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泣くよガメラ
- 1 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月25日(木)19時14分26秒
- どうも、初めまして
野球物というかドタバタ系のものをやって行きたいと思います
頭使って読むようなものでもないので、気軽に読んでもらえたらと思います
- 2 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月25日(木)19時15分03秒
- 第一話「牙を突き立てろ」
野球部部室にて
今日もやる気がない部室。
グローブやバットが床に散乱し、お菓子の食べかすがそこらかしこに落ちている。
そんなけだるい雰囲気の中部室の一番いい席に座っていた保田が、
やる気なさそうに週刊ベースボールを眺めていた石川と吉澤に声をかけた。
「あんたら、ちょっと窓の外見てみ」
やけに嬉しそうな声にとまどう石川と吉澤。
「なんですか?」
「なんか変なものでも見えました?UFOとか?」
「違うわよ。いいからちょっと見てみなさい」
そう言われて窓の外をのぞき込む二人。
そこには校門に一人佇む男子高校生がいた。
別に変わった光景ではない。
「ああ、男の子がいますね。それがどうしたんですか?」
石川が保田に尋ねる。
「あの子さぁ、ちょっとかっこいいと思わない?」
「ええ、遠くてよく見えませんけど・・・、よっすぃ〜見える?」
「ちょっと待って・・・、うーん・・・」
- 3 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月25日(木)19時16分16秒
- その時、窓の外をしげしげと見ていた吉澤が奇声とも取れる声を上げた。
「ちょ!ちょ!ちょっと!梨華ちゃん!あ、あれ隣の高校の滝沢くんよ!!
野球部のエースで超美男子の!!」
「え!?うそ!」
この辺の女子高生の間で滝沢の名前を知らない物はいない。
スタイルは抜群、ルックスはモデル並、野球部では1年生の頃からエースを勤め
プロからも引く手数多のスーパー高校生だ。
「すごいっすねー。保田さん。さすが男に飢えてるだけあってめざといわー」
吉澤が皮肉っぽく笑う
「二人とも、あの子どう思う?」
「どう思うって・・・。やっぱ、かっこいいですよ・・・」
「よっすぃ〜ああいうのに弱いからねぇ・・・」
石川がクスリと笑った
- 4 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月25日(木)19時17分10秒
「あれ、あたしの彼氏」
「!!」
「!?」
唐突に放たれた保田の一言に部室の空気が固まった。
「・・・え?・・・保田さん今なんて言いました・・・?」
「だからぁ、滝沢くんはあたしの彼氏。ボーイフレンド」
「・・・・・」
目をまん丸くする二人。
「・・・や、保田さん、お昼何か悪い物食べました・・・?
なんなら、お薬貰ってきましょうか・・・?」
「結構よ。じゃ、あたしこれから滝沢くんとデートだから。
部室の片づけよろしくねー。ダーイバーイ」
軽い足取りで部室を出ていく保田。
「ねぇ、よっすぃ〜どう思う・・・?」
「どう思うって・・・、一回病院連れていこうか・・・」
部室の扉が大きな音を立てて閉まった。
- 5 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月25日(木)19時18分33秒
- 「おまたせ!ごめんね、待った?」
昨日鏡の前で一生懸命練習した、茶目っ気たっぷりのスマイルで保田が校門の滝沢に声をかける。
「大丈夫、俺も今来たところだから」
さわやかなスマイルを振りまき滝沢が答える。
保田は人生の春を感じていた。
(嗚呼、神様有り難う!今までアタシの人生、狛犬だのガメラだの
怖くてR指定だの一人バトルロワイヤルだの散々言われてきたけど、
このときのための試練だったんですね!本当に有り難う!)
「じゃ、行こうか」
「う、うん!」
- 6 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月25日(木)19時19分56秒
- 下校途中の道行く女子高生が、超美男子と狛犬ガメラという奇妙なカップルに
羨望と殺意の眼差しを送る。
(ふふ、散々うらやましがりなさい。今までアタシを馬鹿にしてきた罰よ)
保田の頬が自然と緩む。
「ねぇ、圭ちゃん・・・」
「なぁに?タッキー」
「・・・今日は大切な話があるんだ・・・、僕の家によってくれないか・・・?」
「!!」
「・・・駄目かい?」
ねじ切れんばかりに首を振る保田。
(大切な話って何かしら!?
まさか、「君の全てが欲しい・・・」なんて言い出すんじゃないでしょうね?
駄目よ!結婚するまでは清い交際でいましょうって言ったのに・・・。
でも、「もう我慢できないんだ・・・。君が愛おしすぎて・・・」
なんて言われたら・・・。アタシ・・・アタシ・・・!!ああっ!!だめぇ・・・!!)
- 7 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月25日(木)19時20分26秒
- 「・・・圭ちゃん?」
「・・・!!は、はい!」
「顔、赤いけどどうしたの・・・?」
「なんでもありませんです!はい!」
にこっと笑う滝沢、胸をなで下ろす保田。
「着いたよ。ここが僕の家」
「へー、結構大きいんだね」
「うん・・・」
「あ、大切な話ってお母さんに紹介するとか?」
「いや・・・」
「じゃ、お父さん?」
「いや・・・」
「・・・・?」
「・・・今日は、親、いないんだ・・・」
!!!!!!!
- 8 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月25日(木)19時21分05秒
- 「・・・そ、そう。そうなんだ・・・」
表面上は冷静を装った保田だったが心の中では様々な妄想が爆発していた。
(や、やっぱり・・・!そう言うことだったのね・・・。
でも・・・、後悔はしないわ・・・。お父さんお母さん圭は悪い女になります・・・。
先立つ不幸をお許しください・・・。)
「上がって」
「う、うん。おじゃまします・・・」
初めて上がる男の部屋。
目を引くような装飾品はなく至ってシンプルだがきれいに片づけられている。
「はい。コーヒーでいいんだよね」
「う。うん。有り難う・・・」
震える手でコーヒーをすする保田。
天を仰ぎ深い深呼吸をして口を開いた。
「でさ・・・、大切な話って・・・なに?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・俺、君のこと・・・・」
「・・・・・・うん」
- 9 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月25日(木)19時21分58秒
「好きじゃないんだ」
「・・・・・・・はい?」
突拍子もない発言にはにわ顔になる保田。
「いや、だから、俺君のこと好きじゃない。ってか嫌い」
「・・・・え?何?え?何言ってんだかわかんないわよ!?」
「わっかんねーかなー。だから、俺は、君のことが、嫌い。」
「え?嫌い・・・?」
「そう」
「・・・え?前に付き合おうって言ってくれたのは・・・?」
「まぁ、一種のジョークみたいなもんかな。野球部の仲間と賭けをしたんだよ。
あの女を落とせるかどうかってね。で、俺はその賭けに勝ったわけ。」
「え?え?」
「おい、お前ら、出てきていいぞ」
滝沢がそう言うと隣の部屋から野球部員と思われる数人の男ニヤニヤしながら出てきた。
あまりの出来事に呆然となる保田。
「いやー、まさかここまで簡単だったとはなぁ」
「俺は絶対何かの罠だって思って引っかかんねーとおもったんだけどよ」
「ってゆうか、普通おかしいと思うよなぁ、ガメラとこんな美形じゃ吊りあわねぇって」
「いいから、とっとと金よこせよ」
生気が抜けた保田を無視して賭けの感想戦を繰り広げる男達。
- 10 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月25日(木)19時23分02秒
- 「・・・!ちょ、ちょっとどういう事よ!」
やっと遠い世界から復活した保田が般若の形相でくってかかる。
「どういう事って、こういうことだよ」
「あんた達あたしを馬鹿にしたわけ!?」
「ご名答、大正解」
「・・・ム〜カ〜ツ〜ク〜!!」
「わかった?君は騙されてたの」
「・・・し、知ってたわよ!それぐらい!あたしだってそんなに馬鹿じゃないわよ!」
「じゃあ、なんで「子供は女の子がいいわ。名前は紗耶香がいいわね」だとか、
「わたしはお母さんとも上手くやっていける自信がある」とか言い出したり、
出来もしない料理の本を大量に買い込んだりしてたわけ?」
「そ、それは・・・・」
保田は後悔していた。生涯初めて出来た男に浮かれ、
歯の浮くような人生設計を得意げに喋っていたことを。
「ま、というわけでもう君は用済みだから。帰って」
冷めた口調で滝沢が言う。
「あ、あんたに言われなくても帰るわよ!馬鹿!死ね!」
けたたましい足音を残して保田はその忌まわしい部屋から出た。
扉を閉めた瞬間、部屋の中からわき上がる笑い声。
帰り道保田は一人泣いた。
誰も慰めてくれる人はいなかった。
っていうか、どう見てもガメラなのでみんな恐れて近づけなかった。
- 11 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月25日(木)19時23分32秒
- 次の日 〜部室〜
部室に保田が入ると石川と吉澤が満面の笑みで出迎えた。
「保田さーん、昨日あの後どうでした〜?」
にこにこしながら石川が語りかけてくる。
バキッ!!ガラガラガッシャーン!!
吹っ飛ぶ石川
「????」
事態がさっぱり読み込めない石川吉澤コンビ。
「・・・保田さん・・・?どうしました?」
「・・・・・」
「保田さん・・・?」
「・・・・石川、吉澤、滝沢に野球で勝つためにはどうしたらいい?」
「はい?」
「あのくそ野郎に野球で勝つにはどうしたらいいかって聞いてるのよ・・・」
「勝つって野球でですか?」
「そう」
- 12 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月25日(木)19時24分50秒
- 「野球じゃ無理ですよ〜。あっちはプロのスカウトが注目する選手なんですから」
「顔面のインパクトなら保田さんの方が上ですけどね〜、えへへ〜」
吹っ飛ぶ吉澤
「勝たなくちゃいけないのよ・・・。あの野球馬鹿を見返すためにも・・・。」
「勝つって言ったって・・・。うちの野球部、私たち3人しかいないんですよ。
勝つ以前の前に野球が出来ませんよ」
「・・・・」
「でも何でいきなりそんなこと言い出すんですか?保田さん、滝沢くんの彼女なんですよね?」
「そうですよ〜、あんなそ〜と〜いけてる彼氏いませんよ〜。なんかあったんですか〜」
吹っ飛ぶ石川吉澤コンビ
「・・・石川、吉澤、今から部員集めに行くわよ、付いてきなさい・・・」
保田は決意していた。自分のプライドをずたずたにされたお返しに滝沢のプライドをずたずたにすることを。
(見てなさい・・・。あんたにもあたし以上の屈辱を味あわせてやるわ!)
保田が二人が気絶して付いてきていないことに気付くのは、それから2時間後のことである。
- 13 名前:名無し読者 投稿日:2001年01月26日(金)02時39分38秒
- 何だか面白くなりそう(今でも充分面白いけれど)。期待してるよ。
それにしても、最近保田が大活躍だな。
- 14 名前:名無し読者 投稿日:2001年01月26日(金)04時25分10秒
- タイトルがいいですね。
これから集まるであろうメンバーにも期待。
- 15 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月27日(土)00時03分29秒
- >>13-14
読んでいただいて本当に有り難うございます。
初めてな物で読みにくい点が多々あると思いますが
引き続き読んでいただけると、是幸いです。
- 16 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月27日(土)00時06分09秒
- 第二話「鉞」
校内をうろつくこと早5時間。
いろんな人に声をかけてもいい返事は帰ってこない。
「なんでなのよ!なんでみんなこうも冷たいのよ!も〜ム〜カ〜ツ〜ク〜!!」
「そりゃ、あんなに鬼気迫った顔で勧誘されたらみんな怖がって近づきませんよ・・・」
「そうそう、只でさえそ〜と〜顔怖いんですから〜」
「!!」
殺気を感じてとっさにピーカブースタイルで防御姿勢を取る二人。
「・・・だったらあんた達も人探しなさいよね!全く役に立たないんだから!」
「でも、もう大体の所行っちゃいましたよ・・・」
石川の顔には疲労の色が見える。
「うーん・・・」
頭を抱える保田。
- 17 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月27日(土)00時06分55秒
- その時吉澤が何かを思いだした。
「あ、そうだ!うちのクラスにそ〜と〜運動神経いい子いますよ!
ずっと前に野球部に誘ったんだけどめんどくさいって言われて断られちゃいましたけど」
「なんでそう言うこと早く言わないのよ!行くわよ!」
保田が二人を後目に早足で廊下を歩いていく。
「あっ!保田さん!」
ものすごい早さで小さくなっていったと思ったら、
ものすごい早さで二人の元に戻って来た。
「・・・で、吉澤の教室どこなの?」
「・・・・・・・」
(そ〜と〜馬鹿だね・・・、梨華ちゃん)
(う、うん・・・)
- 18 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月27日(土)00時07分42秒
- 吉澤の教室
「まだ残ってるかな〜?あ、いたいた、ごっちーん」
放課後誰もいなくなった教室で、一人机に突っ伏して寝ている少女に吉澤が近づく。
「ねぇ、ごっちん、ごっちんってば!起きて起きて!」
机の少女は一向に起きようとしない。
「ごっちん!・・・ごっちん!ベーグルあげるよー!」
急に起きあがり辺りを見回す少女。
「・・・ベーグル?どこ・・・?」
「はい」
少女は吉澤がバックからおもむろにベーグルを取り出すと無表情でぱくついた。
「・・・これが、運動神経抜群の子なわけ?」
明らかに怪訝そうな顔で保田が答える
「いや、普段ぼけーっとしてるけど運動神経はいいんですよ。
あ、ちょうどスポーツテストの結果がありますよ、ほら見て下さい!」
差しだされたスポーツテストの結果表をのぞき込む保田と石川
- 19 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月27日(土)00時08分12秒
スポーツテスト結果表 2年2組 後藤真希
50メートル走 18秒22
垂直ジャンプ 2M51
反復横飛び 20回
斜め懸垂 2回
走り幅跳び 1M34
長距離走 リタイア
「・・・・これのどこが運動神経万能なわけ・・・?」
青筋を立てながら保田が尋ねる
「ご、ごっちん!ごっちん運動神経いいよね!?」
「スポーツテストめんどくさーい・・・・」
後藤がやる気無く答えた
「でもねぇ、これじゃねぇ・・・。使い物に・・・」
保田があきれ返った瞬間、隣の石川が保田をつつく
「・・・保田さんここ見て下さい・・・」
「ん?」
- 20 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月27日(土)00時08分48秒
握力 75Kg
背筋力 250Kg
ハンドボール投げ 測定不能
「・・・・測定不能って?」
おそるおそる後藤に尋ねる
「飛ばしすぎて先生に怒られたー」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「ね、保田さん言ったでしょ!そ〜と〜いけてるって!」
保田の表情が変わる。
「・・・ねぇ、後藤さん?ちょっとこのボール投げてくれないかな。あたし取るから」
「えー、めんどくさーい」
「・・・吉澤」
「はい!」
有無を言わさず吉澤が後藤にベーグルをくわえさせる
「んむぐ(やる)」
(よっすぃ〜・・・・(泣))
石川は人知れず泣いた
- 21 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月27日(土)00時10分24秒
- 「「じゃ、後藤さん、ちょっとキャッチボールしようか」
「はーい」
保田がファーストミットを構え後藤の球を待つ。
(とりあえず12M・・・。この距離は届くと思うけど、どれだけの球が来るか・・・)
「じゃ、いきますよー」
後藤がボールを握り、セットポジションに入る
(セットポジション?初心者にしては変な行動取るわね・・・。野球好きなのかしら)
そして後藤が投球フォームに入ったとき、保田石川吉澤の3人は息をのんだ。
両手を上げ、バックモーションに入ると同時に高々と掲げ上げられる左足。
鞭のように腕をしならせ体全体でボールを投げ込む!
(あれは!?・・・マサカリ投法!?)
そう思った刹那
ドォォォォォォンン!!!!
豪快なマサカリ投法から繰り出された球は轟音を立てて保田のミットに吸い込まれた。
手はビリビリと痺れて感覚がない。取り方が悪かったら捻挫していただろう。
(速い!それに、重い・・・)
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
無言になる三人。
- 22 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月27日(土)00時13分03秒
- 「どうしたのー?もう帰っていいー?」
後藤が面倒くさげに答えた。
「・・・後藤さん、野球の経験は?」
保田がおそるおそる尋ねる。
「うーんと、小学校の時少し。中学も少しやってた」
「・・・・野球部に入る気無い?」
「えー、練習めんどくさーい」
「・・・吉澤!」
「はい!」
吉澤はどこからか取り出したベーグルを、驚異的なスピードで後藤の口に突っ込んだ。
「はひふ(入る)」
「よし!部員一人ゲット!!」
保田の表情がほころぶ。
「やった!ごっちん入ってくれるんだ!わーい!超嬉しいよ〜!私前からごっちんと仲良くなりたかったんだ〜、えへへ〜」
無邪気にはしゃぐ吉澤。
喜びにわく二人とは反対に、影で泣く石川の姿を二人はまだ見付けていない。
只今部員四名
- 23 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月27日(土)00時14分55秒
- 今日はこんな物です。
もしかすると朝方更新するかもしれません。
その時はまた読んでいただけると幸いです。
- 24 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月27日(土)02時31分25秒
- >>19
垂直ジャンプ 2M51
て・・・、
NBA目指してるんすか?(笑)
- 25 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月27日(土)03時19分51秒
- >>24
あ・・・、Cが抜けてた・・・。すいませんー。
指摘サンクスです。
じゃあ、後藤はNBA選手ということで(藁
- 26 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月27日(土)09時20分31秒
- ポジションって中澤監督の奴と一緒なんですか?
- 27 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月27日(土)23時54分00秒
- >>26
すみません、今の予定だと「モー娘。球団」とは若干ポジションが異なるようになると思います。
「モー娘。球団」が好きな方は違和感を感じると思いますが、
我慢して(?)読んでいただければ是幸いです。
- 28 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月27日(土)23時55分17秒
- 第三話 「野球場に連れてって」
「おはよーございまーす」
石川が部室に入ってくる。
「石川!いいところに来たわ!ちょっとこれ貼るの手伝ってくれない?」
石川のか細い腕に大量の紙の束が手渡される。
「うっ・・・、こ、これなんですか?」
「見てわかんないの?部員募集の張り紙よ」
「部員募集・・・。」
そこには「野球部部員急募!来たれ部員!経験者歓迎!」と言うおきまりの文句の他に、
何か前衛アートのような物が書かれていた。
「・・・保田さん。このピカソの絵に出てきそうな人なんですか?」
「はぁ?それ鉄人衣笠よ!見てわかんないの?」
「・・・じゃあなんで衣笠がムカデ背負ってるんですか?」
「ムカデ?あんた目悪いんだっけ?バットよバット。よく見なさい」
「・・・。じゃあ、衣笠の前にいる、今にも「ワレワレハウチュウジンダ」って言い出しそうな人は・・・」
「孤高の天才バッター前田選手よ。我ながら良く書けたわ」
「・・・・・」
「ほら、ぼけっとしてないで校内に貼ってきて」
「・・・・・はい」
頼まれると断ることが出来ない石川。大量の前衛アートを抱えて部室を後にした。
- 29 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月28日(日)00時04分05秒
- 「あーあ。イヤな仕事頼まれちゃったなー。保田さん人遣い荒すぎますよー、もー。
第一私なんで野球部なんかに入ったんだろ・・・」
貼っても貼っても一向に減る気配がない。
「こんなのじゃ野球部に入ろうとしてる人も、絶対入る気なくすだろうなー」
精神が正常な人が見れば、どう見てもオカルト研究会にしか見えない野球部の部員募集の紙を前に、
石川はやる気をそがれ始めていた。
「こんなの貼ったってどうせ人なんて来ないんだから、
もう仕事ほったらかしてどっかに行きたいなぁ・・・」
そう独り言を言うと、石川の目に校舎裏の焼却炉が飛び込んできた。
「そうだ!焼却炉に捨てちゃえばいいんだ!どっかのゴミ箱に捨てたら保田さんに見つかって怒られるかもしれないけど、
燃やしちゃえば証拠は残らないもんね!うん、そうしよう!」
石川はそうひらめくや否や、ダッシュで焼却炉に行くと、両手で抱えていた紙の束を一気に炎の中に投げ込んだ。
一瞬で灰になる保田渾身の前衛アート。
このとき石川の頭に「校内に張り紙が貼って無いことに気付く保田」の存在は全くなかった。
- 30 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月28日(日)00時08分03秒
- 「ふー、仕事終わりー。さーて、家にかえろっかなー」
石川が晴れ晴れとした気持ちで校舎裏を後にしようとしたとき、背後に妙な殺気を覚えた。
(ま、まさか・・・、保田さんが見てたとか・・・?)
石川が意を決して後ろを振り返ると、髪の毛を団子状に結った小さな少女が立っていた。
「・・・見てたで、お姉ちゃん」
不意をつかれてあせる石川
「な、何かしら!?」
「お姉ちゃん、今大量の紙捨て取ったやろ?
なんか大事そうに抱えてはったけど、あれ、なんやったん?」
「べ、別にたいしたもんじゃないの!うん!」
ますますあせる石川。
「ふーん・・・」
その時まだ燃え切ってない張り紙が風に飛ばされて少女の前に落ちた。
それを拾い上げる少女。
「野球部部員募集・・・、か。・・・お姉ちゃんこれ、頼まれもんやろ」
「ギク!」
「お姉ちゃんが書いたんならそんな急いで捨てるような真似はせえへんやろうし、
第一野球部に命賭けてるようには見えへん。
あらかた野球部の誰かにいやいや頼まれたってとこやな。
で、面倒くさなって焼却炉に捨てた。こんなとこか?どや?うちの予想当たってるやろ?」
「ギクギク!な、なんでわかるの・・・?」
「そんくらい大体想像つくわ。
・・・ところで、このこと野球部の人にばれたらお姉ちゃんやばいんとちゃう?」
「う・・・、それは・・・」
- 31 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月28日(日)00時10分21秒
- 「なら商談成立や。はよ金よこし。口止め料。財布にある札全部でええわ。
小銭は許したる、家に帰れへんほどは取らんよ」
淡々と話す少女に石川は恐怖を覚えていた。
(もしかしてこの子不良!?でもって今この状況はカツアゲってって奴なの!?
だ、だめよ梨華!悪に屈しちゃ!)
「・・・なにごちゃごちゃやってんねん。はよ金だし」
(そ、そうだ!この子を更正させないと!
こんなちっちゃい子がこんなことで人生を棒に振ったら・・・!頑張るのよ梨華!)
石川が意を決し少女に尋ねた。
「あ、あなた年いくつ・・・?」
「1年や!悪かったなちびで!」
「え?一年生なの?駄目よ!一年生がこんな事しちゃ!」
「うっさいわ!はよ金だせ言うとんじゃ!はよださんかいボケ!」
「イヤです!出しません!」
「なんやとワレ!いわすぞコラ!」
「なんと言われてもお金は出しません!」
- 32 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月28日(日)00時12分20秒
- 「・・・本格的にいわさんとわからんようやな・・・。そっちがその気ならやったるで」
「け、喧嘩はやめましょう!」
「はぁ?何言うてんねん!?」
「け、喧嘩はいけません!」
「んなら、ここでやるか、金払うか、野球部にばらされるか、どれかはよ選べや!」
「や、野球で勝負しましょう!」
「野球?自分さっきから言ってること滅茶苦茶やで!?」
「野球部の問題です!野球で決着を付けるのが当たり前なんじゃないですか!?」
少女の言うとおり、石川の言うことは支離滅裂である。
石川は突然の出来事に頭がパニックになっているのだ。
普通の人間ならここで有無を言わさず蹴りの一発でも喰らわせているところだが
「・・・それもそうやな・・・」
馬鹿である。
「でしょ!!」
「で、野球の何で勝負すればええんや?」
「そうね・・・。・・・・・・あっ!!」
石川はここでやっと自分に野球経験が全くなかったことに気付いた。
野球部には所属しているものの、部員が3人しかいなかったためろくな練習は出来ず、
やることと言ったら部室でお菓子を食べるか、吉澤と遊ぶか、保田に虐められるかしかなかったのだ。
- 33 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月28日(日)00時16分39秒
- (まずい!!言ってはみたもののこの子に勝てる自信のある物がない!まずい、まずいわ梨華!)
「どうしたんや?」
(どうしよう・・・。何とかごまかさないと・・・。)
「はよ、なんにするか決めぇや。盗塁か?脚には自信あるで。それとも、ノックでもやるか?
うちグラブさばきなら誰にも負けへんよ。あ、打撃か?それやなかったら、遠投か?」
先ほどとはうって代わって何故か嬉々として喋り出す加護。
そんな加護の様子を見て、石川の頭にピンと何かがひらめいた。
「ねぇ・・・、あなた・・・」
「加護や」
「か、加護?」
「うちの名前や」
「・・・か、加護ちゃん、なんかやけに野球に詳しくない?」
「!!」
- 34 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月28日(日)00時18分05秒
- 「・・・ほんと、やけに詳しいよね・・・」
「・・・当たり前や。小さい頃から見てきとる・・・。小さい頃から・・・・」
加護が急にしおらしくなった
「・・・ねぇ、どうしたの?」
石川が心配そうに加護の顔をのぞき込む。
「なんでもあらへん・・・。なんでもあらへんよ・・・。」
石川の顔を見ないように顔を逸らす加護。
「・・・何かあったの?」
「・・・・・」
「良かったら、話、聞くよ?」
「・・・聞いてくれるか?」
「うん!」
加護は初めて笑った
石川も笑った
- 35 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月28日(日)00時21分10秒
- 誰もいない校舎裏で、加護と石川、二人体育座りをしている。
唐突に加護が喋り始めた。
「うちな・・・、小さい頃おとんにいじめられてたんよ・・・。
仕事にも就かんと、おかんの金で飲む打つ買うの、今考えてもろくなおとんやなかったんやけど・・・。
でな、おかんが仕事に出るとな、家にうちとおとんの二人だけやねん。地獄やったわ・・・。
面倒くさがって外にも出させてくれへん。家も貧乏でな、なんにもないんよ。
ほんまなんにもないんや、テレビもおもちゃもぬいぐるみも・・・。
あるのは、窓だけなんや。窓を覗くのが唯一の楽しみだったわ・・・」
- 36 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月28日(日)00時27分08秒
- 「でな、窓の外では近所の子供が野球やってんねん。
めっちゃうらやましくてな、いつかは自分も一緒にってずっと思うとった・・・。
でも、おとんにそんなん言うたらしばかれんねん。
お前にそんな権利はない、只でさえ世話かかるのにそんなんさせられるかってな・・・。
でも、ある時な、うちが思うてたことどっかでわかったんやろうな、
おかんが誕生日にビニールのボールとバット買うてきてくれたんよ。
めちゃめちゃうれしかったわー。毎日窓の外見ながらバット振ってたわ。いつかは自分もって」
「でな、おとんがどっかに出かけた日を狙って外に出る決心をしたんよ。
見つかったらしばかれるからな、ドキドキしながら家の扉開けてな、
そっから全力疾走で野球場まで走ったわ。
電柱数えながら走っててな。
あと20本電柱追い越したら野球場に着く、後15本、後10本、って」
- 37 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月28日(日)00時29分16秒
- 「で、あと5本の時や。
なんでやろなぁ、普段そんなところにいるはずのないおとんがちょうど野球場の所におんねん。
結局見つかってな、家に帰ってしばき倒されたわ・・・。
で、そん時の傷、これなんやけど・・・」
といって加護は制服の肩口をまくって見せた。
そこには生々しい火傷の跡が残っていた。
「・・・・・」
「・・・それからや、うちはそんなん望んだらあかんって。うちは裕福や無い家や。
人並みの幸せ望んだら・・・アホ見るだけやから・・・。
・・・あきらめな・・・って」
「・・・・・・」
「は、ははは・・・。なんでやろ、なんで涙なんて出てくんねやろ・・・。
余計情けなくなるやん・・・」
「・・・・・・」
「・・・なぁ、なんか言うてぇな・・・。
気持ち悪いねん・・・黙ったままやと・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
沈黙
- 38 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月28日(日)00時30分45秒
- 「・・・諦めること無いよ」
沈黙を破り、石川が口を開いた。
「・・・え?」
「・・・諦めること無い!加護ちゃんにも幸せになる権利はあるよ!」
「・・・」
「野球、好きなんでしょ!?一緒にやろうよ!」
「・・・うち、そんなん・・・、今更・・・」
「大丈夫だよ!一緒に、ね!」
「・・・・」
「・・・夢、見てもええんか・・・?」
「うん!」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・そ、そやな、見るだけならタダやしな・・・。」
「うん!」
石川が笑った
加護が笑った
焼却炉の火はいつの間にか消えていた
- 39 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月28日(日)00時32分41秒
- その後
部室前
「うち・・・、やっぱ、ええって・・・」
部室の扉の前で恥ずかしそうにもじもじする加護。
「なにいってんのあいぼん!ほら早く入って入って!」
「ちょ、ちょっとまち!・・・ん?」
「どうしたの?」
「なんか、この中騒がしいんとちゃう?」
「え?」
石川が聞き耳を立てていると聞き慣れない声が聞こえる
- 40 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月28日(日)00時34分49秒
- 「失礼しまーす・・・」
おそるおそる石川が部室に入ると、保田と、見慣れない背の高い女性と、
それと対照的に背の小さい女の子がなにやら談笑していた
「辻、この部員募集の絵いいよねー。なんかカオリこれにビビッと来たのね。
なんかもうこれしかないって感じで」
「よくわかんないれすけどいいらさんがそういうのれつじもすきれす」
「辻ー、やっぱ何回見てもこの絵はいいとカオリはいいと思うのよねー」
「よくわかんないれすけどいいれすね。あとおといれどこれすか?」
保田の前衛アートを褒めちぎるという異様な光景を目にして、
石川は身動きがとれなくなっていた。
- 41 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月28日(日)00時36分13秒
- 「あっ!石川!どこうろうろしてたのよ!
ほら見て!あたしの書いた絵で新入部員が2人も増えたのよ!
やっぱ、あたしは天才だわ〜。こううまくいくと自分が怖くなるわね」
「・・・・・・・」
絶句する石川。それを後目に、絵を賛美する二人の女性。
「やっぱいいよね〜」
「おといれどこれすか・・・?」
呆然と立ちつくす加護と石川
「・・・・」
「・・・・」
「梨華ちゃん・・・、やっぱうちやめとくわ・・・」
加護が呆れたように来た道を戻りはじめた。
「あ!ちょ!ちょっと待ってよあいぼん!あ〜いぼ〜ん!!!待ってってばぁ〜!!」
部員只今7人
「いや〜、やっぱりいいわ」
「も、もれちゃうれす・・・」
- 42 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月28日(日)00時37分18秒
- かなり長くなりましたけど、今日の更新はここまでです。
感想なり苦情なり何かありましたら、気軽に書き込んでくれると是幸いです
- 43 名前:名無し読者 投稿日:2001年01月28日(日)05時05分02秒
- まだ全員揃っていないのに、面白い。
腹を抱えて笑ってしまった。腹筋が痛い。
でも、ちょっとほろっと来るところもあって、それがまた良い。
早く続きが読みたいな。
- 44 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月29日(月)01時18分39秒
- 部員只今何人ってのが「娘。ロワイヤル」みたいで好きかな
- 45 名前:名無し読者 投稿日:2001年01月29日(月)04時53分17秒
- 面白いです。こういう笑える小説いいですね
続き期待してます
- 46 名前:名無し読者 投稿日:2001年01月29日(月)11時35分46秒
- 作者さんはプロレスファン?川田と保田か・・・。
続き頑張ってください。
- 47 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月29日(月)22時54分17秒
- >>43
最高の賛美有り難うございます。
本当はあんまり悲しい話は書きたくなかったのですが・・・。
これからもよろしくお願いします
>>44
別に意識したつもりはないのですが、書いてると時々「あれ?今何人だ?」と
自分で忘れるときがあるので付けました(W
>>45
有り難うございます。これからも気楽に読んで貰えれば幸いです。
>>46
はい、プロレスファンです(w
川田選手が特に好きって訳ではないのですが、語呂が良いので使わせて貰いました。
感想くれた方々、本当に有り難うございます。
みなさんの一言が本当に励みになります。これからも読んでいただけると是幸いです。
- 48 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月29日(月)22時56分16秒
- 第四話 「メイドさんロックンロール」
今日の部室のメンバー:保田 加護 辻
ぱらぱらと部員名簿をめくる加護。
「なぁ、保田さん。うちの部って監督とかいてないんか?」
「いるにはいるわよ・・・・」
「あ、やっぱいるんや。うち一回も見たことないねんけどどんな人?」
「ののもみたことないれす」
「どんな人って・・・。中澤先生っていうんだけど、今お酒の飲み過ぎで肝臓壊して入院してるのよね」
「・・・ドカベンの徳川監督みたいやな」
「でも、いい人よ。厳しいけど優しくて思いやりがあって・・・、
尊敬に値する人ね」
保田は感慨深げに言う。
どうやら本気で尊敬しているらしい。
「ふーん、で、いつ退院するんや?」
「えーと・・・」
部室の広島東洋カープカレンダーを見上げる保田。
そこには24日に二重丸が付いていて「監督退院日」と書かれてあった
「あ、もう退院してたわね・・・。すっかり忘れてたわ」
「ののかんとくにいっかいあってみたいれす」
「そやな、うちもどんな人か一回見てみたいわ」
「そうね・・・、部員紹介ついでに先生の家に退院のお祝いしに行きましょうか」
- 49 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月29日(月)22時56分54秒
- 「わーい、おでかけれす〜」
いそいそと用意し始める辻。
加護も一緒にお出かけの準備をする。
「・・・?辻、そのバックに入ってるのは何?」
保田は何かをバックに一生懸命詰め込んでいる辻に尋ねた
「おかしれす。たいいんのおみまいれすよ」
「お菓子は食べないと思うけどなぁ・・・。で、加護はそれ何持ってるの?」
「これ?酒や。快気祝いってやつやな」
「バカ!酒で入院してた人になんで酒送らなくちゃいけないのよ!
もー、あんたたちは余計な心配しないでいいから!ほら、さっさよいくよ!」
「・・・この酒どうすればええ?うち、飲んでええか?」
「飲むな!」
「やすらさん・・・」
「こっちは何!?」
「おといれ・・・」
「・・・・・・・・」
- 50 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月29日(月)22時58分14秒
- 中澤の家の前
中澤のアパートの部屋の前に来た3人
「ここよ」
「えらい貧相なアパートやなー。教師って儲からへんもんやね」
「ののはやくあいたいれす」
ノックしてからドアノブを握り、ガチャガチャと回す保田。
「失礼しまーす・・・、ってあれ?」
「どないしたん?」
「・・・鍵かかってる。留守かな」
「なんや、おらんのかい」
「どうしよう。このまま帰るのもなんかあれよねぇ」
「・・・ちょっとまっとき」
加護がそう言うと、胸のポケットから針金のような物を取り出した。
その針金を鍵穴に差し込みガチャガチャと動かす加護。
「ちょ、ちょっと、あんた!何してんのよ!」
「何してるって、鍵開けてるに決まってるやん」
「鍵開けてるって・・・。あんたそれ犯罪よ!?」
「ええやん、誰も見てへんし。なぁ、ののちゃん・・・、ののちゃん?」
辻に同意を求めるため、振り返った加護は辻の異変に気づいた
- 51 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月29日(月)22時59分05秒
- 「ののちゃん・・・?どうしたん?」
「・・・もれそうれす・・・」
「はぁ?あんたなんで出かける前にしておかないのよ!」
「おといれにはいったんれすけど、また・・・」
「もー!!か、加護!早く開けて!」
「いわれなくても分かっとるわ!ののちゃん!頼むからここでもらさんといてな!」
「がんばるれす・・・」
- 52 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月29日(月)23時00分31秒
- その後悪戦苦闘するも、辻の膀胱が破裂する間一髪のところで鍵が開いた。
「辻!早く!」
全力ダッシュでトイレに駆け込む辻。
「・・・ふー、間に合ったわ・・・。って、加護!」
いつの間にか勝手に部屋に進入してタンスを物色し出す加護。
「あんた何やってんのよ!」
「いや、なんか金目の物あらへんかなーって。駄目や、この家、ろくなもんがあらへん」
「バカ!そういう問題じゃないでしょ!」
保田が何かと手のかかる問題児達を相手にしているうちに、外の方から話し声が聞こえてきた。
「!!やばい!帰ってきた!加護隠れて!」
「な、なんで隠れなあかんねん!」
「いいから早く!」
加護を押入に押し込む保田。
その後、無事おトイレが終わり、
上機嫌で手を洗っていた辻の首をひっつかんで無理矢理押入に投げ入れる。
そして、驚異的な早さで保田も押入に入る。
- 53 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月29日(月)23時01分21秒
- 押入の中
「何で隠れんねん!うちらなんも悪いことしてへんで!?」
「勝手に鍵開けて家に入ったでしょ!」
「のの、まだよくてあらってないれす・・・」
「ってか、ここめっちゃ狭いわ!なぁ、出てええやろ?」
「ダメ!・・・っ!帰ってきた!」
押入の中でちょっとした喧嘩が始まった頃玄関の方でなにやら話し声が聞こえた。
- 54 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月29日(月)23時02分15秒
- 「あれ?鍵開いてる・・・。鍵かけ忘れたんかな・・・。ま、ええわ。矢口、入り」
「はーい、おっじゃましまーす」
中澤が帰ってきた。しかも女連れで。
「へー、ゆうちゃんの部屋ってこんなんなんだー」
「なんもあらへんけどな。まぁ、ゆっくりしてってや」
押入の中 〜小競り合い〜
(だから何で隠れる必要があんねん!出ってて挨拶せなしょうがないやろ!?)
(いいから黙ってなさいよ!)
(いやや!こんな狭っ苦しいところに押し込められんのは!)
(見つかったらあたしが怒られるんだから静かにしてなさい!)
(それは保田さんの問題やろ!?うちらには関係あらへんやん!!)
(いいから!!)
(よくないっちゅーねん!!)
(しっ!ふたりともしずかにするれす!・・・なんかきこえないれすか?)
(・・・・・!?)
三人が聞き耳を立てるとなにやら艶めかしい声が漏れ聞こえる。
- 55 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月29日(月)23時04分06秒
- 「あっ!ん、だ、だめだってゆうちゃん・・・!今日はそんなんで来たんじゃ無いんだから・・・」
「ええやないか矢口・・・。なぁ・・・、大丈夫やって・・・」
「だ、だめだってば・・・!まだ、お昼だしさあ・・・・。んっ!」
「関係あらへんよ・・・。誰が見てるわけでもないんやし・・・」
「だめだって・・・。んっ、あはぁ!」
三人も見ているとは知らず、真昼の情事を続ける中澤と矢口
生唾を飲み込む辻。
真剣に見入る保田。
あきれ返る加護。
(す、すごいれすね・・・)
(う、うん・・・)
(・・・あほらし。こんなんが監督なんかい・・・)
「・・・なぁ矢口・・・」
「んっ・・・、な、なあにゆうちゃん」
「・・・ネコ耳付けてくれへんか・・・?」
(!!)
(!!)
(!!)
- 56 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月29日(月)23時05分55秒
- 押入の中で硬直する三人
(や、やすらさん・・・、なんでネコ耳をつけるひつようがあるのれすか・・・?)
(し、知らないわよそんなこと・・・!!)
(・・・あかん、こんなんが監督になったら・・・。あかん、絶対にあかん・・・)
(・・・・・・・・)
(やぐちさん、ねこじゃないれすよね・・・?
なんで、いきなりネコにならなくちゃいけないんれすか・・・?)
(・・・辻、世の中には知らない方が幸せって事もあるのよ・・・)
(・・・保田さん、こんなん見てまだ尊敬に値する人物だと思ってるん?)
大粒の涙を流しながら激しく首を横に振る保田
「やっ、やだよ・・・。なにそれ・・・。変態チック・・・」
「・・・・・・・」
押し黙る中澤。
「ゆうちゃん本気で言ったの・・・?まさか、冗談だよ・・・、ね?」
「・・・・・・・・」
中澤からの反応はまだ無い。
- 57 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月29日(月)23時06分53秒
- 「・・・ゆうちゃん?」
矢口が中澤の顔をのぞき込むと、中澤は満面の笑みをたたえて言った
「まさか、冗談やって冗談!うちが、そんな変態みたいなことするわけ無いやろ?
うち、これでも教師やで?教師がそんなアブノーマルなことしたら、
おてんと様にあえへんようになってまうやんか!心配せんとき!」
押入の中で保田は、一瞬でも尊敬する先生を卑下してしまったことを恥じていた
(ごめんなさい先生・・・。あたしは一瞬先生を疑ってしまいました・・・。
やっぱり先生は尊敬に値する人物です・・・)
「でなぁ、矢口。相談なんやけどな」
「ん?なあに?」
「・・・メイド服着てくれへん?」
- 58 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月29日(月)23時08分08秒
- 「!!!!!!!!!!」
矢口が驚きと嫌悪の表情を見せる。
驚いたのは矢口だけではない
(!!!!!!!!!!)
(!!!!!!!!!!)
(!!!!!!!!!!)
押入の中の三人も同じだった
(ネコさんのつぎはメイドさんれすか・・・?
ネコさんがいきなりメイドさんに・・・!?ののよくわかんなくなってきたれす・・・)
(あかん、こりゃほんまもんの変態や・・・)
(・・・・・・・・先生)
(・・・なぁ、保田さん、もう尊敬するとか言いださんよね・・・?)
激しく首を縦に振る
(・・・地球なんて、地球なんて滅びちゃえばいいんだ・・・・)
保田が吐き捨てるように呟いた
「やだよゆうちゃん!矢口そんなの着ないからね!」
「大丈夫だって!一回でええねん!なっ!頼む!着てくれへんか!
何故かちょうどうちにメイド服があんねん!」
「いやだってば!」
「大丈夫や!な、一回でええねん!ちょっと待っとき!確かこの辺りに・・・」
立ち上がりごそごそとタンスを探し始めた中澤
「・・・あれ?確かこの中にしまっといたんやけどな・・・。前にドンキホーテで買った奴が・・・」
「・・・・・・・」
- 59 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月29日(月)23時10分48秒
- 一方押入の中では
(・・・・?加護、その手に持ってる袋なに?)
加護の手にはドンキホーテと書かれた大きめのビニール袋が握られていた
(あ、ああ、これ?さっきタンス物色してるときとっさに掴んだんや。
保田さんに急に押し込められたから中身見てへんけど・・・)
(・・・・・!加護、中、見ていい?)
(・・・?ええよ、はい)
保田がおそるおそるビニール袋の中を覗いた。
(こ、これって・・・!)
(なんや、何入ってたんや?)
ビニール袋の中身を取り出し加護に見せる。
(・・・・・!!!メイド服やん!!)
(・・・・・なんであいぼんがメイドさんをもってるんれすか?)
(うちやない!うちこんなもん買わへんで!あいつや!あの変態のもんや!)
「ねー、ゆうちゃん。矢口もう帰るよー」
「ちょ!ちょと待っとき!もう少しで見つかるから!・・あれぇ、ここいらに閉まっておいたはずなんやけどなぁ・・・」
中澤は家をひっくり返すような勢いでメイド服を探し始めた
(くそ!どこや!どこに行きよった!?このときのためだけに買ったメイド服!
これじゃ矢口に「ご主人様ぁ〜、はにゃ〜ん」って言わせられへんやんけ!)
「ここか!?」
中澤が押入に手をかけようとしたその瞬間!
勢い良く押入の扉が勝手に開いた。
「!!??」
目の前の超常現象に、頭にクエスチョンマークの中澤。
- 60 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月29日(月)23時12分07秒
- 「先生・・・?お探しの物はこれですか?」
押入からゆっくり出てきた保田が卑下の眼差しで、中澤の目の前にメイド服をちらつかせる。
「あっ・・・、や、保田・・・。なんでお前がここにおんねん・・・・?」
中澤は体中に凍るような汗が流れるのを感じていた
「そんなことはどうでもいいじゃないですか・・・」
あまりの出来事に状況が出来ない中澤。いきなりの珍客におびえる矢口。
「先生、良かったですね・・・、メイド服が見つかって・・・」
あくまで淡々と話す保田。その後から加護と辻も押入から出てくる。
「お、お前ら・・・。ずっと・・・、見てたん・・・?」
「ええ、見てましたよ。一部始終。ネコ耳から何からね・・・」
中澤の頭での中で、想像していた楽しい人生設計図ががらがらと崩れていく。
(嗚呼、うちの人生どうなってまうねやろ・・・。細々と教師を続けて、
矢口が卒業したら結婚して、そして小さいながらも暖かいマイホームを築いて、
出勤前には行ってらっしゃいのチュー、で、帰ってきたらただいまのチュー、
それで夜は濃厚な・・・、あかん!こんな楽しい計画潰されてたまるか!)
「たっ!頼む!このこと誰にも言わんといてや!
頼む!ばらされたら、自分学校におれなくなってまう!」
- 61 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月29日(月)23時12分50秒
- 畳がすり切れるほど土下座して許しをこう中澤。
そんな師の姿を見ても表情一つ変えることなく、淡々と喋り出す保田。
「別に、ばらそうとなんて思ってないですよ・・・。
ただ・・・、一日も早く監督に復帰して欲しい・・・、あたしはそれだけです」
「甘いなぁ、保田さん。こういうときは尻の毛までむしり取らんと・・・」
横で加護が悪魔の笑いを浮かべながら茶化す。
「わかった!それだけでええんやな!復帰したる!今から復帰や!これでええな!」
「・・・ええ。あと、それと・・・。」
「・・・それとなんや!」
「そこの矢口って子。うちの学校の生徒ですよね。
野球部に入ってくれるように言ってくれませんか?」
「わかった!ほら矢口!自分もはよ謝り!」
「えー!なんでだよー!矢口なんにも悪い事してないぜー!」
「ええから!」
「やだよー!野球部なんてー!」
「ええから!!!!うちが社会的に殺される所なんやで!!」
「えー・・・」
「これで、決まりですね・・・」
- 62 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月29日(月)23時13分54秒
- その後中澤から大量の酒を貰ってアパートを後にした三人
外はもう夕日が射していた
保田と別れ、辻と加護の二人で帰路に就く
「ねぇ、あいぼん・・・・」
「なんや、ののちゃん」
「なんで、ネコ耳とかメイドさんのふくとかひつようなんれすか?」
「・・・・・・・」
「なかざわさんみたいなおとなになればわかるんれすか?」
「・・・・・・・」
「なんでなんれすか?」
「・・・・・・・」
加護の顔をのぞき込む辻
「ののちゃん・・・」
「なんれすか?」
「あんな大人になっちゃあかんよ・・・」
「????なんでれすか?」
「・・・・・・・ええから」
不思議そうな顔で何かを考える辻
「・・・ののちゃん、なんか食べたいもんないか?今日はうちがおごるで」
「え!ほんとれすか!?やったー!!」
「ほんまや・・・」
加護がニッコリと笑う
保田が財布を抜き取られているのに気付くのは、
憂さ晴らしに寄ったラーメン屋でしこたま食べた後のことである。
只今部員8人(+監督一人)
- 63 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年01月29日(月)23時16分26秒
- すみません、また長くなりました・・・。
読んでいただいてる方には、多大な迷惑をかけると思いますが、
よろしくお付き合いを・・・。
- 64 名前:名無し読者 投稿日:2001年01月30日(火)02時38分37秒
- いやいや、読んでる方は長けりゃ嬉しいですよ。
まあ、こっちで分けて読んでもいいわけだし、
作者さんがよければ、どんどん更新して笑かしてください。
- 65 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月01日(木)03時16分16秒
- 続き期待してます。
- 66 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月01日(木)12時18分42秒
- 本当に面白いですね。これからも頑張って下さい。
長くても全然オッケーですよ。
- 67 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月01日(木)22時20分18秒
- 遅くなりましたが、更新します。
>>64
そうですか。あんまり長いと「こんな長ぇの読んでらんねぇよ、バカ」って思うんじゃ
無いかと考えていたので。少し安心しました
>>65
有り難うございます。不人気ながらも細々と続けていこうかなと(w
>>66
はい、本当に励みになります。有り難うございます。
今回は少しシリアスな話になるかもです。
笑えるのを期待していた方本当にすみません。
- 68 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月01日(木)22時21分36秒
- 第五話 「さよならパステルバッヂ」 〜前編〜
今日の部室のメンバー:保田、後藤、吉澤
保田が部室の古ぼけた椅子にもたれかかりながら、
校内のスポーツ新聞を読んでいる。
「『駅伝部インターハイダントツ優勝。エース安倍、新記録連発で王者の貫禄』
かぁ・・・。ふーん、うちにもこんな人欲しいわねぇ・・・」
誰に言うわけでもなく一人呟く保田
「保田さん何読んでるんですか?」
暇を持て余せたらしく吉澤が声をかけてきた。
「え?ああ、新聞よ。校内新聞。駅伝部がインターハイで優勝したんだってさ」
「へー、うち駅伝部強いですもんねぇ」
「うちにもこんな頼れるエースが欲しいわぁ」
「うちにだっているじゃないですか。ほら、そこに」
といって吉澤が、部室の机でよだれを垂らしながら寝ている後藤を指さす。
「・・・後藤もねぇ・・・。球は確かに速いけど・・・。これ、頼れるように見える?」
「・・・確かに」
吉澤が後藤のほっぺをつねってみるが、一向に起きる気配がない
- 69 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月01日(木)22時22分10秒
- 会話が途切れ、後藤の寝息だけが部室に響く。
そんなとき吉澤が何かを思いだしたように言った。
「そう言えば保田さん。この安倍って人、ごっちんと知り合いみたいですよ」
「え?そうなの?」
「ええ、なんでも小学校のリトルリーグで一緒に野球やってたとかで」
「そうなの!?・・・後藤!ちょっと起きなさい!」
保田が後藤の体を激しく揺さぶるが、これも一向に起きそうにない
「起きなさい!後藤!こら!起きろ!」
「ダメですよ保田さん。ごっちんにはちゃんと起こし方があるんですから」
「・・・・・」
「ごっちーん、ご飯だよー!」
むっくりと起き出す後藤
「・・・ご飯、どこ?」
焦点の定まってないうつろな目でご飯を探す。
「はい」
そう言って吉澤が後藤の口にパンの耳を入れた。
「んむぐ・・・」
「こんなのがうちのエースなんだからねぇ・・・」
保田の肩にドッと疲れがきた。
- 70 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月01日(木)22時23分08秒
- やっと起き出した後藤に保田が尋問する。
「後藤、聞きたいんだけどさ。あんたこの安倍って子と知り合い?」
といって新聞を差しだす。
「ん・・・?ああ、なっちだぁ。うんうん、知ってるよー。」
「このさ、安倍って子野球やってたんでしょ?
あんた知り合いなら野球部に入ってくれるように言ってくれないかな?」
「えー、めんどくさいよー。それにー・・・・」
「それに?」
保田と吉澤が同時に聞き返す
「それに・・・、もうなっちは野球やらないと思うんだー」
「????」
保田と吉澤は顔を見合わせた
「なっちは確かに野球上手かったけど・・・、うーん」
後藤が珍しく神妙な顔つきをしている。
「野球上手かったって・・・、それじゃ、なおさらうちに欲しいじゃないのよ」
「あ、わかった!この安倍さんって人、野球より駅伝の方が大好きになったんだ!」
吉澤が答えを見付けて一人声が弾む
「うーん、多分なっちはまだ駅伝より野球の方が好きだと思う・・・。
時々バッティングセンターで見かけるし・・・」
よく分からないと言う顔の保田。
「じゃあ、なんでそんな野球好きがうちに入らないわけ?」
「多分、・・・昔のショックが大きいんだと思う・・・」
「昔?なんかあったの?」
「うん・・・、あのね・・・」
- 71 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月01日(木)22時24分18秒
- 〜そのころ、駅伝部では〜
「安倍先輩おつかれさまでーす!」
「はーい、おつかれさまー!気を付けて帰ってねー!」
汗をタオルで拭う安倍
「ふー・・・」
ふと足下を見下ろすと、どこから迷い込んだのか、
古ぼけたゴムボールが転がっていた。
拾い上げ、何か少し考え込んだ後
「やりますか・・・」
そう呟き、もう誰もいなくなった無人のグラウンドに
向かって投球フォームに入った。
姿勢を低く屈め、腕を十二分にしならせ、地を這うようにして球を投げる。
いわゆるサブマリン投法といわれるやつだ。
放たれたゴムボールは夕闇を切り裂くように、
轟音を轟かせながら一直線の弾道でグラウンドを横切っていく。
そしてグラウンドの隅のフェンスにボールが衝突した瞬間
パーーーンッ!
耳障りな破裂音を残して、ゴムボールが只のゴムに変わった。
(ボールを投げるたびにいつも思い出す・・・)
安倍はフェンスに落ちているゴムボールだった物を拾い上げた
(自分より速い球を投げられる人なんていないと思ってたあの頃・・・)
- 72 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月01日(木)22時25分15秒
- 7年前
リトルリーグの練習場
ズバンッ!
白球がキャッチャーミットに吸い込まれていく。
体格の良いキャッチャーの顔が蒼白になり、
厚めのグラブをはずして手首を押さえ、うめき声とともにうずくまった。
「おい!誰か救急箱もってこい!またキャッチャーが捻挫した!」
監督と思われる中年の男が周りの選手達に呼びかけた。
「またかよ・・・。これで今日3人目だぜ・・・。
これじゃ選手全員キャッチャーにしても足りないよ・・・」
せかされて救急箱を持ってきた少年がそう愚痴る。
安倍の球の速さは小学生離れしていた。受けるキャッチャーは全員手首を故障。
しかたがないのでシニアリーグから社会人をよんで、安倍の球を受けてもらっているぐらいだった。
- 73 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月01日(木)22時26分16秒
- その殺人的な球を投げ込む小さな少女に監督が近寄る。
「安倍は本当に速い球を投げるな・・・。小学生とは思えないよ・・・」
「えへへ・・・。誉められると照れるべさ」
「しっかし、あんな変な投球フォームでとんでもなく速い球投げるんだからなぁ・・・。
この小さいからだのどこにそんな力があるんだか・・・」
「えへへへ・・・・」
その時監督に一人の男が近寄ってきた。
「監督。入部希望の子がいるんですが・・・」
「ん、わかった。今行く。安倍、これからも期待してるよ。君はうちのエースなんだから」
「わかってるべさ。なっちより速い球投げる人なんかいないべさ。
なっちのせいでけがする人がでるのはいやだから、これからは手加減して投げるようにするべ。えへへ」
「ははは、練習はそれでも良いが、試合では本気で投げてくれよ。
期待してるからな、小さな大エースさん」
そう笑いながら監督は安倍の元を離れた。
そして、それが安倍にとって最後の、監督から誉められた言葉になった。
(そう、あいつが来るまでは・・・、わたしが・・・)
- 74 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月01日(木)22時26分48秒
- 「で、入部希望の子ってどれだい?」
「あの女の子です。名前は・・・後藤真希。希望ポジションはピッチャーですね」
「あの子に言っておけ、ピッチャーは諦めろって。うちには安倍がいる。それだけでうちは十分なんだ」
「いえ、何度もそう言ってるのですが・・・。どうしてもと聞かなくて・・・」
「・・・ふん。まぁ、いい。今ちょうど代わりに呼んだキャッチャーがシニアリーグから来た。
キャッチャーのウォーミングアップついでに投げさせてやれ」
「はい」
- 75 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月01日(木)22時29分47秒
- 安倍は受けるキャッチャーの到着を待っていた。
「早く来ないべか・・・。同年齢の子だとけがさせちゃいけないと思って、思いっきり投げれないべ。
社会人のお兄さん達なら思いっきり投げ込めるから楽しみだべさ。えへへ」
全力を出しきれることに胸が躍る安倍の耳に、救急車のサイレンの音が聞こえた
「????なんだべか?誰かけがでもしたんだべか・・・」
救急車が到着した頃には人だかりが出来ていた
「すいません、ちょっと通して下さい・・・」
人混みをかき分けて安倍が事の様子を見に来た
そこで安倍は自分の球を受けるはずのキャッチャーが
腕を押さえられて担架で運ばれていく様子を目にする。
「か、監督!こ、これ、どういうことだべか・・・!?」
「あ、ああ、安倍か・・・。
キャッチャーのウォーミングアップ用に新入部員の球を受けさせたんだが・・・」
「とんでもないところに投げられて、受けきれられなかったんだべか!?」
「いや・・・、球はミットに入っていったよ」
「じゃあ、なんで!?」
「・・・球が速すぎたんだよ・・・。
あれは、準備の出来てないキャッチャーが受けきれる速さじゃなかった・・・。そう、君よりも・・・」
「!!!!!!」
- 76 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月01日(木)22時30分26秒
- 監督の元に救護隊に付き添っていた男が帰ってくる
「監督!キャッチャーの容体ですが、救護隊の簡単な診断によると、右肩の脱臼それと・・・」
「・・・それと?」
「・・・手首が、完全に折れているらしいです・・・」
「!!!!!!!!」
それから、ピッチャーのポジションが安倍から後藤に代わるのはそう時間のかかることではなかった。
- 77 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月01日(木)22時32分37秒
- その後、突然の土砂降りに練習は中止となり、選手達は各々の家に帰っていった。
そんな中、一人グラウンドに立つ者がいた。
安倍である。
雨は降り続ける
悔しかった
悔しかった
悔しかった
幼い心に芽生えた絶対的なアイデンティティが音を立てて崩れていった。
土砂降りの中、安倍は一人練習場で声を出して泣いた。
「何で!何でなんだべ!!何であいつにはあんな速い球が投げれて!なっちにはなんで投げれないんだべ!!」
雨は小さい体を激しく叩く。
その小さい体はちいさく、とてもちいさく震え続ける。
雨は降り続ける
- 78 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月01日(木)22時34分10秒
- その日から安倍は普段天狗になってさぼっていた練習を再開した。
手の皮が剥けるほど。血豆が潰れるほど。後藤を倒すために。監督をもう一度振り向かせるために。
そして・・・
- 79 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月01日(木)22時38分45秒
- というわけで、前編でした。
後編は近いうちに更新したいと思います。
- 80 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月02日(金)07時56分06秒
- 面白いです。
>>79
マガジンの愛読者ですか?
- 81 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月02日(金)16時01分06秒
- 今のところのポジションは?
- 82 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月02日(金)22時44分26秒
- 今レス数を見たらそろそろ100行きそうですね。
こんなのが100とか200とか行っていいものかと、うーん・・・。
>>80
有り難うございます。マガジン愛読者と言うよりは木多康昭ファンです(w
>>81
とりあえず、今のところは
捕手 保田
中堅手 吉澤
右翼手 石川
投手 後藤
二塁手 加護
一塁手 飯田
左翼手 辻
遊撃手 矢口
監督 中澤 を予定してます。
ま、予定は未定って事で(w
- 83 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月02日(金)22時45分36秒
- 第6話 「さよならパステルバッヂ」 〜後編〜
「出来た・・・。出来た・・・、スライダー・・・」
何千回ボールを投げ込んだだろう、後藤に勝つために必死で覚えたスライダー。
今までの球速を殺さないよう細心の注意を払って完成させた高速スライダー。
低い姿勢から投げ出される球は、ホップしながらミットに向かっていき、
打者の手元で腹をえぐるように鋭く曲がる!
カミソリスライダーの名前に恥じない出来映えだった。
「これで・・・、勝てる!」
あの忌まわしき日から、初めて安倍の顔に笑顔が戻った。
- 84 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月02日(金)22時46分48秒
- 「監督!ごっちんと勝負させて下さい!」
後藤の投球を満足げに見ていた監督に安倍が詰め寄った
「ん、ああ、君か・・・。後藤は今来週の試合に向けて調整しているところだ。
残念ながら今は無理だね・・・」
「そんなこと言わないで勝負させて下さい!」
「ダメだよ・・・。君と勝負して後藤の体に何かあったら・・・」
監督が渋っていると、投球練習をしていた後藤が動きを止めて答えた
「あたしは別にいいですよー」
その表情は実に淡々としている
「ん、そ、そうか・・・。後藤がそう言うなら・・・。よし、いいだろう。
勝負しなさい・・・。ただし、後藤にけがなんかさせないように・・・」
安倍が小さく「はい」と答えた。
「勝負はお互い交互に球を投げてあって、相手の番の時はバッターボックスに入る。
先にヒット性の当たりを出した方が勝ちだ。・・・それでいいな」
「いいべさ」
「いいよー」
「では先攻安倍から!勝負開始!」
- 85 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月02日(金)22時47分37秒
- マウンドのプレートをならす安倍
(マウンドに立つの・・・、久しぶり・・・。
ただいま、帰ってきたよ・・・。もう、ここから、離れない・・・、離れたくない!)
キッとバッターボックスの後藤を睨み付ける。
後藤は神主打法のスタイルで安倍の球を待つ。
「いくよ!」
安倍はそう言うと、大きくワインドアップモーションに入った。
以前より姿勢を低くした超低空のサブマリン。
筋力トレーニングにより体が前よりしなるようになり、
より低い位置から球をリリースすることが出来るようになったのだ。
(初球から高速スライダー!!)
安倍の小柄な体から繰り出された白球は徐々にホップしながら後藤の元へ飛んでいく
(曲がれ!)
安倍がそう念ずるとボールの軌道がクッと曲がった
後藤は左足を踏み込み、完全にストレートの軌道でバットを振り下ろしている。
(もらった!)
安倍は一球目の勝利を確信した。
- 86 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月02日(金)22時48分09秒
- その時だった
後藤が踏み込んだ脚を軽く上げ、もう一度踏み込んだのだ。
(!!!!?)
後藤のこの打ち方は後期型振り子打法に近いものだろう。
これでバットの軌道は、完全にスライダーにロックオンされた
そして一気にバットを振り切る!
パーーーーーンッ!!
バットの真芯で捕らえられた高速スライダーは、無情にも綺麗な
放物線を描き虚空に消えていった。
(・・・・・・・・・)
呆然とする安倍。
渾身の高速スライダーをいとも簡単に弾き返されてしまった。
(なんで・・・?確かに曲がったはず・・・)
- 87 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月02日(金)22時49分36秒
- 「次はー、あたしが投げる番だよねー?」
後藤は放心状態の安倍を後目に、いそいそと次の準備に取りかかった。
「なっちは、次バッターだからバッターボックスに行ってねー」
後藤の声でやっと正気を取り戻した安倍は力無く「うん」と答えた。
後藤の球を待つ安倍。
(・・・大丈夫。ここで打てば次がある・・・。次こそは、完璧に曲がるスライダーで・・・!)
後藤が振りかぶった。
脚を高く上げる豪快なマサカリ投法だ。
鞭のような腕が撓った瞬間、剛球がバッターボックスの安倍めがけて飛び込んでくる。
(・・・打てる!完全なストレート!これなら打てる!)
安倍は力強く地面を踏み込み、グリップを堅く握りしめ渾身の力でバットを振るった。
そして安倍のバットは白球を捕らえ、一気に振り抜き、放物線を描いてスタンドへ・・・・
- 88 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月02日(金)22時50分23秒
入るはずだった。
現実の後藤の投じたボールは、安倍の目の前でカクンと落ち、
ワンバウンドしてキャッチャーミットに収まっている。
スイングの勢いで体を一回転させてしりもちを付く安倍。
(・・・ボールが、消えた!?)
一瞬の出来事に何が起こったのか理解出来なかった。
「フォークです」
後藤の球を受けたキャッチャーが安倍にそう呟いた
「これで勝負ありだな・・・。後藤、お疲れさま」
事の一部始終を見ていた監督が後藤に声をかけた
「はーい。今日は疲れたんでもう帰って良いですかー?」
「ああ、許そう。帰って十分肩を休めるように・・・。」
「わーい、やったー!」
後藤が無邪気にはしゃいでる傍らで、安倍は膝をついていた。
(負けた・・・?まさか・・・。そんな・・・、そんな・・・。そんなのは・・・。)
- 89 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月02日(金)22時51分07秒
- 後藤と監督が帰ろうとした瞬間、安倍は土下座して大声で二人を呼び止めた。
「・・・待って下さい!もう一度勝負させて下さい!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「もう一度!さっきは曲がるはずのスライダーが・・・!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「だから!もう一度だけ!ごっちんと!」
「・・・・・・」
沈黙
重苦しい雰囲気の中後藤が口を開いた
「顔を上げて、なっち・・・・」
後藤が少しはにかみながら膝を屈めていった
「・・・ごっちん!お願い!もう一度!」
安倍が必死の形相で頼み込む。
- 90 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月02日(金)22時51分53秒
- 「なっち・・・」
先ほどの笑顔とはうって代わって無表情になる後藤
「見苦しいよ」
吐き捨てるように言うと後藤はきびすを返して足早に安倍の元を去った。
そして、安倍はもう2度と練習場に姿を見せることはなかった。
グラウンド
今や「駅伝部」の安倍は、拾ったゴムボールを強く握りしめた。
「もう、野球のことを考えるのはやめよう・・・」
安倍はそう呟くと荷物をまとめて帰る支度を始めた。
帰り道、校舎に貼られた「野球部員急募!」のポスターを見付け、安倍はすこし自傷気味に微笑んだ。
(さようなら、私のピッチャーズマウンド・・・・)
- 91 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月03日(土)03時32分51秒
- シリアスもなかなか良いですよ。でも、なんだか後藤怖い。
ところで >>82 のポジション、
保田はマスク無し?ガメラだから(笑
- 92 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月03日(土)07時58分25秒
- 安倍が入ったら、投手はどうなるんだろ?
期待してます。
- 93 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月03日(土)18時26分13秒
- おお、なんか後藤かっこいい!
- 94 名前:やがて鐘がなる 投稿日:2001年02月03日(土)20時30分39秒
- おもしろいっす。
さよならパステル・バッジって、ひょっとしてオザワからですか。
あれは泣けます(勘違いだったらごめんなさい)
- 95 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月03日(土)22時01分07秒
- >>94
オザワというより、フリッパーズ・ギターじゃないの?
- 96 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月03日(土)23時17分24秒
- >>91
あんまりシリアスなのは好きじゃないんですけどね・・・。
「てめぇ!お高く止まりやがって!」みたいな(w
後藤が怖いのはまぁ、勢いでそうなっちゃった感じです。
保田は・・・、まぁ、そんなところです(w
>>92
今悩んでます(w
>>93
後藤こういうキャラにしていいのかなぁとか思ってみたり・・・。
>>94-95
はい、フリッパーズ・ギターからです。
とりあえず一部の人だけが気付いてくれたらいいなぁ、とか思ってたんですけど
結構気付いてくれるもんですね。ちょっと嬉しいです。
と言うわけで次もパーフリネタです。
- 97 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月03日(土)23時20分45秒
第七話 「フレンズ・アゲイン」
「はー・・・、そんなことがあったのねー」
保田が深く息を吐き出しながら、後藤の話に答えた
「だからねー、もうなっちは人前で野球はしないと思うんだよねー」
寂しげに呟く後藤
「ってゆうかさ、ごっちんってそ〜と〜凄い人だったんじゃないの?」
吉澤が感心しきりの顔で後藤の顔を見る。
「うーん、そんなんでもないけど・・・」
照れ笑いする後藤に、保田が詰め寄る。
「でもさ、後藤。その安倍さんってまだ野球への未練が断ち切れてないわけでしょ。
じゃあ、ウチの部にも入ってくれる可能性はあるって事よね!」
「まぁ、ないとは言い切れないけどー・・・」
「よし決まり!明日その安倍さんの所に行くよ!」
吉澤がきょとんとした顔をしている。
「安倍さんのとこに行くって・・・、何しに行くんですか?」
「決まってるじゃないのよ!勧誘よ勧誘。スカウトしに行くのよ」
「え〜、無理ですよ〜。だって安倍さんもう駅伝部員ですよ?今更野球部なんか・・・」
「うっさい!駅伝部はインターハイが終わって、
これから体力トレーニングの時期に入るの!だから一時的に野球部に入ってもらうだけよ!」
「ああ!そうか〜。保田さんそ〜と〜頭良いですね〜」
「ふふん。伊達にキャプテンやってないわよ」
浮かれる保田と吉澤を後目に後藤は一人パンの耳をかじっていた。
「多分、簡単には入ってもらえないと思うんだけどな〜・・・」
本日10枚目のパンの耳が後藤の胃袋の中に収まった。
- 98 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月03日(土)23時21分50秒
- 次の日
駅伝部部室前
大きく「駅伝部」と書かれた部屋の前で保田、後藤、吉澤の3人が立っている。
「あのさぁー圭ちゃん、本当に勧誘するのー?」
後藤が怪訝そうな顔で保田に尋ねる。
「当たり前でしょ!駅伝部のエースで野球経験有り、
しかも後藤並の球を投げられるって聞いて、はいそうですか、って見逃すわけないでしょ!バカ!」
「えー・・・」
複雑な表情を見せる後藤
「いいから、速く入るわよ。失礼しまーす・・・」
駅伝部の扉を勝手に開けてズカズカと入る保田と吉澤。
遅れて後藤が躊躇いがちに入ってくる。
しかし、部室の中に人の姿はなく閑散としていた。
「あれ?誰もいない・・・」
「ほらー、圭ちゃんやっぱ帰ろうよー」
どこまでも乗り気じゃない後藤
「うるさいわねー、これあげるからちょっと待ってなさいよ」
保田はポケットからネコが書かれた10円ガムを取り出し後藤に手渡した。
「うー・・・」
しぶしぶ受け取る後藤。
「しっかし、凄いですね〜この部室。賞状とかトロフィーでいっぱいですよ」
吉澤が駅伝部の部室の壁をうらやましそうに眺める。
「そうねー、壁一面にジャニーズのポスターが貼ってあるどっかの部とは大違いね・・・」
- 99 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月03日(土)23時22分34秒
- 「・・・保田さん、これ、ちょっと貰っていきましょうか?」
「え?」
吉澤からの突然の提案にキョトンとなる保田。
「これだけあるんだから、一個くらい貰ってっても大丈夫ですって!」
トロフィーや賞状を手当たり次第にバックに詰め込む。
「ちょ!ちょっと!吉澤!やめなさいって!後藤!ちょっとなんか言ってやって!」
「えー・・・、めんどくさーい」
必死で止める保田。傍観に徹する後藤。
「えへへ〜、金ぴかに光っててかっこいいっすよね〜」
「バカ!吉澤やめなってば!!」
- 100 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月03日(土)23時23分07秒
- 吉澤が保田の制止を振り切り、3つ目のトロフィーをバックに詰め込んだその時だった。
「あんた達!なにやってんだべさ!」
部室のドアが勢いよく開き、安倍が般若の形相で入ってきた。
固まる保田と吉澤。
「今あんた達トロフィー盗もうとしたべ!」
「・・・い、いやですね、これには深い事情がありましてですね・・・」
吉澤の額から冷たい汗が流れ落ちる。
「言い訳なんか聞きたくないべさ!先生に言いつけてくるべ!」
「・・・!!い、いや、ちょっと、それは・・・」
保田が必死に弁明しようとするが、言葉が思い浮かばない。
- 101 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月03日(土)23時24分36秒
- (保田さん!これ、そ〜と〜やばい状況っすよぉ・・・)
(なに言ってんのよ!元はといえばあんたが勝手な真似するからでしょ!!)
(じゃあ、なんで保田さん止めてくれなかったんですか〜。非道いじゃないっすかぁ〜)
(止めたわよ!暴走して手が付けらんなくなったのはどこの誰よ!)
怒る安倍を後目に、お互いの襟足を掴んで取っ組み合う二人。
安倍が我慢しきれないといった感じで口を開く
「なにやってるべさ!もう怒った、べ・・・・・・?ん・・・?」
激怒していた安倍の口調が下がった。そして何かを見付けたように動きが止まる。
「・・・ごっちん?そこにいるのはごっちんだべか・・・?」
部室の隅で、興味なさ気に10円ガムを膨らませていた後藤に安倍が話しかける。
「・・・うん、そうだよ。久しぶり・・・」
少し気まずそうにはにかむ後藤。
「・・・・・・・・・久しぶりだね・・・。小学校以来だべか・・・」
「・・・うん」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
沈黙が流れる
- 102 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月03日(土)23時25分15秒
- 「・・・ごっちんは、こいつらの仲間なんだべか・・・?」
取っ組み合ったまま固まった二人を指さしながら安倍が後藤に尋ねた。
「・・・うん、そうだよ。野球部の、仲間・・・」
安倍の体が「野球」という単語にピクンと反応した。
「・・・ごっちん、まだ野球続けてたんだね・・・」
安倍の問いかけにこくんと首をうなだれる後藤。
「・・・で、ごっちんは今日はなんのようだべか・・・?
まさか、トロフィーを盗みに来た訳じゃないべ?」
皮肉っぽく後藤に語りかける。
「うん・・・、今日はね・・・」
「なんだべか?」
「今日は・・・」
そこで言葉が止まってしまう。
自分のせいで野球を辞めた人間に、
「野球部に入ってくれ」などと言えるほど無神経ではなかった。
- 103 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月03日(土)23時27分02秒
- そんな複雑な空気の中、安倍が口を開く。
「野球部に入ってくれって言いに来たんだべ・・・?」
安倍の突然の一言にとまどう3人
「・・・なっち、何でわかったの?」
「あれだけ校舎に部員募集の張り紙が貼ってあったら誰でも気が付くべさ」
少し苦笑する安倍。
「・・・で、どうなの?入ってくれるの?」
後藤が安倍の顔色をうかがう様に聞いた。
安倍の笑い顔が一瞬にして怒張した顔になり、安倍が後藤をキッと睨み付けると
「・・・ごっちん、本気で言ってるんだべか?・・・冗談はよして欲しいべ。なっちは野球と縁を切った・・・、
それはごっちん自信が一番よ〜く知ってるんじゃなかったんだべか?」
と過去を思い返すように皮肉を後藤にぶつけた。
「・・・・・・・・・」
うつむいたまま押し黙る後藤。
「・・・ごっちんがそこまで頭の回らない人だったとは思わなかったべ。・・・早く出てって欲しいべさ・・」
後藤は肩をすぼめ小さくなって、鋭いナイフのような安倍の言葉を受け止めていた。
「・・・そして、もう二度と・・・」
安倍の体が小刻みに震える。
「・・・もう、二度と、なっちの前で、軽々しく「野球をしよう」なんて、
言うな・・・だ・・べ・・・」
安倍の頬を涙が伝う。
声にならない声が、駅伝部部室を包んだ。
壁のトロフィーは、夕日に照らされて憎たらしいほどに光り輝いていた。
- 104 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月03日(土)23時29分06秒
- 安倍の嗚咽が部室に響く。
うつむいたまま黙りこくる後藤。
深刻なこの状況に戸惑いを隠せない吉澤。
そんな中、沈黙を突き破る様に保田が口を開く。
「・・・安倍さん・・・。あんた、それ、逃げてるだけだよ・・・」
「!?」
保田のいきなりの発言に凍り付く3名
「さっきから聞いてればくだらないことをいけしゃあしゃあと・・・。
あんたは全ての責任を後藤に押しつけて!それで自分は悲劇のヒロイン気取りかよ!
あんたが野球辞めた理由になんで後藤が関わって来るんだよ!?自分で勝手に限界感じて!
自分で勝手に辞めてっただけだろ!今泣くぐらいなら、何でその時もっと後藤に勝つ努力しないんだよ!
本当に自分勝手なんだよあんたは!!」
保田が顔を真っ赤にして一気にまくし立てる。
「保田さん・・・、それはちょっと・・・」
吉澤が保田をなだめようと必死にフォローに入る。
しかし保田は吉澤の制止を振り切り、安倍に向かって苛立ちをぶつけた。
「いいか!野球から逃げてたんじゃ、あんたはこのままじゃ一生後藤に負けたままなんだよ!!
駅伝でどんないい成績残したって!あんたと後藤の距離は一歩も縮まんないんだよ!!悔しくないのか!?
見返してやろうって思わないのか!?それでもあんたいいのか!?なあ!どうなんだよ!
どうなんだって聞いてんだよ!答えろよ!答えてくれよぉ!」
安倍の襟足を掴んで大きく2,3回揺らす。
安倍は保田から目線を反らし、決して合わせようとしない。
- 105 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月03日(土)23時31分00秒
襟足を掴んだまま、保田は視線を反らし続ける安倍の横顔を凝視した後、掴んでいた手をふっと離した。
そして安倍を見下ろすように保田は口を開いた
「・・・わかったよ。・・・いいよ、もう。勝手にあんたに期待したあたし達が馬鹿だった。
・・・あんたみたいな臆病者、ウチの部に必要ない・・・」
そう言うと保田は後藤と吉澤の方を振り返る
「・・・帰るよ。ここに、もう用はない・・・」
「は、はい・・・」
いそいそと帰り支度を始める吉澤。何か言いたげな後藤。
そんな後藤の肩を叩き、目で「早くでていけ」と合図する保田。
無言で部室を出る3人
駅伝部部室の扉が大きな音を立てて閉まった。
- 106 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月03日(土)23時31分55秒
- 帰り道
下校する生徒ももう少なく、誰もいない渡り廊下を歩く三人
吉澤が心配そうに保田に尋ねる
「保田さん・・・、いいんですか?あんなこといっちゃって・・・」
「・・・・・・」
反応がない。
「・・・保田さん?」
「・・・やっちゃったぁ・・・」
吉澤が保田の顔を覗くと、先ほどの鬼のような形相はなく、今にも泣きそうな情けない顔をしていた。
「どうしよぉ、吉澤ぁ・・・。あたし勢いでめちゃくちゃな事言っちゃったよぉ・・・。やばいよぉ・・・」
「はぁ!?保田さんどうしたんですか?さっきはあんなに強気だったのに?」
「あんな事言うつもりは無かったんだよぉ・・・。でもね、でも・・・、
こう、つい・・・。やばいよぉ・・・、後一人なのにぃ・・・」
崩れ落ちる保田を見て、吉澤が落胆の顔で深いため息を付く
(はぁぁぁぁ・・。一瞬でもこんな先輩を尊敬したあたしが馬鹿だった・・・)
- 107 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月03日(土)23時32分57秒
- 「でもー、さっきー、圭ちゃんかっこよかったよー」
後藤がガムを噛みながら、少し照れたように言った
「あたしー、ちょっと圭ちゃんのこと見直したよー」
「バ、バカ・・・、そんな事言ったら照れるじゃないのよ・・・」
耳まで真っ赤にして照れる保田
「でも、どうします?これでまた部員の当てがなくなっちゃいましたよ・・・」
「うーん・・・、どうしようねぇ・・・」
「まぁ、いいじゃん。明日考えよーよ」
後藤がニッコリ笑う
保田も吉澤もその笑顔を見て、つられて笑った。
「そうね、明日のことは明日考えようか」
「明日は明日の風が吹くんですよ〜。えへへ〜」
三人は笑った。
もう夕日は落ち、夕闇が3人を包み始ている。
そして三人は「明日の風」が吹いているのを、体のどこかで感じていた。
依然部員8名(+監督一人)
「ところで吉澤・・・」
「はい?」
「トロフィー、返してきたよね・・・?」
「・・・あっ!!」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
- 108 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月03日(土)23時34分39秒
- と言う感じで今日はここまでです。
感想なりなんなりありましたら、気軽に書いていただけると幸いです。
- 109 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月04日(日)09時16分15秒
- 頑張ってくださいねー、いつも見てますよー。
福田は出ないんですか?
- 110 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月04日(日)09時45分08秒
- 初めて読んだけど、後藤が酷い扱いで良かったです
- 111 名前:名有り 投稿日:2001年02月04日(日)12時40分35秒
- 始めてカキコします。
いつも読ませてもらってますけど
たくさん書いてくれるから読みごたえがあっていいっすね。
>110
なんか笑っちゃった
- 112 名前:あるみかん 投稿日:2001年02月04日(日)23時46分23秒
- 全体的に漂うシュールな笑いが最高。
楽しみにしてます。
- 113 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月05日(月)00時23分55秒
- >>109
はい、有り難うございます。頑張ります。
福田だったり市井だったりは、どっかで出そうかなぁとは思っているのですが
その辺りを出すとどうしても真面目な話になりそうな気がして・・・。
>>110
・・・どうも(w
意識してなかったんですけど、酷い扱いだったみたいで。
後藤はこれからもこんな感じで行くと思います(w
>>111
有り難うございます。
前にも書いたんですけど、あんまり多く書くと読んでくださる方に負担かけるかなぁ
とか思ってたんですけどね。
そう言って下さると嬉しいです。
>>112
有り難うございます。
あるみかんさんの作品も読まさせて頂いてます。面白いですね。
僕にはああいう作品は無理なので本当に続き期待してます。
- 114 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月05日(月)00時24分50秒
- 第八話 「フレンズ・アゲイン・アゲイン」
安倍の自宅
「弱気は最大の敵」
自分の部屋の壁に書かれた張り紙を安倍は凝視した。
「弱気は最大の敵、か・・・」
ベットにゴロンと横になり、天井を見上げる。
「・・・・・・・・・・」
部室
今日もやる気のない部室。
後藤が惰眠をむさぼり、保田が愛用のカメラの手入れをし、
辻が部室のテレビでドラクエ7をやっている。
そんな辻を見て保田が話しかけた
「・・・ねー、辻」
「なんれすか?」
振り返ろうともせず返事をする辻。
「お腹減った。なんか食べ物買ってきて」
「いやれすよ。ののは石版探しにいそがしいのれす」
「・・・じゃあ、これからなぞなぞ出すから、それに答えられなかったら買ってきて」
「なぞなぞれすか?いいれすよ。なぞなぞならとくいれす」
- 115 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月05日(月)00時25分33秒
- 「じゃあ、第一問」
「はい」
「パンはパンでも食べられないパンはな〜んだ」
「・・・やすらさん、ののをばかにしてるんれすか?ののはなぞなぞマスターれすよ?」
「良いから早く答えて」
「そんなのフライパンにきまってるのれす!」
「ブー、不正解」
「!?なんでれすか!たべられないパンはフライパンにきまってるのれすよ!」
「残念でした。答えはカレーパン」
「カレーパン!?なんでカレーパンなんれすか!?たべれるじゃないれすか!」
「辛いから」
「か、からいから・・・?」
「辛いから。あたし辛いの嫌いなのよ」
「・・・それがりゆうれすか?」
「そうよ」
「やすらさん・・・これなぞなぞじゃないれすよ。きらいなものあてクイズれす・・・」
「はいはい、つべこべ言わないで早く買ってきなさい」
と言って辻の手に強制的に1000円札を握らせる保田。
「ひきょうれす!ひきょうれす!やすらさんはひきょうものれす!」
「負け犬の言い訳聞いてるほどあたしは暇じゃないの。ほら、さっさと買いに行く」
聞く耳持たずと言った保田に、仕方なく折れる辻。
「・・・わかったのれす。で、なにかってくればいいんれすか」
「そうね・・・、カレーパン」
「!!!!?」
保田の一言に驚愕する辻。
(こ、このひと、ほんもののばかれす・・・!さっきじぶんできらいっていったのに・・・!)
「何?早く買ってきなさいよ」
「・・・はい・・・」
何を言っても無駄だと感じたのか、辻は渋々部室を離れた。
「ちゃんとお釣り返すのよー」
部室を離れる間際の保田の一言は辻の耳には届いていなかった。
- 116 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月05日(月)00時27分31秒
- 売店からの帰り道
保田の「お釣り返して」の言葉を無視して、大量の紙袋を下げ部室に戻ろうとする辻。
「あのくそがめら・・・。ぜったいゆるさんのれす・・・!こうなったら、あいぼんかなかざわさんにそうだんして、いっぱつぶんなぐってもらわないとのののきがおさまらんのれす!!ぶつぶつ・・・」
辻が一人呟きながら歩いているとと、渡り廊下に貼ってある部員募集の張り紙を見ている一人の少女に気付いた。
俊敏に少女に近づき、すかさず勧誘を始める辻。
「ちょっとおねえさん!もしかしてにゅうぶきぼうなんれすか!?」
「いや、そういうわけじゃ・・・」
「はいるならいまのうちれすよ。いまはいるとなんと!このうまいぼうをぷれぜんとしちゃうのれす!」
紙袋からうまい棒(メンタイ味)を取り出し、誇らしげに掲げる辻。
「い、いらない・・・」
「いらないんれすか!?よのなかにうまいぼうにつられないにんげんがいるなんて・・・、
けいさんがいれした・・・。じゃあ、このフィリックスくんガムまでつけちゃいます!これでどうれすか!?」
そう言うと今度は当たり付きの10円ガムを紙袋から取り出した。
「それも、いらない・・・」
「!!え!いらないのれすか!?このガムはあたりくじつきれすよ!
あたったらもういっこもらえるのれすよ!それでもいらないのれすか!?」
「うん・・・」
返答に困る少女。
- 117 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月05日(月)00時28分41秒
- (このくそあま、てこでもうごかないきれすね・・・。
こうなったらきょうせいてきにぶしつにつれていくのみれす・・・。
ぶしつにつれていけば、やすらさんのかおのこわさに、おもわずにゅうぶしてしまうにちがいないのれす・・・。けけけ・・・)
「まぁまぁ、ちょっとはなしくらいいいじゃないれすか。ぶしつもちかいしそこでおはなしするのれす」
少女の腕を引っ張り、強制的に部室に連行していく辻。
「あっ、ちょっと待って・・・!」
「いいじゃないれすか。はなしをきくくらい。けけけ・・・」
「ちょ、ちょっと!」
「へへへ、だいじょうぶれすよ・・・、
ふくぬいでまたひらけなんてことはいわないれすから。けけけ・・・」
敏腕AVスカウトの才能を遺憾なく発揮する辻。
現行の野球のルールでは、出場選手にその才能が求められるポジションは、まだ無い
- 118 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月05日(月)00時30分02秒
- 再度部室
「おっそいわねー、あのおもらし馬鹿・・・」
辻が部室を出てもう1時間になる。
保田の怒りと空腹も限界に達していた。
そんな保田の隣では、後藤が穏やかな寝顔で心地よい寝息を響かせていた。
「・・・この居眠り淡水魚は・・・」
部室に来てからずっと眠り続ける後藤を見て深いため息を付いたその時、
部室の扉が勢いよく開いた。
「ただいまれす!」
辻が満面の笑みとともに部室に飛び込んで来る。
「遅いっ!あんたどこで油売ってたのよ!」
「まぁまぁ、そんなにおこらないでほしいれす。の
のはしんにゅうぶいんをかんゆうしてきたのれすよ?」
「・・・はぁ?あんたが、新入部員を?あんた夢見てんじゃないの?」
「ののをばかにしないでほしいのれす!ちゃんとかんゆうしてきたのれす!!」
「はいはい、寝言は寝てから言いましょうね、希美ちゃん」
辻の言うことなど全くあてにしていない様子の保田。
「むー!!もうおこったのれす!そんなこというならしょうこをみせてやるのれす!」
「出せるもんなら出してみなさいよ。どうせ、ナゴヤ球場から使い古された宇野君人形でも持ってきたんでしょ?」
保田の例えはとても古い。
「そんなんじゃないれす!!ほんとにしょうこをみせてやるのれす!・・・ほら、さっさとはいってくるのれす!!」
辻が部室の外に向かってそう言うと、一人の少女がおずおずと部室の中に入って来る。
「・・・・!!!」
その少女の姿を姿を見て絶句する保田。
「ほら、はやくじこしょうかいするのれす」
辻に促されて、少女は躊躇いながらも口を開いた。
- 119 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月05日(月)00時31分03秒
「・・・安倍、なつみです・・・」
その名前に部室が固まった。
「辻・・・、あんたとんでもない人連れてきたわね・・・」
「????」
金縛りにあったように硬直する保田と、保田のいっている意味が理解できない辻。
「なんでれすか?あべさんじゃだめなのれすか?」
「・・・ダメって、いや辻、そういうことじゃなくてね・・・」
「????」
さっぱりわからないといった表情の辻。
- 120 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月05日(月)00時32分09秒
- 部室にイヤな空気が流れる中、保田が意を決して安倍に尋ねた。
「安倍さん・・・、入ってくれるの?」
安倍が少しうつむいた状態で口を開く
「入るなんて言った覚えないべさ・・・。
今日ここに来たのは、なっちは臆病者なんかじゃないって事を証明しに来ただけだべさ・・・。」
「そう・・・」
保田は少し残念そうな顔を見せた。
「で、証明するって、どうやって証明するのかしら?」
何か吹っ切ったように高圧的な態度で安倍に尋ねる。
「・・・ごっちんと・・・、ごっちんと勝負させて欲しいべさ・・・」
「それって、野球で・・・?」
コクリと頷く安倍
「あたしは別にかまわないけど・・・。後藤がなんて言うか・・・」
「いいよ」
いつの間にか起き出していた後藤が安倍の問いに答える
「後藤・・・、起きてたの?」
保田の言葉を無視して、後藤は安倍に語りかけた
「いいよ、なっち。その勝負受けるよ・・・。でも、その代わり・・・」
「その代わり・・・?」
安倍がごくりと唾を飲む。
「あたしが勝ったら・・・、野球部に入ってくれない?」
安倍は少し考えた後
「いいべさ・・・」
と答えた。
七年越しの対決が再び始まる。
安倍は右手で拳を作り、堅くぎゅっと握った
(私勝負する・・・!もう、逃げない!)
「あのー、ののなんのことかさっぱりわかんないんれすけど・・・」
- 121 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月05日(月)00時36分10秒
- ということで今日はこんな感じで。
では、また。
- 122 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月05日(月)01時32分32秒
- おもしろいです。
タイトルの「フレンズ・アゲイン」ってなちごまの間にライバルを越えた友情が
存在するって事なのかなぁ?
続きがホントたのしみです♪
- 123 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月05日(月)08時01分14秒
- >>122
北斗の拳みたいなのじゃないかな?
石川の出番が少ないな…。
- 124 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月05日(月)15時58分14秒
- 野球経験のあるのって、保田、後藤、加護、安倍だけですか?
福田に出てきて欲しいな。
- 125 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月05日(月)19時34分49秒
- ごまなちが見てみたい。
- 126 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月06日(火)23時52分03秒
- 更新のペースはなるべく速い方がいいんでしょうけど、早いとちょっと疲れますね・・・。
>>122
有り難うございます。
えー、題名はフリッパーズ・ギターの曲から取りました。
解釈というかは、123さんが言っているように「強敵」と書いて「友」と呼ばせるような感じです(w
ま、これからどうなるか自分にも分かりません(w
>>123
石川メインの回も必ず書きますので少々お待ち下さい。
>>124
そうですね。その4人です。福田もそのうち出したいとは思っているのですが・・・。
多分そのうち出すと思います。予定は未定ですけど(w
>>125
恋愛物って事ですか?
あんまり得意じゃないんですけどねぇ・・・。
まぁ、こんな感じでリクエストがありましたら何なりと。
出来るだけ要望には応えていきたいとは思いますが・・・。
- 127 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月06日(火)23時53分07秒
- 第九話 「スライド」
グラウンドにて
グラウンドには保田、後藤、辻、そして安倍の4人が立っている。
安倍と後藤の顔をみて保田が口を開いた。
「・・・ルールは7年前と同じ。一球ずつ投げ合って先にヒット性の当たりを出した方の勝ち。これで良いわね?」
同時に頷く安倍と後藤。
「じゃ、順番はどうする?」
「ここ、あたしのホームグラウンドだし、キャッチャーは圭ちゃんがやるから、順番はなっちの好きな方でいいよー」
「じゃあ、なっちが先攻を取るべさ・・・」
「じゃ、安倍さんが先攻で。安倍さんあたしキャッチャーやるけどそれでいい?」
安倍がコクリと頷く。
「よーし、じゃ、試合開始!」
- 128 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月06日(火)23時53分46秒
- バッターボックスに立ち、素振りを始める後藤。
横でスイングを見ていた保田が話しかける。
「後藤・・・、あんた勝つ自信あんの?」
「うーん、わかんない・・・」
「わかんないって・・・、あんたねぇ・・・」
どこまでも脳天気な後藤に、呆れる保田。
「でもね、圭ちゃん」
「・・・ん?」
「あたし、負ける気もしないんだ」
安倍はピッチャーマウンドに立ち、バッターボックスの後藤の姿を睨み付けている。
(なっちは・・・、保田さんの言う通り逃げていたのかもしれない・・・。
野球から逃げて、ごっちんから逃げて、そして自分から逃げて・・・。でも・・・、もう逃げない!)
- 129 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月06日(火)23時54分54秒
- 「プレイボール!」
保田の声がグラウンドに響くと同時に、安倍はワインドアップモーションに入った。
(いくよ、ごっちん!)
体を抱え込むようにして丸め、
腰を落とした低い姿勢から腕を大きく撓らすサブマリン投法独特の投球フォーム。
地面ギリギリを安倍の華奢な腕が這い、
極端に遅いリリースポイントでボールが安倍の腕から離れる。
(あれが・・・、サブマリン・・・)
流水の如くしなやかなそのフォームは、初めて見る保田に強い衝撃を与えた。
低い地点から放たれたボールが、凄まじいスピードで徐々にホップしながら後藤の待つバッターボックスに飛び込んでくる。
(なっちがあの日を未だに引きずっているなら高速スライダー・・・。
吹っ切ったのならストレート・・・。今のなっちは・・・、ストレート!)
後藤はそう確信し、左足を強く踏み込み一気にバットを振り下ろす!
(いける!!)
後藤が芯で捕らえたと思った瞬間、目の前からボールが消えた。
(!?)
ボールは後藤の目の前で落ち、バットは悲しく空を切る。
ボールの急激な軌道に処理しきれず後逸してしまう保田。
- 130 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月06日(火)23時55分39秒
- 「なっち・・・、今のは・・・」
後藤が驚嘆の顔で安倍に尋ねた。
「フォークだべ・・・」
「・」
(フォーク・・・。あの日なっちに勝った球・・・。それを・・、なっちが・・・・)
「サブマリンでフォーク・・・。何者なの、あの子・・・?」
保田が信じられないと言った顔でキャッチャーマスクを上げる。
(これで、あの日のごっちんに借りは返したべ・・・)
安倍はエースだった頃の自分を思い出しいていた。
すこし涙が出た。
- 131 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月06日(火)23時56分52秒
- 今日は短いなぁ・・・。
短いけど今日はこれで勘弁って事で・・・。すいません。
- 132 名前:ま〜 投稿日:2001年02月07日(水)01時10分38秒
- すごい面白いっす!!野球好きにはたまらない!!
随所に出てくる細かいネタがいいっすね〜!!
それにサブマリンでフォークとは・・。スカイフォークっすかぁ?
- 133 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月07日(水)17時38分00秒
- す、すげえ〜〜
- 134 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月07日(水)20時43分54秒
- 安倍に負けて欲しくないけど、野球やってもっと出番欲しい複雑な気持ちになりました。
- 135 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月07日(水)22時10分44秒
- そうかな〜、ここですんなり安倍が勝って安倍がエース復活っていうのもちょっと・・・。
ライバルなちごまのこれからが楽しみ。
- 136 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月07日(水)23時26分35秒
- 後藤はやっぱ天才な選手でいてほしい
- 137 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月08日(木)00時57分28秒
- 更新の時間でーす。はぁ、疲れた。
>>132
有り難うございます。
そう言えば里中の存在を忘れてました。下手投げでフォークってスカイフォークですね(w
気が付かなかったです。
>>133
すごいですか(w
誉め言葉ととってよろしいのでしょうかねぇ(w
>>134
それは安倍のことですか?すいません、あんまり出す機会無かったもので・・・。
>>135
どうなんですかね?かなり自分でも行き当たりばったりで書いてますからねぇ。
かなり安易な話にはなってると思うんですけど・・・。
安倍と後藤はライバルって設定で行くと思います。
>>136
こっちもそう言う設定では書いているんですけどね。どうも、うまく行かないと言うか。
なんかここ、自分の愚痴コーナーみたいになってイヤだな・・・。
えー、で、今回の話なんですが、今回はなっちファンから反感買うような話になってるかもしれません。
なっちファンだけじゃなくいろいろな方からも。
とりあえず注意書きでした(w
- 138 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月08日(木)00時58分54秒
- 第十話 「青春は一度だけ」
(あの日と、全く逆だ・・・)
マウンドに向かう際、後藤は少し昔のことを思い出した。
(昔は・・・、昔あたしは・・・)
後藤は空を見上げて、軽く首を振った。
(・・・ううん、昔のことは、考えるだけ面倒臭くなるよね・・・)
自傷気味に笑った後藤はマウンドに立ち、プレートの砂を手で払う。
(昔より今・・・。今しなくちゃいけないこと・・・、それをするだけ・・・)
顔をあげた後藤の目にはバッターボックスに立つ安倍の姿が映っていた。
後藤が振りかぶる。
安倍がバットのグリップを強く握る。
後藤の脚が高々と上がり、腕を鞭のように撓らせ左足で思い切りマウンドを踏み、
体全体を使って楕円軌道を描く腕を鉞の如く一気に振り下ろす!
「だあああぁああああぁああぁああぁあぁぁぁあ!!!」
後藤が叫ぶ。
後藤の鉞から放たれた白球はうなりを上げて保田のキャッチャーミットへ目がけ加速する!
- 139 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月08日(木)01時00分05秒
- 安倍がバッターボックスで左足を強く踏み込んだその時だった
ズドンッッッッッ!!!
大きな音を立てて、ボールは保田のミットに収まった。
(!!!?)
踏み込んだままの姿勢で硬直する安倍。
(・・・速い!?ごっちんの手を放れたと思ったら、もうキャッチャーミットに・・・?)
保田の手はビリビリと痺れている。
(ろくに練習もしないで、この球威・・・。まさに・・・、進化する怪物ね・・・)
後藤はマウンド上で不敵に笑った。
- 140 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月08日(木)01時01分24秒
- 安倍がマウンドに立つ。
安倍は一球で勝負を付けるつもりでいた。
先ほどのフォークが安倍にとって最大にして最強の武器だったのだ。
それで後藤を押さえて、自分の打席でヒットを打つ。
それが安倍の計算だった。
しかし、その計算が崩れた今、安倍は焦っていた。
(フォークはもう見せた・・・。後はストレートとスライダー・・・。
スライダーだけは・・・、投げられない・・・)
バッターボックスの後藤を見る。
安倍の目に映る後藤は、異様なオーラを放ち、安倍を威嚇し続けていた。
(・・・どこに投げても打たれる・・・!)
安倍は言い様のない恐怖に襲われた。
安倍の膝はガクガクと震える。
(・・・でも、投げなきゃ・・・。投げなきゃ、ごっちんに勝てない・・・)
- 141 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月08日(木)01時01分54秒
- 意を決してサブマリンの体制に入る安倍。
(そう、・・・もう、逃げない!)
低い位置からリリースされた球が、ライズボール気味にキャッチャーミットへうなりを上げて向かう!
パンッッッ!!!
後藤が思い切りよくバットを振り下ろした。
後藤のバットに当たった球は勢いよくライト方向に飛び、そして・・・
ライト線を右に切れ、フェンスに当たった。
「ファールね・・・」
ボールの行方を見ていた保田が口を開いた。
「惜しかったわね、後藤・・・。もう少しタイミングが早ければ・・・」
「・・・うん」
何故か躊躇いがちに返事する後藤。
マウンドの安倍は安堵のため息をもらすとともに、前にも増した恐怖を覚えていた。
(・・・このままだと、必ず負ける・・・。結局、ごっちんには・・・)
- 142 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月08日(木)01時02分51秒
- 安倍と交代で後藤がマウンドに入る。
安倍はバットに滑り止めをかけ、2,3回素振りをした後打席に入った。
(・・・負けたら・・・、ここで負けたら・・・)
後藤を睨み付ける。
(・・・一生負けたまま!!)
後藤が振りかぶる。
ダイナミックなマサカリ投法だ。
「だっしゃぁぁぁぁぁぁーー!!」
気合いとともに投げ出された球は、夕日の射すグラウンドを白く切り裂き安倍の元へ一直線で襲いかかる!
(速い!今までより格段に!!)
白球の行方を凝視していた保田は、その球威に圧倒されていた。
(内角高め、ビーンボール気味の速球・・・、このボールどう打ってもホームラン性の当たりにはならない・・・!)
保田が自分のミットに入るであろう、剛速球を取ろうと深く構えたとき
(この球!)
安倍がバットを振り下ろす。
パキッッッ!!!!
安倍がバットの根本で後藤の剛球を捕らえ、全力で振り抜いた。
(打った!?あのボールを!?)
安倍を見つめ驚く保田。
安倍と後藤はボールの行方を見つめていた。
ボールはレフト方向へ高く上がり、ふらふらと宙を舞っていた。
(大丈夫!落ちる!)
保田はボールの軌道を見てそう確信した。
しかし、保田の確信とは裏腹にボールはその後も直進を続け外野の深いところを飛び、そして
コツッ
レフトポールに当たって落ちた。
- 143 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月08日(木)01時03分30秒
- 「は、入った・・・?」
キャッチャーマスクを上げ事の状況を理解しようとする保田。
マウンド上の後藤がコクリと頷く。
「入りました・・・。ホームランです・・・」
後藤が今度はハッキリとした口調でそう答えた。
(これで、ごっちんに・・・)
安倍はバットを持つために堅く握りしめていた手を、ふっとゆるめた。
- 144 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月08日(木)01時04分15秒
- その後
対決が終わり、殺気だった雰囲気の消えた元のグラウンドに保田、後藤、辻、安倍の4人が残った
「安倍さん・・・、あなたの勝ちよ・・・」
ジャージ姿の保田が口を開いた。
「無理に野球部に誘って悪かったわ・・・、ごめんなさい。
あと、いろいろ失礼なことを言ったのも・・・」
深々と頭を下げる保田。
後藤も頭を下げる。
ほけーっとしている辻を見付けて強制的に頭を下げさせる保田。
「ほら!あんたも頭を下げる!」
「な!なんでれすか!?ののわるいことしてないれすよ!」
「いいから!ほら!」
頭を押さえられて頭を下げる格好になった辻を見て、安倍は口元を少し緩めた。
「別に謝らなくてもいいべさ。やろうって言ったのはなっちの方なんだべから」
先ほどとはうって代わって笑顔を見せる安倍。
他の3人も笑った。
「あべさん、ひまなときはやきゅうぶにあそびにきてもいいれすよ!うちのぶはいつでもひまれすから!」
辻が満面の笑顔で安倍に話しかける。
そんな辻の顔を見てにこやかに笑う安倍。
「じゃ、私たちはこれで・・・」
保田が安倍に一礼して、後藤と辻に目で「帰るよ」と合図した。
「じゃ、あべさんまたなのれす!」
辻が大きく手を振り、先に歩いていった保田の後を追いかけていく。
「・・・・・・・・」
後藤は安倍に何か言いたげだったが、少しだけ安倍に微笑み野球部部室に戻っていった。
- 145 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月08日(木)01時04分45秒
- グラウンドに一人安倍が残った。
安倍はマウンドとバッターボックスの距離を見て少し考えた。
(このたった12Mちょっとが、今まで走ってきた道の中で一番長くて、
一番辛くて、一番・・・、楽しかった・・・)
夕暮れ眩しかった。
- 146 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月08日(木)01時06分49秒
- 部室にて
「何で打たれんのよ後藤!バカ!バカバカバカバカバカバカバカァ!!」
さっきの紳士的な態度はどこへやら。
保田は後藤へ向かって貯まった鬱憤をぶつけていた。
「しょーがないじゃーん。もう打たれちゃったんだからさー」
あくまでマイペースな後藤。
「しょうがないじゃないでしょ!後一人どうすんのよ!あんた8人で野球やるつもり!?」
「えー・・・、そんな事言ったってさー」
「まあまあ、やすらさん。そんなにおこらないでくらさい。ののにいいかんがえがあるのれす」
「・・・?何?くだらないことだったら殴るよ」
「やすらさん、いまうちのぶはひとりたりないのれすよね?」
「そうよ。それで今悩んでるのよ」
「えへへ・・・、こんなこともあろうかと、ののはちゃんとよういしてきたのれすよ・・・」
「え?何?もしかして誰か勧誘してきたとか!?」
「ちがうのれす・・・、ちょっとまっててくらさいね・・・」
といって自分のバックからごそごそと何かを取り出す辻
「じゃーん!やきゅうロボット星くん1号なのれす!」
辻は誇らしげに部室の机の上に、
よくおもちゃ屋で売っている超合金ロボットを置いた。
「・・・ふーん、・・・辻、これ、どう役に立つわけ・・・?」
保田がこめかみをピクピクさせながら辻に尋ねる
- 147 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月08日(木)01時08分00秒
- 「星くんはすごいのれすよ!ここのボタンをおすと・・・」
といって辻が「星くん」の腕のボタンを押すと
ぴょん
と腕が飛び出した。
「すごいれしょ!?これが星くんぱんちなのれす!星くんぱんちはいわをもくだくのれす!」
「・・・・・・・・」
青筋立てて震える保田
「ほかにもれすね、ここをおすと、びびびびびびびびー!星くんびーむ!なのれす!」
辻はその後も星くんのすばらしさを「星くんカッター」「星くん流星キック」
「星くんウルトラDXスーパーデンジャラスソード」などの実演で保田に解く。
保田が震える拳を押さえて辻に聞いた。
「辻・・・、一回聞いておくわ・・・。これ、野球とどう関係あるの・・・?」
今にも血管が破裂しそうに顔が紅潮している保田に、きょとんとする辻。
「やきゅう?かんけいあるわけないじゃないれすか。やすらさん、もしかしてばかれすか?」
豪快にぶっ飛ぶ辻、そして野球ロボット星くん1号。
肩で息をする保田。
「はー、はー・・・。こんなバカ本気で相手にするんじゃなかった・・・。
後藤、明日からまた部員探し再開するわよ!」
「くー・・・・、くー・・・・、むにゃむにゃ・・・・」
保田が後藤の方を振り向くと、後藤はすでによだれを垂らして熟睡していた。
「・・・、あたしこんなのと一緒にいていいのかしら・・・」
本気で野球部を辞めようかと思ったその時、部室の扉をノックする音が聞こえた。
- 148 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月08日(木)01時08分32秒
- 「・・・・?はい、開いてますよ」
ガチャリと扉が開いたその先には
「お邪魔します・・・」
安倍なつみがいた。
「・・・?安倍さん、どうしたの?なんか忘れ物とか?」
「いや・・・、違うべさ・・・」
「・・・?じゃあ、何?後藤に用?」
「それも、違うべさ・・・」
「?????」
不思議そうに安倍を見つめる保田に、安倍は口を開いた
「・・・野球部に、入れて欲しいべさ・・・」
「!!!?」
安倍のいきなりの提案に目を丸くする保田。
- 149 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月08日(木)01時09分02秒
- 「安倍さん・・・、それ、本気で言ってるの?」
コクリと頷く
「・・・い、いや、大歓迎だけど・・・、どうして?」
安倍が照れくさそうに喋りだした。
「・・・今日ごっちんとやって思い出したべ・・・。
昔、あんなに夢中になってやってた野球のことを・・・。楽しかった野球のことを・・・」
「・・・・・・・・」
「それに・・・」
「それに・・・?」
保田が聞き返す
「まだ、ごっちんとの勝負は一勝一敗だべ。まだ、決着はついてないべさ」
安倍がニッコリと笑い熟睡している後藤を見た。
「・・・よし!安倍さん入部決定!やったー!これで9人そろったーー!!」
保田が狂喜乱舞する。
只今部員9人(+監督一人)
- 150 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月08日(木)01時09分38秒
- その後のその後
安倍が部室から出ていき、辻が帰宅すると、部室には保田と熟睡を続ける後藤が残った。
そんな後藤の横顔を見て保田が口を開いた。
「・・・後藤。もしかして、あんた・・・、手加減した?」
後藤はよだれを垂らしている。
「・・・あんた、こうなることを知ってて・・・」
保田は後藤の寝顔をじっと凝視したが、何の反応もない。
一つため息を付く保田。
「・・・なわけないか。この居眠り馬鹿にそんな事まで計算する能力なんて・・・」
そう言うと保田は帰り支度を始めた。
「じゃ、あたし帰るから。戸締まりちゃんとしとくのよー」
寝ている後藤にそう言うと保田は部室の扉を閉める。
手加減したのかどうか、それは安倍にも後藤本人にも分からない。
- 151 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月08日(木)01時11分36秒
- 今回結構みなさんの反応が怖いんですよねぇ。
もう少し捻った話書ければよかったんですが。
てなわけで、また。
- 152 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月08日(木)21時50分03秒
- 凄いなー。さすがナッチでも…ポジションは?
- 153 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月08日(木)21時55分58秒
- 後藤のキャラが好き。
それにしても、slideは名曲ですね。
- 154 名前:ま〜 投稿日:2001年02月09日(金)01時54分41秒
- 面白いっすよ!
やきゅうロボット星くん1号のあたりが、
すごいよマサルさんの野球対決を思い出してしまった。(W
- 155 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月09日(金)02時23分37秒
- ≫154 俺も(w
シリアスあり、ギャグありとおもしろいです。
- 156 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月09日(金)22時40分18秒
- ボOンザ?
- 157 名前:焼肉帝王 投稿日:2001年02月09日(金)23時04分15秒
- 中澤の変態ぶりと辻のとぼけぶりがさいこーっす。
- 158 名前:ま〜 投稿日:2001年02月09日(金)23時43分04秒
- >>156
そうそう!
ボナ○ザ(w
- 159 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月09日(金)23時48分17秒
- この小説、ホント、楽しいですね。
扱いが難しいであろう、ごまなちも双方のファンに気を使いつつ上手くまとめて折られますね。
各メンバーのキャラも個性的に描かれていて最高です。
- 160 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月10日(土)03時46分48秒
- 更新です。
>>152
なっちは、どうなんでしょうね。あれでよかったんですかね。
今回はポジションの話です。
>>153
有り難うございます。スライドは自分も好きな曲です。
>>154
何度も感想書いていただいて有り難うございます。
「すごいよマサルさん」は読んでなかったのですが、どうもそんな感じになってしまいましたね(w
>>155
本当有り難うございます。最初は笑えるのだけにしようと思ってたんですけどねぇ。
どこをどう間違ったか(w
>>157
辻はよく動いてくれるので使いやすいんですよね。中澤は今回ちょろっと出てきます。
そんなに変態ではないですが(w
>>159
本当に有り難うございます。そう言っていただけると励みになります。
とりあえず反感買うような話にはなるべくしたくないなぁって思ってたので。
キャラは2chの奴をそのままパクった感じなので、僕ではなくあっちのネタ職人さんの
おかげですね。
- 161 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月10日(土)03時47分29秒
- 第十一話 「ヤマザルバスター」
今日の部室のメンバー:保田 加護 石川
「うーん・・・、うーん・・・」
保田が部員名簿見ながら頭を抱えている。
「どうしたんですか?保田さん」
そばで加護と遊んでいた石川が、一人悩む保田に話しかけた。
「あ、石川・・・。これ、みんなに希望のポジション書いて貰ったんだけどさ、ちょっとこれ見てよ」
「なんや、なんや?」
保田が手にした紙をのぞき込む石川と加護
名前 希望ポジション
保田 捕手
吉澤 外野手
石川 ほいっ!
後藤 投手
安倍 投手
加護 二塁手
矢口 遊撃手
- 162 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月10日(土)03時48分46秒
- 「どう思う、これ?」
保田が引きつった顔で二人に尋ねる。
「あはははは〜!ほいっ!ですって〜。面白いですね〜」
石川が無邪気に笑った瞬間、保田の高速フリッカージャブが石川の右こめかみを的確に捉えた。
とりあえずお決まりの如く吹っ飛ぶ石川
「バカ!全然面白くないわよ!こんな寒いこと書くんじゃないの!」
「まあまあ、保田さん落ち着きや・・・」
肩で息する保田をなだめる加護
「・・・しっかし、投手希望が二人いるって結構きつうないか?これ」
「まあねぇ・・・、それで悩んでるわけなんだけど・・・」
「保田さんはどっちにピッチャーやらせたいん?」
「とりあえず、後藤にやって貰おうかとは思うんだけど、なっちも捨てがたいのよねぇ・・・」
「はぁ、それで悩んでるわけやな・・・」
「そうなのよ、加護、あんたなんか良いアイディア無い?」
「まぁ、一般的に考えて、二人のどっちかをとりあえず投手以外の守備につかせて、
で、頃合いを見計らって守備交換って形で投手にポジションチェンジ、
投手やってた選手はまたどっかの守備につかせるってのが普通やろな」
「やっぱりそれが一般的かぁ・・・。でもそうすると、二人の練習量が増えるのよねぇ・・・。明らかにオーバーワークになるわ・・・」
「二つのポジションの守備練習せなあかんからな・・・」
「そうなのよねぇ・・・、はぁ・・・・」
保田が深いため息を付いた
沈黙が流れる。
時折部室の隅では、もろにテンプルに喰らった石川がピクンッ、ピクンッと痙攣していた。
- 163 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月10日(土)03時49分55秒
- 部員名簿をしげしげと眺めていた加護が口を開いた
「なぁ、保田さん。矢口さんって練習来とる?うち、見たことないねんけど・・・」
「来てるわよ。監督とグラウンドの裏で二人っきりの愛の特訓してるそうだけどね・・・。」
「二人っきりの愛の特訓・・・。多分ろくな事してへんな・・・」
「前、偵察に行かせた辻の話だと、なんか『あの津波に向かってタイガーショット1000本!』とか言って通常の3倍の重さのボール投げさせてたらしいわよ・・・」
「・・・それキャプテン翼の日向君やん!」
「ユニフォームの袖、肩までまくって」
「!!!タイガーシャツやん!ますます日向君や!」
「矢口は家計を支えるために、おでん屋でバイトしてるという噂も・・・」
「あかん!ネオタイガーショット完成してまう!!」
「ボールの威力を上げるために地面を二回蹴るとかなんとか・・・」
「!!雷獣シュートや!・・・保田さん!はよ止めにいかな!雷獣シュートまで完成してまうで!!」
というと加護は保田の腕を掴んで部室を飛び出していった。
「ちょ、ちょっと加護!石川はどうすんのよ!」
「そんなん知らん!はよ行くで!」
加護は焦っていた。
なぜなら矢口が雷獣シュートを完成させると、
自分と辻がスカイラブハリケーンを覚えさせられることは明白だったからだ。
(いやや!うちはあの兄弟にはなりとうない!)
石川は少しずつ取り戻しつつある意識の中で
「保田さんは絶対に石崎君!」
と思った。
- 164 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月10日(土)03時50分29秒
- グラウンド裏
決死の形相でグラウンド裏になだれ込む加護。
それと強制的に引っ張られて来た保田。
「くぉらぁーーー!!直ちに雷獣シュートの練習やめんかーい!!」
加護が般若の顔で叫ぶ。
「お前らがなぁ!いくら練習してもこのSGGK(スーパーがんばり屋さんゴールキーパー)の前には無意味なんじゃーーー!!」
もはや意味不明。
「これ以上日向君増やしたら日韓ワールドカップが台無しに・・・って、あれ?」
加護の目に飛び込んできたのは、間隔を開けずに連続でノックをする中澤とそれを必死で受ける矢口の姿だった。
「何や加護?なんか用か?」
中澤が加護と保田の姿に気付き、ノックする手を止めて肩で息をしながら話しかけた。
訳が分からないと言った顔の加護。
「いや、あの・・・、雷獣シュート・・・」
「はぁ?お前なにわけわからんこと言ってんねん?」
- 165 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月10日(土)03時51分21秒
- (保田さん!話違うやないか!)
保田の脇を肘でつつく加護。
(知らないわよ!あの八重歯バカが言ったんだから!)
もめる二人を見て、中澤が少し呆れ顔で口を開く。
「・・・ま、ええわ。ええ機会や。お前らちょっと矢口の守備見てみ?」
というと、再びノックを開始した。
中澤がボールを打つと、とてつもなく素早い反応でボールをさばいていく矢口。
「中澤さん、あれ、本気で打ってへんか・・・?」
加護が保田に尋ねる。
「うん・・・、多分、本気・・・」
加護の言うとおり、中澤の打球はかなり速い速度で矢口のいる二遊間へ向かって行っている。
「あれ・・・、なんであんなに簡単にさばけるんや・・・?矢口さん、ほとんど素人やろ?」
唖然とする加護に保田が答える。
「・・・ポジション取りよ・・・」
「・・・ポジション取り?」
「そう・・・、守備のポジション取りがずば抜けて上手いのよ・・・。
監督がボールを打つ瞬間に打球の行く方向を瞬時に計算して、最小限の動きで取れるようなポジションにいるのよ・・・」
「そないな高等技術・・・、なんで素人ができんねん・・・?」
「知らないわよ・・・。だけど、もし・・・、一つあるとすれば・・・」
「あるとすれば・・・?」
加護がごくりと唾を飲む。
「天性の才能ね・・・」
- 166 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月10日(土)03時52分00秒
- 「あっ!あかん!」
中澤が打ったボールはバットの先に当たり、打球は一遊間を抜けてセンターへ向かっていった。
誰もがセンター前へ抜けると思ったその時
パシッ
矢口が派手にダイビングしながらボールをグラブに納めた。
「裕ちゃ〜ん!ちゃんと打ってよね〜!矢口疲れてんだからぁ〜!」
矢口が憮然としながら中澤にボールを返す。
「すまん矢口!次はちゃんと打つから嫌わんといてな!な!?」
「も〜〜〜」
「なんであれが取れるんや・・・、ありゃセカンドの守備範囲やで・・・?」
「打ち損じまで計算に入れてたってことかしらね・・・」
呆然とする二人を後目に、中澤がにこやかに声をかけてきた
「どや!すごいやろ矢口は!一週間かそこいら練習しただけでこんなに取れるようになってもうた!ま、これもひとえに愛の力って奴?がっはっはっはっはっは!」
豪快に笑う中澤。
「・・・・・・・」
「とりあえず矢口はショートで使おと思っとる。異論はないな?」
「・・・ないです」
口を合わせる二人。
「そか。ならええ」
そういうと中澤は満足げに二人を見回した
- 167 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月10日(土)03時52分41秒
- 「・・・あの、監督」
ノックに戻ろうとする中澤を保田が止める
「ん?なんや?」
「あの・・・、あたしに少しノックさせてくれませんか?」
「ん、ええよ。はい」
と言って保田にバットとボールを渡す。
「ただし!矢口の体に傷つけるような事したら・・・、承知せぇへんで・・・」
中澤がドスの利いた声で忠告すると、保田は小さく「はい」と答えバットを受け取った。
「じゃ、矢口。今からあたしがノックするから取ってね。加護、ゲッツーの練習だと思ってセカンドに付いて」
「はいはい」
加護がしぶしぶと守備につく
「じゃ、行くよ」
保田が二遊間を抜けてセンター前へ狙った強い打球を打つと、矢口が素早く反応する。
スピードのある球を難なく捌き、そのままセカンドの加護へグラブトス。
(矢口さん、こんな難しい球を何でもないようにさばいとる・・・。普通ならダイビングキャッチせな取れへんでこれ・・・)
加護は自分のグラブに入っているボールを見ながらそう思った。
- 168 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月10日(土)03時53分58秒
- (ちょっと試してみますか・・・)
バットの握りを少し変える保田。
「・・・、じゃ、もう一球同じ所行くから・・・」
保田はそう言うと、言葉とは逆に思いっきりボールを引っ張り、三塁線ギリギリの所を飛んで行く打球を放った。
(あかんて保田さん・・・。それは取れへん・・・)
加護がそう思った瞬間、
矢口は三塁ベース前にポジションを取り、難なくボールを捌いた。
加護に矢のような返球をすると、憮然とした表情で保田に話しかける。
「も〜、圭ちゃんも非道いよ〜。嘘付くなんてさ〜。」
「ご、ゴメン・・・、矢口。手が滑っちゃって・・・」
「ちゃんとしてよね〜、まったくも〜」
(すごい・・・、サードまで守備範囲に入ってる・・・)
保田は少し顔が引きつったままだった。
- 169 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月10日(土)03時54分31秒
- 帰り道
「加護、矢口の守備見たよね・・・」
「ああ・・・、あんな守備範囲の広い人初めてや・・・」
加護が感慨深げに呟いた。
「・・・これで、問題解決したと思わない?」
「あ?それどういうことや?」
不思議そうに首を傾げる加護。
「だから、なっちがピッチャーの時後藤をサードに置いておけば、守備範囲の広い矢口が後藤の分もカバーしてくれるでしょ」
「ああ、そうか!で、後藤さんがピッチャーの時は安倍さんサードに置いて、矢口さんにカバーして貰うと」
「ご名答。そう言うこと。まぁ、矢口に頼りっぱなしって訳にもいかないけど、サードの守備練習させる時間はこれでずいぶん短縮できるでしょ」
「なるほどな・・・」
「これでポジションの目処が立ったわね・・・」
嬉しそうに笑う保田。
- 170 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月10日(土)03時55分18秒
- 「なぁ、保田さん。うち一つ気になることあんねんけど・・・」
「何?」
「ポジションの希望取ったとき、ののちゃんと飯田さんだけ書いてへんねやけどあの二人どうなってるん?」
「あ、そう言えば今日の朝、あの二人に希望取った紙渡されてたんだ。ちょっとまって・・・」
ごそごそとポケットの中を探し、二枚の折り畳まれた紙切れを取り出す保田。
「これで二人同じポジション選んでたらいややなぁ・・・」
「それはないと思うんだけど・・・」
紙を開く保田。それをのぞき込む加護。
名前 希望ポジション
飯田 いっこく堂
辻 いっこく堂の右
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
黙り込む二人
「これどういうことや・・・?」
「あたしに聞かないでよ・・・」
「どうしような・・・」
「・・・まぁ、この二人は適当なところに置いておきましょう・・・・」
- 171 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月10日(土)04時00分04秒
- そのころの辻と飯田
「あれ?・・・声が・・・、遅れて・・・、来るよ?」
「ちがうのれすよいいらさん。もうちょっとくちをおおきくあけたほうがいいのれす」
「じゃあ、これ十回繰り返してみようか?」
「はいれす!」
一生懸命いっこく堂の練習をしていた。
と言うわけでポジション及び打順決定!
1番 セカンド 加護
2番 ショート 矢口
3番 サード 安倍
4番 キャッチャー 保田
5番 ピッチャー 後藤
6番 センター 吉澤
7番 ファースト 飯田
8番 レフト 辻
9番 ライト 石川
「あのー、私はどうなるんでしょうかぁ・・・?」
部室の隅に倒れたままの石川は、自分の耳からどす黒い血が流れるのを見て、死期が近いのを知った。
- 172 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月10日(土)04時02分49秒
- えー、今回はこんな感じなんですけれども。
「もっとあいつを出せ!」とか「てめぇの決めた打順よりこっちがいいぜ!」とか
なんなりありましたら、自分も参考になりますので気軽に書き込んでくれればなぁと思います。
- 173 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月10日(土)08時53分14秒
- いつも楽しく見てます。早速ですが僕の考える打順です。
1番 セカンド 加護
2番 ショート 矢口
3番 レフト 辻
4番 センター 石川
5番 ピッチャー 後藤
6番 サード 安倍
7番 ファースト 飯田
8番 キャッチャー 保田
9番 ライト 吉澤
この方が、保田の負担も少ないし1.2.3番が確実に出塁すれば
石川がバントでも点が入るし、次が後藤と安倍なので緊張した投手からの死球や四球
も狙えると思う…。
保田と石川の打力が未知数なので、この二人の出番を増やして欲しいな。
頑張ってください
- 174 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月10日(土)09時14分49秒
- あの、市井は…市井は出ないんでしょうか?
- 175 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月10日(土)12時43分59秒
- 打順・ポジション的には作者さんの案がベストだと思います。
クリーンアップトリオ、特に保田(主人公)の四番は不動のままがいいです。
あと、ライバルチームの秘密兵器に訳ありで市井が登場みたいな展開を期待したりして・・・。
でもヤッパ、ここ本当におもしろいので作者さんの思うとうりに書いて欲しいです。
- 176 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月10日(土)15時30分08秒
- 安倍と後藤の打順は隣り合わせにしたほうがおもしろいのではないかと思います。
話がややこしくなるだけかもしれませんが。
- 177 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月10日(土)16時15分12秒
- でも、石川にも活躍して欲しくない?
サヨナラ死球とか
- 178 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月11日(日)00時03分33秒
- 俺が考える打順は
1番 センター 吉澤
2番 ショート 矢口
3番 サード 安倍
4番 キャッチャー 保田
5番 ピッチャー 後藤
6番 ファースト 飯田
7番 レフト 辻
8番 ライト 石川
9番 セカンド 加護
って感じかな。
3,4,5番は安倍、保田、後藤で争ったらいいし、
石川はここからどんどん成長する形でもいいんじゃない?
サヨナラ死球だったら、逆に期待されてない8番ぐらいがいいかと・・・
- 179 名前:ま〜 投稿日:2001年02月11日(日)00時30分23秒
- 楽しく読ませて頂いています♪
石川には、178さんと同じで、石川をライパチくん(ライトで8番)に
してみたらいかがかと思います。(w
打順は
1番 加護
2番 辻
3番 矢口
でスーパーカートリオみたいに・・・。(w
- 180 名前:ばね 投稿日:2001年02月11日(日)01時01分56秒
- 平家を出して欲しいです、特別コーチ辺りで。
中澤の元教え子の野球部OGかなんかで、選手としての実績はないものの、コーチとしては天才的…とか(w
- 181 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月11日(日)06時28分53秒
- こういうの考えたくなるな〜。
ま〜さんのスーパーカートリオいいですね。バット振らなくても、立ってるだけで
ピッチャーはストライクとるのに苦労しそう。
でもそれだと吉澤の打順が下の方になっちゃうな〜。
- 182 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月11日(日)08時25分26秒
- 石川の打順が下位なのは、嫌だよー。
- 183 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月12日(月)19時45分12秒
- 俺が考える打順は、
1番 キャッチャー 保田
2番 ショート 矢口
3番 ファースト 飯田
4番 セカンド 加護
5番 ピッチャー 後藤
6番 サード 安倍
7番 レフト 辻
8番 ライト 吉澤
9番 センター 石川
保田は、4打席連続ホームランのみを狙う。
- 184 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時22分36秒
- 週末ネットに入る機会が無かったんですが、結構な数のレスですね・・・。
なんかこう言うの見てたらキン肉マンの「僕の考えた超人」企画を思い出しました(w
>>173
その1.2.3番もいいですね。
保田と石川についての説明不足で申し訳ないなって思ってたんですよね。ごく一部の人
しか詳しく書いてないなとも。それで打順考えろってのはかなり酷な質問だったかもしれません。
反省してます。
>>174
市井は・・・、どうしましょうね。何らかの形で出そうかなとか思ってます。
>>175
どうも有り難うございます。やっぱり市井は人気ありますねぇ。
>>176
例えば3,4番とか?そうやってもいいんですけど保田の影が薄くなるような気がするんですよね。
話的には膨らみそうですが。
>>177
石川はライパチ君&いじめられっこキャラで行こうって最初から決めてたんですよね。
ちゃんと機会は作るつもりですよ。
- 185 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時30分19秒
- >>178
大体その方向で行こうと僕も思ってたんですよ。なんか方向性見破られた感じがして
ちょっと悔しいですね(w
ただ、野球経験者の加護の打順が下過ぎるかと・・・。
>>179
いつもどうも有り難うございます。おっしゃるとおり石川はライパチ君です(w
>>180
平家さんですか。どこで出しましょうね。考えておきます。
>>181
難しいですよねぇ打順考えるのって・・・。自分から振っといてアレですけど。
>>182
うーん・・・。すいませんが石川ファンは涙を飲んでいただくって形で・・・。申し訳ないです。
>>183
保田、ドカベンの岩鬼みたいですね(w
保田のキャラが弱いのでそれっくらいしてもいいかなとも思いました。参考になります。
- 186 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時41分05秒
- ここから下は作者の感謝及び言い訳の文章です。読み飛ばして頂いて結構です。
みなさんからのレス、要望本当に有り難うございます。
めちゃくちゃ嬉しいし、参考にさせて頂きます。
なるべく意見を重視しようとは思うのですが、私の文章力では全てを叶えるって訳にもいかないのです。
打順に関しては、ここまで意見が分かれるとまとめる必要性があるので
とりあえず保留という形を取らせていただきます。本当に申し訳ありません。
アイデアは随時募集してますので気軽に書き込んでくれると幸いです。
- 187 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時42分07秒
- 弟十二話 「グングニル (for Bump of Chicken)」
グラウンドにて
今日は真面目に練習に取り組む野球部メンバー。
グラウンドに保田の怒号が響く。
「石川!返球遅い!なんで取ってからボール長く持つの!?」
「・・・すいません」
小さくなって謝る石川。
「あたしにこれ言わせるの何回目!?いい加減理解してよね!?」
「・・・すいません」
「グラブは両手で構える!ボール取ったら少なくとも3歩以内で返球する!わかった!?」
「・・・・はい」
「いい?あんたのために言ってんのよ!?わかってる!?」
「・・・はい」
今にも消え入りそうな石川の声
「・・・はぁ・・・。じゃ次!吉澤行くよ!」
- 188 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時43分12秒
- 練習終了後
誰もいなくなった部室で、一人ポジション表を見ながら悩む保田。
「石川が何とかなればなぁ・・・、ぶつぶつ・・・」
そんなとき、部室のドアが開き後藤がおずおずと入ってきた。
「圭ちゃん、いる・・・?」
顔をあげる保田。
「・・・ん?あ、後藤。どうしたの?」
「うんとね・・・、梨華ちゃんの事なんだけど・・・」
後藤は少し悩みながらも口を開いていった。
「あのね・・・、今日の練習見ててさ、思ったんだけどさ・・・、ちょっと梨華ちゃんに厳しすぎない・・・?」
「あー、・・・うん」
少し困った表情の保田。
「自分でもそう思うんだけどさ、ほら、石川ってさ、吉澤とか加護に比べると、こう飲み込み悪いって言うか、ぶっちゃけた話野球下手でしょ・・・。だから・・、こう・・・、つい、ね」
「それはわかるんだけどさ、圭ちゃん・・・。もう少し何とかならないのかな・・・?」
「でもねぇ、下手なのをそのまんまにしておくことも出来ないでしょ・・・?」
うつむいてちょっと泣きそうな後藤の表情。
「後藤・・・。いきなりそんな話するなんて・・・、なんかあったの?」
首をうなだれて黙ったままの後藤。
「後藤・・・?」
保田が後藤の顔を覗く。
- 189 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時43分43秒
- 後藤は今にも泣き出しそうな顔で喋りだした。
「梨華ちゃんね・・・、クラスでいじめられてるんだって・・・。女子グループから・・・。一年の頃はよっすぃ〜が一緒のクラスだったから、よっすぃ〜がかばってたらしいんだけど、2年でクラス替えしてよっすぃ〜と離れたらいじめがエスカレートして・・・・」
「いじめ・・・。そんないじめられてる感じはしなかったけど・・・」
「梨華ちゃん前に言ってたんだ・・・。『野球部でみんなと一緒にいるときが一番楽しい』って。『みんな自分を必要としてくれるから嬉しい』って・・・。だからみんなの前では明るく振る舞ってたんだと思う・・・」
「・・・・・・・そう」
「だから、圭ちゃん・・・。もう少し梨華ちゃんに優しくしてくれないかな・・・?」
「後藤・・・」
「お願い!後藤の一生のお願い!」
後藤が膝をついて手を合わせ、保田に頼み込む。
- 190 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時44分17秒
- 「後藤・・・、気持ちはわかるけどね、それとこれとは別なの・・・。野球部員で、野球が下手なら上手くなるまで練習する。これが常識でしょ?」
「圭ちゃん・・・」
「悪いけど、今回は後藤の頼みは聞けそうにない・・・」
「・・・・・・・・・」
「用事はこれだけ?終わったら早く帰ってね。これから明日からの石川用の練習メニュー組まなきゃいけないんだから・・・」
「圭ちゃん・・・」
何か言いたげな後藤。
「・・・早く帰りなさい」
保田は冷たくそう言うと席に戻り、再びポジション表を見始めた。
「・・・・・・・・・・・・・」
後藤は保田を少し悲しい目で見た後、名残惜しそうに部室を後にした。
部室のドアが静かに閉まる。
(いじめ・・・、ねぇ・・・)
保田は深いため息をついた。
- 191 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時44分55秒
- 石川の教室
石川は昼休みが嫌いだった。
長い休み時間。
クラスの輪にとけ込めず、一人自分の席で持参してきた弁当を食べるのが常だった。
(今日は何も入ってませんように・・・)
石川はそう祈りながら、キティーちゃんの書かれたかわいらしい弁当箱の蓋を開けた。
(!!!やっぱり・・・!)
弁当箱の中には巨大なムカデや、毛虫などが所狭しと蠢いていた。
顔面蒼白になり、即座に弁当箱の蓋を閉める石川。
最近クラスで石川へ対するいじめがエスカレートし、弁当の中に虫などが入れられていた。
そんな様子をクラスの隅で見ていた女子グループが歓喜の笑いを上げる。
「あははははは!ちょっと見た?なんかマジ顔引きつってない?」
「見た見た〜、あの顔超ウケるよ〜!」
「っていうか、よくあんな弁当持ってくる気になるよね〜?」
「そうそう!あのくそダセぇ弁当箱でしょ?」
「いい年してキティーちゃんとか言ってんじゃねぇよって感じ?」
「なんかめっちゃお嬢ぶってムカツクしよー!」
「でも肌の色黒いんだよね〜」
「今更ガングロなんて流行んねぇんだよバーカ!」
「あははははは!ウケるよそれ〜!」
その会話は全て石川の耳にも届いていた。
何もすることが出来ず、ただ机でうつむいたままの石川。
「・・・・・・・・・・」
(早く・・・、放課後に、なって・・・)
石川は、もう二度と開けることの無い弁当箱を凝視したまま昼休みを過ごした。
- 192 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時45分39秒
- 放課後
授業終了のチャイムが鳴ると、石川は脱兎の如く教室を飛び出した。
(野球部に・・・!野球が出来る・・・!)
教室にいた頃とは違って、とても嬉しそうな顔を見せる石川。
全速力で野球部室目がけて石川が走る。
(あそこが・・・、私のいるべき場所・・・!)
石川が職員室の前まで来たとき、保田と中澤が何か話し込んでた。
(監督と保田さんだ・・・。何話してるんだろう・・・?)
何故か物陰に隠れて二人の会話を盗み聞きする石川。
- 193 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時46分19秒
- 「・・・これが今日の練習予定です」
保田が中澤に一枚の紙を渡す。
「・・・ふーん、ま、こんなもんやろ。じゃ、こんな感じでやってや」
「はい。じゃあたし、練習に戻ります・・・」
保田が中澤の元を去ろうとしたとき、中澤が何かに気付いたように保田を呼び止めた。
「あー、圭坊ちょっと待ち。・・・この練習予定な、なんか石川の練習時間多くあらへん・・・?」
「・・・そうですか?他のメンバーとの技量の差を考えて作ったんですけど・・・」
「そうなんやろうけどな・・・。この練習開始から終了まで、圭坊とマンツーマンってのは、ちときついんとちゃう?」
「ええ、あたしもそう思うんですけど・・・。仕方がないと・・・」
保田が少し首をうなだれる
「・・・あかんで、圭坊。石川にばっかかまけてたら、他のメンバーの練習が疎かになってまう・・・。それに・・・」
何か言いにくそうに首筋を掻いている中澤。
「・・・圭坊。お前もわかっとると思うけど・・・、石川に野球の才能は・・・、無い」
「・・・わかってます」
「・・・こんなん言いたか無いねんけどな・・・、ぶっちゃけた話・・・、石川には練習させるだけ無駄かもしれへん・・・」
「・・・・・・・・・」
押し黙る保田。
- 194 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時46分54秒
- 「努力や何や言われとるけどな・・・、やっぱ最後は才能やで。才能無い奴は何やっても上手くいかへん・・・。現に石川のバッティング見てみ?あれだけ練習して未だにへっぴり腰で打っとる・・・」
「でも・・・・」
保田は何か言おうとしたが次の言葉が出てこない。
「圭坊・・・。こんなんいったら変な目で見られるかもしれへんけど・・・、もう一人、部員探してきた方早いんやないか・・・?」
「監督!それは・・・!」
その言葉に保田が中澤に食ってかかる
詰め寄る保田に対して、中澤が重く口を開いた。
「圭坊・・・。自分勝ちたないんか・・?」
「!・・・・・・」
「勝ちたかったら・・・・、うちの意見、聞いた方がええかもしれへんで・・・」
中澤が鋭く、そして冷淡に保田に語りかける。
「・・・・練習に戻ります」
保田はきびすを返して足早に中澤の元を去った。
- 195 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時47分36秒
- 石川は物陰で会話の一部始終を聞いていた。
(私・・・、必要ないの・・・?)
何か足場が崩れていくような感覚だった。
裏切られた、そんな感覚にも似ていた。
その日、石川は初めて練習を休んだ。
- 196 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時48分19秒
- 河原にて
あてもなくフラフラと歩いていた石川は、いつの間にか河原の防波堤の上にいた。
「野球部 石川梨華」と書かれた、野球道具を入れるバックがやけに重い。
(これ・・・、重いなぁ・・・。こんなに重かったっけ・・・?)
ため息を付き、その場にへたり込む石川。
「野球・・・、辞めようかな・・・」
石川は誰に言うわけでもなくそう呟いた。
手元に転がっている小石を拾い上げる。
そして、座ったままの体制で川に向かって軽く投げた。
(居場所・・・、なくなっちゃった・・・)
何故か涙は出なかった。
ただ、一抹の寂しさを覚えた。
石川は少しの間川の流れを見つめると、すっと立ち上がって帰る準備をし始めた。
「帰ろ・・・」
(明日からどうしよう・・・)
そんなことを考えながら、うつむきいて河原沿いの道を歩き出した石川。
そんなとき、何か後から自分を呼び止める声を聞いた。
「あのー、ちょっと!」
石川が声に気付き振り返ると、自分と同年齢くらいの少女がそこに立っていた。
「あのー、忘れ物してますよー!」
気が付くと、石川の手には野球部のバックが無かった。帰り際に置き忘れていたのだ。
「あ、すいません・・・」
急いで少女の元に駆け寄り、バックを受け取る。
「すいません。ありがとうございました・・・。」
そういって少女の元を去ろうとしたときだった
「・・・野球、やってるんだ」
少女がはにかみながら石川に尋ねた。
「・・・え?ええ、まぁ・・・」
複雑な表情の石川。
「こんな大事な物忘れちゃダメだよ」
少女が笑いながらそう言うと、石川は思い口を開いた。
「・・・でも、もういいんです・・・。私、野球、辞めますから・・・」
うつむく石川。
- 197 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時49分08秒
- 「・・・辞めるって、どうして?」
「・・・私、才能無いんです・・・。何やってもうまくいかないし・・・、私のせいでみんなの練習時間が無くなるし・・・」
石川はぽつり、ぽつりと気持ちを吐き出すように呟く。
「・・・・・・・・・・」
「いいんです・・・。もう。なにもかも・・・・」
そう言うと石川はその場に泣き崩れてしまった。
夕闇に石川のすすり泣く声だけが響く。
「・・・ちょっと、お話ししようか・・・?」
少女は石川の手を、優しく取った。
- 198 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時49分52秒
- 再び河原
先ほど石川がいた防波堤に、二人並んで座っている。
少女が川面を見ながら口を開いた
「私もね・・・、昔野球やってたんだ・・・」
「・・・・・・・・」
「私も、最初始めたときはみんなの足引っ張ってばっかりで・・・、そう、あなたみたいに才能が無いってよく言われてた・・・」
「あなたも・・・・?」
「うん・・・、でね、そう言われるのが悔しくて・・・、いっぱい練習した・・・。手の皮が全部剥けるまで・・・、血豆が潰れるまで・・・」
「・・・・・・・」
「でね、そうするとやっぱり上手くなるものなのよね・・・。本当に・・・」
黙って少女の顔を見つめる石川
「上手くなったら、今度はみんなが『あいつは才能の固まりだ』って言うようになって」
少女がクスリと笑う
「おかしいよね・・・。才能が無いって言われてた人間が、ちょっと上手くなったら今度は天才って言われるんだから・・・」
「・・・・・・・・・・」
- 199 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時50分39秒
- 「その時ね、私思ったんだ。才能って言葉は、努力をしない人の言い訳何じゃないかって・・・」
「・・・・・・・・」
「便利な言葉よね・・・、才能って・・・。才能って言っちゃえば、自分はどんなに下手でも立派ないいわけになるものね・・・。」
「・・・・・・・・・・・」
少女は石川の方を見て、優しげに微笑んだ。
「だからね・・・、あなたも・・・、才能って言葉に縛られて欲しくないと思う・・・」
少女の言葉を無言で受け止める石川。
「才能って言葉は・・・、努力の跡に付いてくるから・・・、必ず・・・!」
「・・・本当ですか?」
「・・・本当よ」
にこやかに笑う少女。
「だから・・・、あなたも・・・、負けないで・・・」
「・・・はい!」
石川はキッと少女を見つめ返事を返した。
「うん!その顔。忘れないでね」
「はい!」
「じゃ、戻りなさい・・・。あなたの、いるべき場所へ・・・」
「はい!ありがとうございました!」
立ち上がり深々と一礼すると、野球バックをもって石川は足早に立ち去っていった。
「頑張ってね・・・。私の後輩・・・」
少女は水面を見つめ呟いた。
石川がその少女が、高校野球に燦然と名を残す「福田明日香」であることに気付くのはもう少し後のことである
- 200 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時51分16秒
- グラウンドにて
夕日の射すグラウンド。
メンバーは各自思い思いの練習に精を出していた。
そんな中・・・
「辻!加護!グラウンドで泥遊びしない!」
今日も保田の怒号がグラウンドに響く。
グラウンドの隅では辻と加護が泥あそびをして、ユニフォームを真っ黒に染めていた。
「ここのののじんちれす〜」
「あ!ずるいでののちゃん!そこはウチがダム作ろとしてた所やで!」
「はやいものがちれす〜」
保田の言うことを全く無視して泥遊びに興じる二人。
「じゃ〜ん、できたのれす!のののおしろなのれす!」
「ウチの土地奪っといてよう言うわ・・・。ええもんね、ウチもごっつ大きい城作ったる!」
ぐしゃ
一瞬で保田に踏みつぶされる、辻希美渾身の城。
あえなく落城。
「あーーーっ!!!やすらさん、なにするんれすか!」
「そうやで!保田さん酷いで!ののちゃんが一生懸命作ったんに!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ二人。
「うるさーーーーーーい!!!!」
切れる保田。
「あんた達ねぇ!何で泥遊びなんかしてんのよ!今は野球の練習する時間でしょ!?こんなにユニフォーム泥だらけにして・・・」
- 201 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時51分50秒
- 「だいじょうぶれすよやすらさん。どんなにどろだらけになっても、このドイツのかがくりょくがうんだイオンマルチクリーナーがあるからだいじょうぶなのれす」
懐からイオンマルチクリーナーを取り出す辻。
「そうや、イオンマルチクリーナーは、イオン電子分解するから人体にも環境にもやさしいんやで!」
「それになんと!くりかえしつかえるからけいざいてきにもとてもおとくなのれす!!」
「・・・・・・・・・」
保田がふるふると震える。
「いまなら!りょこうさきでもべんりなけいたいようスプレーもついてくるのれす!」
「うひゃー!そりゃすごいなぁ!で、ののちゃんおいくら?」
「はい!それがいまならなんと・・・」
ドカッバキッ!
辻が値段を言う前に、二人を思いっきり蹴り飛ばす保田。
「このクソガキどもは・・・・」
保田が肩で息をしていると、戻ってきた石川が声をかけた。
「あの・・・、保田さん・・・」
「・・・ん?あ、石川・・・」
何か複雑そうな顔の保田。
「石川・・・、今までどこ行ってたの・・・?」
「・・・ちょっと・・・」
そう言うと石川は押し黙ってしまった。
「ちょっとねぇ・・・。まぁいいけど・・・。で、何?」
「あの・・・、打撃練習・・・、付き合ってもらえませんか・・・」
「・・・・・・・・・」
- 202 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時52分33秒
- 保田は中澤の言葉を思い出していた。
(あいつは才能が無い・・・。練習させるだけ無駄やと思うで・・・)
「・・・・・・・・・」
少し黙り込み何か考える保田。
「駄目・・・、ですか・・・?」
「・・・・・・・・・」
保田は顔を上げると意を決したように口を開いた
「石川・・・、言い難いんだけど・・・、あんた、野球の才・・・」
「才能がないのは分かってますよ」
保田の言葉を遮って、石川が唐突に喋りだした。
「才能が無いから、練習するんじゃないですか・・・」
「・・・・・・・・・・・」
石川の言葉に保田は少し考えた後
「・・・わかった、付き合うよ・・・」
そう答えた。
石川は少し笑った。
- 203 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時53分08秒
- 打撃練習
グラウンドの隅で打撃練習を開始する二人。
保田が石川の素振りを凝視している。
「・・・。もう少し軸足に体重載せて・・・」
「はい!」
必死に素振りを続ける石川。
「・・・、石川、何で体重を前に持っていこうとするかな・・・?テニスじゃないんだからこう、もっと後ろ足にも体重載せるように」
「はい!」
しかし、いくらやっても石川の打撃フォームはなかなか変わらない。
(こりゃ本当に才能って奴が関係してんのかもね・・・)
保田は腕を組みながらそんなことを思った。
- 204 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時53分47秒
- そんなことを考えながら一時間が過ぎた。
一向に石川の打撃フォームに変わりはない。
それでも石川は必死に素振りを続ける。
「石川!だから何で打つとき体が前に来るかな!?それじゃ振り子打法じゃないのよ!」
保田の口調も荒くなる。
そんな保田の言葉を聞いて、石川の手が初めて止まった
「・・・振り子打法って何ですか?」
キョトンとする石川。ついでに保田もキョトンとなった。
「はぁ?あんた振り子打法も知らないの?」
「・・・はい」
(こんなのが野球部員なんだからねぇ・・・)
保田は呆れたように口を開いた
「振り子打法ってのは、マリナーズのイチロー選手の変則的な打ち方のこと。踏み込む足を振り子のように大きく振って、インパクトの時に全体重を前に持っていくの。野球って言うよりゴルフとかテニスのスイングに近いわね。」
「・・・それ、私に出来ませんか?」
「はぁ?出来るわけないでしょ?イチロー選手みたいな天才だから出来る打ち方よ。ろくに素振りもできないあんたなんかに・・・」
「やってみなきゃわからないじゃないですか!」
石川が興奮した口調で保田に詰め寄る。
「そりゃそうだけど・・・」
「じゃあ、振り子打法・・・、教えて下さい・・・」
石川が深々と頭を下げる。
(まいったなぁ・・・)
保田は困ったように頭を掻いた。
- 205 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時54分24秒
- それから石川の振り子打法の練習が始まった。
「もっと足を大きく振る!テイクバックももっと大きく!」
「はい!」
それは日が完全に沈むまで続いた。
「・・・ふー、石川、今日はこのくらいにしておきましょうか?もう、暗くなったし・・・」
さすがに疲れた保田が石川に尋ねる。
「・・・保田さん、先に帰って下さい。私もう少し練習していきますから・・・・」
体中汗でびっしょりになった石川が保田にそう答えた。
「あんたねぇ・・・、これ以上やったら体壊すよ・・・?」
「いいんです・・・。私、こうしないと・・・、みんなに付いていけないから・・・」
「・・・・・・・・・」
石川の気迫に押され、黙る保田。
「分かった・・・。じゃ、あたし帰るから・・・」
少し呆れ気味に答える保田。
「お疲れさまでした!」
石川の声は誰もいなくなった無人のグラウンドに響いた。
- 206 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時55分09秒
- (あの馬鹿は、単純って言うか、度を知らないって言うか・・・)
そう思いながら保田が自分の荷物を持ってグラウンドを去ろうとしたとき、未だに素振りを続けている石川の姿が目に飛び込んできた。
何かに取り憑かれたような石川の姿が。
「・・・石川!!」
思わず保田が声を上げる。
素振りを辞めて保田の方に振り返る石川。
(もうやめなよ・・・)
そう言おうとしたが言葉が出ない。
「・・・頑張りなよ」
「はい!」
保田の口から出たのは気持ちとは正反対の言葉だった。
石川の素振りはまだ続いている。
- 207 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時55分41秒
- 次の日の朝
「ふぁぁぁ〜、眠いなぁ・・・。慌てて起きたから朝ご飯も食べてないし・・・」
目をこすりながら登校する保田。
「あ、部室に買っておいたお菓子あったあったわよね・・・。それ、朝ご飯にしよ・・・」
保田は部室棟に向かって歩き出した。
グラウンドを横切ろうとした時、隅の方で何か物陰が動いているのが目に入る。
「・・・ん?」
目を凝らしてグラウンドの隅を凝視する保田。
「・・・あれ、・・・石川?」
グラウンドの隅では、昨日と同じように石川が一人素振りを続けていた。
「あの馬鹿・・・、まさか!一晩中・・・?」
思わず駆け寄る保田。
石川は一心不乱に素振りを続ける。
(才能は努力の後に付いてくる・・・!)
その言葉を信じて、バットを振り続けていた。
足を大きく後方に蹴り出し、振り子のように撓らせ足の動きとともに体全体を前に出し、鋭く振り抜く。
(完璧に、振り子打法マスターしてる・・・)
石川に駆け寄った保田はそのスイングを見て驚嘆した。
(まさか、・・・才能?)
後に人の気配を感じて振り向く石川。
「あ、保田さん・・・」
「・・・・・・」
保田は何も言えず呆然と立ちつくしていた。
「おはようございます!」
石川は汗を拭ってニッコリと笑った。
今石川は「才能」を物にした。
- 208 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月12日(月)22時58分19秒
- 今日はこの辺で。このごろ他の作者さん達は偉いなぁと思うことが多くなりました。
更新はなるべく早くしようとは思うんですけどね。
では。
- 209 名前:雄根某 投稿日:2001年02月13日(火)00時51分38秒
- あ、野球ものはじまってる!
わーい。
- 210 名前:ま〜 投稿日:2001年02月13日(火)00時53分52秒
- 石川・・。かっこよすぎるぜ!!
笑えるところと、感動できるところ・・・。
デンジャラスKさん・・、あなたの『才能』に乾杯!!
ところで、『キン肉マンの「僕の考えた超人」企画』笑えた!
懐かしいな〜、キン肉マン。
デンジャラスKさん、あなた歳はおいくつ?
- 211 名前:名無し 投稿日:2001年02月13日(火)01時31分37秒
- 野球は基本的なルールぐいらしか知らないけど、
ここの小説は好きだなぁ。
石川の話にはちょっとホロリとしちまったよ。
- 212 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月14日(水)01時28分07秒
- 「努力に勝る才能は無し」とはまさにこの事だな
- 213 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月14日(水)07時53分13秒
- 福田って、今プロ野球選手?
- 214 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月14日(水)13時47分42秒
- 次は、保田編がいいな
- 215 名前:ま〜 投稿日:2001年02月15日(木)01時19分55秒
- テンポがすごくいいな〜。
読んでて楽しいっす。
ところで辻と加護は、週末の深夜にやってる外国(日本語吹き替え)の
TVショッピングでも見てるんだろうか・・・。(w
- 216 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月15日(木)14時03分06秒
- 中澤って野球上手いの?
- 217 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月15日(木)16時41分51秒
- 感想が結構来てますね。ありがとうございます。とりあえずレスだけ・・・
なるべく早く更新しようって思ってるんですけどね。すいません。少々お待ち下さい。
>>209
はじまりましたよ。これからも見てくれると幸いです。
>>210
いつもどうも。
僕は一山いくらの三流大学生ですよ。
>>211
泣かせる話とかはあんまり書きたくなかったんですけどね。
それでも気に入ってくれたなら幸いです。
>>212
そうですね。努力ってもう手垢にまみれてて青臭い言葉だけど、すごく大事なんですよね。
この頃痛感してます。
>>213
いえ、一般人という設定です。ただ昔すごかったよ、と。
>>214
保田は脇にいるとすごく動くんですけど、メインにすると動かないんですよね。
いずれ書こうとは思います。
>>215
ちょうど書いてるときにテレビでホームショッピングみたいなのやってたもんで(w
>>216
そんなには上手くないです。基本的には学校の先生ですから。で、顧問兼監督と言う立場で。
- 218 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月18日(日)07時02分24秒
- 弟十三話 「諦めたらそこでゲームセットだよ」
職員室 〜ミーティング〜
中澤と保田が職員室で何かを話している
「・・・部員達の野球の腕も上がってきました。地区予選も近い事ですし、ここら辺でどこかと練習試合でも組みませんか?」
「そうやなぁ・・・。そろそろそんな時期かぁ・・・」
「部員達も自分の腕を試したがっています。監督、どこかのチームにお願いしてくれませんか?」
「・・・そう言われてもなぁ・・・。うち、現場から長い間遠ざかってたし・・・、今までの縁故も全部切れてもうただろうしなぁ・・・・」
申し訳なさそうに頭を掻く中澤。
「どこでもいいんですよ。腕試しですから。リトルリーグでもシニアリーグのチームでも・・・」
「・・・うーん・・・」
迫る保田に、ますます申し訳なさそうになる中澤。
- 219 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月18日(日)07時02分58秒
- そんなとき、何かを思いだしたように中澤が声を上げた。
「そうや!みっちゃんに頼めばええんや!!そうやそうや!忘れとった!」
「・・・みっちゃん?誰ですか?」
怪訝な顔で尋ねる保田
「平家みちよちゃんや。ウチの同級生なんやけどな、ここの野球部のOBやで。あんたらの先輩に当たるわけや」
「・・・で、その平家さんが練習試合とどう関係あるんですか?」
「まぁまぁ、そうあせんなや。みっちゃんはな、昔すごかったんやで。今グラウンドと校舎の間に無意味なネットが張ってあるやろ。あれな、みっちゃんがあんまり打球飛ばしすぎるために、学校が特別に取り付けたんや」
「・・・で、今その平家さんはプロか社会人かに行かれたんですか?」
「・・・いや、最後の夏の大会でな、アキレス腱痛めてもうて、もう野球でけへんようになってもうた・・・」
少し寂しげに中澤が呟く。
「でな、ウチが監督に復帰するときにコーチとして来てもらうように頼んだんや。なんや、データ集めるとか言うてまだ学校に来てへんようやけど・・・」
- 220 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月18日(日)07時03分54秒
- そう中澤が言ったときだった。
職員室の入り口のドアが開き、一人の女性が入ってきた。
「みっちゃん!」
中澤が声を上げる。
声に気付いた平家が、中澤達の方を振り向き満面の笑みとともに近づいてくる。
「裕ちゃん!どうも遅なってすまんな!」
「ええって、ええって!ま、座り」
平家が差しだされた椅子に腰掛ける。
「・・・で、みっちゃん。早速なんやけどな、例のデータって何やのん?」
「ああ、うん。ちょっと待ってってな・・・」
持ってきた大きめのバックから一台のノートパソコンを取り出す平家。
「・・・これや。ちょっと見てくれへんか?」
差しだされたパソコンのモニターを凝視する保田と中澤。
そこには部員の野球に関するデータが映し出されていた。
「ここ一週間ほど陰で練習見させてもろたわ。で、出したデータなんやけどな・・・」
「すごい・・・。なっちと後藤の変化球の変化量、投球数によるピッチングの変化、投球フォームの分析、打者の平均飛距離、ベース間のタイム、ポジション毎の守備範囲・・・、全部網羅してる・・・」
保田が感慨深げに呟くと、平家は少し自慢げな顔で話し始めた。
「で、データを元に個人個人の弱点も出してみたんや。ちょっと見てくれへん?」
- 221 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月18日(日)07時04分55秒
- ウィークポイントデータ
安倍:球速、スタミナ問題なし。変化球の変化量がばらけているので変化球改良の余地有り。特にフォークの多用禁止
後藤:球速全国レベル。フォークも問題なし。70球を越えるとコントロールが甘くなる。
保田:肩、打力は平均以上。リード面で単調になりがちな部分有り。
吉澤:肩は問題なし。打力もまあまあだが走塁に問題有り。
石川:守備、肩、ともに未だ問題有り。打力に改善の兆し。
加護:一番バッターとして守備、打力、走塁全て問題なし。血の気が多いので性格改善。
飯田:驚異的な一発を持つが選球眼に問題有り。打率.156
辻:足の速さが目立つ。その他の点で改善の余地有り。
矢口:天才的な守備。ポジショニングはプロレベル。打撃に問題有りか。
「・・・さすがみっちゃんやね。こういう地味な作業がよう似合っとるわ!」
「・・・裕ちゃん、それ、誉めてくれてんの?」
漫才のような二人の掛け合いに保田が割って入る。
「・・・あのー。練習試合の件は・・・」
「ああ、そうやそうや!忘れとった!みっちゃん、練習試合やろうと思うんやけどな、なんかアテあらへん?」
「アテなぁ・・・。あんまウチないんやけど・・・」
平家の言葉に落胆の表情を浮かべる保田。
「・・・でもな、一つ方法あるで」
「何ですか?」
保田が期待の眼差しで平家を見つめる
「これや、これ」
そう言って平家は持ってきたパソコンを指さした
「?????」
不思議そうに顔を見合わせる保田と中澤。
- 222 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月18日(日)07時05分26秒
- インターネット体験
「今の時代な、インターネットちゅう便利な物があるんよ。これで、相手チーム探せばええやろ」
平家が携帯電話とパソコンをモジュラーで繋ぐ。
「はぁ〜。そんなんできんの?」
「まぁ、とりあえず見とき」
パソコンに向かい、なにやらカチャカチャと始める平家。
「えーっと、ここやここや。ここの野球フォーラムに『対戦相手求む!』って書いておけば、多分返事帰って来るやろ」
「・・・そんな簡単に集まるもんなん?」
疑い深く中澤が尋ねる。
「・・・まぁ、100%ってわけじゃ無いやろうけどな。ウチらには今アテがないんや、何もやらんよりはましやろ」
「仕方ないか・・・。じゃ、この方法に賭けてみよか?」
中澤が少し諦めた口調で呟いた。
「じゃあ、あたし練習に戻ってみんなに伝えてきます!」
保田がそう言うと早足で職員室を出ていく。
「あっ!ちょっと待ち!まだ決まった訳じゃ・・・!」
平家がそう言うより早く、保田は職員室から姿を消していた。
「あーあ、行ってもうた・・・」
呆然と職員室の出口を見つめる平家。
「みっちゃん。どうする?これ駄目やったら部員の期待裏切ることになるで・・・」
「・・・あんまプレッシャーかけんといてや・・・」
沈黙が流れる
- 223 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月18日(日)07時06分05秒
- そんな中、平家が口を開く。
「とりあえず、募集の文章考えんとな・・・」
「こういう募集かけるときは、やっぱ掴みの言葉が大事やろな」
「例えば?」
「うーん・・・、そうやな。『ええ娘ぎょうさんいてまっせ〜!花びら9回転!』とか?」
「それピンサロのピンクチラシやん・・・。野球の募集やで・・・」
「じゃあ『立てよ国民!』とか」
「ガンダムのパクリやん・・・」
「『小さな事からコツコツと!西川きよしです!』」
「キー坊やん・・・。あかん、野球と全く関係なくなってきた・・・」
「『さらにおいしくなりました』」
「・・・もうええわ!ウチが考えるから裕ちゃんはだまっとき!!」
「つれへんなぁ・・・みっちゃん。昔のみっちゃんは・・・くどくど・・・・」
「あー!もう一向に話進まへんやんけ!!文章はウチが考えるから、これでも読んで監督の勉強でもしててや!」
と言って平家はバックからマンガ「スラムダンク」を取り出して中澤に投げつけ、再度パソコンに向かった。
「ほんま、ノリ悪なったなぁ・・・」
中澤は寂しげに呟いた。
- 224 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月18日(日)07時06分40秒
- 30分後
「よっしゃ!こんなもんやろ、裕ちゃん、ちょっと見てくれへんか?」
平家が中澤に声をかけるが返事がない。
「・・・裕ちゃん?」
「安西せんせぇ・・・・。バスケが、バスケがしたいれふ・・・・」
覗き込んだ中澤の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
「・・・裕ちゃん?どないしたん?」
「・・・みっちゃん。ウチ、安西先生になるわ!」
「はぁ?」
中澤の言動に混乱する平家。
「まず花道にレイアップシュート教えんとな!どこや花道!どこにおんねん!」
(あかん!完全に安西先生になっとる!このままだとそのうち打倒山王とか言い出してまう!)
「花道!おいてくる感じやで!おいてくるんや!」
暴走する中澤、必死に止める平家。
「裕ちゃん!あんたは湘北バスケの監督やない!野球部の監督なんや!」
「ゴール下は戦場なんやで花道ぃぃぃーーー!!」
- 225 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月18日(日)07時07分26秒
- そんなこんなで30分後
ようやく落ち着きを取り戻した中澤。
「・・・すまん。みっちゃん、つい取り乱してもうた・・・」
中澤の制止に全勢力を傾けた平家は肩で息をしている。
「はー、はー・・・、裕ちゃんあんま簡単に影響されすぎやで・・・」
「ごめんな、みっちゃん・・・」
「もうええわ・・・。疲れたからちょっと飲み物買うてくる・・・。文章は考えておいたから、そこの送信ってボタン押しといてや・・・。頼んだで・・・」
フラフラとした足取りで職員室を出ていく平家。
残った中澤はパソコンのモニターを見つめている。
「『対戦相手募集。当方全員女子&初心者につきお手柔らかに。メールはこちらまで』か・・・。文章が弱いなぁ・・・。こんなんじゃ集まるもんも集まらへんで・・・」
ひとしきり何かを考え込んだ後、中澤はパソコンの前に座った。
「ちょっと手直ししたろ・・・」
5分後
モニターの前で満足げに笑う中澤。
野球フォーラムの掲示板には先ほどの平家の文章の最後に
『P.S 勝ったら私たちの躰、好きにしていいわよ(はあと』
と書き加えられていた。
部員達貞操の危機!!
その後、大量のメールが平家の元に送られてきたのは言うまでもない。
- 226 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月18日(日)07時09分08秒
- 感動もクソもない話になりました。
今回はこんなもんで。では。
- 227 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月18日(日)09時39分40秒
- ほんまにデンジャラスな話になってきたぜ・・・
スポ根ものかエロ小説の境目にたったぞ。
さて、どっちをとる?
- 228 名前:ま〜 投稿日:2001年02月19日(月)23時27分30秒
- ぐぁ〜〜!!野球の試合申し込みてぇ〜〜!!!
勝負してぇ〜〜!!
- 229 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月22日(木)13時43分00秒
- >『P.S 勝ったら私たちの躰、好きにしていいわよ(はあと』ってオイオイ姐さん(w
ここの保田&石川、保田&辻加護のギャグ路線も好きですが、中澤&平家コンビも、い
いわぁ〜。
感動だけでなく、お笑い小説としてだけでも十ニ分にいけてます。
- 230 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月23日(金)21時35分30秒
- いよいよ、試合ですか。
ここ更新のチェックは毎日欠かした事がありません。
つづき、たのしみなので〜す。
今日もひたすら更新待ちつづけておりま〜す。
- 231 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月24日(土)07時44分11秒
- 続き期待age-
- 232 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月24日(土)15時45分03秒
- えー、諸々の諸事情がありまして更新が後れました。
「てめぇ遅いんだよ!待たせるぐらいなら小説なんか始めんな!」
との声が聞こえてきそうですが、とりあえず更新です
>>227
ここで一気にエロ小説にしたら人気もぐんとあがるんだろうなぁ、って一瞬思いましたけどね。
そんな小説を書けるほど文章に自信がないので、前と同じようにだらだらとした内容で行こうかな、と。
エロ小説でも書きましょうかね?
>>228
勝負して下さい。多分勝てると思います(w
>>229
ありがとうございます。
前にも書きましたけど、泣かせるような話はあんまりしたくなかったんですけどね。
ぶっちゃけた話、「あら?なんかこっちの方が読者の喰い付きがいいぞ?」という不埒な考えから話を書いてました(w
>>230
本当にありがとうございます。
「こんな小説待ってるやついねぇだろ?」とか思っていた所だったので、本当に励みになります。
試合なんですけど、今回も野球シーンは一切無しです(wすいません
>>231
と言うわけで続きです。
題名も題名だし、内容も内容でどうしようもないので今回はsageで行きましょうかね。
- 233 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月24日(土)15時46分22秒
- 第十四話 「僕の恥丘を守って」
練習試合当日のグラウンドにて
練習試合をあと1時間後に控え、思い思いの練習に精を出す野球部メンバー。
「矢口!ノック行くで!」
「おう!」
矢口に「だけ」向けて愛のノックを放つ中澤。
相も変わらず必死に素振り「だけ」を続ける石川。
広いグラウンドを利用して、金属バット片手に壮絶な鬼ごっこを繰り広げる辻加護と二人を追いかけ回す平家。
遠くを見つめ、目に見えない「何か」とお喋りを続ける飯田。
ひたすら惰眠をむさぼる後藤。
その後藤の脇でしゃべり続ける吉澤。
「栄養補給」と言う名の間食を止めようとしない安倍。
各自自分なりの方法で、試合に向けてモチベーションを高めている・・・、ように見える。
そんな中、一人様子のおかしい人間がいた。
保田である。
保田は苛立っていた。
こんな試合を組んだろくでもないコーチに。
それ以上に使えない監督に。
真剣さの欠けるメンバーに。
そして、余計な提案をしてしまった自分に。
(練習試合しようなんて言い出さなきゃよかった・・・)
そう思うと、保田は悔しげに奥歯を強く噛みしめた。
(負けたら・・・、・・・ってなんなのよこのルール!!)
- 234 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月24日(土)15時47分10秒
- 一週間ほど前
職員室
「監督」
保田は職員室で競馬新聞を読みふける中澤に声をかけた。
「・・・なんでそこでノボトゥルーやねん!!ってか、なんやねんノボトゥルーって!?冠名「ノボ」っておかしいでそれ!?ノボやでノボ!」
保田の声が聞こえていないのか、競馬新聞片手に一人ぶつぶつと何かを呟く中澤。
「あの・・・、監督」
「ノボ!ノボ!あはははは!!ノボ!」
中澤はどうやら馬券がはずれたらしく、一人暴走し始める。
「監督!監督ってば!!」
「ノボ!ノボノボノボノボ!!のぼのbのおおぼぼおおbのぼおぼぼおぼぼぼいいb!!!」
保田の声は耳に入っていないらしく、順調に暴走を続ける。
「監督!監督!しっかりして下さい!監督!」
一つため息をつくと保田は、意を決して口を開いた。
(これだけは使いたくなかったけど・・・)
「・・・おばさん・・・」
中澤の暴走が止まり、キッと保田を睨み付ける。
「・・・・圭坊、なんか言うたか?」
「いえ・・・、何も・・・」
「そか・・・。ならええ」
(ベッタベタだわ・・・)
保田は落胆の表情で首を横に振った。
- 235 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月24日(土)15時47分48秒
- 「で、圭坊。何の用や?」
「・・・ええ、練習試合の相手が決まったって聞いたものですから」
「・・・うん、まぁ、そのな・・・、とりあえずは、決まったで・・・」
何か言いにくそうにする中澤。
「で、相手はどこなんですか?」
「・・・地元の社会人野球チームや・・・」
「そこ、強いんですか?」
「・・・まぁ、可もなく不可もなくってとこやな・・・。ただ、メンバーには甲子園出場経験者もいるんやて・・・」
「へぇ、今の自分たちにちょうどいいじゃないですか。胸を借りるつもりで・・・」
保田が言葉を続けようとしたとき、中澤がそれを遮った。
「・・・そうもいってられへんねん」
「???どうしてですか?」
不思議そうな顔で保田が尋ねる。
「・・・・・・・・・」
何故か黙る中澤。
「監督?」
「・・・・あんなぁ、圭坊」
「はい?」
「・・・言いにくいんやけど・・・、実はな・・・、」
中澤が「耳を貸せ」と言うジェスチャーをする。
「????」
ごにょごにょ・・・
- 236 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月24日(土)15時48分23秒
- 中澤に耳を貸し終え、一瞬の間を置いた後、保田の表情が急変した。
「ええぇぇぇぇええぇぇぇぇぇぇ!!!!????」
保田の奇声が職員室に響く
「しーーーっ!大きな声出すな!何事かと思われてまうやろ!!」
必死で保田を制止する中澤。
「何事かって・・・!これ、その何事じゃないですか!!」
「ま、ええからちょっと落ち付けや!!」
「そんなこと落ち着いてられますか!ちょ!ちょっとその条件はあんまりにもきつすぎるんじゃないですか!?」
「ままま、ええから、ちょっとウチの話も聞いてくれへんか?な!」
「ちょっとなんであたし達が・・・!?負けたら・・・、はぁ!?」
「落ち着きや圭坊!頼むから、な!な!」
必死で懇願する中澤に、渋々話を聞く体制に入る保田。
- 237 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月24日(土)15時49分01秒
- 5分後
お茶を入れ丁寧に保田をもてなす中澤。
「・・・で、どこをどうなったらこういう条件が出てきたんですか・・・?うちが名もない弱小チームだから練習試合の相手がなかなか見つからないってのは分かりますけど・・・」
「いや・・・、実はな・・・」
「・・・実は?」
保田が身を乗り出す。
「・・・その場のノリで決めてもうた・・・」
「・・・・・ノリ?」
「・・・・・ノリや」
「・・・・・ノリで、つい?」
「・・・・・ノリで、つい、な」
- 238 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月24日(土)15時49分43秒
- 保田は一つ深いため息を一つついたあと、ニッコリ笑って中澤に優しく問いかけた。
「裕子ちゃ〜ん?今年で何歳になるのかなぁ〜?お姉ちゃんに教えてくれませんかぁ〜?」
「え〜と・・・、ひぃ、ふぅ、みぃ・・・4つ!」
満面の笑みでかわいらしく答える中澤。
ごちゅ
職員室の窓際に飾られていた花瓶を、中澤の頭頂部目がけて思いっきり振り下ろす保田。
「ふざけんな馬鹿!死ね!この年中欲求不満淫乱教師!!」
どす黒い血を流す中澤を見下ろし、保田はそう叫んだ。
中澤の体は地面に這い蹲り、小刻みに痙攣を続けている。
保田は倒れる中澤を一瞥した後、足早に職員室を立ち去った。
(あの馬鹿監督・・・!こんな条件、どうみんなに説明すればいいのよ・・・!)
- 239 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月24日(土)15時50分44秒
再び練習試合当日のグラウンド
鬼ごっこに興じる加護と辻。
「ののちゃん捕まえた!」
加護が辻の体を抱きしめるように押さえつける。
「だめれすよあいちゃん。このおにごっこのルールは『手に持っている金属バットなどの鈍器のようなもので、相手の後頭部を滅多打ちにするまで攻守の交代なし』なのれすから、ただつかまえるだけではだめなのれすよ」
掴んでいた腕を放し、怪訝そうな顔で尋ねる加護。
「えー、そんなことウチ聞いてへんよ〜?そんなルールあったか〜?」
「・・・ののがいまつくったのれす!いまのうちににげるのれす!!」
「あっ!逃げよった!卑怯やで!ののちゃんそれ卑怯や!」
「てへへへへ〜!これもさくせんのうちれす〜!」
「待ちやー!この卑怯もん!!」
ごちゅ
脱兎の如く走ってくる辻に、保田が渾身のアックスボンバーを決める。
血を吹き吐き沈む辻。
- 240 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月24日(土)15時51分53秒
- 「な!なにすんねん保田さん!酷いで!・・・ののちゃん!大丈夫か!?寝たらアカン!寝たら死んでまうで!!」
保田を睨み付け、辻を抱き起こす加護。
「・・・あんた達ねぇ!!試合前に何遊んでんのよ!!」
今日もまた鬼の形相で怒鳴りつける。
「遊んでるって、これがウチらなりのウォーミングアップなんやで!」
食ってかかる加護。
「もう少しましなウォーミングアップのやり方があるでしょうが!・・・ったく、今日の試合をなんだと思ってんの!?」
保田の決死の説得に、加護はキョトンとした表情で答えた。
「・・・何だと思ってるって、今日練習試合やろ?只の練習試合にそんな無気にならんでもええやん」
「只の練習試合ってあんたねぇ・・・。いい!?今日の試合はね・・・」
そう言いかけて保田の動きが止まった。
(・・・いけない!今この子達にあのことを喋ったら・・・)
保田は悩んだあげく、この試合にある条件が付いていることは部員の誰にも言っていなかった。
その方が部員達の精神衛生上健全であると言う判断を下したのである。
「今日の試合、なんなんや?」
「・・・・・・・・・・」
「なぁ、なんかあるんか?」
顔を覗き込み尋ねる加護から目線を反らして保田は口を開いた。
「・・・何でもないわ・・・。邪魔して悪かったわね・・・」
そう言うと保田は踵を返して、二人の元を立ち去った。
「なんやねんあのガメラ・・・。今日はえらい不機嫌やな・・・」
- 241 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月24日(土)15時53分26秒
- ベンチにて
ベンチに戻り、保田が一人部員データを入念にチェックしていると、石川が小走りに駆け寄ってきた。
「保田さん、ちょっといいですか?」
「・・・ああ、なに?石川」
うっとおし気に顔を上げる保田。
「あのですね、さっき保田さんを探してたんですけど見つからなかったので、変わりに私が相手チームさんに監督と一緒に挨拶しにいってきました」
いかにも「誉めて下さい」と言った態度に、只でさえフラストレーションがたまっているのに、ぶち切れる寸前の保田。
「・・・で、何?『ありがとうございました』って言えばいいの?」
不愛想に返答する保田。
「いえ・・・、そう言う訳じゃ・・・」
「あそう、じゃ、あたし忙しいから」
そう言うと再び部員データノートに目を移した。
- 242 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月24日(土)15時55分21秒
- それでも保田の前を動こうとせず、何か言いたげにもじもじする石川。
「・・・何?なんか言いたいことがあるなら言いなさいよ・・・」
石川のしゃくに触る態度に半切れ通り越して3/4切れの保田。
「・・・あのぉ、一つ聞きたいんですけど・・・」
「だから何!?」
4/5切れの保田。
「ええとぉ・・・」
「何なのよ!?」
5/6切れの保田。
「あの・・・、野球にローソクとか荒縄とかって何か関係あるんですか・・・?」
「はぁ!?」
突拍子もない質問に6/7切れ通り越して9/10切れの保田。
「関係あるわけ無いじゃない!あんたとうとう頭おかしくなった?」
「・・・いや、さっき相手チームに挨拶しに行った時ですね、ベンチにいっぱいローソクとか縄とかあったんですよね・・・。それで何かなーって思って・・・」
「!!!!!!!!!!!」
保田の表情が一気に引きつる。
- 243 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月24日(土)15時58分13秒
- 「・・・石川、それ、本当・・・?」
「本当ですよ?あと、何に使うかわかんない変な機械とかいっぱい転がってましたし・・・。あれ何に使うんでしょうね?」
「・・・・・・・・!」
「保田さん?」
「・・・石川、その機械って、もしかして「こけし」みたいな形してなかった・・・?」
「ええ、よく知ってますね。こけしみたいな形してましたよ。保田さん、何に使うか知ってるんですか?」
(・・・マシーンや!マシーン持ってきよった!!)
驚愕のあまり何故か関西弁になる保田。
「・・・保田さん?」
保田の急変ぶりに、不思議な顔をする石川。
(勝たなきゃ・・・、犯られる!輪姦される!!)
保田の一瞬にして視界が真っ暗になり、グラリと体が傾いた。
「保田さん・・・?保田さん!しっかりしてください!どうしたんですか保田さん!?」
気を失った保田は、薄れゆく記憶の中で、譫言のように「マシーンマスター・・・」とつぶやき続けた。
保田が気を失うと同時に、プレイボールのサイレンがグラウンドに鳴り響く。
試合開始。
- 244 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年02月24日(土)16時02分22秒
- えー、話が一向に進んでおりません。
取りあえず次からは試合に入ろうかなと。
なんかsageでやった方が気を使わなくていい感じはしますね。何となく。
なるべく早く更新しようと思います。では。
- 245 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月24日(土)20時00分53秒
- sageてるとわかんないんだよー。
打順は結局どうなったの?
個人的には、保田の一人野球も見たいんだけど…
- 246 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月24日(土)20時49分27秒
- >>245
作者さんがsageでって言ってるのに、わざわざ悪意に満ちた言い方で上げるのは
どうかと思いますよ。
>>作者さん
いよいよ試合、それもただの試合じゃないこの展開(w
つづきも楽しみにしております。
- 247 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月24日(土)21時22分14秒
- >(・・・マシーンや!マシーン持ってきよった!!)
関西弁保田にわらた。
どうなるのか楽しみ。
もっと中澤の変態ぶりがみたいな。(笑)
とりあえずsage
- 248 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月25日(日)01時01分02秒
- マガジンでやっていた「泣くようぐいす」みたいでおもろい。
- 249 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月26日(月)08時05分01秒
- おもしろいです。
ギャグにもセンスを感じますね。
- 250 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月28日(水)19時45分44秒
- 14話のサブタイトルが最高。
大笑いしました。
続きも期待しています。
- 251 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月05日(月)22時09分25秒
- 更新まだかな?
- 252 名前:ばね 投稿日:2001年03月06日(火)04時34分49秒
- くそう、面白過ぎる(w
更新お待ちしておりますsage
- 253 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月08日(木)10時55分16秒
- まだかね?
- 254 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月10日(土)12時46分58秒
- 奈良みたいのは出ないの?
- 255 名前:削除済み 投稿日:2001年03月11日(日)12時39分19秒
- 削除済み
- 256 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月10日(土)19時00分12秒
- あれ?
- 257 名前:経営者 投稿日:2001年03月11日(日)07時46分03秒
- >>255
うわっ!すいません!間違えてしまいました!
すいません作者さんごめんなさい!
削除依頼だしときますんで…。
ほんとごめんなさい……。
- 258 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月11日(日)23時51分42秒
- 更新楽しみにしています
- 259 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月12日(月)15時56分29秒
- おーい?
- 260 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月19日(月)08時39分43秒
- 終わり?
- 261 名前:やぐ×2 投稿日:2001年03月26日(月)03時00分52秒
- 最初から一気に読みました。
笑いのツボにジャストミ〜ト!! BY福沢←古い
それより、続きが読みたいんですけど… どうしちゃったんでしょう。
- 262 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月27日(火)09時22分48秒
- うぐいす全巻買っちゃったよ(w
- 263 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月07日(土)14時56分32秒
- もう更新は無理かな?
作者が書かないんなら設定引き継いでみたいんだけど。
- 264 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月08日(日)23時00分29秒
- なんで消えたの?
- 265 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月06日(日)20時26分57秒
- 誰か書いてよ
- 266 名前:ごんべ 投稿日:2001年05月09日(水)16時00分00秒
- とっとと続きかけゴルァ
- 267 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月11日(金)01時28分28秒
- >>263
ヒキツイデ
- 268 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月22日(火)22時45分28秒
- とりあえず書いて
- 269 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年05月27日(日)08時53分07秒
- すみません。事故に遭って入院してたもので。
今晩から再開します。
- 270 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月27日(日)11時21分17秒
- うおー!!ついに復活かー!待ってましたよ!
入院でもしてるんじゃないかと考えたことがあったけどホントしてるとは・・・。
期待してます!
- 271 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年05月27日(日)12時59分13秒
- 復活ですか!
待ってましたよ。頑張ってください
- 272 名前:ま〜 投稿日:2001年05月27日(日)13時23分17秒
- おおおお!!!再開か!?
期待してるよ!
お体大切に。
- 273 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月27日(日)13時57分12秒
- おぉっ!復活ですかぁ!
期待大!!!
でも無理はだめよ
- 274 名前:Non 投稿日:2001年06月01日(金)21時31分53秒
- はろしろボケ
- 275 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月02日(土)03時04分15秒
- >>274
まぁ、落ち着け
- 276 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月03日(日)23時04分45秒
- >>275
そんな気もしないでもない。
でも更新待ってます!
- 277 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月04日(月)20時17分17秒
- 疑っちゃダメ!!
マタ−リ待とうよ。
- 278 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月12日(火)10時21分27秒
- ついに死んだ?
- 279 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月12日(火)17時26分30秒
- >278
おいおい。
- 280 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月12日(火)20時52分10秒
- >274〜>279
もし,本物の作者だとしても、もう書く気なくしたな・・(糞
- 281 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月01日(日)08時12分36秒
- どーなっちゃってんだよ、どどどどーなっちゃてんだよぉ♪
- 282 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月03日(火)20時06分39秒
- もう、無理だな。 諦めるしかないか・・・
- 283 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月09日(月)22時59分37秒
- 最後の期待age
- 284 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月10日(火)23時00分06秒
- 本当に最後の期待age
- 285 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月11日(水)17時17分15秒
- かわいそうだからよせよ めいわくだし
- 286 名前:デンジャラスK 投稿日:2001年07月28日(土)19時22分01秒
- もうやめました。
- 287 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月28日(土)22時42分43秒
- >>286
おつかれさまでした。
大変楽しく読ませていただきました読者の一人です。
楽しいひとときをありがとうございました。
- 288 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月06日(月)03時30分32秒
- 放棄宣言って勇気いるよな。
これだけ人気のあった作品ならなおさらだろう。
実は、引継ぎを狙って文体とか研究したりしたんだけど、
全然面白くならなかった…。やっぱ作者さんはスゲェよ!
どっかでまた違う作品でも読ませてもらえば幸せだ。
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