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☆娘。ロワイヤル☆(移転後)
- 1 名前:娘狂 投稿日:2001年01月22日(月)08時45分06秒
- 娘狂と申します。
「娘。全般」で書いていたんですが、小説は本来こちらに書き込んだ方が
良いかと思いまして、この度移転してきました。
今までの内容は↓
http://www.ah.wakwak.com/cgi/hilight.cgi?dir=main&thp=977874738
読んで頂ければ幸いかと思います。
- 2 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月22日(月)20時25分56秒
- 矢口は殺さないでーーーーー。
お願いします!!できれば裕ちゃんも死なないでほしかったけど
あと、矢口にはよっすぃと脱出してほしいっす。
おもしろいんで続きも期待してます。
- 3 名前:84mo弐 投稿日:2001年01月23日(火)05時04分47秒
- はっきり言います。矢口を抹殺してください。辻に顔を滅多刺しにされて
死んでほしいです。あと、福田明日香に生き返りの呪文などは決してかけ
ないで頂きたい。 非常に面白いです。 期待しています。
- 4 名前:名無し読者 投稿日:2001年01月23日(火)05時12分36秒
- 黒石川に黒後藤が良い感じ。是非二人には残って欲しい(w
中澤は可哀相だったけど。面白いので期待してます
- 5 名前:娘狂 投稿日:2001年01月23日(火)08時13分13秒
- >>2 名無しさん
>>3 84mo弐 さん
>>4 名無し読者 さん
ありがとうございます。
今ちょっとネタに詰まってるんですが・・・頑張りますんで
宜しくお願いします。
- 6 名前:娘狂 投稿日:2001年01月23日(火)09時26分51秒
◆『飯田 圭織の場合』◆
- 7 名前:娘狂 投稿日:2001年01月23日(火)09時27分26秒
- 「後藤!何やってんの!」
明日香が落下した直後、屋上に圭織は来た。
依然、後藤は柵の上に腰掛けていた。
「ん〜〜!?」
またも後藤は気のない声を発しつつ首だけ振りかえる。
- 8 名前:娘狂 投稿日:2001年01月23日(火)09時28分00秒
- 「今、落ちてったのって・・・明日香だよね・・・?」
「・・・・・・・・・・・・」
後藤はまた視線を空へと戻すと、目を細め
昇りつつある朝日を見つめた。
小さく息を吐く・・・。
- 9 名前:娘狂 投稿日:2001年01月23日(火)09時28分32秒
- 「ねぇ!答えなさいよ!後藤っ!」
「・・・・・・・・・・・・」
「さっき、爆発音がした時1階にも行ったわ。
彩っぺが死んでた・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「あれも後藤がやったの・・・?」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「何とか言いなさいってばっ!
圭織、本当に怒るわよっ!」
もう怒っていた。
- 10 名前:娘狂 投稿日:2001年01月23日(火)09時29分03秒
- 後藤が事実を認めないまでも、圭織の中では
もう全てが確信であったし――― 思い込みが、たまたま当たったとも言うが ―――
彩、明日香の”死”というのは、圭織にとってまた特別だった。
- 11 名前:娘狂 投稿日:2001年01月23日(火)09時29分41秒
- このプロジェクトが開始された時(例の男(らしき)の放送が入った時)
突然の出来事に、恐怖感と不安感はあったが、
また明日香、彩っぺに会えるっ!といった気持ちも圭織の中では大きかった。
もしかしたら、もう一度あの子達と一緒に歌える、踊れる、ライブが出来る・・・
そういった考えが、圭織の中では大きかった。
- 12 名前:娘狂 投稿日:2001年01月23日(火)09時30分12秒
- ところが、実際ふたを開けたらこれだ・・・
彩っぺも明日香も・・・あろう事か、自分自身の目で
彼女たちの変わり果てた姿を目にしてしまった・・・
(正確には、明日香の場合、それらしき、という事にはなるが)
- 13 名前:娘狂 投稿日:2001年01月23日(火)09時30分45秒
- 「後藤!どういうつもりなのよっ!ねぇ!後藤ったらっ!」
みるみる圭織のテンションは上がっていく。
さっきまで妙な静寂を保っていた”ここ”に大きな声が響き渡った。
- 14 名前:娘狂 投稿日:2001年01月23日(火)09時31分15秒
- 「・・・・・・・・・うるさいなぁ・・・」
後藤はかったるそうに、ぽつりとつぶやいた。
- 15 名前:偽娘狂 投稿日:2001年01月24日(水)01時41分21秒
- 飯田も殺るつもりか?ゴマキは。
- 16 名前:84mo弐 投稿日:2001年01月24日(水)05時36分46秒
- 飯田の目から怪光線!!!
- 17 名前:娘狂 投稿日:2001年01月24日(水)08時50分22秒
- 「…………っ!」
「そうだよ、あれ……福田明日香……」
圭織は自分自身のなかで確信していたものの
そこに明言された言葉を聞いて思わず絶句してしまった。
「…………。
あなた……明日香を…明日香を……
じゃあ、やっぱり彩っぺも……!?」
- 18 名前:娘狂 投稿日:2001年01月24日(水)08時50分55秒
- 後藤は小さく息を吐いた。
「違うよ…彩っぺは自分からかかったのぉ。
私が行った時は、もう煙りモクモクだったしぃ。
それにぃ、明日香ちゃんは勝手に落ちたんだよ?私は何もしてないよぉ」
「ご、後藤…!あなた、まだそんな……っ!」
圭織は目をいつもよりさらに見開いて、後藤を睨みつけた。
後藤は、尚、空に視線をおいたまま続ける…。
- 19 名前:娘狂 投稿日:2001年01月24日(水)08時51分36秒
- 「そんなに興奮しないでよぉ…もぅ。
だって…ここから脱出してどうするの?
また仕事仕事仕事で、今までと何も変わらないじゃん。
だったら私は、今自分が楽しいなぁと思うことしたいだけなのにぃ」
「…後藤……あんたって子は……」
興奮が最高潮にまで達した圭織は、後藤に歩み寄ろうとした。
- 20 名前:娘狂 投稿日:2001年01月24日(水)08時52分06秒
- 「動かないでっ!」
後藤が、急に強い口調で言った。
圭織の身体が一瞬、硬直する。
- 21 名前:娘狂 投稿日:2001年01月24日(水)08時52分36秒
- 「言っとくけど、その辺りはほとんど床が抜けるようになってるよぉ。
明日香ちゃんみたいに落下しても知らないよ?アハッ」
「…………」
「私ね、いいもの持ってるんだよねぇ。…これぇ」
手に持った1枚の紙を圭織に見せつけるように
ひらひらとなびかせた。
- 22 名前:娘狂 投稿日:2001年01月24日(水)08時53分07秒
- 「ここのトラップが全部書いてあるんだぁ、これぇ。
そぉ〜とぉ〜…すごくない?」
「…それ……渡しなさいっ!
早くみんなに教えて、これ以上こんなことにならないようにしないと……っ!」
- 23 名前:娘狂 投稿日:2001年01月24日(水)08時53分44秒
- 後藤は柵から”トンッ”と飛び降り、
あの駄々ごね顔いっぱいの表情で、くるりと圭織の方を向いた。
「え〜っやだよぉ〜。そんなのつまぁ〜んな〜いぃ」
- 24 名前:娘狂 投稿日:2001年01月24日(水)08時54分14秒
- 「……何言ってるの後藤っ!紗耶香だっているのよっ!ここにはっ!!
紗耶香も、し…し…死んでもいいっていうの!?」
「…………」
後藤の顔が固まった。
さっきまでの涼しい顔はどこかへ消え、
ややうろたえた目つきへと変わった。
- 25 名前:娘狂 投稿日:2001年01月24日(水)08時54分50秒
- 圭織は嫌になっていた。
自分達の仲間のことを話す時に、何故こんなに”死”という言葉を
口にしなければいけないのか。
私達は、ステージの上で元気いっぱいに歌っているものばかりだと思っていた。
いつか、アイドルと呼ばれなくなったとしても
きっとその思い出が自分の支えになるものだと思っていた。
それが…”死んでもいいっていうの!?”。
自分が口にするとは、夢にも思わなかった言葉……。
- 26 名前:娘狂 投稿日:2001年01月24日(水)08時55分20秒
- 「関係ないよっ!そんなことっ!市井ちゃんなんて…もう…っ!」
「……あなた…いい加減に!」
思わず、また圭織の体が後藤の方へと動き出す。
「さっき言ったでしょう?動くと落ちるよって」
「…ぅっ……ぐっ」
圭織はあまりの悔しさに、目から怪光線が出そうになった。
(>>16/引用)
- 27 名前:娘狂 投稿日:2001年01月25日(木)12時45分44秒
- 後藤は、圭織の方を見てニヤニヤと笑っていた。
「……なに?……何ニヤニヤしてんのよ…」
「ん?別にぃ。圭織も死ぬの恐いんだなぁって思ってさ。
だって、私が落ちるって言ったら一歩も動かなくなっちゃったじゃない?
………かぁわいぃ(はあと)」
- 28 名前:娘狂 投稿日:2001年01月25日(木)12時46分18秒
- そう言うと、後藤は圭織の方にツカツカと近づいてきた。
そう、自分が足を踏み入れると落ちるといったところを通って…。
- 29 名前:娘狂 投稿日:2001年01月25日(木)12時46分53秒
- 「ちょ、ちょっと、後藤…っあ、あぶない…!」
圭織は思わず声をあげた。
- 30 名前:娘狂 投稿日:2001年01月25日(木)12時47分26秒
- 涼しい顔をして近づいた後藤は、圭織の前に立つと
「ふふふん♪うっそ〜。あははははっ
だって、カオリ本当に信じるんだもん。おっかし〜あはははっ」
「……ご。後藤〜っ……!!」
怒りの込み上がる圭織をよそに、後藤は扉を抜けて
屋上から去ろうとしていた。
- 31 名前:娘狂 投稿日:2001年01月25日(木)12時47分58秒
- 後藤は扉のあたりで、何かごちゃごちゃとやっている…。
「ちょっとっ!待ちなさいよ、後藤っ!」
通り過ぎた後藤に圭織は物凄い形相でつかみ掛かろうとした。
そこに、またも後藤の激しい声が響く。
- 32 名前:娘狂 投稿日:2001年01月25日(木)12時48分29秒
- 「何度も言わせないでっ!動くと…落ちるわよ?ちゃんと聞いてんのぉ?」
「もうその手にはのらないよ。圭織だってね、馬鹿じゃないんだから…!」
圭織はその言葉で一蹴すると、今にも後藤の首をつかみかかるところまで来た……
……時…。
- 33 名前:娘狂 投稿日:2001年01月25日(木)12時49分02秒
- ――ガタッ
「…ふぇ?う、うそ……」
圭織のからだが一瞬宙に浮いたかと思うと、斜めに抜けた床の穴へと
滑り落ちていった。
- 34 名前:娘狂 投稿日:2001年01月25日(木)12時49分57秒
- 「ごと〜ぅっっ……!おぼえてなさいよぉぉぉっ……!」
「……人の話しは聞かないと駄目ですよぉ〜だっ」
暗く広がる穴に向かってそう言うと、さっさと階段を降りていく後藤…。
- 35 名前:娘狂 投稿日:2001年01月25日(木)12時50分36秒
- 安全ピンか〜……トラップっておもしろ〜い。
でも…まだ圭織は死んでないんだろうなぁ…
”ぐちゃっ”って聞こえてこなかったし。
仕返しされたらどうしよう……おぉこわっ。(なんちゃって〜アハッ)
【午前7時00分/残り10人】
- 36 名前:名無し苺魔界 投稿日:2001年01月25日(木)15時25分28秒
- どうなるんだろう。市井… 後藤…
- 37 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月25日(木)23時20分41秒
- わははっ ここの圭織好きだな〜♪
是非長生きして欲しいね。
>娘狂さん
面白いっす。 更新頑張って下さい!
- 38 名前:娘狂 投稿日:2001年01月26日(金)12時09分43秒
- >>36-37
読んで頂きありがとうございます。
ちょっとネタづまりですが…頑張って更新します!
- 39 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月27日(土)00時39分22秒
- 黒ごま、黒りかっち…。他所のでもこんなキャラやなぁ〜。
でも、一番合っとる気がするわ〜。
他のメンバーやったらここまでの黒さはでぇへんなぁ〜。
イメージって...。こわいなぁ。
- 40 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月27日(土)03時29分26秒
- 黒ごま、黒りかに合流してほしい・・・
- 41 名前:娘狂 投稿日:2001年01月28日(日)11時40分07秒
- >>39-40
読んで頂きまして、ありがとうございます。
しかし…どうやら「黒ごま」「黒りか」が注目されていますねぇ。
これはもっと活躍させねば。
続きもどうぞよろしくです。
- 42 名前:娘狂 投稿日:2001年01月28日(日)11時40分39秒
- ◆『吉澤 ひとみの場合』◆
とんでもないことになってしまった。
私自身、まだ認識しきれていないが、確かにここに
中澤さんの死体がある。
血を流して、目を見開いたまま…もう、あの関西弁は聞こえてこない。
- 43 名前:娘狂 投稿日:2001年01月28日(日)11時41分48秒
- 吉澤は例の部屋にいた。
始め1階にいたが、物音がしきりに聞こえてくる2階へと
足を運んでいた。
そして、扉が半分開いた部屋を見つけて入ってみたのだが
そこには誰もいなく、変わり果てた中澤の体が横たわっていた。
「中澤さん……」
見開いた目に手を伸ばし、そっと目を閉じてあげた。
- 44 名前:娘狂 投稿日:2001年01月28日(日)11時42分43秒
- 何故こんなにも冷静なのか……良く分からないけれど
中澤さんの死体を目の前にしても、あまりうろたえていない自分がいた。
最初、これがトラップの仕業、とも考えたが
見たところ、銃で撃たれたような傷が体中にあり
とてもトラップで、という風には見えなかった。
では、だとすると……
- 45 名前:娘狂 投稿日:2001年01月28日(日)11時43分29秒
- 考えた時、すごく嫌な気持ちになった。
この中に、中澤さんを、しかも銃でめったうちにした人間がいる……
ということになる。
この中というのは……もちろん”モーニング娘。”
徐々に吉澤の頭は混乱を始めたが
必死にそれを食い止めるように、また更に考えた。
- 46 名前:娘狂 投稿日:2001年01月28日(日)11時44分17秒
- 今、誰が…という事を考えても仕方が無い。
それよりも、この事実をこの中にいるより多くの人達に
知ってもらわなければ……きっと、また一人、また一人と
犠牲者が増えていく可能性がある……。
- 47 名前:娘狂 投稿日:2001年01月28日(日)11時44分47秒
- そんなのは嫌だ。
矢口さん、ごっちん、梨華ちゃんが死ぬなんて事は考えたくも無い。
そんなことになったら私は……。
- 48 名前:娘狂 投稿日:2001年01月28日(日)11時45分32秒
- 「よっすぃ〜」
不意に後ろの方から声がした。
その声を背にしていた吉澤の体に、一気に緊張がはしる……
しばらく吉澤の体は固まっていた。
肩が細かく震えている。
- 49 名前:娘狂 投稿日:2001年01月28日(日)11時46分03秒
- 「…………誰っ!」
体いっぱいの力を振り絞って、吉澤はふりかえった。
必死に扉の向こうへと焦点を合わせる。
焦っている時は、こんなにも目の前がぼやけてしまうものなのか……
- 50 名前:娘狂 投稿日:2001年01月28日(日)11時46分44秒
- 扉の向こうに立っていたのは
涙を瞳いっぱいに浮かべた石川梨華の姿だった。
【石川×吉澤合流/残り10人】
- 51 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時21分32秒
- ◆『加護 亜依の場合』◆
- 52 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時22分07秒
- どがどががっしゃ〜ん!
スタート地点の子供部屋にずっと閉じこもっていたところに
突然、クローゼットの方から何やら馬鹿でかいものが落ちてきた。
加護はびっくりして部屋の壁にへばりついたが
どうやら聞き覚えのある声が聞こえてきたので、それに近寄ってみた。
- 53 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時22分43秒
- 「いたたたたぁ…」
「………いい…ださん?」
「ふぇ?」
加護が何やらでかい物体に声をかけると、その物体の一部が
くるりとこちらを向いた。
- 54 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時23分35秒
- 「加護?」
「・・・はい、加護です…加護亜依です……よかった〜」
加護は圭織の顔を確認すると、今までの緊張がすべて抜けたように
抱きついた。
「ちょ、ちょっと、加護〜、重いってばぁ…」
「あ〜こわかったです〜…」
「わかった、わかったからとりあえず離れなさいって」
「………」
そう言われて、加護はしぶしぶ圭織から離れ、
近くにあった大きなぬいぐるみを、しっかりと抱きしめた。
- 55 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時24分15秒
- 「加護、あんたずっと1人だったの?」
「……はい、ずっと1人でした…」
「そう……」
圭織はやや険しい顔をして、視線を加護からそらした。
加護は圭織の顔を不思議そうに見つめた。
「飯田さん…ところでどっからきたんですか?」
「え…?う、うん…ちょっとね……」
「………?」
- 56 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時24分51秒
- 圭織は迷っていた…加護に後藤のことを話そうかどうか。
後藤は加護の教育係だったし、加護も厚く彼女のことを信頼していたはずだ。
それを、こんな中学一年生に話せるはずもなかった。
―― あなたの教育係は、石黒彩、福田明日香をトラップにかこつけて殺しました
なんて……
- 57 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時25分25秒
- 「飯田さん、顔色悪いですよ…大丈夫ですか?」
「……そう?」
圭織の顔はとても顔色がいいものとは言えなかった。
無理もない。信じがたい現実がいくつも飛びこんできたのだ。
こうして正常な精神状態でいられることのほうが実は軌跡なのかもしれない。
しかし、そんなことよりもあの後藤の所業が許せない気持ちが強かった。
それに、次に後藤に出会ったメンバーは確実にトラップにはめられ
殺される……!
早くみんなにそのことを知らせないと…大変なことになる。
- 58 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時26分07秒
- 圭織はすっと立ち上がると、加護の肩にそっと手を置いた。
「加護、いい?ここにいるの。絶対にここから出ちゃだめ。
それに入り口にカギをかけて、絶対に誰も入れちゃだめ。わかった?」
「……え?」
「あんたもさっき放送聞いたでしょ?ここにはトラップがいっぱいあって
それに引っかかると危ないの。わかるよね?」
「……はい、それは……でも誰も入れちゃいけないって…
もし、ののちゃんや梨華ちゃんや、よっすぃーとかが来たときはどうするの?
中澤さんや後藤さんや…」
「後藤は……」
圭織は思わず口から出そうになった言葉を飲み込んだ。
- 59 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時26分46秒
- ―― 後藤は危険だ…彼女だけは…
「それにそれに……加護を一人にしないでください…
こわい…こわいですよ…うっうっ…」
「か、加護ぉ…」
瞳からあふれる涙を手に持っていたぬいぐるみで必死に隠しながら
その間から圭織を見つめて、必死に訴えかけていた。
- 60 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時27分20秒
- 「……わかった、わかったからもう泣かないの!
いつも簡単に泣いちゃだめだっていってるでしょっ!」
「……は、はい……ぐしゅ」
「とにかくこの辺りをうろうろしてたら危険なの。
どこか別の、もっと離れたところへ行こう、ね?」
「…はい……ぐしゅぐしゅっ」
圭織は小さな加護の手を握ると部屋の外へと飛び出した。
早く、早く後藤以外の誰かと合流しなければ…
こんな狂ったところからはいち早く脱出しなければ…
―― 教育係か…辻は、辻はどうしてるだろう…?
【飯田×加護合流/残り10人】
- 61 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時28分06秒
- ◆『辻 希美の場合(2)』◆
- 62 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時28分49秒
- 辻は必死に、館の裏の斜面を駆け降りていた。
いや、腰を抜かしたようにフラフラとしていたので
ほとんど這っているといった方が正しいかもしれない。
小柄な体を包んだサイズSの服が真っ白になりかけていた。
まだ幼さの残る丸い目、普段はモー娘。のお調子者の辻の顔が
恐怖に歪んでいた。
- 63 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時29分45秒
- 辻はプロジェクトが開始された時にいたのは「ボイラー室」
(南館地下1階)。
要するに、石川や中澤、安倍、矢口がいる棟の地下にいた。
誰かにあえるだろうと階を上ったのはいいが、
階段の途中で、遠く銃声が鳴り響き、どうしようかと迷っている間に
またすぐ次の銃声が鳴った。
その時、一気に頭が混乱した。
いったい何が起こっているのか…検討もつかなかったが
ごく当然な、何の変哲もないことに気がついた…気がついてしまった。
- 64 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時31分29秒
- 誰かが銃を撃ち、誰かが撃たれている…殺されている…、とわかった。
わかった途端、階段をおお慌てで駆け降り、館の外に飛び出し
館の裏の斜面を這い降り始めていた。
―― 今思えば、この時なんのトラップにもかからなかったことは
ラッキーこの上ないことだが――
あの誰かが次に狙うのは自分に違いなかった。
―― そうに決まっているのれす!
一番近くにいるのがわたしなんれすから!
- 65 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時32分22秒
- そのまま2,3分進みつづけて、ようやく辻は動きを止めた。
そうっと後ろを振り返った。
木々の間、あの館が随分遠くに見えた。
何の動きもない。耳を済ました。何の物音もしない。
―― 逃げ切ったのれすか、わたしは?…わたしはたすかったのれすか?
一種その問いに答えるようなタイミングで、腕に何かが食い込んだ。
辻の頭が恐怖に混乱し、口から「ひぃっ」と声が漏れた。
- 66 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時33分04秒
- 「バカ!」
誰かがささやいて腕に加わっていた力が消え、
代わりに辻の口を生暖かい手が塞いだ。
しかし混乱した辻の耳にその声は入らず、ただ、あの誰かに追いつかれていたのだという思い、
その恐慌のうちに、いつも肌身離さず持っている
「コーンスープの素」の箱を振り回した。
- 67 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時33分48秒
- ぽすっ…!という音がして、その箱は止まっていた。
……だが、なぜだろう。
そのまま何事も起こらないので、辻はおそるおそる、目を開いた。
目の前にいる影は、ジャージを着ていた。
そして身をそらせ、大型の自動拳銃でその箱を受け止めていた。
「もう、相変わらず落ち着きがないのね、辻」
- 68 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時35分02秒
- きれいにショートカットでまとまった髪、やや上がり気味にまっすぐに伸びた眉。
その下にある綺麗な二重まぶた
(昔は一重まぶただった気がするけど…いえ気のせいなのれす)の
研ぎ澄まされた感じのする、しかしユーモアのある目が辻の目をとらえた。
その顔がにやっと笑い、辻の口からそっと手を離した。
辻は放心状態で、ゆっくり「コーンスープの素」の箱を下ろした。
- 69 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)08時35分47秒
- それからようやく、
「市井さん、市井さんれすか!?」
と叫んでいた。
「ばか!」
市井紗耶香が再び小さくささやき、辻の口をもう一度塞いだ。
離すと、
「こっちよ、静かについてらっしゃい」
先に立って低い茂みの中を進みだした。
- 70 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)09時16分46秒
- 途中、足を止めて市井は深刻な顔で辻を目を見て話し始めた。
辻は、きょとんとした目で市井を見つめている。
- 71 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)09時17分24秒
- 「いい?しっかり聞くのよ」
「なんれすか?」
「このプロジェクトは単なる脱出ゲームじゃないわ。
辻も聞いたと思うけど、まず私達をはめる為のトラップがある。
それに…殺し合いをしている人もいるわ。」
「………!!」
- 72 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)09時21分15秒
- 辻はさっき聞いた銃声を思い出した。
市井に会い、安堵感で心の平静をやや取り戻していたが
先程の恐怖が蘇り、辻の顔が一気に硬直した。
「さっき…さっき辻も聞いたのれす…銃声……」
「……ほんと?!ど、どこで?」
「あの建物の中れす…」
- 73 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)09時21分46秒
- 市井は少し考えていた。
殺し合いをしているのはおそらくメンバー同士だろう…と。
考えたくも無かったが、市井の中では安易に想像できることだった。
ただそれを辻に伝えるかどうか…
何も知らなければ、誰かと出会った時あまりに危険だ。
しかし、若干13歳にはこの現実は重い…重過ぎる。
- 74 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)09時22分25秒
- 「・・・えっと・・・市井さん…それは…?」
「え?」
辻は市井が持っている大型自動拳銃を指差して聞いた。
優しい目で自分を守ってくれたようだったが
その黒く光るものが少し恐かった。
「あ、あぁ…ごめん。私がいたガレージみたいなところに落ちてたの。
なにかあったら…と思って」
「辻のことは撃たないれすか…?」
不安げに聞いてみた。
- 75 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)09時23分20秒
- 「な、何言ってるのよ。撃つわけないじゃない。
それに、これは別に人を殺す為に持ってるわけじゃないわ。
自分の身を守る為。そう、護身用…わかる?」
「ごちん…よう……」
辻は「護身用」という言葉は解っていない様だったが、
自分を撃つ為の物では無い、という事は分かったようだった。
「とにかく、出来るだけ多くの人と合流するの。
みんな一人でいちゃだめなの。
集まって、脱出することだけを考えるの、わかる?」
「市井さん…一度にいっぱい言わないでくらさいなのれす…
頭いっぱいなのれす…」
「……まぁいいわ。とにかく辻は私と一緒にいなさい。わかった?」
「…はい」
辻と市井は茂みの中を再び進み始めた。
【辻×市井合流/残り10人】
- 76 名前:名無し読者 投稿日:2001年01月30日(火)10時50分06秒
- これからの展開が楽しみです。がんばってください。
- 77 名前:娘狂 投稿日:2001年01月30日(火)15時14分25秒
- >>76 名無し読者 様
ありがとうございます。
今後の展開も一生懸命考えるので、是非読んでやって下さい。
- 78 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月30日(火)22時01分53秒
- 色々視点が変わって飽きさせませんね。すごい面白いです。
市井ちゃんはやっぱ颯爽としてますねー。
私も楽しみにしています。
- 79 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月31日(水)14時19分20秒
- 面白い。
できればこれ以上死人は見たくないけど・・・・・まだ出るんだろうな。
評価はとりあえず保留。
最高のラストシーンを期待する。
頑張れ、作者。
- 80 名前:Hruso 投稿日:2001年02月01日(木)00時16分55秒
- 市井と辻が一緒に行動するとはかなり意外。
他のバトロワものとはぜんぜん違うようなので、
続きが気になります。
- 81 名前:娘狂 投稿日:2001年02月02日(金)09時10分50秒
- >>78 名無しさん 様
視点変更は結構意識してるんですが
効果的に感じてもらえるのはすごい嬉しいです。
今後もよろしくです。
>>79 名無しさん 様
ご指摘の通り、ラストシーンはすごく難しいと感じています。
読んでくれている方々の期待を裏切らない
ラストシーンになるよう、がんばります。
>>80 Hruso 様
バトロワが媒体といっても、「最後の一人になるまで」
というルールが無いあたりで、”バトロワものか?”という感じですが
雰囲気作りということで…”ロワイヤル”です。
最近仕事がちっと忙しくなってきたので更新が遅れ気味ですが
今後とも宜しくお願いします。
- 82 名前:娘狂 投稿日:2001年02月03日(土)14時07分04秒
- ◆『遂に登場!保田 圭の場合』◆
保田は林の中をさまよっていた。
目を覚ました「物置小屋」のようなところから
不安ながらも明かりひとつない暗闇の中に飛び出し
メンバーを探しに出ていた。
- 83 名前:娘狂 投稿日:2001年02月03日(土)16時59分43秒
- しかし出た直後は周りも本当に真っ暗闇で
自分自身がどちらに動いているのかさえも解らない状態で
案の定、気がついたらメンバーを探すどころか
自分のいる場所自体が不安になってきていた。
- 84 名前:娘狂 投稿日:2001年02月03日(土)17時00分41秒
- ……みんな…何処にいるの?
それでも尚、保田はメンバーのことを一心に心配し
必死になって走っていた。
石川…紗耶香…裕ちゃん…圭織…矢口…後藤…加護…辻…
…よっすぃー…彩っぺ…明日香…
それぞれのメンバーが様々な理由でとにかく心配だった。
人一倍、責任感の強い保田は
この状況は自分が打破すべきだと、心に強く感じていた。
- 85 名前:娘狂 投稿日:2001年02月03日(土)17時01分15秒
- でも…どうしたら良いのか…
強い気持ちとは逆に、皆目見当がつかない状況に
心は焦るばかりだった。
- 86 名前:娘狂 投稿日:2001年02月03日(土)17時01分54秒
- と、心が焦っていると色々忘れっぽくなったりするもので…
―― あ、そうそう…なっちも…大丈夫かな…
(なんで、なっちのこと忘れるべさ!)
そんな声が聞こえてきそうだった。
聞こえてきそうだったが…もう一度その声は聞けるのだろうか……
- 87 名前:娘狂 投稿日:2001年02月03日(土)17時02分36秒
- 単なる”脱出ゲーム”のはずなのに、なんだか妙な胸騒ぎがした。
数時間前に聞いた、あの聞き心地の悪い男(と思われる)の声による
放送にて、”トラップ”に気をつけろ、という警告が出た。
くそっ!一体私達をどうしようというのだ。
行き詰まった個性とは言うが、こんなことでそれが解消されるとでも言うのだろうか。
全く狂っている。
モーニング娘。に入ってから、時折、業界の人間は狂っていると
思うことが多かったが、まさかここまでのことが起こるとは
想像も出来なかった。それに、ここはどこだ?
そもそも日本なのか?日本地図なんて物も、疑わしく思えてくる。
私が今まで生きていた場所も、本当に日本だったのだろうか……?
- 88 名前:娘狂 投稿日:2001年02月03日(土)17時03分19秒
- だめだだめだ!落ち着け、保田 圭…っ!
保田はパタパタと頭を振り、
自分をなだめるように、顔をすぅっと上に向けた。
その時、何かに覆われているという感覚を受けた。
- 89 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月04日(日)00時01分21秒
- >>86 ワラタ
圭ちゃん、最高!(石川風に、親指を立てて)
『遂に登場!』ってのも良い! 待っていた甲斐があったよ。
作者さん、忙しそうですけどゆっくりでいいんで更新頑張って下さい!
- 90 名前:娘狂 投稿日:2001年02月04日(日)08時00分00秒
- >>89 名無し読者 様
ありがとうございます。
満を持しての圭ちゃんにご期待下さい!
これからも宜しければ読んでやって下さいまし。
- 91 名前:娘狂 投稿日:2001年02月04日(日)08時20分14秒
- あの放送から、(あの夜から)もう随分と時間が経過しているはずなのに
全く”太陽”が昇ってこなかった。
おかしいと思っていた。
が、今この至って自然と思える行動から、不自然極まりないものが
視界へと飛び込んできて、その疑問が解決された。
- 92 名前:娘狂 投稿日:2001年02月04日(日)08時20分59秒
- 「……壁だ……なんじゃこりゃ…」
高さが10mはあると思われるコンクリート製の壁が聳え立っていた。
この高さの壁のすぐ横にいたんじゃ、太陽が昇ってきても
気付かないわけだ……。
保田は、迷ったように走っていたと思っていたが
実は、この大きくそびえる壁に沿って走っていたようだった。
- 93 名前:娘狂 投稿日:2001年02月04日(日)08時21分52秒
- ―― …壁……かべ…ねぇ…?
あまりの突然の出来事に、またとてつもない大きさに
保田はしばらく呆然としていた。
そしてあることに気がついた。
- 94 名前:娘狂 投稿日:2001年02月04日(日)08時22分45秒
- もしここが本当に閉鎖された空間だったとして、
壁があるって事は、その空間の端っこってことになるんじゃ……
それに、端っこってことはだよ、これを越えたら”脱出”っていうこと…!?
保田の胸が躍り出した。
さっきまでいらいらしていた心が、少しずつはけていく。
- 95 名前:娘狂 投稿日:2001年02月04日(日)08時23分59秒
- ―― 出口は…?
保田は、目の前の壁にぐっと近づき、コンクリートに手を当てて
まさぐるようにその近辺を捜した。
しかし、その壁は全くの平坦で、その壁から抜けるような
出口らしき物は、少なくともそのあたりには無かった。
- 96 名前:娘狂 投稿日:2001年02月04日(日)08時24分56秒
- きっと、「出口はこちら」なんて書いてある扉があったら
彩っぺよろしく、紙くずのように吹っ飛んでいたに違いない。
そんな怪しげなものが無かった事は、
保田にとってはとてもラッキーなことだったのかもしれない。
- 97 名前:娘狂 投稿日:2001年02月04日(日)08時25分52秒
- おそらくこの壁に沿うかのように出口があるはずだ。
とにかく、この周辺を徹底的に調べ尽くして、早くみんなに教えてあげないと。
今は、出口となる場所を見つけることが先決だ。
私は絶対にあきらめない。
紗耶香に再会した時、自分自身の最高の笑顔を見せてやるんだ。
その為に、私は全力を尽くす!
- 98 名前:娘狂 投稿日:2001年02月04日(日)08時29分11秒
- 保田は迷わないように、今いる目の前の壁に、足下に落ちていた「石」で
「×」と「001/K」と書き込み、壁沿いに走っていった…。
【第1章:序盤戦・完/残り10人】
- 99 名前:名無し苺魔界 投稿日:2001年02月06日(火)18時57分23秒
- 序盤戦が終わって3人死亡… 何人生き残るのやら。
- 100 名前:娘狂 投稿日:2001年02月09日(金)08時13分10秒
- >>99
ようやく、序盤戦が終了しました。
遂に中盤戦です。
これから、誰が行き残っていくかの選択に迫られますが
読んでくれている方々の生き残り希望者みたいなのって
あるんですかね?
そんな期待に添えることを祈りつつ、中盤戦スタートです。
- 101 名前:娘狂 投稿日:2001年02月09日(金)08時15分58秒
- 〜第2章:中盤戦
◆『飯田圭織&加護亜依の場合』◆
- 102 名前:娘狂 投稿日:2001年02月09日(金)08時17分19秒
- 暗く長い廊下。
飯田と加護はひたすらにそこを歩いていた。
思ったよりも広い館、飯田はそう感じていた。
依然、飯田の顔は険しく、加護はうつむき気味に
しかっりと飯田の服のすそを握っていた。
- 103 名前:娘狂 投稿日:2001年02月09日(金)08時17分51秒
- 時折、飯田の焦りから早足になると
加護はそのすそをぎゅっと引っ張り
泣きそうな顔で飯田を見つめた。
そしてまた、加護の歩幅に合わせて歩き出す…。
そんなことを何度も繰り返し、時間ばかりが過ぎていった。
それでも廊下は長く続くばかりだった。
- 104 名前:娘狂 投稿日:2001年02月09日(金)08時18分24秒
- 本当はそれほど長い廊下ではなかったのかもしれない。
それでも飯田と加護にとっては
果てしなく長く続く廊下に感じていた。
「……おかしいなぁ…どこまで続いてるの…?」
飯田の気持ちはあせるばかりだった。
そんな中、加護は小さく口を開いた。
- 105 名前:娘狂 投稿日:2001年02月09日(金)08時19分30秒
- 「飯田さん…、みんなは、みんなはどこにいるんですか?」
「……わからないよ」
いつしか返す言葉も冷たくなっていた。
もちろん、飯田にはそんな気は全くなかったが
――むしろ、加護は自分が守らなくちゃ、という責任感でいっぱいのはずだった――
この信じがたい現実に、自分の気持ちをコントロールすることができなくなっていた。
石黒の死、明日香の死、それにあの後藤の不適な笑み…
あらゆる情景が、飯田の頭の中を支配していた。
飯田も本当は思いっきり泣きたかった。
泣きじゃくって、思いっきりこの理不尽を叫びたかった。
- 106 名前:娘狂 投稿日:2001年02月09日(金)08時20分18秒
- …でも、やはり石黒、明日香、後藤のことは
加護には話せない…。
でも、このまま心の中に黙り込んでいたら
本当に気が狂ってしまいそうだった。
- 107 名前:娘狂 投稿日:2001年02月09日(金)08時21分21秒
- 「飯田さん、私達どうなっちゃうんですか?
これからどうすればいいんですか?……ねぇ、飯田さん…」
「あぁ!もう!うるさいなぁ!ちょっとは静かにしててっ!」
「…………!」
「…………」
「…………」
「……ごめん…加護」
飯田のその言葉を皮切りに、二人の間が再び沈黙へと戻った。
- 108 名前:娘狂 投稿日:2001年02月09日(金)08時22分05秒
- その時、廊下の先の角を一人の影が横切った。
加護はもう完全に俯いてしまっていたので
それには全く気がつかなかったが、飯田はその影を見逃さなかった。
―― 後藤だ…
- 109 名前:娘狂 投稿日:2001年02月09日(金)08時22分43秒
- ビンゴ!飯田の直感は見事、その姿を捉えていた。
飯田は、加護の両肩に自分の両手を添え、その前に座り込んだ。
そして加護の目をじっと見て言った。
「加護、いい?ここにいて。絶対にここを動いちゃだめ、わかった?」
「……ふぇ?」
突然の飯田の言葉に、加護は一瞬硬直した。
”一人ぼっち”
その言葉が最初に浮かんだ。
- 110 名前:娘狂 投稿日:2001年02月09日(金)08時23分48秒
- 「な、なな…なんですか?飯田さん…?」
「いいから、とにかくここにいて。すぐに戻ってくるから、ね?」
「……いやです、いやですよぉ…加護を一人にしないって…飯田さん言ったじゃないですか…」
「1人になんかしないよ。ちょっとここを離れるだけ、わかって、ね?お願い!」
それって一人になるってことじゃ…
加護は言いかけて言葉を飲んだ。
- 111 名前:娘狂 投稿日:2001年02月09日(金)08時25分17秒
- 飯田はさらに真剣な目で、加護の目をじっと見て言った。
「ね?わかって、加護…」
「…………」
「…………」
「……はい…わかりました。でも、でも絶対にすぐ戻ってきてくださいね……ね?」
「…うん、大丈夫」
飯田はそれだけ言うと、加護の頭を力強くなでて
廊下の先の角へと足をすすめた。
【飯田×後藤 再戦間近/残り10人】
- 112 名前:名無しちゃむ 投稿日:2001年02月11日(日)04時54分03秒
- 最高に引き込まれました
密かにいちごまの展開に大期待しております
続き頑張って下さい
- 113 名前:狼狂 投稿日:2001年02月11日(日)11時23分29秒
- ◆『保田圭の場合』◆
「あれは何?」
保田は偶然にも、壁の下のほうに薄汚れたボタンがあるのを見つけた。
- 114 名前:偽娘狂 投稿日:2001年02月13日(火)20時12分22秒
- ん?狼狂?
- 115 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月15日(木)00時11分00秒
- ん?狼狂???
- 116 名前:娘狂 投稿日:2001年02月15日(木)09時11分01秒
- >>112 名無しちゃむ 様
読んで頂きましてありがとうございます。
人気が高いと思われるいちごまについては
気合い入れて書こうと思っていますので宜しくお願いします。
>>113-115
ん?ん?????
最近体を壊してしまって、そうとう更新遅れてましたので
色々あった様です。
とりあえず体調も復調したので、これからはがんがん更新していきます!
(ちなみに、本当の『保田圭の場合』はもうちょい後です…)
- 117 名前:娘狂 投稿日:2001年02月15日(木)09時13分21秒
- ◆『後藤 真希VS飯田 圭織再び』◆
廊下の角に消えた影、あれは後藤に間違いなかった。
今度こそ問い詰めて、とめなくちゃ…
飯田はその角へと足を走らせた。
角を曲がると、真っ先にその先に目をやり
後藤を探そうと思ったが……
- 118 名前:娘狂 投稿日:2001年02月15日(木)09時13分57秒
- 「きゃっ!」
角を曲がった飯田の目の前に後藤は立っていた。
相変わらず無表情のまま…
- 119 名前:娘狂 投稿日:2001年02月15日(木)09時14分38秒
- 少しけつまずいた飯田は、すぐに態勢を整え
後藤のほうへ視線を向けた。
そんな飯田を見て、後藤は軽く右唇をあげた。
「カオリ…生きてたんだねぇ」
「…………っ!」
飯田は後藤を強くにらみつけた。
その視線は、もうかつてのメンバー同士という仲間意識はなく
憎悪と怒りにあふれていた。
- 120 名前:娘狂 投稿日:2001年02月15日(木)09時15分23秒
- 屋上から落下してから、加護に気を使い
本当は叫びたいくらいの恐怖と怒りをずっと胸に秘め続けていた、
…それが後藤の顔を見た瞬間に、一気にこみ上げてきた。
今、ここに加護がいたとしても、もう飯田を止めることはできなかっただろう。
今にも殺してやるという眼光。
もう尋常なものではなかった。
しかしそれでも後藤は、依然涼しい顔のままだった。
- 121 名前:娘狂 投稿日:2001年02月15日(木)09時15分56秒
- 「後藤!もう一度聞くわ……
本当にこの先も、出会うメンバーを殺すつもりなの?」
「…………」
「答えなさい!これは遊びじゃないのよ。
あんたがやってることは、れっきとした人殺しだよ!?」
「…………」
「ねぇってば!」
「……………ごめん…」
「…え……?」
予測もしていない言葉に、飯田は意表をつかれた。
- 122 名前:娘狂 投稿日:2001年02月15日(木)09時16分54秒
- 今…”ごめん”って言った?言ったよね……。
え……っと、どういうこと?
いや…いいことじゃない、そう反省してるのよ!?
本当に?本当に反省してるの?
じゃあ、この怒りは?憎しみは?どこにぶつければいいの?
その一言で終わりなの…?
「本当は……怖くて怖くて…たまらなくて……
自分でも何言ってるのか、わかんなくなって…」
「え……?…え?」
飯田は後藤の意外な言葉に混乱しっぱなしだった。
後藤の口から出てくる言葉を頭の中で整理しきれなくなってきていた。
- 123 名前:娘狂 投稿日:2001年02月15日(木)09時17分37秒
- 「明日香ちゃんだって、殺す気なんてなかった…
私こんな紙持ってたけど、まさか本当に落ちちゃうなんて思わなかったし…
それに、急にカオリが来たからわたしも混乱しちゃって…
ごめんね、さっきは落っことしちゃって……謝ろうと思って
すっと探してたの…」
「………後藤…」
今度は後藤の言葉にどんどんと引き込まれていった。
- 124 名前:娘狂 投稿日:2001年02月15日(木)09時18分15秒
- 私はこの恐怖感の中に混乱した15歳の女の子を今にも殺してやろうと考えていた。
なんてことを考えていたんだろう。
彼女はどこまでいっても同じ「モーニング娘。」の仲間なのだ。
明日香が脱退したとき、石黒が脱退したとき、そして紗耶香が脱退したとき
それぞれの時で、その時のメンバーに対していつも再確認していたじゃないか。
いつまでもみんな仲間だって……
それをそれを…
- 125 名前:娘狂 投稿日:2001年02月15日(木)09時19分02秒
- 「でも…でも、そんなこと許されないよね…もう明日香ちゃんだって戻ってこないし…
だから……」
後藤は壁側にある大きな窓の扉を開いて、上半身を大きく乗り出した。
その窓から吹き込んだ強い風が
後藤の肩まで下ろした髪をなびかせる…。
「……だから…さよなら…」
そういうと後藤は窓から大きく乗り出し、今にも飛び降りるところだった。
「…あ……」
飯田も思わず身を乗り出していた。
今にも飛び降りてしまいそうな後藤の身体を抱え込むように…
引き込まれるように腕を伸ばしていた。
- 126 名前:娘狂 投稿日:2001年02月15日(木)09時19分35秒
- ところが、飯田の腕は空をきった…
「…………え?」
「な〜んてね」
後藤は見事に飯田の体をかわして、その窓から離れた。
飯田の腕は、窓の後藤の触れていなかった部分へ……
もうほとんど乗り出していた体を止める事は出来なかった。
―― 後藤の触れていなかった部分=…うん、圭織わかってるよ……
―― ドスッ
- 127 名前:娘狂 投稿日:2001年02月15日(木)09時20分14秒
- 飯田のお腹の部分が熱くなっていった。
この痛みはきっと今にも死んでしまいそうな、激痛なのかもしれなかったが
おそらく、あまりの激痛というのは快楽に近く
むしろ自分の腹に棒が刺さっているという奇妙な状態を
認識させることが脳神経を猪の一番に駆け抜けていた。
窓の一部に触れた時に、その壁側から真っ直ぐと伸びてくる棒。
角度によっては体を貫通してしまうほどの勢いで飛び出してきた。
絵に描いたようなトラップだった。
- 128 名前:娘狂 投稿日:2001年02月15日(木)09時20分57秒
- 「……うっ、うっ…ぐぅ…」
飯田の口からは、もううめき声しかでなかった。
本当は言ってやりたい事が沢山あったのだけれど
「あ」と発音しようとすれば「が」になってしまい
「い」と発音しようとすれば「じ」になってしまい
「う」と発音しようとすれば「ひゅぅ」となってしまう。
「え」と発音しようと……
とにかくもう口から発する声は言葉にならなくなっていた。
- 129 名前:娘狂 投稿日:2001年02月15日(木)09時21分38秒
- 「かおり〜?大丈夫ぅ?」
「…がんだ……がんだぁじぇ……」
「え?なに?なんていってんのかわかんないよぉ」
「…じゅる、ずるざばぁぃ……」
「…………」
「…………」
「……でもさ、思ったんだけどぉ…これじゃ飛び降りても死ねないよねぇ?」
後藤は串刺し状態になった飯田の脇から
窓の外を見た。
- 130 名前:娘狂 投稿日:2001年02月15日(木)09時22分12秒
- そう、飯田も緊張と混乱からすっかり忘れていたが…
ここは1階だった。
窓の外はすぐに土の地面が広がっており、その端々には
飯田の血が転々と飛んでいた。
飯田の目からは涙があふれていた。
顔は、涙と血と汗とでぐちゃぐちゃになっていた。
―― 正に血と汗と涙の結晶…な〜んてね、ってこんな時まで
冗談いってる場合じゃないよ圭織。
でも、もう言葉は出なかった。
- 131 名前:娘狂 投稿日:2001年02月15日(木)09時22分44秒
- 徐々に閉じていく瞳に映っているのは
涼しく微笑んでいる後藤の顔。
途切れ途切れに伝わってくる音は自分の血が滴る音。
体に伝わる感触は、流れる血液と涙、後は考えたくも無いような
……液…。
自分は死ぬんだという実感が、過ぎる時間に合わせて
どんどんと高まって行く。
そんな飯田を目の前に、後藤は整然と立ち尽くし
じっと飯田のことを見ていた。
「うわぁ……、人の血って多いなぁ〜……」
【飯田 圭織瀕死/残り10人】
- 132 名前:娘狂 投稿日:2001年02月16日(金)08時22分57秒
- ◆『加護 亜依の場合(2)』◆
さっきから、向こうの角の方で飯田さんの
声がしたかと思ったら、なんだか急に静かになった。
それに……嫌な胸騒ぎがおこりだした…。
どうしたんやろ…飯田さん。
こわい、こわいよ……おかあさん……
- 133 名前:娘狂 投稿日:2001年02月16日(金)08時23分56秒
- 加護はいても立ってもいられなくなり、
身体はもう廊下の角の方へと走り出していた。
飯田さんに怒られるやろか…でも、でも……
こわいもんはこわいねん……っ!
廊下の角まで辿り着いた時、次の瞬間、
「加護!動いちゃだめだっていったでしょ!」
そんな飯田さんの声が聞こえると思っていた。
…が、違った。
滑ってこけた。
- 134 名前:娘狂 投稿日:2001年02月16日(金)08時24分44秒
- 「あいたたたた……」
加護はいつものように自分はおっちょこちょいだなぁ…なんて
思いながら、床についた手に何気なく目をやった。
赤かった。すごく真っ赤だった。
そう言えば、転んだ直後に床がぬめっとするな…とは思った。
思ったけど…これじゃまるで……
- 135 名前:娘狂 投稿日:2001年02月16日(金)08時25分14秒
- 「きゃぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!」
床にべっとりと広がった血の海を見て加護は絶叫した。
また、視線を上げると、そこには全身真っ赤になった飯田圭織があった。
「きゃあぁぁぁ…きゃあぁぁぁ……きゃあぁぁぁぁぁぁーーーー!」
とにかく叫んだ、とにかく思いっきり何度も何度も。
そうすることでしか、そんなものを目の前にした自分を維持できないと感じてもいた。
- 136 名前:娘狂 投稿日:2001年02月16日(金)08時25分49秒
- 「加護ちん……うるさいよ…」
不意に何のうろたえも無い、変に涼しい声が加護の耳に届いた。
あまりの冷静な声に呆気に取られてしまった加護は
思わずその声の方に目をやった。
―― 後藤さん……?
「ごとうさ〜んっ!」
後藤の顔を見るなり、加護は突然に飛びついた。
- 137 名前:娘狂 投稿日:2001年02月16日(金)08時26分35秒
- 「ちょっとっ!」
そんな加護を後藤はいなした。
―― ぺちゃっ…
また血みどろの床に転んだ。
「そんなカッコで抱きついたら、血が服に付くでしょう?」
「……ご、ご…ご…」
ごめんなさい、と言いたかったのだが
震えてそれ以上は声にならなかった。
後藤は着ていた上着のすそを軽く直すと
ふぅっとひとつ息をついた。
- 138 名前:娘狂 投稿日:2001年02月16日(金)08時27分28秒
- 「どうでもいいけどさ、加護ちんも気を付けないと
こんなふうになっちゃうよ?」
「…………」
「じゃあ、私もう行くから。じゃね」
「……ま、待って…後藤さん!」
加護は早々と立ち去ろうとする後藤に、床の血に足をとられながらも
必死にしがみつこうとした。
それをまた後藤は手ではじいた。
「んもう!だからさわんないでって言ってるでしょ!」
「だって……だって……」
- 139 名前:娘狂 投稿日:2001年02月16日(金)08時28分05秒
- 加護は思った。
いつも自分のことをかわいがってくれていた後藤さん、
モーニング娘。に入った自分にいろいろと教えてくれた後藤さん、
歌やダンスを一生懸命自分に教えてくれた後藤さん…
血まみれの飯田さんを置いてどこかへ行こうとしている後藤さん、
こんなに怖くて震えている自分を置いてどこかへ行こうとしている後藤さん
やさしい言葉をくれない後藤さん……
そんな思いは、この短時間でいつしか憎しみへと変わっていった……
- 140 名前:娘狂 投稿日:2001年02月16日(金)08時29分02秒
- 「なんで…なんで、そんな平気でいられるんですか…?後藤さんは…
飯田さんがこんな事になってるのに…」
「…………」
自分のことを急に厳しい目でにらみつけた加護に驚いたのか
後藤はしばらく黙り込んだ。
「飯田さんを助けてくださいよ、ねぇ助けてくださいよ…!」
「…………」
「おかしいですよ後藤さん!おかしいですっ!」
「…………」
後藤は無造作におりた前髪を右手でかきあげると
ようやく口を開いた。
- 141 名前:娘狂 投稿日:2001年02月16日(金)08時30分18秒
- 「あのさ、もうめんどくさいから言うけどぉ、
私ねモーニング娘。なんてどうでもいいの。
それにぃ、今は人が死んでいくのがちょっと楽しいのよ、わかる?」
「…………!?」
この人は何を言っているんやろう。
人が死んでいくのを見るのが楽しい?
それじゃまるで昔、おばあちゃんと一緒に怖がりながら見た
ホラー映画の悪ものや……
いつもの後藤さんの冗談?………ううん、ぜんぜん笑えへん。
「あんたみたいなちびッ子が死ぬとこ見ても別に楽しくもなんともないから
別に興味ないけど、どう?良かったら一緒にやらない?
この紙にね、ここのトラップが全部書いてあるんだぁ」
そういうと、例の紙をまた自慢げにちらつかせ
ある種恐怖を感じさせるような笑顔を見せた。
「どう?加護ちん」
- 142 名前:娘狂 投稿日:2001年02月16日(金)08時30分51秒
- 加護の中で何かが切れた。
こんな子供でも物事の良し悪しはわかっている。
後藤の度重なる正義とは逆行する言葉にどんどんと
許せない気持ちが拡大していった。
「その紙……!」
「……きゃっ」
加護は後藤に思いきり飛びつくと、とにかくその紙をつかんだ。
「な、なにするのよ、やめてよ加護ぉ!」
「それ、その紙渡してください!
それ持ってたらまた誰か殺すんでしょう?ねえ!」
血まみれになった手で必死に後藤の持つ紙にしがみついて離れなかった。
「はなして!はなしてってば!」
「むぅぅ〜、うぅぅ……!」
- 143 名前:娘狂 投稿日:2001年02月16日(金)08時33分06秒
- ―― ビリッ
その一枚の紙はもろくも破けた。
その破れた切れ端を握った加護は一瞬動きが止まったが
後藤の一喝に驚き怖くなって次の瞬間、もう走り出していた。
「あんた!返しなさいよぉっそれ!殺すわよ!」
加護はとにかく走った。
どこに向かっているかなんてことは全くわからなかったが
とにかく走った。
本当に殺される……生まれて感じるこんな恐怖感…
もう何がなんだかわからなかった。
- 144 名前:娘狂 投稿日:2001年02月16日(金)08時34分09秒
- 加護を追いかけようと後藤も走り出そうとしたが
今度は後藤が飯田の血に足をとられて転んでしまった。
「んんもぅ!」
真っ赤に染まってしまったズボンから伸びた足で
思いっきり床をけりつけた。
「……取り戻さなきゃ…
こんな切れ端じゃなんの役にも立たないよ…
もう自分の楽しみは誰にも奪わせたりしない…
奪われたくない……」
血に染まった廊下に一人残された後藤はぶつぶつとつぶやいていた…
そんな常識とはずれまくった後輩の会話を目の前にしながら
飯田もまた、いつしか息を引き取っていた……
【飯田 圭織アウト/残り9人】
- 145 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月16日(金)11時21分13秒
- もしかして市井よりも最初に登場したまま、
途中もあまり動きを見せていない、なっちがこの小説のキーマンなのかな?
- 146 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月16日(金)11時45分58秒
- とりあえずそういうのは言わないどこうや
- 147 名前:145 投稿日:2001年02月17日(土)00時52分39秒
- >>146
そうやね。下手に細則しない方がいいな。
- 148 名前:娘狂 投稿日:2001年02月17日(土)10時16分56秒
- >>145
うっ…するどい……(^^;
次になっち編を書くこうとしていたんです…
>>146-147
でも、色々想像して頂けることは嬉しいです。
今後もよろしくお願いします。
それでは、プロローグ以来の「なっち編」スタートですぅ…
- 149 名前:娘狂 投稿日:2001年02月17日(土)11時35分48秒
- ◆『安倍 なつみの場合(2)』◆
安倍なつみは、雑草の生い茂る草むらの中で震えていた。
あの”石川梨華”が”リーダー中澤裕子”を撃ち殺した、という
なんとも信じがたい光景を見て、思わず逃げ出してきた安倍は
いつしか館の外に出て、一人草むらの中にいた。
- 150 名前:娘狂 投稿日:2001年02月17日(土)11時36分52秒
- なんだべ、なんだべ……何が起こっているんだべ…!?
これは、理由は良くわからないものの、ここから脱出するのが
目的だったはずで、梨華ちゃんと裕ちゃんを見かけた自分は
どう逃げ出そうかと今ごろ話し合っているはずで……
それがどうして梨華ちゃんが裕ちゃんを殺してるんだべ……?
もちろん、目の前で人が死ぬのを見るのは初めてで……
しかもそれが裕ちゃんの死体で……
それにそれに、殺していたのが梨華ちゃんで……
- 151 名前:娘狂 投稿日:2001年02月17日(土)11時37分31秒
- ――ガサッ
安倍はその音で身を起こした。
逃げてくる途中の小屋で拾った拳銃をぐっと握り締めると
得も知れぬ緊張が身体をかけぬけた。
拳銃はジグ・ザウエルP230・9ミリショートでごく小さなものだったのだけれど
それでも安倍の小さな手には余るようだった。
- 152 名前:娘狂 投稿日:2001年02月17日(土)11時38分53秒
- 安倍は知らず知らず唇をかみ締めていた。
あの場所から逃げ出してここに隠れてから、
何度もそんな感じの音は耳にしていた。
そのたびに、結局風のいたずらだったり、
何かの小動物(野良猫でもいるんだべか?)らしかったりとわかって
胸を撫で下ろしていたのだのだけれど、やっぱり慣れることはできなかった。
歯で噛み切っていくつも血玉がかさぶたをつくった唇に、
また新しい傷ができた。
- 153 名前:娘狂 投稿日:2001年02月17日(土)11時45分04秒
- 今度こそ……梨華ちゃんかもしれない。
梨華ちゃん…そうだ、メンバーが自分に襲いかかってくる。
館の中で見た”中澤裕子”の死体が、生々しく頭に蘇った。
拳銃を握り締めたまましばらく待ったが、音は続かなかった。
さらに少し待った。……やはり音はしなかった。
- 154 名前:娘狂 投稿日:2001年02月17日(土)11時46分24秒
- 安倍はほうっと息をつくと、立膝の姿勢をといて
再び茂みの中へと腰を落とした。
頬の辺りにちらっといびつな形の葉が触れ、嫌悪感を覚えて
少し腰の位置を移動した。
葉が触れたところを手のひらで何度もこすった。
たださえ最近、顔がむくんできて悩んでいるのに
この上に何かにかぶれて顔が腫れるなんてごめんだった。
どうせ死ぬんだとしてもごめんだ、そんなのは。
- 155 名前:娘狂 投稿日:2001年02月17日(土)11時47分07秒
- そこまで考えて、ぞくッと冷たいものが安倍の背筋を走った。
死ぬのか?あたしは?死ぬのか?
そう意識しただけで、心臓がどきどき高鳴った。
ほとんど心不全を起こしそうなほどに。
死ぬのか?死ぬのか?
耳鳴りのように、あるいは出来の悪いCDプレイヤー…
盤面の傷をそれが無視できずに何度も繰り返すときのように、
その言葉が頭の奥に聞こえ始めた。
死ぬのか?
- 156 名前:娘狂 投稿日:2001年02月17日(土)11時48分08秒
- 何でこんな事になってしまったのだろう。
お母さんに会いたかった。お父さんに、会いたかった。
お姉ちゃんにも、かわいい妹にも、優しいおじいちゃんやおばあちゃんにも、
会いたかった。
お風呂に入って、居間の心地の良いソファに座って、ココアを飲みながら
”モーニング娘。”のライブビデオ(もう何度も見たけれど)を見たかった。
「誰か、あたしを守ってよ。お願い……
あたし、あたし気が狂いそう……」
自分が声を出してそう言うのが耳に聞こえた途端、
安倍は本当に自分が狂いそうになっているような気がして、ぞっとした。
吐き気が胸の奥から突き上げた。
- 157 名前:娘狂 投稿日:2001年02月17日(土)11時49分00秒
- ざっという音が背後でして、安倍はびくっと身体を震わせた。
それはさっきよりも格段に大きな音だった。
涙に濡れた目のまま、ぱっと振り返った。
茂みの間から、人の影がこちらを覗き込んでいた。
市井紗耶香だとわかった。
後ろに回られていたのだ! 知らないうちに!
恐怖に駆られて、安倍はほとんど何も考えないまま、両手で銃を持ち上げ
引き金を引いた。
ぱん、という音とともに、強い衝撃が手首に伝わった。
金色の薬莢が空に舞って、きらっと木漏れ日を跳ね返した。
- 158 名前:娘狂 投稿日:2001年02月17日(土)11時52分16秒
- 「なっち!やめなさい!何てことするの!」
幸運にも弾丸はその標的を外れ、銃声だけが空に響き渡り
血の霧が舞うことはなかった…。
「安倍しゃん!やめるのれすっ!」
また次の瞬間、辻がばっと安倍に飛びかかり身体をぐっと押さえた。
その後も混乱し気味の安倍はしばらく暴れたが
辻の後から、安倍の身体をしっかりと抱きしめた市井の声を聞いて
ようやく落ち着きを取り戻した。
- 159 名前:娘狂 投稿日:2001年02月17日(土)11時53分17秒
- 「急に近づいたりしてごめん……驚いたよね……ごめん…」
「……ごめん…紗耶香……なっちね…なっち…ね……ひくっ」
「わかったから、しばらく黙ってなって……」
一瞬でも自分に拳銃を向け発砲したメンバーを、市井は強く抱きしめた。
辻も、涙を流しながら震え市井に抱きしめられる安倍を見て
”美しい光景なのれす…”と思っていたが
当の本人、安倍なつみの中ではそんなに単純なことではなかった。
- 160 名前:娘狂 投稿日:2001年02月17日(土)11時54分08秒
- 何しろさっきまで、今にも気が狂いそうな心境だったのだ。
それが、この短時間で(紗耶香に抱きしめられたからといって)
正常に戻るわけもなく……
抱きしめられた安倍の目に飛び込んできたのは
市井の右手に握られた”大型自動拳銃”だった。
こんなものを見て、心中おだやかでいられるはずもなかった。
ただ市井が握っていた”大型自動拳銃”が、
あたかも自分に向けられているようにすら感じた。
しかしそれでもまた、叫ぶこともできなかった。
- 161 名前:娘狂 投稿日:2001年02月17日(土)11時54分39秒
- 安倍は強く市井を自分から突き放すと、
少し乱れた髪を、片手でささっと直すように動かした。
「なっち……大丈夫?」
「え?……う、うん。大丈夫だよ…はは」
逃げなきゃ…逃げなきゃ……私は殺される……
理由なんてもうどうでも良かった。いや、そもそもそんなものはわからなかった。
すべてのメンバーが自分を殺そうとしている、そう感じていた。
【市井&辻×安倍合流/残り9人】
- 162 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月19日(月)00時34分43秒
- 非常におもしろく読ませてもらっています。
がんばってください。
- 163 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月19日(月)01時48分35秒
- おもしろいのにレス少ないな。
俺は応援してるよ。
市井よ、後藤を救ってやれ。
- 164 名前:娘狂 投稿日:2001年02月19日(月)08時45分27秒
- >>162-163
ありがとうございます。
今後の見所は、「石川×吉澤」の合流後です。
ご期待下さい!(w
(といってもたいしたことないんですが・・・)
- 165 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月19日(月)14時46分38秒
- 面白さとレス数は必ずしも比例しないと思うから作者さん頑張って下さい
- 166 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月19日(月)20時58分23秒
- 私もいつも楽しく読ませていただいております。
応援してるので頑張ってくださいね♪
- 167 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月20日(火)16時47分52秒
- 石川と吉澤が会うの楽しみにしてます。
次の更新で見れるのかな?
- 168 名前:#lime 投稿日:2001年02月21日(水)01時47分39秒
- 応援してます!最初また バトロワ物かよ とか 思ったけど
ちょーおもしろい はまりちゅう
- 169 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月21日(水)01時49分13秒
- あぁ メアドに色入れたかったのに・・・・
- 170 名前:娘狂 投稿日:2001年02月22日(木)09時01分06秒
- >>165 名無しさん
ありがとうございます。
今後も、面白く読んで頂ける展開を提供できる様
頑張りますので、宜しくお願いします。
>>166 名無しさん
”応援”ありがとうございます。
なんか良いですね、応援って…(W
これからも宜しくお願いします。
>>167 名無し読者 様
「石川×吉澤」編は次の更新で書きたいと思っているんですが…
ちょっと、また最近忙しくなってきてしまったので
遅れています。
出来るだけ早いうちに更新しようと思っていますので
宜しくお願いします。
>>168-169 名無し読者(#lime)様
自分もたまにやってしまうことがあります…書き間違い(W
最近「黄板」「緑板」でも”バトルもの”が始まっているようなので
「☆娘。ロワイヤル☆」も頑張って更新したいと思います。
今後も読んで頂ければ、幸いかと思います。
という事で、最近更新が遅れておりますが
もう少々、お待ち下さいませ…
(今回、レス用ということで、nameの色を変えてみました)
- 171 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)08時33分46秒
- 約2週間ぶりの更新です…。
忘れられていないことを祈りつつ、「石川×吉澤編」スタートです。
前回の「吉澤編」がかなり前だったので
↓宜しければこちら参照で…一応続きになります。
>>42-50
- 172 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)08時37分17秒
- ◆『石川 梨華×吉澤 ひとみの場合』◆
「よっすぃー…」
「梨華ちゃん…っ!」
入り口に立つ石川を見て、吉澤は妙な違和感を覚えた。
しかし、そんな違和感を正確に理解する前に
身体は石川のほうへと走っていた。
- 173 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)08時39分10秒
- 「だめっ!入ってきちゃっ!」
そういうと、石川の身体をぐっと抱きしめて
すぐに部屋の外へと連れ出した。
「よっすぃー……?」
「いいからっ!」
吉澤は顔を上げようとした石川の頭を押さえ込んで
さらに強く抱きしめた。
梨華ちゃんにこんなもの見せられない…。
中澤さんの死体なんて……
こんなもの見たら梨華ちゃんきっと…。
- 174 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)08時44分25秒
- 部屋を出たすぐの廊下で石川を抱きしめた吉澤の腕は
かすかに震えていた。
その美しい大きな瞳も、やや焦点を失い
薄らと涙もにじみかけていた。
さっきまで冷静だったのが、”石川梨華”という
日常が目の前に飛びこんできたことで
吉澤の心の中にも徐々に恐怖がこみ上げてきていた。
- 175 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)08時45分27秒
- 「よっすぃー……くるしいよ…」
「…あっ、ご、ごめん……」
気がつかないうちに腕に力が入り、
”抱きしめている”というよりは、”はがいじめ”にされていた
石川がたまらず、吉澤に訴えかけた。
吉澤は、抱きしめていた身体をすっと離すと
横からしめられたことでやや乱れてしまった
石川の襟元を軽く直した。
- 176 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)08時54分15秒
- 「よかった〜、よっすぃーに会えて…
私…すっごく怖くて……」
そう言いながら涙をためた目でじっと見つめる石川を見て
吉澤はようやく、さっき感じた違和感に気がついた。
- 177 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)08時54分57秒
- 石川の右手に握られた、黒っぽく鈍く光るモノ……
そして、胸元に転々とした血痕……
考えたくもない想像が頭の中を駆け巡った。
- 178 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)08時55分44秒
- あの中澤さんの死体……今、目の前にいる梨華ちゃん……
その右手に握られたモノ……そして血痕……
いや、そんなことは……
いらぬ方向へ向かう気持ちを必死に押さえようとした……
でも……これは…、いや…そんなことは……
吉澤は同じことを何度も考えながら、それを自分の中で否定し
また同じことを考え、またそれを否定して……意識がとびそうだった。
- 179 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)08時58分50秒
- 「きゃーーーーーーーっ!」
「…………っ!」
この世のものとは思えぬ奇声が、吉澤を我に戻した。
石川が自分の肩口から部屋の中を覗き込んでいた。
あの中澤の死体を……!
「……っ!梨華ちゃん!」
「きゃー――ぁぁぁ…ああぁぁぁ……!!」
……しまった…梨華ちゃんがこんなものを見たら……
まさか梨華ちゃんがそんな事するわけがないじゃないか…
私はなんて事を……なんてことを考えてたんだ……
ああぁ、わたしのばかばかっ!
…いや、そんなことより今は梨華ちゃんを落ち着かせなきゃ……
私が冷静でなきゃ…でなきゃこの娘は……
- 180 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)08時59分45秒
- 「梨華ちゃん、落ち着いてっ!ね?
こんなの見て、落ち着けなんて無理かもしれないけど……
今は混乱しちゃだめだよ……わたしだって怖いけど……」
そう言いながら吉澤は石川の肩に手を伸ばした……
- 181 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)09時01分32秒
- ――っ!?
「いやっ……いやいやィャっ!
殺さないで……命だけは…命だけは……っ!!」
………はぁ?なに?何言ってるの?梨華ちゃん…!?
「私まだ死にたくないっ…だから…だから殺さないでぇ……っ!」
石川は涙とも汗とも言いがたいもので、瞳の中をあふれさせ
おびえた目で吉澤を見つめていた。
- 182 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)09時02分21秒
- なに?私が中澤さんを殺したとでも言うの?この私が……?
「違…っ」
「お願い……お願いだから…私、いつもよっすぃーの味方だったじゃない……」
石川はさらに続けた。
「中澤さんと何があったかは知らないけど……私絶対に誰にも言わないから…
……ね?だから…殺さないで……」
- 183 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)09時03分28秒
- どうして?なんでそんなこと言うの?
だって…梨華ちゃん、自分の姿見てみなよ……あなたの方がよっぽど…
それ、マシンガンでしょ?それぐらい私にもわかるよ。
それにその服の血……それの方がどう見たって…
「よっすぃー…おねがい……おねがい……」
石川はついには床に座り込み、吉澤にすがる様に泣き始めた。
吉澤は今にも石川に怒鳴りつけようと石川の胸ぐらに手を伸ばしかけた……が
その石川の姿を見て………やめた。
- 184 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)09時05分24秒
- 吉澤は石川に弱かった。
オーディションで合格して、一緒にモーニング娘。に入って、
いろいろ初めてのことが多くて……知らないことが多くて……
困ったとき、迷ったとき、悲しかったとき……
いつも石川は吉澤にくっついていた。
そう、ちょうど今のような泣きすがる目をしながら……
吉澤はそんな石川との関係は嫌いじゃなかった。
年齢はひとつ上だったけれど、自分をいつも頼ってくれる石川が
とてもかわいく思えた。
好きだった。
- 185 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)09時06分34秒
- 伸ばした手をそっと石川の肩に置くと
吉澤は声を押さえて言った。
「違うよ……わたしじゃない。私が来たときにはもう…中澤さんは……」
「…………」
「ね?信じて……梨華ちゃん…」
「…………ウソっ!」
石川は、肩に置かれた吉澤の手を思いっきり払った。
でも尚、吉澤は石川の両肩に手を添えた。
- 186 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)09時08分07秒
- 「お願い聞いて、梨華ちゃん……
実は私も、最初梨華ちゃんを見たとき、そのマシンガン見て疑ったわ」
「…………私は…っ!」
落ち着きかけた石川の顔がまた険しくなった。
「ごめん…それは謝るわ。…本当にごめんね……
それに、……私は梨華ちゃんを信じる。
だから梨華ちゃんも私を信じて……ね?信じて……」
「…よっすぃー……」
二人の間にしばらく沈黙が続いた。
とても静かだった。
- 187 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)09時12分46秒
- その最中、石川には不安がうごめいていた。
よっすぃーは今、私のことを信じると言ったわ。
けど……それは本当?
こんな自分を見て?信じる…?
返り血を浴びて、武器を持っているのに……?
本当はここで自分を安心させておいて、
今武器を持っている私のことを油断させておいて
後で、中澤さんを殺した自分のことを殺そうとしているんじゃないの?
……よっすぃー……、あなたって…あなたって…
しかし、石川が選んだ沈黙を破る言葉はこうだった。
- 188 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)09時31分11秒
- 「ごめん……よっすぃー……私…わたし……ひどいこと……」
「ううん……いいの、もういいよ…梨華ちゃん……」
そして吉澤の中に漠然とした――いや本当は明確だったのかもしれない――
不安は残っていたが、必死にそれを押さえようとしていた。
吉澤は石川を信じた……同じモーニングの仲間、
それ以上に親友とも呼べる彼女のことを……
―― 私は梨華ちゃんのことを信じる……信じなきゃ…
「…梨華ちゃん、とりあえずみんなを探そ」
「……うん」
二人は疑い合った部屋から逃げるように廊下を進み始めた。
- 189 名前:娘狂 投稿日:2001年03月01日(木)09時34分42秒
- ……ごめんね、よっすぃー…
あの人、どうしても許せなくて……ずっと…ずっと……
でも、こんな涙で信じちゃうなんて……
よっすぃーったら、やっぱりかわいい
「ん?梨華ちゃん、なんか言った?」
「ううん何にも」
【石川×吉澤和解(?)/残り 9人】
- 190 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月01日(木)22時59分53秒
- 石川こわい…
- 191 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月02日(金)23時14分29秒
- 何だかんだで 五等押しで読む私
- 192 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月02日(金)23時16分00秒
- でも 黒後藤 好き♪
- 193 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月03日(土)03時35分31秒
- 黒りかキャラが出てていいですね、自分が石川ヲタってのも
有って余計ソう思うのかもしれませんけど。
ますます黒くなる事を期待してしまいます。
話し全体もとても面白いので今後の展開に期待してます
- 194 名前:娘狂 投稿日:2001年03月03日(土)10時40分53秒
- >>190
名無し読者 さん
自分でも書いてて、なんて奴なんだ、とか思ってしまいました。
今後も読んで頂けると幸いです。
宜しくお願いします。
>>191-192
名無し読者 さん
黒後藤は、今後もっと活躍させますので
どうぞご期待の程、お願いします。
>>193
名無し読者 さん
これ以上黒くなると、そ〜と〜やばそうですよね(w
でも、黒くなってしまうかもしれません。
彼女は作者もびびってしまうくらいの黒さの才能を持ってますので(w
…にしても、「黒ごま」「黒りか」に対する反応はすごいなぁ。
ていうか、他のメンバー、キャラ薄過ぎってカンジなんですよね、きっと。
でも、あんなに更新遅れたのに読んでもらえるなんて…ありがとうござます。
一応、1週間くらいをめどに、更新しようとしているんですが
もろもろの事情と言い訳がありまして(w
今後とも宜しくお願いします。
- 195 名前:娘狂 投稿日:2001年03月03日(土)10時42分11秒
- ◆『安倍 なつみの場合(3)』◆
しばらく静かに時間が流れていた。
市井は黙って自動拳銃の調子を見つづけており、
安倍もじっと押し黙っている。
辻はというと、そんな二人を不思議そうに
何度の首をお互いの方に動かしてはうつむき、
またお互いを見て、そんなことを繰り返していた。
- 196 名前:娘狂 投稿日:2001年03月03日(土)10時42分50秒
- 茂みの中で、時々小鳥が鳴き交わす声がし、
頭上を覆う草木が微風にゆれると、その隙間から漏れる
網目模様の光が、三人の体の上を振り子のように移動した。
すっかり慣れてしまった緑の中の空間が、ともすれば
ひどく平和なものに錯覚されそうだった。
しかし、安倍は、もう1時間ほど前になる”あの光景”のことをずっと考えていた。
- 197 名前:娘狂 投稿日:2001年03月03日(土)10時43分45秒
- ――梨華ちゃんが、裕ちゃんを殺した。
今になってもなぜあんなことが起きたのか、全くわからなかった。
ただ単純に思いつくのは、
”梨華ちゃん”は”裕ちゃん”のことが嫌いだったのだろう…と
そんなくだらないことくらいだけだった。
- 198 名前:娘狂 投稿日:2001年03月03日(土)10時44分28秒
- ………嫌いだった…?
私には嫌いな人はいるかな……?
……ごっちん…………かな……?
- 199 名前:娘狂 投稿日:2001年03月03日(土)10時46分45秒
- いや、嫌いなんて事は……そりゃ確かに
ごっちんがモーニングに入ってきてから
私という存在は、その以前とは大きく変わった。
ずっと私がモーニングの中で一番だと思っていたし
実際にそうだった。
どの番組に出ても、ライブをやっても
モーニングは”安倍なつみ”だった。
- 200 名前:娘狂 投稿日:2001年03月03日(土)10時52分26秒
- それが、ごっちんが現れて、モーニングは”後藤真希”に変わった。
どんどんと私の居場所がなくなって、
そのストレスで過食症にもなった。
食べることでその現実から目をそらしていた。
その結果、こんな身体になってしまったし
”そんな身体になったから、安倍は後藤に取って代わられたんだ”
なんて事も言われた。
”にわとりが先か、たまごが先か”……だ、まるで。
- 201 名前:娘狂 投稿日:2001年03月03日(土)10時52分59秒
- けど、けど……殺そうなんて――いや、正確に言えば
そんなことを考えたこともあったが(もちろん本気じゃないけど)――思ったことはない。
- 202 名前:娘狂 投稿日:2001年03月03日(土)10時54分05秒
- 「なっち、どうしたの?こわい顔して……」
「……え?」
知らぬ間に紗耶香が、顔を覗き込んでいた。
「辻が怖がってるよ…」
紗耶香はさらに顔を近づけて、小さな声でささやいた。
言われてふっと辻のほうを見ると、目が合った途端
顔をそむけられてしまった。
……ののちゃん…
- 203 名前:娘狂 投稿日:2001年03月03日(土)10時54分51秒
- 「ごめん、紗耶香……」
「いや、いいって。辻もこんな状況じゃ無理ないって。
それに私に謝ってどうすんのさ」
「……だね…」
市井の目はすごく優しかったけれど、安倍の中の恐怖は
まだ完全にはとれてはいなかった。
石川と中澤の光景と、拳銃を持った市井の姿が
どうしてもかぶさってしまっていた。
困惑していた。
- 204 名前:娘狂 投稿日:2001年03月03日(土)10時56分26秒
- 「あのさ、なっち…」
「……なに?」
「その拳銃……私に渡しといてくれないかな?」
「…………え?」
安倍はジグ・ザウエルP230・9ミリショートをすっと握ったままで
手には、グリップを強く握りすぎていたせいで、赤く跡がついていた。
手のひらも、汗でべたべたとしていた。
- 205 名前:娘狂 投稿日:2001年03月03日(土)11時16分51秒
- 「別になっちのことを信用していないわけじゃないけど……
一応……ねぇ?」
「…………」
「なっちもかなり疲れてるみたいだし、さっきみたいに
いきなり撃っちゃたりするとさ…」
「……やだっ!」
自分でもびっくりするような子供のような声だった。
でも、唯一自分の身を守れるものを”他人”に渡してしまうなんて……怖かった。
- 206 名前:娘狂 投稿日:2001年03月03日(土)11時17分38秒
- ――他人。
違う、他人なんかじゃない。
同じモーニング娘。としてやってきた仲間だよ……友達だよ……
わかってる…わかってるけど……怖い、怖いよ……っ!
なんで…信じられないんだろう……
なんで、こんなにも疑ってしまうのだろう……
…最低だ、ほんと……こんな私も私は嫌いだ…
- 207 名前:娘狂 投稿日:2001年03月03日(土)11時18分30秒
- 「……なっち…」
「…………」
「…………」
「ごめん…紗耶香…でも……」
「ふぅ……そっか」
市井はひとつ息を吐いて、肩を軽く動かした。
「わかった。…でも、さっきみたいに
むやみに撃っちゃ絶対だめだよ、わかった?」
「………うん」
……これじゃまるで、しつけを受けている小学生だ。
- 208 名前:娘狂 投稿日:2001年03月03日(土)11時19分28秒
- そう、いっつもモーニングのメンバーは私のことを子供扱いしてた。
”しょうがないなぁ…なっちは”とか”はいはい、わかったよなっち”とか…。
それに、ののちゃんや加護ちゃんも、
”安倍さんって、お姉さんみたいで好きです”
っていつも言ってたけど、本当にそう思っているのだろうかと疑ってしまうこともあった。
本当は馬鹿にされてるんじゃないか……って。
あの屈託もない二人の瞳が、ひどく冷たく感じることもあった。
………だめだ…やっぱり誰も信用できない……
- 209 名前:娘狂 投稿日:2001年03月03日(土)11時20分12秒
- 「……紗耶香」
「ん?」
「ちょっと……トイレ……」
「ああ……あ、でもトイレないよ……このへん…」
「うん……いいよ、別に誰もいないし…ちょっと向こうでやってくる」
「はは、しょうがいなぁ…なっちは」
まただ。
- 210 名前:娘狂 投稿日:2001年03月03日(土)11時21分06秒
- 「でも、足元とか気をつけてね、あの……トラップとか。
怪しいもんあったら、絶対触っちゃだめだよ、わかった?」
……まただ…っ!
- 211 名前:娘狂 投稿日:2001年03月03日(土)11時21分57秒
- 「うん…ありがとう。すぐ戻ってくるから」
そう言うと安倍は茂みの影へと消えていった。
もちろん安倍がその場に戻ってくることはなく
”トイレへ”といった足は、
中澤の死体のあった棟(南館)とは別のところ(本館)へと向かっていた
……はずだった、本人は。
本当はその棟(南館)へと向かっていたのだけれど……
【安倍なつみ離脱/残り 9人】
- 212 名前:ぺこ 投稿日:2001年03月03日(土)19時17分19秒
- ここすっごく面白いですよね。1ヶ月程前に偶然見つけてはまってしまいました。
早く続きが読みたいです。頑張って下さいね。
- 213 名前:よしゆき 投稿日:2001年03月03日(土)21時35分28秒
- 文句なしに面白い!
どうぞ頑張ってください。これからもどきどきしながら読ませてもらいます。
- 214 名前:名無し 投稿日:2001年03月03日(土)21時59分25秒
- よしこは殺さないで欲しいな。
作者様、頑張って下さい。
- 215 名前:娘狂 投稿日:2001年03月04日(日)09時47分40秒
- >>212
ぺこ 様
ありがとうございます。
最近、へこたれているのですが、こういったレスがつくと
力が湧いてきます。
今後とも宜しくです。
>>213
よしゆき 様
いやはや…ありがとうございます。
これからも緊張感のある場面で、ドキドキ感をがんばって出していこうと思います。
今後とも読んで頂ければ幸いです。
宜しくお願いします。
>>214
名無し 様
実は吉澤には、重要な役柄としての構想があるんですが
その役柄が気に入って頂ければ良いかな、と思います。
今後とも宜しくです。
- 216 名前:キング 投稿日:2001年03月04日(日)12時43分44秒
- 本当に面白いです。
石川はどうなるのかな
- 217 名前:娘狂 投稿日:2001年03月04日(日)13時43分25秒
- >>216
キング 様
ありがとうございます。
石川は……内緒です(w
今後とも宜しくです。
- 218 名前:娘狂 投稿日:2001年03月05日(月)08時12分22秒
- ◆『矢口 真里の場合(3)』◆
矢口は今も尚、時計の針の音だけが響く
暗く狭い空間に閉じ込められたままだった。
あれからどれくらいの時が経ったのだろう……
矢口にとってはひどく長く感じる時間が過ぎていた。
石川との電話を切った後、しばらくじっと連絡を待っていた。
待って、待って……待ち続けた。
小さな手に”携帯”を握り締めて…
- 219 名前:娘狂 投稿日:2001年03月05日(月)08時14分10秒
- その間、何だか退屈だった矢口は
ストラップを持って電話を振り回してみたり、
お気に入りの”タンポポ”の曲の振りなんかをしたりしていたが
そんな暇つぶしも長くは続かなかった。
- 220 名前:娘狂 投稿日:2001年03月05日(月)08時15分24秒
- 遅い……遅いよぉ…っ!…りかちゃぁぁ〜んっ
もうすっかり待ちくたびれて
我慢しきれなくなってしまった矢口は、
たまらず石川(中澤の電話)に電話をかけた。
ダイアルし終わり、呼び出し音が鳴るまでの間が妙な時間を感じさせた。
しかしその電話から聞こえてきたのは……
- 221 名前:娘狂 投稿日:2001年03月05日(月)08時16分59秒
- ”…電波の届かないところにおられるか、電源が入っていない為、かかりません……”
……え…?
矢口は不安と焦燥にかられ、何度も何度もかけなおした。
しかしやっぱり返ってくる声は、冷たい女性の声だった。
”電波の届かないところに……”
……あぁんもうっ!
どうして、どうして……つながらないの……!?
お願いだからつながって…裕ちゃんの声を聞かせてよ……っ!
さらに矢口はかけつづけた。
リダイアルリダイアルリダイアルリダイアル……
”電波の届かない……”
あああぁああぁぁぁぁぁ……っ!!んもうぉぉぉっ!!
- 222 名前:娘狂 投稿日:2001年03月05日(月)08時18分35秒
- ――ガシャッ!
あ……っ
矢口はあまりの苛立ちに、思わず”携帯”を壁に向かって投げつけてしまった。
しかも、その電子機器は運悪く壁際においてあった
趣味が良いとはいえない”銅のオブジェ”に当たってしまった。
少し暗がりの空間に、ぽぅっと光っていた液晶部分の明かりが
ふっと消えた。
- 223 名前:娘狂 投稿日:2001年03月05日(月)08時19分23秒
- あわわわ……わわゎゎゎぁぁ…
その光を失った”電話”に慌てて手を伸ばして、無造作にボタンを押してみた。
しかし……もうそれが再び光ることはなかった…
ああん…なにやってるんだ、わたしは……
……ほんとわたしって……ばかだなぁ…
- 224 名前:娘狂 投稿日:2001年03月05日(月)08時20分34秒
- 裕ちゃんにもいつも言われてた……
”矢口はもっと落ち着かないとだめだよ”って……
ミニモニ。で辻と加護と一緒にやってきて
自分でもちょっとはしっかりしてきたな…、とか思ってたんだけど
その反面、あの二人といない時の自分が、
前よりいっそう不安定になってきていたことも感じてた…
……どうしよぉ……はぁ〜……裕ちゃん…
矢口はうなだれて、後ろの方へと力なくもたれかかった。
- 225 名前:娘狂 投稿日:2001年03月05日(月)08時21分39秒
- ――ガラガラガッシャ〜ンッ
「うわあぁぁぁ〜…っ」
悪いことは重なるもので、もたれかかった後ろの物が
矢口の体重が乗り、ばらばらと崩れ落ちてきた。
古い小さな柱時計やら、空のダンボール箱やらなんやら…
こまごましたものが矢口の頭の上に降り注いだ。
- 226 名前:娘狂 投稿日:2001年03月05日(月)08時22分43秒
- 「んもぅ〜……ついてないなぁ〜」
小さな体がすっかり物に埋まってしまった矢口は
仕方なく、その雑品を片付け――というよりはただよけていただけだったが――始めた。
…ったく、なんでこうなるんだよぉ…
石川はなにやってるんだよぉ、裕ちゃんも何やってるんだよぉぅ…
矢口は…矢口は……こわくて…こわくて…さみしいよぉ……
- 227 名前:娘狂 投稿日:2001年03月05日(月)08時31分25秒
- 中澤は、例の部屋で血まみれになって
二度と目を覚ますことはなくなっていたし、
石川はというと、あの矢口の電話を切った後すぐに
電源を切り、窓の外へとそれを投げ捨てていた。
当然、矢口はそれを知るわけもないのだが……
- 228 名前:娘狂 投稿日:2001年03月05日(月)08時32分08秒
- 半泣き状態でその雑品をよけている最中、
その中に一本の”金属製の棒”をみつけた。
正に”災い転じて福となす?”か、矢口はそれを見てひらめいた。
――ピコン!(電球)
- 229 名前:娘狂 投稿日:2001年03月05日(月)08時32分42秒
- 矢口は確認するように、目の前の閉ざされた扉を凝視した。
そしてゆっくりとそれに手を差し伸べ、その感触を確かめた。
…うん、これは”木製”…だ。
なにやらつっかえ棒があるみたいだけど……所詮”木製”。
ニタニタしながら”金属製の棒”を手にすると
突然に扉に向かって振り下ろした。
- 230 名前:娘狂 投稿日:2001年03月05日(月)08時33分23秒
- 「えいっ!」
――ガボッ!
そしてさらに振り下ろす。何度も何度も繰り返し……
「えいっ!えいっ!えいっ!…あちょぉ〜ぅっ!!」
――ガスッ!ガスッ!ガンッ!ガショッ!
”金属製の棒”で扉をぶち破ろうとしていた。
矢口の顔は、それはもうすごい形相だったが
どこか楽しんでいるような表情でもあった。
- 231 名前:娘狂 投稿日:2001年03月05日(月)08時34分37秒
- これで…これでこっから出られるっ!
何で最初からこうしなかったんだろう……
裕ちゃんが助けに来てくれるって心の中でずっと期待してたからかな…?
やっぱり私もまだまだ裕ちゃんに甘えちゃってるんだな…
だめだ…もっと大人にならなきゃ。
でもぉ……次、裕ちゃんにあったら思っきり甘えてやるぅ
- 232 名前:娘狂 投稿日:2001年03月05日(月)08時35分40秒
――次…
矢口のその思いは、もう叶うことはなかったが
扉の先にあるはずの希望に向かって、ひたすら棒を振りつづけた……
――ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!…………
【矢口 真里破壊中/残り 9人】
- 233 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月07日(水)00時54分16秒
- 破壊矢口に萌え(w
裕ちゃんをやっちゃった♪(爆死)黒りかと対決するのかな?
吉澤の運命はどーなる。続き期待待ち。
- 234 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)12時01分57秒
- >>233
名無し読者 様
読んで頂きまして、ありがとうございます。
黒りか、吉澤、矢口が今後の”キーマン”になってくる予定です。
今後とも、宜しくです。
- 235 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)12時13分12秒
- ◆『安倍 なつみの場合(4)』◆
安倍は、市井たちのもとを離れ、再び洋館の中へと戻ってきていた。
館の中へ入った安倍が目にしたのは、数々の見慣れた風景……
自分自身が、また中澤の亡骸のある、石川のいるはずの棟(南館)に戻ってきてしまった事に気づき
大きなため息を吐き、肩を落としていた。
しかし、再び外に出て別の棟(本館)を目指そうとは思わなかった。
というのも、いつほかの誰かが自分を狙ってくるかという恐怖の中、
さっきいた草むらの中のように不確定に広い場所を一人で移動する事が
不安でたまらなかったのだ。
- 236 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)12時22分03秒
- 脱出の方法が全くわからない今、どこかにじっと隠れていたかった。
それに、武器を持っていないメンバーに会いたかった。
特に自分が信用できるメンバー……裕ちゃんか――そうか、裕ちゃんはもういないんだ…――
…矢口……か…に会いたかった。
- 237 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)12時22分44秒
- 安倍はふらふらとしながら、また突然に誰かと、石川と遭遇してしまわないよう、
慎重に廊下を歩いていた。
数歩進むたびにどこか身の隠せるような場所に体を密着させ、
曲がり角の前では必ず一度立ち止まり、何か物音がしないかじっと聞いてから
その先に進むようにしていた。
しかし、しばらくは誰にも会うことはなく、
角で立ち止まっても何も聞こえてくる気配はなかった。
そんな何事もない時間が経過しているとき、ある曲がりでいつも通り立ち止まっていると…
- 238 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)12時23分25秒
- ――ガス……ガボ……ガス……
…不意に物音が聞こえた……!!
- 239 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)12時24分02秒
- な、なんだべ…っ!?
安倍は、咄嗟にそこの壁にべったりとはりつき、じっとその音を聞いた。
胸の鼓動はどんどんと高まっていき、額からは汗が次々と溢れ出した。
呼吸も荒くなっていき、その吐息がその先にいるかと思われる
”誰か”に聞こえはしないかという不安が安倍の心をおおっていった。
- 240 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)12時24分48秒
- ――ガス……ガボ……ガショ……
音は、なかなかやまない……
しばらくその音が続く中、それに対する恐怖が”ちょっとした興味”へと変わっていった安倍は、
いったい何の音なんだろうと思い、角の向こう側へ慎重に首だけを恐る恐る出してみた。
- 241 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)12時25分24秒
- 「……………………」
廊下には誰もいなかった。
いなかったが、その先にある扉が、その音にあわせて大きくゆれていた。
「…………??」
なにが起きているのか、いまいち飲み込めなかった安倍は
しばらくその情景を見守っていた。
するとその音は……やんだ…
再び、その辺りに静寂が戻った。
……が、そのあとすぐに人の声が聞こえた。
- 242 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)12時50分50秒
- 「ああぁぁぁ〜……っ!なんでぶっ壊れないんだよぉ〜っ!!」
その声は壁越しであったけれど、数年聞きなれた声は
安倍にはすぐわかった。
――矢口だべ……!!
- 243 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)12時51分57秒
- そうわかったらすぐに足はもう、駆け出すようにそちらに向かっていた。
なんという幸運だろうか。
自分が出会いたいと思っていたメンバーにこんなに早く会えるなんて……
日頃の行いの良さからなのか、生まれもった強運のおかげか
はたまたこれが運命の輪というものなのか…
しかし、そんなことは何のおかげであろうが関係はなかった。
とにかく自分のすぐ近くに、矢口真里がいるのだ。
その扉の前にたどり着いた安倍は、左手をあてがい
右手で扉を強く叩き、叫んだ。
- 244 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)12時52分34秒
- 「矢口?矢口だべか?あたし…なっちだよっ!そこにいるの!?」
「……なっちっ!!?」
安倍の問いかけに対して戻ってきたのは、やはり紛れもなく矢口真里の声だった。
「…なっちぃ〜…よかったぁ……」
「矢口も無事でよかったよぉ〜…でも、なにやってんの?!矢口…」
「…うん、ずっとここに閉じ込められちゃってて……で、今ここから出ようと思って
扉をぶち破ろうと思って、一生懸命やってたんだけど、それが思いのほか頑丈で……」
「そっか……」
「ねぇ、なっち。そっち側で何かつっかえ棒とかされてない?」
「……え?」
- 245 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)12時53分05秒
- そういわれた安倍は、慌てて扉に目をやった。
というのも、扉の向こう側の矢口に夢中で、その扉そのものには注意を払っていなかった。
そして、すぐにその棒は見つかった。
「あぁ、これだ」
安倍は、その棒を取り外すとすぐに扉を開けた。
その先には、なんともぼろぼろになってしまっていた矢口の姿があった。
- 246 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)12時53分52秒
- お互いがお互いの顔を見て安心したのか、ほぼ同時に二人の目から、涙がこぼれた。
そして二人は強く抱き合った。
それぞれが精神的、物理的孤独の時間を過ごし、やっと自分が信用できるメンバーに出会えた。
この事象が及ぼす影響は強く、今までの時でたまりにたまった、孤独、不安、恐怖が一気にはけていった。
”安心”といった言葉が、二人を包んでいった……
この非日常な状況下で、とても平和と思える時間が流れたが、
矢口には安倍と会えたことよりも、もっと気になることがあった。
――中澤裕子。
- 247 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)12時54分34秒
- 「なっち、そういえば裕ちゃん見なかった?」
「…………え?」
安倍はその問いに、一瞬、顔が硬直してしまった。
あの石川と中澤の光景が頭をよぎる。
「“え”じゃなくって…裕ちゃんだよっ!どこかで見なかった?」
「………う、うん…」
安倍の“YES”とも“NO”ともとれる答えに、やや苛立ちを感じた矢口は
さらに続けた。
- 248 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)12時56分59秒
- 「この中にいるときにね、一度電話で話したの。だけどそのあと、つながらなくなっちゃって…」
「…え?裕ちゃんと話したの?」
中澤がかなり前の時間にもう死んでいたことを知っていた安倍は、
矢口の言ったことを不思議そうに聞き返した。
- 249 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)12時57分37秒
- 「ううん、梨華ちゃんと…そのとき梨華ちゃんが電話に出たの」
「…………っ!!」
石川の名を聞いた途端、また安倍の表情がこわばった。
安倍の中では“石川梨華”という名はすでに、恐怖の象徴になっていたし、
なにより、自分の見た光景を矢口に伝えることはとても自分には出来ないと思っていた。
そんな安倍を見て、メンバーの中でもひときわ勘のよかった矢口は
その動揺を見逃さなかった。
- 250 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)13時05分31秒
- 「…なっち?何か知ってるの?」
「え……いや……うん……」
「何?はっきり答えてよっ!何か知ってるんでしょ?……ねぇ!なっちってばっ!!」
安倍は、ばつの悪そうな――ばつが悪いなんてもんじゃないが――顔をして
黙り込んでしまった。
そんな安倍を矢口はじっと見つめた。
- 251 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)13時06分13秒
- 安倍はいつもそんな矢口には弱かった。
もちろん、こんなせっぱ詰まったような状況は今までにはなかったが
――いつもはたいてい、安倍が買ってきたお菓子を食べていい?とか、好きな洋楽のCDをちょうだいとか、
そんなことばかりだったが――どうも矢口にじっと見つめられ、
頼み込まれると断りきれない自分がいた。
二人の間にしばらくの沈黙が流れたが、その沈黙に、矢口の視線に耐え切れなくなった安倍は
遂に口を開いた。開いてしまった……
- 252 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)13時15分27秒
- 「なっち見たよ……裕ちゃん……」
「…え!?本当?……どこ?どこで見たの?」
「多分……ここの近く…だと思う……」
「……何、何してた?裕ちゃんは……」
「…………」
安倍はそこで再び口をつぐんでしまった。
「なっちぃ!ねぇ、裕ちゃんは何してたの…!?」
「………梨華ちゃんと一緒だった…」
「え!?梨華ちゃんと?」
「…………うん」
安倍はそこまで言うと、完全にうつむいてしまった。
矢口はというと、一度に入ってきた情報にやや混乱気味だったが
そんなことよりもやはり、中澤の所在が気になって仕方がなかった。
- 253 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)13時16分15秒
- そして矢口は、安倍に対する質問をさらに続けた。
「そうだ……、なっちは裕ちゃんを見かけて、何で一緒にいないの?
話しかけたんでしょ?裕ちゃんに」
「…………」
「何?声かけなかったの?なんで!?
もしかして…裕ちゃんをおいて、ここから逃げ出そうとしたの?」
「違うっ!………声かけなかったんじゃなくて……かけられなかった…の……」
「はぁ?……どういうこと?」
さっきからはっきりしない安倍にイライラしてきた矢口のテンションはみるみる上がっていった。
しかし、その感情に持ち前の勘の良さが働いた……
「もしかして……裕ちゃんに何かあった……の…?」
「…………」
- 254 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)13時16分54秒
- 矢口の中にいやな予感がどんどんと広がっていった。
自分自身考えたくもないようなことが次々に浮かんでくる……
こんな時くらい、勘のよい自分も鈍感であってほしいと思った。
ほんと……こんな風なら、いっそ鈍感なほうがよっぽどいい……。
また二人の間に沈黙……
もう、二人が再会した時のような“平和”な空気はそこにはなかった。
今となっては得もいえぬ重圧感……
そして、また最初に口を開いたのは、安倍だった。
- 255 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)13時17分28秒
- 「矢口……落ち着いて聞いてくれる?」
「……え?」
“落ち着いて聞いてくれる?”
……いやな話はいつもそんな切り出しだ。
みんなが脱退するときの話だって、そうやって切り出された。
“落ち着いて”なんて聞けるはずもない……そういう話はたいてい……
でも、もうある意味慣れた、そういう話には。
私たちはいつも突然の発表、突然の決定…そんなものばかりだったし。
それに、その“突然”というのがモーニング娘。の代名詞にもなってしまっているくらいだし……
本当はやっている側としては、たまったもんじゃなんだけど…
だから私はやっぱりこう答える……いつも通り……本心とは逆の答えを…
- 256 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)13時18分12秒
- 「うん、大丈夫。話して、なっち」
「…………」
「…………」
「……ごめんね…、なっち何も出来なかった……」
- 257 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)13時18分47秒
- こうして、あのおぞましき、そして信じがたい光景を安倍は話した。
物音のした部屋の前を通りかかったら中澤と石川が一緒にいたこと。
その石川がマシンガンを持っていたこと。
そして…それを中澤へ向けて発砲したこと……
発砲された中澤が、もう目も口も開かなくなってしまったこと……
すべて安倍自身がそこで見たことを、矢口に話した。
- 258 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)13時19分28秒
- 「…………」
「…………」
もう何度目の沈黙だろうか……二人の間にまた何とも言えない時間が流れた。
二人はうつむき、扉を叩いていた時に床に落ちた木屑を、ただじっと見つめていた。
しかし、今度先に口を開いたのは矢口のほうだった。
- 259 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)13時20分15秒
- 「……石川……ぶっ殺してやるっ!」
「……え?」
「見つけ出して絶対にぶっ殺してやるっ!許せない…許せないよっ!!」
「矢口……ちょっと待っ…」
そう言うと、矢口はつかつかと部屋の外へと歩き出した。
そして安倍は、それを追いかけた。
- 260 名前:娘狂 投稿日:2001年03月11日(日)13時20分45秒
- もう矢口の目は完全に据わっていた。
ミニモニ。タンポポ、モーニング娘。の“ヤグチマリ”はもうそこにはいなかった。
そこにいるのは、ただ自分の愛すべき人間を殺した“クソ”に復讐心を燃やす
醜い悪魔のような顔をした“矢口真里”だった……
「ぶっ殺す…ぶっ殺す…ぶっ殺す…ぶっ殺す…ぶっ殺す…ぶっ殺す…ぶっ殺す…ブツブツ……」
【矢口(壊)×安倍合流/残り 9人】
- 261 名前:壱位 投稿日:2001年03月12日(月)10時13分42秒
- すごく面白いです。
早く続きが読みたいです、
市井さんが・・・・・まあ、読者がチャチャいれしちゃいけないですね、
今後もがんばってください。
- 262 名前:キング 投稿日:2001年03月12日(月)14時19分15秒
- とてもおもしろいです。
石川好きな自分としては石川にがんばってもらいたいところです。
- 263 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月13日(火)04時20分10秒
- おお、矢口・・・・ついに(w
吉澤が、矢口と石川、どっち側につくのかも楽しみ。
- 264 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月13日(火)21時14分05秒
- 後藤の再来を楽しみに待ってます
- 265 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月14日(水)11時32分38秒
- 凸(▼皿▼メ)た矢口に激(///▽///)
今後に激しく期待
是非頑張って下さい>作者さん
- 266 名前:娘狂 投稿日:2001年03月17日(土)08時16分28秒
- >>261
壱位 様
読んで頂きまして、ありがとうございます。
ああ…市井さんが…あぁ…(^^;
出番少ないですよね(w
今後はもう少し活躍させる予定ですので、宜しくです。
>>262
キング 様
ありがとうございます。
本物の石川さんは、北海道に行ってしまいましたが
ここでは、娘。の中で大暴れさせたいと思います(w
今後も宜しくお願いします。
>>263
名無しさん
読んで頂きましてありがとうございます。
吉澤は…よっすぃーはどうなるんでしょうか……?
自分でもドキドキです(w
今後もよろしくです。
>>264
名無し読者 様
トラップのMAPの一部を失った黒ごまは、現在館内を徘徊中です…
次回の登場を期待されると、書かねばという気持ちになってきますね。
今後とも宜しくお願いします。
>>265
名無しさん
ありがとうございます。
凸(▼皿▼メ)に(///▽///)ですか。
はっはっは…(分かったふりをしておこう(^^;)
でも、豹変した矢口にご注目を、というかんじです。
今後とも宜しくお付き合いの程お願いします。
- 267 名前:娘狂 投稿日:2001年03月17日(土)08時56分08秒
- というわけで、ずっと更新が遅れている訳ですが
実は自宅のマシンがクラッシュしまして…
創作が止まっています…(T△T)>現在、友人のマシン使用中。
あと1週間後くらいには更新できるかと思いますので
それまでご記憶の片隅にでも残っていれば、お付き合い願いたいと思いますm(_ _)m
- 268 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月20日(火)20時13分13秒
- 頑張ってください。
続き待ってます。
- 269 名前:壱位 投稿日:2001年03月28日(水)00時31分36秒
- いまでも首を長くしてまってますよ、焦らずゆっくりと
やってってください。
- 270 名前:SOUL 投稿日:2001年03月29日(木)21時10分33秒
- 頑張って下さい。
応援してます!
- 271 名前:辻ファンです。 投稿日:2001年04月02日(月)12時38分36秒
- つい最近ここを見つけたんですが、ハマりました。加護はど−なる!?
黒ごま、黒梨華コワイ・・・。辻はなるべく殺さないでくれると嬉しいです。
なっち&矢口も気になります。
- 272 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月09日(月)04時27分35秒
- 続き待ってますよ作者さん
頑張って下さい
- 273 名前:ティムポ博士 投稿日:2001年04月11日(水)05時17分14秒
- 本当に面白いですね!応援してますよ♪
これからもゆっくり頑張ってくださいね。
- 274 名前:娘狂 投稿日:2001年04月13日(金)08時20分33秒
- >>268-273
名無しさん
壱位 様
SOUL 様
辻ファンです。 様
名無しさん
ティムポ博士 様
大変遅れております。ごめんなさい。
マシン復活後、高熱の為寝込んでおりました…
最近ようやく復活しかけてきたので、鋭意創作中です。
放棄しているわけではないので、あと少々お待ち頂けますでしょうか?
頑張りますので…よろしくお願いします。
- 275 名前:Hruso 投稿日:2001年04月14日(土)02時39分21秒
- そうだったのですか。
ゆっくり休んで、復活したら頑張ってください。
- 276 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)08時37分00秒
- ◆『市井 紗耶香&辻 希美の場合』◆
もう太陽も頂点から傾こうとしている時間、
市井と辻がいる草むらの中は、妙な静寂に包まれていた。
安倍がトイレと言ってその場を立ち去ってから
小一時間ほどは経過していただろうか。
市井は依然、落ち着き払ったような表情のまま
何かをじっと考え込んでいるようだったが
辻はというといつものお調子者の表情ではなく
不安と悲しみがやや伺えるような顔になっていた。
- 277 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)08時42分28秒
- すぐに戻ってくると言った安倍がなかなか戻ってこない。
辻の頭の中に”嫌なイメージ”がかすめた。
安倍の顔。
いつかの収録待ちのテレビ局の楽屋、
忙しいスケジュールのほんの短い時間に”洋楽の歌”
――タイトルやアーティストは英語だったので忘れてしまったが――
を歌って聞かせてくれたように、その口は半ば開き
目はどこか遠くを見ているような感じ。
しかし――その額にヒンズー教徒のように黒い、大きな点がついている。
予告なく唐突に、その点から赤い液体が盛り上がってくる。
大きな点は実は、ひどく暗く、深い穴だったのだ。
その奥の脳のある場所から、ゆるやかに血が流れ出す、
その血が安倍の顔に広がっていく、ガラスにひびが入るように・・・・・・
- 278 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)08時44分38秒
- きっとこんな気持ちを口に出して人に伝えられたら
どんなに楽だろうか。
しかし、こと物事をまとめて言葉にし、人に伝えることが
苦手な辻にとっては、それは出来ないことだった。
自分の中で作られていくイメージばかりが、どんどんと頭に広がった。
あぁ、こんなことならもっと国語を勉強しておくんだった・・・
辻の中にそんな後悔も同時に広がっていた。
- 279 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時02分57秒
- そんな不安感ですっかり顔が青ざめてしまった辻に気づき
市井は声をかけた。
「どうした?辻。大丈夫か・・・?体の調子、悪い?」
辻は黙って首を横に小さく数回振った。
「ううんって、顔、青いぞ」
「・・・・・・・・・・・・」
市井は心配そうに辻に近づき、顔を近づけて
やさしく囁きかけた。
- 280 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時04分35秒
- 「なっち・・・のこと?」
辻は、今度は小さく縦に首を1回振った。
「・・・・・・確かにちょっと遅いね、なっち」
市井はそう言うと、あたりを軽く見渡すようなしぐさを見せた。
- 281 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時05分17秒
- 「・・・・・・・・・市井さん」
「ん?・・・・・・何?」
「あのぉ・・・安倍さんのこと探しに行きませんか?辻、すごく心配なんれす・・・安倍さんのこと」
「・・・・・・辻」
「もしかしたらどこかで”とらっぷ”にかかって怪我してるかもしれないれす・・・
ううん、それどころか・・・・・・」
辻は背筋がぞくっとして、それ以上口に出すことができなかった。
またあの、口を半開きにして顔に赤いクモの巣を広げた安倍の映像が
脳裏を横切った。
- 282 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時05分48秒
- そんな辻を見て、市井はすぐに辻の頭を片手でぐっと抱き寄せた。
「ばか、そんなことないよ。大丈夫。なっちならきっと・・・」
実は市井もそう言いながらも、誰とも知れぬ銃声の主が
安倍のことを見つけて撃っていないなんて確信は無かった。
市井の中にも不安はいっぱいだった。
ただそれよりも――本当は比較することなんて出来ないが――
今、自分たちがこれからどうするかを考えることの方が先だと思っていた。
こんな状況下で自分自身には仕方が無いと言い聞かせていたが
少しばかりとも”エゴイスト”になっていた自分が・・・恥ずかしく思えてきた。
- 283 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時06分18秒
- やっぱり・・・・・・これだけの時間戻ってこないとなると・・・・・・
じっとしているわけにもいかない。
幸い(?)安倍がここを離れてから銃声は聞こえていなかったので
その”誰か”に撃たれてはいないはずだ。
「よし、なっちを探しに行こう、辻」
「・・・・・・・・・へい!」
ふたりはずっと座り込んでいた草むらから慎重に立ち上がると
近くに見える側の館(南館)に足を向けた・・・・・・
【市井&辻 行動開始/残り9人】
- 284 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時06分58秒
- ◆『吉澤 ひとみ&石川 梨華の場合』◆
二人はあの「中澤がいた部屋」を離れ、長く続く廊下を歩いていた。
石川は吉澤の左腕に自分の右腕を回し、しっかり腕を組んでいた。
とても組んでいない手にマシンガンを持っているようには思えないような
天使のように微笑みながら・・・
- 285 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時07分30秒
- 「梨華ちゃん・・・なんか楽しそうなんだけど・・・・・・」
「え?そう?」
不安げな視線を向けた吉澤に対して、石川はにっこりと微笑みを返した。
- 286 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時08分01秒
- こんな状況でなんで梨華ちゃんはこんなに楽しそうにいられるんだろう・・・
さっき目の前で”中澤さん”が死んでたのに・・・
それに誰かが殺したことはほぼ間違いなくて、その誰かに遭遇したら
私たちも殺されるかもしれないのに・・・・・・
まだ尚微笑み続けている石川に対して、吉澤は更に言葉を重ねた。
- 287 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時08分32秒
- 「・・・・・・中澤さんを殺した誰かにばったり会っちゃったら
私たちも殺されるかもしれないんだよ?恐くないの?」
「・・・・・・恐い?よっすぃーは恐いの?」
「・・・・・・そ、そりゃぁ・・・」
「私は平気だよ。だってよっすぃーと一緒なんだもん」
「・・・・・・梨華ちゃん」
吉澤は少し困った顔を見せた。
- 288 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時09分09秒
- ・・・・・・また梨華ちゃんに頼りにされてる・・・・・・
そりゃ、頼りにされるのは嬉しいけど・・・私だって一応・・・・・・
- 289 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時09分47秒
- 吉澤は、いつも”男っぽく”頼りにされていたことに嫌な気はしていなかったが
自分だって一応女の子なのに・・・しかも15歳、乙女(なんて恥ずかしい言葉は使いたくないが)なのに・・・
そんな気持ちもまた、吉澤の中にはあった。
特に今はこんな状況・・・・・・
メンバーはいつも私のことは”男前”、”かっこいい”なんて言ってくれて
悪い気はしないけど・・・私だって恐くて・・・不安で・・・落ち込むときだってあるよ・・・
- 290 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時10分34秒
- でもでも・・・・・・今はここから逃げ出すことを最優先に考えなくちゃ・・・
他のメンバーに会って、一緒にここを脱出しなくちゃ・・・
私はやっぱり女の子だけど、今は自分自身が持ってる”強さ”は
他のメンバーのために精いっぱい活かすべきだ。
吉澤は不安定になりかけた気持ちを、ぐっと引き締め直した。
・・・よし、もう1回冷静に考えよう。
私が弱気になったら・・・だめだ。
- 291 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時11分27秒
- しばらく歩き続けたとき、石川が不意に口を開いた。
「よっすぃー・・・これからどうするの?」
その時、その石川の何が気に障ったのかよくわからない。
口調だったのか、言葉自体だったのか、とにかく、吉澤の心のどこかで
一瞬、なんだよそりゃ、という声がした。
私がここを脱出することについて頭をひねっている間じゅう、
梨華ちゃんはぼんやり私の腕に捕まってりゃいいってわけ?
梨華ちゃんはファーストフードを買いに来た客で、私は店員?
- 292 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時12分08秒
- ――しかし、吉澤はその声を押さえつけた。
石川の目の下にはクマが色濃く出ていたし、
頬も明らかにいつもよりそげていた。
私はどちらかといえば運動は得意な方だったし、体力も人よりはちょっとは自信がある。
でも、いつか梨華ちゃんから聞いた話だと
梨華ちゃんは、風邪が流行る季節には体育は休みがちだったし
学校もよく休んでいたらしい。
私とは疲れの度合いが違うのだ。頭がうまく働かないのかもしれなかった。
- 293 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時12分50秒
- それから吉澤はあることにはたと気づきぎょっとした。
今、梨華ちゃんにちょっとでも腹を立てたということ自体、
自分もまた疲れていることの証拠なのだ。
もちろん、こんな見えない恐怖の真ん中で、先も見えない状況じゃ、
神経が参らない方がおかしいかもしれないけれど。
吉澤はちょっと頭を振った。
- 294 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時13分48秒
- 「どうしたの?」
石川が聞き、吉澤は顔を上げて、笑んで見せた。
「なんでもないよ。それより…お腹空かない?梨華ちゃん」
「うん、お腹空いたぁ」
吉澤は自分自身の疲れも、石川の疲れも
今の空腹が原因の一つと考え、気を紛らわせる為にも
ちょっと砕けたことを言ってみた。
にしても・・・梨華ちゃん、デートじゃなんだからもう少し危機感持ってよ・・・
- 295 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時15分00秒
- 「たしかこの辺、さっき私がこっちに来るときに通りかかったんだけど
もうちょっと行ったところに厨房みたいなところがあったから
そこに何かあるかも」
「うん、そこに行こう!」
石川は相変わらずの笑顔で、つかまっている吉澤の腕に、ぐっと自分の頬を押し付けた。
そして2人は食堂(南館2階)へと足を進めた・・・
【吉澤&石川 食堂へ/残り9人】
- 296 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時15分36秒
- ◆『ちょっと短め 安倍 なつみの場合(5)』◆
石川のことを知った矢口が、あの物置のようなところを出てから
安倍はにわかに矢口とはぐれてしまった。
外は真っ昼間で明るいはずなのに、館の中はなぜが薄暗く
曲がり角が連続しているところで、矢口を見失ってしまった。
- 297 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時16分16秒
- なにしろ「石川・・・石川・・・」とつぶやきながら
妙な早足でどんどんと歩いていってしまい
トラップなんてものがある事も忘れ、何の慎重さもなく進んでいってしまったのだ。
安倍はトラップの恐怖――死ぬことへの恐怖――がリアルだった為
その速度で移動する矢口には、とてももじゃないがついていくことが出来なかった。
ただ、そんなに大きく離されているわけではなさそうだったので
かすかに聞こえてくる足音と、矢口の独り言を頼りにその後を追っていた。
- 298 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時16分55秒
- そんな矢口はというと、何かに引き付けられるかのように”食堂(南館2階)”へ。
その後を追って、安倍も同じ方向へと向かっていた。
【矢口&安倍 食堂へ/残り9人】
- 299 名前:娘狂 投稿日:2001年04月15日(日)09時19分04秒
- >>275
Hruso 様
ありがとうございます。
というわけで、ちょっと今回多めに更新してみました。
期間が開いてしまっているので、
もしかしたら雰囲気は変わってしまっているかもしれませんが…
今後とも宜しくです。
- 300 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月15日(日)11時29分04秒
- 更新待ってました。
- 301 名前:SOUL 投稿日:2001年04月15日(日)12時13分06秒
- おもしろかったです。
期待してます!
- 302 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)07時53分30秒
- >>300-301
名無し読者 様
SOUL 様
やっと更新しました。大変遅くなりました(^^;
ストーリー的には、やや佳境に入り気味なので
この先はちょっと頑張って更新しようと思います。
宜しければお付き合いの程をお願いします。
- 303 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)07時54分38秒
- ◆『吉澤&石川×矢口の場合』◆
吉澤、石川の2人は特になんの危険にも遭遇せず、食堂に辿り着いた。
食堂の中はがらんとして、なんとも生活観のない感じだったが
キッチンなどは破損している様子はなく
何か食べるものはある雰囲気だった。
- 304 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)07時55分08秒
- 部屋の奥には流し台があり、その横にはガスコンロがあり、
そして右側にはやや小さ目の冷蔵庫と、木製の戸棚があった。
吉澤は部屋に入ると直ぐに冷蔵庫を開き、
しばらくするとテーブルにのっかり、戸棚を調べはじめた。
そんな吉澤に対して石川は聞いた。
- 305 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)07時56分05秒
- 「何してるの?」
「え?何って食べ物を探してるんだけど・・・そのためにここに来たんでしょ?」
「あ、そっか・・・」
吉澤は、はぁっとひとつため息を吐いた。
「で、なにかあった?」
「ん?うん。一応お米とお味噌はあったんだけど、他には何もないみたい。
冷蔵庫の中は野菜が腐ってたし・・・」
石川は軽く微笑んだ。
「なんか、ドロボーみたいだね」
「・・・・・・ドロボーだよ、違うと思った?」
吉澤はにやにやしながらあっさり言い返した。
- 306 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)07時56分42秒
- またもこの非日常的な状況下に、平和と錯覚するような空気が流れかけていた。
やや沈みかけた太陽が暖かく部屋の中を照らし
そこにいる2人の身体も、どことなくぽかぽかしていた。
- 307 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)07時57分38秒
- ――が、当然そんな時間は長くは続くわけもなく・・・
不意に食堂の入り口の方で、ガタッという物音がした。
吉澤、石川2人に一瞬ものすごい緊張が走った。
吉澤に関していえば、”中澤を殺した人間(メンバー)”に対する
見えない恐怖もあり、その物音はすぐにそれを連想させた。
2人はざっとすぐ近くの壁に背中から身体を密着させるようにしながら
物音のする方に目をやった。
恐怖の中、やや半開きになった目の狭い視界に小さな身体の影が現れた。
- 308 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時01分19秒
- 吉澤は、両手を、思わす胸の前に引き寄せていた。
まるで神に祈るかのように。
でも、多分、吉澤はこの時、間違いなく祈っていたのだった。
この非日常、絶望ともいえる状況下において
奇跡とも呼べる偶然が目の前にあった。
特別、何かに対して信仰があったわけでもなかったが
吉澤は神に感謝した。
――ああ、神様。ありがとう――
立ち上がった吉澤の口から、思わず言葉がこぼれていた。
- 309 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時02分00秒
- 「矢口さん!」
その声に、矢口は一瞬びくっと体を震わせたように見えたが、
ややあってゆっくりと身体を吉澤の方へと向けた。
形の整った顔の中、まつげの濃い目が見開かれ――それから元のサイズに戻った。
そのほんのひと刹那、矢口が全くの無表情になった気がしたが
それはもちろん吉澤の錯覚だったに違いない。
すぐにその顔にいつもの矢口の表情が戻った。
- 310 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時02分41秒
- ・・・が、次の瞬間、吉澤は我が目を疑った。
いや、いったいそれがなんであるのかそもそも理解できず、
ただ、あたかも何か不思議な手品でも見るように、矢口の手元をじっと見ていた。
矢口が自分に向けて、ジグ・ザウエル――その名を吉澤は知らなかったが――
をすっと構えていたのだ。
- 311 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時03分17秒
- 「・・・・・・矢口さん――?」
それでもまだそこにぼうっと突っ立ていた吉澤から
矢口の方が後ろへ2、3歩退がった。
「矢口さん?」
もう一度言った吉澤の頭に、ようやく矢口の顔がいつもと違う、という
事態が認識された。
- 312 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時03分50秒
- 矢口の顔が歪んでいた。
まつげの長い目、すっと通ったきれいな鼻、やや色っぽい小さな唇。
パーツは同じだけれど、歪めた口元に歯がのぞいたその顔は、
吉澤が見たこともない顔だった。
その歪んだ口から言葉が流れ出した。
- 313 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時05分26秒
- 「どけよ、よっすぃー・・・」
吉澤は、一瞬矢口が何を言ったかわからなかった。
苛立ったように、矢口が続けた。
「そこをどけっていってんだよ!よっすぃー!」
相変わらずぼうっとしたまま、吉澤は自分の唇が言葉を押し出すのを聞いた。
「・・・何?何言ってるんですか?」
矢口の口調ににじむ、苛立った感じが強まった。
「いいからそこをどけって!用があるのは石川だっ!」
その名を聞いて吉澤は直ぐに後ろを振り返り
石川の方に視線を移した。
- 314 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時06分24秒
- 一瞬、石川の顔も笑ったように見えたが、もうそんなことを気にしている余裕は
吉澤の中にはなかった。
吉澤は気が動転してしまい、身体の力が抜けて、
ふらふらっと再び壁の方へと身体が沈んでいった。
- 315 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時06分55秒
- そして吉澤の後ろ、石川に対して矢口のジグ・ザウエルの銃口は向けられた。
銃口を向けられた石川の表情は、あの悲劇のヒロインよろしく
もの悲しげなかわいそうな女の子の顔になっていた。
- 316 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時08分08秒
- 「や・矢口さん・・・なにしてるんですか・・・・・・」
震えるような声を発した石川は、怯えた仕種を見せた。
しかし、矢口は尚、石川に銃口を向け続けている。
そこに更に石川は言葉を重ねた。
「あたし――あたし――何か悪いことしました?」
矢口は銃を石川に向けて構えたまま、顔を傾けて
床に唾をぺっと吐いた。
- 317 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時08分47秒
- 「笑わせるな。おまえがろくでもない女だってぐらいおいらは知ってるよ。
その右手に持ってるマシンガンで裕ちゃんを殺したのはおまえだろ!
なっちが一部始終見てたんだ!」
「・・・・・・・・・・・・」
石川の顔が悲劇のヒロインとはまた違ったように歪んだ。
もう言い訳は出来ない・・・そう悟った。
しかし、自分のすぐ目の前によっすぃーがいる・・・
なんとか、なんとかこの場を切り抜けたかった。
- 318 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時10分04秒
- 「あたし――あたし、そんなことしてない・・・そんなこと・・・・・・
それにあたしだって・・・あたしだって殺されるところだったのに・・・・・・」
石川の天使のような瞳から涙がこぼれ、ぼろぼろと頬を伝い落ちた。
それを見て、矢口の顔が一瞬うちのめされたような感じで石川を見つめた。
しかし、すぐに元の表情に戻った。
「嘘つけってんだよ!泣きまねなんかやめろ!このクソ野郎!」
矢口の口調がだんだんと荒く、きつくなっていった。
石川は涙に濡れた目で矢口をみつめていた。
そして、また言葉を転び出した。
- 319 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時10分35秒
- 「それなら・・・それならあたしのこと・・・石川のこと撃ってください・・・
それで矢口さんの気が済むのなら・・・・・・」
- 320 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時11分10秒
- 見事な演技だった。
その言葉を受けた矢口は、奥歯を強く噛み過ぎていることに気づいていた。
額にはものすごい量の汗が流れ、
”いつも元気でさわやか、ミニモニ。の矢口真里で〜す”
の矢口の顔は、脂汗でぎっとりとしていた。
- 321 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時11分53秒
- その光景を横で何も言えず、動けなかった吉澤が
何かに衝き動かされて、だっと矢口の方へ走った。
もう、矢口のそんな言葉を聞きたくなかったからかもしれないし
矢口が同じ仲間のメンバーに銃を向けているという事実が受け入れがたかったからかもしれない。
「やめて!お願いだからやめて!」
吉澤は泣き叫びながら、矢口の手にしている銃をつかもうとした。
- 322 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時12分26秒
- 矢口はすっと身体を翻し、吉澤を思わず突き飛ばした。
いつもはたくましい吉澤の身体が、この時ばかりは背中から床の上に倒れ込んだ。
すぐに矢口がその吉澤の上にのしかかった。
- 323 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時12分59秒
- 「なにするんだよ、ちくしょう!ちくしょう、よっすぃーもおいらのこと
殺すつもりなんだな!よっすぃーも石川と同じなんだな!?
だったらここで殺してやる、ちくしょう!」
矢口は完全に切れていた。
何が正しくて、何が間違っているのか。
そんな判断は、もう正常に出来なくなっていた。
- 324 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時13分42秒
- 矢口が銃を吉澤に構え、吉澤は必死になってその矢口の右手首を両手でつかんだ。
すぐに、矢口が銃を握っている自分の右手に左手を添えた。
ぎりぎりと、矢口の手が下がってくる。
自分の額へ・・・!
吉澤はざあざあと自分の血が引く音を聞いた。
吉澤は両手をつっぱり、必死に叫んだ。
- 325 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時14分31秒
- 「矢口さん!お願い!やめて、矢口さん!」
矢口は何も答えなかった。吉澤を見る目が血走っていた。
機械のように単調な力と動きで、その腕が下がってくる。
あと5センチ・・・あと4センチ・・・あと3センチ・・・もう、その弾丸は
吉澤の髪の毛をかすめることならできるだろう、そして・・・あと2センチ・・・あと・・・・・・
- 326 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時15分07秒
- 吉澤の、哀しみと恐怖に引き裂かれた心の隙間に、ふっと昔の思い出が浮かんだ。
ああ、あのいつか矢口さんが、モーニング娘。入りたての頃
個人的にダンスや芸能界での心得を教えてくれて
その合間の休憩の時に食べたアイスクリーム・・・・・・
自分はアイスを鼻の頭にくっつけてしまって、その時矢口さんも笑っていた。
――すごく幸せだった。
- 327 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時16分20秒
- 吉澤はふっと腕の力を抜いた。
矢口がちゃっと吉澤の額に向けて銃を構えた。
その指は、すぐにでも引き金をひくだろう。
吉澤はその矢口を見つめて、静かに言った。
「ありがとう・・・矢口さん。わたし、矢口さんといられて・・・幸せだった」
矢口の目が何か大事なことにようやく気がついたというように丸くなり、
その動きが凍りついた。
「いいから・・・・・・撃ってください・・・・・・」
吉澤はにこっと微笑み、目を閉じた。
- 328 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時16分58秒
- 矢口の腕が、吉澤に銃を向けたままぶるぶる震えはじめた。
吉澤はしばらく熱い弾丸が自分の頭を貫くのを待ったが、
いつまでたっても銃声は聞こえてこなかった。
代わりに、「よっすぃー・・・・・・」という、かすれたような、
声が聞こえてきた。
- 329 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時17分32秒
- それで吉澤は、ゆっくりもう一度、目を開けた。
視線が矢口とかち合った。
ぼうっと薄い涙の膜ごしに、矢口の目がいつもの、
自分が大好きな”矢口真里”の目にすうっと戻るのを見た。
その目が、後悔と自責の色合いをうっすら帯びているのも。
- 330 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時18分21秒
- ああ――
ああ――わかってくれたんですね――矢口さん――
- 331 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時18分56秒
- ――ぱらららら・・・・・・!
どこか乾いた、不気味な音が響いた。
機械音のような小気味よいテンポで鳴り響いた。
- 332 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時19分37秒
- ほとんど同じに、矢口の右手指が引き金をひいた。
もっともそれは彼女の意志ではなく、単に痙攣だったのだけれど。
ぱん、という爆竹のような衝撃音に吉澤は思わずひっと声を上げたが、
銃口は既に吉澤から外れていて、弾丸は吉澤の頭の上、
食堂の床に突き刺さって、小さな木屑を含む霧が吹き上げた。
- 333 名前:娘狂 投稿日:2001年04月16日(月)08時20分11秒
- 力を失った矢口の上半身が、ゆっくりと吉澤の身体の上に折り重なった。
矢口はそれきり、ぴくりとも動かなかった。
慌てて矢口の身体の下から出ようとした吉澤の目に、
その矢口の小さな肩口の向こう、笑顔が見えた・・・・・・
同期加入のメンバー、石川梨華がそこにいた。
【矢口 真里アウト/残り8人】
- 334 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月16日(月)16時10分46秒
- やぐっつぁーーーん!!
頼むよっすぃー、石川を殺ってくれ!!
- 335 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月16日(月)21時40分31秒
- ハードだ。
- 336 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月17日(火)17時43分00秒
- 再開してたんですね。
相変わらず展開すごいです。続き期待してます。
最後にイシカワガムバレと
- 337 名前:SOUL 投稿日:2001年04月17日(火)20時30分15秒
- 矢口がぁぁ〜〜〜っ!
早く続きが読みたい!
期待してます!
- 338 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)08時16分44秒
- >>334
名無し読者 様
これから、吉澤と石川が…!という展開です。
今後もあまり期待せずに読んでやって下さいませ。
>>335
名無し読者 様
……ですね。書いてる自分でも心配になってきました(w
今後も更にハードになるかと思われますのが
今後とも読んで頂ければ幸いです。
>>336
名無し読者 様
ええ…、何とか再開しました(^^;
長期間の放置状態で、せっかく読んで頂いていた人達には
大変申し訳ないと思っております。
これに懲りず、読んで頂ければと思います。
>>337
SOUL 様
毎度、読んで頂きましてありがとうございます。
矢口はアウトになってしまいましたが
今後とも宜しくお願いします。
というわけで、なんだか内容がやけに黒々しくなってきてしまいましたが、
こういった内容でもお付き合い頂ければ嬉しいかと思います。
さて、『食堂編』の”中盤戦”スタートです。
- 339 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)08時25分36秒
- ◆『吉澤×石川×・・・・・・の場合』◆
吉澤には、何がなんだかわからなかった。
ただ、その石川の天使のような愛らしい、
美しい顔に浮かんだ笑みに、心の底からぞっとした。
- 340 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)08時28分14秒
- とにかく、その石川が「大丈夫?」と言って吉澤の手を握り
吉澤を矢口の身体の下から引っ張り出した。
なにかがらんとした、嫌な空気に包まれてしまった食堂の中、
吉澤はよろけながらも立ち上がり、そして、見た。
矢口の頭の半分が、真っ赤に染まり形が歪んでいるいるのを・・・
吉澤はただ、矢口のその、今は魂の入っていない体を見下ろして、
がくがくと震えていた。がくがく、がくがくと。
- 341 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)08時32分10秒
- あまりに大切なものが、あっさり失われたのだった。
それはいつかの楽屋で、吉澤が食することをすごく楽しみにしていた
”ゆでたまご”が、なにかのはずみで床に落ちて、
ぐちゃっと割れてしまった時の感覚に似ていた。
ただし――その大きさは言うまでもなく、比較にもならなかった。
吉澤の意識が、天上の高みからすっと地上にに戻ってきて
そして吉澤は見た。
――もちろんずっと見ていたのだが、視覚が認識の領域にまで届かなかったのだ。
- 342 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)08時32分41秒
- すっかり吹き飛んでしまった矢口の後頭部の一部から
どくどくと血があふれ、きれいな金色に染まった髪の毛が
どんどんと赤く染まっていっていた。
そしてその横で、石川がうっすらと笑みを浮かべ、立っていた。
- 343 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)08時33分19秒
- 「いやあああああああぁぁぁぁっ!」
声を上げ、吉澤は石川を突き飛ばしていた。
石川が床にどん、としりもちをつき、形のいい美しい脚が
スカートのすそから腿のあたりまでのぞいていた。
- 344 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)08時34分15秒
- 吉澤はその石川にお構いなしに、矢口の身体におおいかぶさった。
”ざくろ”のようになってしまった頭ぐったりとさせたその身体に。
吉澤の目から、ぼろぼろ涙がこぼれ出した。
もう口をきくことのないその矢口の身体は、こう言っているようだった。
――揺さぶったって生き返らないよ。揺するなよ。
頭が吹っ飛んでるんだぜ、痛むじゃんかよぉ。
- 345 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)08時34分48秒
- 吉澤の胸の奥から感情の大波が何度も押し寄せた。
世界が崩壊したような感じが、吉澤を溺れさせようとしていた。
そして吉澤はその原因に思いをいたし、
涙にあふれた目で、傍らにいる石川をきっと睨みつけた。
睨み殺してやるつもりだった。
今自分がどんな状況にいて、誰が敵なのだとか味方なのだとか、
そんなことはもう、吉澤の頭から吹っ飛んでいた。
――そうだ、憎むべき敵がいるのだとしたら、それは自分の大切な人、愛する人を
奪った石川梨華だった。
- 346 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)08時35分27秒
- 「何で殺したの!」
言葉は、吉澤の中にとても空虚に響いた。
もはや、自分が中身のない、人間の形をした一つの空洞なってしまったような感じだった。
それでも言葉は出た。
人間の機能って、おかしなものだ。
- 347 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)08時36分14秒
- 「何で!?何で殺したのよ!ひどいよ!ひどすぎるじゃない!
何で殺さなきゃいけなかったの!?どうして!」
石川は不満そうに唇を歪めた。
「よっすぃー・・・殺されかけてたじゃない。助けてあげたんだよ・・・」
「うそ!矢口さんはわかってくれたわ!
あたしのことを、やっぱりわかってくれたわ!」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・信じてた、梨華ちゃんのこと信じてたのに・・・
中澤さんだって本当は梨華ちゃんが殺ったんでしょ?違う?」
「・・・・・・・・・・・・」
「梨華ちゃんはあたしを裏切った・・・・・・そして何より大切な矢口さんを奪った・・・・・・
殺してやる・・・あたしが梨華ちゃんを殺してやる!」
「・・・・・・・・・・・・」
石川は首を振って肩をすくめると、
すっとマシンガンを吉澤に向けた。
吉澤の目が見開かれた。
- 348 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)08時37分02秒
- 「そんなこと言わないでよ・・・よっすぃー・・・
私はよっすぃーのこと大好きだよ・・・大好き・・・
よっすぃーは私のこと嫌いになっちゃった・・・?」
「なに言って・・・・・・っ!」
「よっすぃーはそんなに矢口さんのことが大事?
私よりも矢口さんが大事なの・・・?」
「・・・・・・・・・・・・」
「ねぇ、そうなの!?」
「・・・・・・・・・・・・そうよ!」
吉澤は吐き捨てるように言い放った。
矢口さんは自分にとってかけがえのない人、大切な人・・・
それは事実だった。
- 349 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)08時37分39秒
- ――ぱららららら
またあの聞き心地の悪い乾いた機械音が部屋に鳴り響いた。
しかし銃口はよっすぃーの足元、矢口の身体にめがけられており
銃弾は、うつぶせになった無抵抗な小さな背中に撃ち込まれた。
矢口の身体はびくびくっと痙攣し、また新たな傷口から血が次々と吹き出した。
- 350 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)08時38分11秒
- 「な!?・・・何するのよ!」
平然とした顔で、矢口に銃弾を撃ち込んだ石川に
吉澤の怒りは一気に爆発した。
両手を石川の方に伸ばし、マシンガンに掴みかかろうとした・・・時
- 351 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)08時54分35秒
- ――ぱららら
今度は数発の銃弾が、吉澤の肩に目がけて放たれた。
吉澤は肩を何かで思い切り殴られたような感触におそわれ
身体が後ろにずるっとのけぞり、矢口の血が広がる床にべたっと倒れ込んだ。
- 352 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)08時55分11秒
- 「よっすぃー・・・なんで私のこと、私の気持ちをわかってくれないの?
一緒にいて・・・ずっと一緒にいて・・・
よっすぃー・・・私だけのものになってよ・・・私のことだけ見てよ!!」
「・・・・・・・・・・・・」
吉澤は、今自分の目の前にいる信じられないような石川の姿、
自分に対して本当に発砲した事実による恐怖で言葉が出なかった。
――殺される・・・・・・!!
- 353 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)08時55分51秒
- 「石川!!」
その時、食堂の入り口の方から突然に2人以外の誰かの声がした。
吉澤は何かすがるように、石川はやや険しい表情で
その声がする方向をほぼ同じに向いた。
そこには大型自動拳銃を構えたショートカットの少女
――男のように立ち様は堂々としてたくましく見えたが――
が立っていた・・・・・・
――市井紗耶香。
- 354 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時07分05秒
- その背中にしっかりとしがみついて、食堂の中の様子を伺っているのは辻希美。
そして入り口の脇からものすごい険しい、
そして危険な雰囲気さえかもし出すような表情をした安倍も現れた。
- 355 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時07分42秒
- 「もう馬鹿な真似は止めなさい!石川!そのマシンガンを離してっ・・・捨てなさい!」
そう叫びながら、市井は大型自動拳銃の撃鉄をがちゃっとおこした。
石川の表情が、微妙に、そして徐々に”まずそうな表情”へと変わっていった。
しかし、マシンガンは未だ右手に握られたままだった。
「石川!これは脅しじゃないわ!警告よ!
ここに来るとき、裕ちゃんを見つけたわ。
それに途中でなっちにも会ったよ。裕ちゃんの話はなっちから聞いた」
「それは・・・・・・」
石川は得意の言い訳を始めようとしたが、その言葉が出る前に
市井が先に言葉を発した。
- 356 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時08分13秒
- 「言っておくけど、私は石川よりなっちの言葉を信じるよ、何を言ってもね」
「・・・・・・っ!」
「それに・・・それに・・・矢口まで・・・・・・」
市井の眉間に深く深くしわが寄り、大型自動拳銃を握る手にも
さらに力が入った。
こめかみあたりから汗が、頬を伝いつっとあごに流れ落ちた。
目の前に倒れ込んでいる、もう矢口真里としての面影も無いような
血まみれの肉塊を見て、いつもは冷静な市井の感情が
どんどんと高まっていっていた。
- 357 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時08分47秒
- 食堂の中に大型自動拳銃を構え立つ『市井紗耶香』。
そしてそれに対峙してマシンガンを持つ『石川梨華』。
その傍らに肩から血を流し座り込んでいる『吉澤ひとみ』。
恐怖におびえた目で震える『辻希美』。
この世のものとは思えないような険しすぎる表情で石川を睨みつける『安倍なつみ』。
そしてもう人としての形はほとんど残していない、真っ赤な肉塊『矢口真里』。
――モーニング娘。小劇場近日公開!というにはあまりにハードな状況・・・
きっと”異常”という言葉はこの時の光景を表す為に作られた言葉である、
と言っても過言ではないほどの狂った状況・・・・・・
もう、そこにいる誰にもそれを修復することは無理――不可能だった。
【1vs4・・・!!/残り 8人】
- 358 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時20分14秒
- ◆『石川×市井&安倍&吉澤&辻の場合』◆
石川はマシンガンを4人のいる方向に向けながら
背中をすすっと、自分の後ろ側にある壁に寄せた。
石川の目は完全に泳いでいた。
右へ・・・左へ・・・右へ・・・そしてまた右へ・・・
周囲を見渡しているつもりが、動揺のあまり、
ろくに視覚的な認識は出来てはいなかった。
- 359 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時20分50秒
- なんで・・・なんでこんなことになっちゃったんだろ・・・
私は、私はただ・・・よっすぃーと・・・みんなと一緒にいたかった・・・
・・・・・・ただそれだけなのに・・・
――私はただ・・・・・・ただ・・・みんなと・・・・・・
- 360 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時22分15秒
- 「りかちゃん!やめて!やめてくらさいっ!」
ものすごい緊張の張り詰めた場所に、
ちょっと鼻のつまった舌ったらずな声が響いた。
市井の影から辻がひょっこりと顔を出して、石川に対して訴えかけた。
「そんなの・・・そんなの・・・りかちゃんひどいれす・・・!!」
- 361 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時22分48秒
- ――すちゃっ
その声に反応するように、マシンガンの銃口がそちらに向けられた。
それと同時に、すっかり顔色の悪くなってしまった石川の顔が更に歪んだ。
「なに・・・!ののちゃんまで私のことそんな目で見るの?
みんなそんなに私のこと嫌い?ねぇ!嫌いなの!?」
「ふぃっ・・・・・・・・・!」
あまりに恐ろしくつりあがった石川の目に脅え
辻は再び市井の後ろに隠れた。
- 362 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時23分46秒
- 「みんな私のこと見てよ・・・私のこと大事にしてよ・・・私のことかまってよ・・・っ!」
――ぱららららららららら・・・・・・
張り上げた石川の声が響いたかと思うと
マシンガンの銃口が予告なく火を吹いた。
その銃弾は市井たちのすぐ横、入り口の柱に何発も命中した。
- 363 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時27分37秒
- とっさに市井と辻は頭を下げ、右側に置かれたいたテーブルの後ろに逃げ込んだ。
そして、そのテーブルを刑事ドラマさながら
ついたてにするように前方にがっと倒した。
そこに安倍も逃げ込む。
- 364 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時28分08秒
- 石川はマシンガンを握った右手にぎゅっと力を込めた。
自分の筋肉はすっかり震えているのがわかったが
――普通の16歳がこんなに連続してマシンガンを発砲しているのだ・・・
その衝撃でもう筋力はかなり低下していた――
今ある残りの力を総動員して、銃を構え直した。
- 365 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時28分47秒
- そのとき――生きるか死ぬかの戦闘の最中だというのにもかかわらず、
石川の意識は突然、全く別のところへと滑り込んでいた。
もちろんそれは一瞬の事だったかもしれないが。
今、自分の傍らに肩をおさえ座り込んでいる、吉澤ひとみに
モーニング娘。に入ったばかりの頃、話したこと・・・・・・
”私・・・ずっと独りぼっちだったの・・・だからこれから一緒にいてくれる?”
自分がそう言った。
- 366 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時29分17秒
- 昔からずっと私は独りぼっちだった・・・
生まれつき、ちょっと太りやすかった体質だった私は
小さいときから俗にいう――軽い程度だったが――”肥満児”だった。
”肥満児”というのをすごく気にしていた私は
どんどんと自分に自身がなくなっていって、性格も内向的になっていった。
そうなると当然、友達もろくに出来なかった。
でも、小学校に入学したときすぐに一人の女の子と友達になれた。
すごく嬉しかった。一生の友達になるんだ・・・その時はそう思った。
- 367 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時30分01秒
- ・・・・・・が次の年、クラスが変わった途端、
その子は自分のことなんか忘れて新しい友達を作ってしまい
自分のことなんか全く相手にしてくれなくなった。
私にはその子しか友達がいなかったし、新しい友達も出来なかった。
- 368 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時36分43秒
- 小学校の時の先生たちも、私が話をしにいくと何だか嫌な顔をした。
子どもながらにそういった空気は感じていた。
それでも先生たちは私の話を聞いてくれたが、結局いつもみんな言うことは同じだった。
”石川さん、言葉の使い方をしっかり覚えましょうねぇ。
でないとお話は人には伝わりませんよ?あとね、お話には流れってものがあってね・・・・・・”
何度かそんなことを言われているうちに、ついに先生とも話をするのが嫌になった。
友達のいなかった私は、ますます一人でいる時間が増えた。
- 369 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時37分19秒
- そして中学生になった。まだやや肥満・・・だった。
自分が進級した中学は地元の公立中学だったが、
地域の関係上、通っていた小学校からは同じ中学に進級する人はすごく少なかった。
私の中に希望が湧いた。
今からでも新しい石川梨華としてやり直せる。
新しい友達も出来る・・・クラスのみんなとも仲良くできる・・・そう思った。
- 370 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時37分49秒
- しかし・・・本当にうまく行くのか、ものすごく不安だった。
小学校の頃の思い出が、見事”トラウマ”になっていた。
物事を前向きに考えることが、からっきし苦手になっていた。
- 371 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時38分40秒
- ――初恋をした。
学年が2つ上の3年生。サッカー部のエースストライカー。
学校内でも有名な花形選手で、女の子の間でも大人気だった。
そんな彼に私も恋をした、・・・しちゃった。
でも話をしたりすることなんて出来なくて、いつも遠くから見てるだけだった。
- 372 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時45分35秒
- けど、夏のある日、思い切って先輩に話かけた。
練習がおわったグランドの真ん中。
タオルを持って、その先輩を囲む女の子の間に入り込み
目をつぶり思いっきりそのタオルを先輩に差し出した。
心臓が口から飛び出そうだった。黒い肌もまっかっかになっていた。
- 373 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)09時46分53秒
- ”・・・これ、使ってください!”
”・・・・・・・・・・・・”
”・・・・・・・・・・・・”
”・・・・・・俺、デブに渡されたものって受け取らない主義なんだよねぇ・・・
って、ところでおまえ誰?”
その人の輪の中に嫌な笑い声が広がった。
自分を嘲笑する声・・・聞き取れないが明らかに自分を馬鹿にしているひそひそ話。
また私の周りから人がいなくなった。
- 374 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)11時22分08秒
- そんな噂が広まるのも早く、私は1週間もしないうちに
学年のさらし者になった。
しかもその噂を広めていたのが自分が中学に入ってから
友達だと思っていた、友達になれると思っていた女の子だった。
後から知ったことだが、その子も”先輩”のことが好きだったらしい。
- 375 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)11時23分12秒
- 悔しかった・・・。悲しかったが、それよりも悔しかった。
自分を笑った人たちに・・・優しい言葉一つくれなかった先輩に、
悔しさがいっぱいだった。
ダイエットをした。
痩せてみんなを見返してやるんだ、先輩を見返してやるんだ、
そんな思い一心に。
そしてさらに思った。
――歌手になる。
歌手になって、有名になって、私のこと無視してきた人たちも見返してやるんだ・・・
みんなの視線を私に向けさせるんだ・・・そう思った。
- 376 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)11時24分15秒
- それで結局そうなれたわけだが、そうなった後でも
みんなはちょっとずつ、いやむしろどんどんと私から離れていった。
・・・が、もう慣れていた。
どうでもよかった。
でもよっすぃーがモーニング娘。に入りたての頃
すごく私に優しくしてくれた。
なのに・・・なのに・・・
- 377 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)11時24分57秒
- 「梨華ちゃん・・・・・・最低だよ」
不意に飛び込んできた声に、石川の意識は”戦闘現場”へと戻ってきた。
声の主は、吉澤ひとみ。
その石川を見つめる(睨みつける)顔は、もう失望そのもの・・・
怒りを通り越して、呆れも通り越して・・・表現する言葉もないほどの表情だった。
- 378 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)11時28分50秒
- 「よっすぃー・・・そんな顔しないでよ・・・・・・そんな目を・・・しないで・・・・・・」
「・・・何?撃つの?あたしのこと。撃てば?中澤さんを殺った時みたいに、
矢口さんにしたみたいに」
ぎりぎりと石川の右手に力が入る。
その会話を聞いて、慌てて市井がテーブルの裏から声を上げた。
「ばかっ!吉澤、何言ってんの!石川も馬鹿な真似やめ・・・」
- 379 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)11時29分34秒
- ――ぱららららららららら・・・・・・
その市井の言葉が終わらないうちに、またあの銃声が鳴り響いた。
銃弾の先は・・・吉澤の左足だった。
程よく筋肉のついた、形の良い足に数発の銃弾が撃ち込まれた。
- 380 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)11時30分17秒
- 「・・・・・・つぅ!!!」
吉澤の顔が歪んだ。
こんな風に人間の顔が歪むものかというくらい
変な方向へ、見たことも無いような形に歪んだ。
「よっすぃーが・・・よっすぃーがいけないのよ・・・よっすぃーが・・・・・・」
「・・・・・・り・・・梨華ちゃん・・・っ!」
それでも尚、吉澤は石川を睨み続けた。
その視線を受けて、石川が更に吉澤にマシンガンの銃口を向けた。
今度は胸に向かって・・・・・・。
- 381 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)11時30分55秒
- ・・・・・・その時、その光景をテーブルの影から見ていた安倍が
石川に向かって一直線に、思い切って飛び出した。
- 382 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)11時31分27秒
- 「な、なっち!何やって・・・・・・!!」
「・・・安倍さん!!」
市井の顔が青ざめた(辻は気を失いそうだった)。
なんだか首の筋がつったような感覚と胃がきゅっと痛む感覚。
虫や動物が危険を察知するのはこんな感じなのかもしれない。
第六感が目覚めたか!?市井紗耶香!!
・・・・・・なんてことを思ってる場合じゃない。
このままじゃなっちが石川に・・・・・・
- 383 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)11時33分20秒
- そう思うのが早いか、突然飛び出してきた安倍に対して
反射的にマシンガンの銃口が向けられた。
「もう止めて!梨華ちゃんっ!!」
「あああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
無我夢中で石川に飛び掛かる安倍。
混乱した心を吹き払うように大声を張り上げ、マシンガンの引き金に力を加える石川。
- 384 名前:娘狂 投稿日:2001年04月19日(木)11時44分58秒
- ――ぱら・・・・・・
マシンガンの銃口がビカビカッと連続して光り
薬莢の匂いが食堂の中全体に充満した・・・・・・
【なっち特攻!?/残り 8人】
- 385 名前:キング 投稿日:2001年04月19日(木)19時31分13秒
- おんもしれ−。
石川どーなるですかーって感じ。
次が楽しみだ−。
- 386 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月19日(木)21時55分47秒
- モアハードだ。
だけじゃ、おもしろくないので、
死んでいく人間に、きちんと、見せ場を作ってくれるあたり、さすがです。
これからも、みんなに花道を歩かせてやってください。
…全員殺しちゃったりして(笑
- 387 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月20日(金)00時17分41秒
- おもしろい。
いいとこできってあるな。
次回楽しみ。
- 388 名前:PUNK 投稿日:2001年04月21日(土)23時20分23秒
- いつも楽しませていただいております。
たまに小説のバトロワの一説ぬいてたりして
面白いです。
でも、前からつっこみたかったけど
ロワイヤル→ロワイアルですよ(笑)
- 389 名前:SOUL 投稿日:2001年04月22日(日)16時41分40秒
- えらいことになってますね・・・。(笑)
なっちがどうなったか気になります。
おもしろいっす。
続き、頑張って書いてください!
- 390 名前:NAVE 投稿日:2001年04月25日(水)18時44分37秒
- おもしろすぎっっ!!!!!!!!!!
早く続きかいてぇ〜
- 391 名前:娘狂 投稿日:2001年04月30日(月)08時33分27秒
- >>385
キング 様
ありがとうございます。
黒りかピ〜ンチ、ってかんじです(w
まさに、1vs4になってしまったので。
今後とも宜しくおねがいします。
>>386
名無しさん
ありがとうございます。
アウトになっていくメンバーの雰囲気は
当然、原作の「バトルロワイアル」の空気に沿っているところはありますが、
自分自身の中では、「太陽に○えろ!」の殉職シーンなんかを
イメージしてたりします。
でも、全員アウトになっちゃたら…やっぱり驚きます?
今後もお付き合い頂ければ幸いかと。
宜しくお願いします。
>>387
名無しさん
ありがとうございます。
ちょっと、週刊少年マンガっぽくきってみました。
どうでしょう?
今後とも宜しくです。
>>388
PUNK 様
いつも読んで頂きまして、ありがとうございます。
バトロワのシーンで自分の好きなシーンをちょっとピックアップしたりして
登場させています。
「ロワイヤル」→「ロワイアル」…ツッコミありがとうございます(^^;
ま、でも”もじったバッタもん”ということで(w
今後もよろしくです。
>>389
SOUL 様
いつも読んで頂きまして、ありがとうございます。
なっちは、このストーリーが始まって、初の活躍のチャンスを迎えました。
どうなるかは…ちょっと内緒です。
続き頑張ります。今後も宜しくお願いします。
>>390
NAVE 様
ありがとうございます。
つづきは…以下参照です。m(_ _)m
- 392 名前:お詫び〜娘狂 投稿日:2001年04月30日(月)08時47分28秒
- というわけで、また更新が遅れているわけですが…
実は、来月の1ヶ月間、仕事の都合で更新できないかもしれなく
なってしまいました。(こんなところで切っておいて、って感じですが…)
その間、読んで頂いてくれていた皆さんには大変なご迷惑をおかけしますが
待っていて頂ければ、と思います。
それでも何とか時間を見つけて、更新させようとは考えていますので
たまに覗いたら更新しているかもしれませんので
時々、ふらっと寄ってみて下さい。
6月初旬には確実に再開できると思います。
それまでご記憶の片隅にでも残っていて下されば幸いかと。
削除されたり、荒らされたりしないことを祈りつつ…
失礼致します。
- 393 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月30日(月)15時53分59秒
- 仕事ですか、大変でしょうが頑張ってください。
マターリ待ってます。
- 394 名前:SOUL 投稿日:2001年05月01日(火)21時27分21秒
- これからも頑張ってくださいね。
期待してます!
- 395 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月04日(金)18時41分52秒
- 面白い!
続きが楽しみです。
- 396 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月06日(日)05時04分46秒
- 最近、見つけたんですけど、上のリンクからいけないのは私だけですか?
- 397 名前:通りすがりの読者 投稿日:2001年05月06日(日)05時57分11秒
- >>396 娘。全般板の中にあるよ。
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=main&thp=977874738
- 398 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月12日(土)23時52分57秒
- とにかく保田だ
おそらくvs後藤戦で大きなキーマンとなるはずだ
それと石川はまだ死なないだろう
名女優をはずしたら視聴率が落ちるからな
しかし誰を消していくかが難しくなってきたな
あんたの名捌きに期待してるぜ
- 399 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月15日(火)15時33分38秒
- 更新求む
- 400 名前:NAVE 投稿日:2001年05月16日(水)00時35分47秒
- >PUNK
ロワイヤルでいいんだよ。ロワイアルじゃないよ。
更新もとむーーー
- 401 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月16日(水)01時00分59秒
- >>392 作者さんの言葉
>6月初旬には確実に再開できると思います。
ということなので、あせらずに、待ちましょうね。
- 402 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月16日(水)01時18分52秒
- >>401 NAVEさんへ
ちなみに公式ホームページ及び原作ではバトル・ロワイアルですね。(ハズカシ
ttp://www.battle-royale.com/officialsite/
- 403 名前:NAVE 投稿日:2001年05月17日(木)22時44分21秒
- あ、そうなんですかすみません。映画がロワイアルだったもので・・・。
あと「>>401]でなく「>>402」でーす
- 404 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月22日(火)16時39分39秒
- あげ
- 405 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月23日(水)16時31分26秒
- おもしろい!ところどころに小説版のネタが入ってるのが(・∀・)イイ!
- 406 名前:ようやく更新です 投稿日:2001年06月01日(金)21時44分52秒
- >>393
名無しさん
お気遣い感謝です。
今も尚、お待ちでしたらようやく更新できましたので読んで頂ければと思います。
今後とも宜しくです。
>>394
SOUL 様
ありがとうございます。
今後は出来るだけ頑張って更新するようにしますんで
宜しくお願いします。
>>395
名無し読者 様
ありがとうございます。
続きをやっとこせ更新しましたんで、今後とも宜しくです。
>>396
名無しさん
どうもすみません。
ここの一覧が新しく出来たときにリンクが変わってしまったんでしょうか。
読んで頂けましたか?
もし気に入っていただければ、今後読んで頂ければ幸いかと思います。
>>397
通りすがりの読者 様
わざわざ申し訳ございません。
ありがとうございました。
もしよろしければ、読んで頂ければと思います。
リンクの再掲載、ありがとうございました。
(…しかし、「1」のリンクは行けませんっていうのを何とか伝えたいなぁ…)
>>398
名無しさん
読んで頂きましてありがとうございます。
> それと石川はまだ死なないだろう
> 名女優をはずしたら視聴率が落ちるからな
視聴率(?)は落ちてしまいますか…やっぱり……
「黒りか」は人気ありますものねぇ…
> しかし誰を消していくかが難しくなってきたな
> あんたの名捌きに期待してるぜ
いやはや、誠におっしゃる通りです。
誰が生き残るのか……非常に難しい選択に迫られています。
って、ストーリー考えてねぇのか作者!ッて感じですが……
宜しければ今後も読んで頂ければと思います。
よろしくお願いします。
>>399
名無しさん
大変遅くなりましたが、なんとか更新しました。
今後とも宜しくです。
- 407 名前:ようやく更新です2 投稿日:2001年06月01日(金)21時45分54秒
- >>400 >>402-403
NAVE 様
名無し読者 様
作者のいいかげんなネーミングでご迷惑をおかけしています。
申し訳ありません(^^;
こんなタイトルネームですが、宜しければ今後とも宜しくです。
>>401
名無し読者 様
中途アナウンスありがとうございました。
更新が大幅に開いているせいで、読んで頂いて下さっている読者の方々には
大変ご迷惑をおかけしました。
今後は精進して更新しますんで、
これに懲りず読んでいただければと思います。
(前もこんなこと言っていた気が……ダメだなぁ)
>>405
名無しさん
ありがとうございます。
原作の自分の好きなシーンをいくつか盛り込んでいるので
(ぱくりとも言いますが…)
そのあたりも楽しんでいただければと思います。
今後ともよろしくお願いします。
というわけで、約1ヶ月ぶりの更新です。
- 408 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)21時48分33秒
- ◆『激戦の果てに…』◆
――ぱぱぱ…パリン……!!
石川の手から放たれた銃弾は、安倍の髪をかすめ、その後ろ食器棚の脇へと撃ちこまれた。
銃弾を浴びた醤油や、食用油のビンの破片が飛び散り、
その中身もまた食堂の床に広がった。
石川に飛び掛った安倍は、間一髪マシンガンの銃口につかんでいた。
安倍の顔と、石川の顔がお互いの息を感じられるほどの距離にまで近づいている……
- 409 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)21時49分51秒
- 「…離して!離してよ!」
石川は、自分の身を守る唯一のものにしがみついた安倍を必死に振り払おうと
マシンガンを大きく左右に動かしてもがいた。
「やだ!絶対離さないよ…!離さないんだからっ!!」
安倍もまた、自分の命綱とも言える手を離すまいと、必死にしがみついていた。
「やめてっ!梨華ちゃん…!もうやめてよ……っ!!」
「いや、いやぁ…!!離して…離してってばぁっ!!」
しばらく二人のもめあいが続いていたが……
- 410 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)21時50分32秒
- 「ぃやぁぁぁ……もうぅっ!!」
「……きゃぁっ!」
石川が思いきり腕を振り切ったのと、
安倍の方が先ほどの銃弾で撒き散らされた油に足を取られたので
遂には床に倒れこんでしまった。
すかさず石川の銃口が安倍に向けられると、そこには妙な静寂感が漂った。
戸棚の上でひっくり返った半透明のビンから、醤油がとぽとぽと
床に向かって零れ落ちていた。
- 411 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)21時51分21秒
- 「…もう……私の邪魔をしないで……」
「…………」
石川は静かな、そして冷酷な口調でそう言うと
目も前にあった矢口(だった肉塊)を蹴りつけた。
すると”それ”はごろりと転がり、倒れこんでいる安倍の足に仰向けにのっかった。
ぎょろりとした驚いたままの矢口の目が安倍にすがるように見つめた。
「………ひぃっ!」
……安倍の顔が恐怖で歪み、
こめかみあたりがぴくぴくと痙攣しているのがわかった。
口も小さく、細かくパクパクと動いていたが、言葉もろくにでなかった。
- 412 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)21時52分58秒
- 「だめっ!なっち逃げて!」
部屋の隅、倒された机の向こう側から市井の声が響いたが
その声とほぼ同時、重なるようにまたあの銃撃の音が鳴り響いた……
――ぱらららららららら……
安倍はその瞬間ぎゅっと目をつぶった。
- 413 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)21時53分52秒
- 人は自分の死に直面した時、今までの人生が走馬灯のように蘇るというが
安倍の頭に幼少の思い出がたどり着く前に次の事柄は起きた。
――どんっ!
何かが爆発する――ちょうど夏に遊んだちょっと大きめな打ち上げ花火の音にも似た――音が
鳴ったかと思うと、足元に乗っかっていた矢口が自分に覆い被さり
体は数メートルほど横へ転がった。
- 414 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)21時54分38秒
- ……何?…なにが起きたの……?!
安倍がすべてを認識する前に、市井の声が食堂に響いた。
「辻!逃げなさいっ!さっきの草むらで待ってて……!」
背中に妙な熱さを感じたのと、掴みきれない状況に
安倍はうつ伏せになった体をやや起こして、あたりを見渡すと
すぐそこで炎が上がっているのを目にした……
そしてそこには、石川の足にしがみついている吉澤の姿……
- 415 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)21時55分35秒
- 石川が安倍に向かって撃った時、吉澤が最後の力を振り絞って石川の足に飛びかかり、
その弾みで標的を外した銃弾は、食堂の壁へと撃ちこまれた。
そして、それは偶然か、もしかしたら必然であったのか、
それはきっと信仰している宗教によって変わってくるのかもしれないが
壁に備えられていたトラップ――きっと、それに触れるか、ショックを与えると
爆発するような仕組みになっていたのかもしれない――にヒットして
そのトラップ通り、爆発は起きた。
その爆発がそこら中に撒き散らされた油に引火して、発火していたのだった……
すっかり古くなって乾燥しきったこの建造物を構成している木材に
炎は容赦なくどんどんと燃え広がった。
- 416 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)21時56分19秒
- あまりに予想だにしない状況に動きが止まってしまった安倍の腕に
力強い腕が巻きついた。
「なっち!何してるの!早く立ってっ!!」
振り返るとそこには市井紗耶香の姿。
見たこともないような真剣な顔で自分のことを見つめていた。
しかし、まだ意識が飛んだまま、ぼぉっとその顔を見つめていると
さらに市井の声がかぶせられた。
- 417 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)21時57分27秒
- 「なっち!早く!」
それでようやく意識が”ここ”に降りてきた安倍は立ち上がると、
市井にすぐさま言葉を返した。
「でも紗耶香……梨華ちゃんが……」
安倍の指差す方には爆発のショックか、意識を失って倒れている
石川と、それに覆い被さった吉澤が炎に包まれていた。
「私が何とかするから、とにかくなっちは逃げて!
なっちが死んじゃ……何の意味もないの!」
「………え?」
「いいから!死にたいの!?早く逃げて!!」
「…………う、うん…でも、でも紗耶香をおいてなんて……」
「大丈夫!絶対逃げるから……あの草むらで待ってて。
絶対に戻るから……っ!」
「……きゃっ!」
市井はそう言うと、立ち上がった安倍を強く出口のほうへと突き飛ばした。
- 418 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)21時58分11秒
- 「……紗耶香……っ!!」
安倍は市井の方へ手を伸ばそうとしたが、勢いを増した炎がその間を阻んだ。
「紗耶香ぁーっ!」
更に叫んだが、炎は安倍の方へとどんどんと勢力を増し、
押し出されるようにして食堂の外へと出てしまった。
「紗耶香ぁ!絶対戻ってきてくれなきゃいやだかんね!
戻ってくるまでずっと待ってるから!ずっと待ってるからっ!!」
そう言うと安倍はぐっと歯を噛みしめて廊下を走っていった。
- 419 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)21時59分04秒
- あの時、あの武道館を最後に私たちの元を去っていった紗耶香に言った言葉を
またここで言ってる……
せっかく、せっかくまた会えたのに……
安倍よりも少し早く食堂を出た辻と、安倍以外の3人を残したその部屋は
幾分かの炎と、立ち上る煙に包まれていた……
【市井&石川&吉澤in炎/残り 8人】
- 420 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)21時59分45秒
- ◆『激戦の果てに…(2)』◆
熱い……重い……熱い……重い……
私はどうしたんだろう……私は……
たしか、安倍さんに向かってマシンガンの引き金を引いて…
その後……私は……私はどうしたの……?
- 421 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)22時00分38秒
- 「……石川!吉澤!……いしかわぁ!よしざわぁぁ!!」
朦朧とした意識の中を彷徨っていた石川の耳に、
自分を、そして自分の親友(だった)吉澤を呼びかける声が聞こえた。
- 422 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)22時01分28秒
- 「おいっ!目ぇさませっ!石川!!吉澤!!」
その声に誘われるようにうっすらと目を開けた石川の目に
市井紗耶香の姿が映った。
そして自分の体の上には吉澤ひとみ。
額から血を流して、静かに自分にもたれかかっていた。
- 423 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)22時02分37秒
- 「……よっすぃー……市井さん……」
「……石川!気がついたかっ!」
そう言って差し伸ばされた市井の手に、石川も反射的に手を伸ばそうとしたが
握られている大型自動拳銃を見て石川は飛び起き、
とっさに背にしていた壁に自分の体を密着させた。
「……ひぅっ!」
その反動で仰向けにひっくり返った吉澤の目は完全に見開かれており
もう二度と口をきかない事を(正に)無言で証明していた。
吉澤ひとみの15年間の短い人生は、先の爆発ですでに終わっていた。
- 424 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)22時03分33秒
- 「いや!来ないでっ!」
「……石川!何言ってんだ!死ぬぞ!!」
4人――正確には2人と2つの死体だが――を囲む炎はどんどんと勢力を上げていた。
「石川!逃げるぞっ!早く!!」
「いや!いや!!」
「いしかわぁぁ……っ!!」
石川は膝を思いっきり曲げて、丸まるように壁に体を密着させ
両手で頭を抱えて込んで叫んだ。
- 425 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)22時04分05秒
- 「もういいの!もういいのぉ!な、中澤さん殺しちゃったし
や、や…矢口さんも殺しちゃったし……よっすぃー…よっすぃーも死んじゃったしぃ……っ!!」
「ばかっ!今、そんなこといってる場合か!このままじゃ自分が死ぬんだぞっ!」
「もういいのっ!私が死んだって誰も別に……!」
「負けてもいいのかよ!事務所に、芸能界に負けてもいいのか!?」
「あああああぁぁあぁっぁぁぁぁ………っ!!」
泣き叫んでいた。
もうムチャクチャに……
- 426 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)22時05分03秒
- 部屋に燃え上がった炎は最高潮に達し、煙も部屋一杯に充満した。
これ以上、ここにとどまるのは非常に危険な状態になっていた。
市井と出口の扉を結ぶ線も、もうすでに炎に阻まれいた。
ただ、この4人がいる場所は、撒き散らされた醤油やら、各人の血液やらで
床が湿ったせいか、かろうじて守られていたが……
「いしかわぁぁぁぁ……っ!!!」
自分の脱出と、石川の救出に選択を迫られた市井は体一杯の力で叫んだ。
と、その時燃え盛る炎に崩れた木製の食器棚が石川と吉澤のいる場所に向かって倒れた。
- 427 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)22時05分57秒
- ――ぐゎしゃ
その飛び散る燃える木片を防ぐように、市井は片手を自分の顔の前に当てたが
その腕を外した直後目に入ったのは、その食器棚に押しつぶされて
炎が燃え移り始め、気を失った石川梨華だった。
「………くそっ!!」
市井は目にかすかな涙浮かべ目の前の窓を蹴破ると
そこから外の植木に向かって食堂を飛び出した。
- 428 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)22時06分29秒
- ――どぉごぉぉ……!
と同時に、他にも火薬を含んだトラップがあったのか、漏れたガスに引火したのか
またひとつ大きな爆発が起きた。
その爆風にも飛ばされるように、市井は外の植木の中へと落ちた。
- 429 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)22時07分15秒
- くそっくそっ……!!
なんで、なんで……
市井は自分のみんなを救えなかった不甲斐なさと、こんな状況を作り出した芸能界を恨んだ。
憎んだ。………悔しかった……本当に悔しかった……
- 430 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)22時08分04秒
- そして市井は立ち上がろうとし……
立ち上がれないことを悟った。
さっきの爆風のせいで、意識が混濁としているのか、とぼんやりと考えた。
いや……頭を打ったのか?
そんなばかな。これくらいのことで立てないなんてわけが……ない
私はなっちと辻の所へ戻らなければなら……ないんだから私はなっちを守らなければ
ならないんだから私は……
体が起き上がりかけた姿勢から、ぐらりと前へ傾いだ。
市井は意識を失った。
【吉澤 ひとみアウト・市井気絶/残り 7人】
- 431 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)22時08分48秒
- ◆『激闘の果てに…(3)』◆
市井紗耶香が窓を飛び出した直後、その爆発は起きた。
ものすごい音をたてて、周りの何かの破片やら屑やらが吹きすぎた。
その破片はいくつか体に突き刺さって、朦朧とする意識の中
その痛みは体にかすかであったが感じていた。
自分の上にある燃える食器棚、それによって自分の体は徐々に燃え始めていた。
死にかけた体のせいか、熱さはほとんど感じなかった。
それにもうどうでも良かった。
- 432 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)22時09分25秒
- うっすらと開く目で周りを見ると、瓦礫に半ば埋め尽くされるように、
矢口が仰向けに倒れている。
そのすぐそばに、これはうつ伏せになった吉澤ひとみの顔が、石川の方を向いていた。
- 433 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)22時10分20秒
- 思った。中澤さん……本当は好きだったんです……ごめなさい。
思った。矢口さん……いつも妬いてました、よっすぃーと仲が良かった矢口さんに……ごめなさい。
思った。よっすぃー…あなたとはずっと一緒……これからもずっと……ずっと……
- 434 名前:娘狂 投稿日:2001年06月01日(金)22時11分02秒
- もう一度爆発が起き、石川の思考はそこで中断した。
爆風と更に石川に襲いかかった破片が言語中枢を引きちぎったのだ。
脳の他の部分が死ぬのに30秒もかからなかった。
石川の頭につけられたシルバーのヘアピンが、こめかみから流れる血が汚して
部屋中の炎を映し、鮮やかに赤く輝いていた。
そして、ずっと石川の手に握られたままだった、あのマシンガン
――何発の銃弾を撃ったのだろうか――も、炎に包まれ、あの悪魔のように鈍く光っていたのも
すっかり真っ黒になり、その面影はなかった。
こうして石川梨華は死んだ。
【石川 梨華アウト/残り 6人】
- 435 名前:NAVE 投稿日:2001年06月02日(土)12時45分16秒
- 最高です。
- 436 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月02日(土)19時45分54秒
- これだけ魅せてくれれば梨華の最期に悔いなし
- 437 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月02日(土)21時08分01秒
- 『思った。・・・』がここででるとは!
- 438 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月02日(土)21時18分02秒
- 石川最高。吉澤もうちょっと見たかった。
- 439 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月02日(土)21時57分05秒
- よっすぃ〜かっけ〜
- 440 名前:娘狂 投稿日:2001年06月02日(土)23時39分12秒
- >>435-439
NAVE 様
名無しさん一同 様
ありがとうございます。
石川がここでアウトになってしまいましたが
今後とも読んで頂ければ幸いかと思います。
今回の更新で中盤戦の完結です。
- 441 名前:娘狂 投稿日:2001年06月02日(土)23時41分13秒
- ◆『ようやく2回目!保田 圭の場合(2)』◆
まだ、矢口が石川たちと遭遇する前、保田圭は奔走していた。
遥か彼方まで続いているかのような、巨大な壁に沿いながら。
「001/K」と書き始めた目印も、今やもう「300」に達しようとしていた。
- 442 名前:娘狂 投稿日:2001年06月02日(土)23時41分49秒
- 一体これはどこまで続いているというのか……
どこまで行ってもその壁自体に何の変化もなく――何か仕掛けがあるかと思い
何度か立ち止まり、その壁を注意深く見ていたが――
一行に出口らしきところにたどり着く気配はなかった。
- 443 名前:娘狂 投稿日:2001年06月02日(土)23時42分36秒
- 自分自身の勘で、この壁沿いに走りつづけてきたが、
それもどんどんと疑わしくなってきた。
この巨大な壁のせいで、実際の時間はほとんどわからなかったが
かなりの時間が経過していることは間違いなさそうだった。
保田の疲労もかなりピークに達していた。
- 444 名前:娘狂 投稿日:2001年06月02日(土)23時43分24秒
- 緊張感と空腹。そして、どこにぶつけていいのかわからないこの怒り。
折り重なる心理状態によって体だけでなく、精神的にも疲弊しきっていた。
- 445 名前:娘狂 投稿日:2001年06月02日(土)23時44分18秒
- 程なく保田は立ち止まり、今一度自分の目の前にある壁を見上げた。
「…………」
その壁の向こう、申し訳程度に覗き込んでいる空には嫌な雲が立ち込めてきていた。
「……降ってきそう……」
そう一言口から漏らし、もうすでに結構書き飽きた「300/K」という記号壁に書き込むと、
再び走り出した。
- 446 名前:ROCK 投稿日:2001年06月02日(土)23時44分33秒
- 2回目の投稿です。
「思った。・・・」の部分最高です!
「バトロワ」小説であの三村の最期、凄く好きだったので
(というかあれでは七原より三村のほうが好きだった)
かなり感動してしまいました・・・!!
- 447 名前:娘狂 投稿日:2001年06月02日(土)23時45分11秒
- この「300」という数字にたどり着くまでの間、保田は走りながら色々と考えていた。
ここから脱出した時のこと……
ここには――もうこの2人はいないが――「福田明日香」がいる、「石黒彩」もいる、
そして当然「市井紗耶香」も……
彼女たちは彼女たちの意思でこのモーニング娘。を脱退(卒業)したはず。
そう考えると、もしここを無事に脱出することが出来た場合、彼女たちはどうするのだろうか。
無理にモーニング娘。に復帰させようというのか。
いや、そんなことは無理だ。国家権力でもあるまいし
そんなことを個人に強制できるわけがない。
(このプロジェクト自体、自分たちは強制されているわけだが)
- 448 名前:娘狂 投稿日:2001年06月02日(土)23時46分32秒
- それに素人目で考えてみても、いきなり13人になってファンの前に出たところで
人気が上昇するとも考えにくい。
そんなことで人気が上昇するのであれば、今ごろとっくに「おにゃんこクラブ」なぞは
「再結成!万歳!!」とか言いながらしぶとくもメディアに生き残っているはずだ。
そんなのは無理だ。
じゃ……一体何のつもりで……
- 449 名前:娘狂 投稿日:2001年06月02日(土)23時47分08秒
- ”行き詰った個性の覚醒”――これが唯一私たちに伝えられた(クソ)開催者側の理由だった。
しかし考えれば考えるほど、それが本当の理由でないという考えが広がっていった。
――悪趣味……いや、本当にそんなくだらない理由だろうか。
ここで起きている事柄自体、”拉致”及び”軟禁”。立派な犯罪だ。
いや、立派という言葉はおかしいか。
そんなくだらない理由でこんなことを犯すのだろうか……
仮に、仮にだ――こんなことは考えたくないが――ここに仕掛けられているトラップに
誰かがかかり死んでしまったとしたら(もう例の放送によれば一人かかっているようだが)
どう説明するつもりなのか、どう処理するつもりなのだろうか……
わからないことだらけだ……全くわからない。
そもそもこんな狂った状況なんてわかりっこないのかもしれないが。
そう…わかりっこない、わからなくったっていい…ここを脱出さえ出来れば……
- 450 名前:娘狂 投稿日:2001年06月02日(土)23時48分13秒
- 「…………っ!!」
とその時、そんな答えの出ない自己問答を続けていた保田の目に
いままで吐き気がするほど眺めてきた同じ形状の壁とは明らかに違った壁が飛び込んできた。
永遠に続いていると思われた表面部分がそこで急に中にくぼむ様になっており
その中を恐る恐る覗き込んでみると真っ暗になった空間が広がっていた。
- 451 名前:娘狂 投稿日:2001年06月02日(土)23時48分57秒
- 保田はそのくぼんでいる部分の境目あたりに「301/K」と書き込むと
その空間に吸い込まれるように入っていった。
一歩、一歩……そしてまた一歩と。
四、五歩踏み入れたあたりで、真っ暗だったその空間に突然眩しい明かりが放たれた。
「………うっ!」
唐突に放たれたまぶしい光に一瞬目を瞑ったが、閉じた目の上の光に若干慣れたところで
ゆっくりと目を開けると……誰かいるのかと思ったが、どうやら誰もいないようだ……
しかし保田は見た……そこに広がった空間の情景を。
- 452 名前:娘狂 投稿日:2001年06月02日(土)23時49分50秒
- 「……これって……」
少し驚いたようなそぶりを見せたかと思うと、ゆっくりと慎重にその中を歩いた。
大きく広がった壁に、何かの文字が大きく刻み込まれている……
「……そうか……そういうことか……」
次々と目に飛び込んでくるものに対して、保田は冷静に心の中で整理した。
ちょうどさっきまで自己問答していたことがすべて見えた気がした。
- 453 名前:娘狂 投稿日:2001年06月02日(土)23時50分52秒
- 早く、早くみんなに合流しないと……
でないと、こんなの私一人じゃとても……どうしていいか解らな……
――ドゴぉぉ……
突然、この広大な敷地に花火が打ち上げられたような爆発音が鳴り響いた。
その音に驚き、保田ははっと自分が背にしていた館のほうを振り返ると
煌々と燃え上がる炎が見えた。
「………な、なに!?何が起きてるの!?」
度重なる驚愕に保田の体は止まってしまったが、次の瞬間もう館のほうに走り出していた。
- 454 名前:娘狂 投稿日:2001年06月02日(土)23時51分35秒
- ざくざくと短く生えた草を蹴る音が、保田の足の動きに合わせて鳴った。
顔は険しく、額にはうっすらと浮かぶ汗、乱れ放題の髪……
ハリウッドアクションスターさながらの風貌でひたすら走りつづけた。
こんなふざけた話……許せない許せない許せない……絶対に負けない……
保田が離れると、その「301/K」と刻まれた空間はふっと明かりを落とし
再び来訪者を待つ静かな遺跡のようにひっそりと林の中に消えた……
【第2章 中盤戦・完/残り 6人】
- 455 名前:娘狂 投稿日:2001年06月02日(土)23時52分31秒
- ここで中盤戦終了です。
次からは終盤戦となるわけですが、お付き合いいただければ幸いかと思います。
近いうちに頑張って更新しますんで、よろしくお願いします。
- 456 名前:SOUL 投稿日:2001年06月03日(日)00時29分21秒
- 次から終盤戦っすか!?
期待してるんで、頑張って下さいよ!
石川死んだのが残念・・・。
- 457 名前:NAVE 投稿日:2001年06月03日(日)15時20分39秒
- お〜やっぱいいねぇバトロワのもって大好き☆
後藤vs加護も忘れずに。
- 458 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月03日(日)23時21分58秒
- 保田は何を見たんだろう・・・
( `.∀´)<謎はすべてとけたわ!
- 459 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月04日(月)02時37分47秒
- 感想ちょっと遅れちゃったけど、石川のよっすぃーに対する気持ちに
なんか胸が痛くなりました。
どこで歯車が狂っちゃったんだろうね。
娘狂さん、いつも楽しみに読んでます。頑張ってくださいね。
- 460 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月05日(火)00時57分17秒
- うまい!
石川の死はつまらなくなると思っていたが、うまい!感動した!納得した!よくやった!
これからの予想だが白5黒1の状態でどうするか?
白から混乱を出すのか?
加護の混乱で辻と・・・
後藤攻安倍守保田犠か・・・
ってこれはあくまで俺の挑戦だから
- 461 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月05日(火)20時28分20秒
- 初めて読んだけどおもしろいね!
石川ヲタだけに石川の死はかなりつらい・・・
作者さんはもしかして旧プッチモニヲタ?タンポポは加護以外全滅じゃん。
- 462 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月14日(木)15時31分21秒
- 再開キボンヌage
- 463 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月16日(土)14時47分32秒
- 期待してます。
マターリ頑張って下さい。
- 464 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月21日(木)10時31分54秒
- 期待ageです。
面白いです。
- 465 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月24日(日)02時20分52秒
- 面白いです。面白いんですが、市井を助けてあげてください。だけど死んじゃうんだろうな?
あの手のキャラが最後まで生き残ると面白くないし。
- 466 名前:初心者です 投稿日:2001年06月25日(月)02時06分23秒
- 一番最初から読みたいのですが1のリンクが死んでるので
読めないです。
どこか補完してるところありますか?
- 467 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月25日(月)02時12分04秒
- >>466 初心者ですさんへ
>>397 に書いてあるよ。
- 468 名前:466 投稿日:2001年06月26日(火)03時13分23秒
- >>467さんへ
ありがとうございます。
これで最初からじっくり読めます。
- 469 名前:はぐれ読者 投稿日:2001年06月26日(火)16時35分53秒
- 今日一気に読みました。ごち。
市井の安倍を守らなきゃならない理由が超気になる・・・
次は完結した頃に一気に読みたいと思います。
- 470 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月27日(水)15時52分16秒
- 続きは7月に入ってからかな?
娘狂さん期待してます。です。
- 471 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時32分54秒
- >>456
soul 様
毎度、読んで頂きましてありがとうございます。
ようやく終盤戦です。
ここまで来るのに半年もかかっちゃいました。
石川はアウトになってしまいましたが
今後とも宜しくお願いします。
>>457
NAVE 様
いつも読んで頂きましてありがとうございます。
もうそろそろバトロワブームも去ってしまいそうですが
この話が完結するまでは、粘り強く書いていきたいと思います。
後藤vs加護は……まぁ、お楽しみということで。
今後とも宜しくです。
>>458
名無しさん
ありがとうございます。
圭ちゃんは何を見たんでしょうか……
終盤戦の目玉ですんで、その時までナイショです(w
今後とも宜しくです。
>>459
名無しさん
石川&よっすぃーの場面は中盤戦の見せ場だったので
何かを感じてもらえてうれしいです。
ありがとうございます。
更新が常に遅れ気味ですが、今後とも宜しくお願いします。
>>460
名無しさん
読んで頂きまして、ありがとうございます。
おぉ!?小○総○ですか…!?
「小○の挑戦は、国民みんなの挑戦です」よね(w
ご期待に添えますようがんばりますので
今後とも宜しくお願いします。
>>461
名無しさん
石川のアウトは、ここを読んでくれている人が減ってしまうことになるんでしょうかね…?(泣
別に旧プッチヲタってわけじゃないんですが…
そういえば、自分が誰推しなのか…(娘。ロワイヤル@娘。全般 参照)
そろそろばれてしまいそうですね(w
今後も宜しくです。
- 472 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時33分48秒
- >>462-464
名無しさん一同 様
皆様、ありがとうございます。
更新大変遅れております。
こんなに更新遅い作品を読んで頂いておりまして
大変感謝しております。
今後も宜しくお願い致します。
>>465
名無しさん
ありがとうございます。
市井ちゃんはこれからどうなるんでしょう。
書いてる自分もどきわくです(w
今後ともどうぞ宜しくお願いします。
>>466-468
初心者です 様
名無し読者 様
どうもすみません。
そして、ありがとうございます。
リンクについては何とかできたらとは思っているのですが…
読んで頂けましたか?
宜しければ、今後も読んで頂ければと思います。
>>469
はぐれ読者 様
ありがとうございます。
いつ完結するのか、作者も不安なのですが(w
今後とも宜しくお願いします。
>>470
名無しさん
更新が遅くて申し訳ありません。
気付いたら7月になっていました(w
もう少しペースアップできれば良いのですが…
何とか期待に答えれるよう、頑張ります。
というわけで、いよいよ終盤戦スタートです。
- 473 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時34分46秒
- ◆『安倍なつみ&辻希美の場合』◆
食堂での惨劇を抜け出した2人は、本館へ続く渡り廊下を進んでいた。
外への道もわからずに、とにかく前へ。
窓は降り始めた雨でしっとりと濡れ、外気との気温のせいか
うっすらと曇っていて、外の景色はグレイに染まっていた。
やや気温が下がり、少し肌寒かったが
今の2人にそれを感じる余裕さえなかった。
あの惨劇が嘘かのように、廊下はひっそりと静まり返っていた。
- 474 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時35分52秒
- 辻は考えていた。
矢口さん……よっすぃー……死んじゃった……?
……殺された?誰に?
……梨華ちゃんに………
中澤さんも……死んじゃった………殺された……梨華ちゃんに……
なんで…なんで?
わからない……なんで死んじゃったの?
なんで……なんで……なんで……
- 475 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時36分34秒
- 亜依ちゃんは?亜依ちゃんはどうしてるの……?
生きてる?死んでる?
あれ?なんで生きてるか死んでるかって考えてるんだろう……?
私は?私は生きてるの……?
ここは……?ここはどこなの……?
どうしてここにいるの?なんでこんなことしてるの?
なんか、頭が熱い……体が熱い……目が…熱い……
- 476 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時37分15秒
- 数えきれないくらいの疑問符が辻の頭の中を囲った。
今までどこか遠足気分だった――とはいってもことの重大さくらいは分かっていたつもりだったが――
辻の頭の中に、いくつかの現実が飛び込んでくることで
本当の恐怖、そう…人は本当の恐怖を感じると笑ってしまうというが
もしかしたらこの時の辻の口は妖しく歪んでいたかもしれない。
もう、自分の存在を自分自身で認めきることが精一杯、
むしろこの年齢で自我を保っているのは賞賛に値するくらいだ。
- 477 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時37分54秒
- 辻の瞳から一筋の涙が流れた……細く弱々しい涙……
道を進む足も、自分の意思というよりは
前を歩く安倍につられて動いているも等しかった。
その安倍も考えていた。
- 478 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時38分25秒
- 紗耶香……絶対生きててね……絶対絶対………
もうこれ以上さよならなんてやだよ……
裕ちゃんも……矢口も……よっすぃーも……
いやだ、もういやだ……!
絶対ここから出てやるんだ、何があっても絶対に。
そして、そして、そして………
冷静に考えよう……冷静に。
- 479 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時39分47秒
- 一時期すこしパニックを起こしかけていた安倍は
あの食堂の惨劇で、戻りつつあった。
たしかに悲惨な現実ではあったが、そこは逆境に立つことの多かった安倍。
あの出来事、そして死は安倍の心を燃え上がらせていた。
- 480 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時40分20秒
- まずは……この前の夜、そう昨日の夜……
何をしてたんだろう……
確かテレビの収録が終わって、マネージャーさんに送ってってもらうようにお願いして……
……お願いして……あれ?それからどうしたんだっけ……
え…っと……あれぇ……覚えてない。
さっきの爆発にあった時にショックで忘れちゃった……?
いや、そんなことは……あんなことじゃ記憶は飛ばないよ…ね……
だって、あんなので記憶がとんでたんじゃ、今ごろ自分の名前すら思い出せないよ。
……じゃ……なんで……
- 481 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時40分55秒
- 見えない恐怖が安倍を襲った。
記憶がない、思い出せないというということは、人に妙な恐怖をもたらす。
しかも一日前のことだ。
もうすっかりべとべとになってしまった安倍の背中を
それとは違う汗がじとっとしめらせた。
……なんか気持ち悪いな……うぅぅ。
あ、でも……そうか、そうだべ。何かあったんだ……何か……
こんなところに勝手につれてこられた夜に何もなかったわけがない……
そうだよ、確かに昨日の夜自分のベットで寝たことは覚えてるし……
そう……その前だ、その前に何か………思い出せ、思い出せなっち……!!
- 482 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時41分29秒
- ……だめだ…思い出せない。
「はぁ……」
思わずため息が出た。
今まで緊張の連続で、ため息を吐く余裕もなかったが
自然に、とても自然にため息が出た。
と、その挙動の淵、辻の不安そうな目が見えた。
- 483 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時42分51秒
- 「ごめん……辻……」
なんとなしに謝ってしまった。
いや、何で謝ったかなんて安倍にも分かっていない。
ただ、あの辻の顔で見られてしまうと、なにか謝らずにはいられないだけだった。
- 484 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時43分26秒
- 「まろんめろん……」
「え?」
不意に辻が口を開いた。”まろんめろん”……
その昔、安倍がDJをしていたラジオ番組で非公式に組まれたユニット。
「やりましょうね、ぜったい……」
「……う、うん……」
明らかにその場の状況にあっていない言葉だったが
安倍はそのことには触れなかった…いや触れられなかった。
これ以上黙っていては、どうにかなってしまいそうな辻の気持ちがなんとなく
分かったからなのかもしれない。
- 485 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時44分09秒
- ――ガシャ…っ
「きゃっ」
暗く長く続く廊下で、2人は唐突に物音と悲鳴を耳にした。
- 486 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時44分44秒
- 「…わぁっ!」
思わず、辻が安倍に飛びつく。
顔は完全に安倍の体に埋もれさせ、もうぜんぜん前を見ていなかった。
安倍は暗い廊下の向こう側を冷静に凝視していた。
自分の胸で震えている辻の頭を片手で軽くなでながら……
「大丈夫……大丈夫……」
自分にも言い聞かすように何度もそう呟いた。
- 487 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時45分16秒
- 「うぅぅ……うぅぅ……」
まだ見えてこない廊下の奥から、今度はうめき声ともとれる声が聞こえてきた。
安倍の顔がややひきつった。
と、その時、安倍にしっかりとしがみついていた辻が
急に安倍の体から離れ、廊下の向こうへ目をやった。
- 488 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時45分48秒
- 「……あ…」
それに気がついた安倍は辻の方を見ると
もうすでに辻は走り出していた。
「…あっ!つじぃ……っ!」
- 489 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時46分21秒
- やっと、やっと会えた。
生きてた、生きてたんだ……よかった、よかった……
早く、早く顔がみたい。
また2人で笑いあいたい……
そう思いながら駆け出した辻の前に現れたのは…
- 490 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時46分51秒
- 「あいぼ〜ん!!」
駆け寄る辻の前には、なにやら大きな網に包まれうずくまっている加護の姿だった。
小さな体をくねくね動かしながらもがいている。
- 491 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時47分38秒
- どうやら”ここ”に仕掛けられているトラップは殺傷能力のあるものばかりではなく
こんな子供だましみたいなものもあるらしく
加護は”トラップMAP”の一片を持っていたものの、いまいちその見方がわからず
ただ上から降ってきた”網”に捕らわれていた。
安倍も辻の声を聞き、既にそこに駆け寄ってきていた。
- 492 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時48分09秒
- 「加護ぉ…大丈夫?」
「あいぼん、今助けてあげるからね」
ようやく加護もその声に気づき、2人のほうを見た。
「のの〜、安倍さん!」
しょぼくれた、でもやや希望を見つけたような顔つきで2人に呼びかけた。
- 493 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時48分41秒
- 安倍と辻は、とりあえずその網を取り払い、
辻は加護に手を伸ばし、加護もそれに応えるように手を差し出した。
……時、気づいた。
「わぁぁ……」
「あわわ…」
――ペタっ
- 494 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時49分18秒
- 先の後藤との一件ですっかり血まみれになった服を見て
辻は思わず手を引っ込めた。
そして、その挙動についていけず、加護は床に再び倒れこんでしまった。
- 495 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時50分31秒
- 「ひどいよぉ……ののぉ…」
「だって……だって……」
「加護、あんたけがしてんじゃないの?」
安倍は、もう見慣れてしまった”血”に別段驚くこともなく
その血まみれの風貌からむしろ”怪我”を連想し、
その血に構うことなく、加護を抱き寄せた。
- 496 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時51分10秒
- 「だ、だいじょうぶです。別に加護はけがしてるわけじゃ…」
「……じゃぁ、どうしたの?これ……」
辻は少し離れたところで、まだやや怯えていた。
安倍とは対照的に、その血まみれの姿を見て
さっきの食堂での惨劇をリアルに思いだしてしまっていた。
- 497 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時51分43秒
- 「これは……あのぉ…そのぉ…」
加護は後藤との事を話そうとしたが、
それもまたリアルな記憶が蘇ってきてしまい
言葉にうまくできなかった。
血みどろになった飯田の姿、後藤のあの冷たい目……
床いっぱいに広がった血……
今にもその場所のにおいが、自分の鼻にとどきそうなくらい
鮮明な記憶が、加護の脳裏によみがえった。
- 498 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時52分13秒
- 「まさか……あいぼん…誰か……」
「ばか!何言ってるの辻!」
辻はよからぬことを考えた。
加護が誰かを殺してしまったのではないか、と。
その時の返り血で、服一面に血がついたんじゃないか、と……
- 499 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時52分45秒
- 「ちゃうねん、ののぉ……これは…これは……」
「いいよ、加護。けがが無いならそれでいいの。
そんな服着たまんまじゃ気持ち悪いかもしれないけど、とにかくここから早く出よう、ね?」
加護の目にいつしか溢れた涙を見て、石川の”それ”とは違うと
直感的に感じた安倍は、そう言うとやさしく加護の肩を抱いた。
- 500 名前:娘狂 投稿日:2001年07月03日(火)06時53分25秒
- 辻は相変わらず不安そうな顔をしていたが
ゆっくりと歩き出した安倍たちにつられるように、いっしょにまた歩き出した。
降り出した雨は、より一層強さを増してやや強くなった風が窓を打ちつけていた……
【安倍&辻×加護合流/残り 6人】
- 501 名前:名無し 投稿日:2001年07月03日(火)16時41分05秒
- 再開おめでとう。
祭のカップリングとダブってなんか泣けてきた。
- 502 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月03日(火)21時39分57秒
- 後藤よ目を覚ませ・・・
お前はこんな女じゃないはずだ
市井後藤を止められるのはお前しかいない
頼む・・・助けてやってくれ
和田・・・なっちに何をした?
- 503 名前:けん 投稿日:2001年07月05日(木)23時54分28秒
- おッ、更新されとる!
なっちがキーキャラ?
っていうかごっちんVSなっち
ここで決着か!?
マロンメロンってユニット名久しぶりに聞いたよ
- 504 名前:山さん 投稿日:2001年07月07日(土)15時25分38秒
- 超面白い頑張って書いてください
- 505 名前:SOUL 投稿日:2001年07月09日(月)22時42分18秒
- ついに合流したんすね!
早く続きが読みたいっす。
頑張ってください!
- 506 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)22時51分25秒
- 名無し 様
ありがとうございます。
ようやく再開しました。
今後とも宜しくお願いします。
名無しさん 様
後藤はどうなってしまうんでしょうか?
市井は後藤をすくうことができるんでしょうか?
作者も不安です(w
今後とも宜しくお願いします。
けん 様
なっちvsごっちん…か。
それもおもしろいかもしれませんね。
使わせてもらいましょうか(w
>マロンメロンってユニット名久しぶりに聞いたよ
いや、自分で書いといてなんですが
自分もかなり久しい名前でした。
今後の2人?の活躍にもご期待を。
山さん 様
ありがとうございます。
ご覧の通り、更新は常に遅れ気味ですが
読んで頂ければ幸いかと思います。
今後とも宜しくお願いします。
SOUL 様
いつもありがとうございます。
>早く続きが読みたいっす。
>頑張ってください!
こういったレスがへばりかけた作者の力になります。
ありがたいです。
本当に不定期更新ですが、何とか完結させるようがんばりますので
今後とも宜しくお願いします。
- 507 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)22時51分58秒
- というわけで、今回から開始当初から
ちらほらとレスで期待されておりました”あれ”が
スタートします。
作者的にもどきわくですが、宜しくお願いします。
- 508 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)22時52分31秒
- ◆『市井紗耶香の場合(3)』◆
市井紗耶香は、ふと目を覚ました。
その目に、鮮やかな緑色の草に縁取られるように、青い空が見えた。
- 509 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)22時53分18秒
- 市井はがばっと体を起こした。
そして見た、自分の周りを囲む草の向こう、
穏やかな陽の光の中に見慣れた天王州スタジオが建っているのを。
その近くには、スーツを着たテレビ東京の社員が何人かいて
タバコを吸いながら、何やら楽しそうに話しこんでいる。
市井がいるのは、天王州スタジオの外、中庭の端の植え込みだった。
頭上にはフェニックスが大きな葉を広げていた。
市井が時折一人になりたいときに、寝転がって考え込み、居眠りする場所だった。
- 510 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)22時53分53秒
- 市井は立ち上がり、自分の体を見回した。
傷などはどこにもなかった。
ジャージに草の細かなくずがついていて、市井はそれを払った。
- 511 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)22時54分33秒
- 夢――。
市井はまだぼんやりしている頭を振った。
そして今度こそはっきりと悟った。
- 512 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)22時55分03秒
- 夢だ。すべては夢だったんだ。何もかも。
悪夢を見た後はいつでもそうなように、ひどい寝汗をかいていた。
首筋を手で拭うと、べったり汗がついてきた。
なんて……なんてひどい夢だったんだろう。
”プロジェクト……?”
なんじゃそれは。
- 513 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)22時55分36秒
- それからはっと気づいた。
右手につけていた腕時計に目をやると、とっくにレッスンの休憩時間は過ぎていた。
――寝過ごした!
市井は急いでその植え込みの中から出ると、小走りにスタジオの方へと走り出した。
そうだ、午後からは……「真夏の光線」のダンスレッスンだった。
そう思った市井は、少し安心した。
- 514 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)22時56分33秒
- 「真夏の光線」の振りは得意なほうだったし――むしろなかなか合わない飯田に付き合って
みんなレッスンを続けているようなものだ――その時の”夏先生”はなぜか機嫌がよいため
なんとか頭を下げるだけで済みそうだ。
天王州。レッスン。真夏の光線。夏先生。
頭の中に浮かぶそれらの言葉が、何だかひどく懐かしく感じられた。
そして、市井は改めてメンバーは、矢口は生きているんだ、と思い、
ばかばかしいと思いながらも、小走りしながら、一瞬、安堵感で泣きそうになった。
ほんとにばかばかしい。矢口が死ぬなんて。
よくもそんなろくでもない夢を見たもんだ。
- 515 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)22時57分12秒
- 市井は、しんと静まりかえった建物に入り、階段をかけあがった。
レッスンしている部屋は3階にある。
2段ずつまとめて足を運んだ。
3階へ出て、廊下を右に折れた。
二つ目の部屋が、レッスンをいつもしている部屋だ。
- 516 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)22時57分53秒
- 市井は扉の前で一旦立ち止まり、夏先生に対する言い訳を考えた。
気分が悪くて……いや、たちくらみがして、にしよう。しばらく休んでたんです。
信じてもらえるだろうか、大方健康優良児の自分が?
矢口が大きく肩をすくめて見せ、後藤あたりが「市井ちゃん寝てたんじゃないの?」とかなんとか言い、
圭ちゃんが鼻の頭をかきながら市井を見つめ、圭織は腕組をして、
かすかに面白そうな表情を見せている。
そして、なっちが頭をかく市井ににこっと微笑む。
それでいい、それでいいや。別に恥をかいたって……いまさら。
- 517 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)22時58分26秒
- 市井は扉に手をかけ、すみませんという気持ちを全身で表しつつ、
そうっとそれを引いた。
夏先生がいるところに向かって頭を上げようとした市井の鼻を、
しかしその時、ぷんと何か生臭い匂いがついた。
市井はぱっと顔を上げた。
- 518 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)22時59分05秒
- 最初に目に入ったのは、ダンスしている姿を映し出す鏡の前に
誰かが倒れているということだった。
夏先生――?
それは夏先生ではなかった。以前卒業したはずの福田明日香だった。そして――
その頭部は、ほとんど喪失していた。
手足もあらぬ方向へと曲がっており、首も奇妙な方向へと向いていた。
市井はその福田の死体から目を引き剥がし、
ぐっとフロアの中央の方へ顔を向けた。
- 519 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)22時59分44秒
- メンバーがそれぞれの場所にいた、いつものように。
いつものようでないのは、見慣れたメンバーたちが皆、床に突っ伏していることだった。
そして――
その床をべったりと血が覆っていた。強烈な匂いが立ち昇っていた。
- 520 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時00分20秒
- 市井は一瞬立ち尽くした後、慌ててすぐ手前にいた飯田圭織に手をかけ……
そして気づいた。
その腹になにか図太い杭のようなものが突き刺さっており
腹部から、そして飯田の口から床に向かって大量の血が流れ込んでいた。
- 521 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時01分38秒
- 市井は足を進めた。
吉澤ひとみの体をゆすった。
うつ伏せだった吉澤の体がごろりと仰向けになると
焼け爛れた皮膚と、肩や足に何点も血の花が咲いていた。
- 522 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時02分41秒
- 市井はひっと叫んで矢口真里のほうへと駆け寄った。
そのジャージの背中は何発もの銃弾で肉がひん剥いていた。
抱き起こすと、矢口の首がだらっと肩のほうへ垂れた。
そのぎょろりとした目は――頭は半分無かったが――天井をぼんやりと見上げていた。
- 523 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時03分18秒
- ……矢口――!
市井は声をあげた。
そして混乱の中で辺りを見回した。
今や全員が床に這いつくばり、異様な静寂の中に眠り込んでいた。
- 524 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時03分51秒
- 石黒彩は黒焦げになった全身に、とれかかった左目。
血こそ出ていなかったが、手も足も、そして腰もあらぬ方向へ曲がっていた。
石川梨華の皮膚は焼きただれ、よく見ると手の指は消失しており
焼けた頭部の髪の毛は、ほんの数本しかなかった。
”リーダー”中澤裕子の体は穴だらけになっていた。
要するにみんな――死んでいた。
- 525 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時04分57秒
- 市井の目にあるものが止まった。
辻希美――あのモーニング娘。一のお調子者――の胸に、深深とナイフが突き立っていた。
その目は柔らかく半分閉じて、壁にもたれかかったようになった状態で
床に向いており……何も見ていなかった。
市井はそれからごくっと唾を飲み込み、安倍なつみのほうへと目をやった。
何人もいないメンバーの中、もっと前に気づいてもよかったはずだ。
しかし、なぜかそれぞれのメンバーの死体がぐるぐると移動している感じで、
市井はそこでようやくその安倍の姿を認めたのだった。
- 526 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時06分01秒
- 安倍はまだ床に突っ伏していた。
市井は安倍にかけより、その体を抱き起こした。
”ごろ”っとその首が”外れ”た。
それはジャージを着た体だけ残して床にごつっと落ち、血の海の中をころころ転がって
――市井を見上げた。
憎悪に満ちた目で。あたしを助けてくれるって、守ってくれるって言ったじゃない。
あたし…なっち死んじゃったよ。なっち……死んじゃったよ……
- 527 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時06分33秒
- 市井は、視線はその安倍の首にくぎづけにされたまま、
両手で頭を抱え、思い切り口を開いた。気が狂いそうだった。
自分の腹の底から、叫び声が絞り上げられるのがわかった。
- 528 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時07分37秒
- ふいに市井の視界に白っぽい閃光が走り、轟音が鳴り響いた。
そして白っぽい”もの”……が目に映った。
- 529 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時08分14秒
- 自分の身体感覚――体が地面に対して水平になっていうそれ、と
視覚をつなぎ合わせ、それが天井だ、とようやく認識した。
視界の端、右の方にぽうっとしかるうす暗い明かりもあった。
誰かがそっと、市井の胸元に手をふれた。
- 530 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時08分46秒
- 市井はなお荒い自分の息に気づきながらも、その手から腕、腕から肩へと目で追って、見た。
少し乱れた服に、やや茶に染まったきれいな髪、
後藤真希が静かに微笑んでいるのを。
「よかった……目ぇ覚めたんだね」
後藤が言った。
【市井×後藤合流/残り 6人】
- 531 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時09分43秒
- ◆『安倍&辻&加護の場合』◆
市井が目を覚ます少し前、しばらく黙々と歩きつづけた3人は、
ようやく館の出入り口へ辿り着いていた。
外の雨は一層強さを増しており、
まさにバケツをひっくり返したような雨だった。
- 532 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時10分17秒
- 出入り口の軒下には安倍、辻、加護の3人。
辻は不安そうに外を眺め、加護はうつむいたまま黙り込んでいた。
そして安倍は、何か意を決したように両手をぐっと握り締めた。
その挙動に気づいた辻はふと安倍のほうを見ると
安倍の目は外の雨のその先のほう、ずっと遠くを見ていた。
- 533 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時11分03秒
- 「……安倍さん……?」
その呼びかけに応じるように安倍は2人の方に振り向き
双方の肩に力強く手を置いた。
- 534 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時11分50秒
- 「いい?2人はここにいて。絶対に動いちゃだめだよ。
私は紗耶香を探してくるから。わかった?」
「「……え?」」
辻と加護はハモルように、それに反応した。
辻は半分泣きそうな顔をしている。
加護はというと……どこを見ているかわからない目。
- 535 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時15分37秒
- 「辻、そんな顔しないの。加護も。
紗耶香と約束したでしょ、あの草むらで会うって。
だから私が行ってくる」
「「辻(加護)たちも行きます」」
またハモった。
「だめ。こんな雨の中に2人をつれていけないよ。
それに紗耶香と会えたらすぐにここに戻ってくるから」
「…………」
「…………」
そんな頭からケツまで筋のとおった理由に言い返す言葉もなく
辻と加護は黙ってしまったが、2人の目はただ一言伝えたいだけだった。
……さみしい。
- 536 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時16分08秒
- 「じゃ、行ってくるから。絶対に動いちゃだめだからね、わかった?」
「「……はい」」
どこかに買い物にでも行くような、軽い言葉を残して行こうとした安倍を
加護が引き止めた。
- 537 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時16分38秒
- 「…あ…安倍さん!」
「だから、加護ぉ〜……」
何度言ったら、と言おうと振り返った安倍の前に加護の手が差し伸べられ
その差し伸べられたものを見て、安倍の表情がくっと変わった。
加護の手に握られていたのは一枚の紙切れだった。
- 538 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時17分11秒
- 「なに……これ?」
「あの……このへんのトラップの地図です。
切れ端で全部ってわけじゃないんですけど……一応役に立てばッて思って……」
「あ、ありがとう…でも、どうしたのこんなもの……」
「それは……その……ご……」
「………ゴ?」
加護は言いかけてやめた。
自分の口から言いたくなかった。
- 539 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時17分53秒
- 「いや……その……」
「…………??」
安倍はしどろもどろしゃべる加護を不思議そうに見ていたが
ふぅっとひとつ息を吐くと加護の頭に手を置き、やさしくささやいた。
- 540 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時18分25秒
- 「うん、わかった。いいよ、加護……ありがとう」
「……ごめんなさい」
「いいよいいよ、ね。とにかくここにいて。すぐに戻ってくるから」
「………はい」
安倍は”その紙”を受け取ると、無造作にポケットに突っ込み
颯爽と走り出した。
- 541 名前:娘狂 投稿日:2001年07月11日(水)23時19分16秒
- 辻は安倍を目で追いながらも、加護の少しおかしな態度を気にしていた。
「……あいぼん……大丈夫?」
「……うん……ごめんね…のの………」
大きな館の小さな出入り口に残された、さらに小さな2人は
お互い身をすり合わせるようにしゃがみこんだ。
雨同様、強さを増した風が吹きつける中
暗く曇った空が突然激しく光輝いたかと思うと、大きな雷鳴が鳴り響いた。
【辻&加護→安倍分離/残り 6人】
- 542 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月12日(木)00時40分01秒
- なるほど市井は元ネタでいう所のあの男の役ですね。
残っている人達も推測できますが。
続き期待しております。
- 543 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月13日(金)01時36分48秒
- やた!更新だ!
元ネタ知ってるとニヤリとするところ多いですね。
これからも楽しみにしてます。
- 544 名前:はぐれ読者 投稿日:2001年07月15日(日)15時42分38秒
- >>542-543 元ネタ読んでるし好きだけどサッパリわからないよ(^^;
※RES不要。あんまり元ネタに拘泥ると興醒めだもん。
もしかして市井は・・・と思うとドキドキします。完結まで待てなかったよ(^^;
- 545 名前:七誌読者 投稿日:2001年07月17日(火)03時52分01秒
- そろそろ保田圭が気になりだしました。
- 546 名前:DRAGON 投稿日:2001年07月18日(水)01時11分58秒
- 初投稿っす。昨日、はじめて見つけて、
最初っから読んでたらおもしろくて止まらなかったです。
早く更新してください。
更新したら、メールくれませんか?
楽しみにしてます。
- 547 名前:タマ 投稿日:2001年07月30日(月)12時21分09秒
- お初です。とてもおもろいっす!
けど、最初っから読んでないんで残念・・・
どっかに前のほうの内容ってどこにあるんですか?
- 548 名前:名無し 投稿日:2001年07月30日(月)23時35分14秒
- >>547
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=main&thp=977874738
- 549 名前:タマ 投稿日:2001年07月31日(火)13時38分23秒
- >>548
どうもです!
- 550 名前:リーダー矢口(偽者 投稿日:2001年08月01日(水)21時09分19秒
- まりっぺの出番がなくなるのはいややけど、面白いっす。
更新頑張って下さい。
ついでに↓
ジグ/ザウエル×
シグ/ザウエル○
です。
まぁ、別にいいんですが(笑
- 551 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月01日(水)22時43分28秒
- sageてレスしてくれ。更新したかと思って来たじゃないか。
- 552 名前:リーダー矢口(偽者 投稿日:2001年08月02日(木)01時11分39秒
- すんませ〜ん。よってsage
- 553 名前:リーダー矢口(偽者 投稿日:2001年08月02日(木)01時12分15秒
- マジミスった!ゴメン!
- 554 名前:壱位 投稿日:2001年08月02日(木)23時36分43秒
- 終盤戦もがんばって。
- 555 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月17日(金)03時18分07秒
- 最後の更新から一ヶ月ですが、私はマターリまってますんで、頑張ってください。
- 556 名前:ティムポ大魔王 投稿日:2001年08月24日(金)12時14分42秒
- ティムポ保全!
- 557 名前:ティムポ大魔王 投稿日:2001年08月26日(日)09時09分23秒
- ティムポ保全!
- 558 名前:読んでる人 投稿日:2001年08月26日(日)09時40分18秒
- >>556-557
保全する必要ないと思うんですけど・・・
- 559 名前:待つ人 投稿日:2001年08月29日(水)21時56分01秒
- 早く更新されないかにゃ〜
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