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月の明かりに照らされて

1 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年06月23日(土)19時37分36秒
今回、作品を発表させていただきます、浪花文語楼です。

一応、全メンバーを出す予定ですが、
今度加入予定の新メンバーについてはどうするか決めておりません。
出さない可能性の方が高いですが…(w


それと、ちょっと特殊な小説であると思われますので、
基本的には「sage」でお願いします。
(これからの事情を見てですが)

2 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年06月23日(土)19時38分42秒
それでは、始めさせていただきます。


『月の明かりに照らされて』

よろしくお願いします。
3 名前:プロローグ 投稿日:2001年06月23日(土)19時40分09秒
「石川、聞いてるか?」
移動の車の中、いつのまにか居眠りしていたあたしの肩を三宅さんがゆする。
貴重な自由時間なんだからそっと寝かせてくれよ……。
睡眠を中断されたあたしは、唇の端のよだれを拭って、姿勢を正した。
うっとうしいなあ……。
「眠いのわかるけど、自分のスケジュールはきっちり理解しとかないと」
三宅さん、さっきからあたしのスケジュールを話していたんだっけ……。
ちなみにこの三宅さんはあたしのマネージャー。
不機嫌なあたしをやんわり注意すると、自分の手帳に目を落とした。
どこまであたしに話したか忘れたらしい。

「えーと……あ、ここからだな。いいか、それで『うたばん』の収録後、
他のメンバーは直接『MUSIX』に行ってもらうけど、
おまえは『anan』のインタビューを受けてもらうからな、間違えるなよ。
で、そのあとに『MUSIX』の方に行って……」


はあ……つまんねえ仕事ばっかり詰め込みやがって……。
大きくため息をつくあたしにかまわず、三宅さんは今日のスケジュールを話し続ける。
よくもまあ、これだけ仕事を見つけられるねえ……感心するよ……。


あたしが所属する人気アイドルグループ、『モーニング娘。』の仕事量は殺人的に多い。


特に最近、あたし『石川梨華』の仕事の多さは、その中でも群を抜いている。


仕事が多いことは、それだけ人気があるということだから良いことなんだろうけど……。


……ちょっとくらい、休みをくれよ。
4 名前:プロローグ 投稿日:2001年06月23日(土)19時41分41秒
「あ、それと……」
三宅さんが思い出したように言った。
「今日、いつ頃になるかわかんないけど、
大槻さん、お前の仕事に立ちあうって言ってるから。そのことも覚えとけよ」
大槻が!? あたしは声を上げた。
この世で最も聞きたくない名前……あたしの気持ちは一気に沈む。
アイツ来るのか……最悪じゃねえか……。
多分、今日は一日中気分が晴れる事はないだろう。
気持ちの沈むあたしの様子をみて、三宅さんはうんざりしたように首を振った。


「あのな、お前の気持ちもわかるけど、
いいかげんに大槻“さん”と呼ぶようにしないと……。
この業界で、あの人の事を呼び捨てにしてるの、おまえくらいだぞ」
またそれか、うんざりだ……。

「ケッ、何が大槻“さん”だよ! あいつ、そのことでなんか文句言ってるの?」
「いや、何も言っていないけど、お前のあの人にとってる態度は……」
「じゃあ、いいじゃねえかよ!」
つまらないこというんじゃねえ!! 無性に腹が立ってきた。

聞く耳を持たないあたしを見て、三宅さんはため息をつく。
「あの人はれっきとした事務所の『副社長』なんだ。もう少し大人の対応があるだろ?」
「大人? あたし、普通なら高校生だよ?
未成年こんなに働かせて……この事を訴えたら、大槻もクビかな? ハハハ……」


……気まずい沈黙が車の中を支配する。

今度はあたしがため息をついた。
三宅さんに当たってもしょうがないのに……。
「……ごめんなさい」
5 名前:プロローグ 投稿日:2001年06月23日(土)19時43分16秒
「別にいいよ、お前の気持ちもわかるし。ただ、大槻さんとのことはやっぱりな……。
もう少し大人になったら? ってことだ」


……いつもこうだ。
自分で自分が嫌になる。

わかってるんだけどなあ……。
感情的になると、いつも見境がなくなってしまう。
悪いくせだよ、全く……。

だけど、大槻のことになると、どうしても……。



他のメンバーもよく似た気持ちだと思う。

ごっちん、よっすぃ〜、あいぼん、のの、なっち、
保田さん、飯田さん、矢口さん、裕子姐さん、


――そして元メンバーの市井さん……。


みんな黙ってるだけ。
あたしが一番「子供」なんだろうけど……。


いつも思うんだ。
ファンの人たちは
こんなあたしのことを知ったらどうなるんだろうって……。




みんなは何も知らないこと。
『モーニング娘。』の『石川梨華』の秘密……。
6 名前:プロローグ 投稿日:2001年06月23日(土)19時44分17秒
窓の外に目をやってみると、
歩道を女の子数人が楽しそうに歩いている。
制服姿の彼女たちの様子から見て、高校生、いや中学生かな?
だけど今の時間、学校は授業をしているはず……サボりだね。
いや、遅刻かな?



楽しそうだなあ……。
あたしは指をくわえる思いで、彼女たちを見つめる。


あたしにだって、あんな時間があったんだ……。



シドニーオリンピックを直前に控えたあの夏……。
全てが始まった、
特別暑かったあの夏を、あたしは思い出していた。
7 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年06月23日(土)19時50分21秒
今日はここまでです。


基本的には、一週間に一回、更新したいと思っています。
かなり長くなりそうですが、これからもよろしくです。
8 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月25日(月)02時52分46秒
石川が怖〜い(w
面白そうなんで期待してます。
頑張って!!
9 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年06月30日(土)20時16分21秒
更新します。よろしくお願いします。
10 名前:第一章すべてのはじまり 1)エロオヤジ 投稿日:2001年06月30日(土)20時18分32秒
窓の外では、ギラギラ輝く太陽が、
地上のすべてのものを、情け容赦なく焼き尽くし、
セミたちがそんな太陽をたたえるように大合唱していた。


今日はまた特別暑い。
汗っかきじゃないあたしの背中にも瞬く間に大きなしみができた。

しかし、この部屋の中は、そんな外の風景とは全く逆だ。
クーラーが凍えあがるくらいに効いている。
入ってきた時は天国のように思えたけど、
汗は一瞬にしてひき、今じゃ寒さに震えてる。


それだけに、あたしの目の前のソファに座るうつむき加減のオヤジの行動は、
知らない人が見たら異様に思えるだろう。
あ、オヤジといっても父親じゃないよ。


この涼しい部屋の中、一人、ハンカチであわただしく額の汗を拭ってる。
拭っても拭っても汗はひかないらしく、
何度もぐっしょりと濡れたハンカチで額を拭ってた。
オヤジの汗の原因が、今日の暑さじゃない事くらい、
この部屋の中の人間だったら誰にでもわかる。



バカやろう……何焦ってやがるんだ、今更……。


あたしは小さくため息をついた。
覚悟は出来てんのかオヤジ? 絶対許さないからな!
このクソ暑い時に、つまらねえことしやがって……。
オヤジをにらみつけたあたしは、さっきまでの出来事を思い出していた。
11 名前:第一章 (1)エロオヤジ 投稿日:2001年06月30日(土)20時20分59秒
今日は久々の学校。あたしは普段あんまり学校へは行かないけど、
今日から一週間は、いやでも登校しなければならない。
期末テストだからだ。


昨夜は3時まであたしの最も苦手とする数学との死闘を繰り広げ、
(成果は……言いたくないな……)
朝、重いまぶたをこじ開けて家を出て、
学校へ行く時にいつも利用する急行電車に乗り込んだ。



当たり前の事だけど、電車の中はいっぱい。
真夏の満員電車……みんな汗くせぇ……。
ドア際に体を押し付け、うんざりするあたし。


目的地の駅まではしばらく時間がかかる。
昨夜の死闘の疲れからか、
あたしは睡魔に敗れ、うとうとしはじめた……。
12 名前:第一章 (1)エロオヤジ 投稿日:2001年06月30日(土)20時22分45秒
そのときだ! あたしの可愛いヒップにおぞましい感覚が走ったのは。


触られてる!! 


睡魔は一瞬にして退散し、あたしの体は硬直する。


最初はおそるおそる触ってるだけだったけど、
あたしが抵抗しないのを知ると、ラインを描きながら楽しみはじめた。


ふざけやがって、ヤロォ……。

怒りがふつふつと湧いてくる。
あたしはこういうやつがダイッ嫌いだ!
身動きのとれない女の子のカラダを触るなんて、男のやることじゃねえ!!
ただの卑怯もんでいっ!! 痴漢の腕をとらえて、警察に突き出してやる!!


大声を出してもいいが、逃げられたらそれまでだ。
それよりも、現行犯として押さえる方がいいと思った。



しかしドアに身体を押し付けられて身動きが取れない!
ちくしょう……このままいいおもちゃになってたまるか!!


あたしは何とか体をずらそうとしたが、隣のおばちゃんに怖い顔で押し返された。
おばちゃん、気持ちわかるけど、こっちはそれどころじゃねえんだよ!
にらみ返した時だった。
13 名前:第一章 (1)エロオヤジ 投稿日:2001年06月30日(土)20時24分23秒
「ヒぁっ!!」
思わず声をあげた。痴漢の指があたしの大事なところに伸びてきたからだ。


野郎、調子乗りやがって……絶対とっ捕まえてやる……!!

あたしはさらに闘志に火をつけ、何とかしようと、もがいた。
おばちゃんは何か言いたげだったが、そんなこと知るか!

あたしは強引に体をずらそうとした。



ところが、今度は周りのおっちゃんたちから、いっせいにブーイングが起こった。
おばちゃんはそれ見たことかと得意げな表情を浮かべる。

くそったれが、これじゃあ痴漢のやりたい放題じゃねえか!!
なんとかしなきゃ! 負けてたまるか!!

14 名前:第一章 (1)エロオヤジ 投稿日:2001年06月30日(土)20時26分13秒
そのとき電車が大きなカーブに差し掛かった。


みんな体勢を崩した。
当然あたしも例外じゃなかった。



痴漢は一瞬触るのを躊躇したが、すぐに再開、じっくり楽しみ始める。

「アホ」
あたしはにやりと笑うと
あたしの“大事な”ところで、もぞもぞする痴漢の手をつかんだ。


バカが、さっきのカーブで、ちょっとだけ体をずらす事が出来たんだよ!!


慌てて、何とか逃れようとする痴漢の手……。
けっ! もう手遅れだよ! 好き勝手にはさせないぜ!!

あたしは、もがく痴漢の手を押さえ込み、
窓に映るたくさんの顔を見た。明らかに動揺した顔が一つ!
デコの広い中年のオヤジだ!
15 名前:第一章 (1)エロオヤジ 投稿日:2001年06月30日(土)20時27分49秒
テメエかあ!!
さっき、あたしが体ずらそうとした時、文句言ってやがったじゃねえか!!



あたしは振り返りオヤジの顔を見た。


一瞬ギョッとするものの、やがて愛想笑いを浮かべるオヤジ。

あたしもにっこり笑うと、思いっきりオヤジの靴を踏みつけてやった。
「ギャッ!!」
苦悶の声をあげるオヤジ。



あたしはかまわずに、ずっとオヤジの手を、あざが出来るほどに力いっぱい握り締め、
全体重をかけてオヤジの靴を踏みしめたまま、
電車が駅に着くのを待った。
16 名前:第一章 (1)エロオヤジ 投稿日:2001年06月30日(土)20時29分34秒
そして今。がっくりうなだれたオヤジを、
クーラーが異様に効いている駅事務所に突き出したあたしは、
警察の人が来るまでオヤジと一緒に待たされる事になったってわけ。



それにしても……。
さっきから、人の顔をじろじろ見て
妙に落ち着きのない駅員の態度は、あたしの神経を逆なでする。



――何見てやがる……見せもんじゃねえぞ!!



駅員をにらみつけてやると、慌ててどこかへ逃げていく。
「バカやろう……」


しかし、そんなあたしの気持ちに構いなく、
駅員は離れたところから、同僚と一緒にまたも、あたしの事を見ていた。
くそったれ……。
17 名前:第一章 (1)エロオヤジ 投稿日:2001年06月30日(土)20時30分53秒
二人の警官がきたのは、それからすぐの事だった。


あたしは、この場で婦警さんに話を聞かれ、
オヤジはあたしからちょっと離れたところで、もう一人の警官に話を聞かれてた。
相変わらず、汗を拭ってた。



あたしは婦警さんに自己紹介をしてから、
電車の中での出来事すべてをうそをつかずに話した。


しかし、あたしの話を聞いているのか、いないのか……。


この若い婦警さんは、あたしが自己紹介した後から、
ビックリした様子で、あたしをみつめたまま、言葉を失っている。

――おいおい、しっかりしてくれよ……。
あたしは話を続けた。
18 名前:第一章 (1)エロオヤジ 投稿日:2001年06月30日(土)20時32分16秒
「ちょっと……いいかな?」

オヤジの元を離れた警官があたしたちのところに来たのは、
呆然としている婦警さんに一応、
すべてを話し終えたときだった(婦警さんよ、ちゃんと聞いてくれたんだろうな!?)。



警官は申し訳なさそうにうつむきながら、あたしに言った。
「あの、こんな事、実に言いづらい……いや、勝手なことなんだけど……」
「なんですか?」
「あの、彼がな……その……どうしても、あんたのサインが欲しいと……。
……どうも彼、あんたのファンらしいんだ……」
あたしと警官がオヤジをみた。



オヤジはいやらしい、吐き気をもようするような笑みを浮かべ、
恥ずかしそうに、もじもじしながら、あたしを見ていた。


この瞬間、あたしは完全にキレた。
19 名前:第一章 (1)エロオヤジ 投稿日:2001年06月30日(土)20時34分20秒
――カラダ触ったうえに、サインがほしいだあ……!?



まただ……また、『馬鹿ファン』だ……。
こいつらは、いつも、あたしの事など全くお構いなしなんだ。



あたしの気持ちなど考えた事もなく、
いつも自分勝手に追っかけてきては、あたしに迷惑ばかり……。
あたしがいつもどれだけイラついているか……!



だから馬鹿ファンって言われるんだよ!!



――サインが欲しい。
こんなこと、あたしは言われなれてる。
普段だったら、冷静に応対するだろう。



だけど、今、あたしはオヤジにカラダを触られた被害者だぞ!!
何考えてやがるんだ! テメエ、さっきまで焦りまくってたんじゃねえのか!!



オヤジのあまりにも非常識な要求は、
ただでなくても、腹が立って、爆発寸前だったあたしに火をつけてしまった。



もう許さない!! 夢から目覚めさせてやる!!
いい年して、浮かれてんじゃねえ!!
20 名前:第一章 (1)エロオヤジ 投稿日:2001年06月30日(土)20時36分53秒
オヤジだけじゃない!! オヤジの近くで、さっきからあたしの事をジロジロ見て、
あたしの神経を逆なでしつづけたボケ駅員、
お前もオヤジと一緒だよ! 自分勝手な馬鹿ファンだ!!



駅員はどこから持ってきたのか、色紙を両手で大事そうに持っていた。



バカやろう……!!
あたしはお前らに『サイン』してやるために、ここに来ているんじゃねえぞ!!



警官が続ける。
「今回の事件も、電車の中で、あんたと思わぬ出会いが果たせて、
つい出来心でやってしまったらしくて……」


――救いのない馬鹿ファンだな、オヤジ……。

警官が全てを言い終えるのを待たずに、
あたしはカバンを持って、ずかずかと、オヤジの元に行った。

もう止められない。覚悟しやがれ!!



恥ずかしそうにうつむいた、オヤジに静かに言った。
「あたしのサインが欲しいって?」
はっと、顔を上げたオヤジが、
まるで、子供のような笑顔を見せてうなづいた。



――吐き気がするぜ……!!



次の瞬間、あたしの右ストレートがオヤジの顔面に炸裂した。
まともに喰らったオヤジは、そのまま吹き飛ばされて、壁に激突して崩れ落ちた。
「なにがサインだ!!」
21 名前:第一章 (1)エロオヤジ 投稿日:2001年06月30日(土)20時39分49秒
あたしの怒りは収まらない。

慌てて、婦警さんと警官があたしを押さえようとしたけど、
それをかわして、壁際でうずくまるオヤジを蹴り上げた。
「おまえ、自分がなにやったのか分かってんのか!? ええっ!!」
「す、すいません……」
顔を覆って、頭を下げるオヤジを、さらに一発蹴っ飛ばした。
ざけんなよ!! この大バカ野郎!!



「で、誰のサインが欲しいって!? 言ってみろよ!!」
テメエらの馬鹿な『夢』を覚ましてやる!! 現実を教えてやるぜ!!
「り……りかちゃんの……」
りかちゃんだあ!? 何、言ってるんでい!!
オヤジが全てを答える前に、あたしはオヤジの腹を蹴り飛ばした。
オヤジがうめき声をあげる。
「りかちゃん!? りかちゃんって誰だ!! おい、そこ! 答えろ!!」
色紙を持ったまま、呆然とあたしを見つめている駅員に怒鳴った。
かなりショックを受けているようだ。


「え……えっと、石川梨華さん……」
「石川梨華だって!? 誰のことだよ!!」
「あ、あなたの事です……」
口をパクパクさせて駅員が答えた。
「誰が石川梨華だ! バカ野郎!!」
駅員めがけて、カバンを投げつけた。
ひっ、と彼が頭をすくめた、その上をカバンは飛んでいって、
大きな音を立てて、ロッカーにぶつかった。



駅事務所の中は大混乱した。



馬鹿ファンの駅員は完璧ビビッちゃって、おろおろするばかり。
うずくまるオヤジは信じられない、といった様子であたしを見てた。

22 名前:第一章 (1)エロオヤジ 投稿日:2001年06月30日(土)20時41分30秒
「ちがうのよ、この子!」
暴れるあたしの両脇を抱えた婦警さんが叫んだ。
「石川梨華じゃないの!!」


「ええっ!?」
ビビりまくってた駅員が声をあげた。
「だけど、この子……!!」


「『モーニング娘。』の石川梨華さん、だよ……ね……?」
あたしの顔を覗き込みながら、警官が聞いた。
「バカ野郎!!」
あたしは婦警さんをふりほどいて、ポケットから学生証を取り出した。
「よく見ろ!!」



学生証を手にとった警官の表情が驚きのものになる。
「……ええっ!?」
23 名前:第一章 (1)エロオヤジ 投稿日:2001年06月30日(土)20時42分58秒
「あたしの名前は高木ちひろ!!
モーニング娘。の石川梨華なんかじゃねえやい!!」
あたしを見たまま、固まってしまった様子の警官から
乱暴に学生証を取り戻した。
「残念だったね! 
あたしは、あんたたちが大好きな梨華ちゃんとは違いますー!! 
わかったか! この、大バカ野郎!!」



オヤジは流れる鼻血のことも忘れて、目を点にしてた。



駅員は言葉を失って立ち尽くしていた。



駅事務所の全員が呆然とあたしを見つめた。



さっきまで部屋で大暴れしていた『高木ちひろ』なる女の子は、誰がどう見ても、
人気アイドルグループ『モーニング娘。』のメンバー、
『石川梨華』そのものだったのだから……。
24 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年06月30日(土)20時47分41秒
今日はここまでです。


それと、前回言いそびれたことがあるので、いくつか…


まず、この作品は、かなり長くなります。


また、「モーニング娘。」が出てきますが、
あくまで、それは、この作品の中での「モー娘。」であり、
実際のモー娘。とは何ら関係のないものであることをご了承ください。

パラレル物、と考えて読んでいただけたら、いいとおもいます。
25 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年06月30日(土)20時50分23秒
また、一週間に一回、更新したい、とお話しましたが、
実際は、それより遅れる可能性があることも、ご了承ください。
(作者である私が、かなりの遅筆であるため)

しかし、長い作品ですが、必ず完結させますので、
最後まで、お付き合い頂けたら、幸いです。
26 名前:削除済み 投稿日:削除済み
削除済み
27 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年06月30日(土)21時04分56秒
間違えてしまった… 鬱だ氏のう…

>>10-23

これでリンク貼れるんですよね(焦)
28 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年06月30日(土)21時07分55秒
よかった、大丈夫だった…(笑


それでは、また更新する時は、お願いします。

また、感想くださった>>8さん、
ありがとうございます。頑張って続けていきたいので、よろしくお願いします。
29 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年06月30日(土)22時53分35秒
今さらながら、隠しておいたほうがいい気がしたので…(w
30 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年06月30日(土)22時54分56秒
勝手なことしてすいません。
31 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月30日(土)23時53分57秒
某所でお名前だけ拝見したことが会ったのですが作品を読むのは初めてです。
まだどんな話になるのか全体像が見えてきませんが、楽しみに次の更新お待ちします。
32 名前:削除済み 投稿日:削除済み
削除済み
33 名前:削除済み 投稿日:削除済み
削除済み
34 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年07月09日(月)18時42分14秒
ちょっと更新が遅れそう。。。
すいません。

>>31さん、ありがとうございます。
遅筆な私ですが、
こんな私でよろしかったら、最後までお付き合いくださいませ(w
35 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年07月28日(土)16時55分37秒
お久しぶりです。更新です。
ダメだなあ……
36 名前:第1章すべてのはじまり 2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)16時58分43秒
駅事務所での大騒ぎの後、
オヤジと駅員は、あたしに、「失礼いたしました」と頭を下げてきた。


わかればいいけどよ……。
っていうか、常識なさ過ぎだぞ、あんたら……。

大体、あたしはあんたらの好きな『梨華ちゃん』じゃないし……。



ちなみに、あたしも、警官から厳重注意された。
「怒る気持ちもわかるけど、いくらなんでもやりすぎだ」って。



――確かにやりすぎたと思う。


あたしだって、好きで暴れたわけじゃない……。
ただ、あいつらが……。



……まあいいや。
あんたたちには、あたしの気持ちはわからないよ。



あたしは小さくため息をついてから、
黙って警官に頭を下げると、駅事務所を後にした。


太陽はもうてっぺんに近かった。
37 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時00分54秒
「ムダになっちゃった……」


――昨夜、必死になってやったテスト勉強……。


今日のテストはとっくに終わっている。


エロオヤジのせいでパー……。



涙がこぼれそうになった。
どうして、こうなっちゃうんだろう……。



と、とぼとぼ歩くあたしに、一枚のポスターが目に入った。


――笑顔の女の子たちが写し出されているポスター……。



それは、アイドルグループ、『モーニング娘。』のポスターだった。



あたしはそのポスターから目が離せず、思わず立ち尽くした。



身体の奥底から、何か熱いものが一気にこみ上げてくる……。
「あんたたちのせいだ……」




38 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時02分05秒
『モーニング娘。』(通称『モー娘。』)が結成されたのは、
今から三年ほど前のこと。


テレビ番組の企画で、女性ロックアーティストオーディションが開かれたんだけど、
それに落選した五人の女の子に、
再チャンスを与えるために、結成されたユニットだった。


テレビ番組と連動して、いろいろキャンペーンをやったりして、彼女たちは頑張った。
確かね、メジャーデビューするために、
インディーズのCDを全国で手売りしたりもしたんだ。



そして、モー娘。はインディーズでの活動の成果も実って、
ミュージシャンの『つんく』って男がプロデュースして、
ついにメジャーデビューする。


彼女たちが新曲を出すたびに、
ヒットチャートの上位にランクインするようになり、
彼女たちの人気は、飛躍的に高まっていった。


一時期、人気が下降線をたどった時もあったけど、
『LOVEマシーン』っていう曲を出してから、
モーニング娘。は大ブレイク。
日本中に名前を知られる、国民的なアイドルになったんだ。


まさに、スーパーサクセスストーリーだ。
39 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時03分03秒
あたしは、そんな彼女たちを、
ほんのちょっぴりだけ、うらやましく思いながら、テレビで見るだけだった。



あたしだって女の子、
アイドルとして活躍する彼女たちに、全く憧れがなかった、といえばウソになる。



あたりまえのことだけど、
あたしは、この『モーニング娘。』とは何の関係もない。



……いや、なかった、というべきだね。
40 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時04分00秒
あたし、高木ちひろは、都内の高校に通う16歳。


芸能人でも何でもない、普通の女の子だ。


もっとも、女の子でありながら、その中身は男みたいなものだけどね。



気は強いし、短気だし、負けず嫌いだし、言葉は悪いし、乱暴だし……。
男子と殴り合いのケンカをすることもざらだった。

……その上、あんまり頭もよくないし。



長所と言ったら、
バカ正直なことと、身体が丈夫なこと、運動神経がいいこと、それくらいだよ。



さっきの駅でのやりとりが、あたしという人間をよくあらわしていると思う。
41 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時05分31秒
こんなあたしの性格が災いしたのか、友達は少なかった。
みんなに怖がられてたし、嫌われてた。



中学校に入る頃には、まわりから一目置かれるようにはなったけど、
それは、あたしの『外見』だけでね。


自分で言うのもなんだけど、美人になったんだ。



もっとも、そのおかげで、女子からは『コワイ』だけでなく、
違う意味でも、嫌われるようになっちゃったけどね。



男子の中には、あたしの『カラダ』に興味を持つのがいたみたいだけど、
好きになってくれる人なんていなかった。



あいかわらずの毎日だった。
42 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時06分39秒
あたしが、みんなにどう思われていたか、よくわかるエピソードがある。



こんな乱暴モノのあたしが、ガラにもなく恋をしたことがあったんだ。
中学一年生の時のことだ。



あたしは、生まれて初めて『告白』というやつをしたけど、
相手に大笑いされた。


あたしは真剣だったんだけど、
彼には冗談だと思われちゃってね……。
結局、相手にもされないでふられちゃった。


あの時、無邪気に笑う彼を前に
あたしも、いっしょに笑うしかなかったけれど、
ちょっぴり涙がこぼれていた事に彼は気づいてくれたかな?



あたしの扱いなんて、こんなものだったんだよ。
43 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時07分54秒
だけどね、あたしは、自分を「かわいそうだ」なんて思った事はないよ。



さみしくない、といえばウソになるけど、
普通の女の子としての毎日は送っていたつもり。



あたしを見守ってくれる家族がいたし、
少ないけど、あたしの事をわかってくれる友達もいたから。



ささやかなものかも知れないけれど、幸せだったよ。



そう……『あの子』が現れるまで……。




――『モー娘。メンバー増員』……。


全国の女の子に、モー娘。に加わるチャンスが与えられる、
モー娘。最大のイベント……。



これが、あたしに大きく関係する事になろうとは、
夢にも思っていなかった。
44 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時08分48秒
『メンバー増員』はいつも不意うちなんだ。


プロデューサーのつんくが、ふいに「増員しよう」とか言い出して、
それに伴って、テレビ番組で大々的にモー娘。の新メンバー募集の告知をして、
たくさんの応募者にオーディションをして、
最終選考の合格者が、『新メンバー』として、モー娘。に加わるんだ。



――ただ、増員するたびに誰かが『脱退』していったんだけどね……。



今までに、行われた増員は三回。



三回目のメンバー増員。


この増員で『あの子』が現れるんだ。
45 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時10分05秒
『モーニング娘。』三回目のメンバー増員、
それは今年の四月の事だった。


この増員で、モー娘。に入る事になった、四人の新メンバーがテレビに映し出され、
初めて『あの子』を見たあたしは、言葉を失った。



四人の新メンバーの中に、あたしがいた。



ぎこちない笑顔を浮かべている彼女は、
顔、声、スタイル……その外見全てが、あたしだった。


あたしと全く同じ姿を持つ彼女は、
「石川梨華です」と、緊張気味に自己紹介してた。





だけど、姿は同じでも、彼女はあたしとは全く異なる人間だった。
46 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時12分17秒
いろんな個性がそろう『モーニング娘。』の中で、
『石川梨華』を表すキーワードがあるとすれば、たった一つ。



それは『美少女』だ。


彼女は、あたしと同じ姿をした美人だ。
あたしが言うのもなんだけど、モー娘。の中でもトップクラスだと思う。


それだけじゃない。
彼女は、その姿から生じるイメージを全く裏切らない。


真面目で、純粋で、一途で、優しくて、ガラスのように繊細で……。
その美しい容姿(自分で言うの、恥ずかしい……)から浮かぶ、
『美少女』というイメージを、そのまま生きているのが彼女だと思う。


あたしとは大違いだ。



『モー娘。一の超美少女』『おじ様キラー』なんて、あだ名もつけられたっけ……。




人気アイドルグループの一員であり、『美少女』である彼女が、
世の男の子たちをひきつけるのに、さほど時間はかからなかった。


そして、彼女の人気が、
『美少女』なんて言葉が全く似合わないあたしにまで、影響を及ぼす事になったんだ。
47 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時13分38秒
「あの……石川梨華さんですよね」
『あの子』が現れてから、この言葉を、あたしは何度かけられただろう。



通学途中、買い物してる時、遊んでいる時……。



いつでもどこでもあたしは、『モー娘。の石川梨華』だった。
今まで、普通の女の子だったあたしが、急に『有名人』になっちゃったんだ。



彼女に間違えられる事は、日課のようになっていった。



最初のうちこそ、
あたしが『梨華ちゃんじゃない』ことを、ていねいに説明してたけど、
あまりにも、間違われる事が多くなって、
間違われても、相手にしない事が多かった。


無視してたね。いちいち説明するの面倒なんだもん。


だけど、あたしに声をかけてくるだけなら、『マシな方』なんだよ。
良心的なんだと思う。


世の中、良心的な『梨華ちゃんファン』ばっかりじゃないから厄介だった。



『馬鹿ファン』って奴がいるからだ。
48 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時14分49秒
『馬鹿ファン』……。
さっきのエロオヤジみたいに、人のことを全く考えず、
自分勝手に動く彼らに、あたしはどれだけ苦労してることか……。



ヘンな男の人に後からつけられたし、
(最近も、家の近くをうろつくやつがいるんだよ)


おかしなビデオに出てみないか? なんて勧誘された事もある。
ヤバイ! と思って、すぐ逃げ出したけどね。



一回、襲われそうになった事もあった。


「僕が君を女にしてあげる!」って。


どこからどう見ても、『変質者』って顔をしている男の股間を、思いっきり蹴り飛ばして、
あたしは逃げたけど。


思い出すだけでもおぞましい。
49 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時15分49秒
こういうバカな連中を、あたしは『馬鹿ファン』と名づけて、
彼らと『戦い』を繰り広げていたんだけど、友達はそうはいかなかった。



友達は、最初のうちこそ、
あたしにちょっかいを出す『馬鹿ファン』に我慢してくれていたけど、
結局、あたしから離れていった。



怖かったんだと思う……。
あたしだって、ホントは怖いもん。



友達の事は、責められなかった。




だけど……さみしかったよ……。
50 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時18分11秒
学校では、『石川梨華』がテレビで初めて映し出されたときは、
あたしがモー娘。オーディションを受けたと思ったらしく、
みんな大騒ぎになったけど、
すぐに、あたしと石川梨華の『違い』に気づいて、誤解は解けた。


それでも、男子の中にはヘンにはしゃぐ奴もいた。


急になれなれしく声をかけてきたり、
写真を一緒に撮りたい、ってやつとかね、自分の名前を呼んでくれ、とか……。


みんなして、『梨華ちゃん』と一緒に過ごしたつもりになりたいらしい。



その中でも、最悪なのが、学校の『写真部』。


『アイドル研究会』の異名を持つ彼らは、
あたしの事を隠し撮りして、
『今日の梨華ちゃん』なる写真をインターネットに流していた。


さらには、あたしの言葉遣い、生活態度、その他もろもろに
うるさく口出ししてきて、
あたしに『梨華ちゃん』であるよう強要して来た。


それだけじゃない。
こいつら、恥ずかしげもなくあたしのところにやってきては
「今の若さを永遠に残しておきたくはない?」
と、ヌード写真をとりたがるんだ。



――最低のバカどもだ。
51 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時19分35秒
このバカ軍団、『写真部』を、あたしは無視するか、機嫌が悪い時は遠慮なく殴った。
それでも懲りないのか、こそこそと『注意』してくるんだから始末が悪い。



もっとも『今日の梨華ちゃん』については、すぐに中止になった。



あたしが隠し撮りに気づいたからだ。



写真部への不満がたまりまくっていたあたしは
直接、部室にのりこんで、写真のネガを全部取り上げて、
連中に、「二度といたしません」って約束を取り付けて、中止させた。


どうやって約束させたかって……?
それは……まあ、想像にお任せするよ。




後、こんなこともあった。


中学校の時、あたしをふった『あいつ』が
「真剣に付き合いたい」なんてふざけたこと言って来たんだ。
(彼は『梨華ちゃん』の大ファンだった)

あたしの返事は彼のことを殴り飛ばす事だったけど……。



……これは、哀しかったね。
52 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時21分13秒
『写真部』をはじめとする、学校の『馬鹿ファン』は本当に最悪だった。



あたしの事を知らない人が間違えるのは、まだ許せるけど、
あたしを知ってて、『梨華ちゃん』の身代わりをさせようとする
こいつらは許せなかった。


今まであたしの事を避けてたくせに、調子のいいこと言ってんじゃねえって!!



女子は女子で、
『馬鹿ファン』の男子にいろいろつきまとわられるあたしを見て、
「調子に乗ってる」なんて陰口をたたいてるし……。



勝手に嫉妬されて、今まで以上に嫌われた。




……あたしの気持ちをわかってくれる人間なんて、学校にはいなかった。
53 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時22分43秒
いろいろな騒ぎに巻き込まれるうちに、
あたしは最近じゃ、学校に行く事が、そして外に出ることがイヤになった。



実際、もう学校には、まともに行っていない。


家の人に、余計な心配をかけちゃいけないから、
学校へ行くフリはしてるけど、
実際はどこか、人気の少ない場所でぼんやりと過ごしている。
街へ出てもいいのかもしれないけれど、
いつ馬鹿なファンに追いかけられるかわからない。



家を出たら、あたしは『梨華ちゃん』になってしまうから……。



無邪気に、勇気を振り絞って声をかけてくる人、
身勝手な『馬鹿ファン』、学校の馬鹿な連中……。
梨華ちゃん、梨華ちゃん、梨華ちゃん、梨華ちゃん……!!



もう、うんざりだった。
あたしは『梨華ちゃん』じゃない! 高木ちひろだ!!



なんで、あんたたちに、
『あの子』と全く関係ないあたしが、いつもいつも振り回されなきゃいけないんだ!!
54 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時24分14秒
ファンだけを責めるつもりは、あたしにはない。



誰が一番悪いのか、それはわかっているんだ……。



石川梨華とモーニング娘。……こいつらだ……!




石川梨華さえいなかったら、
あたしは、彼女のファンが起こす、くだらない騒ぎに巻き込まれる事もなかったし、
モー娘。が、『増員』なんてイベントをやらなかったら、
石川梨華が芸能人になる事なんてなかったんだ……。



あいつらが全ての元凶なんだ……!



あいつらが、あたしのささやかな『幸せ』をとっちゃったんだ!!
55 名前:第一章 (2)あたしと梨華ちゃん 投稿日:2001年07月28日(土)17時26分06秒
……ムチャクチャな理屈かもしれないね。



だけど、あの子がいなかったら、今朝の痴漢騒ぎも無かったことなんだよ。



さっき、駅事務所で大暴れした、あたしの気持ちもわかってくれたかな……?



今、あたしは、一日でも早く、石川梨華と『モーニング娘。』が、
人気をなくして、消えてくれることを祈ってる。



そうすれば、また今までの『幸せ』を取り戻せるだろうから……。



……もっとも、その願いが叶うのは、まだまだ先のことのようだけど……。


今、人気絶頂だからね、モー娘。は……。




――ポスターの彼女たちは、笑顔を浮かべてあたしを見つめている。



あたしはそのポスターを乱暴に破り捨てた。



おなかが、ぐぅ、と泣いた。
56 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年07月28日(土)17時27分06秒
隠します(w
57 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年07月28日(土)17時28分02秒
まだまだ(w
58 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年07月28日(土)17時28分53秒
ちょっと面倒(w
59 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年07月28日(土)17時29分52秒
ようやく半分(w
60 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年07月28日(土)17時31分04秒
よし、気合い入れるぞ、ゴルァ(w
61 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年07月28日(土)17時31分56秒
後ちょっと(w
62 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年07月28日(土)17時32分31秒
ファイナル!!
63 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年07月28日(土)17時35分06秒
……と言うことで、更新終了です。

今回の更新部分はかなり悩んだところでして……

かなり更新が遅れてしまいました。
申し訳ないです。
64 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年07月28日(土)17時36分33秒
続きも頑張って執筆中です。

何度も言うようですが、ちょっと特殊な娘。小説ですが、
皆さん、よろしくお願いします
(って、皆さん読まれているのだろうか?^^;)
65 名前:削除済み 投稿日:削除済み
削除済み
66 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年07月28日(土)17時42分11秒
ミスった…鬱だ、氏のう…

これが正解です。
「第一章すべてのはじまり(2)あたしと梨華ちゃん」
>>36-55

後、今回の更新分で、最初のところだけ、
「第1章」となっているのはお見逃しを…(w
(細かいのです)
67 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年07月28日(土)17時43分08秒
では、また次回、よろしくお願いします
68 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月03日(金)00時11分42秒
読んでますよ〜。どういう方向に向かうのか、楽しみにしてます!
69 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年08月10日(金)18時05分06秒
更新です
70 名前:第一章すべての始まり 3)出会い 投稿日:2001年08月10日(金)18時08分03秒
駅前の、昼時なのに客のいない、まずいラーメン屋で食事を取ったあたしは、
気分を変えるために、駅前の大通りにある、お気に入りのブティックに行く事に決めた。



今の時間、大通りは人が少ない。
だから、この時間この通りをぶらつく事も多いんだ。


通りには、いろんなお店が建ち並んでいて、歩いているだけでも、結構楽しい。



ブティックに入ろうとした時だった。


「高木ちひろさんだね?」


後ろから肩を叩かれた。


振り返ると、白いカッターシャツに青いネクタイを締めた、
サラリーマン風のやせた男の人が、笑顔を見せていた。
オヤジ、と言うにはかわいそうだと思った。まだ三十そこそこだろう。


「はい、高木ですけど……」
「よかった。ちょっとだけ時間いいかな?」
「はあ……」
街中で、自分の名前を呼ばれる事なんて、めったにある事じゃない。
あたしは、笑顔をたやさない相手のリズムに乗せられていた。
71 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2001年08月10日(金)18時10分53秒
「ここじゃあなんだから、あっちで話そうか?」
男の人はそう言うと、車道に止められた黒いワンボックス・カーを指差した。


――うん?
あたしは、この風景をどこかで見たことがあるぞ。
あたしの頭が回転を始める。


――そうだ、あの時だ……ヘンなビデオに出ないか? と誘われた時だ!
あの時も、あたしを巧みに話にのせて車に乗せられたんだった。
あたしはあの時、必死で逃げたんだ。
よく逃げられたものだと、今でも思うよ。


見ず知らずの人間を、いきなり車に乗せるなんて怪しすぎる……。


まずいぞ、逃げないと……。


「あの、あたし忙しいんで……」
「通りをぶらついてたのに? いつものブティックに行くつもりだったんでしょ?」
笑顔を絶やすことなく、男の人はぴしゃりと言った。
「テストも終わって、今日はもう予定は無いはずだね?」


何だよ、コイツ……。
なんでこんなに、あたしの事を詳しいんだ? いきなりあたしの名前を呼んだし……。
あたしの事を知ってるってことだよね……。


疑問がどんどん浮かんでくる。
思わず出た言葉がこれだった。
「あんた、一体誰?」
72 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2001年08月10日(金)18時12分19秒
ああ、といったふうに男の人は頷くと
ズボンのポケットから財布を取り出して、名刺を一枚あたしに差し出してきた。
「アップフロントの三宅隆弘といいます。よろしく」
「アップフロント?」
名刺を受け取ったあたしは首をかしげた。
聞いたことない……。


「芸能プロダクションだよ。名刺に書いてある」
三宅と言う人は、あたしの疑問に答えた。
確かに名刺には『芸能プロダクション・アップフロント』とある。
「モーニング娘。は知ってるよね? 彼女たちが所属してるんだ」
「モー娘。の事務所!?」
あたしは声をあげた。


――なんだか嫌な予感がする。
と言うより、モー娘。とは関わりたくない。考えるだけでも気分が悪い。


「忙しいんで失礼します」
「ちょっと待って!」
この三宅とかいう人は、なかなかしつこい。
頭を下げて、この場から立ち去ろうとするあたしの前にまわりこんできた。
「話だけでも聞いてもらえないかな?」
73 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2001年08月10日(金)18時13分41秒
ヤロォ……。
「イヤだっつってんだろ? しつこいよ、あんた」
あたしは目の前の三宅の横を通り抜けようとするが、それを彼は許さない。
「五分だけでも」
「イヤ、そこどいてよ」
「大事な話なんだ」
「大声出すよ」
「ちょっとだけ、付き合ってもらわれへんかな?」
あたしと三宅の会話に、聞きなれない関西弁が後ろの方から混じってきた。


――うん、誰だ?


振り返ったあたしは、言葉を失った。


あたしの目には、
ちょっと太っていて、金髪に色眼鏡、
派手なアロハシャツを着ている男の人が映っている……。



――間違いない……!



あたしの目に異常がない限り、笑顔であたしのもとに近寄ってくる男の人は、
モーニング娘。のプロデューサー、『つんく』その人だった。


「話だけやから」
74 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2001年08月10日(金)18時15分10秒
更新終了です。
75 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2001年08月10日(金)18時15分46秒
ちょっと隠します。
76 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2001年08月10日(金)18時16分46秒
名作集も作品がたくさん増えましたね。
文字数制限とかが変わっていたのにはビックリしました^^;
77 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2001年08月10日(金)18時17分56秒
これからの更新も考えてやらないといけないわけで…

容量の問題とかもあるようだし…
78 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年08月10日(金)18時20分14秒
まあ、じっくりコツコツと更新していきますです。

しかし、いつになったら娘。は出てくるのでしょうか?(w
私も早く出会いたいものです(w
79 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年08月10日(金)18時24分45秒
>>68さん、ありがとうございます。
作者の私でさえも、「早く娘。を!!」と思ったりしておりますが、
じっくりと腰を据えて話を進めていきたいと思っているので、よろしくお願いします。
80 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年08月10日(金)18時30分17秒
それでは、最後になりますが、今回の更新分を…

「第一章すべての始まり (3)出会い」
>>70-73

ちなみに、これで「第一章(3)」は終わりではありません。
まだ続きます…
ひとまず完成分だけ、先に公開させていただきました。
81 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年08月10日(金)18時31分48秒
では、また次回の更新の時、よろしくお願いします。
今回は更新少なくてすいません。
82 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月11日(土)09時06分40秒
どうなって行くんでしょう?
先を楽しみにしてます!
83 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月28日(火)06時53分29秒
はじめて読ませてもらいました。
まだプロローグの段階だと思いますが、
なかなかおもしろい話になっていきそうなので更新楽しみにしてます。
84 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年09月04日(火)01時33分15秒
作者です。

突然ですが、ちょっとこちらのPCでトラブルが発生してしまいました。

ウィルス感染の可能性もあり、修復まで時間がかかるかもしれません。

ただでさえ遅筆であるのに、さらに更新が遅れてしまうかもしれません。
拙作をお読みくださっている皆様、大変申し訳ありません。


レスです。

>>82さん ありがとうございます。
     続きの方もいい感じで進んでいたのですが、
     続きはPCの調子にかかってきそうです。申し訳ありません。
     更新は遅れてしまうかもしれませんが、
     よろしかったら、最後までお付き合いください。よろしくお願いします。
     
 
>>83さん そうですね、まだプロローグの段階ですね。娘。もでてこないし…(w
     今までとはちょっと違う娘。小説にしたいと思っているので、
     最後までよろしくお願いします。
     更新遅れてしまうかもしれません。すいません。

本当に、勝手な事ばかりで申し訳ありません。
いい作品を作る事が皆様への恩返しだと思っておりますので、
いい御恩返しができるよう努力します。

これからもよろしくお願いします。
85 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月11日(火)13時32分14秒
面白い!待ってますよ。
86 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2001年09月15日(土)23時55分17秒
つんくにビビったわけじゃないけど、あたしはなんだか圧倒されてしまって、
つんくや三宅達に促されるまま、黒いワンボックス・カーに乗り込んでいた。




運転手に指示されて、後部座席に乗せられたあたし。
車内に入ると、向かい合わせに座席があって、
あたしは、進行方向とは反対側の方に座らされた。


つんくと三宅は、順番にあたしの向かいに座る。



そして、つんくたちの席には先客がいた。
87 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2001年09月15日(土)23時56分43秒
一番奥の、窓側に座っている、ふちなしのメガネをかけた男がそれで、
このクソ暑い日にもかかわらず、黒い背広を着ている。



歳は……。
たぶん、この車の中のメンバーでは一番上だと思うけど……。
若いのか、歳をとっているのかよくわからなかった。
四十くらいにも見えるし、二十代後半くらいにも見える。


なんだかイヤな感じのする男だ。
決して、作りの悪い顔じゃないけど、その表情は、ひどく冷たいものだった。


あたしが車に乗り込んだときから、あたしをジーッと見て、目を離そうとしない。
まるで品定めでもしているかのようだ。


失礼なやつだな……。


なにか言ってやろうか、とも思ったが、
つんくたちが入ってくると、すっと窓の方に顔をそらしたので、やめておいた。
88 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2001年09月15日(土)23時58分49秒
「今日は暑いなあ、生き返るわ。車に乗ってよかったやろ?」
額に浮かんだ汗を拭いながらつんくは笑った。
朝の駅事務所ほどじゃないけど、車の中もよく冷房がきいている。
「家には送ったるからな、いいでしょ?」
隣の男に確認する。窓を見たまま、男は黙って頷いた。


男の方からあたしに視線を戻したつんくが、コホンと小さく咳払いすると姿勢を正した。
「じゃあ、改めて自己紹介しとこか……。
俺は……知っとると思うけど……モー娘。プロデューサーのつんく。で、こちらが……」
つんくが隣の三宅を紹介する。
「アップフロントの三宅隆弘です」
三宅はにっこり笑った。

その台詞、さっきも聞いたよ。


「こちらは、アップフロント副社長の大槻さん」
つんくが男を紹介した。
「副社長……!」
ちょっと意外だった。



つんくの話す様子や男の雰囲気から、
この車の中では、男が一番エライ人間なんだろう、とは思っていたけど、
まさか副社長だなんて……。最高幹部ってヤツじゃん。副社長って言ったら。

89 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2001年09月16日(日)00時00分57秒
大槻という男は、つんくの紹介を受けても、
にこりともせずに、窓を見たままだった。あたしの事を見ようともしない。

さっきまであたしに向けられていた視線がウソのようだった。


普通だったら、そんな大槻の態度にあたしは黙っていない。ひとこと何か言ってるだろう。
どう考えても失礼だから。



だけど、今のあたしには、大槻の態度に文句を言うような余裕は無かった。



急に不安になっていた。脚がかすかに震えていた。



――今、あたしの向かいに座る三人の男たち。


真ん中のつんく、そしてつんくの両脇の副社長をはじめとする事務所の人間……。


みんなタダモノじゃない。
あたしのキライなモー娘。の関係者。それも下っ端じゃない、トップクラスだ。



そんな人間たちがあたしに何の話なんだろう。


笑い話ですんでくれないかな……。
90 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2001年09月16日(日)00時02分25秒
「話ってなんですか?」
こわかったけど、あたしが切り出した。早く話の内容を知りたかった。


つんくが小さくため息をつく。顔から笑いが消えた。
「あのな……モー娘。って知っとるよな?」
「知ってるけど……」
やっぱりモー娘。関連の話なのか……。
つんくの表情から、これで笑い話の可能性は消えた、と思った。
「それがどうしたの?」



しばらくの沈黙の後、つんくがあたしの目をじっと見つめると言った。
「いきなりやけど……モー娘。に入らへんか?」
「はあ!?」
あたしは素っ頓狂な声をあげた。



なんだそりゃ!?
91 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2001年09月16日(日)00時04分05秒
「あの……何言ってるんですか?」
さっぱりわからない。一体なんだ?
「せやから、モー娘。に入らへんかって、言うてんねや」
「冗談でしょ? これ、ドッキリか何かですか?」
どう考えても信じられない。あたしがモー娘。に入る? ドッキリの番組かと思った。
どこかに隠しカメラがあるんじゃないか、と、周りをきょろきょろ見回した。
「カメラなんかあらへんよ。ドッキリとかやない、真剣な話や」


ウソォ……。


「突然の話で、信じられないだろうけど、真面目な話なんだ。
君にモー娘。に入ってほしい」
三宅の方を見ると、彼の笑顔もすでに消えていた。


なに……? 一体なんなの……? この真剣な空気は一体……!?


「な、何であたしが……?」
混乱する頭を何とか整理して、つんくに質問した。
何であたしがモー娘。に……?


とたんに、つんくの表情が、さらに険しいものになった。
うつむいて、あたしから目をそらす。なんだか、答えにくそうだ。



不気味な沈黙があった。



なんだ……? この沈黙……。
92 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2001年09月16日(日)00時05分52秒
つんくと同じく、厳しい表情の三宅が大槻をちらりと見た。
大槻はあいかわらず、窓の方を見つめている。


そんな大槻の考えを読んだのか、三宅があたしを見ると、口を開いた。
「はっきり言うとね、君に『石川梨華』としてモー娘。に加入してもらいたいんだよ」



なんだって!?


――『石川梨華』としてモー娘。に加入? エ……何? どういうことさ?



って言うか、あたしが入ったら、モー娘。に、石川梨華が『二人いる』ことになるし……。


さっぱりわかんないぞ!!



あたしは、さらに混乱した。




「あ、あの、一体どういう……?」
「石川梨華は、今、どうしてる?」
あたしの質問をさえぎるように、
沈黙を続けていた大槻が、突然、口を開いた。


窓からあたしに、その鋭い視線を移すと、そのまま目を離そうとしない。
93 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2001年09月16日(日)00時07分24秒
――石川梨華がどうしてるって……。


一週間ほど前の事だ。
ワイドショーで、いや、テレビだけじゃなく、新聞、雑誌、全てのメディアで、
『モー娘。石川入院』って騒いでた。


その内容はというと、
『ダンスレッスン中の石川が、突然スタジオで倒れて、緊急入院した』
というものだった。風邪をこじらせてしまったらしい。


そして、体調が回復するまで、一切の仕事をキャンセルするって……。



あたしよりも、あんたたち関係者が一番知ってる事だろう。



そのことを言うと、大槻は初めてあたしに笑顔を見せた。
鋭い眼差しはそのままだったけど……。
「違うな」
――え?
「石川梨華は失踪したんだ」
94 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年09月16日(日)00時07分56秒
以上、今回の更新分です
95 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年09月16日(日)00時09分03秒
何とかPCも無事だったようで、
これからも執筆をつづけていけそうです^^;

一安心(w
96 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年09月16日(日)00時14分27秒
最後にレスです^^

>>85さん
ありがとうございます。
これからもコツコツと頑張りますのでよろしくです^^


ようやく物語が動き始めました。
続きもちょっと今てこずっていますが、
山を超えたら公開しようと思っているのでよろしくです。遅筆ですいません。


ちなみに今回の更新分。
「第一章すべての始まり(3)出会い(第二回更新)」
>>86-93


まだ、「第一章(3)出会い」は続きます。
今後もよろしくお願いします。


それでは。
97 名前:パク@紹介人 投稿日:2001年09月26日(水)13時58分15秒
こちらの小説を「小説紹介スレ@青板」に紹介します。
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=blue&thp=1001477095&ls=25
98 名前:浪花文語楼 投稿日:2001年10月11日(木)03時49分48秒
溶接とは関係ないので恐縮ですが、
ついに紗耶香が復帰…

私の中にあった、何かモヤモヤが吹っ飛んでしまいました。
ちょっと更新遅れていますが、これから頑張る紗耶香同様、
自分も頑張らないといけないな、と思う文語楼でした。
雑談でごめんなさい。
99 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月15日(木)07時17分14秒
放棄ですかね?
100 名前:浪花文語楼ひたすら恐縮 投稿日:2001年11月18日(日)03時16分45秒
>>99さん
す、すいません〜〜〜(汗
放棄じゃないんだけど、ただいわゆるドスランプで…
って、言い訳してもどうにもなりませんね(汗
(しかも「スランプ」という言い訳、どっかで「放棄する作者の典型の言い訳」とか言われてたし^^;)
続きの方、今、急いで書いてます。
ちなみに放棄はしませんので。
お待たせしてすいません…

ちなみに>>98の「溶接」は「小説」ですわ…なんてこった、鬱だ…
101 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月24日(土)05時33分02秒
基本的に完結するまではレスは控えさせてもらっているのですが、
ちゃんと読んでいますので。次回の更新、楽しみに待っています。
102 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月07日(月)19時26分45秒
sage
103 名前:王大人 投稿日:2002年01月18日(金)02時35分08秒
死亡確認!!
104 名前:浪花文語楼 投稿日:2002年02月16日(土)02時36分18秒
ええっと、氏んでいない、ということで、少しだけ更新を…(汗
105 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2002年02月16日(土)02時38分24秒
――失踪? 石川梨華が……!?


「ちょうど一週間前のことだよ。
いつものようにダンススタジオで、メンバーと新曲のレッスンをやり終えて、
スタッフが石川を家に送ったんだけど、その後の行方がさっぱりわからないんだ」
意を決した様子で、三宅が事情を明かした。
「次の日の朝、スタッフが石川を迎えに行ったんだけど、
そのとき、すでに部屋の中には誰もいなかったんだよ」


――朝、部屋には誰もいなかったって……。
「なんか、事件に巻き込まれたんじゃないの? 誘拐されちゃった、とか……」
あたしは、かなり混乱してたけど、とっさに浮かんだ自分の考えを伝えた。
106 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2002年02月16日(土)02時39分28秒
「誘拐とかだったら、すぐにでも警察に届けるんだけどな」
大槻は苦笑いした。
「マネージャーに、本人から電話があった。
“場所は言えないけど、元気です。探さないでください”ってな」
「後になってからやけど、手紙も送られてきたんや。
“突然の事で、御迷惑おかけしてすいません”ってあったわ……」
そう言って、頭を抱えるつんくに答えるように、
本当にいい迷惑だ、と大槻がいまいましそうに吐き捨てた。
「誘拐じゃない、失踪したんだよ」
三宅がため息混じりに首を振った。


――そんな、とんでもない事が起こってるなんて……。



話を聞いたあたしは、言葉を出す事が出来なかった。


その場を重い空気が覆っていた。
107 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2002年02月16日(土)02時40分27秒
しばらくして、大槻がそれを打ち破った。
「この失踪した事実を明かすわけにはいかん。絶対にな」
「人気アイドルの突然の失踪劇だからね。スキャンダルのネタとしては充分なんだよ」
三宅があたしの目をじっと見つめる。
「このことが明らかになったら、どんな騒ぎになるか……大体想像つくよね?」

「あ、はい……」
石川の失踪が明らかになったらどうなるか、頭の悪いあたしでもそれは簡単に想像できた。
「毎日ワイドショーとかで取り上げられて……みんな大騒ぎすると思う」
108 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2002年02月16日(土)02時42分23秒
あたしの言葉を聞いて大槻は、そうだ、と小さくうなづくと、
「石川の失踪の事実から、メンバー間の確執、事務所の問題、金銭トラブル、男の影……。
色々と話題になって、石川、そしてモーニング娘。全体を揺るがす大スキャンダルになる」
「石川とモー娘。にあたえるダメージは…………とてつもないものだよ」
「少なくとも今の人気を維持する事は不可能だな」
「そうなったら、僕たち事務所や関係者も、みんな大打撃を受ける事になるんだ」
109 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2002年02月16日(土)02時43分01秒
「せやから、今日まで“病欠”いうことで、このことを伏せてたんや。
俺らとしては“病欠している間”に石川を見つけるつもりやった」
一瞬、間を置いて、大槻と三宅のハーモニーにつんくが加わった。
「そして、石川を見つけたら、“全快した”いうことで、無事、モー娘。に復帰させる……。
今回の失踪を伏せるために、そういうシナリオを俺らは書いてたんや」
「そうする事で、“モー娘。の石川が一時病欠していた”という“事実”だけを残して、
モーニング娘。は何の問題もなく、今まで通りの活動を続けていくことが出来る訳だ」
最後は大槻がしめた。


――石川の入院って、そういうことだったんだ……。
あたしは黙ってうなづいた。


石川入院の“理由”はよくわかった。
110 名前:浪花文語楼 投稿日:2002年02月16日(土)02時45分35秒
今日はここまで、ということで…

最後の更新から約半年経ってこれだけの更新、
とはもう言い訳する言葉もございません。
何を言われても仕方ありません。すいません。
111 名前:浪花文語楼 投稿日:2002年02月16日(土)02時52分48秒
レスをつけさせていただきます。

>>101さん
温かいお言葉、ありがとうございます。
半年の間、事実上氏んでいた状態ですが、
今回の更新を機に、また甦らせよう、と思っております。
完結まで先は長いですが、よろしくお願いいたします。

>>103
王大人様…(汗
まさか、あなたに「宣言」されることになるとは…って仕方ないですよね。当然の事です。
しかし、死なずにこれからも続けていきたいと思っていますし、
二度とあなたの宣言を受けないようにしたい、と思っています。
厳しいお言葉、ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
112 名前:浪花文語楼 投稿日:2002年02月16日(土)02時55分54秒
それでは、次回の更新の時もよろしくお願いします。
失礼します。
113 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月17日(日)00時36分46秒
おぉ、更新されてる!
王大人が死亡宣告をすると復活するジンクスは健在だな。
114 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2002年03月09日(土)11時03分52秒
「しかし、厄介な事にな……」
大槻が眉間に深くしわを刻んで、腕を組んだ。
「肝心の石川が今日になっても見つかっていない」
「まだ見つかっていないんですか……」
「ああ。俺らも全力挙げて探してるんやけどな……アカン、手がかり一つなしや」
大槻に代わって返事をしたつんくは、小さく首を振ると、弱々しくため息をついた。
「ホンマ……どこ行きよったんや…………」
115 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2002年03月09日(土)11時05分21秒
「石川がいない今の状況だと、“復帰”も何もないわけだが……」
ため息をついた後、ガックリとうなだれたままのつんくに全く構うことなく、大槻が言った。
「だからと言って、ずっと“病欠”では通せない。これはわかるか?」
「え、どうしてですか、石川が見つかるまでは“病欠”ってことでいいんじゃあ……?」


さっき、『“病気で休業中”に石川を見つけて復帰させる』って聞いたから、
石川が見つかるまでは、ずっと“病欠”で通したらいいのに、と、大槻の言葉には疑問が残った。
116 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2002年03月09日(土)11時06分30秒
あたしが疑問を持っていることを知った三宅が、穏やかに口を開く。
「それはね、石川の“病欠”の理由が“風邪をこじらせたため”だからだよ。
風邪だったら、“こじらせて入院した”とは言え、全快するまでに、そんなに長い時間は必要ないからね。
石川の入院を知らせるワイドショーとか見て、君は、彼女が長いこと仕事を休むって思ったかな?」
「あ……いや、思わなかったですね」

ワイドショーを見て、あ、入院したんだ、とは思ったけれど、長い休業になる、なんて思わなかった。
風邪だったら大した事ない、って思ったから……。

あたしの言葉を聞いて、三宅は優しくうなずいた。
「そうだよね。普通、風邪で休んでいる、というのなら、休業が長くなるとは思わないよね。
だから、石川が見つからないからといって、ずっと“病欠”なんてことにしちゃうと、
マスコミをはじめ、みんなに“病欠”を怪しまれてしまって、石川の失踪がばれてしまうかもしれないんだ」
「ああ、なるほど……だから、ずっと病欠では通せない、って訳ですね」

――病欠のウソがばれて、石川の失踪がばれちゃったら元も子もないもんね。
ようやく大槻の言葉の意味が理解できた。
117 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2002年03月09日(土)11時07分35秒
せやからな、とつんくが付け加えた。
「“病欠”が怪しまれるのを避けるためにも、今日にでも、石川の“退院”を発表するつもりなんや。
一週間前の失踪当日から風邪で入院してる事になってるから、もうええ加減、退院せんとおかしいやろ?」
「そうですね。風邪だったらそんなに長く入院しないですもんね」
石川の“退院”を発表するのは、失踪を病欠で隠し通す為には、当然な事だと思った。
118 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2002年03月09日(土)11時08分28秒
「問題はその先だ」
大槻が鋭く言った。
「退院後、石川の復帰をどうするのか? 退院したら、いずれ仕事に復帰するのは当然の事だからな」
「ホンマやったら、今の時点で、既に石川が見つかってて復帰のはずやったんやけどな……」
まさか今日までみつからへんてなあ、と、つんくがまた大きなため息をつく。
119 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2002年03月09日(土)11時09分28秒
「実は、こういう状況も想定して、僕たちはあるアイデアを考えておいたんだよ」
つんくの隣で口を開いた三宅の表情は穏やかだったけど、その目は大槻と同じくらい鋭かった。
「失踪を絶対に病欠で隠し通すためのアイデアをね」
「こういう状況って……石川が見つからないってこと?」
三宅に問い質すと、彼は静かにうなずいた。

――石川が見つからないかもしれないことも、こいつら最初から計算してたんだ……。

準備がいいというか、先の先まで読んでるというか……。
何が何でも、“病欠”で失踪を隠し通したい彼らの執念みたいなものを感じてしまって、ちょっと怖かった。


「で、そのアイデア、というのは……もう、わかるよね?」

――そういうことか……。
彼らの話が理解できたあたしは、黙ってうなずいた。
120 名前:第一章 (3)出会い 投稿日:2002年03月09日(土)11時10分23秒
『君に“石川梨華”としてモー娘。に加入してもらいたいんだよ』

さっき三宅に言われた言葉が頭の中でよみがえる。
最初に聞いたときは、訳がわからなかったけど、色々と事情を聞いていると、その意味はよくわかった。


「失踪を隠すために、あたしに石川梨華の代わりになって欲しい、そういうことですね」

あたしの言葉を聞いて、大槻が唇に薄い笑みを浮かべた。
「その通りだ。“石川梨華”さん」
121 名前:浪花文語楼 投稿日:2002年03月09日(土)11時12分08秒
更新でした。
何とか一か月以内に更新したけど、これだけってねえ…(汗
122 名前:浪花文語楼 投稿日:2002年03月09日(土)11時14分57秒
レスです。

>>113さん
確かにそういうジンクスありましたね(w
王大人様のお力はすごい、ということで…(w

これからも、続いていきますのでよろしくです。
123 名前:浪花文語楼 投稿日:2002年03月09日(土)11時18分43秒
毎度のことながら、更新が遅くて恐縮です。
ただ、時間をかけた分、じっくりと丁寧に書きあげた作品にしたいと思っています。
それが、自分のけじめと思いますし。

それでは、また次回の更新の時よろしくです。
124 名前:玉大人 投稿日:2002年03月16日(土)02時31分01秒
更新おつかれさまです。
展開的には、これからが本番だと思いますので、王大人に
死亡確認されない程度(W に、じっくり更新して行ってください。
個人的には、週1〜2回ぐらいの更新ペースが保たれていると
読みやすいと思います(わがまま言ってすみません^^;)。

125 名前:王大人 投稿日:2002年04月13日(土)02時22分04秒
死亡宣告!!(2度目)
126 名前:通行人A 投稿日:2002年04月15日(月)18時50分45秒
結構楽しみにしてたのですが放置なんでしょうか?
毎週1〜2スレッドでも更新すれば死亡宣告を受けることないのに。
127 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月29日(月)12時39分29秒
2回も死亡宣告受けた上にレス無しですか。
いろんなところでカキコ見るけど、この作者はカキコする資格がないかもね。
もっと先のこと考えて行動したほうがいいよ。
128 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月29日(月)22時33分26秒
ちょっと特殊な小説って2回も死亡宣告を受けることだったんだ(w
129 名前:第一章すべてのはじまり 4)アップフロントにて 投稿日:2002年04月30日(火)04時01分59秒
窓の外に見える風景がどんどん変わっていく。

「もうすぐ着くよ」
ぼんやり窓の外を眺めていたあたしに、
手にしているファイルに目を通していた三宅が、顔を上げて外の景色をちらりと見るとにっこり笑った。
「そんなに緊張しなくてもいいからね」


あたしたちを乗せた車は今、アップフロントの事務所に向かっていた。
「車の中で話をしていても何だから、詳しい事は事務所で話そう」ということになったからだ。
三宅とつんくに車に乗せられたときは確か「五分でいいから」とか言われていたのに、そうはいかなかった。

だけど、考えてみたら彼らの話は、
あたしに「失踪した石川の代わりをさせよう」なんていうとんでもない内容だ。
車の中ですぐ答えを出せるような話じゃない。事務所でより詳しく話をする事は自然の展開だろう。
もしかすると彼らは、最初からあたしを連れて事務所へ行く事を予定していたのかもしれない。
130 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年04月30日(火)04時02分37秒
三宅に声をかけられたのをきっかけに、窓の外から車の中に目を移してみると、
あたしの向かいの窓際に座る大槻は、携帯電話で誰かと早口で話をしていて、
三宅はあたしに声をかけた後、またファイルを見つめていたのだけれど、
その表情はすごく険しくて、さっきあたしに微笑んだのがまるでウソのようだった。
だけど、そんなに怖い顔して見つめるそのファイルには、一体何が書かれているんだろう?

そして、その二人の間にはつんくが座っていて、さっきのあたしのように、窓の外の景色を見つめていた。
窓の外を見つめるつんくの姿は、なんだか二人に挟まれて小さくなっているように感じられた。
131 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年04月30日(火)04時03分28秒
――はあ、すごい事になったなあ……。

目の前の三人を見て思った。

『馬鹿ファン』を含め、いろんな人に今まで石川に間違えられて声をかけられたりしてきたけれど、
石川梨華やモーニング娘。はもちろん、
芸能界やそれに近い人間とあたしは全く無関係で今日まで過ごしてきた。
まさか、モーニング娘。プロデューサーのつんくや事務所の人たちと出会うことになるなんて、
しかも、あたしに「石川梨華のかわりをやってくれ」と言われるなんて、想像もしていなかった。

しかし、こうやって今あたしは彼らといっしょに彼らの事務所に向かっている。

三宅に声をかけられて車に乗せられてから、まだ一時間もたっていないはず。
このたった一時間足らずの間に、あたしは「似ている」というだけで、全く無関係だったはずの、
石川梨華とモーニング娘。をめぐる大きな流れに巻き込まれてしまった。
132 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年04月30日(火)04時04分11秒
あたしとモーニング娘。を結ぶ線は意外なところにあった。
さっき三宅たちが話してくれた。
133 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年04月30日(火)04時04分44秒
あたしの高校の写真部の連中が、あたしを隠し撮りして『今日の梨華ちゃん』と称して、
インターネットで写真を流していた事は話したけれど、
この『今日の梨華ちゃん』がつんくや大槻たちの間でも話題になり、
彼らは『今日の梨華ちゃん』の正体を調べて、あたし、高木ちひろの事を知ったんだ。

そして、「石川梨華にうりふたつの人間がいる」と、
芸能界の間であたしの名前はまたたく間に広がっていったらしく、
大槻の話では、少なくともモーニング娘。に関係する人間で、あたしのことを知らない人はいないそうだ。
あるゴシップ雑誌では、あたしの正体を探ろうとした特集記事まで組まれたらしい。

馬鹿な写真部のおかげで、
あたしが知らないうちに、あたしとモーニング娘。の間につながりが出来上がってしまっていたわけだ。
134 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年04月30日(火)04時05分36秒
そして突然起こった石川の失踪事件。
大槻たちは石川を探す事に全力を注いだのだけれど、
同時に「もしもの場合」に備えて、あたしに石川の代わりをさせることも考えた。
そのために改めてあたしの事をいろいろと調べたらしく、
さっき、三宅にはじめて声をかけられたとき、彼があたしの事を色々知っていて驚かされたけど、
それは彼らが十分にあたしの事を調査したためで、
あたしの事を彼らがいろいろ知っているのは当たりまえのことだったんだ。

ちなみに、あたしを使う事には反対意見もあったらしいんだけど、
最終的には、あたしだったら「充分石川の代わりがつとまる」と彼らは判断したそうで、
こうして今、彼らといっしょに、アップフロントの事務所に向かう結果になっている。
135 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ
136 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ
137 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
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138 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ
139 名前:謝罪 投稿日:2002年04月30日(火)04時17分25秒
またも更新が遅れてしまい、久々の更新となりましたが、
まず皆様に謝罪させていただきます。
外部スレでちらりと顔をのぞかせたのをきっかけに、
こちらの「紹介スレ」でも小説をご紹介いただいたにもかかわらず、
何ら私自身がこのスレで動きを見せず、二度目の死亡宣告を受けているにもかかわらず、
他のHPでカキコをするという、
極めて無責任且つ読者の皆様を愚弄する行動をとってしまいました。
大変申し訳ありませんでした。
全ては>>127さんのおっしゃるとおりと思います。
どんなことをいわれても仕方がありませんし、失ってしまった信頼を取り戻すのは至難の事と思います。
私自身が厨房と化してしまっておりました。
140 名前:謝罪2 投稿日:2002年04月30日(火)04時23分00秒
自分自身の中に皆様への、そして自分への「甘え」の部分があり、
それに流されつづけた結果が、今日の状況と思います。

この状況を打破するには、自分はひたすら小説を書くしかないのですし、
一刻も早く完結させる事と思います。
141 名前:謝罪3 投稿日:2002年04月30日(火)04時25分35秒
改めて読者の皆様には謝罪します。
大変申し訳ありませんでした。

浪花文語楼
142 名前:レスです。 投稿日:2002年04月30日(火)04時47分55秒
>>124玉大人さん
   拙作にお付き合いいただきましてありがとうございます。
   おっしゃるように、
   これからは一週間に一回は更新できるようにしたいな、と考えています。
   最初のうちはそうやってきていたわけですし、
   これからも数レスだけでも、更新できるようにしたいな、と思っております。
   ご指摘ありがとうございました。

>>125王大人様
   二度もお手を煩わせてしまう事になり、申し訳ありません。
   二度と王大人さんのお手を煩わせないようにします。
   申し訳ありませんでした。
143 名前:レスです。 投稿日:2002年04月30日(火)04時56分41秒
>>126通行人Aさん
   拙作を楽しみにしている、
   というありがたいお言葉をいただいているにもかかわらず、
   作者の私があなたに対する裏切り行為を取ってきておりました。
   このことを深く謝罪します。すいませんでした。
   今後の更新の事ですが、御指摘通り、
   一週間ないし二週間以内に一回は更新するようにしたいです。
   もし更新が厳しいようでしたら、ここで告知するようにして、
   「放置」という状態だけは避けるようにします。
   
>>127さん
   厳しい御指摘ありがとうございました。
   先に書いた通り全てはあなたのおっしゃるとおりと思います。
   これからは私自身が「行動」を伴って、結果を残すしかなく、
   そのために、この作品を完結させるべく頑張りたいと思います。
   厳しい御指摘、どうもありがとうございました。
   もし、今後も拙作にお付き合いいただける、というのでしたら、よろしくお願いいたします。
144 名前:レスです。 投稿日:2002年04月30日(火)04時58分31秒
>>128さん
 確かに言われるように極めて特殊な小説ですよね……。
   二回も死亡宣告を受けた小説は拙作以外にはないと思います。
   もう死亡宣告は受けたくないです……。 


と、言うわけで今回の更新はこれで終了したいと思います。
次回の更新の時、またよろしくお願いいたします。
御迷惑ばかりかけて申し訳ありませんでした。
145 名前:通行人A 投稿日:2002年04月30日(火)10時01分05秒
おおっ! やっと更新されましたね♪
他の方から厳しすぎる指摘があったようですが
正しい意見だとは思いませんが一理あると思いますよ。
見てる方はちゃんと見てるということですね。
話の展開ではまだまだ序盤ですから頑張って下さいね。
146 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月01日(水)21時51分37秒
私がこれまでに死亡確認を2回した小説は1作だけです。
この作品は二人の人間に死亡を宣告された、ただひとつの作品だと思います。

それはともかく更新お疲れ様です。
147 名前:レスです。 投稿日:2002年05月02日(木)04時00分49秒
>>145 通行人Aさん
   拙作にお付き合いいただきましてありがとうございます。
   厳しすぎる、と言うか、やはりこれは私の執筆姿勢に問題があったわけで、
   これは何を言われても仕方がないと思います。
   物語はまだ序盤ですが、これからもお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
   
>>146さん
   あなたがもしや…(汗
   そうですか、確か外部スレでも言われてましたね。
   しかし二人の方から「死亡宣告」されるとは…
   あまり立派な事ではありませんね。
   これからは死亡宣告されないよう頑張りたいので、よろしくお願いします。


と、ちょっとお知らせが。
先日の更新分で、一部修正が必要な個所が出てきてしまいました。
(レス番>>135からになります)
次回の更新では、この「修正」も含めた更新をする予定ですので、
一部重複している部分が出てきますが、御了承ください。

それではまた。
148 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年05月10日(金)03時08分33秒
「お、もう着くで」
窓の外を眺めていたつんくが声をあげると、三宅が再びファイルから顔を上げた。
「あ、本当だ。大槻さんどうします?」
「かまわん、正面につけろ」
大槻は携帯電話を耳から離さず、顔だけ三宅の方に向けて返事をすると、
「おい、着くぞ。正面だ、正面」と携帯電話に向かって早口で言った。
大槻の言葉を受けた三宅は運転手に「前に止めて」と指示する。

今、車は青山通りを走っていて、通りの両脇にはたくさんのビルが立ち並んでいたのだけれど、
このどこかにアップフロントの事務所があるようだ。

車は左車線に入るとスピードを落としていった。

この青山通り、歩道と車道の間には木が植えられているのだけれど、
よく見ると所々に木が植えられていないスペースがあって、
そのスペースの一つに黒い背広を着た男の立っている姿が目に入った。

車はどんどんスピードを落としていき、男の立つところまで来ると、そこで静かに止まった。
149 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年05月10日(金)03時09分18秒
車が止まると、男は小走りに車に近寄ってきて、あたしたちが座る後部ドアを開く。
どうやら男は出迎えのようだ。


「着いたよ」
三宅はそう言って、膝に乗せていたカバンを手にとりファイルを脇に抱えると、車を降りた。
男は車を降りた三宅に丁寧に頭を下げる。三宅は男に黙ってうなずき返していた。
「さあ行こか」
つんくはあたしの肩をぽんと軽く叩くと、三宅の後に続く。
男はつんくにも頭を下げたけど、三宅の時ほど丁寧じゃない感じだった。

「おい」
再びあたしの肩が叩かれた。それもちょっと乱暴に。叩いたのは大槻だった。
彼はもう話し終わったのか、携帯電話を背広の胸ポケットにしまいながら、
無言であたしに先に降りるよう、ドアの方に向かってあごを小さく突き出した。

まるで厄介者を追い返すようなその態度に、あたしはちょっとカチンと来たけれど、黙って従った。
150 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年05月10日(金)03時09分56秒
車を降りたとたん、強烈な日差しがあたしを襲った。
とたんに汗が吹き出てきたけれど、それはこの日差しのせいではなくて、緊張しているからだ、と思った。
日差しを浴びても、あまり暑さは感じなかった。


と、出迎えの男と三宅が車のそばで何か話している姿が目に入った。
そして、男が三宅と話しながら、ちらりと三宅の肩越しにあたしの顔をのぞいてきて、
二人を見ていたあたしとまともに視線があった。

黒縁のメガネをかけ、頭をオールバックにした男は、三宅やつんくと比べると小柄でやや猫背気味。
色白で無表情なその顔はまるでヘビのようで、なんだか気持ち悪かった。
151 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年05月10日(金)03時10分34秒
「ああ、高木さん、紹介するよ。彼、モーニング娘。のチーフマネージャーをしている橘君」
あたしと男の視線があったことに気づいた三宅が、あたしに男を紹介した。
紹介を受けた男はあたしの前まで来ると、名刺を差し出しながら、
「橘です。どうも」
と言って、にこりともせずに小さく頭を下げた。

橘に悪気はないのかもしれないけれど、
彼のとったその行動はなんだかすごく事務的な感じで、あまり好感が持てなかった。
だからあたしは名刺を受け取っても、黙って軽く頭を下げ返すだけだった。
愛想の悪いやつ、と思われたかもしれない。
152 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年05月10日(金)03時11分53秒
「おい、行くぞ。こんなところにいてもしょうがない」
いつの間にか車を降り、あたしの後ろに立っていた大槻はそう言って、
目の前に見える白い小さな雑居ビルに向かって早足で歩き出すと、
橘はあわててあたしの元を離れ、ビルに向かう大槻の後ろについていった。
そして、ペコペコと何度も頭を下げながら、何か大槻に話をしているようだった。

「それじゃあ行こうか」
大槻と橘がビルに向かう姿を見ていた三宅はあたしのほうに振り返ると、
大槻たちが中に入って消えた白いビルを指差した。
「このビルね。ここにアップフロントの事務所が入っているんだよ」
三宅が指差したビルは、けっして大きなビルではないけれど、それでも十階建てくらいある。
それに建てられてまだそんなに年数が経っていないのか、他に建っているビルよりも綺麗だった。
何階にアップフロントの事務所はあるんだろう?

「よっしゃ、行くで」
つんくの声を合図にあたしたちもビルに向かって歩き出した。
だけど、車に乗せられたときと同じようにまた脚が震えてしまい、ちょっぴり歩きづらかった。
153 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年05月10日(金)03時12分24秒
ビルの入口につくと、入口の脇にビルの案内板が張られていたんだけど、
これを見てあたしは驚いた。

案内板を見ると、ビルは十階建てになっているようなんだけど、
各階には「〜プロダクション」とか「○○プロモーション」とかいった名前がたくさんあって、
どうやらこのビルの中には色々な芸能プロダクションが入っているようだった。
特に、あたしたちがこれから向かおうとしている「アップフロント」の名前は、
なんと三つもの階にその名前を見ることが出来て、
このビルの中に入っているプロダクションの中ではかなりの大手なんだ、と思った。
154 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年05月10日(金)03時14分31秒
「おーい、こっちだよ」
先にビルの中に入っていた三宅が、案内板を見つめていたあたしに声をかけてきた。
三宅の声にはっとしたあたしは慌てて彼のいる場所まで駆け寄ると、そこは小さなエレベーターホールで、
三宅をはじめ、全員がそこで立ち止まっていた。
エレベーターのボタンは「上」のランプがついていて、みんなエレベーターがくるのを待っているようだ。
155 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年05月10日(金)03時15分02秒
「あそこで何してたんだい?」
あたしが入口で何をしていたのか不思議だったのか、三宅がたずねてきた。
「あっ、ビルの案内板を見てたんです」
「そんなの見てたんだ」
あたしの答えを聞いて三宅は笑った。
あたしは素直に思ったことを三宅に打ち明けた。
「すごいですね。なんかここのビルの中、いろんなプロダクションが一杯で……」
「ああ、このビルはアップフロントが建てたビルやからなあ」
「へ!? そうなんですか!?」
話に加わってきたつんくの意外な言葉に、あたしはビックリして声をあげてしまった。

――このビルをアップフロントが建てたって!?

「そうや。今から三年程前に昔からあった古いビルを取り壊してアップフロントがこのビル建てたんや。
そんで案内板にいろんなプロダクションの名前あったやろ? あれは全部アップフロントの子会社なんや」
「“アップフロントグループ”とでも言ったらいいのかな? それが全部ここに集まっているんだよ」
三宅の言葉につんくは「そうですね」とうなずいた。
156 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年05月10日(金)03時16分03秒
――アップフロントってかなり大きな会社なんだ……。

芸能プロダクションのことなんてあたしはよく知らないけれど、二人の話を聞くまで
アップフロントが、自分でビルを建てて、
しかも「グループ」を作ってしまうほど、大きな会社だなんて思っていなかった。

芸能プロダクションってあまり知られていないだけで意外とお金持ちなのかもしれない。
157 名前:更新完了 投稿日:2002年05月10日(金)03時18分17秒
本日の更新は以上です。
前のレスでも書いたとおり、前回発表した分で一部修正した個所がありますので、
その改訂版、及び続きの一部を更新させていただきました。

次回の更新の時またよろしくお願いいたします。
158 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002年05月22日(水)12時52分41秒
よく考えたらまだ一人も(本物の)娘。は出てきていない異色作品ですよね。
それはそれで面白いんですが、ちょっと心配なのが、この展開だとなんとなくですが
相当長い話となりそうな気がする(第1章の、しかもまだ導入部ですよね?)のと、
更新速度がそれに反比例して少し遅いのではないかということです(そのせいか2度も宣告を受けられたわけですし)。
もちろん作者様のご都合もあるでしょうが、細部まで完璧を期して書こうとされているのだとするなら、
まず始めのうちは話をある程度進めてしまう方が、読者のペースとしてもついて行きやすいような気がします。
わがままを申し上げて失礼とは思いますが、どういう感じになるのか早く先を知りたくて期待しているので、
ちょっとそのへんが気になりましたので。


159 名前:レスです 投稿日:2002年05月23日(木)11時09分10秒
>>158名無し募集中。。。様
御丁寧なレスありがとうございます。
言われるように確かに展開が冗長になってきている嫌いがありますが、
ただ、今書いている部分は
いわば「基礎工事」の部分ですのであまり手抜きをするわけにもいかず
作者としては、出来る限り読者の皆さんが退屈されないよう話を進めていきたいな、
と思っています。
現在私の個人的な事情から更新が遅れておりますが、
今週中、もしくは来週の頭には更新させるつもりです。
今後ともよろしくお願いいたします。
160 名前:どんぐり 投稿日:2002年05月30日(木)14時28分28秒
この作者さんは娘。が好きなの?それとも書くのが好きなの?
娘。出てこないし、書くのも遅いし、どちらでもないの?
なんか変です、おもしろくないし
161 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002年05月31日(金)11時43分54秒
結局放置か…。
162 名前:一部更新 投稿日:2002年05月31日(金)14時22分59秒
放置じゃないんで。
しかし、更新予定を大幅に越えてしまった…
163 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年05月31日(金)14時25分12秒
「もう全員そろっているのか?」
と、あたしたちのやりとりに全く関心がない様子だった大槻の言葉が耳に聞こえてきた。
声のした方を見ると大槻は無表情でエレベーターの階数を示す文字盤を見上げている。
「常盤さん以下、うちと築地の方は……あとは連中だけですね」
「なんだ、まだ着いていないのか?」
橘の返事が意外だったのか、ちょっと口調が変わった大槻は橘の顔を見た。
「はい。連中を乗せた車が渋滞に巻き込まれたようでして……。
さっき連絡があって、もう少しで到着するようなことを言っていました」
「……仕方ないな」
橘の説明を聞いて大槻はやや不満そうにため息を漏らすと、また無表情のまま階数の文字盤を見上げた。
164 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年05月31日(金)14時25分59秒
聞こえてきた彼らの話の内容の意味はよくわからない。
あたし達の他にも誰かがここに来るってことは確かなようだけど……。

――だけど連中って一体誰なんだろう?
あたしが首をひねった時、エレベーターの扉が静かに開いた。
165 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年05月31日(金)14時26分30秒
エレベーターが七階で止まったところで、あたしたちはエレベーターから降りる。
そしてこの階にあるというアップフロントの会議室に向かった。
エレベーターの中で聞かされた三宅の説明によると、そこでいろいろと話をするらしい。
166 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年05月31日(金)14時27分52秒
廊下をちょっと歩いたところに会議室はあった。

先頭を歩いていた橘が会議室の扉を開き、中に入ってみると、目に入ってきたのは背広姿の男たち。
彼らは先に部屋に入った大槻と三宅に頭を下げると、二人を囲むようにして何か言葉を交わしはじめた。

「……」
「………」
「…………」
「……」
「………………」
「……」

何を言っているのかはよく分からないけど、どうやらあたしの事を話しているようだ。
話をしている彼らの視線はずっとあたしの方に向けられたまま。
なんだか悪口をいわれているみたいであまりいい気はしなかった。

彼らもアップフロントの人間なんだろうか?
167 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年05月31日(金)14時28分24秒
「立ち話をしててもなんですから、とりあえず座ってもらったらどうです?」
多分この部屋の中で一番年上と思われる人の良さそうな男が、大槻とそのまわりの男たちに声をかけた。
男たちはまたボソボソっとお互い言葉を交わし合って納得した様子でうなずきあうと、
誰かが「そうですね」と言い、それを合図にするように男たちは黙って椅子に座っていった。

「あ、高木さんはそっちに座ってもらえるかな?」
みんなが席についていく中、どこに座ったらいいのか分からなくて、きょろきょろしていたあたしは、
三宅に言われて、男たちと向かい合う形で席についた。

「じゃあ始めましょうか」
席についた男たちの顔を眺めながら三宅は言った。部屋の中の空気が一気に引き締まったように感じた。
168 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年05月31日(金)14時29分03秒
あたしの向かいに横一列に並んで座る男たちの数は全部で九人。
つんく以外はみんなネクタイを締めていて、サラリーマンって感じの男ばかりだった。
大槻と三宅、それと男たちに、座ってもらってはどうですか、と声をかけた男が真ん中であたしの正面に。
つんくはその男の右隣に座っている。

一番左端に座っていた橘が立ち上がると、男たちを紹介していった。
169 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年05月31日(金)14時29分35秒
男たちは左端から順番に、
まずモーニング娘。チーフマネージャーの橘。

橘とは対照的に、見るからに体育系、という顔をした中年男が、
「ゼティマ」っていうレコード会社の取締役製作部次長の渋谷。
ちなみに、この「ゼティマ」(正確にはローマ字で「Zetima」って書くそうだ)って会社は、
モーニング娘。のレコード会社だそうで、ここも「アップフロントグループ」の会社の一つらしい。

まだ四十前後くらいだと思うけど、かわいそうなくらいに薄い髪の毛を強引に七三分けにしていて、
メガネの奥のキツネのような鋭い目が印象的な男は、
アップフロントの取締役でマネジメント部長をつとめる白井。なんだかすごく神経質そうな感じだ。

そして紹介は既に車の中でも紹介された三宅、大槻と続いた。
ちなみに橘の話では三宅は「取締役補佐役」という肩書を持っていて、それなりの立場にいるらしい。
170 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年05月31日(金)14時30分18秒
「大槻取締役副社長の隣、こちらがアップフロント代表取締役の常盤社長です」
橘の紹介を受けて、大槻の隣の男が「どうも」とあたしに丁寧に頭を下げてきた。

「へっ!?」
思わず声をあげてしまった。

――この人が社長!?

信じられなかった。ビックリしてしまった。

さっき聞いたつんく達の話だと、この「アップフロント」っていう会社は決して小さい会社じゃない。
よくわかんないけど、「グループ」を作るほどなんだから、それなりの規模の会社のはずだ。
そんな会社の社長なんだから、あたしはなんだかすごく立派な感じの男の人をイメージしてたんだけど、
実際はあたしの目の前に座る、この見るからに人の良さそうな常盤という人が社長だという。
確かにこの部屋の中で彼は一番年上のようだけど、
どう見ても社長という感じではなく、普通の平社員とか課長、とかいった印象だ。
実はあたし、紹介されるまで「この人はアップフロントの課長さんか何かかな」と思っていたんだから。
「座ってもらったらどうです?」と男たちに話す口調もすごく丁寧だったし、腰が低かったからね。

失礼かもしれないけれど、副社長の大槻の方が社長としての雰囲気はあると思う。
171 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年05月31日(金)14時30分57秒
「どうかされました?」
常盤社長の紹介に驚いて声をあげたあたしに、ちょっとビックリした様子で常盤社長が声をかけてきた。
「あ、な、何でもありません。すいません……」
本人を目の前にして心の内を素直に言えるわけがない。あたしは謝るだけだった。
常盤社長はそんなあたしを首を傾げながら不思議そうに見つめていた。
172 名前:一部更新完了 投稿日:2002年05月31日(金)14時46分27秒
今週の頭には更新をし、話を大幅に進めておきたかったのですが、
私の仕事の引き継ぎ等色々とあり、
執筆の方に満足に手がつけられない状態が続きました。
もう少し執筆の時間が取れるかな、と思ったら予想以上に忙しく、
先に言ってた更新予定も守れないという結果になってしまいました。
甘い見積もりから、約束を守れないことになってしまいすいません。
173 名前:一部更新完了 投稿日:2002年05月31日(金)15時06分28秒
あとちょっと最近皆様のレスにも上がってきてる
「娘。はどうなるねん?」というご意見についてですが…

当然のことながら娘。は出します。
ただ、ストーリーの展開上出せない、というだけでほかに理由はありません。
冗長な展開を見せて申し訳ないです。
174 名前:一部更新完了 投稿日:2002年05月31日(金)15時18分23秒
あとですね、もうお読みになった方ならお分かりでしょうが、
今回の更新で「へ、それはどうして」と思われた方がいると思うんですね。
アップフロントの社長の記述の部分で。

これについてはカナーリ迷ったんですが、
自分としてはパラレルとしてこの小説を捉えていますんで、
思い切って社長の設定も変えようかな、と。
パラレルなんだから、現実の体制にとらわれないようにしよう、と思い、
架空のキャラを登場させました。
言うまでもないですが、大槻や三宅、橘も想像です。

だからと言って「俺×娘。」にするつもりはないですが、
こういう展開の仕方には嫌気がさす、という方もいらっしゃると思うんですね。
ただ自分はそういう風にしか小説は書けないし、変えろ、と言われても変えられません。

作者の私が言うのも何ですが、「こんなんついていけんわ」と思われたのなら
もうそれは仕方のないことですし、離れられた方がいいと思います。
それは読者の方の権利であり、私には何も言う資格はないのです。
175 名前:レスです 投稿日:2002年05月31日(金)15時30分34秒
それではレスの方を…

>>160どんぐり様
それでは変人の書く変な小説、ということで…
せっかくお読みいただいたのに御不快にさせてすいません。

>>161名無し募集中。。。様
失礼ながら>>158名無し募集中。。。様と同じ方でしょうか?
>>159で更新予定をいっておきながら遅れてしまい申し訳ありません。
以前言ったように一週間ないし二週間に一回は更新するつもりでいます。
放置と思わせてしまい申し訳ありません。
176 名前:一部更新完了 投稿日:2002年05月31日(金)15時32分25秒
それではまた続きを書き上げたら現れることといたします。
遅れそうになる時にはレスを入れますので、よろしくお願いします。
177 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月01日(土)01時04分26秒
>作者の私が言うのも何ですが、「こんなんついていけんわ」と思われたのなら
>もうそれは仕方のないことですし、離れられた方がいいと思います。
>それは読者の方の権利であり、私には何も言う資格はないのです。
少し無責任ではありませんか?
178 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月01日(土)02時58分40秒
>>177
更新の遅い作者も無責任だが、sageスレをageるあなたも無責任と思われ
179 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月01日(土)08時05分18秒
読みたくない人は読むなということかな。
180 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002年06月01日(土)19時01分13秒
話が進んでいない現段階で面白いの面白くないのという評価はできないですが、
少なくとも作者さんは>>174のようなレスを自ら書かれないほうが良いと思いますよ。
ご本人にその気がなくても、悪く取られれば、>>179のように「読みたくない人は読むな」
という風にも取られますし、せっかく好意的に意見を言ってくれていたレスもあるのに、
「私はこういう形でしか書けない」とか「変えろと言われても変えられません」とレスされるのは、
すごく傲慢に聴こえますよ。文句のレスが多いのは、ご自分が作品を放置気味にされていたことや、
展開がとても冗長(正直、一年経ってまだ会社説明?・・・と誰もが思っても不思議ではないです)で
あることなど、作品自体に読者を惹きつける魅力が不足していたためであることを、しっかりと
認識され、謙虚に耳を貸す位の柔軟な対応をされた方が良いと思います。
きついことを申し上げるようですが、今のようなお考えでは、おそらく文句のレスは
無くならないか、誰も読まなくなるかのいずれかになってしまうような気がします。
どうか、冷静にお考え直し下さいまして、改善できる部分は改善されるようになさることを希望します。
181 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月01日(土)21時59分44秒
ものすごく傲慢に聞こえてもしかたないと思います。
2回も死亡宣告を受けたこと、更新が遅いこと、自分の公言したことを
守られていないこと…
それを踏まえた上での発言とは到底思えないです。
この場所はココの管理人さんが用意していただいた
公共の場であることを忘れてはいませんか?
読者を大切にしていますか?
182 名前:文語楼@お詫び 投稿日:2002年06月01日(土)22時10分02秒
私の不用意なレスが騒ぎを引き起こしてしまいました。
先に言っておくと、私には読者の方をえらぶ権利はないですし、そのつもりもないです。
感想レスについてもお褒めの言葉だけでなく、
お叱りや否定のご意見などがあってもそれは当然の事と思いますし、
作者はそれを素直に聞き入れる必要があると思います。
それを否定するなどという暴慢な事は出来ないです。

自分があのレスで言いたかったことは
「“特殊性ある本作”でその“特殊性”がつまらない、もしくは不快に感じられるなら、
この作品に無理してお付き合いいただくのは申し訳ない」
といわば一つのサービス精神のつもりでのレスだったのですが、
考えてみればこれは今、先に書いた考え方とは明らかに矛盾するわけですし、
これも作者である私が読者の方に対し、一種の強制をしいてしまっていました。
作者である私が読者の方にすべき事はそういう余計な「サービス」ではないはずで、
作者が取る行為としては筋違いな事をしてしまいました。

私の不要な発言から皆さんに御不快な思いをおかけしてしまった事を
深くお詫びいたします。すいませんでした。
183 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年06月05日(水)23時22分38秒
このあと、常盤社長の横に座るつんくの紹介がされ、
残るは右端に座る、エリートって感じの見たところ三十くらいの二人の男だけになった。

「こちらのお二人は“デンツウ”の方でして……」
「“デンツウ”?」
聞き慣れない言葉に首をひねったあたしに構うことなく、何かメモを手にとった橘は二人を紹介した。
「左から第一アカウントプランニング本部第一連絡局漆原部の重田さんと、
メディア本部メディアクリエイティブ局第一部の菊池さんです」
184 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年06月05日(水)23時23分38秒
頭の悪いあたしが一回で覚えることはまず不可能と思われる、非常に長くてややこしい紹介だった。
紹介する橘も覚えられないんだろう。彼の手にあるメモはたぶんカンニングペーパーだ。
だって紹介する時ちらちらとメモを見てたもの。
とりあえずわかったことは、この二人が“デンツウ”とかいうところの重田と菊池ということだけだ。

――だけど“デンツウ”って一体なんだろう?
あたしは二人に疑問をそのままぶつけた。
185 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年06月05日(水)23時24分42秒
「ああ、電報の“電”に通信の“通”で“電通”ね。
広告代理店、といって、わかりやすく言うとコマーシャルを作っている会社かな?」
二人の代わりに三宅が答えると、彼はさらに話を続けた。
「電通は広告代理店としては世界一でね。特に第一連絡局といったら、電通内でもエリート集団なんだよ」
「世界一!?」
ビックリして声を上げたあたしに、電通の二人は満足そうにうなずいた。
特に第一連絡局とかいうところの重田は三宅にエリートと言われてなんだか嬉しそうだ。

――世界一の会社って……一体どんなところなんだ?
アップフロントも大きいと思っていたけれど、上には上があるものなんだ、と思う。
アップフロントがビルを建てたりグループを作っている、と言っても、
「世界一」の会社にはかなわないだろう。
186 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年06月05日(水)23時25分41秒
ちょっと話がそれちゃったけど、と三宅は前置きすると、
「事務所やレコード会社と一緒に電通もモーニング娘。のプロデュースに参加していてね。
つまり、今ここにいる僕たちがモーニング娘。のプロデュースを行っているんだ、と思ってくれたらいいよ」
そんな三宅の言葉を聞きながら男たちは静かに「うんうん」とうなずいている。
187 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年06月05日(水)23時26分16秒
――なんだかヘンだなあ……。
あたしは三宅の話を黙って聞いていたけれど、心の中では何か引っかかるものがあった。

どうしてコマーシャルを作っている、それも「世界一」の会社がモーニング娘。と関係あるんだろう?
事務所やレコード会社がモーニング娘。と関係あるのはまだわかるけど、
コマーシャルを作る会社とモーニング娘。との間に一体どういうつながりがあるんだ?
188 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年06月05日(水)23時26分50秒
さらに言うと、今、三宅は、
「ここにいる僕たちがモーニング娘。のプロデュースを行っている」ってはっきり言ったけど、
モーニング娘。のプロデューサーってつんくなんじゃないの?
あたしの記憶に間違いがなければ、
モーニング娘。の歌を作るのはつんくだし、メンバーを増員させたりするのもつんくが決めてた。
つまり、モーニング娘。の事はつんくが全てを決めているはず。
だからモーニング娘。は「つんくプロデュース」って言われるんだ。

ここにいるつんく以外の男たちはモーニング娘。の関係者なんだな、とは思っていたけれど、
彼らがモーニング娘。をプロデュースしてるなんて話は、
三宅の説明を受けるまで聞いた事がないし、他の人もあまり知らないと思う。
それにそうなってくると、つんく以外もモーニング娘。をプロデュースしているわけだから、
「つんくプロデュース」というのは怪しくなってしまう。


芸能界の事はよく知らないし、「“関係者”と“プロデューサー”の違い」なんて答えられないけど、
あたしは妙にそれらが引っかかった。
189 名前:更新完了 投稿日:2002年06月05日(水)23時27分57秒
本日の更新分は以上です。また次回よろしくお願いします。
190 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年06月15日(土)03時20分13秒
「それでだね、ちょっと繰り返しになっちゃうんだけど……」
と、ここから三宅は車の中であたしに話した事を改めて説明していった。

@石川が失踪した事。
Aこの失踪が明らかになったら大スキャンダルになって、
石川だけじゃなくモーニング娘。にも大きなダメージを与えてしまうから、
それを避けるために『病欠』と発表して、失踪を隠している事。
Bしかし『病欠』と言っても『風邪による休業』としているから長期休業させるわけにいかない事。
Cそのために、早く石川を見つけて復帰させないといけないけれど、
石川はまだ見つかっていないから、復帰させる事も出来ず、
今のままだと『風邪のための休業』が疑われ、失踪が発覚する危険がある事。
Dだから、あたしが石川の代わりをつとめることで『石川が全快復帰した』事にして、
『病欠』を疑われる事のない『事実』にしてしまって失踪をなかったことにしてしまいたい事。
つまり、今のモーニング娘。にはあたしが絶対必要だという事。
191 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年06月15日(土)03時21分14秒
「そして、こちらとしては今後に向けてこういうスケジュールを立てているんだよ」
そう言って、三宅はカバンを机の上に置き、中から青いファイルを取り出すと、
ファイルに綴じられてた一枚の書類を、あたしに手渡した。

渡された書類には、一番上に大きく、『Hello! Project 2000夏コンサートツアー』と書かれている。
「真ん中あたりにコンサートの予定が書かれていて、“七月十五日、大阪城ホール”とあるよね?」

三宅の言うとおり、『Hello! Project 2000夏コンサートツアー』と書かれた下には、
『七月十五日大阪城ホール、七月二十日鳥取境港市内団地内野外特設ステージ……』など、
コンサートの日程と場所が細かく記されている。

確かに七月十五日は大阪城ホールとなっているね。
192 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年06月15日(土)03時22分01秒
「この日からコンサートツアーが始まるんだけど、
僕たちとしては、この七月十五日の大阪城ホールのコンサートを石川の復帰の舞台にしたいんだよ」

――七月十五日に“復帰”……?

三宅の言葉を聞いてちょっと考えてしまった。
今日が六月二十九日……。七月十五日まであと二週間ほどしかないじゃん。
その日を石川の復帰の舞台にしたいってことは……。

――あっ!?

「ってことは、この七月十五日までに、あたしに石川になれってことですか!?」
「その通りです」
あたしが導き出した答えを、
三宅の隣に座る白井部長がメガネの奥のキツネ目を光らせながらあっさりと認めた。
「無理は承知ですが、こちらとしてもこれが限界でしてね」
193 名前:作者 投稿日:2002年06月15日(土)03時24分36秒
今日はここまでです。
更新の量が少ないのは御容赦ください。
194 名前:お知らせ 投稿日:2002年06月27日(木)01時22分22秒
仕事の都合上、ちょっと更新が遅れてしまいそうです。
まことに申し訳ありません。御了承ください…
195 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年06月27日(木)23時38分22秒
「突然の話で混乱された事と思います」
「しかし、こちらにも事情がありまして……」

白井部長の発言をきっかけに男たちも一斉に口を開いた。
こっちも何か言おうと思ったんだけど、男たちみんながまくしたてるように話をするので、
言い返すタイミングを失ってしまったあたしは黙って話を聞くしかなかった。
196 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年06月27日(木)23時38分55秒
話を聞く限り、彼らには彼らなりの事情があるようだ。

彼らとしてはさっき聞かされた話の通り、石川の失踪がばれるのを避けるために早く復帰させたいし、
さらには「石川は七月十五日に復帰する事を前提に」して、
これからのモーニング娘。のスケジュールを組んでしまっているのだという。
つまり、石川が見つかるか、それともあたしが石川の代わりをするか、
いずれかの方法で『七月十五日の復帰』を果たさないと、
石川の失踪を『病欠』として疑われる事なく隠し通すことは出来ないし、
また彼らの立てたモーニング娘。の今後のプランも全て狂ってしまうわけだ。

「ですから、この七月十五日の復帰は絶対に成功させなければなりません。失敗は許されないのです」
電通の重田が力を込めて言ったこのセリフが、『七月十五日の復帰』の重みを表しているように感じた。
197 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年06月27日(木)23時39分33秒
――だけどムチャクチャだよなあ……。
あたしは思う。

復帰を急ぐ彼らの事情はわかったけれど、
だからと言って、「石川に似ている」というだけの素人のあたしに、
彼女の代わりをさせることで『石川梨華の復帰』を果たそう、なんて普通考える?
しかもたった二週間で『石川梨華として』コンサートに出させようなんて……。

学校の文化祭のステージにも上がった事のないようなあたしに、
どうやってコンサートをしろって言うんだ?
198 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年06月27日(木)23時40分05秒
「大丈夫、不安にならなくてもいいよ。君は余計な心配をしなくてもいいんだ。
失敗を防ぐために、じっくりとトレーニングしてもらうし、我々だって全力でフォローするからね」
「いきなりなんて出来るわけないやろ? ゆっくりと慣れていってくれたらええねん」
あたしの不安を少なくしようと思ったんだろう。三宅とつんくがやさしく言った。

「大丈夫です、心配いりませんよ」
「あなたなら絶対成功します」
男たちも三宅たちの後に続いた。
199 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年06月27日(木)23時40分37秒
――余計な心配はしなくていい。ゆっくりと慣れていったらいい。あなたなら絶対成功する……。

だけど、復帰のコンサートまでたった二週間。
「絶対成功する」ために、「じっくりとトレーニングをして」「ゆっくり慣れる」時間があるのかな?

――すごく心配……。

三宅たちには悪いけど、彼らの言葉にあまり説得力は感じられなかった。
200 名前:作者 投稿日:2002年06月27日(木)23時43分48秒
ちょっとだけですが、更新可能と判断できる分が執筆完了したんで、
更新を遅らせるよりはいいと思い、繰り上げて更新しました。

だけど今回も更新量が少ないです…申し訳ありません。

今のところこういう調子なってしまいますが、次回もまたよろしくお願いします。
201 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年07月21日(日)17時33分06秒
「このアイデアがいかに無謀なことか、それは我々もよく承知している」
会議室に入ってきてからはずっと口を開かなかった大槻が、タバコに火をつけながら言った。

――無理だってわかってるならどうして……。
そう言おうとしたときだった。
「しかし、我々ならできる」
「え?」
大槻の言葉にあたしは首をひねった。
――我々ならできるって、どういうこと……?

「我々ならこの無謀なアイデアを実行する事は不可能ではない、という事だ」
煙を吐き出しながら大槻は静かに言った。
「お前にはわからんだろうが、とにかく我々を信用していたらいい。石川になることだけを考えたらいい」
202 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年07月21日(日)17時33分36秒
大槻の話してることの意味はさっぱりわからなかった。
ただ、その言葉はすごく自信があふれていて、大槻は絶対に成功すると信じきっているようだった。

そしてそれは他の男たちも同じなのかもしれない。
だって、大槻の言葉に納得した様子で静かにうなずいていたから。
常盤社長とつんくはちょっと不安そうな顔をしていたけれど。

「お前の協力を得たら、それですべては成功したも同然だ」
大槻はそう言うと、ふたたび煙を吐き出した。


――どうして大槻たちはここまで自信があるんだろう……?
あたしにはそれがわからない。
203 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年07月21日(日)17時34分19秒
と、突然ドアをノックする音があたしの耳に届いた。
そしてドアの向こうから女の人の声が聞こえてきた。
「すいません、中島ですが……」

この言葉を聞くのと同時に、部屋の中の空気が一気に空気が引き締まったように感じた。
目の前の男たちの表情が変わったからだろう。急に彼らの表情は引き締まったものになった。

男たちは全員が顔を見合わせて何かボソボソと小声で話すと、そのまま大槻の顔を見た。
大槻は黙ってうなずくと、それを見て橘が立ち上がって返事をした。
「いいよ、入ってくれ」


静かにドアが開いた。
204 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年07月21日(日)17時34分52秒
――うわ……。

ちょっとビックリしてしまった。

お相撲さんを思わせるほどに太った女の人がそこにいた。
彼女はビルの中はクーラーがきいているのにまだ暑いのか、
汗をだらだらとかいていて、ハンドタオルで顔を拭っている。
「おはようございます」
彼女は男たちに頭を下げた。

――どうしたらここまで太る事ができるんだろう……?
失礼だとは思ったけど、「女力士」の彼女から目を離すことが出来なかった。
205 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年07月21日(日)17時35分54秒
「すいません、遅れてしまって……あの、渋滞に巻き込まれてしまいまして……」
そんなあたしに構わず、彼女は申し訳なさそうに男たちに再び頭を下げた。
「かまわん。急な話だったからな」
ぶっきらぼうに返事をする大槻。
「それで? もうそろっているな?」
「あ、はい」
「入れろ」
大槻にそう言われると彼女は後ろを振り返り、ドアの外に向かって声を出した。
「みんな、入って」

ドアが大きく開かれた。
206 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年07月21日(日)17時37分47秒
「ああっ!!」

開かれたドアからぞろぞろと会議室に入ってくる人影を見てあたしは思わず声をあげた。

入ってきたのは若い女の人の集団。
みんな初めて会う人なんだけど、見るのは初めてじゃない。
よく知っている顔だった。それもイヤというほど……。

だから一目見てすぐにわかった。

――本物のモーニング娘。だ……。


まさか彼女たちがここに来るなんて思ってもみなかった。

あたしは突然現れた彼女たちにビックリしてしまって、
金縛りにあってしまったように動けなくなってしまった。

さっき橘が大槻に言ってた「連中」ってのはモーニング娘。の事だったんだ……。
207 名前:作者 投稿日:2002年07月21日(日)17時42分25秒
カナーリ更新遅れてしまいましたが、放置はしていないわけで。

ちょっと私の事情で更新は遅れてしまってたんですが、
ベッカム氏ね、ということでお許しください。

それにしてもようやく……ですね。
連載はじめてから一年……長すぎる……(汗
208 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月21日(日)18時18分06秒
>ベッカム氏ね、ということでお許しください。
?
209 名前:作者 投稿日:2002年07月21日(日)18時33分20秒
>>208
確かに訳わかりませんね。
今の私、書店勤務なんですがこのベッカムの自伝やらムックやらにさんざん振り回されていまして…

それだけでございますです。はい…
210 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月21日(日)18時34分30秒
うわ! 自分でageてしまった…!!

鬱だ氏のう…ボーっとしてるなあ…
211 名前:作者 投稿日:2002年07月21日(日)19時33分16秒
>>210は私です…
ちょっと壊れてますね…すいませんです…はい…。
212 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月24日(水)10時43分30秒
いつも読んでますよ。
213 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年07月25日(木)11時24分52秒
「おはようございます」
モーニング娘。の全員が会議室に入ると、彼女たちは大槻たちに声をそろえて挨拶した。

「おつかれさま。突然呼びだしてすまないな」
三宅が優しく微笑むと、
「いえいえ、とんでもない……」
モーニング娘。の中で明らかに一番年上と思われる女の人が、静かに首を振った。
214 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年07月25日(木)11時25分42秒
――本物だ……本物なんだ……。テレビで観るだけだったモーニング娘。が今、目の前にいる……!

絶対に会う事なんてないと思っていた彼女たちと、
まさかこんなにあっさりと対面する事ができるなんて思ってもみなかった。


――いつも近くに感じながらすごく遠い存在だったモーニング娘。……。
――あたしの毎日を大きく変える大きな原因になってしまったモーニング娘。……。

あたしは彼女たちに対していろいろな想いがある。
だけど今は目の前にいる彼女たちに圧倒されてしまって、何もかもが飛んでしまっていた。
言葉を出す事も出来ず、ただその姿を見つめる事が精一杯だった。
215 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年07月25日(木)11時26分44秒
モーニング娘。は彼女たちを見つめているあたしの姿にはまだ気づいていないようで、
うつむき加減で会議室の入口あたりにかたまるようにして立っていた。
テレビで見せる表情と違ってちょっとしんどそうなのが印象的で、
これはよく言われることだけど、テレビで見せる表情と実際の表情は違うものなのかもしれない。

と、そのときだった。
「あ……」
ちらりとあたしの方に視線を向けたモーニング娘。のメンバーの一人の小柄な女の人とあたしは、
まともに目があってしまった。
216 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年07月25日(木)11時27分19秒
モーニング娘。の中で一番小柄と思われる彼女は、
ビックリした様子で口に手を当てながら、それからもしばらくじっとあたしを見つめていたけれど、
やがて隣にいる別のメンバーに何か耳打ちして、二人一緒にあたしの顔を覗いてきた。
声をかけられたもう一人のメンバーもあたしの顔を見てかなり驚いているようで、
違うメンバーにあたしの顔を見ながら何か耳打ちしている。


それまであたしは身体をやや後ろに向けるような感じで座りながら、
首だけ振り向いて、あたしの後ろに立つ彼女たちを見つめていたんだけど、
そんなあたしの事に気づいて、じろじろと顔を見てくる彼女たちに気まずくなってきた。
だからあたしは慌てて男たちの方に向き直って座りなおして、彼女たちと目をあわさないようにした。

だけど後ろの方からは小さなざわめきが漏れてきている。
そのざわめきの原因はどうやらあたしのようだった。
217 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年07月25日(木)11時28分28秒
ちなみに、目があったメンバーや、そのあと彼女と一緒に顔を覗き込んできた他のメンバーだけど、
その顔はみんなわかるんだけど、
彼女たちのそれぞれの名前を思い出そうとしても、どうしても浮かんでこなくてわからなかった。

緊張しているせいですっぽりとあたしの中の何かが抜け落ちてしまっているようだ。
218 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年07月25日(木)11時29分33秒
「……ちょっと、静かにしいや……!」
ざわつきだしたモーニング娘。に誰かがささやくような小さな声で、だけどちょっと鋭く言った。
声から判断すると、さっき三宅に首を振っていたモーニング娘。の中で一番年上っぽい女の人だろう。
彼女の小さな注意を合図に、すぐにざわめきは静まった。

「それで……」
ざわめきが消えると、彼女は静かに口を開いた。
「今日は皆さん、おそろいなんですね。私らも突然呼び出されたし……一体どうしたんですか?」
219 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年07月25日(木)11時30分11秒
彼女は標準語をしゃべっているつもりなんだろうけど、その発音は微妙に関西弁が混じっていた。
聞いているとちょっとした違和感があって、それが耳に残る。
だけどそれは不快なものじゃなく、むしろ色っぽく聞こえて、彼女がすごく大人に感じられた。

彼女はあたしの記憶に間違いがなかったら、確かモーニング娘。のリーダーだったはずだ。

――えっと……何とか……裕……子? だったかな?

はっきりと彼女の名前を思い出す事は出来なかったけれど、
あたしの記憶の中にある彼女の名前の一部のかけらだけをつかみとる事は出来た。
220 名前:作者 投稿日:2002年07月25日(木)11時31分22秒
今日はひとまずここまでです。
それでは仕事にいってきます。
221 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月26日(金)01時33分24秒
読んでますよ
222 名前:CYU 投稿日:2002年08月13日(火)10時15分18秒
一気に読みました。
今までいろんなものを読んだのですがカキコははじめてです。

すごくおもしろいです。どんなに遅くなってもかまわないので
ぜひ×2最後まで読ませてくださいおながいします♪
223 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年08月21日(水)02時12分34秒
「お前たちに来てもらったのは他でもない」
あたしの後ろにいるモーニング娘。の顔を見渡しながら大槻は薄い笑みを浮かべ、口を開いた。
「石川が見つかったぞ」

「ええっ!?」
「はあ!?」
何とか裕子が声をあげた。そしてあたしも……。

――石川が見つかったって……それってどういうこと!?

さっき「石川が見つかるまで代わりをつとめてくれ」って言われたばかり。
それなのに大槻は「見つかった」っていう。それって一体……。

――……あ!
ちょっといやな予感がした。

――まさか……。
224 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年08月21日(水)02時13分06秒
大槻は静かに右手の人差し指を立てて、すーっと動かした。
「ほら、そこにいる」

その指が指し示していたのは……あたしだった。

――やっぱり!
あたしのいやな予感はズバリあたった。

大槻の言う“石川”ってあたしのことだ!
225 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年08月21日(水)02時13分46秒
「あ、あんた……!」
だけど、今、あたしとばっちり目があった何とか裕子はこの大槻の“ウソ”には全く気づいていないようだ。
目の前にいる“石川梨華”を見て、ビックリした顔をしている。

おそるおそる他のメンバーに目を移してみると……。


メンバー全員があたしの事を見つめていた。
だけど、その表情は何とか裕子とは違って落ち着いたものだ。

さっき目があったメンバーや他のメンバーがあたしの事を、
いや「“石川梨華”のこと」をもう話していたようだったから、
「石川が見つかった」という大槻の説明を聞かされても、
驚きよりも「やっぱりこの子は石川だったんだ」という思いの方が強いのだろう。

「石川……」
誰かがつぶやいた。
226 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年08月21日(水)02時14分26秒
――ちょ、ちょっと……!!

「ちょっと待ってください! いや、違うんですよ、これはですね、その……」
大槻の発言がきっかけで、
一気にあたしに向けられたモーニング娘。の視線を受けてあたしは大混乱してしまった。
自分のことを説明しようと思うんだけど、何から言ったらいいのかわからない。

――あたしは石川梨華じゃないんだよう……!
227 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年08月21日(水)02時15分13秒
混乱するあたしをよそに、大槻は話を続ける。
「今日、この制服姿で歩いている石川の姿がスタッフに目撃されてな。
それで我々が慌てて現場に行って探してみると、近くに石川がいてここに連れて来た、というわけさ」

――ウソ言ってんじゃねえよ……!

どういう風に彼女たちに説明しようか、ともがいているあたしをよそに、
さらにデタラメを話す大槻の顔をにらみつけたけど、大槻はニヤニヤ笑っているだけだ。

――何考えてんだ、こいつ……!

大槻に何か言ってやろうとした時だった。
228 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年08月21日(水)02時15分51秒
「いやあ、見つかってよかった……本当によかった」
大槻の隣の三宅まで、そう言って安心しきったように大きくため息を漏らした。
「まさか制服姿でうろうろしているとは思ってもみなくてなあ……これは予想外だったよ。
それに、この制服姿はかえって目立たないようだぞ。
だって、今日まで石川は誰にもばれずに逃げおおせる事が出来たらしいから」
「お前たちも普段は学校の制服とか着て過ごすと静かに過ごせていいかもな」と言うと、三宅は笑った。

――はあ……!? 三宅まで!? お前も何言ってんだよ……!

彼らが突然どうしてこんなウソを言い出したのかあたしにはさっぱりわからない。みんな何考えてんだ?


――とりあえず、モーニング娘。にはこいつらの話がウソだって事を伝えなくちゃ……。

頭の中は大混乱してたけど、自分の話さないといけないことが何とか見えてきて、
「いや、ちょっと待ってください、これにはわけがあって……」
落ち着いて事情を話そうとしたときだ。
229 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年08月21日(水)02時16分22秒
「ちょっとあんた、一体どこ行っとったんよ……!」
何とか裕子が泣きそうな顔をしてあたしに近づいてきた。
「突然おらんようなってしもうて……うちら今日までどんな思いで仕事してきた思うてるんよぉ……」
半泣きの何とか裕子はもう関西弁丸出しだった。丸出しの彼女の関西弁にはあまり色気はないし、
さっき彼女に感じた大人っぽさはこれっぽちもない。まるで子供のようだ。
そして彼女はその場にぺたりとへたり込むと、
「もう、いつばれるかいつばれるかと不安で不安で……」
ボロボロとこぼれ落ちた涙を、取り出したハンカチで拭っていた。

石川が失踪してしまってからはよほど緊張した毎日を過ごしていたのか、
「大槻たちのウソ」を聞いて、そしてあたしを見た瞬間、何かの糸がぷつりと切れてしまったようだった。
230 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年08月21日(水)02時17分21秒
「いや、ですから……」
――これには訳があって……。
何とか裕子に声をかけようとすると、へたり込む何とか裕子の後ろに突然大きな人影が現れた。

「石川! みんな心配してたんだよ!!」
長い黒髪の女の人が現れた。大きな目をした彼女のその姿はまるでロボットのようでちょっと怖い。
「カオリはね、石川がそんな勝手なことをするなんて思ってもみなかったよ!!」
231 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年08月21日(水)02時18分41秒
カオリなる彼女はそこから一人わめきつづけた。

勝手にいなくなったことがどれだけ悪い事なのか、みんなにどれだけ心配かけたのか、
突然起こった「“石川梨華”の失踪」のことを彼女は真剣に叱っているようだった。

「叱っているようだった」というのは、
あたしが彼女の言っていることをそういう風に解釈していたからで
実際は違うことを言っていたのかもしれない。

何しろ「朝起きてフクロウが外で鳴いていたらおかしい」とか
訳のわからない例え話を持ち出して話すものだから、
あたしはその例え話から、彼女が何を言いたいのか考えないといけなかったんだ。

話の意味がわからなくて、あたしは何度も首をひねったけれど、
真剣に身ぶり手ぶりを交えて話す彼女に質問するのは失礼かな、と思ってあたしは黙って聞いていた。
それにあたしが話したところで今熱く語っているこのカオリにはあたしの話を聞いてもらえそうにない。

――……早く終わってくれないかな……。
カオリの話に頷きながらそう思った。

この調子で話を聞かされていたら大槻たちのウソのことをいつまでたっても彼女たちに話せない。
232 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年08月21日(水)02時19分19秒
話を聞きながら、ちらりとカオリ以外のメンバーに目をやってみると、
苦笑いしながら話を聞いている子や、心配そうにあたしの顔を見つめている子がいる。

「梨華ちゃん……」
心配そうにあたしを見つめていた彼女は、
話を続けているカオリの声に簡単にかき消されてしまいそうなほどかすかな声でそう言った。

あたしと同い年くらいだろう。かなり可愛い子で、顔にホクロが多いのが特徴だった。
彼女も何か言いたそうだったけれど、カオリの話が続いているから、黙っているしかないようだった。
メンバーの中でも一番心配そうな顔をしている彼女はもしかしたら石川とは仲良しだったのかもしれない。
233 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年08月21日(水)02時20分06秒
カオリの話はそれからもしばらく続いていたけれど、
「とにかく、もう二度とこんな事しないで! 二度とみんなに迷惑かけちゃダメだよ!!」
とあたしの両肩を思いっきり力を込めてつかんだ。

――イタッ……!

あたしは彼女のバカ力に思わず顔をゆがめてしまって叫びそうになったけれど、
カオリがあたしを見つめるその大きな瞳は真っ赤になっていて涙が浮かんでいる。

――この人も石川のことをすごく心配していたんだ……。
彼女の瞳を見てあたしは何も言う事が出来なくなってしまった。
234 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年08月21日(水)02時20分39秒
カオリは左手だけをあたしの肩から外してゴシゴシと涙を拭うと、
ふたたびあたしの両肩をつかみ、
そしてあたしとモーニング娘。のメンバーが真正面から向かい合う形であたしを立たせた。

「ほら、裕ちゃん」
カオリが話している間、ずっとしゃがみこんだまま涙を拭っていた何とか裕子に
一番最初に目があった背の低いメンバーが声をかけると、彼女は立ち上がって、他のメンバーと並ぶ。
「梨華ちゃん……」
さっきのホクロの多い可愛い女の子が心配そうな表情のまま、また小さくつぶやいていた。

「さあ、みんなに謝んなさい」
カオリ以外のモーニング娘。全員と向かい合う形になるとカオリはあたしの頭にぽんと手を乗せて言った。
235 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年08月21日(水)02時22分13秒
――チャンスだ……!
モーニング娘。と向かい合いながら、あたしは思った。

真剣にあたしに話をしてくれたカオリには悪いけど、
もういい加減彼女たちにも大槻たちの話がウソだってことを話しておかないといけない。
こうしてカオリも黙ってしまった今こそ、大槻たちのウソを説明するチャンスだ。

ちなみに大槻たちはあいかわらずニヤニヤと笑いつつも
黙ってあたしたちのやりとりを見つめているだけだ。

――くだらないウソつきやがって……。
大槻を軽くにらみつけたあと、あたしは小さく咳払いして、すべてを話そうとした。
236 名前:作者 投稿日:2002年08月21日(水)02時24分02秒
今日はここまでです。
237 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年08月22日(木)02時56分06秒
「えっとですね……」
と、話をはじめようとした時だ。

――ウッ……!

すごく鋭い視線があたしに向けられている事に気づいた。
その視線をたどるとそれは猫みたいな目をした人に至る。彼女の口元には小さなホクロがあった。

――な、なんだって言うんだよ……。
その鋭い視線には殺気すら感じられて、あたしはビビってしまった。

いや、よく見ると、心配そうにあたしを見つめているのはさっきの同い年くらいの女の子くらいで、
他のメンバーは、つまらなそうにあたしを見ていたり、
怒っている感じでにらんでいたり、あたしをバカにしきったようにあたしの事を見つめていた。
もっとも何とか裕子は立ち上がってからもなお涙を拭っていたけれど。
238 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年08月22日(木)02時56分44秒
だけどそれはしょうがないのかも知れない。

だって石川は一週間ほど前に突然いなくなってしまったわけだけど、
どんな理由があったにしろ、結局それは石川の自分勝手な行動だったわけで、
石川一人の勝手な行動のせいでモーニング娘。をはじめみんな大きな迷惑を受けた。

いや、迷惑なんてものじゃないだろう。
さっき車の中で聞いた話や何とか裕子が泣き崩れた事、カオリの話を聞いているだけでも、
この失踪がどれだけ大きな事件だったのかがわかる。
最悪モーニング娘。が解散しなければならなくなってしまう危険があるほどの事件だというのだから。

つまりこの失踪事件のせいで、
モーニング娘。をはじめとする、関係者の人生を狂わせてしまう可能性もあるわけだ。

それに対して彼女たちが石川に腹を立てたり、軽蔑するのは自然な事だろう。
あたしだってそうなると思う。
239 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年08月22日(木)02時57分58秒
だけど、そんな彼女たちの「“石川”への気持ち」はわかるけれど、
その気持ちを「石川梨華じゃない」あたしが真正面から受け止めるのは息苦しくて辛い。
特にこの猫目ホクロ女から受ける重圧感が何よりも強かった。


彼女も「石川に腹を立てて軽蔑している」その一人のようなんだけど、それは異様だった。

両手を組んだまま瞬き一つせず、ずっとあたしの事をにらみつけている。
明らかに他のメンバーよりもその視線は鋭くて、マジで殺されそうだ。

――早くウソだってことを話さないとマジでこの猫目ホクロ女に殺されるかもしれない……。
そう思ったあたしは彼女に「どうも」と愛想笑いを見せたあと、
メンバー全員の顔を見渡し、そして小さく頭を下げた。

彼女たちはそれに対して特に何の反応も見せず、あいかわらずただ黙ってあたしを見つめているだけだ。
240 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年08月22日(木)02時58分32秒
「あのですね……えーと……」

頭をかきながら、どういう風に話そうか、と言葉を選んでいたときだ。

猫目ホクロ女の目が一瞬きらりと光った。
そして、より一層表情を険しくした彼女は組んでいた両腕をほどくと
ツカツカと早足であたしの方に歩み寄ってきた。

――な、なんだってんだ……?
彼女にビビッたあたしがちょっと後ずさりした。
241 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年08月22日(木)02時59分03秒
そして後ずさりをしたこのとき不思議な事がおこった。
なぜだか不意にこの猫目ホクロ女の名前をあたしは思い出したんだ。

――そうだ、この人の名前……。
目の前に彼女は迫る。
――保田け……。

その時、あたしの左頬に強烈な痛みが走った。
モーニング娘。メンバー「猫目ホクロ女」こと保田圭に思いっきり顔を張られたからだ。
242 名前:作者 投稿日:2002年08月22日(木)03時00分27秒
今日はここまででございます。
243 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月03日(火)21時30分26秒
( `.∀´)<「猫目ホクロ女」で悪かったわね!
244 名前:姐さん 投稿日:2002年10月02日(水)16時37分06秒
あんたな〜! ちょっと更新遅すぎ!

一年半、掛かっても導入部も完結してないやん。
特殊な作品やとか、屁理屈こいてるけど
要は作品に対する入れ込みが足らんねん。
何でも書いたら、ええゆもんちゃうで。
読んでくれてる人に対する責任が有んねんで。

そら、毎日更新せえとは言わんけど
せめて1週間にいっぺんくらいは更新しいや。
それが出来へんねんやったら、自分で死亡宣言しぃ。

おもろい題材やから、誰か続きを書いてくれるかもしれへんやろ。
はっきり意思表示したらどう。
245 名前:145 投稿日:2002年10月03日(木)15時33分03秒
これまた手厳しい意見ですね…
更新が遅れるのは仕方ないと思いますが
>>142>>143>>175>>176で方針を明確に
言っている訳ですからちゃんと守らないとダメですよ。
HNも固定HNのようですし見てる人はきちんと見てますから
今後のあなたの評価にも影響しますよ。
余程のことがないかぎりネットアクセスだけなら
どこからでも出来るはずです。
今後の対応をお待ちしております。
246 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月10日(木)21時53分35秒
>>244
キモッ…
247 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月11日(金)14時56分05秒
マターリマターリ
248 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年10月13日(日)00時22分25秒
保田圭の一撃はあたしの左頬にまともにヒットし、あたしは大きく身体をよろめかせてしまった。
「ふざけんじゃないわよ!」
保田圭は今までたまっていたものを一気に爆発させるようにして叫んだ。
「石川、あんた自分が何したかわかってんの!?」


――石川梨華ならここでどうしているんだろう?
身体をよろめかせ保田圭の叫びを聞きながら、あたしは思った。

――泣くのかな? それとも保田圭やみんなに謝るのかな……?

保田圭に頬を叩かれたあとの石川梨華を想像してみたんだけど、それは一瞬のことに過ぎなかった。
よろめいていた体勢を整えた瞬間、そんな想像はすぐに消し飛んでしまったからだ。

「何しやがんだ、てめえ!!」
体勢を立て直したあたしは速攻で保田圭につかみかかっていた。
「腹立つ気持ちもわかるけどな、だからっていきなり顔引っ叩くことねえだろ!!」
249 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年10月13日(日)00時23分20秒
「へっ!?」
あたしの頬を打った後もその殺気漂う表情を全く変えなかった保田圭。
だけど、あたしに乱暴に襟をつかまれると、彼女はあっけにとられた表情を見せた。
「ちょ、ちょっと、石川……!?」
他のメンバーも突然保田圭につかみかかっていったあたしにビックリした様子だった。

そりゃそうだろう。

石川梨華ってのは、先輩に顔を引っ叩かれても、
それに腹を立てて反抗するっていうようなキャラクターじゃない。
「おじ様キラーの超美少女」とかあだ名されるように、
頬を打たれたら「美少女らしく」しくしくと涙を流しているほうが彼女らしい。

実際石川梨華というのはそういう人間なんだろう。
大槻たちに「石川梨華」として紹介されたあたしが突然、
口汚い言葉を吐きながら保田圭につかみかかっていったことに、
ビックリしている彼女たちの表情が全てを物語っている。
本物の石川梨華はこんな態度をとったことはなかったようだ。
250 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年10月13日(日)00時24分03秒
――だけど、これがあたしだぜ……。
ビックリした様子の彼女たちを見ながらそう思う。


つんくたちに声をかけられてからというもの、あたしは全くあたしらしくなかった。

いきなり有名人のつんくに出会ったことにもビックリしたし、
なにより「失踪した石川梨華の代わりになって欲しい」なんていう、彼らのとんでもない話に大混乱。
そして、事務所に連れられてモーニング娘。が目の前にあらわれてからはなおさらだった。
しかも彼女たちに「石川梨華だ」なんて大槻たちに紹介されてしまったから、もうパニック。
何がなにやら、もうわけがわからなくなってしまった。ただオドオドとしているだけだった。

オドオドして変に大人しくなってしまっていたから、
モーニング娘。はなおさらあたしのことを「石川梨華だ」って信じ込んじゃったんだろう。
251 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年10月13日(日)00時25分01秒
そんな中炸裂した保田圭の一撃。

痛みを感じるよりもモーレツに腹が立った。

そりゃ石川梨華が失踪した事は悪いし、それに怒りを覚える気持ちはよくわかる。
だけど、何の話も聞かずにいきなり顔を叩くなんて、しかも女の子の顔を叩くなんてのは最低だ。

これがあたしは許せなかった。ブチンとあたしの中で何かが切れた。
次の瞬間、彼女につかみかかっていた。

すごく感情的で乱暴な行動だと自分でも思う。
だけど、これがあたしだ。
彼女の一撃を受けてブチ切れたことで、あたしはようやくいつもの自分を取り戻していたんだ。

「あやまれ! あやまるまでこの手離さねえぞ!!」
猫のような目を大きく見開いたままポカンとする保田圭をあたしは乱暴に揺さぶった。
252 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年10月13日(日)00時25分54秒
「そこまでだ!」
不意に鋭い声がかかった。

――ん?

声のした方を見ると、パチパチと拍手をしながら黒い影が立ち上がる。大槻だった。
彼はさっきからニヤニヤと笑っていたけれど、よほどおかしいのか、声をあげて笑い出した。
「ハハハハ、見事なものだ。笑わせてもらった。アハハハハ……」
笑いながら大槻は席を離れると、あたしたちの元に近づいてきた。
三宅も立ち上がってその後に続く。彼もクスクスと笑っている。

――なんだ?
突然笑い声を上げた大槻たちの動きに視線を奪われた。
253 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年10月13日(日)00時27分41秒
ゆっくりとこちらに向かってくる大槻は、モーニング娘。全員の顔をゆっくりと見渡した。
「どうだ、驚いたろう? 今までの石川だったら信じられんことだからな」
「は、はい……」
ぽかんと口を開けたままの何とか裕子が返事をした。
「こんなこと初めてやわ……まるで別人やで……」
「中澤、その通りだ」
「え?」
「実は石川はまだ見つかっていない」
254 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年10月13日(日)00時28分22秒
「はあ!?」
大槻の言葉に何とか裕子……いや、中澤裕子は驚きの声をあげた。
「けど! けどここに石川ちゃんといますやん! ……あっ!」
ハッとした様子で中澤裕子はあたしの顔を見る。
「もしかしてこの子……」
「わかったようだな」
保田圭の襟をつかんだままのあたしのところまで大槻はやってくると、
あたしの顔をちらりと見て、モーニング娘。全員に向かって言った。
「そうだ。彼女は石川じゃない。
お前たちも知っているだろう? インターネットで騒がれた“今日の梨華ちゃん”だ」
「この子が!?」
今度はモーニング娘。の全員が声をあげた。


「石川じゃないの?」
ポカンとしたままの保田圭が小さな声で早口に言った。
「そうだよ」
「……ごめん」
ぶっきらぼうに返事をしたあたしを驚きの表情で見つめたまま保田圭はあたしにあやまった。
255 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年10月13日(日)00時29分16秒
「高木さん、とりあえず保田を離してあげてくれるかな? 彼女にも悪気はあったわけじゃないんだから」
と、後ろからポンとあたしの肩を叩いてきたのは大槻といっしょに席を立った三宅だった。
優しい笑みを見せている。

――悪気はない……。

確かにそうだろう。
保田圭はあたしを石川梨華だと信じ込んでたからああいう行動に移ったはずだ。
石川梨華には保田圭に頬を引っ叩かれる理由はあっても、あたしにはない。
256 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年10月13日(日)00時30分13秒
――待てよ……。

考えてみたら大槻たちのくだらないウソのせいで、
あたしはみんなに石川梨華と間違われて、そして保田圭に引っ叩かれたわけで、
しかもその間こいつらはニタニタと笑うばっかりで何もしようとしなかった。

――あたしがブチ切れないといけないのは実は保田圭じゃなくって……。

「お前らなあ……!」
大槻たちのウソの“被害者”である保田圭を離して、三宅と大槻にひとこと言ってやろうとした時だ。
「どうだ、これでも不安か?」
あたしの話を最後まで聞かず、不意に振り返った大槻は、
唇に薄い笑みを浮かべながら、しかも得意げにあたしの顔を覗き込んできた。
あたしに最後までしゃべらせるつもりはないらしい。
257 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年10月13日(日)00時30分47秒
――う……!
普段なら、こんな大槻のセリフなんか無視して彼らに詰め寄るところだ。
だけど出来なかった。

大槻は笑っている。だけどそのふち無しメガネの奥で光る目は全く笑っていなかった。
すごく鋭い光を放ち、
さっき保田圭があたしに見せた鋭い視線とはまた違う、だけどあれを上回る凄みを持っていて、
それに押されたあたしは、思わず動きを止めてしまっていたんだ。
258 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年10月13日(日)00時32分12秒
そんなあたしに構わず、大槻は笑みを浮かべたまま話を続けた。
「今日、ここにこうしてモーニング娘。の連中に仕事を抜けて来てもらったのは、
お前を石川として紹介しても連中をだませるのか、ということを知るためだ。テストするためだった」

――テスト……。
なるほど、だからこいつらあたしたちのやりとりをニヤニヤ笑って見ているだけだったのか……。

「結果はお前の見たままだ。見事に連中はだまされた。
お前のことを石川梨華だと、こいつらは俺たちの説明を信じ込んだ。
石川とはまったく別人のお前を石川だと信じて疑わなかったんだ。これの意味がわかるか?」
「ど、どういうこと……?」
ブチ切れてやりたい大槻たちにビビっていると思われるのは嫌だったから、
それを悟られないように両腕を組んで強がって返事をしたつもりだったけど、ちょっと声が震えた。
「こいつらは石川と一緒に仕事をしてきた。一日の大半は一緒だ。一番身近に石川と接してきたんだ」
「……だから?」
「そんな連中でもお前のことは見破れないってことさ」
大槻は自信たっぷりに胸を張った。
259 名前:第一章 (4)アップフロントにて 投稿日:2002年10月13日(日)00時33分15秒
「一番身近に接している彼女たちでも君を石川と紹介したらそれを信じ込む。疑いもしない……。
じゃあ、テレビやコンサートを通じてくらいでしか石川を知るチャンスがない、
大勢のファンたちの前で同じ事をやったらどうなるかな?」
後ろから聞こえてきた声に振り返ってみるとそこには三宅がいた。さっきの優しい笑みは消えている。
「誰もが君を石川梨華と信じ込むだろうね。何の疑いもなしに」

「絶対に成功する。あとはお前次第だ」
そう言ってあたしの顔をまた覗き込んできた大槻は笑みを消した。
ただその目だけが異様なほどに鋭くギラギラと光っている。
「コンサートがある七月十五日までの二週間。
この二週間のトレーニングでのお前の成果次第で全てが決まるんだ」
「たった二週間であたしが石川梨華になれると思ってるの……?」
「なってもらわないといかん。失敗は許されん」
静かに大槻は言った。だけど、その言葉には不気味な重みと迫力があって怖かった。
260 名前:作者 投稿日:2002年10月13日(日)00時43分33秒
「第一章(4)アップフロントにて」はこれで終了です。
ちなみに次回からの「第一章(5)隠れ家の決断」で第一章は終了の予定です。

あと、今回は更新がカナーリ遅れてしまい申し訳ありませんでした。
事情の説明等はただの言い訳になるだけだと思うのでそれらについては沈黙します。

「言い訳する暇があったら…」と思いますので。
それでは失礼します。
261 名前:145 投稿日:2002年10月13日(日)15時26分40秒
更新お疲れ様でした。
次回の更新を楽しみにしてますよ。

>あと、今回は更新がカナーリ遅れてしまい申し訳ありませんでした。
           ↑あなたの文章にはまったく誠意が感じられません。
262 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月22日(火)11時57分03秒
川o・-・)ノ一週間以上経ちましたが…。
263 名前:作者 投稿日:2002年10月25日(金)04時21分12秒
またも仕事が忙しくて更新が遅れております…
11月までには落ち着きそうなんですが、いまは休みもままなりません…

不誠実ダメダメウソつき逝ってよしな人間でごめんなさい…
264 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月25日(金)12時07分01秒
川o・-・)<気長にお待ちしております。
265 名前:第一章すべてのはじまり (5)隠れ家の決断 投稿日:2002年11月25日(月)04時14分14秒
「暑いなあ、今日も……」
毎日毎日イヤというほど聞かされるセミの大合唱が今日もいつもと同じように流れる中、
駅前の商店街を歩くあたしは、額に浮かんだ汗を手で拭った。

まだ朝の九時過ぎだっていうのにこの暑さ。
空を見上げると雲一つない綺麗な青空で、
セミの大合唱にこたえるように太陽がギラギラと輝いて強烈な光を放っている。

ギラギラ照りつける太陽のせいで制服の背中はもう汗びっしょり。
ベタベタして気持ち悪いったらありゃしない。

だけど、制服を着ているから、と言ってあたしが学校に向かっていると思ったらそれは間違いだ。
今、あたしは学校の制服を着て、いつもの『隠れ家』に向かっているのだから。
266 名前:第一章 (5)隠れ家の決断 投稿日:2002年11月25日(月)04時15分01秒
『いつもの“隠れ家”』。
石川梨華がデビューしてからというもの、外に行くと彼女に間違われていろいろと騒ぎに巻き込まれるから、
あたしは外に出るのが嫌になって、そして学校もサボるようになった。

けれど学校に行っていないことは家には秘密にしてあるから、
あたしはいつも学校に行く振りをして、
この『隠れ家』で学校が終わるまでの時間をいつも過ごすようにしていた。

学校をサボっても外にいたら石川梨華に間違われてまた変な騒ぎに巻き込まれるかもしれない。
だから、いつも『隠れ家』で一日を過ごすんだ。

本当は家に閉じこもる事が出来たらそれが一番いいんだけど、
家の人間に余計な心配をかけるのは嫌だし、学校行っていないことがばれちゃうからそれは出来なかった。
267 名前:第一章 (5)隠れ家の決断 投稿日:2002年11月25日(月)04時15分38秒
「ふう、ようやく着いた」
『隠れ家』が目に入って来て、あたしはため息を漏らす。

通りに面して建っている『入居者募集中』という紙が窓に張られている薄汚れた古いビル。
これがあたしの『隠れ家』なんだ。

前にあたしが学校をサボってこの近所でぶらついていたら、
若い男に石川梨華に間違われて追いかけられたことがあって、
その時、男から逃げるためにたまたま隠れた場所がここだった。
268 名前:第一章 (5)隠れ家の決断 投稿日:2002年11月25日(月)04時16分11秒
『入居者募集中』と書かれていることからもわかるようにこのビルは誰もいない。
だから正面入口のドアもガレージもカギをかけて閉められていて、入ることは出来ないようになっている。
だけど、このビルと隣のビルとの間には人ひとりがやっと通れるくらいの狭い隙間があって、
奥の方にあるビルのトイレの小さな窓から実は中に入ることが出来るんだ。

追いかけられた時に逃げ込もうとしてもビルに入れず、この隙間に入って男をかわそうとしている時に、
トイレの窓から中に入れることを見つけちゃったんだよね。
269 名前:第一章 (5)隠れ家の決断 投稿日:2002年11月25日(月)04時16分55秒
ビルの前であたしは周りをきょろきょろと見渡して、誰もいない事を確認。
隙間にさっと入り奥に進んでいってトイレの窓の前まで来ると、
あたしの背より高い位置にある窓を手を伸ばして開け、先にカバンを投げ入れる。
そして、窓に手を引っ掛け、壁に脚をかけてよじ登ってビルの中に入り込む。
運動が得意なあたしにとって、これはたやすい作業だ。


入り込んだビルの中は電気を止められているようで、ひとつも明かりがついていない。
その上このトイレはビルの一番奥の方にあって太陽の光も届かないんだ。
だからビルの中は真っ暗。何も見えない。
初めて入った人なら、もうここでいきなり迷っちゃうだろう。それにムチャクチャ怖いと思う。

だけどあたしは毎日ここに来ているから、もう慣れたもの。
最初のうちこそ怖かったけど今はもう平気で、
真っ暗な中でも落としたカバンを見つけて拾い、
何かにぶつかる事もなくトイレから出て、ビルの中でいつも過ごす場所に向かう。
270 名前:第一章 (5)隠れ家の決断 投稿日:2002年11月25日(月)04時17分27秒
『いつも過ごす場所』っていうのは、
トイレを出てすぐのところにある非常階段の一階と二階の間の踊り場のこと。

どこかビルの空き部屋に入れたらその方がいいんだけど、
どこもかしこもみんなカギがかけられていて、結局この非常階段の踊り場で過ごすしかなかったんだ。
271 名前:第一章 (5)隠れ家の決断 投稿日:2002年11月25日(月)04時18分35秒
「ふぅ……」
ため息をつきながら踊り場のひんやり冷たい床にぺたんと腰を下ろした。
そしてカバンの中からノートを取り出して、うちわ代わりに使う。

電気が止まっているビルの中。
クーラーも何も効いていないから、涼もうと思ったらこうするしかない。


ぱったんぱったんぱったんぱったん……。

ぱったんぱったんぱったんぱったん……。


うちわ代わりのノートがぱったんぱったんと音を立てながら顔に風を届ける。
クーラーが効いていないとは言っても、真っ暗なビルの中は外にくらべたらずっと涼しくて、
こうして風を受けてたら、汗なんかはすぐにひいてしまう。
272 名前:第一章 (5)隠れ家の決断 投稿日:2002年11月25日(月)04時19分21秒
ぱったんぱったんぱったんぱったん……。

ぱったんぱったんぱったんぱったん……。


汗もひいたし、もう風を受けなくても十分涼しいのに、あたしはまだノートでぱたぱたと顔を扇ぎつづける。


ぱったんぱったんぱったんぱったん……。

ぱったんぱったんぱったんぱったん……。


こうする以外、ここでは何もする事がないからだ。
273 名前:第一章 (5)隠れ家の決断 投稿日:2002年11月25日(月)04時20分03秒
『今のまんまでおるよりはまだええと思うねん』

風をぼんやりと受けていたら、ふいにつんくの言葉が脳裏をよぎった。

『自分、今、何もおもろないやろ? 俺はそれがすごいもったいないと思うんや』


つんくたちに連れられて行った事務所でつんくに言われた言葉だ。

――クソ……。
あたしは胸の中で小さく舌打ちを打った。

一番言われたくないこと、痛いところをあの時、あたしはつんくに突かれた。
あの時……つまり、昨日連れて行かれた事務所での光景が目の前によみがえる。
274 名前:第一章 (5)隠れ家の決断 投稿日:2002年11月25日(月)04時22分11秒
あたしを引っ叩いた保田圭につかみかかって一騒動あった後、
あたしはモーニング娘。のメンバーと一緒に並んで座らされて、大槻たちから返事を求められた。
「やってもらえるか?」と。

目の前にずらりと並ぶ大槻たちと、あたしの横に座るモーニング娘。全員の視線が、
彼らとモーニング娘。のこれからの運命を返事一つで決めてしまうあたしに集中した。

誰も一言も発しない。ただ、あたしの返事を静かに待っていた。
だけど、全員が向けるその視線はあたしにこう言っていた。
『引き受けると言え』と。『まだ終わりたくない。終わらせてたまるか』と。

不気味な重みがあたしの身体全体にのしかかってきて、押し潰されてしまいそうになった。息が詰まる。

だけどあたしはこのまま押し潰されるわけにはいかなかった。返事をはっきりと言わないといけなかった。
話を聞いたときから、心の中で決めていた返事は一つだった。これだけは何があっても譲れなかった。


小さく深呼吸をした後にあたしは言った。
「お断りします」
275 名前:作者 投稿日:2002年11月25日(月)04時34分45秒
ようやく更新再開出来ました。とりあえず今日はここまでです…。
276 名前:読者 投稿日:2002年12月31日(火)21時07分43秒
川o・-・)<放置ですか?
277 名前:774 投稿日:2003年01月04日(土)02時18分20秒
(;`.∀´)<あたしが卒業するまでに終わるのかしら・・・。
278 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月07日(火)22時41分35秒
焦らずマターリ
279 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月08日(水)17時27分34秒
焦らずマターリもいいですが、ちょっと度が過ぎてませんか?
いっそ一度削除して、もう少し書き溜めてから上げたらと思います。
みんなのカンパとか使って運営されてる場所ですし。
なんか無駄使いしてる感じです。
280 名前:ななしさん 投稿日:2003年01月08日(水)23時53分11秒
>279
 うおっ、厳しい意見だ…

更新が遅いのは仕方ないと思うのですが
全然有言実行してないですからねぇ…
最初から更新遅いです宣言とかしてればこんなことには
ならないと思うのですが。
281 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月12日(日)22時39分30秒
今一気読みしました。なかにはそぉとぉ〜厳しいレスもあるようで。
それはおそらく、作者さんの並々ならぬ更新の遅さと、+娘。小説なのに
娘があんま出てこないことへの不満が大きいかと。
キレる人の気持はよく、わかりますが、作品自体は文章もライトノベル調で
読みやすいし(それこそコバルトやスニーカーを読んでいる気分になる)
設定も工夫次第で広がりを見せそうで興味深い。
つーかとっとと話進めて続きみせろやゴルァ!
・・・・みたいな気分になります。いや、褒め言葉です。
放置もったいねーな、と正直思うっス。
感想ごときに長文スマソ。復活期待しとくsage
282 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月21日(火)11時30分54秒
>>281
たしかに設定は今までになかった物ですし惜しいですね。
ところでベッカム氏ねには何も感じませんでしたか?
作者の作品に対する姿勢が他の方と比べて悪いと思うのですよ。
外部スレで自作自演もしていましたしね。
283 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月25日(土)14時21分26秒
結局放置ですか?
284 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月06日(火)13時41分28秒
>作者様
書き続けないのでしたら自分で削除ぐらいしてください。
285 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月07日(水)20時14分48秒
>>284
君が書き込まなければ圧縮されたろうに…

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