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君の歌、僕の歌。
- 1 名前:ばね 投稿日:2001年03月14日(水)23時23分51秒
- ナカザー脱退関連ネタです。
自分のペースでチマチマやって行きますので、よろしく。
- 2 名前:君の歌、僕の歌。 投稿日:2001年03月14日(水)23時27分25秒
- “僕は僕のままで ただ 今を生きること”
そんな気持ちで歌って
“誰よりも自分を 誰よりも信じてる”
そんな気持ちで…
- 3 名前:君の歌、僕の歌。 投稿日:2001年03月14日(水)23時49分41秒
- モーニング。を辞めること、今日みんなに話した。
とうとう言ってしまった。
もう、後戻りは出来ないーーーーする気なんかは、さらさらないけども。
本日分の仕事がすべて終わった後、みんなを楽屋に集めてもらった。
マネージャーさんにも席を外してもらったので、楽屋はさながら『モーニング娘。大決起集会』となっている。
…ヤンキーか、アタシは。
九人は、一様に言葉では表せない複雑な表情でアタシに注目している。
そんなやや重苦しい雰囲気の中、自分なりの言葉を紡ぐのは思いのほか重労働だったのだけれど。
それでもアタシは、自分の気持ちを一から話していった。
今までずっと考えていたこと。
アタシのこと、みんなのこと。
これまでのこと、これからのこと…。
- 4 名前:君の歌、僕の歌。 投稿日:2001年03月15日(木)00時02分25秒
- みんな泣くんやろうと思っていた。
今までのように、これからもきっと。
仲間がいなくなる寂しさに素直に涙を流せる、そういう純粋さをいつまでも忘れて欲しくない…自惚れじゃなく、アタシのささやかな願いやった。
果たして、それはアタシの願い通りだったのだけれど。
最初に泣き出したのは、なっちとカオリのオリジナルメンバーコンビやった。
アンタらが最初に泣いてどうすんねん、って冗談めかして笑い飛ばしたけれど、幾度と重ねて起こった辛い経験からアタシたちには、『脱退』という言葉に過剰反応する特別な神経回路のようなモノが出来ているのかも知れなかった。
それは、自分の『脱退』に対しても同じことで。
最年少二人にも負けないくらいに、三人して延々泣き続けた。
相応に年齢を重ねてオトナになっても、いつだって同じように泣いて笑い合えるこの関係が、アタシは愛しくて仕方がなかった。
- 5 名前:T.K.O 投稿日:2001年03月15日(木)04時05分34秒
- 期待しています。マイペースでがんばってください。
おもわず『SnowGarden』を引っぱり出して聞いてしまいました。
- 6 名前:ばね 投稿日:2001年03月16日(金)05時18分51秒
- >T.K.Oさん
元瀬能ヲタ作者です(w
ご期待に添えるよう頑張ります…(弱気
- 7 名前:君の歌、僕の歌。 投稿日:2001年03月16日(金)05時23分04秒
- ギリギリの告白。
その後に訪れた、優しい時間。
が、不意にどこか違和感を感じた。
何やろう? 何かが決定的に欠けている。
ーーーああ、アタシが抜けた後、こんな風に誰か『何かが足りない』って思ぉてくれるやろうか…?
ともすれば消えてしまいそうな自我、存在価値。
アタシは無性に、何かにすがりたい感覚に襲われていた。
こんな時、すっかり萎えてしまった普段過剰過ぎるほどの自意識を取り戻させてくれる、強気なあの一言がない。
『しっかりしろよ。何があったって裕子は裕子だろ〜?』
欠けているんはソレや。
……矢口。
そうや、矢口の考えてることが判らん。
何でさっきから何も言うてくれへんねん?
なぁ、何でなん…?
- 8 名前:君の歌、僕の歌。 投稿日:2001年03月16日(金)05時32分35秒
- 「やぐち」
呼びかけたアタシに、今まで見せたこともないようなそれはそれはキツイ視線で、矢口は睨み返してきたのだった。
「やぐ…? ちょ、ちょっと待っ……!」
アタシの制止をイヤというほどに思いきり振り切り、目の前に置いてあった自分のバッグを掴むと、まさに脱兎のごとく矢口は楽屋から走り去っていった。
…あの厚底で。地上高十数センチもある、あのアツゾコで。
妙なことで、アタシは感心していた。
ヒトはホンモノの危機に直面すると、泣くだとか脅えるだとかいう前に笑ってしまうと言うが、あの時のアタシは笑わずとも現実逃避の真っ最中やった。
自分の手で大切に大切に守ってきた何かが、カラカラと音を立てて壊れていく感触。
それはイメージというよりも、確実な実感としてこの手の中にあった。
アタシは矢口を。
矢口を、失ったーーー失った?
- 9 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月16日(金)10時15分42秒
- 矢口−−戻って来〜い!!!なんか、のっけから胸が詰まるっす。
いやはや、ばねさん満を持して登場!ですね。
ご自分のペースで頑張って下さい。また、ちょこちょこ寄せてもらいます。
- 10 名前:マッチ 投稿日:2001年03月16日(金)14時17分39秒
- やっぱり切ない…
寂しい情景の中の面白い光景?がいいですね。
矢口と裕ちゃんの関係は?
ゆっくり更新して頑張って下さい〜♪
- 11 名前:ばね 投稿日:2001年03月17日(土)01時13分30秒
- >名無しさん
満を持して登場…なのかな。
散々よそのスレで騒いできたので、今度はネタを提供する側で頑張ろうと思います。なんて。
>マッチさん
頭の中で一人ボケツッコミをしてるイメージがあるんです、姐さんて。というか、関西人全般に対する(いい意味での)差別意識かも知れません。『探偵ナイトスクープ』リスペクトです。
さて。
あと2,3レスでストックが切れるので、しばらくネタ探しの旅に出ます。探さないでください。かしこ。
- 12 名前:君の歌、僕の歌。 投稿日:2001年03月17日(土)01時23分35秒
- ………くそっ!
最初の一歩にまず躊躇し、一秒でも早く辿り着かなあかん時には身体が動かへん。
歳を取る、てこういうことなんや…。
矢口に逃げられた後頭が真っ白なって、そんで思い付いたようにアタシも楽屋を飛び出た。
走っても走っても、矢口の姿は見当たらん。
グレイを基調にした局内は基本的にどこも景色が変わらず、端っから出口の用意されていない迷路に放り込まれたみたいで胸クソ悪い。
アホの子、言われてるみたいやん。
- 13 名前:君の歌、僕の歌。 投稿日:2001年03月17日(土)02時27分48秒
- ………見つけた…!
ロビーに続く局の正面玄関。
その自動ドアを、矢口は今まさにくぐらんとしているところやった。
スローモーションのようにガラス戸が左右に分かれ、吸い込まれるみたいに矢口は一歩を踏み出す。
ほんの刹那のようで永遠の別れのような、不思議な感覚に襲われる。
多分、このまま行かせたあかん。
ここで別れたらきっと、あの身体はもう二度と抱かれへん…。
どこからか湧いてくる脅迫観念。アタシは大人しくそれに従った。
恐らくは、本能だ。
直感とか第六感とかほかに言い様はあるかも知れないが、昔からアタシはそれが優れていた。
ああ、もぉっ……!
日頃の運動不足がこんなところで発揮されてしまうとは。
両の脚を絡めそうになり、ほとんど倒れる勢いで腕を伸ばす。
閉まりかけのガラス戸に腕と身体をしこたまぶつけながら、必死で空を掴む。
その幾度かの動きの中で、何かを握り締めた。
ーーーー勝った…!
何に勝負を挑んでいたというのか。
しかし間違いなく、アタシは勝利の高揚感に包まれていた。
- 14 名前:マッチ 投稿日:2001年03月17日(土)21時34分37秒
- 何を握り締めたんでしょうか?(わら
頑張って探してきてください(^^)
>>11:ばねさん
一応自分も関西人なんで(わら
わかるような(わら
- 15 名前:ばね 投稿日:2001年03月19日(月)05時16分01秒
- >マッチさん
や、私は関西人ではないです。『ナイトスクープ』のようなノリに憧れる埼玉県人です(w
関西はOPD旗揚げ公演を観に梅田に行ったくらいしかないですねぇ。
- 16 名前:君の歌、僕の歌。 投稿日:2001年03月19日(月)05時18分44秒
- 「……ん…で逃げんねんっ」
見事掴んだのは、矢口のコートの袖部分やった。
いきなり背後からのしかかられ、反射的に振り返った矢口の驚いた顔にぶつけるように、静かに言葉を紡ぐ。
言葉とともに吐き出した吐息が、局内にこもったいかにも身体に悪そうなぬるい空気と新鮮な外気とが混じった中空に漂って、一瞬で消える。
「…べ、つに、逃げたわけじゃないし」
バツが悪そうに、矢口は視線を逸らす。悪戯をとがめられた子供のようだと思った。
袖を掴む指先に、きつく力を込める。
悪いのは矢口やない。
非があるとしたら、置いていくうちの方やのに。
爆発しそうな何かがふつふつと胸に沸き上がって、止まらない。
- 17 名前:マッチ 投稿日:2001年03月20日(火)14時49分22秒
- >ばねさん
かってに関西人にしてすみません(わら
よっすぃーと同じ埼玉なんですか…いいな〜(わら
ずごい関東に憧れてます。
テレビ収録とかいけるんですよね?いいっすね〜
頑張って下さい〜♪
- 18 名前:名無し君 投稿日:2001年03月21日(水)01時24分45秒
- 姐さん卒業。。。
7月からの連ドラ本当に期待で我慢!!
作者さん、やぐちゅーは永遠だー!!!
- 19 名前:ばね 投稿日:2001年03月21日(水)06時30分30秒
- >マッチさん
毎度どうもです。私は関西の方に強い憧れがあります。
同じ埼玉とはいっても、よっすぃーのうちより東京出身の辻ちゃんちの方が近いらしいです、うち。
>名無し君さん(w
辞めてしまってもテレビなりライヴなりで元気な姿を確認出来るというのは、とてもありがたいですね。
やぐちゅーは、今後も意外とコンスタントに目撃出来るんじゃないかという気がしています。
実はやぐちゅーの魅力にはごく最近気付いた、猛烈ごまいし推し作者です(w
- 20 名前:君の歌、僕の歌。 投稿日:2001年03月21日(水)06時41分44秒
- 「これから、時間作ってくれるか? 出来るだけ長く」
「ムリだよ…今日は、マルキュー行って春物買うんだもん」
「買い物なんて、いつだって行けるやん。一時間でも三十分でもええから。話があんねん、大事な」
「聴きたくない、裕ちゃんの話なんか。矢口には関係ないじゃん!」
袖を掴んでいたアタシの手を拒絶するかのように、矢口は力任せに腕を振り払った。
「…なぁ、それ、本気で言うてんの? そうなんやったら、ええわ、もう。無視するなり憎むなりご自由に、ちゅう感じやわ」
何だかもう、どうでもよかった。
確実に傷つけることは、最初から判ってたんやし。
“去るもの追わず、来るもの拒まず”や。
…あ、いや、拒むけども。
「………十分だけ。それだけなら話、聞いたげる」
「よっしゃ」
さすがに足取りの重い矢口。その腕を引っ張り、アタシたちはひとまず楽屋へと戻った。
- 21 名前:君の歌、僕の歌。 投稿日:2001年03月22日(木)04時26分42秒
- 「中澤さぁ〜ん…!」
楽屋には、珍しくまだ子供たちが残っていた。
辻と加護。
泣き顔のまますがりついてくる二人を何とかなだめ、いなくなったアタシらを待っていたマネージャーに途中まで送ってくれるように頼み、帰らせた。
また、泣かせてもうたなぁ…。
毎度のように申し訳ない気持ちになる。
けど、あの年頃の子供の涙は、何より綺麗やから。
純粋で透き通ってて、打算がなくて。
たくさん泣いたらええんやと思う。
そしたら、こんなヒネたオトナにならんで済むから。
一、二時間前までの喧騒が幻のように、シンと静まり返った室内。
暖房の電源はオンのままのはずだが、春と呼ぶにはまだ遠い季節の室温が、否応なく肌を刺してくる。
- 22 名前:君の歌、僕の歌。 投稿日:2001年03月22日(木)04時53分24秒
- ……マボロシ、かぁ。
状況に適切過ぎる言葉が頭に浮かんで、思わず苦笑した。
「…何笑ってんの?」
言葉自体は滑らかだが、トゲがある。胸に痛い。
こんな矢口はイヤやな。可愛くない。
「なんもないで?」
「あ、そ」
息込んだわりに、かけるべき言葉は見つからない。
何を言っても、今は自分の身を庇う言い訳にしかならへんから。
「さっきも言ったけどさぁ、矢口、マルキュー行きたいの」
「マルキューなぁ…ほんま渋谷好きやよなぁ」
「好きだよ。悪いかっ」
「べっつに悪ないけどぉ。いつまでそんな、年甲斐もなくコギャルの格好とかしてるつもりなんかなぁ、とか思ぉてさ」
「さぁね。一応、飽きるまでやるつもりですケド、歳のことはアナタに言われたくないですね」
「ハイハイ、そりゃどーも」
- 23 名前:マッチ 投稿日:2001年03月22日(木)14時42分51秒
- やぐちゅうはいいッスね〜(^^)
この後の展開に期待です♪
>ばねさん
辻ちゃんちの方が近い?
ひぇぇぇ〜〜
関東だと街中歩いてると娘。の誰かに遭遇しそうで羨ましい?ッス(わら
- 24 名前:君の歌、僕の歌。 投稿日:2001年03月22日(木)23時35分07秒
- …アレ?
なんでこんな、普通のリアクションなんやろ?
矢口、怒ってたんちゃうんか?
「ね。今年の春物ってさ、何色がはやるんだっけ?」
「春物? ん〜、何やったっけか?」
「最近さ、雑誌読む時間もないんだわ、矢口」
「…また、眠れてないん?」
「そんなことないよ? なんつーか、集中力欠いてるって感じ?」
「そか」
疲れとか体調不良とか、そういうことを表面上感じさせない子ほど、自分の中に抱え込んでるモノは大きい。
矢口はその、典型みたいなヤツだ。
ツアーのリハ中、常に微熱が続いてたりとか、お腹壊したりとか。そういうことが、昔はしょっちゅうあった。
- 25 名前:君の歌、僕の歌。 投稿日:2001年03月22日(木)23時37分02秒
- 「春物、マジどうしよっかなぁ…」
「秋物着回したらええやん?」
「えーっ? トーンが暗いじゃんよ、秋物はぁ」
「文句ばっかりやな。けど、だいたい春なんて一瞬で終わんねんで? 五月の後半にはもう、半袖着てたりするやん、日本人。地球温暖化現象やで?」
「なんだよ、それ…あー、でも、こんなこと言われても困るか。裕ちゃん、もうその頃いないしね」
歌うように、そう、矢口は言った。
「…ん? あ、違う違う、怒ってるとかじゃなくって…現実じゃん? 実際、裕ちゃん辞めちゃうわけだし」
「…普通、そういう言い方するか?」
「あ、悪い。別に、ヤケになったりとかじゃないんだ…あのさ、ちょっと真面目な話、してもいいかなぁ?」
「ご自由に」
「それはどーも」
上手く伝わるかどうか、判んないけど…。
ひとつ前置きしてから、矢口は切り出した。
- 26 名前:矢口。 投稿日:2001年03月22日(木)23時42分20秒
- あ、ちなみに。
さっき逃げちゃったのは、条件反射みたいなモンだから。
気にしないでくださいまし。
…えーっと。
今まで誰にも話したことないんだけどぉ〜。
矢口さ、娘。の最後を看取るつもりなんです。大げさかもしんないけど。でも、前から決めてて。
でさ。
そん時の矢口の隣には、裕ちゃんがいるんだ、って、思ってた。漠然と…なんだけど、ゼッタイ。
だから正直、キツかったねぇ。
辞めてもみんな、今でも大好きだし、順番なんてつけらんないけどさぁ…やっぱ、一番キツくって。
悔しいし、ムカついたし、いっぱい泣いたし?
でも、さ。
裕ちゃん、知ってるじゃん? 置いてかれる人間のキモチ。一緒にさ、何度も味わったじゃん? 哀しくって辛くって、みじめで…とにかく、サイテーの気分でさ。
だから、それでも辞めるって決めたってことは、それなりの理由があるんだろうなぁ、って。
- 27 名前:矢口。 投稿日:2001年03月22日(木)23時45分00秒
- ……や、別に、理由なんかなくってもいいのさ。
だって、ウチら、親子でも兄弟でもないし?
こうして今、同じことやってる、ってこと自体が実は、奇跡みたいなモンじゃん?
だから別れる時はきっと、カンタンに別れるんだろうなぁ、って。
たぶん、それが一番自然で、一番正しいんだと思う。
矢口はね、自分が一番正しいと思うことをするよ。
裕ちゃんもそうだよね?
だからこんなに愛しくて、大切なんだと思う。全部が。
……って、ヒトが真面目に恥ずかしいこと話してんだから
、泣いてないで最後まで聞けっての。もぉ〜っ。
あ、ヤベ、つられそー。
でも、ぜってー泣かねー…。
- 28 名前:from 矢口。 投稿日:2001年03月22日(木)23時46分48秒
- 泣き虫。
バカゆーこ。
セクハラ。
呑んだくれ。
達者でな。なんてね。
ウソだよ。
いつでも会えるよ? いつでも会えるさ。
手始めに、二日酔いの朝に大声で電話でもかけてやるし。
カラダ壊さない程度にたらふく呑んで、待ってなさい?
忘れたくても、忘れられないようにしてやるからさぁ。
- 29 名前:君の歌、僕の歌。 投稿日:2001年03月22日(木)23時49分51秒
- 2001年4月15日。
メンバーもスタッフも大勢いてる、ゆーのに。
アタシの濡れた頬を優しく包んでくれた小さな両手を。
触れ合った唇のあたたかさを。
一生忘れまいと心に誓った、大阪の夜ーーー。
おしまい。
- 30 名前:ばね 投稿日:2001年03月23日(金)00時03分22秒
- 『君の歌、僕の歌。』おしまい。
超難産。
手直ししたいとかいう気が起きる前に、書き終えた勢いで上げちゃいました。
意味が判らないという方には説明しますので、いちいち申しつけてみてください(w
ではでは。
- 31 名前:ばね 投稿日:2001年03月23日(金)00時20分11秒
- >マッチさん
終了しました。納得のいくラストになってますでしょうか?
街で偶然ばったり芸能人に会うというのは、至難の技でしょうねぇ、東京だろうとどこだろうと。こちらから「会いに」行かないことには…。
- 32 名前:マッチ 投稿日:2001年03月23日(金)13時53分50秒
- ん〜よかったッス(涙)
最後の矢口の語りはメンバー誰もが思ってる事でしょうね…
また頑張って下さい。
ps ANN-Sが裕ちゃんから矢口に受け継がれたってのが、
なんかすごい嬉しかったです(^^)
今の勢いだとごっちんかも?ってすこし思ってましたから…(^^;
>東京で芸能人〜
実際はそうなんでしょうね…(わら
- 33 名前:ばね 投稿日:2001年03月24日(土)06時49分40秒
- >マッチさん
矢口の喋りのシーンは、我ながら反則だなぁ、と思いながら書いてました(w
ま、初ということで勘弁してもらえると有り難いですが。
前から噂はありましたけど、ほんとに矢口になるとは思ってませんでした。<ANN
私はカオリかなぁ、と思っていたんですけどね。諸事情を考慮すると。
さて、次回予告。
次はプッチメインの軽めのネタで行く予定です。需要が少なそう(w
- 34 名前:名無し読者 投稿日:2001年03月26日(月)00時11分03秒
- プッチメイン!!需要が少ないなんてとんでもない!
めっちゃ欲してますよ!自分だけかもしんないすけど。(w
個人的にはヤッスーが…良いっす!お願いします!
- 35 名前:ばね 投稿日:2001年03月26日(月)05時32分44秒
- >名無し読者さん
わ、気合いの入ったレス、ありがとうございます(w
扱いはあまりよくないかも…ですが、ヤス、いっぱい出る予定ですんで、ほんのりご期待ください(w
- 36 名前:プロローグ 投稿日:2001年03月26日(月)05時35分24秒
- ……そう。
そもそもの始まりは、ヤツのしょうもない思い付きだった。その一言のせいで、あたしたちはややこしい出来事に巻き込まれる羽目になったのだーーー。
- 37 名前:ヨシゴタモツ式。 投稿日:2001年03月26日(月)05時52分58秒
- あ、そうだ。
「保田さん、ちょっといいですか?」
「あのねぇ、吉澤。あたし何度も言ってるよね、“圭ちゃん”って呼んで欲しい、って」
「…ハイ。でもそれ、あたしも何度も言うように、無理ですから。ゴメンナサイ」
「った〜、謝られても困るっての。いい加減さ、あたし強行手段に出るわよ。いい?」
「強行手段?」
「いっぺんしか言わないわ。耳の穴かっぽじって、よく聞きやがれ? いい? いくわよ? アンタが“圭ちゃん”って呼ばない限り、仕事以外ではあたしアンタと口きかない。そういうわけだから、以後よろしゅう。んじゃ、オツカレ〜」
「あ、おつかれさま、でした…」
………う〜む。
何て言うか、保田さんの日本語はときどき難易度がえらく高くて、理解に困難が生じるほどで。
ええと。
要するに。
あたしは愛想をつかされた、というわけですか…?
- 38 名前:ヨシゴタモツ式。 投稿日:2001年03月26日(月)06時06分21秒
- 『ヨシザワに“圭ちゃん”って呼ばせてみせます!』
何ていうかそれは、保田さん流の洒落の一種なんだろうと思っていた。
一方で、『必ず吉澤をオとす!』という宣誓のようにも聞こえて、そりゃあ、最初はちょっとは嬉しかったけども…。
「…アハハっ。ヨシコ、ピンチじゃん。どうするよ?」
記憶を巻き戻しているあたしを現実に引き戻す、第三者。
無責任な笑い声。どこまでも楽しそうな、ゴ、ゴ、ゴ、ゴトーマキ。
…っていうかごっちん、キミさ、人が困ってんのにテーブルに顎なんか乗っけちゃって、随分と楽しそうじゃん?
「やぁん、そんな怖い顔で見ないで〜♪」
「……いい。帰る」
帰り仕度は済ませてある。制服やら何やら色々詰まったバッグを肩に掛け、あたしは椅子から立ち上がった。
「や。ウソウソウソ、冗談だって。怒らない怒らない〜♪ ね、後藤にいい考えがあるですよ、お嬢サン。けーちゃんを諦めさせる秘策が!」
甘い言葉を囁かれ、あたしは再び椅子に腰を下ろした。
「……って、マジで? 助けてくれんの…?」
「アタシたち、オトモダチでしょぉ〜? ごとーにまかせなさいって」
「や、頼んます。マジで」
「ふふん♪ そう来ると思ったゼ、ヨシコちゃん。じゃあ明日早速、作戦を発表・遂行いたしますんで。ひとまず、本日は撤収。お疲れっ!」
右手で敬礼のポーズを作ると、背筋を伸ばしてなぜか一礼し、ごっちんはマーチのリズムで楽屋を出ていった。
………いや、しかし。
まったくもって迂闊だった。有り難い救いの手にまんまと騙されて、ヤツの企みを見破ることが出来なかったのだから。
このことは後々になって、保田さんも嘆いていた…。
- 39 名前:マッチ 投稿日:2001年03月26日(月)19時47分00秒
- 今度のプッチも期待してます♪
タイムリーな圭ちゃんの努力目標をネタにしましたね(^^)
しかし…ごっちんは何を考えてるのかに期待♪
- 40 名前:ばね 投稿日:2001年03月29日(木)00時58分35秒
- >マッチさん
後藤は、自分が楽しい思いをするためにベストを尽くすのみなんです(w そのせいで他人が傷つこうと、構いやしない。極悪。けれども、他意はないんです。
そういう後藤に振り回される吉澤、ほか一同を、軽い感じで書いて行こうと思ってます。
- 41 名前:ヨシゴタモツ式。 投稿日:2001年03月29日(木)06時09分07秒
- レギュラー番組以外では、最近すっかり稀になった10人での仕事。
「久しぶりのモーニング。やからって、浮かれんなよ。気ぃ入れてくで〜」
本番直前。
スタジオに入る前、中澤さんはこうしてみんなにハッパをかける。この一声であたしたちは自然と、“娘。モード”に入るのだ。
………はぁ。人知れず溜め息をつく。
なんだってあの人は、あんなに格好いいんだろうか。反則だ。
上に兄弟がいないことに起因しているのか、あたしは年上の人にしか惹かれない。
惹かれるといってもただの恋愛対象としてではなく、尊敬…というか極端な話、崇拝の対象になってしまうのが少々ややこしい。
たぶん、ココロの病気か何かで。
あたしは“誰かに胸がトキメク”というのを経験したことがない。この世に生を受けてから一度も、は誰かを好きになったことがないーーー。
「ヨシコ。この収録終わったら、例のハナシみんなの前で話すから。もし、圭ちゃんがイチャモンつけても、みんなが丸め込んでくれると思うからさ」
「あー、サンキュ。考えといてくれたんだぁ」
「あったり前でショ? この後藤サンにすべてまかせなさいって♪」
昨日の話の続きだ。例の『作戦』。
ああ、持つべきものは遠くの親より頼り甲斐のある身近な友人だ。ありがとう、ごっちん。
ーーーここまで言われて、何で気が付かなかったかな、自分。
面白いこと好きの面々が、わざわざ保田さんの反対を押し切ってまで実行させようとすることなんて。
ロクなことじゃないに決まってるじゃないか!
………はぁ…。
- 42 名前:ヨシゴタモツ式。 投稿日:2001年03月29日(木)06時19分02秒
- 「みーなーさ〜ん! おくつろぎのところ大変申し訳ありませんが、ちょこっとだけ後藤の話にお付き合いくださいませ〜」
突如、楽屋に“アニメ声・その3”が響き渡る。
“その1”はもちろん梨華ちゃんだが、ごっちんもそうとうなものだ。ちなみに、“2”は辻ちゃんでひとつ。
当のごっちんはといえば、スカートの一部をつまんで左右に広げながら優雅におじぎでもしやがりそうな勢いだ。
ーーそう、『お久しぶりです、叔父様』とか何とか何とか言いながら。
『なんだなんだっ…?』
面白いこと好きな皆様方はここぞとばかりにキラキラとその瞳を輝かせ、ごっちんの話に耳を傾ける。
その姿はさながら、野生のハンターって感じだ。
食物連鎖の頂点に位置する、血に飢えた肉食獣。ヨシザワ的にはメスライオンきぼん、て感じ。
- 43 名前:ヨシゴタモツ式。 投稿日:2001年03月29日(木)06時21分42秒
- 「あのね。こちらの保田サンがヨッスィーに“圭ちゃん”て呼ばせたい、って迫ってたのはみんな知ってるよね?」
は〜い!
聞き分けのいい幼稚園児よろしく、センセーに正しいお返事を返すお子様たち。
『まァ、なーんて賢いお子たちなんざましょッ』
頭の中で、レイコさんーーあたしの中のもう一人の人格ーーが珍しく感激してらっしゃる。……って、あたしは飯田さんか!
「ちょっと! あたしが吉澤に迫ってるって、あんたたち一体どういう解釈してんのよッ!」
ごっちんの予想通り、保田さんが吠えた。
オトコマエだ。しかし、多勢に無勢。
恐らくは満場一致で『娘。アワード・毒舌大賞』を獲得するであろう保田さんでも、八人の口やかましい年頃の女の子ーー諸事情により、七人に訂正ーー相手じゃ、かなうわけもなく。
果たして、そんな賞が実在するのかどうかは別にしても。
- 44 名前:ヨシゴタモツ式。 投稿日:2001年03月29日(木)06時23分38秒
- 「何言うてん、圭坊。自覚ないんか? ハタから見とったら自分、ヨシザワにメロメロって感じやんか」
「はぁッ?!」
「みんなもそう思うよなぁ?」
リーダーの言葉に、顔を合わせて頷く一同。
一人パニくってる保田さん。
あたしも、どっちかっつーと保田さんサイドかな。話がサパーリ読めてませんので。
「せやから、考えたん。どうしたらみんながシアワセになれるんか。その方法を」
ふむふむ…。
「でさ。圭ちゃんは、ヨシコに“圭ちゃん”って呼んで欲しいわけだよね?」
「それは…確かにそうだわよ。それは間違ってない」
「うん。で、ヨシコなんだけど」
ん? あたし?
「ヨシコからは、後藤、しょっちゅう相談受けてて。ヨシコね、そういうのーー」
ーーーはっきり言って、迷惑なんだって。
- 45 名前:マッチ 投稿日:2001年03月30日(金)12時38分37秒
- ?
ばねさんに説明受けても後藤読めない…
続き期待♪
頑張って下さい〜
- 46 名前:ばね 投稿日:2001年03月31日(土)04時50分23秒
- >マッチさん
後藤の企みが明るみになるのはもうちょっと先です。引っ張ります。引っ張るほどの内容ではないと断っておきますが(w
- 47 名前:ヨシゴタモツ式。 投稿日:2001年03月31日(土)04時57分45秒
- ……ハァ?
誰が、いつ、そんなこと言ったさ?
ーーーちょっとしたきっかけが怒りの導火線に火を付けるまで、そして爆発に至るまでの時間は、あたし、わりと短い方だと思う。
…………って、ゴトーマキ! テメェの顔、グーで殴ったる!!
無意識で身体が動き出しそうになるほどの怒り。
しかし、椅子から立とうとした直前、鼻をすすっている保田さんと偶然目が合ったあたしは、思わずわたわたしてしまった。
…さっきの怒りはどこへやら。
その間にまんまと発言するきっかけを失ったあたしは、保田さんに向けて否定の意味でただ首を横に振るしかなくなってしまった。
保田さんは目尻にわずかに涙を滲ませていて、ひどく胸が締め付けられる。
……どうしよう、せつない。
「おっと、話はまだ終わってないで〜。本題はこっから」
「そそ。泣いてるヒマなんてないですぞ〜?」
「誰がよッ!」
肝心な時に限っていくじのない自分に対する、深い自己嫌悪と。尊敬する保田さんを泣かせてしまったという、事実の重さと。
このまま消えてしまえたらいいのに。
手のひらを思いきり握り締め、泣き出しそうなのを必死でこらえたーーー。
- 48 名前:ヨシゴタモツ式。 投稿日:2001年03月31日(土)05時04分51秒
- 「ヨシコだけ決断を迫られる、ってのはごとー、ちょっとちがうと思うんだよねぇ〜。だから二人とも、今から後藤が言うことのどっちかを選んでよ。二人ともおんなじ条件なら文句はないと思うんだけど、ど〜よ?」
ヤツの提案に従わなきゃならないのはシャクだけれど、この場はひとまずウソでもそうしなくてはならないみたいだった。みんなの目が、あたしたちを厳しく責め立てる。
渋々ながらも、頷くしかなかった。
「反対者ナシ、だね」
ということは、保田さんも受け入れたんだ…。
「んっ、さすがモーニング娘。やわ。結束力の高さがヨソとはちゃうな〜♪」
「リーダー上機嫌、ってね…とりえず裕ちゃんは置いといて。簡単に説明しとくと、選択肢はふたつ。ちなみに棄権は出来ません。ま、罰ゲームだと思ってやれば、大したことはないと思うんだけどね」
「ちょっとッ! 何なのよ、罰ゲームって!」
「あ、いや…例えをまちがっただけだよぅ。大げさに考えないでちょっとした罰ゲームみたいに、かる〜い気持ちで、ってコト…」
「それにしては表現がマズ過ぎるわ、アンタ。そんな言い方じゃ、誰だって誤解するわよ!」
「あは〜、ゴメンゴメン」
「まったく、なってないわ…」
今思うと、保田さんはこの時に何か感づいていたのかも知れない。
このやり取りの中、ふと気付いた時にはいつもの堂々とした自信溢れる表情に戻っていたからーーー。
- 49 名前:undefined 投稿日:2001年03月31日(土)05時16分17秒
- 「じゃ、そろそろ発表しますかね。本番も近いだろうし」
「おっ。頼むでごっちん♪」
「ではでは。ゴトーマキ、発表させていただきま〜すーーー」
ーーーおおおーッ!!
一瞬の静寂のあと、楽屋に大歓声が起きた。
普段、馬車馬のように働いているわりに心が満たされていないわたしたちにとって、その提案は面白い以外の何物でもなかった。
…が、当事者となれば話は別だ。
こんな、人の純粋なココロを弄ぶような『罰ゲーム』が許されるのか?
チビたちふたりの情操教育に、絶対よくない…とかいう問題じゃないな、ともかく……逃げよう!
- 50 名前:ヨシゴタモツ式。 投稿日:2001年03月31日(土)05時20分15秒
- 「ちょっと待ちなさいよッ! こんなの横暴よ! 人としてしちゃいけないことがあるって、アンタたち知らないのッ?!」
保田さんが絡んでいる。その間に消えてしまおう。
あたしがいなくなれば、みんな少しは冷静になるだろう。そしたらこんな下らないこと、止めるだろうし。
保田さんのせいでちょっとした騒ぎが起きているうちに、気付かれないように楽屋を出ることにした。
…保田さん、ゴメンナサイ。
ーーーッ!!
ドアノブに手をかけた時、もう一方の腕を背後から掴まれた。
おそるおそる振り返った、視線の先にはーーー。
- 51 名前:マッチ 投稿日:2001年03月31日(土)14時53分23秒
- ど・どうなるのですか!?
罰ゲームって…
エッチなんです?
期待♪
- 52 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年04月01日(日)00時24分30秒
- 続きが気になる終わり方ですね。
期待してます。
- 53 名前:ばね 投稿日:2001年04月05日(木)18時41分04秒
- 続きがなかなか書けません(泣
現実逃避とばかりに、別のネタばかり浮かんでくる今日この頃。
本編は全面ageの方向ですが、続きが書けるまで場つなぎの別ネタをsageで仕込んでおきます。
- 54 名前:櫻ノ園。 投稿日:2001年04月05日(木)18時43分00秒
- ツアー先のホテルの一室に押し込まれ半ばカンヅメ状態になっていた圭織は、隣の部屋の梨華と連れ立ってこっそりとホテルから抜け出した。
いわゆる追っかけ対策のためか、メンバーが宿泊するのは会場からはだいぶ離れた市街のホテルが大半だ。
基本的に移動は車に頼るしかなく、地方都市のそれも中心街から外れたような場所では娯楽と呼べるようなものがそもそも少ないので、メンバーたちは自然と各自の部屋に集まって談笑する以外することがない。
スタッフは管理しやすくていいのだろうが、閉じ込められる側はたまったものではない。そんな環境でベストをつくせというのだから、イヤにもなる。
- 55 名前:櫻ノ園。 投稿日:2001年04月05日(木)18時44分36秒
- 二人はしばらくホテルの近辺を散策していたが、何やらほかの場所とは雰囲気の異なった広い敷地を発見し、近づいた。
学校だ。
中学を卒業してから一年と経っていない梨華はともかく、通信制の高校を中退して以来、学校とは無縁の生活を送ってきた圭織には相当懐かしい景色だった。
懐かしさのあまり、思わず敷地に足を踏み入れた圭織。圭織のあとに梨華が続く。
校庭に点在するアスレチック類から、ここが小学校だということが判った。
日に日に日は長くなってきているが、それでも夕方も六時を過ぎているせいか子供の姿は見受けられない。校舎の一角、職員室と思しき場所にのみ蛍光灯の明かりがついている。
- 56 名前:櫻ノ園。 投稿日:2001年04月05日(木)18時46分47秒
- 二人はしばらくアスレチック類で戯れていたがすぐに飽き、校庭の敷地の周囲を覆うように植わっている桜の木の根元に並んで腰を下ろした。
花の寿命が近いのか、どの木も狂ったように咲き乱れている。
風が吹くとどこからともなく桜吹雪が舞う、いかにも『日本の春』といった風景は感動的なほどだ。
パーカーにジーパン、後ろで髪をひとつに束ねている圭織は何ともなかったが、ミニスカートを履いている上、肩まで伸びた髪をすべて下ろしている梨華は風が吹くたびに上と下とを手で押さえなくてはならず、何とも忙しい。
「カオリしかいないんだから、気にしなくていいじゃん」
「そういう問題じゃないんです。飯田さんだからダメなんです」
言われた圭織は嬉しそうだが、必死で押さえる梨華の姿が少々気の毒で素直には喜べなかった。
- 57 名前:櫻ノ園。 投稿日:2001年04月05日(木)18時49分07秒
- 「…あ、そうだ」
「はい?」
梨華は相変わらずあちこちを押さえているが、風が多少おさまってきたのでさっきよりは楽そうだ。
「知ってる? 桜の木の精って、男の精なんだって」
「えっ?!」
梨華は慌てて、もたれていた背中を木から離す。
梨華のあまりに予想通りの反応に、圭織は思わずにんまりと笑った。
「…あ、でも聞いたことあるかも。なんでしたっけ?」
「『櫻の園』。知ってる?」
「ん〜、聞いたことあるような、ないような…」
「圭織が好きなマンガのセリフなんだけどね。そのマンガの主人公も、石川と同じようなリアクションしてた」
「あ、ひどい。からかったんですかぁ?」
「ま〜ね。石川、面白いんだもん」
- 58 名前:櫻ノ園。 投稿日:2001年04月05日(木)18時56分19秒
- 一人ぶーたれる梨華をよそに、圭織は校舎の時計を見上げた。
「ーーーあ、そろそろ帰んなきゃ。晩ご飯の時間だよ、石川」
声をかけるが、すっかりすねている梨華は言うことを聞かない。
「…ったく、しょうがないなぁ」
圭織はおもむろに立ち上がると、梨華に向けて手を差し出した。
「…ほら、帰ろう?」
渋々、といった感じで圭織の手を掴む梨華。圭織は梨華の手を一度きゅっと握ると、引っ張って梨華を立ち上がらせた。
梨華は立ち上がったが圭織は手をつないだまま離さず、再度梨華の手を引っ張るーーーと、華奢な梨華の体は、いとも簡単に圭織の腕の中に収まってしまった。
「…いじわるして、ゴメン」
耳元で優しく囁けば、梨華の機嫌は一発だ。
腕の中でふるふると首を振る梨華の仕草が愛しい。
離れ際、頬に触れるだけのキスをすると、梨華の顔を見ないで手だけをつないだ。
一歩先を行く圭織と、つながれた手に引かれてその後ろを歩く梨華と。
二人の手はいつしか指先まで絡め合い、暗がりの中軽い足取りでホテルへと戻っていった。
----------終劇。
- 59 名前:ばね 投稿日:2001年04月05日(木)19時00分14秒
- 最近、殊にツボなかおりか。
元ネタはごまいしだったんだけどな(苦笑
本編の方は、今週中になんとか続きを上げたいと思います…。
- 60 名前:ヨシゴタモツ式。 投稿日:2001年04月11日(水)04時39分17秒
- ーーーなんだ、オマエかよ…。
あたしの視線の先には、無邪気な笑顔であたしを見つめる、ののがいたのだった。
「……ねぇ、のの。ののはあたしを逃がしてくれるよね…?」
耳元でそう囁くと、ののの無邪気な笑顔にはいっそうの子供らしさが加わり、思わずほっとしたのもつかの間ーーー。
「ダメ〜」
「な、なんでだよぅ…!」
手を振りほどこうとしたが、叶わなかった。
非力な子供の顔をしていても、ののはあたしなんかよりずーっと怪力なのだ。
「ごとーさん、よっすぃー逃げようとしてるよぉ?」
「ん、そりゃ参ったねぇ。ちょっと捕まえといてくれるかな」
「あい、あい、さ〜」
キィーッ、クソガキッ!
……と、心の中で毒づいたはいいが、たちまちのうちに周囲をメンバーに囲まれ、あたしはあっさりと逃げ道を失ってしまった。
- 61 名前:ヨシゴタモツ式。 投稿日:2001年04月11日(水)04時41分48秒
- 「……ていうかアンタ、人が困ってる時になに逃げてんのよ!」
「や、ちがうんです。これにはワケが…」
目の前にはヤツと中澤さん、背後をクソガキと飯田さんが固めていて、無理矢理座らされたパイプ椅子からは一歩も動けない。
どうやらあたしには、弁解の余地すらも与えられていないらしい。
ーーーしっかし、こんな状況であたしたち、無事に帰路に着けるんだろうか…てゆーか、これってちょっとした“軟禁状態”ってヤツだよねぇ?
あ〜、誰か助けてくれないかな…そこでのん気にお菓子を貪ってるあいぼんでもいいし、いかにも頼りなさげなチャーミーだっていいよ。誰でもいいから助けて…!
「……ヨシザワ。アンタ、この期に及んでジタバタするのはやめな。いい加減、腹くくりなさい」
「へ…?」
- 62 名前:ばね 投稿日:2001年04月11日(水)04時45分44秒
- 苦し紛れに上げてみる。すでにグダグダ。
なんとかスレ・ネタとも放棄しないようにしたいものですが…。
- 63 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月28日(土)15時25分24秒
- スランプっすか?大変すね…。
自分も一読者として楽しみにさせて貰ってます!
罰ゲームの内容とか今後の展開とか、スゴク気になりますが。
無理せずに頑張って下さい!って矛盾してますね。(ニガワラ
期待ageという事で……。
- 64 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月28日(土)16時03分17秒
- >>63
期待ageは良いんだけどさ、あんまやんないで。
ホントに期待しちゃうからさ。
- 65 名前:ばね 投稿日:2001年04月28日(土)18時43分11秒
- >>63
おおう、期待ageだ(笑 励みになりやす、ありがとう。
しかしグダグダ(自分が)。
>>64
ありがとう風紀委員(笑
えっと。別にsageスレではないのですが、更新はsageでいかせて頂きます。なんかもう人前に出すのが申し訳ないので、自分的に。期待ageとか晒しageの類は歓迎です(笑
本編の更新は未だ未定(失笑
ただ、放置のままでは色々と申し訳ないので、本編とか関係ない短編を気まぐれで上げることはあるかも知れません。
…と、こんな感じで。
待ってくれている方には申し訳ないですが、引き続きグダグダやっていきますので、マタ〜リお付き合いください。
- 66 名前:愛の力 投稿日:2001年04月28日(土)19時34分13秒
- 「愛の力」
時には雨降り 時には快晴
未来なんて わからない だからいい
時には泣いていい 時には叱って
夢のこと 二人で叶えたい
なんもなくても 恋は出来るから
なんも持たずに 恋をはじめようよ
- 67 名前:愛の力 投稿日:2001年04月28日(土)19時36分07秒
- 楽屋のドアを開けるとそこには、普段めったにお目にかかれないような至極真剣な彼女の姿があって。
寝不足気味でぼんやりとしていた頭が、芯まで一気に醒める。
「なにやってるのっ!?」
あまりに見慣れない光景なもので、ついつい大声を張り上げてしまったあたしの顔を、ごっちんは一瞬だけキッと睨んだ。
だって、真剣な顔で教科書に向かっているごっちんの姿なんてあたし、初めて見たんだもん。
「…受験勉強してんの。悪いけど邪魔しないで」
すっかり機嫌を損ねてしまったらしいごっちんの眉間に深く刻み込まれているシワが、一層深くなった。
ーーそれでも、もうちょっと言い様ってものがあるでしょう?
「……や」
ごっちんの背後に腰を下ろすと、首筋に腕を巻き付けて後ろから抱きしめた。
「ちょっと! 勉強の邪魔なんですけどー!」
「しなくていいよ、そんなの」
「…って。あのさぁ、人が必死こいてるときにそゆこと簡単に言わないでくれる? 合格出来なかったらどうしてくれんの? コレ、ごとーの人生なんすけど?」
……そんな言い方されたら、なんにも言えないじゃん。
腕をほどいたあたしは、渋々ごっちんから離れた。
どこもかしこも気まずい空気ーーそう思っているのは、あたしだけなのかも知れなくて。ごっちんはすでに、再び教科書に向かっている。
楽屋を出るつもりでその場から立ち上がった。邪魔にならないよう心がけて、極力音を立てないようにゆっくりとドアノブをひねる。
- 68 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月28日(土)19時38分06秒
- かおりかすごくよかったっす!!雰囲気とか!
本編マタ−リ待ってますよー。
- 69 名前:愛の力 投稿日:2001年04月28日(土)19時39分21秒
- 「ーーごとーさぁ、ご褒美とかあると結構頑張れちゃう人なんだよねぇ〜」
振り返って、ごっちんに向き直る。
「それって、どういう…?」
「どうって、言葉通りの意味ですけど。ごとー、『頑張ったで賞』が欲しいなぁ」
「『頑張ったで賞』って言われても…たとえばどんな?」
「そーだなー…『梨華ちゃんを一日後藤の好きなように出来る権』とか。…あ、『一生梨華ちゃんのモノになれる権』なんてのがあったら、かなりよさげ♪」
「………」
「……だめ?」
懇願するみたいな上目使いが、かなり狡猾な感じだけど。
でも、許しちゃうんだろうなー、あたし。
「ダメじゃないけど、一生はムリ。確証もないのにそんな、保証なんて出来ないよ」
「別に、約束がしたいわけじゃないもん…ただ、ウソでもいいからそう言って欲しいだけ。一瞬だけでもそう思ってくれれば、それでいい」
「……わかった。『一生あたしのモノになれる権』あげる。ーー合格出来たら、の話だけど」
「うんっ!」
満面の笑みを浮かべると、ごっちんは再び教科書と格闘を始めた。
ーーー
かくして、ごっちんは無事高校に合格し、初春の花嵐の中制服のスカートを押さえながらの登校シーンが週刊誌の紙面を飾る、なんてことも起きたりしていた。
それから、喜んでいいものかどうなのかどうか…一応形だけだけど、約束通りごっちんはあたしのものになった。
だからって、多忙な日常がいきなり変わったりはしないのだけれど。
自分の気持ちのおもむくまま好きだとか伝えられるようになったことは、あたしにとってもごっちんにとっても、とても素敵なことだと、ときどき思ってみたりはするーーただそれだけのことだ。
おしまい。
- 70 名前:ばね 投稿日:2001年04月28日(土)19時51分30秒
- >>68
ありがとうございます。
こんな短編ならなんぼでも書けるんですけどねぇ…。
かおりかはどことなく耽美な香り(笑)がするのがたまりません。「お姉様と妹」とかの流れを汲んでる感じが(ウソデスヨー)。
とかいって、ごまいし推奨委員会なのですが、私。
- 71 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月29日(日)10時53分38秒
- <こんな短編ならなんぼでも書けるんですけどねぇ…。
そっか、じゃ、山ほど書いてください。(笑
作者さんの代わりに、更新age!
- 72 名前:ばね 投稿日:2001年05月12日(土)15時52分34秒
- >>71
レス遅くなってすみません。スランプで死んでました。
前のネタを完結させてないのにどうなのか…。
しかしある意味時事ネタなので、新しいのを始めたいと思います。
改訂版『LOVEセンチュリー』です。
設定等は本編(ミュージカル)そのままに。ネタバレ推奨。これから観に行く人は今読まない方がいいかも。
自分が本編を観て、「あそこはああした方がよかったのに」と感じたことをそのまま表現します(だから改訂版)。
願望を含有してますので、本編とは展開・オチとも異なります。
某有名コテハン著「ピンチラ2」的位置付けで読んで貰えるとありがたいです(怒んないでね…)。
- 73 名前:改訂版『LOVEセンチュリー』 投稿日:2001年05月12日(土)15時58分21秒
- 初夏。すっかり梅雨も明けたうだるような暑さの中、あたしたちは日々ステージをこなしていました。
ーーそんな折。
あたしたちがショースタッフとして働いている遊園地・センチュリーランドの社長の一人娘である圭さんが一回目のステージを終えたあたしたちの控え室に、大切な話がある、と言って現れました。
圭さんは終始浮かない表情で、しかししっかりとした口調でぽつりぽつりと話し始めました。
「そんなっ、そんなのってないよ圭さんーー!」
圭さんの話を受け、最初に口を開いたのはダンサー組のリーダー格・なつみさんでした。
- 74 名前:改訂版『LOVEセンチュリー』 投稿日:2001年05月12日(土)16時07分08秒
- この周囲一帯に広がる土地を先代の社長(圭さんのお祖父さんです)が買い取ったのはだいぶ前だと聞いています。買い取った用地を一大リゾート地へと開拓し、その目玉がこのセンチュリーランドでした。
けれど、どこの企業もそうですがこのところの不況の煽りを受けて赤字がかさんでいました。センチュリーランドだって例外ではありません。
もっとも、赤字続きの原因は不況だけでなく、先代社長のワンマン経営ぶりにもあったのだというのがもっぱらの噂なのですが。
ーーなのであたしは、圭さんの話を聞いても別段どうとは思いませんでした。ああ、来るべきときが来てしまったのだなぁ、とは感じていましたが。
- 75 名前:改訂版『LOVEセンチュリー』 投稿日:2001年05月12日(土)16時17分21秒
- 「ーーひどいよそんなの…センチュリーランドを閉園するだなんて。あたしの居場所はここしかないのにーー!」
「そうだ、横暴だべ! 大人のやり方は汚いべ、ここはカオリに第二の故郷だのにサ!」
「用が済んだらポイ、か。せっかくの夏休みだってのに…まったくやってられん!」
ですから、みんなの反応には少々驚かされました。センチュリーランドをこんな風に大切に思っていただなんて。あたしは知りませんでした。
「本当に、ごめんーー」
深々と圭さんが頭を下げました。
「ちょ、ちょっと圭さん!」
「ちがうのサ、うちら圭さんのことを責めてるわけではないのサ」
「そうだよ圭さん、謝ることなんてない。みんなも込むのはいいけど、まずは先のことを考えない?」
楽天家であることだけが取り柄の矢口さんがみんなを諭すだなんて、ちょっとーーいえ、あまりに意外でした。
「まずは、そうだなぁ…ショーをしまショー! …なんちって〜」
………感心したあたしがバカでした…。
- 76 名前:改訂版『LOVEセンチュリー』 投稿日:2001年05月12日(土)16時21分46秒
- 「ダンサーさん、そろそろスタンバイお願いします」
壁掛け時計を見やる。間もなく本日二回目のステージ開始時刻だ。
「こんな気持ちじゃ、ステージになんて立てない…」
「…ごめんね、なっちゃん。うちのお父さんのせいで」
「ちが、圭さんのせいじゃないったら! …ねぇ圭さん、どっかで見ててくれないかな? そしたらあたし、ちゃんとステージ立てるから」
「わかった。…頑張れ」
なつみさんの頭をくしゃっとひと撫ですると、圭さんは控え室を出て行きました。
「…まいっだね〜、このバガップルがっ」
「見せつけてくれるよ。こっちが恥ずかしいっての」
「ちがっ、そんなんじゃないったらぁ!」
あたしは、SE席から彼女たちのやり取りを眺めていました。あたしもちょっと恥ずかしかったです…。
- 77 名前:改訂版『LOVEセンチュリー』 投稿日:2001年05月12日(土)16時24分43秒
- 真っ赤になっているなつみさんをよそに、あたしは声をかけました。
「やるべサやるべサ」
「気合い入れて行きますか」
「そそ。ヤなこと忘れて楽しもうね♪ ショーをしまショー!」
「んも〜、カップルなんかじゃないんだったらぁー…」
『ボクが誰だかわくぁ〜るくぁい?
みんなのヒーローモー吉どぅえす♪
モーモーモーモー モーモーモー……』
- 78 名前:>>77訂正です(スマソ 投稿日:2001年05月12日(土)16時27分06秒
- 「…そろそろ本番行きま〜す」
真っ赤になっているなつみさんをよそに、あたしは声をかけました。
「やるべサやるべサ」
「気合い入れて行きますか」
「そそ。ヤなこと忘れて楽しもうね♪ ショーをしまショー!」
「んも〜、カップルなんかじゃないんだったらぁー……」
『ボクが誰だかわくぁ〜るくぁい?
みんなのヒーローモー吉どぅえす♪
モーモーモーモー モーモーモー…』
- 79 名前:このスレ立てた人 投稿日:2001年05月21日(月)03時42分17秒
- またもやネタの放棄をしたくなってきた…。
金板でLOVEセンネタ始まったみたいだし、いいよね。
つか、どうせ誰も見てないだろうし。記録代わりに使おう。
ヒソ〜リと小ネタを一本。
羊のいしごまスレに上げようかと思っていたごまいし。
久々にまともなのが書けた。
- 80 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月21日(月)03時44分12秒
- 〜1〜
夏真っ盛り。暑中お見舞い申し上げます、の季節。
恒例のハロプロツアーを間近に控えたある日、突如ぽっかりと空いたオフを、あたしはひとり勝手に梨華ちゃんと過ごすことに決めたのだった。
- 81 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月21日(月)03時49分47秒
- 〜2〜
梨華ちゃんち。なんの連絡もなく訪れたあたしを、梨華ちゃんは嫌な顔ひとつせずに迎えてくれた。
ギ…ギ、ガガガガーーー…
日差しに融けるセミの鳴き声と、アスファルトを砕く音とが混じったものすごい騒音が網戸の網目を擦り抜けて、直接肌に響いてくる。
「…うっさいなぁ、外」
「うん。なんかね、昨日から裏の通りで工事始まったんだって」
突然お邪魔したあたしをもてなそうと、梨華ちゃんはさっきからキッチンでなにやら作業中だ。
「ーー窓閉めてエアコンつけちゃおっか?」
「え、いいの?」
暑かろうが寒かろうが寝るときにはマスクとマフラーを絶対に欠かさない、それほどに喉を大切にしている梨華ちゃんがエアコンをつけようだなんて、珍しいことを言うもんだ。
「ぜんぜん。これ持ってくからちょっと待ってて」
「あ、いいよいいよ、ごとーやります」
「じゃあお願い」
「へ〜い」
リモコンでエアコンに電源を入れ、開いている窓を閉めた。
再びソファーに腰を下ろす。
- 82 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月21日(月)03時52分58秒
- 〜3〜
「お待たせ〜」
トレイにふたつグラスを乗せ梨華ちゃんがキッチンから戻ってきた。
表面に水滴を帯びた薄いガラスのグラスと氷とがぶつかりカラン、と音を立てる様は、目にも耳にも涼やかだ。
グラスの中身は、よく冷えたレモンティーだった。
あたしはそれを口に運びながら、ときどきぐるぐるとグラスの底を回して、グラスと氷のぶつかるか細い響きを楽しんだ。
向かいには、梨華ちゃんの穏やかな視線。
- 83 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月21日(月)03時55分32秒
- 〜4〜
ガ、ガガガガーーー…
窓は完全に閉め切ってあるのに、ピンクで統一された梨華ちゃんの部屋にはそれでも窓ガラスを通して不粋にも騒音が入り込んでくる。
「CDでもかけよっか」
「あ、それごとーが選んでもいい?」
「うん。真後ろの、ラジカセの上にまとめて置いてあるから」
「ん〜」
振り返ると、可愛いパールピンクのCDラジカセが部屋のコーナーに置かれたローボードの上にちょこんと座っていた。
ラジカセの周りには、梨華ちゃんが娘。や知らない人たちと写っている写真や、ジュエリーケースなんかが雑然と並べられているーー雑然とはいっても、後藤の部屋とは比べものにならないほど綺麗だけれど。
ラジカセの上に山積みされているCDケース。あたしはそれらを一枚ずつ手に取ると、今一番聴いてみたいと思われるものをじっくり吟味していった。
- 84 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月21日(月)03時58分36秒
- 〜5〜
「……てか梨華ちゃんさぁ、これハロプロ関連ばっかじゃんよぉ〜」
娘。はもとより、平家さんやメロン、カントリー。のインディーズ盤、どこで手に入れたのかすでに引退した三佳千夏ちゃんのCDなんてのもあった。
「つーか、ハロプロ関連しかないんじゃん…梨華ちゃんってどういう趣味してんの?」
「いいでしょ、好きなんだから。…って、これしか持ってないわけじゃないからね、ほかのは全部実家に置いてきたんだもん」
「ーーうあ〜、ユウキのまである……梨華ちゃん、実は秘かにユウキのファンだったとかいうオチはないよね…?」
実の弟と好きな子を取り合うなんて状況、死んでもゴメンだ。
「ないよぉ、ごっちんには悪いけどどっちかっていうとあたしソニンちゃんの方が好きだし」
「あそ…って、なんも悪かないじゃん」
「ーーファンだった方がよかった?」
「べっつに〜。なんで? っていうか、その質問の主旨ってなんなんですか?」
「さぁ?」
- 85 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月21日(月)04時01分03秒
- 〜6〜
「あ〜、どれにしよー……やっぱコレ、かなぁ」
透明プラスチックのケースからCDを取り出すと、ラジカセにセットした。2曲目をサーチして、再生。
「真夏の光線? …だよね。懐かしい」
「え〜、懐かしくないじゃん。しょっちゅう歌ってるのに」
「や、『娘。のへそ』でさ、あたしたち競争したでしょ? どのペアが一番早く振りを覚えられるか、っていうの」
「…ああ、梨華ちゃんたちが優勝したやつ?」
「そ。あのときのイメージがね浮かぶの、この曲聴いてると。だから懐かしいの」
「ふーん」
わかるようなわからないような。
「ーーでもさ、あれだよね」
「うん?」
「この曲の歌詞ってあたしたちみたいだよね」
「はい?」
全面的にわからんぞ今度は。理解不能。
「去年とこの夏はちがうわ、あなたがいる〜ってとこ」
「いたじゃんかー」
「ちがうよ、そうじゃなくって。あたしの隣にごっちんはいなかったでしょ、って話。去年の夏はね」
「ーーえ? あ…まぁ、ね」
「だから嬉しいの。今年の夏は、すっごく楽しい」
楽しいのは夏だけじゃないけどね、と梨華ちゃんは笑って付け足した。
- 86 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月21日(月)04時03分10秒
- 〜7〜
「…また、ね」
「明日会えるけどね」
「ま、そうなんだけどさぁ…えと、おじゃましました」
「うん」
つないだ手のひらが、熱い。
「そいじゃ」
「うん」
「バイバイ」
「…ばいばい」
手をほどいて、ドアノブをひねるーーかちゃり、と後ろ手にドアを閉めた。
- 87 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月21日(月)04時07分00秒
- 〜9〜
エレベーターは、階下をぐずぐずと上昇してきている。
壁に背をもたれると、右手に目を落とした。
わずかに残る熱のかけら。
それを捕まえるように、ぐっと手のひらを握った。
この夏が永遠に続けばいいのに、と願いながら。
- 88 名前:コテハン捨て 投稿日:2001年05月21日(月)04時14分19秒
- 「ENDLESS SUMMER」でした。おしまい。
7→9になっているのは、ご愛敬。
やっぱりごまいし書くのが一番楽しい。楽なのはかおりか。
ごまいし及びいしごま専用の新スレを立てたいが、どうしよう。羊のいしごまスレを沈めて私物化しちゃおうかな…。
- 89 名前:パク@紹介人 投稿日:2001年07月19日(木)09時47分25秒
- こちらの小説を「小説紹介スレ@黄板」↓に紹介します。
http://www.ah.wakwak.com/cgi/hilight.cgi?dir=yellow&thp=995445727&ls=25
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