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何が君を急がせる
- 1 名前:いむすたん 投稿日:2001年05月18日(金)02時20分38秒
「 体 温 」
私が好きな人は、いつもいなくなるんだ。
そうやって困らせるのが好きな人ばっかりだったから
今でも信じられないけど、隣の温もりはもうない。
お父さん……
いちーちゃん……
ゆーちゃん……
だから………
- 2 名前:「体温」 投稿日:2001年05月18日(金)02時21分54秒
お父さんは、笑顔で早く帰るって出ていったら、二度と
目を開けて微笑んではくれなかった。
すんごい嘘つきだなって心の中で思ってた。
小学生の私には、悲しみよりも驚きが強くて、静寂の中
包帯が巻かれた手をぎゅっと握ってみたけど、冷たくて
なんだか怖くなって、自分で自分の手を握りしめた。
初めて、死んだんだ、って気づいたときには、もう涙が
流れてて、その涙の温かさにちょっとだけ癒されたっけ。
- 3 名前:「体温」 投稿日:2001年05月18日(金)02時22分33秒
で、お父さんも応援してくれてたから、芸能人になって
頑張ろうってオーディションを受けた。
実力を見出してもらって、娘。になって不安いっぱいの
なかで、温かい手で引っ張ってくれたのがいちーちゃん。
いつもはぶっきらぼうな所があるけど、変なところで
優しくて、いつも見ててくれた。
目が温かくて、なんだかお父さんを思い出しちゃって。
泣いていたら、いちーちゃんが来て、抱きしめてくれた。
うまくできない私をいつもフォローしてくれた。
私はいちーちゃんが大好きだったよ。
いつまでも、一緒に上を目指せるって信じてたし。
- 4 名前:「体温」 投稿日:2001年05月18日(金)02時23分12秒
結局、それは違う道になっちゃった。
あんなに近くにいて、いつもいちーちゃんは私を見てて
くれたのに、私は全然見ていなかったんだ。
恋は盲目、って意味違うっけ?
でも、そう。
やっぱり、勝手に理想とか夢を持ってて、それを押しつ
けて見てたのかもしれない。
みんなでその報告を聞いて、みんな泣いた。
私は、好きな人と一緒にいられなくなるって思ったら、
急にね、またお父さんの冷たい身体を思い出した。
すごい怖くなったよ。
いちーちゃんが死ぬわけじゃないのに。
- 5 名前:「体温」 投稿日:2001年05月18日(金)02時24分06秒
自分の体を抱きしめて、しゃがみ込んでたら、急に手を
引っ張られて、屋上に連れてこられた。
いちーちゃんの手は、安心するほど温かかった。
空は、どこまでも限りなく、青かった。
青くて、私なんかちっぽけで、飲み込まれそうなくらい
高く高く続いていたっけ。
あんまり上を見ていたら、首が痛くなった。
それ以上に、自分が消えちゃいそうで怖かった。
だから、いちーちゃんを探したの。
そしたら、いちーちゃんも泣いてた。
言っちゃいけないっていうのはわかっていたけど、
後悔したくないからって、言っちゃった。
いちーちゃんの決断だもん、誰も止める権利無いのに。
そしたら、いちーちゃんはやっぱりいちーちゃんで、
泣き顔のまま、にぃっと笑って、言ったんだ。
それ聞いて、私も頑張ろうと思った。
戻ってくるいちーちゃんに負けないようにって。
だから、私も泣き顔のまま、強がって笑い返してみた。
でも、最後まで引っ張られてばかりだった。
そして、裏切られたような気持ちが消えなかった。
- 6 名前:「体温」 投稿日:2001年05月18日(金)02時24分58秒
もう一年になるけど、あの武道館から。
最後にぎゅっと抱きしめてくれた、あの温もりはきっと
ずっと忘れられないと思う。
終わった後、楽屋でかなりぼーっとしていた。
打ち上げも、しばらく会えなくなるのに何を話したかも
あまり覚えてないくらい、上の空だった。
ただ、自分の手が、自分の体が異様に冷たくなってきて
別れを実感していたのは覚えてるよ。
どんなに辛いことがあっても、時間は止まってくれない。
特に、娘。のまわりは、時間がどんどん加速してる。
どんなときでもいちーちゃんに頼っていたから、自分の
来た道を振り返っても、前を向いたら先は見えなかった。
誰の話も聞きたくなかった。
入れ替わりの新メンバーは見たくなかった。
- 7 名前:「体温」 投稿日:2001年05月18日(金)02時25分33秒
- そんなときにテレビで、第1弾としてプッチモニSPを
撮るって言われたときに、よっすぃーを否定するみたい
なコト言っちゃった。
でも、その時の私は、本当によっすぃーが嫌とかよりも
いちーちゃんしか考えられなかった。
さすがに怒られた。
全然聞いてない風だったら、ばしって頬を叩かれたし。
そこで初めて、顔を上げて目を見たよ。
すごい辛くて、悲しそうな顔をしてた。
全然怒ってるって感じじゃなくて、わかってくれてた。
さすがだと思ったよ、ゆーちゃんを。
ゆーちゃんも、どこかお父さんに似た目をするんだ。
いちーちゃんにも似てる、温もりのある目。
ゆーちゃんに言われたとおり、いちーちゃんが戻って
くるまでに、自分を磨こうって思った。
いちーちゃんを忘れないように、教えてもらったことを
新メンバーにたくさん伝えた。
でも、どーしても辛いときは、ゆーちゃんに甘えた。
何でも聞いてくれるし、背中を押してくれる。
いつの間にか、そんなゆーちゃんが好きになった。
- 8 名前:「体温」 投稿日:2001年05月18日(金)02時26分06秒
ゆーちゃんに、そのことを言おうか迷ったんだけど、
お酒の勢いもあって、ゆーちゃんちに泊まったときに
うっかり言っちゃった。
馬鹿にされたり、冷たくされたり、嫌われたりする。
それが怖くて言わなかったのに、酒ってすごい。
たぶん私の顔は真っ赤だったと思う。
お酒のせいもあるけど、緊張と恥ずかしさと。
しばらくゆーちゃんは俯いていたんだけど、顔を上げて
口を開いた。
けど、何にも言葉は出てこなかったから、終わったな、
って感じて身体が冷たくなってきた。
でも、答えはすごくゆーちゃんらしかった。
凍った心と体は、唇から広がる温もりが溶かしてくれた。
近くにある体温は、幸せな日常を演出していた。
- 9 名前:「体温」 投稿日:2001年05月18日(金)02時26分46秒
なのに、結局お父さんと同じ。
いちーちゃんと同じ。
すごく自分勝手でわがままで。
私の気持ちなんか何も考えてないんだもん、嫌になる。
ゆーちゃんには会えなくなるわけじゃないけど、日頃の
温もりがすごく遠くに行っちゃうのは、もう嫌なの。
自分もわがままなのはよくわかってる。
でも、私はどうしたらいいの?
好きな人はみんないなくなる。
もう、誰も好きになれないの?
私が好きな人は、いつもいなくなるんだ。
お父さん……
いちーちゃん……
ゆーちゃん……
だから…、私には今、体温がないの。
- 10 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月18日(金)14時12分15秒
- 何かセツないゾ…
- 11 名前:いむすたん 投稿日:2001年05月18日(金)20時20分51秒
「あなたと私」
あほ裕子がいない初めてのテレビは、あの関西弁つっこみ
が無いと思うと、なんだか物静かな感じだった。
それ以上に、あまりにもごっちんがおとなしかったから、
すごい心配して声をかけた。
楽屋でも、外を見ては何かを目で追っかけていたっけ。
実際、撮影はすごく面白かった。
なっちの絵は、まあかわいげがあると思う。
だって、あの圭ちゃんの絵は、並はずれた才能だから。
でも、ごっちんは全然笑っていなかった。
最後も、小さくしか手を振らなかったから、ダメ出しされる
かと思って、冷や冷やした。
紗耶香のことから1年しかすぎてないのに、裕ちゃんもじゃ
ごっちんには辛いんだろうな。
みんながいなくなってから、ぼーっとしているごっちんに
そっと、呟きかけた。
「ねえ、ごっちん。どうしたのさぁ?」
- 12 名前:「あなたと私」 投稿日:2001年05月18日(金)20時22分15秒
「………
だから…、私には今、体温がないの。」
ごっちんは、いつものごっちんらしくなく、全然涙も浮かべ
ないで、淡々と話をしてくれた。
トラウマ、っていうのか、ごっちんにとって別れって特別な
ことなんだろうな、なんて感心しちゃった。
…感心している場合じゃないんだけど。
なんて声をかけて良いかわからなくて、黙ってごっちんを
見つめてたら、ごっちんがふと顔を上げて、言った。
「やぐっちゃんはさぁ、裕ちゃんがいなくて淋しくないの?」
痛恨の一撃。
心の片隅で淋しいと思っていても、わざと気づかない振りを
していたのに、ね。
かなり心配そうな顔で、ごっちんは矢口を見つめてた。
そこで初めて、自分が泣いてるって気づいたんだよね。
ごっちんには、言わなくても、答えがわかったみたい。
「…ごめんね、そうだよねぇ。」
ごっちんがまた俯いちゃったよ。
ごっちんパパは、紗耶香は、裕子はどうするんだろう。
思ったとたん、身体が勝手にごっちんを抱きしめてた。
- 13 名前:「あなたと私」 投稿日:2001年05月18日(金)20時23分04秒
驚くほど、身体が冷たかった。
もう毎日が夏日で、半袖だってちょうど良い天候なのに
なんて言う冷たさなんだろう。
これが、さっきごっちんが言っていたことなんだろうか。
「ねえ、ごっちん、今日は一緒に帰ろう。うちにおいでよ。
独りでいたら辛いだけだからさ、ごっちんも、矢口も。」
背中から回した手は、ごっちんを暖めるには短いかも
しれないけど、それでも、矢口の心はごっちんの存在が
ありがたいみたい。
きっと、矢口は自分で思っていた以上に、裕子の存在が
大きなものになっていたことに、気づいてなかったよ。
ねえ、ごっちん。
今日は二人で眠ろう。
本当は、ものすごく寂しいんだ。
- 14 名前:「あなたと私」 投稿日:2001年05月18日(金)20時23分42秒
急に、ごっちんと目があった。
加入した頃の、ちょっと大人びた笑い方だった。
「あはっ、やぐっちゃんのせいで、泣いちゃったじゃん。」
そういって、握りしめてきたごっちんの手は、暖かかった。
ごっちんも静かに泣けるんだ、なんて一筋の涙の跡を見て
思いながら、手を繋いだまま、人のあふれる駅へ向かった。
- 15 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月19日(土)11時55分28秒
- 良い…!!
- 16 名前:いむすたん 投稿日:2001年06月03日(日)22時59分15秒
- おっと、こんな駄作にもレスをつけてくれた人がいるんだねぇ。
感謝しなくっちゃ!
さて、教育実習を終えて暇だから、なんか書きましょう。
やぐっちゃんとごっちんでもいいんだけどね。
それは、ちょっとネタ構想中なので。
無難なところでいちごまでいいか。
市井ちゃん脱退、一周忌だし。かむば〜っく!
- 17 名前:いむすたん 投稿日:2001年06月03日(日)23時04分39秒
- しまった、いちごまじゃないや。
「さやまり」でした。
訂正して、レッツスタート!
- 18 名前:いむすたん 投稿日:2001年06月03日(日)23時07分04秒
- 「 夜に想う〜向日葵〜 」
あの日、君に最後、ちゃんと伝えられなかった。
自分が涙に負けないように、虚勢を張って、それだけで。
3人で、まだ見ぬ世界へ飛び込んでいった。
そんな日の事が、ただ頭の中を駆けめぐってたっけ…
君によく似合う、ヒマワリ。
今年の夏は、もう一緒に見れないのかな。
忙しい事は、悲しい程わかるから、連絡さえできない。
今だって、気持ちは変わらないよ。
…矢口、あたしのこと、忘れないで。
- 19 名前:いむすたん 投稿日:2001年06月03日(日)23時07分59秒
ふうっ、とため息をついて紗耶香はテキストから顔を上げた。
そして、目をこすりつつ、外に見える細い月を見上げた。
いつの間にか、イヤホンから聞こえる音はずっと先の課まで
進んでしまっていた。
「あちゃ〜、また寝ちゃってたか。」
誰がいるわけでもないのに、恥ずかしさで苦笑してしまった。
時計の針は、まだ10時を指している。
眠気を覚ますために、窓を開けて下を見ると、去年の残りか
ヒマワリが、ほんの3本だけ、芽を出していた。
去年は、何本咲いていたか、いつ咲いたのかさえ気づけない
程忙しかったのに、今年は水なんかあげちゃったりしている。
- 20 名前:いむすたん 投稿日:2001年06月03日(日)23時08分46秒
- 「みんな大変だよね。」
毎日テレビの番組表を見ながら、去年の自分を思い出すと
つらさよりも、楽しさの方が勝っていたっけ、なんて。
でも、今では少しだけ疎外感。
「あったりまえか〜。」
自分で決めた道なのに、そんなこと言ってらんないじゃん。
でも、やっぱり勉強する気分は戻らなかった。
今日はもうCDでも聞こうかと、リモコンを手に取ると、
手元にあったのは、携帯だった。
「なんだかなー…」
また、紗耶香は苦笑した。なんだか今日は変だ。
さっき、思い出しちゃったから?
みんな元気かな?なんて思いながら、ベッドに横になる。
携帯をいじろうとすると、『新規録音』に気づいた。
そういえば、サイレントに設定してたんだっけ…
- 21 名前:いむすたん 投稿日:2001年06月03日(日)23時10分09秒
- 着信履歴を見ると、公衆電話らしい。
この時代に誰だろう、ととりあえず聞いてみる。
『……紗耶香、寝ちゃった?…矢口っす。久しぶりで
悪いんだけど、今日泊めてくれない?連絡は携帯…』
プチっ
途中で切れたようだ。
なんて、お約束なタイミングの電話なことか。
なんだろう、急用だろうか?
あの頃のことを思い出すと、期待で胸が高鳴ってしまう。
でも、紗耶香は矢口を泊めるわけにはいかなかった。
ようやく想いを振り切って、未来を目指しているのに、ここ
で会ってしまっては、今までの努力が無駄になってしまう。
そのために、みんなとはほとんど連絡をしていないのに。
でも…
なにか大変なことになってたら…
- 22 名前:いむすたん 投稿日:2001年06月03日(日)23時11分36秒
- 画面に名前を表示しては、「切」を押す。
何度となく、そんな行為を繰り返しながら、画面を見つめる。
ディスプレイには『矢口 真里』の文字が佇んでいた。
今日、何度目かの溜め息をついて…
意を決して、紗耶香は電話をかけた。
ぷちっと、発信音がとぎれる、その瞬間、
「やぐちっ?」
今までの躊躇いは、まるで嘘のように紗耶香は話しかける。
自分の胸の中で、勝手に終止符をうった、想い。
自分が近くにいなくなることで、守れないと感じた、矢口。
絶対に振り切れないとわかっていながら、諦めたはずの、愛。
忘れていた想いが止めどなく溢れ出てきた。
それと同時に、頬を伝う暖かい涙に、紗耶香は気づいた。
『……留守番電話センターへ接続します……』
「本当に、お約束だな…」
紗耶香は自嘲気味に笑った。
あんなに気張って電話した自分が、馬鹿みたい。
- 23 名前:いむすたん 投稿日:2001年06月03日(日)23時12分42秒
- そこで、はっと気づく。
さっき、公衆からかけてきたのだから、携帯は無理じゃん。
もしかして、連絡を取る手段はないのか。
どうしても他のメンバーとは連絡を取りたくなかった。
矢口への想いを吹っ切った、そんな振りをして最後に別れた。
矢口が泣いて、圭ちゃんとかに責められても、笑っておいた。
裕ちゃんが、悲しそうな顔をして、何か言おうとしていた。
そんな時も、気づかない振りをした。
メンバーみんなに、最後の最後まで最大の嘘をついた。
そして何より、自分に嘘をついた。
家に帰り着いてから、壁を作って、自分に嘘をついていた頃の
元の自分に戻ってしまったと、泣いたのだった。
だから、絶対に紗耶香は電話をしないと誓っていた。
なのに、思いもかけない矢口からのメッセージ。
絶対にかかってこないと、自分で見切っていた電話。
想い出した胸が、鼓動で張り裂けそうだった。
「やぐちぃ…」
ちょっとだけ期待を込めて、携帯に話しかける。
「…会いたいよ。もっと声聞かせてよ……」
携帯は、何も言ってくれない。
- 24 名前:いむすたん 投稿日:2001年06月03日(日)23時19分43秒
- そこで、はっと気づく。
さっき、公衆からかけてきたのだから、携帯は無理じゃん。
もしかして、連絡を取る手段はないのか。
どうしても他のメンバーとは連絡を取りたくなかった。
矢口への想いを吹っ切った、そんな振りをして最後に別れた。
矢口が泣いて、圭ちゃんとかに責められても、笑っておいた。
裕ちゃんが、悲しそうな顔をして、何か言おうとしていた。
そんな時も、気づかない振りをした。
メンバーみんなに、最後の最後まで最大の嘘をついた。
そして何より、自分に嘘をついた。
家に帰り着いてから、壁を作って、自分に嘘をついていた頃の
元の自分に戻ってしまったと、泣いたのだった。
だから、絶対に紗耶香は電話をしないと誓っていた。
なのに、思いもかけない矢口からのメッセージ。
絶対にかかってこないと、自分で見切っていた電話。
想い出した胸が、鼓動で張り裂けそうだった。
「やぐちぃ…」
ちょっとだけ期待を込めて、携帯に話しかける。
「…会いたいよ。もっと声聞かせてよ……」
携帯は、何も言ってくれない。
- 25 名前:いむすたん 投稿日:2001年06月06日(水)19時31分13秒
- ベッドに横になったまま、携帯を胸に抱きしめて想う。
今度会えるなら、もっと素直になろう…
紗耶香はそっと瞼を閉じて、祈りを込めて携帯へキスをした。
目尻から流れ落ちる一筋の涙は、枕をぬらしている。
紗耶香は夢の中で、最後に見た矢口の涙を拭おうとする。
しかし、どこかで、それが拭えないモノであると知っていた。
それだけ、自分の罪は大きいのだと、そう感じている。
寂しそうに微笑んだ矢口が、何か言おうとしている。
しかし、なぜか自分の耳にその声は届かない。
焦って手を伸ばす。
矢口を捕まえるために。
ちゃんと話を聞きたい。
今度こそ…離さない。
- 26 名前:いむすたん 投稿日:2001年06月06日(水)19時31分43秒
- そこで、目が覚めた。
気づけば携帯が懐かしい着信音を奏でている。
でも、矢口のでないことはすぐにわかる。
矢口には、もちろん特別な設定だから。
これはずっと消せずにいた、メンバーの電話番号。
メンバーだけに使っていた、着信音。
ディスプレイには『中澤 裕子』の文字。
一瞬躊躇ったが、もしかして…
「はい、もしもし…」
『おー、紗耶香。久しぶりやなぁ。悪いな、寝とったか?』
懐かしい声が、耳元で広がる、くすぐったい感覚。
矢口のことが、まだ愛だの恋だのと気づく前だった。
あんまり目で追いかけているから、からかわれた記憶がある。
「紗耶香、矢口を見る目が獲物を狙うオオカミやで。」
そして程なくして、中澤にファーストキスを奪われた。
あっという間に周りに広がってしまった、事実だ。
どうしても涙が止まらなかった。
その時に、矢口の事を、初めて恋だと自覚した。
でも、しばらく中澤とは、そんな関係を持ち続けていた。
一度知ってしまった温もりは、真冬の朝に布団から出ること
以上に、捨てがたいモノだったから。
- 27 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月11日(月)21時51分28秒
- 今日初めて読ませていただきました。
読み進めるほどに、切なくて…
続きをお待ちしています。
- 28 名前:いむすたん 投稿日:2001年06月29日(金)21時23分11秒
- 『…聞いてるんか?疲れてんのやねぇ。』
中澤の声が、ちょっと笑いを含んだ声になった。
紗耶香も、何度目かの苦笑を浮かべながら、口を開いた。
「色々思い出しちゃってさ…。感傷に浸ってました。」
『なんや裕ちゃんのコト、忘れられへんのか?思い出させたろか?』
こんな日には、中澤の優しさが心に浸みて、少し痛い。
冗談交じりの優しさにさえ、縋り付いてしまいたくなる。
「何いってんの。…何か用あったの?」
無理に話を断ち切って、この気持ちも断ち切ってしまおう。
『なんや、つれないなぁ。…ってか、用事あるんやった。
矢口、そっちに行っとらへんか。』
- 29 名前:いむすたん 投稿日:2001年06月29日(金)21時23分48秒
- 一瞬、体中の筋肉がつった気がした。
今日に限って、何だって矢口のことばかり…
いや、今日だから、矢口なのだ。
さっきの留守電もよく考えてみれば、やっぱりおかしい。
「さっき留守電入ってたけど…何かあったの?」
『…いなくなったらしいんよ。』
「公衆電話からだったけど、携帯はどーしたんだろ?」
『それがなぁ、…うちにあんねん。…忘れてってん。』
しかも充電は切れているらしい。
それでは意味をなさないやん、と笑いながら言った。
どこか、中澤は話したくないことがあるようだった。
『また連絡あったら、こっちにも連絡してくれへんか?』
最後にそういい残して、電話を切った。
自分勝手な気もするけど、仕方がないのかもしれない。
中澤は1ヶ月ほど前に、娘。を卒業していた。
なのに、矢口と連絡を取っていると言う事実。
- 30 名前:いむすたん 投稿日:2001年06月29日(金)21時24分25秒
- 「矢口と裕ちゃん、仲良さそうだもんな。」
オンエアを見ていると、いつもべたべたしていた二人。
それは、紗耶香にとって羨ましくもあり、嬉しくもあった。
矢口はきっと自分のことを吹っ切ってくれている。
自分の中にある罪悪感をぬぐい去ってくれる光景。
そして、胸を締め付ける光景。
裕ちゃんと矢口…
想いは複雑すぎて、紗耶香には重すぎる。
- 31 名前:いむすたん 投稿日:2001年06月29日(金)21時25分12秒
- もともと中澤と別れるのは紗耶香が望んだことではない。
むしろ、別れを拒否したのだ。
恒例の中澤邸に宿泊して、晩酌につき合っていた時。
いつものように、中澤は酒の勢いにまかせて、紗耶香に
ねっとりと絡みつくようなキスをしてきた。
中澤のキスは、どれほどの経験を積んだのか、巧すぎる。
紗耶香はこれで、毎回理性が吹っ飛んでいくのだ。
「…んぅ、ゆうちゃん……」
中澤の背中に手を回して、力を込める。
絶対に離さない、離れない。
しかしいつもと違うのは、中澤がすぐに口を離したことだった。
びっくりして、紗耶香は目を見開いてしまった。
離れても目の前にある中澤の顔は、どこか怒ったような表情を
していたように感じられて、紗耶香はあわてて尋ねたのだ。
「ねえ、なんかあたしが悪いことでもした?」
でも、中澤は何も言わずに締め付けている紗耶香の腕をほどくと
冷蔵庫からもう一本ビールを取り出して、飲み始めたのだ。
- 32 名前:いむすたん 投稿日:2001年06月29日(金)21時32分43秒
- なにやら今まで書いていた独り言が反映されていないとは。
まじ、びっくり。
小説だけうpしている不思議モノみたいじゃないかぁ(w
さて、市井紗耶香やってくれるぜ、この野郎!!
いや、野郎じゃないんだが。
茶髪にして、遊んでいるとは、マジっすか?ってこのコト。
遊びたいから辞めたなんてお前のファンがなぁ、悲しむぞ。
かく言う自分もファンの1人だが。
茶髪のちゃむもなかなかかわいい(w
- 33 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月30日(土)03時59分06秒
- せつなくていいですねここの短編集。
この続きも期待してます。
あの雑誌の記事に信憑性など無いと思われますぞ!!
でも写真のちゃむはあいかわらずカワイイっす
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