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未成年
- 1 名前:らじく 投稿日:2001年03月08日(木)03時41分53秒
- 『彼女』に出会ったのは雪の降る日曜日だった。
- 2 名前:らじく 投稿日:2001年03月08日(木)03時43分41秒
- その日はとても寒かった
この街全体が凍っているような、そんな気がした
でも私の目の前を通り過ぎていく人は皆暖かそうで
手をつないで歩くカップル
プレゼントを大事そうに抱えたサラリーマン
それに、・・・恋人を待っているであろう女の人
誰も皆、幸せそうな顔をして通り過ぎて行く
来るはずもない人を待つ自分が虚しくなる
「ゴメン、待った〜」
え・・・まさか、<彼女>がここに来るはずはないのに
でもほんの少しだけ、やっぱり<彼女>は来てくれた。
そう思って、笑顔の私が振り返った先に立っていたのは
<彼女>ではなく、二十代半ばぐらいの見知らぬ金髪の女性だった
- 3 名前:らじく 投稿日:2001年03月08日(木)03時45分21秒
- 「・・・あの」
人違いじゃないですかと言い終わる前に『彼女』の言葉が遮る
「なあ、暇やったら一緒に飯でもどうや」
よく聞けば<彼女>とは似ても似つかない声で、関西弁のイントネーション
「・・・・いや」
断ろうとする私の言葉を無視して『彼女』はさらに続けた
「あ〜、心配せんでもアタシがおごるから」
「・・・・だから」
ニヤニヤ笑っていた彼女が急に真面目な顔になって言った
「・・・なあ、これ以上ここで待っとっても彼氏はこんで」
心の中を見透かしたような『彼女』の青い瞳
「何で、・・・何でそんな事がわかるんですか」
「そりゃ、こんなカワイイ娘がたってりゃ気にもなる。
しかも、この寒さの中2時間も居れば声も掛けたくなる」
「・・・見てたの」
「ああ、そこでな」
そう言って彼女は向かいにある喫茶店を指さした。
- 4 名前:らじく 投稿日:2001年03月08日(木)03時46分43秒
- これ以上待っても<彼女>は来ないだろう、そんな事は分かっていた
それでも、もしかしたら・・・そう思って
この場を離れることが出来なかった
「寒かったやろ」
そう言って『彼女』は私の頬にそっと触れた
「頬もこない冷たなって」
冷え切った私の心と体に『彼女』の掌から温もりが染み込んでくるようだった
「・・・・・・」
「それじゃ、冷えた体を暖めるおいしい料理でも食べに行こか」
私は黙ってその言葉に頷き、軽薄そうな笑みを浮かべた軟派女の胸に顔を埋めた。
- 5 名前:名無し 投稿日:2001年03月11日(日)04時01分41秒
- 誰と誰だか気になるっす。
軟派な人はわかるんだけど……
- 6 名前:らじく 投稿日:2001年03月13日(火)04時41分47秒
- 退屈やな
矢口は居らんし、みっちゃんはドタキャンするし
まあ、つまらん仕事が無いだけマシか
何ならカワイイ娘でもひっかけてお持ち帰りでもしてまうか
今日は矢口帰ってけえへんみたいやし
せやけど、さっきから外眺めてても通るのは
不細工か彼氏持ちぐらいやし
ここでもう少し時間つぶそうにも
隣の席では人目もはばからんと
不細工共が強烈なディープキスかましてるし
はあ、どっかにカワイイ娘居らんかな
お、カワイイ娘発見!
ショートカットでチョイと男前なカワイコちゃん(死語)
彼氏でも待ってんやろか
こんな雪ん中あんなかわいい娘待たせんなんて
どんな奴が来るんやろうか
まあ、どんな奴やろうがウチには関係あらへんねやけど
彼氏が来る前にかっさらってまうか
- 7 名前:らじく 投稿日:2001年03月13日(火)04時43分35秒
- ピピピピピピピピピピピピ
あ〜あ〜
本当に今日はついてない日やな
「はい、もしも〜し」
『中澤様、お客様が今夜来られるそうなので』
「なあ、圭坊そんな堅苦しい喋り方せんといつもみたく裕ちゃんって呼んでや」
『お客様のご希望は』
「なあ、今夜は暇やし久しぶりにどうや」
『・・・3番を御希望ですので』
「相変わらず素っ気無いんやな、まあそこがエエんやけど」
『では、お待ちしております』
「なあ・・・」
プツッ
あ〜あ、もう少しかわいげがありゃあええのにな
・・・さて、お迎えにでも行くか
ご指名は3番・・・なっちか
今日帰ってきたばっかりやけど。まあ、あの娘なら大丈夫やろ
「もしもし、中澤やけど車よこしてくれや」
「ああ、分かった」
- 8 名前:らじく 投稿日:2001年03月13日(火)04時45分49秒
- >5さん
軟派な人ともう一人は男前な人(新)です。
- 9 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月07日(土)08時49分54秒
- うーん、気になる。期待下げsage
- 10 名前:らじく 投稿日:2001年04月10日(火)04時47分16秒
- いつもは運転手の信田に直接連れて来てもらうんやけど
今日はひまやったから車で片道一時間かけて迎えに行った
なっちは今日は特に機嫌がよかった
裕ちゃんとドライブだってはしゃいでいた
車の中でもずっと喋りっ放しで
行きよりも時間が早く過ぎていった
「ねえ、裕ちゃん」
「ん〜何や」
「今度さあ暇なときにデートしようよ」
「ああ、もちろんええで」
「ホントに」
「ああ、なっちのためやったらデートでも何でもしたる」
・・・大事な商品やからな
「へへ〜、約束だよ」
「ああ、約束や」
「じゃあ、指切りしよ」
「・・・ああ」
「指切りげんまん嘘ついたら針千本の〜ます指切った。えへへ、何か楽しみだな〜」
やっぱりこの娘は単純や
ちょっと優しい言葉かければ何でも言うことを聞く
扱い安さは一番やな
せやけど、そろそろ決めなあかんな
- 11 名前:らじく 投稿日:2001年04月10日(火)04時49分43秒
- 「あ〜、雪結構つもってるね」
「そうやな、・・・ん」
あの娘、まだ居ったんか
もう2時間は経ってるっちゅうに
「ちょっと止めてくれや」
「裕ちゃんどうしたの」
「チョイと用事があってな、なっちは先に行っといてや」
「・・・うん」
車を降りて後ろからそっと近づく
肩には雪が二センチほど積もっていた
なんや、かさこじぞうみたいやな
すると、ウチは親切なお爺さんってトコか
・・・ちょいとからかってみるか
「ゴメン、待った〜」
するとその娘は満面の笑顔で勢いよく振り返った
う〜ん、近くで見るとめっちゃカワイイやん
「なあ、暇やったら一緒に飯でもどうや」
何か言おうとしてたみたいやけどとりあえず無視して食事に誘う
ちょっと困った顔もまたカワイイな〜
この顔はもう誘ってくれと言ってるようなもんやで
「あ〜、心配せんでもアタシがおごるから」
また何か言おうとしてたけど聞こえないふりをして強引に誘う
- 12 名前:らじく 投稿日:2001年04月10日(火)04時50分45秒
- 「・・・・だから」
いいかげん怒ったみたいやけど
怒った顔もエエな〜っとそろそろこの辺で
シリアスモードで一気にぐわっと行こか
「・・・なあ、これ以上ここで待っとっても彼氏はこんで」
「何で、・・・何でそんな事がわかるんですか」
動揺しとるな、その顔もまた(以下同文)
「そりゃ、こんなカワイイ娘がたってりゃ気にもなる。
しかも、この寒さの中2時間も居れば声も掛けたくなる」
「・・・見てたの」
「ああ、そこでな」
そう言いながら向かいにある喫茶店を指さした。
まあ、ずっとあそこで見てたわけやないけど
「寒かったやろ」
そう言って頬にそっと触れた
やわらかい頬は氷みたく冷たかった
「頬もこない冷たなって」
「・・・・・・」
「それじゃ、冷えた体を暖めるおいしい料理でも食べに行こか」
その娘は黙って頷くとウチのちょっぴり小さい胸に顔を埋めた
- 13 名前:らじく 投稿日:2001年04月10日(火)04時52分37秒
- >9さん 期待に応えられるように頑張りマッスル
- 14 名前:らじく 投稿日:2001年04月27日(金)02時11分17秒
- 「ついたで」
タクシーを拾いしばらく走った後『彼女』がそう言って降りたのは
外装からしていかにも高級なレストランで
フランスの国旗が描いているところを見るとフランス料理店なのだろう
『彼女』は行きつけの居酒屋にでも入るように中へ入っていった
中は豪華と言うよりも落ち着いた上品な雰囲気
「中澤様いらっしゃいませ。お荷物をお預かり致します」
「ああ」
彼女はコートを脱ぎ店の人に預けた
私もそれにならいコートを預ける
「それより、客はもう来てるん」
「いえ、少し遅れるそうです」
「じゃあ、着いたら知らせてや」
「かしこまりました。では、お席の方へご案内いたします」
「ああ」
- 15 名前:らじく 投稿日:2001年04月27日(金)02時12分59秒
- 案内されたのは階段を上った先にある個室で
部屋の中は中央に二人掛けのテーブルが置いているだけのシンプルな部屋
それでもやはりテーブルも椅子も私が見ても分かるくらいの高級品だった
奥の席に『彼女』が座り、私は手前の席に座った
「アペリティフはどうなさいますか」
「キールを」
「かしこまりました」
注文を取り店員が部屋から出ていく
「なあ、あんた・・・ってそういえば、名前聞いてへんかったな」
「・・・吉澤ひとみです」
「ふ〜ん、吉澤ひとみかええ名前やん。ウチは中澤裕子や、よろしくな」
「あ、はい・・・あの」
「ん、なんや」
「この店にはよく来るんですか」
「まあな、アタシはこうゆう店より居酒屋とかの方が好きなんやけど
お仕事上の都合とか、まあ色々あってな」
「仕事って」
「う〜ん、まあ会社経営ってとこやな」
「じゃあ、社長なんですか」
「まあ、一応な」
コンコン
ドアがノックされ扉が開かれる
「キールです」
「ああ」
「それから、お客様が参られました」
「ん、分かった」
「お食事の方はどうなさいますか」
「彼女の分だけでええわ」
「分かりました」
「悪いな、チョイと用事があってな。食事が終わる頃までには帰ってくるから」
そう言って彼女はお酒を一気に飲み干し部屋を出ていった。
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