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ネタ元有りの小説

1 名前:メンソール 投稿日:2001年07月15日(日)21時27分57秒
題名の通りネタ元有りの小説を色々書いていきます。
ここでは作者のHNを変えて書きます。
ですのでもし分かっても心の中にしまっておいて下さい(苦笑
他で連載してるのとは区別したいので…
登場人物はいちごまがかなり多くなると思います。なんせ作者は…(略
ではまず短編から書きます。
2 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月15日(日)21時29分39秒
『カチコチカチコチ…』

時計の秒針の音が部屋に響きわたる。


“時間を下さい…少しでもあの娘のそばにいたいから…”

“時間を下さい…せめてこの命…尽き果てるまで…”


「誰かのうちを呼ぶ声が聞こえる…」

3 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月15日(日)21時30分27秒


Case T−願い−

4 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月15日(日)21時31分16秒
「え〜っと今日はアレの前に検診受けるんだっけ?あれ…?」

病院へと続く並木道を歩く一人の少女。服装、容姿からいって女子高生だろう。
歩きながらかばんから財布を取り出し何かを探していた。

「診察券どこにやったっけ…はぁバカだぁ忘れてきちゃった」
立ち止まり溜息をつきながら財布をかばんの中にしまった。

「まぁいっか、1回くらい。どうせいつも病院来てんだし」

開き直った彼女はまた病院へと歩き出した。
そして彼女の視界には風に舞う桜の花びらが映る。

(もう葉桜か…薄紅の無数の花びらが舞っていく)
(その散り様は…潔いのか…それとも…)

「散る瞬間は怖くないのかなぁ…」
彼女は俯きながらポツリと呟いた。

5 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月15日(日)21時32分05秒
『ビュ――ン!』

「きゃっ!な…何…突風!?」
突然の強風に思わず髪を押さえる。


「すごい風だね」


(……誰?)
後ろを振り返るとそこにはショートヘアの少女が立っていた。

「オレンジのハイビスカス」
ショートヘアの少女はそう言って口元を緩ませた。

(えっ?…スカートめくれてたの!?うわ〜ん…恥かしいよぉ)
その言葉の意味に気づいた彼女は顔を真っ赤にしスカートを押えた。
そして恥ずかしさのあまり急いで病院の入り口へと走り出した。

「走って体に無理をさせないでね。後藤真希さん」
入り口に着く寸前に聞こえた言葉に驚き振り向く。

(!!…あたしの名前を……えっ?消えた!?)
後藤が振り向いた時、そこにさっきのショートヘアの少女はもういなかった。

「ウ…ソ…だってさっきまでそこに…」

「いや〜最近の高校生は足が速いなぁ」
「裕ちゃん!?いつからそこに」
6 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月15日(日)21時32分57秒
後ろから今度は違う声が聞こえてきた。
スーツの上に白衣を身にまとった金髪の女性。
胸の名札には“中澤裕子”と書かれている。
どうやらここの病院の医師で後藤とは面識があるらしい。

「どうしたんや?顔色が優れへんみたいやけど…」
中澤が後藤の顔を覗き込む。

「いや…気分はいいんだけど」
(そうか…走って行ったんだ。あたしいつもボ――っとしてるから気づかなかったんだ)

後藤と中澤は病院内へと歩きながら話を続けた。

「でも知らない女の子にパンツ見られちゃった…恥ずかしい…」
「なんや脱いだんか?ほ〜」
「風でめくれたの!!何言ってんのよ〜」
「冗談やん。そうそうついでに言うとさっきの少女、この病院の医院長のご令嬢や」

「えっ?そうなの?」
「あぁ。確か次女やったと思うわ」
(ほえ〜じゃあ後継者は別にいるんだねぇ…)

二人は受付の前で足を止めた。

「ごっちんも早めに受付を済ませや。んじゃまたあとでな」
「あ、は〜い」
中澤は後藤に背を向けると診察室へと歩いていった。
7 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月15日(日)21時33分37秒
『走って体に無理をさせないでね』


(病気の事心配してくれたのかなぁ…)

後藤は人工透析を受けにこの病院に来ている。
腎臓が正常な役割を果せないかわりに、人工的にその役割を補ってもらうもので
週3回、1回5、6時間はその透析の為に費やされてしまう。

そして…これは一生ついて回る。


(――時間が欲しい…もっと自由になれる時間が…)


「後藤真希さん。第1診察室にお入り下さい」
「おっと、呼ばれてる」
後藤は立ち上がると診察室へと歩き出した。

背後にはその後藤を見つめる瞳が…

8 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月15日(日)21時34分26秒

――――

ここは後藤が通う女子高。
2年1組の教室からは騒がしい声が聞こえてきた。

「次の体育何?梨華ちゃん」
後藤のクラスメートで背の高い少女が、隣のおとなしそうな少女に聞いた。

「マラソンだってさヨッスィー」
「うわっ最悪!!」
彼女はそう言って露骨にイヤな顔をした。

「ごっちんは?」
おとなしそうな少女が1人落ち着いて座っていた後藤に尋ねた。
「ドクターストップ」
後藤は胸の前で小さく“ペケ”を作って苦笑いをした。

「なっに――許さん!」
背の高い少女が冗談混じりで声を荒げる。
「アハハ、ほら早く着替えなきゃチャイム鳴るよ〜」
後藤も慣れているのか笑い飛ばして二人を更衣室へと促した。

騒がしかった教室が途端に静寂に包まれた。

「……」
一人取り残された寂しさや退屈さで、後藤は頬杖をついてボーっとしていた。


「ドクターストップか…色々と制限されて大変だね」

自分の真後ろの席から声が聞こえてきた。
(!?…誰もいないはずじゃ…)
9 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月15日(日)21時35分14秒
「あ…あなた!?どこから…」
後ろの席には昨日病院に行く途中に会ったショートヘアの少女が座っていた。

「2年9組市井紗耶香。同じ学校だって知ってた?」
市井はニッコリ笑って自己紹介をした。

「あっあの、そうじゃなくてあなた授業は!?」
後藤は動揺しながら後退る。
「あたし今から早退するからいいんだ」
市井は立ち上がり後藤の方を見た。

「そうゆう後藤さんは何で逃げるの?」
スカートを押さえながら後退していく後藤に市井が少しづつ近づいていく。
「い…や別に…」
(昨日パンツ見られてるから恥かしいんだよぉ)

「ふ〜ん…でも逃げられるとさぁ」
市井はドンドン後藤との距離を縮めていく。

「あっあのっ」
(えっ?…わぁ――!)
そして行き場を無くした後藤の手に自分の手を乗せた。
後藤はその場に座り込んでしまった。

「逃げられるとさぁ…追いかけたくなるんだよなぁ」
市井は笑みを浮かべながら後藤の顔を覗き込んだ。
(うわ〜ん!この人変だよぉ…)

「そ…それより何であたしの事知ってるの!?」
「アハハ、それは後藤さん…後藤真希の事見てたからだよ」
市井は真剣な眼差しで後藤を見つめた。

「えっ…」
後藤の顔がみるみる赤く染まっていく。
10 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月15日(日)21時36分07秒
「うちの病院でよく見かけたよ。入院してた事もあったね。苦しそうな顔も哀しそうな顔も
あたしには見ている事しか出来なくて…ずっとこうして直接話してみたかったんだ」

「あの…あたし…」
(ヤダ…胸がドキドキしてる)

「クスッ。な〜んて言われたらドキドキしちゃう?」
市井は今度は意地悪そうな顔をして後藤を見た。

「…嘘つくなんて!!人をからかって楽しい!?」
「ハハ…嘘だなんて心外だなぁ。本当の事も言ってるのに…でもどこまでが本当だろうね」
(むっ!この人すっごい性格悪――い!)

からかわれて怒った後藤は市井に背を向けて教室を出ようとした。

「後藤?またね」
ニッコリ微笑んで市井はそう言った。
「もう会いたくないです!」
まだ赤い顔をしながら後藤はドアを開けて出ていった。

(9組には絶対近寄らないでおこう)

(はぁ…あの人一体どうゆう神経してるんだよぉ…体の心配したり…変な風に迫ってきたり…)
(何より意地悪だし…でも…あの人に呼び捨てにされても嫌じゃなかった)


(口惜しい…まだ胸がドキドキ鳴ってる…)



〜続く〜
11 名前:メンソール 投稿日:2001年07月15日(日)21時42分04秒
とりあえずここまでです。
話は短いのであと2回の更新でこの話は終わるでしょう。
ネタ元はタイトルと同じ「時間屋」とゆう漫画です。
日高万里とゆう人が書いてます。FANの方、気分を害されたのなら申し訳ないです。
それとネタ元知ってる人は終わるまで内緒にしといて下さいね(苦笑
12 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月16日(月)04時21分10秒
「時間屋」面白いですね。
ネタ元は知りませんが、かなりいい感じっす!!
続きも楽しみにしています。

作者さんが誰なのか、なんとなくわかっちゃった気がしますが、
心の中にしまっておく事にします。(w
13 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月17日(火)22時51分57秒
次の週の土曜日。後藤はいつものように病院に足を運んだ。
中澤が待つ第一診察室に向かう。
けど診察室の扉を開けて後藤の体は固まった。

「こんにちは、後藤も検診?」
中澤のすぐそばには市井が立っている。市井の診察は終わったらしく上着を着ているところだった。

「何でここに…」
「『またね』って言ったでしょ?」
「なんや2人とも知り合いなんか?」
「あの…知り合いって程じゃ」

「紗耶香のガールフレンドか?」
「(裕ちゃん、あたしこんなに趣味悪くないよ)」
中澤の方に顔を向けて市井は小声で言った。

「聞こえてるよ!!」
「嘘だってば。ほら可愛い娘は苛めたくなるんだよ」

「す…すぐそうやって茶化すし」
「茶化してなんかないよ?泣き顔見るの趣味なんだ」
「十分悪趣味だよ!」
怒っているが後藤の顔は赤く染まったままだ。
いいように市井に翻弄されっぱなしの後藤であった。

(もぉ…学校でも顔合わせないように9組の時間割はチェックしてたのに…)
(しかも今日は第二土曜日で休みなのに。何で会っちゃうかなぁ)
14 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月17日(火)22時53分37秒
「あっすまんごっちん」
突然中澤が立ち上がった。

「え?」
「さっきごっちんのカルテを他の書類と一緒に看護婦に渡してしもたみたいや。すぐに戻るから待っといて」
「えっ!?裕ちゃん、ちょっ…」
中澤はそう言い残し診察室を出ていった。

(この人と2人っきり…?)

「……」
「お〜い、そう睨まないでよ。あたしだって一応患者なんだから」
後藤の視線に市井は苦笑いを浮かべた。

「最近微熱が続いてね、この前もそのせいで早退したんだ」
(あっ…そうだったんだ…)
「だからあの時何か変な行動取ってたら熱のせいだね」
(あの言動は熱のせいだけじゃないと思うけど…でも…)

「本当に市井さん顔色悪いよ?ちょっと待ってて、すぐに先生呼んで来てあげる」
「待って!!大丈夫だから…ここにいて?」
部屋を出ようとする後藤の腕を市井は掴んで言った。

(――あたしを見つめるその瞳があまりにも哀しそうだったので…1人にさせておけなくなった…)

「…ちょっとだけだよ」
後藤の言葉で安心したのか市井は診察室のベッドに寝転んだ。
15 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月17日(火)22時55分19秒
「さっきやっと名前呼んでくれたね。でも“市井さん”ってよそよそしいからヤダなぁ」
ベッドの脇に腰を下ろした後藤を見上げながら市井は笑った。

「紗耶香でいいよ?」
「…市井ちゃん…ってなら呼んであげる」
「ハハ、市井ちゃんかぁ。悪くないね」
市井は顔はどこか嬉しそうだった。

「…ねぇ本当に先生呼んでこなくていいの?」
「心配してくれるなら膝貸してよ」
市井は後藤の返事を待たずに膝の上に頭を乗せた。

(もぉ…心配なんかするんじゃなかった…)
(うわぁ無防備。詐欺だなぁ…こうやって黙ってれば割といい感じなのに)
呆れながらも何故か憎めなくて、後藤は市井の髪を優しく撫でた。

「あたしのね」
「はいっ!?」
突然の発言に後藤は驚いて市井の髪から手をのける。

「あたしのお姉ちゃんこの病院に入院してるんだ」
急に淡々とした口調で市井は話し続ける。そして頭を上げ、立ち上がろうとした。

「後藤の事見てたのもお姉ちゃんなんだ…でももうずっと目を覚まさない」
ドアの方に歩き出したけど市井の足取りはフラフラだった。
16 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月17日(火)22時56分41秒
「危ない!…!?」
市井が倒れそうになったのを見て後藤は叫んだ。
けど市井が倒れる寸前その体を中澤が受け止める。

「紗耶香。あんまり無理すると院長先生が心配するで」
(裕ちゃん…いつの間に!?)

「…勉強も程々にな」
「はい…失礼します」
『バタン』
さっきよりはしっかりとした足取りで市井は部屋を出ていった。

「ごっちんも待たせたなぁ。それじゃ…?」
中澤が見た後藤の顔は今にも泣き出しそうだった。

「紗耶香の事が心配か?…大丈夫。ただの寝不足や」
「でも…市井ちゃんすごく苦しそうだった」
「あの娘もあの娘なりにここの跡継ぎとして懸命なんや。聞けへんかった?“お姉さん”の事」
(―――あ…そうか。お姉さんの為にも頑張ってるんだ)

『ドタバタドタバタ』
「何や看護婦さん達が慌ててんなぁ」

“後藤の事見てたのもお姉ちゃんなんだ”
(なぁんだ…あ…れ?あたし…ショック受けてる?)

『ドタバタドタバタ』
「今日は随分と騒がしいなぁ」
17 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月17日(火)22時58分30秒
――――

『ザワザワ…』
放課後。何やら生徒達がざわめいている。
それは校内にある掲示板に、以前行われた模試の結果が貼られていたからだ。

「何の騒ぎ?ヨッスィー」
「こないだの模試の結果だってさ、梨華ちゃん」
(あっあたし病院行ってたから受けれなかったやつだ)

「見てよ、また9組の市井さん学年トップよ」
「!?い…市井ってあの病院の!?」
後藤は前で話してた生徒の腕を掴んで問いかけた。

「うん、そうだよ」
(うっわ〜本当に頑張ってるんだぁ。すごい!)

「あっごっちん!どこ行くの!?」
「ごめん先に帰ってて!」
そう言って後藤は嬉しそうに走っていった。

(教室にいるかなぁ。もう帰っちゃったかな?)
(あぁ顔の筋肉が緩んじゃう。口惜しいなぁ…何であんな怪しい性格の人なんかに…)

「そんなに急いでどこ行くの?」
市井は背後から急に現れ後藤の背中を指でなぞった。

「うわぁぁぁぁ!何するのよもぉ」
「嫌がらせもあたしの趣味なんだ」
「悪趣味!」
(あっ…市井ちゃんの手が肩に触れてる…ドキドキするよぉ)
18 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月17日(火)23時00分05秒
「あああ、あの一番の結果が模試ですごいね!アハハ(動揺して混乱中)」
真っ赤になりながら市井から体を離す後藤。

「???」
「あたしなんてバカだから」

「ハハ、別にすごくなんかないよ。あの病院を継がなきゃいけないから、ただ漠然とやってるだけ」
寂しそうに瞳を伏せて市井は自分の体を抱きしめた。

「他にやりたい事いっぱいあったのにね」
(あ…あたし本当にバカだ…1人ではしゃいだりして…)

「ごめ…ん」
「泣かないで、後藤が笑ってくれたらそれで十分だから」
市井は優しく後藤の涙を拭った。

「時間が足りないよね…時間が欲しいよ」
「腎臓の事じゃなくて?」
「ヘヘ、本当に何でも知ってるんだね。市井ちゃんは」

「腎臓移植、それが一番ベストなんだけど…あとどれだけ待てばいいのか」
ゆっくりと後藤は歩き出した。
「仕方ないけど今はこうして透析を受けるしかないから。だから病院に束縛されない時間が欲しい」
後藤は階段の近くまで歩いていきそして…クルっと市井の方を向いた。

「こうやって好きな人とずっと一緒にいられる時間が欲しいんだ」
(…あっ!うわっまずい…い…勢いで言っちゃった…)
19 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月17日(火)23時01分59秒
「いや…あの…これは」
(どうしよ…いきなりこんな事言って変だよね)
後藤は市井に背を向け口を押さえて俯いた。


「ありがとう」


「あっ…」
市井の言葉におもわず顔を上げ振り返る。

「でも…ごめん」
振り返って見た市井の顔は…ひどく哀しそうだった。

「い…いいの付き合って欲しいとか別にそんなんじゃ…」
後藤の瞳に涙が浮かび上がる。
そして…後藤は階段を駆け下りていった。

「後藤!……」
名前を呼びはしたものの市井には追いかける事が出来なかった。

「そろそろ限界やなぁ」
落胆している市井の体を白衣の女性が後ろから支えていた。
20 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月17日(火)23時03分07秒


あたしバカみたいだ…市井ちゃんの優しさに期待してた。
まだ出逢ってからちょっとしかたってないのに…一人で舞い上がってた。

でも、だったら何であんなに優しくしてくれたんだろう…

…ただお姉さんの変わりに優しくしてくれただけなの?




それでもあたし…市井ちゃんが好きなの…



〜続く〜
21 名前:メンソール 投稿日:2001年07月17日(火)23時11分23秒
>>12 名無し読者さん
ありがとうございます。バ…バレてるのかしら(汗
いちごまは作者も大好きなのでいっぱい書きたいです。

作者です。更新出来る時にしておきました。
Case T−願い−は次で終わりです。
謎な所も最後でわかると思いますので…では。
22 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月18日(水)04時30分32秒
もう終わってしまうのか〜・・・。
残念だけどしかたないっすね!!

>いちごまは作者も大好きなのでいっぱい書きたいです。
その意気込みでガンガン書いちゃって下さい!!(w
23 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月18日(水)07時06分38秒
読みながらニヤケてしまいました(w
こういういちごまツボです
市井に翻弄される後藤カワイイ!!
しかし市井ちゃんの体調が心配・・・
続き期待してます
24 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月18日(水)12時19分27秒
市井ちゃんにはなにやら秘密があるみたいですね!
つ、つづきが気になるぅ〜
25 名前: 投稿日:2001年07月19日(木)03時16分09秒
元ネタ持ってます。(^^;
先を知っていながらも楽しく読ませて頂いてマス。

なにげに『白衣の裕ちゃん』に萌え〜。
26 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月23日(月)23時22分43秒
―――翌日。学校へ行く為に後藤は通学路を歩いていた。
腕時計の時刻を見てポツリと呟く。

「あ〜あ遅刻かなぁ…あと十分あればギリギリ間に合うんだけど」
(昨日の事が気になってよく眠れなかったし…)

『カチコチカチコチ』

(!?…時計の秒針の音…?)
後藤は秒針の音が聞こえてくる方に目を向けた。
そこには都会の街並みに似合わない洋館風の時計屋があった。

(時計のお店かなぁ…)

店の扉が開いていたので後藤はちょっと中を覗き込んだ。
すると、そこには上下とも黒の服に身をつつんだ金髪の女性がいた。

「…えっ!?裕ちゃん!?」

「おう、ごっちんおはよう。今から学校か?」
「うん。そうだけど…」
中澤は店の時計の手入れをしながら後藤の方を見た。

27 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月23日(月)23時24分00秒
「そっか。気ぃつけて行きや」
そう言って笑顔で中澤は後藤に手を振る。

「は〜い。行ってきま〜す…っじゃなくて裕ちゃん!病院は!?何なのここ!?」
「まぁまぁ細かい事は気にすんな」
「裕ちゃんってもしかしてお医者さんじゃないの?(時計だらけ…)」
「いや…医者やよ。“副業”ってゆったらええんかなぁ」
「へっ?」

「うちは“時間屋”の主でもあるんや」
「時間…屋?」
後藤は怪訝そうな顔で中澤を見つめる。

「その名の通り“時間”を売ってる。一日を四十時間にも出来るし…人の命の時の砂を自在に操る事も可能や」
「…じゃ、そうゆう事で失礼します」
顔を引きつらせながら後藤は中澤のそばを離れた。

「信じてないやろ?」
(誰が信じるんだよぉ…そんな話)

「ほな完璧遅刻のごっちんに信じてもらう為に十分だけ時間をあげよう」
時計を一つ持って中澤はニッコリと微笑んだ。
「うわっ!うそ〜もう八時半!?」
自分の腕時計の時間を見て後藤は慌てて学校へと走り出した。
28 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月23日(月)23時25分01秒



『カチコチカチコチ』


「さぁ急ぎや…“時間”は動き始めたで?」


29 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月23日(月)23時27分09秒
(しっかし裕ちゃんがあんなにアブナイ人だなんて…あの病院大丈夫なのかな?)

急いでいた後藤の目に学校の校舎が見えてきた。
(ラッキー♪先生いないじゃん)

『キーンコーンカーンコーン』
後藤が校門をくぐるとちょうどチャイムが鳴った。
学校内にある時計を見ると時刻は八時半。

(あれ?学校の時計おかしいよね…?)

「おう後藤。ギリギリセーフだな」
生活指導の先生達が声をかけていく。

(だってもう八時四十分だよ…それともあたしにだけ時間が増えてるの…?)


“十分だけ時間をあげよう”


(まさか…ねぇ)

(あたしの時計が狂ってたんだ。きっとそうだ。それに裕ちゃんすごく怪しい…市井ちゃんに教えなきゃ)
30 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月23日(月)23時28分11秒
後藤は急いで9組の教室へと向かった。ドアの近くにいた生徒に声をかける。

「あの〜市井ちゃん呼んでもらえます?」
「?…市井はあたしだけど」


(!?…だ…れ?)


市井と名乗る少女。
だが後藤が見た“市井”は後藤が知ってる“市井”ではなかった。

「紗耶…香さんは…?」
後藤は困惑した表情で目の前の市井と名乗る少女に聞いた。

「紗耶香はあたしのお姉ちゃん…あれ?あなた後藤真希って娘?」
「は…はい」
顔を引きつらせながら後藤は首を縦に振った。

「何だよ姉ちゃんの奴…知り合えたならさっさと言えよな。でもそれは無理か…もう半年以上目覚まさないし
先週の土曜日も急に容態が悪化してさ…病院内大変だったし…今は持ち直してるらしいけど」
31 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月23日(月)23時29分28秒


(土曜日…市井ちゃんが倒れた日)


“何や看護婦さん達が慌ててんなぁ”
“今日は随分と騒がしいなぁ”


「また見舞いに来てあげてよ」

(あたし…頭変なのかなぁ。みんなの言ってる事がよく解らないよ。一体誰の話をしてるの…?)

後藤は混乱した頭で廊下を歩き続けた。
何も聞こえない無音の世界、その先に陽炎のように佇む市井の姿があった。

「市井ちゃん!!」
後藤は市井の姿を見つけ少し安心した表情で駆け寄った。
「あ…あたし今すごく変な話聞いて…市井ちゃんの妹って人に会って…」
市井は無言のまま優しく後藤の頬を撫でる。

「じゃあここにいる市井ちゃんは何なの…」
静かに後藤を抱き寄せた市井。

「ねぇ黙ってないで答えてよ!!」
後藤の声が荒くなる。
市井の顔は悲しみ、苦痛の入り混じった表情になっていった。

32 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月23日(月)23時30分48秒

『ビューン!!ザァッ!』

その瞬間、後藤の体に突風が吹きつける。
思わず瞳をつぶった。そして…瞳を開けた後藤が見た景色は真っ暗な闇だった。
目の前にいた市井の姿もない。

『カチコチカチコチ』
闇の中に時計の秒針の音だけが響き渡る。

「い…市井ちゃん?(ここは…ドコ…?)」

後藤が辺りを見回していると、急に光が差し込んできた。
光の差す方に後藤は顔を向けた。しかし光の下で見た光景に後藤は悲鳴をあげる。

「きゃあぁぁぁぁっ!!」
そこには病院のベッドに横たわる市井紗耶香の姿があった。

「これが本来のあたしの姿、市井紗耶香だよ」
後ろからスッと現れ、市井は後藤の肩に手を置いた。

「いち…い…ちゃ」
「昏睡状態でずっと眠ったままなんだ」
「そんな…」
「そして彼女はあたしの契約者」

そう市井が告げたとたん後藤の目の前に白衣の女性の姿が…
33 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月23日(月)23時32分29秒
「裕ちゃん!?」
「そう…裕ちゃんはあたしの協力者なんだ。彼女の力のおかげでこうやって後藤に会う事が出来るんだ」
「あたしに…?」
「そのまま聞いて……後藤の為に何かしてあげたかった」
市井の表情はまるで何かを決心したかのようだった。

「ずっと後藤を見てたよ。笑われるかもしれないけど初恋なんだ…後藤が好きだよ」

「だから…あたしの命、後藤にあげる」
(えっ?な…何言ってるの…?)

「あたしは死ぬまで眠ったきりだ。だったらこのまま命を終わらせるよりも
後藤に役立てられるのならその方がいい。後藤の中であたしが生きる。あたしは後藤を守りたいんだ」

「こ…怖い事言わないでよ…またあたしを困らせて楽しんでるでしょ」
「言ったでしょ?いやがらせはあたしの趣味だって」
泣きそうになる後藤の頬を優しく撫で、市井は微笑んだ。
34 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月23日(月)23時36分08秒



「後藤はあたしの光だった…だから笑って…」



そして…その言葉を残し市井の姿は薄れていった。


「あたしも好きだよ?…好きなの。ねぇ…瞳開けてよ…」
後藤はベッドに眠る市井を見つめる。けど…

「ちょっと冗談だよね?またそうやって人をからかっ……」



『ピ――――――……』


無常にもその機械音は部屋に鳴り響き…そして、市井の命の終わりを告げた。



「…あ……いやあぁぁぁぁ」


でも…ベッドに横たわった市井の表情はとても満足そうだった。

35 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月23日(月)23時37分39秒



(――そして…意地悪な天使はあたしの前から消え去っていった…)



その後…あたしの体の方はとゆうと…

「…信じ難い事ですが機能が正常に戻っています」


本当の奇跡が起きました。


36 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月23日(月)23時39分04秒

「ねぇ…本当に奇跡があるのなら、もう1回生き返ってよ…」
病院の屋上に上がり後藤は一人空を見上げていた。

「な〜んて嘘だよ。天国で待ってて?超カワイイおばあちゃんになってそっちに会いにいくからさ」
(あ…市井ちゃんは嘘つきだから地獄かな?(笑))

「後から後悔しないでよ?“こんな奴に命やるんじゃなかった”って」

「あたし後悔しないよ?市井ちゃんがくれたこの命…最後まで大事に使うから…」



「でも今は…もう少し泣かせて……」


金網のフェンスにしがみつき、後藤は涙を流し続けた。

37 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月23日(月)23時42分09秒

うちは時間屋…人の“願い”を叶えるのではなく“時間”を自由に操る者。

万能とちゃう…でも――


『少しでもあの娘の…後藤のそばにいたいから…“時間”を下さい』
『あんたの時間をその娘に?』

『出来ませんか?』
『いや…簡単な事や。あんたの時間の砂を彼女の時間の砂時計につぎ足せばええだけや』

『せやけど…それでその娘は喜ぶんか?』
『ハハ…怒るだろうね。けど生きてくれるよ、あたしの分まで』


『彼女に会いに行きたいんです。あたしに力を貸して下さい』

38 名前:−時間屋− 投稿日:2001年07月23日(月)23時43分40秒


――大切な後藤の為に…あたしの全てを捧げたい…



『解った…その願い叶えたる』



でも…“時間”が彼女らの“願い”


この切実な想いを…愛する方に届けてあげよう。


それがうちの仕事なんやから…



Case T−願い−
〜Fin〜
39 名前:メンソール 投稿日:2001年07月23日(月)23時51分18秒
>>22 名無し読者さん
はい(笑)終わりです。
いちごま…頑張って書きます。その為に…時間下さい(w

>>23 名無し読者さん
ニヤけさせといてこの展開で申し訳ないです。

>>24 名無し読者さん
市井ちゃんの秘密…わかって頂けたでしょうか?

>>25 Nさん
持ってますか(汗
読んだらわかるでしょうけど内容ほとんど変えてません。
白衣といえば…裕ちゃんでしょ(w
40 名前:メンソール 投稿日:2001年07月23日(月)23時54分55秒
ラストは変えたくなかったんで原作通りにしました。
でも悲しいだけの話じゃないと思うんで…
こうゆう話は終わった後にゴチャゴチャ説明しない方がいいかな?
もし解らない所があれば聞いて下さい。きっと作者の力不足だろうし…
41 名前:メンソール 投稿日:2001年07月23日(月)23時55分53秒
ラストのネタバレ阻止の為レスを稼ぎます。
42 名前:メンソール 投稿日:2001年07月23日(月)23時56分37秒
次回作は…何を書こうかな。
43 名前:メンソール 投稿日:2001年07月23日(月)23時57分30秒
Case Uを書いてみよっかな。
44 名前:メンソール 投稿日:2001年07月23日(月)23時59分14秒
でもCase Uの主役2人はもろ「いしよし」って感じなんですよね。
45 名前:メンソール 投稿日:2001年07月24日(火)00時00分49秒
これで最後かな?
では、時間空いちゃうかもしれないですがまた次回作で…
46 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月24日(火)03時46分40秒
いい話だぁ〜(涙)
説明は無くても十分に伝わりました。
これはある意味、立派なハッピーエンドだったと思いますよ!!

さて、次回はいしよしなのかな?
そちらの方も楽しみにさせていただきます。
でも、今度は二人で幸せになれるいちごまもよろしくお願いしますね。(w
47 名前:パク@紹介人 投稿日:2001年07月24日(火)20時49分29秒
こちらの小説を「小説紹介スレ@金板」↓に紹介します。
http://www.ah.wakwak.com/cgi/hilight.cgi?dir=gold&thp=994402589&ls=25
48 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月26日(木)00時24分30秒
泣いたよ。。
49 名前:メンソール 投稿日:2001年07月27日(金)02時06分16秒
>>49 名無し読者さん
ありがとうございます。
私もバッドエンドな話は書きたくないので…ちゃんと伝わったみたいで嬉しいです。
幸せになれるいちごま話も用意してます。ただ内容とか設定が危険物ですが(w

>>47 バク@紹介人さん
ありがとうございます。いつもご苦労様です(^^

>>48 名無し読者さん
ありがとうございます(涙

どなたかがあぷろだにUPしてくれてたみたいで…ありがとうございます。
次回はCase Uにしようと思ったんですが後回しにします。
ですので次回は時間屋と関係ない違う話です。
ジャンルは…学園モノでSFです。恋愛話はあんまり絡んでないです。
今週末あたりから始めれたら…と思ってますんで。ではまた。
50 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月28日(土)03時04分07秒
次回作の方も楽しみにしております。
51 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年07月29日(日)03時33分02秒

『ジリリリリリッ!』


――最後に学校のベルが鳴ったのは覚えてる。

けど…気がつけばあたしは迷子になっていた…

52 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年07月29日(日)03時34分35秒
えっと…あたしの教室ってどこだったっけ?
あたしったら校内でそんな…ヤダ、ちょっと待って待って待って…
当てもなくあたしは廊下を歩き続ける。

!?…踊り場の鏡に映った目の前の人物。茶髪のセミロングに少し離れぎみの瞳。
この娘…誰?…わからない。これがあたしなのかなぁ…

フゥ〜、とにかく落ちつこう!何かの間違いだよきっと。
思い出すんだ…自分の名前、教室、家。
…ん〜何だっけ?思い出せない…

こんなの嘘だよね?まずい…まずいよ…何これ。どうして何もわからないの!?
ダメだ…体が震えてきちゃった。

あたし、このまま1人でいちゃ危ない…絶対危ない。
誰か見つけなきゃ!力になってくれる人を…早く!

あたしはがむしゃらに廊下を走り続けた。
そしてある教室に人影が見えた。急いでその教室に入る。

教室にはイスに座り、うたた寝をしている少女が1人いた。
53 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年07月29日(日)03時36分15秒
「ねぇねぇ!ちょっと起きて!」
自分以外の人を見つけた喜びと、訳が解らない恐怖で思わず寝ていた彼女を揺さぶり起こした。

「はっ!?な…何だ???」
彼女は急に起こされたのでイスから落ちそうな程驚いていた。
驚かしちゃって悪いけど…あたしに今、謝る程の心の余裕はなかった。

「ねぇ…あたしの事知らないかなぁ?名前とかクラスとか…」
お願い!何か少しでも手がかりになる事教えて…

「……いや…知らないけど」
彼女は眉間にシワをよせながらそう答えた。

「そ…そうだよね」
ガックリ…これからどうしよう…うえ〜ん(涙)
他に誰かいないか探すしかないかなぁ…

あたしは肩を落としながらその教室を出ようとした。
すると…教室の彼女があたしを呼び止めてこう言った。

「――な…なぁ…あんたはあたしの事、知らない?あたしも自分が誰だかわかんないんだよね…」

へっ!?…う…嘘でしょ…?
54 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年07月29日(日)03時37分32秒
――同時刻。ここは東京郊外の山の中。
多くの警察官がロープを張って、ある事件の現場検証をしていた。

「隕石ねぇ…焼け焦げた跡はあっても何もない…か。“例のモノ”は除いてな」
現場を仕切っている女の警部が焼け焦げた地面を見てボヤいた。
その地面には“何か”が墜落した時に出来た焼け跡が残っていた。

「“遺体”はどこへ運んだんですか?中澤警部」
部下の1人が聞いてきた。
「何とかって政府御用達の研究所やと。化学者達が目の色変えて持っていきよった。ひょっとすると…」
中澤が何か考えてると慌てて部下が走ってきた。

「警部!大変です!先程の遺体が行方不明です!!」
「なんやて!?」
55 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年07月29日(日)03時38分47秒

「へぇ〜これがあたしの顔かぁ。な〜んか変な感じ…でも何か男前じゃん♪」

彼女はさっきからずっと鏡の前で短い髪をかきあげ百面相をして遊んでいる。
何だろうこの人…今の状況が怖くないのかなぁ?

「しっかし2人同時に記憶喪失とは絶対何かあるぞ、これは…よし!行くぞ!!」
「へっ?ど…どこへ?」
突然何を…どこに何しに行くって言うの?

「探検だよ、探検!他にもうちらみたいなのがいたら面白いじゃん♪」
そう言って彼女は子供のような少年のような笑顔を見せた。

変なの…心細いのがどっかいっちゃった。
でも、最初に出逢った人がこの人でよかったって思う。
56 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年07月29日(日)03時40分08秒
嬉しそうに廊下を駆け抜ける彼女の後ろをあたしは必死でついていく。

『ガラガラッ』
「あっ…」
先の教室から少し顔色の悪い背の低い女の人が出てきた。

「ねぇあんた達…いいい今からあたし変な事言うけど…ちょっとだけ話聞いてくれない…?」
かなり動揺してるらしく彼女は額に汗を滲ませていた。

「お仲間1人見っけ!」
「!?ななな…何!?ビックリした」
っていきなり仲間って言われてもわかんないでしょ(苦笑)

「驚かしちゃダメだよぉ」
あたし達は彼女に自分達も記憶が無い事を話した。

そしてまだ他にも同じ様な人がいないか、校内を探し回る事にした。

57 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年07月29日(日)03時41分25秒
――家庭科室にて…泣いている女の人を発見。

「ねぇもしかして自分がわからない…とか?」
「ぐすっ…えっ?…うん、そうだべさ」
「大丈夫だよ!あたし達も同じだから」
あたしは肩を抱いて泣いている彼女をなだめた。

「おぉ4人目!」
「面白れ――!もっといるぞきっと。探せ探せ!」


――図書室にて…騒いでる女の子2人を発見。

「うちはいったい誰やねん!何で思い出されへんねん。ちくしょ――!!」
「見てないで止めて下さいよ〜」
「5人目…6人目」
背の低い女の子が2人。1人が暴れてもう1人が必死で止めている。
今は…ちょっと近づきたくない(汗)

だけど…まさかこんなにいるとは…ねぇ。
58 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年07月29日(日)03時43分23秒
――そんな訳であたし達はこうして集まったのだった。

「6人か…こんだけいたら怖くね〜よな」
ショートヘアの彼女が楽しそうに言う。

「怖くないやて!?ようゆうわ!この非常時に。自分で自分がわからんのやで?ヒィィ!!」
「絶対何かあったんですよね、これ…病気かな?それとも事故?」
図書室にいた小さい2人は青ざめた表情だった。でも何かこの2人内面は対照的だなぁ。

「それでこれからどうするんだべ?」
家庭科室にいた少しポッチャリした女の人が心配そうにみんなを見た。

「普通に考えたら大人に頼るしかないよなぁ」
「うん…警察だよねぇ」
やっぱり、それしかないよねぇ。

「あれ…さっきまで霧なんて出てたっけ?」
「えっ?」
その言葉にみんな教室の窓を見た。そこには…
59 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年07月29日(日)03時44分52秒
――教室で彼女達が異変に気づいた頃、学校の外には機動隊や警察が到着していた。

「何だ?あの校舎の周り…妙な霧だな」

「おい!いたか!?この辺りに逃げ込んだのは確かなんだ!早く探せ!!」
機動隊員が校舎の周りに散らばっていく。



「気をつけろ!!ヤツは既に人を3人殺してる!!」

60 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年07月29日(日)03時46分58秒
教室の窓の外が霧で覆われている事にあたし達は気づいた。

「何だよこれ?…霧か?変な…!?」
ショートヘアの彼女が窓を開け、その霧に手を伸ばした。その瞬間…

『ビリッ!ビリッ!ビリッ!』

「うわぁ!!」
「きゃあぁぁ!」

「な…何だぁ?いったい…」

信じられない事にその霧は彼女の手をはじき返した。
その上、霧はここの教室だけじゃなく学校全体を覆っていた。

どうやらあたし達は校舎内に閉じ込められてしまったみたい。
みんなが記憶喪失なのもこの霧と関係ありそうな気がする…



――そしてこれがあたし達の…冒険の始まりだった。
61 名前:メンソール 投稿日:2001年07月29日(日)03時53分07秒
とりあえずここまで…今後の事を考えてsageにします。
まだ名前が出てきてない人がほとんどなので分かりにくいでしょうけど…
この話も同タイトルのパクリものです。「森生まさみ」とゆう人が書いてます。

>>50 名無し読者さん
ありがとうございます。新作です♪
62 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月30日(月)02時46分11秒
早速の新作ですね。
何か不思議な感じのする小説で楽しみです。

今回出てきた登場人物全員、問題なくわかってしまいました。(w
63 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年07月31日(火)23時01分37秒
「あたしは2年の校章付けてる。上着の裏に“市井紗耶香”って刺繍が入ってるよ。みんなは?」
「「「「「えっ?」」」」」
突然話を振られてみんなはキョトンとした。

「自分の身元調査だよ。記憶無いんでしょ?みんな」
そっか…パニックになってたから忘れてた。ショートヘアのあの人…市井紗耶香っていう名前なんだ。
でもあたしブレザー着てないんだよねぇ…何か持ってないかな?

「何か外には出られないみたいだからさ。とりあえず…」
「ちょっと待て待て待てぃ!この3年の校章が見えないのか?」

「はいはい見えるよ…で、名前は?」
「え〜っと“矢口真里”…かなぁ」
彼女はカバンから手帳を出して名前を確かめた。

「…って何でお前が仕切るんだよ!」
「テンション高いなぁやぐっちゃん」
「こら――!先輩をそんな風に呼ぶな紗耶香!」

「「ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー」」
元気だなぁ…あの2人。馴染むのも早いし…
64 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年07月31日(火)23時02分24秒
「あたしノート持ってる。3年の“安倍なつみ”…だってさ。“なっち”とも書いてる、あだ名かな?」
彼女は自分の名前が気に入ったらしくニコニコしていた。

「ええなぁ…うち何も持ってへんわ。気ついたら図書室で…きっと本好きの内気な少女やったんや!
自分の過去思い出せんゆうたらまるで童話のお姫様やん♪」
「安心しろ…お前は1年の図書委員で“加護亜依”って名前だ。腕章してる事に気づけよ…」
本当だ…腕章に学年と名前が書いてある。

「あんたは?」
「1年の辻希美です…多分。カバン持ってるんで…あたしも図書室にいたんですけど
鳥の図鑑開いててちょうどメジロの親子が毛づくろいをして…(以下鳥の話が続く)」

「「「「「(鳥マニア…)」」」」」
65 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年07月31日(火)23時03分46秒
「…で、お前は?」

「え〜っと…2年生の“後藤真希”かなぁ?あたし今週、週番みたい」
唯一持っていた2−Aの週番日誌の記帳者の名前に“後藤真希”って書いてある。
でも…ダメだ。ピンとこないよ。他に何か持ってないかな?

あたしはスカートをポンポンと叩いてみた。
するとスカートのポケットに生徒手帳が入っていた。中を開いてみると1枚の写真が…

え!?…何で?何で市井さんの写真が入ってるの???
あたし市井さんと友達だったのかなぁ…それとも……っと今はそれどころじゃないね。

「まぁ記憶無いんだからお互い好きに呼ぼうぜ?最初は慣れないかもしれないけど」

う〜ん…みんなの事何て呼ぼうかなぁ。
小さい2人は“辻ちゃん”“加護ちゃん”でいいかな。
安倍さんは“なっち”で矢口さんは“やぐっつぁん”…それで…

市井さんは…どうしよう。同い年みたいだけど…
何故だかわからないけど、“紗耶香”とは呼べない気がする。

“市井ちゃん”…なんかこれがピンときた。うん、市井ちゃんって呼ぼう。
66 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年07月31日(火)23時04分33秒
それからみんなで話し合った結果、代表で市井ちゃんが警察に電話をする事にした。
校長室に行って電話をかける。

「だからイタズラじゃねーってば!!」
『大人をからかうのも程々にしなさい』
「本当に変な霧が…だぁ――!もういいっ!!『ガチャン!』」

「うわぁ紗耶香!」
「何すんねん!」
…けど案の定、相手にされなかった。

「…ねぇあれ見て下さい!この霧に気づいて人が…」
辻ちゃんが窓の外を指す。

学校の外には霧でよく見えないけど野次馬らしき人達が集まっていた。
それとテレビ局のレポーターも集まっているみたいだ。

みんなで校長室のテレビの前に集まってテレビをつけてみると…
67 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年07月31日(火)23時05分35秒
『平成の学園ミステリーです!ご覧下さいこの霧!!』
『今日の夕方ごろこの高校の校舎の周りのみ突如発生したのです!』
『この霧の発生原因は全く不明で、近づくと電撃が発生する為我々もこうして遠くから見守るしか…』
女のレポーターが学校前から中継していた。

<スクープ!!学生達閉じ込められる!?>
あたし達の事は各局のニュースで大々的に報じられていた。

『閉じ込められた学生達は記憶喪失だとか…』
『いえ!警察の発表ではまだ何も…』
この局でも…

『霧の成分もまだ解明されてませんが只今全力で…』
この局はどこかの大学の教授が何か言ってる。

『こちらの方のお子様は閉じ込められた学生の1人だと思われます。お話を伺いましょう』
さっきの女のレポーターが野次馬の中に母親らしき人を見つけてインタビューをしてる。
68 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年07月31日(火)23時07分38秒
「……へビィだ」
市井ちゃんがポツリと呟く。
どうやらあたし達6人は思ってたより深刻な事態に巻き込まれてしまったみたい。

『プルルルルッ!』
突然校長室の電話が鳴った。市井ちゃんが電話を取りにいく。

一方テレビでは…

『亜依〜!?見てるか!?お母ちゃんやで!』
「ゲッ!何やあの下品なオバハン!」
ちょっと化粧の濃いおばさんが映っていた。加護ちゃんのお母さんなのかな?

『大丈夫か!?助けに行くからな〜!』
「あんなん絶対うちのおかんとちゃうわ!」
「「「(そうかなぁ…)」」」

…こうして仲間が6人もいるせいかな?
自分の記憶が無いのに怖いどころか冒険気分で不思議とワクワクしてくる。
69 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年07月31日(火)23時09分09秒
「はい、みんな元気ですよ。も〜うるさいぐらい…それより警部さん。あたし達の身元はわかったの?」
みんなの声がうるさいのか市井ちゃんは苦笑いをした。
電話の相手はさっきとは違う警察の人らしい。

『あぁ大体な。帰宅してない生徒が6人確認された。けど…“残りの1人”がまだ…』
「えっ…?」
突然市井ちゃんの表情が驚きに変わる。

『ご覧になれますでしょうか?これは夕方6時頃、学生達が窓から手を振る映像です』

「お…おい紗耶香これ!?」
やぐっつぁんがテレビを見て驚いて市井ちゃんを呼んだ。

『霧でシルエットしか見えませんが…確かに7人!』
テレビのニュースで映し出される映像。そこには…

『7人の子供達が未だこの学校に閉じ込められているのです!!』



あたし達6人がいる校長室の上の教室にもう1人…7人目のシルエットが映し出されていた…
70 名前:メンソール 投稿日:2001年07月31日(火)23時16分29秒
やっぱりこの話はageておきます。ヤバイのは後にまわそう…
全部で10回くらいかな?多分それぐらいで終わりそうです。
2日に1回のペースで更新出来たら…と思ってます(無理だったらゴメンなさい)

>>62 名無し読者さん
ありがとうございます。
不思議な話ですよね。SFですし…
登場人物もきっと当たってる事でしょう(w
71 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月01日(水)03時07分17秒
今回はこの話ですか。
単行本がどっかにあったような……。
続き期待してます。
72 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月01日(水)03時44分42秒
後1人は誰なんだろう…?
この娘がこの話の鍵を握ってるのかな?
続きが楽しみです。
73 名前:アリガチ(HN) 投稿日:2001年08月05日(日)02時58分31秒
懐かしいッスね。
森生先生の作品好きなんでいい感じッスわ。
コンクリートノイズとかやっても面白そう(笑)
74 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年08月06日(月)00時22分02秒

「お〜い!誰かいるか〜?」
「いるなら返事して〜」

あの後すぐ、あたし達は校舎内を探し回った。“7人目”の存在を確かめる為に…けど…

「いた?」
階段を降りてきた加護ちゃんにあたしは聞いた。

「いてないです」
「警部さんに連絡しとこうよ。やっぱり6人ですって」
あたしは市井ちゃんの方を向いて言う。

「うん、そうだな」
結局“7人目”探しは、いないとゆう事で終了。

みんな走り回ってお腹がすいたから調理室で何か作る事にした。
調理室に向かう途中、辻ちゃんが難しそうな顔をしていた。

「辻ちゃん、どうしたの?」
「いや、あの…7人目がいるとしたら何で隠れてるのかなぁって」
あ、そっか…そうだよね。


――ならきっと…7人目は味方じゃないんだよ。
75 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年08月06日(月)00時22分52秒

調理室ではなっちが冷蔵庫にあった材料でチャーハンとスープを作ってくれた。
なんかなっちはお母さんみたいだ。

テレビをつけながらご飯を食べていたあたし達の耳にニュースキャスターの声が聞こえてきた。
何か今日起きた殺人事件の事を言ってるんだけど…

『犯人は3人を殺して逃亡し…』

「えっ!?ちょっとこの辺で惨殺事件があったって!!」
あたしが驚いて言ったのに…
「ふ〜んそれはそれは…なっちおかわり♪」
市井ちゃんはご飯に夢中で聞き流した。

でも加護ちゃんの一言で賑やかだった食卓は一気に静かになる。
76 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年08月06日(月)00時24分22秒

「そいつが“7人目”やったりしてなぁ。アハハ」
「「「「「…………」」」」」
「あ、あれ?みんなどないしたん?」
「…バカ」
やぐっつぁんは顔を引きつらせている。

「笑えないよぉ加護ちゃん」
「あいぼん…のの達ここから出られないんだよ…?」
加護ちゃんはイマイチ状況を把握出来てないみたいだ。

「そ…そんなの矢口が退治してやる!6人揃えば怖くない!!(本当は怖いよぉ)」
やぐっつぁん…無理してるのバレバレだよ。

「なっちおかわり!」
「あっうちも!」
でもこの2人は食欲の方が勝ってるみたい…

「7人目さんのご飯も残しといた方がいいかな?」
「…ん〜なっち好きっ♪心が和むよ」
こんな状況でも7人目の心配をしてるなっちはある意味強者だ。
77 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年08月06日(月)00時25分16秒

―――
夕食後、なっちと辻ちゃんが食器を洗いながら話している。

「窓枠にハトのフンがいっぱい落ちてますよね?」
「あっほんとだぁ」
「この学校屋上にハト小屋ありませんでしたっけ?」
「覚えてるの?」
「え…いや、なんとなくですけど…エサやりに行こうかなぁなんて」
「あっなっちも行く♪」
「「……」」

「ちょっ…なんやあの2人の雰囲気は」
「世界作っちゃってるよねぇ」
「いや、こんな時やからこそロマンスやわ!」
「そ…そう?」

「後藤さんは市井さんとかどうです?」

う〜…実はさっきから市井ちゃんが視界に入ってきて困ってるんだよぉ。
あの写真は?このドキドキはどうゆう意味なんだろう…?
78 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年08月06日(月)00時26分23秒

――再び校長室。
宿直室から毛布を運んできてあたし達は寝る準備をした。

「あ〜あ今夜はお泊りか…」やぐっつぁんが呟く。
「何かキャンプみたいやな!」加護ちゃんは何故か嬉しそうだ。

『ガラガラッ』

「…あれ?」
「ヒュー♪ハト小屋デート組のお帰りだ」
なっちと辻ちゃんがハト小屋から戻ってきた。けど辻ちゃんは不思議そうな顔をしてる。

「市井さん…ずっとここにいました…?」
「?いたよ。何だ生霊でも見たのか?」
「……そうかも」
「なっ!?」

「理科準備室に入ってって声かけても無視されました…」
「あれは紗耶香だったよ」
その言葉にみんな急いで理科準備室し走り出した。
79 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年08月06日(月)00時27分41秒

「鍵閉まってるじゃん!!」
市井ちゃんが準備室のドアを開けようとするもドアには鍵がかかっていた。

「えーでもここに入っていったべ!?」
「…7人目!?」
「紗耶香あんた双子じゃないの??」
「気持ち悪るいなぁ。そいつ惨殺事件の犯人かも…!!(あっ…ヤバっ)」
加護ちゃんダメ…ダメだよそんな事言っちゃ…

「…そうかもな…でも知らねーよ。何も覚えてないんだから…みんなだってそうだろ!?」
違うよ…早まらないで…

「あたしが7人目を捕まえてやらぁ!!」
「お…おい!紗耶香!!」
暗い廊下の向こうへと市井ちゃんは走り出していった。


待って!待って市井ちゃん!!
80 名前:メンソール 投稿日:2001年08月06日(月)00時38分25秒
上手く書けないなぁ…漫画を小説にするのは難しい(汗
それと更新遅れてすいません。

>>71 名無し読者さん
ありがとうございます。
この話、有名な方が書いてるので知ってる人多いと思います。

>>72 名無し読者さん
ありがとうございます。
後1人…まぁ鍵はめっちゃ握ってますが(w

>>73 アリガチさん
……当たりです(w
隠す必要あんまり無いですが、黄の方が終わったらHN戻そうと思ってます。
まぁここはパクリ物ばかりなので気楽に書いていこうかな(w
81 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月06日(月)04時50分57秒
所々に入ってくるギャグっぽい部分が非常に絶妙ですな。
82 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月19日(日)22時53分26秒
かなり面白いです!
続きが気になる・・・。
83 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年08月21日(火)02時19分18秒

暗い廊下をあたしは懐中電灯を照らしながら歩いていた。
夜の学校はすごく怖い…それでなくても怖い状況なのに…

「い…市井ちゃ〜ん…出てきてよ。怖いよぉ」
廊下に響く自分の声が怖かったから恐る恐る声を出した。

「ばぁ!」
「きゃ――!!」
突然階段の影から顔に懐中電灯の光を当てて市井ちゃんが出てきた。

「何だよ、出てこいって言ったくせに」
「ほ、本物?双子の方じゃないよね?」
「当たり前だっつーの!」
「みんな謝ってるよ。教室へ戻ろうよ?」
教室とは反対方向に歩き出した市井ちゃんを追いかける。

「やだね!みんな人を殺人者呼ばわりしやがって。7人目は絶対に見つけてやる!!」
怒っているせいか市井ちゃんの足取りが速くなる。
84 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年08月21日(火)02時20分11秒

「こ…怖くないの?」
あたしも早足で市井ちゃんの後ろをついてゆく。

「別に…ついてこなくたっていいよ。
後藤だってみんなと同じであたしが怖いんだろ…?何で追いかけてくるんだよ」
振り向いて少し不思議そうな顔で市井ちゃんは聞いてきた。

「だって…しゅ、週番だもん」
「……ぶっ!アハハ!!そっかそっか、週番に迷惑かけちゃダメだよな(笑)」
何かツボに入ったらしく市井ちゃんは大声で笑った。

そんなに笑われると恥ずかしいんですけど…
でも、市井ちゃんがずっと笑ってたから…追いかけてきた本当の理由は言わなかった。


だって人殺しをするような人じゃないって知ってたから…
覚えてないのに覚えてるなんて変だよね。
85 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年08月21日(火)02時21分13秒

―――
「中澤警部ですね?お話は伺っております」
「ど〜も」
政府御用達のある研究所に中澤は部下を引き連れてやって来た。

「こちらへどうぞ」
「(ものものしいですねぇ)」
「(ほんまやなぁ…どんな研究しとんのやら)」
エレベーターの中で部下が耳打ちしてくる。

「ここへ運ばれる“予定だった”遺体ですが届いたのは小さな肉片と研究所員3名の遺体でした。この話は?」
「あぁ聞いてる。“アレ”は遺体じゃなかった。3人殺して脱走したんや」
「ええ、おそらくね」
目的の階に着き、部屋まで歩きながら話を続けた。

部屋の中に入る前に衛生服の着用が義務づけられている。
渋々服を着て中澤は部屋の中へと入った。

「それで政府の要請通り肉片を調べました。これを見て下さい」
所長が部屋の奥にあるガラスケースを中澤に見せる。
そこには1匹の猫が入っていた。
86 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年08月21日(火)02時22分33秒

「…猫やな」
「…猫です」
「(おちょくっとるんか!?)」
「ではこちらは?」
「これは…」
隣にあるもう1つのガラスケース。そこには小さな肉片の塊が入っていた。

「生物の細胞を真似る全く未知の細胞なんです。肉片に猫の毛をほんの1本加えるだけで
細胞は猫の情報を読み取る。すさまじい勢いで増殖…これ1匹で約20分」
所長がガラスケースを開け肉片に猫の毛を添えると、肉片はどんどん猫へと姿を変えた。

「この肉片は幸い少量なので中身は空で動く事はありません。しかし…
恐らく逃げた本体は殺された研究員になりすまし…いや、もしかするともう“別人”かも」

「…しかも困った事に本体には人間同様“頭”がついているんです」
所長の言葉に中澤の顔が青ざめていく。


「人間と同じ……7人目か…!?子供達が危ない!!」
87 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年08月21日(火)02時23分33秒

中澤は研究所を急いで出て学校へとやってきた。

「霧はまだ消えへんのか!?」
学校の周りにいる部下達に現在の状況を聞く。

「ええ…まだ」
「下はダメでも屋上はどうや!?」
「それも多分…」
「子供達に連絡を…いや不安にさせてパニックになったらまずい!(相手はバケモノや)」


「6人いつも一緒にいて1人になるなと伝えるんや!!」
88 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年08月21日(火)02時24分51秒

―――
朝起きても記憶は戻ってなかった。
はぁ…ガックリ。そんなに上手い事いかないかぁ。

みんな起きて「眠れた?」とか「お腹すいた」とか話している。
すると校長室の電話が鳴ってやぐっつぁんが受話器を取った。

「…はい。あぁ警部さん…いますよ。え〜っと…3、4、5、6人全員」
昨日の警部さんからみたいでやぐっつぁんは全員揃ってる事を伝えて電話を切った。
その後、お腹がすいたあたし達は朝食を食べる為に調理室へと向かった。

「お米は残ってるんだけどおかずになる物が何も無いよ」
「かまへん。腹減ってるから何でも食えるわ」
なっちと加護ちゃんがお米を炊く準備をし始めた。

あっ、あれは…あたしは調理室のテーブルに置いてあるおにぎりを見つけた。

『7人目用に罠を仕掛けようぜ。七味いっぱい入れといた』
『もぉ…市井ちゃんったら』
アハハ、昨日調理室で市井ちゃんが作っておいたおにぎりだ。

「ねぇねぇ市井ちゃん」
「ん?」
あたしは笑いを堪えて市井ちゃんにおにぎりを見せた。きっと市井ちゃんも昨日の事思い出して笑うはず…
89 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年08月21日(火)02時25分56秒

「見て、これこれ」
「何…?くれるの?サンキュ♪」
なのに何故か市井ちゃんはおにぎりを掴んで食べようとしている。

…あれ?今の……………あっ。
違う…この人、市井ちゃんじゃない。


「あなた…だ…れ?」


市井ちゃんに向けたあたしの言葉に調理室は静まり返る。
そして…市井ちゃんは、いや“市井ちゃんの姿”をした人物は無言のまま走って部屋を出ていった。

「警部さんに電話して…6人揃ってませんって」
いない…市井ちゃんがいない。昨日一緒にいた市井ちゃんが…

「えっ…どうしたんです?後藤さん」
「紗耶香何で出てったの???」
違う…さっきのは市井ちゃんじゃない!


「みんな…みんな本物の市井ちゃんを探してぇ!!」
あたしはその場で震える体を抑えながら泣き叫んでいた。
90 名前:メンソール 投稿日:2001年08月21日(火)02時31分15秒
>>81 名無し読者さん
ありがとうございます。
一応シリアスな話なんですがキャラがこの人達ですからねぇ(w

>>82 名無し読者さん
ありがとうございます。
またこの続き気になったらごめんなさい(w

かなり間が空いてすいません。
がんばって更新しないと…では。
91 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月21日(火)03時31分03秒
ニセちゃむにいつの間に入れ替わったんだ?
続きが気になるよ〜!!
92 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年08月31日(金)23時55分37秒

校内に散らばってみんなで市井ちゃんを探していた。
しばらくすると遠くの方からやぐっつぁんの声が聞こえてきた。

「いた――!紗耶香いたぞ!!」

その声にみんな急いで駆けつける。
場所はあたし達がいた階の女子トイレだった。
本物の市井ちゃんはトイレの物置に手足をロープで縛られ、口にガムテープを張られて閉じ込められてた。

「大丈夫!?良かった…生きてる」
そばに駆け寄ると市井ちゃんは必死にロープを解こうとしてもがいていた。
あたしは急いでロープとガムテープを取る。

「くっそー夜中にトイレから出てきたとこを後ろから殴りやがって…あいつ絶対許さねぇ――!!」
「おぉ!それでこそ本物の紗耶香だ!」
「ごっちん、大丈夫だよ?紗耶香の傷はたいした事ないから」
泣きじゃくるあたしの肩を抱いてなっちが言った。

怖かった…怖かったよぉ。さっきのあの人誰!?
どうしてあんなに市井ちゃんにそっくりだったの?まるで同じだったよ。

怖い…そう多分あいつだ。あいつが“7人目”
93 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年08月31日(金)23時56分27秒

「『――だからヤツはどんな姿で現れるかわからない。必ず複数で動け』ってさ。よくも黙ってやがったな」
と、警部さんに電話した市井ちゃんが言った。

「な、なんや!?そいつって人間とちゃうの!?(勘弁してぇな〜)」
「当たり前じゃん!そんな人間いる訳ないよ(別に怖くなんかないぞ!?)」
「じゃあ辻達の記憶が無いのもそいつのせいですか?」
「だろうね」

「でもどうやって見分けたらいいんでしょう?」
「そうや!さっきのあいつ市井さんソックリやったもん!」
「喋り方も態度もまるで同じだったっしょ?ごっちんどうしてわかったの???」
みんなの視線がいっぺんにあたしに集中する。

えっ…えっと、それは…

「…勘かな」
としか言えなかった。うぅ…あたしのバカ。

でも…市井ちゃんを間違えるはずがない、なんて根拠の無い事は言えなかった。
だって何で?って言われても答えられないし。
94 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年08月31日(金)23時57分20秒

それからみんなで話し合って7人目から身を護る武器を調達することにした。

――用務員室
「外は相変わらずだね」
「中で何が起きてるのか誰も知らないんでしょうね」
なっちと辻ちゃんは武器じゃなくて日用品を探している。
いつここから出られるかわからないから。

――理科準備室
「予備の鍵があってよかったな」
「だ、誰かいるか!?」
「いないって…」
市井ちゃんとやぐっつぁんは昨夜閉まっていた理科準備室へ。

「ほらやっぱり誰かが何かやってたんだ。危ないから触るなよ」
机には割れたビーカーや試験管、ガスバーナーが散乱していた。

「な、なぁ紗耶香。疑う気はないけど…本物の方だよね?」
「(ムッ)……7人目はやぐっちゃんにだってなれるんだぞ?」
「おぉ!このオイラに!?(ヒー怖いよぉ)」
「(あたしだったら矢口だけはごめんだけどな)」
95 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年08月31日(金)23時58分09秒

――調理室
「調理室って武器の宝庫やな!フッフッフ」
加護ちゃん…目つきがヤバイよ。

「こんな身近に武器があるなんて」
「う〜ん新発見かも。あっこれも持っていこう」
あたしはナイフやフォークなどを引き出しごと持っていく事にした。

「後藤さん、先行くで〜?」
一足早く準備出来た加護ちゃんは、すでに部屋から出ようとしていた。

「あっうん、すぐ行く!」
「早よしやなみんなもう集まってるで!」
「わ――置いてかないで」
廊下に出て加護ちゃんの後ろから走ってついていく。
96 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年08月31日(金)23時59分00秒

けど、加護ちゃんは廊下の角を曲がり姿が見えなくなった。

「待って加護ちゃ…」
『ガチャ』
と、同時にすぐそばのドアが開いて…

えっ……か、鏡?
違う、あたしだ。あた…し…目の前にあたしがいる。

「きゃあぁぁぁぁ!!」
『ガシャン!』
!!!!!
あたしは“目の前のあたし”の叫び声に驚いて持っていた武器を落とした。

97 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年09月01日(土)00時00分10秒

「助けて!!誰か――!!」
そして“目の前のあたし”は叫びながら“ある人”へと一直線に走り出した。

「な、なんや!?」
「何だ!?わっ出た!?7人目!」
加護ちゃんとやぐっつぁんの横を通り過ぎ、その後ろにいた市井ちゃんの元へと。
もう1人のあたしに抱きつかれた市井ちゃんが、驚いたようにあたしと“もう1人のあたし”を見た。

「うわっ2人おるやん!」
違うよ、あたしは…そっちが偽者だよ。

「そっくりじゃん!気持ちわりー!!」
「嘘ぉ!?」
「誰か捕まえろっ!」
みんなの視線と罵倒に恐怖や不安な気持ちが溢れてくる。
市井ちゃんは何も言わないで、ただじっとあたしを見つめていた。

違う、違うよ市井ちゃん…信じて。

「待てっ!逃げたぞ!」
あたし何走り出してるんだろう。


でも、どうしよう…あたしのカラダ取られちゃった。
98 名前:メンソール 投稿日:2001年09月01日(土)00時03分50秒
遅くなりましたが更新です。
やっと半分近くまできました。
早く更新出来る執筆力が欲しい(w

>>91 名無し読者さん
昨夜のうちにニセ市井ちゃんと入れ替わってたらしいです(w
99 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月01日(土)03時42分19秒
市井ちゃんなら見破れるハズさ!!
100 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月02日(日)07時58分28秒
がんばれ後藤!
負けんな市井!!
101 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月05日(水)15時49分27秒
ネタ元オイラの好きなのばっかでうれしいっす!!
日高さんもいいし、森生さんもいいっすよね♪
コンクリートノイズやそして今日も世界は揺れる(だったっけ?)
もいいなぁと思います。
102 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年09月16日(日)23時33分28秒

「ふぇ〜ん…怖かったよぉ」
「…もう大丈夫やで後藤さん」
泣いている後藤をなっちと加護が慰めている。あたしはその様子を呆然と眺めていた。

「おい紗耶香!捕まえに行かないのか!?」
「…もう行っちゃったよ。―――それより辻…ちょっと」
「は、はい」
「(……)」
あたしは辻を呼び寄せて耳打ちした。

「真っ昼間から大胆なヤツやなぁホンマに」
「でも本当にそっくりだったね」
加護となっちはまだ興奮が冷めない様子だ。

「矢口さん…ちょっと」
「な、何?」
「(……)」
さっき辻に伝えた事を今度はやぐっちゃんに伝えてもらう。
やぐっちゃんは顔を引きつらせながらも市井の方を向いて頷いた。
103 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年09月16日(日)23時34分36秒

「…今だ!かかれっ!」
市井の掛け声と同時に辻とやぐっちゃんと協力して目の前の後藤を取り押さえる。

「ちょっ…何や!?何すんねん!」
「キャー痛い!痛い!」
「何〜?危ないよ」
色んなわめき声が混じる中、何とか後藤をイスに座らせロープで縛った。
唖然としている後藤。そして…

「何やねん!市井さん、泣いてる娘をつかまえて!」
「まぁまぁ落ち着けよ加護」
1人怒鳴って暴れている加護。必死で後ろから抑えるやぐっちゃん。
加護が絡んでくると何かと面倒なので適当に流す。

「辻!こいつしっかり見張ってて!」
「はっはい!」
「あたしちょっと“ホンモノの後藤”探してくる!」
「えっ…っちゅう事は……」
ようやく事態が飲み込めた加護の表情が青ざめてゆく。

「あたしだよ…ほどいて加護ちゃん」
何食わぬ顔で本物の様に喋る目の前の後藤に、あたし達は鳥肌が立った。
でも今はそんな場合じゃない。本物の後藤を探さなきゃ。
あたしはこの場をみんなに任せ、校内を走り回った。
104 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年09月16日(日)23時35分32秒

「はぁはぁはぁっ」
しばらく探していると階段の隅っこで泣いている後藤を見つけた。

「おっいたいた後藤!降りて来いよ!」
「…市井ちゃん」
「あいつなら捕まえたから大丈夫だよ。ほら早く♪みんな心配してるぞ」
後藤の手を引き階段から降りる。

「ひっく…ど、どうしてわかったの…?」
「ん〜勘♪って嘘。…わかるよ、あいつ後藤じゃなかったもん。あ、答えになってないか…」
「嬉しいよぉ。あたしの事、信じてくれてありがとう…っぐ」
「!!」
突然後藤が後ろから抱きついてきた。
動揺して顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。

「もうちょっとこのままでもいい?」
「……」
返事が出来ない代わりに市井は、しばらく背中を後藤に貸してあげた。

「(はっ!あいつらいつの間に…呼びに来てみればラブラブ)」
そして、うちらを呼びに来たやぐっちゃんに気づいたのは少し後の事だった。

105 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年09月16日(日)23時36分36秒
―――

「お前達の中に潜り込んで“アイツ”を探すつもりだった」
…と後藤の姿をした“7人目”こと“イイダカオリ”は言った。

カオリとその仲間はこの星に不時着した漂流者だった。
仲間は負傷したカオリを見捨て、船を隠し、姿を消した。
カオリも一時人間に捕まったが無事逃げ出す事に成功した。

ロープで縛られたままおとなしく座っているカオリ。
観念したのか、それとも…

「あ、あたしにそっくりだよ…」
「これはあたし達の生存本能。どんな環境でもその生物の世界に適応できるよう変化する」
「…市井にも化けてた」
「簡単な事だ。髪の毛1本あれば誰にだってなれる」
「服!服はどうしたんや!?」
「表面的な物なら見ただけで似せる事も可能だ」
「言ってる事や態度までそっくりだったべ」
「大まかな生活習慣や言語能力を真似るのはそう難しい事じゃない。
ただ…ただ微妙な記憶だけはそうはいかない」

106 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年09月16日(日)23時37分42秒


――だから、永くその世界に身を潜めるつもりなら

――自分の正体がバレないように自分自身の記憶を消す。

――例えば…追われている時。例えば…狙われている時。

――もっと上手く身を隠す方法は?



――答え。周りの者の記憶を消してその中に潜り込めばいい。


107 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年09月16日(日)23時39分48秒

「この中にいる事はわかってる。“ヨシザワ”暗示をときな。船をどこへ隠した?」
「「「「「「!!!!!!」」」」」」

彼女は簡単にロープを引きちぎり、立ち上がった。
そしてあたし達はカオリのカラダを見て驚愕した。
制服の裾を捲って現れたのは抉れて内部の肋骨が丸見えの腹部。

「カオリには時間がない…早く還らないと。
ヨシザワ、お前が出て来ない限り建物を囲む霧を消す訳にはいかない。急いで記憶を取り戻して」
そう言ってうちらを見回す。

「カオリは既に3人殺しているんだ。…あと5人なんてワケのない事だよ」
不気味な程の足音をたててカオリはあたし達の横を通り過ぎていった。
全員の顔が青ざめていく。みんなの思ってる事は同じなんだろう。


信じたくない。信じたくないけど…この中にカオリの仲間がいる。




――この中に
  “6人目”がいる――

108 名前:メンソール 投稿日:2001年09月16日(日)23時47分55秒
>>99 名無し読者さん
す、鋭い!(w

>>100 名無し読者さん
( ´ Д `)<頑張る!
 ヽ^∀^ノ<頑張るぞ!

>>101 名無し読者さん
好みが合うんでしょうかね?(w
でも私、全部は持ってないんで読んだ事ない話が多いんです(汗

やっとこさ7人目の正体がわかりました。
そしてあの中にもう1人…味方じゃない人が。
今までの分でちょっとヒントがあったんですけど、多分わからないでしょう(w
なんせヒントらしくないですから…まぁもうすぐわかりますが。
ラストまで後5回くらいです。では、また。
109 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月17日(月)16時29分10秒
やっすーは最後まで出ないのか。残念。
しかしカオリこえぇ…。見捨てたヨシザワ、いい度胸だ(w
110 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年10月14日(日)23時07分18秒

あの後、みんなで校長室に戻った。
けど誰1人、口を開く者はなく沈黙が続いた。

さっきまで仲間だと思ってたのに…信じられるのはこの6人だけだったのに。
みんな、みんなが怖いんだ。…ううん。自分で自分が怖い。
記憶が無いのはみんな同じ。“6人目”なのは自分かもしれない。
あたしがそう考えてるとなっちが突然口を開いた。

「…6人目はどこにいるの?」
「えっ…だからこの中に」
辻ちゃんがなっちの方を見て答える。

「違うよ、オリジナルの方だよ。
これからずっとその人になりすますなら本物は邪魔でしょ?本物は…どこ?」
けど、みんなはなっちの疑問には答えず表情を曇らせる。

――それは…知ってるよ。
あたし達ほんとはずっと感じてた。
この校舎の中で誰も近寄らなかったイヤな場所。

近づいちゃいけないよ。
見ちゃいけない“モノ”があるよ…って。

111 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年10月14日(日)23時08分21秒

「1階のダストシュート…ですよね」

青ざめた表情で辻ちゃんが言った。
そう、あたし達はその“イヤな場所”に来ていた。

「やだ…この場所やだぁ」
「何かなっちもやだ。気持ち悪い…」
あたしはなっちの背中にすがりついた。

「な、なぁ誰か開けてぇな」
「イヤだよ。紗耶香行け!」
「何で市井ばっか……わかったよ。いくぞ」
頼られるとイヤと言えない性格なのか、市井ちゃんが意を決してダストシュートに近づいた。

「あ、あれ…?」
ガタガタと揺れる音は聞こえるけど蓋が開く音は聞こえてこない。

「…おい紗耶香、遊ぶなよ」
「遊んでねぇよ。何か詰まってて…開かねぇ」
「イヤやっ…何かあるわ!入ってるわ!!」
加護ちゃんが涙目になって叫ぶ。
怖くなってみんないっせいにその場から逃げ出した。

誰……?

誰だかわからないけど6人目のオリジナル。
1人消えて…1人増えて…まるで手品だね。誰も気づかない。
今あたしが消えて誰かが増えてもきっと誰も気づかない。

112 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年10月14日(日)23時09分18秒

―――

「おい!中の様子はどうや!?」
現場に駆けつけた中澤が外にいた部下に問いかける。

「中澤警部!霧は相変わらずですよ」
「中のヤツらと連絡とれなくなって3時間や!人影は何人見える?」
中澤の表情からは焦りの色が出ていた。

「え〜5、6人ですね。動いてるのではっきりとは…」
部下が双眼鏡で校舎の方を見るが霧のせいもあり正確な人数は把握できない。


「くそっ!中はどうなってるんや!!」


113 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年10月14日(日)23時09分51秒

――あたし達はバラバラになってしまった。

1人1人必死で考える。
記憶が欲しい。
自分は6人目じゃないって記憶を。
なのに思い出すのはつまんない事ばかり。


「(プチプチ仮面ゴキラーって何だ?アニメか?…アニオタだったのか?市井は)」

「(あ〜受験生なのに方程式すら思い出せない!大丈夫か?矢口は…)」

「(ホット!ホット!って言う芸人誰やったっけ?…わからんわぁ)」


114 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年10月14日(日)23時10分32秒

――屋上の鳥小屋にて。

『コンコン!』
辻が鳥達にエサをやっていると、ドアがノックされ安倍が中に入ってきた。

「あっ…安倍さん」
「ここだと思った。一緒にエサやっていい?」
「はい」
「鳥さん達こんな狭い所に1日中閉じ込められてかわいそうだね」
「霧が危ないから…仕方ないですね」
「そうだね、もう少し辛抱してね?」

「……安倍さんは怖くないんですか?その、みんなみたいに1人でいたりとかは…」
「ううん、平気。なっちはみんな好きだよ。6人目もきっと同じに好き」

「そうですよね辻も…痛っ!」
鳥小屋の針金で手を引っかいてしまった辻。

「わっ辻ちゃん!?血が出てる…見せてっ」
「大丈夫です。そんな深くないから…」
2人の手が触れる……が。


「「あっ……」」


115 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年10月14日(日)23時11分34秒
―――

月が出てる。
…お腹減ったなぁ。朝から何も食べてないんだ。
お風呂も入りたいし…今日もイスで寝るのかなぁ。

「…帰りたいなぁ」
あっ、あたし子供みたいな事言っちゃった。

「そうだよな、帰りたいよな」
けど、市井ちゃんが複雑そうな表情をしながらも同意してくれた。
その後に辻ちゃんも続く。

「玄関開けたらお母さんの作った夕飯の匂いがして
お腹ペコペコでつまみ食いしようとしたら“みんな揃うまで待ちなさい”って言われたり…」

「市井だったら…夕飯の後はゲームかな?」
「うちはお笑い番組見てたんとちゃうかなぁ」
「なっちは長電話とかして怒られてそう(笑)」
「何だよみんなは遊んでばっかり…矢口のように勉強するヤツはいないのか!?」
「やぐっちゃん、その記憶ウソくせぇ(笑)」
「矢口さん、ほら吹きや〜」

「おかしいよね…親の顔も家の場所も覚えてないのに、家に帰りたいって記憶だけは残ってるんだね」

みんな気持ちは同じだった。
自分の家族の事とか想像してみんな表情が曇っていく。


116 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年10月14日(日)23時12分54秒

家族に会いたいのに顔も思い出せない。
…けど、帰りたいよ…心細いよ…1人じゃ嫌だよ。

こんなに大勢の仲間がいるのに……まるで1人ぼっちみたいだ。

「怖いよぉ…っく……もう家に帰りたいよ」
あたしは堪えきれず泣きだしてしまった。
するとまるで連鎖反応のようにみんな泣きだしちゃった。

「矢口だって…もう限界だよ」
強がって弱い所を必死で隠そうとしていたやぐっつぁんも…

「…うち、うち怖い思いすんのもぉイヤや!
みんなここにおんのに何で1人1人が怖い思いせなあかんの?みんな一緒でええやん!みんな友達やん!」
明るくて誰よりも元気そうだった加護ちゃんも…なっちも辻ちゃんも頷きながら泣いていた。

「…何だよ。市井にはみんなイイヤツにしか見えねぇよ!バケモノが混じってたって怖かねぇよ!」
そして…市井ちゃんの目にも薄っすらと涙が浮かんでいた。

みんな市井ちゃんの言葉に頷く。


今、あたし達の心は1つになった。
誰が“6人目”でも構わない…もう誰も疑いたくない。


117 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年10月14日(日)23時14分50秒

さっきまでの張り詰めていた空気は無くなり、和やかに話をしたりしていた。
そして各々が思い出した事をみんなに話している。

「さっき思い出したんだけどさ、プチプチ仮面ゴキラーって何?」
「何だよそれ〜(笑)そんなの知らねぇ」
後藤も…聞いた事ないなぁ、そんなの。
あっそうだ!さっき急に思い出した歌があったんだ。みんなに聞いてみよう。

「あたしこんな歌思い出したんだけど…“さあ出かけよう きっと届くから…”」
思い出した歌を歌い出すとみんな後に続いてくる。

「それこの学校の校歌やで!“髪を切って 夢をみがく 好きな空をめざすために…”」
「ほんとだ。“ねぇ風にのり…”」
「「“もっと輝いて 愛の種をまきちらしたい〜”」」

「「「「「“いつのまに涙はかわいた何かを残して何度でも笑顔になれるよ地球が回るから”」」」」」


――あたし達は夢中で歌っていたから気づかなかった。
1人だけ堅く口を閉ざしてる人物に…


「…その歌、歌えないみたい」

みんないっせいに声の主の顔を見る。


!!!!!!!!


118 名前:メンソール 投稿日:2001年10月14日(日)23時18分10秒
1ヶ月近くも放置してしまった…自分で嫌になる(苦笑
後、予定では3回で終わりです。
次回で6人目の正体もわかります(バレてそうだけど)
ちなみに愛の種を校歌にしたのには意味はありません(w

>>109 名無し読者さん
ヤッスー出したかったんですけどね。今回は見送りとゆう事で(w
異星人はカオリしかいないかな、と思って…
ヨシザワがカオリを見捨てたのは理由がある…のかな?(苦笑
119 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月15日(月)20時21分16秒
なんか…泣きそうっす。。
ほんとに、6人とも本物なら良いのに…。
だったら話が始まりもしないんだけど(苦笑
残るは3回…続きは気になるけど終わるのは寂しいな。
警部さんに見せ場は巡ってくるのでしょーかね?(w
120 名前:名無し 投稿日:2001年10月17日(水)00時08分22秒
>>119同様泣きそう…
結末が気になるけど終わってほしくないっすね。
頑張って!!
121 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年10月21日(日)16時03分58秒

「…その歌、歌えないみたい」

みんないっせいに声の主の顔を見る。


!!!!!!!!



「…その歌……辻は歌えません」


私達が振り向いたその視線の先には……瞳に涙をいっぱい溜めた辻ちゃんがいた。
その刹那、なっちが辻ちゃんに駆け寄る。

「ちがっ…校歌なんか知らない人だって……」
「いいんです、他の記憶は全部思い出しましたから」
優しくなっちの体を離す辻ちゃん。



「――辻が“6人目”…ヨシザワヒトミです」


122 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年10月21日(日)16時04分29秒

自分達の星に帰る途中に起きた事故。

――墜落。地球人に見つかる前にワタシは船を隠した。
仲間は…捕まってしまった。捕まりたくない…ワタシも身を隠さないと!

自分にとって未知の星。
…そして追われている恐怖。
ワタシは何もかもの正常な判断が出来なくなっていたんだと思います。

その時、目の前にいたのが…野鳥にエサをあげている“辻希美”だったんです。
野鳥がワタシの殺気に気づいて飛び立ったのと同時に彼女を…そしてダストシュートの中に。


………………。


「生き物の細胞の中には色んな記憶が入ってるんです。
本能や生活の記憶はもちろん…その生物の1番大事な気持ちとか」


123 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年10月21日(日)16時04分59秒

けど彼女の細胞を乗っ取った直後に変化が生じた。

――ダストシュートの中のオリジナル。
本物の辻希美は…親孝行で生き物全てに優しい少女だった。
動物は何でも好きで、とりわけ鳥を見るのが好きだった。


――そんな優しい彼女の細胞の記憶は…生き物を殺してしまった“自分”を罪悪感で苦しめた。


『何?この感情は…どうしよう!?何て事をしたんだろう。こんな状態は耐えられない!』
彼女のカラダは全神経を使ってワタシに拒否反応を示しました。


「だから記憶を消したんです…辻希美の記憶じゃなくてヨシザワヒトミの記憶を」



彼女の細胞の記憶は…あまりにも優しかったから。
…とてもみんなを裏切ったりできない。



124 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年10月21日(日)16時05分33秒

「ごめんなさい。みんなにまで辛い思いさせちゃって…」


みんな返す言葉が出てこない。
その代わり…誰1人辻ちゃんを責める者はいなかった。

「自分の手の傷があっとゆう間に治ったのを見て全部思い出したんです。
ごめんなさい安倍さん…せっかくかばってもらったのに」
なっちはギュッと辻ちゃんにしがみつき、泣きながら首を横に振った。


――この時あたしは初めて気づいた。

なっちは…知ってたんじゃないかな?辻ちゃんが“6人目”だって…
知ってしまったのに…黙ってたんじゃないかな。



125 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年10月21日(日)16時06分03秒

『ガチャ』

『ヨシザワ。船をどこへ隠した?』
ドアが開いたのと同時にカオリが中に入ってきた。

「「「“7人目”!!」」」
あたしはやぐっつぁんと加護ちゃんと身を寄せ合って叫んだ。
すると辻ちゃんが少しカオリに歩み寄った。

「ワタシがそこまで案内します。だからみんなには手出ししないと約束して下さい」
「おっおい…」
市井ちゃんが間に入ろうとしたけど…

『お前はカオリを見捨てて逃げた…よね?』
冷たい視線を辻ちゃんに投げかけるカオリ。


――彼女は…最初から見捨てるつもりだった訳じゃないよ、きっと。

みんなもそう思ったのか…あたし達は同時に同じ行動をとっていた。


126 名前:−7人目は笑う−  投稿日:2001年10月21日(日)16時06分40秒

「う、うるさいっ!こいつに手ぇ出すんならうちら全員で相手するぞ!?」

(――もっと…もっと一緒にいたい。だってもう矢口達は……友達じゃん!)


「そうだよ!辻ちゃんに何する気よ!」

(――辻ちゃん…なっちは……なっちはね)


「ののはののや!手ぇ出したら許さんで――!!」

(――気づいた時すぐそばにおったんはののやった…1人やったらきっとうちは泣いてた)


「うちら6人揃えばお前なんか怖くないんだからな!!」

(――バカやろう…悪いヤツになんか見えねぇよ)


辻ちゃんの周りをあたし達は取り囲んだ。
カオリから護るように…あたし達の絆を示すように。



――そうだよ…あたし達は最初から“6人”だったんだから!!


127 名前:メンソール 投稿日:2001年10月21日(日)16時08分50秒
( ゜皿 ゜)<カオリハワルモノ…ナノ?
( `.∀´)<いいじゃない!出てるだけましよ!あたしなんか…うぅ。
 (;^▽^)<(…石川も出てませんが)
( `.∀´)<でも6人目があたしだったら…それはそれでオイシカッタかもね!
(;^▽^)<(…唐突に出てきて6人目って言われても読者は混乱するだけですが)

珍しい時間に更新です。カオリは悪者じゃない…はず(w
圭織ファンに怒られるかなぁ…でも作者は圭織も大好きです!
とゆうよりメンバーみんな好きです(w
後2回…頑張ろう。では次回。

>>119 名無し読者さん
みんな本物なら良かったんですけどね。こればっかりは…ね。
警部さん…あんまり見せ場ないかも(w
( `.∀´)<だから出てるだけましよ!!

>>120 名無しさん
ありがとうございます。頑張りやす!
( ^▽^)<泣いちゃ…泣いちゃダメですよぉ。
128 名前:せっかちな読者 投稿日:2001年11月30日(金)20時48分34秒
ねえ早く続き書いてよう。
ラストのいいところでとめるなんて・・・
というわけで激しく続きを希望します。
129 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年12月03日(月)22時07分17秒

この場の緊迫した空気を破ったのは、辻ちゃん本人だった。
あたし達の横をすり抜けてカオリとの間に立ち、外をジッと見ている。

「…ちょっと外が厄介な事になってるみたいです」
「えっ?何?」
辻ちゃん、どこ見て言ってるの?

「…今、外の声を聞かせますね」

『……はええか!?連絡が途絶えてもう5時間や。霧が消えたら一気に踏み込め!ええな!?』
あたしの耳に、とゆうより頭に直接声が響く。

「うわっ!テ、テレパシー!?」
「すっげぇ!SFみたい!!」
やぐっつぁんと市井ちゃんがはしゃぐ。

『相手は凶悪なバケモノや。どんな姿かもわからんから抵抗するヤツはみんなガスで眠らせろ。
子供やろうと動物やろうと全員や!凶暴すぎて危険な時は麻酔銃を使え!』


130 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年12月03日(月)22時08分13秒

「まっ麻酔銃だぁ!?市井達は猛獣か!?」
「後藤達ってどう助かっても捕まえられるんだね…」
「うち銃よりガスがええなぁ」
あたし達が困惑しているとカオリが提案を出してきた。

『…交換条件を出す。あんた達の無事は保障するし、霧の消し方も教える。
その代わりカオリとヨシザワをここから逃がしてくれ』

「えー!?」
「ずるいやん!」
やぐっつぁんと加護ちゃんが声をあげる。
でも横にいた市井ちゃんが少し考え込んでからその条件を飲んだ。

「……わかった」
「紗耶香!?」
「麻酔銃なら死ぬことはないよ。あたしが機動隊を引きつける」
「ご、後藤も!後藤もやる!!」
あたしは勢いに任せて手を挙げていた。
でも、何だろう…この気持ち。ちょっとワクワクしてる。


カオリの条件を飲んだあたし達はそれぞれ脱出に向けて準備を始めた。


131 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年12月03日(月)22時09分09秒
――理科準備室。

『…と、まぁ中和物質の作り方をいくら簡単に説明してもあんた達には理解不可能だろうけど』
カオリが矢口に霧の消し方を教えていた、が…

「クラッ」
「矢口さん!しっかり!!」
あまりの難しさに気を失いかける矢口と体を支える加護。

『仕方ない、力を少し分ける。知識が持続出来るのは30分だからその間に作業して』
カオリが矢口の前に手をかざすと手の周りがポワーと赤く光った。

「ちょっ!何を!?わ――!誰か助けてぇぇ!離せ加護!!」
「辛抱してや矢口さん。これもみんなの為なんやから」
抵抗する矢口を後ろから羽交い絞めにする加護。
そしてカオリが矢口のおでこに手をかざした。

「お、お、お、うおぉ!?」
矢口の表情が段々と変わってゆく。

「……矢口さん?」
「うわぁぁ!すっげぇ!!今なら矢口何だって出来る!宇宙船だって造れるぞ!!」
「…ほんまかいな」
「おい加護!何か頼みたい事ない?何だったらお前の脳みそを分解して賢くなるように…」

『バコン!!』
「早よ造れ言われたんが聞こえへんかったんか!このボケッ!!」
「うぅ…受験までこの力が持続したらいいのになぁ」


132 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年12月03日(月)22時10分00秒
―――職員室。

「ねぇ市井ちゃん、このワックスも使えるんじゃない?」
「そうだな。それも使うか…おっ?見ろよ後藤」
「なぁに?…あっ、それって爆竹?」
「誰かが学校に持ってきて没収されたんだろうな。よし!これも使おう」
「いいねぇ。もぉ派手にやっちゃおう!」

あたしはワックスの入ったドラム缶を廊下へと運ぼうとしていた。

「重い?一緒に運んでやるよ」
市井ちゃんがそう言って手を差し出してきたんだけど…

「「あっ…」」
互いの手が触れて2人とも顔が赤くなっちゃった。

「な、なぁ?もしかしてうちらって…付き合ってたりしてた、とか?」
「…お、覚えてないよぉ」
「そ、そうだよな!ハハハ。まぁ記憶戻ればわかるし」
「あたし達の記憶戻るの?」
「うん。辻が暗示解けるようにしといたってさ」

「辻ちゃんは…今、どこにいるの?」
「ハト小屋から逃げるからなっちとカオリと一緒のはずだけど」

今、みんなは校舎内でバラバラの場所にいる。
あたし達の脱出劇が成功すれば辻ちゃんとカオリはこの星を出てしまう。
辻ちゃん…もう2度と逢えないのかなぁ。


133 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2001年12月03日(月)22時11分05秒
―――ハト小屋。

理科準備室から移動して来たカオリがハト小屋の中に入る。

『何?まだ“変化”してなかったの?急ぎな、時間がないよ』
「…はい。安倍さん、霧が消えたら窓開けてもらえますか?」
隣にいる安倍に問いかける辻。

「ほんとに…ほんとに行っちゃうの?」
「…はい。だってワタシ達は」
辻がチラッとカオリの方を見た。
カオリはすでにハトの羽を体内に取り込んでいる最中だった。
すると…カオリの体が使っていた後藤の体からハトにへと変化した。

『バサバサバサッ』
ハト小屋の中を飛び回るカオリ。
目の前でその変化を目の当たりにした安倍は呆然としていた。

「ワタシ達は人間じゃないんです。ここには…いられません」
少し哀しそうに、そう呟いた辻。

「でも……って、あたし達と一緒に家に帰りたいって言ったじゃない」
涙を浮かべて安倍が訴えかける。

「あの記憶は“辻希美”としての記憶?………それとも…」
「……」
何か言いたそうに安倍をジッと見つめる辻。



(――それとも、本当のあなた…ヨシザワヒトミの?)


『中澤警部!霧がっ!!』

134 名前:メンソール 投稿日:2001年12月03日(月)22時15分17秒
>>128 せっかちな読者さん
かなり放置してしまってすいません。

このスレ削除依頼を出そうか迷ってたんです。
理由は案内板で議論があったアレです。
ここの話もオリジナルの部分を加えてはいますが、やはりパクリ物には違いないので…
しかし後2回で終わるしどうしようか悩みました。未だに悩んでますが(苦笑
でも書き始めた以上やっぱり最後まで載せようと思います。上げるとまずいのでsageにしました。
それから削除依頼を出すかもう1度考えます。
では、次の最終回で…
135 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月07日(金)17時48分33秒
更新お疲れさまです。
警部さんってば…荒っぽいわぁ。少ない見せ場?(笑
外は緊迫してるのに、校舎内は皆どこか緊張感ないし。
市井・後藤なんか、爽やかに危険なブツを揃えてるし(w
望んでも、皆と一緒にはいられない辻(ヨシザワ)が切ないね。。
だけど本物の辻は…一番哀れかも…。

案内板の騒動…そういえば一時期、えらい勢いでしたね。
まんまコピーのパクリと、パロディーとでは意味合いが違うし
たとえ設定やセリフをそのまま使ったとしても、こういうのは
書き手の方の個性が出るものだと思うので、問題があるとは
個人的にはあまり感じないのですが…。難しいですね。
とりあえず、完結までは載せていただけるということで、楽しみに
次回更新お待ちしてます。終わってしまうのはとても寂しいですけど。
その後は…作者さんのお気の済むように、としか。。
136 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2002年01月11日(金)02時20分11秒

窓の外を見ると、校舎を覆っていた霧がいっせいに晴れてゆく。


「…やった!やったで矢口さん!成功や!!って聞いてんの!?」
「あぁ、力が無くなってゆく。自分がドンドン馬鹿になってくのがわかる」
「最初からアホやからええやん」
「…お前に言われたくないっつーの!」


『ドドドドドッ!!』
外で待ち構えていた機動隊員が、霧が晴れたのを確認すると正面の扉から突入してきた。
その数はおよそ100名ほどにのぼり、地響きにも似た轟音が校舎内に響く。


「来るぞ!!」


階段の影に隠れていた市井が機動隊の姿を確認する。
しかし予め廊下にワックスを零しておいたので、機動隊員達は面白いようにみな足を滑らせた。



137 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2002年01月11日(金)02時22分02秒

『シュュュュュュ…バタン!!』


「ワックス効くじゃん。へへ〜ん♪こっちだよ!」
みんなヘルメットしてるとはいえ…痛そう(ごめんなさい)


「こ、こら!待たんかい!!」
「やだね〜“シュボッ”」
あっかんべぇをすると市井ちゃんはポケットからライターを出し、ある物に火をつけた。


『バチバチバチッ!』
火がついた爆竹の束を機動隊員に向かって投げた(ちゃんと火傷しないように足元に)


あたし達の仕掛けや攻撃などで半分近くの隊員は足止めをくらってる。


138 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2002年01月11日(金)02時23分06秒

「お〜子供だましのわりに効くなぁ」
「…市井ちゃん、楽しんでるでしょ?」
あたし達はドンドン上の階へと走って逃げる。

「二手に別れろ!!」
後ろからさっきの仕掛けを潜り抜けた隊員が追いかけてくる。
その内の半分があたし達がいる場所とは反対の理科準備室に向かった。

「あちゃ〜理科準備室の方に行っちゃった。やぐっちゃん達、見つかっちゃうなぁ」
「市井ちゃん、早く!追いつかれちゃうよ!!」


今のあたし達の目的はとにかく逃げて時間を稼ぐ事。
少しでも時間を稼いで、“あの2人”を逃がす事。


だからやぐっつぁん、加護ちゃん…また“後”で会おうね。



139 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2002年01月11日(金)02時23分51秒

―――理科準備室。


「ここに誰かいるか!?」
機動隊員が準備室のドアを開け、中を確認する。

「…います〜うちら大人しくするさかい、銃よりガスにして〜」
「もう矢口はただのバカでございます。はい」
中には無抵抗で座り込んでいる矢口と加護。
ゆっくりと隊員が近づき、スプレーを2人の前に向けた。

「矢口さん…ほな、また後でな」
「おう…おやすみ」


『プシュー』
2人は催眠ガスによってしばらくの眠りについた。



140 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2002年01月11日(金)02時25分13秒

―――ハト小屋。


『…どうするか自分で決めなヨシザワ。カオリは帰れるならそれでいいんだ』
「……」
『言っておくけど、この星で暮していくなら人間のその姿じゃ無理だからね』
「……」
『それでも構わないと思うのなら、それはアンタの自由だよ』
「……」


『カオリは1時間だけ船の中で待ってる。
時間を過ぎてもヨシザワが来なかったら…出発するから。じゃあ』
「…イイダさん」


『バサバサバサッ!』
イイダは開いている窓から飛び立っていった。


「辻ちゃん、どうするの…?」
「あ、安倍さん。ワタシは…ワタシは―――」



141 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2002年01月11日(金)02時26分17秒
―――

『ドカッ!…ズズズズズ、ドンッ!!』
「防火壁が閉めたから屋上に上れ!」
市井ちゃんに指示されて急いで階段を上がる。

「強く押すと開いちゃうけど、これで少しでもハト小屋に手が回るのが遅れるだろう」
「そうだね」
『…上や!追え!!』
扉の向こうから声が聞こえてきた。

「うわぁ!もう来たのか!?」
「市井ちゃん!こっち!!」
あたしは屋上へと続く扉を開けて市井ちゃんを呼んだ。
市井ちゃんが急いで走ってくる。
間一髪でドアを閉めてカギをかけた。

『ドンドンドンッ!!こら!開けんかい!!』

「…怖い?」
「ううん、全然!」
「たくましいな後藤」
「エヘヘ♪」

市井ちゃんがいるから…だから、怖くないんだよ。



142 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2002年01月11日(金)02時27分18秒

『バンッ!』
屋上のドアを開けてみると夜空に輝く星が見えた。


「うぉ〜久しぶりの外の空気だ!」
…と喜んだのも束の間、すぐにドアを壊して隊員達がやってきた。


「い、市井ちゃん!もう来たよ!?」
「後藤!こっち!!」
市井ちゃんに言われて貯水タンクに掛かっているハシゴを登る。


「これで後がないなぁ、よいしょっと」
「あ、あの2人は逃げたかな?…キャッ!もう限界だよぉ」


逃げ場を失って思わず市井ちゃんにしがみついた。



143 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2002年01月11日(金)02時28分19秒

『ジリリリリリッ!』


…とその時、スピーカーから学校のベルの音が鳴り響いた。
その瞬間、あたしの頭の中にまるでスライド映画のように映像が映る。


学校でのあたしや、帰宅途中のあたし。

これは…お母さんにお姉ちゃん。それに弟の姿も。


そして―――教室のあたしの隣の席で微笑んでいる市井ちゃんの姿。


その笑顔に少し見とれてあたしは放心状態。
でも、プツっとそこで映像が途切れた。
あたしは全ての記憶を思い出した。
市井ちゃんの方を見てみると、あたしと同じように少し放心状態。
きっと市井ちゃんも記憶が戻ったんだね。



144 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2002年01月11日(金)02時29分38秒

『バサッ!バサバサバサッ!』


後ろから聞こえてきた音の方を見ると、無数のハトが夜空へと飛び立っていった。
その中には…あの娘もいるのかな?

「帰っちゃった…のかなぁ」
「…どうだろうな」
パッと市井ちゃんと目が合って、さっきの笑顔を思い出して顔が赤くなっちゃった。

た、ただのクラスメートだったんだ(…ちょっと残念)

「あ、あんたら…ハァハァ……やっと追いつめたで!?」
警部さんが必死な顔をして登ってきた。
市井ちゃんと顔を見合わせて頷く。

「はいはい、降参します。だから麻酔銃は勘弁して」
「後藤も銃はヤダ」
「んじゃ…後藤、おやすみ。話の続きは起きたらしような♪」
「…うん!」

ガスで眠りにつく途中、あたしは以前の記憶をまた思い出した。



145 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2002年01月11日(金)02時30分35秒

あたしは新しいクラスになかなか馴染めなかった。
人見知りをしていたって訳じゃないんだけど…
自分から少し距離を置いていたのかもしれない。
…自然とクラスメートとの会話も少なくなっていった。

そんなあたしに唯一、かまってきてくれたのが隣の席の市井ちゃん。
市井ちゃんはクラスの人気者だった。
そんな人が何であたしなんかに話しかけてくれるのか不思議だった。


でも―――本当はあたしも、みんなの輪の中に入りたかった。


だから、いつもクラスのみんなと騒いでいる市井ちゃんが羨ましかった。
…ううん、違う。
市井ちゃんと騒いでいるクラスのみんなが羨ましかったんだ。


後藤は…いつも見てたんだよ。
市井ちゃんの事は何でも知ってるよ。


後で目が覚めたら―――いっぱい話をしようね?市井ちゃん。



146 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2002年01月11日(金)02時31分29秒

―――その夜、謎の飛行物体が空を飛びました。



2年A組、後藤真希。



―――あれ以来なっちは“1羽の鳩”をとても可愛がっています。



2年A組、市井紗耶香。



―――でも…



1年C組、辻希美(ヨシザワヒトミ)


3年D組、安倍なつみ。



147 名前:−7人目は笑う− 投稿日:2002年01月11日(金)02時32分22秒

―――あたし達がその事を知るのはもう少し後の事。



1年B組、加護亜依。


3年A組、矢口真里。



―――とりあえず今は…



7人目(イイダカオリ)


警部、中澤裕子。




―――目が覚めてもこの記憶が消えていませんように。




−Fin−
148 名前:メンソール 投稿日:2002年01月11日(金)02時55分36秒
終わりました。
ちゃんと読者に伝わったのか不安ですが。
辻(ヨシザワ)はどうなったのかはラストの文で何となくわかってもらえるかな?
>140と>145の文はオリジナルで付け加えました。
原作では市井と後藤の2人を中心に最後は書かれていたので
カオリとヨシザワの会話は本当はありませんでした。
でも私はあった方がいいかなと思ったので(ラストにも繋がるし)書いてみました。

書き終わってみて…この話が1番苦労したなぁと思います。
普段恋愛モノばっかり書いてるから(w
最後まで読んでくれた読者の方々、本当にありがとうございました。
それともし分からない所があれば質問して下さい。
では…
149 名前:メンソール 投稿日:2002年01月11日(金)02時56分44秒
>>135 名無し読者さん
いつもレスしてくれてありがとうです。
警部の裕ちゃんは最後まで見せ場がなかったです(苦笑
辻(ヨシザワ)が望んだ事はやっぱり…想像にまかせます。
ほんと本物の辻が1番かわいそうな役でした(ごめんなさいれす)
案内板はまた、とゆうか最近いつも荒れてる気がします。
削除依頼は取りあえず保留しておきます。
まぁいずれHPの方に載せるから削除してもいいかなと思ったんですが…
更新遅いのにずっと読んで頂いてほんとありがとうございました!
150 名前:メンソール 投稿日:2002年01月11日(金)02時58分09秒

( ´D`)<流すのれす!
151 名前:メンソール 投稿日:2002年01月11日(金)02時59分30秒

( ´D`)<やっぱ梨華ちゃんは鳥嫌いだから出てこなかったんれすね!
152 名前:メンソール 投稿日:2002年01月11日(金)03時01分20秒

( ´D`)<これにて終了れす!さよなられす!
153 名前:ROMってた名無し 投稿日:2002年01月11日(金)10時27分57秒
完結お疲れ様でした。 そして、ありがとうございました。
作者さんがあの騒動を気にしてらしたので、ハラハラして待ってました。(w
(実はHPの方へカキコしてみようかと思ってたとこでした。)
作者さんを信じて待っててよかったです。 うっぅぅっ(泣
これからもがんばってくださいねっ!!
(あっちも、そっちも、マタ−リまってまーす。(w




154 名前:ギャンタンク 投稿日:2002年01月17日(木)12時45分06秒
待ってた甲斐がありました。
面白かったです。
原作も読んでみようと思います。
155 名前:メンソール 投稿日:2002年01月21日(月)06時44分47秒
>>153 ROMってた名無しさん
ありがとうございます。随分待たせてすいませんでした(苦笑
どうしようか悩んだんですが、今ではちゃんとこのスレで完結できて良かったと思ってます。
あっちもこっちも(w 頑張りますよ!

>>154 ギャンタンクさん
ありがとうございます。待たせたのに読んで頂いて嬉しい限りです。
原作、市井ちゃんの役の子はかなり市井ちゃんに近いと思います(w

一応この話、HPの方で全文載せてあります。
何か質問などあればそちらの方で…ではありがとうございました。

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