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この世で一番大事なもの
- 1 名前:鞘鞠 投稿日:2000年11月07日(火)00時11分16秒
- え? この世で一番大事なもの? 何を今更。
そんなの、お金に決まってんじゃ〜ん!
「はい♪毎度あり〜」
ニコニコ笑顔で、さっきまでキスをしていた相手を見送っている小柄な少女。
首から鎖で提げているミニボックスの中身は、今日の稼ぎ代。
「フッフッフッフ。一日デートで一万円。おやすみのチュウセットで一万五千円!
よっしゃ〜! 今日も儲かった〜!!」
三度の飯よりお金が大好きなお年頃。矢口真里。タンポポ学園の三年生。
このお話の主人公である。………一応。
- 2 名前:いち。 投稿日:2000年11月07日(火)00時31分23秒
- そんな矢口真里にとって、学校とは、一番お金が稼げる場所。
思う存分利用する。
―――
お昼休み、人で賑わう中庭。まずはメガホンで人の呼び込み。
そして集まって来た人達に、自分が隠し撮りしたタンポポ学園の人気者達の
写真を売りつける。
「へいへい! みんなよく聞いて! この飯田圭織の写真は残りあと一枚しか
ないから、オークションを開催します!」
その矢口の声を聞いたお客さん(?)達は、それをなんとか落札しようと必死だ。
最終的には、一枚250円の写真が1300円までに膨れ上がった。
〜〜〜〜
そうして昼休みが過ぎ、5時間目。
矢口は授業をサボり、屋上に来ていた。
生徒達のための、腰掛け用ベンチに座るんじゃなく寝転び、今日の昼休みに稼いだ
お金を清算をし始める。しばしチェック用のノートとにらめっこ。
「う〜ん。やっぱり昨日のまとめ売りの失敗は大きかったか。
せっかく稼いだ今日の分も、昨日のに回さなきゃな〜……」
そんなことを、一人ブツブツを呟いている。
だから、矢口は気づかなかった。
屋上に誰かがこっそり侵入してきたことを……。
- 3 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月07日(火)02時12分55秒
- あっおもしろそ〜♪
- 4 名前:にぃ。 投稿日:2000年11月08日(水)17時39分55秒
- 「あ〜もう! せっかく儲かったと思ったのになぁ。くっそ〜」
まだまだ矢口の文句は続いている。背後に忍び寄る影には、まだ気づいてない。
そろり、そろり。
足音を立てずに回り込み、大きく息を吸って。
「やぐちさ〜〜〜んっ!!!」
「うわあっ!?」
思いっきり耳元で叫んでやった。
ベンチから転げ落ちる矢口。その姿を見て笑う、中等部の制服を来た少女。
「か〜ご〜……(怒)」
加護亜依。
矢口の愛弟子である。
〜〜〜〜
「ったくさ〜、あんたほんとに人驚かすの好きだね〜」
「いやっはっは。それがウチの生きがいですわ」
尊敬する親分からアメ玉をもらって、幸せそうな加護。
その加護の首からは、矢口とおそろいのミニボックスがかけられている。
「で? あんた授業は?」
時計を見ると、まだ終了の時間じゃない。
じゃあなぜここにいるの? という矢口の疑問。
「ああ、矢口さん見習って、サボっちゃいました」
無邪気な加護の答え。
「い、いや……そんなとこは見習わなくていいから……」
そんな矢口に、加護もタジタジ。
加護はまだ言葉を続ける。
「あ、そやそや。ウチ市井さんからことづて預かってきたんですよ」
市井さんとは、矢口の彼氏(?)のこと。
ここから少し離れた、タンポポ学園と敵対している、プッチモニ女学院に通っている高校二年生。
「は? 紗耶香から?」
なんだろう…、と思って矢口は耳を傾ける。
それは「今日、いつもの所で待ってるから」という、
普通の恋人同士が交わす言葉だった。
その言葉を瞬間、矢口の顔色が変わり、青ざめていく。
なにか恐い事でもあるんだろうか。
- 5 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月09日(木)08時32分32秒
- おっさやまりすか!いいね〜。
- 6 名前:さん。 投稿日:2000年11月11日(土)22時39分05秒
- 放課後、ホームルームが終わってすぐ約束の場所へと急ぐ矢口。
外から中を覗いてみると、待ち合わせの相手はもう来ていた。
(わちゃ〜、あれはマジで怒ってますね〜)
怒られる心当たりがあるのか、矢口はバツの悪そうな顔をして店の中に入って行った。
そして、全身から怒りのオーラが漂っている自分の恋人の名を呼んだ。
「紗耶香ごめんっ!……待った?」
「はぁ〜〜……」
これで十一回目。ため息の数。
怒られながらも、矢口はそんな事を考えていた。
矢口が怒られている原因は、金稼ぎのために他の人とデートしていたこと。
その日は市井と約束があったのに、デートをすると必ず多めに金をくれる客の方を
取ってしまった。それが、市井にバレたのだ。しかも、キスしていた所も見られたらしい。
矢口、絶対絶命の大ピンチ。
「……ちっ」
下を向いて顔をあげない矢口を不満に思いながら、市井は軽く舌打ち。
矢口の言葉を待っているのに、矢口は謝りの言葉すら発しない。
短気な市井は、そろそろ限界に来た。
「何回言えばわかるんだよ。写真とか売ったりバイトしたりすんのはいいけど、
自分を商売にするなってあれだけ言ったじゃん。なのになんで?」
誰だって嫌だろう、自分の彼女が他の人とデートしていたら。
しかし市井の彼女は、そんな市井の気持ちも知らず、何十回もその行為をやってのける。
一体何回言えば直るのか。市井は検討もつかない。
しばらくそのまま黙っていた矢口だが、どうやら作戦を変えたらしく、
開き直りに出た。
「だってさ〜、一番儲かるんだもんしょうがないじゃん。
ほら、矢口モテるし? それを利用しなきゃどーしろっつーわけじゃん」
あっけらかんと言い放つ矢口。
それを聞いた市井の額には青筋が。
- 7 名前:あつし 投稿日:2000年11月11日(土)23時41分43秒
- いいねぇ〜
- 8 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月12日(日)02時04分14秒
- 矢口ピンチ(笑)
- 9 名前:よん。 投稿日:2000年11月12日(日)22時27分50秒
- 「……のヤロ〜……」
(ダメだ市井! こんなことで腹を立ててちゃ!)
必死に自分に言い聞かす。
しかし、矢口の悪気ない発言はまだまだ終わりそうにない。
「つーかね、矢口改めて実感したんだけど、ほんと矢口ってモテるんだよ!
半日デート2万でも依頼がくるし。すごいっしょマジ! いやぁ〜、
紗耶香は幸せもんだね。こんなカワイイ娘が彼女なんてさ」
ニコニコ嬉しそうに話す。市井の額の青筋にはお構いなし。
「でもさ、ゴカイしないで聞いて欲しいの」
「?」
突然真面目な顔になり、グイッと身を乗り出す。
市井はその続きを待った。そしてその続きの答えは……。
「キスまでは商売にしてるけど、エッチは紗耶香しか相手にしてないから♪」
カァーッと、すごい速さで全身真っ赤になっていく市井。
口をパクパクさせて、「な、な、な……」と意味のわからないことを言っている。
「だからさー、許してよ」
付き合ってもうすぐ半年。それぐらいになったら、もうお互いの性格はわかっている。
しかも矢口の方が年上ということもあり、市井は矢口のペットみたいな感じだった。
もちろん、嫌とは言えない。
だって、市井は矢口には甘すぎる程甘いんだから。
出てくる言葉はもちろん。
「……ちっ。しょ、しょうがないなぁ〜…」
いつも決まっていた。
その言葉をしっかりと聞いた矢口は、次の予定が控えているため
「じゃあねぇ〜」と言って去って行った。
ポツン、と一人残された市井。テーブルには、一枚の伝票。
「結局、また市井が払うのね……」
涙を流しながら、レジへと向かった。
- 10 名前:ごぉ。 投稿日:2000年11月17日(金)00時17分48秒
- もう10月の終わりだというのに、ポカポカとした昼下がり。
矢口はいつものように授業をサボり、屋上に来て昼寝の準備をしていた。
気持ちいい風にあたりながらウトウトする。
・
・
・
『ねえ真里? 真里にとって、この世で一番大事なものってなあに?』
愛おしそうに、自分の膝を枕にしている娘の頭を撫でながら尋ねる。
『え〜? ……家族かな、やっぱり。
だってあたし、お母さんが一番好きだもん!!』
身体を起こし、嬉しそうな顔をして、元気よく答えを返す。
それを聞いた母親は、優しく微笑んだ。
『ありがとう。お母さんも、真里が一番好きよ?』
『ホント?! ホントに!?』
『うん。お母さんは、真里がダ〜イ好き』
『あたしも、お母さんが大好き〜っ!』
ただ、そばにいてくれるだけでよかった。
横で、微笑んでくれてるだけでよかった。
なのに。
オカアサンガシゴトチュウ、シンゾウホッサデタオレタ……
その知らせを聞いた時、その時まだ7歳だった矢口は悟った。
神様は、この世にいないんだ、と。
- 11 名前:ろく。 投稿日:2000年11月17日(金)00時20分04秒
- 矢口の母親は昔から心臓が弱く、入退院を繰り返していた。
でも入院代は高いし、父親が働かない人だったので、母親はお金の事を心配し、
病院にも行かず一生懸命働いていた。
そして、その心臓がとうとう限界に来た。
それが、倒れた原因。
急いで病室へと急ぐ。看護婦さんに「廊下は走らないで!」と注意されても、矢口は走った
お母さんに逢うために。お母さんに微笑んでもらうために。
『おかあさんッ!!』
ドアを開ける。
目の前には、顔を白い布みたいなもので覆われた人。
部屋の中にいた医者が何か言っている。でも矢口は何も聞こえない。
頭の中は真っ白。
ゆっくりと、顔を確かめてみる。涙が止まらない。
お母さんだ。
この時矢口は、世界で一番大事なものを失った……。
・
・
・
「うわあっ!!」
ガバッと勢いよく起き上がる。
そしてしばらく辺りを見渡し、ほっと一安心。
今いる“ここ”は、病院じゃなく屋上だったから。
「………おかあさん………」
あれから何度も何度も問い掛けた。
聞いても、答えが返ってくるはずはないのに。
お母さんが死んで、その後すぐお父さんが蒸発し、一人になっても問い掛けた。
「この世で一番大事なものは、一体なんなの? 一番大事なものがなくなったあたしはどうすればいいの?
お金があれば、こんなことにはならなかったの? お金があれば、お母さんは死ななかったの?
………この世で一番大事なものは、お金なの……?」
ずっとずっと、一人で問い掛けていた。
そして、今に至るんだ。
- 12 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月17日(金)15時06分11秒
- あ・・・好きだなこういう話・・。
矢口に甘い市井ちゃんサイコー。
続き大期待♪
- 13 名前:鞘鞠 投稿日:2000年11月23日(木)08時33分47秒
- スランプ中……。
もう少し待ってください…
- 14 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月24日(金)01時38分56秒
- 気長に待ってるから焦らずに最後まで書いてください。
- 15 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月25日(土)13時24分16秒
- うんうん気長に待ってます。頑張って下さい。かなり楽しみなんで♪
- 16 名前:なな。 投稿日:2000年11月26日(日)01時36分58秒
- 「ねえ紗耶香! あれ可愛くない?」
久しぶりの市井とのデート。久しぶりのショッピング。
矢口ははしゃいでいた。
「はいはい。かわいいね。でももう持てないよ…」
そう言う市井の両手には、紙袋の束。
全部、矢口が今日買ったやつである。市井は荷物持ち。
「何言ってんのさ! まだ持てるじゃん。もうちょっと頑張ってよ」
「頑張ってよって言われても……」
これ以上、どうやって持てというんだ。
そんな事は、口が裂けても言えない。
「……わかったよ。その服で最後だからな」
だって、矢口には「超」が付く程甘いんだから。
午後10時。
長い長い荷物持ちも終わり、やっと解放される時。
矢口をアパートまで送り届けた市井は、いつもの質問をする。
「今度さ、いつ逢える……?」
そして、矢口から返ってくるのはいつもの返事で。
「……わかんない。予定がない日、電話するよ」
いつもそうだ。
自分達は付き合っているのに。
こんなのってある?
なのに口から出る言葉はいつもと同じで。
「……そっか。じゃあ待ってるよ…」
つくづく、自分が嫌になる。
- 17 名前:はち。 投稿日:2000年11月26日(日)01時37分42秒
- 「はぁ〜〜……」
人が少ない、帰りの電車の中。
市井は大きなタメ息をついていた。
窓を見ても、地下鉄だから何もないし。
気分転換になんかなりゃしない。
「もうヤダ……」
タメ息の次には、大きく息を吐いて天井を仰ぐ。
まぶしいので、目は開けずに。
矢口のことは好きだ。でも、最近あのテンションにはついていけない。
市井は疲れていた。ここ最近ずっと。
矢口を好きな気持ちは変わらない。でも、どうも矢口の考え方にはついていけない。
市井は悩んでいた。ここ最近ずっと。
「○○〜、○○〜。降下りの方は、足元にご注意下さい」
車内のアナウンスが、自分の降りる駅を告げる。
もう少し目をつぶっていたかったのだが、仕方がなしに市井は目を開けた。
「うわっ! ビックリしたぁ〜。生きてたんだ〜」
開けた瞬間、目の前に見覚えのない女の子。
どうやら、目をつぶって考え事をしていた市井を、死んでると勘違いしたらしい。
どうやったらそんな勘違いが生まれるんだろう……。
市井は真剣に考えた。
「ヘヘッ、アタシってバカ?」
そう言って微笑う彼女に、市井は「うん」と頷いた。
- 18 名前:鞘鞠 投稿日:2000年11月26日(日)01時38分57秒
- やっとちょっと脱出できました。
この調子でマタ―リと頑張っていきます。
- 19 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月26日(日)01時49分42秒
- 市井ちゃん別れちゃえ…………ボソ
- 20 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月26日(日)02時36分20秒
- おっと誰だ〜〜!?展開ですな。作者さんファイトっす!
- 21 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月26日(日)03時57分06秒
- さやまりなのにさやまりなのに・・なにかを期待してしまう、俺・・。
誰が市井ちゃんに笑いかけたんだぁ!!
- 22 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月26日(日)11時35分05秒
- 市井ちゃん市井ちゃんはあと
- 23 名前:読んでる人 投稿日:2000年11月26日(日)23時54分21秒
- おお!?あの人か?あの人なのか?
- 24 名前:きゅう。 投稿日:2000年11月28日(火)22時29分33秒
- 「ん〜っ! おいしいねえこのハンバーグ。アタシ、料理に初めてカンドーしたよ!!」
「は、はあ…」
深夜のファミレス。
家に帰るはずだった市井は、なぜかそんなところにいた。
向かいの席には、見ず知らずの女の子。
その彼女の話によると、どうやら夜ご飯を食べる前に母親とケンカをして家出をしてしまい、
お腹が空いているんだとか。だから、ひょんなことから知り合った市井を無理やり
ファミレスに連れて行き、ご飯を奢ってもらおうと考えたらしい。
(最近、女運と金運悪いな……)
ドリンクのコーラを飲みながら、つくづく市井は思った。
―――
「うぃ〜食った食った! ありがとね、ほんっと!」
財布の中身を見ながら泣きそうになっている市井の背中を、バシンと一発。
不意に叩かれたため、よろける市井。
「あ、ごめん。ダイジョーブ?」
ヘラヘラ笑っている女の子。
「………」
市井は無言で睨むが、女の子には効きはしない。
「ちっ……」
この子といると、調子が狂う。
さっさとその場を去ろうと思った市井は、歩く歩調を速めた。
「うわっ、待ってよちょっとぉ〜」
慌てて、市井の後を追いかける女の子。
「なんだよ! ついてくんなよ!」
ヤケになり、更にスピードを速める。
「だから待ってって!」
しばらく、その追いかけっこは続いた。
- 25 名前:じゅう。 投稿日:2000年11月28日(火)22時30分29秒
- 「もう限界……」
ゼェゼェと荒い息。
どこかの公園のすべりだいのてっぺんで、追いかけっこは終わった。
「速いね、キミ…」
隣で空を仰いでいる女の子に尋ねる。
「…ヘヘッ。かけっこは得意なのだ♪」
ふにゃっと笑ってピースサイン。
そんな彼女を見て、市井はプッと吹き出してしまった。
「な〜んで笑うのさ〜!?」
「いや、大人っぽいわりには、意外と子供っぽいんだなって」
そう言って、優しく微笑む。
それを見た女の子の頬が、少しピンク色になった気がした。
「ん? どした、熱でもあんの?」
「………」
……鈍感も、ここまできたら罪である。
「あ、もうこんな時間だ。
あんま遅いと、いくらなんでも寝ちゃうなあの人……」
公園にある時計を見て、彼女が呟く。
市井もつられて見てみると、時計の長針は1を指していた。
「なに? 家出少女なのに、行くトコあんの?」
置いていた荷物を再び肩に提げ、すべりだいを滑ってゆく彼女に声をかける。
「ちっちっちっ。女の家出は、まずは宿を確保してから始まるんだよ〜ん。
野宿は出来ないからね〜、先に泊めてくれそうな人にアポをとってからちゃんと家出しました♪」
「…すごいね、…尊敬するよ」
半分あきれながらも、市井は微笑った。
「いや〜、悪いねほんと。タクシー代までオゴってもらって」
「奢ったんじゃない! 貸したんだ!!」
そう怒鳴られた彼女は、あははとごまかし笑い。
「ま、誰にでも間違いはあるさ。今度会った時、ちゃんと返すからさ!」
市井の両肩をバンバン叩く。
そして、ヘヘッと微笑って、タクシーに乗り込み夜の闇に消えて行った。
なんだかよくわからなかったが、いい気分転換ができてよかったと思い直す市井だった。
―――
深夜2時。矢口の部屋の前。
ドンドン! ドンドン!
誰かがアパートのドアを叩く音。
インターホンを押さずに、こんな風にドアをノックする奴は、一人しかいない。
加護の姉貴分でもあり、矢口の知り合い吉澤ひとみの親友、
「こらぁごっちん! 今何時だと思ってんだよ!? 近所メーワクだろ〜!!」
後藤真希だった。
「ヘヘッ、アタシってバカ?」
そう言って微笑う彼女に、矢口は「うん」と頷いた。
- 26 名前:鞘鞠 投稿日:2000年11月28日(火)22時39分01秒
- ごっちん登場です。
でも、ドロドロにする気はたぶんないんで。>ほんとか!?
途中からですいませんが、レス返させて頂きます。
>>19
別れるかどうかは、これからこれから…
>>20
やっぱり気になりますよね、あんなとこで終わっちゃ(w
ファイトっす!
>>21
何を期待したんでしょうかあなたは(w
めちゃ気になります。…微笑いかけた人は、もうお判りでしょう。
>>22
最近流行ってるハートを出したかったのかな?
>>読んでる人さん
あの人は合ってたでしょうか?
- 27 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月28日(火)23時58分40秒
- なんか、おもしろい展開になってますね。
三角関係楽しみ・・・
- 28 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月29日(水)00時14分45秒
- うわっ続きすっげ〜〜楽しみ!!お楽しみが増えた♪
作者さん頑張って下さい♪
- 29 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月29日(水)05時53分47秒
- ドロドロもの結構好き。
- 30 名前:鞘鞠 投稿日:2000年11月29日(水)05時56分42秒
- 間違い訂正…
>>25の「時計の長針」じゃなくて、「時計の短針」。
つーか、読み返してみるといっぱい間違ってる…。
>>4の、「そんな矢口に、加護もタジタジ」じゃなくて、「そんな加護に、矢口もタジタジ」
って書きたかったのに…。
他にも間違いあったら教えてください。
- 31 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月29日(水)11時20分05秒
- 作者さんドロドロもいいけど
矢口を幸せにしてやって下さい。(笑)
続き期待っ!
- 32 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月30日(木)15時18分24秒
- もうドロドロにしてあげてください。
- 33 名前:じゅういち。 投稿日:2000年11月30日(木)23時21分14秒
- キーンコーンカーンコーン
「よっしゃ終わったぁ!!」
チャイムが鳴ったと同時に、屋上への階段を駆け上がる矢口。
次の授業をサボるためだ。本当は一時間目からサボりたかったのだが、
高校は中学と違い、留年というものがある。
英語の単位が危ない矢口は、一時間目の英語の授業をサボることが出来なかったのだ。
学校を留年すると、一年分余計に学費がかかる。
辞めれば済むことなのだが、昔母親と「高校だけはでようね」と約束したので、
辞めるわけにはいかない。
ましてや、今年三年の矢口は、あともう少しの辛抱で卒業できるのだ。
なんとしてでも、ここでサボっちゃいけない。
次の授業は数学。
数学は前半頑張っていたので、サボることができる。
昨日、後藤のグチをずっと聞いていて寝れなかったから、早く寝たいのだ。
「う〜ん…でもやっぱ寒いなぁ……」
ついこないだまでは暖かかったのに。
仕方がなく矢口は、寝ることを止めた。
放課後、中・高等部が行き交う校門で、矢口は見知った顔を見つけた。
「よっす! どしたの加護。誰か待ってんの?」
カバンについているおもちゃやキーホルダーをジャラジャラ言わせながら加護に近づき声をかける。
「あ、矢口さん。矢口さんを待ってたんですよぉ」
「え? 矢口を待ってたの?」
「ハイ!」
返事ひとつひとつ元気がいい。
若いっていいよね、
矢口は目を細めて微笑った。
- 34 名前:じゅうに。 投稿日:2000年11月30日(木)23時22分15秒
- 「あれから後藤さん来ました?」
「ん〜? あ、来た来た。散々グチ言うだけ言って、今ごろ寝てるよ」
下校の途中、加護に奢ってもらったたこ焼きをくしに刺し、フーフーしながら矢口が言う。
「じゃあ矢口さんちにいるんですよね。これから加護行っていいですか? 矢口さんち」
「ええっ! ダメだよ。あんたが来たら、部屋汚くなるもん」
「今度は絶対きたなくしませんって〜。それに、そのたこ焼き奢ったったやないですか」
ジロッと、今まさに矢口の口に入ろうとしているたこ焼きを見た。
「あは、あははははは……」
もう少し前に言ってくれたら、食べるのをやめてたのに。
時すでに遅し。たこ焼きは口の中に。
「行ってもいいですよね?」
笑顔満点の加護。矢口は、
「………ハイ」
と言うしかできなかった。
―――
ガチャッとドアノブを回す音が後藤の耳に聞こえた。
「んんっ!?」
慌てて冷蔵庫の扉を閉め、何事もなかったかのように布団にもぐる。
口いっぱいに何かが入っていたのは気のせいだろうか?
「ただいまぁ〜」
「後藤さ〜ん、寝てるんですかぁ?」
賑やかに聞こえてくる二人の声。足音が、後藤の心の寿命を縮める。
「な〜んや。やっぱ後藤さんまだ寝てるんか〜」
布団の盛り上がりを見て、加護が呟く。
「寝過ぎなんだよコイツは。そのうち起きるでしょ」
矢口は興味なさそうに言って、冷蔵庫の扉を開けた。
「………あれ?」
ここにあるべきものが。朝学校行く前にはあったものが。
冷蔵庫の中は、カラッポだった。
「……ごっちん?」
布団にくるまって、寝たフリをしている後藤を笑顔で見下ろす。
「……ごっちん」
布団から恐る恐る顔を覗かせた後藤を、無表情で見下ろす。
「……ご〜と〜お〜!!」
再び布団をかぶった後藤を、鬼のような顔で引きずりだした。
「すいませんすいません! つい出来心で〜!」
「出来心で済むかっ!! 出せ! 食べたやつ全部吐き出せ〜!!」
あまりにも悲惨なその光景に、矢口の子分の加護も目を背ける。
こうなった矢口は、誰にも止められない。
「あんたが食ったさっきの食料品は、矢口の一週間分の食料だったんだ〜!!」
その後、荷物と一緒に後藤が外に放り出されたのは、言うまでもない……。
- 35 名前:鞘鞠 投稿日:2000年11月30日(木)23時32分35秒
- さて、これからだ。
ガンバロ……。
>>27
三角関係……なりますかね? いや、やっぱりなるわ(w
>>28
そう言って頂けると嬉しいです。。。
>>29
ドロドロにはできればしたくないんです…。
>>31
自分も矢口好きですよ。
自分の名前をひらがなに直してくれれば、矢口が最後どうなるかわかると思いますが。
>>32
ドロドロはねぇ〜、前書いてたやつで嫌になったんですよ。
一応終わりはなんとか一件落着だったんですが。
あくまで今回の後藤は、ボケ役に徹するつもりなんで。
あ、でも、真面目な後藤も書きます。
ドロドロは、後藤がどう動くかですね。
- 36 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月01日(金)00時55分17秒
- さわやかな三角関係なんて想像できへんしなあ・・・
さてさて、どうなる事やら(ニヤッ
- 37 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月03日(日)13時13分15秒
- 続き期待♪
- 38 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月03日(日)14時37分37秒
- 石川は?
続き期待
- 39 名前:じゅうさん。 投稿日:2000年12月03日(日)21時19分45秒
- 寒い外に放り出された後藤。
パンパンと服に付いた砂を払い、重い腰を持ち上げる。
「くそぅ……あのミクロ星人め……」
ちょっと小腹が空いただけなのに。
たったそれだけで、
「なにも、家追い出すことないじゃないかーっ!!」
そんな後藤の訴えも、一枚のドアで隔たれた矢口の耳には聞こえない。
「はぁ…家戻るしかないのかな……?」
トボトボと背中に哀愁を漂わせ、矢口のアパートから遠ざかる後藤。
さて、これからどうするのだろうか。
―――
「おつかれさまでーす。お先っす」
「は〜い。気をつけて帰るのよ〜」
バイト終了後、店の人達との挨拶もそこそこに市井は帰路を急ぐ。
寒いのは苦手だからだ。マフラーに上着も羽織っているけど、やっぱり寒い。
こんな日は、早く家に帰って暖まりたい。
しかし世の中、そう上手く行くハズがなかった。
冷たい風に身を縮ませながらの帰り道、市井の眠そうな瞳にいつかの家出少女が
飛び込んできた。
ドンブリ屋のサンプルをじっと見て死にそうな顔をしている。
(何やってんだアイツは……)
しまいには、そこにへばりついて「お腹すいた〜」と言って泣き出してしまった。
注目の的になる彼女。
(……ちっ)
別に友達でもないのに、たった三時間程一緒にいただけなのに、なんだかほっとけなくて。
へばりついているアイツの首ねっこを掴んで、その場所から離れさした。
「おいし〜い! アタシ、初めてハンバーガーに感動したよ!!」
「……そう、それはよかった」
「うんっ!!」
さすがに前回で学んだ女の子の食欲は、給料前の市井には手に負えそうにもない。
だから考えた。どこでだったら、彼女のお腹を満腹にさせてあげれるか、と。
この際、お金が少なくて済む所と、暖かい所だったどこでもよかった。
ちょっとでも気分転換したかったから。
彼女といたら、何だか楽しくなるから。
だから、市井は彼女をあの場所から連れ出したのかもしれない。
「ねえ、もう一個食べていい?」
すでにトレイには3つの包み紙。
それが、今4つに増えようとしている。
市井は、半分あきれたよう笑みを浮かべ、「うん」と頷いた。
- 40 名前:鞘鞠 投稿日:2000年12月03日(日)21時25分04秒
- とりあえず交信。
テスト一週間前に入ったので、交信まちまちになると思いますが、
見捨てないでやってください(w
ちゃんと勉強しな、マジで留年の二文字が……。
>>36
そうっすね。さわやかな三角関係は想像できないっすね。
さて、ほんとどうなる事やら(ニヤッ
>>37
書きましたー。短いですけど。
>>38
石川は今の所出すつもりは……。
すいません。
- 41 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月03日(日)23時29分02秒
- そうっすか。テスト頑張って下さい
すげ〜楽しみに待ってます
- 42 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月03日(日)23時38分23秒
- この展開・・・期待していいのかな・・・・ものすごくつぼにハマッテル・・・
- 43 名前:じゅうよん。 投稿日:2000年12月05日(火)01時23分18秒
- 「あ、もうここでいいよ。バス、もう来ると思うし」
ご丁寧にバス代まで貸してもらい、停留所で別れを告げる彼女。
お腹一杯になったのか、その顔はご機嫌だ。
「そっ?…んじゃあ荷物」
「あ、ありがと」
代わりに持ってあげていたバックを肩から下ろし、彼女に渡す。
当然のことだが、肩が軽くなった。少し、自由になったような気がする。
「まったく。アポとってた奴に捨てられて、わずか一日で家出終了とはね」
「ムッ。アタシだって思わなかったよ。まさか捨てられるとは。
しかもその人に、食べた食料代取られて無一文になるとはね」
「食べなきゃよかったんだ、食べなきゃ」
「う〜っ」
不満そうに口を尖らせる彼女。やっぱりこんな表情を見てみると、
本人に年齢を聞かなくても自分より年下だとわかる。
自由になって心が大きくなったのか、市井は彼女をからかってみたくなった。
「かわいいなぁ、後藤。ほんっとかわいいよ」
ニヤニヤしながら、覚えたての単語「後藤」を使ってその言葉を口にする。
彼女……後藤は、瞬間真っ赤になった。
「なっ! ちょっとぉ、わざとからかうのやめてよねぇ!」
照れ隠しなのか、口調を少し変え、声も少し変える。
でも、照れは隠せても、肌の色は隠せない。
依然、真っ赤のまま。
- 44 名前:じゅうごぉ。 投稿日:2000年12月05日(火)01時24分30秒
- 「……いちーちゃんなんか、ダイッキライだ」
覚えたての単語「いちーちゃん」を使って、プイッとそっぽを向く。
市井は、そんな後藤がかわいくて仕方がない。
思えば最近、こんな風に誰かと楽しく話したことがなかった。
いつも、雲の上にいるような矢口をずっと追いかけていたから。周りなんか、二の次だった。
好きだから。
矢口が、この世で一番大事だから。
でも、ずっと好きでいるのはやっぱり疲れる。
相手から同じように愛情をもらっていたのなら別だが。
最近、ずっと思うことそれは。
矢口は、自分のことを本当に好きなのだろうか。
解放されたい。
こんな気持ちから。
解放されたい。
誰か、市井を、私を救ってくれ。
「……ちゃん? いちーちゃん、どーかしたの?」
気がつくと市井の目の前には、後藤の顔のアップ。
今は。今だけは。
矢口のことを忘れたい。
いつのまにか来ていたバス。
それに乗り込もうとする後藤。
市井は、とっさに手を伸ばし、バスを見送らせた。
- 45 名前:鞘鞠 投稿日:2000年12月05日(火)01時29分40秒
- ああ、話が下書きと全然違う内容に……。
とりあえず、次からは新展開(?)ということで。
交信はなるべく早く!……できたらいいね(苦笑
>>41
ほんまにテスト頑張らにゃ。
ありがとうございます。嬉しいです。
>>42
こんな駄目文読んでくれて光栄です。
しかもツボにはまってくれてるなんて…(涙
- 46 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月05日(火)07時37分34秒
- 後藤の「いちーちゃん」ってほんとに良いね
- 47 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月05日(火)16時19分46秒
- やべ〜マジで面白い!どうなるのかなぁ〜(ワクワク
テスト頑張ってね
でもって続き頑張ってね
因みに僕はいちごま応援派。
- 48 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月07日(木)02時35分09秒
- 俺もいちごま応援派だな
- 49 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月08日(金)16時54分04秒
- 僕もいちごま応援派です。
ほんといいよ。この二人
- 50 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月08日(金)19時55分36秒
- さやまり応援派ッス。
いちごま大好きだけど、たまには矢口も幸せにしてあげてよ〜。
後藤がでるといつも矢口がふられてしまう。
・・・そんなの嫌だ〜〜〜。
- 51 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月08日(金)20時51分57秒
- ラブレボリューション21!!
- 52 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月13日(水)01時45分30秒
- いちごま押しだけど、作者さんに見を任せます(w
頑張って下さ〜い♪
- 53 名前:2部 エピローグ 投稿日:2000年12月16日(土)02時08分40秒
- 初めて矢口を見た時、その時から市井は、矢口のことが好きだったんだ、たぶん。
どこか儚くて、どこか淋しそうな目をした矢口。
気になって気になってしょうがなかった。初めて、自分から他人に興味を持った。
いつも誰かからの告白を受けて、彼女に不自由しなかった自分。
別れたくなったら、面倒になったら、あっさりその彼女を捨てて。新しい彼女を探す。
そんな自分が今。
一人の少女、矢口に夢中になって。
自ら壊れようとしている。
誰か助けて。こんなのは自分じゃない。
こんなカッコ悪いのは自分じゃない。
矢口に溺れて、周りが見えなくなっちゃうのは。
みっともなくても、言う事聞いちゃう自分は。
とてつもなく嫌だった。
……だから、後藤を引き止めたんだ。
- 54 名前:2部 エピローグ 投稿日:2000年12月16日(土)02時09分11秒
- 「うわっちぃ〜!」
頭に響く甲高い声。時計を確認すると、現在午後12時半。
「学校に遅刻する!」と、慌てて飛び起きたが、ある事に気づく。
「そっか。今日は日曜か……」
寝ぼけ眼で服を着替え、ボサボサの頭のまま、声のしたキッチンの方へ向かった。
「……おす」
目玉焼きと格闘している、目の前の少女に朝の挨拶。
彼女はくるっと回って、頭ボサボサの寝起き少女にこう言った。
「……めす」
ズコッと倒れるボサボサ頭。
それを見た少女は、軽く微笑った。
「……おい。なんで『めす』なんだよ。普通は『おはよ』とかじゃないのか?」
「だって、自分が『おす』って言ったんじゃん。だからアタシも『めす』って返しただけだよ」
くだらない言い合い。しかし、そんなくだらない言い合いでさえも、今の二人には楽しい。
まだ出逢ったばかりだから。お互い、ツライことは何も聞かないから。
とっても居心地がいい。ずっとこうしてたい。
でもまずは、初めての朝の挨拶のやり直し。
「……おはよ、後藤」
「……おはよ、いちーちゃん」
二人見つめ合って、しばらく笑い合う。
出逢って3日目にして、矢口に隠れての秘密の恋が始まった…。
- 55 名前:鞘鞠 投稿日:2000年12月16日(土)02時09分53秒
- ドロドロ第二部。
なんじゃこりゃ。くそう。……なんとか収めるさ(涙
>>46
うん。いちーちゃんはいいっすよね。
>>47
え〜、見事にドロドロになっちゃいました〜<開き直り
くそう。ドロドロにするつもりなんかなかったのに…。
いちごま応援派…オレはさやまり応援派…。
>>48
多いなぁ、いちごま好き。ごまに悲しい思いさせないよう、がんばります。
>>49
ほんといい。だけど、自分はさやまりが好き。
今日のMステで、やぐよしやらやぐちゅ〜があっても。
ほんといいんだよ、さやまりは(涙
>>50
同志同志! うちんとこは、矢口に悲しい思いはさせないさ!
なんせ作者はさやまり好きだから!
>>51
最初聞いた時、呆然としてしまった曲…。
つんく、お願いやから、真夏の光線みたいな曲をもう一度…。
>>52
ええ、身を任せてください。
悪いようにはしません(w
- 56 名前:作者様へ 投稿日:2000年12月16日(土)05時27分28秒
- さやまり と いちごま どちらも捨てがたい…
この後先どうなるかわかりませんが、期待しております。
(でも作者の名前どうりになるのかな(笑))
- 57 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月18日(月)21時58分15秒
- 矢口に隠れて秘密の恋・・・
どうなるか楽しみです。
- 58 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月19日(火)01時49分53秒
- 初々しいいちごまいいっす!
この先楽しみです頑張って下さい。
- 59 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月19日(火)01時53分34秒
- 53、54は第二部プロローグですよね?
- 60 名前:2部 ―いち― 投稿日:2000年12月19日(火)04時47分47秒
- 「……うん、あ〜もう判ってるって!…うっさいなぁ…」
充電必要だった携帯を、市井の家で充電させてもらい、家に電話。
よっぽど大きい声で怒鳴っているのか、後藤から少し離れたソファに座っている市井の耳にも、
母親の声が聞こえてくる。それが、なんだかおかしかった。
ボスッと音を立てて、不機嫌そうに隣に腰を下ろす後藤。
「終わった?」
「……うん」
唇を尖らせ、携帯をじっと見ている。
市井は、さっきから笑いが止まらない。
「結局、心配されてんじゃん後藤。なんだかんだ言いながらさ」
「な! ち、違うよ。し、心配なんかされてない……」
「ん〜? 語尾が弱いよ、語尾が」
「…されてない!」
市井に指摘された語尾の弱さを強にして言い直す。
それを聞いて、また市井は笑い出し、後藤を余計に不機嫌にさせる。
「……いちーちゃんなんか、ダイッキライだ」
でも。そんなことを言った後藤の顔は。
市井のことが大好きって顔をしている。
そんなアマノジャクな後藤が、市井はたまらなく愛しかった。
心は。頭は。意識は。
矢口のことを忘れ。
ゆっくりと、市井は、後藤に顔を近づけた。
それは、ごく自然なこと。
優しい優しい……キス。
- 61 名前:2部 ―にぃ― 投稿日:2000年12月19日(火)04時48分46秒
- 「矢口さーん!」
日曜。何も予定が入ってなかった矢口は、ヒマだから街をウロウロしていた。
そんな時。後ろから、自分を呼ぶ声。
多分加護だ。そう確信して後ろを振り向くと、ズバリその通りだった。
「……なに?」
昨日、後藤に食料を食われたことをまだ根に持っているため、気分は最悪。
その上、今日は服を買いに行こうと思っていたのに、荷物持ち(?)の市井と連絡が取れない。
さっきから何度もワンコールしているのに。市井から返事は返って来ない。
ワンコールじゃなく、電話をかけたらいいのかもしれないが、そうしたら電話代がかかる。
節約のため、メールだって絶対しないのに。
だからワンコールするだけして、市井からの電話かメールを待つのだ。
……気分は最悪。
そんな矢口に話し掛けた加護は、最悪なタイミング。
「あ、あの〜…なんか怒ってます? 後藤さんのこと、まだ根に持ってんですか…?」
「………」
自分の先輩と親分が喧嘩(?)をした。加護は、間で立場が悪い。
なんとか修復を試みようと、会話をつくる。
「あ、あれからどこ行ったんでしょうね後藤さん…。ヨッスィーんちにでも行ったんかな」
ヨッスィーとは、前に言った吉澤ひとみのあだ名。
後藤とはクラスメイトであり、親友でもある。
そんな吉澤は、矢口達が通っているタンポポ学園の一年生石川梨華と交際中。
「…ヨッスィーんち? いや、それはないよ。だって昨日梨華ちゃんちに泊まるって
メールが来てたもん。……家帰ったんじゃない?」
「……でも、ウチあれから後藤さんの携帯に電話してみたんですけど繋がらんかって、
しょうがないから家に電話してみたら、おばさんが『まだ帰ってない』って言うてましたよ?」
「……じゃあ、どこに泊まったのさ」
「……さあ?」
「……アイツ、他に泊めてくれる人とかいたっけ」
「……さあ?」
「……矢口、悪いことしちゃった?」
「……そうですね」
「「………………」」
矢口は知らなかった。
まさか後藤が、自分の恋人の家に泊まってるなんて。
……この時はまだ、知らなかった。
- 62 名前:鞘鞠 投稿日:2000年12月19日(火)04時49分37秒
- よしよし。イイ感じイイ感じ…。
どうやら自分は、矢口に悲しい思いをさせるのが好きらしいことに気づきました。
そして、自分の書いた小説に、必ず吉澤くんを登場させることも…。
>>56
えっと、自分もこの先どうなるかわかりません(爆
(名前の通りにしてみせるさ!)
>>57
ドロドロは好きじゃないんですけど、いつまでも秘密はいけませんよねぇ…。
バレるのは、結構早いかも。書きたいのは、三角関係じゃないので。
メインは、“この世で一番大事なもの”ですからね。
>>58
いちごまは、最後までこんな感じかもです。
頑張ってご期待に添えるよう精進します。
>>59
うわっ!しまった間違ってた!
ありがとうございます。そうです。プロローグです。
うわ〜、ほんとごめんなさい。あと、ありがとうございます。教えて下さって(感謝
- 63 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月19日(火)23時40分23秒
- 作者さんホントにさやまり派っすか?(w
いちごまのツボを分かってらっしゃる(w
続き期待!!!
- 64 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月24日(日)11時19分34秒
- 続き期待♪
- 65 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月25日(月)07時02分49秒
- 続き大期待
- 66 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月25日(月)12時46分30秒
- 続き〜
- 67 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月26日(火)23時38分10秒
- 催促age
てゆーか続きが気になりすぎて…
- 68 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月27日(水)00時32分42秒
- 作者さんファイト
- 69 名前:2部 ―さん― 投稿日:2000年12月29日(金)00時42分10秒
- 「どーしましょう、矢口さん。後藤さん、変なヒトにダマされたりとは…」
「いくらボーっとしてても、それはないっしょ。悪い人かどうか見極めるくらいは…」
しかしイマイチ自信がない。正直言って、後藤と付き合ってかれこれ一年くらいになるが、
今だに性格が掴めないのだ。
何を考えているのか、普段自分と会わないときはどうしているのかも、まったく判らない。
それは、隣りで心配そうにしている加護も同じ。
「ま、たぶん大丈夫でしょ。アイツ、あー見えてもズル賢いし」
とりあえずは、判っている性格を言って、加護を安心させる。
「ん〜…まあそうですけどね。なんとかするとは思いますけど…」
けど、やっぱり心配。そんな加護を慰めるように、矢口が一つ息を吐いて言った。
「そんな心配ならさ、もう一回電話してみれば? 誰かんちに行って、
充電させてもらってるかもしんないしさ。ねっ?」
ほらっ、と加護を急かし、後藤の番号を呼び出させる。
……トゥルルル……トゥルルル……
かかった。二人してガッツポーズ。
そうしてしばらくコール音を聞いて、後藤が出るのを待った。
『はいもしもし…』
- 70 名前:2部 ―よん― 投稿日:2000年12月29日(金)00時42分49秒
- 「はいもしもし…」
電話がかかってくるついさっきまで、熱いキスを交わしていたのに。
それをジャマされた後藤の電話の対応は、ちょっと不機嫌そう。
市井はその電話の着メロの音で、我に返った。
(今市井、後藤に何した……?)
唇を押さえてみる。先程の行為を思い出して、市井は自己嫌悪に陥った。
(最低だ…!)
後藤には、絶対に手を出さないつもりだった。
それは、本気にならないようにっていうのもあったけど、何より、矢口を裏切りたくなかったから。
帰ろうとした後藤の手を掴んだけれど。家に泊まらせはしたけれど。
昨日は何もなかった。ただ、一緒のベッドに入って、手を繋いで寝ただけ。
なのに自分は、一線というまではいかないけど、超えてしまった。
矢口以外の人と、キスしてしまったんだ。
忘れたいとか、そんなくだらないことを思って、
一番大事な人を、この世で一番大事な人を裏切ってしまった。
|
『紗耶香さ、人の気持ち考えたことある?』
『あたしだけじゃないよ。相手の子もあんたに利用されたんだ』
『市井センパイは、自分のことだけしか考えてないんです!』
『………最低ッ!!」
|
瞬間、頭に浮かんだ、過去にフッた子達のコトバ。
はい、その通りです。
人の気持ちなんか、考えたりしませんでした。
市井は、後藤を利用したかもしれない。
情けない自分が嫌だった。そんな自分が恥ずかしいとしか思わなかった。
私は、最低です。
市井は、今やっと、今まで自分がフッてきた女の子の気持ちが判りました。
そんな市井に気づかず、楽しそうに話している後藤。
電話越しに聞こえる声は、市井がこの世で一番大事な人の声なのに。
矢口の付き合っている人の名前が“市井紗耶香”なんて聞いてもいなかったから。
紗耶香という名前は時々耳にしたけど、まさか今自分の隣りにいる人とは思わなかったから。
後藤は、知らなかった。
……この時はまだ、知らなかった。
- 71 名前:鞘鞠 投稿日:2000年12月29日(金)00時52分23秒
- >>63
完璧な、さやまり派です。これは、命かけてもです(大マジ
>>64-67
いやはや、続き遅くなって申し訳ないっす・・・。
最低でも一日置きってことなんですが・・・。
>>68
ファイト、使いきりました(爆
- 72 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月30日(土)00時37分19秒
- 展開が面白いっすね〜
- 73 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月31日(日)03時48分50秒
- あはは、まった〜りまってます。
でも続き気になる〜
- 74 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月04日(木)02時14分18秒
- 年明け催促age
- 75 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月06日(土)00時32分09秒
- 先が気になるな〜〜どうなんのかな!
- 76 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月09日(火)00時02分04秒
- 続き期待してます。
- 77 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月09日(火)06時14分19秒
- 続き希望
- 78 名前:2部 ―ごぉ― 投稿日:2001年01月09日(火)23時29分50秒
- 「後藤……」
電話が終わったのを確認して、静かに後藤に呼びかける。
「ん?」
無邪気な笑顔が、なぜか苦しい。
ほんとは嬉しいはずなのに、心が苦しくてたまらない。
「……ごめん。さっきのキスは、忘れてほしい……」
みるみるうちに曇ってくる後藤の笑顔。
自分は、矢口を裏切って、後藤を傷つけた。
どこまで落ちれば気が済むんだろう。
矢口と付き合う前は、色んな子とハメをハズして。別れる時、どんなに罵倒されても無視決め込んで。
自分から矢口に交際申し込んだのに、こき使われるのに嫌気がさしたから、他の子を引き止めて。
中途半端な気持ちで、キスをしてしまった。
最低は、死ぬまで経っても直らないね。
市井は、自嘲気味に笑った。
- 79 名前:2部 ―ろく― 投稿日:2001年01月09日(火)23時31分51秒
- 「………わかった。いちーちゃんがそう言うんなら、忘れるよ」
でも後藤の笑顔はすぐに元に戻って。思ってもみない事を言ってくれた。
「いちーちゃん、彼女いるんでしょ?」
「え……」
「判るよ。だっていちーちゃんカッコイイし、優しいもんね」
違う。市井は。
「優しくなんかないよ。最低な奴だよ」
彼女がいるのに、後藤にキスした。
「……でも、いちーちゃんが最低な奴なら、アタシは史上最悪最低な奴だよ」
「……なんで?」
後藤は、笑顔でこう言った。
「アタシ、いちーちゃんの彼女、知ってるんだ」
- 80 名前:鞘鞠 投稿日:2001年01月09日(火)23時32分27秒
- 遅くなってすいませんでした。
一週間以上間を空けてしまって…。
いちごま、こんがらがっております。
>>72
展開面白いですか? ありがとうございます。
>>73
マタ―リ待っててくれれば助かります(爆
これからは、4日に一回と言っておこうかな…(獏
>>74
ほんとは31日か正月にアップしたかったんですが、なにぶん忙しくて…。
でも学校始まったから、もっと忙しくなるんですけどね…。
>>75
こんがらがっちゃいました(爆
>>76-77
遅くなってしまって、申し訳ないっす。
- 81 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月09日(火)23時37分46秒
- オモローイ!
- 82 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月10日(水)08時36分00秒
- 続き期待
- 83 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月11日(木)00時48分57秒
- さいこうっす
- 84 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月13日(土)07時01分54秒
- 続き希望age
- 85 名前:名無し読者 投稿日:2001年01月18日(木)04時35分17秒
- これからはさやまり派です・・・
- 86 名前:2部 ―なな― 投稿日:2001年01月19日(金)22時29分20秒
- 「え………?」
後藤の言った言葉が、理解できなかった。
後藤の言った言葉が、聞き間違いだと思いたかった。
後藤の言った言葉が、更に市井を追い詰めた。
「ね? アタシの方が最低でしょ?……あ、加護ちゃんって知ってる? いつもやぐっつぁんと一緒にいる子。
アタシ、あの子と家近所でさ。そこで何回かやぐっつぁんと会って、仲良くなって。
共通の友達とかもいたし、よく色んな話したんだ。もちろん、いちーちゃんの話もでてきたよ」
そこまで言って、言葉を区切る。
電話だ。
後藤は、着信が矢口と出ているのを確認して電話をオフにした。
「今だけは、やぐっつぁんにジャマされたくないんだ」
小さくゴメンと呟いて、再度口を開いた。
「アタシ、あのやぐっつぁんと半年ももつ人、興味あったの。
だって、普通の人だったら、もうとっくに別れてるし。でも、いちーちゃんは別れてない。
そんで、やぐっつぁんに『どんな人?』って尋ねたら、『ヘンなヤツ』って返ってくるから、
勝手に色々想像しておもしろがって、会ってみたくなったの。
顔は、加護ちゃんに見せてもらったことあるから知ってたし。
でも、そんなアタシのバカな考えが、いちーちゃんを追い込んじゃったんだよね……」
「ごと――」
「でもそれももう終わり! アタシ、やっぱ家帰るわ」
軽く背伸びをして、荷物を置いていた部屋に入り荷物を持って再び戻ってくる。
「じゃあね、今度会った時、またオゴってよ。
アタシはいつでもオッケーだよ〜ん♪」
まだボーっと突っ立ったままの市井の背中を叩き、後藤は玄関に。
「あ、でも、やっぱ会わない方がいいのかな? やぐっつぁんにバレたらやばいしね〜」
じゃ、会わない事に決定! 一人で結論を出す。
「んじゃさよなら。オゴってもらえないのは残念だけど」
バイバイ。
耳元でそう言った。
- 87 名前:2部 ―はち― 投稿日:2001年01月19日(金)22時32分31秒
- 市井は、後藤の後ろ姿を見送る。
ドアが自分の方へ戻って来て、後藤が自分の元から遠ざかる。
なぜだか、軽い眩暈を感じた。
気づくと、自分は声を出していた。
「ま、待てよ! 会わないって、前市井が貸したタクシー代はどうすんだ!
今後藤金もってないんだから、今度会う時にしか返してもらえないじゃん!
だから市井は、もう会わないって後藤の意見、反対だからな!!」
素直じゃないと自覚している。
そんなんじゃ判ってもらえないことも判ってる。
もう、後藤が見えないのも判っている。
でも言わずにはいられなかった。
「………バッカみてぇ」
涙が滲んできた。
「うん。ほんとバカだよ」
一筋の涙がこぼれる。
「やっぱり、やぐっつぁんが言った通り、いちーちゃんは“ヘンなヤツ”だね」
「………後藤には負けるよ」
「ヘヘッ、アタシってヘンなヤツ?」
そう言って微笑う彼女に、市井は「うん」と頷いた。
- 88 名前:鞘鞠 投稿日:2001年01月19日(金)22時33分04秒
- さあ、次回は市井くん決断の瞬間です。
ここまで来るのが長かった。こっからが本題なのにな…。
>>81
へい、ありがとうございます。
何よりも励みになります。
>>82
いい所でくぎっちゃいましたからね。
お待たせしました。
>>83
ありがとうっす。
そう言って下さるあなたもさいこうっす!
>>84
いやあ、ほんとに10日間もの間をあけてしまって…。
交信する気はあるのに、時間がない(涙
>>85
是非さやまりに愛を注いでやってください!
ちょっとでもさやまりに魅力を感じてくだされば、私も書いたかいがあります。
めざせメジャーですからね。やぐちゅ〜には負けたくないっす。
- 89 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月20日(土)00時25分04秒
- うぅ、何故か必死の市井にちょっと感動…。
かっこ悪いけどかっこいいっす。母性本能くすぐられる。
後藤のけな気さとさりげなさがいい感じ。
私的にはいちごまだと嬉しいのだが…。どうなるんだろ。
- 90 名前:名無しちゃむ 投稿日:2001年01月20日(土)01時02分56秒
- ちゃむ
- 91 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月20日(土)08時11分11秒
- 続き期待
- 92 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月23日(火)02時38分02秒
- ここの市井なんかいいね
続き待ってます
- 93 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月25日(木)11時24分13秒
- 頑張れ
- 94 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月25日(木)20時49分13秒
- 続き希望
- 95 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月27日(土)15時11分02秒
- 続き楽しみ
- 96 名前:3部 プロローグ 投稿日:2001年01月29日(月)00時10分06秒
- 騒がしい日常。中身のない会話。
心からおもしろいと思ったことなんて、あの時から一度もない。
笑うことはある。自分でジョークを言ったりもする。
でも、心から楽しいと思ったことなんて、あの時から一度もない。
紛らわすのは。忘れるのは。ごまかすのは。
全部お金。
お金を集めている時、数えている時はそれは一切忘れられる。
その後がすっごく虚しいケド。
矢口の感情は、あの時から止まっちゃったんだ。
この世で一番大事なものを亡くしっちゃった時から。
あの時から、矢口は、その現実を忘れるかの様に、お金に逃げてる。
お金のせいにして、お金にすがって、お金をこの世で一番大事なものにして。
お金は、絶対に亡くならない。
お金は、矢口に微笑んだりしない。
お金は、人のぬくもりなんかない。
- 97 名前:3部 プロローグ 投稿日:2001年01月29日(月)00時10分46秒
- でも矢口は見つけてしまったんだ。
お金じゃない、この世で一番大事なもの。
アイツといると、すっごい落ち着けて、心地よくて。
繋いだ手があったかい。
忘れてたこの感じ。忘れたかったこのぬくもり。
好きなんだ、紗耶香のことが。
でもそれは言えない。
態度にも出せない。
今度は、もう、あの時みたいになりたくないから。
一人で淋しい思いはしたくないから。
「好き」って言ったら、何かが壊れてしまいそうで。
次に逢った時は、もうこの世にいないんじゃないかって思って。
矢口は、恐い。
過去に遭った出来事が、今また起こるんじゃないかって。
だから今だに、矢口は紗耶香に「好き」って言えない。
- 98 名前:鞘鞠 投稿日:2001年01月29日(月)00時14分38秒
- また前の交信から一週間以上空いてる…。
ほんといーかげんしろよ、自分。
いや、でも、今回はちょっと検定とかがあって勉強を…。
と、一応言い分けをしてみたりする(爆
>>89
わあ、細かい感想ありがとうございます。
母性本能くすぐりますか、そうですか。
かなり褒められてますね、市井くん。
いちごま……さ〜、どうなるんでしょう!(無責任
>>90
市井、人気だなあ。
>>91
ありがとうっす。頑張ります。
>>92
なぜか市井人気だ…。
みんな、頼りない市井が好きなんかな…?
>>93
おっす! 頑張ります!
>>94
いや、間を空けてしまってすいません。
頑張って書きます。
>>95
ありがとうございます〜。
楽しみにして頂けると、すっげえ嬉しいです。
- 99 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月29日(月)19時09分15秒
- マタ〜リ待ってます
続き楽しみ
- 100 名前:ただ〜の通りすがり 投稿日:2001年02月05日(月)16時27分04秒
- age
- 101 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月10日(土)04時11分33秒
- メチャメチャ楽しみにいつも待ってます。
ガムバッテ・・・・・・・・・俺もガンバル・・・・
- 102 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月12日(月)22時01分34秒
- 続きがすっげ〜気になります。
- 103 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月13日(火)01時28分52秒
- 同じく…続き希望
- 104 名前:3部 ―いち― 投稿日:2001年02月13日(火)23時11分55秒
- 最近思うこと。それは。
紗耶香が、なんかオカシイ。
―――
人や車などで込み合う駅前。その中で一際目立つ高級車。
その高級車の中に、矢口真里はいた。
「なあ、ほんまに家まで送って行かんでええんか?」
「うん。別にすぐそこだし」
「でも……」
シートベルトを外して、ドアに手をかけようとする矢口を名残惜しそうに見ながら、
「やっぱり、一人じゃ心配や。夜も遅いし」
自分も決心したかの様に、シートベルトを外し、外に出る。
慌てて、矢口も外に出た。
外はもう暗くて。
昼間は見えていた、目の前の相手のサングラスの奥に隠されていた瞳。
でも、今はどんな瞳をしているのかさっぱり判らない。
判るのは、自分と同じような金髪と、タバコの火だけ。
「ねえ裕ちゃん、ほんといいって。送ってくれなくてもさ」
「アカン。こんな夜道、矢口一人じゃ歩かせられへん!」
「……あのねぇ、矢口コドモじゃないんだから…」
どうやらこの人――裕ちゃんこと中澤裕子は、自分のことをえらく子供扱いすることがある。
まあ、年齢が離れているっていうこともあるが。
「そんなに心配なら、迎えに来てもらうから。ちゃんと」
でも、なんだかこの人に子供扱いされるのは悪い気はしない。
「誰にぃ」
「紗耶香」
「…………尚更アカン」
だって、この人も子供みたいだから。
- 105 名前:3部 ―にぃ― 投稿日:2001年02月13日(火)23時13分04秒
- 〜〜〜
中澤と知り合ったのは、もう二年近くも前。
一人で夜、街中をブラブラしている時、出逢った。
母親が死んでから、初めて自分に優しくしてくれた人。
初めて、お金をくれた人。
初めて、矢口を抱いた人。
市井と違って中澤は大人で。
人の汚さとか、人を信じるとか、人の命の儚さとか、全部知ってて。
矢口の話を、真剣に、笑わずに聞いてくれた。
この世で一番大事なものは、お金だってことを。
何も言わず、反対もせず、黙って聞いてくれた。
市井のこともそう。
でも市井の話だけは、反対した。
「矢口と市井ってヤツは、合わへんよ」
市井の話をすると、いつもこのセリフばかり。
〜〜〜
- 106 名前:3部 ―さん― 投稿日:2001年02月13日(火)23時13分45秒
- 「「矢口と市井ってヤツは、合わへんよ」」
たぶん言うだろうな、その通り。
見事にハモる。
「絶対言うと思ったよ」
「絶対言われると思ったわ」
毎度、こんな感じ。
「………でもな、裕ちゃんの言うことはホンマやで。
あんたと市井は合わへん。現に、今なんかヘンやねんやろ?」
「……あ〜」
こんな風に追求されるなら、言わなきゃよかった。ちょっと後悔がでてくる。
「でも、電話に出ないだけだし?」
「つーか、電話出ーへんって、大事件やん。自分ら終わりとちゃうん?」
「え、電話に出なかったら終わりなの?」
「いや、普通、よっぽどのことが無い限り、電話あったら電話し返すやろ。
やのに電話が返ってこーへんってことは、そーゆうことじゃないんですか?」
「……そうなんでしょうか」
「……どうでしょう」
「…ま、とりあえず、今日は送ってもらわなくて大丈夫ってことで」
気まずくなった所で、話題を元に戻してみる。
「あ、そうですか…」
中澤も拍子抜けしたのか、がくっと前のめりになった。
「じゃあね〜、また今度」
「おう、またな。……あ」
「ん? んっ……」
不意の声に振り向き、不意にキスされる。
別に抵抗はしない。
しばらくして、中澤が唇を離した。
それと同時に、手を差し出した。
「ハイ、三千円」
「ええっ、マジで? そんな高いん?」
「うん。だって、ディープキスだから」
「……はあ〜」
ため息を吐きながら、財布から三千円を取り出し矢口に渡す。
「毎度あり〜♪」
早速その三千円をミニボックスに入れる。
「トホホ……ただのキスだけにしときゃよかった……」
そう言って車の中に戻り、車を発車させる中澤の後ろ姿を見送りながら、
矢口はふと思い出す。
「電話が返ってこーへんってことは、そーゆうことじゃないんですか?……かぁ」
今日も、市井の携帯は留守番電話設定。
それから矢口は、一人でアパートに帰った。
- 107 名前:鞘鞠 投稿日:2001年02月13日(火)23時14分25秒
- 姐さん登場。
やっと出せた。やっと役者が揃った。
待たせてほんとごめんなさい!
>99さん
続き楽しみにしてくれて、もう2週間以上…。
ほんとごめんなさい(汗
>ただ〜の通りすがりさん
わざわざageてくださってすいません。
ありがとです。
>101さん
うう、マジすいません。
待たせてごめんなさいです。。。
>102、103さん
続き、書きました〜。
お待たせして申し訳ございません!
- 108 名前:ミルクチョコ 投稿日:2001年02月13日(火)23時28分43秒
- やった!更新だ。
ここの矢口のキャラがすっごく好きです。
今後の話にも期待
- 109 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月13日(火)23時59分00秒
- たまに書いてるのに、文章のテンポがすっごくいいのが凄いす
僕の中で一押しなので無理ない程度に頑張って下さい
- 110 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月14日(水)06時23分23秒
- いや〜待ってましたよ更新
続き期待してます。
- 111 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月16日(金)21時56分46秒
- 期待age
- 112 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月17日(土)00時52分27秒
- そろそろ続きぷりーず
- 113 名前:ぷち 投稿日:2001年03月19日(月)20時24分31秒
- う〜ん・・・
まりっぺに幸せになってもらいたい・・・。
さやまり大好きなんで・・・。
作者さん、頑張ってくださいね♪
- 114 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月21日(水)16時39分29秒
- 作者さーん?
応答だけでもしてくれるとありがたいんだけど…
- 115 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月23日(金)23時07分01秒
- 作者さん?
更新希望。
- 116 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月23日(金)23時40分11秒
- 同じく!続き気になってます!!!
- 117 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月02日(月)03時56分56秒
- 作者さ〜ん、カムバック プリ〜ズ!!
- 118 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月03日(火)21時18分34秒
- 作者さん!お願い!!
- 119 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月04日(水)13時10分40秒
- 放置か?
それならそれで一言言ってくれ。
毎回毎回ここをチェックする手間もはぶけるし。
- 120 名前:鞘鞠@作者 投稿日:2001年04月04日(水)15時31分18秒
- うぅ、ごめんなさい。
サボりすぎてました。マジすいません。
書きます。続き。
でも、もうちょっとだけ待ってください。もうちょっとだけ…。
- 121 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月04日(水)15時48分13秒
- 待ちますよ♪
作者さん頑張って下さい。
- 122 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月04日(水)15時52分03秒
- 大丈夫ですよ。待ってますんで気にしないで下さい。
- 123 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月04日(水)20時30分44秒
- おとなしく待ってますよ♪
続けるって解答が聞けてよかったです。
- 124 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月05日(木)00時13分44秒
- 大丈夫!がんばってください
- 125 名前:―よん― 投稿日:2001年04月05日(木)00時24分52秒
- 「すいません、お先でーす」
「お疲れさま〜」
今日のバイトも終了。
この後の予定は、後藤にご飯を奢ってあげる約束がある。
前もって約束していたから、財布の中身は大丈夫。
よっぽどのことがなければ足りるだろう、と考え、三万円は入っている。
用意はバッチリだった。
鼻歌を歌いながら、いざ待ち合わせの場所に行こうとした時。
ブッブー!
道路脇に見覚えある車。
その見覚えある車にもたれて、タバコを吸っている金髪のヤンキーぽい人。中澤だ。
「何しに来たんだよ……」
誰だか分かった市井は、俯き舌打ちをして、その車がある方に向かった。
- 126 名前:―ごぉ― 投稿日:2001年04月05日(木)00時25分37秒
- 「遅かったな。待っててんで」
関西弁。
別にキライではないのだけれど、なんだか妙に腹が立つ。
「なんスか。矢口なら、いませんよ」
「知ってるよ。だってさっき逢ってたもん」
『さっき逢ってた』という言葉に、少し反応をしたが、気づかれないように装う。
「じゃあ、なんでこんなトコにいるんスか」
矢口と中澤の関係は知っている。
矢口のアパートに遊びに行った時、何度か中澤とも会ったこともある。
お互い面識はあるのだが、友達ではない。
そう。ライバルだ。
市井の質問には答えず、笑顔でタバコをはく。
その煙が市井の顔にかかって、更に不機嫌になる。
せっかくさっきまで気分がよかったのに、台無しだ。
どうも合わないみたいだ、この人とは。
「この後約束あるんで、もー行きます」
中澤の口からタバコを奪い、地面に落として火を消す。
そして、去って行こうとしたのだが、手を掴まれた。
「誰と約束してるん? 矢口とは連絡取ってないのに、その約束してる子とは連絡取ってるんや。
もしかして、矢口に黙って秘密の恋してるん?」
バカにしたような笑み。頭に来る。
時折り光が当たり、中澤のサングラスの奥に隠されている瞳が見える。
見透かしたような、瞳。
ナメられているような、瞳。
余裕の、瞳。
すべてがムカツク。
- 127 名前:―ろく― 投稿日:2001年04月05日(木)00時26分43秒
- 「………後藤とは……その子とは、恋とかそーゆうんじゃ絶対ないです。
市井が好きなのは矢口だけです、 矢口しかいない!」
「じゃあ、なんで電話とかかかってきても無視してんねん」
「それは……」
出るのがツラかった。
後藤とキスしたこと、後藤を引き止めたこと。
それを知られてしまったらと考えたら、出れなかった。
それに、後藤にも悪いような気がして…。
やっぱりどこか、市井の知らない所で後藤のことを意識しているのかもしれない。
「……矢口、なんか沈んでたぞ? 本人は気にしてないフリしてたみたいやけど」
「え…」
実際沈んでいる所を見てないので、素直に信じれない。
矢口に好きって言われたことがない上に、態度にも出されたことがないので、
沈んでたなんて信じられないのだ。
しかし恋のライバルが言っているので、間違いはないはず。
「電話しないのは事情があるからで…別に嫌いになったわけじゃ…」
「まあ、そっちの事情なんか知ったこっちゃないけど、あんま矢口を放ったらかしにしてたら
アタシ奪うで。あんたから矢口を」
「………お好きにどーぞ」
でも絶対そんなことさせませんから、と睨みを効かし、今度こそ去って行く。
今度は中澤も手を掴んだりはしなかった。
- 128 名前:―なな― 投稿日:2001年04月05日(木)00時27分16秒
- 運転席に戻り、ジュボッとライターでタバコに火をつけ、咥える。
そして駆け足で去って行く市井の後ろ姿を見ながら
「世の中、“絶対”って言葉はないんやで〜?」
へらへら笑いエンジンをかけた。
コーコーセイは、真っ直ぐでいいね。
汚れとかまだ何も知らんくて。
でもな、そんな汚れとか何も知らんようなヤツに、矢口は合わへん。
一度でも世の中の汚さを知ってしまった人間は、誰だって純粋なヤツに憧れる。
矢口だってそうや。憧れを好きって錯覚してるだけ。
真っ直ぐで純粋なヤツは、世の中の汚さを知ってる人間を憧れたりなんかしない。
矢口のもっと内側を知ったら、アイツも夢から覚める。
純粋なヤツは純粋なヤツと付き合ったらえーねん。
「後藤……って言ってたよな、確か」
世の中、汚いヤツばっかりや。
………自分を含めて、な。
- 129 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月05日(木)04時26分31秒
- やった〜〜!!更新されてる〜〜!!
それにしても、この続きが非常に気になります。
- 130 名前:ぷち 投稿日:2001年04月05日(木)08時52分58秒
- やった♪
更新♪
裕ちゃん黒いですねぇ・・・(w
- 131 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月05日(木)14時53分00秒
- うぉ〜!!更新されてる〜〜!!
……待ったかいがあったよ…
- 132 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月05日(木)20時19分54秒
- う、うれしい!!
密かに毎日チェックしてたかいがあったよ〜。
更新だ〜。
- 133 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月06日(金)01時34分38秒
- ずっと待っていました!!でもなんか暗雲が・・・(笑)
- 134 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月06日(金)01時40分01秒
- くぅ(><)
気になるッス!!
- 135 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月06日(金)23時25分53秒
- おおおッ
ナニゲに気になる展開じゃぁないですか
- 136 名前:―はち― 投稿日:2001年04月07日(土)01時57分49秒
- ザーッ
授業も終わり、靴を履き替えて、さあ今日も稼ぎに出ようとした瞬間、雨。
そういえば天気予報で雨が降るとか言っていたような気がする。
でもその時は遅刻しそうで急いでいた為、ちゃんと耳に入っていなかった。
「ちょっとぉ……どーしてくれんだよぅ」
友達の傘に入れてもらうのも一つの手なのだが、これから仕事でデートなのだ。
二人で一つの傘に入ったら、絶対と言っていいほど濡れる。
かといって、雨が止むのを待っている時間もない。
コンビ二で傘を買うなんて、もっての他。
なんで家に傘があるのに、傘を買わなきゃならないんだ。金が勿体無い。
じゃあどうする? 結局は、こうするしかないんだ。
イライラしながら、携帯のメモリーに入っている“紗耶香”という文字を探す。
そして携帯を耳に当て、ワンコールをして切ろうとするのだが、それより先に聞こえる機械の声。
「……もうっ! なんで出ないんだよぉ!」
同じことしか言わない機械の声にはもう飽きた。
市井の声が聴きたい。でも出てくれない。
「…………なんかムカついて来た。いいよ、そっちがその気なら……」
何やらブツブツと言い出し、どこかに電話をかけ謝る矢口。
そして電話を切り、濡れるのも気にせず雨の中歩き出した。
- 137 名前:―きゅう― 投稿日:2001年04月07日(土)01時58分23秒
- 矢口が通っている高校、タンポポ学園から電車で2駅の市井の家。
たまにしか行かないのだが、ちゃんと覚えている。
矢口は雨に濡れながら、電車で2駅の道のりをひたすら歩いて(節約の為)、やっと家の前に到着する。
もう制服はビッショリだ。自慢の髪の色も、こんなにビショビショじゃ何の意味もない。
せっかくのデートも断わって、逢いに来たんだ。
ここまで来て市井がいなかったら、自分は何のために断わったか分かりゃしない。
イラつく心を抑えながら、チャイムを押した。
「ごめんね、紗耶香まだ帰ってきてないのよ」
出てきたのはお母さん。
「………はあ、そうですか……」
一気に力が抜け、曖昧に返事を返し足早にそこから去る。
こんな濡れて情けない姿を見られるのも嫌だったし、何より、お母さんはどうも苦手なのだ。
人が「お母さん」と呼んでいるのを聞いたり、人のお母さんを見ていると、
自分のお母さんのことを思い出して哀しくなるから。
「バッカみたい…」
電話をかけても市井は出なくて。
家に行っても市井はいなくて。
代わりに出たのはお母さんで。
自分のお母さんのことを思い出して哀しくなって。
ほんとバカみたい。
「帰ろう……」
額に張り付いた前髪をあげ、元来た道を戻ろうとする矢口。
するとその矢口の頭上から、雨が降って来なくなった。
「……?」
上を見上げる。青い傘。
「何やってんだよ、風邪ひくだろっ」
「…………紗耶香?」
「………そぉだよ」
間違いない。
久しぶりに聴いた声だったけど、間違えるハズなかった。
好きな人の声を、間違えるハズ……。
- 138 名前:―じゅう― 投稿日:2001年04月07日(土)01時59分15秒
- 「ったく、大丈夫?」
あたたかいハーブティーを矢口の前に置いて、顔を覗き込む。
それに対し、コクンと小さく頷く矢口。
市井のおかげで、濡れた制服は乾燥機に、濡れた身体はお風呂でぬくもらせてもらった。
制服を乾かしている間は、市井の服を貸してもらって。
「………マジごめん。迷惑かけて…」
「いや、謝るのはこっちの方…」
矢口が家に来たのは、市井が電話に出なかったから。
出てたら、家になんか来なかった。
「あ、あのさ、ちょっと携帯調子悪くてさ…」
「…………へ〜?」
「あ、あははは…」
ウソだ。
それはすぐに分かった。
でも特に問い詰めようという気にはならず、トロンとした瞳で市井を見る。
キスを求める瞳。
「んっ……ん…」
キスしながら、身体がゆっくりと倒れてゆく。
そしてそのまま止まることなく、行為は続いた。
本来の自分なら、さっき市井がウソをついた時、問い詰めていた。
しかし今は、なぜウソをついたのか、どうでもよかった。
市井と逢えただけで。
気にしてない、と虚勢を張っていたけど、やはり逢いたかった。
逢ったら、それまでのイラついていた気持ちも哀しかった気持ちも、全部消えた。
(好きだよ紗耶香…)
休まることなくやってくる快感に埋もれながら、声に出さず呟いた。
- 139 名前:―じゅういち― 投稿日:2001年04月07日(土)02時00分01秒
- 「お帰りなさいませ、社長」
「先程○○事務所からお電話があり、伝言を預かっております」
取引先から戻り、自分の会社に着いて車から出た途端、秘書からの言葉。
「ごめん、ちょっと後にしてくれへん? 疲れてんねん」
社長、と呼ばれた人から出た言葉は、関西弁。
しかも、金髪。
社長室に戻り、ソファに腰掛け一息。
側には秘書の人がいる。
「……悪い、書類書きに集中したいから、もう今日は帰ってくれてえーよ」
入れてもらったワインを少し口に運び、秘書に向かって言う。
秘書は頭を下げ、部屋を出て行った。
それを横目で確認し、ドアが完全にしまったと同時に、どこかに電話をかけ始める。
2、3回ほどのコールで、電話の相手は出た。
「あ、もしもし? アタシ、中澤やけど。
ちょっとみっちゃんに頼みがあんねん。……うん、そう。分かってんなら話が早い。
市井紗耶香の周辺におる、後藤って子調べてくれへん?………いや、調べてくれるだけでいい。
……分かってるって、金ならいっぱいあるから大丈夫やって。うん。……ありがと、ほなな」
耳から携帯を離し、通話を切る。
そして、もう一度ワインを口に運ぶ。
「…………ほんま、汚いよな」
それでもいい。
矢口が自分だけを見てくれたら。
「好き」
と言うだけで振り向いてくれるなら、何べんでも言う。
「抱いて」
と言うならば、いつだって抱いてやる。
「あたし以外見ないで」
と真剣な眼差しで言うんなら、この目は矢口しか映さない。
しかし世の中はそんな簡単じゃなく、上手く行かない。
行っているなら、こんなことなんかしない。
「アタシはこんなんやから、コーコーセイみたいな真っ直ぐな愛し方なんかできひん。
それでも、それでも……」
矢口が、好きなんです。
- 140 名前:鞘鞠 投稿日:2001年04月07日(土)02時00分47秒
- >129さん
本当はここまで一気に更新しようとしたんですが、しんどくなってあんな変な所で。(苦笑
>ぷちさん
後藤が白ごまなら、やっぱ中澤は黒裕だろうということで…
>131 132 133さん
サボっててごめんなさい…
ほんとにサボりすぎてました…
>134 135さん
気になってくれてありがとです。
また今度も気になってくれれば嬉しいです。
- 141 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月07日(土)02時36分51秒
- タイミング悪いようでバッチリな市井
- 142 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月07日(土)03時06分03秒
- いったい何をする気なんだ黒裕〜〜!!
- 143 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月07日(土)12時54分42秒
- 更新がんばってね―!
- 144 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月07日(土)23時27分43秒
- うお〜!!
最高っす!!
- 145 名前:―じゅうに― 投稿日:2001年04月15日(日)16時39分58秒
- キーン コーン
「え〜じゃあこれでHR終わります」
長かった授業も終了、お楽しみの放課後がやってきた。
「よっすぃー、帰りカラオケ行こうよ!」
「やだよ、ごっちんが自分の分、お金払ってくれるんだったらいいけど」
「しょーがないじゃ〜ん、金欠なんだから〜」
親友の吉澤とこの後の予定を決めたりしながら、後藤達は校門までの道をゆっくり歩く。
途中、掃除をサボって帰ろうとしている所を先生に見つかって追いかけられたりもしたが、
上手く撒いて、何事もなかったかのようにゆっくり歩く。
「ごっちん、明日絶対生活指導部に呼び出されるよ?」
毎度毎度懲りずに逃げ回っている後藤を心配に思い、そう声をかけるが、
「呼び出される前に逃げる」
この一言でいつも終わってしまう。
「ところでさ〜」
「ん〜?」
不意にかけられた声に、携帯に来ていたメールの返事を打つのを止め、後藤を見る。
自分から声をかけておいて後藤は、吉澤の方を見ず前を向いていた。
「どしたの?」
携帯をポケットにしまい、そのまま手もポケットにつっこむ。
「いやぁ、特に意味はないんだけれども…」
「なんだい、そりゃ」
あはは、笑う吉澤を横目で見て、自分も少し笑う。
そして、少し考えて口を開いた。
「……………よっすぃー、今好きな人いる?」
「はい?」
「だから、好きな人。いる?」
突然のことだったので、すぐさま答えを返せない。
ちょっと間を置いて深呼吸をしてから、吉澤は一つ頷いた。
「一応………ね」
「そう」
照れている吉澤を満足気に見て、また少し笑う。
「あの子でしょ? 勉強教えてもらってる、幼馴染の。
…………梨華ちゃん、っていったっけ?」
「ごごご、ごっちん!!」
すぐ態度に出る。嘘がつけない性格。
「当たりだ?」
「うっ」
そういう所、すっごく可愛い。
- 146 名前:―じゅうさん― 投稿日:2001年04月15日(日)16時40分41秒
- 「ご、ごっちんはどうなんだよ。す、好きな人いないの?」
一方的に言われるだけじゃ不満。
同じ質問を後藤に聞き返す。
「好きな人ー? アタシ、よっすぃーが好き〜」
「わぁっ、真剣に答えてよぉ」
「真剣ですよ、真剣」
「……………ズルイなぁ」
あたしはちゃんと言ったのに、ごっちんは答えてくれないんだ。
そんな視線を後藤に向ける。
「……判ったよ。言うよ」
降参みたいに両手を上に上げ、吉澤から離れる。
そして、真剣な顔をして一言。
「いないよ、好きな人」
好きだった人はいたけど、人のモノだし。
今は、好きな人なんかいないよ。
あまりにも真剣な顔で、哀しそうな瞳をして言うから、吉澤は何も言えなかった。
校門で見知らぬ関西弁の人に声をかけられるまで、二人は無言で歩いていた。
- 147 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月18日(水)03時48分37秒
- 黒裕の動向が気になる〜
- 148 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月21日(土)14時16分17秒
- めっちゃ続きが気になる〜(w
作者さん、楽しみに待ってますんで頑張って下さい!!
- 149 名前:鞘鞠 投稿日:2001年04月26日(木)23時38分50秒
- 最近ちょっと色々あって、更新滞っております。。。
もう少し待ってくれれば嬉しいです……
- 150 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月29日(日)23時58分00秒
- ガムバレ!マテルヨー
- 151 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月05日(土)03時37分50秒
- 更新してくれるのなら、いつまででも待ってま〜す!!
- 152 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月13日(日)22時39分35秒
- 待ってるっす
- 153 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月20日(日)16時05分50秒
- 続き希望
- 154 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月12日(火)16時29分05秒
- 待ってるっす。
- 155 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月01日(日)16時26分13秒
- まだかなまだかなー
- 156 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月09日(月)05時54分40秒
- 待ってます。
できれば作者さんの一言でもあれば嬉しい。
……放置じゃないよね?
- 157 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月09日(月)08時01分18秒
- 俺も…待ってる…
- 158 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月10日(火)00時23分26秒
- 同じく待ってる…
- 159 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月10日(火)15時28分15秒
- 作者さ〜ん(泣
応答求む!!
- 160 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月14日(土)23時08分30秒
- もう…だめなのかな…?
- 161 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月21日(土)17時30分05秒
- 俺はもう少し待ちます。
- 162 名前:読んでる人 投稿日:2001年07月22日(日)15時37分47秒
- やっぱり破棄?
- 163 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月23日(月)02時52分40秒
- でも、前に書くっていってるし…
破棄なら破棄で一言破棄するって言って欲しいよ
- 164 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月07日(火)21時07分07秒
- 鞘鞠さーん(泣
- 165 名前:名無し娘。 投稿日:2001年08月22日(水)03時58分06秒
- 更新はまだですか?
- 166 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月22日(水)22時29分20秒
- 俺もまだあきらめたくない…
- 167 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月03日(月)19時47分40秒
- 私もまだ諦めない!あえてage
- 168 名前:パク@紹介人 投稿日:2001年09月17日(月)13時22分49秒
- こちらの小説を「小説紹介スレ@赤板」↓に紹介します。
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=red&thp=1000364237&ls=25
- 169 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月20日(土)13時40分43秒
- テスト
- 170 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月21日(日)03時47分31秒
- !?復活っすか??
- 171 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月21日(日)13時30分58秒
- えっ復活?!
- 172 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月22日(月)18時34分38秒
- ちゃむ復活に触発されたのかな(ドキドキ
言っちゃっていいの・・?ワ、ワショー・・・
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