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You don't know what love is.
- 1 名前:やるくぃなし男 投稿日:2001年07月06日(金)23時55分07秒
- ごまよしです。
ふたりのある一日をテーマにして、
わりとカタめに、そしてオーソドクスに書いていく予定です。
全7幕、そんなに長くはなりません。
つまらないとは思いますが、よろしくおつきあいください。
- 2 名前:第1幕 1 投稿日:2001年07月06日(金)23時55分51秒
- 「よっすぃー、ちょっといい?」
ケータイでメールを打っている吉澤ひとみに、後藤真希が声をかけた。
部屋の中にはふたりきりだ。午前中はプッチモニでの仕事なのだが、保田圭は現在席を
はずしているため、ひとみと真希だけになっている。
「なあにー、ごっちん。」
どうせまたくだらないことでも思いついたのだろう、そんな軽い気持ちでひとみは振り
返る。
- 3 名前:第1幕 2 投稿日:2001年07月06日(金)23時56分59秒
- だが予想に反して、真希はなにか張りつめた顔つきをしていた。真剣に決意を固めて思
いつめているようにもとれるし、調子が悪くてだるいのを無理しているようにもとれる。
とにかく、真希はじっとひとみの目を見つめている。
ふだんなかなか見せない表情。心なしか、ひとみには真希がほのかに赤みがかった顔を
しているように思えた。
「どうしたの? 顔、赤いよ…。」
立ち上がって真希に近づく。その間も、真希は黙ったままひとみの目を見つめ続けてい
る。
熱く、それでいて冷ややかな視線。内に秘めた情熱とつねに一歩引いた態度。どちらも
彼女の中にあるアンビヴァレントなものが、瞳から強く発せられていた。
「熱でもあるのかなあ。」
手を伸ばし、座っている真希のおでこに右手をやる。その少し大きな白い手は、優雅な
動きで真希の視線をさえぎった。
「うーん、熱いようなふつうなような…。」
ひとみは残った左手を自分のおでこに当て、真希の体温と比べた。ちょっと右手の方が
熱いかな、と思ったそのとき、
「よっすぃー」
それまでじっとしていた真希は自分のおでこに当てられたひとみの右手をつかむと突然、
強引にそのまま引き寄せた。不意をつかれたひとみの身体は、真希の上におおいかぶさ
る格好になってしまう。あっという間のできごと。ふたりの顔は互いに息がかかりあう
ほどの距離に近づく。
- 4 名前:第1幕 3 投稿日:2001年07月06日(金)23時57分42秒
- ひとみは呆気にとられ、一拍おいて
「ちょっと、ごっちん!」
あわてて真希から離れようとする。が、真希はひとみの右手を握りしめたまま、離そう
としない。
「どうしたの? 今朝のごっちん、なんだか変だよ。」
「…好き。」
「えっ?」
「好きな人とふたりだけでいるんだよ、ガマンできない。」
そう言うと、真希はぎゅっとつかんだ手にさらに力を加える。
ひとみはその場で硬直してしまった。紅潮した顔から発せられているのだろうか、ひと
みは5cmと離れていない真希の身体を熱い、と感じていた。その熱だけがリアリティを
持っていて、それしか見えなくなっていく錯覚をおぼえる。腕をつかむ真希の握力さえ
も遠く感じられていく。しかしその一方で、意味を噛みしめる余裕もないまま、真希の
言葉は確かにひとみの頭の中をぐるぐると回り続けているのだ。
「あたし、よっすぃーが好きだよ。」
真希は決定的な言葉をひとみの耳元にかすれた声でささやいた。
───色っぽいな…、ごっちん。
“好き”という言葉の持つ甘い響きと真希の身体から感じる熱にひとみは酔っていた。
- 5 名前:第1幕 4 投稿日:2001年07月06日(金)23時58分32秒
- 「あっ…。」
真希は目を閉じて唇を近づけてきた。ひとみの身体は動かない。
長い睫毛。なめらかな肌。わずかに開かれた、紅潮した唇。真希はゆっくりと、しかし
確実にひとみに迫ってくる。
触れる… ───そう思った瞬間、ふと我にかえった。
「だめえっ!」
急に身体が反応した。ひとみは真希を振り払う。その衝撃で真希は椅子ごと倒れる。
大きな音。その残響が止むと、はあっはあっ、というふたりの荒い呼吸だけが部屋の中
に残った。
真希は倒れこんだまま、起き上がろうとしない。
「ごっちん…。」
ひとみはどうすればいいのかわからずその場に立ちつくす。ほんのわずかなはずの沈黙
が、永遠のように感じられる。部屋の空気が重い。その圧力がひとみの身体を包みこむ。
冷たい壁の中に塗りこめられたような感触。何か言わなくちゃ、謝らなくちゃ、とは思
っているものの、声にならない。
- 6 名前:第1幕 5 投稿日:2001年07月06日(金)23時59分26秒
- すると真希が視線を床に落としたまま、無言で立ち上がった。そして口を開く。
「ごめん。よっすぃー。」
「ごっちん…。」
「いいんだ、忘れて…。」
うつむいたままの真希。しかしその声には無理に抑揚をつくったような張りがあって、
逆にそれがひとみには哀しく思えた。
「ごっちん…。ごめんね。」
「どうして謝るの?」
「だって…、ごっちん、私のこと…。」
「そんな悲しい顔して見ないで。もういいよ。忘れて。」
「え…、でも…。」
「あたし、トイレに行ってくるね。もうそろそろ出番だし。」
言うやいなや、真希は部屋から飛び出した。
「あっ…、待っ…」
ひとみの声は、冬の白い吐息のように、冷めた空気の中に弱々しく溶けて散らばった。
- 7 名前:第1幕 6 投稿日:2001年07月07日(土)00時00分07秒
- …どれくらい時間が経ったんだろう。
「ひとりぼっち…。」
ひとみはつぶやいた。あれから真希は戻ってこない。今まで近くにいたはずの真希が、
急に遠くに行ってしまったような気がした。
───私はごっちんを傷つけてしまったんだ。きっとそうだ…。
ひとみは椅子の上で膝を抱えてうずくまった。時間なんてこのままずっと過ぎてしまえ
ばいいのに、と思った。
するとそのときドアが開き、自分の出番を終えた圭が部屋に入ってきた。
「吉澤、どうしたの? 後藤、泣いてたみたいだけど。」
その言葉を聞いたひとみの目から涙がこぼれた。ふだんありえない光景。圭はあわてて
ひとみに駆け寄る。
「どうしたの? 何があったの、吉澤!」
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
ひとみは両手で顔をおおって泣きじゃくった。圭がどんなに優しく声をかけても、ただ
首を振って謝り続けるばかり。
圭はついさっきまでこの部屋の中で何が起きていたのか、ひとみの様子から読みとるこ
とはできなかった。しかし、今は事情を聞かない方が良さそうだと判断して、泣いてい
るひとみの頭をただ黙ってなでてあげた。
- 8 名前:筆者 投稿日:2001年07月07日(土)00時02分03秒
- 本日はここまでです。
週明けまでには第2幕を更新したいと思います。
- 9 名前:バービー 投稿日:2001年07月07日(土)00時06分24秒
- いいです、かなり!
文章表現が綺麗ですね。
よしごま、好きなんで期待してます〜。
7幕とおっしゃらずにもっと・・(w
- 10 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月08日(日)10時42分09秒
- 最高!!です!
- 11 名前:筆者 投稿日:2001年07月09日(月)00時14分26秒
- >>バービーさん
感想どうもありがとうございます。
白・黄・緑で書いてらっしゃいますよね。いつも楽しく読ませていただいてます。
僕は先に設定をガチガチに決めておかないと書けないタチですので、全7幕ということでご勘弁を…。
期待に応えられるようにがんばります。
>>10さん
ありがとうございます。
でもまだ先は長いです。この先何かご不満がありましたら遠慮なく指摘してください。
- 12 名前:第2幕 1 投稿日:2001年07月09日(月)00時15分13秒
- 「なんであんなことしちゃたんだろ…。」
真希は背にした廊下の壁にもたれかかりながらぼんやりとつぶやいた。
ひとみのいる部屋を飛び出してからあてもなく建物の中を歩き回っているのだが、後悔
する気持ちばかりがこみ上げてきて胸が苦しくなる。じっとしている方が心が落ち着く
のかな、と思って壁に寄りかかってみたのだが、
「だめ…。」
立ち止まると涙で周りがかすんでくる。
頬の上をひとすじの想いがこぼれていくのを感じると、もうそれを抑えることなどでき
なかった。
◇
- 13 名前:第2幕 2 投稿日:2001年07月09日(月)00時16分03秒
- 忘れもしない初恋の記憶。別れ際、彼女は言った。
「いい恋しろよ、真希!」
いつもは“後藤”と名字で呼ぶのに、このときだけは“真希”と呼んでくれた。最初で
最後の呼び捨て。近くて遠かった人が、やっと見せてくれた感情。
あたしは彼女のことが好きだった。尊敬していた。愛していた。そして、彼女もそのこ
とをわかってくれていたと思う。でもこの恋はまるで泡のように、もろくはじけてしま
った。
───もうどうでもいいや。
それからしばらくは何も手につかなかった。「やる気がない」なんて言われたりもした。
でもそんな揶揄は気にならなかった。一番信頼していた人がいなくなったんだ。誰もわ
かってくれるはずがない、誰にもわかってもらいたくない。
市井紗耶香がモーニング娘。を卒業してから、あたしの心の中には大きな穴が空いてい
た。
- 14 名前:第2幕 3 投稿日:2001年07月09日(月)00時16分34秒
- そんなとき、あたしに声をかけてくる奴がいた。新メンバーで同い年の吉澤だ。
「後藤さん、私にとってあなたはライバルなんです。」
体育会系のノリだ。正直ウザかった。同い年なのにキャリアが違うのは想像以上にから
みづらい。向こうは丁寧語を使えば済むかもしれないが、こっちはそれとは比べ物にな
らないほど気を遣う。それが面倒臭くてのらりくらりと避けているのに、吉澤は知って
か知らずか、ことあるごとにあたしに話しかけてきた。
- 15 名前:第2幕 4 投稿日:2001年07月09日(月)00時17分43秒
- 「市井さんのこと、気にしているんですか…? きっと、大丈夫ですよ。」
あんたなんかにわかってたまるか、と思った。そりゃあ確かに同じようにオーディショ
ンをくぐり抜けてきたんだし、仲間意識もそろそろ芽生えてくる頃だ。心配してくる気
持ちもわからないでもない。
でも、あんたなんかに軽々しく慰めの言葉をかけてほしいとは思わない。どんなに心を
こめた言葉だって、背負ってるものが違うんだからあたしにとっては所詮うすっぺらい
ものでしかない。しかもそれをわかっていて、なおも声をかけてくるから、鬱陶しいっ
たらありゃしない。
だからプッチモニに吉澤が加入すると聞かされたとき、あたしは本気で嫌がった。圭ち
ゃんは「今度のプッチは“プッチモニ2”。またイチからがんばるよ。」と割り切って
いたが、あたしは納得できなかった。
そして吉澤が髪を短くしたことが、あたしをさらに忌々しい気分に追い立てた。
- 16 名前:第2幕 5 投稿日:2001年07月09日(月)00時18分56秒
- そうこうしているうちに、新曲のレコーディング・ダンスレッスンが始まった。
案の定、吉澤はまだ慣れていなくてミスを連発した。そのたびにこっちの調子が狂わさ
れた。
最初のうちは黙って耐えていた。しかし、何度も何度も同じことを繰り返しているうち
に、とうとうガマンの限界がきた。
「だからあたしはイヤだったの!」
気がついたら叫んでいた。いつも気丈そうな吉澤が、両手で顔をおおって膝から崩れた。
「ちょっと後藤! なんてこと言うの!?」
圭ちゃんが吉澤に駆け寄り、震える背中をなでながらあたしに言った。
「圭ちゃんもそう思ってるでしょ! こいつと一緒なんて、もうたくさんだよ!」
あたしが返すと、圭ちゃんはカッと目を見開いて吉澤の背中をなでる手を止めた。そし
て少し間をおいてから、つかつかと大股歩きでこっちに来た。
「な…なによ。」
と言った瞬間、思いっきり頬をはたかれた。部屋の中に乾ききった鋭い音がこだました。
「紗耶香はねえ、絶対にそんなこと言わなかったよ!」
…市井ちゃん?
「『LOVEマシーン』のときも『ちょこっとLOVE』のときも、ずっとあんたを優
しく見てた。なのに今のは何!?」
ゆっくりと襲ってくる痛み。
「今の吉澤は昔のあんたと一緒。今のあんたは昔の紗耶香と一緒なのよ!?」
吉澤が…あたし…? あたしが…市井ちゃん…?
レッスンルームの鏡にあたしが映っている。しゃがみこんで肩を震わせている吉澤も映
っている。
次の日、あたしは吉澤に謝った。吉澤は笑顔で許してくれた。それから、事態はいい方
向に動き始めた。
- 17 名前:第2幕 6 投稿日:2001年07月09日(月)00時19分30秒
- このときからあたしは常に“あたしと市井ちゃんの関係”を意識して吉澤に接するよう
になった。今はまだまだでも、一緒に成長できればいい。新たな目標。あたしが、市井
ちゃんになるんだ。
一緒に話して、一緒に食事して、一緒に買い物して…。
いつしか、あたしは吉澤を“よっすぃー”と呼ぶようになり、よっすぃーはあたしを
“ごっちん”と呼ぶようになった。
すると今まで見えなかったもの、見ようとしなかったものが見えてきた。
そして気がつけば、あたしはよっすぃーに惹かれていた。大人っぽくて色っぽい。そう
かと思えば少年っぽくて無邪気だったりする。優しくて、格好よくて、それでいて話し
やすくて…。あたしにはないものを、よっすぃーはいっぱいいっぱい持っていた。
あたしは、また、恋をした。
- 18 名前:第2幕 7 投稿日:2001年07月09日(月)00時20分10秒
- しかしその一方で不安もあった。
あたしは市井ちゃんの代わりとしてよっすぃーを好きになったのかもしれない。そして、
よっすぃーもまた市井ちゃんのようにあたしから離れていってしまうのかもしれない。
いや、確かに市井ちゃんとよっすぃーは違う。そんなことは、市井ちゃんをいちばん近
くで見ていたあたしがいちばんよくわかっているはずなんだ。…けど。
髪の毛を短くしたよっすぃー。歌もダンスもどんどん上手になっていくよっすぃー。
ボーイッシュな外見やメンバーの誰とも親しくしている姿を見ると、不意にふたりの姿
が重なって見えることがあって、あたしはそのたびにうろたえた。
どんなに強く否定しても、このふたつの不安が消えることはなかった。ううん、むしろ
大きくなっていった。じりじりと追いたてられる感覚。自分でも焦っているのがわかっ
た。でも、落ち着いて考えることなどできなかった。
…確証が欲しかったんだ。市井ちゃんの代わりとしてではなく、かけがえのないよっす
ぃー…吉澤ひとみを愛しているということ。そして彼女があたしから離れることは決し
てないということ。
───そして、今朝。神様はチャンスをくれた、と思った。…でも、うまくいかなかった。
◇
- 19 名前:第2幕 8 投稿日:2001年07月09日(月)00時20分52秒
- 口に出してつぶやいてみる。
「あたしは…よっすぃーが好き…。」
でも、それはもう報われることのない想いになってしまった。あたしは踏みこんではい
けない領域を侵してしまったんだ。
この願いがかなわないのなら、せめて今までどおり近くにいたい。あんなことをしてお
いて、虫がいいのは十分わかっている。でも、それでも、あたしはよっすぃーのそばに
いたいんだ。離れてしまうのは、あたしが嫌われることよりももっともっと厭なことだ
から。
ああ、どうすれば、今までどおり過ごせるようになるんだろう。
真希は寄りかかっていた壁からいったん離れ、今度は向かいあう。目を閉じておでこを
壁にくっつけると、ひんやりとした感触でしだいに気持ちがなだらかになっていくよう
に思えた。
…忘れてしまおう。あたしがよっすぃーにしてしまったこと。そして、あたしのよっす
ぃーへの想い。ぜんぶなかったことにしてしまえば、いつかもとに戻れるかもしれない。
ふたりの関係を、もうこれ以上壊してしまいたくない。
「よしっ!」
真希は天井を見上げて涙をふく。ぐすっ、と最後にひとつしゃくりあげると、今まで歩
いてきた道を引き返した。
- 20 名前:筆者 投稿日:2001年07月09日(月)00時22分20秒
- 本日はここまでです。
第3幕は今週中に更新したいと思います。
何かご意見・ご感想がありましたら遠慮なくお願いします。
- 21 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月09日(月)22時25分40秒
- ごっちん頑張れよ!
期待してるんで作者さん頑張ってください!!
- 22 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月09日(月)22時44分53秒
- 美しい・・・
- 23 名前:筆者 投稿日:2001年07月11日(水)01時22分17秒
- 訂正です。
>>12
×「なんであんなことしちゃたんだろ…。」 → ○「なんであんなことしちゃったんだろ…。」
誤字・脱字がないようにチェックしたはずなんですけどね…。申し訳ありません。
- 24 名前:筆者 投稿日:2001年07月11日(水)01時28分13秒
- >>21さん
ありがとうございます。でもごっちんの見せ場はもう少し先になりそうです。
いましばらくお待ちくださいませ。
>>22さん
ありがたい一言です。がんばります。
- 25 名前:第3幕 1 投稿日:2001年07月15日(日)13時01分46秒
- 「私の…ばか。」
ひとみは誰にも聞こえない小さな声でつぶやいてみた。まだ真希との間はおかしなまま
だ。
午後になってからはモーニング娘。全体での仕事。今は9人全員が楽屋に集まって待機
している。
あれからひとみは真希に話しかけようとチャンスを探していたのだが、今一歩きっかけ
がつかめず躊躇していた。
一方、真希は真希なりに冷静でいようとしたのだが、その態度が逆にひとみには自分の
ことを避けているように感じられたのだった。
- 26 名前:第3幕 2 投稿日:2001年07月15日(日)13時02分23秒
- そして今、ほかのメンバーと楽しそうにしゃべっている真希を見て、ひとみはさらに突
き放されたような気持ちになっていた。誰にもわからないようにため息をつきながら雑
誌をパラパラとめくっていると、
「よっすぃー。」
「あ、梨華ちゃん。」
そこには笑顔の石川梨華が立っていた。ひとみの気持ちが沈んでいるのとはまったく対
照的で、なんだか機嫌が良さそうだ。
「うーん、やっぱりよっすぃーって肌、白くてキレイだよね。」
「え?」
「わたしって地黒だからよっすぃーの隣にいると目立っちゃうよ。」
「そうかなあ。」
「そうだよぉ。うふふ。」
他愛もない話題で話しかけると、梨華はひとみの隣の椅子に座った。楽屋には大きな机
がひとつ置いてあって、椅子がメンバーの人数分だけ並べられている。机を挟んで向こ
う側を見ると、真希が珍しく辻希美・加護亜依とじゃれあっていた。
- 27 名前:第3幕 3 投稿日:2001年07月15日(日)13時02分55秒
- 「ところでよっすぃー、今度のCMだけど…」
「うん…」
梨華はまた軽い話題でしゃべり始める。純粋にひとみと話したい、といった感じだ。
「それでね…」
「うん…」
ひとみは梨華の話にあいづちを打つが、話の内容をほとんど聞き流している状態。上の
空というほどではないが、梨華の高い声を聞いているうちに思考回路が麻痺してきて、
いつのまにか真希の方に視線が動いてしまう。そのたびにハッと我にかえってあわてて
梨華の方を見る、ということを繰り返す。
梨華は相変わらずいつものように収束しない話を一方的にしゃべり続けていたのだが、
そのうちさすがに落ち着きのない様子から、ひとみが自分の話に集中していないことに
気がついた。
- 28 名前:第3幕 4 投稿日:2001年07月15日(日)13時03分36秒
- 「よっすぃー。」
梨華が急に声のトーンを落とす。
「ごっちんがどうかしたの?」
「えっ?」
「さっきからごっちんの方ばっかり見てるみたいだけど。」
ひわかに焦るひとみ。
「そ…んなことないよ。全然。」
「あやしいなぁ。何かあったの?」
「何も…ないよっ。」
ひとみはわざと明るく言ったが、いぶかしげな表情の梨華は納得しない。
「ウソでしょ。」
「ホントに何もないってば…ねえ、ごっちん!」
ひとみはすっかりあわてて、向かいでちびっこふたりとじゃれている真希に思わず大き
な声で話しかけてしまった。
- 29 名前:第3幕 5 投稿日:2001年07月15日(日)13時04分13秒
- 一瞬、楽屋の中が静かになる。そして真希はゆっくりとひとみの方を向くと、
「よっすぃー、どうかしたの?」
「え? いや、その…あの…」
真希がいつもとまったく変わらない調子で答えたので拍子抜けしてしまい、ひとみはし
どろもどろになってしまった。
「自分から話しかけてきたのに、変なよっすぃー。」
真希が言うと、何も知らない希美と亜依は無邪気に笑い出す。圭だけは黙ってその様子
を見ていたのだが、ちびっこふたりにつられてほかのメンバーも一緒に笑った。
「ど〜したのさ、よっすぃー。調子でも悪いの? なんならヤグチが優しく介抱してあ
げようか?」
矢口真里がいたずらっぽく話しかける。すると突然、
「やめてください矢口さん!」
梨華が立ち上がって大声をあげた。いつもおとなしい梨華の意外な姿を目の当たりにし
て、楽屋の中の笑い声がピタリと止む。
「…どうしたの梨華ちゃん、いきなりそんな大きな声なんか出して。」
安倍なつみが不思議そうな顔をして尋ねる。
「なんなのよ石川、びっくりしたぁ。」
飯田圭織がそれに続く。
「もう梨華ちゃん、冗談だってば。落ち着いて座ってよぉ〜。」
真里は笑いながら梨華に話しかけた。すると、
「あ…はい。すみません…。」
梨華はいつもの自信なさそうな声で謝り、下を向いたまま腰をおろした。
「今日はよっすぃーも梨華ちゃんも、なんかヘン。」
「うん。」
亜依が言うと、希美がうなずく。なんとなく場の雰囲気がおかしくなっていることを察
知して、真里がおどけてしゃべり出す。
「よっすぃー、言ってくれればヤグチ、いつでもやさしぃ〜く面倒見てあげるからね!」
「もう、矢口さんてば…」
しかしひとみはいつものように笑う気にはなれず、わずかに口元をゆるめただけだった。
- 30 名前:第3幕 6 投稿日:2001年07月15日(日)13時05分10秒
- 真里の明るい声をきっかけにメンバーは雑談を再開し、楽屋の中はまた騒がしい雰囲気
に戻る───3人を除いて。
真希は希美と亜依の相手を続けたが、どこかうつろな目をしていた。ひとみは再び雑誌
に目を通し始めたが、心ここにあらずという表情で、ただページをめくっていた。そし
て梨華はそんな真希とひとみの間の微妙な空気を感じとり、密かに決意を固めた。
- 31 名前:筆者 投稿日:2001年07月15日(日)13時07分46秒
- 本日はここまでです。
第4幕以降は長くなりますので毎回2回に分けて更新したいと思います。
感想をくださった方には必ずレスをつけていますので、ご覧になってください。
レスつけるタイミングがヘタで申し訳ありません。
何かご意見・ご感想がありましたら遠慮なくお願いします。
- 32 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月16日(月)10時41分09秒
- 展開がとても楽しみです。話の運びがGOOD。
- 33 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月21日(土)09時44分04秒
- すごい続きが気になるんですけど…
- 34 名前:第4幕 1 投稿日:2001年07月22日(日)14時43分40秒
- 「よっすぃー、好きなの。」
梨華の口から飛び出した言葉は、ひとみのまったく想像していないものだった。
あれから梨華に呼び出されてやって来た、誰もいない廊下。声がわずかに響いている。
自然とかかるリバーブは、耳の奥に言葉の欠片を残していく。反芻───好き。すき。
スキ。suki。意味が少し間をおいてからやってくる。
「好き、って…。」
「わたし、ずっとよっすぃーのこと見てた。」
切なくてたまらないんです、と言わんばかりの梨華の上目づかい。
思いがけなくて、それでいて自然な流れに沿った告白。どうして今まで気づかなかった
んだろう。
- 35 名前:第4幕 2 投稿日:2001年07月22日(日)14時44分29秒
- しかし、なぜか現実感がない。足元が浮き沈みしている感覚。急に聞こえ出す鼓動。身
体の周りを薄い膜が包んでいるような気だるさ。
自分が何をしているのかわからなくなる錯覚をおぼえながらも、ひとみは重い口を開く。
「でも、私…。」
「誰かほかに好きな人がいるの?」
イニシアティヴは取らせない。梨華は眉間にシワを寄せる。憐れみを誘う目。狙いすま
した問い。
ひとみの心の中には真希の顔が浮かんだ。私に「好き」と言ってくれた人が、もうひとり。
黙ってしまったひとみを見て、梨華は確信する。
───やっぱりごっちんなのね。…負けられないわ。
- 36 名前:第4幕 3 投稿日:2001年07月22日(日)14時45分09秒
- そしてさらにたたみかける。
「よっすぃーって、ごっちんのことが好きなの?」
突きつけられた言葉。絶望的なほどの切れ味で身体の奥に刺さった。それでも、逃げる。
「そんなこと…ないよ…。」
状況を混乱させない、ただそれだけの、その場しのぎのセリフ。歯切れの悪いひとみの
口調は、真希とのこじれた関係を漂わせている。
チャンスは今しかない。梨華は続ける。
「わたし、よっすぃーを誰にもわたしたくないの。」
「梨華ちゃん…。」
「よっすぃーにわたしのこと、好きでいてほしいの。お願いっ!」
- 37 名前:第4幕 4 投稿日:2001年07月22日(日)14時45分45秒
- どうして…。
ひとみは心の中でつぶやく。
ごっちんも、梨華ちゃんも、私のことを見ていた。でも私は、今までそれに気づかなか
った。その気持ちに応えようと考えたこともなかった…。このままじゃ、ごっちんだけ
じゃなくて梨華ちゃんまで傷つけちゃう。どうしよう…。
ひとみはなんとか言葉をひねり出す。
「ごめんね…梨華ちゃん。今は…まだ…わからない。もう少しだけ、考える時間をちょ
うだい…。」
どんなトラブルがあったのかは詳しく知らないけど、よっすぃーはごっちんとうまくい
っていない。それも、決定的なレベルで。
…そう読んでいた梨華にとっては都合の良くない答だった。チャンスは今しかないのに。
こんなところでぐずぐずしていたら、態勢を立て直した真希にひとみを奪われかねない。
───きっかけはごっちんへのあてつけでも構わないわ。必ず、わたしのものにしてみ
せるんだから。
◇
- 38 名前:第4幕 5 投稿日:2001年07月22日(日)14時46分36秒
- 「石川梨華、15歳、神奈川県出身です。よろしくお願いします。」
「吉澤ひとみ、15歳、埼玉県出身です。よろしくお願いします。」
学年でいうと、吉澤さんよりもわたしの方がひとつお姉さん、ってことになるんです。
でもわたしは早生まれだし、同じ新メンバーだし、かしこまられて話すのも苦手だから、「梨華ちゃん」って呼んでもらうことにしたんです。そしたら吉澤さんも「ひとみでい
いよ」って言ってくれました。
本格的に親しくなったのはそれからです。新メンバーってことで、ののちゃんとあいぼ
ん、わたしとひとみちゃんっていう組み合わせになることが多かったので、自然と。
でものみこみの早いひとみちゃんに比べて、わたしは失敗ばっかり。いつもひとみちゃ
んに助けてもらってばっかりなんです。
- 39 名前:第4幕 6 投稿日:2001年07月22日(日)14時47分18秒
- それでいろいろとお仕事をしているうちに、すっかりひとみちゃんに頼るクセがついち
ゃったんです。…ほら、ひとみちゃんは女の子に人気がある、その、…お姉さんっぽい
ところがあるじゃないですか。本当はわたしの方が年上なのに、いつもひとみちゃんに
くっついてばっかりで。
聞くと、バレーボールをやっていたそうです。わたしもスポーツならテニスをやってて、
いちおう部長だったんですけど、わきあいあいとしたクラブ活動だったから、そんなキ
ビキビとすることはなくて。…だからひとみちゃんを見てると、かっこいいなっていう
か、りりしいなっていうか、そんな気持ちになっちゃうんです。
- 40 名前:第4幕 7 投稿日:2001年07月22日(日)14時47分51秒
- モーニング娘。に入ったばかりのころ、わたしはよく楽屋で泣いていました。そうする
と、決まってひとみちゃんが励ましてくれるんです。一緒にがんばろうって。ののちゃ
んとあいぼんも励ましてくれるんだけど、ひとみちゃんだとなんか違うんですよね。チ
カラがわいてくるっていうか…。
…ひとみちゃんがいるから、わたしは前向きになれるんです。ひとみちゃんといたい、
ひとみちゃんにいてほしい…。そんな気持ちが「好き」という感情に変化したのは、当
然のことなのかもしれません。
- 41 名前:筆者 投稿日:2001年07月22日(日)14時52分09秒
- 本日はここまでです。が、第4幕はまだ少し続きます。
なるべく早く更新しますので、もうしばらくお待ちください。
- 42 名前:筆者 投稿日:2001年07月22日(日)14時57分24秒
- >>32さん
皆さんの予想通りの展開です。ありきたりで申し訳ありません。
>>33さん
すいません。
後半部分が当初の予定よりも長くなりそうでモタついてます。
正直、今後は更新のペースを少し落としていきたいんですけど…。
何かご意見・ご感想がありましたらどうぞ遠慮なくお願いします。
- 43 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月23日(月)22時18分07秒
- ありきたりなんかじゃないですよ。とても楽しみにしています。
がんばってください。
- 44 名前:第4幕 8 投稿日:2001年07月25日(水)11時32分15秒
- だけどひとみちゃんはわたしの気持ちに気づいてくれません。わたしたちは“いい友だ
ち”という状態がずっと続いていました。
一度、矢口さんが冗談半分で「梨華ちゃんってよっすぃーにべったりだよねー。もしか
して梨華ちゃんとよっすぃーって……キャー!」とはやしたてて来たことがありました。
でもそのとき、ひとみちゃんは「そんなことないですよー。ね、梨華ちゃん。」とあっ
さり否定しちゃったんです。その様子を見て、わたしがひとみちゃんに対して抱いてい
る感情を、ひとみちゃんがわたしに対しては持っていないことを悟りました。
- 45 名前:第4幕 9 投稿日:2001年07月25日(水)11時33分04秒
- わたしはチャンスが来るのをじっと待つことにしました。とにかく友だちとして距離を
徹底的に縮めて、いつか彼女にわたしが必要であることを気づいてもらう、そんな作戦
を立てました。
「ひとみちゃん」と呼ぶのもやめました。本当は「ひとみちゃん」と呼びたいんです。
でもその呼び方を“特別扱い”みたいに言われて彼女がイヤな思いをすることはどうし
ても避けたかったんです。わたしはみんなと同じように「よっすぃー」と呼ぶクセをつ
けました。
わたしの相談を真剣に聞いてくれるよっすぃー。わたしのつくったお菓子を喜んで食べ
てくれるよっすぃー。わたしはよっすぃーと一緒にいられればそれでいいの───そう
自分に言い聞かせて毎日を過ごしていました。
- 46 名前:第4幕 10 投稿日:2001年07月25日(水)11時33分44秒
- ところが、わたしがタンポポに、よっすぃーがプッチモニに入ることになって、少しず
つ状況が変わってきたんです。
まず、ユニットが違うことで一緒のお仕事が減っちゃったこと。でもわたしはそのこと
についてはある程度は割り切っているつもりです。いつまでもよっすぃーに甘えてばか
りはいられませんから。問題はもうひとつの方です。
それは、よっすぃーのことを嫌っていたはずのごっちんが、いつのまにかよっすぃーに
近づいてきているということです。保田さんから聞いたんですけど、「雨降って地固ま
る」っていうか、仲直りしてからふたりは急に親密になったんだそうです。もともとよ
っすぃーは同い年のごっちんと仲良くなりたいと思ってたみたいだからそれは当然のこ
ととはいえ、もしごっちんがわたしと同じ気持ちでよっすぃーに接しているとしたら…。
そのことを想像した瞬間、わたしの目の前は真っ暗になりました。ごっちんはプッチモ
ニで一緒。わたしはタンポポで離ればなれ。一緒にいられる時間が少なくなってしまっ
たうえに、ライバルができるなんて。
- 47 名前:第4幕 11 投稿日:2001年07月25日(水)11時34分22秒
- でも、わたしの「好き」という気持ちの方が、ごっちんの「好き」という気持ちよりも
純粋です。だってごっちんは、市井さんの代わりとしてよっすぃーを好きになったんだ
から。ごっちんのよっすぃーに対する想いを、わたしは認めない。認めるわけにはいか
ない。
よっすぃー……ううん、ひとみちゃん。
わたしはあなたと一緒にいたいの。あなたをごっちんに渡すわけにはいかないの。わた
しのために。あなたのために。
だから、待てないの。あなたのこと、わたしのものにしたいの。
◇
- 48 名前:第4幕 12 投稿日:2001年07月25日(水)11時35分07秒
- 「だめ! 今すぐ、今すぐ答えてほしいの! お願い、よっすぃー!」
いつもよりさらに高い声で梨華はひとみに迫る。
と、そのときひとみには、その必死な梨華の表情に、一瞬、今朝の真希の姿が重なって
見えた。
…ごっちん? あのとき、傷つけちゃった…。もう取り返しがつかないね…。
…梨華ちゃん? また私は同じことを繰り返すの? …そんなのイヤだよ。もうこれ以上、
近づけないよ。
「……ごめん、梨華ちゃん!」
ひとみはその場から逃げ出すように走り出した。急いで階段を駆け下りる。
突然のことにしばし呆然とする梨華。しかしすぐに気がつき、ひとみの後を追う。
「待って、よっすぃー!」
ふたりの運動能力の差は圧倒的だった。梨華はあっという間にひとみを見失ってしまっ
た。
「ひとみちゃ----------ん!!」
梨華の高音が踊り場に虚しく響く。
- 49 名前:第4幕 13 投稿日:2001年07月25日(水)11時35分42秒
- そしてその悲痛な叫びを背に走っている間、ずっとひとみは自分に問いかけていた。
「どうすればいいの? 私はどうすればいいの?」
…答えは、見つからない。
- 50 名前:筆者 投稿日:2001年07月25日(水)11時39分44秒
- 本日はここまでです。次回は第5幕の前半です。
- 51 名前:筆者 投稿日:2001年07月25日(水)11時43分28秒
- >>43さん
ありがとうございます。
ここんとこ、この話に自信が持てなくなって沈んでいたんですが、
励ましてもらってだいぶラクになりました。がんばります。
- 52 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月25日(水)12時58分39秒
- なんか微妙に石川がダーク…
- 53 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月28日(土)21時31分54秒
- ごまよし好きなので期待してます。
- 54 名前:第5幕 1 投稿日:2001年08月03日(金)02時31分57秒
- 「吉澤、今あいてるかな?」
圭がひとみに話しかける。
夕方、ひとみが仕事を終えて楽屋に戻ってきたとき、中には圭しかいなかった。今朝の
こともあるし、適当に理由をつけて早くここから出ようと思った矢先に、まるでそのこ
とを見透かしていたかのように、圭は声をかけてきたのだ。無視するわけにもいかない
ので、できるだけいつもと同じ調子で返事をする。圭の方は見ないままで。
「なんですか?」
圭は真剣な表情で切り出した。
「後藤とは何があったの? 今朝のこと、詳しく教えてくれない?」
ついにきたか…。ひとみは今日のできごとを振り返る。真希からの告白、そしてキス未
遂。梨華からの告白、そして逃げてきたこと。
黙ったままのひとみに対し、圭は優しく話しかける。
「言いたくないんなら言わなくてもいい。でもサブリーダーとして、同じプッチの仲間
として、放っておけないんだよね。」
ひとみはその言葉にはっとした。保田さんなら、前のときみたく私を救ってくれるかも
しれない。人を傷つけることしかできない私を。きっと…。
「私は…」
ひとみはゆっくりと、しかしはっきりとした声で沈黙を切り裂いた。
- 55 名前:第5幕 2 投稿日:2001年08月03日(金)02時32分47秒
- 「私は…みんなを、傷つけることしか、できないんです…。」
私の背負っている“罪”があらわになっていく…。
涙がひとみの長い睫毛をいっぱいに満たす。圭は黙ってまっすぐひとみを見つめ、話に
聞き入る。
「今朝、ごっちんに告白されて…。でも私、何も言えなくて…。」
「後藤が? …そう。」
圭は内心驚いてはいたが、それを表情に出すことはなく、ひとみにやわらかい視線を送
り続ける。
「それでキスされそうになって…私、こわくなって…。」
「うん?」
「イヤだって振り払ったらごっちんを椅子ごと倒しちゃった…。」
「ケガ、させちゃったの?」
ひとみは首を横に振る。
「私、謝ったけど、ごっちん、『このことは忘れて』って。そしてごっちん、出てっち
ゃった…。」
「それで後藤は泣いてたのか…。」
圭は椅子の背もたれに思いきり寄りかかって天井を見上げる。天井は規則正しく穴のあ
いた模様になっていて、それが無限に続く追いかけっこを暗示しているように思えて、
圭は少し厭な気持ちになった。
- 56 名前:第5幕 3 投稿日:2001年08月03日(金)02時33分29秒
- 「それから…」
天井を睨んでいる圭に対し、うつむいたままでひとみは言葉を続けた。
「梨華ちゃんにも告白されて…、私、やっぱりこわくなって…」
これまた内心驚いたが、圭は冷静に相槌を打つ。
「逃げてきた…梨華ちゃんを置いて…。」
「そうなの………はあっ。」
圭は天井を見つめたまま、大きくひとつため息をつく。ちらりとひとみの方に視線を移
すと、涙で顔をぐちゃぐちゃにしながらもそれをぬぐおうともせず、きゅっと唇を噛ん
で床を見つめていた。
- 57 名前:第5幕 4 投稿日:2001年08月03日(金)02時34分07秒
- 「保田さん。私、ごっちんとも、梨華ちゃんとも、ずっと仲良くしていたかった。バラ
ンスを崩したくなかった…。」
「バランス…?」
「私はごっちんの本当の気持ちも、梨華ちゃんの本当の気持ちも知らなかった。知らな
かったから仲良くできた。…だけどもうダメなの!」
ひとみの口調はだんだんと強いものに変わっていく。
「ごっちんに告白されて、私はごっちんが怖くなった。梨華ちゃんに告白されて、私は
梨華ちゃんから逃げた。」
「吉澤…。」
「もう現実は変わっちゃったの! もう戻れない! あいまいな私の気持ちはふたりを傷
つけることしかできない!」
ひとみは叫ぶ。そしてまっすぐ圭の目を見る。とめどなくあふれる涙。
「私、どうすればいいの? どうすれば人を傷つけないで生きていけるの? 教えて!」
- 58 名前:第5幕 5 投稿日:2001年08月03日(金)02時34分41秒
- …吉澤は苦しんでいる。後藤の想いも石川の想いも受けとめることができずに。それを
自分のわがままと思いこむことで、自分に罪を負わせることで、吉澤はふたりを救おう
としている。
でもそれはまやかしに過ぎないことも知っている。人を傷つけずに生きていけるなんて
嘘。きれいごとじゃないんだ。自分をいくら深く傷つけたって、それで相手が癒される
はずなんてない。
吉澤はそのことをわかっている。わかっているけど、それでも自分を傷つけずにはいら
れない。それが吉澤の優しさ。はかない、優しさ。
- 59 名前:第5幕 6 投稿日:2001年08月03日(金)02時35分20秒
- 「よっすぃー。」
圭は椅子から立ち上がると、ひとみの肩にぽんっと手を置く。
「告白されるってことは、とても幸せなことなんだよ。」
「保田…さん?」
「告白って、ものすごいエネルギーが必要だよね。いろいろ悩んで。決心をして。相手
に、想いをぶつけて。」
「……。」
「吉澤は、後藤の想いも石川の想いも知らなかったから、いきなりの告白に対して結論
が出せなかった。」
ひとみは小さくこくり、とうなずいた。
「でもね。勇気を出して想いを伝えてくれた相手には、正直な自分の気持ちを返してあ
げないと。」
「正直な…自分の気持ち…?」
「そう。後藤のことをどう思っているのか、石川のことをどう思っているのか、本当の
ことを伝えるの。」
「ごっちん…、梨華ちゃん…。」
「うん、もう一度よく考えてごらん。自分が今まで気づかなかった気持ちが見つかるか
もしれないよ。」
本当の自分の気持ち…。ひとみは目を閉じた。
毎日いっしょにいて、いつもは意識していないけど、でもふたりとも大切な人。
◇
- 60 名前:筆者 投稿日:2001年08月03日(金)02時38分05秒
- 第5幕は今日から4日連続でちまちまと更新していきます。
- 61 名前:筆者 投稿日:2001年08月03日(金)02時44分03秒
- >>52さん
そうですね、梨華ちゃんにはちょっとした「悪役」を演じてもらいます。
いろいろ不満のある方もいらっしゃるかもしれませんが、あくまで物語ですので。
ご了承ください。
>>53さん
甘い展開になるまでにはまだ少しかかります。満足していただけるようがんばります。
- 62 名前:第5幕 7 投稿日:2001年08月04日(土)01時33分36秒
- ───私はごっちんのことをどう思っているんだろう?
「吉澤ひとみ、今日からプッチモニに入りました。保田さん、後藤さん、よろしくお願
いします!」
「うん、一緒にがんばろう!」
「…よろしく。」
プッチモニに入ったときも、やっぱり後藤さんは私のことを嫌っているみたいだった。
- 63 名前:第5幕 8 投稿日:2001年08月04日(土)01時34分52秒
- 私も後藤さんも同じ中学3年生ということで、TVなどで出番が一緒になることは比較
的多かった。そしてそれを絶好のチャンスと私は思っていた。『LOVEマシーン』で
一気にスターダムにのしあがったモーニング娘。を引っ張っているのは、間違いなく後
藤さんだ。私はそんな後藤さんととにかくたくさん接することで、少しでも多くのこと
を学び取ろうと思っていたのだ。
そういうわけで、私は空いている時間を見つけては、できるだけ後藤さんに話しかけた。
でも後藤さんはいつも私のことをそれとなく避けていた。マイペースな後藤さんからす
れば、好奇心のおもむくままに接する私の態度はとてもジャマなものに映ったのだろう。
しかし、それでも私は話しかけるのをやめようとは思わなかった。いつか後藤さんと仲
良くなれると信じていたから。
- 64 名前:第5幕 9 投稿日:2001年08月04日(土)01時35分26秒
- だけど『青春時代1.2.3!』のダンスレッスン中、後藤さんは私と一緒にいたくな
い、と叫んだ。
私は絶望的な気持ちになった。きっとわかりあえる、と信じて努力してきたのに。話し
かけてきたのに。
…でもこのときは保田さんが助けてくれた。それをきっかけにして、私たちは前に向か
って進みだしたんだ。
あれから私と後藤さん…ごっちんは、お互いの考え方を徹底的に突き合わせた。そして
見えてきたのは、ごっちんがふつうの15歳の女の子という事実。私もふつうの15歳の女
の子という事実。もはやふたりの間に壁なんてなかった。
- 65 名前:第5幕 10 投稿日:2001年08月04日(土)01時36分05秒
- そして私は思う。あのときごっちんとの衝突があったから、今の私たちがあるんじゃな
いかって。イヤな部分をぜんぶ吐き出したら、ふたりをつなぐ大切なものが見えてきた
ような気がするんだ。これからも、ごっちんと一緒に成長していきたい。ごっちんとは
いつまでも、お互いのことをわかりあう関係でいたいな。
◇
- 66 名前:第5幕 11 投稿日:2001年08月05日(日)00時13分54秒
- ───私は梨華ちゃんのことをどう思っているんだろう?
「私のこと、『梨華ちゃん』でいいよ。同じ年に生まれたんだし。ね?」
私たちは一緒にモーニング娘。になった。石川さん……梨華ちゃんとはすぐに仲良くな
った。
- 67 名前:第5幕 12 投稿日:2001年08月05日(日)00時15分09秒
- 私と同期の梨華ちゃんは、TVやレッスンなどでペアになることが多かった。小さい頃
から“凶暴女”と言われてきた私とは対照的に、梨華ちゃんは“いかにも女の子”って
感じがした。おまけにいつも不安そうにしているから、守ってあげなくちゃ、そんな気
持ちに思わずなってしまう。失敗して落ち込んでるのをなぐさめたり、相談にのって話
を聞いたりしていると、なんだか私の方がお姉さんみたいな気がしてきた。
梨華ちゃんもそのことは自覚していたようで、やたらと「ポジティブ」という言葉を使
うようになった。「ファイトファイト!」が口癖になったりもした。
そのうちに引っ込み思案な梨華ちゃんが先輩たちの格好の餌食になる、という構図が定
着してきた。それでもなんとか言い返そうとする梨華ちゃん。するとその一生懸命さが
みんなにも伝わってきて、梨華ちゃんは徐々に目立ち始めた。
- 68 名前:第5幕 13 投稿日:2001年08月05日(日)00時16分48秒
- そして梨華ちゃんは、注目が集まることで少しずつ変わっていった。
私に相談をもちかけていた最中に、「そうだ、わたしってイジられキャラだったんだ!」
と、まるで悟りを開いたような口調で叫んだことさえあった。
自分の役割を知った梨華ちゃんは、もう立派に成長していた。チャーミー石川のかわい
らしさとふてぶてしさは、梨華ちゃんにしか表現できない。自分だけができる仕事を、
梨華ちゃんはすでに手にしていた。
私は梨華ちゃんをうらやましく思っている。梨華ちゃんは自分が変わっていったのを、
私がいろいろ励ましてあげた結果だと考えているようだ。でも、それはあくまできっか
けにすぎない。梨華ちゃんが成長したのは、自分自身の力なんだ。自分自身が努力した
成果なんだ。もう梨華ちゃんは、私に頼らなくても大丈夫なんだ。
- 69 名前:第5幕 14 投稿日:2001年08月05日(日)00時17分26秒
- そして梨華ちゃんが結果を残していく間、私はほとんど何もできていなかった。黙って
指をくわえて、梨華ちゃんが変身していくのを見ていた。
私は今のままでいいの…?
…よくなんかない。
◇
- 70 名前:第5幕 15 投稿日:2001年08月06日(月)00時45分32秒
- もう一度、ごっちんのことを考えてみる。
後藤真希。あっさりしてて。何事にも関心がなさそうで。でも強い意志を持った人。
私はごっちんにキスされそうになった。襲われた、と言えなくもない。そして私はごっ
ちんを拒絶した。無意識のうちに。
でもごっちんが部屋から出ていったとき、私は大切なものを失った気持ちになった。ご
っちんがいなくなったら、私はどうすればいいのだろう?
- 71 名前:第5幕 16 投稿日:2001年08月06日(月)00時46分11秒
- 私は今、ようやく気がついた。ごっちんが必要としているのは私。私が必要としている
のはごっちん。
失われたバランスは、もう元には戻らないだろう。それなら前を向いて進むしかない。
傷ついたごっちん、そして未来の私のために。
言おう。
もう一度ごっちんに会って、今の気持ちを伝えよう。
───ごっちんとはもう離れない。私はごっちんと歩いていくんだ。
- 72 名前:第5幕 17 投稿日:2001年08月06日(月)00時46分52秒
- ひとみが目をあけると、圭が心配そうな顔つきでのぞきこんでいた。そのまなざしに対
し、笑顔で答える。
「保田さん…。梨華ちゃんの想いも大切だけど、私はごっちんの気持ちをわかってあげ
なくちゃいけないんだ。」
「吉澤…。」
「私、ごっちんが好き! ごっちんにはずっと私のこと、好きでいてほしい!」
ひとみの言葉にもう迷いはなかった。
「…そう、結論が出たんだ。じゃあ後藤にそのことを言ってあげないとね。」
「はい。」
「石川にもちゃんと言うのよ。」
「はい。…ありがとう、圭ちゃん! 私、ごっちんに伝えてくる!」
ひとみは勢いよく楽屋のドアを開けると、真希を探しに走り出した。
「“圭ちゃん”か…。ふふ…まったく世話が焼けるな、あいつら。」
圭は優しくその後ろ姿を見送った。
- 73 名前:筆者 投稿日:2001年08月06日(月)00時49分16秒
- 第5幕はこれにておしまいです。
次回は第6幕前半の予定ですが、更新はいつになるか未定です。
ご意見・ご感想などありましたらよろしくお願いします。
- 74 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月06日(月)02時32分55秒
- おいおい!いい感じの展開じゃないですか!!(w
- 75 名前:名無しの一読者 投稿日:2001年08月06日(月)06時47分48秒
- そうっすよね。吉澤は究極の選択迫られたら
やっぱ後藤でしょうね
楽しみにしてますね。
- 76 名前:第6幕 1 投稿日:2001年08月13日(月)13時56分43秒
- 「あっ、梨華ちゃん。」
真希を探していた途中の廊下、ひとみは梨華と鉢合わせてしまった。思わず声が出てし
まう。
それと同時に、何時間か前の記憶が一気に押し寄せてくる。セオリー通りの梨華の告白。
憐レム可シ、可憐という言葉はまさに彼女のためにあるのだろう。首を縦に振らないこ
とがひどく後ろめたい行為のように思える、あの告白。いたたまれなくなったひとみは
返事をすることなく、その場から逃げた。
そしてそのとき、ひとみは梨華の告白に、真希の姿を重ねて見ていた。顔も声も性格も
全然似ていないのに。しかしひとみには、自分に迫るふたりが確かに重なって見えてい
たのだ。───なぜ?
- 77 名前:第6幕 2 投稿日:2001年08月13日(月)13時57分29秒
- まるでモラトリアム。大きな海に漕ぎ出すのが怖くて、ずっと甲板の上で備品のチェッ
クをしているような。時化が怖くて、雲ひとつない快晴をずっと待っているような。本
当はいつでも出航できるのに、口実をつくっては先延ばしを繰り返す。
そう、いつでも告白に応えることはできる。友だちとしてのバランスを保ちたいと思う
心が、知らず知らずのうちにひとみを現実から逃れさせようとしたのだろう。でも、も
うその猶予の期限は切れてしまっていた。
- 78 名前:第6幕 3 投稿日:2001年08月13日(月)13時58分08秒
- 「よっすぃー。」
梨華の声が容赦なくひとみを現実に引き戻す。ぼけていたピントが梨華の目に合った。
すると笑顔を浮かべてひとみに話しかける。
「さっきの返事、聞かせてくれるよね。」
やっぱり…。見逃してはくれないよね…。
梨華の微笑がひとみの身体を縛りつける。追いつめられた。もう逃げることはできない
のだ。可憐───その言葉が鈍いタッチと鋭い切れ味でひとみの心をえぐる。
ひとみは目を閉じ祈る。───私はどうすればいいの?───瞬間、さっきの圭の言葉
を思い出した。
『勇気を出して想いを伝えてくれた相手には、正直な自分の気持ちを返してあげないと。』
そうだ。本当の自分の気持ちを正直に梨華ちゃんにも言おう。もう逃げられないのなら、
開き直るしかない!
ごくっとつばを飲みこむと、ひとみは穏やかな口調で切り出した。
「さっきは逃げてごめんね。今度はちゃんと言うから。」
梨華はひとみの目を見て、無言でうなずく。
「私、ごっちんのことが好き。」
- 79 名前:第6幕 4 投稿日:2001年08月13日(月)13時58分43秒
- それを聞いた梨華は笑顔から一転、何時間か前に見せた後ろめたさを迫る表情に戻る。
ひとみは思わずのけぞったが、なんとか踏みとどまって心を落ち着かせる。
「よっすぃー、わたしじゃダメなの?」
梨華の言葉。なおも訴えかける視線。ゆっくりと、真綿で。ゆるやかに、首を。───
それは断罪とも言える時間の始まり。
- 80 名前:第6幕 5 投稿日:2001年08月13日(月)13時59分26秒
- 「ごめんね、梨華ちゃん。私、梨華ちゃんの気持ちに応えることはできない…。」
「わたしの何がいけないっていうの?」
「そんなんじゃないよ…。」
「わたしのどこが気に入らないの? 直すよ、直すから、わたし!」
「ううん、私、梨華ちゃんのこと素敵な女の子だと思ってるんだよ。チャーミーの衣装
とか、すごくよく似合ってたし…」
「ごまかすのはやめて!!」
「聞いて、梨華ちゃん! 私、梨華ちゃんのことをいつもうらやましく思ってるんだよ!」
「じゃあどうして!? どうして!?」
「梨華ちゃんのことも好きだけど……でも…。」
「でも!?」
「私にはごっちんが必要なの! 私がこれから先がんばっていくには、ごっちんじゃなき
ゃダメなの!」
- 81 名前:第6幕 6 投稿日:2001年08月13日(月)14時00分08秒
- その言葉は梨華の身体を突き抜けた。鳩尾に衝撃を受けたように、呼吸が一瞬止まる。
そして何も見えなくなったと思ったとき、梨華は口走っていた。
「ひとみちゃんは市井さんの代わりなのよ! それでもいいの!?」
「えっ…?」
「ごっちんはね、市井さんがいなくなったその穴をひとみちゃんで埋めようとしているの!」
「そんな…。」
「ひとみちゃんはごっちんのいいように利用されてるだけなの!」
「ごっちんが…? ウソ…だ…。」
- 82 名前:第6幕 7 投稿日:2001年08月13日(月)14時00分48秒
- 「ひとみちゃん、わたしを見て。」
「…?」
「わたしなら、ひとみちゃんをひとみちゃんとして愛することができるよ。」
「梨華ちゃん…。」
「わたしは、ひとみちゃんだけを見てるから。わたしには、ひとみちゃんしかいないん
だから。」
「……。」
「もう一度言うね。ひとみちゃん、好きなの。ひとみちゃんにもわたしのこと、好きで
いてほしいの。」
「……。」
「どうしたの、ひとみちゃん? お願い、答えてよ。わたしを好きって言って!」
「…梨華ちゃん………ごめん。」
- 83 名前:第6幕 8 投稿日:2001年08月13日(月)14時01分28秒
- 「どうして!? どうして、ひとみちゃん!! なんでわたしじゃダメなの!?」
「梨華ちゃんは…私がいなくたって大丈夫だよ…。でも、ごっちんとは一緒にいなきゃ
ダメなんだ…。」
「だってごっちんは市井さん…」
「いいの!」
「ひとみちゃん!?」
「私、市井さんの代わりだっていい! ごっちんと私が一緒に成長していくことができる
なら、それで構わない!」
「そんなの……そんなのおかしいよ! ひとみちゃんはひとみちゃんなんだよ!? 市井
さんじゃないんだよ!?」
「梨華ちゃん…。ごっちんが喜んでくれるなら、私はそれでいいんだ。」
「ひとみちゃんがどんなにごっちんのことを想っても、市井さん以上の存在にはなれな
いんだよ!? それでもいいっていうの!?」
「今、ごっちんが必要としているのは私。そして、私が必要としているのはごっちん。
それだけのことだよ。」
- 84 名前:第6幕 9 投稿日:2001年08月13日(月)14時02分07秒
- ひとみは笑みを浮かべて梨華を見つめる。その笑顔は自信に満ちた優しさに溢れていた。
今まで自分には見せてくれなかった表情を見て、梨華は確信する。
───ああ、わたしは負けたんだ。彼女が必要としていたのはわたしじゃなかったんだ。
- 85 名前:第6幕 10 投稿日:2001年08月13日(月)14時02分47秒
- 「歌でも、ダンスでも、レンアイでも、いつか市井さんを超えてみせる。…ごっちんと
ふたりで。」
「………そんなにごっちんがいいんなら、今すぐごっちんに言いなさいよ!」
「…えっ?」
「今朝ごっちんとケンカしたんでしょ! 今日中に謝っちゃいなさいよ!」
「梨華ちゃん…。」
「あしたごっちんと仲良くなってなかったら許さないんだから! 市井さんよりも仲良く
してなかったら許さないんだから!」
- 86 名前:第6幕 11 投稿日:2001年08月13日(月)14時03分20秒
- 梨華はひとみに背を向けて走り出す。その目からこぼれ落ちた涙は残像となって、報わ
れなかった梨華の想いとともにひとみの心に刻みこまれた。
───ごめんね、梨華ちゃん。私、絶対ごっちんに言うから。
「ごっちんに確実に会えるところ…」
思い当たる場所はひとつしかなかった。
- 87 名前:筆者 投稿日:2001年08月13日(月)14時07分53秒
- 本日はここまでです。
第6幕はこれにておしまいです。予告では「前半だけ」と書きましたが、短かったので全部更新しました。
次回はいよいよ最終回、第7幕です。
- 88 名前:筆者 投稿日:2001年08月13日(月)14時13分57秒
- >>74さん
次回、ようやく「ごまよし」にたどり着きます。
長々ともったいぶって申し訳ありません。
>>75さん
ごまよしを正当化するために話を書いてますので、そういうことになりますね。
今までもったいぶってきた分、期待に応えられるようにがんばります。
ご意見・ご感想などありましたら遠慮なくお願いします。
- 89 名前:名無し読者は今夜も眠れない 投稿日:2001年08月14日(火)03時06分50秒
- もう最終回ですか。あきらめかけてきてたごっちんの笑顔が見られそうですね。
でも、かわいそうな梨華ちゃん…。そんな梨華ちゃんにだれか合の手を。(ほい)
>>68 でこないだのうたばんのうらやましいキャラよっすぃーが浮かんできてにやけてしまった。
(シリアスなのに)
- 90 名前:筆者 投稿日:2001年08月25日(土)03時18分21秒
- 25日の夜を目処に更新します。新メン発表までには終わらせたいので。
>>89さん
梨華ちゃんが報われなくって申し訳ないです。
でもこれは梨華ちゃんにしかできない役どころだと思ってます。あくまで物語ですから。
よっすぃーのうらやましいキャラ、確かに重なってしまいましたね。
でも絶対、よっすぃーにとって最近の梨華ちゃんはかなりうらやましいのではないかと思います。
- 91 名前:第7幕 1 投稿日:2001年08月25日(土)23時44分42秒
- 「ん〜〜〜〜〜〜〜」
タクシーを降りた真希が家の前で大きくのびをしたその瞬間、横から聞き慣れた声がし
た。
「…ごっちん。」
最初は空耳かと思ったが、念のために声のした方を見ると、そこにはひとみが立ってい
た。
「よっすぃー!? どうしたの? 何かあったの?」
真希は驚いて大声をあげた。バツが悪そうに笑みを浮かべるひとみ。
「と…とにかく中に入ってよ。お母さーん、ただいまー!」
真希はひとみの背中を押してそのまま家の中に入った。
- 92 名前:第7幕 2 投稿日:2001年08月25日(土)23時45分25秒
- 「びっくりしたよ、よっすぃー。」
部屋に入ると真希がひとみに声をかける。
「ごめんね、急に来ちゃって。」
「気にしなくていいよ。あ、そこに座って。」
真希はベッドを指さすと、自分は学習机の椅子に座る。ひとみはベッドに腰かけると、
まるで初めて来たときのように真希の部屋を見回した。よく汚いと言われる部屋だが、
今日は比較的きれいに片づけられているようだ。そんなことを考えているひとみに真希
が声をかける。
「先に帰ったんじゃなかったんだ。」
「うん…どうしてもごっちんに言っておきたいことがあって。」
「どうしても言いたいこと?」
「ほら、今日はいろいろとあったから…。」
その言葉にふたりともうつむいてしまい、しばらく沈黙が続く。
真希はひとみと梨華の葛藤を知らない。そのためにひとみの言葉の意味を自分の行為の
ことだけだと誤解していた。居づらくなって、真希は立ち上がると
「お茶、持ってくるね。レモンティーでいいよね?」
そう言い残して、そのまま台所へと下りていった。
- 93 名前:第7幕 3 投稿日:2001年08月25日(土)23時46分05秒
- ひとみはベッドに座ったまま、主のいない部屋の中を再び見回した。散らかっていない
その様子が、真希の不在を強く印象づける。
「またひとりぼっち…。」
でも今度はさびしくない。ごっちんが戻ってきてくれるから。
目を閉じ、大きく深呼吸する。
「ふうっ。」
なんだか気持ちが軽くなった。今なら言える、そんな気がする。
いろんな言葉がひとみの頭の中に浮かんでは消えていく。何を言えばよいのか迷ってい
るのではない。寄せては返すこの言葉の波は、ひとみにとって心地の良いものだった。
生まれ、消えていく言葉は、自分の真希に対する想いの証なのだから。
ごっちんが来たとき、ごっちんの目を見て出てきた言葉を素直に伝えられればそれでい
い。でも私の心の中には、こんなにごっちんへの気持ちがいっぱいに詰まっているんだ
よ。言葉なんてしょせん音速。それじゃとても足りないくらい、私の想いはあふれてい
るんだよ。
- 94 名前:第7幕 4 投稿日:2001年08月25日(土)23時46分39秒
- すると、慎重な足どりで階段を上がってくる音が聞こえた。カチャカチャとティーカッ
プがぶつかる音もする。
そして音が止んで、少し間をおいてからガラッとふすまが開いた。心なしか硬い表情で
部屋に入ってきた真希に、ひとみは笑顔で声をかける。
「ねえ、ごっちん。」
「なに?」
「今朝、びっくりしちゃって…ごめんね。」
ひとみに紅茶を差し出そうとした真希は、忘れようとしていたことに触れられたのでう
つむいて答える。
「…あたし、調子に乗って悪かったと思ってる。もうしないから。」
「もうしないんだ。」
「へ?」
意外な言葉が返ってきて、真希は思わず顔を上げてひとみの顔を直視してしまう。ひと
みは真希から紅茶を受けとると、顔を赤らめながら、しかしはっきりとした声で言った。
「私ね、ごっちんのこと好きだよ。」
「よっすぃー…。」
- 95 名前:第7幕 5 投稿日:2001年08月25日(土)23時47分14秒
- 真希は閉じこめていた想いが胸の中で再び熱を帯びていくのを感じた。
しかし、それと同時に思い出す。今朝、自分を追いつめたふたつの不安を。
「どうしたの、ごっちん?」
「う……」
よっすぃーはあたしのふたつの不安を知らない。もし今のままであたしがよっすぃーの
告白に応えても、それはよっすぃーをただ傷つけることにしかならないだろう。表面だ
けをごまかした対応にすぎないから。
そう、はっきりとあたしの不安を伝えなくちゃいけない。あたしの不安を消せるのはよ
っすぃーだけ。
……でも、言ってしまったらよっすぃーはあたしのことを決定的に嫌ってしまうかもし
れない。そしてもう二度と元に戻れなくなってしまうかもしれない。
「ごっちん、私は正直に言ったよ。ごっちんの本当の気持ちをもう一度聞かせて。」
真希を見つめるまっすぐな目。一点の曇りもなく澄み切った瞳。
───ずるいよね、あたし。あたしは今、こんなきれいな目をしていない。きっと迷い
で濁った視線をよっすぃーに送ってる。リスクを恐れて何もできないで。それでもまだ
みっともなく救いを求めてる。
- 96 名前:第7幕 6 投稿日:2001年08月25日(土)23時48分42秒
- 黙ったままの真希を見て、ひとみはしゃべり出した。
「今日ね、私、梨華ちゃんにも告白されたんだ。」
「え…?」
「私、ずるいから最初逃げちゃった。でも、圭ちゃんに『正直な自分の気持ちを返して
あげて』って言われて、私、考えたんだ。そしたら、私はごっちんのことが好きなんだ
って気がついた。」
「……。」
「だから梨華ちゃんに言った。私はごっちんのことが好きだから梨華ちゃんの気持ちに
は応えられないって。」
「待って、よっすぃー!」
耐え切れなくなって、真希はひとみの言葉をさえぎる。
「あたし、よっすぃーに好きって言われてうれしいけど、本当にうれしいけど、…でも
あたしにはそんなこと言ってもらう資格なんてない! 今朝だって無理やり…」
「ううん、気にしてないよ。ごっちん、私のことそれだけ好きでいてくれてるんだから。」
「ちがう…ちがうの! あたし、怖くなって、よっすぃーを…」
「怖い?」
- 97 名前:第7幕 7 投稿日:2001年08月25日(土)23時49分50秒
- はっとする真希。
言うな。言えばあたしはきっとよっすぃーを傷つける。ふたりの関係は、完全に壊れて
しまう。
「ごっちん、何が怖いの?」
ああ、でも。よっすぃーに赦してもらわないと、あたしは誰も愛することができずにこ
れからもずっと苦しみ続ける。助けてほしい。助けて…。
「もしかして、楽屋におばけがいたの?」
そんなんじゃないよ、よっすぃー! あたしは…あたしは……
「ごっちん霊感あるもんね。私にはわからなかったけど…あ、それであのとき───」
ついに、真希は叫んだ。
「ずっと不安だったんだ! あたしはよっすぃーのことを市井ちゃんの代わりとして好き
になったんじゃないかって! そしてよっすぃーも市井ちゃんみたいに遠くへ行っちゃう
んじゃないかって!」
「ごっちん…。」
───とうとう言っちゃったね、あたし。やっぱり、嫌われちゃうんだろうな。…もう
いいや、もう…。
- 98 名前:第7幕 8 投稿日:2001年08月25日(土)23時50分53秒
- 「へへっ、サイテーだよね、あたし。勝手に悩んで、それでよっすぃーに無理やり迫っ
て。きっとよっすぃー、あたしのこと───」
「知ってたよ。」
「へ?」
「梨華ちゃんが言ってた、ごっちんが私のこと市井さんの代わりにしてるって。」
「…そう…なの。」
「でも私、梨華ちゃんに言われても一歩も退かなかったよ。ごっちんのこと好きだって
自信持ってたから。」
「……。」
「それで梨華ちゃんと話しているうちにどんどんわかっていったんだ。私、こんなにご
っちんのこと好きだったんだって。ごっちんがどう思っていたって、私は私でごっちん
が好きだって。」
「……どうして? どうしてそうまであたしのことを好きでいてくれるの? あたしの想
いはよっすぃーに釣り合うほどキレイじゃないかもしれないんだよ?」
「私はね、市井さんのことを好きだったのもぜんぶひっくるめて、ごっちんが好きなん
だ。私がこの先がんばっていくためには、そんなごっちんがいなくちゃダメなんだ。」
- 99 名前:第7幕 9 投稿日:2001年08月25日(土)23時51分53秒
- 「あたしは本当は市井ちゃんが好きで、よっすぃーをそのスペアにしてても構わないっ
ていうの?」
「もしそうでも、私はずっとごっちんといるよ。そしていつか市井さんからごっちんを
のっとってやる!」
「こんなあたしでもいいの?」
「そんなごっちんがいいの。」
「本当に、いいの?」
「本当に、いいの。」
まるでにらめっこをするように黙って互いを見つめあうふたり。ひとみの言葉を噛みし
めた真希は、とびきり無邪気な笑顔を浮かべてみせる。
「…あはっ。よっすぃー、あたし、よっすぃーのこと好きでいていいんだね?」
「うん。…だから、今朝のつづき……キス、してよ。ごっちんの想いを今度こそ受けと
めたいんだ。」
ひとみは顔も耳も真っ赤にして、真希の目を見つめたまま言った。それにつられて真希
も赤くなってしまう。
- 100 名前:第7幕 10 投稿日:2001年08月25日(土)23時52分25秒
- 真希はおそるおそるベッドに腰かけているひとみの隣に座る。ゆっくりと横を向くと、
ひとみはその大きな目いっぱいに優しい光をたたえて真希を見つめていた。笑うとぷく
っとふくらむほっぺたが、たまらなくいとおしい。
そしてふたりは目を閉じる。ふたつの唇がゆっくりと近づいていく。
「んっ…。」
下で紅茶を味見していたのか、真希の唇からはほのかに苦い味がした。しかしそれは一
瞬だけで、すぐに甘い香りが唇から広がってふたりの身体を包みこんでいく。ふたりの
唇が触れあっていたのはほんのわずかな時間だったが、互いの気持ちが通いあったキス
は無限の長さのように思えた。
「柔らかいね、よっすぃーの唇。」
「ごっちんもだよ。」
ふたりは照れくさい気持ちを抑えながら、互いの目を見つめあう。
- 101 名前:第7幕 11 投稿日:2001年08月25日(土)23時53分26秒
- 「今度はよっすぃーからしてほしいな…。」
真希が視線をひとみの唇に落としてささやく。
「…いいよっ。」
ひとみは目を閉じて唇を突き出し、真希に近づいてくる。その動作があまりにもぎこち
なくて、真希は待ちきれない気持ちを抑えるのに精一杯だった。
「んんっ…。」
再びふたりの唇が触れあう。あの甘い香りが広がっていくのを感じて、真希は思わず両
腕をひとみの後ろにまわして力いっぱい抱きしめた。ひとみは心地よい真希の体温を全
身で受けとめている。
- 102 名前:第7幕 12 投稿日:2001年08月25日(土)23時54分30秒
───もう…止まらないよ。
真希は唇の隙間からちょこんと舌を出した。真希が次のステップに進もうとしているの
を感じて、ひとみの身体はびくっとのけぞってしまう。それでも真希は両腕に入れた力
を弱めることなく、舌をひとみの唇の中へと這わせていく。
決心を固めていたひとみには、抵抗する気など最初からなかった。ごっちんのことが好
きだから…ごっちんのしたいことをさせてあげたい…。
- 103 名前:第7幕 13 投稿日:2001年08月25日(土)23時55分06秒
- 「んっ!」
真希の舌がひとみの舌に触れた。なまあたたかい感触がふたりを襲う。はじめての感覚。
最初のうちはお互いの舌の先を突っつきあっていただけだったが、気がつけばふたりの
舌は絡みあい、互いのすべてを知り尽くそうと激しく動き回りはじめる。もうほかのこ
となんて目に入らない。息の続くかぎり触れあっていたい。
- 104 名前:第7幕 14 投稿日:2001年08月25日(土)23時55分51秒
- 「ぷあっ。」
ふたりの身体が離れたとき、真希もひとみも夢中になっていた自分が恥ずかしくて、互
いの顔を見ることができなかった。真っ赤な顔でうつむいてベッドに並んでいるふたり。
しばらくしてようやく真希が小さな声でささやいた。
「よっすぃー…。その、すっごく気持ちよかった…。」
「ごっちん……ふふふ。」
「どうしたの?」
「いや、今日はいろんなことがあったなーってね。」
ひとみの言葉で真希はさらに赤くなってしまう。自分でも顔が熱くなっているのがわか
ったが、構わず真希は言った。
「よっすぃー。もう遅いからさ、泊まっていってよ。」
「うん…。そうしようかな…。」
ひとみがそう答えるやいなや、真希はベッドに倒れこんだ。ちらりと甘えるような視線
を送ると、ひとみはいつもの優しい笑顔でその隣に横たわる。
「いっしょに寝る?」
「うん。」
ふたりはどちらからということもなくまた唇を重ねる。すてきな今日が終わるまで、ま
だ時間はあるから。
- 105 名前:第7幕 15 投稿日:2001年08月25日(土)23時56分25秒
- ───You just know what love is.
- 106 名前:You don't know what love is. 投稿日:2001年08月25日(土)23時57分15秒
END.
- 107 名前:あとがき 1 投稿日:2001年08月25日(土)23時58分23秒
- きっかけは、今は空板に移った「ごまよしってどうです?」を見たことでした。あれを読んで、自分なりに“決定版”を書いてみようと思ったのがはじまりです。
結果、壮大なストーリーもなければエンタテインメントにもならないものになってしまいました。見方によっては、恋愛の要素だけを抽出した、という言い方もできるかもしれませんが。
- 108 名前:あとがき 2 投稿日:2001年08月25日(土)23時59分07秒
- オープニングから仲良くしている作品が多い中、恋愛する理由を改めて問い直す作業は難航しました。特に「いちごま」は決定的な関係であり、それを否定することから始めなければならないのは難しいことでした。
プッチモニの再スタート、ブレイクしきれない吉澤とセンターにまで立った石川の格差。材料を揃えるだけ揃えることで、少しでも現実に沿った設定でふたりの恋愛を描こうとしてみました。
また、話が込み入ったものにならないようにする意図もあり、なるべく2人以上は同時に登場
しないようにと心がけました。
しかし、終わってみると、できるだけオーソドクスに書いた結果とはいえ、ただの時間つぶしの読み物になってしまった、という印象は否めません。自分の力不足を痛感しております。
- 109 名前:あとがき 3 投稿日:2001年08月26日(日)00時00分05秒
- 最後に、レスをくださった皆様、どうもありがとうございました。本当に励みになりました。もちろん、レスせずに読んでくださった方にも感謝しております。
機会があれば、またどこかで書いてみようかと思います。今度は劇団・モーニング娘。の舞台にふさわしい、魅力あるストーリーを目指して。
短い間でしたが、本当にありがとうございました。
ご意見・ご感想がありましたら、ぜひお願いします。
- 110 名前:JAM 投稿日:2001年08月26日(日)00時18分45秒
- ラストはリアルタイムでした。
本当に大切な人って失ってから気づくもんなんですよね・・・
最後は痛くならずに良かったです。
実際経験してるので(この歳で・・・)すごく共感できました。
自分の読んだ中でこういう話は
読みにくいものが多かったのですが
この作品はすごく読みやすかったです。
またどこかで小説を書いて欲しいです。
次回作があれば必ず読ませていただきます。
- 111 名前:no name 投稿日:2001年08月28日(火)20時48分26秒
- 現実に沿った設定で真面目に書く人がわりと少ないし、それを恋愛する理由から
やってくれる作者さんは更に少ないので、私は嬉しかったです。
機会があれば、またここで書いて下されば幸いです。
- 112 名前:筆者 投稿日:2001年09月01日(土)16時42分31秒
- >>JAMさん
タイトルからして吉澤の成長物語なんですよね。それと後藤の救済というか。
痛くするつもりは最初からまったくありませんでした。もう、ベッタベタにしてやろうと。
逆にそれが書いている間、読者の皆さんを惹きつけられなかった原因になった気もします。
「読みやすかった」というのは非常にありがたい感想です。どうもです。
>>111さん
最近の名作集は本当に充実してますね。
面白い作品はやはり、よく練られた設定・ストーリーであることが共通しています。
そう考えるとクソマジメに書いていくのはわざわざ逆風に突っ込んでいく行為でした。
でもこうして一定の評価をいただけたのは非常にうれしいことです。ありがとうございました。
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