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THE PRINCESS OF MERMAID
- 1 名前:道化師 投稿日:2001年01月15日(月)00時57分25秒
- 初めまして、道化師といいます。
以後ヨロシクお願いします。
少しずつですが、書かせていただきます。
苦情でも何でもいいので、意見を聞かせてもらえたら嬉しいです。
それでは、始めさせていただきます。
- 2 名前:道化師 投稿日:2001年01月15日(月)01時02分37秒
- (…う〜ん、いい気持ち…。今日も一日頑張るぞぉ〜!)
朝だ。時計に目をやると、針は7時半を指している。
いつもなら、まだぐっすり夢の中という時間だ。
なぜだかわからないけど、久しぶりにこんな朝早くに目が覚めた。
窓からはレースのカーテン越しに光が差し込んでいる。
外は晴れていて、時折小鳥の鳴き声が聞こえてくる。
私は大きく背伸びをし、窓の外をぼ〜っと眺めていた。
「はあ〜…」
私は肩の力を抜いて、軽く息を吐いた。
ガチャ…
不意にドアの開く音がした。
(ん、誰だ? こんな朝早く…)
- 3 名前:道化師 投稿日:2001年01月15日(月)01時08分55秒
- 「おっはよ〜!! 朝だぞ〜!」
ドアが開くなり、大声が部屋中に響いた。
私は耳を押さえながら、開いたドアの方を見た。
そこには、笑顔で「どうだ!」って感じの顔をした市井ちゃんがいた。
「…って、あれ? もう起きてたの? まだ寝てると思ってたのに」
市井ちゃんは少し残念そうな顔をして両手を広げた。
「おっどろいたな〜、もう…」
私はほっと一息ついた。
市井ちゃんは信じられない光景を見るような顔で、私の顔をマジマジと見つめている。
「どうしたの? いつもならまだ寝ている時間じゃない。
はっはぁ〜、今日は何かあるんだな? デートか? ウリウリ、そうなんだろ?」
市井ちゃんはニヤニヤ笑いながら、私を肘で突付いた。
「そんなわけないよ〜! ただ目が覚めただけ」
私は手を横に振りながら答えた。
「な〜に、どうしたの? そんなに顔を赤くして。ま〜たまた照れちゃって。
かわいいなあ、後藤は。ホント、かわいいなぁ…」
市井ちゃんは赤くなった私の顔を見て、さらにニヤニヤしている。
「だから違うってば!」
私は必死に否定した。
たぶん、私の顔はもっと赤くなってるだろう。
「いいのよ、そんなに照れなくても…」
「だから違うんだって!」
「まあまあ、みんなには秘密にしといてやるから、早く顔洗ってきなよ」
市井ちゃんは顔を真っ赤にして怒る私をなだめながら言った。
私はうなづき、洗面所に向かった。
「う〜ん、なんでわかってもらえないかな〜。ったく…」
私は不満気に呟いて階段を降りて行った。
- 4 名前:道化師 投稿日:2001年01月15日(月)01時12分30秒
- バシャバシャバシャ…
私は急いで顔を洗うと、タオルを手に取り、顔を拭きつつ鏡を見た。
(別に何も変わったところはないよね…、うん)
私は鏡を見ながら、心の中で自分に言い聞かせた。
「おはよ! ごっちん」
背後から声がした。
鏡越しに、ノーメイクのやぐっつぁんの姿が見えた。
まだ起きたばかりなのか、左手で目を擦りながら右手を上げている。
「おっはよ〜! やぐっつぁん」
私はタオルで拭きながら笑顔で言った。
「どうしたの、ごっちん? 今日は静かだね。いつもなら元気よく『おっはよ〜』って言ってくるのに…」
やぐっつぁんが首を傾げて言った。
(……ん? 静か? だって、さっき「おっはよ〜」って言ったじゃん)
「どしたの? ごっちん。そんな怖い顔をして…」
やぐっつぁんはマジマジと私の顔を見つめている。顔を洗うのも忘れたまま。
「あ、ごっちん、どこに行くの?」
私は顔を拭くのも忘れたまま部屋へと戻った。
- 5 名前:道化師 投稿日:2001年01月15日(月)01時14分27秒
- タッタッタッ…
私は走った。
途中、裕ちゃんを見かけたが、私はそのまま走り続けた。
「どうしたんや、後藤。深刻そうな顔をして…」
中澤は走る後藤を目で追いながら呟いた。
中澤は首を傾げたまま、その場に立ち尽くした。
「ま、私の気のせいか…。後藤のことや、また部屋に忘れ物でもしたんやろ」
中澤はそう呟くと、再び歩きだした。
- 6 名前:道化師 投稿日:2001年01月15日(月)01時17分56秒
- 私は急いで部屋に戻った。
途中、何人かのメンバーとすれ違ったが、誰が誰だか私の目には映ってなかった。
部屋に着くと、そこにはまだ市井ちゃんの姿があった。
市井ちゃんはベッドの上に座ったまま私を見た。
「どうしたの? 後藤。そんな深刻そうな顔をして…。何かあった?」
市井ちゃんは心配そうに声をかけてきた。
「ううん、何でもない何でも…」
私は苦笑いを浮かべて首と手を振りながら答えた。
「あのさあ、市井ちゃん…」
私はうつむいたまま言った。
「何? 後藤。聞こえないよ、もっと大きな声で言って」
「今日の私、どこか変かなぁ?」
私はさっきより大きな声で言った。
「だから、何なの?」
が、市井ちゃんは聞こえていないような顔をした。
「さっきから言ってるじゃん。もう! 市井ちゃんなんか、大っキライ!」
私は市井ちゃんを睨みつけて、そのまま部屋を出た。
「…ったく、どうしたんだ? 今日の後藤、何かおかしくない?」
市井は誰もいない部屋で、誰かに問いかけるように言った。
- 7 名前:道化師 投稿日:2001年01月15日(月)01時28分25秒
- 私は走って部屋を出た。
途中、辻ちゃんと加護ちゃんを見かけたが、私はそのまま走り去った。
「あ! 後藤さん、どうしたんですか? こんな朝早くから…」
「おはよ〜ございます! …って、あ、あれ?」
辻はいつもの調子で声をかけた。
加護は丁寧にお辞儀をしたが、途中で慌てて頭を上げた。
「どうしたんだろうね? 後藤さん」
辻は加護の方を見た。
「う〜ん、…わからへん」
加護は首を横に振って言った。
「朝から走ってるなんて、今日は何かあるのかな?」
「何かって?」
加護が傾げていた首を上げた。
「う〜ん……マラソン大会とか」
「んなわけあるかい!」
ポカッ!
加護は思わずツッコミをいれた。
「痛いよ、あいちゃん……うう〜…」
辻は頭を押さえて、涙を目に溜めながら言った。
「ゴメンゴメン。つい、いつものクセで……。…にしても、何なんやろなあ?」
加護は両手を顔の前で合わせ、苦笑しながら言った。
「う〜……」
辻と加護は顔を見合わせた。
「………………………」
しばし沈黙が続く。
次の瞬間、その沈黙が破れた。
「そうだ! あいちゃん」
辻は何を閃いたのか、手をポンと叩いた。
「何? ののちゃん」
「朝ごはんを食べに行こ!」
「うん!」
加護がうなずくと、辻は加護の手を取った。
二人はスキップをしながら部屋へ戻った。
- 8 名前:道化師 投稿日:2001年01月15日(月)01時31分12秒
- タッタッタッ…
何も考えず走っていると非常階段に着いた。
私はそのまま階段にドスンと座った。
(やぐっつぁんも市井ちゃんもどうしたのかなぁ…。
さっきからちゃんと喋ってるのに…。私のこと嫌いになったのかなぁ…)
私はがっくりと肩を落とし、深くため息をついた。
(けど、なんで聞こえてないんだろ…? なんか、おかしかったよね、あの反応…)
私は首を傾げ、またため息をついた。
- 9 名前:道化師 投稿日:2001年01月15日(月)01時36分05秒
- ――その頃。
疑問を疑問に終わらせようとせず、謎を解決しようとしている人物いた。
「う〜ん、何かおかしかったよね、さっきの後藤…。いつもの声が聞こえないし…。何が起きたんだ?」
――市井紗耶香である。
市井は自分に言い聞かせると、何を思い立ったのか、突然ベッドから飛び降りた。
「よし、いっちょ探ってみるか! とりあえず…」
市井はどこからともなく帽子とマントとパイプを取り出すと、それを身につけた。
「…やっぱ、この名探偵セットは必需品よね〜」
市井はパイプを口にくわえて腕を組んだ。
「いいかも…。じゃ行くか」
そう言いながら帽子を被り直すと部屋を出た。
- 10 名前:道化師 投稿日:2001年01月15日(月)01時41分40秒
- 市井は階段を下りて、洗面所へと向かった。
「最初、後藤はここに来たんだよね…」
市井は確認するように自分に言い聞かせた。
洗面台を見た。が、使った形跡があるものの特に変わった様子はない。
市井は大きな虫メガネを取り出して周りを注意深く確認するが、
何も変わった所は見当たらなかった。
「う〜ん、何も変わった所はないか…」
市井はがっくり肩を落として洗面所を出た。
(…となると、何だ? う〜ん…。よし、メンバーにでも聞いてみるか…)
市井は他のメンバーの部屋へと向かうことにした。
(とりあえず、裕ちゃんから…)
市井は中澤の部屋へと向かった。
- 11 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月15日(月)03時18分23秒
- 市井が、探偵の格好してるのが絵に浮かんだよ!?
どのような話になるか楽しみにしてます、頑張って下さい。
- 12 名前:道化師 投稿日:2001年01月15日(月)23時10分58秒
- >11さん
どうもです。頑張らせていただきます。
それでは、いってみよ〜→!!
- 13 名前:道化師 投稿日:2001年01月15日(月)23時12分08秒
- コンコン…
中澤の部屋のドアの前で立ち止まり、ノックした。
シーン…
反応がない。誰もいないようだ。
「あれ? いないのかな?」
しかし、市井はそのことに気付こうともしなかった。
コンコン…
もう一度ノックした。
シーン…
反応がない。
(寝てるのかな、裕ちゃん…。よぉ〜っし!)
「おっはよ〜!! 裕ちゃん、朝だよ〜!」
今度は大声を出しながらノックしてみた。
シーン…
……が、やはり反応がなかった。
「いない……みたいだね。しゃあない、なっちの所に行くか…」
市井は軽くため息をついて、別の部屋へと向かった。
- 14 名前:道化師 投稿日:2001年01月15日(月)23時15分15秒
- 安倍の部屋に着いた。
コンコン…
さっきと同じようにノックした。
シーン…
反応がない。
(あれ? なっちもいないのかな?)
コンコン…
もう一度ノックしてみた。
「はあ〜い! 誰〜?」
今度は、中から声がした。
「あ、私、市井ちゃんで〜す!」
市井はすかさず返事をした。
「ちょっと待っててね…」
(よかった〜。また人がいなかったらどうしようかと思ったよ)
市井はホッと胸を撫で下ろした。
- 15 名前:道化師 投稿日:2001年01月15日(月)23時22分24秒
- しばらく待つとドアが開き、中から寝ぼけ眼の安倍が出て来た。
今起きたばかりなのか、パジャマ姿で髪の毛はくしゃくしゃのままだ。
安倍はあくびをしながら右目を擦っている。
(あちゃ〜…。なんか悪いことをしたなぁ…)
市井はバツの悪そうな顔をした。
「おはよ。ゴメンね、なっち、朝早くから…」
市井は苦笑しながら言った。
「ゴメンね。さっき起きたばっかだから…」
そういうと、安倍はしきりに跳ねた髪を押さえつけようとした。
「で、ど〜したの? こんな朝早くから…」
「後藤を見なかった? ……って、見たはずないか…」
「うん。ゴメンね、役に立てなくて…」
安倍は申し訳なさそうに言った。
「い、いや、こっちこそゴメン。気持ち良く寝てる所を起こしてしまって…」
「いいよ、気にしなくて」
安倍は首を横に振り、慈悲深い笑みを浮かべた。
- 16 名前:道化師 投稿日:2001年01月15日(月)23時26分36秒
- 「アリガト、なっち。それじゃ、また後でね…」
「うん。ゴメンね、紗耶香…」
「いいっていいって。悪いのはこっちだし…」
市井は苦笑しながら言った。
ガチャ…
「見つかるといいね、ごっちん」
安倍は心配そうな顔をしながらドアを閉めた。
市井はしばらく閉じたままのドアを見つめていた。
「う〜ん、なっちには悪いことしたなぁ…。次行くか…」
市井は頭をかいた。
「どうしよっかな〜、これから…」
市井は腕を組みながら歩きだした。
「次は圭織か…。圭織には悪いけど、期待できないんだよね、ちょっと…」
市井は苦笑を浮かべながら歩く。
- 17 名前:道化師 投稿日:2001年01月15日(月)23時35分23秒
- ここからは、視点が「後藤真希」と「市井紗耶香」の2人で頻繁に入れ替わるため、
名前を「phase of Maki」と「phase of Sayaka」にわけて書きます。
- 18 名前:phase of Maki 投稿日:2001年01月15日(月)23時40分05秒
- (はっ! 私、いつの間にか寝ちゃってた…?)
私はハッと目を覚ました。
いつの間にか、眠っていたらしい。どのくらい寝てたかはわからないけど…。
服も着替えてないし、私はなぜか階段で寝てしまっていたようだ。
「あれ? ここどこだ? 階段???」
私は周りをキョロキョロと見回した。
「えっと、確か……そうだった! 私考え事をしてたんだ…」
私は苦笑しながら頭をかいた。
「けど、何を悩んでたんだっけ? ……確か、市井ちゃんに文句を言って………」
その時私はしまった、と思った。
「ああ〜!! なんであんなこと言ったんだろう…。市井ちゃん、
怒ってないといいなぁ…」
私はパニックに陥った。
「どうしよどうしよ……」
私は階段をおろおろしながら昇ったり降りたりした。
「とにかく、謝ろう、うん。そうすれば、きっと許してくれるはず!」
自分にそう言い聞かせ、正気に戻ると、自信満々にガッツポースをとった。
そして、そのまま非常階段を後にすることにした。
- 19 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月15日(月)23時42分30秒
- 「…う〜ん、やっぱり圭織はダメか…。吉澤と石川もいなかったし…。次は…」
市井はため息をついて、次の部屋へと向かった。
(どこにいるんだぁ〜! ごとぉ〜!!)
市井の歩く速さがだんだん速くなる。
そうこうしているうちに、矢口の部屋の前に着いた。
(今度こそ頼む…)
市井はゴクリと喉を鳴らし、扉をノックしようとした。
その瞬間――
- 20 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月17日(水)22時48分04秒
- どうなったんだ!?
- 21 名前:道化師 投稿日:2001年01月18日(木)23時11分43秒
- >20さん
すみません。ちょいと最近忙しいもので…。
では、続きをどうぞ。→
- 22 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月18日(木)23時14分30秒
- ガチャ…
(あれ? 私はまだノックしてないぞ。超能力とか…? まさかね、へへっ…)
ドアが開いた。
中から、髪を下ろして派手な服装をした矢口が出て来た。
「どうしたの? 紗耶香。ドアの前でニヤニヤしながら…」
矢口は不思議そうな顔をしながら言った。
「……はっ!」
市井は正気に戻ると顔を赤くした。
「お、おはよ、やぐっちゃん…」
市井は苦笑しながら右手を上げて言った。
「おはよ、どうしたの? 朝っぱらからニヤニヤと…。またいつもみたいに想像してたんでしょ」
矢口は冷めた目つきで市井を見ながら言った。
(うっ…バレてる…。私ってそんなに顔に出やすいのかなぁ…)
何を想像してたのよ? まったく…」
矢口はニヤけた顔で市井を肘で突付きながら言った。
「い、いや、何でもないんだって、ホント…」
市井は必死に否定しながら言った。
- 23 名前:phase 投稿日:2001年01月18日(木)23時19分03秒
- 「そ、それよりさ、後藤を見なかった?」
「ごっちん?」
「そ、後藤…。見なかった?」
「見たよ」
矢口は真顔で言った。
「ホント!? いつ? どこで?」
矢口の言葉を聞くなり、市井は急に矢口の肩を強く掴んで言った。
「い、痛いよ、紗耶香!」
矢口の声が大きくなる。
「あ! ゴメンゴメン」
市井はすぐに手を離した。
「けど、よかった〜…。みんないないから、どうしようかと思ったよ…」
市井はホッと胸を撫で下ろした。
「え? みんなって?」
矢口は目を大きく見開かせた。
「えっと…、裕ちゃんになっちでしょ。圭織に吉澤、そして石川…。うん、5人か」
市井は指を折りながら言った。
「あちゃ〜、朝早くからみんな大変だね〜…」
矢口は頭を抱えながら言った。
- 24 名前:道化師 投稿日:2001年01月18日(木)23時20分34秒
- 23は「phase of Sayaka」です。すみません。
- 25 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月18日(木)23時24分42秒
- 「大丈夫、いたのはなっちと圭織だけだったから」
市井は笑いながら言った。
「いたのは……って。もう……紗耶香ったら。後藤のことになると、
いっつも周りの迷惑考えないんだから…」
矢口は軽くため息をついた。
「ゴメンゴメン…」
苦笑しながら市井は頭をかいた。
「別に褒めてるんじゃないんだけど…」
「へ? そうなの?」
「そうなの! もう…」
矢口は驚いた表情の市井を見て、深くため息をついた。
「…おっとっと、忘れるとこだった。ねえ、どこで見たの?」
市井は思い出したかのように言った。
「洗面所」
「洗面所?」
「そ、顔を拭いてたよ」
「で、で?」
市井の目の色が変わった。
「そんだけ…」
「ね、今日の後藤どうだった?」
「別に。いつものごっちんだったけど」
矢口は冷静に答えた。
「変わった所とかなかった? 妙に静かだったとか…」
矢口は首を傾げた。
「あ! そういえば、私が声かけても返事がなかったんだ…」
「やっぱり…」
市井はあごに手を当てて眉をひそめた。
- 26 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月18日(木)23時29分37秒
- 「やっぱりって…。どうしたの? 紗耶香…」
矢口は市井の顔を覗き込んだ。
「ん? ちょっとね…」
市井はそのまま黙り込んだ。
「ちょっと、何々? 気になるじゃん!」
「うん。後藤の声をさ、聞いてないんだよね。あの妙にハイテンションな声をさ…」
市井はゆっくりと口を開いた。
「のろけ話?」
「違う違う! マジばな」
市井は手を横に振った。
「聞いてないんじゃなくて、聞こえないんだよ…」
「聞こえない?」
矢口は首を傾げて、そのまま下を向いた。
「そう…」
市井はうなづき、深刻そうな顔をした。
「これさあ、私の推理なんだけど……、後藤って、きっと、何か特別な理由があって喋れないんじゃないかな?」
- 27 名前:名無し読者 投稿日:2001年01月21日(日)03時12分14秒
- 市井クンにはマタ〜リ謎解きして貰いたいな・・・
ま、何にせよ続きが楽しみです。
- 28 名前:道化師 投稿日:2001年01月23日(火)01時57分17秒
- >27さん
楽しみにしていただきありがとうございます。
まだまだ先は長くなりそうですが、頑張ります。
では、続きをどうぞ。
- 29 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月23日(火)01時59分31秒
- 「特別な理由って?」
矢口は顔を上げ、市井の顔を見た。
「それがわかれば苦労はしないんだけどさ…」
市井はふうとため息をついた。
「う〜ん、確かに今日のごっちん、おかしかったよねぇ。私も声を聞いてないし…」
「でしょ?」
「でさぁ、最初はシカトかと思ったよ」
「私もそう思った。うんうん…」
市井は腕を組みうなづいた。
「ま、別に気にしてなかったんだけどね。でも、ごっちん笑顔なんだよね」
矢口は微笑みを浮かべながら言った。
「そうそう笑顔……ん? 私の時は顔を真っ赤にして怒っていたような…」
市井の額には冷や汗が見える。
「もしかして、私の……せい?」
「どうしたの? そんなに汗をかいて。何か思い当たることでもあった?」
矢口は市井の顔をのぞき込んで言った。
- 30 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月23日(火)02時01分17秒
- 「う〜ん、別にこれといって…」
「他に変だなって思ったこととかは?」
いつの間にか質問する側とされる側が入れ代わっていた。
「……………あ!」
市井は思わず上を見上げた。
「何々? 何があったの?」
矢口は市井の両腕を掴んだ。
「そういえば、今日の後藤、いつになく早起きだったんだ…」
「早起き? なんだ、別に普通じゃん、それくらい…」
矢口はふうとため息をつくと、両腕を離し、がっくりと肩を落とした。
「そんなことないって!」
市井が矢口の肩を掴んで、力強く言った。
「いつもなら、ぐっすり眠ってる後藤が、今日に限って早起きしてたんだよ!」
「いつもならって……どうりで遅刻が多い訳だ…」
矢口は苦笑いを浮かべてため息をついた。
- 31 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月23日(火)02時03分12秒
- 「じゃあ何? そこに答えがあるってこと?」
「たぶん…」
市井は自信なさげに言った。
「ほらほら、もっと自分を信じる! いつも言ってるでしょ!」
「よし! 自分を信じる…うん、信じる…」
市井はそう自分に言い聞かせた。
「それじゃあ、昨夜ごっちんを見た人がいないか聞いてみよう!」
「おー!!」
二人は拳を高々と上げた。
「そういえばさあ、紗耶香」
矢口が市井の顔を見て言った。
「何?」
市井は矢口の顔を見返した。
- 32 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月23日(火)02時04分42秒
- 「ずっと言おうと思ってたんだけど、その格好、恥ずかしくない?」
矢口は市井のマントを指さして言った。
「や、やっぱり変かな?」
市井は照れながら頭をかいた。
「うん。すっごく怪しい人に見える」
「じゃ、仕方ない…」
そう言うと、市井はマントなどをはずした。
「けど、なっちも圭織も何も言わなかったんだよね…」
「ま、あの二人はどこか感覚が違うからね〜。特に圭織」
矢口は笑みを浮かべながら言った。
「確かに」
市井と矢口は顔を見合わせて笑った。
- 33 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月23日(火)23時26分16秒
- 「よし、と」
市井はコートなどを外すと手をパンパンと叩いた。
「そうと決まったら、ほら、早く行くよ!」
「行くよ……って、どこに?」
先に歩きだした矢口に向かって市井が言った。
「決まってるじゃん! 私はアンタのお姉なのよ。
それに、後藤はアンタのマイハニーなんでしょ?」
そう言いながら矢口は振り返り、ウインクをして見せた。
「それはそうなんだけど…」
市井は顔を赤くして頭をかいた。
「そうそう、もちろんお礼はしてもらうわよ!」
「しっかりしてるな〜、誰かさんに似て…」
「何か言った?」
矢口は前を向きながら声を低くして言った。
- 34 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月23日(火)23時29分56秒
- 「べ〜っつに!」
そう言うと、市井は走って矢口に追いついた。
「何だよ、急に!?」
「いいからいいから、気にしない気にしない」
矢口が気持ち悪そうに言うと、市井は笑って受け流した。
「さあ、善は急げ! って言うじゃん。早く行こ〜よ!」
市井は矢口の肩を押しながら前へ前へと歩き出した。
(…ったく、単純なんだから…。アンタもごっちんも……。
けど、そんな紗耶香がいいんだけどね)
矢口はそんな市井の姿を見て、微笑ましく思った。
- 35 名前:名無し読者 投稿日:2001年01月24日(水)03時01分26秒
- こんな事指摘していいのかわかりませんが
33の最初主語が市井と矢口逆になってませんか?
- 36 名前:道化師 投稿日:2001年01月24日(水)04時25分31秒
- >35さん
はにゃ? え〜と……
先に歩きだした矢口に向かって市井が言った。
この部分でしょうか? そうですねえ、
市井が先に歩き出した矢口に向かって言った。
こちらの方がいいですね。訂正しましょう。ご指摘ありがとうございます。
これからも、おかしい所があったらお願いしますね。
今のところ、話はまだまだ序盤です。先は長くなりそうですが頑張ります。
では、続きはまた今晩です。
- 37 名前:35 投稿日:2001年01月25日(木)01時31分17秒
- いえ、ここは矢口ではないと流れ的におかしいのではないのかと
>「よし、と」
>市井はコートなどを外すと手をパンパンと叩いた。
>「そうと決まったら、ほら、早く行くよ!」
自分の勘違いかもしれませんし、折角の話に水をさす
気ももちろんありませんので。お許しください。
ささやかながら応援していますのでこれからも頑張ってください。
- 38 名前:道化師 投稿日:2001年01月25日(木)02時43分05秒
- >35さん
>「そうと決まったら、ほら、早く行くよ!」
35さんの言う通り、ここは矢口のセリフです。
こちらの情景描写が少なかったですね。すみません。
>「そうと決まったら、ほら、早く行くよ!」
>そう言うと、矢口が妙にやる気を出して歩き出した。
とでも付け加えておきましょうか。
では、続きです。
- 39 名前:phase of Maki 投稿日:2001年01月25日(木)02時55分03秒
- (どこだどこだ? 市井ちゃんはどこにいるの?)
私は走った。あてもなく闇雲に走り続けた。
ただあの人に、市井ちゃんに謝るためだけに走った。
(あれ? 足が変だぞ???)
さすがに朝からずっと走り続けたせいなのか。私の足は疲れてきたようだ。
(あ〜、足が重い…。そういや、朝ごはんも食べてないんだった…。何か食べよ)
私は走るのを止め、歩き出した。
ぎゅるるるる…
私のおなかが訴えてきた。
(あちゃ〜…。よし! 早く朝ごはんにしよ)
私はスタスタと歩いた。
(何にしよっかな〜…。う〜ん、あれもいいし、これもいいなあ…)
私はいつの間にか、よだれを垂らしていた。
ま、そんなこと別に気にしてはないんだけど…。
- 40 名前:phase of Maki 投稿日:2001年01月25日(木)02時57分31秒
- 「あれ? ごっちん?」
「だよね…。けど…」
二人は肩を落とし、腹部を押さえながら辛そうな表情で歩く後藤を見ながら言った。
「お〜い! ごっち〜ん!!」
吉澤は大きく手を振りながら言った。
(はあ〜…。何食べよっかな〜…。もう、おなかペコペコで死んじゃいそうだよ…)
私は深くため息をつきながら、とぼとぼと歩いた。
「あれ? 聞こえてないのかな?」
後藤の耳には吉澤の声が届いていないらしく、後藤はそのまま歩いている。
吉澤は手を振るのを止め、石川を見た。
「今日の後藤さん、体調でも悪いのかな?」
石川が深刻そうな顔で言った。
「う〜ん、確かにいつものごっちんじゃないよね…」
「もしかしたら…」
「もしかしたら?」
「ううん、何でもない! …何でも…」
石川は必死に首を横に振った。まるで邪念でも振り払うかのように。
「ま、ごっちんのことだから、後で元気な顔してやって来るって!」
吉澤は笑顔で石川の肩をポンポンと叩きながら言った。
「だといいんだけど…」
が、石川の顔から不安の色は消えなかった。
- 41 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月25日(木)23時25分19秒
- 「さ、圭ちゃんに聞いてみよう!」
矢口は張り切っている。
「矢口、そんなに気合入れなくても…」
市井は少しおろおろしながら言った。
「な〜に言ってんの! いい? こういうのは最初が肝心なんだからね」
矢口は腕まくりをして、ドアをノックしようとした。
「…ったく、人の部屋の前で、な〜に気合入れてんのよ!」
背後から、少し低くて不機嫌そうな声がした。
二人は顔を見合わせ、後ろを振り向いた。
「何やってんの? 人の部屋の前で」
振り向くと、そこには腕を組んでこちらを睨みつけている保田の姿があった。
「あれ? 圭ちゃん?」
「け、圭ちゃん……おはよう」
矢口は目を大きく見開き、市井はおどおどしながら言った。
「おはよ、二人とも。で、何の用?」
保田は頭を抱え込みながら言った。
「どうしたの? 圭ちゃん」
市井が心配そうに声をかけた。
「ああ、ちょっとね…」
ガチャ…
そういうと、保田はドアを開けた。
「とりあえず、中に入んなよ」
矢口と市井はうなづき中に入った。
- 42 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月25日(木)23時33分02秒
- 中に入ると、3人はベッドの上に座った。
「体調が悪いのにゴメンね…」
「いいって、いいって」
保田は手を横に振った。
「あのさあ、ごっちん見なかった?」
矢口が言いにくそうな感じで話を切り出した。
「後藤?」
保田は頭を抱えたまま首を傾げた。
「そ。何か今日の後藤変なの。何か知らない?」
市井が保田の肩を支えながら言った。
「後藤ねぇ…。見てはないけど聞いたわよ」
「はあ?」
矢口と市井は顔を見合わせながら言った。
「それ、どーいう意味?」
矢口が保田の方を向いて言った。
「夜中さあ、なんかうるさいなぁ…と思って部屋から出てみたの」
「それで?」
「そしたら…………………ぎゃああああああああっ!!」
保田は突然、両腕を広げて奇声を上げた。
- 43 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月25日(木)23時37分32秒
- 「うぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
部屋中に声が響き渡る。
矢口と市井は目に涙を溜めて二人抱き合っていた。
「ハッハッハ…。大成功!」
保田は笑いながらピースをしている。
「……ひっく…もう! 笑い事じゃないよ!」
「そうだよ! …ぐすっ…、私、ホントに怖かったんだから…ぐすっ…」
矢口と市井は泣きながら言った。
「だいたい、私が怖がりなの知ってるくせに…ぐすっ…」
矢口は目を真っ赤にして頬を膨らませた。
市井は両腕に顔を伏せたまま泣いている。
「いやいや、そんなつもりじゃなかったんだけど…」
保田は苦笑いを浮かべながら頭をかいた。
「ゴメン、紗耶香。私が悪かったよ…」
保田は市井の肩にそっと手を置いた。
「ホント? ホントに悪かったと思ってる?」
市井は顔を伏せたまま言った。
「ホント、反省してる…」
「じゃあ、許してあげる……」
市井がゆっくりと顔を上げた瞬間――
「ぎゃあ!!」
再び部屋中に声が響き渡った。
- 44 名前:道化師 投稿日:2001年01月26日(金)01時39分01秒
- 訂正です。
>「ぎゃあ!!」
↓
>「ぎゃあ!!」
- 45 名前:道化師 投稿日:2001年01月26日(金)01時42分17秒
- あれ? どうも「あ×19」は表示できないようですね。
仕方がないので
>「うぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
こうします。
- 46 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月26日(金)01時44分22秒
- 保田は思わず市井から飛び退いた。
「さ、さ、さ、さ、さ………」
矢口は腰を抜かしたのか、床にペタンと座り込んで後退りをしながら、
声を震わせて言った。
その顔は、まるでこの世に存在しないものを見るような表情だった。
「やぁ〜ぐぅ〜ちぃ〜……待〜て〜……」
市井はうつむき両手を前に出し、声を低くして矢口を追いかけている。
「か、顔が……」
保田は手を口元に当てた。
「ん?」
口の周りにぬるっとした感触を感じた。
「ん? ……………」
保田は何かに気付いたのか、急に平常心を取り戻した。
- 47 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月26日(金)23時09分37秒
- 「い…いやっ! いやっ、来ないで……。お願い、来ないでぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
矢口は目に涙を溜めながら、必死に逃げ惑う。
だが、立っている市井の方が速く、いとも簡単に捕まった。
市井は気味の悪いほど赤く染まった顔を矢口に近づけた。
矢口は少しでも逃げようとそのまま後退りをする。
市井はまるで楽しんでいるかのように、矢口の動きに合わせて
ゆっくり間合いを詰める。
「いやっ……いやっ………来ないで…」
矢口はさらに後退りをした、が――
トン…
矢口の背中は壁にピタリとくっついていた。
「――!」
矢口は顔を強張らせ目を大きく見ひらいたまま、ゆっくりと顔を右にずらし、
そして、また元に戻した。
それは矢口がまるで金縛りにあっているかのごとく、目だけが先に動いて、
その後に頭が動くという非常にぎこちない動きであった。
- 48 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月26日(金)23時12分21秒
- そうこうしている間にも、市井は矢口との距離を詰めてくる。
矢口はそのまま、ゆっくりと目線を下げ、それに続くように顔を下に向けた。
市井は矢口の前で止まり、下を向いて矢口の肩を掴んだ。
そして、市井の手は矢口の頬に触れた。
矢口は両手で自分の顔を覆ったまま、ガタガタと震えている。
市井と矢口の周りの時間が止まる。
2人は硬直したまま、時間だけが過ぎていく。
「やぁ〜ぐぅ〜ちぃ〜……」
そして、目の前まで赤く染まった顔が迫った瞬間――
「いやっ、紗耶香。…………いやあああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
矢口は涙をボロボロ流しながら悲鳴を上げた。
それは悲鳴というよりも、むしろ絶叫に近かった。
- 49 名前:phase of Maki 投稿日:2001年01月26日(金)23時16分48秒
- (はあ〜…。おなかすいたぁ…)
私はまだ歩いていた。
(ごはん……ごはん……。…………。はやくたべたい……)
ぎゅるるるるる……
私のおなかは、無情にも叫び続けていた。
(はあ…。力が入んないよ…)
頭がくらくらして、目も霞んできた。
私はふらふらしながら、必死の思いで一歩一歩足を動かす。
(もう少し、もう少しで…)
そんな意思とは裏腹に、私の足は思うように動こうとしない。
(動け……動け、私の……)
不意に目の前の世界が回転したような気がした。
ドサッ…
さすがに限界が来たのだろうか、私はその場に膝から崩れ落ちた。
私は地面に顔をつけたまま、ぼんやりと眺めていた。
「ごはん……市井ちゃん……ごはん……市井ちゃん………」
私は朦朧とした意識の中で、何度も同じ言葉を繰り返し呟いていた。
次第に目が霞んできて、そのまま静かに目を閉じた。
- 50 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月27日(土)23時10分15秒
- 「それにしても驚いたよね」
「ホント」
保田と矢口は顔を見合わせて言った。
「もう、おあいこでしょ」
市井が頬を膨らませて言った。
「何がおあいこよ。私だけやられ損じゃない!」
目を真っ赤にした矢口は頬を膨らませ、そっぽを向いた。
「まあまあ、矢口。押さえて押さえて…」
保田は矢口の肩にそっと手を置いた。
「にしても、なんでそんなもの持ってんのよ?」
保田は市井の胸元に付いている小さな袋を指さしながら言った。
「コレ? さっき付けたんだけど、外すの忘れてたんだよね。
それにさあ、いっつもやられてばっかじゃん。
だから、ちょっとくらい仕返ししたくって…」
市井がタオルで顔を拭きながら言った。
市井が手に持っている白いタオルが赤く染まっていく。
- 51 名前:phase 投稿日:2001年01月27日(土)23時11分18秒
- 「けど、ホント驚いたよ。まさか、血袋を隠し持っているなんて」
「血糊で顔真っ赤だしね」
保田と市井が笑いながら言った。
「私は、それ以上に怖かったの!」
矢口がそっぽを向いたまま言った。
その声は、まださっきの状態を引きずっているようで、震えていた。
「ゴメン、矢口。悪気はなかったんだ…」
市井は矢口の正面に回り込み、顔の前で手を合わせた。
しかし、矢口は市井と顔を合わせまいとして、また後ろを向いた。
「まあまあ、いいじゃん、矢口」
「よかないよ!」
保田が矢口をなだめてはみるものの、全く変化はなかった。
「わかった! 後で花畑牧場のスペシャルパフェおごるからさ」
市井が何かを決心したような口調で言った。
だが、依然として矢口はそっぽを向いたままだ。
「じゃあ、ケーキも付けちゃう! で、メロンソーダも!」
市井は顔の前で両手を組み、何かに祈るように言った。
- 52 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月27日(土)23時12分22秒
- 「それだけ?」
鼻声混じりの声が返ってきた。
矢口は明らかにすねているようで、その口調はどこかよそよそしかった。
「へ? それだけって……。え〜い! こうなったら、
スペシャルミックスイチゴパフェ(生クリーム増量)にバージョンアップだ!」
市井は息を切らしながら言った。
「ホント?」
ついさっきまで、そっぽを向いていた矢口が、目をキラキラ輝かせながら振り向いた。
「うんうん。ホントホント」
市井は無理に笑顔を作って答えた。
「じゃあ、許してあげる。だ・か・ら、紗耶香ってだ〜い好き!」
そう言って、矢口はいきなり市井に抱きついた。
「いやぁ、『好き!』って言われても……ねぇ?」
市井はどう答えていいのかわからず、思わず保田の方を見た。
保田は両手を広げ、「さあ?」といった表情をした。
「…ったく、ホント都合のいい人だこと……。どっちが年上なんだか…」
保田は呆れ顔で矢口を見た。
- 53 名前:名無し読者 投稿日:2001年01月28日(日)03時10分38秒
- いや、早く後藤を探しに行くべきだぞ市井クン!?
- 54 名前:道化師 投稿日:2001年01月28日(日)23時20分17秒
- >53さん
ありがとうございます。
市井ちゃんは意外とマイペースなのかも……?
ごっちんは結局……これ以上は今のところ言えないです。
ただ、しばらくは現実世界を離れた話になるとだけは言っておきます。
ま、続きを是非読んでくださいね。
それでは、早速、ごっちんの行方編いってみよ〜→
- 55 名前:phase of Maki 投稿日:2001年01月28日(日)23時23分36秒
- 「うっわぁ〜…。こんなに食べ物が…」
私の目の前にはたくさんの食べ物の世界が広がっていた。
私はよだれを拭くのも忘れて歩き出していた。
「う〜ん、何から食べよっかな〜」
私は周りをジロジロと見回した。
そして、右前方になんとなく見覚えのあるものを見つけた。
「あ! あれってさあ、もしかして…」
私はおかしの家らしきものを見つけると、一目散に走り出した。
「やっぱり!」
少し近づいてみると、それはあの有名なおかしの家であることがわかった。
私はそのままおかしの家に向かって、さらに足を進めた。
「うわっ、でっかいな〜…」
私は口をポカンと開けたまま上を見上げていた。
それは、私よりもそぅとぅ大きく、とても一人では食べ切ることが
できないほどの大きさだった。
屋根はチョコで、壁はクッキー、周りの柵はポッキーで、所々には
キャンディも刺してある。
もちろん、その家からは甘い匂いが漂ってくる。
- 56 名前:phase of Maki 投稿日:2001年01月28日(日)23時24分57秒
- 「けど、ホントにあったんだね〜、おかしの家って。初めて見たよ…。
童話の世界だけかと思ってた…」
私はしばらく、おかしの家に見入っていた。
しばらくそのまま立ち尽くしていると、ビスケットの扉が開いた。
(誰? おかしの家の中にいる人って……もしかして、ヘンデルとグレーテル?
マジマジ? 一度会ってみたかったんだ〜)
私は目をキラキラ輝かせながら、今か今かと心待ちにしていた。
「はあ〜…。もう食べ切れないよ…」
(どこかで聞き覚えのある声…)
中から出て来たのは、ヘンデルでもグレーテルでも、イジワルなお婆さんでもなく、
市井ちゃんだった。
市井ちゃんは満足そうな顔で、おなかを押さえている。
「あ! 市井ちゃん。なんでこんな所に?」
私は市井ちゃんに近づこうとした。
そのとき――
「ふぅ〜…、もうダメ〜…」
声がした。
私はその声に反応して家の方を見た。
「あれ? 私がいる。一体、どーなってるんだ???」
中から出て来たのは、私にそっくりな顔をした女の子だった。
- 57 名前:phase of Maki 投稿日:2001年01月28日(日)23時29分13秒
- 女の子はおなかを押さえながら、市井ちゃんに近づいて行く。
「市井ちゃん、待って!」
私は走って行って、市井ちゃんの腕を掴もうとした。
「へ? なんでなんで? なんですり抜けちゃうの?」
――が、私の手は市井ちゃんの体を通り抜け、無情にも空を切っていた。
私はもう一度市井ちゃんに触れようとした。
しかし、またしても私の手は空を切った。
「なんで? なんでよ!? なんで届かないの?」
その後も、何度も何度も市井ちゃんに触れようとしたが、
その度に私の手は空を切り裂いた。
目の前にいるのに……いるはずなのに…。
「ねえ、市井ちゃん! こっちを向いて! 市井ちゃんってば!」
私は目に涙を溜めたまま叫んだ。
しかし、市井ちゃんは何もなかったような顔で私に似た女の子と歩き出した。
- 58 名前:phase of Maki 投稿日:2001年01月28日(日)23時33分32秒
- 「市井ちゃん! ねえ聞いてよ、市井ちゃん!」
私は必死の想いで叫んだが、市井ちゃんは私の方を見向きもしなかった。
「なんで? なんで??? 後藤のこと嫌いになっちゃったのぉ?
ねえ、答えてよ! いつもみたいに『後藤!』って呼んでよぉ……。
ねえってばぁ…」
しかし、市井ちゃんは何事もなかったような顔でどんどん歩いて行く。
私の目からは、いつの間にか涙が溢れ出していた。
市井ちゃんは私に似た女の子と一緒に行ってしまった。
私は二人を見送りながら、その場にへなへなと座り込んだ。
私はうつむき、顔を伏せたまましばらく泣き続けた。
- 59 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月30日(火)00時03分54秒
- 「……で、外に出たら後藤が歌ってたの。真夜中にさ、しかも大声で」
「そりゃ迷惑な話だね」
「ところが、不思議なことにさ、後藤、寝たまま歌ってたのよ」
「うっそだぁ〜 もう、圭ちゃんったら」
矢口がワザと子供っぽく言った。
「それが、嘘じゃないんだな」
「え?」
矢口と市井の顔が引きつった。
「目を閉じてさ、そのままフラフラとどこかに行っちゃったんだけど…」
「どこかに行った……って?」
「じゃあ、圭ちゃんはそれだけしか知らないの?」
「だって、私は風邪で寝込んでたんだもん。しょうがないじゃない」
- 60 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年01月30日(火)00時06分10秒
- 「う〜ん、夜中に出歩いていたか…」
「しかも、眠ったまま…」
矢口と市井は顔を見合わせてため息をついた。
「結局、謎は謎のまま…」
「捜査は一からやり直し」
「けど、少しだけ糸口が見えて来たような…」
「で、それが何になるのよ?」
保田が矢口と市井の頭の上から覗き込んで言った。
「後藤がね、喋れなくなったみたいなの…」
市井が深刻そうな顔で答えた。
「え? マジで?」
「うん、マジで」
矢口と市井が声を揃えて言った。
しかし、保田はまだ状況を飲み込めていないらしく、
頭の周りには?マークで一杯だった。
- 61 名前:phase of Maki 投稿日:2001年01月30日(火)00時08分25秒
- 「……ですか? ねえ、大丈夫?」
声が聞こえる。
誰だろう?
聞いたことないな、こんな声。
「大丈夫ですか? 大丈夫…」
誰を呼んでんだ?
私?
そんなまさか。
だって、ここには誰もいないはずでしょ。
そう、市井ちゃんも…。
「ダメだ、意識がないのかなぁ…。ちょっと待っててね…」
あれ?
声、聞こえなくなっちゃった…。
空耳だったのかな?
結局、なんだったんだろう…?
ま、いいか。
どうせ、私には関係ないことだし。
- 62 名前:phase of Maki 投稿日:2001年01月30日(火)00時14分55秒
- タッタッタッ…
「こっちです。急いでください!」
一人の少女と数人の男達が走ってくる。
そして、男達は倒れている後藤を取り囲んだ。
白衣を着た男は後藤の脈を取り、額に手を当てた。
「ふむ…。よし、急いで医務室へ!」
白衣の男が激を飛ばす。
男達は手際よくタンカに後藤を乗せ、慎重にかつ迅速に運び始めた。
「大丈夫なんですか?」
少女が白衣の男に問いかけた。
「命に別状はないが…」
白衣の男が顎に手を当て、深刻そうな顔をした。
「とりあえず、急いで!」
「はい!」
少女と白衣の男が走り出した。
ここには誰もいなくなった。
- 63 名前:名無し読者 投稿日:2001年01月30日(火)02時11分34秒
- ますますマターリしてる場合じゃ無いぞ、市井クン!
後藤がどうなったのか楽しみ。
- 64 名前:道化師 投稿日:2001年02月02日(金)00時28分50秒
- >63さん
どうもです。
3日ぶりの更新です。すみません。
これからしばらく後藤編なので、しばらくお付き合い下さい。
もう少ししたら、本編に戻る予定です。
それでは、どうぞ。
- 65 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月02日(金)00時34分17秒
- 「で、これからどーすんの?」
しばらくして、保田が口を開いた。
「う〜ん……他のメンバーに聞いて回るしか…」
市井が腕を組んで言った。
タ〜ラララ タラッタ〜♪(ちょこっとLOVE)
市井がそこまで言うと、突然、市井の携帯が鳴った。
「ん? 誰だ…?」
市井は携帯を手に取り、液晶を見た。
「あれ? 裕ちゃんだ。何だろ?」
「裕ちゃん? 紗耶香、早く出てみなよ」
保田が市井をせかした。
「あ、うん」
『あ! もしもし、紗耶香か?』
「どーしたの? 裕ちゃん。そんなに慌てて…」
『あんな、後藤が――』
- 66 名前:phase of Maki 投稿日:2001年02月02日(金)00時35分50秒
- 「…んっ………」
ふと目を覚ました。
目の前には蒼々としたものが広がっている。
薄目越しにぼやけて見える世界は、なんとなく不思議な感じがした。
頭の中がぼ〜っとしている。……眠い。
「ふわ〜ぁ……」
私は大きくあくびをして、再び眠りについた。
しばらくして目が覚めた。
まだ頭の中がぼ〜っとしている。
眠たい目を擦っているうちに、少しずつ目が慣れてきた。
さっき薄目越しにぼやけて見えた不思議な世界の正体は、空だった。
雲一つなく広がる青空。
しばらく眺めていると、なんか吸い込まれていきそうな不思議な感じがする。
風は穏やかで、太陽が出ているわりには暑くもなく寒くもない。
私はいつの間にか眠っていたらしく、仰向けになっていた。
- 67 名前:phase of Maki 投稿日:2001年02月02日(金)00時37分45秒
- サラサラサラ…
不意に心地よい風が私の肌をくすぐった。
「はあ〜…、気持ちい〜…」
私を目を閉じ、しばし風を感じていた。
また眠ってしまいそうになったが、ふとあることに気がついた。
「…なんで寝てんだ?」
私は頭をかきながら上体を起こした。
その瞬間――
「あ〜……」
急にめまいがした。
私は頭を抱えた。
さすがに朝が弱いだけあって、起きてすぐは辛かった。
そういや、さっきから、なんとなく頬の辺りが勝手悪い。
左手で触れてみると、頬は少しザラついていた。
「そういや、さっきまで泣いてたんだった……」
ついさっきまで見ていた光景が頭の中に甦る。
- 68 名前:ティモ 投稿日:2001年02月03日(土)18時27分23秒
- 続き気になる〜
- 69 名前:道化師 投稿日:2001年02月03日(土)23時04分20秒
- >ティモさん
はじめまして。ヨロシクです。
どうですか? 気に入っていただけたでしょうか?
さて、気になる気になる続きをいってみましょ〜→!!
- 70 名前:phase of Maki 投稿日:2001年02月03日(土)23時12分34秒
- 「市井ちゃん………」
私の目から、また涙が溢れていた。
「市井ちゃん…なんで……なんで………うわああぁぁぁぁぁん……」
私は必死に涙を拭った。
けど、どんなに拭っても涙は止まらなかった。
「…ずずっ……ダメだ。こんな顔、市井ちゃんには見せらんない…」
涙と一緒に鼻水も出ていて、私の顔はさらにぐちゃぐちゃになっていた。
「んぁ〜、鼻水出ちった〜……はあ〜…。……ずずっ……顔、洗おう…」
私は袖で顔を拭いてから立ち上がった。
「ここは……?」
立ち上がってみて初めて気づいたが、どうやらさっきとは違う場所のようだ。
私はひと通り周りを眺めてみたが、辺りには何も見当たらなかった。
ただ、延々と草原が続くだけである。
周りをぐるりと見回して見たが、やっぱり何も見当たらなかった。
しばらくその場にぼ〜っと立ち尽くしていたが、こんな所にいても仕方がないので、とりあえず歩くことにした。
「けど、どこなんだ? ここ」
疑問に思いつつも、ただ真っすぐ歩き続けた。
- 71 名前:phase of Maki 投稿日:2001年02月03日(土)23時15分03秒
- あれから、どのくらい歩いたのだろうか。
相変わらず何も見当たらないし、それどころか、前に進んでる感じさえしない。
さっきから同じ風景が続くばかりだ。
「はあ〜…。もう疲れたよ…」
私は歩くのを止め、その場に座り込んだ。
そして、そのまま大の字になって寝ころんだ。
そのまま目を閉じ、少し休むことにした。
「はあ〜…。それにしても、ここにゃ誰もいないのかねぇ?」
私以外誰もいないのに、誰というわけでもなく、ただなんとなく聞いてみた。
「な〜んて言っても、返事が返ってくるわけないんだけどさ…」
「う〜ん……いないのかなぁ?」
(はぁ?)
私は眉をひそめた。
誰もいないはず……なのに、明らかに私とは違う声がした。
「誰かいるの?」
私はパッと目を開け、ガバッと体を起こして周りを見たが誰もいなかった。
- 72 名前:phase of Maki 投稿日:2001年02月03日(土)23時16分44秒
- 「なんだ、空耳か…」
そして、また体を倒し目を閉じた。
「ソラミミ? なんだそれ? ウマイのか?」
今度は確かに聞こえた。
またさっきみたいに周りを確かめたが、やっぱり誰もいなかった。
「どこ見てんだよ。ここだよ、ここ」
声が聞こえてくる方に顔を向けてみると、そこには背中から
変な羽の生えているちっちゃい女の子がいた。
「おい、聞いてんの?」
女の子(?)は腕を組んだまま私を見トいる。
私はただ茫然としていた。
私には少々この現実は辛かったのかもしれない。
どう考えても、この世にこんな小さい人がいるはずないのだから。
(なんなんだ、この子? 人? それとも虫? けど、なんか光ってるし……
…う〜ん、これってやっぱり…いわゆる妖精ってヤツ?)
しばらく頭の中は分析モードだったが、予想はしていたものの、
やっぱりオーバーヒートしてしまった。
「おい! 大丈夫か!?」
私は前を向いたまま気を失った。
- 73 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月04日(日)03時57分39秒
- 後藤の口調が上手いっす。特徴ガッチリ捉えてて、まさに( ´ Д `)な感じする。
- 74 名前:道化師 投稿日:2001年02月04日(日)23時10分22秒
- >73さん
初めまして、どうもです。
>特徴ガッチリ捉えてて…
めちゃ×2嬉しいです。今後も頑張ります。
それでは、続きいってみよ〜→!!
- 75 名前:phase of Maki 投稿日:2001年02月04日(日)23時12分01秒
- 「…ふにゃあ……」
「おっ! 気が付いたか!?」
私が目を覚ますと、目の前にはさっきの女の子(?)がいた。
相変わらずその子はちっちゃくて、背中には変な羽が生えていた。
「大丈夫か?」
女の子(?)は心配そうな顔をして聞いてきた。
「え? う、うん…。あのさあ、ちょっと聞いていいかな…?」
「いいけど」
「君、誰? で、人なの? それとも妖精? 名前は? 性別は? 年は? ……」
私は混乱した状態で、次々と質問を並べた。
「ちょ、ちょっと、質問が多すぎて何が何だかわかんないよ!」
女の子(?)は困った顔をして訴えてきた。
「あっ、あっ……、ゴ、ゴメン…」
私は慌てながら謝った。
「で、何が聞きたいの?」
「えっと……」
私は言葉を詰まらせた。
「君の……名前…」
そして、ゆっくりと口を開いた。
- 76 名前:phase of Maki 投稿日:2001年02月04日(日)23時12分39秒
- 「な〜んだ、普通に喋れんじゃん」
女の子(?)はふうと一息ついた。
「私はシルビィ。アンタは?」
「私? 私は真希、後藤真希」
私は自分を指さし、笑顔で答えた。
「マキ?」
シルビィが首を傾げた。
「そ、真・希。ヨロシクね、シルビィちゃん」
私は右手を差し出した。
「あ、ちょっと大きすぎるか…ハハハッ……」
私のて手のひらは彼女と同じくらいの大きさで、とてもじゃないが
握手などできるような状況じゃなかった。
「大丈夫、大丈夫。こちらこそヨロシク」
そう言って、シルビィは私の人差し指に抱きついた。
「握手じゃないけど、これでいいでしょ?」
「うん」
私達はお互い笑みを交わした。
- 77 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月04日(日)23時14分20秒
- 「裕ちゃん!」
市井は壁にもたれ掛かっている中澤の姿を見つけると、すぐに声をかけた。
「おう、来たか。こっちやこっち!」
市井が気付くと、中澤は手を振りながら市井と矢口と保田を呼び寄せた。
「何があったの?」
保田が心配そうな顔をして問いかけた。
「話は後や。とりあえず、中に入って…」
ガチャ…
そう言って、中澤はドアを開けた。
「ご、後藤!?」
中に入ると、そこにはベッドに横たわる後藤の姿があった。
市井はそれにいち早く気づくと、後藤の元に駆け寄った。
- 78 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月06日(火)03時14分42秒
- 久々に来たら、えらく大変なことに・・・
どうする・どうなる、市井クン!?
作者さん、掛け持ち大変だろうけどガンバッて下さいな。
- 79 名前:道化師 投稿日:2001年02月06日(火)06時12分41秒
- >名無し読者さん
お久しぶりです。
>掛け持ち大変だろうけどガンバッて下さいな。
…ってことは、青版のほうも読んで下さってるんですね?
ありがとうございます。
こっちはまだまだ長くなる予定なので、気合入れて頑張ります。
あっちはもう少しで、市井編が終わる予定です。
さて、続きいってみよ〜→!!
- 80 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月06日(火)06時16分24秒
- 「ごっちん!?」「後藤!?」
矢口と保田も市井の後を追うようにベッドの周りに近寄った。
ベッドに横たわる後藤は、まるで死んでいるのではないか、と思うくらいに
ピクリとも動かなかった。
ただ、静寂だけがベッドの周りを漂っていた。
「な……なんで、なんでこんなことに…?」
市井は震えながら中澤の方を見た。
中澤は冷蔵庫からウーロン茶を取り出し、コップに注いだ。
そして、コップをテーブルに運ぶと、そのままソファーに腰掛けた。
後藤は、気持ちよさそうな顔で眠っている。
「なんで……後藤…」
「落ち着きいや、紗耶香。後藤は眠っているだけやて」
中澤は立ち上がり、コップを市井に手渡した。
「うん…。アリガト…」
市井はウーロン茶を一口だけ口に含むと、軽く深呼吸をした。
市井は呼吸を整えると、いつもの冷静さを取り戻していた。
「けど、どうしたの? 一体」
矢口と保田はソファーに腰掛け、コップを手に取る。
矢口は一口飲んだ後、中澤に問いかけた。
- 81 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月06日(火)06時18分52秒
- 「食堂の近くで倒れてたらしいんや」
「らしい…って?」
市井が中澤を見た。
「ああ。私も実際に見たわけやないからね…」
中澤は奥の部屋に続くドアの方をちらりと見た。
「せやから、実際に現場にいた人に聞くとしよか。入ってええで」
ガチャ…
中澤が言い終わると同時にドアが開いた。
「あ!」
市井と矢口と保田の3人は同じ言葉を発し、思わずポカンと口を開けた。
そのまま3人は硬直した。
中から出て来たのは、背は矢口よりも少し大きいくらいで、肌が白く、
見た目はちょっとふっくらした感じの少女だった。
髪型はショートに近いセミロングで、妙に落ち着きがあるせいか、
すごく大人っぽく見える。
「や! みんな元気だった?」
そう言いながら笑顔で右手を挙げる少女。
- 82 名前:道化師 投稿日:2001年02月06日(火)06時24分50秒
- 個人的な理由により、今回はここまでです。
さあ、この少女は一体誰なのでしょうか?
という疑問を残したまま、次回に続きます。
もし、暇だったら誰だか考えてみてください。
それでは、また次回…。
- 83 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月06日(火)15時55分50秒
- 福……福ちゃん……?
- 84 名前:道化師 投稿日:2001年02月06日(火)23時29分46秒
- >83さん
どうも。さあ、答えは……
さあ、続きを読んで確かめてみましょい! ま、あってると思いますけどね。
- 85 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月06日(火)23時34分45秒
- 「何? どうしたの? 3人とも」
少女はおろおろしながら3人に近づいた。
「別に気にせんでもええって。久々に逢うたから、びっくりしているだけやろ」
中澤が少女に向かって言った。
「明日香ぁぁぁぁ〜!!」
3人は一斉に『明日香』と呼ばれる少女――元メンバーの福田明日香の
元に駆け寄り抱きついた。
「明日香、元気だった?」
「何でここにいんの?」
「高校はどう?」
「楽しくやってる?」
「今何やってんの?」
「勉強は?」
3人が次々と質問を並べていく。
「ちょ、ちょっと、急にそんなに言われちゃ…」
福田は慌てながら、中澤の方をチラリと見た。
「裕ちゃんなんとかして」
声には出さなかったものの、福田の口はこう動いた。
- 86 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月06日(火)23時36分49秒
- 「はいはい。感動の再会の途中、邪魔してなんやけど…」
それに気づいた中澤が手を叩きながら、時間をストップさせた。
「そろそろ本題に移ってもええか?」
中澤がそう言うと、3人は福田から離れた。
3人が離れると、福田は少しホッとした表情を見せた。
そして、全員ソファーに座り、福田が話を始めた。
「私が食事を終えて部屋に戻ろうとした時に、途中で人が倒れていたのを
見かけたの。で、近くにいた人達と一緒に医務室に連れて行って…」
「後藤、倒れてたの?」
市井が口を挟んだ。
「うん。…で、医務室に行ったら、軽い脳震盪だろうって。最近、
疲れ過ぎじゃないのか? って言われた」
「確かにこのハードスケジュールじゃあねぇ…」
保田がうなづきながら言った。
「それから、2、3日は安静にして置いた方がいいって」
「そっか…」
市井は福田の言葉を聞いて、ホッと胸を撫で下ろした。
「けど、無事でよかったよ」
「そうだね」
矢口と保田が顔を見合わせて言った。
- 87 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月06日(火)23時39分03秒
- 「…あのさ、後藤……なんか変なとこなかった?」
「変なとこ?」
「うん。例えば……喋っているのに声が聞こえなかったとか…」
市井は思い切って言ってみた。
「声……声ねぇ…」
福田は何かを思い出そうとしている。
「どう…?」
市井が福田の顔を見つめる。
矢口と保田も福田が口を開くのを今か今かと待っている。
「う〜ん……。彼女、ずっと眠ったままだったし…」
「そう…」
市井と矢口と保田は肩を落とした。
「でも、なんでそないなとこに倒れてたんやろなあ…」
不意に中澤が口を開いた。
「さあ…?」
全員がそれぞれ顔を見合わせた。
「ま、何とかなるっしょ。せっかくの再会やから話でもしよか」
「それもそうだね」
そうして、昔話を語り始めた。
相変わらず、後藤は穏やかな表情で眠っている。
そう、自分に何が起きているかも知らないまま。
市井は話の間もチラリチラリと後藤の方を見ていた。
- 88 名前:phase of Maki 投稿日:2001年02月07日(水)23時14分07秒
- 「うわ〜…綺麗な羽だねぇ。透けてるよぉ…」
私はシルビィの半透明の羽に見とれていた。
「羽? ああ、翼のことね」
「ツバサ?」
「そ、キレイでしょ。これ、虹色に光るんだ。私のお気に入り!」
シルビィが後ろを振り返り、自分の翼を見て言った。
そして、シルビィはクルッと回って翼を広げて見せた。
「羽……じゃなかった、翼があるってことは、やっぱり妖精さんなのかなあ…?」
「ヨウセイ? 違うよ。私達はティンカーベル。これが私達の種族の名前」
「ああ! あのピーターパンの?」
私は手をポンと叩いた。
「ピーター…パン? 何それ? ま、いいや。それより、私さあ、
人間って初めて見たんだよね。ちょっと感激!!」
そう言うと、シルビィは私の周りをクルクルと回り出した。
「私だって初めて見たよ。なんか、おとぎ話の世界みたい」
私はしばらくの間、シルビィの動きを目で追っていた。
シルビィは手のひらサイズでホントかわいい。
まるで、飲茶楼のCMの妖精みたいなあんな感じ。
おまけになぜかチャイナドレスだし(笑)。
私の顔はいつの間にかニヤけていた。
- 89 名前:phase of Maki 投稿日:2001年02月07日(水)23時15分59秒
- 「あり?」
突然、シルビィは私の首の辺りで止まり、私の首の周りを回り始めた。
「マキ」
「な〜に?」
「最近さ、何かおかしなことなかった?」
「え? おかしなこと?」
「そ」
シルビィが私の目の前に出て来た。
「例えば、周りの反応が変だとか…」
シルビィが人差し指を立てて言った。
「周りの反応ねぇ………」
「ない?」
「それって、こっちの言葉が通じない……とか? な〜んてね」
私は笑って答えた。
「そうか……やはりな…」
シルビィは真剣な表情で腕を組んだまま、私の肩の上に座った。
「それがどうかしたの?」
「マキ、言葉が通じないんじゃなくて、声が聞こえないんじゃないのか?」
「え? そんなまさかぁ……」
私は顎に手を当てて首を傾げ、よ〜く思い出してみた。
「そういえば、市井ちゃんもやぐっつぁんもなんか変だったよーな…」
私はそのまま上を見上げた。
- 90 名前:phase of Maki 投稿日:2001年02月07日(水)23時18分07秒
- 「けど、それが何か関係あるの?」
私は顔をシルビィの方に向けた。
「うん。ここにさ、タトゥーらしきものがあるんだよ」
「タトゥー?」
シルビィが私の首の辺りを指した。
「マキからは見えないだろうけど、ここにさ、鎖型のタトゥーの跡があるんだ…」
「でもさあ、タトゥーって、あの刺青みたいなのでしょ?」
私は人差し指を頬に当て、首を傾げながら言った。
「タトゥーって、本来はおまじないの一種なんだ」
「え〜!? あの、変な太陽の絵とかが?」
「違うよ。それは普通のヤツ」
「じゃあ、どんなの?」
「まあ、普段は目にすることはないけど、中には特殊なのもあってね。
昔の錬金術師とかは入れてたチて聞いたことがあるよ。今はどうか知らないけどさ。
ま、私達ティンカーベルの間では、タトゥーを入れてる人は少なくないんだけどね。
ホラ、これとか…」
そう言って、シルビィは左袖をまくり上げた。
そこには、何かの紋章みたいな、変な文字みたいのが刻んであった。
- 91 名前:道化師 投稿日:2001年02月07日(水)23時22分17秒
- 今回から更新日記(?)をつけていこうと思います。
まあ、特に読む必要もないんですけどね。
じゃあ書くなよ! っていうツッコミはやめてください(笑)
とりあえず、今回はここまでの登場人物をまとめてみましょう。
後藤真希 → 一応、本編の主人公。ある朝、喋れなくなった(原因不明)
いろんな所をグルグルと回ったあげく、ダウンしてしまう。
ある少女のおかげで、無事助かった。
市井のことが好きなのだが、まだ想いは伝わっていない様子。
今後の展開次第では、出番がなくなる可能性大。
現在、夢の中で異世界を点々とする。
市井紗耶香 → 副主人公。どうも、主人公より目立つ傾向がある。
思い込みが激しく、好きな人の事となると周囲が見えなくなるようだ。
妄想の世界に浸ることが多く、意外とイタズラ好きなようだ。
後藤の後を追って調査中なのだが、途中でいろんなことが起きる。
現在、中澤の部屋にいる。
- 92 名前:道化師 投稿日:2001年02月07日(水)23時23分49秒
- 矢口真里 → 本編では、市井をサポートする役割として登場。
世話好きで、しっかり者。しかし、必要以上に気合の入った人である。
たま〜に、ミスをすることもあるが、あまりその姿は見せない。
怖がりで、すぐに泣いてしまう。意外と子供っぽい一面も見せる。
現在、中澤の部屋にいる。
中澤裕子 → 本編でもちゃんとリーダーをしている……はず。
今のところ、そんなに重要な役割には見えない。
これから先の行動はちょっと注目! だって、リーダーですから(謎)
現在、部屋で後藤を休ませている。
加護亜依 → 通りすがられたチビっ子その1。
まだまだ本編に絡む様子はない。
意外としっかりしているが、やっぱりまだまだお子様である。
ツッコミ担当として登場しているのみである。
現在、辻とお食事中………?
辻希美 → 通りすがられたチビっ子その2。
こちらも本編に絡む様子はない。
相変わらず、どこか抜けている娘である。
天然ボケ担当として登場しているが、話が脱線するだけなのは
気のせいだろうか?
作者お薦めの一人なので、これから出てくるかも………?
現在、加護とお食事中………?
- 93 名前:道化師 投稿日:2001年02月07日(水)23時25分44秒
- 安倍なつみ → ちょこっとキャラ。寝ぼけたまま登場。
感覚が少しずれた人として出ている。
自分より他人を気遣う優しい一面を見せる。
これからの出演予定はまだ決まっていない。
現在、再びベッドですやすやと………?
飯田圭織 → 本編にまだ一度も姿を見せていない。
出てきたのは、市井の会話の中のみである。
こちらも少し感覚がずれた人として登場。
これから出てくる可能性が高そうで低そうな人。
現在、…………???
石川梨華 → 通りすがりの人その1。
会話から察するに、どこか謎な部分を持っている様子。
心配性なので、実はあまりそうでもなさそうな気もする。
もちろん、座右の銘は「ポジティブ」である。
現在、吉澤と一緒に行動中。
吉澤ひとみ → 通りすがりの人その2。
どうも、第三次追加メンバーは本編に絡む様子は少ないようだ。
後藤と仲がいいが、大抵石川と一緒にいる。
現在、石川と一緒に行動中。
- 94 名前:道化師 投稿日:2001年02月07日(水)23時27分29秒
- 保田圭 → 意外と重要そうなキャラその2。
体調不良で休んでいたが、なぜか共に行動することに。
昨晩、後藤を目撃した一人。
現在、中澤の部屋にいる。
シルビィ → 後藤の夢の中に出てきたキャラ。
今後の展開で重要っぽい気がする。
なぜって? 名前がついてるからに決まってるじゃん。
福田明日香 → 謎の少女の正体。
なぜここにいるかという疑問はさて置き、この娘がいなかったら、
発見者は別の人になっていただろうと思われる。
…って、当たり前か(苦笑)
はい、早くも更新日記じゃなくなっております(苦笑)
とりあえず、今回はここまで。
- 95 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月08日(木)03時46分23秒
- なんかエラく話が膨らみそうな・・・(期待
やっぱり後藤が主役みたいだが、とりあえずガンバレ市井クン!?
- 96 名前:道化師 投稿日:2001年02月08日(木)23時17分53秒
- >名無し読者さん
はい。長〜くなりそうです(笑)
ホントねえ、ちゃんとラストを決めてから書けよ〜!! って感じなのですが、
こちらは勢いでいっちゃいましょ〜→!!
はい、続きをどうぞ〜!!
- 97 名前:phase of Maki 投稿日:2001年02月08日(木)23時20分02秒
- 「それが…タトゥー?」
私はシルビィの左腕に顔を近づけた。
「そ、これも呪文の一種なんだけどね。マキの首にも、これとは違うけど、
似たような感じのヤツがあるよ」
「ほえ〜……。そんなんで効果があるんかねぇ〜?」
私はじっくりとシルビィの左腕に刻まれているタトゥーを見た。
「普段、本とかに載っているのは、オリジナルとは違うからね」
「なんで?」
「だって、オリジナルを教えたら、何か起きた時にヤバイからさ。
だから、どこかちょっとだけ変えてあるんだ」
「ほ〜…」
私はうなづきながらシルビィの話を聞いた。
「けどさあ、私のはどういう効果があるんだろ?」
「大方、予想はつくけど、一応確かめてみようか」
「うん」
「じゃ、ついて来て」
私はうなづき、シルビィの後をついて行った。
- 98 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月08日(木)23時21分49秒
- いつの間にか、日も暮れ、それぞれ部屋に戻っていった。
ついさっきまで賑やかだった中澤の部屋も、中澤と市井と後藤の3人だけになった。
後藤は相変わらず寝たままだ。
「はあ〜…。散らかすだけ散らかしていって…。ったく、誰が片せなあかんと
思ってんねん!」
中澤が飲み物やお菓子の袋などで混雑しているテーブルを見て愚痴をこぼした。
中澤は愚痴をこぼしつつも、テキパキと片付けていく。
市井はそんな中澤をクスクスと笑いながら、中澤が運んできた食器を洗う。
ひと通り片付いたところで、2人はソファーに座った。
「サンキュ、紗耶香。わざわざスマンなあ」
「いいって、これくらい別に」
中澤は冷蔵庫から缶ビールを2本取り出し、そのうちの1本を市井の前に置いた。
「紗耶香も飲むか?」
中澤が缶ビールを市井に手渡そうとする。
市井は一瞬、それを見て戸惑った。
「な〜んてな! ジョークやジョーク。だいたい、私が未成年にお酒なんて
飲ませるわけないやろ」
中澤は笑って言った。
- 99 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月08日(木)23時23分08秒
- 「ほい!」
中澤は缶ジュースを市井に手渡した。
「アリガト」
市井は缶ジュースを開けると、一口だけ口にした。
「……裕ちゃん、あのさ…」
「どないしたん? 改まって」
中澤は缶ビールに口をつけながら市井を見た。
「後藤のこと……なんだけど…」
「ごっちん?」
「うん。さっきはシャレでしか受け取ってもらえなかったと思うんだけど、
後藤、喋れなくなってるんだ…」
「そいで?」
中澤は平然とした顔で答えた。
「へ? そいでって、…驚かないの?」
市井は目を大きく見開いたまま、唖然としている。
「私も色んなことを経験してるからねぇ。別にそないなことで、
いちいち驚いたりせえへんって」
「なんか、裕ちゃんが言うと説得力あるなぁ…」
「何か言ったか? 紗耶香」
中澤が笑いながら、市井の頭を缶でコツンと小突いた。
- 100 名前:道化師 投稿日:2001年02月08日(木)23時36分08秒
- はい。相変わらず、中途半端なところで終わります。
もう既に、夕方になってます(謎)。
自分で読んでて、なんかね、これでいいのか? って。
これからの展開は、市井ちゃんと裕ちゃんという謎のコンビが目立つ予定です。
ま、あくまでも予定であって、ど〜なるかはわかりませんが…。
他に、誰を出そうかな〜って悩んでいるところです。
月曜か火曜まで、個人的な用事のため更新できなくなりますが、
まあ、気長に待って下さい。ほんの3、4日ですから…。
では、また次回の更新まで…。
- 101 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月10日(土)03時11分03秒
- 市井×中澤、楽しみですなー。
御忙しいでしょうが・・・もう一方はupされてた様な(w
- 102 名前:道化師 投稿日:2001年02月10日(土)06時57分12秒
- >101:名無し読者さん
う〜ん、気のせいじゃないですね〜。私も今、確認してきました(苦笑)
…と、いうわけで、続きを書きます。
これって、どちらにも目を通してくださっているって事ですよね。
ありがとうございます。
はい、続きいってみよ〜→!!
- 103 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月10日(土)06時59分34秒
- 「へへへ…。…………けど、どうしよう。このままじゃ……」
市井は缶を置き、立ち上がって後藤の元に歩き出した。
「後藤…」
市井はベッドの前に来ると、自分の左手を後藤の額に置いた。
後藤は相変わらず、穏やかな表情のまま眠り続けている。
市井は後藤を淋しそうな顔で見つめた。
「今は何とも言えへんけど、なんとかせなあかんなぁ…」
中澤が市井の後ろにやって来て、後藤の顔を見ながら言った。
「ったく、周りの苦労も知らずに気持ちよさそうな顔をしよって…」
中澤と市井は笑みを浮かべた。
「はあ〜…。マジ、どーしよ。後藤が一生このままだったら…」
「ま、なんとかなるっしょ」
「それもそうだね…」
市井は後藤の頬をいとおしそうにそっと撫でてから手を離した。
そして、2人がソファーに戻ろうとした時――
- 104 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月10日(土)07時02分56秒
- ぎゅるるるるるるるる……
「ん?」
2人は顔を見合わせた。
少しの間、沈黙が続く。
「あ〜はっはっはっはっはっは…」
その直後、部屋中に笑い声が響き渡った。
2人は腹を抱えて笑っている。
「あ〜あ〜っはっははは……。ハラいて〜」
「ふふっ……はっはっはっははは…」
「なんなのよ、今の?」
市井が涙目で言った。
中澤と市井は苦しさのあまり、床に座り込んだまま笑っている。
- 105 名前:phase of Maki 投稿日:2001年02月10日(土)07時04分30秒
- バサッ…
(……………………………んっ…)
私は頭をかきながら体を起こした。
(どこだここ? 私の部屋じゃないし、なんでベッドに寝てんの?)
ぼんやりとした状態で頭を左右に回転させてみた。
まだ、頭の中はぼ〜っとしていて、周りの状況など把握できる状態じゃなかった。
私は半目のまま両手で顔を擦った。
(ど〜も勝手悪い…。はあ〜…、おなかすいたぁ…)
「ふわぁぁああああ……」
私は大きくあくびをした。
けど、まだ頭の中はぼんやりしている。
ぎゅるるるるる…
私のおなかが鳴った。
私はおなかを押さえて、下を向いた。
(おなかすいたなぁ…)
「あ! 起きたんだ、後藤。よかった〜…」
(ん? なんか懐かしい感じの声だな…。誰だっけ……?)
- 106 名前:道化師 投稿日:2001年02月10日(土)07時09分35秒
- はい。無事、ごっちん目覚めました〜。
…はいいんですけど、これからどうなってしまうのでしょうか?
個人的には、寝ていてもらった方が断然楽なのですが…。
いえ、なんでもありません(苦笑)
と、いうわけで、ホントに次回更新は月曜日になります。
- 107 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月11日(日)02時15分02秒
- この展開はもしかして・・・・?
更新早いですね、頑張ってください続き期待してます。
- 108 名前:道化師 投稿日:2001年02月12日(月)01時24分31秒
- >107:名無し読者さん
>この展開はもしかして・・・・?
もしかして……って、どうなるんだ〜→!!
何を期待していたか、是非聞かせてくださいな。
とりあえず、今は月曜です。夜中でも月曜は月曜なのさ〜♪
はい、続きいきま〜す。
- 109 名前:phase of Maki 投稿日:2001年02月12日(月)01時28分17秒
- 「まだ寝ぼけてんとちゃうん?」
(関西弁? う〜ん……。あっ! ……)
私は顔を上げた。
「ほら、ちゃんと起きてるじゃん」
(あ………)
私の目の前にいたのは、市井ちゃんと裕ちゃんだった。
「泣いてんの? 後藤…」
私の頬を熱いものが伝っていく。
(なんで? 嬉しいはずなのに…。あはっ…、なんで泣いてるんだろう…)
私は涙を拭きながら、無理矢理笑顔を作って市井ちゃんを見た。
「無理しなくていいんだよ…。泣きたいときは泣けばいい…」
そう言って、市井ちゃんは私の顔を市井ちゃんの胸に押し付けた。
「無事でよかった…」
市井ちゃんは私の頭をそっと撫でてくれた。
私は声を上げて、市井ちゃんの胸の中で思い切り泣いた。
なんとなくだけど、市井ちゃんはお母さんと同じ匂いがした。
- 110 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年02月12日(月)01時33分39秒
- 「…なるほどなぁ……。頭の中ではわかっていたつもりやけど、実際
目にするとなると、なんか実感わかんというか何というか…」
中澤は後藤の様子を見て呟いた。
「さて、どうしようか…」
中澤は腕を組み、右手を顎に当てたまま壁にもたれ掛かった。
部屋の中では、後藤の震えた息の音だけが聞こえる。
「…とりあえず、つんくさんと事務所には説明せなな。けど、どうやって
説明しよ……。話だけじゃ信じてもらえへんやろなぁ…。かといって、
これがマスコミにバレる訳にもいかんし…」
中澤はため息をついて、ソファーに座った。
そして、缶ビールを手に取って一口飲んだ。
「裕ちゃん…」
中澤が顔を上げると、市井が深刻そうな顔をして立っていた。
「しかし、ホンマに声が出えへんとは…」
- 111 名前:道化師 投稿日:2001年02月12日(月)01時37分54秒
- すいません。今回はここで終わらせます。
裕ちゃんを中心に展開していきそうなので、試しに↑のようにしてみましたが、
ちょっと……って感じです。
同じ場面に市井ちゃんがいるときはどうしよう? って。
どうしましょう? ホント。
コレを読んだ下さった方、もしよろしければ、どうすればいいのか意見をお聞かせ下さい。
- 112 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月12日(月)02時18分12秒
- 私は、このままでも全然いいと思いますが!
作者さんが気になるのであれば 裕ちゃん中心のところは Phase of Yukoで
そこに市井ちゃんを入れるのが気になるのなら二次元中継にしてみては。。。
ごっちんも勿論。。。なので三次元中継で多角的な構成はどうでしょう?
って意味わかります?
- 113 名前:道化師 投稿日:2001年02月12日(月)02時49分04秒
- >112:名無しさん
>三次元中継で多角的な構成
スミマセン。よくわからないです…。
- 114 名前:道化師 投稿日:2001年02月13日(火)23時29分27秒
- 2日悩んだあげく、普通に進みます。
- 115 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年02月13日(火)23時34分19秒
- 市井はソファーに座った。
「もう、大丈夫なんか?」
「うん、少しは落ち着いたみたい。気持ち良さそうな顔で寝てる…」
そう言って、市井は笑顔を見せた。
「そっか…。これからのことなんやけど、紗耶香はどうしたらいいと思う?」
「しばらくは休ませてあげて…」
「そりゃ、もちろん休ませんと。最近は何かと忙しくて、特に気い
張ってたからな、ごっちん。ちょうどいい機会やて」
「うん。けど、仕事とかどうしよう?」
「それなんや、問題は…」
中澤と市井は顔を見合わせたまま黙り込んだ。
「とりあえず、つんくさんと事務所の方には説明しようと思ってるんや。
けど、どうやってするかは決めてへん。マスコミだけには、絶対に
バレるわけにはいかんからなぁ…」
「そうだね……。でも、信じてくれるかなぁ…?」
「あの堅物じゃ、無理……やろな」
「だよね…」
再び、顔を見合わせたまま時間が止まる。
- 116 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年02月13日(火)23時36分04秒
- しばらくして、市井がポンと手を叩いた。
「だったら、体調を崩したってことにすれば?」
「それしかないか…。でも、つんくさんだけにはホントのことを教えとかんと。
あの方は私達をここまで育ててきてくれたんやから」
中澤は握り拳を作って立ち上がった。
「よし! 私がなんとかつんくさんと事務所に説明するわ!」
「私は?」
市井は座ったまま視線を上げた。
「紗耶香は、ごっちんの様子を見といてや」
「うん。わかった」
「そや、今日はどうする? 紗耶香。ごっちんの側についてるか?」
「うん。できれば…。でも、裕ちゃんは?」
「私? ま、矢口んトコにでも行くわ。ほな、ごっちんのこと頼んだで」
そう言うと、中澤はドアを開け部屋を出て行った。
- 117 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月14日(水)00時47分05秒
- 「アリガト…。裕ちゃん…」
市井は閉まったドアを見ながら呟き、立ち上がってベッドの前に座った。
「後藤…」
市井は後藤の顔を見つめる。
後藤は穏やかな表情ですやすやと寝息をたてながら眠っている。
市井は、まるで赤ちゃんの寝顔を見守っている母親のような顔をして
後藤を見ている。
「……市井ちゃん…」
「どうしたの? 後藤」
市井は立ち上がって声をかけるが、返事はなかった。
「なんだ、寝言か…」
市井はふうと一息ついて座った。
後藤の目から、一筋の涙がこぼれ落ちる。
市井は後藤を起こさないように、そっと涙を拭いてあげた。
そして、後藤の額にそっとキスをした。
- 118 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月14日(水)00時48分29秒
- 翌朝――。
「――ハッ!? いつの間にか寝ちゃってた?」
市井はガバッと体を起こして、すぐに後藤を見た。
「……よかった…」
後藤は昨夜と同じ状態ですやすやと眠っている。
市井はそれを見て、ホッと胸を撫で下ろした。
「ホント、これからどうなるんだろう……。ねえ、後藤。
後藤はどうしたらいいと思う?」
市井が眠ったままの後藤に話しかける。
「………オマエが起きたらなぁ…」
市井は何の反応も示さない後藤を見ながらため息をついた。
「とにかく、裕ちゃんが帰ってくるのを待とう…」
- 119 名前:道化師 投稿日:2001年02月14日(水)00時52分44秒
- と、いうわけで、裕ちゃんのメイン昇格が決定となりました!!
次回から、中澤裕子編スタートです。もちろん、あの方も登場する予定。
- 120 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月14日(水)02時26分55秒
- 裕ちゃんメイン決定ですか!
楽しみです!
あの方って?矢口?つんく?・・・
- 121 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月14日(水)02時38分47秒
- えらく更新されてる!? 3,4日休むって言ってたのに(w
ま、楽しみにしてる一読者としては嬉しい限りですけど、ガムバレ作者さん。
- 122 名前:名無し読者107 投稿日:2001年02月14日(水)10時54分53秒
- >>108
>(ん? なんか懐かしい感じの声だな…。誰だっけ……?)
ここから後藤が記憶喪失になる話を予想したんです。
後藤の寝顔をまるで赤ちゃんの寝顔を見守っている母親のような顔で見る市井
凄く想像出来て良いです。
作者さん続き期待してますよ。
- 123 名前:道化師 投稿日:2001年02月15日(木)04時55分26秒
- >121:名無しさん
どちらかが正解です。おめでとうございます。
でも、今回は正解は出てこないんです。次回まで待ってくださいね。
>122:名無し読者さん
>3,4日休むって言ってたのに(w
けど、頑張っちゃいました(笑)。ま、気にしないで下さい。
>ガムバレ作者さん。
はい! がんばりま〜→っす!!
>123:名無し読者107さん
>ここから後藤が記憶喪失になる話を予想したんです。
これですねぇ、別の人の話で考えています。
今回はそうすると、話が続かなく恐れがしたのでやめました。
>……市井凄く想像出来て良いです。
ありがとうございます。想像できるという言葉は、やはり嬉しいですね。
これからも頑張ります。
さて、気になる続きは……?
- 124 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年02月15日(木)04時59分17秒
- ――その頃、中澤は事務所に足を運んでいた。
中澤はマネージャー達に後藤のことを話している最中だった。
「…というわけなんや」
マネージャー達は顔を見合わせたまま黙り込んでいる。
やはり、なかなか信じてもらえないようだ。
「で、後藤は体調を崩したということにしといて欲しいんやけど…」
「マスコミにバレないように……か…」
「そういうこと」
中澤がうなづく。
「ま、仮にバレたとしても、信じてもらえないでしょうね」
「しかし、万が一を考えたときは?」
「それはヤバイ…。しかし、そう簡単にあの堅物達が聞いてくれるか?」
マネージャー達が次々と口を開く。
「そこをなんとかして欲しいねん」
「わかりました。なんとかしましょう」
「このことは、つんくさんにも?」
「いや、まだや。これからつんくさんトコに行くわ」
「そう。じゃ、事務所側はそういう方向で」
「ほな、お願いします」
中澤はマネージャー達に礼をして事務所を出た。
「意外と、事務所の方は楽やったな…。問題はつんくさんに、
どうやって説明するかや…」
中澤は立ち止まって腕を組んだ。
「悩んでもしゃーない!! とにかく行ってみよ!」
中澤は頬をパンパンと叩いて気合を入れ直した。
- 125 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月15日(木)05時01分28秒
- 「相変わらず、眠ったままか…」
市井はあれからずっと後藤の側に座っている。
ぐうううぅぅぅぅ…
「はあ〜…。ハラ減ったな〜」
市井は腹を押さえながら時計を見た。
針は12時を指している
「昼か…。よし、なんか食べよ…」
市井は立ち上がり、部屋を出ようとしてドアノブに手をかけた。
ガチャ…
「おっとっとっ……」
市井はドアノブを握ったままの状態で、体を引っ張られていく。
「何やってんの? 紗耶香」
「えっ? いや、お昼を…と思って…」
ドアが開くと、矢口が紙袋を抱えて立っていた。
矢口は不思議そうな顔で市井を見ている。
「どうしたの?」
ドアを開けたのはどうも保田だったらしく、不思議そうな顔をして
ドアの向こう側から現れた。
- 126 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月15日(木)05時03分53秒
- 「はい、差し入れ」
矢口と保田が紙袋を差し出す。
市井は体勢を立て直して受け取った。
「アリガト…。けど、なんでここにいるってわかったの?」
「それは裕ちゃんが教えてくれたからよ」
保田が当然のことように答える。
「おかげで、昨夜(ユウベ)はいろいろと大変だったんだから…。
おまけに、あんまり寝てないんだからね!」
矢口は腰を押さえながら、キレ気味の口調で言った。
「?????」
市井は何が何だかわからないような表情で矢口を見る。
「あ〜、いーのいーの。別に気にしなくて…」
保田は苦笑いを浮かべながら、すかさずフォローした。
「どーせ、紗耶香のことだから、何も食べてないんでしょ?」
「うん…」
「私達もまだなんだ。だから早く食べよ!」
矢口が市井の背中を押しながら、部屋へ入っていく。
保田はその様子を見て笑いながら入っていった。
- 127 名前:道化師 投稿日:2001年02月15日(木)05時10分58秒
- はい。裕ちゃんがちょっとずつ動き出しました。
余談ですが、新曲「悔し涙 ぽろり」のカップリング「恋の記憶」
もう聞きましたか? あの歌詞、な〜んとなく市井ちゃんを思わせる内容に
なってるんです。曲だけ聞いたとき、ピーン! ときました。
はい、それでは次回まで…。
- 128 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年02月16日(金)23時42分02秒
- 中澤はサングラスをかけ、茶色い革のジャケットを身にまとう男と話している。
男は少しばかりふっくらとしていて、ちょっと出っ歯である。
噛みは茶髪で、年は30代前半といったところだろうか。
「………というわけなんです」
「……………」
男は無言のまま中澤を見つめる。
「笑えんジョークやな…」
「こんな冗談言うわけないじゃないですか。つんくさん、マジメにお願いします」
中澤は深刻そうな顔で言った。
「わかってるって。軽いジョークやがな。中澤もまだまだ甘いな〜…」
男――つんくは笑いながら言った。
「しかし、えらい事になってもうたなぁ…。事務所には、もう話したんか?」
「はい。こちらへ来る前に」
「そうか……。で?」
つんくは一度視線を下げた後、また視線を上げた。
- 129 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年02月16日(金)23時43分34秒
- 「一応、体調を崩したため休む、ということにしてあります」
「そっか…。後藤が声が出えへんとは……。けど、一度見てみたいなぁ、それ」
「はい?」
中澤は首を傾げた。
「よし、後藤に逢いにいこ。実際見てみらんと、ようわからんからな」
「はあ…」
中澤はただただ返事をするばかりであった。
(一体、つんくさんは何を考えているんや?)
「そうと決まったら、はよ行くで!」
つんくは席を立ち、中澤と一緒に部屋を出た。
- 130 名前:道化師 投稿日:2001年02月16日(金)23時50分55秒
- 最近なにかと忙しいせいか、なかなかこちらの方を書いていません。
だから、青板の方をやってるというわけでもなく…。
来週一杯までは、更新が滞るかもしれません。ゴメンなさい。
- 131 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月17日(土)11時14分59秒
- お忙しい中、大変だと思いますが次の更新もたのしみに、じっと待っております♪
- 132 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月19日(月)02時41分44秒
- 今回は本当に御多忙のようで(w
いろいろと続きが気になる今日この頃、首を長くして待っております。
- 133 名前:道化師 投稿日:2001年02月21日(水)23時36分57秒
- >>131 名無しさん >>132 名無し読者さん
待たせてゴメンなさい。久々の更新です。
- 134 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月21日(水)23時39分40秒
- 市井は矢口と保田と一緒に食事をしていた。
矢口と保田が持ってきた食材を保田がさっと料理したのである。
「新メニューを覚えたので作りたい!」
と、矢口が連呼していたが、二人の反対によって却下された。
なぜ? それは、矢口が料理ができないからである。
だから、保田と市井で準備をしたのだ。
結局、矢口は食器などを並べるだけだった。
後藤は相変わらず眠っていた。
ラ〜ラララララ ラ〜ラララ〜♪
三人で楽しく会話をしていたところに、突然市井のケータイが鳴った。
「紗耶香、電話だよ」
矢口がソファーに置いてある市井のケータイを取り、市井に渡す。
「サンキュ」
市井はケータイを受け取り電話に出た。
- 135 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月21日(水)23時42分37秒
- 『もしもし、紗耶香か?』
電話の相手は中澤であった。
中澤は焦っているのか早口だ。
「あ、裕ちゃん。どうだった?」
『どうだったも何も……あっ! つんくさん!?』
急に中澤の声が遠くなった。
「ど、どうしたの!? 裕ちゃん!」
市井が慌てて中澤を呼ぶ。
「どうしたの? 一体」
保田が市井に聞く。
「わかんない…」
市井が首を横に振る。
『…おう、市井か?』
しばらく何も聞こえなくなったと思うと、突然声が聞こえてきた。
声は中澤のものではなく、男の声だった。
「つ、つんくさん!?」
市井の声が大きくなる。
市井は目を大きく見開いている。
- 136 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月21日(水)23時45分00秒
- 「つんくさん!?」
矢口と保田の声も大きくなる。
三人とも「なんで?」って顔で顔を見合わせた。
「ど、どーしたんですか!? 急に?」
市井は慌てながら言った。
『そこに、後藤いるか?』
「は、はあ…。けど、それがどうかしたんですか?」
『もう少ししたら、そっちに行くわ』
「え?」
「どうしたの? 紗耶香」
「つんくさんが、ここに来るって…」
「へ?」
矢口と保田は顔を見合わせた。
『…紗耶香、紗耶香』
「あ、裕ちゃん」
『ゴメンな、いろいろと。とにかく、詳しいことは後で説明するから。
それじゃ、また後でね』
「あっ、えっ…。………切れちゃった…」
電話は一方的に切られた。
- 137 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月21日(水)23時46分48秒
- 「で、つんくさんは何しに来るのよ?」
「さあ? 詳しいことはこっちで話すって…」
「とにかく、裕ちゃん達が来るのを待つしかないってことか…」
三人はそれがわかると、急いで部屋を片付け始めた。
別にそんなに散らかっているというわけでもないが、なぜか人が来るときになると
なんとなく片付けなければいけないような気になるからだ。
- 138 名前:道化師 投稿日:2001年02月21日(水)23時54分12秒
- これでなんとか合流できそうです。
……ってことは、裕ちゃんは降格?
はあ〜…。個人的にオススメな方なので降ろしたくないのですが…。
よし! なんとかして裕ちゃんを残そう!!
というわけで、また次回まで…。
- 139 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月22日(木)02時23分48秒
- よっ,待ってました!?
後藤はまだまだ寝たままっぽいから、姐さんにキタイ!
- 140 名前:道化師 投稿日:2001年02月22日(木)23時14分40秒
- >>139 名無し読者さん
そう、寝たままっぽいです(笑)
でも、そろそろ起きてもらわないと困るかな……?
ま、この際ですから、もうしばらくはこのままでいてもらいましょう。
- 141 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月22日(木)23時16分22秒
- 10分くらいして――。
部屋はさっきとあまり変わらないが、まあ、テーブルの上から
食器類は消えていた。
ガチャ…
「ただいま〜」
声と同時にドアが開き、中澤が入って来た。
その横にはつんくの姿も見える。
「よお! 元気か?」
つんくは片手を挙げて、市井にあいさつをした。
「こんにちは」
市井が会釈をする。
「なんや、矢口と保田もおったんか…」
つんくは視線を横に動かし、矢口と保田に気付くと少し驚いた顔をした。
「こんにちは」
矢口と保田がつんくにあいさつをした。
「で、どうだったの? 裕ちゃん」
市井が中澤の元に近寄る。
「まあ、そんな焦らんと。座ってから話そうか」
「うん」
中澤と市井を除く三人はソファーに座り、中澤と市井は飲み物などを
用意してから座った。
- 142 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月22日(木)23時20分22秒
- 「で、さっきの続きだけど…」
市井が中澤を見る。
「とりあえず、事務所には後藤は体調を崩したから休む、ってことに
してもらうよう頼んどいたわ」
「まあ、妥当なところかもね」
保田がうなづいた。
「後藤のことは伝えたの?」
「マネージャー達には伝えたけど、上のお偉いさん方には信じて
もらえんような気がしたからこうしたんや」
「事務所はOK、と…」
市井がホッと一息ついた。
「で、つんくさんはなぜここに?」
矢口がつんくを見た。
「後藤を見にやけど」
つんくが淡々と答える。
「裕ちゃん…」
「なんや?」
「ちゃんと説明したんだよね。後藤のこと」
市井が不安そうな顔で中澤を見る。
「したで、ちゃんと」
「じゃあ、なんで…」
「ああ〜…。それはオレの方から頼んだんや」
つんくが口を挟んだ。
「?????」
市井と矢口と保田は顔を見合わせ、首を傾げた後でつんくを見た。
- 143 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年02月22日(木)23時23分18秒
- 「だって、一度目にしてみんと、どうなってるかわからんやろ?」
「…というわけや。最初聞いたときは私も???やったよ。
でも、確かに聞いただけで信じて下さいっていうのは無理やったみたいやね。
まあ、信じろっていう方が無理やからね。実際…」
「そういうことや、百聞は一見に如かず。さあ、後藤を逢ってみよか」
つんくはヤル気まんまんの状態だ。
「あの〜、つんくさん」
「どうした? 市井」
「後藤、今寝ているんです。倒れたときに、お医者さんに過労だろうって
言われてて…。だから、後藤が起きるまで待ってくれませんか?」
市井は心配そうな顔で言った。
「確かに、最近の娘。達はハードスケジュールやからなぁ…。
後藤が倒れたのも無理ないか…」
つんくは腕を組んでうなづいた。
「わかった。じゃあ、待つことにするか。ま、市井が言わんでも、
はなっからそのつもりやったんやけどな。大方の話は中澤に聞かせてもろうたから、
予想はついてたんや。おまけに、後藤はよく寝る子やからね」
そう言って、つんくは笑顔を浮かべた。
「うんうん」
全員うなづきながら後藤の寝ているベッドを見た。
後藤は相変わらず、何もなかったような顔ですやすやと眠っている。
- 144 名前:道化師 投稿日:2001年02月22日(木)23時24分58秒
- 次回から、今後のことについて話が進む予定…。
以前からお知らせしてたように、またしばらく更新を休みます。
ゴメンなさい。
- 145 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月22日(木)23時54分54秒
- 後藤はいつ目覚めるんだろう・・・
更新気長に待ってます
- 146 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月23日(金)02時01分19秒
- 「寝る子は育つ」ということで、
後藤の目覚めとともに、更新ゆっくり待ちますか。
- 147 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年02月27日(火)23時08分40秒
- 「さて、これからのことなんやけど…」
中澤が手を組み、みんなの顔を見ながら話し出す。
全員が中澤の方を向き耳を傾けた。
「もうすぐ、コンサートがあるやろ」
「そうだね。あと6日後か…」
市井がうなづいた。
「それから、TVにラジオもあるなぁ」
「ダイバーにASAYAN、ハロモニにお願いモーニングだね」
保田が指を折りながら言った。
「そうや。とにかく、今の状況やと、ごっちんはしばらくお休み
ということになるな…」
「どうするの?」
矢口が言った。
「残念やけど、どうすることもできへん…。親御さんには、
まだ電話でしか説明してないんや…」
「これから、いろいろ大変だね…」
保田はふうとため息をつきながら、ソファーにもたれて上を見上げた。
- 148 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年02月27日(火)23時10分16秒
- 「とにかく、しばらくごっちんは何もできへん。せやけど、紗耶香、圭坊」
中澤が市井と保田の顔を見る。
「なに?」「ん?」
市井と保田が中澤を見る。
「何とかして、ごっちんをダイバーに参加させてやってくれへんか?」
「けど、どうやって…」
市井と保田は顔を見合わせた。
「FAXとか、その場にいさせて書かせてとか、どんな方法でもええ。
ただでさえ、TV番組には出演することができないんや。せめて、
ラジオだけには参加させてあげたいねん」
「うん。ディレクターさんに頼んでみるよ」
保田がうなづくと、市井もうなづいた。
「今、ごっちんは情緒不安定な状態や。新メンバーが入ってくるというのは
初めての経験やろ? ごっちんが入ってきたときのウチらはどうやった?」
「すごく、不安だった…。明日香が卒業して…、そしていろんなことがあって…」
矢口の目にうっすらと涙が光る。
- 149 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年02月27日(火)23時18分46秒
- 「ウチらは初めてじゃないから大丈夫やけど、今ごっちんも同じように
不安なはずや…。おまけにこないなことになってもうたし……」
中澤は頭を抱えた。
「後藤は、私が何とかする……」
市井が突然、何かを決心したような顔で言った。
「紗耶香…」
矢口が市井を見る。
「後藤は、私が何とかするよ。だから、みんなは他のことを…」
「これは、みんなの問題や。教育係だからといって、紗耶香だけが
抱え込むようなことやない!」
中澤が市井の言葉をかき消すほどの大きさの声で遮った。
「そうだよ、紗耶香」
「私達を忘れてもらっちゃ困るって」
矢口と保田が頼もしそうに言った。
市井が二人の顔を見た。
「ゴメン…。私……」
市井はそのまま下を向いた。
- 150 名前:道化師 投稿日:2001年02月27日(火)23時27分41秒
- …というわけで、5日ぶりの更新です。
今回から、レスはこっちで…。
>>145 名無しさん
>後藤はいつ目覚めるんだろう・・・
そうですねぇ、もう少ししたら起こしちゃいましょうか?
・「おい! 後藤起きろ!!」
・ビシビシ!!!!
・市井が後藤の胸ぐらを掴んで往復ビンタをする。
・しかし、後藤は目を覚まさない。 …以下エンドレス(笑)
みたいに。
>>146 名無し読者さん
毎回どうもです。
>「寝る子は育つ」
そうですねぇ、このコもこれから随分と大きくなっていくと思いますよ。
精神的にですけど…。この話の中ではわからないですけどね。
ラストでそうなるのかな……?
- 151 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月02日(金)03時11分03秒
- 待ってました。←こればっかりだなオレ(w
ま、それだけ楽しみにしてるということで・・・
情緒不安定で声が出なくなったのか、後藤?
- 152 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月09日(金)00時51分52秒
- むこうも大変でしょうがこちらも4649!
- 153 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月29日(木)11時55分39秒
- 「オレも中澤の言うとおりだと思うなぁ…」
今まで何も喋らず、ただじっとそれぞれの言葉に耳を傾けていたつんくだったが、
市井の言動に対する中澤の言葉を聞くと、ついに口を開いた。
「市井、お前の悪いクセや。何でも自分で解決してみせようとする。その責任感の
強さが時には裏目に出ることもある。以前、なっちがそうやったなぁ…。
あのとき、みんなはどうした?」
つんくがみんなの顔を見渡す。
それぞれお互いの顔を見合って、それぞれうなづいた。
「そう、みんなで背負ったなぁ。今回も同じ状況や」
「つんくさんの言う通りや。私達を信じて。な、紗耶香」
中澤が市井の方に手を置いた。
「…うん」
ついさっきまで強ばっていた市井の表情は、緊張が解けたせいか安心した
表情になっていた。
「ほな、そうと決まったら早速行動開始や!」
なぜかつんくは張り切っている。
「あの〜…、つんくさん?」
「どうした? 中澤」
つんくが申し訳なさそうに言う中澤の声に振り返った。
- 154 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年03月29日(木)11時56分43秒
- 「オレも中澤の言うとおりだと思うなぁ…」
今まで何も喋らず、ただじっとそれぞれの言葉に耳を傾けていたつんくだったが、
市井の言動に対する中澤の言葉を聞くと、ついに口を開いた。
「市井、お前の悪いクセや。何でも自分で解決してみせようとする。その責任感の
強さが時には裏目に出ることもある。以前、なっちがそうやったなぁ…。
あのとき、みんなはどうした?」
つんくがみんなの顔を見渡す。
それぞれお互いの顔を見合って、それぞれうなづいた。
「そう、みんなで背負ったなぁ。今回も同じ状況や」
「つんくさんの言う通りや。私達を信じて。な、紗耶香」
中澤が市井の方に手を置いた。
「…うん」
ついさっきまで強ばっていた市井の表情は、緊張が解けたせいか安心した
表情になっていた。
「ほな、そうと決まったら早速行動開始や!」
なぜかつんくは張り切っている。
「あの〜…、つんくさん?」
「どうした? 中澤」
つんくが申し訳なさそうに言う中澤の声に振り返った。
- 155 名前:道化師 投稿日:2001年03月29日(木)11時57分49秒
- 153はミスです。無視してください。
- 156 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年03月29日(木)11時58分58秒
- 「どうして、つんくさんがそんなに張り切ってらっしゃるんですか?」
「そりゃ勢いや、勢い」
つんくは笑いながら答えた。
「い、勢い…ですか…」
中澤は心の中でため息をついた。
「裕ちゃん、とりあえず、後藤に話さないと…」
市井が肩を落としている中澤に声をかけた。
「そうやな」
中澤うなづいた。
みんな後藤が寝ているベッドの周りに移動した。
「――!」
市井の目が大きく開く。
「起きてたの!? いつから…」
後藤が市井の腕を思いきり掴む。
「い、痛っ…」
あまりにも後藤が力強く腕を掴むので、市井は苦痛の表情を浮かべた。
- 157 名前:phase of maki 投稿日:2001年03月29日(木)12時01分49秒
- 「声が…声がでないの……? ねえ、これからどうなるの? コンサートは?
TVは? ダイバーは? 私は? ねえ、教えてよ! ねえ、ねえってば………」
私は涙をこらえ、精一杯の力を込めて市井ちゃんに訴えるように叫んだ。
「後藤…」
市井ちゃんは目を閉じて首をゆっくりと横に振り、悲しそうな顔をした。
やっぱり、私の声は届いてないみたいだ…。
「後藤…」
私は横から聞こえて来た声に振り向いた。
――つんくさん!?
そこにはつんくさんがいた。
つんくさんはただその場に茫然と立ち尽くしている。
私の顔を障害者を見るような目で見ている。
私…、私モーニング娘。をやめさせられるのかな…。
せっかく、せっかく市井ちゃんや他のみんなとも仲良くなれたのに…。
やっと、歌手になるっていう夢が叶ったのに…。
他にも、いろんなことがやりたいのに…。
そんなことを考えていると、こらえていた涙が溢れてきた。
私は……私は…。
- 158 名前:phase of maki 投稿日:2001年03月29日(木)12時03分16秒
- 「辛いか? 辛いやろなあ…」
つんくさんはそこまで言うと黙り込んだ。
たぶん、声をかけようにも、どうしたらいいのかわからなかったんだと思う。
「後藤、これから言うことをよく聞くんやで…」
裕ちゃんが私の腕に手を置いていろいろと話し始めた。
私は裕ちゃんが言うことに、ただうなづくだけだった。
言われたのは……
しばらくの間、TVとコンサートはお休みすることと、ダイバーには
なんとか参加できること。
といっても、ダイバーはちょこっとしか参加できないみたい。
詳しいことはまた後で話すって言ってた。
あ、私の側には市井ちゃんを置いといてくれるって言ってたんだ。
私が少しでも淋しい思いをしないように…って。
- 159 名前:道化師 投稿日:2001年03月29日(木)12時10分52秒
- >>152 名無し読者さん
お待たせしました。こちらも再開です。
といっても、またすぐに忙しくなるから停滞気味になるかもしれませんが…。
またしばらくよろしくお願いします。
それでは、次回まで…。
- 160 名前:phase of Maki 投稿日:2001年03月30日(金)23時18分46秒
- 次の日から、みんなはいつも通りにコンサートの練習を再開した。
もちろん、市井ちゃんも全部覚えているわけではないので練習に参加するわけで。
私も『もしも…』を考えたら練習に参加せずにいられなかった。
みんなは「休んでなよ」って言ってくれたけど、一人でいると結構暇なんだよね。
それに、少しでも市井ちゃんの側にいたかったし…。
夏先生の方には、裕ちゃんが話をつけてくれてるみたいで、練習のときは
いつも市井ちゃんと一緒だった。
そういえば、他のみんなは私が喋れなくなったのを知ってるのかなあ?
なんか、変に避けられてたって感じがしたんだよね…。
加護と辻は、相変わらず私にいろいろと話しかけてきたけどさ。
ただ不便なんだよね、言葉が話せないってのは。
だから私は、その度に紙に文字を書いて返事するんだけど…。
いっそのこと、手話を覚えてみようかな。
たしか、なっちができるはずだよね……うん。
私はその日の練習後に、早速なっちに聞いてみた。
- 161 名前:phase of Maki 投稿日:2001年03月30日(金)23時20分05秒
- 『なっち、わたしに手話を教えて』
あらかじめ書いておいた紙をなっちに見せて聞いてみる。
「手話!? いいよ。じゃあ、いつから始める?」
なっちは一瞬驚いた表情を見せたけど、笑顔でOKしてくれた。
(よかった……、断られたときはどうしようかと思ったよ…)
…ということで、私と市井ちゃんは手話を習うことになった。
なんで市井ちゃんも一緒かって言うと、市井ちゃんいわく、
「私は後藤の教育係だからね♪」
らしい…。
けど、ホントは前々から興味はあったんだって。
とりあえず、少しずつ覚えていくことにした。
だって、難しいんだもん。
- 162 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年03月30日(金)23時22分18秒
- 「後藤の様子は?」
「今のところ大丈夫です。最近手話を始めたみたいで、毎日楽しそうにみんなに
披露してますよ。おかげでみんなも手話を始めて…」
中澤が嬉しそうに身振り手振りを使って話す。
「そうか…。それはよかった…」
つんくは左手の人差し指で下唇を撫でながらうなづいた。
「ところで、今日はどうしたんですか? 用事があるって…」
中澤は改まって言った。
「ああ…。この前、後藤に逢ったときに気づいたんやけど、後藤の首の後ろに
変な模様? ……ちゃうな、なんやろ…。なんかそんなんがあったやろ?」
つんくは首を傾げながら言った。
「首の…後ろ……ですか?」
中澤はどこか一点を見つめ、口をとがらせながら眉間にしわを寄せた。
しばらく頭の中を整理した後、中澤が口を開いた。
「形は覚えてませんけど、確かにあったと思います…」
その声は言葉とは裏腹に、どこか確信のない弱い音だった。
「せやけど、それがどうかしたんですか?」
「う〜ん、いつの間についてたんやろって思ってなぁ…」
「さあ…? そこまではわかりません…」
中澤が首を横に振る。
「とにかく、それについて調べてみてくれ…」
「わかりました…」
- 163 名前:更新記 投稿日:2001年03月30日(金)23時28分52秒
- 少しずつ、少しづつだけど本編に話が戻ってきました。
それにしても、つんくさん、ホントは何か知ってるんじゃないですか?
- 164 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月31日(土)02時53分24秒
- 更新、待ってました!?
そういえば後藤に入れ墨とかありましたね、忘れてた(w
- 165 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月04日(水)15時35分07秒
- ここの後藤かわいい
- 166 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年04月16日(月)11時55分24秒
- 市井と保田はTOKYO FMにラジオの収録に来ていた。
今はディレクターや放送作家らとの打ち合わせ中である。
「……という訳で、しばらく後藤はお休みになります」
市井は一通り後藤の事情を話した。
ディレクター達は顔を見合わせる。
「けど、なんとかして参加させたいのですが…」
保田がディレクター達の顔色を見ながら言った。
「別に構わないよ」
しばらくして、ディレクターが穏やかな口調で言った。
「よかったね…」
市井と保田は顔を見合わせて微笑んだ。
「だいたい、プッチモニは3人そろって初めてプッチモニになるんだろ。
まあ、こっちには来れなくても、メールとか方法はいくらでもあるからな。
なんとかなるだろう…」
ディレクターが肘を突き、口の前で手を組みながら市井と保田の顔を見る。
市井と保田は深々とおじぎをした。
「それじゃあ、早速どうするか決めようか」
「「はい!」」
市井と保田が声を合わせて言った。
その声はどちらも嬉しさを隠しきれないか、元気が溢れていた。
- 167 名前:phase of Maki 投稿日:2001年04月16日(月)11時57分03秒
- 『はあ〜…』
(ダイバーはどうなったのかねぇ…?)
私は市井ちゃん達のことが心配だった。
いくら市井ちゃんが、
「私に任せときなって!」
って言っても、さすがにこればかりはどうしようもないだろうからさ…。
私は今日はオフ……なんだけど、なぜか辻加護と一緒にいる。
別にイヤなわけじゃないんだけどね…。
「後藤さん! 後藤さん!!」
加護が私の肩をポンポン叩く。
『な〜に?』
私はホワイトボードにささっと書いて答えた。
「後藤さん、何か心配事でもあるん?」
加護が私の顔を覗き込む。
『ううん。何もないよ』
「なんか、そないな顔してたんで…」
加護はほっとした表情を見せた。
(あまり、心配させないようにしないと…。でも、市井ちゃん達上手く言ったのかなぁ?)
コンコン…
不意にドアをノックする音がした。
(誰だ? 市井ちゃんかな?)
私はすらすらとボードに書いて辻加護に見せた。
それを見ると、辻加護は「はい!」と返事をして、二人仲良く手をつないでドアに向かった。
- 168 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年04月16日(月)11時58分20秒
- 「はい〜、誰〜?」
「だれぇ〜?」
加護につられて辻も言った。
「ああ、裕ちゃんやで」
ドアの向こう側から聞こえてきたのは中澤の声だった。
「中澤さん? どないしたんですか?」
加護はドアを開けずに言った。
「ごっちんいる?」
「はい」
加護がドアを開ける。
ガチャ…
「ちょっとゴメン…」
中澤はドアが開くと同時に中に入り込んできた。
左手を上げて辻と加護に挨拶すると、そのまま奥にいる後藤の前に来て立ち止まった。
「ごっちん、ちょっと首の後ろ見せてくれんか?」
後藤は一瞬首を傾げ驚いた表情を見せるが、そのまま頷いて後ろを向いた。
中澤は後藤の襟足の髪を掻き分ける。
- 169 名前:更新記 投稿日:2001年04月16日(月)12時04分20秒
- 現在の三人の動きを一度に出してみました。
でも、このうち二人は同じ場所にいるんですよね…(苦笑)
>>164 名無し読者さん
お待たせしました。…といっても、週2〜3のペースの更新になると思いますが、
まあ、気長に待ってくださいな。
>>165 名無しさん
可愛いですか? ありがとうございます。
けど、向こうの方がもっと可愛いかもしれませんよ。
- 170 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年04月20日(金)13時36分25秒
- 「な〜るほど……」
そう呟くと、中澤はハンドバックの中からデジタルカメラを取り出し、
後藤の首を写しだした。
「何やってんねん? 中澤さん」
中澤の行動を不思議に思った加護が中澤に話しかけた。
「ん?」
中澤が声に反応して振り返る。
「ホラ、ココ見てみぃ。辻、アンタもこっちに来なさい」
中澤は後藤の首を指さして言った後に、少し離れて立っている辻に手招きをした。
「なに? これ…」
辻は目を大きく見開き、口元に手を当てる。
後藤は後ろを気にしているようだが、見たくても見れない。
だから、後藤はボードを手にして急いで何かを書いた。
『何があるの?』
中澤はボードを目にすると、後藤の前に回り込んでデジタルカメラを見せた。
後藤はデジタルカメラを手に取り、首を傾げながらしばらく液晶を見つめた後で、
自分自身を指さしながら、「私に?」とでも言うように顔を上げた。
中澤は後藤の反応を見ると頷いた。
後藤はじっと液晶を見つめる。
「にしても、一体なんやろなぁ? これ」
「さあ〜、変だね。なんか」
加護と辻は顔を見合わせて首を傾げた。
そして、そのまま二人は固まってしまった。
- 171 名前:phase of Maki 投稿日:2001年04月20日(金)13時37分33秒
- (う〜ん……どっかで見たことあるよ〜な、ないよ〜な…。どこだっけ……?)
私は目を閉じ腕を組んで、過去の記憶を遡ってみる。
・………。
「すぅ〜…すぅ〜……」
「…ごっちん! 大丈夫か?!」
誰かが私の肩を揺すってる。
(ん……? もしかして、寝ちゃってた!? いかんいかん)
私は首をふるふると横に振り、腕を組み直して再び目を閉じた。
(あっ!? そうだった…)
私は目を開け、手をポンっと叩いた。
- 172 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年04月20日(金)13時38分55秒
- 「ん? どうした? ごっちん」
中澤が後藤を見る。
すると突然、後藤はボードを手に取り、何かを書き始めた。
「ん〜…何やの? 一体」
中澤がボードを覗くが、後藤は気にせずに黙々と書き続ける。
だから、中澤はソファに座って書き終わるのを待つことにした。
しばらく待つと、後藤はペンを置いて顔を上げた。
そして、中澤もペンが置かれる音を聞くと顔を上げた。
辻と加護は、相変わらず二人で何かをしている。
こちらの事情にはあまり深く関わってこないようだ。
後藤はボードを正面に座っている中澤の前に差し出す。
中澤は受け取って、内容に目を通し始めた。
「ふむふむ……」
頷きながら読んでいく。
- 173 名前:更新記 投稿日:2001年04月20日(金)16時44分06秒
- やっと、気になるタトゥーの正体が…。
- 174 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月20日(金)23時53分33秒
- タトゥが気になる・・・
次で分かるのでしょうか?次回楽しみに待ちます。
- 175 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月23日(月)02時28分25秒
- 更新されてた!
首のタトゥーどの程度の大きさなんでしょうかね?
なぜか気になったもので・・・気長に更新待ってます〜
- 176 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年05月01日(火)09時34分39秒
- 後藤はボードを正面に座っている中澤の前に差し出す。
中澤は受け取って、内容に目を通し始めた。
「ふむふむ……」
頷きながら読んでいく。
『首の後ろにあるもよう → タトゥー
コレはおまじないの一種で「マーメイド」っていう名前。
効果は…………う゛〜ん。わすれちゃいました(ゴメンなさい)
だから、後藤はナニかの本にのってるかもしれないので探すことにします』
(タトゥー……??? 入れ墨ってことか?)
中澤はボードをテーブルの上に置くと、立ち上がって後藤の背後に回り込んだ。
後藤はおろおろしながら振り返ろうと試みる。
「後藤、ちょっとストップ」
中澤が制すると、後藤は思わずビシっと姿勢を正した。
「別にそんなに肩に力入れんでもええで。もっと力抜いて、リラックスしてええよ」
後藤は「ふにゃあ〜」とでも言うように、強張っていた表情を緩め、肩の力を抜き
うな垂れた。
- 177 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年05月01日(火)09時36分22秒
- 中澤は再び後藤の首にある模様――タトゥーをじっと見つめる。
(これ…入れ墨か……?)
中澤が手を伸ばし、後藤の首を指先でそっと触れてみる。
後藤は中澤の指が触れた瞬間にビクンと肩をすくめ、フルフルと震えている。
そして、ゆっくりと顔だけ振り向いてから口を動かす。
『く・す・ぐ・た・い』
そう口を動かすと、後藤は我慢しきれなくなったのか、ジタバタと暴れだした。
「どうしたん? 後藤」
中澤はキョトンとした顔で後藤を見ている。
周囲には「ハッハッハッ…」というリズミカルな息遣いとバタバタと床を叩く音が
聞こえる。
涙目になっていることから、おそらく笑っているのだろう。
しかし、中澤はしばらく集中していたため、今の状況を把握できていなかった。
「どーしたの? 中澤さん」
さすがに何か変だと感じ取ったのだろうか、辻が近づいてきた。
加護も辻の後ろから歩いてくる。
- 178 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年05月01日(火)09時37分28秒
- 相変わらず後藤は息を弾ませてジタバタと暴れ、その傍らでは、中澤は何が何なのか
わからない状態で不思議そうな顔をしている。
「あの〜、中澤さん?」
辻が何の反応も示さない中澤に声をかける。
「ん? なんや? 辻」
中澤は背中越しに聞こえてきた辻の声にやっと気づいたのか、声に反応して振り返った。
「なんで後藤さん笑ってるの?」
「さあ? なんでやろなあ…?」
中澤は首を傾げながら言った。
「きっと、思い出し笑いなんじゃないの?」
「んなわけあるかい!」
パコン!
加護が勢いよく中澤にツッコむ。
「いたたたた……」
中澤は頭を押さえながら加護をきつく睨みつけた。
「あっ、いや……その……」
加護は自分の右手に持っているハリセンに気づき、ハッとしてすぐに後ろに隠した。
- 179 名前:更新記 投稿日:2001年05月01日(火)09時49分28秒
- いつの間にかこちらは更新。
もう少し定期的な更新を心掛けないといけないですね(苦笑)
>>174 名無し読者
なんとなく、わかったようなわからないようなって感じです。
これには、まだ一度も登場していない人物が深く関わってきます。
まあ、まだ先の話なんですけど…。
>>175 名無し読者
忘れられた頃に更新です(笑)
大きさについては↑で述べたように、とある人物が登場したときに出します。
検証…みたいな感じで。
こちらはあちらが終わり次第、スピードをあげたいと思います(意気込み)
- 180 名前:道化師 投稿日:2001年05月01日(火)09時58分58秒
- 「さん」をつけるのを忘れていました。ゴメンなさい。
- 181 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月05日(土)03時28分40秒
- 加護、ハリセンを隠すよりもどこにあったんだ(w
- 182 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月02日(土)03時15分53秒
- 作者さん、こちらを覗かれたら何か一言。
- 183 名前:道化師 投稿日:2001年06月05日(火)13時16分33秒
- >>181 名無し読者さん
それは、背中です(爆)常に背中に隠してあります。だからいつでも取り出せます。
…って、そんなわけないですね(苦笑)
実は辻ちゃんと遊んでたときに使っていました。
>>182 名無しさん
最近んの矢口譲が中澤化してきているのは気のせいでしょうか?
…とまあ、それは置いといて、こちらは今週中には再開したいと思いますので、
しばしお待ちを。
- 184 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年06月08日(金)15時59分26秒
- 「あの〜、今のは……」
加護が後退りしながら苦笑いを浮かべる。
「かぁ〜ごぉ〜……」
中澤の拳がプルプルと震える。
「うっ…私が……ひっく……私が悪かったんですぅ…ひっく……」
と思うと、加護は突然うずくまって顔を伏せ泣き出した。
部屋中に加護の泣き声が響く。
「あいちゃん、大丈夫…?」
「ひっく……ひっく…ぐずっ…」
辻が加護の隣にしゃがみ込んで、加護の背中を摩る。
それを見て、中澤がおろおろし始める。
「いや…私も、私もな、そんなに怒ってないんやで〜。だから、泣かんといて。な?」
中澤が無理に笑顔を作って言った。
しかし、加護は泣き止むどころか、さらに泣き出すことになった。
「あいちゃん…ねえ、あいちゃん……うわあぁ〜〜ん!!」
「はい〜? つ、辻…」
思わず中澤の声が裏返る。
加護を慰めようとしていた辻が、加護と一緒に泣き出したからだ。
「ちょっ、ごっちん! こっち来てや」
中澤は加護と辻を見ながら、後藤を呼ぶ。
しかし、後藤はさっきから笑い続けていて話にならない。
「ウソやろ……」
中澤は頭を抱え目を閉じた。
「はあ〜……。泣きたいのはこっちやてぇ〜」
(だから、子供はイヤなんや…。もう、なんとかしてやぁぁぁ〜!!!!)
- 185 名前:更新記 投稿日:2001年06月08日(金)16時01分06秒
- ゴメンなさい。再開したいと言っておきながら、更新は1レス分のみです。
さ、今から頑張って書くぞ〜→!!
- 186 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月09日(土)03時07分22秒
- ウソ泣きだろ!?と思ってしまう私は、心がすさんでいるな(w
更なる期待感…
- 187 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年06月18日(月)12時36分41秒
- 「こんばんは〜! 市井紗耶香でぇ〜っす!!」
ディレクターのキューに合わせて、いつもの元気な声で市井が喋り出す。
「こんばんは。保田圭で〜す!」
保田もいつも通りに歯切れよく喋り出す。
「そして、後藤真希で〜す! …と、いつもならいくんだけど、今日は後藤はお休みです」
「なんでも、風邪をひいたみたいで」
「そうそう。みんなも風邪には気をつけてね〜! …って、季節はずれか」
「まあまあ、天気も不安定だからね。風邪もひくかもよ!」
「それもそうだね。早く元気に慣れよ! 後藤。…ってな感じで、オープニングは
3rd-LOVEパラダイスより、DANCEするのだ!」
『はいOK!』
ディレクターの声と同時に市井と保田がヘッドホンを外す。
「ふう〜…。ナイスフォロー、圭ちゃん」
市井が軽く息を吐いて言った。
「まあね。でも、どうしようか、ホント」
「う〜ん…」
二人はお互い顔を見合わせる。
そうしている間にも曲は流れていく。
- 188 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年06月18日(月)12時41分06秒
- 「とりあえず、ちょっと連絡入れてみない?」
しばらく考えた後で保田が言った。
「それもそうだね。ディレクターさん、番組後半の前にちょっといいですか?」
二人はディレクターの顔を見る。
「いいよ」
ディレクターは右手でOKサインを作り、笑顔で答えた。
市井と保田は顔を見合わせてにこりと微笑むと、いつものようなテンションで番組を続けた。
1コーラス終わった時点で曲はフェードアウトしていき、市井の声が入る。
「…というわけで、今夜は特別に、千葉〜ずの二人でお送りしているプッチモニダイバー。
今日のダイブはこれ! …」
『はいOK。じゃ、少し休憩に入ります』
番組収録は順調に進み、前半が終わった時点でディレクターが一度休憩を入れた。
「あの〜、ちょっと電話してもいいですか?」
『あ、ああ』
市井はディレクターの許可を得ると、カバンの中からケータイを取り出して後藤に電話した。
- 189 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年06月18日(月)12時43分30秒
- 「あ、後藤? …って言っても、答えられないんだったね……。誰か周りにいたら、
ちょっと代わってくれない?」
『……もしもし、紗耶香か?』
「あれ? 裕ちゃん、なんでいるの?」
『な、なんでって……。後藤のタトゥーの調査のためや』
「タトゥー?!」
市井は声を上げ、保田と顔を見合わせた。
『まあ、それについては戻ってきてから話すわ。ところで、どないしたん?
確か、今はラジオの収録中のはずやろ?』
「うん。ちょっと後藤に聞いて欲しいことがあるんだ」
『それやったら、ごとうに直接言えばええやん』
「それもそうなんだけど…。だって、後藤、声が出ないでしょ? 電話じゃ辛いんだよね。
だから頼んだよ、裕ちゃん」
『それやったらしゃーないな。で、用件は何や?』
「え〜っとねぇ……とりあえず、風邪で休みってことにしてあるんだ。だから、
なんかコメントでももらえないかな〜って」
『わかった。ちょい待ち』
- 190 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年06月18日(月)12時45分27秒
- 「どう?」
保田が市井の顔を見る。
市井は頷きながら保田を見返した。
「なんか、泣き声が聞こえるんだけど…」
「泣き声? なんじゃそりゃ!?」
「さあ…?」
市井は首を傾げた。
『……もしもし』
「あっ、はい」
『えーとな…、体調を崩しちゃってゴメンなさい。市井ちゃんと圭ちゃん、
後藤の分も頑張って。やて』
「わかった。サンキュ。そ〜いやさぁ、裕ちゃん」
『なんや?』
「なんか、後ろの方から泣き声が聞こえるんだけど…」
『ああ……、そのことか……。ほな、今から本人達の声を聞かせたるわ。はあ〜…』
力のない言葉とため息が電話越しに聞こえる。
「あ…、ゴメンね……」
- 191 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年06月18日(月)12時51分50秒
- 『…ほら、紗耶香からや。………ずずっ…あ゛、いぢい゛ざんでずか?』
「あ、うん…。か、加護……?」
『は、はい…』
「ねぇ、もしかして、泣いてる……?」
『え? な、泣いてませんよぉ〜。泣いてるのはののです。加護は泣きまねですぅ。
…………なんやてぇぇぇぇ〜〜!! かぁ〜ごぉ〜〜!!!』
「あれ? 後ろから裕ちゃんの声が…」
『な、なんかヤバイ雰囲気なので、後藤さんと代わりますぅ…』
「あっ、加護!?」
ガチャガチャと電話を受け渡しているような音が聞こえる。
「で、どうだったの?」
「う〜ん。修羅場を迎えてるみたい……」
「修羅場?」
保田が目を大きく見開く。
「うん。まあ後から説明する」
市井は頷いた。
- 192 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年06月18日(月)12時54分58秒
『(トントン…)』
「ん? 後藤……?」
『(トントン…)』
「ゴメンね。メールだったら、後藤の声も聞けるのにさ…。不便だね、電話って…。
メッセージ、アリガト。後藤。来週からはちゃんと前もって伝えるからさ。
うちらでダイバー頑張るよ。でも、これだけは忘れないで欲しい。後藤も一緒だよ。
声は届かないけど、後藤も一緒にいる。だって、3人でプッチモニだからね。
じゃあ、収録が終わったらそっちに行くよ。じゃ、また後でね」
そう言って、市井はケータイを切り、カバンに戻した。
「さ、収録を再開しないと」
市井は頬をパンパンと叩いて気合を入れ直した。
「で、後藤のコメントは?」
「体調を崩しちゃってゴメンなさい。市井ちゃんと圭ちゃん、後藤の分も頑張って。…って」
市井がメモを片手に答える。
「ふ〜ん…。でも、なんか静かだね。後藤がいないと…」
いつもならそこに後藤が座っているはずの席を見ながら保田が言った。
「仕方ないよ。今回ばかりはさ…」
「仕方ない……か…」
保田がどこというわけでもなく、遠くを見ながら呟いた。
- 193 名前:phase of Sayaka 投稿日:2001年06月18日(月)12時55分40秒
同じブースでも、なんとなく別のブースにいるようだった。
無邪気にはしゃぐ後藤、そんな後藤が今日はいない。
いや、これからしばらくはいないのかもしれない。
しかし、そんなことを考えている余裕など二人にはなかった。
特に市井にとっては……。
「さ、頑張ろ! 圭ちゃん。私達で後藤の分もさ!」
「そうだね。後藤が見たら、笑われちゃうもんね。後藤が聞いても安心できるようにやんないとね!」
市井と保田はお互いの手をギュっと握り締めてウインクをした。
そして、番組後半の収録を始めた。
- 194 名前:〜更新記〜 投稿日:2001年06月18日(月)12時58分42秒
- 丸1週間休んでの更新。
だから、今回はそぅとぅ多めに書いてみました。
まあ、ね、これから頑張ります。
>>186 名無し読者さん
まあ、間違っているとも言えませんな〜。これは有名な事件(?)ですからね。
時期的には後ですけど。
- 195 名前:phase of Maki 投稿日:2001年06月22日(金)12時03分05秒
- ――後藤も一緒だよ。声は届かないけど、後藤も一緒にいる。
だって、3人でプッチモニだからね――
市井ちゃんの声が私の頭の中でグルグル回っていた。
何度も何度も市井ちゃんの言葉は私の頭の中で繰り返される。
何度も…何度も……。
……3人でプッチモニ……
わかっているんだけど、今の状況で言われるとすごく嬉しかった。
最近、このせいで一緒に仕事もできないし、なんとなくみんなに取り残されたような
感じだったし。。。
早く声が出るようになって欲しいなぁ〜って、なんか他人任せだけど。
でも、しょーがないよね。
だって、私一人じゃ何もできないんだから。
早く元に戻って、また市井ちゃんと一緒に歌いたいなぁ〜…。
よし! 頑張って元に戻るぞぉ〜!!
- 196 名前:phase of Maki 投稿日:2001年06月22日(金)12時05分10秒
ドタドタドタ…
「きゃあぁぁ〜! 助けてくださ〜い!!」
「こぉらぁ〜!! 待たんか〜い!!」
さっきの加護の泣きマネ発言から、ずっと二人で鬼ごっこをしてる。
部屋中を走り回って、近所迷惑もいいところだね。
状況的には、加護の方が有利かな。
裕ちゃんはなんとなくだけど、息が荒そうだから。
年、かな………………。
私はまだ泣き止まない辻に悪戦苦闘中。
せめて声が出れば、こんなに苦労しなくて澄むんだろうけどさ。
はあ〜…。
とにかく、市井ちゃんたちが戻ってくる前に何とかしないとね。
- 197 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月23日(土)04時37分44秒
- 素直で、前向きな後藤。
それに比べ関西の二人は…場が和んでイイですけど(w
- 198 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年06月27日(水)13時08分11秒
トントン…
「どうぞ〜」
中澤はソファーに腰掛けたまま返事をした。
ガチャ…
「ただいま〜♪」
ドアが開くなり、笑顔で手を振りながら市井が飛び込んでくる。
「こんばんは〜」
その後から、いつものようにちょっと冷めた雰囲気の保田が入ってきた。
「ただいま〜って、なんやの、ただいまって」
中澤が笑いながら言った。
「え〜? だって、なんとなくやらない?」
市井は必死に言い訳を考えながらあたふたしている。
「まあ、やらないこともないけどな」
「はいはい、そこまで。ところで、例のタトゥーって?」
そんな和やかな雰囲気をよそに、保田が手をパンパン叩きながら二人の会話を止め、
用件を切り出す。
- 199 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年06月27日(水)13時09分45秒
- 「危うく忘れるところやったわ…。ほな、こっち来て…」
中澤は手を叩きながら立ち上がって、後藤の背後に回り込んだ。
「ま、百聞は一見に如かず、ってな? ほら、これ見てみぃ」
そう言って中澤は手招きをし、後藤の襟足を掻き分けて、首の後ろにある模様――
タトゥーを見せた。
市井と保田は覗き込んで、じっくりとタトゥーを見つめる。
「何? これ…」
「変な模様だね。でも、いつの間にこんなのが?」
保田が後藤の前に回り込み、後藤の顔を見た。
後藤は口をアヒルのようにして顔を横に振った。
「それが『タトゥー』や」
「けど、なんでタトゥーなの?」
市井がすかさず口をはさむ。
「それは後藤のメモを見てもらえばわかるやろ。ほら、これ…」
中澤は後藤が書いたボードを手に取り、市井と保田の前に差し出す。
市井がそれを受け取り、保田と一緒にボードに書かれた内容に目を通した。
「なんなのよ! これは!?」
保田が思わず声を上げる。
「なんなのもなにも、見ての通りや。それ以上でもそれ以下でもない…。
それ以上は、まだ何もわかってないんや……」
中澤は半ば諦めたような声で投げやりに言った。
- 200 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年06月27日(水)13時11分05秒
- 「これ……これのせいで後藤は喋れなくなっちゃったの?」
「確証はないけど、おそらくそうやろな…。せやから、どないしよって思ってんねん」
「けど、どうすればいいのよ」
保田が腕を組み、壁にもたれ掛かる。
「それなんや、問題は…。後藤の話やと、おまじないの一種らしいからなぁ…。
一体どの本を探せばいいにゃら…」
中澤はため息をついてソファーに座り込んだ。
「古文書……そう、古文書だよ!」
何を思いついたのか、市井は声を上げて後藤の肩を強く掴んだ。
それに反応して、後藤は苦痛の表情を浮かべ、思わず肩をすくめる。
「古文書?」
中澤と保田は声を合わせて市井を見た。
「そ。こーいうのってさあ、呪いとか、そんなんと一緒でしょ? どう考えても、
普通のおまじないの本に載ってるはずもないし。だから、きっと古文書に載ってると
思うんだ。魔法みたいな感じで。と言っても、魔法なんてモノは、この世に存在
しないんだけど…。ダメ………かな?」
後藤の背中越しに市井が中澤と保田の反応を交互に見る。
「ま、手当たり次第に当たってみるか」
中澤は一瞬目を大きく見開いた後に微笑んだ。
「そういう訳や。ほな、私は早速調べ始めるわ」
そう言って、中澤は席を立った。
- 201 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年06月27日(水)13時13分08秒
- 「あ、そうそう、最近の紗耶香さぁ、何か思い詰めたような顔してるけど、
何かあったら気軽に言ってよ。少しでも力になれるかもしれないからさ」
そして、背中を向けたまま市井に忠告する。
「あ、うん…。アリガト、裕ちゃん」
中澤の一言で市井は緊張が解けたのか、にこりと微笑み、そのまま後藤を抱き締めた。
後藤は何も言わず、ただじっと市井の目を見つめていた。
後藤の瞳には、市井の涙が映っていた。
「お疲れ、裕ちゃん」
保田が壁にもたれ掛かるのをやめてから中澤に声をかける。
「じゃあね」
中澤は背を向けたまま、手をヒラヒラさせて部屋を出て行った。
- 202 名前:〜更新記〜 投稿日:2001年06月27日(水)13時16分11秒
- 市井ちゃん、一体君は何をそんなに……。
>>197 名無し読者さん
親子みたいでかわいいから許す!!(意味不明)
こんな感じでよろしいでしょうか?
- 203 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月28日(木)02時29分30秒
- 市井の涙に、なにを思う後藤……
200突破、長いようで
永かったけど楽しいから許す!!(w
今後の引き続きガンバッテ下さい。
- 204 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年06月29日(金)16時25分50秒
- 「ああは言ったものの、これからどないしよ……」
中澤は歩きながら腕を組む。
しばらく目を閉じて、うんうんと唸りながらドンドン突き進んでいく。
ドン…
「ん?」
何かにぶつかったような気がして中澤は目を開ける。
しかし、中澤の視界には何も映らない。
「いったぁ〜い……。ったく、どこ見て歩いてんのよ!」
下の方からすごい勢いで怒声が響く。
中澤は思わず視線を落とす。
そこには、頭を押さえながら床に座り込む矢口の姿があった。
「なんで、そんなとこに座ってんの? 矢口」
中澤は何事もなかったような顔で矢口を見る。
「なんで? じゃないでしょ! これのどこが座ってるって言うのよ!
どう見ても、倒されたんじゃない!!」
「それはスマンかったな。けど、今はそれどこやないねん。ほなな…」
中澤は素っ気なく謝って、その場を立ち去ろうとした。
- 205 名前:phase of Yuko 投稿日:2001年06月29日(金)16時27分14秒
- 「ちょ、ちょっと! 『どこもケガしてないか?』とか『痛いとこはないか?』とか、
言ってくれないの?」
矢口はいつもの中澤からでは想像もつかなかった反応にとまどい、おろおろし始めた。
「う〜ん…。今はそんな気分やないんや。じゃ…」
中澤は立ち止まって、しばらく何かを考えていたかと思うと、あっさり答えて
そのまま行ってしまった。
「行くのかよ!! …………じゃなくて、ちょっと、矢口はど〜なるのよぉぉぉ!!!!」
廊下中に矢口の叫び声がこだまする。
そして、そこには矢口だけがポツンと取り残された。
「う〜ん…。しゃ〜ない、今日は戻って寝るか。明日から調べ始めよ。…………ん?
何か忘れているよーな……。ま、いっか」
中澤は無理に思い出そうとせず、そのまま部屋に戻った。
その夜、矢口は中澤に崖の上から突き落とされる夢を見たという…。
「いやあああぁぁぁぁぁ……」
- 206 名前:phase of Maki 投稿日:2001年06月29日(金)16時28分22秒
- あの後すぐに圭ちゃんも部屋に戻った。
今、部屋は私と市井ちゃんの二人きり。
でも、なんとなく気持ちが落ち着かない。
だって…。
あれからずっと考えてたんだ。
市井ちゃんの涙の訳を。
あのとき見せた、涙が意味することを……。
でも、わからないよ。
市井ちゃんの思ってることが…。
私は意外と市井ちゃんのことを知らないのかもしれない。
市井ちゃんは私のことをたくさん知ってるけど、私は…。
ヘン……だよね。
市井ちゃんのことなら何でも知ってるつもりだったのに。
なんで市井ちゃんが涙を零したかわからないなんて…。
- 207 名前:〜更新記〜 投稿日:2001年06月29日(金)16時36分25秒
- どうやら、週2回の更新スピードでいけそうな感じです。
>>203 名無し読者さん
何もわからないまま時は過ぎていく……
市井ちゃんの涙、その理由はいずれわかります。
そう、一年前のあの日のように。。。
- 208 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月08日(日)03時29分16秒
- 皆いろいろと悩んでますな。
姐さんは忘れてただけでしたが(w
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