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隻
- 1 名前:G3HP 投稿日:2001年04月30日(月)05時36分11秒
- 小説書こう思いまして。
題材は鈴木あみがでてたドラマをぱくってます。
- 2 名前:G3HP 投稿日:2001年04月30日(月)05時39分22秒
- 全くの初心者です。文書なんか修学旅行の作文以来書いてないもんで。。
まあ付き合ってください。
- 3 名前:G3HP 投稿日:2001年04月30日(月)06時00分07秒
- 隻(〜対になった物のかたわれ〜)
1. 始まりの言葉
「あんたと私は前世で恋人だったのよ。」
「えっ?」
驚いて彼女の顔を見る。
うつむきながら、でも楽しそうに笑っている。
- 4 名前:G3HP 投稿日:2001年04月30日(月)06時03分36秒
2. カウンセリング
私はベットに横たわって目を閉じ、つんくさんの声を待っていた。
「いいですか?石川さん。
目を閉じてリラックスしてください。」
古びた扇風機がふひぃんふひぃん回っている。
暑い風をただかき回しているだけの扇風機。
かび臭い臭いがする。
横になっているベットがジメッとしている。
こんなところで大丈夫なのかな?
私の心配をよそにつんくさんの声が続けられる。
「では、始めましょうか。
石川さん
あなたは今、白い光の繭に包まれています。
ミルクのように白い白い光です。
何も怖がることは有りません。光はあなたの全てを受け止めてくれます。
あなたの笑顔も、あなたの泣き顔も全部受け入れてくれます。
さあもっと体の力を抜いて私の言うことをに耳を傾けてください。
いいですか?
光はあたたかく
やさしくあなたを包み込んでいます。
私がこれから数を10まで数えます。
するとあなたはその光の奥にゆっくりと潜っていきます。
.....そう.....ゆっくりと....
いいですか?
...1....2....3.....
だんだん私の声以外の音が遠ざかっていきます。
...4...5...6.....
また、あの夢だ。
私は走っている。いや、誰かに追われている。
時々振り返りながら逃げている。
森だと思う。
周りが良く見えない。
まるで濃い霧の中を走っているようだ。
霧というよりミルクか?
手足にまとわりついてうまく走れない。
....このままでは追いつかれてしまう。
とつぜんミルクの中から手が現れる。
ああ またあの人だ。
顔はやはり見えなかったがすぐにわかった。
私はその手をしっかり握った。
なんて冷たい手なんだろう。
その手に引っ張られながら走る。
......私を助けてくれるのね。
- 5 名前:G3HP 投稿日:2001年04月30日(月)06時04分32秒
- 3.ひとり
彼女は何時も一人だった。
私はまた彼女を見つめている。
いつも気だるそうに遠くを見つめている。
(キレイナ顔。)
彼女の笑った顔を見たことがない。
(笑ったら素敵だろうな。)
表情のない顔は回りに強い結界を張っているようだ。
「後藤さん...」
彼女と同じクラスになってもう1年が過ぎている。
誰も彼女と話をしない。誰も彼女に話し掛けない。
彼女の瞳はいつも気だるそうに寂しそうにしている。
でも.....
(なにか強い光を隠しているような瞳。)
ひとりという状況をそのまま受け止めている。
どんな状況でも何を言われても「で?」といって受け流してしまう。
「強いのね。あなたは。」
梨華は後藤がうらやましかった。
自分とは違う。
人とは違う後藤が。
- 6 名前:G3HP 投稿日:2001年04月30日(月)06時05分17秒
- 「あっ!」
突然 梨華の視界の片隅に黄色い物体が見えた。
(テニスボール!)
とっさに後ろに仰け反ったが運が悪いことにテニスコート一面に転がっているテニスボールを踏んでしまった。
ボールを踏んだ足が仰け反った勢いのままに大きく蹴りあがった。
ごぶぃ〜んん!!
鈍い音とともに後頭部に激痛が走った。
(またやっちゃた。)
消え行く景色の片隅に後藤が見える。
「ごとうさん?...」
後藤と目があった?
- 7 名前:G3HP 投稿日:2001年04月30日(月)06時05分53秒
4. なまえ
「梨華ちゃん!梨華ちゃん!」
私は眠りからゆっくりと浮上しつつあった。
「ねえ!聞いてる。梨華!しっかりしなさい。」
親友の心配そうに覗きこむ顔が見えてきた。
「。。。」
「いつものことだからしょうがないけど大丈夫?」
私は親友の顔をぼんやり見ている。
意識と実世界の間に白い布がかぶさったような感覚。
「大丈夫よ。。またやっちゃたね。」と笑う。
まだ変だ。
「梨華ちゃんフェンスの支柱におもいっきり頭打ったけど大丈夫?ごばーん!!て。ねえ大丈夫? 。。。私誰だかわかる?」
親友が心配そうに聞く。
「なにいってるの。。」
そこまで言って息を呑んだ。
(だれだっけ?)
「ご。。後藤 真希!」
親友の顔が曇った。
(やばい!!だれだっけ? )
「梨華ちゃんその冗談面白くないよ! りんねびっくりしたんだよ。本当に心配したんだよ。それなのに」
(りんね? そっか!りんねだ。私の大親友りんねだ。)
「ごめんね りんね。石川また場の雰囲気読めないギャグいっちった。」
「そうだよ!梨華ちゃん。よりによって後藤 真希はないよ。」
(後藤さん?私なんで。。あれ!そう言えばあの時後藤さん私を見ていた。)
ふいに立ち上がり後藤の姿を探す。
「後藤さん。。」
「梨華ちゃん!」
りんねが叫ぶ。
その声でようやく意識の上に覆われていた布が消えてくれた。
「あははは。」
- 8 名前:G3HP 投稿日:2001年04月30日(月)06時06分30秒
- 5. 恋人
「頭壊れちゃったんだって?」
その日の帰りだった。りんねが心配して家まで送るというところを
「もう大丈夫よ。いつものことじゃん。りんねお家遠いじゃない。私の家なんか行ってたら遅くなっちゃうよ。」
そう言って一人での帰り道だった。
声の主は。。
後藤だった。
「後藤さん!」
「へー私の名前は覚えてるんだ。」
「えっ?」
「みんな言ってたよ。梨華ちゃん頭壊れたって。」
「うそよ!そんなこというはずないもん。」
後藤は梨華の周りをくるくる回っている。
「ふ〜ん まあいいけど。」
今まで見たことのない後藤だ。
(笑っている。)
「ねえ あんたさぁ あんたと私は前世で恋人だったのよ。」
「えっ?」
驚いて彼女の顔を見る。
(何言ってるの?)
後藤は驚いた梨華の顔をチラっと見て俯き、でも楽しそうに笑っている。
「どうして?どうしてそんなことわかるのよ。」
「夢」
「。。ゆめ?なんだ夢の話しか。」
「前世を 私たち前世を“夢”の形で垣間見たんだ。」
「わたしたち??」
後藤は話しながら梨華の周りをぐるぐると舞っている。
梨華の顔を覗き込む。
「別に信用してくれなくてもいいんだ。でも、本当なんだ。あんたと私は前世で恋人だったの!」
そう言って後藤は駆け出して行った。
「なにいってるんだろう?」
前世?恋人?夢?
(いまの後藤さん。。だよね?私頭壊れてるのかな?)
- 9 名前:G3HP 投稿日:2001年04月30日(月)06時07分20秒
- 6.教室
「おはよう梨華ちゃん。大丈夫?頭おかしいんだって?」
あさみだ。
「もう!りんねちゃんったら本当に私の頭壊れてるって言いふらしてんだ。」
「ねえお医者さん行った?包帯してないところ見ると行ってないでしょう。頭は危ないんだよ2,3日してからころっと死んじゃうこともあるんだから。」
私はあせった。なにしろ“ぼ〜よ〜よん“とやちゃているから。
「きょ 今日行ってくる。」
そういうとあさみが
「この薬草 打ち身なんかの腫れに良く効くんだよ。」
といってへんな形の葉っぱを渡してくれた。
「あ。。ありがとう。」
葉っぱのにおいを嗅いでみる。(ちょっとくさい。。)
「これをすりつぶして患部に塗りこめるといいんだよ。」
「私医者いきます…」
あっまたやってしまった。気まずい雰囲気だ。
「で でも医者行く前にとりあえず塗っておこうかな。あははは」
私は教室で葉っぱをすりつぶしていた。
「石川!お前何やってるんだ!なんか臭うぞ。お前 昨日部活のとき頭打ったんだって?まだ壊れたままなのか?あたま」
押尾先生がいつのまにか教室にきていた。
教室に入るなり、いきなり梨華に向かって怒鳴った。
クラスの全員がくすくす笑いながらこちらを注目する。
りんねがニィーと笑っている。
「いえ!これ薬草なんです。頭に良く効くって。」
「そっか。石川頭良くなればいいな。」
みんながドッと笑った。
私はなにげに後藤を見た。
私と目が会った。
無表情だけど何かが前と違ってる感じがする。
後藤は私のほうを見たまま無表情のまま突然立ち上がった。
「つまんね〜。」
そう言って教室を出ていってしまった。
「なにあいつ。」
教室のどこかからそんな声が聞こえた。
- 10 名前:G3HP 投稿日:2001年04月30日(月)06時08分00秒
- 7. 夢
昼休み後学校を早退して医者に行き“異常なし”と診断してもらうまでに外はすっかり暗くなっていた。
(眠いや。)
病院っていうところはなんでこんなに疲れるんだろう。毎日通っていたら病気になっちゃう気がする。しかもなんであんなにツッケンドンなんだ?こっちは病人なんだぞ!今回は違ったけど。。
(あ〜あ疲れちゃった。早く帰って寝よう。)
その日の夜が初めてだった。
いや本当はもっと前から見ていたのかもしれない。
なんか懐かしい。
“ゆめ”
なんか切ない感じ。
何時も見る夢と明らかに違っていた。
生々しいというかリアルというか。。
あの霧の生暖かさや あの手
(手?)
冷たかった。
誰の手だったんだろう。
握ったその手が脈打つのを覚えていた。
本当に夢だったのかしら。
ふっと後藤の顔が目に浮かんだ。
「前世では恋人だったんだ。」
前世か。。
前世の夢なのかなあ?
あれ後藤さんだったのかな?
顔見えなかったし、
背中?
背中見えてたっけ?
後藤さんの背中?
今日教室から出ていった後藤の後姿を思い出す。
それから幾度となく同じ夢を見る。
どうして逃げてるんだろう?
だれから?
なにから?
あれは後藤さんなの?
いつも顔が見えない。
また同じ夢見てるってわかっても顔が見えない。
一生懸命顔を覗こうとしても見えなかった。
いつも二人で逃げていく途中で終わってしまう。
どこに行くんだろう?
“わたしたち”
- 11 名前:G3HP 投稿日:2001年04月30日(月)06時08分53秒
- 8. 冷たい手
次の日のお昼休みに思い切って後藤さんに話し掛けることにした。
(どこにいるんだろう?)
そう言えばお昼に後藤の姿を見たことがなかった。
もっとも、よく授業も受けていないことがある。
体育とか。。見た記憶がない。
でも、頭良いし。。
梨華は屋上に行ってみた。
重いサビ付いた扉をあけると、コンクリートの所々から草が生えた殺風景な風景が広がった。
梨華は辺りを見回すが後藤の姿は見当たらなかった。
(ここだと思ったのに。
だいたいロンリーウルフが一人で黄昏れるのは屋上と決まっているのに!)
コンクリートがはがれたところから元気に伸びている草を一握り引き抜いて右手でもてあそびながらフェンスのほうに近づく。
(この辺かな?りんねとあさみは。)
いつも3人でお弁当を食べている花壇の真上にきて下を見下ろす。
「あっいたいた。りんねちゃん、あさみちゃん発見!」
そういって彼女らの座っている近くめがけて草を投げ落とそうとしたとき
「ばか!何やってるんだ。」
突然腕を捕まえられた。
「あっ!」
心臓が止まりそうだった。
(この手だ!この感触。この冷たい手。まちがいない。)
視線がその手の先を追っていく。
(やっぱり。)
止まりそうにびっくりしたはずの心臓がなぜか突然安らいだ音を立てる。
「後藤。。さん」
- 12 名前:G3HP 投稿日:2001年04月30日(月)06時09分29秒
9.笑顔
「探していたんですよ。後藤さん。」
「草持って?」
「これは。。りんねたち最近私のことイジメるから。」
「からかってるだけでしょ?」
「わかってる。」
後藤の顔を正面から見る。
(きれい。)
といよりカッコイイかな?
1分近く後藤とにらめっこをしてから視線を外す。
「あの…前世の話。」
「。。。。」
「私見たの!」
「えっ」
「だから、前世の夢を。」
「わたしたちの?」
「多分そうだよ。」
「。。。。。。どんな夢だった。」
もっと喜んでくれると思ったのに。
あのときみたいに笑ってくれると思ったのに。
後藤は無表情だった。
いつもの気だるい悲しい目。
- 13 名前:G3HP 投稿日:2001年04月30日(月)06時10分15秒
- 10. ふたり
それからだった。後藤と二人で学校の帰りにマックで前世の話しをするようになったのは。
初めのときと違い後藤も笑うようになった。
「それでね。前世で一緒だった人って、その前もその前もやはり一緒だったんだよ。」
「いつも恋人とか夫婦だったの?」
「ううん。夫婦のときもあるし、親子だったり、親友だったり、愛人だったりするんだよ。」
「愛人?」
「そうだよ。時には夫婦より強いつながりの愛人なんてのもあるんだよ。」
「そういって何度も何度も生まれ変わっても一緒になる人のことをソウルメイトって言うんだよ。」
「ソウルメイト?」
「私たちはソウルメイトなんだよ。きっと。」
「ねえ ごっちん。私たちの前世って何時だったんだろうね?」
「よくわからないよ。あの夢って前世の一部でしかないからいつなのかわからないな。」
「ごっちんは夢の中で私の顔見えたの?」
後藤は梨華の手をじっと眺めて言った。
「この手首にあるほくろ。」
そう言って右手を引き寄せた。
梨華の右手首には5つの小さなほくろがあった。
手首に見える大動脈を中心に斜めに掛かった“ちいさな十字架”
(私の十字架。。)
梨華はこの十字架が嫌いだった。
子供のころは良く自慢していたのだけど。。
(私は十字架をもったえらい人なんだよ!)
だったのが、いつのまにか
(ちいさな十字架を背負ったおんな。)
になってしまった。
(でも、その十字架があったからわかってくれたんだ。)
そう思うと久しぶりにちいさな十字架に感謝したくなった。
「ごっちん。。ありがとう。」
「えっ?なんで?」
「ううん。いいの。なんか幸せだなって思ったの。ごっちんは石川といて楽しい?」
「うん。梨華ちゃんとは何千年も前からの友達だもん。また会えただけでもうれしいのに、こんなにかわいいなんて!ってね。」
ふたりは笑った。本当に幸せだと感じていた。
(いつまでもふたりなんだ。前世も今回も来世だって!)
そう思うと何もかもが幸せに思えた。
- 14 名前:G3HP 投稿日:2001年04月30日(月)07時14分16秒
- 11. 旧友
「梨華ちゃん。」
振りかえると、りんねがいた。奥のほうにあさみをはじめテニス部のメンバーがいた。
「最近どうしたの部活出てこないじゃん。」
“私たち”はいつものようにマックで前世の話しをしていた。
「うん。だってほら頭打っちゃたじゃない。まだ体調とかさ。。」
「うそだよ。だって前は絶対部活来てたじゃないか。体調悪いときは玉拾いとかしてさ。」
「へんだよ梨華ちゃん。変わっちゃったよ。それになんで後藤と話しなんかしてるの。」
ごっちんが振りかえってりんねをみている。
いつものあの無表情の目。
「まあ、それは勝手なんだろうけどさ。部活、梨華ちゃんいないとりんね面白くないんだよ。」
りんねは後藤を見て少したじろいたが、無視して梨華に話し掛ける。
「梨華ちゃん。友達だろ?りんねさびしいんだよ。」
梨華は戸惑った。
(どうしよう。)
確かにここ2週間近くずっと後藤と一緒だった。
りんねたちとは学校で話しをするけど前のようにいつも一緒ではなかった。
お昼も後藤と一緒のことが多かったし、部活もずっと出ていない。
後藤をみる。
後藤は何事もなかったように照り焼きバーガーをむさぼっている。
(あっ またこぼしてる。)
バーガーからはみ出したタレが制服についた。
(もう。ごっちんたら。)
- 15 名前:G3HP 投稿日:2001年04月30日(月)07時15分17秒
- 「梨華ちゃん!!行くよ!」
あさみだった。あさみが梨華の腕をとって引き寄せる。
(ごっちん!!)
「あ。。あの。。でも〜。」
(ごっちん!助けて!腕を引っ張って。)
「梨華ちゃんをレンタルするぞ〜。」
りんねの号令とともに奥で様子を見ていた部員たちもやってきて梨華の腕をひっぱる。
(こんな手じゃないよ。ごっちん。。。ごっちんの手。。)
後藤は目の前で行われていることを無視して服についたタレを拭いている。まるで、
“私がそこにいないかの様に。”
- 16 名前:G3HP 投稿日:2001年04月30日(月)07時18分43秒
- 12. 十字架
あれから1週間が過ぎようとしていた。
(ごっちん。。)
どうしても話し掛ける勇気がない。
私たち“ソウルメイト”じゃないの?ねえ、話し掛けてきてよ。
目も合わしてくれない。
自分が合わせようとしていないだけか?
ソウルメイトと永遠にお別れなの?
梨華はじっと自分の右手を見つめる。
ごっちんが引っ張ってくれた手。
ドックンドックン脈打っていた。
冷たい手。
ねえ ごっちん
あれはごっちんだったんだよね。
右手首のちいさな十字架。。
「十字架を背負った。。」
涙があふれそうになる。
- 17 名前:G3HP 投稿日:2001年04月30日(月)07時20分44秒
- とりあえず。書きためていた分だけどっと放出!
ねむいのでもう一回寝ます。
- 18 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月30日(月)18時06分37秒
- 変わった話ですね。引き込まれそうです。
いしごま好きなんで頑張ってください。
- 19 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月30日(月)18時17分13秒
- 「深く潜れ」ですね。面白そうなんで期待してます。
- 20 名前:かんかん 投稿日:2001年04月30日(月)21時00分39秒
- 私この話大好きだったんですよ。
頑張ってくださいね。
- 21 名前:G3HP 投稿日:2001年05月01日(火)09時01分00秒
- >>18 さん もっと変わった話しになっていきます。
>>19 さん そうです。「深もぐ」です。細かい内容は覚えてないですけど、
覚えている名セリフはいれたいと思っています。
>>20 さん 私も好きでした。小説化ならないかなあ。と思っていたけど
なりそうにないので自分で書くことにしました。
どこまでやれるかわからないけど頑張ってみます。
- 22 名前:G3HP 投稿日:2001年05月01日(火)09時02分59秒
- 13. 霧
あれからまた1週間が過ぎた。
相変わらず。後藤に話しかかれないままだ。
同じ教室にいるのに――
ねえ。ごっちんは平気なの?
どうしてそんなに普通にしていられるの?
私もうだめ。
―――ねえ。
ごっちんは、あの夢まだ見る?
私は毎日見てる。
でも、
だんだん ごっちんの手が見えなくなってる。
あのミルクみたいな霧の中から現れたごっちんの手が、
日に日に霧に隠されて見えなくなってきているの。
ねえ。ごっちん。
私、このままじゃ捕まっちゃうよ。
- 23 名前:G3HP 投稿日:2001年05月01日(火)09時03分48秒
- 14.おやじ
「い・し・か・わ〜」
えっ?
ふと我に返った。
(だれ?)
「梨華ちゃん。先生だよ。前。まえだよ。」
あさみの声で漸く状況がわかった。
授業中だったんだ。
「お前、最近ぼーっとしてるな〜。ええっ?今週何回注意された?
他の先生からも聞いてるぞ。」
今週もう10回以上同じような状況を作ってしまった。
「ちょっと後で俺のところにこい。」
(まっまずい。どうしよう。押尾先生と2人きりはまずい!)
「先生!石川さん この前、頭ぶつけたじゃないですか。まだ通院しているんです。
まだ完治してないんですよ。そのことでちょっと落ち込んでるだけです。
でも、私たちが面倒見てますんで大丈夫ですよ。」
(りんねちゃん!!Thanks! )
「そおか。まあなあに、あれだ。部屋にくるだけこい。
俺は心理学も専攻していたから十分力になれるからな。」
そういって授業を再開し始めた。
りんねと顔を見合わせる。
“あっちゃ〜”て顔をしている。
りんねの先に後藤の姿が見える。
(ごっちん。。寝てないでよ―)
- 24 名前:G3HP 投稿日:2001年05月01日(火)09時05分19秒
- 15. 眠
「りんねちゃん。どうしよう。」
「大丈夫よ。りんね ついていってあげるから。
でも、なんであいつが倫理なんか教えてるんだよ。
あのセクハラおやじ梨華ちゃん前から狙ってたもんね!」
押尾は生徒の間の評判は真っ二つに分かれるタイプだった。
授業はわかりやすくて面白かった。
わからない生徒がいても生徒それぞれの個性に合わせて粘り強くじっくり教えていく。
当然個別指導も多くなるし、夜遅くまで指導にあたることもあった。
これが曲者だった。
ルックスも良いし、金持ちのぼんぼんって話しだし。
それを目的にしている女子生徒もいるという話しだ。
(いやだ。どうしよう。
りんねちゃんとあさみちゃんだけで大丈夫かな?
やっぱり、ごっちんに。でも、)
教室を出るとき もう一度後藤の姿を探す。
(寝てるし――。)
- 25 名前:G3HP 投稿日:2001年05月01日(火)09時06分00秒
- 16.チェス
いやいやながら押尾の部屋に向かう。
「りんね、あさみちゃん。。」
「大丈夫。ここで待っているから。」
3人とも表情が強張る。
- 26 名前:G3HP 投稿日:2001年05月01日(火)09時06分46秒
- コンコン
「失礼します。」
「おお石川か。そこらへんに座っててくれるか?」
押尾はコーヒー豆を挽いていた。部屋中にコーヒーの臭いが充満する。
「いいにおいだろ。100g2000円のブルマンだぞ。」
「いいにおいってやつは気持ちを豊かにしてくれる。っな!」
確かにいいにおいだ強張っていた表情が緩んできた。
- 27 名前:G3HP 投稿日:2001年05月01日(火)09時07分33秒
- 「まあ落ち込むなよ。若いときはいろいろ悩むもんだ。
悩まないと成長なんかしないんだぞ。」
(なんだ。大丈夫じゃないのかな?)
やさしく暖かい言葉にを聞いて、自分が要らぬ心配をしていたことを恥じた。
「なあ。石川チェス得意なんだって?一回お手合わせ願いたいんだけどな。」
そういって押尾は入れたてのブルマンを手渡すと奥のほうに引っ込んだ。
「まあチェスでもやりながら、ゆっくりと話しでもしようじゃないか。」
そういって押尾はチェスの用意をはじめた。
チェスは私の得意分野だ。完膚なきまでに。。いや、勝たせてあげたほうが。
20分が過ぎた。
お互い黙って黙々とチェスをやっていた。
- 28 名前:G3HP 投稿日:2001年05月01日(火)09時08分32秒
- 17.くちびる
「なあ、石川。おまえさぁ面白くねえな。」
うっ!痛いところを突かれた。
「いや、こまの動かし方だよ。なんて言うか定石どおりというか〜。
まあ、応用も含めてきっちり覚えているところはお前らしいんだけどな。
でも、そいつはお前が考えたんじゃないんだよ。
なんか石川はさいつも正解を言おうとしてる感じなんだよな。
でも、正解なんか言う必要なんかないんだよ。
もっと気楽に考えろよ。」
そのとおりだ。そんなことはわかっている。
でも、じゃあどうすれば良いの?
やりたいこと勝手にやれば良いの?
でもそんなのみんなに嫌われちゃう。
- 29 名前:G3HP 投稿日:2001年05月01日(火)09時09分09秒
- ひとりは嫌!
一人じゃ怖い!
私は強くない。
――ごっちんだったら。。
ビクン。
えっ?
なに?
腕を?
先生の顔が近づいてくる。
「石川!」
なに?
いやだ。
なんだこの手は?
――ごっちんの手じゃない。
私の腕を取るのはごっちんだけ!
なんでごっちんじゃないの?
何かがはじける感じがした。
- 30 名前:G3HP 投稿日:2001年05月01日(火)09時10分29秒
- ――いやだ。
「石川はもっとこう肩の力を――」
いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。ごっちんじゃない。ごっちんじゃない。
いやだ。いやだ。
「いやだ――!!!!!」
「えっ?いや。あの。。いしかわ!おい!石川!」
教員室のドアが乱暴に開かれた。
- 31 名前:G3HP 投稿日:2001年05月01日(火)09時11分17秒
- 「ご 後藤?」
ドアを開けて突っ立っている少女。
無表情な顔。
冷たい目。
そして、気を失いかけている少女。
後藤は大股でずかずかと梨華に近寄ると
梨華の手首をそっと引き寄せた。
ちいさな十字架をじっと見つめる後藤。
後藤はそっと梨華を抱えあげ、
そして梨華の唇にそっと唇を重ねた。
- 32 名前:G3HP 投稿日:2001年05月01日(火)09時12分01秒
- (ご。。っちん?)
(やっぱり ごっちんが来てくれたんだ!)
後藤は梨華の顔を見てつぶやいた。
「さあ行こう。」
後藤の手をしっかり握って後をついて走っていく。
(ああ。この手。
――ごっちん。)
「おい!おまえらちょっと待て。」
押尾がなにか言っている。
(聞こえないよ。)
廊下でりんねとあさみが固まっていた。
- 33 名前:G3HP 今日はここまで 投稿日:2001年05月01日(火)09時15分18秒
- ちょっと話しを強引に進めてしまったかな?
なかなか、話しが進展しないもんでちょっとビビッてます。
まだ話しが1/10行ってないのか?
- 34 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月01日(火)11時57分58秒
- ぜんぜん強引じゃないですよ。
ドラマチックで、かっこいいカッケーと思います。
- 35 名前:G3HP 投稿日:2001年05月01日(火)22時30分19秒
- >>34 さん そうですか。よかった〜。
いやあ読みなおすのがこっぱずかしいですけどね。
- 36 名前:TOY 投稿日:2001年05月02日(水)03時17分34秒
- ごっちんカッケ〜です
- 37 名前:G3HP 投稿日:2001年05月02日(水)17時06分44秒
- 18. 繭
翌日から2人を取り巻く世界が変わった。
「押尾先生かわいそ〜。」
「あの2人。レズだって。」
「頭やっぱ壊れたんだ。」
「後藤におかしくされたらしいよ。」
「――で?」
そんなことどうでも良かった。
――ごっちんがいる。――
それだけで強くなれた。
それだけで幸せだった。
それだけでよかった。
周りに冷たくされればされるほど。
2人の絆は強くなっていった。
幸せだった。
そして、2人は高校を卒業した。
- 38 名前:G3HP 投稿日:2001年05月02日(水)17時07分35秒
- 19.家族
「ねえおかあさん。私、家を出たいの。」
「何言ってるのよ。梨華。こっからだって十分会社に通えるじゃない。」
「そうだよ梨華。一人暮しなんて危ないじゃないか。
それにおまえ一人でやっていけるわけないじゃないか。」
「ほらあ。おかあさんが許しても、お父さんは絶対許しそうにないから。
あきらめなさい。ねっ?」
「何言ってんだ。別に絶対許さないなんて。。」
「ほんと?ねえ?大丈夫よ。お父さん。私一人じゃないから。」
「おとこか!」
「もう。そんなわけないでしょ。ごっちんとだよ。」
「ごっちん?」
「ほら。後藤さん後藤 真希さん。」
「お母さん後藤のこと良く知らないけど。
別に一緒に住まなくても。。」
「いいの!住むの!決めたんだから。」
- 39 名前:G3HP 投稿日:2001年05月02日(水)17時08分09秒
- 20.へや
あれから半年が過ぎた。
ごっちんは図書館でバイトしながら短大へ。
私はOL。
2人の共同生活は幸せだった。
別にレズってるわけじゃないんですよ。
でも。
そう言えば、あれっきりだな。
キス。
くちびるをそっとなでてみる。
あんまり覚えてないのが悔しいな。
梨華はへやを見て回る。
私のへや。
ごっちんのへや。
2人の居間。
ごっちんと一緒に考えたカーテンの色。
ごっちんと一緒に選んだテーブル。
ごっちんと一緒のマグカップ。
ごっちんと一緒に作った“おきて”。
2人だけの空間。
2人だけの時間。
- 40 名前:G3HP 投稿日:2001年05月02日(水)17時08分46秒
- 21.会話
「ねえ。ごっちん図書館のバイトどお?」
「どおって。寝てるよ。」
「あははは。ごっちんらしいね。」
「ねえ。カッコイイ男のコとかいる?」
「いないよ。梨華ちゃんの会社にはいないん?」
「えへへ。ちょっと気になる人がいるんだ〜。」
そういって後藤の顔を覗き込む。
「へえ〜。どんな人?」
「内緒だよ。」
「コクったの?」
「そんなわけないじゃん。」
(ごっちんがいるから。)
「あ〜彼氏ほしいな〜。」
「ごっちんは?」
「別に。。」
普通の会話。
でも楽しい。
お互いに彼氏ができたって大丈夫。
だって。
彼氏とは今世だけ。
ごっちんとはずっと一緒。
今までもこれからも。
- 41 名前:G3HP 投稿日:2001年05月02日(水)17時10分01秒
- 22.島
「あっ!みえた!島!」
前方の波の間から見え隠れする小さな島が見えてきた。
「つんくさん。あの島れすか?」
少女は振りかえり、つんくの顔をみる。
「ああ。あれですね。」
少女は飛び上がり、もう一人の少女に抱き着いた。
「あいぼん。やっとついたれす。」
「そやな。うち酔いそうだったから助かったわ〜。」
少し顔色の悪くなっていた少女の顔にも元気が戻ったようだ。
(やっと着いたか。)
船が出向してすでに3時間がたっていた。
海はそんなに荒れているわけではないが、ほとんどの人がこんな小さな漁船に
何時間も乗船するのは初めてだったためか、船酔いをおこしている者も少なくなかった。
船の後ろのほうでは妊婦?が吐いている。
「つんくさん。後10分ってところですか?」
「ああ。そうだな。」
「みんな だいぶ参っちゃっている様なんで、スケジュール変更しますか?」
「あー。そうだな。テント設置は夕方になるまでにやれば良いから
とりあえず高台まで行って休憩しましょう。」
- 42 名前:G3HP 投稿日:2001年05月02日(水)17時10分52秒
- 23.上陸
つんくと打ち合わせをしていたキリッとした美少女は船の先端まで行き
ハンドマイクで我々に上陸後のスケジュールを報告している。
「…というわけで、上陸後 高台の洋館まで移動します。
キャンプ地である海岸沿いに大きな荷物は置いていってください。
とりあえず、洋館で休憩していただき、食事のできる人は
食事をしてもらいます。高台から島の全貌が確認できますので良く
見ておいたください。危険な個所もありますので後で説明します。」
美少女が説明をしている間に島はどんどん大きくなってきた。
桟橋が見えてきた。
桟橋といってもがけの下からちょこんと生えている板で組んだ桟橋だ。
船はゆっくりと桟橋につけられた。
船がまだ固定されてもいないのに小さな少女2人は桟橋へと飛び移った。
「いちば〜ん。」
「なにゆうとんねん。うちのほうが早かったや。」
「へへ。いちば〜ん。」
そう言うと少女たちは桟橋を走り抜けた。
- 43 名前:G3HP 投稿日:2001年05月02日(水)17時14分05秒
- 「さあ。船固定しましたけど、気をつけてください。」
美少女の声で次々に船を降りていく。
「ごっちん?降りるよ。」
船尾で眠っていた後藤を起こして船を降りようとする。
もう一人。船尾でうずくまったままの女性がいた。
パーカーのフードをすっぽりかぶっている。
(この人の顔、見てないな。)
そう思いつつ梨華はその女性に声をかけた。
「あの。島に着きましたよ。みんな降りちゃいましたよ。」
声をかけたけど、全く返事をする気配がしない。
じっと、ひざを抱えたまま蹲ったままだった。
(聞こえてないのかな?へんね〜。)
まあ。ずっとこの船に乗ってる人見てたけど皆変かな?
そう思いつつ後藤を連れて船を降りる。
梨華は桟橋で荷物を降ろしている美少女に駆け寄った。
「あの〜。後ろのほうでうずくまって動かない人がいるんですけど。
体調悪いみたいで返事もしてくれないんですけど。」
そう言うと美少女は面度くさそうな“ああ。やっぱりか”て顔をした。
「お姉ちゃん。もう!早く降りてよ。荷物じゃないんでしょ!
自分でさっさと降りなよ。」
そう怒鳴るとパーカー女がゆっくり立ち上がり船を降りていく。
「もう!ちょっとは手伝ってほしいぐらいなのに。」
パーカ女船を降りるとき美少女が毒ついた。
「あの〜。私、手伝いましょうか?」
梨華がたずねる。
「いや〜バイトですから。自分一人で大丈夫っすよ。」
と美少女。
――なんて明るい顔なんだろう。
「ひまわりみたい。」
- 44 名前:G3HP 更新しました。 投稿日:2001年05月02日(水)17時16分55秒
- ようやく他のメンバーを出せるところまで話しが進んだ。
まだ、キャラが決まっていない人もいるんですが、
一応 娘。全員登場させるつもりです。
- 45 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月02日(水)17時51分20秒
- 姉妹が誰なのか気になりますね。
TV見てなかったから、先が読めなくて楽しいです。
- 46 名前::弦崎あるい 投稿日:2001年05月02日(水)23時27分22秒
- 一気に読ませてもらいました。
おもしろかったです。
ドラマみたいなぁって思いました。
続き楽しみしてます、頑張って下さい。
- 47 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月02日(水)23時37分23秒
- このドラマ今月DVD発売らしいっすね。
この小説の影響で買ってしまいそうだ(w
- 48 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月02日(水)23時59分47秒
- あ、DVD出るんだ。
レンタル出ないかなぁ。最終回見忘れてたんすよね。
まあ、レンタル出てもこの話しのラスト見てからにしますけど。
あれ、なんか違う?(w
- 49 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時38分21秒
- >>45 さん 姉妹の名前が出てくるのはずいぶん先になります。特に姉のほうは。
>>46 さん ぼちぼちとやってきますのでよろしくお願いします。
>>47,47さん DVD出るんですか。買いたいですね。でもまず機械を買わないと。。
- 50 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時39分37秒
- 24.ツアー
「荷物持とうか?」
後藤が梨華にやさしく声をかける。
(ごっちん。怒ってないんだ。
ここにつくまでずっと口聞いてくれなかったし。
最近なんか機嫌悪かったんでちょっと安心。)
―――このツアーに強引に誘ったの怒ってないんだ。
“前世ツアー”
- 51 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時40分26秒
- 25.疑問
その言葉を見たときドキリとした。
一枚のチラしに書かれた文字。
“前世ツアー”
前世。
最後にあの夢にみたのは何時だったろう。
もう私にはあの夢が必要ないのだろうか?
何時もそばにいてくれるごっちん。
私といるときだけ笑っている。
ごっちんの手に引っ張られて私は助けられたから
もう必要ない?
前世は。
- 52 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時40分58秒
前世で私たちは恋人だった。
前世ではどんな生活していたんだろう?
仲良かったのかな?
ケンカなんかしたのかな?
何時の時代なんだろう?
どうして追われていたんだろう?
誰に?
そして、どうなっちゃたんだろう?
―――知りたい。
- 53 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時42分02秒
- 26. パンフレット
前世ツアー募集
――あなたはなぜ生まれてきたのですか?
――あなたはなぜ其処にいるのですか?
今、あなたが悩んでいることの答えは「前世」にあります。
「前世」を知ることで、生きる意味がわかるのです。
今こそ、あなたの「前世」を探しに行きませんか?
期間2001年7月21日(土)〜7月24日(火)
場所XXXXXX
連絡先 東京前世セラピー
03―xxxxxxxxxxx
“つんく”まで、御一報待っています。
- 54 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時43分12秒
- 27. 神聖な場所
高台に昇って行くと島の半分ぐらいが見渡せれた。
小さな無人島だ。
洋館は島の南端の少しせり出した崖の上に建てられていた。
かつては別荘として使われていたであろう その洋館は、
今では何時崩壊してもおかしくない状態に見えた。
白く塗られていただろう木の壁のほとんが、
その痕跡をとどめていなかった。
窓ガラスは全て割れ落ち、家の周りには剥がれ落ちた屋根板や壁が
散乱していた。
- 55 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時44分09秒
- 2人の少女がはしゃいで洋館の壁を蹴っている。
そのたびに、何かしらのものが落ちてくる。
「止めなさい!!!」
あまりにも大きなその声に全員が固まり、声のした方向に振り向いた。
つんくだった。
「我々はここに遊びに来たわけではない!!
いいですか?この場所は我々にとって深い意味のある場所なのです。
前世を、前世を知ろうとしている“あなたたち”にとってこの場所は
現世でも前世でもない神聖な場なのです。」
- 56 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時44分49秒
- 28. 洋館
いつのまにか、つんくが玄関を開けて待っていた。
「さあ、玄関を開けましたからどうぞ中に入ってください。」
玄関を抜けると吹き抜けのホールがあった。
埃っぽい、かび臭い いかにも何年も使われていなかったような臭いがする。
床一面が砂埃で白くなっている。
砂埃の所々に足跡が見える。
(ずっと使ってないわけではないのかな?)
床の所々に穴が開きそこから雑草が勢い良く伸びている。
正面には映画にでも出てきそうな階段。
階段の木板は明らかに腐りかけている様だった。
穴の開いた屋根からは、光がスポットライトのように床を照らしている。
右の窓際には木でできたテーブルとベンチが。
そしてその奥の窓からは一面の青い海が広がっていた。
- 57 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時45分28秒
- 「あそこでテーブルで休憩してください。ベンチは汚れていますので
お渡しする布で拭いてください。それとサンドイッチとお茶を配ります。
吉澤。皆に配って。」
つんくにそう言われると、吉澤は担いできた大きな荷物の中からボロ布と
サンドイッチを取り出し皆に配り始めた。
「あっ!階段はまだ上らないでください。今からチェックしますから。」
予想通り、少女たちが階段を駆け上がろうとしていた。
- 58 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時45分58秒
- 29.昼食
(1、2、3、4....全員で8人か。美少女とつんくさん入れて計10人。
つんくさん以外全員20才未満の女のコってところね。)
梨華は改めて参加者の顔を見渡す。
(少女2人、パーカーの女、帽子を深くかぶった背の低い女性、
妊婦、背の高い女性、美少女、つんくさん、と私たちか。)
誰も話そうとしない静かな食事風景だ。
割れた窓から聞こえる波の音しか聞こえない。
- 59 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時46分36秒
- 30.双子
「ねえ、あんたたち双子でしょ?」
静寂の中、妊婦が徐に少女たちに話しかけた。
「あい。そうれす。」
「うちら二卵性なんやわ〜。」
「ねえ、なんで双子なのにかたっぽ関西弁なんだべ?」
「うちらの両親死んでもうたんや。その後、うちは奈良の親戚に
ののは東京の親戚に引き取られたんや。」
「そう。ごめんな〜。変なこと聞いてさ。」
「平気れす。それよりお姉さん赤さん産むんですか?」
妊婦はしばらく返事もしないで自分のお腹を見つめていた。
「。。ん そうね。おなかに赤ちゃんいるんだよね。触ってみる。」
「いいです。わたしも赤さん産むんれす。」
「えっ?」
「いや。何時か産もうなということやねん。」
「すぐに産むれす。」
「のの!もうだまっとき。」
「でも。。」
そういいながら俯いてしまった。
- 60 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時49分32秒
- 31.ファインダー
「さあ みなさん。
椅子に深く腰掛けて肩の力を抜いてください。」
つんくと吉澤を除く被験者は洋館の地下にあった20席ばかりの
ちいさな映画館の埃くさい椅子に点々とわかれて腰掛けている。
電気が点くわけもなく、それぞれが持ってきた懐中電灯と椅子のひざ掛けに
立てられた弱々しいローソクの光が、怪しげな雰囲気を作り上げていた。
つんくは一通り全員の顔を見渡すと続けた。
「あなたたちは今、光の繭の中にいます。
その光に守られて、今とても穏やかな気分です。」
吉澤は炎に照らされている彼女らの顔を一人づつビデオに写していく。
(70点、、55点、、あーガキらは問題外っと。)
ファインダー越しに見える彼女らに点数をつけていく。
「いまから私が5から逆に数を数えていきます。
数を数え始めると、あなたの体はゆっくりと光の繭の中に沈んでいきます。
数字が1になると、光の海の深い、深〜い底まで沈んでいきます。」
(おっと、いた〜。梨華ちゃん100点。)
「5 4 3 さあ段々体が光の奥へと沈んでいきます。
――2 1。 さあ、どんどん、どんどん沈んでいきます。
どんどん、どんどんと」
吉澤がビデオをパーンしていくと、そこに後藤の顔があった。
(いっ!)
後藤は目を開け吉澤を見ていた。
(なんだこいつ?なんて冷たい目で人を見るんだ。)
吉澤は、先ほど梨華を見てにやけていた自分を思いだし気まずくなった。
(気分わる〜。)
- 61 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時51分55秒
- 32.異変
梨華の体はゆっくりと光の海を潜っていった。
あの夢が始まった。
――ミルクのような濃い霧の中を梨華は逃げていた。
自分が逃げていく道すらぼんやりとして良く見えない。
いつもの夢。
(ごっちんは?)
梨華は夢の中で後藤の“手”を探す。
走っても走っても後藤の“手”は見つからない。
段々不安になってくる。
(なんか変。)
いつもと違う。
(なんだろう?)
立ち止まり後ろを振り返る。
追っ手の気配がない。
(振りきったのかしら?
ごっちんは? ごっちんはいないの?)
周りを見渡すが霧でよく見えない。
不安になりまた走り出す。
(どこ?どこにいるの?)
走っても走っても見当たらなかった。
――やがて光の海から浮上を始めた。
目を開けた梨華は、あせって後藤の姿を探した。
後藤と目があった。
「あっ!」
後藤に 今見た夢を見られた気がした。
(どーしよう。)
急に後藤が怖く見えた。
- 62 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時52分35秒
- 33.誤算
その夜、梨華はなかなか寝つかれなかった。
(どうしてあんな夢になったんだろう?)
寝返りを打って横で寝ている後藤をみる。
(あの夢、ごっちんに見られちゃったのかなあ?)
冷たい目だった。
催眠から覚めたときにみた後藤の目を思い出していた。
梨華はいたたまれなくなり、そっとテントから抜け出した。
満天の星。とまではいかないが明らかに東京のそれより多い星が見えた。
(ロマンチックなんだけどな。)
梨華はこのツアーに申し込むときに考えていた風景。
きれいな星空。さざめく波の音。
その下で後藤と一緒に前世の夢の話しやたわいのない会話を
しているはずだった。
- 63 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時53分07秒
- 34.あたたかい手
しばらく波打ち際を歩いていると、星明かりに照らされた小さな人影が見えた。
「こんばんは。」
「あっ。こんばんはれす。え〜と石川さんれしたっけ?」
「うん。えっと辻さんね。どうしたの?寝れないの?」
「あの〜。違うんれす。トイレに行きたいんですけど、こわい。。」
そういって辻はしゃがみこんだ。
トイレといっても穴を掘って周りを囲っただけのものだ。
「加護さんは?」
「あいぼん寝てます。」
「そう。じゃあ私一緒に行ってあげる。」
そういって辻に手を差し伸べる。
辻は頭を上げ梨華にニィ〜と笑って見せた。
- 64 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時53分46秒
- 辻と手をつないで歩く梨華。
(ちっちゃくて柔らかい手。)
「あの〜。石川さん。」
「梨華でいいよ。」
「あい。梨華ちゃん。梨華ちゃんの手、とってもあたたかれすね。」
「えっ?そお?」
梨華は少し驚いた。
後藤の冷たい手を思い出していた。
(ごっちんの手が冷たいんじゃなくて私の手が暖かいだけ?)
少女の手も後藤と同じように冷たかった。
- 65 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時54分39秒
- 35.“ギュ”
「ねえ、ののと加護さんのご両親って何時亡くなられたの?」
とたんに辻の表情が沈んでいく。
(あ〜。またやっちゃった。お昼話し聞いていてわかってたのに〜。)
オロオロする梨華。
「お父さんは生まれる前に事後で死んだれす。お母さんは6才のときにガンで。」
「そう。ごめんね。」
「大丈夫です。なんか話しちゃいたいんれす。」
「そうなの。
――親戚のお家では良くしてくれているの?」
(また、いらないことを聞いてしまった。)
「あい。あたしもあいぼんもすん〜ごくやさしくしてもらってるれす。」
「だから、うちらいつもええこにしてないかんねん。」
いつのまにか加護が来ていた。
- 66 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時55分35秒
- 「あいぼん。」
「ののがトイレいったん知っとったけど、なかなか帰ってこおへんで
心配で探しにきたんや。」
そういって梨華の隣に腰掛けた。
「うちら、おかあはん生きとったころは、いたずらばっかして
よくおかあはんにおこられてたんや。」
「でも、ごめんなさいすると、お母さん2人まとめてギュっと抱きしめてくれたんれす。」
「あれ好きやった。。おっちゃんもおばちゃんも誉めてくれるけど、叱ってくれへん。
怒った後の“ギュ”してくれへんねん。」
「あたしも“ギュ”してもらいたいれす。」
梨華は二人の肩をそっと抱きしめた。
(強いのね。あなたたち。)
- 67 名前:G3HP 投稿日:2001年05月04日(金)21時56分48秒
- 36.印刷られた名前
「あなたたち離れていてさびしくない?」
「昔は電話しかなかったれすから大変れした。でも今はメールあるし。」
「うちら、こんなんでも頭ええねん。」
「えっ?」
「よく全国共通模試なんかやると必ずトップ50に入るんやで。」
「すごいねー。」
「一生懸命勉強してるんや。うちら。」
「あのですね。同じテストうけると2人とも名前が載るんれすよ。
でも、あたし いつもあいぼんに負けてるんれす。」
「順番なんかどうでもええねん。同じ場所に印刷されたののの名前を
見つけるのが好きやねん。」
「ののの名前を見つけてな、こうやってそ〜と ののの名前を撫でたるねん。
『ようがんばったな!』って、そうすると なんかののの頭撫でてるみたいやねん。」
「あたしもあいぼんの名前、撫でてるれす。」
言葉が出なかった。
ただ、この2人が無性にいとおしく思えた。
- 68 名前:G3HP 今日はここまで 投稿日:2001年05月04日(金)21時58分28秒
- なんか、なかなか話しが進みませんですみません。
とりあえず、今日はこの辺までということで。
- 69 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月04日(金)23時19分45秒
- いいえ、石川さんの内面とか、チビッコ二人の境遇とか、
通常だと、だれてしまう話を、ひきこまれて一気に読まされてしまいました。
次の更新をたのしみにまってます。
- 70 名前:G3HP 投稿日:2001年05月06日(日)15時03分45秒
- >>69 さん なんか待っていただいているなんて光栄です。
ちょっとドライアイ気味なんで ぼちぼちやってきます。
36のタイトル間違ってました。
36.印刷された名前 です。
- 71 名前:G3HP 投稿日:2001年05月07日(月)07時44分48秒
- 37.捜索
朝、梨華が起きたときにはすでに後藤の姿はなかった。
(いつも朝起きないのに。)
梨華は急いで身支度をしてテントを出る。
まだ日が浅いのに、太陽は真夏の日差しを発していた。
辺りを見回したが、5つのテントとキッチンを兼ねたダイニング用
のタープだけで、人影は見当たらなかった。
(つんくさんのところに行ったのかな?)
「女性ばかりのテントに近づくわけには行きませんから。」
そういってつんくは、崩れかけた洋館に寝ているのだった。
「まあ、なにかあったら無線で呼んでください。
それと、個別にセラピーしますので気が向いたらいつでも。」
(島から出て行けるわけでもないか。)
梨華は後藤の捜索をあきらめ、波打ち際にしゃがみこんだ。
しばらく、海を眺めていると突然海の中から人影が現れた。
(ごっちん?)
現れた人影はウェットスーツを着た吉澤だった。
「おはようございま〜す。」
吉澤に手を振ると、吉澤は右手に持ったモリを高々と突き上げ叫んだ。
「おはよ〜。タイがとれたぞ!タイが!」
モリの先には、魚が一匹刺さっていた。
- 72 名前:G3HP 投稿日:2001年05月07日(月)07時45分34秒
- 38.朝食
吉澤は海から上がると早速タイをさばき始めた。
「味噌汁の具を探しに行ったんだけど、
まさかタイが捕れるとは思ってなかったよ。」
そういいながら見事な包丁使いを披露していた。
「吉澤さん。 包丁、上手ですよね。」
「ありがとう。よっすぃーでいいよ。梨華ちゃんでいいよね。」
吉澤は手際よく10人分の朝食を作っていった。
おにぎり、味噌汁、スクランブルエッグ、鯛の酢漬け。。
無人島の朝食にしては豪勢な朝食が作りあがっていく様をみて梨華は舌を巻いた。
しばらくするとテントの中で蠢いていたものたちが、
臭いに引き寄せられて次々にテントから這い出てきた。
「梨華ちゃ〜ん。」
辻は梨華のところまで思いっきり走っていき、その勢いのまま抱きついた。
梨華が抱きしめると 辻はしばらく梨華の胸に顔を押し付けていた。
辻は顔を上げ梨華を見つめ“にぃ〜”と笑った。
「梨華ちゃんお母さんみたいれす。」
そういうと振りかえって加護を招き寄せる。
「あいぼん。梨華ちゃんお母さんみたいれす。」
(お母さんみたい。。か。)
「あほ。なにゆうてんねん。おかあはんもっと色白やで。」
加護は2人が抱き合うこの風景がえらく気に入った。
- 73 名前:G3HP 投稿日:2001年05月07日(月)07時46分33秒
- 39.困惑
「あなたたちは今、光の繭の中にいます――」
そのセリフでまたセラピーが開始された。
セラピーを重ねるごとにトリップし易くなっていったはずだったが、
今回梨華には何も起きなかった。
ただ瞼をとじて つんくの声を聞いているだけ、
それ以上のことはおきなかった。
(昨日の夢のショックから立ち直っていないから?
今朝ごっちんいなかったから?
それとも のの達の話が気になってるの?)
自分でもわからなかった。
薄目を開けて後藤を探す。
左前方にいる後藤は明らかに催眠ではなく眠っていた。
(ごっちん。今朝何処に行っていたの。)
後藤が戻ってきたのはセラピーが始まる直前だった。
そのため、今朝のことを聞けないでいた。
(ごっちんは前世を知りたくないの?
それとも、もう必要ないの?)
「さあ右手がかる〜くなってきました。」
つんくの声とともに、みんなが右手を挙げるのが見えた。
梨華も同じように右手を挙げる。
「無理に挙げなくてもいいんですよ。」
つんくが梨華の耳元で囁いた。
梨華は目を見開いてつんくを見る。
「さあ、次は左手が ゆっく〜りと挙がっていきます。」
何事もなかったかのように そのまま歩いていってしまった。
周りを見渡すと部屋の角でビデオを撮りながら梨華に手を
振っている吉澤がいた。
- 74 名前:G3HP 投稿日:2001年05月07日(月)07時48分50秒
- 40.変化
午後から個別にセラピーをおこなっていた.
順番待ちをしている間、各々の時間を過ごしていた。
「ごっちん。どうしてたのよ。」
「なにが?」
「今朝のこと。」
「散歩。ちょっと迷っただけだよ。」
「うそばっか。
――ごっちん この島に来てからなんか変だよ。」
「あたしは普通だよ。」
後藤は梨華をじっと見つめる。
梨華は後藤に何もかも見通されてしまっているような気がした。
後藤の視線に耐え兼ねていた。
(やっぱり昨日の夢のこと、一人で走っていたことわかったんだ。)
「ねえ、梨華は前世を全部知りたいの?」
「だって気になるじゃない。何時の時代なのか、なぜ追われてるのか、
あの後どうなちゃうのかとか。
――ごっちんは知りたくないの?」
「断片だから良いんじゃないの?
全部わかったら、梨華はその全部を受け入れられるの?
本当は良いことなんか前世にないかもしれない。
殺されるだけかもしれない。
梨華はそんなものを受け入れらるの?」
「絶対そんなことないよ。」
そういいつつも梨華は不安でしょうがなかった。
「あたしは断片でいい。」
- 75 名前:G3HP 投稿日:2001年05月08日(火)07時49分46秒
- 41.パス
「後藤さん。次お願いします。」
吉澤が後藤を呼びに来た。
「あたしパス。」
「ごっちん。行くだけ行ってよ。」
「行ったって催眠かからないから。」
「つんくさんと話をするだけでいいから。」
そういって後藤の背中を押した。
「絶対行ってね。」
後藤は気だるそうな笑みで梨華を一瞥してから洋館に入っていった。
- 76 名前:G3HP 投稿日:2001年05月08日(火)07時50分32秒
- 42.帽子
「ねえ石川さん。安倍さん見かけなかった。」
梨華が振り向くと、そこに帽子を目深にかぶった小柄な女性が立っていた。
矢口だった。
どちらかといえばサバイバルな無人島ツアーの中で、唯一スカートを履いている女性だ。
この日も薄い黄色のワンピースを着ていた。
ショートに刈られたきれいな黒髪に、つばの広い帽子をかぶった姿を見ると、
朽ち果てた洋館が建っている無人島でサバイバルなツアーしているのではなく、
バブル時代の代官山にでもいるような錯覚におちいる。
「安倍さんならテントの方で見かけましたよ。」
「そう。ありがとう。」
そういって浜辺に下りかけた矢口が梨華の元に小走りで戻ってきた。
「ねえ。あなたあいつと話した?」
そう小声で言って顎で指した方向には飯田が立っていた。
「あたしあいつと同じテントなんだけどさあ。なんか気味悪くて。
夜中になんかわけわかんない呪文なんか唱えちゃってるのよ。
あ〜やだやだ。どーしてあんなのと同じテントなわけ?
早く安倍さんに言ってテント移動しよう。」
そう捲くし立てると、さっさと浜辺に下りていってしまった。
- 77 名前:G3HP 投稿日:2001年05月08日(火)07時51分17秒
- 43.目的
「あなたは一体ここに何をしに来たのですか?」
「さあ。」
後藤は面倒くさそうにつんくに答える。
「あなたには前世は必要なのですか?」
「まあ一応。」
ずっとこの調子で問答がおこなわれいた。
「あなたにとって石川さんとは一体何なんですか?」
「ソウルメイト。」
「石川さんから聞いてます。他の言葉では?」
「親友。ルームメイト。。何でもいいわ、好きなの選んで。」
「じゃあ質問を変えましょう。
――あなたは何を求めて石川さんに近づいているのですか?
何かの代替ですか?精神的な。または肉体的な。」
後藤は両足を前の席に乗せ、眠るような格好になった。
「私にはどうしても お二人の思いに初めからズレがあったような気がするんです。
これは推測ですが、石川さんの一方的な片思いなんじゃないのですか?
そして、そう仕向けたのは後藤さんあなたでしょう。
それもあなた自身のために。」
そこまで言いったとき、後藤は起き上がりつんくの胸ぐらを掴みかかった。
「くだらねえ。
そういうあんたはどうなんだ?
セラピストね〜。
あんたこそ何が目的なんだ?
まあ“金”だろうけどさ。」
そう言うと後藤は映画館を出ていった。
- 78 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月08日(火)23時05分55秒
- おお〜
人間関係が複雑に入り乱れそうな気配が……
- 79 名前:G3HP 投稿日:2001年05月09日(水)07時08分37秒
- 44.姉妹
「お姉ちゃん。次お姉ちゃんの番だよ。」
吉澤が保田をテントから無理やり引っ張り出す。
保田が無様に浜辺にひっくり返る。
慌てて起き上がり、またテントに潜りこむ。
「ほっといて。。私にはもう何もないのよ。」
「ほっといてと言われてほっとく人がいるわけないじゃない。
何の為にここまで来たのよ。」
吉澤は保田をまた強引に引っ張り出して洋館へと向かわせた。
しばらく保田の後姿を見ていた吉澤だったが、
梨華を見つけて飛んでいった。
「梨華ちゃん。ビデオ撮ってあげようか。」
そういって返事を待たずに梨華を撮り始めた。
「やっぱ梨華ちゃん一番きれいだね。」
吉澤はビデオに撮りながら、視界の片隅に映る保田を追っていた。
(――お姉ちゃん。)
- 80 名前:G3HP 投稿日:2001年05月09日(水)07時09分16秒
- 45.妹
吉澤 ひとみにとって姉は常に比較の対象だった。
“吉澤 圭の妹”そんなレッテルが何処にいってもついて回った。
わざわざ姉と違う隣の県の高校にいっても、やはり変わらなかった。
それほどまでに保田は優秀であった。勉強もスポーツもそして性格も。
どれ一つ吉澤はかなわなかった。
(まあ 私は私なんだから。)
いくらそう思っても、やはり周りはそうは思ってくれなかった。
いつも姉の下で、姉に守られて小さく生きてきた。
それが吉澤ひとみだった。
あの事件が起きるまでは。
- 81 名前:G3HP 投稿日:2001年05月09日(水)07時10分18秒
- 46.我が子
それは、10秒にも満たない出来事であった。
保田はいつものように、2歳になる我が子を抱きかかえ買い物をしていた。
結婚して3年。
保田は幸せだった。
夫と子供に恵まれて、自分の会社も順調に軌道になっていた。
それなのに、それは何の前触れもなく終わってしまった。
まるでTVのスイッチを切るみたいに。
買い物の最中に少年とすれ違った。
そのときに少年に押される感じを受けた。
ただそれだけだった。
「なによ!」
そういって少年を振り返った。
少年の右手には、血を滴らしたナイフが握られていた。
即死だった。
少年だったことと、薬物による一時的精神錯乱という理由で
少年は病院に送られて終わりだった。
保田は戦った。
少年がやったことをちゃんと自覚してほしい。
自ら考えて、罪を償ってほしい。
そう思い、会社も辞めていろんな場所に働きかけた。
マスコミも利用した。
同様な事件は、もうおきてほしくない。
そういう思いだった。
しかし、初め保田に同情的だったマスコミが
ある日、保田に牙を向け始めた。
“子供を盾にした。”
根も葉もないうわさが夫をも蝕み始めた。
そして、2人で心中。
それで全て終わるはずだった。
しかし、保田だけが助かってしまった。
- 82 名前:G3HP 投稿日:2001年05月09日(水)07時11分13秒
- 47.喧嘩
「ちょっと、あなたいいかげんにしなさいよ。」
矢口が叫んでいる。
ツアーも3日目を迎えたにもかかわらず、
誰一人として大した成果があがっていなかった。
全員がこのツアーに失望しかけたころだった。
「なによ。そっちこそいいかげんにしてほしいわ。」
そういって飯田は矢口に掴みかかった。
矢口と飯田は初日から仲が悪かった。
2日目には矢口は飯田とのテントを出て、安倍のテントに潜りこんでいた。
2人が取っ組み合いになっているのを止めるでもなく
ただ呆然と見ている。
(どうしよう。止めなきゃ。)
ひとり気を揉む梨華ではあるが、オロオロするばかりで何もできない。
やがて飯田がその長身に物を言わせ矢口を押し倒した。
その弾みで矢口の帽子が脱げた。
「あたし知ってるんだから。帽子で隠してたってわかるのよ。」
矢口はそそくさと帽子を拾い目深にかぶった。
「あたし見たんだから。おでこのキズ。」
「こ これは自分でぶつけただけ。。」
「うそよ。知ってるもん。夜中言ってたもん。
『裕ちゃん。ごめん。』って。」
- 83 名前:G3HP 投稿日:2001年05月09日(水)07時11分51秒
- 48.フラッシュバック
「うちがこんなに矢口のことを愛しているのが、何でわからへんの?」
中澤裕子の指が矢口の首に食い込んでいく。
矢口は薄れていく意識の中で中澤を見つめた。
(――ごめんね。裕ちゃん。あたしが悪いんだ。)
- 84 名前:G3HP 投稿日:2001年05月09日(水)07時12分38秒
- 49.ソウルメイト
「うるさい。あんたなんかに何がわかるって言うの!
この宗教オタクが!裕ちゃんはやさしいんだ!!」
矢口が飯田に馬乗りになって、首を絞める。
「やめなさい。」
いつのまにかつんくが現れていた。
「あなた達は何をしているんですか?あなた達はここに“前世”を
見つけに来たのではないのですか?」
「もう“前世”なんかいい。裕ちゃんとの前世は自分で見つける。
こんな連中ともう一緒に居たくない。
あ〜やだやだ。あたしなんでこんなところに居るんだろう。
早く東京に帰って、まともな前世をみたい。
あたし今すぐ帰ります。」
「それは困る。」
つんくは崖の上で、ハンドマイクを握っていた。
「あなた方9人は1人でも欠ければ、それだけ前世への覚醒が困難になるのです。」
「どういう意味ですか?」と梨華。
「つまりあなた達9人は、“ソウルメイト”だからです。
非常に強い絆と、使命で結ばれた“ソウルメイト”なのです!」
その場に居た全員の動きが静止してしまった。
- 85 名前:G3HP 更新しました。 投稿日:2001年05月09日(水)07時14分47秒
- 一応毎日更新するつもりです。
夜書いて朝チェックしてから更新って感じでいきます。
- 86 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月10日(木)04時22分14秒
- 毎日レスは出来ないですが、ずっと、読んでますのでがんばってください。
*ドライアイなのに、すごいですね。
- 87 名前:G3HP 投稿日:2001年05月10日(木)07時29分25秒
- 50.我々の前世
「でも、私が知りたいのは、ごっちんと私の前世の続きだから。
それ以外の前世はどうでもいいんです。」
と梨華。
「そうそう。そうよ。あたしのソウルメイトは裕ちゃんだけ。他にはいらない。」
「いいですか。」
「あたしは裕ちゃんと前世で。。」
「いいですか。私が話しているのは、まさにそれです。」
「あなた方がかつて見たという前世は 断片にしか過ぎないのです。」
「どういう意味れすか?」
「あなたがたの前世は、私が話した前世の一部です。」
「勝手に決め付けないでよ。」
「そもそも、数ある前世の中でなぜ特定の前世を見るのか
考えたことがありますか?
何かそこに意味があるとは思いませんか?」
「そしてあなたがたは、たまたま2001年という年に
たまたま私というセラピストの門を叩いた。
――これは単なる偶然ですか?」
つんくは皆の所に降りてきて、一人一人の顔を見て回った。
- 88 名前:G3HP 投稿日:2001年05月10日(木)07時31分12秒
- 51. 都合の良い解釈
「断っておくが、私は神を信じない。基本的には無心論者だ。
しかし、運命は信じる。その運命という見えない大きな力が
皆さんをここに一堂に集めた。私にはそうとしか思えないのですよ。」
「なんのために?」
「それはわからない。皆さんが感じることだ。」
「でも、私はジャンヌダルクだから。」
飯田がつんくに攻め寄る。
「あなたがどんな前世を見ようと、それを私は尊重する。
否定もしない。」
「しかし、人間は弱い。いいかげんなもんだ。
あなたはその前世をいつから見ましたか?」
「小学生のころ。。」
「長い間夢を見つづけていると、その夢をいつか人は自分のほうに引き寄せて
しまうんですよ。」
梨華は夢を思い出していた。
一人で逃げていく夢。
そして、後藤と二人で手を取り合って逃げていく夢。
(あれは。。私が作った都合のいい夢?)
- 89 名前:G3HP 投稿日:2001年05月10日(木)07時32分08秒
「すみません。どういう意味ですか?もっとわかりやすく。。」
「ハッキリ言えば、都合の良いように解釈をするということです。」
飯田はムッとしてつんくをにらむ。
「あなたは単に戦闘員の1人として戦っていただけかもしれない。
それがいつのまにか、先頭に立つ英雄だと思ってしまう。」
「そ そんなことはない。」
飯田は激しくつんくに詰め寄った。
「たとえばの話ですよ。」
「たとえばでも言ってほしくない。
私はこの前世があったから生きて…」
「いいんです。
あなたが正しくて、私が間違っているのかもしれない。
でも、にごりのない目で前世を見てほしい。」
「見たくないものをちゃんと見るべきだと思いませんか?
前世を、今の自分の利益のためでなく ちゃんと見ることができますか?」
梨華は後藤を見た。後藤も梨華を見ている。
表情を変えない後藤の目が、梨華には耐えがたかった。
「自分の自尊心を満足させるためでなく、
誰かとの弱まった絆を強くするためでもなく。」
つんくが梨華の顔を覗き込む。
「前世というものは、そんな安易な道具ではない。
いいですか?
――前世は道具ではないのです。」
「何の為にここに来たのか 答えてください。なんのために。」
「ほ 本当の前世が知りたいから。」と飯田。
「本当の前世に“覚醒”したいんでしょう?」
「ここで見えるものをちゃんと見るんです。
そのために、あなたたちはこの島にいるんです。」
「どうすればいいんですか?」
「吉澤!今夜の予定。」
「えー。みなさん。今晩はですね。最後の夜ということなので
それぞれテントを出ていただいて、それぞれ一人で寝ていただきます。
――ということですね。」
- 90 名前:G3HP 投稿日:2001年05月10日(木)07時32分51秒
- 52.内側の変化
「私もう つんくさんのいうことなんか聞かない。」
梨華と後藤は浜辺を並んで歩いていた。
「だから明日船がくるまで二人で勝手してよ。
二人の前世のことは、もう他人に頼らないから。
――だからもう怒らないでよ。
怒ってるんでしょ?ごっちん。」
「怒ってないよ。」
「うそ。怒ってるよ。」
後藤は立ち止まり、梨華を振り返る。
「――怒ってないって。」
「怒ってるじゃない。めちゃくちゃ怒ってる。」
「あたしはつんくの事なんかどうでもいいんだよ。そんなこと。」
「どうでもいいなら。。」
「私が怖いのは外側のことじゃないの。」
「外側?」
「内側が変わり始めてる。内側が変わってきてるから
ここにきたんじゃないの?」
「同じものを見れなくなったらどうなるんだろうって、ずっと考えてた。
ここに来てから。」
「そんなこと絶対にない!」
「私じゃなくて、変わり始めてるのはごっちんの方じゃない。
私は信じてるから。
私は、ごっちんとの前世をもっと知りたかっただけだよ。
それがそんなに悪いことなの?
どうして、そういう風に人を責めるの?」
- 91 名前:G3HP 投稿日:2001年05月10日(木)07時33分37秒
- 53.涙
その夜、梨華は一人でテントの中にいた。
「あたし、一人で寝るわー。」
夕食後、後藤は梨華にそう告げた。
「どこで寝るのよ。あぶないわよ。」
何とか後藤を引き止めたかった。
今、一人になると永遠に後藤を失う感じがした。
「あたし強いから。」
「まって、私を今置いていかないで!
いや!いやよ!」
梨華は止めることができなかったのだ。
梨華の頬を涙が流れた。
後藤の“手”が、永遠に消えてしまった気がした。
- 92 名前:G3HP 投稿日:2001年05月10日(木)07時34分26秒
- 54.ふたりの前世を
テントが風に吹かれて、はためいている。
梨華はそれを何時間も眺めていた。
何も考えられなかった。
何かを考えると自分が壊れてしまいそうだった。
(いかなくちゃ。)
漸く決心がつき、梨華がテントを出たときは
すでに深夜もかなり過ぎていた。
梨華はふらつきながらも なんとか高台の洋館に辿り着いた。
(もう一度、二人の前世を見なくては。)
洋館は静寂と闇に包まれていた。
梨華は懐中電灯の光を頼りに地下室に向かった。
瓦礫が足元を不安定にする。
階段を降りた先の扉を開くと、そこにはロウソクを持ったつんくがたっていた。
「やあ。やはり来ましたね。待ってました。さあこちらに。」
梨華はつんくを見たとたん、涙が溢れた。
「どうしたのですか?」
「私、もうわからなくなってしまって。」
- 93 名前:G3HP 投稿日:2001年05月10日(木)07時37分54秒
- >>86 さん読んでいただいてありがとうございます。
この小説書くようになってから、会社で画面見る時間が減ったので
なんとかドライアイは大丈夫ですけど、仕事のほうが…
- 94 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月10日(木)21時49分17秒
- 二人の間に危機が・・・・
次が待ちどおしい!
- 95 名前:G3HP 投稿日:2001年05月11日(金)12時22分48秒
- 55.平凡
梨華は落胆していた。
どうしても催眠状態に移行しなかった。
「もういいでしょう。これ以上やっても無駄ですよ。」
つんくは事も無げにそう言いきった。
「じゃあ。違う話でもしましょうか。」
「私は前世を…」
「あなたはいったいどういう人間ですか?
石川 梨華とはどういう人間ですか?」
「平凡な、ごく普通の人間です。」
「平凡って何ですか?」
「平凡は平凡です。特に特徴のない、個性のない…」
「じゃあ 個性とは何ですか?」
「個性?
――例えば、ごっちんは個性があります。
ごっちんの言葉も態度も全然予想がつかない。
集団の中でも ときどきはじき出されるほど、嫌われるほど輝いています。
でも、私はそうじゃない。嫌われるの怖くて、誰にでもいい顔して…
でも、ごっちんは――」
「後藤さんじゃないでしょ。あなたの話をしているんですよ。」
「いえ。ですから、自分のことを…」
「では、質問を変えます。
あなたにとって後藤さんは魅力のある人物です。
では、後藤さんにとってあなたの魅力とは、いったいなんですか?」
梨華は戸惑った。いままでに考えたことが無いわけではなかった。
でも、答えはでなかった。
「どうしました?」
「――わかりません。全く。どうしてごっちんが私なんかと付き合ってくれてたのか…」
- 96 名前:G3HP 投稿日:2001年05月11日(金)12時23分54秒
「高校を卒業するまで私とごっちんは、完全に仲間はずれでした。
――でも、それがよかった。
周りが敵だから、逆に二人の絆が深くなれたというか。
世界を敵にまわしても、狭い世界だけど少しも怖くなかった。
高校を卒業して、一緒に暮らし初めて…
最初のころはすごく楽しかったんだけど、だんだん…」
「飽きてきましたか?」
「いえ。私はどんどん ごっちんを好きになっていった。
変な意味じゃないんですよ。変な。
どんどん好きになると、失うのが怖くなるでしょ。
こんなつまらない私を いつかごっちんが嫌いになってしまうんじゃないかって。
それで、かえって離れたくなってしまうんです。
そうやって ごっちんに囚われてしまう自分が怖いというか。
それが私の詰まらないというか、平凡なところなんです。」
- 97 名前:G3HP 投稿日:2001年05月11日(金)12時29分24秒
- 56.優越感
「あなたの育った家族はどんな家族ですか?」
「――別に取り立てて言うことの無い…」
「取り立てて言うことの無い家庭とは、どんな家庭ですか?」
「だから、会社員の父と専業主婦の母。高校生の妹。まあ割りと仲のいいし
喧嘩はそんなに。」
「喧嘩はしたことない?」
「全然しないわけではないですけど。」
「喧嘩の最中に、相手が死ねばいいと思ったことはありませんか?」
「まさか。」
「まったく?」
「はい。」
「でも、あなた以外の家族は、みんなそう思っていますよ。」
「そんなこと無いです!」
「なぜそう言い切れるのですか?
どんなに仲のいい夫婦、親兄弟、恋人でも心の奥底には憎悪があるもんです。
あなたにもあるのですよ。
それを感知できない、認めない。
それはあなた自分自身が嘘をついているからです。」
- 98 名前:G3HP 投稿日:2001年05月11日(金)12時31分05秒
- 「あなたが言うとおり、家族全員が憎しみを感じたことがないというなら
それはかなりおかしな家庭ですよ。みなが理想の家族を演じている。」
「憎しみを感じないということが、そんなに悪いことなんですか?
憎悪なんて無いに越したことないじゃないですか。
それがどうしておかしな家庭になるんですか?」
「あなたは今、自分が育った家庭がおかしいといわれたことについて
ひどく動揺し、憤慨していますね。」
「当然ですよ。」
「問題の無い平凡な家庭といわれれば満足ですか?
平凡イコール幸せな家庭ですか?」
「そうかもしれません。」
「あなたは先ほど平凡な自分を卑下する言い方をしましたね。
平凡な自分に比べて、非凡な後藤さんはすばらしいと。
でも本当は平凡こそ幸せだ。
つまり、あなたは卑下する振りして自分が上だと思っているんじゃないですか?」
「そんなことありません!
だって私ここに来てからずっとコンプレックスを感じているんです。」
- 99 名前:G3HP 投稿日:2001年05月11日(金)12時32分08秒
- 「何に対して?」
「なんていうか、ここに来ている人はみんな私とは違う。
詳しい事情は知らないけど、傷みたいなものを持っている。
だから、前世が見えるのかもしれない。
でも、私には見えない。」
「つまりこういうことでしょう。
あなたには前世は必要ないんじゃないんですか?
たしかにあの人たちにとっては、前世が無いと生きていけない。
ご苦労なことですよ。
――あなた良かったじゃないですか。」
「ちょっと待ってください。私だって必要だからこんなに…」
「いいですか?あなたにとってコンプレックスは優越感と一緒ですよ。
あなたはこの島で、観客になっているじゃないですか。
あなたにとってもう前世は必要ないんですよ。
後藤さんとの前世も無かったんですよ。」
- 100 名前:G3HP 更新しました。 投稿日:2001年05月11日(金)12時35分10秒
- ついに100まできてしまった。
うれしいやら悲しいやら。。。
>>94 さんこれからもっとわけわからんくなりますがよろしく。
- 101 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月11日(金)21時28分39秒
- 確かに、禅問答になっている。
さて、石川さんは入信するのかな?
- 102 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)01時33分41秒
- 57.失望
「お姉ちゃん。どうだった?一人で寝て。」
吉澤は、朝の浜辺でちんまりと座っている保田に声をかけた。
保田は振り返り、首を振った。
「ははは。そうでしょう。まあそんなもんかな。
あのおっさん かましばっかりだな。」
「そんなひとじゃない!」
吉澤は驚いた。
保田の大声を久しぶりに聞いた。
(あ〜あ、いっちゃったな〜これは。
はははは。もういい。なんなんだよ。
こんなところにお姉ちゃん連れてくんじゃなかった。)
吉澤は辟易していた。
(なにがソウルメイトだっつーの。それになんで
『あなたたち9人』なんだ?あたしを一緒にするなっつーの。
まともなのは、あたしだけだよ。
―― それとまあ梨華ちゃんかな。)
吉澤は保田を置いて朝食を作りにいった。
- 103 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)01時34分47秒
- 58.覚醒
「吉澤さ〜ん。つんくさんどこにいるれすか?」
辻が吉澤のところへ、トコトコやってきた。
「さあ。まだ洋館で寝てるんじゃないの。
どうかしたの?ののちゃん。」
「あい。あたし見たんれす。」
「えっ?なにを?」
「鎧を着ていたんれす。」
「はあ??」
「前世れす。前世で戦士だったれす。」
「うあぁ〜あ。あんたもか〜。」
吉澤は手にもっていた包丁をまな板にたたきつけた。
「ゆめ?」
保田がいつのまにかそばにいた。
「あい。すごくはっきりしたゆめれした。
金属の。。銀色の重い鎧きてたれす。」
吉澤は笑いながら辻の頭をなでる。
「ののちゃん。そういうおかしな話は、あたしにしないでね。
ほら、早くつんくさんとこ行ってきな。」
- 104 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)01時35分50秒
- 59.10人
映画館に全員が集まっていた。
辻 希美はつんくの言葉ですでに深いトランス状態に入っており、
傍らで皆が辻を見守っていた。辻の言葉を誰もが待っていた。
ただ、後藤と加護は少し離れたところで興味なさげにすわっている。
「まず足元を見てください。
――何か見えますか?」
「――靴をはいています。でも、よく見えないれす。
なんか真っ暗れす。」
「夜ですね。
なにを着ているかわかりますか?」
辻は目を瞑りながら、ゆっくりとおなかのところに手を持っていった。
「光っていて、硬い金属のような。とっても重いれす。」
「それはなんだかわかりますか?」
「戦うときに着る――」
「鎧ですね。」
「あい。重くてあるくとカシャンカシャンと音がするれす。」
「周りを見てください。何か見えますか?」
「誰かいます。」
「それは誰ですか?」
「わかりません。」
「では、そこには何人いますか?」
「8。。。9。。。 9人れす。」
「それは知っている人ですか?」
(へっ。絶対こいつらだ。)
吉澤はビデオで全員の顔を写す。
「――わからないれす。
顔は 見えないれす。」
「では、仲間は全部で9人ですね。」
「――――」
「ゆっくり答えていいんですよ。」
「ちがうれす。なんか。。
誰かを待っているような。。」
「それでは、仲間は全部で10人ですね。」
「そうれす。」
- 105 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)01時36分44秒
- 60.表情
辻はつんくに手をつないでもらい上機嫌で先頭を歩いている。
「つんくさん。わかりました。10人目はお母さんれす。
お母さんが生まれ変わって戻ってくるれす。」
「そうですか。お母さんですか。うれしいですか?辻さん。」
「あい。とってもうれしいれす。」
辻はそういうと海岸へ走っていった。
「ごっちん。昨日どこで寝てたの?」
梨華の問いを無視して、そのまま後藤は歩いていってしまった。
梨華はこのツアーに参加したことを悔やんだ。
(どんどん ごっちんが離れていってしまう。)
島に来てから、日に日に後藤から表情が消えていくのを梨華は感じていた。
もともと後藤は表情が豊かではなかったが、
今では、たまに見せる瞳の奥に宿る悲しみだけが残っていた。
矢口が梨華に近づいてきた。
「ねえ、どう思う?辻さんの。」
「さあ。」
「なんかさあ。彼女には悪いけど、ひとたまりも無いって感じだよね。
つんくさんに いいようにされちゃってるって感じだよね。
――でも、なんで10人なんだろう?」
- 106 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)01時38分24秒
- 61.おなか
安倍なつみは一人映画館に残っていた。
“前世”
その言葉に安倍は甘く、魅惑的な響きを感じていた。
(10人目の戦士か。)
安倍は自分のお腹に手をあてた。
「あなたはだあれ?あなたが10人目なの?」
ドン。ドン。ドン。
安倍は自分のお腹殴り続けた。
ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。
――やがて、意識が遠のいていった。
- 107 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)01時39分12秒
- 62.詐欺師
太陽の色はすでに夕暮れに色と変わっていた。
「さあ、もう戻ってテントを設営しましょう。」
つんくが立ち上がって皆に声をかける。
その日の昼には船がやって来るはずだった。
テントをたたみ、桟橋の近くに腰掛けてからすでに5時間経っていた。
「ちょっと!どういうことよ。なんで船こないのよ!」
矢口がつんくを攻め立てる。
「仕方がないでしょう。今日はもう船こないでしょうね。」
と他人事のように言う。
「どういうつもりよ!何でこうなるのよ。今日帰れないとあたし困るのよ。」
「何をそんなに脅えているんですか?」
「脅えているんじゃない、困ってるのよ。」
「そうですよ。私も困ります。連絡取れないのですか?」
「そういわれても。まあ仕方ないんじゃないんですか。」
「こんないい加減なことってない。責任とってよ。」
つんくはポケットから紙を取り出し、矢口の顔の前に突きつける。
「出発前に皆さんにお配りしたこの紙、持ってますか?
吉澤!読んで。」
吉澤はつんくからその紙を受け取り読み始めた。
「なお、天候などの諸事情により船がこず、帰還が遅れる場合がございます。」
「まあ、そういうことですね。」
そういうと荷物の方へと歩いていった。
「この詐欺師!訴えてやる!こうなったら泳いででも帰ってやる。」
矢口が激怒していると、吉澤はビデオで矢口を撮り始めた。
「さすが矢口さん。カッケー。」
「死んだら化けてやる。この詐欺師!!」
「つ つ つんくさんは…」
それまでだまっていた安倍が、急に矢口の前に立ちはだかった。
「つんくさんは、詐欺師なんかじゃない!!」
安倍が怒鳴る。
「あたし。。あたし。。
か 覚醒しました!」
- 108 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)01時39分54秒
- 63.延命
安倍は桟橋の先端に座り、ずっと海を見つめていた。
船はなかなか来なかった。
「今日帰るのか。」
お腹に手をあてる。
結局まだ決められなかった。
(あなたの命も、もう少し延びたようね。)
涙が頬をつたっていった。
――「ちょっと!どういうことよ。なんで船こないのよ!
矢口が叫んでいた。
(この島に来ている人たちは何を求めてここに来たんだろう?
あたしはどうしてここにいるんだろう?)
――「死んだら化けてやる。この詐欺師!!」
安倍は決心して立ち上がった。
(言わなくっちゃ。)
「―― つんくさんは詐欺師なんかじゃない!!」
- 109 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)01時40分35秒
- 64.英雄
「さっき映画館で眠ってしまって、
夢を…」
「何を見ましたか?」
「あたし、すごくきれいな、きらびやかな甲冑をつけて
すごく皆から愛されて、尊敬されて。
―― 高いところから手を振っていました。」
「一人でしたか?」
安部は全員の顔をゆっくりと見つめた。
「ここにいるみんながいたと思います。」
「勝手に入れるな。」と矢口。
「あたしは一人ぼっちじゃなかったんです。」
「何人?何人いたれすか?」
「10人。10人いました。
10人目は此処にいます。」
そういって、安倍はおなかを見つめた。
- 110 名前:G3HP 更新しました。 投稿日:2001年05月12日(土)01時44分58秒
- 会社休んでしまったので、その分書きだめましたので更新です。
>>101 さん 元ネタがどちらかというと説教じみてるんで、
どうもそうなっちゃうんですよね。
あ〜あ、ライトでスケベな話が好きなのに。
- 111 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月12日(土)02時23分50秒
- なんやら、ハードな展開になってきましたね。
>あ〜あ、ライトでスケベな話が好きなのに。
書いたら、ぜひそっちも読ませてね。(w
- 112 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)16時24分57秒
- 65.キス
結局、梨華は船を待っている間も、夕食のときも
後藤に話しかけることができなかった。
(さみしいよ。ごっちん。)
梨華は一人テントに戻り膝を抱えて、
右手首の小さな十字架を見つめていた。
突然テントの入り口が揺れる。
「ごっちん?」
「梨華ちゃん。よっすぃーだよ。」
テントの入り口を開けて現れたのは吉澤だった。
「梨華ちゃん。ちょっと良い?」
「なに?」
「いいから、ちょっとおいでよ。」
梨華はしぶしぶテントを出た。
吉澤は水際近くに座って海を見つめていた。
梨華は吉澤の横にいき、吉澤を見下ろした。
「なに?」
「星見た?」
「ホシ?」
「そう星だよ。」
「見てないんだな〜。せっかく この島星きれいなのに
ここの連中 全然興味示さないんだもんな。」
梨華は夜空を見上げた。
「あの〜。ほとんど星見えてないんですけど〜。」
「えっ?まあ今日は天気悪いんけどさあ。
ねえ。座ってよ。」
「いや〜もう寝ます。」
「最後の夜なんだし、梨華ちゃん少し元気ないから。
気晴らししないと。
ねえ。ほら、ちょっと話しようよ。」
結局、梨華は吉澤の横に座った。
- 113 名前:G3HP 更新しました。 投稿日:2001年05月12日(土)16時25分39秒
- 「後藤さんのことでしょ?」
梨華は声が出なかった。
「あたしも梨華ちゃんとならソウルメイトでもいいな。
ほかの連中とは一緒にされたくないけど。。
あの人らちょっとね〜。逝っちゃってるというか。。」
「―― そういう話なら 私。」
梨華は立ち上がり、テントに戻ろうとした。
「ちょっ ちょっとまって。」
吉澤は立ち上がり、梨華の腕をとった。
ハッとする梨華。
吉澤はすぐに気づき、手を離した。
「ごめん。梨華ちゃんって こういう接触。好きじゃないんだ。」
吉澤は梨華の目を真直ぐ見る。
「でも、自分が変わらなければ何も変わらないんだよ。」
吉澤は突然梨華を抱き寄せ、くちびるを重ねた。
(私は変わりたくなんかなかったんだ。でも…)
梨華は吉澤の唇から何も感じていなかった。
ただ、悲しみが心から溢れそうだった。
――梨華の視界の片隅に人影が映った。
(ごっちん…)
後藤がテントの後ろに立っていた。
梨華と目が合った。
(なんでいつも私は)
後藤は後ろの森へと消えていった。
- 114 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)16時26分27秒
- 66.祈祷師
桟橋に3人の人影が見えた。
辻と安倍と飯田だった。
辻は梨華の姿を見つけると走ってきて抱きついた。
「おはよう。ののちゃん。」
「おはよう。梨華ちゃん。」
「あれ?あいぼんはいないの?」
「あい。昨日もあいぼんテントの外で寝ました。」
辻は覚醒してから変わった。
いつも加護と一緒だった。
いつも加護の後ろにいた。
でも、覚醒してからほとんど一人で行動するようになった。
梨華は、加護が心配でならなかった。
「今日、絶対船来るれすよ。」
辻は少し興奮していた。
「えっ?どうしてわかるの?」
梨華が尋ねると、自身満々の表情で桟橋の先端にしゃがみ込んでいる
飯田を指差した。
「飯田さん。船が来るようにお祈りしてるんれす。
だから絶対船来るんれす。」
梨華は飯田を見た。
飯田は桟橋の先端で何かを燃していた。
- 115 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)16時27分14秒
- 67.あかちゃん
「あの。こんなところに来て大丈夫なんですか?赤ちゃん。」
梨華は安倍のお腹を見て尋ねた。
「なっち。産むつもりなかったから。」
「そうなんですか。」
「でも、いけないことだよね。」
「だんなさん心配してますね。」
「父親はね…いないんだ。
でも、よかった。危うくソウルメイト一人殺すところだったべ。」
「飢え死にするのと殴り殺されるのと、どっちが楽だと思う?」
矢口がポツリとつぶやいた。
「殺されるって…」
「裕ちゃんのことだべさ。馬鹿だよ。」
矢口は深く帽子をかぶりなおした。
- 116 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)16時27分53秒
- 68.食料
いきなり梨華は誰かに後ろから抱きしめられた。
驚いて振り向くと吉澤がいた。
「おはよう。梨華。昨日はよく眠られたかい?」
やけになれなれしい態度に梨華は呆れていた。
「今日船来るそうですよ。ほら、飯田さんがお祈りしてるから。」
梨華がいうと吉澤は失笑した。
「どいつもこいつもあいかわずなこって。
でも、来てもらわないと困るよ。食料も水も、もうほとんどないし。」
「えっ?じゃあ今日来なかったら…」
「大丈夫。大丈夫だって梨華ちゃん。絶対来る。絶対来るって。
ああやってお祈りもしてるし。」
吉澤の顔は引きつっていた。
- 117 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)16時28分41秒
- 69.武士
「やあ。みんなおはよ〜。」
聞きなれないその声に振り向くと、そこに保田がいた。
ずっとかぶっていたパーカーのフードもおろされて、
晴れやかな顔をしている。
「私覚醒したの。」
吉澤が失笑している。
「そりゃあ おめでとう!お姉ちゃん。」
完全に馬鹿にしたような吉澤の言い方も一向に気にならない様で
その場にいた人と握手を交わしている。
「それで、何を見たんですか?」
「私戦士でした。正義のために戦っていました。」
保田はうれしそうに話す。
「正義って?」
「――正義は、、正義です。」
吉澤がいきなり拍手をする。
「正義ですか!カッケ〜。」
「どんなかっこうしてたんれすか?」
「よろいを着ていました。それに腰に長い刀を持ってました。」
「かたなれすか?」
「そう。それから立派な兜もかぶってました。」
「かぶと?」
安倍と辻は顔を見合わせた。
「それって戦国武士みたいな?」
「そう。」
「あの〜私たちが見たのは日本じゃなくて西洋の…」
そこまで聞くと、保田はフードをかぶってしゃがみ込んでしまった。
「はははは。短い春でした〜。」
吉澤が乾いた口調で言う。
- 118 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)16時29分38秒
- 70.同類
梨華は吉澤を引っ張り寄せて、注意をしようとした時だった。
「われわれは、ここに遊びに来たわけではな〜い!!」
突然、の声に全員が振り向いた。
後藤がいた。
後藤は大きな岩の上に仁王立ちして、ハンドマイクで叫んでいた。
「戦国武士。
んなあほな!
中世の騎士。
ばっかじゃないの〜。」
後藤は楽しそうに笑っていた。
「こら!あんた!ちょっと何様のつもりなのよ!」
吉澤が激怒して叫ぶ。
「こっちはこっちで盛り上がってんだから、ほっといてあげなさいよ。
大体あんたも同類でしょうが!」
「あんたは?あんたも同類でしょ」
「はあ?あたしのどこが同類なのよ!あたしは前世なんか信じてないし、
あのおっさんの客でもない。」
「でも、同じ匂いがするよ。」
「なっ なんでよ!なんでこいつらとあたしが同類なの。
あ〜!もうやだ、なんなんだよ〜。
うぁぁあああああ。」
吉澤は狂ったように叫び続けた。
- 119 名前:G3HP 更新しました。 投稿日:2001年05月12日(土)16時30分44秒
- 怒涛の更新です。
今日はもう一回ぐらい更新する予定。
- 120 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月12日(土)19時56分25秒
- 後藤吉澤は現実主義者のように見えていたのに、この展開は……
- 121 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)22時00分59秒
- 71.祈り
桟橋の先端で飯田は護摩を焚き続けていた。
(船が来るように。)
そう祈っていた。
(―― 確かこれは3番目の…)
3番目の新興宗教に入信したときに覚えたお祈りだった。
(信じるんだ。信じれば必ず願いは叶う。)
飯田は、信じていなかった。
信じていないから、不安だった。
不安だから一心不乱に祈っていた。
(これに賭けてみよう。これが最後だから。)
船は、この日も来なかった。
- 122 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)22時02分07秒
- 72.東京
「つんくさん。今日は帰れるって言ったじゃないですか。」
「なんで船来ないんですか?」
「今日帰れないと私困るんです。」
「まってよ。それよりもう水ないんですよ。
このままじゃ皆死んじゃいますよ。マジで。」
つんくは黙ったままだった。
「つんくさん。ちょっとは責任感じないのですか?」
「責任?」
「そうですよ。何とかしてください。」
「そういわれても、連絡取れないからしょうがないですよ。
――あなたたちは、そんなにここから帰りたいのですか?」
「当たり前じゃないですか。」
「帰してくださいよ!」
矢口がつんくの腕を掴む。
つんくは、つかまれた腕を見つめた。
「あなたは、そんなに帰りたいのですか?そんなに東京がいいですか?」
「だから…」
「東京がそんなに住みやすかったですか?生きるのが苦しいから私のところへ、
この島に来たんじゃないのですか?
生きるのが苦しいから、東京から人生から逃げ出したんじゃないのですか?
あなたがたは、現世より前世を大事にする人間じゃないんですか?
今の人生だって数ある前世の一つに過ぎないんでしょう。
だったらいいじゃないですか。一つぐらい無人島で、飢え死にする人生があっても。」
- 123 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)22時03分15秒
- 73.撲殺
「飢え死にするのと殴り殺されるのと、どっちが楽かしら。」
矢口がつぶやくと、突然つんくに頬を打った。
1発、2発、3発、、
矢口はつんくを押し倒し、馬乗りになりつんくの首を絞めた。
「うちほど、矢口を思っているやつはおらんのやぞ。
矢口のためなんだぞ。」
矢口は混乱していた。
「うちがこんなに愛してるのが、なんでわからへんのや。」
つんくは、何とか矢口の手を首から外すことができた。
「こうやって裕ちゃんは、あなたを殴ったのですか?」
その一言で、矢口は自分を取り戻した。
「祐ちゃんは悪くないの。いつもあたしが悪いの。」
「――わたし帰ったら殺される。
でも…」
「でも?」
「私見たの。こいつらと、、こいつらと同じ夢を…」
矢口の顔は少しも晴れやかではなかった。
つんくは立ち上がり、矢口の肩を叩いて頷いた。
「さあ。水を探しに行きましょう。暗くなる前に。」
そういうと、つんくは洋館のほうへと歩いていった。
「ねえ。どんな夢だった。」
安倍に聞かれても、ただ矢口は俯いたままだった。
- 124 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)22時04分07秒
- 74.最後の
飯田は護摩の燃えカスを、海へ払い落とした。
(わかっていたのに。)
船は来なかった。
(もういいかげん終わりにしないと。)
飯田は思い出していた。
――「あたし見たんれす。」
「えっ?なにを?」
「鎧を着ていたんれす。」
うれしそうに笑っていた辻を。
「あたし。。あたし。。
か 覚醒しました!」
安倍の勇気を搾り出すような震えた声を。
「私覚醒したの。」
パーカーのフードをおろして、胸をはって現れた保田を。
「私見たの。こいつらと、、こいつらと同じ夢を…」
震える小さな体から、つぶやくように告白する矢口を。
飯田は立ち上がった。
「これが本当に、最後。」
- 125 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)22時05分16秒
- 75.告白
梨華は後藤を連れ出して、一緒に水を求めて森を探索していた。
「ねえ、ごっちん真剣に探してる?」
後藤はただ黙って、梨華の後ろからついてきているだけだった。
「絶対どこかに雨水が溜まっているはずなんだよね。」
梨華は先ほどから何度も後藤に話し掛けているが、返事はない。
「変わってないね。梨華。」
「えっ?なにが?」
突然、後藤が口を開いた。
「別に好きじゃないんでしょ?」
「なにが?」
「よっすぃー。」
「――うん。」
「なのに梨華は何もいえない。」
「高校のときとおんなじだね。
―― 梨華は誰のことも好きじゃない。
嫌いなものがないということはさ、好きなものもないんだよ。」
梨華は体の力が抜けてしまい、その場にしゃがんだ。
「なんかこの島に来てから、ひどいことばっかり。」
後藤はその梨華の横をすり抜けて、去っていこうとした。
「絶対に言わないでおこうと思ってたんだけど。」
梨華は後藤の背中に声をかけた。
「本当は、私一人で走ってた。夢の中で。
―― ごっちんはいなかった。
ねえ。私どうしたらいい?私たちどうなんの?」
「―― さあ。自分で考えなよ。」
後藤はそうつぶやいて去っていった。
「ごっちん…」
無表情な後藤の顔が、梨華には怖かった。
- 126 名前:G3HP 投稿日:2001年05月12日(土)22時07分26秒
- 76.森
梨華は、後藤を探してひとり彷徨っていた。
あの夢のときと同じように、ひとりで。
(ごっちんは、もう助けてくれないの?)
――「自分で考えなよ。」
後藤はそういった。
(どうしたらいいの?私ひとりじゃぁできないよ。)
『あたしは全部知ってたよ。』
後藤の表情が、そう語っていた様に梨華には思えた。
(早く帰りたい。)
梨華は森を見渡した。
夢とは違う森。
どちらも同じようにリアルだった。
どちらも夢の中のようでもある。
『その夢を人は自分のほうに引き寄せてしまうんですよ。』
答えなんか見つからなかった。
(答えなんか要らないのかもしれない。
真実なんかいらないのかもしれない。
ごっちんと一緒にいたかっただけなのに。)
森を梨華を、闇が覆い被さろうとしていた。
- 127 名前:G3HP 本日二回目の更新 投稿日:2001年05月12日(土)22時12分42秒
- 怒涛の更新2回目。
なんとか、日曜までに島での話を終わらせたい。
来週から出張で更新できなくなるので、きりのいいところまでいきたい。
>>120 さん いつもレスありがとうございます。
― みんな壊れていきます。作者も壊れそう。右目の痙攣が止まらない。
- 128 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月12日(土)23時20分00秒
- いっ!右目の痙攣って、作者さん大丈夫ですか?
更新楽しみですが、あんまし無理しないでくださいねー。
- 129 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月13日(日)02時07分27秒
- あんまり無理しないでください。のんびり待ってますから。
*アドバイス
ブルーベリージャムを、一日三回大さじ一杯なめるといいですよ。
自分も目が弱いけど、ずいぶん疲れの取れ方がちがいますよ。
- 130 名前:G3HP 投稿日:2001年05月13日(日)11時02分35秒
- 77.混乱
辻が走っていくのが見えた。
「ののちゃん!」
梨華が声をかける。
振り返った辻の顔は強張り、緊迫していた。
「どうしたの?何かあったの?」
「あっあ、、向こう。い 飯田さん。水が。倒れて。つんくさんを。
あいぼんが。」
「落ち着いて!ゆっくり説明して。」
「飯田さんが倒れていたれす。つんくさん呼んでくるれす。むこうであいぼんが
飯田さん見てるれす。水が、、覚醒が、、」
まだ、いまいちよく理解できないが、梨華は辻の指差した方向へ走った。
しばらくすると海岸に出た。
飯田と加護は、浜辺までせり出した崖のふもとにいた。
梨華は駆け寄った。
- 131 名前:G3HP 投稿日:2001年05月13日(日)11時04分36秒
- 78.水
加護は飯田の前に立ち、飯田を見下ろしていた。
まるで飯田を責めているかのようだった。
飯田は座ったまま加護から視線を外し俯いていた。
「あいぼん。飯田さんは?」
梨華が加護に声をかかる。
「あっ梨華ちゃん。
飯田さん大丈夫やで。後は本人次第や。」
そういって加護はまた飯田をみる。
飯田は俯いたまま動かなかった。
「それより、梨華ちゃん。水が見つかったんよ。」
加護が指差した先の岩肌が濡れているのがわかった。
「すごいじゃない。私たち助かったのね。」
「うちやない。飯田さんが見つけたんや。
これで何とかなるやろう。」
加護は岩肌から滴り落ちる水を手のひらに集めて飲んだ。
「梨華ちゃん。おいしいよ。」
梨華も水を集めて飲んだ。
「おいしい。」
半日ぶりの水が、喉に染み渡っていった。
- 132 名前:G3HP 投稿日:2001年05月13日(日)11時10分32秒
- 79.正義の革命
「いいださ〜ん。だいじょうぶれすか〜。」
辻がつんくと吉澤を連れて戻ってきた。
「ああ。大丈夫やで。それよりポリタンク持ってきたん?」
「あい。いっぱいもってきましたれす。」
吉澤の両手にタンクがあった。
つんくは飯田に駆け寄り肩を揺する。
「飯田さん大丈夫ですか?」
飯田はつんくに呼びかけられても、しばらくどこかと交信した様な
状態のままだったが、ゆっくり顔をあげ、加護を見つめた。
それから、飯田は一度ゆっくり瞬きをして、つんくの方を見た。
「私、か・く・せ・い・しました。」
飯田はゆっくりではあるが強い口調でいった。
「そうですか。」
「私、戦士でした。村人を引き連れて戦ってました。
革命です。正義の革命のために集まった仲間と一緒に
戦っていました。」
飯田は瞬きもせずにつんくに前世の夢を話した。
加護は、その場から静かに離れていった。
- 133 名前:G3HP 投稿日:2001年05月13日(日)11時11分34秒
- 80.音
夜中。梨華は起き上がりテントを出た。
後藤を探しに森の中に入っていった。
夜中の森は静かで、風の音と遠くに聞こえる波の音しか聞こえなかった。
ザック、ザックと枯葉や枝を踏みしめて歩く。
(ごっちんに会ってどうしようとしているんだろう?
何を話そうとしているんだろう?)
自分が何をしているのかさえ梨華はわからなかった。
ザック、ザック。
梨華は、自分の足音に混じって何かが聞こえるのがわかった。
泣き声だった。
泣き声の方向に梨華は歩いていく。
森が少し開けた場所の真ん中に加護がいた。
- 134 名前:G3HP 投稿日:2001年05月13日(日)11時13分07秒
- 81.Reborn
「あいぼん。」
加護は涙を拭いて、梨華に笑って見せた。
「あいぼん。無理しなくてもいいんだよ。」
加護は首を横に振る。
「テントに戻ってもいいんだよ。」
やはり、加護は首を振った。
「じゃあ眠るまでここにいるよ。」
梨華は加護の隣に腰掛けた。
「ねえ。どうしてあいぼんたちはここに来たの?
――言いたくなかったら別にいいんだけど。」
加護は膝の間に顔を埋めたままだった。
「うち。おかあはんを産むんねん。」
「えっ?」
「おかあはん。生まれ変わって、うちらの子供になる言うたんねん。
おかあはんの最後の言葉だったんや。
――でも、うちが産むんや。
ののなんかに産ませえへんねん。」
「どうして?」
「ののすぐ“チュー”するねん。おかあはん産んだら
毎日“チュー”するつもりやねん。
大きくなっても毎日“チュー”されるおかあはんは可哀想や。」
「あいぼんは“チュー”しないの?」
「うちは“キス”や。外人さんがするフレンチキスや。
ののみたいな“チュー”はせえへん。
そやから、うちがおかあはん産むんや。」
梨華は少し可笑しかった。加護の子供っぽいその理屈が微笑ましかった。
- 135 名前:G3HP 投稿日:2001年05月13日(日)11時14分32秒
- 82.慟哭
「――うそやねん。」
「えっ?なにが?」
「うちら覚えてへんかったんや。おかあはんの最後の言葉。」
加護はまた泣き始めた。
「でも、お母さん亡くなれたのって、うんと小さいころだったんでしょ。」
「うち。ガキは嫌いや!
――なんでおぼえてへんかったんや。
なんで忘れてしもうたんや。」
「仕方ないよ。」
「そんなんおかしいやろ!
いくらガキだったからって、
大好きな。大好きなおかあはんの最後の、、
“最後”の言葉だったんよ!
なんで覚えてへんかったんや。
ねえ。なんでや?」
森の木々が脈動していた。
加護の心臓から絞り出した声に共鳴するかのように。
「――うちが、おかあはんのソウルメイトなんや!!」
加護は叫び、泣き崩れた。
- 136 名前:G3HP 更新しました。 投稿日:2001年05月13日(日)11時20分40秒
- しまった。あいぼん泣かせてしまった。
いつもはじめに考えた設定より皆悲惨になってしまう。
圭ちゃんなんかエリートサラリーマンがリストラされてって設定が
吉澤と姉妹なのに苗字が、、じゃあ結婚してて、、としてるうちに
あんなんなってしまった。
>>128 129 さん ご心配&アドバイスありがとうございました。
早速ジャム買ってきました。
もうちょいで、無人島篇終わるんで、何とかそこまで…
- 137 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月13日(日)13時24分02秒
- 確かに悲惨だ。
でも読み続けてしまう自分がいる。
痛い話は嫌いなのに……
そうだ、全部作者さんのせいにしてしまおう(w
次も楽しみにしています。
- 138 名前:G3HP 投稿日:2001年05月13日(日)23時03分18秒
- 83.船
「石川さん。船が来たよ。」
矢口が梨華のテントに現れた。
結局、梨華は後藤を見つけられなかった。
テントに戻ったときには、空が白んでいた。
梨華は急いでテントを出る。
吉澤が、すでにテントの撤収をしていた。
「おはよう。梨華ちゃん。船来たよ。もうみんな桟橋の所に行ってるから。」
梨華は“みんな”という言葉に反応した。
(ごっちんもいるかもしれない。)
そう思うと、居ても立ってもいられなくなり駆け出した。
――後藤は居なかった。
船は桟橋に着岸しており、つんくが荷物を運んでいた。
梨華は肩を落とし、しかし、どこかで“やはり”と思った。
- 139 名前:G3HP 投稿日:2001年05月13日(日)23時04分10秒
- 84.チュー
「われわれは、ここに遊び来たわけではな〜い。」
突然、背後から声がした。
(ごっちん?)
梨華が振り返った先に、ハンドマイクを持って岩の上に立つ加護がいた。
「えへへへ。梨華ちゃんの顔おもしろいで〜。」
加護は昨日とは裏腹に,ご機嫌だった。
「えへへ。うち、覚醒したんや〜!」
そう叫ぶと、岩の上から飛び降り辻のところまで走っていった。
「あいぼん。おめでとう。」
辻は加護を抱きしめて“チュー”をした。
「ごめんな。のの。おまたせ。」
加護の笑顔は、穏やかで力強かった。
- 140 名前:G3HP 投稿日:2001年05月13日(日)23時05分05秒
- 85.残留
「ごっち〜ん。どこにいるの〜。」
全員で後藤を探していた。
「あの〜。ごっちんを。後藤を見かけませんでしたか?」
荷物を船に載せていた。つんくに尋ねた。
誰も昨夜から見かけていなかった。
「とりあえず。皆さんは東京に戻ってください。
明日、私と吉澤が島に戻って探しますよ。」
つんくが、その台詞を言ったところには、昼を過ぎていた。
「後藤さんが姿を見せないのは、これは、後藤さんの意思ではないですか?
どう思いますか?石川さん。」
そんなことは梨華にはわかっていた。
「とにかく、帰りましょう。
とりあえず、必要なものは全部おいておきますから。」
とても梨華には納得のいくことではなかった。
「私、残ります。
私、ごっちんをおいて帰れないです。
今、絶対ごっちんは見ています。
今帰ったら…」
二度と後藤と会えない気がした。後藤を裏切る気がした。
「わかりました。わたしも残りましょう。」
「だめです。」
「吉澤では?」
「だめです。これはごっちんと私の問題なんです。」
- 141 名前:G3HP 投稿日:2001年05月13日(日)23時06分29秒
- 86.ここにいる
船は梨華を残して島を去っていった。
梨華は、船の姿が水平線のかなたへ消えるまで眺めていた。
船が見えなくなると、梨華は目を瞑り後藤に語りかけた。
〜ごっちん。みんないっちゃったよ。
もう、島には私とごっちんしかいないよ。
だから、ごっちん。
姿を見せて。
私、信じてるから。
もう、疑わないから。
ごっちん。
私、ここに居るよ。
もう、どこにもいかないよ。
ごっちん。
ごっちん。ねえ、 〜
梨華の意識は体を離れ、島中を駆け巡った。
- 142 名前:G3HP 投稿日:2001年05月13日(日)23時07分18秒
- 86.ここにいる
船は梨華を残して島を去っていった。
梨華は、船の姿が水平線のかなたへ消えるまで眺めていた。
船が見えなくなると、梨華は目を瞑り後藤に語りかけた。
〜ごっちん。みんないっちゃったよ。
もう、島には私とごっちんしかいないよ。
だから、ごっちん。
姿を見せて。
私、信じてるから。
もう、疑わないから。
ごっちん。
私、ここに居るよ。
もう、どこにもいかないよ。
ごっちん。
ごっちん。ねえ、 〜
梨華の意識は体を離れ、島中を駆け巡った。
- 143 名前:G3HP 更新しました。 投稿日:2001年05月13日(日)23時13分12秒
- とりあえず無人島での出来事は終了ってところです。
ちょっとブツ切っぽいけど…
第二章終了ってところです。
ちなみに第一章はどこで終わったんだろう?
あとで考えます。
ここまで読んでいただいた方、ありがとうございます。
来週お出かけですので、更新できません。再来週をお楽しみ…
って続くのかあ?
なんせ勢いだけで書いてたから、気力が失せてなければいいんですが。
- 144 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月13日(日)23時18分01秒
- おつかれさまです。
再来週を楽しみにしてます。
もし忘れていたら、催促レスを書き込んでおきます。(w
では、その時まで…
- 145 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月16日(水)03時30分50秒
- 無人島の話終わりなんですか?後藤は??
TVだと島に残った梨華ちゃんの前に現れるんでは?
なんかあのシーン要るような気がするけど。
まあいいや。今後に期待。
- 146 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月16日(水)03時31分46秒
- すんません。ageてしまった。
- 147 名前:G3HP 投稿日:2001年05月18日(金)18時55分28秒
- 復活しました。って忘れられてるか?
まあいいや。
とりあえず、また書き始めます。
>>144 さん そういうわけで書き始めますので、もうしばらくお待ちを。
>>145 さん そうですか。自分も悩んだんですが、省いてしまいました。
ちょっと考えときます。まだまにあうから。。。
>>146 さん ageでも sageでもどちらでも良いです。できれば、7〜10あたりで
書いているのがいいです。あがり過ぎずってところですね。
- 148 名前:G3HP 投稿日:2001年05月18日(金)20時08分56秒
- というわけで、つけたしというか 後藤編です。
>>145さんに捧ぐ??
- 149 名前:G3HP 投稿日:2001年05月18日(金)20時10分57秒
―箸休め―(番外編)
後藤は、梨華を乗せて去っていく船を見つめていた。
梨華が船尾に立ち、島を見ている。
この場所からは見えるはずのない梨華の表情が、目に焼きついて離れない。
――島にはもう誰もいなくなった。
〜あなたは帰らないのですか?〜
「ここへは、まだ来たばかりよ。」
〜私のような壊れかけた家しかいないような島に
とどまる理由はあるのですか?〜
「壊れたものは好きよ。ゴミとか、廃墟とか。」
〜帰るところはあるのでしょう?〜
「いくらでも。
…ここだってそう。」
〜この島に住んでいたんですか〜
「そういう意味じゃないわ。」
〜あなたはここで生きていくのですか?〜
「あたしは、もう死んでるわ。」
〜わからない。あなたのような人は。〜
「どうでもいいわ。気にする者などいない。
…ここではね。」
- 150 名前:G3HP 投稿日:2001年05月18日(金)20時13分04秒
- あっ。殺しちゃった。ウソウソ。
まあいいか。
番外編ということで。
- 151 名前:KEI 投稿日:2001年05月19日(土)14時40分19秒
- はじめまして、149の最後から2個目の台詞って、
密かにケンシロウの決め台詞ではないですか?
「北斗の拳」これからもがんばって下さい。
- 152 名前:G3HP 投稿日:2001年05月19日(土)16時03分49秒
- >>151 さん いろいろ考えた据え、ケンシロウになってしまいました。
書いてて”ケンシロウ”だと思っていました。
なかなか鋭いですね。
話し違うんですが、金板に短編小説を書きました。
よろしかったら、そちらも読んでやってください。
それさえもおそらくは平凡な日々。
という題です。
元ネタは昔読んだ小説?ですが、題と漠然とした内容しか覚えていません。
もう一度よみたいので、この題にピンときた人は作者とか教えてください。
- 153 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月19日(土)20時38分22秒
- >>149 って俺のためですか?
すんませんす。わざわざ。
- 154 名前:G3HP 投稿日:2001年05月20日(日)14時01分22秒
- 87.喪失
あれから、一ヶ月が過ぎた。
結局、後藤とはそれきり会えなかった。
梨華は、後藤の居ない部屋で前と同じように生活をしていた。
前と同じように、朝起きる。
前と同じように会社に行き、仕事をする。
前と同じように。。。
――でも、そこに後藤の姿はもうなかった。
(ごっちん。どこに行ってしまったの?)
静かに時が流れていく。何もおこらない日々。
『あたしさあ、いまこの世界で生きてる実感ないんだよね。実は。』
後藤は、昔そう梨華に言った。
『夢のほうが、よっぽど現実感あるんだ。』
後藤は、この世界のどこかで生きている。
(でも、私はごっちんを失った。)
- 155 名前:G3HP 投稿日:2001年05月20日(日)14時02分35秒
- 88.ブラック
“東京前世セラピー”
梨華はつんくの事務所に来ていた。
ドアの外にまで話し声が聞こえている。
(やっぱり。皆来ているんだ。)
梨華がノブを回して中に入ると、みなが笑顔で迎えてくれた。
「でね。あたしは危うく殺されそうだったの。
そのとき、ブラックが現れて、助けに来てくれたんだ。」
明るい茶髪の矢口が居た。
矢口は島に居たころの“場違いなスカートを履いたお嬢様”
からコギャルに変わっていた。
「でも、ブラックは一人で行ったことを全然責めたりしないの。」
何を話し合っているのか、梨華にはわからなかった。
「そうそう。全然ブラックってえらぶったりしないのよね。」
変わったのは矢口だけではなかった。
保田も、安倍も、飯田も明るくなり、
事務所の中は、女子高生たちに占領されたマック状態であった。
部屋の奥には、彼女らを微笑ましく眺めているつんくがいた。
「あの〜。ブラックって何ですか?」
梨華がきくと、一斉に返答が返ってくる。
「ブラックって10人目の戦士だよ。」
「ほら、前世で、私たちが待っていた。」
「10人目、誰だかわかったんですか?」
「いや。いつも黒い仮面つけているんでわかんないのよ。」
「10人目は私のお腹の中に居るのよ。」
「ちがう。絶対裕ちゃんだって。」
「私はつんくさんだと思うんだけど。」
みんなが興奮気味なのがわかった。
「あたしたち、島から戻ってからそれぞれの前世の夢を話し合って
いろんなことがわかってきたんだよ。」
保田が梨華に説明してくれる。
「時代は良くわからないんでけどね。悪い王様から貧しい村人たちを
救うために、私たちはブラックに集められたのよ。」
「そう。私たちは正義のために自分たちを犠牲にして戦ったのよ。」
梨華は引いてしまうよなこの状況が、なぜか心地よく感じていた。
- 156 名前:G3HP 投稿日:2001年05月20日(日)14時03分21秒
- 89.重み
「ねえ。せっかく来たんだから梨華ちゃんの話聞きたいな。」
「えっ?」
「前世よ。島から戻って何か見たんでしょ?」
「別に…」
「なんだよそれ。」
矢口が不服そうに口を尖らす。
「まあ。矢口そう責めるな。覚醒できないことほど辛いことはない。
でも、あたしら待ってるから。焦ることはないよ。
あたしらは仲間なんだから。なあ、石川。」
保田が梨華の肩を叩く。
(この人こんなに明るい人だったんだ。)
梨華はみんなの中にある“前世”の重さに驚いた。
- 157 名前:G3HP 投稿日:2001年05月20日(日)14時03分56秒
- 90.観客
梨華はその後、つんくのところへよく足を運ぶようになった。
そこにいるときだけ、後藤のことを忘れることができた。
梨華は、一時でも後藤のことを忘れることができる自分に驚いた。
(このまま、時間とともにごっちんのことを忘れていくのかなあ。)
持ち寄られた前世の夢が、ひとつの物語を作っていった。
(私にはもう前世はない。)
梨華はここでもただの観客になっていた。
でも、ここに居ることが必要だと思っていた。
自分が変わっていかないために。
- 158 名前:G3HP 投稿日:2001年05月20日(日)14時04分28秒
- 91.電話
“♪もしかして〜こういうの〜。”
突然梨華の携帯が鳴った。
非通知だ。
梨華は不審に思いながらも携帯に出る。
「もしもし。」
「。。。。。」
何も聞こえなかった。
(あっ。)
「ごっちん?」
「ごっちんなの?」
返事はなく、そのまま切れてしまった。
(近くに居るんだ。ごっちん。)
梨華は周りを見渡した。
どこかで、後藤が見ている気がした。
- 159 名前:G3HP 投稿日:2001年05月20日(日)14時07分05秒
- 92.仲間
“♪もしかして〜こういうの〜。”
再び携帯が鳴った。
「ごっちん!」
「だれが、後藤じゃぁ!
梨華ちゃん。よっすぃーだよ。吉澤。」
「ああ。」
「なんだよー。その言い方。
人がせっかく電話してあげたのにさ。
ねえ。今、梨華ちゃん家の近くに来てるんだけどさ。
ちょっと付き合ってよ。」
- 160 名前:G3HP 投稿日:2001年05月20日(日)14時07分54秒
梨華は渋々出かけることにした。
吉澤は、近くの公園にいた。
「梨華ちゃん。どう?」
「どうって?」
「元気だった?」
吉澤は必要に梨華の傍によって来る。
「まあ。」
「ごめんね。ちょっと忙しくて電話できなかったのよ。」
「別に。」
「梨華ちゃん冷たいなあ。
あっ。そうだ、おっさんのとこいった?」
「つんくさん?」
「あまり寄り付かんほうがいいよ。
あれ、相当やばいから。」
「やばいって?」
「知ってる?ブラック仮面。
なんか好き勝手に“夢”寄せ集めてさ。
ガキだまくらかして何してんだ!って感じ。
戦争がどうの、王様がどうのって。
もう、むちゃくちゃ。」
吉澤は嘲笑している。
梨華は、吉澤の人を小馬鹿にする態度が好きになれなかった。
- 161 名前:G3HP 投稿日:2001年05月20日(日)14時08分54秒
- 「なんか、あいつら普通じゃないよ。」
「普通?普通って何?」
梨華はつんくの言葉を思い出していた。
「…あ〜 あのさ、梨華ちゃん。
気をつけたほうがいいよ。だいぶあのおっさんや後藤に
汚染されてるんじゃないの?」
「後藤?」
「いや。だからさ、気をつけないとあのおっさんに
骨の髄までしゃぶりつくされるよ。
まあほかの連中は、自分からしゃぶらさせてるんだけど…」
「後藤が何なの?いったじゃない。いま、後藤って。」
梨華は段々苛立っていった。
「…あのさあ、 梨華ちゃん。
梨華ちゃんは後藤のこと友達だと思ってるのかもしれないけど…
連絡ないんでしょ?
ちょうどいいじゃない。もう、前世とか、後藤とか。
――あたしがいるじゃない。ねえ。
あたしが…」
「あなたに私の何がわかるって言うのよ。」
「いや、あたしは…」
梨華が吉澤を睨むと、吉澤は力なく俯いた。
「自分勝手なあなたが、あなたが私に何してくれるって言うのよ。
私と後藤の何を知っているというの。
――前世がマジで必要な人だっていると思う。
私はその人のことを笑えない。
だって仲間なんだもん。」
「梨華ちゃん…」
「私、あなたのこと好きになれない。これからもきっと。
私は…」
梨華は、吉澤に八つ当たりしている自分が辛かった。
居た堪れなくなり、その場から走り去った。
- 162 名前:G3HP 投稿日:2001年05月20日(日)14時14分34秒
- う〜ん。スランプですかね。
この次が一向に書けません。
ストーリーは元ネタに沿ってるんだけど、
娘。のキャラから”フカモグ”キャラになってしまっている。
つんくは、はじめから諦めてたけど。
とりあえず、書けているとこまで更新です。
- 163 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月21日(月)02時03分58秒
- 自分はTV見てないんで…
逆に「娘。キャラ」にあわせて、オリジナルストーリーにしちゃったら?
別に原作料払ってるわけじゃないし(w
- 164 名前:G3HP 投稿日:2001年05月21日(月)18時19分40秒
- 93.再会
梨華は外苑東通りを青山方面へ歩いていた。
街は平日にもかかわらず大勢の人でごったがえしている。
顔を合せ、時には目線をもあわせ ただすれ違って行く他人の間を歩いていると、
梨華は自分という個性が消え、ロボットになっていく気がした。
(何も考えたくない。ロボットの方がまし。)
梨華は、ここ数日淡々と仕事をこなしていた。
仕事に打ち込むことで、何もかも忘れてしまいたかった。
何もなかったことにしてしまいたかった。前世も、ソウルメイトも。
しばらく歩くと、右側にファミレスが見えてきた。
ウェイトレスが派手なミニスカートをはいているファミレスだ。
仕事の待ち合わせのために、梨華はこのファミレスに入っていった。
窓際の席に座り、通りを眺める。
- 165 名前:G3HP 投稿日:2001年05月21日(月)18時20分22秒
「ご注文はお決まりでしょうか?」
梨華は振り返って珈琲を注文しようとした。
「いっ!」
後藤がいた。
派手なミニスカートに金髪ではあるが、後藤だ。
「あははは。やっだ、梨華ちゃん。いつまで見てるのよ。
恥ずかしいじゃない。
ねえどう?梨華ちゃん。ごっちん、似合うでしょう。」
(えっ?“ごっちん”?えっ?)
混乱する梨華。
「りかちゃん? 梨華ちゃん 注文は?」
「あっ。こ コーヒー。」
「はい。コーヒーをおひとつですね。
――ねえ。梨華ちゃん。今日仕事何時に終わるの?
あたしは6時に終わるから、一緒に食事に行こうよ。
いろいろ話したいこともあるし。
梨華ちゃんもあるでしょ?」
梨華は声が出なかった。ちいさく横に首を振るのが背一杯であった。
「本当に?」
「何も。」
何とか声がでた。
「つめたいな〜。」
梨華は後藤から目線が外せなかった。
後藤の唇。
(口紅嫌いだったのに。)
後藤の瞳。
(なんて表情の豊かな瞳。)
後藤の声。
(張りのある明るい声。)
何もかもが昔と変わっていた。
「ご…っちん?」
「ん?」
「ごっちんだよね?」
「そうだよ。どうしたの?」
梨華はわからなくなってしまった。
(あんなに後藤に会いたいと願ったのに。)
悲しかった。
後藤の姿が変わってしまったのも一因かもしれない。
外見ではなく、内面が変わってしまった後藤が怖かったのかもしれない。
梨華は、後藤に話すべき言葉を見つけられなかった。
- 166 名前:G3HP 更新しました。 投稿日:2001年05月21日(月)18時22分32秒
- とりあえず、悩んでいたところをクリア。。。。。。。
すこしだけど、更新です。
- 167 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月22日(火)22時00分12秒
- 95.夜逃げ
吉澤はひとり部屋で落ち込んでいた。
梨華に『好きになれない。』と言われたことを
ずっと考えていた。
「いけると思ってのになあ〜。」
吉澤は、いままであの手の女性に人気があった。
宝塚の男役のようないでたちにちょっとした自身もあった。
「マジなのになあ。」
「ただいま〜。」
吉澤の部屋に保田が帰ってきた。
保田は覚醒してからずっと、吉澤の部屋に居候していた。
「つんくさんの事務所に近いから。」
という理由で保田がいついてしまったのだ。
「さあ。皆上がって。」
保田の声に続いて、安倍らが部屋に入り込んできた。
「ど どうしたの。え〜。ちょっと圭ちゃんどうなってんのよ。」
吉澤が保田に問いただしている間に、皆勝手に上がりこんで
テーブルを囲んでいた。
「いや〜。なんか知らないけど。今日、つんくさんの事務所行ったら
中身何にもなくなってたのよ。それで、しょうがないからここにきたの。」
「へ〜。
って。何だって?」
「いや、だからつんくさんいないのよ。
あんたつんくさんの携帯の番号知らない?」
「ちょっと。え〜。なに。連絡取れないの?」
「そう。」
「うあ〜。なに。じゃあ、あのおっさん逃げたん?」
吉澤はあせった。
「なにいってんの。つんくさんはそんな人じゃないよ。」
「って。うそ。なに?お姉ちゃん騙されたって考えてないの?」
「そんなはずないわよ。」
「なんで?」
「つんくさんブラックだから。ちゃんと連絡してくるよ。」
「はあ?なにいっちゃってるの?そんなわけないじゃない。
え〜。じゃあ、あたしのバイト代はどうなるのよ〜。」
吉澤は頭を抱えた。
「つんくさんからちゃんと連絡くるれす。
心配ないれす。」
辻は自身たっぷりだった。
「な なに?じゃあ、みんな信じてるん。。。だ。」
吉澤はみんなを見渡す。
誰一人疑っていないのがわかった。
「なんちゅう連中!」
再び吉澤は頭を抱えた。
- 168 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月22日(火)22時01分53秒
- 「まあ、とりあえず、こないだの続きをやろう。」
そういって保田は、“夢”の年表を広げた。
「梨華ちゃんおらへんで。」
加護に言われて保田があたりを見渡すと、梨華は玄関の外に立っていた。
「梨華ちゃん。何してるのよ。早く入ってきなさい。」
保田の命令で梨華は部屋に入ってきた。
「どうも。」
梨華は吉澤に気まずそうに挨拶をした。
「梨華ちゃん。あなたもなの?」
梨華は、吉澤の声を無視してテーブルへつく。
「本当なの?ねえ。寂しいからって、嘘つかなくても。」
「私、嘘なんか…」
何も言い返せない梨華だった。
「あほくさ。」
そういって吉澤は出て行った。
- 169 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月22日(火)22時02分58秒
- 96.謝罪
あれから、後藤に会ってなかった。
(ごっちんは変わって見せたのかな。私が近づかないように。)
どうしても、発想がネガティブになってしまう。
でも、今は会いたくないというのが本音だった。
つんくとも、あれ以来会わなかった。
つんくのいなくなったソウルメイト現世支部
の定例会は、かつての元気もなくなっていた。
それでも、みんな集まらずにはいられなかったのだ。
梨華は吉澤の部屋の前にいた。
「ソウルメイト現世支部」
とノートの切れ端に書かれたその文字が、吉澤の部屋の玄関を飾っていた。
「こんにちは。」
梨華がいつものように玄関を開けて入っていった。
やけに静かだ。
「おじゃまします。」
梨華が部屋の奥に入っていくと、そこに
後藤がいた。
- 170 名前:G3HP 投稿日:2001年05月22日(火)22時03分30秒
- 96.謝罪
あれから、後藤に会ってなかった。
(ごっちんは変わって見せたのかな。私が近づかないように。)
どうしても、発想がネガティブになってしまう。
でも、今は会いたくないというのが本音だった。
つんくとも、あれ以来会わなかった。
つんくのいなくなったソウルメイト現世支部
の定例会は、かつての元気もなくなっていた。
それでも、みんな集まらずにはいられなかったのだ。
梨華は吉澤の部屋の前にいた。
「ソウルメイト現世支部」
とノートの切れ端に書かれたその文字が、吉澤の部屋の玄関を飾っていた。
「こんにちは。」
梨華がいつものように玄関を開けて入っていった。
やけに静かだ。
「おじゃまします。」
梨華が部屋の奥に入っていくと、そこに
後藤がいた。
- 171 名前:G3HP 投稿日:2001年05月22日(火)22時04分28秒
「梨華ちゃん遅いよ。もう、始めてるよ。」
後藤は笑顔で、梨華を迎えていた。
「なんで、ごっちんがいるの?」
なぜ、後藤が笑顔でいるのか梨華には理解できなかった。
「だって、あたし覚醒したんだもん。」
梨華は全身に鳥肌が立つのを感じていた。
「うそ。…うそよ。ごっちんが覚醒なんかするはずない。」
「あたしうそなんかついてないよ。
島から帰ってきてちゃんと覚醒したもん。」
後藤の声もしゃべり方も何もかもが信じれなかった。
「じゃあなんで、あの時出てきてくれなかったの。」
「あの時って?」
「島に私一人残ったとき。
私が全部悪いんだと思ったのよ。すごく後悔した。
すごく悲しかったのに、なんんで出てきてくれなかったの。」
「ごめん。」
「わ…私は誤ってなんかほしくない。」
梨華はその場に泣き崩れてしまった。
- 172 名前:G3HP 投稿日:2001年05月22日(火)22時05分04秒
「梨華ちゃん遅いよ。もう、始めてるよ。」
後藤は笑顔で、梨華を迎えていた。
「なんで、ごっちんがいるの?」
なぜ、後藤が笑顔でいるのか梨華には理解できなかった。
「だって、あたし覚醒したんだもん。」
梨華は全身に鳥肌が立つのを感じていた。
「うそ。…うそよ。ごっちんが覚醒なんかするはずない。」
「あたしうそなんかついてないよ。
島から帰ってきてちゃんと覚醒したもん。」
後藤の声もしゃべり方も何もかもが信じれなかった。
「じゃあなんで、あの時出てきてくれなかったの。」
「あの時って?」
「島に私一人残ったとき。
私が全部悪いんだと思ったのよ。すごく後悔した。
すごく悲しかったのに、なんんで出てきてくれなかったの。」
「ごめん。」
「わ…私は誤ってなんかほしくない。」
梨華はその場に泣き崩れてしまった。
- 173 名前:G3HP 投稿日:2001年05月22日(火)22時06分25秒
- 97.返り討ち
どのぐらい経ったのだろう。
しばらくして、梨華は顔をあげた。
そこには、困惑した顔の後藤と打ち沈んでいるメンバーがいた。
「あの皆さん、どうしたんですか?」
「あたしのね、前世の話があまりにもショッキングだったんで…」
「ごっちんの?」
「みんな死ぬんだってさ。」
吉澤が笑いながら言う。
「死ぬ?」
「王様に殺されるんだってさ。梨華ちゃんもね。」
「ちがう。そんなことない。絶対うそです。だって…
ごっちん、なんで嘘なんかつくのよ。」
「ほんとよ。あまりにもショッキングだったんで、
今まで悩んでたんだよ。話そうかどうか。」
「うそ。」
「ねえ、あんた!あんた親友なんでしょ?
親友の言うことが信じられないの?」
「だって…」
(絶対に嘘。ごっちんが嘘ついているんじゃなかったら、
あれは、偽者のごっちんだよ。)
「一応な、みんなの夢の話は本当のことと考えないと
きりがないでしょ。」
「でも…」
「いいわよ。梨華が信じなくても。でもあたしは見たの。
みんな殺されるのよ。」
後藤のその言葉で辻が泣き出した。
「のの泣くな。あたしらは正義のために戦ったんだ。
そして正義のために死んでいったんだ。
普通に死ぬより、よっぽど立派な死だ。」
- 174 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月23日(水)20時44分21秒
- ご、後藤どうなっちゃうの!?
- 175 名前:G3HP 投稿日:2001年05月25日(金)19時40分59秒
- エヴァでいうところの”ヤマアラシのジレンマ”状態になっていきます。
- 176 名前:G3HP 投稿日:2001年05月25日(金)19時43分55秒
- 98.帰る場所
結局、梨華はそのまま部屋を飛び出してきてしまった。
「私今日帰ります。」
そういって、梨華は部屋を出てきた。
当然、後藤が追いかけてくれると梨華は思っていた。
少なくとも、何らかの声をかけるぐらいのことはあってもしかるべきと思っていた。
しかし、なにもおこらなかった。
ドアを閉める間際に見えた後藤の視線は、梨華のほうには向けられていなかったのだ。
梨華には、後藤の行動が理解できなかった。
なぜ、後藤が梨華を苦しめるのかわからなかった。
「私が、ごっちんを信じていなかったから?」
だから、後藤が梨華に罰を与えていると思った。
「あんたは、初めから誰も信じていなかったんじゃないのか?」
いつのまにか、吉澤が追いついてきていた。
「そんなことないです。私はごっちんを信じていたし、
みんなのことも信じてる。」
「あたしには、そうは見えなかったね。
あんたは、初めから後藤を信じてなかったんだ。
信じようとしてただけなんだよ。
現世で仲良くしていたいから、前世でも仲が良かった事に
したんじゃないのか?
現世で仲が悪くなったとたん、前世はなかったってか。」
「ちがう。私とごっちんは同じ前世があったのよ。」
「じゃあ、なんであいつだけ覚醒したんだ。
なんで、あんたは覚醒しないんだ?」
「ごっちんは覚醒なんてしてないよ。」
「後藤は“覚醒”したんだよ。
そして、あんたは覚醒しなかったんだよ。
あんたは、あいつらの仲間になれなかったんだ。
あんなやつらの仲間にさえもね!」
- 177 名前:G3HP 投稿日:2001年05月25日(金)19時44分52秒
「ひどい。
ずいぶんじゃないですか。
…ひょっとしてこないだのこと根に持っているんですか?」
「ああ、そうだよ。わるい?
でも、ほんとのことじゃない。
もう、あんたはどこにも帰るところがなくなったんだ。」
「あなたには関係ないじゃない。」
「…そうだよ。
…関係ないよ。関係ないんだ。
そうだ、梨華ちゃん家に帰ればいいじゃない。
普通なんでしょ?梨華ちゃんの家族。」
「帰らない。」
「どうして?うまくいってるんでしょ?家族と。」
「うまくいってるよ。
でも、わかってくれるわけじゃない。」
「そりゃあ贅沢だよ。」
「わかってる。
お父さんもお母さんもいい人だよ
わかってほしいとは思わない。
だから、帰らない。」
- 178 名前:G3HP 投稿日:2001年05月25日(金)19時45分33秒
- 99.決意
吉澤の部屋は静まりかえっていた。
やはり、後藤の話のショックから誰も立ち直っていなかった。
「ねえ、あたしの話だって途中なんだから本当のところを
つんくさんに聞かなきゃ。
本当なのか、誰に殺されたのかとか。
だから、みんなでつんくさんを探そうよ。」
どんよりと落ち込む雰囲気を吹き飛ばそうと後藤は明るい声で話し掛けた。
「そうだな。落ち込んでるだけでは何も始まらない。
よし、決めた。明日からつんくさんの捜索開始だ。」
保田も勤めて明るく振舞おうとするが、雰囲気は一向に改善されなかった。
「とりあえず、今日は解散しよ。
辻、加護。駅まで送ってくから準備しな。」
保田はそういうと、徐に辻の体を抱き上げた。
「保田さん。辻は赤ちゃんじゃないれす。」
皆の間に少しだけ、笑顔が戻ってきた。
- 179 名前:G3HP 投稿日:2001年05月25日(金)19時46分21秒
- 100.予感
「そういえば、変な夢見たです。」
保田が辻と加護をつれて駅に向かっているときだった。
「どんな夢?」
「なんか、前世の夢なのかわからないのれすけど、
太陽が段々なくなっていくんれす。
昼間なのに急に真っ暗になっちゃうんれす。」
「それ日食じゃないの?」
「すんごくいやな気分になったんれす。
なんか、いやなことがおきそうな感じれす。」
「それって王に殺されるってこと?」
「うん〜わかんないれす。でも、すごくいやなことが起きる前触れ
みたいれす。」
- 180 名前:G3HP 更新しました。 投稿日:2001年05月25日(金)19時47分38秒
- ついに 100まできてしまいました。
いつのまにか銀板のなかでも一番の長編になってしまってる。
- 181 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)00時22分20秒
- 自己満足の世界になってしまってるけど、気にしないでとっとといきます。
勘弁してください。
- 182 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)00時23分11秒
- 101.T.K
数日後、保田らが探し出したつんくの部屋の前に全員が集まっていた。
古びた雑居ビルの二階のドアには“TK調査事務所”と書かれたプラスティックの
プレートが貼られていた。
そのきれいなプレートは、貼られてから間もないことを物語っていた。
「本当にここなの?」
保田がベルに指を置いたまま、飯田に聞いた。
「大丈夫。あたしつんくさんを見たんだから。」
飯田は不服そうに頬を膨らませた。
「実際に見てみればわかるべ。」
安倍の言葉に保田は、漸くベルを鳴らした。
ビ〜 ビ〜
しばらく待ったが反応がなかった。
「いないのかなあ」
ビ〜 ビ〜
再度押すが反応はなかった。
「いないみたいね。ドアにカギもかかってるみたいだし。」
保田はドアをガチャガチャまわしたが、ドアは開くことはなかった。
「まあ、場所わかったんだからまた、明日来よう。」
「でも、もう明日からうちら学校あるねん。」
「そうがっかりするな。なんかわかったらメールするから。今日はもう帰ろう。」
保田が皆を帰そうとしたときだった。
保田の視界の隅に人影が映った。
「つんくさん!」
保田は手すりから体を乗り出して一階の中庭を覗き込んだ。
つんくはそこにいた。
- 183 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)00時23分48秒
- 101.T.K
数日後、保田らが探し出したつんくの部屋の前に全員が集まっていた。
古びた雑居ビルの二階のドアには“TK調査事務所”と書かれたプラスティックの
プレートが貼られていた。
そのきれいなプレートは、貼られてから間もないことを物語っていた。
「本当にここなの?」
保田がベルに指を置いたまま、飯田に聞いた。
「大丈夫。あたしつんくさんを見たんだから。」
飯田は不服そうに頬を膨らませた。
「実際に見てみればわかるべ。」
安倍の言葉に保田は、漸くベルを鳴らした。
ビ〜 ビ〜
しばらく待ったが反応がなかった。
「いないのかなあ」
ビ〜 ビ〜
再度押すが反応はなかった。
「いないみたいね。ドアにカギもかかってるみたいだし。」
保田はドアをガチャガチャまわしたが、ドアは開くことはなかった。
「まあ、場所わかったんだからまた、明日来よう。」
「でも、もう明日からうちら学校あるねん。」
「そうがっかりするな。なんかわかったらメールするから。今日はもう帰ろう。」
保田が皆を帰そうとしたときだった。
保田の視界の隅に人影が映った。
「つんくさん!」
保田は手すりから体を乗り出して一階の中庭を覗き込んだ。
つんくはそこにいた。
- 184 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)00時24分53秒
- 「あっ。おっさんこんなところで。。。そこ動くなよ。」
吉澤はつんくに怒鳴って見せた後すぐ走って一階に向かった。
「なに?あんたたち。私に何かようなんか?」
「つんくさん。私たち探していたんですよ。」
「どうしていなくなったんですか?」
「つんくさん。なんか言ってくださいよ。」
みんなが、つんくの言葉を待っていた。
「はあ?つんく?誰ですかそれ?」
「おっさん何言ってんだよ。」
吉澤はつんくのところに辿り着くなり、つんくの胸倉を掴んだ。
「どうみたってつんくじゃんかよー。このジャージ見たことあるし
こんないかさま顔、どこ探したっているわけないじゃない。
あっわかった。あたしのバイト代払いたくないんでしょ。」
吉澤がつんくに詰め寄るが、つんくは迷惑そうな顔で吉澤を見ている。
「あんたら、なんか人違いしているようだね。
私はつんくなんて名前じゃない。
私は小室。小室 哲哉だ。」
そういって、小室と名乗る男はポケットから免許書を取り出し
吉澤に渡した。
吉澤が確認したその免許書には“小室 哲哉”と書かれていた。
「まあ、そういうことやね。」
小室はそういうと、ほくそ笑んだ。
- 185 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)00時27分28秒
- 102.仮面
小室の部屋は雑然としていた。
引っ越したままダンボールがいくつも積み重ねられたままになっている。
小室のすわる机の上にも、まだおかれたままの荷物が
雑然と置かれたままになっていた。
「まあ、座れば。」
小室の言葉にすごすごとみんなは従ってソファに腰掛けた。
「おーい。おっさんのペースにはまるなよ。」
吉澤の声に梨華は反応して立ち上がった。
「梨華ちゃん。自分のしたいようにすればいいんだよ。」
矢口に言われまた座りなおす梨華であった。
「あたしずっとつんくさんがブラックだと思っていた。」
保田の声が沈んでいる。フードさえ被っていないが、
覚醒する前の引きこもりの保田に戻ったようだった。
「ブラックって?」
小室はわざとらしく聞いた。
「前世で。。。
僕らと戦ったんだ。」
「ふ〜ん。あんたらはそういう同好会だったわけだ。」
小室は皆を見渡してうんうんと一人で納得したように頷いた。
「あたしはあの前世があったから、また生きることにしたんだ。」
保田のつぶやきに何人かが頷いた。
- 186 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)00時28分34秒
- 「どこで聞いたの?私があんたらみたいな人を専門でやってるって事。
あんたらみたいな人を一般社会に戻すのが仕事だって事を。」
「知りませんでした。」
後藤が口を開いた。
「あなたが認めたくないなら、それでもかまいません。
でも私たちには本当の前世が必要なんです。
セラピーだけでもお願いできませんか?」
後藤は困惑している可憐な少女のようなすこし脅えた声で、小室にお願いをした。
「でも、セラピーをしてるわけではないから。」
「でも、そういった人たちを相手にしているなら、どうやるのか知ってますよね。」
「ええ、まあ…」
その言葉を聞くと後藤は近くにあった診療用のベットに横たわった。
- 187 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)00時29分29秒
- 103.裏切り者
「今あなたは白い眉に包まれています。
そういうんだよね?
つづきは?続きはどういうんだっけ?」
「まあいろいろと。」
「たとえば。」
「普通は、この光があなたを守ってくれている。」
「あなたは体の力がぬけてもっとリラックスします。」
後藤は自ら言葉を続けた。
「私が数を数えるとあなたはふか〜く潜っていきます。ふか〜く。
どんどんどんと、ふか〜く潜っていきます。」
保田は、吉澤は、安倍は、飯田は、皆が後藤と小室とのその異様ともいえる
光景をただ見つめていた。
何かを期待し、何かに脅えながら。
- 188 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)00時30分33秒
梨華もまた後藤を止めることもできず、ただ見つめていた。
「それでは、まず手を見てください。
手のひらが見えますか?」
「…はい。」
「では、視線をゆっくりと足元に落としてください。
何が見えますか?」
「私は高い崖のようなところでロープにぶら下がっています。」
「周りを見てください。周りに誰か見えますか?」
「いいえ。夜だから良く見えないけど私一人です。」
「山を登っているんですか?」
「違います。石でできている壁です。
上のほうに窓が見えます。窓から明かりが漏れています。
そうだ、ここは王の砦です。」
“王の砦”その言葉に吉澤までが立ち上がり後藤の傍らで立ちすくんだ。
- 189 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)00時31分27秒
「あなたは何をしようとしているのですか?」
「あ…暗殺…王を殺そうとして…
あっ…し、信じられない。なんで、だって…
王の部屋に、王の部屋にブラックがいます。」
突然、後藤は催眠から戻り起き上がった。
「わかりました。」
「えっ?なにが?」
「裏切ったんです。」
「ブラックは、私たちを裏切ったんです。
10人目の仲間は裏切り者です。」
後藤は皆を見渡し、きつく、はっきりとした口調でそう言いきった。
- 190 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)00時57分06秒
- 104.石
「ごっちん。うそついてる。」
梨華の言葉を皮切りに後藤を一斉にせめた。
「あの時もそうだった。」
後藤は全く動じることもなく、話を続けた。
「あたしがやっと帰り着いて、ブラックの裏切りを知らせ知らせたのに
誰も信じてくれなくて…
だから全員殺されたんじゃない。
信じたくなければ信じなくてもいいけど…
あたしは確かに見たの。」
後藤の話に全員が打ちのめされ、惚けたようにただ立ちすくんだ。
- 191 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)00時58分05秒
後藤はまた、目を瞑り静かにトランス状態に入っていった。
「…人が死んでる。きっと私たち9人の中の誰か。
仰向けになって手に何かを握ってる。
何だろう?いし…?
そう石。あたしたちは皆同じ石を持っていた。」
「ちょっとまってよ。みんなごっちんに誘導されてる。
わかんないの? みんなごっちんのウソに」
「何色の石?」
梨華の言葉をさえぎって飯田が聞いた。
「薄い水色の石。
それがある限りあたしたちの力は一つだって戦いの前にもらったの。」
「ブラックが?」
「そう、ブラックに裏切られてもあたしたちはその石を離さなかった。
みんな最後まで石を握って死んでいった。
あたしは一人海の際まで走っていって、海に向かって石を捨てた。
でも、その後に殺された。
…ブラックにね。」
全員が後藤を囲んで後藤の言葉に耳を傾けていた。
梨華と吉澤と小室はその輪の外で、それらを眺めていた。
梨華は目の前でおこなわれていることが現実なのか夢なのか
わからなくなってきていた。
周りの景色に霞さえかかっているような気がしてきた。
「何か変なことおきたれす。あたしたちが殺されたとき。」
「そういえば、ののそんなこといってたね。たしか、日食がおきたとか。」
「…そう、あの日はおかしな日だった。腫れているのに当然あたりが暗くなって…」
「ごっちん。ウソつかないでよ。」
梨華は居た堪れなくなり、話を遮った。
「うるさい!今大事なところなの。」
「こいつ出しちゃっていい?」
矢口が立ち上がって、梨華の手首を掴んだ。
「梨華もここに居たいでしょ。仲間だもんね。」
- 192 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)00時58分42秒
後藤はまた、目を瞑り静かにトランス状態に入っていった。
「…人が死んでる。きっと私たち9人の中の誰か。
仰向けになって手に何かを握ってる。
何だろう?いし…?
そう石。あたしたちは皆同じ石を持っていた。」
「ちょっとまってよ。みんなごっちんに誘導されてる。
わかんないの? みんなごっちんのウソに」
「何色の石?」
梨華の言葉をさえぎって飯田が聞いた。
「薄い水色の石。
それがある限りあたしたちの力は一つだって戦いの前にもらったの。」
「ブラックが?」
「そう、ブラックに裏切られてもあたしたちはその石を離さなかった。
みんな最後まで石を握って死んでいった。
あたしは一人海の際まで走っていって、海に向かって石を捨てた。
でも、その後に殺された。
…ブラックにね。」
全員が後藤を囲んで後藤の言葉に耳を傾けていた。
梨華と吉澤と小室はその輪の外で、それらを眺めていた。
梨華は目の前でおこなわれていることが現実なのか夢なのか
わからなくなってきていた。
周りの景色に霞さえかかっているような気がしてきた。
「何か変なことおきたれす。あたしたちが殺されたとき。」
「そういえば、ののそんなこといってたね。たしか、日食がおきたとか。」
「…そう、あの日はおかしな日だった。腫れているのに当然あたりが暗くなって…」
「ごっちん。ウソつかないでよ。」
梨華は居た堪れなくなり、話を遮った。
「うるさい!今大事なところなの。」
「こいつ出しちゃっていい?」
矢口が立ち上がって、梨華の手首を掴んだ。
「梨華もここに居たいでしょ。仲間だもんね。」
- 193 名前:G3HP 今日はここまで 投稿日:2001年05月29日(火)01時00分19秒
- なんか今日は二重投稿が多くなってしまったので今日は終わりです。
- 194 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)19時19分44秒
105.卑怯者
「ブラックに殺されたのあんただけ?」
「わかんない。でも、ブラックの剣は血で汚れてた。」
「どうしたらいいの?」
「まず。ブラックを探さなきゃね。」
「まってよ。ブラックは英雄なんじゃなかったの。
どうして、みんなごっちんのいう事を信じるの?」
「梨華探されると困るの?」
「えっ?」
「大体覚醒もしていない梨華があたしのことをウソツキなんていえるの?」
保田らが一斉に梨華を振り返った。
皆、批判のこもった顔をしていた。
「かえろ。もうここに用はなくなった。」
後藤は梨華を一瞥して部屋を出て行った。
部屋に梨華と吉澤に残った。
梨華はただ自分がその場から動けなかっただけのことを
良くわかっていた。
悲しかった。
自分がではなく、後藤が悲しかったのだ。
「何かいうことないんですか?つんくさん。」
「私は小室やから。」
「初めにあおったのはあんたでしょ!」
吉澤が怒鳴る。
「私は小室やから。」
小室は、窓の外を見たまま答える。
「名前なんかどうでもいい。あんたが責任取れ、
おい!なんとかしろ。」
「用事が済んだら出てってくれないかな。」
小室は振り返って梨華を睨んだ。
その瞳には力がなかった。
「ひきょうもの。」
梨華の冷たい声が小室のなかで響いた。
- 195 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)19時20分37秒
- 106.斬殺
吉澤は島に戻っていた。
ゆっくりと高台にある洋館の扉を開く。
ぎぃ〜と古びた音がする。
開いた扉の奥には薄暗い部屋が広がっていた。
吉澤は一歩一歩 探る様に部屋の中を進んでいくと
地下の映画館のほうから音がするのに気づいた。
ガシャ〜ンガシャ〜ン。
金属が触れ合って出している音だ。
地下に降りて扉を開くとロウソクの光が見えた。
吉澤は注意深く映画館に入っていく。
ガシャ〜ン、ガシャ〜ン。
気づくと吉澤は鉄の鎧を着ていた。
ガシャ〜ン、ガシャ〜ン。
歩くたびに音が響いた。
(なんだこれ?なんだこれ?)
- 196 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)19時21分25秒
突然背後に人の気配を感じて振り返る。
そこには、全身真っ黒の鎧を被った騎士がいた。
(…ブ…ブラック?)
ブラックは腰の剣を抜いている。
ロウソクの炎に照らされてゆらゆらと輝いていた。
(ころされる?)
ブラックはゆっくりと剣を振りかぶり、吉澤に振り下ろした。
「うわっ!!!」
吉澤は飛び起きた。
(夢か。)
一安心するも、枕もとに人の気配を感じて振り返った。
(ブラック?)
「覚醒したんでしょ?」
保田だった。
吉澤は額に溢れる汗を拭いながら、うつろな目で保田をみた。
全身に鳥肌が立っていた。
- 197 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)19時22分18秒
- 107.最後の一人
「覚醒したんだって? カクセイしたんでしょ?」
ブラックを探すために集まった空き地で、安倍が吉澤を覗き込むように訪ねた。
吉澤はしばらく、そっぽを向いていたが振り返って安倍を睨んだ。
「はい。しました。
でも、信じてるわけじゃないし、あんたらの仲間になったわけじゃない。」
「じゃあなんでここに来たのよ。」
「何でここにきちゃいけないんですか?」
吉澤は嫌味たっぷりに安倍に言う。
梨華は驚いていた。まさか吉澤が覚醒するとは考えてもいなかった。
(これで、また私一人だけになっちゃた。)
「覚醒しても殺されるだけよ。」
保田が暗くつぶやいた。保田はまたフードをすっぽり被っている。
- 198 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)19時22分53秒
- 「梨華だけになったね、覚醒してないの。」
後藤は楽しそうに梨華を覗き込む。
「ブラックを探しても無駄だよね。梨華ちゃん。」
- 199 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)19時23分34秒
- 108.9人
「覚醒したなんてウソでしょ?」
梨華は後藤に向かって、静かに口を開いた。
「ブラックが裏切り者というのも。
…仕返しなの?」
「誰に?」
「私…」
「うぬぼれが強いんだね。
梨華は何で覚醒できないんだろうね。
おかしいね。」
その挑発するような台詞に梨華は身を硬くした。
「ねえ、これ試してみない?」
後藤は突然皆に向かって喋りだした。
「これの力を借りてみない?ムーンストーン。」
そういうと後藤はポケットからチェーンに吊り下げられた石の束を取り出した。
「もうやめてよ、ごっちん。」
「信じない人は帰ればいいじゃん。」
後藤は振り返って梨華に言い放った。
「かえろ。」
売り言葉に買い言葉である。
「帰らないんですか?」
周りを見回すが誰も動こうとしなかった。
「帰ります。」
そう言って梨華が帰ろうとすると、その前に飯田が立ちはだかった。
「だめ、つんくさんいってたじゃない。9人一緒じゃないと駄目だって。」
「そうよ。帰ったらだめだべさ。」
何もおこるわけがない。梨華はそう思いながらそれ以上動くことができなかった。
- 200 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)19時26分58秒
- 109.日蝕
「石を見つめて。
集中して封印されている記憶を皆で呼び覚ますの。」
後藤は皆に話し掛けながら一人ずつ石を渡していった。
「あの時何がおこった?
私たちが殺されてしまう前。」
「太陽が見えなくなって、昼なのに暗くって。」
「そのときの感情を思い出して。
胸騒ぎ、悪夢の始まる予感。
あたしたちの命はそれから数時間で消えたんだよ。」
後藤は梨華にもムーンストーンを渡そうとしたが、梨華は俯いて
受け取らなかった。
「あたしたちは、暗闇の中を追われてさされたり、海に飛び込んだり。
…梨華。覚えてない?あの霧の中を二人で逃げたときのことを。
手をつなぐ二人の手が暖かくって、どくどくと脈打つのがわかった。
…梨華は一人で死んだの?」
「死んでなんかいないよ。」
「じゃあ梨華だけは生き残ったんだ。」
「ちがう。」
「なにが。」
「私じゃない。」
「何があたしじゃないの。」
その答えを梨華は口にすることができなかった。
- 201 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)19時27分37秒
「あっ。太陽が消えていくれす。」
突然、辻が空を指差して叫んだ。その声で、全員が空を見上げた。
「あの時と同じ、ブラックがまた裏切ろうとしている。
あたしたち、また殺されちゃうの?」
後藤の脅えたような声。
「いや!」
辻が安倍にしがみついた。
「太陽がなくなっていく。」
「なんなのこれは?」
安倍も、飯田もうろたえて辺りを見渡した。
- 202 名前:G3HP 投稿日:2001年05月29日(火)19時30分13秒
- 110.涙
後藤は物陰で眩しそうに太陽を見つめているつんくを見つけた。
うろたえている皆の傍から、そっと離れて後を追った。
「つんくさん!」
後藤はつんくの背中に声をかけた。
「小室といってほしいね。小室と。」
つんくは振り返ってそういったが、否定や非難をしているわけではなく。
すこしばつが悪そうに微笑みながら言っていた。
「まだいってるよ。」
後藤はつんくの傍まで歩いていった。
「何度も人生を繰り返す。生き直す。そんな方法もあったんだと思ったよね。」
「なーにいってんだかわからないね。」
つんくは俯きながら失笑し、後藤の様子を窺った。
「それよりどうするんだい?連中。あんなにしちゃって。」
つんくのその質問に後藤は楽しそうに笑い、つんくの周りをまわった。
「人のことなんて、どうでもいいくせに。」
「…本当に死ねたらいいのにね。
この世を前世にできたらいいのに。」
後藤は立ち止まり呟いた。まるで、自分に言い聞かせてるようだった。
「そう簡単にいくもんじゃないよ。」
「試してみた?」
返事はなかった。
後藤はつんくの顔を覗き込んで頷いた。
「そうだよね。」
つんくのこころが後藤のこころと共振する。
後藤はその共振を全身で感じていた。
そして、静かで暖かいまなざしをつんくに投げかけた。
「…殺してあげようか?」
冷たいはずのその台詞が、つんくの体に暖かく染み渡っていく。
「あんたは 誰に殺してもらうんだい?」
その言葉が涙に変わり、後藤の頬を流れ落ちていった。
つんくが空を見上げると、太陽が消えようとしていた。
(それもいいかも。)
つんくは目を瞑り、静かに涙を流した。
- 203 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時36分27秒
- 111.闇討ち
梨華が仕事を終えたころには、すでに日が暮れていた。
街並みの喧騒から離れた住宅街に位置する駅から疲れた人々が
吐き出されていた。
梨華はその波に身をゆだねながら自分の手首を見つめた。
『…梨華。覚えてない?あの霧の中を二人で逃げたときのことを。』
(覚えてる。でも…)
『手をつなぐ二人の手が暖かくって、どくどくと脈打つのがわかった。』
(この手に伝わってきた。でも…)
『…梨華は一人で死んだの?』
(うそ。ごっちん。ウソだよね。)
後藤の真意がわかりかねていた。
仕事も手につかず、そればかりが頭を巡っていた。
気づくと梨華は家の近くまで来ていた。
梨華は何かの物音に振り向き、辺りの様子を窺った。
辺りは静かで何もいつもと変わらなかった。でも、梨華は何かを感じていた。
足早に公園の横を通り抜けようとした瞬間、梨華は口を抑えられ公園の中に
引きずり込まれた。
「ご ごっちん?」
一瞬その相手が後藤に見えた。
梨華はもがいてその手から離れようとしたが、それはあっけなくはがれた。
犯人は保田だった。
保田はつんくに引き剥がされボコボコに殴られていた。
「やめて…」
梨華はつんくの元に走りよってつんくをとめた。
- 204 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時37分59秒
- 112.眩暈
吉澤が部屋に帰ると部屋に電気が点いていなかった。
暗い部屋の真ん中に毛布を被った保田が見えた。
「圭ちゃん何してるのよ。」
吉澤が電気をつけると、一層毛布を強く被った。
「なによ。また引きこもり?
前世が気に入らないから引きこもるの?」
そう言って毛布を引き剥がそうとする。保田の抵抗を受けるか一瞬保田の顔が見えた。
「どうしたの?その顔。」
保田の顔は腫れあがっていた。
「誰にやられたの?あたしの知ってる人?」
「つんくさんは悪くない。」
「はあ?つんくにやられたの。」
「あたしが悪いのよ。」
保田は泣いていた。
「何であやまるの?
ねえ。圭ちゃんさ、お金取られて、だまされて、殴られて、
そして反省して、なにやってるのよ。」
吉澤は立ち上がり、保田の肩に手をかけた。
「よし。警察行こう。あのおっさん捕まえてもらおう。」
保田は動揺した。
- 205 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時38分52秒
- 「そんなことしたら、あたしがつかまってしまう。」
「なんで?なんで圭ちゃんが捕まるの?」
「あたし、ひどいことしてしまったの。」
「な 何をしたのよ。」
「待ち伏せして襲おうとして…」
「誰を?」
「梨華ちゃん。」
「はあ?」
「そうしたら、つんくさんに見つかって…」
「なんで?なんで圭ちゃんが梨華ちゃんを襲わないといけないのよ。」
「彼女ブラックだから。」
「梨華ちゃんがブラックだったからって何で襲うのよ?」
吉澤の中に沸々と怒りが湧き上がってきた。
「仲間を裏切ったから。」
吉澤はその言葉で切れた。
「おい!それは前世の話でしょ。今、関係ないじゃん。
梨華ちゃんがブラックだって証拠どこにあるの?
圭ちゃんずっとブラックはあのおっさんだと言ってだじゃない。」
保田は号泣していた。
- 206 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時40分13秒
- 「ひとみ。 ブラックに遭ったんでしょ?どんな感じだった?」
「はあ?だって、圭ちゃんも見たんでしょ?」
保田は俯いたまま、ただ泣いていた。
「ねえ、どんな感じだった。」
「えっ? なに? み みてないの?
は〜あ、わかったぞ。圭ちゃん本当は何も見てないんでしょ。」
保田の泣き声が一層高くなった。
その声に吉澤は狂ってしまいそうだった。
頭をゆっくり振り、天上を見上げた。
「圭ちゃん。教えてあげようか?」
吉澤は、しゃがみ込んで泣いている保田の背中に顔を接近させた。
「ブラックは、圭ちゃん。あなただった。あたし見たのよ。しっかりとね。
10人目の裏切り者はあんたよ。圭ちゃん。
あんたがブラックだ。」
吉澤は静かに保田の背中に言葉を打ち込んだ。
- 207 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時40分48秒
- 113.鏡
ガシャ〜ン。
あの音が近づいてくる。
安倍は耳を澄ます。
ガシャ〜ン。
音は大きくなっている。
お腹の中にいる鼓動の持ち主が、その音とシンクロして脈を打つ。
「いや。いやよ。あんたなんか産まない。」
安倍はお腹を叩き続けた。
- 208 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時41分27秒
ガシャ〜ン。
その音は大きくなっていた。
矢口は窓の外を確認した。
「だいじょうぶ。」
そういうと矢口はカバンに自分の衣服を詰め込んだ。
ガシャ〜ン。
足音が不意に真後ろで聞こえた。
矢口は背後から髪を捕まれ後ろにのけぞった。
喉に冷たい感触があたった瞬間、喉から血しぶきが噴出すのを感じた。
一瞬のフラッシュバックのあと、矢口は振り返った。
そこに中澤が立っていた。
「いや!こないで。また、あたしを殺すの?」
矢口は後ずさりしながら、手当たり次第ものを投げつけた。
- 209 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時42分12秒
ガシャ〜ン。
その音は廊下の向こうから聞こえてきた。
辻は立ち上がって教室の中を見渡した。
「辻さん。どうしたんですか?」
教団の教師が、辻の突然の行動に驚いている。
ガシャ〜ン。
廊下の窓ガラスに人の影が映る。
「こ こないで、こないでお母さん。」
辻は窓際まで逃げ、しゃがみ込み泣き始めた。
「やだ。こないで。こないでくらさい。」
- 210 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時42分49秒
ガシャ〜ン。
足音は部屋の中まで響き渡るほど大きかった。
足音は階段を一段一段昇っていき、ついに部屋の前に到達をした。
ドアを開く音がし、また一歩ずつ踏みしめるように歩く音が響いた。
ガシャ〜ン。ガシャ〜ン。
足音は鏡の前で止まった。
鏡に全身の姿が映し出される。
全身黒ずくめの鎧を身にまとった騎士が、そこにいた。
騎士は顔面を覆っている仮面に手をかけ、それを外した。
鏡には、顔を高揚させた梨華の顔が映し出された。
梨華が目覚めたとき全身に汗をかいていた。
「あたしが…」
梨華は自分が意外と落ち着いていることに驚いた。
- 211 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時43分33秒
114.屋上
保田は、最後の電話を終えると携帯の電源を切った。
「後は待つだけだな。」
最上級の笑みをしようとしたが、顔が強張って少しも笑うことができなかった。
「笑顔でいきたいんだけど無理だったみたい。」
つんくの事務所の雑居ビルの前に人だかりができていた。
保田はビルの屋上からその様子を見守っている。
そこに、知った顔が2,3集まっていた。
「まだまだだな。」
保田が下を覗き込むたびに、下に集まった人からどよめきがおこる。
「ごっちん…」
梨華が現場に辿り着いたときには、すでにほぼ全員が集まっていた。
「あれ、どうしたの?」
梨華は、上空を指し飯田に尋ねた。
「屋上カギがかかっていて入れないの。」
「この場合、自殺…」
梨華は思わず口にしてしまった。
- 212 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時44分57秒
「9人全員集まった?」
保田が叫んでいる。
「あんたの妹がまだ。」
「じゃあもうちょっと待ってくれ。それから話すから。」
しばらくすると、吉澤が走ってやってきた。
「上にいるのお姉ちゃん?」
「そう、屋上カギがかかっていて入れないの。」
「お〜い。かんべんしてよ。」
「ねえ、圭ちゃん。とりあえず降りてきてよ。
下で話しようよ。」
保田は後藤にもらったムーンストーンを取り出し、しばらく見つめていたが
いをけっして立ちあがり話し出した。
「みんな聞いてくれ。あたしがブラックだったんだ。」
集まった野次馬には意味がわからず、ざわついていた。
「前世でみんなを裏切ったのは、あたしだったんだ。
自分で決着つける。それが一番良いのよ。」
そういうと保田は一歩前に踏み出した。
右足を踏み外し落下しそうになるが、
そのまま しりもちをついたおかげで踏みとどまった。
- 213 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時45分40秒
- 「自殺は転世できないんだからね。」
飯田が飯田なりに説得をした。
「転世なんかどうでもいい。もう、疲れたのよ。生きるのが。
あたしみたいなものは死んだほうがいいのよ。」
梨華は今朝見た夢を思い出していた。
マスクをとったときの顔を。
頬に血が飛び散ったその自分の顔を思い出していた。
「ちがう。ブラックなんかじゃない。私みたの。」
「何を?」
後藤が問う。
「ブラック。私がブラックだったの。」
「うそだ。」
保田はまた、立ち上がって一歩踏み出そうとする。
「私がブラックだったの。」
「どけー飛び降りる。」
叫び声とは裏腹に保田の腰は引けていた。
「私だって苦しい。あなただけじゃないのよ。」
そのとき、吉澤が屋上のカギを打ち破り保田の元へ走りよった。
その音に、保田は振り返り足を踏み外してしまった。
保田の両足が宙を切る。
間一髪のとこで、吉澤が保田の手を掴んだ。
「とりあえず、生きとかないとね。」
保田は助かった。
- 214 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時46分10秒
その姿を見て、後藤は不服そうな顔で梨華に向かって呟いた。
「死なせてやれば良いのに。」
そう言って、後藤は去って行った。
梨華はしばらく後藤の後姿を見つめていたが、安倍たちの視線に気がついた。
批判するようなその視線を背に受けて、梨華もまた一人で帰って行った。
- 215 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時46分50秒
- 115.彷徨う魂
後藤は梨華が帰っていく姿を眺めていた。
「やりすぎだよ。」
つんくがあらわれて、後藤にそう言った。
つんくもまた、先の騒動を見ていたのだ。
「せっかく救われるところだったのにね。
また苦しまなくちゃいけない。…可哀想にね。」
後藤はつんくに、ゆっくりと言い聞かせように話し掛けた。
「楽になれば。あんたも。」
後藤の言葉につんくは振るえ、遠い記憶の世界を彷徨いはじめた。
- 216 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時48分43秒
つんくは部屋に戻っても後藤の声が消えなかった。
島の風景がよみがえってくる。
古びた木でできた桟橋。
白い砂が広がる海岸。
高台へと続く小道。
白い二階建ての洋館。
埃くさい映画館。
窓から見える海。
そして、あの…
つんくは無意識のうちにロープで輪っかを作り、鴨居に吊り下げていた。
いくつもいくつも。
- 217 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時50分04秒
- 116.複雑
それから数日後のある日、梨華が会社から帰ってくると家の前に吉澤がいた。
「どうしたの、よっしぃー。」
吉澤は待っていたにもかかわらず、ばつの悪そうな顔をした。
「うん〜ちょっとね。
いいかなあ。」
吉澤は梨華の部屋を指差した。
- 218 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時51分16秒
- 「お姉さんその後どう?」
梨華はコーヒーを入れながら尋ねた。
「それがさあ。元気ってもんじゃないね。日本一元気な幸せ者だね。」
「えっ?」
「自分がブラックじゃなきゃ良いんだって。」
「へえ〜。」
「あっ、もう梨華ちゃんを襲うような馬鹿なことしないから。」
「うん。わかってる。」
梨華はコーヒーが入ったカップを吉澤に手渡す。
「ねえ。」
「ん?」
「元気?」
「うん。」
「つらい?」
梨華は小さく首をふる。
「なんでも言ってよ。あたしなんかじゃまあ…なんだけどさ。
その…自分が裏切り者だったっていう…その…ね…いろいろあるだろうし。」
吉澤のやさしさがうれしかった。
自分を気遣ってくれてくれることが単純にうれしかった。
「確かにそうなんだけど。
何というか、今までなかったんだ。こういうの。」
「こういうのって?」
「ん〜 たとえば思い出したくない過去があるとか、自分だけ仲間はずれにされるとか。」
「いじめられてるの?」
「ううん。そうじゃないの。なんていうか〜、今までの自分じゃないみたいな。
よかったのかもしれない。これで仲間になれた気がするの。」
「仲間って、あいつら?」
「うん。」
「あいつらと同類になったということ?」
「今となったら、みんなは仲間だと思ってないだろうけどね。」
「なんか複雑だなあ。」
「うん。それ。それなの。今までになかった感覚というか、
充実してるって言うことなのかな。」
「充実ねえ。」
梨華は実際充実していた。島から帰って以来初めて自分自身が楽になったと
感じていた。
(裏切り者なのに。)
梨華はその状況が気に入っていた。
- 219 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時52分31秒
「ねえ、よっしぃーどこか出かけるの?」
梨華は吉澤が大きなバックを持ってきたことを思い出した。
「うん。まあね。ちょっと友達んちにでもってね。」
吉澤はため息をついた。
「あたしさあ、圭ちゃんが元気になればなるほど、なんていうか
おちこんでくるんだよねえ。
…あたしも複雑だよね。」
- 220 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時53分33秒
- 117.死体のある風景
梨華はつんくの部屋のベルを押した。
中から後藤が現れた。
一時間ほどまえに後藤から電話を受けた。
「来てくれないかなあ。」
電話では説明できないということで、とりあえず吉澤と一緒に来たのだ。
後藤はドアの間から顔を出すと、梨華と吉澤を一瞥すると何も言わずに
二人を招きいれた。
「偶然、一緒だったから…」
梨華は後藤に言い訳をする。
「いいよ、別に。」
そういって部屋の中に入っていく。
部屋の中は以前きたときと違い、家具も荷物もほとんどなかった。
「なに?あのおっさんまた逃げたの??」
吉澤は呆れていた。
後藤はだまって部屋の奥まで行き隣の部屋を指差した。
「な……」言葉が、体が固まった。
そこにはうつぶせに倒れているつんくがいた。
その横には倒れたビンからこぼれ出した薬品が散乱していた。
「こ…これって。」
「死んでるよ。」
後藤は事も無げに言い放った。
「うそだろ?」
そう言って吉澤はつんくの手をそっと触った。
「うぁあー!つめたい!つめたいよ。」
吉澤は腰が抜けた。
「なんで?」
「電話があったから来てみたら…」
梨華は瞬きをするのも忘れて、つんくの姿を見ていた。
(えっ?)
梨華は突然ある考えが浮かび、後藤を振り返った。
後藤は梨華を見ていた。というより梨華を観察していた。
後藤と視線が合う。後藤はあろうことか、微笑んでいた。
「ふ〜ん。意外と冷静なんだ。見直しちゃった。」
- 221 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時54分35秒
- 118.犯罪
「ねえ、これ。」
吉澤は後藤から手紙を受け取る。
そこには、つんくの字で
“亡骸は人目のつかないところに埋めてくれ。”
と書かれてあった。
「埋めてくれって、勝手な!」
吉澤が手紙を投げ捨てる。
「こんなことできる…
えっ?ちょっと…」
吉澤は後藤の顔をみてうなった。
「まじで?あんたマジでこのおっさんの言うとおりするつもりなの??」
「いいじゃん。あたしこの気持ち少しわかるし。」
「わかるって…犯罪じゃん。」
「死体遺棄?」
「そう、それ。本気なの?あたし絶対やらないからね。
あたし警察に知らせるからね。」
「だめよ。あんたも仲間でしょ?」
「ばっ馬鹿?」
吉澤は頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。
- 222 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時55分07秒
- 梨華は、後藤の顔から目が離せなかった。
(ごっちんが?なぜ?何のために?何をしたの?でも…)
いろんな疑問が浮かぶ。
「あっあたし。」
梨華は後藤の顔を凝視したまま口を開く。
「私。やる。」
「えっ え〜?なんで〜?」
吉澤が驚いて梨華の両肩を掴み自分のほうに向かせて説得するが、
梨華の気持ちを変えることができなかった。
梨華は体の向きを吉澤に変えられても、後藤との視線を外すことができなかった。
「バック、大きなバックが必要だね。」
後藤は楽しそうであった。
つんくが死んだことも、梨華が手伝うということも、死体を隠そうということも、
すべてが気に入っていた。
- 223 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時56分18秒
- 119.招かざる客
ビ〜ビ〜。
ドアがそっと開かれ、矢口と飯田が入ってきた。
「あっ!逃げられた!」
つんくの部屋を見たとたん飯田が叫んだ。
「どうするべ。どうすれべさ。カオリあのお金返しえもらわないと困るべ。」
「矢口だって返してもらわないと。」
矢口と飯田は部屋中を探す。
「なんか残ってないだべ?どこいったかわからないだべ?」
部屋には家具が一つもなく、残されているものはいくつかのゴミ袋と
散らかった紙切れぐらいしか残っていなかった。
「あっごめんなさい。」
飯田がトイレのドアを開けた。
「矢口さん。つんくさんトイレにいた。」
飯田が矢口を呼び寄せる。
「あの〜あたしたち、こないだ振り込んだ“完全覚醒コース”の
料金を払い戻してほしんですけど。」
返事を待つが何も帰ってこない。
「聞いてますか?あのお金必要なんですよ。
あの〜開けますよ。あけちゃいますよ。」
そう言って飯田はトイレのドアを開けると、つんくが倒れこんできた。
「きゃぁ〜。つんくさん。だめ。だめだべ。離して。」
覗き込もうとしていた飯田の上につんくの体が乗り上げる。
「ちょっと、飯田さん、変だよ。つんくさん変だよ。」
そういって、矢口はつんくの脈を取る。
「死んでる!!」
- 224 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)20時56分50秒
後藤たちが、大きなバックを購入してつんくの部屋に戻ると
トイレから倒れこんだつんくの死体の前で、抱き合ったまま
放心状態の飯田と矢口を発見した。
「はああぁ。勘弁してよ。」
吉澤がうなる。
- 225 名前:G3HP 投稿日:2001年05月30日(水)22時42分48秒
120.使命
「お帰りなさいれす。」
吉澤の部屋に保田が帰ってきた。
「何?今日は辻だけなの?」
保田は部屋を見渡す。辻は口をへの字にして“困ったもんだ”の顔をして
保田を見つめる。
「まあ、そんなもんかもな。」
「どうしてれすか?」
「もう、前世の話は全部わかっちゃったし、後は殺されるだけだからな。
でも、あたしらは正義のために戦って死んだ。」
辻が激しく頭を振って同意する。
「ということは、現世でも何らかの使命をおって生きてるはずだ。」
「何の使命れすか?」
「それはわからないけど、何らかの使命がなければ現世で再びあたしらが
出会うはずないんだ。ののはどう思う?」
「ん〜……わかんな…ぃ…」
- 226 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月31日(木)02時51分23秒
- 元の鈴木あみのドラマが見てなかったから、ストーリー全然知らないんですけど
すごい不思議な話ですね。先が全く読めませんが、最後まで楽しみにしてるので
頑張って下さい。
- 227 名前:G3HP 投稿日:2001年06月05日(火)01時00分27秒
- 121.うそつきあんた
吉澤の部屋のドアが突然開いて、吉澤がはいて来た。
「あっ。圭ちゃん居たんだ。みんな連れてきたからお茶でも入れて。」
「みんなって?」
「ソウルメイトのお仲間。」
吉澤が嫌味っぽく保田に言う。
「どうも!」
後藤が玄関口で、にこやかに挨拶をする。他の者と比べると一人だけテンションが
違い完全に浮いた状態になっている。
さわやかな笑顔。
はりのある声。
輝く瞳。
どれも、今まで梨華が見たことのない態度だった。
「ちょっと良いかな?」
吉澤は辻の姿を見て、まずいと思い保田を部屋の外に連れ出した。
「なに?なんで外行くの?」
「いいから。」
「イイカラ?」
吉澤に引っ張られて保田は部屋を出て行った。
- 228 名前:G3HP 投稿日:2001年06月05日(火)01時01分00秒
「どうしたんれすか?」
辻が梨華の腕を引っ張って尋ねる。
「うん。ちょっと。」
「これなんですか?」
辻はつんくの入っている大きなカバンをつつく。
「旅行にでも行くれすか?」
「ちょっとね、いらないものを捨てに行くだけよ。」
後藤がやさしく辻の手をカバンからどける。
「そんな!嘘よ!」
保田の叫び声がした。
保田が泣きながら部屋に戻ってきて泣き崩れた。
「そんなこと信じられない。」
「でも、ほんとうなのよ。」
後藤は保田の肩に手を置いてやさしく諭す。
「どうしたんれすか?」
「父さんが死んだんだ。」
吉澤のごまかしに後藤が噴きだした。
- 229 名前:G3HP 投稿日:2001年06月05日(火)01時01分52秒
- 122.嫌悪
辻を返した後、ようやく今後の対策についての話し合いが始まった。
「埋めるって、どこかあてがあるの?」
「まあ、ないな。」
「誰か車は持ってるの?」
「…だれも持ってない…みたい。」
「こんなもん。いつまでここに置いてく気なの。生ものだよ。
そのうち匂いとかしてくる…」
「よっしぃー。やめてよ。」
梨華が叫ぶと、後藤が楽しそうに笑う。
「ごっちんも笑わないでよ。」
梨華は後藤の行動にいちいち腹を立てていた。
梨華には後藤がわざと自分が嫌がることをして、怒らせようとしているとしか
思えなかった。
- 230 名前:G3HP 投稿日:2001年06月05日(火)01時02分24秒
結局、車が必要ということで、安倍を呼び出すことになった。
出産間近の妊婦には刺激が強すぎるということで、
つんくの死は伏せて呼び出すこととなった。
「不法投棄じゃないよね?リサイクル法に引っかからないものなの?」
安倍は大きなお腹を抱え現れた。
「来週出産予定だべ。」
吉澤は頭を抱えた。
「車だけ貸してもらえれば…」
「だめだめ。なっちが運転しないといけないっしょ。」
お腹はシートベルトが付けられないぐらい大きかった。
- 231 名前:G3HP 投稿日:2001年06月05日(火)01時04分46秒
- 123.犯人
梨華たちは、安倍のトラックを待っていた。
「ねえ、なんで梨華ちゃん手伝おうなんて気になったの?」
「助けたいの。」
「つんくさんを?」
「ちがう。」
「じゃあ…」
「ごっちん。」
「へえ?なんで後藤?死体埋めるのがなんで後藤のためになるの?」
梨華は答える代わりに、少し離れたところにいる後藤を見た。
吉澤が梨華の視線を追う。
「ええっ?なに?あいつが…やった…の?」
「ん…というか…たぶんごっちんが、そう仕向けたんだと思う。」
「あいつならやりかねんけど。…どうするの。」
「どうするって…やめる?
やめるのは勝手だけど黙っててほしいの。」
「犯罪だよ。」
「うん。わかってる。わかってるけど、ごっちんをこのままにしておけないの。」
後藤はつんくが入ったカバンを足で弄んでいた。
- 232 名前:G3HP 投稿日:2001年06月05日(火)01時05分20秒
「これも、この現世でのあたしらの使命だとおもう。」
保田がポツリと呟いた。
- 233 名前:G3HP 投稿日:2001年06月05日(火)01時05分56秒
- 124.荷台
安倍のトラックの荷台につんくを積んで夜の東京を走っていた。
「ねえ、なんでつんくさん死んだんだろう。」
「借金じゃないの?夜逃げしないといけなかったんでしょ。」
「つんくさんはそんなことで死なないよ。」
梨華と吉澤はずっと後藤を見ていた。
「でも、家族もなくてお金もないなんて、あたしなら死んじゃうけどな。」
「あたしの代わりに死んだのかも。あたしあんなことしたから。」
「そんなわけないでしょ。」
後藤はつんくの入ったカバンの横に座っていた。
ときどき、そのカバンをさわっていた。
子猫でも撫でるかのように優しい目をして、そっと撫でていた。
梨華は後藤が歌いだすんではないかと思うぐらい後藤は浮かれているように見えた。
- 234 名前:G3HP 投稿日:2001年06月05日(火)01時07分05秒
「ねえ、あんたは何で死んだと思う。電話きたんでしょ?つんくさんから。」
後藤を睨み続けていた吉澤が後藤に聞く。
「わかんないわよ。そんなこと。」
「ほんと?ほんとにわからない?
だって、ごっちんつんくさんの気持ちわかるって言ったじゃない。」
「いったっけ?」
「言ったよ。」
「他人の事なんか知らないよ。」
「はぐらかさいでよ。ごっちん。
だって、ごっちん全然驚いていなかったじゃない。
つんくさん死んでも。」
「別に大騒ぎすることじゃないじゃん。同じなんじゃないの?
生きてても死んでても。」
「そんな言い方…」
「だってこいつも言ってたじゃない、島で帰れなくなったとき。
『生きてたってしょうがないじゃないか』
『東京に帰ったって何か良いことあるのか』って。」
それぞれが、東京での現実の生活を考えていた。
“前世の会合”それ以外で何も変わっていなかった。
前世の話をしているときだけが本当の世界のように感じていた。
- 235 名前:G3HP 投稿日:2001年06月05日(火)01時12分28秒
- 125.夜空の向こうに
車は埋立地についた。
東京の明かりが遠くに見えるが、そこは東京とは別世界だった。
さすがに9月ともなると、無造作に咲くたくさんの草花の間から
秋の虫がやかましいほど鳴いている。
「ここなら、一人になれるし東京の夜景も眺められるから寂しくないでしょう。」
後藤はスコップで穴を掘り始めた。
保田と吉澤もスコップで穴を掘り始めた。
『君たち9人はソウルメイトなんです。』
一堀ごとにつんくとの思い出が蘇ってくる。
『人は光の中に生き、死んで闇に帰ります。それを永遠、永遠と繰り返す。』
つんくの言葉が、つんくの顔が思い出される。
『覚醒すれば現世もきっと違ったものになってきます。
いや、もう変わってきてるのかもしれない。』
つんくは何を伝えようとしていたのか、そしてなぜ死を選んだのか、
私たちは変わることが出来たのか。梨華は必死に考えた。
(前世は、後藤は、つんくは私に何を求めているの?)
「私たちは変わることが出来たのかなあ?」
梨華の言葉が初秋の夜空へ吸い込まれていくった。
- 236 名前:G3HP 投稿日:2001年06月05日(火)01時15分21秒
- >>226 さん ありがとうございます。この話はどうしても書いてみたかった
話なので、何とか最後まで書き通すつもりですので、よろしくお願いします。
- 237 名前:226 投稿日:2001年06月05日(火)21時28分30秒
- 今回の話を読んでも全然先が読めない…。どうなるんだろ…。
>>G3HPさん
こちらこそ、楽しみに読ませて貰ってるので、最後まで頑張ってくださいね。
期待しています。
- 238 名前:G3HP 投稿日:2001年06月06日(水)22時01分36秒
- 126.陣痛
「ねえ、カオリ、ブラックと口きいている?」
「ブラックって?」
「あの石川だべさ。」
安倍と飯田はトラックに残っていた。
「口きいてるよ。なんで?」
「何でって、裏切り者じゃない。なっちたちあいつのせいで
殺されたんだべ。」
「でも、それは前世だしょ。」
「わかってる。わかってるべさ。けど、なんかさぁ。
…けど良かった、この子ブラックじゃなかったんだもんね。」
安倍はお腹をさすった。
「ウッ。。。」
安倍は擦っていたお腹を抱えて苦悩し始めた。
「ど、どうしたの?」
飯田の質問に答える余裕もなく、安倍は倒れこんでしまった。
安倍の額から脂汗がにじみ出てくる。
「だいじょうぶ?ねえ、あかちゃん?」
「いま、皆呼んでくるから待ってて。」
飯田はトラックから飛び出し、皆を呼びに行った。
- 239 名前:G3HP 投稿日:2001年06月06日(水)22時02分15秒
- 127.変わらないもの
梨華たちがトラックに戻ってくると、安倍はトラックの荷台で
気絶していた。
「安倍さん?」
梨華がかけると安倍は目を覚ました。
陣痛は収まっているようで、安倍の表情に険しさは見当たらなかった。
「よかった。」
梨華が安心して安倍の肩に手をおいた。
「触らないで!」
安倍は険しい顔をして、梨華の手を払いのけた。
梨華は払いのけられた手と安倍を交互に見つめる。
梨華はなぜか悲しい気持ちにはならなかった。
安倍の気持ちが梨華にはよくわかった。
(昔の私ならすごいショック受けてたんだろうな。)
梨華は自分が少しずつではあるが自分が成長している実感が得られ、
うれしくもあった。
ふと後藤の視線を感じた。
後藤は微笑みそうな自分の心中をすべてを見透かしている気がした。
『内側が変わり始めてる。』
後藤の言葉を思い出していた。
『同じものを見れなくなったらどうなるんだろうって、ずっと考えてた。』
(人は変わっていくものなんだ。)
梨華には初め変わることが怖かった。でも、変わっていく自分を素直に受け入れられる
自分が少し好きだった。
(ごっちん。内側が変わっても変わらないものだってあるんだよ。)
梨華は後藤にそう言ってあげたかった。
後藤を救ってあげたかった。
- 240 名前:G3HP 投稿日:2001年06月06日(水)22時02分57秒
- 128.蠢くもの
「あぁぁ〜!」
安倍がまた叫び声をあげた。
身をよじって苦しんでいる。
「病院!病院にいかないと。」
矢口のその声で全員が漸く動き出した。
トラックで病院に向かう最中、安倍の陣痛は収まらなかった。
それどころか痛みは激しくなっていた。
「大丈夫だから。もうすぐ病院だから頑張って。」
そう声をかけるぐらいしか出来ず、みながただ遠巻きに安倍を見ているだけだった。
「背中擦りましょうか?」
梨華が安倍に近づくと梨華は突き飛ばされてしまった。
「近づかないで!」
安倍は顔を脂汗と涙でグシャグシャにして苦痛にたえながらも梨華を拒絶した。
「あなた…ブラックだから…」
梨華はその姿さえ微笑ましく思えた。
「この子、駄目かもしれない…あなたに…ブラックに殺される!」
安倍が梨華を睨みつける。
「そんなことない。私そんなことしないから頑張ってください。
あなた、お母さんなんだから。」
「うあぁぁぁあぁぁ!」
破水した。
その液体が後藤の足元まで広がった
後藤は怯えていた。
自分と敵対するものが近くで蠢いているのを感じていた。
足を縮め、その液体から身をよじるようにして逃げた。
「もうだめ!生まれる!」
- 241 名前:G3HP 投稿日:2001年06月06日(水)22時03分32秒
- 129.新生
病院で安倍の赤ちゃんを眺めたのはそれから一時間後だった。
結局、赤ちゃんは車の中で梨華の手で取り上げられた。
そのときの梨華の応急処置が母子ともの命を救うことが出来たのだ。
「梨華ちゃん助産婦に慣れるよ。」
矢口のその言葉を噛み締めていた。梨華は自分の体のそこから“自信”という力が
沸いてくるのを感じていた。
だから、後藤の悲しい視線に気がつかなかった。
「つんくさんの生まれかわりだね。」
保田がうれしそうに呟く。
「何言ってるのよ。つんくさんは…」
みんなが一斉にある事を思い出した。
「忘れてた。“あれ”置いてきたまんまだ。」
- 242 名前:G3HP 投稿日:2001年06月06日(水)22時04分10秒
- 130.再生
梨華たちがつんくの元に戻ると、そこにつんくの遺体はなかった。
梨華たちが掘った穴と遺体を入れていたバックだけが残っていた。
みな何も言わず、そのバックを眺めていた。
「生き返ったのか?」
吉澤の言葉が梨華の頭を通り過ぎていく。
こんな場所で人に見つかったとは考えにくかった。
(生き返ったんだ。)
梨華は確信していた。
後藤が一人車のほうに歩いていく。
その後ろ姿は、まるで親友か誰かの葬式帰りのように寂しく痛々しかった。
- 243 名前:G3HP 投稿日:2001年06月09日(土)06時26分40秒
- 131.手紙
“すべてが嘘だ。君たちはソウルメイトなんかじゃない。”
その手紙が全員に届けられたのは、それから数日後だった。
送り主の名前は書いていなかったが、つんく以外に梨華は考えられかった。
- 244 名前:G3HP 投稿日:2001年06月09日(土)06時27分34秒
- 132.お見舞い
梨華と吉澤は安倍のお見舞いにきていた。
安倍も赤ん坊もいたって順調の様子に梨華は安心をした。
梨華は赤ん坊をそっと抱き上げた。
肌着を通してその暖かさが伝わってくる。
まだ目さえ良く見えていないその小さくて弱々しい物体が
動くたびに、梨華の腕に心にその重さと力が伝わってくる。
(なんて眩しいんだろう。)
梨華は目をほそめた。
「この手紙なんだけど。」
吉澤が例の手紙を安倍に手渡す。
「うそよ。絶対信じないから。」
安倍は手紙を一読すると声を荒立てた。
「いまさらソウルメイトじゃないって言われても…
もう生んじゃったべさ。」
しばらく手紙を見ていた安倍だったが、
「なかったことにする。」
そういって安倍は手紙を破いた。
「でも、これはつんくさん…」
「うるさい。うるさい。うるさい。うるさい!」
安倍は激しく首をふり耳をふさいだ。
- 245 名前:G3HP 投稿日:2001年06月09日(土)06時28分29秒
- 133.偽名
それから一週間がすぎた。
梨華の部屋に全員が集まっていた。後藤も。
「なんかわかった?」
「つんくは偽名、小室もね。こりゃあどんなに探しても本人にたどりつかんかも
知れないね。」
つんくの部屋に残されていた偽造免許書を吉澤がみんなに渡した。
小室、和田、はたけ、たいせい…いろんな名前の免許書が並んでいる。
「あいつどっかで笑ってるんだろうね。
あのさ、人間は騙す側と騙される側に別れるんだよ。
あいつあたしらのこと何べん騙しても良いと思ってるんだよ。」
「でも、ほんとうにそうかな?あの手紙なんか別のもの感じるんだよね。」
梨華は島でのつんくを思い出していた。
『あなた達9人は、“ソウルメイト”だからです。』
つんくのあの言葉。
『石川 梨華とはどういう人間ですか?』
やさしく、あやしく、ときには悲しそうにしていたつんくの顔。
(どこに居るんだろう?)
「ほかに探す当てないよね?」
- 246 名前:G3HP 投稿日:2001年06月09日(土)06時29分20秒
- 134.自由
「死んだ人のこと調べてどうするの?」
後藤が突然かすれたような声で呟いた。
後藤は窓際で膝を抱えて、外を見つめたままだった。
「だから死んでないって。」
保田が強い口調で否定した。
「ほんと?ほんとにそう思うの?」
「死んだふりしてたんだよ。」
「あたしは死ねなかったんだと思う。」
梨華はそう思ってた。
(多分ごっちんも…)
「あたしは、あたしたちがねソウルメイトじゃないって事のほうが重要だから、
もし死んでないなら、会ってその事聞いてみたい。」
安倍はまだ名前を付いていない赤ん坊のおしめを変えながら心配そうに言う。
安倍にとって、望んでいなかった子供との繋がりはソウルメイトでしかないのだ。
ソウルメイトだから産んだのだ。
その前提が崩れようとしている今、目の前の赤ん坊に名前は必要なかった。
- 247 名前:G3HP 投稿日:2001年06月09日(土)06時30分19秒
「誰にも理解できない人生ってあるんだよ。
つんくはね、自由になったの。」
後藤は相変わらず外を見つめたまま消えそうなくらい小さな声で話す。
「自由?死ぬことが」
「そう。」
「なにわけわからないこといってるの。」
「生きてるとしたら、どうするの?」
「探して会いに行く。」
「どうやって?」
後藤は首だけふりかえって、みんなを見渡す。
「それは…」
「あの〜、島に小さなお墓があったです。
たしか、平家って書いてあった…です。」
辻の言葉に皆が驚いた。
- 248 名前:G3HP 投稿日:2001年06月09日(土)06時31分11秒
- 135.墓碑銘
“平家まこと”墓にはそう書かれていた。
それは、島の小高い丘の上に建つ洋館から少し離れた場所、
海を見渡せる崖の上に、ぽつんと生えている木の下にその小さな
石は置かれていた。
その石に風化されて読みにくくなって入るが、確かにそう書かれていた。
「この名前で調べてみるよ。」
「でも、死んだ人の名前だよ。」
「それしか手がかりないんだから。」
保田がインターネットを駆使して調べた結果、
横浜の大学の名簿にその名前を見つけた。
「ねえ、行っていようよ。カオリなんかわくわくしてきた。」
飯田の言葉どおり、全員がワクワクドキドキしていた。
後藤を除けば…
- 249 名前:G3HP 投稿日:2001年06月09日(土)06時31分59秒
- 136.名刺
横浜の大学では情報が得られなかった。
しかし、大学の近くの食堂の店長から情報が得られる事ができた。
“平家まこと”はその大学の2年まで在籍していた。
「大学の構内で死んだからよく覚えているよ。」
そのとき、父親が現れたらしい。
「それって、この人ですか?」
保田がつんくの写真を取り出す。
「そうそう、この人。でも、もっと恰幅が良い金持ちって感じだったな。
どっかの社長さんって言ってたな。たしか名刺を置いてったはず。」
そういって店長は店の奥に名刺を探しに行った。
- 250 名前:G3HP 投稿日:2001年06月09日(土)06時32分35秒
- 137.本名
渡されたその黄ばんだ名刺には大阪の住所が載っていた。
「どうする?」
「大阪まで5…6時間。今から行くと夕方になりそうだな。」
「大阪いきたいれす。あいぼんに会えれるです。」
辻のその言葉で結局、奈良の加護の家経由で大阪に向かった。
「しかし、あのつんくさんが会社の社長さんだったなんてね。」
“平家義雄”それがつんくの本名だった。
- 251 名前:G3HP 投稿日:2001年06月09日(土)06時33分45秒
- 138.痕跡
奈良で加護をピックアップした。
「話はだいたいののからメールで聞いてる。」
加護はそう言って、つんくの会社までの地図を手渡した。
「インターネットで調べといたで。」
ちょっと自慢そうに梨華にそういった。
加護を乗せて大阪のその会社に着いたのは夜の7時を回っていた。
会社には人影が見当たらなかった。梨華たちが警備室に尋ねると平家義雄を
知っている人物がいた。
「前の社長さんだったんだよ。ワンマン社長でね。
初めっから評判よくなかったんだ。理想論ばかり振りかざしてんで
最後は誰にも相手にされなくなってさ。
最後は自らやめざるを得なくなったんだよ。」
「今、どこにいるか知りませんか?」
「さあね。この会社出てったきり、あまり話し聞かないしね。」
保田はあからさまに落胆していた。
だれもが、ここで終わりだと感じていた。
「奥さん。奥さんがまだ神戸にいるはずだよ。確か住所もわかるはず。」
なんとか、また痕跡が絶えずにすんだ。
- 252 名前:G3HP 投稿日:2001年06月09日(土)06時35分45秒
- 139.藪枯らし
神戸に平家の奥さんはいた。
年のころは50半ばのその奥さんは、茶色のシンプルなワンピースを着た
芯の強そうな凛とした顔立ちをした女性だった。
夜分遅くの突然の梨華たちの訪問に、笑みで迎え入れてくれた。
その笑みに、隠された悲しみと優しさが滲み出てきていると梨華は思った。
(つんくさん、どのくらい一緒に暮らしてないんだろう?)
苦労した分だけ実際の年寄り老けて見える。
「前世セラピーね。そんなことやってたんですか。」
平家みちよは、特に驚くもなく淡々とした感じで話した。
「正直言ってこれ全員被害者の会みたいな…」
「被害者じゃない。」
保田が吉澤の言葉を遮る。
「あはは
…私も被害者。」
そういってみちよが右手を上げた。
「ねえ、貴方たち藪がらしって知ってる?」
「藪がらし?」
「それが生えるとね、周りの植物枯れちゃうの。
居るのよねそういう人って。
枯らすというか自分がはみ出しちゃうのかな?」
みちよはタバコに火をつけてゆっくり煙を吐き出す。
- 253 名前:G3HP 投稿日:2001年06月09日(土)06時36分34秒
- 「会社追い出されたから出てったんですか?」
「地震あったでしょ。」
「阪神大震災」
「そう、あの人ね三日間埋まってたの。
あのころ家が三宮にあってね、それが全壊して、
瓦礫の下で真っ暗の中で声も出さなかったらしくて…
私達も死んだと思ってたの。
本人も生きてるんだか死んでるんだかわかんなかったみたいで。
やっと掘り出されて病院に収容されて、そこで失踪したの。
一番逃げちゃいけないときに失踪したのよ。一人でね。
…そういうやつなのよ。」
- 254 名前:G3HP 投稿日:2001年06月09日(土)06時38分21秒
- 140.今際の際
「あの、南雲さんは本当に死にたかったんでしょうか?」
梨華は疑問に思っていたことを思い切って訊いてみた。
「またやったんだ。」
みちよは“あははは”と乾いた笑いをした後、呆れた顔をしていた。
「はい。でも多分生きて…」
「失敗したでしょ?詰めが甘いのよね、恐いからでしょうけど
わざと死なない方法でやってるみたい。」
「ぎりぎりまでいって、
ぎりぎりまで行ってこっち側にもだれたとき
一番生きてるって実感するから。」
後藤がそう呟く。
梨華は、後藤のこころがつんくのと近いところにあったことが今理解できた。
(だからあんなに反発したり、遺体を埋めようとしたんだ。)
「私にはわかんないわ。」
みちよは非難めいた口調で言い放った。
「でも、法律上はもうすぐ死ぬことになるの。
失踪して7年経つから私が失踪宣告を出せばそうなる。」
「出すんですか?」
「ええ。」
「一度も連絡ないんですか?」
「ええ。」
「もし戻ってきたらどうするんですか?」
「たたき出しますよ。」
みちよはまた乾いた笑い声をあげた。
- 255 名前:G3HP 投稿日:2001年06月09日(土)06時40分02秒
- 「あの〜。どうしてもっと早く、奥さんのほうから別れなかったんですか?」
梨華の質問にみちよは顔に残っていた笑顔を消し去ってしまった。
「ごめんなさい。」
「いいの。…あのね、いいときもあったのよ。瀬戸内海に小さな島があってね。
そこでずっと漁師やってればよかったのにね。一旗上げるんだって。」
「その島私達も行きました。」
「えっ?どうやって?」
飯田の言葉にみちよは腰を浮かした。
「連れていかれたんです。」
「そこにお墓があったんれす。“平家まこと”ってかいてあったれす。」
「あのお墓はね、息子が死んだ年にあの人が自分で作ったの。
まことが一番好きだった場所に墓を作るんだっていってね。
そのころからかな、自殺…繰り返すようになったのは。
…あのひと、この世を生きていくのには弱すぎるのかもしれないね。
でも、私には優しかった。一度も手をあげたことがなかった。
どこに居るのかしらね。今ごろ…」
「可哀想に。」
- 256 名前:G3HP 投稿日:2001年06月09日(土)06時41分21秒
- 141.島へ
梨華たちはトラックに戻った。
フォロがついているとはいえ、やはり少し肌寒く感じた。
「可哀想って言ってたね。」
梨華はみちよを思い出していた。『可哀想に』っと言ったときのみちよのかおは
何もかも許している顔をしていた。
「甘いよね。あれは失踪宣告出せないね。」
吉澤が皮肉っぽく言った。
「ねえ、島に行ってみない?」
飯田があたしひらめいたのと言ってみんなに尋ねた。
「これから?」
「だめ?」
「あたし、あの島に居る気がする。」
「つんくさんれすか?」
「つんくさんも小室さんも平家さんも」
「うち、いってみたいわ〜。」
加護の言葉にみんなが頷く。
「ねえ、ごっちんも行こうよ?」
後藤は梨華を睨んでいた。
「梨華、怖いんでしょ。あたしのこと。
あたしが何するかわからないって思ってるんでしょ。」
梨華は切なかった。
(違うよ。ごっちん)そう言いたかったのだが、臆してしまい声が出なかった。
「行ってもいいよ。確かめたいのつんくが死んでるってことを。」
- 257 名前:G3HP 投稿日:2001年06月09日(土)06時42分22秒
- 142.消えた手
いつの間にか梨華は眠っていた。
久しぶりにあの夢を見ている。
前と同じように、みるくのような濃い霧の中を梨華を逃げていた。
足元がよく見えない中必死に走っていると、霧の中から手が現われた。
「ごっちん!」
もう久しく見ていなかったこの手に梨華は胸躍った。
でも、前とは違うことを梨華は知っていた。
「行くよ!」
そう手が見えるほうに声をかけると、梨華は後藤の手をしっかり握った。
後藤の走る速度が遅いためか、梨華が引っ張る後藤の手が重い。
「あっ。」
ついに手は離れてしまい。後藤は霧の中に消えてしまった。
「ごっちん!ごっち〜ん!」
梨華が叫んでも後藤の返事はなかった。
ただ、梨華の声が切りに吸い込まれるだけであった。
- 258 名前:G3HP 投稿日:2001年06月09日(土)06時44分51秒
- 143.ヘッドライト・テールライト
目を覚ますとトラックは停車していた。
梨華の手に生々しく後藤の手の温もりの余韻が残っている。
梨華は後藤を探すがトラックにいない。
焦ってトラックの外に出ると、後藤は橋の上の欄干から身を乗り出しすような姿が見えた。
飛び降りそうなその姿に梨華は焦って声をかけた。
「ごっちん。ここにいたんだ。」
後藤は真っ暗な川面を見つめたままだ。
「…私ね。最初つんくさんを殺したのごっちんだと思った。」
梨華は欄干に背をもたらせて後藤の顔を覗き込もうとした。
横顔に表情はなく、相変わらず暗い水面を見つめている。
欄干に触れている背中に冷たさが伝わってくる。
「でも、そうじゃなくって、つんくさんはごっちんがずっとしたいと
思っていたことをやっただけだもんね。」
後藤は漸く梨華の方向を見た。
力なく梨華を睨む。
「私、島でごっちんが居なくなったときごっちんの幻を見たの。
ごっちん『あたしはもう死んでる。』っていってた。すごく寂しそうな顔してた。
でも、ごっちんはそんな顔しない。ごっちんはもっと強い人だから…そう思った
でもあれやっぱり、ごっちんだったのかな?」
後藤は静かに梨華の首に両手をまわした。
そして、ゆっくりと指に力を入れ首をしめる。
後藤のその冷たい体温が首に伝わってくる。
「そうしたいの?」
後藤の指から力が抜けた。
「私にはごっちんを止める力がないんだね。
…わかったよ。いっしょにいってもいいよ。」
そういって、梨華は微笑んだ。
後藤の目に戸惑いと悲しみの表情が表れる。
薄く涙が潤んだその瞳に、梨華の強いそして悲しい瞳が映し出される。
- 259 名前:G3HP 投稿日:2001年06月09日(土)06時45分37秒
- 「でも私つんくさんの人生が見たいの。
死ねなかったんだよ。何かが死なせなかったんだよ。ごっちんは知りたくないの?
私は知りたい。だって死にたくないもん。
私は、私は死なせたくない。」
(ごっちんを…)
後藤は梨華の首にまわした指を外し、後ずさんで行った。
(私、ごっちんを見てるから。ずっと見てるから。)
道路を忙しなく走る車のヘッドライト眩しく永遠と連なっていた。
- 260 名前:G3HP 放置ではないけど… 投稿日:2001年06月09日(土)22時26分39秒
- 今月末ぐらいまで、更新できませんが放置ではありません。
スレ消去しないでね。
- 261 名前:G3HP 投稿日:2001年06月09日(土)22時29分18秒
- すみません ageてしまいました。
ウザイでしょうがすぐ沈んでいきますので…
申し訳ありません。
- 262 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月13日(水)02時07分17秒
- ageられたことにより、
新たな楽しみを発見できました。
次の更新、お待ちしております。
- 263 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月17日(日)00時46分16秒
- 自分も「フカモグ」好きでした(全部は見てないけど)。
作者さんはかなり読み(見?)こんでるようですね。
元ネタのラストはかなり印象的だったんで、こっちがどんな終わりを迎えていくのか、
それが楽しみです。
- 264 名前:パク@紹介人 投稿日:2001年06月19日(火)19時09分23秒
- こちらの小説を「小説紹介スレ@銀板」に紹介します。
http://www.ah.wakwak.com/cgi/hilight.cgi?dir=silver&thp=992877438&ls=25
- 265 名前:G3HP 投稿日:2001年06月25日(月)23時56分15秒
- 144.漁港
早朝になって漸く島に一番近い港についた。地元の漁船だけで客船などない。
ここからは、漁船をチャーターして島に渡るしかないのだ。
梨華は漁港を見渡した。早朝とはいえ漁はすでに終わり船は殆ど港に戻っているようだ。
繋がれている漁船の数は20隻程度で、漁船自体も大きなものは見られなかった。
それが波に揺られてわずかに上下動している。本当に小さな漁港だ。
梨華は漁船の一つ一つを確認していく。漁師の姿が見当たらない。
あきらめかけたころ、保田が漁師を見つけた。
いかつい顔をした小柄な漁師との交渉はすんなりとまとまった。
交渉をしていた吉澤が梨華の元へお金を徴収しにやってきた。
「ねえ。あれどうしたの?」
吉澤が目線を後藤に向ける。後藤はトラックの荷台で放心していた。
前髪が顔半分を隠している。その姿からは嘗ての孤高の人後藤は感じられなかった。
梨華の手を引いて教員室から走り出た強い後藤はそこにはいなかった。
「うん。ちょっと。」
梨華はあいまいな返事でごまかした。
(私はごっちんの何を知っていたんだろう。)
梨華はもう一度後藤を見つめた。
- 266 名前:G3HP 投稿日:2001年06月26日(火)00時02分52秒
- 145.漁船
調達した小さな漁船は9人と安部の赤ん坊を乗せて港を出た。
運良く波はそんなに大きくはなかった。
しかし船室もなく9人では定員オーバーではないかと思われるこの船は
その小さな波でも大きくゆれた。
吉澤が船首に立ち、ジッと先方を睨んでいる。その後で各々が
海に落とされないようにしっかりつかまっている。
その合間を辻と加護が走り回る。
梨華は船の中ほどに立ち後藤を見やった。
後藤は船尾で丸くなって横たわっていたが、眠っているわけではないようだった。
目を見開き視線こそ船床に向けられているが、
それはただ後藤の瞳に映し出されているだけだった。
- 267 名前:G3HP 投稿日:2001年06月26日(火)00時06分22秒
出港して小一時間が過ぎところ先方に見覚えのある小さな島が現われた。
「島が見えたぞ!」
吉澤が振り返って叫ぶ。その声で辻と加護が船首へ駆けていく。
それと入れ違いに吉澤が梨華の元にやってきた。
「ねえ。あたしらつんくのおっさんに本当にあっていいのかな?」
吉澤は保田を振り返った。
つんくに会うことによって保田が元に戻ってしまうと吉澤は感じていた。
それが良いことなのか悪いことなのかわからなかった。
保田自身もそれはわかっていた。
あの手紙のとおり前世はないのかもしれない。
自分を支えているものが足元から崩れ去るかもしれない。
このままでいても、時間がたてば自分が崩壊していくのはわかっていた。
もう、時は進み始めてしまったのだ。あの手紙によって。
「ちゃんと自分自身で決着つけないと。」
保田は自分にそう言い聞かせた。
島がはっきりと見えてきた。
- 268 名前:G3HP 投稿日:2001年06月26日(火)00時09分26秒
- 146.再上陸
島は徐々に大きくなり、いまや高台の洋館の窓を一つ一つが確認できるようになった。
梨華はその窓を注意深く見た。そこにつんくの姿を見つけられるのではと考えがえ、
そこに人影を確認することはできなかった。
船はやがて着岸した。
辻と加護船から飛び降りる。吉澤がそれに続き桟橋に降りる。
梨華は後藤の元へ行き後藤の肩に手をかけた。
「ごっちん、着いたよ。」
後藤はゆっくりと頭を上げて梨華の顔を見た。
後藤はいぶかしげな顔をした。梨華がそこにいることが不思議だとでもいいたげだった。
梨華は無理やり後藤を立たせて船を降りた。後藤の足取りがおぼつかない。
まるで、入院中の病人と看護婦のような姿だと梨華は思った。
- 269 名前:G3HP 投稿日:2001年06月26日(火)00時11分55秒
浜辺から洋館に続く細い道を登っていく。つい数ヶ月前に来た場所だったが、
木々が色を変え様子が一変していて初めてきた場所のようだった。
梨華たちは洋館のところまでたどり着くと、洋館には入らずに岬の先端にある
“平家まこと”の墓に向かった。つんくが上陸しているならここに痕跡があると
考えたからだ。
梨華は前回の上陸時には気づかなかったその小さな墓を見つめる。
墓は草花の中に埋もれておりもう何年もその姿を変えた様子が見られなかった。
「とりあえず家に入るか。」
加護が吉澤のその声を受けて洋館の玄関へと走る。辻がその後を追っかけていった。
- 270 名前:G3HP 投稿日:2001年06月26日(火)00時14分55秒
- 147.誤解
加護が扉を開けると埃っぽい臭いが鼻をついた。
あのときのままだった。辻が加護の横をすり抜けた部屋へ入る。
「いちば〜ん。」辻がはしゃぐ。
「のの静かにせえや!」加護が耳を澄まして物音を聞くが何も聞こえてこなかった。
「つんくさんおらへんのかなあ。」
人の気配は感じられなかった。
「まあ、そんなこといわないでとりあえず探そう。」
保田が肩を落とす加護を励まし洋館の奥へと進んでいった。
1階、2階、地下の映画館からトイレや台所の戸棚まで、およそ人が隠れそうな箇所は
全て探したがつんくは見つからなかった。
- 271 名前:G3HP 投稿日:2001年06月26日(火)00時17分27秒
「誰よ!島につんくさんが居るっていったの。」
飯田が痺れを切らせてそういったときにはすでに日が暮れかかっていた。
島中を探しても結局つんくは見つからなかった。
「絶対居ると思うんだけどな。」保田が弁護するがみんなの矛先が自然と
梨華のほうに向いてしまう。
「あなたでしょう、一番いきたがってたの。」
「でも、私は…」
「つんくさん居るっていったじゃない。」
「でも…」
「あなた何たくらんでるのよ。あたしたちをこんなところに連れてきた。」
飯田が梨華の腕に掴みかかる。
「やめなよ。」
吉澤が飯田の腕を掴んで梨華から引き離す。
「あの手紙だって…あなたでしょ。出したの。」
それでも飯田は梨華に詰め寄ろうとする。
「私出してません。」
梨華が反論するが誰も聞いていない。
「でもね。」
「出してないって言ってるじゃない。なんで梨華ちゃんが出さないといけないのよ。」
吉澤が声を荒立てる。
「だって、ブラックだもんね。」
その言葉に何人かが頷く。
- 272 名前:G3HP 投稿日:2001年06月26日(火)00時18分53秒
「つんくさん殺したのもあなたでしょ。そうやって一人ずつあたしらを
殺そうとしてるんじゃないの。」
「梨華ちゃんはそんなことする人じゃないれす。」
辻が梨華の前に立ちはだかり梨華をかばおうとするそのあまりの真剣な姿に、
全員が毒気を抜かれてしまった。
- 273 名前:G3HP 投稿日:2001年06月26日(火)00時20分37秒
- 148.霧の中へ
「兎に角、それを調べるためにこの島に来たんだからつんくさんの手がかりになるものを
もう少し探そう。」
保田が立ち上がり森へと向かう、その後にみんなが続いた。
海辺から流れてきた濃い霧が島を包もうとしていた。
その霧はすでに霧が立ち込めており、行く手を阻んでいた。
全員が森の入り口で立ち止まって躊躇する。
「はいっちゃだめ。」
振り返ると後藤が立っていた。わずか数メートル後に立っているだけなのに
後藤の姿は霧に霞んでいる。
梨華はそのまま後藤が後藤が霧の中に溶けていこうとしているように感じられた。
「なくしてもいいの?」
「なにを?」
「前世…
みんなあの前世があったから、何とかやってこれたんでしょ?」
「けど、あの人に会わないと、あたしたち前へ進めない。」
そう保田が言った。それは保田だけでなく、みんなが思っていることでもあった。
「つんくはもう前世を否定しようとしてるんだよ。」
「だからこれからそれを確かめに行くんだよ。」
「確かめるまでないよ!」
後藤の声がいきなり激しくなった。
「私、いく。よくわかんないけど、恐いけどここで引き返したら…
逃げちゃいけないんだよ。ごっちん。」
後藤と梨華は見詰め合った。今や後藤の顔すら霧に溶けていこうとしている。
「いこ。ごっちん。」
梨華は手を差し出すが、後藤は首を振り後ずさった。
後藤の姿が完全に見えなくなってしまった。
「約束して。私が戻るまで待ってるって。ここで待っているって。」
後藤の居る方向に向かって梨華は叫ぶが返事はなかった。
- 274 名前:G3HP 更新しました。 投稿日:2001年06月26日(火)00時24分26秒
- >>262 263さん レスありがとうございます。
また、すこしずつ更新していきますので、
よろしかったら最後までお付き合いください。
- 275 名前:G3HP 投稿日:2001年06月27日(水)19時39分25秒
- 149.声
森は深い霧の中にあった。霧は梨華の持つ懐中電灯の明かりを全て吸い込むかの
ようだった。足元がよく見えなくなってきている。
「気をつけて。前の人を見失わないように。」
吉澤が注意を促す。
「ねえ、帰ろうよ。こんなんで、つんくさん探せるわけないじゃん。」
矢口が周囲の森を見回していった。
「そうだね。帰り道がわかるうちに戻ったほうがいい。」
振り返ると一瞬霧が風に流され道がはっきりと現われる。
今を逃すと道がわからなくなる。誰もがそう思った。
加護が辻の手を引いて走り出した。
「あっ駄目!」
吉澤の静止を振り切り全員がその道に向かって走り出した。
一瞬梨華は出遅れてしまった。
「まって。」
梨華も走り出す。懐中電灯の光に頼っていられない。
足元の倒木や小石に足をとられそうになる。百メートルぐらい走ったところで
風が出てきた。また濃い霧が流れ込んでこようとしている。
「梨華。」
後藤の声が突然したような気がして梨華は立ち止まる。
辺りを注意深く眺めるが後藤の姿は見つからない。
「ごっち〜ん。ごっちんいるの?」
耳を澄ますが後藤の声はそれから聞こえてはこなかった。
ただわずかに風の音にまぎれて波の音がするだけだった。
- 276 名前:G3HP 投稿日:2001年06月27日(水)19時40分30秒
気がつくと梨華は取り残されてしまった。
闇の中をゆっくり海岸のほうへ歩き出したとき懐中電灯の光が突然消えた。
「やだ。なんで。」
梨華は懐中電灯を叩くが反応はなかった。
梨華の周りを闇が取り巻く。立ち止まって森を眺めるが、すぐ近くにあるはずの
木さえ見えない。梨華は怖くなりその場にしゃがみこんでしまった。
「助けて、ごっちん。」
いつまでたっても梨華の耳に誰の声も聞こえない。
霧が晴れるのを待つしかない。梨華はその場所で夜を明かす覚悟を決めた。
「助けて、梨華。」
どのぐらい経っただろう。突然再び後藤の声が聞こえた。
梨華は顔をあげ声のしたほうを眺める。
遠くに光が見える。
「ごっちん?ごっちんいるの?」返事はない。
梨華は光のもとへ這うように歩んでいった。
- 277 名前:G3HP 投稿日:2001年06月27日(水)19時41分26秒
- 150.夢と現実
「どうぞ。ここに。」
つんくがいた。つんくはまばゆく輝くランタンを手に大きな木の下に腰掛けていた。
にこやかに笑って梨華に座るように促す。
霧が光を散乱させ、つんくの輪郭をぼやけさせている。
「これ、夢ですか?」
「夢?夢こそが現実でしょ?あなた方にとって…。」
梨華の体も輝く霧に溶けている。どこまでが自分の体でどこからが霧なのか
わからなかった。夢とも現実ともとれるこの空間に梨華は立っていた。
梨華は辺りを見回すが後藤の姿はそこになかった。
(あの声はどこから聞こえてきたんだろう。)
やはりこれは夢なのかもしれないと梨華は思った。
- 278 名前:G3HP 投稿日:2001年06月27日(水)19時42分36秒
「早く始めましょうか、時間がないですから。」
「始めるって何を?」
「では、どうしてここへ?」
「霧の中を歩いてたら…。」
「霧?」
「あなたを探しに森に入ったら霧が出てきて、はぐれちゃって…。
そうだ、あなたに聞きたいことがあったんです。」
夢でも現実でもよかった。梨華は答えがほしかった。
疑問に思っていたいたことをつんくにたずねてみる。
「私たち全員に手紙を出したでしょ?“全部嘘だ”って。
“ソウルメイトなんかじゃない”って。
あれどういう意味ですか?」
「そのままの意味ですよ、そのままの。」
「じゃあ…私たちを騙したっていうの?前世セラピーはインチキだったって…。」
「インチキじゃない!必要な嘘です。」
「そんな…。でも、皆夢を見たじゃないですか。前世の夢を。」
「本当に夢を見たのでしょうか?」
「だって私も…」
梨華は真っ黒な“ブラック”の仮面を被る自分の姿を思い出していた。
あの鎧の重さを感じていた。肌に触れる鉄の質感。そして血の臭いまで
感じていたあの前世の夢を思い出していた。
- 279 名前:G3HP 投稿日:2001年06月27日(水)19時44分37秒
- 「本当に前世の夢を見たのでしょうか?
辻さんはなぜあの時前世の夢を見たのでしょう。」
「それは、覚醒したから。」
「辻さんは私が貴方たちが強い絆で結ばれたソウルメイトだと言った後に
あの夢を見たんです。そうだ、ちょうどそのとき飯田さんが私の前世はジャンヌダルク
だといったのを覚えていますか?」
「ええ。なんとなく。」
「そのとき石川さんは鎧を着た騎士を思い浮かべませんでしたか?」
「…」
梨華は確かにそうだった気がしていた。
「ほかの方はどうでしょう?
手探りのように話す前世の話を石川さんあなたは信じましたか?
信じられないからあなたは覚醒ができなかった。違いますか?
辻さんが太陽が消えていくと言ったとき日蝕を見たのは誰だったんでしょうか。
そうやって、後藤さんがお互いが前世の夢に誘導されて。
周りが前世の夢を見て、吉澤さんまでもが覚醒して。
…そしてあなたも夢を見た。」
「違います。」
全てが壊れていく。梨華はなおも反論しなければと思った。
「現実はそうです。」
つんくが梨華の言葉を飲み込んでしまった。
- 280 名前:G3HP 投稿日:2001年06月27日(水)19時45分13秒
「…でも、ごっちんと、ごっちんと私との二人の夢は。」
「あれは後藤さんが…」
「そんなことない!」
梨華はつんくの言葉をさえぎった。その言葉を聞いてしまえば全てが終わる気がした。
それでも聞かずにいられなかった。
「…何のために。」
「それは後藤さんしかわからないことです。」
その答えは梨華の中にもあった。後藤の目的。
(でも…)
梨華は苦しかった。後藤の気持ちが胸を締め付ける。
後藤が梨華の首をしめたあの日よりずっと前から、梨華は後藤は
お互いの心をそして自分の心を締め付けつけあっていたことに気づいた。
- 281 名前:G3HP 投稿日:2001年06月27日(水)19時46分34秒
- 151.“覚醒”
霧が一瞬晴れてつんくの姿が現われた。
痩せているからだが一層細くなり、無精ひげがやせこけた頬を覆っていた。
よれた黒いジャケットは、梨華たちが運んだときに着ていたものだ。
「どうしてあんな手紙を…みんなあの夢が前世が必要だったのに。
だってそれじゃあ何も変わらないじゃないですか。
どうしてそのままにしてあげなかったんですか?」
「お陰であなた達は繋がることができたでしょ?違いますか?」
「繋がる…?繋がってなんていません。みんなバラバラじゃないですか。」
「私はそうは思わない。一つの目的のために集まり、東京からここまでやって来た。
それだけでもあなた方は格段の、格段の進歩じゃないですか。」
「それならどうして…私…余計わかんないです。」
梨華にはつんくの真意がわからなかった。
パーカーを被った保田の姿が浮かぶ。母親の思い出を遺言を心の中に溜め込んで悲鳴を
あげる辻と加護が目に浮かぶ。
- 282 名前:G3HP 投稿日:2001年06月27日(水)19時47分44秒
- 「前世なんか利用すればいい!振り回されずに利用すればいいんです!」
梨華はつんくを見つめた。つんくもまたその梨華たちの前世に振り回され、
後藤に誘導されて自殺を図ったのだ。
でも、つんくは死ねなかったのだ。
「ほんとに死にたいんですか?神戸で会いました、奥さんに。
ほんとは奥さん、あなたのこと待ってるんじゃないですか?わかってるんでしょ?
だから死ねないんでしょ?」
「あなたはそう思うんですね。待ってる人がいれば人は生きていけるって…。
理解してくれる人がこの世に一人でもいれば生きていけるって。
だったらそういう人を捜しなさい。あなたを理解してくれる人を捜しなさい。」
「見つからなかったら?」
「捜し続ければいいんです。見つからなくても、捜し続ければいいんです。」
梨華にとって後藤は自分を理解してくれる人だと思っていた。
(でも、わからない。わからなくなってしまった。)
梨華にとって後藤とはなんだったのか。後藤にとって梨華はどんな存在なのか。
「私自身が誰かのそういう存在になれるんでしょうか?」
「それは相手の問題です。」
「時間がありません、終わりにしないと…。」
「終わり…?もっと聞きたいことが…。」
「全ての答えは、あなたの中にあります。」
「座って下さい…。」
梨華はつんくに促され近くにあった切り株に腰をかけた。
梨華は自分の右手首を見る。右手首のほくろの十字架を。
そしてつんくの言葉を待った。
「さあ目をつぶって…。これから私が数をかぞえます。10から逆に数をかぞえます。
そうするとあなたは目覚め、そして覚醒していきます。あなたは目を覚まします。
目を覚ますとあなたは、生まれ変わっています。10…9…8…7…6………」
梨華の体はいつのまにか深い海の底にいた。上を見上げると水面が眩く輝いている。
(暖かい。)
梨華はそこに向かってゆっくり浮上を始めた。
- 283 名前:G3HP 投稿日:2001年06月27日(水)19時48分33秒
- 152.みえるもの
梨華が気づいたときには日はとっくに昇っていた。霧が晴れている。
木々の間からは季節外れの入道雲と暑い日ざしが注がれていた。
梨華は起き上がって周りを見回す。梨華が座っていた切り株があった。
つんくの姿はなかった。
(夢だったのかな。)
梨華はつんくにあったのだとおもった。それが夢でも現実でもかまわなかった。
波の音が聞こえた。静かな音だ。梨華は少しの間その音に耳を傾けていた。
(ごっちんが待っている。)
梨華は立ち上がり、海岸へと歩いていった。
森を抜けると眩しく輝く海が目の前に広がった。
白い砂浜の温度がすでにかなり上がっているようだった。
少し離れた桟橋に人が座っているのが見えた。
梨華は桟橋に向かった。
そこにはみんながいた。誰もが互いに目を合わさず話もせず
ひざを抱えてしゃがんでいた。
どこにも焦点があっていない目で自分の世界の中を見ているようだった。
「みんなも?」
「えっ?」
「みんなも会った?」
パーカーのフードをスッポリと被った保田が力なく頷く。
梨華は桟橋の先端を眺めた。そこに後藤が横たわっていた。
後藤にとっての梨華。梨華にとっての後藤とは。後藤の目的。
全てにまだ明確な答えが出ていなかったが、梨華には今それはどうでもよかった。
目の前で横たわる後藤の姿が全てであった。
「ずっとここに居たの?・・・いたよつんくさん。」
梨華が声をかけると後藤の肩が一瞬縮んだ。
後藤は赤ん坊のように小さく丸まった。
「ごっちん、また一緒に暮らそうよ。」
後藤の背中が細かく震えていた。
- 284 名前:名無しさん。 投稿日:2001年06月29日(金)01時50分43秒
ラストはもう目前なんでしょうか?
どんなエンディングになるんだろ。
- 285 名前:G3HP 投稿日:2001年06月29日(金)22時31分37秒
- あと1回か2回の更新で終了の予定です。
エンディングはいまだに悩んでおります。
自分なりに納得のいくエンディングに持っていきたいですのですが
揺れ動いています。
情けないですが。
- 286 名前:名無しさん。 投稿日:2001年06月30日(土)01時43分28秒
では、リクエスト。
できればあまり痛くないンディングで……。
- 287 名前:G3HP 投稿日:2001年07月03日(火)15時46分57秒
- 153.膜
島から戻った梨華はまた後藤と暮らし始めた。
以前とは違って会話の少ない静かな暮らしだ。
梨華は無理やり話をすることはしなかったし、明るく振舞うこともしなかった。
少しでも無理をすれば敏感に後藤は感じ取り、かえって後藤に負担を
かけることは明白である。梨華はなるべく自然に振舞うようにしていた。
朝梨華は7時に起き朝食をとり会社にいく。
後藤の分の朝食を作ることもあえてしなかった。
後藤は昼頃おきて大学に行くでもなく、ただ梨華が帰るまで部屋にいた。
かつて梨華の手を引っ張り、教員室からつれだした強い後藤からは想像
できないほど弱く細くなっていた。
梨華は時々後藤の姿がそのまま薄くなり、消えてしまうのではと思った。
- 288 名前:G3HP 投稿日:2001年07月03日(火)15時47分51秒
- 「コーヒー入れるけど、ごっちん飲む?」
妙に明るくせず、さりげなく梨華が後藤に聞く。
後藤はしばらくの間TVを見つめていたが、ゆっくりと梨華のほうを
振り向きうなずく。
「お湯沸かすから、ごっちん豆挽いてよ。」
梨華の言葉に後藤は立ち上がり、戸棚からコーヒー豆を取り出す。
ざざあぁぁ〜
コーヒー豆が床に散らばった。
「もう。ごっちん何してんのよ!ちゃんと拾ってよね。」
梨華は少しだけ声に力をこめる。
後藤は床に散らばったコーヒー豆をただ ボォーと眺めていた。
「こらごっちん!拾わないか〜!」
命令口調で後藤に声をかけながら、梨華はしゃがんでコーヒー豆を拾い始めた。
後藤もしゃがんでコーヒー豆を拾う。
一粒ずつゆっくりと。
後藤は拾った豆が手に一杯になると、梨華にその豆を渡す。
何度目かのその行為が繰り返されたとき、後藤が梨華を見たまま止まった。
その目に薄く涙の膜が張っていた。
「梨華。」
「なに?」
「たのしい?」
「えっ?」
「あたしといて楽しい?」
梨華の目にも涙の膜が張られた。
「たのしいよ。」
梨華は震える後藤を抱きしめて涙を流した。
- 289 名前:G3HP 投稿日:2001年07月03日(火)15時49分34秒
- 154.隻
どのぐらいそのままでいたのであろうか。
部屋の中はすっかり暗くなっていた。
いつのまにか降り出した雨が窓ガラスを叩いている。
後藤の涙が梨華の肩を濡らした。
梨華の涙が後藤の肩を濡らした。
「ねえ、梨華。 “隻”って言葉知ってる?」
「せき?」
後藤は右手で涙をぬぐいながら、力ない平坦な話し方で梨華に尋ねた。
「うん。ひとつのもの、対になったものの片割れって意味。
片方だけじゃ意味をなさないもの…
あたしね。昔そういう人がいたの。
そう言ってくれた人がいたの。
.…2つ年上の女性だった。
あたしの親友であり先生であり姉貴であり母親であり
そしてあたし自身だった。
やさしかった。
いつもそばにいてくれた。
このままずっと一緒にいられると思っていた。」
後藤は一度目を瞑りその人を思い出していた。
瞑った目からまた大粒の涙がこぼれる。
「でもある日、その人は自分の夢を叶えるために、あたしから去っていったの。
あたしを置いて外国へと旅立っていったの。
…そして、その地で死んでしまった。
あたしを残して。」
後藤は上を向きしゃくりあげた。
頬に後藤の黒髪が張り付いている。梨華はその髪を左手で払い落とす。
- 290 名前:G3HP 投稿日:2001年07月03日(火)15時50分51秒
「全てがなくなってしまった。
…それなのに毎日が平穏に流れてく。
それが許せなかった。
だから、あたしも死ななければと思ったの。
だって、自分の半分が死んでしまったんだよ。」
後藤は言葉を切って、一度唇を噛みしめた。
「…でも、できなかった。
死ぬこともできなかったの。」
無理して上げた後藤の顔が再びうつむく。
梨華は何の声も掛けれなかった。
- 291 名前:G3HP 投稿日:2001年07月03日(火)15時52分15秒
「梨華覚えてる?」
「なに?」
「そのころだよ。梨華があたしに話し掛けてくれたのは。」
「だって同じクラスメートだもん。」
「うん。梨華らしいよね。
…ずっといえなかったけど、
ありがとう。」
後藤は涙を流したまま少しだけ笑った。梨華は静かに首を振る。
「あたし高校になってもその人のことずっと引きずってた。
ずっとひとりだった。ひとりでただ日々が過ぎるのを眺めているだけだった。
真っ暗な闇の中に居るあたしを、みんなは無視していた。
でも梨華。梨華だけは話し掛けてくれた。
だから、梨華ならわかってくれると思った。
ずっと一緒にいてくれると思った。」
「ずっと一緒だよ。」
「本当にずっと一緒に居られると思う?
それって、それってすごく難しいと思うの。
梨華もあたしも変わってしまうのよ。
だってあたしたち、もうすぐ二十歳なんだよ。」
梨華もわかっていた。わかっていたから前世ツアーに参加したのだ。
あまりにも近づきすぎた二人は、互いが互いの一部になってしまっていた。
“隻”になってしまった。
(失うのが怖い。)
だから、梨華も後藤も苦しんでいるのだ。
だから、前世に頼ってでもこのときを繋ぎ止めておきたかったのだ。
「あたしには見えるの。」
「なにが?」
「十年後。
――こんな夜のことなんてすっかり忘れて、前世の事なんか忘れて…
そうなるぐらいなら…。」
「そうなるくらいなら?」
今を、このときを永遠に変える方法。
梨華は後藤も見やる。目を真っ赤にした後藤がぎこちなく頷く。
「それしかないのかな?」
梨華は呟いた。
- 292 名前:G3HP 投稿日:2001年07月03日(火)15時53分37秒
- 155.選択
梨華と後藤はビルの屋上にいた。雨は上がっていた。
街は光にあふれている。
その光の一つ一つに、人々のそれぞれの営みが平穏に続けられているのだ。
その営みが、人々の声が、車の音が街の喧騒となり轟いていた。
冷たい秋風がふたりに吹き付ける。
「恐い?」
「ちょっと。ごっちんは?」
梨華は下を見る。地上まで20メートル近くある。
(本当にいいの?)
梨華は後藤にそして自分に問い掛けていた。
梨華は後藤の顔を見る。後藤は真っ直ぐ前を見ていた。
静かな顔だ。
(でも、これしかない。)
梨華の脳裏に一瞬家族の顔が浮かんだ。
微笑む母、そして渋い顔をする父が梨華に問い掛ける
“後藤さんと家族、どっちをとるの?”
そう問いただしているようだった。
再び梨華は後藤の顔を見る。後藤も梨華を見つめる。
後藤が笑った。穏やかで曇りのない微笑だった。
それが全てだった。
梨華は右手を伸ばし後藤の手をしっかり握る。
後藤は梨華の右手を見やる。
右手首の十字架を見つめた後、梨華を見て再び微笑んだ。
- 293 名前:G3HP 投稿日:2001年07月03日(火)15時55分12秒
「いくよ。」
梨華は半歩前に踏み出した。
つま先がビルの縁から突き出た。
下から舞い上がる風が梨華の髪を舞い上がらせた。
梨華は全身に鳥肌が立つのを感じた。
ゆっくり梨華は目を瞑る。
顎が上がり胸が突き出る。
左足に体重が乗り、そしてゆっくりと右足のかかとがあがる。
「まって。」
後藤が梨華の半歩後でこわばった声をあげる。
「なに?」
「足…動かない。」
梨華は、はっとして後藤を振り返る。
梨華はわかっていた。
後藤は一人では死ぬことはできないのだ。
後藤はこの世で生きていくには弱すぎた。
死んでしまうにも弱すぎた。
弱いが故に動けなかった。
だから後藤は梨華を選んだのだ。
後藤の目的。
「…押して。」
後藤は淋しい。
「出来ないよ。そんな。」
梨華がそういうと、後藤の目に涙があふれた。
後藤は足元を見た。20メートル下を見つめた。
そして、一歩、また一歩ゆっくりと後ずさった。
- 294 名前:G3HP 投稿日:2001年07月03日(火)15時56分51秒
- 156.輪廻
「ごっちん。」
しゃがみ込んでしまった後藤に梨華は寄り添う。
「別のところに行く?」
後藤は首を振った。
「行くことも戻ることも…できないよ。」
後藤の体が震える。梨華は後藤の背中に両腕を回して、後藤をそっと抱きしめた。
「どうしてできないんだろう…私達、やっぱり無理なのかな…。」
梨華も涙を流していた。後藤の悲しみが梨華の涙となって落ちていった。
「無理だとどうなる…ねぇ、どうなる…?」
「たぶんね、私達これからも生きられるんだよ。」
生きることは辛い。でも、この道を選んだのだ。
梨華は後藤のおでこに自分のおでこをくっつけて言葉を続けた。
「それでね誰かと結婚して、子供が生まれて、お母さんになって…。
そしたらこう言うの。私達みたいな子を見て、『変わってるね』って…。
『あの子たち変わってるね』って…。」
後藤は目を瞑ったままその言葉を聞いていた。
後藤は梨華を全身で感じていた。
梨華もまた全身で後藤を感じ取っていた。
静寂な時間が流れる。
やがて後藤が口を開いた。
「お別れだね、しばらく…。」
今は別れなきゃいけない。
今だから別れなきゃいけない。
「今度はいつ?
100年後…?1000年後…?」
またいつか出会う2人。
魂は繋がっている。
理解してくれる人が、待っていてくれる人がここにいるから…。
だから、今が永遠になる。
二人は見つめあい笑った。
いつのまにか雲が晴れ、月の光がふたりを暖かく照らしていた。
- 295 名前:G3HP 投稿日:2001年07月03日(火)15時58分13秒
- 157.現世
後藤は部屋を出て行った。
そして梨華もまた、この部屋を後にしよいうとしていた。
(一人で住むには広い部屋。)
それだけではなかった。
この部屋は後藤と二人で支えあって暮らす部屋であった。
二人だけの閉じあった世界だった。
自分を、そして世界を見つめるにはこの部屋は刹那過ぎた。
「すべてのこたえはあなたのなかにあります。」
つんくの言葉を梨華は思い出していた。
でも、自分の中に何もなかったら答えは見つからない。
自分を知らなければ、どれが答えがわからない。
そして、“現世”という今を、しっかり“自分らしく考えていく”ことを
大切にすべきだと梨華は思った。
なぜなら、“考える”ことが、“現世”という今を貴重なものにしてくれるだろうから。
- 296 名前:G3HP 投稿日:2001年07月03日(火)15時58分51秒
突然梨華の携帯がなった。
吉澤だった。
「元気?」
「うん。よっしぃーは?」
「うん。…圭ちゃん、実家に帰ったよ。」
「そうなんだ。」
吉澤は保田に居てほしかった。保田の面倒を見ることが吉澤の使命だと思った。
でも、保田は一人部屋を去っていった。
「今はだめだけど、でもいつか…いつかきっと…」
そういい残して保田はよりつらい道を自ら選んでいったのだ。
「それでね、あたしも出直そう思うの。」
「うん…。」
「いやっ…そのために一つはっきりさせたい事あるの。」
「何?」
「梨華ちゃんのこと…。」
「私…?」
「やっぱだめ?」
「ん…。」
「わかった。」
「ねぇ、もう会えないの?」
「友達にはなれないよ。あたし、スケベだから。じゃあ。」
携帯が切れた。
梨華は島に行ったのが遠い昔のように感じられた。
(みんなどうしているんだろう?)
前世がなくなり現実に戻されてしまったソウルメイトたち。
それでも、日々は流れていく。
年々歳々花相似たり。
でも、前と同じではない。
少しだけかもしれないが、前向きに自分だけの道を自分の足で歩いていくだろう。
梨華はみんなの気持ちをも感じられるきがした。
「がんばって。」
梨華はソウルメイトたちに向かって祈った。
- 297 名前:G3HP 投稿日:2001年07月03日(火)16時00分24秒
- 157.道
梨華は部屋を見渡した。荷物をまとめ終わった部屋はがらんとしていた。
梱包された箱がいくつも積み重ねられている。
生活感のなくなったこの部屋は、すでに思い出の一部となっていた。
ふと梨華は人の気配を感じてベランダに出た。
ベランダからは隣接する公園の深まった紅葉が見える。
その公園の入り口に吉澤がいた。
吉澤はスカジャンをはおり、足元を見つめたまま梨華を待っていた。
梨華が吉澤を見つけると吉澤もすぐ気づき梨華を見上げた。
「ねえ、また会えるよね。」
吉澤は視線をはずし、しばらく考え事をしていだが
やがて、梨華のほうを見上げ微笑んだ。
「来世でな。」
秋の空はどこまでも高く、どこか冬の気配を感じられた。
その日、梨華は“二十歳”になった。
〜完〜
- 298 名前:G3HP 終了しました。 投稿日:2001年07月03日(火)16時07分22秒
- 最後まで読んでいただいた方、大変ありがとうございました。
何とか終了することができました。
また、機会がありましたら長編にチャレンジしたいと思いますので
そのときは、またよろしくお願いします。
”隻”作者より
- 299 名前:名無しさん。 投稿日:2001年07月04日(水)02時30分39秒
静かでいいてラストでした。
しばし、この余韻に浸っていたいです。
作者さん、お疲れ様でした。
- 300 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月05日(木)17時46分26秒
- よかった。
新作も期待してます。
- 301 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月08日(日)02時24分15秒
おっ、終わってたんだ。
チェック忘れてたぁ。不覚……。
鈴木あみのドラマは最後まで見てないんだけど、
この小説みたいなラストだったのかな?
でも、作者さんは途中で迷ってるって書いてるし……ん〜?
- 302 名前:G3HP 投稿日:2001年07月14日(土)02時14分25秒
- レスありがとうございます。
>>301 さん是非ドラマも見てください。DVDもうすぐ発売です。
鈴木あみ頑張ってます。ラストは。。。見てのお楽しみということで。
できればNHKのホームページのBBSも一緒に読むといろいろと考えさせられる
ドラマになると思います。
新作は眼科の通院が終了するまで、できそうにないですけど
構想は練っております。
もうちょいライトなもんのほうが良いけど、性格上どうしても。。。
とりあえず短編を。。。
- 303 名前:名無しの301 投稿日:2001年07月17日(火)01時20分49秒
- 作者さん、眼科通いですか。
通院が終わったら、次回作お願いしますね。
それまで、自分は原案のドラマのDVD見て待ってます。
とりあえず、お大事に。
- 304 名前:G3HP 投稿日:2001年07月27日(金)01時19分00秒
- DVD買うたがな。第1話2話はじめてみたがな。
そうだんたんだ〜。
鈴木あみ、小西真奈美よくがんばった!感動した!
もう一回見よっと。
誰かDVDの感想を…
語りませんか?
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