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Vanishing

1 名前:chaga 投稿日:2001年05月08日(火)00時56分29秒
はじめてかきます!
石川主役で、長さは未定です。
なるべく更新できるようにがんばります。
2 名前:chaga 投稿日:2001年05月08日(火)00時58分44秒
2001年 夏

その日は雲一つ無く、とてもよく晴れた日だった。
陽に照らされて熱くなったアスファルトはまるで地面の真下にマグマがあるかのような
錯覚を石川梨華に持たせる。
石川は夏が好きだったが、今日のような日は頭がくらくらしてあまり好きではない。
こんな日は家でゆっくり暮らしたいのだがそうもいかなかった。
今日は学校で終業式がある。

(今日我慢すれば明日から休みだ〜)

石川は学校がきらいだった。
別にいじめにあっているわけでも友達がいないわけでもないが、学校で勉強をしている
自分が嫌いだったのだ。
3 名前:chaga 投稿日:2001年05月08日(火)01時02分17秒
勉強をして自分は何になりたいのか?
本当になりたいものは他にあるはずなのになぜその勉強をしないで学校の勉強をするの
か?
それならば行く必要も無いのではないか?

もちろんそれは若い頃にありがちな安っぽい思想であって、ましてや学校を中退するなん
ていう度胸も無いのは自分でもわかってはいる。
それでも石川は何か自分にしかできないことがあるはずだと信じたかった。
友達に言うと「それはみんなが思っていることだけど、なかなかかなわない夢なんだよ」
といわれる。
その度に「そうなるのは自分を磨いて道を見つけることに怠けた人達なんだ」といいたい
のを石川はこらえた。
彼女自身、それをやり遂げることができるか自信が無いからだ。
もしかしたら自分は意志の弱い人間で、自分の夢を見つけることをあきらめて、大人達の
造った社会の部品の一つになることで妥協してしまうのではないかと思ってしまう。
この社会が嫌なわけではない。
社会があるから石川がこのようにある程度自由に生きていけるのであることもわかっては
いるが、漠然とそうなりたくはないと思う自分がいた。

(私がやりたい事ってなんだろう……?)

石川は小さくため息をつき、空を見上げる。
そんな焦燥も手伝ってか、じりじりと照りつける太陽が余計に息苦しく感じた。
4 名前:chaga 投稿日:2001年05月08日(火)01時05分28秒
 1

「これから長期の夏期休業に入るわけですが、三年生は受験生という自覚を持ち、一、二
年生も勉強や部活に励んで欲しいと思います。そもそも夏期休業というものは……」

校長の長い長い『演説』が続く。
こういうものは生徒達が聞いていようが聞いていまいが関係なく、『演説』をしている自分
に酔っているだけなのかもしれない。
恍惚とした顔で壇上から降りると、近くの教頭? と何か会話をしている。

どうだったね、なかなか考え深い話だったろう。
そうですね校長。私自身もこれからの生活の見直しが必要ではないかなと思いましたよ。

そんな話がされているのだろうか?
とにかく式は順調に進んでいき、解散の時間になる。
三年生から教室に戻るので、二年生の石川は少し待つ形になった。
待つ間も暇だったので友達にメールを送ろうとPHSを取り出すと、いつのまにか
自分にメールが届いていたようだ。
5 名前:chaga 投稿日:2001年05月08日(火)01時07分17秒
(いったいいつの間にきたんだろう? ぜんぜん感じなかったけどなぁ……)

まあ熱くていらいらしていたから振動に気づかなかったのだろうと思い、慣れた手付きで
メールをチェックする。


発信者 加護亜依
どうも〜、お久しぶり!
そっちはもう夏休みにはいりましたか?
加護は中学二年生になりました!
ところで加護はちょっと東京のほうに用事があります。
そこでおねがいがあるんだけど、夏休み中梨華ちゃんのおうちに泊まっていてもいいです
か?
迷惑はかけないようにします(出来るだけ!)
お願いします〜、梨華様〜!
詳しいことは後で電話するんで。
梨華ちゃんに断られたら死んでしまう〜!

6 名前:chaga 投稿日:2001年05月08日(火)01時08分30秒
(これは……、あいぼんがうちに来るって事でいいのかな……? よくわかんないけど。
まあ、久しぶりに会えるんだからいいか)

加護の支離滅裂な文章を何とか石川なりに理解しつつ、来てもいいよという返事を送り返
した。
石川は私立の高校に通っていて一人暮しである。
両親はそこそこ名の通った資産家だったこともあり、昔からあまり不自由なこともなく育
ってこれた。
この一人暮しも自立と勉強を理由に相談してみるといともあっさりと承諾が得られたのだ。
式が終わってから一応石川は両親に加護のことを聞いてみる。
どうやら加護はもうすでに両親にも話をつけていたようで、両親もそれを了解していた。
加護の手回しのよさに石川は正直少し驚いた。
7 名前:chaga 投稿日:2001年05月08日(火)01時13分40秒

加護は一週間後にこっちに来る予定だと電話で話した。

「ねー、あいぼん。なんの用事があるの〜?」

実際加護がなんの用事で東京に来るのか石川にはわからなかった。
いくら用事があるからといっても休みの間中というのはなかなかないだろう。

「教えな〜い。あ、でも後でわかると思うよ」

少しからかったような口調で加護は言う。
その感じから加護にとってよっぽど楽しみなことであることが石川には容易にわかっ
た。

「ん〜、やっぱり梨華ちゃんの家に行ったときにはなすから」
「なにそれ〜、本当は話したいんでしょ〜」

二人はまるで姉妹のように話す(加護は従姉妹)。
それから少し話し込んだあと、電話を切った。
加護はひょうきんでいつも石川を笑わせてくれる。
今日の話のときも何回も笑った。
そんな加護のことが石川は好きだった。
自分もそんな性格になれればと憧れたこともあったかもしれない。
その度に石川は自分がネガティブな性格だと反省した。
加護のような性格になるにはまずこの性格をどうにかしなくてはならないだろう。
8 名前:chaga 投稿日:2001年05月08日(火)01時16分03秒
次の日、石川は友人と買い物に出かけた。
買い物をしたり、カラオケをしたりしてとても充実した日だった。
友人と別れてからその帰り道、時間も遅くなっていたので近道をしようと普段通らな
い細い路地に入った。

以前他の友達ときたときに通った道であるので大体の行き方は覚えている。
しかし確かに近道ではあるのだが、石川はここが好きではなかった。
薄暗く汚らしい路地で、壁にはスプレーアートまで描いてある。
こんなところはまず使わないが、今日はどうしても見たいテレビ番組があった。
モーニング娘。というアイドルグループが今日の歌番組にゲストで出るのだ。
石川はこのグループの結成当初からのファンで、大体のことはチェックしていた。
普通アイドルグループに女性のファンは珍しいものだがそんなこと石川は気にしてい
なかった。

今度追加メンバーのオーディションが行われるというのもテレビで見て知っている。
彼女達の大ファンである石川もそれに参加したいと思ったがやめた。
それは自分なんかが受かるわけがないという、またもやネガティブな発想からである。
友達の中にも確か受けようとしていた人がいたのを思い出す。
9 名前:chaga 投稿日:2001年05月08日(火)01時18分14秒
(何万分の一くらいの確率だもんね〜。私なんかじゃ絶対無理。でもあの子は綺麗だ
から受かっちゃうかも?)

そんなことを思いながら歩いていると見慣れない道に出た。
この道は結構複雑で、分かれ道が多くある。
だが大体は石川も覚えていたので大丈夫だと踏んでいたのだが、夏とはいえ完全に陽
の落ちた時間ではやはり勝手が違った。
恐らくどこかの分かれ道で違うほうへ入ってしまったのだろう。
石川は急に不安に襲われた。

(どうしよう! こんなことなら普通に帰っておけばよかった)
10 名前:chaga 投稿日:2001年05月08日(火)01時20分06秒

駅はどっちだろうかとキョロキョロ見回すがどうしてもわからない。

(誰か人いないかな? でもこんなところそんなに人は通らないし)
「なにしてんの?」

急に後ろから声をかけられて石川はどきり、とした。
声から推測すると、少しトーンは低いが女性の声だとわかる。
後ろを振り向くと帽子を目深にかぶった少女がいた。
暗闇であまりよくは見えないが、はっきりとした顔をした美少女であることが石川に
もわかる。

「あの、道に迷ってしまって……。駅に行くにはどっちのほうへ行けばいいんでしょ
うか?」
「ちょっとここからじゃわかりにくいんだよね……。送ってってあげようか?」

今度はやさしそうなトーンで彼女は言った。
そのときふと石川は考えた。
なんだか聞き覚えのある声だと。
まじまじと彼女の顔を見る。
11 名前:chaga 投稿日:2001年05月08日(火)01時25分45秒
最初のほうの1というのは気にしないでください。
ちょっと場面わけとして使ってみただけですんで。

あと、これ変じゃない? っていうところあったらご指摘お願いします。
12 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月08日(火)01時51分18秒
ずっと、石川さんの独白のような話の流れで、通常の話に比べると異質な感じがした。
(悪い意味じゃないよ。)
その口調が独特の話の空気を作っていて、ひきつけられました。
この書き方が味になっていると思うので、続きを期待しています。
13 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年05月08日(火)21時00分57秒
当然(?)加護も受けるんでしょうね。
頑張ってください。
14 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月08日(火)21時48分08秒
おっと、この相手は・・・吉・・・さんでは?
15 名前:chaga 投稿日:2001年05月08日(火)22時59分11秒
「あっ! もしかして後藤真希さんですか?」
「ん……、そうだけどね」

後藤は少し照れたように答えた。
後藤真希とはモーニング娘。のいつもセンターにいるメンバーで、一番人気の少女の
ことである。

「わ、私後藤さんのファンなんです! えっと、あの……」

気が動転してしまって何を話していいのかわからなくなっていた。
後藤は石川がモーニング娘。のなかで一番好きなメンバーであったのもあるので、そ
うなるのは仕方なかったのかもしれない。

「あ〜、ありがと。それよりもほら、ここっていろいろ危ないところだから早く抜け
たほうがいいよ。あなたみたいなかわいい子がいたら襲われちゃうから」

16 名前:chaga 投稿日:2001年05月08日(火)23時01分15秒
駅に着くまでの間も石川はうまくしゃべれなかった(一応自己紹介程度はしたが)。
それでも後藤は積極的に話してくらるのだが、結局緊張してだめだった。

(こんなチャンスもう二度とないのに、私ってだめだ。後藤さんもいやな気持ちにな
っちゃっただろうな……)
「梨華ちゃん?」

不意に後藤が真剣な表情で話しかけてきた。

「えっ、えっ、なんですか?」
「梨華ちゃんさ、後藤のこと好きだって言ってくれたけどそれってほんとなのかな?」
「どうしてですか? 本当ですよ。一番好きです!」
「そうなの? あんまり話してくれないから疑っちゃったよ」

石川はそんなつもりなどまったくないのだが、確かに彼女の態度は後藤にそう考えさ
せてしまっても仕方ないだろう。
後藤はバッグから携帯を取り出すと電話帳を開く。
17 名前:chaga 投稿日:2001年05月08日(火)23時02分58秒
「じゃあさ、梨華ちゃんの携帯の番号教えて」
「えあっ、私の? どうして私なんかの?」

芸能人が自分なんかと電話番号を交換しようとしている。
石川は今が本当に現実なのか疑いたくなった。

「なんでって、友達になりたいからじゃだめ?」
「全然ダイジョブです! あの、私携帯じゃなくてPHSなんですけどいいですか?」

石川も慌ててPHSを取り出す。

「ん、い〜よ〜」

電話帳に『後藤真希』の名前が登録される。
お互いの電話番号を交換しているとき、石川はこれ以上ないくらいの幸せを感じてい
た。
18 名前:chaga 投稿日:2001年05月08日(火)23時16分29秒
更新できました。
皆さんレスありがとうございます!

>>12さん
書き方でなんか言われないかちょっと心配してました。
自分の書き方少し変かな〜って思ってたんでうれしかったです。

>>てうにち新聞新入社員さん
ちょっと露骨に書きすぎましたかね…?

>>14さん
すみません!後藤でした。
吉澤はもう少ししたら出てくると思います。


ちなみにこの小説の世界は現実とは設定が少し(かなり?)ちがくしてありますが
温かい目で見守っていてください。

19 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月08日(火)23時55分43秒
石川ちゃん、か〜わい〜。
続き期待。
20 名前:chaga 投稿日:2001年05月10日(木)01時07分53秒
その夜石川は今日のことを加護に話そうと電話をとったが、加護の『梨華ちゃんの家
に言ったときにはなす』という言葉を思い出してやめた。
確かに自慢したくてたまらなかったが、加護に対抗するとっておきの話として隠して
おくことにしたからだ。

(本当にうそじゃないんだ〜。後藤真希さんと友達になったんだ〜)

何度も電話帳を見返す、その度にそう思った。
窓の外を見る。
外の闇が今日はなんだか妙に綺麗に見えた。

その日は幸せな気分で寝ることが出来きそうだ。

21 名前:chaga 投稿日:2001年05月10日(木)01時08分49秒
携帯の番号を交換はしたものの、仕事の都合のある後藤に自分からは少しかけづらか
った。
石川はいつかかってくるか楽しみだった。
そこで石川は後藤からかかってくるのを待つことにし、もしかかってこなかったとし
たらそれは自分自身に魅力がなかったのだとあきらめるように考えた。

(でも向こうもかけてくるのを待ってるとしたら……)

そうなるともう頭の中で収拾がつかなくなる。堂堂巡りだ。
それからしばらく考えて一度も電話をかけないのは失礼だ、という考えに落ち着く。
PHSを持つと、うっすら手のひらに汗をかいているのがわかった。
何度も見た電話帳を開こうとボタンを押す。
しかし動かない。
PHSがなにも反応しなくなってしまった。

(動かない。壊れちゃったの〜?)
22 名前:chaga 投稿日:2001年05月10日(木)01時14分51秒
更新しました。

>>19さん
ありがとうございます。
期待にこたえられるように頑張ります!


早く他のメンバーも出したいんですが、なかなか後藤との話がまとまんないもんで……。
なるべく毎日更新できるようにしたいですね。



23 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月10日(木)13時35分42秒
やっぱり、加護の用事っていうのは・・・
そーゆうことっすね。
24 名前:chaga 投稿日:2001年05月10日(木)21時10分10秒
その瞬間着メロのハバネラが鳴り出す。
どうやら受信中だったので反応しなかったようだ。
ディスプレイを見ると『後藤真希』の文字がある。
ちょうどかけようとしていた相手の名前だ。
石川は少し咳払いをして声を整えてから電話に出る。

「はい! もしもし」
「あ〜、梨華ちゃんひさしぶり。元気してた?」
「はい、すごい元気してました!」

石川は普通に振舞おうと努めているのだが、どうしてもおかしくなってしまう。

「あのさ〜、明日の夜って空いてるかな〜?」
「はい、空いてます!」

後藤は明日の夜に石川の家に行っていいか聞いてきた。
もちろん石川には断る理由もないのですぐOKする。
PHSを持つ手がいっそう汗ばむ。
石川はなんとか自分の家の位置を後藤に教え(本当になんとか)電話を切った。
電話を切ってからすぐ、夜にもかかわらず掃除をはじめる。
石川の家は女の子の家にしては汚いほうだったので二日にわけて念入りに掃除をして
おこうと思ったのだろう。
25 名前:chaga 投稿日:2001年05月10日(木)21時11分12秒
(わ〜、うれしくて死んじゃいそうだよ!)


いつもは面倒な部屋の片づけも石川は楽しく終わらせることが出来た。
それでも石川は細かいチェックをいれるなど余念がない。
後藤は仕事が終わってからその足で来るといっていたのでもう少し先の時間だろう、
と思った石川は後藤のために夕飯を作りにかかった。
あまり石川は料理が得意ではない。
自立をすると両親に言っているが実のところそれほど進歩はしていなかった。
後藤に失敗した食事などとらせるわけにはいかないので、無難なカレーを作ることに
する。

しばらくして、あぶなっかしい手付きながらもなんとか作り終えた石川は後藤を正座
して待った。
そろそろ来てもいい時間だろう(といっても石川は業界のことなど何一つわからない
のでそろそろもなにもないのだが)。
不意にPHSが鳴る。後藤からだ。
26 名前:chaga 投稿日:2001年05月10日(木)21時12分45秒
「もしもし? 後藤さん?」
「梨華ちゃ〜ん。道わかんなくなっちゃったよ。近くの公園にいるんだけど迎えに来
てくんないかなぁ?」

やはり昨日の石川の説明では細かいところまでわからなかったようだ。
石川は丁寧に電話を切って、急いで靴をはく。
公園は駅と自宅の中間くらいにあるところだ。
あのあたりは初めての人にとってはわかりづらい。

(早く行かなきゃ)

石川は駆け足気味で歩いた。


公園につくと石川は後藤の姿を探す。
結構広いところだったがすぐに石川はベンチに座って上を見上げている後藤を見つけ
ることができた。
月明かりに照らされて後藤の端正な顔がさらに綺麗に見える。
それを見つめていた石川に気づいたのか、後藤は彼女のほうを向いた。

「あ、梨華ちゃん。来てたんなら声かけてよ〜」
「すみません……、ちょっと綺麗だな〜って思ってて」
「なにが?あ、空ね。綺麗だよね〜」
「後藤さんが……」
27 名前:chaga 投稿日:2001年05月10日(木)21時16分45秒
感想ありがとうございます。
どんな些細なことでもとても励みになります。
毎日更新できているのも皆さんのおかげです。

>>23さん
そーいうことになりますね……。
詳しくはもう少ししてからで。

28 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月10日(木)21時43分31秒
やはりここでも、石川さんの部屋=きたない なんですね。(w
(もはや定番と化している。)
石川さんがとてもかわいいです〜
29 名前:chaga 投稿日:2001年05月11日(金)00時29分04秒
後藤は少し言葉の意味を考えるように視線だけ上に向ける。

「な、なに〜? 急に」

意味を理解したのか、後藤は顔を真っ赤にして答える。

「本当にそう思ったこと言ったんですよ〜」
「あはは……。でもさ、私はこの空のほうが綺麗だと思うよ」

確かに二人の頭上にある夜空には、まるでビンからこぼれでたようにたくさんの星
が輝いていた。

「わぁ……、すごいですねぇ。いつもはほとんど見えないんですけど」

今日の星は東京の夜空には珍しく綺麗だった。
石川は子供の頃にのぞいた天体望遠鏡の感動を思い出す。
そのときは星空ではなく月を見ていた。
30 名前:chaga 投稿日:2001年05月11日(金)00時31分15秒
月を見ていると何故か不思議な気持ちになった。
遠くから見る月は丸い。
しかし実際はクレーターでいびつなものだ。
石川が月に惹かれたのは、そんな二面性を持つ月独特の雰囲気のせいだったのかもし
れない。
ただその時の石川はそんな事などわからず、普段は見れないものを見ているという好
奇心しかなかったのだが。

後藤と見上げる星空にも月はあった。

「こういうの見てると心の中がすっきりするよね。悲しいこと、つらいこと、自分の
中にあるグルグルしたもの全部がなくなってく」

石川はなにも言わずに後藤の言葉をじっと待つ。

「最近はいろいろ考えるんだよね……。自分のこと」

31 名前:chaga 投稿日:2001年05月11日(金)00時38分42秒
本日2回目の更新です。
といっても12時回ってるんですけど。

>>28さん
やっぱりあのときの印象があるんで……。
多分あれがなかったらこんな風に書かなかったと思います。
32 名前:chaga 投稿日:2001年05月12日(土)01時17分07秒
石川は後藤でも悩み事があるのか、と正直少し驚いた。

「娘。やってるとさ、後藤はこのままでいいのかって思う。……ちょっとクサイ事言
っていいかな?」
「いいですよ」
「ありがと。でも笑わないでね」

石川は後藤の隣に腰をかける。
ほんの数日前からは考えられなかったことだが、それが今では友達としてそうできる
ことを誰かに感謝したかった。

「後藤はさ、星になりたい。星はいつも輝いているでしょ? 小さくても自分の力で
光ってる。だけど今の自分は月なんだ。月が光っているのは自分自身の力じゃない。
あんなに大きいのにね」
33 名前:chaga 投稿日:2001年05月12日(土)01時18分43秒
後藤は言葉を少しずつ選ぶように話していく。
おそらくこんな話をするのになれていないせいだろう。

「それを後藤にたとえると、自分が光っていられるのはメンバーと一緒にいられるこ
との心強さだったり、ファンのみんなの応援のおかげだと思う。でも後藤はそれに頼
りすぎちゃいけない。自分が光を出して、みんなにそれを分けれるようにならなくち
ゃいけないと思うんだ。だから私は星になりたい」

石川はその言葉を聞いて、後藤には悪いがやっぱりクサイと思ってしまった。

「……後藤さんなら太陽になれますよ」

だから石川もクサイことを言おうと思った。
後藤の言葉に少し共感を得ていたから。




しかしそのことを語るにはまだ二人はあまりに幼稚で無知であった。
後藤の言葉もおそらくどこからか聞いて影響されたものの一つで、自分の言葉ではな
いだろう(もちろん言葉の組み立ては自分で考えたものだが)。
今のままではただの偽善にしかならない。
34 名前:chaga 投稿日:2001年05月12日(土)01時20分12秒
「……『演説』も終わったところで、そろそろ梨華ちゃんの家にいこう!」

そう言うと後藤は石川の手を引っ張って公園を出る。

「時間もったいないから少しはや歩きでいくね」

結局石川は最後まで『後藤に引っ張られる形』で家に帰った。
部屋に入ると二人はまず食事にすることにした。
カレーを温めなおして遅めの夕飯を取る。

「梨華ちゃんて結構料理うまいんじゃない? ホントおいしいよ」
「そんなことないですよ〜。カレーが得意なだけです」

料理を誉められた石川は飛び上がりたくなるのを必死で我慢した。
実際今回のカレーはうまくいったと自分でも思っていたが、基本的に料理が得意では
ない石川はそこまで誉められるとは思っていなかった。
後藤は本当においしそうにカレーを口に運ぶ。
35 名前:chaga 投稿日:2001年05月12日(土)01時22分13秒
「後藤もね、お菓子作れるんだよ。今度作ってくるから」
「あ、うれしいです!」

夕飯をとりおわった二人はお互いのことを話し始めた。
まだ相手のことをよく知っていなかったからだ。

石川は後藤のことをよく知っているつもりでいた。
だがそれはメディアで流された情報でしかなかったので、本当の後藤とはこういう人
物だったのか、という驚きを石川に持たせる。
すぐにメディアの情報だけでは人というものはすべてを知ることが出来ないことを石
川は納得した。
逆に自分とさほど変わらない後藤を見て、よりいっそう親近感を持つことができた。
TVで見る後藤と違い、実際は普通の女の子だったからだ。

(後藤さんと友達になれて本当によかった。娘。だからじゃなくて、人間としての魅
力がある人だったからかな……)
「梨華ちゃん、今度さ……」
「はい?」

いったん後藤は言葉を切った。
独り言のように小さく、石川に聞こえないように「まだ早いか……」とつぶやく。
36 名前:chaga 投稿日:2001年05月12日(土)01時27分22秒
更新しました。

とりあえずそろそろ後藤の話は終わりです。
37 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月12日(土)01時58分18秒
一生懸命、背伸びをしている二人がとてもいじらしい。
話がどう進んでいくのかな?期待してます。
38 名前:chaga 投稿日:2001年05月13日(日)01時21分11秒
「今度…。そう、こんどメンバーのみんなと一緒に遊びにいこうよ」
「本当ですか? いいんですか?」

石川は多少興奮気味に聞く。
後藤はその様子を見て小さく笑いながらいいよ、と答える。

後藤に限らず、石川は基本的に娘。のメンバーがみんな好きだった。
いわば娘。の一つ一つ(一人一人)が彼女の憧れなのである。
自分に無い物を彼女達を通して共有する、そういう気持ちがあったのだろう。

「みんなにさ、梨華ちゃんのこと話したんだ。とっても女の子っぽくてかわいいって。
そしたら なっち とか やぐっつぁん とか友達になりたいっていってた。あ、話
してもよかったよね?」
「はい。もちろんです」

後藤は時計を見る。

「あ、そろそろ帰らないと。明日も早いんだ〜」
「そうなんですか? 駅まで送りましょうか」
「大丈夫。もう道は覚えたから。こういうのは得意だし」

その日は石川にとって、とても充実した日になったのは言うまでもない。

(今度か。今度はあいぼんも誘っちゃだめかな〜)

そんなことを思いながら石川は眠りについた。
39 名前:chaga 投稿日:2001年05月13日(日)01時22分43秒
今日は加護がついに石川の家に来る日だ。
昼頃に東京に着く予定だといっていたので、午前中は部屋の片づけをしてから駅に向
かった。
駅に着くとそこは人でごった返しており、加護を見つけるのに苦労しそうだと石川は
思った。
しばらく経ち、約束の時間になる。
だが辺りを見回しても加護らしき人物は見当たらない。

(あいぼん迷っちゃったのかな……? 結構出口が多いからなぁ)

すると着信音が鳴った。
ディスプレイを見ると案の定、加護からである。
電話に出るとくぐもった加護の声が聞こえてきた。

「……梨華ちゃ〜ん。どの出口から出ればいいんだっけ?」

どうやら石川の推測どおり、道に迷っていたようだ。
40 名前:chaga 投稿日:2001年05月13日(日)01時23分37秒
「あいぼんいまどこ? 近くになんか書いてない?」

加護の話を聞くと、乗り換える方面をどうやら間違えていることに石川は気づいた。

それを伝えると加護は「一人で電車に乗れるようになったの最近だから」と苦しい言
い訳をしてごまかした。

(そう言えばそんな話も聞いたような気がする……)

もう一度迷われると困るので、加護の居る駅まで石川が迎えにいくことにした。
目的地までの切符を買って電車を待つ。
41 名前:chaga 投稿日:2001年05月13日(日)01時25分34秒
(やっぱあっちに乗ればよかったんや〜)

加護は駅前のベンチに座って石川が来るのを待っていた。
どこで乗り間違えたのかはもうわかっていたので一人で戻ってもよかったのだが、石
川が心配だというので結局ここでしばらく時間をつぶすしかない。

足元においてあるバッグの中を特に意味もなくあさってみる。
中には加護の着替えや現金(財布に入っている以外)、その他の旅行に必要なものや
大事なものが入っていた。
そこからチョコレートの箱を取り出して少しつまんでみる。
口の中に甘い味が広がった。

(でも、こんなとこで失敗するなんて幸先悪いな〜)

42 名前:chaga 投稿日:2001年05月13日(日)01時27分07秒
加護の今回の目的はモーニング娘。追加オーディションの参加である。
受かる自信はあった。
いや、そうでも考えなければ自分を奮い立たせることが出来なかった。
モーニング娘。になるなんていうのは自分にとって夢物語であるというのが実際のと
ころ本音である。
自分が何万分の一に選ばれるかなんていったらやはり無理だろう。
しかしまず自分が自分を信じてオーディションを受けなければ可能性はいつまでもゼ
ロなわけだ、という石川とは正反対の発想で今回の参加を決めた。

(オーディション受けるっていったら梨華ちゃんどんな顔するんやろ? 梨華ちゃん
のことだから受かりっこないと思うんだろな〜)
43 名前:chaga 投稿日:2001年05月13日(日)01時28分49秒
ふと駅前のCDショップを見る。
どうやらモーニング娘。のポスターが貼ってあるようだ。
そこにうつる彼女達の笑顔は加護にとって誰よりも光って見えた。
もし今回のオーディションに合格すれば自分もあの場所へいける、という気持ちが加
護の体を震わせた。
それは希望と不安の織り交ざった感情から来るものだった。
合格できれば嬉しい、それはわかってはいるのだが、考えれば考えるほどに不安が希
望を覆い尽くしていく。

自分の実力のなさが彼女達の足を引っ張ってしまうのでないか。
それによって自分だけでなく彼女達の未来も壊してしまうのではないか。

そんな不安があった。
自分の大好きなモーニング娘。をそうならせたくはないが、どうしても入りたい。
矛盾した感情がいつまでも渦巻く。

(……まだ合格してもないのにこんなこと考えるのはおかしいか)

加護は時計を見る。
そろそろ石川が着いてもおかしくない時間だ。
かごは彼女が来た時のために言い訳を考えることにした。
こっちの方はすぐに考えが浮かんできたことに気づいて加護は少し自嘲する。
44 名前:chaga 投稿日:2001年05月13日(日)01時33分11秒
更新しました。

加護の口調に少し悩んだんですけど会話は共通語、心情をあらわすときは
関西弁でいこうと思います。
いろいろ変になるところもあると思いますが、その時はまたご指摘ください。


>>37さん
なんとなくまだ子供なのに子供じゃないような感じで振舞う娘。を書きたかったんです。
37さんの言葉どおり、背伸びをする感じで。
45 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月13日(日)01時56分07秒
石川さんと加護ちゃんの「娘。」に対する考え方の違いがおもしろい。
どう影響しあっていくんだろう…
46 名前:chaga 投稿日:2001年05月14日(月)00時13分53秒
(やっとあいぼんのいる駅だ)

電車を乗りつぎ、人ごみを掻き分けてなんとか加護のいる駅に着く。
改札を出て加護を探す。
加護は出口近くにあるベンチに座っていた。

どうやら疲れていたらしく、小さな目を閉じて静かに眠っているようだ。
その顔を見た石川はやれやれ、といった感じで加護の隣に座る。
そのとき不意にどこからか心地よい風が吹いてきた。
その感触に気づいたのか加護はゆっくりと目を覚ます。

「あ……、梨華ちゃんおはよ」
「おはようじゃないよ〜。こんなとこで寝てて〜」
「ちょっとぽかぽかしてたから眠くなっちゃった」
47 名前:chaga 投稿日:2001年05月14日(月)00時14分58秒
眠気も取れたきたのか、笑顔で答えた。
だがすぐにその顔も崩れる。
加護は足元を見た。

ない。
バッグがなくなっていた。

「あぁ〜! ない!」

加護は立ち上がって大声を出した。
ベンチの後ろを確認するがやはりない。

「どうしたの、あいぼん? なにがないの?」
「バッグ! うちのバッグがなくなってる!」

48 名前:chaga 投稿日:2001年05月14日(月)00時17分42秒
それを聞いた石川も慌てて周りを見渡す。
もちろんそれらしきものを発見することは出来なかった。
加護は泣きそうになりながら探す。
石川はその様子を複雑な表情でただ見ていることしか出来なかった。



しばらくして、二人は警察に届けを出しにいった。
その帰り、加護は一言も話さなかった。
置き引きにあったことにかなりショックを受けていたようで、あれからずっと下を向
いたままだ。
石川の家に着いてもその調子である。

「梨華ちゃん……」

不意に加護が少しかすれ声で口を開く。

「……なに?」
「あのね、荷物のことはもうあきらめてる。けどどうしても無くしたくなかった物が
あった」
49 名前:chaga 投稿日:2001年05月14日(月)00時30分09秒
更新するペースがだんだんきつくなってきたと思う今日この頃。
でもなんとかできそうかな?
もっとぽんぽんアイデアが出てくればいいんですけどねぇ。
まあ、マイペースで行けばいいですよね?
だめですか?


>>45さん
加護と石川はこの物語では二人でようやく一人前なんです。
実際はどうなのかはわかりませんが。
加護は前向きだけど、現実にあるつらさ知らないですし
逆に石川はそれを知ってはいるけど臆病になりすぎてる感じで。
50 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月14日(月)00時46分33秒
夢いっぱいで都会に出てきたのに早速のトラブルですね。
マイペースが一番。無理すると続かないし…
といいながら、頻繁な更新はうれしい、複雑な読者心理(w
51 名前:chaga 投稿日:2001年05月15日(火)01時01分03秒
そういうと加護はいままで下に向けていた視線を石川のほうへ向けた。

「梨華ちゃん、ほら。この前加護の誕生日のときにプレゼントくれたでしょ。その時
めっちゃうれしかった。すごく気にいったから」

石川はその時のことを思い出す。
確かプレゼントとしてマフラーをおくった。
加護の誕生日は二月だったのであまり使える時期はなかったのだが、彼女に似合い
そうだったので石川はどうしてもプレゼントしたかった。
郵送で送ったので結局似合っているかどうかはわからなかったが。

「でも梨華ちゃんがくれたマフラー、加護巻いてるとこ見せてなかったから……、今
日見せようと思って持って…きて…たのに」
52 名前:chaga 投稿日:2001年05月15日(火)01時02分01秒
少しずつ加護の語尾が震えはじめてくる。

「なのに……」

とうとう加護は泣き出してしまった。
顔をクシャクシャにしながら泣きつづけた。

「えぐっ…、ごめんなぁ……、梨華ちゃんごめんな」

石川は加護をやさしく抱き寄せた。

「泣かないで……」
「梨華ちゃんがうちのために選んでくれたのになぁ……。居眠りして無くしちゃうな
んてアホや……」
53 名前:chaga 投稿日:2001年05月15日(火)01時03分35秒
泣き続ける加護の顔を見る度には胸が締め付けられるように苦しくなる。
そこまで大事にしていてくれたとは石川自身も思っていなかった。

「気にしてないから大丈夫だよ? だからもう泣かないで。あいぼんの泣いていると
ころを見ると私も悲しくなるから」

そういうと石川は加護の体をぎゅっと抱きしめる。
加護の体温が石川の胸にも伝わってくるようだ。
人はこんなにも暖かかったのかと正直不思議に思った。



しばらくして少しずつ加護も落ち着いてきた。

「梨華ちゃんのシャツ、汚しちゃった。鼻水でグシュグシュ」

加護は真っ赤になった目を細めて小さく笑う。
それを見た石川はとても愛しく思って、もう一度加護を抱きしめた。
54 名前:chaga 投稿日:2001年05月15日(火)01時08分12秒
>>50さん
やっぱり頻繁に更新していたほうが読んでる側だったころ嬉しかったので
頑張ってやってきます。
絶対に放棄とかはしたくはないんで。


なんでマフラーなんだよ!っていう突っ込みはしないでください(汗
なんとなく思い出になりそうなプレゼント考えてたらそうなっちゃったんで……。

55 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月15日(火)01時42分07秒
加護ちゃん、いじらしいですね。
*無理だけはしないでね。
楽しく書けなければ、続けることもできないから。
56 名前:chaga 投稿日:2001年05月15日(火)23時30分41秒
「梨華ちゃん、くるじ…」
「あ、ごめん! ところでさ、あいぼん電話でいってたでしょ? なに話そうとして
たの?」

石川は自分のしていたことに少し恥ずかしくなって、話題をそらそうとあのときの話
題を出した。
加護は急に含み笑いをする。

「あのね、加護今度モーニング娘。のオーディション受けるの〜」
「え〜、ホントに? 大丈夫なの?」

石川にとってそれはまったく予測していなかったことだった。
自分の身内がオーディションを受けるなどとは考えてもみなかった。
57 名前:chaga 投稿日:2001年05月15日(火)23時31分57秒
「前から入りたいと思ってた」
「前から?」
「加護ね、歌手になりたい。みんなを元気にすることが出来る歌を歌いたい」

加護の目はまっすぐで、それでいてすんでいるように石川には見えた。
少なくともそう思えた。
58 名前:chaga 投稿日:2001年05月15日(火)23時42分45秒
>>55さん
書くのは楽しいんですけど、書くペースと更新するペースがうまく
釣り合ってないんですよね。
とにかく遅筆なもんで


そろそろ本編の雰囲気が変わってくるはず!
多分……


59 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月16日(水)00時09分32秒
>多分……
すっごい、気になる〜。
60 名前:chaga 投稿日:2001年05月17日(木)00時58分08秒
「はぁ〜、やっぱり梨華ちゃんかわいかった!」

石川の家に行った日の夜、後藤は枕を抱きかかえながら嬉しそうに言った。
家に帰ってからでも考えるのは石川のことだけで、明日のレッスンのことなど頭には
まったくない。
今度はいつ会えるのだろうか、なにをしようかなどと考えてばかりいて、後藤自身が
夜の公園で宣言した目標を忘れているようだった。

後藤の足元にイグアナが擦り寄ってくる。

「なに? 嫉妬でもしたの?」

後藤はイグアナを抱き上げた。

「おまえもかわいいよ〜」

まるで赤ん坊をあやすような甘い口調で話しかける。
61 名前:chaga 投稿日:2001年05月17日(木)00時59分34秒
後藤はイグアナを仰向けにして寝かせた。
イグアナにはもちろんそんな態勢を維持することは出来ないので裏返ろうとする。
しかしやっとのことで裏返ったイグアナを後藤はまた仰向けにした。
今度は手を離さずに腹部に軽く触れておく。
そうすることによってイグアナが裏返るのに抵抗を与えているのだ。
必死に四肢をばたつかせるがどうしてもうまくいかない。

それを見る後藤の目は何故かとても穏やかだった。

「おまえはとってもかわい〜ね〜」

後藤が手を離すとすぐにイグアナは裏返って彼女のもとへ擦り寄っていった。

イグアナにとって彼女の行動すべては愛情になり、そしてそれをいつも求めていた。
また、後藤にとっても先程の行動はイグアナに対する虐めではなく愛情であった。
ゆがんだ愛情表現といっていいのだろうか、とにかくお互いに共通したなにかがそこ
にはあったのは確かだ。
62 名前:chaga 投稿日:2001年05月17日(木)01時00分38秒
カーテンを開けると暖かな日差しが差し込んでくる。
それは眠っていた石川の意識を少しずつ覚醒させていく。
石川は大きく伸びをした。

加護がきて今日で二日目だ。
初日は大変なことがあったが、なんとかこの生活にもなれてきたようである。

(でもびっくりしたな…、あいぼんがオーディション受けるなんて)

隣を見ると加護はまだ寝息をたてていた。

時々笑ったような顔をしているのは夢を見ているせいだろうか?
その表情一つ一つが石川にとってなによりもかわいく思えた。
石川は加護の頬に手を伸ばして顔を少し近づけた。
だが自分のしている事がはずかしくなってやめた。

(……顔、洗ってこようかな? きっと昨日は夜更かししずぎたからひどい顔してる
と思うし)
63 名前:chaga 投稿日:2001年05月17日(木)01時02分49秒
石川は洗面所へ向かう。

(危なかった。こんな顔あいぼんに見られたくないよ〜)
「梨華ちゃん、お化けみたい」

不意に後ろから加護の声が聞こえた。

「あっ、あいぼん! 起きたの?」
「うん、寝たふりしてた。ところで梨華ちゃん」

加護は背伸びをして石川の顔を両手で押さえた。
石川はそれまで顔を見られたくなかったので横を向いていたのだが、そうされてしま
って嫌でも加護と顔をあわせなければいけなくなってしまった。
石川は顔を見られた羞恥心と何を言われるかという不安が織り交ざった表情をする。

「加護になにしようとしてたの〜?」
(やばい、みられてた!)
64 名前:chaga 投稿日:2001年05月17日(木)01時04分10秒
「あれは、あの〜」
「まさか梨華ちゃんがあんなに積極的だったなんて加護は知りませんでした! これ
は特ダネですね。小倉さんもビックリです!」

その瞬間、石川の口になにか柔らかいものが触れた。
目の前にはすぐ加護の顔がある。

「いまのは口止め料としてもらってオキマ〜ス!」

加護は外人のようなカタコトの日本語でいった。
石川の顔がさらに赤くなっていく。
石川はすぐにでも倒れてしまいそうなのをなんとかこらえた。
65 名前:chaga 投稿日:2001年05月17日(木)01時08分55秒
>>59さん
多分ですよ。
なんだか自分は書くのがへたみたいで、ホントに書きたいことまで行くのに
いろいろと道草をくってしまうんです。
だからもう少し時間が……。



なんだか最近モーニング娘。っていう設定を入れなければよかったと
後悔しています。
このままだと設定の必要性があまりないままに進んでしまうんで。
やっぱりむずかしいっすね。
66 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月17日(木)01時36分08秒
ようやく、加護ちゃんの個性が発揮されようとしてますね。(w
後藤ちゃんのエピソードも印象的だし。
>いろいろと道草
読む人とすればそれも面白いものです。
設定については、初めての作品であれば、いろいろ後悔することもあるでしょうが、
何事も経験、勉強と思ってがんばってください。
67 名前:chaga 投稿日:2001年05月18日(金)01時34分33秒
加護は半分スキップのような足取りでリビングに向う。
本当に朝からハイテンションな性格だな、と石川はしみじみ思った。

「梨華ちゃ〜ん? メール入ってるよ〜」
「顔とか洗ったら行くから」

洗面所から戻ると加護はTV(特ダネ)を見ていた。
それが意味しているものに気づかないふりをしてメールをチェックする。

(わっ、後藤さんからだ!)

それを見て石川は加護に後藤のことをまだ話していなかったことに気づく。
昨日は加護のことで手一杯で話す暇がなかった。
とりあえず話す前にメールを確認した。
少し石川の顔がにやける。
メールを打つとすぐに返事が返ってきた。
68 名前:chaga 投稿日:2001年05月18日(金)01時36分10秒
(あれ、ごっちんいま休みだったのかな? まあいいか)

「あいぼ〜ん? とっておきの話聞きたい〜?」
「なに〜? 聞きたい!」

加護は今まで見ていたTVを消して石川の元へ駆け寄ってきた。
なにやら聞く気まんまん、といった感じだ。

「私、石川はモーニング娘。の後藤真希さんとお友達になりました!」

は? といった表情で加護は石川を見る。
当たり前のことだがそれをすぐに信じれるわけはなかった。

「何いってるの、梨華ちゃん?」
69 名前:chaga 投稿日:2001年05月18日(金)01時38分14秒
石川は後藤とであった日のことをほんの少し自慢げに話した。
自慢げといってもいやみな意味ではなく、ただその出来事に対しての嬉しさを誰かと
共有したいといった気持ちからであった。
加護ははじめその話を聞いてもあまり信用してはいなかったが、石川の表情から少し
ずつそれが本当のことなのかもしれないと思い始めた。

「それでね、さっきメールであいぼんのこと話したら一緒に遊ぼうっていってたの。
あいぼんもいいでしょ?」
「え、それってほんとにほんと〜?」
「ほんとにほんとだよ〜」

加護の顔がだんだん笑顔になる。
石川はそれを見て後藤と会えて本当によかったと思った。
70 名前:chaga 投稿日:2001年05月18日(金)01時44分54秒
>>66さん
確かに勉強ですよね。
失敗しなければ初期設定の重要さにも気づかなかったかもしれないですし。


吉澤さんそろそろ登場です。
71 名前:LVR 投稿日:2001年05月18日(金)01時59分34秒
いしごまなのかな?
いしごまは大好きなんで、愛読させてもらってます。
でも、いしよしもいいなあ……。
72 名前:chaga 投稿日:2001年05月19日(土)01時37分12秒
その時後藤は車で移動中だった。
矢口と話す辻希美の声だけが強調されたような車内に電子音が鳴り響いた。
メールの届く音に気づいて後藤は閉じていた瞳をゆっくりと開く。

(梨華ちゃんからだ)

後藤は石川のメールに目を通す。
夜に今度会える? とメールいれておいたのでその返事だろうと確認するとやはりそ
うだ。
答えはもちろんOK、だがそこに一つ書き加えてある。

『私のいとこもいいかな〜?』

別に連れてきて悪いことはなかったので後藤はいいよとメールを返す。
予定は二日後の夕方からにしておいた。
その時はモーニング娘。のメンバーも何人か来ることになっている。
後藤は石川の驚く表情を思い浮かべて小さく微笑んだ。
73 名前:chaga 投稿日:2001年05月19日(土)01時37分58秒
「ごっちん、何してるの〜?」

後ろの席からメンバーの吉澤ひとみが顔を出す。
彼女と後藤は年齢もユニットも同じである。
そのせいかメンバーの中で一番仲がいい。

「ン〜、梨華ちゃんとメール……」
「梨華ちゃん……? ああ、あの時のね」

吉澤はまたか、といった表情で後藤に言った。
それもそのはず、吉澤と話すとき最近の後藤は石川のことばかり話題にしているから
だ。

「そんなこと言わないでよ〜、ホントかわいいんだって。娘。にはいないタイプ」
「はいはい、わかりましたよ〜」
74 名前:chaga 投稿日:2001年05月19日(土)01時38分55秒
吉澤は座席に腰を下ろす。

「ああ〜、早くあさってになんないかな〜。よっすぃ〜も来る? 梨華ちゃんとこ」
「考えとく。あ、ごめん辻。少し眠るから静かにしてて」

後ろで騒いでいた辻希美にそう言って吉澤はMDの電源を入れた。
会話のなくなった車内にシャカシャカという音だけが鳴り続ける。
MDの音量を少し下げ、吉澤は目を閉じた。
75 名前:chaga 投稿日:2001年05月19日(土)01時40分33秒
後藤と矢口、辻、そして吉澤(結局後藤に言われるままきてしまった)の四人は待ち
合わせ場所に向かっていた。
予定よりスケジュールが遅れてしまっていたのでタクシーを使って待ち合わせ場所行
こうとしているのだが、時間帯が悪かったのか道は混雑して進まなかった。
すでに時間は十分遅れである(集合場所までこの状態ではまだかかるであろう)。

「やばいな〜。もうこんな時間だよ」

後藤が携帯の時計を見ながらヤキモキしたように言った。
何故か辻もそわそわしている。
それは後藤とは違い、同年代の友人ができるかもしれないという期待からであったが。

「連絡はいれといたの?」

吉澤に言われて初めてそのことに気づいた後藤は急いでメールを打つ。

76 名前:chaga 投稿日:2001年05月19日(土)01時49分32秒
>>LVRさん
ベースはいしごまなんですが、いしよしも入ってます。
二人の間で悩んでる石川を書きたいなと。
それとチョコチョコいろんなメンバーとの小さな絡みもいれていきます。


77 名前:chaga 投稿日:2001年05月20日(日)00時14分48秒

「あいぼん、後藤さん達おそいね」
「仕方ないよ。でも辻ちゃんもくるんでしょ〜?」
「そうらしいね。よかったね、あいぼん」

加護は娘。のメンバーでは辻が一番好きだった。
年齢が同じであることが何か共通点のようなものに感じられるからだ。
石川が後藤のことを好きだったのもそれから来るものなのかもしれない(詳しくは書
いていないが吉澤のことも例外ではない)。

しばらくして石川のPHSにEメールが受信された。
送り主は後藤からで、渋滞で少し遅れるということだった。
石川はその内容を加護にも話す。

「もう少しかかりそうだってさ」
78 名前:chaga 投稿日:2001年05月20日(日)00時15分34秒
それを聞いて加護は少しがっかりしたようだった。
だがすぐに何かをひらめいたように顔をあげる。

「梨華ちゃん、じゃんけんしない?」
「え? なんで」
「あのね、じゃんけんして負けたほうがみんなの前で一発芸するの」

加護はとても良い考えを出したかのように誇らしげに言った。

「そんなの無理だよ〜。やんない、絶対やんない!」
「おもしろいって、そのほうが」
79 名前:chaga 投稿日:2001年05月20日(日)00時16分24秒
「あいぼんは面白いこと考えるの得意かもしれないけど私は無理!」
「じゃあ別に良いよ〜。あのこといっちゃうから〜」
「なんで? 口止め料あげたじゃない!……あ」

石川は自分で言ったことに気づいて顔を赤くする。
加護はそれをにやけた表情で見ていた。

「じゃあ、もう一回口止めしてちょうだい」
「やめてよ〜。あいぼ〜ん!」

泣きそうな顔で加護を見る石川に、ある意味征服感にも似た感覚を加護は覚える。
それが加護自身どうしてなのかはわからなかった。

80 名前:chaga 投稿日:2001年05月20日(日)00時18分09秒
はじめて石川と出会ったとき、吉澤は何か運命的なものを感じていた。
今までにはこんなことは一度だってなかった。

以前は後藤があまりにも石川の名ばかりを言うので、逆ににうっとうしく思っていた
だけにおかしなものだ、と吉澤は考える。
だがあった瞬間からもっと石川のことを自分のものにしたいという気持ちがあったの
は確かだ。

近くのカラオケボックスに入ってからも積極的に自分から話しかける。
とにかく彼女のことを知りたかったし、自分のことも知って欲しかったのだ。
石川は笑顔でそれに答える。

「……梨華ちゃんってホントにかわいいねよね」
「……そだね」

吉澤が隣に座っている後藤に小さく話しかけたが後藤はあまり気乗りしないような口
調で返してくる。
81 名前:chaga 投稿日:2001年05月20日(日)00時19分08秒
「どうしたの? ごっちん元気ないよ〜」

ぽんぽんと後藤の背中をたたく。
だが後藤はただなんでもないとつぶやいて首を振るだけだった。

「気分悪いの? 元気出してね」

歌う順番がまわってきたので吉澤はそれだけ言うとマイクを持って石川のところへむ
かった。

「梨華ちゃん、一緒に歌お?」
「え〜、ひとみちゃん私ヘタだよ?」
「そんなことないよ〜。さ、はやく!」

その様子を後藤は冷めた目で見ていた。
歌い終わってからも二人の会話は続く。

82 名前:chaga 投稿日:2001年05月20日(日)00時20分41秒
「梨華ちゃん、携帯……じゃなくてPHSの番号教えてくれない?」
「いいよ〜」

吉澤と電話番号の交換をしているとき石川はちらり、と後藤のほうを見た。

辻と加護の二人に矢口が遊ばれているのをじっと見ているように思えるし、何も目に
入っておらず深く考え事をしているようにも見える。
その様子が少し石川には気になった。




「ひとみちゃん、ごめん私ちょっとトイレ」
「は〜い、早く戻ってきてね」
83 名前:chaga 投稿日:2001年05月20日(日)00時21分45秒
石川は席を立つと廊下の角にあるトイレに向かう。
中に入ると意外と狭く、個室が一つあるだけだった。

用を足してから石川は鏡を見る。
いつのまにか顔がだらしなく緩んでいるのに気づいて少し苦笑した。

(ひとみちゃんってすごいいいこだよね〜。面白いし、やさしいし)

「ずいぶん嬉しそうだね」

急に声をかけられて石川はどきりとした。
後ろを振り向くとそこには後藤がいた。
後藤の目は石川のそれをしっかりと捕らえている。
84 名前:chaga 投稿日:2001年05月20日(日)00時23分03秒

「あ、後藤さん。後藤さんもトイレですか?」
「ン…、ちょっと……」

後藤は言葉を濁す。

「ねえ、梨華ちゃん?」

その時はじめて後藤は石川から視線を外した。
石川は何か解放された、というような感覚を覚える。

「よっすぃ〜のこと ひとみちゃん って呼ぶのはどうして?」
「え……?」
85 名前:chaga 投稿日:2001年05月20日(日)00時26分28秒
更新しました。

もうなんだか気分的に一気に書きました。
なんとか最初に自分が書きたかったシーンに入れそうです。
86 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月20日(日)04時32分12秒
おお。何やら気になる展開に。
次回シーン、楽しみにしてます。
87 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月20日(日)04時38分08秒
同じく期待して待ってます
88 名前:chaga 投稿日:2001年05月21日(月)00時35分31秒
確かにいつのまにか石川は吉澤のことをそうよんでいた。
別に意識したつもりはなく、吉澤の持つ気さくさがそうさせたのかもしれない。
とにかくいつのまにかお互いに『ひとみちゃん』『梨華ちゃん』と呼び合うようになっ
ていた。
石川はそれ自体には気づいてもいなかったが。

「……どうしてだろう?」

石川は下を向いて自分自身に問い掛けるようにつぶやく。
そのせいか、後藤が動いていたのに気づかなかった。
石川のからだが不意に軽くなる。
89 名前:chaga 投稿日:2001年05月21日(月)00時36分59秒
後藤が石川を突き飛ばしていた。
何が起きたのか理解したときにはすでに彼女は個室の中に入れられていた。
後藤は少し焦ったようにカギをしめる。
ガチャリという音がまわりに反響したためか、普段以上に大きく聞こえた。
後藤のその剣幕に石川は小さく息を飲んだ。
二人の息遣いだけが個室のなかに広がる。

「ご…、後藤さん?」
「梨華ちゃんが悪いんだよ」

それだけ言うと後藤は石川の着ているシャツを捲り上げてきた。
驚いた石川は脱がされまいと必死に抵抗する。
90 名前:chaga 投稿日:2001年05月21日(月)00時38分15秒
(なんで? なんでこんなことするの?)

すると後藤は石川の首をのど輪のようにつかんで壁に押し付ける。
そのまま力を緩めずに石川をにらみつけた。
石川はそれをはずさせようとするが後藤の力がそれを許さない。

のどが圧迫され呼吸が苦しくなってきた。

「くる、くるし……」

顔を真っ赤にしてなんとかその言葉を吐き出す。

「じゃあ、抵抗しないでよ」

後藤は表情も変えずにさらりと言い放った。
それが妙に恐ろしく思えて石川は抵抗をやめる。
91 名前:chaga 投稿日:2001年05月21日(月)00時40分34秒
(殺される! 殺されちゃう!)


頭の中に浮かんでくるのはそれだけだった。
力でかなわないこの状況から抜け出すにはまず相手の言う通り抵抗をやめるしかない。
かといって抵抗をやめたからといって何もされないという保証はないが。
だがここで従わなければどうなってしまうかわからない。
涙があふれた。

92 名前:chaga 投稿日:2001年05月21日(月)00時42分20秒
後藤の力が少し緩む。
今までとだえていた酸素が頭の中に巡ってきて、石川は助かったのだと実感した。

すると後藤は首にかけている手を石川の後頭部にまわして抱き寄せた。
首筋を鎖骨に向かってなぞるように舐める。
しかしその感触は石川に嫌悪感しか与えなかった。
力の入らない両腕で後藤を押し返そうとすると不意に後藤の行動が止まった。

「なんでいやがるの?」
「なんでって……」
「後藤のこと好きなんでしょ? じゃあいいじゃん、好きならこういうことしても」
93 名前:chaga 投稿日:2001年05月21日(月)00時44分25秒
後藤は不思議そうな目で石川を見つめる。

「そういう意味で言ったんじゃないです! 好きっていうのは憧れで……」

それをいい終わらないうちに後藤は石川をまた壁に突き飛ばした。

「あうっ! ……つ!」

その衝撃に石川は思わず悲鳴をあげた。

「よっすぃ〜ならいいの?」
「え?」



その言葉の意味を理解し終える前に後藤は個室を出ていく。
石川はわけのわからぬままそこに取り残された。

しばらくして目の腫れも落ち着いてきた石川もカラオケに戻ったが、そこに後藤の姿
はなかった。
94 名前:chaga 投稿日:2001年05月21日(月)00時47分03秒
「梨華ちゃん遅いよ〜。何してたの?」
「うん……、ちょっとね」
「ごっちんもなんだか用事があるって帰っちゃうし。なんかあった?」
「え〜、なにもないよ」

石川は気持ちを悟られないように明るく努めていった。
あまり納得しないような表情をしながらも吉澤は笑顔で返す。

「お〜い、よっすぃ〜。そろそろ終わりにしようか。このチビ達もいることだし」
「え〜、矢口さんだってちっちゃいじゃないですか〜」

加護が矢口にそういったのは、すでにそれが許される間柄になった証拠なのだろう。
矢口が加護をしかるまねをしているのを見ると石川は後藤とのことがまるで別世界の
話のように思えて仕方がなかった。
ほんの数時間前までは二人の中もあのように良かったはずだったのだ。
何がそれを狂わせてしまったというのだろうか。

95 名前:chaga 投稿日:2001年05月21日(月)00時48分23秒
「ねえ、ごっちん。あのときなんかあったの?」

カラオケの次の日、吉澤は疑問に思っていたことを後藤に聞いた。

石川の少しあと、後藤も続いてトイレにいった。
しかし二人はなかなか帰ってこなかった。

「梨華ちゃんとケンカでもしたの?」
「……なんでもないよ」
96 名前:chaga 投稿日:2001年05月21日(月)00時49分39秒
後藤は吉澤に目もくれずに冷たく言い放った。
いつもと違うのは何かあるはずだという確信は吉澤にもあったのだが、後藤に
聞いても石川に聞いても何も話してはくれない。
それが吉澤にはもどかしく思えた。

(ともだちでしょ? なんで話してくれないんだろ)

その思いが吉澤の心をいつまでも渦のように取り巻いていた。

その日の収録でも後藤はどこか上の空であるのが手に取るようにわかる。
それはいつも一緒にいた吉澤だからこそわかる小さなものだったのだが。

(絶対おかしいよ。……後で梨華ちゃんに会おう)
97 名前:chaga 投稿日:2001年05月21日(月)00時57分15秒
>>86,87さん
後藤のファンだったらごめんなさい。
ただの黒ごまにはしませんので……



やっぱり休みはいいですね。
結構いろいろ書けちゃいました。
毎日こんなペースで書ければいいのに。

今回乱暴なシーンが多かったんですけど、NGですか?
98 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月21日(月)01時28分08秒
性格設定がステレオ式でなくて、感心しています。
(単純でないと言うことね。)
「乱暴なシーンを入れる」=目的。でないならOK(w
いつも楽しみにしています。
99 名前:chaga 投稿日:2001年05月22日(火)00時47分32秒

「梨華ちゃ〜ん。電話なってるよ〜」
「今いく〜」

加護がテレビの前のソファから叫ぶ。
石川はちょうど隣の部屋で考え事をしていた。
後藤のことだ。

なぜあのような行動をとったのか、それを考えていた。

会話の内容から客観的に推測すると、あれは一種の『嫉妬』であることは確かだ。
石川は吉澤とばかり話していて後藤のことをないがしろにしてしまっていた。
しかしそれだけであれほどの事が起きるものなのだろうか?
100 名前:chaga 投稿日:2001年05月22日(火)00時49分55秒
たとえ後藤が石川に対して恋愛感情を持っていたとしても考えづらい。
いや、長い間そのような関係で、それでいてその人物が異常に嫉妬深く独占欲が
強いのであればありえないこともない。

だが石川と後藤は知り合ってまだ日が浅い。
それどころか実際にあったのはカラオケの日をまぜるとまだ三回しかないのだ。
とりあえず考えるのをやめて電話に出る。

「もしもし、ひとみちゃん?」
「あ、うん」
「どうしたの?」

吉澤は何も言わない。
それからしばらくしてから吉澤は口を開く。
101 名前:chaga 投稿日:2001年05月22日(火)00時50分49秒
「本当のことを言って欲しいんだ、昨日のこと」
「え……」

石川の明らかな動揺を感じて推測は確信に変わった。

「梨華ちゃん、今日会える?」
102 名前:chaga 投稿日:2001年05月22日(火)00時51分55秒
石川と吉澤は近くのファミレスで落ち合うことになった。
吉澤はなかなか話を切り出せずに頼んだコーヒーを口に運んでばかりいる。

「……後藤さんとはなにもなかったって」

石川は何を聞かれるのかわかっていたかのように吉澤に言う。
それでも吉澤は何も話さない。

しばらくして吉澤は決心したように口を開いた。

「ごっちん様子がおかしいんだよ。何してても上の空って感じで」
「だから……」
「梨華ちゃんだけの問題じゃないんだよ。このままじゃ私達の仕事にも影響が出るん
だから」
103 名前:chaga 投稿日:2001年05月22日(火)00時53分56秒
それを言ってから少し吉澤は後悔した。
なんて無神経なことを言ってしまったのだろうか。
石川がいつまでたっても話そうとしないことに苛立っていたのもあるが、それにして
も相手の気持ちを第一に考えていなかった。
吉澤は自分の浅はかさに情けなくなる。

「……ごめん。やっぱりはなせない」

石川がいう。
話せるわけがなかった。
石川も話して楽になりたかったが、どうしてもあの言葉を言ったときの後藤の顔がひ
っかかるからだ。


「よっすぃ〜ならいいの?」


それはとても悲しみに満ち溢れた表情にもとれたし、怒りを必死に打ち消そうとして
いるようにも見えた。
もちろん落ち着いている今だからいえることで、あの時はただ恐怖しか感じなかったが。
104 名前:chaga 投稿日:2001年05月22日(火)00時56分15秒
その帰り道。

石川はふと空を見上げた。
そこにはいつものように星が輝いていて何も変わりはない。
そういえば後藤と見た空もこんな感じだった、と石川はその時のことを思い出す。
あれからそれほど経っていないはずなのにこの心の変わりようはなんなのだろうか?

今は後藤には会いたくない。
怖い。

この先を通るとあの時の公園だ。
石川は無意識のうちにその道を避けていた。
今の石川の心の奥にある気持ちがそうさせていたのかは誰にもわからない。
105 名前:chaga 投稿日:2001年05月22日(火)00時57分58秒
「梨華ちゃんとケンカでもしたの?」
「……なんでもないよ」

後藤は吉澤に目もくれずに冷たく言い放った。
友人にそんなことをするなんて少しやりすぎたと後藤の胸がちくりと痛む。

(ケンカ……。あれはケンカじゃない、一方的な暴力だ)

どうしてそういうことになったのかよく覚えていなかった。
ただ吉澤といるときの石川の表情を見るとなにかどす黒い気持ちが生まれたのは感じ
ていた。
106 名前:chaga 投稿日:2001年05月22日(火)01時00分19秒
いや、正確には生まれたのではなく、もとから心の奥に隠れていただけなのかもしれ
ない。
それ自身後藤の知るところではなかったが。

(やっぱり謝るべきだ! あの時はどうかしてた)

そう決心して石川に電話をしようとしたが、ちょうど休憩時間が終わってしまったの
で出来なかった。
内心後藤はほっとした。

決心はしたものの電話をかけづらかったからだ。
自分の気持ちを落ち着けるために時間稼ぎの口実を探していたのもある。

(仕事しようか……。暇なときにでも気持ちととのえよう)
107 名前:chaga 投稿日:2001年05月22日(火)01時02分51秒
収録も終わり、後藤は楽屋に戻った。
だがいまだにかけられる気がしない。
また時間稼ぎにトイレへ行くことにした。
人がいるところはうるさくていやだったのであまり使われていないフロアへ向かう。

「……あ、うん」

ふいに人の話し声が聞こえてきて後藤は立ち止まる。
どうやら階段の踊り場で誰かが電話をしているようだ。
その声にどことなく聞き覚えがあったので陰からそっと覗き見る。

吉澤だった。
その言葉のあと吉澤は何も話さない。

「本当のことを言って欲しいんだ、昨日のこと」

しばらくして吉澤はそういった。
その言葉から大体の内容は理解できる。
108 名前:chaga 投稿日:2001年05月22日(火)01時04分44秒
(もしかして梨華ちゃんと話してる……? よっすぃ〜に伝えてもらおうかな、ごめ
んって)

吉澤は今夜石川と会うことを約束した。
後藤はそれを聞いて一つの考えを思いつく。

(よっすぃ〜と会うってことは梨華ちゃんあの公園の前通るよね。後藤もそこにいけ
ば会える。そうだ、プレゼントっていうかお詫びの品を持って謝りに行こう)

急いで帰りの支度をする。
何を買おうか考えるだけで何故かわくわくした。

109 名前:chaga 投稿日:2001年05月22日(火)01時08分49秒
>98さん
乱暴なシーンが目的じゃないんで大丈夫です。
あと、楽しみにしている方がいるっていうのはとても嬉しいです!
これからもお付き合いお願いします。


ちなみにいつのまにか100こえてました。
結構おどろきです。
これからもこのペースで頑張っていきたいと思います。
110 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月22日(火)22時25分14秒
夜中の公園ドキドキ…
111 名前:chaga 投稿日:2001年05月23日(水)00時09分29秒
いろいろ考えた結果、やはり自分でクッキーを作ることにした。
そのほうが心もこもっているし、以前した約束を守ることになるからだ。

家に帰るなり後藤はクッキー作りをはじめる。

「よし、完成!」

多少時間がかかってしまったがなんとか思ったとおりに作ることが出来た。
焦ってやったわりには結構な自信作である。
加護の分もラッピングして綺麗にまとめた。

(時間がないから早く行かなきゃ)
112 名前:chaga 投稿日:2001年05月23日(水)00時10分53秒
後藤は公園へ向かった。


公園につく。
当たり前のことだが人のいない公園で一人さびしくベンチに座る。
後藤は空を見上げた。
あの時ほどではないが今日も結構な数の星が瞬いていた。

(前と結構似たシチュエーション)

後藤は少し感傷的になりながら空を見る。
自分勝手なものだと後藤は思ったが、どうしてもあの時のような関係に戻りたかった。


後藤はしばらくそのまま星を眺めていた。
その間何度も石川のことを探すために路地を見るが現れない。
時間はすでに十時を回っている。
この道を通る人はもういないように思えた。
113 名前:chaga 投稿日:2001年05月23日(水)00時12分08秒
(こない……。後藤が来るの遅かったからその間に帰っちゃったのかなぁ……)

後藤はクッキーの包みを空けて一口食べた。
口の中に甘い味が広がり、こうばしい香りが後藤の寂しさを少し取り去ってくれたよ
うな気がした。
自信作のクッキーは味わってもらおうと石川の家に届けるために立ち上がる。

石川の家までの道のりはちゃんと覚えている。
だが後藤はその足を前に進めることが出来なかった。

ただ怖かった。
自分を見つめる石川の視線がただ怖かった。
114 名前:chaga 投稿日:2001年05月23日(水)00時16分10秒
後藤はクッキーをおもむろに掴むとそれを食べた。
やがて二人分のクッキーはなくなる。

(おいしいから全部食べちゃった。これじゃあ梨華ちゃんトコに行けないな〜)

駅に向かって歩き出す。

(加護ちゃんのクッキーは失敗かなぁ? ちょっとしょっぱいし。あはは……)

鼻をすすって後藤はそう考えた。

後藤が公園を離れたのは石川が近くを通りかかったちょうど十五分後のことだった。
115 名前:chaga 投稿日:2001年05月23日(水)00時25分09秒
今回はちょこちょこっと……。


>>110さん

夜の公園で待っていたのはすれ違いでした。

ちなみに加護のクッキーがしょっぱいの理由は一応文章の中に隠喩みたいなもの
いれたんですが、わかりにくいかなぁ?
116 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月23日(水)01時25分58秒
>無意識のうちにその道を避けていた。
で、そうなるかも?とも思っていたけれど……
なかなか後藤ちゃんも切ないですね。
117 名前:chaga 投稿日:2001年05月24日(木)01時03分02秒
吉澤は昨日のファミレスでの会話を思い出して考えた。

きっと石川も誰かに話して楽になりたいはずだ。
それが出来ないのはどうしても話せない何かがあるからなのだと。

それが後藤がらみなのは容易にわかる。
いったい何をされたというのか?
いや、考えづらいことだが逆に石川が後藤に何かをしたという可能性もあるのだ。

考えれば考えるほどわからなくなる。
ただ確かなのは今の状況では何も進展しないということだ。
やはりここはなんらかの情報が欲しい。
118 名前:chaga 投稿日:2001年05月24日(木)01時04分00秒
吉澤はそう思って後藤のほうを見る。
すると少しおかしなことに気がついた。
後藤の目が腫れていたのである。

「ごっちん、どうしたの? 目とか真っ赤だよ?」

吉澤は以前と変わらないように自然に振舞った。
まず話を聞き出すには後藤の心を開かなければならない。

「あはは……、ちょっとね」

後藤は言葉をはぐらかす。

「あ、辻〜。なんか嬉しそうじゃな〜い〜?
119 名前:chaga 投稿日:2001年05月24日(木)01時05分41秒
後藤は吉澤を避けるように辻のところへ行く。

「あのですね、今日あいぼんがうちに泊まりに来るんですよ〜」
「あいぼん…ああ加護ちゃん」

辻は嬉しそうに話した。
この世界には辻と同じ年頃はなかなかいないので、やはり同年代の友達というのは違
うものなのだろう。

(加護ちゃんが泊まりに来る? ていうことは今日は梨華ちゃん一人きりか……)

120 名前:chaga 投稿日:2001年05月24日(木)01時06分33秒

後藤が石川の家に行けなかったのは、加護がいたせいも少なからずあった。
加護にあの時の話を聞かれてしまうのではないかという不安を後藤は持っていた。
加護がいないのであれば落ち着いて話せるかもしれない。

「今からも〜、楽しみなんです!」
「そうなんだ。よかったね〜」

そのせいで自分が傷ついたってかまわない。
一番傷ついているのは石川なのだから。
後藤は石川の家に行く決心をした。
121 名前:chaga 投稿日:2001年05月24日(木)01時07分48秒

「あいぼん今日いないのか〜。さみしいな〜」

石川は加護の新しいバッグに荷物を入れてやりながらいった。
ちなみにこのバッグは石川が以前使っていたもので、今のを使う前までは一番のお気
に入りだったりする。
加護もそれを気に入ってくれたので、石川は嬉しく思った。

宝物にする、と言われたので石川は少し大げさだと思ったが、加護にあげたマフラー
のことから考えるとそれもあながち嘘ではないように感じる。
どちらにしても大事に思われるというのは気持ちのいいものだ。
122 名前:chaga 投稿日:2001年05月24日(木)01時08分53秒
「ごめんね〜。辻ちゃん明日休みらしいからさ」

加護は本当にすまなそうな表情で言った。
石川はこの表情をされると本当になんでも許したくなる。

「うるさいのがいなくなっていいから大丈夫!」
「なに〜? それ〜!」
「そのままの意味だよ〜」

石川と加護はいつものようにじゃれあった。

123 名前:chaga 投稿日:2001年05月24日(木)01時09分52秒


後藤は石川の家に行くことを考えるだけで胸が高鳴った。
そのせいか収録の本番中も集中することが出来ない。

(やばいな〜)

案の定、帰りにマネージャーに引き止められる。

(この人いいひとなんだけど、説教長いんだよね)

後藤は一応反省したような顔をしてマネージャーについていく。

説教が終わった頃にはもう時間は遅くなっていた。
後藤が考えていた時間より一時間半ほど遅れている。
急いで駅に向かった。
124 名前:chaga 投稿日:2001年05月24日(木)01時15分28秒
>>116さん
そうですね〜
後藤も切ないですね。
っていうかある意味一番切ないのは後藤です。


だんだん最初のイメージと変わってきてしまいました。
ホントは後藤はもっと黒かったはずなんですけどね。
だんだん健気な性格に……
まあ行き当たりばったりがいけないのか
125 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月24日(木)22時14分52秒
石川さんがどう動くかで、すべての流れが決まりそうですね。
126 名前:chaga 投稿日:2001年05月25日(金)01時12分17秒
(一人だとやっぱりつまんないな〜。ビデオでも借りてこようかな?)


読んでいた本にしおりを挟んで立ち上がる。

外に出ると夜になって冷えこんできたためか、少し身震いする。

ジジジとなる街灯に小さな虫が集まっている。
その様子がなにか不気味で石川はその近くを通らないように避けて歩いた。

石川のほかに歩く人影はない。
この辺りは夜になると昼間とまったく違う寂しい道になる。
石川の足も次第に速くなった。
127 名前:chaga 投稿日:2001年05月25日(金)01時14分23秒
その時一瞬だけだが人影が見えた。

(なに? なに? やめてよ〜)

石川は立ち止まって目を凝らすがなにも見えない。
引き返そうかと思ったがただの見間違いだと思っておくことにした。
だが歩き出そうとした瞬間、ガサというなにか布ずれのような音がした。
石川は後ろを向いてゆっくりと歩き出す。
そうするほうがなんとなく怪しまれずに逃げやすいような気がした。

(ついてきてる? うそ? 偶然でしょ?)

怖くなって石川は走り出す。
それにあわせて足音も早くなった。
少しずつ自分との距離が狭まってきているのが石川にはわかった。
後藤とのことも手伝ってか、恐怖で頭がくらくらする。

石川の肩に手がかけられた。
反射的に肩をこわばらせ目をつぶる。

「はぁ、はぁ……。逃げないでよ梨華ちゃん」
128 名前:chaga 投稿日:2001年05月25日(金)01時19分03秒
>>125さん

石川がどっちにいくのかはまだ自分でもはっきり決めてません。
なんせ自分いいかげんなんで……。
現在いい感じでも後でまったく違う展開になるかもしれませんし、
そのまま続いていくかもしれません。
その辺は話に無理がないように処理したいとおもいますので。



今回あんまり更新できませんでした。
今書いてるところ行き詰まってしまいまして。
というか『そういう文章』に書きなれていないだけなんですけど。
129 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月25日(金)05時09分52秒
梨華ちゃんどうする?
130 名前:chaga 投稿日:2001年05月26日(土)00時24分17秒
石川は恐る恐る目を開いてその声の主を見た。

吉澤だった。
吉澤は少し額に汗を浮かべて石川を見る。

「……なんだ〜。ひとみちゃん?」

石川も汗を軽くぬぐいながら笑った。

「こんなことするなんてひどいよ〜。あれ、でもひとみちゃんに私の家教えて
たっけ?」
「加護ちゃんに聞いた。辻が今日会うって言ってたからついてきたの」
「でもビックリした〜。あ、家で話そうか?」
131 名前:chaga 投稿日:2001年05月26日(土)00時25分29秒
「別に脅かすつもりはなかったんだけどさ〜、梨華ちゃんがあんまり怖がるからつい
ね……」

吉澤はきまり悪そうにして鼻の頭をかく。

「あ〜でもホントにビックリしたよ? 大声で助けてって叫ぼうと思った〜」
「ごめんごめん」

吉澤は小さく笑って石川の目を見た。

「あのさ……、今日来たのは、ホントにしつこいとは思うんだけどごっちんとのこと
で……」

石川はなにも言わずうつむく。
吉澤は気にせずに続ける。
132 名前:chaga 投稿日:2001年05月26日(土)00時26分43秒
「ごっちんね、あの時までいつも梨華ちゃんのことばかり話してたんだ。すごく幸せ
そうな顔でさ。なのに今は違う。私はごっちんのそんな顔は見たくない」

石川はいつのまにか吉澤の目を見ていた。
大きく綺麗で吸いこまれそうな瞳。

「ごっちんだけじゃない。梨華ちゃんだって笑っていたけどどこか違うよ。なんだか
無理してるみたい。二人とも私にとって大事な人だから、いつも心から笑っていて欲
しい」

吉澤はいったん言葉を切る。
133 名前:chaga 投稿日:2001年05月26日(土)00時28分27秒
「だから……、だから教えて欲しい。本当のことを」
「ひとみちゃん……」

石川は一つずつゆっくりと吐き出すように話し始めた。
吉澤は真剣な表情でそれに耳を傾ける。
吉澤にとって後藤との話はまったく予想していた事とはちがく、驚いたようだった。
いや、むしろ後藤の行動にであったが。

(梨華ちゃんが話せなかったのは当然だ。そんな事をされたのなら。でも……)

「梨華ちゃんはどうなの?」
「えっ?」

石川はうつむいていた顔を吉澤に向ける。
吉澤は一呼吸おいてから、

「わたしだったら……」そういった。


134 名前:chaga 投稿日:2001年05月26日(土)00時31分12秒
>129さん
どうなるんでしょうね?
わかりません(汗


なんとか大体のあらすじは考えることが出来ました。
もっと更新できいるように頑張りたいです。
135 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月26日(土)03時46分16秒
吉澤さんでしたか……
ん〜どーなるんでしょう〜。
136 名前:chaga 投稿日:2001年05月27日(日)01時01分02秒
時計の秒針の動く音だけが部屋に響く。
それが三十回も鳴っただろうか、石川はつぶやくように言う。

「わからない。そんなのわからないよ……」

吉澤は頭がくらくらした。

(ふられたっていうことになるんだよね、これ……)

そんな吉澤に気づく様子もなく石川は続けた。

「ごめんね。後藤さんが嫌だとか、ひとみちゃんがいいとかそういう問題じゃないの」
「そ、そう。そうだよね」
137 名前:chaga 投稿日:2001年05月27日(日)01時09分28秒
うちのめされた。
石川のことで妙な自信を持っていたからかもしれない。
根拠もなく石川が自分の事を好きだと思いこんでいたのだ。
胸が苦しい。
一秒でも早くこの場所を立ち去りたいと思った。


「でもね……」

石川がぽつりと言う。

「え……?」
138 名前:chaga 投稿日:2001年05月27日(日)01時10分35秒
「でもね。私はひとみちゃんのこと大好きだよ?」
「え?」
「はじめてあったとき、ひとみちゃんを私だけのものにしたいって思った。おかしな
話だけど、誰にも触らせたくないと思った」

顔を真っ赤にしながら石川は真剣な表情で言う。

「私馬鹿みたいじゃない?」
「……そんなことないよ。私も梨華ちゃんのこと好きだから」

石川を抱きしめる。
吉澤は石川の心臓の音が聞こえたような気がした。
それと同時に石川にも自分の鼓動も聞こえているのだろうかと心配になる。
139 名前:chaga 投稿日:2001年05月27日(日)01時11分49秒
なるべく石川には弱いところを知られたくなかった。

「ひとみちゃん……?」

石川にそれを言われるのではないかと思い、すぐに唇をふさぐ。
一瞬驚いたように石川は目を開いたが少しずつそれを細めていった。

「ねぇ、いい?」

石川はなにも言わずにうなずいた。

それを確認して吉澤は石川のシャツに手をかける。
その時一瞬だが、石川の体が硬直したのがわかった。
おそらく後藤のことを思い出したのだろう、吉澤は石川の体を抱き寄せる。
140 名前:chaga 投稿日:2001年05月27日(日)01時17分11秒
>135さん
吉澤……、まあそういうことになるんでしょうかね
まだわかりませんけど。
今現在の気持ちはということなんで。


141 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月27日(日)12時33分23秒
えーと、たしか後藤ちゃんがこのあと……
波乱の予感。。。
142 名前:chaga 投稿日:2001年05月28日(月)00時52分54秒
「ひとみちゃん……」

石川も強く抱き返してくる。
それだけで吉澤はお互いをわかりあえた気がした。
しばらくそのままでいると時間が止まっているような感覚に陥る。

「ありがとう、もう落ち着いたから大丈夫だよ?」
「……うん」

石川のシャツをめくるとピンク色の小さなブラが見えた。
それをはずさずに上にずらす。
その細い体からは想像しづらいような大きな胸が現れる。
143 名前:chaga 投稿日:2001年05月28日(月)00時54分19秒
吉澤はゆっくりとそれに手を触れた。
びくりと石川の体が震える。

少しずつ力を入ていくと同時に、石川の顔が上気し始めるのが吉澤にはわかった。
小さなため息にも似た喘ぎ声が石川から洩れる。

(梨華ちゃんがこんな声出すなんて)

吉澤は石川の普段見られない一面を見たような気がした。
顔を近づけて乳首を舌先で軽く触れる。
今度は大きく震えはしなかったが、吉澤の肩をつかむ手が強く握られたことから
石川が感じているのだと確信できた。
それは吉澤にとって一つの自信につながる。

少しずつ石川の背中に回していた手を下のほうへ動かした。
144 名前:chaga 投稿日:2001年05月28日(月)00時59分41秒
「ひ…、ひとみちゃん?」

それに気づいたのか石川は慌てたように吉澤に言う。
だが吉澤はまるでそれが聞こえなかったかのように続ける。

「あっ、だめ…だよぅ」

吉澤は石川のスカートとショーツを一つずつゆっくり脱がした。
シャツとブラだけになった石川を吉澤はベッドに押し倒す。
スプリングがギシリと無機質な音を立てて鳴った。

「ねぇ? さわるよ?」
「う…うん」
145 名前:chaga 投稿日:2001年05月28日(月)01時03分38秒
「なにいってんの?」


背後から声が聞こえた。
吉澤が振り向くよりも早くその人物は肩をつかむ。
そのまま横に突き飛ばすように投げられた。
石川は何がおきたのかわからない様子で前を見た。

後藤だった。


二人は行為に夢中で後藤の『侵入』に気づいていなかった。
いや、スプリングの音だと思っていたものは、実は後藤がたてた床の軋みだったのか
もしれない。

後藤は石川の手を強引につかむとベッドから立ちあがらせた。


146 名前:chaga 投稿日:2001年05月28日(月)01時05分34秒
「やっ、やだ! 助けて! ひとみちゃん!」

それを聞いた後藤は石川をまたベッドに突き飛ばし、吉澤のもとへ向かう。
おきあがりかけた吉澤を平手で打った。

「だってさ。助けてみなよ、ひとみちゃん?」

もう一度うつ。
さらに手を振り上げたところで後藤の動きが止まる。
吉澤は涙を浮かべてその様子を見ていることしか出来なかった。

「忘れてた。明日も収録あるんだっけ。顔、はれてちゃヤバイよね?」
147 名前:chaga 投稿日:2001年05月28日(月)01時07分46秒
後藤の口から出る収録という言葉に吉澤は不思議な違和感を感じた。
この後藤はいつも一緒にふざけあっている友人のはずなのにまったく別人のような
人格になってしまっているからだ。

後藤はベッドの脇においてある下着とスカートを乱暴につかむと石川に向けて
放った。

「早く着たら?」

どうしていいかわからずにそのままでいると、後藤は痺れを切らしたようにいった。
石川は慌ててそれを身につける。

「ねぇ、よっすぃ〜」

びくりと吉澤は身構える。
またぶたれるのではないかという不安にかられた。
ところが後藤の口から出た言葉は予想とはまったく異なったものだった。
148 名前:chaga 投稿日:2001年05月28日(月)01時10分12秒
>>141さん

ハイ、一波乱です。
でもすぐ終わっちゃいましたけど。



ヤバイです!
最近ネタが出てきません……
149 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月28日(月)01時17分33秒
寝ようと思ったら修羅場が始まってるし(w
>最近ネタが出てきません……
ここまで追いつめて、それはほんとにヤバイ(w
150 名前:chaga 投稿日:2001年05月29日(火)00時24分18秒
「帰ろう? 明日早いんだから」
「え……?」

いつもと変わらない声のトーンで言う。
表情ももとの後藤にもどっていた。

それが吉澤にはとても無気味に思えた。
まるで二重人格者のように人がかわるのだ。

後藤は震えながらうずくまる吉澤を置いて玄関へ向かった。
151 名前:chaga 投稿日:2001年05月29日(火)00時25分17秒
その帰り道。
後藤と吉澤は石川の家の近くにある公園にいた。
後藤が吉澤を誘ったのだ。
なにをされるのか吉澤は様子をうかがうように後藤を見る。

「あの…さ」

うつむきながら後藤は口を開いた。

「さっき…は、ご…めん」
「えっ?」

意外だった。
後藤のこの変容はいったいなんなのか吉澤にはわからない。
とにかく今わかることはこの後藤はいつもの後藤だということだけだ。
それでもまだ恐怖は消えていないのだが。
152 名前:chaga 投稿日:2001年05月29日(火)00時27分47秒
「痛かったよね……? 叩く気なんかなかったんだよ。でも梨華ちゃんとよっ
すぃ〜が一緒にいて、その…あんな事してるの見ちゃったらさ、なんだか自分
がわかんなくなって」
「……」
「気がついたらよっすぃ〜の事殴ってた……。こんなんじゃ許されないけど、
ごめん」

後藤の瞳から涙が流れていた。
それをぬぐわずに続ける。

「私、最近おかしいんだよ……。なんだか欲しいものは自分のものにしなきゃ
納得いかなくて。前はそんなことなかった。……例えば梨華ちゃんの事」

下を向いて足で砂をかき混ぜながらゆっくりという。

「あの…ね、実は梨華ちゃんこと、結構前から知ってたんだよ。知らなかった
のは梨華ちゃんだけで、あの日であったのは偶然じゃないんだ」

後藤は心の中にある何かを吐き出すようにすべてを吉澤に話していった。
153 名前:chaga 投稿日:2001年05月29日(火)00時33分10秒
>149さん

またもあっけなく修羅場は終了です。
なんとなくアイデアでたんで、後は時間さえあればいいんですけど。



次辺りからちょっと後藤と石川の本当の出会い書きます。
ちなみに昔から後藤が石川のことを知っていたっていうのは結構前に
また隠喩っぽく書いてました。
気づきましたでしょうか?

154 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月29日(火)06時09分01秒
そっか前から知っていたのか〜
だったら後藤の気持ちがわかるような…
155 名前:chaga 投稿日:2001年05月30日(水)01時14分13秒
毎日忙しいモーニング娘。にもやっとまとまった休みがとれた。
後藤はその休みを利用して今までできなかったことをすることにした。

以前からの友人を誘って買い物に出かける。
その日は不思議なことに何故か違和感を感じた気がした。
それは娘。としての後藤真希でいる時間が長かったせいなのか、
複雑な思いが後藤の中に巡る。
友人の笑顔が遠い。
後藤は彼女達の笑顔が好きだった。
しかし今の笑顔はどこか違う。
156 名前:chaga 投稿日:2001年05月30日(水)01時16分01秒
(私が娘。に入ったから?)

確かにモーニング娘。にはいったことで周囲の態度が変わってきたのは明らかだった。
そのときは大して気にもとめていなかったが、最近ではそれが後藤のかんに障るよう
になっていた。
もちろん扱いが変わるのは仕方ないとは思ったが、せめて友人だけにはそのようにし
てはもらいたくなかった。

買い物が済む。
後藤はいまだに続く違和感にたえられなくなり、友人と別れる。

「真希〜、もっとやる気出せよ〜」
「テレビでいっつも見てんだから〜」
157 名前:chaga 投稿日:2001年05月30日(水)01時17分09秒
その言葉を聞いたあと後藤は胸を締め付けられるような感覚に苦しんだ。

彼女達は自分のことをこんなにも応援してくれているのに、その応援自体を苦痛に感
じてしまうことに気分が悪くなる。
そう思う自分に腹がたった。

目的もなく町を徘徊する。
後藤真希だということはばれてはいなかった。
その時にふとある人物に目がいく。

たった一人の少女に後藤の目はくぎ付けになる。
それが石川と後藤の出会いだった。
158 名前:chaga 投稿日:2001年05月30日(水)01時18分04秒
友人の囲まれ楽しそうに笑っている彼女がいた。
その表情は後藤になんともいえない感覚を持たせる。
胸が苦しくなり、かきむしりたいとまで思う。

やがて石川は一人になり、駅に向かって歩き出した。
後藤はその後ろを見つからないよう静かにつけていく。

(何でつけてるんだろ、これじゃストーカーでしょ?)

そう思いつつも後藤の『尾行』は続く。

電車を下りると石川は近くの公園で立ち止まる。
どうやら空を見上げているようだ。
その様子が後藤にはとても美しく感じ、馬鹿らしいことに女神のようにさえ見えた。
159 名前:chaga 投稿日:2001年05月30日(水)01時21分20秒
>>154さん

わかってやってください、後藤の気持ち。
かなり屈折してそうですけど。


やっぱり時間が足りない!
俺だけ一日27時間にならないかな〜
160 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月30日(水)21時09分37秒
わかります、よーくわかります。
って、わたしがわかっても仕方がないのか…
161 名前:chaga 投稿日:2001年05月31日(木)01時24分25秒
家に帰った後も後藤は石川のことを忘れることが出来なかった。
それどころか日増しにその思いは強くなっていった。
暇があれば石川とまた会えるかもしれないと思い街へ出かける。
その度に後藤は落胆した。

再会はそんなときだった。

もうだいぶ日が暮れて辺りも人が少なくなってきた。
カップルばかりの町に居心地が悪くなり、後藤も駅に向かう。
するとどこかで見た人影が横道へそれていった。
後藤はそれを石川だと確信する。

人の流れはみなまっすぐに駅へと向かっているので、その動きは目立つ。
後藤は人ごみを掻き分けてその横道に入ろうとするがなかなかうまくいかない。
162 名前:chaga 投稿日:2001年05月31日(木)01時25分33秒
やっと路地に入るとなにやら不気味な雰囲気をかもし出している。

(うわ〜、入りたくないよ。よくあのここんなトコ入っていけたな〜)

恐る恐る後藤も中に入る。

その中はジメジメしていて据えた匂いがひどく、吐き気がした。
ほとんど無いに等しい街灯も薄汚れていて、本来の明るさの十分の一も機能していな
いのではないかと思われた。
その微妙な明かりがこの路地にある影を浮かび上がらせている。
163 名前:chaga 投稿日:2001年05月31日(木)01時27分20秒
途中いくつか分かれ道があったが、後藤は人が一番通りそうな道を行ってみる。

(これで梨華ちゃんに会えなかったらアウトだな〜)

するとなにやら暗闇の中にぼんやりと人影が見えた。
目を凝らしてみてみるとどうやら石川のようである。
なにやら辺りをキョロキョロ見回している。

(迷っちゃったのかな? っていうか私もこの道知らないからヤバイんだけど)
164 名前:chaga 投稿日:2001年05月31日(木)01時30分51秒
>>160 さん
おおっ!
後藤の気持ちをわかってくれる人が!



皆さんの作品見ていたらなんだかこれとはちょっと違ったものを書きたく
なってきました。
ちょっと違う板でも書いてみようかな〜。
時間があればで好けど。
165 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月31日(木)20時41分04秒
はじめたら、教えてくださいね。
それより先が気になる〜
166 名前:chaga 投稿日:2001年06月01日(金)01時19分31秒
後藤は意を決して話しかける。

「なにしてんの?」

緊張のためか、少し低めのトーンで話しかけてしまった。
これではまるで不機嫌そうに聞こえてしまうのではないかと後藤は少し焦る。

だが石川は突然話しかけられ戸惑っている様子で、そのことにはあまり気にとめては
いないようだった。

「あの、道に迷ってしまって……。駅に行くにはどっちのほうへ行けばいいんでしょ
うか?」
「ちょっとここからじゃわかりにくいんだよね……。送ってってあげようか?」
167 名前:chaga 投稿日:2001年06月01日(金)01時20分50秒
すべてを話し終わったあと、後藤なにか後悔と期待の入り混じった不思議な感覚を覚
えていた。
吉澤にすべてを話してしまった不安と、もしかしたらこの気持ちをわかってくれるの
ではないかという期待である。
虫のいい話しだが、ここで吉澤に理解をしたもらいたかった。


後藤はおびえたような瞳で吉澤を見つめる。

「それを私に話してどうする気なの?」
「え……?」
「ごっちんがしたことをそんなのですべてゆるされるわけないんだよ? 最近自分が
おかしい? 虫が良すぎるんじゃない?」
168 名前:chaga 投稿日:2001年06月01日(金)01時22分10秒
もちろんそれは後藤自身感じていたことであったのでなにもいい返せはしなかったが、
それよりも吉澤の言葉一つ一つが心に突き刺さった。
後藤の中にある不安や過ちなどを的確についてくる。

一度は止まった涙がまた奥から溢れ出した。

「ごっちんは異常だ……。このままじゃみんなを不幸にする」
「……異常……」


吉澤は畳み掛けるように一気にいった。
後藤の弱みに付け入ってでもいい、今は彼女をやり込めなければならない。
今だけは後藤と自分の立場が逆転している。

ここで決定的な打撃を与えること、つまり後藤がもう自分達に危害を加えることが出
来ないほどに打ちのめせればすべてはうまくいくのだ。
そのためにはこのチャンスをどうしてもいかさなければならない。
後藤自身が話した『チャンス』は吉澤に救われることを信じて明かしたことに間違い
無いのは彼女にもわかっていたが、その希望をつぶしてでも後藤を打ちのめしておく
必要があった。
169 名前:chaga 投稿日:2001年06月01日(金)01時23分29秒
「ごっちんは梨華ちゃんを好きになることで彼女を傷つける。それは私もたえられな
いよ。今のごっちんには人を好きになることは許されていない。それは一つの償いと
してごっちんがこれから先背負っていかなければならないものなんだ。私にはそれが
どれぐらいの間続いていく苦痛なのかはわからない、無責任だと思うけど。……けれ
どごっちんのすべてを否定しているわけじゃあないよ。ごっちんは私の大切なパート
ナーだし、友達だから。でも……」
「……」
「もう梨華ちゃんには近づかないで欲しい」

後藤は涙を浮かべて吉澤を見る。
何度も何度もしゃくりあげながら「うん……」と一言だけ吐き出した。
170 名前:chaga 投稿日:2001年06月01日(金)01時24分26秒
吉澤はその時大切な後藤との絆が途切れる音を、小さくだがはっきりと聞いた気がし
た。

一方的に着られた絆は何も無い空間を漂う。
まるでその先にあった何かを探すように。


吉澤は後藤をおいて公園から出ると駅へ向かった。


薄暗い街灯に照らされた公園に一人後藤の姿だけが残る。
涙を流しながらぼんやりと足元を見た。
地面は所々シミのように涙で濡れ、まだら模様のようにも見える。

空を見上げるとそこにもまだらのようにぽつぽつと小さな星があった。
月は―――今日は見えていないようだ。
171 名前:chaga 投稿日:2001年06月01日(金)01時26分34秒
石川は一人ベッドで考えていた。

吉澤が後藤に何かひどいことをされているのではないだろうか?

今すぐにでも飛び出して吉澤の顔が見たかった。
だが出来ない。
ドアを空けた途端広がる暗闇に、後藤のあの冷たい微笑が浮かんで見えるように感じ
たからだ。
カラオケの出来事のあとでさえまだ友人といして残っていた感情も、いつのまにか恐
怖ですべて塗りつぶされていた。
それと反対に友人としての吉澤は、今はもっとも大切な存在へと変わっていた。
それについて石川はなんの疑念も持っていなかった。



たんに吉澤を好きになって、後藤を嫌いになっただけだからだ。
172 名前:chaga 投稿日:2001年06月01日(金)01時31分30秒
>>165 さん

期待にこたえられるようなものが出来たらアップしたいと思います。
いつになるかわかりませんが。
そろそろテスト期間なんで。



今回頭の中で急になにかが沸いてきてスラスラ書けました。

ちなみに結構いためになってきました。
後藤の思いが通じることはあるんでしょうかねぇ〜
173 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月01日(金)03時57分09秒
なんか、吉澤押しなのに後藤を応援したくなる。マジで(汗)
皆幸せになるコトを祈りつつ、作者様、テスト頑張ってくだされ(w
174 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月01日(金)21時10分05秒
いつもはいしよし派なんですがこればかりはごっち〜ん!って感じです…
ごっちんがんばれ〜!
ちなみに私も月曜からテストです
175 名前:chaga 投稿日:2001年06月01日(金)23時52分39秒
それからどのくらいの時間がすぎただろうか。

ようやく涙も止まり、後藤は立ちあがる。
おぼつかない足取りで駅へ向かおうとするがうまくいかなかった。
一歩歩くごとに吉澤の言葉が思い出されたからだ。

(もう梨華ちゃんとは会えない……。よっすぃ〜にも)

吉澤は後藤のことを大切なパートナーで友人だといってはいたが、もう以前のように
付き合うことはできないことは容易に理解できた。
石川のことだけでなく後藤はそのことにも胸をいためた。
176 名前:chaga 投稿日:2001年06月01日(金)23時53分19秒
吉澤とはいつまでも友達だと思っていた。
初めて会った時は絶対に合わない性格だと思っていたはずなのにいつのまにか一番の
親友で、かけがえの無いものになっていた。

(私が馬鹿なせいですべて失ってしまう……。どうしたらいいの?)

いつのまにかまた涙が流れていた。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を公園の水道で洗い流す。
その水が妙に冷たくて、すべてを洗い流してくれるようだった。

だが流しても流してもいつまでも続くこの苦しみは耐えられない。
もう死んでしまいたい衝動にかられたが、出来なかった。
そんな度胸はない。
177 名前:chaga 投稿日:2001年06月01日(金)23時54分02秒
「……あぁぁぁぁぁぁ!」


息を大きく吸いこんで後藤は叫んだ。
コンサートでも出したことの無いほどの大声で後藤は言葉にならない悔しさと悲しみ
を吐き出した。
少し気分が楽になる。

(あはは……、気持ちい〜。近所迷惑かもしれないけどもう一回だけならいいよね?)

もう一度だけ、今度は前より大きな声で後藤は叫んだ。
178 名前:chaga 投稿日:2001年06月01日(金)23時54分44秒
吉澤は駅の近くで―――石川とはなしたファミレスで考え事をしていた。

ストローでグラスの中の氷をかき混ぜる。
カランという小気味よい音が鳴った。

吉澤は後藤を完全に打ちのめした。
それに対しての罪悪感は無い。
むしろこれから先に対する安堵感がすべてを満たしていた。

だが一つ気になることがあった。
石川のことだ。
あの時後藤に連れ出されてしまったので石川のことを気にかけてやれなかった。
179 名前:chaga 投稿日:2001年06月01日(金)23時55分39秒
後藤に傷をつけられていなかっただろうか?
あまりの出来事にショックを受けていないだろうか?
そしてなにより心配だったのは自分のことを心配していないだろうかということだ。

石川はなによりも人のことを心配する性格だということが短い時間ながらも吉澤は感
じることが出来た。
おそらく今もまだ自分からの連絡を待っているのではないか思い、吉澤は携帯を取り出
した。

3回目のコールが終わったちょうどに石川が出る。
180 名前:chaga 投稿日:2001年06月01日(金)23時56分17秒
『もしもし? ひとみちゃん?』
「あ、梨華ちゃん。私だけど」

やっぱり、と吉澤は思った。
石川は吉澤からの連絡を待ちわびていたかのような口調で言う

『ひとみちゃん、大丈夫? どこも痛くない?』
「大丈夫だよ、何もなかった。……それと、ごっちんのことなんだけど」
『うん……』
「もう大丈夫。ごっちんは梨華ちゃんには近づかないって約束してくれた」

181 名前:chaga 投稿日:2001年06月01日(金)23時58分07秒
しばらく沈黙。

「どうしたの? 嬉しくない?」
『……え、嬉しい? どうなんだろう……?』
「どうして?」

吉澤には石川のその反応が理解できなかった。
もっと違う反応を期待していたのに、なにやら煮え切らない態度なので吉澤はなかば
いらついたように聞き返す。

「ごっちんは梨華ちゃんを傷つけたんだよ? そんな人と会うこともなくなるんだよ、
嬉しくないの?」
182 名前:chaga 投稿日:2001年06月02日(土)00時06分55秒
おおっ!
今日はレスが二つも!
感想とかたくさんあるととても励みになるんで嬉しいです。


>>173 さん
がんばります!
でもこういう展開だと必ず誰か一人が不幸になってしまうんですよね。
カップリングは基本的に一対一ですから。

>>174 さん
いしよし派多いですね〜。
その人達にも支持された後藤を書けて幸せです(?
結構こっちの吉澤は最初と設定が変わって黒くなってますけど、
なんとか我慢してこれからも見てやってください。

あと、テスト頑張りま〜す!
183 名前:トム五郎 投稿日:2001年06月02日(土)01時11分07秒
毎日チェックしてま〜す!
後藤さんを応援してます。
この先、どうなるんでしょう??
ドキドキしつつ楽しみです。
184 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2001年06月02日(土)08時35分02秒
よっすぃ〜も石川を思ってるがための行動なんですよね・・・
はたして女神石川はどちらを選ぶのでしょう・・・
185 名前:chaga 投稿日:2001年06月03日(日)01時21分50秒
『そう、そうなのかな……?』
「そうでしょ? ……ごっちんは梨華ちゃんが思っている以上に危険な人だ!」

お互いになにも言えなくなる。
その嫌な空気を壊そうと吉澤は口を開いた。

「あ〜、そういえば明日も仕事あるんだった。プッチだけちょっとすることがあった
みたいだから、他のメンバー休みなのにうちらだけ収録しなくちゃいけないんだ〜」
『プッチって、プッチモニ? 後藤さんは?』
「あ〜、ごっちんも来るよ。……でも大丈夫だから」


そのあと吉澤は少し石川とはなしてから電話をきった。

186 名前:chaga 投稿日:2001年06月03日(日)01時22分20秒
嫌な気分だった。
石川の口から『後藤』という単語が発せられるのが。
後藤はもう二人には関係無い人物なのだと大声で叫びたかった。
だが石川がそう言うのも自分を心配してのことだということを感じてなんとか
その感情をおさめる。

思い出したかのように携帯を再び見る。
ディスプレイを見ると予想以上に時間が遅くなっていたのに驚いてかけだした。

187 名前:chaga 投稿日:2001年06月03日(日)01時23分37秒

次の日、いつものように吉澤は楽屋に顔を出した。
先に来ていた保田が本を読むのをやめて吉澤に顔を向ける。

「おはようございます」
「おはよ」

それだけ言うと保田はまた本を読み始めた。
手持ち無沙汰になってしまった吉澤はなんとはなしに楽屋の外をうろうろする。

(そういえば今日急いでてトイレ行ってなかったんだ)

吉澤は個室に入るとカギをかけた。

しばらくして誰かがトイレに入ってきたのをしめすようにドアがぎぃっとなる。
ところがその人物は個室に入るでもなく中をうろうろしていた。
吉澤が鏡でも見に来たのかと思っていると、またぎぃっと音がして外に出て行くのが
わかった。
吉澤もそろそろ集合の時間が迫ってきたので戻ろうとドアの部に手をかけた。

開かない。
188 名前:chaga 投稿日:2001年06月03日(日)01時24分32秒
ノブは回るのにいくら押しても開く気配はなかった。
これは引くドアだっただろうかと試してみるがもちろん開くはずもない。

(ちょっ、ちょっと! なに、なに?)

体当たりをしてみるとほんのわずかだが何かテープのはがれるような音が聞こえた。
もう一度試してみる。
今度はすれる音がしてドアが少しだけ開く。

何度も何度もそれを繰り返し、ようやっと吉澤が出れるくらいまでに広がった。
肩が痛む。
内出血をしてしまったかもしれないと吉澤は心配した。

(これで肩とか出す衣装だったらヤバイって)

外に出ると原因がわかった。
ガムテープが個室のドアをあけることが出来ないほどに貼りつけられている。
頭に血が上る。
なんのためにこんな事をするのか、理解できない。
吉澤は楽屋へ向かった。
189 名前:chaga 投稿日:2001年06月03日(日)01時30分43秒
>>トム五郎 さん
毎日のチェックありがとうございます!
そうですねぇ、どうなっていくんでしょうか。
これから先もある程度受難があって、それから少しずつ救われていく予定
なんですけど。


>>ラヴ梨〜 さん
それが問題なんですよね。
相手のことを思ってやっているはずなのにそれが実は間違っていることに
気づいていないんです。


やっぱりレスがあるととても嬉しいです。
なんだか毎日の楽しみになってて……。

190 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月03日(日)23時43分18秒
なかなか目の離せない展開ですね。
191 名前:chaga 投稿日:2001年06月04日(月)00時30分59秒
楽屋に入ると前と同じように本を読んでいる保田と後藤がいた。
後藤は吉澤に近づいて気まずそうにおはよう、といった。
吉澤はそれに返事をせず、後藤の腕をつかんで外に連れ出した。

「え……? なに、どうしたの?」

後藤をなかば引きずるように吉澤は先ほどのトイレへと連れ込んだ。
ガムテープでぐるぐるになったドアを指す。

「これ、なに?」
「なにって……、ガムテープ…?」
「そんなこと聞いてるんじゃないの。これは誰がやったか聞いてるの」
192 名前:chaga 投稿日:2001年06月04日(月)00時32分07秒
後藤は視線を天井に向けて何かを考えた。
はっと思いついたように吉澤を見る。

「私じゃないよ! だって今来たばっかりなのに」
「じゃあ、誰がやったての?」
「私じゃない……!」

そのまま二人はにらみ合う。
息の詰まるような時間が過ぎていった。
もう一度吉澤は口を開こうとした瞬間、トイレのドアが開いた。

「いた。よっすぃ〜、……保田さん早くこいって怒ってたよ。」

辻と加護がドアから覗いていた。
二人はただならぬその雰囲気に緊張した面持ちをしている。

仕方ない、といった表情で吉澤はトイレから出た。
後藤も遅れてそれに従う。
そこにはガムテープで巻かれた個室だけが残った。
193 名前:chaga 投稿日:2001年06月04日(月)00時33分15秒
「そういえば今日なんで辻いるの? それに加護ちゃんも」

いったん楽屋に戻ると吉澤は後ろを歩いていた辻と加護にむかっていった。

「亜依ちゃんに辻のそんけーする後藤さんの収録を見せたいと思って……。だめです
か、後藤さん?」
「あ……、いや。私はいいけど。こういうのって大丈夫なの?」

後藤は困ったように保田に意見を求める。



結局今回は特例として収録中迷惑にならなければよいということになった。
194 名前:chaga 投稿日:2001年06月04日(月)00時36分48秒
>>190さん
これから先どうなっていくのかはまだきちんと決まっていないんですけどね……(泣き


辻をだした意味を作るためにこういう設定にしました。
結構悩みますね。
195 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2001年06月04日(月)00時59分39秒
いったい誰がガムテープを・・・先がまったく読めない〜!!
毎日楽しみにしてます
196 名前:トム五郎 投稿日:2001年06月04日(月)02時17分57秒
犯人は誰なんでしょう??
気になって眠れないヨ〜!
197 名前:chaga 投稿日:2001年06月05日(火)00時16分36秒
辻と加護に見られているということで後藤は必要以上に意識してしまい、ダンスの途
中で何度か小さな間違いをした。
本当に小さな失敗だったので収録は止まることなく順調に進んでいったのだが、休憩
時間に保田に呼び出される。

「後藤、あんたまた間違ってるよ」
「ん……。ごめん」
「前もこういうことあったよね?」

前とは後藤がマネージャーに説教をされたときのことだ。

「いっつも言ってる『石川梨華』っていうこのせいで上の空なってるんじゃない?」
「やめて!」
198 名前:chaga 投稿日:2001年06月05日(火)00時18分06秒
後藤は叫ぶ。
今回石川は関係なかったが、その名前を聞くと胸がずきりと痛んだからだ。
そのままゆっくりと保田から離れていった。

(後藤……?)

「……吉澤、なんかあったの?」
「私は知りません」

吉澤はそうこたえると持っていたジュースを飲み干し、ごみ箱に投げ入れる。
きれいな弧をえがいてカラン、という乾いた音が響いた。

199 名前:chaga 投稿日:2001年06月05日(火)00時19分16秒
その日の収録が終わり、保田は矢口に電話をかけた。

「もしもし〜? 圭ちゃん?」
「あ、矢口。ちょっと後藤のことで聞きたい事があるんだけど……」
「後藤? 後藤がどうかしたの?」
「最近後藤おかしいと思わない?」
「……ん、そういえばね」

保田は今日あったことをすべて話す。
石川梨華という人物がそれの原因なのではないかと保田が言うと、矢口は少し考える
ために間をあけた。

「そういえば……」

矢口が何か思い出したように口を開く。
200 名前:chaga 投稿日:2001年06月05日(火)00時20分32秒
「カラオケいったんだ、梨華ちゃんと。その時からなんか変だった気がする。後藤も
用事があるって先に帰っちゃうし」
「……その石川って子に聞けばわかるかな?」
「よっすぃ〜でもいいんじゃない?」

よっすぃ〜という言葉を聞いて保田は少し狼狽した。
吉澤のあんな態度は初めてだったからだ。

「吉澤はおしえてくれなかった。何か隠してるみたいで」
「……じゃあ、やっぱり梨華ちゃんかな? 私聞いてあげようか?」
「ホント? 助かるよ」

保田自身まったくといっていいほど面識の無い人物に今回の件を聞くのはためらわれ
る部分もあったので矢口に感謝をする。
矢口はこういうときにでも気のまわるいいやつだ、と保田は思った。

「いいよいいよ。そのかわり今度焼肉食べにいこうね、圭ちゃんのおごりで!」
201 名前:chaga 投稿日:2001年06月05日(火)00時21分32秒
「後藤さん」

廊下を歩いていると辻に声をかけられた。
隣には加護もいる。
二人とも小さく縮こまっているように見えた。

「どうしたの?」

後藤は表情をなんとか作り変えて穏やかなトーンで二人に言う。

「……あの。後藤さん、今日のことすみませんでした!」
「あはは…、今日のは後藤が悪いんだよ? 集中できなかっただけで、辻があやまる
必要はないって」

後藤は笑って辻に言う.
だが辻の表情ははれない.
202 名前:chaga 投稿日:2001年06月05日(火)00時22分11秒
「そうじゃないんです! ……それもあるんですけど、今日のトイレで……」

後藤の頭の中でガムテープで巻かれたあの情景が浮かぶ。

「あの時…、いえなかったんですけど。あれ、辻がやったんです。すみません」

理解できなかった。
なぜ辻が吉澤にそんな事をしたのか。

「どうして…よっすぃ〜にあんなことしたの?」

203 名前:chaga 投稿日:2001年06月05日(火)00時27分42秒
>>ラヴ梨〜 さん
>>トム五郎 さん

レスありがとうございます。

犯人は辻でした。
普通の人はわかりませんね。
なんせ伏線も糞もありませんでしたから。
すみません


もうなんだか人間関係が複雑になっちゃいました!
ちょっとヤバイです。


ちなみに今回のアップでいつのまにか200いってました。
結構はやいもんですねぇ
204 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月05日(火)01時50分46秒
やはり辻か…
>>194での作者氏の、意味ありげな発言で
なんとなく気づいてました(本文で気づけなかったYo

今後も邪推しながら楽しませてもらいます。
205 名前:chaga 投稿日:2001年06月06日(水)00時20分53秒
「それは……。それは後藤さんのこと好きだったから……、後藤さんにあんなことし
たよっすぃ〜が許せなかったんです」

辻は目に半分涙をためて後藤を見る。

「辻聞いたんです。公園でよっすぃ〜が後藤さんにひどい事言ってるのを」

後藤の中で吉澤の言葉がまるで反響でもするかのように、何度も何度も繰り返される。
小さな吐き気を感じた気がした。

「その日ののと加護が―――せっかく吉澤さんもいるんだから梨華ちゃんの家に行っ
てみようって話してたんです。それで夜に行ってみたら、公園に後藤さん達がいて」

加護が必死にその時の状況を説明する。
206 名前:chaga 投稿日:2001年06月06日(水)00時22分48秒
「ねえ、のの。あれって後藤さんと吉澤さんじゃない?」
「あ、ホントだ。後藤さんも来てたんだ〜」


「ごっちんは異常だ……。このままじゃみんなを不幸にする」
「……異常……」


ハッキリと聞こえたその言葉は、とても吉澤の口から発せられたものではないような
感覚を二人に覚えさせた。
それはとても冷たくて、感情の起伏がなく、それでいて敵意のようなものを少なから
ず含んでいた。

「なに? なに? どういうこと?」
207 名前:chaga 投稿日:2001年06月06日(水)00時25分53秒
辻は困惑した。
いつも仲のよい二人の関係があきらかにおかしかった。
吉澤の表情は歪んではいないが、どこか狂喜じみた感情を感じさせている。

その後も吉澤は後藤を攻めるような格好でまくし立てた。
後藤の目に涙が溢れ出した。



208 名前:chaga 投稿日:2001年06月06日(水)00時28分51秒
>>204さん

う・・・
やっぱり余計なことは言わんほうがいいなぁ〜。
多分今回も突込みどころ満載な内容なんで、よろしくお願いします。

っていうかおれ自身つっこみたい文章なんで。
209 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月06日(水)20時14分44秒
うぅ・・・なんてゆうか・・
みんな幸せになってほしいな・・・

つっこみどころは…今のところ思いつかないです(w
へこたれずに頑張って!!!
210 名前:chaga 投稿日:2001年06月07日(木)01時45分32秒
「それ見てたらどうしてもよっすぃ〜が許せなくなって……」
「……」

「自分の感情にまかせて行動して、結果的に後藤さんにまで迷惑をかけてしまってま
した。……よっすぃ〜にも…」

後藤はそれを聞いてとても複雑な気分になった。
辻は確かに間違ったことをした。
だがそれは後藤を思ってしたことだったのである。
おそらくあまりの興奮に自分を見失っていたのではないだろうか、まるであの時の石
川に対する自分と同じだ、と後藤は思った。

そのせいか、後藤には辻のことを叱る権利がないように思えた。
211 名前:chaga 投稿日:2001年06月07日(木)01時46分50秒
「とりあえず…とりあえずって言ったらへんだけど、よっすぃ〜のところいこうか」
「う……」
「そうだよ、のの。一緒に言って謝ろう?」

気まずそうに下を向いている辻に加護が言った。

212 名前:chaga 投稿日:2001年06月07日(木)01時51分27秒
(そろそろあいぼん帰ってくるのかな〜)

その日石川は特にすることもなく家で暇をしていた。
吉澤もきょうは仕事であったので、とりあえず最近買った本を読んでいる。

(あいぼんのために今日は奮発して料理作ってみようか!)

石川は立ちあがって本棚の奥にあった料理のレシピ本を取り出してくる。
結構埃まみれでほとんど使われていないことがわかるがそれは置いておき、石川はそ
の中から今日作るのに適当な料理を選び出した。
必要な材料をメモし、スーパーに出かける。
213 名前:chaga 投稿日:2001年06月07日(木)01時53分04秒
その時、石川のPHSがなった。
誰だろうか、石川はディスプレイを見るとそこには『矢口さん』と表示されている。

「もしもし、矢口さんですか?」
「あ、梨華ちゃ〜ん。今暇かな〜?」
「え〜っと、暇っていったら暇なんですけど……」
「けど?」
「あいぼん…亜依ちゃんが今日帰ってくるんで、ちょっとご馳走つくっておこうかな
〜って。そうだ! 矢口さんも来ませんか? みんなで食べたほうがおいしいですし」

石川はいい案を思いついたように早口で言った。
矢口自身、今日は後藤のことを聞くためにもいい機会だと思い、そうすることに決め
た。
214 名前:chaga 投稿日:2001年06月07日(木)01時59分32秒
>>209さん

やっぱりこれはヤベーだろゴルァ! ってところはつっこんでください。
そのほうが自分のためにもなりますんで。(どきどき


どうやったらいい感じの終わり方が出来るのか今のところ皆目見当がつきません!
まあ思いつくまでやるかな……
215 名前:chaga 投稿日:2001年06月09日(土)10時44分26秒
石川が自宅の場所を教えてからしばらくして矢口はやってきた。

「梨華ちゃ〜ん、来たよ〜」
「あっ、矢口さ〜ん」

なんとも情けない声が奥から聞こえる。
矢口は一応、お邪魔しますとことわってから中に入った。

部屋にあがった途端、なにやら形容しがたいにおいが矢口の鼻をつく。

「すっぱ! 梨華ちゃんすっぱい、この部屋!」
「矢口さ〜ん、たすけてくださ〜い!」

矢口は石川のいるキッチンに入る。
216 名前:chaga 投稿日:2001年06月09日(土)10時45分35秒
「り、梨華ちゃん! なにやってんの!」
「シチュー作っていたんですけどぉ……」

泣きそうな表情で矢口を見る石川。
やれやれといった感じで鍋を覗きこむとそこにあったのは白色のマグマ、つまりこの
異臭の素である。

「えっと…梨華ちゃん、これシチュー?」
「そのはずなんですけど……。やっぱりこれじゃ……」
「シチュー……じゃないね」
217 名前:chaga 投稿日:2001年06月09日(土)10時46分48秒
とりあえず火をとめる矢口。
シチュー? はいまだにぐつぐつと不気味な音をたてていた。
ゴミでグチャグチャになったテーブルを見ると『シチュー』の項目で折り目をつけて
おいてあるレシピ本を見つける。

「りかちゃ〜ん、これみてつくったの?」
「はい……」
「なんだってこんなに詳しく書いてあるのに……。やっぱり今日は矢口が来て正解だ
ったみたいだね」
「いっつもは上手くいくはずなんですけど〜」

石川も必死に弁解しようとするが、もちろん聞く耳は持たれるはずもない。

「う〜ん、矢口もあんまり料理は得意じゃないんだけどな〜」
「えっ、矢口さん! お客さんはゆっくりしていていいですよ」
「それじゃいつまでたってもご飯なんて食べれないよ。加護も帰ってくるんでしょ?」
218 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月09日(土)14時36分15秒
>「いっつもは上手くいくはずなんですけど〜」
これは、石川さん言いそうだな(w
219 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2001年06月10日(日)01時20分31秒
現実でも梨華ちゃんが作った料理で矢口がおなかを壊したっていう話だし・・・
なんかリアリティーがありますね
220 名前:chaga 投稿日:2001年06月13日(水)01時13分48秒
「それはそうですけど〜」
「じゃあ、梨華ちゃんはあっち行ってテレビでも見てていいよ。矢口が作るから」

石川は半分納得できないような顔をしてリビングへ向かう。

やれやれといった感じで矢口も料理にとりかかる。
矢口の耳にテレビから流れる笑い声が入ってきた。
おそらくバラエティー番組でも見ているのだろう。

矢口も料理を作るのはそれほど得意ではなかった。
だが今回はちょうど詳しく書いてあるレシピ本があるのでいくらかは自信を持って作
れそうである。
とりあえず材料もそろっていたので石川のやろうとしていたっシチューを作ることに
する。
221 名前:chaga 投稿日:2001年06月13日(水)01時15分26秒
その時ふと、リビングからとても聞き馴染んだ音楽が流れてくる。
ああ、と矢口は理解した。

「矢口さ〜ん。今日特番やってますよ、モーニング娘。の」

そういえば放送日は今日だったかもしれない。
いったん作る手を休めてリビングへ向かった。

「ほら、ほら! あっ、矢口さんだ!」

テレビを指差しながら石川は興奮したようにいう。

(梨華ちゃんって、ホントに娘。のことが好きなんだ。やっぱりこういうのって嬉し
いよね)
222 名前:chaga 投稿日:2001年06月13日(水)01時21分43秒
今回これだけです。
最近更新サボっているのに…すみません。
テストが近いもんで……。

>>218さん
やっぱりまちがいありましたか。
なにぶん理系の人間なもんで…以後気をつけます

>>ラヴ梨〜 さん

なんだかそうらしいですね。
確か自分で作ったホットケーキでもやっちゃったとか。
223 名前:chaga 投稿日:2001年06月14日(木)20時22分02秒
テレビを指差しながら石川は興奮したようにいう。

(梨華ちゃんって、ホントに娘。のことが好きなんだ。やっぱりこういうのって嬉し
いよね)

テレビを見ている石川の表情はとても嬉しそうだ。


「こういうのってはずかし〜ね」
「そんなことないですよ〜。でも矢口さん、テレビでもかわいい!」
「えっ?」
「私本当に矢口さんの笑顔がだいすきなんです」
224 名前:chaga 投稿日:2001年06月14日(木)20時22分40秒
矢口はその言葉を聞いてますます照れしまう。
それを隠すようにまた台所へ戻った。


(ふ〜、あっつい。一気に体熱くなっちゃったよ)

矢口は胸の辺りをばたばたとあおぎながら窓をあけた。
心地のよい風が舞い込んでくる。
そのおかげで少しずつだが気分も落ち着いてきたようだ。
矢口はまたシチュー作りを再開する。

だが石川を意識してしまったせいか、先ほどとは違っておぼつかない手付きになって
しまう。
225 名前:chaga 投稿日:2001年06月14日(木)20時24分28秒
しばらくしてシチューなどを調理し終わった矢口は、石川と一緒にリビングで娘。の
特番を見ていた。
隣で見ていた石川はなにかあるごとに黄色い声をあげる。
だが矢口はそんな事を気にしている余裕はなかった。

(私本当に矢口さんの笑顔がだいすきなんです、か……)

あの時から矢口はどうしても石川を意識してしまう。
石川以外にも自分の笑顔が好きだと言われた事はもちろんあった。
自分でも笑顔はだいすきだった。
だからこそいつも笑っていようと心がけている。

しかし今回はいつもと違っていた。
なにかこう、胸の奥のほうをグッと鷲掴みにされたような感覚、表現のしようがない
ものを確かに感じたのだ。
226 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月15日(金)00時27分46秒
なんか、もっと複雑になる予感…
227 名前:LVR 投稿日:2001年06月15日(金)02時04分49秒
うわあ、ドキドキする展開ですね。
まりりかも好きなんで、先が楽しみです。
228 名前:chaga 投稿日:2001年06月16日(土)00時40分58秒
(あっ、そんなこと考えてる場合じゃない! 今日はごっちんの事できたんだっけ)

しかし矢口は考える。
いったいどうやって聞き出せばいいものか。
保田に聞いてほとんど考えることもなく自分からやるといってしまっただけに、その
ことで頭を痛めていた。

(とりあえず、加護が帰ってきちゃったら話しづらいよな……)

「そう言えばさ〜」

矢口は頭の中で言葉を整理しながら話しだす。

「この前楽しかったよね〜、カラオケ」
229 名前:chaga 投稿日:2001年06月16日(土)00時41分43秒
一瞬、ほんの一瞬だが石川の体がこわばったのを矢口は見逃さなかった。
石川はテレビから顔をそらしてはいないが、矢口と顔を合わせないためにそうしてい
るのはあきらかだ。

(やっぱりなんかあったんだ。ヤバイはなしだったらやだなぁ……)

「…そうですね〜。みんなたのしそうでしたし。あいぼんが迷惑かけてしまってすい
ませんでした……あ、また矢口さん出てますよ!」


まだ目を合わせずに話しをそらそうとする。

230 名前:chaga 投稿日:2001年06月16日(土)00時45分12秒
>>226さん
ちょっと複雑にしすぎてしまいました。
反省してます。
少しずつですが解決していこうと思います。

>>LVRさん
最近は矢口と石川が絡んでるとなんとなくいいかんじなんですよ。
大体は矢口がからかってるだけなんですけど。
俺が今一番おしてるカップリングです
231 名前:chaga 投稿日:2001年06月17日(日)00時27分14秒
「後藤と……、なにかあったんでしょう?」
「……」
「このままじゃかわいそうだよ。梨華ちゃんも、後藤も」

石川は黙ってうつむく。

「今日圭ちゃんから聞いたんだけどね、後藤とよっすぃ〜の間でなんかトラブルがあ
ったみたい」
「トラブルですか?」

トラブル、という言葉を耳にしてはじめて石川は矢口をみた。
232 名前:chaga 投稿日:2001年06月17日(日)00時28分29秒
「いや、何が原因なのかはわからないんだけどね。いっつも仲良かったはずなんだけ
ど。それで、梨華ちゃん何か知ってないかなって思ったんだ」


矢口はだめもとで聞いてみる。
おそらくこのまま考えていても自然に聞き出すことはできないだろうと踏んだからで
ある。
もちろんすでに矢口には自然に聞き出すための方法を考える思考力はなくなっていた
のだが。

「もしつらいことがあるんだったら矢口も相談にのってあげれるし、
233 名前:chaga 投稿日:2001年06月17日(日)00時29分09秒
少しの沈黙のあと、吉澤のときと同じように一つずつゆっくりと話し始めた。
矢口もまた真剣な表情でそれに耳を傾ける。

話したといっても後藤にレイプをされかけた、というところまでは言わなかったが、
自分と後藤の小さないざこざがいつのまにか大きくなって、それを知った吉澤が後藤
に対して注意をしたらしいということを矢口に話した。

もちろん、吉澤と後藤のそのやり取りは詳しく聞かされていなかったので、あまりわ
からなかったのだが。
234 名前:chaga 投稿日:2001年06月18日(月)00時33分31秒
「……そっか。後藤と吉澤には矢口からも言っておくけど、梨華ちゃんも後藤と早く
仲直りしたほうがいいと思うよ。きっとあいつもそうしたいと思ってるはずだからさ」
「でも、矢口さん……」

私にはそれができるか自信がないです。

そう言おうとした瞬間、玄関のほうでガチャリとドアが開く音がした。
石川は開きかけた口をとじる。

「梨華ちゃ〜ん、ただいま〜!」

加護だった。
その声は今までの状況と不似合いなぐらい明るく響く。
235 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月19日(火)19時53分40秒
どーなるんだー?!!!
236 名前:パク@紹介人 投稿日:2001年06月19日(火)21時45分30秒
こちらの小説を「小説紹介スレ@銀板」に紹介します。
http://www.ah.wakwak.com/cgi/hilight.cgi?dir=silver&thp=992877438&ls=25
237 名前:chaga 投稿日:2001年06月20日(水)01時07分05秒
「あっれ〜、矢口さんじゃないですか〜!」
「加護お邪魔してるよ……って、なんか妙にテンション高いね」

少し驚いたように矢口がいうと加護は目を細めながら笑ったが、あまり二人の顔を見
ずにそのまま洗面所にいこうとする。
おかしく思った石川は加護に声をかけた。

「あいぼ〜ん、辻ちゃんち楽しかった?」
「えっ、うん。楽しかったよ。ごめんね、ちょっとトイレ行く」

一瞬だけ石川のほうを向き言う。
その時、ほんの少しだが石川には加護の表情がおかしいということに気づいた。
表情は笑ってはいたのだがどこか違う、その裏に何かを隠しているようなものが石川
には見えたのだ。
238 名前:chaga 投稿日:2001年06月20日(水)01時15分37秒
加護が洗面所に行ったあとしばらくして石川は立ち上がり、矢口に一言断ってから
加護のところへ向かった。
リビングのドアを閉めてトイレにいる加護に話しかける。

「あいぼん、どうしたの?」

返事はない。

「あいぼん?」

耳を澄ますと何か小さな息遣いのようなものを感じることができるのだが、それでも
返事はなかった。
239 名前:chaga 投稿日:2001年06月20日(水)01時23分10秒
なんだかさっきからCGIエラーばっかりになる。
かなりきついっす

>>235さん
話が無意味に大きくなってしまった感があるんでこれから少しずつ
修正しようと思います

>>パク@紹介人 さん

確か見えなくなるだかそんなかんじの意味だったと……
240 名前:chaga 投稿日:2001年06月25日(月)02時06分05秒
あの〜、更新じゃないんですけどちょっと一言。
黄板で新しい小説書き始めました。
よかったら見てください。

ただの宣伝で上げてしまってすみません
241 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月27日(水)21時21分19秒
黄板の方も読ましていただいてます。
こっちもがんばって!!!
242 名前:ドッキドキLOVEよしこ 投稿日:2001年06月29日(金)04時20分12秒
どんどん複雑になっていきそう・・・
でも期待!
頑張ってくださいね!
243 名前:chaga 投稿日:2001年07月04日(水)01時39分32秒
「どうしたの? なにかあったの?」

「……なんでもないよ〜、ただのトイレだって。恥ずかしいからちょっとむこういっ
ててくれる? ごめんね」


その日は加護は結局いつものように矢口とはしゃぎあっていた。
石川もただの考えすぎだったのだろうとその気持ちを忘れるようにした。
244 名前:chaga 投稿日:2001年07月04日(水)01時40分34秒
―――矢口が帰ったその日の夜

石川は眠れなかった。
隣で静かに寝息を立てている加護の顔を見始めてから三十分も経とうとしている。

(眠れないのはどうしてだろう……。今日のことかな? それとも後藤さんのことか
な? それともよっすぃ〜?)

石川はつかれていた。
問題が起きても、それを解決できないままに次々と新しいことが起きる。

吉澤にはもう後藤のことは解決した、と言われた。
だが吉澤と後藤の間のトラブルのことを聞き、それは完全に解決したわけではないの
だということがわかった。

245 名前:chaga 投稿日:2001年07月04日(水)01時41分18秒
(まずは一つずつ、少しずつだけでも解決していかなきゃ。人に頼るんじゃなくて自
分の力で。きっとそうすることですべてがいいほうに向かうんだと思う)

石川は『ポジティブ』にそう考えることにした。

石川は加護を起こさないように携帯を持ってそっとリビングに向かう。

(よっすぃ〜はもう寝てるかな〜? この前はなんだか変な感じで話し終わっちゃっ
たし……、ちょっとかけづらいかも)

しばらくディスプレイを見ながら悩んだ結果、メールを出してみることにした。

(ちょっとこんな夜中で迷惑かもしれないけど……、ごめんね!)
246 名前:chaga 投稿日:2001年07月04日(水)01時47分33秒
>>241さん
応援ありがとうございます!
また更新復活しましたのでこれからもお願いします。

>>ドッキドキLOVEよしこ さん
今複雑になった関係を頭の中でどういうかんじで処理しようか考え中です。
最初は決まってたんですけど、なんだか後から考えるとショボイ感じだったんで…


今まで放置してしまってすみません。
これからまたマイペースになると思いますがよろしくお願いします。
247 名前:LVR 投稿日:2001年07月05日(木)10時55分16秒
久しぶりの更新嬉しいです。
本当に複雑になってますよね。
これからどうなるのか全然予想できない……。
248 名前:chaga 投稿日:2001年07月07日(土)01時51分10秒
しばらくして返事が返ってきた。

『梨華ちゃ〜ん。まだ起きてた? 私も電話したいな〜って思ってたんだ。……けど
もう夜だったしさ。だからメールありがと! ところで、加護ちゃん大丈夫?』

ほとんど内容のなかった石川のメールにもきちんと返してくれた吉澤にやさしさを感
じていたが、最後の加護のところで石川の頭の中にあの時の様子が浮かんだ。
確かにあの時は少し様子がおかしかった。

『なに? 何かあったの?』

石川もメールを返す。
249 名前:chaga 投稿日:2001年07月07日(土)01時51分42秒

『今日加護ちゃんと辻が、ごっち…プッチモニの収録見に来たんだ。その時ちょっと
いろいろあってね……。辻が私にいたずらみたいなことしたんだけど、加護ちゃんも
それに協力した形になってて。その時私ごっちんとのことでイライラしてたからさ、
きつい言いかたしちゃったから…』

『そうだったんだ…ごめんね? でも大丈夫だと思うよ、結構次の日にはすべて忘れ
るタイプだし。私も気にしないように言っておくから。でもごっちんのことってまた
何かあったの?』

『いや……、今日の辻のいたずら、ごっちんのせいだと思ってたからさ。なんでこん
なことするんだろうってむかついてたんだ』

『だめだよ、そういうことしちゃ。友達にそんなふうに思われたらごっちんだって悲
しくなっちゃうよ』

『でもこの前のことがあったすぐ後だったからさ。ちょっとね……』


250 名前:chaga 投稿日:2001年07月07日(土)01時52分55秒
吉澤とのメールのやり取りが終わったとき、石川はやはり後藤との関係をどうにかし
て修復しなければならないと思った。
それによって吉澤と後藤の関係ももとにもどると思ったからだ。

だが、後藤にもう一度会うことを考えると石川はあの時の行為を思い出してしまい、
どうしようもない恐怖感を感じた。

251 名前:chaga 投稿日:2001年07月07日(土)01時55分36秒
>>LVR さん
本当にひさしぶりの更新ですね……
すみません
しかもほとんど進展ありませんしね。



なんか249の表示がおかしい。
あそこは二人のメールのやり取りを書いたところなんで。
そういうかんじで見てください。
252 名前:chaga 投稿日:2001年07月08日(日)01時16分00秒
(あ〜、ここに入ると今日も仕事だ。いやだな、もうやめたい)

後藤は楽屋の前でうろうろとしている。
入りづらかったのは吉澤がいるから。
ここでこんなことをしていても仕方がないと後藤がドアの部に手をかけたようとした
瞬間、誰かが肩をたたいた。

「なにしてんの? ごっちん?」
「……あ、やぐっつぁん〜。驚かせないでよ」
「別に驚かせるつもりはなかったんだけどさ〜、ずっとおんなじ状態でいたからどう
したんだろうってね〜」
253 名前:chaga 投稿日:2001年07月08日(日)01時16分45秒
矢口の笑顔に少し後藤は癒されるような感覚を覚える。

彼女と一緒にならば楽屋にも入りやすいと思った後藤は、今まで触ることのできなか
ったドアノブに手をかけて一気に開いた。

「おはよ〜!」

急に入ってきた後藤に少し驚きながらもメンバーも挨拶を返す。

吉澤のほうを見ると、気まずそうな表情でこちらを見ているのがわかった。
だが後藤はまた何か言われてしまうのではないかとすぐに視線をそらす。

254 名前:chaga 投稿日:2001年07月08日(日)01時17分15秒
「ごっちん、ちょっと……」

(あ……。だめだった)

吉澤は後藤の手を取って外に連れ出した。
こういうときはたいていトイレに行くと後藤にはわかっている。
あの雰囲気が内緒の話をしやすいと以前に吉澤が言っていたからだ。

(やっぱりトイレだ)

後藤の思っていたとおり、吉澤はトイレに入っていく。
255 名前:chaga 投稿日:2001年07月08日(日)01時18分01秒
「ごっちん!」
「はいっ!」
「昨日はごめん!」

後藤は怒られるのではないかと内心びくびくしていたので、まったく予想もしていな
かった吉澤の言葉に拍子抜けする。

(ビックリした〜。でも、これってよっすぃ〜との仲が少しもとに戻ったってことに
してもいいのかな?)

「……昨日梨華ちゃんに言われて気付いたんだよね。なんて最低なことしてんだろう
って」
256 名前:chaga 投稿日:2001年07月08日(日)01時19分04秒

梨華ちゃん

後藤はその言葉に無意識のうちに反応していた。

(会いたい、会いたいよ……梨華ちゃん)

「……だからさ、ごめんね」

その言葉はもう後藤の耳に届いていない。
それに気付かくはずもなく吉澤は「じゃあ先にいってる」とだけ言い残し
て楽屋に戻っていった。
257 名前:chaga 投稿日:2001年07月08日(日)01時22分13秒
そろそろいしよしピンチになります。

もう少しほのぼのスレになれるように頑張っていこう!
258 名前:chaga 投稿日:2001年07月09日(月)01時25分08秒
頭の中にあるのは石川の顔だけだった。
すでに吉澤の警告は消え去っている。
後藤は携帯の電話帳から石川の名前を探した。

「あ……」

なかった。
吉澤から石川に近づかないでほしいといわれた夜、後藤は泣きながら携帯を操作して
石川のメモリーを消したのを忘れていた。
いつもひとつだけ浮いたようにある070の数字、それが今はなかった。

激しい後悔。
それはメモリーを消したことではなく、石川を犯したことへだ。
259 名前:chaga 投稿日:2001年07月09日(月)01時25分43秒
石川を犯し、それによって彼女の友情も壊した。
石川だけではない。
吉澤との仲も狂わせてしまった。

もしも時間が戻せるのならば、はじめて石川と出会った時に戻りたかった。
その時に戻って、おかしな恋愛感情なんか持たずにただの友達としていれればよかっ
たのだ。
考えれば考えるほど自分に嫌気がさす。

(もう一度だけ。もう一度だけチャンスが欲しい!)

後藤は楽屋へ向かった。
260 名前:chaga 投稿日:2001年07月09日(月)01時26分47秒
楽屋では辻が買ってきたお菓子をメンバーであさっているところだ。
何か両手で包むように持ちながら、すべて取られるのではないかと辻は心配そうな表情
を時折覗かせている。


「あっ、後藤さ〜ん。どこいってたんですか?」

後藤を見つけた辻が小走りで寄ってきた。

「あ、ちょっとね〜」
「…後藤さん。今日来るときにこれ買ってきたんですけど食べますか?」
「なに?」

辻は握っていた両手を開く。
そこには何やら怪しげなパッケージの梅があった。
3個入りで、明らかにあるヒーローのパクリとわかるキャラクターがかいてある。

「……ウメトラ3兄弟?」
261 名前:chaga 投稿日:2001年07月09日(月)01時28分14秒
更新しました。

読んだ方、感想とかいただけるとありがたいです。
ただコツコツやってるのは寂しいんで……
262 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月09日(月)02時03分45秒
ウメトラ3兄弟…懐かしい(w
反省の意をこめた駄菓子でしょうか、エエ子やの〜!?
263 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月14日(土)06時45分56秒
ウメトラ3兄弟で何が起こるんだ?
264 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月03日(金)00時19分04秒
忙しいのかな?
265 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月09日(木)04時35分43秒
黄板も更新ないし・・・どうしたんだろ。
266 名前:chaga 投稿日:2001年08月10日(金)01時18分33秒
みなさんすみませんでした!
最近ちょっと受験とかの関係で忙しくって書いてませんでした。
ある程度書き溜めてから載せようと思っていたんで、しばらく時間ください……

267 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月13日(月)23時35分18秒
頑張ってください〜
待ってます!
268 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月27日(月)19時37分50秒
応援してます。待ってますよ〜!
269 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月07日(金)22時07分13秒
待ってるっす!

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