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マイナーリーグ

1 名前:グェン 投稿日:2000年12月05日(火)21時17分02秒
その名の通りマイナーカップリングのスレ。
くじ引きにより、第1回目は「いちいし」。
2 名前:True love story  1 投稿日:2000年12月05日(火)21時58分00秒
8月の終わり、紗耶香は恋人と別れたばかりだった。
付き合っていた期間はたったの1ヵ月とちょっと。
出会いは今日と同じようなクラブイベント。
正直、失敗だった。
何故あんなにも焦ってしまったのか・・・。

「確かに面食いだけどさ、中身も重要なんだよ」
「なのに佳ちゃんが急かすから・・・」

こんなこと、分かっていたはずなのに後悔はつのるばかり。
初めから付き合おうなんて言い出さなければ、傷つけることも傷つくことも無かったのに。

紗耶香は荒れていた。
自分の甘さに苛立ち、ぬくもりを覚えてしまった体の欲深さに。
クラブに入ったとたん、少しでも可愛い子がいれば節操も無く、声を掛けまくっていた。
話に飽きれば、ダンスフロアーに。
踊り疲れれば、ソファーでディタモーニを浴びるように飲み干す。
顔見知りとアイサツ代わりのショットガン。
摂りつかれたようなテンションのアガリっぷりだった。
3 名前:True love story  1 投稿日:2000年12月05日(火)22時02分49秒
8月の終わり、紗耶香は恋人と別れたばかりだった。
付き合っていた期間はたったの1ヵ月とちょっと。
出会いは今日と同じようなクラブイベント。
正直、失敗だった。
何故あんなにも焦ってしまったのか・・・。

「確かに面食いだけどさ、中身も重要なんだよ」
「なのに佳ちゃんが急かすから・・・」

こんなこと、分かっていたはずなのに後悔はつのるばかり。
初めから付き合おうなんて言い出さなければ、傷つけることも傷つくことも無かったのに。

紗耶香は荒れていた。
自分の甘さに苛立ち、ぬくもりを覚えてしまった体の欲深さに。
クラブに入ったとたん、少しでも可愛い子がいれば節操も無く、声を掛けまくっていた。
話に飽きれば、ダンスフロアーに。
踊り疲れれば、ソファーでディタモーニを浴びるように飲み干す。
顔見知りとアイサツ代わりのショットガン。
摂りつかれたようなテンションのアガリっぷりだった。
4 名前:True love story  2 投稿日:2000年12月05日(火)22時49分37秒
不意に声を掛けられた。
振り向くが、姿が見えない。
「おいおい、下だよ下!」
視線を降ろす。
「あ…キミ、こないだのイベントの・・・?」
「矢口! 矢口だよ!! ちゃんと覚えてるぅ?」
忘れるはずが無い。
「可愛い子は覚えてるよ」
「まぁ〜たぁ〜! 相変わらず上手いなぁ…矢口も気をつけないと」
「なんだよ、誉めてんじゃんか。相変わらず可愛いねって」
「そこが上手いって言ってんの! まったく、あぶない、あぶない」
「なぁ〜んだよ〜〜」

忘れるはずが無い。
ここ最近のクラブ通いの成果とも言える、1番の可愛さだ。
何度か電話をしたが繋がることはなく、諦めかけていた紗耶香だが逃すまいと話を続ける。
しかしそれがアダになったようだ。
「1人? こないだのコと来てんの?」
「ううん。ちがう友達。ほら、あそこにいるコ」
ラウンジを左右に分ける長いテーブルの向こうに矢口が目をやる。
「赤いシャツのコだよ」
矢口がそう言う前に紗耶香はその友達と目が合っていた。
「ああ、なるほど」
性格には睨まれたのだ。

「こないだ一緒に来てたコもいるの? …えっと、ゆう?」
「ああ、裕ちゃんは明日仕事があるから来てないよ。今日は佳ちゃんってコと来てるんだ」
「ふぅん、そっか。・・・あ、呼んでるみたい。ちょっと行ってくるね」
「朝までいるの?」
「もっちろん!! 今来たばっかだもん。また、あとでゆっくり話そう。矢口、一踊りしてっくからさ」
「ん、じゃあ、またあとで」

26時過ぎ・・・。
今来たということは夜のバイトなのだろうか?
聞きたいことはたくさんある。
赤いシャツのコのことも・・・。

「久々に面白くなってきたなぁ」
5 名前:グェン 投稿日:2000年12月05日(火)22時55分48秒
ああ、1が二重になってる。
石川はもうちょっとしたら出てきます。
ちゃんと「いちいし」+色んな人が出てくる。

コテハンかえて新たにスタート! よろしくお願いします。
6 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月05日(火)23時38分59秒
うわ!面白そ!!いちいしムッチャ期待です!!
7 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月06日(水)02時24分02秒
佳ちゃん?
8 名前: 投稿日:2000年12月06日(水)16時03分15秒
やったー!いちいしモノだ!
マイナーカップリングかあ、いいアイデアっすね。
楽しみにしてます!
9 名前:名無し@都合により 投稿日:2000年12月06日(水)22時27分24秒
頑張って下さい! いちいし好きっす!
10 名前:グェン 投稿日:2000年12月07日(木)04時18分31秒
6さん>
 ご期待に添えるかどうか・・・緊張!!
7さん>
 わ〜!!!!
 やっちゃった!!
 ご指摘ありがとうございます。
Qさん>
 自分だけでなく、いろんな人に書いてもらいたいと思ってます。
 もちろんこの小説がちゃんと終わってからなんですけどね(自らプレッシャー
 総当り戦できたらいいなぁ・・・
9さん>
 都合により名無し? コテハンされてる方なのでしょうか?
 …っていらんせん索ですよね(失礼!
 くじ引きでコレを引き当てたときに、ちょっと自分が怖くなったよ。はは。
 よりによっていちー…。逃れられないみたい…。 
11 名前:True love story 3 投稿日:2000年12月07日(木)04時51分55秒
「さ・や・か!!」
矢口と入れ違いに圭がダンスフロアーから戻ってきた。
また酒を飲んだのか、完全に酔っ払い。
「またナンパ? やるねぇ〜」
「圭ちゃん! 大丈夫? なんかフラついてるよ?」
「だ〜いじょうぶ! …いや〜、しかし踊った、踊った」
汗の跡がうっすらと背中にうつっていた。
「水、買ってこようか?」
「いいよ、いいよ。こんくらいいつものことだからさぁ」
「まぁ…そうだけど」
「それより・・・!」
がしっと、肩に腕が絡みつく。
人に触られるのが少し苦手な紗耶香は、思わず身を引いた。
「さっきのコ! 可愛いじゃな〜い。何てコ?」
「〜〜矢口。ナンパしたのはこないだのイベントだよ」
「んん? いつ?」
「圭ちゃんは来なかったやつ。88(エイティーエイト)だよ」
酔いが回っているのか、圭の目は半開きで明後日の方向を向いている。
「ああ! アレね」
「って、ちゃんと分かったぁ?」
「分かってるって」

は!!!!!!
・・・と、笑いながらバーカウンターへと消えてしまった。
やれやれと、紗耶香はまたソファーに腰をおろす。
薄暗さになれた頃、今一度辺りを見回した。
「ふぅ、なかなかヒットがいないなぁ」
ブラックライトに銀の装飾。
夏も終わりだというのに、海の底のようだった。
「箱の中だからイイトコ水族館かな」
乾いた笑いはやるせなさ。
一人身の寂しさと、半分ヤケになってナンパしてる自分の情けなさから。
12 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月07日(木)05時53分09秒
楽しみ〜♪
13 名前:True love story 4 投稿日:2000年12月07日(木)05時58分42秒
ここのクラブは全部で4フロアーから成る、比較的大きなハコだ。

エントランスを抜けると、まず最初にメインラウンジ。
ソファーが周りをぐるりと囲み、中央には長いテーブルがフロアーを左右に分けている。
会話を楽しむならこのフロアーだろう。

螺旋階段を上ると大量の音に圧倒。
ハウスが絶えず流れるダンスフロアーではショウも行われる。
その上にダンスフロアーを覗き込める小さなフロアー。
ここはカーテンで幾つかに仕切られていて、ペアシートになっている。
このペアシートに恋人と来るのが、紗耶香の密かな夢だった。
「いつ行けるんだろうねぇ」

メインラウンジの下にはスタンダードナンバーが流れるラウンジ。
落ち着いた雰囲気で音量も抑え目。
本格的な語りと口説きはここで行われる。
紗耶香は矢口と2人。
とはいえ、口説いてるわけではない。
焦りすぎた前回を教訓に、「まず相手を知る」ことを実践しているのだった。
14 名前:True love story 5 投稿日:2000年12月07日(木)06時27分03秒
「矢口はねぇ、やっぱ面白い人がいいな」
「面白い人?」
「うん。見てて面白い人」
「なんだよそれ」
「あはは! なんつーかさ、一喜一憂の激しい人がいいんだよね。自分に素直な人」
「なるほど。あの赤いシャツのコは?」
ちょうどフロアを挟んだ向こう側のソファーでそのコは寝ていた。
踊りつかれたのか、飲みすぎたのか。
「ああ、あのコは友達だよ。いい友達」
「いい友達・・・ね」
「な〜んだよぅ」
イヤミっぽく聞こえてしまったのか、矢口はすねるように切り替えした。
「いやいや、別に。なんでもないよ!」
紗耶香は慌てて否定する。
「ネットで知り合ったメルトモだったんだけどさ、矢口をクラブに連れてきてくれたんだ」
「うん?」
「矢口、そん時落ち込んでてさぁ〜。ずっと励ましてもらってたの」
理由も聞かずに紗耶香は黙って矢口の話を聞いていた。
15 名前:グェン 投稿日:2000年12月07日(木)06時30分04秒
進みが遅いなぁ。

12さん>
 リアルタイムですね。どうぞごひいきに。
16 名前:名無し@都合により 投稿日:2000年12月07日(木)13時56分42秒
コテハンあるんですけど、どーせそんな知られてないんで(w
矢口とかも絡むんですか?
17 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月07日(木)23時28分43秒
クラブとかでの出会いの話好き
期待です
18 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月08日(金)01時16分23秒
いちいしって、なんとなくいいかも…。
最初の一言がなんなのか期待!
19 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月09日(土)20時55分15秒
待ってまーす
20 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月13日(水)22時11分31秒
そろそろ続きが見たい…
21 名前:グェン 投稿日:2000年12月15日(金)13時05分28秒
@都合によりさん>
ここまでだとほとんど「さやまり」ですね
でもちゃんと「いちいし」なのです

17さん>
クラブは自分自身、良く行くんで書き易いんです
この話しに出てくるクラブも実在するクラブだったりします
クラブとか行きます?

18さん>
「いちいし」って他にもあるんでしょうかね?
参考に是非読んでみたいっす
石川って性格があんまりよめなくって・・・
ところで、最初の一言ってどれ?

19さん、20さん>
お待たせしました!!
自分PC持ってないんで、マン喫からなんですよ・・・
んで、ようやくこうし〜ん
22 名前:True love story 6 投稿日:2000年12月15日(金)13時44分40秒
「あんまり詳しく話しちゃうと、マジ、オチちゃうから止めとくけど・・・
 なんつーかさぁ、自分が何をしたいのかとか、誰を好きになればいいのかとか
 すんごい考え込んでたのね・・・仕事も辞めちゃってさ」
矢口はずっと遠くを見ていた。
とはいえ、狭いハコの中。
おそらくDJでもボンヤリ見ていたのだろう。
「そういう時期って、きっと誰にでもあるんだと思うんだけど。ホラ」
急にこっちを向いた笑顔に、紗耶香はドキッとした。
「矢口ってこういう性格じゃん? アガル時はどこまでもアガルんだけどさ、
 ・・・オチル時もめっちゃオチんのよ」
その笑顔にはウソは無かった。
「そんな時にあのコが連れ出してくれたの。今は楽しくてしかたがないんだ。
 悩んでる時期はおしまい!!」

頭を天井に向け、口を開けて眠ってる。
はたから見ればマヌケな姿を、矢口は愛しそうに見つめていた。
「・・・あのコのことが、好き・・・なの?」
そんな姿を見れば誰だってそう思うだろう。
しかし矢口は「何言ってんのよ!」とばかりに、驚き振り返った。
「ちっっが〜〜うよ!!」
「え・・・だって」
「あのコは親友!! っつーか、キョウダイみたいなもんだよ!!」
力一杯の否定に何人かが振り向き、赤いシャツのコも起きてしまった。

タイムリミット。
矢口は連れて行かれてしまった。
まぁ、そうだろう。
ココには遊びに来てるのだ。
踊りたいだろうし、他の友達とも話しをしたいだろう。
矢口の中にある紗耶香に割り当てられた時間はここまで。
それでも話せただけ紗耶香は満足だった。
矢口の話しを聞けただけで。
23 名前:True love story 7 投稿日:2000年12月15日(金)14時02分27秒
「よう、どうだった? 今日はカワイイコいた?」
もうすぐ29時。
メインラウンジ。
イベントも終わろうとしている時だった。
声をかけてきたのは、同じく恋人募集中のひとみ。
「んん? う〜ん。こないだ知り合ったコくらいかな?」
「え? どれどれ? どのコ? なんてコ?」
きょろきょろと締まりのない顔で辺りを見回すひとみ。
こいつもカワイイコに目がない。
「今居ないよ。上で踊ってんじゃん?」
「ああ、アンコール?」
そっか・・・
残念そうに向かいのソファーに腰をおろす。
「そっちこそどうなのさ?」
「あ? ダ〜メダメ。今日はマジでヒットなし!」
ドカッ! と長い足を紗耶香のソファーの肘掛に乗せてきた。
「なんだよ〜〜。ちゃんと探した? 最近やる気ないぞ。お前」
「はぁ。最近マジでどうでもいいかな〜って思う・・・」
「オイオイ・・・」
24 名前:True love story 8 投稿日:2000年12月15日(金)14時32分58秒
プッっと音楽が止んだ。
絶えず刺激を与えていた重低音が消えると、なんだか気持ち悪い。
携帯のデジタルを見ると、5:00ジャスト。
歓声と共に再び音楽が流れ出した。
上からもれてくる声は最高潮。
アカペラから始まるMisiaの「忘れない日々」Mixバージョン。
「終わりかぁ・・・」
今日は割と充実していた。
矢口とも喋れたし・・・。

しかし紗耶香は何か足りない。
矢口と出逢ったイベントでもそう感じていた。
夜の刺激に慣れてしまったせいだろうか?
こんなモンじゃないと思わずにはいられないのだ。

ハウス特有の四分踏みベースが戻ってきた頃、照明が上がった。
もうクセになってしまった。
ラウンジの中の人をグルリと見渡す。

暗かった時には気付かなかった、すぐ近くのソファー。
まだら茶パツの野郎と話しているコに目が止まった。
ナンパされて困っているのだろうか、そのコは話してるそばからきょろきょろと落ち着かない。
何度か目が合う。
自分でも気付かないうちに口走っていた。
「あのコ・・・めちゃくちゃカワイイ!!」
「え?」
久々に紗耶香の血が早く流れ始める。
それは直感。
25 名前:グェン 投稿日:2000年12月15日(金)14時41分47秒
よすぃ〜登場〜〜〜。
年齢差はちゃんとあるんですが、ここではみんなタメ口です。
違和感あるかもしれないけど、許して下さい。
慣れてください。
実際クラブでの出逢いってこんな感じなんだよね。
みんな同じレベル。
だからこの先よっすぃ〜がねーさんにタメ口きいたりもします。
ちょっとすごいね。それ。
26 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月16日(土)00時21分43秒
赤いシャツのコって誰だ?
27 名前:名無し@都合により 投稿日:2000年12月16日(土)14時23分41秒
おお。石川登場ですか?
28 名前:グェン 投稿日:2000年12月17日(日)20時53分54秒
26さん>
あまり、重要人物じゃないです。
イメージ的には・・・ダニエルかな(笑)

都合によりさん>
や〜っと、石川登場です。
長かった・・・
でもまだ出番は少ないんだよね
29 名前:グェン 投稿日:2000年12月17日(日)21時25分16秒
すいません!!
続き書こうと思った矢先に仕事入ってしまいました
石川を待っててくれた方ホントにごめんなさい!!
30 名前:名無し@都合により 投稿日:2000年12月20日(水)23時22分13秒
いいですいいです。
時間が空いた時に、ゆっくり更新してくれれば。
ちゃんと待ってますんで。
31 名前:グェン 投稿日:2001年01月04日(木)13時07分55秒
「な!なっ!! かわいくない? かわいくない?」
「う…ん、かわいいんじゃん?」
「なんだよ。そんだけ? 今日来てる中で1番のヒットじゃん?」
興奮状態の紗耶香に、ひとみは少し引き気味だ。
「ああ・・・かわいいよ。かわいいと思うよ」
「だろ?だろ?」
チラチラと確認しながら、悶える紗耶香。
「声でかいよ」
なだめるひとみにハッとし、身を縮める。
もう一度そのコの方を見ると、また目が合う。
「聞かれてた!?」
恥ずかしくなって、思わず目をそらす。
そしてまた、そぉ〜っと見てみると・・・
「なんか、メッチャ、目が合うんですケド」
「ん? ・・・へぇ、もしかしたらミャクアリかもよ」
ひとみがイタズラっぽく、ニヤリと笑ってけしかけてくる。
「・・・・・・・・・」
「声かけてくれば?」
「う・・・ん。だよな」

いつになく緊張していた。
緊…張なのだろうか?
ナンパなら何度もこなしてきた。
最初の言葉、相手に微笑みかけて、畳掛けるように褒め落とす。
ほら、いつもと同じ事をするだけだよ。
・・・そう思っても何故だか立てないのだ。

「どうしたの? 話し掛けようよ」
「ん〜〜〜! あ、その・・・ほら、今話してるじゃん。ちょっと、待とうよ」
「ああ、そっか。ナンパされ中だもんな。さすがに横取りは感じ悪いか」
「だ、だろ?」
この2人の凄いトコロは、ナンパしたコは必ず友達、もしくはそれ以上になるコト。
そう、ハッキリ言ってしまえば、顔も人当たりもいいから目をひくのだ。
笑いかけて、笑い返してこないコはいない。
別にそれを鼻にかけてるわけではないが、妙な自身を植え付けさせていたのは事実かもしれない。
「だよな」
また、チラリと目をやると決まって合ってしまう。
違うヤツと話してるのにいくらなんでも・・・
紗耶香は少し不思議に思ってた。
目が合ったまま、首をかしげてしまう。

「あ! 茶髪がいなくなった。ほら、行くぞい! 紗耶香!!」
「え、あ、うん!」
躊躇する間もなく、急かされるように紗耶香は席を立とうとする。
・・・が!
矢口がこっちに来たのである。
「待って! 矢口だ!!」
「え〜? なんだよ、いいじゃん、行こうよ」
「いや! ちょっと待って!!」

ナンパしてるトコなんて見られたくないぃ!!
紗耶香はパニクッていた。
32 名前: 投稿日:2001年01月04日(木)13時49分02秒
やった!更新されてる!!
いちいしでしたっけ?いしよしもいいっすー。
期待してますよん!
33 名前:紅餓唯 朧 投稿日:2001年01月05日(金)10時37分19秒
いちいし楽しみです。
これからどう絡んでいくか気になります。
34 名前:グェン 投稿日:2001年01月05日(金)18時16分41秒
>都合によりさん
  お待たせしました。
  年も明けましてなんとか、落ち着いてきました。
  また更新が止まってしまう事があるかもしれないけど、どうかお付き合いください!

>Qさん
  久々の更新です。
  いちいしです!
  よっすぃーもね、そのうち相手を見つけると思うので・・・
  応援してやって下さい。

>紅餓唯 朧さん
  絡まって、ほどけて・・・
  どうなるんだろう? と自分でも気になります(w
  他のコも色々と絡んでくるので、その辺もお楽しみに!

それでは続きをどうぞ!!  
35 名前:True Love Story 10 投稿日:2001年01月05日(金)19時09分01秒
「さぁ〜やかぁ〜〜!」
毎度毎度、矢口は屈託のない笑顔を見せてくれる。
それはかなり嬉しいし、「アレ? もしかしていけそう?」なんて思わせてくれるのだが、
今回ばかりはちょっと焦る。
頭のスイッチはナンパモードに入り、すでにあのコのことで一杯になってたからだ。

なんと言う皮肉か、矢口は丁度彼女の横を通って、こちらへと向かってきた。
いつになくオロオロする紗耶香を見かねて、ひとみが席を立った。
「しゃーないなぁ。あのコは私がひきとめておくよ」
気づかれないように耳元で。
矢口に軽く会釈をして、ひとみはその場を離れた。

ラウンジの中央に背を向ける感じで座っていた紗耶香に、後ろからスルリと腕を絡める。
「や、矢口・・・」
「どお? 今日はカワイイコいたぁ?」
「え! へ!? あ〜…う、うん。まぁ…いや! 少し」
ハッキリ言って困った!!
この状況って、はたから見れば、程よく親密な感じではないかい?
・・・はたから、というよりあのコにどう思われているのかが、ひどく気になった。
見られていないハズがないだろう。

ひとみ! 頼んだぜ!!
36 名前:True Love Story 11 投稿日:2001年01月05日(金)21時16分21秒
「なに? 矢口もう帰るの?」
「だってもう終わりじゃん? 始発も出てるし」
「そっか、そうだよね。来週のイベントも行くの?」
「う〜ん、まだ分かんないや。行けるようだったら電話してもいい?」
あれだけ繋がらなかった電話が矢口からかかってくる!
思わず顔がニヤケてしまうのが、自分でも分かった。
チラリとひとみの方を見るといい感じに引き止めてくれてるようだ。
しかし、先ほどから気になって仕方がない。

「今度さ、飲みにでも行こうよ。普通にさ」
「あ、いいねぇ。矢口結構呑めるくちですぞ」
「マジで!?」
「あ!! いま似合わねーとか思っただろ!?」
・・・図星。鋭いね。
「いやいや、まさか。それよりさ、マジで遊びましょ。友達とかも紹介するよ」
「あ、いいね。矢口まだこっちカンケーの友達少ないからさ。お願いする」
「OK! OK! 任せてよ。じゃあ、とりあえず来週電話して」
「うん、するする。じゃ、今日はもう帰るね。・・・話せて良かったよ」
絡まっていた腕がまたスルリと解けた。
紗耶香は体を向き直して笑顔を作った。
「こちらこそ!」
じゃあね、と別れた後グッタリとソファーに沈む。
たったの3分程度の出来事がやけに長く感じられた。
なんだか、やけに疲れてしまったのだ。

いあ、もう一仕事残っている。
紗耶香は顔だけをひとみの方に向けた。
すると丁度2人もこっちを見ていた。
「紗耶香! なにグッタリしてんだよ、早く来いって!!」
ひとみのでかい声に何故だか笑ってしまう。
その笑顔のままあのコを見ると、ペコリと頭を下げられてしまった。
紗耶香はダルそうに体を起こしてアイサツをした。
「こんばんわ〜」
「あ、どうも・・・」
初めて聴く声は想像していたモノとえらくかけ離れていた。
「あは、メッチャ高い声だな・・・」
聞こえないようにボソリと一言。
37 名前:ぶんぶん 投稿日:2001年01月06日(土)04時32分53秒
いちいしは面白そうだね。期待してます。
38 名前:名無し@都合により 投稿日:2001年01月06日(土)13時24分21秒
石川登場だ!めっちゃ嬉しいっす。
今回は自分の大好きなさやまりも少しあったし…。
グェンさん大好きだ!

更新ゆっくりでいいんで、頑張ってください。
39 名前:True Love Story 12 投稿日:2001年01月12日(金)04時39分10秒
「紗耶香、こっちおいでよ」
ひとみが気をきかせて呼んでくれる。
なんだか疲れてしまった紗耶香も、「よし!」と気合を入れなおして席を立ち、
さっきまで茶髪がいたソファーに座りなおした。
必然的に隣に座ることになっている。
なるほど。
ひとみの気配りには頭が下がる。
事実ひとみの方に目をやると、ニヤリとした顔が飛び込んできた。
まるで見透かされてるかのような顔に、紗耶香は肩をすくめた。

あからさま過ぎないか?
こんくらい当然でしょ。

「梨華ちゃんていうんだって」
ひとみが話を進めた。
2人のアイコンタクトに入り込めずにオロオロしていた梨華は、胸を撫で下ろす。
「へぇ、はじめまして」
握手を求める紗耶香にひとみのツッコミが入る。
「って、お前も自己紹介くらいしろよ!」
「え? ああ、紗耶香です」
とぼけた顔でもう一度手を差し出す。
2人の掛け合いに梨華は思わず笑ってしまった。
「ごめんなさい…。はじめまして、梨華です」
その笑顔に紗耶香は面を食らった。
「かわいいなぁ・・・」
言葉が口を突いて出てくる。
「え!?」
梨華は正直に驚いた。
「また始まったよ・・・」
ひとみだけが冷静に、そんな2人を見ているのだ。
「って、いうかさ、メチャクチャかわいくない?」
「ええ!? そんなことない! ふつう。ふつうです!!」
「いや、メッチャかわいいって!!」
「そんなことないですぅ!!」
「いや! かわいいよ!!」
何度か堂々巡りのやり取りが続く。
「ま、後は若いお2人に任せて。私は圭ちゃんを探してくるよ」
いいかげん、あきれてひとみはその場を離れていってしまった。
紗耶香はなおも続ける。
40 名前:グェン 投稿日:2001年01月12日(金)04時47分22秒
ぶんぶんさん>
  石川苦手なんですけどね。なんとかいけそうです。
  期待に添えるかどうかは不安ですが、温かい目で見てやってください。

@都合によりさん>
  毎度ありがとうございます! やっと、石川出せました。
  さやまり好きなんですね(w
  この後も矢口は結構絡んできますよ〜。

ホントに更新遅いよな。我ながら。
地道に完結まで行きたいです。
皆さんどうかお付き合い下さい。
41 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月12日(金)16時10分08秒
なんか知らないけど、市井ってタラシが似合うよね。
いちいし期待!
42 名前:名無し読者 投稿日:2001年01月13日(土)21時06分15秒
矢口が絡んでくるのか…。
今後の矢口の行動に期待!
43 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月17日(水)21時57分48秒
よっすぃ〜のお相手は誰になるんだろ?
44 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月19日(金)07時27分44秒
マジで市井ってタラシ似合うな(w
45 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月21日(日)00時52分49秒
続き期待!
46 名前:True Love Story 13 投稿日:2001年01月22日(月)17時49分21秒
「いや、マジ、タイプっす」
「そんな・・・あの、そのぅ・・・」
梨華の真っ赤な顔が、更に紗耶香に油を注ぐ。
「あんまり見ない顔だけど、こういうイベントにはよく来るの?」
「えっと、はじめて・・・。家が遠いから」
「そうなんだ、怖くなかった? なんかさ、クラブってイメージ悪いじゃん?」
「ん〜、ちょっと・・・」
「あ、やっぱ怖かった?」
「でも、友達と一緒だから。前から行ってみたいねって話してて」
「? 友達は?」
「疲れて、向うで寝てるみたい」
音楽が止まった。
アンコールも終わり、歓声に混じってたくさんの人がダンスフロアーから降りてきた。
それでも紗耶香は続けた。
「それで1人なんだ。1人だとナンパされまくったでしょ? キミ、かわいいし」
「ん〜〜」
首をかしげる仕草に、紗耶香はニヤけてしまう。
「ちょっとだけ・・・。さっきの人と、あと、何人かくらいですよ」
「今日はかわいいコいなかったからね。集中したんだよ。キミがダントツだし」
「そ、そんなコトないですぅ〜」
「敬語使わなくていいよ。謙遜もね」
「うぅ〜〜、うん」
とまどいながらも、梨華はうなずく。

「遠いって、家はどこなの?」
「・・・・・・・・・」
ためらうように、梨華は目をそらした。
紗耶香が覗き込むと、また顔が赤くなる。
「あの、・・・神奈川」
「神奈川? そんなに遠くないじゃん。私なんて千葉だよ。まぁ、そんなに遠くはないケド」
「あの、神奈川でもほんとはじっこの方で、ほとんど静岡なの!」
「へ? 静岡?」

「遠距離恋愛」の5文字が紗耶香の頭をよぎった。
47 名前:グェン 投稿日:2001年01月22日(月)18時08分15秒
41さん>
  ですよね! 市井はマジでタラシっぽい(w
  
名無し読者さん>
  矢口はやらかしてくれる予定ですぞ。
  そこだけ見たら、ほとんどさやまり状態!

43さん>
  よっすぃ〜の相手・・・実は悩みドコロ。
  どしよ? リクエストなんてあります?

44さん>
  ねぇさんもタラシっぽいよね。
  でも、市井もやっぱりタラシ。
  この2人はモー娘。2大タラシだ!!

45さん>
  お待たせしました!(毎回言ってるな、このセリフ)
  今週は結構進められそうなので、見てやってください。
48 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月24日(水)00時55分22秒
遠距離恋愛なんか気にすんな市井!
49 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月24日(水)23時14分27秒
実はひそかにさやまりも期待してたり…
50 名前:名無し@都合により 投稿日:2001年01月30日(火)16時34分23秒
そこだけ見たら、さやまり状態!という言葉に
ちょっとドキドキ…
しかし、石川がかわいい…
51 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月30日(火)18時18分05秒
タラシ市井好きです。楽しみに待ってます!
よっすぃ〜は矢口当たりと絡ませたら話の流れ的に作りやすいんじゃないすかね。
っていうか矢口とを希望っす。
52 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月01日(木)21時05分27秒
はう〜……続き……
53 名前:True Love Story 14 投稿日:2001年02月02日(金)19時12分37秒
正直引いてしまった・・・なんてコトはしっかり隠して。
いつも通りにケイタイの番号を聞くと2人は分かれた。

フロアにはもう知った顔しかいなくて、この後どうするかという声が聞こえる。
「紗耶香。行くでしょ? デニーズ」
声をかけてきたのは汗だくの圭ちゃんだった。
「って、お〜い! 圭ちゃん? すっごい汗だよ?」
茶色いシャツの背中に大陸地図が浮かんでる。
「いや〜! サイッコー!! 今日のDJサイコーに「アゲ」だったよ」
「はは、踊ってたんだ。しっかし大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫! さ、デニーズ行こう!!」
半ば強引に、背中を押すとエレベーターへと乗り込む。
「よっすぃー! 早く乗れって!」
「あれ? 彩っぺは?」
「え? 彩っぺ来てたの?」
「上でいっしょに踊ってたんだけど・・・ま、電話してみるか」

クラブを出ると自然に足はいつものデニーズに向かっていた。
道順は色々あるはずなのに、決まってそこを選ぶのは公園の横を通るからだろうか。
朝も早くから老人達が集まって、ラジオ体操の始まりを心待ちにしている。
リーダー格のおじぃちゃんがいる。
紗耶香達はそのおじぃちゃんを「しゅうさん」と呼んでいた。
「あのおじぃちゃん、絶対太極拳もやってるよね」
「ってゆーか、あの人日本人?」
誰が言い出したのかは忘れたが、失礼な話しである。
しかし、このクラブに来るとこの老人達を見ずにはいられないほどの、楽しみになっているのだ。
「しゅうさんって、絶対あのおばぁちゃん狙いだよ」
ひとみが言った。
「!! やっぱそう思う? あのいっつも頭にネットかけてるおばぁちゃんのことだよね!」
「あんた達そんなこと思ってたの?」
圭ちゃんが突っ込んだ。
朝から不健康な3人は、テンション高く笑って健康を装った。
54 名前:グェン@病み上がり 投稿日:2001年02月02日(金)22時22分09秒
15も書いたんだけどね。はじかれた。
お久しぶりです。病み上がりグェンです。
今年の風邪はのどにくるらしい・・・みなさんお気を付け下さい。

48さん>
  だよね! だよね!! 市井には頑張ってもらいますよ。

49さん>
  さやまりねぇ・・・(ニヤ

都合によりさん>
  さやまりですな。(ニヤニヤ
  でもあくまでもコレはいちいしですぞ

51さん>
  矢口はだめなんです。だって・・・

52さん>
  ハイ! どうぞ!!
55 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月06日(火)15時59分05秒
15って何の事?
何を書いたんですか?
56 名前:名無し 投稿日:2001年02月07日(水)00時03分26秒
>55
15話目ってことでしょ。きっと。
しかし、はじかれた……しくしくしく。
続き待ってます。
57 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月08日(木)02時29分37秒
よしこの相手もやっぱマイナーな感じなのでしょうか?
58 名前:NOISY 投稿日:2001年02月08日(木)06時44分26秒
クラブ行きたくなってきた(わら
59 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月12日(月)18時25分27秒
ちきしょう…続きが気になる(><)
60 名前:True Love Story 15 投稿日:2001年02月13日(火)03時00分10秒
「あ、良かった。いつものトコだ」
店員に案内されたのは壁側の席。
いつも、待ってでも壁側に座る。
窓側は日差しが強くて嫌なのだ。
朝を、日常を感じさせられて、余韻に浸れないから。
「あー、メニュー変わったね」
踊り疲れてお腹が減ったのか、早速圭はメニューを開く。
「でもどうせいつものヤツ頼むでしょ」
「まぁねぇ」
紗耶香はデニーズブレックファースト。
圭はそれにコーンスープをプラスして、ひとみは「選べるスープモーニング」を有機野菜のスープで。

「デニーズもベーグルを置けばいいのに」
「このカンパーニュもおいしいよ」
カンパーニュは紗耶香のお気に入りで、今は圭も巻き込んでいるほどだ。
通常「デニーズブレックファースト」はデニッシュ・トースト・パンケーキから好きなモノを選ぶ。
その中にはカンパーニュは含まれていない。
しかし紗耶香はある「必殺技」で店員と仲良くなり、特別にカンパーニュを付けてもらっているのだ。
「ん〜、でもやっぱベーグルだな」
「ナンダカンダ言って、いつもチーズサンドうまいって言ってるじゃん」
「チーズサンドはおいしいよ。でも、やぁっぱり! ベーグルなんだよ!!」
ひとみの力説に呆れ顔の2人は、運ばれてきたばかりのアメリカンコーヒーをすすった。
「ちょっと、聞いてる?」
「へいへい。んなことより、圭ちゃん! 彩っぺに電話しようよ」
話を変える紗耶香に「んなことってなんだよぅ」とひとみが食って掛かる。
紗耶香も「あんだぁ?コラ」と冗談混じりで応戦。
「あんなコトしてまでカンパーニュにしてもらってるヤツに言われたくないね!」
「私はデニーズに来た時だけだろ? ひとみなんてドコに行ってもベーグル、ベーグル!」
「いいじゃん! 好きなんだから!!」
「私だってカンパーニュ好きだもん」
「はいはい、もう! 2人とも止めなさいって!!」
そんな2人を止めるのはいつも圭だ。
首をすくめて、
「「はぁ〜い。おねぇちゃんごめんなさ〜い」」
「まったく!」
気を取り直して圭は彩に電話をかけた。

「怒られちゃったね」
「うん、また怒られちゃったね」
ひそひそと喋る2人をキッと睨むと、次の瞬間聞き慣れた声が「もしもし?」と発せられた。
「あ、彩っぺ? お疲れ〜・・・」
かまってもらえない手持ち無沙汰、いや好奇心がほとんどだろう。
拗ねてたはずのひとみは、ニヤニヤと紗耶香に切り出した。
61 名前:True love story 16 投稿日:2001年02月13日(火)06時09分16秒
「んで?」
「ああ?」
「まぁたぁ、とぼけるなよぅ。どうだったのさ、り・か・ちゃん」
「・・・・・・」
「? 何? まさか、ダメだったわけじゃないだろ?」
コーヒーを1口。
「・・・ん、まぁ、ね」
驚きに身を乗り出していたひとみは胸を撫で下ろした。
「いい感じだったよ。ちゃんと電話番号も聞いたしさ」
「・・・にしては浮かない顔だね」

思い出していたのは、「神奈川のはじっこ。限りなく静岡」という言葉。
自分も千葉に住んでいるから悪くは言えないが、例えば六本木。
電車を乗り継いで最短ルートで来ても1時間半はゆうにかかってしまう。
神奈川のはじの方からだと約2時間だそうだ。
仮に付き合ったとして、会いに行くには3時間半。
距離にしてどれくらいだろう?
JRの普通旅客車で行って、片道いくら?
中間地点で会ったとしても約2時間の小旅行。

「だるいなぁ・・・」
「へ?」
「遠距離なんだよ。彼女、梨華ちゃん? 静岡の方なんだって」
「しずおかぁ?」
「・・・正確には神奈川のはじっこ。静岡との県境だってさ」
ありゃりゃりゃりゃりゃ・・・・・・そんな顔をしてひとみは固まった。
かける言葉が見つからないのだろう。
「それを除けばバッチリなのになぁ」
「ま、ね、・・・ほ、ほら! 愛さえあれば距離なんて関係無いよ!」
ふむ。
ため息混じりに頷くが、やっぱりそこはネックだった。
「まぁね、愛があればね。まだ分からないよ。会ったばっかりだし」
「・・・生まれるかもしれないよ?」
「愛が?」
「そう、愛が。電話番号だって聞いたんでしょ? 努力する気はあるんでしょ?」
遠くを見る目で紗耶香は弱々しく頷いた。
仲の良い店員がモーニングセットを運んで来る。
店内は混み始め、騒々しさがBGMの様に右から左へと耳を通り過ぎて行った。
62 名前:True Love Story 17 投稿日:2001年02月13日(火)06時27分03秒
料理が目の前に出される。
「デニーズブレックファーストのお客様・・・」
「あ、紗耶香・・・と圭ちゃん」
圭は電話をしたままフォークを手に取る。
「選べるスープモーニングのお客様は・・・」
「はいはい、私です」
ゆっくりとスープがテーブルに置かれる。
「コーンスープのお客様・・・」
紗耶香は無言で圭を指差した。
「ご注文は以上でお揃いですか?」
3人が同時にコクリと頷く。
「ごゆっくり、お召し上がり下さいませ」
ウェートレスは伝票をさしながら、チラリと紗耶香を見る。
「アリガト」
ニッコリとよそ行きの笑顔を紗耶香が返すと、ウェートレスははにかみながら顔を赤くして
いそいそとテーブルから離れた行った。
ひとみの視線が痛く感じる。
圭は電話で話をしながら。
あとの2人は黙々と朝ご飯をパクついた。

一息ついて。
「実はさ。今日、会うかもしれないんだ」
「ふぇ?」
熱いスープと格闘していたひとみが、まぬけな声で返事する。
「まだわかんないけど。・・・梨華ちゃんとさ、会うかも」
63 名前:グェン 投稿日:2001年02月13日(火)06時44分21秒
どうも〜、最近めっきり週間連載になってますね。
遅筆作者のグェンです。
読んでくれてる方々、ありがとうございます。

55さん>
  56さんのフォローの通り、15話目がはじかれてしまったんです(TT)
  文字数オーバーで・・・今回は気をつけました。

56名無しさん>
  フォローありがとうございます。
  最初に書いた15話とは若干違いますが、ちゃんと書きましたよ〜。

57さん>
  そうですねぇ・・・。
  ちょっとマイナーかな。ありえなくはないと思うんですが・・・。

NOISYさん>
  今後もクラブのシーンが出てきますよ。
  なるべく色んなクラブを出そうと思ってるので、行った気にはなれるかも(w
  でも実際行った方が楽しいですよね!

59さん>
  今回は少し長めに更新できました。
  ゆっくりゆっくりですが、これからもよろしくお願いします。
64 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月14日(水)00時04分08秒
いちいしいちいし
あっちゃえ!
65 名前:NOISY 投稿日:2001年02月14日(水)08時14分44秒
すいませーん、ライヴハウスは行くのにクラブは行った事ないんッスよ〜。
オールした朝って妙なテンションで不思議ですよね。
↑はそんな感じがあって好きです。
さぁさぁどうする市井!?
66 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月17日(土)23時30分06秒
ある「必殺技」って一体……
67 名前:True Love Story 18 投稿日:2001年02月20日(火)04時25分41秒
「そっかぁ・・・なんだか大変だね。・・・うん、じゃよろしく言っといてよ。うんうん。じゃあね〜」
圭の長電話がようやく終わった。
「圭ちゃん、彩っぺは?」
「来れないって。なんか、イベントの最中にケンカしちゃったらしくってさ、オチてた」
驚いた2人が目を丸くした。
「ケンカって、福ちゃんと!?」
「めずらしー! あの2人でもケンカするんだ!!」
両手が自由になった圭は少しさめてしまったカンパーニュを大きくちぎって口に放り込んだ。
「ホント・・・もにゅもにゅ、めずらし、んぐ、よねー」
「なんで? なんで? 彩っぺなんかやらかしたの?」
「んー・・・」
プライベートなことだからだろうか、圭の口は重い。
「今日、相談がてらに呑む約束したからさ、2人もおいでよ。直接彩っぺから聞いた方がいいし」
「ああ、そうだね。分かった、行くよ。・・・紗耶香はどうする?」
少し考え込む。
その間にひとみが圭に事情を話した。

「へぇ! やったじゃん。そりゃ、行くべきだよ!」
「そうだよ、お前理想高すぎるのにも程があるぞ!! 私なんて悩む相手もいないんだから」
とは言われても、まだ乗り気のしない紗耶香は遠い目でコーヒーをすする。
ズズ・・・
「オイオイ。贅沢だぞ、お前。なぁ? 顔良し、スタイル良し。ま、性格はまだ分からないにしても、
 おいしー状況じゃん。とりあえず会えって」
「・・・まだ会うかどうか分かんないよ。明けて今日の夕方電話が来れば、だよ」
「いやいや、あのコけっこー紗耶香のこと気に入ってるぜ」
梨華と話したことのあるひとみは、何かを知っているかのような具合だ。
「そうなの? じゃ、電話来るんじゃん?」
68 名前:True Love Story 19 投稿日:2001年02月20日(火)05時07分43秒
来ました。
圭の予言どうり。
半分は社交辞令だったが、誘ったのは自分だ。
断る理由もないし。
紗耶香は少し早く待ち合わせの場所にいた。
渋谷の「Q FRONT」前。
最近出来たばかりとはいえ、ハチ公前と並んで待ち合わせのメッカだ。
スターバックスのラテ(ローファット)ヘーゼルナッツシロップ入りが紗耶香のお気に入り。
時計を見ると20:25。
そろそろ来るだろうか。
紗耶香は2本目の煙草に火を付けて待った。

どこに連れて行こうか?
とりあえず、ご飯だよな。
クラブは昨日行ったばかりだし。
老舗のバーにでも行くか。
最後はやっぱ、みっちゃんの店だよな。彩っぺの事も気になるし・・・。

〜♪

大音量で「宇宙戦艦ヤマト」が流れ出す。
「わわわ!!」
ディスプレイには「リカ」。
「あー、ビックリした」
「何が?」
すでに通話ボタンを押していたらしい。
「あ、いや。着信音が最大になっててさ・・・で、いまどこ? 渋谷着いた?」
「う、うん。ハチ公口でいいんだよね?」
「そうそう。交差点のトコにでっかいスクリーンが見えるでしょ? そこの下にいるから」
「う〜ん・・・。3つもあるよ?」
「そんなかで、1番でかいやつの下」
「1番・・・」
「TUTAYAがあって、スターバックスが見えると思うんだけど・・・」
信号が青に変わった。
紗耶香は絶えず人ごみの中に目をこらす。
「スターバックス・・・あ、これかな?」
「うん、多分それ。そこにいるから。電話切るね」
「うん」
とりあえず一安心。
紗耶香また人ごみに目をやった。
69 名前:グェン 投稿日:2001年02月20日(火)08時30分29秒
64さん>
  会っちゃいますよ〜。

NOISYさん>
  是非この機会にクラブも行ってみてくださいな。楽しいですよ。
  オールの朝はみんな壊れてますよね。自分もそうだけど・・・。
  ヘタするとそのまま2オール。なんてことも・・・

66さん>
  「必殺技」そりゃ、ね。市井ですから。
70 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月21日(水)22時08分57秒
梨華の気持ちが知りたいな。
71 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月25日(日)14時19分54秒
市井は矢口と石川どっちが好きなんだ!(藁
72 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月25日(日)23時51分06秒
いちいし小説って少ないけど好きなんで続き期待してます
73 名前:True Love Story 20 投稿日:2001年02月26日(月)05時18分03秒
渋谷のスクランブル交差点。
土曜日ということもあって、人の量はハンパじゃない。
ケイタイが普及してない時代は、どうやって待ち合わせしてたんだろう。
などと考えつつも、紗耶香は梨華を発見してしまった。
「目立つコだなぁ」
ピンクのTシャツにスリムのボトム。
明らかに周りとは違う「カワイイコ」のオーラを出している。
座り込んで煙草を吸っていた紗耶香は立ち上がろうとして止めた。

きょろきょろ。きょろきょろ。
梨華は紗耶香を捜している。
慣れない街だからだろう、かなりの挙動不審。

きょろきょろ。きょろきょろ。
「う〜ん、やっぱカワイイなぁ〜」
自分を一生懸命に捜している姿がなんとも可愛く思える。
だから立ち上がって声をかけるのを止めたのだ。

携帯片手にくるくると首を振る。
ギャルカップルにぶつかっては頭を下げて、親父にぶつかってはよろけて。
その姿を紗耶香は微笑を浮かべて楽しんでいた。
「はは、カッワイーなぁ。しかし、なんで見つけられないかね?」

しばらく、と言っても2分程度のことだが、梨華は人ごみに疲れたかのように
街灯に寄りかかってうなだれてしまった。
「ありゃりゃりゃりゃ、やりすぎたかな?」
煙草をアスファルトでもみ消して、火種が消えたのを確認して吸殻をポケットに入れる。
ポイ捨てはしないが、携帯灰皿も持たない紗耶香のポケットの中は、
いつも吸殻か煙草の葉が入っている。
立ち上がると同時に携帯が鳴った。
74 名前:True Love Story 21 投稿日:2001年02月26日(月)05時45分26秒
「紗耶香さぁん? どこですかぁ?」
声がかすかに震えている。
「あー、えっと。そこから何が見える?」
「・・・スターバックスは見えます」
「んじゃね、そこ、ガラス張りになってるでしょ?」
「はい」
「そこをたどって、右のほうに歩いてきて」
「はい」
人並みに怯えながらも梨華はたどたどしく進む。
「スタバの入り口と逆に来るんだよ」
「はい」
自信がないせいか、先ほどから梨華の口数は少ない。
紗耶香は梨華の姿が見えている。
あと少しでここへ辿り着くことだろう。
紗耶香はわざとそっぽを向いた。
「大丈夫? ちゃんと来れそうかい?」
「はい・・・あ!!」
やっと発見したのだろう、梨華の声が明るくなった。
「紗耶香さん?」
紗耶香は無言で携帯を切る。
声のした方向へ笑顔で振り向くと、梨華の不安顔が同じ笑顔に変わっていった。
「おう! 1日振りだね!!」
75 名前:グェン 投稿日:2001年02月26日(月)05時54分57秒
70さん>
  もちょっと待っていただければ、わかりますので。

71さん>
  それもね〜、もうちょっと待ってやってくださいな。
  2人とも出会ったばかりですので。

72さん>
  いちいしはやっぱ少ないですね。
  他にもあったら教えていただけますか? 参考までに(w

またあんまり更新できなかった・・・反省。
76 名前:72 投稿日:2001年02月26日(月)07時07分37秒
>作者さん
白板の「とまどい」っていう小説がいしよしでしたが、途中で作者さんが体調壊して
一度復帰したけど、そのままどうなってしまったのか更新されてないです。
77 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月04日(日)01時54分52秒
続きが気になる。続き期待♪
78 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月28日(水)04時05分51秒
同じく続きが気になる
79 名前:グェン 投稿日:2001年03月31日(土)23時53分29秒
続きを待ってくれてるみなさん申し訳ありません。
この1ヶ月色々な事がありまして、今現在精神的にかなりまいってます。
でもこの話を書きあげる意志はあるので、放置にはしません。
自分がどれくらいの期間休養が必要なのかもわかりませんが、暖かい目で待ってやって下さい。
本当に自分勝手でごめんなさい。
一刻も早く立ち直れるよう、またこの話を書き始められるよう努力します。
絶対、絶対! 戻ってきます!!
80 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月03日(火)01時04分31秒
この作品大好きなんでまってます。
作者さんがんばってください!!
81 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月03日(火)17時23分06秒
うぉ!!いいとこで・・・・
煙草吸うけどポイ捨てしないっていう何気に市井らしい(?)とこがツボです。
タラシ市井ダイッスキなんで、作者さん頑張って下さい。
待ってますよ
82 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月03日(火)23時56分31秒
いちいし好きなんで気長に待ってます
83 名前:True Love Story 22 投稿日:2001年05月08日(火)11時05分46秒
「ハラ減ってる?」
「う〜ん、夕方軽く食べたんだけど…紗耶香さんはお腹減ってますよね?」
「ん、ちょとね。起きてから何も食ってないし」
紗耶香が起きたのは2時間ほど前。
それもそのはず、なんだかんだとデニーズに長居してしまって、
結局家に着いたのはお昼近かった。
そして夕方6時、梨華の電話で目が覚めたのだ。
「私は食事っていうか、ちょっと休みたいかも…」
「あは、ずいぶんと人ごみにやられたみたいだね。OK。すぐ座れる大きな店があるから、そこ行こう」

本来渋谷は買い物に来る所であって、食事や呑みにはあまり適していない。
呑みに行くなら新宿の方がベター。
しかし、紗耶香のホームグラウンドは渋谷。
クラブが多いし、つまらなければ西麻布・六本木へもタクシーでそれほどかからない。
なにより渋谷には我が家ほどに落ちつける、平家の店があるのだ。
紗耶香だけではなく、クラブ仲間はそこを拠点としていて、行けば必ず誰かがいる。
平家の人柄がにじみ出る最高の店だ。

Q FRONTから5分ほど、目指す店はこのビルの3階にある。
アジアンテイストのその店の装飾に梨華は目をパチクリさせてる。
狙い通り! 紗耶香はその顔を見て、してやったりと言わんばかりのにニヤケ顔。
「あちゃー、結構人がいるなぁ」
「いらしゃいませ! お客様は何名様でしょうか?」
どこの民族衣装だろう、普段あまり見る事のない風貌の店員がたずねてきた。
無言で2人とも指を2本立てると、店員はなにやら無線で連絡をとる。
「2名様・・・ちょうどお席の用意ができますね。係りのものが参りますので少々お待ち下さい」
しばらくすると、アオザイ(?)を着た女の子が2人を席へと誘導する。
どうやら待っている客は団体らしく、2人は運良く待たずに済んだ。
薄暗い店内。細い通路はなんだかお化け屋敷みたいだ。
84 名前:True Love Story 23 投稿日:2001年05月08日(火)12時53分19秒
少し怯える梨華をよそに、紗耶香はなれた足取りですすむ。
ざわめきが近くなると、目の前に巨大なホールが現れた。
「????」
そのホールの真中には何を意味するのか、巨大な仏像。
なんだか未知の世界に放り込まれたように、梨華はきょろきょろと落ち着きをなくす。
すると突然・・・
「Aの24番テーブル、2名様ご来店で〜〜す!!」
「「「「いらっしゃいませ〜〜〜〜!!!」」」」
誘導していた店員が大声で叫ぶと、ホールで忙しなく動く従業員達が
いっせいにこっちを向いた。
「どうぞ!」
何事もなかったように、店員は尚も2人を誘導する。

着いた席はイスが3つの丸いテーブルだった。
梨華はいまだ落ちつきがない。
「こちらがメニューになっております。お先にドリンクのご注文よろしいですか?」
「何にしよっか」
紗耶香もまた、何事もなかったようにメニューを梨華に差し出す。
「え!? えぇっと・・・」
「市井はぁ〜、とりあえず生」
「生ビール。中ジョッキでよろしいですか?」
「うん。梨華ちゃんは?」
梨華は・・・
「カシス・・・オレンジ」
とりあえず、いつもの無難なやつにしてみた。
「カシスオレンジ、ありがとうございま〜す。お食事はこちらのメニューになっております。
 のちほどまた参りますので、お選びになってお待ち下さい」
アオザイの店員が離れていくと、梨華はやっと一息ついた。
85 名前:True Love Story 24 投稿日:2001年05月08日(火)12時57分27秒
「はは、驚いた? 面白いでしょ? このお店」
「面白いっていうか、なんていうか・・・ビックリ」
「そっか、うんうん。でもね、割と味もいいし、結構安いんだよ」
ホラッと、メニューを見せると、梨華はまた不思議な顔をする。
「・・・なんか、よくわからない」
「ん〜? んじゃ、市井がてきとーに決めちゃっていい?」
「はい、お任せします」
「OK! 嫌いなモノとかある?」
「特には・・・」
ドリンクが運ばれてくる。
先ほどの店員とはまた違って、少し動きやすい格好だ。
ドリンクを受け取ると同時に紗耶香は食べ物類をオーダーする。

「・・・あと、生春巻きパクチー抜きで。それと、ナシゴレンっておねぇさんが持ってきてくれるの?」
「え? ああ、私でよければ」
梨華には良く分からなかった。
「うん、おねぇさんがいいな♪」
ニッコリと微笑みかけると、その店員は顔を真っ赤にして、
「ご、ご注文ありがとうございます。ごゆっくりどうぞ!」と、オーダー確認も忘れて
足早に去ってしまった。
向こうで他の店員の女の子となにやら盛り上がっている。
梨華は終始、不思議顔。

「さてと、かんぱ〜い!」
カチンとグラスがいい音を立てる。
紗耶香はゴクゴクと一気に3/1まで流し込んだ。
「っく〜〜、ウマイ!」
「あの、ナシゴレン? ってなんですかぁ?」
「ん? まぁ・・・来てのお楽しみ♪」
紗耶香だけが1人得意げに涼しい顔だった。
86 名前:グェン 投稿日:2001年05月08日(火)13時17分43秒
お久しぶりです。
皆さんご迷惑をお掛けしました。
やっとこさ、自分的心の整理がつきまして、復活です。
まだまだ更新にムラがあると思いますが、お付き合いいただければ幸いです。

>72さん
  「とまどい」見てきました。2人の接し方等参考になりました!
  ありがとうございます。

>77さん、78さん
  見ていただけましたでしょうか?
  なんとか復活です。これからまだまだ完結までは長いですが、よろしくです。

>80さん
  ありがとうございます! 
  いちいしが帰ってきました。これからもがんばります!!

>81さん
  市井はカオリみたいに「自然を守る」というより、「道徳的に反することはキライ」
  って、タイプでしょうね。
  今回もタラシっぷり発揮しましたねぇ。いちーちゃん。

>82
  ほんとにお待たせしました。
  これからしばらくいちいし甘々が続くのでご堪能下さい。(上手く書ければだけど)
87 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月09日(水)01時26分57秒
あぁ〜待っててよかったよ(泣)
ホントずっと楽しみにしてたので感激です。
甘々楽しみ&他のメンバーのからみも楽しみにしております。
88 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月09日(水)01時33分02秒
待っていました。これからもマイペースに頑張ってください
89 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月09日(水)02時30分26秒
ほんと〜に、待ってました。
作者さんが復活してくれてよかったっす!!
甘〜い、いちいし非常に楽しみです。
90 名前:True Love Story 25 投稿日:2001年05月22日(火)04時15分06秒
「ナンタ〜ラカンタ〜ラ・・・ええっと、ウンニャホラ ホイホイ♪」
ニヤケ顔の紗耶香に目を丸くしてる梨華。
先ほどオーダーを取ってくれた店員は真っ赤な顔で、その儀式を終えた。
「はい! これで[おいしくなる呪文]は終わりです。是非覚えて、次回は一緒に唄ってくださいね!」
小皿に取り分けると、店員は逃げるようにその場を去った。
「は〜い! これがナシゴレンだよ」
「は、はぁ・・・。面白いですねぇ〜」
「でしょ? 市井さ、ここ来たら絶対コレ頼むんだ! この呪文が聞きたくて」
満面の笑みでパクつく。
「あの呪文って何語なんだろう?」
「ん? ・・・さぁ? ま、いいじゃん。面白くて、美味しいんだから言う事ナシだよ!」
梨華も恐る恐る初めて食べるナシゴレンを口へと運んだ。
様々なスパイスで「何味」かは判別出来ないものの、それは確かに美味しいと感じる。
「うん、おいしい!!」
紗耶香は口一杯にほおばりながら「でしょ!」という笑顔を返した。

その後も次々と紗耶香の頼んだ料理が運ばれてくる。
梨華にとってはどれも見た事のない料理だったが、飛びぬけて変な味のモノはなく、
紗耶香の説明もあってか美味しく食べることができた。
「ふう、結構食ったなぁ・・・。あぁ、でもデザートは別腹でイケルでしょ?」
「う〜ん、そうだなぁ。何がおすすめなんですか?」
「市井はいっつも[タピオカココナッツミルク]だけど、あぁ、コレ美味いらしいよ」
メニューを指差すと、自然と梨華の顔も寄ってくる。
ごく自然な行為なのにもかかわらず、フイをつかれた紗耶香はスッと身を引いた。
「フォンダン・・・ショコラ? なんだか分からないけど、おいしそう!・・・? 紗耶香さん?」
「んん! あ、あぁ。じゃ、これでいい?」
「はい!」
血液が顔面向かって一気に流れてるのが、手にとるように分かってしまった。
悟られないように、紗耶香はオーダーするため、店員を探してきょろきょろ。
(やっべー! ああいうの素でやられるのって・・・市井、弱い!!)
91 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月23日(水)02時33分06秒
久しぶりの更新うれしいっす!!
ところで「ナシゴレン」注文すると、本当にあんなことするんですか?
見てみたいな〜。
92 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月26日(土)13時56分26秒
続きが待ち遠しい
この独特な雰囲気が好きです
93 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月22日(金)01時56分22秒
デートの続きが覗きたい。
あ〜、覗きたい……。
94 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月27日(水)04時22分21秒
作者様を信じて待ち
95 名前:True Love Story 26 投稿日:2001年07月02日(月)14時22分20秒
スプーンを入れるとトロリとチョコが流れ出る。
それとともにホンワリ上がった湯気をキャンドルが揺らめいて映した。
「わぁ…!」
口に運ぶと心地良い温かさが舌をあたため、ビターチョコの上品な風味が鼻をくすぐった。
「すっごく美味しいですよ!」
満面の笑みに先ほどの緊張を思い出した。
紗耶香ははにかんで自分のタピオカココナッツをすくった。

「良かった。市井それ食べたことないからさ、不味かったら悪いもんね」
「ぜんっぜん、美味しいです!! 紗耶香さんも食べます?」
「・・・!!」
ココナッツミルクが気管に入った!
それって、それって・・・間接キスぢゃん!!
「いい! 市井はいいよ!! あの、チョコってチョコっと苦手なんだ〜ハハ」
苦し紛れのダジャレは梨華の目を丸くさせた。
「ハハハハ〜・・・って、サムイっすね。すんません」

「クスッ!」
「え!?」
「チョコがチョコっと・・・くくく。あははははは!!!」
ウケてる!!
何故!?
「紗耶香さんって、面白いですね〜。もっとクールな人だと思ってた」
自らイメージを壊してしまった・・・。
ってゆーか、それでウケてる梨華って・・・。
「梨華ちゃんは変わり者だよ」
「??」
96 名前:True Love Story 27 投稿日:2001年07月02日(月)14時48分17秒
「ふぅ。美味しかった〜! お店事態も楽しかったし!」
「そりゃ、よかった。お腹一杯になった? あんまり食べてなかったみたいだけど?」
「あ、私夕方頃軽く食べてたから」
「ああ、そっか」
「それより、ごちそうさまでした…やっぱり割り勘にしません?」
確かに紗耶香もフリーター。
余裕があるとは言い切れない。
しかしここは
「いいんだよ。心配しないで。初回限定特典ってことで、素直に奢られてよ」
「・・・はい。次は何処に連れてってくれるんですか?」

ふむ。
109の前、紗耶香は少し立ち止まって考えた。
11:08ちょっと早いけどアソコへいこうか。
「ちょっと歩くけど大丈夫?」
「? はい」
「そんなに遠くはないよ。10分くらい」
紗耶香が向かったのは、ガードの向こう側さっきとは反対側の宮益坂だ。
坂を登って左に入ったところに平家の店がある。
時間は早いが誰かいるだろう。
少なくともマスターである平家がいるから問題はない。
慣れた道を行く紗耶香。
梨華はその後姿を見逃さないように必死だ。

無言で登る坂の途中、紗耶香が振り返る。
「お疲れ様。ホラ、あそこだよ」
笑顔で指差す先にはネオンが光る。

「Bar GET」
97 名前:グェン 投稿日:2001年07月02日(月)14時59分41秒
ホントにねぇ。
更新遅くってすいません。

この小説に出てくるお店はほぼ実在します。
もちろん名前とかは変えてますが。
知ってる人は知ってると思うけど、ナシゴレンのお店も実在します。
んで、あの[美味しくなる呪文]も実在します。
先日久し振りに行ってみたらメニューが変わってました。
でもナシゴレンは見事に残ってた(w

少ししか書けませんでしたが、これからもよろしくお願いします。
不定期過ぎるので、これからはsageで書きたいと思います。
定期連載してる作者さんたちに悪いので。
ご協力お願いします。
98 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月08日(日)13時21分37秒
「Bar GET」うけました(w
不定期でも待ってるんで頑張ってください!
99 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月17日(火)01時00分57秒
おおっ!更新されてるっ。
よかった、放置じゃなくて……。
ナシゴレンの店、マジで行ってみたいなぁ(w
100 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月21日(土)02時26分42秒
続きを待ちつつ
100(Bar)GET!ということで(w
101 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月07日(火)05時04分30秒
久し振りにたくさん読めて嬉しかったっす。
sageでやってたんですね。
続き期待してます!
102 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月07日(火)05時06分07秒
ぎゃー!!
すいません!! ageちゃいました・・・鬱だ。
逝ってきます・・・
ほんとうにごめんなさい。
103 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月31日(金)01時11分30秒
のんびり更新お待ちしています。
104 名前:True Love Story 28 投稿日:2001年09月03日(月)01時48分35秒
古びた重いドアを押すとざわめきがこぼれ出してくる。
「んん? 結構人がいるなぁ?」
「あー! 紗耶香だ〜。おはよー!」
店内のあちらこちらから声がかかった。
どうやらいつものメンバーが揃っているらしい。

「こら! 紗耶香。 聞こえてんで〜?」
「あは、おはよ! みっちゃん」
「まったく、人の店をバカにせんといてや。ま、ええわ。2人? ・・・ごめん、ちょっと詰めたってや!」
横長の店内はカウンターが8席。6人がけのボックス席が2つ。
めずらしく今日は全て埋まっているようだ。
しかし詰めれば2人くらいは余裕。
105 名前:True Love Story 29 投稿日:2001年09月03日(月)01時50分12秒
「おぅ! 紗耶香!! こっち座んなよ」
「おっす、ひとみ。悪いねぇ」
「今日って過去最高なんじゃない? 何人いんの?」
「紗耶香達入れて、28人だよ」
「ま〜だまだ! この店の最高記録は34人やで」
メニューを持って平家がカウンターから出てきた。
しかし、ここまでの道のりはそれこそ人波を掻き分けるかのよう。

「なんだって今日はこんなに人がいるの? みんなクラブ行かないの?」
「今日はEUROにイギリスのDJが来てんやんか」
「そうだよ、市井も行こうと思ってたもん」
メニューを受け取り、梨華に渡す。この店のメニューはすっかり頭の中に入っているからだ。
平家も普段はメニューを出したりはしない。
これは初めから梨華のために持ってきたものだ。
「IDチェックがあんねんて。ここにおんのは弾かれたやつらばっかりだよ」
なるほど、見渡すと年の近い未成年がほとんどだ。
「ありゃりゃりゃ、そっか。入れたのは圭ちゃんくらいかぁ」
「ああ、でも早めに切り上げてこっちに来るって言ってたよ」
「なんで? ・・・ああ、彩っぺと呑むのか」
「そそ」
106 名前:True Love Story 30 投稿日:2001年09月03日(月)02時00分24秒
「まぁ、おかげで店は繁盛。DJ様々やわ!」
ニヒヒと笑って平家はカウンターへと戻っていく。

慣れない店で落ち着かない梨華に気付いたのはひとみだった。
こいつ、こういうトコはホント抜け目無い。
「どもども、梨華ちゃんだよね? 18時間振りだね!」
「あ、昨日の・・・ひとみちゃん!」
知ってる人に会えたことで梨華の緊張も多少解けたようだ。
梨華とひとみは両者ニッコリと再会の握手を交わす。
ひとみのその笑顔の本当の意味を紗耶香は感じ取っていた。
「いいなぁ、紗耶香。今日はデートだったんでしょ?」
やっぱり!
「え!? なに? 紗耶香、彼女できたのぉ??」
ひとみの横から話に食らい付いてきたのは圭織。
「ち、ちげーよ! バカ!! まだ、そんなんじゃねーよ!!」
「違いますよ〜〜!」
顔を真っ赤にして手をブンブンと振る2人。
「・・・! へっえ〜。まだ、なんだ!! 紗耶香、がんばんなよ!」
「い、いや、だからぁ〜」
107 名前:True Love Story 31 投稿日:2001年09月03日(月)02時21分53秒
「お〜い、そこ! ちょっと面白そうな話だけど、ここは一応呑み屋なんだからなんか頼んでや」
助け船が出される。
紗耶香も梨華も心から感謝をしたい気持ちだった。
「ごめんごめん。みっちゃん、市井は生ね。・・・梨華ちゃんどうする?」
「カシス・・・オレンジ」
とっさの出来事に、梨華はいつもの無難なやつしか浮かんでこなかった。

「好きなの? カシスオレンジ。さっきもそれだったよね?」
「あ、あの。弱いの・・・お酒」
興奮覚めやらぬうちに、イタイ所をつかれてしまった。
「へぇ。ま、市井も弱いんだけどさ。さっきは暗かったから分かんなかっただろうけど、
 1杯ですぐ赤くなっちゃうんだよ。カッコ悪いんだけどさ」
「でももう赤くないですよ?」
「あ! 敬語禁止だよ!!」
梨華は思わず口を押さえる。
「はは、気をつけろよ〜ぅ? んとね、最初の赤いのが引けば、後は不思議と大丈夫なんだ」
「それって、強いんじゃ・・・」
「ん〜? どうだろ? でもそんなに量は飲めないし、限度過ぎれば・・・吐くよ」
「え・・・」
108 名前:True Love Story 32 投稿日:2001年09月03日(月)02時56分34秒
「大丈夫! まだまだいけるし、限界まで呑むことは滅多にないから」
「やっぱり強いよ! 私なんてさっきも全部飲めなかったし、これも・・・ちょっと自信無い」
2杯目となるカシスオレンジに目を落として、軽くため息をつく。
「別に無理しなくていいよ。呑まなくても楽しければいいんだから!」

「そうそう、圭織なんてウーロン茶でこのテンションだよ! キャハハハハ!!」
先ほどは平家に邪魔をされたが、ずっと話し掛けたがっていた圭織は
ついにチャンスをモノにした。
「カオは浮き沈みが激しいからなぁ・・・。あ、紹介するよ。圭織。市井の2こ上」
「はじめましてー! 梨華ちゃん・・・で、いいかな?」
「は、はい」
「なんだよ、カオにも敬語なんて使わなくていいぞ」
「で、でも。4つも年上だし・・・」
「いいよ。圭織的には5こまではセーフだから」
「なんだそりゃ」

少しずつ友達が増えていくのは梨華にとって嬉しいことだった。
何より、沢山の友達に囲まれて、色んな表情を見せる紗耶香を隣で眺められることが嬉しかった。
明日にはまたこの楽しさとも離れなくてはいけないのだけれど・・・。
109 名前:グェン 投稿日:2001年09月03日(月)03時21分03秒
>98さん=100さん・・・でしょうか?
  Bar GET 気に入っていただけたようで(w
  「ワンルーム」じゃギャグだし、「愛の力」じゃスナックみたいですからね。
  無難に「GET」にしてみました。しかし、紗耶香達以外あまり客が来ないらしい!?

>99さん
  ナシゴレンのお店は全国に何店舗かありますよ。
  お店によって「牛肉のガパオ炒めご飯」しか呪文をかけてくれないですが、これもうまいっす。

>101,102さん
  大丈夫です。作者が鈍筆の為、見事下がりました(笑…えないか)
  これからもよろしくです。

>103さん
  ホントにのんびりしてしまいました。倉庫逝きにならなかったのは奇跡ですね。
  これからもハッパかけてやって下さい。

今月の目標:まめに更新。・・・先月もだったケド
110 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月04日(火)01時38分50秒
いっぱい更新さけてるぅ〜。
うれしいなっと。
でも、この様子だと矢口の登場はまだ先になるんですかね?

蛇足:99=100です(w
   待ちきれずに連続カキコしました。
   すんませぇ〜ん。
111 名前:パク@紹介人 投稿日:2001年09月26日(水)13時57分03秒
こちらの小説を「小説紹介スレ@青板」に紹介します。
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=blue&thp=1001477095&ls=25
112 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月02日(火)12時15分24秒
続き楽しみに待っております
113 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月17日(水)21時01分42秒
続きかなり楽しみにしてます
114 名前:グェン 投稿日:2001年11月05日(月)03時47分42秒
>112さん、113さん
  申し訳ありません。
  近々更新します。話は一応最後まで出来ているので、ご安心を。
  
>パク@紹介人さん
  ご苦労様です。ありがとうございました。
115 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月06日(火)00時36分25秒
おもしろいです。
ところで、題名ってどういう関係があるんですか?
116 名前:考え中@33 投稿日:2001年11月08日(木)05時43分17秒
28時。
あれだけいた客もまばらで、最終的にはいつものメンバーが残る。
紗耶香、ひとみ、クラブから帰ってきた圭、彩、圭織・・・はすでに寝てしまっているが。
この店を初めて訪れた梨華にマスターの平家。

いつのまにか紗耶香もひとみも、彩の話に加わっていた。
その間梨華は紗耶香の横で、深刻そうな話に眠たい目で必死に耐えていた。
「まぁさ、明日香もわかってくれるよ。年の割にしっかりした子だからさぁ」
「ん、そうなんだよね。あの子はしっかりしてる。だからいままでこんなケンカはなかったんだと
 思う。でも、それが余計に問題なんだよね。私たちはケンカ慣れしてないってことがさ」
117 名前:考え中@34 投稿日:2001年11月08日(木)05時44分46秒
彩は昨日、会社で海外転勤を言い渡された。
彼女の勤めるデザイン会社のイタリア支部への転属だ。
もちろんそれは将来を有望視された上でのこと、会社の同僚からは様々な祝いの言葉をもらった。
・・・が、高校生の明日香には「遠距離恋愛」現実を突きつけることとなる。
思い悩んだあげく、昨日のイベントでそのことをつげた。
仕事が忙しく、久しぶりに会えた昨日のイベントで。
彩は最悪のタイミングで明日香に告白をしてしまったのかもしれない。
しかし、これを逃せば今度会えるのは空港にもなりかねない。
電話なんかで伝えたくはなかった。しかし、やはり彩の選択は間違いだった。
「きっとさ、明日香はビックリしちゃったんだよ」
「・・・・・・・・・」
118 名前:考え中@35 投稿日:2001年11月08日(木)05時45分44秒
本当はこの貴重な休みを2人で過ごすはずだった。
しかしいくら連絡をしても、ケイタイの電源は切られたまま。
家に行ってみても母親から「具合が悪いみたいで・・・」と言われただけであった。
「いつ・・・行っちゃうんだっけ?」
「来月末には・・・」
「それまで休みはないの?」
みんな彩の忙しさは知っていた。
イベントで会えたとしても、それは5日の徹夜明けで、踊ることもなく明日香の隣で寝ている姿。
朝のデニーズにも参加せずに、そのまま会社に行くことがほとんど。
「いまが大事な時期だから」
それが彼女の口癖だった。


「私と離れるためにがんばってたの?」


明日香の言葉が突き刺さったまま、胸が焼けるようにイタイ。



119 名前:考え中@36 投稿日:2001年11月08日(木)05時46分56秒
「引継ぎの整理しなきゃ」
そう言って、彩は会社に向かった。
この人はいったいいつ寝てるのか・・・。

「結局何も言ってあげられなかったなぁ・・・」
「紗耶香だけじゃないよ。私も・・・」
「遠距離恋愛かぁ・・・」
ひとみのつぶやいた言葉が紗耶香には特別に聞こえた。
彩ほどではないが、紗耶香にもこの先待ち受けているかもしれないコト。
120 名前:考え中@37 投稿日:2001年11月08日(木)05時49分21秒
「もう、閉めんで・・・まぁ、どうせここで寝てくんだろうけど」
「さすがみっちゃん、わかってるねぇ」
「明日はどうする?」
「公園でも行って昼寝しよっか?」
「はは、いーねぇ」
「梨華ちゃんはどうする? もう、始発走ってるけど?」
「あ・・・」

一緒にいたい。

「今日は帰ります」

一緒にいたい・・・とは言えなかった。
何故だかここにいることが、悪いような気がした。
この輪を壊してはいけないような気が・・・。
「そっか・・・」
「何? 紗耶香? 寂しいの?」
「バッ・・・!! そんなんじゃねーよ!!」
グサリ。
梨華にはその言葉がイタイ。
神様。世界中の乙女が心を痛めています。
121 名前:考え中@38 投稿日:2001年11月08日(木)05時53分43秒
「ほらほら、あんま、からかったら紗耶香がキレんで?」
「ひとみ、そんくらいにしときなよ。紗耶香も、ちゃんと送ってあげんだよ?」
「は〜〜い」
「わかってらい! 行こう、梨華ちゃん!!」
「あ、ごちそうさまでした」
「またきてや〜〜!」
ドアを閉めても声が聞こえる。

(紗耶香、送り狼になんないかなぁ?)
(いや、むしろそんくらいがえーねんて)
(あれでおくてだからなぁ・・・)

紗耶香はたまらず振り返って怒鳴った。
「聞こえてるよ!!」
するとドアが少しだけ開いて、上から、平家、圭、ひとみが「トーテムポール」のように顔を覗かせる。
「梨華ちゃん、気をつけてね〜〜〜! 紗耶香に!!」
梨華の手を引いて紗耶香が走り出した。
122 名前:考え中@39 投稿日:2001年11月08日(木)05時55分40秒
表通りまで出ると紗耶香は自然と手を離す。
薄明かりの中赤い顔がバレないように、梨華はうつむいた。

「ホント、ごめんね? バカな友達ばっかでさぁ」
「そんなことないよ。今日はすっごく楽しかった!」
坂を下るともうすぐに駅についてしまう。
始めて来た場所だけど、それくらいはわかる。
梨華は少し歩幅を縮めて歩くようにしてみた。
「そっか、良かった。バカだけどさ、市井にとっては最高の友達なんだ!」
全開の笑顔で嬉しそうに話す紗耶香。
その歩幅は梨華に合わせていた。
「紗耶香さんって・・・優しいね」
「え!? 市井がぁ? そっかぁ?」
「うん」
そっかぁ? どこがぁ?
あれこれ色んなトコを見て目を合わせようとしない彼女はシャイなのだ。
123 名前:考え中@40 投稿日:2001年11月08日(木)05時56分43秒
朝の渋谷は疲れてる。
クラブ帰りの若者が死んだような目をして、それぞれの家路につくのだ。
そんな中、ハチ公はいつまで待ちつづけるのだろう?
願わくば、彼女たちの待ち人も早く現れますように・・・

「電話、してもいいですか?」
「もちろん! いつでもどうぞ〜〜」
改札越し、梨華はためらいがちに手を振った。
その姿を見届けて紗耶香は平家の店へと戻ってゆく。
梨華は電車の中一人想いをはせていた。
始発列車はゆっくりと動き出す。
とても、ゆっくりと。
124 名前:考え中@41 投稿日:2001年11月08日(木)06時00分53秒
「・・・ん、んん〜〜?」
「矢口ですけど」
「はぁ、市井ですけど・・・!?」
「?? 寝ぼけてんなぁ〜〜。おきろ〜〜〜!! 矢口だぞ〜〜〜〜!!」
「へ!? やぐち!?」

千葉。
自宅。
突然の電話の主は矢口真里。
水曜日の夕方。
バイトから帰ってきて4時間後の出来事。
「おう、やっと目が覚めたかね」
「はい。覚めました・・・って、マジで矢口?」
「なんだよ、まだ寝ぼけてんの? また後でかけよっか?」
「いや、いいっす! 起きました、起きました!!」
紗耶香はベッドから飛び起きて何故だか正座状態。
「あんさ〜、今日ってイベントあるよねぇ? ほら、こないだのDJの・・・」
「ああ、DJイナバの? 確か・・・ブルーでやるよ。ブルーラボ」
「ん〜っと、西麻布だっけ? 矢口行きたいんだけどさ、場所がわかんないんだよ・・・」
125 名前:考え中@42 投稿日:2001年11月08日(木)06時02分16秒

それってお誘いっすか!?


「いちーわかるよ!!」
「あは、よかったぁ。一緒に行ってくんない?」
「もちろんっす!! OK! 大OK!!」
「んじゃ、12時位に待ち合わせしよっか?」
「うん、うん。じゃ、六本木アマンドで待ってるよ。六本木からでも近いからさ!」
「あ、そうなんだ。じゃ、アマンド前ね」
「アマンド前ね!!」
「じゃぁね」
「ほいほ〜〜い!!」

以外にもあっさりとデート成立。
落ち着いて電話を切った後、紗耶香はいてもたってもいられなくなってガッツポーズを決める。
「おっしぁ〜〜〜〜!!」
頭の中には梨華の存在はなかった。
この辺が「タラシ」と言われてしまう由縁だろうか!?
この後に起こる事も知らずに紗耶香はしばらく小躍りを続けた。
126 名前:グェン 投稿日:2001年11月08日(木)06時16分11秒
自爆・・・。自らageてしまった・・・ホントに死にたい。
定期更新をしている作者様ごめんなさい。

>114 で書いた「最後まで・・・」ってのはあくまで自分の中でなんです。
紛らわしかったらごめんなさい。最後が決まってるとなんだか途中のエピソードが
飛び飛びの急展開になってしまうなぁ。焦るな、自分。
ホント、読みづらくてごめんなさい。更新遅いし(TΔT)

>115さん
  読んでいただきましてありがとうございます。
  題名ってのはおそらく「True Love Story」のことですよね?
  実は書き始めるにあたって、適当に付けました(w
  自分自身気に入ってなかったのでこの機会に変えたいと思います。
  何がいいっすかねぇ?って、自分で決めろってなぁ・・・(1人ツッコミスマソ…
127 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月14日(水)08時30分02秒
タップリ更新ありがとうはあとはあと
128 名前:value 投稿日:2001年11月14日(水)12時08分15秒
>127
sageようぜ。ま、作者さん自らageてるから気持ちはわかるけどな(w

お待ちしてました。
市井の横っちょ座って話を聞くりかっちに萌えまくりです!
月一でもいいので、続けて下さい。
129 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月17日(土)04時38分16秒
ヤター。待っていたかいがあった。
130 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月16日(日)02時40分58秒
まだ?
131 名前:グェン 投稿日:2001年12月25日(火)20時10分53秒
今年は放置してごめんなさい。
来年はもっと更新できると思いますので、見捨てないでやってください。
それでは、良いお年を…(って、まだクリスマスですが)
132 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月22日(火)14時34分45秒
そろそろ更新してちょ
133 名前:42 投稿日:2002年01月24日(木)02時16分48秒
今日の待ち人は矢口真里。
10分前に到着してウェンディーズでコーヒーを購入。
アマンド前で華やかに着飾ったおねぇさんを観察する。
1本目のタバコを消したところで、小さな女の子が現れた。
時計を覗くと、待ち合わせの時間、5分前。
どうやら彼女も時間にはしっかりしてるようだ。

「ゴメン! 待ったぁ?」
「ちょーどタバコ吸い終わってマッタリしてたとこっす」
「そ? んじゃ、行こっか」

原色の赤にオレンジのペンキをこぼしたかのようなキャミソール。
デニムのひざ丈スカートはスリットが入っててちょっとエロい。
ギャルファッションが嫌に感じないのは、矢口のサバサバした性格があってのモノだろう。
紗耶香はニヤケ顔を隠すように、ズズッとコーヒーを飲み干した。
空になった紙コップに吸い殻を入れて、ごみ箱に。
顔を造り直して、

「い、行きましょーか」
「おう!!」

交差点を渡って麻布方面へと慣れた道を行く。
小さな矢口の歩幅に合わせることを忘れない。
チラリと横に彼女がいることを実感して、紗耶香は含み笑いを隠すように口元をさすった。
134 名前:43 投稿日:2002年01月24日(木)02時18分12秒
しばらく行くと、人影がまばらになる。
六本木通りを行き交う車は、高級車と空車のタクシーがほとんどで、日本経済の縮図を見ているようだ。
次の角を曲がって少し行けば、お目当てのクラブに到着する。
そこで紗耶香は思い出したように声を上げる。

「ああ、確かあそこさ、再入場できないんだよ」
「えー、マジでぇ?」
「うん、だからさ、盛り上がってくる2時前くらいまでお茶でもしてない?」
「その方が無難だね」

2時に入店するのなら、もっと遅くに待ち合わせをすればよかったハズである。
近くにいいカフェがあるから、というのは計算尽く、初めから紗耶香の目的は
お茶することに重点が置かれていた。
クラブでは音が大きくてまともに話せないし、相手も自分も踊りに夢中になってしまう。
特に今日のようなトランスイベントなどはそうだ。
以前にも自分が誘って連れてきたのにもかかわらず、その女の子を放って踊り狂ってしまい、
気が付いたらその子は帰っていた・・・。なんてことがあった。
もちろん、怒りのメールがオマケに付いていたコトは、言うまでもない。
135 名前:44 投稿日:2002年01月24日(木)02時19分22秒

「ここのシフォンケーキが美味いんだよ。あ、ケーキ好き?」
「だいすっきぃ!!」
「へへ、いい顔すんなぁ。んじゃ、いちーが奢ったげるよ」
「マジ? ラァッキー!」

小犬のようにつぶらな瞳を輝かせる矢口は、紗耶香の心をくすぐる天才のように思える。
それから2人は雑談を交わして、時間をつぶした。



紗耶香はたくみに話を振って矢口に色んな事を聞いた。
音楽の趣味から夢の話。
気になる恋人は現在募集中らしい。
夜の仕事だからといって、お水のおねぇさんではないことも発覚した。

「そっかぁ、もしかしたらなんて思ったけど、やっぱそれは有り得ねーよな!」
「ああ? それどういう意味だよ! 矢口に色気がないからムリってことぉ??」
「い、いや。・・・そういうことなんだけどさ」
「キーーーーッ!! ぜってーセクシーなおねぇさんになって、紗耶香を見返してやる!!」

矢口はハンカチを噛むような仕種を見せた。
紗耶香はそんな矢口をなおも煽る。
136 名前:45 投稿日:2002年01月24日(木)02時19分56秒
「はぁ? セクシー!? まぁ、人間、頑張るのは、いいことだと思うよ?」
「ムカツク言い方!」
「ははは。応援してるよ。でも、今のまんまで充分可愛いと思うケドな。市井は」
「・・・・・・騙されねーぞ」
「ん?」
「そうやって、女の子タラシ込んでるんだろう!」
「っな! 人聞き悪いなぁ。そんなことしなよ!!」
「どーだか」

大げさに首と肩を振って紅茶に口を付ける。
紗耶香は身を乗り出して弁明を続けるが、矢口は「聞く耳持ちませ〜ん」という姿勢。
しばらく矢口の紗耶香イジメは続いて、紗耶香の一生懸命な姿に吹き出す頃、
ちょうど2時前に店を後にした。
137 名前:46 投稿日:2002年01月24日(木)02時20分56秒
一見何の変哲も無い建物に見える。
青い看板とかすかに漏れてくるベース音だけが、このクラブの目印だった。
エントランスを抜けるとラウンジスタイルのバースペースが広がる。
迷路状に入り組んだこのクラブの最初の空間だ。
ダンスフロアに足を踏み入れると、ショーの始まりを待つ大量の人達の熱気に圧倒される。
紗耶香は矢口の手を取って、なんとか人並みを掻き分け進む。

「矢口ダイジョーブ? 潰されないようにね」
「お、おー・・・」

言った側から矢口は、踊りに夢中の若者にタックルされそうになる。
慌てて手を引くと、わ〜りぃわりぃと笑顔で謝る姿にホッとした。

フロアの中央近くで見慣れた顔を発見。
ダンスフロアの切り込み隊長、圭である。
一緒にいるのは先日のイベントには来れなかった裕子。
こちらに気付いたのか2人とも踊るのを止め、笑顔で迎えてくれた。

「おーっす! 紗耶香おっそいよ!!」

圭はすでに汗だくで、DJの調子の良さが伺える。

「おう、ひさしぶりー! って、もしかして・・・矢口?」
「ひさしぶり。裕ちゃん・・・だよね?」

元々矢口と出会ったのは、裕子と2人で行ったイベントだった。
138 名前:47 投稿日:2002年01月24日(木)02時21分42秒
「なんや2人ともできとんかい!」
「いやー、実は・・・
「ち、違うよ。矢口がここわかんないから、一緒に来てもらったんだよ!」

ニヤケた紗耶香の肯定を遮って矢口が大声で否定する。

「矢口ぃ、何もそんなに力一杯・・・」

泣くふりをすると矢口もなんだか申し訳なくなって「ごめんよぅ」なんて言いながら、
高い場所にある紗耶香の頭を撫でてくる。
そんなコントみたいなやり取りに終止符を打ったのは圭だった。

「まぁまぁお2人さん、もうすぐショーが始まるよ!」
139 名前:48 投稿日:2002年01月24日(木)02時22分57秒


ほどなくしてステージでは人気ハウスシンガー、ルルのライブが始まった。
矢口はルルのファンらしく、今日も本当はこれが目当てだとさっき聞いたばかり。
ライブ中の矢口は食い入るようにステージを見つめて、時々口ずさんでたりもした。

(ホントに好きなんだなぁ・・・)

前の方には来れたが、それでも人が多くて、小さい矢口は目線を遮られるのか、ぴょんぴょんと跳ねる。
途中、よろけて腕を掴まれた時に紗耶香はドキリとした。

ステージと矢口を交互に見て、紗耶香には幸せなひとときを過ごす。
しかし3曲でライブは終わってしまった。
ファンじゃなくとももう少し聞いていたかったが、それは狙いだったみたいで、
「アトはCDできいてクダサイ。エントランスでうってマ〜ス」そう言い残してルルはステージを後にした。

「あ〜ん! もっと聞きたかったよー!! CDなんて毎日聞いてるっつーの!!」
「確かにちょっと短いような感じしたね」

もちろん紗耶香は別の意味でも短く感じたのだが、敢えてそれは言わないでおこう。
矢口の遠吠えに食いついたのは、紗耶香だけではなかった。

140 名前:49 投稿日:2002年01月24日(木)02時24分04秒
「おぉ! 矢口、ルルのファンなん?」
「うん。最近知ったばっかだけどさ」
「いぃ〜ねぇ〜。ちょっと向こうで話しせーへん? ルルばな」
「はは、いーねー! ルルばな!!」

そういえば裕子もルルのファンだったことを今になって思い出した。
矢口を気にしてばっかりいたからだろうか?
に、しても、2人の盛り上がりは急上昇。
紗耶香は隣にいることを忘れられているように感じた。

「紗耶香!」

裕子の声にはっとしてマヌケな顔でかえす。

「んぁ、何?」
「おう、生きとったか。矢口、ちょっと借りんで?」
「あ、うん・・・」
「向こうのラウンジにいるから」
「あー、じゃあ踊ってるね。いってらっしゃい。後で圭ちゃんと行くよ」


なんともあっさりと裕子に持っていかれてしまった。
確かに矢口は紗耶香の何でもない。
いや、矢口が彼女だったらもっと快く応えられたかもしれない。

もやもやとした気持ちを振り払うように、紗耶香は踊り続ける。
それにつられた訳ではないだろうが、今日の圭はいつもより激しく踊っていた気がする。
半ばヤケクソだった紗耶香は、その顔が怖かったことしか覚えていない。

141 名前:グェン 投稿日:2002年01月24日(木)02時40分18秒
皆さんのレスは心の応援団♪ (マジで

>127さん
  今回も少し多めにしてみました。
  更新が遅いのに量も少ないってのは、やっぱ酷すぎますよね。
  ageちゃったことに関しては気にしないでください。
  128さんも言ってますとおり、自分みずからageちゃう時あるんで。  

>128さん
  お待たせしました。最近は月一にもなってないですね・・・(反省
  >横っちょ・・・
  気付いていただけましたか(w

>129
  まだ待ってくれてる?
  本当にお待たせしました(反省・・・

>130さん
  更新しましたぁ〜!!
  お楽しみいただければ幸いですぅぅ

皆さん毎度毎度・・・お待たせしましてごめんなさい!
短編集に参加してみたり、さやまり・いしよしにハマってみたり、「いちいしってアリなのか?」と悩んでみたり、
挙句の果てに違うものを書いてみたりで、放置しすぎました。
地道に書いていきますので、お付き合いいただけたら嬉しいです。
142 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月25日(金)03時03分28秒
やっぱおもしろいわ。ここ。
読み終わると遊びに行きたくなる(w
たまーに覗くからのんびりと続けてってください。
143 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月18日(月)10時23分14秒
更新されていたことに今ごろ気づきました(遅!
また新しいクラブが出てきましたね。142さん同様、おいらも遊びに行きたくなった!

短編も読んでましたよ〜。「GET」が(w
144 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月08日(金)10時23分50秒
まだっすかね?
145 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月31日(日)23時52分21秒
期待sage
146 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月31日(日)23時57分14秒
期待sage
147 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月15日(月)16時10分50秒
いつまでも待っております。
148 名前:-50- 投稿日:2002年04月19日(金)18時57分41秒

たっぷりと5曲分踊り終えた後、紗耶香は圭を止めてラウンジに向かうことにした。
ダンスフロアを抜け出すと、紗耶香は真っ先にタバコに火を付けた。
このクラブの暗黙のルールで、ダンスフロアの中では吸えないのである。
その時、圭が紗耶香を突付きながらニヤニヤと覗き込んできた。

「な、なに?」
「ん〜? いや、さっきのさ、矢口・・・だっけ? あんた狙ってんでしょう」

図星。
・・・・・・なのだろうか?
紗耶香は自分でも良く分からない感覚に襲われた。

「あら。・・・裕ちゃん達のトコに行く前に、ちょっと話そうか。ちょっと待ってて」

そう言って、圭は小走りに近くのバーカウンターへ向かう。
目で追ってみたが、すぐに戻ってきた。

「お待たせ、はい。クアーズでよかった?」
「ん、サンキュ」

プルトップが小気味良い音をたて、泡が小さく吹き出す。
形式上の乾杯を軽くして、圭は待ちきれないとばかりにビールをあおった。
喉を鳴らして半分近くまで飲み干すと、声にならない快感がその顔から見てとれる。
ショーの後、ダンスフロアから出てきた人達が、そこかしこで談笑に花を咲かせていた。
149 名前:-51- 投稿日:2002年04月22日(月)15時31分44秒
2人も例外ではないなずなのに、紗耶香の顔は曇りがち。

「矢口ね。イイコそうじゃん。相変わらずのタラシだねぇ」
「なんだよそれ」
「だって、こないだは梨華ちゃんの横でニヤニヤしてたクセにさ」
「・・・・・・」

苦笑いを通り越し、明らかにバツの悪い表情に変わる。
「クール」とも言われる紗耶香だが、実はもの凄く感情豊かで、こと自分の事になるとポーカーフェイスを保てなくなる。
余裕が無くなるのは本気だからだろう。
遊び仲間の中で紗耶香の最も古い友人である圭は、そのことを充分理解していた。

「梨華ちゃんねぇ・・・」
「ん?」
「イイコなんだけどさ、なんつーか・・・あんましゃべんないしさ。あー、市井の前では結構話すんだけど。
なんだろ? 市井的には、友達とも仲良くなってほしいんだよね。やっぱ恋人には、みんなで遊ぶ時とかにもいて欲しいし」
「人見知りしてるだけなんじゃん? ほら、こないだは大勢いたし」
「・・・ん、でもさ、なんだろー? 2人でしゃべってる時も思ったんだけど、なんつーか、ネガティブ? っぽいんだよねー」
「ネガティブ・・・それはちょっと嫌かも」
「でしょー?」
「そう言われてみれば、そんなカンジするね。あのコ」
150 名前:-52- 投稿日:2002年04月22日(月)15時33分23秒
灰皿を探すとタバコをねじこむ。
手持ちぶたさからビールを一口飲み込むと、特有の苦みがタバコの味を忘れさせるように広がった。
すぐ後、今度は圭が火を付けた。
ガラムの甘い匂いが鼻に付く。

「その点、矢口はあんな感じじゃん?」
「あー、気さくだよね。共通する趣味があったからって、あの裕ちゃんと対等に話してるのは凄いかも」

こういったクラブで特に珍しい訳ではないが、裕子の金髪碧眼(カラコンだけど)につりあがった眉、
そしてあの関西弁とねぇさんキャラは、他を圧倒する雰囲気がある。
梨華が裕子に冗談でも睨まれようものなら、一発でノックアウト確実だろう。
同じ金髪の同族意識か、矢口はそんな裕子と物怖じせずに話してる。
まぁ、2度目という事も手伝っているのだろうが。

「そろそろ行こうか? このままじゃ裕ちゃんに取られちゃうわよ。あの人も手が早いから」
「ん、そうだね。って、裕ちゃんにはなっちがいるじゃんか!」
「そうだけど、アノ裕ちゃんのことだから、油断しない方がいいわよ」
「・・・確かに」
151 名前:-53- 投稿日:2002年04月22日(月)15時37分11秒
裕子にはなつみという彼女がいる。
あまりクラブには来ないのだが、平家の店には裕子と何度か来たことがある。
なつみは音楽の専門学校に通っていて、紗耶香、圭とはバンド仲間だ。
紗耶香はギターボーカル、圭はベース、なつみはキーボードと作曲を手がけている。
同じバンドにはひとみと圭織もいる。
ひとみがギターで、圭織がドラムと作詞担当。
裕子となつみを引き合わせたのも紗耶香だった。
たまたま平家の店に1人で来ていたなつみをナンパして、裕子に紹介したのが始まり。
その時はなつみに対して、さほど本気ではなかった。
だから祝福もできたのだが・・・。

「どうにかなっちゃう前に裕ちゃんを止めなきゃ。なっちに申し訳ないや」
152 名前:グェン 投稿日:2002年04月22日(月)15時49分00秒
お久しぶりです。
復活したことに最近気付いたオイラです。
よくぞ消えなかったもんだなー。と感心してる場合ではないんですよね。
PCトラブルで間が空きましたが、一応更新です。

>142
  ありがとうございます。
  これからも遊びに行きたくなるようなものを書きたいと思います。

>143
  「ブルーラボ」は実在している某有名クラブをモデルにしています。
  もしよかったら探して行ってみて下さい。

>144
お待たせしました。

>145・146
  ご期待に添えたかどうか・・・?

>147
  本当にお待たせしました。

これからも「たまーに更新」ですが、書きつづけますのでよろしくです。

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