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主演 辻希美 『きっと忘れない』
- 1 名前:キリ 投稿日:2001年03月10日(土)16時47分35秒
- はじめて小説をアップします。
よかったら読んでみてくださいね。
それでは・・・↓
- 2 名前:キリ 投稿日:2001年03月10日(土)16時49分56秒
- ***プロローグ***
「ホワァァータァァァァーーー!!!!」
希美の奇声とともに男が吹っ飛ぶ。
「フゥゥーー!」
唖然とする男を前に、希美は拳法らしき構えをとりながらジリジリと近づいていく。
「へぁ〜」
男は情けない声をあげながら、逃げ道を探している。そして・・・。
「アチャーー!!」
-
- 3 名前:キリ 投稿日:2001年03月10日(土)16時50分57秒
- 希美の普通の毎日がちょっと普通じゃなくなったのはそれからだった。
あの日希美は、ホテルの部屋に進入してきた変質者を見事やっつけてしまった。
騒ぎを聞いたマネージャーが慌てて駆けつけた時、希美の部屋では、希美と黒い服を着た男とが同じように鼻血をだして倒れていたのだ。
逮捕された男は、警察の取り調べに対し「あの女の子にジャッキ−チェンばりの突きと跳びげりをくらった」と供述したが、希美に武術の心得がないのと、当の本人が何も覚えていないということで、男が興奮するあまり鼻血を出して卒倒したのだろうということになった。
希美の鼻血にいたっては、メンバーの「よくあることだから」の一言で終わった。
- 4 名前:キリ 投稿日:2001年03月10日(土)17時42分46秒
- 次の日、希美はいつものように目を覚まし、洗面所で顔を洗っていた。
「おう、おはよう」
「ん?」
声が聞こえた気がして振り返ってみたものの誰もいない。
「????」
首をかしげて再び洗面台に向かう。
「よう寝たか?」
「ん??」
今度は確かに聞こえた。
そう思い、キョロキョロと辺りを見回す希美の視界の端に、
小さな物体が見えた。
それは小さなハムスターだった。
バスルームのドアのレールのところにかわいらしいハムスターが・・・、
二本足で立っているのだ。
「何口開けてボケ−っとしとんねん」
ごく普通にしゃべりだすハムスターらしき生き物。
「・・・・・・・・・・、・・・・・・・・、えー!?」
「って反応遅いわっ!」
「くんくん・・・」
「あー、やめて恥ずかしい!ワシもう3日も風呂入ってへん・・、ってお前は犬か!!」
・・・・これからしばらく、希美とノリツッコミのうまいハムスターとの
ちょっとばかり変な日々がはじまる。
これは、その物語を記録したものである。
- 5 名前:キリ 投稿日:2001年03月11日(日)03時05分03秒
- 「いいか?だから、ワシはお前らの世界で小悪魔って呼ばれてて、
たまたまここを通りかかった時に、お前が危ない目にあっとったから助けたっていうわけや、
で、ワシがお前を・・、って何草食わそうとしとんねん!」
小悪魔に観葉植物の葉っぱを突き出した希美にすかさず突っ込む小悪魔。
「はぁ・・・、お前ほんまにわかっとんか?」
「はい、わかってますよ、ハムスターさんが小悪魔で、
ののが助けてもらったおかえしをあげなきゃだめなんですよね?」
テーブルに両肘をついて身を乗り出しながら希美が笑う。
「だから、ハムスターって言うなっちゅうとんねん」
「あぁ、・・・へへへ」
「自分大丈夫??悪魔に助けられたってことはその分、
すごいモンを無くすっていうことやぞ?」
小さなハムスターがあぐらをかきながら説教し、
女の子がそれを楽しそうにのぞき込んでいる。
知らない人が見たら微笑ましい(?)光景である。のだろうか・・・。
「う〜ん・・・、はいっ!」
「うわー、ありがとー、こんなおいしそうな雑草はじめてー♪ってなんでやねん!」
「へへへー、おかえしです♪」
無邪気に笑う希美を前に、小悪魔は小さな小さなため息をもらす。
「ふぅー、あのな、そんなもんじゃ全然おかえしにならへんし、
第一悪魔っていうのはお腹すいたりせえへんの!」
「・・・なんでですかぁ?」
「悪魔っていうのはお前らと違って、命っていうもんがないねん、
まぁ言ったら魂だけで存在してる、魂のスペシャリストっていうんかな?だから死ぬこともないし、
お腹もすかへんの、ちなみにお前を助けた時はブルース・リーの魂呼んだったんやで?あっぱあいつは強いわ」
「ほぉぉー」
めずらしくまじめに話を聞いていた希美がおおげさにうなずく。
「お前ほんまにわかってる?ドゥーユーアンダスタン?」
「わかってますよー、ぶろーすりーは強いんです」
・・・このあと小悪魔のするどいツッコミが入ったことは言うまでもない。
- 6 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月11日(日)03時25分33秒
- おもいろいっす。
- 7 名前:数 投稿日:2001年03月11日(日)04時30分20秒
- なんだか面白そうな予感ですね(^^
がんばってください。
- 8 名前:キリ 投稿日:2001年03月11日(日)13時30分10秒
- >6さん
初レスありがとうございます!
内心かなりほっとしました(笑
>数さん
ありがとう!
期待にそえるようにがんばります。
それでは↓
- 9 名前:キリ 投稿日:2001年03月11日(日)13時32分56秒
- 「おはよー」
「おはよーございまーす!」
やさしい先輩、矢口に挨拶をかわすと希美はすばやくジャージに着替えた。
『なんやこのちっこいの』
ステージへ走る希美の頭に声が響く。
「矢口さんです、ミニモニのリーダーなんです」
『えらいコンパクトなリーダーやなっ』
「はい、ミニモニで一番ちっちゃいんです」
「何ひとり言いってんの?」
「なんでもないですぅ」
「???」
希美にとって矢口は姉のような存在で、ライブのリハーサルである今日も
がんばってメンバーそれぞれに気を配っている。
まずは娘。全員での振り付けや動きのチェックをすまし、それぞれのユニット
のリハーサルに入る。
娘。の時はなんとか順調にいったものの、ミニモニの時が大変だった。
まじめに歌っている希美の頭の中で小悪魔が笑い転げていたのだ。
ついつい気が散ってしまう希美は、何度も振りを間違えた。
「辻大丈夫??無理しちゃだめだよ?」
昨夜の事件もあって、誰も希美のこと叱らなかった。
ただ人一倍負けん気の強い希美にとっては、とても悔しいリハーサルとなった。
- 10 名前:キリ 投稿日:2001年03月11日(日)23時21分07秒
- 「あ〜、眠たいわ〜〜」
「裕ちゃんもう年だしね〜」
いつものように騒がしい控え室の隅っこで希美はひとりふくれていた。
『ごめんて・・・、ほんまに』
「むー・・・・」
『だって、じゃんけんピョンって・・・、いやいや、ええ曲やったでー?』
小悪魔の弁解がはじまってもうかれこれ15分はたつ。
それでもなかなか希美の機嫌は直らない。
「のの、何してんの?」
加護が話しかけてきた。ここではもう相方のような存在である。
「ううん、なんでもない」
ふくれっ面のままとりつくろう希美。
「このプリクラに落書きしてどっかに貼らない?」
見るとそこには石川とその友達らしき人が写ったプリクラがあった。
早速二人はペンをカバンから取り出すと好き好きにペンを走らせた。
基本の鼻血から入って眉毛を太くし、
吹き出しに「チャーシュー石川です!うふっ!」と書いて二人で大笑いした。
「何してんの?」
珍しく安倍が話しかけてきた。
二人は顔を見合わせて笑いながら石川のプリクラを見せた。
「はっははぁ!」
「安倍さん、しーっ!」
二人そろって人差し指を立てて安倍を静かにさせる。
『なんや、うるさい女やなぁ』という小悪魔の言葉が希美の頭の中で聞こえた。
- 11 名前:キリ 投稿日:2001年03月12日(月)13時10分33秒
- 「行ってきます!」と軍隊のように敬礼をすると
プリクラを隠し持った加護が飯田のほうへ走っていく。
「飯田さん飯田さん」
「なに加護?」
「元気になるおまじないがあるんですよ〜」
得意げに人差し指をピッと立てる加護。
「もういいよ〜」
「ほんとに効くんですよぉ?」
面倒くさそうにあしらおうとする飯田を強引に説得しながら、
加護は飯田のおでこに手を持っていった。
「♪ほんにゃ〜、はんにゃ〜、ん〜〜・・・・、はいっ!」
そう言って手を離した飯田のおでこには、さっきのプリクラが貼りついていた。
「はいはい、ありがとー」
「どういたしましてぇー!」
そういうと、加護は必死で笑いをこらえている希美の元へ走っていった。
- 12 名前:キリ 投稿日:2001年03月12日(月)18時26分00秒
- 「いえ〜い!」
二人でパンパンと手を合わせながら大笑いした。
『おいおい、あいつ本気で気付いてないぞ』
見ると飯田はおでこにプリクラをつけたままぼんやりと宙を凝視していた。
安倍が矢口と中澤に耳打ちでそれを教えているのが見えた。
二人の笑い声でみんなが飯田の異変に気付いた。
「圭織なんか今日はいけてるねぇ」
早速矢口が茶化す。
「さすが石川は度胸があるねぇ」
「私じゃないですよぅ〜!」
中澤と石川だ。
後藤、吉澤、保田の3人も楽しげに笑っている。
と、急に飯田が立ちあがって部屋から出ていった。
「あ〜あ、怒らしたでぇー、あとでちゃんと謝りやぁ?」
中澤の言葉に二人は少ししゅんとなった。
- 13 名前:キリ 投稿日:2001年03月12日(月)22時56分22秒
- 『なんや色っぽいねぇちゃんやなぁ?』
加護が後藤のところへ行ったのを見計らって小悪魔が話しかける。
「はい、中澤さんです」
『年はいくつや?』
「13才です」
『ほぉー、えらい色っぽい13才やなぁー、ってそれはお前の年やろ!(こいつ、基本はおさえとんなぁ)
あの金髪のねぇちゃんの年や!』
どうやら中澤は小悪魔のタイプらしい。
「とぅえんてぃーせぶんです」
『おお、ええがなええがな』
その時、廊下からバタバタとものすごい足音が聞こえ、
かなりの勢いでドアが開いた。
- 14 名前:キリ 投稿日:2001年03月14日(水)12時26分49秒
- 「悪ガキーー!」
そこには顔を紅くした飯田が、息を切らしながら仁王立ちしていた。
どうやらプリクラに気付かないまま普通にトイレに行き、
そこの鏡を見てはじめて気付いたらしい。
「なんかー、スタッフの人が笑ってると思ったよー!」
「ごめんなさぁーい!」×2
「まぁまぁ圭織、似合ってたよー」
すかさず矢口がフォローする。
「もうー!ミニモニのリーダーは甘すぎるよー!」
「かわいいからええやんかぁー」
「何ぃ?チャレモ二のリーダーに逆らうの?」
・・・・・、娘。はいつもにぎやかである。
(この子見てたら思い出すなぁ)
そんな娘。の中ではしゃぐ希美を見ながら悪魔はひとり、しみじみと思った。
- 15 名前:キリ 投稿日:2001年03月14日(水)12時27分20秒
- +
- 16 名前:キリ 投稿日:2001年03月15日(木)13時35分38秒
- 「みんなー!たのしんでるー!?」
『うおーー!!』
コンサートは順調に進み、もう終盤にさしかかっていた。
ちょうど今ミニモニのステージで、2曲歌い終えてミニモニとしては
最後の締めに入っていた。
「それじゃあ最後に一人ずつ挨拶していきまーす!」
と言いながら矢口が前に出る。
「ミニモニでは、やさしくてたよりになって、やっぱりセクシーな矢口真里でした!」
次は加護の番だ。
「ミニモニでは、面白くてテンションの高い加護亜依でしたー!」
そして希美の番が来た。会場からは叫びに近い声援があちこちから聞こえてくる。
(あっ、忘れた!)
ふと練習でがんばって覚えたはずのセリフが興奮のせいかどうしても思い出せないことに気付いた。
「・・・・・・・・」
(どうしよう・・・)
- 17 名前:キリ 投稿日:2001年03月16日(金)16時32分34秒
- 沈黙が続き、会場の声援がざわめきに変わる。
『おい、お前の番やぞ、どうしたんや?』
頭の中で声が響く。
(うえ〜ん、忘れちゃったよぉ〜)
もはや希美の目には涙がたまっていた。
ミニモニのリーダーである矢口もフォローに困っているようだった。
加護もミカも心配そうである。
『ったく、しゃあないなぁ』
希美が頭の中でこの言葉を聞いてから意識がとんでいて、
気がつけばミニモニのコーナーが終わり、娘。全員で歌うところだった。
希美は、頭の中を?マークでいっぱいにしながらもなんとか無事にライブを乗りきった。
控え室にもどり、希美が着替えていると矢口が話しかけてきた。
- 18 名前:キリ 投稿日:2001年03月16日(金)22時04分03秒
- 「あんたあの時はマジあせったよ〜、でもよく切り抜けたよ、
次からはちゃんと忘れないようにしなさいよ」
「あのぉ〜、辻は何をしたんですかぁ?」
恐る恐るたずねる希美。
「あんた覚えてないの??」
「あぽー!」
加護が走ってきて面白そうに割り込む。
「甘いよあんた、辻がやった馬場はそんなもんじゃなかったよ、ねぇ裕ちゃん?」
「ああ、あれはすごかったねぇ、あんたも芸つけてきたなぁ」
「ばば???げい???」
二人の言葉に文字どおり首をかしげる希美。
いきなり”あぽぅー!プロレスはやらせじゃないぞぅ!”とか言い出すんだもん、
それも鼻血出しながら・・・、まぁお客さんも大ウケだったからよかったけどねっ」
「ほぁーーー・・・」
思わず間抜けなリアクションをしてしまう希美をみて中澤が吹き出す。
- 19 名前:キリ 投稿日:2001年03月16日(金)22時05分25秒
- 「ぷっ、あんたホンマに覚えてへんの??」
「・・・おぼえてないです」
「頭の中真っ白になっててんなぁ・・・、かわいいやないか!」
「むぐっ」
急に抱きしめられた希美は変なうめき声をあげた。
「えぇー!とっさのアドリブで流血しながらジャイアント馬場をやる13才、
なんか恐ろしいよ〜」
矢口が中澤につっこみをいれる。
「ええねん、ええねん、なぁ?のんちゃんは一生懸命がんばってんな?」
「んぐ、ふぁい」
(なんかよくわかんないけど、大丈夫だったみたい、よかったぁ)
中澤の揺れる二の腕の中で、希美は心底安心していた。
- 20 名前:キリ 投稿日:2001年03月17日(土)13時10分31秒
- 「でぇ、これがよっすぃ〜、いつもののがいたずら電話してる人です」
「ふむふむ、この男女やな?しかしイタ電て・・・」
「じゃあ、これは誰でしょー?」
「う〜ん、これは・・・、あれや、井上や」
「そんなひといません」
きっぱりと言う希美。
「冗談やがな、覚えてんねんで?ちょっと度忘れしただけや、
・・・で誰やったっけ?」
とぽりぽり頭をかきながら言う小悪魔。
「飯田さんです、おっきい人です」
「おおそうやそうや、ぜんまいで動いてる感じの奴やな」
「じゃあ・・・・(ぜんまい?)」
- 21 名前:キリ 投稿日:2001年03月17日(土)13時11分52秒
- コンサートも無事終わり、希美はホテルの部屋で小悪魔に娘。
のメンバーを教えていた。
早いことにこの一人と一匹(?)は、
今朝はじめて会ったとは考えられないほどの仲の良さになっていた。
「じゃあ、これは?」
「これはラブリー中澤ちゃんやんけー」
「正解ぃー!(らぶりぃ??)・・・、じゃあこれは?」
と言いながら希美は加護を指差す。
- 22 名前:キリ 投稿日:2001年03月18日(日)13時59分21秒
- 「えーっと・・・、あ、あ、あご?」
小悪魔の珍しい天然にお腹を抱えて爆笑する希美。
小悪魔も自分がバカなことを言ってしまったとバツが悪そうである。
「正解は、加護亜依ぃー!亜依ちゃんです」
「・・・、わかってるがなぁ!アメリカンジョークっちゅうやつや」
「えへへ(あめりかんじょーく?)・・・、これは?」
「これは安倍や!あのやかましい奴やな?」
あごひげ(?)を触りながら得意気に答える小悪魔。
「正解ぃ!(やかましい?)じゃあ、これは?」
「この魚面はぁ・・・、魚、鉄火巻き、まき、真希、後藤真希や!!」
「あったりぃ!(うおづら?)」
楽しく夜はふけていく。
- 23 名前:キリ 投稿日:2001年03月18日(日)23時41分07秒
- あれからしばらく小悪魔のメンバー暗記は続き、
小悪魔がなんとかメンバーを覚えたころ、希美にとってはそろそろ眠たい時間になっていた。
「しかしお前みたいな子供についたんは初めてやわ」
「ののもう13才ですよ?電車にも一人でのれます!」
ベッドにうつぶせに寝転びながら、それでも元気に答える希美。
「・・・、なんか君とおったら君のペースに巻きこまれるなぁ」
言葉の意味がわからない希美は、きょとんと首をかしげる。
「まぁええわ、しかしわしも昔はでかい仕事したもんやでー」
と、得意気に腕を組みながら続ける。
「中国のマフィアのボスを助けたこともあったんやで?あの時は、
ホンマに感謝されたもんや。何回もわしに頭下げてなぁ、
まぁその時には助けたかわりに財産の半分をスラムの街中にばらまかせたなぁ、
わしら悪魔がもらうモンっていうのは、直接的なものとは違うんや、
まぁ言うたら感謝の気持ちの大きさを表わすためにモノを基準にしてるわけや、
だから2回も助けられたお前も相当の・・・・」
と、希美をみた小悪魔は話をやめ、小さくため息をこぼした。
- 24 名前:キリ 投稿日:2001年03月18日(日)23時41分53秒
- そこには静かに寝息をたてている希美がいた。
「ふぅ、なんとも不思議な子やなぁ・・・、あの子にそっくりや・・・」
それでもこの子を放っておけない、
そんな自分の感情に戸惑いながらも小悪魔は小さく笑った。
安心しきって眠っている希美の寝顔も、すこし微笑んでいるように見えた。
- 25 名前:キリ 投稿日:2001年03月19日(月)13時19分57秒
- 空を飛んでいる。風が気持ちいい。
下を見ると雪がつもっているようだ。
気付けば自分も吹雪の中を飛んでいる。
だんだんと高度が落ちてくる。必死に羽ばたいても体が重くてうまく羽ばたけない。
積もった雪の中に落ちてもまだ羽を動かす。雪が重い。息が苦しい。
ひとりの男の子がこっちを見ている。その表情からは何も読み取れない。
体が重い。息ができない。でも助かってはいけないような気がする。
いっそのこと雪に埋もれてしまおう。もう目を閉じよう。
- 26 名前:キリ 投稿日:2001年03月19日(月)13時20分41秒
- 「またこの夢か・・・」
誰に言うでもなくつぶやく。
希美のほうを見ると、希美はすやすやと寝息を立てている。
「この子が思い出させるんやなぁ、あの子のことを」
皮肉っぽく笑うと、悪魔は再び眠りに落ちた。
- 27 名前:キリ 投稿日:2001年03月20日(火)12時36分44秒
- 「それじゃあまた来週〜!」
朝から数社の雑誌の取材を受けたあと、MUSIXの撮影があった。
自宅に帰った希美は、いつもよりも元気がなかった。
「はぁ・・・」
ため息をつきながらベッドに倒れこむ希美。
今日はだめな一日だった。
オープニングトークでは一言もしゃべれなかったし、
モー娘。選手権でも、クイズに答えられたのは二回だけで、
そのうち一回はゲストの人に正解をもらえなかった。
エンディングでは、亜依ちゃんのチクリメールがきて
亜依ちゃんはモノマネでごまかして、みんな笑ってた。
結局私はほとんど前に出られなかった。
希美がそんなことをぼんやり考えていると、
それを見かねた小悪魔が話しかけた。
「どうしたんや?今日は珍しく暗いやないかい?」
「うん・・・」
希美はあいまいに返事をしただけだけだった。
いや、あいまいな返事しかできなかった。泣きそうだったから。
- 28 名前:キリ 投稿日:2001年03月20日(火)23時41分51秒
- 「しかし今日の加護のモノマネは似てなかったなぁー!」
小悪魔のカラ元気な声を聞いた時、ついに希美の目から涙があふれた。
「お、おい、どないしたんや!?どっか痛いんか?」
腕で涙をふきながら首を振る希美。
そして途切れとぎれに言った。
「亜依ちゃんはかわいいし・・・、ひっく・・歌も・・・うま・・・いのに、
ののはぁ・・・・、ひっく、・・・」
次々溢れ出してくる涙に言葉がせき止められてうまく話せない。
「なにを言うてんねん、お前もミニモニでがんばってるやないか!
みんなでいる時もがんばって話してるし、仕事終わってホテルに帰ってからも
ひとりでダンスの練習したりしてたやないか!」
無神経に加護の話を出してしまった自分に責任を感じてか、
小悪魔は必死に励ました。
「うぐ・・、でも・・・、ののはみんなに迷惑・・・、ひっく・・・、
ばっかりかけてる・・・」
「最初っからうまくできるやつなんかおらへんよ、
それでも今を精一杯がんばってる、それが一番大切なんや、
そのがんばりがいつか絶対でてくるんやから・・・」
小悪魔が必死に説得しても、なかなか希美は泣き止まなかった。
小さな子供のように(実際小さいのだが)声を出して泣く希美の姿は、
見ていて痛々しかった。
抑えきれずに溢れ出してくる感情をうまくコントロールできないのだ。
小悪魔が急にやさしい声になって話し始めた。
- 29 名前:キリ 投稿日:2001年03月21日(水)12時32分11秒
- 「昔な、あるところに一人の天使がいたんや、
その天使はまだ天使になったばっかりで、まだうまく魂をあつかえんかった」
「・・・天使?」
赤くはれた目で小悪魔をみる希美。
「うん・・・、ある日、小さな男の子が雪の中で道に迷って困ってた、
その天使は助けようと思ったけど、何しろ天使になって間もないから、
何をどうしたらいいんんかわからんかった」
希美にも理解できるように、小悪魔はひとつひとつ言葉を選びながらゆっくりと話した。
「だからただその男の子に話しかけて励ました、
でもついにその男の子は力尽きて倒れこんでしまった」
「・・・」
希美の顔がさっきまでとは違う理由で曇る。
「男の子は次の日の朝発見された、なんとか命は助かったものの
それから長い入院生活がはじまった」
いつのまにか、希美の涙は止まっていた。話に聞き入っているようだ。
- 30 名前:キリ 投稿日:2001年03月21日(水)21時45分10秒
- 「男の子は次の日の朝発見された、なんとか命は助かったものの
それから長い入院生活がはじまった」
いつのまにか、希美の涙は止まっていた。話に聞き入っているようだ。
「責任を感じた天使は毎日お見舞いに通った、でも、
さすがにその男の子にはあわせる顔がなかったから、
毎晩その子が眠ってるあいだに枕もとにきれいな石を置いといたんや」
「なんで、会ったりできなかったの?」
「きっと怒ってるやろうと思ったんやな、助けてあげれんかったからなぁ」
こんな時、希美は本当に悲しそうな顔をする。顔は心を写す鏡だ。
「その晩も天使はきれいな石を拾って病院に行った、で、
その子の枕元に石を置こうとしたら男の子が目を開けて言ったんや、
(いつもきれいな石をくれてありがとう)って・・・、
天使は何も言えんかった、助けられんかったのは自分やのに、
自分のせいで男の子は入院することになったのに、
それやのに、ありがとう・・・、そんな言葉自分に合わへんと思った、
それでも男の子はもう一回言った、(ありがとう)、
・・・・・結局それがその男の子の最後の言葉やった、
その子は天使の目の前で・・・、ながーい眠りについた・・・」
「・・・・・・」
- 31 名前:キリ 投稿日:2001年03月21日(水)21時47分00秒
- 希美の透明な瞳に悲しみの色がにじむ。
こんな時、希美は「死んじゃったの?」と聞いたりしない。
人の言葉をそのまま受け取り、うそのない表情をする。
純粋とは痛みを孕んだ素直な心のことを言うのかもしれない。
「それからも天使は人を助けることをあきらめんかった、
今やその天使はたくさんの小さい天使たちの憧れの的になってる、
もちろんどんな魂も自由自在に操れる、たくさんの人に感謝されてる、
それは天使が男の子が言ったありがとうっていう言葉を信じたからや、
大切なのは結果ばっかりじゃない、本当に心からがんばろうと思う気持ちや、
だからお前も今がんばってる自分を信じろ、きっと誰かがわかってくれる、
今お前はできるだけの努力をしてる、それで十分なんや、わかったか?」
「・・・・・」
言葉はなかったけど希美は強くうなづいた。
- 32 名前:キリ 投稿日:2001年03月22日(木)16時21分49秒
- その希美の瞳の、強く純粋な光が小悪魔には確かに見えた。
「まぁ、こういう時は寝るのが一番や、さぁ寝よ寝よ!」
こっくりうなづくと希美は部屋の明かりを豆電球にした。
そして目を閉じながら明日もがんばろう、と強く誓った。
「なんとか立ち直ったみたいやな」
小悪魔は安心しながらため息をひとつこぼした。
(でもわしはひとつ嘘をついた)
泣き疲れていたのだろう、はやくも寝入ってしまった希美の寝顔をみる。
(その天使は、今自分のことを悪魔やと言って、お前と一緒にいる・・・)
- 33 名前:な・ななし 投稿日:2001年03月24日(土)23時36分51秒
- 小悪魔いいやつだ・・。泣ける。
続き楽しみです。
- 34 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月31日(土)00時03分52秒
- 続き見てぇ!!!
- 35 名前:lazyfrog 投稿日:2001年03月31日(土)16時10分27秒
- 俺も続き読みたい。
作者さん、がんばって。
- 36 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月07日(土)08時36分09秒
- 思わず泣いてしまった。
- 37 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月07日(土)10時46分46秒
- まさか放置ってことないよな・・・
続き頼みます。ホントに楽しみにしてるから。
- 38 名前:ポルノ 投稿日:2001年04月08日(日)02時28分48秒
- ええ話や、、
続き書いてくれえええ!!!
- 39 名前:キリ 投稿日:2001年04月09日(月)16時26分45秒
- 次の日も朝から忙しかった。
学校が終わってそのまま都内のスタジオで歌のランキング番組のコメントをとり、
ゲストとして出演する番組の打ち合わせを済ませ、雑誌の取材を受けた。
そして今日最後の仕事は、お願い!モーニング!の撮影だ。
今回のメンバーは希美と、吉澤、後藤、中澤、保田という面々で、
稲川淳二がゲストで来た時の恐い話がウケたらしく、
その第二段として織田無道がゲストに来ていた。
『なんやもの恐ろしいおっさんやなぁ』
という小悪魔の言葉に希美も思わずうなずく。
(しかしこの番組は、いつもなんともいえんゲストを呼ぶなぁ)
と小悪魔は心の中でひとり思った。
前回と同様後藤は自分が実際にあったことのある不思議な体験を話した。
中澤が飯田はよく幽体離脱をしているんではないだろうか、とまじめに語り、
みんなを爆笑させた。
希美の番がきて、頭の中で『お前ちゃんと考えてきたんか?』という声が聞こえた。
希美はひとり力強くうなずくと、話し始めた。
- 40 名前:キリ 投稿日:2001年04月09日(月)16時29分02秒
- 久々のアップです。
実は今自宅ではネットにつなげなくなっていて、
更新できませんでした。
久々に見たらレスくれてる人がいっぱいいて、
かなりうれしいです。
みなさんありがとう!!
かならず完結させますので楽しみにしていてくださいね!
それでは。。。
- 41 名前:lazyfrog 投稿日:2001年04月09日(月)19時54分48秒
- やたっ!
放置かな・・いやいやそんなことないさ・・で、でももしかしたら・・・
とか勝手に葛藤してたんですよ。
作者さん、これからも末永く頑張ってください!
- 42 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月12日(木)02時06分48秒
- うれしいー。
- 43 名前:キリ 投稿日:2001年04月14日(土)21時04分12秒
- 「辻はぁ、悪魔に会いました」
『あちゃ〜』と人知れず古風なリアクションをとる小悪魔。
「えっ?悪魔」
と中山がすっとんきょうな声をだす。
「はいっ」
自信まんまんで答える希美。
「辻さんそれはどんな悪魔ですか?」
中澤がからかい半分に質問する。
「なんかぁ、ハムスターみたいでぇ・・・」
はむすたぁ!?と中澤が大きな声を出し、みんなが爆笑する。
『だからちゃうっちゅうねん!』
と悪魔もつっこみをいれる。その言葉に希美も一緒に笑いながら続ける。
「それで、中澤さんみたいに関西弁なんです」
「裕ちゃんみたいな悪魔?!」
と言いながら後藤も笑っている。
- 44 名前:キリ 投稿日:2001年04月14日(土)21時08分57秒
- アップです。
やっとネットに繋げられる環境になりました。
これからはもっとスムーズにアップできると思います。
最後まで何卒お願いします。
>>lazyfrogさん
こちらこそ、みなさんから反応いただいてほっとしています(^ ^
これからラストまで突っ走りますのでよろしくです。。。
>>42さん
ありがとうございます。
楽しんでいただければ光栄です。。。
- 45 名前:lazyfrog 投稿日:2001年04月14日(土)22時14分11秒
- そうですか。とってもうれしいです。
とくべつ辻が好きって訳じゃなかったけど、この小説読んでたら無性に可愛く思えてきました。
だめだ・・いちごま同様、またフィクションの影響で本人が好きになっていく・・。
- 46 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月15日(日)19時07分22秒
- やさしい空気が漂う…この話とっても好きです。
- 47 名前:キリ 投稿日:2001年04月15日(日)23時31分02秒
- 「え、例えばたとえば?」
中山もこのトークにノリノリである。
「んーー、・・・ちゃうっちゅうねんんっー!」
希美のたどたどしい関西弁に再び笑いにつつまれるスタジオ。
恐い顔の織田無道もにこやかに笑っている。(それでも怖い)
「のんちゃんは悪魔とか怖くないんかぁ?」
ミニモニを見る時の目で中澤が話しかける。
「はいっ、やさしいし、おもしろいから大好きですっ」
希美は自信を持ってそう答えた。
(やれやれ・・・悪魔やっちゅうのに・・・)
と照れくさく笑う小悪魔であった。
- 48 名前:キリ 投稿日:2001年04月15日(日)23時34分34秒
- >>lazyfrogさん
ありがとうございます!
このコンビに愛着を感じてもらえると
願ったりかなったりです!
>>46さん
ありがとう!
いっぱい笑っていっぱい笑っていただきたいです。
- 49 名前:キリ(ひとり言) 投稿日:2001年04月15日(日)23時38分19秒
- 今日大阪城ホールいきました。
アイドルのライブは初めてだったんですが
ヲタの掛け声を聞くたびにテンションが下がりました。
でも最後は、みんな泣いててよかったです。
ヲタがいるかぎりもうニ度と行かないでしょうが。。。
以上独り言でした。。。
- 50 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月17日(火)02時16分25秒
- >>49 大阪城ホール行ったんですか、いいな…
- 51 名前:キリ 投稿日:2001年04月17日(火)22時44分59秒
- 次の吉澤の時にも希美が話の中心になった。
「私も悪魔知ってますよー」
と吉澤は話をはじめた。希美のおかげでスタジオの雰囲気も
かなり和やかになっていた。
「よく留守番電話に悪魔の声が入ってるんですよー」
内容を察した後藤が一人笑っている。
「よく留守電に、”よしこ、よしこぉーー!”とか、
巻き舌で”よっすぃ〜!”とか、あと、”めぇ〜〜!”って
羊の鳴き声とか入ってるんですよぅ」
「それ辻やんかぁー!」
と中澤がつっこみを入れ、またみんなで大笑いした。
悪魔も一緒に笑い転げていた…。
- 52 名前:キリ 投稿日:2001年04月17日(火)22時47分37秒
- 更新です。。。
>>50さん
はい、行ってしまいました(藁
自分が娘。ファンであることにプライドを持ち出したら
かなり楽しめると思います(藁
- 53 名前:キリ 投稿日:2001年04月19日(木)01時12分34秒
- 「おぉーー、悪魔だぞー!」
「きゃー!ごっちん助けてぇー!」
お願い!〜の撮影が終わった楽屋でも希美のテンションは下がらず、
吉澤にじゃれついていた。
「はいはい、さっさと着がえやぁー」
いつものように中澤が注意する。
「今日は辻が主役だったねぇ〜」
本番ではずっと笑いっぱなしだった保田が言う。
「あの関西弁がおもしろかったよ」
後藤もにこやかである。
- 54 名前:キリ 投稿日:2001年04月19日(木)01時13分58秒
- 更新です。
そろそろクライマックスに入っていきます。
読んで下さっている方々。
もう少しのお付き合いよろしくお願いします(_ _)
- 55 名前:キリ 投稿日:2001年04月19日(木)20時12分10秒
- 『お前、あの時はヒヤヒヤしたでぇ』
着替えをはじめた希美に小悪魔が話しかける。
「へへぇー」
楽しそうに笑う辻。
「辻、何ひとりで笑ってんの?怪しいやっちゃなぁ〜、
それよりあんた、なんか顔紅いで」
「そうれすかぁ?」
あれ?おかしいな?希美は思った。うまくろれつがまわらない。クラクラする。
「ほんとだぁ、ほっぺたとかそうとう紅くなってるよ?」
後藤も中澤に同意する。
「???」
そういえば顔が熱い気がする、みんながゆがんで見える、
希美がぼんやりとそう思った時、
視界が大きく揺れながらフェードアウトしていった。
「きゃあ?!」
「辻?!どうしたんやー?!」
みんなが何かを口々に叫んだ。がしかし、その声は希美には聞こえなかった。
- 56 名前:な・ななし 投稿日:2001年04月22日(日)01時29分43秒
- どうなるんだ!?気になる〜〜〜!!!
- 57 名前:キリ 投稿日:2001年04月28日(土)13時34分15秒
- 気がつけば、見慣れない天井と聞きなれた声があった。
「あ、気がついた?」
最初に矢口が気付いた。
あ、矢口さんだぁ、と心の中で安心する希美。
すると天井を見上げた希美の視界に続々と見なれた顔が入ってくる。
「あんた、疲れててんなぁ」
と中澤はやさしい顔をしている。
「びっくりしたよ、もうー」
「ほんとほんと、びっくりさせないでよー」
と言う安倍と保田の顔も、やはり笑っていた。
「いきなり鼻血出して倒れるたんだってねー?」
安心したせいか飯田の声もうわずっている。
「ののだいじょーぶ?」
いつもは騒がしい加護も今は心配そうな顔をしている。
「辻、びっくりしたよー」
「ほんとだよねー」
後藤と吉澤も安心した様子だ。
「ののちゃん、しんどくない?大丈夫?」
そういう石川の方が泣きそうだ。
「…うん、だいじょうぶ」
そう答えながらなぜか涙が溢れてきた。
- 58 名前:キリ 投稿日:2001年04月28日(土)13時37分30秒
- 更新です。
>>な・ななしさん
気にしていただけてうれしいです!
話も佳境に入ってきて、あと数回のアップでエンディングと
なると思います。
もうしばらくのお付き合い、よろしくお願いします。
- 59 名前:ポルノ 投稿日:2001年04月28日(土)18時58分37秒
- ああ・・これ、もうちょっとで終わるのか・・
楽しみがひとつ減っちゃうなあ・・・
- 60 名前:キリ 投稿日:2001年04月29日(日)18時59分37秒
- 静かな病室のなかでは、希美の嗚咽が鮮明に響いた。
「どうしたん?どっか痛いんか?」
いつのまにか着せられていたパジャマの袖で涙をぬぐいながら、
希美は首を振った。
「じゃあどうしたん?怖かった?」
うん、怖かった、すっごく怖かった。
しかしその気持ちを言葉にはできず、ただうんうん、とうなづくのが精一杯だ。
「よしよし、もう大丈夫やで」
と言った中澤だけでなく、みんなが希美のことを
心底心配してくれているのが希美にはわかった。
というよりも、希美の心が無意識に感じているのだ。
怖いぐらいのやさしさを・・・。
うえーん、あったかいよぅ・・・。
みんなのやさしさが、みんながいることの安心が希美の涙を許していた。
- 61 名前:キリ 投稿日:2001年04月29日(日)19時01分37秒
- 更新です。
>>ポルノさん
そう感じていただけてうれしいです。
このコンビに愛着をもってやってください。
あと少し、よろしくお願いします。。。
- 62 名前:キリ 投稿日:2001年05月02日(水)13時33分48秒
- 「あんたもがんばってたからなぁ・・・、
神様がちょっと休憩しなさいって言ってるんやでぇ」
言いながら中澤は希美の頭をなでなでする。
「うえーん」
と、突然加護が泣き出した。
「なんで加護がなくのよー」
笑いながら飯田が言う。
「だって・・・、びっくりしてんもん〜」
本当に心配だったのだろう、ついつい関西弁がでる。
それを見て、最初に中澤がが笑って、それからみんな笑った。
希美も・・・。
泣きながら、みんなと一緒に笑った。
- 63 名前:キリ 投稿日:2001年05月02日(水)13時35分50秒
- 更新です。。。
さあ、いよいよクライマックスです。
後もう少しでこの物語は終わります。
読んで下さっているみなさん、本当にどうもありがとうございます。
もう少しのお付き合い、よろしくお願いします。。。
- 64 名前:ポルノ 投稿日:2001年05月02日(水)15時39分56秒
- がんばってくださーい(T_T)
- 65 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月02日(水)18時11分18秒
- がんばって〜
- 66 名前:キリ 投稿日:2001年05月06日(日)00時55分08秒
- 明け方目が覚めた。あれからみんなが帰って、またすぐに眠った。
みんなが残していった安心感が希美を眠りの中へと滑り込ませた。
なんとなく窓のほうに目をやると、小悪魔が外を眺めているのが見えた。
「おぅ、目ぇ覚めたか?」
うん、とうなづく希美。
「何してるんですかぁ?」
「うん、次に助けるんはどんな人かなぁって思ってな」
「・・・つぎに?」
言葉の意味がわからず首をかしげる希美。
「うん、ワシも長いことお前と一緒にいたからなぁ、
そろそろ別の人のところに行こうと思うんや」
それはやさしさと決意の込められた声で告げられた、別れの言葉だった。
- 67 名前:キリ 投稿日:2001年05月06日(日)00時58分10秒
- 更新です。。。
>>ポルノさん >>65さん
いよいよクライマックスが動き出しました。
適度にひっぱりながら、それでも順調にアップしていきたいと
思っております(^-^
後しばらく、この二人を見守ってやってくださいm(__)m
- 68 名前:キリ 投稿日:2001年05月10日(木)20時37分17秒
- 小悪魔の言葉一つひとつをゆっくりと考えて理解するかのように、
無言でうなずく希美。
「お前がしんどくても歌ったり踊ったり、そういうことを続けていくように、
ワシにもこれからもやっていかなアカンことがある、
やっていきたいと思うことがある」
うん、うん、とうなずきながら希美は込み上げてくる涙をこらえる。
「お前とおって、ワシ思ったんや、
なんでもすごいがんばってるお前をワシが助けてたらアカンのちゃうか、ってな」
小悪魔は不器用に言葉を選びながら、それでもできる限りやさしく話した。
「それにお前にはいい仲間がいっぱいいるやないか、
ワシなんかいなくても大丈夫やって」
希美の瞳からぽろぽろと涙がこぼれた。
それが嗚咽に変わり、希美は声を出して泣きだした。
- 69 名前:キリ 投稿日:2001年05月13日(日)16時37分33秒
- 小悪魔はやさしく微笑みながら希美の肩に飛び乗り、
小さな手で希美の頭をなでなでした。
「でも・・・、ののは・・・、なんにもあげて・・・ません・・よ・・・?」
とぎれとぎれになりながら一生懸命にしゃべる希美を見ていると、
小悪魔まで泣きそうになる。
「いや・・、お前はすごいもんをくれたよ、すごい大切なモンを教えてくれた、
それはどんな宝石よりも価値があって、きれいなモンや」
次々溢れる涙を拭きながらも、希美は一生懸命小悪魔の言葉を聞いた。
たぶんもうさよならだって思ったから。
「今ワシが言ってることを今すぐ理解できんでもいい、
ただお前は今まで一生懸命にがんばってきた気持ちと、
これからもがんばろうと思う純粋な気持ちを忘れんといて欲しい、
後いろんな事を楽しめる心もな、このお願いは完全にワシの自分勝手や、
でもお前には変わって欲しくないんや、
その純粋な心をなくさんとって欲しいんや」
ふぅ、と小さく深呼吸して、高ぶってしまった自分をしずめる小悪魔。
そしてゆっくりと続ける。
- 70 名前:酢漬け 投稿日:2001年05月13日(日)22時04分43秒
- 俺まで泣きそうになる。
- 71 名前:ポルノ 投稿日:2001年05月14日(月)23時37分45秒
- ホンマええ話や・・・
- 72 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月17日(木)07時55分21秒
- 小悪魔のやさしさに惚れました。
- 73 名前:キリ(レス) 投稿日:2001年05月19日(土)15時31分32秒
- 更新が遅れてしまってすみません。。。
明日いっきにラストまでアップします。
未熟な文章にもかかわらず、最後まで読んでくださった
皆様、本当にありがとうございました。
>>酢漬けさん
うれしい限りです!
明日も泣いてください(^-^;?
あ、あんまり泣けないかも・・・。
>>ポルノさん
度々のレスありがとうございます!!
この物語が終わった後もそういって頂けるとうれしいです。
>>72さん
うれしいです!
このふたりに愛しさを感じて欲しいと思ってます。
後少し、お付き合いを・・・。
- 74 名前:ポルノ 投稿日:2001年05月20日(日)12時50分39秒
- 今日ラストアップですねえ・・・・・
楽しみです。
- 75 名前:キリ 投稿日:2001年05月20日(日)14時15分42秒
- 「こうやってワシが思うのも、ワシがお前と今別れようとしてるのも、
お前が好きやから、泣きそうなぐらい好きやからなんや、
今はそれだけわかってくれたらいい」
小悪魔の言葉にうんうん、とうなずく希美。
そして”ののも大好き”と小さな声で、それでもはっきりと言った。
希美をいとおしいと思う気持ちと、希美に自分の涙を見られないように、
小悪魔は希美のほっぺたに身を寄せた。
そして話をつづけた。
「どうや?あったかいやろう?」
うなずく希美。
「これは、心が感じてるあったかさや、
だからメンバーが帰った後も安心して眠れたやろう?
あれは心の中に温もりが残ってるからなんや、
だからワシがいなくなっても、
お前がこの温もりを心で覚えてるうちは一緒やねんで」
「忘れないです・・、うぅ…、絶対に忘れない・・・・、ず〜〜〜〜」
「うわっ、汚いなぁ、鼻水ついたでぇ!」
湿っぽくなってしまった空気をほぐそうと、
わざと明るい声でおどけてみせる小悪魔。
「えへへ・・・」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で、希美は本当に楽しそうに笑った。
- 76 名前:キリ 投稿日:2001年05月20日(日)14時17分35秒
- 「はいはい、そこにティッシュあるから鼻水ふいてぇ、
最後ぐらいかわいい顔はっきりみせてやぁ」
希美は素直なティッシュをとり、鼻をかんだ。
その時に目が合って二人でまた笑う。
「…じゃあ、元気でな、ワシもそろそろ出掛けるとするわ」
「あ、ちょっと待ってください?」
そう言って希美はベッドから下り、
まだすこしふらついた足取りでベンチの上に置かれた自分のカバンまで走った。
そして「ん?なんや?」という小悪魔の言葉を背中で聞きながら、
ごそごそと探し物を探し当てると、
それを手の中に隠しながらベッドの上に飛び乗った。
そしてゆっくりと手を差し出す。
- 77 名前:キリ 投稿日:2001年05月20日(日)14時26分44秒
- 「はい、これあげます」
ひらけられた小さな手には、ピンク色のあめ玉が一つ転がっていた。
「ん??あめか?」
「はい、ののが一番好きなあめです」
「おお、ありがとう」
ほっぺたをそのあめのような色にしながら、
小悪魔は照れくさそうにそれを受けとった。
「それじゃあ、元気でな、お前のこと絶対わすれへんで」
「はい、ののも悪魔さんのこと、絶対にわすれません」
「ほんまに・・・、ありがとう」
最後にそう言った後、希美の目を見てやさしく笑うと、
小悪魔は窓から明るくなりかけた空へと飛び出していった。
蒼白い空に溶けるように消えていった子悪魔の姿が、
希美には一瞬天使に見えた。
それに希美は驚かない。
ただ夢を見ているかのように、この別れに現実感を持てない希美はもう一度、
小さな声で
「絶対、わすれません」
とだけ言った。
- 78 名前:キリ 投稿日:2001年05月20日(日)14時34分26秒
- 新しい空気に街が少しずつ呼吸をはじめていた。
朝の冷たい風が希美の頬を柔らかく滑っていく。
胸の辺りに大きな空洞ができたかのような切なさに、
希美は少しだけ泣いた。
空洞を涙で満たそうとしているかのように、切実に、痛々しく。
ビルの間からは、新しい太陽がいつもと変わらず希美を照らしていた。
- 79 名前:***エピローグ*** 投稿日:2001年05月20日(日)14時40分11秒
- 泣き疲れて眠った。
朝、目が覚めるとお母さんがベッドの横に座っていた。
キョロキョロと辺りを見回してみたけれど、
やっぱり小悪魔はもういないみたいだった。
(やっぱり夢じゃなかったんだ)
そう思うと少し涙がでてきた。
わかってるのに・・・。それなのにどうしようもなく寂しい。
「どうしたの?」
お母さんの言葉にううん、と首を振ると、
「なんでもない」
と答える。
大丈夫、心にはっきりと残ってるもん、小悪魔さんの気持ちが・・・。
そう思うと少し安心した。
ふと携帯に目をやるとメール着信のマークがついていた。
ボタンを押すと、そこにはぴったり9件のメールが入っていた。
「お前にはいい仲間がいっぱいいるやないか」
という小悪魔の言葉を思い出して、希美はひとり静かに笑った。
『終わり』
- 80 名前:キリ(後書き) 投稿日:2001年05月20日(日)14時44分18秒
- というわけで終了いたしました。
自分なりにがんばって考えて書きました。
最後まで付き合ってくださった方々。
よければ感想でもなんでも書いていただけたらうれしいです。
それでは、本当にありがとうございました。
- 81 名前:KEI 投稿日:2001年05月20日(日)20時01分05秒
- お疲れさまでした。
いやぁ、題名を見たときから、最後は別れだとわかっていましたが、もう涙です。
次作を楽しみに待っています。
- 82 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月20日(日)20時35分57秒
- よかったです。
たくさんの感謝の言葉でなく、大好きなあめ玉をひとつ……
泣けました。
九つのメールのエピソードが読んでいてとても嬉しかったです。
新しい作品でも頑張ってください。
- 83 名前:TOHKI 投稿日:2001年05月21日(月)09時23分25秒
- お疲れさまでした。
最初で最後の贈り物がピンク色のあめ玉というところが
ののらしく、とても愛しく感じました。
それでは、新しい作品を楽しみに待っています。
- 84 名前:キリ(レス) 投稿日:2001年05月21日(月)15時27分47秒
- >>KEIさん
うれしい感想ありがとうございます!
二人が別れる時に、読んでるほうもその二人と
お別れするような寂しさを感じて欲しいと
思いながら書きました。
次回があるのかは、わかりませんが、ありがとうございました!
>>82さん
ありがとうございます!
なるべく娘はテレビでの印象通りに書こうと思っていました。
とても嬉しかった、という感想が本当にうれしいです。
ありがとうございました。。。
>>TOHKIさん
ありがとう!
飴好き、というエピソードを使わせてもらいました。
愛しく思っていただけたことも、目標のひとつだったので
うれしい限りです。
ありがとうございました。。。
- 85 名前:ポルノ 投稿日:2001年05月22日(火)05時33分46秒
- 今、最後まで読みました。
ほんまエエ話しや・・・
エピローグの9件のメール・・・・・サイコーです・・・
スンゲー感動もんです。涙、涙です。
本当にお疲れさまでした。
次回作、楽しみにしています。
- 86 名前:キリ(レス) 投稿日:2001年05月22日(火)15時45分30秒
- >>ポルノさん
本当にありがとうございました。
何度もお褒めの言葉を頂いて、ずいぶん励みになりました。
涙していただいて、嬉しい限りです。
ありがとうございました。。。
- 87 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月28日(月)21時32分46秒
- 泣きsage・・・・ぐずっ
- 88 名前:キリ(レス) 投稿日:2001年05月30日(水)22時32分03秒
- >>87さん
ありがとうございます!!
十分うれしい反応です。
sageで失礼しました。。。
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