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TACTICS OF MM
- 1 名前:刹那 投稿日:2001年07月17日(火)06時14分15秒
- 読みは「タクティクス オブ ダブルエム」です。
元ネタはFFTで恐らくジャンルはファンタジーです。
登場人物の名前が漢字だと雰囲気に合わないので一応片仮名にしてます。
- 2 名前:序章 投稿日:2001年07月17日(火)06時15分46秒
- 1448〜1472年
一つの大陸を巻き込んで「スラスト戦争」、別名「双頭の戦」が行われた
14世紀中頃のその時代幾つもの炎が生まれ
そして幾つもの生命が消えていった
その時代に終止符を打ったのはたった一人の名も無き剣士だった
時は過ぎ、戦争は終わり戦乱の最中であった国も統一され一つの国になった
一部この剣士の存在を知る学者達はこの言葉に隠された剣士の背景を何代にも渡り調べてきた
「剣士の血筋はとある貴族のものだ。」と言う者や
「あの話は戦後大人達がスラスト戦争を語り継ぐ為に作ったただのおとぎ話だ。」と唱える者も出てきた
しかしその剣士について真実を知る者は一人もいなかった
そして現代、一人の剣士の存在を知る者は誰も居ない
- 3 名前:第一章「剣士と王女と武装騎士団」 投稿日:2001年07月17日(火)06時16分31秒
- ―1448年1月20日午前0時38分
不運にも18回目の自分の誕生日となる日に一人の少女は馬に跨り荒野を進んでいた。
少女の名前は"見習い"剣士ヤグチ=マリ。今日で18歳になる。
故郷のグリーディムからはどの位離れたのだろう。
自分を戦火から逃がしてくれた両親は無事なのだろうか。
恐らく無事では無いだろう。それでもマリは自分をそう納得させるしかなかった。
手綱を強く握り込み上げてきた涙を吹き抜ける風に拭わせる。
全速力で30分は跳ばしただろう、馬に疲労が見えてきた。
荒野の続く森を抜けると短い草がまばらに生えている草原に出た。
遠くに国旗が見える、ツヴァイクの国旗だ。
建国以来変わっていないという緑と黄色がベースの中で双頭の獅子がそれぞれ東西を向き
たてがみを優雅になびかせている。
「もうすぐ・・・。」
森の中では小雨だった雨が大粒になっているのも気にしなかった。
雨に濡らされた髪が頭に張り付いてる、それでもマリは手綱を握り締めたまま馬を走らせた。
霧がかる草原の中をただひたすらと進むとやっとの事で城門に着いた。
見張りの兵士は槍を構えこちらに向けた。
マリは馬の首の辺りを撫で、「・・・ねえ、この子に水をあげてくれる?」
とだけ言うとドサッと馬から落ちた。
- 4 名前:第一章「剣士と王女と武装騎士団」 投稿日:2001年07月17日(火)06時17分03秒
- ―1448年1月20日午前2時45分
マリは目を覚ました。
初めに視界に飛び込んできたのはどこか見覚えのある天井だった。
マリはすぐにここは城の中だということを理解できた。
何とか立ち上がり窓の向こうを見た。
外は真っ暗だ。遠くの町、マリの故郷であるグリーディムからは炎が上がっている。
壁を思いっきり殴ろうとしたが疲労が酷く、目眩がしてきたので何とかベットまで戻り倒れこんだ。
30分位経っただろうか、その間マリは眠ることができなかった。
何とか頭を整理しようとしたがそれも出来なかった。
ただぼんやりと天井を眺めているとドアの開く重たい音がした。
ドアの向こうから差し込んだ光の中に長身で長い黒髪の女が見えた。
「久ぶりだね、マリ・・・。」
懐かしく優しい声がした。
「もう6年ぶりになるのかな。変わってないねカオリ。」
マリはベッドに寝て天井の方を向いたまま言った。
「・・・あの・・グリーディムの事・・・・残念だったね・・・。」
カオリがこう言うということはやはり既にグリーディムは壊滅状態なのだろう。
「うん・・・残念だったんだけどさ、私ね、戦おうと思うんだ。」
マリは無理矢理明るい声を出してみせた。
「マリが?」
「うん。敵討ちって訳じゃないけど。」
「そんな無茶を言う所も昔と変わってないね。」
「無茶と分かってて止めないカオリも変わってないよ。」
ほんの一瞬だったが二人は笑顔を交わした。
「本当に戦うつもり?」
「もちろん。こう見えても剣士だからね。」
「だったらいい人達を紹介してあげる。」
マリは圭織に連れられて螺旋状の階段を下りて行った。
体が軽くなっている、疲労は心理的なもので旧友との再会を果たして氷のように溶けていっただろうか。
同じ形の階段を下りていくうちにマリはふとあの時の事を思い出した。
- 5 名前:第一章「剣士と王女と武装騎士団」 投稿日:2001年07月17日(火)06時18分07秒
- ―1437年8月31日
よく晴れていたこの日マリの一家は父親の仕事の為王都ツヴァイクへ越してきた。
当時真里は7歳だった。引越してきて早々にマリは近くの丘へ出かけた。
綺麗に咲いている小さな花たちをじっと見ていた。町の中では同じくらいの歳の子供達がわいわいと遊んでいた。
明るく活発だったマリにも引越してきた初日にその中に入る事は流石に出来なかった。
ずっと花を眺めていたマリに誰かが声をかけてきた。
マリがハッと振り向くとそこには長い黒髪の少女が立っていた。
年はマリとほとんど変わらないと思う、ただ身長はかなりの差があった。
小柄なマリと歳のわりに背が高い彼女とでは5cmは差があったと思う。
黒髪の少女はマリにこう言った。
「ねえ、どんなお花が咲いているの?」
これが当時7歳のマリと当時8歳の王女イーダ=カオリの出会いだった。
- 6 名前:第一章「剣士と王女と武装騎士団」 投稿日:2001年07月17日(火)06時19分07秒
- カオリとマリは見た目こそ正反対だったがとても気が合い、すぐに親友になる事が出来た。
家に帰って両親に今日の出来事を話した。
両親はマリに友達が出来るかを心配していたので大そう喜んでいた。
その時は両親はおろかマリ自身もカオリが王女である事は知らなかったのだが。
ある日マリは城に招待された。
カオリの部屋の窓から見える庭の花はあの丘の花よりももっと綺麗だった事を今でも覚えている。
王座の間にも入った。
王様に挨拶したら王様は「カオリに友達が出来た。」って喜んで特別に王座に座らせてもらった。
すごく座り心地が良かった。当たり前かもしれないけど。
そのことも両親に話したら血の気が引いてた。料理していた母親は危うく指を切り落としそうになっていた。
7歳のマリには理解できなかったが。
お母さんに、「明日もう遊べない。」って言ってきなさいって言われた時は悲しかった。
次の日カオリにお母さんに言われた事を話したらカオリすごく悲しそうな顔して帰ってった。
そしたらその次の日にカオリと王様が家に来たんだよね。
お母さん驚いてもう気絶しそうだった。「マリがとんでもない事したからきっと打ち首にされるんだわー。」なんて言ってた。
私王様に気に入られたみたいで「お願いだからマリちゃんをカオリの友達にしてくれないか。」って頼まれた。
そしたらお母さん「い、いえ王様家のマリなんかでよければお願いします。」って何度も頭を下げてた。
その間私とカオリはずっと笑ってた。
王様が帰ってった後お母さんが「あんたもすごい人を友達にしたもんだねぇ。お母さんも鼻が高いよ。」なんて言ってたなぁ。
- 7 名前:第一章「剣士と王女と武装騎士団」 投稿日:2001年07月17日(火)06時19分38秒
- それから5年位の間私とカオリはずっと一緒に遊んでいた。
ケンカしたことなんてほとんど無かったと思う。いっつもカオリの部屋に遊びに行ったり、近くの丘で遊んだり。
私が12歳の時急にグリーディムに引っ越す事になった。
父の仕事が一段落着いたからとグリーディムの祖母の容態が安泰でなかったからだ。
マリ達の一家は王都ツヴァイクに別れを告げた。カオリも見送りに来てくれた。
その時カオリに貰った銀の指輪は今も右手の中指に着けている。
当時はブカブカだったのだが今ではぴったりとはまっている。
- 8 名前:第一章「剣士と王女と武装騎士団」 投稿日:2001年07月17日(火)06時20分09秒
- ―螺旋階段を降りるとそこには10人程度の武装した人達が居た。
男も居れば女も居る。2人以外は全員武器を持っていたので恐らく魔法が主流ではない国の人達が多いのだろう。
「武装騎士団だよ。」カオリは彼らの紹介をしてくれた。
武装騎士団ということは彼らはこの国に雇われているのであってこの国の兵士ではない。
「ねえ、この娘を騎士団に入れてくれる?」
カオリはリーダーっぽい男に聞いた。
「足を引っ張らなきゃいいんだけどね。どうします?リーダー。」
男は奥に居る金髪の女の方を見た。
「別にええんちゃう?結構可愛いし。名前はなんっちゅうの?あ、マリ。
ええ名前じゃん。私?私はナカザワ=ユーコってゆうんやけどな。」
どうやら武装騎士団のリーダーは彼女らしい。
剣を腰から下げていて、盾は持っていない。
ユーコはマリの肩を叩いて「よろしくな、マリ。」と言うとどこかへ歩いていった。
騎士団の人が「リーダーまた酒場に行ったのか。もうすぐ戦闘だっていうのに。」
と愚痴っていたので多分酒場に行ったのだろうとマリは思った。
1448年1月20日午前2時55分マリは武装騎士団見習い剣士になった。
- 9 名前:第一章「剣士と王女と武装騎士団」 投稿日:2001年07月17日(火)06時20分41秒
- ―1448年1月20日午前3時29分
時は来た。
見張りの兵士がカンカンと音を鳴らしながら階段を降りてきた。
兵士が「リセリアが攻めて来ました!!」と叫ぶとユーコがちょうど戻ってきた。
それを確認すると武装騎士団はゆっくりと腰を持ち上げた。
この世界には大陸が三つあって地図上に表すと三つの大陸がほぼ正三角形を描いている。
ここは三角形の上の部分にあたる大陸、スラスト大陸という場所だ。
この大陸は他の二つの大陸の1.5倍位は大きい。
さらにスラスト大陸は大まかに東西南北の4つに分ける事が出来る。
王都ツヴァイク、グリーディムは北側に入る。リセリアは西側だ。
それぞれの方角によって祖先も違うので得意な攻撃方法も違う。
北側は武具、特に剣による攻撃を得意としている。
それに加え魔法も扱う事が出来るので優秀な魔法剣士の出生地は北側である事が多い。
それに対し、西側は根っからの魔法派である。武具こそは使えないが魔法の攻撃力では群を抜いている。
南側は武装派。東側は様々な職業が集結している。
勿論例外は居るわけだが。
それぞれが装備を確認して出撃を待った。
5分程度の沈黙が続く中マリはこの空気に緊張感と胸の高鳴りを憶えた。
午前4時11分、空が白みを帯びてきたころ「武装騎士団出撃!」という声が城内に響いた。
そしてもう一声
「戦闘開始!指令はリセリア軍を全滅させよ!!」
という武装騎士団団長ユーコの声が冷たい壁に反射し塔の中でこだました。
第一章「剣士と姫と騎士団」終了
- 10 名前:第二章「血と殺戮の争いの中で」 投稿日:2001年07月17日(火)06時22分57秒
- 門を開いた。雨はより強くなっている。
敵兵は20体も居ないだろう。職業はナイト、黒魔術士、呪術師、シーフといった所だろうか。
元々武装騎士団というものは前線に出て戦うものではなく、相手の城を直接攻め落とす時や
こうして多くの兵士が前線に出て守備が手薄な時を狙い城を攻め落としに来た敵を倒すためにある。
強く叩きつける雨の中静かに戦闘は始まった。
見習い剣士と言えどマリはまだ戦闘に参加した事は無い。
どうするべきか戸惑っているとユーコが
「どっか隠れとき、今死んだらしゃあないからな。」
と声をかけた。ユーコの指示に従い城の柱の陰に身を潜めた。
初めに動いたのは敵のナイトだった。
ガチャリガチャリと音を立て走りこちらに向かってくると剣を大きく振り下ろした。
前に居た剣士が剣で受け止めた、ガチャという重たい音が響いた。
相手の剣を払うと、左手から炎を出し剣に炎を帯びさせると相手の腹を水平に斬った。
じわりと敵の腹から血が出てその後血が焦げ、肉の焼ける悪臭が漂った。
「グッ・・・・何故だ・・・?こ・・・の作戦・・で死人・・・・が出る・・はず・・・では・・・・なか・・った・・・はず・・・だ・・・・」
と走り去っていくユーコの方を見ながら言い残すと黒鎧の男はひざまずき倒れた。
水溜りが赤く染まっていくのがマリの居る柱の陰からでも窺えた。
- 11 名前:第二章「血と殺戮の争いの中で」 投稿日:2001年07月17日(火)06時23分36秒
- 敵軍の呪術師が岩場に隠れて呪文の詠唱をしているのが僅かに聞こえた。
「黒く輝き魂を持つ精霊よ我と共に悪魔と知識の契約を結び彷徨えし魂を力とすることを誓え・・・・・
デッドリー・ドライブ!!」
敵の呪術師が魔法を唱えると骸骨が無数に宙に浮かび上がり一人の剣士を取り囲んだ。
その後剣士を取り囲んだ骸骨が消えると「ァァ・・・」と低く声を漏らしながら剣士はガクリとひざまずき倒れた。
「しまった。自軍を減らしたくなかったんやけどなぁ。」
ユーコは頭を掻いてそう言うと剣を抜き走り出した。
走ってくる途中に向かって来た敵兵は全て斬った。
「隊・・・長・・・・・・な・・・・・ぜ・・・・?」
顔に少しかかった血液を拭いながらも敵の司令の近くまで走りよった。
「北斗聖王剣!!」
地面に剣を突き立てると5mはあろう大きくて透明な結晶のような物が地面から突き出た。
敵司令と思われる男や周りにいた兵士諸共結晶に突き刺さった。
結晶が消えると敵兵は力無く地面へ落ち、真紅の水溜りを作った。
これでほとんどの敵は倒す事が出来た。
流石武装騎士団だ。高額で雇われるだけあってあっという間に倍近い敵を壊滅させた。
- 12 名前:第二章「血と殺戮の争いの中で」 投稿日:2001年07月17日(火)06時24分50秒
- 一人の犠牲は払ったもののなかなかの快勝ではあった。
これでしばらくの間リセリアも直にツヴァイクには攻め込んでは来れないだろう。
ユーコも剣に着いた血液を拭き、鞘に収めると皆と祝いの言葉を交わした。
雨でびっしょりと濡れた頭を軽く振り、水を落とすと城に向かった。
だが門の中に入ろうとした時呪文を詠唱する声が聞こえた。
「まずい!まだ黒魔術師が居る!」
ユーコは急いで振り返り剣を抜くと走った。
「全てを破壊し全てを否定せしまがつびの神よ。我今此処に破壊の祝福を求める事を誓わん。」
何かが乗り移るっているかの様な耽々とした調子の詠唱が聞こえてきた。
「アカン、一人残してた・・・。」
ユーコは黒魔術師の方へ真っ直ぐと走っていった。草を踏み、岩を跳び越えあと黒魔術師までわずかな所まで来た。
「神に背を向けし邪神の力、汝の眼でしかと見届けよ。」
黒魔術師は左手に持っていた杖を掲げた。
「闇に心を委ねし者に聖なる審判を!聖波斬!!」
詠唱を遮る様にユーコが剣を地面に向かって投げると白い牙が地面を走り黒魔術師の方へと向かって行った。
あと2m程度だった。あとたった1秒でもあれば黒魔術師に届いただろう。
だがもう遅かった。黒魔術師が「漆黒の火炎地獄(ダーク・インフェルノ)」と叫ぶと辺りは一瞬で暗闇に覆われた。
ただ何故か攻撃を当てる事が出来なかったユーコの口元が少し緩んで見えた。
「この呪文はまさかマ・・・・」という自軍の兵士の声が聞こえた。
その後この世に居るのでは無いような感覚が体を包んだ。
それは徐々に広がっていきツヴァイク城ごと覆われた黒い球の中に閉じ込められた。
5秒ぐらいその球の中で浮かんでいた。
そしてとにかく周りが熱くなった。火とか炎とかそんな感じではなく体中の水分が一気に蒸発するくらいの熱さだった。
叫び声すら出なくなっていた。
薄れ行く意識の中周りを見回したがなぜかユーコの姿は見えなかった。この呪文を避ける事が出来たのだろうか、それとも・・・。
蜃気楼のように揺らぐ視線の奥に気のせいか馬に乗り走り去っていく人が見えた。
二人いて一人は無理矢理乗せられている様にも見える。
そしてそのまま宙に浮かびながら意識が遠退いきツヴァイク城が砂の城のように崩れていくのが見えた。
武装騎士団はマリの加盟から1時間過ぎで無くなり、王都ツヴァイクは建国180年の歴史を残し崩壊した。
- 13 名前:刹那 投稿日:2001年07月17日(火)06時26分49秒
- 本日分更新完了です。
- 14 名前:刹那 投稿日:2001年07月17日(火)06時28分14秒
- 戦闘シーンが下手っていうつっこみは勘弁して下さい。
- 15 名前:刹那 投稿日:2001年07月17日(火)06時28分44秒
- まだ長いなあ
- 16 名前:刹那 投稿日:2001年07月17日(火)06時30分22秒
- 矢口=ラムザ位はとりあえず解ってもらえたですかね
- 17 名前:刹那 投稿日:2001年07月17日(火)06時31分34秒
- あと3つ
- 18 名前:刹那 投稿日:2001年07月17日(火)06時32分10秒
- ↑あと2つだった。あと1つ
- 19 名前:刹那 投稿日:2001年07月17日(火)06時32分41秒
- 更新完了です。本日分は>>2-12
- 20 名前:7Ster☆@原作好き 投稿日:2001年07月17日(火)14時56分51秒
- ディリータ・アルマ・ティータの配役及び、
市井が出るかどーかが、気になってみたりします。
期待sage
- 21 名前:第三章「いつかの時代(とき)の中で」 投稿日:2001年07月17日(火)23時35分16秒
- 悪夢に魘されてマリは目を覚ました。
真暗な空間の中で焼かれる夢。
大きな城が一瞬にして崩れ去っていく夢。
恐怖が甦り上半身を起こした。
起き上がれない程に体全体が痛む、悪夢は実際に起こった事だったのだ。
マリは痛み故に体を戻さざるを得なかった。
たった一日程の間で二度気を失い二度助けられたのだ、つくづくついているものだとマリは苦笑した。
しかし、もしかしたら自分は武装騎士団の生き残りとして捕虜にされたのかもしれない。
マリはベッドに横たわったまま周りを見た。
どこかの小屋のようだ、割と小さめで木で造られている。
リセリアに向かっている途中のリセリア軍が此処を見つけて休むことにしたのだろうか。
そんな事を考えていると突然ドアが開いた。
- 22 名前:第三章「いつかの時代(とき)の中で」 投稿日:2001年07月17日(火)23時36分23秒
- スラスト大陸の東側に位置するストースランドの戦士養成学校にゴトー=マキは居た。
1443年今から8年前の事だ。養成学校自体は4国どこにでもあるのだが
ここは大陸の東側だけあって様々な能力を持った生徒がいるので能力の種類によって幾つかの科目に分けられている。
ちなみにストースランドの養成学校は4年制で13歳から入学。一定の金額の税金を納めている貴族の子供など以外は義務教育である。
マキはごく普通な血筋の家系に生まれてきている。両親が共に魔道士系の血を継いでいるので
マキの能力の種類も魔道士となっていて学校の学級も魔道士の所に通っている。
と言っても両親が大した魔道士でもなかったので鳶が鷹を生む訳も無くマキも平凡な才能、というよりはそれ以下のやや劣等生組だった。
という訳でマキは成績も平均以下だった訳だが、特に気にしてはいなかった。
だがマキも成績が悪い方が良かったわけでは無い、同級生が杖から火の玉を出しているのを見て羨ましく思っていた。
しかしマキが二年生に進級して二週間程経った頃ある人物との出会いでマキは大きく変わった。
マキと同じく進級したばかりで今年四年生になった二つ歳上の人だ。
彼女との出会いは春のまだ浅い木々に若葉が少しだけ芽吹き始めた頃である。
その日マキは校庭の隅で小炎爪(しょうえんそう)の魔法の練習をしていた、四時限目のテストの結果が思わしくなかった為宿題が出されたのだ。
とはいえいくら練習しようと本人にやる気が無ければ炎が出ることはない、半ば自棄になりながらブンブンと杖を振っていた。
- 23 名前:第三章「いつかの時代(とき)の中で」 投稿日:2001年07月17日(火)23時36分58秒
- 「練習してるの?熱心だなあ。」
不意に後ろから声をかけられたのでマキはびっくりしてブンブン振っていた杖を飛ばしてしまった。
慌てて杖を拾い屈んだまま振り返った。ショートカットで少しだけ男っぽい(ボーイッシュ?)な人が立っていた、右手に杖と魔法剣の教科書を抱えている。
「どう?上手くなった?」
彼女は笑顔で問い掛けた。
「あ、あのテストが悪くて宿題出されてそれで適当にやってただけですから全然上手くは・・・。」
杖を拾って立ち上がりマキは照れ臭そうに答えた。
「へえ、大変だね。私はイチイ=サヤカって言うんだ。あなたは?」
「え、あの二年のマキです。」
慌てて答えた拍子にまた杖を落としてしまった。
「あ゛っ・・・」
サヤカがクスクスと笑いを抑えている声が聞こえたので恥ずかしそうにしながらも
急いで杖を拾い上げ立ち上がるとサヤカの教科書に「攻撃・補助用魔法剣4年二分野」と書いてあるのが見えた四年生らしい。
「やべ、もう授業始まっちゃうよ、それじゃまたね。」
サヤカが腕時計を見て慌てて走って行った。
走っていくサヤカの後姿を見ながらマキが「さよなら、先輩。」と言うとサヤカは振り向き笑って手を振りまた走って行った。
サヤカが去った後もマキはしばらくボーッとしていた。そして始業のチャイムが鳴ると慌てて教室に向かって走った。
- 24 名前:第三章「いつかの時代(とき)の中で」 投稿日:2001年07月17日(火)23時37分52秒
- その後マキとサヤカは何回か顔を会わせる事があった。
そして顔を会わせる度に仲良くなっていった二人はその年が終わる頃には親友になっていた。
サヤカは魔法剣の学級で優等生の部類に入っていたのでマキは何度かサヤカに魔法を教えてもらった。
「魔法は良い杖より良い心構えから」これは毎回の様にサヤカに言われていた。
サヤカも幼い頃から魔法剣を教えてくれた祖父にこの言葉を言われ続けていたらしい。
サヤカの徹底した特訓の成果もあり、マキの魔法はすぐに上達し、実力は魔法学級でもトップクラスになっていた。
(特に闇と炎の呪文にかけてはテストでA´以下を取った事が無い)
図書室の古文を解読し新たな魔法を編み出したので学校やストースランドの魔法協会から表彰を受けたこともあった。
マキが三年生を終わる頃にも二人は親友のままでいた。そしてその年の春サヤカは卒業を迎えた。
「今年の卒業生は皆例年よりよく頑張り素晴らしい成果をあげてくれました。
実戦に配置されるてもきっと活躍してくれることでしょう。
さて今年の卒業生が配属することになるのはゴルタナ軍呪術専門部隊、レオポルト軍魔法剣・・・・・」
全校生徒の前でシルキス校長が話している。マキは校長の話も上の空でただボーッと窓の外を見ていた。
戦火の中とは裏腹に青く広がる空が目に映った。
一時間半程で卒業式は終了した。
- 25 名前:第三章「いつかの時代(とき)の中で」 投稿日:2001年07月17日(火)23時38分27秒
- 学校の外では卒業生達が恐らくもう会えることの無いであろう仲間との別れを惜しんでいた。
卒業生以外の生徒が続々と帰宅していく中マキはただ一人サヤカの姿を探した。
「ゴトー!!」
不意に後ろから呼びかけられ振り返ると4、5人の友達に囲まれたサヤカが居た。
サヤカは友達に何か言った後走ってマキの方へ向かって来た。
「イチイちゃん・・・」
「どうした?そんな顔して。ゴトーらしくないぞー。」
サヤカは微笑みかけるとマキの手を引いて誰も居ない校庭に向かって走った。
「ねえ憶えてる?私がマキに小炎爪を教えてあげた時のこと。」
サヤカは卒業記念に貰った白銀でできた剣を宙に向け振った。
真赤な炎が三本、爪で何かを引掻いた様な跡を残し消えた。
「うん、憶えてる。」
マキが杖を振るとサヤカの時よりはるかに大きな炎が燃え盛る音を立てながら爪の様な跡を残した。
「今じゃゴトーの方が上手なんだよね。昔は火の玉も出せなかったのにさ。」
空を見上げたままそう言いながらサヤカは芝生に腰を下ろした。
「うん・・・。」
しばらくの間沈黙が続いた、草を千切ったり空を見上げながら二人は黙っていた。
- 26 名前:第三章「いつかの時代(とき)の中で」 投稿日:2001年07月17日(火)23時39分00秒
- 「ねえ、イチイちゃんはどこに配属される事になったの?」
学校の周りのざわめきも小さくなった頃マキはそう尋ねて寝そべった。
「私はね・・・・ストース軍の剣士部隊に配属されることになったよ。」
サヤカも頭の後ろで手を組み芝生に寝転んだ。
「この国の軍隊に?すごいね・・・。ゴトーじゃとても入れないよ・・・。」
マキは上半身だけ起こしてそう言った。
国の中の貴族の軍隊ならまだしもストース軍に入るということはある意味死を意味する。
というのもこの益々悪化する戦況の中でこの国の兵力は不足し、
学校を卒業し入ってきたばかりの新米兵士でも実戦に出される可能性が非常に高いからだ。
一部ではベテランの兵士が一戦終えた後生存している確率はせいぜい五割程度、
新米兵士に至っては一戦終えただけで生存している確率は二割にも満たないと言われている。
「こういう言い方は何だけど成績の良い人は国の軍隊に引き抜かれいくからね。
大丈夫、ゴトーもきっと入れるよ。」
マキが知っていると言うことは当然サヤカも国軍に入ることがある意味で死を意味する事を知っているのだろう。
だがサヤカの目からは少なくとも死を恐れているような色は見えなかった。
むしろ少しだけ何か自信に満ちたようなものが見えるような気がした。
全ての生徒が学校から出てしばらくした後二人は立ち上がった。
「・・・もう会えないかもね。」
制服に付いた草を払い、マキが静かに呟いた。
「・・・うん。」
草を掃いながらサヤカも静かに答えた。
嘘でも良いから「大丈夫、また会える。」と慰めて欲しかった。
だがそれ以上何も話すことは無く二人は学校を出た。
マキは少し複雑な気持ちを残しながら家へと向かって行った。
- 27 名前:刹那 投稿日:2001年07月17日(火)23時40分19秒
- あい、短かったかも知れないけど本日分更新完了です。
- 28 名前:刹那 投稿日:2001年07月17日(火)23時43分39秒
- >>20
ディリータ役みたいなのは考えてるけどアルマとティータはかなり微妙なとこです。
多分孤独な主人公的な存在になると思います。
「ラムザ役」と「ディリータ役」の絡みも結構少ないかなと、
- 29 名前:刹那 投稿日:2001年07月17日(火)23時46分56秒
- 腕が痛いです。その上眠いです
- 30 名前:刹那 投稿日:2001年07月17日(火)23時48分23秒
- 何気に今、小説の最後にディリータのあのセリフを入れようかどうか迷ってるとこです。
- 31 名前:刹那 投稿日:2001年07月17日(火)23時49分14秒
- いちごまって書けないんだよな・・・
- 32 名前:刹那 投稿日:2001年07月17日(火)23時50分43秒
- 自分でも設定がよく解んなくなってるんでもう少し設定を整理しておきます。
- 33 名前:刹那 投稿日:2001年07月17日(火)23時51分33秒
- 更新完了>>21-26です。
- 34 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月18日(水)02時49分46秒
- 懐かしいな〜FFT。
正直、すっかり忘れてしまっていて、読んでいてもちっとも思い出せません。(w
ヤグチ=ラムザはわかったのですが、ゴトーとイチイがなんの役なのかさっぱり!!(爆)
でも、面白いことは確実なので、新鮮な気持ちで楽しませていただきます。
- 35 名前:第三章「いつかの時代(とき)の中で」 投稿日:2001年07月22日(日)23時09分28秒
- その二年後マキも卒業を迎えた。
戦況は相変わらずだ、今年の卒業生も卒業早々に各軍に配置されていくだろう。
卒業の二週間程前、卒業生には各自書類のようなものが配布された。
封筒の中にはそれぞれがどの軍に配置されるかが書いてあった。
マキの書類には「ストースランド軍 黒魔術部」と印刷されてあった。
国軍に配置される事になったのだ、イチイと同じく。
校長が例年と全く同じ事を長々と話している間マキは卒業証書を膝に乗せ二年前の今日の事を考えていた。
今年も一時間半程で卒業式は終了した。魔術師のクラスは卒業記念として樫の杖を貰った、剣士のクラスはイチイの時と同じく白銀の剣を貰っていた。
校門の所は別れを惜しむ卒業生で溢れかえっていた。
勿論マキにはイチイ以外の友達も居る。マキは数人の友達と最後になるであろう言葉を交わした。
下手をすれば明日には敵同士かもしれないという残酷な運命に少し寂しげな笑みを浮かべるとそのまま家路に着いた。
明日からはもう自分は国軍の魔術師だ、しばらく家にも帰れないだろう。
この日の夜は夜遅くまで家族で過ごした。
- 36 名前:第三章「いつかの時代(とき)の中で」 投稿日:2001年07月22日(日)23時10分26秒
- その日外は生憎の曇り空だった。
マキはストースランド城の窓越しに今にも泣き出しそうな空を眺めていた。
ここは城の二階にある会議室だ。周りには自分と同じく昨日卒業したばかりであろう人達が居る。
中には見覚えのある人も居た。もうすぐ今回の作戦の打ち合わせが始まる。マキは壁に掛けられた時計を見た。
ガチャリと重たい音がして会議室のドアが開く。そこに居合わせたほぼ全員がドアの方を見た。
二等兵らしき人が4人とマントの装飾からして騎士長らしき人が入ってきた。
「みなさん、初めまして。本来ならしっかりとした挨拶をするべきなのだが作戦の遂行を急がねばなりませんので省かせて戴く。
私はストースランド軍騎士長イチイ=サヤカだ。それでは早速作戦の説明を始める。」
そう言ってサヤカはマキの方を見た。
生きていたのだ。生存確率20%以下と言われる戦いの中で騎士長に昇格までしていたのだ。
「それでは今回の作戦の内容を説明する。
既に知っているとは思うが今この世界で戦っているのは東西南北のそれぞれの国の軍、
大きな権力を持っている教会の騎士団「Zetima」、そしてこの争いに反発する騎士団「UFA」の六つだ。
今回君達にはストースランドの南東のフリブ岬にあると思われるUFAのアジトの一つを叩いてもらう、あそこには恐らくUFA幹部の一人マコトが居るはずだ。
油断はするなよ、死ぬぞ。」
- 37 名前:第三章「いつかの時代(とき)の中で」 投稿日:2001年07月22日(日)23時11分29秒
- 数時間掛けてフリブ岬へ到着した。
見張りが一人居る、此処がUFAのアジトだということは間違えないようだ。
「出撃。」イチイが短くそう言って走りだした。それを追って他の連中も走り出す。マキも慌てて敵のアジトへ向かった。
「!?て、敵襲!!!」
見張りの男が叫んだ。数人のナイトや弓使いが中から出てきた。
多分黒色のマントを着けているのが幹部の一人のマコトだろう。
「チッ、ここがバレていたのか。行くぞ!」
マコトがそう言うと敵が向かって来た、こちらも迎え撃つように走り出した。
建物の上で弓使いの男が弓を引こうとしていた。サヤカが大きく剣を振ると大きな炎が弓使いに襲いかかった。
男を覆う様に炎は大きくなり辺りには人肉の焼け焦げる異臭が漂った。
続いてサヤカは向かって来る騎士を斬った。斜めに剣の痕が走り血飛沫をあげ男は前のめりに倒れた。
舌打ちをしながらもう一人の騎士が進路を変え、マキ達の居る方へ走ってきた。
「ゴトー!」
恐らく早く魔法を唱えろという事だろう。
それは自分でも分かっている。今までその為に魔法を練習していたのだ。
ただ体がいう事を利かなかった、考えてみれば今まで人に魔法をかけた事など一度も無い。ガタガタと杖を持つ手が震えていた。
敵との距離はもうほとんど無かった。1歩2歩と敵が近づき、気付けばもう目前にまで迫っていた。
「燃え滾る赤き血よ、大地を揺るがし天を呑み込む炎となれ。ファイガ!」
目を瞑ったまま反射的にそう唱えていた。大きな炎が男を呑み込み一瞬の内に焦がした。
赤々と燃える炎の中で黒いシルエットが跪き倒れた。
マキは全身の震えが止まらないままサヤカの方を見た。サヤカは静かに肯いている。
マコト以外の敵は全て倒した。足元の草は赤く染まっている。
サヤカはマコトのすぐ近くまで歩み寄った。
- 38 名前:第三章「いつかの時代(とき)の中で」 投稿日:2001年07月22日(日)23時11分59秒
- 「待ってくれ、分かった。大人しく降参しよう。」
マコトは剣を捨て、両手を挙げた。
終わった。マコトは降参し任務は終了する、あとはマコトを城に連れ帰るだけだ。
マキはそう思っていた、だが現実は違っていた。
サヤカは剣を抜き、振った。つまりマコトを殺したのだ。
鮮やかな赤色をした血飛沫がサヤカの着ている金色の鎧にかかった。
マコトは何か言おうと口を開いたまま力無く倒れていった。
「・・・!?」
「どうしたの?ゴトー。」
動揺を隠せていないゴトーに気付きサヤカは剣を鞘に収め尋ねた。
「何も殺す必要は無かったんじゃないの?降伏してきたんだし・・・。」
マキは少し戸惑いながらもそう言った。
「ゴトー、今回の任務はアジトを潰すことだよ?一人でも生かしちゃいけないんだ。」
「それはそうだけど・・・。」
「国の命令は大人しく聞くしかないんだよ。」
マキはサヤカが二年前と変わってしまったことを実感した。
いや、むしろ各地でテロ行為を繰り返している集団に哀れみを抱いている自分の方が場違いなのかも知れない。
マキは戦火の中とはいえ幸せであった今はもう戻れない時を思った。
- 39 名前:第三章「いつかの時代(とき)の中で」 投稿日:2001年07月22日(日)23時12分33秒
- 「ゴトー」
城に帰る途中マキは不意にサヤカに呼び止められた。
「なぁに?イチイちゃん、じゃなかった騎士長殿。」
「ふざけないでよ。」
「ハハ、ごめんごめん・・・。それで何?」
「マキはその・・・英雄になりたいって思う?」
「え、何?急に。」
突然の問い掛けにマキはなんと答えればよいか解らなかった。
「・・・そっか。」
「イチイちゃんはなりたいの?」
「うん、まあ・・・・ね。」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
しばらく沈黙が続き馬の蹄の音だけが耳に響いた。
「ねえゴトー。」
「何?イチイちゃん。」
「私の事好き?」
全く予想していなかった問いかけにマキは躊躇った。
昔自分でもイチイに対する感情について考えた事があった事を思い出した。
その時は全く答えは見つからなかったが。
だが二年振りの再開を果たした時マキはやっと気がついた。
自分はイチイが“好き”なのだ。友達としてというよりは女性が男性に好意を抱くように。
「好きだよ。」
マキはイチイに微笑みかけた。
「そっか。」
イチイは微笑み返し、空を見上げた。今にも雨が降り出しそうな曇り空。
そして空を見上げるイチイの顔はどこか寂しげだった。
まるでこれから起こる事件を暗示するかのように。
その事件が起きるのはこれから一年後の事である。
第三章 「いつかの時代(とき)の中で」終了
- 40 名前:刹那 投稿日:2001年07月22日(日)23時13分10秒
- 更新終了
- 41 名前:刹那 投稿日:2001年07月22日(日)23時14分22秒
- >>34
元ネタFFTとか言っといて結構かけ離れたものになるかもしれません(w
期待せずに待ってて下さい
- 42 名前:刹那 投稿日:2001年07月22日(日)23時15分01秒
- スクロール
- 43 名前:刹那 投稿日:2001年07月22日(日)23時15分32秒
- まだ長い
- 44 名前:刹那 投稿日:2001年07月22日(日)23時16分02秒
- まだまだ長い
- 45 名前:刹那 投稿日:2001年07月22日(日)23時16分40秒
- まだまだまだ長い
- 46 名前:刹那 投稿日:2001年07月22日(日)23時17分39秒
- 短いけど更新完了です。
本日分>>35-39
- 47 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月23日(月)03時15分08秒
- やっと思い出した!!・・・イチイはあの役か〜・・・・・・・。
- 48 名前:第四章 「一つの別れ、一つの出会い」 投稿日:2001年07月24日(火)23時11分28秒
- ゴトーがストースランド軍に配属され一年と少し経った。
その間イチイは王に信頼を置かれ騎士の中で最高の称号「聖騎士」を授けられ、
マキは戦闘での実績を認められ「一級魔術師」の称号を授けられた。
その一年程の間ゴトーはイチイの元で数々の任務を果たした。
イチイと一緒に居ることが出来たのでゴトーとしては特に不服は無かった。
一年前にイチイの言ったあの言葉だけは気になってはいたが。
- 49 名前:刹那 投稿日:2001年07月24日(火)23時12分39秒
- ―1447年6月10日、その事件は起こった。
ストースランド国王ハタケ及び重臣などが城に集結し、今後の打開策を話し合っているところだった。
外には絶え間なく雨が降り注いでいる。
その日ゴトーはイチイからの命令でUFAのアジトの一つを潰しに行っていた所だったがその日は何故かイチイは同行しなかった。
最近ストースランドでは妙なニュースが流れていた。
貴族を相手にした誘拐事件だ、犯人は未だ捕まっていない。
貴族の子を誘拐し、高額の身代金を用意させる。もし従わなければ息絶えた子供が玄関の前に置かれるという残忍な事件だった。
会議の途中バタンと大きな音を立て突然ドアが開いた。
そして急いだ様子で会議室の中に入ってきたのはイチイである。
「何だ。イチイ、会議中だというのに騒々しいぞ。」
イチイにそう注意したのは国王ハタケであった。
「申し訳ありません、閣下。」
「まあよい、それでどうしたのだ?」
「多発していた誘拐事件の犯人が判明しました。」
「ほう、誰だ?」
ハタケは顎の辺りを撫で、興味深そうに聞いた。
イチイは軽く深呼吸をして呼気を落ち着けるとこう言った。
「そこに居る、タイセー氏です。」
「!!??」
その場を引っ繰り返したかのように会議室全体がざわめいた。
- 50 名前:第四章 「一つの別れ、一つの出会い」 投稿日:2001年07月24日(火)23時13分39秒
- タイセーはハタケが最も信頼を置く人物であったからである。
ざわめきを掻き消すかのように机を叩き立ち上がったのはタイセーだった。立った勢いで座っていた椅子も倒れた。
「何訳の分からないことを言っている!そんな事がある訳が・・・・」
「それは誠か?」
タイセーの言葉を遮るようにハタケが割って入った。
「はい、証拠があります。まず誘拐事件があったと思われる時刻にタイセー氏は誰からも目撃されていません。」
「何者かに呼び出されて外に出ただけだ!」
タイセーが話を遮ったのでハタケが睨みつけるとタイセーは転がった椅子を戻し座った。
「そして何よりの証拠はこれです。」
イチイは端の方が少し破れかかっている紙切れを二枚差し出した。
「こちらは犯人が実際に送りつけた脅迫文。こちらはタイセー直筆の手紙です。」
ハタケは目を細めた。そして目を疑った。
二枚の紙に書かれている文字の筆跡が酷似、いやほぼ完全に一致していたからである。
これにはタイセーも目を疑った。
「そうか、犯人はお前であったか、タイセーよ。」
「違います!閣下は長年忠誠を誓っていた私より庶民出の騎士を信じるのですか!?」
「いい加減にしろ!見苦しいぞストースランドの面汚しが!」
「畜生!これは誰かの陰謀・・・」
そう言いかけた所でタイセーは後ろ向きに倒れた。腹部に剣が刺さっている、イチイはゆっくりと剣を抜くと鞘に収めた。
「まさか最も信頼していた者に裏切られるとはな。もういい、私が死んだあとは奴にこの国を任せようと思っていたが
この際だ、次はイチイ、お前にこの国を治めてもらうことにする。」
「光栄です、閣下。しかし私の命が有る限りは閣下をお守りする事を誓います。」
王の言葉に周りに居た重臣達は目を丸くした。
確かにハタケには子供が居ないので誰か周りの人物から次に国を治める人物を選ぶ事になる。
重臣達は元平民の騎士より自分の方が国王として相応しいと言おうとしたが
たった今イチイに殺されたタイセーを目の前にすると言うことは出来なかった。
- 51 名前:第四章 「一つの別れ、一つの出会い」 投稿日:2001年07月24日(火)23時14分21秒
- その数時間後、マキが率いる部隊は任務を果たし帰って来た。
一時間ほど前から降り出した雨は徐々に強くなってきている。
マキの着ている黒魔術師の制服とも呼べる黒のローブが雨に濡れているせいで少し重たく感じた。
足場が悪い中、何時間か歩きやっと城が見えてきたのだがどうも城の様子がおかしかった。
見張りの兵の一人がうつ伏せに倒れ一人は誰かと戦っている、倒れている兵士の周りには血溜まりができている。
遠くから敵を見たが他国の鎧を着ている訳ではないので恐らくUFA辺りだろう、
もう一人の見張りの兵を軽々と切り払うと城内へ入って行った。
「待て!」そう叫んだが敵には届かずマキは急いで城に向かって走って行った。
城中では多くの兵士が敵兵と戦っている、あちこちで剣のぶつかり合う不快な音が響く。
しかしマキは何故かその光景に違和感を憶えた。
敵襲にしてはどう考えても死傷者が少なすぎるのだ。
よく見ると敵兵がこちらの軍の攻撃を全て受け流しているようにも見える。
向かって来る敵を焼き払いながらもマキはしばらく辺りを見回した、敵軍の中に一つだけ周りとは違う剣があった。
マキの体ほどの大きさがあり刃は冷たく冴え渡っている、顔は兜を被っているのでよく解らなかった。
(確かあれは大剣使いの・・・ヘイケ・・・・ヘイケ=ミチヨだ。)
もし彼女が本当に大剣使いのヘイケだとしたら更に疑問は増える事になる。
彼女はUFAに所属していないはずだ、普段は賞金稼ぎの仕事をしながら普通に生活している。
という事は今この城を襲撃しているのはUFAではないのだろうか?
マキは考えてみたが少しすると何かを思い出し、慌てて階段を駆け上がった。
「そうだ、王様・・・・」
階段を上がってもイチイの姿は見えなかったのでハタケと一緒に居るという事だろうか。
二段飛ばしで階段を駆け上がりやっとの思いで会議室の前へ辿り着いた。
緊急事態の時、王はここに避難する事になっているからである。
マキは一年と少し前、初めての作戦の内容を教えてもらった場所もこの会議室だった事を何故か今思い出した。
ここに来るまでで少し疲れたので何度か深呼吸していると、中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
- 52 名前:第四章 「一つの別れ、一つの出会い」 投稿日:2001年07月24日(火)23時15分05秒
- 「閣下、お話が・・・」
「どうした?イチイ、敵の正体が掴めたのか?」
聞き覚えのある声はイチイだった。この事態でも落ち着いた口調である。
階段の方から走ってくる足跡が聞こえる、
振り向くとマキと最近同じ部隊になったがイチイと同じく今日は何故か作戦に同行しなかったリンネが居た。
「いえ、それよりももっと重要な・・・」
イチイが言いかけたところでリンネは勢いよくドアを開け中に入る、そしてドアはまた勢いよく閉まった。
その時まだマキは外に居た、ハタケもイチイも無事である以上特に用事は無かったからだ。
そしてすぐに中からまた声が聞こえてくる。
「どうしたのだ?リンネ。」
「閣下、今すぐお逃げ下さい。今回の一連の騒動を起こしたのは紛れも無い、そこに居るイチイです!」
マキは耳を疑った。この敵襲を企てたのがイチイだというのはどう考えても信じられなかった。
(この敵襲はイチイちゃんが起こした?そんな訳ないじゃん。第一理由が・・・)
マキが混乱している間にも会話は進んでいった。
「まだ捜査はしていませんがここ最近連続で起きていた誘拐事件とも何らかの形で関与していたと思われます。」
「イチイ・・・。」
「閣下は私よりそちらの方を信用なさるというのですか?」
「最近お前の様子がおかしいという奴がおってな、まさかとは思ったが念の為草(情報員)を流した、それがリンネなのだ。
役に立つとは思っていなかったのだがな。誠に残念だ、まさか次に国を託そうと思ったお前までもが裏切っていたとはな。」
「閣下は何か勘違いをなさっているようだ。」
イチイの話し方が急に耽々とした口調になった。
「何だ?リンネが偽りの証言をしたと言うのか?」
「いいえ、違います。」
「では何だ?」
「私は閣下を裏切ってなどいませんよ。元からこうするつもりでしたから。」
イチイは剣を抜き、ハタケに突き刺した。
「グッ、まさか・・・お前・・・が・・・・」
そう言い残し倒れるとハタケは動かなくなった。
絶命したのを確認するとイチイは何か思い出したかのように振り向いた。
リンネが剣を持った状態で震えている。イチイは少しも躊躇うことなく剣を振った。
炎がリンネの体を呑み込んだ、そしてリンネが倒れたのを見計らい消えた。
「ふう。」イチイはハタケの血液を払うため何回か剣を振り、鞘に収めた。
- 53 名前:第四章 「一つの別れ、一つの出会い」 投稿日:2001年07月24日(火)23時16分18秒
- イチイが部屋から出ようとした時、マキが部屋の中に入ってきた。
自分から入ったというよりは無意識のうちに入っていたという方が近かったが。
「イチーちゃん・・・」
「ありゃ、見てた?」
サヤカはいつもと変わらない調子で言った。
マキが静かに首を縦に振ると「そっか」とイチイは苦笑を浮かべた。
「本当にイチイちゃんがやったの?」
俯き加減で静かにマキが聞いた。
「うん・・・。」
イチイも静かにそう言って肯いた。
「何で・・・・・」
「英雄に・・・・なるため・・・かな」
- 54 名前:第四章 「一つの別れ、一つの出会い」 投稿日:2001年07月24日(火)23時17分03秒
- イチイが部屋から出ようとした時、マキが部屋の中に入ってきた。
自分から入ったというよりは無意識のうちに入っていたという方が近かったが。
「イチーちゃん・・・」
「ありゃ、見てた?」
サヤカはいつもと変わらない調子で言った。
マキが静かに首を縦に振ると「そっか」とイチイは苦笑を浮かべた。
「本当にイチイちゃんがやったの?」
俯き加減で静かにマキが聞いた。
「うん・・・。」
イチイも静かにそう言って肯いた。
「何で・・・・・」
「英雄に・・・・なるため・・・かな」
- 55 名前:第四章 「一つの別れ、一つの出会い」 投稿日:2001年07月24日(火)23時18分01秒
- 「何で英雄になんてならなくちゃいけないの?私は普通の人でいる方がいいよ。普通の人のイチイちゃんが好きだよ。」
マキは目に涙を浮かべ、鼻を啜った。
「三年前私がこの軍に入った時に私と同じくらいの娘が一緒に入ってきたんだ。
フクダ=アスカっていう名前の娘。その年に私と同じくらいの歳の娘はアスカ以外いなかったからすごく気があったんだ。
いっつも一緒に居てね、二人とも作戦はしっかりこなしてたんだけどあんまりうるさいもんだからよく指揮官に怒られてた。」
イチイが何の話をしているのかは分からなかったが気になったのでマキは相槌を打った。
「本当にいつも一緒に居たんだけど確か二年前の今日位かな?敵のアジトの本部を叩いてる途中にちょっとした作戦のミスで死んじゃったんだ。」
初めて利いた話だったのでマキは何と返答すればいいのか分からなくてただ俯いていた。
「私はアスカの最期の瞬間まで一緒に居た。そしたらアスカは最後にこう言ったんだ。
『私はここで死んで骨になって家に帰る。私がこうしてここに居てサヤカと一緒に戦った事、話した事、笑った事、泣いた事、そして今こうして死んでいく事を知ってる人なんて本当に少ししか居ないんだよね、すごく哀しいよ。
最後にお願いがあるんだ。サヤカは英雄になって、そして今こうして生きていた事を歴史に刻んで。そしたらみんなサヤカがこうして生きていることを知ってくれる。私、サヤカにだけはこんな哀しい思いさせたくない、ただ流れに従って死んでいくなんて。
ねえ・・・・約束だよ・・・・・・サ・・・ヤ・・・・カ・・・・』
私は『うん、約束したよ。アスカ。』って何度もアスカの手を握ってた。」
イチイの声が震えていることに気付き、俯いたまま話を聞いていたマキが顔を上げた。
イチイは泣いていた。その顔はマキが四年前に一度だけ見たことのあるイチイの泣き顔と全く変わっていなかった。
「だからお願い、止めないで。」
「分かった・・・イチイちゃんにはイチイちゃんの道があるんだもんね。ゴトーは邪魔なんて出来ないよ・・・。」
そう言うとマキは走って部屋の外へ飛び出しそのまま城を出たが、イチイが追ってくる事はなかった。
走っている内に自然と涙が流れたがその涙さえも降り頻る雨に流され水溜りに溶け込む。
15歳の黒魔術師ゴトー=マキは行き先も分からずにぬかるんだ荒野をただ我武者羅に走って行った。
- 56 名前:刹那 投稿日:2001年07月24日(火)23時19分14秒
- 更新完了です
- 57 名前:刹那 投稿日:2001年07月24日(火)23時20分21秒
- >>53-54の二重投稿恥かしいな(w
- 58 名前:刹那 投稿日:2001年07月24日(火)23時21分14秒
- スクロール
- 59 名前:刹那 投稿日:2001年07月24日(火)23時21分44秒
- すくろーる
- 60 名前:刹那 投稿日:2001年07月24日(火)23時22分22秒
- 巣苦炉羽瑠
- 61 名前:刹那 投稿日:2001年07月24日(火)23時22分55秒
- スクラッチ
- 62 名前:刹那 投稿日:2001年07月24日(火)23時24分03秒
- 本日分更新完了>>48-55です。
- 63 名前:刹那 投稿日:2001年08月14日(火)00時32分31秒
- すいません放置ではないんですがネタ切れ&忙しくてしばらく更新は出来ません
- 64 名前:読んでる人 投稿日:2001年08月14日(火)12時13分22秒
- いつまでも待ってます。
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