秒
「あ、いやそれは大丈夫です。あたしある人物にゴッチンの事尾行させてますから。なんかあったらこの携帯がけたたましく鳴り響くはずです」
よっすいーが手に握ってる携帯を、ストラップ部分を持ってブラブラさせながら目の前に出した。
「ある人物って?」
「おっなんだそれ?尾行なんて矢口も知らないぞ?誰?」
「ええと・・・・り、梨華ちゃん・・・・」
「「「・・・・・・・・」」」
なんだかんだ言って梨華ちゃんを利用してるよっすぃー。
まぁ・・彼女程使える人っていないし・・・ってそう思うのは悪いけどさ・・。
きっと「よっすぃーのお願い事ならなんでも聞くわ!!」とか目ぇ輝かせて言ったんだろなぁ・・・。
「ま、ま、まぁいいよ・・・よっすぃーよくやった!ナイスフォロー!流石ごっつぁんの親友だけの事ある!」
「そりゃあそうですよ・・あたしだってゴッチンは凄い大事な人ですもん・・」
「でも石川かぁ・・・なんか・・・・あの・・やっぱ出来れば手短に説明して欲しいんだけど・・・・」
やはり不安の色は隠せない様子の紗耶香。
「うん・・そだね・・・。そんじゃあ結論の結論!」
「・・・うん・・」
紗耶香がゴクリと唾を飲む。
圭ちゃんは疲れた様子でなんかもうどうでもいいわよって感じの顔してる。
- 572 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時18分54秒
「矢口らがここまでややこしい芝居をゴチャゴチャしてきたけど、とにかく最後に全てをまとめる役はね、、、
紗耶香の役目だよ」
「へ・・?市井・・?ここまでグッチャグチャにしといて最後にバトンタッチっすか・・・・・?」
「何言ってんだよアンカーは一番美味しいんだぞ!」
「いやだって何をどうすりゃ・・・・・市井そんな速くないすよ・・・・」
そんな冗句交じりの会話から一変させ、、
「、、あの話、彼女にしたげなよ」
口をキュッと結んで、精一杯柔らかな口調で矢口はそう言った。
「あの話・・?」
「彼女にしてない話あるしょ?あと、しなきゃいけない話・・」
「え・・・やぐっちゃんまさか・・・・」
「うん、気付いてた。っていうか、覚えてた。で、紗耶香の事だからまだ話してないだろなぁって、思ってた」
「・・・・・」
「でも大丈夫だからさ、彼女なら絶対大丈夫だから、だからちゃんとしてきなよ」
「??何?何々なんの話!?ちょっともういい加減にしなさいよ!最後の最後を明かしてくれない訳!?!?まるで長々と読み続けてきた推理小説の最後の犯人分かるページ破かれた気分じゃないのよちょっと!!!!」
無関心な様子で聞いてたはずなのに、矢口と紗耶香の意味深な言葉のやり取りにキレる圭ちゃん。
けど紗耶香はそれどころじゃないらしく、、
「・・・・やぐっちゃん・・・・もしかして市井にその話させる為にわざわざこんな事してくれたの・・・?」
唇を震わせ、目に涙を浮かべて紗耶香はそう言った。
「だってこうでもしなきゃ紗耶香絶対話さないだろうと思って。紗耶香って変なとこ頑固っていうか(笑)
っていうかまぁ、これは矢口とよっすぃーの為でもあるから。
凄い無理矢理で傲慢ちきなのは悪かったと思ってるけど・・。
紗耶香が最後に彼女に話してくれれば、全ては解決するじゃん?」
「あたし、保証しますよ!ゴッチンだったら、絶対大丈夫です!だてに親友やってません。彼女の事は分かってるつもりです。だから、、先輩・・・」
「なっもうちょっとなんなのよ!!何が大丈夫なのよ!!あたしだけのけ者な訳!?」
「・・やぐっちゃん・・・吉澤・・・・
・・・・ありがとう・・・・マジで・・・ズッ・・・」
騒ぎ立てる圭ちゃんをよそに、紗耶香は目を真っ赤にさせて鼻をすすりながらそう呟いた。
- 573 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時21分36秒
「・・ズッ・・・おっしゃっ、、
・・・じゃー市井行ってくっかな!」
下を向いて目を擦った後上げた紗耶香の顔は、いつもの男前で爽やかなあの顔だった。
紗耶香は気合を入れながら小さく拳を上げ、そして荷物を持ちあげようとしたところで、突然何かを思い出したかのように一旦それを降ろし、、
「・・ズッ・・あれ・・・そういやさ・・・じゃあ吉澤はなんの為に市井に告った訳・・?
他の芝居は分かるけど・・・意味無いじゃんあれ・・・・。」
「あ〜あれは、、、」
「あぁぁ言うなぁぁ!!」
「いいじゃないですかもう」
「ダメ!それはダ、、!!」
「矢口先輩が、“紗耶香にはっきり振られて来い!”ってうるさいから一応告白を・・・」
「ほぇ・・?」
「あぁぁ・・・もぉぉ〜〜言うなよぉ・・・・」
「憧れにしちゃ度がすぎてるから、さっさとそんな変な偶像とか過大評価した思い込み捨てちゃいなって。そんなたいした奴じゃないからって(笑)」
「あ〜あ・・・そこまで言っちゃって・・・・・」
「ふぅ〜ん・・・まぁ〜たいした奴じゃないけどね!市井は!」
矢口に顔を近付けて強調する紗耶香。
「ったくそんなたいした奴じゃないのを好きになったのは何処のどいつだよ・・」
「いやっ・・矢口は別にその・・・・」
矢口達のやり取りを見て圭ちゃんがプッと吹きだす。
さっきまで怒ってたのになんか微笑ましげに頬杖ついて眺めてる。
この切り替えの早さはなんなんだぁ・・?
そしていきなり何かを思い出したように、、
- 574 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時22分41秒
「あれ?じゃあ吉澤なんで泣いてたわけ?あんた泣いてたじゃない紗耶香に振られた後」
「あ!ちょっと言わないで下さいよ保田さん!!」
「へ?マジ・・?市井泣かすような事言ってないよ・・」
「あ〜そういやそれ矢口も思った。なんでこいつ泣いてんだぁ?入り込みすぎだよって(笑)」
「だって尊敬して憧れてる先輩に振られちゃそりゃショックもありますよ・・あたし振られ慣れしてないし・・・」
「うわっヤらしこいつっ・・」
「やっ・・っていうか違うんですよ!先輩が!市井先輩が・・・」
「市井がなんだよ・・・・」
「あたしの事知ってたなんて思わなくて・・・そんな事最後に付け加えてくれて・・・・それがなんかちょっと感動でした・・・」
「は?紗耶香よっすぃーの事知ってたの?」
「うん。顔だけね。ギャラリー毎日来てたから、、幾ら市井でも気付くよ。顔派手だし(笑)」
「そうそう!こいつ矢口と付き合いだしてからも毎日見に行ってたんだよ!矢口との甘い時間より紗耶香の観戦なんかいぃ!って何度心の中で突っ込みいれた事か・・・」
「だって先輩のプレー見れるのもうホント最後だから・・」
「そんなの紗耶香に直接頼めば幾らでも見せてくれるヨ!!」
「いやそれもなんか悪いじゃないですかぁ・・・」
「いや別に構わないけどね市井は。、、つーかもう行くね・・後藤心配だ・・・二人続けて痴話喧嘩してていいからさ」
「別に痴話喧嘩なんてしてないヨ!!」
「でもまぁ安心したよ。なんだかんだ言ってやぐっちゃん吉澤にベタ惚れなんじゃんか(笑)」
「ちっちがっ!!」
「違うんですか・・なんだそうなのか・・・」
「やっ・・・ちょっよっすぃースネないでよ・・・・・・す、好きだヨ・・・・」
矢口のその一言で嬉しそうにニヤニヤするよっすぃー。
あ〜あそんなだらしない顔しちゃって・・・男前が台無しじゃんか・・
ま、そゆとこスキダケド・・・・。
なんだか矢口まで赤面しちゃって勝手に二人でいいムードになってる矢口とよっすぃー。
紗耶香はそんな二人を嬉しそうな顔で見て、、
「つーかその二人のラブラブな姿を後藤に見せれば全て解決したのに(笑)」
あ・・・・
そんな手もあった・・・・・・・。
いやっいんだいんだ!矢口は紗耶香の背中押す手伝いをしたんだ。
うんうん、だからインダyo!
- 575 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時24分02秒
「あ、市井先輩、ゴッチンとの仲は市井先輩にかかってるんで、全ては芝居だったってちゃんと伝えてきて下さいね!」
「おうっ任せとけ」
よっすぃーが最後に紗耶香にそれを伝えた。
じゃあ矢口は、最後にこれを言っとかなきゃね。
「紗耶香?」
「ん?」
「これからも・・・」
「うん」
「これからも・・・・・宜しくねっ」
俯き加減で、めちゃめちゃ照れながら矢口はそう言った。
紗耶香は矢口のそんな当たり前の言葉に感動してくれたのか、ちょっと間を置いて、目頭をグイッて袖で拭ってズッを鼻をすする。
そして、、、
「・・・当たり前じゃんっこちらこそ宜しく!」
矢口の大大大好っきな、あの爽やかな満面の笑みでそう言って、手を差し出した。
- 576 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時24分44秒
やぱちょっとドキドキする・・・・・・・
ゆっくりと手を近付ける。
あれだけいっぱいいたのに、握手とかするの初めてだよなぁ〜・・
紗耶香との思い出が湧き上がってくる。
“ちょっとこれじゃ短いな。ねぇ近くにもっと長い木の枝落ちてない?”
“何言ってんだよ!せっかくここまでやったんじゃんか絶対諦めないぞ!”
“なんで?ちまちましてて可愛いよ”
“大きくなったら、絶対やぐっちゃんの元へ戻ってくるからっ”
“こんなちっちゃい子にこんな事していんですか”
“、、でもホントすごい大人っぽくなったね”
“アハハ!ウソウソ。やぐっちゃんと遊ぶのが一番楽しいよっ”
“・・・じゃあ今日一晩は、市井がやぐっちゃんの嫌な思い出全部忘れさせてあげる・・・”
“最後に市井からも頼みごと、一つしていいかな”
“・・人は、親友から恋人になったりとかは、出来るかもしれない。けど、恋人から親友には、戻れない・・・・・”
ホント色々あったなぁ〜〜
って別にこれでお別れじゃないんだけど。
・・・・恋人から親友には戻れない、、か・・
じゃあ矢口と紗耶香は例外な訳だ。
特別って訳だ。
それだけ互いの絆が深いって訳だ。
へへっなんか嬉しいな♪
- 577 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時25分18秒
そんな事を思いながら、矢口は紗耶香の柔らかくてあったかいその手を、、、ゆっくりと握った。
矢口の手をきゅっと握ると、紗耶香は急に真面目な顔になった。
「やぐっちゃん・・ホントありがとね・・・」
そう言い終わったか終わらないかと同時に、、
チュッ
「!!!・・・・・」
「わっ!あたしの矢口先輩に何すんですかぁ!!!!」
「さ〜いっごぉのキスっもぉ一度ぉ〜〜〜♪ってやつだよ。もう出来ないからね」
ふいうちで真っ赤になってる矢口をよそに悪戯っぽく笑った紗耶香は、怒るよっすぃーをなだめるように「あ〜もう分かった分かった。吉澤もサンキュッ」と言って更にチュッとも一つし、、
ガチャッ
バタン・・・・
風のように去っていった。
- 578 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時27分13秒
「「「・・・・・・」」」
「・・よ、よっすぃ・・・?だいじょぶ・・・?おーい」
硬直してるよっすぃー。
紗耶香からのキスがよっぽど刺激的だったのかな。ほっぺになのに。矢口は唇にだけど♪
「先輩酷いですよ・・・・そんな去り方・・・・」
照れてるのか怒ってるのか下向いてブツブツ言ってるよっすぃーに対し、、、
「なっちょっとアタシには“圭ちゃんサンキュッ” チュッとか無いわけ!?!?!なんで放置なのよ!!!アタシだって協力したじゃないちょっと!!!どうなのよこの差別!!ライバルだからって今日くらいなんかしてくれたっていいじゃない!!!」
今日最大のブチギレをみせてる圭ちゃん。
そんなにチュウして欲しかったのかな・・・(苦笑
「ま、まぁまぁいいじゃん紗耶香多分照れ臭いんだよ。圭ちゃんにそういう事するの」
一応フォローしてみる。
「あんたねぇ、顔思いっきりほころばしながらそんな事言ったって説得力ないわよ!!」
「べっ別にほころんでなんか・・・・」
実際問題、四人で遊んだりして、本当に上手くいくかどうかは分からない。
目の前で後藤が紗耶香に甘えたりするの見たりとか、最初は抵抗あると思う。
後藤だって、矢口が今まで通り紗耶香にベタベタくっ付いたら絶対嫌だろう。
だからってそれ意識して紗耶香とギスギスしちゃうのも嫌だし・・
どうなっていくかはホント分かんない。
でも、それでも四人で仲良くしたいって、心からそう思うんだ。
よっすぃーの事好きになったからって、紗耶香との関係が疎遠になっていくの嫌だし・・
よっすぃーだって後藤と変わらず仲良くやっていきたいって、そう言ってる。
ちょっと複雑な四人だけど、でも複雑だけど思いは至ってシンプルだ。
四人とも、大事なものが二つあるってだけの事。
それは、比べる事の出来ない、大切なものだって事。
ただ、ほんのちょっぴり贅沢を試みてみようと、それだけで。
- 579 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)06時28分19秒
「あ〜あ、なんか面白くないなぁもう」
矢口とよっすぃーが、ここまで取りあえず上手くいったって事で安堵の表情を浮かべていると、
圭ちゃんがあからさまに不満の声をあげた。
確かに・・・圭ちゃんは面白くないかもしれない・・・
後で夕食奢るかな、そんな事思ってた時だった。
「、、、バラしちゃおっかなぁ〜」
は?
「バラす?」
「?何をですか??
「アタシさぁ、ずっと一人で考えてて、気付いちゃったのよねぇ〜
ある矛盾に」
- 580 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時02分32秒
「・・・む、矛盾・・・?」
「?矛盾ってなんですか?」
や、やばい・・・
「まぁ結局、紗耶香が後藤に何のフォローの言葉を言いに行ったのかはわかんないけど、、でもど〜〜考えても繋がらない部分があんのよ。っていうか納得いかない部分が」
「・・・・・」
やべぇ〜・・・・・
「えっとじゃあまず分かり易く順順に追っていきますか」
「あ、いやいいよそんな事しなくて・・・矢口らに説明したってしょうがないじゃん・・・」
「だって吉澤は分かってないんじゃないのぉ?あの事」
ニヤッて不敵な笑みを浮かべる圭ちゃん。
やぁばいYO・・・・
汗を噴出しながら落ち着き無くキョロキョロ目を泳がす矢口。
「あら、図星だったの?ちょっと言ってみただけだったんだけど(笑)」
「??なんですか?あたしは分かってないって」
「じゃ〜よっけぃに話しとかなきゃね。ふふっ・・」
け、圭ちゃんがコワイyo!!!!(ブルブル
「えーと、ゴホンッ じゃあ簡単に今回のこの企画を説明致しますか、、」
教授のようにちょっと鼻高々に説明を勝手に始める圭ちゃん。
矢口は一人縮こまってた。
- 581 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時04分30秒
「まず、趣旨としては〜、今後四人が、矢口と紗耶香の事でわだかまる事無く、仲良くやっていく為。って事で宜しいですね?」
「・・は、はい・・・」
「??そうですけど」
「で、その為にまずは、矢口と紗耶香の過去の関係を後藤に知らせて、、その上でその事を受け入れてもらう必要がある」
「それ、あたしさっき言ったじゃないですか・・・・」
「そこっ!黙って最後まで聞く!」
ビシッと指をよっすぃーに突き刺す圭ちゃん。
怯えて縮こまるよっすぃー。
「で、じゃあどうしようか、、って思ってた時に、、紗耶香が何か後藤に伝えてない事がある事に着眼した訳ですね?」
「「・・はい・・・」」
「あたしはよく分かんないけど、とにかくそれは凄く大事な事、大きな事で、それさえ紗耶香が後藤に伝えてくれれば万事上手くいく、と」
「「・・・はい・・・」」
「それであんたらは、まずは後藤に矢口と紗耶香の関係を、間接的に明かす、、ってとこまでの役をやる事にした。
なんでわざわざこんな手のこんだ真似したかというと、後藤に直接はどうしても言えないっていうのと、紗耶香にその話をしたところで、紗耶香は後藤にその、、謎の話、、?をしてくれないだろうと思ったから。
だから強硬手段に出た。違う?」
「おっしゃる通りです・・」
「でもこれもアタシからしてみれば、なんで言えないのよって感じなんだけど、、まぁきっと深い事情がおありなんでしょう」
「「・・・・・・」」
「で、それでね。まぁ話は分かるのよ。あんたらのやろうとした事は分かる。
よくまぁ無い頭絞ってここまで考えたなって思う」
「「・・・・・・」」
シツレイだこの人・・・・
「ここまでやられちゃあ紗耶香もその、、謎の話しざるを得ないものね。
、、、でもね」
- 582 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時05分18秒
「・・・な、なに・・?」
「なんですかぁ?完璧じゃないですかあたしらのこの計画」
「ミスは無いと思うわよ。ミスはないんだけど、、、余計なとこない?」
顔を引きつらせながら矢口を鋭い視線で見てそういう圭ちゃん。
「・・・・・・」
「??余計?」
やぁばい矢口人選ミスだ・・・・・・この人こんなに・・鋭いとは・・・・
ただのバスケ馬鹿(失礼)かと思ってたのに・・・・・予想外だ・・・
「っていうか全部余計ではあるんだけどね。
こんな事しなくてももっと簡単に全てを上手くまとめる方法あったし」
「・・な、なにさ・・・」
「・・なんですか・・?」
ドキドキドキドキ
い、言うなよ言うなよ・・・・?
バクバクバクバク
「紗耶香に、、、
“今後矢口と後藤との間にわだかまりを生まない為にも、後藤にその話してあげて”
ってそう言えば、紗耶香の事だからどんなに嫌な事でも辛い事でもなんでもしてくれたと思うけど?」
「ぁ・・・・・・」
目を点にさせて唖然としているよっすぃー。
完全に凍ってる矢口。
- 583 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時06分17秒
やっぱ人選ミスだ・・・奴は紗耶香の事を知りすぎている・・・・・・・・・・誤算だった・・・・・
「そ〜〜ですよ!市井先輩の事ですもん矢口先輩とゴッチンのためって言われりゃ絶対聞いてくれましたよ!!
なんでそう頼まなかったんですか!?矢口先輩!!」
「あ、いやその・・・えっと・・・ほ、ほら矢口あったま悪いから!!だからそんなのも〜全然思いつかなかったよホント!!いやぁさっすが圭ちゃん!最初に圭ちゃんに相談しとけば良かったなぁ〜〜!!」
「ホントに思いつかなかったんですか!?あれほどゴッチン悲しませたくないからもっと他の方法無いかって聞いたじゃないですか!!!」
「だっだから思いつかなかったんだってば!!いいいいいいじゃん解決したんだから!!」
「まだしてませんよ!演技だって知ったらもしかしたらゴッチン怒って許してくれないかもしれないんですよ!?
でも一か八かでやってみるしかないって先輩がそう言ったから、、!!」
「あ〜はいはいちょっとお怒り中失礼するけど、アタシの話はまだ終わっちゃいないのよ」
キレてるよっすぃーに頭抱えて縮こまってる矢口。その間を圭ちゃんが割って入ってくる。
「アタシが言いたかったのはね、そんな事じゃないのよ」
やったら静かな口調。
こ、これはもしや・・・
「後藤が一時悲しもうが矢口と吉澤がわざわざ意味無い芝居を一生懸命してようが、あたしに取っちゃあ、、、
ど〜〜でもいいいのよ。」
こ、怖い・・・・
「そんな事よりもね・・何が意味無かったかってね・・・・・」
- 584 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時07分15秒
ゴ、ゴクリ・・・
「アタシが一番活躍したあの部分がいっちばん余計で意味なしでしょうが!!ちょっと矢口!!!なんの為にアタシ呼んだのよ!!!」
「わぁぁぁごめんなさいごめんなさい!!」
頭を抱えてごめんなさいを連発する矢口。
そんな矢口をよそに、、
「?そういやそうですね。別に、あそこで市井先輩に“ばいばい”とか言って一旦引き下がった意味ないですよね。保田さんも別にいなくて良かったですよね」
「わぁぁよっすぃーそういう事言わない!!」
「・・・・吉澤って失礼天然ね・・・・。別にいなくて良かったって・・・別にって・・・・・」
圭ちゃんがブルブルと震えてる。
変身しなきゃいいけど・・・・
「こんなバレンタインデーなんて世間じゃ華々しい日に・・一人電車に揺られて遠くからわざわざ来てやったって言うのに・・・・」
とかなんとか言っちゃって、ホントは紗耶香に会いたかったクセに。
素直じゃないなぁ〜。
下を向いてブルブル震えてた圭ちゃんは、髪を掻き揚げながらサッと顔を上げた。
「ま、矢口の魂胆は見え見えよ。結局あたしを使った“あの部分”に今回のこの遠まわしな面倒くさい企画の真意が込められてるんでしょ。その大事な部分に出演させてもらって嬉しいわよ」
めちゃくちゃ嫌味口調で言う圭ちゃん。
矢口はまたビクッとしてちっちゃくなった。
「な、なんですか企画の真意って・・・ねぇ矢口先輩ってば・・・」
グラグラと揺らされるけど目と口を硬く閉じる矢口。
「もう、何が紗耶香を後藤の為よ。結局ただ単に自分が紗耶香に、、、」
「あぁぁ言っちゃダメぇ!!!」
必死に食い止める。
「・・ま、いいわ。結局アタシは騙されてなかったって事だしね」
「騙されてなかった・・?」
圭ちゃんの言葉に更に疑問符を浮かべるよっすぃー。
そんなよっすぃーをよそに、
「その代わり、矢口・・?」
キラーンと目を光らす圭ちゃん。
わっビームだ!!よけろ!!
- 585 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時07分45秒
「は、はいなんでしょうか保田様・・・」
顔を腕でサッとガードしながら丁重な口調で言う。
「後でその紗耶香のうんちゃらって謎の話教えなさいよね」
「・・・・あ・・・ゴメン圭ちゃん・・・・」
矢口は圭ちゃんのその言葉に、一変して真面目な顔をして答えた。
「それは・・・紗耶香から・・直接聞いてくれないかな・・・・・・・」
「・・なによ。なんで?」
「ゴメン・・・。よっすぃーに話すのでさえ、凄い躊躇いあったから・・・。
・・なんていうか、、第三者に勝ってにしゃべってほしくない事って・・誰でもあるしょ・・・?」
矢口が今までになく真剣に話してるのを分かってくれたのか、圭ちゃんは「・・分かった」と言ってくれた。
やっぱそういうとこさっぱりしてる。
- 586 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時08分22秒
「じゃ、役目も果たしたところで、、邪魔者のアタシは消えるかな。」
荷物を持ち上げ、携帯の液晶を確認した圭ちゃんはピタッと動きを止めた。
「?圭ちゃんなしたの?」
「・・・あ〜いつさぁ・・・こういうなんていうか・・・・キザなとこどうにかなんないかな・・・」
疑問符を浮かべながらよっすぃーと矢口は近づいて液晶を覗き込んだ。
『こんな市井達のゴタゴタなんか付き合ってる暇あったらバスケの腕上げろよ。
P・S サンキュー圭ちゃん!ダイスキだよ!』
「「・・・・・・」」
紗耶香からのメール。
多分あの後すぐ入れたんだろう。
「どうにかって・・・ねぇ・・・・」
「・・ちょっと・・あたしらにはどうにもこうにも・・・・」
「まいいわ。ムカつくからあいつが恋愛なんかでゴタゴタしてる間にアタシは紗耶香を抜くわよ」
そんな事言ってるけど顔は思いっきりほころんでる圭ちゃん。
分かり易い人だ・・・
「じゃ帰るね♪」
「「・・・今日はホントにありがとうございました!!」」
最後にちゃんと二人で頭下げてお礼を言って、更衣室を出てからも圭ちゃんが見えなくなるまでデパートの閉店みたいに深く深くお辞儀をして見送った。
- 587 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時09分44秒
「「・・・っっっふぅ〜・・・・・」」
大きく溜息を吐く二人。
そのまま二人は壁にもたれるように廊下にへたり込んだ。
互いの肩にもたれあって肩で息をする二人。
「疲れたね・・・・」
「かなり・・・・」
「紗耶香達うまくいったかな・・・」
「・・絶対上手くいきますよ!」
「・・そうだね!うん!上手くいく!!」
「うちらはもうそれ祈るしかないですしね・・・」
「・・うん・・・」
「・・矢口せんぱぁい・・・」
「ん〜〜〜・・?」
「さっきの・・・」
「ん〜〜〜・・?」
「さっきの保田さん言ってたの・・」
「ぁ・・・・・」
「話してくれてもいんじゃないですか・・」
「・・・・・」
「真意ってなんですか・・・・」
「・・・・・」
「保田さんの役の部分に込められてるって・・なんですか・・・」
「・・っていうか!最悪な状況下に一度置かれた人間関係は、心理的にその反動で結びつきが強くなるから、なんか衝撃的なデッカイ事やりましょうよって言ってきたのはよっすぃーだよ!?」
「そ、それはそうですけど・・・」
「矢口の名誉の為に言っとくけど!単なる自分のエゴでこの企画やった訳じゃないからね!!後藤をいびってみたかったとか、そんな姑みたいなのじゃないからね矢口は!」
「じゃあなんですか・・」
- 588 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時10分33秒
「そりゃあさ・・・紗耶香にそやってお願いしたら、うんって言ってくれたかもしれないよ・・・?
でもさ・・・・それじゃあ紗耶香のホントの気持ちが分かんないじゃん・・・」
「ホントの気持ち?」
「・・・後藤の気持ち後藤の気持ちって言ってるけど、でも矢口だってそんな簡単に後藤を受け入れる自信ないもん・・・」
「・・・・・・」
「だから・・・だからちょっと・・・・・」
「ちょっとなんですか・・・・?」
「・・・・秘密・・・・」
「えぇ!?なんでですかぁ!!」
「矢口にしか分からない心理だから・・・・」
“・・今市井にとって一番大事な人は・・・やぐっちゃんだからさ・・・”
「そんな事言わないで話してくださいよ・・・だってあたし達その・・・付き合ってるわけだし・・
そんな隠し事とかなしですよ・・・」
「いやダメ!これは、ずっと紗耶香と一緒にいた矢口にしか分かんない気持ちなの!」
“お願いだから・・・そばにいて・・・・”
「なんですかそれ!なんかすっごい嫌〜な感じなんですけど!」
「嫌な感じって、、、付き合ってるからって何でもかんでもぜ〜〜んぶ話さなきゃいけないって事ないじゃん!よっすぃーだって過去に好きな人とかいたしょ!?それとか全部気持ちとかまで話せって言われたら話せる!?」
“ねぇ紗耶香ぁ?ベッドなんで買ってくれたの・・?”
“なんで、、って?”
「矢口さんが聞きたいなら話せますよ!?でも聞きたくないだろうから話さないだけです!」
「なっべ〜つに聞いてもいいぞオイラは!そんなんで妬いたりしないもん!」
- 589 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時12分03秒
“いやっだってほらっ一緒に住んでる訳じゃないんだし・・・あ、でも嬉しかったのはホントだよ!嬉しかったけど・・・なんでかなぁ・・って・・”
“、、覚えてないの?”
“ん・・?”
“ほら、やぐっちゃんさ、ちっちゃい頃に言ってたじゃん”
“何を??”
「じゃあ別に話してもいいですけど?」
「いやっ・・っていうか・・・いいじゃんかぁ紗耶香の事は色々と自分でも気持ちが難しくて説明し難い部分があるんだよぉ・・」
“小学生ん時さ、よく市井と一緒にベッドで昼寝してたの覚えてる?”
“うんうん”
“その時にさ、やぐっちゃんがよく言って事あったじゃん。、、マジで覚えてないの??”
“え・・あ・・え〜と・・・ちょっちょっと待って思い出す・・・・ん〜と・・・・”
“・・・なんかあれだね、市井は凄いさ、はっきり記憶に残ってるけど、やぐっちゃんに取っちゃそんな大した事じゃなかったのかな・・”
“えっ!?やっそんな訳ないよ!現に凄い嬉しかったしっそのっ矢口がただ単に記憶力悪いだけだよ!”
“でもなんか、、ちょい悲しいなぁ〜・・”
“あ、いやっ・・・っていうか・・・なんでだぁ・・・?”
“思い出って儚いものだよね・・・”
“ちょっちょっとさやりんしょげるなよぉ・・・”
“ど〜〜せ市井なんてその程度なんだよな〜〜〜〜”
“いやそんな事ないって!!”
“ハハッうそうそ、結構昔の事だもんね。忘れててもしょうがないかも”
“も〜〜なんだよぉ!矢口をからかうなぁ!!”
- 590 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時12分37秒
“ごめんごめん(笑)、、っつーか、なんだと思ってたの?もしかして市井がえっちぃ事考えて買ったとでも思った?(笑)”
“い、いやそんな事ないけどそのっ”
“あ〜違うか、えっちぃ事考えてたのはやぐっちゃんか”
“バッ矢口はそんな事全然考えてないよ!!”
“ふぅ〜ん”
“なんだよ!信用してないな!!”
“まぁどっちでもいいけどね〜”
“ホントだってば!”
“分かった分かった(笑)”
“、、で?矢口なんて言ったの??”
“ああえっとね、、、
矢口もっとおっっきぃぃベッドでさやりんと一緒にお昼寝したいなっ
って、、覚えてない?”
“・・・・そう言えばそんな事言ったような・・・”
“なんだ忘れてたのか〜、、しょっちゅう言ってたんだよ?”
“へぇ〜・・だからなんだか凄い嬉しかったのかなぁ、、っていうか・・・・
覚えてて・・くれたんだぁ・・・”
- 591 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時14分16秒
「、、、もういいですよ!結局矢口先輩はただ単に市井先輩の事引きづってるだけじゃないですか・・・」
「あ・・よっすぃー・・・?スネちゃ・・やだよ・・・?」
「実際そんな・・市井先輩に勝てる自信とか無いし・・・・今日改めて告白して、やっぱこの先輩には適わないって思ったし・・・
そんな人とずっと一緒にいた矢口先輩の心・・・あたしなんかが動かせるわけないし・・・・」
「やっちょっ・・・よっすぃーもしかして泣いてる・・・?」
「泣いてませんよ!・・ズッ・・・」
「・・・・ちゃんと・・よっすぃーの事好きだよ・・?」
「そんなの・・言葉ではなんとでも言えるじゃないですか・・・本当の気持ちなんて・・本人にしか分からない・・・矢口さんの言う通りですよね・・」
「いやそういうつもりで言ったんじゃないんだけど・・・・」
「・・・・ズッ・・」
「じゃあ・・・こう言ったら信じてくれるかな・・・」
「・・・・?」
矢口はそう言うと、よっすぃーの腕を抱きしめて、そっと顔を埋め、、、
「・・お願いだから・・・そばにいて・・・」
「へ・・・」
心臓がバクバクと音を立てる。よっすいーの鼓動も凄い早くて、、。
- 592 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時15分44秒
「・・ちょんまげ・・・」
「・・・・一瞬クラッときたのに・・・なんでそこでふざけちゃうんですか・・・・(笑)」
目を擦りながら笑うよっすぃー。
「いや・・・矢口にはやっぱ・・・無理みたい・・・」
そっか、自分で言って初めて分かる、この気持ち。
一人が寂しいとか、そういう意味じゃないんだ。
やっと、紗耶香の気持ちが分かった。
「でも先輩らしいですけどね」
「お、嬉しい事言ってくれた!ご褒美!」
チュッ
「・・・・・・・」
「・・よっすぃーこんなんで照れないでよ!!矢口の方が恥かしくなっちゃうじゃんか!!」
軽くキスをしただけなのに赤面中のよっすぃー。
全くもぉ〜可愛いなぁこいつ(笑)
「先輩結構へ〜きにこういう事しますよね・・・」
「そう?これでもかなりドキドキしてるよ・・」
「そうかなぁ・・なんか妙〜〜に慣れてる感じするっていうか・・・“キスくらい”みたいなそういう・・・・
・・・・・市井先輩とドコまでいってたんですか・・・・?」
「は!?」
- 593 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時16分40秒
- 「いや聞いた事無かったから・・・・」
「えーと・・・・・んーと・・・・・
・・・・・っていうかもう外真っ暗だよ帰んないとヤバイって!!」
「・・やっぱそうなのか・・・
・・・今日は先輩んち泊まってきますよ」
「え、えぇ!?!?」
「・・・市井先輩とした回数埋めるまで帰らない・・・」
「やっちょっなななに言ってんのよっすぃー・・・そんなアダルトなだだっ子聞いた事ないよ・・・・別にそんな焦ってする事じゃな、ないじゃん・・・」
「なんでそんな動揺してるんですか。市井先輩とそういう事いっぱいしたんなら慣れてるんじゃないんですか?あ、もしかしてそんな回数埋まるまでしたら一晩じゃすまないよとかそういう問題ですか?」
「いやよっすぃー何キレてんのってば・・・や、やぐちと紗耶香はその・・・・」
「そのなんですか」
「・・・・・事故・・みたいな感じでその・・・・・一回しただけ・・・だよ・・・・・」
「うそですよ!半同棲みたいのしてたって言ってたじゃないですか!」
「・・ホントなんだってば・・・・」
よっすぃーに話したそれは事実。
実際恋人同士になったからと言って何がどう違うかと言えば、スキンシップの形と感情移入が違うだけだ。
ぶっちゃけ、寝るか寝ないか、肉体関係を持つか持たないかってとこだろう。
でも実は矢口、結局紗耶香とは付き合いだしてからもそこまでしなかったんだ。
- 594 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時17分17秒
- なんでかなって自分でも思ったけど、、、多分無意識のうちに防衛本能働かせていたんだと思う。
こうなる事をどっかで予測してたからだろう。
紗耶香も自分の気持ちが曖昧である事を分かっていたから、自分から矢口を求めてきたりとかはなかった。
そう、結局矢口と紗耶香は、あの晩お互いの気持ちに素直になったのだけど、
だからと言って何が変わったのかと言うと別にこれと言って大きな事はなくて、(以前よか大胆矢口だったけど)結構拍子抜けではあった。
いや拍子抜けだったのは紗耶香の方だろう。
矢口は紗耶香の気持ちが少しでも矢口に向いててくれた事で満足で、安心できて、それ以上の事は望まなかったんだ。
「・・じゃあその一回の事故って・・」
「えと・・彼氏に振られてね・・・・それでちょっと・・・矢口おかしくなってて・・・・
でもその時は紗耶香にあったのは恋愛感情じゃなかったよ・・・。紗耶香も気持ちはっきりしてなかったらしいし・・・・
だからなんていうのかな・・・その・・そういう意味で愛し合う行為とかそんなのとちょっと違ったから・・・・
・・・って何言わせるんだよ!!もう!恥ずかしいじゃんか!!」
「・・そうなんだ・・・・」
「安心した・・?」
「・・ちょっと」
- 595 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時18分04秒
紗耶香とは、確かにそういう事はしなかった。
でも、そうじゃなくてもいい思い出はいっぱい出来た。
紗耶香と付き合ってる時は、矢口、紗耶香とはいつ何処でも離れたくなくて、紗耶香のバスケの合間を縫っては、学校で人知れずコッソリと、密会なるものをしていた。
コソコソしていたのは、バレたら矢口が嫌な思いするからっていう紗耶香の優しさからだ。
でも家に帰れば会えるものを、わざわざそんな状況の中、学校で会っていたのは、矢口の希望というか願望というか欲望みたいので、、、。
みんながいるこの校舎の中で、独占感みたいなのを味わいたいっていう、そういう願望があった。
なんとなく、学校での愛の確かめの方が説得力を感じたから。
紗耶香は矢口のもんだぁぁぁいいだろ〜〜〜っていう(笑)
でも紗耶香も楽しんでくれてたはずだ。
秘密の恋っていうか、、なんかそんな感じが凄くドキドキして楽しかった。
会う場所はその日によって違くて、校舎裏だったり音楽室だったり更衣室だったり、、時には止むを得なくトイレなんて時もあった(笑)
毎回矢口が場所を指定して、メールを打つ。
メール送ったら、紗耶香はバスケの途中でも投げ出して、すぐに来てくれた。
たまにメールに気付かれない時もあるんだけど・・
3分以内とまではいかないけど、でも速攻で飛んできてくれるそれは、矢口が好きになったお助けマン紗耶香そのものだった。
困っている事は特にない。
けどもお願い事はある。
いつもの事なんだけど、毎回照れてモジモジしちゃって中々言えなくて、、、。
紗耶香のブレザーの裾掴んで、俯きながら、
「チューしてっ・・?」
正義のヒーローになりきった紗耶香は、「かしこまりました・・」とか言いながら顔を近付ける。
それじゃ正義のヒーローじゃなくて付き人だよって笑っちゃって、上手くキス出来ない時とかあって、、(笑)
とにかく本当に本当に楽しかった。
本当に本当にいい思い出だ。
- 596 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時18分52秒
結局、矢口の物語の最後は、こうだったんだ。
正義のヒーローは役目を終え星に帰っていってしまった。
弱々しく空に手を振り、俯いた矢口。
肩を落としながらゆっくりと顔をあげると、、
矢口の目の前には、いつも傍にいた彼が、そこにいた。
マントもマスクもつけてない、眼鏡をかけていてどっか頼り気のない彼。
でも、何故か凄く落ち着く彼。
彼はちょっと恥かしそうに笑って、そして手を差し出した。
矢口は勿論、満面の笑みでその手を握った。
- 597 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時27分44秒
「じゃあ、よっすぃー今日はお疲れさん!紗耶香とごっつぁんがどうなったかは、後で多分紗耶香知らせてくれると思うから、上手くいく事祈ってようね。それじゃばいばい!」
「何言ってんですか先輩んち行きますよ」
「はぁ!?あれマ、マジで言ってたの・・?キミ・・・・」
「マジですよ」
「な、何もそんな焦ってなくなるもんじゃないから矢口は・・」
「・・・だってなんか・・まだ先輩の中に市井先輩がいそうで不安だから・・・
・・・早く自分のものにしちゃいたい・・・・・・」
「・・・・・・」
そして新たに現れたヒーローは矢口のハートをガッチリキャッチして離しそうにない。
そんな強引なヒーローが今は大好きなんだけども♪
〜Yaguchi's valentine story
- 598 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)07時42分14秒
- うおっこれも600超えるなぁ・・・・
なんで俺書くとこんな長くなるんだろ・・・・・
なんか、ホントはもっと削ったりくっつけたりして文章を綺麗に補修してから載せようと思ってたんですが(ゴチャゴチャしすぎてるから)、、
結局無修正(ピクッ)で載せました。。
もう、じゃんじゃん進ませます。
えと、ヤッスーが指摘してる、矢口が計画した企画の真意ってやつですが、、あえてきちんと明かさずにストーリー閉じました。
ヒントはあちこちでさらしてます。それに、矢口の気持ちになりきれば、、分かるかと・・・
というか簡単かも知れないです。
えぇ〜〜、そして察しの通り、ま〜だ!続きます・・・
大きな伏線残したままですからね。
勿論最後はいちごまです。
けどその前にやぐよしの出会いのくだりをちょこっとだけ載せとこうかなって思ってます。
あ、でも載せないかも。どうしよっかな。
あと、さやまり大好きでやぐよし嫌いって人、ごめんなさい・・。この話当初はさやまり一切くっ付けないつもりだったんだけど、途中で矢口に情が移りました・・(ニガワラ
- 599 名前:Oー150 投稿日:2001年07月01日(日)08時04分11秒
- あ・・・っていうかヒントどころかはっきり心情明かしてる部分があった・・・
やっぱ補修すべきだった・・・まぁいいや・・
- 600 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月01日(日)08時58分48秒
- やっぱり作者さんは最高だyo!!!
いちごまも楽しみにしてるyo!
でもほんとは、さやまりがよかったなー・・・。(ぼそっ)
- 601 名前:1496 投稿日:2001年07月02日(月)02時58分56秒
- う〜ん更新順調に行ってますね。ご苦労様です。
>やっぱ補修すべきだった・・・まぁいいや・・
いやいや、遠慮なさらずに補修&補填して下さい。
何故ならオイラの答えが合ってるか?気になる〜〜〜
もし本文に入らないなら○○○番に答え有りと…でも良いので<問題集みたい(笑)
やぐよし、さやまり、いちごま!可愛いっす。
で、よしごまの「友情秘話」も登場して貰えると完璧かな!?(希望)
スポーツ恋愛物?です(いちごま): O-150さん
サイコー!
- 602 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月02日(月)04時47分56秒
- 長い更新ご苦労様でした。
最後の締めのいちごま、楽しみにしています。
- 603 名前:まめ 投稿日:2001年07月04日(水)10時17分21秒
- 最初から読んでます。もうじき終わりだと思うと寂しい・・
でも続き見たい!!とにかくO-150さん最高です!!
楽しみにしてますんで頑張って下さい!!
- 604 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月08日(日)00時41分31秒
- いや〜更新していた。
いよいよラストですね。いちごま楽しみにしています。
途中、デビル矢口でビックリしましたが
最後はハッピーエンドになりそうで?安心しました。
- 605 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月08日(日)23時24分26秒
- ラスト、めちゃめちゃ楽しみにしてます。
- 606 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月09日(月)10時01分36秒
- 最高の一言だ!
- 607 名前:Oー150 投稿日:2001年07月11日(水)05時23分14秒
- やぐよし、はしょっても良さげな雰囲気なのでやめます(w
あんま人気ないのかなぁ・・・僕は普通に好きなんですが・・・
まぁいいや。
いちごま行きます。もう、迷ってる暇はナイ。
>>600
ありがとうございますホントに・・・書いて良かったと思えます。。
さやまり、、実は結構「この話別に書けば二人くっ付けれたよなぁ・・」とか思ったりもしました(ニガワラ
ちょっと話を良い感じに膨らませすぎた・・
>>601
ありがとうございます!
う〜ん、、矢口の心情ですが、、単純に受け止めて下さい。そんな深くないです。
で、やっぱ本文以外でタネ明かししたくないんで、それぞれで解釈して頂ければと思ってます。
とにかくヤッスーにしてもらった事が全てです。
>>602
ホントに・・こんな長くなると思ってませんでした・・・・
ちょっと・・自分で思ってたよりさやまり好きだったみたいで・・・・
続きのいちごま、頑張ります。
>>603
ありがうございます!
精神最悪な状況で書いたんでそんな風に言って頂けると思ってなかったんで、滅茶苦茶嬉しいです。
なので、投げ出さずに続き行きます。実はまた放棄病?第二波が来てまして、本気でやばかった・・。
>>604
デビル矢口は書いてて結構楽しかったです(w
難しかったけど。。
いよいよいよいよラストです。そういうしてるうちに夏真っ盛りです・・・・・。
いそげっいそげっ
>>605
もう、そう言われちゃったら僕は頑張りますよ(w
そして頑張りました。まだ終わんないけど、、。
続きどぞ!
>>606
ありがとうございますです・・(涙
書いて良かった・・・
って事で行きます。
先に言っておこ・・・
いちごまは実はさやまりより先に話進んでたんですが、載せ渋っていたのには訳はありまして、、
内容変更しなきゃなと思ったのですが、やはりこれを変えてしまったら全部変えなくきゃいけないって感じなので、
悩みまくった結果、変えずにそのまま行く事にしました。
いちごまの定義と受け止めて頂ければ幸いです。僕が以前書くとか言ってたものをここで強引に使ってます。
何の事かは読めば分かるかと・・・。
- 608 名前:Oー150 投稿日:2001年07月11日(水)05時49分27秒
- ばれんたいん
「ハァッハァッハァッ・・んっ・・・ハァッハァッ・・・」
ガチャガチャと、うるさい位携帯ストラップが鞄に擦れあう音がする。
そして、タッタッタッというローファーと地面のぶつかり合う足音。大きく乱れてる呼吸音。
それは自分一人のもので、もう日も暮れかかってるこの住宅街に人影は殆どない。
その中を、後藤は何故か懸命に走り抜けてた。
“・・・・・・変わらず、やぐっちゃんと付き合ってたよ・・”
別に、絶望感に浸らせる程の好きになった要因とか、思い出だとか、そんなものはない。
ただ無条件に惹きつけられて、、、
“昭栄学園バスケ部キャプテン、市井紗耶香。宜しくねっ”
無条件にどうしようもないほどはまってしまっただけ。
理由なんか、自分じゃ分かんない。
確かにバスケをしてる先輩が一番好きだけど、、、
でもねいちーちゃん、
後藤はいちーちゃんの全部が好きなんだ。
ううん、好きだったんだ・・・。
- 609 名前:Oー150 投稿日:2001年07月11日(水)05時50分49秒
息を切らせてようやく立ち止まったそこは、見覚えのある公園だった。
はぁはぁと息を吐きながら、ふらふらとベンチに向かっていく。
学校のダサイ指定鞄をドサッとベンチに置いて、そしてゆっくりと自分も腰を落とした。
前かがみになって、下がった紺のハイソックスを上げる。
鞄を抱きしめるように抱えて、地面に向かって息を吐きながら、暫くそのままうずくまっていた。
“そう。目指すは全国制覇!!スラムダンクみたいでしょ?(笑)”
いちーちゃんの夢、後藤が適えてももう意味ないのかな・・・・
そう思った瞬間、ビクッと体が跳ねた。
―――!?
ダムッダムッダムッ
反射的に反応してしまう耳に馴染んだ音。
凄い勢いで顔を上げると、目の前でボールをついている中学生くらいの男の子の姿があった。
視線の先には、ゴールリング。
それを見て、ようやく情景が重なった。
見覚えがあって当然だ。
―――そっかここ二度目にいちーちゃんと出会った場所だ・・。
・・ここで偶然に会わなかったら絶対進展しなかっただろーなぁ・・・
いちーちゃんの事も、自然と忘れてったよね・・・
じゃあここは嫌な思い出の場所なんだ・・・
なんでだろう、それなのになんか胸がきゅんきゅんする・・・
あの時の気持ち、思い出しちゃうよ・・・
視界が薄れる程の土砂降りの雨。周りの音を一切遮断するかのような、もの凄い雨音。
体を打ち付ける雨のせいで、気持ち悪いくらい制服もベッチャベチャで、、
なのに、いちーちゃんはそんな雨にも気付かないかのように、真っ直ぐにゴールリングを見つめて、何度も何度もシュートを繰り返していた。
情景全てを壊すかのようにドドドッと振る土砂降りの中、いちーちゃんの周りだけは、まるで雨がいちーちゃんの引き立て役みたいに、綺麗にその雰囲気を作り上げていた。
ボールと雨と一体化して、流れるようなフォームから繰り出されるそれは、本当に綺麗だった。
そして後藤は、電流に打たれたみたいにその場を動けなくなっちゃったんだ。
その後、雷の中いちーちゃんにギュッと手を握られて、二人、全力で走った。
周りの音が雨と雷に遮断されて、なんだか二人だけの世界って感じで、凄くドキドキしたの覚えてる。
今考えると、その時既に後藤はいちーちゃんにはまっちゃってたんだよね。
- 610 名前:Oー150 投稿日:2001年07月11日(水)05時52分28秒
徐にその時の右手を目の前に持ってきて、ぼーっと見つめていた。
「アハッ・・・後藤重症だなぁ・・・・」
我に返ってぱっと手を降ろし、自嘲気味に笑ってみる。
目の前の男の子のプレーが視界に入るが、全く意識がそっちにいかない。
いちーちゃんのプレーみちゃったら・・もう誰のも見れないよ・・・・
虚ろな目で、ただその場に何時間もぼーっとしていた。
途中、その男の子も帰ったみたいだけど、気付かなかった。
辺りはもう真っ暗で、街灯が付いている。
今日の朝までは、当たり前の情景が輝いて見えたのに、今はどんよりと濁って見える。
今日は自分でも驚くくらい早起きして、鼻歌を歌いながら冷蔵庫を開け、取り出したそれを丁寧にラッピングしていた。
勿論、大好きな人にあげるチョコレート。
想いをありったけ詰めて、ちょっと照れちゃうと思うけど、“好きです”って改まってもう一回ちゃんと言って、手渡すつもりだった。
「・・・・・・」
鞄のチャックを開けて、渡すつもりだったそれを取り出してみる。
今全力で走ったから、ちょっとラッピングが乱れてる・・。
- 611 名前:Oー150 投稿日:2001年07月11日(水)05時58分37秒
全ては、ダルイ授業が終わった後の放課後から始まった。
いちーちゃんの告白大会とかが開かれるって噂を聞いたから、やっぱどんな子が来るか気になるし、すんごい可愛い子ばっかりだったりしたらどうしようとか思っちゃって、コッソリ様子を見に行った。
一応いちーちゃんは後藤と付き合ってた訳だし、告白されたからって何か変わるとは思えないけど、
でもやっぱり心配ではあった。
本当は、全員が告白し終わったら、後藤も紛れて最後にコンコンってノックして、モジモジしながら入っていって、“あたし、前から先輩の事が、、”とかふざけてやろうと思ってたんだけど・・
後藤のそんな悪戯心は、向かった先で速攻で打ち砕かれた。
そこには、よっすぃーがいたんだ。
それを見て、ずっと避けられてた意味を理解した瞬間、ズンッて心が重くなった・・。
そっからは、あんまり覚えてない・・。
ただ、いちーちゃんと矢口さんのやり取りははっきり覚えてて、それでもう視界がグニャグニャ歪んで訳が分からなくなった。
思い出そうと思えば二人のやり取りは多分はっきり思い出せる。
でももう、考えたくない。忘れちゃいたい。
手にしていたチョコをぼーっと見つめて、
―――どうせもう意味ないし・・・食べちゃおっかな・・・・
そう思って、ラッピングを解こうとした時だった。
「待った!!!」
- 612 名前:Oー150 投稿日:2001年07月11日(水)06時00分28秒
!?・・・・
振り向いた瞬間、瞳孔が開いて、ぶわっと涙が溢れてきた。
そこにいたのは、髪がちょっと乱れて息を切らせた、いちーちゃんだった。
ゆっくりと近づいてきて、後藤のすぐ側まで来た。
やっぱまだ泣いちゃうよ・・・・
もう大丈夫って思ったのに・・・・
「・・・何しに・・来たのさ・・・・」
俯いて、ぽつりと言った。
もう、顔合わせたくない・・。
「ハァッハァッ・・・・間に合って良かった・・・・・」
後藤の問いかけに答えず、前かがみになってハァハァと息を吐きながら、独り言みたいにいちーちゃんが言う。
「・・どうしてここだって分かったの・・・?」
「あぁ・・・石川が・・・」
「・・?」
そう言っていちーちゃんが向けた視線の先を見た。
後藤から離れた反対側の公園の入り口。
そこの側に立ってる標識の影に隠れるような怪しい姿で立っていたのは、梨華ちゃんだった。
付けられてたんだ・・・
後藤全力で走ってたから気付かなかった・・
でもどうして梨華ちゃんが・・・・・
まぁいいや・・なんかもうどうでもいい・・・
いちーちゃんは、多分梨華ちゃんにだと思うけど、なんかメール打って、梨華ちゃんは任務を果たしたからか小さく手を振って帰っていった。
そして二つ折りの携帯をパチンと閉じながら、後藤の持ってるのを指差し、
「それって・・・いちーにくれる・・つもりだったんだろ・・・?」
「・・・違うよ・・・」
「・・・・・・」
後藤の意味のないウソに、いちーちゃんが返事に困ってる。なんか言葉を捜してるみたい。
- 613 名前:Oー150 投稿日:2001年07月11日(水)06時02分01秒
きっと、一応慰めに来たんだ・・・
でも今更同情されたくないよ・・・
そんな事を思いながら、ゆっくりとベンチから立ち上がった。
そして少しづついちーちゃんから離れていって、鉄棒の所に移動した。
自分の胸辺りの高さの鉄棒を握って、上体を離したり近づけたりと体を揺らしながら、
ずっと、話そうと思ってたけどなんか恥かしくて話せなかった事を、どうせ最後だしと思って話し始めた。
「・・・ごとーね、ちっちゃい頃からずーっと何度も何度も見てる夢があるんだ」
いちーちゃんは目をパチクリさせながら、後藤の話に耳を傾けた。
「・・なんかね、中世のお姫様とかの舞踏会の夢なんだけど、、
それにね、ごとーが出てるの。
ただの舞踏会じゃなくて、、ほら、ディカプリオの映画でやってた、仮面舞踏会?っていうのらしくて、みんな仮面付けてるんだよね。
、、で勿論ごとーも仮面つけてて、なんか分かんないんだけどお姫様の格好してて、いっぱ―いいる綺麗なお姫様に紛れて一人で踊ってるの」
長くなる事を察したのか、いちーちゃんは話を聞き入りながらゆっくりと移動して、さっきまで後藤が座っていたベンチに部活の荷物が入ってる大きいバックを置いてから腰掛けた。
それを確認して、後藤も続ける。
「、、暫く踊ってたら突然音楽がやんで、シーンとなるのね。
でみんな一斉に同じ方向向きだして、ごとーもなんだろって思ってそっち向いたら、、
赤いじゅうたんを辿ってった階段上がったところに、映画のディカプリオがしてたみたいな、あんな格好した、王子様がいるんだ。
王子様は王様の横の立派な椅子に座ってるの。
でも、、なんでか分かんないけど、いつも顔がぼやけてはっきり見えないんだよね」
真剣な顔して、聞き入ってくれる。
想いが一瞬にしてぶり返してしまうから、いちーちゃんと視線を合わさないようにしながら話す。
- 614 名前:Oー150 投稿日:2001年07月11日(水)06時03分07秒
「・・でその王子様がね、ゆっくり立ち上がって、赤いじゅうたんの階段を降りてくるの。
みんななんか落ち着き無くソワソワして、王子様の事見てるのね。
ごとーもなんでか分かんないんだけど、すっごいドキドキしてその王子様見てるの。
王子様はゆっくりとお姫様の間掻き分けて、迷いもせずに真っ直ぐ歩き出すんだけど、
王子様が歩き出したら、お姫様達はさっとよけてって、歩くとこちゃんと道ができてくんだよね。
王子様が目の前にきたら、みんな一瞬凄いドキッとした顔して、、いや顔は見えないんだけどでもなんか凄い驚いてて、でも自分じゃないって分かったらすっごいシュンとしてよけてくのね。
王子様は一点しか見てないんだ。
もう一直線って感じで、真っ直ぐ一人のとこだけ見て、それに向かって歩いてくるの。
ゆっくり、ゆっくり、凄い熱くて、真剣な目で・・
で、ようやく立ち止まったと思ったら、、、
後藤の目の前なんだ。
王子様が真っ直ぐ見てた先にいたのは、後藤なんだよ。
後藤すっごい驚いて、ドキドキして、なんか分かんないけどモジモジしながら一人で困ってるんだよね(笑)
後藤と王子様は周りガーってお姫様達に囲まれてて、、、
殺気混じりの視線凄いビリビリ感じて、後藤なんか怖くてちっちゃくなっちゃって、肩すぼめて下向いてたのね。
そしたら急にふっと顎持ち上げられるの。
勿論、王子様に。
王子様ね、凄い真剣な真っ直ぐな目ぇして、後藤の事見つめたと思ったら、ふって力抜いて、ニコッて笑うんだ。
後藤ドッキーンてしちゃってもう、一瞬にして固まっちゃって、、(笑)
、、そいでね、王子様、いきなりすっごい優しい穏やかな顔して、
こう言うんだよ、、。
“ずっと待ってたんだよ・・・”
って・・・。
そう言いながら、後藤に手ぇ差し出すんだよ・・。
後藤その言葉聞いたら、なんか胸のあたりがきゅーんてなって、そしてなんでか分かんないけど涙ボロボロ出てきて、いつもみたいにしゃっくり止まんなくなっちゃうのね。
で、後藤もゆっくり手を差し出して、王子様の手を握ろうとするんだけど、、、、
・・・いつもそこで夢が終わっちゃうんだ・・」
話し終わった後、視線を落とした。
少しの沈黙の後、いちーちゃんは、、
「・・・・・・ふぅ〜ん・・・・・ずっと待ってた・・・ね・・・」
ポツリとそう言った。
- 615 名前:Oー150 投稿日:2001年07月11日(水)06時04分16秒
「そんな切ない夢を十年間くらい何度も見続けてるんだよ」
「・・・へぇ〜・・・・」
「でやっぱ最近も同じ夢見て、同じように手ぇ握る一歩手前で夢覚めちゃった」
「・・残念だね・・・・」
そう言ってるけど、なんだか他人事かのようにどっか素っ気無くて、口調は残念そうじゃない。
いちーちゃんがこういう風に言う時って、別に何か感想持ってるんだよね、、。
ホントの感想は、これ言ったら引き出せるかな。
「でもね」
「ん?」
「最近初めてね・・・・顔が・・・見えたんだ・・・」
「・・・ほ、ほぉ・・・」
「・・・勘のいいいちーちゃんはもう予想ついてると思うけど、、」
「・・・・・」
「そう、その王子様ね、いちーちゃんなの・・・」
- 616 名前:Oー150 投稿日:2001年07月11日(水)06時05分48秒
落ち着きなく揺らせていた体を止め、真っ直ぐにいちーちゃんを見ながらそう言った。
「・・・・・・」
でもいちーちゃんは視線を反らして、ちょっと首を掻いてから手を組んで上体を屈めた。
いちーちゃんの表情が髪に隠れる。
「いちーちゃんさ、こう思ってるしょ?」
「ほぇ?」
一瞬神妙な顔つきになって、その表情を隠したかと思ったら、今度はちょっと間の抜けた表情で顔を上げる。
なんか今日はやけにコロコロと表情が変わる。
動揺を隠してるっていうか、なんかそんな感じがする。
確かに動揺させるように話してるんだけど。
「王子の相手は、別に最初からいちーちゃんって決まってたんじゃなくて、たまたまいちーちゃんと付き合いだしたから、その王子の顔にいちーちゃんの顔が入っただけだって」
「・・・・・」
再び下を向いて、表情を隠した。
「そんな運命みたいな思い込みバカらしいって、そう思ってるしょ?」
「・・・・・」
「っていうか、この話も作り話だって思ってるかな。よく別れる間際に相手を引き止める為にしそうな話だもんね」
「・・・・・」
「ごめんね、信じろって方がバカだよね。っていうか本当だったとして、だから何って感じだよね・・・」
「「・・・・・・・」」
長い沈黙。
やっぱ・・言わなきゃ良かったな・・・・・
後悔が走った直後だった。
「・・・・・信じるよ・・」
「へ・・?」
「・・・・・信じるって・・・」
- 617 名前:Oー150 投稿日:2001年07月11日(水)06時07分47秒
「・・・・ほんと・・・?」
「・・・うん・・・・」
「・・なんで・・・?」
「なんで・・って・・・・いちーロマンチストだもん・・(笑)」
「・・うそだよ・・」
「うそって失礼だな(笑)・・バスケ選手なんて夢を一直線に追いかけてるような奴だもん、大抵の事は信じるよ。信じるものは救われるってね」
「そー・・なんだ・・・・・やっぱりごとぉいちーちゃんの事まだ全然分かってないね・・」
もう分かってようと分かってまいとどうでもいんだけど・・・。
いちーちゃんはまた返答を詰まらせて困っていた。
さっさと解放してあげよ・・・。
「だったら尚更、こんな話する後藤はズルイよね・・・ごめんねなんか・・・別にだからいちーちゃんと後藤は運命なんだから別れるのは間違ってるとかそんな事言いたかったわけじゃないよ・・?
ただどうしても・・聞いて欲しかった・・・
だってこんな話恥かしくて誰にも出来ないし・・(笑)」
「・・・・・」
「・・・もう、話できたから満足だよっ。聞いてくれてありがとー。ごとぉ、帰るねっ」
勢いよくそう言って、タッと走りかけた。
「ちょっ、、!」
「あ、大丈夫だよ、いちーちゃん卒業しちゃえばごとーと会う事も無くなるし、もうなんも接点無くなるから。ごとー付きまとったりしないから安心して。じゃーいちーちゃんバスケ選手の夢適えてね、もしすっご〜い有名になったら、もしかしたらちょこっとだけ誰かに自慢するかもしれないけど(笑)、でも迷惑は絶対掛けないようにするからっ。、、じゃね、ばいばい・・」
踵を返して一方的に捲くし立てて、走り出した。
「ちょっ待てって!」
もう、いちーちゃんの声なんか聞きたくない・・!!
涙が溢れて視界が曇る。
もう、言うべき事は全部言った。思い残す事もない。
これ以上未練を持ちたくないし、これ以上いちーちゃんの声を聞いたら忘れられなくなる。
そう思ったから、全力で走りだしたのに・・・
- 618 名前:Oー150 投稿日:2001年07月11日(水)06時11分14秒
「待てったら!!」
「やだ離してよ!!ンック・・・」
やっぱバスケやってるいちーちゃんの足には適わなくて、公園の入り口辺りであっさりと捕まってしまった。
「ちょっと市井の話を聞けよ!!」
「ンック・・ンッ・・・ヒック・・・」
「もーなんなんだよ・・・・一人で喋り捲って去ってくなよ・・・
ここまで全力で追いかけてきた市井のこの汗はなんなんだって事になるじゃんか・・・」
「も、いいよ・・・ンック・・最後に優しくするのとかやめてよ・・・
そんなの何の意味も無いよ・・・いちーちゃんの自己満じゃん・・・・ンッヒック・・・」
「ちーがうよ市井そこまで自己中じゃないってば・・・」
「じゃあ何さ・・ンッ・・ック」
「何さって・・だからさっきも言っただろ?いちーはごとーの事・・、、」
「信じないもん!!」
「だからなんでだよ・・・」
「いちーちゃんがごとーの事好きになる訳ないもん!!
夢の中でだっていちーちゃんごとーの手握ってくれないじゃん!!」
なんだかもう錯乱状態で訳分かんなくて、夢と現実がゴッチャになってる。
「・・いやっそんな事言われても・・・・握ろうとしてたのは事実な訳だし・・・いちーは何も・・・・」
「もうごとー分かっちゃったんだ・・ック・・
あの夢はね、これから現れる王子様はごとーの事なんか好きじゃないから、だからその優しい雰囲気とか甘い言葉とかに騙されちゃダメだよっていう、そういう暗示だったんだって・・ヒック・・・ちっちゃい頃からずっとずっと危険信号送られてきてたのに・・それ気付かなかったごとーがバカだったんだもん・・・ンック」
「後藤それは違うよ・・・」
「だって、絶対・・絶対ごとー・・・ンッ矢口さんに太刀打ち出来ないもん・・・・」
「太刀打ち・・?」
「ごとーよりずっとずっといちーちゃんの事いっぱい知ってて、いっぱいいっぱい一緒にいた矢口さんに、勝てる訳ないもん・・・・」
- 619 名前:Oー150 投稿日:2001年07月11日(水)06時12分04秒
「あ・・のなぁ・・・勝つとか負けるとか・・・・・勝手に試合すんなよホントに・・・・
やぐっちゃんと後藤は、市井の中ではなんつーか、リングが違うんだよ・・・」
「・・意味分かんない・・・・ズッ・・」
「後藤だって吉澤と市井はリング違うだろ?」
「ごとーとよっすぃーは付き合ったりとかないもん・・・・清い友達関係だもん・・」
「・・いちーとやぐっちゃんは清くないっつーのかよ・・・・」
「・・そういう訳じゃないけど・・でもだって付き合ってたんでしょ・・?どーせもう色んな事してきたんでしょ・・・・・友達ではないじゃん・・・」
「・・・・それは・・・」
「そんなんでごとーいちーちゃんと付き合えないもん・・・・
いちーちゃんにその・・・・ぁぃ・・されてる自信とか全然ないのに・・付き合えないよ・・・・
いつも不安で、いちーちゃんまた矢口さんとこいっちゃうんじゃないかって思って・・不安すぎて・・そんなんで一緒にいても辛いだけだもん・・・・」
「・・・・ハァッ・・・」
「なんで溜息つくのさ!!いちーちゃんにしてみたらくだらない事でウジウジ考えやがってって感じかもしれないけど、でもだって証明できる!?
ごとーの事本気で・・・ぁぃ・・してますって証明出来る!?」
「・・・なんでそこんとこだけちっちゃくなるの・・?(笑)」
「真剣に話してるんだから茶化さないでよ!!」
「ごめんごめん・・・・
えっと・・・、、」
「あ、“これなら信じるだろ・・”とか言ってキスしたってダメだからね・・。
いちーちゃんキスくらい何でもなさそうだもん・・」
「おい・・・市井ってそんなキャラかよ・・・。
・・・っていうかくだらない事でウジウジしやがってなんて思ってないよ。
後藤の事不安にさせちゃって悪かったなと思って・・。
市井バスケばっかやってたし、後藤と話したりとか、コミュニケーション全く取らないうちに付き合いだしたもんね。
・・市井が悪かった。ちゃんと話すべきだった」
「話すって何をさ・・・ズッ・・」
そこまで言うと、いちーちゃんは掴んでいた後藤の腕を離し、、
「んっと・・・ゴホンッ・・・じゃーここらで市井もタネ明かしすっかな」
- 620 名前:Oー150 投稿日:2001年07月11日(水)06時25分18秒
「・・・・?」
タネ明かし・・・?
「・・まず先に言っておきたいのは、やぐっちゃんと吉澤のさっきのあれね、
あれ全部狂言だよ」
「・・狂言て・・・
・・・・・何・・?」
「おい・・・・・。
あー・・・つまり、、芝居。演技。ウソって事」
「ウソ・・?ウソって・・えっじゃあ矢口さんのあのいちーちゃんと付き合ってたとか言うあれもウソ!?」
「あ・・・・それは・・・・・・・マジ・・・・・」
「・・・なんだ・・・・・・
じゃあ何さ・・・」
一瞬視界がパァッと明るくなったのに、またすぐ曇りに戻ってしまった。
でもその後、いちーちゃんはよっすぃーと矢口さんがなんでそんな事をわざわざしたかについて分かり易く説明してくれた。
よっすぃーは今でも後藤の事親友だと思ってくれてる事。
いちーちゃんに対する感情は憧れで、今は矢口さんと付き合ってるって事。
なんかもう、いきなりあれこれ思いもしなかった事言われて混乱中なんだけど・・
でもやっぱ結局二人は何がしたかったのかいまいち分かんない。
「・・・矢口さんていちーちゃんの事もよっすぃーの事も好きなんでしょ?
それってよっすぃかわいそうだよ・・・」
「あーそれも違う。だからそれも、演技だって。
もうやぐっちゃん市井の事ホントに友達としか見てないよ。
そう言ってた。
それになんか吉澤とラブラブだもん。大丈夫だよ」
「・・そんな簡単に気持ちって変わるものかな・・」
「う〜ん・・・まぁ完全にはどうか分かんないけど・・・
でも元々市井達は単なる親友だったんだよ?
ちゃんと恋人同士って関係になった期間だってほんの数ヶ月だもん。
それに後藤はやぐっちゃんが市井に未練が残ってたら気持ち揺らぐ訳?」
「ううん・・矢口さんがどう思おうといちーちゃんへの気持ちは変わんないよ・・」
「じゃあそんな事責めてもしょうがないじゃん。
過去に執着して現在と未来の幸せ逃したってしょうがないじゃん」
- 621 名前:Oー150 投稿日:2001年07月11日(水)06時27分11秒
「後藤が心配なのは矢口さんの気持ちじゃなくて、いちーちゃんの気持ちだよ・・・」
「・・・・や、まぁ聞けよ・・。
でね、そんな時に思いついたのが、今回の企画らしい。
四人仲良くやる為には、どっちにしろやぐっちゃんと市井が付き合ってた事を、まずは後藤に知らせる必要がある。
で、知ったうえで、受け入れてもらう必要がある」
「そんなの、、」
「そんなの無理だよな。うんだから、わざわざあんな芝居までしたんだよ。
もうこれはホントにね、全部市井が悪いんだ・・
市井が先に全部後藤に話してれば、吉澤とやぐっちゃんを悩ませずにすんだんだ・・
ホント二人には悪い事したと思ってるし、今回のこれもホントに感謝してる・・・
今回のこれは、市井と後藤の関係を、揺ぎ無い絶対なものにする為に、二人が自分ら犠牲にしてやってくれたもんなんだよ」
「・・揺ぎ無い絶対なもの・・・?」
「うん。そして、そうなる事を望むよっていうやぐっちゃんの後藤に対する気持ちだよ」
「・・後藤・・への・・・・」
「そうだよ。やぐっちゃんは後藤とも仲良くしたいと思ってる。
四人仲良くやってきたいって。
それが吉澤のためでもあるし、市井のためでもある。
みんな幸せでいて欲しいって。
それを一番望むってさ。いい子だなぁ・・・」
「・・・いちーちゃんノロケてる・・・」
「ゴホンッ・・いやだから、まぁなんつーか、とにかく二人はやるだけの事してくれた。
最後にビシッ!!っとキメるおいしい役は市井な訳」
「・・・・やるだけの事って・・散々後藤の事傷つけといて・・・今更何をどうできるっていうのさ・・・・
もう後藤誰も信じれないよ・・・・
結局みんなただ自分の自己満の為に後藤を利用したんじゃん・・・」
- 622 名前:Oー150 投稿日:2001年07月11日(水)06時27分47秒
「・・こういう形を取った事は、悪かったと思ってるけど、他に思いつかなかったんだって・・。
まぁいいや、とにかく市井に託された最後の閉めをすれば済む事だ。
それが後藤の言ってる証明でもあるし、、。
、、、あんね後藤、後藤は、市井が後藤の事好きになんかなる訳ないって言ったよね?市井がやぐっちゃんに振られたから、どうせその穴埋めだって」
「うん・・・」
「違うよ」
「違わないもん・・」
「違う。違うって事、さっき後藤が自分で証明してくれたじゃん」
「え・・?」
「夢の話。あれがその証明だよ」
「何言ってんのいちーちゃん・・そんなの証明にならないよ・・」
「いやなるよ。だって後藤のその夢は、後藤の願望じゃない」
「・・・?」
「市井の願望だから」
- 623 名前:Oー150 投稿日:2001年07月11日(水)06時28分38秒
突然、いちーちゃんは今までに見た事もないくらい真剣な顔つきになった。
「・・・・・」
「市井の願望が、後藤の夢となって届いた」
はっきりと丁寧な口調で、真剣な眼差しで訴えるように言ってくる。
「・・・・・・ははっ・・嬉しいなぁ・・・」
後藤をからかってる・・・?
「あ、信じてないな」
「当たり前だよ・・・」
「なんで当たり前なわけ?」
「だってそうじゃん。後藤がその夢見出したのちっちゃい頃だよ?
いちーちゃんがその頃から後藤の事好きだったとかなら分かるけどさ。
違うんだから、そんな話訳分かんないじゃん」
「違うんだから、、、ってなんで言い切れんの?」
「え・・・だってずっと好きだったって事になるんだよ・・?そんな訳・・ないじゃん」
「もし市井がずっと・・・
・・・ずっと後藤の事好きだったとしたら・・・?」
「な・・・何言ってんのいちーちゃん・・・別にいいよ・・・
そこまで話作ってくれなくても・・・・・」
「作ってないよ」
後藤の半笑いの言葉に、表情一つ変えずに即答してくる。
「い・・いちーちゃん・・・?」
「ずっと・・・ずっと待ってた・・・・・」
吸い込まれるような真っ直ぐな目で、いちーちゃんはそう言った。
夢の中の、王子様と全く同じ、あの強く、熱い視線で・・・・。
ばれんたいん
- 624 名前:Oー150 投稿日:2001年07月11日(水)06時36分21秒
- ネミィーヨー…
また徹夜か・・・
- 625 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月11日(水)07時00分22秒
- お連れ様です。
朝から幸せな気分になれました。(笑)
いちごま、めちゃめちゃサイコーです!!
- 626 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月11日(水)16時50分20秒
- "ずっとあなたが好きだった”ってか。
どこを読んでも背筋がゾクゾクする。
- 627 名前:mo-na 投稿日:2001年07月12日(木)02時09分35秒
- お!更新ですね。待ってましたよ
市井ちゃんごっちんを頼みましたよ。
『市井王子』後藤の手をちゃんと掴んで放しちゃダメダメ
- 628 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月12日(木)03時12分08秒
- 短編の方との連続更新お疲れさまです。
最後の市井のタネ明かしを楽しみにしております。
- 629 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月15日(日)18時06分27秒
- いちーちゃんと一緒で更新ずーっと待ってました!!
最高っス!!頑張って下さい。
最後のいちーちゃんの最後の愛の告白期待大です。
- 630 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)05時35分27秒
- んんん・・終わらなかった・・・
なんか長いんで、二回、三回・・?にやっぱ分けます。
>>625
朝から読んでテンション狂いませんでした?(シンパイ
でも幸せになって頂けたなら良かったです。甘い部分ないのに・・なんでかな・・?
>>626
ずっと系に弱いんです僕(w
キチッと読者さんのツボを抑えれるように頑張ります。
>>627
ヽ^∀^ノ<ま、まかせといて・・ははは・・
市井王子、これどーしようか迷った部分なんですが・・
迷った末、やっぱり市井王子じゃなきゃって思って(w
>>628
最後のタネ明かし、ここまで長かったなぁ・・・
何ヶ月タネを隠してた事か・・・
一気に放出します
>>629
お待たせしてすいません!待って頂けて嬉しいっす。
そして、ありがとうございますホントに・・
それではいちーちゃんの最後の愛の告白、すた〜〜〜と
- 631 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)05時39分10秒
- ばれんたいん
「もし市井がずっと・・・
・・・ずっと後藤の事好きだったとしたら・・・?」
「な・・・何言ってんのいちーちゃん・・・別にいいよ・・・そこまで話作ってくれなくても・・・・・」
「作ってないよ」
「い・・いちーちゃん・・・?」
「ずっと・・・ずっと待ってた・・・・・」
「・・・やめてよ・・そんな事言って後藤の気持ち掴もうとするなんてズルイよ・・・
酷いよ・・・全然嬉しくないよ・・・・ンック・・・」
“ねぇ後藤って呼んでいい?”
“いや〜ちゃんと見た事無かったけどさ、可愛い顔してんな〜と思って”
“・・・ありがとう・・。市井も・・好きだよ・・”
「そんなウソ信じる程後藤、バカじゃないよ!!いちーちゃん酷いよ・・ンッ・・・ヒック・・」
涙が止め処なく溢れてきて、ボロボロと勢いよく零れ落ちる。
俯いて唇をかみ締めながらギュッと通学バックを握り締めた。
いちーちゃんはそんな後藤の腕を静かに握り、
「本当だよ。作り話じゃない。この目がウソついてるように見える・・?
市井は後藤が市井の事好きになる前から、後藤の事が好きだった・・・・」
少しだけ顔を上げていちーちゃんの目を見る。
真剣そのもので、真っ直ぐに後藤を見据えていた。
それが余計に悔しくて、後藤はそんなに甘く見られてたんだ、バカにされてたんだって思って、悲しみを通り越して初めていちーちゃんに対して怒りが芽生えた。
大好きな人に自分を子馬鹿にされる。屈辱とかじゃなくて、胸がズキズキ痛む。
どん底に突き落とされたような絶望感に襲われて、後藤はいちーちゃんの手を乱暴に振り解いて、悲しみに顔を歪ませながら思いっきり叫んだ。
- 632 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)05時40分40秒
「そんなの聞きたくないよ!!もう騙されるのは沢山だよ!!
後藤抜かして、三人で思いついた仲良し大作戦がこれ・・?
酷いよ・・・最低だよ・・・みんな、みんなサイテーだよ!!
勝手に三人で仲良くしてれば、、!!」
頭の中グチャグチャになりながら言いかけた言葉は、いちーちゃんの体温によって阻まれた。
「騙してなんかないよ・・・市井は後藤の事騙したりしないよ・・・?」
ギュッと強く強く、苦しいくらい抱きしめてくる。
・・いちー・・ちゃん・・・?
直接体に響いてくるその声は震えてて、確かにいちーちゃんは、、泣いてた・・。
後藤は言葉を無くして、ただ抱きしめられるままになり、しゃくりあげてた。
そしていちーちゃんはズッと鼻を一回すすって、ゆっくりと後藤から体を離し、
「後藤・・・・市井と後藤が出会ったのは・・・
・・・去年じゃないよ・・・・・」
とても静かな口調で、なだめるようにそう言った。
「・・うそだよ・・ズッ・・・後藤いちーちゃんの事なんて知らないもん・・・ヒック・・」
「後藤全然覚えてないんだね・・・・
まぁ市井二つ年上だし・・ちょっとの差だけど、あの頃はその差が大きいのかな・・・
後藤さ・・・このハンカチ、見覚えない?」
突然いちーちゃんがポケットから出した四つ折りのそれは、今時ないようなガーゼみたいな生地で、赤い淵取りに色とりどりの花が散りばめられてて、真ん中にクマの絵が描かれている。
幼児くらいの子が使うような、可愛らしいものだった。
かなり古い感じで、色あせている。
でも、見覚えなんて全くない。
「・・・?ヒック・・・・ンッ知らないよ・・・ック・・・」
- 633 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)05時41分50秒
「ははっ・・それも覚えてないか・・・
えっとじゃあ後藤さ、千葉に親戚いない?」
そう言ってパッと切り替えたように顔をあげた。
「え・・・?・・いる・・ヒック・・・けど・・・なんでその事・・・ンッ・・」
なんでそんな事を知ってるんだと、疑問符を浮かべている後藤をよそに、
いちーちゃんは唇をきゅっと噛んでたっぷりと間を溜め、、
「、、、市井ね、生まれは千葉なんだ。小学3年の終わりまでずっと住んでた。
4年になる時に東京に移って、6年の終わりで北海道行って、高校になる時また千葉に戻ってきた。
で二年になってここ、東京にまた来たんだよね」
「・・・?・・ヒック・・・・」
話の意図が見えない。けど、何かを言おうとしてるのは確かだ。
後藤は息を呑んで次の言葉を待った。
「、、、、んと、何から話したらいいかな・・・・」
「・・・ンッンッ・・・ズッ・・・」
ポリポリと頭を掻きながらも、いちーちゃんは真剣な顔で話の順序を探していた。
簡単に整理し切れない程の話・・?
しゃっくりは止まらないけど、いつの間にか怒りや悲しみは無くなってて、いちーちゃんの話に対する興味へと変わっていた。
じっと耳を傾ける。
暫く落ち着きなくウロウロしながら頭をポリポリ掻いてたいちーちゃんは、
突然立ち止まって静かに話し始めた。
- 634 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)05時43分00秒
「・・・・市井さ、ちっちゃい頃、体弱かったんだよね」
「へ・・・?ズッ・・」
「生まれつき、体弱かったんだ。
まぁ今の市井知ってる人ならみんな“ウソ!?”っていうと思うけどね(笑)
でもホントに弱くて、医者に止められててまともに走る事も許されなかったくらい。
なんか、心臓の弁が生まれつきどうこうってやつだったらしい。
無理したら死んじゃうとか、、深刻なレベル」
「!?・・・・・・」
「それこそ作り話だと思われるかな・・。
この事はね、今まで話したのやぐっちゃんしかいない。
話しても信じてもらえないだろうし、話す意味が無いから。
でも、本当なんだよ?
実際、市井って見た目そんな体育系じゃなくない?
ガッチリしてるわけじゃないし、どっちかっつーと文科系っぽいじゃん。
小さい頃の名残っていうか、、、体質的に元々そうなんだ。
だから、人一番鍛えてるつもりだけど」
無理したら、死んじゃう・・・・?いちーちゃんが・・・?
その一言で後藤の思考はストップして、ただそれから続くいちーちゃんの話に吸い込まれていった。
- 635 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)05時43分49秒
「幼稚園時代なんかね、みんなで遊ぶ時とかさ、いつも市井だけ変な部屋に隔離されてて(笑)
みんな元気に遊んでるとこ指加えて見させとくのかわいそうっていう、先生の配慮だと思うんだけどね。
でも市井はその輪の中にいるだけでもいいから、いたかったなぁ。
まぁ見てるだけで我慢できたか分かんないけど(笑)
元々やんちゃっ気あったからさ。
体と気持ちがこう、、合致してないっつーの?
気持ちは走り回りたくてしょうがないのに、体はそれ出来ないって感じで、、。
小学校上がってもね、体育の時間はただ隅でちょこんと座って見学。
休み時間も、教室でちまちま遊んでて、、」
「・・・・・・」
「幼いながらね、思ったんだよね。
なんの為に生きてんの?、、ってさ・・。
元々ね、大人しい子ならいいよ?
静かな楽しみを見つけられる子ならいいよ。
でも市井は違ったんだよね。
それを自分で分かってたから尚更、結構・・辛くて・・。
親とか医者とかはさ、良く分かんないけど、静かに出来る生き甲斐?みたいの与えようとする訳よ。
絵とかピアノとか、、数えると切り無いくらい。
で無理だって言ってんのに、やりもしないで決め付けるなーみたいなね、なんかそんな感じで。
、、周りが一生懸命市井に与えようとするものは、市井に取って苦痛でしかなかった。
生き甲斐どころの話じゃなくてさ・・。
いっそ、ほっといてくれたらどんなに楽だったか・・」
「・・・・」
「生き甲斐なんかさ、普通になんの問題もなく生きてる人間だって中々見つけられなくて、何十年も暗中模索して、やっと掴んだりするもんじゃん?
それをたった6年や7年しか生きてない子に見つけさせようっていうほうが無理な話で、、。
それも、望んでもいない、他者からの供給でさ。
まぁ他者っつっても親とかだから、我が子を心配する気持ちは分からなくないけど・・
でも心配と同情は違う。親のそれは確かに心配だったかもしれないけど、それを手伝う周囲の目は明らかに同情だった。
どんなに幼くったってね、いや幼いからかな、、周囲の同情とか、そういうの敏感に感じるんだよね。
、、それで、、、ある日ね、小学校1年の終わり頃、もうやんなっちゃって、コッソリ家飛び出したんだよね。
、、、直行したの、何処だと思う?」
「・・・・」
後藤は無言で首をかしげた。
- 636 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)05時45分46秒
「・・・公園」
「・・公園・・?」
「うん、公園。みんながキャーキャーはしゃいで、いっつも楽しそうに遊んでる、公園。
市井さぁ、一回でいいからブランコのあれ、分かるかな、ほらブランコの勢いに乗ってジャンプして、ブランコ囲んでる柵を越える、ハイレベルな技、あれやりたくてさぁ。、、分かる?」
「・・・・」
コクコクとオーバーな程大きく頷いた。
「でもやっぱね、自分の心臓の事さ、詳しくは知らないけどでも大体どんな病気か知ってたから、最初は怖くて、ブランコに座って鎖ギュッて握りながら、ただボーッとしてたんだよね(笑)
、、10分、20分、、、1時間、2時間て刻々と時間は過ぎてって、周りで遊んでた子もお母さんのお迎えが来て一人、また一人って帰って行くんだ。
気付いたらもう日も沈んできてて、周りに誰もいなくなってて、、、それでもまだ怖くてこげなくて・・・
帰ろうかって思ったんだよね。結局市井はヘタレだったんだぁしょうがないじゃんって弱い自分を無理矢理肯定して。
で、立ち上がろうとした時にね、、」
「・・・・」
ゆっくりと頷く。
- 637 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)05時48分52秒
「急にフッと体が浮いたんだ。
え!?って思ったら、ブランコ揺れてて、視界がこう、上下にフワーって揺れてた。
“わっ市井何もしてないのにブランコが独りでに動いてる!!”ってビビッたよマジで。
でフワーって浮いて戻ってきたら、背中になんか衝撃があって、またフワーって浮いたんだよね。
驚いて後ろ向いたら、、、
女の子が市井の事押してた。それも無表情で(笑)
市井焦っちゃって、“止めて止めて!”って叫んだんだ。
そしたらその子、“ん?なんで??”って不思議そ〜〜に疑問符浮かべてて、でも止めてくれなくて、、
段々強くなるから、怖くなっちゃって、“びょ、病気なんだ!!”って言ったら、
“ん?ブランコできないびょーき?”
とか無表情で疑問符浮かべながらも手を止める気配なくてさ、
もう混乱して訳分かんなくなっちゃって、
あれこれ言ったんだけど、理解してもらえなかったみたいで、その子が返してきたのは、
“ん???怖いの??”
って、、。
多分ね、嫌味な意味で言ったんじゃないと思うんだ。
そんな感じじゃなかった。ホントに疑問に思ってるみたいで、、。
でも市井はね、それ聞いてなんかカッチーンってきちゃったんだよね。
負けず嫌い魂に火をつけられたっつーか・・(笑)
それで、怖い訳ないじゃんとか言っちゃって、心臓バクバクいってたけど無理してこがれるままになってた。
そしたらそのうちね、なんか恐怖感がどっかいっちゃって、すっごい気持ちくなっちゃってさ、、
みんなはこんな気持ちー思いいつもしてたのかぁって、なんかチィッって悔しくなっちゃってさ。
そう思ったら、飛びたくなったんだよね」
「・・飛ぶ?」
- 638 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)05時49分41秒
「うん、柵の向こうにジャンプ。ダイブっつーか、、まぁ飛ぶって感じ。
出来そうな気がしてきて。
きっと飛んだら、今以上にめちゃめちゃ気持ちーんだろうなって思って、自分も味わいたいって思って。
、、であれってさ、ほら、かなり勢いつけてこがないと無理じゃん?
押されてるだけじゃ弱いなって思って、それで、もう自分でこぐからいいよって言って、、そしたらなんかその子嬉しそうに走ってって、ちょっと離れたとこで市井の事見てた。
見られてるからには失敗できないなって思って、その子年下っぽかったし、年上の意地があるじゃん?
だから初めてだったけどむちゃくちゃ頑張ってこいだんだよね。
いやぁあれは市井自分でも凄いと思うね。
初めてなのにいいこぎっぷりしてた。
ほらみろやっぱ市井運動神経いいんじゃんって思ったもん(笑)
それで、もうこれ以上無理ってくらい勢いよくこいだとこで、意を決したんだよね。
飛ぶぞ!!って。
もうあん時の緊張感は今でも忘れない。
不思議と恐怖感は無かった。飛びたい!ってそれだけで。
で、バッて、飛んだよ市井は。
タイミングばっちりに。
どうなったと思う?ちゃんと柵飛べたと思う?」
「・・いちーちゃんなら飛べた、、かな・・?」
「、、、、ブー、残念。
着地失敗でした・・・。
コケちったんだよね・・。思いっきり・・。
柵も越えれてなかった・・・
柵の手前でクシャッ・・・。
でイッテーって思って顔上げたらさ、いきなり、、
“きゃはははははは!!”
って・・・爆笑・・その子・・。
もう市井さ、なんつったらいいのかな・・言葉でうまく言えないんだけど、なんか悔しさと嬉しさで、気付いたら泣いてたんだよね」
- 639 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)05時50分44秒
「・・嬉しさ?」
「うん、そういうさ、なんかして失敗して笑われたりとか、そういうのも初めてだったんだ。
失敗するような事した事も無かったから。
ああいうの感無量っていうんだよね。
凄いくだらない事だけど、市井に取っちゃあそれまで生きてきた中で一番ドキドキワクワクしたし、楽しいとか気持ちいいとか悔しいとか、、、そういうの全身で感じて、ああ生きてる!!って思ったんだ。
、、でね、市井膝擦り剥いてたからさ、その子多分市井が痛くて泣いてるって思ったみたいで、
いきなりタッてどっか走ってたと思ったら、凄い勢いで戻ってきて、市井のとこ来て、膝んとこ濡れたハンカチで拭いてくれた。
わざわざ水のみ場行って濡らしてきてくれたみたい。
でもそのハンカチさ、なんかクシャクシャで、むちゃくちゃ汚いの(笑)
おいおいんなばっちぃので拭いたらバイキン入って意味ねーよ・・とか内心思ったんだけど(笑)でも素直に凄い嬉しかった。
・・・その時のハンカチがこれだよ・・。市井に渡したまま忘れてったんだ」
「・・・??」
「ほらここんとこ見てみ」
「・・・ご、と、う、ま、き・・・・・・後藤真希!?」
- 640 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)05時51分34秒
ビックリして、目を見開いたまま固まってしまった。
驚いてる後藤をよそに、いちーちゃんは二三歩歩いて、街頭の柱をペタペタ触りながら再び話し出した。
「、、で、市井が泣いた、その後ね、その子がどっからともなくボール持ってきてさ、これで遊ぼうよって市井に差し出してきたんだ。
でももう日が暮れかかってたから、誰も回りにいなくて、、二人だけじゃん?
市井遊びに関する知識疎かったから、二人で何していいのか分かんなくてさ、ボール持ってちょっとしょげてたんだよね。
そしたら、いきなりバッってその子にボール奪われて、
その子ボールつきだしたんだよね。バウンドね。
“取ってみろぉ”って。
それで、なんか知らないけど、ドリブルする彼女のボール必死で取って、市井も下手くそながらドリブルして、また取られて、、って、、それ繰り返してた。
そのうちね、公衆トイレの壁んとこにあるラクガキの円みたいなやつを、それゴールにしようって事になって、当てたら一点とかしだして、、。
やり始めたらなんかもうすんごい夢中になっちゃって、時を忘れてやってた。
辺りはもう真っ暗で街灯照らされてて、、、その事にも気付かずに。
キャーキャー言いながら、取り合いっていうか、じゃれ合いっていうか、、幼いながらのそれは、単なるボール遊びに過ぎなかったんだろうけど、
でもあとでそれが、バスケットボールって言うんだって知った。
バスケしてるその瞬間は、初めて心から笑ってたと思う。初めて人と心から触れ合ったと思う」
「・・・・・」
少し沈黙が流れる。
後藤はいちーちゃんの心情を逃すまいと、無言でただいちーちゃんの表情をじっと見ていた。
いちーちゃんは気恥ずかしくなったのか、そこまで言うとクルッと後藤に背を向けた。
そして、
「、、人間の感情ってさ、複雑である一方凄く単純なとこがあって、ある状況下において、二つの感情と刺激が混同して分からなくなる事がよくあるって知ってた?」
そう言って再びクルッと後藤の方を振り返る。
その打って変わった知的な表情に、言葉の意味を理解するより先にドキッとしてしまう。
「・・・・・・」
後藤はちょっぴり顔が赤くなりながらも、小難しい表情を浮かべて首をかしげた。
- 641 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)05時52分42秒
「例えばさ、部活終わった直後に呼び出されて告白されたりすると、運動したから心臓がバクバクしてるのか、その子の事が好きでバクバクしてるのかが、混同してわかんなくなる事がよくあるらしい。
まぁ錯覚である事が多いんだろうけど。
よく、危険な体験を共にした二人は、恋に落ちるとか聞くじゃん?それも同じで、、。
確かに市井はバスケをしてるその間、なんかめちゃくちゃ胸が熱くて、ドキドキしてて、、気持ちが高揚してた。
それが、バスケってスポーツになのか、、、その子になのか・・・。
全然区別が付かなくて・・今でも、その時の感情のベクトルがどっちに向いていたのか分からない。
市井のそれは、死と隣り合わせの時間だったからね。訳分からなくもなるよ(笑)
恐怖と快感と恋愛感情?なんかもうゴッチャになってたんだけど、、最後に残ったのはね、三つ目だったんだ・・」
「・・・――ぁぃ・・かんじょー・・・・」
ちっちゃな声で、ポツリと呟いた。
いちーちゃんはポケットに手を入れながら、下を向いて地面を蹴る。
「・・散々バスケして力尽きた後さ、二人して汗びっしょりかいてヘタリこんで、暫く地面に肩並べてボーっと座ってたんだよね。
で、市井が口を開いたんだ。―――・・
―――――
――――
――
―
- 642 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)05時56分46秒
「・・・いちー、ちゃんと生きてる・・・」
「?いちーちゃんっていうんだぁ。うえのおなまえは?」
「ちがうよーうえがいちーだよ。したはさやかだよ」
「?じゃあまきはごとーだぁ。ごとーも生きてるよ?」
「まねすんなよぉ。いちーっていうのは自分で考えた特別な呼び方なんだからさぁ。それに、、えーとまきちゃんは生きてて当たり前なんだよ。いちーは特別なんだ」
「ふぅ〜ん。いちーちゃんていっぱい特別なんだねぇ凄いねぇ」
「ヘヘンッ。・・でもね、死んじゃう特別は嬉しくないよ・・」
「どーして?」
「どーしてって・・・・・
まきちゃん知ってる?空に光ってるお星様は、全部死んじゃった人がお空に飛んでいって、姿が変わったものなんだよ?」
「へぇ〜〜ごとーお星様にならなりたいよ?」
「お父さんにそれ初めて聞いた時はね、いちーもいいなぁって思ったんだ。あんなきれーになれるなら、いーなぁって」
「うん」
「でもね、いっぱい考えたら、全然良くないって気付いた・・・」
「なんでぇ?」
「だって・・・ほら見て?お星様はみんなバラバラで、一人ぼっちなんだよ・・?あんなに輝いてても、一人ぼっちなんだ・・・・。もういちー・・・一人は嫌だ・・・」
「う〜〜ん」
「・・・・・」
「だったらごとぉもお星様になる。いちーちゃんと一緒にお星様になるっ」
「へ・・・?」
「ごとぉがずっとずっといちーちゃんのそばにいてあげる!」
- 643 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)05時57分37秒
―
――
―――
―――――
「―――ちゃんのそばにいてあげる・・・って・・・むちゃくちゃ笑顔で、そう言った・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「「・・・・・・」」
二人とも、下を向いて固まっていた。
後藤は、なんていっていいのか、どう捉えていいのか分からなくて、とにかく下を向いていた。
何故だか胸の辺りが熱くて、むず痒い感じがする。
いちーちゃんのその話に、これっぽっちも違和感を覚えない自分がいる。
どこか、懐かしい感じがする。
いちーちゃんは止まった空気を破るように慌てた様子で喋りだした。
「べ、別にさ、そんな・・深い意味はなかったと思うんだ・・。そのくらいの年頃って、あんま深く考えないでなんでも言うし、その子は特にあんま考えてないっぽかったし・・」
「・・・・・」
「でも・・・市井はあの時・・その一言で・・凄い・・・凄いなんていうか・・・胸いっぱいになったんだ・・・」
「・・・・・」
消えちゃいそうなとても小さな声で、いちーちゃんは下を向きながら途切れ途切れそう言った。
後藤の方が何故か胸が締め付けられる。
でも後藤は、やっぱりなんて言っていいか分かんなくて、視線を落としながら微動だにせずにじっとしていた。
そしていちーちゃんは街灯を背にして寄りかかり、パッと真っ暗な空を見上げながら、
「、、、でもその子はそれっきりで市井の前に姿を現す事はなかったっ」
カラッとした声で言った。
- 644 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)05時59分52秒
「・・・・・」
「毎日毎日真っ暗になるまで公園にいたんだけど、、毎日毎日彼女の姿探したんだけど・・でもやっぱり彼女は二度とそこへは来なかった」
「・・・・・」
「まいっちゃうよ。ずっとそばにいるどころか、二日としてそばにいてくれなかったんだからね・・(笑)
なんちゅー適当な奴だってさ、最初は腹立ったよマジで(笑)」
「・・・・・」
「少し大きくなってから調べたけど、その辺に後藤って人は住んでなかった。多分、親戚んちかなんかに遊びに来てたんじゃないかなって思う」
「・・・・・」
いちーちゃんはちょっと視線を落とし、けれどすぐにまた真っ直ぐ前を向く。
その先は後藤ではなくて、何処か遠くだったけれども。
「、、なんかさ、会いたいって気持ちと、喪失感ってやつは比例してるんだよね。
会いたいと思えば思うほど、会えないって事実を突きつけられて、痛いほど実感する。
ポッカリ穴が開いて・・・どう埋めていいか分かんなかった・・。そんな術を持ってなかった。
ただすがっていただけなのかもしれないし、
ただ寂しかっただけのかもしれない。
でも、とにかく、もう一度会いたいって、、そう切に願ったんだ・・」
いちーちゃんはそう言いながら、ザッという地面と踵の擦れ合う音と共に後藤の方を向き、真剣な眼差しで後藤を見つめた。
いちーちゃんの真っ直ぐと伸びる綺麗な立ち姿が、街灯の下に浮かび上がる。
“だって後藤のその夢は、後藤の願望じゃない。・・・市井の願望だから”
「いちーちゃ・・・・・」
後藤はその真っ直ぐな視線に何故か後ろめたさを感じ、俯いてしまった。
いちーちゃんは凄い真剣に話してる。絶対、ウソではない。
でも・・・
- 645 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)06時00分40秒
「でも・・・同性同名かもしれないじゃん・・。
いちーちゃんが初めて会った時言ったんだよ・・?同姓同名結構いそうな名前だなって・・。
それに・・後藤全然覚えてないし・・・」
そう、後藤は全く記憶にない・・・・
そしてあれだけ自分の夢の話をまともに信じてたのに、いちーちゃんとは運命なんだって思い込んでたのに、
実際にそんな話をされると、なんだかしり込みしてしまってる自分がいる。
どうしようもないほど好きないちーちゃんが、後藤の事をずっとずっと好きだったなんて・・・
どうしても想像がつかない。
自分が自分の知らないところで、いちーちゃんの心を掴んでるなんて、それはある意味恐怖でもあった。
いちーちゃんは再び街灯の周りをウロウロしながら話し始めた。
「、、確かにさ、ごとうまきってひらがなで書いてるだけだから、それこそ同じ名前なんてやたらいるだろうし、、市井もね、会った瞬間似てるなって思ったんだけど、、でもまさかそんな訳ないなって思って、大した気にも止めてなかったんだ」
「・・でしょ?ごとうまきって名前だけなんて、あまりに証拠不足だよ」
何故だろう、後藤はそれが自分だと証明されるのを怖がってる。
いつの間にか否定を促す言葉を吐いていた。
そんな後藤を無視し、いちーちゃんは、、
「、、、でもね、すぐに確信した。あの時の子だ・・って・・・」
ドクンと心臓が脈打つ。
「すぐって、い、いつ・・?」
声が上ずってしまう。
緊張の面持ちを向ける後藤に対し、いちーちゃんはまるで、推理小説の主人公の決め台詞みたいに言った。
「会ってすぐだよ。市井が更衣室に行ってジャージに着替えて出てきた瞬間に」
- 646 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)06時02分06秒
更に心臓が速くなる。
「へ・・・?な、なんで・・・?」
「、、後藤さ、部活入って、市井が後藤に個人的にバスケ教えるようになってからやっとフォーム変わったけど、それまでずっと、こうやって両手でバレーのトスみたいにしてシュートしてたじゃん?」
そう言っていちーちゃんはシュートする振りをした。
「・・うん」
「その、シュートフォーム」
「・・?」
「・・市井が、この子あの時の子だ・・って確信出来たのは、そのシュートフォームを見た瞬間。
ピッタリと重なったんだ」
「・・後藤・・そんな珍しいフォームでもないじゃん・・後藤みたいな投げ方してる子いっぱいいるよ・・?」
「確かに女の子は殆どが両手でシュート打つ。片手に添えてスナップを効かせて打つっていうのは腕力と手首の力がかなり必要だから。まぁコツ掴んだらそんな力入れなくても打てるんだけど。
、、だから、そんなの証明にならないよって言われたら普通はそうなんだけど、、
でも市井には分かる。ずっと色んな人のフォーム見てきたから。
人のスポーツする時のフォームとかクセっていうのは、練習でも積まない限り変わらないもんだよ。
だから、高校で会った時聞いたんだ。“中学時代バスケやってた?”、、って。作られたものだとしたら、あの時の子じゃないから」
“へ〜上手いじゃんっ。中学時代バスケやってた?”
・・そう言えば・・・・。
「あの時の子と、高3に始業式に会った後藤は、フォームが全く一緒だった。
確かに、年齢的な運動能力の差でかなりズレはあるけど、でも、
首から肩にかけての角度、ジャンプしてボールを放るタイミング。着地の仕方。細かい所まで全部、ピッタリと重なった」
「・・・・・」
普通の人がそう言っても、多分なんの証明にもならない。
でもいちーちゃんが言うそれは、何よりも説得力があるって、後藤自身が一番良く分かってた。
バスケに関しては、いちーちゃんに間違いはないんだ。
- 647 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)06時04分44秒
そんな後藤の気持ちを察してか、いちーちゃんが押しの一手を加えた。
「、、あと、ボール投げた後の表情もね」
「表情・・?」
「自分じゃ気付いてないと思うけど、後藤ってちょっと変わってるんだ(笑)シュートした後の表情」
「・・どう変わってるのさ・・」
変わってるとか笑われてちょっと腹立って、プクッと膨れてみせた。
「なんかね、普通シュートした時って“入れ入れ”って念を唱えてるから、そういうような表情になるんだよ。
ポーカーフェイスしてても、やっぱどっかそういう感じ出てる。
でもね、後藤って放った後のボール、ホントどうでも良さそうに見てるんだよね(笑)
こいつ入れる気あんのか?ってくらい(笑)」
「・・・・・」
むぅ〜・・なんかバカにされてる・・・
口を尖らせて笑ってるいちーちゃんを見る。
「でその子もそうだったんだよね。
そして、二人に共通するのが、、」
「・・何さ・・」
「そんなんなのに、上手いんだ」
そう言ったいちーちゃんの表情は、真顔だった。
- 648 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)06時05分43秒
「・・後藤別に上手くないよ・・?」
「いや、センスあるよ。ボールに対するセンスって言ったらいいのかな。
シュートした後の表情はね、他人が見ると一見どうでも良さそうに見えるんだけど、違うんだって市井には分かる」
「へ・・?」
「どうでもいいんじゃなくて、ボールになってるんだって」
「・・・・・」
目をパチパチしながらいちーちゃんを見た。
「自分がボールになった気持ちになってるっていうのかな。普通はボールに気持ちを込めるんだけど、、
後藤はボールそのものと一体しちゃうんだ。
ボールを放った後も、ボールと離れてない。
だから、他人から見たら“この子運いいなぁ”ってくらい適当っぽいシュートがポンポン入って行くけど、本当は全然適当なんかじゃないんだよね」
「・・・・・」
言葉に詰まった。
確かに、言われてみればそうで、、後藤は別に適当になんかシュートしてない。
でも、入れ入れって唱えたりもしてない。
無心で、ただ、ボールがリングを通る気持ちよさを一緒に味わってるっていうか、、、
“あっいえ・・ほんの遊び程度です・・”
“ホントに!?へ〜〜運動神経いいんだね〜センスあるよ”
“(センスって・・こんな軽いシュートで何で分かるんだろ)”
全ての言葉が、パズルのピースみたいに、当てはまっていく。
それが、後藤の心のピースもはめていくような感じだった。
- 649 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)06時06分51秒
「あんな表情でボール放つ子、中々いないよ。
・・更衣室出てきて後藤のそれ目にした瞬間、ホントはめちゃくちゃ動揺してたんだぞ・・?
動揺を通り越して、一瞬目の前がフラッシュ炊かれたみたいに真っ白になった・・。
ドックンドックンって体中が脈打って、体、ガタガタ震えたよ・・。
ウソだろって・・・そんな訳がないって・・・・
もう二度と会えないって察して、心の隅に追いやった子。その子が、再び目の前に現れるわけないんだって・・。
でも、名前聞いて、後藤真希、、って聞いて・・・
その後は何喋ったかあんま覚えてない・・。錯乱してて、それ隠す為になんかやたら捲くし立てながらヘラヘラ笑ってたのは覚えてるけど・・。
まさか、会えるなんて思ってなかったしさ、もう、一生会えないと思ってたから・・」
・・・いちーちゃん・・・・
そっか・・・だからあの時・・・
“ねぇ後藤?”
“ん〜?”
“いい加減さぁ・・・市井先輩っていうの・・・やめない・・・?”
- 650 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)06時07分51秒
“?なんで??”
“いや〜なんか・・他人行儀な感じするっつーかなんつーか・・・”
“う〜ん・・そうかな。じゃー先輩はなんて呼んでほしいの?”
“へ!?あ・・いや・・・別になんでもいいけどね・・いちーはね・・”
“だって、、紗耶香ぁとか、、変だよ・・なんか・・”
“あーそうだね・・紗耶香は違和感あるねうん・・”
“、、さやりんとか?(笑)”
“あっそれはダメ”
“??なんで?”
“いや・・友達と被る・・かな・・”
“へぇ〜〜いちー先輩の事さやりんなんて呼んでる人いるんだぁ〜・・・ふ〜ん・・なんか恋人みたいだよ〜・・・ごとーちょっとジャラスィ〜”
“・・・・・”
“他に何あるかなぁ〜〜〜さやぴょん、さやっち、さやっぺ、さや、、”
“あ〜〜〜・・・さやから離れない・・?”
“へ?どう離れるの?”
“いやだから・・苗字の方が・・いいかな・・”
“みょーじ、、。いっちーとか?あっいっちー可愛い!”
“ダメダメ!いっちー却下!”
“え〜なんでさぁ可愛いのに。全く我がままだなぁ”
“・・・・・”
“いちー、、いちーいちー、いちいちいちー・・・・いちーってホンット可愛い苗字だねぇ(笑)”
“そりゃどうも・・”
“う〜〜ん、、可愛いから、、、いちー・・・、、、分かった!!”
“は、はい・・・?な、な、なに・・?”
“んーとぉ、、、、いちーちゃん!!!”
“・・・・・・”
“うんいちーちゃんがいい!いちーちゃんいちーちゃん、、なんか胸がキュンキュンするよぉいちーちゃんって”
“・・・・・・”
“?なしたの先輩。・・・・・先輩・・?・・泣いてる・・・?”
“・・・ま、まさかなんで泣くんだよ!・・ズッ・・”
“・・・・いちーちゃんって、ダメ・・?”
“ううん・・・・・・
・・めちゃくちゃいい・・・”
“わっ・・ちょっと・・・どうしたの急に・・苦しいよぉ・・”
“好きだよ・・後藤・・・・”
“うん・・後藤もいちーちゃんの事好きだよっ・・”
- 651 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)06時09分21秒
だから・・・あの時・・・泣いてたの・・?いちーちゃん・・・
いちーちゃんが小学校入ってすぐに後藤と出会っていたとしたら、もう10年も経つ。
10年・・・・
胸の奥がぎゅ〜っと締め付けられる。
俯いてるいちーちゃんを切なげに見つめた。
- 652 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)06時09分59秒
そして、モジモジしながら、気持ちを上手く言葉にしようとなんとか口を開いた。
「・・・・・ごとぉ・・・・・なんていうのかな・・・・なんか・・・・」
「・・うん」
「凄い無責任だと思うけど・・・・やっぱり・・・・覚えてなくて・・・」
「・・うん」
「でも・・ホントだって・・思う・・・。自分でも・・それ・・絶対後藤だと思う・・・・直感だけど・・」
「・・うん」
そう言えば、後藤が好きになる男の子は、みんないちーちゃんとどっか似てる感じだった。
初恋だと思ってる小3の子から、中学時代まで何人も好きになった人いるけど、、
みんな、華奢で、色白で、中性的で、目が力強くて、、
よく、好きになった人がタイプ、なんて聞くけど、後藤は違った。
自分の中に描いてる人がいて、その人の虚像を追っかけてた気がする。
それでいつも、なんか違うって思って一瞬にして冷めちゃったりして、長続きしなかった。
いちーちゃんに会った瞬間、ビビビッてきて、この人だ!って思ったけど、、
それはもしかしたら、後藤のタイプ、にピッタリあったんじゃなくて、いちーちゃんそのものを探していたからかもしれない。
ううん、きっとそうなんだ。
“、、な〜んかさ、緊張してる?テンション低いよ?(笑)”
“これが基本のレイアップ。でも市井あんまこれ好きじゃないんだよね(笑)ホントはドカッとダンクでもしたいとこなんだけどさっ(笑)身長たんね〜!!”
入学初日に会ったあの時のいちーちゃん、やたらとテンション高かった。
あんなにテンション高かったいちーちゃん、あれ以来見てない・・。
・・・いちーちゃんが・・・後藤の事を・・・・・・
ずっと・・・・
ずっとずっと・・・・
“昭栄学園バスケ部キャプテン、市井紗耶香。宜しくねっ”
- 653 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)06時10分54秒
「なんか・・・・上手く・・・言えないけど・・・・・」
「・・うん」
何も考えないで近所の子と無邪気にはしゃいで、真っ暗になるまでいつも外で遊んでた、小学校低学年。
隣の席の男の子を好きになって、ままごとみたいな恋を楽しんでた小学校高学年。
突然の周りの変化に戸惑って、置いてかれたくないって必死になって大人ぶってた中学時代。
そして、それまでの全部を否定するかのように、
後藤を狂わせたいちーちゃん・・・。
そのいちーちゃんが・・・
頭ん中が混乱して訳が分からない。
でも、それは多分、いや絶対事実で、、
そんな混乱してる後藤が選び出した言葉は、、
- 654 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)06時11分38秒
「ごとー・・・・・いちーちゃんの事・・・」
「・・うん」
「・・・・好きだよ・・・?」
「・・・・・・・うん」
やっぱりそれだった。
いちーちゃんはニッコリ優しく笑いながら頷いてくれた。
- 655 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)06時12分20秒
「、、それって・・いちーの気持ち、信じてくれたって事・・?」
「うん・・・・・・信じた・・・・
疑ってゴメンね・・?」
「いやいいよ・・疑って当然だから・・・」
「でも信じたけど・・
・・いちーちゃんが後藤の事ずっと好きだったなんて・・なんか・・・・
嬉しいんだけど・・・・凄い不思議な感じ・・・・」
「・・・まぁ、突然言われてもあれかもしんないけど・・・」
- 656 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)06時21分42秒
「・・いちーちゃん・・矢口さんと付き合ってたんでしょ・・?矢口さんはその事・・」
「・・うん・・・小さい頃ね、一度だけ話した事がある・・・。このハンカチの子が頭から離れないって・・・。
でも話したのは小さい頃だったから、やぐっちゃんも、市井がまさかまだその子の事好きだなんて思ってなかったと思うんだ・・。
実際市井も、好きっていうより、頭の隅にずっといたって感じだったから・・それで・・やぐっちゃんとそんな風になったりもした・・。
けどやっぱ・・・どっか気持ちが中途半端で、入り込めなかった・・。
やぐっちゃん、、多分吉澤経由かなんかで後藤の名前知って、あの時の子だって重なって、それで市井が夢中になってる訳も同時に理解したんだと思う・・。
で、今回、その話してあげなよって後押ししてくれた・・」
「・・そっか・・・矢口さんに感謝しなきゃ・・・」
「うん。吉澤にもね」
「うんっ」
「「・・・・・」」
そこまで話して、ようやく話の流れが止まった。
―――めでたしめでたしって感じかな。
なんて思って、全身の力が抜けて、後藤は気持ちの良い脱力感にちょっと浸ってた。
でも、話はまだ終わってなんかいなかったんだ。
後藤はいちーちゃんのもっと心の奥底の感情に気付いてあげる事が出来なかった。
いや気付いてたからと言って、何かを変えられたかどうかは分からない。
ただもっと、少しでも早く、そう、少しでも早く・・―――
心に触れてあげたかった
ばれんたいん
- 657 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)06時26分50秒
- あぁまた日が射してる・・今日も好い天気・・・・
ネミ・・
いつも閉めが即興だな・・・
なんか、市井の一人語りが長くて、読んでてダルくならないかな?と心配しつつ書いてます。
そしてスクロール問題で、僕のような字数詰めるは行間空けるはってのは偉い迷惑らしいので・・
ちょっとレス稼ぎます
- 658 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)06時28分01秒
- ・
- 659 名前:Oー150 投稿日:2001年07月18日(水)06時29分22秒
- スクロール
- 660 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月19日(木)04時36分59秒
- なるほど!!そういう事だったのか〜
これですべてがすっきりした・・・・・・・と思ったら最後にまた意味深なかんじで終わってる(w
まだ、何かあるようなので楽しみに待っております。
- 661 名前:マルボロライト 投稿日:2001年07月20日(金)23時52分09秒
- こっちは初カキコです(w
市井ちゃんとごまはそんな前に出逢ってたんですね。
でもまだまだ気になる展開があるようで…のんびり待ってます。
- 662 名前:レイコ 投稿日:2001年08月01日(水)10時18分59秒
- 奥が深いっすねえ。すごいです!
続き待ってます!!
- 663 名前:Oー150 投稿日:2001年08月03日(金)05時27分32秒
- ものすっご雑だけど、自作です。何のフォローにもなりませんが・・どうぞ。
好きな方は好きかと。
ttp://www.geocities.co.jp/Bookend-Akiko/8387/huryogaku.jpg
それでは・・・
- 664 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月03日(金)05時52分15秒
- >>663
いちーちゃんかっこいい!
- 665 名前:ぐれいす 投稿日:2001年08月03日(金)17時55分42秒
- まさに「カッケー」って感じですね(w
- 666 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月04日(土)10時27分04秒
- いちーせんぱい…
- 667 名前:名無しの読者 投稿日:2001年08月09日(木)23時24分21秒
- こ、更新している〜♪
嬉い〜、これで完結ですか?
いや〜初レスから10ヶ月読ませてもらいましたが
いちごま最高です。
もう完全にノックアウトですね。
- 668 名前:かりんとう 投稿日:2001年08月31日(金)20時13分07秒
- 一気に読みました。
すごいです。作者さん、尊敬です。
早く続き読みたいです。
よろしくお願いします。
- 669 名前:Oー150 投稿日:2001年09月01日(土)04時17分20秒
- こんな精神無茶苦茶破綻状態の時に書いた駄作に、レスをくれた方、本当にありがとうございます(ペコリ
きちんと言っておいた方が良さげなんで、報告を・・
現在、書く事のエネルギーと時間の問題、&なんとか書き上げてもどうしても納得したものにならない、、等で、執筆意欲を掻き立てるのが困難な状態です・・。
続きを書くとしたら新スレを立てなければならない訳で、もし立てて放置&放棄、となったらそこれそ迷惑極まりないと思うので、
まだ放棄と断定は出来ませんが、その方向で見合わせております・・・ホントにごめんなさい・・・
と言っても、来年落ち着いたら、続き書けるとは思いますが・・
つまり放置かな・・?
※このスレはもうヤバイくらい重いんで、申し訳ないですが、レス控えて下さい。
今後何かレスがありましたら、とりあえず
この板にある僕のスレ、『いちごま短編集』
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=red&thp=992805769
か、
ttp://www.geocities.co.jp/Bookend-Akiko/8387/
こちらでお願いします。
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