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学校の階段
- 1 名前:カキMAX 投稿日:2000年11月28日(火)01時24分33秒
- 〜序〜
『特別校則:
いつ何時でも、階段と話をしてはならない。
尚、これを守らない場合、当事者の身に何が起きても、
当校では一切の責任を負わないものとする。』
- 2 名前:カキMAX 投稿日:2000年11月28日(火)01時26分25秒
- 〜1〜
『ハイスクール娘組』という新番組は、モーニング娘。たちが生徒役になり、
実際の学校の教室を使って、お届けするバラエティ番組だ。
教師の設定でやってくるゲストは、独自の人生論を語ったり、様々な無理難題を
娘。たちに出題してゆくといった内容になる予定で、ゲストが何を語ったり、
出題するのかは、事前に娘。たちには知らされていない。
記念すべき第一回目のゲストは、モー娘。のプロデューサーであり、
実際に芸能界の良き指導者でもある、つんくだ。
彼はすでに自分の番組も持ち、もはやモー娘。ばかりに関わっていられる立場では
なかったが、娘。初のゴールデン番組ということで、それを快諾した次第だ。
学校側では(女子校ではあったが)モー娘。が来るということで、生徒たちがパニックになるのを危惧し、
撮影スタッフは大掛かりにならないように、最小人数で来ることを条件として提示した。
そこで番組サイドが決定したのは、実験的とも思える撮影方法であった。
- 3 名前:カキMAX 投稿日:2000年11月28日(火)01時27分15秒
- それは『リアルな学校の影像』というのをコンセプトにして、
家庭用のデジカム2台を用意し、娘。たち自身に撮影させるといった方法だ。
そのことを告げられて、すぐに後藤が困惑の表情を示した。
「え?私たちが自分で撮るんですか?」
「大丈夫かな〜…」
「つんくさん怒るんとちゃう?」
吉澤、中澤が言葉を続けた。
当然だが、他のメンバーも少なからず不安を覚えている。
「なっち、カメラの使い方分からないよ?」
「そうそう、私も撮り方わかんないんだけど…」
「なんやねんな〜?あんたら若いくせに何〜も知らへんねんなぁ〜」
そう言って、保田が手にしていたデジカムを中澤が受け取り、
慣れた感じでスイッチ類を操作して録画を開始した。
矢口がすぐにカメラに反応して、Vサインを出しながら言った。
- 4 名前:カキMAX 投稿日:2000年11月28日(火)01時28分31秒
- 「スゴイ!裕ちゃん。さすが年の功って感じ?」
「ウルサイ!年齢関係無いっちゅうねん。こんなん簡単やで。ほらズ〜ム…インっと」
「ちょ、ちょっと裕ちゃん!どこ撮ってんの?!もうーやめて〜」
中澤は矢口のスカートの中を撮ろうとしていた。
ずいぶんと大胆な盗撮だ。
嫌がって逃げる矢口。それを追いかける中澤。
この場面も番組で使ったほうが良いのではないか?と思うくらいおもしろい。
「中澤さ〜ん!こっちも撮ってくださいよ〜」
「撮ってくらさ〜い!」
加護と辻だ。知らない学校へ来たのが楽しいのか、二人ではしゃいでいる。
それを見た飯田が「しっ!」と口に指を当て、静かにするように促した。
騒いで一般生徒に迷惑をかけてはならないのだ。
- 5 名前:カキMAX 投稿日:2000年11月28日(火)01時30分12秒
- 「えっーーー!」
加護と辻が静かにしたかと思えば、今度は石川が叫び声をあげた。
ディレクターから第一回目のクラス委員長役を任命されたからだ。
(委員長役は、週変わりでやるらしい)
「まあ、司会進行役と思ってやってみてよ」
とディレクターから気軽にアドバイスされたが、石川にとっては一大事だ。
大切な第一回目の司会で失敗するわけにはいかない。
「それよりも、ウチのセーラー服姿はホンマに大丈夫なんかいな?」
「だ〜いじょ〜ぶ!いけてるって!裕〜ちゃん!」
矢口がスカート盗撮のお返しと言わんばかりに、スカートめくりをしてみせた。
こんな調子で、メンバーは番組用に借りた教室に入り、撮影がスタートした。
- 6 名前:カキMAX 投稿日:2000年11月28日(火)01時31分57秒
- 始めまして。初登場です。
一レス分の文字量は、こんなもんでOKですかね?
- 7 名前:ま〜 投稿日:2000年11月28日(火)01時34分54秒
- 多分だいじょぶっす♪
初登場、期待してます。
それにしても『ハイスクール〜組』とは、また懐かしいフレーズだ♪
- 8 名前:カキMAX 投稿日:2000年11月29日(水)03時18分04秒
- >>7
がんばります!
- 9 名前:TKO 投稿日:2000年11月29日(水)17時16分49秒
- 裕ちゃんのセーラー服姿見たいー。白がいいなあ。(笑
- 10 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月01日(金)01時44分42秒
- −−−1時間目が始まる前の雑談シーン(実際の時刻は10時過ぎだったが)−−−
後藤がピンチランナーの長谷川さなえよろしく、遅刻ギリギリで教室に駆け込んでくる。
(もちろん、アドリブで考えた演技だ)
「セーーーフ!」
「ゴッチン、遅いよ〜何してたの?」
「いやぁ〜ちょっと、持病の腰痛が…」
「なんやそれ?オッチャンかいな」
「ちょっとみんな、先生来たよ!」
ガラガラガラ……
少々建付けの悪い扉が開き、つんく扮する教師が入ってきた。
ラフな格好で決めているつんくは、少し困惑した表情だ。
それもそのはず、教室の中にはモー娘。メンバーしかいないのだ。
カメラを手にしているのは飯田と保田の二人で、照明などの他スタッフはいない。
石川が「うん」と、一つ小さく頷いてから口を開いた。
- 11 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月01日(金)01時47分09秒
- 「きり〜つ!れい!ちゃくせき!」
「早っ!」
石川以外の全員が思わずつっこんだ。
まさに「アン、ドゥ、トロワ」のリズムで、誰も挨拶についていけなかったが、
石川自身は何が変だったのか気付いていないようでニコニコしている。
すかさず、つんくのフォローが入った。
「なんやエライ挨拶の早い学校やな〜、元気でよろしい!」
「つんく先生の授業を早く受けたいからです」
いきなりすべった石川だったが、つんくが再びフォロー。
「ほほ〜う、勉強熱心やねんな〜、まあその前に出欠取るで、ほな、市井!」
「………ハァ?」
今度はつんくが、いきなりすべった。
メンバーもリアクションに戸惑っている。
そんな時は決まってリーダー中澤の登場だ。
- 12 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月01日(金)01時50分04秒
- 「せんせ〜え!その子はもう転校したんで、このクラスにはいてませ〜ん」
「せやったんかぁ〜スマンスマン…ところでキミら一体何年生やねん?!ごっつ年離れてるで」
「それは言わないでくださぁ〜い」
「私、10浪なんです」
「私は2浪くらいで」
「私はぁ、一年生なのれす」
「分かった!分かった!なんや構成がおかしいクラスやねんな。みんな来とるようやし、もう出欠はええわ」
「あー、いいかげんな先生だー」
「うるさいっちゅうねん!おもろい話したるから…っちゅうかこんな番組でええんか?」
「番組とか言わないでくださぁ〜い。学校なんですゥ」
- 13 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月01日(金)01時52分05秒
- ここで飯田が手にしていたカメラを辻に渡した。
保田がその姿をもう一台のカメラでフォローしている。
辻はカメラのレンズの側を自分で覗き込み、そのまま撮ろうとしていた。
「撮れてますか〜?」
「誰に聞いてんの?ってゆうかカメラの向き逆、逆!あはははは…はは…」
飯田が笑いのツボにはまってしまった。なかなか笑いが止まない。
慌ててカメラを逆さにする辻の姿を見て、さらに笑いころげる。
「あはははははは…」
「そこ!授業中に大声で笑わない!」
「先生〜、早く授業始めてくださーい」
「よっしゃ分かった。ほんなら始めるでェ〜」
間の抜けたつんく先生の言葉で、授業がやっと始まった。
- 14 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月01日(金)01時57分10秒
- >>10-13 更新しました。
書き忘れましたが、〜2〜 です。
>>9 TKOさん
それでは白いセーラー服ということでいきましょう〜
- 15 名前:りるる 投稿日:2000年12月01日(金)23時01分00秒
- すべる石川のキャラが好きです!
もっといじめてあげてください!(わら)
- 16 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月05日(火)03時33分58秒
- 〜3〜
「ほんなら、何を話してもええって聞いてるんやけど…
ホンマにええの?学級委員長?」
つんくに振られた石川は、自分が委員長だと忘れていたのか、一瞬ハッ!とした表情になり答えた。
「いいですよ。手短にお願いします」
「ぷっ…」
思わず言葉の意味を理解したメンバーから笑いがこぼれた。
何と単語を間違えたのか分からないが、石川は委員長気取りで澄ましている。
「手短て失礼やな〜!?こうなったら意地でもメッチャ長い話したんねん。
…まあ、それは冗談やけども、ほんなら俺が学校で聞いた変わった話するで。階段の話や」
「怪談の話?それって怖い話なんですか?」
娘。たちが聞き間違えるのも無理はない。
誰が「かいだん」の話と聞いて「階段」を思い浮かべるだろうか?
と、思っていたらここにいた。二人も。
- 17 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月05日(火)03時38分16秒
- 「階段は、怖くないです」
「そうれす」
加護と辻だ。安倍が隣で「え?!」というような困ったような笑ったような表情をしている。
「俺が今からする話は、加護たちの言うとるほうの階段の話や。ステアーやな、ステアー。歩くほうや」
「それって、おもしろいんですかぁ?」
「おもろいっちゅうか、まあ〜、変わった話や。とりあえず聞いたらええ。いくで」
10人は黙って、つんく先生の話を聞くことにした。
カメラは机の上に固定され、一方はつんく、一方は娘。を引きで全員写している。
つんくが話し始めた。
- 18 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月05日(火)03時39分04秒
- 「ここの学校の階段でな、どっかに段が3段しかない階段があんねんて。
ほんで聞くところによると、その階段がしゃべりよるっちゅう話や。
階段がしゃべんねんで。変やろ?でもまだ驚くんは早いで。実はな、その階段とな、
よう会話しとったやつがおってん。変なやつやな〜言うて、まわりも無視しとってんけど、
そのうちな、無視もでけへんようになってん。実はある時、突然そいつが消息不明になったんや」
奇妙な話だ。10人は皆そう感じながら黙って聞いていた。
そんな娘。の様子を気にするでもなく、つんくは話を続ける。
「ほんでな、ここからがスゴイで。その消えたやつの口癖がな『ウソよね〜ん』やったんや。
別にこの話がウソやでえ〜!っちゅう、そんなしょうもない話ちゃうで。
じ・つ・は…消息を絶ってから何があったと思う?
その3段しかない階段を上り下りする度にな、聞こえてくるねんて!
『ウソよね〜ん』って!どこからともなくそう聞こえてくるって言う生徒が続出したんや!」
- 19 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月05日(火)03時39分35秒
- 「こ、怖っ……怪談話やないですかァ〜、そんなんウチ苦手やねんな〜…も〜」
中澤がつんくの不気味な話に思わず口を開いた。
他のメンバーも、つんくの言い回しに惹き込まれていたのか、かなり真剣に聞き入っていたので、
中澤の言葉が緊張を緩和するのにちょうど良かった。
ただ安倍だけが、こわばった表情のままで冷や汗をかいている。
矢口が心配して声をかけた。
「どーしたの?なっち、そんなに怖かった?」
「あ…ううん、別になんでもないんだけど…ね。ほら、大丈夫」
安倍はいつもの笑顔で笑ってみせたが、すぐに堅い表情に戻ってつんくに何かを確認するように訊ねた。
- 20 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月05日(火)03時40分53秒
- 「つんく先生。それでその階段はどうなったんですか?」
「ああ…それやねんけど、その階段はそれ以来『通らずの階段』って呼ばれて、
誰も使うてへんみたいやな〜まあ、声がするんは単なる噂かも知れんけど、不気味やからな。
3段しかないっちゅうのもなんか変やで。
せやから、まあそんな階段見つけても使わんほうがええで〜!っちゅう、為になる話や」
9人は話を聞き終えて、つんくの作り話だと考えたのか、安心したように一息ついて笑っていたが、
安倍だけは、やはり落ち着かない様子で顔色が妙に青ざめている…
「なっち、気分でも悪いん?」
中澤に言われた安倍は2、3回発声できずに金魚のように口をパクパクさせてから答えた。
「な、なっち見たよ。その階段……
それに…聞こえた…『ウソよね〜ん』って…聞こえちゃったよ…」
9人は、お互いに顔を見合わせ、瞬間、笑顔が無くなった。
- 21 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月05日(火)03時44分45秒
- >>16-20
更新しました。
これから話がメインに入っていきます(予定)。
>>15 りるるさん
石川、次回からボケる間も無くとんでもない展開になるかも知れません。
- 22 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月05日(火)03時47分33秒
- しかし関西弁の会話を活字で書くときって、読点が難しいですな〜
- 23 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月19日(火)01時56分47秒
- 続きまだですか?
- 24 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月20日(水)02時52分41秒
- 「なっち、冗談だよね?」
いつになくマジ顔で心配する矢口に対して、安倍はただ首をブルブルと横に振るのが精一杯だった。
「ホンマに聞こえたん?」
安倍は無言で頷いてから、やっと言葉を口にした。
「そんでね……なっち『何?』って返事しちゃったのさ……怖いよ」
「大丈夫やって!な〜んもあらへんよ。ねえ?つんくさん。作り話ですよね?」
まったく無意味な問いかけだった。
安倍は実際にその言葉を聞いたと言っているのだ。
つんくも「人に聞いた話やからな〜」と茶を濁すしかない。
「とりあえず休憩しましょう。ね?クラス委員長」
「あ……はい!そうしましょう」
保田に言われて役どころをスッカリ忘れていた石川が、少し無理して明るく答えたが、
他メンバーはそれぞれ何か考えているのか、曇った表情で押し黙っていた。
ただ二人、教室をコッソリと抜け出して行った辻と加護を除いては。
- 25 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月20日(水)03時28分03秒
- 「あいぼん、3段の階段を探しにいくのれす」
「そうやな。なんやおもろそうや。ええな?二人だけの秘密やで」
二人は話の内容を理解していないのか、聞いていなかったのか、はたまた単なる好奇心か、
宝さがしをするような気分で『通らずの階段』を探しに抜け出していたのだ。
『通らずの階段』は、読んで字のごとく普段使わなくても支障のないような場所にあるのかと思われたが、
意外にも校舎1階のちょうど真ん中あたり、家庭科室の隣にそれは存在していた。
辻と加護も自分たちが思っていたより、ずっと早く見つけることができた。
「のの見てみ!ホンマに3段しかないで」
「ほんとれすね〜」
「安倍さん、なんか聞こえたとか言うとったな。なんか聞こえるかぁ?」
「う〜っんとぉ……」
耳に手を当ててじっとする二人。
校内は授業中とあって静かなもので、耳を澄ましても聞こえてくるのは、
遠くの教室でしゃべっている教師の声と、黒板を叩くチョークの音、時々生徒の笑い声……くらいか。
と、思っていたその時!
- 26 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月20日(水)03時33分25秒
- 「ウソよね〜ん」
「!!!」
思わず辻がビクッ!として飛び跳ねた。
加護もすぐにあたふたして、辻の顔色をうかがう。
「なんや?いま聞こえたで?!ののがしゃべったんとちゃうんか?」
「私はぁ、しゃべってないのれす……き、き、聞こえたのれす!」
「ウソよね〜ん」
「ひゃ!またや!また聞こえたで!」
「あいぼん!あ、あれは、誰なのれすか?!こっちに向ってくるのれす!」
辻の指差す方向には、得体の知れない黒い影。
二人は足がすくんで硬直してしまい、パニック寸前の状態だ。
「だ、誰て分からへんわ!寄ってこんといて!!」
「に、逃げるのれ……」
辻の最後の言葉を残して、校内は再び静寂に支配されていた。
- 27 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月20日(水)03時39分05秒
- >>24-26 更新しました。
この話、青板では異色っぽいので、そろそろ板移動して再開しようかと思ってましたが、
>>23 さんがナイスタイミングであげてくれたので、ここで続けることにします。
でも、異色だろうな〜
- 28 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月22日(金)06時59分46秒
- 23さんのおかげか、自分も待ってたんでお礼を。
異色なのは、気にしなくてもいいんじゃないですか?
同じようなのばかりでも何だし、異色だからこそ、ここで続けて欲しい、
と自分なんかは思うんですが。
- 29 名前:23 投稿日:2000年12月23日(土)02時21分24秒
- >>28
激しく同意です。
- 30 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月24日(日)00時36分55秒
- その頃、撮影用に借りてある教室では、当然ながら辻と加護がいなくなったことで、
ちょっとした騒ぎになっていた。
「ホンマにあの子らは、どこに行きよったんや〜?」
「いくらなんでも撮影中の休憩に、そんな遠くまでは行ってないと思うけど……」
「もしかして一般生徒と間違われて、教室に連れていかれてるとか?」
つんくが休憩中に『ウソよね〜ん』を笑い話としてうまく昇華させたことによって、
安倍もやっと冗談に付き合えるくらいに気分が回復していた。
「職員室で怒られてるのかもしんないよ?」
「あ〜り〜え〜る!!」
「そんなわけないじゃん!カオリちょっと見てくる」
皆が談笑している中、飯田が怒鳴って教室を飛び出して行った。
辻の世話係であり、タンポポでは加護の先輩にあたる飯田は、二人が消えたことを
冗談っぽく笑っているメンバーに対して(少々ナーバス過ぎたが)本気で怒っていたのだ。
- 31 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月24日(日)00時40分09秒
- 当然、最近ではミニモニ。として二人とは親交が深い矢口も心配はしていたが、
それ以上にカメラに写りたいという気持ちが勝っていたので、あえて探しにいくことはしなかった。
悪気ではなく、純粋なる向上心が自然にそうさせたのだ。
「ちょっとカオリ!……あ〜もう行っちゃったよ」
「どうする?ウチらも手分けして探してみよか?」
「でも校舎内はあんまりウロウロしないほうがいいんじゃない?」
「せやな……後藤どうする?」
中澤は加護の世話係である後藤にたずねた。
「う〜ん……どっしよっかな〜」
正直この時、後藤はめんどくさいと思っていた。
『加護だってもう素人じゃないし、放っておいてもそのうち戻って来るんじゃん?』
言葉にこそ出さなかったが、そう言いたくてしかたなかった。
- 32 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月24日(日)00時41分41秒
- ぐずっている後藤を見て、中澤が言った。
「みんなが出て行ってもしゃあないし、後藤だけでも行ってき」
中澤は「世話係には、世話している者の行動の責任も取る必要があんねんで」と
諭したかったようだが、今の後藤にはうまく伝わらなかったようで……
「え?一人で?!ヨッスィ〜、一緒に行こうよ〜」
「は?わたしも?なんで?」
「いいじゃ〜ん。一人で行ってもつまんないよ〜」
「あー!もうしゃあない、ヨッスィ〜も一緒に行ったって」
「はぁーーい」
吉澤も後藤同様めんどくさそうだったが、「二人で」ということで納得し、渋々出て行った。
教室では、残り5人のメンバーとつんくで、撮影が再開された。
- 33 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月24日(日)00時43分58秒
- >>30-32 更新しました。
>>28-29 両氏
どうも異色支持?ありがとうございます。
更新が滞っているときは、またケツを叩いてやってください。
- 34 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月24日(日)19時24分52秒
- おもしろぉ〜い!
すっごい続きが気になるっ!!
カキMAXさんは他に何か
書いてないんですか?
- 35 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月27日(水)00時54分39秒
- 「おぉ〜ィ……あ、ヤバ」
飯田が叫ぼうとして、思わず言葉を止めた。
校内は授業の真っ最中で、一般生徒たちに迷惑をかけるわけにはいかないのだ。
飯田は校舎裏や運動場の隅といった人目につかない場所から、辻と加護を探していった。
「もーう!あの子たちどこに行ったのよ〜……
見つけたら絶対16ビートの猛特訓してやるんだから!」
一方、後から教室を出て行った後藤と吉澤はその頃……
「ね〜え?ヨッスィー、なんかもう疲れたよね〜」
「うーん。疲れたしィお腹すいたー、嗚呼〜ベーグルぅ〜」
「ちょっと休憩しよっか?あそこでジュース売ってるし」
「それイイねえ〜!ラ・ラ・ラ・ムジンクン〜」
「ふ・る・いッス〜」
後藤が吉澤のギャグ?を受け流しながら、さっそく自動販売機に向った。
販売機の隣には、休憩するには持ってこいのベンチがある。
吉澤は早速ドカっと腰掛け、後藤がジュースを買うのを待っていた。
- 36 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月27日(水)00時59分03秒
- 「あら〜?ここ飲茶楼入ってないよ〜?」
「カップの飲茶楼ってあんまり無いんじゃない?」
「そっかぁ……まあどうせ買わないんだけどね〜」
「あ〜もうなんでもいいからゴッチン早く買っちゃって〜。のどカラカラだよ〜」
「なんでもいいの?じゃあ青汁を一杯っと……」
「あ、あおじる?!そんなの売ってんの?!」
「あ〜るわけな〜いじゃーん、ヨッスィー素直だね〜」
「なんじゃそりゃあ?!」
事もあろうか、二人はそこが公園か遊園地といった感じで、
一般の学校内であることをすっかり忘れている様子だった。
そのくつろいでいる姿を見かけた教師(らしき男)が、二人に向って叫んだ。
「おいコラー!お前ら授業中だぞー!」
ジャージ姿からして体育教師であろうその男は、当然二人を一般生徒と勘違いして注意したわけだが、
二人は『なにが?』といった表情で、意味が理解できていないようで、ジュースを飲みつづけていた。
- 37 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月27日(水)01時08分31秒
- 教師は二人がわざと無視していると思い、厳しく注意するつもりで走ってきたが、
途中で二人がモーニング娘。であることに気付き、同時に校内でTV番組の撮影があると
朝礼で伝えられたことを思い出した。
険しかった教師の表情は、一転して笑顔に変わっていた。
「いや〜、これはどーもどーも。撮影はもう終わったんですか?」
「あ、いま休憩中なんです」
「そうですか〜……実はですね〜、僕、モー娘。の大ファンなんですよ。サインいいっすか?」
「別にいいですよ。二人しかいませんけど……」
「十分っす!ヨッス…いや、吉澤さんの大ファンなんで」
そう言いながら吉澤ファンを名乗る体育教師(推定27才)は、抱えていたプリントの一枚を抜き出した。
吉澤と後藤は順番に気前良くスラスラとサインし、それを受けとってご満悦の教師がその場を去ろうとした時、
後藤が急に思い出したかのように質問を投げかけた。
「あのぉ〜、ここの学校で3段しかない階段の話って有名なんですか?」
- 38 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月27日(水)01時21分12秒
- それを聞いた目尻の下がった教師の笑顔は、突如一変し、シビアな面持ちになった。
その表情を見た二人も、神妙な態度で返答を待つ。
「どこで聞いたのか知りませんが、そのことにはあまり触れないほうがいいと思いますよ」
「え?やっぱり悪い噂とか、何かあるんですか?」
「実際問題、事実はよく知らないんですが……
私の口からはこれ以上はなんとも……ええ、すいません」
「あ、そんなに気にしてもらわなくっても全然いいんですよ〜
どこにあるのかだけでも教えてもらえないですかね?」
「場所は確か家庭科教室の隣だったはずですが……
校内では『通らずの階段』って呼ばれて誰も寄り付きませんね」
教師はこれ以上語りたくないと言わんばかりに、足早に去っていった。
その際、脇から数枚のプリント用紙が風に飛ばされたが、それさえも拾う余裕がなくなっていた。
それほどまでに恐ろしい逸話でもあるのだろうか?
二人は少し躊躇したが、辻と加護を探すのは一旦置いといて(忘れて?!)、
『通らずの階段』を目指すことにした。
- 39 名前:カキMAX 投稿日:2000年12月27日(水)01時25分26秒
- >>35-38更新しました。
>>34さん
声援ありがとうございます。
「カキMAX」名義では、青板のこのスレでしか書いていませんが、
実は別ハンで、BAD板で短いやつを書かせてもらったりしています。
- 40 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月30日(土)04時39分00秒
- こういう後藤、吉澤のキャラもおもしろいですね。
次は二人が階段に? BAD板ともども期待してます。
- 41 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月08日(月)01時57分42秒
- 「あ!あれカオリンじゃない?」
運動場で体育の授業をしている生徒に、飯田がうっかり見つかってしまった。
「しまった!」と思うのも束の間、すぐに生徒数人に囲まれてしまった。
「わー本物だ。髪キレーイ」
「手、細ーい。足、長〜い」
「カワイイ〜」
賞賛の言葉が飛び交い、飯田も悪い気はしなかったが、今はそれどころではない。
辻と加護を探さなくてはならなかったし、授業の邪魔をするわけにはいかないのだ。
「あの、ゴメンね。いま撮影中だから……」
「え?!今、映ってるんですか?きゃー!カメラあるんですか?」
- 42 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月08日(月)01時58分20秒
- 飯田は咄嗟に苦しい言い逃れを試みたが、逆効果だったかもしれない。
今度は生徒たちの興味が「カメラはどこ?」という話題に切り替わり、
飯田(モー娘)に興味が無い生徒たちも巻き込んでしまった。
それを見た飯田は機転を利かせて、騒ぎを収めると同時に、この際消えた二人のことを
生徒たちに聞いてみることにした。
「はーい、みんなちょっと落ち着いて〜。こっちに注も〜く!!
実は今ね、カオは辻と加護の二人を探すゲームをしてるの。
だからさ、カメラはここにはないんだけど、この中で二人を見たって人いない?」
それを聞いた生徒の一人が「なるほど〜」といった感じで頷いて答えた。
「だからあの二人コソコソしてたんだぁ。さっき見たよ。家庭科室のほうだったかな?」
「え?あいぼんと、ののちゃんも見たの?言ってよー、私も見たかったのにィ〜」
「ズルーイ!」
再び生徒たちがゴチャゴチャしてきた隙をついて、飯田は「ありがと、TV見てね〜」
と言って、その場をうまく抜け出した。目指す先は、もちろん家庭科室だった。
- 43 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月08日(月)02時02分58秒
- >>41-42 21世紀一発目、更新しました(少ない……)
>>40 さん
どうもありがとうございます。
BAD板はサーバーが逝っているみたいで、年末から入れないようです。
再開されたらハンドルを統一してカキMAX名義にしようかと思っています。
- 44 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月08日(月)15時19分05秒
- >カキMAXさん
BAD板でのハンドルってなんだったんですか?
- 45 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月09日(火)02時35分59秒
- >>44 さん
「妄 想牛」という変なハンドルです。
実は妄想の妄と、牛のモーと、モー娘のモーが掛かっているというトンチの
利いた?ハンドルです。ぱっと見、韓国系の名前にも見えて(見えん!)、
個人的には気に入っていますが、何も知らない人が見ると不気味な感じに
見えそうなので変えようかなと。
それでは更新のほうは明日からがんばるべ!(大予定)
- 46 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月15日(月)00時23分13秒
- 一方、撮影中の教室では「持ち物検査」と称して、メンバーの持参している
カバンの中身をチェックするコーナーに突入していた。
「恥かしいから、やめてー!」の連発で終わった中澤に続いて、つんくが安倍のカベン
に手をつけた。番組企画的には、教卓にメンバーのカバンがランダムで並べられていて、
つんくが手当たり次第に一つ選んで、誰のものか分からずに中を見て行くという予定だ
ったが、自分のカバンが手に取られた時点で持ち主が「イヤー」と叫ぶのでバレバレだ
った。安倍も当然のことながら叫んでいた。
「キャアー!それダメ、あとにしようよー。何もおもしろいもの入ってないよ」
「さてはこれ、安倍のカバンやな?叫ぶからバレバレやんか〜」
嫌がる安倍を無視して、つんくは持ち物検査を開始した。
まずは女の子らしくメイク類が出て来たが、次につんくが手にしたものは、
およそ女の……と言うよりも、一般的にはあまりカバンに入っていないだろうと思われ
る代物だった。と言うのもそれは怪しい文字が書かれたお札なのだ。
「なんやこれ?こんなんは校則に引っかかるんかな〜?持って来てもええんかいな?」
「あー、それはねェ、あれだよ、あれ、えっーと……」
安倍は「あちゃ〜」といった感じで言葉がしどろもどろだ。
- 47 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月15日(月)00時25分06秒
- 「何あれ?なっち、怪しー!怪し過ぎ!」
「魔除けの札とか、そんなんやないのー?」
「あ、そうそう裕ちゃん正解。そんな感じ、そんな感じ」
「は?!ホンマかいな!」
中澤は冗談で言ったつもりだったが、安倍の返答によると正解のようだ。
「前に、オネモーであったじゃない?なっちと同じ苗字の人で、
安倍生命?だっけ?保険会社みたいな人」
「安倍晴明じゃなかったっでしたっけ?晴れに明るいって字を書く人じゃ……」
「そう!それそれ、リカちゃん記憶力いい!さすがクラス委員!」
「アンタが記憶力無いだけやろー?」
「きー!裕ちゃんウルサ〜イ!そんでね、なっちはちょっとその人調べてみたのさ。
そしたらね、その人、稀代の大陰陽師で、超たくさん護符の種類とかあって」
「それも番組で言うとったような気がするけど……」
「ちょ、ちょう待て!なんでもええけど、この札、なんかごっつ熱いで!!あっつう!!」
つんくが思わず持っていた札から手を離して叫んだ。
すぐさま、最前列に座っている保田が落ちた札に手を伸ばす。
「熱い?札が熱いんですか?まさか〜どれどれ……熱っ!熱っつう!なにこれ、なっち?!」
- 48 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月15日(月)00時25分45秒
- その時だ!
札が突然、炎をあげて燃えはじめた!
瞬間、教室内はパニックに陥ったが、燃え移るものも無くすぐに炎は鎮火した。
「安倍〜なんやねんこれ?手品用の燃える紙のヤツちゃうんか?!」
「ち、違いますよー失礼な〜!それはちゃんとした護符でけっこう高いんですよ〜。
危険が迫ってたら燃えて知らせてくれるらしいんですけど……
まあ、そんなの売り言葉だと思いますけど……?ね?あれ?」
安倍は、自分が言った言葉に違和感を覚えていた。
周りも同様に「え?」というような表情だ。
『危険が迫ると燃えて知らせる』
たった今、この護符は勢い良く炎をあげて燃えたではないか!
そのことに気付いた安倍は、どうしてもあの階段のことを思い出さずにはいられなかっ
た。偶然であろうか、教室の外では娘たちの不安を煽るかのように、徐々に暗雲が広が
って行った。
- 49 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月15日(月)00時28分18秒
- >>46-48 更新しました。
>>46 の「安倍のカベン(×)→安倍のカバン(〇)」鬱だ……
- 50 名前:名無し読者 投稿日:2001年01月15日(月)05時56分52秒
- うぉう、スーパーナチュラルやなぁ。
外の面子は無事か?
- 51 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月18日(木)03時01分48秒
- その頃、後藤と吉澤は……
「なんか、雲行き怪しくな〜い?」
「雨降ったらヤだねー」
「絶対ヤー。あ……あそこが家庭科室みたい。書いてあるし」
「確か隣に階段があるんだっけ?あるぅ〜?ゴッチ〜ン?」
「え〜と……わ!あった!あった!ホントに3段しかないよ」
「ホントにィ〜?でも時々、こんなの見るよね?」
「見るぅ?ヨッスィ〜の近所だけじゃない?」
「さいたまー!」
吉澤は『バイセコー』のノリで軽くボケて見せたが、気付かれなかったようだ。
「しっかし、これが何だってんだろうね?普通の階段じゃん。ほいっ!」
後藤はそう言って一気に3段を飛び越え、踊り場まで上がってみせた。
- 52 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月18日(木)03時02分32秒
- 「あの体育の先生って、何を怖がってんだろうね〜?
『通らずの階段』とか言っちゃってさあ、じゃあ壊せば?って感じじゃない?」
「そう簡単にはいかない理由があるんじゃん?なんか埋まってるとかさ」
「死体とか?!」
「それって夢な〜い。やっぱ宝物でしょう〜!ベーグルの山積みとかさ〜」
「それ、ちょっといいかも!出てきたら二人で山分けしよー」
「ウソよね〜ん」
「え?なになに?ヨッスィ〜、今ウソって言った?言われなくても分かってるって〜
ベーグルがこんなトコにあるわけないじゃーん。あったら面白いんだけどさぁ」
「はぁ?私なんも言ってないよぉ。ゴッチン耳、大丈夫?」
階下の吉澤が困った顔で、そう答える。
「さっき聞こえたよーちっちゃい声で『ウソよね〜ん』って……ヨッスィ〜じゃないの」
「マジで?!それってもしかしたらアレじゃん?ってゆーかなんかヤバくない?」
「ヤ、ヤバイかな?焦ってきた〜!でも空耳かも……」
後藤は己の聴覚に半信半疑で(当然、好奇心もあったが)そっと聞き耳をたててみた。
- 53 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月18日(木)03時03分05秒
- 「ウソよね〜ん」
「わ!ほらまた聞こえたよ!階段の下?中?から?聞こえてくる?なんで?!」
後藤が「そっちは聞こえないの?」とたずねようと思ったとき、すでに吉澤の目は何か
をまっすぐ捕えて動かなくなっていた。
「ゴ、ゴッチン!何?!なんなの?!アレ!」
「んんー?なんかあるの?」
吉澤の指差す方向は、踊り場にいる後藤からは手摺を越えて覗きこまないと見えない死
角にある。そして「どれどれ」と首を伸ばして覗きこんだ後藤の目に写ったモノは、お
よそ生命力があるとは思えないコマ送りのようなスピードで、ノソリノソリと蠢く黒い
影だった。後藤は思わず後ずさって、その場で尻餅をついてしまった。
- 54 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月18日(木)03時04分10秒
- 「ヨ、ヨッスィー!逃げて!!」
今出せる精一杯の声で後藤は叫んだが、影を凝視したままの吉澤は消え入るような小さ
な声で「無理みたい……」とだけ言い残して卒倒してしまった。
その吉澤の姿を確認したのか、影はターゲットを変えて、後藤の方をノロリと振り向く。
黒一色に包まれた塊の中で、ギョロリと見開かれた両目だけが異常に白く、それは後藤
を見ているのか虚空を見ているのか視点が定まらない様子で、クルクルクルクルと回り
続けている。
『逃げよう』と焦る頭とは裏腹に、体は思うように動かず、その場でジタバタと手足を
動かしているのがやっとだった。叫ぶ前にゴクリと唾を飲み込んで、後藤は気を失った。
- 55 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月18日(木)03時07分39秒
- >>51-54 更新しました。
>>50 名無し読者さん
どうもっす。
自分で書いておきながら、後藤とヨッスィ〜が早くも消えた?ことにプチショック。
- 56 名前:名無し読者 投稿日:2001年01月18日(木)05時19分36秒
- さ、貞子? こわっ!
- 57 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月21日(日)04時57分55秒
- 教室では、沈黙がしばし続いて、撮影が中断状態になっていた。
「雨、降りそうだね……」
保田が教室の外を見ながら、ポツリとつぶやいた。
それをなんとなく聞いていた中澤が答える。
「せやなぁ……テンション落ちるなァ〜。それにしても辻と加護、どないしてるんやろ?
追いかけてったカオリたちも遅いなァ〜ホンマに」
「言いたくないけど……言いたくないけどね、なっち何か嫌な予感がする」
「ちょ、ちょっと、なっち〜!それは考え過ぎィ!札が燃えたのは偶然でしょお?ねえ
リカちゃん?」
矢口が安倍に突っ込んで、同意を求められた石川が答える。
「そうですよ。偶然ですよ安倍さん。人体が自然発火することもあるらしいですから」
「ああ!それやったら俺ビデオで前にそんなん見たことあるで。確かスポンティニアス・
コンバッションとか言うとったかな〜?あれはスゴイで〜、話したるわ」
- 58 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月21日(日)05時00分32秒
- つんくが沈んだ場を和ませようと、半ば強引に話題を映画に切り替えようと試みたが、
ネタがマイナー過ぎた。結果、誰一人それに乗ってくることはなかったのだが、それで
もつんくは、一人語りを続けた。
「結局言いたいんはな、物が自然と燃え出すっちゅうことは、ある!っちゅう話や」
「ふぅん。じゃ、なっちが持ってたあの札も、たまたま燃えた出しただけなのかなァ?」
「まあ、大枠ではそうゆうこっちゃ」
「つんく先生の話は、いっつも胡散臭いですねェ〜」
「おう!そやでェ!ワシは先生やでェ!しかもお前らの担任やねんぞ!!」
「せんせ〜い。持ち物検査再開してくださァ〜い」
娘。たち(と言っても今は5人しかいないが)は、つんくの気を汲み、なんとか気を取
り直して撮影を再開することにした。
- 59 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月21日(日)05時19分53秒
- 持ち物検査は吉澤のカバンに移って、ゆで卵の殻が出て来たりとツッコミどころ満載で
あったが、本人がいないのでイマイチ盛り上がりにかけた。メンバーの笑いも心なしか
ぎこちない感じがする。とくに保田は、プッチモニのメンバーが二人もいないことが気
になって仕方がなかった。かつて市井が自分の前から突然姿を消したように、このまま
あの二人も消えてしまうのではないか?──なぜかそんな不安で頭の中が一杯だった。
そして、いても立ってもいられなくなった保田は、ついにイスから立ちあがった。
「私もちょっと見てくる。いいよね?雨降りそうだし、傘持ってってあげんの」
傘を持って行くと言っても、自分が携帯してきた折りたたみ一本しか無いのだが、なん
とか外に出て行くキッカケが欲しかったのだろう。メンバーも保田の気持ちを解してか、
誰もそのことに対して突っ込まずに「そうだね」といった感じで頷いていた。
そんな中で、中澤が言った。
- 60 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月21日(日)05時20分56秒
- 持ち物検査は吉澤のカバンに移って、ゆで卵の殻が出て来たりとツッコミどころ満載で
あったが、本人がいないのでイマイチ盛り上がりにかけた。メンバーの笑いも心なしか
ぎこちない感じがする。とくに保田は、プッチモニのメンバーが二人もいないことが気
になって仕方がなかった。かつて市井が自分の前から突然姿を消したように、このまま
あの二人も消えてしまうのではないか?──なぜかそんな不安で頭の中が一杯だった。
そして、いても立ってもいられなくなった保田は、ついにイスから立ちあがった。
「私もちょっと見てくる。いいよね?雨降りそうだし、傘持ってってあげんの」
傘を持って行くと言っても、自分が携帯してきた折りたたみ一本しか無いのだが、なん
とか外に出て行くキッカケが欲しかったのだろう。メンバーも保田の気持ちを解してか、
誰もそのことに対して突っ込まずに「そうだね」といった感じで頷いていた。
そんな中で、中澤が言った。
- 61 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月21日(日)05時22分12秒
- 「今日は止めにしよか?つんくさんには、せっかく来てもらって申し訳ないんですけど」
「俺のことは気にせんでええねん。いまメンバーも半分以上おらんし、これやったら、
”モーニン”だけやで〜(笑)せやけど、今まで撮った分だけで今度の番組、予定通
りにちゃんと埋まるんかいな?」
「まあ、半分も無理でしょうね。あとはライブスペシャルにでもしてもらうしか……」
「そんなんで大丈夫なんか〜?1回目やでェ。歌やったら他でもやってるで〜みたいな」
つんくにそう言われて、もう少し様子を見てみることにした。確かに番組の1回目は、
大事だ。今回はとくにモー娘。の更なる新たな一面を出して行く貴重な番組なのだ。
──かと言って今は冗談とか言える気分でもないし、うまく笑えそうもない。
重い空気が再び教室を流れる……
- 62 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月21日(日)05時28分07秒
- >>57-61 更新しました。
が、>>59 と >>60 が被ってしまってるァァァ……
スイマセン。見事に2重投稿してしまいました。
>>56 名無し読者さん
貞子とは、これまた懐かしい。
ビジュアルイメージは近いかも知れないですね。
ただし正体は……まだ秘密です(当たり前)。
- 63 名前:ミルクチョコ 投稿日:2001年01月21日(日)23時12分30秒
- よっすぃ〜たちはどうなるのでしょうか?
続き期待しています。
- 64 名前:名無し読者 投稿日:2001年01月21日(日)23時51分14秒
- 次は保田の番? メンバーが徐々に減ってくところがいいですね。
いなくなった方の状況も分からないし、緊張感が煽られます。
- 65 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月23日(火)02時07分21秒
- 静まりかえった教室に聞こえてくるのは、遠くの教室(撮影で借りている教室は、一般
生徒の教室から離れているのだ)の微かな笑い声と、学校の外周をグルリと囲んでいる
公道を走る車の音、そしておそらくこれも公道からだと思われるが、時々鳴り響く携帯
の着メロ……
「ピピ、ピッピーッピ……」
都合4回目になる着メロは、奇しくもモー娘。のシングルだった。いち早くそれに気付
いたのは、やはり作曲者であるつんくだ。
「おお!これお前らの曲やないか。ホンマに有名になったもんやなァ〜、携帯の着メロ
やでえ〜、今や日本国民の半分以上が個人所有しとると言う……」
つんくはそこで一旦言葉を区切って、ポンッと大きく手を叩いた。妙案が浮んだ合図だ。
「せや!携帯や!外に出て行っとるヤツら携帯持ってるやろ?かけたらエエんやんか」
確かに、つんくの言うことには一理あった。が、娘。たちの表情はなぜか曇ったままだ。
- 66 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月23日(火)02時07分53秒
- 「収録中は多分持ってないと思いますけど……」
言いながら安倍は、先ほど持ち物検査が終わった自分のカバンから携帯を取り出して、
飯田のナンバーを押してみる。が、その直後、むなしく教室中に着メロが響き渡ってい
た。後藤、吉澤、辻、加護──結局、(つんくのみだが)期待もむなしく、各々のカバ
ンの中で着信音が鳴り響く結果に終わった。
「やっぱり……はァ〜」
溜息をつく安倍を見て、つんくが言った。
「しゃあないわ。こうなったらマネージャーに言うてみたらどうや?職員室で待機しと
るんやろ?」
問われた安倍は、無言のままで中澤の顔色を伺った。それを受けた中澤は、個人的にで
はなく、モー娘。リーダーとして、つんくに答えた。
- 67 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月23日(火)02時08分41秒
- 「それも考えたんですけど、それで校内が大騒ぎになるいうんもヤバそうやし、実は、
今回だけは、ウチらだけでも出来んねんで!ってトコ見せときたいんですよね……」
「そらまた、なんでやねんな?」
「ウチらそろそろ独立していこうかな思うてるんですよ。……あ!これ絶対、言うたら
あきませんよ!」
「ああ〜なんや、そうゆうことかいな。それやったら、わかってるがな〜、言わへんよ」
「せやから今回のんは、その第一歩ってゆうか、力試しみたいな意味もあるんですよね」
「自分らだけでやってみたい、か。なるほどな〜、そんな時期なんかな〜」
つんくは自分の過去を思い出しながら『ホンマに大丈夫なんかな〜』と思いつつも、娘。
たちのその意気込みは十分理解できていた。
- 68 名前:カキMAX 投稿日:2001年01月23日(火)02時18分18秒
- >>65-67 実は前回一度に更新する予定だったものを今回しました。
一応、推敲をかましているんですが、その度になぜか文章が長くなるという・・・・・・
>>63 ミルクチョコさん
ありがとうございます。
ヨッスィ〜たちの行方は?!近いうちに何かわかるかも知れません。少々お待ちください。
>>64 名無し読者さん
次は本当に保田なのか?!飯田も外に出ているし……
できれば誰もあの階段には近寄らないように!
- 69 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月08日(木)01時43分33秒
- がんばれ!
- 70 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月09日(金)18時52分00秒
- まだ?
- 71 名前:カキMAX@久々 投稿日:2001年02月12日(月)01時34分50秒
- パッチリとした大きな瞳を涙目にしながら、飯田圭織が中庭を奔走していた。その姿は、
さながら迷子になって親を探している子供のようだったが、右往左往しているうちに、
ロングヘアーが振り乱れ、ずいぶんとヘタクソなダンスを踊っているようにも見える。
とにかく、とても怪しい人物に見えることは間違い無かった。
教室を飛び出した保田が、偶然にもすぐにそれと遭遇した。
「カオリなにしてんの?!動き怪しいって!あれ?泣いてる?どうしたの」
「あのね、家庭科室がね、見つかんないのぉぉぉ……」
保田は、なぜ飯田が家庭科室を探しているのか見当もつかなかったが、とりあえず
「うんうん」と頷いて頭を撫でてみせた。
「辻と加護がね、家庭科室に行くの見たって生徒に聞いたから……」
「え?そうなんだ。なんでそんなところに?」
「わかんない。ってゆうか、圭ちゃんカサ持って何してんの?」
「あ〜、これ?だって雨振りそうじゃん」
「え〜!うそぉ!カオリの為に持ってきてくれたのぉ?圭ちゃん優しい〜!」
「うん……まあ、そんな感じ、そんな感じ。別に気にしないで」
保田にとって、教室を出る口実でしかなかったカサを誰が使おうとどうでも良いのだ。
- 72 名前:カキMAX@久々 投稿日:2001年02月12日(月)01時37分19秒
- 「それよりさァ。ゴッチンとヨッスィ〜は見なかった?」
「あの二人も外に出てんだ?」
「探しに行っといてさぁ、全然帰って来ないんだよ〜まあカオリも同じだけどね」
「あたしは、本気で探してるからなの」
飯田がまた少し涙目になったように見えたので、保田的には後藤と吉澤の行方が気にな
ったが、一緒に家庭科室へ向うことにした。
「家庭科室って、あそこじゃん?」
二人で歩き出して3分も経たぬ間に、家庭科室は見つかった。
が、飯田は「ここがそうなの?」という表情でシックリ来てない様子だ。
「家庭科室って、もっと料理作る大きい釜とかなかったっけ?」
「釜ぁ?!そんなのないでしょ普通。それって給食つくるところじゃん?」
「んんー……そうだったかな〜?……そうだったかも知れない」
「そうだよ」
『キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン…』
その時、授業終了を知らせるチャイムが二人の会話を遮った。
「やばっ!一般生徒に見つかっちゃう!どうしよ?!とりあえずどっか隠れる?」
保田は慌てて目の前の家庭科室のドアに手をかけた。幸い鍵は掛かっていないようだ。
さっそく二人は中に入って身を隠すことにした。
- 73 名前:カキMAX@久々 投稿日:2001年02月12日(月)01時43分27秒
- 「誰も来ませんように……」
保田は教室の隅で手を組んでお祈りしている。
「次の時間に家庭科の授業があったらヤバイんじゃない?」
「カオリ、不吉なこと言わないでよ〜、一般生徒に見つかったら大変なんだからね」
「だよね〜。見つかりませんよーに!」
飯田は『さっき運動場で見つかっちゃったんだけどな〜』と思いつつも、そのことは、
どうやら内緒にしておく気らしい。飯田が言葉を続けた。
「でもさァ、普通こうゆう特別教室って使わない時も鍵開いてたっけ?」
「え?どうだろ?よく覚えてないよー。私が学生の頃って随分昔の話だからね〜……
ってゆっか、ちょっと静かにしとこ。見つかるよ」
「そだね」
『カタタッ』
「ん?なんか今、奥の方で音しなかった?」
「誰かいるのかな?圭ちゃんちょっと見てきてよ〜」
「ヤだよ〜カオリ行ってきてよ〜」
「無理!」
確認役を押し付け有っていた二人だったが、不安をよそに、その後何か起きるわけでも
なく、再び物音がすることも無かった。
- 74 名前:カキMAX@久々 投稿日:2001年02月12日(月)01時49分32秒
- >>71-73 3週間振り(うげェ!)に更新しました。
>>69 >>70 さん
更新遅過ぎてどうもスイマセン。
私用のゴタゴタと、先の話の下書きばかり書いてました。
また、はりきって行こうと思いますので、よろしくお願いします。
- 75 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月12日(月)07時41分09秒
- なになに、なんの音?
飯田が髪を振り乱して校内をさ迷ってるのは、情景が浮かんできて笑ってしまった。
でもはたから見たらけっこう恐そうでもあるな。
- 76 名前:カキMAX 投稿日:2001年02月13日(火)23時51分59秒
- それからは、沈黙が続いた。現役学生の頃にはあんなに短く感じられたほんの10分と
いう休憩時間が今の二人には異常に長く感じられる。外からは相変わらず、くだらない
ことで笑っている生徒たちの声が聞こえてくる。二人は『自分たちもあんなだったんだ
ろうな〜』と思いながら、会話に聞き入っていた。
そうしているうちに保田がチラリと時計を見やると、休憩時間は残り1分を切っていた。
どうやら次の時間に家庭科の授業は無いようだ。二人が揃ってホッと胸をなでおろした
時、教室に戻る間際の生徒たちから、気になる会話が聞こえてきた。
「あれ〜?ここの階段ってさ〜あ、3段じゃなかったっけ?い〜ち、にい、さ〜ん、し、
ごお、ろく、なな……7段?!こんなにあったかな?別に注意して見てないけどさァ」
「ちょっと、その階段の話はしないほうがいいってば。校則でも決まってるんだからね!
どう変わっていようと無視無視!ほらっ授業始まるから、もう行こっ!」
- 77 名前:カキMAX 投稿日:2001年02月14日(水)00時01分13秒
- チャイムが鳴る少し前には、生徒たちの大半は各々の教室に戻っていたが、念の為に、
保田が顔だけをそぉっと教室から覗かせて誰もいないのを確認してから、忍び足で先に
出ていった。飯田もなぜか忍び足でそれに続き、その姿はまるでルパン三世と次元大介
のコンビのように見える。外へ出ても不安なのか、保田がキョロキョロしながら言った。
「カオリ、さっきの最後の話聞いたぁ?」
「聞いたよ〜。3段の階段が7段?とか、訳わかんないけど」
「でもやっぱ3段の階段って言ったら、つんくさんが言ってたあの階段のことだよね?」
「多分、だと思うけど……」
「さっきの子の話だと、すぐそこみたいじゃん?」
無言で頷く飯田。緊張感で少し目付きが険しくなっている。
- 78 名前:カキMAX 投稿日:2001年02月14日(水)00時02分26秒
- 「もしかして辻と加護って、その3段の階段を探しに来てたんじゃない?」
「あぁ!きっとそうだよ。イタズラっ子どもめ〜!絶対、見つけ出してやるからぁ!」
「ん?その階段って、もしかしてあれのことかな?」
そう言って保田が指差したのは、家庭科室のすぐ隣にある階段だった。周りを見渡して
も、それ以外に視界に入る階段は存在しない。
「7段……あるね」
二人は階段が3段でなかったことに、理由はなぜか分からなかったが、ほんの少しだけ
ガッカリした。
- 79 名前:カキMAX@久々 投稿日:2001年02月14日(水)00時09分27秒
- >>76-78 短いですが更新しました。
>>75 名無し読者さん
”音”はなにかものすごい伏線になるかも知れません。
飯田の動きは、髪と手足が長いエイリアンがあたふたしてる感じを、なぜか想像しながら書いていました。
- 80 名前:カキMAX 投稿日:2001年02月19日(月)01時19分16秒
- 現在、教室に残っているメンバーは、つんくと、中澤、安倍、矢口、石川の4人の娘。
たちで、保田が出て行った頃から番組収録が思うように進んでいない。
「やっぱりあの子らが気になって、うまいことでけへんわ」
「だよねェ?娘。が4人だけだと、ちょっと寂しいってゆうか……」
「普段はウルサイけど、いざいなかったらなァんだかモノ足りないって感じするね〜」
中澤の言葉に続いて、安倍、そして矢口も珍しく低いテンションで言った。
しかし、こんな状況の中でただ一人、石川梨華だけが笑顔で前向きな姿勢を見せていた。
「そんなことはないですよ!例えばですよ、この4人だけでも、すっごく楽しい番組が
作れたら、すごくないですか?ね?がんばりましょう!」
小さくガッツポーズまでしてみせる石川。3人は少し苦笑いのような笑顔だ。
- 81 名前:カキMAX 投稿日:2001年02月19日(月)01時20分38秒
- 現在、教室に残っているメンバーは、つんくと、中澤、安倍、矢口、石川の4人の娘。
たちで、保田が出て行った頃から番組収録が思うように進んでいない。
「やっぱりあの子らが気になって、うまいことでけへんわ」
「だよねェ?娘。が4人だけだと、ちょっと寂しいってゆうか……」
「普段はウルサイけど、いざいなかったらなァんだかモノ足りないって感じするね〜」
中澤の言葉に続いて、安倍、そして矢口も珍しく低いテンションで言った。
しかし、こんな状況の中でただ一人、石川梨華だけが笑顔で前向きな姿勢を見せていた。
「そんなことはないですよ!例えばですよ、この4人だけでも、すっごく楽しい番組が
作れたら、すごくないですか?ね?がんばりましょう!」
小さくガッツポーズまでしてみせる石川。3人は少し苦笑いのような笑顔だ。
- 82 名前:カキMAX 投稿日:2001年02月19日(月)01時22分32秒
- 「うん、まあなァ。それはそうなんやけど、今そんな気分になられへんねん」
「リカちゃん前向きだよねェ。成長したよ。なっちはもう元気出ないよ」
「どうしてですか!もっと元気出していきましょうよ!。安倍さん最近、元気足りな
い感じがします。落ち着いたって言うか、なんか私たちが入る前より……
元気が足りない気がします」
「え……」
石川の言葉が、安倍の心の深いところにグサリッ!と突き刺さった。
今でも自分ではソロデビューを虎視眈々と狙ってがんばっているつもりだ。
……なのに、自分は今のポジションで満足しているように後輩には見えているのか?
安倍は唇を軽く噛み締めて、俯いてしまった。場の空気がますます重くなってゆく。
さすがの石川も好ましくない気配を察したのか、あわてて謝った。
「ゴ、ゴメンナサイ……でも、安倍さんはソロでドラマ始めるし、矢口さんだって、
ミニモニ。とか新しいユニットあるし、中澤さんも番組の司会とかラジオとか……
でも、私、何も無いから……こんな時こそ、がんばらなくっちゃ……」
「何言うてんねんな石川ぁ〜、お前にはタンポポがあるやんか」
つんくが、すかさずフォローに入る。
- 83 名前:カキMAX 投稿日:2001年02月19日(月)01時23分34秒
- 「タンポポは本当は亜衣ちゃんだけで良かったんです。私はなんとなく入っただけ……
チャーミーだってあんまりみんなにうけてないし……いつも浮いてる感じするし……」
つんくは考えていた。
『こらあかん。突然の異常な状況下で石川は完全に被害妄想入っとるで。何かこの状況
を打破できるええ手段はないもんかいな?』と。
「それやったら、こうしようや。みんなで今おらんヤツら探すねん。そうゆうゲームや。
まあ〜一種のかくれんぼみたいなもんやな。一人ずつでやりたいところやけど、肝心
なカメラが2台しかないからな〜、2チームに分かれてやったらえ〜んとちゃうか?」
「ああぁ……ほんじゃ、そうしましょっか?」
突然の提案だったが、石川の異変を察した中澤は、あまり乗り気ではなかったが、場の
空気を変える為に賛同してみせた。
- 84 名前:カキMAX 投稿日:2001年02月19日(月)01時24分17秒
- 「チームはもう決まっとるようなもんやな〜、アダルトチーム対ヤングチームやろ?」
「ちょ、ちょっと待ってェ〜、なっちはアダルトなのかい?!」
「自分、来年でハタチやで〜?バリバリアダルトやで〜、いつまでも若うないでえ〜、
早うこっちにおいでやぁ」
中澤は山田花子のギャグ『カモ〜ン』のポーズをしてみせた。その手付きは、さっきま
でテンションが低かった人とは、とても思えないくらい滑らかであった。
「いや〜あぁあ〜!!」
「なっち、顔ブッサイクになってるって!ほら撮ってる!撮ってる!」
それを見た安倍が『ムンクの叫び』よろしく絶叫すし、カメラ片手につっこむ矢口。
そのやり取りを見て、石川もいつもの笑顔をどうにか取り戻した。つんくの作戦は一応、
成功したのだ。
4人は早速2チームに別れて「アイ探」ならぬ「ムス探(娘。を探せ!)」ゲームを開
始した。
- 85 名前:カキMAX 投稿日:2001年02月19日(月)01時26分10秒
- >>80-84 更新しました。
うげ〜最悪っす。80と81二重投稿してしましました。すいません。
- 86 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月27日(火)17時50分18秒
- そろそろ続きが読みたいですな♪
- 87 名前:カキMAX 投稿日:2001年02月28日(水)01時27分09秒
- その頃、保田と飯田は、問題の階段の前にいた。
「やっぱりさっきの子が言ってたみたいに7段あるみたいだけど、つんくさんの話に出
て来た階段とは違うのかな?」
「う〜ん……わかんなァい。でも辻も加護も……いないよね」
「もう時間経ってるからね〜、そう言えばゴッチンとヨッスィ〜もどこに……あ!」
その時、保田が妙な数の一致に気が付いた。
「ちょ、ちょっとカオリ!聞いてヨ!大発見!『通らずの階段』が3段でしょ。で、辻、
加護、後藤、吉澤が4人で、3と4を足したら7になる!!」
「圭ちゃん何言ってんの?意味わかんないんだけど?なんでその数を足すのさ?
大丈夫?落ち着いてよ〜」
シュールに突っ込む飯田に対して、保田は人差し指で「違う違う」みたいなアクション
をしてから答えた。
「7段でしょ?今、ここの階段」
「うん。そうだけど……」
「このが元々3段の『通らずの階段』だったと仮定したら、消えた人数と、増えた段数
が同じなのよ!」
「はァ?言ってること変だよ、圭ちゃん??」
あまりにも落ちついて返事をする飯田を見て、保田も自分が思い付きで言ったことの不
条理性を認識した。
「……だよねェ?やっぱ関係無いよね。ゴメン頭おかしくなってたみたい。エヘヘ……」
照れ笑いをしながら目線を反らした保田は、その先で何かを発見した。
- 88 名前:カキMAX 投稿日:2001年02月28日(水)01時35分08秒
- 「ああー!ちょ、ちょっとカオリ!見て見て!大発見!」
「なァに?今度はァ?」
「あそこ。生徒手帳が落ちてる」
「なによぉ〜、そんなしょうもないこと?」
肩透かしばかり食らってウンザリする飯田をよそに、保田は早速、生徒手帳を拾って、
意気揚揚と中身を拝見している。
「なになに、1年6組の……わ!市井さんのだって。偶然!紗耶香と同じ苗字じゃん」
「そんなのどうでもいいじゃん。早く辻たち探しに行かない?なんかあったら困るしさ」
いまだにメンバーが見つからないという事実が、飯田をイライラさせていた。
「あ!ちょ、ちょっとカオリ!これ見て!大発見!」
「まァ〜た出たー!今度はなァに?」
「このページ、校則みたいなんだけど……特別ぅ校則?『いつ何時でも、階段と話をし
てはならない。尚、これを守らない場合、当事者の身に何が起きても、当校では一切
の責任を負わないものとする。』だって!これってやっぱり『通らずの階段』……?」
「階段と話す?何それ?意味わかんなーい。階段がしゃべんのお?変だよ」
「つんくさんも言ってたじゃん。しゃべる階段のこと。噂話だとか言ってたけどさ」
ここで飯田が「ま〜ったく」といった具合で一つ大きな溜め息をついた。
- 89 名前:カキMAX 投稿日:2001年02月28日(水)01時41分18秒
- 「ジョークでしょお?つまんないジョーク!!なっちみたいだべ」
「でもジョークって普通は生徒手帳の最初のページに書くかな〜?しかも見開きだよ〜」
「ユニークな校長先生なんでしょ?もうさっさと別のところ探しに行こうよ」
保田はそれでもしばし考えていたが、
「そうだね。じゃあ生徒手帳は落ちてた場所に置いといて……っと」
「なんじゃそりゃあ〜?!その子に届けてあげればいいのにィー」
「無理でしょ?モーニング娘。が直接届けに行けるわけないじゃん」
あれだけ肩透かしな大発見をしておいて、変なところで冷静な保田であった。
そして二人がやっとその場を離れようとしたその時。
『圭ちゃん!』
──聞き覚えのある声。
保田が咄嗟に反応して振り向く。
「え?ゴッチン?!どこ?隠れてんの?」
「はいはいは〜い。圭ちゃん今度は空耳?後藤がいるわけないでしょ〜!行くよ〜」
「おかしいな〜?」
空耳だったのだろうか?
声がしたと思われる方向には、確かに人が隠れるようなスペースも無く、あるのは7段
の階段だけだった。
保田は2、3度、首を傾げて、飯田のあとを追った。
- 90 名前:カキMAX 投稿日:2001年02月28日(水)01時43分48秒
- >>87-89 更新しました。
しかし飯田が辻のことを気にかけるのは、偶然タイムリーネタだったりして?
>>86 さん
なるべく週刊ペースでがんばりまっす。
- 91 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月08日(木)01時44分24秒
- 一方『娘。探しゲーム』中のアダルトチーム、中澤と安倍は校舎裏を捜索していた。
きれいな校舎の外観に反して校舎裏は掃除が行き届いておらず、枯れ葉や雑草で地面の
半分以上が埋まっていて、普段はほとんど誰も立ち入らないことが伺われた。
「ちょっとなっち!こんなとこに女の子がいてるわけないやろ!戻るで」
「そっかな〜?隠れてそうなんだけどな〜」
「あんなぁ言うとくけど、ホンマはあの子ら別にカクレンボしてるわけとちゃうねんで?」
「しっつれ〜い!それはなっちだって分かってるさ……でもさぁ、ホラ、あのおっきな
板の裏に、加護とか辻とかコソッて隠れてそうじゃない?」
そう言って安倍が指し示す所には、確かに巨大な板が壁に立てかけられていて、人が隠
れるにはもってこいの空間ができていた。
板に大きく書かれている装飾文字は、塗料が擦れてほとんど読めないが、かつて学園祭
か何かで使用されていた立て看板のようだ。
- 92 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月08日(木)01時48分55秒
- 「だ〜か〜ら〜隠れてへんっちゅうねん!……あぁ!?」
つっこんですぐに中澤は大きな板の裏で動く『何か』を確認した。
「なんか今、板の裏で動いたで!」
「やっぱり!加護?辻?ヨッスィ〜だったら笑っちゃうよね?」
そう言いながら、二人は思わず小走りmになり板に接近した。
「そこにおるのは誰や?」
中澤は大きな板と壁の隙間をグイッとこじ開けて、中を覗き込んだ。
「……!!」
次の瞬間、二人は思いもよらない場面に遭遇し、凍り付いてしまった。
- 93 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月08日(木)01時54分48秒
- 二人の目の前に現れたのは、着替え中と思われる上半身裸の男性だったのである。
しかもそれに対して中澤は、番組撮影用のハンディカメラを向けているいるという最悪
の状態にあった。
「あ、あ、あ……いやいや、そんな私たち別に覗こうとか、全然そんなんじゃないんで
すよ。カメラもまだ回ってませんから、ええ、はい。あははイヤやわ〜もお〜」
「裕ちゃん何言ってんの?!自己弁護とかは後、後!」
「あ、せやな。ゴメンナサイ!ゴメンナサイ!本当にゴメンナサイ」
必要以上に動揺する中澤に反して覗かれた男のほうは、恥かしがる様子ではなく、むし
ろどちらかと言えばイタズラを見つかった子供のような表情で小さくなっているように
見えた。
思い出したように男が言った。
- 94 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月08日(木)02時00分19秒
- 「クラスで……え〜と、生徒の誕生パーティーがありまして、その出し物用に、着替え
中なんすよ。断ったんですがねェ、生徒たちにどうしてもやれって言われまして……
あ、申し遅れましたが私、1年6組担任の石黒と言います」
「石黒……先生ですか?」
二人にとっては懐かしい名前の響きだ。中澤よりも年下に見えるので、年齢もちょうど
彼女と同じくらいであろうか?石黒と名乗ったその男性教員の手には、確かに着替え中
の衣装が握られていた。
「生徒思いのイイ先生じゃないですか」
「いやいや、そんなことはないっすよ。それよりも、すいませんがそろそろ……」
「あ!!そうですね。ゴメンナサイ。私たちこれで失礼します!」
何気なく普通の会話を交わしていたが、男は半裸で着替え中なのだ。これ以上二人に、
ここに居られても困ることは、容易に想像がついた。男がズボンに手をかけると同時に
中澤が顔を赤らめ、急いで二人はその場を立ち去っていった。
- 95 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月08日(木)02時07分13秒
- 「ちょっと〜!!さっきウチ変な女に思われたんちゃう?!なっちのせいやで!」
「なぁ〜んでなっちのせいなのさ?裕ちゃんがマジマジ見てるからっしょー?」
「マジマジ見てへんっちゅうねん!ずう〜っと目ェ反らしとったわ」
「はいはい……でも、あの衣装って真っ黒だったけど、何の役やるんだろうね?」
「なんやぁ?なっちのほうがよう見てたんちゃうのん?衣装が真っ黒?ウチ、よう見て
へんし、全っ然!気付かへんかったわぁ。ジャングル黒ベエでもやるんとちゃう?」
「ジャ、ジャングルくろべ?何それ?」
怪訝そうな表情の安倍。
「知らんの?昔あったアニメやん?ってゆうか、ウチかてそこまで古い世代ちゃうで!
いやホンマに!懐かしのアニメなんとかゆう番組で……」
「やっぱアダルトチームは、裕ちゃん一人だよねェ」
「ちょっと、それはアカンって!」
二人は石黒と名乗った男を、何一つ訝しげがるでもなく、限りなくノンキな会話に花を
咲かせていた。
- 96 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月08日(木)02時10分45秒
- >>91-95 更新しました。
中澤脱退か……
4/18までに完結できるかな〜
- 97 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月08日(木)02時12分48秒
- 何一つ訝しげがる(×)でもなく→何一つ訝しがる(〇)でもなく
まあ、念の為に訂正。それにしても中澤脱退か……キャラが一つ減るなぁ
- 98 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月12日(月)02時24分17秒
- 何を発見してんだか。(笑)
しかし二人は訝しがらなくても、こっちは気になるぞ。
後藤の声や、いなくなったメンバーの行方とともに。
続き期待してます。
- 99 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月13日(火)01時17分46秒
- ついさっきまで保田たちがいた家庭科室の前に、少し遅れて『娘。探しゲーム』中の、
ヤングチーム、矢口石川がやって来た。
撮影用のハンディカメラは、先輩であるにも関わらず矢口が担当していたが、先程から
自分の顔のアップばかり写して、ニヤニヤしている。それが少しおもしろくない石川は、
カメラ(矢口)を無視して、一人、辺り一面をグルリと見渡していた。
それに気付いた矢口が、石川にカメラを向けて言う。
「は〜い、リカちゃ〜ん。何かレポートしてよ」
「あ、はい。分かりました。んん〜っと、中庭ですね〜。大きな石?岩があるようです」
「……う〜ん、そのままっすね。石川レポーター?他に何か見えますか?」
「そうですねェ〜校舎には、階段が見えます。7段あるようです。中途半端です」
まったく番組主旨を取り違えている二人であったが、そうこうしているうちに、石川が
何かが落ちているのを発見した。
- 100 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月13日(火)01時31分25秒
- 「あら?矢口さん、あれってさっき保田さんが持ってたカサじゃないですか?」
「え?どこどこ?あ、ほんとだァ。圭ちゃん落としちゃったのかな?ドジだね〜」
矢口がレンズを覗きながら、徐々にズームでカサをとらえている。
と!突然、石川の顔がカメラに超ドアップで飛びこんで来た。
「わわわっ!!ちょっとリカちゃん!ビックリさせないでよ〜」
「矢口さん!私、何か嫌な予感がするんです!」
「なになに?なんでよ?カサが落ちてるだけじゃん?」
矢口の返答もろくに聞かずにカサを拾いに行った石川は、カサともう一つ何かを拾って、
しばしそれを眺めているようだ。その後ろ姿を撮っていた矢口が言った。
「な〜に?リカちゃん。なに拾ったの?」
それが聞こえた石川が、慌てて戻ってきた。
- 101 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月13日(火)01時33分05秒
- 「矢口さん、これ」
「あー、やっぱりそれって圭ちゃんのカサだね……あれ?そっちは何?」
石川はカサ以外に、生徒手帳を拾ってきていた。
「や、矢口さん……落ち着いて聞いてください。そ〜と〜ヤバイんです!」
「な、なに?どうしたの?何がヤバイの?!」
「この生徒手帳、少し読んだんですけど、『特別校則』って言うのがあるんですよ。
イイですか?よく聞いてください。読みますよ?
『特別校則:
いつ何時でも、階段と話をしてはならない。
尚、これを守らない場合、当事者の身に何が起きても、
当校では一切の責任を負わないものとする。』
……これ、どう思います?」
石川の甲高い声で読まれると少しも緊迫感がなかったが、「どう思います?」と聞かれ
たところで、その文章が何を言いたいのか、矢口には(当然、矢口でなくとも)意味が
分からなかった。
- 102 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月13日(火)01時41分42秒
- 「どうゆうこと?これがカサと……圭ちゃんと何か関係あるの?」
「多分、保田さんは階段と話しちゃったんですよ!それで……カサだけ残して……」
「なに?それで圭ちゃんがどうなったって言うわけ?」
「消えちゃったんですよ!!ショーソク、フメーになったんです!」
「ちょっとちょっとちょっとちょっとお!リカちゃん?!世にも奇妙な物語じゃないん
だから〜、そんなわけないじゃん」
しかし石川はいたって真剣な表情のまま、言葉を続ける。
「でもこの校則の階段って、つんくさんが言ってた、あの階段のことですよね?」
「どぉかなぁ?似てる気はするけどさ〜、なんだっけ?『ウソだよ〜ん』だっけ?」
「『ウソよね〜ん』ですよ」
「あ、そっかそっか、んじゃすぐそこの階段に話かけてみますか?」
「ちょっと矢口さん!!ダメですよぉぉ!」
「せェ〜の。ウ・ソ・よ・ねェ〜ん!」
矢口は冗談半分に”ヤッホー”の感覚で、すぐ側の7段ある階段に話しかけてみせた。
つんくの話に出て来た階段は3段。ここにあるのは7段。そんなわけで、この時の矢口
的には、絶対的安心感もあった上での行為だったわけだが……
その直後、二人を取り囲む大気が、ほんの少しだけ変わった気がした。
- 103 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月13日(火)01時49分03秒
- >>99-102 更新しました。今週中にもう一回更新する予定です。あくまで予定ということで…
>>98 さん
声援、ありがとうございます。中澤卒業(4.15でしたね)に合わせて、徐々にクライマックスヘ!
でも多分それまでには終わらない…
- 104 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月18日(日)09時59分04秒
- 『ウソよね〜ん』
「え?何?こんなところでヤマビコ?!な、わけないか」
矢口は一瞬、ドキッとして、手にしていたハンディカムを落としそうになる。
『ウソよね〜ん』
「誰?何がウソなのよ」
矢口は声のする方向を振り返ったが、そこに人影はなく7段の階段があるだけだった。
再び向き直った矢口の目の前には、今にも泣き出しそうな石川の表情があった。
「こ、これってやっぱりつんくさんが言ってたあの階段の話とおんなじ……」
「でも、つんくさんは3段って言ってたじゃん?だからこれって違うと思うんだけど?」
『ウソよね〜ん』
「絶対そうですよ!また聞こえましたよ!段数は関係ないんですよ!はぁああっ!」
- 105 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月18日(日)10時09分24秒
- 石川の足はすくみ、手がブルブルと震え出す。
同時に石川の目には、矢口の背後からノソリノソリと近付いて来る黒い影が写っていた。
得体の知れない恐怖感から、自然と溢れ出す涙が止まらない。
「や、矢口さん、う、うしろ……うしろ……」
「なに?!後ろ?……って、そんな顔されたら怖くて向けるわけないでしょーー!」
その時、矢口は機転を利かせ、果敢にも手にしたカメラで背後を撮影していた。
(実際には、その場で微動だにできなくなっていただけなのだが……)
「リカちゃん!よくわかんないけど、とりあえず逃げて!早く!!」
「で、でも……」
「先輩の命令!逃げなさい!!」
「わ、わかりました!ごめんなさい矢口さん、きっと迎えに来ますから……ううっ……」
か細い声でそう言い残した石川は、ガクガクと震える足で涙を堪えながら走り出した。
行き付く先は明確でなかったが、とにかくどこかへ。
- 106 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月18日(日)10時10分41秒
- 残された矢口の耳に聞こえてくるのは、『ジィィ〜』という録画中を意味するカメラの
微かな駆動音と、呼吸とも唸りとも取れない黒いモノが発する奇妙な音だった。
この後に及んで矢口は『ちょっとダースベーダーに似てる』とか、なぜか呑気なことを
考える余裕があったが、それはおそらく最後の開き直りだったのだろう。
「あ……」
ふわりっとした浮揚感を感じた次の瞬間、矢口は立ったまま気を失った。
支える力を失ったカメラは、地面に直撃して『ガチャン』という音をたてて、テープを
吐き出した。
- 107 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月18日(日)10時11分59秒
- >>104-106 なんとか更新できました(ふゥ〜)。
- 108 名前:名無しじゃん。 投稿日:2001年03月20日(火)00時09分58秒
- うわー、なんかドキドキする展開ですな!
かなり楽しみっすよ〜!頑張ってください!
- 109 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月21日(水)05時21分35秒
- おおー、矢口頑張ったね。
石川は「見た」メンバーでは初めて無事なのかな。
あと矢口が頑張って撮ったテープも残ったか。
こっからの展開に期待してます。
- 110 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月29日(木)01時05分13秒
- 「カオリ、本当〜ゥにゴメンって!」
「もおーーー!圭ちゃんシッカリしてよぉ!急いでるんだからぁ!」
飯田が、あからさまに不満そうな返事をした。
保田が先程までいた家庭科室の前にカサを置き忘れたことを告げたからだ。
「そんなにカリカリしないでよ!辻や加護が見つかんなくて焦るのは分かるけどさ」
『後藤だって見つかってないんだからね』保田はそう言いかけたが、特定の人物だけを
心配しているように聞こえそうなのでやめた(実際そうなのかも知れないのだが)。
「あ……ゴメン圭ちゃん。カサも私の為に持って来てくれたのにね」
飯田がへこんだ。感情的になりやすい自分を少し反省している様子だ。
保田は保田で『実はカサはカオリの為ってわけじゃない』という事実を、言い出せない
自分に罪悪感を感じていた。二人の間に居心地の悪い空気が流れて沈黙が続いた。
- 111 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月29日(木)01時18分20秒
- 「い、飯田さん!保田さん!」
突然の叫び声が、二人の沈黙を破った。石川梨華だ。
「どうしたの?!リカちゃん!」
いつも笑顔でがんばっている石川の顔が、涙で歪んでいる。
声を出して泣くのを堪えて唇を噛み締めていたのか、少し血が滲んでいた。飯田の胸に
顔を埋めた石川は『うっ…うっ…』と嗚咽に近い声を出してしばし泣き続けた。それ
は安堵と恐怖の混ざったような泣き声だった。
「リカちゃん、落ち着いて。何があったの?」
「階段で、声が……聞こえて、矢口さんが……矢口さんが襲われたんです」
「誰に?」
「わかりません……何か黒くて影みたいな感じで、目みたいのがクルクル回ってて……
それで、私は……私は矢口さんを残して逃げたんです……」
石川の説明は抽象的過ぎて飯田には理解し難かったが、問いただすことはせず、優しい
笑顔で聞いていた。
「大丈ー夫!泣かないで!矢口は無事だよ。だ〜ってあの矢口だよ?チビのくせにさ、
元気さけが取り柄なんだから。ねえ?圭ちゃん?」
- 112 名前:カキMAX 訂正:元気さけ→元気だけ 投稿日:2001年03月29日(木)01時33分03秒
- 同意を求めた飯田だったが、その返事は期待していたものではなかった。
保田は茫然とした様子で、口をゆっくりと開く。
「……やっぱり、本当なんだ……あの階段の話……」
「圭ちゃん何言ってんの?石川も変な話しちゃって、なんかの見間違いだよ」
石川が小さく首を傾げる。
「あれは見間違いとは思えなかったです……肌がゾワッとしてたし……」
「リカちゃん、その階段って家庭科室の隣じゃなかった?」
「え?!保田さん、なぜそんなこと分かるんですか?」
「やっぱりあそこなんだ……あの階段は絶対何かあるね……」
保田と石川の思考が、一方通行でどんどんマイナスへと進んで行く。
それを見かねた飯田が、ついに開き直って言った。
「でも証拠がないじゃーん!写真とかさぁ、証拠あれば信じれるかもしんないけどぉ!」
「それはそうなんだけどさ〜、でも、あの階段は絶対ヤバイって!」
「圭ちゃん!大丈夫?それは何かの妄想だと思うよ。デンパ入ってるって」
「電波って何よ〜!カオリじゃないんだから……でも、電波であってもらいたいけど……」
確かに証拠と言われればそんなものは無かったが、保田はなぜかそれに近いものを感じ
ていた。
- 113 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月29日(木)01時46分01秒
- 「証拠、あるかもしれないですよ」
石川が何か思い出しながら口を開いた。
「え?どーゆうこと?」
「矢口さんがハンディカメラで撮ってたから、もしかしたら何か写ってるかも……」
「そのカメラは今どこにあるの?」
「矢口さんが持ったままなんです」
「そっか。じゃあ、もう一回あの階段に行ってみるしかないね」
それを聞いた石川が、一瞬ビクッとした。再びあの場所へ向かうことを、体が自然と拒
絶しているのだ。保田もあまり気が進まない様子で、下を向いてジッとしている。
「なんだよー?二人ともびびっちゃってさ!圭ちゃん、さっきまでカサ取りに行くって
言ってたじゃん?近いところだったでしょ?ってゆうかほとんど同じ場所じゃない?」
「カサはもういいから、とりあえずいったん教室に戻らない?」
「ダメダメ!変なやつに圭ちゃんのカサが盗まれたら大変でしょ!ストーカーとかさ」
飯田はムリヤリな理由をこじつけて、二人の同意も得ないうちから、階段を目指して動
き始めている。
- 114 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月29日(木)01時48分12秒
- 「あ、保田さんのカサってこれじゃないですか?」
そう言いながら石川がポケットからカサを取り出した。確かに保田のカサである。
あんな状況下でも、シッカリ持ってくる物は持って来ていたのだ。
「それそれ!リカちゃん偉い!!コレお気に入りのカサだったのよ〜……ってわけで、
とりあえず教室に戻るよ!あの階段に行くのは後回し。カオリ?それでいいよね?」
「なによぉ?さっきはカサもういいとか言ってたのに、お気に入りって……ブツブツ」
「ブツブツ言わずにちゃっちゃと戻るよ!」
カサが手元に戻り、階段へ向う必然性がなくなった保田は、いきなり活気付いていた。
ホッとした石川もそれに便乗したのか、笑顔を取り戻した様子だ。こうして3人は例の
階段が目に入らないように迂回して(保田の作為的なナビゲートなのだが)、教室へと
戻っていった。
- 115 名前:カキMAX 投稿日:2001年03月29日(木)01時53分50秒
- >>110-114 更新しました。
>>108 名無しじゃん。さん
トキドキしてもらって、光栄であります。
もっとドキドキする展開になるようにがんばります(遅遅ペースですが)。
>>109 名無し読者さん
どうもありがとうございます。石川はなんとか逃げおおせたみたいっす。
- 116 名前:NAVE 投稿日:2001年05月08日(火)14時52分09秒
- まだ?!
- 117 名前:カキMAX 投稿日:2001年05月11日(金)02時02分03秒
- 撮影用に借りている教室は、校舎の最上階、更にその端の端にある。もともと何かの特別
教室にでもする予定だったのか、通常の教室より縦長で、多少広い作りになっていた。
その隣は、視聴覚ルームとは名ばかりの通常ほとんど誰も使用しない場所だったので、
撮影で使用するにはもってこいの空き教室なのだ。
「はあ、はあ、はあ、あ〜もう……なんで4階の教室とか借りるかな〜」
「圭ちゃん、もう年だね。カオリなんか全然平気だよ。ホラッ」
「ひとつしか違わないでしょ〜」
全然平気と口では言うものの、飯田も確実に息が上がっていた。しゃべくりながら階段
を昇れば、それも当然のことなのだが。そんな二人をヨソに、石川は黙々と歩を先に進
めていた。
「あれ?」
一番に階段を昇りきった石川が、その先に見える異変にすぐに気が付いた。
「あそこ……なにか窓から煙?みたいなの出てる気しませんか?」
「え?なぁに?」と言いながら飯田が石川の指し示す方向を見やる。
次の瞬間、目に飛び込んできた突然の異質な光景にしばし膠着……
ボケッとしている飯田の背後から、保田がヒョコっと顔を覗かせて言った。
「あそこって、撮影で借りてる教室じゃん!!」
「マぁジイィィ?!」
「か、火事ですよ!」
言ってすぐに石川が教室へ向かって走り出し、思考が回復した飯田は気が動転して、
あたふたしはじめた。
- 118 名前:カキMAX 投稿日:2001年05月11日(金)02時28分46秒
- そんな飯田を尻目に、すでに教室に到着した石川は、開口一番叫んだ。
「つんくさん!大丈夫ですか?!」
そうなのだ。
娘。たちが外に出ている間、この教室にはつんくがただ一人で居るはずなのだ。
……しかし、そこにあるはずのつんくの姿は無い。
一瞬とまどった石川だったが、すぐに気を取り直して煙の出所を探した。
煙の量に対して出火元の規模は小さく、燃えているのはどうやら安倍のカバンのようだ。
「石川、どいて!!」
声を聞いた石川がサッと見をひるがえすと同時に、背後から『ブシュウウウ!』と白い
粉が噴出された。消化器を構える保田は、慣れているのか、本番に強いのか、必要以上
にビシッ!とした様になるポーズだった。
そして大袈裟に思えるくらいの消火器の噴出は、ものの数秒で見事鎮火に成功した。
「ふうぅぅぅぅ……消火完了、だね」
「さすが保田さんです。良かった。私どうやって火を消そうかと思ってて……」
石川が保田に感心している最中、トロトロと遅れてやってきた飯田が、現場を見て100%
他人事で言った。
「あれえ、火は?……なあ〜んだ、もう消えちゃってるじゃん。良かったよね」
「な〜にしてんのよカオリ〜!遅過ぎ!これでも片付けてきて」
「ほら」と言われて飯田は消火器を手渡された。
「また、さっきの所まで戻るの〜?こんな重いの持って??うそー」
「あたしのこと、年寄り扱いしたバツよ」
「圭ちゃん、コワーイ」
無事、ボヤが一件落着した安堵感からか、3人は”通らずの階段”の話もすっかり忘れて
和んでいた。
- 119 名前:カキMAX 投稿日:2001年05月11日(金)02時33分59秒
- やっと更新できました(まさかの一ヶ月半振り更新)。
>>96 の自分に「どこが中澤脱退までに完結じゃ?!」と言いたい。
>>116 NAVEさん
激遅更新ですが、よろしくお願いします。
- 120 名前:カキMAX@ちょこっと更新 投稿日:2001年05月13日(日)04時09分04秒
- 「学校にはいつもあったけどさ、実際に役立つこともあるもんなんだね〜」
飯田は消火器をマジマジと見ながら廊下を歩いてた。
「こんな構えでイイのかな〜。とォ!!……決まった」
マシンガンを構える映画女優のつもりで、思わずポージング。と、その時。
「何してんねんカオリ?!アタマでも打ったんかいな?」
「わぁ!何?!裕ちゃん?!」
「わぁ!って、こっちがわぁ!やわ。先をこっちに向けんといて!危なっ!」
「ゴメーン!」
飯田は、廊下の角から突然姿を現した中澤に恥かしいポーズを見られてしまった。
続けて少し遅れて安倍も姿を現した。
どうやら二人も機を見計らって、一旦教室に戻ってきた様子だ。
「裕ちゃん階段昇るの早いね〜……あれ?カオリ何それ?消火器??」
「違う違う!……じゃなくて、これは消火器なんだけど、違うくて、な〜んもないよ」
「…………」
「裕ちゃん!さっきのことはくれぐれも皆には内密に……」
「アンタは悪代官に賄賂を渡す悪徳商人か?」
「え?なになに?賄賂?なっち、よくわかんないんだけど?」
「アンタそれはボケ潰しやで……あ、そういやあの子ら見つかったん?」
飯田は消火器を元に戻しながら「ううん」と小さく答えた。
「そうか……こっちもや。まあ直に出てくるて。とりあえず教室戻ろか?」
「……そうだね」
3人は教室へ向った。
- 121 名前:カキMAX 投稿日:2001年05月15日(火)01時18分08秒
- 教室では保田と石川が、コゲたカバンの残骸を見ながら話していた。
「なっちのカバンが燃えてたみたいね」
「そうですね。昼前の撮影で燃えたお札と関係あるんですかね?」
「んん〜……かもね。でも不吉だから正直、それは考えたくないってところかな〜」
「そう言えば、つんくさん居ないですよね?」
「それそれ!私も気になってたのよ。何か事故とかだったら大変じゃない?」
「それにしても、飯田さん戻ってくるの遅いですねェ」
「リ、リカちゃん、やたら話が飛んでるよね……」
『ダッダッダッダッダ……ガシャッ!!』
二人の会話を遮るかのように、突然足音が近付き教室の扉が開いた。
「何?!」
そこに立っていたのは飯田でもつんくでもなく、悲壮感漂う安倍であった。
「そ、それってなっちのカバン?マジぃ?!なんでそんななってるのさ〜」
「な、なっち?」
言うが早いか、ほんの5分程前までは自分のカバンだった残骸を手にする安倍。
- 122 名前:カキMAX 投稿日:2001年05月15日(火)01時22分53秒
- 「あららら〜これはもう使えないべさ〜真っ黒コゲだよ〜」
「残念だけどご愁傷さまだね……でもなんでカバンのこと分かったの?」
「カオリがさっき廊下でサラっと”燃えてたよ”とか言ってくれちゃって、キィー」
「あ〜、そうゆうことね」
そうしているうちに、のん気な会話をしながら中澤と飯田も教室に戻って来た。
これで行方が確かなメンバーが、再び顔を会わせる形になった。
しかし時刻を決めていたわけでもないのに、ほぼ同時刻に戻って来るとは、長い間共に
活動しているうちに身につけた、特殊な集団能力でもあるのだろうか?
「今日のなっちの持ち物は、よう燃えよるなぁ〜、で、カバンの中身は?」
「『なにこれ?』って感じ……ん?これはもしかしたら大丈夫かも」
そう言いながら安倍は何か封筒のようなものを取り出した。それは多少ススにまみれて
はいるようだが、確かに他のものと比べて、ずいぶんと外形を留めているようだ。
「スゴイやん。ラブレターかいな?なんか大層な紐でくくっとるみたいやけど」
「な、わけないでしょ〜。中はお札が入ってるのさ。良かったぁ5枚は残ってるみたい」
「5枚て、何枚買うてんねん?!」
「10枚。メンバーみんなが安全なように!って思って」
「それは買い過ぎやろ〜」
- 123 名前:カキMAX 投稿日:2001年05月15日(火)01時35分30秒
- 安倍の手にはその姿で存在するのが当たり前のように、無傷の護符が5枚握られている。
それを見た保田が不思議そうな表情で口を開く。
「ってことは昼前に1枚燃えちゃったから、カバンの中で燃えたのは4枚ってこと?」
「うん……そうなるのかな」
「やっぱり、そのお札が火事の原因だったんですね」
「せやけど、なんで残りの5枚は燃えへんかってんやろ?それもただの紙やろ?」
保田が不思議そうにするのも、中澤の疑問も、もっともだった(石川は素だったが)。
仮に護符の自然発火ではなく、何者かがカバンに火を放っていたとしても、同じ封筒に
入っていた他の4枚の護符は、完全に焼失しているのだ。同じ材質で作られていると思
われる残りの5枚が燃えないどころか、完全に元の状態を保ったまま存在している事実
に疑問を持つなと言うほうが無理な話なのだ。
しかし、その疑問に対して飯田がさも得意げな表情でアッサリと答えた。
「それは簡単なことだよ。『神』様が作った『紙』で、できてるから!」
「……は?」
ひゅうううぅぅぅ〜〜〜……
一瞬にして、教室中の空気が凍りついてしまった……
「なんだよー?間違ってないじゃん?ってゆうか、笑って。ねえ?」
「なにげに懐かしいソロのセリフ言うても、今のはアカンで」
「そうですよ。安倍晴明は神様じゃなくて、陰陽師ですから」
石川がシュールな突っ込みをいれて、結局、根本的には何も解決せぬまま、護符の話題
は流れていってしまった。
安倍は、危ないから残りも捨てろという中澤の忠告(ツッコミ?)を無視して、護符を
大事に内ポケットに入れた。持っておくべきだ。という、そんな胸騒ぎがしていた。
- 124 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月15日(火)16時22分17秒
- メンバーの数だけもえてるんじゃ・・・・。
- 125 名前:カキMAX 投稿日:2001年06月03日(日)02時27分26秒
- 「あ!」
中澤が思い出したように(と言うか本当に今思い出したのだが)言った。
「みんなちょっと聞いて〜な!なっちがなぁ、おっかしなこと言うねんやんかぁ」
「なになに?」
飯田の紙と神を引っ掛けたサブイダジャレの後だったので、否が応でも皆の期待は高まる。
「さっきな『階段の数が増えてるべさ!』とか言うねん」
「なっちのマネ似てな〜い」
「ウルサイ!モノマネのコーナーちゃうねん!」
中澤の口調は冗談そのものだったが『階段の数が増える』という言葉を聞いた保田は、
ドキッ!とせずにはいられなかった。昼前に、ちょうどそのことに関する疑問を抱いて
いたのだ。あの時は飯田のもっともな返答を聞いて、自分が異常なのだと思い、疑問視
することを止めにした。
──『圭ちゃん!』
保田の耳に、あの時聞こえた後藤の声が再び聞こえてくる。あれは幻聴だったのか?
安倍の言うことが真実ならば、あるいは……
- 126 名前:カキMAX 投稿日:2001年06月03日(日)02時28分43秒
- 「この壊れたデジカム拾った所の階段やねんけどな……あ!そうゆうたら矢口は
ドコ行きよったんや?さては壊したカメラ放って逃げよったな?」
「あ、あの……」
「まあ、今はその話はええわ。ほんでな……」
石川が何か言いかけたが、気付かずに中澤は言葉を続けた。
「ほんでな、朝に見たときは3段やった言うね〜ん。けどなぁ〜、どう見てもその階段、
8段もあんねんな〜。3と8やで?見間違わへんっちゅうねん」
「だってホントなんだよ〜。なっちが見たときは3段だったんだよ〜」
「3と8て、えらい違いやでェ?まあ3を、くるっと左右反転して2つ引っ付けたら、
確かに8に見えるかも知れへんけどやな〜」
「その話おもしろいから番組で使っちゃおう〜。圭織撮るね。は〜いもっかいお願い」
「だからそのデジカム壊れてるゆうねん!」
トリオ漫才が展開される中、神妙な口調で保田が言う。
「裕ちゃん、ちょっと待って。確かに8段あったの?7段じゃなかった?」
「8段やったで」
「それって家庭科室の側の階段だよね?マジで8段だった?本当に?」
「そうやけど、どないしたんや圭ボウ?必死やんか?」
保田の脳裏に再び奇妙な数式が浮ぶ。
『3+2+2+1=8』
小学生でもできる足し算だが、その数式が意味するものは、保田に恐ろしい推測を再び
もたらすことになった。
- 127 名前:カキMAX 投稿日:2001年06月03日(日)02時29分44秒
- 『なっちが最初に見たっていう元の階段が3。
……最初にいなくなった辻、加護の2、続いていなくなった後藤、吉澤の2……
で、あの時の石川の話からして何かに遭遇した矢口の1……
……合計8。いなくなった人数と一致する階段の数……か……』
妙に考えこむ保田を見て、中澤が心配そうに言った。
「ほんまに8段やったで?」
「そんなことありえない!」
保田がブルンブルンと頭を振りながら叫んだ。
「け、圭ボウちょっと落ち着きいや。そないおおげさに否定せんでもええがな〜」
「あ、ごめん。裕ちゃんのことじゃないんだ。ちょっとバカなこと考えちゃって……」
当然だが、中澤は自分の意見が否定されたと勘違いしたのだ。
「でもさぁ裕ちゃん多分数え間違えてるよ。カオリも見たけど7段なんじゃん?」
飯田は、目だけで石川に同意を求めた。石川も素直に「7段でした」と答えた。
それを聞いた中澤がバツが悪そうに言った。
「ホンマにィ?それやったら、なっちゴメンなぁ」
「でも安倍さんの3段のほうが、全然遠いんですけど」
「ムムッ……」
石川のシュールなツッコミが、またもや炸裂した。
- 128 名前:カキMAX 投稿日:2001年06月03日(日)02時34分11秒
- 更新しました。いつの間にか青板ってすごい老舗板になっちゃったな〜
>>124 名無しさん
お札と消えたメンバーと増える?階段の数の一致は何を意味するのか?!
乞う!ご期待(に添えるようにがんばります)
- 129 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月03日(日)13時57分44秒
- 読みました。やっぱおもしろいっすね〜!
期待してます。出来るだけ早くつづきを書いてくれるとうれしいです。
- 130 名前:カキMAX 投稿日:2001年06月09日(土)01時40分43秒
- 「それにしても矢口はどこをウロチョロしてんねん?生徒に見つかってまうで」
「どっかで昼寝でもしてたりしてね」
「中澤さん……そのことなんですけど」
再び矢口の話題が出て来たので、石川は先程言いかけたことを口にした。
「そう言うたら矢口と石川チームやったな。ケンカでもしたんか?」
「実は……」
石川はあの時、階段で起きたこと、見たことをできる限り正確に伝えた。
突然、7段の階段の前で二人を包んだ異様な空間、奇妙な声、そして黒い影……
途中何度か言葉に詰まったが、メンバーは黙って聞き入っていた。
──作り話や冗談ではない。
話終えた石川の表情には、そう思わせる何かが宿っていた。
「ほんならこの落ちとったテープに、なんか撮れてるかも?ってわけやな」
そう言うと中澤は自分たちが使っていたデジカムにテープを入れて巻き戻しを始めた。
シュルルル〜というテープの乾いた音のみが教室を静かに包み込む。
やがて音が止み、中澤がグルリとメンバーの顔を見渡してから頷いた。
「行くで」という静かな掛け声で、再生ボタンがゆっくりと押され、小さなモニターに
全視線が集中する。
- 131 名前:カキMAX 投稿日:2001年06月09日(土)01時59分51秒
- 『ヤッホー!!みんな見ってるぅ?矢口真里でーす。はぁ〜いみんな元気ぃ?』
「はあぁぁぁ〜……いつもの矢口じゃん」
突然の明るい声で、一気に張り詰めていた空気が緩んだ。
全員がテープの始めから、石川の言う異様な雰囲気の映像をドキドキして待っていたのだ。
「あ、最初のほうは何も写ってないと思いますけど……」
「あ〜ええねんええねん。暇やしちょっと見てみよか?」
矢口はカメラが映し出す先々で、レポーターよろしく「あーだこーだ」解説をしている。
『あ、ここは家庭科室のようです。誰もいませんね〜さぼってるんでしょうか?』
『授業が無いだけじゃないでしょうか?』
画面外から時々聞こえてくる石川の声もいいアクセントになり、異様な雰囲気どころか、
思い切り和んだ内容のビデオになっている。
「なんやぁ?矢口のアップばっかりやんか〜?!」
「しかも自分で撮ってるし……」
確かに『娘。を探せ!』ゲームの為に、教室外へカメラを持って行ったわけだが、これ
では『矢口真里のオモシロ百面相』とでもタイトルを付けた方が良さそうな内容である。
場面はそろそろ置き忘れた保田のカサを、石川が発見するシーンにさしかかっていた。
- 132 名前:カキMAX 投稿日:2001年06月09日(土)02時18分04秒
- 『あら?あれって、さっき保田さんが持ってたカサじゃないですか?』
『え?どこどこ?あ、ほんとだァ。落としちゃったのかなァ?』
石川の体が、わずかに震え始めた。
それに気付いた飯田は、そっと優しく手を握ってやった。
同時にモニターでは、テープが傷んでいるのかノイズが走り始めている。
「なんや映り悪いなあ……安っすいテープなんちゃうん?」
「裕ちゃん、シィッ!」
石川の変化に気付いてない中澤は、半ば飽きてきてグチをこぼした。
飯田がそれを制したが、安倍も保田も少し怪訝そうな表情をしている。
石川一人だけが、ブルブルと膝から震え始めていた。
『……んじゃ階段に話かけて見ますか〜?ウ・ソ・よ・ねェ〜ん』
『ちょっと矢口さん!!』
ここで今までにない大きなノイズが画面を横切り、メンバーに再び緊張感が走った。
「なに?!」
- 133 名前:カキMAX 投稿日:2001年06月09日(土)02時30分27秒
- 『ぅウぅぅウすをヨよヨぉぉぉオぬェェェえエんンんン……』
『え?何?こんなところでヤマビコ?!な、わけないか』
『ぅウぅぅウすをヨよヨぉぉぉオぬェェェえエんンんン……』
『誰?何がウソなのよ』
「ん?なんや?矢口の声しかまともに聞こえへんで??」
「ちょっと裕ちゃんわざとらしい、普通に再生してよぉ〜」
「いやいやいやウチはなんもしてへんて!」
『ぅウぅぅウすをヨよヨぉぉぉオぬェェェえエんンんン……』
「ぅウぅぅウすをヨ……みたいなのはなんだろうねェ?」
「バカ殿みたいに聞こえるのは、なっちだけかい?」
「なっちだけでしょ」
メンバーが雑談を始めるのも無理は無い。
画面にはスロー再生をしたような耳障りな音声と壁と階段しか映し出されてないのだ。
『絶対そうですよ!また聞こえましたよ!段数は関係ないんですよ!はぁああっ!』
「これは石川の声やな。メッチャ焦ってるやんか?なんでや?」
言いながら中澤は石川の表情をチラリと見やった。
石川の脳裏には、あの時の映像がハッキリとプレイバックされているのか、
目を真っ赤にして涙を堪えている。
さすがにその異変に気付いたメンバーは口数が少なくなり、モニターに集中した。
(相変らず、壁と階段しか映っていないのだが……)
『先輩の命令!逃げなさい!!』
『わかりました!ごめんなさい矢口さん、きっと迎えに来ますから……ううっ……』
『……ううっ……う……ぅ…………』
石川の声が遠ざかり、ガチャンッ!という衝撃音と共に画面が突如暗転した。
再び、サァーーーというテープ音のみが、教室を静かに包み込む。
結局、画面には何一つ怪しい映像は記録されていなかったのだ。
「へ、変ですよ!これ!絶対!!」
石川が震える声で叫んで、乱暴に停止ボタンを押した。
- 134 名前:カキMAX 投稿日:2001年06月09日(土)02時39分00秒
- 更新しました。新メンもそろそろ新メンじゃなくなりますね。
増員までに終了するかな〜?
>>129 さん
どうもありがとうございます。
更新は最悪でも週一ペースを守りたいと思っています。でもできなかったり・・・
- 135 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月23日(土)19時46分29秒
- マダデスカ?
- 136 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月07日(土)16時52分03秒
- もうすぐで月一ペースですね。
- 137 名前:読んでる人 投稿日:2001年07月20日(金)08時59分41秒
- もしかして破棄?
- 138 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月05日(日)20時35分58秒
- えっマジで放棄?
- 139 名前:王大人 投稿日:2001年08月28日(火)06時54分47秒
- 死亡確認!!
- 140 名前:パク@紹介人 投稿日:2001年09月26日(水)13時50分19秒
- こちらの小説を「小説紹介スレ@青板」に紹介します。
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=blue&thp=1001477095&ls=25
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