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祭のあと

1 名前:ライター 投稿日:2001年02月19日(月)17時59分05秒
「10年なんてあっというま。でもね、この10年間、1度だってあの事を忘れることはなかったよ」
これは、私が某メンバーへの取材中に聞いた言葉である。
きっと彼女は、私との取材を通して当時の記憶を呼び起こし、無意識に言ったのだろう。
彼女だけではない。他のメンバーだって、口には出しはしないものの皆同じ気持ちを心に抱いていただろう。

『モーニング娘。』

厳しい芸能界で一時代を築き、鮮やかに疾走したスーパーグループ。
テレビで彼女たちを見ない日はなかったし、曲を出せばヒット間違い無しだった。
全ての歯車は順調にまわっていた。ーーそう、あの瞬間までは・・・。
2 名前:ライター 投稿日:2001年02月19日(月)18時52分32秒
『モーニング娘。』が、ブラウン管の前から姿を消して10年になる。
その間様々なアイドルグループがデビューしていったが、彼女たちほどの成功を
おさめたグループは無いし、今後も出てくることは無いであろう。
それだけ『モーニング娘。』が残した足跡は偉大なものであった。
当時の映像を現在見ても、新鮮で、決して色あせることなく映る。

中澤裕子・飯田圭織・安倍なつみ・保田圭・矢口真里・後藤真希・石川梨華・吉澤ひとみ・辻希美・加護亜依

十人十色。それぞれの個性がぶつかりあい、それによって生じたパワー。
そのパワーは無限に広がり、芸能界を席巻していく。
しかし、エンディングは意外な所からやってきた。全く予想だにしなかった所から・・・。
ーーそう、突然の死。
3 名前:ライター 投稿日:2001年02月19日(月)19時53分45秒
これは紛れもなく『事件』であった。
しかし、我々に真実が伝わることは無く、伝わったのは「自らの命を絶った」ということと、
「モーニング娘。解散」という事実だけであった。

あれから10年の月日が経ち、この『事件』も、『モーニング娘。』の存在と共に風化していった。
各メンバーも、それぞれの生活を送っている。
「なぜ今更『モーニング娘。』なんだ」と、思われるかもしれない。
10年間語られることの無かった真実を、皆が忘れかけている事実を、なぜ今になって掘り返す必要が
あるのかと感じられるかもしれない。
『今だからこそ』である。
10年経った今だからこそ、彼女たちの口から真実が聞けるのではないだろうか。と、私は思う。
この『事件』は、決して風化させてはならない。今後、芸能界でこのような不可思議な『事件』を
繰り返させてはならない。ーーなんて綺麗ごとは言わない。
真実を知りたいのだ。純粋な1ファンとして。
彼女たちに会って、話がしたい。私は日に日にそう思うようになっていった。
幸い、私はこの業界で仕事をしている。そこそこ名の知れた物書きだと自負している。
以前の彼女たちとも面識がある。
私は彼女たちに取材することを決意した。『モーニング娘。』の真実を知るために。
4 名前:ライター 投稿日:2001年02月19日(月)21時44分03秒
『モーニング娘。』解散後、芸能界から身を引いた子も当然いる。
やはり芸能界にいる子のほうが私の仕事上、連絡がとりやすい。
そこで、私は彼女に取材を申し込むことにした。

加護亜依(23)
『モーニング娘。』解散後、メンバーで同い年の辻希美とユニット『nono-ai』を結成したが、
3年前に解散し、現在はソロ歌手として頑張っている。
『モーニング娘。』の時からしゃべりのたつ子だったから、トーク番組などでもなかなか
業界内の評価は高い。
所属事務所も『nono-ai』解散を期にUFAから業界最大手の事務所へと移籍した。
まあ、『モーニング娘。』の中では1番芸能界で成功したと言われている。
所属事務所に取材の申し込みをしたところ、意外にもあっさりOKだった。
後日、私は彼女との待ち合わせの場所へと向かった。
5 名前:ライター 投稿日:2001年02月19日(月)22時06分45秒
彼女を待つこと10分。時間どうり彼女ーー加護亜依はやってきた。
昔の面影は多少残ってはいるが、やはり年相応に成長している。
身長も小さいほうではあるが、以前のような「ちっちゃ〜!」という感じではない。
また、顔は幼さを残してはいるが、身体のほうはもうすっかり女性である。
まあ、10年も経てば当然なのだが・・・。
「すみません。お待たせしました」
と言いながら彼女は私の向かいの席に座った。
彼女が飲み物を注文した後、私は早速取材を開始した。
6 名前:ライター 投稿日:2001年02月19日(月)22時34分33秒
ーーお久しぶり・・ですね。
「お久しぶりです」
ーー大活躍のようで。
「いえいえ。やっと1人に慣れたところですね」
ーー今日は『モーニング娘。』についての取材なんですが・・・
「あ、はい」
ーー解散して10年経ちますが、現在振り返ってあの頃はどうでしたか?
「そうですね・・・まだ何もわからない状態でしたから、とにかく必死でしたね」
ーー必死だった。
「歌もダンスも早く先輩たちに追いつけるようにって」
ーーけっこう自由奔放にやってたように見えたんだけど・・・
「やっぱり、まだ子供でしたから(笑)」
7 名前:ライター 投稿日:2001年02月19日(月)22時59分15秒
ーーあの頃の思い出とか教えてください。
「ツアーとかでいろんな所に行けたのが楽しかったですね。修学旅行みたいで」
ーー修学旅行。
「そう。だってみんな一緒だったから・・・」
ーーでも、親元から離れて暮らしてたから寂しかったんじゃない?
「そうですね・・・。でも毎日メンバーに会ってたから・・・」
ーーメンバーが支えだった。
「うん、そうでしたね」
ーー今もメンバーと連絡とってる?
「う〜ん、たまにですね。みんな忙しいから」
ーーそうなんだ・・・
「そうですね・・・」
8 名前:ライター 投稿日:2001年02月19日(月)23時43分52秒
それから私たちは昔話に花を咲かせた。しかし私の聞きたいのはこんな事ではない。
そう私は『真実』を知りたいのだ。私はその核心に迫った。
ーーで、あの事件について聞きたいんだけど・・・
「あの事件・・・ですか?」
ーーそう。自殺だったとか・・・
「・・・そうですね。私もそう聞きました」
ーーなにか思い悩んでたとか、おぼえてる?
「いえ、全然わかりませんでした」
ーー相談されたとか・・・
「いえ、なかったです。・・・やっぱりまだ子供だったから」
ーーそうだよね・・・自殺したって聞いたときは・・・
「うん・・・やっぱりショックでした・・・ずっと一緒にやっていくと思ってたから・・・」
9 名前:ライター 投稿日:2001年02月20日(火)13時23分30秒
どうやら彼女もあの事件の『真実』がわからないようだ。
我々と同じく『事実』しか知らされていない。
それはそうだ。当時13歳の彼女に対して、事件の『真実』を話したところで、よりショックを
与えるだけで、当時の彼女には『真実』を受け入れる余裕はなかっただろう。
まあ、周りの大人たちの判断は正しかったと言える。
最後に、私はどうしても聞きたい質問を彼女にぶつけた。
10 名前:ライター 投稿日:2001年02月20日(火)13時55分44秒
ーー現在、振り返ってみて、あなたにとって『モーニング娘。』とは何だった?
「う〜ん、やっぱり現在私がこの仕事をできるきっかけだったし、1年ちょっとだったけど
歌もダンスも一生懸命やったから、それが私の基礎になってると思うから・・・」
ーーあんな解散の仕方だったけど、もう思い出したくない過去だとか・・・
「いや、それはないです。・・・まあ、当時は辛くて、もう辞めようとか思ったけど・・・
いっぱい泣いたし・・・。でも、やっぱり感謝してます。いい思い出です」

彼女は話してくれた。「いい思い出です」と。
私は『真実』には一歩も近づくことはできなかったが、なぜか清々しい気持ちだった。
忌まわしい『事実』を残し、消えていった『モーニング娘。』であったが、
こうしてメンバーが芸能界で活躍している。
忌まわしい『事実』も含め「いい思い出です」と言って・・・。
もうすっかり関西弁も消え、心も身体も大人になった彼女。
今後も芸能界で頑張っていくことだろう。ぜひ頑張ってほしい。
彼女を見送りながら私はそう思っていた。
11 名前:ライター 投稿日:2001年02月20日(火)16時03分38秒
彼女を見送ったあと、私は次の展開を考えた。
やはり、結論はメンバーに会って話を聞く。そこで何か手がかりがあればということだ。
さっきの取材後、彼女ーー加護亜依から数人の連絡先を教えてもらった。
メモ片手に私は、誰に連絡をとろうかと考えた。
そして、彼女に決めた。
メンバー内にいても、どこか自分たちを客観的に見てた彼女なら、何か気持ちの変化や
抱えていた悩みなどわかっていたかもしれない。
そう考えた私は、内ポケットから携帯電話を取り出した。
12 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2001年03月05日(月)01時29分59秒
何かこれまでに無い流れと技法がナイスですね!誰が死んだのかムチャクチャ気になります。更新待ってます

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