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fragmentation
- 1 名前:specific 投稿日:2001年06月14日(木)12時55分50秒
世界中に蔓延る善と悪の境界線
「わたし」というアイデンティティ
…揺るぎ無いものだったなら、どんなに良かったろう
- 2 名前:specific 投稿日:2001年06月14日(木)13時01分24秒
- ―1― prediction
……しくじった
錆びた臭いのするドアを開けた途端、そう悟った。
午後からこんな晴れるとは思っていなかったのに。
やたら暑いし、なにより紫外線対策をしていない。
1年とおして着ているこんな薄い長袖ブラウスでは
とてもじゃないがこの日差しに敵わない。
しかしここ以外に適当な場所も考えつかなかった。
他に、人の来ない、広くて落ち着ける場所……
(…背に腹はかえられない、焼けてしまうのは諦めよう、っと)
吉澤がそう判断を下すのに時間はかからなかった。
- 3 名前:specific 投稿日:2001年06月14日(木)13時09分35秒
昼休みなどとっくの昔に過ぎたプールサイド。
ここは授業さえなければ、とても静かな特等席。
コンクリートの照り返しがきついものの、水辺は何となく涼しい。
体育館の屋上に設置されていて、程ほどに眺めもよかったりする。
吉澤はローファーと靴下を脱ぎ、素足を水中に浸した。
パシャパシャと飛沫を散らして出来る波紋をぼーっと見ていた。
一見退屈そうだが、こういう時間は他にかえがたい
有意義なものと吉澤は思っている。
(時々、息苦しくて窒息してしまいそうになるからね…)
やがてそれに飽きると、おもむろにスカートのポケットから
タバコとライターを取り出した。
喫煙に関して、吉澤は今や罪悪感なんてほとんどない。
(ヘマしてばれなきゃいいのだぴょ〜ん)
割合こなれた仕種で火を付け、深深と吸い込む。
そして安心したかのように大きな瞳を閉じ、ゆっくり煙をはきだした。
紫煙は水面に薄く映りながらやがて拡散していった。
- 4 名前:specific 投稿日:2001年06月14日(木)13時14分05秒
(どうして他の生徒はこの場所に目を付けないんだろう?
ちょっとしたリゾートっぽいのに…塩素臭いけど)
と言うよりも。
この学園で授業を抜け出したりする人間は吉澤ぐらいだった。
ここは典型的なお嬢様学校だから。
保守的で封建的。
のろまな時間の流れ。
変わる事を頑なに拒む、伝統という名の鎖。
いわゆる良家の子女たちは、ここの空気に浸かって、
やがて立派なお人形となって巣立っていく。
そんな学内で、入学早々から吉澤は異端扱いだった。
元々ハデな顔立ちと化粧、ピアス、メッシュをいれた髪。
愚かな教師が注意しようものなら、
酷薄そうな笑みを浮かべて飄々と反抗する。
そしてそれ以上教師は吉澤に口出し出来なかった。
学園の上層部が吉澤を黙認せざるを得ない理由があるのだ。
「…バッカじゃな〜い」
今頃は教室でくそ真面目にお勉強している奴らも。
腫れ物扱いして気を遣って頂いてるセンセイ方も。
みんな。全部が。
「バカはあなたでしょ」
一人きりだと思っていたプールサイドには、
いつの間にやらもう一人いたようだ。
吉澤は突然聞こえたその声に別段驚く訳でもなく
煙を吐きながらのんびり振り返った。
- 5 名前:specific 投稿日:2001年06月14日(木)13時26分21秒
- ここまで全部ハンドルをいれてしまいましたが、
題名は flagmentation です。
断言します、暗いです。甘くも無いです。
万人ウケは到底しそうにありません…。
でも書かせて下さい(w sageますので。
優しい方々、どうか見てやって下さい。
- 6 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月15日(金)00時38分48秒
- ヨムyo ガンバテ
- 7 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月15日(金)01時10分27秒
- どうも僕の好きなジャンルっぽいので完結までお付き合いさせてもらいます。
期待してまっせ〜
- 8 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月17日(日)05時21分32秒
- 暗いの好きです
- 9 名前:ラック 投稿日:2001年06月17日(日)09時10分38秒
- 僕も、暗いの好き。
声の主は誰だ〜〜
- 10 名前:ラック 投稿日:2001年06月17日(日)09時12分22秒
- 僕も、暗いの好き
声の主は誰なんだ〜〜
- 11 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月18日(月)14時32分41秒
「あっれぇ〜生徒カイチョーさんがサボってて良いの?」
「一緒にしないで。私のクラスは午前中までなのよ」
「ふ〜ん…特進はいいよね。やっぱ不平等だ、このガッコーは」
吐き捨てるようにそう言い、乾いた笑い声を上げる吉澤。
生徒会長と呼ばれた少女は、背後に立って見下ろしている。
折れてしまいそうなか細い外見に
似つかわしくない威圧感を漂わせて。
生徒達の、彼女に対する評はおしなべて
「学園生の鑑」「真面目な優等生」「柔和なお嬢様」といった
類のものばかりだった。
悪い噂などはとんと聞かれない。
実際、各学年に1クラスしかない特進コースで
首席をキープしているし、相当な金持ちの娘でもあるから
評判に偽りはないのだが。
- 12 名前:fragmentation 投稿日:2001年06月18日(月)14時40分26秒
(しかしねぇ…見なよ、私を睨みつけてるこのカオを。
あんたらがビビッてる私なんかよりよほど怖い人なんだから!)
彼女は、吉澤以外の他人に対しては絶えず気を巡らし
天使のような笑みを振りまく。
吉澤はその事実をよく見知っているのだが、
かと言って彼女の事を偽善者だとは思っていない。
なぜなら、偽善ではあれほどまでの
完璧な笑顔は作れないだろうから。
…あれはあれで、彼女の本当の姿。
ただ、他の人達はもう一つある裏の姿に気付いていないだけ。
「…ところで」
スカートのプリーツを気にしながら屈み、
目線の高さを合わせて切りだす。
そして後ろを振り向くかたちで自分を見つめている吉澤に、
にっこりと微笑みかける。
(あ…やっぱり?)
吉澤の右手に挟まっているタバコを素早く取り上げた。
毎度の事なので、今更取り返そうとジタバタしたりはしない。
少しだけ不満を表情に表して見せるだけだ。
「困るのよね。こういうの堂々としないでくれる?」
いくらあなたでも停学になるわよ、と付け足して
手にあるタバコを忌々しそうに一瞥した。
笑顔はもうすっかり消えていた。
- 13 名前:fragmentation 投稿日:2001年06月18日(月)14時50分56秒
「だーから、こっそりやってるじゃないっすか。
こんなトコ、誰も来やしないって」
「…あなた、ほんとにバカね。
現に今、私に見つかってるんじゃないの。今日だけじゃないわ、
何回も何回も…こんな事が知れたら私もただでは済まないのよ!」
「わかったよ、これからはここじゃもう吸わないから。
あ、それあげよっか? ホントは嫌いじゃなかったりして」
相手の手元を指差しながらそう言うと、
吉澤はあざとい笑みを浮かべた。
静かに、しかし確実に、相手の怒りのボルテージは
上がっていくのが見て取れる。
それとは対照的に、なおも吉澤はのらりくらりと軽口を続けた。
「…とにかく」
うんざりした様子で話が切られた直後、ジュッという
小さな音とともにタバコが消される。
さすがの吉澤も、その瞬間は肝を冷やした。
ブラウスの襟元につけてある校章へ、タバコの先を押し付けられたのだ。
まるで、そこにゴミ箱があるから捨てました、
といった自然さで。
服を焦がすこともなく、涼しい顔をしてこういう事をやってのける。
吉澤は心から怖いと思った。
当の本人は、邪悪さの欠片もない清楚な笑顔を湛えていた。
だからこそなお空恐ろしいのだが。
「…私は忙しいのよ、付き合っていられないわ。
ただ。…言っておくけど。
あなたの不祥事で私の名前を汚さないで頂戴ね。
少しは人の迷惑も考えて行動したらどうなの?」
表情と合わない強烈なセリフをさらりと
言い残して出口へ向かって行った。
規則正しい靴音を聞きながら、吉澤は足を水に漬けたままで
しばし呆気にとられていた。
しかし、そのうちさっきの言葉にふつふつと腹がたち始めた。
- 14 名前:fragmentation 投稿日:2001年06月19日(火)16時23分52秒
吉澤は周りから思われているよりキレる事の
少ない性格だが、一旦そうなると我慢がきかなくなる。
裸足のままダッシュで追いかけると、プールサイドの
階段を降りている後ろ姿を捕まえた。
ぜいぜい息を切らしながらも、凄みのある睨みを向ける。
「…ハアッ…何なんだよ、結局自分の事しか
…カハァ…考えてないんじゃん!? そんなに自分がカワイイ?
私がまるで邪魔みたいに…ムカツクんだよ!!!」
普通の相手なら、これでもう震え上がって謝るか、
泣きだしてしまう所だろう。
しかし目の前の人物は動じない。眉一つ動かさず、相変わらず
爽やかな笑顔のまま。
「…そうよ。
私は自分が大事。でも、いつも自分の好きなようにしている
ひとに文句が言える? 他人に迷惑をかけてる分
あなたの方がたちが悪いと思うけど?」
やはり口ではかなわない。
相手は、日頃壇上から数百人を統制している
能弁な人間なのだから。
理論だてて返されてしまってはグウの音も出なかった。
- 15 名前:fragmentation 投稿日:2001年06月19日(火)16時32分02秒
よけい苛立つはめにあわされた吉澤は
更にカッとなって力に訴えた。
腕を引っつかむと自分の方へ無理矢理引き寄せる。
邪魔者扱いされるなんて、吉澤には絶対に許せなかった。
少し背の低い相手の顎を持ち上げ、無理に唇をあわせようとする。
(私が、邪魔者だなんて、言わせない…!!)
どうやら、さして抵抗する気配もなさそうである。
吉澤の口元がニヤリと歪む。
しかし。
…直後、プールの方まで届きそうな音が、響き渡った。
そこには、何が起こったか分からない様子の吉澤と、
それを見下ろす相手がいた。
要するに、唇を奪おうとした瞬間、力一杯
ひっぱたかれてしまったのだ。
吉澤は視界がブレているのか、しきりに頭を振っている。
その間に、さっきより少々荒い靴音が消えていった。
取り残された吉澤は、纏わりつくセミの声に
苛立ちを感じながらしばし初夏の空を仰いでいた。
- 16 名前:specific 投稿日:2001年06月19日(火)17時29分10秒
- 昨日ここまで載せる予定が、途中で夢の中へ…。
>>6 さん
<がんばります!
>>7 さん
ありがとうございます。俄然やる気がでます
>>8 さん
<私は暗いですか―?
>>ラックさん
<こえのぬしはもうバレバレなのれす
- 17 名前:fragmentation 投稿日:2001年06月20日(水)17時26分54秒
―2― hedonics
1階の古びた長い廊下を突き当たりまで進むと、生徒会室がある。
日が長いとはいえ、8時になれば辺りはすっかり暗く
不気味な事この上ない。
そこの、これまた年季の入った木の戸が
ギィという気味の悪い音を立てて開いた。
戸を開けた主は、まだ室内に人がいた事に驚いた。
「…帰ってなかったの!? 今日はもう何も仕事ないじゃない」
声を掛けられた生徒は少し疲れている顔を隠すように、笑顔を向ける。
しかし、椅子にもたれ掛かっているその姿には
かなり疲労の色が滲み出ていた。
「うん。そうなんだけどね…なんとなく居ちゃった」
「もう8時だし…わたしも終わったから、一緒に帰ろ?」
「そうだね、帰ろっか。
…ごっちん、いつも遅くまでありがとう」
「なーに言ってるの、全然マシな方だよ〜、書記なんてさ」
ごっちん、と呼ばれた生徒はそう言って、
座っている相手の肩をポンとたたいた。
- 18 名前:fragmentation 投稿日:2001年06月20日(水)17時33分27秒
生徒会書記の後藤真希。
1年の特進コースにいるが、珍しく進学には執着がない。
生来、欲とか野心というものが少ないのだろう。
ただ、幸か不幸か、やらなくても出来てしまう人種だった。
もっとも、後藤本人にしてみれば
それは不幸でしかないのだが。
のんびり屋で、せわしない事と面倒な事の嫌いな後藤が生徒会にいる。
それを周囲は不思議がるけれども、いちおう彼女なりの理由がある。
ふと、肩に置いた手がそっと包み込まれる。
「ね…しばらくこうしてていいかな?」
掠れた声でそう言った先輩の上目遣いに、鼓動が速まった。
二人の視線が絡みあい、後藤は自分の顔が紅潮していくのがわかった。
「え、うん。べつに、いいけど…」
「なんだか落ち着くの。ごっちんが傍に居てくれると」
「やっやだ、わたしなんか大して役にたててないし…」
視線を離せないまま、やがて指までも絡めとられる。
「そんなことないわ…」
静かにそう言い、椅子から優雅に立ちあがった。
シワひとつ無いスカートがふわりとひらめく。
後藤は、ちらりとその様を見ていた。
そして視線を感じ顔を戻すと、柔らかく微笑みかけられていた。
「あなたにはとても役にたって貰ってるのよ…」
- 19 名前:ラック 投稿日:2001年06月21日(木)00時52分20秒
- あ!!ごっちんも出て来た〜〜
- 20 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月22日(金)01時45分26秒
- 頭のいいごっちん……ごめん、ちょっと笑ってしまった……
- 21 名前:fragmentation 投稿日:2001年06月22日(金)09時41分23秒
「ぁ…」
後藤に向けられた優しい天使のような微笑みは、
しかし後藤の全てを絡めとってしまう。
小さくうめいたきり、後藤は動けなくなった。
いつもこうだ…
わかっていても、後藤はこの瞳から逃げる事をしなかった。
何故なのか、後藤自身もわからなかった。
いや、心の奥では気付いているのかもしれない。
この、まるで金縛りのような不自由で不思議で不条理な感覚に
恍惚としている、そんな自分がいるのを…。
「…感謝してる…いつも」
後藤の髪を撫でていた細い指が
流れるように唇の方へ移動する。
柔らかい唇を指でゆっくりなぞられて
頭が痺れた様になっていく。
やがて思考が遮断されて、後藤は自分を失いはじめた。
「っつ…!!」
「…あ…わ、わたし……うそ!?」
気付いた時には床の上に組み伏せていた。
衝撃で顔をしかめる相手を見て、はっと我に帰った。
自分が無意識にやってしまった事の恐ろしさに
身体がカタカタと震えだす。
「ごっちん、何するの…こんなっ…!!」
「え…いやっ、あの、ちが…ゴメン、け、けど…」
「…乱暴な人は嫌いよ」
向かい合っていた顔を横に背けられ
後藤はより一層罪悪感に苛まれる。
―これって自業自得?
訳のわからないまま、今にも泣き出しそうになっていた。
絶望的な言葉をもう一言かけられたら、壊れてしまいそうだった。
- 22 名前:specific 投稿日:2001年06月22日(金)10時00分32秒
- >>ラックさん
( ´ Д `)<登場だよ〜!これからはごとーが大かつや〜く!!
(0^〜^0)<……しないよ(ボソッ
>>20 さん
( ´ Д `)<むっ!ごとーはぁ〜、やったらできるんですぞ〜…zzz…
(0^〜^0)<とか言ってゼッタイやらないじゃんか、ごっちんは…
( ^▽^) <(わたしは笑われなかったみたいだし、ま〜いっか♪)
- 23 名前:ラック 投稿日:2001年06月22日(金)17時08分11秒
- 情景描写がすごいうまいですね〜
この後の展開どうなるか期待しています。
- 24 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月25日(月)20時57分22秒
- 不思議な感じの雰囲気がイイ感じです。
続き、期待してをります。
- 25 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月27日(水)21時18分40秒
- 催促sage
がんばってネ!!!
- 26 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月02日(月)01時32分23秒
―でも、これが初めてって訳じゃなく…
だからなおさら泣きたくなるのだった。
後藤がこういう不測の事態に陥るのはいつも同じ状況下。
この人と、二人きりになって、目が合って、離せなくなって、微笑まれて…
頭の中がだんだん白くなっていくんだ…
- 27 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月02日(月)01時35分54秒
…出遭った時の事を思いだす。
薄紅色の淡い記憶。
ちらちらと花びらを降らす並木道。
校舎に戻ろうとしてゆっくり歩いていた。
人通りの無い時間のはずが、
向こうからひとり、生徒が歩いてきた。
ブレザーの胸ポケットに花が1輪。
(…ああ、新入生か)
距離が縮まると、その人物が特定できた。
1つ上の有名人。この学校に通っているならみんな知っている。
今日だって総代として謝辞でも読んでいた筈だ。
向こうは知らないだろうと思うけれど、とりあえず会釈はした。
やっぱりキレイな人だった。
…けれど、こういう人とは馬があわない。
真面目過ぎる。潔癖過ぎる。
要領が全て、の自分とは大違いだから。
- 28 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月02日(月)01時43分22秒
そして、すれ違う。
「後藤さん」
後ろから声を掛けられる。
かなり驚いた。
まさか話かけて来るなんて。
大体、なぜ自分の名前を知っているのか…?
きっと、ぽかんとした顔をしていたんだろう。
「えっ、別に怪しいものじゃないんだけど…」
そんな様子に焦ったらしく、早口を加速させてそう付け加えた。
…わかってるって。
怪しい者にしては顔が割れすぎだ、この先輩は。
「あの、実は後藤さんにお願いがあって、一度お話したいと思ってて、
そうしたら前からやって来たからつい…いきなりでごめんなさい」
彼女独特の甘い声で、しかも深々と頭を下げてご丁寧に謝られては、
こちらが悪い事をやったような気になる。
それにしても…イメージとは違う。
優しそうなのはそのままだけど、もっとツンとしてると思っていた。
「いや…ちょっとビックリしただけなんです。それで〜
…あたし、何かしちゃいましたぁ?」
でもおかしい、心当たりは無いのに。
品行方正とは言えないけれど
やるべきことはきっちりやっている。
そうしていれば周りから余計ないちゃもんを付けられないもの。
ただ反発ばっかりしている人はバカ。体力の無駄遣いだ。
向かいにいる品行方正な優等生は、
いつもの優しげな表情でこたえた。
「そういうのじゃなくて…今度の選挙の事でね」
は…何?
今までセンキョなどというものに関わった覚えなんて無かった。
この人は人違いしてるんじゃないだろうか。
「ほらぁ、今度あるでしょう生徒会の選挙が。でね、後藤さん…」
- 29 名前:specific 投稿日:2001年07月02日(月)02時07分51秒
>>ラックさん
( ^▽^) <嬉しいですぅ。もっともっとがんばります!
ラックさんの小説って、確か石川が…キャ
( ´ Д `)<……
>>24 さん
( ´ Д `)<どうあがいても最終的には不思議な小説になっちゃうねー
(;^▽^) <何が言いたいんです、ごっちん!?
(0^〜^0)(そうだね…多分あんたらのせいだよ)
>>25 さん
(0^〜^0)<さんきゅ〜!がんばるYo! ってか出番ねぇぞ〜
( ^▽^) <…そ、そのうちきっと大活躍するって!
( ´ Д `)<……しないよ
- 30 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月03日(火)18時14分24秒
- 本編の雰囲気と返信レスのギャップに笑っちゃった(獏
交信がんばってね
- 31 名前:ラック 投稿日:2001年07月05日(木)16時43分37秒
- 梨華ちゃんと、ごっちんと、よっすぃ〜の
三角関係が他の小説には、類を見ない感じでイイ♪
それとspecificさん、僕の小説読んでくれてて有難う御座います。
ジャンルは全然違いますが、お互い頑張りましょう。
- 32 名前:specific 投稿日:2001年07月08日(日)10時21分26秒
続いた言葉に腰が抜けそうになった。
とてつもなく長い時間、絶句していた気がする。
(ってかワケわかんない。なんで、なんでよ〜!?)
「…後藤さん、次の中等部の生徒会長やってくれないかな〜、と思って…」
そうだ! この人、絶対に誰かと勘違いしてる。
誰か他の人の評判だかなんだかを聞いて、
自分と思って声掛けてきたんだ。
とにかくこのままじゃ、ヤバい。
ここの選挙なんて、名前だけなんだから。
そんな民主主義的なコトやるわけがない。
いくら興味がなくってもそれくらいは知っていた。
ここの生徒会は、実際は前任者からの指名制。
その他大勢の生徒は用紙に○を書くだけ。
そう、だからこのままじゃとてつもなくヤバいのだ。
- 33 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月08日(日)10時30分15秒
……無理。
っていうか、ガラじゃない。
っていうか、面倒くさい…
「う…あ〜……っと。あたし…です?」
自らを指差し、改めて確認を促してみた。
アナタのお考えになっている後継ぎは、こぉんな魚顔?
違うでっしょー?
やだなぁ、どの子と思ってたんだろぉね…
「そ。3‐D、出席番号16番の後藤真希さん、あなたにお願いしてるんです。
会長がイヤなら副会長でも良いよ」
(そういう問題じゃなくってですね…)
儚い希望は爽やかな一言で脆くも崩れ去った。
ここで逆らうと、あと4年弱の学園生活が
針のむしろみたいになる事だろう。
諦める…しかないのだろう。
(…だね。だよね。そうだよねぇ。
さようなら、平凡で穏やかなスクールライフ…)
- 34 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月08日(日)10時35分24秒
「…そうですかぁ……わかりました、ケド…なんであたしなんでしょう?」
「え〜、そうね…」
最後に足掻くだけ足掻いてみた。
理由を聞くくらいの権利は持ち合わせているはずだ。
「後藤さんって割とお勉強できるみたいだし、
お友達も多いでしょ。バッチリじゃない。それに〜…」
こちらを真っ直ぐ見据えた目をキラキラさせて。
歯が浮くからもう止めて欲しいんですけど、なんて言えず。
「はぁ…」
なんとも中途半端な生返事しか返せなかった。
(…いいです、いいんです。観念して働かせて頂きます。
ただし、後で後悔しても知らないんだから!)
「それに、後藤さん…可愛いから」
また腰が抜けそうになった。
そんな基準アリですか!?
なんで真顔で言えるんですか!?
ってか生徒会はあなたのお気にを集めたサロンっすか!?
「…ダメ?」
「いやぁ…」
「じゃ、決まりだよね。よかったぁ、だってこのままじゃ
前の副会長が会長になっちゃうんだもの。
あのひと、はっきり言って可愛くないよね。頭はいいんだけど…」
イメージがどんどん修正されていった…。危険な方向に。
あああ、こんな人だったなんて!
王様のロバの耳を見てしまった気分だった。
そしてきっと、この悪魔の契約は
1年じゃ済まないと薄々感じ取った。
高等部に上がっても、引き続いてこの人の下で働く事になるのだろう、と。
- 35 名前:specific 投稿日:2001年07月08日(日)10時56分35秒
- >>30 さん
(0^〜^0)<レスでは思いっきり地が出ちゃってますね〜
( ^▽^) <でも暗いのばっかりだよね〜変なの〜
( ´ Д `)<……梨華ちゃんが沢山出てると暗くなるんだよ
(;^▽^) <わ、私のせいだって言うんですか!?
>>ラックさん
(0^〜^0)<むふふ、吉子がふたりにモテモテいや〜んな展開に…
( ^▽^) <……しないよ♪キャ、私も言っちゃった
(;´ Д `)<……
(;0^〜^)<…え、えへへ…
(;^▽^) <ダメなんですか!?私が言っちゃダメなんですかっ!?
- 36 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月16日(月)20時10分32秒
- 続ききた〜い!
がんばってね
- 37 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月21日(土)02時13分21秒
- 黒い石川の続きに期待。
- 38 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月23日(月)08時05分04秒
「先生方にはわたしから言っておくから。詳しい事はまた後日ね」
「はぁ…」
歯切れの悪い返事に苛立つ様にびゅうっと風が鳴り、
一瞬、視界が一面の花吹雪で遮られた。
その余りのおびただしさは一気にどこか
別の世界へ連れて来られた様な不安を煽った。
ウンザリする程よく通ってきた並木道が
初めて見た場所の様に感じられて。
強烈な不安と孤独感。じんわりと襲う軽い眩暈。
前方でかろうじて見えるあの人の姿は。
突風にも特に動じていないらしい無表情。
(大丈夫、独りじゃないんだ…)
なんとも言い得ぬ安堵を覚えた。
「じゃ、これからよろしくね後藤さん」
すっかり風も止むと、あの人は何事も無かったかの如く微笑んで
横を通り過ぎろうとして…
咄嗟にその腕を掴んだんだった。
訝しげな瞳をむけられたけれど、
とにかく行ってほしくなかったから。
「ん、とぉ…あははは…」
引き止めた理由など説明しようにも浮かばず、
ただ笑うだけ。
おかしい奴と思っただろうか?
やっぱり別の人にしようと考え直しているだろうか?
だったら自分の望んだ通り、してやったりの筈…
――なのに、どうしてあんなに怖かったんだろう…
- 39 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月23日(月)08時10分19秒
「どうしたの? 怖かった?」
まるで読心術。
でも、どんな不思議な事が起きたって、あの時は受け入れられた。
もっとも、あの人の言った怖いとは、
少し違った事を思っていたのだけれど。
「……は…い」
「ここのところ風が強いからね…見ごろは今日一杯かしら。
ねぇ後藤さん? 怖いどころか、きっと私達ツイてるよ。
だってこの季節で一番綺麗な瞬間に立ち会えたんだもの」
「そう…ですかね…」
「本物の綺麗なモノってね、最期を一番美しく見せるの。
ニセモノはダメよ。最期には化けの皮が剥がれちゃうんだから」
うふふ。と、さも楽しげに微笑んだ。
細められた黒目がちの瞳が
深淵の闇へいざなっているようだった。
見つめていてはいけない気がした。
でも、目が離せなかった。
普段見せる事をしない、温度の無い笑顔を見た時…
- 40 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月23日(月)08時13分33秒
「あ…あたし…あたし…は」
震える唇。手の平に感じる冷たい汗。
生々しく覚えているそれらの感触。
「…あたしは……あなたにとって、の…」
…そしてその先からはぼやけた記憶しかない。
『ホンモノな人間に…なれるのかな……なりたい…
あたしは、最期まで裏切らない…よ』
- 41 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月23日(月)08時17分46秒
『そう。
じゃあ、特別に信じてあげる』
- 42 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月23日(月)08時26分52秒
「…いつまでこんな事してるつもり?」
怒気をはらんだ静かな声で後藤の頭は現在に戻ってきた。
そして改めて、如何ともし難い現状に突きあたる。
結局半べそをかきながら、のそのそと体を起こした。
怒りの主も起き上がり、軽くスカートをはたいたりして
身なりを正していた。
その間も後藤はただ床に座り込んで呆然としているだけ。
一向に動く気配がないのを見かねたのだろう。
憮然としながらも後藤に手を差し伸べてやる。
「帰りましょう…ほら、立って」
うなだれたままその手を握り返し、大儀そうに立ち上がった。
相当落ち込んでいる様子だ。
さすがにもうこれ以上怒る気はそがれてしまう。
「はい、ごっちんの鞄。
ああ、もう…ブラウス出てるじゃない、ちゃんと直して、ね」
保護者よろしく後藤の世話を焼いてやる。
後藤は何度もこくりと頷くだけで、何も喋らなかった。
溜息を一つ漏らし、ひとりで出る準備を手早く済ませると
後藤を引っ張って生徒会室を後にした。
- 43 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月23日(月)08時30分16秒
帰り道でも後藤は無言、相変わらずうなだれたまま。
そんな後藤に困り果てたのか、校門を出てすぐに足を止めた。
「反省してるなら、もういい」
彼女なりの精一杯の優しい言葉だった。
後藤が顔をあげると、今までこらえていた涙が頬に零れていった。
嗚咽をはさんで何度も謝罪の言葉を口にする。
「ごめんなさい、もうしません…ごめんなさい…」
本当にイヤな人間だったら、どんなに謝られても許しなどしない。
しかし、ちょっと頼りないこの後輩の事は、
とても気に入っているのだ。
その感情が愛情なのかは本人にもわからないけれども。
再び歩を進める。
手は繋がれていた。
- 44 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月23日(月)08時34分18秒
「…あのね、ごっちんが嫌いな訳じゃないのよ。でも…」
「わかってます…」
(そりゃあ、ああいうことされたら引くよね…)
これで疎遠になってしまっては元も子もない。
後藤はもう謝り倒すのみだと思っていた。
だが、その後に続けられた言葉は
後藤の想像の範疇を越えていた。
「あの、違うの。だから…
どうせごっちんは覚えて無いんだろうけど。前に言ったわよ?
私ね、ダメなの。学校でそういう風な事したりするのが…
やっぱりお勉強するところじゃない?
だから、そういうのはすべきじゃないと思う」
なんて彼女らしい…。
そういえば以前に言っていたような、と後藤は思い出した。
しかも生徒会室じゃあ余計に許せなかったんだろうな、と
まるで他人事のように考えていた。
ここまでは、後藤も彼女らしい考えについていけていた。
しかし…
「…それで今日、私、家にひとりなの…だから、
さっきの続きがしたいなら、家に寄って行く?」
後藤は埴輪の様にあんぐり口を開けたままになってしまった。
- 45 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月23日(月)08時38分48秒
この人の思考回路は読めない…と改めて思う。
(でも、これはチャンスなわけ?
あぁ、でも家に行ってまた突っぱねられたら再起不能だよね…
ん、でもでも、誘ってくれてるんだから拒否られるこたぁ無いか…)
「ねぇ、どうするの?」
後藤が黒い考えを巡らしている間に痺れを切らしたらしい。
意外と気が短いのを知っているので、後藤は慌てる。
(うわっ早く返事しなきゃ…ええい、どーにでもなれ〜!)
「え〜と…お邪魔させて頂きまーす…」
そう返答すると、素っ気無く「じゃ行くよ」とだけ言って
ツカツカと先に行ってしまった。
後藤は追いかけながら、思いがけない展開に
何とか気持ちを落ち着かせる。
そして自分を取り戻せたところで
2、3メートル前方へ声を掛けた。
「まって下さいよぉ…
あはっ、もしかして照れてる?」
ぴくっと反応して軽く振り返ったが、
すぐにまた歩きだしてしまう。
だが振り返った時、耳が赤くなっていたのを後藤は見逃さなかった。
にへらっと笑うと、横まで小走りして
愛しい先輩の腕に腕を絡めた。
- 46 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月23日(月)09時19分56秒
>>36 さん
(0^〜^0)<おう!これからどんどん頑張るッスよ!!
( ´ Д `)<……がんばりたいんだけど後藤はこれで暫くお休み…
( ^▽^) <石川もでーす♪じゃ、ごっちんどっか遊びに行こ?
(;0^〜^)<ゴルァ!!あてつけかよ!!
>>37 さん
( `.∀´) <アンタは腹ン中から美白しなさいッ!
(;^▽^) <なんでですか〜…
(;0^〜^)<や、保田さん、ここの梨華ちゃんには逆らわない方が…
( `.∀´) <何よ、ビビッちゃって!アタシが最強よ!!
- 47 名前:ラック 投稿日:2001年07月23日(月)10時55分50秒
- う〜ん、何か不思議な小説・・・・
でも自然に引き込まれるそんな感じ・・・
文章の運び方が、僕とは比べものにならない位・・上手い・・・
次はヨッシィ〜編ですかね?作者さんがんばってください!!
- 48 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月23日(月)12時54分10秒
- おう。更新されてる♪
腹黒いかと思ったら、そうでもないのですね。
妙なこだわり持ってる石川さんナイス!
てか、ここのごっちんは石川のソロ写真集見て
鼻血ふきそうだ(w
- 49 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月29日(日)13時32分48秒
―3― anomie
マンションが立ち並ぶ深夜の住宅街に、只ならぬ音が響いていた。
がぉん、がぉ…ん、ごぃん…
とあるマンションのエレベーター内から聞こえる怪音。
何者かをのせてエレベーターは上昇していく。
『8F』で停止し、あわれにへこんだ扉がカタカタと開いた。
これで故障しなかったのはここが一応高級マンションだからだ。
火を噴かんばかりの恐ろしい形相。
床が凹まんばかりの勢いで自室へ向かって歩いていく。
…この人物、普段はクールな女、保田圭。
並大抵な事には動じない、頼れるお人。
もちろん恋愛に関してだって超クール…というか出遭いがない。
そんな保田が唯一熱くなるのは『仕事』上の出来事。
今日は珍しく段取りを間違ってしまった。
最終的には目的を果たしたのだが、完璧を目指す
保田には耐えられないミスだった。
仕事仲間では最年長な保田は、周りの模範になるべく
妥協は許せない! という妙に熱い使命感を持っていた。
己のミスに苛立ちを最大級にした結果、
本日の『仕事相手』はいつもより大分不運な目に遭った。
それだけでは足らず、燻りつづけた怒りが
あのエレベーターの惨状となる。
怒りは漸く収まったが、ハイヒールは只のパンプスになるわ、
ケリーバッグは薄汚れたなんちゃってオーストリッチと化すわ…
(とにかく疲れた…ベッドに一直線ね)
カギを開けようとした保田の手が止まる。
おや…
独り暮しのはずの我が家が随分賑やかじゃないか…
- 50 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月29日(日)13時37分22秒
「アンタ達、どうやって入ったのよ…」
「いよぅ圭ちゃん、おつかれ〜」
「あ、どうも、お邪魔してます…」
まず保田の目に飛びこんできたのは、他人様のカメラで
撮影会を開いている矢口真里と吉澤ひとみ。
矢口はセクシー(だと思っているんだろう)ポーズのまま
気まずい様子も見せず保田に挨拶する。
虎の子のウン十万円が注ぎ込まれたカメラを抱えている
吉澤は、さすがに気まずそうに視線を落とす。
「アンタ達、侵入した上に、それ、壊したら…わかってんでしょうね?」
地を這うような低音で保田が呟く。
吉澤はビビる。
手にあるカメラを一刻も早くどこかへやりたかった。
矢口はつっかかる。
「なんだよーケチ。それに矢口達はねぇ、
どうぞ、って言われたから入ったんだかんね!」
「ウルサ〜イ! ちょっと吉澤、さっさとしまいなさいよ!
ってゆうか、誰がどうぞなんて言うんだよ!?」
「アノ人達だけど?」
矢口の指差す方を辿ると、隅っこに座り込んで
仲良く作業する二人の姿。
「おい、何やってんだよ、圭織…とそのオマケは…」
- 51 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月29日(日)13時42分19秒
「いいらさん、いいらさん、帰って来ましたよ」
「ん? ああ…おかえり、圭ちゃん」
飯田は助手と必死こいて
銀メタのスーツケースに荷物を詰めていた。
よいしょ、とフタにのっかかり、やっと収まりきったようだ。
ところで…
「なんでアタシの部屋で…
って。あああっ!!!
それっ! アタシのサムソナイトじゃないの!?」
「そぉだよ?
いや、カオリさ、前ん仕事でスーツケース
破壊しちゃってたの忘れててさ〜、明日出発だし〜。貸してね?」
貸してね?っていうのは
荷物を詰める前に訊けよ…と保田は思うのだが。
今更イヤとも言えまい。
「えーっまたカオリは海外出張? 信じらんない〜矢口も行きた〜い!」
「矢口は学生だから授業あるでしょ。
いいじゃん、夏休みプライベートで行けば。
カオリはぁ、お仕事なの。お、し、ご、と」
「いいらさん、ほんとは、つじも行きたい…」
「えっ!? つぅ〜じ〜も行きたいの?
んっと、じゃあカオリが欠席届書いてあげるね♪」
「「おい!!」」
保田と矢口のツッコミがシンクロする。
- 52 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月29日(日)13時47分31秒
空気を切り裂かんばかりのツッコミに
辻はしゅんとなり、テーブルにてカメラの
片付け中だった吉澤は手を滑らせかけて真っ青になっていた。
「「…そうれふか。らめえすか…」」
師弟ともどもあやしい口調になって懇願するも
保田のひと睨みで却下されてしまう。
しかも追い討ちで矢口からも容赦ない言葉を浴びせられる。
「んな事言ってぇ、辻は自分のオシゴトしなきゃなんねーだろーが!」
矢口のその一言で、ぞわっ、と部屋の空気が一変した。
保田は顔面を強張らせて小声で「バカ…」と呟いた。
事の運びをわかっていない吉澤は
部屋をキョロキョロ覗っている。
そしてさっきまでの情けない表貌から一変、
飯田が瞳孔の開いた瞳で矢口を見据えていた。
…飯田がこうなると、保田にだって手におえない。
「ねぇ、カオリは何も聞いてないんだけど、どぉいうこと?」
- 53 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月29日(日)13時48分18秒
空気を切り裂かんばかりのツッコミに
辻はしゅんとなり、テーブルにてカメラの
片付け中だった吉澤は手を滑らせかけて真っ青になっていた。
「「…そうれふか。らめえすか…」」
師弟ともどもあやしい口調になって懇願するも
保田のひと睨みで却下されてしまう。
しかも追い討ちで矢口からも容赦ない言葉を浴びせられる。
「んな事言ってぇ、辻は自分のオシゴトしなきゃなんねーだろーが!」
矢口のその一言で、ぞわっ、と部屋の空気が一変した。
保田は顔面を強張らせて小声で「バカ…」と呟いた。
事の運びをわかっていない吉澤は
部屋をキョロキョロ覗っている。
そしてさっきまでの情けない表貌から一変、
飯田が瞳孔の開いた瞳で矢口を見据えていた。
…飯田がこうなると、保田にだって手におえない。
「ねぇ、カオリは何も聞いてないんだけど、どぉいうこと?」
- 54 名前:fragmentation 投稿日:2001年07月29日(日)14時12分41秒
- ショックなことに二重投稿を…すいません
>> ラックさん
〜^◇^〜 <多分ますます不思議になっていっちゃうね…
( ^▽^) <いっときますけど石川のせいじゃ…
(;´D`) <そして文のながれは、かなり風まかせなのれす
(0^〜^0) (あっ…ウチにもなんか喋らせてよ〜…)
>>48 さん
( ^▽^) <はい!石川はナイスでイイ人なんで〜す!
( `.∀´) <ちょっと!騙されるんじゃないわよ!コイツはね…
\(^▽^)/ <は〜い、残念ですがお時間です!チャオ〜♪
口口 Д `).,:";.’。<ん〜?どれどれ……ぶほぁっ!!
- 55 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月30日(月)00時15分35秒
- ↑のごまが早くも石川の写真集を手に入れている!
うらやますぃ〜!!!!
ところで、ののたんの「お仕事」ってなんでしょう?
- 56 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月04日(土)20時16分20秒
最悪だ。
保田は心の内で舌打ちした。
ヤバいモードになってしまった飯田は
どうはぐらかそうとも食い付いて来るだろう。
他でもない辻に関して、なのだから。
保田がどうしたものか頭を抱えている所に、
耳障りな笑い声が邪魔をしてきた。
「キャハッ! はっはーん。
そう言うわけかっ!
いやぁ、辻ちゃんがそんなに師匠思いだとは…
っか〜泣かせるねぇ〜」
(さっきからテメェは…空気を読め!! 死にたいのか、こんのミクロ星人がっ!!)
保田は思い浮かぶだけの罵倒を心で叫んだ。
普段から小賢しくてチクチク毒づく矢口だが、
今日はやけに目に付く。
…ここは一番冷静な自分が割って入るのが妥当だろう。
あまり冷静とも言えないのだが、保田はそう思った。
仲間はずれにされるのを極端にイヤがる飯田。
もう、この際全部話してしまおう。
その方が早くカタがつくだろうし。
「カオリ、落ち着いて聞いて。辻のはね、ホント急に決まったんだよ。
で、それ聞いたらきっとカオリは
自分の仕事が手に着かなくなっちゃうだろうから、
黙ってて欲しいって言われたんだよ。辻にね…」
- 57 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月04日(土)20時23分50秒
「…圭ちゃんが言ったの本当?
ウソだよね、つぅ〜じぃ〜?
隠し事しないってカオリと約束したもんね?」
瞳孔が開いたままでも辻に向かいあうと
優しい顔になるんだな〜、などと呑気に感心する吉澤。
蚊帳の外の人間はのんびりしたものである。
対照的に、渦中の辻は突然やってきた修羅場で既にボロ泣きだった。
それでも…
ちゃんと言わないと。
大切な人が、悲しんでいるから…。
「つじのぉ〜はつ仕事はぁ〜、いいらさんみたいにカッコよく
ひとりでビシッて決めるんれす!
いいらさんは心配しないでお仕事してきてくらさいっ」
口角を歪めて無理矢理ニカッと笑顔を作り、
ついでにvサインも添えて健気に頑張る。
決めぜりふの後にはいつもの「てへてへ」笑い。
ただし今日はしゃっくりが混じっていたけれども。
- 58 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月04日(土)20時25分21秒
可愛い可愛い辻からそう宣言されてしまった飯田は動揺が隠せない。
「…なっ…ちょっと、…カオリ納得できないよ!
つぅ〜じ〜は分かってないの。私達の仕事はね、
あんたが思ってる程カンタンにいかないんだよ。
危ない目にもたっくさん遭うんだから!
カオリが一緒じゃないとダメ〜ッ」
その後も、絶対ダメ!の一点張りな飯田。
飯田だって日頃は、歳の割に幼いこの子が一人前になるのは
いつになるやら…と悩んでいたりするのだが。
イザいっちょまえな発言をされたら、
親離れみたいですごく寂しいのだった。
- 59 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月04日(土)20時30分52秒
- ( `.∀´)<朝方にまた更新するわ!
行ける時にはトントンと…
- 60 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月05日(日)03時40分18秒
- 更新待ち……
- 61 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月05日(日)07時39分23秒
「ったくもう…クタクタよ!」
やけ気味に保田が叫ぶ。
すったもんだの末、飯田と辻はスーツケーツを抱えて
さきほど帰って行った。
頑固者の飯田を説き伏せるのには相当な労力を要した。
矢口は知らん振りして雑誌を読み出すし、
吉澤は全然役に立たない。
その上自分も疲れているからもうムリ、と思いきや
意外にも辻が頑張ってくれた。
保田の予想では「え〜ん、いいらさぁん…」とか言って、
結局飯田サイドへ翻って行くはずだった。
…だが、今日の辻は一味違った。
- 62 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月05日(日)07時43分50秒
辻のためなら明日に迫った出発を取り消す、
とまで言い始めた飯田へ
「お仕事に穴をあけたらダメれしょう!」
どっちが年上かわからない一喝を浴びせたのだ。
すると、みるみる間に飯田のおっきい両目から
涙がこぼれはじめた。
シクシク泣く飯田を辻は必死になだめようとしている。
…そんな光景、滅多にお目にかかれない。
他の3人は呆然と見守るしかできなかった。
「辻も成長したんだね…」
飯田は溜息とともに呟いた。
立場的には喜ぶべきことなのに、
憂鬱極まりない、といった風情である。
でも、それではイケナイと思い直したのか
「……うんっ、カオリは嬉しいよ!」
すぐに弾けるような笑顔で辻を抱き締めた。
- 63 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月05日(日)07時50分55秒
この二人、憎たらしいほど泣き笑いの表情、とても似てるわね…
いつまでも抱擁を解かない二人を見ながら、
さすがの保田も罪悪感を感じていた。
しかし保田にはわかっている。
どれだけ可哀相だと思おうが、
何とかしてやりたいと思ったところで…
自分たちにはどうしようもないコトなのだ。
こうして、言い様もない無力感と気だるさを部屋に残して
飯田と辻は帰って行ったわけだが…
- 64 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月05日(日)08時22分03秒
>>55 さん
(;´ Д `)<……すいませ〜ん、取り乱しましたぁ…
〜^◇^〜 <アイツ、喋らなければホントかわいいのになー
(;0^〜^)<あ〜もうっ矢口さん、一言余計ですって(でも密かに同意)
〜^◇^〜 <なんだよー!ビビッてんじゃねーよ!オイラが最強なんだぜ!
(;´D`) (てめーら、はなしのてんかいもきにしろやゴルァ)
>>60 さん
\(^▽^)/ <sageスレで更新を待って頂けるなんて…感激です!
( `.∀´) <……嘘ね
( ^▽^) <えっ!?
( `.∀´) <自分の出番が無い場面では何とも思っちゃいないでしょ
(;^▽^) <な、何を言うんですかっ
( `.∀´) <汗出してんじゃないわよ。ま、そういう子ね、アンタは。
- 65 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月05日(日)08時23分18秒
>>55 さん
(;´ Д `)<……すいませ〜ん、取り乱しましたぁ…
〜^◇^〜 <アイツ、喋らなければホントかわいいのになー
(;0^〜^)<あ〜もうっ矢口さん、一言余計ですって(でも密かに同意)
〜^◇^〜 <なんだよー!ビビッてんじゃねーよ!オイラが最強なんだぜ!
(;´D`) (てめーら、はなしのてんかいもきにしろやゴルァ)
>>60 さん
\(^▽^)/ <sageスレで更新を待って頂けるなんて…感激です!
( `.∀´) <……嘘ね
( ^▽^) <えっ!?
( `.∀´) <自分の出番が無い場面では何とも思っちゃいないでしょ
(;^▽^) <な、何を言うんですかっ
( `.∀´) <汗出してんじゃないわよ。ま、そういう子ね、アンタは。
- 66 名前:またやっちゃった・・・ 投稿日:2001年08月05日(日)08時27分35秒
- 読んでくださってる方へ
また自爆の二重投稿してしまいました。
読みにくくしてすいません。
- 67 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月08日(水)01時35分55秒
- 展開が謎で良いです。
>>64の60さんへのレスの二人の会話、超ワライました
保田最高(w
- 68 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月08日(水)02時43分24秒
- 55です。
2度もレスいただいてとても嬉しいです(w
かおのののやり取りにちょっと萌え〜でした。
いいなぁ、かおのの……。
- 69 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月12日(日)09時15分29秒
「あ〜もぉー!!
めっちゃハラ減ってんだっつーの! あいつらのせいで忘れてたけど。
ねっ圭ちゃん、なんかないのぉ〜?」
「…いえっ、わ、私がコンビニ行って来ますからっ。
何買いますか、焼きそばとかでいいんです?」
「う〜む…焼きそばはあんまし食う気しねえね…なんとなく。
ま、テキトーにヨロシク♪」
(…こいつらがまだ残ってるんだったわ)
保田は深い深い溜息をつく。
(つーかさ、アンタ達もこっから出てファミレスなり
何処なりと行っちまえばいいじゃない!)
「…ねぇ、確認の為に訊いとくけど…
泊まるつもりじゃないでしょうね?」
- 70 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月12日(日)09時17分54秒
疲れてるんだ。
さっきのでブルーな気分なんだ。
だから、ひとりにして欲しい。
特にテンション高めの矢口の相手なんて
今日は勘弁して、という感じだった。
「ほぇ? ああ、心配しないでよ。
ちゃ〜んと歯ブラシもタオルもシャンプーリンスも
全部持って来たから♪
圭ちゃんのどケチぶりはよぉーくわかってるもん。
な〜っよっすぃー」
「……矢口…すぐさま帰れ」
- 71 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月12日(日)09時20分27秒
有無を言わさず強制退去させられた矢口。
玄関までもがいて抵抗したものの
大明神になった保田には敵わない。
カチャリと施錠し、チェーンもぬかりなく…
「ひっで――よぉ〜
なんで矢口だけ追い出されるんだ!?
バーカバーカ、圭ちゃんのケチんぼ!
おにっ! アクマッ! ヤッスー!」
その瞬間、どがんっ!! という凄まじい音と共にドアが開いた。
折角かけたチェーンは木っ端微塵にちぎられていた。
あまりの迫力に、外にいた矢口もふっ飛んで
尻餅をついてしまった。
矢口の額に縦線が入る。
(やべぇ…もしかして殺られる!?)
- 72 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月12日(日)09時23分22秒
いつもよりさらに低い目線から
そっと保田の顔を覗う。
たしかに紅潮はしているが、無表情なのがなんだか不気味だ。
「………」
無言。
大明神はそのままドアノブに手をかける。
閉めきる前に、ぽんっと何かを放り投げて。
!? ァ…
「…ツ、ゾコ? 矢口の…」
そうかそうか、裸足じゃ帰れないもんな、
と納得。
…って!!
「くっそ――――!!!
こんな扱いアリかよっ!? 口くらいきけよ!
これって放置かよ!?」
矢口の虚しいひとりツッコミが
深夜のマンションに響く。
まったくもって近所迷惑な部屋である。
- 73 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月12日(日)09時26分59秒
矢口のわめきをドア越しにききながら、
保田は無表情に施錠し直した。
ダルそうに部屋の方へ振りかえる。
その先には吉澤が立ちすくんでじっと見つめていた。
「…何よ?」
文句ある? あるなら言ってみなさいよ。
それか、アンタも出て行けば?
フンと鼻で笑ってやる。
派手な格好の割に気の小さい奴め。
「……ぅ…」
「何よ?」
「う…うらやますぃ〜!!」
ハァ? 何ですって!?
- 74 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月12日(日)09時32分03秒
「…ん〜私ってこう、ビシッと言えないんですよね。
相手が矢口さんだと尚更っすよ。
それに比べてさっきの保田さん…
スゲーかっけー!
うらやますぃ〜〜!」
「…あ、そう」
てっきり矢口を庇うかと思っていたのに。
吉澤ってこんなリスペクターなキャラだっけ?
保田は思いっきり肩透かしされた気分だった。
(矢口とは別の意味で疲れる子ね…)
- 75 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月12日(日)09時34分10秒
「で、アンタは泊まる気マンマンな訳ね」
「はいっ♪」
ニコニコして返事されては、保田も無碍には帰せない。
吉澤は大人しい方だから
別に構わないか、と思うことにした。
それに、飯田や矢口と違って滅多に遊びに来ないし
たまにはいいだろう。
「でも珍しいわよね?
いつ遊んでも絶対家に帰るアンタが」
「いやぁ、色々あるんスよ…」
吉澤の表情に僅かな影がさした。
それで保田は勘付く。
(…なるほどね)
「今回は長引きそうね、吉澤?」
- 76 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月12日(日)09時54分01秒
- >>67 さん
( `.∀´) <よくぞ言ったわ!アタシが最高にして最強よ♪
(;0^〜^)<あーああーあ。調子にノッてるよ…
( ´ Д `)<……雑魚は泳がせとけばいいんだよ(ボソ
(;`.∀´) <後藤っ!?
>>68 さん
( ´D`) <おのぞみならば、なんどでもれすをするれすよ
( ^▽^) <もぅ、ののちゃんったら。同じレスいれてもしょうがな…
( ´D`) <なんどでも、なんどでも!ひたすら!ちからのかぎりっ!
(;^▽^) <ちょ、ちょっと、ののちゃん!?
( ゚皿゚)」 <ソウダヨツジ、ガンバルンダヨッ!ダッテカオリタチハフクロウナンダモノ
- 77 名前:(;^▽^) <今度はあげちゃったよぅ 投稿日:2001年08月12日(日)10時05分21秒
- これではセルフ荒らしやっちゅうねん(w
お目にかけて頂けるいい機会、と思うことにします。
(;^▽^) <ポジティブ、ポジティブ!
- 78 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月12日(日)12時19分42秒
- ageてくれたおかげで発見できました(w
こんな面白いのがあったなんて…
これからに期待してます!!
- 79 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月20日(月)04時47分12秒
保田の問いかけにあからさまに焦って、
必死にとぼけて見せる吉澤。
意外と大人しい性格の吉澤が家を飛び出す、という事は…
「あいつ」がまた何かやらかしたか…?
「…保田さん。
私、自信なくなってきました…うっ…
もぉ…ダメかも…ヒック」
シラをきるのをやめた途端、吉澤は涙ぐみ始めた。
学校でのクールでコワモテなイメージは何処へやら。
「ちょっと、アラアラ…どうせ痴話げんかだろうけどさー…」
「そんなんじゃないです!
私だって許せない事あるんっす!
…大体わかってないんですよ……」
家を飛び出した経緯を語る吉澤に、
保田は思わず苦笑いした。
…ほらみろ、痴話げんか以外の何物でもないじゃない。
- 80 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月20日(月)04時49分56秒
「あー。わかったわかった!
…ま、なんにせよ一週間も家あけてるのはヤバイわよ?
そのうちただのケンカじゃ済まなくなったりして…」
「な!? やめて下さいよ!!
っ…でも、もし、もしそうなったら、
私、どうしよう…ぐすん…」
保田や矢口の前では、こういう面も素直に出せてしまう。
それは、きっと生まれた頃からの付き合いだから。
自分と同じ運命みたいなのを背負っていて、
でもそれに屈しない強い人達だから。
「…はいはい、今日はいいよ。泊まって行きな。
でも、今日だけだからな!」
慰めや同情の言葉よりも、今は保田のぶっきらぼうな
優しさがとても嬉しかった。
アタシは早く寝たいのよ!と保田に風呂へ追いやられながらも、
まだちょっと吉澤の涙は止まらなかった。
- 81 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月20日(月)04時54分08秒
―4― euphoria
眠りたい、と思っているのに寝付けないのは
なかなかイラつくものである。
ましてや、そんな状態が2時間も続けば、
もう気も狂わんばかり。
吉澤はベッドの上で時折暴れながら、意地でも寝てやると
空回りな努力をしていた。
大まかに言って、こうなる原因には二通りあるだろう。
―胸の踊るような出来事への期待が、眠る時間さえ惜しませるような時。
―押し潰されそうな不安や恐怖が、眠るなどといった甘えた逃避を許さない時。
現在の吉澤は完全に後者だ。
「ふぁーっ。信じらんない、なんで眠れねーんだ?」
このまま朝まで寝てしまえば、今日は逃げられる。
明日になったらどうする?
…それはまた明日考えればいい。
ところで何から逃れようとしているんだった?
…結局、会うのを先延ばしにしてるだけなんだよな。
その時、鍵の開かれる音が聞こえた。
どうやら吉澤の努力も虚しく間に合わなかったらしい。
自室のベッドの上でひどく動揺する吉澤。
2、3秒あたふたした後、寝たフリで誤魔化すため布団をすっぽり被った。
- 82 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月20日(月)04時56分37秒
多分、いちど自分の部屋にもどって荷物を置いたあと、
こっちにやって来るんだろう。
その間のわずかな猶予で寝たフリを完璧にしなければ…
…小心者そのものの思考を巡らせていた。
しかし、予想に反してすぐに吉澤の部屋のドアは開かれる。
ギョッとして、思わずドアの方を見てしまった。
…吉澤の悪あがきはここであえなく終了した。
そこには鞄を提げたままの、一番会いたくなかった人物が立っていた。
- 83 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月20日(月)04時59分32秒
一度目が合ってしまった以上、無視をする訳にもいかない。
「…おかえり」
無機質な口調でとりあえず声を掛けた。
相手は無言。
しかし何も言わなくても相当怒っているのがわかる。
ここで弱気になりそうな自分を奮わせる。
(わ、私は悪くないんだ! 原因はそっちなんだぞ!!)
言葉のない重い空気が漂っていた。
それでも、むこうの出方をみるために何も話さなかった。
「……迷惑はかけないでって言ったでしょう?」
不意に吐き捨てるように言われた一言。
ハラがたつとかムカツクとか、
そんなのよりもただただ悲しくなった。
(…なんで自分だけがこんなに思い詰めてるんだろう?
相手は自分の事邪険にしか思っちゃいないのに。
こんな思いするのはもう沢山だよ…)
- 84 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月20日(月)05時05分23秒
「突然出ていって一週間も学校休んで、どういうつもり!?
どこ行ってたか知らないけど、そこにも迷惑掛けてるのよ?
呆れちゃうわ、ホント自分勝手なのよね、わかってな…」
「わかってないのはそっちだろ!!」
相手の言葉が終わらないうちに吉澤の怒鳴り声が重なった。
普段は吉澤の反抗も涼しい顔して受け流すのだが、
さすがに今の剣幕には驚いたようだ。
わずかに後じさり、ひきつった表情になった。
「…そんなメーワクなら出ていってやるよ。
二度と戻るもんか! 学校も辞めてやるし、せいせいするだろ!?
その方がこっちも、鬱陶しいって思われるよか楽だよ」
そう言い放って黙々と荷物をまとめ始める吉澤には
「何言ってるの?」「あなた正気?」
といった問い掛けがされていたのだが、聞こえていないように
作業を続けていた。
必要最低限の荷物をバッグに入れ終えると
それを肩に背負ってドアの横にいる相手と対峙した。
「…お世話になりました。サヨナラ」
しっかり目を見据えて、それから躊躇なく部屋を後にした。
- 85 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月20日(月)05時17分00秒
- >>78 さん
( ^▽^) <悪い事ばかりでもないんですね♪
( `.∀´) <そうね石川、たまにはageるのもいいものね♪
( ´ Д `) <……調子にのる師弟だ(ボソ
(;^▽^) <なんですって!?
(;`.∀´) <キィ―!いちいちウルサイ子ねッ
- 86 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月21日(火)01時44分44秒
- んに?
話が以外な展開に……。
- 87 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月21日(火)01時45分22秒
- 吉澤の事どう思ってるんだろう…
どきどきです!!
- 88 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月26日(日)09時43分53秒
「そんなこと許さないわ、私、認めないから!」
ヒステリックな叫び声が吉澤の背中に浴びせられる。
「どうせ保田さん達の所に行くんでしょう!?」
(そうだけど、どこ行こうが関係ないじゃん)
無視するように吉澤はぐるりと一度肩を回して、玄関から出た。
甲高い声が家の中から微かに聞こえる。
制鞄を乱暴に落としたのか、それとも
どこかに叩きつけたのか鈍い音も聞こえた。
(そんな事したら後でぜったい後悔するってのに)
…でも、きっとこちらへは出て来ないだろう。
自分を引きとめにはやって来ない。
予想通り背後からは何の音もしない。
吉澤は苛立たしげに鼻で笑い、エレベーターに乗り込んだ。
- 89 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月26日(日)09時48分21秒
…今までの生活が嫌で嫌でしょうがなかったのか、
と問われればそうでもない。
むこうの機嫌が良いときには、それは本当に楽しくて
幸せな二人暮しだったわけで。
料理べたな者どうし、一緒に四苦八苦して
晩ご飯を作った事もあった。
夜はどちらかの部屋で一緒に寝るのも珍しくなかった。
機嫌が多少悪くて冷たくされたって
昔はどうって事なかった。
だって彼女はプライドが高くて世間知らずな「いかにも」な
お嬢様なのだから。
そんな所さえ吉澤は好きだった。
それが彼女らしさなのなら
ずっと変わらなくてもいい、と思っていた。
だから彼女に関してなら耐えられないことなど無い、
という自信があった。
でも、吉澤には最近分からなくなってきた。
…いったい、相手のなかで自分はどういう立場なのだろう。
例えば「愛しい人」とか、そこまでは
おこがましくて求めたりしない。
けれどせめて「大事な人」とかぐらいは
思っていてくれてもいいのに…
…恨みがましいのは自分らしくないや、
と吉澤は苦笑いを浮かべ、歩を早めた。
- 90 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月26日(日)10時00分50秒
バス停に辿りついて、ベンチにバッグを放り投げる。
ただでさえ熱帯夜なのに
こんな重い荷物を担いで来てはたまらない。
全身汗だくになってかなり不快な気分だった。
(今日はとりあえず…矢口さんトコかなぁ)
恐らく最も吉澤の来訪を喜んでくれる…はずなのだが。
ひっかかるのは、ここの所どうも
矢口がおかしい気がする事だ。
周りが引くぐらいハイテンションで喋りたおすと思えば
突然誰とも会いたくないと家に閉じこもったりする。
そんな不安定な精神状態が1ヶ月前から続いていた。
(う〜む…やっぱヤバいかな?
怖いけど保田さんトコにしよっか、でもなぁ…)
考えながら、時刻表の灯りに群がる羽虫を
ぼんやり見遣っていた。
そして、とっくにバスの最終は出た後なのだと気付く。
行き先の選択肢が一つ消えてしまった。
仕方がないので、保田の家へ向かうべく
最寄りの駅へ移動しようとした時だった。
寂れたコンビニの照明で
ぼやけた輪郭が浮かび上がっている人影。
ここにあるはずのないシルエットが
吉澤の目に飛びこんだ。
- 91 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月26日(日)10時05分10秒
徐々に近づいて来るその人物は、
間違い無く先刻に別れを告げた相手だった。
あいかわらず制服姿のまま少し息を乱して
こちらを見つめていた。
まさか追って来ようとは
未だに吉澤には信じられなかった。
どうして…?
「バスはもう来ないわよ。残念だったね」
- 92 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月26日(日)10時08分54秒
吉澤が訊ねるより前に、悪意のこもった口調と笑顔で
言葉をかけられた。
自分を追いかけて来てくれた事にちょっとした
感動をおぼえていた吉澤だが、その言葉にまたカチンときた。
「……別にいいよ、他にアテがあるし。じゃね」
できる限りの素っ気無さを装って
この場を去ろうとした。
「次は保田さんの所行くつもり?
…ダメだと言ってるでしょう。
つまらない意地なんて張ってないで、早く帰るわよ。
私は明日も早いんだから」
横柄とも取れる、反論など一切受け付けない態度。
本人には全く自覚がないのだろうが。
「…帰るつもり、ない」
ぼそりと呟き、今度こそ
そそくさと去るつもりだった。
しかし、吉澤の足はすぐに止まる。
凍てつきそうな冷たい微笑と共に自分に向けられたモノのせいで。
- 93 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月26日(日)12時27分27秒
細い手に握られた黒い塊。
比較的小ぶりなそれは人目をはばかるように
持たれていたが、しかし先はしっかりと
吉澤の左胸に合わせていた。
制服を着た優等生には不似合いなはずなのに、
構えている姿は余りにも板についたものだった。
「ほら、早く言う通りにしないと…戻れなくなっちゃうよ?」
どこにもね、と付け加えて目を細めた。
もし本気なら、吉澤が逃げられる確率は
限りなく0に近い。
ただし、相手の要求をのむ以外の手がある事はある。
吉澤のカーゴパンツのポケットには
全く同じモノが入っているから。
ダメもとでそれを取り出せば、威嚇くらいにはなるはずだ。
隙をみて逃げるなり最悪の場合
反撃するなり、どうとでもできた。
…しかし悲しいかな、吉澤にはそれを試す気なんて
さらさら持ち合わせていないのだ。
- 94 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月26日(日)12時32分27秒
物心ついた頃から刷り込まれた自分の生きかた。
今になって逆らおうとも思わない。
吉澤は思う。
彼女を手にかける事は、即ち
自分の人生の意味をも抹殺してしまうのだ、と。
…ポケットの重みは、彼女を守るためだけに在るんだから。
だから、やりたいようにすればいい。
ただ、私はあなたに迷惑と思われてまで傍で生きていたくないだけなんです…
「どうぞ。私は戻りませんから…」
吉澤は力無く笑うと、全ての抵抗を放棄した意志を
見せるため、静かに両目を閉じた。
- 95 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月26日(日)12時49分23秒
- >>86 さん
( ´ Д `) <……この展開、後藤的に超ヒマなんだけど?
(;^▽^) <ごめんね、もうちょっと待っててね
( ´ Д `) <……ところでさっきの告白きいてくれた〜?
(;^▽^) <そんな余裕なかったわよ!!
>>87 さん
(;0^〜^) <どう思ってるんだYo!
( ´ Д `) <……どう思ってんの〜?
(;^▽^) <う、ふぇ……フェードアウト〜☆ …ふぎゃ!?
( `.∀´) <ふっふふ、逃がさないわよ♪
(;T▽T) <いや〜〜助けて〜!!
- 96 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月28日(火)01時15分00秒
- ど、ど〜なるんだ〜!!
- 97 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月28日(火)23時06分27秒
- ふむ、興味深いな・・・
- 98 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月29日(水)09時25分44秒
至近距離で対面しているから、
感情の昂ぶりが波動のように伝わってくる。
十年以上の付き合いの長さ、常時気配を察知する
習慣づけられた生活、これらがただの脅しではないことを
吉澤に充分知らしめていた。
…正面で微笑む虫一匹殺せなさそうなお嬢サマが
実のところは激情に任せて蜂の巣にするような
人間とは誰も信じるまい。
乾ききった唇を固く結ぶ。
いよいよ吉澤は覚悟を決めた。
限界点ぎりぎりの緊張感は熱帯夜をより息苦しくさせる。
こんな時にかぎって人っ子ひとり通りやしない。
重くじめついた空気が
てらてらと光るアスファルトの上を満している。
それを破ったのは破裂音でも叫び声でもなかった。
響いたのは。
- 99 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月29日(水)09時29分59秒
場違いな…
「っふ…あはははっ、しないよ〜だ!」
…おどけた口調のアニメ声だった。
- 100 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月29日(水)09時33分26秒
吉澤の眉の上にかかる汗が地面に滴り落ちた。
一気に弛む、場の空気。
自分もこの空気と一緒に蕩けてしまいそうな
感覚に見舞われながら、吉澤は再び両目を開けた。
まず瞳に映ったのは、悪戯の成功した子供みたいに
嬉しそうな表情。
反対に吉澤の胸中には言い表せない苛立ちが渦巻きだした。
(死ぬコトも受け入れようとした自分の決心は何だったんだ!?
バカにするにも程がある…!)
「…あん、た…は…っ!」
噴火の直前の唸るような低い声。
「いったい何がしたいんだよぉ!!!」
感情を爆発させて叫ぶと、肩にかかった
スポーツバッグを力任せに叩き落とした。
「わかんねー、もう、わっかんないよぉ…」
吉澤の目が涙で滲みはじめる。
それでも、目の前の『ワケのわからないひと』をぎりりと
睨みつけていた。
しかし、怒りに肩を震わせている吉澤には
気付いていない事があった。
さっき感じた殺気は勘違いなどではなく
今もなお消えていない。
そして、そっと隠された黒い塊は依然しっかりと
掌に握りしめられている。
- 101 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月29日(水)09時40分37秒
吉澤の目に涙をみとめて、ありゃりゃと肩を竦め
両手を口にやるブリッコな仕種は本人には大層似合っているが、
右手に相当不似合いなモノを連れていた。
「何がしたいって? 何回も言ってるよ、家に帰りましょ、って」
左手は口元にあてたまま、右手をツツッと
顔の輪郭に沿って上げていく。
こめかみの高さで止め、握り直し自分自身の方へ先を向けた。
そして勝ち誇った顔で吉澤に問い掛ける。
勝負あり、ゲームオーバーだった。
「…ねっ帰る? 帰らない?」
- 102 名前:fragmentation 投稿日:2001年08月29日(水)10時00分32秒
- >>96 さん
(^▽^;)) ((;^▽^) キョロキョロ
「(;^▽^)」 <今のうちに…
(;T▽T)<キャッ!?
( 0`〜´) <みーつけた!さっ、別室で教えてもらおうか?
>>97 さん
(´ Д ` ))(( ´ Д `) キョロキョロ
( `.∀´) <アンタ、何やってんの?
( ´ Д `) <……イヤ、なんとなく
( `.∀´) <顔広がってたわよ?
( ´ Д `) <……圭ちゃんよかマシ。てゆーかレスになってないじゃん…
- 103 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月30日(木)19時34分05秒
- 石川〜…
- 104 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月31日(金)09時47分26秒
- 続きが気になる〜
- 105 名前:fragmentation 投稿日:2001年09月03日(月)06時41分40秒
吉澤の完敗。
相手は奥の手を、吉澤が否応なく戻ってくる方法を、
ちゃんと知っていたのだ。
そのカードを今まで出さなかったに過ぎない。
相手は、ちゃんと知っていたのだ。
自分が吉澤にどれだけ深い想いを寄せられているか。
吉澤が自分に絶対愛想を尽かしたりしないことを。
意志とは関係なく小刻みに震える拳と声。
「……汚いよ、あんたは汚い…!!」
そうまでして引き戻したいのは、きっと
自分の「モノ」が勝手に消えるのが許せないから。
吉澤は子供の頃彼女の玩具を無断で持ち出して、
こっぴどく怒られたのを思い出した。
吉澤から剥ぎ取るように取り返した着せ替え人形で
見せつけながら嬉々として遊んでいた少女。
再び床に置いてけぼりにされた人形を、幼い吉澤は黙って箱に片付けた。
(今は私があのおもちゃなわけ、か…)
…幼心に傷つき、悔しいと感じた。
その頃から、相手との格の差の存在を薄々わかりはじめた。
そしていつしか仕方ないと諦めるようになっていた。
「もういいよ、それ、しまいなよ…」
俯き加減で呟くと吉澤は、想いを利用され蹂躙されて
ズタズタになった胸を庇う様に背を丸めて足を動かした。
- 106 名前:fragmentation 投稿日:2001年09月03日(月)06時49分47秒
- (…ここはどこだろう?
帰るべき家? 自分の部屋?)
再びベッドの上にいる吉澤。
ただし今の吉澤には苛立ちも恐怖も悲しみもなかった。
虚ろな瞳で電気の点らない暗い天井を見上げていた。
(…違う。ここは、檻の中だ。
いや、オモチャ箱の中かな?
気まぐれで出されて、散々いじられて
きっと飽きたら放っておかれるんだね。
可笑しいね、私はモノじゃないのに…
私は、感情のある人間だよ)
ごそごそとベッド下に隠してあるカートンボックスを探す。
手で探っても、覗きこんで見ても、無かった。
お見通しらしく、きっちり没収されてしまっていた。
吉澤は大した事でもない、というようにまた寝転んだ。
(…そうだ。何でも大した事ないって思えばいい。
それで楽になれるなら…
もう私、しんどいのはいや…
心なんか……持ってたって私には必要ないもん)
- 107 名前:fragmentation 投稿日:2001年09月03日(月)06時52分27秒
クスクスッと吉澤の笑い声が漏れてくる。
かれこれ10分はそこで立ちんぼしている同居者は
訝しげに首を傾げる。
友達とメールのやりとりをしているのだろうか?
とてもそんな事をできそうな雰囲気では無かったのだが。
数時間前、抜け殻のように焦点の定まらない目で
家路についていた吉澤は…。
「起きてる?」
…
返事は無かった。
「…また今度にするね。おやすみ」
それだけ言い残すと吉澤の部屋の前から去って行った。
うす暗い部屋で吉澤は消えていく足音を数えていた。
- 108 名前:fragmentation 投稿日:2001年09月03日(月)06時55分04秒
朝と言うには早過ぎる時間。
ふとひどい喉の乾きを覚えた吉澤は冷蔵庫へ向かう。
キッチンの方から明かりが漏れていた。
ということは先客がいるのだろう。
背を向けるかたちで先客はリビングのソファに座っていた。
明日も早い、と昨夜言っていたが随分また早起きな事だ。
しかしその姿を確認しても、特にちゅうちょしたりせず
冷蔵庫のドアを開ける。
先方も振り返ることなくTVから流れる
ビルの上からの景色を見つめていた。
はたして何が面白いのだろうか、じいっと見入っている。
そのまま互いの存在を無視して
この場は終わるはずだったのだが…。
- 109 名前:fragmentation 投稿日:2001年09月03日(月)06時58分48秒
「おはよ。いつもこの時間に起きてるの?」
意外にも、コミュニケーションを取ったのは
吉澤の方からだった。
更に意外なのはその口調がとても友好的だった事だ。
穏やかな表情は、昨夜激昂した時とは180度異なった風情だった。
「もう出かけるの? 時間あるなら何か飲む?」
吉澤はソファに近寄って、画面に向けられたままの
視界にひょいっと割って入った。
「…ねぇってばー」
それでも相手は変わらず遠い目をしていたのだが、
その状態が3秒ほど続いた後
「…えっ!? ……なっなによ!?」
さっきから話しかけていたというのに、
不意討ちにあったように目をまるくして驚いた。
「んー、どうしたのさ? 珍しいなぁ、ハハ」
吉澤は笑顔で自分の持っていたペットボトルを差し出し
「これ、飲む?」と訊ねる。
まだ動揺のおさまらない様子でそれを受け取ると
少し口をつけてから溜息を漏らした。
- 110 名前:fragmentation 投稿日:2001年09月03日(月)07時02分06秒
「あれ? もしかして…」
ニコニコしてそれを見ていた吉澤が、
途端に曇った面持ちになる。
「もしかして最近ちゃんと寝てなかったの?」
自分よりも切れ長な両の瞳の下にはとても1日2日では
出来なさそうな、はっきりとしたクマがあった。
問われてすぐに顔をそむけてしまったのを見て、
吉澤は自分の質問が図星だったのだと確信した。
「…私のせいなんだよね。
ゴメン、これ以上迷惑はかけないから…ゴメンね」
ソファの前の床にひざまづいて、相手を心苦しげに見上げる。
一瞬だけ目が合う。が、すぐにまた逸らされてしまった。
「私が言うのもなんだけどさ、今日はゆっくりした方がいいと思うよ?
よっぽど大事な用じゃないなら…」
「…た…って……私だって、
心配の一つや二つぐらいしていたのよ!」
吉澤が言い終える前に震える声が遮った。
そむけた横顔はその言葉を証明するようにやつれている。
「うん、そうだね。悪かった。
これからは言う事ちゃんときくから。
…じゃあ、私は部屋に戻るね。ムリしちゃダメだよ」
- 111 名前:fragmentation 投稿日:2001年09月03日(月)07時05分49秒
妙に爽やかな顔をしてリビングから立ち去った吉澤に
またしても言いそびれてしまった本題があった。
加えて先ほどの吉澤に感じた違和感…。
「あなたはやっぱり自分勝手よ…」
苛立ちが募る。
誰に? 他でもない自分自身へ。
今朝何度目かわからない溜息をつく。
何時の間にか景色からニュース番組に変わっていた
TVを消し、すぐれない表情よりはしゃんとした
足取りで立ちあがった。
- 112 名前:fragmentation 投稿日:2001年09月03日(月)07時22分49秒
- >>103 さん
[ ゚皿゚]」 <イシカワ―
〜^◇^〜 <お呼びですよ〜
( `.∀´) <…奴はワケあって顔をお出しできません
>>104 さん
〜^◇^〜 <イシカワ〜続きは〜?
( ´D`) <ししゃにむちうつようなことはやめるのれす
(`〜´0 ))(( 0`〜´) <くっ、取り逃がしたか…!
( ´ Д `) (……それじゃコイツはさしがね死神だな)
- 113 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月04日(火)06時23分51秒
- 言いそびれた本題ってなんだろう…?
- 114 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月15日(土)19時25分59秒
- 続き読みたいよ〜!!
- 115 名前:パク@紹介人 投稿日:2001年09月17日(月)13時19分33秒
- こちらの小説を「小説紹介スレ@赤板」↓に紹介します。
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=red&thp=1000364237&ls=25
- 116 名前:fragmentation 投稿日:2001年09月18日(火)10時47分22秒
何事も無かったかのように一週間が過ぎた。
その後の二人の関係はむしろ良好に見える。
結局、吉澤は終業式にも出ないまま夏休みを迎えたのだが
生徒会長が強権を発動させたため、特にお咎めもなかった。
吉澤の為に権限を利用するなど、今までなら
考えられなかったハズだ。
果たしてふだん聖人君子面している彼女は、どんな顔をして
教師たちにごり押したのだろうと正直、吉澤は戸惑った。
最終的に吉澤には『病気のため自宅にて静養中』という
理由があてがわれていた。誰も信じちゃいないだろうが。
休みに入っても、これといってやる事がある訳でもなく、
殆ど家で過ごしていた。家を出る用事はコンビニか本屋ぐらいだった。
かたや同居人は休みにも関わらず頻繁に学校へ出向いている。
従って、諸々の家事は吉澤がするようになった。
そんな三食昼寝付きの毎日は、吉澤にとって快適そのもの。
学校では不良のレッテルを貼られているけれども、
実は平凡な日常をこよなく愛し、些細な幸せを望んでいたりする。
本人いわく「自分は平和主義者で刺激なんて求めちゃいないのに、
まわりがマイペースに生きさせてくれない」のだそうだ。
- 117 名前:fragmentation 投稿日:2001年09月18日(火)10時50分45秒
だから今している風呂掃除だって、快適な毎日が続くなら
全くもって苦にならない。
「ふふん、ふん、ふん♪
うーんウチってぜったい良い主婦になれるよね♪あ、鏡も磨いて、と
…っつーか、この髪いい加減どうにかしたいのになぁ…
勝手に戻したら矢口さん怒るんだろな…」
吉澤イコール不良、を決定づけたその髪の色も
矢口に半ば強制的にされてしまったものだったのだ。
色素の抜けた自らの髪に思わず拒否反応を示した吉澤。
文句の一つも言おうかという時
「よっすぃーサイコー!ヤグチのセンスもサイコー!
勝手に戻したりすんなよなっ、キャハハ♪」
…釘を刺されてしまい、現在に至る。
「ま、休みだしいいか。さ〜て、そろそろ晩ゴハンの支度しなきゃ」
- 118 名前:fragmentation 投稿日:2001年09月18日(火)10時53分03秒
「…ただいま」
吉澤の独り言に疲れきった様子の声が重なった。
やがて現れた姿は、「倒れそうなんです…」という
瘴気のオーラを四方に放っていた。
「ど、どうしたの!? 横になる?」
「うん…でも、その前にお風呂…はいりたい…」
蚊のなくような声で応え、フラフラと弱りきった
足取りで洗面所へ消えていった。
本日の献立、ビーフシチューに取りかかりながらも
先程のただならぬ様子に気がいってしまって、どうにも手が進まない。
吉澤は一旦火を止め、とうとうキッチンから離れて
バスルームまで見に行くことにした。
「おーい、バスタオルとかはここに置いとくからね〜」
気を利かせて着替えなどを持って来てやったのだが、
ドア越しに声をかけても反応がない。
「ねぇ聞こえてるよね? 返事してよ…」
「……ちょっ、マジで……開ける、よ?」
言い終えると同時にドアを開けた。
室内に充満していた湯気がもうもうと出てくる。
流れっぱなしのシャワーだけがけたたましく存在を主張していた。
…そして白く霞んだ視界の先には、
一糸纏わぬ姿で意識を失った少女が壁に寄りかかるように倒れていた。
- 119 名前:fragmentation 投稿日:2001年09月18日(火)11時09分40秒
- >>113 さん
[ ゚皿゚]」 <イシカワー!
〜^◇^〜 <ご質問いただいてるよー
( `.∀´) <「そんなのイシカワの口から言えません!キャ」…以上、伝言でした
>>114 さん
(;T▽T) <ううぅ、ありがどうございまずぅ…
( ´ Д `) <……あ、なんか足音が
(T▽T ))) <いやぁ〜〜〜(パタパタ
(`〜´0 ))(( 0`〜´) <おや、声が聞こえたケド?
>>パク@紹介人 さん
( `.∀´) <「ご紹介に預かりましてありがとうございました!
イシカワは泥沼だけどこれからも負けません!
応援よろしくお願いします」……長い、長過ぎるわイシカワ!
アタシはイタコじゃないのよ、ムカツク!
- 120 名前:fragmentation 投稿日:2001年09月27日(木)20時55分36秒
久しく訪れる事のなかった部屋の中、吉澤は俯いて立っている。
その視線は今しがた自分が抱きかかえて連れてきた少女にそそがれていた。
静かに眠っているのを邪魔しないように掛け布団を
直してやると、またじっと立ったまま見つめている。
来ない間にまた随分、散らかりだしたな…などと考えながら。
とにかく、この部屋の主には見た目で騙されてはいけないのだ。
努力家、真面目、優等生…どれも正しい。
だが、だからといって整理整頓が得意とはかぎらない。
堆く積まれた本や申し訳程度にたたんだ衣類の山、
あやしげなぬいぐるみの数々…。
モノが多すぎる上に、雑然と置くもんだからしょうがない。
そのなかで、おろしたてのブラウスとグレーのスカートは
場違いなほどきちんと壁に掛けてあった。
- 121 名前:fragmentation 投稿日:2001年09月27日(木)21時01分23秒
ベッドの脇で依然吉澤は立ったままいた。
意識が戻るまでそうして待っているつもりだった。
冷たいような、あるいは穏やかそうにも見える表情を
浮かべて、じっと。
やがて、この上なく気だるそうに開かれた瞳が吉澤を捉えた。
なぜ自分が自室で横になっていて吉澤が傍で突っ立っているのか
分からず、困惑した顔をしている。
吉澤は少しかがんでそんな彼女に微笑みかけた。
「お風呂入ってそんまま倒れてたんだ。疲れがたまってるみたいだし、
ちょっと熱があるね。薬のんで今日明日は安静にしてね」
諭すようなゆっくりした口調で告げると
吉澤は部屋を去ろうとした。
「どこ、行くの…?」
元々弱い喉をやられてしまったのかその声は掠れていた。
吉澤は出口に向かう足を止めて、優しい笑顔で振り返る。
「お水持ってくるんだよ、薬のむときの、ね」
- 122 名前:fragmentation 投稿日:2001年09月27日(木)21時05分48秒
「ハイ、これ解熱剤だから。
……ダメだよそんな顔しても! ほら早くっ」
顔をちょっと傾げて潤んだ瞳で上目遣いになるのは、故意なのか
はたまた無意識にやってのけているのか。
…不利になった時にこうするのを、吉澤は小さい頃から幾度となく
見ているから、恐ろしいことに多分後者なのだが。
「…こなぐすり、キライ、だって苦いもん!」
「高校生にもなって、んなコト言わないでよー。
これしか無いんだから我慢するの!」
往生際の悪い相手を追い詰めようと、吉澤の片足は
ベッドに乗り上げている。
そして片手に薬、もう一方にコップを携えて距離をつめる。
しかし相手は変なトコまでとことん負けず嫌いの窮鼠。
大人しく言いなりになるわけもなく…
「ふんっ、無理に飲ませるなんて毒でも入ってるんじゃないの?
ホントに薬なんだったら、あなたが先に飲みなさいよ!」
……噛みついた。
- 123 名前:fragmentation 投稿日:2001年09月27日(木)21時08分57秒
熱っぽい顔を更に赤くして抵抗を試みる姿はなんだか
可愛らしいのだが…普段が普段だけに、こんな事で
ムキになられると呆れてしまう。
挙句の果てには、苦笑いして言い返さない吉澤に
変な勘違いまでしはじめた。
「ほらっ、ほらっ、自分じゃ飲めないんだ!? 解熱剤なんて嘘なのよ、
私は騙されませんからね! なによ、そんなに私が憎いわけ?
あなたなんか…」
…ごっくん!
黙って吉澤は手にある粉薬を流しこんだ。
それと同時にまくしたてていた相手も黙る。
「……」
「…飲んでくれるよね?」
有無を言わさない目で吉澤は詰め寄る。
熱もありゃしないってのに飲んでやったのだ、いい加減
諦めるだろうと吉澤は踏んでいたのだが…
- 124 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月27日(木)21時26分29秒
- ああぁ〜(泣
この作品がエントリーされてなかったことに気がついた(鬱
ごめんなさいぃ〜(涙涙
応援してますよ!!!!!!
- 125 名前:過去のself ageでここを見つけた者 投稿日:2001年09月28日(金)00時30分17秒
- >>124
されてるよ
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=imp&thp=984660287&st=175&to=175&nofirst=yes
- 126 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月01日(月)05時53分11秒
- ほんと尻に叱れてますね、吉澤(w
- 127 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月03日(水)20時34分23秒
-
眉間にキュウ、と皺がよりつつあるのを発見した時、
そんな算段は甘かったんだなぁ、と思わず項垂れた。
「イ・ヤ! イヤなものはイヤ! ぜ〜ったいイヤ!!!」
開き直りごり押しモードが炸裂してしまうと
吉澤にはお手上げだ。
いっそここまでワガママだと清々する。
もういい、たかが薬ごときに恐らくベストは尽くしたはずだ、と
自分に言い聞かせて。
「わかったよ! 弱ってんのにそんな興奮された方が困るって。
長引いてツライのは私じゃないんだし、好きにすれば!?
………折角あさっては前言ってた映画に……もぉいい、おやすみ!!」
こっちまで熱がでてきそうな気がして、そろそろ吉澤は
お暇しようと決心した。
水がなみなみ入ったコップをドン!とテーブルに置き、外人よろしく
大仰な溜息を見せつけてやって、部屋を出るつもりだった。
「明後日ですって……?」
- 128 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月03日(水)20時37分21秒
ガラに合ってない、地を這うような声が吉澤の背中に待ったをかけた。
「…あなた、明後日は、この私と映画に行こう、って、
そう思っていた…違いないわね?」
(はぁ、そりゃたしかに相違ありませんケド…)
眉間の皺とドスの利いた声にひたすら戸惑う吉澤を気にせず、なおも
彼女からの問いかけは続いた。
「…でも、私の体の具合がまだ悪いだろうから、きっと行けない。
それは、私がこの薬を飲まないからだ、って、そう言ってるのかしら?」
(なんだなんだ!? 逆ギレの前兆かよ〜??)
全くもって理不尽な、と思いながらも習性で身を構えて
爆発に対しての準備をしてしまう。
- 129 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月03日(水)20時45分54秒
しかしそんな吉澤には目もくれず、当の本人は厳かに
まず薬包紙を開き、口に流し込んだあと中身の少々
減っていたコップを一気に傾けた。
「……ハアッハアッ…奇遇ね、
明後日に入っていた用事が無くなったのよ。まぁグウゼン私も
時間が出来ちゃったから、あなたと行ってあげ……
うえぇ…口っ! 口の中が苦いじゃないの!
立ってないでよ、もっとお水!!」
目を潤ませ必死の形相で命令され、
吉澤は弾かれるように部屋を飛び出した。
冷蔵庫まで全力疾走して、折り返しもまた超特急で
部屋に戻る吉澤の姿は、まるで忠実なフリスビー犬のようで
憐れささえ感じさせるものだった。
- 130 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月03日(水)20時49分54秒
「ちょっとはマシになった? まだ口ん中気持ち悪い?」
「もう大丈夫…でも、こんなのよく平気ね、殆どお水も飲んでないし」
「ははっ…(それが普通だって、全くお子様なんだから…)」
こんなことで感心されてもなぁ…と内心思いながら、
とりあえず笑ってる自分が悲しい。
「ホントは我慢してるんでしょう、私が全部飲んじゃったから。
…ひとみちゃんの分、残しておかなかったから」
…もし吉澤が心の機微に疎い人間でなかったなら、
いい加減ここで何か察知できたのだが…
「いやぁだー何言ってんの。ウチは何ともないんだってば〜!」
鈍感な吉澤はまだ知る由もない。
- 131 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月03日(水)21時20分26秒
- >>124 さん
( ^▽^) <応援ありがとうございます♪
( `.∀´) <sageでやってるんだからエントリーなんて僭越ね!
〜^◇^〜 <でも誰かがしてくれてるんだよな〜
( ● ´ ー ` ● ) <ありがとう
>>125 さん
( ^▽^) <教えて貰わなかったら気付かないままでした…
( ´ Д `) <……さ〜て、票は入るのカナ〜
(;^▽^) <そ、それは…じゃあageてみましょうか…?
( `.∀´) <でしゃばるとロクな事がないって、学習なさい、石川…
>>126 さん
(;^▽^) <だっだっだめです、そんな事言ったら…
〜^◇^〜 <ククッ、あいつ怒ってるだろ〜なぁ
(;T▽T) <ああぁ〜よっすぃー違うのに〜…
- 132 名前:124 投稿日:2001年10月03日(水)21時37分23秒
- 早とちりしましてゴメンナサイ
いや〜おもしろい!!
もちろん投票しましたyo!!
- 133 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月08日(月)13時45分57秒
ポジティブな時だと、こんな吉澤も「純粋なのね…」といって
微笑ましく思えたりもするのだが。
ここ数週間の彼女の精神状態は最低、鬱の中の鬱。
その鬱の原因が目の前で人の気も知らずに、
優しそうなカオを引っさげて居られたら…。
返答を待っている吉澤のきょとんとした表情は
彼女の気分を底無しに下降させてゆく。
…ちゃんと彼女にだって自覚はあるのだ、自分が本当は不器用で
窮屈な人間なのかもしれない、と。
優しくなんてない、嘗て言われた通りのエゴイストだという事も。
―――でもね、
- 134 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月08日(月)13時54分07秒
「痩せ我慢するの、あ…ひとみちゃんの悪いトコだよ。
私覚えてるんだから。ひっ、ひとみちゃん、お茶会のお抹茶が不味いって
べそかいてたもの!」
突然の昔話に吉澤の頬がピキピキ引き攣る。
…嗚呼、忘れもしない。
あれは8歳になりたての初夏だった。
本邸で開かれた豪華な茶会には錚々たる著名人が集まっていたはずで。
当時3年生だったお嬢サマは隣りで、しゃなりしゃなりと
お作法に則った身のこなしをしていたのに。
自分ときたら、あんな中で…
…熱とその他で頬が紅潮している彼女とは全然別の意味で、
吉澤は顔に一気に血が逆流していくのを感じていた。
「…んなっ、いつの話を引き合いに出してんのさ!?
ガキの頃と一緒にするなよ〜! 自分だってついさっきまで
子供みたいに駄々こねてたでしょおっ」
- 135 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月08日(月)13時57分32秒
いかん、このままじゃ時間無制限のバトルトークがまた始まってしまう。
相手は絶対にひかない質なのだ、折れなければキリがない。
吉澤はそう判ってはいるもののつい言い返してしまった。
「……あ、ありゃ〜素ムシっすか!? マジギレしちゃいましたか?
だってだって…イキナリあんな昔の事言うからぁ…」
布団を被り、プイとあっちを向いてふて寝してしまったから、
吉澤は動揺を隠せない。
モジモジウロウロする気配を背に感じながら、
強情な彼女が滅多に見せない涙を浮かべていたのも
もちろん気付けずにいた。
―――こんな私にもね、ひとつ、ひとつだけ…
―――自分を捨てられるものがあるんだよ?
- 136 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月08日(月)14時06分34秒
- >>132 さん
( ● ´ ー ` ● ) <ありがとう…だべ…
( ´ Д `) <……この頃やけにここへ登場し出したね〜?
( ● ´ ー ` ● ) <なっちはこの話の顔っしょ…
( `.∀´) <イヤ、顔も何も、一回も出てないっしょ
- 137 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月09日(火)00時24分18秒
- おお♪これは期待していい展開なんだろうか…(笑)
- 138 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月12日(金)23時35分00秒
- 続き期待!!
- 139 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月17日(水)11時19分07秒
いやが応にも沈黙は続く。
せっかく打ち解けた雰囲気になりつつあったのに
またまた元の木阿弥。
吉澤は自分と正反対の黒く長い髪を見遣りながら、
どうしたものかと頭を悩ませていた。
何よりもまず、穏便に済ませなければ楽しい夏休みは過ごせない。
「…あの、さ。早く治して、あさって映画行こうね…ね?」
背中越しに聞いた躊躇いがちの声。
…優しい言葉は、ダメだ。
必死に堪えている涙が決壊しそうになる。
本当は素直に嬉しいのだ。コクリと一つ頷けばいいだけのこと。
けれど、それだけでも感情に
歯止めが利かなくなってしまいそうなのだ。
優しさを勘違いして、それを押しつけてしまいそうで。
だから……
- 140 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月17日(水)11時20分44秒
「……出てって」
意地っぱりな己の性格にはとことん嫌気がさしてしまう。
これで吉澤は呆れるか落胆して去るんだろう。
ここまで意地を張って、一体何を求めているのか分からなくなった。
心の中ではゴメンナサイを繰り返しているのに。
吉澤が後ろで静かに動きだす。
瞼を閉じると、最初の一粒が枕にそっと零れていった。
このまま泣き疲れて眠れたらいいのに…と思っていた時、
肩がぐいっと後ろにひかれる。
驚いて彼女が目を見開くと、蒼ざめた吉澤がいた。
「どう…して、泣いてるの……?」
- 141 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月17日(水)11時24分35秒
最悪…
吉澤は部屋を出てくれると思っていたのに。
なぜこうも上手くいかないのよ!と悪態をつきたくなる。
「…なんで……わかんない、
でも、どうしようどうしよう…泣かないで」
吉澤まで泣き出しそうな、いやむしろ吉澤の方が
悲愴な面持ちをして見つめている。
「っもう見ないで! 触らないで。出て行ってよ…」
腕で目を覆って、吉澤に鋭い言葉を浴びせる。
しかし吉澤はそれにたじろぐ余裕さえなかった。
彼女の肩へ置いた手にはさらに力がこもり、
その場に座り込んでしまう。
焦点の定まらない目で「泣かせちゃった…どうしてだよぉ…」と
ぶつぶつ繰り返し呟いている。
- 142 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月17日(水)11時29分08秒
そんな吉澤の姿に、彼女の心中は忸怩たるものがあった。
また結局自分のエゴに巻き込んでしまっている、と感じたから。
「ねえ、どうしたら機嫌…直してくれる?」
何度も訊ねる吉澤の切羽詰った表情が愛しくてたまらない。
気持ちをそのまま笑顔にかえて
吉澤へ向ける事ができたならいいのに。本当は。
できたらなら…いいのに……
―――叶わない想いだっていうのなら…最初で最後の私の優しさ…
我慢してばっかりの生き方から…私から…解放してあげるね
ひとみちゃん
「私の前から消えて。二度と戻って来ないで。
…そうしたら私の気分は良くなるわ」
- 143 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月17日(水)11時31分53秒
吉澤は不思議なほど動揺を感じていなかった。
心の隅で、彼女がこういう台詞を投げつける日の来る事を
予想していたからかもしれない。
「……ふぅん、やっぱりね。今度は要らなくなったからポイなワケ?
物騒なモノ使って戻した割にはあっさり捨てるんだ?」
険のある口調になるのは仕方ない。
気まぐれすぎるお姫サマはそれでも
「あなたも自由になれるのよ? お互いの為じゃない?」などとうそぶく。
そんなのは詭弁だ、と吉澤には感じられた。
ストレートに「飽きたからサヨナラ」と言えばいいじゃないか。
今更優等生っぽくされても余計に辛い。
「生活の面では今までぐらいの暮しはさせてあげる。
だから心配し…っ!?」
吉澤には、これ以上同情めいた言葉は苦痛でしかなかった。
だから彼女が言い終えないうちにその唇を塞いだ。
- 144 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月17日(水)11時49分26秒
- >>137 さん
( `.∀´) <期待できるかどうかビミョーなとこね
( ´ Д `) <……破局だ、破局〜♪あはっ
(0`〜´0) <でえぇぇいっ!!!勝手に決めるな〜〜!!
>>138 さん
(;^▽^) <もしかして期待…外れですか?(怯
( 0`〜´) <そーだYo!いしよしにならないと!
(;^▽^) <う〜んそぉかな……って、よっすぃー!?
( 0`〜´) <ふっふふ。さて、いい加減ハッキリしてもらおうか?
- 145 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月17日(水)17時54分45秒
- 素直になれない石川カワイイ!!
応援しちゃうぞ♪
ガンバレガンバレい〜し〜か〜わ!
- 146 名前:名無し 投稿日:2001年10月17日(水)23時31分19秒
- 前回の>135の
>>モジモジウロウロする気配を背に感じながら、
強情な彼女が滅多に見せない涙を浮かべていたのも
もちろん気付けずにいた。
句点まで読んで石川が主語なんだなとおもったんですけど、後半は吉澤の文なんですよね。
ちょっとねじれてたんで、いまいち意味がわからなかったです。
いつも面白く読んでいるだけに、ちょっと言いたくなってしまいました。
ごめんなさい。
- 147 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月18日(木)12時19分48秒
間近に見える、拒絶を表した彼女の姿に吉澤は後悔した。
けれど、衝動的とか、気の迷いなどといった言葉で
その行為を片付けようとは思っていない。
風化しかけている、長い長いあいだ留めてあった想いを
ホンの少し溢れさせただけなんだ。
吉澤が説明を求められたなら、そう言うだろう。
ただ、いくら吉澤が忍耐強い性格とはいえ、
感情を完全にセーブするなんて不可能だ。
そのことを吉澤は見落としていた。
どんな堅牢なダムでも、ちょっと穴をあけてしまえば
やがて決壊してしまうのだ。
- 148 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月18日(木)12時23分05秒
「…ん、やめ…いやぁっ…!!」
頭の中では、最後だし、キスして想いをぶちまけてやって
彼女の前から消えるつもりだった。
なのに体が言う事をきかない。立ち去ろうとしても足が動かない。
抵抗する彼女がふと見せた、翳りのある妖艶な表情は
吉澤の理性や罪悪感を木っぱ微塵にしてしまった。
「…金とか保証とか、私はいらないんだよね。
追いだす前にさぁ、いっこぐらい私の欲しいモンちょうだいよ?」
彼女の上に覆い被さって歪んだ笑みを浮かべている吉澤は、
恐ろしいほど美しく彼女には映った。
- 149 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月18日(木)12時26分10秒
…吉澤の欲しいもの、それはまさか自分なのだろうか。
あるいは自分を犯すことでもっと他の物を
要求しようとしているのか、測りかねていた。
服を潜ってわき腹の辺りを蠢いていた吉澤の細い指が、
胸へと移動する。
その感触にはっとして、しばし忘れていた抵抗を再び試みる。
「何かんが…てるの…よ!?
自分のやってること、わかってるの?」
武器になるものがあれば話は違うが、
体力では吉澤に全く及ばなかった。
組み敷かれる体勢を変えたくても、ままならない。
ブラをしていない彼女の胸は、やがてあえなく
吉澤の手の平に制圧されてしまった。
- 150 名前:fragmentation 投稿日:2001年10月18日(木)12時39分33秒
- >>145 さん
(;T▽T) <良かった…生きよう…
( `.∀´)<アンタねぇ、しっかりしなさいよ!!
( ´ Д `) <……ごとーもなんだかネガティブ
>>146 さん
( ^▽^) <客観的なご意見は貴重ですので、有り難いんですよ〜
( 0`〜´) <梨華ちゃんと一緒で、ヘソ曲がりな文だからね!
( ´D`) <しこうさくごなのれ、いろいろおせーてくらさい
( `.∀´) <手放しマンセーなレスもアタシは大歓迎よ
- 151 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月18日(木)23時27分51秒
- いけっ!よしこ!!(w
- 152 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月27日(土)23時55分21秒
- そろそろ続きを…
いしよしさいこー!
- 153 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月29日(月)18時47分49秒
- どうか、私に続きを読ませてください・・・
- 154 名前:undefined 投稿日:2001年10月30日(火)18時06分39秒
- 吉澤!それでいいのか!?
- 155 名前:fragmentation 投稿日:2001年11月01日(木)11時07分43秒
-
「んぅ…やめてぇ…!」
身を捩って逃げる彼女を嘲笑うかのごとく、
胸への執拗な指の愛撫は続く。
それどころか、触れられていなかった方の胸まで
吉澤の舌に嬲られはじめる。
微妙な力加減でちろりと先端を舐められ
彼女の背中に甘い疼きが走り抜けた。
ここで声をだせば負け…と身を固くして堪え続ける
彼女の姿に、増長した指と舌はさらに動きを激しくさせてゆく。
もう、行く所まで行かないと止めてくれそうにない。
彼女もそれはわかっていた。
吉澤の瞳は狂気に潤み、それでいて寸分の揺らぎも無く
彼女を静かに見据えていた。
けれども、何より吉澤の理性の糸が切れたのを
彼女に知らしめたのは、吉澤の唇だった。
- 156 名前:fragmentation 投稿日:2001年11月01日(木)11時15分17秒
熱病にうなされているかのような
荒い呼吸の間には、微かに唇が動いて
声にならない「音」を発していた。
行為の途中、絶え絶えに繰り返される
その「音」は、もう何年も吉澤の口から
聞いていない、彼女の名前にとても似て聞こえた。
…ハッキリした原因があったという訳ではない。
けれども何時の間にか吉澤は
彼女の名前を呼ばなくなっていた。
ただその後も、それを除けば彼女への
接しかたは特に変わらなかった。
本当はその頃から彼女はすごく気にしていたのだ。
なんだか吉澤が二人の間に
見えないカベを建てかけたように感じて。
皮肉なものだ。
その頃よりも決定的な溝が二人の間に出来た今、
再び吉澤が名前を呼んでいる。そして、これまでにない
くらいカラダの距離は無くなっているのに、全く
お互いの心はわからなくなってしまった。
- 157 名前:fragmentation 投稿日:2001年11月01日(木)11時20分51秒
彼女の思考は、下腹部に突如襲った激痛で遮断された。
反射的に悲鳴を上げる。
「…ひっ…!? いたい、いたいよぉ、ひどい…っ!!」
潤ってもいない大事な場所へイキナリ
指がねじ込まれたのだ。
しかも肩を吉澤の左腕で抑えられていて
ずり上がろうにも身動きが出来ない。
彼女は苦痛に顔を歪ませて呻き声をあげ続ける。
表情一つ変えず吉澤はやけに優しいくちづけを彼女の頬へ落とした。
そして、耳元で睦言を囁くように残酷な言葉を放つ。
「白けちゃうなぁ、なんで濡れてないんだよ。
初めてじゃないでしょう?
アイツの指にしか感じない、なんて言わないでよね」
怖い…
彼女は吉澤にかつて無いほど恐怖を感じた。
吉澤の事を甘く見すぎていたのかもしれない。みくびっていた。
「…まぁ、でもスグに気持ち良くなるよ。
舐めたげるから…
……マキちゃんみたいに、ね」
- 158 名前:fragmentation 投稿日:2001年11月01日(木)11時27分59秒
吉澤の最後の一言は、彼女にめまいと悪寒をもたらした。
確かに、吉澤が「あの子」と彼女との関係を
知っていても不思議ではない。
今思えば、こんなにそばにいて知らない方が不自然だったのだ。
何のためだか分からないが、吉澤はただ
「知らないフリ」をしていたのだ、ずっと。
肩に置いていた手が、脇腹へと滑る。
吉澤の口づけも頬から鎖骨、臍のあたり…と徐々におりてゆく。
そして、混乱した彼女が足にうまく力を
入れられないのに乗じて容易く目的地へ辿りついた。
ソコに吐息を感じたかと思うと、
敏感な蕾を吉澤の舌で突つかれる。
それだけで彼女は、耐える事を放り出してしまいそうになる。
まず音を上げたのはカラダだった。
舐めあげられ、音をたてて吸われ、甘噛みまでされて。
吉澤の唇のたてる音が、湿った淫靡なものになっていく。
舌に舐られ続ける蕾は、更なる刺激をねだるかのように
よりその存在を誇示していた。
…快楽の渦へと彼女がきってしまうのに
さほど時間はかからなかった…
- 159 名前:訂正と感謝のレス 投稿日:2001年11月01日(木)11時42分07秒
- 訂正れす。 直前の文章、
『…快楽の渦へと彼女が呑まれきってしまうのに
さほど時間はかからなかった…』
でした、反省して逝ってきます。申し訳有りません。
投票して頂いた皆さん、ありがとうございました。
ヤッスーの言う通り参加も僭越なのに、嬉しい限りでございます。
そして嘗ての作品と同じ順位なのをみて、ゲンが良いと思いました(w
( ´ Д `) <……んなトコで運つかってていいの〜?
- 160 名前:感謝のレス 投稿日:2001年11月01日(木)12時09分00秒
- >>151 さん
(;T▽T) <そんなぁ…
( `.∀´) <イヤよイヤよもスキのウチ、ってか
〜^◇^〜 <拒んでるようで実は誘い受けかよ、やるね〜
>>152 さん
( 0`〜´) <…クス、焦らなくていいよ、梨華ちゃん
(;^▽^) <よよよよっすぃー、あの、もう少し健全ないしよしには…?
( 0`〜´) <しないYo!!(ガバッ
(;T▽T) <やっぱりダメですか〜(泣
>>153 さん
[ ゚皿゚]」 <ヘイ、オマチ!イシヨシイッチョウネ!
〜^◇^〜 <慣れてないもんでねぇ、ま、初物ってコトで
(;^▽^) <そこのお二人、勝手に仕切らないで下さいね〜
>>undefined さん
( ´ Д `) <……いーのかよ?
( 0`〜´) <……ふんっ
( ´ Д `) <……ま、この後はごとーに任せていいよん
( 0T〜T) <……(涙
- 161 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月01日(木)23時36分19秒
- どーかよっすぃーと梨華ちゃんに幸せを・・・。(泣)
- 162 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月02日(金)03時05分31秒
- 黒よし…そそる…(w
がんがんいっちゃってください!!(w
- 163 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月04日(日)02時39分23秒
- いっきに読みました。
凄い話に引き込まれて、何でもっと早くこの小説を
発見しなかったんだぁ〜と後悔(笑)
続きが楽しみです!!頑張ってください!!
- 164 名前:ちび 投稿日:2001年11月05日(月)23時16分15秒
- いっきに読んでしまいました。
話が全然よめなくてドキドキしっぱなしです!
久しぶりに小説のせいで心臓がイタイ…
- 165 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月14日(水)23時15分43秒
- そろそろ続きが読みたいYO!!!
- 166 名前:ちび 投稿日:2001年11月16日(金)18時30分10秒
- 待ってますよ〜
- 167 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月23日(金)14時00分11秒
- ↑同意。そろそろ禁断症状が・・
作者さーーん!!(w
- 168 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月27日(火)23時49分02秒
- 首を長くして待ってますよ!作者さ〜〜〜ん!!!!
- 169 名前:fragmentation 投稿日:2001年12月03日(月)06時32分46秒
ずぅっと意識することなど殆ど無かったくらい
慣れきって染み透った、吉澤の香り。
普段同じ物を使い共に生活している彼女とはもうほぼ完璧に
同じ香りなのに、今彼女が大きく喘いで息を吸ったら
やけに目の奥をじんと刺激させた。
なんだか、目の前に居る吉澤が見知っている吉澤ではないと
突きつけられたみたく感じた彼女は、もう一度息を吸って
確かめたけれど、やはり『何か』が違っていた。
引き離そうとして吉澤の髪に埋めた両手の平は、
下から押し寄せる本能的な衝動にただ髪を
掻きまわすだけになっていた。
さっきみたいに、いっそ乱暴にしてくれたら
咄嗟に払い除ける事も出来るのに。
相手の心の内が読めるのか、吉澤の愛撫はどこまでも甘ったるく
ゆっくりと深みへと引き込んでゆく。
- 170 名前:fragmentation 投稿日:2001年12月03日(月)06時36分40秒
――引きずり落とすよ、地獄まで…
今だけ、今が最後だから、一緒に墜ちよう…
ソレから先は……
……あなたの未来は、私は知り得ないのだけれど――
- 171 名前:fragmentation 投稿日:2001年12月03日(月)06時42分05秒
「………ねぇ」
「なに?」
「…私、多分…」
「多分、なに?」
「…ずっとすごく好きだった、のだと思う。きちんと気付けなかったけど」
- 172 名前:fragmentation 投稿日:2001年12月03日(月)06時53分19秒
だから、どうしろと言うのだろう…?
そんな言葉で誤魔化されはしないのに。
欲しくて堪らなかった彼女の愛の告白さえ
もうストレートには響かなくなった自分の心の醜さに、
吉澤は自己嫌悪で叫び出したい気持ちになる。
「……ウソツキだね、相変わらず」
それでも、彼女の虚ろで焦点の合わない瞳に、吉澤は
あくまでも冷淡にきり返した。
「本当だもの」
「…へぇ、じゃあさ。こーやってヤられてんのも本望なんだ?
拒否ってたのはポーズだった?…の割には、はじめ
あんまり感じてなかったようだけどね」
さぁ、言い訳が得意なあなたは
どんな言葉を返して来るのか。
「…好きな人になら、喜んで抱かれるよ。
私、ひとみちゃんの事は、好きだよ。
……でも、私はあなたを知らないわ」
目の前の人物を透かしてもっと遠くを見つめていた
彼女の瞳が、ふと戻った。
その視線に思わず吉澤は顔を横に逸らしてしまう。
私は…今の私は…
- 173 名前:\(^▽^)/<… 投稿日:2001年12月03日(月)07時37分29秒
- >>161 さん
( ´ Д `) <……泣かなくていいよ〜(フキフキ
( `.∀´) (ぁゃしぃ わ、コイツが優しいなんて!)
( ´ Д `) <……ごとーの幸せは梨華ちゃんの幸せ、
梨華ちゃんの幸せはよっすぃーの幸せ…わかる?
( `.∀´) (ジャイアンと逆パターンの三段落ちする気ね、小癪な)
>>162 さん
( 0`〜´) <そう言われたら、やる気出るッす!
(;^▽^) <ほ、ほどほどに、お願いしますぅ〜
( ● ´ ー ` ● )<吉澤、決めるっしょ!
(;^▽^) <余計な事を…天使なんかじゃない!
>>163 さん
\(^▽^)/ <有難うございまーす
( `.∀´) <ふむ…『…何でもっと早くこの小説の保田をハケーン
しなかったんだぁ〜と…』フフ、まだまだイケるわね♪
\(^▽^)/ <読者の方のレスを偽造しないでくださ〜い!!
>>ちび さん
( ´D`) <どうもれす、ようこそさげすれへ
〜^◇^〜 <気付いて貰えるとうれしーもんだよね〜
( `.∀´) <心臓がイタイのはきっと2時間以上…
- 174 名前:\(T▽T)/<… 投稿日:2001年12月03日(月)08時05分11秒
- >>165 さん
〜^◇^〜 <カオリ〜まだー?セキマエのお客さんなんだけど。
[ ゚皿゚]」 <…ガ…タイヘン…オマタセ…イシヨシ…イッチョーpipipi
>>ちび さん
〜^◇^〜 <悪ぃカオリ、もぅ一丁追加で!
[ ゚皿゚]」 <…ガ…カオリガンバル…ウイーン
>>167 サン
[ ゚皿゚]」 <…リーダー@フルカドウチュウ…ガチャン、pipipipipipi-
〜^◇^〜 <あ、エラー…参ったな
( ● ´ ー ` ● )<ちょっと矢口、働かせ過ぎだべ!!
>>168 サン
[ ゚皿゚]」 <…カオリノクビハ、モトモトナガインダヨ
(;^▽^) <前からお尋ねしたいと思ってたんですけど、飯田さんって
[ ゚皿゚]」 <…ナアニ、ナンデモキイテ
(;^▽^) <「いしよし」作るって、イッチョウって、一体…ぁ、フリーズした!
今後とも遅いスレですが、地道にはやっていきますので
たまに覗きに来て下さい。[ ゚皿゚]オネガイシマス
- 175 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月03日(月)11時17分13秒
- おう、久ぶりの更新だぁ〜(拍手)
涙が…だー!!!(T-T)(小説の内容にね…)
これからも無理せず更新頑張ってください。
- 176 名前:ちび 投稿日:2001年12月04日(火)23時55分32秒
- わ〜い!わ〜い!久しぶりの更新だ!!
放棄じゃなきゃいいです♪待つのは慣れてるんで
無理せず頑張ってください。
- 177 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月12日(水)00時21分21秒
- 作者さんのマタ―リには馴れたけど(w
それでも催促してみたりする
- 178 名前:fragmentation 投稿日:2001年12月13日(木)13時03分58秒
―咳き込んだって、涙目だって、容赦などしてやらない。
病人? 関係ないでしょ、感じてるクセに…
優しくすれば素っ気無いし、言う通りにしたって結局は腹をたてられて。
傍に居たら邪険にされるし、居なくなったらそれはそれで気に障るらしい。
…挙句の果てには「私はあなたを知らないわ」と言われ。
じゃあ、彼女は一体どんな「吉澤ひとみ」を知っていると言うだろう?
彼女の好きだった「ひとみちゃん」はどんな奴だったと言うのか。
さっきの言葉は、極限状態で出てきた彼女の偽りない感情で。
でも、その言葉が今の吉澤にはもっとも聞きたくないものでもあった。
だから、吉澤は愛しくて仕方のない存在を、もうこれ以上は
ないほど無茶苦茶にしてやった。
出口の無い迷路のような、塞がれた自分の想いもろともぶっ壊してしまうために。
- 179 名前:\(T▽T)/<… 投稿日:2001年12月13日(木)13時07分01秒
-
- 180 名前:fragmentation 投稿日:2001年12月13日(木)13時10分22秒
―5― persona
……たたたたた、たたんっ、ぱたぱたぱたぱた…
イチョウのおちばちらして、並木道を土ぼこりたて、
あのこの黄色いカブがやってくる。
あたしにはわかるんだ、どんなに遠くても。
かすかなおとでも、あのこだって。
あたしが誰よりも分かっているんだもん。
まもってあげる
ずっとずっと…
- 181 名前:fragmentation 投稿日:2001年12月13日(木)13時14分49秒
ごとん、と鈍い震動とともに皿へ降ってきたイチゴ。
向かいにいるさっきから仏頂面の人間が、行儀悪いことに
フォークで投げてよこしたものだ。
投げられたほうは意図が掴めないので
とりあえず、ムリにでも笑うことにする。
「…てめー、なにがおかしーんだよ! 立場わかってんのかよ!?」
それがますます機嫌を損ねたらしく、足を一発蹴られる。
ここは、短大生用のカフェもどきの食堂。
弱い陽がかろうじて当たる窓際の席で、
背丈はほぼ同じであるものの服装を異にした二人が
穏やかではない雰囲気を醸し出している。
「…すみまひぇ〜ん…」
「ったくよ、お前カッコつけたんだからさぁー、しっかりやってチョーダイよ」
ブレザー姿が怯えている。
一方のギャル系私服姿はフンと鼻をならす。そしてまわりを
じろりと見回して、不愉快そうに肩を竦め、思った。
どうしてここが中等部、高等部のヤツらに占拠されなきゃならんのだ、と。
- 182 名前:fragmentation 投稿日:2001年12月13日(木)13時18分47秒
もっとも、自分が呼び出した出来損いの後輩もその一人なのだが。
それもこれもあの調子に乗ったバカのせいだ、と
とある人物の顔を思い浮かべていると、丁度その人物が入り口からやって来る。
さっき放り投げた、ショートケーキの上で威張っているイチゴみたいなヤツ。
昔から忌々しくてたまらないのだ、コイツだけは。
「あー、やぐっつぁんが中等部の子イジメてるー。か〜わいそ!」
「るっせーよ! お前も気安く話しかけてくるな」
「なんでさ、やぐっつぁん・ごっつぁんの仲じゃんか。
ねね、ゴトーにもケーキ奢ってよ〜」
「んな義理はない! おい、早くコイツ連れてってくれよ」
困ったような呆れたような表情で、矢口は後藤の連れに救いを求めた。
「…ごっちん、ケーキは私が買ってあげる。あっちの禁煙席行こうよ。
喉が痛いわ、ここ」
矢口の吸殻をちらりと見ながら言ったのを、矢口は見逃さなかった。
後藤のせいで忘れていたイライラが、一瞬で再沸騰する。
- 183 名前:fragmentation 投稿日:2001年12月13日(木)13時22分01秒
「じゃ、失礼します矢口さん。それとののちゃんも、頑張ってね」
尻尾を振ってついていく後藤を従えて、去っていった。
…このカフェに短大生以外の出入りを許可させ、禁煙席を作らせ、
なぜかショートケーキを置かせた張本人。
矢口には大した暴君だ、としか思えなくても
高等部の生徒たちからすれば英雄なのだろうか。
「あ…ああっ…!」
「なんだよ、いらないんなら食べちゃうからな」
言うが早いか、辻の皿の上にあったイチゴに
フォークを突き刺して、口の中へ納めてしまった。
ただし、固くて青っぽい、ハッキリ言って相当不味いイチゴだった。
- 184 名前:fragmentation 投稿日:2001年12月13日(木)13時34分59秒
- >>175 さん
( 0`〜´) <…涙も枯れそうな勢いだね
( ´ Д `) <……自業自得じゃん
( 0T〜T) <……(涙
>>ちび さん
〜^◇^〜 <カオリが動く限り交信は続けます!
[ ゚皿゚]」 <…カヲリン@コンヤモコウシンチュウ…カタカタ…
( ● ´ ー ` ● )<今はま昼だべ、カオリ…
>>177 さん
[ ゚皿゚]」 <…ハイ、オマタセシマ…プシュープシュー!
〜^◇^〜 <あ…
(;´D`) <いいらさんっ!?
- 185 名前:ちび 投稿日:2001年12月14日(金)01時49分16秒
- お疲れ様です
がんばれカオリ(笑
更新いつも楽しみです
- 186 名前:fragmentation 投稿日:2001年12月15日(土)12時01分29秒
◆
朝起きて、身支度をして、鍵を閉めて。
あと、必ず1階の郵便受けを確認する。
これは、今後の生活が左右されてしまう、とても重大な儀式だ。
5年間一日も欠かした事の無い日課。
鳴り響く目覚ましを手探りで止めた。
今日も変わらない一日の始まり。
- 187 名前:fragmentation 投稿日:2001年12月15日(土)12時05分39秒
――一人ぼっちが寂しいなんて知らなかった…
いつも、周囲には沢山の人がいたから。
愛情や優しさは、求めなくても自然に与えられていた。
そういう人生しか知らなかった。
孤独とか、憎しみだとか、ましてや絶望なんて単語は
知識として頭にあるだけで、実際にはどんなものか
あんまりわからなかった。
中学生の頃だ。
平穏無事だった生暖かい人生が一気に暗転した。
- 188 名前:fragmentation 投稿日:2001年12月15日(土)12時08分29秒
うだるような暑さの昼下がり、多分短縮授業だったのだろう、
クーラーの利いた迎えの車に乗って家路についていた。
途中、降りてまた外に出るのはブルーだったけれども、
テイクアウトのジェラートを買った。
寒さには滅法強いくせに暑いのは全くだめだった両親は、
買って帰ってあげるといつも本当に嬉しそうな顔をしたから。
お金を払ってすぐ店を出ようとしたら、年頃の近い
女の子に話しかけられた。友達が用事をしているあいだ
時間を潰したいのだが、他にいい所があったら教えてくれ、
という感じの事だったと思う。
地元の人間ではないと語ったその子はすらりとした美人で、なるほど
こんな田舎にはそぐわない雰囲気があった。
お人よしにも細かく説明してあげていたら、買っていた
ジェラートの存在をすっかり忘れてしまっていた。
家まで15分かかるのに、ドライアイスのリミットは迫っていて
大急ぎで車に戻って…
- 189 名前:fragmentation 投稿日:2001年12月15日(土)12時10分34秒
衝撃の大きすぎる事柄の前後が、やたら鮮明に
記憶されているのはよくある事だそうだ。
そして肝心のその事柄の記憶は、きれいに
切り取られてしまっている。
記憶の有無に関わらず、揺るがない事実。
誰かが家族の命を奪い去っていた。
- 190 名前:(;^▽^)<…… 投稿日:2001年12月15日(土)12時36分25秒
- (;^▽^)<大変です!ageてしまった上にこのあとの下書きが
消えて続きが%U(9;U=~$0*@p]?!
〜^◇^〜 <わかったよ…もう何もいうな
>>ちびさん
〜^◇^〜 <ゴメンよぅ、もっと更新するつもりだったんだよ〜
カオリがホントにフリーズするとは…トホホ
- 191 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月15日(土)21時12分52秒
- か、カオリさ〜ん!!(叫
- 192 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月15日(土)21時55分46秒
- マジッすか!?
カオリさんのご機嫌を伺いつつ、頑張ってくださいな
気長に待ってますので。
- 193 名前:fragmentation 投稿日:2001年12月16日(日)11時22分23秒
後に警察から聞かされた説明によれば、どうやら
「本職」にやられたという線が強いらしい。
金目の物には一切触ることなく、犯人は家族の生命だけを
細い刀傷で持って行ってしまった。
そして手がかりとなるような証拠を一切残さなかった。
もちろん、両親は他人から恨みをかう人たちではなかった。
よって、未だこの事件は迷宮入りのまま。
その後の運命は、笑えるほどヒサンだ。
ぬくぬくと守られて育った世間知らずの娘は、
残された財産のほぼ全部を体よく掠め取られてしまった。
どれくらいだって?
住み慣れた家を出され、引き取る者も現れず、隙間風だらけの
安アパートで一人暮しを強いられた。
地元では名の知れた私立に通っていたのを辞め
公立へ移り、その後は高校進学の道も諦めねばならなかった。
慣れない仕事に追われ、擦り切れそうな孤独な心を
繋いでいたのは、犯人と裏切り者たちへの憎しみ。
復讐を日々の原動力に、闇のような毎日を生きぬいていた。
- 194 名前:fragmentation 投稿日:2001年12月16日(日)11時24分26秒
働きはじめて半年を過ぎた頃だろうか。
街はせわしなく浮かれていて、
至る所に年末ムードが漂っていた。
ある日の早朝、郵便受けにたまったピンクチラシを
処分している時。
中に埋もれて一通の手紙が入っていた。
目の醒める鮮やかなイエローの封筒に青い蝋で
封をしてあって、やけに立派な手紙だと思ったものだ。
差し出し人は書かれておらず、しかし自分宛てであるのは間違いなかった。
…その翌日、北国の片田舎から東京へ。
絶望的な人生に、再び光は射した。
- 195 名前:fragmentation 投稿日:2001年12月16日(日)11時42分48秒
- >>191 さん
〜^◇^〜 <オラァ〜呼ばれてるじゃねえか!起きろよカオリ!!(ガスッ
[ T皿T]」 <…
(;´D`) <てあらなまねはやめてくらさい!!
>>192
〜^◇^〜 <問答無用!打つべし!打つべし!(ベシッ
( ´ Д `) <……どーしてそんなに焦ってるんだよ〜
[ ゚皿。]」 <…ガ…
(;´D`) <ああああああああああ!!!
- 196 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月20日(木)03時18分46秒
- ハードボイルドな展開・・・・
- 197 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月26日(水)09時47分39秒
- この作品ダイスキです。頑張ってください。
- 198 名前:fragmentation 投稿日:2002年01月07日(月)21時08分53秒
◇
ごった返した昼時のカフェ。
矢口のすぐ後ろにある窓は、人ごみの熱気でまっ白にくもっている。
見えないはずの矢口越しの景色を、辻は眺め続けていた。
「ハァ〜…
なぁ辻ちゃん? そーゆうのだけはカオリから伝授されたの、キミは?
直ちに現実界へ戻ってこぉい!」
アツゾコキックは机の足に誤爆し、カップやら
フォークやらがけたたましい音をたてる。
辻はやっと、何事か、といった様子で矢口の方に視線を戻した。
「あのね、カオリも予定外のロングバケージョンに
なっちまって大変なんだ。ハッキリ言って、アイツは
お前のこと心配していられる状況じゃねーんだぞ!」
- 199 名前:fragmentation 投稿日:2002年01月07日(月)21時11分29秒
1ヶ月の予定だった滞在は、季節を二度も越えてしまっている。
出発の前に、「とぉっても危ない場所に行くんだよ」と
いうのは聞かされた。でも、緊迫感の感じられない飯田の調子に
どこか辻も安心をおぼえていた。
けれども今回はツイていなかった。
飯田のオシゴトの前に、もっとドハデな仕事を
やってくれた輩どもの出現。
何度教えられても辻が『いすかんだる』とのたまう
飯田の滞在先にも、その余波はモロに及んだ。
元々ややこしい地帯なのに、なんとか持ち堪えていた
秩序が無くなってしまった。
つまり現在飯田は、報道の特派員も行きたがらないような所で
どうにか頑張ってサバイバルしているらしい。
「ふぅ…いいらさん…」
またしても遠い目。埒があかない。
- 200 名前:fragmentation 投稿日:2002年01月07日(月)21時16分57秒
「だーから! お前は自分の事やらなきゃ!
早くカオリを安心させてやれよ。ぼちぼち決心して、さ」
押し付けられる形ではあったものの、飯田から辻を任された以上
放っておけない。
ひどいことを強要しているのは自覚している。
矢口だって、別に辻が腹の底からムカツク訳じゃない。
それが辻のためだから、と信じているから。
「………わかりました」
いつもはどんなに怒られても腑抜けている辻の顔。
今ばかりは暗い翳がさしたのを見て、矢口は
こんな役を降りたいと痛切に思った。
かといって情にほだされては意味がないから、お得意の空元気を使う。
「よ〜しよく言った。んじゃ、バッチリ頼んだよ!」
俯いて微かにコクリと応える辻。
気まずくてたまらない空気から、お互い一秒も早く解放されたかった。
- 201 名前:fragmentation 投稿日:2002年01月07日(月)21時18分47秒
「矢口さん。もうすぐじゅぎょう…なんれす…」
「あっあ〜、そうだよなっ悪ぃなギリギリまで。
オイラも図書館でも行こうかな〜」
「…じゃあさよなら」
「おう。
…辻、ちょと待った!」
呼び止めずに居られなかった。
恐らく、矢口のこれからする事を飯田が知ったら、
飯田は怒り狂うだろうけれども。
…もう一つ、教えてやれる道があるにはある。
矢口はその道への扉の鍵を渡してやろうとしていた。
- 202 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月07日(月)21時24分49秒
- ( `.∀´)<続きはまた明日うpするわ
今年こそ早く更新できるようにしたいです。
半分どころか3分の1ぐらいしか終わってないかもしれないので。
考えてちょっと眩暈を感じましたが(汗
どうぞ引き続き暖かく見守ってやって下さい
- 203 名前:ちび 投稿日:2002年01月07日(月)23時34分10秒
- お久しぶりです。更新お疲れ様です。
温かく見守ります♪見続けます♪
自分も書いてみて大変さがわかりました。続きがかけない。。。
- 204 名前:fragmentation 投稿日:2002年01月08日(火)08時32分50秒
無論本物の鍵ではなく、小粒な緑のカプセル。
「…わかるよな?」
小さな手の上へ無造作に渡した一錠が、
決められたレールの上から逃げられる裏道。
でも辻は怪訝そうに矢口を見ている。
まったく飯田はこんな事も教えていないのか、
と矢口は腹立たしくなったのだが、むしろこんな事だからこそ
飯田は愛弟子に教えるはずも無かったのだ。
「つまりだね。
…もしお前がど〜〜〜〜っしても!
ゼッタイ我慢できないぐらいイヤだ、やりたくない!
っていうんなら、だよ?
……コレ、自分に使えば辻、あんたはこの仕事をやらずに済む。
ってか出来なくなるんだけど」
とんでもない事を告げられた辻は、
手の平にあるモノを握りしめて絶句してしまった。
せっかく頂いたのだが、力任せに遠くへ投げ飛ばしたくてしょうがない。
こんなもの…!!
- 205 名前:fragmentation 投稿日:2002年01月08日(火)08時37分37秒
辻はそれをぐっとこらえて、ふと浮かんだ質問をしようとする。
「もし、つじが……」
「もちろんお薦めはしないケドね。てゆーかこんなの使わせたら、
矢口もあの世行きかもなーカオリに殺られるって。
そんなんより、矢口は…辻に生きてて欲しいよ。
役立たずでもバカでも、お前は大事な仲間なんだからさ…寂しいじゃん…」
いつも不機嫌そうにしているか、バカ笑いしているかしか
見た事のない矢口が、えらく真面目に、ちょっと哀しげな
表情をしていて。
どうしても矢口に訊きたい事があるのだが、
そんな雰囲気ではない。
さっきよりも、さらにさらに重い沈黙が二人にのしかかっていた。
- 206 名前:fragmentation 投稿日:2002年01月08日(火)08時40分28秒
「ぅひゃああ〜!?」
素っ頓狂な声をあげて椅子からずり落ちそうになる辻。
直後、辻の体は落下せずにぎゅん、と上へ持ち上げられる。
あまりに突然の事で「…へ…っあ…?」と言葉にならない
辻の背後で、犯人が嬉しそうに笑っていた。
「びっくりした〜? あは、授業始まっちゃうぞ〜
サボりはダメダメよん。ほら行こうぜっ!」
ケーキにありつけてご機嫌な後藤が、一応生徒会の人間らしい事を
辻に言い聞かせている。
そして後ろから持ち上げたまま、ジタバタする辻を
風の様にテイクアウトして行った。
- 207 名前:fragmentation 投稿日:2002年01月08日(火)08時44分59秒
呆気にとられて出口の方を見ていた矢口は、
同じくしていた横にいる人間に話し掛ける。
「…色んな意味ですげーよな…おまえの飼い犬さんは」
「すごいですよねぇ色んな意味で……ってなんなんですか、飼い犬って!!」
そんな声でツッコミされたって全然迫力ないよ、と容赦なく毒づく矢口。
そうじゃなくってですね〜…、とヘコまず言い返してくる。
まともに二人っきりで話すのはいつ以来なのか矢口はもう憶えていなかった。
「……とにかく、ごっちんは生徒会で助けてくれてる
大事な後輩なんです! 飼い犬とかいうのやめて下さいっ」
「あれ、『ダイジなコーハイ』なの、後藤って?
そんな間柄じゃないでしょ、キミ達は」
意地悪い質問を矢口に浴びせられて、一瞬左眉がピクつく。
それを見取って内心ほくそ笑んだ。
…来た来た、イチゴがムキになり始めたぞ。
- 208 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月08日(火)09時07分42秒
- >>196 さん
( 0`〜´) <…俺は卵もハードボイルドだぜ!
\(^▽^)/ <きゃ〜 かっけーよっすぃ〜
( ´ Д `) <……ねぇ、それって本当にかっこいい?
>>197 さん
\(^▽^)/ <嬉しいお言葉アリガトウ!
( `.∀´) <ふむ…
\(^▽^)/ <あ、「作品が」ですからね、前もって言いますけれど。
(;`.∀´) <くっ…!!
>>ちびさん
[ ゚皿゚]」 <…タイヘンダヨネ コウシンッテ
(;´D`) <いいらさん、復活したれすか?
[ ゚皿゚]」 <… カヲリハモウダイジョウブ オタガイガンバリマショウ!
- 209 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月12日(土)03時21分25秒
- 毒舌矢口いいねぇ(w
- 210 名前:fragmentation 投稿日:2002年01月15日(火)05時39分37秒
悟られたくはないのか、作り笑いをして「何の事ですかぁ?」などと
とぼける標的に、矢口はより加虐的な感情を強める。
「そっちはともかくさ。あの後藤が、あのダルがりなごっつぁんがよ?
見返りなしでせっせと人のために働く訳ないでしょ。
まー…キミは人を利用するのが上手いみたいだから、とっても」
好き好んでではないがお互い付き合いだけはやたら長い。
泣き所など知り尽くしている。
最近また増えた、過去最悪であろう泣き所…吉澤との
一件も、全容ではないが矢口の耳に届いている。
- 211 名前:fragmentation 投稿日:2002年01月15日(火)05時42分59秒
同情すべきは吉澤、目の前で傷ついたフリをしているヤツじゃない。
どんなに我侭三昧されてもそばにい続けた吉澤が
矢口には理解できなかった。そんな吉澤にとうとう捨てられたなんて、
自業自得としか思えないのだ。
しかも後藤とは相変わらずよろしくやっている。
これが腹が立たずにいられるだろうか。
「そんな…私、酷い人間じゃないです。ごっちんの事だって、ちゃんと…」
「ちゃんと愛してますぅ〜、とか? あーあ、よっすぃーが聞いたら
ショックだろうなぁ〜」
「さっきから何なんですか!?
言いたい事あるんならハッキリ言ったらどうです!?」
絡んでくる矢口に我慢が限界になったのか、語調が荒くなる。
言いたい事なんて決まってるじゃない、睨み上げながら矢口はそう呟く。
矢口の言葉には言い返さず、まるで視線を逸らした方が負け
とばかりにしばらく睨み合いが続いた。
- 212 名前:fragmentation 投稿日:2002年01月15日(火)05時46分47秒
つい、と相手が急に顔をそむけてガンの飛ばし合いは終了した。
ざまあみろ、矢口は勝利の優越感に浸ろうとしたのだが…
「……わかってます、ぜんぶ…ひとみちゃん…わた…し…せいで…」
顔を伏せてしゃくり上げながらぼそぼそと自分を責める。
予想が外れた矢口は一気に動揺し始めた。
ヤバッ ヤバッ!!!
本当に泣かせてしまう気はなかったのに。
オロオロしてかける言葉を探している間に、
一礼して走り去られてしまった。
その場に残された矢口は、さすがにやり過ぎたのを悔やんでいた。
去り際のやけに不敵な泣き笑いが気になってはいたが。
- 213 名前:fragmentation 投稿日:2002年01月15日(火)05時51分59秒
肩を落として、沈んだ気分でカフェを出ようとする
矢口へ鋭い視線を向ける者がいた。
扉付近で何となく感づいて振り返った矢口と目が合う。
非難と、侮蔑の混じった瞳。
一部始終を見ていたのだ、という察しはすぐついた。
距離があるから聞こえはしないが、唇は確かに
「サイテー」と小さく動いたのが矢口には見て取れた。
十分へこんでいた矢口だが、さらにどん底まで
へこんでしまいそうだった。
たまらなくなって一歩だけ前へ踏み出した途端、
周りの友達にまじってお喋りしだした。
それからは二度と矢口の方へ目も向けてはくれなかった。
(また後輩いじめだと思われちゃったんだ…)
駆け寄って誤解を解きたかった。
しかしそれ以上近づく事さえも許されない雰囲気。
仕方なく矢口は重い足取りでカフェを後にした。
「…違うんだよぅ…なっち」
- 214 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月15日(火)06時09分41秒
- >>209 さん
〜^◇^〜 <オイラも頑張ってるんだよ〜
\(^▽^)/ <え〜? それが素でしょう?
〜メ^◇^〜 <何だ、じゃあテメーの自己中も素か?イキリも素か?
シャクレも素なのか、ぁん?
\(T▽T)/ <いたたた、すみません〜(シャクレは素なんですけど…)
- 215 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月15日(火)12時16分17秒
- おお、ついに登場!
この先大期待!
- 216 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月15日(火)22時02分09秒
- 密かな苦労人矢口さんが憐れでなりません。(合掌
てゆーか吉澤君どこいったんでしょうか…。
何より石川の気持ちが…
続きに期待しております。
- 217 名前:ちび 投稿日:2002年01月16日(水)01時28分35秒
- 続きがものっっっっすごい気になります!
やっと頭の中が整理できて話のつながりがわかりました(遅ッ
楽しみにしてますのでがんばってください。
カオリがんばれ!!!
よっぱらいでした(汗
- 218 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月12日(火)22時37分28秒
- 早くこの後が読みたいよー。
- 219 名前:fragmentation 投稿日:2002年02月19日(火)18時22分08秒
◆
『親友になろうよね、これから、ずっと!』
- 220 名前:fragmentation 投稿日:2002年02月19日(火)18時25分07秒
耳がちぎれそうだ。
冬の通学、このカブではちょっとばかり辛いもんがある。
校舎へは上り坂の並木道が、長くもなく短くもなく
緩やかに続いている。この坂から眺める景色は好きだ。
けれど銀杏はいけない。
秋は言うまでもない。その上冬は殺風景だし
春になってもあまり綺麗じゃない。
その点、高等部の桜並木はよかった。
あっちへ寄る機会もすっかりなくなってしまったのが残念だ。
「…おーい。なっち〜!」
離れた所から私を呼ぶ声。
学内ではほぼいつでも行動を共にしている友人達。
カブを駐輪場に置き、私は小さく手を振って彼女達のもとへ歩いた。
- 221 名前:fragmentation 投稿日:2002年02月19日(火)18時28分10秒
私が門を入ったら、すぐやって来たのが分かるのだという。
パタパタと聞こえたらまずなっちだ、と思うのだそうだ。
たまに郵便屋さんだったりするみたいだが…。
でも姿が見えればまず間違いはされない。
カブもメットも手袋も、黄色ずくめなのだから。
虫がやたら寄ってくるのがたまに瑕だったりするけれど、
気に入っているから変える予定はない。
平和な毎日だ、と思う。
まるで数年前の日々を穴埋めするかのように、
穏やかで安らかな生活が今与えられている。
- 222 名前:fragmentation 投稿日:2002年02月19日(火)18時29分59秒
一通の手紙を頼りに東京へ来た。
内容が嘘か真かなんて考えだにしなかった。
同封されていた航空券は翌日の便のだったから、
迷うヒマなんてなかった。
書かれていた通り、東京で暮す諸々の準備は完璧になされていた。
完璧というか、ちょっとやりすぎだろう、と思ったくらいだ。
私はかえって空恐ろしくなってしまった。
見知らぬ相手にああまでされては、有難いの前に困惑するのが
普通というものだ。
あの手紙の最後には一言…
――あなたの笑顔をもう一度見たいのです
これが全ての答えだと信じていいのだろうか。
- 223 名前:fragmentation 投稿日:2002年02月19日(火)18時36分35秒
原則として、この学園は高校からの入学を受け入れていない。
特例として私は認められた。
それまでにどんな経緯があったのかはわからない。
とりあえず言えるのは、私の「後見人」はこの学校において
相当な力をもっている人間のようだ。
短大は思った以上に授業日程がきつくって
こんなことなら4大にすべきだった、といった類のボヤきは
周りでもよく聞かれる。
でも私はそんな事思わない。
本来ならとてもじゃないけど進学なんか
させてもらえる身分じゃないから。
掲示板を見ると休講が重なっていて、午後から時間ができてしまう。
バイトの入り時間までには中途半端な空きだから、
家に帰らず学校で暇を潰すことにした。
カフェで昼食をとっていたらずいぶん不愉快なものを目撃してしまった。
この後の一日が台無しになりそうなほど重い気分にさせられた。
なんだかなぁ…
…ホントに変わってしまったんだね、矢口は…。
- 224 名前:( ● ´ ー ` ● )<更新しました 投稿日:2002年02月19日(火)19時12分26秒
- >>215 さん
(;^▽^) <ついに大物(?)登場です!
(;^▽^) <で・も!ここはあくまで石川が主役なんです…よね?
( 0`〜´) <…いや、ウチだと思うんだけど。出番なさすぎだYO!!
>>216 さん
〜^◇^〜 <ああ〜、この方はわかってくれてる!!
( 0`〜´) <行方不明よりマシじゃないすか!
\(^▽^)/ <そうですよ、可哀相なりかっち、やっぱ定番はコレでしょう!
( ´ Д `) <……(グス
>>ちびさん
川 `〜` )|| <カオリもやっと展開がわかってきたよ
(;´D`) <あ…あれ…
川 `〜` )|| <どしたのツージー。あらすじ説明してあげようか?
(;´D`) (いいらさんが、いいらさんがへんしんしてる!!)
>>218 さん
〜^◇^〜 <矢口的にはこの先は…ユーウツ
( ● ´ ー ` ● )<なっち的には〜主役っぽいし…デモユーウツ
(;`.∀´) <もーーー鬱陶しいわね!それならアタシに譲りなさいよ!
- 225 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月19日(火)21時08分30秒
- ( ● ´ ー ` ● )更新お疲れ。
まってましたよぉ。
矢口との関係、ひじょうにきになるところです。
- 226 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月20日(水)20時26分34秒
- 待てました!!
つづき非常に気になるです。
( `.∀´) <きりきり更新なさい!!
- 227 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月22日(金)05時23分13秒
- 色々と大変でしたがまたこうして続きを読めてよかったです。
この作品大好きです。頑張って下さい。
- 228 名前:fragmentation 投稿日:2002年03月01日(金)09時44分45秒
四方八方からまき散らされる喋り声と、神経をやられそうな
食器のぶつかる音。
コーヒーの香りとタバコのやに臭さがミックスした空気。
時間が来るまでそれらが絶える事のないここでは、
もしかしたら学校よりも多くを過ごしているかもしれない。
視線をやらなくても指は商品のボタンに辿りつき、
店員1なんていわれるステキな笑顔で復唱する。
高校時代から専ら私はレジ担当だ。
接客業向きだね、などと決められてしまったお陰で…
楽だからいいのだけれど。
「お飲み物おさきにお待たせしました! お後の商品はお席まで…」
「あっ、なっち! も、もうすぐこっちも出来るよ、ちょっと待っ…イデ!!!」
- 229 名前:fragmentation 投稿日:2002年03月01日(金)09時49分10秒
あ〜あ〜…
私の流れるような接客トークを中断させた上に
出来かけのフードを台無しにするなんて。
忙しいのに、ほんとイライラするよ。要領悪すぎ。
パン切りナイフにやられた指を涙目になって
おさえているこの同期。
本音はムシしたいところだけれど。
「お後の商品は席までお持ちします。ありがとうございまーす!
……もう、なっちが代わるから、レジやって矢口」
「ごめん、助かる…」
矢口はまだ私に話しかけたそうにしていたけれど、
忙しそうにしていたら諦めて去って行った。
- 230 名前:fragmentation 投稿日:2002年03月01日(金)09時53分12秒
元々はこのバイトも矢口と一緒に見つけて入った。
あの頃は校内外問わず、矢口とべったり
行動を共にしていたから。
きっとあんな事がなければ今でも私達は親友だったろうに。
『違う、信じてよ! なっちが大事なの、なっちが矢口の一番なのに…』
- 231 名前:fragmentation 投稿日:2002年03月01日(金)09時57分31秒
私の場合、本来の年齢から言うと
一年遅れて始まった高校生活だった。
それだけで十分ひけめはあるけれどましてや
周りはみんな内部上がり。
性格もあってなかなか馴染めない私に
たったひとり、軽い調子で話し掛けて来た子がいた。
不思議なもので、矢口とちょこっと喋ったその翌日から
私へのみんなの態度が明らかに変わった。
空気みたいな扱いから、あっという間に学園の中心と
思われるグループの一員にされて。
でも、もともと目立つのが好きな私には、この変化はまさに棚ボタだった。
- 232 名前:( ● ´ ー ` ● )<今回もなっちが乗っ取ったべ 投稿日:2002年03月01日(金)10時40分54秒
- >>225 さん
( ● ´ ー ` ● )<なっちに任せなさい
川 `〜` )|| <ちょおっと、カオリの仕事とらないでよ!
( ● ´ ー ` ● )<すいません もう1回いってください!
( ゜皿 ゜) <ムキ−−−!!!
>>226 さん
( ● ´ ー ` ● )<そうだべ矢口!キリキリやるっしょ!
〜^◇^〜 <ぇ…だって更新はなっちが…
( `.∀´)/~ピシ! 〜T◇T〜 <なんでだよ〜〜〜
>>227 さん
\(^▽^)/ <がんばります!主役は石川です
〜^◇^〜 <今は矢口の時代なんだよ!ひっこんでろい!
( ● ´ ー ` ● )<今回も次回もなっちが乗っ取るべ
- 233 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月02日(土)02時10分00秒
- なちまりも(・∀・)イイ!
- 234 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月02日(土)14時37分12秒
- なんか要領悪い矢口っていいですね。
- 235 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月02日(土)22時43分46秒
- あぁ過去形せつない…
- 236 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月14日(木)23時48分47秒
- 更新期待age。いしよしの絡み見たいよーーーー。
ここの石川さんは他にない感じですごくいいです。
- 237 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月16日(土)04時33分14秒
- 今日初めて一気に読みました!おもしろいです!
作者さんって文学部とかですか?
すごい文章の言い回しがウマーな小説だと思いました♪
- 238 名前:fragmentation 投稿日:2002年03月22日(金)11時27分55秒
かつての私の周りに流れていた空気がもどって来た。
例えばたわいない恋愛の相談(当人は切実だけど)とか、
実しやかに広がる出所不明の噂ばなし。
あの店はもう行ったとか学食の文句とか
髪型変えたとかあ〜4限テストじゃんどーするどーするなっち忘れてたよー…
どこまでも平凡、どこにでも転がってそうな光景。
でも、これが私にとっては最高に贅沢な時間の使いかた。
常に誰かがそばいる、矢口はいわゆる人気者だった。
それは単に明るくて面白いからだけじゃなく
相手の気持ちを汲み取って話すのが天才的に
上手いからなのだと思う。
触れられたくない部分は自然を装って避けてくれる、そんな子だった。
矢口と話しているといつも心から笑えた。
- 239 名前:fragmentation 投稿日:2002年03月22日(金)11時31分38秒
「ねぇねぇ、なっちってさー…」
3年の秋口だったと思う。
教室で、私たちはいつもどおり昼食をとっていた。
缶の蓋を弄びながら矢口は続ける。
「こないだのヤツのこと、けっこう気に入ってたりする?」
「へぇ?こないだっていつさ?」
「ホラ、先週のコンパ一緒に行ったじゃん、あの時の…」
とぼけてみせたが矢口の言ったとおり、初コンパにして
片想いの相手を見つけてしまった私。
- 240 名前:fragmentation 投稿日:2002年03月22日(金)11時40分10秒
「あっちはさ、なっちに気があるよ。矢口が保証する。
で、どーなの?」
「どど、どうって…そりゃかっこいいなって…思うべ…」
「きゃはは、なっち訛ってるぞ。
んじゃ〜なっちの番号教えたげてもいーよね」
「え、ええッ!? 待って矢口、そんな急に…
ああっもうかけてるしー!」
――この日の会話が、二人の関係に
修復できないヒビの入った出来事の始まりだった。
- 241 名前:( ● ´ ー ` ● )<続きは日曜にうpします 投稿日:2002年03月22日(金)11時48分28秒
- ( ゜皿 ゜) <コンカイハ ミジカクテゴメンナサイ マタシュウマツネ レスモソノトキ キッチリカエシマス
ゴルア ナッチ! オメーメダチスギナンダヨ!!
- 242 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月31日(日)22時41分33秒
- 更新,待ってます・・。
- 243 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月03日(水)00時56分42秒
- 続きが気になる…。
- 244 名前:fragmentation 投稿日:2002年04月04日(木)09時53分54秒
油が切れてギーギーうるさい扉が、また開いた。
誰が来たかはすぐに思いあたった。
あの季節にあそこの場所へわざわざやって来る人なんていなかったから。
ナイショだよ、と私にそこを教えた矢口以外は。
- 245 名前:fragmentation 投稿日:2002年04月04日(木)09時57分15秒
「やっぱりいた。探したんだぞー!」
振り返らなかった私に、水面にうつる矢口が
無邪気に語りかけてきた。
脳天気な矢口とは逆に、私は下唇を噛み締めた。
小さく波に揺れるキラキラした髪も眩しい笑顔も。
その時の私には腹立たしさしか湧きおこさなかったから。
「どうしたんだよサボりなんて。なっちらしくないじゃん。
とかいって矢口もサボっちゃってるんだなコレが。キャハハ」
まーいっか、なんて締めくくって横にちょこんと座った。
依然矢口と視線をあわせていない私は、ただ黙って前を見ていた。
水面の矢口が少し真顔になった気がした。
「……何か怒ってるんだよね、ヤグチのことで」
- 246 名前:fragmentation 投稿日:2002年04月04日(木)10時02分17秒
あの頃のあからさまな拒絶を気づけないような
鈍い子ではなかった。
矢口を避けた時、いつも私の背で辛そうに
俯いていたのを知っている。
だからって矢口と今まで通りに戻ろうなんて考えもしなかった。
私はどうしても許せなかったんだ。
でも、せめてその理由ぐらいは
矢口に伝えるべきだろう。溜息一つ、決心した。
…噛み締めていた唇を漸く開いたとき、木枯らしに
飛ばされてきた木の葉が音もなく波に降りていった。
私に似てる、なんて漠然と感じていた気がする。
- 247 名前:fragmentation 投稿日:2002年04月04日(木)10時08分01秒
「…ってゆうか! ワケわかんないよ、なっちは何か勘違いしてる。
ヤグチがなっちを騙すようなマネするはずないじゃんか!」
「いいよ、もう…ただ、なっちはね。矢口に同情される義理ないし。
カワイソーな身の上だから恋人譲ってあげた、なんてさ。
やられた方はたまんないよ? なっちバカみたいじゃない…」
矢口からすればいつもの「老婆心」ぐらいだったんだろう。
でも今回はただ怒りを増幅するだけだった。
矢口はここの生徒の御多分に漏れず金持ちの娘だ。
あんまり詳しい話はしたことがないが、
きっと超がつくくらいの、だと思う。
理事長の娘ともよく喋っているのを見かけたし、
あの金髪だって黙認されていた。
「なっちを利用して自己満足してるんだよね。
矢口は憐れんでる自分を好きなんでしょ? そうゆうの偽善ってゆうんだよ」
あまりにキツ過ぎる言葉だった。
現実として私は矢口に相当よくしてもらっていたのだから。
わかっていた、わかっていたんだ、その時だってそんなコトは…
- 248 名前:( ● ´ ー ` ● )<なっちバテぎみ… 投稿日:2002年04月04日(木)10時47分59秒
- >>233 さん
( ● ´ ー ` ● )<…そう?
〜T◇T〜 <なっちぃ〜
( ´ Д `) <……(ニヤソ
>>234 さん
( ● ´ ー ` ● )<…どうだろ
〜T◇T〜 <ぅ…ウエエーンよっすぃ〜!!
( 0`〜´) <……!…!!
( `.∀´) <なになに、「甘ったれんじゃないっす!今頑張らないと!!」
まあその通りね。吉澤みたいにならない為にはね。
>>235 さん
川 `〜` )|| <「せつない片想い」ってドラマ、昔あったよね
\(^▽^)/ <若い間は過去なんて切り捨てて生きればいいんですよ
〜^◇^〜 <できねーから困ってんだろ!てかいくつなんだオマエは!?
>>236 さん
\(^▽^)/ <やった♪久々の石川へのレスですよ〜
( ● ´ ー ` ● )<…ふーん
(;^▽^) <あはは…(もう少し、もう少しの我慢よ、梨華!)
- 249 名前:( ● ´ ー ` ● )<でもなっちもう逃げない 投稿日:2002年04月04日(木)11時08分08秒
- >>237 さん
( ´ Д `) <……ごとーは帰宅部だけど?
( `.∀´) <アンタにゃ聞いてないのよ!
川 `〜` )|| <文学部じゃないから交信しながら文章作ってるんだよ
>>242 さん
( `.∀´) <申し訳無いわね、相変わらずマターリで
( ● ´ ー ` ● )<でも必ず終わらせるべ!なっちの場面は…
( `.∀´) <…(ここにも自己虫がいたわ)
>>243 さん
(;● ´ ー ` ● )<なっちヘロヘロだべさ…
川 `〜` )|| <もう慣れない予告しちゃダメだよ!
(;● ´ ー ` ● )<…すまないべ
- 250 名前:名無し読者。 投稿日:2002年04月06日(土)23時58分42秒
- 更新お疲れ様です。
なっち、ちょっと我が強いというか、自分中心な感じですね。
- 251 名前:fragmentation 投稿日:2002年04月08日(月)07時12分56秒
いったん疎ましく思うと、その人物のアラばかり
見てしまうようになるらしい。
私達はめっきり話さなくなったし、行動もばらばらになった。
そして、たまに遠目から矢口の姿を見かければ、
今まで知らなかったような冷たい表情をしている事が常だった。
怒鳴り散らしている場面にも出くわした事がある。
私の前ではずっといい顔だけ見せてて、それって二重人格じゃない!?
裏表のない子だと思っていたから、ものすごく不愉快に感じた。
…私は矢口を軽蔑するようになった。
- 252 名前:fragmentation 投稿日:2002年04月08日(月)07時15分40秒
マンションのひしめくこの辺りは夜中だって
きちんと街灯がついている。
あんまりとばすと寒いし近所迷惑なのでノロノロとカブを走らす。
のんびり走ったところでバイト先から家まで
15分あれば着いてしまうのだから。
それともう一つ、このカブの贈り主から
『くれぐれも安全運転で!』と念を押されていたんだっけ。
一緒に届いた手紙に書いてあった。
駐輪場からエントランスに入ろうとして、人影に気づいた。
時間が時間だけに警戒を強めたけれど、女の子のようだ。
自分を棚に上げて夜中にウロついちゃ危ないよ、なんて思っていた時だ。
私を確認して、女の子が紙か何かを指にはさんで
ピラピラと振っていた。
「コンバンハ、ナッチさん。速達ですよ〜」
- 253 名前:( ● ´ ー ` ● )<ちょっと更新 投稿日:2002年04月08日(月)07時24分08秒
- >>名無し読者。さん
( ´ Д `) <……しょーがないよ、過去がああだからねぇ
( `.∀´) <そうそう、誰かみたいに生まれつき自己虫でもなさそうね
煤i;^▽^) <えっ?なんで石川を見るんですか、二人とも!?
- 254 名前:fradmentation 投稿日:2002年04月15日(月)06時40分42秒
―6― love affair
『私、思うんです。生きててね、明かにイケナイコトだ、
逆にゼッタイ正しい、って自信もって主張できる場面は
何%あるんだろう、って。
……やっぱりわかんないですよね。
ええ、ひとみちゃんに聞いても…
「んー」とか「そぉだねぇ〜」とか……
ひとみちゃんらしいですけどね』
- 255 名前:fradmentation 投稿日:2002年04月15日(月)06時44分49秒
あたしは必死こいて坂道をチャリで登ってたの。
汗だくだくとかテカってるとか言わせないわよ。
クソ暑い真昼間にチャリなんて…しかも制服、サイテーだったわ。
ああそう、これは丘の上のどでかい家にアタシ達が
まだ一緒に住まわされてた頃の話よ。
で、やっとこさ上に着いて一息いれようかと
思ってたところに…あのバカったら…
あたしの昼下がりの一杯はおあずけになっちゃったわ。
「はーいっみなさん落ち着いてねー。後始末は私達がやりますからね、
各自お仕事に戻った戻った! 行きなさいっての!!」
居合わせたヤツらの心情を察せないアタシじゃないわ。
でもね、とっとと片付けなきゃ
いつまでもエビスにありつけないの。
- 256 名前:fragmentation 投稿日:2002年04月15日(月)07時49分08秒
「カオリいる〜ちょっと手伝って〜!
…んもう、肝心な時にいないんだから!
どいつもこいつも……おっナイス、矢口、ちょっと矢口!」
いっつもスピーカー並みに五月蝿い矢口だけど、
夏バテのせいかしら、無言で前のめりに帰って来てたわ。
「あ゛ー? …なんだよ、用事なら後で聞くから…
ぅげげっ!?
コレ、圭ちゃんやったのかよ!?」
…夏バテもすっとばす光景だったでしょうね、確かに。
- 257 名前:fragmentation 投稿日:2002年04月15日(月)07時52分17秒
でも矢口、まだまだね。
アタシの仕事だったらもっと簡潔にやってるでしょ!?
しかもあんな真正面から、なんてありえないわよ…。
玄関の奥の階段上から見下ろしてる仏頂面したガキ…
――不本意だけどアタシ達の『飼い主』でもあるのよね…――
コイツがまた癇癪おこしてやらかしたのよ。
なによ一人前にガンくれちゃって、この保田様に対して百万年早いのよ!
- 258 名前:fragmentation 投稿日:2002年04月15日(月)07時55分40秒
「あーもう…
アンタにゃもう何回同じこと言ってるのかしらね…
いい!? いくらアンタの家の中だからって、
むやみやたらに人を殺したらダメです!
わかった!? ダ、メ、なの!!」
必死に理性をたもって言ったわ。
ホントかわいくなかったのよ、性格も外見も、この頃のコイツって。
鉄拳制裁してやろうと思った事、数え切れないわ。
この時だってね、素直に謝りゃ済むのに…
「保田さんだって…
同じくせに、私だけダメ、ダメ、って説得力ないです」
…誰が同じですって!?
- 259 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年04月16日(火)18時29分43秒
- んあ!? 「人を殺したらダメです!」?
ど〜ゆ〜意味っスか??
- 260 名前:名無し 投稿日:2002年05月11日(土)15時30分55秒
- この先が気になる…。
- 261 名前:fragmentation 投稿日:2002年06月05日(水)06時12分11秒
くすんだ赤の絨毯を踏みにじるように、アタシは階段へ歩を進めた。
「ふざけるんじゃあないわよ。アタシは…
矢口もカオリも、アンタ以外はみんな…」
点々とドス黒く変色してしまった部分は避けながら。
視界のはじよりもうちょっと向こうにあるのは、
さっきまで動いていた今は単なる肉塊。
酷いもんよね、蜂の巣にされちゃってさ。
あんまりいけ好かないオッサンだったけど、
この最期には同情してやったわ。
ハッキリ言って慣れてんだけどね、こういう光景は。
「アタシらは『やってる』じゃないの、『やらされてる』の!
今更だから言いたくなかったけど。
自分の命がかかってんの、殺らなきゃ殺られるから…アンタたちに、ね。
こういう事情、もちろん知ってて言ったわね?」
冷房はよくきいていたんだろうけど、ベトベトに汗かいてた。
その不愉快さを振り切るように階段をずんずん上っていった。
- 262 名前:fragmentation 投稿日:2002年06月05日(水)06時15分07秒
視点がアイツより上になった時、ようやく言い返して来たわ。
小癪な、アタシが来るのを待ってやってたと言わんばかりに。
眉一つ動かさず待ちうけてたわ。
「……そんなイヤなら、やめればいいんじゃないですか?」
「やめさせてあげましょうか?」
「ねぇ保田さん?」
- 263 名前:fragmentation 投稿日:2002年06月05日(水)06時16分53秒
生きてて一番の寒気がしたわ。
あのバカ、銃口こっちに向けてるんだもの。
絶体絶命…っ。間に合わないじゃない。
「それとも、生きておきますか? お仕事はやっていかないと
いけませんけれど…」
コイツの性根を叩き直そうとしてたんだけど、
それどころじゃあなくなっちゃったわ。
でもアタシの最後のプライドは
YES NOどちらの返答もすることを許さなかった。
我ながらカッケー! と思うわ。
…なに?
ああ、最近はやってんのよアタシらのまわりで。
何でもカッケーの、OK?
- 264 名前:fragmentation 投稿日:2002年06月05日(水)06時23分08秒
んなのはどーでもいいのよ、で、こうふっかけてやったの。
「そういう考え方しかできないアンタが憐れだね」
痺れちゃいそうでしょ?
アタシも体がシビれたわ。言った後にアイツの表情見てね。
知ってる?
マジでキレる時ね、すぅっと目ぇ細くして笑うの。
眉間に皺寄せて笑ってんの。おっかないったらないわ。
アタシこの時からある意味トラウマに
なっちゃってるのよ、アイツの笑顔には。
まぁあの仮面ユートウセイのことだから、
滅多に人前じゃ見せないでしょうけど。
アイツが引き金に絡まった人差し指に
力いれていくのを、スロー再生みたいにゆ〜っくり感じながら眺めてたわ。
- 265 名前:fragmentation 投稿日:2002年06月05日(水)06時28分40秒
「…だっ!! いやだよもう撃っちゃやだぁっ…!!」
腹を括ったアタシの耳に、あさっての方向から叫び声が届いた。
誰? と思って探したらアイツのかなり後ろで
へたりこむみたいに座ってた。
深窓の…ってのが似合いそうな感じだったねぇ、あの頃は。
図体デカイのは今も昔もそうだけど、
髪は黒くて長かったしおとなしかったし。
最近の吉澤しか知らないだろうから
あんまり想像つかないでしょうね。
なんでそんなトコにいるのかと思ったら、
ふっ、さっきのアイツの発砲で腰ぬかしてやがったの。
まーそれが一般ジンならごくフツーの反応なんでしょうけど。
アタシ的には、失格も失格、何やってんだよ吉澤!
って言いたい所だね。
…言いたい所だけど、結果的には吉澤に救われたんだ。
- 266 名前:(;`.∀´)<放棄じゃないわ 投稿日:2002年06月05日(水)06時53分21秒
- ( ´ Д `) <……懲りずに顔文字使うんだね
(;`.∀´) <ええ、ええ、自己満足よ!頼むから許しなさいよ(泣
>>梨華っちさいこ〜 さん
( ´ Д `) <……よくお見かけする名前だ
〜^◇^〜 <ここの石川はすぐ殺っちゃうしヤっちゃうしマジ(ry
(;^▽^) <あ、ぁ…これには海より深い訳が…
>>名無し さん
川 `〜` )|| <なんとか続きをうpしました
( ● ´ ー ` ● )<お暇な時にでも読んで下さい
(;^▽^) <sageでこれからもショボっと書いていきます
- 267 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年06月05日(水)21時58分26秒
- たしかに気がついたらその辺にレスしまくってる…。
いーんです、クレクレ君でも。
( ;´D`;)<らってみんらおもしろいんらもぉん!!
半ばあきらめていたんで更新されてうれしいです。
よーし、ここでもクレクレ言っちゃうぞ〜。
- 268 名前:fragmentation 投稿日:2002年06月10日(月)05時34分25秒
あの場面で一番テンパってたのは吉澤。
超ヤバな状況のアタシをぶっちぎって
収拾つかないぐらい取り乱してたんだから。
それに比べて1階に置いたままの矢口なんて、
仲間の危機だってのに麦茶のんでたのよ。
しかも相当ウマそうに。キィ――ムカツク!
……でね、そんなんだからアイツも
ほっとけなくなって、銃口おろして吉澤のとこへ行ってくれたわけ。
- 269 名前:fragmentation 投稿日:2002年06月10日(月)05時36分43秒
『ごめんね怖かったよね。さあ、ひとみちゃんのお部屋行こ?』
『う…ふぇ……もぉあんなのやめて…ヤダ…』
『大丈夫、撃たないよ』
『ほんと? やすださんは…』
『あれは心配しないで、ねっ、一緒に行こう。立てる?』
こーんな感じでなんとか一件落着よ。
ただ、一言いわせてもらえれば。
…ラブラブショウかよ、オチはっ!?
心の底から叫びたい衝動にかられたわ。
それに、「アレ」呼ばわりされた屈辱、
墓の中まで持ちつづけてやるんだから!
- 270 名前:fragmentation 投稿日:2002年06月10日(月)05時39分41秒
……思い返してみたら契機だったのかもね、あの日が。
なぁんか知らず知らず吉澤はオットコマエなキャラになってるし。
言葉遣いも変わったよね。
内面は未だに脆いトコが残ってるんだけどさ。
けっこうカワイイ面があるんだよ、吉澤って。
アラ、意外そうね?
そんな毛嫌いしてやらないでよ。
片われの方は今も、相変わらずヒネクレた奴だけど。
外見だけは劇的に女の子らしくなっちゃって、フン。
アンタも奴にだまくらかされてる一人でしょ?
あっ…ちょっと! 待ちなさいよ!!
キレんのは勝手だけど、アタシにばっかり
喋らせて終わるつもり?
こっちだってアンタに訊きたい事が山ほどあるのよ。
ギヴアンドテイクの約束でしょう!?
なに、また今度?
冗談じゃないわよ、コラッ逃げんな!!
- 271 名前:fragmentation 投稿日:2002年06月10日(月)05時44分25秒
ハア……なんて子なの。
アイツの連れにはロクなのがいやしないわね。
でも、まぁ…
面倒なのが増えて鬱陶しいと思ってたけど。
……サヤカのシッポがこんなとこから
掴めるなんて棚ボタだわ。
あの子、最後には口を割らせてやるわ。フフッ…
- 272 名前:( `.∀´)<祝 投稿日:2002年06月10日(月)06時03分38秒
- >>梨華っちさいこ〜 さん
川 `〜` )|| <つじー、欲張ってたらまた太るよ?
( ´ Д `) <……じーつー、ごとーの分盗ったら…わかってるよな?
@ @
( ´д`) <のの…欲しいもんは欲しいゆえるんが一番や
- 273 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 274 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月20日(木)01時05分28秒
- だんだん各人の置かれてる環境が明らかになってきて、楽しみです。
しかもあの人も登場するし。
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