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discharge〜いままでで一番〜

1 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月12日(土)04時30分30秒
いちごまの病院ものを書いてみます。できるかぎりリアルに書いていきますので良かったら読んでください
2 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月12日(土)04時45分51秒
「なんか後藤このごろ笑わないね。」
収録が終わったあとこんな声をよく聞くようになった。
「笑ってるつもりなんだけどな〜。大物の風格が出てきたんでしょ。」
このごろは決まって軽く皮肉を言うようになった。
(あ〜めんどくさい、そういえばこのごろ顔が引きつるな〜?)
家に帰って鏡の前で笑顔を作ってみる。(やっぱりぎこちないかな?)
「真希〜、ごはんよ〜。」
「は〜い、すぐいく〜。」階段を転がるように降りていった。
3 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月12日(土)04時54分18秒
「ほら、ちゃんとブロッコリーも食べなさい。栄養100%なんだから。」
そういって母さんはちょっと怒ったふりをした。
「ね〜、お母さん前から聞こうと思ってたんだけど栄養100%ってどうゆう意味?」
母さんは「栄養100%は、栄養100%なの!」といつものように笑った。
4 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月12日(土)05時06分43秒
あんまり、ブロッコリーって好きじゃないんだけどとおもいながらしかたなく
口に運んだ。
「もー真希、嫌いなのは解かるけど落とさなくてもいいでしょ。」
私は気づかなっかたが、テーブルの上にはブロッコリー以外にもいくつかの食べかすが
落ちていた。
部屋に戻って顔を触る、なんかおかしい。(明日、オフだし病院行ってみようかな?)
そう思いながら眠りについた。
5 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月12日(土)05時20分44秒
翌朝、後藤は電話帳をめくりながら(う〜ん、やっぱり大きい病院だとばれるかもしれないから小さい病院が良いかな?)などと余計なことを考えていた。
病院に行くのは誰にも言っていなっかた。白髪頭の老医師はひととおり顔を触った後に
「う〜ん、大きな病院で見てもらったら、いま紹介状を書くから・・・」
と言って机に向かった。
(おいおい、それじゃわざわざ小さいココ選んだ意味がないだろっ)と心の中でつっこみながらその日は家に帰った。
6 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月12日(土)06時05分54秒
1週間後、紹介してもらった病院へ、そして入院、わたしは六人部屋の窓側のベットでボッーとしている。
(う〜ん、なんでこんなとこにいるの?展開早すぎだよ〜)
今朝からのことを思い出してみる。診察が終わってお母さんも呼ばれた。
お医者さんはたいしたことはないといいながらサラリと2週間の入院ですと言った。
ムズカシイ話はわからなかったけど「顔面神経麻痺」とかいう病気で顔が引きつったり、
食べ物の味がわからなくなったりする病気らしい。
そのあとは、マネージャーが駆けつけたり、メンバーのみんなに電話したりした。
(市井ちゃんにも久しぶりに電話かけようかな。今日は遅いから明日かけよう)
(市井ちゃんが脱退してからしばらくは連絡取り合っていたけど今何してるのかな?)
(音楽の勉強続けてるのかな?会ってみたいな?)色々なことを考えながら眠りについた。
なつかしい夢を見た。いつまでも友達だからねと言っていたあの日の夢を・・・・
7 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月12日(土)10時51分52秒
市井登場に期待!!
8 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月12日(土)10時55分49秒
いい感じ。頑張ってください。
9 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月12日(土)19時43分45秒
「おはようございま〜す。」カーテンをシャーと開ける音で目が覚めた。
(う〜ん、まだ暗いよ〜。何時だと思ってるの、げっまだ六時〜、)
「お母さ〜ん、まだ早いよ。」
と言いながら起きると目の前には白衣の看護婦さんが立っていた。
「後藤さん、起きてください。病院の朝は早いんですよ。昨日説明したでしょ。」
私は少し頭が混乱していたがとりあえず起きると「オハヨウゴザイマ〜ス。」と言いながらまた布団にもぐった。
(そっか、入院してたんだっけ。それにしても病院のベットって硬いな〜。)
鉄パイプのシングルベットは横に柵があるだけの簡単なものでいかにも病院ってかんじのベットだ。
でも六人部屋なのに部屋には窓側の私と向かいにいるおばさんの二人だけだった。
(この病院って流行ってないのかな〜。でもこの病室以外はあいてなっかたんだよね〜、しかたないか。)
7時半になってやっときた朝食を食べながら今後のことを考えていた。
10 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月12日(土)20時17分46秒
(う〜ん、ご飯を食べたら、う〜ん、う〜ん、何しよう。)
ブロッコリーをほうばりながら考えていた。
(そういえば、ブロッコリ〜そんなに苦手じゃないかも。)
(病気のせいだとわかっているけどそんなに悪いことばかりじゃないかも。)
窓から外を見ているとスズメやほかの鳥のさえずりが聞こえてくる。
それにまじって隣の建物に入っていく若い人たちがたくさん見えた。
「すいません。隣の建物ってなんですか?」
となりのおばさんはもう結構入院が長いらしくテレビを見ながらせんべいを食べている。
「えーとね、たしか看護学校だと思うけどね。」
そういうとまたせんべいをボリボリ食べはじめた。
(ふ〜ん、看護学校って病院の横に建ってるんだ。みんながんばってるんだな〜。)
妙なことに感心しながら外を眺めていた。
11 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月12日(土)21時26分12秒
時計を見ると八時半になっていた。
(あっ、そうだ市井ちゃんに電話かけなきゃ。でもな〜、久しぶりだしな〜でもアレが最後だったからな〜。」
ひさしぶりに、市井ちゃんが脱退してしばらくしたときの電話のことを思い出した。
「私ね、モーニング辞めようかなって思ってるの。」
いつものように市井に甘えて励ましてもらおうと思ってなにげなく言ったら意外な答えが返ってきた。
「そうだね、後藤が辞めたいんならそれもいいんじゃない。」
そのあとの言葉に私はショックを受けた。
「私も歌以外にやってみようと思うことができたから・・・。」
その後の会話はあんまり良く憶えていない・・・。
「どうして、どうして市井ちゃん戻ってくるっていってたじゃないか〜。」
「うそつき、市井ちゃんのうそつき。」
市井が何か話していたけど聞かないで一方的に電話を切った。
あの時のことを考えるといつも胸が痛む・・・。
(あ〜もう1年以上たったのか〜。どうしてるかな市井ちゃん。)
ぼんやり考えていると隣のおばちゃんがゴソゴソし始めた。
「ほら、あんたも準備しないと検査に行くんでしょ。入院したら最初いろんな検査があるって聞いたでしょ。」
(あっ、そうだった。えっ〜とレントゲンに心電図あとおしっこの検査もあるんだったけ?)
「でも場所がわからないんですけど、どこに行けばいいんで・・・」
私は言葉を失った。
「おはようございま〜す。」
青い服を着た女の人が入ってきた。ショートカットの髪に見慣れたキリリとした顔・・。
「いっ市井ちゃん?!」
「ごっ後藤・・・さんですね。検査がありますから私がご案内しますね。」
「はっはい・・。」
(なんで他人行儀なの〜。でもびっくりした。)
私は市井ちゃんの後をトコトコついて行った。
12 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月12日(土)21時55分48秒
ここまでは後藤視点できましたが、市井視点もいれつつ書いていこうと思うので
よろしくお願いします。
13 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月13日(日)00時20分41秒
市井ちゃんの後をついていこうとするとズンズン歩いていく。
後ろから見る市井ちゃんは青の上下を着ているけど看護婦さんとは違う。
エレベーターの前でも下のボタンを押したまま黙っている。
なかなか降りてこないエレベーターに気まずくなって、話し掛けようとしたら
「えーと、まずレントゲンを撮ってから心電図にいきますね。それにしても久しぶりですね後藤さん。」
(他人行儀だけどやっと話し掛けてくれた。うれしー。)
ニッコリ笑おうとしたけど鏡の前の自分を思い出した。やっぱり笑えない・・・。
「はい。」
それだけしか言えなっかった。(うまくしゃべれない、なんでだー。さっきまで普通にしゃべれたのに〜。)
そのままエレベーターに乗り込むとまたおも〜い空気が・・・・。
(ツラ〜い、辛いよ〜。)
14 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月13日(日)02時58分58秒
ひと通り検査が終わって、診察を受けた。診察室に入った私は先生に詰め寄るようにして質問した。
「先生、わらひ、うらくしゃへれなくなったの?!」
(あれ〜おかしいな、やっぱりしゃべれない?!)口からはよだれがこぼれてくる。
先生は何を言ってるんだこの子はと言うような顔をして、
「昨日説明したでしょう、この病気は顔の神経が麻痺する病気で表情がうまく作れなくなったりするって。」
「でも、うまくしゃべれなくなるってことはよほどの疲れかストレスがあったんでしょう。しばらくは症状が続くって昨日も言ったはずだったけどな〜。」
(う〜、昨日は上の空でよく聞いていなっかたんです。)と言おうとしても、
「う〜、きのふはうはのほらでよふ・・・・。」
先生はやれやれと言うような顔をして
「これからリハビリや治療をしていくと1週間ぐらいで良くなってくるからしばらくは安静にしていてくださいね。」
でも私の頭の中は「しゃべれない原因はストレス、ストレス」というフレーズが繰り返えされていた。
15 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月13日(日)11時45分27秒
(やっぱり、原因は市井ちゃんだよね〜。)
ベットの上で窓から眺める風景は朝となんにも変わってなくて、ただ隣の看護学校の生徒が昼休みなのかバレーをしている。
(そういえば何で市井ちゃん、ここにいるんだろ格好は看護婦さんじゃなかったしな〜)
隣のおばちゃんに聞いてみようと思ったけどでてくる言葉は・・・
「あの〜、いひいひゃんはいふころからここひ・・・。」
(市井ちゃんはいつごろからここに・・・ってやっぱりうまくしゃべれないよ。)
おばちゃんは不思議そうな顔をしていたが、またテレビを見始めた。
(決めた!!うまくしゃべれないなら黙っててやる〜。黙ってるほうが早く治るって先生も言ってたしね。)
「後藤さん、点滴の時間ですよ〜。も〜そんな恐い顔しないの、そんなに痛くないからね。」
病室にはいってきた看護婦さんは点滴を振りながら歩いてきた。
(後藤、そんなに恐い顔してるかな〜。これも病気のせいか〜誤解されてるよ〜。)
看護婦さんの質問にも「はい。」「いいえ。」しか答えなかった。
ただ、看護婦さんが部屋を出て行くときに
「市井さんもがんばってるんだから後藤さんもがんばろうね。」
と言ったとき思わず
「いちひちゃんは、なはんだほほひいふんでふか〜。」
(市井ちゃんは何でここにいるんですかってまたしゃべれないいいい。もういいこんなしゃべり方で話したら、市井ちゃんも心配させちゃうから本気で貝になってやる。どうせ市井ちゃんが教えてくれるもんね。)
でも後藤の中では他人行儀な市井がいつまでもくすぶっていた。
(それにしてもなんで後藤に教えてくれなかったの、も〜しばらく無視決定。)
かってに決めた後藤はふとんにもぐりこんで寝ることにした。もう自分で考えることがめんどくさくなっていた。
(あ〜ここのベットやっぱり硬い。)
16 名前:かんかん 投稿日:2001年05月13日(日)14時09分08秒
今までにない感じで面白いっすよ。
頑張ってくださいね。
17 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月13日(日)19時07分03秒
自分も長期の入院生活を送ったことがあるので、
描写にすごくリアリティがあるのがわかる。
どんな話になるのか楽しみ。
18 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月13日(日)21時15分28秒
>7,8さん感想ありがとうございます。
結末はもうできているのですが、いかんせんへたくそなものでこれから市井を
どういうふうに絡めて行くか迷ってます。
>かんかんさん
いままでにない感じですか・・やっぱりうれしいです。
たぶんいままでの『いちごま』が好きな人は違和感があると思いますが、
がんばりますので応援よろしくお願いします。
>名無し読者さん
本当はもっとリアルに書きたいのですが文章力が無くて・・
あと他のメンバーを出したほうがいいかな・・・迷ってます。
19 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月16日(水)23時43分19秒
  〜後藤に会う2時間前〜

(・・ちいちゃんのうそつき、市井ちゃんのうそつき!!)
(後藤、私の話を聞いて。歌以外にやりたいことってね・・・)
(ガチャン・・ツゥーツゥーツゥー・・・)

「後藤〜!!!!」
布団から飛び起き、あたりを見渡すとカーテンの隙間から昨日干した洗濯物が見える。
「また、あの時の夢か〜。」
後藤との最後の電話・・・1年以上前だけど未だに夢に出てくる。
「いいかげんにしないとな〜。これってトラウマってやつかな〜?」
時計に目をやると、いつも起きている時間より1時間も早い。
「げ〜、まだ六時半じゃん。二度寝決定!!!オヤスミ〜ZZz・・・」
(むにゃむにゃ・・一人暮らししてるとひとり言が増えるな〜) 

20 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月17日(木)00時02分16秒
 〜後藤に会う30分前〜

『ジリリリリリ・・・・』
「うるさいな〜、何時だと思ってるんだよ・・・うわっ〜!%&?。」
「寝坊だ・・・。」
こういう時の私はみょーに冷静になる・・ってボサボサの頭でかっこつけてみる。
「朝ご飯、朝ご飯。」
朝食べないと調子が出ない。冷蔵庫を開けると昨日作ったサラダしかない。
「ブロッコリ〜、栄養100%〜、ブロッコリ〜。」
歌いながらサラダを口に放り込む。
「遅刻、遅刻〜!。」
階段を駆け下り愛車のべスパにまたがり出発!!!
「市井いきま〜す!!?」
21 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月17日(木)00時54分13秒
 〜後藤に会う5分前〜

「市井さん、市井さん。」
病棟の朝礼に何とか間に合いホッとしていると婦長が話し掛けてきた。
「今日から、後藤さんが入院してきます。知り合いだからってなれなれしくしない様に。あくまで看護する側と患者さんだという事を忘れないように。」
「後藤?後藤ってあの後藤ですか?」
「だからね市井さん、後藤じゃなくて後藤さんでしょ。」
「は〜い。」
402号室、足音を立てないようにそっと近づく。
「市井さん、おはようございま〜す?」
「おはようございま〜す。」
他の病室の患者さんが不思議そうな顔をして通り過ぎていく。
(後藤は患者、患者さんなんだ。ただ検査に案内するだけでいいんだ。)
(よしっ、行こう!!・・・あ〜だめだ〜。)
今ちらっと後藤の顔が見えた。久しぶりにみる生後藤はう〜んカワイイ!!
(気まずいな〜、どんな顔して会えばいいんだ〜。)
(え〜い、いっちゃえ〜。)
22 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月17日(木)01時08分17秒
 〜後藤に会う0,2秒前〜
後藤は隣のおばちゃんと話をしている。
こっちにはまだ気づいていない。
おばちゃんが私にウインクをしてくれた。
(さすが、お母さんも私を助けてくれるな〜。ありがとう!!)
私は心の中で感謝した。よ〜しいくぞ!!!
「おはようございま〜す。」
23 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月17日(木)01時53分07秒
 〜後藤に会った5分後(謎のおばちゃん)〜

「・・検査が終わりましたら診察室に行ってください。」
「はい・・・。」
後藤が検査室に入ったと同時に私は病棟に向かって階段を駆け上っていた。
そして、402号室へ駆け込んだ。
「おばちゃ〜ん。どうしよう。どうしよう。後藤やっぱり怒ってる〜。」
「何言ってるの紗耶香ちゃん。」
「だってず〜と恐い顔してるし、返事も『はい』しか言わないんだよ〜。」
何でか解からないけど悲しくて涙が出てきた。
「泣かないの紗耶香ちゃん。もう昨日は真希ちゃんが入院してくるし、どうなってんだろうね〜。」
「このあいだ、圭に紗耶香ちゃんがいたって電話したばっかりなのにね〜。」
おばちゃんはやさしく頭をなでてくれる。
「ごめんねおばちゃん、私、親子両方に迷惑かけてる。うえ〜ん。」
「いいのよ紗耶香ちゃん。保田家は面倒見のいい家系だから、ねっだから泣かないで。」
一通り泣いたあと、私はおばちゃんにお礼を言って病室を出た。
後藤と久しぶりに会った日。
うれしくて100倍悲しい1日でした。
(後藤、明日は口聞いてくれるかな〜?)
24 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月17日(木)03時22分00秒
かなり、特殊な設定ですね。
でも、面白そうなんでこの先も期待してます。
25 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月19日(土)15時09分43秒
〜保田ママと保田〜
「もしもし圭〜。」
「あっママ、どうしたの?体の調子悪いの?」
「私は、順調なんだけど紗耶香ちゃんがね〜。」
「紗耶香がどうかしたの?」
「う〜ん、真希ちゃんのことで、ちょっと・・・」
「なんで後藤がでてくるの?ママ、後藤のこと知ってるの?」
「なんでって、病室同じだもん。」
「ハア〜?どういうことなの、くわしく話して。」
(〜〜〜〜〜詳細説明中〜〜〜〜〜〜〜)
「へ〜、そんなややこしいことになってるの。」
「・・・わかった、そのうちお見舞い行くからその時話してみる・・。」
「だから、ママは余計なことしないでね。じゃあ切るね・・」
 (ふ〜、これでよしと、あとは若い者にまかせてテレビでも見〜よう)
受話器を置き、ずれたメガネを親指で押し上げる。
(真希ちゃんと紗耶香ちゃん仲良くなれるかね〜。)
26 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月19日(土)15時35分20秒
〜402号室〜
ポタッ、ポタッ、点滴をみつめる後藤の目は落ちてくる水滴に注がれている。 
入院して4日目、病状は改善に向かっているが後藤の心は沈んでいた。
この4日間後藤は市井が話し掛けてくれるのを待っていた。
しかし、市井は後藤の顔を見ると少し悲しそうに笑ってすぐ仕事に戻っていく。
後藤は少しずつなれてきた入院生活に飽き飽きしていた。
診察・・・点滴・・・食事・・・リハビリ・・・テレビ・・・
(なんかリストラされたみたいだよ〜。)
相変わらず窓の外には学生が楽しそうにおしゃべりする姿が見える。
(まったくあきないね〜。何がそんなに楽しいんだろう・・)
あたりまえに笑っていた自分をなつかしく思う。
(う〜、後藤はブル〜一直線だ〜。)
いつのまにか日落ちかけていた。黄色い光線が点滴にあたり天井に波のような波形を残していく。
(こうして人って老けていくんだろうな〜。)
27 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月19日(土)15時56分01秒
〜402号の夕方〜
「ごっ後藤さん点滴終わりましたね。」
ぼ〜と窓の外を見ている後藤に明らかに緊張している声がかかる。
「はい・・・?」振り返るとどう見ても20そこそこにしか見えない看護婦が立っていた。
(この看護婦さん大丈夫かな〜?)
後藤は点滴の針を差し替えている看護婦をぼっ〜と見つめていた。
明らかに慣れていない手つきに後藤は懐かしい感覚をおぼえた。
「しっかりやってる〜?後藤さん痛かったら痛いって言っていいからね。」
いつのまにかベットの横に後藤の担当の看護婦が立っていた。
「いえ、あんまり痛くないで・・・痛っ・・・。」
「すいません、ごめんなさい、すいません・・・・。」
(あ〜あ、痛いって言えないのって結構辛い・・・)
28 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月19日(土)16時57分41秒
〜402号の夕方2〜
点滴を終えた後藤がトイレに向かっていると、さっきの看護婦さんが怒られていた。
「申し送りのときはメモを取りなさいて言ったでしょう。」
「はい・・・。」
後藤が病室に戻ると相変わらず保田ママがせんべいを食べながらテレビを見ている。
(圭ちゃんのママだって聞いたときはびっくりしたけどよく見るとやっぱり似てるな〜。)
(そうだ4日ぶりに声出して見よう・・上手く話せるかな?)
「おばちゃん、あの看護婦さんよく怒られてるね。」
私は4日ぶりに出た声にちょと感激した。
「あ〜、真希ちゃんに点滴した人。あの子新人なんだよ。」
「ふ〜んそうなんだ。」
(昔の後藤と市井ちゃんみたいだ・・なつかしいな〜)
(メモを取れか・・よく言われたな〜)
(あのころは、きびしいけど後藤のためを思ってくれてるて解かったけど・・・)
「今は冷たいだけだよ・・・」
思わず口にした言葉が聞こえたらしい、保田ママがこっちをみて驚いた顔をしている。
恥ずかしくなって窓の外を見ると、夕日に染まった市井が一人隣の看護学校に入っていくのが見えた。
「市井ちゃん・・・?」
 
29 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月19日(土)17時00分32秒
>24
特殊すぎて保田ママまで出してしまいました。
やっぱりレスがつくとやる気がでます。
30 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月20日(日)11時20分14秒
いちごま好きなんで期待してます。
保田ママの活躍希望(w
31 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月21日(月)03時29分10秒
市井ちゃん、後藤を寂しがらせちゃだめだぞ!!(w
32 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月22日(火)22時52分31秒
>>30
保田ママは流れの中で出てきました。
上手く間を取り持ってくれることを願ってます。
>>31
これからすれ違いが続くかも・・・・

昨日は特別な日で他の皆さんの小説やサイトを回っていたら更新する暇が
ありませんでした。皆さんの小説に少しでも追いつけるようにがんばりたいと
思います。
33 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年05月22日(火)23時02分08秒
(なんで市井ちゃんが看護学校に・・・?)
「市井ちゃ〜ん!!!」
思わず窓から身を乗り出して叫んでいた。
市井が気づいたのか周りをキョロキョロ見渡している。
(市井ちゃん・・・・あっこっち見てる?)
後藤は気づくと窓の下に隠れていた。
(あれっ、何で隠れなきゃいけないんだろ?)
34 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月26日(土)14時25分31秒
がんばれ〜!!!!
35 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月11日(月)20時00分14秒
どうなるんだ〜?!!
作者さんがんばって!!!!
36 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月14日(木)00時08分11秒
長い間忙しくて書けませんでした。今週末からまた書きますのでよかったら読んでください。
37 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月15日(金)04時53分39秒
作者さんが戻って来てくれてよかった〜!!
このまま沈んで消えちゃうかと思いましたよ〜!!(w
忙しいのでしたらマターリでいいと思うんで頑張って下さい。
38 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月17日(日)02時13分29秒
「真紀ちゃん、何してるの?」
保田ママが隠れている後藤に不思議そうな顔を向けている。
「え〜とっね・・・市井ちゃんがね・・・。」
(う〜、なんか聞きづらいな〜)
「紗耶香ちゃん?紗耶香ちゃんがどうかしたの?」
「どうして、隣の看護学校に市井ちゃんが・・%&!?」
興奮して久しぶりに舌が回らなくなった。
「あ〜、学校のこと。紗耶香ちゃん言って無かったのね。」
「あのね真希ちゃん、紗耶香ちゃんはね・・・。」
保田ママはいつに無く真面目な顔で話し出した。
(う〜、ドキドキしてきた。)

39 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月17日(日)02時14分24秒
話し終えた保田ママはまたテレビを見始めた。
私は保田ママの話の内容を頭の中で一生懸命整理していた。
(市井ちゃんの新しい夢は看護婦で・・・)
(今、昼は病院で働いて、夜は学校に通っている・・・)
考えがまとまった時、何となく寂しさを感じた。
(頑張ってるんだ〜、さすがだな〜)
窓の外を見ると暗闇の中、隣の学校の明かりだけがやけに眩しい。
「真紀ちゃん?泣いてるの?」
40 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月17日(日)02時15分21秒
「えっ・・・。」
自分では気づかなかったが涙がシーツを濡らしていた。
後藤は恥ずかしくなって仕切りのカーテンを閉めた。
(何で泣いてるの私・・・市井ちゃんが新しい道見つけたんだから応援したいのに・・・)
後藤の中で色々な思いが浮かんでは消えていった。
(今までは、私と市井ちゃんの道は違っても、目指している方向は一緒だと思ってたのに・・・)
(また私を置いて行っちゃうんだ・・・)
いつのまにか置かれていた晩御飯の湯気は無くなっていた。
(市井ちゃんの未来に私はいないのか・・・)
後藤の中で渦巻いていた考えが一つにまとまっていった。
41 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月17日(日)02時16分11秒
保田ママは締め切ったカーテンを見つめながらせんべいを食べていた。
さっきまで聞こえていた泣き声は聞こえなくなっていた。
「よしっ!!」
カーテンの向こうから掛け声が聞こえた。
次の瞬間カーテンが勢い良く開いて、ベットの上に仁王立ちのシルエットが現れた。
「後藤、復活しましたぁ〜!」
元気の良い笑顔の目元は赤くなっていた。
「真紀ちゃん・・・。」
保田ママの言葉をさえぎるように後藤は喋り出した。
「後藤は、大人になりました。決心しました!!!」
(市井ちゃん、後藤は邪魔しないからね・・・)
 
・・・それはとっても悲しくて一人よがりな考え・・・

42 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月17日(日)13時25分03秒
続き待ってました。あぁ、後藤…
43 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月18日(月)02時22分19秒
再開ですね、待ってました。
スミマセン
一つだけ、真紀→真希
44 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月18日(月)03時09分55秒
>43
すいません真希でした。
これからは週一ぐらいで書ければと思ってます。
遅筆ですいません。
良かったら読んで下さい。
あとやっぱりレスはうれしいです。
45 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月19日(火)19時51分38秒
作者さんのペースでがんばってくだされ。
46 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月19日(火)22時23分28秒
〜市井、学校へ〜

「市井ちゃ〜ん・・・」
遠くから呼ばれているような声が聞こえる。
市井が周りを見渡してもそれらしき人影は見えない。
ふと、後藤のいる病室に目をやる。
窓は開いていて、保田ママらしき人が立っているが、こっちを見ているようには見えない。
(後藤の声に聞こえたんだけどな〜、そんなはず無いか・・・)
(後藤は話し掛けてくれないし、私からも話し掛けづらいよな〜)
市井は重い足取りで教室への階段を上っていった。
(やっぱり、仕事と学校の両立ってつらいな〜)
47 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月19日(火)22時24分20秒
(この病理学の授業眠いんだよな〜)
「え〜、教科書の62ぺージを開けて・・・今日は顔面神経麻痺について話します。」
市井は窓の外を見ながら後藤と再会してからのことを考えていた。
(久しぶりに会ったのに恐い顔されて返事もあまりしてくれなかったし〜)
(やっぱりあの電話が最後だったから怒ってるのかな?)
(でもこっちもどう話し掛ければいいか解からないし、後藤から話し掛けてくると思ったんだけど・・・)
とりとめも無い考えが浮かんでは消え浮かんでは消えていった。
「やっぱ患者さんだと思ったら話しかけづらいよ〜。」
市井は自分がひとり言を言っていたのと、近づいてくる人影にまったく気づいていなかった。
48 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月19日(火)22時25分22秒
「そーですか市井さん、患者さんには話せなくても私の授業中にはしゃべれるのですね・・・。」
市井は机の前に立っている先生にやっと気づいた。
顔から明らかに怒りが見て取れる。
市井は思わず苦笑いをしたが、先生はそれを無視すると背を向けながら
「それでは市井さんには、今日勉強したことについて発表してもらいましょうか。」
市井はシブシブ立ち上がると、教科書を机に置いたまま目を落とした。
(んんっ!?今日何の授業してたんだっけ???)
市井は立ち上がったまま動けなくなった。
「・・・62ページ・・・」
隣の友達が小声で教えてくれた。
49 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月19日(火)22時26分06秒
(62ページ、62ページ・・・)
(・・・顔面神経麻痺・・?ん?何か聞いたことあるな〜、まっいいか・・・)
「え〜と顔面神経麻痺とは?、顔の神経を司る神経が麻痺し、顔がこわばったり、
味覚に障害が出たり、流涙などの現象が起こる????。」
「はい、まあいいでしょう。」
市井は教科書をもったまま無言のまま席についた。
(あれっ、この症状って後藤の・・・)
市井の考えをさえぎるように先生の質問は続いた。
「まあ、だいたいそうですね、では顔面神経が麻痺したことによって起こる他の障害は何がありますか?」
市井の後ろの生徒が当てられた。
「・・・え〜と、しゃべりにくくなったりします。」
「そうですね、これを構音障害と言います・・・。」
後ろの友達の答えるのを聞きながら、市井は病院での後藤を思い出していた。
(顔面神経麻痺・・顔がこわばる・・味覚に障害・・流涙・・しゃべりにくくなる!?&%・・・・)
50 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月19日(火)22時26分47秒
しばらく頭が真っ白になった。
(・・・後藤・・・・)
先生の声がだんだん遠くなっていく・・・。
(後藤は怒って恐い顔をしていたんじゃないんだ、嫌いなはずのブロッコリーを食べてたのも・・しゃべらなかったのも・・話したくても話せなかったんだ・・・。)
後藤の悲しそうな顔が浮かんできた。
入院患者用の緑のガウンを着ている。
目からは涙があふれ、頬をつたっていた。
(いちい〜ちゃん、後藤はさみし〜よ・・・)
そうつぶやくと背を向けて暗がりへと歩いていく。
その姿がゆらゆらと揺らぎながらだんだん透き通って行く・・・。
(後藤!まって後藤!!)
後藤の腕をつかもうとしても、すり抜けるだけでつかめない。
(まってよ後藤、まって行かないで・・・)

51 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月19日(火)22時27分23秒
「・・・起立・・・礼・・・」
周りがなんか騒々しい。
「・・市井さん、市井さん、もう授業終わったよ。」
体をゆする手で市井は目を覚ました。
市井はいつのまにか居眠りをしていたらしい。
「市井さん、泣いてたの?目が真っ赤だよ、大丈夫?」
「えっ・・・。」
目元に手をやると指先に涙のしずくがついた。
「んん、大丈夫、ちょっと恐い夢見ちゃったみたい、疲れてるのかな。」
友達は不思議そうの顔をしながらも『じゃあね』と言って帰っていった。

52 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月19日(火)22時27分59秒
誰もいなくなった教室で市井はしばらくボ〜としていた。
誰もいない学校は昼の騒がしさとはうらはらに奇妙な静けさだけが広がっている。
時計に目を移すと、針は9時半を示している。
教室から見る病院は、消灯時間が過ぎているので暗闇の中に溶け込んでいる。
所々見える明かりも、ベットサイドの小さな明かりしかない。
市井は一人学校を出ると、後藤のいる402号の窓に小さな明かりが点いているのに気づいた。
市井は叫びたい気持ちをぐっと押さえて小さな明かりを見つめて決意を固めた。
(後藤、もうさびしい思いはさせないからね・・・)

・・・二人の思いは一つでも、すれ違う決意・・・
53 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月19日(火)22時30分40秒
週一と言いつつ、レスがついていたので勢いで書いてしまいました。
良かったら読んで下さい。
54 名前:パク@紹介人 投稿日:2001年06月19日(火)23時07分20秒
こちらの小説を「小説紹介スレ@銀板」に紹介します。
http://www.ah.wakwak.com/cgi/hilight.cgi?dir=silver&thp=992877438&ls=25
55 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月20日(水)03時50分54秒
せっかく、二人の想いは一つなのにすれ違ってしまうのか!?
悲しいな〜(w

レスすることで作者さんが勢いづくなら、いくらでもレスしますぞ〜!!(w
56 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月24日(日)00時49分58秒
 〜決意のあと〜

後藤は生まれて初めて徹夜をした。いや正確に言えば眠ることができなかった。
朝日がカーテンの隙間から差し込んでくる。いつもは見ることができないきれいな朝日に赤く腫れた目を細める。

「うーん、やっぱり眠れないや・・・。」

朝もやに埋もれた学校がいつもとは違って見える。まだ6時を回ったばかりで、もちろん生徒どころか人ひとり見えない。後藤は昨日の保田ママの話を思い出していた。
(決意したのはいいけど、これからどうしようかな?)

57 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月24日(日)00時55分21秒
後藤がぼんやりこれからのことを考えていると、市井が朝御飯をもって病室に入ってきた。

「おはよう、後藤。」
「えっ、あっ、おはようございます。」

そのとてもやさしい声に後藤は驚きを隠せなかった。これまでの市井は、病室に入ってきても保田ママに話し掛けるだけで、後藤の顔を見ないことさえあったからだ。
後藤は市井から食事を受け取ると、食べるのも忘れて病室を出て行く市井を目で追っていた。
(う〜、市井ちゃんがわからないよ〜)
58 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月24日(日)00時56分10秒
朝だけでは無かった、市井はことあるごとに後藤の病室を訪れては声をかけていく。
後藤も初めは驚いたが、うれしいと思うよりも市井に対する不満が徐々に高まっていった。

「ど〜したの真希ちゃん、昨日は遅くまで起きてたみたいだけど・・・」
「おばちゃん・・市井ちゃんて何考えてるのか解からない・・・」
「わたしにはそうは見えないけどね〜。」
59 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月24日(日)00時56分45秒
後藤は保田ママと話をしながら、頭がボ〜としてきた。
(そういえば、昨日ねてなかったんだ〜)
(ねむい、ねむい・・・・)
後藤は保田ママに寝ることを告げるとベッドにもぐりこんだ。布団の中から見えるテレビは大リーグ中継をしている。中継には聞いたことのない女優がゲストで出ていた。ルールを知らないらしく、解説者と会話がかみ合ってない。後藤は自分の仕事のことを久しぶりに思い出した。
(私の居場所はテレビの中・・・市井ちゃんの新しい道は病院・・・)
(ここはやっぱり後藤が我慢しないとな〜うん。)

次の日、後藤は先生からあと一週間で退院だと告げられた。

60 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月24日(日)00時57分39秒
入院していると、曜日の感覚が無くなってくる。朝テレビを見ていて、いつも見ているワイドショウをやってなくて初めて土曜日だと気づくぐらいだ。後藤も例外なく今日が何曜日だか解かっていなかった。しかし、後藤にしてみれば何曜日かなんてどうでもいいことだった。

いつものように窓の外を見ていると、いつもの朝から騒がしい学生の姿が見えない。
(へ〜、今日は学校ないんだ)
後藤にとってはそんなことはもうどうでもいいことだった。感情を無くすことで、このごろの後藤はなんとか平静を保っている状態だったからだ。ボ〜としていると隣の保田ママが何かゴソゴソしている。

「おばちゃん、なにしてるの?」

後藤は興味なさそうに聞いた。
61 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月24日(日)00時58分28秒
「今日はね・・・圭が久しぶりにオフが取れたから、お見舞いに来てくれるの。」
「へ〜、圭ちゃん来るんだ〜。」

保田ママは、いつもはしない化粧を丁寧にしている・・・と言うよりもあきらかに塗りすぎだ。後藤は張り切っている保田ママをはじめて見た。会いたい人に会えるというのはエネルギーが沸いてくるものだとは知っているが・・・。

「圭のお土産なにかな?」
「おばちゃんには、もちろんせんべいでしょ。」

(会いたい人に会えるってやっぱりうれしいよね。)
頭に市井の顔が浮かんできた。
(会いたかった人に、もうすぐ会えなくなるのか〜)
市井のことを考えると別れのイメージしか湧いてこない。
(あーだめだ、違うこと考えよう)
(お土産・・おみやげ・・プレゼント・・・そうだプレゼント・・・・)

62 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月24日(日)01時00分03秒
(はいこれ後藤、あげる)
後藤は市井がはじめてくれたプレゼントのことを思い出していた。
後藤が娘に入ったばかりのころ、まだ市井が教育係だったころ・・・。

「後藤って、誕生日いつ?」
「えっ、九月二十三日ですけど・・・。」
「何がほしい?」
「・・・食べ物なら何でもいいです。」

後藤は適当に答えると市井から離れていった。後藤はこのころまだ市井が苦手だった。市井は後藤に話し掛けてくるが、会話が真面目すぎて面白くなかった。なにしろ会話が続かない。

「そっか・・・食べ物ね・・・解かった、後藤楽しみにしててね。」
「・・・はい。」
 
後藤は背中から聞こえてくる市井の声にやる気の無い声で答えた。

63 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月24日(日)01時00分47秒
九月二十三日、後藤の誕生日。後藤が楽屋に入ると笑顔で市井が駆け寄ってきた。

「はいこれ後藤、あげる。」
「あっ、ありがとうございます。」

(なんで、私の誕生日知ってるんだろう?)
後藤は市井との会話を忘れていた。渡された包み紙は食べ物にしてはごつごつしているが、振ってもあまり音もしない。開けて見ると『サボテン』が出てきた。

「・・・何ですか、これ・・・サボテン?」
「サボテンって食べられるんだよ。」

市井はどうだと言わんばかりの顔をしている。
64 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月24日(日)01時05分21秒
なんだよ後藤、やっぱりこんなのじゃだめ?」

思わずうつむいてしまった後藤の顔を覗き込むようにして市井が声を掛ける。

「市井さんて・・・やっぱり面白くないですね。」
「なんだと後藤、てめ〜。」

市井は後藤の頭を押さえてヘッドロックのまねをする。ヘッドロックされながら後藤は市井の思いやりを感じていた。市井は市井なりに、後藤と仲良くなりたいと思ってくれていたんだと思うと、涙が出てきた。

「後藤、ごめん痛かった。」

慌てて市井は手を離すとおろおろしながら後藤に謝ってきた。そのおろおろする様子がなんだか猿みたいで思わず笑ってしまった。顔はもう泣いてるのか笑ってるのか解からない。ただ感謝の気持ちでいっぱいだった。

「ううん、あのね・・・市井ちゃんありがとう。」

65 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月24日(日)01時07分23秒
(あの時から私の中での市井ちゃんは、器用に見せようとしているけど、どう見ても不器用で、面白くないけどやさしくて、後藤にとって気になる人になって・・・)
その時、聞き覚えのある声が病室の入口から聞こえてきた。

「うい〜す、後藤元気〜。」
「ママも元気にやってる。」
「病気だから元気な分けないか、ハッハッ。」

(いつもよりちょっとテンション高いな、圭ちゃん・・・)
66 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年06月24日(日)17時10分46秒
>55
レスありがとうございます。
今回はちょっと過去の話を入れてみました。
あまりにも市井と後藤のからみが無かったので・・・
これからもよかったら読んで下さい。
67 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月25日(月)01時21分38秒
過去のいちごまイイ。これからのいちごまはどうなるんだ?
68 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月25日(月)03時21分33秒
誕生日にサボテンって(w
やっぱいいですねいちごまって。
この先も期待してま〜す。
69 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月01日(日)01時00分30秒
〜どうにかして土曜日〜

「・・・そうなんだってママ〜、信じられる〜。」
「圭、そんなのばっかり見てたら、頭おかしいと思われるよ。」
「だって面白いんだもん。」

(圭ちゃんが、圭ちゃんのママと話してる・・・・)
後藤はそんな当たり前のことを考えながら二人の話を聞いていた。そこには後藤が見たことの無い顔で保田が笑っていた。
70 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月01日(日)01時02分05秒
「圭ちゃんてそんな顔で笑うんだ〜。」

保田と保田ママは顔を見合わせて不思議そうな顔をしている。

「後藤あんた病気よっぽどひどいんだね。」

保田は後藤のベットの前に来ると、椅子の背もたれにまたがる形で座った。そして何かを思い出したかのようにバックの中をあさっている。そして後藤の前に派手な本を取り出した。
71 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月01日(日)01時03分06秒
「何これ?圭ちゃんまたこんなの読んでるの?ブ・ブ?なんて読むの?」

(圭ちゃんて芸能人のくせにこんな雑誌好きだよな〜)

「そんなとこじゃなくてココ、ココ。」

圭ちゃんの開けたページを見てみると、髪を少し明るくした市井の笑顔の写真と弟のユウキが写っている。

72 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月01日(日)01時05分24秒
「何これ?市井ちゃんとユウキが付き合ってる・・?この写真市井ちゃんが『娘』辞めてから一度家に遊びに来た時に後藤が撮ったんだよ・・・?」
「なーんだ、面白くない。」
「・・・圭ちゃん。」
「ご、後藤そんな怒るなって、冗談だよ、冗談。」

(まったく、圭ちゃん解かっててこんなことするもんな〜)

73 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月01日(日)01時06分25秒
「まーそんなことより、後藤あとどれくらいで退院できるの?」
「えっと5日ぐらいかな?」
「はやく退院してもらわないと、吉澤はピンで仕事が入ってるし・・私は暇なんだからね・・・。」
「まー後藤は、紗耶香がいるからからあんまり退院したくないか。」
「・・・ないもん。」
「えっ・・・。」
「そんなことないもん、こんなとこ早く退院したいよ。」
「あ・・・そう・・・。」

保田は後藤の気迫に押されて思わず言葉に詰まってしまった。
明らかに後藤は動揺していた。自分でも何故だか解からないほど・・・。
74 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月01日(日)01時13分10秒
とりあえずここで一息・・・
今回の話は色々な意見があると思いますがこちらの都合でこういう事にしました。
意見・批判はレス下さい。

>67・68
レスありがとうございます。
これからは後藤と市井がどんどん絡んでいくので、良かったら読んで感想ください。
75 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月02日(月)03時38分51秒
なあ〜んだ、あの写真はごっちんが撮ったのか、よかったよかった。(爆)
いいんじゃないですか、1年ぶりに出てきた市井ちゃんネタなんだし。
俺は全然OKだと思いますよ。
それにしても、金髪の市井ちゃんカワイイよ
76 名前:mo-na 投稿日:2001年07月02日(月)03時39分32秒
お!お互いの思いが「同じ」なのに、すれ違って行くのかな?
うーん面白くなりそうだ。
保田家ある意味主役級に(笑)
77 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月14日(土)02時16分34秒
つづき期待してま〜す
78 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月21日(土)00時43分14秒
交信〜・・・
79 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月28日(土)16時30分26秒
え〜と、また更新がしばらく出来ませんでした。
電話代を払ってなっかたので・・・・
とりあえず、待っていてくださった方々ありがとうございます。
夏休みにも入ったことですしバシバシ書いていこうと思います。
それでは〜どうにかして土曜日〜の続きです。
80 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月28日(土)16時33分56秒
保田は病室の窓側に設置してあるクーラーに寄りかかってTシャツのすそをパタパタしている。病室は暑い夏の日差しにも関わらず、あまりクーラーが効いていない・・・。

「さてと、私はそろそろ帰ろうかな?」
「もう帰るの?」
「もうって夕方だよ、明日も来るから。」
「明日もオフなの?」
「だ〜か〜ら〜後藤がいないからプッチは暇なの。」
「ごめん・・・なさい・・・。」
「いいっていいって、病人にむちゃ言えないしね。」
「じゃあママも、後藤もまたね。」
「圭ちゃん、今日はどこに泊まるの?」
「ああ、紗耶香に泊めてもらうよ。」
「じゃ〜ね〜。」
保田は手をひらひらさせながら病室を出て行った。

81 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月28日(土)16時39分28秒
(あ〜あ、帰ちゃった)
後藤は保田が帰っていった病室の入口をボ〜と見ていた。
(久しぶりに病院以外の人と話したのに〜)

「あれっ、圭ちゃんもう帰ちゃった?」

後藤が見ていた入口から市井がひょっこりのぞき込んできた。思わず後藤は顔を伏せてしまった。押し黙る後藤とせんべいを食べつづける保田ママ、「ぼりぼり」という独特の音だけが病室に響く。

「圭なら帰ったよ。」

せんべいの音が途切れ、一言言うとまた独特の音が病室に響きだした。

「そうなんだ、待ってるって言ってたのに?」

そう言うと市井は仕事に戻って行った。
82 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月28日(土)16時40分41秒
(ふ〜、びっくりした)
(市井ちゃん見ると緊張しちゃうよ〜)
後藤は握り締めていたシーツを離すと、ベットを降りて窓の縁に寄りかかった。
(早く退院しないと後藤耐えられないよ)
しばらくクーラーで涼んでいたが、後藤は何かを思いついたように入口に向かって歩きだした。

「あれ?真希ちゃんどこ行くの?もうすぐ御飯だよ。」
「うん、散歩。」
「そうだ真希ちゃん、おばちゃん明日ね・・・。」
「行ってきま〜す。」

そう言うと後藤は、保田ママが何か言いかけているのを背中で聞きながら病室を出て行った。
(一人で色々考えたいから・・・)

83 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月28日(土)16時41分28秒
後藤はエレベーターで一階に降りると売店に向かった。売店をウロウロするもピンとくるものがない。売店を出ると自販機の列が見える。
(何か美味しそうなのあるかな?)
ジュースの自販機の一番端にアイスクリームの自販機が見えた。
(ハーゲンダッツか〜)
84 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月28日(土)16時44分19秒
ここで一息・・・
やっと長い前フリが終わった。ここからが一番書きたかったところなんで・・・
次回から『ハーゲンダッツは甘くない』です。
今日中に更新します。
85 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月29日(日)03時39分17秒
〜ハーゲンダッツは甘くない〜

「お疲れ様でした〜。」

市井はナースステーションを勢い良く飛び出すと402号室に向かった。しかし病室には保田ママしかいなかった。

「おばちゃん、後藤は?」
「何か散歩に行くって言ってたよ。」
「ふーん。」
「そうだ紗耶香ちゃん明日に決まったよ。」
「そっか〜、ちょっと残念だけどおめでとう。」

そう言うと、市井は保田ママに手を振りながら病室を出て行った。

86 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月29日(日)03時40分07秒
(そう言えば後藤とぜんぜん話してないな〜)
更衣室から出た市井は後藤が入院してからのことを考えていた。
職員用の出口に向かったいた市井のお腹が「グゥ〜」と鳴った。

「そういえばお昼食べてなかった。」

お腹をさすりながら市井は売店に向かった。
売店の途中に見覚えのある後ろ姿が立っている。

(後藤・・・?)
87 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月29日(日)03時41分17秒
後藤はアイスクリームの自販機の前に立って腕組みをしている。
市井は後ろからそっと近づいていくと、後ろから目隠しをしようとした。
(いきなりこんなことしたら怒るかな?)
さっきの病室での後藤を思い出すと手が動かなかった。
(私と話したくなさそうだったからな〜)

「後藤〜、また太るぞ。」

今の市井には肩をたたくことが精一杯だった。
振り向いた後藤は目を丸くしている。
(こういうのを驚いてる顔って言うんだろうな)
冷静にそんなことを考えてしまうような典型的な顔をしていた。

88 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月29日(日)03時42分16秒
(気を取り直して・・・・)

「後藤、もうすぐご飯だよ・・・・って私が言うことじゃないか。」

後藤は黙ったまま私の顔を見ている。
(なんか調子狂うな〜)
頭をボリボリかきながら市井は話し掛けたことをちょっと後悔した。

「え〜と、何食べる・・・おごってあげるから・・・」

(いまさら何を言ってるんだよ私は・・・もうこの空気嫌だ・・・)

「・・・ベリー。」
「えっ・・何?」
「ストロベリーがいい。」
「じゃあ、私はバニラかな・・・。」

89 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月29日(日)03時43分53秒
「ガコッ、ガコッ」
「はいストロベリー、じゃああっちで食べようか。」

出てきたアイスを持って受付近くのベンチに向かおうとすると、後藤はアイスを持ったまま動こうとしない。
(うー、ちょっとどうしろっていうんだよ〜)
市井は後藤の方を向くと少し語気を強めて話し掛けた。

「どうしたの後藤、食べたくないの?」

(ていうより私と食べたくないの?)
市井は思わずそう言いたくなった。

「・・スプーン。」
「ああ、そうかスプーンね、そうだった。」

市井は返事をしながら思わず笑ってしまいそうになった。
後藤は相変わらず後藤のままだった。
まるで出会ったころのようなそっけない態度、何を考えているか解らないとぼけた顔・・・それでいてたまに見せる弾けるような笑顔・・・笑顔は最近見てないけど。

90 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月29日(日)03時50分16秒
「後藤〜まだ〜。」

後藤は取り出し口の横のスプーン入れを開けたまま固まっている。

「スプーンが一個しかないよ〜。」
「じゃあ、いっしょに食べよう。」

そう言うと市井はベンチに歩いていった。

「う・・ん。」

心なしか後藤の顔が赤くなったのに市井は気づいていなかった。
91 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年07月29日(日)03時56分24秒
とりあえず今日はここまでです。
あまりにも間があいていたから読んでくれていた人も内容忘れているかも・・・
よかったら感想下さい。
次回は「ハーゲンダッツは甘くない(後編)」です。
92 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月30日(月)03時17分46秒
更新、お待ちしておりました。
今回の話で二人のぎこちない雰囲気が改善されるといいな〜。
93 名前:mo-na 投稿日:2001年07月31日(火)06時10分23秒
激烈更新待ちしていましたよ!
何をおっしゃいます。内容を忘れるはず無いですよ!
も〜〜いちごま 
ハーゲンダッツは甘くなくっても いちごまは甘なって欲しいなぁ〜
94 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月01日(水)23時39分02秒
>>92
感想ありがとうございます。
書いてる方もぎこちない雰囲気をどうにかしたいんですが・・・
がんばります。
95 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月01日(水)23時45分57秒
>>93
熱い応援ありがとうございます。
内容を覚えていてくれているとはそれが一番の気がかりでした・・・(感謝)
甘甘か〜この二人には結構遠いかな?
96 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月01日(水)23時50分10秒
〜ハーゲンダッツは甘くない(後編)〜

受付の前のベンチに座る二人・・・会話は無い。
ベンチの近くには喫煙所があって、何人かのおじさんたちが夕日を背にして入院話に花を咲かせている。
市井と後藤の二人も外が見える大きな窓の近くに座って夕日に体をさらしていた。
その強い日差しを浴びて、二つのアイスは水滴をまといながら食べられるのを待っているかのようだった。

(何から話そう?入院生活のこと?保田ママのこと?娘。のこと?)
(あ〜、いざ話そうと思うと言葉がでないよ〜。)
97 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月01日(水)23時51分56秒
しばらくモジモジしていたが市井は決意を固めて話し掛けた。

「・・・後藤、最近どう?」

(あ〜、こんなこと聞きたいんじゃないのに〜)

「えっ・・・どうって言われても入院中・・・かな?」
「そう・・だよね。」

受付の前のベンチに座る二人・・・会話が止まった。

98 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月01日(水)23時54分06秒
気まずい空気を打ち破ったのは後藤の当たり前な一言だった。

「市井ちゃん、アイス食べないと溶けちゃうよ・・・」
「そっそうだね。」

市井はふたを取るとアイスを食べはじめた。
緊張で渇いていたのどにバニラ味が広がっていく。
市井はかきこむようにアイスを食べていった。

「・・市井ちゃん。」
「んんっ?!」
99 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月01日(水)23時55分24秒
スプーンを咥えたまま顔を上げると、市井のおでこに冷たい感触が触れた。

「つめたっ?!」
「あははっ、市井ちゃん顔がマジになってる。」
「なにすんだよ後藤!!」

目の前にあるアイスをどけると市井はお腹を抱えて笑っている後藤の手をつかんだ。
手の中にはハーゲンダッツのストロベリーがふたのついたまま収まっている。

「市井ちゃん・・・スプーン。」
「あっ・・・ごめん・・・なさい。」
100 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月01日(水)23時57分27秒
後藤は、心なしか小さくなっている市井の口からスプーンをとると「間接キッス〜」と口ずさみながらアイスを食べはじめた。
(やっぱ後藤はつかめないな〜)
市井はアイスをパクパク食べている後藤を見つめながら、後藤の気持ちを探ろうとしていた。

「市井ちゃん、あ〜ん。」
「あ〜ん。」

(やっぱわかんね〜や)
市井は口をモグモグさせながら沈む夕日を眺めていた。
101 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月02日(木)00時15分15秒
ここで一息・・・
なかなか話が進まない。
しかし、100レスまできたので頑張って書きます。
102 名前:mo-na 投稿日:2001年08月02日(木)04時23分33秒
はい!頑張って下さいね。
チョット「甘」入ってますね。この微妙差がドキドキです。
103 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月05日(日)20時48分40秒
えーと、〜ハーゲンダッツは甘くない(後編の後編)〜です。
104 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月05日(日)20時49分29秒
いつのまにか後藤はストロベリーだけでなく、市井のバニラも食べている。
口をモグモグさせながら後藤は神妙な顔をしながら話し始めた。

「市井ちゃん、一言言っていい?」
「うん、いいよ・・。」

市井は首筋を汗が伝っていくのを感じていた。

「あのね・・・ストロベリーの方がバニラよりおいしいね。」
「へっ!?それだけ?」
「うん!」

そう言うと後藤は再びアイスを口に放り込んだ。
相変わらず顔は笑顔なんだが、何を考えているのかわからない。
105 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月05日(日)20時50分16秒
市井が考え込んでいると、後藤がスプーンにアイスをのせて市井の顔の前に持ってきた。

「市井ちゃん、あ〜ん。」
「またかよ、さっきも食べたじゃウグッ@?*!!!」
「ね〜、市井ちゃんはどっちが好き?」

後藤は市井の驚いた顔を見て子供のように喜んでいる。
市井は口をモグモグさせながら怒るのを通り越して呆れてしまった。
(あっ・・・でもほんとにストロベリーの方がおいしいな・・・)

106 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月05日(日)20時50分46秒
アイスを食べ終わった後藤は、外を通る人の流れをつまらなそうな顔をして見ている。
また沈黙になるのが恐くなった市井は場所を変えることにした。

「ねえ後藤、屋上行ってみない?」
「屋上?」
「屋上からの夕日は綺麗だよ、ほんとに・・」

一瞬の沈黙の後、後藤は「いいよ。」と答えた。

107 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月05日(日)20時51分33秒
エレベーターの中はクーラーが効いてなく、一種のサウナ状態になっていた。

「あついね・・・」

市井がそうつぶやいたと同時に屋上に着き、エレベーターの扉が開いた。

「うわぁ、風がきもちいい〜。」

夕暮れの日差しは腕を広げる後藤の体を紅く染め、何かの芸術品のように見える。
金網が張られた屋上はかなりの範囲が見渡せ、展望台のように見晴らしが良かった。

108 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月05日(日)20時52分28秒
「ね〜市井ちゃん、あの遠くで光ってるの何?」
「あれは飛行場の管制塔だよ。」
「じゃあ、あれは?」

金網に寄りかかった後藤は次々質問を浴びせかけてきた。
市井はそれに一つ一つ答えながら、後藤の表情を見つめていた。
109 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月05日(日)20時53分06秒
「後藤・・・顔もうひきつらない?」

後藤の質問をさえぎるようにして市井は質問を投げかけた。

「う〜ん、もうほとんど大丈夫だけど、緊張すると症状が出るかな?」

そう言うと後藤は、顔を両手で挟んで「ぶぅ〜」と言いながら、再び金網の方を向いた。

「かわいいな〜、後藤、マジで。」

市井は頭をクシャクシャと撫ぜながら後藤の横に並んだ。
そのまま市井は頭から肩に手を下ろすと、後藤の肩を軽く抱いた。

110 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月05日(日)20時53分39秒
「あっ・・・」

後藤は驚きとも、喜びともどちらにもとれるような声をあげた。
市井は自分の心臓の鼓動を感じながら、努めて平静を装いつつ話し掛けた。

「ここからだと市井のアパートが見えるかも・・・あっほらあそこの小学校の後ろなんだけどな〜、校舎が邪魔で見えないか〜。」
「市井ちゃん、学校はいいの?」

後藤は表情をまったく変えずに話し掛けてくる。

「学校?土曜日ぐらい休ませてよ。」


111 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月05日(日)20時54分24秒
市井は自分で何を話しているか解からなくなっていった。
とりとめの無い話をしながら、まくしたてるように話を続けた。

「でもさ〜、こんな風にしてるとカップルみたいに見えるかな?」

市井は、心臓の鼓動が最高潮に達していくのを感じながら、勢いにまかせて言った。

(とうとう言っちゃった・・・)

112 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月05日(日)20時56分27秒
ここで一息、残りは今日中に載せます。
感想良かったらお願いします。
113 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月05日(日)23時39分19秒
「せいぜい姉妹じゃない?だって後藤ドキドキしないもん。」

あっさり言い切ると、後藤は金網から静かに離れた。
市井の手は後ろへ下がる体に押されるようにして、ずれ落ちるように後藤の肩から離れた。
そのまま表情を変えずに、後藤は両腕を高く上げ背伸びをすると市井の方を振りかえった。

「じゃあ市井ちゃん、もう御飯だから病室に帰るね。」

そう言うと後藤は、エレベーターを待たずに勢い良く階段を駆け下りていった。
屋上には腕を途中まで下げた市井が一人残された。
市井は金網に寄りかかると、下を走る車のライトを黙って目で追っていた。
114 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月05日(日)23時40分38秒
「きっついな〜。」

そうつぶやくと市井は日が落ちるまで屋上から景色を眺めていた・・・眺めざるを得なかった。
夕日が沈み、明るかった屋上も市井の気持ちに呼応するように、みるみるうちに暗くなっていく。
ボーっとしている市井の頭からは一つの言葉がいつまでも離れなかった。

「だってドキドキしないもん・・・か・・・。」

115 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月06日(月)04時28分57秒
後藤〜、本音で話そうや!!(w
116 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時42分03秒
〜乙女の心理学(市井編)〜

後藤が屋上から降りていってから、市井はしばらく動くことが出来なかった。
日はすっかり落ち、町の明かりが明々と輝いている。

(この明かりの一つ一つにいろんな人の人生があるんだよな〜)
(私は明かりの点いていない暗いアパートに寂しく一人・・・)
(帰ろっかな?)

そんな市井のネガティブな考えを遮るように、携帯の呼び出し音が鳴り響いた。

117 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時43分15秒
(あれ、この着信音は・・・?)
(乙女の心理学!?圭ちゃん?)
(何でこんなときに・・・)

市井はゴソゴソとバックを探ると携帯を取り出し画面を見る。

(やっぱり圭ちゃんだ・・・)

118 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時43分57秒
「もしもし、圭ちゃん?」
「もしもしじゃないよ、紗耶香いつ帰ってくるの、もう仕事終わったんでしょ?」
「私、紗耶香の家の前で結構待ってるんだけど・・・」

市井の低いトーンとは裏腹に保田のテンションは高く、時計を見ると針は八時前を指していた。
(しまった、後藤のことばっかり考えてて圭ちゃんのこと忘れてた・・・)

「あっ・・ごめんちょっと用事があって・・。」
「すぐ帰るから、ちょっと待ってて。」

市井は携帯を切ると急いで病院を後にした。
119 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時44分53秒
市井が愛車のべスパでアパートの前に着いたときには、保田は腕組みをして仁王立ちで待っていた。
その姿はまるでアパートを守っている守り神のように見えた。
その横には、買い物袋が盛り塩のように積み上げられている。

(こっ狛犬?)

「さ〜や〜か〜、どうしてこんなに遅くなったか説明してもらおうかしら。」

べスパを止めると、保田は間髪入れずに質問してきた。

(げっ圭ちゃん顔恐い、かなり怒ってる・・・)

「あのね圭ちゃん実は・・・」

市井は保田にありのままを話し始めた。
120 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時45分27秒
「あっはっはっ、そんなことしたの紗耶香〜。」

保田は市井の話を聞くと「ちょっと待って、ここじゃもったいない。」と言って家に上がりこむとさっそくビールを飲み始めた。

(だめだ・・・完璧に酔ってる・・・)
(やっぱり話さなければ良かったかな?)

さっきから数えていると保田のビールはすでに三本目に突入していた。

121 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時46分23秒
「ね〜、圭ちゃんなんでそんな楽しそうに飲んでるの?」
「バカだな紗耶香、こんないい酒のつまみあるわけ無いじゃん!」
「酒のつまみって圭ちゃんひどいよ、私これでも結構ショックだったんだからね!」

保田は「ごめん、ごめん。」と言いながらせんべいを口に運んだ。
そして口をモグモグさせながら話し始めた。

122 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時47分09秒
「あのね紗耶香、紗耶香の話を聞いてたら、それってどう考えても後藤の照れ隠しにしか考えられないんだけどな、私的には。」
「だって後藤、ドキドキしないとか言ってたし・・・」
「しかも一年以上経ってるから、後藤私のことなんか忘れちゃったんじゃないかって・・・」
「あ〜もうじれったいな〜、後藤が忘れるわけないじゃん、ちょっと待ってて。」

そう言うと保田は自分のバックを持ってくるとガサゴソし始めた。


123 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時48分36秒
「あれっ?確か持ってきたと思ったんだけど・・・。」
「圭ちゃん、何探してるの?」
「いや・・後藤が表紙だったテレビジョンをね、あれっ無いな〜。」
「それだったら私持ってるよ、ちょっと待ってて・・・。」

市井は自分の本棚に行くとガサゴソ探し始めた。

(あれって、忙しくて読んでなかったんだよね〜)
124 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時49分09秒
「あっ、あった。」
「これでしょう圭ちゃん。」

表紙の後藤は、さっきまで会っていた後藤とは違い、さわやかな笑顔でレモンを持っている。

「そうこれこれ、これのさ娘の特集の中で『勇気づけられた曲』っていうのを見てみて。」

市井は保田からテレビジョンを受け取ると、ぱらぱらとめくりだした。
125 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時49分51秒
「あっ・・・みんな書いてるんだ〜、後藤は・・・『サンキュ』・・・」
「そうだよ紗耶香、これって紗耶香が『娘。』辞めるときに後藤にあげた、ドリカムの曲でしょ・・・。」
「後藤言ってたよ、これを聞くと落ちつくんだって、市井ちゃんがそばにいてくれてるみたいだって・・・書いてあるでしょ一日中聞いてたって・・・。」
「・・・後藤・・・。」

市井の目から流れる涙は止まらない。
頬を伝う涙は温かく、市井の凍えた心を暖めていった。
これまでの後藤の行動、言動、表情、その全てが市井の脳裏に浮かんできた。
126 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時50分32秒
  * * * * *

(後藤、これもらってほしいんだ・・・。)

市井の脳裏に脱退コンサート後の後藤との会話が鮮明に浮かんできた・・・。
市井と後藤が、まだ教育係と教わる側だった最後の日・・・。
後藤はコンサートの余韻がまだ残っているのか目が涙ぐんでいた。

127 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時51分21秒
「はい、これ。」

市井は一枚のCDを差し出した。
後藤は「ヒック、ヒック」と嗚咽を漏らしながら目をゴシゴシこすると、目を真っ赤にしながら手を差し出した。

「ドリカム・・・?」
「うん、私のお古だけどね。」
「このCDは後藤に持っていてほしいんだ。」

後藤はCDを受け取ると中の歌詞カードを取り出した。
歌詞カードはかなり読み込まれていてボロボロになっていた。

128 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時51分55秒
「・・・『サンキュ』・・・?。」
「市井と後藤はこの歌詞にあるような友達になろうよ。」
「えっ・・・。」

後藤は少し驚きの声を上げると歌詞カードをじっと読み始めた。
しばらくして顔を上げた後藤はまた涙目になっていた。

「何か良くわからないけど、すごく仲がいい友達ってこと・・・?」
「う〜ん、なんか言いづらいけど・・・。」
「こんな感じかな・・・?」

市井は歌詞の最後のあたりを指差した。
129 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時52分25秒
「えーとね・・『いてくれて良かった』・・・。」

市井はちょっと恥ずかしくなって頭をぽりぽり掻きながら小声で読んだ。
後藤は何も言わずにうつむいている。

「まあ、簡単に言うと、いつでもそばにいるから・・・って感じかな?」

市井は出来る限りサラッと流すように言った・・・つもりだったけど体中の血液が顔に集まっていくのが感じられた。
まだ後藤はうつむいている。
130 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時53分07秒
「ごっ後藤・・・?」

市井が後藤の顔を覗き込むと、後藤は目にいっぱいの涙をためていた。
顔を上げた後藤の目から涙が線を引いて流れていく・・・。

「・・・後藤も市井ちゃんのそばにいつもいるからね・・・。」
「市井ちゃん・・・サンキュ。」
「ばーか、後藤発音が悪い、Thank You だろ。」

市井はうつむいている後藤の顔を起こして、指で涙を拭いてやった。
131 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時53分57秒
「さすが市井ちゃん・・・でも友達なの?。」
「今はまだ友達ってことにしとこう。」

後藤は目を真っ赤にしたまま、市井に抱きつき「ぜったい、離さないもんね。」と言ったきり放れない。
市井はこのまま時間が止まれば良いのにと、この時初めて感じた。

(なんかな〜、あの時から私の中で後藤は・・・まあいいか、これからのことを考えよう・・・)

            ** * * *
132 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時57分19秒
「圭ちゃん・・・ありがとう、もう迷わない、中途半端な気持ちじゃ後藤に失礼だもんね。」

市井は、長いトンネルから抜けたような清々しい気分になった。

「私、恐かったんだよね、自分が傷つくのが・・・だからまわりくどい言い方しか出来なかった・・・。」
「そうだよ紗耶香、例えふられるとしても全力でぶつかってみようよ!」
「そうだね、例えふられるとしても・・・ってそれじゃダメじゃん!!!」
「まあまあ、とにかく紗耶香当たって砕けろだ!」

そう言って保田が振り上げた手がバックに当たって中の雑誌が出てきた。

133 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時58分00秒
市井は落ちた雑誌を拾い上げると、保田に渡そうとしたがある見出しで手が止まった。

「何これ圭ちゃん、ブ・ブ・・・カ?って読むの?」
「あ〜これね、いや後藤に見せてやろうかなって・・・」

保田の表情が一瞬引きつった・・・。
市井は保田の表情を不思議に思ったが、とりあえず折り曲げてあるページを開いてみた。
市井はそのページを開けると、目が点になってしまった。

「私とユウキ君が付き合ってる・・・?!」
「・・・圭ちゃん、これ後藤に見せたの!!!!」
「いやっ、まあシャレでね・・・」
「・・・圭ちゃん。」
「マジで、ゴメン。」

保田は両手をつくと土下座のような格好をした。
134 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時58分30秒
「しょうがない、今回にかぎり許してつかわす。」
「はは〜、ありがたき幸せ、このご恩は一生忘れません・・・。」
「フフフ・・・あっはっはっ・・・。」

二人は顔を見合わせると声をあげて笑い出した。

「ははっ、もう圭ちゃん笑わせないでよ〜、お腹痛くなってきた・・」

いつのまにか市井は泣き笑いの顔になっていた。

(圭ちゃんて、たまにこんなことするんだよね〜)
(でもほんとありがと・・・サンキュ圭ちゃん)

135 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時59分17秒
〜乙女の心理学(市井編)〜でした。
なんかテレビジョンを見てたらこの話にあるように『勇気づけられた曲』という欄で
後藤は『サンキュ』を挙げてました。
一応全文を載せておきます。
『サンキュ』・・・「昔、毎日ずぅーと聴いてました。すごく好きだったなー」
この一文でここまで話を広げてしまいました。
歌詞も良かったんで・・・つい書いてしまいました。
うーん、どうも現実と結び付けてしまう・・・

ついでに歌詞も・・・
136 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月08日(水)00時59分48秒
『サンキュ』

何も聞かずに つきあってくれてサンキュ
季節外れの花火 水はったバケツ持って
煙に襲われて走りながら
‘キレイ’涙目で言うから 笑っちゃったじゃない
・・・来てくれて良かった

何も言わずに つきあってくれてサンキュ
煙の匂い残る 公園のブランコで
話のきっかけを探して黙ったら
急に鼻歌 歌うから 笑っちゃったじゃない
・・・いてくれて良かった

    今日 彼に さよならしたんだ
    泣かなかったし 責めなかった

‘えらかったね’って あなたが言ってくれるから
ポロポロ弱い言葉 こぼれてきそうになる
‘好きだったのにな’言っちゃった後 泣けてきた
また涙目のあなたを見て 笑って泣いた

‘ちょっとカッコ悪いけど 髪切るならつきあうよ’なんて
笑っちゃったじゃない

来てくれて良かった

いてくれて良かった

今日はホンと          ・・・サンキュ

137 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月08日(水)03時21分19秒
後藤がドリカムの曲を挙げるなんてこれはもう、現実でもいちごまが成立している証拠でしょう(w
138 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月09日(木)04時32分18秒
どっかで見たけど尊敬するアーティストが「吉田美和」に
なってたらしいっすね。前は安室だったのに。
139 名前:つーじー 投稿日:2001年08月11日(土)20時09分15秒
じつは、いちーさんはやすらさんをきらっているのれすか?やすらさんのそうぞうりょくとかいうのはすごいれすねえ。ののはびっくりしたのれす。
このしょうせつおもしろいのれす。こうしんたのしみにしているのれす。
140 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月17日(金)23時43分24秒
おまけで〜乙女の心理学(保田編)〜です。

(んんっ、今何時・・・?)

保田の横にはさっきまで一緒に飲んでいた市井がすやすやと眠っている。
その市井に保田は抱きつかれる格好で目が覚めた。

(ったく、紗耶香はしょうがないな〜)

保田は目の周りを赤くしている市井の顔をやさしくそっと撫ぜると再び眠りにつこうとした・・・・そのとき!!
141 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月17日(金)23時47分20秒
「・・・圭ちゃん・・から・・・ないで・・」

保田はその声に驚いて市井の顔を覗き込む。
市井の顔からは明らかに苦痛の色が見て取れる。

すると再び・・・

「・・・圭ちゃん・・・でよ・・・から・・・」

保田は驚きのあまり声が出なかった。
142 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月17日(金)23時50分52秒
(紗耶香、後藤後藤って言ってたのに・・・)
(本命は私だったのね・・・)
(圭ちゃん『寂しい』から『離さ』ないでなんて・・・後藤に悪いよ・・・)
(しかも・・・圭ちゃん『行かない』でよ『何でもする』から・・・なんて)

保田の妄想は膨らみつづける・・・。

(解かった・・紗耶香、私大切にするから・・・)

保田はそっと市井の唇にキスをしようとした・・・そのとき!!!
寝相の悪い市井のパンチが、保田の顔面にヒット、壁まで飛ばされてしまった。
市井は何も知らずに眠りつづける・・・。
143 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月17日(金)23時51分40秒
「・・・圭ちゃん『顔、恐い』から『近づけ』ないで・・・。」

さらに市井の寝言は続く・・・

「・・・圭ちゃん『見つめない』でよ『後藤が恐がる』から・・・。」

保田は薄れていく意識の中で、妄想をさらに膨らませていった。

(結構キツイな紗耶香の愛は・・・Sなのかな?)

そして意識が途絶えた・・・・(妄想終了)
144 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月17日(金)23時52分20秒
朝・・・
「おはよう、圭ちゃん。」
「おはよう紗耶香。」
「昨日何か恐い夢見たんだよね、誰かが追っかけてきて必死で逃げてたの・・。」
「私はいい夢見てたんだけど急に終わったんだよね・・・何か顔痛いし。」

「後藤と一緒にいる夢だったんだけど・・・・。」

市井はぼやく・・・・

「何で顔が痛いんだろう・・・・?」

保田は考え込む・・・


・・・ちなみに二人とも夜の記憶は無かった。

145 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月17日(金)23時59分12秒
すいません修正したのですがageてしまいました。
>>139
レスありがとうございます。
自分で読んでみて文章が抜けているのに気づきませんでした。
気をつけます。
146 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月19日(日)05時44分22秒
〜乙女の心理学(後藤編)〜

「だってドキドキしないもん・・・。」
「・・・病室帰るね・・・。」

後藤は階段を駆け下り病室に飛び込むと、保田ママの話し掛けるのを無視してベットにもぐりこみ仕切りのカーテンを閉めた。

「真希ちゃーん、御飯食べないの?」
「・・・いらない。」

後藤は、自分でもこんなか細い声が出るのかと、感心するくらいの小さな声で答えた。

「そう・・・」

それっきり保田ママは、しばらく話し掛けてこなかった。
147 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月19日(日)05時45分13秒
後藤はCDプレーヤーを取り出すと、ヘッドホンをしてCDを聞きだした。
しばらく音楽に聞き入っていると、カーテンの隙間から保田ママが覗き込んでいた。

「・・・ちゃん・・・院するから。」

話し掛けてくる保田ママは泣きそうなうれしそうな顔をしている。
後藤はヘッドホンをはずすと、泣き顔を見られないようにうつむきがちに保田ママの顔を見た。

「どうしたの?おばちゃん。」
「えとね・・おばちゃん明日退院するの。」
「ええっ!!!」

後藤が驚きのあまり飛び起きるとCDプレーヤーからヘッドホンの線が抜けて音楽が病室中に響いた。
148 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月19日(日)05時46分00秒
『・・付き合ってくれてサンキュ・・・』

後藤は慌ててCDの電源を切った。

「なんでおばちゃん言ってくれ・・・」
「その曲、『サンキュ』って言うんでしょ。」

後藤の質問を遮るようにして保田ママは話し掛けてきた。
保田ママの勢いに押された後藤は「うん。」としか言うことができなかった。

「そう・・・」

保田ママはそれだけ言うと後藤のベットに腰をかけた。

149 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月19日(日)05時46分40秒
「真希ちゃん・・何かあったの?おばちゃん聞いてあげるよ?」

後藤は見透かしたような保田ママの表情におされて、ポツポツと話し出した。
アイスを食べたこと、屋上での市井との会話・・それらを思いつくまま話した。
後藤は保田ママに話していると少しずつ心が軽くなっていくのを感じていた。
それと反比例するように頬を涙が濡らしていった。
一通り話し終えた後藤は「ありがと、すっきりした。」と言って再び布団にもぐりこもうとした。

「それで・・『サンキュ』を聞いてたのね・・・。」

保田ママのその一言で後藤は布団から飛び起きた。
保田ママが何を言いたいのか解からなかったが、何故か後藤の心を揺さぶった。

150 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月19日(日)05時47分10秒
「何、おばちゃんどういう意味?」
「えっ・・・いやおばちゃんこれ読んだからね・・・」

保田ママは手に持っていたテレビジョンを取り出した。

「今日のことは、そんなに勇気の要ることだったの?」

後藤は思わず絶句してしまった。
後藤は無意識にこのCDを聞いていた。
この曲を聴くことによって乱れた心を整えていた。
その行為が、市井を忘れることが出来ない自分を、他人に気づかれることになるとは・・・。

151 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月19日(日)05時47分57秒
「そっそんなことないよ。」

それだけ言うのが精一杯だった。
あとは勝手に流れてくる涙で声にならなかったのだ。

「だって後藤が市井ちゃんのそばにいたらダメだし・・・」
「市井ちゃんの未来に後藤はいないわけだし。」
「それぞれ違う夢を追っかけてるし・・・うえーん、ヒックヒック。」

152 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月19日(日)05時49分17秒
しばらく黙って聞いていた保田ママは深いため息をつくと

「それで真希ちゃんは納得してるの?」

それだけ言うと後藤の答えを聞かずに抱きしめた。
保田ママのぬくもりを感じながら、後藤は長い緊張から解かれていくのを感じていた。

「後藤は後藤は・・・ヒック、ヒック・・・。」

後藤の返事は自分の泣き声によってかき消されていく。

保田ママの病院最後の夜は、このまま後藤のベットで過ごすことになった。
153 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月19日(日)05時59分29秒
〜乙女の心理学(後藤編)〜でした。

何か保田ママにすごい愛着が湧いてきました。

( `.∀´)y-~~ <まったく近頃の若い子は、はっきりしないわね!

保田ママでした。 すいません・・・      
154 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月19日(日)14時11分47秒
保田ママもヤッスーと同じ顔なんですかねえ〜(ワラ
155 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月20日(月)03時19分24秒
保田ママ、後藤を素直にしてあげてください(w
156 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年08月26日(日)01時48分56秒
>>154-155
レスありがとうございます。
ちなみに保田ママは顔が同じですがこんな感じだと勝手に考えました。

( `●∀´)<ある部分が圭とは一味違うのよ!!

あと勝手ではありますが試験が近づいてきたのでしばらく更新出来ません。
結末はもう考えてあるので決して放置はしません。
最後まで必ず書きます。
誰も読んで無くても・・・
では、しばしさよならです。

157 名前:mo-na 投稿日:2001年08月27日(月)06時02分43秒
読者いますよ!(笑)
気長に待ってますね〜
158 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月30日(日)05時58分15秒
試験で忙しいのでしょうし、更新をとは言いません。
今後の予定や近況でもいいですからレスしてもらいたいです。
あまり長い間ほっておくと放棄と見なされますから・・・
159 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月01日(月)00時17分36秒
>>158
長い間更新できなくてすいません。
来週末から更新できると思います。
一気に最後まで行きたいのですいませんがもうしばらく待ってください。
160 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月08日(月)03時09分51秒

〜祭りのあと(前編)〜

カーテンの隙間から明るい日差しが入ってくる。
後藤はその光に昨日とは違う明るさを感じた。
カーテンを開けると、これまで何度も見ていた市井の通う看護学校が見える。
今日見る看護学校は、これまでとは違い自分との距離がグッと縮まった気がする。

「たっく、二人とも仲良くしなさいよ・・・」

保田ママは夢の中でも後藤に説教しているらしい。


161 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月08日(月)03時11分44秒
(狭いベットに二人で寝たから今日の私は早起きなのか。)
後藤は妙なことに納得しながら目覚し時計を手にした。

「六時か・・・。」

病院での六時といえば朝の点呼だ。

「おはようございま〜す。」
「あれっ、真希ちゃん早いわね。」

たわいのない会話を交わしながらも、昨日とはまったく違う自分に後藤は驚いていた。
何と言うか一言で言うと心が軽い、決心を通り越して心の奥から沸いてくるやさしい気持ちに後藤は軽い感動を覚えた。


162 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月08日(月)03時12分31秒
「おそいわね〜、圭。」
「おそいね、圭ちゃん。」

さっきからこの会話を繰り返している。
外の日差しは眩しいを通り越して痛いほどに感じられる。
時計に目をやると、すでに十二時を指ししていた。

「もう、十二時だよ〜。」
「そうよねえ、早く退院しないとベットとか片付ける人が五時までに帰れないじゃない。」

こんな時でも、他の人のことを心配できる保田ママを後藤は尊敬の眼差しで見つめた。

「んんっ、真希ちゃんどうしたの?」
「えっ、いや、さすが圭ちゃんのママだな〜と思ってね。」

163 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月08日(月)03時13分13秒
「で・・帰りにお祭りに行って・・・。」
「いいな〜、私も行きたい。」

そのとき、聞き覚えがある声が廊下から聞こえてきた。
(市井ちゃんも来てるんだ。)
予想していなかったが、今の後藤には素直にうれしいと思えた。

「おっす、ママ。」
「おっすじゃないよ、圭遅いよ。」
「ゴメンゴメン、紗耶香にお祭りの場所教えてもらってたから遅くなっちゃって。」

164 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月08日(月)03時13分47秒
保田と保田ママの会話を聞きながら、後藤は静かな目で市井を見つめていた。
市井は少し照れたような顔をしながら

「おはよう・・後藤。」
「おはよっ、市井ちゃん。」

市井は少しビックリしたような顔をした。
それもしょうがないかと後藤は考えた。
昨日の今日だもんな・・・。

165 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月08日(月)03時14分20秒
「市井ちゃんもお祭り行くの?」
「いや、私は遅出だから。」
「遅出?って何?」
「ああ、遅出は昼の十二時から夜の八時までの仕事のこと。」
「へ〜、市井ちゃん夜まで働くんだ。」
「うん、今日が三回目なんだけどね。」

お互い何か昨日までとは違う空気をまとっている事に、二人は気づいていなかった。
保田ママと保田は小声で昨日の夜のことをそれぞれ確認していた。
166 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月08日(月)03時15分03秒
「そう、上手くいったの。」
「ママもさすがだね。」
「後は若い二人にまかせて。」
「ママ私もまだ若いんだけど・・・。」

「さてと・・・」保田ママは保田を促すように腰を上げると市井たちに

「じゃあ、紗耶香ちゃん、真希ちゃんもう行くね。」

そう言うと保田ママは大きなバックを一つ持つと病室を出て行った。
167 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月08日(月)03時15分45秒
そのあまりのあっけなさに、後藤はあっけに取られながら市井と顔を見合わせてしまった。

「ちょっとおばちゃんまってよ〜、後藤ちゃんとお礼も言ってないのに・・」

後藤は、保田を引き連れてスタスタと歩いていく保田ママの背中に声をかける。
保田ママは背中をむけたまま、手をひらひらさせ廊下の角を曲がっていった。

(おばちゃん、ありがとう・・・)

後藤は心の中で静かに感謝の言葉を並べた。
168 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月08日(月)03時16分56秒
二人だけの病室・・・何となく重い空気が漂う。

「さてと・・・仕事に行きますか。」

市井は後藤に「じゃあね」と言うとそのまま病室を出て行った。
後藤はその後ろ姿をこれまで以上の眼差しで見つめていた。
なぜか市井の目に涙が浮かんでいるように見えた気がした。
(気のせいかな・・・)
169 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月08日(月)03時18分06秒
「あ〜あ、みんないなくなっちゃった。」

一人きりの病室で天井を見つめる。
入院していると、あまりの暇さに天井のシミの数まで数えてしまった。
点滴の後は青たんになっていて、後藤の腕に独特の模様を刻んでいる。
入院で得たものといえばこの腕の青たんだけだ・・・。

後藤は保田ママがそれまで使っていたベットに座ると、懐かしむように撫でてみた。
シーツは何故かザラザラしている。
後藤が手の平を見てみると、せんべいのかけらが手についていた。
170 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月08日(月)03時35分32秒
「おばちゃんらしいな・・・」

後藤はそのまま保田ママのベットに横になると誰もいない静かな病室に誘われるようにして眠ってしまった。



『ヒュー、ドンドン・・・パァン』

遠くから静かな夜を盛り上げるような花火の音が聞こえてくる。
後藤は静かに目を開けると窓に目を向けた。
しかし音は聞こえるが花火は見えない。
病室の明かりは点いておらず、広い病室はとても不気味に感じた。
171 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月08日(月)03時42分27秒
「あっ、後藤やっと起きたの?」

開けられたドアから廊下の明かりが差し込んできた。
逆光で顔はよく見えないが声で市井であることはわかった。

「後藤が寝てるから、ベット片付けられなかったじゃない。」

市井は病室の明かりをつけると、まぶしそうな顔をしている後藤のベットに近づいてきた。

「ごめん・・・、おばちゃんのベットでいつのまにか寝ちゃった。」

市井はシッシッと後藤をベットから追いやると「しょうがないな」とつぶやきながらシーツをはがし始めた。

172 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月08日(月)03時43分39秒
後藤は市井のシーツを代えているのをボーっと見つめていた。
(そういえば市井ちゃんが仕事してるの初めて見るな〜)
後藤は自分のベットに座りながら、そんなどうでもいいことを考えていた。

「なに後藤、じっと見られてると仕事しにくいじゃない。」

市井は枕を枕カバーに入れながら話し掛けてきた。
「よしっ、完成。」
「どうよ後藤、結構上手いでしょ。」
「うん、しわが全然ついてない。」
「さてと・・・もうそろそろ帰ろうかな?」
173 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月08日(月)03時44分22秒
市井は最終確認するようにしてベットの周りをチェックしている。

「市井ちゃん・・・、この名札は?」

後藤が枕もとにあるネームプレートを指差している。
おばちゃんのネームプレート外すの忘れてた。

「あっ・・・そうだった後藤それ外してくんない。」
「うん。」
174 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月08日(月)03時45分20秒
後藤は取り外した名札をじっと見つめている。

「ねえ、市井ちゃんこれもらっていい?」
「別にいいけど何するのそんなの?」
「いいの、おばちゃんの入院してた思い出にするの。」
「ふ〜ん。」

(後藤結構かわいいとこあるじゃん・・・)
175 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月08日(月)03時46分39秒

『ヒュ〜ウ・・・バァン、バン、バ〜ン・・・』

「花火、見に行こうか・・・。」
「うん・・・。」

市井はいつもより、ちょっと帰る時間が遅くなりそうな気がした。
176 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月08日(月)03時52分37秒
えっとかなりひさしぶりです。
いつのまにか小説投票フォームに登録されていて
しかも投票してくれている人がいる(涙)
これはがんばるしかないでしょう!というわけで
ここからラストに向けてバシバシいきたいと思います。

177 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ
178 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ
179 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月12日(金)03時31分49秒
〜祭りのあと(後編)〜

『ヒュ〜・・・バァン・・バンバァン・・・』

屋上に立った二人は打ち上げられる花火を黙ってじっと見つめていた。
花火が打ち上げられるたびに二人の顔が暗闇に映し出されている。
市井は昨日のことを思い出していた。
(だって・・・ドキドキしないもん・・・か)
ずいぶん前にあったように思えるのは気のせいだろうか・・・。


180 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月12日(金)03時32分59秒
金網にもたれかかっている後藤は口を半開きにしながら花火を見つめている。
市井は後ろからそっと肩に手を回した。
後藤はちょっと驚いたような顔をしたが、すぐに花火の方に顔を戻した。
花火が上がるたびに後藤の顔に赤や黄色の光が射す。
(男だったらたまらないだろうな〜)
市井は自嘲気味に口元をゆがめた。
後藤の体温が手から伝わってくると、市井は緊張がどんどん高まっていくのをを感じていた。

「後藤、私今かなりドキドキしてる。」
「私も・・・。」
「ねえ・・・後藤に私が何で看護婦になりたいか話してないよね。」
「うん・・・。」

市井が話したことは後藤にとって衝撃的なことだった。
181 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月12日(金)03時34分25秒
           
             * * * * * *

市井が娘を辞めて一年ぐらいたった春・・・。

「おかあさ〜ん、御飯・・・。」

玄関を開けて目に飛び込んできたのは母親のうつ伏せに倒れている姿だった。
そこから病院までのことは市井の脳裏にこびりついて今でも離れない。
市井は震える手で受話器を取り救急車を呼んだ。
それから救急車が来るまで市井は母親の傍でただただ母親に呼びかけていた。

「お母さん、ねえお母さん、目を開けてよ・・・ねえお母さん・・・。」
182 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月12日(金)03時35分00秒
救急車の中での救急救命士の会話は、その後の市井の人生を代えるのに十分だった。
今でも、これからもきっと一生忘れない・・・。

「意識レベルは300、脈は取れません!」
「呼吸は?」
「してません。」
「心臓は?」
「心停止から二十分経過してます。」
「心マは?」
「現在続行中ですが・・・多分もう・・・。」

母親の口元に当てられている酸素マスクは曇ることなくシューシュー言っている。
それだけで呼吸をしていないことは解かった。
心臓マッサージを受ける母親の体は、胸を押されるたびに少しだけくの字に曲がった。
183 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月12日(金)03時36分09秒
今の市井にしては恥しいことだが、そのころの市井は人工呼吸も心臓マッサージも知らなかった。
あの時すぐに人工呼吸や心臓マッサージをしていれば・・・。
あの時の私には泣く事しか出来なかった。
でももうそんな思いはしたくない・・・ただ泣いているだけの自分に決別したかった。

次の年の春、市井は看護学校に入学した。

            * * * * * 


184 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月12日(金)03時36分57秒
一気に話した市井が後藤の顔を見ると、後藤の目から涙が流れていた。

「いや、でもねお母さんのことは吹っ切れたし、今は立派な看護婦になってやるっていう思いでいっぱいだし・・・。」

必死に話を変えようとして、市井は自分のうかつさにあきれてしまった。
(何も今言うことはないよな・・・)
後藤は「ひっく、ひっく」と嗚咽が止まる様子はない。
いつのまにか花火は終わっていた。


185 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月12日(金)03時37分28秒
「でもね・・・後藤に久しぶり会ってから本当の意味の看護って何なのか考えるいいきっかけになったんだ・・・。」
「看護婦ってね、患者さんにとってはかなり頼れる存在なんだよね。」
「私は・・・患者さんや後藤にいつも笑っててもらえるような存在になりたいな〜って・・・。」

まくし立てるように市井はしゃべり続けた。
しゃべることで後藤に自分の気持ちを伝えたかった。
いつのまにか後藤の嗚咽は止まっていた。


186 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月12日(金)03時38分32秒

「それでね・・・そんな考えるきっかけをくれた後藤に感謝してるっていうか・・・
なんていうか、こんなこと言うのは看護婦目指すものとしては失格かもしれないけど・・・いつまでも後藤が入院していてくれればいいな〜なんて考えてしまったりして・・・」

うつむきながら話していた市井が顔を上げると、泣いていたはずの後藤がいつもの
にへら〜とした笑顔で市井のことを見つめていた。


187 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月12日(金)03時39分19秒

「それで後藤のことどう思ってるって・・・。」

後藤はずいっと顔を近づけてきた。

「市井ちゃん、知ってると思うけど私もあと一週間ぐらいで退院なんだよね〜。」

後藤はさっきよりもニヤニヤしている。
(このやろ〜)
市井は覚悟を決めたようにして話し始めた。


「いままで色んな患者が退院していったけど・・・いままでで一番退院して欲しくないな・・・。」


188 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月12日(金)03時40分24秒

沈黙が辺りを包む・・・遠くでは祭りの終わりを告げる花火が夜空に白い煙を残していた。

「今の市井にはこれが精一杯っす。」
「・・・・。」
「だめ・・かな?」

そう言うと市井は花火の煙が消えた夜空に目を向けた。

「市井ちゃん、だ〜い好き〜。」

後藤は照れて向こうを向いている市井の背中に抱きついた。
189 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月12日(金)03時41分02秒

「なんだよ〜、びっくりするだろ。」

市井は後藤に背を向けながらにやけた顔を必死で元に戻そうとした。

「今回はこれで許してあげるけど、今度はちゃんと言ってね。」
「努力するっす。」

市井は後藤の体温を背中に感じながら照れたようにうつむいた。

(あ〜、やっと言えた〜)


190 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月12日(金)03時41分50秒

〜告白の後味〜

後藤は市井の横に並んでベンチに座るとぼーと夜景を眺めていた。
まだ胸はドキドキしている。
後藤は市井の告白を聞いて、昔の市井のことを思い出していた。
そして、何かを思い出したかのように市井に話し始めた。
191 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月12日(金)03時43分27秒

「市井ちゃん、市井ちゃんがくれた誕生日プレゼント憶えてる?」
「・・・サボテン?」
「あのね市井ちゃん、サボテンってね水やらなくても結構大丈夫なんだよ。」
「ふ〜ん、そうなんだ。」

興味なさそうに市井は髪をいじっている。

「・・・後藤っていうサボテンはね、『愛情』っていう水がなくても
『好きだ』っていう太陽があればきれいな花を咲かせるんだよ・・・」

(自分でもわけがわからないことを言っている・・・)

192 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月12日(金)03時47分05秒

「へ〜サボテンって花が咲くんだ、トゲがあるだけだと思ってた。」
「市井ちゃんそれって皮肉?でも、あんまり水くれないといくらサボテンでも枯れちゃうよ・・・」

後藤が言い終わらないうちに、市井はやさしくキスをした。驚いた後藤は目を閉じる暇も無かった。後藤がボ〜とした顔で市井の目を見上げると、市井はいたずらっ子のような目をしている。

「いてっ、トゲが刺さった。」
「も〜市井ちゃんやっぱりいじわるだ〜。」
193 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月12日(金)03時48分13秒
後藤が文句を言いながら市井の肩を叩こうとすると、市井の体が急に近づいてきた。
市井は後藤をそっと抱きしめると、これまでの時間を取り戻すかのようにやさしい口調で話し掛けた。

「後藤・・今まで水あげられなくてごめんね、これからはいっぱいあげるからね。」
「・・・うん、いっぱいいっぱいちょうだいね・・・」
「あっ、でもサボテンって水やりすぎたら枯れちゃうんだっけ。」
「・・・いち〜ちゃん。」


(後藤の好きな市井ちゃんは、すっごくやさしくて・・・それでいてちょっぴりいじわるです。)



194 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月12日(金)03時58分47秒
祝!!市井復帰!!
何がうれしいってこんなうれしいことはない。
ラストに向かってがんばるのみっす。

あと今回のサボテンの話、誰も憶えてないと思うのでショートカットを・・・
>>62-64

195 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月14日(日)21時25分34秒
更新待ってました。
頑張って下さい!
196 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月28日(日)21時38分01秒

〜MIDNIGHT HOSPITAL〜


「じゃあ、今日はここまで・・・来週は117ページから・・・。」
「起立・・・礼っ!」

挨拶が終わったのを確認して市井は教室を飛び出した。
屋上の告白からまだ24時間経っていなかったが、市井には何日にも感じられた。

(後藤まだ起きてるかな〜)

淡い期待を持ちながら後藤の病室見上げたが・・・期待むなしく電気は消えている。
腕時計の針はすでに10時半を指していた。

(しょうがないか・・・9時には消灯だもんな・・・)



197 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月28日(日)21時39分36秒


学校の前に止めてあるべスパの前に立っても、あきらめきれずに病室を見上げてしまう。
昼間も後藤に会えるのだが、さすがの市井でも職場でいちゃいちゃするほどの根性はない。
互いに目をあわすのだが、どうしても会話がぎこちない。
そのまま夕方になり、市井は隣の看護学校へ・・・。


198 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月28日(日)21時41分18秒

エンジンを掛けようとしてキーを回そうとした時、病室の窓にかすかに動くものが見えた。
キーを回す手を止めて市井は病室の窓を食い入るように見つめた。
(なんか動いてる?後藤か?)
暗闇に慣れてくるとかすかに人が手を振ってるのが見えた。
確認するまでもない、市井が大きく手を振ると窓に映る影も大きく動く。

(後藤だっ、やっぱり後藤だ!)

影を見ながら市井が病院へ駆け出すと同時に病室の影も見えなくなった。
市井は学校から一番近いガラス張りのドアから中を見ると、エレベーターから後藤が出てくるのが見えた。
ドアのノブを回して開けようとするが鍵が掛かっていて開かない。

199 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月28日(日)21時42分38秒

(しょうがないか・・・)

ドアの向こうではしゃいでいる後藤を残して、市井は職員入口に向かった。
一般の人はあんまり知らないと思うが、病院は警備会社に委託していて何人かの警備員が見回りをしているのだ。
もちろん不審者が入らないように、夜中も開いている職員入口には当然警備員が常駐している。

「おつかれさまで〜す。」
「はい、おつかれさまです。」

しかしそんな警備は「おつかれさま」の一言で通過できる、あっても無くてもいいほどいいかげんなものなのだが・・・・。


200 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月28日(日)21時44分02秒

やはり夜の病院は昼とは一味違う。
なんていっても薄気味の悪さといったら墓場なんか比べ物にならない。
なんせ一日に何人も亡くなる場所なんだから。
薄暗い通路をゆっくり歩いていくと、エレベーターのある踊り場にでた。
そこにはガラス張りのドアに額を押し付けながら、外を必死に覗き込んでいる後藤がいた。

「いち〜ちゃ〜ん、どこいったの〜。」

ガラスドアに向かってため息をつくたびに、後藤の顔の周りが白く曇る。
その曇りはすぐ消えるのだが、またすぐに後藤のため息で白く曇る。


201 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月28日(日)21時44分59秒


「は〜、もう帰っちゃたのかな〜?」

そのとき窓に映る後藤と目が合った。ちょっとおどけて手を振ってみた。
振り向いた後藤の顔は・・・やめとこう表現できないくらいかわいいとしか言いようがない。

「いち〜ちゃん、こんばんは!」
「こんばんは。」

昼間の患者と看護助手とは違う、素の市井と後藤としての挨拶を交わした。
二人は手をつなぐと、ベッド搬送用のエレベーターに乗った。
エレベーターのドアは閉まったが、上に上がる気配は無い。
昼間ならボタンを押さなくても、勝手に上に上がっていくのだが、さすがに夜にエレベーターを使う人はいないらしい。
とりあえずというか自然にキスをした。なんて言うか自然にできた。


202 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月28日(日)21時45分56秒


「どこ行く市井ちゃん?」
「う〜ん、3階には当直のDr.が居るし〜、4階から上は普通の病棟だし〜、そうだ2階は?」
「電気点いてるの?」
「点いてない・・・」
「じゃあ、ブ〜。」
「そしたら・・・。」

(ここしかないよな〜)
エレベーターがゆっくりと上がって行く。
市井の横で後藤は「どこ、どこ、ね〜市井ちゃんどこ。」といいながら私の腕をブンブン振り回している。どうやらしばらく離す気はないらしい。
(市井的には大歓迎なんだけどね。)


203 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月28日(日)21時46分54秒

後藤はしばらく市井の腕で遊んでいたが、急に手を離してエレベーターの奥を眺めて不思議そうな顔をしている。
このエレベーターには入口が前と後ろ二つある。
(市井は理由を知ってるけど、後藤は知らない方がいいと思うんだけど・・・)

「市井ちゃん、このエレベーターなんで入口二つあるの?」

(あちゃ〜やっぱり聞くか)

「後ろのドアは*@○×につながってるんだよ。」
「えっ何て言ったの。」
「だ〜か〜ら〜、れ・い・あ・ん・し・つ。」

丁寧にくぎって言ったんだけど、かえって逆効果だったらしい。
エレベーターから降りるまで、市井の腕をつかんだまま離さなかったし・・・。


204 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月28日(日)21時47分49秒


『チ〜ン』
ゆっくりとドアが開くとひんやりとした空気が流れ込んできた。

「気持ちいい〜。」

金網にほっぺたを付けながら後藤は夜の町を眺めている。

「ごめんね後藤、屋上ぐらいしかゆっくりできるところ知らないんだ。」
「いいよ〜、私ここ大好き。」

後藤はしばらく金網と遊んでいたが急に静かになると、思いつめた顔をしてこっちを振り向いた。
急に風が強くなったような気がした。


205 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月28日(日)21時49分02秒

「あのね〜市井ちゃん、今日先生に呼ばれてね診察受けたんだ〜。」
「うん、それで。」

私は嫌な予感がしたが、できるだけ普通に返事をした。

「なんかね、後藤頑丈だから病気の治りが早いんだって。」
「それで・・・。」

ますます嫌な予感がしてきた。

「だから、あさってには退院していいって・・・。」

最後のほうは小声になって聞こえにくかった。

(やっぱり、嫌な予感的中・・・)


206 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月28日(日)21時49分58秒

「あさってか〜、喜んであげないといけないんだけどね。」
「ホントのこと言うとあんまりうれしくないな〜。」

今日の私は自分でもビックリするぐらい素直だ。

「ほんと〜、市井ちゃん。」
「ほんとだよ、市井嘘つかない。」
「なにそれ、なんの真似?」

たわいもない会話はすぐに途絶えて、二人は求め合うようにまたキスをした。
後藤の顔はなんだか“ほわん”としている。


207 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月28日(日)21時52分22秒

「市井ちゃん、今のキスで何回目だか憶えてる?」
「う〜んと3回目かな?」
「せいか〜い、ごほうびで〜す。」

そう言うと後藤の唇が市井の唇に触れた。
なんだかさっきのキスよりちょっとだけ長かったような気がした。

「これで、4回目だね。」

そのとき、後藤の後ろから『ギィ〜』ってドアを開ける重苦しい音が聞こえた。

(やばい!!警備の人だ!!)

すぐさま市井は後藤の腕をひっぱってドアの影に隠れた。
後藤が何か言ったみたいだけど、口も押さえているから『モゴモゴ』としか聞こえない。
懐中電灯の明かりが屋上を一通り照らして、また『ギィ〜』という音を残して警備の人は下へ降りていった。


208 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月28日(日)21時53分29秒

「いひいひゃん・・・くるひい。」
「あっごめん。」

慌てて後藤の口から手を離すと、市井の手形が口元にくっきりと残っている。

「あっははははっ、後藤うけるんだけど。」

笑い転げていると、後藤はへなへなと崩れるように地面に座り込んだ。


209 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月28日(日)21時54分11秒

「もう〜、ホントにビックリしたんだからね。」
「ごめんごめん、もうそろそろ帰ろっか。」
「え〜、もう帰るの?まだ一緒にいたいのに〜。」

座り込んだまま後藤は市井の服の袖を引っ張っている。

「退院したら、家に泊りにくればいいでしょ。」
「え〜、いいの?お泊りお泊り。」
「はいはい、じゃあ帰りましょうね〜。」

市井はおどけている後藤の腕を引っ張って屋上を後にした。


210 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月28日(日)21時55分11秒

1階のについた二人は、周りに誰も居ないのを確認してエレベーターを降りた。
後藤は市井の服の袖をさっきから離さない。
窓に映る後藤は、物をねだっている子供のように見える。

(このまま、一緒にいたいけど・・・)

市井は後ろ髪に引かれる思いを感じながら、重い口を開いた。

「じゃあ後藤、帰るね・・・。」

職員入口に向かおうとしたが、後藤の袖を引く力で前に進めない。

「市井ちゃんの家に行きたい・・・。」

これまで聞いたこともないほど、心細そうな声だった。


211 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月28日(日)21時56分53秒

「退院したら、こんなに隠れて会わなくて済むようになるよ。」
「うん・・・、じゃあお別れのキス・・・。」

なんだか後藤の顔が泣きそうになっているように見えた。
しかし、市井は後藤の両肩に手を置くと、まるで子供をあやすようにやさしい声で語りかけた。


212 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月28日(日)21時57分46秒

「5回目のキスは、今度外で会うまで取っておこうよ。」
「え〜なんで〜。」
「だって、引っぱったほうが気持ちが盛り上がるでしょ。」
「う〜、解かった・・・。」

なごりおしそうな後藤を残して市井は病院を後にした。

(かっこつけすぎたかな?)

後藤は市井が見えなくなるまで手を振っていた。


213 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年10月28日(日)22時01分13秒

その二日後、後藤は退院した。
退院するときも、後藤はなにか言いたそうな顔をしていたが市井は笑顔で手を振って別れた。

(後藤〜、家でまってるよ)

市井の心はすでに一週間後、後藤が家に来ることでいっぱいだった。




一週間後・・・5回目のキスは思いがけない形ですることになった。




214 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月29日(月)18時17分21秒
キスキスキス… 良いいちごまだ(w
甘える後藤もあやす市井もかわいいです。
215 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月30日(火)00時21分55秒
ああ、いい所で終わってる…。
続き楽しみです。
216 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月04日(日)16時40分09秒


   〜5回目のキス〜


よく晴れた日曜日、気持ちのいい朝、何も問題ない。
何気に布団を干してみたりする。
いつもと違うのは、今日は後藤が来るということ。
何気ない朝、何でこんなに気持ちが高ぶるのだろう。
いつもより丁寧に掃除してみたりする。
今日見るためのビデオも借りてきた。
もちろん一日中後藤と一緒にいるためだ。

(9時か〜、後藤が来るまで後1時間・・・)




217 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月04日(日)16時41分31秒

9時50分・・・もう限界だ、迎えに行こう。
さっき後藤から電話があって、45分にはバスが着くって言ってた。
家の場所を電話口で教えたけど、待ちきれない。
私は家を飛び出した。
家の前の道路から病院が見える。
もうあそこで後藤に会うことが無いかと思うとちょっと寂しい。
一週間はかなり長く感じた。

(ちょっと、家から近すぎるよな)

そんなことを考えながら、べスパにまたがった。

(後藤、待ってろ〜今行くからな)



218 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月04日(日)16時42分07秒

病院から歩いて10分の所にバス停がある。
いつもは、おばあちゃんやおばさんの病院の行き来にしか使われない。
でも今日は違った、そのバス停に後藤が立っている。
バス停の前でキョロキョロしている。

(なんか迷子みたいでかわいいな)

向かいの道路にべスパを止めて、市井はちょっと『後藤とバス停』という組み合わせを眺めていた。


219 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月04日(日)16時42分57秒

(もうそろそろいいかな?)

「後藤〜。」

市井は隠れていた電柱から顔を出さずに呼んでみた。
後藤はちょっとビックリした顔をしたが、すぐに市井を見つけたらしく、すぐに大きな声が返ってきた。

「市井ちゃ〜ん。」

電柱から顔を出すと、道路の向かい側から後藤が手を振っているのが見える。
後藤は地面に置いていた大きな買い物袋を持ち上げると、がに股でこっち側に渡りだした。

「後藤〜、がに股はかっこ悪いだろ・・・。」

220 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月04日(日)16時43分51秒

(しょうがない手伝ってやるか)

そう思った瞬間、市井の視界から後藤が消えた。
その代わりに市井の目の前を黒い車が走り去っていく。
車が走り去った後には、倒れている後藤。
その周りには、何を作るつもりだったんだろ?
玉ねぎ、にんじん、じゃがいもが転がっている。
倒れている後藤、倒れている後藤、倒れている後藤、倒れている後藤、
タオレテイルゴトウ?


「後藤〜!!!」


221 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月04日(日)16時44分32秒

駆け寄った市井に後藤は一瞬だけ笑顔を見せた。

「いち〜ちゃん・・・。」

そうつぶやくと後藤は目を閉じてしまった。
アレ?なんで目をつぶるの?
一瞬ボ〜っとしてしまった。
気が遠くなるような気がする。
どこかで見たことがある風景・・・・。


222 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月04日(日)16時45分28秒
      
       * * * * *

「おかあさ〜ん、御飯・・・。」

「お母さん、ねえお母さん、目を開けてよ・・・ねえお母さん・・・。」

「意識レベルは300、脈は取れません!」
「呼吸は?」
「してません。」
「心臓は?」
「心停止から二十分経過してます。」
「心マは?」
「現在続行中ですが・・・多分もう・・・。」


* * * * *


223 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月04日(日)16時46分08秒

「ねえ、後藤・・・目を開けてよ後藤!!」

気が付くと私は後藤の体をゆすりながら叫んでいた。
今日のために着てきたのだろう、初めて見る服を着ている。
しかし、その服は後藤の血で赤く染まっていく。
また同じことを繰り返すの?
また市井の目の前で死んでしまうの?
・・・・。
後藤が死ぬ????。
違う!!!もうあのころの市井じゃない!

後藤の体を抱えると道路脇へと引っ張る。
引きずった後は、赤いペンキをこぼしたみたいに血だまりになっている。
携帯で救急車を呼んだ。


224 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月04日(日)16時46分51秒

「はい、・・・そうです病院の近くのバス停です・・・。」

どうしてだろ何か他人の声のように聞こえる。
頬を叩いて意識を確認する。

「意識レベル300、昏睡状態。」

鼻の前に顔を寄せて呼吸を確認する。

「呼吸は・・・なし。」

だんだん声が震えてきた。


225 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月04日(日)16時47分24秒

首の頚動脈を触って脈拍を確認する。

「脈拍・・・微弱・・・。」
「出血は・・・頭部から大量に出血・・・。」

確認しながら市井の頬を熱いものが流れていく。
それは目を閉じた後藤の頬にポタポタと落ちていった。
冷静に、冷静に・・・。

市井の頭の中に母親の顔が浮かんでは消えていく。
今はそんなことはどうでもいい。
ただひたすら、これまで習ってきた看護技術を思い出すことで頭をいっぱいにしたかった。


226 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月04日(日)16時47分57秒

(意識がない場合には、まず気道を確保します。)

授業中の先生の声が頭の中で鳴り響く。

(人工呼吸は5秒に1回、1〜2秒吹き込みます。)

紫がかった後藤の唇に唇を重ねる。
後藤の唇は冷たくてひんやりしている。

(1・・・2・・・)

心臓の音を聞く、微弱だが聞こえる。
再び唇を重ね、息を吹き込む。
市井の脳裏に病院での後藤の会話が浮かんでくる。


227 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月04日(日)16時49分24秒

      * * * * *


「うん・・・、じゃあお別れのキス・・・。」
「5回目のキスは、今度外で会うまで取っておこうよ。」
「え〜なんで〜。」
「だって、引っぱったほうが気持ちが盛り上がるでしょ。」
「う〜、解かった・・・。」


      * * * * *


228 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月04日(日)16時49分56秒

(後藤・・・ごめんね・・・)

息を吹き込むたびに、後藤の胸が上がる。
眠っているような表情、顔色は透き通るように白い。
顔色と反比例するように地面に血が広がっていく。

遠くから救急車の音が聞こえてきた。



229 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月04日(日)16時50分37秒

「担荷に移します、1,2,3ハイ!」

救急隊員の質問が次々と続く。
市井はもうろうとする意識の中で質問に答えていく。
病院の救急処置室に後藤が運ばれていった。

「すぐ輸血の用意して!!!」

看護婦の叫ぶ声が奥から聞こえてくる。

(本当に手術中って赤いランプなんだ・・・)

そんなことを考えながら自分の手を見ると
後藤の血で真っ赤に染まっていた。

230 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月04日(日)16時51分28秒

しばらく処置室の前にいたが、看護婦さんに促されてトイレに手を洗いに行く。
トイレの鏡に映る市井の顔は、涙と後藤の血でぐしゃぐしゃだった。
唇を触る・・・自然にまた涙が出てきた。

(後藤・・・ごめんね。)



五回目以降のキスは憶えていない・・・・。




231 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月04日(日)17時16分49秒


    つづく

232 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月04日(日)19時27分24秒
後藤、頑張ってくれ〜。
233 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)00時26分17秒

〜希望と言う名の媚薬〜


どれぐらい経ったのだろう、トイレから出ると懐かしい顔がたくさん来ていた。
一様に暗い顔をしている。

「みんな・・・ひさしぶり。」

いっせいに私に視線が集中した。

「紗耶香〜!!!」

泣きながら矢口が抱きついてきた。



234 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)00時27分43秒

矢口は相変わらず小さくて涙で化粧もすっかり落ちている。

「紗耶香〜ごっちんどうなるの、ねえ助かるんでしょう。」

私にしがみついたまま、なかなか離れない。
矢口の肩越しにしばらくみんなの顔を眺めていたが、圭ちゃんと顔が会うと止まっていた涙がまた流れてきた。

「圭ちゃんごめんね、私後藤のこと守れなかった。」
「ば〜か、そんなこと言ったら後藤が死んじゃうみたいじゃない。」

涙声になりながら近づいてきて、私の頭をゆっくりとなでてくれた。

235 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)00時28分27秒

「あっ、終わったみたい・・・。」

誰かが小声でつぶやいた。
ゆっくりと手術室の扉が開いた。
出てきた後藤の周りにみんなが群がる。

「後藤。」「ごっちん・・・。」「後藤さ〜ん・・・。」

口々に後藤の名前を呼んでいる。
私は少し離れたところでその様子を見ていた。
一瞬だけ後藤の顔が見えた。
頭一面に包帯を巻いていて、酸素マスクをつけている。


236 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)00時29分08秒

たぶん、ICU(集中治療室)に運ばれるのだろう、みんな後藤についていく。
私もついて行こうとしたのだが、後藤のお母さんの一言でついていけなくなってしまった。

「紗耶香ちゃん・・・一緒に先生の話聞いてくれないかな。」

(みんな、後藤のことよろしくね。)

手術室の前には、先生の話を聞くために後藤のお母さんと市井だけが残っていた。


237 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)00時29分55秒

私はムンテラ(病状の説明)が結構好きだ。
カルテ整理をしながら、ムンテラに聞き耳を立てるのが楽しみでもある。
でも今日のムンテラはっきり言って聞きたくない。
先生がCTとMRIを取り出して説明を始めた。

「えっと、ここの所に出血があってですね・・・。」

はじめて後悔した・・・勉強してて。

「それで、脳圧が高まってですね・・・。」

後藤のお母さんはわかったような、解からないような顔をしている。

「とりあえず、一命は取り留めました。」

この一言で後藤のお母さんは笑顔になった。
私はその後の一言が気になった。

「記憶障害が残るかもしれませんが・・・。」


238 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)00時30分42秒

しばらくして、みんな笑顔で帰っていった。

「よかったね〜、早く良くなるといいね。」

病室には、私と圭ちゃんが残った。
みんないそがしいらしい。
後藤のお母さんは着替えをとりに家に帰った。

「よかったね、後藤が助かって・・・。」

圭ちゃんがポツリとつぶやいた。
その一言で私の気持ちがあふれ出た。

239 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)00時31分36秒

「助かった!?、これで助かったって言うの?」
「みんな助かった、良かったって言うけど、どこがいいの?」
「はっきり言って植物状態なんだよ。」
「記憶障害も残るって言われちゃったんだよ。」
「みんなテレビの見すぎだよ、植物状態がどんなことだかわかってないんだ。」
「筋肉が衰えてきて、床ずれもできるかもしれない。」
「関節も硬くなってどんどんやせていくんだよ・・・。」
「何時目が覚めるかも解からない・・・。」
「後藤のそんな姿見たくないよ・・・。」

最後の方は声にならなかった。
圭ちゃんは何も言わずに抱きしめてくれた。

「紗耶香大丈夫だよ、希望を持とうよ。」

『希望』、今日ほど空しく聞こえたことは無かった。


240 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)00時36分59秒

〜dischargeいままでで一番・・・〜


「おはよ〜後藤。」

いつもどうりの朝、私はいつもどうりに出勤している。
早速窓を開ける。
今日もいい天気だ。
後藤が眠り始めて三ヶ月がたった。
私は後藤が何時目を覚ましてもいいように、毎日体を拭いている。
そして昨日あった出来事を話すんだ。


241 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)00時37分44秒

「昨日ね、ガンの患者さんが亡くなったんだ。」
「私ねガンの患者さんって幸せだと思うの。」
「だって死ぬまでの時間が解かってて、家族も心の準備ができるんだもん。」
「本人も家族もやりたいことは全部やろうって思えるでしょ。」
「それで死ぬまでの残り時間を精一杯生きるの・・・。」
「思い残すことが無いようにお互いに気持ちを伝えるんだ・・・。」
「思い残すことが無いように・・・。」

後藤の髪の毛をそっと撫ぜた。
坊主だった状態からもう少しでショートカットになろうとしていた。


(私も気持ちを伝え合いたいよ。)


242 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)00時38分40秒

「さ〜て今日も頑張ってくるかな。」

いつものように後藤に『行ってきます』のキスをした。

「・・・回目だね。」

病室を出て行こうとした市井の耳に何か聞こえた。

「後藤!!」

振り向いた市井の目に、うっすらと目を開けた後藤の笑顔が飛び込んできた。
私は何も言わずに飛びついた。

「痛い、痛いよ市井ちゃん。」
「後藤〜、後藤〜、うわ〜ん。」

希望がかなった?奇跡?そんなこともうどうでもよかった。
ここで後藤が笑ってくれるそれだけで十分。
涙が止まらなかった。


243 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)00時39分26秒

「市井ちゃんどうしたの?何で泣いてるの?」

後藤の記憶障害は確かに残った。
退院前日から今までの記憶がなくなっていた。

「後藤、ホントに覚えてないの?」

市井は説明しようと思ったが今日は辞めておこうと思った。

「ねえ後藤、今日ねずっと一緒にいてあげる。」
「なんで?いいの?」
「いいのいいの、今日は特別。」

市井は後藤の体を引き寄せると、今までで一番やさしいキスをした。


244 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)00時40分03秒

「6回目だね市井ちゃん。」
「へっ?!」
「だってさっき五回目のキスしてくれたでしょ。」
「あ〜あれね、そうだよ王子の目覚めのキスだ。」
「何言ってるの、市井ちゃん。」

今日初めて解かったことがある。
唇を合わせるだけがキスじゃないんだ。
お互いの気持ちがあって初めてキスになるんだ。
気持ちが伝わるっていいな〜。


245 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)00時42分14秒

〜さらに1ヶ月後〜


「後藤何やってるの?」

市井が病室を訪れると後藤がめずらしく本を読んでいる。

「お勉強。」

そういったまま後藤は再び本に目を落とした。
どうやら英語の勉強をしているらしい。
後藤曰く、

「後藤ね大検受けようと思うんだ、市井ちゃん見てたらなんか勉強したくなっちゃった。」
「ふ〜ん、明日は退院だしね。」
「退院は・・・discharge・・・。」
「えっENTって言うじゃないの?」
「え・ん・と?」
「そうENT。」

246 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)00時43分00秒

そんなやりとりが続き、そしてお互い押し黙ってしまった。

「市井ちゃん、寂しいんでしょ。」
「寂しいよ。」
「正直でよろしい。」

次の日、後藤は退院していった。

247 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)01時41分07秒

みんなに見えないところでしっかりお別れをした。
いつもの屋上が今日は曇っている。

「市井ちゃん、チュウして。」
「後藤、帰り気をつけるんだぞ。」
「わかったからチュウして。」

そんなやりとりをしていたが、キスをした時の後藤の目には涙が浮かんでいた。

「じゃあね市井ちゃん・・・。」
「おう、もう入院してくるんじゃないぞ。」

振りかえった後藤は、手を振りながらエレベーターに乗っていった。


248 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)01時41分45秒


後藤が退院した。
後藤のカルテに最後の申し送りを書く。
最後の一文、いつもならENTって書くけど、
きょうはdischargeって書いてみた。


249 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)01時42分37秒

家に帰ると明かりが着いていた。

(そっか、今日からだったよね。)

ドアノブをゆっくり開けると後藤が台所に向かっている。
なんかの味見をしているらしい。
青いエプロンがすごく似合っている。

「あっお帰り市井ちゃん。」
「後藤、ただいま。」

250 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)01時44分39秒

市井がドアを勢いよくあけると、カレーのいい匂いがしてきた。

(そっか、あの時後藤はカレー作ろうとしてたのか?)

ドアを開けたまま動かない市井に、後藤は不思議そうな顔をしている。

「市井ちゃん、どうしたの?」
「ううん、なんでもない、カレーだったのかって思ってね。」
「なにそれ、後藤がカレー作るって知ってたの?」
「まあね。」

何でだか解からないけど頬を涙が伝っていった。


251 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)01時45分34秒

「市井ちゃん、なんで泣いてるの?」
「後藤のカレーがずっと食べたかったな〜って思ってね。」
「変な市井ちゃん。」

そう言って後藤は再び台所に向かった。

今日からしばらく、後藤は市井の家から病院に通院することになっている。
だからしばらくは一緒に生活することになる。
私が部屋でくつろいでいると、台所から後藤が何か言っている。

「ごめん、市井ちゃんカレー作りすぎちゃった。」
「いいよ、2日連続ぐらい。」

そう言って市井が台所に顔を向けると、
後藤はパスタをゆでるための鍋を持って立っている。

252 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)01時47分11秒

「後藤〜、その鍋で作ったの?」
「ごめん・・・。」

しょうがないか、後藤前からカレー作りたかったんだもんね。
後藤はすまなそうに馬鹿でかい鍋を持っている。

「よしっ後藤、私もいっぱい食べるから。」
「ホント〜だから市井ちゃん大好き。」




(あ〜あ、私が後藤から退院できるのはいつだろ?)
(まっいいか、ず〜っと入院していたいもんね。) 




253 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)01時49分04秒


      『おわり』





254 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月11日(日)02時12分36秒

〜あとがきらしきもの〜

まず更新が遅くてすいませんでした。
なんどやめようかと思いましたが、自分が読んでいて
途中で更新が止まっているのが一番嫌だったので、
それが避けることができてホッとしてます。
あと解かりにくい病院ネタですいませんでした。
できるだけリアルにしたかったのですが・・・。

それと最後の話がわかんない方はすんません、
後藤が病院に運ばれる所をもう一読してください。
>>219-220

最後にこんなベタな話を読んでくださってありがとうございました。

>195
待っててくださってありがとうございました。
このレスでやる気がわきました。
>214>215
この小説で唯一の甘い話でした。
やっぱ甘い方がいいのかな?
>232
レス催促してすいませんでした。
でもやっぱりレスはうれしかったです。
255 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月11日(日)02時51分58秒
泣いちまったよ。良かった〜
256 名前:たべた〜〜い 投稿日:2001年11月11日(日)06時39分45秒
うん良かった!!(。>_<。) えーん
お疲れさまでした。<作者さま
「いちごま」いいですね。ずーっと永久にカレー食べてて欲しいっす。
257 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月12日(月)19時13分05秒
やっぱりこういう設定はいちごまが1番くるなあ〜!!と再確認。
ハッピーエンドで良かった〜〜!!作者さん最高!
258 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月13日(火)20時29分18秒
よかった、幸せに終わって。
作者さん、お疲れさまでした。
259 名前:ボーズゥ 投稿日:2001年11月16日(金)03時55分22秒
>255
ありがとうございます。
自分ではラストを急ぎすぎたと後悔していたので、
よかったと言ってもらえてうれしいです。

>256
最後のカレーは解かってくれる人がいるのか正直不安でした。
後藤も二度入院するし、初めに考えたラストはもっと痛い設定だったのですが、
自分がもやもやするでハッピーエンドにしました。

>257
そうですね、こういう設定じゃないとこの二人は盛り上がらないかも
とか思ってしまいます。そうですよねハッピーエンドが一番!

>258
正直終わってホッとしています。
お疲れ様でしたの一言が大変ありがたいです。

今回初小説だったので、文章も更新もメチャクチャになってしまいました。
話も途中から痛い路線に走り出すし・・・。
それでも最後に良かったと言ってもらえてうれしいです。
また短編でも書いたらこのスレをageます。
そのときは読んでやってください。
では、最後に影の主役に一言締めていただきます・・・。


( `.∀´)<私のママの病気は何だったのよ!

 ありがとうございました。

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