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価値観・浮遊感

1 名前:まいのすけ 投稿日:2001年05月19日(土)01時17分44秒
今日は珍しく昼間から会う予定だった。
其れが、生活指導に下駄箱で捕まってしまい指導室へ。
「――聞いてるんですか、吉澤さん!?
 あなたはやれば出来る子でしょう? 其れがどうして、ここ一ヶ月で・・・。」
背の低い女教師が、諭す様に話し掛ける。この人の感情をどう受け止めれば良いのか判らない。
「・・・はぁ。まぁちょっと・・・。」
反省してるでもなく、逆らうでもなく曖昧な応えを返す。頭の後ろを掻いた手を、其処で止めた。そし
て控え目に聞く。
「あのー、この後、用事あるんで帰って良いですか・・・?」
「え?! ちょっと・・・。」
何か云い返される前に、横に放ってあった通学鞄を取り、ソファから立ち上がった。
「でわ、失礼しまっす!」
深く頭を下げると、体育会系よろしく一瞬で頭を上げる。指導室の扉を閉めると、一気に下駄箱に向かっ
て走り去った。
(やれば出来る、ねぇ・・・。)
靴を履き替えながら、ぼんやりと思った。
(確かにね。やれば何でも出来るよね。)
2 名前:まいのすけ 投稿日:2001年05月19日(土)01時20分20秒


「タノシイコトしたくない?」

何時ものドーナツ屋。その日も何をするでもなく、窓から外の通りを見ていた。
行き交う沢山の人を目線を移ろわせながら、観察してみる。
(あの帽子の人格好良いなぁー・・・アイツ先刻もここ通ったぞ。
 ・・・夏も来るし、新しいキャミソール欲しいなぁ・・・・・・援交かな・・・?)
背広姿の若目の男が、金髪の少女に向い財布を開いて居る。中を覗いた少女は、首を振ると男に背を向け
て歩き出した。男は追うこともなく、そのまま佇んで居る。
(ありゃ、足りなかったんかな。)
そんなに高い娘なのかな、なんて何の気もなしに目線で少女を追った。
すると、今度は少女の前に女が現れる。長く伸ばした髪を茶色く染め、長く伸ばした爪は黒く塗られて居
る。格好から察するに、夜中に働く様な人ではないだろうか。
少女と親しげに言葉を交わすと、腕を絡ませ歩き出した。女の方が寄り掛かり甘えて居る感じだ。
「ひとみちゃん、お待たせ。」
少女達が視界から消えた頃に、梨華が戻って来た。
「トイレ混んでた?」
「ううん、今は平気。」
「じゃ、あたしも行って来る。」
特に気に掛けるでもなく、吉澤は席を立った。

携帯に連絡が来て、クラスの男子達とカラオケに行った。奢りでなければ、行かなかったのだが。他にも
女子が数人誘われて居て、女子全員奢ったのかと考えると哀れさを感じた。しかも部屋の作りがしっかり
して居る、そう安くないカラオケボックスだ。
(其処迄して女の子と遊びたいかぁ・・・?)
吉澤は異性に困った事がないから、そう思った。
自分でも判って居る。顔だけだったら悪くない、と。ちょっと付き合う位なら、性格なんてどうとでも変
えられるし。
「ひとみちゃん、詰まんない?」
「どうしてさ? そんな事ないよ。」
そう云って笑ってみせ、歌に大声で合いの手を入れて見せた。窺う様にして居た石川も、吉澤に促され一
3 名前:まいのすけ 投稿日:2001年05月19日(土)01時23分49秒
緒に手を叩いた。

大音響を押し込めて、扉を閉めると、用もないのにトイレに向かった。
無理にテンションを上げた所為で、少し疲れた。少しゆっくり目に戻ろうか、なんて考えて他の部屋に目
を配りつつ、歩く。
「・・・あ。」
妙に暗い部屋で、ソファに身を預け抱き合う影が見えた。
(先刻の人達だ。)
金髪の少女が、女に抱かれソファに寝転んで居る。悪いと思いつつも覗き込むと、少女と目が合った。
少女は一瞬、無表情で吉澤を見据えた後、口角を吊り上げ「にぃっ」と笑った。吉澤が息を呑んだ時には、
彼女の目線は女に向かって戻って居た。
(見なかった事にしよう・・・。)
トイレに足早に向かった。店内が暑く感じられる。

誰も居ないのを確認すると、一息吐いた。稼ぐ為ならば相手は選ばないのだろうか。
(・・・まぁそんなモンだよね。)
どれ位稼げるのだろうか、なんて考えて見る。相場が判らないのだから、見当が付かない。
嫌悪感よりも好奇心の方が勝る。そんな物だ。
女の相手もする娘が居るなんて、初めて知った。出来過ぎた漫画みたいだ、とも思った。
折角来たのだから手でも洗って帰ろうと、蛇口に手を差し出した時に、扉が開いた。
鏡越しに見えたのは、ウェーブがかった金髪の少女。
(――金髪?)
扉が閉まるのと同時に顔を上げたのは、あの金髪の少女だった。先程迄着ていたスタジャンを脱いで、オ
レンジのTシャツ姿だ。吉澤の隣に来ると、同じ様に手を洗い始めた。
居心地の悪さに早く立ち去りたかったが、何でもない振りをして手を洗い続けた。
4 名前:まいのすけ 投稿日:2001年05月19日(土)01時24分27秒
吉澤は話し掛けられる事もなく、意味深な目線を投げ掛けられる事もなく、手を乾かし終えた。扉に手を
掛け安堵の息を吐こうとした瞬間、声を掛けられた。
「何で見てたの?」
取っ手に手を掛けたまま、吉澤は凍り付く。
「・・・え?」
派手な音を鳴らして手を乾かし終えた少女は、ドライヤーから手を引き抜くと、水を飛ばす様に振って居
る。勿論、水は飛ばない。
「先刻。何で見てたのって聞いてんだけど?」
手を振るのを止め、吉澤を見上げるともう一度聞く。
「あー・・・えっ・・・と。」
「何、もしかして客?」
腰に手を充てると上半身を乗り出して、楽しげに訊ねて来る。たじろいだ吉澤を見ると、口角を上げ「に
ぃっ」と笑う。少しだけ、客になる人々の気持ちが判った気がした。
「・・・え? あーっと・・・。」
しかし何とも、曖昧な返答しか返せない。別に理由があって見てた訳でもないし。
「まっさか!違うよねぇ・・・君みたいな学生がお金持ってる訳ナイもんなぁー。」
値踏みするみたいに吉澤を興味深げに見ると、彼女は体を引き真顔に戻り、突き放す様にそう云った。
「でも、さ・・・タノシイコトしたくない?」
真顔を崩さず聞いて来る。数秒、沈黙が流れた。
「ビンボー人は相手にしないのだよ。すまんね。」
一転して演技じみた口調で云った。吉澤の肩に手を置くとポンポンと叩く。「タノシイコト」と云う問い
掛けが、「ワルイコト」と響いて来た気がした。
「あの・・・。」
吉澤の真剣な目線に気付くと、少女は「んあ?」なんて呑気な声を出した。
「幾ら、ですか・・・?」
「え?」

「ひとみちゃん、皆帰っちゃうよ〜?」
部屋に戻ろうと向かって居た吉澤に、梨華が向かって来た。
「え、マジ? あ、もう五時半か。」
「皆ファミレス行くって云ってるけど、どうする?」
「あー・・・帰るわ。梨華ちゃんは? 行くの?」
「ひとみちゃん帰るなら、私も帰る。」
「そ?」
「うん!」
歩きながら、少女達の部屋を覗いた。声は聞こえて来ず、重低音だけが響いて来る。
画面の灯りで、テーブルの上にオレンジのTシャツが放られて居るのが見えた。
「どうしたの?」
梨華に悟られぬ様、慌てて目線を逸らした。
「何でもない。早く帰ろ?」
5 名前:まいのすけ 投稿日:2001年05月19日(土)01時26分28秒
「お験し期間! 特別に、最初だけはタダで良いよ。」

そんな言葉に誘われて、吉澤は彼女に会う為、電車に乗った。
悩んだ事は悩んだ。後々請求されたらどうしよう、とか。彼女は居なくて、数人の男に囲まれたらどうし
よう、とか。――結局はこうして向かって居るのだが。
(何でだろ・・・好奇心?)
何に気を惹かれたのだろう。何に興味を持ったのだろう。
自分は――。
そしておそらく彼女は。
6 名前:まいのすけ 投稿日:2001年05月19日(土)01時28分03秒
駅前のファーストフードで午後三時。席等の指定はなく、ただ其れだけを告げられた。
携帯を見ると、七分前。店内を見回すと制服姿の高校生、中学生が目に付く。
週末でもないのに暇な事で、なんて自分を棚に上げて思ったりする。
「おーい! コッチコッチ!」
片手に持った煙草を振り上げ、彼女が声を掛けてくれた。隣に座ったサラリーマンらしき人が、舞い落ち
て来た灰に眉を顰めて居る。
「やはー。」
そんな事全然気付いてない風で、彼女は力の抜けた感じに挨拶をして来た。
「コンニチワ。」
緊張を隠せない声で、吉澤も挨拶を返す。
「煙草、吸うんですね。」
椅子を引いて腰掛ける。ハズレ椅子だった様で安定が悪い。
「んー? うん、何で? 煙ダメとか?」
気遣う様な台詞を吐きながら、煙を吐く。手元の長い煙草を消す素振りはない。
「へーき、ですけど。」
「良かった。今、火ぃ付けたばっかだからさ。」
テーブルに放って置かれた居る、見た事のない銘柄の煙草。藍地に赤い蝶の絵柄。毒々しい真っ赤な蝶。
「吸う?」
吉澤の前に、煙草が突き出される。近くで見ると、細かな処迄描かれた蝶は、益々気味が悪い。
「いや、いいです。―見た事ないヤツだったから。」
「あ、成る程。うん、珍しいよね。貰い物なんだ。マズイし。」
「じゃぁ、吸わなきゃ良いじゃないですか。」
「え、勿体無いじゃん。」
何云ってるんだ、なんて顔をしながら彼女は吸い続ける。
この間会った時とは、少しイメェジが違うかも知れない。服装の所為だろうか。
前回は、厚底スニーカーにデニムのスカート、オレンジのTシャツの上にはスタジャンを着ていた。
今回はベースボールキャップに大きめのパーカー、そしてダボパン。影だけみたら、男でも通りそうな感
じだ。
7 名前:まいのすけ 投稿日:2001年05月19日(土)01時29分07秒
「ナニナニ? 早速あたしを品定め?」
見られて居る事を気にも留めず、楽しそうに聞いて来る。
「いや・・・こないだと雰囲気違うから・・・。」
彼女の顔が近づいて来たので、体を引きつつ応える。
(あ、ピアス開けてんだ・・・。)
キャップから出た金髪を耳に掛けて居る。ピアスは右に二個、左に三個(内、一個は軟骨だ。)同じデザ
インの物は一つとしてない。
「あー、服装の要望は聞くからね、一応。」
「今日は?」
「んー・・・楽な格好。」
フィルター近く迄吸った煙草を消して、彼女は付け足した。遅刻しそうだったから、その辺の物を着て来
たの、だと。
「って事は、帽子取ると寝癖スゴイとかですかぁ?」
「・・・バレた?」
彼女は舌を出しておどけて見せた。確かに良く見ると、キャップから覗いた髪は方々に散って居る感じだ。
「ホントはさぁ、行くの止めようかとか思ったんだよねぇ。」
(其れは自分も思いました。)
「でもさぁ、君ちょっと可愛いじゃん。しかも面白そうだし。」
(あぁてゆうか、名前も知らない二人なんだよね。)
「丁度良く、起きれたし。」
「はぁ。」
黙ったままなのも悪いと思って、適当に相槌を打つ。
「客っつーよりか、フツウに遊んでみたかったんだよね。」
嗚呼、成る程なんて思った。きっと吉澤もそう思って来たのだ。
「あたし、結構友達少ないしさ。」
悪戯っぽく笑って云った。表情も意図も読み取れない。ただ、吉澤は思った。彼女みたいな人は、友達が
多いだろう、と。
(だって、あたしは友達に成りたいから。)
8 名前:まいのすけ 投稿日:2001年05月19日(土)01時29分43秒

「サヤカ。」
「え?」
店を出ると、今にも降り出しそうな空色だった。不意に声を発した彼女に、吉澤は振りかえった。
「あたしの名前。君は?」
「あ、吉澤です。吉澤ひとみ。」
「ふぅん。――吉澤で良い?」
「はい。・・・サヤカさん。」
急に名前を呼び合うとなると、妙に気恥ずかしい。初めて呼ぶには、ちょっとしたタメが必要だった。
「んじゃ、まぁ・・・よろしく。」
サヤカは手を差し出して、吉澤と握手をした。
9 名前:まいのすけ 投稿日:2001年05月19日(土)01時30分14秒


(サヤカさんもう来てるよなぁー・・・。)
下駄箱からダッシュで校門をくぐり、駅に向かう。夕方の帰宅ラッシュに揉まれながら、電車に飛び乗る。
お互いに、名乗った日から二人は会う様に成った。夜型のサヤカに連れられて、様々な場所で遊んだ。
閉店時間を過ぎたゲームセンター。(知り合いに開けて貰って入る)
かくれんぼに最適な立体駐車場。
駄菓子が豊富なコンビニ。(腹が減っては何とやら)
工事現場では足場に気を付けて。(落ちたら、本当にシャレに成らない)
ゲームをする訳でもなく、たむろするボウリング場。
それから定番のカラオケ等、毎日を退屈させないラインナップだ。
(・・・何か、考えてみるとあんましお金の掛かんない遊びばっかだね。)
車窓の外を見やり、ふっと微笑む。流れ去る樹木が緑色をテカテカと反射させた。
10 名前:まいのすけ 投稿日:2001年05月19日(土)01時32分51秒

「欲しい物なんて特にナイ。」

何時だったかサヤカが云った。その時は何とも思わなかったが、考えてみると判らなくもない。
欲しい物は手に入れてる気がする。服やCDや本、お金等ではなくて、欲しい物。
(・・・何だろ・・・満たされてるのかなー。)
答えに辿り着く前に、車両は目的地の駅に滑り込んだ。
11 名前:まいのすけ 投稿日:2001年05月19日(土)01時37分19秒
慣れないもので、しょっぱな(2、3間)カラ見にくくて、申し訳ナイです。
こんな感じで、吉澤・市井メインに書いて行こうかな、と思ってます。
12 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月19日(土)03時00分55秒
いちよしがメインの作品ってあまり(ってゆうか全然)ないんで期待してます!!
13 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月19日(土)03時08分32秒
おおおう面白そう!
まいのすけさんて、以前チラッといちごま書いたりしてたあの、、、って違ったらすみません。
とにかく期待してます
14 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月19日(土)13時40分34秒
久々にいい感じな予感
15 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月19日(土)13時49分24秒
楽しみです。
16 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月21日(月)14時49分11秒
17 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月24日(木)23時59分05秒
続き期待!
18 名前:まいのすけ 投稿日:2001年06月01日(金)00時07分45秒
続き書いてるのですが、もう少しかかりそうです。
申し訳ナイです。
レス有難う御座います。期待に添えられる様頑張ります。

>13
 そうです、書いてました。懲りずにマタ来てしまいました。
19 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月01日(金)22時11分12秒
待ってます!!!
頑張って下さい
20 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月02日(土)02時37分44秒
>>18
おぉぉやっぱあのまいのすけさんでしたか!
めちゃくちゃ楽しみにしてます!!
頑張って下さい
21 名前:パク@紹介人 投稿日:2001年06月19日(火)17時17分13秒
こちらの小説を「小説紹介スレ@銀板」↓に紹介します。
http://www.ah.wakwak.com/cgi/hilight.cgi?dir=silver&thp=992877438&ls=25
22 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月27日(水)00時11分39秒
そろそろ続ききぼ〜ん
23 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月07日(土)21時19分57秒
すいません、続き行きます。取り合えず、頑張ります。
24 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月07日(土)21時21分34秒
「おっそい!」
「ごめんなさいぃ。」
片手で謝罪を表して突き出すと、語尾を消え入りそうにさせながら吉澤は謝った。
「あたし、十三時半って云ったよね?」
「・・・云いマシタ。」
「もー、皆集まってんだかんねー。」
文句もそこそこに市井は手を引くと、吉澤を近くのコンビニに連れて行った。
二十歳前後の男女が、数人たむろして居る中にサヤカは突っ込む。
そうして、彼等に手を上げ挨拶を交わして行く。くっついて、吉澤も頭を下げた。
「あ〜紗耶香、遅かったじゃん。」
ちょっとキツめの目をした女がサヤカに声を掛ける。へらへらっと笑い「ごめんごめん。」と軽く云うと、
女の方は仕様がないな、なんて顔をする。其れだけで、親しげな雰囲気が感じられた。
「あ、この子がこないだ話した吉澤。」
いきなり紹介されて、吉澤は慌てて「どうも」なんて小さな声に出しながら頭を下げる。
「んで――」
「保田圭です。よろしく。」
サヤカが紹介するよりも早く、保田が吉澤に手を差し出した。
握手を交わした時の感覚が悪い人ではないな、と吉澤に思わせた。
「―そいじゃ、行きますか?」
保田が声を掛けると、それぞれは歩き出した。
25 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月07日(土)21時22分07秒
女二人に、男三人、の五人組バンド。今日は月一で行ってる彼等のライブの日だ。
「こっちのギター持ってって貰って良い?」
是で何本目だよ、なんて思いながら吉澤は「はぁい。」と応えた。両肩にギターを提げると、地下のライ
ブハウスへと続く階段を、慎重に下りた。
「おー・・・大丈夫?」
上って来たサヤカが壁にへばり付き、通り過ぎる吉澤に声を掛ける。狭い階段なので、擦れ違うのも困難
なのだ。
「だいじょぶです・・・多分。」
この階段でサヤカと擦れ違うのも何度目だろう。
「あはははは、まぁ頑張ろうよ。今夜はオゴリだ!」
サヤカが右手を握って上に突き上げる。吉澤もうんうんと頷き、又階段を下りた。

「手伝ってくれる御礼だから、打ち上げにも参加してってよ。」
このライブハウスに来る迄の車中で、保田は二人に云った。
(手伝ったのは、ライブ見てみたかったから、なんだけど・・・。)
サヤカに誘われて好奇心で来ただけなのだ。シンバルが入って居るらしい袋を抱えながら、階段を下りる
。どうやら、是で最後の荷物の様だ。
(一石二鳥ってヤツ・・・?)
大した荷物でもないのに、保田が扉を開けて待って居てくれてる。
「――ちょっと・・・全然違うか。」
自分でつっこんで、残り三段を一気に飛び降りた。吉澤の不意の行動に保田は驚いたが、年長者の顔で微
笑むと、そんな吉澤を迎えた。

邪魔をしない様にと音合わせの段階に入ると、サヤカと吉澤は隅で眺める事にした。
爽やかな感じの男と、一番幼そうな少女とで、ダブルギター。
逆に、メンバー内で一番年をくってそうな髭面の男が、ベース。
オレンジで短髪の男がドラム。(一番ミュージシャンっぽい、と吉澤は思った)
そして、ベージュの髪をさっぱりと短く切って居る保田が、ボーカル。
思ったよりは、聞き易い感じの曲を演って居る様だ。癖のある声を前面に出さず、すんなりと聞かせてく
れる。
26 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月07日(土)21時23分37秒
開演時間が近くなると、場内には人が入り出した。
何でも、毎回来てくれる固定のファンも居るのだそうだ。五十人かそこらの収容数の場内に、びっしりと
、迄は行かなくとも人が溢れ出す。
照明に照らされ現れたメンバー達は、先刻と何も変わらないラフな格好のままだ。
そんな親しみ込み易さがそのまま出た様なライブだった。
ゆったりとした音が会場を満たす。
吉澤はそんな音に合わせて、体でリズムを取った。隣を見やると、サヤカも同じ様にリズムを刻んで居た

大音響の所為もあって、二人は言葉も交わさず目線だけ交わした。ステェジに向けられた筈の照明は、サ
ヤカを引き立てる為だけに点いてる気がした。
吉澤に向けられた笑顔。細くなった目は何を見て居るのだろうか。
(あたしを見て居るだろうか。)
額で光る汗を見て、何故だか無性に抱き締めたくなった。こんな汗だくで抱き合ったら、気持ち悪い事こ
の上ないのに。
(――あぁライブハウスって、気持ち良い。)
27 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月07日(土)21時24分13秒
「古臭いでしょ?」
打ち上げは居酒屋で。煌々と白熱灯の照らす中、ビールで乾杯となり一口目を飲んだ保田が云った。
「・・・んーっと、懐かしい感じでした。」
曲の事かな、と見当を付け吉澤は応える。
「そぉ? ・・・そっか。」
照れる様に、はにかんで笑うと保田は納得した様に云った。
(ビールってこんなに美味しかったんだー。)
クラスメイトと興味半分で飲んだ時には苦くて、結局カクテル位しか飲めなかったものだが、今日のビー
ルは、何故だか美味しい。サヤカなんかは、おっさんの様にグビグビっと飲むと「ぷはー!」なんて満足
そうに云って居る。ライブは音響事故もなく、何の問題もなく、無事に終わった。
やっぱり荷物上げは少し辛かったが、皆で一気にあげてしまうと、後はもう感想を云い合ったりで、それ
所じゃない。
保田達は「当日は感動を、後日に反省を。」がモットーらしいので、今日はとことん楽しむ気だ。
次から次に、チューハイやカクテルが運ばれて来る。
(うわ、グラス人数分越えてるんだけど・・・。)
従業員が置いて行ったグラスを隣に回しながら、吉澤は驚く。もう、誰が何を頼んだのか判らない状態だ


トイレに行ったついでに、少し夜風に当たろうと、吉澤は店を出た。
時間は深夜に近づいた頃だろうか、シャッターの下りた通りをまばらに人が通り過ぎる。
28 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月07日(土)21時24分58秒
「――吉澤?」
向かいの販売機から保田が向かって来た。
そう云えば吉澤が席を立つ少し前に、保田も席を立って居たのだ。手には封を切って居ない煙草を持って
居る。
「保田さんも吸うんですか?」
「ああ、コレ? 違う違う、紗耶香の。」
ゆったりとした足取りで吉澤の近く迄来ると、ダルそうに路の脇に腰を下ろした。
少し酔いが回ってる様子だ。
「なくなりそうだったから、トイレ行くついでに、さ。」
随分と気が利く人なのか、それとも何か他に理由があるのか。親切にしては、ちょっとやり過ぎな気がし
ないでもなかった。「座れば?」と促され、吉澤も隣に腰を落とす。
背を預けた壁から、コンクリィトのひんやりとした感触が伝わる。ぶるっと体を震わせた。
初夏には未だ遠く、夜ともなると肌寒い。
「――仲、良いんですね。サヤカさんと・・・。」
「んー・・・同じ高校だったからさ。」
「え? ―サヤカさん高校行ってないって・・・?」
吉澤には一度だけ話してくれた事がある。高校には行ってない、其れで親に迷惑掛けたくないから一人で
暮らしてる、と。
「辞めたって云わなかった?」
「・・・詳しくは、聞かなったです。」
(――悪いかなって思ったから・・・。)
あの時、表情は見えなかったけれど、話したくない事だったら聞きたくなかったから。
しつこく訊ねてやっぱり、なんて子ども扱いされたくなかったから。
話してくれるのを聞く方が、お互いに関係として良いと思ったのだ。
「そっか。何か余計な事云っちゃったね。
 ・・・ウチらさぁ一緒に辞めたんだ、高校。あたしが高三で、紗耶香が高一の夏休み。」
保健室で良くサボってたサヤカに保健委員だった保田が、話し掛けたのが二人の出会い。
29 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月07日(土)21時25分56秒
既に入学式からやる気のなかったサヤカは、保健室の常連だった。
「あんた、又寝てんのー?」
シャっとカーテンを開けると、寝台で眠る下級生に声を掛ける。
「んー・・・。」
起きる気がないのか、掛け布団を引っ張ると顔を隠してしまう。
「ちょっとー・・・市井紗耶香!起きろってば!」
来室者ノートを開くと、クセ字で書かれた名前が何段にも並んで居る。今月の来室トップは間違いなく、
この市井紗耶香だ。そして来室理由は毎回「頭痛」。
(頭に釘でも刺さってんじゃないの?)
聞いてやりたい所だが、黙っておく。二言、三言、話した事はあるが、冗談が通じそうな相手には思えな
かったからだ。しかし、何時迄も寝かせて置く訳にもいかない。
サヤカは起きる気配もなく、もぞもぞと布団の内で丸まって居る。保田は手を伸ばすと、一気に布団を剥
がした。
「・・・もう下校時刻なんだけど?」
暖かい世界から引っ張り出されたサヤカは、状況の飲み込めない顔をして半身を起こした。
布団を持って睨み付けて居る保田を見ると、やっと状況が判った様で、撥ねた髪を慌てて手櫛で直す。
「あぁ、そんなに寝てたんだ。・・・ごめんなさい、直ぐ帰ります。」
そう云って、寝台の下に転がった上履きに手を伸ばした。
(おや?)
思ったより素直そうな子じゃないか。保田の中でサヤカの印象が変わった。

「そんで、夏休み前には息投合して、一緒に辞めちゃったってワケさ。」
「はぁ・・・。」
「良く判んないって顔してるね。・・・んーっと、バイト辞める、みたいなモンだよ。」
「バイト・・・ですか。」
「そ、気に入らないからいっぺんに辞めてやろうぜ。みたいなさ。」
やっぱり良く判らない。吉澤は足元に転がった缶を眺めた。
「高校が気に入らなかった、て事ですか?」
「まぁ、そんな感じ。そしてあたしは夢の為、時給も判らない様な音楽の世界に飛び込んだ!って訳。」
(――夢の為。)
「云うとちょっと恥ずかしいんだけどね・・・若いから云えるのかも知れない台詞だし。」
保田は本気で照れてる様で、吉澤から顔を逸らすと軽くそう云った。
「・・・そんな事ないと思います。何かを・・・何かを目指すってスゴイ事だと思います。」
「そっか。――ありがとね。」
(でも・・・。)
保田は夢の為だとして、サヤカは何の為に高校を辞めたのだろう。
(そもそも行く気なかったって・・・。)
30 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月07日(土)21時26分53秒
「あっれ〜? 圭ちゃんに吉澤! こんなトコに居たんだ〜。」
かなり良い加減になってるサヤカが、居酒屋の扉を派手な音で閉めると、吉澤達に向かって来た。
「おーおー、紗耶香ってば、大分酔ってるね。」
保田は立ちあがるとサヤカの両肩に手を置く。
「ホラ、煙草。買いに来たんでしょ?」
「あー・・・うん。」
そうして手に持った煙草をサヤカに目の前に差し出す。
「ってもう十一時過ぎちゃってたんだ!」
目の前の煙草には気付かず、自販機を見て驚くサヤカ。
煙草の自販機には赤いランプが灯って、既に営業時間外である事を告げて居る。
「だから、買っといたんだってば!」
先程から目の前に差し出された煙草に気付かなかったものだから、笑い半分責め半分に云われて居る。
「え? あ、ありがとー!」
サヤカは「助かるー。」と抱き付いて喜びを表した。保田は其れをやれやれ、と云った感じで受け止める。
酔って居る所為か、保田と居る所為か、今夜のサヤカは吉澤に見せない幼さを見せる。
(ま、相手は年上ですし・・・。)
何とも腑に落ちない感情を抱きながら、吉澤は其の光景を眺めた。

サヤカに続き、扉をくぐろうとした吉澤を保田が引き留めた。
「あぁ・・・吉澤、ちょっと良い?」
躊躇いがちに聞かれ、取り敢えずは頷く。
興味を示したサヤカが「どしたの?」なんて訊ねて来たが、保田に追い払われて先に戻った。
「どうしたんですか?」
サヤカの背中を追いながら、保田に問う。そんな吉澤の顔をじっと見た保田は、「やっぱ、いいや。」と突き放す様に云った。少し、気にはなったが、直ぐに忘れて仕舞い席に戻った。
31 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月07日(土)21時27分37秒
子どものはしゃぎ合う声で目が覚めた。吉澤は知らない匂いの布団で寝ている。
寝返りを打った先に見える窓からは、曇った天気が伺えた。
口に残る酒のにおいで、昨日は飲んだんだっけか、なんて思い出す。
(――ああ、サヤカさんの匂いだ・・・。)
普段はこんなに濃く嗅ぐ事もないから、思い出すのに時間がかかった。
(そうそう、床でサヤカさんが寝てるハズ・・・。)
昨夜の事を思い出し、体を寝台から起こすと下を覗いた。
腕は頭上に放り出され、口を少し開け熟睡してるサヤカが寝て居る。
(無防備だなぁ、なんか。)
別に何をしようと思った訳でもないのだが、何となく、そう思ってしまった。
(通学路なのかな、外の路は。)
窓の外から子ども達の声が飛び交って居るのが伺える。
枕元に放り出された携帯で時間を確認すると、静かに寝台の上で体を起こした。
ぐるり、とワンルームの部屋を見回す。テレビとCDプレーヤーと小さな冷蔵庫。壁に嵌め込まれる形でクローゼットがあり、扉が全開になって居る。そこから散らばった雑誌や、服等。玄関の方を覗けばゴミ袋が二つ、分別されて捨てられて居る様だ。
(・・・梨華ちゃんの部屋見慣れてるからなぁー・・・。)
意外に綺麗な気がした。
(れ? そう云えば今日、何曜だ?)
最近は、あまり学校に行かない所為か梨華に会って無い様な気がする。最近はサヤカとばかり遊んで居て、梨華とは前程遊ばなく成ってしまった。
(木曜日か・・・。)
携帯で曜日を確認すると、寝台から降りて顔を洗いに向かった。
32 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月07日(土)21時29分49秒
こんな感じで。
是からは、もう少しスピードアップで行きたいと思います。
すいません。
33 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月08日(日)16時33分40秒
作品の中に流れる空気が、気持ちいいです。
楽しみにしてます。
34 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月09日(月)02時13分06秒
楽しみにマターリ待ってます
35 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月09日(月)03時39分06秒
お待ちしておりました。
久しぶりでしたがやっぱり面白いです!!
この先も頑張って下さい!!
36 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月14日(土)12時24分33秒
レス有り難う御座います。励みに成ります。
では続きに行きます。
37 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月14日(土)12時25分42秒
しんと静まり返った廊下に、ゴムの靴底の音が響かせて歩く。
丁度二目時限目が終わろうかと云う時間帯だ。吉澤は自分の教室迄来ると、終業の鐘が鳴るのを待った。
未だ眠って居るであろうサヤカには手紙を残して、一度家に戻りシャワァを浴び学校に来た。少し眠気が残るが、肌寒い空気に触れて居たら、目が冴えて来た。教室を覗き見ては、早く終わらせろよと、心の中で教壇に向かって訴えた。
暫くすると突き抜ける様な鐘が校舎中に鳴り響き、あちこちから一気に生徒達の声が溢れ出した。教師の目に付かない様に気を付け、人が動き出すのを待って教室に入った。
「梨ー華ちゃん!」
机の上を片付けて居る石川に、後ろから抱き着いた。
「――わっ! ビックリしたぁー・・。」
教科書を持った手を机に入れたまま、梨華は振り向いた。
「へへ、ごめんごめん。やっほ!」
吉澤はおどけた感じで、額から手を前に突き出して挨拶した。
「もーう、最近来ないから心配してたんだよ?」
教科書を机に押し込みながら梨華は云う。
「あ、そうなの? だったらメールくれれば良いのにー・・・って梨華ちゃんの携帯、メール出来ないんだっけね。」
「あー!! 又そうやって馬鹿にしてぇ・・・。」
「あはは、早くメール出来るヤツに変えなよー。メールしよ、メール!」
「うん、判ってるってば。来月のバイト代入ったら、買い換えるよー。」
「まじで? そっかー、やっとだねー。」
久し振りに話し始めると、心地良さがたまらない。笑顔から飛び出す話題は止められない。黒板の上に付けられた時計に目をやった梨華が、吉澤の席を指差した。
「――続きは後にしよ? 取り敢えず、授業。」
このまま話し続けても良いんだけれど、なんて思いながらも、おとなしく吉澤は席に向かった。石川はそう云うのを嫌うだろうから。サヤカと違って。
38 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月14日(土)12時26分12秒
「やーっと、お昼だー!」
コンビニの袋を片手に吉澤は伸びをする。
校舎端の教室の扉を開くと、少々埃っぽい空気が迎えてくれた。しかし窓を開けて風を通して仕舞えば、そんな事は気にならなくなった。何より、人が来ないこの教室は梨華とだけ、過ごしたかった吉澤には絶好の場所だった。
「ね、やっぱ人居なかったでしょ。」
「うん、こんな教室が有るなんて知らなかったよー。」
「私もね、こないだ資料取りに来た時に、たまたま発見したんだ。」
他の使われて居ない教室の様に鍵が掛かってる訳でも無く、誰かが定期的に使って居る様子も無い。吉澤は端に寄せられた机一つと椅子を二つ持って来ると、軽く手で上の埃を叩いた。
梨華を促して座らせると、自身も背もたれ前にしに、上半身を任せて座った。
「最近、何してるの?」
紙パックのジュウスにストローを刺しながら、梨華が聞いて来た。吉澤はパンの袋を開けながら応える。
「んーと・・・・遊んでる。――昨日はライブハウス行ったんだよ。」
「学校の方は平気なの? 日数とか・・・。」
「ヤバイ・・・と思う、多分。判んない。」
何にも考えずに休んで居るものだから、本当に判らないのだ。
「ええ?・・・ちゃんとしようよ、其処は。」
「だよね。」
吉澤は笑いながら、缶のプルタブに指を掛けた。
「――学校、嫌いなの?」
梨華が控え目に聞く。他の教室から離れたこの場所へは、騒々しい声も聞こえて来ず、二人の沈黙がただただ流れる。
「んー・・・判んない。」
プシュッと云う音立てて、缶が開いた。中から炭酸のしゅわしゅわと云う音が、涼しげに辺りに広がった。
「判んないって・・・!」
「や、ホントに。ぶっちゃけ、どうでも良い。――今日だって、梨華ちゃんに会いに来ただけだし。」
(こう云えば、梨華ちゃんは何も云えなくなる。)
読み通り、梨華は困った様に頬を赤らめた。その梨華の頭に手をやると、ぽんぽんと軽く叩き、そのまま手を置いた。
「何で・・・。」
梨華はじっとしたまま、困惑した表情を向け吉澤を見上げて居た。目線を合わせると、石川の額の髪を指でかき上げ、其処にキスをした。
「じゃね、又。」
ゴミを袋に詰めると、梨華の方は見ない様にして教室を去った。

「ごめんね。」

少しの悪戯心に罪悪感を感じて、教室を出て随分経ってから、小さく呟いた
39 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月14日(土)12時27分42秒
家に帰って風呂に入った。
吉澤の両親は共働きだから、こんな平日の昼間には、家を一人で占領出来る。風呂からあがるとバスタオルを巻いただけの格好で、食卓に転がった新聞を広げた。
(なーんか、テレビも詰まんないなー・・・。)
特に読む訳でも無く広げては、閉じる。広告が何枚か落ちたが、面倒臭いので放って置く事にした。一通り目を通したが特に是と云った事件も無く、世の中は今日も平和な様だ。冷蔵庫から出したコーラを開けると、一口飲んで部屋に戻った。寝台の上に携帯を置きっ放しにして居る。メールが来てないか、気に成った。
折り畳み式の携帯を開くと、メールのマークが目に入った。二件来ている。
『ゴミ捨てといてくれてサンキュー。助かったよ、起きたの今だからさ。又、飲み行こうね♪』
サヤカから一通。少し考えてから、是から遊べないかと返した。
『帰る事無いじゃない、明日は来るの?』
梨華からも一通。取り敢えずは行く予定である事を伝えておく。
(予定は未定、だけどね。)
用の無くなった携帯を寝台に放ると、ジャージに着替えた。本屋にでも行って、立ち読みをしようと思ったのだ。するとタイミング良く携帯が鳴った。
サヤカからの着信だ。通話ボタンを押すと、サヤカの声が飛び込んで来た。
――吉澤〜? 今、何してんの〜?
「えーっと、暇してました。」
――学校は?
「今日は休み・・・って事で。サヤカさんこそ、何してるんですか?」
――んー、バイト。でも、もう終わりそうだからさぁ、遊ぼうよ。
「良いっすよ。 何処にします?」
電話を切ると、この格好のまま出掛ける事にした。ポケットに家の鍵と、携帯、財布だけを詰め込んだ。
40 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月14日(土)12時28分13秒
待ち合わせのファミレスでは、既にサヤカが席を取って居た。柄物のジャージを履いてラグラン袖のロングTシャツを着ている。
「今日は少年ぽくって注文ですか?」
固定されたソファ風の席に腰を落ち着けながら、聞いた。
「おー、当たり!」
云いながらサヤカは手を銃に見立てて、吉澤に向かって撃った。
「でも、そっちも似た様な格好じゃん。」
「あー、まぁそうですけど。」
「吉澤も結構、儲けられんじゃ無いの?」
「――はぁ?」
「多分ね、あたしの客とか吉澤連れてったら、喜びそうな人とか居るもん。」
「うっそだぁー。」
「や、マジだって。」
ウェイトレスが来て、吉澤に注文を聞いた。ドリンクバーを頼むと、其れで粘る事にした。オレンジジュウスを入れて居たら、サヤカに横からメロンソォダを混ぜられた。お返しに、サヤカのコーラには烏龍茶を足してやった。
「うぇ・・・。」
舌を出して不味そうにしたサヤカに、自分のコップを見せ付けた。橙と緑が混じり、実験的な色に成って居る。
「あんまし、下んない事しないで下さいよ。」
一口飲み込んで見る。思ったよりは不味く無いが、好き好んで飲む物でも無かった。
「そう云えばさ、先刻の話だけど。」
何事も無かった様にサヤカは切り出した。
「吉澤見て、喜ぶ人とか見たく無い?」
「・・・はぁ?」
「そして、ちょっと小遣い稼ぎをしたくありません?」
楽しそうに、何かを企んで居るサヤカは続ける。
「大丈夫、あたしも連いてくからさ。」
「――それって・・・?」
「そう。」
感づいた吉澤に大きく頷き返すと。「どうする?」とでも云いたげに、サヤカは首を傾げた。
41 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月14日(土)12時29分33秒
取り敢えずは是位で。未だ全然、長く成りそうです。
42 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月14日(土)23時13分23秒
おぉぉ・・よっすぃー小遣い稼ぎなさい!!
続き楽しみすぎ
43 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月15日(日)16時44分29秒
少し一緒に居れば良いだけ。
夕飯は奢りで、終電迄にはちゃんと帰れる。
携帯で交渉らしきものを終わらせたサヤカに簡単に説明され、吉澤はそのままファミレスから連れ出された。
「まぁ、あたしも居るしさ。軽いキモチで、よろしく!」
「はぁ。」
断る事もせず、何となく連いて行く。
五階建て程度のマンションに来ると、サヤカが慣れた様でインターフォンで呼び出して居る。少し低めのトーンで女の声が返って来る。間も無く鍵が開いて、二人はエレベータに乗り込んだ。
「そんなに緊張しなくても、平気だよ。ここの人は何もしない人だから。」
閉鎖されて居るエレベータ内は、篭った空気が蒸し暑く感じさせた。サヤカが四階のボタンを押すと、足元が浮かぶ感覚に軽い眩暈を覚えた。人に指摘される程だ、かなり緊張して居る様だ。
44 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月15日(日)16時45分18秒
しかし緊張は拍子抜けに変わった。本当に何も起こらず、ただ其の部屋で過ごしただけだったのだから。テレビゲームをしたり、一緒にテレビを見ていただけ。サヤカの提案で手料理迄をご馳走に成り、最後はお小遣いを貰ってマンションを後にした。
45 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月15日(日)16時47分00秒
マンションからそう遠く無い公園のすべり台。
「面白いっしょ?」
銜え煙草のままサヤカは滑る方から登る。
「はあ、何か・・・拍子抜けっつーか・・・。こんなんでお金貰って良かったんですかね?」
「良いんじゃないの? くれたんだし。まぁこん位なら、誰でもくれるよ。」
そうなんだ、なんて思いながらポケットに入った紙幣を握り締めた。
「サヤカさんって・・・。」
「うん?」
天辺迄登ったサヤカは、足を広げて座る。
「サヤカさんって・・・何時もこうやって、稼いでるんですよね?」
「んー。まぁ、こんな感じで。」
もう少し突っ込んだ話がしたいのだが、なかなか良い聞き出し方法が思い付かない。
滑り台の下をウロウロとし、梯子の様な階段に寄りかかった。サヤカの背中に背を向けて。
「吉澤。」
「っはい?」
「他にも聞きたい事あんの?」
「――え、や・・・ハイ。」
「あはははは、正直だなぁ。」
笑いながら滑り台を滑ると、砂場に辿り着く。そうやって座ったまま、サヤカは砂を弄りながら話し出した。吉澤は背中を向けたまま、首だけで振り返って聞く。
「んーと、ねぇ。まぁ、何時もこんな感じ。時々・・・そう、此間のカラオケボックスみたいな事に成る事も有るけれど。」
「此間の・・・。」
「アレは特定の相手だけだけど・・・。」
片手に掬った砂を顔の前迄上げて、手を開くと指から零れさせる。サヤカは其れを何度も繰り返す。
「そうやって、生活シテマス。」
不意に振り返って、「ニッ」と笑った。吉澤は弱りながらも笑い返した。
「――高校辞めてからですか? そうやって生活する様に成ったのは。」
「うん、そう・・・って高校の話って、したっけ?」
あ、と思った。サヤカは自分には知られたく無い事だからこそ、話さなかったのでは無いのか。
「あー・・・っと保田さんに・・・。」
「・・・圭ちゃんか。」
そう云うと、サヤカはふい、と背を向けて仕舞った。気まずい空気が流れる。又、砂を弄り出したサヤカに、吉澤は話し掛ける事も出来ず、背中を見詰めるだけだった。
46 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月15日(日)16時47分35秒
「ごめん、なさい・・・。」
「え! 何で・・・?」
サヤカが驚いた顔で振り向いた。
「や・・・だって勝手に聞いちゃって・・・。そう云うのって嫌ですもんね・・・。」
「あー、うん。嫌だけれど、そんなん吉澤が悪いんじゃ、無いじゃん。」
保田の心配性な処は、時々迷惑な事が有る。誰にでも自分の事を話したりはしないものだ。其れを、当人の知らない処で勝手に話されて居ては、友達だからこそ気分の悪い物だ。サヤカはそう云った。
「ホントに、良いヤツで好きなんだけどさぁ・・・。」
「だから、こそ・・・。」
「うん。」
其れ以上の話はしなかった。滑り台を滑ったり、少しはしゃいでから帰った。
47 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月15日(日)16時48分07秒
夢心地を壊したのは、携帯の着信音だった。
最初は無視して寝続けようと思ったのだが、相手のしつこさに呆れて四十三コォル目で受話ボタンを押した。
「・・・・・・。」
受話器の向こうから、駅のアナウンスが聞こえる。
――もしもし? おはよう、ひとみちゃん! 寝てたでしょう?
(寝てたから出なかったんだけど?)
寝起きの不機嫌を誰かにぶつけるつもりは無い。
「――おはよう。起きた・・・今。どうしたの?」
――うん。一緒に学校行こうと思って。
「え? 梨華ちゃん、家反対方向じゃん。」
――うん。だから、是から向かえに行くね。
「は?!」
受話器の向こうのアナウンスが、電車が来る事を告げた。
――あ、じゃ電車来ちゃうから。後でね!
「え? もしもし?! 梨華ちゃん??」
彼女にしては珍しく、強引に電話を切った。
(そうでも無いか。梨華ちゃんて、時々ヒジョウにゴウインだもんね。)
思い込んだりしたら怖いタイプだ。昨日のメールのお陰だろうか、吉澤は学校に行く事に成って居る。特に休む理由も思い付かず、壁に掛けた制服に手を伸ばした。
48 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月15日(日)16時51分00秒
レスどうもです。
楽しく出来る様、頑張ります。
49 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月16日(月)00時35分27秒
いちよし、ワクワクドキドキ
今いちよしってここだけですよね。すんごい楽しみです。
50 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月16日(月)03時47分58秒
面白いっすね〜!!
自分もいちよし大好きです。
51 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月19日(木)09時45分42秒
梅雨も開け、連日暑い日が続いた。梨華は毎朝向えに来る。
始業ギリギリの電車に乗って、二人で登校する。
他に予定も無いから、と云う理由で梨華に連いて学校に行く。そんな理由を梨華は知らない。何か良い方向に考えて、受け止めて居るのだろう。梨華のお陰で一時は危なかった(らしい)吉澤の出席状況も、大分良くなった。
「もう夏休みに成るね〜。」
冷房の効いた車内で団扇片手に梨華は楽しそうだ。今日は期末考査の為、昼前の電車で帰って来て居る。
「楽しそうだね。最近いっつもだけど。」
「え? そうかな。へへ、夏休みだもん!」
楽しそうな梨華につられて、吉澤も柔らかく笑う。目線が合うと、梨華は照れくさそうに俯いた。ピンクのキャラクター物の団扇がぱたぱたと、忙しなく動く。
「何で? 何か予定あんの?」
「未だ無いけど・・・。」
梨華は頭を少しだけ上げ、伏せ目がちに、見上げて来た。
何かを求めてる目。
(未だ、ね・・・。)
梨華は吉澤に求めて居る。
「どっか行きたいトコあんの?」
「え? 何で??」
期待に満ちた目。
是は誘導訊問だ。彼女がどんな言葉を待って居るのか、当てなくちゃ不可ない。
「一緒に、どっか行こうよ。折角、休みなんだし。」
「え、ホントに?!」
梨華は両手を合わせて喜んだ。誘導等をしたつもりは欠片も無いだろう。彼女の無意識に吉澤が望んで付き合ったのだ。
「うん、何処が良い?」
「プール! プール行こうよ!」
「良いねー、暑いもんね。」
こうやって、人の汚い処を曝け出すのは楽しい。綺麗に固めてた意識の奥には、自分の為の理由が一杯だ。傲慢をキレイ事に摩り替え、無意識に思い込む。
梨華と居ると、良くそんな事に気付く。
52 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月19日(木)09時46分27秒
「あ! あそこ、行きたい!!」
「何処?」
梨華は、室内型アミューズメントパークの吊り革広告を、団扇で指して居る。
冷房の効いた室内でゲームに興じる。楽しそうだ。
「うん、良いね! 行きたいね。」
「あ、お買い物も行こうよ。」
「ははは、予定一杯だよ。」
「え? えへへ、はしゃいじゃったかな。ごめんね。」
梨華は恥ずかしそうに、座席に縮こまった。
「良いよ。全部行こう。」
随分上手く成ったなぁ、と吉澤は自分で思う。
この娘は確実に好意を抱いてくれて居て。自分は其れに気付かない振りをして。二人はそれぞれに違う感じ方で、この関係を楽しんで居る。心地良さは何時だって欲しいのだ、お互いに。
53 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月19日(木)09時47分27秒
梨華が夏休みの為にバイトを始めると云い出した。夏休み迄、もう二週間も無いと云う頃だ。
「バイト代、何時入るんでしょうね。」
「わっかんないよ。週払いとかかもよ?」
「・・・多分違うと思いますよ。」
駐車場の金網に背中を預けて、アイス片手に梨華の話題で盛り上がる。
サヤカは梨華の話が好きだ。「面白い話無い?」と切り出しては、梨華の話を聞きたがる。
「チョコミントって旨い?」
最中のアイスを齧ったサヤカが、吉澤のアイスを覗き込んだ。
「旨いですよ。交換します?」
一口、スプウンで掬うと、サヤカの口に入れる。
「どうです?」
サヤカは眉を寄せると、首を傾げた。
そして黙ったまま自分のアイスを吉澤の口元に押し付けた。吉澤は其れを、小動物の様に、伺いながら、一口齧った。
「んまいっすね。」
口をもごもごとさせながら吉澤が云うと、サヤカは満足そうに頷き
「旨いってゆーのは、こーゆーのをゆーんだよ?」
と、窘める様に云った。
54 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月19日(木)09時48分02秒
「何か、未だ口に味が残ってる。」
よっぽど気に入らなかったのか、サヤカは食べ終わってから暫く経った今に成っても、不満を云う。
「――もー、先刻からソレばっかですよ。」
呆れ気味に吉澤は返す。
「だってさー・・・・・・。」
尚も口を尖らせる。そんな様子を溜め息を吐きながら見ていると、急にサヤカの顔つきが変わった。何か思い付いた様だ。
「どうしたんですか・・・?」
「良ーい事、思い点ーいたっ!」
そう云うと、サヤカは腕を吉澤の首に廻し、力を入れて引いた。
吉澤はサヤカに顔を突き出す格好に成った。
更にサヤカは、ぺたと額同士をくっ付けさせてから、唇を突き出した。其の体制のまま瞳で、吉澤に訴えた。
一度、唾液を飲み込んだ吉澤は、目を閉じ、自らも唇を突き出した。
唇は二、三度触れ合って、お互いに中を開放した。
口内に、二人の混じった唾液が溢れ出す。
サヤカに頭を掴まれた。その瞬間に、後頭部から全身へ熱さが流れ出す様な感覚があった。
(熱い・・・。)
薄目を開けると、目を閉じ眉を顰めたサヤカが、唾液を飲み込むのを見た。
コンクリートの地面に着いて居た吉澤の手が、サヤカに向かった。
腰に廻して、下から背骨をなぞった。緊張の所為だろうか、指が思い通りに動かない。固まったみたいな手を、背骨に沿って何度か往復させた。
55 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月19日(木)09時49分21秒
「で? 吉澤は、バイトどうすんの?」
「あ、え?」
「どしたの、ぼーっとしちゃってさ。」
「あ、いや・・・何でも無いっす・・・。」
熱いキスを止めたのはサヤカだった。「―っぷは!」と口を離したサヤカは、吉澤に「ニンマリ」と笑って見せると、何事も無かった様に辺りに転がったゴミを集め、立ち去ったのだ。其れを追って、吉澤はサヤカの部屋迄来た。
「・・・で、何の話でしたっけ?」
サヤカは連いて来るな、と云う素振りも無く、当たり前の様に部屋に上げてくれた。
「バイトの話だってば。吉澤はしなくて良いの? 夏休み来ちゃうよ。」
「あ、そっか・・・そうですよね。」
バイトの話なんかより、先刻のキスの事が話したいのだが、切り出す事は出来ない。
(気紛れ、なんだろうけど・・・。)
意味等が有る訳では無いのだろうけれど、キスは確かに在ったのだ。
少しの期待と、現実を見ようとしてる自分。
「・・・紹介したげよっか?」
至近距離から覗き込んで来たサヤカが、悪戯ぽく笑った。
何となく予感はした。
「・・・紹介?」
「うん。どんな人が良い?」
(バイト先の店長が? バイト先の先輩が?)
そうでは無いと判りながらも、頭の中の整理の為、確認作業をする。
「どんな人、ですか・・・?」
「そ、どんな人。―どんな相手が良い?」
やっぱり、と思った。
そして、其れを不思議にもすんなりと受け入れた。
「どんな人が居ます?」
こんな時は来るのだろうと予感して居た。ずっと曖昧に引いて居た線が、今はっきりと姿を現しただけだ。
56 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月19日(木)09時50分06秒
何だか当たり前の様な感じがした。
(是はフツウの毎日なんだろうなぁ・・・。)
手を引かれ古着屋に入る。相手は大学生だ。会うのは三度目に成るので、不自然さも段々と無くなって来て居る。
「ね、是どう?」
目の前でハンガーに掛かったシャツを、体に当てて見せて来た。
「んー、もうちょっとおとなしめの方が。」
「そう?」
云うと彼女はクルリと反転し、壁に沿って並んだシャツに向かう。一着一着を慎重に見比べて居る様だ。吉澤も脇に何本も並べられたデニムパンツを、何となく見る。
「ジーパン?」
どれも同じ様に見えるのだが、彼女にはちゃんと区別が点く様だ。
シャツを何着か持って、吉澤の隣りに来た彼女は、ハンガーを器用に片手で操る。中から一本のパンツを引っ張り出した。
「ひとみちゃん、こーゆーの似合いそう。」
(―って云われても、あんま判んないんだけど・・・。)
彼女は吉澤の足に、パンツを合わせて見たりして居る。黙って其れを見て居ると、彼女は続ける。
「うん、似合うよ。―良し、買おう!」
「あ・・・ありがとうございます。」
「敬語。」
「ごめんなさ・・・――ごめん。」
「うん、良し。」
そう云って満足そうに頷いた彼女は、吉澤を促してレジに向かった。彼女には最初に会った時に云われたのだ、「タメ語で話してね」と。「そーゆーカンケーが良い」と。
一緒に映画を見たり、一緒に食事に行ったり。其れだけで其れ以上を求めない関係。お互いに気楽な、そんな関係が良いのだと。吉澤に取っても、其れは有り難い事だった。後ろめたさを感じずに、稼げるのだから。
店外に出て、ジーパンの入った袋を手渡されると、喫茶店に行く事に成った。
57 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月19日(木)09時50分50秒
コンビニの自動扉をくぐると、朝の陽射しに目が眩んで、立ち止まった。
「眩しいねぇ〜・・・。」
吉澤に続いて、梨華も出て来た。
「ホント、夏だよね。」
「だよー。学校も今日迄だしね。」
「楽しみにしてた、夏休みだね。」
「うん! ――でも未だバイト代入らないんだよね・・・。」
同じ制服の群れに混じりながら、二人も学校へ向かう。
「あははは、仕様が無いよ。」
「二十五日には入るんだけど・・・。」
「二十五なんて直ぐじゃん。」
「しかも、あんまり入らないの。二十日締めだから・・・。」
梨華は、バイトを始めたのが十二日だから、なんて一人でぶつぶつと、計算を始めてしまった。
其の横顔を見ながら、安心感を覚えた。気分が落ち着いた気がした。
58 名前:まいのすけ 投稿日:2001年07月19日(木)09時57分08秒
取り敢えずはこんな感じに。

レス有り難う御座います。
微妙にいちよしって事で。
59 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月20日(金)03時06分28秒
きまぐれ市井、いいっすね!!
それにしてもこの小説、不思議な感じですよね〜
石川がいる陽の世界と市井がいる陰の世界を吉澤がさまよっているって感じですかね?
この先も楽しみです。
60 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月01日(水)18時27分19秒
まだかすぃらぁ??これ超おもしろいね。
大期待だよ。いちよしっていいね!!
頑張ってください。
61 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月06日(月)03時34分35秒
続きめちゃめちゃ楽しみっす
62 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月06日(月)16時01分55秒
まだかなー。続き、はよ読みたいなぁー。
63 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月10日(月)07時44分10秒
まだまだ、オイラは待ってるっすよ!!
64 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月17日(月)13時42分37秒
続きがきになります

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