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グラフィティー

1 名前:LVR 投稿日:2001年05月15日(火)01時34分14秒
短編を書いていきたいと思っています。
学園ものとか、パラレルが増えるかも。
2 名前:LVR 投稿日:2001年05月15日(火)01時35分25秒
いつもと変わらない月曜日。
今までと変わらずに流れて、過ぎてゆく日常。
たぶん、私はそれを望んでいたんだ
3 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月15日(火)01時36分47秒
「ごっち〜ん、何その眼鏡」
仲のいい友達の一人が、ニヤニヤ笑いながら私に近づいてくる。
他の友達も、笑いをこらえているようだ。
「別に、黒板がよく見えないからかっただけだけど?」
彼女が何を言いたいのか気づかない振りをして、答える。もちろん、彼女はその答えに満足するわけもない。
「そうじゃなくて〜、何でそんなにフレーム厚いの?」
確かに、フレームが一センチ近くある私の眼鏡は、ちょっとおかしいかもしれない。
もちろん、そんなことはわかって買ったんだけど。
4 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月15日(火)01時38分16秒
そんなこんな考えてる間に、人が続々と私の元へ集まってきた。
「何それ〜」
「あはは、ごっちんらし〜。お笑いの人みたい」
そして、一言二言、声をかけてゆく。
「え〜、ごっちん的には優等生を意識したんだけどな」
そう言うと、またみんなから笑いが起きた。ごっちんには無理、などという失礼な声も聞こえくる。
5 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月15日(火)01時40分19秒
「だいたいさ、ごっちんが優等生だったら、梨華ちゃんは天才じゃない。ね、梨華ちゃん」
「そ…そんなことないよ」 
突然話を振られた少女は、おどおどした調子で答える。
そんな感じの子だから、きっと私とは合わないだろう。
でも、そんな梨華ちゃんにちょっと憧れていたりもする。
女の子らしいその仕草。守ってあげたくなるような健気さ。声優のような甘くて高い声。
どれもこれも、私には持ち合わせていないものばかりだ。
6 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月15日(火)22時57分33秒
短編集みたいになるの?
各話に関連性はあるのかな?
期待していますので頑張ってください。
7 名前:LVR 投稿日:2001年05月16日(水)05時16分51秒
>>6 さん
初レスありがとうございます。
このスレが初めてなので、慣れるまで短編でやっていこうと思ってます。
関連性は……あったりするかも(笑
8 名前:LVR 投稿日:2001年05月16日(水)05時18分27秒
「でもさ、いいよね梨華ちゃんは。眼鏡がそんなに似合って」
私は梨華ちゃんのそばに歩み寄り、そんなことを言う。
「そんな……」
梨華ちゃんは照れたようにうつむくと、頬を両手で抑えた。
「梨華ちゃんかわい〜」
ますます赤くなる。
そうやって私がからかっていると、みんなもそれに乗ってきた。
次第に話題は私からずれて、梨華ちゃんのことになってゆく。
そう、これでいい。
みんなの意識が私から離れたのを確認すると、私は教室から抜け出した。
9 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月16日(水)05時20分04秒
「ふう……」
屋上についた私は、ひとつ大きなため息をついた。
無理して笑ったあと特有の怠惰感が、柵に寄りかかっている私を襲う。
「ごっちん、何かあったの?」
不意に声をかけられ、私は慌てて聞こえてきた方向を振り返る。
10 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月16日(水)05時23分12秒
「……よっすぃー」
そこに立っていたのは、私の親友、吉澤ひとみだった。
もしかして、私がため息をついていたのを見ていたのだろうか。よっすぃーは、神妙な顔をして口を開いた。
「ここ、立ち入り禁止だよ」
その言葉が、あまりに今の雰囲気にそぐわなくて、思わず吹き出す。
「何それ。そんなこと言いにわざわざ来たの?」
「いや、何言ってんだ私。そうじゃなくて……」
照れ隠しなのか、よっすぃーはしきりに髪を掻き揚げている。
自分の言いたいことを、なかなか言い出せずにいるよっすぃーもかわいい。
「何かあったんでしょ?」
よっすぃーは気を取り直し真面目な顔になると、もう一度同じ事を聞いた。ただ、今度は断定するように喋ってるけど。
……やっぱりよっすぃーは親友だ。私が隠そうとしたことだって、なんとなく気付いちゃう。
「え〜、なんで?」
私はあくまで知らない振りを押し通す。
「だって、なんか笑い方とかいつもと違った気がするし……」
その後も、なんか…なんか…、と繰り返すよっすぃ〜を見てると、なんか優しい気持ちになった。
きっと私の様子が変なの、感覚で感じ取っちゃったから、言葉で伝えられなくてモドカシイんだよね。私もよっすぃーの気持ち、「なんか」わかるよ。
だから、そんな顔しなくても大丈夫。私はこんなにチャランポランしてるけど、あなたには感謝しています。
11 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月17日(木)00時25分30秒
でも。
「ああ、あれね。なんか、梨華ちゃんばっかり誉められるのが悔しくってさ〜」
私は笑顔で嘘をついた。よっすぃーの顔がわずかに緩んだのに気付く。
「そうなんだ。まあ、事実だしね」
「ちょっと〜!」
その後に二人で笑った。少し涙が出たけど、きっと笑いすぎたせいだろう。
12 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月17日(木)00時26分20秒
「そろそろ次の授業始まっちゃうよ?」
くだらない話をずっとしていたら、いつのまにかそんな時間になっていた。
授業、出たくないなあ。
「……よっすぃー」
「な…なに?」
私は上目遣いでじっとよっすぃーを見つめる。当のよっすぃーは、どこか怯えてるようだ。
「おなか痛いな〜。きっと、人がいっぱいいるところに行ったら、もっとひどくなるんだろうね」
「えっと……。寄る所あるから先に行くね!」
よっすぃーは私の言葉から逃げるように扉へ向かっていく。
だから私は、よっすぃーにちゃんと届くように声を大きくした。
「次の授業の先生に、具合悪そうだったとか言っておいてよ」
その言葉に、よっすぃーの動きがピタリと止まる。
「ごっち〜ん。嘘だってばれたら私まで怒られるんだよ。ってか、もう何回もそうなってるじゃん!」
「えへへ。よろしく〜」
よっすぃーは仕方ないな、という感じで溜息をつくと、屋上から降りていった。
よっすぃーってば、やっぱり優しいな。嫌がってても最後には頼みを聞いてくれるんだもん。
13 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月17日(木)00時28分02秒
もともとが立ち入り禁止区域で、さらに授業中となると、屋上にくる人なんてもういない。
私は安心して使い慣れない眼鏡をはずした。
……もし、私がよっすぃーのことを好きになってたら、こんなに苦しまなくてもよかったのかな。
不意にそんなことを思いつく。と、同時に目元が熱くなってきた。
結局、この日は授業に出ることはできなかった。
14 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月17日(木)01時46分53秒
せつなく甘酸っぱい香りがただよってきて、まさに「青春学園もの」
とても好きなジャンルなので期待しています。
15 名前:LVR 投稿日:2001年05月18日(金)01時09分50秒
>>14 さん
そうですね。
青春ってのを意識してますから、そう言ってもらえると嬉しいです。
あるみかんさんの「3-three-」にも影響されてますし。
できれば今夜中に更新したいと思ってます。
16 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月18日(金)01時54分36秒
「ごめん、後藤。なんか、うまい言葉が見つからないけど……」
申し訳なさそうな、それでいて優しい顔。
そんな顔で言われたら、私は何も言えないよ。
「……気にしないでよ。今までどおり、ね?」

なんか、懐かしい夢を見た。いや、懐かしくなんてないな。まだ、一週間も経ってないんだもんね。
気を取り直して起きようとすると、自分の頬が濡れているのに気付いた。
……最近、涙もろすぎるよ。
私は、もうすぐ起こしにくるお母さんに、その涙がばれないよう必死に拭った。
17 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月18日(金)02時01分23秒
「おはよ〜」
家を出ると、待ち構えていたようによっすぃーが顔を出した。
「ほえ、迎えに来るなんて珍しいね」
よっすぃーが私の家に迎えに来るなんてこと、普段ならまずない。
一緒に行こうよ、って誘われたことはあるんだけど、私がその時間に起きれたためしがないしね。
しばらくすると、よっすぃーも諦めたのか、まっすぐ学校に行くようになった。
「ごっちん、体大丈夫?」
よっすぃーは、下から覗き込むように私の顔を見てくる。
「え、何で? この健康優良児にむかって」
悪いけど、体はぴんぴんしている。ここ1年風邪だってひいたことはない。
「だってさ、昨日最後までこなかったじゃん。先生だって心配してたんだよ。『吉澤、今回は本当なのか?』って」
先生、酷い……。少しはかわいい教え子のこと信用してよ。
「まあ、先生が心配してたなら、結果オーライだね」
「やっぱり仮病じゃん」
よっすぃーは、じと目でこちらを見る。
「まあまあ、いつものことだしさ」
私がそう言うと、よっすぃーも諦めたようで、そーだね、と言って、もうその話には触れてこなかった。
18 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月18日(金)02時04分01秒
それにしても、私は何回よっすぃーに助けられてるんだろう。
今回だって、よっすぃーが朝待っててくれなかったら、夢のことをもっと引きずっていたかもしれない。
「ん、どうしたの?」
じっと見つめる私の視線に気付いて、よっすぃーは怪訝な顔をした。
「あはは、なんでもないよ〜」
私はそう言って、笑いかける。
気付いてるかな。この笑顔だって、みんなよっすぃーのおかげなんだよ。まだ、傷口は閉じきってないけど、あなたのおかげで、少しずつ、だけど確実に閉じていってるんだ。
「変なごっちん」
よっすぃーは少し照れたのか、いつもよりぶっきらぼうに言った。
その仕草が微笑ましくて、私はもう一度笑った。
なんか、全てがうまく回ってるような気がした。

だから、まさかあんな形で傷口が開くことになるなんて、私には予想もできなかったんだ。
19 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月18日(金)22時14分40秒
何か痛くなりそうな気配が…
次回の更新待ってます。
20 名前:LVR 投稿日:2001年05月19日(土)21時38分40秒
ああ…、せっかく書いたのが消えてしまった。
がんばって書き直します。

>>19 さん
そうですね。なんかそういう雰囲気が(笑
前回の更新で傷口も少し見えましたし。
21 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月20日(日)01時52分50秒
私が眼鏡をかけるようになってから、もう一ヶ月が経った。
最近では、みんなの眼鏡いじりも大人しくなってきた。どちらかというと、梨華ちゃんと比べられて馬鹿にされることの方が多い。
……それも、眼鏡馬鹿にされてるのと同じじゃん。
でも、そのおかげかどうかわかんないけど、梨華ちゃんとはずいぶん仲良くなった気がする。
最初は合わないと思ってたんだけどね。でも、梨華ちゃんは人に合わせるのがうまい。天性の才能なのかな。合わせられてるのがわかるのに、嫌味を感じないんだ。
「後藤、次の文を訳して」
「ほえ!?」
突然の先生の声に、私は思わず声をあげてしまった。そういえば、授業中だったんだ。
予想通りというか、私の間の抜けた声を聞いて、周りのクラスメートはクスクスと笑っている。
よっすぃーが私に向かって必死に口パクをしているけど、焦っている私には、内容がまったくわからない。
「しょうがないな、石川助けてやって」
「あ、はい。彼女がその街を訪れたとき――」
先生、何も私の後に梨華ちゃんに当てなくても……。
私は休み時間に起こることを想像して、頭を抱えた。
22 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月20日(日)01時53分35秒
「もう、せっかく教えてあげたのに」
「う〜」
授業が終わるとすぐに、よっすぃーが私の元へ来た。そのよっすぃーの言葉に私はうなだれる。
「あ、後藤ちゃ〜ん」
……だって、またみんなが集まってくるのが、目に見えてるんだもん。
「何よ」
わたしが彼女たちの方を睨むと一瞬怯んだが、またすぐに笑顔に戻ると口を開く。
「また梨華ちゃんと差がついちゃったね〜」
この台詞はもう何回目だろう。少なくとも、耳にたこが5,6個出来てる。
23 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月20日(日)01時54分14秒
そこに、ちょうど梨華ちゃんが通りかかった。
「あ、梨華ちゃん。相変わらず頭いいね」
別に、梨華ちゃんを褒めるのは構わないからさ。こっちをチラチラ見ながら言うのはやめてくれないかな。
「え……、そんなことないよ。たまたま予習してた所が当たっただけだから」
梨華ちゃんはこういう時、あくまで謙虚だ。ちょっと困惑した顔を浮かべながらうつむく。
「またまた〜。予習してないところなんてないじゃん。ごっちんと違って」
私もそう思う。だって梨華ちゃんが質問に答えられないのを見たことがないから。……まあ、ごっちんと違っては余計だけどね。
「たまたま〜? それはないって」
「はあ、もう切りがなさそうだな」
そう思った私は、梨華ちゃんを連れて教室を抜け出した。
24 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月20日(日)05時46分50秒
なんかドキドキします。続きが楽しみ〜。
25 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月21日(月)04時54分25秒
「ごめんね。私のせいで梨華ちゃんにまで迷惑かけてさ」
屋上まで梨華ちゃんを連れてくると、私は開口一番そう言った。
よく考えてみると、梨華ちゃんは何も悪くないんだもんね。
「そんな、私は褒められてるんだし。それより、後藤さんのほうが……」
申し訳なさそうにぼそぼそと呟く。
もう、そんなに人にばっかり気を遣って。たまには自分のことも考えないと、疲れちゃうよ。
「私は嫌じゃないからね。本当に嫌なことは、みんなしないから」
そう考えると、本当にいい友達ばかりだと思う。……でも、最近はみんな調子に乗り過ぎかも。
26 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月21日(月)04時55分56秒
その後は何も話すこともなく、ただ梨華ちゃんと2人でぼうっとしてた。
「後藤さん、そろそろ授業始まっちゃうよ?」
チラチラと時計を見ながら言う。
ああ、もうそんな時間か。なんか、ずいぶんゆっくりしちゃったな。
「めんどくさいな〜。ねえ、次の授業さぼっちゃおっか」
「え……?」
なんてね。
梨華ちゃんが真面目なのは私もよく知ってる。梨華ちゃんには、私が具合悪いとか先生に言ってもらって……。
「……うん、いいよ」
「え!?」
次は私が驚く番だった。ちょこっとどころか、とんでもなく予想外の答え。
「一時間ぐらい、構わないよね」
梨華ちゃんはそんなことを言って、微笑んでいる。
「あの、梨華ちゃん……? 授業は真面目に出た方が……」
あ〜もう! なんか私言ってることがメチャクチャだ。
「もう、後藤さんが言ったんじゃない」
その通り。その言葉で、私は腹をくくった。
「よし! じゃあさぼろっか。あ、私のこと名前で呼んでいいよ」
「名前……?」
なんか梨華ちゃん困惑してる。そんなに抵抗あるもんかなあ。
「そうだよ。2人でさぼったんだから、仲間じゃん。仲間はやっぱり、ファーストネームじゃなきゃね」
そう言って梨華ちゃんに、ニコリと微笑んだ。
「真希、ちゃん……」
「そうそう。じゃ、これからもよろしくね」
私は照れまくってる梨華ちゃんに、右手を差し出す。少し戸惑いながらも、梨華ちゃんは私の手をゆっくり、そしてしっかりと握った。
でも、私が梨華ちゃんをさぼらせたこと先生が知ったら、いつも以上に怒られるんだろうなあ……。
梨華ちゃんともっと仲良くなれたのを喜びながら、私は頭の片隅で必死に先生への言い訳を考えていた。
……はぁ。
27 名前:LVR 投稿日:2001年05月21日(月)04時59分01秒
他のスレに迷惑をかけてしまった……。
ふぅ……。

>>24
ありがとうございます。
なるべく定期更新できるように頑張るので、もう少しドキドキしてて下さい(笑
28 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月22日(火)01時55分12秒
帰宅部の私は、今日も学校が終わるとすぐに家路についていた。
そこで、見知った顔を見かける。
「あ、よっすぃーじゃん。バレー部は?」
なんかこんな時間によっすぃーを見かけるなんて珍しいな。本当に練習熱心だから。
「昨日試合だったから、今日はオフなんだ」
「じゃあ、久しぶりに一緒に帰れるじゃん!」
嬉しくなった私は、思わずよっすぃーに抱きついた。
よっすぃーも口では文句を言うけど、別に嫌がるそぶりは見せないので、そのままくっついていた。
そのまましばらく歩いていると、よっすぃーがおもむろに口を開いた。
「あのさ……、ごっちん今日時間ある?」
よっすぃーは、少し遠慮でもしたかのように私に尋ねる。
「まあね。帰宅部だもん」
エヘン、と胸をはってみたけど、どこか空しい。よっすぃーも反応してくれないし……。
「相談……、したいことがあるんだけど」
よっすぃーのいつになく沈んだ顔。別に私には、断る理由もない。
「任せてよ! じゃあ、どっか店に入ろっか」
「ありがと、ごっちん」
いっつもよっすぃーには世話になってんだもん。こんな時くらい、お返ししなくちゃね。
私達は、近くに手ごろな喫茶店を見つけて、店の中に入った。
29 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月22日(火)01時55分55秒
「で、相談って?」
よっすぃーは、ウエイトレスの人がいなくなるのを待ってから、笑わないでね、と言って話し始めた。
「私さ、どうしても梨華ちゃんと話せないんだ」
そういえば、私と梨華ちゃんが話している時には、よっすぃーの声を聞いたことがないな。いっつもは気軽に会話に入ってくるのに。
「まあ、合う合わないもあるからね。話せなくても無理しなくていいと思うけど」
でも、誰にでも人当たりがいいよっすぃーにしては、珍しいな。よっすぃーにも、馬の合わない相手っているんだ。
「いや、そうじゃなくて……」
よっすぃーは、なんだか言いにくそうに頭をポリポリ掻いている。
しばらく黙って話すのを待っていると、よっすぃーはようやく決心したように、私の顔をじっと見つめた。
「意識しちゃって上手く離せないんだよ」
……えっと。
意識してるってことは?
「できれば、もっと噛み砕いて……」
何となく……、何となくどういう意味かはわかる気がするんだけど。
「だから、梨華ちゃんのことが好きなの!」
振り絞るようにそう言ったよっすぃーの顔は、真っ赤になっている。
一応、私は念を押してみた。
「ライク?」
「ラブ」
……だよね。
30 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月22日(火)01時56分46秒
「女の子を好きになるなんて、馬鹿みたいでしょ」
よっすぃーは、自分を嘲笑するような口調で呟く。でも、その目は真剣で。
「だけど、本気だから」
私は、否定することも、肯定することすらも出来なかった。
その時、胸の奥がチクリと痛んだ。まるで、傷口を覆っていたかさぶたを剥いだ時のように。
「まかせて」
「……え?」
自分でも気付かないうちに、声を発していた。よっすぃーも、きょとんとした顔をしている。
「私が梨華ちゃんと話したときに、よっすぃーに話を振るように心がけるから。まあ、その後はよっすぃー次第だけどね」
私の言葉を聞いたよっすぃーは、ニコリと笑い、
「ありがとう」
と言った。
でも、何でとっさにこんなことを言ったんだろう。
よっすぃーが親友だから?
いや、きっと違う。
私は、これ以上よっすぃーの純粋な瞳に見つめられて、傷口が開くのが怖かったんだ。
31 名前:24 投稿日:2001年05月22日(火)20時02分39秒
うわー。。まじでドキドキします。すごい好きっぽい展開です。くぅっ。
32 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月23日(水)00時45分10秒
2月も半ばになると、そろそろ卒業式という行事が頭を掠めるようになってくる。
私達は2年生だから直接は関係がないけど、それでも、みな一様に寂しそうな顔をしていた。
「もうすぐ先輩たちもいなくなっちゃうんだねえ」
ぼうっとしながら、私は梨華ちゃんに話し掛ける。
「……そうだね」
そう言った梨華ちゃんの顔は寂しそうだ。
そりゃそうだよね。梨華ちゃんは部活で、先輩にいろいろ良くしてもらってたみたいだし。先輩とのかかわりは私よりも深いはずだ。
そこまで考えると、私は急に寂しい気持ちになった。
「そういえばさあ、市井先輩も卒業しちゃうんだよね」
よっすぃーも会話に参加してくる。
あの後、私の協力の甲斐もあって、私たちの会話に自然に入ってこれるようになった。
それにしても、市井先輩か。ここ久しく、耳に入ることも、口に出すこともなかった名前だ。
「よっすぃー、市井先輩って誰?」
そっか、梨華ちゃんは知らないんだ。
「え、えっと、ごっちんの仲のいい先輩で、その……」
なんでかなあ。よっすぃーってば、いまだに梨華ちゃんに話し掛けるときは、あからさまに緊張するんだよね。
私はクスリと笑ってから、よっすぃーの言葉に続けた。
「私は部活に入ってないからさ、仲良くしてくれる先輩は貴重なわけよ」
「また、偉そうに。いっつも、『市井ちゃ〜ん』って甘えてたじゃない」
「うっさいな」
梨華ちゃんには話せないくせに、私にだけこんな意地悪く言うんだから。
「ま、そんなことはどうでもいいじゃん」
私が話題を変えようとすると、どうでもよくないよ、とよっすぃーが言い出した。
33 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月23日(水)00時46分42秒
「梨華ちゃ〜ん」
調度いいタイミングで、ドアの所から、梨華ちゃんを呼ぶ声。
「あ、ごめんね。先輩に贈る色紙の準備しなきゃ」
そう言って、部活の友達らしき人のもとへ走り出す。
「部長は辛いね〜」
本当にそう思う。私なんて、部活をやることすらめんどくさいのに。
「私も部長やろうかなあ」
「はあ!?」
よっすぃーの突飛な言葉に、私は驚く。
「バレー部って、まだ部長が決まってなくてさ。部長になれば、会議とかで梨華ちゃんに会えるじゃん」
よっすぃーは、名案を思いついた、というような顔をしている。
まあ、よっすぃーがいいんなら、別に文句は言わないけどさ。
「えっとね」
そんなことを考えると、よっすぃーは思いつめたような顔で、声をかけてきた。
「いや、別に馬鹿にとかしてないよ」
何も言わないうちから言い訳をする私。って、こんなんじゃ逆にバレバレじゃんか!
「私も馬鹿だってのはわかってるけどさ。その話じゃなくて」
ほら、やっぱりよっすぃー気にしてる。
「じゃあ何?」
こういう時は、言いたいことを言ってもらうに限る。そうすれば、今のことも忘れてくれるかもしれないし……。
34 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月23日(水)00時50分14秒
「私、梨華ちゃんに告白してみようと思うんだ」
「え?」
……告白?
まさか、よっすぃーがそこまで思いつめてるとは思わなかった。
「でも、相手は女の子……」
「わかってる! けどさ、来年になったら受験とかもあるし、今までみたいに話せなくなるかもしれない。それくらいだったら、本人にはっきり断られたいもん」
よっすぃー、本当に梨華ちゃんのことがすきなんだね。
でも、私は親友として、よっすぃーを止めなきゃならない。
「駄目だよ、よっすぃー」
「だって……」
「もしどうしても告白したいなら、絶対に成功させて! よっすぃーが泣く姿なんて、見たくないよ……」
「ごっちん……」
だって、女の子だからって理由で断られるの、本当に辛いんだよ。好きとか嫌いとか、そんな土俵にすら上がらせてもらえないのはさ。
だから。
「私に任せてよ」
「……ごっちん?」
「一度乗りかかった船だもん、ね?」
よっすぃー、今度こそ親友として言えたよ。自分のためじゃなく、よっすぃーのために。だから、私に任せて。
「上手くいくかどうかはわかんないけどさ」
「……ありがとう」
よっすぃーは、少ししゃくりあげながらそう言った。私は、よっすぃーの頭をそっと撫でてやる。
その痛みを、その想いを、自分に重ねながら。
35 名前:LVR 投稿日:2001年05月23日(水)00時53分34秒
>>31
いつも感想いただいて、ありがとうございます。
一応主人公は後藤なんですが、もう少し吉澤編にお付き合いください。
36 名前:24 投稿日:2001年05月23日(水)01時51分42秒
いくらでも付き合うさあ! 友達思いなごっちんがナイスです。
後藤の気持ちは、私が思ってたのとは違うのかな? どちらにせよとても楽しみです
37 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月23日(水)01時53分36秒
みんな自分の感情にとまどっている……
どう話が動き出すのか本当にドキドキですね。
38 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月23日(水)05時29分19秒
市井が後藤を振るって新鮮だな・・(w
39 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月24日(木)04時08分14秒
「ごめん、遅くなっちゃって!」
梨華ちゃんが戻ってきた。
さて、ここからが私の出番だね。
「ここさ、よっすぃーが部活で使いたいって言ってるからさ、屋上にでも行って、2人で話さない?」
「いいよ」
梨華ちゃんは笑顔で答える。
でも、何故だろう。梨華ちゃんの笑顔が、いつもと少し違う気がするのは。
「私も真希ちゃんと2人きりで話したいことがあったんだ。誰にも聞かれたくないから」
その言葉に、よっすぃーの肩がピクリと振るえる。
私は、何故だか嫌な予感がした。
40 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月24日(木)04時11分05秒
いつもと変わらない屋上。ただ、少しだけいつもより肌寒い気がした。
「で、話って……?」
私は、屋上に来てから何も話さない梨華ちゃんを促すように行った。それでも、梨華ちゃんは何も話さない。
別に、話すことがない、という風でもない。まるで、タイミングを伺っているような……?
「今日さ」
突然大きな声で話し始めた梨華ちゃんの方に、視線を移す。
「まあ、今日に限ったことじゃないんだけど、変な相談受けちゃってさ」
そう言って微笑む。でも、、いつもの優しい微笑じゃなくて、意地の悪い笑み。
「『私、よっすぃーのことが好きなんだけど、仲を取り持ってくれない?』だって。女の子同士で馬鹿じゃないの?」
梨華ちゃんは、軽く鼻で笑った。
「んで、私が断るとさ、『梨華ちゃんも好きなの?』だって。そんな趣味ないわよ』
私は梨華ちゃんの言葉に呆然としていた。私が聞こうとしていたことは、もう答えが出たんだけど。
「梨華ちゃん、ひどいよ……。そんなの梨華ちゃんじゃない」
私は振り絞るように言った。声が少し震えていたかもしれない。
そんな私を見て、梨華ちゃんは突然眼鏡を外した。
「この眼鏡、高校になってからつけたの」
眼鏡をはずした梨華ちゃんはかわいくて、よっすぃーの気持ちが少しわかった気がした。
「そしたら、みんなこの眼鏡にだまされた。『梨華ちゃんは、大人しい子なんだ』ってね。おかげで、揉め事に巻き込まれなくて楽だったわ」
梨華ちゃんの口元は少し歪んでいる。
……これが本当の梨華ちゃん?
41 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月24日(木)04時14分08秒
その時、階段を駆け下りて行く音が聞こえてきた。
こんな時間に屋上にくる人なんて普通はいない。まさか……、よっすぃー?
「立ち聞きか、趣味が悪いね」
その割には、梨華ちゃんは怒った顔をしていない。むしろ、より笑顔になった気さえする。
ただ、何か別の色が混ざっている気もした。
……悲しみの色?
「梨華ちゃん、何が悲しいの?」
私は、思ったことを口に出していた。一瞬、梨華ちゃんの表情が変わる。
「話し始めたときからずっとだよね。何が、悲しいの?」
もう一度、同じ事を聞いてみる。でも、梨華ちゃんはそれには答えず、逆に私に問い掛けてきた。
「私のことより、あなたは何に怯えてるの?」
「え?」
思いがけない言葉。私は、別に怯えてなんか……いない。
「あなたがその眼鏡で何を隠そうとしているのかは知らないけど、何かを隠してるってのはわかるわ」
私の全てを覗いてくるような、梨華ちゃんの瞳。
その瞬間、私の頭は真っ白になった。
42 名前:LVR 投稿日:2001年05月24日(木)04時30分07秒
>>36 24さん
>後藤の気持ちは、私が思ってたのとは違うのかな? 
どのような展開を予想してくれているんでしょうか?
いい意味で裏切れるように頑張りたいですね。

>>37 名無し読者さん
もしかして、今回の更新で、こじれて動き出しちゃいましたか?
ここからの展開は急になるかもしれません。
誰かが読んでくれてるってのは、力になりますね(笑

>>38 名無し読者さん
ようやく後藤編に入っていきます。
まだ後藤本人のことは、ほとんど語られていないので、暴走しないように気をつけないと(笑
43 名前:24 投稿日:2001年05月24日(木)20時33分15秒
くっ、こうきましたか。
実は自分好みのマイナーカップリング期待があったりするのですが、それを抜き
にしても性格付けと、妙にこう、健全な世界観が面白いです。カップリングとか
強制するのはイヤなので、そのあたりはそっと心に仕舞っておきます。
44 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月24日(木)21時54分03秒
眼鏡ってそういう比喩だったんだ。
ついに動き出した石川さんの「心のきず」知りたいですね。
45 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月25日(金)00時12分13秒
「市井ちゃん、今日は何処に行こっか?」
なんだこれ、昔の私……?
「何処でもいいけどさ、後藤も彼氏とか作れよ。私とばっかりいるから、出来ないんじゃないの?」
市井ちゃん。なんか、市井ちゃんなんて言ったの、ずいぶん久しぶりだ。あれ、何で言わなくなったんだっけ?
「そんなことない……」
私は、悲しそうな顔で呟いている。何か言いたい言葉を、必死に飲み込んでいるような感じだ。
2人の間には、気まずい沈黙が流れている。見ている私も、結構辛い。
「後藤、何か言いたいことあるのか?」
市井ちゃんが私に尋ねかける。
「あのさ……」
私は、口篭もりながらも、何とか言葉を吐き出した。
「市井ちゃんは私のことどう思う?」
「どうって?」
「だから、好きとか……嫌いとか……」
「嫌いなわけないじゃん。好きだよ」
その言葉を聞いても、私は嬉しそうな顔1つしない。代わりに、真剣な顔で市井ちゃんを見つめていた。
「そうじゃなくてさ」
私の切り返した言葉に、市井ちゃんは不思議そうな顔をしている。
私も不思議だった。好きといわれて、何の不満があるのだろう。何を求めているのだろう。

その時、私は全てを思い出した。
46 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月25日(金)00時15分43秒
駄目だ! その先を言っちゃ!
しかし、私の必死の呼びかけも空しく、過去の私は口を開く。
「私は、恋愛対象として、市井ちゃんのことが好きになったんだ」

……言っちゃった。
この後、何が起こるのかを私は知っている。
もう何も見たくない! 聞きたくない!
けど、残酷にも、私にはそれに抗う手段を持たなかった。
「私は女の子だよ?」
「わかってる! それでも市井ちゃんが好きなんだよ……」
あの時の私なりの、正直な気持ち。
「断られるのはわかってる。だったらせめて、市井ちゃんの言葉で聞かせてよ」
少しの沈黙の後、市井ちゃんは口を開いた。
47 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月25日(金)00時16分32秒
「ごめん、後藤。なんか、うまい言葉が見つからないけど……」
申し訳なさそうな、それでいて優しい顔。
そんな顔で言われたから、私は何も言えなかったんだ。
「……気にしないでよ。今までどおり、ね?」
そう言って、市井ちゃんのそばから離れる。
あはは、人のこと言えないや。私も、よっすぃーと同じことしてたんだね。
結果のわかってる恋。だったらこんな気持ち、初めから無かったことにすればいいんだ。

次の日から、私は眼鏡をかけた。
48 名前:LVR 投稿日:2001年05月25日(金)00時22分10秒
>>43 24さん
マイナーなカップリングですか。僕も読者なので、気持ちはわかります。
王道行っちゃってますけど、最後までお付き合いお願いします。

>>44 名無し読者さん
今回ようやく、ごっちんの心の傷公開ですね。
なんか、市井の出番が少なすぎて焦ってます(笑
49 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月25日(金)00時36分24秒
キュンとなるね。
・・市井ちゃん後藤を振るなぁ!(w
50 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月26日(土)01時27分44秒
「まあ、何だっていいけどね」
梨華ちゃんの声で、私は我に返る。
「別に、怯えてなんかいない……」
精一杯声を振り絞って、そう伝える。きっと、信じてないだろうけど。
「こんな話知ってる?」
「え?」
突然、梨華ちゃんが私の話を無視して話し始めた。
「眼鏡はね、相手を欺くことも、自分を欺くこともできるんだって」
「へえ……?」
軽く答えてみたけど、何故だか胸がドキドキしていた。
「あなたはどっち?」
それだけ言うと、梨華ちゃんは屋上から立ち去る。
アナタハドッチ?
さっきの梨華ちゃんの言葉が、一人で立ちすくむ私の頭の中を反芻していた。
私は、どっちなんだろう。もしかしたら、両方かもしれない。
でも、私は一つの事が引っかかった。
梨華ちゃんが欺いてるのは、本当に他人だけなの?
「あなたは……、どっち?」
私は、もう誰もいない屋上で、そんなことを呟いた。
51 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月26日(土)01時28分33秒
あんなことがあった後でも、何も変わらない日常が続いていた。少なくとも、見かけ上は。
あれから、私も、……そしてよっすぃーも、梨華ちゃんとは話をしていない。
それ以外は、変わりないと思うんだけど……。
「ごっち〜ん」
遠くからよっすぃーの明るい声が聞こえてくる。私は、とりあえずよっすぃーのもとへ向かった。
「先輩が来てるよ」
「先輩?」
いいから、とよっすぃーに教室から連れ出される。そこには、彼女がいた。
52 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月26日(土)01時30分29秒
「よっ、後藤」
「市井……先輩?」
まさか、こんな形で会うなんて思わなかった。でも、不思議と久しぶりな気はしない。最近彼女を思い出すことが多すぎたからかもしれないな。
「なんだよ、市井先輩って。他人行儀な」
彼女は、そう言って前と変わらない笑顔で笑った。
「なによ〜、突然来たから驚いただけだもん」
私もそれに、笑顔で返す。
「そういえば、何か用?」
何か、聞く順番が違う気がするけど、まあいっか。
「いや、前から後藤が楽しみにしてた映画があったじゃん。それの試写会の券があるんだよ」
そう言って、ポケットから2枚のチケットを取り出す。
でもそれ、そう簡単に取れないんじゃ……。
思っていたことが、あからさまに顔に出ていたんだろうか。彼女はおでこをポリポリと人差し指で掻きながら、ぶっきらぼうに言った。
「友達がいらないって言うからさ」
彼女が必死にチケットを探している姿が目に浮かぶ。
「ありがとう、市井ちゃん!」
「うわっ! こんなところで抱きつくなよ」
私の言葉を覚えていてくれたこと。そして、あの日から何も変わらない市井ちゃんの態度が嬉しかった。
「それにしても、ようやく市井ちゃんって呼んでくれたな」
市井ちゃんは、照れくさそうに言う。
そう言えば、市井ちゃんって口に出したの本当に久しぶりだな。
でも、それは私の気まぐれなんかじゃない。恋愛対象じゃなくなっても、ただの仲のいい友達でも、私にとっての市井ちゃんは、市井ちゃんでしかないってことに気付いたから。
今なら、大好きだよって言葉も、笑顔で言える気がする。そして、そう思えるようになれた自分が、嬉しかった。
53 名前:LVR 投稿日:2001年05月26日(土)01時32分58秒
>>49 名無し読者さん
久しぶりに明るい雰囲気になりました。
次回の更新は、映画の予定です。まだ書いてないけど。
54 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月26日(土)02時56分13秒
市井ちゃん!!・・・いい響きだ〜。(w
二人の関係は、やはりこうでなくっちゃね。
55 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月26日(土)03時48分27秒
次が、たのしみというか、怖いというか…
56 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月26日(土)04時04分30秒
おっ!映画か〜ごま頑張れ!
57 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月26日(土)04時24分11秒
キャ〜市井ちゃんかっこい〜
58 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月26日(土)10時34分17秒
ほっ。良かった・・・。
59 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月27日(日)02時49分19秒
「あ〜、面白かった」
映画を見た後の私は、非常に上機嫌だった。
「まあ、ただで見れたにしてはね」
市井ちゃんはそんなことを言ってるけど、後半ずっと涙ぐんでいたのを私は知ってる。
「明日みんなに言っちゃお」
「後藤……、まだみんな見てないんだから、つまらなくなっちゃうだろ」
市井ちゃんは、少し顔をしかめながら言った。
でもさ、私が言いたいのは、映画の内容じゃないんだよね。
「そうじゃなくて、市井ちゃんが映画見て涙ぐんでたってこと。市井ちゃんに憧れてる子とか、結構いるからさあ」
「後藤!」
市井ちゃんが怒るのを見て、私は笑いながら逃げ出した。市井ちゃんも怒った顔を少し笑顔で歪めながら、追いかけてくる。
ごめんね。私素直じゃないから、またこんなこと言っちゃったよ。
本当はね、市井ちゃんはこんなにいい先輩なんだよってことを、みんなに自慢したかったんだ。
60 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月27日(日)02時49分56秒
「でもさあ」
あの後、しばらく追いかけっこをして、結局市井ちゃんに捕まってしまった。息を切らしながら、市井ちゃんが話し始める。
「後藤、その眼鏡どこで買ったんだ?」
そう言って、市井ちゃんは私の眼鏡を指差す。
「……もしかして、馬鹿にしてる?」
いつのまにか私には、眼鏡コンプレックスが出来上がっていたらしい。
必要以上に卑屈な言葉を返す。
「いや、そうじゃなくてさ。似合ってるよ」
もう、市井ちゃんってば。そんなこといわれたら……嬉しいじゃん。褒めてくれる人なんて、他にはいなかったよ。
「そうかな?」
私は少し照れながら、聞き返す。市井ちゃんは、ウンウンと頷いて返した。
「それにさ、元気そうだったから安心したよ。」
一瞬の沈黙。
やっぱり気にかけてくれてたんだ。態度に出さないからわからなかったじゃん。
「えへへ、私には笑顔が似合ってるでしょ」
動揺を隠しながら言った私の笑顔に、市井ちゃんは安心したように頷いた。
でも、私には、さっきからずっと引っかかってることがあった。
この笑顔、本当に私に似合ってる?
でも、声には出さない。市井ちゃんが喜んでくれるなら、私は何だってするよ。何だって見せるよ。
眼鏡をかけた、私の笑顔でも。
61 名前:LVR 投稿日:2001年05月27日(日)02時59分58秒
>>54 名無し読者さん
ようやく市井ちゃんって呼ばせることが出来ました。
一応、タイミングははかってたつもりだったんですが、どうでしょうか?
>>55 名無し読者さん
微妙な終わり方をしちゃいましたね。
次はどっちに転ぶのか、考え中です。
>>56 名無し読者さん
映画が終わっちゃいましたね(笑
でも、まだ2人のシーンは続くのでそれで勘弁してください。
>>57 名無し読者さん
今回は市井のちょっとかわいらしい面を書いてみました。
でも、やっぱり最後はくさい台詞にいっちゃいますね(笑
>>58 名無し読者さん
せっかく明るくなったのに、また少し翳りを入れてしまいました。
僕も明るく書きたいんですけど、まだ何も解決してないんで。
62 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月27日(日)12時30分12秒
けなげな後藤ちゃん…萌え〜〜
63 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月27日(日)19時22分55秒
なんかキュンて感じ・・
ごま負けるな・・
64 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月28日(月)01時11分30秒
「あのさ、後藤」
「ん?」
さっきまで安心した顔をしていた市井ちゃんが、突然真面目な顔になって、私に話し掛ける。どこか、緊張した面持ちだ。
「私、卒業したら留学しようと思う」
「……え?」
私には初め、市井ちゃんの言ってる意味が理解できなかった。
留学って、海外に言って勉強することだよね。
「ずっと夢だったんだ。だから、親にも反対されたけど、結局行くことに決めた」
「……」
私は、何も返さなかった。いや、返すことができなかったって言った方が正確かな。本当は、文句にしろ、激励の言葉にしろ、言いたいことはいっぱいあったはずのに。
「今まで何も言わなかったのは、悪かったと思ってる。でも、家族以外じゃ、後藤が一番最初……って、泣くなよ」
私は、自分でも知らない間に涙が出ていた。市井ちゃんは案の定、情けない顔でおろおろしている。
もう、何やってんだよ、私は。市井ちゃんが喜んでくれるなら、何だってするんじゃなかったの?
でも、これは……、この涙はしょうがないよ。
65 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月28日(月)01時12分35秒
「おめでとう」
「後藤?」
市井ちゃんは驚いたように、私の顔を見上げた。
「私が市井ちゃんの夢を、知らないとでも思う? ずっと頑張ってきたんだもんね。おめでと」
だってさ、嬉しいときにはやっぱり涙が出ちゃうじゃん。
こんな直前になって言われて悔しいはずなんだけど、これから会えなくなるのは辛いはずなんだけど、それなのに、嬉しいって感情が一番最初にきちゃう。
「ありがと、後藤」
今でも、市井ちゃんを止めたくてしょうがないんだ。止める資格がないのはわかってても、それでも止めたいんだ。
だけど、そんな私の気持ちはどうだっていいから、市井ちゃんには留学して夢をかなえて欲しい。
それは、私が市井ちゃんのことをいい友達だと思ってるから? それとも、憧れの先輩だから?
きっと、どっちも違うね。
「市井ちゃん、ごめん」
そう言うと、また涙が流れてきた。きっと今の私はとんでもない顔をしてるだろう。
「あのね、こんなときに言うのはどうかって思うし、女々しいって思われるかもしれないけど」
市井ちゃんは黙って聞いている。でも、まだ情けない顔のまま。
それを見たら、思わず笑っちゃった。泣きながら笑ったから、おかしな顔になったよね。

「私は……、後藤は、今でも市井ちゃんのことが大好きです」
66 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月28日(月)01時15分25秒
梨華ちゃん、あの眼鏡の話、間違ってたよ。
私は市井ちゃんを騙すことも出来なかったし、自分の気持ちをごまかすことも出来なかった。
だって、市井ちゃんが夢を叶えることがこんなに嬉しいんだよ。嬉しすぎて、涙まで出ちゃって。
だから、こんな眼鏡はもういらない。
私はいつのまにか馴染んでいた眼鏡を外して、今出来る最高の笑顔を作った。
「これが私の本当の笑顔だよ。ちょっと涙とか出てて申し訳ないけど、市井ちゃんにはこっちの顔を覚えていて欲しいから」
あはは……。また涙が出てきちゃった。
わがままだけど、やっぱり市井ちゃんと離れるのは嫌だよ。
「ごめんな、後藤……」
「いいから、気にしないで! 全部後藤が勝手に言ってることだし。だから……」
私はその後の言葉を繋げなかった。
唇に感じた、初めての感触。
67 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月28日(月)01時15分56秒
「市井ちゃ……」
「最後まで話聞けよ。今回も……前回も。私は何も答え、出してないじゃんか」
市井ちゃんは真剣な表情で、私の瞳を見つめる。私は、動くことが出来なかった。
「私だって後藤のことが好きだ。そうじゃなきゃ、楽しい時間を壊してまで、留学の話をしたりなんかしない」
え?
好きって、誰のことが?
「ずっと迷ってたんだ。私は女の子だし、後藤が辛い思いをするかもしれない。それに、留学しちゃったら、きっと当分会えない……」
私は、市井ちゃんに抱きついた。涙とか、服についちゃったかな。
「構わないよ……そんなの。私は、ずっと待ってられるから。市井ちゃんが辛いんだったら、浮気とかしちゃっていいし」
「……ば〜か。それはこっちの台詞だよ」
そう言うと、市井ちゃんはくっついている私を思い切り抱きしめた。
それにしても、市井ちゃんはすごすぎるよ。
私がせっかく涙を我慢して、必死に笑顔作ってたのに。市井ちゃんがちょっと一言言ってくれただけで、私は自然と笑っちゃうんだ。
おかげで、本当に最高の笑顔を、市井ちゃんに贈れそうだよ。
68 名前:LVR 投稿日:2001年05月28日(月)01時21分29秒
結構頑張って更新してみたんですけど、どうでしょう?

>>62
ほんと、びっくりするくらい健気に頑張らせてみました。
でも、今回でそれも報われたのかな?

>>63
後藤が負けずに頑張ったおかげで、ようやく甘い話になりました。
これがendではないので、また見にきてください。
69 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月28日(月)01時25分53秒
とっても、うれしい〜。
作者さんありがと〜。
70 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月28日(月)03時57分26秒
いい話ですな〜
いちごま最高です。
71 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月28日(月)04時07分34秒
ホッ・・良かった良かった・・
72 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月29日(火)01時12分18秒
「でもさあ」
「ん、どうした後藤?」
2人で一緒に来た道を戻る。
不思議なもんだね。今日ここにくる前は、どんなに顔が笑ってても、心から笑えてなかった気がするのに。今は、本当に心から笑えてる。
「人間ってさ、誰でも心に眼鏡をつけてるんだね」
「はあ?」
もう、市井ちゃん。珍しく後藤が真面目な話してるのに、そんな間抜けな顔したら駄目だよ。
「自分でつけてることを忘れちゃうくらい、長い間つけて」
「……なんか、後藤にしては珍しく哲学的だな」
もう、茶化さないで。
私が睨みつけると、市井ちゃんは下唇を突き出して、わかったよと言った風な表情をした。
「でもさ、眼鏡だからさ、いつでも取り外せるんだよね」
そう言って、私は自分の眼鏡をフルフル振って見せる。
「私は市井ちゃんのおかげで、取り外せたよ。だから……」
私は、市井ちゃんの顔をまっすぐに見た。市井ちゃんもじっと私の方を見詰める。
「市井ちゃんも、私の前では眼鏡を外しててね」
その言葉を言い終わった瞬間、私は思い切り抱き寄せられた。
「後藤にキスしたときから、とっくに眼鏡は外してるよ」
私も思い切りしがみつく。
73 名前:眼鏡 投稿日:2001年05月29日(火)01時12分58秒
その時、そばにあった柱時計から音楽が鳴り出した。
「なんだよ、もう」
なんか、市井ちゃんは悔しそうだ。
「そういえば、今何時?」
私は、柱時計の方を見る。
あ、やばい。何も見えない。
「ごめん、市井ちゃん。眼鏡外したから、時計見えない」
「じゃあ、つければいいじゃん」
「ダメ」
私は、市井ちゃんの言葉に即答する。
「眼鏡を外した私を見て欲しいんだもん」
「いや、さっきのはそういう意味じゃないだろ……」
少し呆れ顔の市井ちゃん。
でもさ、時計は見えないけど、すぐ近くにある市井ちゃんの顔ははっきり見えるよ。
私は市井ちゃんの頬に口付けをした。
「後藤……」
私は市井ちゃんの前では眼鏡はかけないから。だから、いつでも顔が見えるくらい傍にいてね。

その後、もう一度私の唇を奪った市井ちゃんの顔は、眼鏡をかけていた時よりもずっとはっきりと見えた。
74 名前:LVR 投稿日:2001年05月29日(火)01時20分46秒
一応これで完結です。
短編にしようと思ったんですけど、ちょっと伸びちゃいました。

>>69名無し読者さん
自分がハッピーエンド好きなもんで、こんな結末になりました。
痛いのが好きな人、すいません。

>>70名無し読者さん
最後は甘いいちごまで終わらせてみました。
2人の絡みが少なかったので、不自然にならないか心配だったんですけど、どうだったでしょうか?

>>71
ずっと心配させてすいませんでした(笑
ちょっと終わり方が大人しすぎたかもしれません。
75 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月29日(火)03時27分50秒
ハッピーエンド最高!!
やっぱり、いちごまは甘いに限ります

ただ一つ、石川の突然の豹変理由が最後まで気になりました。
76 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月29日(火)05時12分47秒
ハッピーエンドはやっぱいいっすねぇ
同じくいしよしが気になったのですが・・
77 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月29日(火)06時13分59秒
わ〜いハッピーエンドだ〜
次も楽しみにしてます。
やっぱり石川編?
78 名前:chaga 投稿日:2001年05月30日(水)01時11分37秒
読みましたよ〜。
やはり石川が気になりますね。
この書き方からすると続きがあるように思えますが……

期待してます
79 名前:LVR 投稿日:2001年05月30日(水)02時21分24秒
>>75 名無し読者さん
石川の豹変ですか。
もちろん、後藤の傷口を見せるためにも必要な設定だったんですが……。

>>76 名無し読者さん
確かに、ただでさえ登場人物少ないのに、2人しか完結してませんね。
石川も吉澤も好きなんで、何とかしたいんですが。

>>77 名無し読者さん
そうですよ。よく考えたら、ここは短編をいっぱい書くスレだったんですね(笑
今は、何を書くか少し迷ってますけど、多分そうなると思います。

>>78 chagaさん
まあ、布石だけはたくさん用意しましたからね。
続きは一応考えてますが、まだ全然まとまってないので、石川がどうなるのか……。
いしごまはchagaさんにまかせることになると思いますが(笑
80 名前:眼鏡2 投稿日:2001年05月31日(木)01時10分49秒
「おっはよ〜!」
次の日、私は元気いっぱいの挨拶とともに、教室へ入った。
「うわっ!」
「どうしたの、ごっちん!?」
その途端、教室がざわめき出す。中には悲鳴をあげているものまでいる。
「えっと、何が?」
私はとりあえず、近くにいた友達に聞いてみた。
「眼鏡を外すなんて、なんか悲しいことでもあったの!?」
「そっか、誰かに振られたんだね?」
みんな口々に勝手な事を言ってる。
「……失礼な」
大体さ、眼鏡を外したからって、振られたってのはないんじゃないの? 眼鏡をかけた時には何にも言わなかったくせに。
「あ〜、でもごっちんにはやっぱり、今の方が似合ってるよ」
みんなにつられて私のところに来ていたよっすぃーが、そんなことを言う。
ありがとう、よっすぃー。やっぱりあなたはいい人だ。
「ね、梨華ちゃんもそう思うでしょ?」
え!?
私はまさか、よっすぃーが梨華ちゃんに話し掛けるなんて思わなかった。今までもまともに喋れたことなんてないはずだし、ましてや、あんなことまであったのに……。
「え……、う、うん。そうだね」
梨華ちゃんも珍しく動揺している。
そりゃそうだよ。私だってびっくりしたもん。
81 名前:眼鏡2 投稿日:2001年05月31日(木)01時11分26秒
そのうちに、周りのみんなも、眼鏡がないほうがいいなんて言い出した。
……さっきまで馬鹿にしてたくせに。
でも、そんなことよりも、みんなは梨華ちゃんが動揺しているのに気付かないみたいだった。
そっか、みんなの目に映ってる梨華ちゃんは、あれが普通なんだもんね。
「ごっちん、ご飯食べに行かない?」
ぼうっとしていた私は、よっすぃーの声で我に返った。
「あ、うん」
慌てて勉強道具をしまい、鞄の中からお弁当を取り出す。
「梨華ちゃんも行かない?」
よっすぃーは、梨華ちゃんにも声をかけている。
まただ。もしかして、あの時屋上から降りていった人って、よっすぃーじゃないのかな?
よく考えてみたら、よっすぃーだって言うのも、私が勝手にそう思ってるだけなんだよね。梨華ちゃんもだろうけど。
「あ……、今日はまだ予習が終わってないから」
そう言って、チラリと私の方を見る。
私に訴えかけるような目。その目には、戸惑いの色が見受けられた。
きっと、梨華ちゃんもあの日のことを考えているんだろう。
「じゃあ、しょうがないね。2人で食べよっか」
私は梨華ちゃんのほうを覗いながら、よっすぃーの後をついていった。
82 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月01日(金)07時57分34秒
今日は天気がいいので、屋上で昼食をとることにした。でも、なんか空気が重い気がする。私の気のせいかもしれないけど。
「でさあ、あの時梨華ちゃんが……」
よっすぃーの口からは相変わらず梨華ちゃんの話題がよく出た。不自然すぎるほどに。
「よっすぃー」
私は意を決して、よっすぃーに声をかけた。
「ん、何?」
よっすぃーはいつもと変わらない。やっぱり、私の思い過ごしかな。
「あ、何でもない」
思わず口篭もってしまう。
まあ、よっすぃーがあの時のことに関わっていないというのなら、それにこしたことはない。
私は言葉を飲み込んで、楽しい昼食に戻る事にした。
けど、それでこの話が終わることはなかった。
83 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月01日(金)07時58分11秒
「ねえ、ごっちん。任せてくれって言った件、どうなった?」
あ……、そうだ。あの話を聞かれたどうのこうのの前に、私にはもっと悩まなきゃいけないことがあった。
「この間わざわざ2人きりになったじゃん。聞いてくれたんでしょ?」
「えっと……」
まくし立てるように、よっすぃーは言葉を続けてくる。
もう、逃げることは出来ない。
「やっぱり直接聞くのはまずいじゃん。で、それとなく聞いてみたんだけどね……」
チラリとよっすぃーの方を見た。興味津々と言った顔で、私の方から視線を外さない。
「まんざらでもないみたいだったけど……な」
言っちゃった。胸の中にじくじくと罪悪感が広がっていく。
よっすぃーはどんな顔をしているだろう。
喜んでいるんだろうか。それとも、驚いた顔をしているのかな。
私はもう一度よっすぃーの方を向く。

私の目に映ったよっすぃーの瞳は、怖いくらいに何の色も映していなかった。
84 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月02日(土)00時06分36秒
ドキドキする…
どうなるんだろう…
85 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月03日(日)05時05分43秒
「よ…よっすぃー?」
「どうして?」
私の呼びかけは、よっすぃーの一言にかき消される。その目は、鋭く私を見据えていた。
「どうして本当のことを言ってくれないの?」
「そ…それは……」
思わず目を伏せてしまう。
よっすぃーが何を言いたいのかは容易に想像することが出来た。
よっすぃーはあのときの話を聞いてたんだ。私の考えが間違っていたわけじゃなく、梨華ちゃんが勘違いしたわけでもない。ただ、よっすぃーの演技が上手すぎた。
「私、二人の話聞いてたんだ」
知ってるよ、と言いかけて口をつぐんだ。知っていたからどうなるということでもない。
「ごっちんは、他の友達みたいに馴れ合いばっかり言うような関係じゃなくて、ちゃんと言うことは言い合える本当の親友だと思ってたのに……」
そう言うと、よっすぃーは弁当も食べかけのまま、屋上から降りていった。
カタンカタン。
あの日聞いたのと同じ音。
そう、あの日から、良くも悪くも何かが変わっていってしまったんだ。
86 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月03日(日)05時06分59秒
私は、今更ながらに自分のとった行動を後悔する。吐き気すら覚えた。
よっすぃーの真剣な目が重くて、冷たい言葉が痛くて、私はその場にへたり込んだ。
一人じゃ押しつぶされそうだよ……。
思わず携帯電話を取り出す。とにかく、誰かに相談したかった。
メモリーの一番最初のところに、市井ちゃんの名前が出てきたけど、市井ちゃんは今準備のために留学先に行ってるはずだ。私は、携帯を持つ手を動かす。
その手は、自然と止まった。
吉澤ひとみ。
画面には、そう映されていた。
意識していたわけではないのに、自然と止まってしまっていた指。
私は、改めてよっすぃーの存在の大きさに驚いた。
今までこんな気持ちのとき、何回よっすぃーに相談してきたのだろう。何回助けてもらっていたのだろう。
思えば、いつも頼っているのは私の方だった。
それでも親友と思っていてくれたよっすぃーの、たった一つの頼みごと。

私は、それを最悪の形で裏切った。

気が付くと、私は梨華ちゃんのもとへ電話をかけていた。
87 名前:LVR 投稿日:2001年06月03日(日)05時11分01秒
>>84 名無し読者さん
皆さんのリクエストどおり石川主体の眼鏡2です。
……のはずだったんですけど、やっぱり後藤が色々悩んでます。
また、ドキドキして読んでもらえるように頑張りますね。
88 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月03日(日)23時15分16秒
もうドキドキしてます。
石川さんの対応が気になりますね。
89 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月05日(火)00時59分42秒
長いコール音の後、梨華ちゃんは電話に出た。
「……もしもし」
あえて私を突き放すような、冷たい声。しかし、さっきのよっすぃーの声を聞いた私にしてみれば、それすらも暖かい声だった。
「用がないなら、切るよ」
「……ヒック……梨華………ちゃん」
私は必死に声を振る絞る。
「真希……ちゃん? ちょっと、どうしたの!?」
ホントは涙なんて流したくなかった。一方的に私が悪いのに、泣くなんて虫が良すぎる。
「梨華ちゃん……ック……助けてよ」
……でも、私はズルイから。
涙を隠そうとはしなかった。
「今、何処にいるの?」
「屋上……」
「わかった。今行くから、待ってて」
そう言って、梨華ちゃんは電話を切る。
その後には、ツーツーという音だけが、耳に残った。
90 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月05日(火)01時01分28秒
「真希ちゃん!」
屋上のドアを開けて、梨華ちゃんが私のもとへ駆けてくる。走ってきたのか、額には少し汗がにじんでいた。
「梨華ちゃん……、来てくれたんだ」
また涙が出てくる。梨華ちゃんは、そんな私を心配そうに見つめていた。
「私、よっすぃーに嫌われちゃった」
「何が、あったの?」
「この間のことよっすぃー聞いてたんだ」
「そんなことで!」
私の言葉を聞いた梨華ちゃんは、急に声を荒げた。
「よっすぃーに一言言ってくる!」
そう言って、梨華ちゃんはその場から立ち上がる。
「違うの。私が、私が悪いんだよ……」
梨華ちゃんの腕をつかんで引き止めると、私はさっきの会話の一部始終を話した。神妙な面持ちで耳を傾ける梨華ちゃん。
「……ね? 私、最悪だよ」
「でも、悪気があってやったことじゃないでしょ。よっすぃーだったら、きっとわかってくれるよ」
梨華ちゃんは、泣きじゃくる私の頭をそっと撫でた。そして、悲しそうにポツリと呟く。
「それに、原因は私なんだよね。こんなはずじゃなかったのに……」
今の梨華ちゃんには、あの時のようなトゲトゲしさなんて微塵も感じられない。あの時と同じなのは、悲しそうな表情だけ。
いったい、どれが本当の梨華ちゃんですか?
「ごめんね」
まるでマリア様のような、優しい表情。
市井ちゃんに頼れなくて、よっすぃーにも愛想を突かされた私は、その表情に甘えるしか出来なかった。
だから、私はあんな過ちを犯してしまったんだ。
91 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月05日(火)01時02分39秒
「梨華ちゃん、よっすぃーのことは嫌いですか?」
唐突な質問に、梨華ちゃんは目を丸くしている。
「嫌いじゃないよ……」
「じゃあ、もし告白されたら付き合う?」
「え?」
間髪いれずに質問する私。
「どうなの?」
「そ…それは……。確かによっすぃーのことは好きだけど」
梨華ちゃんは、口篭もりながらぼそぼそと喋っている。
「梨華ちゃんは、前言ったみたいに、女の子と付き合うことに抵抗があるんだよね」
そこまで言うと、私はつかんでいた腕を、思い切り自分の方に引いた。
「きゃっ!」
当然のごとく、梨華ちゃんはバランスを崩し、地面に倒れこむ。そして、そのまま梨華ちゃんを押さえつけた。
「じゃあ、私が女の子のこと好きにさせてあげるよ」
92 名前:LVR 投稿日:2001年06月05日(火)01時05分17秒
>>88 名無し読者さん
今回は、白い石川です。
でも、後藤がなんか黒く……
93 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月05日(火)02時34分16秒

ごま錯乱……。
正気に戻ってくだされ。
94 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月05日(火)03時30分38秒
こら〜、後藤!!
おまえには市井ちゃんがいるだろが〜!!
95 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月06日(水)01時09分55秒
私は、梨華ちゃんの上着のボタンを一個ずつ外していく。
「やめ……」
梨華ちゃんも必死に抵抗するけど、私の腕はそう簡単にはほどけない。
そりゃそうだ。私と梨華ちゃんじゃ力が違いすぎる。ましてや、上に乗っているのは私。
そうやって梨華ちゃんが必死に抵抗しているうちに、私はブラウスのボタンにまで手を掛けた。
「真希ちゃん! お願いだから……」
梨華ちゃんの必死の懇願も空しく、下着があらわになる。
「ヒック…ヒック……やめてよぉ……」
無駄だよ、梨華ちゃん。泣いたって、私はやめないよ。
だってこれは、私の大事なよっすぃーのためなんだから。
96 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月06日(水)01時10分27秒
そうして、梨華ちゃんの胸に手をかけたとき、私の携帯が音を立てた。
「うるさいなあ……」
私は携帯を遠くに弾き飛ばすと、今度こそ梨華ちゃんの下着の中に手を潜り込ませた。
「やめ……んんっ……」
梨華ちゃんはくすぐったそうに身をよじるけど、もう抵抗はしてこなかった。それに気を良くした私は、行為に没頭する。
その時、耳障りな音を立てていた携帯が、留守番電話に切り替わった。
97 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月06日(水)01時11分29秒
「もしもし、ごっちん」

よっすぃーの声だ。
私は思わず梨華ちゃんの胸の上で動いていた手を止める。

「あんな酷いこと言ったんだもん。電話に出たくないよね。ごめんね。
ほんとは、さっきのことだって、私のことを思って言ってくれてるんだってわかってたんだ。
でもね、誰かに当たらなきゃ、どうにかなっちゃいそうで……。
ごっちんだったらわかってくれる、なんて思って。自分勝手な友情押し付けちゃってさ。
本当にごめんなさい。
こんな私でよかったら、親友続けてくれないかな。
……なんて、こんなこと言えた義理じゃないんだけどね。はは……。
できれば直接会って話したいです。
許してくれないかもしれないけど、一度電話してください。それじゃあ」
98 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月06日(水)01時11分59秒
その言葉を聞いて、私の胸はチクリと痛んだ。
……これは、罪悪感?
なんで? 私はよっすぃーのことを思ってやってるんだから、罪悪感なんて感じる必要はないのに。
そこまで考えて、一つの事が頭をよぎった。
もしかして……、全部自分のためなの?
そう考えたら、わたしはもう何も出来なくなってた。
99 名前:LVR 投稿日:2001年06月06日(水)01時15分55秒
>>93 名無しさん
正気に戻ったのはいいんですが、なんか話が込み入ってきた……。
早く続きを考えないと。

>>94 名無し読者さん
ごっちん、市井ちゃんを忘れるなよー!
あ、でも、よく考えたら、市井の影メチャクチャ薄いですね(笑
100 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月07日(木)01時24分57秒
不意に視線に気付き、意識を梨華ちゃんに戻す。
梨華ちゃんは涙目で私の方を見つめていた。
「あ……」
私はようやく事の重大さに気付いた。
優しくしてくれた梨華ちゃんにつけこんで、自分の寂しさを紛らわせようとしたんだ。
「ご……ごめ……」
私はその言葉を、途中で飲み込んでしまった。梨華ちゃんが表情一つ変えず、私の方を見つめ続けていたから。
まるで金縛りにあったかのように動けない。
しばらくの間、その状態が続いた。
突然梨華ちゃんは私から視線を外し、おもむろに服を身につけていく。
私は思い切り息を吐き出した。
本当は梨華ちゃんに向かって、何か言いたかったんだけど、声を発することで、再び梨華ちゃんに視線を向けられるのが怖かった。
101 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月07日(木)01時26分40秒
私が何も言えずその場に呆然と佇んでいると、梨華ちゃんは落ちていた眼鏡を拾い、屋上の入り口に向かって歩いていく。
「梨華ちゃん!」
私は、意を決して梨華ちゃんに呼びかけた。
ゆっくりと振り返る梨華ちゃん。
眼鏡をかけていない彼女の目は、悲しそうにこちらを向き、そして、またもとの場所へ戻った。そのまま、屋上から消えていく。
結局、私には陳腐な弁解の言葉すら浮かばなかった。
それは自分に対しても同じで。
今の行為は、市井ちゃんを裏切った。梨華ちゃんを傷つけた。そして、よっすぃーとの友情を踏みにじった。
もう、何も言い訳なんて出来ない。
こんな私でも、よっすぃーは友達と言ってくれるの?
……たぶん、もう駄目だね。
私は、震える指で、携帯に手を掛けた。
102 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月08日(金)03時15分46秒

救いがあることを祈りつつ……
更新待ち。
103 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月08日(金)08時58分35秒
放課後の喫茶店は、思った以上に込んでいた。そのざわめきの中で、私たち二人は黙ったまま俯いている。
「ごめん!」
よっすぃーは、開口一番そんなことを言った。
その頭は、今にもテーブルにつきそうなくらい下げられている。
「ちょっと、よっすぃーやめてよ!」
私は慌てて、よっすぃーの頭を上げさせる。それでも、なかなか上げようとはしない。
「でも……、あんな酷いこと言っちゃって。親友の資格なんてないよ」
そう言うよっすぃーの顔は罪悪感でいっぱいだ。それも見ると、私も胸が苦しくなってくる。
けど、本当に酷いのはどっち?
「ねえ、よっすぃー」
私が声を発した瞬間、よっすぃーの体がピクリと動く。
「資格がないのは私の方。いっつも頼ってばかりいるし、この間だってせっかく頼ってくれたのに、何の役にも立てなかったし」
――それに、私は梨華ちゃんを襲ったんだよ? よっすぃーの大好きな梨華ちゃんを。
「だから……、私はもうよっすぃーと、友達できないよ」
104 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月08日(金)08時59分09秒
「え……」
顔をあげてよっすぃーのほうを見ると、よっすぃーは泣きそうな顔をしている。
「嘘でしょ……、ねえ? やだよぉ……。ごっちん、私を嫌わないでよ」
これだけの騒がしさの中、不思議とよっすぃーの声は辺りに響き渡った。
そして、私の耳の中で、いつまでも反響を続けていた。
105 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月08日(金)09時00分21秒
「だってさ、私と一緒にいても、何の利益もないよ?」
耳にまとわりついたよっすぃーの声を消すために、もう一度言ってみる。
でも、よっすぃーはその言葉を聞き、首を横に振った。
「私、別にごっちんに何も望んでない! ただ近くにいてくれればいいだけなのに……」
ついに、よっすぃーの瞳から涙がこぼれた。
だめだ、もう、辛いよ……。
私は、事実を打ち明けることを決心した。
106 名前:LVR 投稿日:2001年06月08日(金)09時04分15秒
>>102 名無しさん
また、少し暗くなっちゃいました。意識はしてないんですが……。
「眼鏡」の方も、結局ラスト以外は暗い話でしたし。
とりあえず、この3人に少しでも光を見せられるように、頑張ります。
107 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月09日(土)14時38分42秒
次が気になる〜
108 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月10日(日)00時00分59秒
「私、梨華ちゃんを抱いたよ」
正確には、途中で止めたんだけど、言い切ってしまったほうがいいと思った。
そうすれば、よっすぃーも私を嫌いになってくれるだろうから。
「え……? ごっちん、何言ってるの……?」
よっすぃーは、戸惑った瞳で私を見つめてくる。
「さっき、よっすぃーの電話に出なかったじゃん。あの時、梨華ちゃんと一緒に屋上にいたんだよね」
私は、言ってることわかるよね? という風に微笑む。
よっすぃーの唾を飲む音が聞こえてきた。
「えっ…と……、そうだったんだ」
あからさまに悲しそうな顔。
これでよっすぃーは、私を嫌ってくれるはずだ。だってこんな奴、私だったら平手で叩いちゃってるよ。
「それなのに、ごっちんに相談したりして……。ごめんね。あの、応援するから!」
「はあ……?」
よっすぃーは無理やり笑顔を作ると、私の両手を握ってきた。
これはどういうことだろう? 私を許してくれるどころか、自分を責めちゃってる。
もう、よっすぃーのお人好し! こんなんじゃ、私はもっと惨めになるだけじゃんか。
109 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月10日(日)00時01分49秒
「違うよ……」
そう言った私の口調は、かなり荒っぽかったと思う。その証拠に、よっすぃーはビクリと顔を上げた。
私は、これから起こることを想像し卑屈に笑う。
「梨華ちゃんは嫌がってるのに、無理やり抱いたんだ」
「あ……」
よっすぃーの緊張が、握られた手から伝わってくる。
そして、止めを刺すように私は言った。

「よっすぃーの大好きな梨華ちゃん、汚れちゃったね」

瞬間、よっすぃーの顔が強張るのを、私は見逃さなかった。
110 名前:LVR 投稿日:2001年06月10日(日)00時04分46秒
>>107 名無し読者さん
相変わらず更新量が少なくてすいません。
その分、更新のペースだけは守っていこうと思うので、気長に待っていてください。
111 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月10日(日)00時17分36秒
次が気になる〜
あれ、前にも書いたような……
112 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月13日(水)00時47分40秒
よっすぃーは鋭い目で、私の方を睨んでいる。私はその視線によって、身動き一つ出来なくなった。
でも、後少し。そうすれば、私もよっすぃーも苦しむことはない。
「梨華ちゃん泣いてたなあ……」
クスリと笑う私。
よっすぃーの腕が振り上げられる。
……ああ、叩かれるんだ。
私は酷く冷静だった。これくらいのことは、覚悟が出来ていたから。
けど、違った。
113 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月13日(水)00時48分13秒
「……よっすぃー?」
振り上げられたその腕は、私の頬を叩くことなく、その両腕をつかんだ。
「ごっちん、梨華ちゃんに謝りに行こう!」
「え……?」
ぐいぐい腕を引っ張るよっすぃーに、私は戸惑う。
「でも、もう遅いよ。だってあんなこと……」
「遅くても謝るの! 私もついていくから」
そう言うよっすぃーの目は真剣だ。
「駄目だよ! そんなことしたらよっすぃーまで嫌われちゃう」
「……いいから」
「よくない!」
私は必死だった。
まさかこんなことになるなんて。
私なんかと一緒に行ったら、よっすぃーにだって影響がないわけがない。きっと、嫌われちゃう。
「よっすぃーは梨華ちゃんのことが好きなんでしょ? だったら私のことなんてほっといてよ!」
「できないよ」
穏やかな顔で、よっすぃーは答える。
「私はごっちんも梨華ちゃんも、同じくらい大好きだもん。そりゃ、好きの意味は違うけどさ」
「よっすぃー……」
「何もしないで片方を失うのはやだ。私はどっちも手に入れて見せるから」
そう言って、笑った。
その笑顔に、わたしも何故かほっとする。
ねえ、よっすぃー。よっすぃーの笑顔には不思議な力があるんだね。
だって、よっすぃーの根拠のない自信を信じてみようって気になるんだから。
114 名前:LVR 投稿日:2001年06月13日(水)00時50分15秒
>>111 名無し読者さん
いつもありがとうございます。
相変わらずゆっくり進んでますけど、
ようやく明るさが見えてきたんじゃないでしょうか。
115 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月13日(水)02時51分33秒

よっすぃ〜の意外な行動に目からウロコ……。
ハッピーエンドを期待!
116 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月18日(月)04時41分52秒
「やっぱり、明日にしない?」
「ダメ」
案の定、私は梨華ちゃんの家に向かう道の途中で怖気づいていた。それでも、よっすぃーによって、無理矢理歩みを進めさせられる。
こうして考えると、よっすぃーについて来てもらって良かった。
だって、普通の神経じゃ、今更梨華ちゃんに会うことなんて出来ないだろうから。
だから、背中を押してくれる人が必要なんだ。

でも、これ以上迷惑は掛けれない。

「よっすぃー、ここまででいいよ」
「え?」
そう言う私を見て、よっすぃーは不安そうな表情を浮かべる。
「そんな顔しなくても、大丈夫だよ。ちゃんと行くから」
そう、今度は私が背中を押す番だ。
そのためには、まだ梨華ちゃんとよっすぃーを会わせるわけにはいかない。
もうよっすぃーを傷付けるわけには、いかないんだから。
117 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月18日(月)04時43分14秒
「ヤダ」
けど、よっすぃーはいきなり私の考えを打ち砕いた。
「ヤダってあなた……」
「イヤなものはイヤなの」
普段のよっすぃーからは想像できない姿に、思わず苦笑してしまう。
「お願い、私も連れてって」
そこで初めて、よっすぃーの顔が真剣なことに気付いた。その目は少なからず決意を秘めているように見えた。
「今話さなきゃ、もう梨華ちゃんと話せないような気がするんだ」
「……わかった」
私は、その言葉に頷いた。
よっすぃーの背中を押すって決めたんだ。その結果がどうであっても、私はよっすぃーの力になるだけ。
「じゃ、一緒に行こっか」
「うん」
しずみかけた夕日をバックに、私達は梨華ちゃんの家へと再び歩き出した。
118 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月18日(月)04時44分37秒
「出てこないね」
私達は、梨華ちゃんのアパートの前で黙って佇んでいた。
先程からインターホンを押しているが、中から人が出てくる気配がない。
「あ!」
突然よっすぃーが声をあげた。
後ろにいるよっすぃーの方を振り向くと、彼女がいた。
「……梨華ちゃん」
「いったい、私の家の前で何やってるの?」
「あ、そ…その……」
私の代わりによっすぃーが答えようとしたけど、心の準備も無しに本人が登場したので、ドモってしまいうまく話せない。
「ごっちんに聞いてるんだけど?」
そう言うと、梨華ちゃんは私の方を見つめる。
「ここじゃなんだしさ、場所変えない?」
何とか張り詰めた空気を変えたくて、私は二人に声を掛けた。
「……いいよ」
梨華ちゃんは私の言葉に頷くと、クルリと踵を返し歩き出す。私達もそれに付いていった。
119 名前:LVR 投稿日:2001年06月18日(月)04時50分05秒
>>115 名無しさん
ようやく終盤に差し掛かってきました。
自分で収拾つかなくなってきてますが、何とか完結させたいです。
それが、ハッピーエンドになるのかどうか……。
頑張ってみます(笑
120 名前:パク@紹介人 投稿日:2001年06月19日(火)22時56分37秒
こちらの小説を「小説紹介スレ@銀板」に紹介します。
http://www.ah.wakwak.com/cgi/hilight.cgi?dir=silver&thp=992877438&ls=25
121 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月24日(日)00時31分14秒
「で、何の用?」
梨華ちゃんは紅茶に口をつけながら、私の答えを促す。
もう言うべきことは決まっているが、その前にチラリとよっすぃーの方を見る。
よっすぃーは誰とも目を合わさずにただ俯いていた。大好きなベーグルにも手をつけていない。
やっぱりよっすぃー緊張してる。
私は、これ以上この場の雰囲気を悪くしてはいけないことを悟った。自然に、開くはずの口も重くなってしまう。
「用がないなら、帰って食事の準備しなきゃ駄目なんだけど」
「え、もしかして、一人暮らし?」
「言ってなかったっけ?」
そう言って、横に置いていたバックに手を掛ける。
「ああ、ちょっと待って!」
慌てて呼び止める。
よっすぃーも、止めようと少し腰を浮かせていた。
「冗談よ。早く話して」
梨華ちゃんは何事もなかったかのように腰をおろす。
私は胸をなでおろすと、ようやく意を決した。
122 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月24日(日)00時32分12秒
「あの……今日のこと……」
「別に気にしてないよ」
「え?」
私が言い終わる前に、梨華ちゃんが言葉を挟んだ。
「だから、気にしてないよって言ったの。それで終わりだったら、次は私が質問していい?」
「あ……うん」
「それ、何で?」
そう言うと、梨華ちゃんはゆっくりと私の目を指差す。
一瞬何のことかわかんなかったけど、落ち着いてみるとすぐにわかった。
ああ、梨華ちゃんは私の眼鏡のことを言ってるんだ。
「もういらないから」
そう言ってニコリと微笑む。
「ふうん……」
そんな私たちの会話を、よっすぃーは心配そうな表情で見守っている。
「梨華ちゃんも、眼鏡を外せばきっといろんな物が見えるよ」
自分でも、何でこんな偉そうなことを言ってるのかわからなかった。でも、眼鏡を外した時のきれいな瞳が、ずっと心の中に残ってるから。
しかしその後、梨華ちゃんが返してきたのは意外な答えだった。
123 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月25日(月)21時17分20秒
石川・・!!素直になれ!!!!
124 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月26日(火)00時27分06秒
「私、好きな人の前でしか素顔は見せたくないの」
え……?
私はその言葉に固まってしまう。
「あ、そ…そうだよね。ごめんね無理言っちゃって」
私の沈黙を、どう受け取ったのかわからないが、よっすぃーは慌てて梨華ちゃんに謝りだした。
でも少なくとも、よっすぃーは何で私が沈黙したのかをわかっていない。
「ねえ、ごっちん。許してくれたんだから、そろそろ喫茶店から出ようよ」
そう言って、よっすぃーは私の腕を引っ張る。が、私はその手を軽く振りほどいた。
「まだよっすぃーの用事が済んでない」
私の横で、よっすぃーが息を呑んだのがわかった。
「さっきの言葉、どういう意味……?」
「そのままの意味だけど」
「女の子は趣味じゃないんじゃなかったの?」
ニコリと笑う梨華ちゃんに向けて、言葉を放つ。梨華ちゃんの顔が一瞬曇ったのを、私は見逃さない。
私はさらに詳しく追求しようと、口を開いた。
125 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月26日(火)00時28分37秒
「あの!」
私達の緊迫した空気が、その一言でかき消される。
その声の聞こえた方向を見ると、私達の会話をビクビクしながら聞いていたよっすぃーがいた。
でも、もうその顔には怯えの色は見えない。
そして、一瞬私の方を見ると、もう一度梨華ちゃんに向き直る。その時、確かに微笑んでいたように見えた。
「うじうじ悩むのは私の柄じゃないんで、もうはっきり言うね」
そうだ、よっすぃーだってただ私達の会話を聞いていたわけじゃない。ずっと話す機会を覗ってたんだ。
頭の中に、私と一緒に梨華ちゃんに会いに行く、と言ったよっすぃーの顔が浮かんできた。
あの時、よっすぃーにはもう梨華ちゃんに断られる覚悟が出来てた。
「梨華ちゃんのことが好きです。できれば、付き合ってくれませんか?」
「どうして!?」
突然の大声に、周りの人も一斉にこちらを振り返る。
「あの時、趣味じゃないってはっきり言ったじゃない! それなのにどうして……」
あれ……?
私には、今の言葉がどうしても引っかかった。
「あれは……、私に言ったんじゃなかったの?」
私が言った言葉に、梨華ちゃんはハッと顔を上げる。
その後すぐ、よっすぃーもすぐに私の方を見る。私が言った意味がわかったみたいだ。
「そ…それは……」
梨華ちゃんは口篭もると、答えを出さないまま席を立った。
126 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月26日(火)00時29分28秒
「ごめん! ご飯支度があるから、早く帰らないと」
そして、そのまま出口へと駆け出す。
「梨華ちゃん、待って!」
それを見て、よっすぃーも慌てて席を立った。
「え……、ごっちん?」
よっすぃーは信じられないといったように、自分の腕を見る。その腕は、私がしっかりと捕まえていた。
「よっすぃー、もしここで梨華ちゃんを追いかけるなら、梨華ちゃんが傷つくことも覚悟しなきゃ駄目だよ」
本当はもっと前に気付かなきゃ駄目だったんだ。
彼女が眼鏡を使って騙しているのが、他人ではなく彼女自身だったってことに。
127 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月26日(火)00時30分01秒
「きっと梨華ちゃんは、自分で自分を傷つけようとしてる」
そう、きっとそれは市井ちゃんがしたのと同じことだと思う。
私のためを思って、自分の感情を押し殺して。
でも、二人とも間違ってることが一つあるよ。
二人とも、私たちのことを思ってやってくれたんだろうけど。
大好きな人が苦しんでるのを見て、幸せになれる人なんているもんじゃない。
「自分で自分を……?」
よっすぃーが不思議そうに呟く。
「彼女は、誰よりも優しい人だから」
考えてみれば簡単なこと。
梨華ちゃんが矛盾した態度をとる時、そこにはいつもよっすぃーの影があった。常によっすぃーを意識して、何かを話してた。
そしてそれは、よっすぃーが梨華ちゃんへの想いを私に打ち明けた日から始まった。
128 名前:眼鏡2 投稿日:2001年06月26日(火)00時32分02秒
「ん〜、よくわかんないけど」
よっすぃーは、先程までの強張った表情とは違って、どこかとぼけた顔をしている。
「梨華ちゃんが傷つくんなら、その分私が背負っちゃえばいいってことでしょ」
よっすぃーってば、あんまり理解してない。
「だからあ……」
「わかってる」
そう言うと、私の方を見向きもせずにバックを肩に掛ける。
「でも、そんなことは抜きに、私は梨華ちゃんが好きだから追いかける。きっと私はそうしなきゃならない」
呆然としている私を振り返って、彼女は飛び切りの笑顔を見せていった。
「言ったでしょ。何もしないで失うのはやだって。絶対に手に入れて見せるんだから」
その言葉を聞いて、やっぱり梨華ちゃんにはよっすぃーしかいないって思った。
「よっすぃー」
もう一度私は、よっすぃーを呼び止める。
走りかけていたよっすぃーは、テーブルに手をつきながらもなんとか止まる。
「今度は何よ〜」
よっすぃーは、今にも走り出しそうなまま、私のを方へ向き直る。
「全て片付いたら、梨華ちゃんの分もここの料金払ってよね」
さっきのお返しとばかりに、私も飛び切りの笑顔を作る。
それくらいおごってよ、と言うと、よっすぃーは今度こそ喫茶店から出て行った。
私は遠くなるよっすぃーの背中を見ながら、梨華ちゃんが私に素顔を見せてくれた理由についてぼんやりと考えていた。
129 名前:LVR 投稿日:2001年06月26日(火)00時39分05秒
最近更新の速度が遅かったんで、一気にアップしてみました。
最初はここいらで終わろうと思ってたんですけど、もう少し続けます。

>>123 名無し読者さん
石川について、一歩踏み込んで書いてみました。
やっぱり、石川が素直になれるかっていうのが、この話の核ですからね。
130 名前:眼鏡2 投稿日:2001年07月05日(木)11時05分37秒
「ああ、もう、梨華ちゃん何処だよ」
私は、公園の前でそんなことを呟いていた。
こういう時は公園にいるってのが相場のはずなのに。
いや、きっといる。絶対いる。
そんな根拠のない自信を持ちながら、必死に辺りを見回す。
あれ?
公園の近くのスーパーから、白いビニール袋を持った少女が出てきた。
梨華ちゃん……だよね。
「梨華ちゃん!」
そう思ったときには、もう叫んでいた。それに気付き、梨華ちゃんがこっちを振り返る。
「よっすぃー……」
梨華ちゃんは少し戸惑って表情で答えた。
私はすぐに梨華ちゃんのもとへ駆け寄る。
「えっと、その袋どうしたの?」
何も話すことを考えていなかったので、とりあえず思いついたことを言ってみる。
「どうしたのって……。今日の晩御飯だけど」
あ、ご飯支度って嘘じゃなかったんだ。公園でブランコに乗ってる姿を想像してたのに。
「そうなんだ……。その、ちょっと時間あるかな? 公園で話したいんだけど」
私の言葉に、しばらく何か考えているようだったけど、「わかったわ」と言って、私の後についてきてくれた。
131 名前:LVR 投稿日:2001年07月05日(木)11時06分12秒
「えっと、何から話そうか。何でも聞いていいよ」
二人で誰もいないベンチに腰掛ける。
しばらく、二人でたわいもない話をしていた。きっと、どちらともなく話の確信に触れるのを恐れていたんだ。
ひっそりと静まり返る公園に、私達の声だけが響いていた。

「あのさ」
「ん、何?」
「もう一つ聞いていいかな」
「……うん」
私が声をかけたとき、梨華ちゃんの表情が一瞬強張った。理由はわかっている。
私の顔が強張ったから。
「私のこと嫌いっていうの、本当?」
さすがに、この質問をするのには勇気が必要だった。
でも、ずっとずっと、知りたかったこと。
132 名前:LVR 投稿日:2001年07月05日(木)11時06分42秒
「なんでだろうね」
しばらく黙っていた梨華ちゃんが、ゆっくりと口を開いた。
「え?」
突然の言葉に、思わず私は聞き返す。
「何であなたたち相手だと、ペースが崩れちゃうんだろう」
「……梨華ちゃん」
「っていうか、あなたたちが崩してるんだろうけど」
そう言うと、私を見て微笑んだ。
「私が考えてる通りにすれば、誰も傷つかないのに」
「梨華ちゃん以外は、の間違いじゃないの?」
少し俯いていた梨華ちゃんは、ハッと顔を上げる。
「私のことは、どうだっていいんだ。梨華ちゃんの気持ちを聞くためにここに来たんだから」
私の中で、梨華ちゃんと結ばれるなんてことは、二の次になっていた。
喫茶店にくる前、ごっちんが言ってた言葉。
(梨華ちゃんは、眼鏡を外さなきゃ駄目なんだ)
何のことだかわからなかったけど、今なら理解できる。
「私……私は……」
そこまで言って、ふうっと息を一つつく。
「好きって言ってもらえて嬉しい。でも怖いの……。きっと私が受け入れたら、よっすぃーは周りから変な目で見られる。……ううん、違う、よっすぃーが聞いてるのはそんなことじゃないんだよね」
梨華ちゃんの頭はすっかり混乱しているようだ。言葉の途中途中で、何度もかぶりを振っている。
その姿は、痛々しかった。
他人に向けたその優しさは、鋭い刃となって自らを傷つける。
133 名前:LVR 投稿日:2001年07月05日(木)11時07分25秒
「梨華ちゃん、目つぶって」
「え?」
「いいから、早く!」
「は、はい!」
少し戸惑っていた梨華ちゃんも、私が強い口調で言うと慌てて目を閉じた。
私は梨華ちゃんに近づき、そのまま強く抱きしめる。
「……よっすぃー!」
「目を開けないで」
一瞬だけ目を開いた梨華ちゃんと視線が交錯したけど、その言葉にもう一度まぶたを閉じる。
「そのままで聞いて欲しいんだ。余計なこと考えないで、余計なフィルタを通さないで、私の言葉を直接感じて欲しい」
「……うん」
「私には全て理解してあげられないかもしれないけど、守ってあげることは出来る。私のものになって欲しいなんて我が侭なこと言わないから、私をずっと傍において下さい」
そう言って、抱きしめていた腕に力をこめる。
「よ…よっすぃー、苦しいよ」
「あ、ごめん!」
慌てて抱きしめていた腕を緩める。
「えっと、あんまり近いと、眼鏡掛けてても変わらないね」
不意に梨華ちゃんが笑った。
優しい、優しい笑顔。初めて見る笑顔。
いったい今まで何人の人に、この笑顔が向けられたのだろう。
そう考えると、とても悔しくなった。
「でも、ごめんね。眼鏡は外せない。外すのが怖いんだ」
「そっか……」
梨華ちゃんの言った言葉が何を意味するのかは、馬鹿な私にだってわかった。
梨華ちゃんは最後まで、私の気持ちを断るときまで優しい梨華ちゃんのままだった。
134 名前:眼鏡2 投稿日:2001年07月05日(木)11時08分25秒
「それでね、ここからは私の独り言」
わかりきっていたこととはいえ、やはり落ち込んでいる私の隣りで、梨華ちゃんが何か話し始めた。
「今はまだ外すのが怖いけど、頑張って外せるようにするから、もう少し待っててくれないかな」
「梨華……ちゃん?」
「真希ちゃんにだって外せたんだもん。絶対外してみせるよお」
梨華ちゃんはおどけた笑顔を見せる。独り言だから聞き流していいよ、とネガティブにフォローするのも忘れない。
「待つ!」
「きゃっ!」
突然大きな声を上げた私に驚いたのか、梨華ちゃんは後ろへ飛びのいた。
「絶対待つから! 一年経ったって、卒業したって」
そこまで言って、初めて梨華ちゃんが驚いていることに気付いた。
「あ…、興奮しちゃった。ごめん」
「ううん、嬉しいよ」
梨華ちゃんはもう一度私に近づくと、今度は自分から私を抱きしめた。
「梨華……ちゃん……」
もう、情けないなあ。
自分でやっといて、相手にやられた途端動けなくなるんだもん。
「今はこれが精一杯だけど、私の素直な気持ち」
私は、何も答えなかった。
ただ、梨華ちゃんのその言葉を何度も何度もかみ締めていた。
135 名前:眼鏡2 投稿日:2001年07月05日(木)11時31分20秒
この気持ちがいつまで続くかわからないし、梨華ちゃんが本当に眼鏡を外せるのかはわからない。
もしかしたら、今まで梨華ちゃんがしてたように、眼鏡をかけたまま過ごしていったほうが幸せなのかもしれない。
でも、だからといって、今持っているこの気持ちは偽物なんかじゃない。

だから、きっと、間違いだったって後悔なんてしないよね。

私の気持ちが通じたのかどうかはわからないけど、梨華ちゃんはにっこりと微笑んだ。
この笑顔を見るためなら、どんな苦労だって乗り越え行こう。
それが、私の唯一見つけることの出来た道なんだから。



「いいこと思いついた!」
「え?」
「梨華ちゃんコンタクトにしなよ。そしたら眼鏡がなくてもよく見えるよ」
「えっと、眼鏡を外さないのは、見えるとかそう言う問題じゃないし……」
「じゃあ、その上にサングラスをつけたら!」
「それじゃ意味ないよう……」

眼鏡2……完
136 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月07日(土)00時43分33秒

ラストの健気でおバカなよっすぃ〜がいいかんじ(w
137 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月07日(土)20時35分37秒
お疲れ様でした!!
いや〜、よかったっす!!
梨華ちゃんも相変わらず素直じゃないけど、
これからって感じですね。
続編など期待してますyo!!!
138 名前:LVR 投稿日:2001年07月08日(日)02時26分39秒
タイトル間違ってました。
正確には、「眼鏡2〜side H〜」です。
皆さんのレスのおかげで、最後まで書くことが出来ました。
ありがとうございます。

>>136 名無しさん
最後まで読んでくださってありがとうございます。
今までずっと話が重かったんで、最後くらいは馬鹿っぽくしようかなと(笑
なので、そう言ってもらえて嬉しいです。

>>137 名無し読者さん
ありがとうございます。ようやく終わりました。
眼鏡シリーズは、これでとりあえず完結です。
まあ、まだ書き足りないことがあるので、続編も考えているのですが、その前に別なのも書きたいと思います。
一応、短編集なんで(笑
ということで、何かリクエストとかないですかね。
139 名前:LVR 投稿日:2001年07月08日(日)02時28分11秒
すみません。
レスだけなのに、ageてしまった……
140 名前:遠回り 投稿日:2001年07月11日(水)20時46分39秒
「は〜い、収録終わりです。お疲れ様でした」
今日も一日ハードな仕事が終わった。なんか、今日は本当に辛かった気がする。
「矢口さ〜ん、お疲れ様ですっ」
「よっすぃー……、お疲れ」
おかげで、トレードマークの笑顔も燃料切れだ。
それを見て機嫌が悪いと思ったのか、よっすぃーはそそくさと帰っていく。
ああ、ごめんよっすぃー。でも、マジで疲れたんだよー。
しかも、聞いた話によると、このスケジュールが一週間以上も続くらしい。
……あたしを殺す気ですか。
141 名前:遠回り 投稿日:2001年07月11日(水)20時47分44秒
冗談じゃなく機嫌が悪くなりかけていると、ドアの前にメンバーの姿が見えた。
「あれ、梨華ちゃん。何やってんの?」
「矢口さ〜ん、助けてくださいよぉ〜」
あたしが声を掛けると、梨華ちゃんは泣きそうな顔であたしのもとへ駆けて来た。
話を聞くと、どうやら地図を家に忘れてきたらしい。
「って、これだけ長い間住んでるのに、まだ地図なんか使ってるわけ?」
「違いますよ。今週一週間ここでお仕事じゃないですか。実家の方が近いから、実家から通うことにしたんです」
そう、今回の仕事場は東京ではなかった。
それなのに、ホテルに泊まるというわけではない。ここからなら、各自で自宅に帰れると判断したようだ。
とはいえ、実家への帰り方がわからないのもどうかと思うが。
「しょうがないなあ。矢口も途中まで一緒だから、途中まで送っていってあげるよ」
さすがに、梨華ちゃんのあの泣きそうな顔を見ながら放っておくなんてこと、あたしには出来ない。
それに、あたしがこんなことを言い出したのには、もう一つの理由があった。
142 名前:遠回り 投稿日:2001年07月11日(水)20時48分29秒
「ホントですか! お願いします」
抱きつかんばかりに喜んでいる梨華ちゃんに、「わかったわかった」と苦笑しながら答えてやる。
ただ、もしかしたら、ずいぶんと引きつった笑顔になっていたかもしれない。
あたしは、自分の胸の鼓動が激しくなっているのに気付いていた。
143 名前:遠回り 投稿日:2001年07月11日(水)20時49分09秒
「梨華ちゃん、こうやって二人で帰るのも久し振りだね」
「そうですね。入ったばっかりの頃を思い出します」
彼女が引っ越す前、あたし達はよくこうやって二人で歩く機会があった。
記憶によると、梨華ちゃんは先輩である私といるのに緊張しているのか、ほとんど無言だった。そして、それを何とか打破しようと喋り続けるあたし。
思えば、ずいぶんと変わったよなあ。
二人の関係も、二人の立場も。
裕ちゃんがいた頃には好き勝手に喋っていた私が、今ではみんなの会話をまとめなくてはいけない。
加入当初は一番印象の薄い新メンバーと言われていた梨華ちゃんが、新曲のセンターを任せられるまでになった。
けど、変わらない部分だってある。
あたしは、今でも梨華ちゃんのことが好きだ。
144 名前:遠回り 投稿日:2001年07月12日(木)00時28分08秒
新メンバーとの初顔合わせのとき、梨華ちゃんを見た私は一瞬で虜になった。
どこがよかったとか、そんなのはもう覚えてはいない。
ただその笑顔が、可愛い声が、彼女を作っている全ての要素が私の心を掴んで離さなかった。
だから、たんぽぽに彼女が入ってきた時、素直に嬉しかったし、このユニットを頑張っていこうっていう気にもなった。
それが、こんな風に好きだなんていえない空気になってしまったのは、どうしてなんだろう。
それはきっと、あたしがあたし自身よりも、梨華ちゃんのことを好きになってしまったから。
145 名前:遠回り 投稿日:2001年07月12日(木)00時28分46秒
梨華ちゃんは今でこそ、自分のキャラが出来ているけど、以前はよくそのことで悩んでいた。
何度もカオリに相談に行ったりもしていた。
何であたしのところに相談にこないのかっていう怒りもあったけど、それ以上に何もしてあげられない自分が悔しかった。
その頃だと思う。番組の中で裕ちゃんが梨華ちゃんのことをいじり始めたのは。
そして、その後に決まってあたしの方を見てウインクをする。
その時には何のことやら意味がわからなかったけど、梨華ちゃんの人気が出始めているというのを聞いたとき、ようやく裕ちゃんの意図がわかった。
裕ちゃんは気付いてくれていたんだ。
自分のキャラが出せなくて困っている梨華ちゃんと、何も出来なくて悔しい思いをしているあたしに。
それからあたしは、裕ちゃんとともに番組内で梨華ちゃんをいじるようになった。
梨華ちゃんのファンに嫌われても構わなかった。
梨華ちゃん自身にすら嫌われても構わなかった。
とにかく、少しでも梨華ちゃんが喋れそうな機会があるのなら、私はそうなるように仕向けた。
裕ちゃんの後を引き継いだラジオでも、なるべく梨華ちゃんの話題を出すようにしていた。
146 名前:遠回り 投稿日:2001年07月12日(木)00時29分26秒
「矢口さん、何を考えてるんですか?」
しばらく何も話さなかった私の顔を覗き込んで、そんなことを聞いてきた。
「いや、昔はよく二人で帰ったなあって」
ああ、そうですね、と彼女が頷く。
本当はちょっと違うんだけど、納得してくれたようなのでそれ以上は何も言わなかった。

あたし達は電車を降りると、近くにある駅を目指して歩き出した。
梨華ちゃんはこの駅にはじめて降りたのか、辺りをキョロキョロ見回している。
「何キョロキョロしてんだよ。矢口が恥ずかしいじゃんか」
「だって初めてなんだから、しょうがないじゃないですかぁ〜」
相変わらず力が抜けるような声で訴えてくる。
でも、それすらもたまらなく好きなんだけどね。
147 名前:遠回り 投稿日:2001年07月12日(木)00時30分31秒
ここから駅までは基本的に一本道だ。
始めて来た人でも、誰かに道を聞けば間違うということはない。
当然あたしだって、そんな道を間違えるはずはない。
だけど、あたしは最初の交差点を左に曲がった。
その後も曲がらなくていい道をわざと曲がり、少しでも駅までの時間を稼ぐ。
「でも、矢口さんがいてくれてよかったです。こんない道、私じゃ絶対に覚えられませんよ」
突然、梨華ちゃんがそんなことを言って微笑んだ。
胸にチクリと走る痛み。
ごめんね。
あたし、梨華ちゃんがこの道を知らないのをいいことに、遠回りしてる。
少しでも長く話したいから。
148 名前:遠回り 投稿日:2001年07月12日(木)00時31分26秒
「あ、駅ですね」
梨華ちゃんがそう言うまで、あたしは駅についていることに気付かなかった。
時計を見ると九時を回っている。五分とかからない道を十五分近く歩いていたらしい。
「ありがとうございます。本当に助かりました」
なんか……、メチャクチャ罪悪感があるんだけど。
でもあたしは、罪悪感ついでにもう一つ提案することにした。
「道覚えらんないでしょ。明日迎えにきてあげようか」
「え……、でも悪いですよ。私が道覚えられないせいで、矢口さんに迷惑掛けるの」
「いいって。普段はずうずうしいくせに何でこんなときだけ遠慮するんだよ」
それに、あたしだってあんな道覚えられません。
「じゃあ、お願いしていいですか?」
「ドンと来い!」
そういって小さな体を精一杯広げて胸を叩く。
かわいいですね〜、なんて頭を撫でられたから、恥ずかしくて思い切り手をはたいてやった。
「まったく、一言多いんだよ。じゃあ、明日遅れるなよ」
「は〜い」
149 名前:遠回り 投稿日:2001年07月14日(土)16時12分08秒
それから毎日あたし達は一緒に仕事に行くようになっていた。
楽しい時間は早く過ぎるって言うけど、もうここでの仕事も明日が最後だ。
今日もいつもの様に梨華ちゃんとあの道を歩く。
「後二日で、また一人暮らしなんですよね。大変になるなあ」
「じゃあ、自宅から通えば?」
「今度は移動が大変じゃないですか」
自宅から通えば、こんな一言を言うだけでドキドキしている自分に驚く。きっと、梨華ちゃんにはあたしの真意、伝わってないんだろうけどね。
「今日終わったら、どこかご飯でも食べに行きませんか?」
そんなあたしの気持ちを知ってか知らずか、梨華ちゃんはそんなことを言い出した。
「うん、行く行く! 今日ラジオがあるからその前でいい?」
「はい! 今日の仕事、頑張って早く終わらせましょうね」
梨華ちゃんは満面の笑みを浮かべる。
くぅ〜、かわいいなあ。
でも、なんかさりげなく前進してるよね。ばれないように遠回りした甲斐もあったってもんだ。
よし! 絶対に早く仕事を終わらせて、梨華ちゃんと一緒の時間を長くするぞ!
150 名前:遠回り 投稿日:2001年07月14日(土)16時13分29秒
しかし、現実とは残酷なもので……。
午後八時。
まだ仕事が終わっていなかったりする。
「矢口さ〜ん、そろそろラジオ間に合わなくなるんで、車に乗ってください」
スタッフの方の声が、仕事場に響き渡る。
メンバー達はその言葉でようやく今の時間に気付いたのか、押している仕事に溜息をついていた。

チラリと梨華ちゃんのほうを見る。
あたしと目が合うと、気にしないで下さいとでも言うように、優しく微笑んでいる。
……梨華ちゃんが気にしなくても、私が気にするっつーの!
「スタッフさん、後三十分何とか……」
「駄目です! 今でももうぎりぎりなのに」
「……は〜い」
あたしは、なす術もなく車に乗せられた。
151 名前:遠回り 投稿日:2001年07月14日(土)16時14分00秒
ラジオが終わった後、あたしはさっきの仕事場にUターンさせられていた。
「ちょっと! これって、仕事させすぎじゃないですか?」
そんなあたしの怒りも、ごめんごめんと平謝りするスタッフに受け流されて、仕事は進められていく。
「もう駄目〜」
仕事が終わる頃には、あたしは疲れのあまり、床に突っ伏すことしか出来なかった。
「どうする? ここに泊まっていって方が楽じゃない?」
確かに、スタッフの言う通り、ここに泊まっていったほうがいいのかな。
ってか、帰ってたら寝る時間なんてないじゃん!

その時、携帯電話の着信ありの表示が目に入った。メールも届いてるようだ。
「えっと、『さっき電話を掛けたんですけど、仕事が終わってないようだったので、また掛けなおします』……? あーーーー!!」
慌てて着信を確認する。三件とも梨華ちゃんからだった。
「スタッフさん! やっぱり帰ります」
そういい残すと、あたしは風よりも速くその場を去った。
152 名前:遠回り 投稿日:2001年07月14日(土)16時14分40秒
あたしは待ち合わせの駅まで行くと、時計を確認する。
よかった。まだ待ち合わせの時間には余裕がある。
でも、梨華ちゃんの最寄の駅まで歩く時間を考えると、あの遠回りな道を行く時間はなかった。大体、一人なのにあんな面倒な道を行く意味はない。
あたしは無意識のうちに、近道を選択していた。
でも、それが間違いだった。
あの時、どちらが最初に気付いたのだろう。
ただ、目が合ったときには、頭の中が真っ白になって、何も考えることが出来なかった。
153 名前:遠回り 投稿日:2001年07月14日(土)16時15分39秒
「矢口さん……?」
「梨華ちゃん……」
「仕事で泊まってくるとばっかり……」
そう言うと、彼女は少しばつの悪そうな顔をした。
原因はわかってる。
本来この道は、二人が知っているはずのない、知っててはいけない道だから。
我に返ると、あたしはいろんなことを考えた。収拾がつかなくなるくらいのスピードで、色々なことを考えたけど、確かなことが二つあった。
それは、あたしがこの道を知っていることと、梨華ちゃんもこの道を知っていること。
それに気付いたとき、あたしは恥ずかしさのあまり、来た道を走って戻っていた。

あんなことがあったから、あたしは仕事の間中、梨華ちゃんと目を合わせることが出来なかった。
彼女が実家に泊まる、最後の日だって言うのに。
ここ数日、あたしはひいき目無しに、梨華ちゃんと仲良くなったと思っていた。
けど、ここでの仕事が終わったら、あたし達はまたもとの関係に戻ってしまうだろう。
それは、しょうがない事だ。それがわかっているから、有効な手段がとれるというわけでもない。
でも、今朝の出来事で、あたしは行動することすら出来なくなってしまったんだ。
154 名前:遠回り 投稿日:2001年07月14日(土)16時16分09秒
「終わった〜!」
「みんなお疲れ様〜!」
ようやく、この長くて、苦しかった仕事も終わりを迎えた。
メンバーの顔には、やり終えたという充実感が浮かんでいた。
「矢口さん……、あの」
その中で一人で浮かない顔をしていた梨華ちゃんが、あたしに話し掛けてきた。いや……、浮かない顔をしているのは、あたしも同じか。
「ん、何?」
あたしは力ない表情で、微笑む。
「ごめんなさい! あたしが今朝矢口さん待たないで、さっさと来ちゃったから怒ってるんですよね? でも、約束を破るつもりじゃなくて、矢口さん仕事だと思ったから」
あれ?
何だよこの子。
メチャクチャ勘違いしてるぞ。
「今日も一緒に帰ってくれますか」
「……」
「駄目……ですか?」
「……っく、くくく……」
「矢口さん?」
「きゃはははははは、馬鹿だよ梨華ちゃん!」
思わず、腹を抱えて大笑いしてしまう。
「酷いです! 仕事中ずっと悩んでたのに!」
「だからネガティブだって言われんだよ。そんなことでこのあたしが怒るわけないじゃん」
「じゃあ、帰ってくれるんですか?」
「当たり前じゃん」
よかったよかった。もうしばらく、梨華ちゃんとは話せないんじゃないかと思ってたよ。
ってことは、何だ?
あたしも見当外れな心配をしてたってこと?
いやいや、違う。あたしは断じてネガティブなんかじゃないぞ!
そんな葛藤しているあたしを、梨華ちゃんは不思議そうな顔で見つめている。
「あ、ちょっと待ってね」
あたしは慌てて自分の荷物をまとめた。
155 名前:遠回り 投稿日:2001年07月14日(土)16時16分53秒
「ようやく終わったな〜」
「そうですね、今回の仕事、かなり大変じゃありませんでした?」
あたし達は、最後だということもあってか、途切れることもなく話し続けた。
そして、いつもの、あの別れる駅にたどり着いた。

「もうしばらくここに来ることもないんですね」
ちょっと感慨深そうに梨華ちゃんが呟く。
「あたしは毎日来るけどね」
ついどうでもいいところで、口を挟んでしまった。
梨華ちゃんは、口を尖らせている。
「ごめんごめん、じゃあ帰ろっか」
あたしは迷わず近道の方へ歩き出した。
親から聞いたのかどうかはわからないけど、こっちの道を知っているなら、もう遠回りをごまかすことは出来ない。
と、その時、私の手が引っ張られた。
そしてそのまま、いつものあの遠回りの道へつれられていく。
「……梨華ちゃん?」
あたしは戸惑っていた。
確かに梨華ちゃんは、今朝近道の方から歩いてきたはずだ。
「私達が歩く道は、こっちじゃないですか。それとも、矢口さんはそっちの道が好きですか?」
こともなげにそう言うと、梨華ちゃんは満面の笑みを浮かべた。
「まさか。言っとくけど、この道教えたのはあたしなんだからね」
あたしも負けずに返す。
これって、少しは進展したってことなのかな。
156 名前:遠回り 投稿日:2001年07月14日(土)16時17分27秒
あたしは梨華ちゃんと仲良くなるために、こんなに回りくどくて遠回りな方法しか取れなかったけど。
でも、遠回りじゃないと見えない景色だってたくさんあるから。
あせらず、少しずつでも前に進めればそれでいいんじゃないかって思う。

「ね、梨華ちゃん」
「え?」

少なくとも、あたしの左隣の景色は、こんなにすばらしいんだから。

あたしは、ぬくもりの感じられる左手に少しだけ力を入れた。
157 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月14日(土)17時35分59秒
こういうまりりかがもっと増えてくれたらなぁ。
実際はあの二人仲いいと思うなあ。
158 名前:LVR 投稿日:2001年07月15日(日)00時46分49秒
書くのを忘れていましたけど、これで「遠回り」終了です。

>>157 名無しさん
この作品の初レス、ありがとうございます。
僕も仲いいと思いますよ。ラジオとかで石川の話をする矢口さん、楽しそうですし。
自分ではこれが精一杯なんで、誰かまりりか書いて欲しいです。
159 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月15日(日)10時30分44秒
なんか、あちこちで矢口さん叩かれて辛かったんですけど、
自分と同じ思いを作者さんが(自分の思っている以上の形で)書いてくれて
とってもうれしかった。
こんなほのぼのした話とっても好きです。
160 名前:LVR 投稿日:2001年07月15日(日)17時54分52秒
>>159 名無し読者さん
ありがとうございます。
僕は直接見たわけじゃないんですけど、矢口さん叩かれてるらしいですね。
今が一番きついときだと思うんですが……。
とりあえず、もう一個今日書いたので、あげたいと思います。
161 名前:道草 投稿日:2001年07月15日(日)17時55分53秒
「矢口さぁん、私もミニモニに入れてくださいよ〜」
「うっさいなあ、これはチビの特権なんだよ!」

いつもの様に、楽屋で石川とじゃれあう私。
その様子をメンバー達は苦笑気味に見守る。

……いつもの様に。
こんなことが日常になったのは、いつからだったろう?
162 名前:道草 投稿日:2001年07月15日(日)17時56分26秒
裕ちゃん……、冗談でしょ?」
私を見つけると、すぐに駆け寄ってきて抱きしめる裕ちゃん。
嫌がっているところを無理矢理にキスする裕ちゃん。
確かに、テレビ番組とかで「矢口のことが好き」とか堂々と公言しちゃってるけど、絶対冗談なんだと思ってた。
けど。

「本気やで?」
今までにないほど真剣な表情で私を見つめる裕ちゃんに、思わず口篭もる。
「……でも、女の子同士だし……」
それだけ言うのが精一杯だった。
胸は外に聞こえそうなくらいにドキドキなってるし、まともな思考力は失われていた。
163 名前:名無し 投稿日:2001年07月15日(日)17時56分49秒
>157
私もそう思います!テレビでも色々言ってるけど、別に酷くないですよね?
むしろ、梨華ちゃんが前に出てる気がします。それに『愛』が感じられるのは
私だけですかねー?だって、嫌いで「黒い!」とか言ってたら『おねモニ』で
隣の梨華ちゃんに、もたれかかることはないと思いません?
なんか力説しちゃいました…
作者さん。本編も頑張って下さい。まりりかも…
164 名前:道草 投稿日:2001年07月15日(日)17時56分55秒
「こんな恋愛、人生から言ったら、どうでもいいことなのかもしれん」
いきなりの裕ちゃんの言葉に、私は黙って耳を傾ける。
「けどな、道草のない人生なんて、つまらんやんか」
そういって、笑った。
それも見て、ああ、私もこの人が好きなんだな、って思った。
そのまま裕ちゃんのもとに走っていって、今度は私から抱きついた。

「なんや、急に甘えん坊になったなあ」
少し苦笑気味に呟く。
それでも、裕ちゃんは私のことを優しく包んでくれた。
「矢口……、好きやで」
その一言が、本当に私を安心させる。
165 名前:道草 投稿日:2001年07月15日(日)17時58分01秒
だから、ずっとその言葉を聞いていたかった。
ずっと…ずっと…ずっと…、離れたくなかった。

はっきりと別れを言われたわけじゃない。
でも、裕ちゃんがモーニング娘。を卒業する時、私に言った「今までありがとうな」って言葉。
あれが何を意味してるかなんて、私にだってわかるよ。
だから私は、まだ裕ちゃんと会う機会はいくらでもあるっていうのに、泣いちゃったんだ。

でもね、私、こうなること、何となくわかってたよ。
だって、道草をしたって、最後には家に帰らなきゃ駄目じゃん。
いつまでも道草してることなんて、出来るわけがないんだよ。
166 名前:道草 投稿日:2001年07月15日(日)17時59分18秒
「ちょっと〜、矢口さん聞いてるんですか?」
「へ?」
気が付くと、石川は拗ねたように私を睨んでいた。
「ああ、ミニモニね。そんなの、私じゃなくってつんくさんに頼めよ〜」
そう言った途端、石川の表情がさらに険しくなった。
「もう〜、やっぱり聞いてないじゃないですか!」
いつのまにか、話の流れが変わっていたらしい。
「今日、矢口さんの家に泊まってもいいですかって聞いたんです!」
「ふ〜ん、そういうことね。って、ええええっ!?」
私達のケンカもいつものこととして流していたメンバーだったけど、いきなりの大声に一斉に視線を向ける。
「……私の家にくるの?」
「はい」
石川は少しだけ顔を赤くしながら、コクリと頷いた。
「矢口だって、もう子供じゃないんだからさあ。何すっかわかんないよ?」
「ちっちゃいくせに……」
ポツリと呟く。
「……んだとぉ!!」
167 名前:道草 投稿日:2001年07月15日(日)17時59分57秒
私は、逃げる石川を必死に追いかけた。
捕まえた頃には、二人ともくたくたで怒る元気もなかったから、手をつないで一緒に帰った。
その手からは、石川の緊張がピリピリと伝わってくる。
なんか、昔の私みたいで可愛いなあ。

「ちょっと暑いね。喫茶店でも寄ってくか」
しかし、その言葉に対して、石川はフルフルと首を横に振った。
「矢口さんと二人きりでいたい」
手から伝わるくらいに緊張してるはずなのに。
石川は顔をさらに真っ赤にさせて、そう言った。
その純粋さに、思わず笑みがもれる。

「そうだね、道草は無しだ」

様々な店が建ち並ぶ通りを、私達はただひたすらまっすぐに歩いた。


道草……完
168 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月17日(火)00時53分51秒
まりりかって珍しいけど、なんか雰囲気いいですね。
新曲では、石川の語りの時、矢口が耳に息吹きかけてましたよ。
ここの小説思い出して、ちっと妄想した(w
169 名前:LVR 投稿日:2001年07月17日(火)02時15分46秒
>>163 名無し さん
そうですね、僕もそう思います。
周りからいじられたから、今の石川さんのキャラがあるんだと思いますし。
本編って眼鏡のことですか?
続編は考えてるんですけど……、もしかしたら更新するかもしれないです。

>>168 名無しさん
ここの小説を思い出してくれて、ありがとうございます(笑
新曲マジっすか!?
もしかしてライブに行ったとか?
早く見てみたいです。
170 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年07月24日(火)01時43分38秒
――ずっと、好きな人がいた。

いつも笑ってて、寝るのが好きで、軽そうなんだけど、優しくて思いやりのある人。
ちゃんと話したことはないんだけど、優しい人だって言うのはすぐにわかった。
だって、話せない分ずっと見ているから。笑っている姿も、怒っている姿も、泣いている姿も全部。
だから、彼女に想っている相手がいることも当然知っている。
応援は出来ないけど、邪魔だけは絶対にしたくなかった。
171 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年07月24日(火)01時46分20秒
でも、ある日彼女は突然眼鏡をかけてきた。

それを見て笑うクラスメートに、彼女はおどけて見せる。
でも、私にはわかったんだ。
彼女が何かを隠していること。
ううん、何か、じゃないね。
ちょっとしたことだったら、彼女は上手くごまかして見せる。
彼女が眼鏡をかけてきてまで、ごまかさなければならないこと。
きっと、市井さんと何かあったんだ。
172 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年07月24日(火)01時47分49秒
結局クラスメートがその様子に気付くことはなかった。
唯一、吉澤さんだけが心配そうな顔をしていたけど、気にかかる、といった程度だったようだ。
しばらく吉澤さんを見ていたら、不意にこちらを見た吉澤さんと目が合った。
吉澤さんはすぐに視線をそらす。
……嫌われてるのかな。
できれば、吉澤さんは彼女の親友だし、仲良くなりたいんだけど。
でも、それもたいしたことじゃない。
吉澤さんが彼女の親友じゃなかったら、きっと今のことを気にも止めなかっただろうから。
173 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月31日(火)01時02分41秒
祝!!
続編?が始まってたんですな。
やはり石川の思い人はあの子でしたか……。
続き期待してます〜。
174 名前:LVR 投稿日:2001年08月01日(水)01時06分32秒
>>173 名無しさん
まだ、吉澤と市井しか名前が出てきてないけどバレバレですよね(笑
一応この話の構想はずっと前からあったんですが、アップするかどうか迷ってました。
過去をなぞるだけなので退屈かもしれませんが、次の話の布石として読んでください。
175 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月01日(水)01時08分32秒
幸運にも(彼女にとっては不幸かもしれないけど)、彼女が眼鏡をかけてきたことがきっかけで、私は彼女と話す機会が増えた。
大体は、みんなが彼女が勉強できないのを私と比較してからかっているだけだったんだけど、それでも私は嬉しかった。
たまには優等生っていうのも役に立つんだな。
彼女の方も私を気に掛けてくれてるみたいで、屋上で二人きりで話をしたりした。

そのころからだった。
吉澤さんと話す機会が増えたのは。

今思い返してみれば、彼女が吉澤さんと私が話すように仕向けていた気がする。
でも、少しずつだけど、吉澤さんとも仲良くなることができた。
全てが上手く回っているように思えた。
そんなはず、あるわけないのに。

歯車が狂い始めたのは、あの日からだった。
176 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月01日(水)01時09分05秒
卒業式が近づいたある日、私は彼女と話す機会があった。
「そういえばさあ、市井先輩も卒業しちゃうんだよね」
吉澤さん――よっすぃーが寂しそうに呟く。
ズキンと胸が痛んだ。
市井紗耶香。彼女の想い人。
ライバルだなんて呼ぶことすらおこがましい。
「よっすぃー、市井先輩って誰?」
震える声で尋ねる。
どうやら、二人にはばれてないみたいだ。
「え、えっと、ごっちんの仲のいい先輩で、その……」
何故かおどおどしているよっすぃーの言葉を彼女が助ける。
「私は部活に入ってないからさ、仲良くしてくれる先輩は貴重なわけよ」

違う。

「また、偉そうに。いっつも、『市井ちゃ〜ん』って甘えてたじゃない」
「うっさいな」

彼女の目が、どこか違う。
177 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月01日(水)01時09分39秒
「ま、そんなことはどうでもいいじゃん」

別に照れているわけではない。
かといって、市井さんとケンカをしているといった雰囲気でもない。
じゃあ、なんで?
何で市井さんの話をしているのに、あなたはそんな悲しそうな顔をするの?

「梨華ちゃ〜ん」
その時、私は部活の友達に呼び出される。
用件は、卒業していく先輩のことだった。
「あ、ごめんね。先輩に贈る色紙の準備しなきゃ」
二人にそう告げて去っていく。
先輩にはよくしてもらったから、それくらい当然のことだ。
部活をしているときだけは、彼女を頭の片隅に追いやることが出来た。
私にとってのそれは、彼女にとっての市井さんなんだろうか。

市井さん。
何があったのかは知らないけど、このままじゃ終わらせない。
178 名前:SHURA 投稿日:2001年08月01日(水)02時16分54秒
何か切ない予感。
いや、退屈には思いませんよ。期待して待ってますんで。
179 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月02日(木)01時47分33秒
石川さんの「このままじゃ終わらせない」が
腹黒い感じでいいですな。
180 名前:LVR 投稿日:2001年08月02日(木)23時47分11秒
>>178 SHURAさん
優しい言葉ありがとうございます。
少しでも退屈させないように頑張りますね。
SHURAさんの話はどちらも楽しく読ませてもらってるので、 頑張ってください。

>>179 さん
ありがとうございます。
石川がかなり黒くなってますね。
写真集のあどけない笑顔を見てると、罪悪感が……(笑
181 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月02日(木)23時49分23秒
「じゃあ、これ、クラスの部員に回しといてね」
「うん、わかった」
「じゃあ、友達待ってるから」

私は二人が待ってるだろう教室へ引き返した。
中に入ろうとして、扉に手を掛ける。

「私、梨華ちゃんに告白してみようと思うんだ」

……え!?
182 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月03日(金)00時17分58秒
「でも、相手は女の子……」
「わかってる! けどさ、来年になったら受験とかもあるし、今までみたいに話せなくなるかもしれない。それくらいだったら、本人にはっきり断られたいもん」

告白……?
よっすぃーが、誰に?

その言葉で、私の頭の中は真っ白になっていた。
よっすぃーは彼女の親友で……。
それで、私は彼女のことが好きで……。
もう、何がなんだかわからない。
必要のないことまで、頭の中をグルグルし始めた。
183 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月03日(金)00時18分30秒
その後も色々と話をしているようだったけど、片方の耳からもう片方の耳へすり抜けていく。
けど、いつまでもここで立ち尽くしているわけにはいかない。
なんとか、平常心を保って。

「ごめん、遅くなっちゃって!」

まだ少しドキドキする。
きっと、顔も赤い。
でも、彼女達も突然の私の登場に驚いてるみたいで、そんなことには気付かない。
さっきの言葉は死ぬほど驚いたけど、少なくとも両者の情報を持っているのは私だけだ。
主導権は……、私が握ってる。
184 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月03日(金)00時19分11秒
「ここさ、よっすぃーが部活で使いたいって言ってるからさ、屋上にでも行って、2人で話さない?」

彼女のその言葉に、再び心臓が鳴り出す。
きっと、よっすぃーのことについて切り出すつもりのはずだ。

「いいよ」

私は精一杯の笑顔を作って答えてやった。
彼女と二人きりになる。これはチャンスなんだ。
よっすぃーに対してけじめをつける意味でも。

「私も真希ちゃんと2人きりで話したいことがあったんだ。誰にも聞かれたくないから」
彼女――真希ちゃんの……、そして、よっすぃーの肩がピクリと振るえる。

二人とも、これが最善の策だと思ってるんだろうね。
でも、私達三人の関係は、上手くいくことなんてありえない。
よっすぃー、あなたが、真希ちゃんの親友である限りは。
185 名前:和希 投稿日:2001年08月09日(木)13時03分18秒
えっと…はじめまして…。
本編がある上でのこういったサイド的な話は
結構好きだったりします。(苦笑)
梨華ちゃんの心の動き(?)的なものに…
なんというか…。切ない話もいいなぁ…。
とか、思ってしまう今日この頃です。
186 名前:LVR 投稿日:2001年08月16日(木)01時53分45秒
>>185 和希さん
ありがとうございます。
この話はサイド的な色が強いので、どうしても本編の雰囲気を崩せず、
また痛い話になっちゃってるんですが。
どっちかって言うと、ネタばれに近い話になると思うんで、
サイド的な話が好きと言っていただけると助かります。
187 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月16日(木)01時56分26秒
「で、話って何?」
真希ちゃんが私の言葉を促す。
でも、私は何も話さない。
もう一人、この場にいなければならない人がいるから。

カチャ。

微かだけど、ドアの軋む音。
どうやら、主賓のご来場のようだ。
小さな音だったから、きっと真希ちゃんは気付いていないだろう。
188 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月16日(木)01時56分58秒
「今日さ」

なるだけ、大きな声で離す。
真希ちゃんに……そして、ドアの外にいるよっすぃーに届くように。

「まあ、今日に限ったことじゃないんだけど、変な相談受けちゃってさ。
『私、よっすぃーのことが好きなんだけど、仲を取り持ってくれない?』だって。女の子同士で馬鹿じゃないの?」
全てが嘘というわけではない。
私がよっすぃーと話すようになってから、結構相談を受けるようになっていた。
「んで、私が断るとさ、『梨華ちゃんも好きなの?』だって。そんな趣味ないわよ」
その言葉を聞いて、真希ちゃんは呆然としている。
嫌われたかな。
でも、そのときの私には不思議と後悔がなかった。
189 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月16日(木)01時58分24秒
「梨華ちゃん、ひどいよ……。そんなの梨華ちゃんじゃない」
震える声で呟く。
でも、私は言葉を止めない。

「この眼鏡、高校になってからつけたの」
私は眼鏡を外した。
「そしたら、みんなこの眼鏡にだまされた。『梨華ちゃんは、大人しい子なんだ』ってね。おかげで、揉め事に巻き込まれなくて楽だったわ」

ガタン。

その瞬間、ドアの外から階段を下りていく音が聞こえた。
真希ちゃんの顔には後悔の色が浮かんでいる。
きっと、今初めて、よっすぃーがいたことを知ったんだろう。
190 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月16日(木)01時59分03秒
「立ち聞きか、趣味が悪いね」

とどめの一言。
でも、もうよっすぃーはいない。
じゃあ、これは誰へのとどめなの?
それは、私かもしれなかった。
もう、真希ちゃんの目に私は、酷い女としてしか映っていないだろう。

そして、よっすぃー。
もう私に話し掛けてくることはないかもしれない。
でも、仕方のないことだ。

これで、親友になれるかもしれない人と、大好きな人を同時に失ったんだ。
そう考えると、悲しくなったから無理矢理笑った。
もっともっと楽しそうに、涙が出るほど笑い転げたいと思った。
191 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月17日(金)01時08分20秒
「梨華ちゃん、何が悲しいの?」

自分の中では、笑顔は完璧だった。
だから、いきなりそんなことを言われたとき、私はあからさまに動揺した。

「話し始めたときからずっとだよね。何が、悲しいの?」

嬉しさや恥ずかしさ、そして悔しさが入り混じった不思議な感情。
それを持て余した私は、少しパニックになっていた。
何とか今の状況を抜け出して必死にもがく。
192 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月17日(金)01時08分53秒
「私のことより、あなたは何に怯えてるの?」
「え?」
「あなたがその眼鏡で何を隠そうとしているのかは知らないけど、何かを隠してるってのはわかるわ」

私は、なんとか抜け出すきっかけを見つけ出そうと、苦し紛れに以前から思っていたことを口走った。
だから、真希ちゃんがこんなに動揺するなんて想像していなかった。

そして、一つの事実を再確認。
真希ちゃんは、やっぱり市井さんのことを好きで、今もそのことで悩んでる。
だって、それ以外のことでこんな悲しそうな顔をしている真希ちゃんを、見たことなんてないから。
193 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月17日(金)01時11分06秒
「まあ、何だっていいけどね」

私のその言葉で、真希ちゃんはようやく我に返ったみたいだった。
それでいい。
そのために声を掛けたんだから。

でも、もう一つだけ確認できたことがあった。
私は、やっぱり真希ちゃんが好きだということ。
まだ私は、好きな人が誰かのことを想っているのを、平気で見ていられるほど大人じゃない。

「別に、怯えてなんかいない……」

そんな私の考えを、彼女の言葉が遮った。
でも、ただ言ったというだけで、彼女も私がその言葉を信じるとは思っていないようだった。
大体、そんなに動揺した顔をしていたら、私じゃなくたってわかるよ。
194 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月17日(金)01時11分47秒
そこまで考えたら、急に先程まで抱えていた感情がムクムクと顔を出してきた。
市井さんがどういうつもりかは知れないけど、少なくとも私は悲しんでいる真希ちゃんを見たくない。
たとえその笑顔が、私の反対側を向いていたとしても。

「こんな話知ってる?」
「え?」
「眼鏡はね、相手を欺くことも、自分を欺くこともできるんだって」
「へえ……?」

真希ちゃんはいつもの様に、興味があるのかないのかわからないような態度で答える。
でも、少しは気になるのか、語尾が震えてた。
195 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月17日(金)01時12分20秒
「あなたはどっち?」

だから、そんな言葉を投げかけてやった。
真希ちゃんと市井さんの間で何があったのかわからないから、これが正しいことなのかどうかはわからないけど。
でも、このままじゃ駄目だと思った。
真希ちゃんも、私も。

黙って屋上から立ち去る私の背中を、真希ちゃんは黙って見つめていた。
――あなたはどっち?
先程自分の言った言葉が、今度は自分に跳ね返ってくる。
真希ちゃんの方は振り返らなかったけど、彼女の目がそんな風に言っているように思えた。
196 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月17日(金)12時07分48秒
おもしろいですね!!
197 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月18日(土)23時23分55秒
あれから、私はあの二人と話していない。
考えてみれば当然だ。
私はそれだけの事をしたんだから。

そんなことを考えていると、教室の扉のところに見慣れない顔があることに気付く。
クラスのみんなもチラチラと扉の方を見ていた。
その時、一人の少女がその場所へ向かっていく。

まさか。

胸が急に鼓動を打ち始めた。
よく見てみると、見知らぬ人というわけじゃない。
あれは、市井さんだ。
198 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月18日(土)23時25分59秒
私は友達と話す振りをしながら、様子を覗う。
始めは少し警戒した風だった真希ちゃんも、次第に笑顔が見え始める。
市井さんに抱きついて甘える真希ちゃんは、不思議なくらい彼女の魅力を引き立てていた。

こうやって見ると、あの二人は本当にお似合いなんだって思う。
市井さんの傍こそが、真希ちゃんが真希ちゃんでいられる場所。
じゃあ、私は何なんだろう。
真希ちゃんの傍にいる時だって、全然素直になれない。
私は愛し方が、愛のカタチが間違っているのだろうか。

その後よっすぃーと目があったけど、すぐに目を逸らされた。
やっぱりそう。
私は愛するにも愛されるにも、不器用すぎるから、幸せの反対を向いて歩き出しちゃうんだ。
199 名前:LVR 投稿日:2001年08月18日(土)23時29分34秒
毎日更新しようと思ってたのに、熱が出て更新できませんでした。
少しよくなったんで、また頑張ります。

>>196 さん
ありがとうございます。
素直に面白いと言ってもらえると、嬉しいです。
頑張って更新するので、また見に来てくださいね。
200 名前:ミヤビ 投稿日:2001年08月19日(日)01時26分13秒
LVRさん!はじめまして!
体の方は大丈夫ですか?もしかして夏カゼですか?
ミヤビも8月のはじめにひいて、まだ鼻がグシグシしてます。
夏カゼはしつこいですヨ!気を付けてください!

ミヤビはLVRさんの落ち着いた文章がすごく好きなんです!
これからも頑張って下さい!!
201 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月19日(日)12時43分16秒
次の月曜日、教室内はざわついていた。
理由は誰にだってわかる。
真希ちゃんがあの眼鏡を外してきたからだ。

「眼鏡を外すなんて、なんか悲しいことでもあったの!?」
「そっか、誰かに振られたんだね?」

そんな言葉が聞こえてくる。
私は思わず苦笑した。

その逆だ。

真希ちゃんはそんなに弱くない。
眼鏡を外したってことは、市井さんと上手くいったっていうこと。
これで、もう、私の出番は終わったのかな……?
でも、それでもいい。
また今まで通り、私は真希ちゃんを遠くから見つめつづける。
それが、一番自然な関係だから。
202 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月19日(日)12時44分27秒
そんなことを考えていたから、当然真希ちゃんの周りで話されている会話には、注意を払っていなかった。
「ね、梨華ちゃんもそう思うでしょ?」
突然私に話を振られ、焦ってしまう。
「え……、う、うん。そうだね」
話を聞いていなかったけど、とりあえず頷いてみる。

ここで、意外なことに気付いた。
私に話し掛けてきたのは、よっすぃーだ。
どうして?
あの屋上の一件以来、明らかに私を避けているような態度だったのに。
まあ、私から話し掛けることはないから、断定は出来ないんだけど。
203 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月19日(日)12時45分40秒
「ごっちん、ご飯食べに行かない?」
「あ、うん」
それにしても、相変わらず二人は仲がいい。
どちらかに好きな人が出来ても崩れない関係。
あの二人を見ていると、そんな関係もいいかなって思う。そして、それを崩しちゃいけないとも。
やっぱり、私があの二人と距離を置いたのは正解だったのかもしれない。

「梨華ちゃんも行かない?」
え?
また、だ。
「あ……、今日はまだ予習が終わってないから」
そう答えた後、真希ちゃんの方を見た。
真希ちゃんも少し戸惑っているようだ。
きっと、真希ちゃんもあの日のことを考えているんだろう。

「じゃあ、しょうがないね。2人で食べよっか」
よっすぃーの言葉で、二人の視線が外れる。
よっすぃーが屋上に向かうのについていくように、真希ちゃんも歩き出した。
真希ちゃんがまだこっちを見ていたけど、私は目を合わせることはしなかった。
204 名前:LVR 投稿日:2001年08月19日(日)12時52分33秒
>>200 ミヤビさん
初めての感想、ありがとうございます。
心配かけてすいません。
たぶん夏風邪だと思いますけど、だいぶ治ったので大丈夫です。

それにしても、落ち着いた文章って言われたのは初めてです。
なんか照れますね(w
こんな文しか書けないですけど、頑張ります。
205 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月20日(月)18時15分08秒
どういうことだろう。
よっすぃーはあのときの私達の会話を聞いていなかったんだろうか。
そんなことはない。
だってあの時、私は確かによっすぃーの足音を聞いたんだから。

プルルルル。

味気ない音。
この音は、真希ちゃんだ。
そういえば、私の特別な想いに周りが気付かないよう、こんな音にしたんだった。
206 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月20日(月)18時16分11秒
でも、どういうつもりだろう。
よっすぃーに続いて今度は真希ちゃん。
あの時のことを、本当に忘れたとでも言うつもりなの?

しばらく待っていたが、鳴り止む様子がないため、仕方なく電話に出る。
「……もしもし」
思いっきり、不機嫌そうな声を出してやった。
しかし、何の返答もない。
「用がないなら、切るよ」
冷たく言ってやる。
こっちはただでさえ、真希ちゃんに関わらないように努力をしているんだ。
何も用がないのに、それに付き合う義理なんてない。
しかし、次の一言は私の心を大きく揺さぶった。
207 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月20日(月)18時16分51秒
「……ヒック……梨華………ちゃん」
明らかに涙声とわかった。
どういうこと?
人前で、少なくとも私の前で、彼女は泣いてる姿を見せたことはなかった。
市井さんと何かあったのだろうか。
でも、それなら、一緒にいたよっすぃーが何とかするはずだ。

「真希……ちゃん? ちょっと、どうしたの!?」
私の頭の中はパニックになっている。
「梨華ちゃん……ック……助けてよ」
その言葉を聞いたとき、私の中で何かが外れた。
「今、何処にいるの?」
「屋上……」
「わかった。今行くから、待ってて」
私は、無意識のうちに走り出していた。
208 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月21日(火)01時55分29秒
久々に来てみたらいっぱい更新されている。
内容はダークなとこに突入中だけれど幸せ(w
209 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月21日(火)21時51分54秒
「真希ちゃん!」
屋上に着き、ドアを開けると、涙で目を腫らした真希ちゃんの顔が見えた。
「梨華ちゃん……、来てくれたんだ」
私の顔を見た途端、また真希ちゃんの顔から涙が溢れる。
それを見ただけで、ただ事じゃないってわかった。

「私、よっすぃーに嫌われちゃった」
ポツリと、寂しそうに呟いた。
そう、もう一人いたんだ。彼女のことを泣かせられる人物は。
「何が、あったの?」
「この間のことよっすぃー聞いてたんだ」
「そんなことで!」
正直、私は頭に血が上っていた。怒りが込み上げてきた。
私にはとても築けない真希ちゃんとの親友と言う関係。
それをあっさりと放棄してしまう吉澤ひとみに対して。

「よっすぃーに一言言ってくる!」
このときの私は、よっすぃーが下手なことを言ったなら、手も出しそうな勢いだった。
それを見た真希ちゃんが、慌てて止めに入る。
「違うの。私が、私が悪いんだよ……」
そう言うと、ポツリポツリと先程の出来事を語り始めた。
210 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月21日(火)21時53分43秒
「……ね? 私、最悪だよ」
それは、私が見た真希ちゃんの中で一番悲しそうな顔だった。
時々鼻をすするが涙は一向に止まらない。
「でも、悪気があってやったことじゃないでしょ。よっすぃーだったら、きっとわかってくれるよ」
本心からそう言った。
「それに、原因は私なんだよね。こんなはずじゃなかったのに……」
私が絶対に壊さないと誓った、真希ちゃんとよっすぃーの関係。
そのために仕掛けたことが、逆に彼女達をこんなに苦しめたなんて、悔やんでも悔やみきれない。

「ごめんね」

その言葉が私の精一杯だった。
よっすぃーの気持ちもわかる。真希ちゃんの気持ちもわかる。私にも私なりの考えがあった。
そして、私も含めた三人それぞれに罪がある。それは、目を背けられないことだ。
だったらせめて、私が謝ることで、その罪を許してやろうと思った。
どうしようもない、私の罪も。
211 名前:LVR 投稿日:2001年08月21日(火)22時02分21秒
>>208 名無しさん
とりあえず、連載当初の速度に戻そうと頑張ってます。
それにしても、ダークっていう感想をいただけると、
「今、眼鏡を書いてるんだな」って改めて思うことが出来ます。
連載初期は、そういうレスが多かったですから。
何回も書いてるように、これは眼鏡1,2を別視点から見ただけのものなんですが、
以前から読んでくださっている方のためにも、少しでも面白くしたいと思います。
212 名前:ミヤビ 投稿日:2001年08月22日(水)00時32分35秒
LVRさん、風邪はよくなりましたか?
私もLVRさんみたいな落ち着いたいい雰囲気の文章を書きたいのですが
どうしても、おちゃらけてしまうのです(笑)
「眼鏡」を読むたび、ミヤビの頭の中ではドリカムの「眼鏡越しの空」が
流れます。大好きな歌です。
これからも頑張って下さい!!
213 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月23日(木)13時26分30秒
「梨華ちゃん、よっすぃーのことは嫌いですか?」

突然の質問だった。
思わず、私は目を丸くしてしまう。
「嫌いじゃないよ……」
「じゃあ、もし告白されたら付き合う?」
「え?」
どうしたんだろう。
何処か、真希ちゃんの雰囲気が違う。
「どうなの?」
追い詰めるような彼女の口調に、私はどう答えればいいのか迷ってしまう。
「そ…それは……。確かによっすぃーのことは好きだけど」

あなたのことがもっと好き。

でも、そんなことは言えない。
いったらたぶん、全てのものがぐちゃぐちゃに壊れる。
214 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月23日(木)13時27分06秒
「梨華ちゃんは、前言ったみたいに、女の子と付き合うことに抵抗があるんだよね」
そう言った後、私は強く腕を引かれた。
「きゃっ!」
思い切りバランスを崩してその場に倒れる。
その瞬間、私は真希ちゃんに押さえつけられていた。

「じゃあ、私が女の子のこと好きにさせてあげるよ」

真希ちゃんが何を言っているのか、私はすぐに理解が出来なかった。
215 名前:LVR 投稿日:2001年08月23日(木)13時31分54秒
>>212 ミヤビさん
風邪は大丈夫ですよ。そのくせ、昨日は更新サボっちゃいましたが(w
ただぼうっとしてたら夜になって、熱闘甲子園を見て寝ちゃいました。
だから、今日中にもう一回更新できたらと思います。
話は変わりますが、ミヤビさんの文章好きですよ。
加護さんとかがかわいくて、「あんな文章書けないな〜」って思いながら見てました。
216 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月23日(木)23時25分54秒
服のボタンが一つずつ外されていく。
「やめ……」
確かに真希ちゃんと結ばれたいと何度も願った。
でも、私が望んでいたのはこんな形ではない。
「真希ちゃん! お願いだから……」
必死に抵抗するけど、真希ちゃんの力は想像以上に強い。
何も出来ないまま、下着が露わにされる。
「ヒック…ヒック……やめてよぉ……」
一瞬だけ真希ちゃんと目が合った。
何処か遠くを見つめている目……、少なくとも私には向けられていない。
それを見たとき、何故だか哀しくなった。
それは私がされていることにではなく、真希ちゃんのことを想って。
そして、なすがままにされようと思った。
真希ちゃんがそれを望むのなら、私には拒む理由がない。
217 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月23日(木)23時26分36秒
真希ちゃんが私の胸に手をかけたとき、真希ちゃんの携帯が音を立てた。
「うるさいなあ……」
そう言って、携帯を弾き飛ばす。
遠くで依然音を立てていたけど、私達二人には関係がなかった。
真希ちゃんの手がわたしの下着の中に入ってくる。
「やめ……んんっ……」
形だけの抵抗。
それがわかったのか、真希ちゃんは気分よさそうに続ける。
しかしその時、遠くで着信音を鳴らしつづけていた携帯が、留守番電話へと切り替わった。
218 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月23日(木)23時29分13秒
「もしもし、ごっちん」

よっすぃーの声!?
真希ちゃんの指が、私の胸の上でその動きを止める。

「あんな酷いこと言ったんだもん。電話に出たくないよね。ごめんね。
ほんとは、さっきのことだって、私のことを思って言ってくれてるんだってわかってたんだ。
でもね、誰かに当たらなきゃ、どうにかなっちゃいそうで……。
ごっちんだったらわかってくれる、なんて思って。自分勝手な友情押し付けちゃってさ。
本当にごめんなさい。
こんな私でよかったら、親友続けてくれないかな。
……なんて、こんなこと言えた義理じゃないんだけどね。はは……。
できれば直接会って話したいです。
許してくれないかもしれないけど、一度電話してください。それじゃあ」

そのメッセージを聞いた真希ちゃんの顔は、私でもわかるくらいにみるみると変わった。
私も、何故か胸がチクチクした.
よっすぃーの声が、頭から離れなかった。
219 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月23日(木)23時31分08秒
「あ……」
ずっと見つめていた私に、真希ちゃんがようやく気付く。
「ご……ごめ……」
しばらく、二人で見詰め合った。
真希ちゃんは自分が何をしていたのか、今ようやく気付いたみたいだ。
ふいに、真希ちゃんの顔がよっすぃーとかぶり、思わず目を逸らす。
よっすぃーへの罪悪感か、それともよっすぃーを気にかけたことに対する、真希ちゃんへの罪悪感かはわからないけど、慌てて服を着た。
そしてそのまま、真希ちゃんから離れようと屋上の入り口へと急ぐ。

「梨華ちゃん!」

真希ちゃんの声が聞こえる。
私は、ゆっくり後ろを振り返った。
真希ちゃんは何も言わない。
私も何もいわない。
あんなに好きだった顔だけど、今は見ているのが辛かった。
そのまま、屋上から出る。

きっとこの後、真希ちゃんはよっすぃーへと電話するだろう。
そしてその時、もちろん今のことも言うだろう。
真希ちゃんはそのことを言えないほどには弱くはないけど、隠し通せるほどには強くない。
その後、私達の関係がどうなるのだろう。
きっとこれは罰なんだ。
……三人の罪を許してしまった、私への。
220 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月28日(火)06時04分45秒
続き、期待してまーす。
221 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月30日(木)00時05分39秒
同じく期待。
そして、更新待ち。
222 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月30日(木)14時28分38秒
私は、学校からまっすぐ家に帰ることはしなかった。
一人で当てもなく歩いていると、不思議と考えがまとまっていく気がした。
ふいに、見覚えのある人影に気付く。
「お、石川じゃん」
「矢口……さん」
そう話し掛けた私の表情は、自分でも簡単に推測することが出来た。
きっと、情けない、泣きそうな表情をしているんだろう。

彼女は、テニス部以外で私に話し掛けてくれる、数少ない先輩の一人だ。
いつも面白がってからかわれているだけなんだけど、今日は私の雰囲気がいつもと違うことに気付いたようで、余計なことは何も言わなかった。

「……今日だったら、ただで相談受けてやってもいいよ」
唐突にそんなことを言う。
私はその言葉に甘えるように、黙って頷いた。
223 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月30日(木)14時30分17秒
「で、今回は何でネガティブモードに入っちゃってるわけ?」
喫茶店に入ると、矢口さんは早速その理由を聞いてきた。
どう説明すればいいのだろう。
真希ちゃんのことが好きなんです、なんて恥ずかしげもなく言えばいいのだろうか。
「あのさ、黙ってちゃわかんないんだけど」
「あ、す…すみません」
強い口調で言われ、思わず俯いてしまう。
「いや、別に責めてるわけじゃなくってさ。何か悩みがあるんでしょ?」
ちょっと怖いけど、本気で心配してくれているのはわかった。
だから、今まで私の胸の中にだけしまっておいた想いを打ち明けることを、決心した。

「あの、実は……」
私は、勇気を振り絞って口を開いた。
224 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月30日(木)14時31分49秒
「ごめん!」

「え!?」
けど、そんな私の勇気は、遠くから聞こえてきた「ごめん」と言う声にあっさりとかき消された。
「あれ……よっすぃーとごっつぁんじゃん」
矢口さんも気付いたようで、声がした方を見ている。
内容は……、聞かなくても大体想像できた。
実際、耳にはよっすぃーが真希ちゃんに必死に謝ってる声が聞こえてくる。
「あっちもなんかあったのかよ……」
驚いたような表情で矢口さんが呟いた。
二人の会話はそんなに軽いものじゃなかった。
友達を止めるとか止めないとか、そんな言葉がぽんぽんと飛び出てくる。
私はそうなることが何となく予想できていたから、平気ではなかったけど取り乱すことはなかった。
けど、次の真希ちゃんの一言は私と矢口さんの周りの空気を凍りつかせた。
225 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月30日(木)14時32分29秒
「私、梨華ちゃんを抱いたよ」

私の目の前で、矢口さんがミルクティーを吹き出す。
「ちょちょちょ……ちょっと、どういうこと!」
矢口さんが、わけがわからないと言った表情で私を見つめている。
私も、まさか真希ちゃんが、正直によっすぃーに言うなんて思っていなかった。しかも、尾ひれまでつけて。
「大体……、ごっつぁんには紗耶香がいるじゃんか」
「紗耶香……さん?」
「石川は知らないんだっけ。市井紗耶香ってやつが矢口の友達にいてさ、いつもごっつぁんと一緒にいんだよ。だからてっきり……」
そこまで行ってから、あ! と大きな声を出す。
「もしかして、悩み事ってそれ? 別に矢口は女同士とかそんなの気にしないよ」
226 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月30日(木)14時33分08秒
私達がそんな話をしている間も、向こうのテーブルでは、二人の会話が続いていた。

「梨華ちゃんは嫌がってるのに、無理やり抱いたんだ」
「あ……」
「よっすぃーの大好きな梨華ちゃん、汚れちゃったね」

「…………」
「…………」
再び、矢口さんとの間に気まずい空気が流れる。
「……石川、あの」
おずおずと、矢口さんが言葉を発する。
「な…なんでも相談に乗るからさ。元気出していこうぜ」
「はい……」
「…………」
「アハ……、アハハハッ」
「ちょっと、石川ぁ……?」
突然笑い出した私を見て、矢口さんがなんだか焦ってる。
あんな話の後だからしょうがないけど。
「あれ、半分嘘ですから大丈夫ですよ」
そう言った私の言葉に、矢口さんの目はきょとんとなる。
「あ、そ…そうなんだ。って、半分!?」
再び変な顔になった矢口さんを見ると、また笑いがこぼれた。
227 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月30日(木)14時33分43秒
「何もしないで片方を失うのはやだ。私はどっちも手に入れて見せるから」なんて、決め台詞を残したよっすぃーと真希ちゃんが、私たちに気付かず喫茶店を出て行く。
どうやら、このあとは私の家に向かうらしい。
「……だそうですけど、石川」
「そうらしいですねぇ」
さっきの私の笑顔に安心したのか、今度は矢口さんも笑っている。
「なんかさ〜、矢口たちあの二人の会話に振り回されてない?」
「ですねぇ」
けど、そのおかげで、少し心が軽くなった。
あの二人は、きっと大丈夫だ。
「でもさ、半分ってどういうこと?」
矢口さんは不思議そうな顔で問い掛ける。
「ムリヤリ抱かれかけたって感じです。まあ、どっちでもよかったですけど」
そう言って、私は席を立つ。
「じゃあ、あの二人が家に来るらしいんで、そろそろ帰りますね」
「あ……うん」
さて……と、これから忙しくなる。
あの二人が仲直りしたなら、もう私がすべき行動は決まっている。
「なあ……、もしかして石川、ごっつぁんのこと……」
矢口さんはそう言いかけて、止めた。
「真希ちゃんは、市井さんのものです。市井さんによろしく言っておいてください」
そう残して、喫茶店を出る。

改めて言葉に出してみたけど、別に悲しくなかった。
真希ちゃんと友達になる前からわかっていたことだ。
でも、もしかしたら、それはただの強がりであって、市井さんへの伝言が精一杯の抵抗だったのかもしれない。
228 名前:LVR 投稿日:2001年08月30日(木)14時41分44秒
>>220 さん
ありがとうございます。
更新速度を速めようと思ったらいきなり滞っちゃいました。
ちょっと安比ライブのためにに遠出していたもので。

>>221 さん
期待してくださってありがとうございます。
今回は新キャラとか出してみました。
グラフィティースレ内だけで言うと、かなり狭いキャラの使い方してますね(w
229 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月31日(金)23時55分22秒
どうやらあの二人は、まっすぐ帰ったのではないらしい。
意外と矢口さんとの話が延びてしまったので、もう家にはいないのではないかと危惧もしたが、未だに彼女達は私の家の前にいた。

「出てこないね」
そんな声が聞こえる。
当然のことだ。私は今二人の後ろにいるというのに。

「あ!」
どうやらよっすぃーは気付いたようだ。
その声につられて、真希ちゃんもこちらも向く。
「……梨華ちゃん」
「いったい、私の家の前で何やってるの?」
とりあえず、怖い顔を作って言っておく。
「あ、そ…その……」
「ごっちんに聞いてるんだけど?」
よっすぃーが慌てて答えようとするが、私はそれをぴしゃりと制した。
「ここじゃなんだしさ、場所変えない?」
まあ、確かに正論だった。
もし言い争いにでもなって、近所の人に見られたら困るのは私だから。
「……いいよ」
私は、さっきまで四人がいた喫茶店へと踵を返した。
230 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月31日(金)23時56分17秒
「で、何の用?」
大好きな紅茶を飲みながら、私は尋ねた。
しかし、どちらとも黙ってまま俯いている。
「用がないなら、帰って食事の準備しなきゃ駄目なんだけど」
「え、もしかして、一人暮らし?」
「言ってなかったっけ?」
そう言って、私はバックを手にとり家に帰る振りをする。
「ああ、ちょっと待って!」
予想通り、真希ちゃんは焦って引き止めてきた。
思わずクスリと笑いそうになるのを必死に押しとどめ、真面目な顔で二人に向き直る。
「冗談よ。早く話して」
その言葉を聞くと、真希ちゃんはいっそう真剣な顔になった。
231 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月31日(金)23時56分54秒
「あの……今日のこと……」
まあ、予想通りの展開。
だって、さっきの会話、矢口さんと一緒に全部聞かせてもらったし。
「別に気にしてないよ」
だから当然、返事の言葉も用意してある。
どうするのが一番いいか、ずいぶん悩んだ結果の答えだ。
「え?」
「だから、気にしてないよって言ったの。それで終わりだったら、次は私が質問していい?」
「あ……うん」
「それ、何で?」
そう言って、真希ちゃんの目を指差す。
私が聞きたかったこと、彼女には伝わるだろうか?
「もういらないから」
ニコリと微笑む。
「ふうん……」
なるほど、ちゃんと伝わってるみたいだ。
私は、次の言葉を促す。
「梨華ちゃんも、眼鏡を外せばきっといろんな物が見えるよ」
やっぱり。
市井さんとのこと、解決したみたいだね。
これでもう私が二人の、ううん、ここにいる三人のために出来ることが、決まったよ。
232 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月31日(金)23時58分35秒
「私、好きな人の前でしか素顔は見せたくないの」
一応、さっきの真希ちゃんの言葉に皮肉でも返してみることにする。
これはちょっとしたいたずら心。
真希ちゃんに想いが伝わればいいなんて、そこまで傲慢には思わないけど、この恋の終わりにはぴったりの強がりだと思った。
それに、これは私が思い描くシナリオの布石でもある。
真希ちゃんが気付いてくれるかどうか、それこそわからないけど。
「あ、そ…そうだよね。ごめんね無理言っちゃって」
よっすぃーが何故か謝る。
そう言えば、よっすぃーは私が真希ちゃんの前で眼鏡を外したことを知らないから、二人に対しての皮肉だと思ったのだろう。
まあ、皮肉には違いないんだけど……。
「ねえ、ごっちん。許してくれたんだから、そろそろ喫茶店から出ようよ」
よっすぃーは真希ちゃんを引っ張って喫茶店を出ようとするが、真希ちゃんはその手を振り払った。
「まだよっすぃーの用事が済んでない」
用事?
喫茶店ではそんな話はしていなかった。
233 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月31日(金)23時59分05秒
「さっきの言葉、どういう意味……?」
真希ちゃんが、いきなり質問をしてくる。
「そのままの意味だけど」
「女の子は趣味じゃないんじゃなかったの?」
女の子は趣味じゃない?
ああ、そう言えば以前そんなでまかせを言った覚えがある。
そんな私の間を、真希ちゃんは動揺と受け取ったのか、まくし立てようとする。

「あの!」
突然、よっすぃーの声が聞こえた。
少し……微笑んでいる?
「うじうじ悩むのは私の柄じゃないんで、もうはっきり言うね」
告白……か。
用事ってこのことだったんだ。
いつかこうなることはわかってた。
「梨華ちゃんのことが好きです。できれば、付き合ってくれませんか?」
「どうして!? あの時、趣味じゃないってはっきり言ったじゃない! それなのにどうして……」
それでも、こう言わずにはいられなかった。
それで諦めてくれれば、全ては上手くいったのに……。
234 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年08月31日(金)23時59分37秒
「あれは……、私に言ったんじゃなかったの?」
思いついたように真希ちゃんが言う。
私はその言葉に顔を上げた。
「そ…それは……」
正直、焦った。
あれがよっすぃーを諦めさせるためだとばれたら、真希ちゃんに抱いていた気持ちまでばれるかもしれない。
「ごめん! ご飯支度があるから、早く帰らないと」
そう言って、喫茶店を出る。

その後、家の近くのスーパーまで、必死に走った。
胸がドキドキしていた。
大丈夫、大丈夫。ばれていないはずだ。
ああ見えて、真希ちゃんは頭がいい。
布石も用意した。私がよっすぃーに対して、矛盾したことを言っているのにも気付くはず。
後は、ただ待つだけ。
それで、全てが上手くいくはずなんだから。
235 名前:LVR 投稿日:2001年09月01日(土)00時00分31秒
次で眼鏡終わりです。
236 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月01日(土)18時27分40秒
面白いです。何があるかわかっていただけに
そのとき石川が何を考えていたのかわかるのは嬉しいです。
(実は、自分馬鹿なんでよくわからなかったんで(笑

それにしても石川はごまとよしの会話全部聞いてたんですね・・・恐るべし(藁
237 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年09月02日(日)03時40分32秒
少し落ち着きたいこともあったし、私はスーパーで晩御飯の材料を買った。
上手くいっているだろうか。
その間も、そんなことばかり考えてしまう。

「梨華ちゃん!」

遠くから私を呼ぶ声。
やっぱりよっすぃーは来た。

「よっすぃー……」
でも、本当にこれが正しいことなんだろうか。
私はあいまいな表情で微笑んだ。
「えっと、その袋どうしたの?」
「どうしたのって……。今日の晩御飯だけど」
「そうなんだ……。その、ちょっと時間あるかな? 公園で話したいんだけど」
公園に行けばよっすぃーと二人きり。
そうなれば、もう逃げることは出来ない。
でも、全てを上手く解決させるためには、ここで動かなきゃ駄目なんだ。

「わかったわ」

そう、もう、決めたことなんだから。
238 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年09月02日(日)03時41分42秒
公園に着いてから、私達はたわいもない話をしていた。
よっすぃーは、話が核心に触れるのを恐れている。
けど、もしかしたら、私もそうなのかもしれない。

「あのさ」
「ん、何?」
「もう一つ聞いていいかな」
そう言ったよっすぃーの顔が強張った。

「……うん」
いよいよ確信に触れてくるなってことが、わかった。

「私のこと嫌いっていうの、本当?」

よっすぃーは、本当に勇気があると思う。
少なくとも私には、そんなことは出来ない。
239 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年09月02日(日)03時43分12秒
「なんでだろうね」
「え?」
「何であなたたち相手だと、ペースが崩れちゃうんだろう」
確かに今までも、真希ちゃんが幸せになるなら何でもやろうと思った。
けど、それ以外のことにはまったく気をかけなかった。
今では、よっすぃーのことも気にかけれるようになってる。
「……梨華ちゃん」
「っていうか、あなたたちが崩してるんだろうけど」
そこまでいうと、自然と笑みがこぼれた。

「私が考えてる通りにすれば、誰も傷つかないのに」
そうすれば、二人がケンカをすることもない。
一番賢い選択肢だったんだ。

でも、次の言葉は、私の心を鋭くえぐった。

「梨華ちゃん以外は、の間違いじゃないの?」

心の中が読まれてるのかと思った。

「私のことは、どうだっていいんだ。梨華ちゃんの気持ちを聞くためにここに来たんだから」

優しい気持ちになれた。
今なら、私の決断は間違ってないと思える。
もしここで、よっすぃーを拒絶したとしても、彼女は断った私を気遣うだろう。
そんなあなたが相手なら、私はいくらでも犠牲になろう。
240 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年09月02日(日)03時44分06秒
「私……私は……」
大きく息を吐いた。
ここで、私はココロをコントロールするんだ。
私が好きな人は……吉澤ひとみ。後藤真希ではない。

「好きって言ってもらえて嬉しい。でも怖いの……。きっと私が受け入れたら、よっすぃーは周りから変な目で見られる。……ううん、違う、よっすぃーが聞いてるのはそんなことじゃないんだよね」
これで、今までの全ての行動がつながるはずだ。
私はよっすぃーのことが好きだったけど、よっすぃーのことを気遣って拒絶した。
そう、思ってくれるはず……。
241 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年09月02日(日)03時45分17秒
「梨華ちゃん、目つぶって」
突然のよっすぃーの言葉。
「え?」
「いいから、早く!」
「は、はい!」
強い口調で言われ、思わず目を閉じる。
その瞬間、強く抱きしめられた。
「……よっすぃー!」
「目を開けないで」
一瞬目を開けたけど、その言葉に再び目を閉じる。
「そのままで聞いて欲しいんだ。余計なこと考えないで、余計なフィルタを通さないで、私の言葉を直接感じて欲しい」
「……うん」
「私には全て理解してあげられないかもしれないけど、守ってあげることは出来る。私のものになって欲しいなんて我が侭なこと言わないから、私をずっと傍において下さい」
よっすぃーの言葉は、心に響いた。
私がしていることは正しいことなのだろうか?
そんな思いに、胸が締め付けられる。

「よ…よっすぃー、苦しいよ」
「あ、ごめん!」
よっすぃーは慌てて、腕をほどく。
違うんだ、よっすぃー。
私は、よっすぃーのまっすぐな思いが苦しいんだよ。
242 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年09月02日(日)03時46分08秒
「えっと、あんまり近いと、眼鏡掛けてても変わらないね」
自然と、口をついて出た。
「でも、ごめんね。眼鏡は外せない。外すのが怖いんだ」
「そっか……」

真希ちゃん、私言ったよね。
眼鏡は、相手を欺くことも自分を欺くことも出来るって。
私は、今からよっすぃーと、私のココロを欺く。
だから、眼鏡を外すことなんて出来ない。

けど。

「それでね、ここからは私の独り言。今はまだ外すのが怖いけど、頑張って外せるようにするから、もう少し待っててくれないかな」
「梨華……ちゃん?」
「真希ちゃんにだって外せたんだもん。絶対外してみせるよお」

何でかわかんないけど、よっすぃーのことは本気で好きになれそうな気がする。
243 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年09月02日(日)03時46分44秒
「待つ!」
「きゃっ!」
あまりの勢いに、思わず飛びのく。
「絶対待つから! 一年経ったって、卒業したって」
そこまで言ってから、私が近くにいないことに気付いたようだ。
「あ…、興奮しちゃった。ごめん」
「ううん、嬉しいよ」

だってさ、

「梨華……ちゃん……」

もう、自然と抱きしめちゃうくらい好きになってるんだよ?
244 名前:眼鏡〜side R〜 投稿日:2001年09月02日(日)03時49分39秒
「今はこれが精一杯だけど、私の素直な気持ち」

未だに真希ちゃんのことを好きな私がいる。
二人の仲を崩さないために、よっすぃーと付き合おうとしている私は、多分相当酷い奴だ。
それでも、この計画を思いついた直後ほど心が痛まないのは何故だろう?
それはたぶん、よっすぃーが傍にいてくれているから。

さっきから私を見ているよっすぃーに、にっこりと微笑む。
もしかしたら、こんな私の馬鹿な考えを見抜いて、傍で心を癒してくれているのかもしれないな。

「いいこと思いついた!」
「え?」
「梨華ちゃんコンタクトにしなよ。そしたら眼鏡がなくてもよく見えるよ」
「えっと、眼鏡を外さないのは、見えるとかそう言う問題じゃないし……」
「じゃあ、その上にサングラスをつけたら!」
「それじゃ意味ないよう……」

もしかしたら、だけどね……。


眼鏡〜side R〜 …… 完
245 名前:LVR 投稿日:2001年09月02日(日)03時56分59秒
本当は、八月いっぱいで終わらせたかったんですけど、ちょっとオーバーしました。
これで、眼鏡は終わりです。
次回作は、書き次第アップするつもりです。

>>236 さん
面白いと言っていただいて、ありがとうございます。
作者がこんなこと言っていいのかわかんないですけど、
僕も石川の気持ちは始めて知りました(w
まあ、眼鏡2を書いている時には軽くしか練っていなかったところもあったので。
246 名前:なつめ 投稿日:2001年09月02日(日)07時02分48秒
お疲れ様でした。眼鏡シリーズ面白かったです。
〜side R〜では石川がグッと株を上げましたね、登場人物も皆かっこよかったです。
次回作も期待しています。
よい作品を読ませていただいてありがとうございました。
247 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月05日(水)00時00分09秒
お疲れ様でした。
ハッピーエンドで終わってよかったです。
いつか石川もメガネを外すことができることを祈りつつ……。
248 名前:LVR 投稿日:2001年09月06日(木)01時32分26秒
掲示板がきれいになりましたね。
でも、容量が一気に増えた……。
ということで、移転します。

>>246 なつめさん
全編読んでいただいてありがとうございます。
ここでは、石川の気持ちが吉澤に傾くことはなかったはずなんですが、こうなっちゃいました。
まあ、ハッピーエンド好きなんで、これもいいかなと。

>>247 さん
ありがとうございます。
ハッピーエンドで終わっちゃいましたね。
石川の眼鏡を何時まで引っ張るんだって話ですが、前の2作品と同じ時間帯ですしね。
この先を書くことがあれば、考えたいと思います。
249 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月30日(日)14時51分03秒
まだここって、結構容量あまってたんですね。
新しいのたてるまでも無いみたいなんで、ここで続編を書こうかな。
とりあえず、沈んでるので誰も見ないと思いますが、もし管理人さんが見ることがありましたら、
もう少しだけ、このスレを消すのを待ってください。

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