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真夏の光線

1 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月08日(水)23時48分07秒
初めての青板です。
野球ものです。
2 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月08日(水)23時49分33秒
あれ?青で登録したのに赤になっちゃった。
まぁいいや。
3 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月08日(水)23時50分58秒
 ベンチを出た瞬間、ムワっとした熱風が顔に降りかかった。
 グランドはものすごい熱気で目玉焼きでも焼けそうだ。
 ウグイス嬢の声が超満員のスタンドに響き渡る。
『朝比奈学園、代打のお知らせをいたします。後藤さんに代わりまして、代打・
市井さん、背番号11』
 一塁側スタンドの歓声がその瞬間最高潮に達した。
「キャプテン!頑張れ!」
 背中から後藤の声が聞こえた。市井は軽く片手を挙げ、数回素振りをくれた。
「帰って来たんだ……この場所に……私も……」
 市井はそう呟いた。そして愛用のバットを担ぐと、打席に向かった。
 クソ暑いこの太陽、砂埃舞うグランド、その全てが妙に懐かしい感じがした。
(14回か…よく踏ん張ったね、後藤。見てな、私が決めてきてあげる―――)
4 名前:地区予選直前:朝比奈学園高校グラウンド 投稿日:2000年11月08日(水)23時52分12秒
「ええか、3年は泣いても笑ってもこの夏が最後や」
「ハイっ」
 きれいに揃った返事が返ってくる。
「よし、これから背番号渡すから呼ばれたら取りこい」
 監督である寺田の言葉に、朝比奈学園野球部員の表情が引き締まる。
「まず背番号1、後藤。連戦でキツいかもしれんけど、頼むで」
「ハイッ」
5 名前:地区予選直前:朝比奈学園高校グラウンド 投稿日:2000年11月08日(水)23時52分50秒
「次。背番号2……吉澤」
 その寺田の言葉に、ナインの中に少なからず動揺が走る。
「でも…2番は市井さんの…」
 吉澤も戸惑っている。この1年、朝比奈学園の背番号2といえば市井の代名
詞だったのだから無理もない。
「ええねん、今の正捕手は吉澤なんや。市井も納得の上や」
 その言葉に市井が頷く。寺田はそれでも固辞しようとする吉澤に「2」とい
う番号がついた布を無理やり掴ませた。
「で、次いくで。3番は飯田…………」
6 名前:地区予選直前:朝比奈学園高校グラウンド 投稿日:2000年11月08日(水)23時53分06秒
「11番。市井」
「ハイ」
 一際元気な返事がして、市井が出て来ると、11という番号が縫いこまれた布
を寺田から受け取った。市井の野球人生の中、2ケタの番号というのは初めてで
あったが、市井はそれほど悪くもないと思った。
7 名前:地区予選直前:朝比奈学園高校グラウンド 投稿日:2000年11月08日(水)23時53分22秒
「……20番、松浦。以上。今日は早めに帰ってゆっくり休め。…それと市井、
あとで監督室に来てくれや」
 そう言うと寺田は足早にグラウンドから消えた。
 寺田の姿が見えなくなると、市井はすぐに皆に囲まれた。
「ホントに良かったの?紗耶香」保田が言った。
「別に番号で野球やるわけじゃないしね。それに11って『いちい』って読める
から気に入ってるんだ」
 あっけらかんと笑顔で話す市井。
「じゃ市井はこれから監督室へ行って参ります!」
 そういうと、松葉杖をつきながらグラウンドを後にする。
8 名前:地区予選直前:朝比奈学園高校監督室 投稿日:2000年11月09日(木)00時59分58秒
「市井です。入ります」
 ドアが開き、市井が監督室に入ってきた。
「おー、来たか。まぁ座れ」
 お茶をすすっていた寺田は、市井に椅子に座るように促すと、口を開いた。
「ホントによかったんか?吉澤に2番やってもうて」
 市井は手を左右に振った。
「いいんですよ。その方が吉澤に責任感がでますから」
「ま、それはそうやけどな…。で、どうなん?体の具合は」
9 名前:地区予選直前:朝比奈学園高校監督室 投稿日:2000年11月09日(木)01時00分52秒
「相変わらずっす。投げられない走れないっカッパえびせん♪ て感じっすよ」
「そうか。俺な、今でも夢に見んねん。去年の決勝のクロスプレーを……」
 寺田は目を伏せた。
「済んでしまったことを考えても仕方ないっす。幸いリハビリは順調にきてる
んで、大学に入る頃には草野球くらいはできそうです」
「……打てるか?」
「え?」
 寺田の突然の質問に市井の動きが止まった。
10 名前:地区予選直前:朝比奈学園高校監督室 投稿日:2000年11月09日(木)01時01分36秒
「市井、打つだけなら出来るんか?」
「『だけ』ならできますけど、走れませんよ?四球やバントくらいしか……」
「誰がお前にバントなんか期待するか。だいたいお前バントだけは小学生以下
やないか。打って歩いてホームに帰ってくりゃええねん」
 市井は笑って言った。
「ハハハ、狙ってホームランですか?そりゃ無理っすよ」
「せやけど市井、俺はお前のこと、戦力として考えとるからな。自分の仕事は
応援だけなんて考えとったらあかん。準備はしとけよ」
「え…?」
 いつになく真剣な目でそう言った寺田は、あっけにとられる市井を残し、監
督室を出て行った。
11 名前:そして… 投稿日:2000年11月09日(木)01時03分51秒
 チームの要、市井を欠いた朝比奈学園は地区大会初戦から苦戦の連続だった。
 吉澤はよくがんばっているが、市井に比べると物足りなさはやはり否めない。

 1年生ながらレギュラーに抜擢された遊撃手の辻は、緊張からかエラーを連発。
 福田の後を継いだ中堅手の石川も大暴投を繰り返し失点を増やした。
 抑えの加護は四球で自滅し、後藤がレフトからスクランブルでマウンドへ戻る
事もしばしばだった。
12 名前:そして… 投稿日:2000年11月09日(木)01時04分40秒
 それでもどうにかこうにか決勝まで残ったのは、昨夏の甲子園準優勝メンバー
の力によるところが大きかった。
 4番に座った安倍はチャンスに強かったし、ライト保田の強肩はランナーを次
の塁に進ませなかった。二塁の矢口もバックトスを覚え以前よりダブルプレーを
とれるようになっていたし、飯田は敬遠の球をスタンドに叩き込んだ。
 そして何よりエースの後藤が素晴らしい投球を見せていた。
 今大会屈指の好投手という新聞の評価どおり、その実力を存分に見せ付けた。
 とにかく、接戦に持ち込み終盤に逆転するという綱渡り的内容ながら、朝比奈
学園は勝ちあがってきた。
13 名前:そして… 投稿日:2000年11月09日(木)01時05分32秒
 一方市井はというと、試合に出場することはなく、一塁コーチを務めていた。
 野球センスの塊は的確な指示で、ある意味試合をコントロールしていた。

 東東京都大会決勝、朝比奈学園高校は、吉澤のスクイズであげた1点を後藤が
守りきり、2年連続で甲子園行きを決めた。
14 名前:夏の甲子園 投稿日:2000年11月09日(木)01時08分50秒
 甲子園初戦、2回戦と得意の接戦に持ち込んだ朝比奈学園が勝利し、3回戦で
春のセンバツの優勝校との対戦を迎えていた。
 夏も優勝の本命と言われている関西の名門高校である。
 相手校の先発はエースではなかったものの、ほぼ実力の差がない2番手投手。
 この投手を打ち崩せず朝比奈学園は僅か2安打に抑えられていた。
15 名前:夏の甲子園 投稿日:2000年11月09日(木)01時09分21秒
 守りでも夏の連戦の疲労か、後藤の調子が全くあがらず毎回ランナーを背負う
苦しい展開が続いていた。
 9回表、先頭打者をヒットで出した後藤は、送りバントで一死を取るも続く打
者に四球を与えてしまい、一死一、二塁のピンチを迎える。
 この時点で投球数が140球を超えているだけに、監督である寺田がどう動く
か注目された。ベンチから市井が伝令として出る。同時にマウンドに内野手が集
まる。
16 名前:夏の甲子園 投稿日:2000年11月09日(木)01時09分52秒
「後藤、踏ん張れるか?」
 肩で息をしている後藤に市井が聞く。コクコクと頷く後藤だが、その目は暑さと
疲労で虚ろになっている。

「紗耶香、心配すんな。打てない代わりに必ず守りきってやるっしょ!」
 三塁手の安倍が言った。飯田、矢口、辻も、そして吉澤も即座に同意した。
「キャプテン、カオリたち、絶対抑えるから安心してて」飯田の言葉。
 市井はそんな仲間達の気迫を心強く感じた。そして吉澤の方を向いた。
「吉澤、次のバッターに外はダメだ。見せダマだけにしろ。内角勝負だ。外のスト
ライクは力で持っていかれるぞ。それと一番大事なのは……」
「わかってる。『弱気は最大の敵』でしょ?」
 つらいはずの後藤が市井を制して笑顔で答えた。市井は苦笑すると
「そういうこと。みんな、頼むよ!」
 そう言ってベンチへ下がった。
17 名前:夏の甲子園 投稿日:2000年11月09日(木)01時38分46秒
 ナインが散り、再びプレイがかかる。汗を拭いた後藤がセットポジションから投球
フォームに入った。
 後藤が白球を投じた瞬間、吉澤と市井は同時に「あっ」と漏らした。
 吉澤は内角へ要求していたのだが、逆ダマになってしまったのだ。
 相手打者の最も得意なコースにスーっと入っていったボールは、振り切ったバット
から金属音を残し右中間へ低いライナーで飛んでいった。
18 名前:夏の甲子園 投稿日:2000年11月09日(木)01時39分19秒
 なぜそうしたのか、理由はわからない。
 なんとなく、中堅手の石川梨華は後藤が投げる直前に2、3歩ライト寄りに守備位
置を変えていた。
 打球が放たれた瞬間、石川は弾かれたように落下地点へ飛び出して行った。
 もともと足は自信がある。でなければ守備位置が広いセンターなどできはしない。
 しかしその石川の足をもってしても追いつきそうにない。
(走ってたら捕れない!)
 石川は一瞬だけこちらに走って来るライトの保田を見て、思い切りダイブした。
19 名前:夏の甲子園 投稿日:2000年11月09日(木)01時40分35秒
 保田は懸命に走っていた。しかしそれほど速くない保田の足ではあの打球に追いつ
けない事は明白だった。俊足の石川でさえ捕れそうもない。
(一塁ランナーだけでもホームへは返さないっ)
 そう思った保田は抜けた場合のクッションボールの処理に備えた。
 しかし、石川と目が合った瞬間、即座にその考えを捨てた。
(石川?そうね、イチかバチか、やってみる!)
 保田は猛然とダッシュした。
20 名前:夏の甲子園 投稿日:2000年11月09日(木)01時51分07秒
 石川が飛び込んだとき、打球は地面に落ちるスレスレのところを『飛行』していた。
 ずいぶん長い時間飛んでいた気がする。
 懸命に差し出したグラブのほんの先っぽに、幸運の女神は住んでいたらしい。
 グラブの先端にボールが引っかかってくれた。
 そこへ、顔面凶器ともいえる顔をした保田が突っ込んで来た。
 石川は保田に恐怖を感じたが、必死でこらえてタイミングを合わせグラブトス。
 素手で白球を掴んだ保田がものすごい雄叫びをあげながら「ロケットアーム」とか
「地獄の特急便」と言われた強肩にものを言わせ、セカンドに弾丸ライナー!
 必死で戻って来る二塁走者との競争は、もちろん保田の勝ちだった。
21 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月10日(金)02時25分54秒
ナイスプレー!!
22 名前:9回の裏 投稿日:2000年11月10日(金)06時11分24秒
「いたたったったった!」 
 ベンチに戻るなり辻がうめきだした。グラブを外したその手が真っ赤になって腫れて
いる。保田の送球を受けた衝撃でこうなったらしい。
「あ、辻ゴメンね。相手のこと考えずに思い切り投げちゃったからさ」
 見事なプレーを見せた石川とハイタッチしながら戻ってきた保田が辻の手を見て言う。
「しょ、しょうがないのれす。くすん」
 涙をこらえ、水で手を冷やす辻。
「さっきの保田の送球、150近く出てたんちゃうか? 辻の手も無理ないで」
 寺田が言った。
23 名前:14回の裏 投稿日:2000年11月10日(金)06時13分09秒
 そして両チーム0行進のまま、延長へ。14回の裏、朝比奈学園の攻撃。
 マウンドには、この回から登板した相手校のエース。150キロ近い速球を投げる、
今秋のドラフト1位が確実視されている豪腕投手だ。
24 名前:14回の裏 投稿日:2000年11月10日(金)06時22分14秒
(先頭は後藤からか…。出塁まで期待するのは流石に厳しいか)
 そんなことを考えながら市井はベンチを出てコーチャーズボックスへ向かった。
 しかし、寺田が市井を呼び止めた。
「待て待て市井、代打行くで」
「は?」
「代打や代打。後藤に代わってお前が打ってくるんやて」
 そう言うと、さっさと審判に交代を告げた。
「マジっすか」
 ベンチに戻ると、後藤がタオルを頭からかぶってヘタっていた。
 心身ともにギリギリだったのだろう。それでも市井が自分の代わりに代打に出ると
知ると、だんごピースを市井に送って笑った。
25 名前:14回の裏 投稿日:2000年11月10日(金)06時22分49秒
 ベンチを出た瞬間、ムワっとした熱風が顔に降りかかった。
 グランドはものすごい熱気で目玉焼きでも焼けそうだ。
 ウグイス嬢の声が超満員のスタンドに響き渡る。
『朝比奈学園、代打のお知らせをいたします。後藤さんに代わりまして、代打・
市井さん、背番号11』
 一塁側スタンドの歓声がその瞬間最高潮に達した。
「キャプテン!頑張れ!」
 背中から後藤の声が聞こえた。市井は軽く片手を挙げ、数回素振りをくれた。
「帰って来たんだ……この場所に……私も……」
 市井はそう呟いた。そして愛用のバットを担ぐと、打席に向かった。
 クソ暑いこの太陽、砂埃舞うグランド、その全てが妙に懐かしい感じがした。
(14回か…よく踏ん張ったね、後藤。見てな、私が決めてきてあげる―――)
26 名前:14回の裏 投稿日:2000年11月10日(金)06時24分13秒
 初球は、外角低めストレート。ストライク。
 2球目、内角一杯に高速スライダー。ストライク。
 市井は2−0とあっさり追い込まれた。
 3球目、相手投手が投じた球は、ワンバウンドでもしそうなインローの速球。
 見送れば確実にボール。
 それを、市井のバットがすくい上げた。左手一本だけでのフォロースルー。
 フォームこそ崩れたが、バットに乗せた。
 打球の行方を見つめる選手、観客、審判。
 一瞬の静寂がスタジアムを包み込んだ。
27 名前:14回の裏 投稿日:2000年11月10日(金)06時24分38秒
 打った瞬間は、定位置で構えていたライトが慌てたように背走していく。
「そのまま来い!来いっ!!来るんやーっ!!!」
 ライトスタンド最前列に陣取っていた昨年のキャプテン・中澤が絶叫した。
 昨夏のエース平家、同じく遊撃手だった石黒も一緒になって叫んでいる。
 距離もギリギリならフェアゾーンもギリギリだった。
 そして打球がライトスタンドの最前列にポトリと落ちた時、甲子園はこの大会
期間中を通じて最大級の歓声に包まれた。
28 名前:14回の裏 投稿日:2000年11月10日(金)13時15分46秒
市井「は、入った…!?」
29 名前:杉田昭博 投稿日:2000年11月10日(金)13時21分51秒
相手校って常総学院では?
30 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月11日(土)02時49分53秒
関西の名門校だから
PL学園・智弁和歌山・天理あたりかな?
スポーツ物好きなんで頑張ってください。
31 名前:14回の裏 投稿日:2000年11月11日(土)10時50分51秒
 代打サヨナラホームラン。
 
 朝比奈ベンチは、後藤が、安倍が、保田が、選手全員が抱き合っていた。
 辻と加護などはぐしゃぐしゃになって泣いている。
 打席で打球の行方を静かに見守っていた市井は、足をひきずりながらダイヤモ
ンドを一周するために、ゆっくり歩き出した。
32 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月11日(土)10時57分42秒
市井編、これでおわりです。
恋愛ものじゃなくてすいません。

唐突にはじめましたが、決めているものだけで

3年:安倍、飯田、矢口、保田、市井、りんね
2年:後藤、石川、吉澤、柴田、村田、斉藤、大谷、あさみ
1年:辻、加護、松浦
OG:中澤、石黒、平家
監督:つんく(寺田)

です。設定上、部員は20人以上いることになってます。
それぞれのエピソードを書けたらいいなぁとおもっちょリます。

33 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月12日(日)02時02分16秒
短かったけど結構読み応えあった、面白かったですよ。

次はりんね編希望ー。
だって3年で1人だけ補欠なんだよね。
雄根小二郎さん、ドラマティックなのお願い。
34 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月12日(日)21時31分20秒
あ、ありがとうございます。
飯田編でもと思ってましたが、りんね編を考えます。
35 名前:真夏の光線・戸田鈴音編 投稿日:2000年11月12日(日)22時41分14秒
「戸田先輩、お疲れ様でーす」
「あ、お疲れー」
 後輩達が挨拶をして先に帰宅していく。
 りんねは後輩達を見送ると、ネットの中に転がっているボールを拾い始めた。

 朝比奈学園高校野球部3年生、戸田鈴音。ポジション、レフト。
 ……の補欠。
36 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月12日(日)22時43分21秒
「あれ、りんねまだやってたの?」
 制服に着替えた飯田が声をかけてきた。りんねは、この野球部の中で飯田と
なぜかウマが合った。
「あ、うん。もうちょっと、ね」
「いまさらだけど、りんねよく頑張るよね」
 感心しているのか半ばあきれているのかよくわからない口調だ。
37 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月12日(日)22時43分54秒
「あたしはみんなみたいに上手くないし。普通にやってたら追いつけないから」
 口を動かす間も手は休まない。
「でもさ、入ってきた頃に比べればりんねすごく上手くなったよ」
 飯田が言った。
「ありがと。でもね……」
「でも?」
「あたし足もそれほど速いわけじゃない。圭織みたいにパワーもない。圭ちゃん
のような肩もない。だったら基礎練習コツコツやってくしかないじゃない?」
「そりゃそうかもしれないけど。りんねはさ、アピールしなさ過ぎ」
 飯田がズバっと突いてきた。
38 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月12日(日)22時47分23秒
 飯田は続ける。
「紅白戦や練習試合でも、りんねバントしかしないじゃん」
「ランナーいなかったら打ってるよ」
「それは当然。りんねったらランナーいるとすぐバントだもん。りんねがバント
が上手いのは認める。それはよくわかったから、たまにゃ打ちなさいって」
 飯田の言葉は当然といえば当然だ。
「でも打ってゲッツーとかになったらチームに迷惑かかるし……」
「それがいけないの。練習試合なんかゲッツー食らったっていいじゃない。
攻めてのミスなら監督は何も言わないわ。りんねに一番の足りないのは積極性。
もっと強気に出なきゃ。ホントそこだけだってば」
39 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月12日(日)22時48分10秒
本日はここまでです。
40 名前:水島新司 投稿日:2000年11月13日(月)09時51分29秒
オモロイ!
41 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)12時05分49秒
「積極的かぁ…」
 授業時間、ぼーっと窓から外を見ていたりんねは小さく呟いた。
 積極性が足りないのは自分でもわかりすぎるくらいわかっていた。
 しかし、闘志が表に出るタイプではないし、自分からどんどん行くタイプでも
ない。夕べは飯田に痛いところを突かれたが、こればっかりは仕方ない。
「こら、戸田、聞いてるか?」
 教師の注意でりんねは現実に引き戻された。
「あ、すいません!」
42 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)12時06分42秒
「どうしたの?今日なんかぼーっとしてるよ。らしくないじゃん」
 3年では唯一同じクラスの矢口が声をかけてきた。
「あ、そうだね。なんか考え事してて」
「ね、期末試験の勉強ってしてる?矢口全然してないの。もうヤバイ。ホントヤバイって」
 相変わらずマシンガンのようなしゃべりだ。
「練習キツイからね。あたしもあんまりしてないよ」
「でもりんねいっつも学年で5番以内に入ってるじゃんか、頭の出来が違うよね」
 矢口の目はどう見ても『ノート貸してね、お願いっ』と訴えている。
 りんねは苦笑した。
「わかったわかった。あとでノートコピーさしてあげるから」
「マジ!?やったー!持つべきものは友人ってカンジだよね。うんうん」
 矢口は踊らんばかりの勢いで喜んだ。
「……勉強よりも、野球の才能が欲しかったな……」
 りんねは呟いた。
「え?なに?なんていったの?」
「なんでもないよ、さ、学食行こ!」
 りんねは元気良く立ち上がった。
43 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)12時07分02秒
 夏の大会直前、実戦さながらの紅白戦が行われた。
 紅組はレギュラーチーム、白組はベンチ入り候補のメンバーで構成された。
 りんねも運良く白組のスタメンに名を連ねていた。
 この日の後藤は制球が安定しないかわり、スピードはものすごく出ていた。
 おそらく常時140キロ後半はあっただろう。
 四球を連発していたが、後藤は白組を無安打に抑え込んでいた。
 三振か内野ゴロ、内野フライだけで、外野には一球も飛ばされていない。
 後藤の顔に自信が伺えた。
44 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)12時16分37秒
 9回、打席がりんねに回ってきた。状況はエラーを絡めてニ死ニ、三塁。
 かなり点差があるため、これが最後の打席になるだろう。

 打席に立つと、頭の中に、昨日飯田に言われたことが蘇ってきた。
(りんねに一番の足りないのは積極性なんだよ…)
45 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)12時17分33秒
(そうだよね。結果を気にしちゃダメだ。イチかバチか…)
 りんねは2人の走者にサインを送った。
 後藤が余裕の表情で投球モーションに入った。後藤が『ごまボール』と勝手に
呼んでいる落ちるスライダーだ。りんねは見送った。低め一杯、ストライク。
46 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)12時17分57秒
 2球目。後藤がモーションに入ると同時にランナーがスタートを切った。
 りんねがバントの構えにスイッチする。
 虚を突かれた飯田、安倍が一瞬遅れてダッシュ。
 速球に自信のあった後藤−吉澤バッテリーはウエストしない。
 内角高めに唸りをあげて白球が飛んできた。
(やってやる!)
 後藤の最速タイ、151キロをりんねはいともたやすく三塁側に転がした。
47 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)12時18分14秒
 投手、三塁手、捕手のトライアングルのちょうど真ん中に落ちるボール。
 守備側からしたら一番転がって欲しくないところだ。
 ホームは間に合わない。二死だから一塁でアウトにすればゲームセットだ。
 そう考えた安倍が必死に自身が進む方向を変え、ボールを掴み一塁へ送球。
 サイドスロー気味に放った送球が、少し高めに浮いた。
 一塁にはカバーの矢口。小柄な矢口にとって、その送球は『とても』高く見えた。
 ジャンプしてキャッチするが、着地の一瞬前にりんねがベースを駆け抜ける。
48 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)12時18分31秒
 この紅白戦で主審を務めていた市井は感嘆した。
 動きが俊敏ではないうえ、サイドスローで投げると球の浮くクセがある安倍、カバー
に入った矢口の身長、飯田なら楽にとれる高さも矢口には厳しい。そして、後藤のあの
ストレートを楽々あそこへ転がす技術……。
(ホント、うちの弱点を良く見てるよ)
49 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)12時18分58秒
 矢口がベースに着地し、一瞬背を見せた瞬間、二塁走者が三塁を駆け抜ける。
「矢口!ホーム!!」
 走者の動きを見ていたライトの保田が叫ぶ。
 りんねが企図したのはセーフティ2ランスクイズだったのだ。
 村田が俊足を飛ばして本塁に突っ込む。
 矢口が慌ててバックホームする。
 ブロックに行く吉澤。
 それをかいくぐり、村田はスライディングしながら左手でベースをさっと払った。
「セーフ!」
 市井の両手が横に広がった。
50 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)12時19分11秒
(畜生!やられた!)
 吉澤は歯噛みした。これならホームランを打たれた方がマシだ。
 後藤も、何が起きたのかわからないという表情をしている。
 完全に格下の相手にこうもやすやすと2ランスクイズ…しかもセーフティだなんて!
 レギュラー全員が厳しい表情の中、一人飯田だけは笑っていた。

「ほう、戸田の奴、バントしか能がないと思っとったけど、なかなか策士やんけ」
バックネット裏から試合を見ていた寺田が思わず漏らした。
51 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)12時22分34秒
「背番号15、柴田」
「はいっ」
 寺田がどんどんベンチ入り選手を読み上げていく。
「えっと、最後やな、16番…」
 まだ名前を呼ばれてない残りの部員が固唾を飲んで言葉を待つ。
 甲子園では予選の20人からベンチ入りメンバーが16人に減るため、競争率
は更に激化していた。りんねも地区大会のメンバーには入っていたが、去年の夏、
今年のセンバツでは甲子園のメンバーに残れなかった1人である。
52 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)12時23分03秒
「…は、戸田。甲子園ベンチ入りメンバーは以上」
(へー、戸田かぁ。あたしと同じ名字の子なんか下にいたんだ。知らなかったな)
 りんねは漠然とそう思った。
53 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)12時23分27秒
「…ね、りんねってば!」
 突然りんねは飯田にドツかれた。
「痛っ、圭織何よ?」
「りんね呼ばれてんだよ、ほらボーっとしてないで」
「え!?あたし?」
 呆然とするりんね。
「圭織にボーっとしてるなんて言われるなんて、りんねも相当だよ」
 保田が突っ込む。
 寺田が苦笑いしながら口を開いた。
「なんや戸田、いらんなら違う奴にやるで」
54 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)12時24分14秒
 誰もいなくなった部室。
 最後にりんねが出るという事が、もう日課のようになっていた。
 読みかけのマンガ、誰かが置きっ放しのグラブ、割れた竹バット。
 それらが乱雑に置かれた部室を整理し、ようやく制服に着替えるりんね。
 改めて背番号を広げてみた。
(夢じゃないんだ……甲子園……あたしもメンバーとして行けるんだ……)
 16とついた背番号をギュっと抱きしめたりんねの頬を、熱いものが伝わり、
白い布にポトリと落ちた。
55 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)12時24分38秒
 9時過ぎ、りんねは愛用の自転車に乗って校門を出る。
「あれ?」
 そこにはとっくの昔に帰ったはずの飯田がいた。
 身長に不釣合いな小さい自転車に乗った飯田がにっこりと笑った。
「おめでと、りんね。一緒にガンバローね!」
「うん。圭織ありがと」
「みんな待ってるよ、さぁ行こ!」

 その日、いつものお好み焼き屋で、3年生が集まってりんねのためにささや
かなお祝いをしてくれた。
56 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)12時27分42秒
真夏の光線・戸田鈴音編終わりです。
エピローグもあったんですけど、長くなるのでカットしました。

野球知らない人にはわかんない話になっちゃいましたね。
ごめんなさい。
57 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月13日(月)14時01分58秒
いや、マジおもろいっす。
個人的には矢口編がみたい。
58 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月13日(月)14時04分13秒
ほんと、面白いっす。できれば続編希望。
59 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月13日(月)15時48分41秒
保田か石川編希望
60 名前:メア 投稿日:2000年11月13日(月)17時16分59秒
りんね編をリクした者です。

雄根小二郎さん、めっちゃ面白かったっす。
しかもモー娘。球団のスレッドの方の面白可笑しい部分からも
ごまボールとかの決め球やキャラはカッコ良く引用してて、
しかもほんとドラマティックで。
マジよかったっす、感動。
リク答えてくれてほんとどうも。
是非今度は長篇物に挑戦してください。

うおー、野球やりてぇ。(笑)
61 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)21時59分01秒
レスいただけて幸せです。
長編は…ちょっと無理です。
長いのはとても根気が続かないです(w
62 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)22時00分07秒
ということで、リクエストのありました矢口編行きます。
63 名前:真夏の光線・矢口真里編 投稿日:2000年11月13日(月)22時01分11秒
「野球なんてダイキライ」

 野球なんてダイキライ。
 そう決めてたはずなのに。
 そう思ってたはずなのに。
 気が付けば野球をやっていた。
 おまけに甲子園まで出てしまった。
 何やってんだろ、アタシ。
64 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月13日(月)22時03分41秒
わたしのゆめ 1ねん2くみ やぐちまり

わたしのゆめは、おおきくなってぷろやきゅうのせんしゅになることです。
きょじんにはいって、だいかつやくしたいです。
それがだめなら、めじゃーりーぐのせんしゅになります。
わたしはせがおおきくないので、まいにちぎゅうにゅうをのんでます。
はらせんしゅのようにをばんばんほーむらんをうちたいです。
はやくおおきくなりたいな。
65 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月13日(月)22時04分17秒
2年前の春。
「な、あそこにいるのって、南向中の矢口じゃない?」
「え?マジ?……あらホントだ。確かに南向の矢口だ」
「でもさ、あの矢口がなんでバスケ部の見学に来てんだ?」
「さぁ?」
66 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月13日(月)22時06分54秒
「本当にバスケ部に入るの?」
 入部希望の受付をしていた2年生が聞いた。
「ハイ。背は……小さいけど、負けませんっ」
「まぁ、本人の希望だから受けるけど……野球部、怒るだろうなぁ」
 2年の受付嬢は恐ろしいと評判の野球部主将の顔を思い浮かべて恐怖した。

 こうしてこの春、矢口真里は朝比奈学園高校バスケ部に入部した。
67 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月13日(月)22時11分09秒
 昨夏、全く無名の存在から破竹の勢いで全国大会優勝をなしとげた南向中。
 その南向中のキャプテンにしてエースだった矢口。
 小さい体というハンディを背負いながらも投げつづけるその姿は全国に驚愕と
感動を呼んだが、全国大会が終わったあと、矢口は突然野球を辞めてしまった。 
 原因は諸説入り乱れたが、一度も本人の口から語られる事はなかった。
68 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月13日(月)22時12分41秒
「なんやて!矢口がバスケ部?」
 口からご飯粒を飛ばしながら中澤が叫んだ。
「うわっ汚な、もう姐さん食べるかしゃべるかどっちかにしいや」
 真正面に座っていたばかりに、中澤のご飯粒の洗礼を受けた平家が言った。
「はい、先ほど本人に確認しました。もう入部してしまったようです」
 報告に来た1年の新入部員、保田が言った。
「あっちゃぁ〜……矢口が野球辞めたっちゅう噂はホンマやったんか……」
 朝比奈学園野球部主将・中澤裕子は溜息をついた。
69 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月13日(月)22時15分24秒
本日はここまでです。というか、ここまでしか書けてないです(w
70 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月15日(水)02時02分45秒
詰まった…。
71 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月15日(水)11時41分54秒
続きに期待してますが、あせることはないです。気長にやってください。
72 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月15日(水)16時54分41秒
福田はどうしたんだろう? 転校でもしたのかな。
73 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月15日(水)19時16分33秒
>>71
ありがとうございます。がんばります。

>>72
早ければ石川編で語られると思います。気長にお待ちください。
74 名前:メア 投稿日:2000年11月17日(金)00時14分47秒
>>73
> 石川編で…
深いっすね。

自分は雄根さんのFANす、がんばりまっしょい。

75 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月17日(金)18時57分45秒
 放課後、部活に行こうと教室を出た矢口の前に、一人の上級生が姿を見せた。
 野球部主将、中澤裕子だ。
「アンタ、矢口真里やろ?」
 いきなりの高圧的な物言いに矢口はカチンときたが、冷静を装って答えた。
「そうですけど、なんか用ですか」
「なんで自分、バスケなんかやってんねん」
 突然核心を突いてきた。
「別に。やりたいからやってるんですよ。部活に遅れるんで、失礼します」
 そう言って中澤の横をすり抜けようとした。
「ちょお待ち」
 中澤の手が矢口の肩を掴む。
「何で野球やらへんねん!」
「………」
「何で野球辞めたりすんねん!」
「………」
「何で……」
「……失礼します」
 そう言うと、矢口は中澤の手を振り切って走り去った。
(矢口……ウチはあきらめへんで……)
76 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月17日(金)18時58分05秒
「そっかー、姐さん玉砕やってんかー」
 部室で事の顛末を聞いた平家が笑った。
「フン、まだ第1ラウンドが終わったばかりや」
「やり方が強引すぎやって」
「矢口にご熱心なのもいいけどさ、練習始まるよ、キャプテン、みっちゃん」
 スパイクの紐を結んでいた石黒が2人に言った。
「アタシらもいよいよ上級生なんだから、ビシっといかないと」
「彩っぺ、わかってるて。すぐ行くわ」
77 名前:雄根小二郎 投稿日:2000年11月17日(金)19時01分58秒
今日はここまでです。

お話の途中ですが…………。
中澤、石黒、平家が出てきますが、彼女達は旧3年生です。
ということは、矢口編では全員2年生です。
一応新設校という事で、中澤達2年が最上級生ということで3年生はいません。
そうしないと話が続かないから(笑)
78 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月19日(日)09時34分43秒
頑張って下さい。
個人的には、石川、保田編を期待してます。
矢口編には、吉澤って出てくるんですか?
79 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月11日(月)13時25分49秒
続き、書かれないのかなあ? 矢口編詰まったんならとりあえず置いといて
他の話とかでもいいと思います。期待してます。
80 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月09日(火)17時59分55秒
続きはまだなのでしょうか?
81 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月08日(火)23時44分33秒
半年もほっぽってなんだって感じですが、矢口編をとりあえず放棄します。
82 名前:真夏の光線:飯田圭織編 投稿日:2001年05月08日(火)23時45分56秒
 おはようございます。飯田です。
 実は、体調が最悪で、もう倒れそうです。
 でも、今日はとーっても大事な試合だから、休むわけにはいきません。
 お腹痛い…
83 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月09日(水)00時10分10秒
「ねぇ、カオリ大丈夫?」
 球場へ移動するバスの中、顔面蒼白の飯田に、隣席のりんねが心配そうな顔で話し掛けてきた。
 飯田達3年生にとって最後の夏の甲子園。今日がその初戦である。
 いきなりセンバツの優勝校と当たることになった朝比奈高校。
 朝比奈高校も昨夏の甲子園準優勝なのだが、その時のチームに比べたら若干小粒になった印象があり、下馬評では
相手高校の有利が伝えられていた。
 なんといっても、3本柱と言われている宇多田、倉木、椎名という超校高級の投手を3人も擁する強力投手陣が看板だ。
 地区予選大会で許した点はわずか4点のみという驚異の強さを発揮し、順当に甲子園にコマを進めてきた。
「あー、だいじょ〜ぶ〜」
「全然ダメじゃん」
「だいじょ〜ぶだいじょ〜ぶ」
「まぁ、カオリがそういうならいいけど…」
 りんねは納得しない顔をしながらもそれ以上追求はしなかった。
84 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月09日(水)00時10分55秒
 朝比奈学園高校のシートノックの時間がせまって来た。
「きゃぷてん、いいらさんがいませーん」
「まじで? もうノック始まるっつーのに…辻、加護、探して来て」
 市井の指示で辻と加護がすっとんで行った。
85 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月09日(水)00時11分27秒
 その頃、当の飯田は、ロッカールームでへたっていた。
「お腹…痛い…」
 そこに、ダッシュで辻が通りかかる。飯田に気付き、急ブレーキで止まる辻。
「あ、いいらさんみつけたれす!」
「ううう」
「いいらさん、のっくはじまっちゃいますよ、はやくいきましょう」
「辻…カオリここにいるから、あんたカオの代わりにノック受けてきて…」
「なにいってるんれすか!むちゃくちゃいわないでくらさいよ!いつもの「がおー!!」っていうげんきないいらさんはどこいったんれすか!」
「そんなこと言われても…だってお腹痛いんだもん…」
「も、もしかして、おとなのおんなのひとにつきにいちどくるという、まだののがしらないあれれすか!」
「違うわよ」
「じゃぁ、しゅしょくががそりんなのに、まちがってけいゆをほきゅうしてしまったのれすか?」
「違うわよ」
「じゃぁ、いいらさんのおーえすのせきゅりてぃほーるを、はかーにつかれたんれすか?」
「違うわよ。わかったわかった、行くから許してってば」
「いいらさんいいこれすね。あとでののがあめをあげるれす」
(元気になったら覚えておきなさいよ辻…)
86 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時00分12秒
 なんとか時間ギリギリに辻に引っ張られて来た飯田だったが、動きが悪い。
 それでも脂汗を流しながら、ノックをどうにかこうにか終えた。
 そして、朝比奈ナインは恒例の円陣を組んだ。
「今年もここまで来たよ。相手は強いけど、勝つぞ!」
「おー!」
 円陣の中央で、キャプテン市井のゲキが飛ぶ。
「レギュラーも、そうでない者も、悔いの残らないようにやろう!」
「おー!」
「じゃぁ行くよ。がんばっていきまーっ」
「しょい!!」
87 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時00分55秒
 なんとか時間ギリギリに辻に引っ張られて来た飯田だったが、動きが悪い。
 それでも脂汗を流しながら、ノックをどうにかこうにか終えた。
 そして、朝比奈ナインは恒例の円陣を組んだ。
「今年もここまで来たよ。相手は強いけど、勝つぞ!」
「おー!」
 円陣の中央で、キャプテン市井のゲキが飛ぶ。
「レギュラーも、そうでない者も、悔いの残らないようにやろう!」
「おー!」
「じゃぁ行くよ。がんばっていきまーっ」
「しょい!!」
88 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時02分13秒
 なんとか時間ギリギリに辻に引っ張られて来た飯田だったが、動きが悪い。
 それでも脂汗を流しながら、ノックをどうにかこうにか終えた。
 そして、朝比奈ナインは恒例の円陣を組んだ。
「今年もここまで来たよ。相手は強いけど、勝つぞ!」
「おー!」
 円陣の中央で、キャプテン市井のゲキが飛ぶ。
「レギュラーも、そうでない者も、悔いの残らないようにやろう!」
「おー!」
「じゃぁ行くよ。がんばっていきまーっ」
「しょい!!」
89 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時04分51秒
 なんとか時間ギリギリに辻に引っ張られて来た飯田だったが、動きが悪い。
 それでも脂汗を流しながら、ノックをどうにかこうにか終えた。
 そして、朝比奈ナインは恒例の円陣を組んだ。
「今年もここまで来たよ。相手は強いけど、勝つぞ!」
「おー!」
 円陣の中央で、キャプテン市井のゲキが飛ぶ。
「レギュラーも、そうでない者も、悔いの残らないようにやろう!」
「おー!」
「じゃぁ行くよ。がんばっていきまーっ」
「しょい!!」
90 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時05分46秒
 なんとか時間ギリギリに辻に引っ張られて来た飯田だったが、動きが悪い。
 それでも脂汗を流しながら、ノックをどうにかこうにか終えた。
 そして、朝比奈ナインは恒例の円陣を組んだ。
「今年もここまで来たよ。相手は強いけど、勝つぞ!」
「おー!」
 円陣の中央で、キャプテン市井のゲキが飛ぶ。
「レギュラーも、そうでない者も、悔いの残らないようにやろう!」
「おー!」
「じゃぁ行くよ。がんばっていきまーっ」
「しょい!!」
91 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時11分03秒
うぉー!
アホか俺は!
92 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時12分49秒
試合前の朝比奈ベンチ。
「カオリ、顔色悪いよ。さっきも動きよくなかったし。大丈夫?」
「頼むよ、ファーストはカオリしかいないんだからさぁ」
 保田と矢口が話し掛ける。
「うん、大丈夫ということにしといて」
「は?それってダメってこと?」
 2人は顔を見合わせた。
93 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時14分01秒
 両校がホーム上に揃い、いよいよ試合開始。
 先発の後藤があっさりとトップバッター釈に右中間をやぶられ、立ち上がりからピンチ。
 2番池脇が送りバントを決め、3番に入っている宇多田を迎えた。
 吉澤がマウンドへ行き、攻略の打ち合わせをする。
94 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時15分40秒
 だが、1−3と悪くしてしまったカウントで、ストライクをとりにいった球をジャストミートされ、
 2点を先制されてしまった。

「あっちゃー、やられちゃったよ」

 マウンドの後藤は比較的サバサバしていたが、吉澤と市井の胸の内は
(ヤバいな…)
 であった。後藤は頭に血がのぼっているときは、サバサバした表情を無理に作るのだ。
 案の定、4番椎名には球がうわずり、四球。5番井川には初球のストレートを狙われ、6番倉木に3ランを
 浴びた。朝比奈にとっては最悪のシナリオである。
95 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時17分57秒
「加護!」
 たまらずに寺田監督がレフトにいた加護を呼び寄せる。投手交代だ。
 一死もとれないまま、後藤はレフトに退いた。
 代わった加護だが、心の準備もなくいきなり登板というスクランブルだった事が功を
そうしてか、四球を出す事もなく、どうにか後続を断ち、長い1回表の攻撃が終わった。
96 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時25分36秒
 戻ってくるなりトイレに駆け込んだ飯田を尻目に試合は進み、3分後には早くも打順が
飯田に回って来た。
 矢口、辻と今日の先発倉木の前に連続三振である。

「なんだあれ、センバツの時よりえらい早くなってるよ!」

 戻ってきた矢口が言う。ミートに定評のある矢口が言うのだから、よっぽどなのだろう。
 ようやくトイレから戻ってきた顔面蒼白な飯田が、素振りをする間もなく打席に向かった。
97 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時28分03秒
「うう、まだお腹痛い…神様、カオリなにか悪い事しましたか?」
 ちょっぴり涙目で打席に向かう飯田。
 いつもはポジチブ志向がウリの彼女もさすがに全く打てる気がしない。
 自身の体調の悪さもさることながら、倉木の調子がすこぶる良いというのもある。

(あ〜、はやくトイレに……)

 そう思いながら、ロクにボールも見ずにヤケクソで振った初球の高速スライダーが、
弾かれたようにライトスタンド最上段へ弾丸ライナーで飛び込んでいった。
「え?」
 投げた倉木も、受ける広末も、朝比奈ベンチも目が点になった。
「カオリのやつ、いつものような力みが全くない理想のスイングしとるやないか!俺の
教えをやっとわかってくれたんか!」
 監督の寺田だけが、ベンチで1人ではしゃいでいた。
98 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時34分47秒
 飯田の特大本塁打でスコアを1-5として、初回の攻防が終わった。
 加護−北上−柴田と小刻みな継投策で、どうにかこうにか初回の5点のみに抑えていた
朝比奈高校に、6回裏、これ以上はないという願ってもないチャンスが到来した。
 先頭の吉澤が倒れた後、代打村田が振り逃げ、レフトに入っていた大谷が犠打野選、
そして辻が四球と二死・しかもノーヒットながら塁を全て埋めて、打順は初回の印象が
強烈な飯田。
99 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時36分24秒
「スライダーに注意するんやで!」
「短く持って!」
 色々アドバイスが飛んでくるが、腹痛…というかありていにいうと下痢のため、ボーっ
としている飯田には耳に入ってこない。いや、普段からそうなのだが。

(あ〜〜〜〜〜、出る……)

 もはや配球を読むどころではない。
 ポンポンとあっさりストライク2つで追い込まれた飯田に対して、この回からマウンドに
上がっている先発3本柱の1人でもある宇多田は余裕の笑みを浮かべていた。
100 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時39分42秒
(なんだ、麻衣が打たれたのはやっぱりマグレじゃないか)
 バッテリーは、アウトコース低めのフォークを見せ球にして、スコアラーから情報を入手
した飯田の苦手なコース、インコース高めストレートで勝負しようという目論見だった。
「やっぱり」
「紗耶香、何が『やっぱり』なんだ?」
 矢口が市井のもらした言葉に反応した。
「あいつら、アタシたちの弱点を知ってる」
「弱点を?」
「いい?相手の配球は、最後にインコース高めを持ってくるための布石をうってるわ。
カオリがそこが打てないのを知ってるのよ」
 確信したように市井が言う。
101 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時41分03秒
「そういえば、オイラの時も決め球は苦手の外角スライダーだった」
「他のみんなもその筈よ。投手の持ち味を活かすよりも、相手打者の一番苦手のところを
突いてくる配球だわ」
 カウント2−1。勝負球のストレートが要求通りのコースに最高のキレでうなりをあげて
来た。極端なアッパースイングの飯田が、最も苦手とするコースだ。
 しかし、今日の飯田はひと味違った。
 力みの一切ない、しなやかなそれでいて美しいフォームから繰り出されたバットが、
コース一杯を突いてきた厳しいコースのストレートをいとも簡単に完璧に捕らえた。
102 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時42分31秒
 センターは打球を追おうともしなかった。否、打球のあまりの早さに反応ができなかっのだ。
 甲子園のスコアボードに直撃した超特大の同点満塁弾が、あれほどうるさかった三塁側の
相手高校応援団をピシャリと黙らせた。
103 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時43分50秒
 相手ベンチでは、名将とうたわれた監督が、思わず立ち上がっていた。
「信じられない……我々が入手した情報は完璧のはずだ!なぜあの球を打たれた!?」
 とりあえず反対ベンチの寺田はおおはしゃぎだった。

 そして打った飯田本人は打席でへたっていた。
「出、出そう……(ていうかちょっと出…)」
104 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時45分54秒
 8回、4度目の打席が回ってきた。即座に相手ベンチが投手交替を告げる。
 強力3本柱の中で、ただ1人のサウスポー椎名をぶつけてきた。
 高校生活の中で被本塁打が1本もないという椎名の投球は、プロの各スカウトが注目していた。
「ふん、麻衣もヒカルもあんなバッター1人抑えられないのか。3本柱の名が泣くよ」
 つぶやく椎名。
(ま、朝比奈では唯一コイツだけが当たってることは事実だ。油断はしない。しないけど、コイツがアタシ
から打つなんて事はないね)
持ち球である7色の変化球のどれをウイニングショットに使おうか、どうしたら自分が目だてるように対決を
演出できるかを迷う椎名であった。
105 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時47分08秒
 前の打者の矢口が三振に倒れたあと、必要以上にゆっくりと歩いて打席へ入る飯田。
(だってそうしないと出そうなんだもん!)
 椎名が3本柱のプライドにかけて投げ込んできた151キロのストレート。
 奇跡を呼ぶ飯田(下痢P)のバットが、そのストレートにアジャストした。
106 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時49分20秒
 二塁手の酒井若菜は、その瞬間(ジャンプすれば捕れる!)と思った。
 そして反動をつけて思いきりジャンプした。
 白球は、酒井のグラブのわずか数センチ上を通過し、そのままグングン上昇し、そのまま甲子園の
 ライトスタンド最上段の看板にブチ当たって、ようやく止まった。
107 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時50分11秒
 一瞬の静寂のあと、すさまじい歓声が甲子園を包んだ。
 マウンドで片ヒザをつき、がっくりとうなだれる椎名を尻目に、おぼつかない足取りでベース
を一周する飯田。
 たった1人で全6点をたたき出し、今大会の目玉ともいうべき屈指の好投手である3本柱、
その全てから完璧な本塁打を叩き出した飯田に、ライトスタンドから自然発生的にウェーブが
巻き起こる。そしてウェーブは、敵である三塁側のスタンド応援団までも参加し、何周も何周も
続いたのであった。
108 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時52分42秒
 そして、大殊勲の飯田がダイヤモンドを一周し、本塁を踏んだとき。
 甲子園にいた全ての観客が見たものは、飯田がヒザから崩れ落ちる姿だった。
 即座に飛び出す寺田、そしてナイン。
「飯田、どうないしたんや!しっかりせぇ!」
「飯田!飯田!」
 寺田の呼び掛けに答えない。完全に気を失っている。
「タンカ持ってこい!」
「しっかりしてカオリ!!」
 混乱状態の中、スタッフがあわてて走っていく。スタンドがざわめき始める。
109 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時54分06秒
「戸田、一塁できるな!ファースト入れ!」
「え? あ、はいっ」
 寺田の指示を聞いて、慌ててベンチへと走るりんね。
 ベンチの自分のグラブを取ろうとしたりんねだったが、ふと手をとめ、横に置いてある
ミットを掴んだ。
(カオリ、借りるよ!)
110 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時54分41秒
「ごっちん、キッチリ抑えるよ」
 9回表、再びマウンドにあがった後藤にボールを手渡しながら吉澤が言った。
 囲むように、キャプテン市井、セカンド矢口、ショート辻、サード安倍、そして飯田から
代わったりんねと、内野陣も一緒にマウンドに集まっていた。
「わかってる。後藤のミスをカオリが帳消しにしてくれたんだから、今度は、アタシが…」
 後藤が笑顔で言った。
「みんな、もうカオリはいない。だから逃げ切るしかない。絶対抑えるぞ!」
 市井のゲキで、各自がそれぞれの守備位置へ散った。
111 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)21時57分37秒
 迎えるは相手クリーンアップの3、4、5番。
 しかし、立ち直った後藤の気迫の投球は、宇多田、椎名、井川という高校野球界屈指の
クリーンアップのバットに、かすることさえ許さなかった。


 朝比奈学園高校が放った安打はわずか3安打。しかしその全てが飯田の本塁打という
珍記録で6−5で初戦をモノにした。
 翌日、すっかり元気になった飯田だが、次の試合からは、またいつもの力んで振り回す
飯田圭織に戻ったという。
112 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)22時01分43秒
 え?カオリがなんで倒れたのか…ですか?
 それが笑っちゃうんですけど、最後の甲子園だっていうんで、カオリ柄にもなく緊張
しちゃったらしくて、3日くらい何にも食べてなかったらしいんです。それで、試合当日の
早朝に目が覚めて、厨房に忍び込んで、たまたま置いてあったキムチかなんかを食べたん
ですけど、それが腐ってたらしいんですよね(笑)

 で、下痢になってしまって試合に臨んだ……と。

 でも、あの3本のおかげでプロ入っちゃうんだから、すごいですよねー。
 あのカオリがプロの選手だなんて、私なんかはなんかの間違いだろうって、未だに
思っちゃいますけど(笑)

 あのときのメンバーの1人、戸田鈴音への取材を終えると、彼女の人なつこい笑顔に
見送られて、私は牧場を後にした。
113 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月17日(木)22時02分26秒
真夏の光線・飯田圭織編(?)おわり
114 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月18日(金)03時12分04秒
かなり、お久しぶりみたいですね〜(w
とりあえず、前みたくリクエストはありなんですか?
115 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月18日(金)08時26分56秒
かろうじて受け付けております(w

つーか矢口編どーすべ
116 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月18日(金)20時26分54秒
勝手になっち編突入れす
117 名前:manatuno 投稿日:2001年05月18日(金)20時40分23秒
「……っ!!」
 あの光景に目を背けたとたん、思わず目が覚めた。
 息が荒い。やはりうなされていたみたいだ。
 また、あの夢を見てしまった。
118 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)20時41分18秒

真夏の光線・安倍なつみ編

『負け犬』


119 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)20時41分51秒
 小高い丘の上にある、朝比奈学園高校の屋上は見晴しが良いことで
知られ、昼休みには多くの生徒がここでランチを楽しんでいる。
 そこから少し離れた、穴場というべき場所に今回の主人公がいた。
120 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)20時42分22秒
「なっち」
「ん〜?」
 もぐもぐと絶えず口を動かしているのは、安倍なつみ。朝比奈学園
野球部の正サードである。
 その隣でブリックのオレンジジュースを飲んでいるのが福田明日香。
同じく朝比奈野球部のメンバーで、センターを守っている。
 この2人、いつもお昼を一緒にここで食べることが習慣になっていた。
121 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)20時42分50秒
 この時期の朝比奈学園高校野球部は少々特殊な環境にあった。
 寺田監督の指令で、3つのバッテリーがエースと正妻の座を争って
いるのだ。
122 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)20時43分48秒
 まずは、エースナンバー1をつける平家と中澤の3年コンビ。平家は
サウスポーであり、130キロ台のストレートだが、スクリュー、スラ
イダーなど球種も豊富で制球に優れ、ナインの信頼を充分に得ていた。

 続いては、安倍−福田のコンビ。学年は違うが、リトル時代からバッ
テリーを組んでいたので息はピッタリ、相性も抜群で平家−中澤コンビ
の地位を脅かす。今は抑えを任されているが、本人達はあくまでエース
と正妻を目指している。
 
 そして最後に、後藤−市井のバッテリーである。
後藤が入部後に組まされた急造バッテリーだが、後藤の天性の剛球と、
市井の野球センスの良さが十二分に発揮され、平家たちを猛追していた。
123 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)20時44分30秒

「あたしね、転校するんだ」

 福田が空を見ながら言った。
「ふーん、そりゃ大変だべな…」
 と言ったところで、あたしはようやく気が付いた。その言葉の意味を…。

 ウソであって欲しい。
 そうだよね?
 ウソだよね?

 なっちを驚かせようとしてるだけだよね?
124 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)20時45分34秒
「福ちゃん、それって……冗談…だよ…ね?」
 あたしの方を向いた福ちゃんが、寂しそうに笑って首を振った。
「ホントなんだ」
「急に親の転勤が決まってさ」
 あたしは、突然の告白に口をぽかんと開けることしかできなかった。

「…………ごめんね。もう、なっちと同じ夢……見れないよ……」
125 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)20時46分28秒
 いつも気丈で、人前では今まで一度も涙を見せたことがない福ちゃんの
頬を、光るものが流れ落ちていった。
 福ちゃんとあたしは、抱き合って泣いた。


 それから一週間後、明日香はこの街を去った。
126 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)20時47分33秒
 そしてあたしにとって、一生忘れることのできない夏が始まろうとして
いた。
 福ちゃんというパートナーを失ったあたしは、裕ちゃんや紗耶香とバッ
テリーを組むようになった。
127 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)20時48分36秒
 裕ちゃんのリードは、みっちゃんがそうだからか、制球を重視するタイプ。
相手打者の苦手な所を突くリードのため、細かい制球力が要求される。

 対照的に紗耶香のリードは、良く言えば荒れダマ、悪く言えばノーコンの
ごっちんが相手のためか、細かいコースは気にせず投手の持ち味を最大限に
生かすリード。
128 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)20時49分23秒
 そして、福ちゃんのリードはそのどちらにも属さない。もう10年近くも
バッテリーを組んだ福ちゃんだからこそわかる、感覚的なものがあった。

 それを失ったあたしは、モロかった。あまりにもモロ過ぎた。
 自分がいかに福ちゃんに依存していたかを思い知らされた。
129 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)20時49分54秒
裕ちゃんと組んではコーナーに決められず四球を連発し自滅。
 紗耶香と組んでは投げる球投げる球全部まん中へ集まりノックアウト。

 一生分ボコボコに打たれた。打ちのめされた。

 あたしのパートナーは福ちゃんじゃなきゃダメなんだということが、
それはもう嫌になるくらい味あわされた。
130 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)20時50分28秒
 こうしてあたしは、夏の地区予選直前に、投手失格を告げられた。


 そして、甲子園で投げるという、小さい頃からの夢が……消えた。
131 名前:朝比奈学園:春のメンバー 投稿日:2001年05月18日(金)20時52分57秒
遊 石黒 彩
中 福田明日香
左 市井紗耶香
右 後藤真希
一 飯田圭織
三 安倍なつみ
投 平家みちよ
捕 中澤裕子
二 矢口真里
132 名前:夏のメンバー(明日香転校後) 投稿日:2001年05月18日(金)20時53分30秒
遊 石黒 彩
二 矢口真里
左 市井紗耶香
中 後藤真希
一 飯田圭織
投 平家みちよ
捕 中澤裕子
三 安倍なつみ
右 保田 圭
133 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)20時55分57秒
 あたしと組む時以外はセンターを任され、強肩、俊足、小技大技なん
でもオッケーの、福ちゃんという攻守の要を失ったのはチームにとっても
大きなダメージだった。
 センターには、ライトからごっちんがコンバートされた。そしてライト
のポジション争いには圭ちゃんが勝ち上がってきた。
134 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)20時56分44秒
 得意だったバッティングも調子が狂いっぱなしで、まったくヒットが
出なくなっていた。いよいよ地区大会が始まる頃には、とうとう8番に
まで打順を落とされた。

 それでも、みっちゃんとごっちんのWエースの活躍で、甲子園への切符
を手にした。
135 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)20時58分24秒
 甲子園に来ても、あたしの調子は一向にあがらなかった。打ってはゲッツー、
守ってはエラーと散々で、ついに2回戦からはスタメンでさえなくなった。


 勝ち続けることが苦痛だった。チームが勝てば勝つ程、居場所がなくなっ
ていく気がした。

 もういいよ。
 もういいよ。
 もう……

 自暴自棄という言葉はこんなときの為にあったのだと思った。
136 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)21時00分04秒
 甲子園に朝比奈旋風を巻き起こした今大会、ついに朝比奈学園は決勝にコマ
を進めた。東京から大量の応援バスが乗り入れ、スタンドは満員になった。

 同点で迎えた7回裏の守備から、あたしは久しぶりに試合に出場した。
「安倍さん、お願いします」
 あたしがスタメン落ちしてから、ずっとサードを守っていた1年生の吉澤が
言った。地区予選ではずっとベンチで、甲子園に来てからいきなり試合に抜てき
された吉澤は、心身ともに疲弊しきっていた。

「なっちに任せるべ」
 無理して笑顔で言ったけど、心臓はバクバクいっていた。
137 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)21時02分40秒
 9回裏。みっちゃんからバトンを受けたごっちんが、緊張からか制球を乱し、
2死満塁。ここさえ凌げば、延長に突入する。

 10回は絶好調の紗耶香からだし、点が期待できる。そしたら、優勝かぁ。
 ぼんやりとあたしはそんな事を考えていた。
138 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)21時03分25秒
 バッターがスイングした。

 平凡なサードゴロだった。

 あたしはグラブを差し出した。



 ボールは、あたしの足の間を抜けていった。
139 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)21時04分01秒


 あたしたちの夏は終わった。
 なっちが、終わらせてしまった。
140 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月18日(金)21時04分53秒
 表彰式後の朝比奈側ロッカールーム。

 ごっちんは頭からタオルをかぶって肩を震わせていた。
 紗耶香はそんなごっちんの肩に手をやり、必死でなぐさめていた。
 彩っぺは気が抜けたような顔で座り込んでいた。
 みっちゃんと裕ちゃんは抱き合って号泣していた。
 圭ちゃんは怒ったような顔をしてたけど、涙を流していた。
 カオリは、一点を見つめたまま動かなくなっていた。
 やぐっちゃんはそんなカオリのヒザの上に顔をうずめてわんわん泣いていた。
 ずっとサードで頑張っていた吉澤も、ヒザを抱えてタオルをかぶっていた。
 
 あたしに近付いてくる人は、誰もいなかった。
141 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月18日(金)21時06分29秒
こんな感じで今日はここまでです。
感想あったらよろしくお願いします。
142 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月18日(金)21時15分21秒
市井編『背番号11』:3〜31
りんね編『攻めのキモチ』:35〜55
矢口編『野球なんてダイキライ』(途中放棄):63〜76
飯田編『筋書きのないドラマ』:82〜112
安倍編『負け犬』:117〜

となっております。

飯田編書き直したい…
ダメだ…
143 名前:長レス、スマソ! 投稿日:2001年05月19日(土)05時21分58秒
全部、楽しく読ませていただきました!
1人1人にスポットライトを当てた書き方は、
数ある野球スレとは異色ですが、このほうが
モー娘。小説の本道ってカンジでいいッスね!!

リクエストされた直後、りんね編をアップしたところで
もしかして、この人すげぇ!?と驚いたりしましたが、
リクエストに応える必要なんてないので、作者さんの
書きたいモノを書いてくださいな。
それが、オレの読みたいモノなので・・・。
144 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年05月19日(土)07時58分28秒
〜編って書き方が良いですね。
個人的には、保田&石川編が気になります。(w
僕も紫版で野球物かいてますが、勉強になりました。
145 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月19日(土)09時34分37秒
飯田編が他と較べてちょっと感じが違うなあと思ってたのは、
作者さんもだったんですね(w
これも又良しということで、飯田編その2をいつかお願いします。
146 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月19日(土)14時00分06秒
>>145さん
( ´D`)ノ アーイ!
147 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月19日(土)21時23分13秒
わたしの書いてる小説に何度かレスいただきまして、ありがとうございました。
まさか、この小説の作者さんだったとは・・・
その昔、わたしがROM職人だった時に読ませていただいたことがありました。
その時は既に、更新が滞ってるようでしたが・・・(w
久々に読ませていただきましたが、やっぱりおもしろいっすね。
(飯田編の空気の変わりようは、ちょっとドキッとしましたが・・・)
月並みですが、お互い頑張りましょう。
148 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月19日(土)22時59分56秒
飯田編は彼女らしくて個人的にはイイ!
149 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月22日(火)23時03分34秒
 決勝の日から3日後、東京に帰ってきたあたしたちは、裕ちゃんたちの簡単
な引退式をすませて、すぐに新チームでの練習に入った。

 新チームは、紗耶香がキャプテンに選ばれた。
 紗耶香は副キャプテンにあたしを指名したけど、あたしは頑として断り、
かわりにカオリがその任についた。
150 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月22日(火)23時07分47秒
 9月、新学期になると、猛烈なあたしへのイジメが開始された。
 なんといっても甲子園の決勝でのサヨナラタイムリーエラー女だ。
 あたしはまだいいけど、実家もイタ電やらスプレーで落書きやら、連日もの
すごい騒ぎだった。
151 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月22日(火)23時09分28秒
 月の半ばになったある朝、あたしは誰もいない部室にいた。
 紗耶香の席に夕べ書いた『退部届』の封筒を置くと、そのまま学校を出て
駅に向かった。
152 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月22日(火)23時10分59秒
 あたしの手には一通の手紙が握られていた。
 電車をいくつも乗り継いで、ようやく目的の駅に着いたときには、もう日が
西に傾き始めていた。
 まだ暑い日ざしが容赦なく注ぎ込まれ、流れる汗をぬぐいながら、あたしは
歩き出した。
153 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月23日(水)21時50分21秒
どうも長くなりそうです。
154 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月24日(木)06時33分36秒
長くしてください(w
155 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月27日(日)02時28分45秒
 しばらく歩いていると、独特の金属音が聞こえてきた。
 思わず走り出していた。
 大きな照明灯と、グラウンドが見えた。
 グラウンドと一般道を分け隔てる金網に顔を付け、目をこらした。
 たくさんのユニフォーム姿が躍動していた。
 100人はくだらないであろうその数に、あたしは圧倒された。
156 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月27日(日)02時29分32秒
 設備の整ったグラウンドでの練習風景をしばらく見ていた安倍は、
勇気を出して近くにいた
部員の1人に声をかけ、福田を呼び出してもらった。


 少し待った後、安倍の前に目的の人物、――福田明日香が姿を現した。
「で、何か用?」
157 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)02時30分58秒
 開口一番、福田の口から出て来たのはこの言葉だった。
「用って………福ちゃん?」
 思わぬ反応に、戸惑う安倍。
「サヨナラエラーしたんだって?見てなかったから良く知らないけど。
それで、チームにいづらくなって、あたしに優しい言葉の一つでもかけて
もらおうって来たっていうのが大方の所でしょ?」
 言葉が出てこない安倍に対し、福田は構わず続けた。
「あたし、今ここの一軍にはいれるかどうかの瀬戸際なの。時間が惜しいの。
なっちに構っているヒマはないの」
「………」
 安倍は下を向いて唇を噛んだ。
158 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)02時32分40秒
「だいたい、あたしが知っているなっちは、あんたみたいな弱虫じゃない。
……帰ってくれる? あ、やっぱいいわ。あたしが練習戻るから」
 それだけ言うと、福田は踵を返しさっさと行ってしまった。
 取り残された安倍は、しばらくその場に立ち尽くしていた。

 救いようのない絶望感だけが安倍の体を覆った。
 悔しさと、悲しさと、切なさ。
159 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)02時33分31秒
 そんな思いが胸をうずまき、重く動かない足をひきずるようにして、
駅に戻ってきた安倍の視界に、見なれた姿が入った。

その人物は、安倍の姿を見つけると、静かにこちらへ向かってきた。

「絶対ここに来てると思ってた」
160 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)02時34分45秒
 その人物――飯田圭織が言葉をかけた。
「なんで…ここだって……?」
「明日香に会ってきたんでしょ?」
「……うん」
「ただその様子だと、明日香に相手にされなかった……違う?」
「………」
「なんでだかわかる?」
「あたしは……」
161 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)02時35分51秒
「結局なっちは、甘えてたんだよね。明日香に」
「明日香はそれに気付いた。だからあえてなっちを突き放したんだ」
「…これはさ、明日香に口止めされてたんだけどさ、言うよ」
「………」
「決勝があった日の夜、カオリの携帯に明日香から電話かかってきたの」
「福ちゃんから…?」
「明日香、泣いてたよ。カオリに泣きながら言ったよ。『あたしがなっち
をダメにしてしまった』って……」
162 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)02時38分45秒
「カオリさ、明日香があんなにボロボロ泣いたの初めてだったから、
どうしていいか、どんな言葉をかけていいのかわからなかった」
「明日香はさ、『もうあたしはなっちを助けてあげられない。でもね、
チームのみんなは、せめてカオリだけは見捨てないでいて』って……」
163 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)02時45分19秒
「だけどね」

「なっちが、なっち自身がカオリたちから逃げたら、背を向けたら、
カオリたちがどんなに頑張っても、なっちのこと助けられないよ」


「カオリも、裕ちゃんも、みっちゃんも彩っぺも、もちろんチームの
メンバーみんな、なっちのことを怒ってないよ。仕方ないんだもん。
カオリたちは野球やってるんだもの。エラーがあって当然だよ。失敗
して失敗して、たくさん練習して、それで上手くなるんだよ」


 カオリの言葉の一つ一つが、あたしの乾いた心に染みていった。
164 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)02時59分06秒
 カオリが言うだけ言うと、お互いに無言の状態が続いた。
 先に口を開いたのはやはり飯田だった。

「あんまりうまく言えないけどさ………見返してやろうよ」
「カオリ…?」
「1回じゃできなくても、10回やればできるようになるよ。練習して
うまくなって、日本一上手いサードになろうよ」

 飯田の言葉の中にこめられた意味に、不意に涙がこみあげてくるのが
わかった。
165 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)03時01分16秒
「そりゃ明日香にはかなわないけど」
 ポツリと飯田が言った。
「カオリだってさ、なっちとずっと一緒にいるんだよ」
「カオリ…」
「なっちの考えてることぐらい、わかるよ。たぶん。うん。…腐れ縁だもの」
 そう言って飯田はちょっと笑った。
 こみあげていた涙があふれてきて、あとはもう言葉にならなかった。
 ただ、カオリのその不器用な優しさが、すごく嬉しかった。
166 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)03時11分26秒
 結局無断で練習をサボったということで、あたしとカオリは紗耶香から
ものすごく叱られた。罰として、グラウンド整備を一週間2人だけでやる
ことになった。

 カオリはぶーぶー言っていたけど。
167 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)03時19分43秒
 こうして秋が過ぎ、冬になった。
 普段の練習が終わった後、カオリと2人で徹底的に走り込みを行い、
筋肉の強化と反射速度の向上を目的としたトレーニングを積んだ。

 その後、裕ちゃんたちに事情を話して手伝ってもらい、守備の基本から
再度体に叩き込ませるため、ノックを1度だけ倒れるまでやった。
 そして次の日から、短時間で集中して行う速射砲ノックを毎日こなした。
168 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)03時20分52秒
 年が明けてからは、ピッチングもメニューに加えた。
 また投手としてやろうとは思っていなかったけど、後藤頼りでどうしても
投手陣が薄い朝比奈では、やれないよりはやれた方がいい。
 また、送球に難があるからとにかくコントロールをつけたかったという
のもあった。

 この秘密特訓の間も、カオリとは話をすることはあまりなかったけれど、
パートナーがいてくれるだけで、あたしは心強かった。
169 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月27日(日)03時21分43秒
今日はこんな感じで。
155〜からです。
170 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)22時49分25秒
 そして、最上級生として迎えた、最後の甲子園。

 怪物エース・後藤を擁する朝比奈が準々決勝にコマを進め、矢口のタイ
ムリーと飯田の今大会4号本塁打で1−2とリードしていた。
171 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)22時52分23秒
 8回、完封ペースで快調に飛ばしていた後藤のスタミナが突然切れた。
 まるで3回戦(市井編)の再現だ。

 状況は1死2、3塁。

 リリーフを任されている加護は、コントロールに不安がありこの場面では
心もとなく、もう1人の投手柴田は肩ができるまで時間がかかる欠点がある。

 朝比奈にはもはや後藤と心中する以外に、道は残っていなかった。
172 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)22時53分08秒
 絶望的なこの状況で、マウンドにナインが集まる。
「後藤、月並みな言葉しか言えないけれど……踏ん張れ、踏ん張ってくれ」
 伝令のキャプテンの市井が疲労困ぱいの後藤に声をかける。
「ぬはは……だいじょ…」
「紗耶香!」

 突然、安倍が強い口調で声を出した。
「あたしが…なっちが投げるよ」
173 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)22時54分56秒
 マウンドに集まっていた全員が、驚いて安倍の方を見、そしてその発言に
さらに驚愕した。
「ごっちんは限界まで頑張ったべ。だから…」
「だから、柴田の肩ができるまで、なっちが時間を稼ぐ!」
 躊躇した市井だったが、安倍の目を見た時、腹は決まった。

 寺田がそれを受けて主審に交代を告げ、投手・安倍のアナウンスが響き渡った。
174 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)22時55分57秒
「なっちが投げるんか!?」
 三塁側スタンドで観戦していた中澤は驚愕した。
 それは平家、石黒も同じだった。
 福田がいなくなった後の滅多打ちにされているイメージがあまりにも強烈
だったからだ。
(なっち…吹っ切れたんか……なぁ…なっち…?)
 中澤は複雑な思いだった。
175 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時02分07秒
「なっち、去年から投げてない……」
 言いかけた市井を制して、安倍は言った。
「大丈夫だから。それより、柴ちゃんの肩できるまで何分ぐらい?」
「5分あれば何とか…」
「そっか。…紗耶香、吉澤。このバッターはフォアボールで出すよ」
 市井と吉澤は驚いた。

「フォアボール!?」
176 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時02分58秒
「そう。故意四球で歩かせる。…いい?あたしがまともに勝負したらたぶん
打たれる。ここはあくまで柴ちゃんで勝負するんさ。そのためにはフォア
ボールを出してワンナウトフルベースにした方がむしろ守りやすいっしょ」

「安倍さん…いいんですか?それで」
 思わず吉澤は聞いていた。
 安倍は笑顔で答えた。
「ごっちんもダメ、加護もダメ、あたしは投手失格なんだから、おのずと道は
見えてるでしょ?」
177 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時03分43秒
「それは…」
「でもね、あたしだって時間稼ぎにくらいには使えるっしょ?」
「時間稼ぎって…」
「したっけ、ストレートでは出さないよ。勝負してると思わせる」
「思わせる…?」
市井がいぶかしげな顔をした。
「ファールくらい打たせてやるってこと。冬にいろいろやって、コントロール
は結構自信ついたんさぁ」
178 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時04分44秒
「あの、でも安倍さん、あたしは…」
 吉澤がなにかいいかけたが
「もう交代は告げられちまってるべ。さぁ行った行った」
 と追い返した。
 ブルペンでは大慌てで柴田が投球練習を開始した。
179 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時07分15秒
 安倍のフォームは、昨年までと全く変わらない美しいフォームだった。
 クセのないしなやかなフォームでキャッチャーのミットへ投げ込む。
 久しぶりのマウンドの感触を確かめながら、ストレートだけ、コーナーへ
丹念に投げ分けて投球練習を終えると、安倍は入念にマウンドを慣らした。
(あと、3分か)
180 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時08分04秒
 安倍は高校野球とは思えない程ゆっくりとサイン交換を行うと、ようやく
投球モーションに入る。セオリー通り外角低めに吸い込まれる。判定はボール。
(いい感じだべさ)
 指先にみなぎる力を感じながら、2球目を内角高めに投じた。
(ボール2つ続けた。ここからが重要だべ)
181 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時11分34秒
 3球目、ド真ん中に70キロ台のチェンジアップを投じる。
 安倍の投じたド真ん中のチェンジアップを打者が待切れずに空振りすると、
スタンドが大きくざわめいた。
「うっひゃぁ。ウチのほうがヒヤヒヤしたわぁ」
「いえてるいえてる。でも、なっちってあんなに度胸座ってたっけ?」
「このピンチにへーきな顔してスローボール放るんだもん」
(よし…大バクチだったけどうまくいった!…あと1分)
 そう考えながら投げた4球目、ぎりぎり一杯から外角ボールへ逃げるスライダー。
182 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時12分04秒
 キーン!
 快音を残し、打球はライトへ上がった。
 バットがボールを捕らえた瞬間、圭ちゃんが猛然とライン際へ走り出した。
 ファールゾーンに落ちる打球だけど、三塁ランナーはタッチアップに備えて
ベースにつく。
 まずい。あれを捕られたら計算が狂っちゃう!!
183 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時14分47秒
「捕るなぁぁぁ!!!」
 あたしはありったけの声で叫んだ。
 幸か不幸か、圭ちゃんは打球に追いつけず、ただのファールに終わった。
 ホッと胸をなでおろしたあたしは、バットの届きそうもない外角へ2球
ストレートを投げ、予定通りフォアボールを出した。
184 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時17分28秒
 投手交代が告げられ、柴田がマウンドにあがる。安倍が時間を稼いだおかげで、
柴田の肩は完全に出来上がっていた。
 内野はバックホーム態勢をとり、あわよくばホームゲッツーを狙う布陣を敷く。
 流れるようなサイドスローから、柴田がボールを投じた。
185 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時19分26秒
 金属音がはじける。

 三遊間を抜けそうな鋭い打球。

 考えるより先に体が反応する。

 必死で腕を伸ばしダイビング。

 グラブの網にボールが入った感触。

 昨年までなら、まず間違いなく取れなかったであろう打球。

 瞬時の動作で起き上がると、迷わずホームに全力で投げる。

 投げ終わった後に、バランスを崩して顔から倒れこんだ。
186 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時20分01秒
 安倍が投げたボールは、吉澤がガッチリ捕球し、一塁へ素早く送球する。
 打者走者とボールのコンマ1秒の勝負。
 ホームを駆け抜けたとほぼ同時に飯田のミットにボールが収まった。

 きわどいタイミングだったが、塁審の手は大きく上にあがった。

 5−2−3と渡るホームゲッツーで、辛くも朝比奈はピンチを脱した。
187 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時21分36秒
 9回の表、朝比奈学園の攻撃に移った。
 ピンチの後にチャンスあり。
 この格言通り、辻が遊撃内野安打で出塁し、続く飯田がワンバウンドの
球を得意のアッパースイングで振り抜くと、とんでもない速度のライナー
がライトを襲った。
 加速を続けた打球はダイレクトでライトのフェンスに当たったが、その
あまりの打球の鋭さが災いし、シングルヒット止まりとなった。
無死1、2塁。ダメ押しのチャンスが広がる。
188 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時22分00秒
「なっちー、ワンバン打ちごろー!!」
 一塁ベース上から、カオリが脳天気に大声であたしに声をかける。
「アホかー!!」
 とりあえず怒鳴り返してやった。
 おかげで緊張はとれた。
189 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時23分30秒
 シンに当てるんだ!

 ボールをよく見ろ!

 カーブを狙え!

 相手のウイニングショットを打ってこその4番なんだ!


 あたしの中のもう1人のあたしが、熱く叫んでいる。
190 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時24分07秒
 ここまでノーヒット。
 どうにも、あの鋭いカーブにしてやられている。
 今日はチャンスに2回まわってきたけど、いずれもカーブでゲッツー。
 あたしだけじゃない、みんなもほとんどこのカーブにやられていた。
 体は熱く、心は冷静に。
 そう言い聞かせて、あたしは打席に入る。
 打席には右足から入るのがあたしのジンクスだけど、もうそんなのは
関係なかった。
 捕手に気付かれないように、半歩投手寄りに立った。
191 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時27分01秒
 なんとかここで打って柴田を、チームを楽にさせてあげたい。
(1点、もう1点だ。ここで打たなきゃ4番じゃない…)
 走者を2人置いて、4番。
 最も得点が期待できる場面だ。
 今日は結果は出てないけれど、調子自体はすこぶるいい。
 集中−−。
192 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時28分01秒
 カウント2−2。
 セットポジションから投じられたのは、やはり勝負球のカーブ。
 顔に当たるかと思う程のコースからググっと曲がり、外角低めに決まる
すごい落差だ。案の定、厳しいコース。

 しかし、リリースする直前に、スタンスをスクエアからクローズドにした
あたしは、そのカーブの曲がりっぱなを、ギリギリまでひきつけて思いきり
ひっぱたいた。
193 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時30分18秒
 あたしの打球は、綺麗な弧を描いてスタンドへ吸い込まれていった。

「うっしゃぁぁぁぁ!!!」
 スタンドでは中澤が、興奮のあまり平家の首を絞めながら雄叫びをあげていた。
 相手の息の根をとめる、値千金の3ランホームラン。
 これで勝負はついた。
 スタンドでは平家の息の根も止まりそうだった。
194 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時30分56秒


 試合後、ベンチ裏の通路でヒーローインタビューを受けていた安倍が、ようやく
解放されて戻ってきた。

 自分の道具と荷物が置いてある場所に来ると、後藤が1人立っていた。
「なっち、ありがとう。…すごかったよ」
「ううん。みんなに後押しされただけだよ」
「あたしね、1年かかって、やっとわかったことがあるんだ。……野球は1人で
するもんじゃない。チームのみんなが、あたしを支えていてくれるんだってこと。
そしてあたしもチームを支えているんだってことをね」
195 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時31分33秒
 突然、安倍の肩がぽんと叩かれた。
 振り向くと、そこには見慣れない、しかしテレビでは見慣れたユニフォームに
身を包んだ福田がいた。

「明日香……」

「見てた。やるじゃん」
 そう言って、福田はニッと笑った。
196 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時32分08秒
「福ちゃんのおかげだよ」
「ないない。あたしはなんもしてない。ま、運が良ければ決勝で会おうよ」
 言うだけ言って、ひらひらと手を振りながら行ってしまった背番号8の後ろ姿を
見ながら安倍は笑った。

「明日香、変わってないねぇ」
 後藤が言った。
「だからこそ、福ちゃんなんさ」
197 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時32分43秒
「こらぁ!なっち、ごとー!!置いてくぞー!!」
 通路の向こうで市井の怒鳴り声がした。

「わわっ、紗耶香の雷だ」
「ごめんなさーいっ」
 安倍と後藤は慌てて走り出した。
198 名前:真夏の光線:安倍なつみ編 投稿日:2001年05月27日(日)23時33分13秒


真夏の光線・安倍なつみ編 終わり

199 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月27日(日)23時37分39秒
ようやくおわりました。
短くするつもりだったのに長すぎです(w


なんかありましたら書いてってくらさいです。。
200 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月28日(月)21時14分08秒
昔野球をやってた頃を思い出して、切なさ2倍です。
次も楽しみにしてます。
201 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年05月28日(月)21時55分28秒
お疲れ様でした。
次は誰編かな?
石川編かな?
202 名前:雄根小二郎@疑問形 投稿日:2001年05月28日(月)22時33分56秒
終盤・接戦時で一死満塁のときって、普通ホームゲッツー態勢を
敷くんでしたっけ?

自分の記憶を引っ張り出して、たぶんそうだったと思ってそういう
シフトを敷かせましたが…

しばらくまともな野球やってないから忘れてしもうた(汗
203 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月29日(火)10時41分46秒
>>202
ランナーの足の速さにもよりますけど、
僕がやってたチームでもホームゲッツーにしてたと思います。
一つしかアウトが取れなくても無得点で二死二、三塁。次の打者も歩かせられる。
普通のゲッツー崩れだと、一点取られて一塁にランナーが残りますから。

内野守備に絶対の自信を持つチームなら中間守備でいいのかなあ?
204 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月29日(火)22時14分45秒
うちのチームはちょっと変則的で、ファースト、サードはホームゲッツー。
セカンド、ショートは中間守備をとるようにしてました。
205 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月31日(木)01時22分16秒
うお、詳しいレスありがとうございます。

この先も続けて行こうと思ってますが、他の板で滞ってるやつを
進めたいと思いますので、しばらくお待ちください。
206 名前:203 投稿日:2001年05月31日(木)01時52分24秒
「ホームでアウトを取るのを第一に考えて、駄目そうだったら一塁をアウトにして
二死二、三塁でその次とその次の2人の内でやりやすい方と勝負する。
中間守備のゲッツー崩れなら前に書いたように一塁に走者が残り、
次の打者勝負を余儀なくされ、大量失点の可能性がより高くなる」って書くつもり
だったのに。すんません。

出来るときに書いてもらえればそれで嬉しいです。前のを読み返しときます。
207 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月31日(木)02時38分25秒
うん。そうですね。
週ベでも買ってルール教室を読むか……


さらに質問です。
2ランスクイズって2,3塁の走者を一気に返すからそう言うんでしたっけ?
2塁の走者が2つ塁をランすれば2ランスクイズになるんでしたっけ?

うちのチーム、2ランスクイズのサインはありましたが出たことは1度もないです。
208 名前:204 投稿日:2001年05月31日(木)10時29分04秒
2ランスクイズは、2点入るからだと思います。
2ランホームランも2点入るし(w
(あくまで個人的見解なのですが・・・)

うちのチームには、2ランスクイズのサインはありませんでしたが、
結果的に2ランスクイズになったことは1度だけありました。
209 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月02日(土)14時31分25秒
2ランスクイズは2点入るスクイズですよ。
そもそも「ラン」っていうのはランナーのことではなく、得点のことです。
多分英和辞書にも載ってると思います。(「run」のところ。)
ノーヒットノーランも無安打無得点試合のことですし。
210 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年06月02日(土)22時37分59秒
ありがとうございます。
長年の疑問が解決してすっきりしました。
俺はホントに経験者なんだろうか?
211 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月03日(日)20時58分00秒
2ランスクイズって実際にきまることってあるんですかね?
漫画以外ではみたことないもんで(汗
212 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月04日(月)08時00分35秒
2ランスクイズは、野村克也の必殺技です(w
http://www.nikkansports.com/osaka/otr/club/cl_02.html
現日ハムの正田が優勝した年の夏の甲子園でもあったような気がします。
http://www.mainichi.co.jp/entertainments/sports/koshien/06/02-senpyo.html
213 名前:211 投稿日:2001年06月04日(月)10時39分57秒
>>212
どうもれす。
ってか、TV中継あるとこでやってよ野村さん(w
214 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年06月13日(水)02時03分55秒
ぼちぼち書き始めてまっす。

次はあの人のお話です。
215 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月16日(土)14時45分33秒
あの人って誰だ?
気になるぞ!!

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