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隔離列島
- 1 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年04月02日(月)21時58分22秒
- 黄板で書いてる弦崎あるいと言います。
ここでは少し長編をやろうと思っています。
題は難しい感じですけど、そんなに堅い話じゃありません。
市井さんが主役で、いちごまをやりつつ、他のメンバーとも絡ませたいと思っています。
- 2 名前:オープニング(1) 投稿日:2001年04月02日(月)22時10分04秒
- 渋谷はウザイ。
人が多すぎる。
そりゃ、前よりはかなり少なくなったけど。
それでもどこからともなく人が現れる。
あたしはポットからマルボロを取り出して吸い始める。
あいつはまだ来ない。
(全く、時間にルーズ過ぎなんだよ。)
なんだかムカツいてくる。
でも、きっとムカツいている理由はそれだけじゃない。
この世界全てにムカツいてる。
どこかボヤけてる、灰色の世界。
数年前と変わらず人は笑って生きているのに、その笑顔の裏に狂気じみたものを感じる。
(バカらしい。)
あたしは人々を嘲笑する。
(そんなに笑ってんなよ。)
ふとあたしが見ていた人込みで人が倒れる。
だけど周りは平然としている。
どこか飽き飽きした様子でそれを眺めている。
同じ芸をくり返すピエロでも見るかのように。
数分後、どこからともなく数人の男が現れて、倒れた人をどこかに運んで行った。
倒れた人を乗せたタンカーがあたしの前を通る。
倒れた人は・・・・・・笑顔だった。
- 3 名前:オープニング(2) 投稿日:2001年04月02日(月)22時20分47秒
- こんなふうに世界が、いや日本が変ってしまったのは、やっぱりあの奇病のせいなんだろう。
(っていうかそれしか考えられないんだけど。)
日本は、4年前くらいにどこかの国(いろんな説があったから忘れた。)の宇宙船(探査船?)のかけらが落ちて来て、
それは日本に直撃しなかったんだけど、そのかけらがなんか宇宙の病気を持ったらしくて、日本はあっという間にその病気に汚染された。
日本はすぐに封鎖された。
今は、出ることも帰ることもできない。
日本の周りは厚い壁で覆われた。
なんでも病気をこれ以上広めないための壁らしい、その壁には殺菌能力があるって聞いた。
(昔の鎖国ってやつ?なんか違う気もするけど。)
日本は世界に見捨てられた。
- 4 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年04月02日(月)22時22分13秒
- 間違えました。
ポットじゃなくてポケットです。
- 5 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月02日(月)22時26分33秒
- おもしろい!
チャイルドプラネットみたいで大期待!!
- 6 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年04月02日(月)23時38分45秒
- >5さん チャイルドプラネットの影響を少し受けました。
あぁいうシュールな感じが好きなので、
この話もそういう方向性でいきたいと思っています。
- 7 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月03日(火)03時55分18秒
- こうゆう感じの話大好きです。
確か、2〜3年前にこんな感じの設定のドラマもあったよね。(知ってるかな?)
- 8 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年04月03日(火)22時46分48秒
- >7さん 好きだと言ってもらえて嬉しいです。
キンキキッズが出てたドラマですか?
もしそれなら見てました。結構あの話は好きでした。
別にその話にはあまり影響は受けてませんけど。
- 9 名前:オープニング(3) 投稿日:2001年04月03日(火)22時59分52秒
- 某女神のある国なんて速効で日本を見捨てたらしいし。
(あの国ならやりそうだよ。)
どっかの偉い坊さんは、ただグダグダ祈ってるだけ。
(祈ってるだけじゃ救われないんだよ。)
とにかく、その病気っていうのがまた厄介で、いつ発病するか分からない上に、
発病したって普通の生活ができるから病気だって気がつかない。
だからこの病気はあっという間に全国に広まった。
国からこのことを聞かされたとき、すでに国民の半数が病気に感染していたらしい。
そう、この病気にかかったら年なんて関係ない。
いきなり死ぬだけ。
(ま、かかっても発病しなければ生きられるっていうんだからエイズみたいなもんか。)
でも、かかったら1日も経たずにで死ぬらしい。
(苦しみまくって死ぬよりマシか。)
それに、この奇病が発生してから4年経つのに未だに治療法や、特効薬というものがない。
金持ち連中や、お偉いさんは高い金払って買ってるらしいけどね。
- 10 名前:オープニング(4) 投稿日:2001年04月03日(火)23時12分26秒
- 世の中はとことん不平等だと思う。
(そんなの前から知ってたけど。)
金があれば助かる。
世の中の半数が金で決まるなんて常識だ。
(でもあたしは金がない。)
それはほとんどの一般ピープルに当てはまる。
だからあたし達は死ぬのをただ黙って待っている。
薬を買うお金なんてないから。
(そんな薬が本当にあるかどうかも分からないし。)
これ以上感染区域を広げないために、日本にミサイルをぶち込むっていう案もあったらしいけど、
なんか非人道的とかでおじゃんになった。
(でも死の恐怖に怯えながら生かされる方が、あたしはよっぽど非人道的だと思うだけど。)
ミサイルぶち込まれた方が幸せなのかもしれない。
(ま、何とも言えないけどさ。)
だから、この国は壊れている。
空から、あのかけらが落ちてきた日から。
人々は笑う。
まるで狂ったように。
どうせ死ぬなら、笑って死のうってやつらしい。
(クソアホらしい。)
でも、いつ死ぬか分からない状態で理性を保て、っていう方が無理なのかもしれない。
人間はそんなに強くない。
だから人々は笑ってるのかもしれない。
楽しく笑って現実逃避。
(やっぱりアホらしい。)
あたしはいつ死んでもいいと思っている。
別にもう悔いがないから、死んでもいい。
(でも、あたしが死んだらあいつは泣くんだろうな・・・・。)
きっと一生泣いてる気がした。
「市井ちゃ〜ん。」
(おっ、バカが来た。)
- 11 名前:7 投稿日:2001年04月04日(水)03時44分22秒
- そう!!そのドラマです。同じく結構好きで見てました。
あ、別にそれを期待してたわけじゃないんで、気にしないでください。
- 12 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月05日(木)06時22分58秒
- >「市井ちゃ〜ん。」
>(おっ、バカが来た。)
うまい!!
この一文でファンになりました。
この先、シリアスになるのかコメディになるのか?
設定はむちゃシリアスなのに(笑
- 13 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年04月05日(木)23時06分09秒
- >7さん あぁいう話が好きなら、
この話も好きになってもらえると思います。
>12さん 最初の方はややコメディーな感じでいきたいと思います。
基本はシリアスなんですけど。
- 14 名前:ルーズな女(1) 投稿日:2001年04月05日(木)23時19分19秒
- あいつはまるで無邪気な子犬みたいに走ってきて、いきなりあたしに抱きついた。
「遅い。」
あたしはポカッとその頭を殴る。
「痛いよぉ〜。」
あいつは自分の頭を撫でる。
「殴られたくなかったら早く来い。」
あたしはタバコを投げ捨てる。
「だってぇ、市井ちゃんにかわいい真希ちゃんの姿を見せようと思ってがんばってたら、
思ったより時間がかかっちゃったんだもん。」
ニッコリと笑うあいつの姿に一瞬見愡れる。
「無駄な努力しないでいいから早く来い。」
あたしは照れ隠しに早口で言った。
「ちょっと顔が赤いよ?私に惚れちゃった?」
あいつは鋭いところをついてくる。
(ボケてるのに変に鋭いんだよなぁ。)
「バァーカ、なわけないだろう。いくぞ、真希。」
あたしは歩き出す。
こいつは真希。
名字は・・・・・忘れた。
初めて会ったとき、言わなかった気がする。
だから、知らない。
茶色い髪を揺らしてあたしにじゃれる姿は、本当に子犬みたいだった。
- 15 名前:ルーズな女(2) 投稿日:2001年04月05日(木)23時34分59秒
- 「待ってよ、市井ちゃん!」
真希は慌ててあたしの後を追いかける。
あたしは市井紗耶香。
渋谷じゃそれなりに名の知れた女。
いい意味でも、悪い意味でも。
真希はあたしが心を許した数少ない奴の1人だ。
大切だと思う。
(でも、こんなご時世に大切に思ってもしょうがないのにな。)
お互いに、いつ死ぬか分からないから。
そういうのは飽き飽きした。
もう、いらない。
(三度目は・・・・・勘弁だな。)
「市井ちゃん、どうしたの?」
真希があたしの顔を覗き込む。
「ん?なんでもない。ただ・・・・・・・いや、なんでもないよ。」
あたしは言いかけてやめた。
こんなの真希に言うことじゃない。
昔話は、好きじゃない。
もうあのことは忘れた方がいい。
(ホント、忘れた方がいい・・・・・。)
「ねぇ、どっか食べるところは入ろうよ。」
真希があたしの服の袖を引っ張る。
「あん?別にいいよ、真希の好きなところにして。」
あたしは適当に答えた。
特に腹は減ってなかった。
でも、別に食べてもいいと思った。
(今日のあたしはなんだかおかしいな。)
「今日の市井ちゃんなんか変だよ。何か会ったの?」
(やっぱ鋭いな、こいつ。)
「ちょっと昔のことを思い出して、ブルーになってただけだよ。」
「ふ〜ん。あっ!あの店にしようよ!」
真希の頭の中には食べることしかないらしい。
それともわざと聞き流しているのかもしれない。
(って、こいつはそういう奴じゃないよな。)
真希が指さしたのはイタリアン系の店だった。
- 16 名前:.ルーズな女(3) 投稿日:2001年04月06日(金)22時40分54秒
- (ま、悪くないか。)
真希はあたしを引っ張って店に入って行く。
ドアを開けると、チリンと小さな鐘の音が聞こえた。
あたしは辺りを見回した。
「ありゃリゃ、誰もいないね。」
店には客はおろか従業員すらいなかった。
別に珍しいことじゃなかった。
店なんて大体こんな感じだから。
やっている店の方が少ない。
「違う店に行くか。」
あたしが後ろに向き直って歩き出そうとすると、
「ここでいいよ。なんか2人っきりの貸し切りみたいでいいじゃん。」
と真希があたしを引き止めた。
「貸し切りねぇ、で、食べ物はどうすんの?」
「市井ちゃんが何か作ってよ。」
真希はもうカウンターに座ってる。
(なんであたしが作らないといけないんだよ、めんどくさい。)
でもあたしは料理は嫌いじゃない。
どっちかっていえば、好きな方だ。
ただ、めんどくさくてあんまり作る気にならなかった。
「材料があったら作ってもいいよ。」
あたしはそう言って厨房に向かった。
- 17 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月06日(金)22時54分52秒
- なんだかんだ言って、結局ごっちんに甘いいちーちゃんが好き
- 18 名前:.ルーズな女(4) 投稿日:2001年04月06日(金)22時57分13秒
- あたしは厨房を物色する。
見つけたのはスパけティーの麺と、とうがらし、スライスしたニンニクを揚げたもの。
それにコンソメの素と、塩とコショウ。
肉とか魚もあったけど腹壊しそうだからやめた。
だからなるべくちょっとくらい時間が経ってても大丈夫なものを選んだ。
「なんかあった?」
真希はカウンターから厨房を覗き込む。
「まぁ、なんとか食べられそうだよ。大したもんはできないけどね。」
あたしは早速調理を始める。
「何ができるの?」
真希は興味津々で聞いてくる。
「できてからのお楽しみ。」
あたしはそっけなく答える。
あたしは黙々と調理をする。
「ヒマだから物色してこようっと。」
真希はつまらなくなったのか、そう言ってどこかへ行ってしまった。
あたしは料理に専念する。
この店から人がでて行ったのは最近のことらしい。
冷蔵庫の状態を見て分かった。
鍋に入れた水が沸騰する。
あたしは塩を一振りすると、スパゲティーを入れた。
少しだけ昔のことを思い出した。
(こうやって作ったよな・・・・・。)
あたしはハッとして頭を振るう。
(何また思い出してんだよ。未練たらたらかよ、情けない!)
いきなり店にジャズ系の音楽が流れる。
「なかなか気分でてるでしょ?お金入れると音楽が流れるやつがあって、蹴っ飛ばしてたら曲がかかった。」
真希は自慢げに言う。
どうやら真希の仕業らしい。
(いろんな意味で、さすがだな。)
- 19 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月07日(土)04時27分34秒
- 市井ちゃんの過去が気になりますな。
かなり重い過去なのかな?
- 20 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月07日(土)07時00分19秒
- それも一度ではない・・・・・。
- 21 名前:.弦崎あるい 投稿日:2001年04月08日(日)23時26分01秒
- >17さん ありがとうございます。
なんだか市井さんって後藤さんに甘いってイメージがあるのでこうなりました。
>19さん 過去はこれからの話でだんだんと明らかになっていくと思います。
重い、かもしれません・・・・。
>20さん 一度じゃないっていうのがポイントですね。
結構大事なことかもしれません。
- 22 名前:.ルーズな女(5) 投稿日:2001年04月08日(日)23時50分11秒
- 「まぁ、いいんじゃないの。さっ、もうすぐできるから座ってな。」
あたしは料理の仕上げに取りかかる。
「なんかぁ、こうやってると新婚家庭みたいだよねぇ。」
真希は顔をニヤけさせながら言った。
あたしは料理を作ってて真希の顔を見てないけど、なんとなくそんな気がした。
「そうか?ほい、できたよ。」
皿にスパゲティーを適当に盛り付けて、軽く味付けをしてスープと一緒にカウンターに置いた。
あたしはカウンターに移動する。
そこにはワインが置いてあった。
「なんか地下にたくさんあったから、1本もらってきちゃった。」
「へぇ、なかなか気が利いてるじゃん。」
あたしは真希の頭を軽く撫でた。
音楽が少しだけあたしの心を和ませた。
「ねぇ、これって何って言う料理?」
「ぺペロンチーノもどきと、コンソメスープもどき。」
もどきと言ったのは、適当に作ったから。
「ふ〜ん。ま、おいしいそうだからいいや。」
真希は大して気にした様子もなく食べ始める。
(だったら始めから聞くなよ。)
あたしはワインをラッパ飲みする。
スパゲティーはそんなに食べたくなかったから、真希の量を多くしてある。
真希はそれでなくてもよく食べる。
なのに全然太ってない。
(不思議な奴。)
「あぁ〜ぁ、おいしかった。」
ワインはあまりおいしくない。
「もう食べたのか?相変わらず早いな。」
真希の皿には1本もスパゲティーは残ってない。
「あたしの分も食べていいよ、あんまり腹減ってないからさ。」
「本当にいいの?じゃ、いただきま〜す。」
(なんでこんなに食えるんだ?)
あたしはスープを飲む。
うまくも、まずくもない。
(あいつの方が料理は・・・・・・。ちっ、またかよ!)
なんであいつのことばかり思い出すんだろう。
(今日は厄日なのか?)
「ねぇ、市井ちゃんってさ、昔付き合ってた人いたの?」
真希は食べるのを一時やめて言った。
(イヤな質問だな・・・・。)
今一番されたくない質問だった。
- 23 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月09日(月)22時12分48秒
- 後藤によって、市井の過去の女が明かされるのか!?
- 24 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年04月09日(月)22時26分18秒
- >23さん これから市井さんの過去の話に入っていきます。
もちろん過去の女も登場します。
- 25 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年04月09日(月)22時37分48秒
- 「・・・・いたよ。」
あたしは小さな声で言った。
聞き逃してくれることを期待した。
「その人のこと、聞いちゃダメかな?」
真希はあたしの顔色を伺いながら言う。
真希にはちゃんと聞こえたらしい。
「聞いてどうするんだよ。」
(そんな、何の足しにもならないような話をさ。)
「えっ?その、なんとなく。市井ちゃんの過去も知りたいし・・・・。」
真希は少し寂しそうに笑う。
その顔があいつの顔とタブる。
(全然似てないのに・・・。)
なのに、あいつの顔とダブって見えた。
寂しそうな笑い方したから。
(やっぱ全然忘れてねぇな。)
「過去なんか知ってどうすんだよ。もう、あの頃には戻れないっていうのにさ・・・・・。」
それは真希に向けて言った言葉じゃない。
自分に向けて言った言葉だ。
(そう、もうあの頃には戻れない。)
「でも、知りたい。」
真希はあたしをまっすぐ見つめる。
強くて、まっすぐな瞳。
いつものガキみたいな真希じゃない。
あたしよりずっと大人の目をしている。
別に話す気はなかった。
なのに口が勝手に、
「・・・・いいよ。」
と言っていた。
- 26 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年04月09日(月)22時45分42秒
- 25のところに題を入れるのを忘れました。
題はsadnees pastです。
- 27 名前:sadnees past(2) 投稿日:2001年04月09日(月)23時04分43秒
- (話してどうすんだよ。)
もしかしたら、聞いて欲しかったのかもしれない。
あたしには、よく分らない。
「今から・・・2年前くらいになるか。そのころは強盗、強奪、強姦が当たり前で、自殺者は1日10人くらいいた。
本当にこの日本は狂ってた。人殺しなんて当たり前で、ルールーなんて意味を持たない世界だった。」
もう、世の中は壊れ過ぎてて。
あたし自身も、もう壊れてて。
そんなときだった、あいつがあたしに出会ったのは。
「そんなときだったよ、あたしがこの世で一番愛した女に会ったのは。」
2年前
あたしはヒマだから渋谷に来ていた。
渋谷はすっかりがらの悪い連中の溜まり場になっていた。
いつからそうなったのかは知らない。
別にそんなことに興味もなかった。
あたしはただ当てもなくただブラブラ歩いていた。
それはいつものことだった。
目的なんてない。
(生きることにさえ目的がないんだから。)
もしあるんだったら、きっとそれを存在意義として生きていると思う。
ふと路地に目をやる。
それは本当にただの気紛れだった。
女がいた。
肩にかかるくらいの、少しウェーブのかかった赤茶色の髪。
ボロボロの薄汚れたTシャツに、よれよれのジーパン。
何より印象的だったのが、その大きな瞳だった。
あたしより2、3才年上に見える。
顔がチラッとしか見えなかったから、よく分らなかった。
女は4、5人の男に囲まれていた。
- 28 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月10日(火)06時05分50秒
- 誰だろう…?
- 29 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月10日(火)23時03分10秒
- きになるっすね・・・誰だろう?
- 30 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年04月10日(火)23時37分56秒
- >28、29さん 自分的には結構分かりやすく
書いたつもりなんですけどね。
その人は今とは違うイメージで書いているから、
分かりにくいのかもしれません。
- 31 名前:sadnees past(3) 投稿日:2001年04月10日(火)23時57分44秒
- この後に何をされるのか大体分かる。
女は別段怯えた様子はなかった。
あたしには、笑っているように見えた。
(笑ってる?)
あたしにはそれが信じられなかった。
と同時に、その女に興味を持った。
笑っている理由が知りたくなった。
だから、助けることにした。
人を助けるなんて初めてだった。
あたしは人に興味を持たないから。
持っても意味がないことをあたしは知っている。
「あのさぁ、その女こっちにくんない?」
あたしは男達に向かって言った。
男達の中の1人が、ヘラヘラ笑いながらこっちに近づいてくる。
(薬でもやってんのかよ、こいつ。)
「金くれるならいいぜ。」
あたしはその男の腹にケリを入れた。
「ケリならくれてやってもいいけど?」
男はあっけなく地面にうずくまる。
反撃してくるかと思ってあたしは身構えた。
でも男達は、
「ひぃぃぃぃぃぃ!」
という情けない悲鳴を上げて、倒れた男と共に逃げて行った。
「ちっ、クソが!弱すぎるんだよ!」
あたしは吐き捨てるように言った。
「ありがとう、助けてくれて。」
女は立ち上がると、笑顔であたしにそう言った。
「別に。大したことしてないよ。」
あたしは髪を掻き揚げる。
「でも・・・・・ありがとう。」
女はあたしに近寄って、そっと唇を重ねた。
あたしはただ女の唇を受け止めていた。
避けることもできたなのに、あたしはそうしなかった。
望んでいたのかもしけない。
(キスしたかっていうのか?)
「これは私からのお礼。」
女は唇を離すと二コッと笑って言った。
でも、その笑い方はどこか寂しそうだった。
だからなのかもしれない。
あたしは女を壁に押しつけた。
そして、女の唇を強引に奪った。
- 32 名前:sadnees past(4) 投稿日:2001年04月11日(水)00時07分30秒
- 女は少しだけ驚いた顔をしていた。
でも、抵抗はしなかった。
あたしは口の中に舌を入れた。
女は少し笑って、慣れた様子で舌を絡ませてくる。
女の笑いは、あたしを嘲笑しているように見えた。
生暖かい舌の感触。
口腔は少しザラッとしていた。
途切れ途切れに聞こえる吐息。
お互いの唾液が混ざる。
女はあたしの唾液を飲み込んだ。
こんなことをしたのは久しぶりだった。
(あれからまだ2年しか経っていないのか・・・・・・。)
どれぐらいキスをしていたのか分らない。
(何やってんだあたしは!)
あたしは女から離れた。
「お礼ならこれくらいして欲しかった?」
女はいやに楽しそうだった。
あたしをからかってるのかもしれない。
「まぁね・・・・。」
あたしは口元に垂れた唾液を手で拭った。
- 33 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月11日(水)04時38分40秒
- 情けない事に、いまだ相手が誰かわからず。
- 34 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年04月11日(水)22時35分40秒
- >33さん いえ、それは自分の書き方が悪いからです。
うまくその人の雰囲気っていうのが出せてないから、
分らないんだと思います。
- 35 名前:sadnees past(5) 投稿日:2001年04月11日(水)22時53分07秒
- 「名前、なんていうの?」
女は口元を拭って言った。
「あたしの質問に答えたら教える。あんた、なんで男達に囲まれてたとき笑ってたんだ?」
女はクスッと笑って言った。
「ん〜、なんて言ったらいいのかな?頭がイカれてたのかもね。なんか別にどうなってもいいやって思ったら、
不思議と笑えてきてさ。ま、もう生きてる意味なんてないし。」
「イカれてるよ、あんた。」
あたしは女ことを少し軽蔑した。
ヘラヘラ笑って何も考えずに、ただ流されてるだけ。
(バカらしいんだよ。)
「イカれてるか・・・・。そうかもね。それと、私はあんたじゃなくて、圭って名前があるから、
今度からそう呼んでよねお嬢ちゃん。」
女は、いや圭はそう言ってあたしの頭を撫でようとする。
あたしはそれに、一瞬懐しさを感じる。
(重ねてるのか?)
全然似ていないというのに。
「あたしに触るな!」
あたしは女のを払う。
「ねぇ、そう言えば名前は?質問に答えたから教えてくれるんでしょ?」
女は楽しそうだった。
「・・・・・・紗耶香だ。」
あたしは小さな声で言った
- 36 名前:sadnees past(6) 投稿日:2001年04月11日(水)23時10分34秒
- こんな奴に名前なんて教えたくなかった。
偽名でも教えてやろうかと思ったけど、いちよあたしの質問に答えてくれたから、本当の名前を教えた。
圭にはちゃんと聞こえたらしい。
「ふ〜ん、紗耶香か・・・・。なかなかかわいい名前じゃん、似合ってるよ。さてと、じゃそういうことで私は帰るから。
あぁ、そうだ。私はこの辺りにいつもいるからヒマだったら会いに来てよ。」
圭は完璧あたしをなめている。
「誰がお前なんかに会いに来るか!」
とあたしは怒鳴る。
圭はあたしの言ったことなんか気にせずに、
「じゃ、バイバイ紗耶香。」
圭は軽く手を振って路地から出て行った。
完全に圭のペースだった。
こんなにあたしがペースを乱されるなんて、めったにないことだった。
(あの人じゃあるまいし・・・・。)
あたしは少しだけ昔を思い出した。
ほろ苦い思いで。
二度と思い出したくない思い出。
あれを思い出すと、自分の全てが否定されそうになる。
(ちっ、ムカツクンだよあの女!)
それがあいつの第一印象。
「お前みたいな奴、2度と会いたくないよ。」
あたしは遠ざかって行く圭の後ろ姿に言った。
- 37 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月12日(木)01時53分35秒
- はー、あってた。ハナピの人と迷ったけど。
- 38 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月12日(木)05時53分24秒
- なるほど圭ちゃんでしたか〜!!
俺もハナピかと思った。
- 39 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年04月12日(木)22時46分29秒
- >37さん そう思えなくもないですね。
やっぱり自分の書きわけが出来てないです。
まぁ、石黒さんでもよかったんですけど、
少し年が離れ過ぎかなと思って保田さんにしました。
>38さん 最近にファンになったので、
石黒さんのことがよく分かりません。
でも、こういう感じに合わなくもないかなぁって思います。
けど、石黒さんはうまく書けないので、
これから小説に出てくることはありません。
- 40 名前:It a fate?(1) 投稿日:2001年04月12日(木)23時04分43秒
- (そう、あんときはあんな奴に、2度と会いたくないって思った。)
なのに、翌日あたしはあいつを捜していた。
この広い渋谷の中から、たった1人の女を捜そうなんて自分でもバカだと思う。
それでも、あたしは毎日渋谷に来た。
体は勝手にあいつを捜して歩き回る。
目はいつも周りをキョロキョロと見ている。
頭じゃバカげてるって思っているのに。
それでも、あたしはあいつを捜していた。
この辺にいるって言ってたのに、全然姿が見えない。
見えるのはただ高い虚構のビルだけ。
(からかわれたんじゃないのか?)
その可能性は十分にある。
(クソッ!なんであいつを捜してるんだよ!)
自分がムカツク。
なんでこんなにもあいつにこだわっているんだろう。
(キスした相手だからか?)
キスなんて昔は飽きるほどした。
(キスがどうしたっていうんだよ!)
一体あいつに何を求めてるんだろう。
求めたって、答えても、救ってもくれないのに。
あいつに求めるのは間違ってる。
そんな、分かっていた。
「お嬢ちゃん、誰か捜してるの?」
後ろでバカぽっい声がした。
どう聞いても、からかっているようにしか聞こえない。
ムカツク声だった。
(あいかわらずムカツク女だ。)
- 41 名前:It a fate?(2) 投稿日:2001年04月12日(木)23時21分33秒
- 「あぁ、激ブサイクで、クソバカで、世界一ムカツク女。」
あたしは振り返る。
「そうそう、あんたみたいな顔してたよ。」
女はウェーブのかかった赤茶色の髪に、薄汚れた服を着ていた。
何より、大きな瞳が印象的だった。
まるで、何もかも見透かしたような目。
「あっ、それ私のお姉ちゃんかもしれない。」
「圭って言うんだけどさ。」
「あぁ〜、それ私のお姉ちゃん。」
(なんかムカツいてくる。)
「姉妹揃ってブサイクか・・・・。悲しい家庭だな。」
「家族全員ブサイクだからいいの。」
「ふ〜ん。・・・・で、この茶番はいつまで続くんだ?」
(いい加減ウザくなってきた。)
「じゃ、やめようっか、お嬢ちゃん?」
圭はあたしを子ども扱いする。
「その呼び方はヤメろ!」
あたしは怒鳴る。
(あたしを子ども扱いしていいのはあの人だけだ!)
なんだか、あの人との思い出を汚された気がした。
「じゃぁ、紗耶香お嬢様にする?」
圭は楽しそうに笑っている。
「殺すぞ。」
あたしは圭を睨む。
「ゴメン、ゴメン。そんなに怒らないでよ、紗耶香。あっ、そうそう、会いに来てくれて嬉しいよ。」
圭は人なっこい笑顔で言った。
「バ、バカ!誰がお前なんかに会いに来るんだよ1自惚れんな!」
あたしは圭の胸倉を掴む。
(からかいやがって!)
- 42 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月12日(木)23時50分45秒
- 凄くいい感じです。タイトルが・・・fateかぁ。
直ぐに圭ちゃんだと思ってしまった私はやはりやすヲタ。
- 43 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月13日(金)04時26分46秒
- 市井ちゃんを子供扱いしていい人物とは誰なんでしょうかね〜
って先走りすぎですね。今は市保を楽しむとしましょう。
- 44 名前:牛乳嫌い。 投稿日:2001年04月13日(金)12時17分43秒
- 今日一気に読ませて貰いました。やす…超いい感じす!!
ごまの天真爛漫なとことか、いちさんの黒いとことか、マジで良いですね。
やす…昔の女か…。密かにいや、カナリ嬉しいです。(w
これからも頑張って下さい。楽しみに読まして貰います!
あ。fateってどういう意味すか?自分…ヤスヲタ失格だな。(w
- 45 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月13日(金)20時27分35秒
- >>44 EXCEED英和辞典
fate
n. 運命, 宿命; めぐり合せ; 行く末; 成り行き; 死; 破滅;
【ギリシア・ローマ神話】 (the Fates) 運命の三女神 ((Clotho, Lachesis, Atropos)).
- 46 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年04月14日(土)22時55分22秒
- >名無し読者さん 保田さんだと分かってもらえてよかったです。
タイトルは直感的なイメージで決めてるので、
あまり深い意味はないです。
fateの意味を調べて頂いてありがとうございました。
ちなみに、自分の辞書には運命としか出てませんでした。
>43さん 市井さんを子ども扱いする人物は、
もう少し後になりますが出てきます。
その人は少し設定を変えてあるので分かりにくいと思います。
楽しんで読んでもらえたら幸いです。
>牛乳嫌いさん そう言ってもらえると嬉しいです。
自分は黒い人が好き(タバコ吸う女の子が好き。)なので、
市井さんはそういうキャラにしました。
ヤスヲタ失格じゃないですよ。
- 47 名前:It a fate?(3) 投稿日:2001年04月15日(日)00時12分12秒
- 「すぐにムキなるところがお子様なんだよ。」
圭はあたしの頭を撫でる。
「子ども扱いするなって言ってんだろう!」
あたしは圭を突き飛ばした。
圭はあたしが予想した以上に吹っ飛んだ。
「あっ!悪い・・・・・。」
あたしは圭の元に駆け寄る。
(もしかして、ちょっとヤバい・・・・?)
圭は倒れたままピクリとも動かない。
「お、おい!大丈夫?!」
あたしはゆっくりと圭に触る。
(まさか、死んでないよな?)
その瞬間、圭がいきなり動き出した。
「うわぁぁぁぁ!」
あたしはびっくりして尻もちをついてしまった。
「やっぱり子どもだね。でも、紗耶香のそういうところ好きだよ。」
圭は立ち上がって私に手を差し出す。
あたしは手を弾いて立ち上がる。
「・・・・・バカなことをするなよ。死んだかと思っただろ。」
「死んだ方がよかったのかもね・・・・・。」
圭は寂しそうに笑う。
(まただ・・・・・。)
あの寂しそうな笑い方。
(やめろよな、その笑い方。)
「なんで・・・・あんたは、そんなに寂しそうな笑うんだよ・・・・・。」
「えっ?」
圭はあたしの言葉に驚く。
「その笑い方されると、あんたを放っておけなくなるんだよ!」
あたしは圭を抱きしめていた。
(似てる・・・・からなのか・・・・。)
全然似てないのに。
(あの人とは・・・・・全然似てない!)
- 48 名前:牛乳嫌い。 投稿日:2001年04月18日(水)00時00分23秒
- >>45
ワザワザどうもっす!ありがとうございました。
運命かー カック良いですねぇ!!
やーっ やっぱ良いっすね〜寂しそうな笑顔に弱い、いちさん!
読んでて何だか無性に切なくて、きゅんってなりました、(w
「あの人」も気になるけどやっぱK1いいなぁ〜。
作者さん本当にお上手ですね!羨ましいです。
- 49 名前:弦崎 あるい 投稿日:2001年04月20日(金)15時10分52秒
- >牛乳嫌いさん いや〜、まだまだ下手ですよ。
この話は何度も書き直してやっとできましたから。
とりあえずこの話はせつなさっていうのを、
だせればいいかなぁと思っていたので、そう言ってもらえると
嬉しいです。
- 50 名前:弦崎 あるい 投稿日:2001年04月20日(金)15時13分34秒
- 家のパソコンが壊れたのでしばらく更新が
できません。
なので、気長に待っててくれると、嬉しいです。
- 51 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月21日(土)03時29分04秒
- 非常に残念です!!
でも、ゆっくり気長に待ってますよ〜!!
- 52 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月24日(火)14時05分17秒
- パソコン復活を祈らせて頂きますっ!
自分もまた絶対読ませてもらうんで。ずっと待ってます!
- 53 名前::弦崎あるい 投稿日:2001年04月28日(土)22時51分23秒
- >51さん お待たせしました。
やっとパソコンが治りました。
また書き始めるので見て下さい。
>名無し読者さん 待ってくれると言ってもらえて嬉しいです。
書けなかった分、なるべく毎日更新していくと思うので、
見て下さい。
- 54 名前::It a fate(4) 投稿日:2001年04月28日(土)23時05分20秒
- 「意外に大胆なんだね、こんな街中でいきなり抱きしめるなんてさ。」
圭は平然とした様子で言った。
街中で抱き合うことに抵抗がないらしい。
あたしはある。
人通りが少ないとはいえ、全くいないわけじゃない。
何人かは、あたし達をおもしろがって見ていた。
あたしはハッとてして圭から離れた。
「私を誰かとダブられせてるでしょ?」
圭の言葉にあたしは目線を下に向ける。
(結構鋭いな、こいつ。)
「別に、あんたに関係ないだろ・・・・。」
圭は、あたしのことを全てお見通しなのかもしれない。
「ふ〜ん、そういうこと言うんだ。ディープキスして、抱きしめ合った仲なのに。」
圭はニやリと笑う。
(くっ!こ、こいつ!)
「話したくないこと1つや2つ、人にはあんだろうが!」
「じゃぁ、私の全てを教えたら、紗耶香の全てを教えてくれる?」
圭があたしの首に手を回す。
「あんたの全てなんて知りたくないよ。」
あたしは圭の手を軽く払う。
圭は少し鼻で笑ったように見えた。
「そんなに人を好きになるのが怖い?」
「なにっ!・・・・・・・・・。」
あたしはそれ以上言葉が出なかった。
図星だったのかもしれない。
(あたしは人を好きになるのを怖がってる?)
あたしには、よく分からない。
- 55 名前::It a fate?(5) 投稿日:2001年04月28日(土)23時23分47秒
- 「図星?まぁ、こういうご時世だからね、人を好きになるのは勇気のいることだと思うよ。
好きな人と自分がいつまで生きていられるのかって思うと、怖いから・・・・。」
圭はまるで実体験を話すように言った。
(こいつも、好きな人を失ったのか?)
「分かったようなこと言うなよ!何も知らないクセに。」
あたしは低い声で言った。
圭は一瞬体をビクッと震わせた。
街はウザイくらいに騒がしいのに、あたし達の周りだけが沈黙していた。
空気が音を遮断したようだった。
「私の家に来ない?ヒマだったらだけど。」
その空気を壊したのは圭だった。
(こいつの家か・・・・・。)
できれば行きたくなかった。
これ以上こいつといると、思い出したくないあの事を言いそうになる。
それをあたしは恐れた。
自分の全てをさらけだしそうだから。
(それでも、こいつはあたしを受け止めてくれるんだろうか?)
何を考えているんだろう。
(こいつがあたしを受け止めてくれるはずがない。)
何を勘違いしているんだろう。
(こいつはそんな奴じゃない!)
「ヒマじゃない?それとも私の家になんか来たくない?」
圭は苦笑して言った。
「別に。・・・・行ってもいいよ。」
あたしはそう言った。
「じゃぁ、行こうか。この近くだからさ。」
なぜそう言ったのか分からない。
(行きたくないのに・・・・。)
そう言ったのは、心の底でこいつの期待しているからかもしれない。
(あたしを癒してくれるんじゃないかって?)
バガげてる。
(こいつはそんな奴じゃない!)
- 56 名前::It a fate?(6) 投稿日:2001年04月28日(土)23時34分04秒
- あたしが思っているような奴じゃない。
(あたしはこいつに何を求めているんだろう?)
あたしはこいつに何かを求めてる。
だから家に行くんだと思う。
なんだか自分がムカツいた。
でも、ムカツいている原因は他にある。
あたしはこいつに惹かれ始めてる。
それが余計にあたしをムカツかせる。
もう人を好きになることなんてないと思っていた。
なんでこんな奴に惹かれるんだろう。
(こいつはそれに気がついているんだろうか?)
だからあたしを家に呼んだのかもしれない。
好きになるのにはもう嫌だった。
(ただ、悲しい思いだけだから。)
このご時世に、恋しても、愛しても、傷つくだけだ。
心を壊すだけだ。
一生癒されない悲しみを背負うだけだ。
(そんなこと、分かっているのに・・・・。)
それでもあたしは惹かれている。
(バカだな。)
- 57 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月29日(日)03時10分13秒
- パソコン治ったんですね♪
久々に続きが読めてうれしいっす!!
- 58 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月29日(日)12時22分43秒
- 祝!PC復活ですね!自分のトコにレス下さってたんで、もしやって思ったんすけど。
なるべく毎日!?自分的には超嬉しいっすれど無理をなさらないで下さい!
では、頑張って下さい!
- 59 名前::False Days 投稿日:2001年04月29日(日)23時50分49秒
- >57さん やっとパソコンが治りました。
自分でもかなり嬉しいです。
これから色々展開していくので、楽しみしていて下さい。
>58さん 毎日って言ったのはGWの間は特に出かけないので、
ヒマだから毎日できるかなぁって思って。
もしかしたらできないかもしれないですけど・・・・。
がんばって書いていきたいと思ってます。
- 60 名前:Sanctuary(1) 投稿日:2001年04月30日(月)00時11分24秒
- 「ここの路地を入ったところだから。」
圭が薄暗い路地を指さして言った。
あたし達は薄暗い路地へと入って行った。
少し歩くと、薄汚れた看板が見えた。
どうやら、圭の向かっている所は喫茶店らしい。
看板は英語かフランス語か、よく分からない文字で書かれていた。
どっちにしても日本語じゃないので、その意味を知ることはできない。
(まぁ、別に看板の意味なんて興味ないし。)
「ここが私の家。って言っても人がいなかったから勝手に使ってるだけなんだけどね。
汚い所だけど、入って。」
圭が喫茶店のドアを開ける。
そのとき、チリンっと小さな鈴の音がした。
「お邪魔します・・・・。」
あたしはいちよ礼儀でそう言った。
中はアンティーク調だった。
大きくて古い時計、テーブルも椅子も相当使い込まれている。
「適当に座ってて、今コーヒーでも入れるから。あっ、コーヒー飲める?」
(子ども扱いするなよ!)
「そんぐらい飲める!」
あたしはつい大声を出してまった。
「別にそういう意味で言ったんじゃないよ、飲めない人もいるからさ。」
圭はクスクス笑いながら言った。
「・・・その、悪かった、怒鳴ったりして。」
あたしは圭の顔を逸らした。
「いいよ、気にしてないから。で、ブラックでいいの?」
圭は軽く髪の毛を掻き揚げる。
「あぁ、甘いのは好きじゃないんだ。」
(あのときは、苦くて全然飲めなかったのにな・・・・・。)
「分かった。じゃ、少し待ってて。」
圭はカウンターの行ってしまった。
- 61 名前:Sanctury(2) 投稿日:2001年04月30日(月)00時43分25秒
- あたしは改めて辺りを見回す。
元々なのかどうか知らないけど、中は薄暗い。
ランプがぼーっと辺りを照らしている。
店内は、そう広くない。
座れて20人くらいだ。
「なかなかいい所でしょ?」
圭はカウンター越しにあたしに話し掛ける。
「まぁ、悪くないかな。」
落ち着いた場所は嫌いじゃない。
でも、心が休まるっていうわけでもない。
あたしはカウンターの所に行った。
そして、腰を下ろした。
「コーヒー少し時間かかるよ。私はインスタントは嫌いだから、ちゃんとコーヒーメーカー
でやるからさ。」
「別にいいよ。」
そこで会話は途切れる。
あたしは元々話好きじゃない。
人から話を振られるが答えるが、自分から振るということはない。
圭もおしゃべりというわけでもなさそうだ。
だから会話はは自然に止まる。
「私は、誰でも家に入れるってわけじゃないんだよ。」
圭はポツリと呟いた。
「えっ?」
あたしは圭を見た。
- 62 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年04月30日(月)00時45分24秒
- 59の名前は手違いで入ってしまったもので、
別に名前を変えたわけじゃありません。
- 63 名前:Sanctuary(3) 投稿日:2001年04月30日(月)23時47分29秒
- あたしはなんて言っていいのか分からないから、ただ黙っていた。
「好きな人じゃないと家に入れないんだ。だから、紗耶香でこの家に入ったのは2人目。」
あたしは少し驚いた。
圭はもっと遊んでいる奴だと思っていたから。
「意外って顔してるね。そりゃあたしはたくさん人と寝たよ。でも、結構一途なんだよねって、
自分でそんなこと言わないか。」
圭はまるで、あたしの心を見透かしたように言った。
「ふっ、好きになるのは悲しすぎるから。だから、私は本気にならない。」
圭は少し苦笑した。
「・・・・じゃぁ、あたしを呼んだのは?」
(そんなこと聞いてどうすんだ?)
圭はあたしのことを好きなんだろうか。
(ちっ、何期待してんだよ!らしくねぇな。)
好きだって言われてどうする。
(あたしはこいつを好きになるのか?)
もう2度と、人を好きにならないって決めたのに。
「好きだからだよ。」
圭はあたしを見つめて言った。
それは、あたしが言って欲しい言葉。
「マジで?」
「まだ本気じゃないけどね。でも、好きになり始めてる。紗耶香は?」
あたしは圭から目線を逸らす。
「あたしは・・・・・。」
惹かれている。
(でも、そう言っていいのか?)
お互いに好きになり始めている。
きっと、あたしはこいつを愛してしまう。
そんな気がした。
- 64 名前:Sanctuary(4) 投稿日:2001年05月01日(火)00時05分18秒
- (でも、あのときみたいな思いをするのは嫌だ・・・・。)
苦い思い出が、あたしの本心を語らせない。
「好き」って言葉は重すぎる。
この世界でこれほど重い言葉はない。
あたしにとっては、何よりも重い言葉だ。
聞きたくもないし、言いたくもない。
「あんたのことは・・・・・嫌いじゃないよ。」
としか言えなかった。
自分の本当の気持ちを言うのが怖い。
好きなることが、怖い。
好きだと言えば、こいつはそれに答えてくれると思うから。
あたしにはそれが、ひどく恐しいことだった。
「ってことは、好きってことか。でも、なんでだろう・・・・・もう誰も好きにならないって思ってたのに、
紗耶香のこと好きになってる。きっと、似てるからかな、あの子に少しだけ。」
圭は寂しそうに笑う。
(そうか、圭が寂しそうに笑うのは、好きになった奴のことを思い出すからか。)
そいつと、あたしを重ねてるからだ。
(一体何があったんだ?)
めずらしいことだった。
(あたしが他人のことに興味を持つなんて・・・・。)
でもそれは、あたしとこいつが似ているからかもしれない。
似ているから、癒されるのを期待している。
あたしが出せない答えを、出せるんじゃないかって期待してる。
だから、惹かれているのかもしれない。
- 65 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年05月01日(火)00時07分24秒
- すいません!
毎日更新するって言ったのに、明日出かける予定が入ってしまって
多分更新できません。
帰ってきたら更新するので待っていて下さい。
- 66 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月01日(火)03時52分51秒
- 無理して更新する必要ないっす!!
作者さんのペースで頑張って下さい。
- 67 名前::弦崎あるい 投稿日:2001年05月02日(水)23時34分12秒
- >66さん そう言ってもらえると嬉しいです。
なるべく早いペースで書いていきたいなぁとは
思っているんですけど、なかなかうまくいきませんね。
- 68 名前::Sanctuary(5) 投稿日:2001年05月02日(水)23時54分39秒
- 圭の手が、あたしの頬に触れる。
「私は、あの子と紗耶香を重ねてる。あの子で負った罪を、紗耶香で拭おうとしてる。
重ねてるのは、私の方だね。」
圭の目からは涙がこぼれていた。
(なんで泣いてんだよ。)
あたしは、圭の頬に触れる。
「聞きたい。あんたが好きになった人のことが聞きたい。そうすれば、あんたの罪をあたしも背負えるから。
それで少しは、あんたの罪が軽くなると思うから。」
(何言ってんだろう?)
こんなこと言う気はなかった。
もしかしたら、あたしは圭と同じ罪を背負うことで、近づきたかったのかもしれない。
あたしは誰かに支えられないと、生きていけない。
(あたしはこいつを必要としてる?)
だから、圭に言ったんだろうか。
悲しすぎる過去に、押し潰されそうになっているから。
(助けて欲しいのか?)
心がこれ以上壊れる前に。
「じゃぁ、少しだけ昔話でもしようか。・・・・・少し、悲しい昔話でもね。」
圭はカウンターを乗り越えて、あたしの横に座った。
そして、ゆっくりと話し始めた。
「その子は、石川梨華って言ってね。まだ、確か16才だったかな、色が黒くて、声が少し変わって、
でも、かわいい子だったよ。梨華に会ったのは、今から2年前になるかな。ちょうど奇病が流行りだした年だった。」
(2年前か・・・・。)
- 69 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月03日(木)18時05分14秒
- あぁ…マジで切ないっすねぇ……。(涙
しかもこれからやすいしの兆し!!(興奮)……切ないんでしょうなぁ。
弦崎さんの文才には感服致しております!
これからも楽しみに読ませて貰います。頑張って下さい!
- 70 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年05月03日(木)22時54分40秒
- >名無し読者さん せつないって言ってくれると嬉しいですね。
この話は、とにかく読んでせつなさが伝われば
いいかなって思っているので。
やすいしは、まぁ、ちょっと好みで入れただけなんですけど。
せつない、と思います。
まだまだ文章的に甘い所もあると思いますけど、
楽しんで読んでれもらえると、書いてて嬉しい限りです。
- 71 名前:heavy cross(1) 投稿日:2001年05月03日(木)23時12分37秒
- 「梨華との出合いは、紗耶香とすごく似てた。まぁ、襲われてたのは私じゃなくて梨華の方
だったけど。だから、紗耶香に始めて会ったとき、あの子が助けに来てくれたんだって思った。
あのときから、私は重ねてたのかもね。・・・・・だから、キスしたのかな。」
圭はなんとも言えない顔をしていた。
嬉しそうでいて、でもどこか寂しそうで。
「助けたのか?なんか意外だな。」
あたしには、圭が人を助けるような奴には思えなかった。
「助けたって言うのかな?なんか声を掛けたら男の人達は逃げちゃってさ。梨華は、
何事もなかったような、っていうか無表情だった。なんて言ったらいいのかな、
まるで、世界に取り残されたって感じだった。・・・・あの子は、壊れてたよ。」
圭はどこか遠くを見つめる。
(一体、どこ見てんだよ。)
あたしはそんな圭を、ただ見ていることしかできなかった。
「梨華は、ただ私を見つめていた。何も写らない瞳で・・・・・。」
- 72 名前:heavy cross(2) 投稿日:2001年05月03日(木)23時28分29秒
- 2年前
「なんで・・・・・声掛けたんですか?」
女の子は今にも消え入りそうな声で言った。
「なんとなく。助けるのに理由がいるの?」
私はしゃがみ込んで言った。
「そうですか・・・・・。」
女の子は腑抜けのように言う。
女の子にはまるで生気というものが感じられなかった。
私はそのとき思った。
この子の心は、ここにはないんだ。
自分という人間が存在していないような顔してる。
女の子の胸元は少し乱れていた。
された後なのか、されそうだったのかは分からない。
ただ、きっとこの子は抵抗しなかったと思う。
「私の家に来ない?」
なんでこんなことを言ったのかは分からない。
理由があるとすれば、放っておけなかったから。
このまま見捨てるということが、私にはできなかった。
そのときから、私はこの子に惚れていたのかもしれない。
「なんで・・・・ですか?」
女の子は虚ろな瞳で私を見つめる。
「強制じゃないから、嫌なら別にいい。ただ、ご飯ぐらい食べれるけど?」
私は笑顔を作って言った。
別に作ったところで、意味はないんだろうけど。
女の子は少しだけ考え込んでから、
「・・・・・・いいですよ。」
と静かに頷いた。
見知らぬ人が家に来いと言われても、平気でついて行ってしまう。
全てが受け身なんだと思う。
拒む、ということをしない。
この子は全てを受け入れてる。
私は立ち上がって、女の子に手を伸ばす。
女の子は、ゆっくりと私の手を掴んで立ち上がった。
「名前なんていうの?」
「・・・・・石川梨華です。」
それが、あの子との始めての出合いだった。
- 73 名前:heavy cross(3) 投稿日:2001年05月04日(金)23時27分46秒
- 言われたことは、何でもする。
聞かれたことは、なんでも答える。
でもそれじゃ、機械と一緒にだよ。
「私は保田圭。覚えといてね。」
私は女の子の手を取り、家に向かった。
放っておけなかった。
自分に似てたから。
私も全てを受け入れてる。
それでもいいと思っていた。
別に悪いことじゃない。
だって、そうしなきゃ生きていけないから。
この世の中を生き抜くためには、それしかない。
生きる術がそれしかないのだ。
でも、この子はまだ幼い。
この生き方はあまりにも残酷だ。
世の中の汚さを知るから。
自分が汚れてしまうから。
だから、全てを受け入れるのは無理だ。
きっとこの子は、重いものを背負っているんだと思う。
その細身の体が、壊れるくらい重いものを。
その心が、壊れてしまうくらいのものを。
だから、放っておくことができなかった。
それから私達は一緒に暮らし始めた。
ぎこちない共同生活だったけど、それなりに私は楽しかった。
あの子はどうだか知らないけど。
それでも、あの子にとってこういうのは必要だと思う。
あの子は、誰かが付いてなくちゃいけない。
誰か、守ってくれる人が必要なんだ。
- 74 名前:heavy cross(4) 投稿日:2001年05月04日(金)23時41分56秒
- 元々、梨華には行く所がなかった。
この世で独りぼっちだった。
あの子は家族を亡くして、住む所を亡くして、生きる意味を無くしてた。
私と同じだった。
だから、なんだろうか?
私はあの子を抱いた。
別に深い意味なんてなかった。
愛していたわけでもない。
それは、ただの気休め。
分かっていた。
そんなのは何の気休めにもならないってこと。
あの子の重荷を、一時的な快楽で紛らわすことはできない。
そんなことは、分かっていた。
でも、私にできるのはこれくらいしかないから。
私にあの子は癒せない。
始めてあの子を抱いたとき、
あの子は、
「私は汚れてますよ。」
って悲しい目をして言った。
「そんなの知ってるよ。まぁ、私だって似たようなものだし。」
私は笑って返した。
あの子は、なかなか心を開いてはくれなかった。
一生、心を開かなくてもいい。
私はあの子のそばに黙っているだけだから。
なんでここまで、この子に肩入れをするのか自分でも不思議だった。
自分に似ているから?
まるで、運命の人みたいだ。
もしかしたら、そうなのかもしれない。
梨華は、私にとって運命の人なのかもしれない。
半年過ぎた頃から、あの子はだんだんとと笑うようになっていた。
あの子の壊れた心が戻りつつあった。
やっと、本来の姿を見せてくれるようになった。
毎日がすごく楽しくて、幸せで。
その頃には、もう一緒に住むのが当たり前になっていた。
- 75 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月05日(土)05時03分34秒
- ここまでだとやすいし、いい感じですね。
でも当然このままでは終わらないんですよね。
この先、切ないのかなあ・・・
- 76 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年05月05日(土)23時04分18秒
- >名無し読者さん ここまでいい感じなんですけどねぇ、
当然これで終わりじゃありません。
この先はかなり、せつないです。
- 77 名前:heavy cross(5) 投稿日:2001年05月05日(土)23時21分33秒
- 「あぁ〜、お腹減ったぁ。」
私はカウンターにもたれ掛かる。
「もう少しで出来ますから、待ってて下さいね。」
梨華は手を動かしながら言った。
私は梨華が料理を作っている所が好きだった。
すごく、楽しそうに作るから。
前は無表情で作っていたのに、今は楽しそうに笑いながら作っている。
たまに鼻歌を歌ったりする。
まぁ、音を外したりするけど。
「私も手伝うよ。」
私はカウンターに向かった。
「じゃぁ、このスープ見てもらえますか?」
「OK。」
こうやって笑いながら料理する日が来るなんて、あのときは思いもよらなかった。
ふと見た梨華に私の胸が高まった。
すごくかわいく見えたから。
だから、思わず後ろから抱きしめてしまった。
「や、保田さん!?」
梨華は半年一緒に住んでいても、私のことを保田さんと呼んだ。
私にはそれが少し悲しかった。
なんだか、まだ梨華と距離がある気がして。
「少しだけ、こうしていたい・・・・。」
少しでも、梨華との距離を縮めたい。
「少しだけですよ。このままじゃ料理できないですから。」
梨華は少し怒っていたけど、嬉しそうだった。
梨華には色んなことを教わった。
料理だって、この子から作り方を教わった。
2人ともあんまりうまくないけど。
それ以外のことだって、たくさん教えてもらった。
梨華は、いつも幸せそうだった。
そんな姿を見ていると、心が癒された。
私達はお互いを必要としていた。
気がつくと、本気で好きになっていた。
女同士だとかそんなことは関係なかった。
ただ、梨華がいないと生きていけなかったら。
愛していた。
だから、私も毎日が幸せだった。
すごく、幸せだった・・・・・。
- 78 名前:heavy cross(6) 投稿日:2001年05月05日(土)23時49分38秒
- 「あの頃は、本当に幸せだったよ。一生の中で一番幸せなときだったと思う。」
「じゃ、なんで別れ・・・・・。」
あたしは言おうとして気がついた。
このイカれた世界で恋をしてはいけないことを。
愛してはいけないことを。
圭は少し自虐的に笑った。
あたしにはそう見えた。
「・・・・・死んだから。そのとき始めて・・・・気がついたよ。・・・・恋しちゃ、
好きになっちゃ・・・・いけないんだって。愛することは罪なんだって・・・・。」
圭の目からは絶えず涙が流れている。
あたしは、無意識のうちに圭を抱きしめていた。
今のあたしにはそれしかできないから。
(それ以外、あたしに一体何ができる?)
「梨華は・・・・泣きながら・・・・死にたくない・・・・・死にたくないって・・・・
何度も言った。・・・・・でも私には・・・・どうすることもできなくて・・・・ただ
・・・梨華を・・・・抱きしめてることしか・・・・できなくて・・・・。」
あたしは圭を強く抱きしめる。
(重たいものを背負っているんだ・・・・。)
「でも梨華・・・・・泣きながら・・・・笑ってた。・・・・圭に会えて・・・・よかったって
・・・・大好きだよ・・・って言って・・・・死んでいった・・・・。」
あたしもいつの間にか泣いていた。
「・・・なんで・・・・こんな私が生きて・・・・梨華や・・・・家族が・・・死なないと
・・・・いけいなんだろう。・・・・私が・・・死ぬべき・・・だった。」
泣いている圭は、とっても弱く見えた。
今にも壊れそうだった。
「そんな・・・そんなことねぇよ!あたしには圭が必要だよ!いないと困るんだよ!
だから、死んだ方がいいなんて言うなよ!!」
あたしはまっすぐ圭を見つめて言った。
「・・紗耶・・香・・・。」
あたし達はしばらく抱きあっていた。
お互いの存在を確かめるように。
- 79 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月06日(日)11時12分45秒
- あぁ・・・・これは本当に悲しいですわ・・・。
自分小説って感情移入して読む派なんですけど、もうハンベかきました。(ニガワライ
なんつか悲しすぎる運命ですね。
せめて今度ばかりは圭にも紗耶香にも幸せになって欲しいんすけど・・・。
そうは行かないんでしょうなぁ。
ほんっとに作者さんスゴイっす!!マジで頑張って下さい!!
- 80 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年05月06日(日)23時39分48秒
- >名無し読者さん 自分でも悲しい話作ってる
なぁって思います。
でも死んだとしても、満足した死に方ができれば
それは幸せなのかなぁって思ったりして書いてます。
頑張って書くので、待っていて下さい。
- 81 名前:haevy cross(7) 投稿日:2001年05月06日(日)23時53分38秒
- あたし達はお互いを必要している。
(いないとダメだ。)
あたしには圭が必要だった。
圭じゃないとダメなんだってことに気づいた。
(圭じゃなきゃ、あたしの傷は癒されない。)
一体、どれくらい抱き合っていたんだろうか。
圭は、いつの間にか眠っていた。
あたしは、圭の温もりを感じていた。
静かな寝息を立てている圭の寝顔が、あたしにはとても愛しく思えた。
(この温もりはあの人じゃない・・・・。)
あたしは、そっと圭の額に優しくキスをした。
(あの人とダブらせなくたって、あたしは圭のことが好きだ。)
イカれた世界で、恋をした。
人を好きになってはいけない世界で、あたしは人を好きになった。
あたし達は知っている。
愛しい人を失う恐怖や、悲しさ。
そして、自分がただ愛しい人の死を、見ていることしかできない無力さ。
それを知りながらも、あたし達は愛し合う。
傷つくのを知りながら、それでも愛さずにはいられない。
あたしは圭を愛してしまった。
(あの人以外、2度と人を好きにならないって決めたのに・・・・・。)
なんで、あたしは恋に落ちたんだろう。
これが運命というものなんだろうか。
あんな思いは、もう2度としたくなかった。
(真里・・・・・・。)
- 82 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月07日(月)03時43分03秒
- ついに、市井が最初に愛した人の名が出てきましたね。
それにしても保田の過去、せつないな〜
そして市保、これ自体も過去の話なわけだから・・・
- 83 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年05月09日(水)23時17分55秒
- >名無し読者さん 何か過去の話ばかりなんですか、
やっぱりこの過去の話がないと物語りが
繋がらないので、書くことにしました。
どんどん遡っていきますが、そういうことなので
了承して下さい。
- 84 名前:bitter dream(1) 投稿日:2001年05月09日(水)23時40分42秒
- あの人と始めて会ったのは、3年前のことだ。
あの人は、母さんが再婚した奴の連れ子だった。
母さんが再婚したとき、別にあたしは驚かなかった。
(そんなに男に飢えてたのかよ。)
とただ冷めた目で見ていた。
まるで、他人事のように。
母さんはあたしのことなんて、どうでもいいんだろうし。
あたしが、母さんのことをどうでもいいように。
お互い好き勝手やってればいい。
迷惑かけなきゃそれでもいいんだけど、あたしの場合はかけまくった。
あたしは近辺で有名な不良だった。
警察だって飽きるほど行った。
近所の奴等にはロクな目で見られていない。
母さんは、それをずいぶんと気にしているようだった。
(他人なんてどうでもいいじゃん。)
あたしは他人の目なんか気にしない。
母さんは、色々ストレスが溜まっていたらしい。
きっと、誰か愚痴を聞いてくれる相手でも欲しかったんだろう。
だから再婚したのかもしれない。
1人で生きていくのが辛いから。
(あぁ、アホくさ。)
再婚した人はバツイチで、あたしより2つ年上の子どもがいると聞かされていた。
「お姉さんができてよかったわね。」
って母さんは言ってた。
あたしは別に嬉しくなかった。
ただ、ウザイ奴が増えるとしか思ってなかった。
あの日は少し速めに帰ってきた。
リビングに行くと、中年のおやじと中学生くらいの子どもがいた。
(こいつらが再婚したおやじとそのガキか。)
「こんにちわ、紗耶香ちゃん。」
ガキの方が挨拶してきた。
それが、あの人との始めての出合いだった。
初対面だっていうのに、ニッコリと笑って挨拶する。
(馴れ馴れしい奴)
それがあの人の第一印象だった。
両端で2つに結んだ髪は、意外なことに茶髪だった。
少し童顔で、背もあたしより少し低い。
どう見えてもあたしより年下に見えた。
笑っているところは、犬みたいに見えた。
あたしは母さんに挨拶しなさいと言われて、渋々と挨拶した。
- 85 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月10日(木)03時07分09秒
- ついに紗耶香の恋愛の原点まで来ましたね。
また、泣かされちゃうのかな・・・
- 86 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年05月11日(金)23時12分09秒
- >名無し読者さん そうですね、これが市井さんの
原点でもあり、この話にとってのキー的な部分です。
泣けるかどうか分かりませんけど、泣かせられるように
がんばりたいです。
- 87 名前:bittar dream(2) 投稿日:2001年05月11日(金)23時30分14秒
- (ウザイんだよなぁ、こういうの。)
あたしはさっさと部屋に帰って寝たかった。
なんか色々話があって、ようやく部屋に戻れると思ったらあいつが話し掛けてきた。
そのときは名前も知らなかった。
聞いたけど忘れた。
そんなことはどうでもよかった。
興味がなかった。
(なんか犬ぽっいから、名前は犬でいいや。)
あたしはこれから、こいつを犬と呼ぶことにした。
犬はあたしの顔を見上げて言った。
背が低いから。
「ねぇ、紗耶香ちゃんの部屋に入ってもいい?」
嫌だと言おうと思ったけど、なんとなく入れてもいいと思った。
ホントに、ただなんとなく。
「別にいいけど、部屋は2階だから。」
私は愛想なく答えた。
あたしは達は2階に上がった。
「ここだよ。」
あたしの部屋は、2階の突き当たりにある。
昔は父さんの部屋だった。
「どうぞ。」
あたしがドアを開けて、犬を部屋の中に入れた
部屋に人を入れるのは久しぶりだった。
「お邪魔します。」
犬は楽しそうだった。
(何がそんなに楽しんだよ。)
「適当に座りなよ。」
あたしはそう言ってソファーにドカッと座った。
犬は物珍しそうに部屋を見回している。
「意外にキレイにしてんだね。あっ、意外っていうのは余計か。」
犬は1人で笑って、ソファーの近くに腰を下ろした。
ソファー二人座れるけど、あたしが1人で占領してるから。
「クッション使えば?」
さすがに地べたは足が痛いと思って、近く似合ったクッションを渡した。
「ありがとう。紗耶香ちゃんは優しいんだね。」
犬はニッコリと笑って言った。
(あたしが優しい?なわけないじゃん。)
「別に。」
あたしはクールに返す。
部屋は、それから沈黙した。
- 88 名前:bittar dream(3) 投稿日:2001年05月11日(金)23時50分59秒
- 大体、今始めて会ったばかりで話が弾むわけがない。
(あたしは、話するの好きじゃないし。)
それに、犬とはどうも人間的に合わない気がする。
根本的に性質が違うと思う。
「・・・・・なぁ、あんた名前は?」
なのに、あたしは話し掛けていた。
自分でも驚いた。
あたしから話し掛けるなんて滅多にないから。
(何話し掛けてんだよ。)
話をするのは、自分と相手に接点を見つける為だと、どっかで聞いたことがある。
だからあたしは話したくなかった。
他人との接点を持ちたくなかったから。
他人を拒んでいた。
けれど、今あたしは犬に話し掛けた。
他人との接点を求めている。
(求めてなんかない!)
そんなのはいらない。
「矢口真里、だけど。・・・・・お母さんから聞いてなかった?」
犬、もとい矢口は不思議そうな顔をする。
「聞いたけど忘れた。」
あたしはボソッと言った。
「プッ!ふっふふ、あははは、おかしい〜!あはははははは!!」
甲高い声で矢口は笑った。
明るい笑顔は、子犬みたいだった。
なんだか、矢口が輝いて見えた。
(何がそんなにおかしいんだよ。)
あたしは怒らない矢口にムカツいた。
自分の名前を知らないって言われたのに、矢口は笑っている。
矢口といるとペースが崩れる。
それが、なんだか怖かった。
(あたしがあたしじゃなくなりそうで。)
「あははは、紗耶香って、ぷっははは、天然?」
矢口はまだ笑っている。
あたしは無意識のうちに矢口に手を伸ばしていた。
そして、優しく頭を撫でた。
(何やってんだあたしは!)
なんでこんなことしたのか、自分でも分からなかった。
たぶん、矢口が甘えてる子犬に見えて、それがすごくかわいかったらだと思う。
だから気がついたら、頭を撫でいた。
- 89 名前:bitter dream(4) 投稿日:2001年05月12日(土)23時45分36秒
- 「あっ・・・・・。」
矢口はあたしの手を見つめる。
あたしは矢口の頭から手を離す。
「その・・・・犬みたいだったから・・・。」
あたしはボソッと呟いた。
「犬?ハムスターがいいなぁ。」
矢口は口を尖らせる。
(怒る論点が違うじゃないのか?)
それがあたしには、なんだかおかしかった。
笑いのツボにハマった。
「ふっ、あっはははははは!」
だからあたしは大声で笑った。
矢口もつられて笑った。
こんなに笑ったのは久しぶりだった。
矢口があたしを変えてる。
(あたしが、変えられている?)
「紗耶香ちゃんって笑うとかわいいじゃん、もっと笑った方がいいよ。」
今度は矢口があたしの頭を撫でた。
(やめろよ・・・。)
あたしは他人に触られるのが嫌だった。
手を払おうと思うのに、体が動かない。
なんだか不思議と心が和んだ。
そのときの矢口は、少しだけあたしより年上に見えた。
「ふん。子ども扱いするなよ。」
あたしは少ししてやっと手を払った。
(こんなのあたしらしくない!)
人に甘えたくなかった。
人に触れたくなかった。
触れられたくなかった。
本当は、ただ怖かっただけのかもしれない。
人に心を許すことが。
裏切られたとき、自分が傷つくのが怖いのかもしれない。
「いいじゃん。紗耶香ちゃんはまだ子どもなんだから。」
矢口は優しく微笑んで言った。
「子どもじゃない!」
あたしはそっぽを向く。
(これじゃガキじゃん・・・・・。)
矢口と触れあうことが、急に怖くなった。
だからそっけない態度で矢口に接した。
「少なくとも私より子どもだよ。だから、甘えていいよ・・・。」
矢口はあたしを抱きしめようとする。
ゆっくりとあたしの体に触れる。
突き飛ばしたいのに、体が言うことを聞かない。
(イヤだ!触れられたくない!)
あたしは拒む。
でも、体は動かない。
矢口の小さい体があたしを包み込む。
(なんでこんなにも簡単に、他人を受け入れてしまうんだろう?)
矢口は少し甘い匂いがした。
- 90 名前:bitter dream(5) 投稿日:2001年05月13日(日)23時58分56秒
- (いい匂いがする・・・。)
すごく温かかった。
どうして矢口を拒めないんだろう。
もしかしたら、望んでいたのかもしれない。
誰かに抱きしめられることを。
ずっと、甘えたかったのかもしれない。
でもそれは、弱い自分を認めるようでイヤだった。
矢口は全部見抜いたのかもしれない。
それとも、恋愛感情か何かあったんだろうか。
(まさか、そんなことはないだろう。)
不思議な奴だと思った。
こんなにも簡単に、あたしの中に入ってきてしまうから。
母さんの声が聞こえた。
どうやら晩ご飯が出来たらしい。
その声であたし達は離れた。
耳たぶが少し熱かった。
(照れるのか?らしくない!)
そのときからだった。
あたしが矢口に興味を持ち始めたのは。
「さっ、下に降りよう。」
矢口は何事もなかったように部屋から出て行く。
あたしはしばらくボーってしていた。
そして、めんどくさかったけど下に降りた。
久しぶりの大勢での食事。
別にあたしは嬉しくも何ともなかった。
人数多くて、逆に少しウザかった。
できればあたしは1人で食べたかった。
集団というのは、あたしの性分に合わないらしい。
だけど、あたしは矢口が気になっていた。
矢口と目が合うと、あたしは逸らした。
見ていることができなかった。
矢口は、ただ笑っていた。
あの笑顔を見ると、全てを見抜かれそうで怖かった。
あたしは逃げていたのかもしれない。
だから、夜遊びがひどくなった。
- 91 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月14日(月)04時16分16秒
- 素直になれない市井・・・
つっぱてる所が逆にかわいいですね。
- 92 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年05月16日(水)23時42分04秒
- >名無し読者さん この市井さんのキャラは
自分でも好きで、結構気に入ってます。
お姉さんな感じの矢口さんも好きなんですけどね。
- 93 名前:bitter dream(6) 投稿日:2001年05月16日(水)23時57分42秒
- 夜遊びは、中学入った辺りからやっていた。
(いつからか、こんな風になったんだろう?)
自分でも自覚がない、
今さら悔いても、しょうがないのは分かっている。
(もう遅すぎる・・・・。)
その日も帰りが遅かった。
この頃は毎日夜遊びをしていた。
よく、近所からうるさいと苦情がきていた。
近所では、あたしが夜遊びをしていること知っているから。
前まで母さんは、あたしが帰ってくるまで起きててくれだけど、この頃は先に寝ている。
(どうせ夫とお楽しみ中なんだろ?)
本当は、家に帰りたくなかっただけかもしれない。
家にあたしの居場所はないから。
だからって、外にあたしの居場所があるわけじゃない。
どこにも、あたしの居場所なんてない。
あたしは1人だった。
ときどき、生きてることがウザかった。
死んでも、どうせ悲しむ奴なんていないから。
あたしが死んだらみんな喜ぶと思う。
(いなくなった方がいい存在なんだ。)
そんなことは、前から知っていた。
だから、死のうと思ったときもあった。
でも、今は死ねなくなった。
あたしの帰りを待っている奴がいるから。
- 94 名前:bitter dream(7) 投稿日:2001年05月17日(木)00時13分11秒
- 矢口は、あたしがどんなに遅く帰ってきても絶対に待っていた。
そしてあたしの顔を見ると、
「おかえり。」
と笑顔で言ってくれた。
それから、いつも簡単な料理を作ってくれた。
あたしには矢口が分からなかった。
何を考えてんだか理解できなかった。
あたしは矢口に何もしない。
求めたって答える気はないし。
きっと、応えられない。
でも、矢口はあたしを本気で心配してくれた。
友達よりも、親よりも、誰よりもそばにいてくれた。
怒ってくれたし、泣いてくれた。
あたしの話をちゃんと聞いてくれた。
あたしをちゃんと見てくれた。
こんな奴は始めてだった。
そして、あたしは気づいた。
矢口は何のメリットなしで、あたしに付き合ってくれていることに。
だから、死ぬ気がなくなった。
矢口の為に生きようと思った。
(誰かの為に生きるなんて、アホらしいと思ってたのに。)
矢口はあたしの生きる証だった。
気がついたら、矢口のことを好きになっていた。
分かっていた。
それは、報われない思いだと。
してはいけない恋だと。
でも、たまらなく好きだった。
矢口はあたしのことを、妹としてしか見てない。
それでも、惹かれていった。
矢口の優しさに惹かれていった。
初めてだった。
こんなにも他人を欲したのは。
あたしは矢口を欲していた。
(いつからだろう・・・・・、あたしが矢口を姉として見なくなったのは。)
- 95 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月17日(木)03時31分45秒
- せつない感じですね・・・
続きが楽しみです。
- 96 名前:happy daily(1) 投稿日:2001年05月17日(木)23時28分18秒
- その日は、親は2人で旅行に行くということでいなかった。
新婚旅行の代わりらしい。
(アホらしい。)
でも、少しだけ感謝はしている。
矢口と2人っきりでいられるから。
そう、あんなこと言うつもりはなかった。
あたしは矢口の部屋に行った。
ヒマだから本でも借りようと思って。
本当にそれだけだった。
なのに、矢口の顔を見たらこの手に抱きつくなった。
矢口が欲しくなった。
自分だけのものにしたくなった。
感情が押さえられなくなっていた。
「あのさ・・・・矢口。」
あたしは緊張していた。
すごくドキドキしている。
「ん?何かいい本あった?」
矢口は机に向かったまま、こっちに振り向かずに言った。
ためらった。
(本当に言っていいのか?)
でも、言わずにはいられなかった。
思いが止まらない。
「その・・・好きなんだよ・・・・矢口のこと・・・。」
あたしは気恥ずかしくなった。
告白するなんて初めてだから。
耳たぶが少し熱かった。
「私も好きだよ、紗耶香のこと。」
矢口は笑顔で言った。
いつものように人懐っこい笑顔だった。
「そうじゃない!本気なんだよ!」
あたしは強引に矢口を振り向かせた。
振られるのは分かっていた。
きっと、拒否される。
それでも、思いを伝えずにはいられなかった。
あたし達は、けして結ばれない。
なのに矢口は言った。
「私も本気で紗耶香のこと好きだよ。ちゃんと恋愛感情あるもん。」
矢口は平気な顔で言った。
いつものように笑って。
(あたしのことが好き?)
その言葉が信じられなかった。
「本当に?」
あたしは矢口の顔を覗き込んで聞いた。
「本当だよ。大好きだよ、紗耶香。」
矢口が両手を広げる。
あたしは矢口に抱きついた。
- 97 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月19日(土)03時04分33秒
- 素直に、この二人の幸せの時間が長く続く事を願いたい。
- 98 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年05月19日(土)23時48分47秒
- >名無し読者さん 何とも言えないですねぇ、
今の時点では。
とりあいず、せつなくはなります。
- 99 名前:happy daily(2) 投稿日:2001年05月20日(日)00時03分44秒
- あたし達は抱き合った。
お互いを強く抱きしめた。
温もりを感じていた。
(ずっとこのままでいたい・・・・。)
本心から嬉しかった。
真里があたしを受け入れてくれたことが。
人生で、1番嬉しかったことかもしれない。
初めて他人と心通じた瞬間。
あたしは、そっと真里の唇に唇を重ねた。
柔らかくて、温かかった。
それは、あたしの初めてのキスだった。
なんだかドキドキした。
(これがキスっていうものなんだ・・・・・。)
真里が愛しかった。
こんなにも、人を愛したことは初めてだった。
あたしはゆっくり唇を離す。
「ねぇ、しよっか。」
真里が身元で囁く。
それは、とても甘い囁きだった。
理性が働かなくなるくらいに。
あたし達は服を脱いだ。
部屋の薄明かりが、あたし達をぼんやりと照らしていた。
あたし達はベットに移動した。
最初は、ただ座ってお互い見つめ合っていた。
「いい?」
それから真里が不安そうに聞く。
「真里ならいいよ。」
あたしは真里の頬を優しく撫でる。
こんなにもあたしは変わってしまった。
(こんなに他人に優しくしてる・・・・・。)
「・・・・・紗耶香。」
真里がそっとあたしを押し倒す。
そして、濃厚なディープキスをする。
息ができないくらい激しくなっていく。
真里の舌が、私の舌を絡んで離さない。
手慣れている感じがした。
誰かとしていたのかもしれない。
(でも、今はそんなことどうでもいい。)
真里はあたしを見てるから。
- 100 名前:happy daily(3) 投稿日:2001年05月20日(日)00時31分12秒
- 「ん・・・あっ・・・。」
あたしは矢口の舌を舐める。
矢口は舌を離すと、首筋に舌を這わせる。
「くぅ・・・・んっ・・・。」
あたしはせつない吐息を漏らす。
矢口の舌が、ゆっくりと鎖骨から胸へと辿り着く。
「あん・・・・うぅ・・・・はぁん・・・・。」
そして、胸を口の中で弄ぶ。
「紗耶香・・・・すごくかわいいよ・・・。」
手でだんだんと激しく揉んでいく。
「くぅ・・・あん・・・・・。」
あたしは、何がなんだか分からなくなっていた。
頭が真っ白になっていった。
もう、何も考えられない。
矢口があたしの秘部に手を伸ばす。
そして、そっと指でなぞる。
「くっ・・・・んっ・・・・あっ・・・・。」
初めての感覚に体が震えた。
「あぁ・・・・そ、こは・・・・ダメ・・・・。」
「感じてるね。・・・・ほら、こんなに濡れてる。」
矢口があたしの愛液のついた指を見せる
そして優しく笑うと、あたしの秘部に顔を埋めた。
舌が入ってくるのが分かった。
矢口は丹念に愛撫する。
「くっ・・・あぅ・・・・ぁ・・・んん・・・。」
だんだんと秘部が熱を帯びてくるのが自分でも分かった。
「入れるよ、いい?」
矢口の口元にはあたしの愛液がついていた。
優しくあたしにキスすると、ゆっくりと指を入れた。
「んん!・・・・うっ・・・・あぁん・・・・。」
「・・・・動かすよ。」
矢口がゆっくりと指を動かす。
「はぁ・・・あん・・・・あぁっ・・・・。」
今まで味わったことのなかった快感があたしを襲う。
指がだんだんと激しく動く。
「や・・ぁ・・・お・・か・・しく・・・な・・り・・そう・・。」
「おかしくなって・・・・いいよ。」
矢口が一気に奥へと突き上げる。
「あっ・・・はぁあ・・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
あたしは叫んだ。
体がビクッと跳ねた。
そして、ゆっくりとベットに沈んだ。
心地よい脱力感だった。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・。」
あたしの荒れた息はなかなか静まらない。
矢口は抱きしめながら、あたしの髪を優しく撫でる。
それから、キスしてくれた。
朝まで2人は抱き合って寝た。
あたしと矢口が結ばれた日。
幸せだった。
- 101 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年05月20日(日)00時34分54秒
- いきなりエロに入ってしまってすいません!
予告すれば良かったですね。
それから、下手ですいません!
それにhappy daily(2)で矢口さんが真里になってますけど、
間違えました。訂正です。
- 102 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月20日(日)04時37分26秒
- エロ歓迎ですよ(w
萌えてしまいました・・
- 103 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年05月20日(日)23時48分46秒
- >名無し読者さん そう言ってもらえると本当に嬉しいです。
本当に、自信がなかったので。
萌えてくれれば、本望です。
- 104 名前:happy daily(4) 投稿日:2001年05月21日(月)00時04分54秒
- 「ん・・・・う〜ん。もう、朝か・・・・。」
あたし起き上がって大きく背伸びをする。
カーテンから漏れる光が眩しい。
隣では、まだ矢口が寝息をたてて眠っている。
あたしはそっと矢口の髪を撫でた。
愛しい人が隣で眠っている。
こんなにも人を愛しいと思ったことはなかった。
(まさか、あんなことになるとはな。)
昨日のことを思い出しすと、耳たぶが熱くなる。
でも、後悔はしていない。
よかったと思っている。
矢口と繋がっていられるから。
(朝飯でも作るか。)
あたしは静かにベットから降りようとする。
「う・・ん・・・。」
矢口が寝返りをうつ
(ヤバ、起こしたかな?)
矢口は目を擦りながらあたしを見上げる。
目が合った。
あたしはどう接していいのか分からなかった。
なんだか気恥ずかった。
「おはよう、紗耶香。」
矢口はいつもと変わらない。
「あ、あぁ、おはよう・・・・。」
あたしはぶっきらぼうに言った。
でも、微笑んでいた。
自分でも信じられなかった。
こんなに他人に優しく接している。
でもそれは、矢口だから。
大切な人だから、優しくなれる。
「あぁ〜、昨日はやっちゃったね。少し早かったかな?」
矢口はベットから這い出る。
「そういうこと朝っぱらから言うなよ!」
あたしは顔が上気するのが自分でも分かった。
「あれ?顔が赤いよ?もしかして照れる?ふふっ、紗耶香って意外にウブなんだ。」
矢口が楽しそうにあたしの顔を覗き込む。
「う、うるさい!」
あたしはソッポを向く。
(なんだか、楽しいな。)
- 105 名前:happy daily(5) 投稿日:2001年05月21日(月)00時17分07秒
- 「さてと、着替えてご飯作らないとね。紗耶香はお風呂でも入ってくれば?」
矢口はあたしの抗議を無視して着替え始まる。
「じゃぁ、そうしようかな。」
あたしは手早く昨日の服をきた。
そして、部屋から出て行こうとすると、
「あ、待って。」
矢口が引き止める。
「ん?何だよ。」
とあたしが振り向くと同時に矢口が唇を重ねる。
(うえぇぇぇぇぇ?!)
「な、な、な、な、な、何するんだよ!」
いきなりのことにあたしは動揺した。
「朝のキス。」
矢口はニッコリ笑って言った。
「バカなことやるなよ!さっと飯作りに行け!」
そう言い残して、あたしは足早に部屋を出た。
正直、嬉しかった。
なんだか、心が弾んでいた。
こんなに幸せを感じたことは初めてだった。
シャワーを浴び終えてダイニングに行くと、すでに朝食に朝食が出来ていた。
スクランブルエッグに、ハムとトースト。
それにコーヒーが置いてあった。
どうやら矢口はあたしを待っていたようだ。
「先に食べてればよかったのに。」
あたしはドカッと椅子に座る。
「だって、一緒に食べたかったから。」
矢口は楽しそうに笑う。
その笑顔が、たまらなく愛しかった。
- 106 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月21日(月)03時19分02秒
- 甘〜いさやまりいいですね。
特に照れてる市井がカワイイ
- 107 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年05月23日(水)23時21分24秒
- >名無し読者さん 全体的にちょっと暗めだし、
せつない話なもので・・・・。
少し明るく、甘い感じにしようと思ったら
こうなりました。
- 108 名前:happy daily(6) 投稿日:2001年05月23日(水)23時42分03秒
- 「あ、そうだ。紗耶香ってコーヒー飲めるっけ?」
「ん?たぶんな。」
と言って、あたしはコーヒーを一口飲んでみる。
(なんだよ、これ?!)
「ウゲェ〜、苦っ!」
そのときあたしは、初めてコーヒーというものを飲んだ。
まさか、こんなにマズイもんだとは知らなかった。
「飲めない・・・・・。」
「そう言うと思った。はい、オレンジジュース。」
矢口は自分の所に置いてあったオレンジュースをあたしに渡した。
そして、コーヒーを自分の所に持ってくる。
(矢口は、あたしがコーヒーを飲めないの知っててやったのか?)
「コーヒー飲めんの?」
「うん。小さい頃から飲んでたから。そりゃ、始めは砂糖とかミルクとか入れてたけど、
今はブラックでも飲めるよ。」
矢口は本当に何もいれずコーヒーを飲む。
「ふ〜ん。」
あたしはそんな矢口はただ見ていた。
矢口のこういうところは、やっぱり年上だと思う。
(普段はあたしよりガキみたいなクセに。)
あたしはそんなことを思いつつ、朝食に手をつけた。
「何かさ・・・・新婚生活みたいだよねぇ。」
矢口は少し顔を赤くして呟く。
「な、何言ってんだよ・・・・。」
あたしは照れ臭くて本心を言えなかった。
「ねぇ、紗耶香。私が高校でたら、一緒に2人で暮らそうか?」
いきなりの矢口の言葉に、あたしは戸惑った。
あたしはそのとき14才で、矢口は16才。
あたし達は、まだ幼かった。
でも、矢口と一緒に暮らす。
それはすごく嬉しいことだった。
矢口がそう言ってくれたことも、あたしには嬉しかった。
けど、あたしは素直じゃないから。
「ま、まぁ、いいかもな。」
あたしは矢口から顔を逸らして言った。
「じゃ、約束ね。」
矢口は笑顔で言った。
「あ、あぁ。」
あたし達は指切りをした。
それは、あたし達にとって小さな夢になった。
いつか叶うものだと思っていた。
そう、難しい夢じゃないと思っていた。
この日本が壊れるでは・・・・・。
- 109 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月24日(木)03時00分10秒
- こういった幸せな日常のシーンは、後の事を考えると逆にツライっす。
- 110 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月24日(木)11時40分32秒
- もうすでに、せつないです。(悲
- 111 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年05月24日(木)23時19分08秒
- >109さん 確かにそうですね。、
幸せすぎるから、辛いシーンが映える
というのはありますね。
だからこそ、幸せなシーンを書きました。
>名無し読者さん もうすでにせつないですか?
ここはとにかく甘くて、幸せなシーンにしようと
思ったんですけど。
でも、これからもっとせつなくなりますよ。
- 112 名前:death a word(1) 投稿日:2001年05月24日(木)23時40分54秒
- 夢はいきなり1年後に移る。
矢口は高校3年生。
あたしは中学を卒業して、高校には行かずファーストフード店でアルバイトしていた。
親は高校行けって言ってたけど、これ以上勉強したくなかった。
バイトの方が、ずっとあたしには合っていた。
1年経ってもあたしの気持ちは変わってない。
やっぱり矢口のことが好きだ。
毎日1回はキスして、抱きしめあった。
たまにだけど、エッチもした。
毎日が、すごく幸せだった。
そして、もうすぐ矢口が高校を卒業する。
そうしたら2人で一緒に暮らすんだ。
もう誰に気兼ねすることなく、思いっきし抱きしめあえる。
あたし達の関係を親は知らなかった。
別に知られたっていいんだけど、色々とめんどくさそうだから黙っていた。
親は、あたし達が一緒に暮らすと言ったらすごく驚いていた。
心配そうにしてたけど、とりあいず許可はでた。
なるべく家の近くって条件付きだったけど。
それでも、あたしは矢口と暮らせることが嬉しかった。
ある日、矢口の誕生日が近いから、誕生会をすることになった。
街では、こないだこの辺りの海に落ちた何かの欠片の話で持ち切りだった。
少しだけ、街が浮かれていた。
でも、あたしはそんなことに興味はなかった。
それからだんだんと、街は狂い始めた。
ここ最近、急死する人が増加しているらしい。
けど、そんなことはどうでもよかった。
あたしは、矢口へのプレゼントのことで頭がいっぱいだった。
どうせ、あたしには関係ないことだと思っていた。
関係ないはずだった。
なのに・・・・・・。
誕生日の日、あたしがプレゼントを手に帰ってくると、リビングで矢口が倒れていた。
- 113 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月25日(金)03時45分24秒
- ついに来たか・・・
矢口〜〜!!(涙
- 114 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年05月25日(金)23時30分04秒
- >113さん ついに来ましたね。
でも、ここの場面はこの話にとって
すごく重要な部分なので、ちゃんと見て欲しいですね。
- 115 名前:death a word(2) 投稿日:2001年05月25日(金)23時49分50秒
- あたしは手に持っていた赤いアネモネの花と、クマのぬいぐるみの入った袋を床に落とした。
(一体、何がどうなってんだ?)
何が起こったのか理解できなかった。
どれくらい、そうして立ち尽くしていたんだろうか。
ほんの数秒、それとも何分、何十分。
あたしはハッとして矢口に駆け寄った。
「矢口!」
矢口はまだ息をしていた。
けど、それは弱々しい息だった。
「矢口!しっかりしろ!」
あたしは矢口の耳元で叫ぶ。
「・・・・・紗・・・耶・・香・・・・・。」
矢口がうっすらと目を開ける。
「そうだよ。どうした?何があった?」
「分か・・らない・・・。突然・・・苦し・・く・・なって・・・・気が・ついた・・ら・・
・・紗・・耶香が・・・・いた・・・・。」
矢口の声はすごく小さい。
それに、言葉も途切れ途切れだった。
聞き取るのがやっとだった。
「分かった。分かったからもうしゃべるな!いや、しゃべらない方がいい。今、すぐに救急車呼ぶからな。
そうしたら絶対に助かるから。」
あたしは怒鳴らず、諭すように優しく言った。
そして、立ち上がったときだった、矢口がズボンの裾を掴む。
「・・・行か・・・ない・・で・・・・・。」
矢口が寂しそうな顔であたしを見上げる。
「救急車がくれば助かるんだよ!」
あたしの言葉に矢口は首を小さく左右に振る。
「矢口は助かる!絶対に死なない!絶対に死なねぇよ!」
あたしの目から涙が溢れる。
「・・・・・そ・・ばに・・・い・・て・・・・・。」
矢口が優しく笑う。
あたしはグッと自分の手を握った。
骨が折れるくらい。
(あたしは何もできないのかよ!)
こんなにも愛しいのに。
それでも、助けることができない。
(この世に神様がいるなら助けてくれよ!)
あたしの全てを捧げてもいい。
分かっていた。
この世に神様なんていないこと。
いたとしても、きっと助けてくれない。
- 116 名前:death a word(3) 投稿日:2001年05月26日(土)00時11分24秒
- あたしはそのとき、自分の無力さを知った。
(何で助けてやれないんだよ!)
あたしはその場にしゃがんで、涙を服で拭った。
ちゃんと、矢口の顔を見たかったから。
その髪も、目も、鼻も、口も、顔も、手も、足も、全てを心に刻みたかった。なのに涙は止まらない。
なのに、涙はどんどん溢れてくる。
矢口があたしの頬に手を伸ばすと、
「・・・・・泣か・・な・・いで・・・・・。」
と言って手で優しく涙を拭ってくれる。
(なんで、こんなに現実は残酷なんだろう?)
これは、今まであたしが犯した罪への罰なのかもしれない。
(だったらあたしにすればいいのに!)
「なんで矢口が死ななくちゃいけないいんだよ!」
あたしは大声で叫ぶ。
けど、きっと誰にもその叫びは届かない。
なぜだか急に、音がしなくなった。
世界が静かになった。
「・・・・あ・・い・・し・・て・・る・・・・・。」
矢口の声がハッキリと聞こえた。
そして、頬に添えてあった手が、力なく床へと落ちる。
矢口は笑顔だった。
でもほんの一瞬だけ、悲しい顔をした。
こんなに寂しそうな顔をした矢口を見たのは、それが初めてだった。
あたしは呆然としていた。
まるで、体から魂が抜けたみたいだった。
「・・・・目を、開けてくれよ。冗談だっていってくれよ。 ウソなんだろ?こんなの、
ウソだよなぁ? ふざけてるだけなんだろ? ウソだって言えよ!頼むから、言ってくれよ!」
あたしは何度も矢口の体を揺すった。
けれど、矢口はピクリとも動かなかった。
「うあぁ!!」
そのとき、あたしの心は壊れた。
- 117 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月26日(土)03時02分18秒
- わかっていても辛いこのシーン。
涙が止まらんよ〜!!
- 118 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月26日(土)03時51分13秒
- うえ〜ん……(涙
- 119 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月26日(土)04時37分33秒
- 号泣。。。(T T)
- 120 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年05月26日(土)23時28分29秒
- >117さん このシーンは力を入れて
書いていたので、自分も書いたときに
少しだけ泣きそうになりました。
>118さん 泣いてくれるのは嬉しいです。
書いた甲斐がありました。
>119さん 号泣ですか?
作者的にはかなり嬉しいです。
- 121 名前:death a word(4) 投稿日:2001年05月26日(土)23時42分34秒
- どんなに叫んでも、届かない。
誰にも届かない。
あなたには、もう届かない。
愛しい人よ。
この世で一番あたしが愛した人よ。
あたしが初めて愛した人よ。
矢口が以外は、もう誰も愛さない。
(一生、人を愛さない。)
あたしは、そう心に決めた。
もう、矢口をこの手に抱くことはできない。
もう、矢口があたしに笑い掛けてくれることはない。
あの笑顔を見ることは、もう永遠にない。
自分で思ったっていたよりも矢口は大切な存在だった。
まるで、心に穴が開いたようだった。
何かが、あたしの中からなくなった。
いや、壊れたのかもしれない。
その穴は、もう埋まることはない。
そして、生きてる意味もない。
(矢口はあたしの生きる証だから。)
あたしは、何度も矢口のところに行こう思った。
なのに、あたしはだらだら生きていた。
死ぬことを、恐れていたからかもしれない。
でも、死ぬことなんて簡単だ。
(生きることよりも、ずっと簡単なことだよ・・・・・。)
矢口がいない世界で生きるより、ずっと簡単だと思った。
( 愛しい人は、もうこの世にいない。)
数日後、宇宙から落ちてきたあの欠片が、病気を持ってきたことを知った。
- 122 名前:Not stop time(1) 投稿日:2001年05月26日(土)23時58分18秒
- あたしはハッとして起き上がった。
掛けられていた毛布が床に落ちた。
あたしは辺りを見回した。
一瞬、自分がどこにいるか分からなかった。
(そうか、圭の家に行ったんだったな。)
寝覚めは最悪だった。
(いつも見ても、イヤな夢だな・・・・・。)
あのことを思い出すと、自分の無力さに打ちのめされる。
そして、改めて愛しい人を失う怖さを知る。
(愛さない方がいいのかもしれない。)
でもそんなこと思っても、もう手遅れだ。
あたし達は愛し合っている。
(もう、愛さないなんて無理だ。)
「おはよう。コーヒーでも飲む?」
あいかわらず圭に、少しだけ心が和んだ。
圭はカウンターで何かを作っていた。
「あ、あぁ・・・・。」
あたしは曖昧な返事をする。
「昔のことでも思い出した?」
圭はあたしの方を見ずに言った。
なっ!
(なんでこいつはこんなに鋭いんだ?超能力者か?)
「図星か。あいかわず分かりやすい性格してるねぇ。」
圭が鼻で笑う。
「くっ!う、うるせぇよ!」
(たっく、ムカツク奴だなぁ。)
完全に遊ばれている。
それがあたしをひどくムカツカせる。
でも、楽しいと思った。
こうやって、2人きりで話していると少しだけ昔とダブって感じる。
だから、あたしは聞いたのかもしれない。
- 123 名前:119 投稿日:2001年05月27日(日)03時56分34秒
- 読んだら泣いてしまうとわかっているのに
読んでしまいました。。。
続きを楽しみにしています。
- 124 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年05月27日(日)23時27分29秒
- >119さん 泣けるように頑張って書きます。
まだ過去の話なので、これが今にどう繋がるのか
というところを、見てもらえたらいいと思います。
更新も時間ある限りするようにします。
- 125 名前:Not stop time(2) 投稿日:2001年05月27日(日)23時45分50秒
- 「なぁ、なんでたまに寂しそうに笑うんだ?」
「えっ?なにいきなり?」
圭がパッとあたしの方を見る。
さっきの夢が、ハッキリとあの人の顔を思い出させた。
だから、聞いたのかもしれない。
「いや、なんとなく。・・・・・あ、いいや、今の話忘れてくれ。」
(こんなこと聞くもんじゃないな。)
「昔、そういう風に笑われた?」
圭の問いは見事に図星だった。
(こいつは絶対超能力者だ。)
「・・・・・ま、まぁな。」
あたしは圭から顔を逸らして言った。
「そっか・・・。」
圭はそう言うと、また料理を再開した。
「あたしはずっと、1人で死ぬのがイヤだからだと思ってた。一緒に来て欲しいのに、
それが無理だからあんな顔するんだと思った。」
圭は何も言わない。
あたしはそれでもいいと思った。
これは圭に答えを求めることじゃない。
それに、圭に答える義務はないんだから。
だから、黙っていてしょうがない。
ただ、寂しい笑い方をした圭なら、答えが分かるかもと勝手に期待してただけだ。
「1人にするのが可哀相だから・・・・・。」
圭はポツリと呟いた。
「えっ?」
あたしは驚いて圭の方を見る。
「この世界でたった1人ぼっちにしちゃったから。一緒にいてあげられないことが、
すごく悔しくて、悲しくて。それに、何1つしてあげることができなかったからから
じゃないかな。・・・・まぁ、これはあたしの意見だけどさ。」
圭は、また寂しそうに笑って言った。
- 126 名前:Not stop time(3) 投稿日:2001年05月28日(月)00時02分26秒
- (あの人は、あたしをこの世界で1人ぼっちにするから寂しかったのか。)
そうかもしれない。
(一緒にいてあげられないことが、悲しすぎるからあんな顏したのか。)
あたしの方が、あの人に何もしてあげらなかったのに。
あの人が悲しむことなんてない。
(そう、一言言えたらよかったのにな・・・・・。)
そんなあたしの考えを見透かしたように圭は言う。
「過去は、所詮過去なんだよ。どんなに思い返したって、それが現実になることはないし、
ましてや戻れるわけじゃない。過去は、やっぱり過去でしかないよ・・・・。」
その顔は、少し悲しそうだった。
(圭だって、愛しい人を失っただもんな、あたしと同じように・・・・・。)
「・・・・・そうかもな。」
あたしは微笑して答えた。
そう、あたしには今がある。
過去をどんなに思い返しても、あの人は戻ってこない。
だから、もう忘れよう。
(あの人だって、きっとそれを望んでいるはずだから。)
いつまでも自分に縛られて欲しくないはず。
(今あたしに必要なのはあの人じゃない、圭だ!)
「あたし圭のことも好きだよ。きっと、惚れてる。」
もう、隠すことないんだ。
(あたしは圭が大好きなんだから!)
「ブッ!ちょ、ちよっといきなり何言ってるの?」
圭は味見していたスープを吹き出した。
その顔は、少し赤くなっている。
あたしには、そんな圭がすごく愛おしく思えた。
(照れると結構かわいいじゃん。)
「吐き出すなよ、汚いなぁ。それ食わないといけないんだぞ。」
「吹き出させたのはそっちでしょ。」
お互い、顔を見合わせて笑った。
あたし中で、何かが変わった気がした。
- 127 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月28日(月)04時09分07秒
- 壊れた紗耶香の心を圭が修復・・・いい感じだ〜!!
でも、この先を読むのが怖い・・・きっとまた泣いてしまうから。
- 128 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月28日(月)05時22分39秒
- 市井と保田・・・新鮮だ!
後藤も気になる、、、
- 129 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年05月30日(水)23時33分55秒
- >127さん 市井さんの壊れた心を保田さんが
直しつつ、保田さんの心も市井さんが癒している。
2人はお互いに必要な存在なんだと思います。
泣いてもいいですから、読んで下さい。
>128さん 新鮮ですか?
まぁ、確かにあんまり見かけないですね。
好きなんですけどねえ、このカップリング。
後藤さんはもう少し後になったら出てきます。
最初はいちごまの予定だったんですけど、
まぁ、色々あってこうなりました。
- 130 名前:Not stop time(4) 投稿日:2001年05月30日(水)23時56分32秒
- 「はい、どうぞ。大したもんじゃないけど。」
圭は湯気の出ている料理を、カウンター越しにあたしに渡した。
見るとそれはスープで、クズ野菜と白い練り物が浮いている。
「へぇ、すいとんか。」
あたしはスープを覗き込んで言った。
「知ってるんだ、ちょっと意外だな。」
圭はあたしの言葉に感心したような声を出す。
すいとんっていうのは、小麦粉を練って団子状にし、野菜などと一緒に煮る料理のことだ。
ずっと昔、戦争が起こったときに食べていたものらしい。
いたのは少しだけだけど、災害孤児を集めて保護するところでよく食べた。
圭はカウンターから戻るとあたしの隣に座った。
「多分まずくないと思うよ、まぁ、うまいとも言わないけど。」
(それが、これから食う奴に向かって言う言葉か?)
「なんだよそれ。」
あたしは圭の言葉に納得が行かなかったが、とにかく多分まずくないソレを食べることにした。
「う〜ん、こんなもんじゃねぇの?」
元々、すいとんってすんごいウマイもんでもない。
(好みは人それぞれだしな。)
「ウソでも美味しいって言えないの?」
圭は冷たい視線をあたしに向ける。
「そんな気が利くこと、あたしが言えるわけないだろう。」
それから会話は止まって、あたし達はただ黙々とすいとんを食べた。
食べ終わる頃に、あたしはボソッと言った。
「・・・・・まぁ、前に食ったところのよりは、美味しかったよ。」
「え、あぁ、ありがとう・・・・。」
圭は少し顔を俯けて言った。
どうやら照れているらしい。
「圭ってさ、誉められると弱いんだな。ま、あたし的には、照れてるところもかわいいからいいんだけどさ。」
あたしは恥ずかしいセリフをサラリと言ってみせる。
からかってみたくなった。
「バ、バカなこと言わないでよ!」
思った通りの反応だった。
圭は顔を真っ赤にさせて、カウンターに戻って行った。
(こりゃ、しばらくからかえそうだな。)
あたしはカウンターで洗い物をしている圭を見て思った。
ふと、今すごく幸せだと思った。
それからあたし達は、一緒に暮らすようになった。
- 131 名前:Not stop time(5) 投稿日:2001年05月31日(木)00時10分47秒
- あるとき、あたし達は出掛ける。
別に出掛けるって言ったって、見るものなんて何もない。
高いだけで、役に立たないビルに囲まれたこの街で、することなんて何もない。
あたし達は歩き回り、ビルを見上げていた。
空にまで届きそうな高層ビル。
でも今は、何の意味も持たない。
高い建物は、人間の愚かさの象徴のようでもある。
(なんてどっかの誰かが言ってたな。)
太陽の光が反射して、すごく眩しかった。
そんなとき、あたしは何してるんだろうと思う。
前までは、すごくバカみたいだった。
1人で、バカみたいだった。
(でも今は、隣に圭がいる。)
圭がいるだけで、今までの灰色の世界が違って見えた。
色がついて見えた。
(なんか・・・・不思議だな。)
その日は、あたし達はデパートに入った。
服とか雑貨とか漁る為だ。
(これも、ショッピングって言うのか?)
本当は、普通の世界でこうしてたかった。
楽しく笑い合っていたかった。
(もっと早く、圭に会っていれば・・・・。)
でもこういう世界だからこそ、あたし達は愛し合えるのかもしれない。
けど別に、愛し合わなくたっていい。
普通の世界で会っていれば、ずっと一緒にいられた。
(この世界では、それは無理なことだから・・・・・。)
ずっとは、いられない。
- 132 名前:Not stop time(6) 投稿日:2001年05月31日(木)23時26分50秒
- デパートの中は静かで、人の気配はしなかった。
(当たり前か。こんなところ物好きしか来ないもんな。)
前だったら、こんなところに入らなかった。
1人で入ったって、何も楽しくないから。
誰もいないデパートは、あまり好きじゃなかった。
でも今は違う。
(誰もいないこの空間が好きだ。)
誰にも邪魔されない、2人だけの世界。
(いつからあたしは、こんなにも変わってしまったんだろう?)
「デートっていうのも、たまにはいいかもね。」
圭があたしに笑い掛ける。
(なんで、こんなにも愛しいんだろう・・・・。)
圭の全てが愛しかった。
ふと、こんなにも圭のことを愛している自分に気づく。
(この笑顔を、一体いつまで見られるんだろう?)
明日までかもしれない。
あと、数時間までかもしれない。
(あたし達は、一体いつまで生きられるんだろう?)
そう思ったら、すごく怖くなった。
こんなにも愛している圭を、失うことが怖くなった。
だから、あたしは急に圭を抱きしめた。
- 133 名前:Not stop time(7) 投稿日:2001年05月31日(木)23時41分14秒
- 「ちょ、ちょっと紗耶香!?」
圭はいきなりだったから、かなり驚いていた。
でも、離したくなかった。
ずっと、このままでいたかった。
「もう少しだけ、このままでいたい・・・・・。」
あたしは抱きしめる腕に力を込めて呟いた。
圭の体温を全身で感じていた。
あたし達の、こうやっていられる時間は限られている。
(だから少しでも長く、圭に触れていたい・・・・。)
この温もりを忘れたくない。
圭の全てを心に刻みたい。
あたし達はいずれ、死んでしまうから。
(死んでしまう前に、もっと圭を感じたい。)
圭は微笑して、耳元でそっと囁いた。
「・・・・キスして。」
そして、ゆっくりと目を閉じる。
(何であたしはこんなにも、圭を愛してしまったんだろう。)
あたしは圭の頬を軽く撫でた。
圭はくすぐったそうに笑った。
顔にかかった赤茶色の髪を、手でそっと避ける。
あたしは少しだけ身を屈めた。
そして圭の唇に、優しく唇を重ねた。
その唇は、すごく柔らかかった。
唇を通して伝わる圭の熱。
微かな吐息。
お互いの微かな心音だけが、静かな店内に聞こえていた。
(死ぬその瞬間まで、圭を愛したい!)
- 134 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月01日(金)13時12分43秒
- いつまでも幸せが続くと良いのに・・・。あぁ切ない!
こういう幸せなシーンを見ちゃうと後がツライすよね〜。
でもとりあえずは圭がもっと照れるぐらいイチャイチャして欲しいす!
- 135 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年06月01日(金)23時41分40秒
- >名無し読者さん ずっと続けたいんですけど、
続かないんですよねぇ・・・・残念なことに。
もっとイチャイチャさせたかったですけど、
なんか想像しにくいんです、あの2人だと。
ドライな関係って、イメージなんですよね。
- 136 名前:Not stop time(8) 投稿日:2001年06月02日(土)00時00分07秒
- それから色々あって、気がついたら1年が経っていた。
その日は雨だったので、あたし達は昼ご飯を食べ終わるとソファーで抱き合っていた。
雨の日はいつもこうだった。
何もせず、ただ抱き合っていた。
それで十分だった。
お互いの温もりさえ感じられれば、それでよかった。
(このまま、時が止まればいいのに。)
それは無理な願いだ。
それでも、そう望まずにはいられなかった。
あたし達は必ず死ぬ。
それは、絶対的なことだ。
どうすることもできない。
でも、それまではこうしていたかった。
( 死が2人を別つまで・・・・・。)
だから、あたしは言ったのかもしれない。
「圭を、抱きたい・・・・。」
圭は少しだけ驚いてたけど、優しく微笑んで言った。
「・・・・いいよ。こんな私でいいなら。」
その顔は少しだけ赤かった。
あたしは圭を強く抱きしめた。
今まで、あたしは圭を求めるということをしなかった。
別に怖かったとかいうわけじゃなくて、ただその必要がなかった。
抱かなくたって、ちゃんと圭を感じられた。
だから、それ以上は必要ないと思った。
圭もそういう考えなのか、それともあたしの考えを理解しているのか、
ともかく、圭も求めてくるということはなかった。
「じゃ、服脱ごっか。」
圭はそう言うと、ためらいもなく脱ぎ始めた。
あたしもそれに習って服を脱ぐ。
生まれたままの姿になった圭を見る。
キレイだと、本心から思った。
- 137 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年06月03日(日)23時49分40秒
- これからちょっとエロに入ります。
もしageをしたことで不愉快な気分に
なったらすいません。
- 138 名前:Not stop time(9) 投稿日:2001年06月04日(月)00時09分31秒
- 「初めてじゃないよね?」
圭はあっけらかんと言った。
「あぁ。そっちだって、初めてじゃないだろう?」
あたしは圭をゆっくりとソファーに押し倒す。
「まぁね。」
圭は手慣れてるって感じだった。
これからやるって雰囲気はじゃない。
(まぁ、いいんだけどさ。)
あたしは圭に優しくキスをした。
それはだんだんと激しくなり、ディープキスになっていく。
お互いに舌を絡め合い、口腔を舐め合う。
息ができない激しいキスだった。
だから時々口を離し、またキスしあったこ。
お互いを求め合った。
あたしは唇は離すと、圭の首筋に舌を這わせる。
首筋を何度も舐める。
圭が愛しくてたまらなかった。
「んっ・・・・・。」
圭が初めて声を出す。
「キレイだよ・・・・圭。」
あたしはそう言って首筋から鎖骨、そして胸へと移っていく。
そして、そっと胸の先端を口に含む。
それを優しく愛撫する。
「くっ・・・・はぁ・・・・。」
左手で圭を抱きしめ、右手でゆっくりと揉み始める。
「うっ・・・っ・・・あぁ・・・・。」
口の中でそれを転がす。
「あっ!・・・くぁ・・・・。」
いつもより少し高い圭の声。
あたしは圭をぎゅっと抱きしめる。
(この温もりを忘れたくない!)
- 139 名前:Not stop time(10) 投稿日:2001年06月04日(月)00時37分19秒
- 「ずっと・・・・こうしていたな。」
あたしは圭の耳元で囁いた。
「・・・・うん。」
圭は静かに頷いた。
しばらく、お互いの体温を感じていた。
あたし達は軽くキスを交わした。
そして、そっと圭の秘部をなぞる。
「うっ・・・はぁ・・・・。」
圭の体がビクッと反応する。
「もう、濡れてるんだね。」
あたしは指をそっと口に入れる。
そして下にさがって圭の秘部を愛撫する。
「くっ・・・・あっ・・・・はぁん・・。」
その秘部はどんどん熱を増していく。
圭の行き場をなくした手が、あたしの髪をかき乱す。
「いい?」
あたしの問いに圭は無言で頷いてた。
指は愛液の為に、思ったよりもすんなりと入った。
「あっ!んっ・・・あぁ・・・。」
上下するスピードをだんだんと速めていく。
圭の息が荒くなる。
内膜があたしの指を軽く締め付ける。
「はぁ、あ、うっ、あっ・・・。」
圭の声は小刻みになっていく。
その声に合わせて腰が動く。
あたしは徐々に奥へと攻め立てる。
「あん、はっ、さや・・っ・・・か。」
圭があたしの肩をグッと掴む。
あたしは一気に奥へと突き上げた。
「っ、あっ、あぁぁぁぁぁ!」
圭が体を反らす。
どうやら絶頂に達したらしい。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・。」
圭の息はすごく荒い。
あたしが指を抜くと愛液が溢れた。
圭の全てが欲しくなった。
「大好きだよ・・・・・。」
あたしは優しく圭を抱きしめた。
- 140 名前:Not stop time(11) 投稿日:2001年06月04日(月)00時51分29秒
- 圭の息はまだおさまらない。
あたしは、そっと圭の髪を撫でる。
あたし達は何度も何度も同じことを繰り返した。
幸せだった。
今まで生ききた中で、一番幸せだった。
そのときあたしはすごく眠かった。
抱きしめ合いながら横になっていた。
圭が、そっと耳元で囁く。
「私・・・紗耶香に・・・会えて・・・・よかったよ・・・・・。人を・・・愛することが
・・・・できて・・・・本当に・・・よかった。・・・大、好きだよ・・・・紗耶香・・・。」
途切れ途切れに圭は言った。
それは圭が眠いからだと思っていた。
あたしは眠くて意識がモウロウとしていた。
眠気には勝てなかった。
「あたし、も・・・・・。」
と言ってあたしは深い眠りに堕ちていった。
それが、圭との最後の会話になるとも知らずに。
眠りに堕ちる寸前に見た圭の顔は、とても幸せそうだった。
- 141 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月04日(月)01時26分27秒
- このふたりのエロは初めて読みました。他では誰もやってないんじゃないかな。
う〜ん、新鮮だぁ(w
最後の会話って、、、悲しい予感・・・
- 142 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月04日(月)03時56分40秒
- エロシーンから一転シリアスに・・・不意をつかれてしまった。
まだ大丈夫だと思ってたのに・・・(涙
- 143 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年06月06日(水)23時28分42秒
- >141さん 初めてですか?
あまり数は多くないですですけど、
たまに見かけますよK1エロって。
新鮮だって言ってくれたのは、嬉しいんですけどね。
>142さん 不意をつくつもりは、
あんまりなかったんですけどね。
もう少しのことを2人のこと描こうかな、
とも思ったんですが、あんまり過去のことを長くやって
もしょうがないので少し短くしました。
- 144 名前:Reai(1) 投稿日:2001年06月06日(水)23時44分36秒
- 窓に反射する眩しい光で、あたしを起床した。
「あ、痛たたたた。」
あたしは上半身を起こすと肩を回した。
ずっと圭を抱きしめていたから、肩が痛かった。
辺りはすっかり明るくなっている。
隣で、まだ圭は寝ていた。
あたしは大きく伸びをした。
ボキボキトと関節が鳴る。
「あぁ〜、もう昼くらいか?おい、そろそろ起きろよ。」
あたしは圭の肩を揺さぶる。
圭はピクリとも動かなかった。
「・・・・・圭?」
あたしは、改めて圭にゆっくりと手を伸ばす。
手が震えた。
分かっていた。
でも、認めたくない現実だった。
(そんな、嫌だ・・・・。)
そっと触れた圭の体は、やっぱり冷たかった。
「ウソだろ・・・・・。」
声が震えた。
信じたくなかった。
(そんなのアリかよ・・・・。)
圭は死んでいた。
あたしには、何がどうなったのか理解できなかった。
あまりに突然のことすぎた。
涙が流れた。
目の前に起こったことを、事実として受け入れる前に。
別に悲しくはなかった。
悲しいという、認識がなかったから。
あたしは圭の冷たい顔に手を置く。
圭は笑顔だった。
「なんで・・・・そんないい顔してるんだよ。」
それはまるで、人生に何も悔いがないような顔だった。
とても、満足そうな顔だった。
(分かってたのかもな。)
- 145 名前:Reai(2) 投稿日:2001年06月06日(水)23時56分43秒
- あいつは、自分が死ぬのを分かっていたのかもしれない。
だからあたしに抱かれたんだと思う。
死ぬことを言わなかったのは、あたしを悲しませない為。
そして、自分も悲しまない為。
きっとあたしは泣いただろう。
圭も、きっと泣いたと思う。
お互いに、この世で一番愛した人だから。
涙を流しして死ぬよりも、幸せそうなあたしを見て死ぬことを圭は望んだ。
これが、圭の望んだ死に方。
(圭らしいよ・・・・。)
「なぁ、圭。いい人生だったか?」
あたしは安らかな圭の顔を見て呟いた。
この顔が何よりの答えだ。
あたしが睡魔に堕ちる寸前に見た圭の顔は、今まで見たことないくらい幸せそうだった、
(あんとき、何考えてたんだよ。)
今となっては分からない。
もう、永遠に分からない。
この世には、もういないから。
圭は分かっていた。
あたしのことも。
自分のことも。
圭は、いつもあたしのことを分かったように言う。
なのに、あたしは圭のことが分からない。
いつだって、圭はあたしの先にいた。
死ぬときでさえ、先を超された。
もう、追い抜かすことはない。
- 146 名前:Reai(3) 投稿日:2001年06月07日(木)00時21分28秒
- あたしは圭の最後の言葉を思い出した。
(私、紗耶香に会えてよかったよ。人を愛することができて本当によかった。
大好きだよ、紗耶香。)
(それは、あたしのセリフだよ。)
圭に会えてあたしは変わった。
また生きる意味を見つけることができた。
「あたしも、圭に会えてよかったよ。圭のこと、大好きだよ。・・・・・愛してる。」
あたしは優しく圭を抱きしめた。
(本当に、ありがとう・・・・。)
あたしは圭に癒されていた。
同じような傷を持っているから、圭はあたしを癒すことができた。
(あたしは圭を癒せた?)
「圭・・・・。」
この世で一番愛しい人の名前。
あたしは、圭の唇に唇を重ねた。
その唇はやっぱり冷たかった。
あたしは何日も、何日も圭を抱きしめ続けた。
少しでも、あの温もりを忘れたくなかった。
こうしていないと、圭のことを忘れそうで怖かった。
人の記憶は、いずれ薄れていくものだから。
もう、あの声を聞くことはもうない。
もう、笑顔を見ることはない。
もう、あたしを抱きしめてくれることはない。
(あたしは、また生きてる・・・・。)
愛しい人の死を見るのは、辛すぎる。
重すぎる罰だ。
どちらかが先にに死ぬなんて、始めから分かっていた。
明日、あと何時間、何分、何十秒したら死ぬかもしれない。
そんな考えがいつも頭の中にあった。
あたし達には、生きれる保証なんてなかった。
だから、こういう結末になることも予想はついた。
でも、愛さずにはいられなかった。
壊れやすい愛だと知っていた。
いつか、壊れる愛だと分かっていた。
それでも、あたし達は愛し合ってしまった。
分かっていた。
知っていた。
それでも涙は、止まることを知らない。
- 147 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月07日(木)03時42分12秒
- 悲しいけど、圭ちゃんは幸せな気持ちのまま死を迎えることが出来たみたいなんで、
少し救われた気分です。
さて、そろそろ後藤が再登場ですか?・・・期待してます。
- 148 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年06月07日(木)23時58分26秒
- >147さん これで少しでも救われた気分に
なってくれてよかったです。
やっと後藤さんの登場です。
これで、やっと出せるようになりました。
- 149 名前:No regret life(1) 投稿日:2001年06月08日(金)00時18分42秒
- 「・・・ぐっ・・・えぐっ・・・・。」
真希は泣いていた。
「なんでお前が泣くんだよ。」
あたしには、なぜ真希が泣いているのか分からなかった。
「市井・・・ちゃんが・・・・泣いてる・・・から・・・・。」
あたしは真希の言葉で、初めて自分が泣いてることを知った。
確かにあたしは泣いていた。
(なんで、泣いてるんだ?)
きっと、あのときのことを思い出したからだ。
「あたしも泣かないから、泣き止め。」
あたしは服で目許をゴシゴシっと拭う。
「うん・・・・。」
真希もそれに習い、服で目許の涙を拭った。
少しすると、真希は落ち着いたようだった。
そして、あたしの顔色を伺いながら聞いてきた。
「あのさ・・・・、市井ちゃんは、その・・・今でも、圭さんのことが・・・好きなの?」
(なんちゅう質問するんだよ。)
「さぁな。自分でもよく分からない。」
それは本音だ。
もう、あれは過去のことだと思っていた。
忘れたことだと思っていた。
けど本当は、自分でそう思い込んでいただけなのかもしれない。
(今でも圭のことを愛してる?)
本当に分からなかった。
「ただ、後悔はしてる・・・・。」
あたしは苦笑して言った。
「後悔?」
真希が不思議そうな顔をする。
「圭が生きてるときに、愛してる言いたかった。最後に、ちゃんと伝えたかった。
それだけ、今でも後悔してる。」
(なんだか、頭がぼーっとするなぁ・・・・・。)
「そう、なんだ。」
真希は力なく笑って俯いた。
それから、しばらく沈黙が続いた。
- 150 名前:No regret life(2) 投稿日:2001年06月08日(金)00時29分29秒
- 「ねぇ・・・・ここで抱いてよ。」
真希は弱々しく呟いた。
でも言葉とは裏腹に、あたしを力強く見つめる。
「抱かない。」
あたしはキッパリと言った。
(忘れるのが辛くなるから。)
これは自分の経験上からだ。
「嫌だ!抱いてよ! もっと、私を愛してよ!」
真希があたしの肩を揺さぶる。
(こいつは、きっと受け止められない。)
あたしが死んだら、立ち直れないくらいに心が壊れる。
まだ、そんなに強くない。
(だから・・・・抱かない。)
愛しい人の死を、受け止められないから。
「その代わり、気が済むまで抱きしめててやる。」
あたしは真希を抱きしめた。
(こんぐらいしかできないから。)
あたし達はただ抱き合っていた。
何も言わず、ただ時を刻む時計の音だけが聞こえていた。
永遠に、こうやっていられないは分かっている。
あたしはそんなに長くない。
(・・・・・きっと、もうすぐあたしは死ぬ。)
それでもいい。
人生に悔いはない。
矢口を愛したことも、圭を愛したことも、そして・・・・・・真希を愛したことも。
あたしにとっては、もったいないくらいいい人生だった。
だから、死んでも構わない。
(やっと2人の所にいけるな・・・・。)
もう、自分の体重を支えることができなくなっていた。
あたしは膝から崩れ落ちた。
- 151 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月08日(金)03時12分25秒
- ま、まさかイチイが・・・
そ、そんなことあるわけないですよね?(動揺
- 152 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年06月08日(金)23時19分14秒
- >名無し読者さん まぁ、それは読んでからの
お楽しみってやつですね。
ただ一言だけ言うと、この話は生存確率が低いです。
- 153 名前:No regret life(3) 投稿日:2001年06月08日(金)23時35分35秒
- (まっ、今までよく持った方だな・・・・。)
「市井ちゃん!」
真希が大声を上げる。
その甲高い声が、少しだけ頭に響いた。
「あぁ〜、なんか酒飲み過ぎたみたいだ・・・・。」
そう言って、あたしはヘラヘラと笑う。
そして、床に大の字に寝転がる。
こんなことで誤魔化せないのは分かっていた。
「市井ちゃん・・・・死んじゃうの?」
真希は今にも泣きそうな顔になる。
(今から泣きそうな顔するなよ。)
あたしはポンと、真希の頭に手を乗せる。
「あぁ、きっとな・・・・・。」
「嫌だ!そんなノ嫌だよ!市井ちゃんが死ぬなら私も死ぬ!」
あたしは真希の頭をバシッと叩く、
「バカッ。・・・・お前は生きろよ、たった一度の人生なんだからさ。ちゃんと真希として
精一杯生きろ!」
あたしは優しく頭を撫でる。
「市井ちゃんが死んだら、生きていけないよぉ・・・・。」
真希は急にに弱々しい声を出す。
「生きていけるよ・・・・・。いや、生きてけるぐらい強くなれ・・・・。」
(なんか、少しばかし息苦しいな・・・。)
「・・・・無理だよ、私・・・弱いもん・・・・。」
真希はボロボロと泣き出した。
あたしは真希の涙を、親指で拭ってやる。
「大丈夫だ・・・・。真希は強くなれるよ・・・。」
(しゃべるのも辛くなってきたな。まだ、言いたいことがたくさんあるのに・・・・。)
真希の涙は止まらない。
そう言えば、始めて会ったときも泣いて気がする。
- 154 名前:No regret life(4) 投稿日:2001年06月08日(金)23時51分25秒
- 圭が死んで、あたしが一番荒れていた時期。
そんなときに、あたしと真希は出会った。
あるときあたしは、物陰で泣いている1人の女の子を見つけた。
その路地に行く度に泣いていて、その泣き声が頭から離れなくて、
気がついたらそいつに手を差し伸べてた。
偽善者みたいで嫌だった。
あたしは、こいつに何もできないから。
する気もなかったし。
それで、飯をやったら泣き止んだ。
現金なやつだと思った。
それから、そのうるさいガキは自分を真希と名乗った。
それが偽名でも本名でも、何でもよかった。
あたしには興味がなかった。
真希は、それからあたしの後ろについてくるようになった。
離れろって何度言っても聞かないから、放っておいた。
そしたら、いつの間にかいることが当たり前になっていた。
いないと寂しくなった。
渋谷で、いつも同じ時間に真希と会うのが習慣になった。
真希を、必要としていた。
圭が死んでから、1年が経とうとしていた。
あたしは、また人を愛しそうになった。
いい加減勘弁して欲しかった。
こいつが死んだら、きついから。
だからあたしは、真希を愛さないようにしていた。
同じ思いをしたくない。
同じ思いをさせたくない。
でも愛さないなんて、無理だった。
だから、なるべくその素振りを見せないようにした。
真希はあたしの顔を覗き込んで言った。
「キス・・・・していい?」
「あぁ・・・・。」
あたしは小さく頷いた。
真希はそっと唇を重ねた。
生暖かくて、何とも言えない感触。
まるで、初めてキスしたみたいだった。
でも、これは最後のキス
(最初で、最後のキス・・・・・。)
- 155 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月09日(土)03時30分17秒
- >ただ一言だけ言うと、この話は生存確率が低いです
この言葉には、低いけどゼロじゃないという意味が込められてると思いたい!!
- 156 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年06月09日(土)23時47分20秒
- >名無し読者さん 確かにゼロじゃありません。
もう、読んでもらうしかないですね。
それしか言えません。
- 157 名前:No regret life(5) 投稿日:2001年06月10日(日)00時09分03秒
- 圭の気持ちが分かった。
(死ぬことが全然怖くない。)
生きたことに悔いはない。
そばに愛しい人がいるから。
矢口の気持ちも分かった。
この世界で独りぼっちにしてしまう。
そばにいてやりたいけれど、いてあげられない悔しさ。
でも、きっと真希なら1人で生きていける。
だからあたしは、寂しくない。
真希を信じているから。
(だから、あたしは寂しい顔をしない。)
「・・・・泣く・・な・・・笑って・・ろよ・・・・。」
不意に、あたしの視界が歪む。
「・・泣いて・・るの?」
真希があたしの頬に手を当てる。
「・・・・泣い・・て・・ねぇ・・よ・・・・。」
(ちっ、泣き過ぎだな。)
あたしは涙を拭こうとするが、既に体が動かなかった。
真希はそれを察したのか、あたしの涙を拭った。
(いつもと反対だな。)
真希はムリヤリ笑顔を作る。
(最後ぐらい、笑っていた方がいい。)
泣き顔はもう身飽きた。
(真希には、やっぱり笑顔が似合うな。)
「・・・・やっ・・・ぱり・・・・お・・前は・・・笑っ・・てた・・
方が・・・・いい・・・・。」
真希は泣きながら、笑っていた。
(器用なやつだな。)
「・・・お・・前の・・・笑、顔・・も・・・・・お前・・・・も・・・・
大・・好・き・・・だ・・・・。・・・・・愛・・し・・て・・る・・・。」
伝えたかった。
(今さら伝えたって、意味がないのにな・・・・。)
死にゆくあたしが、どんな言葉を伝えても意味がない。
それでも伝えたかった。
伝えずには、いられなかった。
あたしは、ゆっくりと視界が暗くなっていくのを感じる。
(もう、目さえ開けていられないんだな・・・・・。)
ゆっくりと、瞼が閉じられていく。
真希は笑っていた。
今まで、一番いい笑顔かもしれない。
あたしはどんな顔してるんだろう?
きっと、笑ってんだろうな。
- 158 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年06月10日(日)23時08分56秒
- いきなりですが、これから後藤さん視点になります。
今日で終わりになります。
- 159 名前:私達の生きる意味(1) 投稿日:2001年06月10日(日)23時27分33秒
- 「・・市・・井・・ちゃ・・ん?・・・・嫌・・だよ・・・・。そんなの
・・・嫌だよ!目を開けてよ、市井ちゃん!・・・私を・・・・1人にしないでよ!
市井ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
私は叫んだ。
これが枯れるまで。
そして泣いた。
何回も、何十回も。
涙が枯れ果てるまで泣いた。
けど、市井ちゃんが目覚めることはなかった。
市井ちゃんのは、すごく嬉しいそうに笑っていたから、私も泣くのをやめた。
市井ちゃんが悲しくないんだから、私も悲しむのをやめた。
それから3日経って、この病気が治る薬が配られた。
どっかの人が、本当はもっと前に薬ができてた、とか言っていた。
でもきっと、市井ちゃんはこの薬を飲まないと思った。
そんな気がした。
それから、あっという間に1年という月日が流れた。
日本は元に戻りつつあった。
人間ってすごいなぁ、って思った。
私は今、孤児院に引き取られている。
家族は死んじゃったし、引き取ってくれる親戚もいないから。
身寄りっていうものがなかった。
でもそれは、ここにいるほとんどの子達がそうだ。
けど、別に不幸だとは思わない。
ここには友達もいるし、みんな家族みたいしだし。
だから、幸せなんだと思う。
今は菜園管理で、草刈りの真っ最中。
眩しすぎる太陽が、まだ夏でもないのに焼けるように私を照らしつけている。
これさえなければ、もっといい所なんだけどなぁ・・・・。
ここの孤児院は少しでも自給自足して、他の所に国からの援助金を回したいらしい。
だから毎日でもないけど、こうして菜園の管理をしないといけないのだ。
「・・・・ねぇ、ごっちん?ごっちんってば!」
私はいきなり肩を揺すられて、ハッとなって顔を上げた。
そこには呆れ顔で私を見ている、友達のヨッスィーがいた。
- 160 名前:私達の生きる意味(2) 投稿日:2001年06月11日(月)00時05分32秒
- ヨッスィーは私と同じ年で、この孤児院で一番の友達だ。
私は、ふと辺りを見回した。
辺りには私達の他に誰もいない。
「あれ?みんなどこ行っちゃったの?」
ヨッスィーは私の言葉に、軽く溜め息をついて言った。
「みんな菜園管理の時間が終わって帰ったんだよ。終了って言ってたのに、
聞こえなかったの?」
「うん、全然気がつかなかった。ちょっと1年前のこと思い出してさ。」
「1年前?」
ヨッスィーは怪訝な顔をする。
それは、いい思い出じゃないから。
特に、ここにいる子達はみんなそうだ。
親や兄弟を亡くしているから。
ヨッスィーも、何か嫌なことでも思い出したのかもしれない。
「あっ、ごめん・・・・。」
悪いことを聞いたと思って、私は謝った。
「別にいいよ。もう、過去のことなんだし。」
ヨッスィーは笑ってたけど、やっぱりどこか悲しそうだった。
「さ、早く戻ろ。」
「うん。」
こうして、私達は菜園を後にした。
これから私には、色んなことがあると思う。
楽しいことや、嬉しいこと、悲しいことや、辛いこと。
色んな人と出会い、別れていくと思う。
死にたくなるときもあるかもしれない。
生きてくことは、辛いことだから・・・・・。
でも、きっとそのときには思い出す。
あのときは、すごく辛かったことを。
辛い思いをした人が、たくさんいたということを。
その人達の分まで、市井ちゃんの分まで、私は生きなきゃいけない。
私達だけじゃない、今生きてる人達全てに、それは当てはまると思う。
今、市井ちゃんはどうしてるのかな?
私は空を見上げた。
そこには、雲1つない晴天が広がっている。
市井ちゃんと過ごした日々は忘れないよ。
だって、この世で一番愛した人だから。
きっとこの青い空のどこかで、私を見て笑ってるんだよね?
そのとき急に風が吹いて、かぶっていたボロボロの麦わら帽子が飛ばされた。
それが、なんだか市井ちゃんからの返事な気がした。
私、頑張って生きるよ!
「だから、ちゃんと見ててよね!!」
私は抜けるような青空に向かって叫んだ。
「空に向かって何言ってんの?」
ヨッスィーが少し冷たい視線を向ける。
「なんでもないよ。」
それでも私は、満面の笑みで言った。
私達をジリジリと照らす太陽が、もうすぐ夏が来ることを知らせていた。
完
- 161 名前:あとがき(みたいなもの) 投稿日:2001年06月11日(月)00時13分50秒
- 隔離列島これで完結です。
いかかだっでしょうか?
レスを下さった皆さんには感謝しています。
そのレスで、ここまでやることができたと思います。
この話、とにかくせつなく書ければいいと思ってました。
シュールぽっさを出したかのですが、まだまだ自分は未熟で
そういう部分は出せなかったと思います。
次回作については、なるべく早く書きます。
読んで下さって、ありがとうございました。
- 162 名前:no name 投稿日:2001年06月11日(月)03時08分50秒
- 楽しませて頂きました。
お疲れ様でした。
黄板と共に、次回作を期待しております。
- 163 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月11日(月)03時45分51秒
- お疲れ様でした。
作者さんの思惑どおり、かなりせつなくさせていただきました。(w
あまりにもせつなかったんで、最後ぐらい幸せにと思い、《市井ちゃん死なないで〜》的レスを、
何回かしてしまい、少しウザかったかな〜と反省しております。
この話の流れ的にやはり、市井の死は必要不可欠だと最後まで読んで思いました。
最後に、これは個人的な気持ちですが、市井と後藤の出会いのシーンも見てみたかったっす。
- 164 名前:かんかん 投稿日:2001年06月11日(月)19時53分43秒
- 今日、国語の時間に『火垂るの墓』(アニメ映画)を見たんですが、
そん時あまりにもつまんなくて、iモードでこの小説が更新されてるの知って
読んでたら映画じゃなくてここの小説の方で泣けてきました。
マジでよかったです。
この小説に何度泣かされたことか・・・・・人を泣かしたり出来る
ものが書けるなんて羨ましい・・・・・。
これからも頑張ってください!
- 165 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年06月13日(水)23時33分14秒
- >no nameさん 楽しんでもらえたら
書いている方としては嬉しい限りです。
黄色板も、今は結構終盤なのでちょっと
気合い入れて書こうと思っています。
>名無し読者さん レスは全然ウザく
なんかなかったですよ。
市井さんは最初の方は死なす気はなかったん
ですけど、話を書いていくうちに死ぬという
ことになってしまいました。
本当は、いちごまをもっと書こうと思ったんですけど
あそこのシーンでやるには少し長いかなぁ、と思い
カットしてしまいした。
>かんかんさん 褒めてもらってなんですけど、
自分なんかまだまだですよ。
これ書いていて本当に、そう思いました。
やっぱりまだ表現が甘かったり、物語的にも
もう少し構成をきちんとした方がよかった思います。
いちよ、泣かすつもりで書いたので、泣いてくれた
というのはすごく嬉しいです。
それから、『火垂るの墓』の方が何倍も泣けると
思いますよ。(自分は見て泣きました。)
新作頑張って書くので、そちらもよろしくお願いします。
- 166 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年06月13日(水)23時38分24秒
- これから新作書きます。
これは、あるマンガを参考というか、
ほとんど内容はパクってます。
あんまりこれ自体はメジャーじゃないので、
たぶん何のマンガか分からないと思いますけど、
もしよかったら付き合って下さい。
題は『シャングリラ』です。
- 167 名前:シャングリラ 投稿日:2001年06月13日(水)23時41分22秒
- いつからか、空は一色だけで覆われていた。
雲はただ重く、まるで押し潰されそうだった。
その向こうにあるはずの太陽を、私はまだ知らない・・・・。
- 168 名前:灰色のセカイ(1) 投稿日:2001年06月13日(水)23時54分14秒
- 世界は、いつからこんなになったんだろうか?
土地は枯れ、雨はほとんど降らず、風はあまり吹かない。
空は・・・・・どこまでも灰色。
青空は、今だかつて見たことがない。
太陽は厚い雲に覆われ、その姿を滅多に見せてはくれない。
そのおかげで食べ物は取れなくなり、この世界は飢えと貧困に見舞われた。
世界は、既に壊れていた。
土地が荒れれば、自然と人々の心も荒れた。
各地で暴動や、盗難や暴行が平然と起きている。
いつから、世界は壊れてしまったんだろう?
私はひび割れた地面の上に、寝っ転がっていた。
ふと、灰色の空に手を伸ばす。
私の手のひらには、銃痕がある
痛みはない。
けれど、私はこの傷の意味を知らない。
なぜなら、私には記憶というものがないのだ。
気がついたときには、この荒れ果てた大地に倒れていた。
もしかしたら、捨てられたのかもしれない。
誰に捨てられたのかは、分からない・・・・・。
でも、別にそれでもよかった。
私はそんなにも、記憶に執着していないから。
記憶なんてものは、曖昧なものであって忘れたり、美化されたりしてしまう。
そんな不確かなものに、こだわりなんてない。
なくたって、十分生きていける。
現に私は生きているんだから、その定義は証明される。
私は立ち上がり、服についた砂を払い落とした。
そして、街を目指して歩き出した。
- 169 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月14日(木)02時57分20秒
- 新作だ〜♪うれしいっす!!
今回もまた荒廃した世界の話なのかな?
荒廃した世界に傷を持ったキャラ・・・もしや、原作は「北斗の○」(w
誰が出てくるのかも含めて期待してますんで黄板と掛け持ち大変でしょうけど頑張って下さい。
- 170 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年06月14日(木)23時23分44秒
- >名無し読者さん 世界設定は少しかぶってますね。
舞台は日本じゃありません。
まぁ、異世界ってところですかね。
ちなみに、原作は「北斗の○」ではありません。
もっと、マイナーなマンガです。
- 171 名前:灰色のセカイ(2) 投稿日:2001年06月14日(木)23時40分20秒
- 私は旅をしていた。
それは、あてのない旅だった。
自分の記憶の断片を、捜す旅なのかもしれない。
けれど、例え記憶を手にしても大して満足しないと思う。
なぜなら、失った記憶にそれほど価値はないだろうから・・・・・。
私は空を見上げた。
この青さを忘れた空は、どこか自分と似ている気がする。
無表情で、無気力で、それでも失った青さを求めている。
それはこの街も同じだった。
空の色を反射したように、街も灰色だった。
風化している壁、崩れかけている家々。
でもそれは、この街に限ったことではない。
どこもみんな同じようなものだ。
ゴーストタウンのような風景でしかない。
人の住んでいるゴーストタウン。
それは虚しく、悲しいものだった。
道端には、廃人やホームレス、薄汚れたストリートチルドレン達が肩を寄せ合って
生きていた。
大抵そういう道を歩くと、金や食べ物を求めてたかられる。
けれど、私の所には誰1人として寄ってこない。
きっとそれは、腰にあるこの銃のせいだろう。
ヘタして打ち殺されるのは嫌らしい。
私だってむやみに撃ちはしないが、それほど寛容な心を持ってはいない。
タチの悪い奴らになると、一瞬の隙をついて物をかっさらって行く。
だから油断できないし、私だって銃を撃つときがある。
この世界は、それ程までに荒れていた。
でも、そうしなければ生きていけないのだ。
けれど法律はそれを取り締まる。
なんとも、無情な世界だ・・・・・。
- 172 名前:灰色のセカイ(3) 投稿日:2001年06月14日(木)23時50分14秒
- 私はぶらぶらと街を歩いていた。
いつもなら酒場に行って仕事の情報をもらうのだが、今はまだ昼をちょっと
過ぎたくらいで、当然酒場はやっていない。
だから、それまで時間を潰さなければならなかった。
そのとき、少し遠くで喧噪が聞こえた。
ほどなくて、1人の少女らしき人影が見える。
その小さい人影は、こっちに向かって走ってくる。
それはまだ12、3才くらいの幼い少女だった。
後ろから数人の男が追ってきていた。
少女はその小さな手に、パンを持っていた。
どうやら、あの男達から食べ物を盗んだようだ。
私には関係ないことだと思った。
すると何を思ったのか、少女が私の方に手を伸ばした。
いきなりのことに、私は少し戸惑った。
私は少女のことを知らない。
それとも、少女は私を誰だか知っているんだろうか?
あの少女は、私の過去を知っているんだろうか?
なんだかこの少女に、失われた青い空を見た気がした。
少女が私の後ろに回り込む。
私はほとんど無意識のうちに、ホルスターから銃を抜いていた。
- 173 名前:灰色のセカイ(4) 投稿日:2001年06月17日(日)00時06分13秒
- 男は私の目の前に立つと、始めはたじろいでいたが、少しすると男達の中の
1人が叫んだ。
「そいつを渡せ!そいつは俺達の食べ物を盗んだんだ!それとも、あんたが
俺達に食べ物でもくれるの?」
その男の声が少し甲高くて、なんだかシャクに障った。
この銃で脳天でも撃ち抜けば黙るかとも思ったけど、こんなところで騒がれて
捕まるのはゴメンだ。
だから私は、ポケットから数枚の金貨を取り出して地面に投げ捨てた。
男達は目の色を変えて、その金貨に飛びつく。
「それ以上はやれない。」
私はいつもより低い声で言った。
男達は金を拾い終わると、逃げるように消えて行った。
少女は男達がいなくなると、私の目の前に現れた。
「ありがとな、ほんま助かったわ。」
まだ少しだけ、少女の息は乱れていた。
一般の言葉は違うイントネーション。
「別に・・・・。」
私はそれを軽く受け流した。
「ウチは、カゴアイって言うねん。お姉ちゃんは?」
カゴは道端の階段に腰を下ろした。
笑って私を見上げる。
私はその隣に座って答えた。
「名前、持ってないから。」
別にそのまま帰ってよかったんだけど、いいヒマつぶしになると思った。
カゴはそれ以上何も聞いてこなかった。
子どもなりに色々と悟ったんだろう。
それからしばらく、沈黙だけが続いた。
- 174 名前:灰色のセカイ(5) 投稿日:2001年06月17日(日)00時15分46秒
- それをカゴは唐突に破った。
「なぁ、シャングリラって知っとる?」
カゴは目を輝かせて聞いてきた。
「シャングリラ?」
聞いたことがあった。
どこかにあるという、幻の地上の楽園。
「ウチ、絶対にそれを見つけたいねん!」
カゴはまっすぐ前を見据えて言った。
「ないかもしれないよ。」
それは、私が冷静に出した結論だった。
その言葉は少し残酷だったかもしれない。
「それでも、あるかもしれへんから。」
カゴは笑顔で言った。
その笑顔は、まさに子どもならではの無邪気さと、純粋さを感じられた。
少しだけ感心した。
何があっても諦める事を知らない、純真で強い心。
この子なら、無くしたものを見つけられる気がした。
私と違って・・・・。
「姉ちゃんは、探し物とかないん?」
カゴはいきなりあたしに話を振る。
探しものか・・・・。
「・・・・・ある、かな。」
私は少し考え込んでからポツリと答えた。
でもそれは、きっと見つからない。
見つからないけど、捜さずにはいられないもの。
「なら、ウチと一緒やな!」
カゴは嬉しそうに笑っていた。
- 175 名前:灰色のセカイ(6) 投稿日:2001年06月17日(日)23時51分45秒
- 「それより、なんで私に助けを求めたの?」
この子を助けたのは、失われた記憶を知っているかもしれないから。
別に、知らなくたってよかった。
記憶にこだわっていないし、そんなことでこの子を責める理由にはならない。
「助けてくれそうやったから。」
カゴは満面の笑みで言った。
それだけ?
私の記憶とは関係なかった。
それにしても、バカらしい・・・・・。
私なんかに賭けたってしょうがないのに。
今回はたまたま運がよかっただけ、いつもならきっと見捨ててる。
「私が助けてなかったら、どうすんの?」
私はぶっきらぼうに質問する。
「う〜ん、そないなこと全然考えてなかったわ。まぁ、こうして助かったんやし
それでええやん!」
怖いくらいのポジティブさと、プラス思考。
それに、子どもならではの単純な発想。
「そう・・・かもね。」
私はそれを静かに肯定した。
一息ついて、私は立ち上がった。
「じゃ、私行くところあるから。」
この子といつまでも一緒にいる義務はない。
歩き出そうとしてけど、足が止まった。
カゴが私の服の裾を掴んでいたから。
「離してくれない?」
私は少し呆れ気味に言った。
子どもに付き合っているほど、ヒマではない。
「ウチ・・・・、ウチを一緒に連れてって下さい!」
カゴは私を力強く見つめた。
断るつもりでいた。
なのに、私はカゴの手をとって歩き出していた。
- 176 名前:灰色のセカイ(7) 投稿日:2001年06月18日(月)00時06分20秒
- 自分でも驚いた。
でもきっとこの手をとったのは、一緒にいると探し物が見つかる気がしたから。
それになんとなく、私の喪失を埋めてくれると思ったから。
それとも、ただの気の迷いだろうか・・・・・。
カゴはコケそうになりながら、私の横に並んだ。
「・・・・・なぁ、ウチが姉ちゃんの名前決めてもええ?」
カゴは上目遣いで私を見て言った。
「別に・・・。」
名前なんて何でもよかったから、私はそれを了承した。
「じゃぁ・・・・・・ケイ!」
カゴは少しだけ考え込んでから、私の顔を見て言った。
「・・・・・・・。」
なんて言っていいか分からないから、何も言わなかった。
でも別に、悪い名前じゃないと思う。
「まぁ、特に意味はないんやけど。なぁ、気に入らんかった?」
カゴは不安そうに私を見上げる。
「別に・・・・。」
私の反応は相変わらずクールだった。
シャレた言葉で返したいたけど、思い浮かばなかった。
「・・・・・ケイ。」
カゴはボソッと私の名を呼んだ。
「何?」
私はカゴのを見る。
名前を呼ばれたら返事をする。
無視するときはよほどのときだ。
「あっ・・・。な、何でもあらへんよ!」
カゴはパァッと顔を輝かし、ニッコリと笑った。
- 177 名前:パク@紹介人 投稿日:2001年06月19日(火)22時16分40秒
- こちらの小説を「小説紹介スレ@銀板」に紹介します。
http://www.ah.wakwak.com/cgi/hilight.cgi?dir=silver&thp=992877438&ls=25
- 178 名前:Smoky dream(1) 投稿日:2001年06月20日(水)23時40分28秒
- そこはひどく埃ぽっくて。
むせるくらいのタバコの匂い。
そして、死の匂いがしていた・・・・。
一瞬、黒い長髪が見えた。
私は卑下するような笑み。
そして。その首筋には十字架のタトゥー。
「・・・・・・ケイ!」
私はハッとなって、ベットから身を起こした。
嫌な夢だと思った。
それに対する記憶はないが、なんだか胸に嫌悪感が残った。
「うなされてたけど、大丈夫なん?」
横を見ると、カゴが心配そうな顔をしていた。
「あぁ・・・・。」
私は何とか声を絞り出し、それだけ答えた。
「悪い夢でも見たんか?」
カゴはまだ心配そうな顔をしている。
だから、私はカゴの頭をクシャクシャッと撫でた。
カゴは照れくさそうに笑っていた。
この世界のどこかにあるという「シャングリラ」を捜す少女。
失った記憶を捜している私。
私達が出会って、早いもので2週間が過ぎた。
「帰る場所なんてどこにもない」とカゴは言った。
それは多分、私にも言えることだ。
帰る場所は・・・・・分からない。
もしかしたら、ないのかもしれない。
私達は何処へ行くわけでもない。
けれど何処まで行っても、あの灰色の空はついてくる。
逃げることはできない。
私達はモノクロの世界を彷徨い、歩き続ける。
何処かにあるという、探し物を見つける為に。
- 179 名前:Smoky dream(2) 投稿日:2001年06月21日(木)23時39分41秒
- 「なぁ、これってケイの大事なものなん?」
とカゴはアタッシュケースを持ち上げて言った。
それは私が倒れていたときからそばにあった。
茶色で、ボロボロの、皮でできたアタッシュケースだった。
「なんで?」
私は外着に着替えながら聞いた。
「だって、ずーっと持ってるやん。」
「必要、と言えばそうだけど。・・・・・・別に大事なものじゃない。」
私はカゴの方を見ないで答えた。
「ふ〜ん。なぁ、必要なものと大事なものって違うん?」
カゴは私の前に回り込み、顔を見上げて言った。
「・・・・・・どうだろうね。」
私は少し間を開けてから答えた。
「・・・・4、5、6と。はい、丁度だったよ。」
それは宿屋のおばさんに、私はお金を払っている最中だった。
「こんな物騒な時代に長旅とは御苦労だねぇ、その子あんたの子ども・・・・・。」
おばさんの言葉が途切れる。
それは、本当に一瞬の出来事だった。
物陰に隠れていた男が、私のアタッシュケースをひったくったのだ。
「あっ!「
とカゴが声を上げる。
男はヤバいとばかりに、一目散に逃げて行った。
「待て、泥棒!」
カゴはその男を追いかけようとする。
「追わなくていい、カゴ!」
けれどカゴは私の制止を聞かず、男を追いかけて行ってしまう。
私は、チッと舌打ちをした。
めんどくさいことをしてくれる。
それはアタッシュケースをひったくった男にも言えることだが、カゴにも言える
ことだった。
あれはそんなに大事なものじゃない。
だから、カゴに深追いをさせたくなかった。
私は軽く溜め息をつくてから、カゴを追いかけた。
- 180 名前:Smoky dream(3) 投稿日:2001年06月21日(木)23時57分58秒
- 少しして、私はカゴと男が争っている現場を見つけた。
カゴが男の背中にしがみつく。
男はそれによってバランスを崩し、その拍子に持っていたケースを地面に落とした。
ケースが開き、たくさんの札束のうち何枚かが、風に乗って舞い上がる。
「こりゃすげぇ・・・・。」
男が感嘆の声を漏らす。
「それはケイのもんや!」
カゴが男にタックルをする。
男は軽く飛ばされて、地面に転がった。
どうやらそれでキレたらしく、懐からナイフを取り出した。
「カゴ!」
私は男とカゴの間に飛び込んだ。
男の服のはだけたところから、骸骨のタトゥーが見えた。
私の体がグラリと傾いた。
それはわずかだったけれど、どうやらそれは記憶の断片らしかった。
私は卑下する笑み。
首筋のタトゥー。
大量の真っ赤な血。
空に舞う数枚のお札。
私は男に銃を向けていた。
なぜだかは分からない。
ただ、殺したいという衝動がそうさせた。
男は腰を抜かし、怯えた瞳で私を見ていた。
私は銃の引き金を引く。
それとほぼ同時くらいに、カゴの声が響いた。
「ケイ!!」
銃弾は、男の頬を軽く掠っただけだった。
何もない私に、このケースは唯一の持ち物だった。
気がついたら横に置いてあった。
誰のものだかは知らない。
私に残されたのはたくさん札束、これだけだ。
カゴは私の服の袖ギュッと掴む。
そして、軽く手を引っ張った。
そこから伝わる微かな体温と、柔らかい痛み。
その手が、少しだけ私を責めているような気がした。
私はその小さな手を、優しく握り返すことしかできなかった。
何処までも続く灰色の空。
この空のように、私達は何処までも行けるんだろうか?
- 181 名前:Ambition high(1) 投稿日:2001年06月23日(土)23時38分42秒
- その日もまた宿屋に泊まった。
広くもなく、大して家具も置いてない部屋は、それだけが自慢のように小奇麗だった。
私は一息ついてから、薄っぺらい紺色をしたコートを脱いだ。
そして上着も脱ぎ、タンクトップ姿になる。
ふと、自分の体を見る。
幾筋もの傷跡が、私には刻み込まれている。
私の存在を絡めとるように、その傷は存在しているようだった。
一体、私は何なんだろうか?
どうして傷があるのか、傷ついた理由でさえ知らない。
私はその無数の傷をいつも眺めてるだけ。
そこにある過去も知らずに・・・・・。
忘れてしまいたかった?
でもきっと、忘れてはいけない。
そのとき、私が感じていたはずの痛みを。
その夜はあいかわらず暑かった。
窓は開けてあるのに、たまに微風が入ってくるだけ。
空はいつもより少しだけ、晴れている気がした。
暑いにも関わらず、私達は1つのベットで寝ていた。
カゴが、私の背中にコツンと頭を当てた。
「眠れないの?」
私は軽く起き上がって、カゴの髪を撫でた。
普段は寝つきがいいカゴが、その日は小さな身体を寄せてきた。
- 182 名前:Ambition high(2) 投稿日:2001年06月23日(土)23時57分14秒
- 「ケイも、眠れなそうやね・・・・。」
カゴは私を上目遣いに見て言った。
「・・・・まぁね。」
私は少しだけ苦笑して答えた。
カゴは、まるで腫れ物にでも触れるように、私の傷跡に手を置いた。
「傷、痛くないんか?」
不安そうに私を見つめる。
私は口元だけで笑って言った。
「今はね。」
これはただの傷痕。
そう、痕でしかない・・・・・。
「昔は、痛かったん?」
カゴは私の顔を覗き込んで言った。
分からない、けど、きっと痛かったと思う。
だから、
「・・・・・・・多分、ね。」
と私は答えた。
その痛みは、もはや私の中には残っていない。
「あんた、どうしてシャングリラなんて捜してるの?」
ふと、頭に湧いた疑問をカゴに投げかける。
シャングリラ=それは何処かにあるという地上の楽園。
「う〜ん、なんでやろうな・・・・・。」
カゴは複雑な顔して考え込んでいた。
「理由ないの?」
私は少し冷めた口調で言った。
その言葉に呆れていた。
大した理由もないのに、途方もない大地を捜し回る。
それはかなり労力を使うことだ。
私にはそれが滑稽なことに思えた。
「ウチの父ちゃんなぁ、「ちがくガクシャ」ちゅうもんやってな。父ちゃんがよう
言うてたん、『俺はシャングリラを見たって』まぁ、誰も信じてくれなかったんやけど。
でも、ウチはどこかに絶対シャングリラがあると思うんや!だって、父ちゃんが
ウソつくはずないから。」
カゴは楽しそうに私に話した。
幻の楽園。
この世界のどこかにあると言うが、その場所を知るものは誰1人としていない。
それは、存在しないかもしれない。
もしかしたら、人間による愚かな偶像なのかも・・・・・。
- 183 名前:Ambition high(3) 投稿日:2001年06月25日(月)00時17分45秒
- 「でも、父ちゃんが言うとった、『シャングリラが幻になったのは、ウチらを
見捨てたから』になんやて・・・・・。」
カゴは寂しそうに天井を見つめて言った。
私達は汚れてしまった。
だから幻の楽園は、私達の元を去ったのかもしれない。
青空もそうなんだろうか?
私達に愛想を尽かし、身を潜めってしまったのも、
私達が愚か過ぎるから?
「あっ、そうや!ええもん見せたる!」
と言って、カゴはポットから琥珀色のペンダントを私に差し出した。
そのペンダントの中には、うす紫色の花びらが一枚閉じ込めてあった。
カゴは自慢げな顔をしている。
だから、それがイミテーションじゃないのか?という疑問は口にしなかった。
「それな、父ちゃんの形見なんや。シャングリラには、色んな花が咲いとるんやて。
父ちゃんが死ぬ前に言ってたんや、『もう一度、シャングリラに行きたい』って。
だから代わりにウチが行くんや!それがきっと、行く理由なんやと思う。」
カゴは向日葵のように笑って言った。
約束の大地がある事を、信じて疑わない汚れなき魂。
「だから一緒に行こうや、ケイ!」
その笑顔に、少しだけ心の喪失が埋まったような気がした。
カゴはそれからしばらくして、眠ってしまった。
手に、ペンダントをしっかりと握って。
私が布団を掛けようとしたとき、カゴのシャツが捲れた。
脇腹に銃痕があった。
私は声を発しなかったが、少しだけ目を見開いた。
撃たれてから、そう月日は経っていないように見える。
・・・・・・まるで、人に踏まれた小さな花だ。
私はシャツを引っ張り、傷を隠した。
そして、軽くカゴの頭を抱きしめて目を閉じた。
暑いというのに、私達は身を寄せては眠りについた。
私達に帰るべき昨日はなく。
行くべき明日はない。
喪失が埋まったように感じたのは、
錯覚なんだろうか?
- 184 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月25日(月)01時29分23秒
- 文章の書き方がすごく好きです。
しかも、やすかごですね。
続き期待しています。
- 185 名前:N 投稿日:2001年06月27日(水)00時51分26秒
- 切ない気持ちで一杯になりながら読んでます。
どんどん引き込まれて行ってます。
頑張ってください。
- 186 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年06月29日(金)23時03分20秒
- >名無し読者さん この話は始めはよしのの
だったんですけど話を書いていくうちに、
やすかごの方がいいなと思って変更しました。
文章の書き方は、なるべく原作の雰囲気を壊さないように書いています。
>Nさん 原作もすごく切なくて、
自分も引き込まれたので書くことにしました。
独特の雰囲気にハマってしまいました。
- 187 名前:Man−made beauty(1) 投稿日:2001年06月29日(金)23時22分09秒
- 「えぇ、これは大変貴重なバラの花なんですよ。」
カゴは古びた骨董屋のガラス窓に、顔を張り付けてそれを眺めていた。
店の亭主がそれに気づき、商品の説明とも自慢ともとれるような言葉を、
さっきから並べていた。
それのバラというものは、何かの本で一度見たことがあった。
丸いガラスの中に、バラはまるで宝物のように入っていた。
それはエバーフラワーと言って、瞬時に花をドライにしてガラスの中に
入れたものだそうだ。
なんでも中は真空になっていて、半永久的に枯れないらしい。
「しかしこんな物、今なっては物好きな金持ち連中しか買いませんよ。これは
質屋から流れてきた物でしてね、この店じゃ客引きとして置いてるんですよ。」
店の主人は、欠けた前歯を見せて笑っていた。
この世では見ることができない。
もしかしたら、存在していないかもしれない。
血のように赤いバラの花。
それはガラスの中で咲いているけど、青空の下で咲いていればもっと美しいと思う。
閉ざされた空間の中で、この花は空気や水に触れることができない。
ある意味、悲しい花だ。
「・・・・・・・ケイ、この花を外に出してやれへんか?」
カゴはそのバラの花を見ながら呟いた。
何でも買える紙切れなら、私は腐るほど持っていた。
だから、それを買った。
「・・・・・ま、毎度ありがとうございました!」
店の主人の声は少し上擦っていた。
その声を背にして聞きながら、私達は店を後にした。
そして、道の路地に放置されている木箱に腰を下ろした。
カゴが私に物をねだったのは、これが初めてだった。
- 188 名前:Man−made beauty(2) 投稿日:2001年06月29日(金)23時37分32秒
- 「この花って、まだ生きてるんか?」
カゴはバラの花を物珍しそうに眺めながら言った。
「厳密言えば生きてない。まぁ、仮死状態ってところかな。」
私は冷静に意見を述べた。
言ってからもう少し柔らかい言い方をすべきだったと、少しだけ後悔した。
「ふう〜ん・・・・。」
カゴはそっけない声で答えた。
「実物の花は見たことないの?」
親が地学学者なら、花の1つくらい見たことがあると思った。
「写真でならたくさん見たけど、実物見たんはこれが始めてや。」
カゴはガラスに入ったバラを、ジーっと見つめていた。
「そう・・・・。」
会話が止まる。
しばらくして溜め息と共に、カゴが空を見つめる。
そして、バラを薄暗い空に向けて呟いた。
「・・・・こいつ、可哀想やね。」
私は横目でカゴを見た。
カゴは切なそうな顔をしていた。
ガラスに入ったバラは綺麗に咲いていた。
私は少し顔を俯けて、ボソッと言った。
「・・・ガラスに入れられて、よかったのかもしれない。」
「なんでや?」
カゴはバッと私の方に振り向く。
「この灰色の空の下で咲いても、意味がないから。」
このバラの美しさは、終わりのない灰色の空と反比例している。
こんなところで咲くよりも、閉じ込められて美しく咲く方が、この花にとっては
幸せのように思えた。
- 189 名前:Man−made beauty(3) 投稿日:2001年06月30日(土)23時00分29秒
- 「・・・・そやけど、必ずシャングリラはあるんや!そこに行けばたくさんの
花が咲いとる!」
カゴは必死に反論しようとしていた。
「そうとも限らないよ。」
余計な言葉を口にしていた。
「なんで・・・・そないなこと言うんや!」
カゴは立ち上がり、私はを軽く睨んだ。
・・・・責められているような気がした。
空を奪った大人達を、無言で叱責しているようだった。
「このタールみたいな空に、終わりがあるとは思えない。」
「だって・・・・ケイ、ウチと一緒にシャングリラ捜してくれるって言ったやんか!
ウチの話、ちゃんと聞いてくれやんか!」
カゴが私の肩を揺さぶる。
「・・・・・・どうして私なの?」
カゴの手がピタッと止まる。
私は顔を俯けたまま言った。
「私は自分のことさえ知らない、自分のことさえ興味がない。」
だからきっと、カゴの喪失を埋めてやることはできない。
だから、求めないで欲しかった。
「・・・・あんたの親の代わりには、なれないよ。」
私は少しだけ顔を上げて、カゴの様子を伺った。
カゴは悲しそうで、寂しそうで、怒っているようにも見えたし、今にも泣き出し
そうにも見えた。
「・・・・ケイのバカ!」
カゴはそう言い残し、どこともしれず走って行ってしまった。
「ちょっとカゴ!」
私はそれからすぐに追いかけたけど、この街は人が多くて雑踏の中に見失って
しまった。
人の波をすり抜けて私は捜し続けた。
逃げたのは、小さな花だった。
でも、失ってからその大きさに気づいた。
人間と同じように・・・・。
過ちを何度も何度も繰り返す、けれども愚かにも安らぎと救いを求めている。
私は不意に妙な気配を感じ、後ろを振り返る。
人々の中に紛れて、全身黒づくめの少女が立っていた。
- 190 名前:Man−made beauty(4) 投稿日:2001年06月30日(土)23時11分11秒
- 肩より少し長い黒い髪。
整った美麗な顔立ち。
コートで隠れてよく見えないけれど、首筋に黒い十字架のタトゥーをしていた。
それは私を見つけて、嘲笑っていた。
私は大きく目を見開いた。
何かあるのに、それが漠然とし過ぎていて分からなかった。
ただ、身体は金縛りにあったように動かない。
少女のくわえたタバコの白い煙が、空へと吸い込まれていく。
私は何もできず、ただ少女を見つめていた。
少女は胸で十字をきる。
私と目が合うと冷たく笑った。
そして、『アーメン』と言った。
私の中で・・・・・何かが壊れた。
まるで、身体に電流を流されたような感覚が私を襲う。
「・・・っ!・・・ぐっ・・・・・がはっ!」
込み上げてくる何かを、抑えきれなかった。
私は吐血した。
少女は何事もなかったかのように、人込みの中に消えて行った。
私はゆっくりと崩れ落ちる。
「・・・・・?!ケイ!」
薄れゆく意識の中で、カゴがこっちに走ってくるのが見えた。
「どうしたんや、ケイ!」
遠くにカゴの声が聞こえた。
そこで、私の意識は途切れた。
- 191 名前:Man−made beauty(4) 投稿日:2001年06月30日(土)23時13分30秒
- 真空に閉じこめれば、確かに見た目は綺麗だ。
けれど、そこには酸素がない。
見えないところで、本当は苦しがっている。
・・・・・・私達は、
生きてるフリをしているだけなんだ。
- 192 名前:Man−made beauty(5) 投稿日:2001年07月01日(日)23時34分21秒
- 目覚めたらそこは、安ホテルのベットの上だった。
私はぼんやりとしながら天井を見上げていた。
どこまでが、夢だったんだろう?
でも、私はたぶん知っている。
あの黒髪の少女・・・・・・死神のことを。
ふと横を見ると、ベットにもたれ掛りながらカゴが寝ていた。
私の手をギュッと握っている。
空いている方の手でそっと髪を撫でたら、カゴの身体が少しだけ動いた。
どうやら、起こしてしまったらしい。
「う、う〜ん・・・・・・あっ、目覚めたんか、ケイ!」
カゴは目を覚ますと、ベットの上に這い上がってくる。
そして、心配そうに私を見つめる。
「・・・・・ごめん。さっきは言い過ぎたよ。」
寝起きだからなのか、私の声は少し掠れていた。
「・・・・・・うん。」
カゴは神妙な顔をしていた。
「まだ、怒ってる?」
私はカゴの頬にそっと触れた。
「うん。・・・・・・でも、ちょいちゃうわ。」
カゴは笑っていたけど、それは苦笑いのようにも見えた。
私は上半身を起こし、カゴを抱きしめた。
小さい身体だと思った。
カゴは私の服をしがみつくように掴む。
「ケイ、ウチな・・・・。」
真剣な瞳でカゴはまっすぐ私を見上げる。
「ケイに、絶対青い空を見せたるから!」
その言葉を聞いたとき、カゴの瞳にはいつか青い空が映る気がした。
私は微笑して言った。
「・・・・・あぁ。」
T可哀想な花″それはたぶん、
行き場をなくした私の方だ。
私の言葉を聞いたカゴは、本当に嬉しそうに笑っていた。
まるで、天使のようだった。
その笑顔だけで、私の心は満たされる。
- 193 名前:Recognize(1) 投稿日:2001年07月01日(日)23時49分49秒
- 私達は少し落ち着こうと思い、とある街で部屋を借りた。
部屋は全面白い壁で覆われていたが、それはどうやら昔のことで、今は薄茶色や
灰色になっていた。
もっといい部屋を借りることはできた。
でも、このくらいが私達には丁度いいと思った。
「あっ!」
窓から外を眺めていたカゴが声を上げる。
「どうしたの?」
私は新聞を読みながら聞いた。
「今、花が見えたんや!」
カゴの声はいつも以上に弾んでいた。
ポケットからオペラグラスを取り出すと、窓から身を乗り出して捜している。
年代を感じさせるソのオペラグラスは、おじいちゃんがくれた物だと言っていた。
私はチラッとだけカゴを見て、また新聞に目を戻した。
「あんまり乗り出してると落ちるよ。」
相変わらず新聞を読みながら言った。
「・・・・・あれ?どこかに行ってしもうた。」
カゴはキョロキョロと頭を動かして捜している。
「見間違いじゃないの?」
私は溜め息をつき、タバコに火をつけた。
「そんなことないっ!・・・・・本物の花かもしれん!」
カゴは妙に慌てていた。
正確には、焦っていた。
ソワソワしながら、私と窓を交互に見ている。
「やっぱりウチ見てくるわ!ケイはここで待っててな!」
カゴは言うが早いか、猛ダッシュで出て行ってしまった。
「ちょっと・・・・。」
私の声は既に聞こえていない。
はしゃぐ小さな背を見送って、私はまた溜め息をついた。
- 194 名前:Recognize(1) 投稿日:2001年07月01日(日)23時51分32秒
- 振り返っても、そこには足跡なんて何処にもない。
2人が歩いた道も、ふと口ずさんだ歌も、
私達が死んだら・・・・・・・誰も知らない。
- 195 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月02日(月)01時08分10秒
- この後、どうなっていくのでしょー?
楽しみにしています!!
- 196 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年07月06日(金)23時17分19秒
- >名無し読者さん ありがとうございます。
これからだんだんとケイの過去が明らかに
なっていくと思います。
- 197 名前:Recognize(2) 投稿日:2001年07月06日(金)23時28分51秒
- 「遅いな・・・・・。」
私は軽くタバコを噛み締めた。
テーブルの上にある灰皿には、既に溢れるくらいの吸い殻が捨てられている。
何杯目かのコーヒーは、少し冷めかかっていた。
久しぶりに時間を持て余した私は、さっきから繰り返しコーヒーを飲んでいる。
いつもは気にならないのに、今は壁掛け時計から聞こえてくる秒針が嫌に耳つくいた。
だから適当に作った鼻歌で、掻き消してみたりした。
道に迷った?
事故にでも遭った?
それとも、花を追いかけてどこかに行ってしまった?
そうしたらあの子はもう戻らない。
あの子のいない時間を、冷めたコーヒーのように注ぎ足してはゆけない。
たった1つの約束を知ってしまった苦さ。
それは、きっとこのコーヒーより苦い。
私を縛る生温い痛み。
それを体中の傷痕へと、優しく深く刻み込ませよう。
私はタバコの煙りを吸い込んで、ゆっくりと吐き出した。
そのとき、勢いよくドアが開いて、
「ただいま!」
と元気な声が聞こえた。
振り向くと、笑顔のあの子が立っていた。
「・・・・・おかえり。」
私は優しく微笑んでそれに答えた。
いつからか、それが私のすべて。
- 198 名前:Recognize(3) 投稿日:2001年07月06日(金)23時40分00秒
- 「花は見つかった?」
カゴが私のところに走り寄ってくる。
「う、う〜んと、なんちゅうのかな・・・・・。」
カゴは私の問いに複雑そうな顔をした。
「ん?」
私はなぜカゴが困っているのか分からなかった。
「・・・・・これ。」
そう言って、カゴは私に一輪の花を差し出した。
それは薄いピンク色をしていて、花びらはまるでアイロンをかけたように
しわくちゃだった。
そして花びらは、ふんわりとカップのように花弁を包み込んでいた。
でも、それは造花だった。
花は確かに見つかった。
けれど、それは本物ではない。
だからカゴは戸惑ったんだと思う。
「それどうしたの?」
私は花をしげしげと眺めて言った。
「それな、ポピーって言うんやて。黒づくめのお姉ちゃんがくれたんや。」
黒づくめ?
全身に嫌悪感が走った。
「花言葉は・・・・・・慰め、とか言うてたなぁ。」
ガシャーン!
私は手から落ちたコーヒーカップが、テーブルを黒く染めていく。
冷や汗が流れるのを感じた。
「・・・・・・ケイ?」
カゴは不思議そうに私を見上げていた。
その夜、私は夢を見た。
真っ黒な冷たい瞳が、私を見下ろして嘲笑う。
そんな・・・・・夢を見た。
- 199 名前:Black dream(1) 投稿日:2001年07月07日(土)23時41分41秒
- 『死神の匂いがする』
そこは色のない世界だった。
全てはモノクロに見えた。
家の壁や、
人々の顔や、
太陽さえもモノクロだった。
ただ、血だけが紅く。
鮮やかに紅かった・・・。
私は壁に寄り掛かって、返り血で紅く染まった自分の手を見ていた。
7、8人の男の死体が転がっている。
やっぱり、血は紅かった。
私は銃をホルスターに戻した。
ふと近づく気配に振り向くと、そこには黒ずくめの少女が立っていた。
「あぁ〜あ、いつものことだけで本当に見境なく殺すね。」
彼女は辺りを軽く見回すと、口元だけで笑って言った。
「まるで、前世紀前の子どもみたいだよ。蝉の抜け殻だけを集めてる。」
暗闇を纏う少女。
「本能だから・・・。」
私はボソッと答えた。
その声も、
艶のある髪も、
瞳の奥も、
ただ黒く・・・・。
私はいつしか染められていた。
「だけど、私だけは殺さないよね。それも本能?」
彼女は私の頬に触れる。
私の顔は返り血でベタついていた。
彼女はまるで、私の世界そのもの。
絶対的なもの。
彼女が嘲笑えば、首筋の十字架が断罪してくれる気がした。
私は目を閉じる。
仕事の終わった後はいつもこうだ。
まるで、儀式のようだった。
彼女は私の唇に唇を重ねた。
その卑猥な唇が、私をまた闇に染めさせる。
- 200 名前:Black dream(2) 投稿日:2001年07月07日(土)23時58分00秒
- 私は何でもした。
それが「彼女」の命令なら何でもした。
人も殺したし、薬も捌いた。
人売りだってやった。
「彼女」出会ったのは今から2年前で、身寄りのない天涯孤独の私を、まるで
捨て犬を拾うようにして手懐けた。
「彼女」は私の存在理由になった。
『哀しい』、『愛しい』、『虚しい』
感情が私は削げ落ちている。
そんな私に出来ることがあるんだと、「彼女」は教えてくれた。
そこのない漆黒の眼で、闇に解けるような声で教えてくれた。
「彼女」の存在全てが、私を絡んで離さない。
私は「彼女」に教えてもらった通り、人を殺したり売ったりした。
悪いことだとは思わなかった。
お金を貰えたけど別に欲しくなかった。
言われた通りにすれば、「彼女」は私に手を差し伸べてくれる。
それだけでよかった。
それ以外はいらなかった。
それだけの為に、私は何でも出来た。
その2年間は、全てが「彼女」できていると思う。
「彼女」は私の主であり、真っ黒な神様だった。
「彼女」が私の全てだった。
だけど、私にはこの感情が何て言う名前なのか知らない。
- 201 名前:Black dream(3) 投稿日:2001年07月08日(日)23時58分55秒
- 鉄製の安いベットは、人間2人の重さに今にも壊れそうな、軋んだ音をさっき
から発していた。
彼女は私を見下げていた。
私は彼女を見上げていた。
全身で感じる彼女の重み。
それは、本当に彼女の重みだった。
人を殺したり、脅したりしているとは信じられない。
けれど見上げて見えるその顔は、彼女がわたしより4つ、5つも年下とは
考えられないほどに妖艶だった。
彼女は私の前髪を軽く掻き揚げると、優しくキスしてくれた。
でもそれは、触れるだけのキス。
思えば、深いキスは一度もしたことがなかった。
彼女がそれを拒んでいた。
私はそれでも構わなかった。
どうしてこんなことをしているのかと、前はいつも思っていた。
彼女に抱かれることを嫌悪していた。
年下に抱かれるということ、それ以前に抱かれること自体が嫌だった。
しょうがないことだと、自分を納得させていた。
だって「彼女」は、私を買ったのだから・・・・・。
道端で灰色の空を眺めているだけだった私に、「彼女」はいきなり現れた。
そしてポケットからたくさんの札束を取り出して、私に向かって投げ捨てた。
そして、一言だけ言った。
「あんたを買う。」
ぶっきらぼうに私に向かって手を差し出した。
私は、なぜだか分からないけれど・・・・・・・・その手を取った。
思えば、それが「彼女」との始めての出合いだった。
いつからか、私は「彼女」に抱かれることを望んでいた。
- 202 名前:Black dream(4) 投稿日:2001年07月09日(月)00時19分05秒
- 静まり返った部屋で聞こえるのは、時計の針の音と私の荒い息。
そして、切ない喘ぎ声だけ・・・・・。
彼女は一言も発せずに、軽蔑にも似た卑下のまなざしで私を見ていた。
とても行為を楽しんでいるようには思えない。
でもそれは、いつものことだ。
いつも、私の中に違う誰かを見出そうとしている。
それから「彼女」は、私の名前を呼ぶと言うことをしなかった。
ただ例外的に、行為のときだけ「私」の名を呼んだ。
「私」も、行為のときだけ「彼女」の名を呼んだ。
「ケイちゃん、気持ちいい?」
口元だけで笑って、彼女は私に聞く。
「あっ、はん、いいよ、マ・・・。」
彼女がいきなり私の唇を塞いだ。
だから、名前を呼ぶことができなかった。
彼女は私に名前を呼ばせたくないんだ。
たまにこうやって、私が名前を呼ぶのを拒む。
なぜだかは分からない。
それでもよかった。
きっと、私は何も欲してはいけない。
それを彼女も望まないだろうから。
行為が済むと、彼女は服を着替え始める。
私はけだるい身体を起こした。
「今日は泊まって行きなよ、朝までには戻るから。」
そう言い残し、彼女は部屋から出て行った。
「はい。」
私は閉まったドアに向かって言った。
それから私は、ベットでもう一眠りすることにした。
- 203 名前:Black dream(5) 投稿日:2001年07月15日(日)00時16分04秒
- 起き上がると、もう外は暗くなってきていた。
私はタバコを一服した後、冷たいシャワーを浴びた。
髪を拭きながら、少しだけ部屋を物色した。
前々から興味はあったけれど、触れることはなかった。
それは、暗黙の了解のようなものだったから。
触れてはいけなかった。
私はなんとなくタンスの引き出しを開けた。
そこには服は入っていなかった。
ただ、隠すように裏返しになっている写真立てがあるだけだった。
なんとなく、それを手に取った。
私は何の感情も持ってはいけない。
「彼女」の傍にいる為に。
私は写真を見た。
そこには、ショートカットで男の子のような少女と、笑って映っている金髪の
「彼女」がいた。
年は、ショートカットの少女の方が少し年上らしかった。
本当に仲が良さそうで、こんな顔した「彼女」を私は始めて見た。
愛しそうに少女を見つめる眼差し。
こんな顔、見たことがない・・・・・。
私は写真立てを床に叩きつけた。
この痛みが何と言う名前なのか、私はまだ知らない。
ただ、私は「彼女」の笑顔をビリビリに破いて、破いて、破いて、
ゴミ箱に捨てた。
ハッとなって後ろを振り向くと、そこに「彼女」がいた。
・・・・・そこからのことは、あまり覚えていない。
その日、神様は消えた。
- 204 名前:Black dream(6) 投稿日:2001年07月15日(日)00時26分29秒
- 目覚めると、血まみれになって荒れた大地に倒れていた。
いや、捨てられていたと言うが正しいかもしれない。
私は壊れたオモチャで、生まれたばかりの胎児のようだった。
フィルムを切り取られたように、記憶というものがなくなっていた。
喪失だけがあった。
数えきれない程の命を奪った私。
拭いきれない程の血を浴びた私。
だけど、私の犯した罪はたった1つだけ。
写真を破ったこと。
ただ、それだけ・・・・・。
そのとき私は何も判らないまま、重苦しい灰色の空向こう側に、
太陽を捜していた。
- 205 名前:Emply heart(1) 投稿日:2001年07月15日(日)23時26分37秒
- 私は町外れの小さな教会に来ていた。
そこには誰もいなくて、神父様さえいなかった。
だからきっと、こんなところに神様はいない。
あの薄汚れたステンドぐらいに描かれている、十字架に磔られて苦しげに顔を
歪ませる男が、すごく滑稽に見えた。
私は過去がないから、空っぽなんだと思っていた。
でも本当ははじめから、空っぽだったんだ。
記憶が戻ったのは本当に唐突なことだった。
だから記憶なんてものに、大した価値はないんだ。
そう思った。
私はしばらく、ベットの上で途方に暮れていた。
いつの間にか、闇を押し退けるように、窓から淡い光が差し込んでくる。
隣でカゴが寝返りをうつ。
私はビクリと肩を震わせた。
安らかな寝顔を目にした途端、私は急に怖くなって部屋から逃げ出した。
これで、良かったんだ。
だって、こんな汚れた空ではあの子は飛べないから。
汚れた私じゃ、あの子を飛ばせられないから・・・・・。
- 206 名前:Emply heart(2) 投稿日:2001年07月15日(日)23時44分17秒
- 「ケイ。」
と不意に声がして、私はチラッとドアの方を見た。
「これ、忘れ物や。」
カゴはそう言って、紙切れの詰まったケースを私に差し出した。
そのケースは、私が唯一あの子にあげれるものだった。
それがあれば生きることに不自由しない。
餞別みたいなものだった。
「これ、ケイの必要なものなんやろ?」
カゴの声は、いやに老朽した室内に響いていた。
響いたせいなのか、その声は少し震えていた。
「・・・・・・・・。」
私は何も言わなかった。
「黙って行っちゃうんはズルイけど、仕方ないんやな。ウチが勝手に一緒に
行こうって言ってただけやし・・・・・。」
カゴの声がだんだん弱々しくなっていく。
「・・・・・・・・。」
私は何も言えなかった。
「・・・また・・・・どっかで・・・会えるよな?」
カゴの声は少しだけ聞き取りずらかった。
「・・・・・カゴ。」
私は一言だけ言った。
カゴの気持ちは分かった。
ちゃんと私に伝わった。
あの子から、離れることなんてできない。
あの子が、離してくれない。
「だから、だから・・・・・。」
カゴは声を振り絞るように言った。
見ると、カゴは泣いていた。
泣いているカゴを見るのが、それが初めてだった。
ケースが床に落ちる。
カゴが私に抱きついた。
私はカゴを抱きしめた。
教会の鐘が鳴る。
それは壊れたレコードのような、鈍った音だった。
あの子は、自分がつけた私の名を何度も何度も呼び続けた。
私はそれに応えるように、ありったけの力であの子を胸に閉じ込めた。
いっそこのまま壊してしまえば、永遠に私だけの物になるのだろうかと、
思ってはいけないことを・・・・・・思った。
- 207 名前:Emply heart(3) 投稿日:2001年07月16日(月)00時11分16秒
- その晩私達は、部屋には戻らずに道端の片隅で、夜空の下で2人寄り添って過ごした。
冷たいコンクリートの壁を背に、私はカゴを抱き締めるようにして座っていた。
私はカゴに逢うまでの自分がどんなだったかを、訥々と語った。
・・・・・全部理解してもらうつもりはなかった。
カゴはただ黙って、時折私の手を強く握りしめながら耳を傾けていた。
「怖い?」
と私はカゴの顔を覗き込んで聞いた。
「うんん。でも・・・・痛いな。」
とカゴは少し悲しそうな顔をして答えた。
私の声が静かに、星さえない真っ黒な空に吸い込まれていく。
確かなものは、腕の仲の小さな温もりだけ。
まるで、懺悔だと思った。
「ねぇ、カゴはどうして私にケイって名前をつけたの?」
その質問に深い意味はない。
どんな答えでも構わない。
ただこの名前が、「彼女」が私を呼ぶときの名前と同じだったから。
私には偽名を名乗れないのかと、少しだけ自分を嘲笑した。
そして、「彼女」から逃げられないことを思い知らせる。
だからどんな答えでも、きっとこれは事実だから変わらないと思った。
「なんでそんなこと聞くん?まぁ、別にいいんやけど。」
カゴは少し不思議そうな顔をしていた。
質問の意図が分からなかったらしい。
それでいい。
その方がいい・・・・・。
「いや、なんとなく聞いてみただけだよ。」
私はカゴの髪を手で掬って言った。
真意を言うことができなかった。
「ふ〜ん、そっか・・・・。あぁ、名前つけた理由やったな。それは、きっと
ケイがケイだからやな!」
カゴはいつもの笑顔で言った。
そうか・・・・・。
私は、私でしかない。
どんな残酷な運命でも、逃げることはできない。
でも、私はこの子がいる。
それだけで私は前に進める。
- 208 名前:N 投稿日:2001年07月16日(月)01時17分24秒
- すごく、おもしろいです!
読んでて、頭に映像と音までも浮かんできます。
- 209 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月16日(月)02時22分20秒
- すっごくいいっす!!
感動しました。
続き期待しています!
- 210 名前::弦崎あるい 投稿日:2001年07月19日(木)22時43分30秒
- >Nさん この話は原作自体が言葉が断片的で、
抽象的なので、結構分かりにくいかなぁと
思っていたのですが、映像や音までも浮かぶと
言ってもらえて良かったです。
>名無し読者さん 感動ですか?
すごく嬉しいです!
自分もすごくこの原作が好きで、少しでも多くの人に
知ってもらいたくて書くことにしました。
頑張って続き書きます。
- 211 名前:Emply heart(4) 投稿日:2001年07月19日(木)22時53分18秒
- 私達は、ながいたびをしていた。
あの子は青空を捜していた。
私は一体何を捜しているんだろう?
私の過去?
私自身?
それとも喪失を埋める為の何か?
いや、どれも違う。
あのとき、荒れ果てた地面に横たわりながら捜した太陽。
今、腕の中で私に預けられた体温。
もう痛むことのない傷を、あの子が指でなぞるたびに、言いしれない痛みを憶えた。
心臓が、悲鳴を上げるくらい熱くなる。
そのまま死んでしまうんじゃないか、と思うくらいに。
でもその熱は、私にココロの在り処を伝える為のもの。
・・・・・私が欲しかったのは、痛み。
痛いんだ、ココロか。
だから生きているんだ、私は。
痛みを感じるのは生きている証拠。
私はそっとカゴを抱き寄せた。
「ケイ?」
カゴが不思議そうな顔をして私を見つめる。
「必ず行こう、約束の大地へ。」
私は腕に力を込めた。
- 212 名前:Emply heart(5) 投稿日:2001年07月19日(木)23時01分43秒
- 不意に感じた人の気配に、私は顔を上げた。
黒いロングコート、黒いシャツ、黒いズボン。
全身黒ずくめの少女が立っていた。
肩までくらいの黒くて艶のある髪。
首筋に見える、黒い十字架のタトゥー。
そして、深く黒い瞳。
タバコをくわえたまま、その唇は言った。
「迎えに来たよ。」
口元だけに笑みを浮かべて・・・・・・。
私はカゴをかばうように前へ出た。
「・・・・・ケイ?」
カゴはいきなりのことに、ただ呆然としていた。
私は、この少女の名を知っている。
それが本当の名前か知らないけれど、その名を出せば誰もが震え上がった。
畏怖の念を込めて呼ばれていた名前。
その名は、『マキ』
- 213 名前:Faint smile(1) 投稿日:2001年07月19日(木)23時20分49秒
- その声を聞いたとき、身体がゾクリと震えた。
冷たい汗が流れる。
暗い夜を背負って、死神は私に微笑んだ。
「ケイ、この人や!この人がウチに花をくれたお姉ちゃんや。」
カゴが私の服の袖を引っ張る。
私は、ただじっとマキを見つめていた。
「それがケイちゃんの疵?」
マキは吸い終わったタバコを、地面に投げ捨てて言った。
・・・・・えっ?
「あの日、ケイちゃんを荒れ果てた大地に捨てたとき思いついたんだ。『そうだ、
ゲームを始めよう』ってね。」
この、脳が蝕まれるような黒い黒い声を憶えている。
「調教された飼い犬に、一時の自由を与えたらどんな風に生きるのか。」
マキは懐から新しいタバコを取り出し、火をつけた。
憶えている。
ぬめった血の匂いも、乾いた札束の感触も、ザラついた空気も。
あのときの感覚が蘇る。
「まぁ、記憶をなくしたのは計算違いだったけどね。・・・・・いや、本当は
なくしたんじゃなくて、忘れたかったのかもしれないけど。」
この真っ黒な瞳を、忘れることなんてできない。
「けど、忘れられないよ。細胞の1つにまで私が染みついているんだから。」
マキは嘲笑にも似た笑みを浮かべる。
生かされていたのは、この少女と同じ運命を辿る為。
「今度は私が破る番だね、写真を。」
マキはコートの内側に手を入れる。
「逃げて!カゴぉぉぉぉぉぉぉ!」
私は腹の底から叫ぶ。
「愛してるよ。」
マキは銃をカゴに向けた。
一瞬、いろんなことが頭の中でプレイバックした。
割れた写真立て。
血まみれの私。
カゴとの出会い。
カゴの笑顔。
泣き顔。
私はカゴを抱きしめた。
必ず、一緒に行こう!
約束の場所へ・・・・・。
- 214 名前:Faint smile(2) 投稿日:2001年07月20日(金)23時28分09秒
- ガウン!
と乾いた銃声が辺りに響いた。
「ケイ!」
カゴが悲鳴のような声を上げる。
私はカゴをかばった。
背中に痛みが走る。
「ケイ、ケイ!」
カゴが必死に私の名前を呼ぶ。
私はカゴを強く抱きしめた。
「まだだよ。まだ、全然だね。」
マキがまたこっちに銃を向ける。
ガウン!
ガウン!
何発もの銃声が聞こえた。
私はそれを、背中で全て受け止める。
「この程度の痛みじゃ、感じないでしょ?」
マキは楽しんでいるようだった。
その少し低い声は、弾んでいた。
「ケ・・・・。」
カゴの声が止まる。
「ぐっ、がっ・・・はっ!」
私は胃からくる熱いものを、地面に吐き出した。
辺り血が飛び散った。
私はその場にうずくまった。
カゴが私の前に回り込んで叫んだ。
「・・・・・やめとき!なんで、なんでケイにこんなことするんや!」
目にうっすらと涙を浮かべ、マキを睨みつける。
「それ、やめてくんない?」
マキは見下さすような視線をカゴに向ける。
「えっ?」
カゴはそれに怯えて少し後退る。
「ケイって呼んでいいのは、私だけなんだよ。」
ゴッ!
と鈍い音がした。
マキが銃でカゴの頭部を殴り飛ばした。
「なっ・・・・・。」
カゴは小さな声で呻く。
呻くというより、絶句してそれしか言葉が出なかった感じだった。
そして、思いっきし吹っ飛ばされ、転がるようにして地面に倒れ込んだ。
「カゴォォォォォォォォォォ!」
私は悲痛な叫びを上げて、カゴに駆け寄った。
無我夢中だった。
身体の痛みなんて忘れていた。
私はカゴをゆっくり抱き起こした。
マキは口元だけで笑っている。
私はホルスターから銃を抜いた。
マキも私に銃を向ける。
2人はお互いに銃を向けたまま、立ちつくしていた。
- 215 名前:Faint smile(3) 投稿日:2001年07月20日(金)23時46分29秒
- 「喜びなよ。ケイちゃんにももうすぐ、本当の暗闇が見えるよ。」
マキは余裕からなのか、銃を下ろした。
「私は、あんたとは違う。」
私は震える手で標準を定めた。
「ふっ・・・・。」
マキは鼻で笑っただけだった。
「これが私の疵なら、この痛みが全てだ!」
私は大声で叫んだ。
カゴはピクリとも動かない。
右手にカゴを抱きしめ、左手でマキに銃を向ける。
マキが哄笑する。
大きな声で、狂ったように笑っていた。
私はマキを睨む。
カゴを抱く手に力を込めた。
アタッシュケースが開いていたのか、札束が風に乗って舞い上がる。
マキが銃を構える。
私は引き金を引いた。
少しの沈黙の後で、壊れた鐘の音が辺りに響き渡る。
それはまるで、戦いの終わりを告げているようだった。
札束が空高く昇っていく。
私はそれを、ただぼんやりと眺めていた。
- 216 名前:Faint smile(4) 投稿日:2001年07月20日(金)23時48分48秒
- 何処までも続く灰色の空の下
帰る場所なんてない私達は
・・・・・・だから
きっと何処へだって行けた。
- 217 名前:シャングラリはいらない(1) 投稿日:2001年07月22日(日)23時42分42秒
- 教会の外れに私は小さな墓地を作った。
寄せ集めの木で作られた十字架は、「彼女」に相応しい気がした。
私はその墓の前にさっきから立っていた。
墓にはお供物のように、カゴのオペラグラスが置いてある。
・・・・・本当の暗闇。
「彼女」の見てきた孤独がなんだったのか、今の私には分かる気がする。
深くえぐれた傷痕の奥・・・・・・どこまでも続く空っぽの痛み。
「・・・・・ケイ?」
その声に振り向くと、カゴはアタッシュケースを抱え込んで立っていた。
そして、壊れた瞳で私を見つめていた。
「そこにおるんか、ケイ?」
カゴは不安そうに私を捜している。
「・・・・・あぁ、ここにいるよ。」
私はカゴの持っていた、アタッシュケースを手に取った。
死神は消えた。
けれどそれと引き換えに、カゴの目は何も映さなくなった。
医者は打ち所が悪かったんだろうと、同情した声で言っていた。
カゴは私の手をギュッと握って、「大丈夫や」と笑った。
少し震えながら、笑っていた。
本当は抱きしめてやりたかっけれど、強いこの子は泣き顔を見られるのを嫌がる
だろうから、やめた。
私はカゴの手を握り返した。
少しだけ、嗚咽が聞こえた。
- 218 名前:シャングラリはいらない(2) 投稿日:2001年07月22日(日)23時54分59秒
- 「さよならを言ってた。」
私はもう一度、墓を見つめ直した。
「そっか・・・・・。」
カゴは少しだけ悲しそうな声を出した。
「いいの、オペラグラス?」
それはカゴが肌身離さず持っていたものだった。
だから、あげていいのかと思った。
「ウチにはもう必要ないもんやから、その人にあげるわ。・・・・・・ちゃんと、
大事な人が見つかるようにな。」
カゴが墓に向かって手を伸ばす。
私はその手を導いてあげた。
「心配せんでええよ。大事な人は、ちゃんと見つかんねんから。」
カゴは墓に顔を寄せて言った。
そして、いびつな十字架を優しく抱きしめた。
「・・・・・そうだね。」
私はカゴの頭をクシャクシャっと撫でて言った。
「行こう!」
カゴがこっちに振り返って、私に向かって手を差し出す。
躊躇もなく伸ばされた小さな手を、強く強く握った。
いつもこの子がしてくれたように・・・・・。
カゴはニッコリと笑った。
この子の目には、もう青空は映らない。
私達はゆっくりと歩き出した。
けれど目的はなく、あてもない。
帰るところも私達にはない。
この子の目には、暗闇しか映らない・・・・・。
だから、今この子が見ている暗闇に、今度は私が道標を灯そう。
しっかりと手を繋いで離さない。
どんなに遠く小さくても、けして見失ったりしないように。
- 219 名前:シャングラリはいらない(3) 投稿日:2001年07月23日(月)00時03分50秒
- いきなり風が吹いてきて、小さな何かが私に向かって飛んできた。
私をスッと通り過ぎたそれは、ピンク色の花びらのようだった。
えっ?
見間違いだと思った。
私はつい、足を止めてしまった。
その正体を確かめたかった。
それは1枚だけではなく、何枚か飛んできた。
間違いなく、花びらだった。
私はしばらく呆然としていた。
信じられなった。
花びらが飛んでくるなんて・・・・・。
「・・・・どうしたん?」
カゴが不思議そうに私を見上げる。
「その・・・・。」
私は言葉に詰まった。
地平線の向こうに、うっすらと青空が見えた。
私はこの子がいれば何もいらない。
この子の目は、もう何も映さない。
なら、どこに行ったって同じだ。
それが楽園でも、薄汚れた灰色の世界でも。
「・・・・・なんでもないよ。」
私は優しい口調で答えた。
もう、シャングリラはいらない。
- 220 名前:シャングラリはいらない(4) 投稿日:2001年07月23日(月)00時06分37秒
- あの子が微笑んで、私がその手を握って、
あのとき確かに私達は、
青空と反対方向に向かって、歩いていた・・・・・。
END
- 221 名前:あとがきみたいなもの 投稿日:2001年07月23日(月)00時26分30秒
- やっと終わりました。
あんまり長い話じゃなかったんですけど、すごく気力を使う話なので長編ものを
書いたみたいな気分です。
原作もそうなんですけど、読み終わるとすごく脱力感に襲われるんですよね。
だから今、すごく脱力してます。
いちよ原作を紹介しときます、興味がわいたら読んでみて下さい。
峰倉かずやさん原作の、Stigma(スティグマ)というマンガです。
新書館から出てます。
定価1200円と少し高いんですけど、オールカラーで書かれてます。
この話は、最初はよしのので書こうと思ってました。
それで黒づくめの少女の役が保田さんだったんですけど、いろいろあって
やすかごになりました。
今はこの方がよかったかな、って思ってます。
次回は長編で、アンドロイドと人間の愛について書こうかなと思ってます。
AIに影響されただけなんですけどね、単純ですいません。
多分、いしよしで書くと思います。
長いあとがきなりましたが、読んでくれた皆さんありがとうございました。
- 222 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月23日(月)00時28分29秒
- お疲れ様でした。
前に書き込んだときも言いましたが、すっごい感動しました。
鳥肌が立ちました。ほんとマジで。
いや〜、パッピーエンドとも、なんとも言い切れないですが、
とにかくよかったです。
次も、気が向きましたら、やすかご書いてくださいね。
では、失礼します。
- 223 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月23日(月)01時00分45秒
- 最初はよしののだったんだすか。
やすかごを読んだあとだからか、意外な感じがしますね。
私的にはこのやすかごがお気に入りです。
何はともあれ、お疲れ様でした。
次回作期待してます。
- 224 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月23日(月)01時16分10秒
- 作者さん、お疲れ様でした。
連載中のレスは世界観を壊しそうだったので遠慮してましたが毎回読んでました。
前作よりもよりハードボイルドになった今作は静かで繊細な作品でしたね。
それでいて内容は熱いものが感じられました。
次回作のいしよし話、楽しみにしてます。
- 225 名前:N 投稿日:2001年07月23日(月)03時44分00秒
- 圭ちゃんにつられて読み始めたのですが、すぐにどっぷりとハマり
名作に来るたびに更新をチェックしてました。(^^;
終了したら、原作を聞こうと思ってました。
明日、本屋へ行って買おうと思います。
もちろん、作者さんの書く圭ちゃんも素敵でした。
ホントお疲れ様でした。 次回作も楽しみにしています。
- 226 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年07月29日(日)23時39分35秒
- >名無し読者さん 鳥肌が立ったんですか?
そう言ってもらえると嬉しいです。
ちょっと微妙な終わり方ですけど、こういうのも
いいかなぁって思います。
やすかごは自分でも好きなので、また書いてみたいです。
>223さん よしののでも悪くないかなぁって、
自分的にはするんですけどね。
ただ、2人の年がもう少し離れていれば
話としてはいいと思います。
次回作も頑張りますので、よろしくお願いします。
>224さん 毎回読んでくれてありがとうございます。
ハードボイルドの物は好きなので、いつか書きたいなぁと
ずっと思っていました。
原作の持ち味を壊さないように気をつけたので、
そういう部分が出せたのなら、よかったと思います。
>Nさん 原作と少し内容が違う部分があるのですが、
それは笑って許してやって下さい。
でも、原作もおもしろいので読んで損はないと思います。
保田さんは好きですし、自分的には一番書きやすい人です。
なによりも、書いてて楽しいですし。
Nさんの書く保田さんも好きですよ、チェック入れて読んでます。
レス遅れてすいません!
学校が色々と立て込んでいたので、遅くなってしまいました。
次回作のいしよしは、全体的にはシリアスになる予定なんですけど、
始めの方は少しギャグぽっくいきます。
もう少しで書くので、気長に待ってて下さい。
- 227 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年08月03日(金)23時17分09秒
- やっと次回作書きます。
前半は少しギャグぽっくなって、いていしよしやぐの三角関係です。
たぶん・・・・・。
四角関係には、きっとならないと思います。
まだどうなっていくか分からないので、なんとも言えないんですけど。
後半はシリアスになる予定です。
題は 『アンドロイドに恋をして』です。
- 228 名前:近未来の生活(1) 投稿日:2001年08月03日(金)23時26分58秒
- 西暦2215年。
世の中は俗に言う、近未来になっていた。
一部だけだけど・・・・・。
電車はみんな地下を通り、自動車も排気ガスなんて出さないように、全部電気
で走っている。
電気も危ない原子力は廃れて、今は自然の風や水の力を利用して発電している
ところがほとんどだ。
だからって、きっとやっていることは200年前と変わらない。
ずっと昔からそうだったように、私達人間の根本は何も変わっていない。
歴史の教科書を見れば分かるように・・・・・・。
戦争は今もどこか遠い国でしているし、宇宙にできたコロニーとも何かと揉めて
いるし、未だに貧富の差はある。
餓死はなくなってきたけど、それでも飢えに苦しむ人はいる。
平和じゃないんだ。
こんなにも人は、月日を重ねてきたっていうのに・・・・・。
すぐに変わらないのは、人間のいいところであり、悪いところでもある。
って、そんなことを私が力説したってしょうがないんだけどね。
あぁ〜、なんか余計に熱くなってきたよ。
熱くて死にそう・・・・・・。
- 229 名前:近未来の生活(2) 投稿日:2001年08月03日(金)23時40分27秒
- このいうところは、変わって欲しかったなぁ。
今は夏。
それも真っ盛り。
眩しいくらいの太陽が容赦なくアスファルトを焦がし、その熱気によって
私が焦がされる。
ムンムンと熱気が漂っているこの部屋には、扇風機しかなかった。
完全に文明が200年前でストップした部屋。
それが私、吉澤ひとみの部屋の全てを現せる言葉である。
太陽光線を遮断して、もはや温度というものを自由に調節できるところもある。
けれど、それは一部でしかない。
都会と言われ、発展しているところはみんなそうなっていた。
東京は比較的そうなっている割り合いが高い。
でもここは残念ながら都会ではない、東京と言われながらもほとんど見た目は
田舎と変わらない。
東京の端っこの方のしがないところだ。
なぜ田舎にも温度調節できるようにしないのか?
その答えは簡単、膨大のお金がかかるからだ。
自由に温度調節できるって言ったけど、それはその区間全体の空を薄いガラスみたいな
ものが覆っているから。
本当はちゃんと名前があるんだけど、長いし難しいから忘れた。
だから私達は、それを通称ガラスと呼んでいた。
- 230 名前:近未来の生活(3) 投稿日:2001年08月03日(金)23時59分15秒
- そのガラスが日本の全国を覆うまで、後20年くらいかかるらしい。
まぁ、そんなのあてにできないけどね。
にしても、その前に干涸びたらどうするんだよ・・・・・。
でもガラスに覆われるのも、なんだか私は嫌だった。
だって、ガラスを通して見る空は本当の空じゃないから。
だから都会に長く済んでいる人達は、本当の空の色を忘れてしまうらしい。
そういう面では田舎の方がいいかな。
本物の、青い空が眺められるから・・・・・・。
これで暑くないといいんだけどねぇ。
せっかく地方から上京してきたのに、っていっても埼玉からだけど。
でも、これじゃ実家にいる方がマシだよ。
あそこはクーラーがあるから涼しいし。
それにしても、暑くて死にそうなのは昔と全く変わらないらしい。
それを風情があるって言う人もいるけど、死にそうな暑さの中で風情も何も
あったもんじゃない。
私は風情よりも、冷房機具を求めていた。
- 231 名前:近未来の生活(4) 投稿日:2001年08月04日(土)00時12分20秒
- それにこれは噂だけど。今は昔より暑いらしい
私がまだ小さい頃、オゾン層の破壊がひどくて紫外線が強くなり外を歩けなく
なったときがあった。
それは数カ月続いたらしいけど、私は幼かったからかあんまり憶えていない。
それで食料とかは、政府が配給とかで何とかしたらしい。
そして人工オゾン層みたいなもので、やっとことをしのいだらしい。
もう少し気づくのが遅かったら、紫外線がモロに地上に降り注いでとてもじゃ
ないけど、外なんか歩ける状態じゃなくなっていたそうだ。
けれど今は、その人工オゾン層が太陽の光を反射して地上を熱しているらしい。
要するに、虫眼鏡で光を集めて紙を焦がすみたいなものだ。
だから今は昔より暑いらしい。
まぁ、それは噂だから定かじゃないんだけどね。
そんなことないって言う人もいるし。
けど理由はどうあれ、暑いことに変わりはない。
冷房機具は買いたいんだけど、苦学生じゃお金がねぇ・・・・・。
生活だけで手一杯で、そんな余裕はどこにもない。
お金のな独り身には、冷房機具なんて高嶺の花だな。
はぁ・・・・・・・。
出るのはさっきから溜め息ばっかし。
そんなとき、ピンポ〜ンとチャイムが鳴った。
- 232 名前:突然の贈り物(1) 投稿日:2001年08月06日(月)00時06分43秒
- ん?
誰だろ?
今日は友達も家に来る予定ないし。
まぁいいや、とにかく出なきゃ。
「は〜い。」
私は気だるい体を持ち上げて、7歩でいける玄関に向かった。
私の部屋は8畳のワンルームなのだ。
だから、玄関まですっごく近い。
私はいちよ用心して、チェーンをしたままドアを開けた。
そこには宅配屋のお兄さんが立っていた。
横には、そのお兄さんと同じくらい大きな段ボールがある。
見るからに怪しかった。
「あの、ここって吉澤ひとみさんの宅ですよね?」
その質問に、一瞬「いいえ」と答えようと思ったけど、調べたらすぐに分かる
のでやめた。
「あっ、はい。そうですけど・・・・・。」
私は怪しい段ボールが気になって、会話どころじゃなかった。
「じゃぁ、ここにハンコお願いします。」
と宅配屋さんはポケットから紙を取り出し、私に差し出した。
ハンコ?
前まであったような気がするんだけど、今はどうかな・・・・・・。
見つけられそうにない。
だからすまなそうに、宅配屋さんに聞いた。
「・・・・・あの、サインでもいいですか?」
- 233 名前:突然の贈り物(2) 投稿日:2001年08月06日(月)00時18分08秒
- 「えぇ、構いませんよ。」
宅配屋さんは笑顔で、私にボールペンを差し出してくれた。
私はサラサラと名前を書いて、紙を宅配屋さんに渡した。
「あの、荷物をお部屋の中に運びますけど、よろしいですか?」
宅配屋さん紙を確認した後で言った。
「えっと、あぁ・・・・・・いや、いいです。これって女の人じゃ運べませんか?」
できれば、あの殺風景で時代遅れなあの部屋を誰にも見せたくなかった。
汚くないけどマシだけど。
でも、女の子の部屋にはきっと思えないだろうな・・・・・・。
「・・・・まぁ、部屋のところに入れるくらいなら、女性の方でもできると
思いますけど。・・・・・大丈夫ですか?」
宅配屋さんは少し考え込んでから言った。
「はい、大丈夫です。こう見えても力には自信があるんで。」
あの部屋を見せるくらいなら、死ぬ思いして運んだ方がいい。
「分かりました。では、ワレモノなので気をつけて下さい。」
そう言い残して、宅配屋さんは帰って行った。
私はそれから少しして、軽く溜め息をついてからドアのチェーンを外した。
「おっし、やるか!」
と気合いを入れて、人くらいある段ボールを部屋の中に入れることにした。
- 234 名前:突然の贈り物(3) 投稿日:2001年08月06日(月)00時27分50秒
- 少し重かったけど、なんとか部屋の中に入れることに成功した。
それにしても、何なんだろこれ?
私は座り込んで段ボールを見上げた。
よくよく考えると、かなり怪しい。
中に死体とか入ってたりして・・・・・・・。
怖っ!
そういうことを考えるのはよそう。
どんどん怖い方向にいきそうだから。
もしかしたら、何かの景品かもしれない。
お歳暮ってことはないだろうし、親からってこともない。
大体、中身は何?
鮭一匹にしては大きすぎる、まるで鮫でも入ってるみたいだ。
服とかにしたって、何もこんな大きな段ボールを縦にして入れることはない。
それにワレモノって・・・・・。
何か嫌な予感がする。
まぁ、とりあいず中を見てみないとなんとも言えないしなぁ。
何かあったら逃げるなり、戦うなりすればいいし。
ということで、私はそっと段ボールを横に倒して中を見ることにした。
っていうかこの時点で、横に倒していいのかって疑問が浮かんだけど、今は無視。
まぁ、立ててちゃ開けられないし。
私は胸の鼓動の高鳴りを感じながら、ゆっくりと段ボールを開けた。
そこには・・・・・。
- 235 名前:箱を開けたら(1) 投稿日:2001年08月10日(金)22時59分46秒
- そこには、裸の女の子が入っていた。
・・・・・・・・・・・・・・。
私はいったい箱を閉め、一息ついて冷静になってからもう一度箱を開けた。
それは幻でも、見間違いでもなかった。
誰だよ、こんなもの送ってきて奴は!
何考えてんだよ!
その少女は少し色黒で、見た目では私と同じくらいの年だと思う。
肩まで伸びた艶のある黒髪、端正で綺麗な顔立ち、そして結構大きな・・・・・・。
って、どこ見てんだ私は!
ちょっと危ない人みたいだよ。
そりゃ、女だから男に見られるよりマシだろうけど、でも誰だって他人に裸を
見られるのは嫌だろうし。
当たり前なんだけどさ。
にしても、この子は誰?
全然知らないんだけど・・・・・・。
まぁ、知っても困るんだけどさ。
それに、どうしてこんな段ボールで送られてくるわけ?
怪しさ大爆発なんだけど。
さてと・・・・・・・・どうしたもんかな。
- 236 名前:箱を開けたら(2) 投稿日:2001年08月10日(金)23時08分19秒
- ん?
ふと見ると、少女の脇腹辺りに紙が入っているのが見えた。
私は少し躊躇してから、その紙を手に取った。
体に触れたらいけないかと思って、私は躊躇った。
私はその紙を広げると、大体B5くらいだった。
そして一番上にデカデカと、「当選おめでとうございます!」と書かれていた。
はぁ?
私なんか応募したっけ?
けど何があっても、女のが送られてくる応募なんてしてない。
そんなのしたら、犯罪だと思うし・・・・・。
まぁ、今はそういうところは置いておこう。
私は紙の続きを読むことにした。
そこには、「我が社の作った最新型アンドロイド・・・・・・・以下略」と
書かれていた。
ふ〜ん、最新型ねぇ。
・・・・・・えっ?
し、新型アンドロイド?!
アンドロイドってことは、この子は人間じゃないの?!
- 237 名前:箱を開けたら(3) 投稿日:2001年08月10日(金)23時36分08秒
- そりゃぁ、今は人間とアンドロイドの区別なんて、昔に比べたら殆どなくなって
いると言ってもいい。
それだけアンドロイドは人間に近づいた。
まぁ、昔は露骨にロボットって感じだったし。
でも今は人間に近づけるように開発が進められているから、世の中に出回っている
アンドロイドの9割以上が、今や人間と区別がつかない。
そりゃ、見れば大体分かるけどね。
例えるならば、日本人と中国系の人達ぐらいの違いだろうか。
だから顔とかで分からなくても、雰囲気で分かるといった感じだ。
それにアンドロイドには、必ず右肩に製造番号を記載しないと法律で決まっている。
今や世の中は、アンドロイドで溢れていた。
学校なんかでも、普通にアンドロイドの起動についてやその歴史などを教えて
くれる機械工学というものがある。
名前は難しいけど、ただ単に家庭でもアンドロイドを使えるようになるための授業で、
私はこの授業が好きだった。
昔はロボット工学だったけど、アンドロイドとロボットを一緒にするなって
いう抗議があったんで、今は機械工学になった。
機械というのでも、抗議した団体はまだ不満らしい。
- 238 名前:箱を開けたら(4) 投稿日:2001年08月10日(金)23時36分57秒
- いちよ一般的には言われているのは、ロボットは知能指数も低くて見た目も
機械に近くなっていて、大体は工事現場とか危ない場所で働いている。
アンドロイドは知能指数も高いし、見た目も人間と変わらないのでメイドとか
ベビーシッターなどの仕事をしている。
ロボットと違って、人間のように会話できるのはアンドロイドのなせる技だ。
そういうわけでアンドロイドは、買うとなったらすっごく高い。
そりゃぁピンからキリまであるけど、大体頭が良くて人間を精巧に再現して
造られているものは高いと決まっている。
そういう高いやつは、お金持ちのところで子どもの教育係をしていたり、社長の
秘書とかをやっていたりする。
その辺の人間なんかより、よっぽど使えるんだから当たり前なんだけどね。
だけどそれが人間の方の失業問題に繋がっていて、巷じゃ少しばかり問題に
なっている。
それのせいなのか知らないけど、アンドロイドとかを毛嫌いする人達もいる。
なかなか複雑な世の中なのだ・・・・・。
- 239 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年08月21日(火)23時30分21秒
- どうも、長い間更新してなくてすいません。
色々と内容を考えていたんですが、どうもいい感じならなくて、
ここまで更新をしていませんでした。
もしこの話を楽しみにしていた方がいたら、大変悪いと思うんですけど、
この話は破棄させて下さい。
どうも続きがうまく書けません。
すごく自分勝手な話だと思うんですけど、どうしても続きがうまくいなかいので
破棄することに決めました。
アンドロイドものは好きですし、また書きたいは思ってます。
それで破棄したお詫びというわけで、短編でいしよしを書きます。
短編と言っても、少し長くなってしまうんですけど・・・・・。
これは原作があるやつで、少しホラーぽっいような話です。
よかったら見て下さい。
長々と言い訳してすいませんてじた。
- 240 名前:早朝 投稿日:2001年08月21日(火)23時33分08秒
- ・・・・・早朝。
それはいつもと変わらない、何の変哲もない朝のように思えた。
ふと目覚めて辺りを見回すと、恋人の梨華ちゃんが部屋の白い壁に、
裸で埋まっていた。
- 241 名前:早朝 投稿日:2001年08月21日(火)23時41分36秒
- この頃、私は高校を休みがちだった。
私は地方から上京してきて一人暮らしをしている。
そんな1人身の私を心配してか、梨華ちゃんが家まで来たところは憶えている。
けれど、なぜ梨華ちゃんが壁に埋まっているかは分からない。
分かるはずがない!
こんな非現実的なことが起きるなんて・・・・・。
一体、何がどうなってるの?!
私は呆然と壁に埋まっている梨華ちゃんを見ていた。
梨華ちゃんは隙間なく、ビッシリと埋まっている。
それは、まるで芸術品のようだった。
それだけ梨華ちゃんは・・・・・・美しかった。
「・・・・痛くないの、梨華ちゃん?」
私は少し怖かったけど梨華ちゃんに近づいた。
「なんだか変な気分だよ。まるで、夢の中にでもいるみたい。」
梨華ちゃんは薄らと笑みを浮かべて言った。
私はどうすることもできなかったし、ちょっとだけおもしろそうだったので、
梨華ちゃんをそのままにして、しばらく様子を見ることにした。
- 242 名前:回想その1 投稿日:2001年08月21日(火)23時59分27秒
- 私と梨華ちゃんが出会ったのは、高校の入学式の時だった。
実際は会ったというんじゃなくて、ただ見かけただったけど。
梨華ちゃんは県でもトップのあの学校に、主席で入ったらしい。
私も自分に自信があったけど、梨華ちゃんにはかなわなかった。
それでも、私は校内で五本の指に入るくらいの実力はあった。
私達の出会いは、『類は友を呼ぶ』そんな感じだった。
いつの間にか知り合って、それから色々と話すようになった。
そして気が合って友達になった。
本当にどうしてだか分からない。
運命的な巡り合わせとでも言うんだろうか?
とにかく2人は出会い、友情を結んだ。
だがそれは・・・・・・・いつしか愛に変わった。
それはいつからだっただろう?
別にどっちかが言い寄った、というわけではないと思う。
きっと、お互いに惹かれたんだと思う。
何かが私達を導いてように、2人は急速に距離を縮めた。
だから、私達が愛し合うのは当然のように思えた。
「・・・・・きっと、天罰だね。私がこんな姿になったのは、神様の怒りに
触れちゃったからだよ。」
梨華ちゃんは自嘲するように笑って言った。
「私達がこれ以上、“神に背く行為”をしないために?」
私は床に座って梨華ちゃんを見上げて言った。
そして徐に立ち上がると、梨華ちゃんの頬にそっと手を置いた。
- 243 名前:a.m8:00 投稿日:2001年08月22日(水)00時11分19秒
- 「今すぐにでも壁を壊して、梨華ちゃんを助け出すことは簡単だと思うんだけど、
・・・・・不思議と気分が乗らないんだ。どうしてなんだろう?」
私は自分の顎に手をやって考えた。
自分でもわけが分からなかった。
けれどやっぱり、梨華ちゃんを助け出す気が起きない・・・・・・・。
「いいよ。私はさっきから、だんだんと自分と壁がしっくり同化している、
そんな気がしてるの。」
梨華ちゃんは軽く微笑んで言った。
なんか不思議というか、変な感覚に襲われる。
梨華ちゃんはこの状態を深刻に考えているんだろうか?
さっきから笑っていて、不安そうな顔一つしないでいる。
まるで、この状態を楽しんでいるようにさえ思えた。
- 244 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年08月24日(金)23時35分15秒
- すいません。
題を書き忘れてました。
題は『Wall in be buried』です。
- 245 名前:回想その2 投稿日:2001年08月24日(金)23時48分15秒
- あれは今から3週間前。
私達は既に何回も体を重ねていた。
それは何の抵抗なく、自然のことように思えた。
梨華ちゃんだって抵抗しなかったし、私も抵抗なんてなかった。
女同士なんて関係なかった。
そんなものは障害にすらならない。
でもその日、私達の前に障害が立ち塞がった。
梨華ちゃんの家庭は再婚していた。
数年前に、色々あって別れたらしいことは私も知っていた。
けれどその父親が、有名なコンピューター会社の社長だということは、私も
知らなかった。
私はそのことに驚愕した。
梨華ちゃんの父親が社長ということではない、その人の名前が私の父親と同じ
名前だったのだ。
父といっても、私が幼い頃に母を捨てて出て行った薄情な奴だ。
母がそうだと教えてくれたのは、私が父だと慕っていた人が死んだ日のことだった。
ずっと父だと信じていたのに・・・・・。
その話を聞くまで、私は再婚したことすら知らなかった。
母が言うには、その男は私が生まれてすぐに家を出て行ったらしい。
まさか、梨華ちゃんからその名前を聞くなんて、思ってもみなかった。
同姓同名ってことはない。
母もその人が、コンピューター会社の社長になってると言ってたから。
つまり・・・・・・私達は兄弟だったのだ。
- 246 名前:回想その2 投稿日:2001年08月25日(土)00時00分26秒
- 私達は血が繋がっていた。
そんなこと信じられるはずがない。
だって、私達は愛してあっているというのに・・・・・。
そんな残酷な現実を、受け入れらるはずがない。
女同士、まして2人は兄弟だった。
こんな事があるんだろうか?
ある意味、出来過ぎている。
テレビや小説の話じゃあるまいし。
だから、私達は“神に背いた”。
許されない愛を求めているから。
愛しあうことは罪だから。
けれど・・・・・・私達は別れなかった。
それどころか、その愛は以前よりも激しさを増した気さえした。
倒錯した現実をお互いに共有する事で、この上ない快楽を味わっていた
なんという恍悦感・・・・・・
誰も知らない、
2人だけの、甘い海にも似た秘密
- 247 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月31日(金)01時30分49秒
- 痛いのちょっと好きです。
更新期待してます。
- 248 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年08月31日(金)23時46分25秒
- >名無しさん 痛め・・・・・なんでしょうたぶん。
ある意味、甘めなのかもしれないですけど。
更新はなるべくするようにします。
- 249 名前:1週間後 投稿日:2001年09月01日(土)00時00分52秒
- 梨華ちゃんは日に日に少しずつ、壁と同化していくようになっていった。
もう、下半身は全て埋まっている。
それはまさに生きる彫刻のようだった。
けれどその美しさは、けして芸術品が表せるものではない。
だって、生きた芸術品なんだから・・・・・。
たがら生きたものを模造した芸術品に、こんな美しさが出せるはずがない。
「さぁ、食事にしよう。」
私は台所から梨華ちゃんの食事を持って現れた。
梨華ちゃんは、なぜか少し沈んだ顔をしている。
「今日は、梨華ちゃんの好きなスープスパゲティーだよ。」
私はフォークで麺を巻いて、そっと梨華ちゃんの口に運んだ。
けれど梨華ちゃんは食べようとしなかった。
「どうしたの?欲しくないの?」
私は心配して梨華ちゃんの顔を覗き込んだ。
「・・・・うんん。私の身体は、もう食事をする必要がないみたい・・・・。」
梨華ちゃんは弱々しく首を振って言った。
- 250 名前:1週間後 投稿日:2001年09月01日(土)00時02分54秒
- 私はガクッと床に膝をついた。
スープスパゲティーが辺りにこぼれた。
「このまま何日かすれば、梨華ちゃんは完全に壁に埋まって消えちゃう。なのに、
私はそれを助けることすら出来ないんだ!」
拳を思いきり床に叩きつけて言った。
悔しくて、悲しくて、なのにどうすることもできない。
私はただの無力な子どもなんだ・・・・・。
「私がいけないんだね。ずっとあのまま、楽しく過ごしていたかったのに・・・・・。」
私は涙でボヤけた瞳で、梨華ちゃんを見上げた。
- 251 名前:回想その3 投稿日:2001年09月01日(土)00時12分05秒
- それは私がまだ学校に行っていた頃、帰り道の途中で偶然に梨華ちゃんを見かけた。
声をかけようと思った瞬間、1人の女の人が梨華ちゃんに駆け寄っていった。
茶髪のショートカットをした、私達より少し年上な感じの人だった。
2人は仲良さそうに談笑していた。
あんなに楽しそうに笑った梨華ちゃんを、私は久しぶりに見た気がした。
その女の人は・・・・・・・・私の知らない人だった。
それから私は悩み続けた。
どうしたらいいのか?考え続けた。
私は梨華ちゃんと別れたくない
あんな奴に渡したくない。
梨華ちゃんに相応しいのは、この私なんだから。
私以外に、梨華ちゃんと付き合う資格がある奴なんていない。
いい解決策が見つからない、そんなとき梨華ちゃんに近くの公園に呼び出された。
- 252 名前:回想その3 投稿日:2001年09月01日(土)00時19分32秒
- そこは、私達がよく遊んだりした公園だった。
「・・・・・私と別れたい?」
私は梨華ちゃんに言われた言葉を聞き返した。
間違いであってほしかった。
そんな言葉を信じられるはずがない。
けれど、梨華ちゃんは小さく頷いた。
「・・・・・前に、学校の帰りに会ってたあの女の人?」
私がポツリと呟くと、梨華ちゃんはかなり驚いた顔をしていた。
まさか知ってるとは思わなかったんだろう。
梨華ちゃんは、しばらく間をあけてから言った。
「・・・・・うん。あの人のことが好きなの。確かに、ひとみちゃんといて
楽しかったし、恋人同士でいられて良かったと思ってる。けれどそれは、愛
じゃなかったの・・・・・・。あの人を好きになって、やっとそのことが分かった。」
梨華ちゃんは思っていることを全て吐き出すかのように、一気にしゃべった。
そして最後にこう付け加えた。
「ひとみちゃんに抱かれているとき、ずっとどこか不安だった・・・・・。」
私は何も言えずに、呆然とその場に立ち尽くしていた。
- 253 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月01日(土)05時22分02秒
- 最初は単なるタイプミスかと思ってたら、その後も何度か出てきたので
お訊きしますが、「いちよ」は「一応(いちおう)」の間違いでは?
- 254 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年09月01日(土)23時02分07秒
- >名無し読者さん 多分そうだと思います。
全部がそうじゃないと思うんですけど、自分でも気がつかなかったので
何とも言えません。
適当な感じになって、ホントにすいません。
でも、訂正ありがとうございました。
- 255 名前:回想終わって 投稿日:2001年09月01日(土)23時14分47秒
- 私はそのことをふと思い出し、床にいくつも涙をこぼした。
「梨華ちゃんの、あんな言葉聞きたくなかった。私は誰よりも、梨華ちゃんを
理解してるつもりだったのに、どうして、どうしてあのとき、何も言い返せ
なかったんだろう・・・・・・。」
涙は止めどなく私の頬を伝って床に落ちる。
もはやそれは、自分との意志など関係ないように思えた。
梨華ちゃんは何よりも大切だった。
なのに、離れるのを止められなかった。
なんでだろう?
あんなに愛していたのに・・・・・。
「ひとみちゃん。」
梨華ちゃんの優しい声に私はゆっくりと顔を上げた。
「本当に不安だったのは、私よりもひとみちゃんの方だったんだね・・・・・。」
梨華ちゃんは寂しそうに笑っていた。
- 256 名前:回想終わって 投稿日:2001年09月01日(土)23時15分18秒
- そう、初めて会ったその日から、
その瞳の美しさに見せられた日から、
ずっと梨華ちゃんを失うことが怖かった。
でも、本当は分かってたんだ。
いつか梨華ちゃんが私から離れていくこと。
そして私には、それを引き止められないことを・・・・・・。
「・・・・梨・・華・・・ちゃ・・ん・・・・・。」
私はフラフラッと立ち上がり、梨華ちゃんに近づくとその胸に顔を埋めた。
梨華ちゃんは何も言わなかったけれど、少し悲しげな瞳で私を見つめていた。
- 257 名前:3日後 投稿日:2001年09月01日(土)23時24分34秒
- 私達はしりとりをしてその日を過ごしていた。
時間はどんどん過ぎっていく。
私は床に座り込んで、ずっと梨華ちゃんを見上げていた。
梨華ちゃんは、壁に埋まりながら私に微笑んでいた。
飽きることなく続く言葉。
それは途切れることはない。
いや、途切れちゃいけないんだ。
「リンゴ」
「ゴリラ」
「ラッパ」
「パイナップル」
「ルビー」
「ビスケット」
そこで言葉は途切れてしまった。
私は言葉がパッと頭に浮かんでこなかった。
ボキャブラリーのなさが、自分でも悲しくなってきた。
「えっと、う〜んと、と、と・・・・・・トキ!」
私はやっと浮かんだ言葉を、少し声を弾ませて言った。
だけど言葉はまた途切れた。
梨華ちゃんは軽く溜め息をついてから言った。
「・・・・・・キス。」
そして、部屋に本当に沈黙が訪れた。
- 258 名前:3日後 投稿日:2001年09月01日(土)23時43分08秒
- 「・・・今日がひとみちゃんと話せる、最後の日かもしれない。」
梨華ちゃんはギリギリ聞こえるくらいの小さな声で言った。
私はその言葉を耳を澄ませて聞いていた。
もう既に梨華ちゃんは、顔から下は全て埋まっている。
「・・・・・・梨華ちゃん、私を恨んでる?」
私は梨華ちゃんを上目遣いで見上げた。
「・・・・・うんん。」
梨華ちゃんは弱々しいけど、首を小さく左右に振った。
(ねぇ・・・・。)
ふと、梨華ちゃんの声が聞こえた気がした。
けれど壁の梨華ちゃんは、別にしゃべった様子はなかった。
でもそれは確かに梨華ちゃんの声だった。
(ねぇ、ひとみちゃん・・・・・。)
また声が聞こえた。
それは頭の中に直接響いてくるようだった。
(私の唇が、壁に埋まってしまう前に・・・・・・。)
私にはちゃんと聞こえた。
だから大きく頷いて立ち上がった。
梨華ちゃんの目の前に立ち、顔の横に手を置いて顔を近づけた。
すると梨華ちゃんはゆっくりと目を閉じる。
そして私は、自分の唇を梨華ちゃんの唇に・・・・・・・優しく重ねた。
- 259 名前:3日後 投稿日:2001年09月01日(土)23時48分41秒
- それは触れるだけのキスだったけど、心にはちゃんと届いていた。
私はそっと唇を離すと、梨華ちゃんは目を開けてニッコリと笑った。
それはまるで、天使の微笑みのようだった。
美しくて・・・・・目が離せなかった。
梨華ちゃんだけしか、私は目に入っていなかった。
でも、それ初めて会ったときからそうだったんだ。
私は梨華ちゃんしか見てなかった。
梨華ちゃんの他に何も欲しいものはない。
私には必要ない。、
ただずっと、永遠に梨華ちゃんだけを見つめていたかった・・・・・。
でもだんだんと瞼が重たくなってきて、視界が完全に暗くなる直前に見たのは
梨華ちゃんが慈愛の瞳で私を見つめ、そしてゆっくりと目を閉じるところだった。
そして、完全に視界は闇に閉ざされた。
- 260 名前:3日後 投稿日:2001年09月01日(土)23時56分54秒
- もう、それからのことは記憶にない。
どうやら眠ってしまったらしい。
私はふと目を覚まして、ぼやけた頭で辺りを見回した。
目の前には壁があった。
でもそれはただの白い壁で、前からそうだったように存在していた。
・・・・・・梨華ちゃんの姿はどこにもなかった
まるで、今までの全てが夢のように思えた。
だってそには何の痕跡もなかったから。
私はしばらく呆然としていた。
何もない白い壁を見つめ続けていた。
「・・・・梨・・華・・・ち・ゃ・・・ん・・・・。」
やっとのことで出した声は、ずいぶんと掠れていた。
「あ・・・・・・・うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
私は頭を抱えて狂ったように大声で叫んだ。
- 261 名前:それから・・・・ 投稿日:2001年09月03日(月)00時17分23秒
- どこからか・・・・・人の声が聞こえた・・・・・。
それはテレビのニュースのようだった。
『昨日午前11時頃、杉並区のアパートで女性の死体を壁に塗り込めるという
奇妙な事件が発生しました。被害者は捜索届けが出されていた、石川梨華さん
(16)で、遺体は死後1ヶ月を経過しており、犯人と思われる未成年の少女は
梨華さんを自宅に連れ込み、殺害した後で遺体を壁に埋める途中だったと見られて
います。なお、この未成年の少女は大量の薬物を使用しており、家の中からも
多数の薬物が発見されています。現在、この少女は意識不明の重体で、都内の
病院に・・・・・・・。』
そんなこと言ってたけど、別にどうだっていい。
興味なんてない。
私は梨華ちゃんの声が聞こえれば、それだけで十分なんだ。
他には何も聞きたくなんかない。
ねぇ、梨華ちゃん・・・・・・、
あのとき確かに言ったよね?
(ねぇ、ひとみちゃん)
(私の唇が壁に埋まってしまう前に)
(キスして・・・・・・)
そう、確かに言ったよね?
- 262 名前:あとがき 投稿日:2001年09月03日(月)00時26分37秒
- これでこの話は終わりです。
元々、原作自体が短編の話だったのでこんな感じになりました。
ホラー系っていうんでしょうか?
でもダークな終わり方なので、好き嫌いがあると思うんですけど、
読んでくれた皆さん、ありがとうございました。
次回作は原作あるもので、長篇でも書きたいかなぁって思います。
オリジナルで長篇は、ちょっと難しいなぁと思ったので・・・・・。
次回はちゃんと書き上げたいと思います。
そういうことで、更新はしばらくしないと思います。
読んでくれた皆さん、本当にありがとうございました。
- 263 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月03日(月)02時19分30秒
- うあー。痛い痛い!めちゃ痛いです!
とりあえず、吉澤の気持ちは石川に届いていたと
思いたい。
そうでないと、やってられない……。
次回作期待してます!
- 264 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)00時20分03秒
- はじめて読みました。
「茶髪のショートカット」の人は一体誰だったんですかね?
ちょっと気になりました。
- 265 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年10月05日(金)00時05分06秒
- >263さん 確かにこの話はかなり痛いです。
でも、自分としては結構気に入ってます。
きっと吉澤さんの気持ちは、石川さんに届いたことでしょう。
だから、最後にキスしたんだと思います。
>264さん レスありがとうございます。
茶色のショートカットの人は、保田さんのつもりで書いてました。
ちょい役だったんですけど、人選はかなり適当です。
やっと次回作を始めます。
この頃、私的に立て込んでいたために更新が出来ませんでした。
それに少しスランプ気味だったので、思うように書くことができなくて、ここ
まで更新していませんでした。
長篇やるつもりだったんですけど、中編くらいになりそうです。
原作ありもので、せつない感じの話だと思います。
更新はかなり遅いと思うので、たまに覗いてみて下さい。
題は『残像は今も心の中に』です。
- 266 名前:1 投稿日:2001年10月05日(金)00時29分09秒
- ドン、ドン、ドン!!
うるさいなぁ・・・・・。
さっきから聞こえるノックの音に、私は少し苛つきを感じ始めていた。
静かにしてよ・・・・。
でも次の瞬間、バン!という大きな音と共にドアが開いた。
それと同時くらいに、7、8人の男達が部屋の中へと入ってきた。
男達は全員かなり体格がよくて、少し人相が悪かった。
「こ、これは・・・・。」
男達は全員が絶句しているようだった。
「お前、一体何してるなんだ!」
男達の中の1人が私に向かって叫ぶ。
不愉快だった。
「・・・・そんなに叫ばないでよ。」
血まみれのベットの上で、血まみれの少女を抱きかかえて、血まみれの私は言った。
「おい!そいつはもう死んでるじゃないか!?お前が殺したのか?」
「何とか言ったらどうだ!」
男達は黙ったままの私に激しく捲し立てる。
「・・・・・うるさいよ。」
私はポツリと静かに呟いた。
そして不快と嫌悪のこもった瞳を、騒がしい男達に向けた。
男達はそれに一瞬怯む。
「真里が起きるでしょ?静かにしてよ。」
- 267 名前:2 投稿日:2001年10月05日(金)00時34分15秒
- 私の言葉に男達は諦めたような顔をすると、いきなり私に近づいてきた。
そして無数の手が伸びて、真里を私から連れ去ってしまう。
「待って!連れて行かないで!!」
私は必死に腹の底から叫んで、狂ったようにも真里に向かって手を伸ばした。
「この子はもう死んでいる。このままにしとくわけにはいかない。」
と誰かが冷静な声で言った。
「違う!真里が死ぬはずがないよ!真里ぃぃぃぃぃぃ!!」
男達が私を取り押さえてそれを邪魔する。
だから、その手は届かなかった・・・・・・。
愛している。
愛しているよ。
誰よりも愛してる。
だから、どこにも行かないで。
私を置いていかないで。
- 268 名前:3 投稿日:2001年10月05日(金)00時35分05秒
- それから私は手錠をかけられて逮捕された。
逮捕された私を一目見ようと、辺りはたくさんの人垣が出来ていた。
スーツに身を包んだリポーターが、人の波にも揉まれながら私にマイクを向ける。
太陽よりも眩しいフラッシュが、私の姿を終始撮り続けいる。
「たった今、全国を震撼させた少女連続殺人事件の犯人が逮捕されました。彼女は
近所のファーストフード店でアルバイトをしていた、20歳の保田圭という女性
だそうです。」
そんな言葉が辺りから聞こえてきた。
同じような言葉が、次から次へと繰り返し聞こえてくる。
私のことは新聞になるだろう。
けれどそれは・・・・・・次の日になればただのゴミ。
- 269 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月07日(日)23時01分35秒
- 保田か・・・
教師だから中澤かと思った
- 270 名前:弦崎あるい 投稿日:2001年10月09日(火)22時39分37秒
- >名無し読者さん 性格的に中澤さんじゃ変かなぁ
と思って、保田さんにしました。
だから教師という設定も変えました。
原作知っている方なんですよね?
あの独特の感じを出せるように、書いていきたいと思ってます。
- 271 名前:4 投稿日:2001年10月09日(火)22時46分17秒
- 非難や中傷の言葉を、人々は次々と私に投げかける。
それを鈍い頭で聞いていた。
この光の洪水
人々のざわめき
あぁ、そうか・・・・・分かった
これはカーニバルなんだ
楽しく、軽やかで、賑やかな音楽
人々の弾むような笑い声
そして、ピエロが嘲笑う
狂ったような世界の中で、あの子だけが誰よりも醜くて、誰よりも綺麗。
- 272 名前:5 投稿日:2001年10月09日(火)22時56分52秒
- 私はうすぐらい路地に立っていた。
その手の中には血まみれの包丁がある。
真っ赤に染まった手、顔にも飛び散った血が少しかかった。
私の目の前には、目隠をされて腹から大量の血を流して死んでいる、女子高校生の
少女が横たわっている。
ホラ、もう大丈夫。
どうしょもなく汚いものだから。
この方が、ずっと綺麗だよ・・・・・・・。
私は少女の死体に優しい微笑みを向ける。
そのとき、後ろの方で小さな足音が聞こえた。
私は音のした方にすぐ顔を向ける。
そこには悲鳴を上げるわけでもなく、平然と私を見つめる少女がいた。
肩までぐらいの茶色い髪。
背は随分と低くて小学生のようだけれど、その顔つきはどこか大人びている。
その少女は驚きもせず、無表情な瞳を私に向けていた。
私は手に持った包丁を握りしめた。
・・・・・殺すしかない!
- 273 名前:6 投稿日:2001年10月17日(水)22時47分37秒
- そう思ったとき、路地の奥からまた少女が現れた。
「お〜い、真里!早く戻らないと、ボスに怒られちゃうよ!」
と後から来た少女が叫ぶ。
・・・・・2人も殺すのは無理だ。
もし取り逃がしたら、私は人生はそれで終わり。
あまりにもこちらの分が悪すぎる。
だから私は逃げることにした。
この状況では、それが一番いい方法だと思ったから。
私は包丁を投げ出して逃げ出した。
途中で近くにいた少女にぶつかって、ポケットに入れてあったペンダントが
落ちてしまった。
だけど今は、そんなこと気にしてる場合じゃない。
私はこの場から逃げることしか頭になかった。
- 274 名前:7 投稿日:2001年10月17日(水)22時56分31秒
- ブラインドキラー(目隠し殺人鬼)
それは世間で騒がれている連続少女殺人事件、その犯人の通称の呼び名だった。
それが・・・・・私のもう一つの名前。
そう、私は人殺しだった。
もう既に6人の少女と関係し、その挙げ句に目隠しをして殺してしまった。
そのニュースは連日放送されている。
日本全国を恐怖に陥れた、ブラインドキラー。
殺しているときは、いつも胸が熱くなって死にそうになる。
私はこの捩れた欲望と衝動を、時々抑えられなずにいた。
だから少女を殺すんだ。
けれど私はあの少女に、殺してる現場を見られてしまった。
きっと顔もハッキリと見られた。
今にして思えばやはり殺してしまえばよかった。
でもそんなこと、今更思っても意味がない。
もう、おしまいだ。
・・・・・・おしまいだ。
おしまいだ!!
- 275 名前:8 投稿日:2001年10月17日(水)23時13分55秒
- 私はその日は家に帰ってから、ずっとベットの上で震えていた。
警察が来るんじゃないかと怯えていた。
でもその日、いくら経ってもドアが叩かれることはなかった。
そしていつの間にか朝が来て、私はとりあえず起きることにした。
本当はこのまま寝てしまいたかったけれど、今日はどうしても行なければない
ところがあるため、気が重かったけれど出かけることにした。
気分転換になるかもしれないと、プラス思考的な考え方で自分を納得させた。
そして電車を何本か乗り継ぎ、少し寂れた街に辿り着いた。
駅から2、30分歩いた所にそれはあった。
「全く、あんた達は!」
錆びた門から中に入った瞬間、聞き慣れた怒声が耳に響いた。
私は声のする方に向かって歩いて行った。
すると、1人の女性と2人のやや幼い感じの少女の姿があった。
その女性は少し興奮気味で、彼女がさっきの怒声を発したことが分かる。
彼女はスラっとしたモデルのような長身で、その顔も綺麗な顔立ちをしている。
こんなところにいるのは場違いだった。
けれど彼女は両脇に少女を抱えて、真剣に悩んだ表情をしていた。
- 276 名前:9 投稿日:2001年10月17日(水)23時28分56秒
- 「一体、どうしたの?」
私は微笑を浮かべながら、その彼女に近づいた。
「あ、圭ちゃん。あれ?いつ来たの?」
彼女はいきなり間の抜けた顔をする。
その顔を見ると、この仕事は彼女にとって一概に不向きとは言えないなと思う。
ここは・・・・・私の育った養護施設だ。
育ったといっても、ここにいたのは大体5、6年という短い期間だった。
それでも私は、今でもたまにこの施設にやってきては、多少の寄付や食べ物を
持って来たりしている。
ここは、私にとって大切な場所だから。
偽善ではあるものの、人に優しくしているという事実。
それは現実の重い空気から、一時的に私を解放してくれる。
疑似的にでもそう思わせてくれるだけで、私は随分と救われていると思う。
そう、彼女には本当に救われている・・・・・・。
何も知らずに、無垢な瞳で笑いかけてくれるだけで、非現実な世界に染まって
いく私は癒されるのだと思う。。
彼女は名前を飯田圭織といった。
- 277 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月04日(金)21時49分58秒
- k
- 278 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月05日(土)16時20分50秒
- あー 上がってて思い出したけど。こっちの続き書かないのかなー・・弦崎さん
- 279 名前:弦崎あるい 投稿日:2002年01月10日(木)00時31分29秒
- 書かないというか、今はちょっと書けない状態です。
いちよここは長篇用に考えているので、今は黄板の学園ものだけで手一杯で
ここを書く余裕がないです。
ハードボイルド物とか書きたいんですけどね。
もし期待してる方がいたらゴメンなさい。
その代わりではないんですが、一月の中旬くらいかもう少し前にあたりに
森板で短編で何本か書きたいと思っています。
理由としては黄板もうすぐ一段落つけることと、前から書きたいと思って
いたからというだけです。
ヒマならリクエストとかもらって、書いていこうかなぁとか考えています。
まだ予定なんですけど・・・・・。
まぁ、そういうことなのでふと森板を覗いてみてください。
- 280 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月10日(木)15時32分27秒
- ぉー そうでしたか。なら安心♪じゃあ今は黄板に期待。頑張って下さいなー
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