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プロジェクト・ハロー

1 名前:カエル 投稿日:2001年02月18日(日)23時14分26秒
 ガヤガヤガヤ・・・バスの中は、大勢の少女達が雑談を交わしている。矢口真里(モー
ニング娘。)は、左隣に座る中澤裕子(モーニング娘。)と、他愛のない雑談を交わして
いた。窓際に位置する席に座る矢口は、窓の外が暗くなってきていることに気づいた。中
澤と通路を挟んで座る、後藤真希(モーニング娘。)と吉澤ひとみ(モーニング娘。)は、
何か食べているようだ。そして、その前に辻希美(モーニング娘。)と加護亜依(モーニ
ング娘。)は何かに熱中しているみたいだった。それが何なのかはわからなかったけど、
普段はミニモニ。として彼女達を引き連れている矢口にとって、その二人から解放されて
いる今が、心地よく感じた。ふっと気がつくと、斜め前に座る安倍なつみ(モーニング娘。
)がお菓子を差し出していた。
「矢口、食べる?」
「うん、ありがとう」
「裕ちゃんも、食べるっしょ?」
「おぅ、サンキュー」
安倍の隣には飯田圭織(モーニング娘。)が、その前に座るりんね(カントリー娘。)と
話しをしている。この二人は、<アイドルをさがせ!>という番組で共演しているため、
普段から仲がよかった。りんねの隣にはあさみ(カントリー娘。)が肩身が狭そうに座っ
ている様だった。矢口の後ろには、保田圭(モーニング娘。)と石川梨華(モーニング娘。
)が座っていて、眠っているのか静かだ。通路を挟んで反対側の席に平家みちよ(ソロ)
が見えたが、こちらも眠っているのか静かだ。その隣は・・・見えなかった。まぁ、この
バスが騒がしいのはいつものことだった。
2 名前:〜バスの中にて。 投稿日:2001年02月18日(日)23時15分44秒
 矢口は再び隣の中澤に目を戻して、いつもの調子で会話を始めた。
「裕ちゃん、ホテル着いたらどっか行こうよ」
「いや、ウチは部屋でゆっくりしてるわ」
「なんだよ、つまんないな〜」
矢口はプイッと唇を尖らせた。
「ライブと移動の連続で、裕ちゃん疲れてんねん。そっとしといてぇな」
「いいもん、後藤と遊びに行くから」
拗ねた矢口も可愛い、と、中澤は思った。そこにあるのは、幼子を見つめる、大人の中澤
裕子の目だったが。
「ねぇ後藤〜、ホテル着いたらどっか遊びに行こうよ」
中澤を跨いで、矢口は後藤に話しかけた。
「うん、いいよ〜」
「ヨッスィーは?行く?」
後藤の隣に座る吉澤にも、声をかけてみた。
「はい、行きま〜す」
「じゃあ、ホテル着いたらロビーに集合だよ」
頷いた後藤と吉澤を見て、矢口は再び中澤に目をやった。
「やっぱり若いコは元気があっていいねぇ」
「ヤ〜グ〜チィ〜、言うたなぁ〜!」
中澤は手をパーにして、矢口の背中をバシッと叩いた。
「イタッ!痛いって!裕ちゃんが若くないとは、矢口言ってないじゃん」
「ウチにはそういう風に聞こえたで」
「それは裕ちゃんが気にしてるからじゃないの?」
「そ、それは・・・」
「気にするな裕ちゃん。裕ちゃんはまだまだ若いよ」
「アハハ、ありがとな」
中澤の機嫌も戻って、矢口はホッとした・・・はずだった。気がつくと、窓の外はさっき
よりも暗くなっていた。ふっと運転席の左上にある時計を見てみると・・・10:20。
外が暗いことも考慮すると、夜の10時過ぎだろう。しかし、もうとっくにホテルに着い
ててもいい頃だ。いや、むしろホテルでメンバーの誰かと遊んでいる時間のはず。隣の中
澤に目をやると、中澤は気持ち良さそうに眠っていた。その隣の後藤も。少し腰を上げて
見回すと、起きている者はいない様だった。次の瞬間、矢口の浮いていた腰はストンと落
ちて、急激な睡魔に襲われた。
(昨日は確かにライブだったけど・・・こんなに眠くなったのは初めてだ)
不思議に思いながらも、矢口は迫り来る睡魔に、素直に身を委ねた。
3 名前:カエル。 投稿日:2001年02月18日(日)23時17分23秒
バトル・ロワイアルをベースにしたバトル系です。
設定とかモロパクリですが、内容は変えていく予定です。
更新スピードも遅いですが、適当に読んじゃってくれたら嬉しいです。
4 名前:〜分校内。 投稿日:2001年02月22日(木)04時13分47秒
 目が覚めた矢口は、妙な違和感に襲われた。まず、バスではない、どこかに座らされて
いること。目の前には机・・・そう、丁度学校で使う様な、木でできた身体に触れる部分
は木で出来ている、あの机と椅子だ。足下には、ツアー時に常に携帯していた、着替え等
が入った荷物が置いてあった。一瞬学校にいる錯覚にさえ落ちてしまいそうな程だった。
無理はない、ここはどこかの学校だった。第二に、学校なら、なぜ前の席に保田がいるの
か。隣にいるのは、中澤ではなく懐かしい顔、福田明日香だった。なぜ辞めていった福田
がこんなところにいるのだろう。いや、そもそもここはどこなのか。周りを見回してみる
と、同様に、目が覚めて、不思議そうに見回している者が数人いた。
 (・・・?)
矢口は首元に違和感を感じた。手触りは鉄の様だった。外そうとしたが、指を入れるのが
やっとの隙間だったため、力を入れると苦しかった。何度が足掻いたが、結局諦めた。隣
の福田の首元にも、同じ様なモノが巻かれていた。
「圭ちゃん・・・圭ちゃん」
前の席で眠っている保田を起こそうと、手を延ばした瞬間・・・ガラっと音を立てて、部
屋にある唯一のトビラが開いた。
「お〜いオマエラ、そろそろ起きろや」
派手な出で立ちで、サングラスをかけた、見慣れた男・・・つんくが入ってきた。
「疲れてんのはわかんねんけどなぁ、そろそろ起きた方がえぇんとちゃうかぁ?」
まだ眠っている者もいたが、つんくの声に反応した者が起こしていた。
「よ〜し、みんな起きたな。まずは挨拶や、芸能界は挨拶は大事やからな。みんな、おは
 よう」
「「「おはようございます」」」
ザワザワっと、それぞれがつんくに挨拶を返した。芸能界を引退した、明日香もしっかり
と。再び回りを見回すと、石黒、市井、そして解散したはずのT&Cボンバーのメンバー
もいることに気がついた。
「ビックリしたやろ、目が覚めたらこんなところに居るんやもんな」
「これってなんかのロケですか?」
声のした方を見ると、中澤が右前の席に座って、つんくに対して質問をしていた。矢口は
中澤がこんなに近くにいることを、この時に初めて知った。
「おぅ中澤、やっぱり気になるか?気になるわな。えぇぞ、それでこそ芸能人や」
明らかにいつもと違う雰囲気のつんくに、不信を抱く者は少なくはなかった。矢口もその
ひとりだったが、敢えて静かにしていることを選んだ。
5 名前:〜開始宣言。 投稿日:2001年02月22日(木)04時15分21秒
「今居るところやけどな、とある分校の教室や。わかるな?それでな、オマエラにこれか
 ら何をしてもらうかと言うと・・・」
語尾を置いて、息を飲み込んだ後、つんくは言い放った。
「殺し合いや」
再びザワザワっと、しかし今度はそれぞれ違う言葉で、喋りだした。
「それって、ホンマに殺し合うワケやないんですよね?」
当たり前じゃん、何言ってんの?裕ちゃんは。矢口はそう思ったが、次のつんくの言葉に
その考えを訂正せざるを得なかった。
「いや、ホンマに殺し合ってもらうで」
「マジっすか?何考えてるんですか!?」
「何考えてるって・・・そうやな、ちゃんと説明したらなアカンわ。実はな、オレんとこ
 に映画の監督っちゅうオファーがあってな。どんなんにしようかなーって思うたんやけ
 ど、ほら、やっぱり新しいモンがえぇやろ?今までになかった、斬新なモノやないと一
 般に受けへんのや。せやから、オレは考えた。そしたらな、こういうことになったんや」
(こういうこと?どういうこと?)
意味がわからない。というか、もはやつんくの言うことが自分の知っている言葉ではない
かの様に、理解不能だった。
「まぁ、そういうワケや。オマエラの親御さんに話したらな、やっぱり反対しはった。せ
 やから、代わりにオマエラのクローンをやる言うて、それと金渡したらな。渋々やけど
 承知してくれたわ」
(まさか!?)
矢口はハンマーか何かで頭を殴られた様な衝撃を受けた。自分の両親が承知するはずがな
い。前に座る保田も、隣の明日香も、中澤だって同じに違いなかった。いや、そんなこと
より・・・矢口は辻、加護の最年少コンビのことが気になった。もちろん、自分にとって
もそうだが、彼女達にとって、それは衝撃が大きすぎる。安倍と飯田の席順が前の方で自
分が比較的後ろの方ということを考慮すると、この並びは五十音順だろう。辻と加護を、
大体の推測から簡単に発見できた。加護は手で顔を覆って、泣いている様だった。辻の方
はというと、何が起きたのかわからないかの様に、ただ、一点だけを見つめていた。
6 名前:〜犠牲者。 投稿日:2001年02月22日(木)04時16分09秒
「何考えてるんですか?そんなの、できるワケないじゃないですか!」
この中では最年長の、信田美帆(元T&Cボンバー)が、つんくに喰ってかかった。
「あたし達・・・今は解散して抜けちゃってるけど、それでも仲間だったんですよ?うぅ
 ん、今だって仲間意識はあります!それなのに殺し合いなんて、できるワケ・・・」
(そうだ!娘。だって、ハロプロだって、仲間なんだ!殺し合いなんてできるワケない!)
「そうか?そう思うてんのは、オマエだけかもしれへんで」
騙されちゃいけない!そう思った矢口だが、教室内の空気が緊張してくるのがわかった。
(みんな、騙されちゃダメだよ!それこそ、相手の思うツボだ!)
「コラそこ!勝手に喋ったらアカンぞ!」
つんくが右手が上げられたかと思うと、何か黒いモノを握っていた。それが拳銃だとわか
るのに、時間は要らなかった。なぜなら、その瞬間に花火の様な音を発して、次の瞬間、
隣に座るミカに話しかけようとしたダニエルの体が、まるでダンスレッスン中にターンを
する様に回転して、そのまま倒れたからだ。ダニエルの額には不自然な穴が開いていて、
そこから出た血しぶきが周囲の者に降りかかった。しかし、悲鳴をあげる者はいなかった。
「アカン、出演者が減ってしもうた。まぁしゃあないわ。勝手に喋ったりしたらアカンぞ」
ダニエルの顔が少しだけ覗けた。目は虚ろに一点を見つめていて、動かない。次第に顔色が
変わっていくのがわかった。ダニエルは死んでいた。
7 名前:〜ルール説明。 投稿日:2001年02月23日(金)22時48分42秒
「じゃあ、ルール説明するぞ。ルールは、まぁ、簡単やな。お互い殺し合えばえぇ。武器は
 教室から出る時に渡すんやけど、公平に誰がどの武器になるんかは、オレもわからんよう
 になってるから安心してえぇで。それから・・・」
つんくは黒板に向かって、乱雑にひし形が歪んだ様なモノを書いた。それから縦、横に数本
ずつ線を引き、縦線の間に数字、横線の間にアルファベットを書き足した。
「これは大雑把な地図やねんけど、ここから出たら丁度こんな感じの島や。三時間ごとに禁
 止区域を作るで。もし禁止区域に入ってもうたら、みんなの首に巻かれてるモノが爆発し
 てまうから、注意するようにな」
そう言われて、初めて首輪に気づいた者もいた。首筋に手を当てて、少し引っ張ってみたり
もしている。
「それからな、その首輪、無理に外しても爆発してまうからな」
みんなの手がスッと首元から離れる。
「それとな、この分校も、みんなが出た後は禁止区域や。戻ってこれへんからな」
つんくはゆっくり周りを見回した。きっと誰かが喋ってないかとか、確認でもしたのだろう。
「あと、24時間経って誰も死なない場合も、爆発してまうぞ。そうせんと誰も殺さへん
 かもしれんからな。島から出ても爆発するぞ」
「はーい」
誰かが手を上げて、つんくが名前を言うのを待った。
「なんや市井、質問か?」
「はい、いいですか?」
「えぇで」
「24時間経っても死なない場合って言いましたよね?それってわかるんですか?まさか、
 つんくさんが見回るワケじゃないですよね?」
「あぁ、えぇ質問やな。実はその首輪にな、みんなの脈拍やらがわかる様になっててな。そ
 れが無くなってもうたら、その情報がこっちに送られてくるワケや。他に質問は?ないな
 ら始めるで」
「あ〜、それとぉ、出発する順番って重要ですよね。どうやって決めるんですか?」
「なんや市井、やる気になったんか?」
「いやだなぁ、一応聞くだけですよ、一応」
「そうやなぁ、順番は重要やな」
(まさか紗耶香が・・・)
矢口はまた、頭を殴られた様な衝撃を受けた。まさか市井がやる気に・・・
8 名前:〜秒読み。 投稿日:2001年02月23日(金)22時49分42秒
「まぁ見てもわかると思うが、今みんなが座ってるのは、五十音順や。その順番のまま、ク
 ジ引きでどこからスタートするか決めんねん。それから2分置きに出発や。公平やろ?も
 う質問はないな?」
市井ももう立ってはいなかった。
「最後に、このゲームの優勝者には、事務所から一生が保障されるから、がんばるんやで。
 このまま芸能界に残るもよし、望むんなら新しいユニットも組んだるからな」
一生の保障?新しいユニット?クソクラエだ!矢口は頭の中で嘆いたが、声には出さなかっ
た。
「じゃあ始めるで。まずはクジ引きからやな」
つんくは教卓の下から黒い箱を取り出し、徐に手を突っ込んだ。
「えー、スタートは・・・おぅ、偶然やな。1番や。あさみからやで」
名前を呼ばれたあさみ(カントリー娘。)は、ビクッと体を震わせた。

【残り32人】
9 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月23日(金)23時30分43秒
バトロワ系は最近多いね。
どう展開していくか楽しみにしてます。
10 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月26日(月)01時01分14秒
市井が三村・・・?
続き期待
11 名前:カエル。 投稿日:2001年02月26日(月)23時03分04秒
>>9
かぶらないようにやろうと思ってるんですけど、やっぱり難しいです(汗
>>10
そうですね、一応キーパーソンに市井を使おうかと。

更新は、やっぱりゆっくりです(涙
12 名前:名無し読者 投稿日:2001年02月27日(火)05時11分33秒
32人とはまた壮大な……
無理に全員かぶらないようにすることもないんでない?
頑張りや〜〜
13 名前:キング 投稿日:2001年03月04日(日)09時49分21秒
やっぱり
石川→相馬
後藤→桐山 になるのかな?
一人ぐらいは月山みたいな死に方も良いかも
14 名前:カエル。 投稿日:2001年03月04日(日)22時55分46秒
>>12
ハロプロのメンバーと、引退した娘。、それにEEを加えたので、
それくらいの人数になりました。
>>13
う〜ん、石川、後藤には別の方向で。
時間制限での死に方もいいですね。
15 名前:〜出発。 投稿日:2001年03月04日(日)22時57分42秒
 あさみは震えた身体を強ばらせながらも、ヨロヨロと立ち上がった。
「ほら、はよせんかい。出口のところに人が居るから、デイバッグ受け取ってくんやで。そ
 の中に武器も入ってっからな」
足下に置かれてた自分の荷物を持って、あさみは出口の方へと歩き出した。五十音順ってこ
とは、矢口の前は保田、後ろは・・・吉澤だろうか。つんくの方を伺いながらも、後ろを振
り向くと、意外な人が座っていた。ユウキ(EE JUMP)だ。確か、EEはハロプロメ
ンバーではなかったはずだが・・・しかし、そこを考えても答えは出なかった。吉澤はその
後ろで、周りの空気を伺うように、キョロキョロしていた。
「はい次は、安倍やな。2分後にスタートやからな、準備しとけよ」
(なっち・・・)
なんとかしたかったが、今動けば殺されるのは確実だった。矢口にはどうにもできなかった。
悔しさで、両の拳を握りつぶしそうになっていた。フッとバスの中で安倍がお菓子をくれた
ことを思い出した。
(なっちと殺し合えるワケないじゃん)
「よし、そろそろ2分やな。安倍、頑張るんやで」
いつも瞳に強い光を宿らせた安倍でさえ、この瞬間は負の状態になってしまっている。矢口
はまた、悔しさに身を震わせた。
(くっそぉ・・・なんとかしなきゃ)
16 名前:〜迫る順番。 投稿日:2001年03月04日(日)22時58分24秒
 矢口はまず、みんなを集めて脱出する方法を考えようとした。しかし、島から出れば、この
首についている忌まわしい物体が爆発してしまう。
(それなら、このゲームの主催者を倒せばなんとか・・・)
それも無理だった。主催者であるつんくはこの分校に留まるだろうし、この分校はスタート
直後に禁止区域になってしまう。つまり、つんくには、近づけないのだ。いや、まだだ。ま
だチャンスはある。ここから出る時に、行き方を考えれば、つんくのすぐ前を通れる。問題
は、つんくがピストルを持っていることと、すでにひとりを殺していること。実際に、その
無意味な殺人は、絶対的な効果を持っていた。やらなきゃ殺されるという思考が、みんなの
頭の中に一瞬にして築かれただろう。
(あのピストルさえ、なんとかできれば・・・)
矢口がその方法を考えている間に、順番はすぐ目前へと迫ってきていた。村田めぐみ(メロ
ン記念日)がダニエルの死体を避けるように、出口へと向かうのが見えた。
(どうしよう・・・)
しかし、矢口はこの場で正常な思考を持つことが出来なかった。焦れば焦るほど、同じこと
が浮かんでは消え、そしてさらに焦るのだった。そうこうしているうちに、保田の名前が呼
ばれた。
(せめて圭ちゃんだけでも・・・)
そう思ったが、名前を呼ばれてしまった今、お互いに打ち合わせをするほどの十分な会話は
出来ない。
(圭ちゃん・・・また逢おうね)
矢口は、保田は自分でなんとかできるだろうと思い、後から来るであろう、吉澤を待つこと
にした。矢口は吉澤の教育係であり、その吉澤なら自分を信じてくれると思ったから。
17 名前:〜矢口、発つ。 投稿日:2001年03月04日(日)22時59分36秒
「次は矢口やで、準備しとけよ〜」
何の準備をしろと言うのだろうか。荷物を纏めろとでも言うのか?それとも、心の準備の話
か?矢口は沸々と沸き上がってくる行き場のない怒りを、抑えるのに苦労した。そして・・・
「よし、矢口、がんばるんやで」
嬉しくない激励と共に、矢口の名前が呼ばれた。矢口は、吉澤に目で合図を送ろうと、チラ
ッと後ろを振り向いた。しかし、吉澤は下を向いてしまっていて、矢口の方なんかは見ては
いなかった。
(・・・外で待ってれば、大丈夫だよね)
「コラ矢口、さっさと行かんかい!後が詰まってるんやぞ!」
心残りだが、仕方なく矢口は、足下のルイ・ビトンのバッグを肩にかけ、出口へと歩き出し
た。トビラの外には黒いスーツに、サングラスをかけた男が立っていた。その男は黙って、
矢口に黒いデイバッグを差し出すと、さっさと行け!というようなジェスチャーで、矢口を
追い払った。
(くっそぉ・・・)
窓が鉄のような板に塞がれていたため、廊下は夜の学校のように蛍光灯がついているだけだ
った。そこから出口までは一本道だったため、迷わずに行くことができた。途中、職員室ら
しき場所には、さきほどの黒スーツと同じような男が数名、パソコンをせっせといじってい
るのが見えた。
(コイツらも、つんくの仲間か)
矢口は、もはやつんくさんなどとは呼べなかった。男達の手元には、黒い拳銃が置いてある。
この場で乱入しても、到底勝ち目がないことは、明白だった。矢口は諦めて、大人しく出口
へと向かった。
18 名前:〜犠牲者。 投稿日:2001年03月10日(土)01時32分39秒
 重いトビラを開けると、外は夜だった。ちょっとした広場があり、その向こうには木々が
生い茂っていて、全くの暗やみだった。
(・・・!?)
暗やみでうっすらとしか見えないが、少し離れたところに、黒い影が寝そべっていた。
(あれは・・・人?)
重たさを感じるその物体に近づき、矢口は顔を見ようと手を触れた。
(・・・冷たい!)
その物体は、すでに死んでいるようだ。モーニングのメンバーでないことを祈りつつ、矢口
は顔を確認した。斉藤瞳(メロン記念日)だった。脳天には、何か棒状のモノが突き刺さっ
ている。
(ちっくしょぉ、一体誰が・・・)
パシュッ!矢口の頭上、わずか十数センチのところを、何かがかすめて、地面に刺さった。
(!?)
それは銀色で、先端の尖った短い槍のようなモノだった。
(・・・矢?狙われている?)
矢口はそれを抜き取り、辺りを見回した。自分の目から水平線上には、誰も見当たらない。
というか、森の中は暗くて、見つけられなかった。上を見上げると・・・分校の2階の窓に、
薄暗く影が動いた。
19 名前:〜影。 投稿日:2001年03月11日(日)02時11分30秒
(誰・・・?)
そう思うのも束の間、次の瞬間には2本目の矢が、矢口に向かって飛んできた。矢口は素早
く走り、その矢を交わしてから、手に持った1本目を誰かわからぬ影に向かって、投げた。
腕力には自信がない矢口だが、その矢は見事、影に命中したように見えた。そして、その影
は体制を崩して、窓の真下にドサッと崩れ落ちる。影の正体は・・・稲葉貴子(T&Cボン
バー)だった。
「あっちゃん・・・なんで・・・」
モーニング娘。とT&Cボンバーは、他のグループと比べると中が良かった。その為、矢口
も稲葉とはよく話した。その稲葉が、自分の命を狙っていたのだ。矢口は信じられなかった。
いや、信じたくはなかった。しかし、現に稲葉は自分に向けてボウガンを放ってきたし、自
分は危うく命を落とすところだった。
(なんで・・・ちくしょう・・・)
稲葉の肩口に刺さっている矢を抜いて、矢口は森の中へと走っていった。吉澤を待つという
ことも忘れて・・・

【残り31人】

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