インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板

『実況ハロープロ野球2001』

1 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月01日(日)22時48分14秒
プロ野球を題材にした小説です。
某野球ゲームのプレイをモチーフに書いていきたいと思います。
登場人物は、ハロプロメンバー+福田・石黒・市井です。
初めて書くので、小説と呼べる代物になるかどうか分かりませんが、よろしくお願いします。
更新はちょこっとずつになりそうですが…
2 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月01日(日)22時50分50秒
〜プロローグ〜

開幕戦を間近に控えたある日。
セントラルリーグ所属のプロ野球球団「UFAハロープロジェクト」は、広島東洋カープとのオープン戦を迎えていた。
オープン戦でありながら、ホーム球場であるハロースタジアムには、熱心なファンがたくさん詰めかけている。

お目当ての選手を応援する声。
応援テーマを奏でる鳴り物の音。
大の大人が一つのプレーに一喜一憂し、声を張り上げる。
開幕を間近に控えて、選手だけでなく、ファンのムードも盛り上がってきている。

(また今年もこの季節が来たんやな。ファンの人達も、もうすっかり開幕モードやね)
ベンチから外野スタンドを、目を細めるように見つめていた中澤裕子の耳に飛び込んできたのは…

「うわ〜ん」
(な…なんや?)
バッターボックスに目を移すと、小柄な少女がバッターボックスに座り込んで泣いている。
(うわ…あかん。またか…)
「カオリッ!また泣いとんで。頼むわ」
ベンチの奥で、何やら一点を見つめて交信中の、飯田圭織に声を掛ける。
「へっ…またかよ〜。タ〜イム」
タイムをかけ、バッターボックスに向かう飯田。
3 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月01日(日)22時54分48秒
「辻〜。どした〜」
座り込んで泣いている辻希美の顔を覗きこむ飯田。
「うわ〜ん。だってストレートだと思ったのに、顔の前で急に曲がるんだも〜ん」
どうやら、広島のピッチャー高橋建のスライダーが、インコースに入り過ぎたらしい。
なかなか泣き止む様子のない辻に飯田のこの一言。
「大丈夫。辻、生きてるから」
それを聞いてさらに大声で泣き出す辻。

その一部始終を見ていた、プレーイングマネージャー中澤裕子に出来ることは、代打柴田あゆみを送り出すことだけだった。
「柴田…その後、セカンドも頼むで…ほんま頼むわ…」
そう柴田に声を掛けた後、力無く頭を抱えこむ中澤。
(ほんま勝ちたいんや今シーズンは…でも…大丈夫なんか?)

白球の行方に、さまざまな思いがある。
野球というスポーツが愛される季節がやって来た。
もうすぐ開幕だ。
4 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月02日(月)19時22分17秒
市井の活躍が楽しみです。
5 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月02日(月)21時15分49秒
>>4
初レスありがとうございました。
市井はストッパーです。
大活躍しますよ。
たぶん…
6 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月02日(月)21時18分58秒
〜孤独なエース〜

子供の頃から憧れていた舞台。
やっと手にいれた自分だけの称号。
みんながすごいねって誉めてくれた。
自分が一番輝ける場所だから、誰にも渡したくなかった…


開幕戦登板は、三日前に裕ちゃんから言われた。
四年連続の開幕戦登板だ。
でも裕ちゃん…わたし一度も開幕戦に勝ったことがないんだよ。
去年だって、「三度目の正直や!!」ってあんなに励ましてくれたのに、6回2/3KOだったね。
今年は投げられないと思ってた。
テレビの解説者も、今年の開幕は彩っぺかアヤカちゃんだって言ってた。
いつも、キャンプ終了後に開幕を言われていたから、今年は違うんだって思った。
裕ちゃんもすごく悩んだんだね。
でも…裕ちゃんは言ってくれたね。

「開幕戦の先発頼んだで。なっちしかおらへんから…なっちがエースやから」

「なっちがエースやから」って…

(だから、なっち今年は絶対勝ちたいんだよ)
7 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月02日(月)23時57分42秒
球春到来。
みんなが待ちに待った開幕戦。
長いペナントレースの始まりや。
地元ハロースタジアムに、横浜ベイスターズを迎えての開幕カード。
今シーズンを占う大切な一戦。
負ければ単なる1/140なんて今まではゆうてたけど、今年はちゃうで。
絶対に勝って、スタートダッシュをかけるんや。
プレイングマネージャー中澤の開幕に賭ける意気込みは、並々ならぬものがある。

独特な緊張感の中、試合前の練習を終え、場内ではベイスターズのスタメンが紹介されている。
「先発は三浦さんじゃなくて小宮山さんか…予想外やったなぁ。なぁ圭ちゃん」
隣で、スコアラーからのデータに目を通している保田圭に声をかける。
「ん?ホント…あれ本当だ。小宮山さんかぁ。こりゃ手強いなぁ」
電光掲示板を確認し、驚いた表情の保田。
「なぁ圭ちゃん」
「何?裕ちゃん」
「なっちのこと頼むで。うまいことリードしたってや。今年こそ勝たせてやりたいんや」
「そうだね勝たせてあげたいね。落ちるスライダー覚えて幅も広がったんで、なんとかね」
「去年の後半、だいぶ打ち込まれて弱気になっとったやろ。まだ引きずっとるみたいやねん」
「ん〜?まぁいろいろ引きずってるみたいだからねぇ。弱気にならないようにハッパかけてみるよ」
「いろいろごめんな圭ちゃん」
「え?何言ってんの裕ちゃん。なっちを勝たせてあげたい気持ちは、みんな一緒だよ」
それを聞いて、プレイボール前から早くも涙ぐみそうな中澤裕子27才。
8 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月03日(火)00時00分59秒
「只今よりUFAハロープロジェクトのスターティングメンバーを紹介いたします」
ウグイス嬢の声が場内に響き渡り、ファンの大歓声が沸き起こる。

「1番 ショート   石川梨華   背番号1」
「2番 レフト    加護亜依   背番号0」
「3番 センター   後藤真希   背番号5」
「4番 ファースト  飯田圭織   背番号7」
「5番 ライト    吉澤ひとみ  背番号10」
「6番 サード    矢口真里   背番号8」
「7番 セカンド   辻希美    背番号2」
「8番 キャッチャー 保田圭    背番号9」
メンバーが発表されるたびに大歓声が起こる。
しかし、一番大歓声が起こったのは…
「9番 ピッチャー  安倍なつみ  背番号18」
ワーッと今日一番の大歓声。
ファンの間でも、開幕ピッチャーについては物議が醸されていたので、エースの登場に場内は湧いた。

この大歓声を聞いて、プルペンで大木衣吹を相手に投球練習中の安倍の投球にも力が入る。
「よぉ!なっち〜。すっごい大歓声じゃん。後藤より大きかったもん」
「おぅ紗耶香がんばんべ〜」
満面の笑みで声をかける市井紗耶香に、手を振る安倍。
「ねぇやっぱり今年も初球はストレート投げんの」
そう、毎年安倍の開幕初球はど真ん中のストレートだった。
「ん…今年はね…」
そう口籠る安倍。
「新しく覚えた落ちるスライダー投げるよ。これ中心でいきたいから…ニューなっちをみせるっしょ」
「ふ〜ん。なんかなっちらしくないなぁ。でもガンバレよ!!今年こそ開幕勝とうぜ」
「ありがと紗耶香。なっちアンダーシャツ変えて来るよ。それじゃガンバルからね」
市井に手を振りながら、ブルペンを後にする安倍。
(そうかぁなっちは初球ストレート投げないのか……ん?待てよ…いいこと思いついたぞ)
にまぁ〜っと満面の笑みを浮かべる市井。
プレイボールももう間近に迫っている。
9 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月03日(火)03時41分46秒
スポーツ物は少ないんで貴重です。
期待してま〜す!!
10 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月03日(火)20時48分26秒
>>9
ありがとうございます。
がんばりますので、御期待くださ〜い!!
自信はないんですけどね。
11 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月03日(火)20時50分25秒
「え〜っと誰にしようかな?」
ブルペンを飛び出し、自軍ベンチへ向かう途中、獲物を物色する市井。
「おっ、吉澤と石川じゃん。よし、あの二人に決めた」
ベンチ裏通路で談笑している吉澤ひとみと石川梨華に、歩み寄っていく。
いわくありげな笑みを浮かべながら…
「やぁやぁ、吉澤くんに石川くん、開幕初スタメンおめでとう」
大袈裟に拍手をしながら声をかける。
「あ…市井さん、ありがとうございま〜す。石川がんばりますよ〜」
「ありがとうございます市井さん。なんとか一本打ちたいですね」
「そうかそうか…頼もしい後輩を持って市井さんも鼻が高いよ。鼻高々〜っアハハハ」
意味もなくバカ笑いをする市井を、唖然と見つめる二人。
「えっ、市井さんどうしちゃったんですか〜。今日は変ですよ〜。ねぇよっすぃ〜」
「そうかな…いつもこんなもんじゃないかな」
アハハハハハっとバカ笑いを続けながらも、心の中では笑っていない市井。
(吉澤コノヤロー…お前は本当に天然に失礼な奴だな。もう一人は天然ボケだしよぉ)
そんな怒りをバカ笑いで鎮めつつ、本題に入る。
12 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月03日(火)22時23分11秒
「あのさぁ、開幕を記念してちょっとした賭けをしない?」
「えっ、もしかしてお金を賭けるんですか〜?」
「ひょっとして野球賭博ですか?」
(おいおい、二度と野球が出来なくなっちまうぞ)
「違うって、今日の夕食を賭けてさ…ほら、なっちが先発だろ…なっちの開幕初球を当てるんだよ」
「なるほど、それはおもしろそうですね。やろうよ梨華ちゃん」
「安倍さんの開幕初球ですか〜。なんだろストレートかな?カーブのキレが凄いイメージがあるけど」
「ほら、あれじゃない。スライダーの握り変えて縦に落ちる奴、オープン戦でたくさん投げてたじゃん」
(げっ…マズイ。こいつら、なっちが開幕初球にストレート投げてたの知らないんだ…)
13 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月04日(水)00時29分40秒
「コラーッ!!」
通路中に響く大きな声…
「何やってんだよ紗耶香ーっ!!」
「げっ、矢口!!」
突然現れた矢口真里に動揺を隠せない市井。
「い…いきなりなんだよ矢口〜」
「頭悪そうなバカ笑いが聞こえてきたから、気になったんだよ。それより紗耶香…」
ジロリと市井を睨む矢口。
「よっすぃ〜と梨華ちゃんをカモにしようとしてただろっ。矢口にはみ〜んなお見通しだからね」
そう言って球界一小さい体で胸を張ってみせる。
「何言い掛かりつけてんだよ矢口」
「うるさいっ!!さっきから言動がおもいっきり怪しいんだよ。何が、『鼻高々〜っアハハハ』だよ!!バカかお前はっ」
市井もカタナシである。
「よっすぃ〜と梨華ちゃんは、開幕ベンチ入り初めてだから知らないだろうけど、なっちの開幕初球はストレートって決まってるんだよ」
「え〜っ、そうなんですかぁ。ヒドーイ市井さぁん」
「市井さん、それ知ってて賭けをしようなんてズルイですよ」
抗議の声をあげる石川と吉澤。
「紗耶香、あんたの悪巧みもここまでだねっ」
更に胸を張る矢口。
14 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月04日(水)00時33分10秒
(くっくっくっ…矢口さん、あなたはこの市井紗耶香を追い詰めたつもりでしょうが…『ピンチの後にチャンス有り』ですよ)
「ふ〜っ、分かったよ。じゃあこうしようよ、市井が変化球に賭けるからさ、ストレートが来たら石川と吉澤の勝ちでいいよ」
「えっ、いいんですかぁ」
「だって今まで100%ストレートなんでしょ矢口さん」
「そうだよよっすぃ〜、しかも決まってど真ん中。もう『打ってみろーっ!!』ってカンジ。どうしちゃったの紗耶香?」
「いやさ、初めての開幕戦で緊張してるだろう二人を掴まえてさ、悪いことしちゃったなって…ゴメンね石川、吉澤」
(見よ!!この憂いに溢れた演技力…参ったか!!)
「石川も吉澤も去年みたいな活躍期待してるから…なっちを勝たせてあげてよ…その後なっちも呼んでさ、みんなでゴハン食べようよ」
「それなら矢口もその賭けのりた〜い。いいよね〜紗耶香。なんてったって矢口はキャプテンだし〜」
「しょうがない、いいよ矢口キャプテン。でも、まぁ可能性はないと思うんだけど、変化球だったら矢口キャプテンの仕切りだからな」
「オッケー、オッケー、ごちそうさま紗耶香」
(ぷぷぷ…こちらこそごちそうさま矢口キャプテ〜ン)
「もうセレモニー始まるでしょ。そろそろベンチに戻らないと裕ちゃんに怒られるんじゃない?」
「そうだね、よっすぃ〜に梨華ちゃんベンチに戻ろっか。じゃあな紗耶香」
「おぅ、あたしもすぐに戻るから…三人とも頼むぜ。絶対に勝とうな」
ベンチに戻っていく三人に、そう声をかける。

最後にかけた言葉は、紛れもない本心だ。
どうにかしてなっちを勝たせてあげたい…
ストッパーの自分に登板機会があるなら、絶対に抑えてあげたい…

その後は、矢口キャプテンの仕切りで祝勝会だけどね。

「だははははっ!!」
勝利の高笑い。
しかし、それは次の瞬間、怒声に掻き消された。
「うるさいわっ!!紗耶香ええかげんにしぃ。もう始まんで」
「ごめん、裕ちゃん。今行くから…」

さて、それでは注目の一球を拝見させていただきますか。
15 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月04日(水)03時33分35秒
おもしろいっす!!
特に市井のキャラが、他の小説の市井キャラとは違っていてグットです!!
16 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月05日(木)00時11分11秒
>>15
そう言っていただけるとありがたいですが、正直やり過ぎたかも…とはおもっています。
自分的にはああいうイメージあるんですけど、違和感あるかな?
(不自然さを出そうとして暴走させすぎちゃったけど…)
なんか意図したものと違ってきてるし、試合前なのに長くなってるし、ツライ。
17 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月05日(木)00時13分07秒
セレモニー開始前のハロープロジェクトベンチ…
いつもの試合前と違う雰囲気にのまれ、口数少なめな最年少コンビ。
「なぁ、のの〜今日うちら大丈夫かな?大事なとこでエラーせぇへんやろか?」
「うん、亜依ちゃん…なんか緊張で心臓飛び出そう」
「うん、うちも緊張してもう半分ほど出てんねん。すぐ飲み込んだけどな…はぁ〜あ…」
大きなため息をつく加護亜依と辻希美。
「加護ちゃん、辻ちゃんどうしたの?元気ないじゃん」
「あ…後藤さん…」
緊張する二人をみかねて、後藤真希が声をかける。
「アハッ、二人とも緊張してんの?いつもあんなに騒がしいのに、心配しちゃうじゃん」
「はい、緊張してます。加護は〜えっと〜大事なとこでエラーしないか心配なんです」
「辻もです」
「ふ〜ん…でも大丈夫だよ。もし二人がミスしてもみんなでカバーするから」
そう言って二人の肩をポンと叩く。
「エラーしたらなんて考えてると、余計に緊張しちゃうよ。エラーしてもいいから思いっきりやろうよ」
そこへ市井と別れた吉澤と石川が戻ってくる。
18 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月05日(木)00時15分10秒
「あれ?ごっちんどうしたの…辻と加護またなんかしでかしたの?」
「あ…よっすぃ〜に梨華ちゃん。違うよ、二人とも緊張してて元気ないんだよ。二人は大丈夫なの?」
「わたしもダメぇ…緊張しちゃって、緊張しちゃって…よっすぃ〜は平気そうだね。大丈夫なの?」
「え…あたしは大丈夫だよ。よし、二人に緊張しないおまじないしてあげるよ。二人とも頭だして…」
恐る恐る突き出した二人の頭を、わしわしとちょっと乱暴になでてあげる。
「緊張しませんよ〜にっ!!どうだ!!」
「うん、なんとなく平気になった気がする。ののは?」
「うん、辻も…ありがとよっすぃ〜。ガンバリま〜すっ!!」
「よかったね二人とも。さっすがよっすぃ〜。あれ?セレモニー始まるみたい…加護ちゃん、辻ちゃん行こっ」
「は〜い」
後藤の後に続いて、元気よくグラウンドに飛び出していく二人。
「ねぇ、よっすぃ〜」
「ん?何、梨華ちゃん。あたし達も早く行こうよ」
「わたしにも緊張しないおまじないしてぇ」
「えっ、何言ってんだよ。いい歳して梨華ちゃん子供みたいだよ」
「お願ぁい。わたしも緊張して足が震えそうなんだもん」
「本当にしょうがないなぁ」
ちょっと呆れ気味に石川の頭をわしわしとなでる吉澤。
「緊張しませんよ〜にっ!!はいはい行くよ梨華ちゃん」
そう言って、吉澤は一人グラウンドへ駆け出していく。
(不思議!?本当に緊張しなくなっちゃった。ありがとうよっすぃ〜)
石川もまた、セレモニーが開始されようとしているグラウンドへ、元気よく駆け出していった。
19 名前:15 投稿日:2001年04月05日(木)05時31分54秒
いえいえ、違和感なんてぜんぜん無いですよ。それどころか、良い感じに
はまってます。
作者さん!!期待してますんで、ツライなどと言わずに
がんばっていきまっしょい!!
20 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月05日(木)08時56分28秒
こんな感じの市井も面白いですよ。
のんびりとがんばってください。
21 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月05日(木)21時54分28秒
>>19
>>20
暖かいお言葉ありがとうございます。
ようやく試合開始のメドが立ち、やる気が出て参りました。
試合の描写方法に悩んでおりましたが、秘策もあるので…
(淡々と試合経過を追うかたちになりやすいので…なんとかおもしろく書きたいですね)
市井の出番はしばらく少なくなるかもしれませんが、他の選手の活躍?にも御期待ください。
22 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月05日(木)21時55分51秒
長いセレモニーの後、ベンチ前では円陣が組まれている。
「えぇか、いよいよ開幕や!!長いシーズンいろいろあるけど、全てがここから始まるんや!!」
中澤プレイングマネージャーが、激を飛ばす。
「創設1年目が最下位、2年目が3位、去年が2位や…今年は優勝しかあらへん!!」
そう言ってメンバーの顔を見回す。
「スタメンの9人の力だけやない!!ベンチ入りメンバー、そしてファームの選手、コーチ、スタッフみんなの力で勝つんや!!」
そしてニヤリと笑いながら。
「秋には、おいしいお酒呑ましてや…頼んだで」
円陣の中、笑い声とヤジが巻き起こる。
「バカ裕子ーっ!!」
「ヨッパラ〜イ!!」
「うっさい!!おいキャプテン!!号令や」
円陣の真ん中で、手が合わせられる。
そして、キャプテン矢口の号令…
「よ〜し、いくよ〜っ!!みんなヨッパライにいい思いさせてやろうぜ!!ガンバっていきま〜っ」
「しょ〜いっ!!」
メンバー全員の思いが込められたかけ声…
戦闘準備は整った。
23 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月05日(木)22時00分37秒
ベンチ内、プロテクターとレガースを装着中のキャッチャー保田。
隣に座っている大木衣吹に声をかける。
「ねぇ大木、ブルペンのなっちどうだった?」
「安倍さんですか?ストレートが走ってましたね。カーブとスライダーはイマイチって感じでしたね…」
「カーブとスライダーはイマイチか…組み立てが難しいわね。落ちるスライダーは?」
「覚えたてのボールですからねェ…キレ自体はいいんですけど、変化しないときがあるんですよ」
「そっか…結局、なっちはなっちらしく投げさせるしかないか。それじゃ行ってくるわ」
「ガンバってください保田さん」
グラウンドへ向かう保田を見送る大木。

(でも保田さん…ストレートは走っていることは走っているんですけど、なにか違うんですよね。うまく言えないんだけど…なんか爆弾抱えてるような…)

グラウンドではスタメン9人が、それぞれのポジションにつき、プレイボールを今や遅しと待っていた。
24 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月06日(金)05時42分35秒
作者さんのやる気も回復したみたいでよかったです。
がんばってくださいな!!
25 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年04月06日(金)07時54分38秒
野球物は大変でしょうが、お互い頑張りましょう。
試合を小説にするのは、かなり難しくないですか?
僕は全く別の方法にしてますよ。
26 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月07日(土)09時16分16秒
>>24
はい、やる気まんまんで頑張ります!!
まだ試合始められないけど…
でも、今書いている部分をきっちりしておかないと、後が怖いんで。
しかし、難しい…なっちをうまく表現できるかが、この小説?の鍵。
>>25
うおっ、小説を書いている方からのレス。
同じ野球物ですか?
そう、試合の描写難しいですね。
読んでくれてる方が、実際に野球中継を見てる気になってもらえるような描写。
まぁタイトルがタイトルなんで…
うまく融合させながら書いていきたいと思ってます。
(実は試合も書きはじめてるんですが、う〜ん…なかなか…トホホ)
レスありがとうございました。
こちらこそお互い頑張りましょう。

ところで、てうにち新聞新入社員さんはやっぱり『てうにち』ファンなんでしょうかねぇ?
27 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月07日(土)09時18分43秒
(も〜ぅ、いい加減にしてよ〜っ!!)
プレイボール前の始球式、それは数分で終わっているはずだった…
しかし、そのゲスト達が登場してから既に10分が経過、未だにボールが投げられる気配はない。
ミットを構えたまま、ボールを待ち続ける保田が毒づくのも無理はない。

「一度でいいから見てみたい。安倍が、開幕勝つところ。歌丸です」
(コラーっ!!あんた何てこと言うのよーっ!!かわいそうに…なっち、うつむいちゃって…)
「安倍さん、あんた開幕戦で勝利投手になったことがないらしいな。今日は打たれちゃぁ、ダメ!ダメ!」
(ファンまで一緒に『ダメ!ダメ!』やってるし…あんた達、なっちを潰しに来たのか?!」

コージー富田と原口あきまさのものまねネタに、笑いの華が咲き、場内のムードは最高潮。

一方、試合前の緊張感を壊され、安倍をこきおろされた保田の、コージーと原口に対する殺意も最高潮。
(あんた達…もし、なっちが打ち込まれでもしたら、ただじゃおかないわよ!!)
キラーンと保田の目が光る…

それを見てしまった横浜トップバッター石井琢朗は、恐怖を感じていた。
(怖っ!!俺、殺されるかもしれない……)
28 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月07日(土)09時20分53秒
安倍と保田にとって悪夢のような始球式も終わり、安倍の投球練習。
(う〜ん、カーブとスライダーが高めに浮くなぁ。大木の言ってた通りか…ストレートは走ってる…けど…?)
規定投球数も終わり、マウンド上で安倍と最後の打ち合わせ。

始球式の際、曇りがちに見えたなっちの表情だったが、今はいたって普通に見える。
あんなこと言われて、本当に大丈夫なの…?
そして、あのストレート……

「ねぇ、なっち気にしてないの?」
「えっ、始球式のこと?なっち全然気にしてないよ。だって本当のことだし、見返してやるつもりでなくちゃね…」
そう笑ってみせるなっちだったが、次の一言にあたしは、なっちの心の奥に巣食う闇を見た気がした。
「なっちはエースだから…」
29 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年04月07日(土)22時29分12秒
ちなみに僕は、2チャンの羊で書いてます。
アドはttp://teri.2ch.net/test/read.cgi?bbs=mor2&key=984540572です。
広島に住んでいるのでカープですが、選手では清原が好きです。
頑張ってください
30 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年04月07日(土)22時30分22秒
すみません
29は26への返事です。
31 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月07日(土)23時34分44秒
声のトーンが変わった訳でも、表情が変わった訳でもない。
なっちは相変わらず、笑顔だった。
(何…今の、あたしの気のせい!?)
プレイボール直前に芽生えた、なんの確証もない胸騒ぎ…あたしは、思考を巡らせることに夢中になった。

「そんな怖い顔で、なっちのこと見つめないでよ圭ちゃん。どうしたの、打ち合わせでしょ?」

なっちの一言にあたしは現実に引き戻された。
「あ…うん、ストレートが走ってるんで…変化球を見せ球に、前半はストレートで押していこう。
初球はストレートでしょ?」
「ううん…なっち今年は、新しく覚えた落ちるスライダー投げる」
「え…!?」
32 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月08日(日)02時49分10秒
(何それ!?あんた、あのときあたしに言ったじゃない!!)

開幕戦でなっちとバッテリーを組んだのは、2年目のシーズンが最初だった…

正捕手の小湊さんの控えとして始まったシーズン1年目…
出場は主に代打や、敗戦濃厚時の守備、時には不慣れな外野を守ることもあった。
しかし、そんなあたしにもチャンスはやってきた。
オールスター前、ケガでチームを離れた小湊さんに変わり、スタメン出場の機会を得たのだ。
リード面は小湊さんにかなわなかったが、しぶとい打撃と強肩で、チームに貢献することが出来た。
そうして、当時監督だった和田さんの信頼を得たあたしは、小湊さんの復帰後も、併用というかたちで、
スタメン起用されるようになった。

特に、当時ルルとエースを争っていたなっちの登板の際には、専属捕手としてマスクを被ることになった。
躍動感あふれるフォームから繰り出される、MAX148km/hのノビのある速球と、ブレーキの効いた
キレ抜群のカーブ…

マウンド上で躍るなっちの姿は、自信に満ちあふれ、妬けちゃうくらいキラキラ輝いていた。

スピードガン表示で云えば、なっちより速いストレートの投手は他にもいたが、なっちのストレートは、
あたしの心を一番躍らせた。

『28試合 16勝6敗 完投13 防御率2.47 奪三振158 勝率.727』

この年、なっちは名実ともにUFAハロープロジェクトの『エース』になった…
33 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月08日(日)08時55分24秒
>>29
2チャンって2チャンネルのことですよね。
怖いところと聞いておりますが…そこで小説を書くなんてすごい!!
小説のアドレス教えていただきましたが、読ませていただいちゃうと、
畏縮して書きにくくなりそうなんで、陰ながらの応援とさせていただきます。
(せっかく読んでいただいてるのに失礼かな…?)
それでは、お互いがんばっていきまっしょい!!
34 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月08日(日)08時57分09秒
迎えた2年目の開幕戦は、東京ドームでの巨人戦…あのときも、こうやって打ち合わせしてたっけ。
開幕初球にど真ん中のストレートを投げるというなっちに、あたしはカーブを投げるように提案した。

「ダメだよ、圭ちゃん!!初球は絶対ストレートだって」
「え!?絶対危ないって…トップの仁志さんは初球必ず狙ってくるよ…」
「嫌だよ。ストレートしか投げないから!!」
なんとかなっちを納得させようとするが、頑として受け付けない。
「お願い、なっち。ホームラン打たれちゃってもいいって言うの?」
「ダメだべ!!それになっちホームランなんか打たせないべさ!!」
ほっぺたをプッと膨らませたなっちは、さらにとんでもないことを言い出した。

「いいべさ…圭ちゃんがどうしてもカーブ投げろって言うんなら、なっちもう投げない!!」
(はぁ!?何、言い出してんの)
「それか裕ちゃんに言って、キャッチャー変えてもらうべさ!!」
(勝手なこと言っちゃってぇ、あんた何様!?ム〜カ〜ツ〜ク〜)

あたしは正直、心底頭にきていたが自分が折れることにした。
あたしにとって、スタメン定着を目指す大事なシーズンだったし、悔しいけどなっちのストレートの威力はあたしが一番知っていたから…

「分かった…それじゃストレート投げなさいよ。打たれたらただじゃおかないからね」
(ふん、バカなっち…覚えときなさいよ)

忌々しげに、マウンドを降りるあたし。

「ゴメンね…圭ちゃん、なっちワガママ言って…でも、圭ちゃんにはこれだけは分かって欲しいの」
(へっ?!)
その言葉にあたしは驚いて振り返る。

そしてなっち、あんた確かに言ったんだよ…

その言葉にあたしが、どんなに感動したと思ってんの…ねぇ、なっち…
35 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月08日(日)15時45分36秒
「開幕投手の初球ってね、ただの一球じゃないんだよ…圭ちゃん」
「そんなの、あんたに言われなくても分かってるわよ!!」

なっちが感傷的なことを持ち出そうとしていると思い、あたしは語気を荒げた。

「開幕投手は、プロのピッチャーなら一度は経験したい名誉なことだし、初球には、自分の一番自信のあるボールを投げたいのも分かってる…でもねぇ…」

「違うよ、圭ちゃん…開幕投手の初球ってね、チームのみんなの想いが込められた大切な一球なんだよ…」

「………?!」

「これから半年の間、勝利を目指して戦っていく最初の一球は、かわすようなボールじゃダメなんだよ…」
さっきまでのなっちが嘘のように弱々しく、語り続ける。
「なっちの精一杯の気持ちを込めたストレートに、みんなの想いを乗せて、バッターに向かっていくんだよ」
あたしは、黙ってなっちの話しを聞いていることしか出来なくなった。
「なっちとみんなが一緒になったボールだから…みんながそばにいてくれるから…なっちは怖くないんだよ」
そして、あたしはなっちの口から衝撃の告白を聞くことになる。

「圭ちゃん…なっちね、学生時代いじめにあってたんだ…」

二人の間に流れた一瞬の沈黙…

「みんなに無視されて、一人ぼっちになって、野球部にもいられなくなって…でも野球が大好きで…」
36 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月08日(日)15時47分32秒
あの時のなっちは、すっかり自分に自信がなくなっていた。
行き違いから孤立することになり、自分は誰からも必要とされない人間だって思うようになった。
甲子園出場の夢が断たれ、学校もサボリがちになったが、河川敷でのピッチングだけは欠かさなかった。
バックネット相手のひとりぼっちの投球練習…
自分でボールを拾いにいくと、泣きそうになる。

そんな時、あたしの運命を変えたあの人に出会った。

「ええ球ほうるやん」
「……?!」
振り返ると、金髪に色メガネ…真っ赤なスーツをパリッと着こなした軽そうな男が、笑いながら立っていた。

第一印象はとにかく怪しい、いかがわしいそれだけだった。

(この人何だべ?…大阪弁だったし、いかにもチンピラ風だべ…なっちにイタズラするつもりだべか?)
「自分歳は、いくつや?」
(え…なんで歳なんて聞くんだべ?やっぱり、なっちにイタズラするつもりだべ)
「それ以上近寄よると、舌噛むべ。どうせ、なっちは誰にも必要とされない人間だから、覚悟出来てるべ。」

すると、今までニヤニヤ笑ってたその男は、少し悲しそうな顔をして言った。

「そんなこと言うたら絶対にあかん!!何も取り柄のない人間なんておらへんねん!!」
「うまいこと言ってなっちを騙す気だべ!!そんなのに引っ掛かる程、なっちバカじゃないべ!!」
「自分、なんか勘違いしとるで。そう見えへんかも知れんけど、俺はプロのスカウトや!!」
「やっぱり正体を現したべ!!なっちをいかがわしい世界に、スカウトする気だべ!!」
「だから、ちゃうって…プロ野球のスカウトマンやねん」
(プロ野球!?…)

思いもよらぬ人物から、思いもよらぬ単語を聞き、あたしは動揺していた。
37 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月09日(月)05時15分16秒
今日初めて読んだんですど、めちゃめちゃおもしろいっす!!
続きを期待してます!!
38 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月09日(月)22時54分22秒
>>37
レスありがとうございます。
とても励みになります。
なかなか先に進まないのですが、頑張りますのでよろしくお願いします。
39 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月09日(月)22時58分18秒
「プロ野球のスカウトってどういうことだべ。なんでプロ野球のスカウトが、こんなところにいるんだべ?」
あれだけ警戒していたにも関わらず、自分のことをなっちと呼ぶ女の子は、興味を示してきよった。

「飯田圭織っちゅうごっついバッターがおるって情報があってな、見てきた帰りやねん」
彼女は、俺の渡した名刺を食い入るように見つめとる。

「やっぱりあんた嘘ついてるっしょ。UFAハロープロジェクトなんて、なっち知らないべさ」
う〜ん、それは疑うのも無理あらへん。
しかし、警戒心の強い女の子や…まぁ、ピッチャーには大事なことやけどな。

「たぶんもう少ししたら発表ある思うねんけど、ヤクルトスワローズあるやろ。あそこ身売りすんねん」
「なまら、あやしいべ。ヤクルトがこのUFAハロープロジェクトになるってことかい?」
「まぁ正確に言うと、全然別のチームになるんやけどな」
「……?!」
「石井一・高津・古田の3人はメジャーに挑戦しよるし、池山・飯田・稲葉なんてのはパの球団に金銭トレードすんねん、まぁ他にもいろいろあるけど…とにかく選手を一掃するっちゅうことや」
「何でだべさ?そんなことしたら、このチーム弱くなっちゃうべさ」

「まぁ最初の内はな、とにかく球団経営でネックになるのは、選手の年俸と観客動員数やねん。客が入らへんのに、高年俸の選手がたくさんおったら最初からアップアップやろ」
彼女は一応、真剣に聞いてくれとる。

「だから最初からやるんや。確かに最初は弱いやろうけど、センスのある選手が徐々に集まってくれば、何年か先には絶対強うなる。もしかしたら、このチームを強くするのは、お前さんかも知れへんで…」
40 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月09日(月)23時00分28秒
彼女は意外そうな顔しとった。
冗談やと思われたかな?
「えぇと、なっちでえぇんかな?フルネームは?」

「なっちはニックネームだよ…本名は安倍なつみ…」
「そうか…安倍はさっき、自分は誰にも必要とされない人間だって言うてたやろ。何かあったんか?」
安倍は黙ったままやった。
「さっき俺が、何も取り柄のない人間なんておらへんて言うたやろ…あれホンマやで…」
「…………」
「取り柄があるかどうかなんて、自分では気付かんもんや…でも絶対あるはずやし、誰かがそれを必要としてくれてるんや。なぁ安倍…うちのチームは、お前の力を必要としてるかもしれへん」

安倍の様子は変わらへんかった。
何があったかは知らんが、いろいろ葛藤があるんやろ…

「さっき投げてたのは、まだ肩ならしやろ。本気のピッチングを俺に見せてくれへんか?」

その時…

「コラーっ!!、やっと見つけたべさ。あんた、そこ動くなーっ!!」

「な…なんや…え?あ…あいつは…」

河川敷の土手を、猛然と駆け降りてくる少し大きめの人影ひとつ…
(こりゃ、おもろいで。えぇチャンスかもしれん)
41 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月09日(月)23時04分36秒
「安倍、見てみぃ。あのでっかいのが、さっき話した飯田圭織や。ごっつい迫力やろって…うわた?!」
ドカーン!!
土手を駆け降りてきた飯田の強烈なぶちかまし。
(アタタ…不意を突かれてしもた、何やねん!?)

「ゴメン、圭織止まれなくなったべさ。でも、あんたのおかげで止まれたから…」
「お前、加減っちゅうもんを知らんのかい。ケガしたらどうすんねん!!」

しかし、そんなことお構いなしに飯田はこう切り出した…

「最近カオリ変なんだべ…なんか食欲ないし、カバンに付けてたキーホルダーなくなるし、あと向かいのおじいちゃんが死んじゃったんだよね…それでカオリ考えたんだべ」
(……………?)
「あんたのせいでしょ!!」
(へっ?何言うとんねんコイツは…)
「あんたさっき、グラウンドの陰からカオリのこと見てたべさ!!あんたストーカーでしょ!!」
「何で俺がストーカーやねん!!ええ加減にせぇ」
「だってメガネが黄色い…」
(………???)

分からん?
まったく分からへん?
今どきのストーカーは黄色いメガネかけとるもんなんか?
ヤバイ、こりゃヤバイで…こんな手強いの初めてや!!
とにかく誤解を解かへんと…
42 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月10日(火)04時08分34秒
なっちと圭織がおもしろいべさ!!
43 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月10日(火)23時20分00秒
>>42
ちょっと話が暗くなって来たので、飯田さん登場!!
市井に続いて二人目の犠牲者に…
大脱線モード継続中。
果たしてプレイボールはかかるのか?
44 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月10日(火)23時23分01秒
「俺はプロ野球のスカウトやねん。お前のバッティングの噂聞いて見に来たんや」
「嘘だべ!!それが本当だとしたら、向かいのおじいちゃんは、なんで死んじゃったの?」
(知らへんて…病気やろ、病気!!)

「本当やて、どうしたら信じてくれんねん?」
「じゃあさ、カオリと勝負しなよ!!プロ野球のスカウトなら、カオリを抑えられるはずだべ」
(!!……そう来なくっちゃな。えぇ展開や)

「ちょ…ちょい待てや、スカウトっちゅうのはええ選手探すのが仕事やで。野球がうまいとは限らへん」
「ほら、やっぱりストーカーだからそんなこと言い出すんだべ」
「違うて、俺とじゃなくて、俺の探して来た選手と勝負して欲しいねん」
飯田はしばらく、一点を見つめて考え込んでいた。
(おい、いつまで考えとんねん…)

5分後…

「ふ〜ん、おもしろそうだべ。じゃあ、そのコ早く連れて来てよ」

「今ここにおんねん。ほら、コイツや」
俺と飯田のやりとりを、隣で聞いていた安倍の頭を指差す。
「ふ〜ん。カオリ、こんなちっちゃなコと勝負すんの?」

飯田の視線が安倍を捉えた…
45 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月10日(火)23時31分59秒
腰の辺りまで伸びたストレートの黒髪。
大きくてきれいな瞳。
人形のように整った顔だちに似つかわしくない、神経質そうな表情で、彼女はあたしを見下ろしていた。

飯田圭織……

それが、彼女との出会いだった。
彼女もまた、あたしの運命を変えてくれたのかもしれない…

あたしはまだ迷っていた…
あの人はあたしを必要だと言ってくれたが、あたしには自信がなかった。
また受け入れられないんじゃないかと思うと、正直怖かった…

しかし、そんなウジウジした思考を吹き飛ばしてくれたのが、圭織のパワーだった。

人はよくあなたを、自己中心的だなんて批判したけど、あたしはそうは思わなかった。

時に人を振り回すあなたの言動は、抑えきれないあなたの情熱のあらわれなんだね。

あなたの突拍子もないけど真直ぐな情熱が、あたしにはうらやましく思えたの。

あなたの自分を信じて疑わないその姿勢を、カッコイイと思ったの。

あたしは弱い人間だから…あなたみたいになりたいと思った…
46 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月12日(木)05時46分35秒
あいかわらず圭織は何処かと交信してますな〜(笑
47 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月12日(木)21時04分44秒
>>46
レスありがとうございました。
圭織の交信はなおも続くべさ。

今日は休みとったので多めに更新するべさ。

48 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月12日(木)21時08分45秒
飯田は安倍を観察するように見つめていた。
やがて……

「あんた身長いくつだべさ?圭織は168cmあるんだよね…」
「えっ、身長…!?」

安倍も圧倒されてるようやった…無理もない…
長いスカウト生活でえぇ選手はもちろん、おかしな奴もたくさん見てきた。
しかしコイツは圧倒的にNo.1や!!

「なっちは152cmだべ…」
それを聞いた瞬間、勝ち誇った表情を浮かべる飯田。

「152cm!!それならカオリが100点だとしたら、あんたは73点だべ!!勝負なんか必要ないべさ」
(何や…今の何の点数なんや?いや…それどころじゃない…話がこじれそうや)

「そんなことないで!!安倍は今、73点かもしれへんが、頑張れば100点取れるコやねん」
「カオリだって頑張れば130点ぐらいまだ取れるべさ!!」
(いったい何点満点やねん?)

「飯田が何点取ろうが、安倍はもっともっと頑張んねん。だから勝負したってや」
「う〜カオリもう、アッタマきたべさ。バット持ってくる!!キャッチャーどうすんの?」
「キャッチャーは俺がやるから、ミットだけ貸してくれるか?」
「分かったべさ。逃げないでよ!!」

飯田はそう言い残すと、河川敷の土手を、猛然と駆け上がっていった。
49 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月12日(木)21時10分32秒
「うらやましいべさ…」
安倍がポツリと一言もらした。
「ん?…うらやましいか…」

「うらやましいべさ…あのコ、あんなにキラキラ輝いてるもん」
「輝いてるか…そうやな、あいつ自分にものすご自信があんねんな」
(自信がありすぎるのも困りもんやけどな…)

「欲しいものは、自分の力で絶対に手に入れる…そんなパワーが溢れとんねん」

安倍はまた、黙りこんでしまった。

「おっと、そう言えば俺ストーカーにされるピンチやった。安倍、頼むわ。アイツ打ち取って俺を助けてや」
「………………」

(ホンマ手がかかるわ)

「なぁ安倍。待ってるだけじゃ、誰もお前を必要としてくれへんで…自分の居場所は自分でつくるんや」
「………………」
「こんな時、アイツやったらどうすると思う。きっと、めちゃめちゃ必死で投げてくんで…」
「………………」

(もう自分の殻に閉じこもるのは、ヤメにせぇへんか?安倍)

「安倍!!お前はどうすんのや!!」

安倍は、突然声を荒げた俺に、ビックリしたようやった。

「ほら、来よったで。めちゃめちゃ必死に走ってきよる。お前のええとこ見せてくれへんか?」

河川敷の土手を、猛然と駆け降りてくる飯田の姿が見えた。
50 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月12日(木)21時13分30秒
ドカーン!!
本日二度目の大激突…

えぇねん、もう…予想はしとったから…

「ゴメン、大丈夫?」
さすがに、二度目ともなるとすまないと思ったのか、飯田は申し訳なさそうに言った。
「大丈夫や。それより道具は持ってきたんか?」
「持ってきたべさ。はい…これミット」

飯田はバッグの中からミットを取り出し、投げてよこした。

「10球程、投球練習ええかな?」
「いいよ、じゃあ正々堂々勝負したいから、カオリ向こうで素振りしてくるべさ」

(正々堂々か…純粋すぎるんやな。あの性格やし、傷つくことも多いやろ…)
グラウンドの隅へ走っていく飯田を見送ると、安倍に声をかける。

「さぁ、安倍!!投げてみぃ」
まだ渋りがちな安倍を、無理矢理マウンドにあげる。
正直、安倍の渋りようを見たら、まともに投げてくれるか心配やった。
しかし、一旦マウンドにあがった安倍は、ホンマに楽しそうに投げ始めよった。

(よかった…安倍、ホンマに野球好きやねんな)

小柄な体格に似合わず、身体をめいっぱい使った躍動感のあるフォームや。
(なんか…マメがはじけとるように見えんこともないけど…)

バックネット相手に肩ならししてた時のボールと違い、ホームベース付近でえらいノビとる。
(これ程のピッチャーが埋もれようとしてたなんて、残酷な世の中や…)
51 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月12日(木)21時16分23秒
「安倍〜っ、変化球はないんか〜?」
「カーブが投げられるべさ〜」
「残り3球、投げてみぃ〜」
「分かったべさ〜」

落差のある大きなカーブ…

(えぇやん!!えぇやん!!キレ抜群や!!えぇところから曲がってきよる。これも一級品や!!)
「おい、えぇやん安倍〜!!ビックリや!!」

俺は興奮を抑えきれなかった。
(こいつはとんだ拾いもんや!!後は安倍の気持ち次第…そして今がチャンスなんや!!)

投球練習を終え、飯田を呼び戻す。
(さぁ、勝負や安倍!!自分の未来は自分で切り開くんや!!)

左バッターボックスに立った飯田。
遠めから見てたのと違い、上背もあるせいか迫力満点や…
加えて言いようのない威圧感…

(……!?)

ふと、飯田の構えの違和感に気付き、声をかける。
「おい、飯田……」
しかし、飯田は微動だにせず、バットの先を見つめていた。

(うわ…またや…)
52 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月12日(木)21時24分42秒
頭の中に浮かんでは消えるのは、遠い日々の記憶…
向かいのおじいちゃんの優しい笑顔。

あたしが元気よくあいさつすると、おじいちゃんはニッコリ笑ってあいさつを返してくれた。
『おはよう、圭織ちゃん』って…
よく、あたしと妹にお菓子を買ってくれたっけ…
運動会で一等賞とると、すごく喜んでくれたね。
あたしが友達とケンカした時には、相談に乗ってくれたね。

3年前におばあちゃんが死んでからは、元気がなくなっちゃったけど、あたし心配してたんだよ。
最近すっかり、姿を見かけなくなって、どうしちゃったのかな?って…

やさしかったおじいちゃん…

思わず目が潤んでくる。

あんなにいいおじいちゃんと、おばあちゃんを殺したこの二人をあたしは許さない!!

中学野球北海道大会、決勝戦で対戦したりんねと交換した記念のキーホルダー…
大切な思い出を奪ったこの二人をあたしは許さない!!

育ち盛りのはずなのに、食事がのどを通らなかった…
あたしの食欲を奪ったこの二人を…

「おい、飯田!!聞こえとるか…お〜い!!」

その声にあたしは現実に引き戻された。

「え…!?何」
「いや!?…動かへんかったから…大丈夫かな〜って」
(ん…心配してくれたの?この人、ちょっといい人かもしれないべさ)

「大丈夫。ありがとう…」
「いや…えぇんやけど、お前バットの握りが逆やで」
「いいんだべさ、カオリこれが打ちやすいんだから。早く始めてよ」

ストーカー男は、ちょっと呆れた顔をしたように見えたが、きっと気のせいだろう。
そして、ストーカー男から勝負開始が伝えられた。
53 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月13日(金)04時17分52秒
おもしろすぎるぞ圭織!!
作者さん、この際もう試合なんてどうでもいいんじゃないっすか?(w
54 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月17日(火)04時17分54秒
圭織となっちの対決はたして軍配はどちらに?
楽しみに待ってま〜す!!
55 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)00時12分57秒
>>53
レスどうも。
しかし、とうとう言われてしまったか…ちょっぴりショック。
野球ものの需要があるかどうか考えたら、仕方ないですけどね…
(本人もたまに思うこともあるし、結構確信犯だし…)
>>54
書き溜めてあるので、圭織となっちの対決編は次回更新で一気に放出。
御期待ください。

読んでくださってる方へ
現在、設定上の問題が見つかり、修正するか開き直るか思案中。
元々ありえない話を書いているんだから、開き直る方向で検討中。
(修正すると設定が設定を呼び、書きづらいし、読みづらいと思うので…)
パラレルもパラレル、完全な異世界の話としておつきあいいただければと思います。

浮上狙いage
56 名前:53 投稿日:2001年04月18日(水)04時52分49秒
作者さ〜ん、ショックなんて受けないで〜!!
オイラは野球大好きですぞ!!(ちなみに巨人ファン)
サッカー人気に負けるな野球!!
なんかレスがずれてしまった(w
57 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)21時31分34秒
>>56
ありがとうございます。
変な気を使わせちゃったかな?

開き直って書く決心がついたので一気に更新。
とりあえず、なっちの過去編終了。

58 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)21時34分48秒
マウンドで、キャッチャー相手に投げる感触は、最高だった。
あんなに投げることをためらっていたのに、あたしも単純だね。
でも、ボールを投げ込む内に、単純でいいんだって思った。
あれこれ考えるから、一歩も踏み出せなかったんだって…

あの人があたしにチャンスをくれた。
あのコがあたしに勇気をくれた。
お膳立てをしてもらったのに…
それでもあたしはウジウジしてた。

でも野球が好きなら、野球をすればいいんだ。
本当に呆れちゃうくらい、単純なことだよね。

過去のことはもういいよ。
今、マウンドにいるこの瞬間は、野球を楽しむことだけを考えればいい。

あのコが左バッターボックスに立ち、バットを構えた。
いよいよ勝負だ…

スタンスはオープン気味。
膝はあまり曲げず、グリップエンドを高い位置で、バットを立てて構えている。
身長の高さもともなって、とても大きく感じる。

加えて無気味な威圧感…

(腕も長いのに、あんな構えで内角の速球に対応出来るのかな?)

第一球目、投球モーションに入る。
59 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)21時36分45秒
あのコの右腕から投じられた第一球。
それは、あたしにとって予想外の一球だった。
だって、てっきり山なりなボールが来るもんだと思ってたから…
軽く初球を叩き込んで終わり。
その後、このストーカー二人をどう締め上げてやろうか?
そんなことを考えていた。
しかし…

内角高めの快速球。
顔の目の前に投じられたボールに、あたしは身体をのけぞらせた。
(えっ…速い…?!)
一瞬何が起こったか分からず、ストーカー男に視線を送る。
「ワンボール・ナッシングや。安倍〜っ、力入っとるんやないか〜楽に、楽に」
(楽に…?!カオリを楽に打ち取れるってこと?!)
顔の目の前に投げられたことも合わせて、頭に血がのぼってきた。

「タイム!!ちょっと待って…カオリ考えるべさ」

ストーカー男が、嫌そうな顔をしたように見えた気もするが、きっと気のせいだろう。
60 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)21時38分47秒
頭の中が混乱していた。

なんで?なんでストーカーのコが、あんな球投げるんだべ?
それに、カオリ悔しい!!
あんな球投げられて!!
あんなこと言われて!!

ダメだよカオリ。

えっ?!

そんなにカッカしてちゃ打てるボールも打てないよ。

う…うん、そうだよね。
短気は損気って言うもんね。

そうだよ。
ねぇカオリ、今まで対戦した中で、一番速かったピッチャーを想い浮かべてごらんよ。
そして、そのタイミングに合わせて振ってみたらどうかな?
61 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)21時39分59秒
一番速かったピッチャー?
う〜ん、やっぱりりんねかな…
右のサイドスローから対角線に食い込んでくる直球…

それだよ、カオリ!!
カオリなら絶対打てるよ!!
あくまでも冷静にね。
それじゃ、さよなら。
頑張ってね。

うん、分かった。
カオリ頑張るべさ。
カオリ絶対負けないから…

ありがとう…ありがとう…
あたしは心の中で、精一杯手を振った。
62 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)21時41分26秒
(声かけるの嫌やなぁ。またバットの先、見つめとるで…)
しかし、コイツも驚いたやろ。
コイツのパワーもずば抜けとるが、安倍のピッチングはその上や!!
ストレートは140km/h以上楽にあるやろうし、ブレーキの効いたあのカーブはプロでも通用する。
それに対して、飯田はどういうバッティングするやろか?

「飯田〜もうえぇか〜?」
恐る恐る声をかける。
「え…!?何」
ビックリしたような顔で、こちらを振り向く飯田…
(こっちがビックリや)

「よかったら安倍に、二球目投げさせたいんやけど…」
「うん、いいべさ…早く投げさせてよ」
「………………」
63 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)21時43分10秒
第二球目もあのコは、内角高めのストレートを投げて来た。
あたしは一瞬カッとなりそうになったが、なんとか冷静さを保つことが出来た。
そしてアドバイス通り、りんねのストレートを想定して、スイングを始動した。
ポイントを前に置き、腕をたたみ、ダウンスイングを意識しながら、ボールを叩きにいく。

ブンという音を残して、バットが空しく空をきる…

あたしは、あのコの球を捉えることが出来なかった。
「あのコ、りんねより速いべさ!!」
思わず叫んでしまった。

「なんやお前、りんねと対戦したことがあるんか?そうか、安倍はりんねより速いか…そうか、そうか」
「え…!?」
ストーカー男の言葉に、あたしは動揺した。

(この人、りんねを知ってる?!なんでだべ…)
あたしの頭の中に沸き上がってきた一つの疑問…
答えを知りたい衝動を抑えきれず、声をかけた。

「あんた、りんねを知ってるの!?」
「まぁな、北海道No.1ちゅう噂やから、チェックは入れとる。球も速いし、大きなスライダー投げよるな」

その言葉は、あたしに衝撃を与えた。

(りんねのことを知ってる?!それに、あのコのあのピッチング…)

そういえば、あたしが道具を取りに行った時、逃げようと思えば逃げられたはずなのに…
この人、本当にプロのスカウトかもしれない…

そう思えるようになった。
そして、そうなれば話は別だ。

(なんだ…カオリのことスカウトに来たんだべ。あのコのボール打ったら、憧れのプロ野球選手だべ)
そう思うと俄然、やる気が湧いて来た。
64 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)21時45分05秒
三球目は、外角低めにボール気味のストレートを投げ込んだ。
二球続けて内角高めに投げたから、あのコの目線を遠いところに持っていきたかった。
あのコの性格なら、無茶振りしてくれるんじゃないかと期待したんだけど、見逃された。
カウントはワンストライク・ツーボール。

あたしは、あのコをローボールヒッターだと判断した。

内角高めに投げると、窮屈そうなスイングをしていたし、スイングの際に大きくヒッチするため、内角高めの速球は特に振り遅れるだろう。

一方、外角低めに投げると、きわどいボールをきっちり見逃しつつも、打ち気を見せた。

内角でも低めならそんなに窮屈じゃなく打ち返すだろう。

四球目は、空振りもしくはファールを見込んで、ちょっと怖いけど、内角膝元ボールになるカーブ。
五球目は、内角高めにストレートと、この後の組み立てを決めた。

マウンドに立ち、バッターに対すると、やはり打たれたくない…
なんとかあのコを抑え込みたかった。
65 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)21時46分48秒
三球目は、外角低めのストレート。
大好きな低めに、思わず手が出そうになったが、ボールだと判断した。
いつもなら、少々ボール気味でも打ちにいくのだが、なんといってもプロ入りのかかった大勝負。
ホームランを打つことしか、考えていなかった。
内角低め…なんとかこれを引っ張りたかった。

こんなに緊張感のある打席は初めてだ。
あのコの投げるボールは、今まで対戦したどのピッチャーよりも速い。
そう、りんねよりも…
悔しいけれど、あたしの方が押されていた。
しかし、力と力のぶつかりあいの勝負をしていると感じた。
緊張を楽しんでいると思えた。
それがなにより、あたしの心を躍らせた。

それなのに…

四球目、狙っていた内角低目。
しかし、それは変化球だった。
内角膝元にストライクからボールになる見事なカーブ。
これをすくい上げようとしたあたしだったが、まんまと空振りを喫した。

逃げられた…

あたしはそう思った。
66 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)21時49分44秒
ホンマ見事なカーブや!!
飯田のバットが、まんまと回りよった。
これでカウントは、ツーストライク・ツーボールや。

しかし、次の瞬間、飯田が吠えた。
「あんた、ズルイよ!!」
(へ!?…何や)

飯田が、安倍に向かって声を荒げとる。
「カオリはストレート待ってたのに…なんであんたは逃げるんだべ!!力と力の勝負が出来ると思ったのに、なんで逃げるんだべ!!」

「何、言うとんのや!!それが駆け引きや!!野球の醍醐味っちゅうやつやないけ!!」
しかし、飯田はそんなことはお構いなしになおも続ける。

「あんたはいつもそう!!自分の殻に閉じこもって逃げてばかり!!だから誰も助けてくれないんだべ!!」
(お前、安倍と今日初対面やろ。何でそんなこと分かんねん?それにしてもそこまで言うか?)

「でも、カオリは違うべ。カオリにはパパでしょ、ママでしょ、妹でしょ、向かいのおじいちゃんでしょ、由実でしょ、沙織でしょ、それからえ〜と…とにかく頭の上で、カオリ頑張れって応援してくれるんだべ」
(お前は左門豊作か?!それに由実とか沙織って誰やねん…)
67 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)21時51分50秒
一見、いいこと言うとるようやが、何か違うやろ
少なくとも、俺はそう思ってん。
でも安倍は違った。

「飯田さんの言う通りだべ…ゴメンね。今のノーカウントでいいべ…」

(なんでやねん!!アホか!?お前ら、アホやろ!?)
しかし、アホは俺の方やった…

今の安倍に必要だったのは、バッターとの駆け引きを覚えることやない。
野球を楽しむこと、何ごとにも向かっていくこと、自分を信じること…
もっと単純なことやった…
勝負の結果なんてどうでもよかったんや。
俺は、興奮のあまり一時的にそれを忘れとった。

しかし、飯田の情熱が、安倍にそれを教えようとしてた。
(たぶん、全くの偶然やろが…)
68 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)21時55分40秒
あのコの言葉は、あたしの胸に鋭く突き刺さった。
野球を、単純に楽しむことだけを、考えていたはずなのに…
技巧や駆け引きにこだわり、野球に真正面から向き合うこと、人と真正面から向き合うことを、怖がっていたのかもしれない。

あのコはバッターボックスでも、常に真直ぐな情熱をぶつけてきた。
あたしは、それを小手先でかわそうとした。
でも、もう逃げない…
あたしもあのコに、あたしの情熱をぶつけたい。

新しく生まれ変わろうとする、あたしの全てをぶつけたい…

あのコと同じ輝きを手に入れるんだ…
69 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)21時58分35秒
仕切り直しの四球目は、ドエライ球を投げよった…
渾身のストレートってのは、ああいうのを言うんやな…
外角に大きく外れたが、ベース付近でのノビは、今までの比やなかった。

五球目、ほぼ真ん中を豪快に空振りした時は、次で終わりやと思ったが、六球目を飯田はファールした。

バッターボックスでの情緒不安定さがなくなり、あれだけ大きくヒッチしたり、体が突っ込んでたりしたのが、今はきれいなスイングをしよる。

まったくわからへん?

お互いの気持ちを純粋にぶつけ合う、超パワー空間。
目の前で繰り広げられる光景に、目頭が熱くなる…
これが、プロになると忘れがちになるもんかもしれへんな…
そうか、これが原点なんや。

そして、終幕が訪れた。
振り遅れながらも飯田のバットが、安倍のストレートを捉え、三遊間真ん中を破る打球となった。

(これで俺はストーカーかい…でも、こんなおもろいこと最近なかったで…)
70 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)22時02分28秒
「よう打ったな…飯田」
「うん…」
もっと喜ぶもんや思たが、意外に歯切れが悪い。
そこへマウンドを降りた安倍が、駆け寄ってくる。
満面の笑顔で…

ホンマ、現金やなお前。
逆に頭に来るで…

「ゴメ〜ン、なっち期待に応えられなかったべさ。飯田さんスゴイね。ナイスバッティング」
(いや、お前は充分期待に応えてくれたで…ホンマ…よかったで…)

「あんた笑うとカワイイね…ちっちゃくてかわいいべさ」

突然、飯田がポツリと言う。
(なんやお前、変な趣味あるんとちゃうやろな?!)
71 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)22時06分57秒
「勝負はあんたの勝ちだべ…ど真ん中をホームラン出来なかったのは初めてだべ…」
「えっ、ヒットはヒットだべ。飯田さんの勝ちだべ」
「勝負が終わった後の顔を見れば、どっちが勝ったか一目瞭然だべ。結果じゃないべ」
安倍の顔をジーっと見つめる飯田…
「あんた今、すごくいい顔してるべ」

確かに二人の表情は、対照的だった。
勝負の前と後で、まったく逆になってしまった。
飯田の落ち込みようは、見た目にもハンパじゃなかった。
強がってるだけで、ホンマは弱い人間なんやな…
でも…
メンタル面が強化されれば、コイツは大化けする。
さっきも、安倍の球を打てるとは思わへんかった。
先が楽しみな選手や!!
(扱いが難しいんやけど…)
72 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)22時08分27秒
「それより、あんた本当にプロのスカウトみたいだね…」
「!!…そうや、そう言うたやんけ。ホンマかなわんわ」
(よかったで、やっと分かってくれた。実はこの後どうなるか、ビビっとったんや!!)
「だいたい俺のどこが怪しいねん!!なぁ安倍」

「なまら怪しいべさ。なっちも絶対、変質者だと思ったべ」

お前、そういうこと言うか?!

「だいたい名前も怪しいんだべ。これ、見てよ飯田さん」
そう言って、俺の渡した名刺を、飯田に見せている。
それをジーっと見つめる飯田。

目が怖い…

「ひらがな三文字だべ?!ひらがな三文字で『つ・ん・く』だべ!!なまら怪しいっしょ!!」
「本当だ…なまら怪しいべ…」

「アホやな。つんくは親しみやすいようにニックネームやんけ。安倍のなっちと同じやろ!!」

そんな俺の反論を聞こうともせず、『怪しいべ!!』を連発する安倍。
服が怪しいだの、メガネが怪しいだの…
俺って何やねん…
73 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)22時09分53秒
えぇ〜い、そんなことはどうでもえぇねん!!
俺はスーツが汚れるのも構わず、地面に正座した。
「ウチのチームに入団してくれへんか?お前にはプロで通用する力がある!!お前の力を貸してくれ!!」
そして俺は頭を下げた。
「頼む!!さっき話したようにウチはゼロからのスタートや!!お前がゼロから始めるのに適しとる!!」
ここまでしたのは、安倍に最上級の誠意を見せたかったからや。
そして、今の安倍なら必ず応えてくれる。

「分かったべ…」
(よしっ!!やったで!!)
74 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)22時11分52秒
「あんたがそこまで言うんなら、カオリあんまり気乗りしないけど、入団してあげてもいいべさ」
「へっ!?」
顔を上げると、気乗りしないという割には自信満々、笑顔の飯田が目の前に立っとった。
お前いつ復活したんや!?

ちょっと待て!!
そりゃ、お前も欲しい選手や。
でも、お前は学校があるやろ?
そりゃ、安倍もあるけど事情が事情や!!
それに、もうちょっといろんな意味で、成長してもらってからのほうが、えぇんちゃうかなって…
でも、コイツに今さら誤解だなんてとても言えへん…
うわ、素振り始めよった?!
75 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)22時13分20秒
「い…飯田、やる気満々やなぁ…でもなホラ、飯田は学校があるやろ…学校…」
なんとか誤解を解こうと切り出す。
「あ…そっか、飯田は学校あるもんなぁ。そっか、そっか、気が付かへんかったなぁ…」

「大丈夫だべ、カオリ学校辞めるから…カオリ一度決めたら本気なんだよね…」
そう言いながら、バットを振る飯田。
うわ、スピードが速くなってきた?!

それを見ていた安倍がニヤニヤしながら、こう言った。
「飯田さんが入団するなら、なっちも入団しようかな〜」

安倍、お前そういう奴やったんやな…
ま、えぇか…
76 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)22時15分20秒
「安倍も飯田もホンマに学校はえぇんやな!?」

「うん…なっちゼロからやり直してみたいべさ…」
「カオリ本気だから…」

「分かった…二人とも、ありがとうな。それじゃ東京に球団職員として来てもらって、練習してもらうことになるから…」

それを聞いて安倍が声をあげる。

「東京?!スゴイべ!!都会だべ!!ねっ、飯田さん!!」
「東京なんて、たいしたことないべさ…」
「そんなことないべ、原宿に渋谷もあるべさ。東京タワーもあるし、忠犬ハチ公もいるし、それから…」

(安倍…東京に忠犬ハチ公はおらへんで、銅像が立っとるだけや…)
すっかり元気になった安倍に目を細めながらも、心の中で俺は軽く突っ込んでおいた。
77 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月18日(水)22時16分49秒
こうして、あたしはプロ野球選手としての道を歩み始めた。
親元を離れる不安。
チームに馴染めるかどうかの不安。
自分の力が通用するかどうかの不安。
最初のうちは、不安だらけだった。

毎日、一生懸命練習することで、その不安を拭いさろうとした。
挫けそうになることもあったが、そばにカオリがいたから頑張れた。
友達として励まし合うだけでなく、ライバルとして張り合うことで、お互いを向上させていった。

やがて、ドラフト会議を経て、正式にUFAハロープロジェクトの選手となった。
キャンプでは、フリーバッティングや紅白戦での投球が認められ、チームメイトとも打ち解けていった。
オープン戦でも結果を残し、開幕投手に選ばれた。

全ては順風満帆だった。
78 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月19日(木)04時35分32秒
二人の掛合い、本当面白いですね!!
それにしても、なまらって・・・(w
79 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月19日(木)23時45分21秒
>>78
毎度レスありがとうございます。
たった一人でも読んでくださって、レスをいただけるのは本当にありがたい。
なまらうれしいべさ!!

今回更新分からシリアス?『なちけい』に突入。
プレイボールももう間近。
お笑い小説じゃないところを見せなければ…
80 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月19日(木)23時47分08秒
いつしかみんなが、なっちをエースと呼んでくれるようになったの。
なっちは、やっとみんなに必要とされるようになった。
望んでいたものを、やっと手に入れることが出来たんだよ。
すごくうれしかった。

みんなに望まれて、みんなと一緒に野球が出来る。
だから今は、マウンドに上がるのが、楽しくてしょうがないの。
なっちは絶対マウンドの上で逃げない。
みんなの想い、なっちの想いを込めたボールで、バッターに向かっていくの。
それが、なっちを支えてくれるみんなへの恩返し…

それが、なっちのストレートなんだよ…
あの時、カオリが教えてくれたボールなんだよ…

だから圭ちゃんお願い!!
開幕初球だけは…初球だけは、なっちにストレートを投げさせて!!
81 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月19日(木)23時48分58秒
なっちはあの時、目を潤ませながら、一気にまくし立てた。
いつも自信に満ちあふれ、マウンドの上で、キラキラ輝いていたなっち…

そのなっちに、そんな過去があったことに、まず驚かされた。
加えて、今はあまり仲がよさそうに見えないカオリとの過去には、もっと驚いた。

なっちはピンチになると、ストレートを投げたがった。
あたしが変化球のサインを出しても、なかなか首を縦に振らなかった。
その裏には、そんな想いがあったんだね…

だから、なっちのストレートは、あたしの心を躍らせたんだ。

だから、ストレートを投げるなっちは、あんなにキラキラ輝いていたんだ。

キャッチャーの立場から言えば、変化球が逃げる球だなんていうのは、納得が出来ない。
ナンセンスだ。
変化球だって、攻めの気持ちで投げてくれれば、立派な勝負球だ。
なっちが、変化球をストレートと同じ気持ちで投げてくれれば、20勝は楽に出来るだろう。

しかし、あたしはそのことについて触れることはしなかった。
いや、正確に言うと出来なかった。
なっちの言葉が、頭から離れなかった。

『みんなの想い、なっちの想いを込めたボールで、バッターに向かっていくの。
 それが、なっちを支えてくれるみんなへの恩返し…
 それが、なっちのストレートなんだよ!!』

この時、あたしはなっちを支えてあげたいと思った。
なっちには、いつまでもキラキラ輝いていて欲しいと思った…
82 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月19日(木)23時50分34秒
「分かった…なっちの一番のストレートを投げなさいよ」
あたしは、そう一言だけなっちに告げた。
なっちの目からは、大粒の涙がこぼれだしていた。
「ありがとう…ありがとう圭ちゃん…」
泣きながら、何度も何度もお礼の言葉を口にするなっち。
なんとか泣き止ませようと、声をかける。

「ほら、これから勝負だっていうのに、泣いてちゃいい球、投げられないよ」
しかし、なっちはなかなか泣き止まない…
(困ったなぁ…仕方ないわね。これだけは出したくなかったんだけど…)

「ねぇなっち、こっち見て」
顔を上げたなっちに対して、本邦初公開…変顔『保田スペシャル』!!

ちょっと恥ずかしいんだけど、これで大爆笑ね。
普段、あたしこういうことしないんだからね!!

「!!ひっ…………………」
83 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月19日(木)23時54分35秒
(あれ!?)
予想に反して、大爆笑は起こらなかった。
(おかしいわね?自信があったんだけど…)
目の前にあるのは、なっちの凍りついた顔…

「なんや…なんかもめとるんか?」
サードの裕ちゃんが様子を見に来た。

「ううん…な…なんでもない!!」
激しく首を横に振るなっち。

「そうか?打ち合わせにしちゃ長いんで、心配になってな…二人とも頑張ってな」
裕ちゃんが、自分のポジションに戻っていく。

「じゃあ、なっち頑張ろう」
声をかけて、あたしも自分のポジションに戻る。
その途中、ふと考える。
(泣き止んだのはいいけど、笑ってくれなかったわね…『保田スペシャル2』の開発が必要ね)

だって、なっちにはいつも笑顔でいてほしいもんね。

そんな保田を見送りながら、安倍なつみは二度と保田の前で泣くまいと心に誓うのであった。
84 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月20日(金)03時37分38秒
なっちを凍りつかせた「保田スペシャル」とは一体・・・(w
見てみたいっす!!
85 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月21日(土)16時58分20秒
おもしろい
86 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月21日(土)23時13分40秒
結局はあの時、仁志さんにホームランを打たれちゃったんだけど、あたしはなっちを責めなかった。
あの時のなっちの一球は、なっち自身の言葉を証明してみせる素晴らしい一球だったからだ。
打たれたけれど、なっちはキラキラ輝いていた。
自身に満ちあふれた顔で、次の打者に向かっていった…

今、目の前にいるのは、あたしの知っているなっちではなかった。
あたしの好きななっちではなかった。
じゃあ、ここにいるのは誰?
あんた誰なの?

『落ちるスライダー投げる』って何なの?
開幕初球のストレートは、なっちにとって特別なものだったんじゃないの?

そんな気持ちが口を突いて出た。
「はぁ!?」

「えっ?だから初球は落ちるスライダーを…」
なっちは、あたしが聞き逃したと思ったのだろうか?
あたしの耳に、忌わしい単語が再び飛び込んできた。
あたしは、それを振り払うかのごとく声を荒げた。
「そんなこと、聞いてんじゃないわよ!!」

なっちはビクッと肩を竦ませた。
あたしはこの時、どんな顔をしてたのだろうか?
しばらく二人の間に沈黙が流れた。
87 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月21日(土)23時14分54秒
去年のシーズンは、なっちにとって苦しいシーズンとなった。
三度目の正直とばかりに挑んだ開幕戦。
1回にいきなり3点を奪われ、苦しいピッチングが続いた。
ランナーを出しながら6回まで抑えてきたが、7回に追加点2点を奪われKO…

さすがに三度目の開幕失敗が応えたのか、その後の登板では、勝ったり負けたりの投球が続いた。
終わってみれば『27試合 11勝10敗 完投10 防御率3.68 奪三振124 勝率.524』

勝利数はアヤカ、奪三振数は彩っぺ、防御率と勝率は、この年ローテーション入りした斉藤に負けた。
なっちがエースとして誇れるものは完投数ぐらいしかなかった…

一念発起の新変化球修得。
これで、なっちの変化球に対する気持ちが変わってくれれば…
なんて思ってたあたしがバカだった。

なんのことはない…
今のなっちの様子が、先程の投球練習が、全てを物語っていた。

自分のピッチングに自信が持てなくなって、変化球に逃げようとしてるんだ。
88 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月21日(土)23時16分00秒
「あんた自分を捨ててまで、そんなに勝ちたいの?」
あたしのストレートな言葉が沈黙を破った。
「開幕初球のストレートは、なっちにとって特別なものだったんじゃないの?」
なっちは唇を噛み締めている。
「ちょっと打たれたからって、簡単に自分のピッチングを変えるの?そんなのエースじゃない!!」
今まで、黙ってあたしの話を聞いていたなっちの表情が、一瞬にして変わった。
ひどく怯えたような顔…
それでも、精一杯声を張り上げた。
「やめて!!…なっちは…なっちはエースだよ…」
そして、激しく頭を振る。
「…エースなんだから…」
一転、蚊のなくような声。
その瞳は潤んでいた…

『エースじゃない!!』
そのたった一言に対して、この動揺ぶりは異常だった。
事態は、あたしが想像していたより深刻なようだった…

ふと、思い返してみる。
日頃なっちは『エースだから…』という言葉をよく口にした。
調子の良かった1年目、2年目はさほどでもなかったが、昨年はそれが著しかった。
エースであることに、固執していたような気がする…
そんなにエースの称号が大切なの?
あたし達の、なっちに対する想いは届いてなかったんだね…
ガッカリだよ…
89 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月21日(土)23時17分17秒
イジメに遭い、自分の居場所を失い、自分を見失っていたなっち…

カオリと出会い、カオリに惹かれ、自分を変えるため、この世界に飛び込んで来たんでしょ?
自分の居場所が出来たんでしょ?
なっちがいつも笑顔でいられる場所が…
投げて、投げて、投げ抜いて…なっちが自分で勝ち取ったんじゃない!!
それは決してエースという称号なんかじゃない!!

エースであること…それがなっちのアイデンティティなの?
エースの称号を守るために、あんた今まで投げてきたの?
それっておかしいよ?
それじゃ、あんた全然変わってないよ…
あまりにも情けなさすぎるよ…

あたし達は、エースのなっちが好きなわけじゃない!!
どんな強打者相手にも、逃げずに立ち向かっていく…
あたし達に勇気をくれる…
いつもキラキラ輝いているなっちが好きなんだよ!!
そんななっちを信頼しているんだよ…
エースなんて…そんな飾りだけの言葉必要ないじゃない!!
いいかげん成長してよ!!
逃げないで立ち向かって来てよ!!
90 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月21日(土)23時18分32秒
この時、そうなっちに言ってあげられたらよかったのに…

プレイボール直前のこの大事態に、あたしは全く心の余裕を失っていた。
裏切られたという気持ちが、なっちのあたしの顔色を伺うような目が、あたしをキレさせた。

「エースだってんなら、エースらしいピッチングしなさいよ!!」
怯えるなっちに対して声を張り上げた。
「もういいわよ…なっちが投げたい球を投げなさいよ!!スライダーだろうが、カーブだろうがなんでも構わないわよ!!」
なっちの目からはとうとう涙がこぼれ出した。
『保田スペシャル21』を繰り出すチャンスの場面だったが、とてもじゃないがそんな気分ではない。
さらになっちに最後通告とも言える言葉を、浴びせかけた。
「ただし、気の抜けたボール投げるんなら、あたしはなっちの球を受けたくない!!裕ちゃんに言って、大木にキヤッチャー交代してもらうから!!」
吐き捨てるようにそう言った。
いや、言ってしまった…

(最悪だ……あたしがなっちを支えてあげなくちゃいけないのに…あたしはなっちの女房役失格だ…)

あたしの目にも熱いものが込み上げてきた。
こぼれ落ちないように空を見上げる。
軽く鼻をすすると、逃げるようにマウンドを降りた。
こんなあたしをなっちはどう思っただろう?

(ゴメンなっち…本当に最悪だ…)
91 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月21日(土)23時27分46秒
>>84
( `.∀´)『保田スペシャル』は日進月歩よ。
>>85
 レスありがとうございます。
 そう言っていただけるとありがたいです。
 
大事な部分だったのに案の定失敗!!
終盤大丈夫かな?
次の更新では久々に他のメンバー登場。     
92 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月22日(日)02時27分39秒
安倍の運命やいかに?
長いおつきあいになりそうですね。更新楽しみにしてます。
93 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月22日(日)23時31分44秒
スタンドの大歓声に掻き消されそうだったが、確かに聞こえた。
マウンド上、圭ちゃんの怒鳴り声…
ゲーム開始前、内野陣でボールを回していたんだけど、マウンドの様子が気にかかった。
なっちの少し肩を落とした様子が、気になっていた。
ちょっと声をかけに行こうかな…
ファーストのカオリからボールを受け取ると、すばやくショートの梨華ちゃんに投げた。
「梨華ちゃーん、ちょっと三人でボール回しててー」
「はぁ〜い、矢口さぁ〜ん。トイレですかぁ〜?」
「違う、違う…ちょっとなっちに声をかけて来るよ」
(なんてこと聞くんだろ?しかもでっかい声で…本当にいつも一言多いよ)
そんなことを思いながら、マウンドのなっちに歩みよって行く。

圭ちゃんの姿はもうマウンドになかったが、後ろ向きのなっちに声をかける。
「おーい!!なっちー!!」
振り返ったなっちの顔を見て驚いた…
真っ赤になった目の廻り。
それも今まで泣いていたのを、慌てて涙を拭ったという感じだ。
「……圭ちゃんと何かあったの?」
何があったか推し量りかねて、とりあえずそう聞いてみた。
94 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月22日(日)23時33分57秒
「全然!!何にもないよ。わざわざどうしたの矢口?」
いつも通りなっちは笑顔で応えた。
いや、応えようとした…
バカだねなっち…
全然笑えてないよ。
「どうしたって…なっちの様子を見に来たんだよ。泣いてたでしょ」
「泣いてないべさ…」
「泣いてたよ…目赤いもん。なんだよーキャプテンの矢口に隠し事かよー」
なっちは黙り込んでしまった。
「圭ちゃんになんか言われたんでしょ。圭ちゃんの怒鳴り声が聞こえたもん」
しばらく沈黙が続いたが、観念したのかなっちはこう答えた。
「なっちが怖くなって泣き出したのを、圭ちゃんがしっかりしろって励ましてくれたんだよ。それだけだよ」
「怖くなった…?」
あたしは思わず聞き返した。
「柄にもなく緊張しちゃって…ほら、開幕戦勝ってないし、ちょっと怖くなって泣いちゃったの…」
「それを圭ちゃんがハッパかけてたって言うの?ホントにーっ?」
「本当だよ…」
「ホントに、ホントーっ?」
「本当に、本当だべ…」
なっちの言ったことは本当だろうか?
でも、もし嘘だとしても、頑固者のなっちのことだ。
問いつめて返ってくる答えは同じだろう…
信じるしかないんだよね。
「分かった。じゃあ頑張ってなっち。みんなついてるから…打たせていいんだからねっ!!」
「うん、ありがとう矢口…」
多少の不安は残しながらも、あたしはマウンドを後にした。
95 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月22日(日)23時38分05秒
サードのポジションに戻って来たあたしに、梨華ちゃんと辻が駆け寄ってきた。
「矢口さん、安倍さんどうでしたぁ〜?」
梨華ちゃんの甲高い声。
あたしは少し考えて…正直に答えることにした。
あたしって隠し事とかするのって嫌いなんだよね。
「うーん…なっち泣いてた…」
「えぇ〜っ!!安倍さん泣いてたんですかぁ〜?何でですかぁ〜?」
「……………………!?」
梨華ちゃんが驚きの声をあげる。
相変わらず、大袈裟だ…
辻は小首をかしげ目をパチクリさせている。
大口を開けたまま…
(コラ、君は口を開けっ放しにするのはヤメなさい)

「緊張して怖くなっちゃったんだって…君らは大丈夫かい?」
すると、二人はニッコリ笑って顔を見合わせた。
「大丈夫ですよぉ。ねぇ、のの」
「大丈夫ですっ」
「そうやって大丈夫、大丈夫って平気そうにしてる奴ほどポカやらかすんだよ…君らの守備は定評あるからなー」
皮肉をちょっと込めて二人にそう言った。
「ヒド〜イ、矢口さぁ〜ん。石川だって頑張ってるのにぃ〜」
「辻もですよっ」

分かった分かったと二人を鎮めながら、心配していた二人の元気な様子に安心した。

あれ?そう言えば練習中なんかは、もっと緊張してた気がするのに、今はリラックスムードじゃん。
ちょっと疑問に思ったあたしは、二人に尋ねてみた。

「意外と緊張してないみたいだね。練習中なんかはガチガチだったのに…なんかあったの?」
「はい!!よっすぃ〜に緊張しないおまじないしてもらったんですよぉ…ウフフ」
「してもらいましたっ!!」
96 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月22日(日)23時39分21秒
にゃ…にゃ…にゃにお〜っ!!

緊張しないおまじないってなんだよー?
なんで矢口にはしてくれないんだよー。
よっすぃ〜は矢口の一番のお気に入りなのに…
くっそー、ムカツクなー。
まぁでも、矢口は大人だから取り乱したりしないんだけど…
落ち着いて…落ち着くのよ真里…

あたしのそんな思いをかき乱したのはこの余計な一言だった。

「よっすぃ〜やさしかったなぁ…ウフフ」
胸の前で手を組み、うっとりと目を細めながら、ライト方向を見つめる梨華ちゃん…

「うわぁーっ!!」
あたしは叫びながら、ライト方向へ駆け出した。
しかし、二人に捕まった。
「矢口さぁん、何やってんですかぁ?もう試合始まりますよぉ」
「矢口さんっ!!ダメですよっ!!」
「離せっ、離せー!!矢口もおまじないしてもらうんだー!!」

しかし、ガッチリ掴まれて一歩も動けない。
非力な梨華ちゃんは問題ではないのだが、小柄なくせに辻のパワーはハンパじゃない。
昨シーズン後半戦だけで、16本塁打したのはダテじゃない。

くっそー、お前ら覚えてろよー!!

あぁ…よ…よっすぃ〜!!
97 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月22日(日)23時51分31秒
>>92
ええ、長いおつきあいよろしくお願いします。
一応、最後までちゃんと書き終える予定なので…

しかし、市井や飯田に比べて他のキャラはちょっと弱いかな?
各キャラをフューチャリングした話を書く時に、うまく掘り下げられればとは思ってますが…
実は最初は短編集みたいなイメージだったんですよ。
98 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月23日(月)03時33分48秒
さて、そろそろ賭けの結果が・・・
市井ちゃんの運命はいかに!!(w
99 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月23日(月)23時16分41秒
矢口が去ったマウンドの上。

矢口のおかげで幾分気持ちは落ち着いた…
でも、圭ちゃんの言葉が頭から離れなかった…
圭ちゃんに見放された…

圭ちゃんが一番なっちのピッチングを誉めてくれたのに…
圭ちゃんが一番なっちの勝利を喜んでくれたのに…
圭ちゃんが一番なっちを理解してくれていたのに…

絶望感という名の大波があたしに押し寄せてきた。
あたしは一歩も動くことが出来ず、飲み込まれるのを待っていた。
一度飲み込まれたら、もう二度と岸には戻れない。
弱いあたしは、ただ暗い水底でもがき続けるだけ…
それなのにあたしは何も出来ず、ただマウンドに立っていた。
独りぼっちのマウンドで…
ただ飲み込まれるのを待っていた…

もうすぐプレイボールがかかる。
今のあたしがどんな球を投げても、圭ちゃんは納得しないだろう。
圭ちゃんはベンチに下がり、衣吹ちゃんかミカちゃんがマスクを被る。
圭ちゃんに愛想をつかされたボールなんかで、勝てるわけない…
明日の新聞の見出しはこう…『安倍四度目の開幕失敗!!エース失格!!』
圭ちゃんだけじゃない…
もう、誰もあたしに力を貸してくれない…
エースじゃないあたしは、また独りぼっちになるんだ。
100 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月23日(月)23時18分02秒
同じだ…
結局あの夢と同じなんだ。
いつも見るあの夢と…
知ってる圭ちゃん…?
あたしバカなんだよ…
ありもしない夢なんかに怯えてるんだよ。
去年の夏頃から見るようになったの…
知ってるカオリ…?
あたしあなたと出会った頃から、何にも変わってなかったんだよ。
相変わらず逃げてばっかり…
くだらない夢のこと一つ自分で解決出来ないんだよ。
カオリがあたしを嫌いになるのも当たり前だよね。

もうダメだ…飲み込まれちゃう。
そう思った時、手が差し伸べられた…
救いの女神の手が…

「知ってる?…信頼って無くしても取り戻せるんだよね…」
あたしの肩にそっと手を置き、その人物はそう言った。
101 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月23日(月)23時26分49秒
>>98
そうですね市井ちゃんにもそろそろ登場してもらわないと…
毎度レスありがとうございます。

うぎゃ〜っ!!100レス超えてもうた。
とりあえずケリはつけられましたが…
今後の更新は少しずつ。
102 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月24日(火)03時14分57秒
なっちを救うその手の人物とは・・・?
作者さん、いい所で区切りますね。(w
103 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月24日(火)22時48分09秒
「カオリもいろいろ言われるじゃん…
 三振王とか、チャンスに打てないとか、後藤が入団して余計に言われるようになったよ…
 なんでカオリが四番なんだって…」

あたしの肩に手を置いた人物はそう語り出した。

「四打席連続三振して四番失格とか言われるじゃん。
 でも次の試合でサヨナラホームラン打てば、さすが四番って言うんだよ…
 単純だよね」

そう言って、視線を宙に泳がせた。

しばらくして…

「うまく言えないけどさ…
 雨の日があれば、晴れの日もあるじゃん…
 曇りの日とか雪の日も当然あるんだけどね。
 例え濡れてても、干しておけば洗濯物は必ず乾くって言うか…
 まぁ、晴れの日もあるから…
 カオリの言いたいこと…分かる?」
104 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月24日(火)22時50分45秒
カオリとまともに会話を交わすのはいつ以来だろう?
まぁカオリが一方的にしゃべってるんで、会話とは言わないんだろうけど…
今のカオリの言葉は、正直分かるような、分からないようなそんな感じだった。
でも、すごくうれしかった…
そして、とても懐かしかった…
あたしがエースと呼ばれるようになった頃から、ずっと冷戦状態になっていたからだ。

若き四番としてスタメンに名を連ねたカオリだったが、
グラウンド内外のことでさまざまな酷評を受けた。
次第に、エースとして活躍を続けるあたしと、カオリを比較する動きが出てきた。
もともと負けん気が強いカオリは、この動きに煽られたように、
あたしを強くライバル視するようになった。

話しかけても、まともに取り合ってくれなかったり…
悪口までいかないけど、あたしのことを批判するコメントをしたり…
ピンチになっても、マウンドに激励にくることなんてなかった…

メディアがあまりにもあたしとカオリの不仲説を書くものだから、あたしもそれに乗せられた。
カオリはあたしのことが嫌いなんだって…
バカだね…あんなのあることないことおもしろがって勝手に書いてるのに。
エースとして居場所を確保したあたしは、カオリのことを軽んじて見るようになった。
感謝してもしたりないぐらい大切な人だったのに…
105 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月24日(火)22時52分55秒
それから今まで、ずっと冷戦状態が続いてた。
だから、この場面でカオリがマウンドに来るなんて思わなかった。
カオリがマウンドに来た真意は分からない。
でも、ただ今だけは誰かにすがりつきたかった。
そんな気持ちが、あたしから警戒心を奪っていった…
思わず、カオリの話を遮るようにこう問いかけた。

「カオリはなっちのこと嫌いだったんでしょ…?」

一番確かめたかった事…
カオリはどう答えるだろう?

「…カオリも少し大人になったんだよね。
 そしてちょっとは素直になったんだよ」

一瞬、カオリは驚いた顔をしたが、ポツポツと語り始めた。

「なっちとか後藤に負けたくないって張り合ってたんだけど、ちょっと違うかなって…
 去年の夏頃から思い始めたんだよ。
 チームの四番の仕事って何かって…
 新しい子達もレギュラーになったし…」

正直驚いた。
カオリの口からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。
106 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月24日(火)22時57分23秒
>>102
ありがとうございます。
狙って区切ってみました。(w

107 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月25日(水)22時57分59秒
「先輩として恥ずかしい所見せられないじゃん。
 チームのことより自分のことなんて…
 自分の成績だけにこだわってる場合じゃないなって…
 四番として、信頼されるようなバッチングしようって思ったんだよ」

カオリはちゃんと成長していた。
昨シーズン、カオリは初めて三割を打った。
ホームランは少なくなったが、三振が少しだけ減り、打点も増えた。
カオリの言う『信頼される四番としてのバッティング』をちゃんと成績として残した。
自分が情けなくなった…
あたしは何にも成長出来てない。
カオリと目を合わせているのが恥ずかしくなって、思わず視線を落とした。
また絶望感が押し寄せて来そうだった…

不意におでこに熱いものを感じた。
ほんの一瞬、温かくて柔らかい感触…
そ〜っとその部分に手を触れてみる。
108 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月25日(水)22時59分56秒
「深い意味はないよ。
 カオリそんな趣味ないから…
 ただ…なんか寂しそうだったからさ」

カオリはあたしから奪った帽子を返しながら、さらっとそう言った。

「カオリは本当は弱いくせに強がりだからさ…
 自分の周囲に壁を作って他人に素直になれなかったんだよね」

そして、ちょっと照れくさそうに言った。

「別になっちのことは嫌いじゃなかったよ。
 ずっと友達だし、ずっとライバルだから」

「ありがとう…」

一番確かめたかったことが確認出来た…
胸のつかえが一つ取れた気がした。
109 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月26日(木)02時47分46秒
カオリがまともな事言ってる!?
回想シーンの中のカオリと同一人物とはとても思えん。(w
110 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年04月26日(木)21時19分12秒
このたび紫版に引っ越しました〜。
ナッチファイト〜。
111 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月26日(木)23時07分50秒
「それからさ〜、圭ちゃんは別になっちに本当に愛想なんかつかしてないよ」

えっ…?!
何で知ってるんだろう?
改めてカオリの勘の鋭さというか何というか…まぁそういうものに驚かされた。

「たださ、信頼を取り戻したいなら早めの方がいいよ。
 さっきはああ言ったけど、一度無くした信頼って、本当は簡単に取り戻せないんだから…
 完全に愛想をつかされる前に頑張らないと」

「うん…ありがとうカオリ。
 本当に大人になったね…
 なっちなんて全然成長してないのに…
 なっちもカオリみたく変われるかな…?
 ううん…絶対無理だよね…」

「なんだよ〜ネガチブなこと言うなよ。
 本当は石川よりネガチブだよね、なっちは…」

うん…あたしも本当そう思うよ。
いつまでもウジウジしちゃってさ…
梨華ちゃんの方がよっぽどポジティブだよ。
112 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月26日(木)23時09分03秒
「よし、今日で卒業しよう!!
 『変われるかな?』じゃなくて変わるんだよ!!
 なっち次第だよ!!」

突然そう言い放つと、何を思ったかユニフォームのボタンを引きちぎった。
「はい、これ!!」
あたしに向かって引きちぎったボタンを差し出した。

え!?何なのこのボタン…
さっぱり分からない。
これは説明必要でしょ。

「カオリ何このボタン…」

「カオリの第2ボタン…カオリだと思って大事にして」

え!?まだちょっと分からない。

「何で…!?」

「え…だって卒業式だから…
 じゃあカオリもう行くよ。
 頑張ってね、なっち!!」

自分のポジションに戻っていくカオリを見送りながら、ちょっとうれしくなった。
こういうところは変わってないんだね…
113 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月26日(木)23時10分48秒
あれ?
カオリが戻って来た…
どうしたんだろう?

「カオリ大事なことを一つ聞き忘れたんだよね…」

猛ダッシュで戻って来たためか、息を切らしながらカオリは言った。

「なっち、カオリのこと嫌い…?」

(そうだね…なっちも素直な気持ちをカオリに伝えなくちゃね)

「嫌いじゃなかったよ。
 ずっと友達だし、ずっとライバルだよ」

「ありがとう…」

なんだか照れくさいね…
カオリも照れくさかったのか、猛ダッシュで自分のポジションに戻っていっちゃった。

結局またカオリに救われちゃったね…
114 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月26日(木)23時12分14秒
あたしは変われるだろうか?
正直いってまだ自信がない。

夢のことを考えると、身体が引き裂かれるような気持ちになる。
くだらない妄想だって分かってるのに…
どうしようもなく不安になった。
恐怖を抑えることが出来なかった。

何か確固たる証しが形として欲しかった。
エースの証し…
開幕戦のウイニングボール。
手に入れたらもう怖くなくなる…
もう、くだらない妄想に怯えることはなくなるんだ!!
そう思ってた。

今年がそのラストチャンス。
なりふりなんて構ってられなかった。

しかし、そのことで一番大切なものを失う危機に立たされた。
でも、今ならまだ取り戻せる。
今は難しいことは考えるのはよそう。
自分の精一杯の思いを込めたボールを投げ込むんだ。

カオリにもらったボタンを見ていたら、あの時のことを思い出した。
カオリとの出会い…
一番野球を楽しんでいた瞬間…
カオリに向かって投げ込んだあのボール…

ありがとうカオリ…
カオリにもらったボタンを、ズボンのポケットにしまいこんだ。

左バッターボックスに、横浜ベイスターズトップバッター石井さんが立った。
主審の友寄さんの右手が高々と上がった。

「プレイボール!!」

ペナント奪取を目指すシーズンが今始まった…


第一話 〜孤独なエース〜 完
115 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月26日(木)23時37分09秒
>>109
 やっぱり違和感ありますかね?(w
 (回想シーンのカオリはやり過ぎたからなぁ)
 一応、回想シーンから4年程経ってますからカオリも成長します。
 その過程はいずれ語る予定なので、今後もよろしくお願いいたします。
>>110
 てうにち新聞新入社員さんお久しぶりです。
 書きにくくなるので読まないと言ってたんですけど… 
 第一話完結を機に読んでみようと思ったらスレがなくなってて気になってました。
 週末にでもまとめて読ませていただいてレスさせていただこうと思います。
 お互い頑張りましょう。

116 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月27日(金)03時15分05秒
やっと、第一話が終わりましたね。
ずっと見てきましたが、作者さん、面白いっすよ!!
小説書くの初めてとは、とても思えないです。
この先も期待してますんで、頑張って下さい。
117 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月30日(月)22時41分25秒
>>116
 私の拙い文章にはもったいないお言葉ありがとうございます。
 期待に応えられるように頑張ります。
 (更新ちょっとサボっちゃいましたが…(w )

いよいよ新キャラも登場する第2話開始!!
118 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年04月30日(月)22時42分49秒
第2話 〜抱えていた爆弾〜

いつもそういう風に見られないんだよね。
だから強がってた…
本当は弱いくせに…


プレイボールのかかる数分前。
誰もいなくなったブルペンで小躍りする怪しい影一つ…
(ふんふんふ〜ん♪)
まもなく訪れるであろう最良の瞬間を待ちわびて、ウキウキの市井紗耶香。
(踊るか?踊っちまうか?いや、むしろ踊るだろ…ああ踊るさ!!)
軽快にステップを踏み出す。
(市井さ〜ん コングラチュレ〜ショ〜ン! ハイッ!♪)
もう誰にも止めることが出来ない…

パラッパラッと一心不乱に踊っているところに、人が入って来た。
プクプクほっぺにショートヘア…
そして野球選手らしくない小柄な身体…

(おっ!!あれは…)
119 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月01日(火)03時42分39秒
市井ちゃんは相変わらずのはじけっぷりですな。(w
そしてついに新キャラ登場ですか!!
しかし、またしてもいい所で切られた・・・(w
120 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月01日(火)23時47分53秒
(紹介します
 セットアッパーの福田明日香…
 背はまぁ低い方だけど、頼れる娘
 アンダースローから繰り出される制球力抜群の変化球と、クレバーな投球術が武器なの
 だって裕ちゃんが
 『明日香はホンマに頼りになるわ。みんな見習わなあかんで…』って言ってたし…)
 
「ねっ、明〜日香!!」

あたしの方を見て、何故か唖然とした表情をしている明日香に声をかけた。

「えっ?!
 『ねっ、明〜日香!!』って言われても何のことだか…
 どうしたの紗耶香?」

目をパチクリさせながら、あたしを見上げる明日香。

(う〜ん…クリクリしててかわいいなぁ明日香は…妹みたいだね)

そこへ、もう一人大声をあげながらやって来た。

「福ちゃん見た?!始球式…
 めっちゃおもろかったやん!!
 まぁ、なっちにはちょっと酷やったけどな…」

興奮した様子でブルペンに入って来た平家みちよ…
あたしと目が合った。

「ん…!!紗耶香ここにおったん?
 紗耶香見た…始球式?」

「紗耶香たぶん見てないと思うよ…ずっと踊ってたみたいだから…」

あたしの替わりに明日香が答える。

(う〜ん、一応やっときますか?めんどくさいなぁ…また踊らなきゃいけないよ…)
121 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月01日(火)23時49分44秒
(紹介します
 左のワンポイントの平家みちよ…
 ドラフト1位入団だけど、伸び悩んでる人
 マイナーチェンジを図ろうとして修得した豊富な変化球が武器なの
 だって裕ちゃんが
 『みっちゃんにも期待しとるで…
  ワンポイントでええんや…
  一人二人きっちり抑えてくれるだけでええんや…』って言ってたし…)

「ねぇ〜みっちゃん!!」

再びパラッパラッと軽快にステップを踏みながら、みっちゃんに声をかけた。

「何が『ねぇ〜みっちゃん!!』やねん?何、自分踊っとんねん?ええ加減にしぃ!!」

素早いツッコミがちょっと嬉しい…
さすが、みっちゃんだ。

平家本人にしてみれば、ツッコミなんかよりピッチングを誉めてほしいだろうが…

「さっきから紗耶香おかしいんだよ。ずっと一人で踊ってるの…」

「そうやな、なんかえらい舞い上がっとるみたいやん。何かあるんちゃう?」

げっ…マズイ。
ここでこの二人にバレたら元も子もないじゃん。
もっとはしゃいでいたいのにさ…
122 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月01日(火)23時56分24秒
>>119
 市井さんは勝手にいろいろ動いてくれるので書きやすいし、
 書いてて楽しいです。
 本当は結構書き溜めてあるのですが、今ちょっと詰まっているので、
 更新は徐々に…

マイナーコンビ? 市×福ネタ スタート!!
123 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月02日(水)03時09分31秒
いちふくいいっすね!!
かなり、マイナーな組み合わせだと思いますよ。
だからこそ逆に楽しみです!!
それにしても、市井ちゃんの踊りながらの新キャラ紹介はワラタ。
124 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月02日(水)13時17分46秒
いや〜、面白いですね。
出てくるメンバーみんな個性的だし。
この先も期待大!
125 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月02日(水)22時58分28秒
今まではしゃいでいた紗耶香の表情が急に変わった。

「そんなにおかしいかな…?
 市井が舞い上がってるのってそんなに変…?!
 いつもクールでなくちゃいけないの?!
 今日は大事な開幕戦!!
 なっちの開幕初勝利…チームの開幕初勝利がかかった…
 大事な大事な開幕戦っ!!
 市井だって怖いんだよっ!!
 なっちの開幕初勝利を…チームの開幕初勝利をぶち壊しにするんじゃないかって…
 本当は…不安で不安で仕方ないんだよっ!!
 はしゃいでなくちゃプレッシャーで押し潰されそうなんだよっ!!
 いつもクールでなんていられないっ!!」

目に涙を溜めながらの紗耶香の突然の激白…

みっちゃんは神妙な顔つきで、紗耶香の言葉を真剣に受け止めているようだった。

でもあたしには分かった。
紗耶香は何かを隠そうとしている。
そして今のはそれを誤魔化すための演技だ。
やけに芝居がかった台詞…
そして何より激白の後に、一瞬だけ見せた『してやったり』の表情…
ちょっとイジワルだけど、紗耶香が隠そうとしている何かを知りたくなった。
あたしもちょっとはしゃぎたくなったからかな?
126 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月02日(水)23時00分51秒
「大丈夫だよ紗耶香。
 紗耶香が自分で思ってる程、みんなは紗耶香のことクールだと思ってないから…
 せいぜい一部のファンの人達や新人の子達ぐらいなもんだよ。
 紗耶香のことクールだなんて思ってるのは…
 みっちゃん、紗耶香いつもと変わらないよ。
 騙されちゃダメだよ。
 紗耶香ウソ泣きして、あたし達をからかおうとしてるんだから」

さて、紗耶香はどう出るだろうか?

しばらくの沈黙の後、紗耶香はペロリと舌を出した後、にまぁっと笑った。

「チェッ、ひどい言い方するなぁ。
 あ〜あ、バレちゃった。
 せっかく二人をからかってやろうと思ってたのに…
 はいはい、どうせ市井はクールじゃありませんよ〜だ」

そう言ってイジけてみせる。

やっぱりそう来ましたか…

「なんや、ビックリしたわ〜
 そういやそうやな…別にいつもと変わらへんわ。
 あ〜アホらし。
 あたしちょっと裕ちゃんのとこ行ってくるわ。
 裕ちゃんは見とったやろか?…始球式。
 いや、ホンマおもろかったもんなアレは…」

そう言いながらみっちゃんはブルペンを後にした。
127 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月02日(水)23時03分05秒
二人きりになったブルペン…
さて、これなら紗耶香も話しやすいでしょ。

「みっちゃんもちょっとおかしいよね。やっぱり緊張してるんだね…」
未だにイジけ続ける紗耶香に、そう話しかけた。

「みっちゃんもってどういうことさ?」
紗耶香がおもしろくなさそうに聞き返してきた。

?!
別に気分を悪くするとこじゃないのにどうしたんだろう?
まぁ、いいか…
あたしはその言葉をとりあえず無視して、ズバリ紗耶香に問いかけた。

「さっきはああ言ったけど、やっぱり紗耶香おかしいよね…何を隠そうとしてたの?」

紗耶香は予想外のあたしのツッコミに驚いたようだった。

「?!…
 明日香には敵わないなぁ…
 まぁ明日香なら口も固いし、喋っちゃおうかなー
 本当は喋りたくて喋りたくてウズウズしてたんだよねー
 でも絶対ないしょだから…
 いい、明日香?」

そう前置きした後、紗耶香は自分の悪事を楽しそうに語りだした…

そう…楽しそうに…
128 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月02日(水)23時07分21秒
「プププ…ね…明日香?
 ケッサクでしょ?
 いや〜矢口達のビックリした顔が目に浮かぶよ。
 一回表が終わったらさ〜
 絶対『バ〜カ!』って言いに行ってやろっと」
 
そっか…そんなイタズラしようとしてたんだ…
だけどそんなイタズラのことなんてどうでもいいの。
だって今、本当に紗耶香が隠そうとしてたものを見つけちゃったから…

さっきの台詞は紗耶香の本心だったんだね。

「それにしてもさっきのは迫真の演技だったね。
 一瞬、紗耶香が本気で不安がっているのかと思っちゃった。
 実は本当に緊張しているんじゃないの?」

ちょっと冗談めかしたあたしの言葉に対して、紗耶香がすぐさま反応した。

「何言ってんの〜?
 あたしが緊張する訳ないじゃ〜ん。
 今のあたしは昔のあたしとは違うんだからさ〜
 まぁ明日香が騙されそうになる程、
 この市井さんの演技力に磨きがかかってきたってことだけどね〜」

そう言いながら笑ってみせる紗耶香に、あたしは冷めた口調で言い放った。
紗耶香を刺激するかのように…

「嘘ばっかり…」

案の定、紗耶香はムキになって突っかかってきた。

「何がさ?!何が嘘だって言うのさ!!」

二人の間に沈黙の時間が流れた…
紗耶香が鋭い目つきであたしを睨んでいる。
あたしはその視線を反らすことなく、逆に冷静に紗耶香を見つめ返す。

しばらくして紗耶香が、ため息混じりに沈黙を破った。

「分かったよ…
 コワイ女だね明日香ってさ…
 何で分かっちゃうのさ?
 ハイハイどうせ市井さんは緊張と不安で胸いっぱいですよ〜だ」

そう言ってバツの悪そうな顔をした…
129 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月02日(水)23時19分13秒
>>123
 市井さんのキャラ紹介ネタは会心の作だったので、
 喜んでもらえて嬉しいです。
 『いちふく』に限らずマイナーな組み合わせはいろいろ準備しているので、
 お楽しみに…
>>124
 ありがとうございます。
 ひょっとして読者が増えたかな?
 読者の少ない不人気小説なんでどうぞ御声援よろしくお願いします。
 御期待に応えられるよう頑張ります。

詰まってた部分がクリア出来て今日だいぶ書き溜められたので、
舞い上がって多めに更新。
福田さんは違和感あるかな?
130 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月03日(木)11時54分25秒
えー作者さんのレスに刺激されて、初めて読んでみました。GWだし(w
ここで書いてあるのは知ってはいたんですが、野球ものということで、す通りしてました。
(スポーツものって結構趣味に走りすぎてて個人的に引いちゃうものが多いんですよね)
うーんもっと早く読んでおくべきだった。
たくさん突っ込むところがあったのに、(ネタとしてね。)
ほめ言葉になるかわかりませんが、試合外での人の話がとても生き生きしてて好きです。
更新楽しみにします。
131 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月03日(木)23時51分22秒
「なんかさ…別に紗耶香のこと言ってた訳でもないのに、
 『緊張してる』って言葉にすごく反応したから変だなって…
 その後、紗耶香が笑いながら話してたんだけど、いつもと違ったんだよ。
 自分で気付いてた?
 ちょっと笑顔が引きつってたんだよ。
 楽しそうな顔してるつもりでも、ちょっと不安そうだったんだよ」

(鋭い洞察力だこと…)

改めて明日香の恐ろしさを思い知った気がする。

「なる程ねぇ…そいつは気が付かなかったな。
 なんだよ結局市井の演技力ってそんなもんかよ」

「紗耶香は顔に出やすいんだよ…でも、ほんのちょっとだよ」

拗ねてみせるあたしを、一応明日香がフォローする。

「そっか…
 なんかさ、いつも開幕戦はいい緊張感を持っていられるんだけど、
 今日は特別ピリピリしてんじゃん。
 なっちのこともあるし…
 今年は開幕ダッシュで絶対優勝だってファンの期待がすごいから…
 でも、後藤や新人達の前で、そんな素振り見せられないじゃん。
 先輩が緊張してるとなると、余計に不安がるしさ…
 他のみんなにも気を遣わせたくないし…
 だからなんか気を紛らわせたくってさ」

自分の不安を晒け出せるっていうのは、何て素晴らしいんだろう。
必ずしも何か解決する訳ではないんだけど、う〜ん何ていうかな…?
一人で抱えてたものを、共有してもらえるような感じが安心するんだよね…
そうすることで、自分の不安が少し軽くなるような気がするんだ。

自分のことをよく知っていてくれて、安心して相談出来る人間がいる。
そんな仲間があたしにはたくさんいるんだ…
それはとても嬉しいことだ。

明日香のおかげで、それを改めて確認することが出来た。
132 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月03日(木)23時55分18秒
あたしがそんなことを考えながら満足そうな顔をしていると、
明日香が急に思い付いたようにクスッと笑った。

(ん…?何だろう…)

「それで必要以上にあんなにはしゃごうとしてたんだ?
 あんなイタズラまで考えて…
 あんな演技で誤魔化そうとして…
 でも本末転倒ってやつだよね?」

そう言い終えた明日香は未だにクスクス笑っている。

(何がいったいおかしいんだろう?本末転倒ってどういう意味だっけ?)

あたしは田村正和張りのポーズを取り、何がおかしいのか考えてみる。
しばらく考えていたが、何がおかしいのかさっぱり分からない。
思考がグルグル頭の中で駆け巡る。
ラッパを持った天使達が頭の上を回り始めた。
騎兵隊が突撃を開始する。
銭形警部がルパンを追いかけ回している。
もう何がなんだかよく分からない…
このままではカオリになってしまう危険を恐れて、明日香に問いかけた。

「何がそんなにおかしいんだよ?」
133 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月03日(木)23時59分31秒
「だってさ緊張しているのを隠したいはずなのに、
 みんなに心配かけさせたくないはずなのに、
 あんな演技して本気にされたら、普通にみんなに心配されちゃうよ。
 たぶんイタズラの方を誤魔化すのに夢中で、気付かなかったんだろうけど…
 大ボケだよね。
 それに、一人きりであんなに踊っちゃってさ…
 頭がおかしくなっちゃったのかと思って、心配しちゃうよ
 あ…思い出してきちゃった」

そう言うと、明日香はアハハハッと大声を上げて笑った。

(なる程、そりゃ大ボケですね。
 ああ、確かにイタズラを誤魔化すのに夢中で、気付きませんでしたよ。
 自分の演技力に、勝手に一人で酔ってましたとも…
 でもね…
 あたしも気付いちゃったんだよねぇ。
 想いを内に秘めるタイプのあなたが、今日はやけによく喋るじゃないですか?
 それにあなたが大声を上げて笑うのなんか、初めて見させていただきましたよ。
 ねぇ明日香さん…
 今まで、あなたの調子を狂わすのはアイツ位だと思ってましたが…
 これは、あなたの冷静な顔を、この市井さんが引きつらせるチャンスじゃないですか?
 プププ…
 いいですか?
 市井さん反撃しちゃってもいいですか?
 反撃しちゃいますよ!!)
134 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月04日(金)00時34分01秒
>>>130
 レスありがとうございます。
 130さんみたいな読者が実は一番嬉しいです。
 スポーツものが素通りされやすいのは承知の上ですし、
 それで読者が少ないのももう諦めてます。
 (まぁ単純におもしろくないだけかもしれませんが…)
 実際試合に入ると、どうしても独特のマニアックな部分が出て、
 やはり万人向けではないかもしれません。
 でも野球を知らない読者にも楽しんでもらいたいですし、
 野球というのはあくまでシチュエーションであって、
 本当に描きたいのは娘達のドラマ部分なんですよね。
 だから、そういう部分を認めていただけるのはとても嬉しいです。
 今後もコミカルからシリアスまでいろんなネタを盛り込む予定なので、
 遠慮なく突っ込んでいただけるようお願いします。
 素通りしてて後悔する読者が出るようなおもしろい小説を書けるよう頑張りたいです。
 御声援よろしくお願いいたします。
135 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月04日(金)05時04分56秒
GWキャンペーン中なのか、いつもより多く更新されていて大満足です♪
それに何やら作者さんの熱いレスも読めたし(w
よく考えてみたら確かに野球ものというより娘達の人間ドラマですよね。
今更ながら、本来の野球のシーンよりも娘達の掛合いのシーンを楽しみにしている自分に、
気づかされました。(遅すぎ)
とにかく作者さんの、その熱い心意気があればNO,1小説への道も遠くないですぞ!!(w


136 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年05月04日(金)14時29分38秒
読んでますよ〜。
頑張ってください
137 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月04日(金)21時46分45秒
あたしは明日香の笑い声を遮るように声をかけた。
明日香があたしにしたように、冷めた口調で明日香を刺激するかのように…

「何、笑ってんのさ…自分だって緊張と不安で胸いっぱいのくせに…」

プププ、ど〜だね明日香くん。

「うん、やっぱり気付いちゃった?」

拍子抜けの明日香の返答に、あたしはコケそうになった。

(あ…あれ、意外にあっさり認めちゃうんだ…負けず嫌いのあなたが?)

「今日はみんなおかしいんだよ。緊張してない人なんていないよ。ほら、あれ見て」

そう言って明日香はマウンドを指差した。

そこには驚くべき光景が…!!

続きは次週!!
138 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月04日(金)21時49分00秒
なんちゃって…しかし、驚いたなぁ…
マウンドの上では、なんとカオリがなっちを激励しているようだ。
あんな光景を見たのはいつ以来だろうか?
思わず口をパクパクさせながら、二人を指差してしまった。

「ね…いつもなら考えられないでしょ。
 カオリも緊張してるんだよきっと…
 でも、みんな頑張って欲しいね」

そう言う明日香の横顔を見てたら、なんだか悔しくなった。

冷静に周りをよく見てるしさ。
自分の弱さは簡単に認められちゃうしさ。
でも、芯はやっぱり強くてちょっと頑固者…
自分なりの信念は絶対曲げない。
かといってそれを他人に押し付けることなく、
いつでも闘志は内に秘めてるんだ。

ちょっとカッコイイよね。

年下のクセにさ…
なんだか悔しいよ。

でも、最後に笑うのは結局あたしなんだよね…プププ
気まぐれで始めた賭けが、まだ残ってるじゃないですか。
まぁ、矢口に夕食をオゴってもらうことで良しとしましょうよ。

そんなことを考えて、気を取り直した。
そして、明日香に声をかけた。

「みんな頑張ってくれるよ。そしてあたし達も頑張ろう。絶対勝とう!!」
「うん…」

ガッチリと固い握手を交わす。
明日香の控えめな笑顔が嬉しい。
気分がずいぶん楽になった。
やっぱり仲間がいるって素晴らしいな…
139 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月04日(金)21時58分16秒
「絶対勝って楽しい夕食会にしないとね…
 負けてお通夜みたいな夕食会なんてゴメンだからね。
 夕食は何がいいかな〜
 あ!そうだ…よかったらさ明日香もおいでよ。
 どうせ矢口キャプテンのオゴリなんだからさ…」

すっかり緊張も解けていい気分になったあたしは、明日香をそう誘ってみた。

「あたしはいいよ…」

「何でさ?…タダ飯食うチャンスじゃん…」

「紗耶香に悪いから…」

「何であたしに気を遣うのさ。
 気を遣うなら矢口だろ。
 まぁ矢口にはお金を使ってもらうんだけどさ…プププ。
 でも、明日香なら矢口もイヤだって言わないよ」

「でも、今のなっちの初球ストレートだったよ…」

(は?…)
140 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月04日(金)22時13分36秒
>>135
 GWキャンペーン中につき多めに更新してみました(w
 134のレスはお恥ずかしい限りで…
 たまに自分で盛り上げておかないと挫けそうなんですよ。
 ポジティブ!ポジティブ!
>>136
 てうにち新聞新入社員さんありがとうございます。
 あのモードは遠慮なく使わせていただく予定です。

明日の更新で『いちふく』ネタ終了。
いよいよ試合へ突入。
長かったねぇ…ホントに。
141 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月04日(金)22時47分18秒
他の小説だとクールな役が多い市井さまですが、
やはり、明日香のほうが一枚上手ですね。
まあ、ここの市井さまは、特別仕様ですが。(w
142 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月05日(土)03時18分58秒
賭けには敗れ、明日香には主導権を握られっぱなしの、へたれな市井ちゃん。
はたして、このまま三枚目路線をただひたすら突き進むのみなのか!?(w
143 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月05日(土)10時13分06秒
思わず明日香の顔をジーッと見つめてしまった。

(何?…今ストレートって言った?あたし聞き間違えたのかな?)

「今リプレイがオーロラビジョンに出るから見てごらんよ…」

動かなくなったあたしを心配して、明日香が声をかけてくれた。
そしてセンターバックスクリーンを指差す。

スコアボード右に設置された高さ8メートル、幅24.5メートルのオーロラビジョン。
ゲーム中にはここにリプレイ、選手の表情、ファンの表情などが映し出される。
そこに、なっちの初球の投球の様子が映し出された。
なっちの右腕から放たれたボールは何の変化も見せず、
ほぼ真ん中辺りに構えた圭ちゃんのミットに吸い込まれていく。
横浜ベイスターズの1番バッター石井さんは、これを見逃した。
球速は146km/hと表示された。

(146km/hとはムチャクチャなスライダー投げるなぁ…
 でも全然落ちてないじゃん。
 プププ…全然変化しないんでやんの…
 プププ…146km/hだって…
 まるでストレートみたいじゃん…)

「だははははっ!!見た今のまるでストレートじゃん」

「そうストレートだよ…」

「ストレートって言ったら真直ぐな球じゃん。
 全然変化しない球ってことじゃん。
 だははははっ!!
 こりゃケッサクだね…
 だははっ…は
 …?!」
144 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月05日(土)10時14分57秒
自分の口から発せられた言葉の意味するところに気付き、
一瞬にして顔が青ざめる。
膝がガクガク震え出す。
Oh!No!市井さんサスペンス…
ちょっと大袈裟か?

「ちょっと〜何でストレートなの?
 冗談じゃないよ〜
 落ちるスライダーだって言ってたのに…」
 
そこへ明日香が冷静な口調で一言。

「きっとなっちもおかしかったんだよ…緊張してたんだよ…」

じっくり考えてみる。
なる程…
あたし達が緊張するぐらいだから、開幕投手のなっちの緊張は相当なものだろう。
今まで勝ってないっていうプレッシャーもあるだろうし…
そうだよな…
大体なっちが開幕初球に変化球なんておかしかったんだよ…

「あ〜あ今日は踏んだり蹴ったりだよ」

そう言ってため息をつく。

「無理しようとするからだよ…」

(ごもっともです。でも目的は果たせたし、明日香の珍しい表情も見れたしね)

「よし!!まぁいいや…今日の市井さんは太っ腹だ!!
 明日香もおいでよ。
 たぶん、焼肉になっちゃうと思うんだけどさ…」

「紗耶香がそう言うなら、お言葉に甘えちゃおうかな…」

そう言って明日香は笑う。
控えめな笑顔…
いつもの明日香だ。

楽しい夕食会にするために頑張ろうね明日香…
 
145 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月05日(土)10時25分32秒
遊びに行く前に更新。
『いちふく』ネタ終了。
いつまでも書き溜めた分を寝かせておいても仕方ないので、夜も更新する予定。
>>141
>>142
 本当はやり過ぎた市井さんをフォローするためのネタでしたが、
 福田さんが勝手に頑張っちゃったものですから…(w
 でも、決めるときは決めるカッコイイ市井さんもいつかお見せ出来るハズ。
146 名前:実況くん 投稿日:2001年05月05日(土)23時24分00秒
『いよいよ開幕を迎えました新世紀のプロ野球。
 新世紀初のセントラルリーグのペナントレースを制するのは、どのチームか?
 本日は、昨年2位と躍進を遂げましたUFAハロープロジェクトと、
 森新監督を迎えた横浜ベイスターズの開幕戦の模様を、
 オレ流解説の落合博満さん、熱血先生こと栗山英樹さんの解説でお届けいたします。
 お二人ともよろしくお願いします』

『よろしくお願いします』

『さて、両チームの開幕投手なんですがハロープロジェクトは安倍、
 ベイスターズは小宮山…
 落合さん、これはちょっと意外でしたか?』

『う〜ん…横浜は順当に三浦だと思ってたんで、小宮山はちょっと意外ですかね。
 まぁ森監督は、西武時代に小宮山のピッチングをよく見てますからね…
 ハロプロの安倍はまぁ順当でしょ。
 石黒やアヤカの名前も挙っていましたが、
 一年を通して、ローテーションの中心にならなきゃいけないのは誰かってことでしょ…
 真の意味でエースって呼べるのは結局、安倍しかいないんですよ。
 ただ、それだけに今日の安倍の投球内容は重要な意味を持ちますよ…』

『なる程…その安倍のピッチングですが、栗山さんはどう見られますか?』

『初球は相変わらずストレートでしたね。
 石井選手に対して今まで3球ともストレートでしたが、
 今日のストレートは走っていると見ていいでしょうね。
 2球ファールしましたが、いずれも詰まってましたからね』

『なかなか石井琢朗が前へ打球を飛ばすことが出来ませんね。
 ここまで3球ともストレートですが4球目はどうか?
 お〜っと、石井琢朗4球目の落ちる球を空振り!!
 今のはフォークボールですか落合さん?』

『VTRを見ると挟んでいないですね。これスライダーかな栗山くん?』

『安倍選手がキャンプから取り組んでたボールですね。
 縦に変化するスライダーって言ってましたね。
 元オリックスの佐藤義則さんが投げてたヨシボールに近い球だと思います』

『先発の安倍、トップバッター石井琢朗を空振り三振に斬って取りました。
 そして打席に、昨年の首位打者2番の金城を迎えます』
147 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月05日(土)23時28分22秒
プレイボールがかかり、初球を投げ込んだ後、あたしは不安で仕方がなかった。
あたしの投げ込んだボールに対して、圭ちゃんはどういう評価を下すだろうか?
落ち着かなくてマウンドをならしたり、ロージンバッグをはたいたり…

自分の投げたボールに自信がない訳ではない。
今の自分が投げられる精一杯のボールを投げた。
今の自分を包み隠さず表現することが出来たはずだ…

しかし、カオリがああは言ってくれたものの、
本当に圭ちゃんは、私に愛想をつかしていないだろうか?
そんなことを考えると不安になった。

心の中はどんより曇り空…

圭ちゃんが捕球をしてから、
次のアクションをおこすまでの時間が、途方もなく長く感じた。

捕球の後、しばらく間を置いて圭ちゃんがスクッと立ち上がる。
今のあたしにとっては運命の瞬間…
思わずポケットに手を突っ込んで、カオリのボタンを握りしめた。

しかし、そんな不安は無用だった…

圭ちゃんは、あたしの胸元に捕り易いボールを返してくれた。
そして…
「ナイスピッチ!!いい球きてるよ!!」
って…声をかけてくれたんだ。

雲間から光が射すってこんな感覚かな?

身体中に力がみなぎってきた。

内角を2球ストレートで押した後、落ちるスライダー…

握りはスライダーというよりストレートに近い感じ。
手首をひねりつつ親指と人さし指の間から抜く感じで、地面に叩き付けるように投げる。
覚えたばかりでうまく抜けない時があるボールだが、精一杯腕を振った。
その結果、自分でも驚く程よく落ちた。

トップの石井さんを空振り三振に取り、ワンアウト。

(なっち今日は圭ちゃんを信じて精一杯投げ込むからね…)
148 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月05日(土)23時33分02秒
こんな不安な気持ちでポジションに着いたのはいつ以来だろう?

優勝を狙うシーズンの開幕戦。
この後、巨人3連戦も控えているので、今年こそは開幕戦に勝って勢いをつけたい。
みんなの気持ちは同じだろう。

でも、あたしが不安要素を作ってしまった。
苦悩するなっちを余計に追い込んでしまった。
あんな酷いこと言っといて、『まともなピッチングをしろ!!』なんて言うほうが無理だ。

あたしがマウンドを去った後、キャプテンの矢口と選手会長のカオリがなっちを激励していた。
なっちに対して胸に一物あるらしいカオリだって、自分の役目を果たそうとしているのに…

(あたしがしたことはなんだ!?)

選手会長のカオリを補佐して、チームをまとめなきゃいけない副会長なのに…
なっちを初めとする投手陣を、女房役として支えなきゃいけないのに…
グラウンド内の監督代理として、
冷静な判断力と、忍耐力を必要とされる要のポジションのキャッチャーなのに…

チームのことなんて考えないで、一時の感情に任せてとんでもないことをしてしまった…
そんな後悔の念が、あたしの心を支配していた。

でも…しょうがないじゃない。
だって悔しかったんだもん。
あたしの勝手な思い込みだったかもしれないけど、
あたしが今まで思い描いていたなっち像と、本人の考えていた事はギャップが有りすぎた。
裏切られた気持ちがした…

ううん…違うよね。
本当はあたしも分かっていたんだ。
本当に悔しかったのは…本当に頭にきたのはそんなことじゃないんだ。

なっちの過去にちょっと触れたぐらいで、
なっちを全て理解した気になってた自分が、愚かで悔しかったんだ…
なっちの本当のピンチに、
なっちに当り散らすことしか出来なかった自分が、情けないんだ…
本当にあたしは大バカヤローだ。
こんなあたしに、なっちは愛想をつかしただろう…

本当はなっちに謝りたい。
どうにかしてなっちの力になってあげたい。
でも、今さらどの面さげてなっちを激励しに行けっていうの?
意地っ張りな自分がうらめしい。

そんな葛藤があったから、あたしは改めてなっちをフォローしに行くことも出来ず、
ただ不安と後悔を抱えたまま、なっちの初球を待つことしか出来なかった。
149 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月05日(土)23時36分49秒
なっちの体がマウンド上で跳ねる…
躍動感あふれるフォームから繰り出されたボールが、あたしのミットに収まった。
投球練習時の違和感は感じなかった。
なっちの想いが込められた一球…

野球を愛する情熱…
バッターに向かっていこうとする気迫…
今の自分が抱えている不安…
今の自分を変えようという想い…
加えてなっちのあたしに対する気持ち…

ホームベース付近でノビる威力抜群のストレート。
なっちが、今の自分を包み隠さず表現するために選んだボール。
なっちの心の叫びが聞こえてきそうだったよ。

まぁ所詮は、またあたしの思い込みが強いだけのことかもしれないけどね…

でも確かにあたしの心に響くものがあった。
そして、煮えきらなかったあたしに勇気をくれた。
なっち…これが本当のエースのボールなんだよ!

なっちの胸元に捕り易いボールを心掛けて返球した後…

「ナイスピッチ!!いい球きてるよ!!」

そう簡単になっちに声をかけることが出来た。
投球後、不安そうだったなっちの顔に笑顔が戻ってきた。
本当にあんたって単純だね。

(オッケー!!なっちの気持ちは充分に分かった。後はあたしに任せなさいよ!!)

焦ることないんだから、ゆっくり自分を変えていこうよなっち…
今度はあたしも協力するからさ…
もう一人で抱え込まなくていいんだからね…

それにしてもトップの石井さん、ほぼ真ん中だったのにやけに腰を引いて見逃したわね…
ケガで調整不足だったせいかしら?
まぁいいか…ストレートがいい感じだから思いきって内角を攻めさせてもらうか。

(さぁなっち、ぶつけても構わないぐらいの気持ちで投げてきなさいよ!!)
150 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月06日(日)05時19分50秒
読者全員プレゼントありがとう。
いちばんキャラに違和感があるの解説の落合だったりして。(w
151 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月06日(日)23時03分23秒
安倍さんはとっても調子がよさそうでした。
こんなにお客さんがいる中で、いきなり三振とってすごいなぁって思いました。
緊張しないのかな?
辻は、よっすぃ〜におまじないしてもらったのに、また緊張してきちゃいました。
心臓がドキドキ、ドキドキしてる…
お客さんの大きな声が、辻の心臓をよけいにドキドキさせるんですよっ。
安倍さんが三振とったときなんて、『ワーッ!!』ってすごかったんですっ。
胸がしめつけられるようで、なんかきもち悪くなってきちゃった。

(辻のとこにボール飛んできませんように…)

でも神様はイジワルでした。
2番の金城さんの打ったボールは、辻の目の前へ…

「セカンドォ〜!!」

梨華ちゃんが甲高い声で叫ぶ。

(わかってるよっ!!)

正面に近い強めのゴロ。
腰を落としてグローブを差し出した。

でも辻が思ってたより強い球でした。
グローブでボールをはじいちゃった…

「辻っ落ち着いて!!間に合うよ!!」

飯田さんの声が聞こえたんだけど、なんか頭の中が真っ白になってて…
あせって投げたボールは、飯田さんのず〜っと頭の上へ。

(やっちゃった…安倍さん、飯田さんゴメンなさいっ)
152 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月06日(日)23時25分57秒
辻の送球が、カオリの遥か頭上を越えたのを見届けたあたしは、
イヤな予感が当たってしまったのを忌々しく思った。

(やっぱりなー。
 どこかでやるとは思ってたけど、イキナリかよー。
 だから矢口は言ったんだよなー。
 『大丈夫って平気そうにしてる奴ほどポカやらかす』って…)

そうは思いながらも、仕方ないかとも思う。
この開幕戦の緊張の中でプレーするのは、初めてなんだから…
それも今日はいつも以上だ。
あたしだって内心ドキドキして仕方がない…

マウンド上に内野陣が集まっている。
あれ?またカオリがいる。
さっきもなっちを激励してたみたいだけど、どういう風の吹き回しだろ?
まぁいいか…

あたしがマウンドに着くと、辻が泣きそうな顔でなっちにひたすら頭を下げていた。
なっちと梨華ちゃんは辻を励ましている。
カオリはと言えば、軽いお説教だ。

「辻っ!手に人って書いて3回飲んどきなさい。
 それと明日は早出で反復練習だからね!!」

辻はカオリに言われた通り、手のひらに人という字を書いて飲み始める。

(可哀想に…)

あたしも辻に軽く注意した後、辻となっちに声をかけてその場を解散とした。

自分のポジションに戻った後も沈みがちな辻の様子を見て、
ふと、自分が初めて1軍の試合に出場した時のことを思い出した。

そういやあの時、エラーして裕ちゃんに怒られたっけ…

そんな感傷に耽っていた時に、打球音がした。

三遊間の打球…
ショートの梨華ちゃんの守備範囲だが、球足が速くないのであたしにも捕れそうだ。

(下手にエラーされても困るしなー)

そう考えて梨華ちゃんには悪いけど、あたしが捕ることにした。
軽快にさばいた後、セカンドランナーを牽制してから、一塁へ…

この時、あたしは突然の打球に対して集中力を欠いていたのかもしれない。
153 名前:実況くん 投稿日:2001年05月06日(日)23時28分29秒
『3番小川打った。
 しかし、これは ショートゴロか?
 いや、サードの矢口が捕ります。
 サード矢口、セカンドランナーを牽制して、そしてファーストへ…
 あぁ〜っと高い、高い!!
 また送球が高〜い!!
 一塁はセーフ!!
 ファースト飯田が捕球するも足がベースから離れて、一塁はセーフ!!
 ワンアウトでランナーが二塁一塁!!
 横浜ベイスターズ、相手のミスからチャンスを掴みました。
 いや〜落合さん、エラーが二つ続きましたね』

『う〜ん、これは痛いね…
 まぁ辻はエラーの多い選手でしょ。
 昨年後半戦だけでいくつですか?』

『え〜手元の資料ですと、出場した後半戦56試合で16個のエラーですね。
 これはちょっと多いですね。
 ついでに言えば、ショートの石川が49試合で12個。
 これも多いですかね?
 そして、今エラーしたサードの矢口はフル出場で8個ですね』

『辻、石川に関してはちょっと酷いよこの数字は…
 結局バッティングがあるから、
 我慢して使わなけりゃならないってのが苦しいところですよ。
 今の矢口のエラーも、本当はショートの打球ですよ。
 ただ、その辺の二人の守備力っていうのが矢口の頭の中にあるから、
 無理をして今みたいなエラーになるんですよ…』

『栗山さんはどう思われますか?』

『う〜ん…落合さんのお話もごもっともなんですが、
 僕はやっぱり開幕独特の緊張感も、多少はあったんじゃないかと思いますけどね。
 まぁいずれにしても、安倍選手には厳しい場面になりましたね。
 この場面で4番の鈴木尚典ですからね』

『さて、ワンアウトランナー二塁一塁で4番の鈴木尚典を迎えるところですが、
 ここでマウンドにまた人が集まります』
154 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月06日(日)23時31分40秒
悪送球でワンアウトランナー二塁一塁のピンチ…
全くみんなに合わせる顔がなかった。
人のこと言えたもんじゃないよ…トホホ。
案の定カオリが声を荒げる。

「何やってんだよ〜矢口〜!!」

(はいはいお叱りは当然です…でもやっちゃったものはしょうがないじゃん)

「矢口さん!今のは石川の捕る打球ですよぉ。任せてくれればよかったのに…」

(君に任せきれないから、矢口が捕ったんじゃんかよー
 いいや、梨華ちゃんのせいにしちゃダメだ。
 判断したのは矢口だし、余計なこと考えて集中してなかったのも矢口なんだから…)

「みんな、ゴメン…もう絶対エラーしないから…」

とりあえずここは、謝るしかない。
そしてこの借りは絶対返すから…

「気にしないでいいよ矢口…かえって一塁が埋まった方が守りやすいっしょ…ね、みんな」
そう言ってなっちはあたしに笑いかけた後、みんなの顔を見回した。

なっちの気遣いはありがたい。
だが、実際はかなり無理をしているだろう…
緊張感いっぱいの開幕戦の立ち上がり、無難に三者凡退で終わらせたかったはずだ。
それなのに、思わぬエラーでピンチを背負いこんだ。
本当なら三者凡退で1回表が終わっている内容なのに…
なっちの動揺はハンパじゃないだろう。

みんなにもなんとなくそんな様子が伝わるのか、その場の空気は重い…
本来ならあたしが元気よく声をかけなきゃいけない場面だが、
エラーしたのがあたし本人なのだから、なかなかそういう訳にもいかない。

しかし、そんな空気を読めずに脳天気な発言をする奴が一人いる…
155 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月06日(日)23時45分04秒
>>150
 意外なところで苦戦するキャラが出来てしまったようで…(W
 一応研究はしたんですが…
 辻加護も苦戦してるしな〜

GWキャンペーン更新終了。
156 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月07日(月)01時38分25秒
ナーイス(w
栗山のフォローが、バッチリ!!
>空気を読めずに脳天気な発言
やはり、あの人なんでしょうね。(爆
157 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月07日(月)03時09分16秒
みんな緊張してますね〜
でも空気を読めないこの娘はしてないか・・・(w
あと、気になる事が1つ・・・
やっぱり巨人戦では「午後8時の男」のコーナーはありですか?(w
158 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月07日(月)23時22分13秒
「さすが安倍さんはポジティブですね。
 そうですよ矢口さんポジティブ、ポジティブでいきましょう!!」

(コノヤローちょっとは場の雰囲気を読めよー)

梨華ちゃんの相変わらずの空気の読めなさに頭を抱えそうになる。

「石川!!お前はポジチブ、ポジチブ言い過ぎなんだよ。もう、うんざりなんだよ」

カオリが梨華ちゃんに対して声を荒げる。
しかし、梨華ちゃんも負けてはいない。

「飯田さん違います…『ポジチブ』じゃなくて『ポジティブ』です」

(いいよそんなことはどうでも…
 本当に心底どうでもいい…
 もっと今大事なことが他にあるでしょ!!)

しかし、どうやら梨華ちゃんのこの一言が、カオリの負けず嫌いに火を付けたようだ。

「カオリちゃんとポジチブって言ってるよ!!」

「えぇ〜っ!飯田さんポジティブって全然言えてないから…ねぇ〜のの」

なんとこの場面で梨華ちゃんは辻に同意を求めた。

(最悪だ…
 なんて空気が読めないんだろう?
 本当に恐ろしい女だ梨華ちゃんは…)

もはや呆れて何も言えない。
159 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月07日(月)23時28分29秒
自分のエラーがきっかけで始まったピンチが心苦しいのか、俯きっぱなしだった辻。
突然の梨華ちゃんのフリに驚いたように顔を上げた。

「え?…」

「辻っ!!カオリ、ちゃんとポジチブって言えてるでしょ!!」

カオリが有無を言わさぬ形相で辻に詰め寄る。
大口を開けたまま、カオリを見上げることしか出来ない辻…

(うわ…可哀想…)

「カオリやめなよ…そんなことどうでもいいじゃん。辻が可哀想だよ。それよりさ…」

しかし、カオリはあたしの言葉に耳を貸さない。

「矢口は黙っててよ!!これは重大な問題なんだから!!」

何が重大な問題なもんか!!
最近ちょっと大人になったと思ってたのに…
一度熱くなるとすぐコレだ!!
もう…どうすんだよー

その時、今まで黙ってこの様子を見ていたなっちが口を開いた。

「カオリもうやめてよ。大事な場面なんだしさ…ケンカしてる場合じゃないっしょ」

なっちの言うことなんかを、今のカオリが聞くもんか!!
むしろ余計に、火に油を注ぐようなもんだ!!
そう思ってたんだけど…

「分かった…そうだよねケンカしてる場合じゃないよ」

え?…
何それ、二人の間にいったい何があったんだよー?
そして、カオリはなんでちょっと顔を赤らめてるんだよー?

マウンドからサードへ戻る途中、二人のことが気になって気になって仕方がない。
こんなことじゃまたエラーしちゃうじゃんかよー
自分の知らないところで話が進んでるのが、悔しくてイライラしてきた。
そんなあたしの肩をポンと叩く人物がいる。
振り返ると梨華ちゃんと目があった。
160 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月07日(月)23時39分32秒
>>156
 いつもありがとうございます。
 ちょっとは感じが出てきたかな?
>>157
 いつもありがとうございます。
 「午後8時の男」の件、面白いアイデアですね。
 やっちゃおうかな(w

という訳で突然のクイズ企画『200レスの娘』っていうのはどうですか?
200レス目の1番最初に登場するハロプロ選手を当てるってヤツ。
商品は豪華1000ガバス!!
じゃ盛り上がらないのでネタのリクエスト権利なんてどうでしょうか?(w
161 名前:明日香のサインボールくれ(w 投稿日:2001年05月08日(火)00時12分26秒
200レス目?
あと40か……
何回ぐらい行くんかな?(アストロ球団だとまだ,一回終わってないだろうし、進めパイレーツだと、試合なんかやってないだろうし…)
個人的に長谷川好きなんで、明日香ということでひとつ。
162 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月08日(火)04時10分07秒
まさかこんな企画になるとは・・・冗談で書いたのに(w
200レス目か〜・・・ムズイっすね!!
でもやっぱり大好きな市井ちゃんで勝負!!
ってゆうか俺が200レス目をゲットして市井ちゃんを出す。・・・だめっすか?(w
163 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月08日(火)04時52分31秒
おもしろそうですね 200レスまであと少し
こうしてレスしてるうちにあっとゆう間のような・・・
おっと!忘れるとこでした 「200レス娘」
キャプテンの真里っぺに投票です
164 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年05月08日(火)07時50分51秒
200レス目まであと少し『保田』が出てくると思います。
頑張ってください
165 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月08日(火)22時52分38秒
「何?梨華ちゃん」

あたしがおもしろくなさそうに尋ねると、梨華ちゃんはこんなことを言いだしやがった。
ニコニコ笑いながら…

「矢口さんっ、気を落とさないでくださいね!!
 失敗は誰にでもありますから…
 チャーミーは矢口さんのこと応援してますからねぇ」

抑えていたものが弾けとんだ。
もう我慢が出来ない!!
素早く梨華ちゃんの首を両手で掴むと、前後に振った。

「お前はいつも一言多いんだよー!!」

梨華ちゃんが悲鳴を上げる。

「きゃあぁ〜っ、誰か助けてぇ〜
 よっすぃ〜、ごっち〜ん助けてぇ〜
 チャーミー何もしてないのにぃ〜」

その言葉と甲高くて甘えた声が、更にあたしの神経を逆撫でした。

「コノヤロー!!お前はまだ言うかー!!」

梨華ちゃんの首にかけていた手に、更に力を込めた。

「だ、誰かぁ〜
 い、石川…矢口さんに…こ、殺されちゃいますよぉ〜」

騒ぎに気が付き、何とかあたしを取り押さえようと、マウンドにまた人が集まって来た。

「どうしたんだよ矢口!!お前何やってんだよ〜」

「矢口さんっ…やめてくださ〜いっ…ダメですよっ」

「矢口やめなよ…梨華ちゃん死んじゃうよ…」

「矢口、あんた何してんのよ!!石川を離しなさいよ!!」

多勢に無勢…
あっけなく取り押さえられてしまった。

(チクショー!!悔しいよー!!)
166 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月08日(火)22時54分01秒
「あいつらこの大事な場面で何してんねん!!」

一塁側ダッグアウトで怒り爆発のプレイングマネージャー中澤裕子。
思わず目の前のベンチを蹴り上げる。
そのベンチに座っていた選手達は、その衝撃に思わず首をすくめる。

「全くケンカしとる場合やないやろ…なぁ、しのちゃん」

そう言って中澤は、ヘッド兼打撃コーチの信田美帆に同意を求めた。

「まぁね、でも案外これでみんなの緊張が解けたりするんじゃないの?
 退場を食らわないかどうかは心配だけどね…」

熱くなってる中澤とは対照的に、信田はそう冷静に答えた。
オリンピックの大舞台を経験してるだけあって、信田は根性が据わっている。
故障がちではあったが、選手時代は逆境に強い頼れるバッターだった。
昨年いっぱいで現役を退きコーチに就任したのだが、
最年長であることもあって、中澤が心底頼れる参謀役だ。

「まぁ、あたしちょっと注意してくるよ裕ちゃん」

そう言うと信田はグラウンドに向かって歩き出した。

一方、若干放置気味の外野陣…

しゃがみ込んだまま、ふわぁ〜っと大きなあくび一つ。
センターの後藤真希だ。
潤んだ目でぼんやりとマウンド付近を見つめている。
167 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月08日(火)22時58分02秒
(何やってんだろ?
 何か緊張感がなくなってきちゃったよ…
 それはそれでいいことなんだけどね…)

そんなことをふと思う。

よっすぃ〜とあたしって、よく強心臓の持ち主みたいに言われるんだけど、
実際はあたし、こういう大きな舞台ってすっごく緊張してダメなんだよね…
そうは見えないみたいなんだけど…
本当は市井ちゃんに甘えてリラックスしたかったんだけど、
何か市井ちゃんも緊張してるみたいで変だったんだよね…
そのくせ緊張してるって認めたくない感じで、あれじゃとても甘えられないよ。
あ〜あ…まいったな…

「あ、あの〜、後藤さ〜ん」

不意に声をかけられた。
レフトの加護だ…

「どうしたの加護ちゃん、一応は自分のポジションに居た方がいいと思うよ」

「えっとですね〜ちょっとだけとなりに座ってもいいですか〜」

あたしの言葉を無視するように、加護が擦り寄ってくる。
う〜んどうしよう…
本当はあんまり自分のポジションを離れない方がいいんだけどな。
まぁ、ちょっとならいっか…

傍目から見れば、とても開幕戦が行われているとは思えない不思議な空間。
こんなことでいいのかな…?
でも…ちょっと落ち着くなぁ…
ホノボノムードに浸っていると、急に横から抱き付かれた。

「後藤さ〜んっ!!」

今まで隣で大人しく座ってたのに、どうしたんだろう?
でも、これはいくらなんでもマズイよ。
ここはグラウンドで、タイムがかかっているとはいえ、一応試合中なんだからさ。

「ちょっと加護!!
 ダメだってば一応は試合中なんだからさ。
 コラ、ちょっと甘えないでよ…
 …?!」

加護に注意しながら、ハッと気付くことがあった。
168 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月08日(火)23時18分49秒
>>161
 早速企画に参加していただきまして、ありがとうございます。
 ちなみに『キャプテン』の場合は、2回から7回に急に飛んだりしますよ。(w
>>162
 アイデアありがとうございました。
 冗談で終わらせるにはあまりにもったいなかったので…(w
 200レス目に感想レスが付いた場合は、
 『実況くんモード』を含んだ本編まで持ち越しということで…
>>163
 レス&企画参加ありがとうございます。
 そんなにレスつかないだろうと油断してたんですが、
 4件もレスが付いていたのでビビリました。(w
>>164
 てうにち新聞新入社員さん、いつもありがとうございます。
 こちらがまた落ち着いた頃に、まとめて読ませてもらいたいと思います。
 ガンバレ『ピンチヒッター』!!

企画をおおむね受け入れていただけたようでうれしいです。
トラブルもなく好評なようでしたら、100レスごとに継続していきたいと思います。


169 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月09日(水)00時23分15秒
矢口さんの天敵って石川さんなのか、この掛け合いは萌える〜
中澤監督って星野仙ちゃんタイプ?
170 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月09日(水)03時21分52秒
久々に後藤登場!!
この小説でも後藤は市井ちゃんにラブラブなのかな?
それにしても、やぐいしはいいっすね〜
首を絞めてる所なんてほんと、殺意を感じましたよ。(w
171 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月09日(水)22時44分14秒
「もしかして…加護また緊張してんの?」

あたしの顔を黒目がちな瞳で見上げていた加護は、やがてコクリとうなずいた。

「さっきまで平気だったんですけど〜
 ののがエラーしたの見たら、なんか心配になって〜」

目を伏せがちに、辿々しく語り出す加護…

(そうか…そうだよね。
 あたしだって甘えたくなる気持ち分かるよ…
 でも今ここで甘えさせてあげる訳にはいかないしなぁ)

加護の緊張をほぐしてあげたいとは思うのだが、いい方法が思い浮かばない。
しばらく考えてみる…
ん〜?…そっかあれがあるじゃん。

「じゃぁ、後藤が加護ちゃんの緊張を吹き飛ばしてあげるよ。
 加護ちゃん、ちょっと頭出して…
 怖がらなくてもいいからさ〜、後藤に任せてよ…」

不安げに差し出した加護の頭を、見様見まねでわしわしとなでてあげる。

「緊張しませんよ〜にっ!!
 …だったっけ?
 アハッ、よっすぃ〜のより効かないかもしれないけどさ〜」

「…そ、そんなことないです〜。後藤さ〜ん…ありがとうございました〜」
首を必死に左右に振りながら、加護はあたしに感謝の意を示そうとしている。

(ん〜カワイイね。
 市井ちゃんが後藤を見る目もこんな感じかな?
 アハッ、ちょっとキャラが違うか…
 でも今度、加護キャラで甘えてみようかな?)

そんなバカなことを考えていたら、マウンド辺りから声がかかった。

「後藤〜!!加護〜!!座ってないでキャッチボールでもして身体暖めときな!!」

ヤバッ!!ヘッドコーチの信田さんだ…

「やっぱり怒られちゃったね。
 加護ちゃんキャッチボールだってさ…
 はい立って、立って!!」

急かされながら加護が立ち上がる。
不安げな様子はなくなってるのでちょっと安心かな?

(どう市井ちゃん?
 後藤だってちゃんと後輩の面倒見てるんだからね。
 でも、なんだか市井ちゃんが後藤に緊張してるのを隠そうとしてた理由が、
 分かった気がするよ。
 後藤もいつまでも市井ちゃんに甘えていられないんだね…)
172 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月09日(水)22時51分31秒
グラウンド内での騒動は、ヘッドコーチの信田さんの手によって解決した。
幸いなんとか退場者を出すこともなく、試合を再開することが出来た。
それにしても、試合再開後の安倍さんのピッチングは圧巻だった。

ワンアウトランナー二塁一塁で、4番の鈴木尚典さんをストレートで見逃しの三振。
続く5番の佐伯さんを、ストレートを詰まらせて浅いレフトフライに抑え込んだ。

ストレート主体の力のピッチング…
そのピッチングに、あたしがブルペンで感じた爆弾を抱えてるような違和感はなかった。
違和感どころじゃない…安倍さんのあんなストレートは、今まで見たことがない。

(これが正捕手と控え捕手の差なのかな?
 あれだけピッチャーを乗せちゃうことが出来ちゃうんだ…)

「すごいなぁ…なんか自信がなくなっちゃうよ」

思わず、口に出してしまった。

「どうしたの衣吹?」

隣に座っていた北上アミが、心配そうに顔を覗き込んできた。

「あ?…アミちゃん…
 なんかさ保田さんは凄いなって…
 自分もあんなふうになれるのかなって、自信がなくなってきちゃってさ…」

そう言ってあたしが肩を落とした瞬間、ベンチの中で拍手が起きた。

「安倍さん!ナイスピッチ!」

「みんな!お疲れ〜!」

一回表を終えたスタメンのみんなが戻ってきたんだ。

エラーをした辻ちゃんは、飯田さんになにやら注意されながら…
先程、騒動の中心になっていた真里ちゃんと梨華ちゃんは、意外にも笑い合いながら…
他のメンバーも、緊張感から解放されたようなホッとした顔つきで…
それぞれ一塁側ベンチに戻ってきた。

そして、安倍さんと保田さんも…

「安倍さんナイスピッチングでした…保田さんもお疲れさまでした…」

あたしが声をかけると、安倍さんは満面の笑顔で一気にはしゃぎたてた。

「ありがとー、衣吹ちゃーん。
 はぁー、なっち緊張したよー
 でも、きっちり抑えたべ。
 ストレート走ってたでしょー
 あ…アミちゃーん、元気ー?」

隣に座っているアミちゃんに、林家パー子張りに体の前で手を振っている。
マシンガントークに圧倒されそうだ…
試合前は緊張していたせいか落ち着いた雰囲気だったのだが、
今はすっかりいつものお茶目な安倍さんだ…
173 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月09日(水)22時57分21秒
保田さんは、そんな安倍さんをただ横目で見ているだけだった…
もともと落ち着いたタイプの保田さんには、このノリは付いていけないんだろうな?
あたしにもちょっと分かりますよ…
自分もどっちかっていうと賑やかなタイプだとは思うけど、流石にこのノリはね…

安倍さんはしばらくその場を賑わせた後、
『裕ちゃーん!』と叫びながら、ダッグアウトの奥にいる中澤さんの方へ行ってしまった。

「あの〜、保田さんってすごいですね…」

腕を組んだままの姿勢で、安倍さんを見送っていた保田さんに思い切って声をかけた。

「何が…?」

ジロッと保田さんの視線があたしに突き刺ささる。
あれ?なんか怖いなぁ…
確かに保田さんはあまり愛想のいいほうではないし、怖いって言えば怖いんだけど…
開幕戦でピリピリしてるのかな?

「え、え〜と、ピッチャーを調子に乗せるのがうまいなぁって思って…
 ブルペンでボールを受けてた時、球自体は走ってたんですけど違和感があったんですよ。
 なんていうか…爆弾抱えてるような…
 それなのに、今の安倍さんのストレートは絶好調だったじゃないですか。
 すごくリラックスした感じでしたし…
 これが正捕手と控え捕手の差なのかなって…
 なんかあたし、自信がなくなってきちゃいましたよ」

保田さんは目線を下げ、何かを考えているようだった。
しばらくして…ポツリと一言。

「…そんなことないよ…すごくなんかない…」

それから、ふと目線を上げるとニィっと笑った。

「あんたも気付いてたんだ。
 あのなっちのストレートの違和感に…
 それに気が付くようだったら大丈夫だよ…大木。
 あんたの未来は明るいよ…」

そう言ってグラウンドの方を見やると声をあげた。

「コラ石川〜!!お前が大振りしてどうすんだよ〜!!」

そんな保田さんを見ながら、保田さんに言われた言葉について考えてみる。

(あたしの未来が明るい?…なんでだろ?)

よく意味は分からなかったんだけど、
保田さんなりにあたしに気を遣ってくれたんだと解釈した。

褒め言葉みたいだからやっぱりうれしいなぁ…
あたしも保田さんみたいなキャッチャーになりたい。
地元千葉のヒーローって言うと普通は紗耶香ちゃんなんだけど、
あたしにとっては保田さんなんですから…
174 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月09日(水)23時25分54秒
>>169
 从#~∀~#从 闘将中澤裕子やで…レスありがとうな!!
>>170
 レスありがとうございました。
 『やぐいしネタ』お叱りをいただくかと思ってたんですが、意外と評判がいいようで一安心。
 『いちごま』はまぁメジャーどころなんで…

『200レスの娘』については参加を締め切らせていただきたいと思います。
結構書き溜めたんですけど、そろそろ200レスぐらいになるのかな?
『200レスの娘』が誰になるのか、書いている本人も結構ドキドキしてます。

宇宙初?マイナーコンビネタ『やすいぶ』でお目汚し…(w
175 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月10日(木)02時34分38秒
人類始まって以来のマイナーコンビ「やすいぶ」が見れるなんて〜!!
これは、もしや歴史的瞬間の目撃者になったのか!?(w
176 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月10日(木)23時17分42秒
『空振り三振っ!!
 2番の加護、カウントツーツーからの変化球を空振りで三振です!!
 横浜ベイスターズの開幕投手小宮山、
 1番のテニス打法石川、2番クセ者加護を打ち取ってツーアウト!!
 さぁ、そして場内が大きな歓声に包まれます。
 昨シーズンのチーム三冠王にして、
 セントラルリーグ打点王の3番後藤真希が右バッターボックスに入りました。
 落合さん、小宮山対後藤の対決ですがいかがでしょうか?』

『まず初球の入り方でしょ…』

『初球の入り方と言いますと?』

『このバッターは、ツーストライク取られるまでは、初球から一発狙いできますから…
 得に内角高めなんてもっての他ですよ。
 高めに強いバッターですし、内角もうまくさばきますから…
 まぁ、とにかく低め…クサイところから入るべきでしょ』

『つまり、外国人選手と同じような攻め方をしなければいけないということですか?』

『そう…
 まぁ、今日の小宮山だったら外角のスライダーかな…
 今日のスライダーはキレもいいし、
 右バッターに対するアウトコース低めのコントロールがいいんですよ…』

『僕も初球はアウトコース低めのスライダーでいいと思いますね。
 1、2番の二人…
 まぁ左バッターだったんでインコース低めってことになるんですが、
 全く手が出ませんでしたからね。
 あと僕はストレートでも結構勝負できるような気がするんですけど…
 どうですかね落合さん』

『うん…確かに今日はストレートも走ってるね。
 あのスライダーと組み合わせられると、
 今日の小宮山は、なかなか打てないんじゃないかな…』

『さぁ注目の初球は…?
 小宮山振りかぶって…投げた!!』
177 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月10日(木)23時22分49秒
2番の加護のバットが空を切った。
変化球…
スライダーかな?

「ほ〜っ!!後藤さ〜ん」

奇声をあげながら加護が戻ってきた。

「すごいんですよっ!!
 加護がこの辺かな〜って…振ったら…
 でも…当たんなくって〜
 す〜って行っちゃったんですよ〜
 えっと〜それで〜アレ?…」
 
なんだかよく分からない…
でも、とにかく今日の小宮山さんはすごいらしい…
騒ぎ続ける加護をベンチに戻し、バッターボックスに向かう。

初球はアウトコース低めのスライダー。
ボールかな?と思って見逃したんだけどストライクの判定。
加護が騒いでたボールがこれだろう。
左バッターはともかく、右バッターにこれは確かに打ちにくい。
長打を打つのは難しいだろう。

二球目もアウトコース低め…今度はフォークだ。
ワンバウンドになったこのボールを見逃して、ワンストライクワンボール。

(アウトコース一辺倒かな…?でも谷繁さんが、そんな単調なリードする訳ないよね)

思った通り三球目はインコースのシュート。
しかも、低めギリギリのストライク…

全然バットを振れないまま追い込まれてしまった。

(うわ〜さすが小宮山さんと谷繁さんじゃん…
 的がしぼれないよ〜
 ん〜?最後はやっぱりあのスライダーかな?)
178 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月10日(木)23時33分01秒
>>175
 あなたは今、伝説の生き証人に…(w
 レスありがとうございました。

ダラダラやってましたが、徐々に第二話のクライマックスへと…
179 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月10日(木)23時52分01秒
加護VS後藤は、たしかにこんなかんじだな〜
加護は絡む相手によって、キャラ変わるもんな〜(w
180 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月11日(金)01時31分54秒
ダーヤスマンセー
181 名前:実況くん 投稿日:2001年05月11日(金)23時25分30秒
『3番の後藤、ツーエンドワンと追い込まれました。
 いや〜落合さん、後藤がここまでバットを一度も振らせてもらえませんね』

『うまく攻めてますね…
 ただ、ここからの後藤はミートに徹してきますから要注意ですよ』

『この後の配球なんですが、どう攻めたらいいんでしょうか?』

『まずバッテリーは、勝負を急がないことでしょ…
 まだボールが2つも投げられるんですから…
 急いで勝負にいくと痛い目に会いますよ。
 最後は外のスライダーでいいと思いますよ…』

『今日の小宮山選手は本当にスライダーがいいですね。
 そして谷繁選手もスライダーを中心に、非常に左右に幅のあるリードをしてますね。
 ハロプロの安倍選手も調子がいいですし、今日は投手戦になりそうですね』

『小宮山、四球目!!
 内角高めのボールだ!!
 後藤これを見逃してカウントツーツー。
 いや〜内角できましたね落合さん』

『うん、うまく起こしたね…これで外のスライダーでしょ』

『さぁ、落合さんの予想では外角のスライダーとのことですが…
 小宮山、振りかぶって…
 五球目!!
 内角打った〜!!
 大き〜い!!
 レフトスタンドへ一直線〜!!』
182 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月11日(金)23時37分13秒
勝負球は、外角低めのスライダーだと思ったんだよね…
四球目に近目のボールで体を起こされたしさ…

いつもならホームランボールの内角高めのストレートだったんだけど、
予想外のボールに対応が遅れちゃったじゃん。
それに、今日の小宮山さんのストレートは球威があったんだよね。
完全に詰まらされて、大きなレフトフライ。
谷繁さんに裏をかかれちゃった…
悔しいなぁ…も〜う!!

ベンチに戻ると圭ちゃんが声をかけてきた。

「ごっちん、小宮山さんどうだった?
 石川は早打ちだったし、加護は言ってることがよく分からなくってさ…」

こういうところは圭ちゃんらしいなって思う。

「コントロールがすごくいいんだよね〜
 さすが小宮山さんってカンジ…
 右バッターの外のスライダーは、ちょっと打てないんじゃないかな〜?
 ストレートも球威があるし、ごっちん詰まっちゃったよ…」

そう言うと圭ちゃんは少し残念そうな顔をした。

「そっか…なんとか先に点を取って、なっちを楽にしてあげたいんだけど…」

本当に圭ちゃんらしいね…

「大丈夫だよ〜圭ちゃん…
 ごっちん、今度は絶対に打つからさ〜
 カオリだって、よっすぃ〜だって、やぐっつぁんだってみんな打ってくれるよ…
 終わってみれば絶対に楽勝だって…
 だから心配しないで大丈夫だよ…
 アハッ」

そう言って、圭ちゃんにふにゃ〜っと笑いかける。

「分かったふうなこと言っちゃって〜
 最近お前、生意気なんだよ〜
 はいはい…守備について…
 ダラダラ歩くんじゃないの!!」

あたしの背中を押しながら、憎まれ口をたたく圭ちゃん。

素直じゃないのが一番圭ちゃんらしいや…
183 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月11日(金)23時57分55秒
>>179
 加護、大丈夫でしたか?
 レスありがとうございました。
 しかし、そんなプ、プレッシャーつ、通じませんぞ…(w
>>180
 レスありがとうございました。
 とりあえず…マンセー!!
それにしても、200レスに近付いてきましたね。
200レス目が突然レファだったりしたら殺されるかな…(w

 
184 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月12日(土)01時01分29秒
石川のテニス打法っていうのを見てなぜか第三野球部を思い出してしまいました(w
185 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月12日(土)02時43分42秒
200レス目にレファなんて出てきたりしたら、球場全体で暴動が起きますよ!!(w

ヽ^∀^ノ・・・200レス目はイチイだっつーの!!・・・
186 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月12日(土)16時03分28秒
なっちの11勝中、完投10、
ということは・・・
抑えの市井ちゃんの出番はなかったの!?
187 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月12日(土)23時11分16秒
一回裏の攻撃が終わり、二回表の守備が始まろうとしている。
先発の小宮山さんの前に、あっけなく一回裏は三者凡退。
ベンチから見ていた限りでも、小宮山さんが絶好調なのは分かった。

(マジかよー本当に点がとれるのかなー?)

そんな弱気になりそうな投球内容だった。
でも、今は気持ちを切り替えて守備に集中しなければならない。
もうエラーなんて絶対に出来ないんだから…

(クッソー、それにしてもムカツクなー)

まぁ、それはさておき…
あたしには自分のポジションに着く前に、一つやっておかなければならないことがある。

皆さん、なんだと思いますか?

えっ!!梨華ちゃんとの仲直り…?!

まぁそれは一応ね…
ちゃんとしておきましたよ。
立場上のこともあるし、別に心の底から梨華ちゃんのことが嫌いって訳でもないから。
大人気無かったとも反省しておりますよ。

でもね…
言い訳するつもりではないんだけど、梨華ちゃんは本当に気に障る一言が多いんですよ。
おとなしくニコニコ笑ってればカワイイのにさ…

まぁいいよ、その話は…なんだかまたムカツいてくるから。

そんなことじゃないんだよ。
今あたしがやっておかなくちゃいけないことっていうのは…

(え〜っと、おっ!!目標捕捉…
 周囲に敵影も無しっと…
 では、いざ突撃〜っ!!)
188 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月12日(土)23時14分37秒
「よーっすぃ〜!!」

ライトのポジションへ向かうよっすぃ〜の背後から、いきなり首に飛び付いた。

「ぐぇっ…!?」

「あのさー矢口、よっすぃ〜に一つお願いがあるんだけどさー
 よっすぃ〜、梨華ちゃんと辻に緊張しないおまじないしてあげたでしょー
 なんで矢口にはしてくれなかったんだよー
 おかげでエラーしちゃったじゃん。
 ねぇ、よっすぃ〜ってば…聞いてる?」

その時、よっすぃ〜の首に回したあたしの手を、よっすぃ〜の手がタップした。

「…や、矢口さん…く、苦しい…く、首はいってます…」

とぎれとぎれになっていくよっすぃ〜の声…

ヤバイ!!あたし首にぶら下がったままだった。
このままじゃよっすぃ〜が死んじゃうよ!!

慌てて手を離すが、よっすぃ〜は虫の息…

激しく咳き込むよっすぃ〜の背中を、あたしは必死にさすった。

しばらくして…

「はぁ…はぁ…矢口さん、いきなりヒドイですよ!!死ぬかと思いましたよ!!」

よっすぃ〜が、めずらしく強い口調で非難の声をあげた。

よっすぃ〜が怒るのも当然だ。
ちょっと調子に乗り過ぎちゃったかな…

「ゴメンね、よっすぃ〜…
 矢口ちょっと調子に乗り過ぎちゃったよ…
 よっすぃ〜もしかして矢口のこと嫌いになっちゃった?
 でもさ、梨華ちゃんと辻ばっかりやさしくしちゃってさ…
 矢口だって緊張してるのに…
 よっすぃ〜が構ってくれなくて…悔しかったんだよー!!」

そう叫んでよっすぃ〜の胸に飛び込んだ。
189 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月12日(土)23時30分42秒
>>184
 第3野球部でテニス打法の記述があるんですか?
 今、自分なりに研究中なんですが、参考になるかな…
 石川フューチャリングネタまでになんとかしなきゃいけないんで…
>>185
 マズイ、警備員の数を増やさないと… (w
>>186
 完投負けというのも存在しますので…
 もちろん市井さんが締めた試合もありますよ。
 その逆に市井さんが台無しにした試合もあるハズ…
 創世記から結構、投高打低ぎみのチーム設定なんです。
 4番がチャンスに打てなかったし…(w

皆様レスありがとうございました。
さて、そろそろですね。
いろんな意味で…
190 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月13日(日)02時30分35秒
こらっ矢口!貴様、試合中に何やってんだ。(w
って、そういえば、矢口だけではなかったような……
闘将はなにやってんだ!なめられてるぞ!!
*このレスでまた200の人が変わったんだな。。。
191 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月13日(日)23時07分39秒
(よっすぃ〜まだ怒ってるかな…?)

顔を少し上げ、片目だけでよっすぃ〜の表情を伺うように覗いてみた。
ぶ然とした表情で、あたしを見下ろすよっすぃ〜と目が合ってしまった。

(ヤバッ…)

「…矢口さんも…意外とにぶいんですね…」

落胆したような表情で、よっすぃ〜はそうポツリとつぶやいた。

(え…どういうこと?
 ま…まさか、よっすぃ〜ってばあたしのことを…
 ダ…ダメだよ、よっすぃ〜
 女同士で、そ…そんな…
 あたし、そんなつもりで言ったんじゃないのに…
 そりゃさ、よっすぃ〜のことは大好きだよ…
 おもしろいし、頼りがいがあるし、笑顔が可愛くて矢口のタイプなんだけど…
 でも、よっすぃ〜は女の子じゃん。
 あぁ…
 でも、よっすぃ〜だったらいっそ…
 ううん…ダメ!ダメ!)

てっきり怒られるかと思ってたところへ、よっすぃ〜の意外な一言。
あたしは大パニックに陥った…
動揺と恥ずかしさで顔が火照ってくる。
一人でキャーキャー悲鳴をあげることしか出来ない。

そんなあたしの頭に、よっすぃ〜の少し大きめな手が置かれた。

「緊張しませんよ〜にっ!!はい矢口さん、頑張りましょう!!」

わしわしと乱暴に頭をなでられた。

そして、よっすぃ〜はそれだけ言うと、自分のポジションへ向かって駆け出した。

(う〜ん、やっぱりよっすぃ〜は頼もしいなー。
 本当に惚れちゃいそうだよ…
 あ…ダメよダメなのよ、真里ったら…
 キャー!!)

なっちは絶好調だし、
メンバーの緊張もほぐれたみたいだし、
これで小宮山さんから点が取れればもう大丈夫だね!!

う〜ん…ただ、これであたしも大丈夫のはずだったんだけど…
なんか、違う意味でドキドキが止まらなくなっちゃったよ…
192 名前:実況くん 投稿日:2001年05月13日(日)23時14分20秒
『ハロースタジアムにて行われている、
 UFAハロープロジェクトと横浜ベイスターズの開幕カード…
 その第一戦の模様をお伝えしております。
 只今、五回の攻防を終わりまして0対0の同点、
 現在、六回表の横浜ベイスターズの攻撃を迎える前に、
 グラウンド整備が行われております。
 解説はオレ流解説の落合さん、熱血先生こと栗山さんでお送りしておりますが…
 いや〜ここまで非常に締まったゲーム展開となってますね?』

『開幕戦からこういう展開は、選手達にとって一番シンドイですよ…
 まぁ、それにしても両投手ともよく投げてるんじゃないですか?
 ただ言わせてもらえれば、絶好調と言ってもいい横浜の小宮山に対して、
 ハロプロの安倍は、4回5回を見るとちょっと後半が不安な感じですね…』

『落合さんのおっしゃる通りですね。
 今日の安倍選手は、時折投げるカーブとスライダーが良くないんですよね。
 今まではストレートで押すピッチングで来てるんですが、
 打順も三巡目に入ってますし、
 球威が落ちてくる後半は、変化球を混ぜていかざるを得ないでしょうから、
 安倍選手の方が、この先はちょっと不安ですね』

『今日の両投手のここまでの投球内容を確認してみましょうか…
 まずハロプロの安倍ですが、
 五回までで打者23人に対して被安打4、フォアボールが2つ、三振が6個、
 投球数が82球ですね。
 一方横浜の小宮山は、
 打者19人に対して被安打3、フォアボールが1つ、三振が8個、
 投球数が69球ですね。
 落合さん、両者の投球数なんかはどうなんでしょうかね?』

『そうですね、安倍についてはやっぱり球数が多いですね…
 栗山くんから今、ストレートの球威の話が出たんだけど、
 わたしはもう、球威はかなり落ちてきてると思いますよ。
 その辺は、次の回の安倍の投球で話したいと思いますが…』
193 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月13日(日)23時34分49秒
>>190
 ついに指摘が…(w
 実は書いてる本人も少々気になってました。
 考えてみてください1話の『かおなち』とかこの間の『かごごま』、
 さらに今回の『やぐよし』…これお茶の間に流れてるハズですよね…(w

200まで一気に更新しようと思ったのですが、
ストックがほぼなくなってしまうので少しだけ更新。
次の更新は水曜日の予定…アレの件はそこで決定するでしょう。
(最近、別の短編書いててコレさぼってたもんだから…
 常にある程度ストックのある状態で更新したいんですよね)
194 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月14日(月)01時13分39秒
やはり球団方針として通常の野球ファンだけでなく、
「コアな○○ファンのハートもゲッチュー」
ということじゃないですか。
どっかの小説みたいに(w
*更新する前に200いってたら、どうします?
195 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月16日(水)07時22分43秒
五回まで終わって0対0の緊迫した展開。
先発の安倍なつみの投球数は80球を超え、投げる球にも疲労の色が見え始めてきた。
通常なら、一試合140〜150球の球数を投げて完投することもある安倍だが、
開幕戦での登板となると話は違う。

いつもと違う緊張感が、知らず知らずの内に体力を奪っていく…
3回までは、ストレートを中心にランナーを出しながらも無難に抑えてきた。
しかし、前半に飛ばし過ぎてストレートの球威が落ちてきた4回以降は、
二人の走者を背負う苦しいピッチングが続いた。

「序盤は抜群やったんやけど…球威が落ちてきたみたいやな…なっちは…
 それにしても何で点が取れへんのや!!」

UFAハロープロジェクトのダッグアウト。
選手兼監督の中澤裕子は、忌々しげに目の前のベンチを蹴り上げた。
この日、中澤が怒りに任せてベンチを蹴り上げた回数は、これで6回目になる。
まぁ、プレー以外の出来事に対する怒りも、中には含まれていたのだが…

攻撃時に出したランナーは4人…
小宮山をカモにしている矢口が、スライダーを右方向へ打ってシングルヒット2本。
フォアボールを選んだ加護。
甘いカーブをセンター返しして、ピッチャー強襲ヒットの保田。
ランナーをセカンドに進めることも出来ず、チャンス一つ作れない。
先発の安倍の限界は近付いているというのに…
中澤のイライラは増すばかりだった。

安倍をどうしても勝たせたい…
しかし、監督として安倍を引っ張りすぎて、チームを危機にさらすことも出来ない。
中澤は最大の決断を迫られていた。

そして…

「小湊…ブルペンのルルに連絡を頼むわ…」

バッテリーコーチの小湊美和に指示を与えた。

一塁側ファールグラウンドそばのUFAハロープロジェクトブルペン。
UFAハロープロジェクトが誇る強力リリーフ陣が、リリーフ登板に備えて肩を作っている。 
右のサイドスローのりんね、左のレファが肩を作り終えた後、
現在はセットアッパーの福田明日香、
左のリリーフエース平家みちよが、投球練習を行っている。

そんな投球練習の様子を、ブルペン内の椅子にもたれ掛かって見ている市井紗耶香。
そこへ投球練習を終えたりんねとレファがやってきた。
196 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月16日(水)07時26分20秒
「りんねちゃんどう調子は?」

自分の隣に座ったりんねに声をかけた。

「ん〜まぁまぁいいんじゃないかな?」

りんねちゃんはのんびりした口調で、そうチャームポイントのタラコ唇を動かした。
加えて、りんねちゃんの奥に座ったレファにも声をかける。

ミカちゃんと違って、レファは日本語があんまり分かんないから大変なんだよね。
でもこの市井さんは、裕ちゃんと違って英語には少々自信がありますぞ。
最近ちょっと勉強もやり始めたしさ…

「え〜っと、OH!レファ ユー コンディション OK?」

いつもよりスマイル20%増しで、大袈裟な身振り手振りを交えて話しかけた。

「オ〜コンディション?…ダ〜イジョ〜ブデ〜ス!!」

親指をビッと突き出し自信満々の笑顔。

(ホッ…なんとか通じたよ…)

それにしても、外人さんて凄いのね…緊張しないのかよ?
呆れるやら、感心するやら…

「なんか福ちゃん調子悪そうだね?首ひねっちゃってるよ」

りんねちゃんの言葉に釣られて、あたしは明日香の方に目を向けた。
確かに首をひねってるなぁ…
調子悪いのかな?

「お〜い、明日香〜調子悪いのか〜?」

「ちょっとシュートとシンカーのキレとコントロールがね〜」

マジっすか?…ボールの速くないあなたにそれは致命的でしょ。
涼しい顔している場合じゃないぜ明日香さん。

そんな時、ベンチとの連絡用の電話が鳴った。

「ハ〜イ、ルルで〜す。小湊サンですか〜?」

ピッチングコーチのルルの陽気な声がブルペンに響く。

(なんだよ?まだこれから六回だぜ…)
197 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月16日(水)07時28分57秒
うゎ〜やられたわよ…
ここは絶対に三振が欲しかったのに…

六回表、ワンアウトランナー三塁のピンチを迎えてしまった。

この回先頭の6番ズーバーには、初球のカーブを叩かれてツーベースヒット。
そして、7番ドスターにはツーストライクまで追い込みながら、
高めに浮いた外角のストレートを流し打ちされた。
一二塁間を破ろうかという打球だったが、セカンドの辻がよく追い付いた。
一回のエラーを帳消しにする辻の好プレー。
しかし、ランナーを三塁に進める進塁打となってしまった。

8番の谷繁さんを迎える場面で、バッテリーコーチの小湊さんがマウンドにやってきた。

「この回だけなっちになんとか踏ん張ってほしいんだけど…どうかな圭ちゃん?」

小湊さんは、なっちにではなくあたしに意見を求めた。
ピッチャーに状態を聞いても、大丈夫だと言うに決まっているからだ。
投球を受けるキャッチャーが、一番ピッチャーの状態を分かっている。
そしてあたしの答えがそのまま、投手交替の判断材料とされる。
一見、冷酷なように思われるかもしれないが、
こうやってリリーフ陣に繋いでいくことで勝ちを拾ってきたのだ。

だから、あたしが今から発言することはとても重要なはずだった…

「大丈夫ですよ…
 球数は多くなってますけど、ストレートもノビてるし、変化球のキレもいいですから…」

ミエミエの嘘だった。
だって…ストレートは、抑えが効かなくって高めに浮いてるのは一目瞭然だし、
キレがいいはずの変化球は、ほとんど見せ球にしか使っていないんだから…

「そっか…じゃあ圭ちゃんに任せるよ…
 スクイズの可能性も高いから守備の確認もお願いね。
 それと、リードが一本調子になっているみたいだから気を付けて…
 じゃあ、なっち頼んだよ…」

そう言い残して、小湊さんはベンチに帰っていった。

(ありがとうございます小湊さん…)

「この回までしか投げられないんだ…やっぱり、なっちって信用ないんだね…」

小湊さんを見送っていたあたしの背後で、なっちがポツリとつぶやいた。

(違う!!違うよ、なっち!!)
198 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月16日(水)07時30分57秒
「何でそんなこと言うの…そんなことないわよ!!
 小湊さんや裕ちゃんが、どれだけなっちを信用してるか分かんないの?」 

あたしの言葉に、なっちは目を伏せて押し黙ってしまった。
やっぱり一筋縄ではいかないんだね…

「はっきり言うわよ…正直なっちはもう限界だよ。
 チームの勝利のためには、ピッチャーを交替するべきだと思う。
 そして、それは小湊さんも分かってた。
 でも、なっちならなんとかしてくれると思ったから…
 なっちを信用してくれてるから、この回を任せてくれたんだよ。
 今のなっちが考えなきゃいけないのは、完投なんかじゃない…
 エースなら信頼に応えて、この六回を抑えることだけ考えなさいよ!!
 開幕初球のあの球は、嘘じゃないんでしょ?」

「…うん…嘘じゃないよ…
 ここまで気を抜いて投げた球は一球もない…
 本当だよ…圭ちゃん、それだけは信じて…」

あたしの問いかけに、なっちは消え入りそうな声で答えた。

「うん、分かってるわよなっち…それは球を受けているあたしが、一番分かってる。
 だからこそ、早い回にバテがきてるんじゃない。
 なっちは、あたしの信頼に応えてよく投げてくれた。
 だから六回でマウンドを降りたとしても、誰にも文句は言わせない!!
 6回裏は2番の加護からでしょ…絶対に一点取ってなっちを勝たせてあげるから…
 もう絶対に…絶対だから…はい、指切りっ!!」

そう言って、半ば強引になっちの手を取って指切りをした。

「はい、約束したから…この回、点取られたらただじゃおかないわよ!!」

ニタァ〜っと笑うあたしに、なっちは力強く頷いてくれた。

内外野の守備陣形の確認をした後、ゲーム再開…

つくづくなっちって単純だなって思った。
本当は、力をセーブしてたんじゃないかと疑いたくなる。

『ブタも煽てりゃ木に登る』ってこういうことかしら…?
ん…?あ…いや…決してそういう意味で言った訳じゃないんだけど…

8番の谷繁さんの初球、スクイズを警戒してウエストすることはせず、
思い切って内角高めにストレートを通した。
初球スクイズのサインは出ていなかったらしく、谷繁さんはこれを見送った。
高めに浮くこともなく、球速表示は今日MAXの148km/h…
いったい、何なのよ!?
199 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月16日(水)07時33分04秒
『六回の表ベイスターズの攻撃は、ワンアウトランナー三塁!!
 バッター8番谷繁の場面ですが…
 いや〜落合さん、初球思い切ってストライク取ってきましたね』

『ビックリですよ…しかし、今のストレートは球威が戻ってきてましたね。
 内角高めでしたし、下手にスクイズしてたら小フライの可能性もありましたよ。
 まぁ2球目は、さすがにウエストでしょうね…』

『さぁ、安倍2球目を…
 お〜っと!!代走の三塁ランナー波留走った〜!!
 スクイズだ〜!!
 ウエストはしな〜い!!落ちる球だ〜っ!!
 谷繁これを当てるが、どうだ?ファールか?ファールか?
 ファール!!ファール!!ファールです!!
 2球目、谷繁スクイズ失敗〜っ!!
 いや〜っ落合さん、森監督やっぱりやってきましたね?』

『えぇ、やってきましたね…
 それより今のハロプロの守りですよ…
 わたしには、分かりません…なんであの場面でウエストしないのか…』

『僕もビックリですね。
 しかし、落ちるスライダーが一番スクイズしにくいところに決まりましたね。
 いや〜、ツーストライクに追い込みましたし、これは大きいですよ』

『さて、落合さん…スリーバントスクイズはありますかね?』

『まぁ、難しいでしょうね…この後、3球ウエストされる可能性がありますから…
 なかなかサインは出せないでしょ…』

『そうですか…おぉ〜っと、3球目はウエストだ。
 バッテリーここで外してきましたね栗山さん?』

『ここからは、バッテリーも判断が難しいところですね。
 スクイズがあると考えるか、無いと考えるかで攻め方が変わってきますからね』

『落合さんはスクイズは難しいだろうとのことですが、栗山さんはどう思われますか?』

『谷繁選手のバント能力を考えると、僕も難しいと思いますね』

『さぁ安倍4球目…
 外角高めだ!!谷繁打ち上げた〜ライトフライ!!
 ライト吉澤は強肩だが、タッチアップはどうか?
 ちょっと浅いか?』

『次がピッチャーの小宮山ですからね…思い切ってスタート切らすでしょ…』

『さぁ、波留はタッチアップの構えだ!!
 吉澤の肩 対 波留の足!!
 ライト吉澤、反動をつけて〜
 あ〜っと、えっ落とした!?
 落とした!!落とした〜っ!!ライト吉澤、落球〜っ!!
 波留バンザイだ!!バンザイでホームイ〜ン!!
 均衡破れる〜っ!!横浜ベイスターズ先制〜っ!!』
200 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月16日(水)07時37分28秒
あたしは、唇を噛み締めながらライト方向を見やることしか出来なかった。
そして、自らが言った言葉を思い出す…

『大丈夫って平気そうにしてる奴ほどポカやらかす』

何で気が付いてやれなかった…?

あたしは何てバカな先輩なんだろ?
何てバカなキャプテンなんだろ?
悔しいよ…悔しいよー

よっすぃ〜は緊張と不安と闘いながら、必死に平静を装ってたんだ…
同じ新人やバカな先輩に気を遣いながら…

そうだよね…よっすぃ〜だって初めての開幕戦だったんだもんね。
しかも、今日は何度も開幕投手やってるなっちが、
不安で泣き出すような、特別ピリピリした緊張感があった。
あたしだって不安で怖かった。
みんな同じハズだ…みんな同じハズだったんだよ!!

それなのにあたしは、よっすぃ〜の気持ちも考えないで…
脳天気に抱き着いちゃったりしてさ…
恥ずかしいよ!!
悔しいよ!!
よっすぃ〜の唯一のSOSもキャッチしてあげることが出来なかったんだ…

『…矢口さんも…意外とにぶいんですね…』

あの時の落胆したようなよっすぃ〜の表情…

そうだよ…あたしはバカでにぶちんだから自分のことばっかりで…
見下げ果てた先輩でしょ…?

怖かったんだよね…?
苦しかったんだよね…?
誰にも打ち明けられなくて…

あたしだけには見せてくれたのに…

でも、よっすぃ〜はバカだよ…強がることなんてなかったのに…
最初からあたしに甘えてくれればよかったのに…

うぅん…ゴメン…

よっすぃ〜本当にゴメン…
201 名前:実況くん 投稿日:2001年05月16日(水)08時31分21秒
『2番金城打って三遊間へのゴロ…
 石川捕って、セカンドへ…アウト!
 スリーアウトチェンジです。
 六回表、横浜ベイスターズの攻撃を終えて1対0…
 横浜ベイスターズ1点リードとなりました。
 いや〜なんとか安倍が後続を断ち切りましたが…
 栗山さん、吉澤のプレーについて何かありますでしょうか?』

『そうですね…僕も外野手だったんで経験があるんですが、
 バックホームのことで頭がいっぱいになって、
 ボールから目を切るのが早かったんじゃないでしょうか?』

『落合さん、普通に捕球していればタイミング的にはどうだったんでしょうか?』

『球が逸れなきゃアウトでしょ…しかし、これはハロプロには痛いね…
 まぁ、この1点が小宮山にどんな影響を及ぼすか注目ですね』

『さて、これから六回裏ハロプロの攻撃なんですが…
 皆様から募集していた『200レスの娘』の結果が出ましたので、発表したいと思います。
 なんと今回正解者が出てしまいました。
 矢口真里にお申し込みいただいた163の名無し読者さん、おめでとうございます!!
 つきましては、何かリクエストがあればお応えしたいと思います。
 まぁ、別にコレといって何もなければ無理しなくてもいいんですけど…
 イヤ…本当に…(w
 外れてしまった皆さん、今回は残念でした。
 参加してくださった皆様、マナーよく参加してくださったことを大変感謝しております。
 今後とも応援の程、よろしくお願いいたします。
 さて、そんな企画だったのですが、
 もし落合さんが正解されたとしたら何をリクエストされますか?』
 
『…復活のダニエル…』

『(えっ!?…)
 そ…それでは一旦コマーシャルを…』
202 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月17日(木)01時53分35秒
くっそ〜!!はずれか・・・残念。
当たったら「市井、消える魔球を習得する」の巻をお願いしようと思ってたのに〜(w
次回こそは正解する予定なんで作者さん、300レス目指して頑張って下さい!!
203 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月17日(木)20時44分38秒
ざんねん〜はずれた〜
もしあたってたら、ハーフタイム?に、マスコットとネタを始める
ぶりんこう○こをリクエストしようと思ってたのに。(w
204 名前:163っす  投稿日:2001年05月17日(木)21時39分07秒

YES!!リクエスト権 GETだぜ!!
うーんどうしようか・・・関西在住の僕としては
アンチ巨人ですのでジャイアンツ戦でなっちの
完全試合が見てみたいっす それと攻撃面でキャプテンの
大活躍でヒーローインタビューは「なちまり」でよろしくっす
更新頑張ってください 楽しみにしてます



205 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月17日(木)23時45分33秒
とんでもないことをしてしまった。
安倍さんがあんなに踏ん張っていたのに…
みんなが、安倍さんを勝たせようと必死になってたのに…

「よっすぃ〜大丈夫だから…泣かないで、ねっ。
 ごっちんがホームラン打って取り返してくるから…
 ねっ、だから泣かないでよ〜」

泣き崩れるあたしに、ごっちんが肩を貸してくれている。
そして、向かう先は一塁側ダッグアウト…
今のあたしが一番恐れている場所。
みんながいる…安倍さんがいる…
ヤダヤダ行きたくない!!
顔向けなんて出来る訳ない…

いつもは長くてダルイなぁって思うダッグアウトまでの距離が、今は異常に短く感じられた。
背番号18がもう目の前に迫ってきている。
半ばごっちんに引き摺られるように、遂にここまで来てしまった。
あたしの泣き声に気が付いたのか、安倍さんが振り返る。
目と目が合った…

あたしは堪らなくなって嗚咽を上げながら、その場にへたりこんで頭を下げた。

「うぅ…すいません…
 安倍さん…本当にごめんなさい…
 ごめんなさい…
 本当に…うぅ…」

時折、グスッと鼻をすすりながら、何度も何度も頭を下げた。

そんなあたしの顔を、安倍さんが腰を落としてのぞきこむ。

「どうしたのーよっすぃ〜、よっすぃ〜が謝ることなんてないんだよー
 あの場面で高めに投げたなっちが悪いんだから…
 泣くなー、よっすぃ〜泣くなー」

あたしの頭をなでながら、独特のイントネーションの喋り方で、あたしを励ましてくれた。
そして、それに端を発したように、みんながあたしに声をかけてくれた。
 
「吉澤、大丈夫!!カオリ、なんだかこの回逆転できる気がするから…」

「吉澤!!自分で打って取り返すぐらいの気合い見せてみぃ!!」

「よっすぃ〜泣いちゃダメだよっ…ののはエラーしても泣かなかったよっ…」

あたしはバカだった。
本当は弱いくせに強がることはなかったんだ…
一人で無理して、結局迷惑かけて…
みんな…ごめんね…
206 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月17日(木)23時49分51秒
「ごめんね裕ちゃん…」

そう言って、なっちはあたしの隣に腰掛けた。

「アホ言いなや…謝るのはこっちの方やろ?
 ごめんな、点取ってやれなくて…」

あたしは自嘲気味になっちにそう言った。

「えへへっ、止めようよ裕ちゃん。みんな、なんだか謝ってばっかりだよ」

なっちは人懐っこい笑顔を作った。

「そうやな…もう謝るのは無しにしよか?」

その時、グラウンドで歓声が湧いた。

ん?ヒットやろか…?

オーロラビジョンのリプレイに目を移す…
2番の加護の三塁線へのセーフティバント。
意表は突いたのだが、加護のバントは下手とは言わへんがあまりうまくはない。
少々強すぎて、定位置より前に守っていたサードの小川さんに軽くさばかれた。
微妙な判定となったが一塁アウト。

「あぁ、狙いはいいんやけどな…もっとバント練習せぇっちゅうんや!!」

「う〜ん、惜しかったね…もうちょっとだったのになー」

そう言って目を細めるなっち…
はぁ、言いにくいわ…でも、きちんと言わなアカンし…

「あのな…なっち、一つ聞いてくれるか…?」

「何さー!?裕ちゃん、改まっちゃって…」

「次の回からな、みっちゃんにピッチャー替えよ思うねん」

しばらくの沈黙の後、なっちが口を開いた。

「監督は裕ちゃんだよ…裕ちゃんの判断で決めればいいんだよ…
 それに覚悟は出来てたよ…小湊さんに六回までって言われてたから…」

「そっか…ホンマごめんな、なっち…」

「アハハ、裕ちゃんさっき謝るの無しにしようって言ったべさー」

そう言って笑うなっちの姿が、なんだか痛々しくて…
この回に逆転してくれることを、心から願わずにはいられなかった。

ホンマ何とかせぇっちゅうねん!!
207 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月18日(金)00時34分56秒
>>202
 外れちゃったみたいでごめんなさい。
 それにしてもある意味、落合のリクエストより危険なリクエストですな…
 パワプロが、超人ウルトラベースボールになっちゃうじゃないですか(w
 とは言いながらも、ネタを想像してみてる自分もいたりして…
>>203
 こちらも外れちゃったみたいでごめんなさい。
 ぶりんこは、この調子だとだいぶ先になりそうですが、一応ネタ用意してました。
 気が遠くなる程待つかもしれませんが…(w
>>204
 (〜^◇^〜)『200レスの娘!』正解おめでとー
 リクエスト的には応えられるネタなのですが、
 今のなっちに、完全試合をやらせるわけにはいかない事情もある訳で…
 勝手ながら、このネタを実現するためにお時間をいただけませんでしょうか?
 おそらく終盤になると思うので、かな〜り待ってもらうことになりますが…
 でも、必ず気合いれて「なちまり」の活躍を書かせていただきますし、
 絶対に途中で放りだすようなことはしませんので…
 もし、納得いかなければレスください。
 本当にすみません。

この小説、予想以上に長くなってるのは確かなんですよね…(w
開幕戦は1話で終わる予定だったし、
2話は絶対短くしようと思ってたのが、1話より長くなってるし…
なんかダラダラしてきて、話が繋がっているのかどうか心配だし…
いつまで読者の方々を引き止めていられるのでしょうか?

うぉ〜っ!!アレもコレもソレも早く書きたいのにぃ!!

とりあえず『200レスの娘!』は好評だったようでありがとうございました。
『300レスの娘!』については、また改めて告知したいと思っております。
208 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月18日(金)00時55分48秒
ガンバッテ!
209 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月18日(金)04時47分08秒
焦らずにマターリ行きましょうよ!!
作者さんが書き続ける限り私は読み続けますぞ!!
210 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年05月18日(金)07時53分43秒
頑張ってください。
ウチでも100レスやってみようかな(w
211 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月19日(土)01時26分41秒
あたしの隣では、ひとみちゃんが大きな体を丸めたまま、まだ泣き続けていた。
緊張でガチガチだったあたし達と違って、
新レギュラー4人の中で、唯一ドッシリ構えて落ち着いて見えたひとみちゃん。
そんなひとみちゃんがエラーするなんて、夢にも思わなかった。

外見上はそんな風には見えなかったんだけど、やっぱり緊張してたのかな?
そうだとしたら、悪いことしちゃったな…
あたしより年下なのに、しっかり者で頼りがいがあるから、つい甘えちゃうんだよね…

明るくて、面白くて、優しくて…
そして笑顔がまぶしいひとみちゃん。
こんな姿は見たくないよ…
いつでも笑っていてほしい。
でも、あたしにはどうしたらその笑顔を取り戻すことが出来るのか分からなかった。

一応、『よっすぃ〜、ポジティブだよ!!』とは励ましてみてるんだけど…

もうすぐひとみちゃんはネクストバッターズサークルに入らないといけないのに、
あたしの『ポジティブ!!ポジティブ!!』という声が空しく響くだけで、
ひとみちゃんは未だ顔を伏せたままだった。

どうしたらいいのかな…?
その時、あたしの頭の中でひとつ閃くことがあった。

「ねぇ、よっすぃ〜正直に答えて…
 あたし全然気が付かなかったんだけど、きっとよっすぃ〜も緊張してたんだよね?」

顔を伏せたままのひとみちゃんの頭が、肯定を示すように軽く動いた。

「そっか…あたしばっかりよっすぃ〜に甘えちゃって、悪いと思ってるんだ…
 おまじないしてくれたよね…あれ、すごく効いちゃったんだよ…
 だから、今度はあたしがおまじないしてあげる。
 よっすぃ〜が緊張しないように…そして、絶対にホームラン打てるように…」

「効かないよ…」

えっ…!?

ひとみちゃんは伏せていた顔を上げ、あたしの顔を見つめてそう言った。
目の周りは泣き腫らしたせいで赤くなっているが、涙は止まっている。

「梨華ちゃんのそんな細い腕じゃ…ホームランなんか打てないじゃん…
 その腕でおまじないなんかされたら…余計に打てなくなっちゃうよ…」

時折、グスッと鼻をすすりながらひとみちゃんはそう言った。
212 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月19日(土)01時29分39秒
「なによぉ〜、せっかく人が心配してあげてるのにぃ〜」

もぉ〜、ひとみちゃんったら人の気も知らないで…
いいよ、嫌がったって無理矢理しちゃうんだから…

必死にひとみちゃんの頭に手を伸ばすんだけど、
ひとみちゃんも、これまた必死にあたしの手を巧みにかわすの…

もぉ〜〜〜〜っ!!なによぉ!!

「よっすぃ〜、ちょっとおとなしくしててよぉ〜」

「しつこいんだよ…梨華ちゃんは…」

その時、スタジアム内に快心の打球音が響き渡った。
ベンチのみんなが身を乗り出す。
そして、スタジアムを包む割れんばかりの大歓声…
一塁ベースを回ったところで、ガッツポーズをするごっちん…

3番ごっちんの同点ソロホームラン。

「よっすぃ〜、やった!やったよ!
 ごっちんが…ごっちんが…ホームラン打ったよ…
 同点だよ…同点なんだからぁ…」

あれぇ…おかしいなぁ…?
なんだか分からないけど涙が溢れてきた。
あたしが泣く必要なんてないのにぃ…

「何で…梨華ちゃんが泣いてるんだよ…」

「だって…だってぇ…あたし、よっすぃ〜に何もしてあげられなくって…
 でも…でも同点だから…よっすぃ〜悪くないから…
 よっすぃ〜はもう悪くないんだからぁ…」

あたしはガマン出来なくなって、ひとみちゃんの胸に飛び込んで泣いた。

「ごめんね梨華ちゃん…イジワルして…
 でも、梨華ちゃんとは、あぁやってたほうが自然で落ち着くんだよね…
 梨華ちゃんに甘えるのって、なんか不自然で…余計に緊張しちゃうからさ…
 だから…ありがとね梨華ちゃん…
 梨華ちゃんのおかげで気分が楽になったから…
 もう大丈夫だからさ…
 さぁ、ごっちんを出迎えに行こっ」

未だ泣きじゃくるあたしは、ひとみちゃんに手を引かれてダッグアウト前へ…
ひとみちゃんに支えられるように、ごっちんを出迎えるための列に加わった。

これじゃ、どっちが落ち込んでたのか分からないよ…
213 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月19日(土)01時39分17秒
>>208
>>209
>>210
 レスありがとうございます。
 先を急ぎすぎてスカスカな小説になるのも納得いかないので、
 マターリ頑張っていきたいと思います。
 (今のままでも充分スカスカになってる気はしますが…(w )

 てうにち新聞新入社員さんは、保田さん惜しかったですね。
 外れてごめんなさい。

メジャーコンビ『いしよし』ネタ
ちょっとツライね…
214 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月19日(土)01時43分58秒
オラも赤板でやきうものやってるんで、よかったら覗いてね
215 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年05月19日(土)11時16分51秒
>>213
気にしないで(w
次にまた挑戦するから(w
俺も頑張らないとナ
216 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月19日(土)23時16分16秒
アハッ、やったよ〜!!
今シーズン第1号ホームラン!!
よっすぃ〜のために、なっちのために絶対打ちたかったんだよね〜
市井ちゃんは、あたしのホームラン見ててくれたかな?

第1打席、第2打席とさ〜あれこれ考えすぎてたみたいなんだよね〜
あっ!今、柄にもなくって思わなかった?
でもさ〜、あたしだって頭を使わなきゃいけない時は、ちゃんと使うんだよね。

だって、バッテリーが小宮山さんと谷繁さんだったしさ…
ちゃんと配球を読まないとダメじゃん。
でも、慣れないことはするもんじゃないね…
2打席ともなんか遊ばれちゃってたよ。

だから、なんにも考えずバッターボックスに入ったんだよ。
そして来た球を、思いっきり叩いたの…

いや〜、我ながら飛ぶもんだね。
レフトスタンド2階席に飛び込む同点ソロホームラン!!
お客さんの歓声がものすごかったんだよ。
なんかあたしの気持ちと、お客さんの気持ちが一体になった感じでさ…
もぉ〜最高っ!!
思わず一塁ベースを回ったところで、ガッツポーズなんかしちゃったよ。

いや〜ホームランって本当にクセになっちゃいますね!!

ダッグアウト前では、みんなの手荒い歓迎を受けた。
みんなポコポコあたしの頭を叩いちゃってさ…
その中でも圭ちゃん、やぐっつぁん、裕ちゃん…そして、なっち…
この4人には本当に思いっきり叩かれた。
あたしが、これ以上バカになっちゃったらどうすんの?
217 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月19日(土)23時19分37秒
そして、出迎えの列の最後尾にはよっすぃ〜がいた。

「ごっちん!!ナイスホームラン!!本当にありがとう!!」

「ありがとうよっすぃ〜、同点だよ〜今度はよっすぃ〜の番だよ!!」

「オッケーごっちん…任せといて!!」

そう言ってよっすぃ〜は、力強くあたしとハイタッチを交わしてくれた。
よっすぃ〜は、泣き腫らしたせいか目の周りが赤くなっているんだけど、
すっかりいつもの笑顔を取り戻している。
それに、ハイタッチした手の平が痛いのなんのって…
な〜んか拍子抜けってぐらい、立ち直っちゃってるんですけど?
う〜ん、まぁよかった…よかった…

それで〜、ん〜?え〜っと…
そこまではいいんだけどさ…
なんで、その隣で梨華ちゃんが泣いちゃってんの?
よっすぃ〜のこと励ましてあげてって頼んでったのに…

「ねぇよっすぃ〜、何で梨華ちゃん泣いちゃってんの?」

訳が分からなくて、よっすぃ〜に尋ねてみた。

「う〜ん、ちょっとね…
 あっ!あたし飯田さんの次だからさ…もう行かなくちゃ。
 悪いけどごっちん、梨華ちゃんのことお願い」

そう言うとよっすぃ〜は、逃げるようにネクストバッターズサークルヘ…

ちょ…ちょっと待ってよ!!
あたしにどうしろって言うのさ…!?

その時、梨華ちゃんがあたしの胸に飛び込んできた。

「ごっち〜ん…よかった…よかったよぉ〜」

ちょっと!ちょっと〜!
梨華ちゃん…こんなところで泣かないでよ〜

も〜っ、なんであたしが〜?!
218 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月19日(土)23時30分19秒
>>214
>>215
 お互い頑張りましょう!!自分を盛り上げてさ…(w

もうすぐ第2話も終わりです。
第3話は 『乙女の心理学 Part1 〜もう1つのリベンジ〜』の予定。
219 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月20日(日)02時24分57秒
第3話はこのタイトルから、あの2人が主役とみてよろしいのでしょうか?
そうだと嬉しいっす!!(違ってたららスマン)
220 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月20日(日)13時10分18秒
>いや〜ホームランって本当にクセになっちゃいますね!!
これ聞くといつも赤面しちゃうんですよね。

これからも小ネタをはさみつつ、がんばってください。
221 名前:実況くん 投稿日:2001年05月20日(日)23時05分54秒
『いや〜本当に大きなホームランでしたね。
 落合さん、初球甘いボールだったんですが、これ何でしょうかね?』

『スライダーのすっぽ抜けですね…
 点を取ってもらった直後に、クリーンアップに投げるようなボールじゃないですよ…
 まぁ、スライダーってボールは怖いね…
 フォークと同じで、すっぽ抜けると全くの棒球ですから…
 たぶん、アウトコース低めを狙ったボールなんだろうけど、
 小宮山の初めての失投らしい、失投じゃないですか…』

『1点先制してもらって、気持ちの緩みみたいなものが出たんでしょうか?
 それともこれはスタミナ的なものなんですか?』

『気持ちの緩みって訳じゃないでしょうが、気持ちの変化は確かにあるでしょうね…
 ピッチャー心理っていうのは微妙ですから…
 ただ、わたしはスタミナ的な部分の方が大きいと思いますがね』

『両チームそうなんですけど…
 ピッチャー交替の時機は近付いてきてますよね。
 ハロプロの安倍選手は今の6回で限界かなって感じなんですが、
 横浜のベンチがどこまで小宮山選手を引っ張るのか…?』

『もう、そういう時機ですか?
 ハロプロは先程、平家と福田がブルペンで投球練習をしてましたが…』

『ハロプロはその前に、りんね選手とレファ選手もやってましたね。
 横浜は今、え〜と…右の木塚選手と左の河原選手ですかね…
 ハロプロにとって今の1点は本当に大きいと思いますよ。
 同点になりましたから、躊躇なく福田選手を投入出来ますからね』

『栗山さんは、安倍は6回で交替ではないかとのことなんですが…
 落合さんはどう思われますか?』

『ダッグアウト前で、投球練習を行ってませんからね…
 やはり交替でしょ…
 ただ、いきなり福田の投入はないでしょ…
 ハロプロベンチは、福田を大事に使いたい意向がありますから…
 1点リードするようなことがあれば分かりませんが、
 七回は4番鈴木、5番佐伯と左が2人続く場面があるので、平家の方が先じゃないかな…』

『さぁ、試合が動き出してきました…
 そして、打席には4番の飯田が入ります』
222 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月20日(日)23時11分39秒
後藤がホームランを打って同点になった。

よしよし…これでカオリがホームラン打ったら逆転じゃん…
後藤ばっかりイイカッコさせられないんだよね…
やっぱりカオリの予感は当たるんだよ…
カオリのホームランで一気に逆転だよ!!

んなわきゃない…

えっ…!?
だ…誰…!?

飯田…髪切った…?

ダメでんがな〜
カオリ…お前4番やろ〜
そんな自分勝手なバッティングしてちゃあ、ダメ!ダメ!

ダメ!ダメ!っと…
あ…!カオリも釣られてやっちゃったよ…
なんだ…始球式の人達じゃん…何か用?
カオリ自分勝手なバッティングなんてしてないよ…

ふっざけんなよ!!ジョンソン!!
お前、今日2打席連続三振じゃねぇか!!
大人になったとか言っといて、全然振り回してるじゃねぇか!!
4番として、本当にチームのこと考えてねぇダロ!!
それに比べて、ごっつぁんはすごいよな…
チームのこと考えてるよな…
ごっつぁ〜ん、後で試合で使ってたスパイクちょうだい。

このエロジジィ!!
だけどそうだべぇ!!
だべぇ!だべぇ!ジョンソン4番失格だべぇ!!

うわ〜、超似てる〜!!
だけどなんでカオリがジョンソンなのさ…
カオリ、ジョンソンなんかじゃないよ!!
う〜ん…
でも…カオリちょっと振り回しすぎてたかも…
確かに、それじゃ昔のカオリと変わんないね…
今のままじゃ4番失格だね…
ちょっと…反省…
分かった…カオリ、ちゃんと4番にふさわしいバッティングする。

はい、こんばんは島田紳助です。
我々は真の4番にふさわしい飯田さんを一生懸命探しました…
日本全国探しました…
そして中澤監督さん…
見つかりましたよ。

すご〜い、やっぱ超似てるよ〜!!
わざわざ来てくれてありがとう…
あっ!ちょっと待って…
カオリ馬の鳴きまね出来るんだけど…
超似てるから…
ねぇ!!
ちょっと見てってよ!!
ねぇ〜、ちょっと待ってよ〜!!
223 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月20日(日)23時28分00秒
>>219
 さて、どうですかな〜?ってもったいぶることもないか…(w
 まぁ、お楽しみに!!
>>220
 小ネタに反応していただけると嬉しいですね。
 後藤さんが興奮気味に感想を述べてるシーンっていうと、
 これしか思いつかなかったので…
 結局こういう小ネタをいれないと、
 キャラが書き分けられないってことですがね…(w

感想ありがとうございました。
今週中には第3話に入れそうですね。
224 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月21日(月)04時05分32秒
飯田絡みの話はやっぱり笑わせてくれますな〜!!
225 名前:実況くん 投稿日:2001年05月21日(月)22時56分54秒
『6回の裏、ハロプロの攻撃はワンアウトランナー三塁!!
 いや〜落合さん、小宮山が急に乱れましたね。
 この回先頭の2番加護を抑えたところまでは良かったんですが、
 3番後藤に同点ソロホームラン、
 4番飯田にレフト線いっぱいに入ったツーベース、
 5番吉澤の2球目をワイルドピッチ…
 突然の小宮山の乱調に、横浜のブルペンが慌ただしくなってきました』

『全部スライダーなんですよね…
 後藤のホームランも、飯田のツーベースも、
 今の吉澤へのワイルドピッチも、全部同じあのスライダーなんですよ』

『そうですね、五回まで猛威を振るった小宮山選手のスライダーだったんですが…
 この回に入って吉澤選手の初球以外は、要求通りにボールがきていませんよね』

『ピッチャー交替は考えられないですかね落合さん?
 遠藤ピッチングコーチが、今マウンド上でバッテリーと話をしておりますが…
 おっ…替えませんね、どうやら続投ですね…』
 
『この吉澤まで引っ張ろうってことじゃないですか…』

『そうですね。6番の矢口選手には2安打されてますからね』

『外野フライでも1点のケースですが、
 吉澤にはどう攻めたらいいんでしょうか落合さん?』

『外野フライを防ぐためには、低めがセオリーなんですが…
 このバッターは、低めをうまくすくいあげますからね。
 膝の使い方は天才的ですよ…』

『外野フライを打たせないために低めを投げたいが、
 投げられないということでしょうか?』

『攻め方は2つですよ…高めで勝負するか、低めで勝負するか…』

『!?…具体的にどういうことでしょうか?』

『今までの2打席ともうまく攻めていたんですが、
 内角高めの速球か…外角低め外に逃げる球…
 いずれもボールくさい球…歩かせてもいいつもりでね。
 ただ内角の速球は、攻めきれないとやっぱりパワーで持っていかれるから、
 あの外のスライダーで勝負だろうね…
 小宮山続投の意図は、そこにあると思いますよ。
 問題は、あのスライダーがコースに決められるかどうかでしょ…
 ベンチの判断はいけるってことなんでしょうが…』

『さぁ、ワンエンドワンから3球目は…』
226 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月21日(月)23時00分24秒
それにしても飯田さんのバッティングは巧かった。
その前の2打席は、振り回して三振だったのに…
1打席ですぐ修正してくるんだからすごいよね。

まぁ打席に入るまでの異様な間が、ちょっと気にはなったんだけど…

やっぱり…また交信してたのかな…?

めちゃ振りして三振するイメージが強いから、ファンの人には、
バッティングがヘタクソだと思われがちなんだけど、
以外にバットコントロールはうまいんだよね。
外角低めのスライダーを右手1本でレフトへ運ぶと、飯田さんは一気に2塁を狙った。
まるで、何かが乗り移ったかのような必死の大激走!!
ちょっと無理かなって思ったんだけど、気合でセーフにしちゃうんだよね。

カッケー!!飯田さんカッケー!!

その飯田さんは、ワイルドピッチの間に三塁へ…
あたしはついている…
こんなに早くエラーの汚名を挽回するチャンスをもらったんだから。

ごっちん、安倍さん、梨華ちゃん…
みんなが、エラーしたあたしを気遣い、励ましてくれた。

エラーをしたことで、あたしの胸の内でさらに大きくなった不安という名の爆弾…
みんなのおかげで、もう解除できそうだよ。
本当にありがとう…

みんなの気持ちに応えたい。
絶対に飯田さんをホームに迎え入れるんだ!!

3球目は内角高めのボールで、ワンストライクツーボール。
4球目は真ん中低め…
得意な高さ…ホームランボールだ!!

思いっきりバットを振ったが、ホームベース手前でワンバウンドになるフォークボール。
ツーストライクと追い込まれた。

「吉澤〜!!力むな〜!!」

三塁ベース上の飯田さんから激が飛んだ。

いけね…力入ってたかな?
そっか、よく考えてみたら目の前にいいお手本があったんだ。

そうですよね飯田さん…
まずはコンパクトにミートですよね…
絶対に飯田さんにホームを踏んでもらいますからね…
間違ってもベースの踏み忘れなんてしないでくださいよ!!
227 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月21日(月)23時16分45秒
>>224
 レスありがとうございます。
 一応、自称電波職人なんで…(w
 別に、飯田さんが一押しキャラってことではないんですが…
 他のキャラがある程度書けるようになるまでは、
 飯田さん、市井さんのツートップで頑張ってもらわないと…
228 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月22日(火)23時27分55秒
後藤のホームランで活気を取り戻したダッグアウト内が、さらに喜びに包まれた。
ダッグアウトに戻ってきたカオリとよっすぃ〜が、みんなに囲まれている。

カウントツーエンドワンから小宮山さんが投げたのは、外角のスライダー。
しかし、低めを狙ったはずのボールは高めに浮いた。
いつも引っ張るバッティングが多かったよっすぃ〜だったが、
犠牲フライには持って来いのこのボールを、ライトヘ高々と打ち上げた。

よっすぃ〜のライトへの犠牲フライで同点。
6回の裏ついに2対1と逆転することに成功した。

ダッグアウト前で、みんなの手荒い祝福を受けているよっすぃ〜。
少し前まで悲しみに沈んでいたその表情は、今現在太陽のように輝いている。

よかったね…よっすぃ〜
ありがとうね…

「よっしゃ!!よっしゃ!!やったで〜!!
 なっち、良かったな〜
 ホンマ安心したわ〜!!
 これでなっちを勝たせてやれるっちゅうねん!!
 さぁ、もう安心してアイシングしてきぃ、なっち。
 これで7回がみっちゃんやろ〜、8回が明日香やろ〜、それで9回が紗耶香やん!!
 もぉ〜完璧や!!
 完璧やっちゅうねん!!
 ちょっとブルペンの様子を聞いてみたりしてな…
 あ…!?えぇわ小湊、あたし自分で聞くから…
 ブルペンのブルペンの明日香ちゃん〜あなたの調子はどうですか〜♪
 なんてな!!」

カオリがホームベースを踏んだ瞬間、裕ちゃんはそう嬉しそうにまくし立てた。

すっかりノリノリだね。
ちょっと紗耶香の病気が移ってない?

ありがとう裕ちゃん…そしてごめんね…
なっちのことで、ずいぶん気を遣わせちゃってたみたいだね。
裕ちゃんホッとしてるよね…
やっと一つ肩の荷が下りたって感じなんだよね…きっと…
でも…ごめんね…

呆れてる小湊さんを尻目に、ブルペンとの連絡用の電話に手を伸ばす裕ちゃん。
今にも受話器に触れようかという裕ちゃんの手を…

そっと掴んだ。

本当にごめん…裕ちゃん…
229 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月23日(水)03時33分12秒
さて、なっちの勝ち投手の権利を守りきれるのか!?
(  ` ◇´)(0°−°0)ヽ^∀^ノ・・・不安アリ(w
230 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年05月23日(水)13時21分05秒
コマメナ継投作戦どうなるんだろ?
頑張ってください
231 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月23日(水)23時08分11秒
「なんや…なっち、アイシングしに行け言うたやんか〜
 大切なエースが肩壊したらどうすんねん?
 なっちには、今シーズン最低でも15は勝ってもらわんとな…
 さぁ、早よ行き!!」

なっちは、あたしの手を掴んだまま一歩も動こうとしない。

ん!?…どういうつもりや…

「もう一度だけ言うで…
 ええか、なっち…?
 肩壊したら困るやろ?
 この手を離してアイシングしに行け!!」

今度はちょっと強い口調で言った。

なっちはあたしの手を掴んだまま、首を静かに横に振った。
唇をキュッと噛み締め、ジーッとあたしの目を見据えている。
雨に濡れて震えていた子犬が、甘えるような…すがるような…
そんな瞳で…

お前はホンマに一番世話がかかる!!
入団した頃からず〜っと…
辻加護よりも、石川よりも、明日香よりも!!

あたしはその目に弱いんや…
でもアカン!!
絶対アカン!!

あたしは心の中で必死に首を横に振る。
自分に言い聞かせるように…

やがてなっちは、あたしに視線を注いだまま口を開いた。

「裕ちゃん…ごめん…
 あと一回だけ…あと一回だけなっちに投げさせて…」

出た…やっぱりや…
ホンマ…いい加減にしぃや…

エースとして、キチッと自分の納得するところまで投げたいっちゅうんやろ…
いつものことや…
でも今日ばかりは、なっちのワガママを聞くわけにはいかん!!
今日はなっちに勝ってもらうことが大事なんや!!
チームが勝つことが大事なんや!!
優勝に向けてスタートダッシュをかけるために…
だから危ない橋を渡るわけにはいかへんねん!!

だから、少々キッツイ言い方してでも、言い聞かせなあかんねん。
分かってな、なっち…

「あぁん!!
 アカン!!絶対アカン!!
 お前はもう限界やっちゅうねん!!
 それとも…なにか?!
 うちのリリーフ陣が、信用できないっちゅうんか?!
 ワガママもいい加減にしぃや!!
 とにかくダメ!ダメ!ダメ!ダメ!ダメ!ダメ!ダメ!ダメ!ダメーッ!
 アカンっちゅうねん!!」

あたしは、なっちにそう怒鳴りつけた。
232 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月23日(水)23時18分57秒
>>229
 思わずワラタ。
 確かにそのAAが3つ並ぶとなんか不安な気がする…
>>230
 以外になっちが完投したりして…

すんません。
ちょっと行き詰まってるので更新は少しずつ…
なっちが出てくると行き詰まるんだよねぇ…
レスありがとうございました。
233 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月24日(木)23時33分20秒
ワガママばかりで、裕ちゃんをいっつも困らせてたね。
知らずに振り回して…みんなに迷惑かけてたよね。
ごめんねワガママ…なっち少し後悔してるんだよ…
もうワガママ言わないつもりだったんだけど…
ごめんね…
今でもまだワガママ直らないの…
でも…これが最後だから…

「ごめん裕ちゃん…いつもワガママ言って…
 でもね裕ちゃん…今日のは去年までのとは違うの…」

「何が違うっちゅうねん!!
 お前、さっき6回で降板するのを納得してくれたはずやんか!!
 同じや!!
 お前はいつもそうや!!
 自分の状態は、自分が一番分かっとるやろ!!
 チームに迷惑かけるのが、エースの仕事やないねんで!!
 勝たせてやるっちゅうんやから、今日はおとなしく引っ込んどけ!!」

あたしの言葉は、途中で裕ちゃんの怒声に掻き消された。
裕ちゃんに、こんな剣幕で怒られるのは久しぶりだ。
鋭い目つきであたしを見つめてる。
本気でおこった時の裕ちゃんは、本当に怖い。
辻加護が怯えるはずだよね…

そして…

裕ちゃんの表情がフッと変わった。
いつもの柔和な表情…
あたしの好きな優しい目…

「なぁ、なっち…
 あたしも辛いねんで…
 ホンマおとなしく言うこと聞いてくれへんか?
 それに、この際だから言うんやけど…
 なっちも、そろそろ変わらなアカン。
 なっちが、チームのために一生懸命投げようとしてくれてるのは分かる。
 でも…なっちが、一人で無理することはないねんで…
 後ろには、リリーフピッチャーがちゃんと控えてるんや…
 紗耶香、明日香、みっちゃん…それに、りんね…
 レファ、あさみ、松浦、末永…
 任したったらええんや…
 さっきも言うたけど、無理してチームに迷惑かけるのはエースとは言わへん。
 引くべきときは、引かな…ただのワガママやねん。
 そんなんじゃ誰も信頼してくれなくなるで…
 なっちは今日よう投げてくれた。
 でも、今日の状態、点差を考えればここまでや…
 なっちには、真の意味でエースになって欲しいねん。
 本当にみんなから信頼されるピッチャーに…」

裕ちゃんは、熱っぽく…諭すようにあたしに語りかけた。
ただ怒鳴ってただけじゃない…
これからのチームのことを、あたしのことを本当に考えてくれているんだ。
234 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月24日(木)23時39分49秒
「裕ちゃん…
 圭ちゃんもね、同じようなこと言ってくれたんだ…
 『エースなら信頼に応えろ』って…
 なっちね…途中から勘違いしてたんだよ。
 今こうして野球をやってる意味を…
 本当に欲しかったものが何かってことを…
 そして、エースって何なのかってことを…
 なっちは、本当はチームのことなんて考えてなかったんだよ…きっと…
 うまく言えないんだけどさ…自分のためだけに投げてた気がする。
 でも、みんなが信頼してくれてるのが分かったから…
 なっちは一人じゃないって分かったから…」

そこまで言葉を紡ぎ出すと、目頭が熱くなってきた。
裕ちゃんは黙ってあたしの話を聞いてくれている。

「みんなが、なっちを勝たせようとしてくれているのが分かったの…
 圭ちゃんが…カオリが…石川が…なっちを励ましてくれた。
 辻がね、矢口がね、吉澤がね、
 なっちのために、必死に自分のミスを取り返そうとしてくれているの…
 加護のセーフティバント…
 後藤のホームラン…
 なんとか追い付こうって、なんとか逆転しようって…
 今までずっと結果の出せなかったなっちなのに…
 みんなはそれでもなっちのこと信頼してくれて、勝たせようとしてくれているの…
 エラーした後のよっすぃ〜の泣き顔と、
 勝ち越し犠牲フライを打った後のよっすぃ〜の笑顔…
 なっちジーンときたんだ…
 だから、なっちは今日から変わるの…
 カオリにも言われたんだ…
 『なっちは今日から変わるんだよ』って…
 これからは、みんなの信頼に応えるようなピッチングがしたい!
 みんなに勇気を与えるようなピッチングを…
 よっすぃ〜達になっちは大丈夫だよってピッチングで見せてあげたい!
 ワガママなのは…分かってる。
 でもこれが最後だから…
 裕ちゃん…お願い…」

あたしの話を聞き終わった裕ちゃんは、今どんな表情であたしを見ているのかな?
やっぱり『これだけ言ってもまだ分からんのか!!』って怒っているかな…?

あたしの視界は涙でぼやけて、裕ちゃんの表情を確認できなくなっていた。
235 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月25日(金)03時33分48秒
いや〜、なっち熱いな〜!!みんなの信頼に応えたいだなんて・・・カッコイイ!!
「ドリームス」の久里だったら死んでも言わないセリフだな。(w
236 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月25日(金)18時12分59秒
さぁ、監督はどうするのか…
次の試合の事を考え続投か?
それともこの試合を取るために心を鬼にして交代か?
237 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月26日(土)00時21分49秒
どうしたもんやろか?
正直困った…
小湊も腕を組んだまま、あたしの隣でなっちを見つめ続けたままや。
あそこまで泣きながら決意を述べられると、コッチが悪者みたいやんか。

ワガママを通すための新手の作戦だったとしたら、
『アホかー!!』って怒鳴りつけて終わりやねんけど…
そうだったとしたら、ホンマどんなに気が楽か…

でも、そんなこと考えつく程、頭良くないからな…
いや、むしろアホの娘やねん…
そう考えるとやっぱり、本気なんやろな…

本気だったとしたら、もちろんそれはそれでえぇことや…
しかしなぁ…
気持ちだけで抑えられる程、プロは甘くない。
投げさせてやるわけにはイカンっちゅうねん。

ホンマお前は一番手がかかる…

困惑…
今のあたしに浮かんでいる表情は、これかもしれん。
『絶対アカン!!』なんて言い切れんようになった。

ハァ〜、あたしは監督失格やないやろか…?

泣き続けるなっちを見つめたまま、あたしは一つため息をついた。

その時…

「安倍さ〜ん!!安倍さん!!
 やりましたよ!!あたし、やりましたよ!!
 逆転ですよ!!喜んでください!!」

みんなの祝福から解放された吉澤が、ダッグアウト奥のあたし達のところまでやってきた。
今のこの場の雰囲気に似つかわしくない、はしゃぎようで…
その顔は、なるほど太陽のように輝いている…

これが、なっちの心を動かしたんか…
238 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月26日(土)00時22分54秒
「…あ…あれ…?
 安倍さん泣いてるんですか?
 ひょっとして…吉澤のさっきのエラーが原因ですか…?」

なっちがあたしの隣で泣いているのに気が付くと、吉澤の表情が少し曇った。
背を屈めてなっちの顔を不安そうに覗きこんでいる。

「違うよ…なっちね…
 よっすぃ〜が逆転してくれたから嬉しくって…
 感動して泣いているんだよ…
 本当だよ…
 ありがとうね…よっすぃ〜」

「本当ですか…?
 あたし…
 あたしのせいで、チームが負けたらどうしようって…
 あたしのせいで、安倍さんが負けたらどうしようって…
 でも…安倍さんが励ましてくれたから…
 チームのみんなが励ましてくれたから…打てたんですよ!!
 本当によかった…
 これでもう大丈夫ですよね!!」

なっちの言葉に対して吉澤は興奮気味に声をあげた。

「うん…もう大丈夫だよ…
 もう一回だけ…なっち投げるからね…」
 
勝手なこと言いやがって…
誰も許可なんかしてへんっちゅうねん!!

なっちの言葉にちょっとカチンときたあたしだったが、
なっちがもう一回投げるって聞いた時の吉澤の表情を見たらな…

「えっ?!もう一回投げるんですか!!
 よかったー!!
 あのエラーで、安倍さんの降板が早まったんじゃないかって、
 ちょっと気になってたんですよ!!
 もう吉澤エラーなんかしませんから!!
 安倍さん頑張りましょう!!」

そう言ってなっちの手を握りしめた吉澤の表情は、また太陽のように輝き出した…

なぁ、なっち…お前ホンマに真のエースになってくれるんか…?
239 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月26日(土)00時24分14秒
もう一度ブルペンとの連絡用の電話に手を伸ばした。

「あ…!?ルルか…
 なっちにな、もう一回投げさせることにしたから…
 8回からは明日香や…
 あん?
 違う!!アヤカやない!!
 何?
 『アヤカりたい…』って何やねん!!
 アホー!!
 お前のくだらんダジャレ聞いてる場合やないねん!!
 もう、ええわ!!
 みっちゃんに替われみっちゃんに!!
 何ぃ!!
 『みっちゃんみちみちウンコたれて…』やと!!
 アホー!!
 もう、ええっちゅうねん!!
 バカーッ!!」

受話器を壁に投げ付けた。

落ち着け…落ち着け…
スマイル、スマイルや…

なんとか笑顔を作りなっちの方に向き直ると、なっちと目が合った。

「いいの…裕ちゃん…?」

あたしと小湊の顔色を窺いながら、なっちが尋ねてきた。

「今、自分で投げるっちゅうたやんか…
 それに監督はあたしやねん…
 あたしの判断で決めればいいって、なっち少し前に言うたやろ。
 そのあたしが、なっちはみんなの信頼に絶対応えてくれるって判断したんや!!
 誰にも文句は言わさん…
 なぁ、吉澤!!
 なっちは絶対抑えてくれるよな!!」

あたしの問いかけに吉澤は元気よく答えてくれた。

「はいっ!!もちろんですよ!!
 いや…別にプレッシャーをかけているわけじゃないですよ安倍さん」

サンサンと輝きを増す吉澤の笑顔…

「ありがとう…よっすぃ〜
 裕ちゃん…ごめんね…本当に…
 またワガママ聞いてもらっちゃって…
 これが最後だから…ごめんね…
 絶対に抑えてくるから…力いっぱい投げてくるから…」

涙をアンダーシャツで拭いながら、なっちは必死に声を絞り出した。

「もう謝るのは、お互いに止めようってさっき言うたよな!!
 さぁ、泣いてないで肩ならししてこい!!
 ホンマ、打たれたらクビにしてやるからな!!
 吉澤、お前もや!!
 今度エラーしたらお前もクビにするからな!!」

悪態をつきながら、二人を送り出した。

ホンマ…これでよかったんかな…?
240 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月26日(土)00時29分08秒
「ごめんな小湊…お前の存在を否定するようなこと言うて…
 本来ならお前の意見を聞くべきやったんや…
 あたしは野手やから、ピッチャーのことは分からへん…
 あたしの采配は、どうしようもない人情采配やねん…
 『あいつならやってくれるはずや!!』って、根拠も何にもないのにな…
 今まで、何度なっちのワガママで痛い目に会ったか…
 それじゃアカンって思ったから、
 お前にバッテリーコーチとして、投手陣を預けたはずなのにな…」

腕を組んだままで、なっちを見送っている小湊にそう話しかけた。

「いいよ…気にしてないから。
 あたし、今のなっちの続投については反対じゃないから…
 6回のピッチング見たら球威が戻っていたしさ…全部詰まっていたじゃん。
 ああいう形で点を取られたし、
 メンタルな部分で続投は無理かなって思っていたんだけど…
 あの気迫を見せられたらねぇ」

そう言って小湊は苦笑してみせた。

「もともと中盤以降、しりあがりに調子を上げてくるピッチャーだし大丈夫でしょ。
 ダメなら交替させればいいんだし…
 あそこまで言ったんだから、今度は首を縦に振るでしょ」

冷静にちゃんと見てくれていたんやな…
正直言うと、あたし後悔しかけていたんや…
でも、後押ししてくれてありがとうな…小湊。
これでホンマになっちのこと安心して送り出せる。
241 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月26日(土)00時29分58秒
「そうやな…ホンマお前は頼りになるわ。
 投手陣からは恨まれる辛い立場やけど、これからもよろしく頼む。
 本当ならルルの仕事やねんけど、アイツがあの調子やからな…」

「ルルはルルで、ああ見えても技術的なことはちゃんと教えられるからさ…
 ちゃんとみんなに伝わってるかどうかは、よく分からないけどさ…
 でも、みっちゃんなんかパームボールを教えてもらって、
 ちゃんと習得できているんだから大丈夫なんじゃないの」

ニカッと笑う小湊を見てあたしはつくづく思う。
現役の頃から思ってたんやけど、ホンマこいつは『肝っ玉かあさん』やな…
巧みなリード、全身から醸し出す安心感…
あの圭ちゃんが、今でも『小湊さんには全然敵わない』って言うぐらいやからな…

いいコーチ陣に恵まれてあたしは幸せや。
頼りない監督のあたしやけど、チームのためにしてやれることもあるんやで…

一選手としてな…

コーチ連中にはまた世話をかけるけど…今シーズン限りや!!
今シーズンいっぱいは、力を貸してくれ!!

「小湊!!もう一度ルルと連絡をとって、今後の継投を確認しといてくれるか?
 しのちゃん!!あたし裏でバット振ってくるから、代理監督を頼むわ!!
 なっちなら大丈夫や!!
 あいつは素直でアホやから、あれだけ言えば必死で抑えてくる!!
 次の回、絶対にもう一点取るから!!」

6回の裏の攻撃が2対1で終了したのを見届けると、
あたしはダッグアウト裏に向かって歩き出した。
242 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月26日(土)00時45分36秒
>>235
 レスありがとうございました。
 なっちは印象が悪くなってないかどうか一番心配なので、ホッとしました。
 (メール欄に監督AA入れようとして失敗しましたね?
  わたしも2回程あるんですよね。何で入らないんですかね?)
>>236
 レスありがとうございました。
 結果はこうなりました。ヒネリも何もなくてすみません。

詰まっていた部分を一気に放出。
今週中に3話に入るつもりでしたが、無理っぽいです。

『ウソつき作者』
从#~∀~#从ウ〜ソつ〜き〜いつものことね〜忘れるわ〜
     新し〜い小説を〜見つけてやるわ〜

うっぷんばらしに次回はバカネタで更新予定。
ウソつきですが見捨てないでいただけるとありがたいです。
 
243 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月26日(土)02時50分02秒
せっかくスポコン系の熱い友情ドラマを展開していたのにバカネタ投入ですか・・・
大変素晴らしい!!(w
244 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月26日(土)12時57分35秒
ルルオモロ(w
ってゆうちゃんが裏でバット振るって…
まさかねぇ…
245 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月27日(日)00時12分56秒
まさか、あんなことになるなんて思わなかったんです…

そう、あたしのせいなんかでは決してないんです。
でも、悪のりし過ぎだって…
あなたのせいだって…
口には決して出さないんだけど、みんなの視線があたしを責めているようで…
よかれと思ってやったことだったのに…
あの娘を救ってあげたかっただけなのに…

でも、なんで…なんでこんなことになってしまったの…
動かなくなってしまったあの娘を見つめながら、思考をめぐらせる。
でも…分からない。
分からないよ。

悪のりし過ぎたとは思いません…
でも、ちょっとはしゃいでいたのは認めます。
ただ…あたしは嬉しかっただけなんです。
吉澤の勝ち越し犠牲フライが…
これで、なっちに勝利投手の権利を持って、マウンドを降りてもらうことが出来る。
なんとか約束を果たすことが出来たって…

1点取られたのは吉澤のせいなんかじゃないんです。
あたしのリードのミスなんです。
ライトに打ち上げられた最後のボール…
あそこは、落ちるスライダーを要求するべきだったんです。
でも、その前のストレートがあまりにもよかったから、
あたしは外角低めのストレートを要求してしまった。
高めに浮いて、犠牲フライに持って来いのボールになる危険を冒して…

だからチームが逆転した瞬間、本当に嬉しかったんです。
ちょっとはしゃいでしまったんです。

でも、信じてください。
本当にこんなことになるなんて思わなかったんです。
あの娘を救ってあげたかっただけなんです。
あたしのせいなんかじゃないんです。
信じてください…

って言うか、なんであたしのせいなのよ!!
あたしは悪くなんかないわよ!!
人のせいなんかにしないでよ!!
ムーカーツークー!!
246 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月27日(日)00時15分35秒
ふにゃ〜これどうしよう…

いい加減に泣き止んでよ〜、ね…梨華ちゃん…  
大体、なんで梨華ちゃんが泣かなくちゃいけないの?
ホラホラ泣き止んでよ〜

あたしの膝の上では、未だに梨華ちゃんが泣いていた。
何度も何度もなだめて泣き止ませようとしたんだけど、一向に泣き止む気配がない。

「ね、梨華ちゃん…逆転したよ。
 よっすぃ〜が犠牲フライ打ったから…ね、二人で出迎えに行こうよ。
 梨華ちゃんってば〜」

あたしの言葉に対して、
梨華ちゃんは泣きながら『うん…よかった…よかったよぉ〜』なんて言うだけで、
全然起き上がろうとしない。

参ったな〜あたしより少しお姉さんなんだから、もっとしっかりしてよ…

その時、ふと左側から強力な視線と邪悪な気配を感じた。
ん〜?!って感じで振り向いてみると、そこにはニヤァ〜っと笑った圭ちゃんがいた。

ヤバッ?!

あたしは慌てて圭ちゃんから視線を外すと、
梨華ちゃんを隠すために、半身の体勢でベンチに座り直した。
さらに、あたしの膝の上にある梨華ちゃんの上半身を両腕で抱え込む。

「ねぇ、後藤さ〜ん…そこで誰か泣いているでしょ…」

来たっ?!
お願い神様!!
あたしに一握りでいいから恐怖と戦う勇気をください!!

「えっ、し…知らないよ〜圭ちゃんの気のせいじゃない…」

あたしは、圭ちゃんに背を向けたままそう答えた。

「何とぼけてんのよ!!
 あんたの隣から、すすり泣く声が聞こえるのよ!!
 ねぇ、誰なのよ!?
 いいからあたしに任せなさいよ!!」

そう言うと圭ちゃんは、あたしの左隣に強引に座り込んできた。

ごっちん、ピ〜ンチ!!
247 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月27日(日)00時18分48秒
あたしの左隣に座った圭ちゃんは、あたしの右隣をチラチラ観察するように見ている。
相変わらずニヤァ〜っと笑いながら…

なんか今の圭ちゃん怖い…

「ねぇ、誰よ!?ごっちん、言いなさいよ!!」

「け…圭ちゃんの知らない人…」

思わず声が裏返った。

「なんであたしの知らない人間が、ベンチに座って泣いてんのよ!!
 あんたふざけるのもいい加減にしなさいよ!!
 って…あーーーーーーっ!!」

圭ちゃんが何かに気が付いたのか大声をあげた。

「今、ちらっとピンクのリストバンドが見えたわよ!!
 ちょっと、ちょっと〜それ石川じゃないの!!
 そうでしょ!?
 ちょっと石川ならあたしに任せなさいよ〜!!」

ヤバイ!!ばれちったよ〜
って言うか、なんで梨華ちゃんはリストバンドまでピンクにしてんのよ〜
このピンクバカ!!
でも、なんとかごまかさないと…

「ち…違うよ圭ちゃん…
 これはピンクのリストバンドをした圭ちゃんの知らない人だよ…
 梨華ちゃんなんかじゃないよ…
 本当だって…ごっちん嘘つかないよ…
 あ…そうそう、これ中日の井上さんだよ…ピンクのリストバンドしてるじゃん…」

ん〜我ながらうまくごまかすもんだね。

そう思ったのもつかの間、圭ちゃんの怒声が響いた。

「バカーーーーッ!!
 なんで中日の井上さんが、こんなところでごっちんの膝枕で泣いてんのよ!!
 いい加減なこと言ってると、ただじゃおかないわよ!!
 いいから石川をあたしに引き渡しなさいよ!!」

キラーンと目が光ってる。

怖さ爆発…
もうダメだ…
いいやもう…
248 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月27日(日)00時21分40秒
ごめんね梨華ちゃん…
でも、あたしは悪くないからね…
いつまでも泣き止まない梨華ちゃんが、悪いんだからね…

だって、テンションが上がっている時の圭ちゃんって怖いんだもん。

「うぅ…分かったよ〜
 梨華ちゃんは圭ちゃんに任せるから…
 どうか怒りはお鎮めください…
 ごっちんだけは見逃してください…」

ついに梨華ちゃんを圭ちゃんに差し出してしまった。
なんか野獣に生け贄を捧げたような気分だよ…

この後、梨華ちゃんに待ち受けている運命を考えると、
悪いことしたなぁって思うんだけど…
自分の身も大事なわけで…

嬉しそうに梨華ちゃんを抱えて、ベンチの隅へと運んでいく圭ちゃん。

ふと、頭の中にこんな映像が浮かんだ。

ここはジャングルの奥地…
ドンドコドンドコ太鼓の音が響き渡っている。

グツグツ煮えたぎる大釜の中身をかき回しているのは、ニヤァ〜っと笑った圭ちゃん。
もちろんドンドコドンドコ太鼓を叩いているのも、ニヤァ〜っと笑った圭ちゃんだ。

梨華ちゃんが大きな木に縛り付けられている。

そして…その大木を囲むように、これまたニヤァ〜っと笑った大勢の圭ちゃんが、
右手に大きなナイフ、左手に大きなフォークを持って踊っている。

ドンドコドコドコ、ドンドコドコドコ…

だんだん太鼓の音が早くなってきた。
そして、踊るスピードも…
だんだん踊りの輪が小さくなってきて、
ニヤァ〜っと笑った大勢の圭ちゃんが梨華ちゃんに接近してきた…

ドンドコドコドコ、ドンドコドコドコ…
ドンドコドコドコ、ドンドコドコドコ…

うぅ…ごめんね梨華ちゃん…
249 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月27日(日)00時24分29秒
いや〜よかった、本当によかった…
逆転出来たし、安倍さんも続投するってことだし…
なんか胸が熱くなってきちゃったよ。
それにしても、梨華ちゃんとごっちんはさっき出迎えにきてくれなかったな…
まだ梨華ちゃん泣いているのかな?

安倍さん達と別れたあたしは、
ごっちんと梨華ちゃんの座っているはずのベンチの前に戻ってきたのだが…

!?…

そこには梨華ちゃんの姿がなく、
膝の上に手を置いたまま、俯き加減で座っているごっちんの姿があるだけだった。

「あれ、ごっちん梨華ちゃんは?」

あたしの問いかけに、ごっちんは少し顔を上げてあたしの顔を見やると、
無言でベンチの右隅を指差した。
あたしがごっちんの指差した方向に目を向けるとそこには…

「あぁーーーーーーっ!!
 ちょっと、ごっちん何やってたんだよ〜!!
 梨華ちゃんのことお願いって、頼んでったじゃんか〜
 ごっちんのバカバカーーーーっ!!」

あたしの非難の声に、ごっちんはちょっとムッとした顔をすると、
あたしに反撃してきた。

「ごっちんだってね〜必死に戦ったんだよ〜
 でもしょうがないじゃん…テンションが上がっている時の圭ちゃんって怖いんだもん。
 自分は、勝手にごっちんに梨華ちゃんを押し付けてったクセにさ…
 よっすぃ〜のほうがバカじゃん。
 そうだよ…よっすぃ〜のほうがバカだよ…
 名古屋ドームが青森県にあると思ってたクセに!!」

何を〜〜〜〜〜〜っ!!
じゃあこっちも言わせてもらうから!!

「何だよ!!ごっちんだって静岡県にあると思ってたクセに!!
 ごっちんなんか分数の計算問題が出来ないじゃんか!!」

「よっすぃ〜なんかオフのクイズ番組でさ…
 アメリカの歴代大統領の名前がソビエトって何さ!!」

売り言葉に買い言葉…
あたし達の東西バカ合戦は長期戦の様相を呈してきた。
250 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月27日(日)00時28分06秒
「ねぇ、ごっちん…梨華ちゃん大丈夫かな?」

東西バカ合戦を痛み分けで終えた後、あたしはごっちんに質問を投げかけてみた。
梨華ちゃんの件は、もう手を下しようもないのだが、気になるものは気になる。

「なっちがさ〜初めて見た時はさ〜
 あまりの衝撃に声が出なかったって言ってたよ。
 柴ちゃんの時は、ひきつけを起こして救急車で運ばれてたなぁ…」

「柴田さんが!?
 辻と加護なんか、一日中泣き続けて試合に出れなかったことあったよね…
 梨華ちゃんの場合、もしかしたら死んじゃうんじゃないかな…?」

「考えすぎだよ…よっすぃ〜」

そんなやり取りをしている時、ダッグアウト中に悲鳴が響き渡った。
耳をつんざく超音波…誰が発したかはすぐ分かる。
思わず視線をベンチ隅に送ろうとすると、ごっちんの制止をうけた。
無言で首を横に振るごっちん…

うん…分かってるんだけどさ、ごっちん…
なんか、梨華ちゃんに悪くてさ…

気分を落ち着かせようと、グラウンドに目を向ける。

「あ?!矢口さん、またヒットだ…すごいねごっちん」

「そうね…」

「あ〜惜しい三塁タッチアウトだ…ちょっと三塁は無理だったかな?」

「そうね…」

「ごっちん…梨華ちゃん、動かなくなっちゃったみたいなんだけど…」

「…………」

「梨華ちゃんさ〜大丈夫だよね…ごっちん…」

「たぶん…」

「あのさ…試合が終わったらさ、梨華ちゃんに優しくしてあげようねごっちん」

「うん…そうね…それから、梨華ちゃんの分までがんばらなきゃね…」

気のない返事を繰り返すごっちんだったけど、やっぱり気になってたんだよね。

でも集中してがんばろうよ梨華ちゃんの分までさ…

そして、あたしには一つやっておかなければいけないことがあるんだけどね。
251 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月27日(日)00時45分18秒
>>243
 シリアスとギャグの比率は3:7ぐらいにしたいと常々思っております。
 そしてこのタイミングではバカネタをいっとくしかないでしょう(w
>>244
 プレイングマネージャー中澤さんは、
 監督に専念した昨シーズンと違って、
 今シーズンは選手としてもヤル気マンマンです。
 
レスありがとうございました。
書いた分をその日に投稿することはあまりなかったのですが、投稿しちゃいました。
充分に推敲できてないと思うので、誤字脱字や描写不足があるかもしれませんが… 
あと一つエピソードを書いたら第2話は終了。
252 名前:244 投稿日:2001年05月27日(日)02時00分07秒
そうなのねってどっかにあったかも
一気に読んだからポジション等わからんくなってる(w

あんまり無理はだめよ
253 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月27日(日)04時26分38秒
わーい、『保田スペシャル』炸裂だー
もしかして『保田スペシャル2』?
254 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月27日(日)23時29分23秒
ふぅー

あたしは一つため息をつくと、自分のグラブを持ってダッグアウトを後にした。
開幕戦から3打数3安打の猛打賞。
これ以上ない好調なスタートじゃないですか。
だけどあたしは、これ以上ないぐらい落ち込んじゃってるんですよね。

初回のエラーとか今の打席の三塁タッチアウト。
そんなことが原因じゃあないんですよ。

分かっちゃったんですよね。
自分がキャプテン失格だってことが…
今シーズンからあたしはキャプテンに任命されたんですけど、
その経緯を少し説明しておきましょうか。

なんと、あたしはハロプロ初代キャプテンなんですよね、エッヘン。
過去3シーズン、このチームにはキャプテンなんてなかったんですよ。
普通キャプテンっていうのは、
毎日試合に出れないピッチャーや、若手の選手が選手会長になった時に、
選手会長とは別に、チームをまとめる役割をする人らしいんですよね。

そうなると、あたしのキャプテンっていうのはちょっとおかしいと思うでしょ…
だって、選手会長のカオリも副会長の圭ちゃんも毎日試合に出場する野手だし、
あたしよりも年上なんだから…

昨シーズン終了後、納会が始まる前に裕ちゃんから呼び出しを受けた。

「なんだよー裕子ー呼び出しなんて。これから楽しい納会だっていうのにさー」

そもそも呼び出しなんてものはあんまり嬉しいものではない。
あたしは裕ちゃんに非難の声をあげた。

「あのな〜矢口にちょっと頼みたいことがあってな…」

裕ちゃんがこう切り出した時、あたしはイヤな予感がした。

また『キスさせろ!!』とか言うのかなー
本当にしょうがないよねこの人は…
可愛がってくれるのは嬉しいんだけど、ほとんど依怙贔屓のレベルだからなー
その愛情表現にも問題があるし…
あたしもちょっと辛いんだよね…
わざわざあたしを呼び出したりして、まさか本気で告白でもする気じゃないよね?

あたしはこの時、裕ちゃんの頼み事とやらを軽く考えていた。
255 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月27日(日)23時33分39秒
「何、頼みたいことって?また『キスさせろ〜!!』とか言うの…?」

あたしがおもしろくなさそうにそう尋ねると、
裕ちゃんは猛烈な勢いであたしに抱き着いてきた。

「それもある!!矢口〜好きやで〜!!」

本当にしょうがないこの人は…頭がおかしいんじゃないだろうか?

押し付けようとしてくる唇を必死にかわす。

「ちょっと裕ちゃんやめてよ!!やめろーバカ裕子ーっ!!
 そんなことで呼んだのかよー!!」

その瞬間、裕ちゃんは我に返ったようにあたしの体から手を離した。

「そうやった、そうやった…今日は真面目な話をするつもりやったんや。
 ごめんな矢口〜まぁ聞いてくれ!!」

そう言って裕ちゃんが語りだした話は、あたしに衝撃を与えた。
楽しい、楽しい納会のことなんて頭の中から吹き飛んだ。

「えー!!矢口をキャプテンにするってどういうことだよー!!
 無理無理…絶対無理!!
 そんな責任重大なの無理だよー!!
 だいたい選手会長のカオリや副会長の圭ちゃんがいるんだから、
 キャプテンなんか必要ないじゃん!!
 無理だよー裕ちゃん!!
 本当に無理無理…勘弁してよ裕ちゃん!!」

突然、大役に任命されてあたしはパニックに陥った。

ヤバイ…なんだか泣きそうだ。

そんなあたしを、裕ちゃんは優しい目で見つめている。

「なんやお前、泣きそうやんか。
 大丈夫やで矢口…
 そんな大袈裟に考えんでもいいんやで…
 元気よく声をかけてくれるだけでいいんや。
 お前の明るさで、みんなを盛り上げてくれればそれでいいんや。
 いつも自然にやってることやんか。
 肩書きつけてやったほうが、気兼ねなく出来るやろ?
 それだけやねん。
 難しく考えなくていいんや」

裕ちゃんはそう言うと、あたしの体を抱き寄せて頭をなでてくれた。

無理矢理抱き着いてくるのは勘弁してほしいんだけど、こういうのは悪くない…
256 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月27日(日)23時51分50秒
>>252
 お気遣いありがとうございました。
 6月に入ると仕事が忙しくなりそうなので、
 筆が進み時間の取れる内は頑張ろうと思います。
 (まぁ、無理はしない程度に…今までも無理はしてないですけどね(w )
>>253
 お待たせ!!『保田スペシャル』炸裂です!!
 ちなみに今回炸裂したのは、
 プレイボール前になっちに使用しなかった『保田スペシャル21』です。(w

第2話最後のエピソード。
2レス分ぐらいで終わると思ってたんですが…全然ダメだ。
脱線、脱線!!
なんか開幕戦書き終わったら、完結にしてもいいぐらいのボリュームですね。
開幕戦なんてまだほんのプロローグ部分なのに…
市井さんの出番をお待ちの方スミマセン。 
257 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月27日(日)23時57分43秒
ガンバレー
オイラのほうはようやく終わりました。
泣くよガメラの作者さんも復帰したし、ROMに戻ろうか考え中。
258 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月28日(月)03時43分25秒
ここまででまだ、開幕戦1試合も終わっていないとは思えない。
それだけ、密度の濃い素晴らしい作品だっちゅうことですよ!!
259 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月28日(月)23時40分38秒
「落ち着いたか矢口…もうちょい聞いてくれるか?
 あたしな…来シーズンは絶対優勝したいねん。
 なぁ、矢口…うちら強くなったよな?
 今シーズンなんか2位やもんな…
 打てなくて、打てなくて…勝てなかったのが嘘みたいやな。
 一年目なんかまともに勝ってるのが、なっちだけやったもんな。
 みんな一生懸命投げてんのに、なかなか応えてやれなくてな…
 でも、後藤が加わって…あの新しいのが4人加わって…矢口達も成長して…
 巨人に引けを取らない打線になったと思う。
 強力なリリーフ陣を中心にした投手陣だって、中日に負けてへん。
 優勝できる戦力はあると思う。
 でもな、今シーズンの2位は、巨人に独走されての2位や…
 うちらは、10勝17敗で巨人に大きく負け越してる。
 戦力は五分以上のはずなのに大きな差がついてる…
 それは重要なポイントや。
 うちらと巨人では何が違うと思う…矢口?」

裕ちゃんは、真剣な表情であたしにそう尋ねた。

こういう裕ちゃんの顔は大好きだな。

「なんだろ分かんない…二遊間の守備力かなー?」

あたしがイタズラっぽくそう言うと、裕ちゃんは思わず苦笑した。

「お前、そんな意地悪いこと言うな。
 あいつらだって一生懸命やってんねんで…
 でもまぁ、それもあると言えばある!!
 9回裏二死満塁で、紗耶香が松井を真正面のセカンドゴロに打ち取ったのを、
 辻にトンネルされてサヨナラくらった時なんか、
 思わずベンチの後ろ側にひっくり返ったからな…
 でも…そんなことやない」

あたしが答えを導き兼ねていると、裕ちゃんは静かに話を続けた。

「分からへんか…?
 追い詰められた時のチーム力が違うねん。
 勝つことを宿命づけられたチームの底力っちゅうか…なんやろなアレは?
 そのへんが違うねん。
 巨人戦になると、勝ってても逆転されそうなプレッシャーを感じるし、
 リードされるともうダメかなってなるやろ。
 ようは気持ちの面で競り負けてるんやな…
 そんな時に、そういう空気を吹っ飛ばしてくれる奴が必要やねん!!
 明るく元気よく声を出してな…
 これをわざとらしくでもいいから、意識的にやってくれる奴が必要やねん!!
 そして、これが出来るのは野手では矢口しかおらへんから…」

裕ちゃんはあたしの目をジッと見つめている。 
260 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月28日(月)23時42分59秒
「矢口の言う通り…
 本来ならこれは、選手会長のカオリや副会長の圭ちゃんの役目かもしれへん。
 でも、二人ともチームをまとめようと、よう頑張ってくれたんやで…
 カオリは自分以外の周りのことに目が向くようになったし、
 バッターとしてずいぶん成長してくれた。
 圭ちゃんもキャッチャーとしてよく声を出してくれるようになったし、
 後藤や石川達、後輩のめんどうを不器用なりによく見てくれた。
 でも、もともとこの二人はどっちかって言うとマイペースタイプやろ。
 率先してチームを引っ張っていくタイプとちゃうんやな…
 二人ともだいぶ無理をしてくれたと思う。
 これ以上、無理させるのも悪くてな…
 だから矢口には、この二人をサポートしてチームを盛り上げてほしいんや。
 本当に、明るく元気よく声を出してくれるだけでええねん!!
 あの二人がへこんでる時でも、チームが活気づくようにな!!
 さっきは気楽に考えろって言うたけど…
 実際には、矢口にも無理はしてもらうことになると思う…
 それでも、矢口にその役目を頼みたいねん!!
 これからは、矢口にもチームの中心選手になってもらいたいねん!!
 頼む!!」

そこまで言うと裕ちゃんは、あたしに対して頭を下げた。

ずるいよ…裕ちゃん…
ここまでされてさー、あたしが断われる人間じゃないの知ってるんだもん。
本当に自信なんてないのにさ…
いつもは、本当にしょうがない人だなって思うことが多いんだけど…
ちゃんとチーム全体、個々の選手のこと考えてくれているんだね。
みんなで勝利を目指すために…
やっぱりカッコイイね。
見直したよ…裕ちゃん…

「うん…分かった裕ちゃん…
 自信ないんだけどさ…やってみる…」

しかし、あたしが裕ちゃんを見直したのも束の間…

本当にしょうがないこの人は…頭がおかしいんじゃないだろうか?
 
あたしがキャプテン就任を認めた途端、裕ちゃんの猛アタックが再開された。

「本当か!!サンキュー矢口ぃ〜、好っきやで〜!!」

至近距離から無理矢理に唇を押し付けられた。

うわー見直して損したー!!
このバカ裕子ーーーーーーーっ!!
261 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月29日(火)00時15分39秒
>>257
 完結したんですか!?
 とりあえず『お疲れさまでした』ですが、ちょっと残念な気がします。
 雄根小二郎さんのはわたしのと違って、
 選手の必死さとかがすごく伝わってきて好きだったんですよね。
>>258
 密度が濃いかどうかは自分で判断しかねますが、ありがとうございました。
 開幕戦が終われば、
 各選手にスポットをあてた短編集みたいな形に出来ると思うのですが…

次回更新時に、アレの告知をしようと思ってます。
まだちょっとやろうかやるまいか迷ってはいるんですけどね…
262 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月29日(火)23時30分05秒
ねぇ、裕ちゃん…
裕ちゃんは、あたしなら出来るって言ってくれたけど…
ダメだよ… 
あたしはキャプテン失格だよ…

今日、あたしがキャプテンとしてやったことなんて、
円陣組んだ時に号令かけたことぐらいだもん。

今もこうやって、みんなに声をかけることもせずにトボトボ歩いてるだけ…
逆転してこれからって時だよ?
みんなを盛り上げなきゃいけないのに…

カオリや圭ちゃんをサポートして、チームを盛り上げろって言ってたけどさ。
あたしがへこんでる時には、誰がサポートしてくれるのさ?
もしかして裕ちゃん…?
でも、その度に無理矢理キスされるんじゃ考えちゃうな…キャハハハ…

「矢口さ〜ん!!」

その時、背後から声をかけられた。
今、あたしが一番顔を合わせるのが辛い人物…
あたしが一番、彼女を励ましてあげなきゃいけなかったのに…出来なかった。
彼女のエラーを一番、引き摺っているのは…あたしなんだよね…

あたしはキャプテン失格だ…

「何?…よっすぃ〜」

振り向いて、素っ気なく返事をした。

「矢口さん、あたし矢口さんに一つお願いがあるんですけど…
 あたし、矢口さんに緊張しないおまじないしてあげたのに、
 矢口さんはあたしにしてくれなかったじゃないですか…
 あたしだって緊張してたのに…
 なんで吉澤にはしてくれなかったんですか?
 おかげでエラーしちゃいましたよ」

よっすぃ〜は悪びれることなく、ニコニコ笑いながらあたしにそう言った。
あたしの大好きなその笑顔…

なんだ…もうすっかり元気そうじゃん…
それなら、あたしの手助けなんて必要ないよ…よっすぃ〜
そんな顔見てると、余計に惨めになっちゃうよ。
だからそっとしておいてよ、よっすぃ〜
263 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月29日(火)23時32分40秒
矢口さんの反応は予想外だった。
視線を合わせようとしないし、なんかあたしと喋りたくなさそうにも見えた。

あたし、なんか怒らせるようなこと言ったのかな?
それとも、エラーしたこと怒ってるのかな?
そういえば、矢口さんはエラーした後、あたしに一度も声かけてくれなかったし…

「あ…あの…矢口さん、ひょっとして吉澤のこと怒ってますか?
 もし、さっきのエラーのせいだったとしたら本当にすみませんでした。
 あの…言い訳するつもりじゃないんですけど…
 緊張してたんですよ…そうは見えなかったかもしれないんですけど…
 なんか、焦っちゃって…
 あれ?…これってやっぱり言い訳かな…とにかくすみませんでした」

矢口さんに頭を下げた。

「違うよ…」

矢口さんはあたしから視線を逸らしたまま、ポツリと言った。

あれ?違うのか…
何だろ、何を怒ってるんだろ…?
あ…そっか!!

「じゃ…じゃあ、エラーを矢口さんのせいにしたのを怒ってるんですね?
 あの…さっきのは、そういうつもりで言ったんじゃないんですよ。
 言い訳するつもりじゃないんですけど…
 冗談っていうか…ちょっと矢口さんのセリフを真似してみたんですよ。
 おまじないをしてほしいっていうのは、本当なんですけど…
 あれ?これもやっぱり言い訳かな…とにかくすみませんでした」

再び、矢口さんに頭を下げた。

「違うよ、よっすぃ〜
 怒ってなんかいないってば…
 だから謝らなくてもいいんだよ。
 むしろ、謝らなきゃいけないのは矢口のほうだよ。
 ゴメンねよっすぃ〜
 よっすぃ〜が苦しんでいたのに、気が付いてあげられないダメなキャプテンでさ…
 本当に矢口はダメなキャプテンだよね…」

そう言うと、今度は矢口さんが頭を下げた。
264 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月29日(火)23時57分28秒
クイズ企画『300レスの娘!』

前回『200レスの娘!』が好評だったと勝手に解釈させてもらい、
クイズ企画『300レスの娘!』を行いたいと思います。

300レス目の1番最初に登場するハロプロ選手を予想してください。
正解者には、前回と同じくネタのリクエスト権利を差し上げたいと思います。
尚、リクエストいただいたネタについては早急に対処したいとは思うのですが、
事情により少しお時間をいただく場合があることをご了承ください。
(前回、不快な思いをさせてしまったような気がしますので…予めお願い致します)

300レス目が感想レスだったり、選手の描写のないレスだった場合には、
301レス目を『300レスの娘!』の対象としたいと思います。

お申し込みは、1人1選手とさせていただきます。

締め切りは280レスです。

以上、よろしかったらご参加いただけるようお願い申し上げます。
265 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月30日(水)03時06分56秒
待ってました!!
今度こそリクエスト権を頂くとしますか。(w
300レスくらいでちょうど9回と予想
と、いうことでストッパー市井で勝負!!(前回といっしょ)(w
ところで、指名したい選手が他の人と重なった場合はどうしますか?
266 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年05月30日(水)07時52分45秒
今度こそ保田で勝負だ。(w
リクエスト権はいただきだぜ
267 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月30日(水)23時21分07秒
「ちょっと、どうしたんですか矢口さん…
 何かおかしいですよ?
 矢口さんは、ダメなキャプテンなんかじゃないですよ。
 いつもみんなを明るく元気にしてくれるし、
 あたし達後輩のめんどうも、ちゃんと見てくれてるじゃないですか。
 チームをまとめてくれるいいキャプテンですよ」

よっすぃ〜は、様子がおかしいあたしを気遣ってそう言ってくれた。

「そんなことないよ…
 エラーはするし、後輩の首は絞めるし、
 よっすぃ〜が緊張して苦しんでるのに気付いてあげられなかったし、
 エラーしたよっすぃ〜を励ましてあげられなかったし、
 今も、せっかく逆転したのに、みんなに声をかけることも出来ないんだよ。
 裕ちゃんに、『どんな時でも明るく元気に声を出せ』って言われてたのに…
 一度へこむと、何も出来なくなっちゃうんだよー!!」

一気に自分の苦悩をぶちまけると、あたしは思わず頭を抱え込んだ。

ダメだ、こりゃ…
恥ずかしー!!
後輩のよっすぃ〜の前でこんなに取り乱して…
本当にバカだ!!

「そんなの関係ないんじゃないですか…?
 キャプテンだってエラーするし、頭に来ることもありますよ。
 キャプテンだからって人の心が読めるわけじゃないから、
 吉澤が緊張してるのに気付かないのだって当たり前ですよ。
 自分でダメだって決めつけないでくださいよ。
 いいキャプテンだとか、ダメなキャプテンだっていうのは周りが決めることですよ。
 大丈夫!!矢口さんはいいキャプテンですよ!!」

頭を抱え続けるあたしを、よっすい〜はそう熱く励ましてくれた。
顔を上げると、そこにはよっすぃ〜の真剣な表情…
少ししてよっすぃ〜は、自分の芝居がかった台詞に恥ずかしくなったのか軽くはにかむと、

「す…すみません…ちょっと生意気でしたかね?
 あ〜恥ずかしくなってきちゃった」

そう言って、両手で赤くなった頬を押さえた。

そんなよっすぃ〜はやっぱりかわいいなって思った。
そして、やっぱり頼り甲斐があるんだよね。
後輩なんだけどさ…
ありがとうね…よっすぃ〜
268 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月30日(水)23時25分27秒
「あ…あの、生意気ついでなんですけど…
 よかったらあたしも一緒に声を出しますんで、今からみんなに声をかけませんか?
 きっと…1回思い切り声を出したら、スーッとすると思いますよ」

しばらく頬を押さえて恥ずかしがっていたよっすぃ〜が、突然そう切り出した。

よっすぃ〜の言う通りかもしれない…
ここで独りでいじけているよりも、思い切って声を出した方がきっとすっきりする。
よっすぃ〜が一緒に声を出してくれるなら、思い切って出来るかもしれない…

よし、思い切ってやってみるか!!

「生意気なんかじゃないよ…よっすぃ〜
 でも、梨華ちゃんに同じことを言われてたら、
 『生意気だー!!』って首を絞めてるかもしれないけどさ…」

ニヤリと笑いながらそう言うと、よっすぃ〜は予想通りの反応を示してきた。

「え〜っ!!あんまり梨華ちゃんをいじめないであげてくださいよ〜
 一回の表でしたっけ?
 あの時も二人のこと、すごく心配してたんですから…」

そう言うよっすぃ〜の表情は、本当に心配そうだ。

「冗談だよーよっすぃ〜
 本当にやさしいんだね…
 じゃあ、悪いんだけどさー
 矢口と一緒にみんなに声をかけてもらえるかな?」

「ええ、もちろんですよ!!
 矢口さん、思い切り大きな声を出さないと意味ないですからね。
 思い切っていきましょうよ!!」

そうだね、よっすぃ〜
よーし、やるぞー!!

かけるかけ声はもう決まっている…

「せーの…みんな〜、頑張っていきまっしょ〜い!!」

あたし達二人のかけ声が、グラウンド中に響き渡る。
そして、それに呼応したかのようにみんなから声が返ってきた。
明るく元気なみんなの声が、あたしの心を鼓舞してくれた。

よかった…ホッとしたよー
そっか…あたしがへこんだ時は、みんながあたしをサポートしてくれるんだ…
そして、裕ちゃん…あたしの役割の大事さが分かったような気がするよ。
それに、切り替えが早いのは、たしかにキャプテンに向いてるかもね?
へこんじゃう時もあると思うけど、頑張って明るく元気に声だけは出していきたいな…
269 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月30日(水)23時39分41秒
>>265、266
 企画参加ありがとうございました。
 とりあえず参加者がいてホッとしてます。
 ところで、指名したい選手が他の人と重なった場合の件ですが、
 重なっても構わないことにします。
 前回の参加者は4名でしたし、
 今回も参加人数はしれてると思いますから…(w

今年のオールスター戦は札幌ドームでも行うみたいですね。
中継ぎと抑えのファン投票もあるし…
構想の中にあったことが、やりやすくなってちょっとラッキーです。
いよいよ次回更新で第2話終了!!
いや〜長かった!!
  
270 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月31日(木)00時09分09秒
梨華っちとか、ゆうちゃんとかが気になるとこやけど…
あんまり活躍できてない(出てこない)あいぼんで(w
271 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月31日(木)00時44分26秒
代打で中澤ねえさんを…
272 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月31日(木)01時42分55秒
キタイアゲ

200getハ、アスカデオネガイ
273 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年05月31日(木)01時44分16秒
300ダッタ
274 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月31日(木)02時26分47秒
今までROMっておりましたが、図々しくも300レスの娘!に参加させて頂きたく(w

予想はですねぇ・・・強肩センター後藤の本塁殺で(w
275 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月31日(木)02時49分50秒
じゃあ飯田の170m弾で。(w
276 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月31日(木)09時17分48秒
俺も300レスの娘!に参加させてもらいます。
予想は、9回行きそうにないので、セットアッパー福田で。
277 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月31日(木)20時28分21秒
間に合った〜(嬉
私はなっちの完投に賭けてみたい!!!
278 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月31日(木)23時47分11秒
よーし、思い立ったらすぐ実行だー!!

「よっすぃ〜、矢口ちょっとなっちに声かけてくるよ!!
 本当にありがとうね。
 じゃあねー」

よっすぃ〜に手を振ってマウンドに駆け寄ろうとすると、よっすぃ〜に呼び止められた。

「ちょ…ちょっと待ってくださいよ、矢口さん!!
 あたし、矢口さんにおまじないしてもらいに来たんですから…
 矢口さんが元気になってくれたのは嬉しいんですけど、ちょっとお願いしますよ〜」

そういえばそうだった。
ゴメンね、よっすぃ〜
あたしうっかりしてたよ。
今度はあたしが、よっすぃ〜の優しさに応えないとね!!
それじゃーやりますか!!

「ゴメン、ゴメン…ちょっと調子に乗っちゃって…
 よーし、いくよー!!」

期待感いっぱいで待っているよっすぃ〜の頭に、手を伸ばしたのはいいのだが…

う…?!
て…手が届かない…

「よ…よっすぃ〜、悪いんだけどさ…
 もうちょっと頭を下げてくれると嬉しいんだけど…」

「す…すみません」

申し訳なさそうに腰を屈めて頭を下げるよっすぃ〜

べ…別によっすぃ〜が悪いわけじゃないんだけどさ…

「緊張しないよーにっ!!はい、よっすぃ〜どう?」

よっすぃ〜の頭をわしわしっとなでてあげた後、そう聞いてみた。

「ありがとうございました矢口さん!!吉澤もう大丈夫ですよ〜!!」

そう言って笑うよっすぃ〜の顔がすぐ目の前にある。

もう、めちゃくちゃかわいいよー

「もー、よっすぃ〜!!かわいいー!!」

思いっきりよっすぃ〜に抱き着いた。

「ぎぇ〜っ!!矢口さん止めてくださ〜い!!」

なーんだ…あたしも裕ちゃんと変わんないよ…
279 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年05月31日(木)23時50分31秒
「安倍さ〜ん!!頑張っていきましょう!!」

ライトのポジションから、もう一度安倍さんに大きな声をかけた。

「なっち〜頑張れ〜!!」

「安倍さ〜ん…頑張ってくださ〜い…」

ごっちんや加護からも、かけ声がかかる。
マウンド上では、矢口さんが保田さんを交えて安倍さんを激励している。
飯田さんと辻は、熱の入ったキャッチボールを続けている。

みんなの顔は、先制された直後と打って変わってイキイキしている。

あたしのエラーで先制された時は、『どうしよう…』なんて思ったけど…
そう、もうこの世の終わりみたいな感じだったんだよね。

安倍さん達の激励、矢口さんのおまじない、そして今のみんなの顔…
あたしが抱えていた不安は、みんなのおかげでもうすっかり解消できましたよ。

もう、何にも不安はないです。
独りで抱え込んで悩むことも、背伸びすることもないんですよね。
だってみんながいるんだから…
ね…矢口さん…

後は、自分の役割を必死に果たすだけ…

あたしは、右の拳をグッと握りしめた。

その時、場内アナウンスの声が、スタジアムに響き渡った。

『UFAハロープロジェクトの選手の交代をお知らせ致します。
 1番ショート石川梨華に代わりまして、柴田あゆみ…背番号25』

げっ!!

あわわわ…
り…梨華ちゃん…ごめん…
でも、梨華ちゃんの尊い犠牲は絶対に無駄にしないから…

う〜ん…本当に大丈夫なのかな〜
アハハ…なんか、また不安を抱えちゃったかもね?
笑い事じゃないんだけど…


第2話 〜抱えていた爆弾〜 完


\(^▽^)/よ…よっすぃ〜、とりあえずあたし死んでないから…
280 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月01日(金)00時23分43秒
まず第一声…
从#~∀~#从レスの数にびびったっちゅうねん!!

新たに『300レスの娘!』に参加いただいた270-277のみなさま、
本当にありがとうございました。
結果をお楽しみにお待ちください。

なんとか第2話を5月中に終わることが出来てホッとしてます。
とりあえず『300レスの娘!』に備えて、ある程度書き溜めたいと思います。
公正を期するために…

ROMってくれていた人もいたみたいで、ちょっと嬉しかったです…

そして、『300レスの娘!』の参加申し込みは終了とさせていただきます。



281 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月01日(金)03時40分29秒
ひとまず第2話が終了したとゆうことでお疲れ様です。
それはそうと、困ってます。
280まで来て今だに7回、これでは300レスまでに9回は絶対行かね〜(w
こうなったら第3話が9回から始まるか、300レスの時に偶然出てるかを願うしかない!!
sayarin<諦めてないよ!!
282 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月01日(金)23時19分21秒
第3話 乙女の心理学 Part1 〜もう1つのリベンジ〜

旅立つために、乗り越えなければいけないものがあった…

スタンドに消えていった打球…
耳に残るヤジ…
堪え難い屈辱…

新しい自分を発見して、有頂天になっていたあたしの鼻っ柱は、無惨にもへし折られた。
でも…そこからが、あたしの野球人生の本当の始まりだった…
今のあたしが在るのは、あの屈辱があったからだ。

そういう意味では、感謝もしたいぐらいなんだけどさ…
やられっぱなしで、黙って引き下がるようなあたしじゃないんだよね…

開幕戦に借りがあるのは、なっちだけじゃない。

これが最後のチャンスだから、悔いは残していきたくなかったから…

絶対に抑えてやるんだ…



「なんかすごくない?なっち、完璧じゃん!!」

オーロラビジョンのリプレイを見ながら、隣に座ったりんねちゃんが驚嘆の声をあげる。

りんねちゃんが、驚きの声をあげるのもうなずける…
この回のなっちのピッチングは、6回までのそれとは明らかに違っていた。
3番の小川さんをストレートで追い込んだ後、落ちるスライダーで空振り三振。
そして今、4番の鈴木尚典さんにはストレート一本槍。
数球ファールで粘られはしたが、気迫のピッチングで、これも空振り三振。
鬼気迫るという言葉が、ピッタリと当てはまるようなピッチングだった。

もう体力も気力も、ほとんど限界だろうにさ…

こういう気迫を見せられると、チームのムードは盛り上がるんだよね。
グラウンドに出ている選手だけじゃない。
ベンチにいる控えの選手はもちろん、監督、コーチ…
そしてブルペンにいるあたし達にも、熱い想いは伝わってきた。

チームが一丸となり、勝利に向かって走りはじめていた。
なっちがその先頭を切って、あたし達を導いてくれようとしている。
道を間違わないように、寄り道をしないように…

『勝利はこっちだよ』って…

分かったよ、なっち…
その想いは、あたし達が引き継いでいくからさ…
283 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月02日(土)00時15分47秒
いよいよいち〜ちゃんの出番ですか?
楽しみだなぁ
284 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月02日(土)23時35分06秒
「いいなぁ、なっちは…」

りんねちゃんが、ためいき混じりにそうポツリとつぶやいた。

「どうしたのさ?」

その表情が、あまりにも曇って見えたので気にかかった。

「なんか…すごく気持ちよさそうに投げてるからさ…
 やっぱり、誰にも踏み荒らされていないマウンドで投げる気分は最高だよね…
 紗耶香はさ…
 もう先発したいって思うことはないの…?」

先発…!?
そういや、しばらく考えたことないなぁ…
投げるのが楽しくなってきて、自分が目立ちたくてしょうがなかったあの頃は、
先発したい、先発したいって思ってたけどさ。
今のあたしには、誇りに思える自分の役割があるからなぁ…
なんちって…だははははっ!!
プププ…市井さんカッコイーッ!!

りんねちゃんは、あたしの返答を期待のまなざしで待っている。

げげっ!!そんな期待のこもった目で見つめられても困るんだよ。
どうしちゃったのさ?
この市井さんに、どんな返答を期待してるっていうのさ?

返答をしかねているあたしを見兼ねて、りんねちゃんが言葉を続ける。

「今シーズンはさ…チャンスなんだよね…
 ダニエルがケガで出遅れて、先発の枠が1つ空いてるじゃん。
 ベイスターズとの3戦目…まだ誰も先発を言われてないんだって…
 りんねはさ〜、やっぱり先発したいよ…
 誰にも踏み荒らされていないマウンドで投げたい…
 紗耶香はそう思わない…?」

もう一度りんねちゃんは、あたしにそう問いかけてきた。

なんでこんな大事な試合の時に、そんなこと考えなきゃいけないのさ?
りんねちゃんの気持ちも、分からないでもないんだけどさ…
今この場所にいるからには、あたしと同じ気持ちでいてほしい。

だから…あたしはこう答えた。

「思わないね…」
285 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月02日(土)23時37分28秒
意外にも、りんねちゃんの表情にあまり変化は見られなかった。

まぁ、元々りんねちゃんは表情豊かってタイプでもないんだけどさ…

りんねちゃんは、黙ってあたしのその先に続く言葉を待っていた。

う〜ん、それにしてもなんか変な雰囲気なんだよな…
よ〜し!!

あたしは椅子から立ち上がると、指をパチンと鳴らした後、華麗にターンを決めた。
そして…

「市井はそうは思わない!!
 だって、リリーフが好きだから!!
 みんなの想いが込もっているあのマウンドが大好きだから!!
 自分の役割に誇りを持っているんだからっ!!」

両手を握りしめ、視線を宙に向けながらそう言い放った。
言い終わってそっと目を閉じる…

「な〜んちゃって!!だはははははっ!!」

カッと目を見開いてりんねちゃんを見た。

そこには、笑顔のりんねちゃんの顔があるはずだった。
しかし、実際にそこにあったのは仏頂面のりんねちゃんの顔…
りんねちゃんは、思ったことが顔に出るタイプだ。
さしずめ今は、『真剣に相談してるのにふざけないでよ!!』と言ったところだろうか…

ヤバッ!!
なんなんだ…いったい?

そうは思っても、急に笑うのを止めるのもなんか不自然だ。
しばらく笑い続けた後、数回せき払いをすると、再びりんねちゃんの隣に座った。
流れる沈黙と白けた空気が辛い…

石川には分かんねぇだろうな…きっと
この空気の辛さが…
こんな時、あいつのことを羨ましいと思うよ…ホントに…
それにしても、何であいつ途中交代になったんだろ?
守備固めにしては、セカンドの辻はそのまま守備に着いてるし…
また何かしでかしたのかな?
まぁ、気になると言えば気になるんだけど、今はそれどころじゃない。

なんかおかしいよ絶対!!
こんな時に何をムキになってんだろ?
286 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月02日(土)23時42分25秒
「あのさ…りんねちゃん…
 りんねちゃんの気持ちも分かるけどさ…
 市井にもそういうのあったけどさ…
 踏み荒らされた後のマウンドってのも悪くないよ。
 さっきも言ったけどさ…
 あたし達が立つマウンドには、前に投げたピッチャーの想いが残ってるんだよね。
 今のなっちみたいな勝利に対する気迫だったり、打たれた悔しさだったり、
 その想いはいろいろなんだけどさ…
 踏み荒らされたマウンドの様子から、なんとなく伝わってくるんだよね。
 プププ…面白いんだよ。
 気付いてた?
 彩っぺなんか調子のいい時と悪い時で、マウンドの荒れ具合が全然違うんだよね。
 そんないろんな想いの込められたマウンドに立った瞬間さ…
 なんかこうカーッと燃えてくるんだよね。
 『く〜っ…よっしゃ、あとは市井にまかせな!!絶対に抑えてやる!!』って…
 ピンチを抑えた時の、あの歓声も最高だしさ。
 やっぱりヒーローは遅れて登場するもんなんだよね〜
 調整やら何やら大変だし、打たれリゃボロクソに言われて辛いんだけどさ…
 それでも市井はリリーフ登板って大好きだし、自分のこの役割を誇りに思ってる」

りんねちゃんの真剣な気持ちに応えるべく、あたしは熱っぽくそう語った。

「それは…紗耶香がストッパーだからだよ…
 紗耶香が出てくれば、お客さんは大歓声で迎えてくれるじゃん。
 そりゃ、やりがいもあるよ…」
 
あたしの話を受けてりんねちゃんは、そう表情も変えずに言った。
また嫌な沈黙が二人の間に流れた。
287 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月02日(土)23時45分26秒
そう言われちゃうと、はっきりいって困るんだけどさ…
いったい本当にどうしたんだ?
確かにりんねちゃんの役割は、あたしや明日香、みっちゃんなんかと比べて、
割に合わない部分もあるかもしれない。
ピッチャーやってる人間なら、先発で投げたいって気持ちも分かる。
だって…目立つもんな〜
でも、今まで愚痴も言わずに頑張って投げてくれてたのに…
なんかあったのかな…?
そういえばキャンプ、オープン戦と気合い入ってたしな〜

沈黙を破ったのはりんねちゃんだった。

「ごめん…変なこと言っちゃって…
 紗耶香の言いたいことも、なっちのあの気迫もちゃんとりんねに届いてるから…
 大丈夫だよ…ちゃんとリリーフ頑張るからさ〜
 あくまでもささやかな希望だよ…
 紗耶香には心配かけちゃったみたいでごめん…」

そう言ってりんねちゃんは、あたしに気を遣うようにニィっと笑った。

それならいいんだけどさ…でも、なんか…
いや…今はこの試合に集中しないと…
そろそろ投球練習を開始しないといけないや。

でも…何がカッコイイかなんて、自分の割り切り方一つで決まると思うけどな。
288 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月02日(土)23時55分22秒
>>281
 レスありがとうございます。
 すごいAAですね。感動した…動くんだ…
>>283
 久々の市井さんです。
 最初書き上げた時にはクールだったんですけど、
 一晩寝かせたらこうなってしまった。
 最初の方と比べて違和感があり過ぎたんで…

いい感じで書き溜められてます。
第2話で当たり前のコンビネタが多くなってしまったので『さやりん』投入。
289 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月03日(日)01時22分30秒
ハロプロくんの紗耶香いい感じっす。
暴走?もかっこいいところも好きだなぁ(はぁと
290 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月03日(日)23時39分33秒
「あ!…中澤さん、振りに来たんですか?」

あたしがダッグアウト裏の鏡部屋に入っていくと、大谷雅恵に声をかけられた。

「そうや!!次の回、絶対に点取るからな!!
 大谷も北上もミカちゃんも、きっちり振っといてな!!」

鏡の前でバットを振り続ける3人に激を入れた。
3人から威勢のよい返事が返ってくる。

鏡の前に立ち、バットを振り始める。
相手投手の球筋、球速、配球をイメージしながら…

吉澤に犠牲フライを打たれたところで、森監督は小宮山さんを諦めた。
代わってマウンドに登ったのは2年目の木塚。
右の変則サイドスローから、強気に投げ込んでくるストレートとスライダーが武器や。

うちのりんねほどではないが、サイドスローから投げ込まれるボールは、
背中からボールが来るような気がして腰が引ける。
そこへ外角にスライダーを投げられるのだから、右バッターには手強い相手や。
まぁ、このスライダーも所詮りんねほどやないけどな…フン!!

昨シーズンは、バッター中澤裕子としては不本意なシーズンに終わった。
初めての監督業に追われ、キャンプから自分の調整が出来へんかった。
苦手な内角をガンガン攻められたが、バットの振りが鈍く振り遅れが目立った。
ルーキーだったその木塚にも、何度か苦い思いをさせられた。
ホンマ、ムカツクっちゅうねん!!

でも、今年は違うで!!
キャンプ中からヘッドコーチのしのちゃんの理解と強力を得て、
納得のいく調整もさせてもらったし、体調も万全や。
見てみぃ、このスイングを!!

熱を入れたスイングを続けていると、小湊が入ってきた。

「なんや、7回表終わったんか?それとも打たれたんか?どうした…?」

あたしの心配をよそに小湊はニヤリと笑いながら答えた。

「7回表終わったよ。三者三振…最後はちょっと息切れしてたみたいだけどね」

そうか…
やりよったな〜なっち…

「分かった!!今、戻るで!!」

絶対に点取ってやるからな!!
291 名前:実況くん 投稿日:2001年06月03日(日)23時40分58秒
『ど真ん中〜!!見逃しっ!!
 三球勝負だ!!最後は変化球!!
 最後はカーブでしょうか?
 5番佐伯、これをボーゼンと見逃して三球三振!!
 安倍、三者三振!!
 いや〜驚きましたね〜落合さん!!』

『この回マウンドに上がった時は、どうなることかと思いましたがね…
 いや、この回のピッチングは見事でしたね…
 佐伯の最後の球は、甘いカーブだけど裏をかかれたって感じかな?
 その前の鈴木尚典には、ストレートでゴリ押ししたからね。
 佐伯の頭の中には三球勝負はあっても、カーブはなかったんじゃないかな?
 保田の安倍に対するリードも、今シーズンは変わったね。
 昨シーズンまでは、安倍のストレートに頼り切ったリードでしたから…
 安倍は本来いいカーブを持ってるんですよ。
 今日はちょっと高めに浮いてますが…
 なんでここで使わないんだってケースが、たくさんありましたよ。
 昨シーズン安倍が勝てなかったのも、
 保田のリードが、1つ原因として挙げられるとわたしは思いますがね…』

『確かに落合さんのお話通り、安倍選手に対する保田選手のリードは、
 勝負どころでストレートを要求するケースが多かったですね。
 しかし、それにしても素晴らしいピッチングでしたね。
 鈴木尚典選手への気迫の込もったピッチングといい、
 佐伯選手への変化球を多用した攻めといい、本当に見事でしたね。
 キャンプから取り組んでた縦に変化するスライダーも、武器になってます。
 あのカーブと縦のスライダーをうまく使っていけば、
 今年の安倍選手はやってくれるんじゃないかと僕は思います』
 
『どうですかね落合さん、安倍のこの後は?
 7回終わって球数は122球、被安打6、フォアボールが2つ、三振が10個ですが…
 このまま続投はありますかね?』

『今のピッチングを見ると、投げさせたくなるところですが…
 球数も多くなってるし、7回の裏に打順が回ってきますからね。
 あまり無理はさせたくないでしょハロプロは…
 横浜3連戦の後、巨人3連戦が控えてるし、その3戦目に使いたいでしょうからね』

『なるほど、後の巨人戦を見越すと、この回で降板したほうがいいということですか…
 おっ!ハロプロは円陣を組んでますね。
 7回裏ハロプロの攻撃は7番の辻から始まります』
292 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月03日(日)23時53分23秒
>>289
 レスありがとうございました。
 そう言っていただけると嬉しいです。
 市井さんに限らず、
 他のキャラもみなさんに喜んでいただけるよう頑張りたいです。
293 名前:ま〜 投稿日:2001年06月04日(月)00時03分05秒
ハロプロくんさん(?)は
相当な野球好きですね!自分も超野球好きなんで楽しく読ませてもらってます♪
それぞれのキャラクターが良く出てていいっす!
今後も期待してますよ〜!
294 名前:289@270 投稿日:2001年06月04日(月)01時27分27秒
>>292
みんないいキャラ出せてまっせ(^^
いち〜ちゃんメインのとこやったからね(w

気合入ってるゆうちゃんもええわ〜かっこいい!
なっちのためにもぜひとも追加点取って欲しい所やね
295 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月04日(月)03時42分34秒
おそらく次の回投げるであろうりんね、いまいち気合が入ってないみたいだけど大丈夫か!?

もう知ってるかも知れませんが、動くAAはM−seekの総合案内に行けば出し方がわかりますよ!!
296 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月04日(月)22時46分18秒
3球目のカーブを佐伯さんが見送ったのを見た瞬間、マウンド上でふ〜っと一息ついた。

出し切った…
自分の持てる力を出し切れたよ。
ちょっと最後は危なかったけどさ…

主審の三振のコールに、スタンドから大歓声が巻き起こる。
一塁側スタンドに向けて軽く手を振りながら、ゆっくりとマウンドを降りる。
各ポジションからそれぞれメンバーが、駆け足でダッグアウトに引上げてくる。
あたしに対して口々にねぎらいの言葉をかけながら…
ダッグアウトの中のメンバーも、大きな拍手であたしを迎えてくれようとしている。

よかった…
あたし…みんなの信頼に応えるピッチング出来たよね…
みんなに勇気を与えるピッチング出来たよね…
これなら、みんなのエースとして恥ずかしくないよね…
ありがとね…裕ちゃん…
ありがとう圭ちゃん…そして今までごめんね…
うぅ…

「ねぇ〜どうしたの…大丈夫、なっち?
 えっ何!?…泣いてんの?」

圭ちゃんが、いつまでもダッグアウトに戻ってこないあたしを心配して駆け寄ってきた。

「圭ちゃん…圭ちゃんありがとね…
 それから今までワガママ言ってごめん…
 なっち、今日初めて気付いたんだ…
 なっちは、圭ちゃんのこと何にも理解してなかったって…
 圭ちゃんは、なっちのこと理解してくれていたのに…
 なっちは、なっちのワガママでサインに首振ってばっかりいたよね。
 圭ちゃんは、なっちの状態とか…バッターの心理とか…
 そういうのちゃんと考えながらリードしてくれてたのに…
 なっちは自分の投げたいボールばっかり要求して…
 でも…本当に苦しいなって思った時に、なんて頼りになるんだろって初めて気付いた。
 圭ちゃんのこと信じて投げて本当によかった…」

鈴木尚典さんにファールで粘られてる時…もう本当に球威がなくなってるのに気が付いた。
限界だって思った…
みんなに迷惑をかける前に、マウンドを降りたほうがいいかなって思った…
でも…弱気になったあたしを、強気のリードで引っ張ってくれたね…
バッターの心理を逆手に取ったリードで、あたしを助けてくれた…
今までのあたしだったら、最後のカーブに首を振ってたよ…きっと…
ここまで投げられたのは…

圭ちゃんのおかげだよ…
297 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月04日(月)22時50分36秒
アンダーシャツの袖で涙を拭い続けるなっちを見つめながら思った。

なんだよ〜今日初めて気付いたのかよ〜!!

あんた今まであたしが思ってた以上に、自分の好き勝手に投げてたんだね。
こちとら、ない頭で必死に考えてるっていうのに〜!!
所詮、あたしのなっちに対する想いなんて一方的なものだったんだ。
なんか…どっと疲れが出たわよ〜!!

でも…本当によく投げてくれたよ…
もう1回投げるって聞いた時は、『大丈夫かよ〜?』って思ったけどさ…
でも…嬉しかった。
あんたの力って本当に底が知れないね。
最後は、突然ストレートの球威が落ちてヒヤヒヤしたけどさ…
変化球中心のリードにも、ちゃんと応えてくれて嬉しかったよ。
最後にカーブを要求するのは、高めに浮いてたからあたしも怖かったんだけどさ…
なっちが腹を括ってくれたんで、あたしも思い切って要求できたよ。

「なっち…泣くなよ〜!!
 大丈夫だよ…今日のなっちは本当によく投げたから…
 それに、そんなに大袈裟に考えるなよ〜
 あたしの配球ミスを、なっちに救ってもらうこともあるし…
 バッテリーって持ちつ持たれつだから…
 まぁ、確かにワガママはほどほどにしてほしいけどね…
 でもさ…なっち変わったよ…
 さぁ、泣いてないでダッグアウトに戻ろっか…
 疲れたでしょ?
 肩貸すわよ…ハロプロのエース!!」

なっちはアンダーシャツの袖で涙を拭い続けたまま、首を左右に振った。

「ありがとう…圭ちゃん…
 でも、いいよ…ダッグアウトには胸を張って帰りたいから…」

なるほどねぇ〜
そりゃそうだよねぇ〜
でも…それなら泣いたままじゃダメなんじゃないの?
ちょうど、さっき開発したいいやつがあるんだけどさ…
ねぇ…
『保田スペシャル22』ってやつなんだけどさ…
298 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月04日(月)22時58分24秒
「ねぇ、なっち…それなら泣いたままじゃダメなんじゃないの?
 笑顔でないとさ〜
 泣いてないで、ちょっとこっち向いてみてよ…」

あたしの言葉に対して、なっちは一瞬ビクッと肩を竦ませたように見えた。

「えっ!!
 い…いいよ!!
 も…もう大丈夫だから!!」

そう言いながら、なっちは必死に両手で目を擦りだした。
そんななっちの両肩を両手で押さえ付ける。

逃がさないわよ〜

「本当に大丈夫だべさー!!ありがとう圭ちゃーん!!」

そう叫ぶと、なっちはあたしの手を強引に振り解いてダッグアウトに駆け出した。
 
あちゃ〜っ!!油断した〜!!
あたしによっすぃ〜や辻みたいなパワーがあったら、逃がさなかったのに〜!!
ム〜カ〜ツ〜ク〜!!

でも、まぁいいか…
なんか知らないけど、なっちの成長を垣間見ることができたし…
それにしても、突然変わりに変わるもんだよね?
ほとんど180度と言ってもいいぐらいだもん。

カオリなんか見てても思うんだけど、
純粋な人間ってのは、普通の人間以上に感じ取るものの量が違うんだろうね?
嬉しいことだったり…傷付くことだったり…いろいろなんだろうけど…
喜怒哀楽の差が激しいし、なんか考え方も極端だもんね…
きっと…この試合の中でなっちの心を大きく震わせる何かがあったんだろうね。
なんで急にああなったのかは分からないけど、
その気持ちはずっと忘れないでいてほしいな…
だって…
さっきのなっちは、今まで見た中で一番キラキラ輝いて見えたから…

さて、あたしも早くダッグアウトに戻らないと…
辻の次に打順が回ってくるしね。

あたしは急ぎ足で、ダッグアウトに向かって駆け出した。
299 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月04日(月)23時00分59秒
『UFAハロープロジェクトの選手の交代をお知らせ致します。
 7番セカンド辻希美に代わりまして、代打中澤裕子…背番号3』

場内にそうアナウンスされると、スタンドが沸き上がった。
『裕ちゃ〜ん!!』という声援も聞こえる。

ありがたいことやで…

まぁ、辻が引っ込んだことに対するため息も聞こえるんやけど…

バッターボックスに入る前に、自分のスイングを確認するように2、3回バットを振った。

なっちが、きっちり責任を果たしてくれた。
三者三振でチームにいい流れをもたらしてくれた。
さらに、矢口が機転をきかせて円陣を組み、ムードを高めてくれた。
さすが矢口や!!
ゲームの流れは、こちらに傾いてきている。
ここで1点でも追加することが出来れば、その流れは完全なものになるはずや…

そのためには、まず先頭バッターが出塁することが大切やねん。
あたしの役目は重要や。
しかし、プレッシャーはあらへん。
そんなもん感じてるヒマなんか、あらへんっちゅうねん。
もうストレスが溜まりに溜まって、暴れたくてしょうがないんやから…
監督っちゅうのは、そりゃストレスが溜まんねんで。
こうやってバットを振ってるほうが性に合う。
やっぱりあのバッターボックスに立って、
ピッチャーと相対した時の張り詰めた空気が忘れられへん…

あと何回バッターボックスに立てるかは分からへん…
でも…バッターボックスに立っている間だけは、
一選手としてチームのために全力を尽くすんや…

悔いを残さんためにな… 

あたしは、ゆっくりとバッターボックスに向かって歩き出した。
300 名前:実況くん 投稿日:2001年06月04日(月)23時04分59秒
『いや〜出てきましたね…落合さん、栗山さん。
 7回表ハロプロの攻撃、代打でプレイングマネージャーの中澤が出てきました。
 この回の先頭打者7番の辻に代わっての代打となります。
 この代打はいかがですか、落合さん?』

『逆転して…
 安倍の好投があって…
 今の流れはハロプロに傾いてきてるんですよ。
 やっぱり追加点が欲しいですからね…
 先頭打者を塁に出したい場面で、辻なんですが、
 この7番の辻がバットを1度も振らずに2三振ですから、
 この代打は仕方ないでしょうね』

『昨シーズンは、思ったような成績を上げられなかった中澤ですが、
 キャンプ、オープン戦を精力的にこなしてたみたいですね、栗山さん?』

『僕はキャンプ、オープン戦なんかで話を聞いてきたんですけど、
 やはり昨シーズンは、『監督業に追われて調整が出来なかった』って話してましたね。
 今シーズンは、信田ヘッドコーチの協力もあって、調整がきっちり出来たみたいですよ。
 バットの振りも、全盛時の状態に近いものがありますね』

『さぁ、その中澤が右バッターボックスに入りました。
 落合さん、マウンド上の木塚ですが、中澤へはどう攻めたらいいんでしょうか?』

『基本的には内角の速い球でしょ…
 もともと苦手なコースですし、
 ベテランになると、どうしても速い球には振り遅れるんで…
 一発長打があるバッターじゃないんで、思い切って攻めたいね』

『そうですね、中澤選手はミートがうまく変化球にうまく対応するんで、
 速い球で押していきたいですね』

『さぁ木塚、中澤に対して第1球…
 あ〜っと近めだ〜!!
 すっぽ抜けだ〜!!
 中澤ひっくり返った〜っ!!
 どうだ…当たったか!?』

『当たってはないですね…うまく避けてますよ…』

『おっ!中澤が木塚を睨みつけてますね…
 一触即発というムードになっておりますが…
 お〜っと!中澤がマウンドに詰め寄っていきますよ!!』
301 名前:実況くん 投稿日:2001年06月04日(月)23時07分49秒
『場内が騒然としてきましたが、ここで気分を変えまして、
 皆様から募集していた『300レスの娘!』の結果が出ましたので、発表したいと思います。
 前回に続いて今回も正解者が出てしまいました。
 予想しやすかったのでしょうか?
 中澤裕子にお申し込みいただいた271の名無しさん、おめでとうございます!!
 つきましては、何かリクエストがあればお応えしたいと思います。
 できれば、お手柔らかに…(w
 
 外れてしまった皆さま、かすった方も、全然かすらなかった方もいると思いますが、
 今回は残念でした。
 『400レスの娘!』もぜひやりたいと思いますので、よろしかったらまたご参加ください。
 今回は、たくさんの方に参加いただきまして、ありがとうございました。
 今後とも応援の程、よろしくお願いいたします』
302 名前:289@270 投稿日:2001年06月04日(月)23時30分20秒
素直にゆうちゃんでしたな…次がんばろっ

バッテリーのやり取りかなりいいです
保田SPが決まらなくて残念やったけど(w

ところでゆうちゃんがキヨハラみたいやと思ったのはうちだけか?
303 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月04日(月)23時34分17秒
>>293
 ま〜さんレスありがとうございました。
 期待に応えられるように頑張ります。
>>294
 270さんは予想が加護さんでしたね…
 今回は外れてしまったようでごめんなさい。
 自信のないキャラも多いので、ああいうコメントをいただけると嬉しいです。
 ありがとうございました。
>>295
 hoi りんねさん大丈夫かな?
 こちらは市井さん予想でしたね。
 前回に引き続いてごめんなさい。
 何ぶん展開が遅いものですから…

『300レスの娘!』に参加いただいた方、ありがとうございました。
当たった方…おめでとうございます。
外れた方…どうもごめんなさい。

最近、いろいろ励ましのレスをいただきまして活力になってます。
別のやつも高評価をいただいたみたいだし…
なかなか進まないんですが、頑張って書いていきたいと思います。
本当にありがとうございました。
304 名前:ま〜 投稿日:2001年06月04日(月)23時46分19秒
『保田スペシャル22』くらいてぇ〜!!
305 名前:名無し@274 投稿日:2001年06月05日(火)00時16分17秒
裕ちゃんでしたか・・・残念(ってこともねーか ワラ

まぁ、バッテリー間の信頼度もUPしたから、よかった、よかった(笑)

これからも楽しみに読ませていただきます。
ぜひぜひ、頑張って下さい!
306 名前:271の名無しさん 投稿日:2001年06月05日(火)00時16分40秒
わ〜い、あたった、あたった。
なっちの活躍を願ってやまないのですが、
前回の完全試合があるので…

先発に憧れてるりんねを先発させてやってもらえますか?
でも、とてつもなく長くなりそう。
307 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月05日(火)03時25分42秒
またしてもハズレ・・・(泣
あ〜あ、せっかくリクエスト権を取ったら番外編で
「清原VS市井のガチンコファイトクラブ」編をお願いするはずだったのに・・・(w


308 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月05日(火)22時01分27秒
遂に中澤か・・・
って乱闘かぁ!?
う〜ん面白い・・・
309 名前:276 投稿日:2001年06月05日(火)23時19分44秒
はずれちまった・・・
解説者がテレビ朝日系だったから、
阪神戦の解説者に福本さんを起用してほしかったのに・・・・
310 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月06日(水)00時40分24秒
目の前にいきなりボールが迫ってきた。
ピッチャー木塚の投げ込んだボールが、すっぽ抜けて顔面を襲う。

ヤバイ!!当たる!!

そう思った瞬間、懸命に体を反らした。
思い切り踏み込んでいたので、対応が遅れたんやけど体がとっさに反応してくれた。
背中から地面に、音を立てて倒れこむ。

背中が痛いっちゅうねん!!

そう悪態はつきつつも、とりあえずボールを避けられたことにホッとした。

『バッターボックスの中で死ねたら本望かもしれん』なんて思ったこともあったけどな…

でも、実際にこういう場面を経験すると、『まっぴらごめんやな』と思う…
それに、今はここで死んだら後悔することが沢山ある。

まだ死にたくないっちゅうねん!!

それにしても…
木塚のやつ前々から思ってたけど、えぇ度胸やんか!!
まぁ、すっぽ抜けみたいやからしょうがないって言えば、しょうがないんやけど…
ただ、このまま嘗められたままでは気が済まん!!
ちょっと威圧してやろか?!

あたしは、勢いよく立ち上がるとマウンドに向かって歩き出した。

「おう、木塚!!お前、何すんねん!!殺す気か〜っ!!」

マウンド上の木塚を睨みつけながら、声を張り上げた。

すかさず、ネクストバッターズサークルの圭ちゃんが飛んできた。

「ちょっと〜裕ちゃん、やめてよ〜」

あたしの体を押さえ付けようとする圭ちゃんに、表情は変えずにこう言った。

「大丈夫やねん…これも駆け引きやで…」

そう、これも重要な駆け引きやねん…
311 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月06日(水)00時42分24秒
2球目のストレート…これが、ほぼ真ん中に入ってきた。

攻め切れなかったんか木塚?
えぇ度胸してると思ってたけど、かわいいところもあるやんけ!
昨シーズンの借りも返させてもらうで!!

思いきり引っ張った打球は、三塁線を破るヒットとなった。

「見たか!!これが中澤裕子や!!」

溜まっていた今までの鬱憤を晴らすかのように、思わずそう叫んだ。

ここまでは、かっこよかったんやけどな…

バットを放り出し、一塁ベースへ駆け出そうとしたその瞬間…
思いきりずっこけた。

ベースもないところで思いきりヘッドスライディングや…
こんな恥ずかしいことはあらへん。
やはり…足腰が弱ってるんやろうか?
これはちょっとへこむわ…

なんてことを考えている場合ではない。
レフトは、もう打球に追い付こうとしている。

マズイ!!このままじゃレフトゴロや!!
恥ずかし過ぎる!!
矢口にまたバカにされる…

なんて思ってる側から、『バカー!!走れ裕子ー!!』なんて声が聞こえてきた。

立ち上がって必死の大激走。
最後は足をもつれさせながらのヘッドスライディング。
なんとか一塁セーフとなった。

ポジティブに考えれば、(イカン!石川の病気が移った!)
監督必死の大激走でムード最高潮と考えられなくもないんやけど…
ダッグアウト内の大爆笑を見ると、とてもそうは考えられない…
ある意味、ムードはよくなってるかも知れへんけどな…

それにしてもお前ら、笑い過ぎやっちゅうねん!!
312 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月06日(水)00時45分10秒
>>302
 あのバッテリーのやりとりは最初はさわやかな終わりかただったんですけど、
 二晩寝かせたら、あぁなっちゃいました。(w
 それと、あの描写だと確かに裕ちゃんは清原イメージですね。
 単打狙いの非力な清原って感じかな?あんまり威圧感ないか…(w
>>302
 ま〜さん、命は大切にしないと!!(w
 日々、進化を続ける『保田スペシャル』と保田さんに御声援を!! 
>>305
 ご参加ありがとうございました。
 これからも頑張ります!!
>>306
 ん?ひょっとして2回連続正解ですか?(違ってたらごめんなさい)
 そうだとしたら、私の思考は完全に読み取られているのでしょうか?

 リクエストの方は概ね了解です。
 ちょっと意向とは違ってしまうかもしれないですけど…
 いいネタが出来そうなんで…
 たぶん、なっち完全試合よりこちらの方が早くなると思います。

 本当にお待たせしてすみません。
>>307
 市井さんへの愛情は変わらないんですね。
 それにしても、またすごいリクエストですね。(w
 と、言いつつまたネタを想像してみたりする自分がいたりして…
>>308
 今回は乱闘とはいきませんでしたが、いずれはあるかも?
 レスありがとうございました。
>>309
 外れたようでごめんなさい。
 実況くんの解説者は、対戦するチームで変えていきたいと思ってます。
 福本さんは、かなり研究が必要かもしれませんが…(w

仕事が忙しくなってきて、昨日、今日と書き溜めた分を放出するだけでした。
もうストックがないよ〜
次回は新キャラ登場ですが、ちょっと研究したいんで更新が遅れるかもしれないです。
毎日きちっと更新して先に進みたいのですが…
313 名前:ま〜 投稿日:2001年06月06日(水)23時57分47秒
ハロプロくんさん
焦らずマターリ逝きましょう。
楽しみにしてます!
314 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月06日(水)23時59分19秒
タイムをかけダッグアウトに戻る途中で、主審に代走を告げた。
目論み通り、先頭打者として出塁することが出来た。

ここで一気に勝負を賭けるんや!!
あたしに代わってホームに戻ってくるのは、コイツしかおらへん。

たぶん…

『一塁ランナー中澤裕子に代わりまして、ピンチランナー村田めぐみ…背番号22』

場内アナウンスを受けて勢いよく飛び出してくると思いきや、
なかなか本人が出てこない。

「お〜い、村田はどうしたんや!?」

ダッグアウトに戻ると、大きな声でダッグアウト中に呼び掛けた。

「はい…いますよ…」

声のした方に視線を泳がせると、
村田本人がどこか焦点の定まっていないような目で、ニッカリ笑いながら右手を上げている。
それも最前列のベンチのド真ん中で…

「お前、そんなとこに座ってる場合やないで!!
 代走やっちゅうのが聞こえんかったんか?」

「聞こえてましたよ…
 信田さんからも聞きましたし…
 頑張りますよ…姐さん…」

静かにそう語ると、相変わらずの表情であたしに笑いかけた。
カオリの交信中の目も怖いが、コイツの生気の感じられない目も怖い。
何かを企んでいそうで…
何やろな?
なんか知らへんけど、静かな闘志を秘めてる感じで怖いんや。
ホンマ無気味なやっちゃで…
カオリみたいに一点を見つめてる時もあるし…
あたしは密かに、『コイツも交信が出来るんじゃないか?』と思ってる。

ん?そう言えば今、コイツ姐さん言うたな?
315 名前:中澤当てた人 投稿日:2001年06月07日(木)00時01分33秒
前回正解者とは別人です…すみません。
更新、楽しみにしてます。

ちなみに日本シリーズとかオールスターも…
316 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月07日(木)00時02分20秒
「なんやお前、姐さんって?」

村田は、今まであたしのことを『中澤さん』と呼んでいたので、
村田の口から飛び出した耳慣れない呼び方が気になった。

「え…?今シーズンは、お姐キャラで頑張っていきたいんで…
 中澤姐さんを、師匠と仰がせていただきます…」

あたしの問いかけに村田は、そうニッカリ笑いながら答えた。

「そんなこと頑張ってどうすんねん!!
 君は、頼むからもっとバッティングを頑張ってくれ!!
 打つ方が良くなれば、レギュラーで使えるんやで!!
 それに、そんなキャラ作らなくてもお前は充分オモロイから大丈夫や!!
 さぁ、頼むから早よ代走に行ってくれ!!」

あたしがそう言うと、村田はあたしの言葉に不満な様子は見せつつも、
スクッと立ち上がった。

全く…何を考えてるんやコイツは?
今が、大事な場面だって分かってるんやろか?
ホンマに大丈夫かな?
やっぱり有紀ちゃんにしといた方がよかったかな?

頭の中には沢山の疑問が浮かび、それにともなってだんだん不安になってきた。

その時、ベンチから立ち上がって2、3度屈伸をしていた村田がボソッと一言。

「大丈夫ですよ…ちゃんと見てましたから…」

そう言った後、村田はあたしの目を例の目でしばらく見つめると、
フフフンと鼻で笑ってから一塁ベースへと駆け出した。

何や!?
何を見てたんやろ?
それに何や!!
あの笑いは…?
超〜気になるやんか!!

一塁へと走っていく村田を見送りながら、とてつもなく不安な気持ちになった。

全く…頼りになるのか、ならへんのか分からへん!!
317 名前:289@270 投稿日:2001年06月07日(木)00時05分08秒
乱闘にならへんかったか。ちょこっと残念(w
ゆうちゃんええ感じやったのにのにあそこでこけちゃあねぇ

大変みたいですがハロプロくん頑張ってくださいね〜
318 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月07日(木)03時25分25秒
それにしてもこの球団にはまともな人がいませんね〜(w
出てくるキャラがみんな一癖も二癖もある個性派揃い。
この球団がまがりなりにも一つにまとまっていることが不思議。(w
319 名前:名無すぃんぐ 投稿日:2001年06月07日(木)16時51分38秒
今日一気読みしました!
野球好きのオイラにはたまんねぇ(w
あぁぁぁ、パワプロやりたくなってきた…
ついでにパワプロ98で娘。チームを
作った事があるのはここだけの話(w
リリーフエースはごっちんでした(あまり関係なし)
これからもガムバッテちょーだい!!
320 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月07日(木)18時41分52秒
>319
おらも作った
抑えは安部で後藤はパワーヒッターの4番だったような気がする
321 名前:ま〜 投稿日:2001年06月07日(木)22時25分01秒
村田・・。あんたにゃアイサガで惚れたよ・・。
俺の一押しが出てきて嬉しいよ!
322 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月08日(金)00時38分13秒
(なんで…単独スチールじゃないんだろ…?)

一塁ベース上で眉をひそめる村田めぐみ。

(自信あるのに…
 ダッグアウトから見てて、ピッチャーのクセも分かった…
 変化球を投げる時にスタートを切れる…
 あのピッチャーはフォームも大きいし、絶対に二盗できる…
 ひょっとして…信用されてない…?)

一方、こちらは一塁側ダッグアウト。

(うわ〜、アイツあたしのことジーッと見てんで…
 エンドランのサインが気に食わんのか…?
 それにしてもお前、そんな不満そうな顔するな!!
 ホンマに目が怖いっちゅうねん!!
 それじゃ相手に『単独スチールはありません』って言ってるようなもんやで!!
 こっちの作戦が台無しや!!
 お前のこと信用してないのとちゃうんやで…
 お前なら、バッテリーを確実に揺さぶることが出来るんや。
 あたしがここで頭に描いているのは、ノーアウト三塁一塁や)

俊足の村田が一塁にいるこの場面。
村田がリードを大きくとり、スタートの構えを見せるだけで、
横浜バッテリーは盗塁を警戒してくる。
バッターの保田は有利なカウントで勝負出来るし、
ストレートが多くなるから、変化球の苦手な保田にはこれも有利となる。
ランナーを気にしたピッチャーが、コントロールを乱す可能性もある。
さらに、ファーストは牽制球に備えて一塁ベース付近に、
セカンドもキャッチャーからの送球に備えてベース寄りに守るので、
一二塁間が広くなりヒットゾーンが広がる。

監督中澤裕子の狙いはここにあった。

(だから…いつも通りの何考えてるのか分からん顔しといてくれ…
 頼むから…)
323 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月08日(金)00時40分37秒
>>315
 こちらこそすみません。
 てっきり、そうかなと思ったんで…
 オールスターは書くつもりです。
 日本シリーズは、まぁ結果しだいですね(w
>>317
 レスありがとうございます。
 頑張りますよ!!
 ええ感じのままで終わらないのは、きっと作者のせいだと思います(w
>>318
 書いてる本人も不思議です。(w
 村田の部分の更新でヤバイと思ったのが、
 『チーム一丸で勝利に向かって』みたいな流れだったのに、
 このキャラはマズイだろ!って…(w
>>319
 一気に読んでいただいてありがとうございました。
 どのくらい時間がかかったんでしょうか?
 そして、話はちゃんとつながっているのでしょうか?(w
 頑張りますので応援よろしくお願いいたします。
>>320
 名無すぃんぐさんに続いてこちらにも同志がおられましたか…(w
 会社帰りに今日パワプロ2001買ってきちゃった…(w
>>321
 ま〜さん、村田さん一押しとは渋いですね。
 いいキャラになるように頑張ります。
 ラジオはネタ収集のためにチェックしてますが、リアルタイムでは聞いてないです。

たくさんのレスありがとうございました。
ごめんなさい今日はちょっとだけ更新です。(しかもあまり動きのない部分)
一応言っておきますけど、パワプロ2001買ったからではないですよ!!
324 名前:ま〜 投稿日:2001年06月08日(金)00時53分49秒
お疲れ様。
今日はパワプロ2001発売日だったっけ。俺も買おう。
村田は5月22日の「アイさが」を見た人なら、おそらく大半の人が惚れたでしょう。
めちゃくちゃおもしろかった。
それにしてもこれだけの登場人物に、しっかりキャラクターを与えてる
作者に感心します。
325 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月08日(金)03時02分25秒
パワプロ2001俺も買う〜・・・と思ったのですが、
来月にPS2でパワプロ8が出る見たいなんで我慢します。

326 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年06月08日(金)08時07分09秒
村田が良い味出してますね。
僕も頑張らないと…
これからも期待しています。
327 名前:名無すぃんぐ 投稿日:2001年06月08日(金)14時59分09秒
>>320
追伸
ウチの4番はつんくでした(爆
おいらは市井ファンのハズ…
328 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月09日(土)01時19分48秒
ホンマ一瞬ヒヤッとしたで…

二塁ベース上で満足げにフフフンと笑う村田を見て、ホッと胸を撫で下ろした。

思惑通り、ランナーの村田が気になるのか、圭ちゃんへのカウントはノーツー。
ここであたしはエンドランのサインを出した。
ストライクが欲しいやろうし、絶対ストライクゾーンで勝負してくる。
圭ちゃんは決して巧いバッティングをするタイプではないんやが、
こういう場面では、しぶとく結果を出してくれる。
最悪でもなんとか当ててくれる。

そう思ったんやけど…

カウントノーツーからなんと谷繁さんにウエストされた。

なんちゅう大胆なことを!!

圭ちゃんが、必死に飛びついてバットに当てようとしたが無念の空振り…

あぁ、圭ちゃん…
宙に舞うあんたのその姿は、今誰よりも一番輝いているんやで…
その姿が美しいかどうかは別にして…
ホンマあんたのひたむきなプレーは、この裕ちゃんをジーンとさせるで…
その必死の形相が堪らんっちゅうねん!!
感動や…
ホンマおもろ…いやいや、ええもん見せてもらった…

などと感動している場合ではない。

ヤバイで〜!!
二塁で刺されるんとちゃうか!?
ひえ〜神様、仏様、村田大明神様〜!!
何卒!!何卒〜!!
…っちゅうか、何とかしいや!!コラ!!

そんなあたしの願いが届いたのか、
件の大明神様は今、二塁ベース上でニッカリ笑っている。

采配のミスを救ってくれたのはありがたいんやけど、何か気に食わん。
何や!!そのしてやったりの顔は…!!
さっきの言葉も気になるし…
なんか挑戦的や!!
お前、ホンマにあたしのこのキャラのポジションを狙ってるんとちゃうやろな!!

しかし…
ホンマに助かったわ…
サンキュー村田…お前の足は一流や…
329 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月09日(土)01時21分35秒
ダッグアウト内が拍手に包まれた。
圭ちゃんが、木塚の球威のあるストレートにてこずりながらも、
進塁打となるセカンドゴロを打って、ワンアウトランナー三塁。
確実にチャンスが広がった。
こういうチームバッティングに対して、自然に拍手を送ることが出来るのは、
チームのムードが良くなっている証拠や。
メンバーが、口々に圭ちゃんのバッティングを称えている。

そして、もう一人拍手を送られた選手がいた。

「安倍さんナイスピッチングでした!!」

「なっちお疲れ!!」

「なっち…よく頑張ったね…後はまかせて!!」

代打を告げられ降板することになったなっちが、ロッカールームに下がろうとした瞬間、
さらに大きな拍手とねぎらいの言葉で、ダッグアウト内が活気づいた。

そして…
ホンマに嬉しい出来事が、この後に起こった。

このダッグアウトの光景がオーロラビジョンに映し出された瞬間、
球場全体がなっちを称える大歓声に包まれたんや…
こんなに嬉しいことはない…

みんなの暖かい声に送られながら、ロッカールームに下がっていくなっちの顔は、
今まで見たことがないくらい輝いていた。

なっち…ホンマにご苦労さん…
聞いたかなっち…?
この声を…
ハロプロの真のエースはなっちやて…
みんなが、言ってんねんで…
ええなぁ、なっち…ホンマよかったな…

これからも頼むで…
みんなが期待してるんやから頑張るんやで…

あたしは、誰にも気付かれないように瞼をそっと拭うと、自分自身に気合をいれた。

さぁ、ここから先はあたしの采配がものを言うで!!
エースの力投を無駄にしたらアカン!!
330 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月09日(土)01時22分40秒
>>324
 ま〜さん、レスありがとうございました。
 せっかくいろいろなキャラが出せるんだから、
 『名前がちょろっと出ておしまい』みたいなのは避けたいんですよ。
 だから全員に今後も見せ場を作っていきたいと思っています。
>>325
 PS2を持ってるとは羨ましい…
 FFの発売日だったとは全然知らなかった…(w
>>326
 てうにち新聞新入社員さん、レスありがとうございました。
 件の『アイさが』で村田さんが注目をされつつあるところだったので、
 少々プレッシャーでした。
 お互い頑張りましょう!!
>>327
 名無すぃんぐさんは、市井さんのファンですか…レスありがとうございました。
 それにしてもせっかく買ったパワプロ2001…
 まだ袋も破ってない…(w

次回更新では、たぶんまた新キャラ登場。
なんだか煮え切らないあの人が…(w
まぁ、わたしの私見ですけどね…
331 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月09日(土)03時20分17秒
またまた新キャラ登場ですか!!
今度のキャラも、個性バリバリなのかな〜?(死語)(w

ところで、現在のUFA一推しのあの子は出るのでしょうか?
最近、少し気になる今日このごろ・・・(w

332 名前:ラック 投稿日:2001年06月09日(土)07時44分48秒
新メンバーは、どうなるのですかーー?
333 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月09日(土)23時10分33秒
ワンアウトランナー三塁のこの場面、どう攻めるべきか少々迷った。
北上でスクイズという手も考えられる。
しかし、当然のごとく北上が出てきただけでスクイズは警戒される。
さっきのエンドラン失敗の事もあるし、
森監督と谷繁さん相手では、やっぱりスクイズのサインは出し辛い。

はぁ〜、さっきのエンドラン失敗は応えたで…

迷ったあげく、ここは正攻法で攻めるのが一番いいと結論づけた。

やはり、タイムリーできっちり得点を上げるのが一番や。
何も考えなくてええし…
いやいや…タイムリーはチームに勢いをもたらすからな…
うん、ホンマに…

右のサイドスローの木塚に合わせて、左のミカちゃんを代打に送った。
しかし、横浜ベンチも動きを見せた。
木塚からピッチャーは左の森中に代わった。
森中は、得点圏に走者を置いた時の昨シーズンの被打率は.125でピンチに強い。
ミカちゃんは、木塚みたいな直球で押してくるピッチャーには強いが、
左ピッチャーに弱いし、縦に変化する系統のボールに弱点がある。
森中は結構いいカーブを投げるから、横浜ベンチとしては当然の策やろ…

しかし、これも計算の内や…
ミカちゃんには悪いけど、あたしがこの場面でホンマに期待を寄せるのはコイツや…

『UFAハロープロジェクトの選手の交代をお知らせ致します。
 9番ミカに代わりまして、ピンチヒッター大谷雅恵…背番号24』

入団当初から、非凡なバッティングを高く評価されていた大谷雅恵。
貧打に苦しむチームのカンフル剤にと期待されたんやけど、
同期入団の後藤に大きく水をあけられることになった。

まぁ、後藤に関しては当時、誰も今の姿は想像してへんかったけどな…
チームの救世主になりそこねた選手…それが大谷かもしれへん。

チームをAクラスに押し上げる救世主となった後藤と、代打屋に成り下がった大谷…
後藤の方がパワーがあることを除けば、バッティングに関しては力に差はない。
しかし、こと守備・走塁に関しては大きな差があった。
大谷の守備・走塁は、非凡なバッティングに比べてあまりにもお粗末過ぎた。

そして、なにより大谷が後藤と違ったのは…

与えられたチャンスをものに出来なかったことだった。
334 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月09日(土)23時12分36秒
期待を掛けられ、スタメンに名を連ねるんやけど、結果が出せない。
かく言うあたしも監督1年目の昨シーズンには、
5番レフトのポジションを与えて期待を掛けた。

5番を打っていたしのちゃんが、持病の腰痛で代打に専念することになったし、
あたしも監督に専念で、攻撃力の低下が懸念されていた。
守備のことは目をつぶるから、とにかく打ってほしかった。

でも…ダメやった。
6月にファームから吉澤が上がってきて、打ち始めると、ベンチを暖めるようになった。

代打である程度成績は残したのだが、相変わらず勝負どころで打てない。
しかし、それでは困る。
今シーズンは、どうしてもやってもらわなければならない。
野球はレギュラーメンバーだけで勝てるもんやない。
勝負どころでキッチリ仕事をしてくれる代打も重要な役割なんや…
代打の一番手として一皮むけてほしい。

今後のチームのために…

この打席は、この大谷にとって試金石となる。

「大谷〜っ!!思い切っていくんやで〜!!」

打席に向かう大谷に声をかけると、元気な声が返ってきた。

「まかせてくださいっ!!」

いつも明るく元気者で、ひたむきに練習もこなしてる。
それだけに結果を出し切れないのが不憫でならない。
後藤に続いて同期の柴田、村田、斉藤がある程度の結果を残している。

昨シーズン前半戦、セカンドのレギュラーとして働いた柴田。
後半戦は辻・石川の控えに回ったが、安定した守備でシーズンを通してチームに貢献した。

村田も吉澤・加護の台頭で途中から控えに回ったが、チームNo.1の盗塁数を記録した。
最近なにやら自信を深めているようやし、守備での貢献度も光る。

ルルの抜けたローテーションの穴を埋めた斉藤は、チームNo.1の勝率と防御率を残した。

もともとおっとりした性格の大谷だが、本人にも焦りはあるようだ。
なぜ打てへんのかよく分からんのやが、技術的な面が理由ではない。
むしろ、他のバッターに見習わせたいところがたくさんある。
得に、変化球にも柔軟に対応できる軸のぶれない安定した下半身は、チームNo.1や!!

気負い過ぎも良くないが、自分の力を信じて気持ちでぶつかっていくんや!!
335 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月09日(土)23時22分48秒
>>331
 今度のキャラはそんなに個性爆発でもないです。
 期待させちゃったらごめんなさい。
 あの娘については、ネタバレになるのであまり多くは語れませんが、
 『登場します!!』とは言っておきます。
>>332
 まだなんとも言えませんが、
 新メンバーについてはうまく取り込んでいきたいと思ってます。
 ピッチャーの絶対数が少ないので、ありがたいと言えばありがたいので…
 ラックさんははじめましてですね。
 レスありがとうございました。

今回の大谷さんはちょっと苦戦…
よくキャラが分からないんですよね…
まぁ、読んでる方も知らないだろうからいいのかもしれないけど…(w
336 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月10日(日)02時51分29秒
大谷「安定した下半身」…まったく正しいッス!
337 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月10日(日)23時40分52秒
「頼んだよ…あんた…!!」

「あいよっ!おまえさん!」

日頃、仲良くしている三塁ランナーの村っちとそんなやりとりを交わし、打席に入った。
元気よく声を出すことで、迷いを振り払おうとした。

大事な場面での代打…
自然と力が入る。
なっちさんの力投、真希ちゃんのホームラン、中澤さんの気迫、村っちの力走…
みんなの活躍に胸の辺りがざわついた。

絶対に結果を出さないと…

そんな思いが、あたしから思いきりのよさを奪っていた。
慎重になり過ぎて、初球の甘いストレートを見逃してしまった。

しまった!!
絶好球だった…

そんな後悔の思いが、さらに自分自身を追い込んだ。
2球目の明らかにボールになるカーブを、思わず空振りしてしまった。

もう狙い球もへったくれもあったもんじゃない。
頭の中が真っ白になった。
鏡部屋で素振りをしている時には、配球や狙い球を想定しながら振っているのだが、
そんなものはもう頭の片隅にも残っていなかった。

気を落ち着かせるために、一度バッターボックスを外した。
大きく深呼吸してみる。
三塁ランナーの村っちから、また声がかかった。

「大丈夫かい…あんた…!?」

「いぇい!」

その言葉に対して、無意味にVサインなど返してみた。

ダメだ…
何が『いぇい!』だよ…
なんだよ…このVサインは…
みんな結果を出してるんだ…

やらなきゃ…やらなきゃ…
338 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月10日(日)23時42分33秒
「なぁ、圭ちゃん…
 あいつ何でああなっちゃうんやろな?
 なんでもない場面ではよう打つのに…
 完全に遊ばれてるで」

高めのボール球に手を出してファールを続ける大谷を見つめながら、
そう圭ちゃんに話しかけた。

「あたしにも分かんない…
 紅白戦なんかで対戦すると、弱点らしい弱点がないだけに、
 カオリやよっすぃ〜より攻めにくいなって思うことあるけど…
 今の大谷は、たぶん辻より攻めやすいよね。
 もうストライクゾーンに投げなくていいもん。
 2球目に投げたようなカーブ投げれば、簡単にバットが回るよ」

いつものことやと言ってしまえば簡単やけど、本当に何なんやろ?
緊張しいなんやろか?
それともプレッシャーに弱いのか?
はたまた、やる気が空回りするのか?
まさか、ボケ倒してるんとちゃうやろな?

とにかくこのままではマズイ!!

そう思ったあたしは、タイムをかけて大谷をダッグアウトに呼び戻した。

「どうした大谷…大丈夫なんか?」

「おっす!大丈夫っす!」

明るく元気に返事してくれるのは結構なんやけど、
あのバッティングを見てると、とても大丈夫だとは思えない。
まったく、こいつもちょっとボケたところがあるからな…

「お前…あのバッティングは大丈夫やないやろ?
 なんでもかんでも振り回して…
 少しは狙い球とか絞っとるんやろうな?
 初球の甘い球も見逃して…
 代打は1球勝負やで!!
 何度もチャンスがあると思ってたらアカン!!」

その時、大谷の表情が一瞬変わった。
339 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月10日(日)23時49分33秒
>>336
>大谷「安定した下半身」…まったく正しいッス!

 レスありがとうございました。
 唯一の研究の成果です。
 いろいろ調べてたら、
 『大谷、怒濤の下半身』という記述があったので…(w

340 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月11日(月)03時09分31秒
大谷についての知識がメロンの一員程度にしかない俺ですが、いいですね、このキャラ!!
実力はあるのにチャンスに弱いって所に惹かれました。(w
341 名前:ラック 投稿日:2001年06月11日(月)16時22分48秒
チャンスに弱い大谷に萌え
342 名前:ま〜 投稿日:2001年06月11日(月)22時05分56秒
大谷!頑張れ!
俺はメロンの中では村田の次に大谷押しなんだ!

それ行け 弾けるパワー
それ行け 閃くセンス
右に左に流して
それそれ大谷!
343 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年06月11日(月)22時47分16秒
俺は大谷がメロソで一番好きなんだ!
頑張れ!
344 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月11日(月)23時32分33秒
中澤さんの何気ない一言が、妙にあたしの胸を締め付けた。

中澤さんの言う通りだ…
代打は短い準備時間の中で、ゲームの流れに入っていかなければいけない。
スタメンの選手と違って、1回しか打席に立つ機会がない可能性が高いので、
並々ならぬ集中力が必要とされる。
狙い球・甘い球がきたら、思い切って打っていかなければならない。
1回しかない対戦の中で、狙い球・甘い球が何回もくるとは限らないからだ。

そう…チャンスは何度ももらえるとは限らないんだ…

どうしよう…
追い込まれた…

自分の置かれている状況を、再確認した気分だった。
頭の中では、自分が凡退しているシーンが何度も何度もリプレイされていた。
もう、空元気でも気持ちを制御できなくなってきた。

そんな時、中澤さんの声が耳元で響いた。

「どうした!?
 お前、ボケっとしてる場合ちゃうで!!
 集中せなアカン場面やで!!
 余計なこと考えてる場合じゃないっちゅうねん!!」

中澤さんに、心の中を見透かされているんだろうか?
確かに今のあたしは、雑念がいっぱいで集中力を欠いている。
まともなバッティングができるような状態じゃない…
理解してもらっているような安心感からか、つい本音が口をついて出た。

「バッターボックスの中で集中できないんです…
 また打てなかったら、どうしようって…
 今…頭の中が真っ白なんです…」

そう言い終わった瞬間…
『しまった!!』と思った。
中澤さんは、驚いたような顔であたしを見つめていた。

中澤さんは、落胆したように1つため息をつくと、視線を宙に泳がせた。
何か、言葉を探しているようだった。
あたしは中澤さんと顔を合わせることが出来なくなって、思わずうつむいてしまった。

うかつだった…
中澤さんに見限られてしまったかもしれない…
345 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月11日(月)23時34分01秒
「あのな〜、なんちゅうか…その…あんまり思い詰めるな。
 まぁ、あたしもキャンプの時にいろいろ言うたよ…
 言うたけど…お前を追い込むつもりで言うたんとちゃうんやで…
 まだ、シーズンは始まったばっかりやんか〜
 あたしも別に結果を急ぎ過ぎてはいないんやで…
 まぁ、もちろん打ってほしいけどな」

そう言って、中澤さんはニヤッと笑った。
消極的な姿勢を怒鳴られると思っていたので、中澤さんの言葉は意外だった。
そして、次に中澤さんの口から出た言葉はもっと意外だった。

「よし!!打てなくてもいいから、思いっきりバットを振ってこい!!
 狙い球を1球だけ決めてな…
 空振りしても仕方あらへん。
 だけど…ピッチャーをびびらすような空振りじゃないとアカン!!
 ピッチャーに嘗められたまま凡退するのは絶対にダメや。
 冷や汗ぐらいかかせてこい!!
 どうや…出来るか?」

全く情けなかった。
でも…それさえも出来ないのはもっと情けない…
本当に中澤さんに見限られるだろう。
だから…あたしは中澤さんの問いかけに軽くうなずいた。

「アカン!!
 ここで気合いが入ってなくて、バッターボックスで思いっきりバットが振れるか?
 さっきみたいな空元気でええから、元気よく声を出せ!!
 ええか…?
 『これが大谷雅恵や!!』っちゅうスイングで、ピッチャーに冷や汗かかせてこい!!
 どうや…出来るか?」

「出来ますっ!!任せてくださいっ!!」

中澤さんの激に対して今度は、元気よく返事をした。
やけくそ気味ではあったが、中澤さんの言葉はまったくその通りだと思ったからだ。
中澤さんの要求は本心ではないだろうが、
最低でも一振り…自分らしいスイングを中澤さんに見せたかった。

ただ一振り…自分自身を表現するようなスイングをすることだけに集中しようと思った。

打席に戻ったあたしは、ただ1球狙い球と定めたボールを待った。
そして、カウントツーツーからの1球…
あたしが狙い球と定めたそのボールを思いっきり叩きにいった。
もう、やけくそだった。

『おっす!!これが大谷雅恵どぇ〜〜っす!!』
346 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月11日(月)23時41分06秒
>>340
>>341
>>342
>>343
 大谷選手への熱い御声援ありがとうございました。
 応援歌まで作っていただいて感激です。
(イメージに合ってて、いいカンジではないでしょうか?)

次回更新で大谷さん部分に決着!!
果たしてそのスイングから生み出されるものは…?
347 名前:ま〜 投稿日:2001年06月11日(月)23時46分12秒
大谷の応援歌は、岡崎(元巨人)の応援歌の
「岡崎」を「大谷」に変えただけです・・。
パクリです・・。すいません・・。

大谷の看板直撃弾を期待してます!!!
348 名前:ラック 投稿日:2001年06月12日(火)00時02分32秒
横浜球場だから、看板はないんじゃ・・・
まあ、そんなことはいいか?
大谷、ガンバレ!!
349 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月12日(火)13時06分12秒
>>343
自分の小説、どーなったの?
そっちも期待してるのよ〜ん!
350 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月12日(火)20時08分38秒
>>342
>>347
>右に左に流して
 右には引っ張れよ岡崎。
351 名前:ま〜 投稿日:2001年06月12日(火)22時56分44秒
スレ汚してすまんが・・・。
>>350
笑った。確かに・・。
そう言えば岡崎は水道橋で焼肉屋やってたな。
352 名前:実況くん 投稿日:2001年06月12日(火)23時21分23秒
『大谷打った!!
 ショート後方のフライだっ!!
 ショート石井とレフト鈴木が追うっ!!
 追い付くか?追い付くか?
 落ちた?!
 ポトリと落ちた〜っ!!
 それを見た三塁ランナー村田、ハーフウェーから一気にホームイン!!
 7回裏UFAハロープロジェクト追加点!!
 打った大谷は、一塁ベース上でガッツポーズ!!
 森中のストレートを叩きました!!
 栗山さん、今のはボール球じゃないですか!?』

『そうですね…内角高めのボール球ですね。
 詰まった打球でしたが、振り切っていたんでその分ヒットになりましたね。
 大谷選手らしい思い切ったいいスイングだったと思いますよ』

『落合さんは、しきりにボール球になる変化球を続ければいいとおっしゃってましたが、
 今の配球はどうでしたか?』

『見ての通りですよ…
 2球続けてボール球になる低めの変化球を大谷に見逃されて、
 高めのストレートを振らせることに切り替えたんですが…
 切り替える必要なんてなかったんですよ。
 ボール球になる低めの変化球を続ければよかったんです』

『バッテリーの考え過ぎということでしょうか?』

『こういうのは、考え足らずって言うんですよ…
 谷繁が調子に乗り過ぎたね。
 この場面、無理に大谷と勝負する必要なんてないんですよ。
 1球目、2球目と自分のスイングが出来ていなかった大谷ですが、
 高めのストレートは、ファールでタイミングが合っていたんですよ…
 歩かせてもいいから、ボール球になる低めの変化球を続けるべきでしたよ。
 ランナーが一塁にいれば、ゲッツーも狙えますし…
 最悪満塁にして、左に弱い加護で勝負するぐらいのつもりでいれば、
 柴田にも厳しいコースで勝負できますからね』

『なるほど…
 さて…UFAハロープロジェクトは代走が出るようですね。
 背番号4番は…え〜と、稲葉ですか?
 今シーズンから内野守備走塁コーチも担当することになった稲葉ですね。
 さぁ、スコアは3対1となりました。
 ワンアウトでランナーが一塁、UFAハロープロジェクトの攻撃が続きます』
353 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月12日(火)23時22分32秒
こりゃアカン…

2番の加護が、初球のボール球を簡単に打ち上げたのを見てガックリきた。
大谷のタイムリーの後、あっちゃんの盗塁もあって二死三塁までこぎつけたんやけど…
どうやら追加点は1点で終わりそうだ。

「加護!!あんた、ここはじっくり打たなきゃいけない場面でしょ!?」

「え〜?でもぉ…加護はぁ…」

ダッグアウトに戻ってきた加護に1つ注意しようと思ったが、
圭ちゃんが先にちゃんと注意をしてくれているようなのでやめた。

それにしても、大谷はよく打ってくれた。
正直なところ…大谷には悪いが、あの調子じゃダメかなと思った…
でも…ゴメンな…
ホンマよう打ってくれた…
お前の1番のスイングを見せてもらったで…

ダッグアウトに引き上げてきた大谷は、役目を果たせてホッとした顔してた。
みんなから手荒い祝福を受けた後、村田と一緒に何度も喜びを分かち合ってた。

結果を出せたのがよっぽど嬉しかったんやろ…

今もまだ、すぐ隣ではしゃいでる。

「よかった〜!村っち、打てたよ〜!」

「やったじゃん…
 中澤さん…大谷雅恵ですよ…
 大谷雅恵がやりましたよ…」

何の意味があるのかよく分からんが、
わざとらしく村田が大谷をあたしにアピールしようとしている。

「そんなもん見てりゃ分かるっちゅうねん!!
 大谷はよう打ってくれたで!!
 それにしても…何なんや、いったい?
 お前らが、そんなに仲が良かったなんて今まで知らへんかったわ!!」

「今まで…知らなかったんですか?
 ずっと仲が良かったんですよ…」

そう言って、フフフンと笑う村田…

ちょっと待て!!
何でお前はそこでそんなにえらそうな顔してんねん?
お前は…いったい何なんや!?
354 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月12日(火)23時33分43秒
>>347
>>350
>>351
 わたしも笑いました。
 確かに…
>>348
 今、試合が行われているのはハロースタジアムです。
 ちなみに看板はありますよ。
 当たったら100万円です。
>>349
 書くのやめちゃったんですか?
 わたしも楽しみにしてますよ。
 これが終わったらぜひ読ませてもらいたいので…

レスありがとうございました。
書ききれなかった気もするけど、大谷祭は終了。
今後は村田と大谷コンビでギャグネタも書いてみたいですね。 
355 名前:ま〜 投稿日:2001年06月12日(火)23時35分01秒
これほどまで、村田・大谷というマイナーな人物達に
脚光を浴びせた小説があるだろうか・・?!
356 名前:ラック 投稿日:2001年06月13日(水)00時04分55秒
あっそうだったんですか。
すいません。それにしても100万円とは・・
大谷は気持ちで持っていったね。
ここで、でかいのを打たせなかったハロプロさんは渋いねーー
357 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月13日(水)03時34分50秒
全国一千万人?のメロンファンが、この小説を読んでみんな喜んでいるはずです。(w
358 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月14日(木)00時00分45秒
「なぁ、裕ちゃんウチどこ守ったらええねん?
 セカンドか?やっぱセカンドやろ!?」

声をかけてきたのは、『グラウンドを駆け回る悪いリス』こと稲葉貴子。
今シーズンから、内野守備走塁コーチも担当してもらうことになった。
こすいプレイが売りで、セカンドでゴールデングラブを獲得したこともあるのだが、
柴田が入団してからは、ショートを守ることが多くなった。
しかし…セカンドに未練があるのか、控えに回った今でもセカンドを守りたがる。

まったく…ええ歳こいて、しょうもない…

「あっちゃんはショートや!!しっかり頼んだで!!」

「え〜っ!ウチ、セカンドがええなぁ〜
 なぁ、ええやろ…裕ちゃ〜ん?」

そう言って口をちょっと尖らせながら、上目使いで目をパチパチさせて、
あたしにおねだりをする稲葉貴子27歳…

あんたが、そんなことやっても全然カワイクない…
ハッキリ言って気持ち悪いっちゅうねん!!
ええ加減に諦めや!!
セカンドは、グラブ裁きが丁寧な柴田の方が向いとる。
ボールに猛然と向かっていくタイプのあっちゃんは、ショートの方がええ!!
柴田より足が速くて、肩も強いし…
ここはもう煽てて言うこと聞かすしかないで…

「そんなワガママ言わんでください…稲葉姐さん…
 ここだけの話…みんな『稲葉姐さんのショートは最高や』言うてましたで…」

その瞬間…あっちゃんの目が輝いた。

「ホンマかいな?」

よし!!効いてる…効いてる!!

「ホンマですわ…
 石川やら柴田やら北上やら、みんな『いいお手本です』って言うてましたで…
 今年は、ショートでゴールデングラブやないですか…?」

「そうか…?
 まぁ、そうかもしれへんな…
 あいつらも一生懸命やってんねんけどな…
 まぁ、嫌々やで…嫌々やけどショート守ったるわ!!
 ベテランにはホンマ、ショートは応えるんやで…
 それじゃ行ってくるわ!!
 はぁ〜、ヤダヤダ…」

そう言いながらも、嬉しそうにショートのポジションに走っていくあっちゃん…

アホや…
ホンマにアホや…
359 名前:実況くん 投稿日:2001年06月14日(木)00時02分38秒
『さぁ、8回の表…横浜ベイスターズの攻撃を迎えるところですが…
 落合さん、とうとう福田が出てきましたね?』

『出てきましたね…
 追加点も入りましたし、ハロプロは勝ちパターンに入りましたね…
 ただ、7回の裏二死三塁のチャンスの場面での加護のいただけないバッティングが、
 流れをどう変えるかが心配ですね…』

『さて…
 ピッチャーの福田の他にも選手の変更がありますので、画面上で紹介していきましょう。

 1番 セカンド   柴田あゆみ  背番号25
 2番 ピッチャー  福田明日香  背番号13
 3番 レフト    後藤真希   背番号5 
 4番 ファースト  飯田圭織   背番号7 
 5番 ライト    吉澤ひとみ  背番号10 
 6番 サード    矢口真里   背番号8 
 7番 センター   村田めぐみ  背番号22 
 8番 キャッチャー 保田圭    背番号9 
 9番 ショート   稲葉貴子   背番号4

 だいぶ守備を意識した布陣になりましたね栗山さん?』

『そうですね。
 このメンバーなら、守備に関しては不安がありませんね。
 コースを突いて、打たせて取るタイプの福田選手にとっては、心強いですよ。
 それにしてもいいピッチャーですよね落合さん?』

『いいピッチャーだね福田は…
 調子が悪くても悪いなりに抑える技術があるから、安定感がありますよ。
 ただ、連投があまり利かないのと、球質が軽いのが弱点だね』

『横浜のバッターは、どう打ち崩していけばいいんでしょうか?』

『狙い球を絞って、ひたすらその球を待てるかどうかだね…
 低めの変化球に手を出さないことも大切でしょ…』

『落合さんならどの球を狙いますか?』

『わたしならカーブ…
 ひたすらカーブを待ちますよ…』

『さぁ、横浜打線は狙い球を絞って福田を打ち崩すことが出来るでしょうか?
 福田の投球練習も終わり、8回の表の横浜ベイスターズの攻撃が始まります』
360 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月14日(木)00時04分06秒
>>355
 マイナーキャラにもスポットを当てる物好きな作者
 『ハロプロくん』の作品が読めるのは名作集金板だけ!!(w
>>356
 最初からあまり立ち直らせ過ぎると、大谷さん編で書くことがなくなっちゃうので…(w
 大谷さんの今後の活躍はいかに?
>>357
 娘。以外の選手の活躍を楽しみにされてる方ってどのくらいいるのでしょうか?
 メロンファンの皆さん大谷さんやりましたよ!!(w

恒例!!読者参加企画!!

クイズ『400レスの娘!』

400レス目の1番最初に登場するハロプロ選手を予想してください。
正解者には、ネタのリクエスト権利を差し上げたいと思います。

尚、リクエストいただいたネタについては早急に対処したいとは思うのですが、
事情により少しお時間をいただく場合があることをご了承ください。
それと、ネタによっては今後の展開上の理由により、
リクエストの変更をお願いする可能性があるのもご了承ください。

400レス目が感想レスだったり、選手の描写のないレスだった場合には、
401レス目を『400レスの娘!』の対象としたいと思います。
お申し込みは、1人1選手とさせていただきます。

尚、今回からは同じ選手への申し込みは3名様までとさせていただきます。

締め切りは380レスです。
以上、よろしかったらご参加いただけるようお願い申し上げます。
361 名前:ま〜 投稿日:2001年06月14日(木)00時24分50秒
400レスの娘は平家さんにしておこう。
みっちゃんいい子なのに・・・( `◇´)
362 名前:289@270 投稿日:2001年06月14日(木)00時27分58秒
大谷ようやった!メロンでは一押しなんでうれしいぞ。ハロプロくんありがとう
あっちゃんもいいわぁ。
出る人出る人みんな濃いっすねぇ(w

でも出てきたと思ったのにあいぼんがぁぁぁぁ!
それでも400レスは相変わらずあいぼん一筋で(w
363 名前:ラック 投稿日:2001年06月14日(木)00時55分42秒
多分、福ちゃんは打たれるね。
だから400レスの娘はりんね。
364 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年06月14日(木)01時15分25秒
意表を突いて信田コーチで(w
365 名前:275 投稿日:2001年06月14日(木)01時51分05秒
あいも変わらず4番飯田でお願いします。
366 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月14日(木)03時18分12秒
予告どうり市井ちゃんで。
ただ、どうも話の展開上400レスまでに出そうな予感がない。(w
今回は焼銀杏こと福田が鉄板のような気がするが・・・浮気はしません!!(w
367 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年06月14日(木)07時56分06秒
ベンチで死んでいる石川のような気がしないでもないが、
ここは保田でお願いします!
368 名前:276 投稿日:2001年06月14日(木)09時48分26秒
もう打席がまわってくることもなさそうやけど、
ここは敢えて柴田でお願いします。
369 名前:名無すぃんぐ 投稿日:2001年06月14日(木)10時18分40秒
>どのくらい時間がかかったんでしょうか?
>そして、話はちゃんとつながっているのでしょうか?(w

すっかり忘れて質問に答えてなかったスね
かかった時間は概ね1時間半くらい
話はしっかりつながっております

で400レスの娘。は
とぉぜん市井紗耶香さんに1票ぅッ!
370 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月14日(木)17時42分55秒
400レスの娘はやっぱ吉澤か!?
371 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月14日(木)20時59分25秒
後藤の,本日2本目駄目押し場外ホームランで!!!
372 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月14日(木)23時33分09秒
なぁ、頼むからそんな顔すんな。
ダッグアウト内の空気が悪くなるやろ…

マウンドの上では、決してポーカーフェースを崩さないんやけど、
なんか気に食わんことがあるといつもそれや…
ホンマそれだけは、お前の悪いクセや…

ダッグアウト隅に座って、ふて腐れたような顔で戦況を見守っている明日香。

しょうがないやろ!!
小湊が、交代させたほうがいいっちゅうんやから…

8回の表に満を持してマウンドに上がった明日香だったが、
今日の出来は今一つだったらしい。
あたしにはいつも通りに見えたんやけど、小湊に言わせると調子が悪いそうだ。

二死二塁の場面…
ピッチャーの森中に左の代打井上さんが告げられたところで、
みっちゃんをマウンドに送った。

小湊が言うには、今日の明日香のシンカーは、左バッターには怖いらしい。
明日香は球が速くないし、球質も軽いので甘い変化球は命取りになるそうだ。
ブルペンのみっちゃんの調子がいいという情報もあったので、思い切って交代させた。

小湊に投手陣を任せてから、実に的確に投手交代を見極めてくれるんやけど、
去年までなら交代させられてない場面だけに、明日香も納得がいかんのやろ…

でも…小湊だって辛いんやで…
みんなに与える印象もよくないし…
それだけは直してほしい…

そう考えて、明日香に対して声を荒げた。

「明日香!!お前そんなところで、何をふて腐れてんのや!!」

「ふて腐れてなんかいないよ…」

明日香がいつもの落ち着いたトーンでそう答えるが、顔は依然ふて腐れたままだ。
373 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月14日(木)23時34分48秒
「ふて腐れた顔してるから、言うてんねん!!
 交代させられたのが納得いかんのも分かるけど、そんな顔してたらアカン!!
 ムードが悪くなるやろ!!」

「交代させられたのなんて気にしてないよ…
 小湊さんの判断は正しいと思うし、
 それがチームが勝つための最善の策なら仕方ないよ」

あたしの言葉に対して、そう淡々と語る明日香。

明日香は寡黙なタイプやけど、自分の意見はハッキリ口に出す。
だから、今の言葉に嘘はないやろ。
しかし、あんな顔してるからには、なんか不満があるはずや…
まったく…天才なんて言われてるやつの考えてることはよう分からん?

「じゃあ、何でそんな顔してんねん!?
 とにかく…そんな顔でそこに座ってられても迷惑や!!
 アイシングしに行け!!」

「嫌だよ…
 自分の出したランナーを、みっちゃんに任せてアイシングしになんか行けないよ。
 ちゃんとこの回を見届けて、
 マウンドを降りてきたみっちゃんにお礼を言ってからだよ。
 そんなの当たり前だよ」

なるほど確かにそれは正論や…
そして、そう言ったからには頑固な明日香はそれを貫き通すやろ…
もうテコでも動かないといった感じや…
ホンマにカワイクないやっちゃ!!

「いいから行ってこい!!」

「嫌だ!!」

そんなやり取りが続く。
しばらくあたしと明日香の睨み合いが続いとったが、それも終幕を迎えた。

ある人物の登場によって…
374 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月14日(木)23時45分54秒
『400レスの娘。!』に参加いただいた皆様ありがとうございました。
結果をお楽しみに!!
毎度のことながら、企画の告知をした後のレス数には驚かされます。
それと、意外にメロンの中で大谷さんを押す人が多かったことにも、
驚かされました。(w
375 名前:ラック 投稿日:2001年06月15日(金)00時08分33秒
この調子だとりんねじゃなさそうだなぁ〜〜
まあ、福ちゃんが打たれるのがあたったからいいや。
余談ですが銀板で小説を書き始めましたよかったらみて下さい。
はい、ええそうですはっきりいって宣伝です。すみません。
376 名前:nakazawa 投稿日:2001年06月15日(金)00時43分00秒
今回は、みっちゃんでいっとくか
377 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月15日(金)01時30分01秒
楽しく読まさせてもらってます。
ここは、なかざー姐さんで!
378 名前:ダン吉 よろしく! 投稿日:2001年06月15日(金)10時28分43秒
 はじめまして。いつも、
これを読むのが楽しみでしかたありません。
これだけのメンバーの個性出すのには、
野球って、あってますね。
もちろん、作者さんの才能があってこそです。

私は、大穴で消えた石川で。
379 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月15日(金)17時34分09秒
横浜の逆転にぼーぜんとするなっちで(w
380 名前:エッグベーグル 投稿日:2001年06月15日(金)17時49分42秒
はじめまして。いままでROMっていましたが、
ぎりぎり380に間に合いそうなのでずうずうしくも
参加させていただきます。よっすぃでおねがいします。
背番号の王道外しもよいですね。
381 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月16日(土)00時37分04秒
「あぁ〜っ!!福ちゃんだぁ〜っ!!」

ダッグアウトに入って来たその人物は、そう甲高い声を上げた。
張り詰めた空気が、一瞬にして台無しになる。

また面倒なのが戻ってきた…

しかし、今はあいつに構っている場合ではない。
明日香をなんとかせえへんと…
改めて明日香の方に視線を向けると、珍しいものが目に飛び込んできた。

それは…動揺する福田明日香。

相変わらずふて腐れた顔しとるんやけど、何やら落ち着きがなくなった。

まぁ、無理もない…
あいつは、しつこいからなぁ…
いらんことよう喋るし…
構ってもらえないとムキになるし…
明日香の一番苦手なタイプやろ…
明日香もああ見えて、突き放すことが出来んからなぁ…
まぁ、目を付けられたのが運の尽きや…

コラコラ…今頃タオルで顔を隠したって、もうバレとるっちゅうねん!!

「ねぇ、福ちゃん…見て!見て!
 あたしリストバンドをピンクに変えたんだよぉ!
 それからねぇ〜
 ホラ手袋も!
 ねぇねぇ、似合うかなぁ?」

あたしを無視して、明日香の前でニコニコ笑ってやがる。

「コラ!!監督への報告はないんかい?!」

「あ?…ごめんなさぁい…石川、只今戻りましたぁ」

「お前、もう大丈夫なんか?」

「はい!大丈夫です!」

石川とそんなやり取りをしていると、明日香が『今だ!!』とばかりに急に立ち上がった。

「ゴメン裕ちゃん…
 あたしアイシングしに行ってくる。
 少し頭を冷やしてくるよ…
 梨華ちゃんゴメン…
 話は後で聞くから…」

そう言い残して、明日香はダッグアウトを出ていった。
不満そうな顔で明日香を見送る石川を見て、あたしは思った。

ホンマ…お前のこと、たまに頼もしいって思うことあるで…
382 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月16日(土)00時40分04秒
よっしゃ!!
今日は絶好調ですやん!!

ブルペンキャッチャーのミットに収まったボールに対して、思わずニヤけてしまう。

ストレートもノビとるし、変化球のキレもええですわ。
もう、投げたくて投げたくて仕方あらへん。
でも…
正直、今日は出番がないやろな。
8回は明日香、9回は紗耶香で決まりやろ。

そう思っとった…

だから、ピッチングコーチのルルから声がかかった時には驚いた。

「平家サ〜ン、出番ですよ〜
 準備大丈夫ですか〜?
 早くしないと、ルルサン代わりに投げちゃうよ?」

アホなこと言いよる。
投げれるもんなら、投げてみいっちゅうねん!!

それにしても、小湊さんも思い切った交代させますわ…
今までやったら、なんぼ左や言うたかて井上さんクラスのバッターに対して、
福ちゃんを代えるなんてあらへんかったもん。

今年は案外、出番が増えるかもしれへんな…
望むところやけどな…

昨シーズン…裕ちゃんが、ガマンして使うてくれたおかげで、
何とか恥ずかしくない成績を残すことが出来た。

でも…これからや…
まだ期待を裏切った分は、全然返せてへん…

過去の姿は、もう追わへん!!
今ここにいる自分が、全てなんや!!

『UFAハロープロジェクトの選手の交代をお知らせ致します。
 ピッチャー福田明日香に代わりまして、平家みちよ…背番号17』

場内アナウンスの声に導かれるように、あたしはマウンドに向かって駆け出した。
383 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月16日(土)00時44分22秒
新たに企画に参加いただいた皆様ありがとうございました。
初めてレスをいただいた方もいらっしゃって嬉しいかぎりです。

ここまでで『400レスの娘。!』の申し込みは締め切らせていただきます。

384 名前:289@270 投稿日:2001年06月16日(土)01時06分24秒
梨華ちゃん戻ってきましたねぇ
しかもぜんぜん堪えてない(w

みっちゃんにはセットアッパーの役割を果たして欲しい
385 名前:ラック 投稿日:2001年06月16日(土)07時50分48秒
左のバッターで平家が登場と言うことは、
平家は左利きかな〜?
386 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月16日(土)18時45分48秒
おお!梨華ちゃん復活!
嬉しいね〜
387 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月17日(日)00時20分04秒
サウスポーのみっちゃんの登場に対して、横浜は代打の代打で右の中根さんを起用してきた。

あらまぁ…こりゃええバッターが残っとったで…

中根さんは、昨シーズンは5番も務めたパンチ力のある強打者だ。
左ピッチャーにも滅法強く、まさにこの場面でのとっておきの代打と言える。

実はマズかったんちゃうか?

みっちゃんのことを信用してない訳とちゃうんやけど、相手が相手だけに心配や…

「なぁ、小湊…
 中根さんが出てきたで…
 みっちゃんに代えたのマズかったんちゃうか?」

あまりの不安から、そう小湊に聞いてみた。

「大丈夫!
 みっちゃんは、案外右も苦にしないタイプのピッチャーだよ。
 彩っぺ程の威力じゃないけど、右バッターの外に逃げていくスクリューボールがあるから。
 緩急を付けて、コーナーを突いてくれれば、今日の調子なら絶対打たれないよ。
 まぁ、ルルのブルペン情報が確かならだけどね…」

小湊はそう言ってニカッと笑った。

なんやねん!!
途中までは、人を安心させるようなこと言っといて!!
最後の一言で、さっき以上に不安になったで!!
なんちゅう意地悪いやっちゃ!!

「せっかく安心しかけてたのに、最後の一言で台無しや!!
 ホンマに大丈夫なんやろな?」

「中澤さん!
 こういう時こそポジティブですよ!
 ネガティブに考えてちゃダメじゃないですかぁ!」

小湊に聞いてるっちゅうのに、余計な口を挟みやがって…

いつの間に近付いてきたのか、あたし達の隣でニコニコ笑っている石川をキッと睨み付ける。

「やだぁ〜中澤さん…石川、何か気に障ることでも言いましたかぁ?」

全く、もぉ〜っ!!
ホンマ明日香も大変やな…

そんな時、ため息をつきながら小湊が言った。

「ああ見えても、ルルの情報は確かだから大丈夫だよ…
 ただ…まちがいであってくれたらって…半分思ったけどね…」

…!?
388 名前:実況くん 投稿日:2001年06月17日(日)00時22分15秒
『いや〜思い切って福田を代えてきましたね…
 何かトラブルでもあったんでしょうか?
 あの場面で、そうそう交代することのないピッチャーですよね落合さん?』

『そうですね…
 ただ…今日は変化球のコントロールに苦労してましたね…
 先頭バッターの波留にヒットを打たれた後、微調整はしてたみたいですが、
 その後のズーバーの打球も、セカンド柴田の好プレーに助けられましたからね。
 シンカーが、嫌な感じで抜けて入ってきてたんですよ。
 左バッターには怖いとベンチが考えたんでしょ…
 ただ…シンカーを使わなくても、打ち取れる技術は持ってるピッチャーですがね…』
 
『オープン戦を見てても思ったんですけど…
 今シーズンは投手交代の傾向が、昨シーズンとは変わっていますね。
 小湊バッテリーコーチが就任した影響だと思うんですけど…』

『さて…打席には代打の代打で中根が入りました。
 初球は緩い球!!
 中根、見逃してストライク!!
 これはチェンジアップですか栗山さん?』

『パームボールですね。
 今シーズンから投げ始めたボールですね』

『しかし、この人もデビュー当時と比べてイメージが変わったね…
 ストレートで真っ向勝負ってタイプでしたが、今や変化球ピッチャーですから…
 腕をサイド気味に下げて投げたり、いろいろ工夫してますよ…』

『さて…重要な場面での登板となった平家ですが、どう攻めたらいいでしょうか?』

『内角へはボール球、勝負はアウトコースでしょ…
 うん…今のボールでいいですよ…』

『中根2球目の外へ逃げていく変化球を空振り!!
 これで内角のストレートを意識させてから、今のボールですかね落合さん?』

『そうですね緩いボールが続いたんで、速いボールを見せたいですね…
 ただし、内角へのコントロールミスは危ないですよ』

『さぁ、3球目…おっとサイドスローだ!!
 外角へストレート!!
 見逃し三振!!
 三球勝負!!平家、ツーアウトランナー二塁のピンチを防ぎました!!
 8回を終わって3対1ハロプロのリードが続きます』
389 名前:雄根小二郎 投稿日:2001年06月17日(日)00時28分52秒
お見事!!
みっちゃんいい子だよ(  ` ◇´)
390 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月17日(日)00時30分11秒
>>384
>>386
 \(^▽^)/ 復活しましたぁ!応援よろしくね!
>>385
 平家さんはサウスポーの設定です。
 左バッターに対するワンポイントでの起用が多いです。

レスありがとうございました。
久々に余裕を持って更新できました。
391 名前:ラック 投稿日:2001年06月17日(日)01時27分37秒
どうも、私の小説にレスありがとうございました。
不愉快だなんてそんなこと、全然思いません。
よかったら時々レス下さい。なにぶんレスが少ないもんで。

9回の攻撃はごっちんからか、楽しみ、楽しみ〜
392 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月17日(日)14時08分50秒
後藤打て!
追加点をとっていよいよいち〜ちゃんだぁ!
393 名前:289@270 投稿日:2001年06月17日(日)23時16分34秒
みっちゃんカッコ良く決めたねぇ。
いち〜ちゃんが心配なので(w追加点とって欲しいね

ところで8回の表終了だよね?>ハロプロくん
394 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月17日(日)23時24分59秒
「平家さん…ナイスピッチング」

セカンドの柴ちんが、マウンドを降りるあたしに声をかけてきた。
 
「柴ちん、ありがとう…危なげなかったやろ?」

柴ちんは、一瞬視線を宙に泳がせて考えている素振りを見せたが、えへへっと笑うと…

「そうですね…平家さん、かっこよかったです…」

って言うてくれた。

少々間が空いたのが気になるんやけど、まぁええやろ…
柴ちんは、いつもこんな感じやもんな…
きっと被害妄想ですわ…
ホンマにありがとうな…柴ちん。

ダッグアウトに戻るまでの間、みんながあたしのピッチングを称えてくれた。

自分の役目をきっちり果たせた。
これでええねん。

中には、今のウチの姿を笑う人もおるかも知れへん。
変わり果てたウチの姿を…
でも、ピッチングスタイルなんてどうでもええことや。
期待に応えるピッチングが出来ることが重要やねん。
形振りなんて構わへん…
チームの勝利に貢献出来れば、それでええねん。
頑張っていれば、必ず明日へつながるんや…

「みっちゃん、ナイスピッチングや!!
 助かったで!!」

ダッグアウトに戻ると、裕ちゃんからもねぎらいの言葉がかかった。

「姐さん、これぐらい朝飯前ですやん。
 やっぱああいう場面では、
 酸いも甘いもかみ分けたウチみたいなピッチャーが、頼りになりますやろ?」

「何言うてんのや!みっちゃんは酸っぱい部分しか味わってへんやんか!」

裕ちゃんは、ニヤリと笑いながらそう言った。

全く酷いこと言うわ!
でも…裕ちゃん、ウチは甘い部分もちゃんと味わってんねんで…
ええピッチングして、裕ちゃんにねぎらいの言葉をかけてもらうのが、ウチの幸せや…

「冗談やねん…みっちゃんのことは、頼りにしてるで…
 なぁ、みっちゃん…悪いけど9回もう一人、石井さんまで投げてもらってもええか?」

今のウチはカッコ悪いのかもしれへん…
でも…頑張っていれば必ず認めてもらえるんや…
明日へつながるんや…
395 名前:ラック 投稿日:2001年06月17日(日)23時26分23秒
あ〜本当だ〜〜
8と9間違えてるハロプロさんすみません
396 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月17日(日)23時28分22秒
ダッグアウトを出てすぐのところで、なっちに会った。
アイシングを終えて、ダッグアウトに戻ってきたのだろう。

「福ちゃん、投げ終わったのー?お疲れー」

なっちが、人懐っこい笑顔であたしに話しかけてきた。
ニコニコ
ニコニコ
誰からも好かれるその笑顔…
みんなの心を和ませてくれるその笑顔…

いつの間に、そんな風に心の底から笑えるようになったんだろ?
ついさっきまで、暗い影を内包していた嘘っぱちの笑顔だったのに…

なんか…取り残されたような気分だ。
 
「福ちゃん、どうしたのー?泣いてるのー?」

あたしが、タオルを頭から被って顔を隠しているので、そう勘違いしたのだろう。

「違うよ…」

あたしが頭から被っていたタオルを取ると、なっちの顔が心配そうな表情に変わった。

「打たれちゃったの…?福ちゃん…」

今、自分がどんな顔をしているのかは、裕ちゃんに指摘されるまでもなく分かっていた。
それが、良くないことだっていうのもよく分かっている。
でも…直したいとは思っていても、これだけは直らない。
なっちが、あたしの顔を見てこういう反応をするのは仕方ないことだ。

「やっぱり気になる、なっち…?
 大丈夫だよ…点はまだ取られてないから…なっちの勝利投手の権利は残っているから…」

「え?全く気にならないって言えば、嘘になるけど…
 なっちは、自分の力を出し切れたからそれで充分だよー
 後は、ただチームが勝つように一生懸命応援するんだー
 大丈夫だよー、福ちゃん!
 打たれても今度頑張ればいいべさー
 元気出していきまっしょい!」

ニコニコ笑いながら、あたしを励ましてくれるなっちに驚いた。

まるっきり別人だ…

相変わらずちょっとズレているのだが、とりあえずなっちの優しさに心が和んだ。
その後、少し話をしてなっちとは別れたのだが、胸の内に残ったのは焦燥感だった。

でも…あたしには、なっちやあの娘みたいに笑うことなんて出来ない…
だって…あたしは福田明日香だから…
397 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月17日(日)23時49分40秒
>>389
 (  ` ◇´)3球勝負狙ってたんや!!9回もいくで!!
>>391
>>392
 8回裏はクリーンアップ登場。
 追加点が欲しいところですが…
>>393
 人に読んでいただくものなので気を付けているんですが、抜けてましたね。
 実は同じレスでもう一ケ所ミスがあるんですよね。
 読んでいただいてる皆様、本当にすみませんでした。
>>395
 わたしのミスなので気にしないでください。

ちょっと反省モードです。
余裕もって更新できる時ほど気をつけなければ…
書き溜めた分、見直さないと…
やっと柴田さんのキャラの方向性を決めることが出来ました。
今回はちょろっとですが、いずれたっぷりと…

 
398 名前:ラック 投稿日:2001年06月18日(月)19時39分04秒
福ちゃんは、梨華ちゃんよりネガティブだな〜
399 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月18日(月)19時40分09秒
刻一刻と登板の時は近付いていた。
借りを返す時が、近付いてきたんだ。

だんだん気持ちが昂揚してきた。

絶対抑えてやるんだ!!

でも、そういう意気込みだけではどうにもならないこともある…
ミカちゃんのミットに収まったボールに愕然とする。

ヤバイ…
シャレにならないくらい調子が悪いんでやんの…

ブルペンでの投げ込みを続けながら、首を捻った。
投げ込んでも投げ込んでも、調子は一向に上がってこない…

コントロールは悪くないんだけど、ストレート・変化球ともにキレがない。
これならまだ、ボールが荒れていたほうがいくらかマシだ。

「ミカちゃ〜ん!!なんかフォームがおかしいところあるかな〜!!」

『溺れるものは藁をも掴む』
圭ちゃんに指示されたのだろう…
代打を終えて、ブルペンにあたしの球を受けに来てくれたミカちゃんに尋ねてみた。

「ワ〜オ!Super Cool!フォームばっちり!」

ビッと親指を突き出し、あたしの質問に元気よく答えるミカちゃん。

おいおい…本当かよ…!?
かと言って、あの人に見てもらうのもどうかと思うしな…

ブルペン内のベンチに座って、
しょーもないダジャレを披露しているルルピッチングコーチを、横目で見やる。
隣に座っているりんねちゃんの表情だけで、そのレベルは推測することが出来る。

よかった…あの場所に居なくって…
それにしても…こんな調子の時でも、マウンドに上がらないといけないんだもんな…
当然、結果は出さないといけないし…
確かに辛い役回りかもね、りんねちゃん…
プププ…でも今のりんねちゃんの役回りの方が辛そうだね。

まぁ、調子が悪いなりに抑えてみせましょう!!
調子がいいとか悪いとか関係ないんだよ…
みんなの想いは絶対に無駄にしない…
プププ…最後にマウンド上で笑うのは、この市井さんなんだよね…
400 名前:実況くん 投稿日:2001年06月18日(月)19時43分17秒
『空振り三振っ!!
 最後は内角ストレート!!
 5番吉澤、三振!!
 この回からマウンドに上がった斎藤隆、
 クリーンアップ登場のハロプロの攻撃を三者凡退に切って取りました。
 いや〜、今シーズンからストッパーに任命された斎藤隆ですが、
 見事に森監督の期待に応えましたね?』

『そうですね。
 まさか、2点負けている場面で登板させるとは思いませんでしたけど…
 しかも、まだ8回ですからね。
 でも、いい流れを作りましたね。
 9回の攻撃は、トップの石井琢朗選手からなんで期待が持てますよ』

『西武時代の森さんはね…
 開幕戦だからって、あんまりこういう起用をする監督じゃなかったの…
 でも、横浜に来て新しいことをチームに植え付けていくためには、
 やっぱり勝っていかないとダメなんですよ…
 まず勝って説得力を持たせないと、選手が森野球に就いてきませんよ。
 負け続けると不協和音が生まれるしね…
 それが分かっているから、どうしても開幕戦を勝利で飾りたいんだろうね』

『なるほど…
 さぁ、負けている場面での斎藤隆の投入が、吉と出るか凶と出るか?
 9回の表は1番の石井琢朗からの好打順ですが、
 ハロプロは当然、2年連続最優秀救援投手の市井の登板となるでしょう』

『いや…平家が出てきましたね…』

『あ…本当ですね…9回の表のマウンドには左の平家が上がります。
 これは、左の石井琢朗までということですか?』

『そうでしょうね。
 おそらく8回の平家選手のピッチングを見て、調子が良かったからなんでしょうけど…
 僕は、9回の頭からきっちり市井選手を行かせてあげたほうがいいと思うんですけど、
 どうですかね落合さん?』

『市井には、あんまり関係ないでしょ…
 ランナーを置いてもゲッツーに取れるボールがあるし…』

『おっと、初球打ちだっ!!
 ピッチャー返しっ!!
 平家のグラブを掠めていったっ!!
 セカンド柴田が追い付くがどうか!?
 セーフ!!
 間に合わないっ!!
 この回トップの石井琢朗、内野安打!!
 横浜ベイスターズ反撃開始〜っ!!』
401 名前:実況くん 投稿日:2001年06月18日(月)20時17分48秒
『落合さん、初球攻撃でしたね。
 平家のボールは、いいコースにきていたように見えましたが甘かったんでしょうか?』

『いや…難しいコースですよ…
 外角低めの…あれはカーブかな栗山くん?』

『そうですね…カーブでしょうね』

『バットの先でしたが、石井琢朗がうまくバットコントロールしましたよ…』

『さぁ…横浜ベイスターズの反撃開始というところですが、
 皆様から募集していた『400レスの娘。!』の結果が出ましたので、発表したいと思います。
 今回は、2人正解者が出ました。
 吉澤ひとみにお申し込みいただいた370の名無しさんと、
 380のエッグベーグルさんおめでとうございます!!
 つきましては、何かリクエストがあればお応えしたいと思います。
 
 『400レスの娘!』に参加してくださった皆様、ありがとうございました。
 前回以上に参加者が増え、盛り上げていただけて嬉しかったです。
 今後とも応援の程、よろしくお願いいたします』
402 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月18日(月)21時10分24秒
うおうっ!?はずした・・・姐さんご生誕前夜祭なのに・・・
でも小説おもろいから、ぜんぜんオッケ〜!
試合も終盤!がんばって書いてくらさい!!
403 名前:ま〜 投稿日:2001年06月19日(火)01時13分08秒
は、外した・・・。
やっと終盤で400レスですね。
このまま続けると・・・・、
140試合で140×400(それ以上)=すごい数字だ・・。
404 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月19日(火)03時19分58秒
ありゃりゃ、また外しちまった〜!!
399レス目を読んでる時に「ついに来た〜!!」と思ったのに・・・
こんな事ならレス控えしないで、感想レス1つ書いとけばよかったよ〜(w
あ〜あ、今回は【市井、オフにプライド参戦か!?】編を番外編かなんかでお願いしたかったのに(w
こ〜なったら、9回裏の市井ちゃんの活躍に期待です!!
405 名前:ダン吉 投稿日:2001年06月19日(火)09時06分01秒
 ホント、面白いです。
これだけのキャラ使い分けて・・・・GREATっす。
頑張ってください!!
石川と思ったら、
直後復活した・・・・ 次こそ!!!
406 名前:エッグベーグル 投稿日:2001年06月19日(火)12時28分39秒
いや〜、まさか当たるとは思ってなかったです。
なので、具体的なリクエストは考えていなかったんですが、
14歳になったののちゃんの活躍がみたいです。
気長に待っていますので、より良い作品を
書き上げていってくださいね。

参加賞は保田スペシャル22ですか・・・。
いったいどんなのだろう・・・。
407 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月19日(火)23時45分00秒
絶対にあきらめない…

このバッターは、絶対に出しちゃいけないんだから…
先頭バッターを出したら、流れがベイスターズにいっちゃう…
せっかく、みんなで築いてきたいいムードが、台無しになっちゃうよ…

センターへ抜けようかという打球を必死で追った。
全力で走って精一杯左手を伸ばすと、逆シングルのグラブになんとか収まった。
そこから左足を一塁側へステップして、必死の一塁送球。

でもダメだった。

無理な体勢から投げた力のない送球が飯田さんのミットに収まる前に、
石井琢朗さんが、一塁ベースを駆け抜けていた。

「ごめんなさい…平家さん…」

「柴ちんが謝ることないやろ…打たれたウチが悪いねん」

「みっちゃんが悪いってこともないやろ!
 外角低めいっぱいのカーブやねんで…あれは石井さんが、うまく打ったわ!
 普通なら、初球から手を出すボールやないやろ!」

「そうだよー、みっちゃんは悪くないよー
 柴ちゃんも、よく追い付いたよ…矢口、感動したよ」

マウンド上に内野陣が集まっていると、場内アナウンスが響き渡った。

『UFAハロープロジェクトの選手の交代をお知らせ致します。
 2番ピッチャー平家みちよに代わりまして、市井紗耶香…背番号11
 6番サード矢口真里に代わって前田有紀…背番号26』

大歓声にスタジアム全体が揺れる。

「紗耶香…頼んだで…
 みんなも…
 きっちり抑えたかったんやけど、ゴメンな…」

平家さんはそう言い残すと、ボールを紗耶香ちゃんに渡してマウンドを降りていった。
その後ろ姿はどこか寂しそうで…

平家さん…あたし達、このままリードを守ってみせますからね…

「あの〜、平家さんの分までみんなで頑張りましょう…」

相手の追い上げムードに負けないように、みんなの気持ちを一つにする必要がある…

そう思ったから、言ってみたんだけど…

「チクショー!!
 なんで矢口まで交代なんだよーーーーー!!」 

あたしの言葉は、矢口さんの大絶叫に掻き消されてしまった。
408 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月19日(火)23時47分06秒
「痛い!!痛い!!痛〜い!!
 痛いっちゅうねん!!
 止めろ!!止めろって言うてるやんか!!
 ちゅうか…止めて…
 止めてください…お願いやから…
 お願いしま〜す、矢口さ〜ん!!」

「嫌っ!!
 なんで矢口まで交代なんだよー!!
 アホ裕子ーーーーっ!!」

矢口に遠慮なく背中をバシバシ叩かれて、あたしは思わず悲鳴をあげた。

いつもあんなに愛情を捧げてるっちゅうのに…
矢口…お前は、あたしを殺す気か?

「しのちゃん…みっちゃん…た…助けて…」

「逃げるんじゃなーい!!
 なんで代えたんだよー!!
 『ガッツがある矢口はサード向きや!!あたしの後釜は矢口しかおらへん!!』
 って言ってくれたのは嘘だったのかよー!!」

「嘘やないって…でもしょうがないやろ…
 矢口が、ヘタやって言ってる訳やないで…
 有紀ちゃんが、次元を超えてうまいんやからしょうがないやんか!!
 この試合は、絶対に守りきるんや!!」

「矢口だってちゃんと守りきれるよー!!何が足りないって言うのさ!!」

「言っても怒らへんか…?」

「何だよー!!言ってみろよー!!」

「身長が足らへんねん…
 だって…普通の選手がジャンプして簡単に捕れる打球が、矢口は捕れないんやもん…」

ヤバイ!!矢口の顔が、紅潮してきた…噴火寸前や!!

「チクショー!!」

「まぁまぁ、矢口さん…そんなに興奮しないでくださいよぉ…
 悔しいですけど、石川達も交代させられちゃったんですから…ねぇ〜、のの…
 ポジティブにまた今度、頑張りましょう!!」

バカ!!石川…お前、殺されるで!!

「お前らと一緒にするなー!!」

「きゃあぁ〜っ、誰か助けてぇ〜」

ホンマにこりんやっちゃ…
鉾先が変わったのはありがたいけどな…
409 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月19日(火)23時48分31秒
>>398
 ネガティブというかなんというか…
 いろいろ複雑なのです…
>>402
 そうか…姐さん、ご生誕前夜祭でしたね…
 とりあえず本日『姐さん、ご生誕おめでとうございます』ですね。
 (実際は、あんまりおめでたくないのかな…(w )
>>403
 140試合まるまる書くつもりもないですが、すごいことになりそうです…(w
 とりあえずスレは、またぎそうですね。
>>404
 むぅ、相変わらず危険なリクエストですな…(w
 結構、レスの付き方で結果が左右されますからね…
 今回も残念でしたが、
 いよいよ第3話の本題の部分に入り、市井さんの出番が増えますので…
>>405
 石川さんの復活は、予定に入ってました。
 『いしふく』ネタの振りにしたかったので…
 まだ出してないキャラもいるので、皆さんに喜んでもらえるように頑張ります。
>>406
 エッグベーグルさん、おめでとうございました。
 リクエストの件、了解です。
 楽しみに待っててくださいね。
 『保田スペシャル22』…それはこの作品に隠された謎を解くための鍵(嘘…(w )
 
たくさんのレスありがとうございました。
そして『400レスの娘。!』にはずれてしまった方ごめんなさい。
明日の更新では回想モードへ…
410 名前:ラック 投稿日:2001年06月20日(水)07時50分56秒
矢口が交代して、よけいダグアウトが賑やかになったなぁ〜
次は回想シーンですか、頑張ってください。
411 名前:エッグベーグル 投稿日:2001年06月20日(水)14時30分56秒
怒るまりっぺ、かわいいですね。

それと、誕生日が嬉しくない年かな〜、と
いらん気を使って昨日言いませんでしたが、
やっぱり言いたくなったので。
監督、お誕生日おめでとうございます。

ちなみに僕は、
古田敦也のシミュレーションプロ野球2(SFC)で、
娘。球団をつくって遊んでいます。
(誰も聞いてないっつーの)
412 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月20日(水)16時32分32秒
何かベンチの中が想像できて楽しい
特に怒る矢口が・・・
413 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月20日(水)23時07分32秒
状況の違いこそあるけれど、あたしは開幕戦のマウンドに帰ってきた。

別に、横浜ベイスターズに恨みがある訳じゃないんだけどさ…
自分の中でわだかまっているものに、どうしてもケリをつけておきたかった。

開幕戦で味わったあの屈辱を晴らしたい。
そして、あたしの成長した姿を見てもらうんだ。

今シーズンが最後のチャンスだしさ…

万全の調子だとは言えないから、はっきりいって不安はある。
でも…今までだって、調子がいい時だけ投げてきた訳ではない。
ストッパーとして積んできた経験を活かして、絶対に抑えてみせる。

あの時のあたしとは違うんだ。

そう…あの時とは…



ガルベスとなっちの先発で始まった2年前の開幕戦…
1回の裏に仁志さんの先頭打者ホームランで先制を許したが、
それ以降は、二人の投手戦となった。
まぁ、正確に言えばなっちの熱投と、味方打線の貧打がもたらした結果なんだけどね…

あの頃は、本当に点が取れなかったんだよね…
あっちゃんと矢口の1、2番コンビの出塁率はどうしようもなかったし、
4番のカオリは、三振するためにバッターボックスに立っているみたいだったもん。
少ないチャンスを、3番の裕ちゃんと5番の信田さんでなんとかものにしてたっけ…

この試合もそんな展開だった。
7回の表、一塁にヒットで出塁した裕ちゃんを置いた信田さんの打席。
ガルベスのシュートを詰まりながらもレフトスタンドへ逆転ツーラン。

しかし、リードを奪ったのも束の間…
7回の裏にツーアウトランナー二塁一塁のピンチを迎えた。
監督の和田さんに続投を願い出たなっちだったが、ここでノックアウト。

打席に3番の松井さんを迎えるこの場面でマウンドに上がったのは、
セットアッパーとして実績を残した明日香ではなく、このあたしだった…
414 名前:実況くん 投稿日:2001年06月20日(水)23時11分27秒
『え〜、画面上で選手の変更をご紹介いたしましょう。

 1番 セカンド   稲葉貴子   背番号4
 2番 ショート   矢口真里   背番号8
 3番 サード    中澤裕子   背番号3 
 4番 ファースト  飯田圭織   背番号7 
 5番 ライト    信田美帆   背番号6 
 6番 センター   三佳千夏   背番号10
 7番 レフト    大谷雅恵   背番号24 
 8番 キャッチャー 小湊美和   背番号12
 9番 ピッチャー  市井紗耶香  背番号11

 いや〜江川さん、バッテリーごと代えてきましたよ』

『代えてきましたね』

『しかもピッチャーは、福田ではなくて市井ですよ。
 これは驚きましたね?』

『驚きましたね。
 ここで福田投手ではなく、期待株の市井投手をもってくるとは思いませんでしたね。
 この市井投手は、非常にストレートの速いピッチャーですからね。
 松井選手に対して、球威で勝負しようということでしょうね』

『キャッチャーを小湊に代えたのは、どういうことでしょうか?』

『この市井投手と先発した安倍投手は、持ち球の違いはありますけど、
 似たようなタイプのピッチャーなんですよ。
 保田選手がマスクを被り続ければ、
 松井選手に対して似たパターンの攻め方をするでしょうからね。
 リードの質を変えて、目先を変えようということでしょうね』

『この大事な場面での起用ですからね〜
 この市井くんには、和田監督がずいぶん期待を寄せているみたいですね』

『この市井については、
 和田監督が『今シーズン絶対に一本立ちしてほしいピッチャー』だと言ってましたね。
 いいシュートとストレートがありながら、
 遠慮がちな性格でインコースを攻め切れずに、結果を出せなかったらしいんですけど、
 昨シーズン後半ぐらいから自信がついたのか、
 別人のようなピッチングをするようになったみたいですよ…掛布さん』

『あぁ、そうですか〜
 ぜひこの場面では、頑張ってほしいですね』

『さて、一発出ればもちろん逆転の場面です!!
 市井対松井の対決やいかに!!』
415 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月20日(水)23時25分35秒
>>410
 これでダッグアウト内のポジション争いも激化!!
 キャラが立っていない人から駆逐されていくのです…(w
>>411
 やはりゲームの違いはあれど、思わずやってしまいますよね…
 それにしても、パワプロ2001で選手を作っている時間などないぞ!!
 前のバージョンからパスワードでデータを持ってこれたらよかったのに…
>>412
 >何かベンチの中が想像できて楽しい 
 そう言っていただけると嬉しいです。
 状況を想像していただけるような表現が出来るように頑張りたいです。
 今は全然、表現力不足ですけどね…

第1話の悪夢を思いおこさせる、恐怖の回想モードスタート!!
戻ってくるのはいつの日か…
テーマは「いちこみ」…(w
416 名前:ま〜 投稿日:2001年06月20日(水)23時38分58秒
やっと市井の登場ですね!!
>>今シーズンが最後のチャンスだしさ…
ここ、ちょっと気になるな・・。何かの伏線かな・・?

ところで、ちょっと気になったのだが、
「落合」はテレビ朝日の解説者・・・
「江川」は日テレの解説者・・・
まあいいさ!!気にしないで行こう!!
(いらない突っ込み申し訳ない)
417 名前:中澤当てた人 投稿日:2001年06月20日(水)23時42分56秒
巨人ホームだから日テレになりますね。
で、今回はUFAホームだからテレ朝?
418 名前:ラック 投稿日:2001年06月21日(木)00時50分25秒
ほら、ヤクルト戦はよくテレ朝でやってるし
ヤクルトに変わってできたのがUFAだからだろ〜
419 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月21日(木)03時16分55秒
苦節10年(推定)市井メインの話をず〜っと待っておりました。(w
悪夢という言葉が気になりますが・・・
420 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月21日(木)05時40分28秒

いよいよ市井の出番ですね!!
しかも相手は松井と来たもんだ
やってくれるさ市井なら!!
421 名前:ま〜 投稿日:2001年06月21日(木)06時22分57秒
>>416
作者さん、ごめんなさい。
勘違いしてました。去年の巨人戦の回想シーンでしたね。
江川の名前が出てきた時、『あれ?落合だったのに』って
思ってしまったんで、思わず書いちゃったったんです。
感想書いてたとき酔っ払ってたんで・・。ごめんなさい。
さらにスレ汚しごめんなさい。
鬱山車脳・・・。
422 名前:エッグベーグル 投稿日:2001年06月21日(木)14時08分44秒
>>414
そうか・・・。まりっぺは
最初はショートであとからサードに
コンバートされたんだ・・・。
その辺の成り行きも見てみたいなぁ。
作者さん、書く予定はありませんか?
423 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月22日(金)00時42分40秒
「まったく!!みんな、なっちには甘いんじゃないの!?」

ブツブツ文句を言い始めたカオリを、裕ちゃんがなだめる。

「カオリ!!ええ加減にしぃや!!
 なっちはエースなんやから、ちょっと打たれても引っ張るのは当たり前やろ…」

それでもカオリの気持ちは収まらない。

「そんなのズルイじゃん!!
 カオリがちょっと打てないと交代させるクセにさ…
 それに、この間だってさ〜」

「うるさいっ!!黙れっ!!」

裕ちゃんに一喝されたカオリは、不満顔で自分のポジションへ戻っていった。
ファーストで腕を組んだまま一点を睨み続けるカオリを見て、裕ちゃんがため息をもらす。

「あんなに仲が良かったのになぁ…
 何があったんやろな…?」

「今は、そんな心配してる場合じゃないよ…
 大ピンチなんだから…
 松井さんへの攻めだけどさ…
 松井シフトを逆手にとって、内角も思い切って攻めるつもりだから、
 あっちゃん中心にその点を踏まえて、守備隊形を調整してよ」

小湊さんが、脱線しそうな流れを引き戻してテキパキと指示を送る。

内角を攻めるっていうのは、大歓迎っス!!
ここは、あたしのストレートで真っ向勝負しかないっスよね?
今日は、ブルペンから絶好調…
絶対に松井さんを牛耳ってみせますよ!!

巨人との開幕戦。
ゲームは終盤、巨人の逆転のチャンスの場面。
昨シーズン二冠王に輝いた松井さんが、打席に入る。
全国の野球ファンが、この場面を注目しているだろう…

これは、市井紗耶香の名を上げるチャンスなんだ!!

そして…

絶対ビッグになってやる!!
424 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月22日(金)00時44分48秒
>>416
>>421
 ま〜さん、実況くんの件は、気にしておりませんよ!!
 わたしの場面転換の描写も分かりづらかったと思うし…
 場面転換の表現の悪さについては、
 短編を書いた時にも指摘されたんですけど、直ってない…(w
 努力しなければ…
 あと、伏線についてはあまりお気になさらずに…
 たいして考えて書いてないですから…(w
>>417
>>418
 フォローありがとうございました。
 だいたいおっしゃる通りです。
>>419
 いつも応援ありがとうございます。
 いよいよ市井さんの出番です。
 悪夢というのは、
 第1話の『なちかお』の過去のシーンで脱線して戻ってこれなくなったことです。
 あまりお気になさらずに…
>>420
 市井さんの出番を待ってらっしゃった方が多いですね。
 期待に応えられるように頑張ります。
>>421
 書く予定はあります。
 エッグベーグルさん、いいところに注目されましたね?
 実はその辺が矢口編の核になるんで…
 まぁ、成り行きって程のものでもないですが…
 実は最初がショートでもないんですよ。

今回の更新はちょっとだけですみません。
時間がないのもあるのですが、ちょっと行き詰まったので…
自分なりにどうしても埋まらない部分があるんですよね。
市井さんはファンも多いんで、
きっちり書かないといけないと思うのでプレッシャーもありますね…
今までの部分、手を抜いてる訳じゃないですけどね。
425 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月22日(金)03時34分14秒
そりゃーもう、市井好きとしてはきっちり書いてもらわんと・・・なんてね!!(w
市井ファンがどうのとか気になさらず書いて下さいよ〜。
作者さんが普通に書けば、それだけで問題なく面白いっすから。
426 名前:名無すぃんぐ 投稿日:2001年06月22日(金)08時59分11秒
つ… ついにいちーさんが…
活躍に超期待超です。
427 名前:エッグベーグル 投稿日:2001年06月22日(金)12時55分57秒
>>423
カオリは今でも若いんじゃ・・・
年齢設定はどうなっているのかな?
>>424
楽しみにしております。
>>426
シュート希望。今のピッチャーはあまり投げないから、
おもしろいかな〜なんて。
ストレートだと、なっちとかぶっちゃいますしね。
作者さんの、大どんでん返しに期待しましょう!
428 名前:ラック 投稿日:2001年06月22日(金)16時04分26秒
いちーちゃん、松井に内角攻めは無謀なんじゃ・・・
429 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月23日(土)18時49分55秒
よっしゃ来た〜!!
市井だ〜!!
ここはきちっと抑えて開幕戦勝利をかざるんだ!
430 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月23日(土)21時32分52秒
自分らしさを出す勇気が、あたしにはなかった。
あたしはあたしらしく、自由に振る舞いたかったのに…

昔のあたしは、本当に自分に自信がなかった。
周りの友達に比べて、妙に大人びた意見を持っているところがあったので、
自分だけ浮いているような気がしてた。
そして…それが悪いことのような気がしてた。

自分が悪くないと思っても、とりあえず謝ってみたり…
人の意見に安易に同調してみたり…
イジメにあってたとか、そういう訳じゃなかったんだけど…
人の顔色をうかがって、オドオドしてばかりいた。

自分の主義主張で、人を傷付けるのが怖かった。
自分の主義主張が、受け入れられないのが怖かった。

あたしは、自分をアピールすることに臆病だった…

本当はあたし、こんなじゃないのに…

アレもしたいし、コレもしたい…
いろんなことに挑戦してみたい…

そして…
思い切り笑っていたい…

でも…
伏し目がちに力無く笑ってみせるのが、あたしのトレードマーク。
そんなウジウジした自分が、悔しくって…情けなくって…
所構わず、いつも泣いてばかりいた…

付いたあだ名は、『泣き虫サヤカ』だった…

自分を変えるために、思い切ったことに挑戦してみたかった。
一念発起で、子供の頃から憧れていたプロ野球の入団テストを受けた。
出来立てホヤホヤの球団だったせいか、
球が速いのと、いいシュートを投げるということで、意外にあっさり合格した。

夢にまで見たプロ野球の世界…
今までのウジウジしたあたしを知る人は、誰もいない…
ゼロからのスタート…
自分で自由に染めてもいい、新しい布地をもらったような気分だった。

この真新しくて白い布地を、今度こそあたし本来の色に染め上げてみせるんだ。

この時のあたしは、希望に満ちあふれていた。

でも…
ここでもあたしは『泣き虫サヤカ』だった…
431 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月23日(土)21時34分10秒
あの頃は、いろいろギクシャクしてたんだよね…

あたし以外に、この年の入団テストに合格した選手が2人いた。
圭ちゃんと矢口だ。
テスト合格組のあたし達は、スカウトされて先に練習生扱いになっていた裕ちゃん達に、
なかなか認めてもらえなかった。

頭ごなしにいろいろ注意されるものだから、自分を主張することなんて出来なかった。
毎日、毎日…本当に細かいことでよく怒られた。

もう、あんまりにも怖かったからさ…
臆病だったあたしは、ボロボロ泣いた。
当然、悔しかったのもあったんだけどさ…
言われたことが出来ない情けなさもあったし…

せっかく新しい環境で、本来の自分を出していくんだって思ってたのに…
結局あたしは『泣き虫サヤカ』。

今となっては、『そんなこともあったね』って感じでわだかまりはないし、
注意してもらったことは、本当に自分のためになっているからいいんだけど、
出鼻をくじかれたのは確かだったね。

ペナントレースが始まると、チームは最下位を独走状態。
あたし達もしばらくは、なかなか活躍する機会を与えられなかった。

矢口と圭ちゃんは代走や代打が多く、スタメンで出場することはなかったし、
あたしは、敗戦処理みたいな形で登板することが多かった。
そして…打たれた。
臆病さが災いしてか、インコースを攻め切れなかった。
インコースを狙ったボールが、真ん中に入って痛打を浴びた。
ブルペンでは絶好調なんだけど、試合で使い物にならない…

『ブルペンエース』

あたしの評価は、そんな感じだった。
432 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月23日(土)21時35分59秒
やがてペナントレースが進むと、あたしもウカウカしてられない状況になった。

チェルシー、エイプリルの両外国人選手の不振に伴って、
矢口がスタメン起用されるようになった。
ポジション、打順もまちまちでよくエラーしてたし、
バッティングも力負けしてて大活躍って訳じゃなかったけど、
あたしと圭ちゃんを焦らせるには充分だった。

オールスター前には、ケガをした小湊さんに代わって、
圭ちゃんが、スタメンでマスクを被るようになった。
リードに定評のあった小湊さんと、何かと比較されていろいろ大変だったみたいだけど、
メキメキ上達しているのが、あたしにも分かった。

でも…
あたしだけは相変わらずだった。
気心の知れた圭ちゃんとバッテリーを組むことになっても、
相変わらず臆病なピッチングを続けていた。
圭ちゃんもインコースを攻め切れないあたしを気遣って、
アウトコースで勝負する組み立てをしてくれたりしたんだけど…
依然として結果が出せなかった。

圭ちゃんは、本当にあたしのことを親身になって考えてくれた。
あたし自身の問題なのに、リードのことでいろいろ悩んでくれていた。
それだけに、結果を出せなかったことが辛かった。

プロの厳しさを思い知るような出来事もあった。

件の両外国人選手が、成績不振を理由にシーズン途中で解雇された。
結果を出せなければ、これが当然の世界なんだ。
あたしも他人事には思えなかった。

そしてもう一つ…

ローテーションの谷間に先発をしていたひろみが、打球を頭に受けて大ケガをした。
そしてその恐怖感から、シーズン途中で引退を決めた。
この出来事はチーム全体に大きな影響を与えた。
さらに、中継ぎのあずさも自身喪失を理由に引退を決めてしまった。

これには二人と仲が良かったりんねちゃんが、かなりのショックを受けていた。
引退を決めた二人の気持ちも良く分かる。
あの頃のあたしが同じ目に遭っていたら、同じ道を選んでいたかもしれない。
でもそんな弱い気持ちでは、この世界で成功することなんて出来ない。
気持ちで負けたら闘えないっていうことを改めて思い知った。
433 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月23日(土)21時37分17秒
ペナントレースも中盤から終盤へと差し掛かっていく中で、
日増しにチーム内の矢口と圭ちゃんの評価が、高まっていった。
矢口は2番ショートとして、完全にレギュラーに定着した。
圭ちゃんも小湊さんが戻ってきてからも、スタメンを任されることが多くなった。

この頃にはチーム内のギクシャクも完全になくなり、
明るく自分らしく振る舞えるようになっていた。
思い切り笑うことも出来るようになった。
年齢も違ういろんなタイプの人間がいる中で、
お互いにじっくりと話しをしてみると、あたしの個性なんてちっぽけなものだった。
同年代の友人間という狭い世界観で悩んでいたのが、滑稽なぐらいだ。
あたしと近い価値観を持っていた人間も、何人かいた。
特に圭ちゃんとは、非常に価値観や考え方が似通っていた。
それだけにいいライバルになったし、何でも相談出来る間柄になった。
この世界に思い切って飛び込んできて、よかったとつくづく思った。

でも、それがピッチングに反映されることはなかった。
実際に涙を流していた訳ではなかったけれど、
マウンドの上のあたしは、臆病な『泣き虫サヤカ』のままだった。
ただ一人、みんなから取り残されたままだった…

ペナントレースも大詰めを迎える頃…
横浜ベイスターズが38年ぶりの優勝に向かって、
中日ドラゴンズとデッドヒートを繰り広げていた。
すでに最下位が決まっていたあたし達には、そんなこと関係なかったけどさ…
そんなある日、あたしは監督の和田さんに監督室に呼ばれた。

「市井…お前このままじゃヤバイぞ…」

和田さんは、開口一番そう言った。
そんなこと和田さんに言われなくても、
自分が置かれている状況は、あたしが一番分かっていた。
でも…結果を残せていない人間が、ここでつべこべ言っても仕方がない。
あたしは無言で、和田さんの次の言葉を待った。

「…先発してみるか?これがラストチャンスのつもりで…」

ラストチャンスというのは、大袈裟だろうという気持ちも心の片隅にはあった。
でも、すぐにそんな甘い考えを打ち払った。

それだからいけないんだ!!
もっと自分自身に危機感を持たせなくちゃいけない!!

「お願いします…これで結果が出せなかったら引退します…」

初先発は、あたしのプロ野球選手としての運命を左右することになった…
434 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月23日(土)21時39分28秒
球場に行く前に、思い切って髪を短く切った。

先発のマウンドに上がる前に、
今までの自分の臆病なピッチングのイメージをふっ切りたかった。
今まで肩にかかる位のストレートヘアだったんだけど、
それっておとなしめな感じで、今の自分の内面と違ってるなって思ってたんだよね。
ショートヘアって、活発なイメージを与えるからさ…
こっちの方が、本来のあたしを出すのにふさわしいと思ったんだよね。

切った後に、鏡を見たらイメージがだいぶ変わっててアララって思ったりしたけどね。
でも、なんかサッパリした気分になった。

いいじゃん…
イケてんじゃん…

周りの評判も上々だったし、いつもと全然違う気分でグラウンドに立つことが出来た。

ブルペンでの投球練習も相変わらず絶好調…
後は、実戦のマウンドでこのピッチングが出来るかどうかだ。

この日の対戦相手は、38年ぶりの優勝を狙う横浜ベイスターズ。
小湊さんとのバッテリーでこの試合に望んだ。

「和田さんから聞いたんだけど、この登板に引退を賭けてるんだって?
 よろしく頼むって言われちゃったよ」

小湊さんが、真剣な顔であたしにそう声をかけてきた。

「だははははっ!!ヤダな〜小湊さん、そんな顔しないでくださいよ。
 今日は開き直って頑張りますから…
 絶対に抑えてみせるっス!!」

湿っぽい空気になるのがイヤだったので、そう振る舞った。
小湊さんもそんなあたしの心情を察してか、その件に関してそれ以上突っ込まなかった。

「あたしのリード通りに投げれば絶対に大丈夫だから!!
 インコースも思い切りね!!」

ただそれだけを言い残して小湊さんはマウンドを後にした。

そして1回の表の横浜ベイスターズの攻撃。
あたしは、ノーアウト満塁で4番のローズを迎える大ピンチに立たされた…
435 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月23日(土)21時40分30秒
>>425
 暖かいお言葉ありがとうございました。
 そう言っていただけるのはありがたいのですが、
 自分がどれだけ納得できるかっていうのもわたしには大事なので…
>>426
>>428
>>429
 本筋の対決の前にまたまた脱線で申し訳ないです。
 でも、そのうち戻ってきますので市井さんの応援よろしくお願いいたします。
>>427
 カオリは今でも若いですとも!!
 年齢設定は聞かないでいただけるとありがたいです…(w
 ちなみに稲葉さん、中澤さんは27歳って書いちゃってますけどね。
 もう開き直って書くことに決めちゃってるんで…(w

市井さんの内面等については、否定的な意見もあるでしょうが、
この小説ではこの設定でやらせてください。
いろいろ研究したんですけど、これで精一杯なので…

決め球については、あまり意識してなかったけど、
生命線はやっぱりシュートかなという気はします。
ただ、球種はもう2つあるのでお楽しみに…
決め球論争の大どんでん返しになるかも…(w
436 名前:ラック 投稿日:2001年06月24日(日)00時46分01秒
いち〜ちゃんにこんな辛い過去があったなんて・・・
メンバー、一人一人のストーリーをこんな丁寧に
書けるハロプロさんに感服です・・・
437 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月24日(日)23時39分57秒
「さて…どうしましょうかね市井紗耶香さん?」

マウンドにやってきた小湊さんが、ため息交じりにそう言った。
冷静沈着でいつもどっしり構えている小湊さんだが、さすがに怒っているようだった。

無理もない…
もう後がないはずのマウンドなのに、あたしのピッチングは何も変わっていなかった。

まず1番の石井琢朗さんには、内野安打を打たれた。
これは仕方ないんだけど…次からが問題だ。
詰まらせてゲッツー狙いの内角シュートが真ん中に入って、
2番の波留さんにエンドランを決められた。
おまけにストライクが入らず、3番鈴木尚典さんを歩かせてノーアウト満塁。

小湊さんが呆れるのも当然だ…

不意に小湊さんが、あたしの頭に手を伸ばしてきた。
そしてあたしの頭から帽子を剥ぎ取ると、髪の毛をくしゃくしゃっとしながらこう言った。

「こういう気持ちも分かるんだけどさ…
 もっと本当に変えていかなきゃいけない部分があるんじゃないの?」

小湊さんの言う通りだ。
でも…何が悪いのかさっぱり分からない。
気持ちでは負けてないつもりだ…

「変えていかなきゃいけないのは分かってるんスけど…
 何を変えたらいいのやら…
 開き直って投げてるつもりなんスけど…」

「開き直って投げるも何も…
 紗耶香、体が開いてんじゃん。
 左肩の開きが早くて、一塁側に体が流れるから、
 右バッターの内角のボールが甘くなるんじゃないの?」

へ…?
気が付かなかった…
なんだ…フォームが悪かったから打たれてたのか…

「な〜んだ…フォームに問題があったのか…
 だははははっ!!
 よかった〜
 フォームなら修正出来ますもんね!!
 今まで、メンタル面に問題があるんじゃないかって悩んでたんスよ!!
 だははははっ!!」

ホッとして高らかに笑うあたしの目を、小湊さんの視線が鋭く捉える。

「違うよ…そんな簡単な問題じゃないよ…
 精神面が弱いから、重圧のかかる場面でフォームが無意識におかしくなるんだよ…」
438 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月24日(日)23時40分56秒
「和田さんに、ああ言われたからさ…
 ブルペンでの投球練習を、じっくり見させてもらったんだよね…
 ブルペンでは、今みたいなフォームでは投げてなかった。
 そして石井琢朗さんに打たれるまでは、ちゃんといいフォームで投げてた。
 でも、ランナーが出てからは違った…
 腕が縮み上がって、全然振れてない!!
 バッターに相対するのを逃げるかのように、体が開いてる!!
 これは、無意識の内にビビってるからじゃないの!?」

小湊さんのいつもと違う様子に、ちょっとビビった…
グラウンド外では、明るくチャキチャキした人なんだけど、
一度グラウンドに立てば、冷静沈着…ごくクールに勝負に徹する人だからだ。

その小湊さんが、あたしに向かって熱く激を飛ばしている。
なんか、とんでもないことをしでかした気分だ…
まぁ、実際にとんでもない状況を作ってしまっているんだけどさ…

しかし…情けない…
バッターに向かっていっているつもりが、無意識の内に逃げていたなんて…
どうすりゃいいってんだ?
結果が出なかったら、引退するなんて言っちゃったしさ…

「思い切ってぶつけてみよっか?」

次に小湊さんの口から出た言葉は、ちょっとビビったなんてもんじゃなかった。

「…え?
 またまた…ご冗談でしょ…?
 は…はははっ…」

こんな時に冗談を言う人ではないのは、重々承知しているのだが、
あまりにも目が真剣だったので、恐る恐るそう尋ねてみた。

「いや…マジでさ…
 いいじゃん別に…
 どうせ最後なんだから…」

うわ〜っ!!
本気だ〜っ!!
誰か助けて〜っ!!

小湊さんが壊れた〜〜〜〜っ!!
439 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月24日(日)23時41分59秒
「言っときますけど、あたしは最後にするつもりなんかないっスよ!!
 ちょっと勘弁してくださいよ!!」

「勘弁してほしいのはこっちなんだけどね…
 ビビってバッターから逃げてる泣き虫ちゃんのクセに、何言ってんだよバカ!!」

『バカ!!』って…
ちょっと小湊さん、本当にどうしちゃったんスか…?
家庭でなんかあったんスか…?

押し黙ってしまったあたしに対して、小湊さんはさらに言葉を続ける。

「悪いけど…引退を賭ける云々は、紗耶香個人の問題じゃん。
 あたしには関係ないんだよね…
 あたしの役割は、ピッチャーをうまくリードして失点を防ぐことなんだよね。
 自分の仕事だけきちんと出来ていれば、それでいいの…
 あたしのリード通り投げれないんなら、マウンドを降りろっての!!
 あたしの仕事の邪魔しないでよ!!
 こっちは生活がかかってんだから!!」

これには心底、頭にきた。
こういう人間だとは思ってなかった。

密かに、クールに勝負に徹する姿勢に憧れていたのに…

確かに、自分を主張することは大切なことだと思う。
あたしだって、ずっとそのことについてはこだわり続けてきた。
そういう考え方が、あなたの主義なのかもしれない。
でも…
時と場所を考えず、他人の気持ちを全く無視して、
自分の主義だけを押し通すのは、違うんじゃないですか?
あなたみたいな大人が、そんな考え方でいいんですか?
個人の主義主張を超越したところで、みんな一丸にならないといけないんじゃないですか?

「チームの要であるキャッチャーの小湊さんが、そんな自分勝手な考え方でいいんスか?」

あたしは、小湊さんを睨みながら抑揚のない声でそう言った。
しかし、小湊さんは全く悪びれる様子がない。

「何一つ結果も残してない泣き虫のガキに、説教される筋合いなんてない!!
 悔しかったら結果の一つも残してから言いなよ!!
 そうしたら聞いてあげるからさ!!」

「分かりました…
 結果を出せばいいんでしょ…
 何だよっ!!  
 家庭のゴタゴタを職場に持ち込むなっての!!」

この時のあたしには、もう小湊さんを敬う気持ちなんてどこにもなかった…
440 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月24日(日)23時43分08秒
完全に頭に血が昇っていた。

あたしは、自分を主張することに臆病な人間だった。
自分を主張することで、人を傷付けるのを恐れていた。
自分を主張することで、人から傷付けられるのを恐れていた。
だから…
本来の自分を素直に表現するのに時間がかかった。
悩んで…悩んで…
悩み抜いた…

だから…
他人の気持ちを全く考えず、所構わず自分の主義を押し通して、
平気な顔をしている人間が許せなかった。

それが、自分が密かに憧れていた人間だったから、怒りはなおさらだった。

もうバッターボックスのローズなんて、目に入ってなかった。
怒りが、あたしに力を与えていた…

『これなら文句ないだろ!?』って感じで、
寸分狂わず、要求されたボールをミットに投げ込んでやった。

そして、4球目の内角に食い込むシュートで、ローズのバットをへし折ってやった。
内野陣は中間守備を敷いていたため、ダブルプレイの間に1点を先制されたが、
続く5番の駒田さんを、ストレートを詰まらせてセカンドフライに打ち取った。

見たか、こんにゃろ!!

1回の表を最少失点に抑えて、マウンド上でガッツポーズ。

よし!この後は、1点もやらないからな!!
よく見とけよ小湊美和!!
次の回はミットを突き破ってやるからな!!

なんて思ってたら、2回からキャッチャーが圭ちゃんに変わった。
彼女はダッグアウト前で、何やら圭ちゃんにアドバイスをしている。

どうしたんだろ?
プププ…まさか、あたしの豪球で骨折でもしちゃったのかな?
ざまぁみろってんだ!!

この時のあたしは、本当にガキだったね…

小湊さんにうまく乗せられたのに、最後まで気が付かなかったんだから…
441 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月24日(日)23時48分52秒
>>436
 レスありがとうございました。
 各メンバー一人一人にそれぞれストーリーをつけて書いていく予定です。
 
もう少しで2年前の開幕まで戻ってこれそうです。
442 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月25日(月)03時13分47秒
やれば出来る子なのよ市井ちゃんは・・・(w

大どんでん返しの決め球って何だ?気になる〜!!
443 名前:名無すぃんぐ 投稿日:2001年06月25日(月)09時58分41秒
いちーさん…
ここからどうやって抑えのエースになっていくのか? 期待っす
444 名前:ま〜 投稿日:2001年06月25日(月)21時34分34秒
さすが市井だ。しかし市井を調子に乗せた小湊がいい味を出している!
普通ならマニアックなキャラクターのはずなのに・・。
ハロプロくん・・。見事だ!
関係ないが昨日草野球でピッチャーやってきました。
体中が痛いっす・・。
445 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月25日(月)23時02分15秒
7回の裏に代打を出されるまで、
あたしは追加点を奪われることなく、自分の役目を終えた。

7回を投げて、5安打1失点8個の三振。
2回以降は、得点圏にランナーを置くことがない安定したピッチングだった。

結果を出すことが出来た…

これで引退しなくてもいい訳だが、もうそんなことはどうでもよかった。
ダッグアウト内を見回して、あの人の姿を探した。

「やぐっちゃん、小湊さんは?」

ダッグアウトの中に姿が見えなかったので、やぐっちゃんに尋ねてみた。

「今さっき、ダッグアウト裏に行ったみたいだよー」

なる程、ダッグアウト裏ね…
待ってろよ小湊美和!!

「よっ!ナイスピッチング!!」

あたしの姿を確認すると、彼女はニカッと笑いながらそう言った。

こんにゃろ!!何笑ってんだ!!

「結果…出しましたよ…」

彼女の笑顔が、あたしの感情を逆撫でした。
彼女を睨んだまま、そう切り出した。

何を、余裕かまして笑ってんだ!!
あんたには、いっぱい言ってやりたいことがあるんだ!!

でも…
何も言えなくなった…

彼女の顔を見たら…言えなくなった。
彼女がかけてくれた言葉を聞いたら…言えなくなった。
446 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月25日(月)23時03分52秒
「よかったね、紗耶香…
 よく頑張ったよ…
 ちょっとは自信ついたでしょ…?」

そう言った彼女の顔は、あたしに悪態をついていた時の顔ではなかった。
さっきの出来事が、まるで夢だったかのような柔和な表情に、あたしは面喰らった。
まるで女神のようだった。
…っていうのは、少々言い過ぎか?
よく裕ちゃんが、『チームの肝っ玉かあさん』なんて言ってたけど、なるほどって思った。
なんか、母親の優しさに包まれているようだった。
あんなに頭に血が昇っていたのが嘘のように、冷静さを取り戻すことが出来た。

なんだ…そういうことだったのか…

「どうしたの?
 あたしに言いたいことがあるんじゃないの?」

何も言えなくなって立ち尽くしているあたしに、彼女が意地悪く語りかけてきた。

「わざとだったんスか…?」

あたしは、そう彼女に確認するのが精一杯だった。

「まあね…
 これからも頑張ってね…
 紗耶香が自信を持って投げれば、あのシュートとストレートは絶対に通用するから…
 じゃ、あたしダッグアウトに戻るから…」

あたしの横を擦り抜けて、ダッグアウトに戻ろうとした彼女が、急に立ち止まった。

「そうそう…言っておかなきゃいけないことが一つあったんだ…
 何を勘違いしたんだか知らないけど、家庭にゴタゴタなんてございませんよ…
 ウチは円満にやっておりますから…
 じゃあね…」

そう言ってニカッと笑う彼女を見たら、もう我慢が出来なくなった。

『泣き虫サヤカ』は卒業したはずだったのに…
447 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月25日(月)23時06分12秒
「久しぶりに見た気がするね…
 もう卒業したのかと思ってたけど…」

もう二度とチームメイトの前で泣かないつもりだったのに…
小湊さんのぶっきらぼうな優しさが、
元々弱かったあたしの涙腺を、完全にノックアウトしていた。

「小湊さん…
 本当にありがとうございました…
 さっきまで、全然気が付かなかったっスよ…
 市井は、小湊さんのことを見損なう所でした… 
 一人でカッカして、失礼なこと言ってすみませんでした…
 市井も、小湊さんみたいにクールになりたいっス…」

小湊さんに抱き着いて、泣きじゃくりながらそう一気にまくしたてた。

「謝ることなんてないよ…
 怒らせるようにあたしが仕向けたんだから…
 それに今は、『クールになりたい』だとか結果とか余計なこと考えずに、
 ただバッターに思い切って向かっていけばいいんだよ…
 そう慕われても迷惑なんだよね…
 本当はあたし、嫌な奴なんだからさ…
 とにかく…まぁ頑張れ!
 自信を持って投げれば、必ずチームのエースになれる力があるからさ…
 まぁ、期待してるからさ…」

そう言ってダッグアウトに戻ろうとした小湊さんが、また急に立ち止まった。

「イカンイカン…
 もう一つだけ、紗耶香に言っといてやらなきゃいけないことがあった」

あの時と同じように、小湊さんがあたしの頭に手を伸ばしてきた。
そしてあたしの頭から帽子を剥ぎ取ると、髪の毛をくしゃくしゃっとしながらこう言った。

「これ…ショートよく似合ってるよ…
 それじゃ…
 いつまでも泣いてないで、ちゃんとアイシングをしておくように… 
 それでは、サラバじゃ…」

そう言い残して、今度は本当にダッグアウトに戻っていった。

小湊さん…ありがとうございました。
市井は、今日から走り続けますからね…
絶対にビッグになりますから…
見ていてくださいね…
448 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月25日(月)23時15分37秒
>>442
>>443
 市井さんの決め球については、現在時間に戻ってから…
 大どんでん返しってほどではないかもしれませんが…
 まぁ、お楽しみに!
>>444
 草野球お疲れさまでした。
 戦績はいかがでしたかな?
 
レスありがとうございました。
最近いろんな意味でマニアックですみません。
今回も勢い余ってとんでもないものを書いてしまった気がします。

明日、更新が出来れば『松井対かあさんバッテリー』まで戻れるはずです。
449 名前:ま〜 投稿日:2001年06月25日(月)23時27分05秒
市井・・、可愛すぎるぞ!結構小湊好きなんだよ。
マニアックなの好きですよ。頑張ってください!
『松井対かあさんバッテリー』期待してます。

>>草野球お疲れさまでした。
>>戦績はいかがでしたかな?
戦績は5イニングを投げて失点4自責点3でした。
一応今期2勝0敗です♪
体がいたい・・・。こりゃ中2週くらいでないと投げれない・・。藁
450 名前:ラック 投稿日:2001年06月25日(月)23時49分31秒
う〜ん
松井との対戦は?
いち〜ちゃんの決め球は?
気になることが多すぎて眠れねぇ〜
451 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月26日(火)19時56分33秒
市井の勝ちは原始時代から決まってるんだ〜(狂
452 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月26日(火)23時25分36秒
たった1度でも、結果を出せたことが大きかった。
あたしのピッチングは、自信溢れるものに変わっていった。
その後の数回のリリーフ登板にも結果を出し、
再び掴んだ先発登板では、念願のプロ初勝利を手に入れた。

あの時は、ダッグアウトの中で本当にドキドキしてたなぁ…

当時には珍しい7点の大量得点に守られて、7回まで無失点。
8回に2ランホームランで2点を奪われて、交代させられたけど、
疲労もあったし…まぁ、仕方ないでしょ。

5点差がありながらも、当時ストッパーだったみっちゃんが最後を締めてくれた。
ちょっとヒヤヒヤしたんだけどね…
最終的に7対5だったし…
  
でも、嬉しかったなぁ…
みっちゃんに感謝!感謝!だったもんなぁ…

結局…
まぁ、打たれることもあったけど、内容は全然良かったし…
確かな手応えを残して1年目のシーズンを終えることが出来た。

秋期キャンプも、目的意識を持って精力的にこなした。
周りの評価も上々で、あたしは来シーズン期待の戦力という位置付けだった。

年俸もちょっぴり上がったしさ…
これって、ちゃんと期待されているってことだもんね。
この年のドラフト1位ルーキーだった後藤の教育係にもなったし…

この当時の後藤は、あいさつもろくに出来ないし、
やる気があるのかないのか分からない、手のかかる奴だったんだけどさ…
それでも『市井さん…市井さん…』って擦り寄ってくるとやっぱり可愛くってさ…
だいぶ厳しく接したつもりだったんだけど、あいつもよく付いてきた。
実際のところ『何であたしが?』なんて思ってたかもしれないけどさ…

大変だったけど、人にものを教える立場ってのは、
自分自身の勉強になることが多いんだよね。

キャンプを終えて、オープン戦を迎えた。
この頃のあたしは、本当にノリに乗っていた。
ほとんど打たれることなく絶好調のまま、2年目のシーズンを迎えた。

やるべきことは全てやったし、自信もあった。
あたしは、自分自身の今シーズンの活躍を信じて疑わなかった。

やると決めたからには、絶対に1番になりたい!!

頂点を目指したあたしの想い…

この時のあたしを、小湊さんはどんな目で見てたんだろう…?
453 名前:実況くん 投稿日:2001年06月26日(火)23時27分39秒
『初球は、インコース!!
 松井は腰を引いて見送った!!
 判定はストライク!!
 初球はインコースでしたね、江川さん?』

『ええ、ボールからストライクになるシュートですね。
 まともにインコースから入ってきましたね』

『掛布さんは、初球から思い切って打ちにいってほしいと言ってらっしゃいましたが、
 松井は見逃してきましたね?』

『ええ…ただですね〜
 僕は、この打席の松井くんに関しては、
 初球から思い切って打っていくつもりはあったと思います。
 おそらくボールと判断したんでしょうね。
 今のはキャッチャーの小湊くんが、うまかったですね』

『さあ、この後はどう攻めていったらいいんでしょうかね江川さん?』

『インコースでうまくストライクが取れましたからね。
 後は、アウトコースのクサイところを突いていきたいですね。
 今日の松井選手はツーベースが1本だけですが、
 凡打の内容も非常にいいですから…
 調子に乗って、まともにいくと一発を浴びますよ。
 カウントが悪くなったら無理せず、歩かせてもいいと思いますよ』

『バッテリーは、勝負にきてると考えていいですか?』

『勝負にきてますね』

『おっと〜っ!!
 2球目もインコースだ!!
 ズバッといってストライク!!
 球速は151km/h!!
 ストレートですね、掛布さん?』

『ストレートですね〜
 いや〜驚きましたね、江川さん?』

『一番驚いているのは、松井選手じゃないですか?
 首を捻っていますからね。
 しかし、これは危険ですよ…
 この後は、アウトコースのボール球だと思いますけどね…』
454 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月26日(火)23時37分24秒
>>449
 2勝0敗…立派です!!
 痛みに耐えて、頑張ってください!!
 きっとわたしは感動するでしょう…(w
>>450
>>451
 『松井対かあさんバッテリー』いよいよ開始!!
 結末をお楽しみに…
455 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月27日(水)03時03分04秒
松井相手にインコースに続けて2球投げるとは、市井ちゃん(小湊)強気ですね〜。
まさか3球勝負か!?(w
楽しみです。
456 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月27日(水)23時19分59秒
インコースを2球続けてツーストライクと追い込んだ後、
今度はアウトコースを3球続けた。
いずれもボール球だったが、その内の1球に松井さんが手を出してファール。
5球を投げ終えた時点で、カウントはツーツーとなった。

本当はインコースのストレートで押したかったのだが、
小湊さんが許してくれなかった。
まぁ、ストレートを投げさせてくれていたので、
そんなに不満はなかったんだけどさ…

この日は、とにかくストレートが絶好調だった。
ここまでで自己最速の152km/hを2回もマークした。

もう三振を狙う以外、考えられなかった。
もちろん、歩かせて次のバッターで勝負なんて、頭の片隅にも無かった。

こんな絶好調の時に、勝負しなくていつ勝負するってんだ!!

そんなあたしの想いに呼応するかのように、小湊さんのサインは内角高めストレート。

さすが小湊さんだ…
市井の想いを、ちゃんと分かってくれている…
そうっスよね…小湊さんが、通用するって誉めてくれたボールだもんね…

内角高めのストレートを、2球続けてファールされた。

見てるか後藤…
あの松井さんが、たかだかストレートを続けられて前に打ち返せないんだぜ…
あと1球で決めてやるからな…
プププ…明日の新聞の見出しは、『市井渾身の7連続ストレート!!松井三振!!』だね。

しかし、小湊さんから出たサインは、あたしの想いと違っていた。

マジっスか!?
冗談でしょ、小湊さん!?

納得がいく訳がなかった…
小湊さんのサインに首を振った。

嫌だ!!
絶対に嫌だ!!
後藤にだって、『勝負の最中に弱気な姿勢は見せるな』って教えたんスよ!!
後藤が見てるんだ!!
そんなボール絶対に投げたくない!!

しかし、何度首を振っても小湊さんのサインは変わらない。

何でなんスか…小湊さん…?
小湊さんにだって、頂点を目指す市井を止める権利なんてないっスよ…
でも…抑えてみせれば、文句はないっスよね…小湊さん…?
大丈夫…打たれる訳がないっスよ…
小湊さんが、通用するって誉めてくれたボールだもん…

ね?小湊さん…
457 名前:実況くん 投稿日:2001年06月27日(水)23時21分49秒
『江川さん、どうしたんでしょう?
 サインが、なかなか決まりませんね?』

『ここまでストレートで押してきましたけど、さすがに変化球でしょうからね』

『市井のほうが、ストレートを投げたくて渋っているということでしょうか?』

『でしょうね』

『掛布さんは、この場面をどうご覧になりますか?』

『ストレートは危ないですね〜
 2球続いたファールで、タイミングは合ってきてますからね。
 僕も勝負は、やっぱり外の変化球だと思いますね』

『松井は、変化球を待てばいいということですか?』

『そんな簡単には、いかないですね。
 変化球のタイミングで待ったら、今日のあのストレートは絶対に手が出ませんからね。
 ストレートは頭に残しながら、変化球に対応しないといけないでしょうね。
 ただし、この場合ストレートには対応が遅れますから単打狙いですね。
 ヤマを張って狙わないと、あのストレートをホームランには出来ないでしょうね』
 
『さぁ、サインに市井がうなずきましたね…
 セットポジションから第8球目…
 小湊が外角に寄った…
 外の変化球か!?
 いや、内角だっ!!
 打った〜〜〜〜っ!!
 弾丸ライナーだ〜〜〜〜っ!!
 ライトスタンドへ一直線〜〜〜〜っ!!
 巨人7回の裏についに逆転っ!!
 ハロプロ市井投入が裏目!!
 松井の逆転スリーランホームランだ〜っ!!
 掛布さん、すごいホームランでしたね!?』

『いや〜松井くんは、ストレート1本に絞っていましたね〜
 誰もが変化球だと思う場面で、
 ストレートを待つことが出来た勇気が生んだホームランですよ。
 このホームランは素晴らしいですね』

『江川さん、最後は150km/hの内角ストレートでしたね?』

『驚きましたね。
 しかし、あそこでストレート1本にはなかなか絞れないですよ。
 配球云々じゃなくて、松井選手を誉めるしかないですね』

『バッテリーは、ライトスタンドを見送ったまま…
 市井は、ボーゼンといった表情だ…』
458 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月27日(水)23時23分43秒
打球の消えていったライトスタンドを、ボーゼンと見つめていた。
そんなあたしを現実に引き戻したのは、スタンドのファンからのヤジだった。

『この場面は福田だろ!!なんで市井を出したんだよ!!』

これは、まだ我慢できるさ…
でも…

『小湊バカヤロー!!あそこでストレートはねえだろ!!』

これには、胸が締め付けられた…

違う…違うんだよ…
小湊さんは悪くない…

そう…あたしが小湊さんのサインを無視したんだから…

舞い上がって、冷静さを欠いていたのかもしれない…
後藤に対して、いい格好を見せたかったのもあるだろう…
とにかくあたしの増長が原因で、たくさんの人を傷つけた。

小湊さんは、あたしを直接咎めることはしなかった。
ただ…松井さんへの問題の1球については、小湊さんのコメントが新聞に載った。
 
『市井のストレートが良かったんで、調子に乗り過ぎた。
 市井には悪いことをした。
 これに懲りず、いいピッチャーになってほしい』

そう書いてあった。
このメッセージが、あたしにはさらなる成長のきっかけとなった。
一見あたしを庇ってくれたようだが、小湊さんはそんなに甘い人じゃない。
小湊さんは、直接あたしを指導することはしなかった。
これは、あたしに『自分で考えろ』という突き放した指導方法なんだ。

本当のところは分からないけど、あたしはそう解釈した。
この失敗…この屈辱を、教訓にするんだ。
落ち込んでいる暇なんてない…

リリーフ登板の真の怖さを知ったあたしは、逆にリリーフ登板に魅せられた。
プレッシャーが最大級にかかる場面で、仕事をするのが最高にカッコイイと思った。
先発投手以上に1球、1球が大切なこの役割にのめり込んでいった。
そしていろいろ考える中で、自分が多くの勘違いをしていたことに気が付いた。

『攻めのピッチングとは…』
『ウイニングショットとは…』

その後、不調のみっちゃんに代わってストッパーになった。
2年連続で最優秀救援投手のタイトルを手にして結果を残した。

全ての始まりとなった開幕戦のマウンドで、あの日の借りを返すんだ。
あたしの導き出した答えを、あの人に見てもらうんだ…
459 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月27日(水)23時34分19秒
>>455
 レスありがとうございました。
 実際の松井の攻め方に比べるとやっぱり無謀なんだけど、
 キャラ特性ってのもあるから、
 ああいう攻め方を書かざるをえないんですよね。
 だから、なっちの時もそうだけど、
 ワンパターンに内角ばっかりって印象になっちゃいますね。

なんかダラダラ長くなるだけって感じがしたので、ペースアップしてみました。
これで現在時間に戻ってこれました。
460 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月28日(木)21時49分02秒
あ〜びっくりした
回想シーンだった
461 名前:ま〜 投稿日:2001年06月28日(木)22時09分06秒
不調のみっちゃん萌え!
ストッパーの平家が想像できない・・藁。
462 名前:ラック 投稿日:2001年06月28日(木)23時16分21秒
2年連続最優秀救援投手のすごい
いちーちゃんに萌え〜
463 名前:ま〜 投稿日:2001年06月28日(木)23時23分58秒
スレ汚しですまんが、市井が9月芸能界復帰って本当でしょうかね?
ここの市井も頑張ってもらいたいですね♪
464 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月28日(木)23時32分09秒
右手で一度、マウンド上のプレートに手を触れた。

登板する際に、これだけは必ずやっていた。
マウンドを去って行ったピッチャーの想いを、自分の中に取り込む大事な儀式だ。

みんなの想いを裏切らないように…

この瞬間…体の奥底がカーッと熱くなってくる。
しかし同時に、冷静さを取り戻す瞬間でもある。

あたしは、自分では冷静に現実を見つめているつもりなんだけど、
知らず知らずの内に調子に乗り過ぎてしまう一面があるらしい…

マウンドの上では、クールに燃えてみせるんだ…

「あんまり調子よくないわね…紗耶香…」

投球練習を受け終えてマウンドにやってきた圭ちゃんが、苦しそうに言った。

「うん…とにかくコースを突くしかないよ…
 幸い、コントロールは悪くないからさ…」

たった数球の投球練習だったんだけど…
やっぱり、圭ちゃんはあたしの不調に気が付いた。
でも…そんな圭ちゃんだからこそ、安心して投げることが出来る。

「そうね…
 2点差あるし…とにかく2番の金城さんが勝負ね…
 なんとか低めでダブらせたいわね…」

「まぁ…慎重にいくよ…
 絶対に抑えてみせるから…
 任せてよ…」

「あんたは、一人で頑張ろうとし過ぎるんじゃないの!!
 周りを見てみなさいよ…みんないるでしょ…
 それに、あたしもフォローするわよ。
 あたし達に甘えていいんだからね!!」

ちょっと熱くなりかけたあたしを、圭ちゃんが瞬時にクールダウンさせてくれた。
 
「そうだね…
 それじゃ圭ちゃん…頑張っていきまっしょいっ!!」

マウンド上、二人で気合いを入れた。

ありがとう圭ちゃん…

抑えてみせましょう
あなたと二人で…
465 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月28日(木)23時36分17秒
「ねぇ…梨華ちゃん…おなかすかへん…?」

あたしの右隣に座っていたあいぼんが、不意に声をかけてきた。

「おなかすいた〜っ」

あいぼんの右隣で、ののが元気よく手を上げた。

もぉ〜、ダメだよ二人とも…
『交代してもしっかり先輩のプレーを見て勉強しなさい』って言われてるでしょ!

ここは年上のあたしが、ちゃんと厳しく注意しなくっちゃ!

「ダメだよ、あいぼん!
 ののも!
 ちゃんと試合を見てなさいよぉ!」

あたしの言葉に対して、ののが軽く頬をプッと膨らませて不満の意思を示す。
あいぼんは目を一瞬伏せがちにしながらも、
もう一度あたしの顔をのぞきこむように、こう聞いてきた。

「だって…あいぼん、おなかすいた…
 梨華ちゃんは…おなかすかへんの…?」

あいぼんの口から出たのは、『本当にあたしの話を聞いてるの?』っていう内容だった。
改めて怒らなきゃいけなかったんだけど、あたしの顔をのぞきこむその顔が、
あまりにも可愛かったんで、つい話に乗ってしまった。

「あたしもお腹は空いてるよ…
 でも、ちゃんと試合を見て勉強してるんだから…
 もうちょっと我慢すれば、市井さんが夕食をオゴってくれる約束だし…
 だから、あいぼんもちゃんと試合を見て勉強しなきゃダメだよ…」

そう言い終わった瞬間、二人の顔がパッと明るくなった。

「やったっ!!亜依ちゃん、市井さんがオゴってくれるってっ!!」

「いぇ〜い!!のの、やったね!!」

あいぼんとののは、二人で両手を叩き合って喜んでいる。

え!?
ちょっと待ってよ…

どうしよう…?
二人とも勘違いしちゃった…
466 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月28日(木)23時50分09秒
>>460
 驚かせてすみません。
 いよいよ現在の市井さんの登板です。
>>461
 過去の平家さんにはいろいろあったのです。
 いずれ平家さん編で…
>>462
 大魔人と争った結果ではないですが、ギャラードには勝ってます。
>>463
 そんな情報があるとは知らなかった…
 どうなんでしょうね?

レスありがとうございました。
だいぶ先が見えてきましたね。
467 名前:289@270 投稿日:2001年06月29日(金)01時35分50秒
試合も大詰めやねぇ。
いち〜ちゃんにはしっかり抑えてもらいたい。
でもどうなるかかなり不安や…賞取ってるのに(w
あいぼん出してくれてありがとなぁ(w
468 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月29日(金)03時10分52秒
コントロールミスさえしなければ抑えられるはず・・・
頑張れ〜市井ちゃん!!
469 名前:ラック 投稿日:2001年06月29日(金)22時41分21秒
ここでいち〜ちゃんが抑えなければ
辻加護が暴れだすなぁ〜・・・
梨華ちゃんじゃ二人を抑えられないから
いち〜ちゃんがバッター抑えちゃえ!!
470 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月30日(土)00時01分22秒
「あのねぇ…あいぼん、のの…
 違うのぉ…
 市井さんがオゴってくれるのは、あたしとよっすぃ〜と矢口さんと安倍さんだけなの…」

大喜びの二人をがっかりさせるのはためらわれたのだが、このままにしてもおけない。
思い切ってそう切り出した。
二人は、一瞬無言でお互いの顔を見つめ合っていたが、やがて不満の声をあげた。

「なんでなん…?
 梨華ちゃんばっかずるい…」

「辻も食べたいっ!!
 梨華ちゃんずるいっ!!」

市井さんが夕食をオゴってくれることになった経緯を説明したのだが、二人は納得しない。
それどころか、とんでもない提案をしてきた。

「市井さんはお金をいっぱいもらってるから、二人ぐらい増えても大丈夫だよっ」

「ねぇ、梨華ちゃん…市井さんに頼んでぇ…」

え〜っ!!
そんなの無理に決まってるじゃない…
そんなこと言ったら、市井さんに怒られちゃうよ…

「そんなの無理だよぉ…
 市井さんだって、急に二人増えたら困っちゃうよ…
 ワガママ言っちゃダメだよ…」

しどろもどろになりながら、二人に言って聞かせようとしたんだけど…

「聞いてみないと、無理かどうか分かんないじゃん…
 梨華ちゃんは、本当にネガティブなんだからっ!!」

「ねぇ、梨華ちゃん…聞くだけ聞いてみてぇ〜
 梨華ちゃんは、ポジティブになったんでしょ〜?」

食べ物のことになると、二人とも必死だ。
特にののは、あたしのことを睨みつけて一歩も引かない構えだ。
言い含めようとするあたしと、要求を押し通そうとする二人のやりとりが続いた。
やがて、ののが前向きに検討する意思を見せないあたしにこう言った。

「ふ〜んだっ!!もういいよっ!!
 亜依ちゃん、梨華ちゃんなんかアテにならないからよっすぃ〜に頼もうよっ!!」

え〜っ、そんなぁ…
あたしってなんてダメなんだろう…
471 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年06月30日(土)00時03分26秒
>>467
 タイトルホルダーにも関わらず読者を不安にさせるストッパー市井さん。
 でも、市井さんが悪いのではないのです。
 ひねくれものの作者が悪いのです。(w
 試合で結果を出さずにダッグアウトで結果を出す加護さんもよろしく…(w
>>468
 市井選手への度重なる御声援ありがとうございます。
 いよいよ勝負も大詰めですね。
 まぁ、いきなり脱線しようとしてますが…(w
>>469
 辻加護を抑えることの出来る助っ人が現れたりして…(w

恒例!!読者参加企画!!
クイズ『500レスの娘。!』

ちょっとやろうかどうか迷ったのですが、やっぱりやります。
でも…次回からは、ちょっと方法を変えたいと思っているので、その旨ご承知ください。
まぁ、お遊びの企画なんで熱くなることもないんですけどね。

500レス目の1番最初に登場するハロプロメンバー(コーチも含む)を予想してください。
正解者には、ネタのリクエスト権利を差し上げたいと思います。
尚、リクエストいただいたネタについては早急に対処したいとは思うのですが、
事情により少しお時間をいただく場合があることをご了承ください。
それと、ネタによっては今後の展開上の理由により、
リクエストの変更をお願いする可能性があるのもご了承ください。
500レス目が感想レスだったり、選手の描写のないレスだった場合には、
501レス目を『500レスの娘。!』の対象としたいと思います。
お申し込みは、1人1選手とさせていただきます。
尚、同じ選手への申し込みは3名様までとさせていただきます。

ちょっと告知が遅れたので、今回の締め切りは485レスです。
以上、よろしかったらご参加いただけるようお願い申し上げます。
472 名前:nakazawa 投稿日:2001年06月30日(土)00時14分52秒
こんどは市井でしょ
473 名前:ダン吉 投稿日:2001年06月30日(土)00時56分32秒
まったく、(@_@;)ッスが・・
辻選手ということで!!
474 名前:ラック 投稿日:2001年06月30日(土)02時08分05秒
辻加護抑える助っ人って誰だろう?
もしかしてアノ人かなぁ〜?
500レスの娘。は僕の大好きな梨華ちゃんでお願いします。
475 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月30日(土)04時12分21秒
いままでどうり市井ちゃんで。
今回は話の主役だし最大のチャンスかも・・・
だからリクエストを、先に決めときます。
『市井、金髪にする』でお願いします。(ウソ)(w
476 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年06月30日(土)08時03分36秒
保田でお願いいたします。
昨日のMSで仲良いみたいな事言ってたので
477 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月30日(土)14時12分56秒
市井と思わせといてその勝利を喜ぶ後藤で。
市ごまはやぱーり最高
478 名前:娘。LOVE 投稿日:2001年06月30日(土)14時36分03秒
中澤でお願いします。
勝利監督インタビューですね!!
リクエストは当たってから考えよう
479 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月30日(土)16時55分56秒
穴狙いでなっちです。
パーフェクトリリーフのいちーちゃんを出迎える
なっちで!
・・・どうかな〜?
480 名前:276 投稿日:2001年06月30日(土)20時38分25秒
華麗なゲッツーを決める柴ちゃんで!!
481 名前:ま〜 投稿日:2001年06月30日(土)21時42分37秒
食事を奢ってくれと市井に抱きつく辻加護だ!
482 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月30日(土)22時34分20秒
なんの!ヒーローインタビューに
答えるなっちさ!!!
483 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月30日(土)23時52分00秒
同点ホームランの後藤だ
それ以外に道はない
484 名前:名無し祭 投稿日:2001年07月01日(日)02時07分19秒
明日香でお願いします。勝利直前で市井のピッチングを
不安そうにみつめる明日香で勝負!
485 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月01日(日)08時33分29秒
辻の一言は、あたしをポジティブ石川からネガティブ石川へと変身させた。

あたしってそんなにアテにならないのかなぁ…?
でも…きっとそうなんだ…

だから、ひとみちゃんもあたしにおまじないさせてくれなかったんだ…

矢口さんは、あたしが何か発言しても『あっ、そう…』って取り合ってくれないし…
おまけに今日なんて、2回も殺されそうになっちゃったもん…

安倍さんは、エラーしても『大丈夫だよー』って言ってくれるんだけど、
目の奥が笑ってなかったような気がするし…

頭の中を、マイナスイメージばかりが駆け巡った。

中澤さんには、いつも怒鳴られるし…
平家さんには、いつもお尻を叩かれるし…
飯田さんには、長いお説教されちゃうし…
保田さんは、野球のことあたしに熱心に教えてくれるんだけど、顔がちょっと怖いし…

ごっちんには、密かに嫌われてるような気がするし…
ののには、前からちょっと見下されてるような気がするし…
あいぼんも、一年前に比べてあたしの言うこと聞いてくれなくなっちゃったし…

柴ちゃんやあさみちゃんは仲良くしてくれるんだけど、本当はどう思ってるのかな…

村田さんみたいに足が速くないし…
大谷さんみたいにホームラン打てないし…
北上さんみたくうまくバント出来ないし…
前田さんみたいに上手に守れなくて、エラーばっかりするし…
稲葉さんみたいな卑怯なプレイなんて、到底出来ないし…
アヤカさんやレファさんやミカちゃんみたいに、英語なんて喋れないし…

石黒さんみたいな迫力が、あたしにあったらなぁ…

市井さんは、ポジティブで羨ましいなぁ…

それに…

ううん…いけないわ…
あれほどポジティブ石川になるって決めたんだもん!
きっとみんな気のせいだし、あたしにだっていいところがあるはずなんだから…
前だけ見つめるのよ!
そう決めたんだもん…

意識してキッと視線を上げ、無理矢理ポジティブな自分の姿をイメージする。

負けないわよぉ…!

でも残念ながら…発動したのは、『ポジティブ石川モード』ではなく、
ただの『逆切れ負けず嫌い』モードだった。

話し合いは、もう完全に収拾がつかなくなってしまった。
486 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月01日(日)08時36分12秒
クッソー!!
矢口の奴、全然相手をしてくれへんようになった…

『矢口ぃ〜』って声をかけても…
『フン!!』なんてホッペタ膨らましてソッポ向く…

そんなヘソを曲げた矢口ももちろんカワイイんやけど、寂しいっちゅうねん!!

今は、アイシングから戻ってきたなっちと、今後の展開について話し合っとる。
何度かさりげなく、その仲間に加わろうとしたんやけど、矢口に拒絶された。

『嫌っ!!裕ちゃん、お断りーっ!!』やて…

「まったく矢口の奴、監督のあたしを何だと思ってんねん!!」

思わず不満が口を突いて出た。

すると、隣で腕を組んだまま戦況を見守っていたしのちゃんが、ポツリと一言。

「じゃあ…裕ちゃんは、監督の仕事を何だと思ってるのかな…?
 一応、最後の重要な局面を迎えてるんですけどね…」

しのちゃんは、あまり口数の多い方ではないんだけど、それだけにその言葉には重みがある。
思わず背筋がピンと伸びてしまった。

「ゴメン、しのちゃん…
 でも、決して試合のこと忘れてる訳とちゃうんやで…
 矢口へのフォローも必要やから…」

言い訳がましかったかな?
でも、試合のことはもちろんちゃんと気にかけてたし、
矢口をフォローする意味合いもホンマにあったんやで…
ホンマにホンマやで…

しかし、さすがはしのちゃんや…
気持ちが引き締まったで…

そんな時、ダッグアウトの奥の方で甲高い声が響いた。

「もぉ〜っ!!あんまり聞き分けのないこと言ってると、怒っちゃうわよぉ!!」

「キャハハハハ〜!!梨華ちゃん…全然怖くな〜い」

「逆切れじゃんっ!!
 梨華ちゃん、最悪っ!!
 ネガティブな梨華ちゃんが悪いのにっ!!」

あいつら、試合中だっていうのに…

「お前ら、試合中に何を騒いどんねん!!大事な場面やで!!」
487 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月01日(日)08時53分43秒
>>472〜484
 『500レスの娘。!』へのご参加ありがとうございました。
 結果をお楽しみに!!
 
 ま〜さんは、辻加護のどちらか一人に絞っていただけるようお願い出来ますか?

各選手を一通り紹介するためのプロローグ部分にあたる3話までが、
もうすぐ終わろうとしています。
まだほんの一部分なのに500レスとは、いったいどういうことでしょうか?(w

キャラクターがごちゃごちゃになってきて、微妙にずれてきてる気がする…
辻と加護は相変わらず書けてないし…
キャラクターを出しすぎるのも考えものですね…
488 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年07月01日(日)11時16分50秒
朝起きるの早いんですね〜
羨ましいです
石川の空想に笑いました
489 名前:ま〜 投稿日:2001年07月02日(月)01時10分56秒
ネガティブ石川最高だ!
>>ま〜さんは、辻加護のどちらか一人に絞っていただけるようお願い出来ますか?
すいません。では食いしん坊の辻でお願い致します。
490 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月02日(月)03時13分34秒
逆切れ梨華ちゃん、最高っ!!(w
491 名前:エッグベーグル 投稿日:2001年07月02日(月)12時50分36秒
Σ(゚д゚lll)ガーン
しばらく来られなかった間にずいぶん進んじゃってるじゃないの。
でも、しあい終わってなくてよかった〜。
492 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月02日(月)21時01分03秒
更新されてない!
Shocked!
493 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月02日(月)23時09分44秒
あたし達は、中澤さんと矢口さんからそれぞれ注意を受けた。
試合中…
それも最終回ながら、ピンチを迎えている大事な場面で騒いでいたのだから当然だ。

「だから『ちゃんと試合を見てなさい』って言ったのに…」

怒られた後、神妙な顔つきでベンチに座っている二人に声をかけたが、無視された。

なによ…二人とも、あたしが悪いって言うの…?
あたしは、『交代しても試合をよく見て勉強しないとダメだよ』って注意しただけなのに…
何で分かってくれないんだろう…?

でも…
中澤さんや矢口さんに怒られると、
一時的にでもちゃんと言うことを聞くんだよね…

結局、あたしの言い方が悪いってことなのかな…?
年上なのにムキになって声を張り上げちゃったし…
よく考えてみれば、もっと言い様があったのかもしれないな…

どうしよう…このまま放っておく訳にもいかないよね…?
でも…どうしたらいいのかな?
もう、まともに話を聞いてくれそうにもないし…

あたしが肩を落としてベンチに座っていると、声をかけられた。

「どうしたの梨華ちゃん…何かあったの?」

顔を上げると、そこには涼しげな顔をした福ちゃんが立っていた。

「福ちゃぁ〜ん、あのね…聞いてくれる?」

自分でも情けないとは思うんだけど…
もう福ちゃんだけが頼りだった。

福ちゃんがベンチに腰掛けるのを待たずに、早速話を切り出した。
時折、福ちゃんに落ち着いて話すように促されながら、事の成り行きを説明した。
福ちゃんは、表情一つ変えずに話を聞き終えると、
目であたしに席を代わるように合図をしてきた。
494 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月02日(月)23時13分23秒
「隣に座ってもいいかな?」

突然、福田さんに聞かれた時…
となりに座っていたののも、たぶん心臓がドキドキしてたと思うねん…

だってなぁ…福田さんは、なんかちょっと怖いねん…
怒られたことがあるわけやないし…
大声で怒ってるところとか見たわけじゃないんやけど…

どっちかって言うと、おとなしくポツンと座ってる…
そんな感じなんやけど…
でもなぁ…なんか…なんかなぁ…怖いねん…
正直ちょ〜っと…苦手やねん…

でも…
とりあえず『はい…いいですよ〜』って答えてん…
そしたらなぁ…
となりに座った福田さんは、しばらく加護達を観察するように見てた…
な〜んもしゃべらずに、ただジ〜ッと見てた…

何なんやろ〜?
やっぱり…怒られるんかな〜?

なんか…怖くてなぁ…ののと二人で下ばっかり見ててん…

「二人とも、そんなに紗耶香達とご飯を食べに行きたいの?」

え…!?

いっしゅん、何言われたか分からへんかった…
福田さんの意外な一言にびっくりした加護達は、思わず顔を見合わせた。

いきなり、隣に座っていたののがおびえたように首を横に振りだした。
だから、加護もあわてて首を横に振った。
福田さんは、そんな加護達を涼しい顔で見てた。

「行きたくないの?
 だって梨華ちゃんを困らせるぐらいに…
 裕ちゃんや真里っぺに注意されるぐらいに…
 『行きたい!行きたい!』って騒いでたんでしょ?」

福田さんは、静かにゆっくりとそう聞いてきてん…
いつも通りのしゃべり方やし、別に加護達をいあつしているわけじゃないねん…

でもなぁ…それが、なんか…なんかなぁ…逆にブキミやねん…

加護は心の中で『梨華ちゃん…ズルイ…』って思った…
そして…ののと二人でだまったまま、やっぱり下向いててん…
495 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月02日(月)23時16分28秒
「いいよ…二人とも一緒にご飯を食べに行こうよ。
 だって…本当は行きたいんでしょ?
 ね、辻ちゃん?」

ののがポカンと口を開けたまま、福田さんを見つめてた…
それでなぁ…
『どう答えたらいいの?』って顔で、加護のことチラッて見んねんけど…
加護にも、どう答えるのがいいか分からへんねん…

「はいっ!!辻も行きたいですっ!!」

結局、ののは食欲に負けたのか元気よくそう答えた。

もぉ、ののは何にも考えてないんだから…

「そっか…じゃあ行こうよ。
 加護ちゃんも行きたいよね?」

福田さんは、加護にもそう聞いてきた。
今まで無表情に近かった福田さんの顔が、ちょっぴり優しそうな顔になってる…

「はい…加護も行きたいです…」

ののが正直に『行きたい!!』って言っちゃったなら、まぁいいかって思った。
ののは優しそうな福田さんの顔に安心したのか、てへへっと笑ってるけど、
加護はとても笑えへん…
福田さんのちょっぴりの笑顔が、逆に怖かった…

「自分のやりたいことを『やりたい』ってはっきり言えるのは、
 悪いことだとは思わないよ。
 それがどんな場面でも、どんな人に対してでも言い通すことが出来るならね…
 辻ちゃん、加護ちゃん…」

福田さんが突然、そう話しだした。
その顔は、元の無表情な顔に戻っている。

やっぱりやねん…

お説教だ…

梨華ちゃんのせいだ〜
496 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月02日(月)23時20分49秒
「裕ちゃんや真里っぺ、そしてあたしには言いたいことがはっきり言えないのに、
 梨華ちゃんには言いたい放題ってのは、ちょっとズルイと思うよ」

てへへっと笑っていたののも、また下向いちゃった…
もちろん加護もだけど…

「裕ちゃんや真里っぺに、梨華ちゃんと同じ態度を取っていいってことじゃないからね。
 むしろ逆だよ…
 辻ちゃんや加護ちゃんにとっては、頼りなく思えるのかもしれないけど、
 梨華ちゃんだって先輩なんだよ。
 辻ちゃんや加護ちゃんにとっては、説得力がないのかもしれないけど、
 きちんと正しいことを教えようとしてたんだよ。
 試合をよく見ることも勉強だよ。
 勉強をサボってると、追い抜かれて試合に出れなくなっちゃうよ。
 それでもいいの?」

「イヤですっ…
 辻は、た〜〜〜〜っくさんホームラン打ちたいですっ…」

隣に座っていたののが、首を横に振りながらそう答えた。

ののには、負けてられへん…

「加護も、い〜〜〜〜〜っぱいヒット打ちたいです…」

福田さんの顔が、またちょっぴり優しい顔になった…

「そうだよね。
 だったら無駄話は止めて、試合をちゃんと見て勉強しようよ。
 梨華ちゃんも、同じことが言いたかったんだよ。
 最初の話にちょっと戻るけど、
 梨華ちゃんが友達みたいに接してくれるからって、
 それに甘えるような態度を取っちゃダメだよ」
 
この時加護は、ちょっと反省しなきゃいけないと思った…

加護は、梨華ちゃんに甘えてたのかなぁ…?

奈良から東京に一人で出てきた加護に対して、
梨華ちゃんは、『何でもあたしに言ってね』って、とにかくいろいろ心配してくれた…
でもなぁ…おせっかいしすぎって思うこともあってん…

いつでも優しくしてくれたし、時には注意もしてくれた…
聞いてないことが多かったけどなぁ…
でも梨華ちゃんは、加護のためを思ってしてくれてたんやろなぁ…

加護はすぐ調子に乗っちゃうから、それが当たり前になっちゃったのかもしれへん…

そういうのを甘えてるって言うのかな…?

福田さんの隣で、加護達のことを心配そうに見てる梨華ちゃんが、なんか嬉しかった。
497 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月02日(月)23時26分50秒
「梨華ちゃん…ごめんね…」

福ちゃんの話が終わった後、あいぼんがそう言って頭を下げた。
それに促されたように辻も頭を下げる。

「梨華ちゃん、ごめんっ…」

「ううん…あたしこそムキになっちゃったりしてごめんね…ちゃんと応援しようね!」

やっぱり福ちゃんはすごいなぁ…
同い年とは思えないよ…
ののとあいぼんが、あんなに素直に話を聞くんだもん。

でも一つだけ気になることがあるんだよね…
大丈夫なのかなぁ…?

「ありがとう、福ちゃん…
 でも…勝手にののとあいぼんに御飯をオゴる約束しちゃって大丈夫かなぁ?」

「大丈夫だよ…あたしが半分払うから…」

「えっ…福ちゃんが…?」

「あたしも紗耶香に誘われてたから…
 あたしが半分払うんだから、紗耶香のことは別に問題ないよ」

「そんな…あたしも払うよ、福ちゃん…
 あたしのネガティブで、これ以上福ちゃんに迷惑かけられないよぉ…」

「いいよ…そんなこと気にしなくて…
 あたしが払いたいって思ったんだから、それでいいよ…」

何度あたしも払うって主張しても、福ちゃんは頑として受け付けない。
最終的にあたしが根負けすることになっちゃった…

本当にごめんね…福ちゃん…
あたし…もっと努力しなくっちゃ…

うなだれるあたしに対して、福ちゃんが視線は前に向けたままポツリと言った。

「梨華ちゃんは、ネガティブじゃないよ…」

え…?

そんな時…隣であいぼんとののが、ひそひそ話をするのが聞こえた。

「よかったね〜、のの…
 ののは何食べたい?」

「ののは、クレープがいいっ!!」

もぉ〜っ!あなた達、本当に分かってるのぉ〜っ!
498 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月03日(火)21時28分11秒
「梨華ちゃんは、ネガティブじゃないよ・・・」
どゆこと?福ちゃん教えて?
499 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月03日(火)23時35分48秒
『初球エンドランだ〜っ!!
 センター後方っ!!
 センター村田、バック、バック、バ〜〜〜〜ック!!
 届かな〜〜〜〜いっ!!
 村田は勢い余って顔面からフェンスへ激突〜っ!!
 一塁ランナー石井琢朗は、三塁を回って一気にホームへっ!!
 打った金城は三塁へ行くか?
 いや、二塁でストップだっ!!
 バックアップの吉澤から、今ボールがサードへダイレクトで返ってきた〜っ!!
 9回の表に1点返して、3対2!!
 横浜ベイスターズ2番金城のタイムリーツーベースで1点差!!
 落合さんっ!!森監督が積極的に動いてきましたね?』

『思い切って初球からやってきましたね…
 内角高めへの完全なボール球なんだけど…
 エンドランがかかっていたんで、思い切って叩きにいきましたね…
 それにしても栗山くん…
 この市井は、あのコースのストレートを金城クラスのパワーのバッターに、
 あそこまで飛ばされるようなピッチャーだっけ…?』

『いえ…今日はストレートが走ってないんでしょうね。
 スピードガンの表示が全てではないですが、今のボールは142km/hでしたからね。
 いい時の市井選手のストレートだったら、
 空振りでセカンドでタッチアウトの危険性もあったんじゃないですか?』

『ハロプロは満を持しての市井投入なんでしょうが、
 この調子だと、この先どうなるか分かりませんよ…』

『おっと…フェンスに激突した村田ですが、自分で立ち上がりましたね…
 グラウンドに担架が運びこまれましたが、
 村田は大丈夫のジェスチャーで、これを制します。
 本当に大丈夫でしょうかね、栗山さん?』

『こういうシーンは、昨シーズンも何度か見かけましたが、
 この村田選手は、本当にガッツのある選手ですね。
 僕も外野手だったんで経験があるんですが、
 フェンスが近付いてくるのが見えると、やっぱり怖いんですよ。
 でも、この選手は全速力で背走して、思い切って後ろへ飛び込みましたからね。
 頭を打ってないかどうか心配ですが、この様子だと大丈夫みたいですね。
 吉澤選手のバックアップも、無駄がなくて素晴らしかったですね。
 金城選手を、セカンドで止めたのは大きいですよ』

『さぁ、ノーアウト2塁と同点のチャンスを迎えて、
 打席には、森監督が大きな期待を寄せる3番小川が入ります』
500 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月03日(火)23時38分06秒
その瞬間…
ダッグアウト内に、悲鳴とも取れる声が沸き起こった。

ブルペンの調子が悪いとは聞いていたが、あたしは迷わず紗耶香をマウンドへ送った。
紗耶香は、2年連続で最優秀救援投手にもなったチームのストッパーだ。

チームの誰もが信頼してるし、何より監督のあたしが一番、
初めて出会った頃に比べて、頼もしく成長したあの娘を頼りにしていた。
だから、小湊に最後の確認をされた時、迷わず紗耶香でいくことを決めた。

1点差にされて、尚もノーアウトランナー二塁…
打席には、オリックスからやってきた勝負強い3番の小川さん…

でも…紗耶香は、胸を張ってマウンドの上に立っていた。
堂々として落ち着いて見えたし、眼光は鋭く逃げずに立ち向かう姿勢を打ち出していた。

そうやな、紗耶香…
それが市井紗耶香やもんな…

抑えてくれるって信じてるで…

「ねぇ、裕ちゃん…」

突然、ヘッドコーチのしのちゃんから声をかけられた。

「何…しのちゃん?」

「レフトの後藤だけどさ…
 バックホームのこともあるし、北上に代えといたほうがいいんじゃないかな…?」

なるほど…1点を守りにいってるんやし、それもそうやな…
でもな…

「いや…レフトはこのまま後藤でいこ…
 守備力自体は、後藤のほうが本来は内野手の北上より数段上や…
 バックホームも、あっちゃんがきちんと中継してくれれば大丈夫やろ…
 フェンスに突っ込んだ村田も一応心配やし、交代要員は残しとかなアカン…」

「そっか…分かった…」

しのちゃんは、それ以上突っ込まへんかった。

ごめんな、しのちゃん…
でも…ホンマによく気付いてくれるわ…

その時、スタジアムに快心の打球音が響き、ダッグアウト内にはどよめきが起こった。
501 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月03日(火)23時40分00秒
「ごめんね…紗耶香ちゃん…」

マウンド上にやってきた前田さんが、申し訳なさそうにあたしに頭を下げた。

「いや…何言ってんスか!
 止めてくださいよ、前田さん!
 前田さんにそんなことされたら、市井なんか土下座しなきゃいけないっスよ。
 マジで、あれを止めてもらえただけで充分っスから…」

ノーアウトランナー二塁の場面…
内角ボールにするはずのシュートが甘くなったところを、
小川さんに思いっ切り引っ張られた。

打たれた瞬間…『やられた!!』って思った…
痛烈なライナーが三塁線上を襲った。
これが抜ければ、二塁ランナーはホームまで返ってくるだろう…
2対2の同点になる…
自分の投じた迂闊な一球を呪った。

しかし、矢口に代わってサードの守備についていた前田さんが、この危機を救ってくれた。
三塁線上を襲う打球に反応よくダイブすると、
キャッチ出来ないまでも、ボールを手前に落としてくれた。
ファーストにボールを投げられず内野安打でノーアウトランナー二塁一塁…

前田さんが謝ることなんて全然ない…
言っちゃ悪いけど、矢口がサードだったら抜かれていた打球だった。
実際、打球が飛んだ瞬間、『やられた!!』って思ったし…

本当に…前田さんの守備力には頭が下がる。
いや…前田さんだけじゃない。
今の布陣は、守備に関しては12球団一と言ってもいいメンバーだ。

安心して任せればいいんだ…
あたしは、とにかくバッターの芯を外して、打たせて捕ることを考えればいいんだ…
圭ちゃんの言う通り…
今日だけは、みんなに甘えさせてもらうから…
どんな形でも構わない…
リードを守って試合を終えるのが、あたしの役割なんだから…

「今度は絶対にアウトにするから…頑張って、紗耶香ちゃん…」

あたしを激励してから、自分のポジションへ戻っていく前田さん…

あたしは決意も新たに、再びマウンドに上がった。
502 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月03日(火)23時42分10秒
前田さんの好プレーで、被害は最小限に抑えられた。
紗耶香本人も言ってたけど、歩かせて守りやすくしたと思えば、全然問題ないだろう。

しかし…何なのよ、あのシュートは…?

思惑通りに変化しないし、球威もなく、小川さんに簡単に引っ張られた。
スタンドに運ばれなかったのが、不思議なくらいだ。
金城さんに打たれたストレートのこともあるし、
正直なところ、今後のリードに対して光明を見いだすことが出来ないでいた。

だからと言って、もちろんあたしが諦めるわけにはいかない。
自分の考えられる最大限のリードで、紗耶香を…チームを…勝利に導くんだ。

4番の鈴木尚典さんには、
紗耶香のピッチングを語る上で重要な、もう一つの球種から入った。

人を小バカにしたような球速90km/h台の大きなスローカーブ…

紗耶香の持ち球の中で、今日唯一まともな球と言ってもいい…
ただ…この球は、あんまり続けて投げられる球じゃないんだよね…
ランナーを背負った場面では、盗塁を許しやすいし、
球筋を見定められて狙い打たれたら、スタンド行きだもん…
だから…効果的に使える場面を見定めて、要所・要所で使うつもりだった…
でも、そんな悠長なこと言ってられない。
ヒット一本打たれたら同点の場面なんだ…

2球目…外角にボールになるように要求したストレートが、
力が入ったのか高めのクソボールになった。

そして、3球目…
横浜ベンチが、また動きを見せた…
さっきの投球が、浮き足だっているように見えたからか、思い切った作戦に出た。
二人のランナーが、スタートを切った。

意表を突いたダブルスチール…

コノヤロー!!
なめんじゃないわよ!!
503 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月03日(火)23時44分51秒
「サンキュー圭ちゃん!!
 助かったよん!!」

マウンドの上から紗耶香が、声をかけてきた。

状況は変わって、ワンアウトランナー二塁…

ダブルスチールを試みた横浜ベンチ…
しかし、三塁を狙ったセカンドランナーの金城さんをアウトにすることが出来た。

アウトを一つ取って、勝利に一歩近付いた。
4番の鈴木尚典さんに対するカウントもツーエンドワン…
少し勝利への光明が見えてきた気がした。

それなのに…

ちょっと…いい加減にしなさいよ!!

次の投球のサインが決まらない。
何を要求しても紗耶香は首を振る…

あたしは堪らずに、タイムをかけてマウンドに向かった。

「ちょっと紗耶香!!
 あんたどういうつもりなのよ!!」

紗耶香の顔を見て、ちょっと嫌な予感がした…
マウンドに登ってから今まで、クールな表情をなんとか保っていたんだけど、
あたしがマウンドにやってくると、その表情がやんちゃ坊主のそれに変わっていた。

「いや〜今日は、みんなにちょっと甘えちゃおうかと思って…
 どうしても投げさせてもらいたいボールがあるんだよね…」

出た…こんな大事な場面で、いい加減にしなさいよ!!

「何だってのよ?
 あんたの持っているボールは、今さっき全て要求したはずだけど…?
 全部、首を振ったわね…他に何があるって言うの?」

紗耶香が何を言いたいのかは分かっていたが、取りあえずそう聞いてみた。

「何言ってんの…?
 まだ『紗耶香ボール』があるじゃん!!」

「あんた…殺すわよ…」
504 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月04日(水)00時07分38秒
>>498
         あたしも知りたぁい!!
  \(^▽^)/だって、そんなこと言ってくれるの福ちゃんだけなんだもん…
 
  (0°−°0)あたし…そんなこと言ってないよ…

書き溜めた分、一気に更新しました。
今週中に終わりそうかな?

『500レスの娘。!』は中澤裕子に決定!!
478の娘。LOVEさん、正解おめでとうございます。
何かリクエストがありましたら、お応えしたいと思います。
そして、外れてしまった方々、申し訳ございませんでした。
毎度毎度、企画に参加していただいてありがとうございました。

くれぐれも言っておきますが、『紗耶香ボール』に過剰な期待はしないように!!
( `.∀´)あたしとの約束よ!!
505 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月04日(水)00時16分15秒
ここの読者ってホント、マナーいいですね。
いつもはレス多いのに『500レスの娘。!』があった今回はレスを控えるなんて。
『紗耶香ボール』期待しますよ。
506 名前:ま〜 投稿日:2001年07月04日(水)00時16分18秒
くっ!外したか・・。中澤ヲタの俺が他の人に応募するからだ・・。
しかしさすがだ。前田=守備の人。これがいいね〜♪
村田の顔面ダイブも。
この後は『紗耶香ボール』に期待しよう!(過剰に♪)
507 名前:naka 投稿日:2001年07月04日(水)00時36分14秒
紗耶香ボール=アレか?
みっちゃんに自責がついちゃった・・・
508 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月04日(水)03時30分06秒
また外れた〜(涙)
これはもう呪いかなにかとしか思えん(w
こうなったらもう『紗耶香ボール』に全身全霊をかけて期待してやる〜(w
509 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年07月04日(水)07時55分38秒
くそ〜股外れた。
『紗耶香ボール』って何だ?4シームか?2シームか?
期待してます。頑張って
ナッチの勝ち星が・・・
510 名前:エッグベーグル 投稿日:2001年07月04日(水)12時39分05秒
>>503
おKさんのセリフがよいですね。
思わず吹き出してしまいました。
511 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月04日(水)13時37分48秒
まさか、紗耶香が星野ばりのスローカーブを使えるとわ・・・
ストレートMAX150キロだし・・・
調子よかったらホント最強だな!!!
512 名前:ラック 投稿日:2001年07月04日(水)16時27分37秒
キャチャ−の圭ちゃんが嫌がる『紗耶香ボール』
もしかして、あのボールじゃ・・・・・
513 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月04日(水)19時36分43秒
魔球といえば「パラシュートボール」!!
514 名前:名無し祭 投稿日:2001年07月04日(水)21時23分12秒
500レス直前に明日香が出てきて、もしや?と思うも撃沈。
次回は頑張ります!
515 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月04日(水)22時06分45秒
またはずれた・・・けども・・・
オッケ〜オッケ〜!!
魔球楽しみ〜!
まさか・・・ラビットボール?
516 名前:276 投稿日:2001年07月04日(水)23時25分31秒
今回もかすりもしなかった・・・

しかし、「紗耶香ボール」か・・・何だろうね。
圭ちゃんの反応を見ると余計に気になるな。

>>515
 そりゃまずいだろ(w
517 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月04日(水)23時42分30秒
『紗耶香ボール』…

まったく、大層な名前付けちゃって… 

名前だけ聞くと、誰にも打てない必殺の決め球みたいだけど、何の事は無い…

ただのフォークボールだ…

正確に言うと、指が短くて深く握れないんで、
『スプリット・フィンガード・ファーストボール』になってるんだけどね…

そして…もっと正確に言うと、落ちないことが多いんで、
フォークの握りで一生懸命投げてるスピードの落ちたストレートなのよね…

三振が取れる変化球を覚えたいってことで、
1年目の秋期キャンプから取り組んで早、2年半…
全く進歩がない…

もう…いい加減に諦めてほしいんだけど、全然諦めないのよね…

ストッパーになった紗耶香は、あたしにこう言った。

『三振に取ることとか、ストレートで抑え込もうなんてことは考えない…
 どんなボール、どんな結果でも、リードを保って試合を終えることが大事なんだ…
 それが…あたしの仕事なんだから…』

でも…そう言いながらも、三振を取りにいくボールの修得に励み、
最悪の結果を招く可能性のある未完成の怪しげなボールを投げたがる紗耶香…

これはハッキリ言って矛盾している。

でも…あたしには、分かる…
イヤ…分かってあげたい…

紗耶香は、自分を殺してまでもチームに貢献し続ける道を選んだ。
チーム事情、そして紗耶香の優しい心が、優等生的なストッパーであり続けることを求めた。
そして…紗耶香は、それをあっさり受け入れた。
自分が求められた道で、最大限に輝き続ける道を選んだんだ。

惜しいね…あんたみたいに無限の可能性を秘めたピッチャーなんて、そうはいないのにね…
やっぱり…2年前のあの開幕戦が心の中で引っ掛かってるんだね…

紗耶香本人は、きっとそんな意識なんてないんだろうけど…
きっと『そんなことない!!』って否定するだろうけど…

『紗耶香ボール』は、あの娘のストレスのはけ口なのよね…
518 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月04日(水)23時45分00秒
『紗耶香ボール』を投げたがる紗耶香に対して、あたしは必ず嫌そうな顔をする。
そして一度は、きっぱり断る。
それが、あたしのこのチームのキャッチャーとしての役割…

でも…結局は、『紗耶香ボール』を投げさせる。
それが、あたしの紗耶香の永遠のライバルとしての役割…

結果はいろいろ…
ホームランを打たれることもあれば、物の見事に落ちて三振を取ることもたまにはある。

でも…結果なんて、どうでもいいんだよね。

本当にチームに迷惑がかかるような状況では、『紗耶香ボール』を投げたがらないから、
打たれてもどうってことないし、抑えりゃ抑えたで結構じゃないの…

本当に結果なんてどうでもいいの…

『紗耶香ボール』とやらを投げることで、紗耶香の迷いが晴れるなら…

でもさ…
分からないよ、紗耶香…
この勝負を左右する大事な場面で、なんで『紗耶香ボール』なの…

「あんた、今のこの状況が分かってるのかしら?
 何で今ここで、そんな訳の分からないボールを投げる必要があるの?
 パニクって頭おかしくなっちゃったんじゃないでしょうね?」

あたしの問いかけに紗耶香は、真剣な表情でこう答えた。

「パニクってなんかいないよ…
 勝つためだよ…
 勝つために…
 このピンチを切り抜けるために…投げるんだよ」

そこまで覚悟するの紗耶香…
唯一のストレスのはけ口のボールでしょ…
頑張り過ぎだよ…
あんた…逃げ場を失うよ…
519 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月04日(水)23時47分01秒
「今日のあたしは、悔しいけど本来のピッチングが出来ない…
 だから…申し訳ないけどみんなに頼るしかない…
 なんとか、内野ゴロを打たせたい…
 そのために『紗耶香ボール』が必要なんだよ…圭ちゃん…」

「たかが内野ゴロを打たせるのに、そんな信用出来ないボールを使う必要なんてない!!
 カーブだって、シュートだって低めを突けば内野ゴロを打たせられる!!
 確かに『紗耶香ボール』がきちんと落ちれば、
 ストレートのつもりで出したバットの下側に当たって、内野ゴロを打たせやすい…
 でも…絶対に投げさせないからね!!
 あたしに甘えなさいよ!!
 あたしのリードで何とかするから!!」

「ダメだよ…圭ちゃん…
 ここは絶対に『紗耶香ボール』じゃなきゃダメだよ…
 覚悟が必要なんだよね…
 大丈夫…絶対に落としてみせるから…
 頼むよ…もうサイン無視は、したくないんだよね…」

にまぁっと笑ってみせたあたしを、圭ちゃんは凄い顔で睨んでた。

「バカヤロー!!
 もう勝手にしろー!!
 あんた、本当に打たれたらただじゃおかないわよ!!」

「チェッ…
 なんか…なっちと市井じゃ、圭ちゃんの扱いが違うんだよね…
 なっちには、好きな球を投げさせるクセにさ…」

「なっちは特別!!
 あんたのことなんか…どうだっていいんだよ…バカー!!」

まったく…圭ちゃんは、やりにくいんだよね…
市井のこと…本当に分かってくれてんだもん…

でも…大丈夫…
市井は、全然大丈夫だからね…

市井は、一か八かの勝負を挑む訳じゃない…
このボールは今日ちゃんと落ちてた…自信があるから敢えてこのボールを使うんだ…

内角低めを狙った『紗耶香ボール』は、思惑通り鈴木尚典さんのバットの芯を外した。
打球はゴロとなって一二塁間へ…

やった…打ち取った!!
これで、あと一人だ!!

一瞬…そう思ったんだけど…
非情にも、打球はセカンドの柴田とファーストのカオリの間を抜けていった…

ゴメン…圭ちゃん…
なっち…
そして…みんな…

市井はリードを守れなかった…

小湊さん…市井はやっぱりダメでした…
520 名前:ま〜 投稿日:2001年07月05日(木)00時14分05秒
ライト強肩吉澤か!?
本塁で刺すんだ!
521 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月05日(木)00時21分33秒
>>505
 本当にいろんな意味で、マナーよく読んでいただいていると思います。
 いつも本当にありがとうございます。
>>506
 ま〜さんは、中澤ヲタだったのか…
 前田さんは、やっぱりそういうイメージなんで…
 村田さんは、お約束!!
>>507
 ヽ^∀^ノみっちゃんゴメン…
 (  ` ◇´)ウチのことはエエねん…後をきっちり抑えるんや!!
>>508
 多少…申し訳なくは思うのですが、こればっかりは仕方ないので…
 意地悪してるわけでもないし、呪いもかけておりませんよ!!(w
>>509
 ツーシーム・ファーストボールは他に投げさせる予定のピッチャーがおります。
 なっちの勝ち星は絶望か…?
 本当にゴメンなさい…
>>510
 ( `.∀´)保田節、炸裂よ!!
>>511
 本当に最強です。(w 
 ちょっとやり過ぎかなとも思ったのですが、
 スローカーブを唖然と見送らせて心の片隅で、
 プププと笑う市井さんも捨てがたかったんで…
>>512
 結果はあれです。
 本当にゴメンなさい。
522 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月05日(木)00時23分07秒
>>513
 「パラシュートボール」って何だー!!
 聞いたことがあるような…ないような… 
>>514
 明日香は惜しかったですね。
 またご参加ください。
>>515
 ヽ^∀^ノあたしゃ江川か!!
>>516
 外れたようでゴメンなさい。
 またご参加ください。
 「紗耶香ボール」は期待させただけでごめんなさい。

まず謝っちゃえ!!
「紗耶香ボール」の件は本当にすみません!!
ほんの出来心で…(w
もう一つ謝らないといけないことがあります。
重大なミスをしてしまいました。
敢えて何処だとはいいませんが、本当にすみません!!
目が行き届かなくて、ミスに更新してから気が付いた。
これからは気を付けます。

たくさんのレスありがとうございました。
それなのに…本当に情けない…
523 名前:naka 投稿日:2001年07月05日(木)01時50分52秒
紗耶香ボール=さとるボールじゃなかったか…
抑え&さとるボールで私の好きな西武潮崎(昔)を重ねようと思ったのに。
でも、紗耶香は速球派か。
524 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月05日(木)02時44分50秒
ヤクルト安田猛 第一期ヤクルト黄金時代を支えた左のエース
サイドスローからのスライダーを武器に新人で防御率一位のタイトルをとる。
短身胴長その歩く姿からペンギンともあだ名される。
「パラシュートボール」本人曰く魔球(笑)実は山なりのパームボール。
その人となりは、漫画「がんばれタブチくん」いしいひさいち著を参照されたし(爆
525 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月05日(木)04時23分33秒
紗耶香ボールがSFFだったのは全然問題なしですが、
紗耶香が活躍してないよ〜!!
これは大いに問題ありですぞ!!(w
526 名前:名無すぃんぐ改め、七星 宙城 投稿日:2001年07月05日(木)09時29分11秒
500レスの娘。には参加し損ねたけど(気付いたら締切が過ぎてた)、
キメ球が予想&希望通りSFFでよかったのれす。
しかし、『紗耶香ボール』とゆーのを聞いた(見た)瞬間、
『阿畑ボール(実はナックル)』を思い出した宙城はパワプロヲタっす。

よっすぃ〜…
いちーさんを、そしてなっちを救ってあげてください。
527 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月05日(木)23時05分06秒
吉澤!お前なら刺せる!!
いや、絶対刺すんだ!!!!!
528 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月05日(木)23時37分51秒
市井さんや安倍さんには、ちょっと悪いと思ったんだけど、
ボールが一二塁間を抜けて、目の前に転がってきた瞬間…
こう思った。

三塁を回れ!!

絶対にホームで刺してやるから!!

勝ち越しの犠牲フライだけでは、気が済まなかった。
胸の辺りが、まだもやもやしていた。

重大なエラーをしでかしてから、
密かにこんな場面を心待ちにしていたのかもしれない…

絶対絶命のピンチなのに…

期待感で胸が踊った…

三塁ベースコーチの青山さんは、三塁ストップのジェスチャー。
しかし、小川さんに代わる代走の万永さんは、これを振り切ってホームへ… 
 
神様が、あたしの願いを叶えてくれたのかな?
あたしの肩を知らないはずないのにね…

あたしがボールを掴んで、助走を利用しつつ送球体勢に入ると、
場内が歓声に包まれた。

ここは、あたし…吉澤ひとみの見せ場だ…

矢のような送球なんて表現があるけれど… 
あたしの体は大きな弓だ…

大きくしなった右腕から放たれる白球の矢で、
保田さんのキャッチャーミットという的を射抜く…

必殺必中!!

自分の手からボールが放たれた瞬間…
あたしは、自分のリベンジの成功を確信していた…
529 名前:実況くん 投稿日:2001年07月05日(木)23時40分13秒
『鈴木尚典打った〜!!
 引っ掛けたが、飛んだコースがいい!!
 一二塁間を抜けて、ライト前ヒット〜!!
 セカンドランナー代走の万永はどうするか?
 三塁ベースコーチはストップだ!!
 あ〜っと!!
 回った、回った〜っ!!
 制止を振り切って本塁突入だ〜っ!!
 ライト強肩の吉澤!!
 助走をつけてバックホーーーームっ!!
 アウト!!
 アウトっ!!
 アウトォーーーーっ!!
 本塁手前1mで、楽々タッチアウト!!
 打った鈴木はセカンドへ!!
 ツーアウトランナー二塁!!
 ツーアウトランナー二塁まで、漕ぎ着けました!!』

『このプレーは大きいね…』

『勝敗を分けるプレーだったと思うんですが、落合さん…
 まず、鈴木の打った球は何でしょうか?』

『ストレートでしょうね…
 ん?VTRを見ると挟んでるな…
 少し落ちてますね…
 バットの下側だったんだけど、飛んだコースが良かったね…』

『万永の本塁突入はいかがですか、栗山さん?』

『三塁コーチを振り切って、思い切って突入したんですけど、
 吉澤選手の肩を考えると、ちょっと無謀だったかなと思いますね』

『ありゃ無茶ですよ…罰金もんですよ…』

『さぁ、そんなプレーの後ですが…
 おっと、吉澤がスタンドのファンに手を振って応えてますね。
 市井は、あと一人ですが落合さん…
 だいぶ楽になりましたよね?』

『楽にはなりましたが、気は抜けないですよ…
 5番の佐伯も勝負強いですからね…
 とにかく慎重に…
 コーナーを突きたいね…』
530 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月05日(木)23時44分04秒
5番の佐伯さんが、4球目の外角のスローカーブを打ち上げた。

今度こそ打ち取った。

しかし…
鈴木尚典さんの打球が一二塁間を抜けた時は、一瞬全てが終わったと思った。

本当に、頼もしい後輩を持って市井さんは鼻が高いよ。
鼻高々〜っ!!だははははっ!!

本当にみんなに助けてもらった…

今回ばかりは最後までいいところがなかったけど、
みんなを信じて最後まで粘り強く投げられた。

そして…
こんな状況の中でも、勝利を呼び込むことが出来たのが、あたしの成長の証しなんだ。

ストッパーに、途中経過の善し悪しは関係ない…
もちろんいい方がいいんだけどさ…
だって…どんなに凄い球を投げていたって最後に打たれたら、意味がなくなるんだもんね。

結果を出せるのが重要なんだ…
どんなにへろへろだって、四球で歩かせたって、たとえ打たれたって…
最後にリードを保ってゲームを終わらせるのが重要なんだ…

攻めのピッチングとは、ただ闇雲に向かっていくピッチングじゃない。
勝利のために… 最後まで諦めずに最善を尽くすピッチングなんだ。

そして…特別なウイニングショットなんて、あたしには必要ない。
勝利を掴むために費やした全てのボールが、あたしにとっての決め球なんだ。
でも…敢えて言うなら、
勝利を決めた最後のボールがウイニングショットかな?

今日は外角のスローカーブ…

小湊さん…
これが、あたしの答えです…
見ててくれましたか…

なんて思ってたんだけど…
何やら、佐伯さんの打球の行方が怪しい…

ショートのあっちゃんとレフトの後藤が、必死に打球を追う…
ツーアウトの場面…ポトリと落ちれば、ランナーは当然ホームに返ってくる。

最後の最後に何だよ〜〜〜〜っ!!

後藤〜〜〜〜っ!!
何とかしろ〜〜〜〜っ!!
531 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月06日(金)00時07分56秒
>>520
>>527
 (0^〜^0)吉澤やりましたよ!!
>>523
 西武の潮崎か…
 ちょっと市井さんとは、イメージが違いますね。
 福田さんもシンカーはあるけど、ちょっとイメージが違うからな…
>>524
 安田猛氏は存じあげておりましたが、パラシュートボールはよく知りませんでした。
 噂に聞くってレベルで、実際に見たことがないもので…
 情報ありがとうございました。
>>525
 確かに、ちょっと市井さんファンには辛い描写になってるかもしれませんね。
 でも、あせらないで…まだ1/140ですよ(w
>>526
 名無すぃんぐさんは、やけに素敵な名前になりましたね。(w
 メアド欄は確認しておりました。
 当時…密かに、『やるな!!名無すぃんぐさん』と思っておりました。(w
 
レスありがとうございました。
いよいよ終わりへ向けて一直線!!
532 名前:naka 投稿日:2001年07月06日(金)00時17分11秒
よっすぃーの肩はイチロー、新庄をも凌ぐ!!!
533 名前:ま〜 投稿日:2001年07月06日(金)00時22分13秒
頑張れ!それにしてもSFFとはパワプロ2の桑田を思い出してしまう。
内野ゴロ連発だもんな。あれは友達にキタナイと言われた・・・。藁
吉澤はさすが強肩ですな。カッケー!
534 名前:276 投稿日:2001年07月06日(金)00時30分33秒
後藤、市井のために何とかしてくれ。
535 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月07日(土)12時43分04秒
5番佐伯さんの打球が、あたしとあっちゃんの間にふらふら〜っと上がった。
ヒットコースにポトリと落ちるかもしれない。

そんな〜やめてよ〜
せっかく市井ちゃんが、ここまで頑張って抑えてきたのにさ〜

「あっちゃん、どいて!!どいて〜!!」

距離的には、若干あっちゃんの方が近いかもしれない…
でも…あっちゃんは、背走…
あたしは、前進でボールを追っている…
スライディングキャッチを試みることも出来る。
だから…あたしが追う方がいいんだよね…

なんちゃって…

実は、そんな計算なんかしていない…
出来る訳がない…

市井ちゃんの力になりたい…
市井ちゃんに誉めてもらいたい…

だから…あたしが絶対に捕るんだ!!

見よ!!普段は、あまり見せない全力疾走!!

でも…やばいなぁ…
ちょっと…届かないかもね〜
え〜い…ダイビングキャッチだ〜
アハッ、捕れなかったらごめんね〜市井ちゃん…

前方の打球に向かって思い切って飛び込んだ。
体が、地面に強く打ち付けられた。
天然芝だから、人工芝のように火傷みたいな擦り傷にはならないんだけど、
それでも擦りむくものは擦りむく…

チェッ…痛いなぁ〜

でも…この身を犠牲にした甲斐があった…
差し出したグラブに確かな手応えがあった…

イタタ…
市井ちゃん、やったよ〜

それにしても…本当に痛いな〜
も〜、後で絶対に市井ちゃんに誉めてもらうんだ!!
536 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月07日(土)12時44分54秒
後藤が、ボールを掴んだグラブを軽く上に掲げて見せた瞬間…
ダッグアウト内が、今日一番の喜びに包まれた。

しのちゃん、小湊とガッチリ握手を交わす。

「後藤…代えなくてよかったやろ…」

「御見逸れいたしました…」

しのちゃんは、そうおどけたように言うと、ニヤリと笑った。

「紗耶香…よく頑張ったよね、裕ちゃん…」

小湊が、そうポツリと呟いた。

あぁ…ホンマによく頑張った。
信じた甲斐があったで…

「なっち!!なっち〜!!」

矢口と二人で勝利を喜んでいたなっちを呼び寄せて、握手を求めた。

「なっち、よかったな〜
 おめでとう…」

「ありがとう…裕ちゃん…」

言葉少なに、ガッチリと堅く握手を交わした…

「なっち、ジャイアンツとの3戦目…投げてもらってもええか…?」

なっちは何も言わずに、ただ頷いてくれた。
自信に満ち溢れた眼差しで、あたしを見つめながら…

苦しい試合展開だったけど…最高のスタートが切れた。

エースのなっちが踏ん張って…
クリーンアップで得点を取って…
ストッパーの紗耶香が、最後を締めてくれた…

今年は本当にいけるかもしれない…

そんなことを考えていると、ダッグアウトに選手が戻ってきた。

さぁ、お出迎えや!!
537 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月07日(土)12時46分50秒
後藤の捕球を確認した瞬間…
あたしは、大きく一つ息をついて、空を見上げた。

最後の最後まで…
後藤…サンキューな…

まず…圭ちゃんがマウンドに駆け寄ってきた。

「お疲れ、紗耶香!!みんなに感謝しなさいよ!!」

うん…もちろんだよ…
そして…ありがとう圭ちゃん…

内野のみんなと勝利を分かち合っていると、後ろから急に抱き着かれた。

「市井ちゃ〜ん、今シーズン初セーブおめでと〜
 は〜い、ウイニングボールだよ〜」

「コラ後藤!!こんなところではしゃぐんじゃない!!」

「何さ!!後藤、痛いの我慢して市井ちゃんのために頑張ったのにっ!!」

「それとこれとは話が別っ!!ケジメを付けるべき時は、きちんとケジメを付ける!!」

後藤と言い争いを始めたあたしを、圭ちゃんがなだめる。

「まぁ、いいじゃないの紗耶香…何をそんなにムキになってんのよ?」

「後藤が、いつまでも新人気分で甘ったれなのがいけないんだよ!!」

「そんなことないよ!!後藤だってちゃんと後輩の面倒見てるし…
 何さ!!ちょっと抱き着いただけなのにっ!!」

後藤が頬を膨らませてあたしを睨んでる。

言い過ぎたかな…
せっかく、あたしのために頑張ってくれたのに…

まぁ…急ぐことはないか…

「悪かった、後藤…
 でもさ、これからの後藤にとって大事なことなんだよ…
 それだけは分かってよ…
 それとさ…さっきのは本当に助かった…ありがとう、後藤…」

さっきまで膨れていたのが嘘のような後藤の笑顔…

この甘ったれめ…

「後藤が怒るのも無理ないよ…あんなのどうってことないじゃないの…
 本当に何をムキになってんのよ…?」

二人きりになったマウンド上…圭ちゃんの台詞が心苦しかった。
538 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月07日(土)12時48分50秒
最後に遅れてダッグアウトに向かった圭ちゃんとあたしを、
みんなが出迎えてくれた。

「紗耶香、お疲れ…あんまりヒヤヒヤさせるんやないで…」

裕ちゃんがニヤニヤ笑いながら、あたしの背中をポーンと叩く。

「だははははっ!!あんまり完璧過ぎるとイヤミかなと思いまして…」

「よう言うわ…」

そして…
小湊さん…

「お疲れ…」

短く一言だけ…そして、お尻をポーンと叩かれた…

別に何か特別な一言がほしかった訳じゃない…
今日の登板は確実にあたしの財産になったし、自分でも満足している。

借りは返せた…それでいいじゃんか…
後は、大きな目標に向かって真直ぐ突き進んでいくんだ…

「なっち〜!!お〜い、なっち〜!!」

「紗耶香、お疲れー」

「おう!!ウイニングボールだぞ!!大事にしろよ!!」

「いいの…紗耶香…なっちがもらっちゃっても…」

ボールを受け取ったなっちは、恐る恐るあたしに聞いてきた。

「いいに決まってんじゃないの…その為に我々は頑張ったのだよ、安倍くん…」
 
なっちは、広報の人に連れていかれるまで、
何度も何度もお礼の言葉を述べながら頭を下げてた。

やがて…なっちのヒーローインタビューが始まった。
あたしは、ダッグアウトの奥で、タオルを頭から被って汗を拭いていた。

「よく頑張ったね…成長の証し…見せてもらったよ…」

突然…そう声をかけられた。

姿は見えない…
でも、誰の声かはすぐ分かる…

勘弁してくださいよ…
泣きそうになるじゃないっスか…
539 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月07日(土)12時51分23秒
『今日のヒーローは、見事に開幕投手の大役を果たしました安倍なつみ投手です』

スタンド内に大きな歓声が起こった。

『いや〜、すごい歓声ですよ安倍投手…今のお気持ちはいかがですか?』

『みんなー!!ありがとねー!!
 なっちが頑張れたのは、みんなのおかげだよー!!』

さっき以上にスタンドが湧いた。

ファンの声援って本当にありがたい…

『開幕戦の初勝利…安倍投手にとっては、思い入れがあるんじゃないですか?』

『ずっと…ずっと…みんなに迷惑かけてきたから…
 今日…勝つことが出来て本当に嬉しいです…
 でも…この勝利もみんなのおかげです…
 次回の登板では…なっちが、みんなを助けてあげられるように頑張ります』

『次回の登板の話しが出ましたが、中5日で巨人との3戦目はいかがでしょうか?』

『まだよく分からないですけど…投げろと言われたら、もちろん投げます…』

『手に持っているのは、ウイニングボールですか?』

『そうです…ストッパーの紗耶香がなっちにって…』

『今シーズンは、安倍投手にとってもチームにとっても、いいスタートが切れましたね。
 最後にファンの方々へ何かありますか…?』

『今シーズンは、みんなと力を合わせて必ず優勝しますんで、
 応援よろしくお願いします!!
 今日は、本当にどうもありがとー!!
 安倍なつみでした!!』

『開幕戦を勝利に導いたUFAハロープロジェクト安倍投手のヒーローインタビューでした』
 
ヒーローインタビューが終わっても止むことのない『なっちコール』…
ダッグアウトへ向かう間、精一杯に手を振ってこれに応えた…

ファンのみんなの想い…
チームのみんなの想い…
そして、なっちの想い…

今日からは…向かうところは一つだよね…

あたしは、紗耶香からもらったウイニングボールを、両手で強く握り締めた。


第3話 乙女の心理学 Part1 〜もう1つのリベンジ〜 完
540 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月07日(土)12時52分51秒
>>532
 やり過ぎちゃったかな?
 でも同じくらいのレベルは意識しました。
>>533
 ヽ^∀^ノプププ…キタナイと罵られようが抑えてみせるのが大事なのさ!!
>>534
 ( ´ Д `)頑張ったよ〜 でも…なんか納得がいかないな〜

やっと一区切りつきました。
なんか…まだまだこれからなのに、感無量って感じですね。

書き始める前は、
『自分の書きたいものを信じて書いていくんだ!!』なんて息巻いてましたが、
いざ書き始めてみると、弱音と愚痴のオンパレード(今でもそうか…(w )
皆様の応援に支えられて、ここまで書いてこれました。

特に最初の方でよくレスをつけてくださった方…
一人の方がマメにレスしてくださっていたのか、
複数の方々だったのか良く分かりませんが、とても勇気づけられました。

レスをもらうのが全てではないと思っておりますが、
読んでもらっている人のために頑張ろうというエネルギーになったのは確かでした。

必ずしも、読んでくださっている方々の期待に応えられているとは思いませんが、
今後応えられる方向で頑張りたいと思います。

なんか…もう終わってしまうようなあいさつで変なんですが、
お礼が言いたかったものですから…
本当にここまでありがとうございました。

次回は 第4話 明るい未来に… 〜奪三振ショー〜 を予定しております。

冒頭で新キャラを二人出さないといけないし、
前半と後半のバランスをきっちり取らないと失敗しそうな話になるものですから、
ちょっと準備期間をいただくことになると思います。
ちょっとリフレッシュもしたいですしね…(w

それでは、出来れば長いおつきあいをよろしくお願いいたします。
541 名前:途中参加読者 投稿日:2001年07月07日(土)16時27分24秒
作者続投宣言ですね。楽しみにしてます。
542 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月07日(土)19時01分17秒
きゃ〜っ!!
脱・三振ショー!!
楽しみだ〜ッ!!!
543 名前:ま〜 投稿日:2001年07月07日(土)21時47分04秒
>>止むことのない『なっちコール』…
「な〜っち!はい!な〜っち!はい!!」ですかな?
良かったですよ〜!!まずは開幕戦終了ですね。
この後の展開は・・?やはり巨人3連戦の3戦目ですな。
モーヲタの嫌いな巨人ファソ(「モーたい」が潰れるから)の
わたくしにとっては楽しみです。藁
544 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月07日(土)22時46分44秒
仁志は許すがね。
545 名前:パク@紹介人 投稿日:2001年07月08日(日)12時41分35秒
こちらの小説を「小説紹介スレ@金板」↓に紹介します。
http://www.ah.wakwak.com/cgi/hilight.cgi?dir=gold&thp=994402589&ls=25

546 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月09日(月)03時20分58秒
作者さん、ひとまずお疲れ様でした。
ついに、開幕戦が終わりましたね。
まさか1試合に500レス使うとは思いもしませんでしたよ〜(w
本当に中身の濃い1試合でした!!
リフレッシュ後も頑張って下さいね!!

こんなに素晴らしい大作になるとは・・・
最初の頃、終わらないようにレスしまくった効がありました。(爆)
547 名前:七星 宙城 投稿日:2001年07月09日(月)09時30分34秒
>名無すぃんぐさんは、やけに素敵な名前になりましたね。(w
素敵な名前っすか。最後の“(w”が気になりますが(爆)有り難う御座います。
実は銀板で書いてる人なので、そっちのコテハンに変えさせていただきました。
sageで沈みまくってますが、よかったらど〜ぞ(宣伝)

で、いちーさん。抑えてくれましたね。
一時はど〜なるコトかとも思いましたが、まさにリリーフエース☆

第4章にも期待してマッシュ!
548 名前:エッグベーグル 投稿日:2001年07月09日(月)13時00分18秒
やっと一段落ですね。
ネタをしっかりあっためて、第4章もがんばってください。
(それにしても、各選手の能力、恐ろしく高いな〜)
549 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月09日(月)20時32分44秒
最高だぜ!!!!
最後の2アウトが後藤と吉澤なんて!!!!
最高すぎるぜ作者さん!!!!!!!
550 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月13日(金)22時43分54秒
第4話 明るい未来に… 〜奪三振ショー〜

あんまり好きじゃなかったのよね…
この人のことは…

好きじゃないどころか、何度『殺してやろうかしら』って思ったことか…
あたし達のことを、一番見下して…そしてバカにしてくれたもの…
本当にムカついたわ…

でもさ…
一番最初に、あたし達を認めてくれたのも…
この人だったのよね…

この人の突然の心変わりの理由は、今でもよく分からない…
何か真意があるのか…
それとも…単なる気まぐれだったのか…

この人のことは、なかなか一言では語れない…

しっかりしてると言えば、しっかりしてるし…
いい加減だと言えば、いい加減だ…
非常につかみどころがない…

よくも悪くも影響力のある人で、先頭を切って何かを行うのは大体この人だ…
例えば乱闘とか…
あたしが密かに得意としている変顔なんてのも、この人が先駆者ね…
まぁ… あたしは、ここぞという場面でしかやらないけど…

喜怒哀楽が激しくて、結構近寄り難い…
実のところ… 未だにあたしもちょっとだけ苦手意識はある…

でも…
本当に、この人がきっかけだったの…

この人のおかげであたし達は…
明るい未来に向かって走り続けることが出来た…




551 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月13日(金)22時46分11秒
2本の縫い目に沿って平行に人さし指、中指をかけてボールを握る。

「彩さん…こんなの知ってますか?」

隣に座って、ファッション誌を熱心に読んでいた彩さんに、
ボールを握った右手を差し出した。

「何よ… バカにしてるの?… ただのストレートじゃないの…
 ちょっと邪魔しないでよ!!
 登板前にコンセントレーションを高めてるんだから!!」

すごい剣幕で彩さんに怒られてしまった。

ちょっと彩さん…何時間前だと思ってるんですか?
ちょっとぐらい、いいじゃないですか〜
だいたい、来るのが早すぎるんですよ…
まだ…あたし達2人しか、このロッカールームに来てないんですよ。
急に呼び出されるあたしの身にもなってくださいよ…

「そんなこと言わないで…ちょっと聞いてくださいよ〜
 彩さんのためになるかもしれないですよ。
 確かにストレートって言えばストレートなんですけど、ちょっとおもしろいんですよ」

あたしの話に、相変わらず彩さんは耳を貸そうとしない… 

今シーズンは、やけに神経質だな〜?

でも…いいですよ!!
あたしは、彩さんを一瞬にしてこちら側に引き込む術を心得てますからね!!

「あ〜あ…
 せっかく彩さんのために、とっておきの情報を仕入れてきたのに…
 これツーシーム・ファーストボールって言って、流行ってるんですよ〜」

彩さんの耳が、ピクッと少し動いた。
と思ったら…すごい勢いであたしに食い付いてきた。

「何それっ!!流行ってんのっ!?ねぇ、流行ってんのっ!?」

そんなにがっつかないでくださいよ〜、彩さん…

しかし…呆れるぐらいに効果てきめんですね…
まぁ…いいんですけどね〜
552 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月13日(金)22時47分55秒
「さっき彩さんは、これをただのストレートだって言いましたけど、よく見てくださいよ…
 普通あたし達は、ボールの縫い目と垂直に人さし指と中指をかけるじゃないですか…
 その握り方をフォーシームって言うらしいんですけど、
 これはツーシームっていう握り方で、縫い目に沿って人さし指と中指をかけるんですよ」

彩さんは、さっきとは打って変わって真剣にあたしの話を聞いている。

「フォーシームで投げると、
 きれいなバックスピンがかかってノビのあるボールになるんですけど、
 ツーシームは回転が不規則で回転数も落ちるんで、
 空気抵抗によって沈んだり、左右に揺れたり微妙な変化が起こるんですよ」

「それがどうしたって言うの…?」

先程までの真剣な様子から一転…
彩さんが、おもしろくなさそうに言った。

ありゃ…お気に召さないみたいですね〜

彩さんは、はっきり言って流行りものに弱い…
ただ…何でもかんでも飛びつく訳でもない…
自分にとって必要なものか、必要でないものかはちゃんとチョイスする。
そして、それが必要なものと認めたならば、自分の価値観を変えてまで取り入れたりもする。

何が気に食わないんだ石黒彩…?

「使えると思いませんか?
 バッターの芯を外しやすいから、思い切ってカウントを取りにいきやすいじゃないですか?
 彩さん、苦しい時にカウントが取れるボールが欲しいって言ってたじゃないですか」

そんなあたしの言葉にも、彩さんはもう興味なしといった感じで、
またファッション誌をめくり始めた。

彩さんの持ち球は2つだけ…
MAX147km/hのストレートとスクリューボール…
彩さんらしいと言えば、彩さんらしい…
全く潔い…

でも…調子がいい時の彩さんは、本当にこれだけで充分なんだよね〜
問題は調子が悪い時で、特に低めのスクリューボールを見極められると最悪だ。
ボールが先行して、仕方なく投げたストレートを狙われて痛打を浴びる。

あれば便利だと思うんだけどな〜

その時、ロッカールームに明るく元気のいい声が響いた。

「おはようございま〜すっ!!」
553 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月13日(金)22時49分27秒
>>541
 お待たせしました。
 更新再開です。
>>542
 一瞬、誤字があったのかと思っちゃいました。
 確かに脱・三振ショーはちょっと楽しみかも…
>>543
 すみません…巨人戦はもうちょっとおあずけです。
>>544
 私もちょっと仁志は好きだったりして…
>>545 
 ご紹介ありがとうございました。
 大変な労力だったと思います。
>>546
 私も1試合に500レス使うとは全く思っていませんでした。(w
 最初の頃から支えていただいたようで、ありがとうございました。
>>547
 市井さんについては、私もどうなることかと思ってました。(w
 いろいろ予定と変わった点もあったんで…
>>548
 能力については、ちょっとやり過ぎちゃってるかもしれないです。
 自分としては、ホドホドにしたいと思ってるんですけど…
 まぁ、巨人に対抗する戦力にしないといけない部分もあるんで…
 不愉快に感じたらゴメンなさい。
>>549
 吉澤のプレイについては最初から決めて構成を考えてました。
 後藤は、最初予定になかったんですけど、
 『いちごま』っぽい部分も出しとこうかと思ってやりました。
 市井さんの性格設定と小湊さんの関係で、
 そういう展開には持っていけませんでしたが…

更新を休んでいた間にもたくさんのレスありがとうございました。
本当はもっと休んで、短編でも書こうと思ってたんですが…(w

なにはともあれ更新再開です。
今後ともよろしくお願いします。
554 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月14日(土)00時43分08秒
うわぉ!!
待ってました!!がんばって!!
ところで彩さん、スクリューって
山本(昌)タイプっすか?
もしかして、カムストック・・・?
555 名前:ま〜 投稿日:2001年07月14日(土)01時00分39秒
おお!再開おめでとう!
期待してるよ!!

>>554
カムストック カムストック
スクリューボール投げろよ
カムストック カムストック
星の国のマジシャン
556 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年07月14日(土)09時11分16秒
お・石黒が出てる。
入ってきたのは、苗字に同じ字が入る奴か?
ガンバ!
557 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月14日(土)22時51分55秒
「辻ちゃん、早いね…どうしたの?」

「飯田さんに言われて〜っ…辻は、これから特訓なんですっ…」

辻ちゃんは、ちょっと首をすくめながらあたしの質問にそう答えた。

「辻っ!!ウィ〜ッス!!」

突然、彩さんの気合いの入った声が響いた。

「う…うぃ〜っす…」

一瞬、ビクッと体をすくませながらも辻ちゃんがこれに応える。

「声が小さいっ!!」

「うぃ〜っす、ですっ!!」

彩さんのダメ出しに今度は元気よく応える辻ちゃん…
そして、そんな辻ちゃんを満足げに見つめる彩さん…

スキンシップを深めてるつもりなんでしょうけど…
そんなことやってるから、後輩達に怖がられるんですよ!!

「さっきのボールの情報は、どこから仕入れてきたの?」

しばらくして、彩さんがファッション誌に目は向けながらも、あたしに声をかけてきた。

おっと…結局は興味があるんじゃないですか…

「ドラフト2位で入団してきた末永さん…いるじゃないですか?
 昨日…ちょっと話をする機会があって、その時に教えてもらったんですよ…
 メジャーでは、日本みたいにきれいな回転のストレートはあまり投げないんですって…
 あの人、メジャーリーグ大好きみたいで、いろいろ研究してるんですよ…
 ツーシーム・ファーストボールとか、カット・ファーストボールとか…
 日本でも最近、流行り始めたんですよ〜」
 
「ふ〜ん…
 でも、あたし向きじゃないのよね〜
 要は、『なんとか芯を外れてくれたらいいなぁ』って感じのボールでしょ…
 この石黒彩さんは、マウンドの上で白黒はっきり付けたいわけよ…分かる!?
 そういうわけで、そこんとこヨロシクっ!!」

まぁ…無理に薦めるつもりもないですけどね…
突然、手の平を返したように『覚えたい!!』って言うかもしれないし…
調子よく『あの時のあたしは若かったのよ』とか言っちゃってさ…
まぁ…いいんですけどね〜別に…
558 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月14日(土)22時55分31秒
「あの〜、あめ食べますか〜っ…?」

ユニフォームに着替え終わった辻ちゃんが、あたし達に飴の袋を差し出す。

「おっ!辻は気が利くな〜サンキュー辻っ!!」

『てへへっ』と笑ってますけど、辻ちゃん…ちょっとオドオドしてますよ…

「ねぇ〜辻っ…そっちの袋には何が入ってるの?」

彩さんの視線が、飴の袋を差し出した手と逆の手にぶら下げたコンビニ袋に注がれている。
辻ちゃんは困ったような顔で、袋をちょっと後ろに隠すような素振りを見せた。

「別に取ったりしないからさ…ねぇ〜何が入ってるの?」

中身を見せることに難色を示していた辻ちゃんだったが、
彩さんの言葉に少し安心したのか、袋の中からあるものを取り出した。

「アロエヨーグルトですっ…」

その瞬間…彩さんの目がカッと見開かれた…

「何それっ!!流行ってんの!?ねぇ辻っ、流行ってんの…それっ!?」

知らなかったんですね…彩さん…
アロエヨーグルト…
辻ちゃんが、大好物だってことも…

そして…まさか…まさかですよね…
いや…考えられない…
こんないたいけな少女から…

「ん〜?…流行ってますよっ…」

ダメだって辻ちゃん…そんなこと言っちゃ!!
それに、それは辻ちゃんの中でマイブームになっているだけで、
そんなに流行っちゃいないでしょ!!

彩さんは、アロエヨーグルトを手に取って眺めている。

「ふ〜ん…
 『素肌とカラダのために』って書いてあるじゃないの…
 ねぇ、辻っ…」

イヤな予感がした…
というより…もう分かってた…
この後どうなるかなんて…もう分かってた…

「これ1個ちょうだいよ…」

彩さん…ひょっとしてそれはカツアゲなんじゃないんですか…?
559 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月14日(土)22時58分01秒
「ちょっと、彩さん!!
 いい加減にしてくださいよ!!
 辻ちゃんが可哀想ですよ!!」

「あの〜っ…これ練習が終わった後と、試合が終わった後に1個ずつ食べるんですっ…
 辻の大好物なんですっ…だから〜っ…」

辻ちゃんも泣きそうな顔で、懸命に彩さんに説明する。

「いいじゃないの…1個だけ…1個だけじゃん…」

あたしの非難にも耳を貸さず、ひたすらおねだりを続ける彩さん…

「でも〜っ…」

辻ちゃんは、とうとう俯いて考え込んでしまった。
しばらくして…
辻ちゃんが、意を決したように顔を上げた。

「あの〜っ…これ食べたら…今日いいピッチング出来ますかっ…?」

そう言って、彩さんの顔を真剣な顔で覗き込む。
あたしと彩さんは、思わず顔を見合わせてしまった。

彩さんは、そんな辻に目を細めながらこう答えた。

「おう!!
 これ食べたら今日いいピッチングするよ…バリバリ抑えてみせるから…
 約束する…」

「約束ですよっ」

辻ちゃんと指切りをした後…

「本当に辻は可愛いな〜」

辻ちゃんの頭をなで続ける彩さん。

そう思うんなら、アロエヨーグルトを返してあげてくださいよ…
そんなことやってるからダーティなイメージが付きまとうんですよ!!

その時…頭をなでてもらっていた辻ちゃんから、衝撃的な質問が飛び出した。

「石黒さん達は〜っ…」

『てへへっ』と笑いながら、辻ちゃんはこう問いかけてきた…

「悪いお姉さんなんですかっ?」

あたしと彩さんは、また思わず顔を見合わせてしまった。
560 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月14日(土)23時07分51秒
>>554
 一応、いい時の山本昌イメージです。
 カムストックは実際に見たことないんで…
>>555
 なんかすごい応援歌ですね…
 どんなピッチングしてたんだろ…(w 
>>556
 入ってきたのは辻ちゃんでした。
 レスありがとうございました。
561 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年07月15日(日)09時52分42秒
チーム内でのカツアゲ…
何故か清原が思い浮かんだ(w
週刊誌に出ませんように(w
『辻内野手号泣とか…』
562 名前:276 投稿日:2001年07月15日(日)16時50分30秒
辻は飯田と特訓か。。。
何でも10回繰り返してしんどそうだな。
563 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月15日(日)22時54分25秒
辻ちゃんに悪気は、おそらくないだろう…
いや…ないと思いたい…

でも…先程の彩さんの行いを考えると、はっきり言って自信がなくなる…
あれは…純真な天使を小悪魔に変えてもおかしくない行いだ…

しかし…
もう一つだけ、辻ちゃんがあたし達にこんな質問をする心当たりがある…
ある人物が、あたし達を辻ちゃんから遠ざけようとしているんだ…

「オ〜ッス!!辻、来てるか〜?」

どうやら、その張本人が来たようだ…

「おはようございますっ!!飯田さんっ!!」

その声を聞いた瞬間…
辻ちゃんの顔がパッと明るく輝いた。
100万ドルの笑顔…
あたし達に見せてくれた2ドル50セントの笑顔とは大違いだ。
当たり前か…
だいぶ怯えていた感じだったもんね〜
ロッカールームの入り口付近まで、駆け寄ってのお出迎え…

辻ちゃん…
本当にカオリのことが好きなんだね…

そして…
抱き着く辻ちゃんを半ば引き摺るようにして、あたし達の前に現れた飯田圭織。

「カオリっ!!ウィ〜ッス!!」

「オ〜ッス!!彩っぺ達、早いじゃん…
 って…ちょっと辻っ!!
 離れなさい!!」

カオリが辻ちゃんに睨みを利かせる。
辻ちゃんは、拗ねたような顔でちょっとだけ抵抗してみせたが、
やがて…なごり惜しそうにカオリの体から手を離した。

「着替えたらすぐ行くから…グラウンドで待ってなさい」

カオリの言葉に黙って頷き、ロッカールームを後にした辻ちゃん…

さすがに手懐けられてるわ…
564 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月15日(日)22時57分06秒
「愛されてんじゃん…カオリ〜」

「もう…甘えん坊で泣き虫だから…大変、大変…」

「まんざらでもないクセに!!
 辻、可愛いもんな〜」

「分かる…?
 実はカオリ、『I LOVE 辻希美』だから…
 なんちゃって…」

「バッカじゃないの!!」

二人の笑い声がロッカールームに響いた。
着替えながら、彩さんとそんなやり取りをしているカオリ。

ずいぶんと辻ちゃんにご執心のようですがね…
何て言うか…
ちょっと許せないんだよね…

ふと…カオリとあたしの目が合った。

「最近…悪いことしてない…?」

まただ…
あたしと顔を合わせると、まずこれだ…

「してないって…」

「本当…夜遊びとかしてない…?」

「だから…してません…」

「そっか…カオリ安心…」

そう言ってカオリは満足げに微笑んだ…

いいかげんうんざりだ…

そりゃ…
そういうふうに見られるのも仕方ないんだけどさ…
でも…あたしとしても辛いんだよね…
辻ちゃんみたいな娘にまで、あんなこと言われてさ…
カオリが、辻ちゃんを大切に思ってるのも分かるけどさ…

余計なこと吹き込むことないじゃん…

『あの人達は、悪いお姉さん達だから…辻はあの人達のことマネしちゃダメだよ…』

とか…きっと言ってるんでしょ…
565 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月15日(日)23時00分14秒
カオリは着替えが終わると、満足そうな顔でロッカールームを出ていった。

「なんか不満そうじゃん…」

彩さんが、黙り込んだままのあたしに声をかけてきた。

「なんか…悔しくないですか…?」

「あたしが…?
 い〜や、全然っ!!
 まぁ…あんたの言いたいことも分かるけどね…」

彩さんはアロエヨーグルトのふたを剥がしながら、事も無げにそう言った。

「そりゃ…ああいう事を言われるのも仕方ないとは思うんですよ…
 ブランド物の派手な服を好んで着てたりするし、
 ふらふら遊び歩いてるイメージがあるんでしょうよ…
 でも…そんなことないのに…
 彩さんだって…そうじゃないですか!?
 普段の言動とか振るまいとか…怖そうだからって…
 本当は…
 本当は…いい人なのにっ!!
 絶対に損してますよっ!!」

思わず語気が荒くなった。

「あんたは…下らないことで熱くなってんじゃないの…
 下らないこと気にしてると、また太るわよ…」

彩さんは、憤るあたしを意に介さない様子でアロエヨーグルトを口に運ぶ。

「関係ないじゃないですかっ!!
 ちょっと…真面目に話を聞いてくださいよ!!
 辻ちゃんがあんなこと言うのは、絶対にカオリの仕業ですよ!!
 超ムカツクっ!!
 辻ちゃんにまで勝手にあんなこと吹き込んでっ!!
 大体…カオリにあたし達の何が分かるって言うんですかっ!!」

不満を一気にぶちまけた。

「瞳っ!!!!!」

彩さんが突然、弾かれたようにあたしの名前を叫んだ。
一瞬の沈黙…
うむを言わさぬ彩さんの鋭い視線が、あたしの瞳を捉え続ける…
やがて…彩さんがゆっくりと口を開いた…

「じゃあ…あんたにカオリの何が分かるって言うの…?」
566 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月15日(日)23時09分33秒
>>561
 レスありがとうございました。
 確かに気を付けなければいけませんな…(w
>>562
 ( ´D`)でも…飯田さんといっしょで楽しいれすよ…
567 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月16日(月)00時27分30秒
カムストック、良かったですよ。
衣笠の頭にド〜ンとね(w
記憶してるだけでも2回も(爆
568 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月16日(月)04時59分05秒
メロン斉藤だったとは…。
569 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月16日(月)23時41分30秒
さっきの静かな様子から一転…
彩さんが吠えた…

「あんたにカオリの何が分かるの!?
 カオリの全てを、あんたは正しく理解してるの!?
 自分だって、イメージだけで物を言ってるんじゃないの!?
 自分の作った枠の中だけで判断して、結論づけてるんじゃないの!?」

こうなったら口を挟むことなんて出来やしない…
あたしは無言のまま、彩さんの話に耳を傾けていた。

「人間ってのは…みんなそれぞれ枠を持ってるわけよ…
 その基準は、単純な好き嫌いだったり自分の信じる価値観だったり、
 いろいろあるわけ…
 そして…その枠が物事の一つの判断材料になってるのよ…
 枠の中の範疇については理解しやすいけど、枠の外は理解しにくい…
 でも…それを理解しようと思うんなら、自分の枠を広げてみる必要がある。
 それは、本当に難しいし勇気もいることだけど…
 そこまでしてみて、初めて発見することもあるわけよ…
 瞳っ!!
 あんたは、そこまでしてみてカオリを結論づけてるの!?
 安易な認識は、自分の世界観を狭めるわよ!!」

そこまで一気にまくしたてると、彩さんはあたしの言葉を待った。
でも…彩さんのいつもと違う様子に圧倒されたあたしは、何も言えなかった。
すると彩さんは、今度は落ち着いた様子で話を始めた。
彩さんの目からは、先程までの鋭さが消えていた。

「あんたに初めて会った時、あんたはあたしの作った枠の外にいた…
 これから練習だってのにチャラチャラしてるのが許せなくってさ…
 でも…中身は違うって分かった…
 それは…あたしが枠をちょっと広げてみたからなのよ…
 正しく理解しているかどうかは分からない…
 でも…第一印象なんていう下らないイメージを壊して、
 少しでもあんたの本質に迫るきっかけにはなったと思う…
 あんたもそうだったんじゃないの…
 ねぇ…瞳…」

ふと昔のことを思い出した…

彩さんの言う通りだ…
彩さんに初めて会った時、彩さんはあたしの作った枠の外にいた…
『自分のことは棚に上げて何を言ってるんだ』って納得出来なかった…
でも…知らず知らずの内に、あたしも自分の作った枠を広げてたのかもしれない…
彩さんを、違った目で見ることが出来るようになったもの…

「あ…あの〜っ…ケンカはダメですよっ…」

一瞬ビックリした。
声のした方を振り向いてみると、辻ちゃんが心配そうな顔で立っていた。
570 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月16日(月)23時43分31秒
「辻っ、どうした?」

「グローブ忘れちゃいましたっ…」

『てへへっ』と笑いながら、辻ちゃんは手に持ったグローブを掲げてみせた。

「それより〜、ケンカしてませんでしたか…?」

「してないよ…辻からもらったこれ食べてたもん」

彩さんが、再びアロエヨーグルトを口に運びながら答える。

「本当ですかっ…?大きな声が聞こえましたよっ…ケンカしてるみたいな…」

「本当だって…
 それよりさ〜、辻…
 あたし達ってどんなお姉さんなのかな〜?
 やっぱり悪いお姉さん?」

辻ちゃんは、『ん〜っ?』と唸りながら考え始めた。
首を左右に交互にかしげながら、一生懸命考えている。
そして…結論が出たようだ。

「ん〜、大人のお姉さんですっ…
 ちょっと怖いですけど〜
 セクシ〜なお姉さんですっ…
 悪いお姉さんじゃあないですよっ…」

彩さんが『どうよ?』と言わんばかりの顔で、あたしをちらっと見た。

「飯田さんもいいお姉さんだって言ってましたっ…
 でも、飯田さん変なんですよ〜
 いいお姉さんだって言ったのに〜、マネしちゃダメって言うんですよっ…
 何でですか…?」

「さぁねぇ…カオリの考えてることはよく分からないから…
 カオリにちゃんと聞いてみたら…?
 そうだ…辻っ、これおいしかった!!
 ほら辻っ、ア〜ンして」

大きく開けた辻ちゃんの口に、スプーンでアロエヨーグルトを押し込む彩さん…
そういうの見てると微笑ましいんですけどね…

それにしてもカオリめ…
やっぱり余計なこと吹き込んでんじゃん…
571 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月16日(月)23時45分03秒
「辻っ、今度はあたしに食べさせてよ…」

「いいですよ〜
 あっ…もう少なくなっちゃった…
 まっいっか…もう1個食べちゃお…」

辻ちゃんは、コンビニ袋からアロエヨーグルトを取り出し、ふたを剥がす。

「石黒さ〜ん、ア〜ンしてくださいっ」

「ア〜ン」

「どうですか〜」

「おいちい

辻ちゃんに、さっきまでの怯えた様子はない…
すっかり彩さんとのやり取りを楽しんでいる…

それはいいんだけど…

彩さん…
あなたはいったい何をやっているんですか…?
恥ずかしくないんですか…?

「辻っ、瞳にも食べさせてあげなよ」

ちょ…ちょっと…余計なこと言わないでくださいよ…彩さん!!

「はいっ…斉藤さ〜ん、ア〜ン」

辻ちゃんが、嬉しそうにあたしの目の前にスプーンを差し出す。

うわ〜どうしよう…

目の前のスプーンと辻ちゃんの笑顔を交互に見比べた。

え〜い…やってやろ〜じゃないの!!

ア〜ンと口を開けると、辻ちゃんが待ってましたとばかりにスプーンを突っ込んできた。

「どうですか〜っ」

辻ちゃんが、超期待の眼差しであたしの言葉を待っている…
 
「う…うん…おいしい…」

その瞬間、辻ちゃんの顔に不満の色が浮かんだ。

「辻っ、瞳…なんだかおいしそうじゃないよね〜
 『おいちい』って言ってほしいよね〜
 そういうわけだから…瞳!!そこんとこヨロシクっ!!」

辻ちゃんがコクコクと頷く。

ちょっと、彩さんっ!!!!!
572 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月16日(月)23時47分25秒
>>567
 カッカするタイプだったんですかねカムストックって…
 それとも単にコントロールが悪かったのか…
 ある意味…山本昌より、むしろカムストックかも…(w
>>568
 ごめんなさい…新キャラのもう一人はメロンの斉藤さんでした。
 石黒さんと誰かコンビを組ませたかったんですよ。
 性格設定をして考えてみると、このラインしかないかなって感じだったんで…
 ビジュアル的にも、アリかな〜と思ったんですけどね…(w

レスどうもありがとうございました。
いろんな意味で暴走してますがお許しを…

結構書き溜めたのですが、今回の第4話はちょっとヤバそうですね…
内容的にいろいろ不快な思いをさせるかもしれない部分が、多々あるような気がします。
直せるところは、ちょっとずつ直してるんですけど…
『どうなるんですかー!!』って感じだ…

それから恒例のクイズ企画は、今回お休みにさせてください。
いろいろ思うところがあるので…
ちょっと募集の方法を変えて次回はやりたいと思っておりますが、
もし…『やる必要などない!!ウザイ!!』って方がいらっしゃいましたら、
ご意見をいただけるとありがたいです。
573 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月17日(火)00時11分01秒
再開うれしぃです。頑張って
574 名前:代打名無し娘。(背番号88) 投稿日:2001年07月17日(火)03時49分23秒
選手名鑑とか制作したくなってきたYO!
575 名前:七星 宙城 投稿日:2001年07月17日(火)11時29分15秒
>>574
取りあえず今まで出てきたメンバー表を作ってみたんですが、
レスをけっこー使いそう…
貼ってもいいですかね?>作者さん
576 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月18日(水)01時06分58秒
再び、あたしの目の前にスプーンが差し出された。
スプーンの先には、期待に目を輝かせる辻ちゃん。
そしてその奥には、あたしのことをニヤニヤ見つめる彩さん。

絶対絶命のピンチだ…
ある意味、ノーアウト満塁で巨人のクリーンアップを迎えるようなものだ。

「おい辻〜っ!!
 遅いぞ〜〜〜〜〜っ!!」

ドンドンと外からドアを叩く音。
そしてカオリの怒鳴り声。

神はいた…

「あっ…忘れてた…じゃあ辻、行きますね〜」

辻ちゃんは、ちょっとなごり惜しそうにスプーンを置くと、
慌ててロッカールームを後にした。

「チッ!!面白いものが見れるかもしれなかったのに!!」

舌打ち一つ…
彩さんが悔しそうに呟く。

「もう『助かった〜っ!!』って感じですよ〜
 彩さんは…よく照れもなく出来ますね…
 これもやっぱり…自分の枠を広げて考えてみろってことですか…?」

「まあね…くだらないことだけどさ…
 それにしても、ずいぶん抵抗してたじゃないの?」

「やっぱりちょっと…恥ずかしいですよ…
 結局…自分の価値観から抜け出すことが出来てないってことですか…?」

「あれが恥ずかしいってのは、それはそれであんたの大事な価値観だからね…
 何でも受け入れればいいわけじゃない。
 まず一瞬だけ枠を広げてみるわけよ…
 そして、自分の作った枠が自分にとって本当に正しいか考えてみる…
 枠を広げるべきだと思ったら広げる。
 自分の枠を守るべきだと思ったら拒絶する。
 もし、迷ったならお預けにしておけばいいのよ…
 どんな結果でも、一瞬だけ枠を広げて考えてみる事こそが財産になるわけよ…
 場合によっては、今のあたしみたいにまず受け入れちゃう…
 そして、結果を確認してから判断を下すっていう手もあるけどね…
 ちなみに、さっきのはあたしの中でアリなわけよ…
 辻が、あれだけ楽しそうな顔を見せてくれるならね…」
577 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月18日(水)01時08分42秒
「ちなみに…聞きたいんですけど…
 彩さんは、カオリのことどう理解してるんですか…?」

「ん〜、カオリのこと〜?
 辻にも言ったじゃん。
 よく分からない…
 もう…ほとんどが枠の外…
 いくら理解しようと広げてみても、全然ダメ…
 でも…だからこそ安易に判断しちゃダメだって思ってる…
 あの娘は、気持ちの優しい娘だし、弱い娘じゃないかって思ってるから…
 瞳は、やっぱりカオリのこと納得いかないの?」

「そりゃ…納得いきませんよ…
 でも…彩さんの話は、なんとなく分かりました…
 確かにあたしは、カオリを自分の作ったイメージの枠で判断してましたよ…
 『気持ちの優しい娘』、『弱い娘』っていう彩さんの認識が、
 今のあたしには、どうしても導き出せないですから…
 だけど、その彩さんの理解が本当に正しいのかやっぱり分からないです…
 理解したいと思うし、理解してほしいとも思うんですけどね…
 このままじゃ悔しいから…」

「瞳がそう思うだけでも、カオリに対して少し寛容になったってことじゃない。
 ちょっと枠が広がったってことじゃん。
 いいんじゃないの…?
 とりあえず、それで…
 まぁ、焦ることもないでしょ…
 そのうち、一度本音で話をしてみるのをお勧めするけどね…」

そう言って彩さんは、あたしにウインクをしてみせた。
 
しばらくして…突然、思い出したように彩さんが語り始めた。 
 
「それにしても辻は可愛いかったな〜!!
 ヨーグルト食べさせてる時、なんか餌付けしてるみたいじゃなかった?
 も〜、メッチャクチャ可愛いじゃん!!
 将来…あんな子供ほしいと思わない?」

そう嬉々として語る彩さんを見ていたら、『なるほど』って思った…

きっと…恥ずかしいとかそういうの関係なかったんだ…

枠を広げることで、失うものと得られるものがある…
いずれにせよ…思い切ってやってみなきゃ、何も変わらない…
それって、大事なことかもしれないですね…
578 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月18日(水)01時24分26秒
>>573
 レスありがとうございました。
 今後ともよろしくお願いいたします。
 保田さん視点でずっと読んでいた方、いらっしゃったみたいですね…
 レスも分けたし、一応書き分けたつもりだったのですが…
 書き分けが甘かったようでごめんなさい。
>>574
 そう言っていただけるのは、世界観を楽しんでいただけているようで嬉しいです。
 レスありがとうございました。
>>575
 わざわざありがとうございます。
 貼っていいものかどうか、わたしにも判断しかねます。
 わたしとしては構わないのですが、読んでくださっている方にとってどうかな?
 と思うので…
 話の区切りの時なら、問題ないかなとは思います。
 なんか、せっかく作ってもらっといてちょっと失礼ですね…
 気を悪くされたら申し訳ないです。
 大変感謝はしておりますので…
579 名前:七星 宙城 投稿日:2001年07月18日(水)09時20分27秒
餌付け… って、辻ならフツーに餌付けされそうな気が…

ののちゃん、知らないおぢさんに付いていっちゃダメだよ?

( ´D`)ノ<あ〜い!

…不安だ(w

閑話休題
>気を悪くされたら申し訳ないです。
こちらこそ気を悪くされたらどーしようかと、
レスを付けてから思ったんですが、
感謝していただけたようなので、良かったです。

これからも更新期待してます!
580 名前:エッグベーグル 投稿日:2001年07月18日(水)12時11分04秒
作者様、お久しぶりです。
次はどこのチームと対戦なんでしょうかね。

>>553
気を悪くなどしておりませんが、
なんか今年の巨人みたいな印象を受けましたね。
もっとチームワークというか、
ヤクルトのように選手間の歯車がかみ合えば無敵だと思います、戦力的には。

>>563
>2ドル50セント
笑っちゃいました。
581 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月18日(水)16時15分48秒
辻ちゃんさいこーですな。
582 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月18日(水)23時16分06秒
突然…また目の前にスプーンが現れた。
ニヤニヤあたしの顔を見つめる彩さんの顔がその先にある。

「はい…瞳ちゃ〜ん、ア〜ン」

この人はもう!!
あたしを試そうってんですか!?
いいですよっ!!
受けて立とうじゃないですかっ!!

彩さんの差し出したスプーンをパクッと一口…

「おいちい〜

彩さんが一瞬、目を丸くした…

どうですか!?
やると思ってなかったんでしょ!!
思い切ってやってみりゃ、なんてことないじゃないですか!!
まさか、こんな間近で彩さんの驚く顔が見られるとは…
やってみた甲斐があったってもんですよ!!

「うわ…可愛くねぇ〜っ!!
 辻の足下にも及ばないじゃん!!
 それに…なんか太ってるし!!」

驚きの表情も一瞬、すぐに切り返してきた彩さん。

ちょっと、彩さんっ!!!!!
なんてこと言うんですかっ!!!!!

「関係ないじゃないですかっ!!!!!
 太ってないですよっ!!!!!」

突然、彩さんの手があたしの顎に伸びてきた。
そして…下から顎を掴まれ、頬っぺたをプニプニされた…

「これでも…あんた、そんなこと言うつもり…?」
 
彩さんがキッとあたしを睨む。
あまりにも鋭いその視線に、あたしはもう観念するしかなかった。

「うぅ…ごめんなさい…
 太っちゃいました…」

しまった!!
罠だったのか!?
583 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月18日(水)23時19分38秒
「キャンプの時から気になってたのよね〜
 やっと観念したか!!
 あんた、こんなザマで今シーズン大丈夫なわけ…?
 キレのあるボール投げられるの?
 オープン戦もあんまりよくなかったし…
 しっかり星勘定されてるのに知らないわよ!!
 『去年の成績はまぐれでした…』なんてことになったら、シャレになんないからね〜
 ちょっと考え直したほうがいいんじゃないの?」

そりゃ…あたしだって気になってましたよ…
密かに小湊さんから注意されてたし…

これでも…一応…
走り込みもして、調整してるんですよ…
甘いものも控えてるし…
自分なりに対処はしてます…

こういう指摘を受けるのは、それが彩さんとは言えども、
はっきりいってちょっと面白くない…
正直、『ちゃんと自分で考えてやってますよ!!』って言いたくもなった…

でも…ちょっと枠を広げて冷静に考えてみる…

彩さんが、キャンプ中に気になっていたにも関わらず、今まで黙認していたのは何故か?
そして、今になってこういう指摘をするのは何故か?

まず…彩さんがあたしの考え方を理解してくれていて、
その考え方を尊重してくれていたと考えられるだろう…
そして…それを前提としても今になってこういう指摘をするのは、
あたしの認識があまりにも甘くて、目に余ったということだろう…

つまらない意地を張ってる場合じゃないですね…
正直…開幕に向けて『やばいなぁ』って不安に思ってましたよ。
もう自分の登板日まで時間はないんだけど、気を引き締めてやらなければいけませんね。
今の状態では、ボールのキレやスタミナの面で不安があるもの。
ペナントレースは長い…
最初の登板日に間に合わなくても、やっておかなければ後で絶対に後悔する。

『やっぱり見た目通りで、チャラチャラしてたいしたことない奴だ』とか、
『去年はまぐれか…』なんて絶対に言わせない!!

だから…太っちゃったって認めますよ!!
ええ!!認めますとも!!
でも…絶対にヤセてみせますからね!!
激ヤセ狙いますよ!!
584 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月18日(水)23時23分01秒
「そういうわけで…
 はい、これ…ランニングついでにダッシュで行ってきてよ!!」

決意も新たなあたしに、彩さんが何かを握らせてきた。

…!?

「200円もあれば足りると思うんだけど、足りなかったら立て替えといてよ」

手を広げて中身を確認しているあたしに、彩さんはそう言った。

「えっ!?ちょっと待ってくださいよ!!
 何ですか、これは…?
 ひょっとしてパシリですか!?
 『行ってきて!!』って何処に行けって言うんですか…?」

「何処に行けばいいかなんて、あたしだって分かんないわよ!!
 球場の近くのコンビニにでも行けば、あるんじゃないの!?
 とにかく、その辺は臨機応変に対処してよ!!
 そういうわけだから…瞳!!そこんとこヨロシクっ!!」

クソ〜っ!!
あたし…本当に彩さんにくっついてていいのかな〜

あれ!?
そういえば何を買ってくればいいんだろ…?

「ところで彩さん…何を買ってくるんですか…?」

彩さんは、あたしの質問に目を丸くした。

「何!?あんたそこまで言わなきゃ、何を買ってくればいいか分かんないわけ…?」

えっ!?何だろう…いったい…

首を捻りつつ、いろいろ考えてみた。
そして自分の枠もちょっと広げてみて…ハッと気付くことがあった。

あっ!!
そうか…そういうことなんですね…

それにしても…
確かに他人のことを正しく理解することって、やっぱり簡単じゃないですね…
理解しているつもりの彩さんでも、『えっ…?』て思うことまだあるんだ…

彩さんの言う通り…一回カオリと本音で話をしてみようかな…

「瞳ちゃ〜ん!!何やってんの〜!?
 ダッシュ!!ダッシュ〜っ!!」

ロッカールームを出ようとするあたしの背中に、彩さんの迫力ある声が浴びせられた。
585 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月18日(水)23時39分06秒
>>579
 レスありがとうございます。
 感謝の気持ちが伝わったようでよかったです。
 石黒さんにも簡単に手懐けられてしまう辻さん…
 やはり、ちょっと不安でしょうか…?
>>580
 お久しぶりです。
 密かに更新を再開しておりました。
 貴重なご感想ありがとうございました。
 現状のチームは、まだまだ個人の想いが先走りしてるような感じですね。
 これを最終的にまとめていかなければいけないわけですが…
 まとまるかな…?(w
>>581
 辻さんは3話までで影が薄かったので、いろいろ動かしてみました。
 実は自信のないキャラなので、褒めていただけて嬉しかったです。
 どうもありがとうございました。

第4話の冒頭部分終了。
次回は試合経過の部分。
そしてドロドロと…
586 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月19日(木)23時57分39秒
横浜ベイスターズとの開幕カード第2戦は、彩っぺとバワーズの先発で始まった。

今日こそ三浦さんだと思ってたのに…
3戦目かしら…?
それとも次の中日戦に投げるのかしら…?
もし…そうだとしたら、あたし達も嘗められたもんじゃないの!!

過去3年間いずれも第2戦目に登板し、
チームにシーズン初勝利をもたらしてきた彩っぺは、今シーズン初登板も絶好調。
ストレートとスクリューボールがコーナーに決まり、三者三振の立ち上がり。

そして攻撃陣は、そんな彩っぺのピッチングに応えて初回から結果を出した。

1番の石川が、外角のストレートをレフト前にポコーンと今シーズン初ヒット。
2番の加護は、バントの構えでバワーズを揺さぶってフォアボールを選ぶ。
ノーアウト二塁一塁のチャンス…
3番の後藤が、右中間を破る走者一掃のタイムリーツーベースヒットでまず2点。
4番のカオリ、5番の吉澤が凡退してツーアウトになったが、
昨日から絶好調の6番矢口のタイムリーで、初回にいきなり3点を先制した。

調子のいい時の彩っぺって、本当に頼もしいんだよね…

低めのスクリューボールが面白いように決まって、三振の山を築く。

テンポよく投げる彩っぺのピッチングスタイルは、攻撃陣にもいいリズムを生む。
着々と追加点を奪い、6回を終わって8対0とほぼ勝敗を決めた。

彩っぺには悪いけど…
今日みたいな出来だとリードにそんなに気を遣わなくてもいいから、
バッティングの方に集中出来るのよね…

おかげで先頭打者として回ってきた2回の第1打席には、
レフトスタンドへ今シーズン第1号ホームラン!!
その後の打席でもヒットが出て3安打の猛打賞!!

たまにはこういうのも悪くないわね!!

今日の彩っぺのピッチングは、まさに完璧だった。
立ち上がりから五者連続三振。
2つのフォアボールは出したが、ヒットは許さず6回までに11個の三振。

いつもこの調子なら本当にすごいピッチャーなのに…

周囲がノーヒットノーランを意識しはじめた7回の表…
打席には3番の小川さん…
587 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月19日(木)23時59分23秒
「あの人、意外にパワーあるのね〜
 ねぇ…圭ちゃん」

打球の消えたレフトスタンドを見つめながら、彩っぺが感心したように言った。
まるで他人事のようだ…

「だからミーティングの時に、
 『追い込むまでの懐のボールは、コントロールに気を付けて』って言ったのに〜!!
 意外とパワーあるんだから!!
 ねぇ、彩っぺ…聞いてるの!?」

「打たれたものは、しょうがないじゃないの…
 今日が初めての対戦だったんだし、繰り返さなきゃいいのよ…
 はいはい、テンポよく投げたいんだから戻った…戻った…」

あたしを追い返そうとする彩っぺだが、ここで引き下がってはいられない。
この人は、味方が大量リードするとピッチングが少々いいかげんになる…
放っておくと、どんな事態を招くか分かったもんじゃない!!
せっかくノーヒットノーランも狙えたのに、なんでこうなんだろう!?

「ねぇ彩っぺ…
 出来れば今日は完投してもらいたいんだから、もうちょっと真面目に投げてよ…
 横浜の後、巨人戦が控えてるし…
 明日だって誰が投げるか分かってないんだし、リリーフ陣は休ませたいじゃない…」

話の途中で、『ふわぁ〜っ』と大きなあくびを一つする彩っぺ…

「ちょっとぉ〜〜〜〜っ!!」

「ゴメンゴメン…そう怒んないでよ…圭ちゃん…
 昨日…ちょっと眠れなかったのよ…
 完投でしょ…もちろんじゃないの…分かってるって!!」

本当に分かってるのかしら?

今度は真面目に話を聞くかと思ったら、あたしの話を聞きながらニヤニヤ笑い始めた。

「も〜〜〜〜っ!!何で真面目に話を聞いてくれないのかな〜!?
 もう…いいですっ!!どうぞ…ご勝手に投げてください!!」

「ちょっと…今のは違うのよ!!何でそんなにキレるのよ!!」

「彩っぺとバッテリー組むと、どうでもいいところで疲れるのよ!!
 せっかく今日は楽が出来ると思ったのに〜!!」

「あんた…あたしとバッテリー組む時に、楽をしようだなんて100万年早いわよ!!
 『いいキャッチャーになったな…』ってちょっと感心してたのに!!」

彩っぺの口から、そんな言葉が出るとは思わなかった。

そんなこと…初めて言ってもらった…
あの頃のこと思うと、信じられないよね…

ねぇ、彩っぺ…
588 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月20日(金)11時08分31秒
石黒らしいな・・・
589 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月20日(金)20時51分21秒
孤高のマイペース、まさに彩っぺ
590 名前:回想くん 投稿日:2001年07月20日(金)22時29分53秒
「クッソ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!
 石黒彩、ム〜カ〜ツ〜ク〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」

春期キャンプ地のハワイ…
宿舎であるホテルの一室に、あたしの叫びが響いた。

「矢口は、あの中澤裕子がムカツクよーーーーーっ!!!!!
 エラーすると矢口のことリトルリーグ、リトルリーグってバカにするんだよー!!
 矢口のどこがリトルリーグだって言うのさーーーーーっ!!!!!」

それは仕方ないんじゃないの…?
だってある意味、本当にリトルリーグだもん…

一瞬そう思ったのだが、もちろん口に出すことはない…

ただ、小さな体を目一杯に使って怒りを表現する矢口に無言で相槌を打った。

「あ…あの…そんなに大きな声を出すと…外に聞こえますよ…」

声を発した主に対して、あたしと矢口の視線が集中した。

「ご…ごめんなさい…」

あたし達二人の視線を受けた紗耶香は、オドオドしながらそう謝った。

「紗耶香さ〜、そうやって何でも謝るのよくないと思うんだけど…」

「ごめんなさい…保田さん、矢口さん…自分でも分かってるんですけど…
 つい…謝っちゃうんです…」

「紗耶香さー、矢口達にまで『さん付け』は止めようよー
 そんなんじゃ、一日の内で気の休まる時間がないでしょー」

「そうそう…それにあんた、言った側からまた謝ってたじゃないの…」

「ご…ごめんなさい…これからは気を付けます…保田さん、矢口さん…」

あたしと矢口は、思わず顔を見合わせてしまった。

だめだコリャ…

それにしてもなんでこの娘は、こんなにオドオドしてるのかしら…?
入団テストの時なんか結構、堂々として見えたのに…
でも…無理もないとは思うけどね…
こんな状態が毎日続いているんだもん…
この娘も夢と期待いっぱいで、プロの世界に入ってきただろうに…

あたしは、オドオドする紗耶香を気の毒そうに見つめた。
591 名前:回想くん 投稿日:2001年07月20日(金)22時31分19秒
入団1年目のハワイでの春期キャンプ…

そこには、地獄が待っていた…

1日中プロの厳しい練習で、足腰が立たなくなるまで鍛えられた。
覚悟はしてたし、『望むところだ!!』って意気込みもあった。
でも…プロの練習は、あたし達が思い描いていた以上に厳しいものだった。
そんな体力的に辛いキャンプだったんだけど、地獄はむしろ精神的な方だった。

テストに合格して入団を決めたあたし達3人は、
スカウトされて、練習生扱いで先に始動していたメンバーに受け入れられなかった。

なんか…すでにちょっとした連帯感みたいなものが出来てたのよね…
それは、決して一枚岩ではないんだけど…
むしろ…あたし達を拒絶することで、連帯感を作ってたような感じなんだけど…
とにかく、あたし達のことを喜んで迎えてくれる感じではなかった。

別に陰湿なイジメがあったわけではない。

でも…なんか見下されてるのが分かるんだよね…
『あんた達なんかに、プロがつとまるの』って感じでさ…
全員が全員そういう感じでもないんだけど…

おかしいと思わない…?
同じプロ1年目の選手なのよ…

でも…正直、体力的な部分なんかでは、やっぱり差がついてたのよね…
キャンプ初日から音を上げてしまったあたし達と違って、
きちんと練習をこなせていたもの…
それに…悔しいけど、技術的な面でも差を見せ付けられちゃったし…

あの人達にしてみれば、おもしろくなかったんだと思うのよね…

実績もあって、プロのスカウトからちゃんとした評価を受けた人達だし、
新チーム立ち上げに向けて、必死に練習してきたんだもんね…

それなのに…
どこの馬の骨とも分からないあたし達みたいなのが、実力も劣るのに急に加わってきたら、
そりゃおもしろくないでしょうよ…

それは分からないでもないんだけどさ…

ドンドンドン!!

突然、部屋のドアが激しく叩かれた…
592 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月20日(金)22時38分27秒
>>588
>>589
 レスありがとうございました。
 石黒さんが多少なりとも表現出来ているようでホッとしました。
 よく知らないメンバーなんで探り探りですが…

遂に問題の部分へ…
ある意味、新キャラ…第4話の隠し玉『泣き虫サヤカ』登場(w
593 名前:回想くん 投稿日:2001年07月22日(日)00時35分40秒
「おお〜っビックリしたー!!
 誰だよー、ちゃんとドアベルを鳴らせよー」

ドアに一番近いところにいた矢口が、ビックリして悪態をついた。

まったく矢口の言う通りだが、このドアを叩く人物に一人だけ心当たりがある。
覗き窓を確認すると、思った通りの人物が、焦点の合ってない瞳でこちらを凝視している。

やっぱりだ…

「だ…誰ですか…保田さん…」

だから…『さん付け』はやめろっての…

「同室のカオリだ…」

「飯田さん…?何しに来たのかなー」

「さぁ…?とにかく開けるよ…開けないとドア壊されかねないしさ…」

ガチャリとドアを開けると、当然そこにはカオリが立っていた…
首をちょっと傾けて、一点を凝視したまま…
目の前で手を振ってみるが、カオリは微動だにしない…

おいおい…こんなところで…

「圭ちゃん…飯田さん、どうしたのー?」

「ホラ…前に言ったでしょ…例の交信中…」

「マジー!?
 キャハハハハ
 ホントだー、全然動かない」

「ちょっと…オモチャにしないの…カオリっ!カオリ〜っ!!」

耳元で大声を出されたカオリは、ビクッと体をすくませた。

「何?保田さん…なんかあったの…?」

「何を言ってるのよ…カオリこそなんかあったの?」

『う〜ん…?』と首を傾げるカオリ…

あんた…何しに来たのよ…

「そうそう…裕ちゃんに呼んできてって言われたんだ…」

思わずため息が出た。
矢口と紗耶香もガックリと肩を落とした。
594 名前:回想くん 投稿日:2001年07月22日(日)00時37分10秒
「自分等、練習が終わった後、笑ってたらしいな…?
 どういうつもりや…?」

選手会長の中澤裕子の部屋…
あたし達3人は、中澤裕子の前に立たされていた。
椅子に座って腕を組んだままの中澤裕子は、視線鋭くあたし達を見つめている。
涼しい顔はしているが、ものすごい威圧感がある。

「そりゃ…きっちりこなせてるんなら構わへんで…
 でも…自分等、練習についてくるのが精一杯やんか…?
 そんなんで、練習後に笑ってる余裕なんかあるんか…?
 自分等、なんか勘違いしてるんとちゃうか…?」

中澤裕子は、感情を込めない淡々とした口調で説教を続ける。

まるで『あんた等のことなんか構わへんけどな…』って感じ。
これがまた精神的に応えるのよね…
怒鳴ってもらった方がまだいい…
親身になってもらってる感じがするもの…

「なぁ、矢口…
 お前、ポロポロとエラーしといて笑ってる余裕があるんやな…
 ここはリトルリーグちゃうねんで…
 バッティングも全然振り遅れてるやんか…
 そんなんで…よう笑ってられるな…?」

矢口は唇を噛み締め、ギュッと両方の拳を握り締めて中澤裕子の言葉に耐えている。

「市井…えらいボール投げるって聞いてたけどな…
 いつになったら見せてもらえるんやろな…
 向かっていく気持ちがないと、ピッチャーは勤まらんのとちゃうか…?」

説教が始まった瞬間から俯きかげんだった紗耶香の目からは、
とうとう涙がこぼれだした。

「泣いて済む問題とちゃうんやで…市井…
 保田…
 お前もポロポロとボールを逸らしてるらしいやんか…
 ランニングもいっぱいいっぱいやしな…」

そして…
あたしに対しての小言が始まった途端、口を挟む人物がいた。

「本当…勘弁してほしいのよね〜
 あたし…その娘とバッテリー組みたくないもの…」

ベッドに寝転んで、ファッション誌をめくっていた選手会副会長の石黒彩…

出たなコノヤロー!!
595 名前:回想くん 投稿日:2001年07月22日(日)22時57分27秒
「本当にパスボールばっかりで、お話にならないのよね…
 センスないんじゃないの…?
 あんたみたいなのが、あたしのボールを受けようなんて100万年早いのよ…」

なんて嫌な女なんだろう…

石黒彩の言いたい放題は更に続いた。

「結局…出来ない人間は、いつまでたっても出来ないのよね…
 下手な奴は、いつまでたっても下手…
 泣き虫は、いつまでたっても泣き虫…
 ねぇ、市井…」

急に鉾先を向けられた紗耶香…
なんとか必死で涙を堪えようとしている。
ここまで言われて、この女の目の前でこれ以上の涙を見せることが、
どういうことか分かっているからだ…

確かに何故かは知らないけど、紗耶香は泣き虫だ。
でも…なんとかしようと頑張っているじゃないの…
周囲の人間が、自信がつくように見守ってあげることも必要じゃないの…
明るい未来を信じて努力を続ければ、必ず道は開ける…
あたしはそう思ってる…

だから負けるな紗耶香!!

半ば紗耶香に自分の想いを託すような気持ちで、心の中で紗耶香にエールを送った。

でも…そんなエールも空しく、遂に嗚咽とともに紗耶香の目から大量の涙が溢れだした。
その瞬間…紗耶香に一瞥をくれて鼻で笑う仕種を見せた石黒彩。

もう我慢が出来ない!!
石黒彩!!
あんた何様よ!!

「あの…ちょっといいですか…石黒さん…
 そこまで言うことないんじゃないですか…?
 確かに…今日あたし達が練習後にヘラヘラしてたのは、考え方が甘かったと思います。
 注意されるのも仕方ないと思います。
 でも…そこまで言うことないんじゃないですか…?
 確かに今は実力がないです。
 でも…だから努力してるんじゃないですか。
 矢口だって…市井だって…」

なんとか平静は保ちながら、怒鳴られるのも覚悟でそう言った。
しかし石黒彩は、そんなあたしの精一杯の主張を一言で斬って捨てた。

「バッカじゃないの!?」
596 名前:回想くん 投稿日:2001年07月22日(日)23時01分43秒
「悪いけどあたし、なんでもかんでも『努力!努力!』って考え方が大っキライなのよね…
 努力すれば、なんとかなると思ったら大間違い!!
 決められた運命には絶対に逆らえない!!
 あんた達は、一生『努力!努力!』って言ってな!!」

もう…開いた口がふさがらなかった。

なんだこの女は…?
本当に何様なんだ!!

激しい憤りを覚えたあたしが、石黒彩に食ってかかろうとしたその瞬間…

「ちょっと言いすぎやで…彩っぺ…」

中澤裕子が、石黒彩に待ったをかけた。
静止をかけられた石黒彩は、まだ言い足りない様子ではあったが大人しく口をつぐんだ。

「まぁ…この辺にしとこか…?
 とにかく、よう考えて練習に臨むことやな…
 最終的にプロは結果やねん…
 悔しいと思うんなら…
 結果を出すんやな…」

「まぁ…出せるもんならね…」

最後に石黒彩のイヤミな一言。

「彩っぺ!!」

形ばかりの中澤裕子の叱責に、おどけたように首をすくめてみせる石黒彩。

「じゃあこれで解散や…
 明日の練習に遅れないように早く休むんやで…」

決して心がこもっているとは言えない中澤裕子の言葉。
それでも、こうやってあいさつしなければならない。

「どうもありがとうございました。
 失礼しました」

中澤裕子の部屋を退出した途端、泣き崩れる紗耶香。
そんな紗耶香を慰める矢口。

こんな状態…いつまで続くんだろう…?
597 名前:回想くん 投稿日:2001年07月22日(日)23時04分10秒
「うわー!!吸い込まれそうだよー!!」

「そうね!!嫌なことなんか全部忘れられそうだよね、紗耶香!!」

「うん!!キレイ!!」

夜間練習を終えた後、ホテルから一番近い海岸にあたし達は来ていた。
 
満天の星空の下…
あたし達は、それぞれの描く明るい未来に想いを馳せる。

「矢口はさー、絶対に中澤裕子からポジション奪ってみせるから…
 そしたらさー、走りまくって盗塁王とって、3割も打って、
 ゴールデングラブもとって、オールスターにも出て…それから…えーっと…」

「あんた欲張りすぎじゃないの?
 まぁ、あたしはまず華麗にレギュラーを奪うわよ!!
 クレバーなリードと堅実なインサイドワークで、
 球界No.1キャッチャーなんて呼ばれちゃうわよ!!
 そして引退した後は、野球評論家を経て監督に就任するってところかしら!!」

「えーっ!!圭ちゃんの方が欲張ってるじゃんかよー!!
 絶対に無理だよー!!」

「あんた失礼ね〜!!
 夢は大きく持たなくちゃ張り合いがないじゃないの!!」

「何それ!!圭ちゃん、言ってることが矛盾してるじゃん!!」

矢口とそんなやりとりをしている間も、紗耶香は目を輝かせながらただ…星を眺めていた。
説教が終わった後、紗耶香は『悔しい…悔しい…』ってずっと泣きっぱなしだった。
夕食も取らず、自主参加の夜間練習にも姿を見せず…ずっと部屋で泣いていた。
なんとか元気づけるために連れてきたんだけど…

オドオドしてるあんたより、そういうほうがずっといい…
目をキラキラ輝かせているあんたのほうがね…

「ねぇ…紗耶香はどうなの…?
 あんたの未来を語りなさいよ!!」

日頃…あまり自分のことを語らない紗耶香…
でも、今なら自分のことを語ってくれそうな気がした。

期待を込めて、紗耶香が口を開くのを待った。

「あたし…あのお星様になりたいっ!!」

紗耶香は、満天の星空を指差しながら、今まで見せたことのない笑顔でそう言い切った。

ん〜!!
なんですと〜!?
598 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月23日(月)01時04分18秒
ああ・・・おもしろひ(涙
彩っぺのあの言葉に隠された真意はっ!?
それとも、言葉のままなのかっ!?
続きが気になる!!
599 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月23日(月)02時58分57秒
泣き虫サヤカの星になりたい発言にやられました。(w
600 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月23日(月)17時18分19秒
市井の性格が違いすぎる。これがあれになるのか・・・。

600の大台っすね。リクエスト権は・・・・あるわけないか(w
個人的には矢口と中澤が仲良くなるきっかけが知りたいけどね。
601 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月23日(月)18時38分18秒
市井の性格急変!
守護霊変換!?(w
602 名前:回想くん 投稿日:2001年07月26日(木)00時09分57秒
紗耶香の口から出た言葉だから、まだ許せる…

今日あれだけ泣きじゃくっていた紗耶香に、きついツッコミなどいれられるハズがない。

でも…他の人間が、こんな可愛らしいこと言おうものならただじゃおかない!!
首根っこ掴んで『ふざけんじゃないわよ!!』ってツッコミいれるだろう。

そして、考えるのも恐ろしいんだけど…
あの石黒彩の口からこんな言葉が出てきたらどうだろう?
もう自分で自分を抑えることが出来ないかもしれない…
刺し違えるのを覚悟で向かっていくかも…

まぁ、とにかく紗耶香の発言にはどう対応していいのか困ったわね。

隣の矢口も、紗耶香の発言にどう反応していいのか分からない様子だ。

「そ…そっかー、な…なれるといいねー、紗耶香…」

とりあえずツッコミきれずに、らしくない言葉で返している。

「うん!!」

紗耶香は、悪びれる様子もなく相変わらずの笑顔だ。

しかし…
『生きているのが辛いからいっそのこと…』なんて意味じゃないでしょうね?
まぁ…あれだけの笑顔で言ってるんだから、それは考えられないだろうけど…

『あのお星様になりたいっ!!』か…

可愛らしいこと言うじゃないの…

でも…
なんとなく分かる気がするのよね…
あの星みたいになれるといいね…紗耶香…
603 名前:回想くん 投稿日:2001年07月26日(木)00時13分47秒
その後、3人で海を見ながら語り合った。

「でも…いつまでこんな状態が続くのかなー」

「そんなこと分かんないわよ…
 でも…絶対に認めさせてみせるわよ!!
 あんた達、弱気になってんじゃないでしょうね!!」

「まさか!!
 矢口は、絶対に中澤裕子を見返してやるんだ!!」

あたしと矢口の視線が、紗耶香に注がれた。

「あたしも…絶対に…このまま終わりたくない…」

紗耶香は、途切れ途切れではあったが自分の意思をハッキリ示してくれた。
あたしは心底ホッとした。
この3人の内、誰かが脱落していくなんて考えたくなかった。

そうだ!!
あたし達の戦いはまだ始まったばかりなんだ!!
辛いのなんて最初だけ…
明るい未来は、きっとやって来る!!
信じて努力を続けていれば…

どうしようもなく脳天気かもしれないとはちょっと思うけどね…

「あのさー、この3人が主力になってさ…絶対に優勝しよう!!
 矢口が俊足好打、鉄壁のサードでさ…
 圭ちゃんが球界No.1のキャッチャー?
 それでエースの紗耶香が、最後のマウンドに立ってるの…
 優勝が決まった瞬間…
 圭ちゃんが紗耶香に飛びついて、矢口もそれに加わるんだ。
 どうかなー、いいカンジじゃない?」

突然の矢口の提案。

でも…考えるまでもないよね…

「いいじゃないの、それ!!ねぇ、紗耶香!!」

「うん!!」

3人で手を取り合い、未来を誓い合った。

必ず…いつか…
この3人で…
604 名前:回想くん 投稿日:2001年07月26日(木)00時16分43秒
「矢口は、そろそろ部屋に戻ろうかなー?もう門限も近付いてるしさー」

矢口が、携帯を確認しながらそう言った。

「そっか…もうそんな時間なのか…
 じゃあ、最後に腹の中に溜めてることを思いっきり吐き出してから解散にしようよ。
 悔しさを明日に持ち越さないようにさ…
 練習だけは、意地でも明るく元気にこなしてやろうよ。
 あたし達に、下向いてる時間なんて必要ないんだからさ」

「で…でも…こんなところで大きな声を出したら誰かに聞こえるんじゃないかな…?」

紗耶香が、辺りを見回しながら不安そうに言った。

「何をビクビクしてんのよ?
 聞こえたって別に構わないわよ!!
 要は気合いなのよ!!
 紗耶香は、もうちょっと強気でいかないとダメよ!!
 『何見てるんだよ!!何か文句あんのか!!』ぐらいの気持ちでいかないとダメなのよ!!
 少しずつでいいから変える努力していかないと…」

「そうだよ紗耶香ー、ちょっとずつでいいから変えていこうよー
 それじゃー、矢口からやろうかなー」

矢口は、息を大きく吸い込む仕種をするとそれを吐き出すように海に向かって叫んだ。

「中澤裕子のアホーーーーーっ!!絶対にポジション奪ってやるぞーーーーーっ!!」

よ〜し、あたしもいくわよ〜!!

「石黒彩のバカヤロ〜〜〜〜〜っ!!
 絶対に見返してやるから覚えておきなさいよ〜〜〜〜〜っ!!」

スッキリしたわね〜、これでイヤなことは忘れて明日からまた頑張れるってもんね…
我ながら単純だとは思うけど…

「はい、次は紗耶香の番」

紗耶香は、しばらく考えこんでいた。
そして、意を決した紗耶香は精一杯声を振り絞ってこう叫んだ。

「絶対に…絶対にビッグになってやるんだからーーーーーーーーーーーっ!!!!!」

耳をつんざくかのような大声が辺りに響いた。
思わぬ紗耶香の勢いに、あたしと矢口は完全に気押された。
叫び終わった後、『えへへっ』と照れ笑いを浮かべる紗耶香。

ちょっとだけ紗耶香が分からなくなった…
ひょっとしたら…とんだ食わせ者かもしれない…

「あんたとは、一度じっくりと話をしてみたいわね、紗耶香…」

紗耶香はあたし達の驚いた様子を気にして、恥ずかしそうに首をすくめた。
605 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月26日(木)00時19分14秒
>>598
 一人でも『おもしろひ』と言っていただける方がいて、とても嬉しいです。
 今回の話は、だいぶ自己満足作品ですからねぇ…
 問題の点については、
 ちゃんと読者のみなさんに見えてくるように頑張って書きたいと思います。
 最上級のお言葉本当にありがとうございました。
>>599
 正直言って、インパクトを狙いました。確信犯です。(w

 \(^▽^)/チャーミーあのお星様になりたぁい!!

 ヽ^∀^ノだはははははっ!!市井もなりたいっ!!

 ( `.∀´)あんた達…殺すわよ…

>>600
 『600レスの読者。!』GETおめでとうございました。(w
 リクエストは、矢口と中澤が仲良くなるきっかけということでよろしいでしょうか?

 自分の悪いところは、悪乗りが過ぎることだと最近シミジミ思ったりもする。
>>601
 『泣き虫サヤカ』はたくさんの波紋を呼んだようで…(w
 ベースというか内面は変わらずに、
 自信を持って表現出来るか出来ないかというのが本当のところだとは思うんですが…
 『これ』も『あれ』も究極に悪乗りし過ぎたもんだから…(w

レスありがとうございました。
ちょっと更新が滞っていますが、FFをプレイしているからではありません。
次回更新で出す部分が迂闊に出せない部分なので、
回想部分を一気に仕上げてから出そうと奮闘中なのです。
書いていくとどんどん手直しがあるので…
そういう訳で、次回更新は回想部分が書き終わった時になると思います。
読んでくださっている方には申し訳ないですが、ご理解いただけるようお願いいたします。
そのかわり、書いた部分は一気に放出しますからね。
606 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月26日(木)00時21分33秒
『告知』

読者参加企画!!
クイズ『700レスの娘。!』

700レス目の1番最初に登場するハロプロメンバー(コーチも含む)を予想してください。
正解者には、ネタのリクエスト権利を差し上げたいと思います。
尚、リクエストいただいたネタについては早急に対処したいとは思うのですが、
事情により少しお時間をいただく場合があることをご了承ください。
それと、ネタによっては今後の展開上の理由により、
リクエストの変更をお願いする可能性があるのもご了承ください。
700レス目が感想レスだったり、選手の描写のないレスだった場合には、
701レス目を『700レスの娘。!』の対象としたいと思います。
お申し込みは、1人1選手とさせていただきます。
尚、同じ選手への申し込みは3名様までとさせていただきます。

申し込みの締め切りは650レスまでです。

以上、よろしかったらご参加ください。
607 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月26日(木)02時15分56秒
あっ、クイズだ!!やった〜っ!
しかし100近く先の・・・
むずいな。旧メンぽいけど・・・
よしっ!いちーちゃんで勝負っ!!
608 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月26日(木)03時00分16秒
今回もクイズに参加できてうれしいです。
予想はずばり保田圭でお願いします。
何気に市井とのからみででてきそう。
609 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年07月26日(木)09時05分57秒
今回も参加できるとは嬉しいな
今度こそ保田で行こうと思ったら取られてる(w
なので石川で
610 名前:名無し祭 投稿日:2001年07月26日(木)10時20分46秒
今回も明日香で。新人3人と絡みも多そうだしね。
611 名前:600 投稿日:2001年07月26日(木)16時51分52秒
>>605
はい、よろしいです(w
700レスは石黒でお願いします。今回やたら早いですね。
612 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月26日(木)22時59分58秒
あいも変わらず飯田さんでいきます
613 名前:276 投稿日:2001年07月27日(金)00時11分01秒
初心に帰って福田でお願いします。
614 名前:名無し初参加 投稿日:2001年07月27日(金)00時35分01秒
保田は会話に“!”がたくさん入るので好きです(w
というわけで保田でお願いします。
615 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月27日(金)03時15分59秒
いつもどうりですが、泣き虫サヤカでお願いしますぞ!!
616 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月27日(金)18時22分38秒
いつもどうりですが、後藤で
617 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月27日(金)21時35分54秒
初心に返って「なっち」で・・・
リクはなちごまで…
618 名前:naka 投稿日:2001年07月28日(土)00時02分45秒
じゃ、まだでてないやぐちで勝負
619 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月28日(土)02時31分14秒
中澤ねーさんにしとこう。
620 名前:名無し娘 投稿日:2001年07月28日(土)13時44分39秒
意外なところであいぼんを
621 名前:回想くん 投稿日:2001年07月29日(日)01時22分46秒
「なぁ、彩っぺ…」

豹柄のバスローブに身を包んで、自由時間をゆったりと自室でくつろいでいたあたしは、
ベッドの上で巨乳になるための体操に精を出す彩っぺに声をかけた。

「何〜、裕ちゃん?」

体操を一時中断した彩っぺから返事が返ってきた。

「夕方のことやけどな…」

「夕方のこと…?」

何のことか分からないといった感じの彩っぺ。

「ほら保田とか市井の…」

「あ〜、説教のこと…何よ…突然…」

「あれは言い過ぎとちゃうんかな?」

「あれって何よ…?」

彩っぺにとっては、何でもない一言だったんやろか?
それとも、バツが悪くてとぼけてるんやろか?

出来れば後者であってほしいと思いつつ、あたしは話を続けた。

「努力しても無駄みたいなこと言うてたやんか…
 あれはどういうつもりや…本気で言うてたんか?」

「本気だったとしたら…どうだって言うの…?」

彩っぺが、それがどうしたとばかりに逆にあたしに問いかけてきた。
あたしは、彩っぺの真意を読みきれずにしばらく沈黙を守った。
 
「本気だよ…」

そう言った後、彩っぺが苦笑をもらした。
あたしの凍り付いたような表情が、可笑しかったのやろか…?
622 名前:回想くん 投稿日:2001年07月29日(日)01時24分37秒
彩っぺの言葉は、正直ショックやった。
まさか、本気でああいう発言をしたとは思っていなかったからや。
いや…正確に言えば思いたくなかったのかもしれへん…
胸の中で芽生えたちょっとした罪悪感がさらに生長して、あたしの精神を圧迫した。

3人を部屋から退出させた後、いろいろ考えていた。
彩っぺの今日の発言がその引き金だった。
今まで目を背けていた問題について真剣に思考を巡らせた。

あたしを押しつぶそうとするもの…
それを一つでも無くしておきたかったからや…

だから…彩っぺの本心を確認したかったんやな…

そして…その結果が最悪であっても、あたしは諦めきれへんかった。
アホやな…
彩っぺだけフォローすれば済む問題やないのに…
よほど追い詰められてるんやな…

「あたしは…そうは思わへん…
 なんぼなんでもそれは言い過ぎや…
 あたしだって彩っぺだって、今まで努力してきたからここにおるんやないか…?」

とりあえず、自分の考えを彩っぺにぶつけてみた。

「全ての努力を否定してるわけじゃないわよ。
 だったら、こんな体操してないし…
 まぁ、こんなのは気休め程度にやってるんだけどね…
 ただ…ムダな努力ってあるでしょ?
 才能もないのに努力してもムダなのよ」

彩っぺは、淡々とそう切り返してきた。

「あの3人には才能がないって決めつけるんか?」

「ないわね…
 それより…どうしたの裕ちゃん…?
 今日はやけにあの3人の肩を持つじゃないの…
 なんかあったの…?」

彩っぺは、心配そうな顔であたしを見つめてた。
623 名前:回想くん 投稿日:2001年07月29日(日)01時26分08秒
「あたしらしくないと思ったやろ…?
 最近、ちょっと弱気になってるのかもしれへんな…
 もうすぐ一次キャンプも打ち上げやろ。
 オープン戦も始まるし、きっとペナントレースまでアッという間やろな…
 日を増すごとに不安が倍増してくるわ…
 『ホンマに自分がプロで通用するのか?』ってな…
 ウチ等、上の方からすごいプレッシャーかけられてきたやんか…
 『強いチームじゃないと客が入らないからとにかく勝て!!』とか、
 『3年で優勝争いが出来るチームになれ!!』なんてな…
 えらい金掛けてボールパークみたいなキレイな球場も建ててるし…
 あたしは、これが最後のチャンスやと思ってる。
 あんまり言いたくないけど年齢も年齢やし、プロ入りを決心するまで時間がかかった。
 でも決めたからには、燃え尽きるまでプレイしたいんや。
 そのためには、1年目から結果を残さないとアカン…
 いや…あたしの場合、結果を出した後も1年1年が勝負になるやろな…
 それが分かってるから、正直焦ってるんや…
 不安で不安で仕方ないんや…」

自分の胸にあった不安を一気に彩っぺにぶちまけた。

「ちょっとビックリしたよ…
 でも…誰だって弱気になることってあるからね…
 自分の信じた道に不安を感じることも…」

彩っぺは、あたしの弱気な発言にとまどったのかポツリポツリとそう語った。

「でもさ…それがあの3人の肩を持つのと、どう関係があるの裕ちゃん?」

一転、顔を強張らせてあたしを見据えながら、彩っぺはそう問いかけてきた。

「そうやな…もう少し話を聞いてくれるか…?
 もう一つあたしを悩ませていることがあるんや…
 それがあの3人のことやねん…」

彩っぺの表情が、さらに強張った。
624 名前:回想くん 投稿日:2001年07月29日(日)01時27分08秒
「まず先に言っておくけど、別にあの3人の肩を持ってるわけやないで…
 あたし個人は、あの3人に興味の欠片もあらへん。
 ただな…今の状況に対してちょっと罪悪感があるんや… 
 あの3人のこと、最初は面白くなかったやろ?
 ウチ等が、今までいらんプレッシャーかけられながら必死で練習してきたのに、
 『お前等、今頃なんやねん!!』って感じやったもんな…
 どんな連中かと思えば、ろくに練習に付いてこれへんしな…
 だから…あの3人には辛く当たったよな…?
 思えば…単にストレスのはけ口にしてたような気がするわ…
 さっき話したような不安を紛らすためのな…
 あの3人にとっては、いい迷惑やろな…
 あの娘達だって同じような不安抱えてるはずなのにな…」

そこまで話すと、あたしは『ふーっ…』と一息ついた。
目線を落とし、自分の手をジッと見つめた。

「あたしは、団体行動とか本来は苦手やねん。
 正直、選手会長なんて役割もちょっと辛いねん。
 だから、特にみんなをまとめようとか実は思ってへんのや…
 でもな…よくも悪くもウチ等はやっぱり影響力があるんやろな…
 もちろん、みんなが同じ不安や不満を抱えてたからだとは思うけど、
 ウチ等のそういう態度が、他のみんなにまで広まったのがちょっと心苦しいんや…
 だから…今日の彩っぺの一言が、えらく気になってな…」

今まで誰にも打ち明けることのなかった自分の弱さ…
全部…ぶちまけてしまった…
また…あたしらしくないってビックリされたかもしれへんな…

「なるほど…それで裕ちゃんらしくもなく、あたしにつっかかってきたんだ…
 いつも適度に距離を置いた付き合い方するクセにね…
 裕ちゃんのそういう付き合い方って、あたし好きだったんだけどね…
 それにしても…裕ちゃんが、こんなに弱い人間だったなんて知らなかったよ…」

ガッカリしたような言葉とは裏腹に、彩っぺは優しい目をあたしに向けた。

「そうか…
 ゴメンな…
 ガッカリさせたかもしれへんな…
 もしかしたらな…
 弱い自分を見せたくないから、適度に距離を置いた付き合い方をするのかもしれへんな…」

「なるほど…そうかもね…」

彩っぺは、そんなあたしの言葉を受けて自嘲気味に笑った。

なんや…気になる笑い方やな…?
625 名前:回想くん 投稿日:2001年07月29日(日)01時30分01秒
彩っぺの顔から笑いが消えた。
そして、あたしの目を見つめながら、ゆっくりと口を開いた。

「そうか…裕ちゃんは、実はあの3人をそういう目で見ていたんだ…
 でもね…
 裕ちゃんには悪いけど、あたしはあの3人が心の底から大っ嫌いなのよね。
 別に裕ちゃんの影響を受けたとか、同じようにストレスのはけ口にしてたとか、
 そんなんじゃないから…
 目障りなの!!
 ムカツクの!!
 あたしの周りでチョロチョロしないでほしいのよ!!」

落ち着いた様子だったのは最初だけ…
彩っぺの想いが一気に爆発した。
正直…彩っぺのただならぬ様子にビックリした。
そこまであの3人に特別な意識を持ってるとは思わなかったし、その理由も分からなかった。

まぁ…当たり前やな…
今まで、そういうの見ないように…関わらないようにしてきたからな…

「何でや…?」

静かな口調でただ一言…
彩っぺにそう問いかけてみた。

あの3人のためではない。
さっきも彩っぺに語ったように、ちょっとした罪悪感はあってもそれ以上の興味はない。
ただ…
彩っぺのただならぬ様子が、さっきの自嘲気味な笑い方が気にかかったからだ。
おかしいよな…
他人のことなんて、気にかけるような人間じゃなかったのに…
自分でもビックリやわ…

あたしの問いかけに対して彩っぺは、しばし沈黙を守り続けた。
ただ無言であたしの目を見つめていた。

「嫌い…だから…」

長い時間を置いた後、ポツリと出た一言…

何やそれ…!?
説得力のカケラもあらへん…

何や…理由もロクにあらへんのか…?
それなのに…何であの連中を頑なに拒むんや…?

彩っぺに対する疑問が、あたしの心を捉えて離さなかった。
626 名前:回想くん 投稿日:2001年07月29日(日)01時31分55秒
「あのな〜彩っぺ、『嫌いだから…』って言うのもおかしいやろ?
 何で嫌いなのか聞いてるっちゅうのに…」

彩っぺの神経を逆撫でしないように注意しながら、尋ねてみた。
その言葉に、凍り付いたような表情だった彩っぺが不自然な苦笑をもらした。

「ホントだね…
 じゃあ…何が嫌いなのか教えてあげるよ…
 あの矢口ってのは、練習中でもヘラヘラ調子よく笑ってるのがムカツクっ!!
 市井は、オドオドしてるあの姿を見るとイライラするっ!!
 そして、努力すれば何でも手に入れられると思ってる保田は、一番目障りよっ!!
 努力したって持って生まれた運命なんて変えられないっ!!
 なのに、必死にすがりつこうとするあいつ等は許せないっ!!」

視線鋭く彩っぺが吠えた。

「そうか…分かった…
 最後に一つだけ聞いてもええか…?」

彩っぺを説き伏せようとは思わなかった。

自分の弱さを見つめ直したことで、新しい発見があった。
彩っぺのことが気にかかってしょうがない。
これは…自分の中に芽生えた新たな価値観かもしれない…
でも…
もう一歩突っ込んで、彩っぺの内面を探る勇気はまだ持てなかった。
新たな価値観に対するとまどいと怖さが、まだあったからだ。

でも…放っておくわけにはいかへん…

そんな想いから出た質問かもしれない…

「もし…彩っぺが、運命に見放されていたとしたらどうするんや…?
 努力しても叶わない運命の下に生まれていたとしたら…?」

これは意地悪な質問だったかもしれない…
でも…彩っぺは即座にこう答えた。

「そんなことは絶対にないっ!!
 裕ちゃん…弱気は最大の敵だよ…
 どんな時でも強気に自分を信じて進めばいいんだよ…」
627 名前:回想くん 投稿日:2001年07月29日(日)01時33分10秒
彩っぺの答えは、あたしの質問の内容から少し外れたものだった。

そして…彩っぺ…
たぶん、あの3人も同じことを言うやろな…
あの3人だけやない…
自分の未来に見切りをつけてる人間なんて寂しすぎるやろ…?

彩っぺの考え方は、傲慢だと思われても仕方ない…
問題のある考え方だが、それも一つのスタイルやから彩っぺを非難するつもりはなかった。
誤解を招く表現かもしれへんけど、強い女だと思った。
今までずっと、そんな彩っぺを頼りにしてきたのかもしれへん…
あたしは、弱い女やから…

「強いんやな…彩っぺは…」

思わず出た一言…
計算なんてしてへん…
ホンマに何気なく出た一言やった…
でも…
また、彩っぺが自嘲気味に笑った。

「どうだろうね…
 裕ちゃん…あたしはね…負けられないんだよ…
 本当に…もう…
 みっちゃんとの開幕投手争いにも絶対に負けない!!
 そして…ずっと勝ち続ける!!
 だから…裕ちゃんも弱気にならずに頑張ってよ…
 大丈夫だよ…
 裕ちゃんには力があるから…」

気になる笑いを残して、彩っぺはそう語った。
2度にわたる気になる笑い…
あたしはその笑いに、今まで植え付けていたイメージとは対極にあるものを見た気がした。
628 名前:回想くん 投稿日:2001年07月29日(日)01時34分28秒
「そうか…
 ありがとうな…彩っぺ…
 ホンマにゴメンな…弱気なところ見せて…
 でもな…弱い自分を認めることで、新しく発見出来たこともあったんやで…
 まだ少し…それを素直に認める勇気がないんやけどな…
 自分の守ってきた価値観が壊れるのが、怖いのかもしれへん…
 でも…怖くて当たり前やな…
 怖いから、今まで壁を作って守ってきたんやもんな…
 まだ…もう少し自分を見つめ直す時間がほしい感じやな…
 なんや、訳の分からない話をしたかもしれへんけど…
 最後に言いたいのはこれだけや…
 弱い自分をさらけ出すことは、悪いことやないと思う…
 『そんなことない!!』って言うかもしれへんけど…
 もし…彩っぺが辛くてどうしようもなくなったら、その時には相談に乗るからな…」

「なんか…やっぱり裕ちゃんらしくないね…
 でも…ありがとう…
 心配してくれてるんだね…
 だけど…大丈夫だよ…
 あたしは大丈夫だから…」

彩っぺは最後にそう語ると、ベッドの上に大の字に寝転がった。
そして、一息つくと…

「あ〜あ…それにしてもどうしたら巨乳になれるのかしら…
 ねぇ、裕ちゃん…?」

突然、そんなことをあたしに聞いてきた。

「何や突然…!?
 そんなの知らんわ…
 あたしに聞くな!!
 ケンカ売っとんのかいな!?」

悪態をつきながら、ジロッと睨みを利かせた。
あたしのそんな様子を見て、豪快に笑いだす彩っぺ…

あたしには、そんな彩っぺの姿がさっきにも増して弱々しく感じた。
629 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年07月29日(日)01時52分17秒
『700レスの娘。!』に参加していただいた皆様、ありがとうございました。
今回は、申し込み期間を長く取りたかったのでこういう形にしました。
正解するのは、ちょっと難しくなったかもしれませんね。

回想部分を仕上げてからの更新にしようと思ってましたが、
仕上がる前に更新しちゃいました。
まぁ、なんとかなるかなって感じになったので…
クライマックス部分には入ってるし…
次回更新は
(〜^◇^〜)VS( ` ・ゝ´)です。
630 名前:回想くん 投稿日:2001年07月29日(日)22時28分23秒
ビュッビュッと空気を切る音が微かに部屋に響く。
気を入れて何度も何度もバットを振る。

海岸から自室に戻ってくるや否や、あたしは素振りを始めた。
3人で誓い合った未来を現実のものとするために…
自分に実力が足りないのは、よく分かっていた。
だから、努力して実力を身に付けなければいけない。
もう、居ても立ってもいられなかった。

今この部屋には、あたししかいない。
同部屋の紗耶香が、圭ちゃんと海岸に残って話を続けているからだ。

でも、矢口にとってそれは好都合なんだよねー
矢口、『努力してます』って姿を必要以上に他人に見せるの嫌なんだよねー
なんか計算ずくのアピールしてるみたいでさー

そんなことを思いつつも、バットを振り続ける。
中澤裕子のスイングをイメージしながら…

悔しいけど、中澤裕子のバッティングはすごいと思う。
パワーはないんだけど、どんなボールも確実にミートしてヒットコースへ運ぶ。
矢口が言うのもなんだけど、中澤裕子の守備はさほどうまくないと思う。
足も遅い。
でも…あの勝負強くて確実性のあるバッティングには頭が下がる。
あまりパワーのない矢口にとっては、あれは理想のスタイルかもしれない…
ちょっとしゃくにさわるけど、矢口はあのバッティングを物にするんだ。

突然、ドアベルが鳴った。

「はいは〜い」

てっきり紗耶香が戻ってきたのかと思ったあたしは、
軽く返事をすると覗き窓を確認することなくドアを開けた。

ぎょぎょっ!!

そこに立っていた思いがけない人物に驚いて思わずドアを閉めた。

おお〜っビックリしたー!!
何でいるんだよー!?
何しにきたんだろ?
やばいよー!!
今、この部屋には矢口しかいないのにさー

「ちょっと!!何閉めてんのよっ!!開けなさいよっ!!」

声の主である石黒彩がドアを叩きながら叫ぶ。

うおー開けたくないよー!!

そうは言っても、こんなところで籠城し続けるわけにもいかない。
観念してドアを開けると、石黒彩がものすごいガンを飛ばして立っていた。

怖ーっ!!
絶対この人、元ヤンだ!!
631 名前:回想くん 投稿日:2001年07月29日(日)22時30分02秒
部屋に入ってきた石黒彩が部屋の中をジローッと見回す。

「あんたしかいないの?」

「は…はいっ」

「市井は何処に行ったのよ?」

「や…保田さんと…ちょっと外へ出てます」

クソーっ、声裏返っちゃってるよー
矢口、情けないぐらいビビっちゃってるしさー

「保田と一緒なの…?
 それは手間が省けていいわね…
 それより、さっきから気になってたんだけどさ…
 そのバット何なのよ?」

へ…!?

石黒彩が、あたしの右手を指差している。

しまった!!矢口、バットを持ったままだった。
どうしよう…
『素振りしてました』なんてこの人に言いたくないなー

「あんた、これで不意討ちでもしようとしてたんじゃないでしょうね?
 1回ドア閉めた時に取りにいったんじゃないの?」

石黒彩が、真顔であたしに問い詰める。

「そ…そんなことないですよ…
 あ…あの…矢口、バットを抱いて寝るクセがあるんですよ…
 キャハハハハ…」

自分でもしょーもない言い訳をしてるとは思いつつ、
緊張した空気を和らげるべく笑ってみせた。

「アハハハハハハッ…」
 
突然、石黒彩が豪快に笑いだした。 

よかった…

そう思ったのも束の間…
『バーン!!』と思いっきり壁を叩く音がした。

「調子のいいこと言ってんじゃないよ!!」

石黒彩が吠えた。
632 名前:回想くん 投稿日:2001年07月29日(日)22時32分20秒
「あんた…本当にムカツクわね…
 ヘラヘラ調子がよくってさ…」

『蛇に睨まれた蛙』とはよく言ったものだ…

石黒彩に睨まれたあたしは、もう一歩も動けない。

「すみません…」

まったく不本意なんだけど、謝るしかないだろう…
反論したってまともに聞いてくれるわけないんだし、立場を余計に悪くするだけだ。
本当に悔しいんだけどさ。

それにしても、なんでこの人はこんなに怒るんだろう…?
いつも笑っていたほうが楽しいのに…
矢口は、明るくて笑いの絶えない毎日を過ごしたいだけなのに…
どんなに辛くたって…どんなに苦しくたって…
明るく笑っていたいだけなのに…

「まぁ、いいわよ…どうだって…
 それで…どうなのよ?」

謝ったきり押し黙ってしまったあたしを見兼ねて、石黒彩が先に口を開いた。
 
え…?
『どうなのよ?』って突然言われても…

「あ…あの…『どうなのよ?』ってどういうことですか?」

石黒彩はチッと一つ舌打ちをすると、面白くなさそうにこう答えた。

「あんた達の様子を見に来たのよ。
 裕ちゃんが『どうしても…』って言うからさ…
 さぁ、異常があるのかないのかどっちなの!?」

「ないです…」

「そう…じゃあね…」

その一点だけ確認すると、石黒彩はドアを乱暴に閉めながら部屋を出ていった。

あ〜あ…せっかくヤル気になってたのにな…
まぁ、しょうがないか…

あたしは、気を取り直して素振りを再開した。
633 名前:回想くん 投稿日:2001年07月29日(日)22時33分33秒
素振りを再開したのとほぼ同時…
突然ドアが開き石黒彩が顔を覗かせた。

「ところで…保田と市井は何処にいるのよ?」

バットを振り切った体勢のままのあたし…
恐る恐る石黒彩のいるドアの方を振り返った。

視線が合うと、石黒彩はまたあたしにガンを飛ばしてきた。

「あ…あの…
 ゴ…ゴキブリが飛んできたんで…
 叩き落とそうと思って…」

ムダとは思いつつ、そう言い訳してみた。

『バーン!!』とまた壁が叩かれる音が響き渡った。

「誰がそんなこと聞いたっ!!
 『保田と市井は何処にいるのか?』って聞いてるのよっ!!」

うわ…こ…怖いよー

「か…海岸です…このホテルから一番近い…」

バットを振り切ったままのお間抜けな体勢で、震えながらそう答えた。

「あっそう…
 今度こそじゃあね…」

そう言い残すと、石黒彩はまたドアを乱暴に閉めながら部屋を出ていった。

はぁーっ…
殺されるかと思った…

なんかなー

また来るとイヤだから、今日はもう大人しく寝ようかな…

それにしても…
いつになったら、心の底から明るく笑いながら練習が出来るようになるんだろ…?

あたしは『ふーっ』と一つため息をつくと、バットをバットケースにしまいこんだ。
634 名前:回想くん 投稿日:2001年07月30日(月)23時51分23秒
ホテルのロビー、あたしは椅子に座って圭ちゃんを待っていた。
圭ちゃんが、海岸に置き忘れたらしい財布を取りに戻ったからだ。

今日は、いろいろなことがあった…

悔しいことも…
嬉しいことも…

海岸でのひとときは、あたしにとってすごく有意義な時間だった。

夢を語った…
明るい未来を誓い合った…
今まで胸の奧にしまい込んで言えなかったことを思いっきり叫んだ…
そして…保田さん…
『圭ちゃん』とたくさん話をすることが出来た…

まず、話したのは呼び方のことだった。

『何度も言うけど、保田さん…じゃなくって圭ちゃんでいいよ…
 なんで呼べないの?
 あたしのこと嫌いなの?
 それとも怖いの?』って…

どうでもいいことかもしれない…
でも…そんなどうでもいいことについて納得がいくまで真剣に話し合った。
圭ちゃんが、ちゃんとあたしの話を聞いてくれたのがすごく嬉しかった。

圭ちゃんは、あまり饒舌でないあたしの話を根気強く真剣に聞いてくれた。
そして…あたしの話を踏まえた上で、自分の考えをちゃんと説明してくれた。
そして、いろいろアドバイスしてくれた…

正直、もっと怖い人だと思ってた…
ガーッと強い口調で話すタイプだし、顔つきもなんか怖かったし…
でも…優しい人だと思った…
どことなく繊細な印象を受けた…
そして…強い人…
人生に前向きで一生懸命で、困難に真正面から向かっていく…

『あたしはね、紗耶香…
 保田圭という人間を知ってもらいたいの。
 だから、体全体で自分を表現したいと思ってる。
 失敗して落ち込んだり…
 思いがけずに人を傷つけたりして悩むこともあるけど…
 本当の自分を知ってもらえるし、相手の本当の姿を引き出せる。
 だから、怖がらずにまず自分を全力で表現するの。
 失敗は取り返すことも出来るし、誠意を持って接すれば誤解を解くことも出来る。
 とにかく一歩も踏み出さないことには何も始まらないよ…』

そんな圭ちゃんの言葉は、あたしにとって希望の光みたいに感じられた。
635 名前:回想くん 投稿日:2001年07月30日(月)23時53分38秒
「保田と一緒じゃなかったの?」

急に背後で声がした。
振り向くと、そこには石黒さんが立っていた。
思わず息をのんだ。

「ちょっと聞いてるの!?
 『保田と一緒じゃなかったの?』って聞いたでしょ!!」

黙ったままのあたしに、石黒さんの怒声が浴びせられた。

本当は、堂々と石黒さんに接したかった。
ほんのちょっとでもいいから、いつもと違う自分を出そうと思っていた。
勇気を振り絞ってやってみようと思っていた。
海岸でのひとときをムダなものにしたくなかったからだ。
でも…石黒さんの登場はあまりにも突然で、心の準備がまだ出来ていなかった。
喉が乾ききって、とっさに声が出なかった。

しばらくして、なんとか圭ちゃんが海岸に財布を取りに戻ったことを告げると、

「そう…それじゃ、すぐに戻ってくるわね。
 同じことを2度も言うのは面倒臭いから待たせてもらうよ…」

石黒さんは、そう言ってあたしの向かいの席に座った。
その途端…
石黒さんの鋭い視線が、あたしの全身にからみついた。
じっくり観察するような視線…
冷たい笑いを浮かべながら…
あたしはその視線を避けるように少し顔を背けた。

あぁ…またこの人は、あたしのことを軽蔑してるんだ…
泣き虫のあたしのことを…
いつまでたっても進歩のないあたしのことを…
こんなのイヤだ…
あんな目で見つめられるのはイヤだ…
本当のあたしは、こんなんじゃないんだから…

『なんとかしなきゃ…』って思った。
もう一歩も退きたくなかったから…
今日のあのひとときをきっかけに出来なかったら、一生このままかもしれない…

顔は背けたまま…
蚊の鳴くように小さくて、震えた声…
でも…あたしは勇気を振り絞った…
自分を表現したいから…
本当のあたしを知ってほしかったから…

「ジロジロ…
 見ないで…ください…」
636 名前:回想くん 投稿日:2001年07月30日(月)23時57分09秒
「え…?何…?
 聞こえないっ!!」

すぐさま石黒さんの大きな声が辺りに響いた。
威圧感のあるその声に、やっとの思いで振り絞ったものが無になりそうになった。

3人で未来を誓った時に手を合わせたぬくもり…
思い切って海に向かって叫んだ自分の夢…
圭ちゃんの言葉…

思い返しながら、恐る恐る視線を石黒さんに合わせた。
相も変わらず、鋭い視線…
いや…いつもより鋭さが増しているかもしれない。
体がちょっと震えているような気がした。
一瞬だけ唇をグッと噛み締める。

「ジロジロ…
 ジロジロ見ないでくださいっ!!
 不愉快ですっ!!
 あたし、そんなんじゃないですからっ!!」

自分が今、一番主張したいと思ったことを一気にぶちまけた。
言い終わった後、息が荒くなった。
心臓が締め付けられるような感覚に、気が遠くなりそうだった。

あたしの主張は、思いがけないものだったのだろう…
石黒さんの表情が凍りついた。
でも…それも一瞬だけ…

「ああん!!あんた、いい度胸じゃないの!!」

石黒さんは、あたしの胸倉をつかんで無理矢理立たせると一気に壁に押し付けた。

「泣いて謝ったら許してあげるよ…
 ほら…いつもみたいに泣いてごらんよ…」

冷めた表情…
しかし、眼光はいつにも増して鋭くあたしにプレッシャーをかける。
もう…ただ怖いなんてレベルの話ではない…
殺されるんじゃないかって思った…

いつもなら胸倉をつかまれた時点で、泣きながら謝っているだろう…
でも…あたしは泣かなかった。
体がガクガク震えたけれど、必死に抵抗した。
今…この人の前で泣いたら、この人に本当のあたしを知ってもらうことは二度と出来ない。
これが最後のチャンスなんだ…
そう自分に強く言い聞かせたが、とにかくハンパじゃなく怖い…
元々…どうしようもなく弱い涙腺が、だんだん緩んできた。

そんな時…
『ガシャン』という音が、あたし達しかいないはずのロビーに響き渡った。
637 名前:回想くん 投稿日:2001年07月31日(火)23時51分28秒
音のした方向を二人の視線が追った。

あ…福田さん…

追った視線の先にあった光景…
それは、自動販売機で飲み物を購入する福田明日香…
あたし達の視線に気付いた福田さんは、ちらっとあたし達に視線は向けたが、
そのままロビーを立ち去っていった。

チッと舌打ちをする音…
石黒さんは、あたしの胸倉をつかんでいた手を離すと、

「あんたのこと…よく覚えとくからね…」

そう言い残して、福田さんの後を追うようにロビーから立ち去った。

放心状態…
あたしは、思わずその場にヘナヘナとしゃがみ込んだ。

「ちょっとムカツクわよ〜!!財布がないのよ〜!!何処にいったのよ〜!!」

しばらくして圭ちゃんが、ちょっとパニック気味に海岸から戻ってきた。
圭ちゃんの声を聞いた途端、涙がボロボロ溢れてきた。
思わず、座り込んだままで情けなく声をあげた。

「圭ちゃ〜ん…あたし、明日殺されるかもしれない…」

尋常ではないあたしの様子に、圭ちゃんの表情が一瞬にして曇った。

「ちょっと紗耶香…あんたどうしたのよ…」

圭ちゃんは、あたしの傍らにしゃがみ込むと、
泣きじゃくるあたしを抱き寄せて、ゆっくりとあたしの話を聞いてくれた。

「あんた…いきなり高いハードル越えようとしたわね〜
 無茶するんじゃないの…
 焦らずにちょっとずつ変えていけばいいんだから…
 でも…
 頑張ったね、紗耶香…
 あんたよくやったよ…
 やれば出来るのよ…あんたは弱い娘じゃないから…」

あたしと石黒さんの間で起こった出来事を説明すると、圭ちゃんはそう誉めてくれた。
勇気を出して自分を表現してみて、よかったと心の底から思った。

少しずつ、焦らずに自分を表現していこう…
みんなに、本当の市井紗耶香を知ってもらうために…
638 名前:回想くん 投稿日:2001年07月31日(火)23時53分12秒
エレベーター前…
二人の若い女性…

「明日香…あんたどういうつもりよ…
 何か文句でもあるっていうの?」

「どういうつもりって…ただジュース飲んでるだけですけど…
 別に文句もないですし…」

石黒彩と福田明日香…
エレベータで自分の部屋のあるフロアに上がってきた石黒は、そこで福田に出会った。
福田は、エレベータのドアの真正面に座り込んでジュースを飲んでいた。
まるで石黒を待ちかまえていたように…
石黒もそう感じたから福田に声をかけたのだが、はぐらかされた。
先程のロビーの一件も手伝って、石黒のイライラが爆発した。

「あんたもちょっとムカツクわね…
 どこまでもマイペースでさ…
 言っとくけど、あたしあんたにも絶対負けないからね!!」

「あたし…別に石黒さんと勝負するつもりはないですから…
 いつでも、何処でも、どんな場面でも自分の納得のいくピッチングをするだけ…」

視線を合わせることもなく、淡々とした口調で語る福田。

会話がまともに成立しない。
何を言ってもはぐらかされて埒が明かない。

そう思ったのか、石黒は舌打ちをするとその場所から立ち去ろうとした。

「あまり…焦ることないんじゃないかな…」

福田がポツリと呟いた。
その言葉に反応して石黒が振り返る。

「ああん!?誰に言ってるのよ!!誰が焦ってるって!!」

石黒がキッと福田を睨むが、福田は相変わらず石黒と視線を合わせようともしない。

「ただの…ひとり言ですけど…」

福田はそうポツリと呟くと、ジュースの缶を口へと運んだ。
それを見た石黒は、忌々しそうにその場を立ち去った。

福田はジュースの缶を一度口から離すと、宙を見上げた。

「羨ましいな…」

639 名前:LVR 投稿日:2001年08月01日(水)10時55分15秒
福田は相変わらずかっこいいです!。
今のことが、8人の関係を変えるきっかけになるんですかね。
タイミング良く福田が出てきちゃったんですが、700は福田でお願いします。
640 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月01日(水)17時25分33秒
>顔つきもなんか怖かったし…
笑わせていただきました
641 名前:回想くん 投稿日:2001年08月01日(水)23時17分28秒
紗耶香はだいぶ怯えていたけど、石黒彩からの報復らしきものは特になかった。
まぁ、相変わらずの状態は続いたんだけど…
中澤裕子の説教はほぼ毎日続いたし、石黒彩の人を小バカにした態度も変わらなかった。
そして、チーム全体の重い雰囲気も…

ハワイでの一次キャンプも終わり、オープン戦が始まった。
最初の頃こそ試合に出してもらっていたが、3人ともほとんど結果が出せず、
中盤以降は完全にベンチを暖めることになった。
チーム内での立場をますます悪くしてしまったような気がした。

チームのオープン戦の成績は、上々だった。
あたし達3人以外は、それぞれ手応えを掴んでいたようだった。
中澤裕子も石黒彩も…

そして、このオープン戦で一際脚光を浴びた選手がいた。
ピッチャーの安倍なつみ…
4試合に登板して16回を投げて自責点0、三振も18個奪った。
スポーツニュースでも大大的に取り上げられて、ちょっとしたスター扱いを受けた。

そして…
この安倍ちゃんは、完全に運を味方につけた。

開幕投手の予定だったドラフト1位の平家さんが、肩の故障で開幕直前にリタイアした。
その平家さんに替わって開幕投手に任命されたのは、
もう一人の開幕投手候補だった石黒彩ではなく、安倍ちゃんだった。

迎えた開幕戦…
安倍ちゃんは、堂々たるピッチングを披露した。
打線の援護がなく、最後はサヨナラホームランを浴びて敗戦投手になったが、
小さな体を目一杯に使ってバッターに向かっていく姿が感動を呼んだ。
翌日の新聞には、『悲劇のエース』だの『無念…熱投156球』なんて見出しが踊ってた。

本人の努力と生まれ持った強運が、安倍ちゃんをエースの座へと押し上げた。

開幕戦には負けたが、なかなか勝ち星をあげられない投手陣の中で一人勝ち星を重ねた。

名実ともに完全にエースの座を掴んだ。
642 名前:回想くん 投稿日:2001年08月01日(水)23時18分55秒
チーム自体は、ペナントレースが始まるともう最悪だった。
開幕戦を落とした後…
石黒彩が、意地の完投勝利で記念すべき初勝利をあげたが、その後が続かなかった。

連敗、連敗であっという間に最下位転落。
先発ピッチャーが踏ん張れば、打線が沈黙する。
打線が珍しく爆発すれば、投手陣が打ち込まれる。
そんな試合が続いた。

チームが低迷を続ける中、あたし達にも少しずつ出番が回ってくるようになった。
紗耶香は、敗戦処理ながら登板機会を与えられるようになったし、
あたしも代打に出たり、途中から守備に着く機会が増えた。
特に矢口は大出世で、専門外のポジションながらスタメンで試合に出場するようになった。

暗いチームのムードもあって、あたし達の扱いは相変わらずだったけど味方が2人も出来た。

1人は、一次キャンプの時にあたしと同室だった飯田圭織。
このカオリは、実は最近まであたし達が受けている扱いに気付いていなかったらしい…

「別に…裕ちゃんや彩っぺのこと嫌いな訳じゃないんだけどさ…
 カオリ、そういうのフェアじゃなくて嫌だから…
 困ったことがあったら、何でもカオリに相談して…」

なんて言ってくれたのはありがたかったのだが、いざ相談してみると…

「ゴメン…カオリよく分かんない…」

なんてことが多かった。
でも…いろいろ気を遣って声をかけてくれたのが、この頃のあたし達には心底嬉しかった。

もう1人は、意外にも今まで誰にも関心を示すことがなかった福田明日香。
誰とも交わることなく、ただマイペースに自分を貫いていたように見えた明日香。
そんな明日香が、あたし達に声をかけてくれるようになった。
中でも特に紗耶香に関心があったらしく、よく一緒に行動するようになった。
気を許せる同年代の仲間が増えて、紗耶香もオドオドしたところが少しずつ直ってきた。
たまに涙を見せることもあったが、明るく元気な一面を見せてくれるようになった。

たった2人の理解者だが、その存在はあたし達にとって明日への活力になった。
少しずつ練習が楽しくなって…
試合でも活躍出来るようになって…
実力が少しずつついてきたのが、感じられた。

そして…最下位を独走したまま6月を終えようとする頃、あたしに大きなチャンスが訪れた。

正捕手の小湊さんの故障…
643 名前:回想くん 投稿日:2001年08月01日(水)23時26分14秒
>>639
 『700レスの娘。!』の件、了解しました。
 福田さん、かっこよすぎたかもしれません…
 レスありがとうございました。
>>640
 笑っていただけたようで嬉しいです。
 レスありがとうございました。
644 名前:回想くん 投稿日:2001年08月02日(木)23時36分11秒
かくして、あたしはスタメンでマスクを被ることになった。
そして、信じられないことにチーム初の4連勝に貢献することが出来た。

まぁ、たまたまなんだけどね…
相手チームも小湊さんと違うリードに戸惑っていたようだったし…

ルル、ダニエル、アヤカ、安倍ちゃんと続けて4連続完投勝利。
今までのチーム状況を考えれば、ほとんど奇跡に近い出来事だった。

そして…
遂にこの人とバッテリーを組む日が来た…

石黒彩…

オープン戦、公式戦と一度もバッテリーを組むことはなかった。
石黒彩が頑として拒んだからだ。
だから、当然今回もあたしとバッテリーを組むことに難色を示した。
もう1人のキャッチャーのミカちゃんを指名したが、
広島相手に肩の弱いミカちゃんでは問題があるということで監督の和田さんに説得された。

そんな状況の中でチームの5連勝、そして自身の2勝目を賭けた登板に臨む石黒彩。

そう…石黒彩は開幕2戦目に勝って以来、2勝目をあげることが出来ずにいた。
645 名前:回想くん 投稿日:2001年08月02日(木)23時37分13秒
いいピッチングはしていた。
客観的に見て、本当にそう思った。
ここまで13試合に登板して、1勝9敗で防御率が3.49
特に開幕から10試合に関しては、防御率2.31と安倍ちゃん以上の安定感をみせた。
でも…なぜだか勝てなかった…
この人が投げる時は、必ず打線が沈黙する。
敗戦が決まった後、何度この人のうなだれる姿を見たことか…
あまりに勝てなくて気落ちしたのか(まぁ、それはないか…)
ここ3試合は、自滅して早い回でノックアウトされていた。

そんな流れがあったから、正直やりにくかった。
でも、ある意味チャンスかもしれないと思った。
あたし達のことを認めてもらうチャンス…
小湊さんがリードして勝てないものを、あたしのリードで勝利に導いたとすれば、
石黒彩もあたし達のことを認めてくれるかもしれない…

淡い期待…

でも、そんな淡い期待にすがりつきたかった。
理解者も出来て、実力も自信も少しずつ付いてきた。
しかし、中澤裕子や石黒彩、他のチームメイトに認めてもらえないと仕方がない。
あたし達の目指す未来はそこから始まる。

あたしは、試合直前まで配球や相手打者の研究に余念がなかった。
646 名前:回想くん 投稿日:2001年08月03日(金)00時03分08秒
「リードはあたしがするから、あんたはただヘマしないように気を付けなさいよ」

寝る間も惜しんで研究してきたっていうのに、いきなりの先制パンチ。

それにしてもタフな人だと思う。
あれだけ負け続けてるのに、どこからこんな元気が出るんだろう?
あたし達も根性がある方だと思うけど、落ち込むときはどうしようもなく落ち込む。
しかし、この人は違う…
よっぽど根性が据わっているのか、どんな時でも傲慢に自分を貫き通す。
普通の神経なら、あたし達にあれだけ言った手前、今の成績で偉そうに言えないだろうに…

本当に、こんな人にあたし達のことを認めさせることなんて出来るのだろうか…?

試合が始まると不安はますます大きくなった。
石黒彩から出るサインは全てストレート…直球でただガムシャラに押してきた。

まさか、このままストレートだけで抑えるつもりじゃないでしょうね…?

そして迎えた2回裏、先頭の4番江藤さんにストレートを高々とレフトスタンドへ運ばれた。
石黒彩は、忌々しそうに打球を見送ると、マウンドを蹴りあげた。

ちょっと…いいかげんにしなさいよ…

あたしは堪らずマウンドへ向かった。
647 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月03日(金)15時58分16秒
ホントに石黒らしいな(笑
648 名前:回想くん 投稿日:2001年08月04日(土)23時11分17秒
「ちょっと…何やってるんですか…?
 ストレートだけで抑えられるわけないじゃないですか…」

「うるさいわね…
 あんた相手にスクリューなんて怖くて投げられないわよ…
 いいから戻りなさいよ…」

やっぱりストレートだけで勝負するつもりだったんだ…
それも、あたしのキャッチングが信用出来ないからだってさ…

急にどうしようもない無力感に襲われた。

確かにキャンプの頃はポロポロ後逸してた…
でも、地道な練習の甲斐もあって、だいぶうまくなったと思ってたんだけど…
結局…この人には、そんなこと関係ないんだろうね…
チームのことも考えずに、あたし達に対して意地を通すことの方が大事なんだ…

しかし、ここで引き下がるわけにはいかない。
与えられたチャンスは確実にものにしたい。
そう…石黒彩のことは別にして、今のあたしにとって1試合、1試合がチャンスなんだから…
萎えそうになった自分の気持ちを奮い立たせる。

「あたしに…リードさせてくれませんか…?」
649 名前:回想くん 投稿日:2001年08月04日(土)23時12分29秒
「ああん!?何を言ってんのよ、あんたは!!」

石黒彩が、声を荒げた。

「お願いします…絶対に石黒さんを勝たせてみせますから…」

思わず出たハッタリ…
まさか、自分の口からこんな台詞が飛び出すなんてね…
自分でもビックリ…
だけど、自信がないわけじゃないし、このぐらい言わないとまともに取り合ってもらえない。

あたしの発言に石黒彩がヒートアップする。

「あんた、何を調子に乗ってんの!!
 ふざけるのもいい加減にしなよ!!」

激昂した石黒彩の手が、あたしの胸倉に伸びようとしたその時…

「いい加減にするのは彩っぺのほうやろ…?」

そう言った人物の鋭い視線に、石黒彩はあたしに伸ばしかけた手を引っ込めた。

サードの中澤裕子…
650 名前:回想くん 投稿日:2001年08月04日(土)23時13分22秒
「これ以上、今みたいなピッチングを続けるようなら、選手会長として黙ってられへんな…
 和田さんにピッチャー交代を要求するしかあらへん…」

無言の睨み合い…
そして…

「分かったわよ…
 ちゃんと投げればいいんでしょ!!
 はい、解散っ!!」

石黒彩がヒステリック気味に声をあげて、クルリと背を向けた。
これ以上の話合いは不要という構えだ。
しかし、それではこの場は収まらなかった。

「ちょっと待った…
 リードは保田でいくんや…」

中澤裕子の意外な提言…

「何を考えてるのよ…裕ちゃんは…?
 あたしより、その娘の肩を持つつもりなの…?」

石黒彩は、あたし達に背を向けたまま、意外にも落ち着いた様子でそう問いかけた。
651 名前:回想くん 投稿日:2001年08月04日(土)23時14分24秒
「別に、保田の肩を持ってるわけやない…
 今あたしが考えてるのは、チームの勝利のことだけや…
 そのためには、今の彩っぺがリードするより保田がリードする方がええ…
 ただ、それだけのことや…」

「変わっちゃったね…裕ちゃん…
 そんなこと言うような人じゃなかったのにね…
 やっぱり、打撃ベストテンの上位にいる人は余裕があるんだね…」

皮肉たっぷりにそう言った石黒彩に対して、中澤裕子の表情が険しくなった。

「彩っぺ…ちゃんと言って聞かせなならんことがあるからこっち向き…」

「嫌よ…何よ、あたしにまで説教しようっていうの…?」

「説教するのに特別扱いなんてあるわけないやろ!!
 注意せなならんことは、誰彼構うことなく同じように注意するんや!!
 それが当たり前やろ!?
 選手会長としてのあたしの役割の一つや!!
 ええからこっち向き、彩っぺ!!」

今まで努めて冷静だった中澤裕子の口調が変わった。
652 名前:回想くん 投稿日:2001年08月04日(土)23時15分15秒
いつもあたし達が体験しているのと同じ光景が、目の前で繰り広げられていた。
先程の中澤裕子の言葉は嘘ではなかった。
いつもと同じ感情を込めない淡々とした口調で、
チームのことを無視した石黒彩の自分本位のピッチングについて戒めている。
そして…石黒彩は、ただ唇を噛み締めたままでその話に耳を傾けている。

「どうしても納得がいかへんのやったら、マウンドを降りても構わへん…
 でも、今ここでマウンドを降りたら石黒彩はもう終わりやと思う…
 それは、自分でも分かってるんと違うか…?」

中澤裕子は最後にそう問いかけて、石黒彩の返答を待った。

「あんた…さっきあたしを絶対に勝たせてみせるって言ったわね…?」

石黒彩から突然、話を振られたあたしは少し返答に窮した。
自信がなかったからではない。
あたしに向けられた石黒彩の悲愴感漂う顔に圧倒されたからだ。

この人も…こんな顔することあるんだ…

悪魔のような女が、ふとした瞬間に見せた弱い一面…
この時、少しだけ石黒彩という人間に興味が湧いてきた。
653 名前:回想くん 投稿日:2001年08月04日(土)23時16分13秒
マウンドから自分のポジションに戻る途中で、中澤裕子に引き止められた。

「保田…彩っぺにあんな大口叩いて本当に大丈夫か?」

あたしの目を真直ぐに見つめながら、中澤裕子はあたしにそう問いかけてきた。
意志を確認されている…
そう思った…

「いろんな意味で自分達にとってチャンスだと思いますから、やってみせます。
 なんか…やらなくちゃって…さっき余計に感じたんですよ…
 信じてもらえないかもしれないですけど…
 石黒さんに勝ってもらいたいって…」

つい先程芽生えたばかりで、まだ自分の中で消化しきれていない想い…
だから…少したどたどしくなってしまったが、自分の意志はしっかり伝えた。

「そうか…
 まず、最初のスクリューやな…これは絶対に逸らしたらアカン…
 逸らしたら、彩っぺの気持ちが完全に切れてしまうかもしれへん…
 最近キャッチングはよくなってきてるんやけど、まだミットでボールを追う癖がある。
 体の真正面でボールを止めにいくようにするんやで…」

軽いアドバイスを残して、中澤裕子は自分のポジションに戻っていった。
654 名前:回想くん 投稿日:2001年08月04日(土)23時17分18秒
意外なことに、石黒彩はきちんとサイン通りに投げてくれた。
不安視していたスクリューボールも…

それにしても低めのスクリューボールは緊張するのよね…
ほとんど受けさせてもらってないから球筋を知らなかったし…
とにかくえげつないのよ…この人のスクリューボール…
性格まるだしって感じで…
そして何種類かあったのよね…実は…
ちょっと変速させたり、落差の大きいタイプと、落差が少なくて引っ掛けさせるタイプ…
そんなこと、こっちは知らなかったから、もう慌てちゃって…慌てちゃって…
あの人、勝手に投げるんだもん…
チェンジアップ効果を狙って変速させるんだけど、
バッターじゃなくてあたしがタイミングを外されてたもの…

2回裏が終わってダッグアウトに引き上げる時に問い詰めたら…

「そこまで決めてなかったでしょ…なんか文句でもあるの!?」

なんて平然と言ってのけるんだから、『さっきの顔は何だったの?』って感じよ…
まぁ、この人にしてみればささやかな抵抗だったのかもしれないけど…
もちろん、この後ちゃんと打ち合わせをしたけどね。

そして試合は、このまま0対1で広島リードのまま終盤を迎えた。
655 名前:回想くん 投稿日:2001年08月04日(土)23時18分11秒
いつもの通り、点が取れなかった。
広島先発のミンチーに8回まで3安打に抑えられた。
巡り合わせとか…あるとは思うんだけど…
何でだろう…?
日頃の行いが悪いから、勝利の女神にソッポを向かれているのだろうか?

しかし、今日は石黒彩の好投に打撃陣が応えた。
9回表ツーアウトまで追い詰められたが、今日は2番レフトでスタメン出場の矢口が、
ミンチーのチェンジアップをよくためてセンター前にはじき返した。
塁に出た矢口は思い切って、二盗…
キャッチャー瀬戸さんの送球が逸れて、一気に三塁を陥れた。
ここで登場の3番中澤裕子が、ミンチーのカーブをレフト前へ運んで同点。
土壇場で粘りを見せた。
中澤裕子の打球が、レフト前に落ちた瞬間の石黒彩のはしゃぎようはすさまじかった。

その後、4番のカオリがデッドボールで出塁して二塁一塁のチャンスを作ったが、
5番の信田さんはルーキー小林幹英のフォークに空振り三振に倒れた。

惜しくも逆転は逃したが、連勝中のいいムードが戻ってきた。
『9回裏を抑えれば勝てる!!』
そんな気迫が、ダッグアウトを出るメンバー全員に感じられた。
656 名前:回想くん 投稿日:2001年08月04日(土)23時19分50秒
疲れもあったと思う…
握力もなくなってくるだろうし…
力が入ったのか、それともホッとしたのか…?
まぁ、もともとコントロールがいいほうではないんだけど…

9回の裏…石黒彩は、先頭の1番緒方さんに簡単にフォアボールを出した。

「あの…大丈夫ですか…?」

「何が…!?いちいち来るんじゃないわよ…!!」

台詞こそ強気なんだけど、やっぱり肩で息してたのよね…
本当に大丈夫かしら…?
正直、球威も落ちてるのよね…

あたしの未熟なリードだけで、強力な広島打線を抑えられるほど甘くはない。
ここまでリード云々より、石黒彩のボールのキレで抑えてきた部分があった。
だから一抹の不安があった。

2番の野村さんがバントで送ってワンアウトランナー二塁。
打席には、3番の前田さん…
ここで、あたしはとうとうやらかしてしまった。
痛恨のパスボール…
657 名前:回想くん 投稿日:2001年08月04日(土)23時22分18秒
「やっぱり…やると思ったのよ…
 裕ちゃん…所詮この程度なのよ…」

「そんなこと言うてる場合やないやろ…
 保田…あたしの忠告ちゃんと聞いてへんかったんか…?
 今のはミットだけでボールを追いにいってたで…」

「すみません…」

マウンド上に内野陣が集まった。

「しょうがないよ…圭ちゃん…
 あれだけ落ちるんだもん…カオリだって捕れないから、圭ちゃんだって無理だよ…
 明日は明日の風が吹くさ…」

落ち込むあたしを、カオリが慰めてくれた…のかな?一応…

「どうする裕ちゃん?
 満塁策をとるしかないんとちゃうか?」

「そうやな、あっちゃん…
 彩っぺ…二人歩かせて5番のロペスで勝負しよか…」

監督からも同じ指示が出た。
かくして、一死満塁で5番のロペスを打席に迎えることになった。
658 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月04日(土)23時28分56秒
>>647
 石黒さんらしいっすか?
 レス本当にありがとうございました。
 ありがたいっす…

イヤな雰囲気が続きますが、もう少しだけおつきあいください…
659 名前:回想くん 投稿日:2001年08月07日(火)00時25分53秒
ドタドタと足をもつれさせながら必死で打球を追いかけた。
一塁側広島のダッグアウト前、グラブを差し出したが手応えはなかった。
そして、そのまま勢い余ってダッグアウトの中へ転落… 

アイタタ…

レガースやらプロテクターやらしてたんだけど、ものすごく痛いわよ!!

打ち付けた部分をさすりさすり自分のポジションに戻ると、中澤裕子が声をかけてきた。

「あんた…大丈夫か…?
 それと、今のタッチアップされる危険性もあったで…
 一生懸命も結構やけど…そこまで考えとったやろな…?」

あらら…まったく考えてなかったわよ…

そんなあたしの思いが顔に出ていたのか、中澤裕子はこう続けた。

「どうやら、考えてなかったようやな…
 冷静になるんやで…マスク被ったままやったしな…」

まったく気付かなかった…なんか視界が悪いと思ったら…

自分のミスを取り返すことに頭がいっぱいで、舞い上がってたのかもしれない…
660 名前:回想くん 投稿日:2001年08月07日(火)00時26分46秒
危ないっ!!

思わず目をつぶりたくなった。
高めに置きにきたようなスクリューボール…

ストレートを待ってたのか、ロペスが手を出さなかったので助かったが、
冷や汗ものだった。
カウントはツーワン。

この1球は、この後のリードに影響を与えることとなった。
結局、悩んだ末に出したサインは落差があるタイプのスクリューボール…

しかし…石黒彩は、このサインに今日初めて首を振った。

もう、こうなるとパニックだった。
石黒彩の意図がよく分からない。

やはり、さっきのパスボールが響いているのか?
疲労で投げる自信がないのか?
それとも、他に投げたいボールがあるのか?

経験が少なく、石黒彩と充分な意志の疎通がはかれていなかったあたしは、
サインが出せなくなった。
661 名前:回想くん 投稿日:2001年08月07日(火)00時27分47秒
見兼ねた石黒彩から、インハイへのストレートのサインが出た。

インハイのストレート…?

三振かゲッツーがほしい場面で、今の球威では少々危険なボール。
もちろん、前半の球威だったら三振が狙えるんだけど…

冷静に考えれば、拒絶しなければいけなかった。
でも…リードに迷いがあったし、パスボールの負い目もあり出来なかった。

そうして投じられたインハイのストレート…

打球は、快音を残してレフトポール際へ…
距離は充分だったが、わずかに左に切れた。
さらなる動揺を誘う特大ファール。
マウンド上の石黒彩は、帽子を取って額の汗を拭っている。

もう居ても立ってもいられなくなってマウンドへ…

「まったく、よく来るわね…いったいなんなの…」

石黒彩は努めて冷静に振る舞っているが、もはや疲労は隠せない様子だった。
あたしを睨み付ける目にも全く力がなくなった。
662 名前:回想くん 投稿日:2001年08月07日(火)00時28分36秒
「あの…こんなこと言える立場じゃないって分かってるんですけど…
 もう後ろに逸らしませんから、スクリューを投げてもらえませんか…?
 ストレートじゃ…たぶん打たれますよ…」

もう怒る元気もないのか、石黒彩は大きくため息をつくと目を閉じた。

「あんたも本当に面の皮が厚いわね…」

こっちだってもうイッパイイッパイなのよ…
それに…あんたほどじゃないわよ…

「もう…戻りなさいよ…頭に来るからもう来るんじゃないわよ…」

再開後、石黒彩は2球続けてスクリューボールを地面に叩き付けた。
あたしは、中澤裕子のアドバイス通りに懸命に体でボールを止めた。

あれだけ言った手前、もう後ろにボールを逸らすことなんて出来るわけがない…

一死満塁でフルカウント…
とうとう追い込まれた…

次の球が勝負を決める1球になる。
663 名前:回想くん 投稿日:2001年08月07日(火)00時31分29秒
前の2球を考えると、スクリューは冒険だ。
きっと疲労でうまく腕が振れないんだろう…もう…限界なんだ…

それなのに…ダッグアウトに動きはない…
ピンチの場面に全く動きを見せない監督及びコーチ陣に毒突きたくなった。

ピッチャーって孤独だ…

ふと、そう思った。
少しだけ石黒彩を同情したくなった。

結局、最後の1球は空振りを狙う落差のあるスクリューに決めた。
経験の少ないあたしには、これ以外に考えられなかった。
限界だろうけど、信じるしかない…
石黒彩は長い間合いを置いた後、サインに頷いた。

「石黒さん!!思い切っていきましょう!!」

ミットをポンと叩き、マウンド上の石黒彩に大きな声をかけた。
664 名前:回想くん 投稿日:2001年08月07日(火)00時32分49秒
大きなバックスイング…
そして、石黒彩の左腕がしなる。
思い切って振りおろされた腕から放たれたボールは、
船のスクリューのような回転を描いて突き進む。

スリークォーター気味に腕を振ったこの1球は、
ホームベース付近でやや外に逃げながら下方向に大きく沈みこんだ。
絶妙な高さ…
ストライクからボールになる低めを狙ったスクリューボールにロペスのバットが空を切る。

『やった!!』と思ったのも束の間…

あれ…?

ボールが…
消えた…!?

一瞬だった…
舞い上がって、一瞬だけボールから目を切ってしまった…

試合は…終わった…


665 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月07日(火)12時26分29秒
ま・・・まさかパスボール!?
666 名前:サザエオールスターズ 投稿日:2001年08月10日(金)12時16分07秒
このスレッドは非常にサイズが大きくなっています。
次スレを立てて移転してください。
667 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月10日(金)20時57分09秒
>>>666
HNが面白かった
668 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月11日(土)00時05分45秒
作者さんへ
案内板より管理人さんよりの指針
通常板
>「レスを全部読む」を開いてみて200KBを越えていたら
>それ以上の投稿を避ける。新スレを立てて引っ越す。
このスレは611KBになっています。最近板が不安定になっていますので、
移転した方がいいかと(>666さんは本物の管理人さんだと思う)
669 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月14日(火)06時24分38秒
新スレに移動したんですか?
670 名前:ハロプロくん(夏の抜け殻) 投稿日:2001年08月16日(木)16時08分30秒
>>665
 レスありがとうございました。
 ご推察の通りパスボールです。
>>666
 このスレが迷惑をかけていたようで、申し訳ありませんでした。
 キリのいいところまで書いて移転するつもりでしたが、認識が甘かったようです。
 板の管理、常日頃より感謝しておりました。
 もう迷惑をかけないようにします。
>>667
 ?
>>668
 ご指摘ありがとうございました。
 上でも書いたように、わたしの認識が甘かったようです。
>>669
 第4話の続きを新しく出来た風板にアップさせていただきました。

恥の上塗りになるかもしれませんが、このスレの続きを新しく出来た風板にアップしました。
続きが気になられていた方がいらっしゃったらどうぞ…
今回のお詫びもそちらに書いておきました。

さようなら金板!!今までありがとう!!

Converted by dat2html.pl 1.0