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インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板

市井。小説 

1 名前:次郎 投稿日:2001年06月14日(木)21時44分43秒

あり?
ありでしょ。
レスは?
私が受けるってことでいいんじゃない。
それだと、作者はどうなるんですか?
そこはあんたが受ければ。
わかりました。じゃあそういう事で、
2 名前:次郎 投稿日:2001年06月14日(木)21時46分20秒
ほんとに立てちゃいましたよ。
3 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月14日(木)21時47分21秒
そういうのはめーるでやれよ!!
4 名前:次郎 投稿日:2001年06月14日(木)21時48分13秒


 市井はさっきから、自慢のi-Bookを前にうなっている。

 事の起こりは、昨日の夜、ネットで見つけた娘。小説だ。
 暇を持て余していた市井は数々の名作達に感動し、自分でも書いてみたくなったのだ。

 で、・・・・うなっている。

 「うーん」
 古来より伝わる、悩むときの決り文句。文句?言語かこれ?
 あ、そっか唸り声だわ。

 「いちごまかあ・・・・・」
 思わず呟いてしまった。でも自分で書くのは、恥ずかしいしなあ。
 「きゅーん」とか言わせてみたいけど・・・
 後藤に知られたら、てぇへんだ。
 他にも、やぐちゅうとか、いしよしとかあるし。そっちならいいかも・・・
 でもなあ、いきなりカップリング書くのは気がひける・・・
 よし、まずはネタもので・・・・

 市井はカタカタとキーボードを打ち始めた・・・・・


5 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月14日(木)22時03分26秒
>>3
ま、もうちっと様子見ようや。ひょっとしたらバケるかもしれんし...
長い目で見ましょ。
6 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月14日(木)22時58分26秒
なんかスレ立てるまでに複雑な事情があるみたいだけど…
話の導入部は、興味津々。
7 名前:次郎 投稿日:2001年06月14日(木)23時15分58秒
>>3
どーします?
sagaるまで待ちますか?


8 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月14日(木)23時16分58秒
まてねーよ。
9 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月14日(木)23時19分24秒

 アル中澤

最近辻が可愛い。
なんでやろ、やっぱなついてくるからやろか?
「なかじゃわしゃーん」とか言って。
そう言えば今日は傑作やった。
えらい真剣な目であたしを見てるからなんやと思ったら、ぱたぱたぱたーと駆け寄ってきて「あめなめましゅか?」やで
しかもヨーグルト味。
「ちゅじはぁあろえよーぐうとがだいしゅきなんでしゅ」
お前そのかつぜつなんとかならんのかえ?

さあ風呂にでもはいろ
バスタイムや
まずは、湯船に使ってリラックスや
ヴぉー、気持ちええ疲れ取れるわ。
さてそろそろ、頭でもあらおか、シャンプー?
もちろんビダルサスーンや。
泡立ちがええんや泡立ちが、ほらなっもうこないに・・・
まてよ?なんかきこえるで?ちっちゃい声がようさん・・・
なんや頭の方から・・・鏡、鏡・・・あわあわや、うちのあたま
ん?あわ?・・・・・・・・・・・・・?・・・・・・・・・?・!!!!つ、つじぃーーーーーーーーーー!!!!!!
なかじゃわしゃーん、なかじゃわしゃーん、なかじゃわしゃーん、なかじゃわしゃーん、
なかじゃわしゃーん、なかじゃわしゃーん、なかじゃわしゃーん、なかじゃわしゃーん、
なかじゃわしゃーん、なかじゃわしゃーん、なかじゃわしゃーん、なかじゃわしゃーん、
なかじゃわしゃーん、なかじゃわしゃーん、なかじゃわしゃーん、なかじゃわしゃーん、
なかじゃわしゃーん、なかじゃわしゃーん、なかじゃわしゃーん、なかじゃわしゃーん、
なかじゃわしゃーん、なかじゃわしゃーん、なかじゃわしゃーん、なかじゃわしゃーん、
あ、あわが全部辻や・・・
プチプチいうとる・・・
10 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月15日(金)23時10分44秒


ぎゃーーーー!!

はあはあはあはあはあはあはあはあ・・・・・あは?
なんやったんやろ、いまのは・・・

つかれとるんやろなうち・・・・。
最近、きついからなあ、口には絶対出せへんけど年やろか?
・・・・・・・・・・・はっ。
あかんあかん、絶対みとめへんで。
まあええわ。
ビールでも呑も。風呂あがりやもんな、

実はなぁ、これ自慢やねん。
ビールサーバー。きめの細かい泡こそ、ビールの命やからな。

さあ、冷蔵庫で冷やしたジョッキを用意して・・・
いくで!!
・・・。
やっぱりな。しかも今度は加護や。
泡細かすぎて、なにゆうとるんかわからんし・・・
もっと耳ちかづけてみよ。
「原材料はやな、麦芽やろ、ホップに米にコーンスターチ・・・・
 アルコール分は約ごうてんごパーセントやで
 生まれは北海道、育ちは東京や、しかも一番絞り麦汁で、生やで
 こらもう、のまなあかん!!」
解説しとる。しかもとんでもない多重音声で。
あんたは生まれも育ちも奈良やろが。

まあええわ。
「のまなあかん」ゆうとる事やし
ごくごくごくごく。
プハー!!
うまい!


11 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月15日(金)23時21分29秒


ウィッ、ヒック。
酔ったわ、もう寝よ。ベットへ直行や。
うーん、なんや頭痒いな。
ガシガシガシ。
おっと、うちの自慢の金髪がゆびについてきおった。
いつもやったら、ちゃんとごみ箱に捨てるとこやけど・・・
ごめんなあ、うち、ねむいねん。

ふっ。・・・ぽん。

「のみすぎだよ!!」

そやな、ちょっと呑み過ぎたかも知れへん・・・

「ってなんで等身大やねん矢口、しかもなんで泡やなくて西遊記やねん」
「いいだろ!!べつに」
「つーか、等身大でも十分ちっちゃいな、よしよし、頭なでたる」

ぱちんっ。

「もーだから呑みすぎっていってるでしょ」
「もーだから呑みすぎっていってるでしょ」

矢口がはじけて、半分ぐらいの矢口が二つ・・・
かわいい。
せっかくやから両方撫でてやる。

ぱちんっ、ぱちんっ。

「こらー、ゆうこ!!」
「こらー、ゆうこ!!」
「こらー、ゆうこ!!」
「こらー、ゆうこ!!」

さらに半分の矢口が四つ。
こらおもろい。
さらに細かくして遊んだろ
ぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷち・・・・・・・・
「アル中澤!!!」

「つんく先生またやってますよ、中澤さん」
「いつもの事やろ、ほっとけ、石川」


12 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月15日(金)23時23分47秒
レス頂戴。はあと
13 名前:まちゃ。 投稿日:2001年06月15日(金)23時49分56秒
地味におもろい。
がんばっちょ!!
14 名前:6 投稿日:2001年06月16日(土)01時06分41秒
レスしていいの?
おもしろい。続き期待大!!
下げた方がいいのかなあsage
15 名前:323 投稿日:2001年06月16日(土)22時44分37秒
やばいかも、スッゲーおもしろい!
なんかもー次の更新がたのしみです!
16 名前:白板書き 投稿日:2001年06月17日(日)01時17分24秒
 市井はi-Bookを前に、にやけてきた。
 レスが三つもついてる・・・。
 しかもおもしろいって・・・ニヤニヤ。
 しかし、まちゃさん、地味って・・・。私はやっぱ地味なのか?
 プッチのセンターまでのぼりつめたのに・・・。
 市井は、消しゴムを取り出し、けしかすでねりケシを作り始める。
 いじいじいじいじいじいじいじ。
 その行動が地味といわれる所以だと気付いていない、市井。
 その時携帯がなる。
 圭ちゃんからだ。なんだろう?
「はい、もしもーーし市井だよ」
「ふふふ・・・・・紗耶香、見たわよ。小説板」
 流石は2ちゃんねらー保田。
 あなどれない。
「あれ、あんたでしょう?」
 しかも鋭い。
「何であたし出てないの?」
 そしてがめつい。
 って、頭の中がネタモードになってる。ヤバイ、ヤバイ。
「仕方ないじゃん処女作なんだから、ああいうのしか思いつかなかったんだよ」
「冗談だよ、でもいつかは、あたしを登場させてよね」
「なんか浮かべばね」
「仕方ないなあ。まあ、気長に待ってるよ、あ、後藤と変るね」
17 名前:次郎 投稿日:2001年06月17日(日)01時18分58秒
↑酔っ払いのバカ作者です。
18 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月17日(日)22時24分43秒
市井様がんばってください!!
更新待ってます。
19 名前:次郎 投稿日:2001年06月18日(月)18時30分02秒

「もしもし、市井ちゃん?」
「おう、後藤、久しぶり元気か?」
「元気だよ、いそがしーけど」
 ・・・・・・きゅーん。
 なんて絶対いわないよなあ、本物の後藤は。
どっちかって言うとぶっきらぼうな方だし。
「・・・もしもし、聞いてる市井ちゃん?」
「ん?ごめんごめん、なに?」
「だからあ、相談があるの。でさあ、市井ちゃんち行ってもいい?」
 ん?・・・なんか、いちごまっぽい展開。
 ドキドキ。
「いいよ、ひまだし、なんだったら今から来る?」
 ドキドキ。
「今からは無理だよ仕事があるから、土曜日でいい?」
 がっくし。・・・まあいいや。土曜日、土曜日。
「いいよ土曜日だね」
「うん、じゃあね・・・ちょっと待って圭ちゃんに変わるね」
「あ、うん」
 ちょっと早くないか?後藤。もうちょっとしゃべってくれても・・・
「もしもし、紗耶香?」
「なに?」
「後藤には、いってないから安心しろ、小説板」
 ピッ、プツ。
 ツーツーツーツー。
 疾風の様にあらわれて、去っていく。
 月光仮面か、あんたは・・・。

20 名前:次郎 投稿日:2001年06月18日(月)18時30分56秒

 ふたたび、i-Bookを前に沈思黙考の市井。
 必死に次のネタを考えるが、いつのまにか土曜日の後藤の訪問に気が行ってしまう。
 はっ!いかん、いかん。
 お、またレスが増えてる。
 >>18
 がんばるよー。

21 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月19日(火)00時41分57秒
 『ショーをやりましょう。』

その日、ののちゃんは遠足に行きました。
おっきなお山にハイキングです。
ところが迷子になってしまいました。
泣きながら、歩いていると不思議な妖精さんに出会いました。
妖精さんは矢口さんそっくりで、でもやぐちさんよりもっとちっちゃくて十センチぐらいでした。
うれしくなったののちゃんは妖精さんに連れられて、不思議な場所に行きました。
マッシュルームみたいなきのこがいっぱい生えているのです。
食いしん坊なののちゃんは、嬉しくなって、リュックいっぱいにそのきのこを取りました。
でも、とり終わってしまうと、自分が迷子だった事を思い出しました。
「ぐすっ、やぐちさーん」
思わずミニモニ。のリーダー矢口さんの名前を叫んでしまいました。
でも、それを聞きつけた先生が、ののちゃんを見つけてくれました。
ありがとう。矢口さん。

22 名前:名無し@浪花ンぴぃぷる 投稿日:2001年06月19日(火)09時50分33秒
シュールやね。まったくもって。
でも、まー取りあえず期待してっから、コレカラもがんばりや!

…で、市井さん。本人?(爆
23 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月19日(火)17時29分18秒

翌日。
ここはモーニング娘。の楽屋です。
「やぐちさーん」
「ん、どうしたの辻?」
辻はもじもじしながら話し始めました。
「あのですねえ・・・きのうですねえ・・・・・・
・」
相変わらず要領を得ませんが、とにかく昨日の出来事を矢口に話したようです。
「?」矢口もあまりわからなかったようです。
「で、ですねえ、矢口さんへの感謝の気持ちをこめて、オムレツを作りました!」
辻がタッパーを開けると、おいしそうな匂いが楽屋に立ち込めました。
「辻のアイがいっぱい入ったオムレツです」
矢口は良くわからないまま、おいしそうな匂いに釣られて、一口食べました。
辻は目をうるうるさせて、みています。
「おいしい!!」
「やったー」
「ありがと辻」
「ヘイ」

24 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月19日(火)17時30分13秒

そんな様子を見て良からぬことを企む、はらペコ娘達がいました。
「なっち」(ぐぅーーーー)
「ごっちん」(ぐぅーーーー)
「やる?」
「やるべさ」
「「それっ」」

哀れ、オムレツは、はらペコ娘達に奪われてしまいました。
辻は泣きながら、
「ダメなのれすダメなのれす、それをたべていいのはやぐちさんだけなのれす」
と、いいましたが、
「娘はグループなんだから、一人占めはだめだべさ」
といって取り合ってくれません。
「やっぱみんなで食べなきゃね」
「「おいしーーー」」

25 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月19日(火)17時30分45秒

矢口は矢口で、途中参戦した吉澤に押さえ込まれていました。
「ぐそーーー、よっすぃー、おぼえとけよ」
「矢口さん、ごめんなさい、でも一人占めはだめですよ」
「はーい、よっすぃー、あーーん」
「ありがとごっちん」
ぱく。
「お・い・すぃーーー」
「ぐるるるる。みんな、のろってやるーーーーー」
結局、辻のオムレツはメンバー全員の口に納まりました。
「ごめんね、辻」
「矢口さんは悪くないです」
「でもほんとにおいしかったよ」
「えへへへへ」

26 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月19日(火)17時31分30秒

三十分後。
「あ、あれ?あたし、なんかおかしい・・・・きゃは、きゃはは」
「なっちもだべさ・・・・きゃは、きゃはは」
「よっすぃーは?どう・・・・きゃは、きゃははは」
「あたしも、なんか・・・・きゃは、きゃはは」
「あ、もうがまんが・・・きゃは、きゃはは」
「わたしも・・・・きゃは、きゃはは」
「「「きゃははははははははははははは」」」 

「キャハハハハハハハハハハハ!」(ほんもの)
「そっくりー、なにそれ、矢口のまね?」と矢口。
「うーんやっぱ本物は違うね、きゃは」と飯田。
「違いますね、きゃは」と石川。
「きゃは、きゃはは、まね、じゃないべさ、きゃは、なんか、勝手に・・・きゃははは」「矢口さんがいっぱいれす」と辻。
「のの、私もなんかへんや、きゃは、きゃはは」
「亜依ちゃんも矢口さんれす」
「なんで・・・こんな・・・きゃはははははは」

「「「「「「「きゃはははははははははは」」」」」」」

27 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月19日(火)19時15分00秒
おもしろい!!
シンガ-ソングライターなんかにするのはもったいない。
これで食べていきなさい。
28 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月21日(木)00時59分57秒
>>27
ありがと!!
じゃあ、シンガーソングをとってただのライターで
って食えねえっつーのこんなんじゃ(爆
29 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月21日(木)01時06分16秒
おっと忘れちまったぜい。
>>22
名無し@浪花ンぴぃぷるさん
シュールかと思ったらこんな展開でごめんね。
ぐぁんばりまっせ。
30 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月21日(木)01時45分07秒

「みんなやぐちさんなのれす」
「!」矢口がなにかに思い当たる。
「辻もしかして昨日とったっていうきのこ入れた?」
「はい」
「あっちゃー、多分それだよ、原因は」
「きのこがれすか?」
「どーすんの?きゃははははははは、こんなんじゃ収録できないよ。きゃははは」
 と、保田。
「ていうか、きゃはははは、なんで矢口は無事なわけ?きゃははは」これは飯田。
「矢口さんは元々矢口さんだからなのれす!!」
意味不明。
「あーー、いー加減あきてきた、きゃはははは」
「なんだと、よっすぃー!!」
「そーだよねー、きゃは、こんなバカ声じゃあ、きゃはは、テレビ出れないよねー」
「「「きゃははははははは」」」
 矢口激怒。
「よっすぃー?どしたのれすか?」
「きゃはは、笑い過ぎでお腹が・・・・・きゃはははは」
「どーする?つじ?」
「どーしますか、矢口さん?」
「とりあえず無事なのはあたしらだけみたいだからね」
とその時。
『おーい、やぐち!』
 矢口の頭の中に声が聞こえてきました。
「辻なんかいった?」
「いいませんよ?」
『やぐち、ここだよ、辻のポッケのなか』
矢口は、辻のポケットを探ろうとしました。
辻は慌てて、ポケットを隠そうとします。
「何するんですか矢口さん!」
「いいからみせなさい!!」
「・・・・へい」
辻のポケットから、妖精が出てきました。
矢口はそれを人形だと思いました。
『ふーたすかった、さんきゅ』
人形が動いたので矢口は驚きました。
「つじ・・・なにこれ?」
「妖精さんれす。矢口さんにそっくりなのれす」
「もー、落ちてる物拾っちゃダメってあれほど言ったでしょう!」
妖精はパタパタと羽ばたいて、やぐちの目の前に来ました。
『よくいってくれた、やぐち。辻には言葉が通じなくって』
良くみてみると、妖精の声は矢口以外には聞こえていない様です。
「矢口さんにそっくりだけど矢口さんより小さいから小矢口さんなのれす」
辻は嬉しそうに言いました。
『昨日からずっとあの調子でさあ、相手してたら疲れたよ、矢口は』
矢口は呆然としました。

「「「「「「「きゃはははははははははは(泣)」」」」」」」
31 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月21日(木)01時54分38秒

『あ、もしかして、辻の作ったオムレツ食べた?』
「うん」
『あれ、いっぱい「ヤグチワライタケ」入ってたからねえ』
「やぐちわらいたけ?まんまじゃん」
『まあ、いいじゃん。それにしても・・・・しょうがない。
 矢口、あたしを持って、みんなの上で揺すって』
「はあ?」
『はあじゃなくて早くやるの!』
矢口は半信半疑ながらも、小矢口を持って、みんなの上で揺すった。
キラキラと、小矢口から麟粉が落ちました。
するとどうでしょう、あれだけ苦しんでいた矢口病?がみんな治りました。
「ふーこれでやっと、収録できるべさ」

・・・と言うわけで、みんな矢口病が治り、無事に収録が出来ました。

小矢口さんですか?
『久しぶりに下界に降りてきたから、もうちょっといるわ』
という事で、まだ辻のポッケの中にいます。

よかったね、ののちゃん。

32 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月22日(金)03時44分32秒

 強引だ・・・。
 市井は自慢のi-Bookを前に落胆していた。自分の才能に。
 結局、的を絞って書いていないのが原因なのだろう。
 ネタしか出来ない。
 というより、ネタも満足に出来ない・・・。
 ああ自己嫌悪。
 二十歳の原点。高野悦子。
 わかる人少ないだろうな・・・
 まあ、よし。
 やっぱカップリングか?
 同人っぽいのはリビドーの乱でなくちゃね。
 「五月雨を あつめてはやし 最上川」ってくらい官能的で無くちゃ。
 それにさ、ニーズってやつを考えなきゃいけないわけ、メジャーは出尽くしてるからマイナーを狙いたいよね。でもあんまりマイナー過ぎると、意味無いし・・・
 ここは読者に頼ってみるかな。
 
33 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月22日(金)03時50分39秒

 ここから先はリクエストの答えていきたいっす。
 もし、読んでる人がいたらリク頂戴 
 つーか何でもO.K。
 
34 名前:名無し@浪花ンぴぃぷる 投稿日:2001年06月22日(金)09時20分16秒
読んでるっすよ
して、いちよしきぼーん
35 名前:ななしさん 投稿日:2001年06月22日(金)12時53分04秒
書いている本人にしゃしゃり出てきてほしいっす。
というわけで、いちいしきぼーん。
36 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月23日(土)02時36分50秒
マイナー狙いね・・・
じゃあ弟子の弟子ということでいちかごを!
37 名前:次郎 投稿日:2001年06月24日(日)03時24分19秒

>>32
困るなあ。あれじゃ作者が書いたみたいじゃないすか。
自己弁護するなら、ちゃんと自分の文で・・・
いいじゃん、別に。ちゃんと流れにはなってるっしょ。
しかしですねえ・・・
じゃもうかかないよ。
そっそれは困ります!・・・・わかりました。今回はおおめに見ましょう。
しかし今回だけですよ・・・作者の立場っていうのもありますし・・・
うん、もうやらない。

      ・・・・またやるかも(ボソ

ん?なにかいいましたか?
うんにゃべつに。
あそうそう、とうとうカップリングかくんですか?リク募ってましたね。
かくよ~、もえてるよ~
・・・あんなネタばっかりかいててかけるんですか?
ん~、どうだろ
見切り発車かよ!!
38 名前:次郎 投稿日:2001年06月24日(日)03時25分11秒

 市井は自慢のi-Bookをまえに・・・・・・していなかった。
 明日の後藤の訪問に心浮き立たせ、いてもたってもいられなくなった市井は部屋の掃除をした。一通り掃除機もかけ終わって、今はころころクリーナーで細かい埃や髪の毛をとっている。
 後藤がこの部屋に来るのも久しぶりだな。
 最後に来たのはいつだっけ、・・・もう一年以上前だ・・・
 ふと手が止まる。
 もう一年たったんだな、あの日から。
 私が、モーニング娘。じゃなくなった日から。
 しんみり。
 なんつってる場合じゃねー!
 明日は、後藤が来るんだよね・・・
 なんか相談があるとかいってたけど・・・正直、あたしは後藤が私を頼ってくれるだけで嬉しい。
 久しぶりに後藤に色々教育を・・・ってこれじゃ怪しいな。
 さて、もうねよ。
 おっとその前に・・・
 市井は自慢のi-Bookを前にした。
 一日一回これやらなきゃね。
 お、レスがついてる。
 >>34 いちよし
 >>35 いちいし
 >>36 いちかご
 全部、あたしがらみか・・・
 悩むなあ。第一自分で自分が書けるのか?
 まあいっちょやってみますか。
 吉澤、石川、加護。
 あーみだくじー、あーみだくじー、ひいて楽しいあみだくじー・・・。
 よしっ!!加護!!
39 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月24日(日)03時26分11秒

みなさんリクありがと。
それでは行きます。いちかごです。

40 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月24日(日)03時27分31秒

欲望の渦巻く街、新宿。
眠らないアジア最大の歓楽街。
そのはずれ、西新宿にその事務所はある。
「市井探偵社」
それが事務所の名前だ。加護はここで見習のような事をしている。
奈良を飛び出して、東京にやってきたは良かったけど、なにもわからず、うろうろしているうちに変なおじさん達につかまり、売り飛ばされそうになった。
その時、助けてくれた人の元でしばらく探偵見習いをやっていたのだが、ある日、突然、この事務所につれてこられた。聞くとその人の師匠らしかった。
―――しばらくおいてやって―――
―――いいよ、べつに―――
そんな気の抜けた会話で、加護はここで働く事になった。否応も無かった。
数日後、加護を助けてくれた人は、消えた。ヤクザの金を持ち逃げして・・・。

41 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月24日(日)03時28分22秒

いつもの様に古びたわきの階段を上がると、加護は鍵を取り出してドアを開ける。
多分また寝てるんやろうな・・・。
真っ暗な中、手探りで蛍光灯のスイッチを入れた。
やっぱり、この事務所の主、市井紗耶香は、いつもの様に皮張りのソファで寝ていた。
「いつまでねとんのや!」
加護は布団代わりのタオルケットを毟り取った。
ごろんと、市井はソファから落ちる。
それでやっと目を覚ましたらしい。
クシャクシャ頭をかきながら、
「かごちゃーん、もうちっと寝かせて・・・・」
なんて言って、またソファーに逆戻り。
「あかん!!おきぃ!!」
加護は市井の首根っこをつかんで洗面所にほうりこんだ。

42 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月24日(日)03時29分10秒

「ったく・・・」
探偵見習いとは、言うものの実のところは電話番である。
しかも、加護が働き出してからかかってきた電話は二本。
家賃の催促とバーのママからの付けの払いの催促。
・・・師匠のところは結構忙しかったのにな。
加護も師匠の師匠だと言うから期待していたのだが。
市井探偵は師匠よりもはっきり言って格下のように加護には思われた。
普段の生活から、まったくのダメ人間なのだ、市井は。
加護は、スチールデスクに座り、ため息をついた。
なんで、あんなんにほれたんやろ・・・。
そうなのだ、なんと加護はそんなだめ人間の市井に惚れてしまったのだ。
これは驚くべき事である。

43 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月24日(日)03時29分54秒

かっこええプラス百点
だらしないマイナス二十点
仕事をしないマイナス五十点
酒癖が悪いマイナス三十点
甲斐性無しマイナス十点
すぐ調子に乗るマイナス十点
ソファで寝る・
あかん、マイナスになってしもた。
シャワーを浴びた市井がデスクに座る。
「かごちゃーん、コーヒー入れて」
加護はむっとしたもののそこは惚れた弱み。
黙ってコーヒーを入れる。
マグカップになみなみ、これが市井の朝食だ。
市井によると二日酔いの特効薬らしい。
・・・また昨日も呑んでたんか、くそ!!
それを市井のデスクのどんと置く。
「さんきゅー」
あちっとか言いながら、コーヒーを飲む市井。
洗い髪が目にかかってセクシーだ。
すっと通った鼻筋も黒々とした目も意志が強そうにみえる。
が、見えるだけなんやなこの人の場合。
「ん、市井の顔になんかついてる?」
「べ、べつに」
鈍感。マイナス五十点。

44 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月24日(日)03時30分44秒

いつも通り、うんともすんともしない電話をにらみながら、一日の大半を過ごした。
夕方。
外を眺めながら、コーヒーを飲んでいる市井が突然話し始めた。
「加護ちゃんさあ、こんな事務所にいていいわけ?」
「なんや、突然」
「だってさあ、加護ちゃんはあいつの仕事振り見てこの道に入ったんでしょ」
「まあ、いつかはあんななりたいなあ、おもてるけど」
「市井はさあ、もう半分辞めてるから、この業界」
もう3ヶ月いるけどこんな会話は初めてだ。
「あいつも、あんなことやっちゃあ、しばらくあらわれないだろうし」
「・・・・・・・」
「良い事務所、紹介してあげよっか、加護ちゃんのためにも」
え?なんで?
加護は思わず立ちあがった。
「うん、それがいい、そうしよ」
市井はまったく意に介さず、外を眺めている。
「・・・・んでですか?なんでですか?厄介払いですか、私ががうるさいからですか?
 ・・・・・うちはここにおったらいかんのですか?」
最後の方は少し涙声になってしまった。
市井が振り返る。
「ちょ、ちょっとどうした、加護ちゃん」
「だって、でていけゆうてるやないですか、市井さん・・・」
「別にそんなつもりはないよ、私はだた加護のことを思って・・・」
「私はここにおりたい・・・」
・・・市井のそばにいたい。
「あかん?」
市井は加護の前に立つと、
「ええよ」と関西弁で言った。
加護は少し笑ってしまった。
そうすると涙ぐんでいる自分が恥ずかしくなった。
「へたくそ」
二人で笑いあった。
市井は大きく伸びをすると茶化して
「そんなに市井の事が好きかー」といい、加護の頭を軽くポンポンと叩いた。
「はい」と言った加護の声は小さすぎて聞こえていないようだった。
それでもいい。
市井さんは優しい。プラス無限大。


市井探偵社にまだまだ事件はおこりそうにない・・・



45 名前:37 投稿日:2001年06月24日(日)04時16分32秒
おぉ!いちかごだ!いちかご!
あみだくじよ、ありがとう!ちゃむ最高!マンセー!
46 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月24日(日)22時24分32秒
まさか、ここの「市井探偵の生活」実話では…
いい加減仕事しろよ~(w
47 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月25日(月)02時41分04秒
部屋でひとりあみだくじをする市井紗耶香(17)
・・・暗い・・・でも・・・イイ・・・
48 名前:やすぼん 投稿日:2001年06月27日(水)03時48分01秒

市井探偵社その弐



うんともすんとも言わなかった電話がなる日がついにやってきた。
加護は慌てて受話器を取る。
「はいもしもし、市井探偵社です」
加護は頭の中でだけ何度も繰り返し練習したフレーズを言った。
「あんただれ?」
「え・・・見習いの加護と申しますが」
微妙に関西弁のイントネーションになってしまう。
「紗耶香に代わって」
「失礼ですが、どなた様でしょうか」
「いいからかわって、保田って言えばわかる」
強引な人だなと思いつつ、加護は市井を呼んだ。
机にへばりついて寝ていた市井は、「んあ?」と人とは思えない声をあげて起きた。
加護はその顔に幻滅しながら言った。
「保田さんて人から電話です」
「へ?保田?」よだれまで垂らしてる・・・
「知らんのですか?」
「ん・・・・・・ああ、圭ちゃんか」そう言った市井の顔は、少し引き締まっていた。
 市井は立ち上がり、加護から受話器を受け取った。
「もしもし・・・」
加護は聞き耳を立てる。用がある電話がかかってきたのはこれが始めてだったから。しかも市井を名指しで。
「え・・・だからもうやめたって、そう言うのは、え?ちょちょっとまてよ・・・困るって・・・・そんなこと言われてもなぁ、ちょっと、圭ちゃん!!」
市井が大げさに受話器を耳から離す。切れたようだ。しかも相手は受話器を叩きつけたらしい。市井はためいきをついて、受話器を元に戻した。
「依頼ですか?」
「んにゃ、違う。・・・・とも言いきれないか・・・今から来るって言ってたし・・・・人の言う事ちっとも聞いてくれないんだから・・・」と市井は一人ごちる。
「市井さんのこと知ってるみたいやったけど、保田さんて何者やの?」
「刑事・・・昔の同僚」

49 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月28日(木)03時02分30秒
yasubon・・・のっとり?
50 名前:次郎 投稿日:2001年06月30日(土)00時31分22秒

 土曜日。
「市井ちゃん、こんちわー」
後藤がやってきた。制服だった。
制服を着た後藤は年相応に見える。
「うっす」
「あれ?市井ちゃん、金髪にしたの?」
「おう、むかしの後藤みたいだろ」
「うん、なかなかいいんじゃない」
後藤はすたすたと部屋に上がりこみ、ベットに腰掛ける。
後藤は、鞄を置くなり、靴下を脱ぎだした。後藤の癖だ、リラックスできるところに来ると、靴下を履いていることが我慢できないらしい。ぱさっ、と脱いだ靴下を投げ出した鞄の上に置き、後藤は言った。
「あいかわらず、ぐーたらしてんでしょ」
「そっそんな事ないよ、毎日市井は勉強にいそしんでます」
「ふーん、で、曲はかけた?」
「うっ、いたいとこ突くなあ・・・」
「書けてないんでしょ?」
「市井だってがんばってるんだよ」
まずい、後藤のペースだ。そう思った市井は強引に話題を変えた。
「7人祭り、聴いたよ。なかなかいいじゃん」
「そう?まあ、市井ちゃんに誉められて悪い気はしないけど・・・
 市井ちゃんがいたらどこに入ってたかなあ、シャッフル」
三人祭りは・・・ちゅっちゅっちゅちゅちゅ・・・・・・。
市井には不可能だ。
7人祭りは・・・レゲエか・・・なんとなくキャラじゃないな。
市井には不向きだ。
10人祭りか・・・。
男前キャラだし。多分ここだろうな・・・。
51 名前:次郎 投稿日:2001年06月30日(土)00時32分43秒

「吉澤もいるしね、男前は和風でなきゃ」
そう言うと後藤の顔が曇った。
めったに見せない憂いの表情を浮かべている。
「ど~した後藤?」
「ん・・・何でもない」
ってなんでもない顔をしていないから困る。
強引に聴くと臍を曲げる。ソフトに聴くとしゃべらない。
後藤の本音を引き出すのは一苦労なのだ。
こんな時こそ、教育係時代に培ったテクが役に立つ。
 ~~~~~~~
「へ?」市井は不覚にも呆然としてしまった。
「だから~、よっすぃーが私のこと好きなんだって、告白されたの」
市井、目が点。
「えー、同性にあこがれる事は、思春期には良くある事です、そういう劣情はスポーツなどで、昇華しましょう」って保健体育やってる場合か!
それでも後藤がクスリと笑ってくれたので救われる。
「でもさ、よっすぃー、本気っぽいんだよね、だから、これが相談」
そうそうよしごまって結構あるんだよね、あたしが脱退してからさぁー。
なんて茶化す事も出来ないような後藤の本気顔。
もちろん、あたしにとってもショックだった。ていうか吉澤、よしごまカップリングを地でいくつもりか?おい!つーか後藤、なんで悩むんだ?
あたしは後藤をレズビアンに教育した覚えはないぞ!!・・・なんか淋しい・・・。
「どーすればいいかな市井ちゃん?」
ってそんな事私に相談するな!!・・・・と言えない所があたしの弱点。
まあ確かに後藤も年頃だ。恋の一つや二つあってもいいだろうだがしかし!
メンバー同志だと!!かあさんは許しませんよ!!

52 名前:次郎 投稿日:2001年06月30日(土)00時33分35秒

が、しかし、市井の口から出たのは、
「後藤の思うようにすればいいじゃん」
というまあ相談のし甲斐もあったものではない言葉。
「んもう、そんなに意地悪するとあれ出すよ!!」
へ?あれって何?
後藤が投げ出した鞄からなにかを引っ張り出した。
そっそれは!!8月号の○○○じゃあないですか後藤さん。
「市井ちゃん、私がこれ見たときどんな心境だったかわかる?」
だって・・・後藤が忙しそうだったから・・・
ユウキくんに変わりに遊んでもらったんだい。
なんて口が避けても言えなねぇ。もと教育係の立場上。
「ごっ後藤までゴシップを信じるのかよ・・・」
「んなもん信じてるわけないじゃん。だいたいユウキとあたしは兄弟だっつーの」
「良かった・・・」
「だから、ちゃんと答えてよ、私の質問に」
って脅迫ですか?
「質問って?」
「だから、私はどーすればいいの?市井ちゃん?」
「・・・うん、やっぱりそれは市井がどうこう言う事じゃないよ。
 吉澤は後藤に気持ちをぶつけたんだから、それを受け止めるかどうか判断するのは
 後藤自身じゃなきゃ。そうじゃなきゃ吉澤に失礼だよ。
 あ、あたしは大丈夫、同性愛に偏見持ってないから・・・」
 後藤は、顔を真っ赤にして立ち上がった。
「ん?どうした後藤」
「市井ちゃんのばか!!」
 体を震わせてそう言うと、後藤は鞄を引っつかみ、ドアを開ける。
「ちょっと、後藤?」
「市井ちゃんなんかユウキと遊んでればいいんだ!!」
そう言い残して後藤は部屋を出ていった。
ぽつんと残された市井の頭の上にクエスチョンマークが無数に飛び交っていた事は言うまでもない。

53 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月30日(土)01時35分49秒
ネタにできるなら大丈夫ですね>ブ○カ
いやぁ、ここに限らず
「小説家の皆さんがやる気を失ってしまうのでは?」
ってことが何より不安だった(w
54 名前:次郎 投稿日:2001年06月30日(土)02時17分51秒

「?」
よくわかんないけど、後藤が怒った。
・・・後藤に怒られた・・・・・・・。
茫然自失の市井はふらふらと自慢のi-Bookを立ち上げた。
半分意識が無いままカタカタとキーボードを打ち始める。

55 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月30日(土)02時19分44秒


「いちーちゃん
「どうした後藤?」
市井は後藤をぎゅっと抱きしめる。
「きゅーん」
可愛いなあ、後藤は。
「いちーちゃん。後藤はねえ、いちーちゃんがダイスキなんだよ」


56 名前:次郎 投稿日:2001年06月30日(土)02時21分15秒

はっ!!
なにしてんだ市井?
あーーーー投稿してるし・・・・無意識って恐ろしい・・・。
そう言えば久しぶりだな、このスレ。
ん?
>>48 yasubon
・・・・・・圭ちゃん!?のっとりか?
ナーニしてんだかあの人は・・・
そう言えば出せ出せってうるさかったなあ。
だからってかってに人の板のっとるな!!
ん?まてよ。もしかして、みんな「市井探偵社」の続きを読みたいのかなあ?
続きって言ってもなんも考えてないけど・・・
それともネタに戻った方が善いのかなあ?
ご注文は?どっち?

57 名前:ちゃむ 投稿日:2001年06月30日(土)02時22分58秒

なんでも展開リク募りますよー。
58 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月30日(土)04時44分14秒
「市井探偵社」の続き、超読みてえ!
59 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月01日(日)00時28分35秒
同じく。市井探偵社が実に気になる。
60 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月01日(日)00時45分32秒
いちかごぉ~……見たいです。。。
61 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月05日(木)19時37分13秒
確かにいちかごはレアだ。
そう気付いた今日この頃。
62 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月05日(木)19時38分18秒

加護は慌てて、市井を着替えさせた。
「別にこのままでいいよ~」
と言う市井のしわくちゃになったシャツを毟り取り、真新しいシャツに替える。
「あかん!人に会うときぐらいはちゃんとせな」
まったく、あたしがいないとどうなっちゃうんだろ、この人は・・・
「保田さん」はそれからかっきり三十分でやってきた。
地味なスーツを着こんで、ズボンのポケットに手を突っ込んでいる。
刑事っぽい。きっちりしてるし・・・
この人と市井さんが同僚だったなんて信じられない。
保田は、加護が呼んでも起きない市井に近付くと思いっきり頭を張った。
「ってえ、なにすんだよ・・・」
市井がそう言うと保田は鼻で笑った。
「ったく、あんた腐るよ」
「もう腐ってるよ、圭ちゃん」
加護が立ち上がり、珈琲を出そうとすると、市井が、
「加護ちゃん、いいよ気ぃ使わなくても。こいつ依頼人でもないしさぁ」
と言う。

63 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月05日(木)19時38分59秒

「で、なんの用?」市井がだるそうに聞いた。
「さっき電話でも話したでしょ、人探しだよ」
保田は、行方不明の人間をさがしている人から相談を受けたことを手短に話した。
「で、そう言うのは警察の仕事じゃないから、あんたに頼みたいのよ」
「だからさっきも電話で断ったじゃんか、だいたい圭ちゃんがそんなの相手にするなんて珍しいね・・・・あ、ひょっとして、その人お偉いさん?」
 保田は、持っていた資料を市井の机に叩きつけ、踵を返す。
その背中に、
「やんないからねー」
と市井は言った。
保田はチラリと振りかえると、ギラ!!と怪光線を照射した。
バタン!!
事務所の古いドアが悲鳴をあげてしまった。
「お~こわ」
 市井はおどけて言うが加護は本当に怖かった。
 噛み殺されるかと思ったぐらいだ。
 市井は一回伸びをして、その資料を引き出しに叩きこんだ。
「さすが、新宿署の狂犬、やる事が無茶苦茶だ」
「え?ほんまですか?今の人があの?ひと睨みすれば、やくざも道をあけるって言う?」
「そうだよ、かごちゃんも顔ぐらい覚えておいた方がいいよ」
市井はそれだけいうと、大きな欠伸を一つする。
「あーあ、ろくでも無い事で時間つぶした、かごちゃーん、五時になったら起こしてね」
・・・今日も呑む気や・・・せっかく仕事もらったのに断るし・・・
「ちょっと、市井さん。ええ加減に働かんと呑む金もなくなりますよ。そうなって困るんは市井さんやねんで!!」
・・・・あかん、ねてる。

64 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月05日(木)19時39分30秒
保田刑事登場編、強制終了。
65 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月07日(土)03時00分04秒
やっぱいちかごは最高だ…
66 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月07日(土)03時19分40秒
まじっすか?
・・・調子に乗っちゃおう。
67 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月07日(土)03時25分05秒
>ちゃむ
どんどん調子に乗って、いちかご書いてください(w
68 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月07日(土)09時09分31秒
おもろい(w
同じくどんどん調子に乗って書きまくってください!
69 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月07日(土)17時56分13秒
>>66
でも、再デビューの準備も忘れずに……
70 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)05時49分46秒

小さな探偵。




その日はいつものごとく過ぎていった。
ただ一つ違ったのは市井さんと喧嘩した事。
いやけんか、ゆうてもあたしが一方的に怒って、
市井さんが一方的にすねただけやねんけどな。


市井のこのごろの習慣は、事務所にある映りの悪いテレビで、再放送のドラマを見る事。
それまでは「かごちゃーん五時に起こして・・・」だったのが、このごろは、
「かごちゃーん三時に起こして・・・」になった。
某局の「愛をください」がお気に入りらしい。
そして見終わったらいつも歌う。

愛をください wow wow
愛をください Zoo♪~

71 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)05時50分18秒

愛をください wow wow
愛をください Zoo♪~

「ん?そう言えばかごちゃんの名前も亜依だったよね」
「それがどうかしたんですか?」
思いっきり怒気のこもった声で加護は言う。
・・・仕事せんか、歌なんか歌ってる場合やないやろ。
つっても、ないんやからしゃあないか、仕事。
「かごちゃーん、機嫌悪いねー、もしかしてオンナノコの日?」
市井は机の上に上半身を転がしながらニタついた。
加護の我慢もここまでだった。
言うにことかいて、オンナノコの日やと?
ブチッ。

加護は本当にオンナノコの日だった。

72 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)05時51分10秒

・・・・・。
呆気にとられる市井に思う限りの罵声を浴びせ、ダメ人間と加護は言い放った。
「ダメ人間でわるいかよ・・・」
市井はいつに無く真剣な顔をしていた。
「ダメな人間は生きる価値もないのかよ」
そのあと、市井は、上着を引っつかんで飛び出していった。
まあ、またのみにいくんやろ・・・・・。
加護はいつものごとく掃除をして、事務所を出た。

73 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)05時51分56秒

良く音の響く階段を降りていくと、小さな女の子がぽつんと座っている。
「どないしたん?」
加護は気軽に声をかけた。
ここにいると言う事はまず間違い無く、事務所に用があると言う事だ。
張り詰めた表情をしていたその子は、加護の顔を見て安心したらしく、
ぽろっと涙を流した。
「おかあさんを・・・さがしてほしいんれす」

74 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)05時52分48秒

加護は事務所に取って返して、その子から事情を聞いた。
小さい頃に両親が離婚して、父親に引き取られた事。
最近そのその父親が、リストラにあい、暴力を振るい出した事。
耐えきれなくなって家を飛び出した事。
昔、存命だった祖母に「おかあさんは歌舞伎町で働いている」と聞いた事。
加護はその話しに少し自分自身を重ねた。
「それで、新宿にきたのはよかったんれすけど・・・」
「そらそうや、新宿ゆうてもひろいんやで、そんな簡単に見つかるかいな」
加護は、他になんの手掛かりもなく新宿までやってきた少女に少しあきれた。
「探偵さんにたのもうとおもったんれすけど、お金がないことに気がついて・・・それで」
「それで、うちの階段で途方にくれとったんかいな」
「そうれす・・・・・さがしてくれますか?」
加護の心は決まっていた。
ちっとは仕事せな、腕なまるさかいな、
それにこの子、かわいそうやし・・・
「ええで」
「ほんとれすか!!」
と少女は大喜びした。が、すぐに目を伏せた。

75 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)05時53分27秒

「あの、おかね・・・ないんれすよ・・・」
「いらん、いらん。うちが、あんたの力になりたいだけやただでええ」
「でも、わるいれす。やっぱりだめれす。商売をばかにしちゃいけません」
・・・・?なんか妙なところで頑固やな、こいつ。
「・・・そや、ほなこうしよう。うちとあんたは年もおんなじくらいやし、
背もおんなじくらいやし、今日から友達や。友達やったら金はらわんでええやろ」
「へいっ!!」
加護の新しい友達は嬉しそうに頷いた。
「まず自己紹介からや、うちは加護亜依、あんたは」
「辻希美れす、ののってよんでくらさい」
「ほな、のの、おかあさんの写真かなんかあるか?」
辻は首を振る。
「ないんか・・・」
こら難しいかもなあ・・・
「したら、お母さんの名前はなんて言うんや?」
「中澤裕子れす」

76 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)05時54分16秒

二時間後、加護と辻はコマ劇前にいた。
加護が、昔のつてをたどって、電話をかけまくったところ、
「中澤裕子」を知っている人物を探り当てる事に成功したのだ。
その人がいうには、「中澤裕子」は、昔、売れっ子のホステスで、歌舞伎町では有名な存在だったとのことだった。
加護は「中澤裕子」が昔勤めていたと言うクラブの名前を教えてもらい、その場所を再度調べた。そのクラブはまだ、存在していた。
まあ、一発で当たるとは思ってへんけど、なにかしらの情報は掴めるはずや。
加護は辻を置いてくるつもりだったが、散々ごねて、結局辻はついてきた。
ま、ええか。
「いくで、のの」
「へい」
二人は夜の町に足を踏み入れた。

77 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)05時54分56秒

裏道を抜けて、クラブの入ったビルが建ち並ぶ通りに出る。
この、加護でさえ緊張する雰囲気の中、辻は元気にしゃべりつづけている。
「ねー亜依ちゃん。亜依ちゃんって関西弁れすよねー。
辻のおかあさんも関西弁なんれすよー」
辻によると、母の記憶は関西弁と、金髪だけらしい。
「だからー、亜依ちゃんに話し掛けられた時、とってもうれしかったんれす」
加護は生返事をする。
・・・こっちは緊張しとるっちゅうねん。
二人は目的のビルのエレベーターに乗った。
香水の強い匂いがした。
クラブにつくと、ホステス達が小さな二人の闖入者に、わーきゃー言いながらよって来た。
「どうしたの?」「かわいい」「ちっちゃい」「こんな娘、欲しい」
口々に好き勝手をいっている。
加護は、なんとか「中澤裕子」について説明し知ってるものはいないかと聞いた。
「裕ちゃんは、他の店に移ったよ」
そう言ったのはマネージャーらしき男の人だった。

78 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)05時55分41秒

どうやら「中澤裕子」は、いくつも店をかえているらしい。
原因は彼女の性格。
面倒見が良く、愛想もいいのだが、なにより喧嘩っ早く、他のホステス達と
もめて、自分からやめる。その繰り返し。
回った店は十軒を超えていたが、まだ、彼女の今につながる情報は得られていない。
大久保の方へ抜けるために、コマ劇の前を通った時、すでに十一時を回っていた。
「なあ、のの、今日はもう遅いし、かえろ。寝るとこないんやったら、事務所開けてもええし・・・」
「だめなのれす」
「そんなこというたかて・・・」
もう、あぶないやろ、時間が時間やし・・・と加護は思った。
「あいぼんこわいんれすか?」
!!
「こっこわいわけないやろ・・・」
と言いながらも、加護は少し怖さを感じる。
丁度日が変わる頃から、歌舞伎町には本物の裏の世界の住民が顔を出し始めるからだ。

79 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)05時56分16秒

「ん?あいぼんてなんや?」
加護が我に返ると、辻がいなくなっていた。
どこいったんや?ののは?
あの子、気い弱そうにみえんのに、なんや糞度胸だけはあるな・・・
・・・ようわかってへんだけかな?
加護は目を凝らしてあたりを見るが人ごみが邪魔をする。
加護も小さいが辻も小さい。
・・・本格的に迷子になったんちゃうやろな。
「あーいぼーん」
喧騒の中から、辻の声が聞こえて来た。
見ると辻はゲームセンターの前にいる。
加護は慌てて駆け寄った。
「なにしとるんや、うちから離れたらあぶないいうたやろ!」
辻は一切それを気にせず、
「プリクラみつけたのれす」
と楽しそうに言った。

80 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)05時57分43秒

「とりましょとりましょ」
と辻にせかされ、加護は仕方なくフレームに収まる。
実は加護はプリクラなるものは初体験だった。
ずっと、年相応の遊び相手がいなかったから。
撮れた写真にひげを書いたり、セリフを付けたりしているうちに
段々楽しくなって、三回もやってしまった。
友達ってこう言うものやったんや・・・。
そのころには、あいぼんという奇妙なあだ名も気にならなくなっていた。

81 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)05時58分15秒

「あと一軒だけやで、ほんま危ないから」
「へい」
二人は大久保病院の裏にある公園を通り抜けようとしていた。
思えば、辻と仲良くなったことに興奮して、加護には隙が出来ていたのだろう。
加護は近付いてくる三人の影にも気がつかなかった。
あっという間に加護と辻は、後ろから組み付かれ、口をふさがれて、
茂みの中に連れ込まれていた。
加護は失敗したと思ったがもう遅い。
「なんだ、こどもじゃん」
「そうか?これぐらいが丁度善いんだよ」
「お前、ほんとロリコンな」
男達が声を殺して話している。
あっという間に口にガムテープが張られる。
見ると辻が涙を浮かべて、こちらを見ていた。
ののだけでも、にがしたらんと・・・・
依頼人まもれんのは最低の探偵や・・・
加護は、気付かれないようにズボンのポケットに手を伸ばした。
そこには飛び出しナイフが入っている。
加護はそれを取り出すと、男の伸びてくる手を一息に薙いだ。
男は獲物の突然の反撃に体を離した。
手のひらから流れる血を見て、別の男が
「このくそがき」とつぶやく。
「まあまあ」
男は血をぺろっと舐めて、キライじゃないぜと心底嬉しそうな顔をした。
加護は大声を出そうとしたが、ガムテープのせいで声が出ない。
はがそうにも、男は今にも飛びかからんばかりに、腰を落としていて、
隙がない。

82 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)05時58分53秒

どうするんや・・・加護亜依。
逡巡している加護は一瞬反応が遅れた。
もう一人の男が加護の後ろに回りこんでいた。
男の力には、抵抗も無駄だった。ナイフは振り落とされ、地面に組み敷かれる。
「・・・面白くない」男はそう言いながらも加護の服に手を伸ばした。
・・・なんでやろ、なんで、こんな時にあのダメ人間の顔が浮かぶんやろ。
あの人がきたって、うちを助けられるわけないやん。にげだすにきまってるやん。
加護のシャツのボタンが、全て外される。
振るえている加護を見て、もう抵抗する気がないことを見て取った男は
ガムテープをはがす。
「でかい声だすなよ、殺すからな」
「やめろよ、誰か通ったら聞かれるぜ」
「そしたらそいつも、脅せば善いさ、声が聞けないのはつまらないからな」
男の手が、ブラジャーにかかる。
・・・・市井さん、たすけて市井さん・・・いやや。
加護は脅された事も忘れて叫んだ。
「市井さん!!」
男が、加護の胸に倒れこんできた。
83 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)05時59分52秒

もうあかん。やられる。全部うちがわるいんや。油断したうちが、御免のの。
が、男は次の瞬間、目を回して、加護の横に仰向けになった。
加護は何が起こったのか分かたなかったが、目の前に誰かのシルエットがあった。
「市井さんじゃないけどさあ」
シルエットは言った。
「むかつくんだよね」
その言葉は男達に向かって発せられていた。
残った二人の男がその人に飛びかかった。
「てめえ」「この野郎」
その人は、ポケットに手を突っ込んだまま、男の拳を避けて膝を叩き込む。
「野郎じゃねえよ」
男は崩れ落ちる。
あっという間の出来事に呆気にとられているもう一人の男に
その人はハイキックをぱかんと叩きこんだ。

84 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)06時00分31秒

加護はシャツをかき合わせておきあがった。
辻のもとにかけより、泣いている辻の頭を抱く。
「ごめんな、うちが油断したばっかりに・・・」
辻の目はうめき、のた打ち回る男達に向けられていた。
加護は、やっと光の中でその人を見た。
市井に似た面差し、メッシュの入ったショートカット。
一見して、ホストとわかる服装。
その人は、まだ男達をけりつづけている。
「ったくむかつくんだよ」
ボスッ。
「女に手だすならそれなりの覚悟はしなくちゃな」
ガスッ。
「これはその罰だよ」
メキッ。
見ているこっちの方が止めたくなってくるぐらいに、
滅茶苦茶に蹴っている。
その姿に加護は狂気を感じずにはいられなかった。

85 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)06時01分03秒

「吉澤さーん なにやってるんですか」
連れらしいホストがやってきて、やっとその人は蹴るのをやめた。
「あーあ、また喧嘩ですか?」
「いいじゃん、別に」
「うわっこれは、また手酷くやりましたね、障害残るんじゃない?」
「自業自得だよ、ね」
と言って吉澤と呼ばれた人は加護の方を見る。
「ああ、そう言う事ですか・・・それはそうとマネージャー呼んでますよ」
「またぁ?どうせまた・・・・」
「ぶつぶつ言ってないで早く行きましょう」
「ちょっと待って」
と、加護達に近付き、名刺を手渡す。
「今度、遊びにきてね、サービスするから・・・つってもまだはやいか」
と、いって、煙草に火をつけ、早く帰れよ、と吉澤は公園を後にした。

86 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)06時01分33秒

「裕ちゃんなら西新宿でバーやってるよ」
大久保のクラブでやっと、中澤裕子の今を掴む事が出来た。
辻は小躍りして喜んだ。
「よかったなー、のの」
「へい、おかあさんに会えるのれす」
場所を聞くと事務所の近くだった。
・・・灯台下暗しや。やっぱ、普段から情報集めとかんとな・・・

87 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)06時02分06秒

中澤裕子が経営するバー「クロウ」は市井探偵社から徒歩十分ぐらいのところにあった。
油断すると見逃しそうな小さな店だった。
看板も出ていない。
「さあ、ここやで」
辻は黙って頷いた。
今になって、母が自分を受け入れてくれるかどうか心配になってきたらしい。
加護はバンと辻の背中を叩いた。
「大丈夫やって、ののはあいたかったんやろ、なら、おかんも会いたいはずや」
辻は力強く頷いた。

88 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)06時02分44秒

辻が、ドアをあける。
カラーンと、ドアベルの音がする。
「もう看板やで、わるいけど」
カウンターとボックス席が一つだけの小さな店内。
酔いつぶれた客が一人いるだけの薄暗いバー。
金髪の女性は、カウンターの中で、テレビを見ていた。
辻はその声を無視して、近寄っていく。
「おかあさん」
中澤裕子は、え?と言う風に振りかえる。
「希美?どないしたん」
まるで日常の一こまだった。
中澤は、突然のことに現実感を失ってしまったようだった。
呆然と立ち尽くす中澤に辻がかけより、抱きつく。
そして泣き出してしまった。
「あんた、泣き虫なところはかわってへんなあ・・・」
辻はビエーンビエーンと泣きながら、会いたかったといった。
「でも、どないしたんや?急に。ていうかようここ分かったなあ」
「あいぼんが・・・・あいぼんが・・・・」
「あいぼん?」
加護は、ぺこりと頭を下げた。
「あんたが、この子連れてきてくれたんか」
「はい」
中澤はにっこりと微笑むと、ありがとな、と言った。

89 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)06時03分34秒

加護は泣きつかれて、眠ってしまった辻に代わり、事情を説明した。
ボックス席の片隅で母親に膝枕してもらい、かわいらしい寝息を立てている辻を
加護はうらやましく思った。
加護にはそんな記憶はない。
「そうやったんか・・・・」
中澤は深いため息とともに、そんなセリフをはいた。
「ほんま、ありがとな、えーっと・・・」
「加護です」
「加護?あんたもしかして加護亜依?」
・・・・ん?なんやいきなり呼び捨てかい・・・
「市井探偵社の?」
「そうやけど・・・」
中澤は独り合点して大声をあげて笑った。
「そっかそっか・・・ほな、いっこ依頼あるんやけど・・・」
中澤は、カウンターでつぶれている客を指差す。
「その酔っ払い連れてかえってや」
・・・はあ?なんでうちがそんな事せな・・・・・・
・・・市井さん!?

90 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)06時04分07秒

・・・案外軽いな、市井さん・・・
加護は酔いつぶれた市井を背負って、事務所を目指している。
「紗耶香からようきいとるよ、毎日ここきて、かごちゃんが、かごちゃんが
ばっかりやもんな、ほんま、耳に蛸できたわ。
今日かて、かごちゃんにダメ人間ゆわれたって無茶のみして・・・
後藤が独立してから、ずっと一人やったもんな、寂しかったんやろ、
紗耶香も・・・。
あんたがきてから嬉しそうやったもんな・・・
ああそれから、紗耶香の名誉のために言うとくけど、昔はすごかったんやで」
加護がじゃあなんでと聞くと中澤は言葉を濁して、
「とにかく、紗耶香の事たのむで」とだけ言った。
加護は頷いた。

91 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)06時04分52秒

二人分の重みを感じながら、両足はしっかりと地面を踏みしめる。
ののにはおかんがいる。
けど、うちは独りや、市井さんも独りや。
うちも寂しかったけど、市井さんも寂しかったんや・・・・。
そして、うちが頼れる?のは市井さんだけや・・・
「ん・・・加護ちゃん・・・」
「おきた?市井さん?」
「・・おきてるよー、市井はずーと起きてるよーよってんないいんっよー」
・・・あかんまだよってるわ、この人。
「あばれんな!!」
「はーいかごちゃん」
市井はしっかりと加護の前に腕を回し、しがみつく。
そして歌い始めた。
♪~
僕達はこの町じゃ・・・
夜更かしの好きなフクロウ
本当の気持ち隠しているそうカメレオン
ほらねそっくりなサルが僕を指差してる

・・・歌詞、滅茶苦茶やな、さすが酔っ払いや。
伸びはないが、透明感と張りのある歌声で市井は歌いつづける。

きっと何処か隅の方で僕も生きてるんだ
あいをくださいwowow あいをくださいZoo
あいをくださいwowow あいをくださいZoo・・・


市井さん、そんなによばんでも、あいはここにおるで・・・




市井探偵社にまだまだ事件はおこりそうにない。
92 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月13日(金)06時20分52秒
早起き更新。
93 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月13日(金)08時37分52秒
最高だよちゃむ!!!
いちかごがこんなにいいなんて思わなかった…
94 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月13日(金)15時34分36秒
ちゃむ書くのうまくなったね!
でもマジで再デビューの用意忘れずに(w
95 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月14日(土)02時16分55秒
登場人物が増えてきて嬉しい
何気に吉澤の再登場があるのかどうか気になったり。。。
96 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月14日(土)06時38分30秒
ちゃむの書くいちかごも
現実(?)でのいちごまも気になる・・・
97 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月22日(日)19時11分28秒
mada?
98 名前:次郎 投稿日:2001年07月23日(月)01時10分05秒

すみません。
作者次郎はがんばってるのですが、如何せん才能が無い。
時間が無い。金も無い。
つーわけでここはバトンタッチ。
ちゃむ、お願いします。

99 名前:ひみつや 投稿日:2001年07月23日(月)01時14分12秒

アル中澤っって、なんやねん紗耶香ー。
・・・・・・・ウイック。
あんたがこの板におるとはな、因果は巡るってやつか?
(因果ってなんや?)
ってほんまは圭坊から聞いたんやけどな。
しかもなんやこれ、何であたしが辻の母親やねん。(ヤケ)ごくっ
28―13で、15才の時の子?あほか。(ふざけんな)ぐびっ
十五ゆうたら後藤やで、(吉澤もか?)ごきゅ
そら、うちも盗んだバイクで走り出すぐらいの事はしたわ(自慢)もうないなあ
けどな、・・・・・後藤がバイク盗んだらおもろいやろな。(あのすっとぼけで)ぷしゅ
どこに走り出すんやろ?(ぐびっ

「いちーちゃんのとこっ、あはっ」

・・・・・とかいうの期待したやろ紗耶香。(もうビールサーバーなんぞ)
ふふふふふ、これでもべんきょうしてるんやで、カップリング小説。
王道はいちごま、やぐちゅう、いしよし。(使う気にならん)
うち的には紗耶香は男前で吉澤はカッケーんや。
どや、大した知識量やろ。
ああああああああっ彩裕はどこ行った!
さみしいわ。(グビグビグビグビグビ)
・・・・・けどやぐちゅうは健在やで!!(ぐしゃ)

うち感動や。
100ゲット!!
100 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月23日(月)01時15分49秒

おわっ!!
裕ちゃんまで・・・しかもそこは99だろうが。
しかし、バトンタッチって急に言われてもねー。
うーん。
じゃあとりあえず市井探偵社の続きで。
真の100GET!!

次回の登場人物リクエスト募集!!

101 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月23日(月)01時29分25秒
ここはホストのかっけー吉澤で!
市井を妬かせてやりましょう!!
102 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月23日(月)11時44分19秒
>>101
激しく同意!(w
103 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月23日(月)23時57分29秒
>>101
いちかごでさらによしかごまで!?
た、たまらん・・・
104 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月24日(火)00時12分02秒
吉澤のほかさらに2,3人に言い寄られてモテモテな加護ちゃんと、
妬いてうじうじしてる市井っていうのをきぼーん。
105 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月28日(土)00時03分59秒

む、むずかしー!!
と、とりあえず、吉澤を出せばOKってことにして 

106 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月28日(土)00時18分45秒
OK
107 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月28日(土)01時38分15秒

鮮血。
嗚咽。
吐瀉。
見なれた光景。
「ユウキ、酒」
ウィスキーのポケット瓶が投げられる。
吉澤はそれを一息にあおる。
目の前には芋虫のように転がる男達。
見るからに堅気ではない。
「吉澤さん、やばいですよ、こいつら寺田組・・・」
「どうでもいいよ」
吉澤は、煙草に火をつける。
「けど相変わらず、強いですね。あいつらのパンチ、一発も当たってないし・・・」
「ばーかっ」
吉澤はユウキの頭をはたく。
「ホストが顔に傷つけられてどうすんだよ、商売道具だろうが」
いってーと呟くユウキを尻目に、吉澤はさっさと踵を返す。
「よーく覚えとけよ、新入り」
「まってくださいよ」
それもまた、ここ壱ヶ月ぐらい続いているいつもの光景だった。

108 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月28日(土)01時42分17秒

 『一片の星座』

109 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月28日(土)01時44分52秒

アイドルの仕事は着飾ること、私の仕事は衣装を脱ぐ事。
ぬぐっていっても、売春するわけじゃない。
売春婦は春を売るけど私たちは夢を売る。
私が身に纏っている物を一枚脱ぐたび、客達はその一瞬に夢を見る。
スポットライトに照らされた、幻想を見る。
幻想は儚くきえてしまうけど、夢は残る。
だから私の体は、夢を売る道具。

・・・・そしていつもの様に、私はステージに立つ・・・・

110 名前:ちゃむ 投稿日:2001年07月28日(土)01時59分05秒

「かごちゃーん」
いつもと同じ市井の甘え声で加護は我に返った。
やっぱり、お礼ぐらいいうとくべきやろな・・・。
加護は昨日「吉澤」にもらった名刺を見てそんな事を考えていた。
慌てて、名刺を抽斗の中に隠す。
ん?うちはなんで慌ててんのや?
なんもやましい事なんかあらへんはず・・・・。
「おーい、かごちゃーん」
一夜明ければ、やっぱり市井は市井のまま。
加護の中に生まれた甘い気持ちが持続したのも半日だった。
もうする事は分かっているので、返事もせずに珈琲を入れる。
・・・あのひとは市井さんに似とった、でも、あの荒荒しさと、
カッコ良さは市井さんにはあらへん。なにより、頼り甲斐がありそうや・・・。
相変わらず、机の上でゴロゴロすると言う人間技とは思えない
グータラぶりを見せている市井の机にマグカップを置く。
それに猫の様に飛びついてすすっている市井をみて、加護は決意した。
・・・吉澤、ゆうひとにあいにいってみよ・・・・

111 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月28日(土)21時34分15秒
吉澤よりちゃむの方がかっこいいぞ!(w
112 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月03日(金)00時08分43秒
>>111
全面的に同意!
113 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月15日(水)23時42分06秒
ちゃむ、デビューに向けて、忙しいのかな……(悲
114 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月23日(木)02時50分43秒
いつまでも待ってるよ~
デモデキレバハヤメニネ
115 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月28日(火)06時46分37秒
ずいぶん経っちゃったなあ。
まあでも「絶対戻ってくる」よね?
116 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月01日(土)06時26分44秒
こっそり……
117 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月01日(土)06時28分08秒

その店は市役所通りを抜けたところに在った。
クラブ「トライアングル」。
とくに、ホストクラブと銘打っているわけでもない。
加護は、その店に入っていく客を見て、首をかしげた。
・・・ホストがおるっちゅうことはホストクラブやろ?
なんでおっさんが入っていくんや?

118 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月01日(土)06時29分30秒

入り口で店員(女のひとやった)に名刺を見せて事情を説明すると、
「ユウキくーん」と誰かを呼んだ。
しばらく待っていると、そのユウキという人がやってきた。
「「あ!!」」
あんとき、吉澤さんの隣におったひとや。
ユウキも、加護の顔を見て、事情を察した様で、
「ついておいで」といって、加護を奥の部屋に案内してくれた。
その時店の中を通ったのだが、加護は混乱してしまった。
何せ、ホストらしい人が居るかと思えばホステスも居る。
・・・どうなっとるんや?
加護の頭の上に?マークが三つぐらい浮かんだ時、ユウキが
「ここだよ」と加護の肩を叩いた。

119 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月01日(土)06時30分15秒

加護の目の前に、「Ysizawa」 と銘打たれた重厚な扉があった。
いくら加護でも分かる。
ただのホストが店の中に部屋なんかもてるはずがない。

120 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月01日(土)06時31分41秒

「吉澤さんは、ナンバーワンだからね」
ユウキが、加護の心を見破った様に言った。
トントンとノックとして、失礼しまーすとドアをあけるユウキ。
その時、「バカヤロウ」という罵声とともに、黒いコートが飛んできて
ユウキの顔にかかった。だが、加護には気付かなかった様で、
「返事聞いてから入って来いつってるだろ、しばらくそれかぶっとけ」
と言いながら、慌てて、シャツを着る吉澤の白い背中を加護は見てしまった。
・・・なんやちょっとエロい光景やな・・・

121 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月01日(土)06時33分13秒

吉澤は、きちんと服を着ると、ユウキの頭をパチンと叩いてもう一度
「このバカやろう」と毒づいた。
そこでやっと加護の存在に気付いた様だ。
すみませんと何度も謝るユウキを一切無視して、
「よくきてくれたねー」とソファーを勧めた。

122 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月01日(土)06時34分00秒

「あははははっ」
店の事を聞くと吉澤は大笑いした。
「えーっと、名前は?」
「加護亜依です」
「んじゃあ、あいちゃん。君がホステスだと思った店員は半分は男だよ。
そして、ホストだと思ったのの半分は女」
「へ?」
「つまりそう言う店なんだよ」
そういうって、どないやねん。
「あ、飲み物なにが善い?」
「・・・オレンジジュース」畜生、おこちゃまやな、うち。

123 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月01日(土)06時34分48秒

「ユウキ」といって吉澤は、顎をしゃくった。
ユウキが、備え付けのミニカウンタで、オレンジを絞り始める。
加護は吉澤の説明に納得しないまま、この間のお礼を言った。
途中でユウキが口を挟む。
「あ、お礼なんて善いですよ、吉澤さん、喧嘩したかっただけですから」
「だから、お前は黙ってろって」と吉澤が、アルミの灰皿を投げる。
ユウキはそれをひょいとかわした。
・・・こりへん奴やな。もう何遍目や?
「あ、ごめん。」と吉澤は打って変わった笑顔を加護に向ける。
それは、子供みたいで、大の男を三人もブッ倒した人のものとは思えないような表情だった。

124 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月01日(土)06時35分58秒

フレッシュオレンジジュースは美味しかった。
「全部呑んじゃダメだよ」
そう吉澤が言うので、半分ぐらいで加護はグラスを置いた。
すると吉澤は、そのグラスにウォッカを少し注いだ。
「呑んでごらん、美味しいから。少しならいいでしょ」
加護は恐る恐る口をつけた。

二時間後、加護は完全に酔っ払った。

125 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月01日(土)06時37分29秒

「そやけどなあ、ちょっとぐらい気付いてもええと思うんや、
もう、三ヶ月も一緒におるんやから。うちの気持ち少しぐらいわかってくれても………」
吉澤はさすがホストだけあって、聞き上手だった。
加護は、酔って市井の事を愚痴る。
「どーしてだろねー、亜依ちゃん可愛いのにね」
と言って吉澤は加護の赤くなった頬に触れる。
加護の目の前、距離にして二十センチぐらいのところに吉澤の顔があった。
吉澤の大きな目が、まっすぐに加護を見ている。
お酒呑んだせえか?なんやうちドキドキする……。

126 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月01日(土)06時38分28秒

…………寂しいんだ。
吉澤はそう呟いた。
……ウン……
吉澤のやさしげな瞳に加護は思わず甘えてしまった。
「……かわいそう……」
吉澤は、そのまま加護にくちづけた。
……ええっ?
加護が起こった事を理解したときにはもう、吉澤は離れていた。
思わず唇に手をやり、吉澤の顔を見る。
吉澤は微笑んで加護を見ていた。
加護のドキドキは最高潮。
触れた瞬間の柔らかさがまだ唇に残っている。
「少しはまぎれた?」
……へい。
わー、また思わず答えてしもうた。しかもなんでののや。

127 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月01日(土)06時39分15秒

「かごちゃーん、何かあった?」
「ぶぇつにい、なんもあらへんよ……」
「最近、機嫌いいじゃん」
「市井さんには関係あらへんよ」

128 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月01日(土)06時40分03秒

あれ以来、加護は毎日「トライアングル」に通っていた。
吉澤のそれはまさにマジックだった。
吉澤のひとみを思いだすたびに、頬を赤らめる加護がいた。
業務中だろうが、なんだろうが……
クラブ通いと言っても、加護は吉澤の客分扱いで金銭を払う事はしない。
「今日からこの娘、あたしの客分だから」
吉澤がそう、宣言したとき、ユウキはハイハイ、といったようにため息をつき、
加護は心の中で、客分ておい、極道ちゃうんやから、と呟いた。
……ともかく加護は、吉澤に免罪符を与えられた、特権階級として気軽に店に出入りしていた。
あまりに、吉澤が加護の相手ばかりしてくれるので、仕事は、と聞いてみたが、
「子供はそんな心配しなくていいの」
と、軽くかわされた。

129 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月01日(土)06時40分39秒

そんなある日。
昨夜も吉澤に連れられ、刺激的な夜の町で遊びまわっていた。
あの日以来覚えたお酒も少々飲んだので、二日酔い。
そんなこんなで、事務所に遅刻してしまった。
まあ、ええやろ、どーせ市井さん寝てるやろし……
昨日も楽しかったなー
加護は浮かれ気分のままドアを開ける。
どーせ市井さん今日もソファで寝てるんやろな……
あれ?おらん。

130 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月01日(土)06時41分13秒

見ると市井は、ドアに背を向けて椅子に座っていた。
逆光を浴びて、煙草の煙が立ち昇っている。
あれ、市井さん煙草吸えへんかったはずやのにな……
こんな時間に起きていた事のない市井に疑問を抱きながらも加護は席についた。
「遅刻」
不意に市井が聞いたことのないような低い声で言った。
加護はなぜかドキリとして「すみません」と反射的に謝ってしまった。
けど、段々腹が立ってきた。
市井さんかて、いっつも寝てるやん、何でうちがあやまらなあかんのや……
「かごちゃーん」
いつもの甘え声ではない。
「なんですか?」
「夜遊びたのしい?」
加護は顔が真っ赤になるのを感じた。

131 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月01日(土)06時43分41秒
ageちゃった……
こっそりとかいいながら……
……つづく……
132 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月01日(土)08時41分58秒
早めの続きをメッチャ希望!
133 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月01日(土)19時31分55秒
やっぱオモロイわこれ!
134 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月22日(土)15時52分25秒
アレ?ちゃむどっかいったのかな??
135 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月25日(火)05時22分39秒

尾行られてた……。
「いいんだけどさあ、べつに。いつも、師匠みたいになりたいっていってたじゃん。
………なれないよ、そんなんじゃあ。後藤みたいには。
あいつはいつもマジだった。ホストなんかにうつつをぬかしたりはしなかった。
今の加護ちゃんみたいに呆けてはなかったよ」
市井の声からはなんの感情も読み取れない。
加護は一気に頭に血が上った。
「……卑怯や」
「……」
「うちの事、つけたんやろ、市井さん、卑怯や!!」
「そりゃ……心配だったから……」

136 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月25日(火)05時23分39秒

「……けいないやん」
「え?」
「市井さんには関係ないやん!!」
加護の目からぼろぼろと大粒の涙が落ちる。
「いっつも呑んだくれて仕事もせえへんくせに。あたしのことかて
ほったからしのくせに、なんでそんな事いえんの!ほっといて!!」
呆気にとられる市井を置いて、加護は事務所を飛び出して行く。
途端に気弱になる市井。
「かごちゃーん、なんでそんなにおこるのう」
多分あの様子だと、追いかけても加護の怒りがおさまるとは思えない。
それに、多分……。
「……吉澤か……」
市井はぼそりと呟いた。

137 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月25日(火)05時24分16秒

意味もわからないまま加護は走っていた。
市井の言葉が頭の中で、半鐘の様に響いていた。
それだけで、なにも考えられない。
自分が走り出したことも自覚していない。
意味を捉えられない。
ただ、頭が真っ白になって、目の前がぼやけて……
なんだか、恥ずかしくて、悲しくて……
ふと気付けば、歌舞伎町の雑踏の中。
足が自然にトライアングルに向いていた。

138 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月25日(火)05時24分58秒

ネオンにはまだはやく、本来の顔を隠している町。
眠っている。
そんな印象さえうける。
夜の化粧をしていないそこは、うそ寒く、加護の気分を一層暗くさせる。
それでも、トライアングルの近くに来ると幾分気分が軽くなってくる。
吉澤の顔が目の前にちらついた。
吉澤はちゃんと自分を「特別」扱いしてくれる。
市井さんとは違う。
わかってくれる。
加護は多分、自分を特別な存在として見てくれる誰かが欲しかったのだ。
荒涼としたこの町で、だれかとつながっていたかったのだ。
ただ、孤独を埋めたかった。
それだけ。
加護は、それが甘えだと気付かなかった。

139 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月25日(火)05時26分00秒

準備中の札がかかっていたが、押すと扉は開いた。
営業前の店内には誰もいない。
普段の華やかさはどこにもなく、しんと静まりかえっている。
加護は、すうっと深呼吸をした。
足音を殺して歩き出す。
吉澤を驚かせてやるつもりだった。
昼間は自室にいるはずだ。

140 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月25日(火)05時26分36秒

日の光が入らない店内をそっと、奥へと進んで行く。

一条の光が加護の足元を照らす。
重厚な扉が少し開いている。
やっぱり、いてる!
加護は、はやく荒れた心を癒して欲しかった。
うれしくなってドアに駆け寄り、そっと中を覗き込んだ。
自然にソファに目が行くが、そこにはいない。
……当たり前や、市井さんやないんやから……
加護は、無意識に市井の事を思ってしまい、思わず頭を振る。
市井さんは関係ないんや。
加護は勝手に高まった胸の鼓動を無理矢理押さえ、部屋の中にふみこんだ。

141 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月25日(火)05時27分40秒

カウンターバーには呑みかけのショットグラスが置いてあった。
その周りに出来た小さな水溜りが、吉澤がここを離れてからの時間をうかがわせる。
おれへんのかなあ……吉澤さん。
はあ、と溜息をつくと加護はソファアに埋もれた。
もてあました気持ちのやり場をいきなり失った、憂鬱な視線を下ろす。
赤。

ふと、異物感を覚えもう一度視線を上げる。
同時に、何処からか人の声が聞こえた。

142 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月25日(火)05時28分21秒

何処や?
加護は立ちあがり、辺りを見渡したがこの部屋には人がいる気配はない。
なんとなく声のした方に歩いていく。
カウンタバーの奥の方やったはずや……
加護が、そこまで来た時もう一度、人の声が漏れてきた。
が、目の前には衝立があるだけで、直ぐ後ろは壁だった。
……やっぱり空耳やろか
だが、駄目押しの様にもう一度、そこから声が漏れてきた。

143 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月25日(火)05時29分16秒

普段の加護ならそこで分かっただろう。
まだ、若いとはいえ、探偵見習いとして、個人として人より多少複雑な人生を
歩んできた加護は、色んな物を見てきたのだから。
それとも、どんな場面も結局他人事に過ぎなかったのだろうか。
ただ、確実に言える事はその時の加護は明らかに冷静さを欠いていたと言う事。
引き寄せられる様に衝立を、寄せると半開きになったドアがあらわれ……
瞬間、加護の頭の中は真っ白になった。

吉澤が振りかえり、衝立が倒れ……

144 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月25日(火)05時29分52秒

雨が降っている。
そう気付いたとき、加護はコマ劇の前でうずくまっていた。
灰色の空を見上げたとき、真っ先に心に浮かんだのは、
……うちの居場所は結局何処にもないンやな……
そんな事だった。
そう、思ってしまうとなんだか浮かれていた今までの自分が可笑しくなり、
へへへ、と少し笑ってみた。
このまま笑い飛ばせたらと、無理矢理笑いつづける。
「へへへへへへへへへへぇ……」
けれど、笑うほど凍りつく様に冷静になる自分の心に気付いて、やめた。

145 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月25日(火)05時31分05秒

加護の目の前を、雨に追われた人が行き交う。
雨を物ともしない賑やかな女子高生たち、すすけたスーツ姿のサラリーマン、
空に悪態をつく客引き、けばけばしい色を撒き散らして出勤して行く風俗嬢。
みんな行くべき場所があり、帰る事の出来る家がある。
そんな当たり前の事がひどく羨ましい。
ふっと目の前を恋人同志らしき二人連れが通った。
小さな赤いかさの中で仕合せそうに笑いあっている。

146 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月25日(火)05時31分38秒

赤……。
加護は吉澤の部屋で感じた赤の正体を、想起して、その正体に気付いた。
加護の頭の中で映像がよみがえる。
それは机の上。
灰皿に残されていた、吸殻についた口紅の赤だった。
あの時気付くべきだった。
その後悔と連鎖して、吉澤の下にいた女の顔も浮かんだ。
吉澤の客で、相当にいれこんでいた松浦とか言うホステスだ。
加護は膝を抱えて、顔を伏せた。

147 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月25日(火)05時32分09秒

「濡れるよ」
顔をあげると、ユウキが立っている。
加護は、真赤に腫らした目が恥ずかしくて、吉澤と関係のあるユウキにそれを見られたのが悔しくて、顔をそむけた。
「行こうか」ユウキがそう言う。
……何処へ行くっていうんや……
加護が憮然とした表情で拒否すると、ユウキは黙って加護の手を引いた。
「ちょっと」
加護の抗議も聞かず、ユウキは歩き始める。
「店にはいかへんよ、もう」
それでやっとユウキは振りかえり、歩みを止めた。
そして微苦笑を浮かべると、「吉澤さんに、殴られるからさあ、お願い」と言う。

148 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月25日(火)05時33分07秒

結局、加護はのこのこと吉澤の部屋に戻ってしまった。
ユウキの顔を立ててやったと、加護は自分に言い訳してみるが、
それは嘘だとわかっていた。
部屋に吉澤の姿はなく、ユウキは加護にタオルを手渡して、シャワー室に導いた。
ずぶぬれの服を脱いで、コックをひねる。
温かい湯が加護の体を包む。
……なにしてんのやろ、うち……
加護は普段より長く、シャワーを浴びた。

149 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月25日(火)05時33分54秒

ユウキが用意してくれた着替えに袖を通し、部屋に戻ると、誰もいなかったが、
カウンターの上にオレンジジュースが置いてあった。
加護はソファに座ってそれを飲んだ。
いつもより酸っぱかった。
不思議と、気分は楽になっていた。

「もう直ぐ来るから」
ユウキはそう言ったのだが、吉澤はなかなか現れなかった。
加護は、何もする気になれず、天井を見上げてぼんやりとしているうちにねむってしまった。

150 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月25日(火)05時34分26秒

夢を見た。

光の中で師匠の背中が見えた。

いくら呼んでも振りかえらない。

師匠はずっと前を見ていた。

師匠の視線の先には市井さんがいて、

市井さんは、泣いていた。

151 名前:ちゃむ 投稿日:2001年09月25日(火)05時35分35秒
中澤「地味やな」
市井「うん」
152 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月27日(木)02時19分21秒
なんだか忘れた頃に更新するな…
期待~。
153 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月02日(火)20時23分06秒
まってるよ!!!!!
154 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月03日(水)22時18分45秒
あいぼぼん>うちは負けへんで~
155 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月03日(水)22時20分23秒
>>153
うわっハズッ
156 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月13日(土)23時36分45秒
そろそろこないかなー。
やっぱレコーディングで忙しいのか…
ヽ^∀^ノ<復帰するよ!
157 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月14日(水)00時30分28秒
もう芸能活動も始まったし、ここに来る暇も無いのかな。
嬉しいような、悲しいような・・・
158 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月21日(水)07時14分02秒
ちゃむ、復帰前に一度だけでも顔を見せてくれ。
159 名前:名無し読者。 投稿日:2001年11月24日(土)18時29分57秒
彩裕リクエスト。
160 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月25日(日)06時31分00秒
更新しないのかYO
それとも、まさかあれは本物だったとか
161 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月26日(月)00時20分12秒
今日「MUSIX!」でしっかりこちらへ向って歌っているお姿を拝見しました。
ライブ、頑張って下さい。
162 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月13日(木)23時30分48秒
ちゃむ、もう来れないなら来れないって言ってよ…
163 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)03時54分58秒

「亜依ちゃん?」
加護は吉澤の囁きで、うっすらと目を開けた。
まぶたに含まれていた涙が、頬を伝った。
「つまんないもの見せちゃったね」
吉澤はその大きな目を細めてそう言った。
その眼を加護が見返すと、吉澤は慌てて目を背けた。
「……なんなん、あの人?」
加護は、自覚しているのだが僻み口調になってしまう。
しばらくの間が、加護の自己嫌悪をより深めた。

164 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)03時55分43秒

自分が口を出すべきことではない。
その立場にもない。
自分はただの……ただのなんだろう。

165 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)03時56分36秒

吉澤と加護の関係を明瞭に表す言葉などない。
友人とも言えるし、客とホストとも言える。
或いはそのどちらでもないのかもしれない。
吉澤は客分だといってくれたが、それは加護の事を公的に説明したに過ぎない。

166 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)03時57分07秒

「松浦って言ってさあ……」
吉澤は、目を背けたまま、沈黙を破った。
「山崎組系の店で、ホステスやってる子なんだけど、うちの客でね、稼いだ金は全部落としていくんだ……」
その声はからりとした空気にぴりぴりと響いた。
その様子にいらついた加護は、ベッドから身を起こし、吉澤に詰め寄る。
「吉澤さんてそんな人やったん?客と寝るような、そんな安っぽいホストやったん」
吉澤は、加護が見た事のない、酷く哀しそうな目をした。

167 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時00分08秒

そして、立ちあがってカウンターの上で、バーボンをあおる。
コトン。
グラスを置く音が聞こえるまで、加護はその背中を見ていた。
「吉澤さ…」
「加護ちゃん」
吉澤が振りかえる。
「いい所、行こうか」

168 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時00分55秒

加護はただ、吉澤の背中だけを見て歩いていた。
なんにも考えられなかった。
吉澤もなにも話しかけてこない。
普段より大きなスライドで、すたすたと歩を進める。
加護はついて行くのが精一杯だった。
いつもはこんなに早くないのになんでやろ……
加護はそんな事をふと思う。
いつもは、加護の歩調で充分並んで歩けるのに……
思えば、これが吉澤の通常の歩調なのだろう。
加護と歩くときは加護にあわせていたのだ。

それに気付いたとき、
「着いたよ」と、吉澤の背中は言った。

169 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時01分28秒

明らかに場違いだった。
それに未成年者の加護が入れるような場所じゃない。
まだ時間が浅いせいか、ちらほらとしか客の姿は見られない。
そこは、ストリップ劇場だった。
加護はそこに自分を連れてきた吉澤の意図を読み取れないまま、
吉澤に促されて席についた。
吉澤は相変わらず無言だった。
舞台上では、さびれた芸人がネタのわかるマジックショーをやっていた。
単調な電子音が繰り返されるだけのBGM。
加護は、吉澤の顔が見たかった。
横並びの椅子では、表情がよみとれない。
真正面から見るのが怖かったので、少しだけ背を浮かせて、首を横に振った。
しかし、暗い場内は、吉澤の目を浮かび上がらせはしなかった。
諦めて、元の姿勢に戻る。
同時に、吉澤が、なにか言った。
……好きな人がね、ここにいるんだ。
加護にはそう聞こえた。
聴き返そうと思ったとき、舞台が暗転し、BGMが変わる。
そこに彼女は立っていた。

170 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時02分52秒

少し黒い肌がライトを艶やかに反射し、
すらりと伸びた手足は、リズムに合わせて滑らかに動く。
脱いで行く。
ツンと上を向いた乳房があらわる。

……綺麗。

彼女の体はなにも恥じていなかった。
ただ、そこにあった。
美しさと言う幻想を伴って。

加護は既にその世界に没頭していた。
性を感じなかった。
ただ綺麗だった。
人間の体ってあんなにきれいなんや……
そう思った。

音楽が終わると、彼女は晴れ晴れしい笑顔で一礼して、
袖に去って行った。
夢を見たようだった。

171 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時04分22秒

「どうだった、梨華ちゃん綺麗だったでしょ」
吉澤の言葉に、加護は、こくりと頷いた。

172 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時08分06秒

彼女は梨華という名前らしい。
吉澤は関係者以外立ち入り禁止のドアをごく当たり前のようにあけ、
雑然とした廊下を抜けると、楽屋をノックした。
「はーい、ちょっと、まってねー」甲高い声とともに、
中から、バスローブ姿の黒い肌が現れる。
「久しぶり」
彼女は、吉澤の顔を見とめると、満面の笑顔を浮かべた。
「よっすぃーーっ!!やだ、きてたの?恥ずかしいなあ、もう。
いっつもいきなりなんだから、言ってくれれば……」
「いったら、梨華ちゃん、出てこないじゃん」
彼女は、吉澤とひとしきり、挨拶の応酬をしたあと、加護に気付いた。
「このこは?」
「加護亜依、言います」加護は、慌てて頭を下げる。
彼女はちょこんと現れた、小さな訪問者に彼女は驚いた様だったが、
「石川梨華です」と、丁寧に挨拶を返した。
吉澤は、ともだち、と加護の事を紹介した。
「そう」石川の満面の笑顔は、加護にも向けられた。

173 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時10分14秒

「あたしは紅茶いれるけど……えっと、加護ちゃんは?」
「え?」
「何かのむ?」
「えっとじゃあ、同じものを」
加護は、正直よく聴いていなかった。
石川に見取れていた。舞台から降りた石川は、きらめくような輝きを失っていた。
ごく普通の女の子に見えた。
ただ……加護はそこで気付いた、心地よさに正体に。
それは、石川が発している暖かさだった。
……この人、安心する。
加護はほぼ直感的にそう思った。
不思議だった。

174 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時15分24秒

「加護ちゃん」
「……はい」
「加護ちゃんはよっすぃーのこと好きなの?」
「ちゃいます!!」
思わずの大声。なんでやろ。
「……そっか……よっすぃーが、お友達連れてくるなんてめずらしいから、
ちょっと期待したんだけどな。……で、加護ちゃんには他に好きな人がいるわけだ」
加護はきょとんとしながらも、頷いた。
「あんなに大声出したら、わかるよ、それぐらい」
石川は可笑しそうに微笑みながら、加護の前にカップを置いた。
「……石川さんは好きな人いるんですか?」
「いるわよ」
「吉澤さんですか」
石川は、ゆっくりと残念そうに首を振った。
「……そう…ですか……」
「加護ちゃんが好きな人ってどんな人?」
加護は、自然と市井の顔を思い浮かべていた。
「……だらしなくて、鈍感なダメ人間です」
「ふふっ、ずいぶんな、言われ方ね」
「でも、ホントにそうなんです」

175 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時16分04秒

「……でも、優しいんでしょ」
……え?
「だから好きなんでしょ」
加護は頷くしかなかった。
「……石川さんの好きな人はどんな人なんですか?」
石川はクスリと笑い、とっても怖い人、と答えた。
「だけど、私には優しいの。忙しい人だから時々しか会えないけど、
私のこと、良くわかってくれて、とっても大事にしてくれるの」
「……市井さんは、市井さんはうちの事なんにもわかってくれへん……」
……こんな好きやのに……
加護は悔しさで、目が滲むのを感じた。
石川は、立ちあがり、加護の肩をそっと抱いた。
「それで、加護ちゃんはいらいらしちゃうんだ……でもね、
大声で叫んでも、つたわらないことだってあるの。
……人には、誰でもそれぞれ事情があるから」


……小声で伝えてごらん。


176 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時16分43秒

楽屋を出るとき、吉澤と石川は手を振り合ったが、
二人とも何か、寂しそうな顔をしていたのに加護は気付いた。
日が落ち始め、ざわめき出した町を歩きながら、加護は聞いてみた。
「吉澤さん」
「なに?亜依ちゃん」
「吉澤さんは、石川さんの……」
「知ってるよ」
加護が、皆まで言わぬうちに吉澤は答えた。
「梨華ちゃん、不思議だよね」
加護は頷く。
「なんかさあ、安心するんだ。だから……好きでいる事、やめられない…」
「でもっ……」
「わかってるよ、けど梨華ちゃんが私の事情なんだ」
吉澤は、立ち尽くす加護の手を引いて、
「ほら、店に戻ろう。今日は……朝まで、ね」

177 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時21分14秒

店に向って歩いている最中、加護は、石川に言われた事で頭が一杯だった。
だから、ギリギリになるまでその状況に気付かなかった。
気付いた時にはもう遅かった。
「……ちゃん……亜依ちゃん!!逃げて!!」
吉澤の声が、やっと耳に届いた時には既に、前後を挟まれて逃げ場が無かった。
加護の首筋に、ぴたりとナイフが突きつけられる。
「どうする、吉澤」
チンピラの一人が聞く。
吉澤は、組み付いていたチンピラを一人、振り払い、
「なんで名前知ってんだ、お前?」
「この顔に見覚えねえか?」
吉澤はせせら笑って、
「あるわけないだろ、そんな汚い顔」と、答えた。
「……この前、お前にやられた寺田組のもんだ」
「しらねえよ」
チンピラは、唾を吐くとおい、仲間に声をかけた。
吉澤は黙って拘束された。
「これでいいんだろ、そのこは関係ない。放してやれ」
吉澤、そう言って、加護を見る。
チンピラは、にやりと笑って、ヤダね、と答えた。

178 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時21分57秒

そこは、何処だかはっきりはわからなかったが、倉庫のような雰囲気だった。
その床に、加護は拘束されて、ゴロリと転がされた。
声を出せないよう猿轡を噛まされているが、そんなもの無くても、恐怖で声は出ない。
となりには、吉澤が転がされている。
いくつもの、影が、加護たちを覗き込む。
「どうします?取り敢えず、吉澤を殺って、このちっこい方はどっか、流します?」
「それじゃ、面白くねえ。大体俺らはこいつに恨みがあるんだよ、
こいつが、悔しがる顔みたいだろ?」
「じゃあ、どうするんだよ」
「だから、まず、このちっこい方を弄ってだな……それからだよ」
薄気味悪い笑いを浮かべてチンピラ達は笑う。
「それじゃ、始めますか。ショーを」
そのくだらない冗談に、チンピラ達は、またゲラゲラ笑った。
―――夜遊び、楽しい?―――
加護の頭の中にそう言った市井の横顔が蘇る。
加護は漠然と、自分を俯瞰していた。
……こう言うときに、思い出すのはいっつも市井さんなんやな、うち。
市井さん……市井さんはうちの事、どうおもとるんやろ……

179 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時23分30秒

瞬間、ガチャリとドアがなる。
「動くな」

180 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時26分33秒

……市井さん?!なんで?
そこには市井が立っていた。
チンピラどもの視線がいっせいに集まる。
コートのポケットが不自然に突起している。
銃?
「動くと怪我するよ」
コートが持ちあがり、その突起はチンピラどもに向けられる。

……市井さん……古典的過ぎるわそれ。
加護は飽きれた、市井は、ポケットの中で指を立てているだけなのだろう。
今時、チンピラにも通用せん……

加護は、チンピラどもに目を向けた。
チンピラどもは……視線をそこに注いだまま固まっていた。
へ……通用してる?
判断しかねる。銃に驚き、固まっているのか、侵入者にあ然としているのか……
「さあ、そのこ達を返してもらうよ」
市井はその逡巡が途切れないうちに切り出した。

181 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時27分16秒

チンピラの一人がニヤニヤ笑い出した。
「そうはいかねえよ」
……やっぱ、ばれるわな……。
しかし、市井は平然として答えた。
「あ、やっぱり?」
チンピラ達の表情に余裕が戻る。
「へへへへ……なかなか、おもしろいことしてくれるなあ」
ちんぴら達は下品な笑いを浮かべながら、市井を取り囲んで行く。
「しょうがないか……」
市井はそう呟いて、コートの中の手を少し動かした。
その音は、市井に注意を向けていた加護には聞こえた。
「なんだって?なにかいったか?」
「いいや、なんにも」
「へんな野郎だ……覚悟はできてんだろうな」
「覚悟?なんの覚悟?。おまえらの方じゃないのか覚悟がいるのは?」
人を食ったような市井の科白に、逆上したチンピラの一人が、先陣を切って、市井に飛びかかる。
「……それに、あたしは、野郎じゃない」
……あ、その科白、吉澤さんとおんなじや。
市井は流れるような動きでチンピラをかわすと、
コートに突っ込んでいた手を抜いた……

182 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時27分54秒





……穴のあいた天井からパラパラと、コンクリートの欠片が落ちて来る。
完全に空気は凍り付いていた。
加護に至ってはあいた口がふさがらない。
まったく動じていないのは、市井本人ともう一人、
何故か苦い顔をしている吉澤ぐらいのものだった。
「ほ、ほんもんやん……」
加護の呟きが、静まり返った倉庫に響いた。
「こんな奴出てくるなんて、聞いてないぞ!!」
チンピラの一人が叫ぶ。
「そりゃ、言ってないもん」しれっと、市井が言う。
「クッソー……」
リーダーらしきチンピラが市井を悔しそうに睨み付けるが市井は何処吹く風で、加護に近付き、拘束を解き始める。
「……引き上げるぞ。……今度あったら覚えとけよ」
「ん、忘れなければね、何年先になるか分からないから、今度」
「なんだと?」
「聞こえない?」
「何が?」チンピラ達は呆けた表情を浮かべた。
加護は耳を澄ましてみる。
……あっ。

183 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時30分19秒

「警察だ!!動くな!!」
声を同時にドアが破られ、私服が一人と制服が十人ほど倉庫の中になだれ込んでくる。
「げっ!!狂犬!!」
チンピラの何人かがほぼ同時に悲鳴ともつかない声が上げる。
「なにやってたんだよ、もうちょっと早くきてよ、遅いよ圭ちゃん」
「うっせーな、ったくこんな事で呼ぶなよ」
保田は、苦々しそうに言った後、振り返って、
「早く終わらせろ」
と、制服たちに低い声で命じる。
捕り物が始まる中、保田はさっさと吉澤の拘束を解いた。
「さあ、さっさと消えろよ」
「ちょいまち、これ、始末しといて」
市井が銃を保田に差し出す。
「使ったの?」
「圭ちゃんが遅いからだよ」
「……ちっ。高いよ」
保田は、舌打ちを一つくれてそれを受け取った。
……やっぱ、この人、怖いわ。

184 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時33分22秒

三人は通りにほうりだされた。
途端、吉澤が市井の胸倉を掴む。
「余計な事すんなよ」
「危なっかしいとこは変わってないね、吉澤」
市井は笑って、言う。
予想外の展開に加護は戸惑うばかりだった。
「いい加減、この街を出たらどう?いつも、今日みたいに助かるわけじゃないよ」
「うるさいよ、あんたにだけは言われたくないね」
沈黙したままにらみ合う二人に、加護は恐る恐る、声を出す。
「吉澤さん……市井さんのことしってんの?」
「まあね、世話になったから」
吉澤は、皮肉っぽくそう言った。
加護が市井に目をやると、苦く笑っているだけだった。
「……市井さん……」
加護の呟きが耳に入ったのか、吉澤は、市井の胸倉を掴んでいた手を離し、
「今日は亜依ちゃんに免じて許してやるよ」と、言い背を向けた。
市井は、襟元を正すと、その背中に言葉を投げる。
「吉澤、またな」
吉澤は、チラリと振りかえると、夜の町に消えて行った。
その背中は、やっぱり少し寂しそうだった。

185 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時33分52秒

加護は、市井の背中を見ながら歩いている。
気まずくて、とても話せたものではない。
……やっぱおこっとるんやろか……でもなんで……
「……なんで、うちらがあそこにいる事分かったん?」
加護は思わず口にしてしまう。
「かごちゃーん、それ聞かないことにしようよ」
振りかえった市井はいつもの市井だった。
「……あーーー、また、つけてたんや!!」
「そうだよ」
「もう、信じられへんわ、何でそんなことするん?」
「そのお陰で助かったでしょ」
「そう言う問題やない!!」
「それに、……心配だったからねー」市井は加護を見ずに言う。
……ずるい、それいわれたら、なにもいわれへんやん……うち。

186 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時36分17秒

加護はあの時見た夢を思い出した。
……夢の中で、市井さんはないとった。師匠の背中を見て。
……師匠……。

187 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時37分25秒


「なあ、市井さん。師匠はなんであんなことしたんやろ」
「さあ、ね。でも、あいつにも、まあ、いろいろ事情があったんじゃない」
加護は、カラッとそう言った市井の大きく見える背中を眺めながら、
市井さんの事情てなんやろ、そう思った。

だから、
小声で伝えてみた。

「市井さん、好きです」






           それは二人にとって、はじめての事件だった。



188 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時44分04秒

中澤「あんた、さぼっとったな……」
189 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時47分31秒
市井「……復帰イベントで忙しいんだよぉ」
190 名前:ちゃむ 投稿日:2001年12月22日(土)04時49分09秒

中澤「いいわけやな」
市井「……うん」
191 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月23日(日)02時27分40秒
!・・・おかえりなさい!
192 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月29日(土)10時45分42秒
おかえり!
ずっと待ってたよ!!(泣
193 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月31日(月)19時00分51秒
続き書かれてたんですね。感激です。
お帰りなさい。
そして、誕生日おめでとうございます。
194 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月01日(火)09時16分11秒
更新されてるよ(泣
ゆっくりでいいんで完結させてください

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