運命の人
- 1 名前:ぷち 投稿日:2001年07月29日(日)18時06分01秒
- 市井主役でいきます!(ただ、今回の市井は、ちょっと性格悪いかも・・・(w
年齢等、実際と違うところは、多々ありますが、
一生懸命書くので、よろしくお願いします。
更新は、1週間に1度くらいを目標にしていきたいと思います。
- 2 名前:ぷち 投稿日:2001年07月29日(日)18時06分36秒
-
いつからだろう。
本気で人を愛せなくなってしまったのは。
- 3 名前:ぷち 投稿日:2001年07月29日(日)18時07分57秒
- ある夏の土曜日、人通りの多い日中の街中で、
何を探しているのかキョロキョロしている人が1人。
黒いTシャツにジーパン姿のその人。
一見、普通っぽい感じなのだが、他の人とは違うオーラのようなものが出ている感じがする。
その人は、ふと立ち止まり、音量最大にしていたMDを切り、
何かを決心したように小さく1度頷き、
1人で歩いている16歳くらいの、100人に聞いたら90人は「可愛い」と言うような
お嬢サマ系の女の子に近づいていった。
「ねぇねぇ、君、 可愛いね〜。何やってんの?
あぁ・・・君みたいな美しい女性と出会えるなんて、僕は何て幸せなんだろう・・・。
もう、一生分の運を使い果たしてしまったかもしれないな・・・。
でも、いいんだ。君と出逢えたんだから・・・。」
そう言うと スッと、かけていたサングラスを外した。
短めの綺麗な黒髪、キリッとした瞳、スラッと伸びた足。
背はさほど高くは無いが、少し色落ちしたジーパンがとても似合っている。
誰が見ても文句無しの美少年だ。
「どう?これから、遊びに行かない?
この広い地球で僕等が出逢ったという素晴らしい運命を無駄にしないためにもさ。」
キザなセリフを連続であびせられた その女のコは、ウットリ・・・。
もちろん答えは、迷うことなくYESだ。
「ホントに?
良かった〜〜・・・。もしかして僕らは、運命の糸で結ばれているのかもしれないね。」
そう言うと、ニコッと笑った。
その女のコは、それだけで、顔を赤くする。
「あはは♪ホントに可愛いなぁ・・・。
あっ、君、名前は?
僕は、市井紗耶香って言うんだ。”紗耶香”でイイよ♪」
そして、またニコッと笑った。
「あ・・あの、私、石川梨華って言います!」
- 4 名前:ぷち 投稿日:2001年07月29日(日)18時09分36秒
「へ〜、梨華ちゃんって言うんだ〜、可愛い名前だね。
あっ、もちろん梨華ちゃん自身も可愛いけど。」
その言葉に、石川と名乗ったその女のコは、また赤くなる。
(ふふ・・・。よっし!こりゃあ、落ちたな・・・。
昨夜は、ハズレばっかりだったけど、今日は大当たりだな。
しかも、こんなに簡単に落ちるなんて・・・。
まぁ、僕にかかれば、どんな子だって余裕だけどね♪)
この自分のことを”僕”と呼ぶ女、市井紗耶香。
一体どこから、そんな自信がやってくるのか・・・・。
しかし、この市井紗耶香、ナンパ成功率97.3%という
素晴らしい記録の持ち主なのだ。
落とした女は100人以上とまで噂される彼女は、
運動神経バツグン、剣道の全国大会で優勝経験あり。
勉強も、県下一の高校で、常にトップ3に位置しているという・・・。
その上、あの整った顔だ。
完璧という言葉は、彼女の為に存在する、
そう言っても過言では無いほどだ。
- 5 名前:ぷち 投稿日:2001年07月29日(日)21時48分15秒
- =
えっと、最初の更新終了です♪
先に、言っておきますが、
ここまでだと、いちいしっぽいんですが、
実際は、違います。
いちいし推しの方、申し訳ございません(アセ
- 6 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月29日(日)23時30分48秒
- やったぁちゃむ主役だぁ
ガムバッテネ
- 7 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月30日(月)03時11分41秒
- 石川は、プレイガール市井の餌食になってしまうのか!?(w
続きを楽しみにしてますのでもう1つの方ともども頑張って下さい!!
- 8 名前:★ 運命の人 ★ 投稿日:2001年08月02日(木)23時47分41秒
- 2人は、立ち話もなんだから、というコトで、近くの喫茶店に入った。
蒸し暑い外とは違って、店内は寒いくらいに涼しい。
だんだん汗がひいていくのが分かる、この瞬間こそ、まさに天国だ。
「へぇ〜、梨華ちゃんって、中学時代テニス部だったんだ〜。」
「はい!でも、全然ヘタなんですけどね。はは。」
(市井のモテモテ マニュアル
第1条! 『とにかく聞き手にまわるべし!』)
「え〜?でも部長だったんでしょ?」
(市井のモテモテ マニュアル
第2条! 『相手を誉めて誉めて誉めまくるべし!』)
「いや、部長って言っても、ただ部員のみんなに指示出したりとかだけなんで、
上手い下手関係無いんですよ。私、あんまり試合にも出してもらえなかったし・・・。
私、才能ないんです・・・。」
そう言うと、石川はうつむいてしまった。
- 9 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月02日(木)23時48分22秒
- (市井のモテモテ マニュアル
第3条! 『相手がブルーになってしまったときは、相手を元気付けるような
セリフを、多少クサくてもイイから言うべし!』)
市井は、少し考えてから、口を開いた。
「ん〜・・でもさ、部長って誰でもなれるモノじゃないじゃん?
先生にも信頼されて、部員に「この人にならついて行く気になれる!」
って思われてる、そんな人がなるモノでしょ?
それってさ、凄い才能だと思うよ?
そーゆーのをアピールできる試合にあまり出なかったなら、なおさらだよ。
梨華ちゃん、普段の練習で、すごく頑張ってたんだろうね。
僕は、努力無しでも、上手にできちゃう人より、
梨華ちゃんみたいに努力でなんとかしようとする人の方が好きだな。」
「い・・・市井さん・・・」
石川が、潤んだ瞳で市井を見つめる。
「あ・・・ありがとうございます・・・。」
「ん?僕は別にお礼言われるようなコトはしてないよ?
さぁ、そんなコトより どっか行こうよ。
時間が勿体無いって♪」
- 10 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月02日(木)23時48分52秒
その後、2人は、
買い物をしたり、映画を見たり、
カラオケに行ったり(と言っても歌っていたのは市井だけで何故か石川は、
1曲も歌わずに市井が歌い終わった後 拍手するくらいだった)
まるで本当の恋人同士のように過ごした。
しかし、楽しい時間というものは、あっという間に過ぎてしまうもの。
気が付くと、時刻は夜の11時をまわっている。
2人は、色とりどりのネオンが光る街中を歩いていた。
周りが暗いので、信号の緑色でさえ、やけに綺麗に見える。
ナンパで知り合い、遊びまわった二人がこんな時間に行く先と言えば
1つしかないだろう・・・。
- 11 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月02日(木)23時51分39秒
(梨華、市井さんにならどんなコトされてもイイですぅ キャッ )
興味本位で中3のとき、クラスの男と1度だけヤッたことはあったが、
想像していたよりもあっけなく、期待外れだったので、何だか冷めてしまい、
それ以来は1度もない。
自分が愛する人とするのは、初めてである。
人見知りをする石川のために、さっきまであれだけ話をしていた市井が
今は黙ってしまっている。
心なしか、顔が強張っているようにも見える。
- 12 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月02日(木)23時52分28秒
- (市井さんったら、緊張してるのかしら・・・。カワイイ )
石川は組んでいる市井の腕にグッと胸を押し当ててみる。
一瞬、市井の体がピクッと反応して、
チラッと石川の方を見て、目が合うとスッと逸らす。
暗くて顔はよく見えなかったが、市井の耳がほんのり赤くなっているのを
石川は見逃さなかった。
(ウフフ 市井さん、梨華のカラダを意識してるんですね?
そんなに焦らなくても、後で市井さんの好きにさせてあげますから )
- 13 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月02日(木)23時54分18秒
- 「ホラ、梨華ちゃんついたよ?」
暴走していた石川を現実に引き戻したのは、市井の声。
石川は、その声を聞くと パッと顔をあげた。
(さぁ、ここが市井さんと梨華が初めて愛し合うお城なんですね? )
しかし、期待いっぱいで顔を上げた石川の目の前に飛び込んできたのは、
お城のようなホテルでも、これでもかと言うほど緑色やらピンク色やらが
光っているホテルでもない。
石川が今朝、電車を2本乗り継いでやって来た駅。
土曜の夜ということで、普段よりも大分混んでいる。
一瞬石川の頭が真っ白になる。
(い・・市井さん、こんなに人が たくさん通るところで する気なのかしら・・・。
市井さんって、な・・・なんて大胆なの!?
いくら市井さんの為でも、それは さすがに恥ずかしいわ・・・・。)
しかし、石川の心配は 次の市井の言葉で 綺麗に崩れさった。
- 14 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月02日(木)23時55分01秒
- 「ごめんね、こんな時間まで連れまわしちゃって・・・。
お家の人 心配してるんじゃない?
・・まぁ、でも今日は楽しかったよ。ありがとう。」
(え・・・?今のって・・・どういう・・・?)
いきなりの市井の思いもよらなかった言葉に
石川は、一時 放心状態になる。
そんな石川の様子に市井は、あわてる。
「え・・・梨華ちゃん、もしかして 僕、駅 間違えてる?
梨華ちゃん、ずっと黙ってたから てっきり 道、あってるのかと・・・」
- 15 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月02日(木)23時55分41秒
- 石川は、やる気になっていたのは自分だけだったという事に、
やっと気付き、赤面した。
(そうだ、市井さんは別に、私となんかヤル気はなかったんだ・・。
私 1人で舞い上がって、バカみたい・・・。)
そう思った途端、涙がこぼれそうになった。
しかし、その涙を大好きな市井に見せないように、石川は俯いて言う。
「いえ、わざわざ送っていただいて、ありがとうございました。
あ・・・あの コレ・・・。」
そう言って、石川は小さな紙を差し出した。
その紙には、女の子らしい小さくて可愛い字で、
携帯の番号と、メールアドレスが書いてあった。
市井は笑顔でそれを受けとり、
「ありがとっ 連絡するよ♪ じゃ、気をつけてね♪」
そう言うと、石川に くるっと背を向けて、また夜の街へと消えて行った。
もちろん市井は、石川の気持ちには気付いていた。
それでも、気付かないフリをしていた。
もし、今夜 石川を抱いてしまえば、きっと
石川は本気になってしまうから。
自分も本気になれるなんて保証は、どこにも無いのに。
- 16 名前:ぷち 投稿日:2001年08月02日(木)23時57分25秒
- =
2度目の更新、終了です♪
何か、焦って、更新しすぎたような気が・・・(反省)
次回からは、もう少し、考えて更新していかないと・・・。
- 17 名前:☆運命の人 ☆ 投稿日:2001年08月03日(金)00時07分22秒
- 从 ~∀~ 从 「なんやなんや 紗耶香、カッコエエこと言ってるやん。
アンタ、今回、エエ役やなぁ〜」
ヽ^∀^ノ 「むっ・・・てか、何で裕ちゃんがここに!?」
从 ~∀~ 从 「今回、ウチ、1個も出番ないらしいんや・・・。
だから、ここでアピールしとこうかと・・・」
ヽ^∀^ノ 「・・・。」
>>6さん
ありがとうございます!脱線せずに ちゃむ主役でいく予定ですので、
よろしくおねがいします!
応援してもらえると凄く励みになります!!
>>7さん
石川、何か、無事帰還しちゃいました・・(w
むしろ危なかったのは市井か!?(w
もう1個の方も読んでくださってるなんて・・・(感涙)
本当に、ありがとうございます!!
- 18 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月03日(金)03時51分09秒
- 石川にたべられる市井ちゃんが見たかった気が・・・(w
そんなに市井ちゃんの性格は悪くないようですね。
それともこの先で黒ちゃむが出てくるのかな・・・?
どうなっていくのか楽しみです。
- 19 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月06日(月)00時54分49秒
- 運命の相手の人が、気になります。
後々わかるんだろうけど、やっぱ気になる〜!
- 20 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月07日(火)15時41分49秒
翌日、昨日と同じ場所でキョロキョロしている人が・・・。
もちろん その人物とは、前日 石川のような美少女を見事に
落とした挙句、結局 何もせずに帰してしまった市井紗耶香だ。
市井は、休みの日になると ナンパのために必ずと言っていい程、
ここに出現する。
それを知って、わざわざ市井に会う為に、あらかじめ市井の休みの日を調べて
朝早くから市井を待ち伏せする人間も少なくはない。
今日も、いつもと変わらず、午前の11時ごろから、この辺りをウロウロしている。
いつもと違うところと言えば、妙にイライラしている事くらいだ。
(くっそ〜・・・もう4時間もここにいるのに、なかなか好みの子がいない・・・・。
1人も見つからないなんて事、滅多にないのに・・・。)
そう言って、チラッと時計を見て、舌打ちをする。
- 21 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月07日(火)15時42分32秒
- ちなみに、市井の好みのタイプというのは、
素朴で、か弱い感じの、守ってあげたいタイプ。
なかなか、いそうで いないものだ・・・。
(はぁ・・・今日はもう、諦めようかな・・・。)
市井は、そう思い、駅まで足を進める。
(やっぱ、2日連続ヒット!って事はないか・・・・。
しゃーない、昨日の梨華ちゃんにでも、電話してみるかな・・・。)
そんな事を思い、涼しげな水色のシャツの胸ポケットから
ちょうど携帯を取り出そうとした瞬間、
市井は思わず足を止め、一点を見つめて固まってしまった。
市井の視線の先にいたのは、駅の前で大きな荷物を
抱えて立っている、150cmあるかないかくらいの背の低めな女のコ。
市井の場所からは顔は見えない位置に立っているのだが、
市井は、今までのナンパ生活のおかげで、自分の好きなタイプかどうかは、
一目見ただけで、見極められるようになっていた。
それが、たとえ後ろ姿であっても。
- 22 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月07日(火)15時43分06秒
- 市井は、その子にそっと近づき いつものキザなセリフを言う。
「ねぇねぇ、君、 可愛いね〜。何やってんの?
あぁ・・・君みたいな美しい女性と出会えるなんて、僕は何て幸せなんだろう・・・。
もう、一生分の運を使い果たしてしまったかもしれないな・・・。
でも、いいんだ。君と出逢えたんだから・・・
この広い地球で出会えたなんて、
・・・これが、運命ってヤツなのかな?
どう?これから一緒に遊びに行かない?
この広い地球で僕等が出逢ったという素晴らしい運命を無駄にしないためにもさ。」
市井のナンパはいつもこのセリフから始まる。
こんなクサイセリフを使って、何故ナンパ成功率97,3%なんて数が
でてくるのか理解に苦しむところである。
世の中、本当に分からないものだ。
この女の子も市井の連続成功記録に名を刻むことになるんだろうか・・・・。
- 23 名前:ぷち 投稿日:2001年08月07日(火)15時45分03秒
- =
3回目の更新終了♪
今回は少し、少なめです。
その分、明日か明後日 また更新するつもりなんで・・・(アセ
てゆーか、相手の名前 伏せてるの意味あるのかな・・・(w
- 24 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月07日(火)15時51分00秒
- ヽ^∀^ノ 「さぁ、市井の運命の相手は誰なんでしょう♪」
从 ~∀~ 从 「・・・裕ちゃんやったりして・・・(ボソッ」
ヽ^∀^ノ 「もし、裕ちゃんだったら、市井、この役降ります!(キッパリ
从 ~∀~ 从 「さ・・紗耶香!そんな悲しいコト言うなや!!」
ヽ^∀^ノ 「うっさい!だいたい、裕ちゃん150cm余裕で
越えてるじゃんか!」
从 ~∀~ 从 「裕ちゃんやって、夢みたいやんか!!(泣)」
>>18 さん
市井・・食べられちゃってもよかったんですけど、
何かそうすると、情が移っちゃってそのまま、
いちいしになっちゃいそうだったんで・・(私の性格からすると)
>そんなに市井ちゃんの性格は悪くないようですね。
ちゃむを悪くしきれない、自分が悲しい・・・(w
- 25 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月07日(火)15時52分38秒
- >>19 さん
運命の相手、一応、登場しましたけど、名前が・・・・。
まぁ、身長150cmくらいで、素朴で守ってあげたいタイプって言えば、
大分、絞られてくると思うんですケド・・・。
すみません、伏せたままで・・・(アセ
- 26 名前:ぷち 投稿日:2001年08月07日(火)15時54分18秒
#すみませんHNミスしました(アセ
一応、上2つのレスは本編では無いので・・(当たり前だけど)
- 27 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月07日(火)17時15分59秒
- (●´ー`●)<私を期待していいべ?
たらしのいちーちゃんサイコ−!(w
次回更新期待♪
- 28 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月08日(水)03時51分32秒
- 誰だろうな〜?
この小説の作者さんが、よく某スレでお見かけしたぷちさんだとすると……
- 29 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月08日(水)15時38分26秒
その女の子は くるっと市井の方を ふりかえり
「は・・はい?」
と聞き返してきた。
ズドンッッッッッ!!!
彼女が振りかえった瞬間、市井は、頭に雷が落ちたような衝撃を受けた。
(か・・かわいい・・・・。)
市井がぼーっと その子の方を見つめて固まっていると、
その子が、市井の顔のすぐ前で手を上下に振り市井に声をかけた。
「どうかしたんですか?」
その言葉で我に返った市井は、すぐ目の前に
その子の顔があったので、思わず
10mほど後ろに飛び退いてしまった。
「あ・・・あ・・・あの・・いや・・その・・・え・・・えーっと・・・」
動揺しまくっている市井を不思議そうに見つめ、
その子は、誰が見ても分かるような作り笑顔で言った。
「あの、私 急いでるんで・・・。」
「え?・・あ・・あ・・あぁ、・・は・・はい・・・。」
どこか迷惑そうにしている彼女の様子を見て、
市井は少し傷つきながらも返事をしてしまう。
- 30 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月08日(水)15時39分11秒
(僕は、一体 何を焦っているんだろう・・。
こんな可愛い子には、もう二度と会えないかもしてないのに・・・。
・・・あれ?でも、こーゆー時って何て言って呼び止めたら
イイんだっけ・・・・)
普段なら、<市井モテモテ マニュアル(略して市マニュ)>に沿って、
いとも簡単に相手を 落としてしまう市井だが、
何故か今は、何をすればイイのかが全く分からないのだ。
「それじゃあ、失礼します。」
そう言ってペコリと頭を下げると、その子は、市井に くるっと背中を向けてしまった。
そして、彼女は4つ折りにして手に持っていた一枚の小さな紙を広げ、
その紙を反対向きにして見たり、キョロキョロとまわりを見まわしたり・・・。
そして、またその紙を見たり・・。
市井には、彼女が何をしているか全く理解できなかったが、
困っているようにしか見えなかった。
- 31 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月08日(水)15時40分06秒
- 気付くと市井は、その子に声をかけていた。
「あ・・・あの どうかしました?」
先ほどから、自分の顔をじーっと見られたり、急に飛び退かれたりと、
かなり怪しい市井に対し、少しとまどいの表情をしながら、その子は答えた。
「あの、私 ここに行きたいんですケド、イマイチ、場所が分からないんです。」
そう言って、その子は、手に持っていた紙を市井に差し出した。
その紙には、さまざまな目印が細かく記されている
とても親切な地図が書いてあった。
しかし、困ったことに目的地が書かれていない。
(何で、こんなに丁寧に書いてあるのに、肝心な目的地を書き忘れるんだよ・・・
コレ書いた人、よっぽどのドジなんだろうなぁ・・・。
何か、僕のよく知る”アイツ”に似ている・・・。)
- 32 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月08日(水)15時41分25秒
「ん〜・・・あっ、あのさ、その場所の住所とか知らない?」
住所を聞いたところで場所が分かるとは思えなかったが、
何もしないよりはいいだろう と市井は考えた。
何より、もう少し彼女と話をしていたかったから。
「あっ!ありますよ。えーっと たしか ここに・・・」
そう言いながら、持っていた大きなカバンのポケットから、
さっきの紙と同じくらいの大きさの
ピンク色の紙を取り出し、手渡した。
市井は、その紙を受け取り、広げて見た。
(・・どれどれ・・・ん〜っと、
・・・ん!?この住所ってもしかして・・・)
市井は慌ててバッグから、水色の手帳を取り出し、
アドレス欄をチェックし始めた。
そんな市井の様子を、不思議そうに その女の子は見ている。
(あっ!やっぱりアイツの家か・・・。だよな〜・・・目的地を書き忘れるバカなんて、
アイツくらいなもんだろ・・・。
ってコトは、あの子と知り合いなのかな・・・・。)
- 33 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月08日(水)15時42分09秒
- 「あのさ、もしかしてキミ、矢口・・・矢口真里の家に行こうとしてる?」
その言葉に彼女は驚いたように突然 大声で言った。
「えっ!?矢口を知ってるんですか!?」
その後すぐに、自分が大声を出した事に気付き、
まわりの人に慌てて頭を下げている。
そんな様子を笑顔で見ながら市井は答える。
「うん。矢口とは、高校でクラスが一緒なんだ。ときどき
遊びに行ってるから、場所分かるけど・・・。
なんなら、案内しようか?」
そう言う市井に、その子は少しとまどう。
「あっ、でも、あの、そこまでしていただくわけには・・・。」
遠慮している彼女に市井は言う。
「いいって、遠慮しなくても♪」
「で・・でも・・・」
それでも、なお 彼女は遠慮する。
「あっ、でもさ、僕も矢口のトコ行くつもりだったから♪」
もちろん、矢口の家に行く予定なんてなかった。
だが、このままでは、ラチがあかないと思ったのだ。
そんな適当に作った理由をその子は、あっさり信じる。
- 34 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月08日(水)15時42分53秒
- 「そ・・そうなんですか?
「だからさ、一緒に行こうよ♪」
「は・・・はい!!」
その子は、少し考えてから、とびきりの笑顔で言った。
(う・・・かわいすぎる・・)
市井は、その笑顔に昇天しそうになりながらも、
おそらくニヤけているであろう顔を必死に笑顔に変え、
「じゃ、行こっか。こっから すぐだから。」
と言い、その子が持っていた重そうなカバンをスッと持ち上げて、歩き始めた。
いつもなら、ここでさりげなく手を握るのだが、
今日は何故かそれが、できない。
(はぁ・・・僕、どうしちゃったんだろ・・・。
何か、さっきから おかしいや・・・。
妙に心臓の音が早い気がするし・・・。)
- 35 名前:ぷち 投稿日:2001年08月08日(水)15時44分57秒
- =
更新終了です♪
次の更新は、多分 来週くらいになると思います。
てゆーか、今だに、ヒロインの名前が出てこない・・・(アセ
多分、次は出てくると思うんで・・・。
- 36 名前:ぷち 投稿日:2001年08月08日(水)15時49分18秒
- >>27 さん
从 ~∀~ 从 「だから、裕ちゃんやって言うてるやろ!?」
ヽ^∀^ノ 「だから、それは、絶対 無いって・・・」
次回、明らかになりますんで・・・(アセ
でも、矢口も石川も違うとなると、もう 安●さんしかいない気が・・・(爆)
>たらしのいちーちゃんサイコ−!(w
やっぱ、いちーちゃんは、タラシじゃないと・・・(w
>> 28 さん
さやまり、好きなんですケドね〜・・・。
今回は、別のにしてみました。
・・でも、多分 後でちょこっと さやまりが
出てくると思いますケド・・・。
- 37 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月17日(金)22時46分57秒
- 2人が並んで しばらく歩いていると、矢口の家が見えてきた。
「ホラ、あれが矢口の家だよ?」
市井は、そう言うと矢口の家を指差した。
「えぇ!?あ・・・あれがぁっ!?」
市井の指差す先を見て、さっきから市井の心臓に悪影響を及ぼしている
少女が、突然 驚いたような声を出した。
まぁ、彼女が驚くのも無理は無い。
市井の親友、矢口真里は大会社の社長の娘で、
家は 洋風のかなり大きなものだ。
矢口の母の趣味で、家の周りには、白い薔薇が咲き乱れている。
普通、社長の娘というのは、甘やかされ、贅沢な暮らしの
せいで、性格は悪いものだと相場は決まっている。(これは作者の偏見かもしれないが・・)
だが、矢口は、そんなところは全然無く、
誰にでも優しく明るい、暮らすの人気者だ。
長い坂を上り、そんな矢口の家の前に、2人はやっとの思いでたどり着いた。
- 38 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月17日(金)22時48分24秒
- ━━━ピンポーン
市井は、矢口家のインターホンを押した。
「はい?どちら様ですか?」
出たのは矢口の母だ。
市井は、慣れたように返事をする。
「あの、市井っすケド・・・」
矢口の母は、嬉しそうに声を弾ませ
「まぁ、さやちゃんね♪いらっしゃい♪」
「ど・・どーも」
━━━ガチャッ
市井がインターホンを押して、そんなに時間が経たないうちに
身長145cmの小さな女の子が出てきた。
その子は、市井を見て、嬉しそうに
「あっ、紗耶香〜〜♪」
「おぉ矢口♪相変わらず ちっちゃいな〜・・・」
そう言って、市井は矢口の頭をポンポンと軽く叩く。
矢口は、そんな市井の行動が気に入らなかったのか
「う・・・うるさい!!来ていきなりソレかよっ!!」
そう言って、市井の足を蹴った。
市井は、スッと矢口の蹴りをかわし、ニヤニヤと笑う。
矢口は、悔しそうな声で、自分より背の高い市井を見上げながら、
「ムッかつくな〜・・・・てゆーか、だいたい何しに来たの?
宿題なら写させないよ!」
「ちげーよ!矢口の宿題なんて、ほとんど間違ってるから、写す意味なもん!
市井は、この子を案内してきたの!」
- 39 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月17日(金)22時48分55秒
- 矢口は、市井の言葉で、市井の隣で2人の会話を楽しそうに聞いている
女の子に、やっと気付いた。
その子を発見した途端、矢口は、子供のように嬉しそうな声で言った。
「な・・なっち〜〜!!」
そんな矢口に、なっちと呼ばれた女の子は、笑顔で答える。
「久しぶりだね、矢口♪」
矢口は、その子と会えた喜びが隠せないという感じで、
少し、興奮気味になっちに話しかける。
「もぉ、なっち、遅いよ〜!
・・・さては、道に迷ったな〜・・・」
ニヤニヤしながら言う矢口に、なっちは、あきれたような顔で言う。
「いや、それは、矢口が目的地を書き忘れるからっしょ^?」
その言葉を聞いて、矢口は一瞬固まる。
そして、恐る恐るなっちに聞く。
「・・・え?か・・・書いてなかったの・・?」
なっちと呼ばれた子は、こくんと頷き、矢口に
地図を見せた。
- 40 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月17日(金)22時49分50秒
- それを見た矢口の顔がどんどん赤くなっていく。
矢口は、真っ赤な顔で必死に、なっちに謝る。
「ご・・・ごめん、なっち!マジでごめん!」
そんな矢口に、安倍は笑顔で
「いいよぉ、そんなに謝らなくても。
この人に案内してもらったから、こうやってちゃんと来れたんだしさ♪」
そう言って、市井に今までで最高の笑顔で
「本当に、ありがとうございました♪」
そう言って、ペコリと頭を下げた。
「え・・いや・・・別に、たいした事してないし・・・」
あまりに純粋な笑顔でお礼を言われたのでテレてしまい、
言葉に詰まってしまう。
「ん?紗耶香ぁ、何赤くなってんだよ?〜?」
そう言って、矢口がニヤニヤしながら、からかう。
「う・・うるさいぞ 矢口!」
微妙に視線をずらして そう言う、市井を見て、
矢口はついつい笑顔になってしまう。
あんな顔をした市井を見たのは、あの時以来・・・
いや、もしかしたら、初めてかもしれない・・・・
そう思ったから。
- 41 名前:ぷち 投稿日:2001年08月17日(金)22時54分07秒
- =
更新終了です♪
なんか、結構 間あけちゃいましたね。
すみません(アセ
とりあえず、やっと市井の運命の人(?)の名前が出てきました(w
何で、ここまで伏せてたんだろ・・(w
从 ~∀~ 从 「おっ!遂に、矢口の登場やな♪」
ヽ^∀^ノ 「裕ちゃん、何でそんなに嬉しそうなのさ?」
从 ~∀~ 从 「な・・何を言ってるんや紗耶香・・・」
ヽ^∀^ノ 「言っとくけど、矢口には、ちゃんと相手いるから・・・
裕ちゃんじゃない事だけはたしかだよ?」
从 ~∀~ 从 「紗耶香、いつからそんな冷たい言い方するようになったんや!?」
- 42 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月18日(土)03時38分58秒
- 矢口にもちゃんと相手がいるんですか〜……誰なんだろ〜?
哀れ裕ちゃん(w
- 43 名前:読んでる人 投稿日:2001年08月20日(月)11時36分26秒
- 矢口の相手・・・気になるなぁ〜・・・
裕ちゃんでも、なっちでもないとなると・・・もしかして、よ(以下自主規制)?
- 44 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月22日(水)22時30分56秒
- ここは、矢口の部屋。
なっちと矢口、そして何故か市井も成り行きで
お邪魔している。
2階にある矢口の部屋は、真っ白な壁以外は、
カーテンからカーペット、クローゼットなど、
全体的に薄いピンクで統一されている。
窓際には、チューリップの鉢があり、その横には、写真立てが。
矢口と髪の長い綺麗な美少女が仲良さそうに寄り添っている写真が飾ってある。
その写真には白いペンで『遊園地にて・・・圭織と矢口は超ラブラブ』
と書いてある。
写真の中の二人は、とても幸せそうだ。
そんな部屋の真ん中に置いてある机に
3人は、矢口の母が先程持ってきたジュースとお菓子を置いて座っている。
「じゃあ、あらためて自己紹介を・・・
えーっと、この性格悪そうなのが、矢口と同じクラスの
市井紗耶香。”紗耶香”でイイよ♪」
そう言って、自分を指差す矢口に、
「いや、お前が許可すんなよ!」
すかさず市井がつっこみを入れる。
矢口は、それを軽くかわしながら、
なっちと呼ばれている少女に近づき、
その子の肩に手を置いて、笑顔で言った。
「んで、この子が安倍なつみ。」
「よろしくね♪」
安倍が市井に笑顔であいさつ。
「あ・・・あぁ。よ・・よろしく・・・」
市井も慌ててあいさつをする。
(安倍なつみかぁ・・・可愛い名前だな・・・・。)
- 45 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月22日(水)22時31分47秒
- 「前、矢口が小学校の頃 北海道に住んでたって言ったじゃん?
なっちは、その時の友達でさ、
矢口がこっちに来てからも、毎週電話とかしてて、
いまでも、仲良しなの 」
そう言うと、矢口は安倍にギュッと抱きつく。
「それでね、偶然にも、先月 なっちがお父さんの都合で、こっちに
引っ越してきたんだ♪
・・で、今日はお互いの予定が一致したから、
矢口の家に泊まりに来たってワケ♪
な、なっち?」
子供みたいに、無邪気な表情で聞いてくる矢口に、安倍は笑顔で頷く。
(なるほど、何か微妙にイントネーションが違うと思ったら、
あの子、北海道の人だったんだ・・・・)
「ちょっと 紗耶香〜!何黙ってんのよ。ちゃんと矢口の説明聞いてた〜?」
そう言って矢口が、ぼーっとしていた市井をハリセンで叩く。
「痛っ!!き・・・聞いてたってば!てか、お前 ハリセンなんて、
どっから出したんだよ!?」
市井は頭を押さえて必死に抗議。
そんな様子を安倍は笑顔で見ている。
- 46 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月22日(水)22時32分36秒
- 市井は、さっき矢口が「小学校以来ずっと会ってなくて、今日 久々に会えた」
と言っていた事を思いだし、あわてて安倍の方を見て妙にあらたまった感じで
「あ・・えーっと、安倍さん、あのさ・・・」
「なっちでいいよ♪」
安倍が市井の言葉をさえぎって、笑顔で言う。
その笑顔を見て、ニヤけそうになる顔を
必死で押さえながら
「あっ、じゃあ、な・・・なっち、ごめんね久々に矢口と会ったってのに、
ジャマしちゃって・・・もう、帰るわ・・・・。」
そう言って市井は、ペコリと安倍に頭を下げた。
しかし、安倍は、立ち上がろうとする市井の手をパッとつかんで
笑顔で、
「いや、ジャマなんかじゃないよ?私。にぎやかな方がイイし・・・・。
ホラ、私と矢口、久々に会ったばっかだから、会話とか、
とぎれて、気まずくなっちゃうかもしれないし・・・・。」
そう言って、チラっと時計を見て、もう一度ニコッと笑って
「まだ、帰らなくてイイっしょ?ねぇ、矢口、イイよね?」
矢口は、笑顔で頷き、市井に言う。
「仕方ないな〜・・・紗耶香、1人暮しだから、そんなに早く帰っても寂しいだけでしょ?
特別に優しい優しい矢口様の部屋にいさせてあげよう。」
市井は、そんな二人の言葉が嬉しくて、少し顔を赤らめながら
笑顔で言った。
「ありがと。なっち♪」
安倍も、その笑顔を受けて、満足気に頷き、笑顔で返した。
- 47 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月22日(水)22時33分08秒
- そんな2人の様子を見て、矢口は頬をプクーっとふくらませ、不満気に
「ちょっとぉ、矢口にも お礼言えよ、紗耶香〜!」
そう言ってポカッと市井の頭を叩いた。
「あっ、ごめん小さすぎて見えなかった。」
そんな矢口の頭をポンポン叩きながら市井は悪戯っぽく言った。
矢口は、そんな市井の様子が気に入らなかったのか、
安倍の後ろに隠れて、市井を指差しながら、
「紗耶香、こうやって、いっつも矢口の事いじめるんだよ?
マジ、ひどくない?」
「コラァ 矢口!そんな事言ったら市井がホントに嫌なヤツみたいに
聞こえるだろぉ!?」
激しく抗議する市井に、矢口は、さも当たり前の事のように
「はぁ?だってホントの事じゃん?」
市井は、矢口の前でだけは、自分のことを”市井”と言う。
きっと、矢口の事を本気で信頼しているから。
一生のうちに必ず1人は親友と呼べる人間に出会えるという。
市井にとっては、矢口がそれなんだろう。
だから、普段 誰の前でも優しくて格好イイ自分を演じている市井が
こんなにも砕けることができるんだろう。
まぁ、他にも理由はあるのだけれど・・・・。
- 48 名前:ぷち 投稿日:2001年08月22日(水)22時35分50秒
- =
更新終了です♪
ん〜〜・・・やっと、圭織登場♪
そして、やっと市井の運命の相手の本名が登場・・・。
何で、今まで出てこなかったんだろ・・・(w
しかし、今だ話が動き出す気配なし・・(w
- 49 名前:ぷち 投稿日:2001年08月22日(水)22時40分58秒
- 从 ~∀~ 从 「そうか・・・圭織が矢口の相手か・・・」
ヽ;^∀^ノ 「あの、裕ちゃん・・・その右手に持ってる尖ってて
ギラギラしてるモノ、何?
よく、台所とかで見かけるような気が・・・・」
从 ~∀~ 从 「何でもあらへんでぇ〜・・・(ニヤリ)」
>>42 さん
ってことで、飯田さんでした・・・。
予想、当たりましたか?
裕ちゃん・・・ファイト!(w
>>43 さん
すみません。
ホントは、吉澤にするつもりだったんですけど、
ちょっと、不都合が出てきちゃいまして・・・・(汗
- 50 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月23日(木)03時27分29秒
- いいじゃないですか!!話が動かなくったって(w
マターリいきましょうよ!!
- 51 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月26日(日)17時14分26秒
さっきから、30分くらいたっただろうか・・・。
今だに、市井と矢口は口喧嘩を続けていた。
「ちょっと、なっち この変態に何か変なことされなかった?」
矢口が市井を横目で見ながら言うと
「ん〜〜・・・どうだったかな〜・・・」
笑いながら安倍が言う。
「ちょ・・ちょっと、なっちまでヒドイよ〜
シャレになんないじゃん!」
市井が泣きまねをしていると
「あはは〜、一生泣いてろ!」
「酷っ!!」
冷たくそう言う矢口に市井はすかさず、つっこむ。
さっきから、笑いが耐えることが無い。
━━━ピンポーン
そんな風にギャ−ギャ−騒いでいると突然インターホンが
なった。
「ん?誰か来たみたい。ちょっと、下行って来るね♪」
そう言って矢口は、心なしか嬉しそうに
部屋を出ていってしまった。
- 52 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月26日(日)17時14分56秒
- 部屋にいるのは、市井と安倍の2人だけ・・・。
市井は余計な考えを振り払うように、
両手で自分の顔をパチンと叩いて
「飯田先輩だったりして・・・・」
市井は、ニヤニヤしながら言った。
「飯田先輩って?」
安倍が不思議そうに聞いてきた。
そんな安倍を見ていると何故か鼓動が早くなり、
つられて、口調も早くなってしまう。
「い・・・飯田先輩ってのは、あの矢口と一緒に写ってる
髪の長い人だよ。」
市井は、慌てながらも そう言ってすぐ側のコルクボードを指差した。
そこには、幸せそうな笑顔の二人の写真が
ところ狭しと飾られていた。
「へ〜・・・綺麗な人だね・・・」
安倍は、そう言って2人の写真をじっと見つめた。
そんな安倍に横顔にドキドキしながらも、
それが、気付かれないよう、平静を装って
「ウチの高校のバスケ部メチャメチャ強いんだけど、
飯田先輩は、そこのキャプテンなんだ。
バスケ部だから 背ぇ高いし、運動神経もすごくイイんだ。
まさに、全校生徒の憧れの的!」
「へ〜・・・矢口ってそんな凄い人と付き合ってんだ・・・。」
安倍は関心したように言う。
- 53 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月26日(日)17時15分29秒
- 「あ〜・・・でも 結構大変らしいけどね・・・。
飯田先輩FCの人から目ぇつけられてるみたいだし・・・。」
そう言って市井も、コルクボードに目をやった。
「そっか・・・・」
心配そうにそう言う安倍の優しさにドキッとしながらも
市井は、写真から目を離さずに言う。
「昔さ、矢口と中学の頃から、高一まで3年間付き合ってたヤツがいたんだ。
そいつも結構モテてさ、まわりの子からメチャメチャ騒がれてた。
だから ちょっと調子に乗ってたのかな・・・。
そいつ、気付かないうちに矢口の事傷つけてて、
自分のせいで矢口が傷ついてるのに、全然 気付かなくって、
そのクセ、自分は矢口のこと一番よく分かってる
なんて勘違いしてて・・・。ホント、最低だよ・・・。
・・・でも、飯田先輩は、そいつと違ってしっかりしてるから、大丈夫だよ♪」
安倍は、そう言った市井が一瞬、ほんの一瞬
とても悲しそうな表情をしていたような気がした。
- 54 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月26日(日)17時16分04秒
- 「それにホラ、矢口 ああ見えて結構強いところあるしさ♪」
写真から安倍に目線を移し、市井は笑いながら言った。
そう言う市井の笑顔が、あまりに無邪気で子供のようだったので
安倍は、つられて笑って言った。
「それもそうだね♪」
それから、安倍は少し考えるように
腕を組んで言った。
「飯田先輩って事は、年上か・・・。
何か凄いねぇ・・・私、年上の人と付き合ったことなんて無いや・・」
「まぁ、年上って言っても、1歳しか変わらないけどねぇ・・・。
そーいや、僕もちゃんと年上の人と付き合ったこと無いや・・・。」
「ん!?1個上!?
じゃあ、私と一緒かぁ・・・・。」
「えっ!?なっち17!?」
安倍の言葉を聞き、市井は思わず驚いたように大声を出す。
「うん、そうだけど・・・。
あ〜!やっぱ、年下だと思ってたんだぁ!
何か、態度が年下に接するような感じだと
思ったんだよねぇ〜・・・。」
そう言って、安倍は泣き真似をする。
「あ・・いや・・・その・・
な・・なっち〜〜・・・
ご・・ごめんって〜・・・」
誰がどう見ても泣き真似なのに、市井は見抜けず
オロオロしている。
- 55 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年08月26日(日)17時16分40秒
- 安倍は、そんな市井がおかしくて、
笑いながら顔を上げる。
「あはは〜、嘘泣きだってば〜!
もぉ・・・そんな事で泣きわけないっしょ〜?」
市井は、その言葉を聞くと、
ほっとため息をつく。
「もぉ〜、本気で焦ったじゃんかよぉ・・・」
そう言いながらも顔は笑顔だ。
「あは♪ホント、紗耶香は騙し甲斐があるな〜
私が今まで出会った中で一番かもよ?」
市井は、安倍に「紗耶香」と呼ばれただけで
ドキッとしてしまう。
「い・・いや、そんな事で一番でも嬉しくないって!」
(ホントは、なっちの中の全てにおいての一番になりたいんだけどな・・・。)
市井は、この湧き上がる感情をイマイチ理解できずにいた。
いや、本当は、分かっていたのかも知れない。
でも、気付かないフリをしていた。
その感情を受け入れてしまえば、
きっと、誰かを傷つけることになるから・・・。
- 56 名前:ぷち 投稿日:2001年08月26日(日)17時19分03秒
- =
更新終了です♪
何か、飯田さんが格好イイキャラに・・・(w
飯田さん、この後も絡んできます。
- 57 名前:ぷち 投稿日:2001年08月26日(日)17時22分12秒
-
从 ~∀~ 从 「おっ!よく我慢したな〜紗耶香(ナデナデ)
ヽ^∀^ノ 「そりゃあ、裕ちゃんとは違うからね♪(エッヘン)」
>>50さん
有難うございます!
そう言っていただけると、ホントに助かります♪
でも、本当にマターリした状態が続きそう・・・(w
- 58 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月02日(日)14時43分55秒
- 続き気になるー!
- 59 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年09月08日(土)00時33分08秒
安倍と2人きりという事で、市井の心臓はドキドキしっぱなしだ。
さっきから、安倍と目が合うたびに目を泳がせている。
幸い安倍が話し上手だったので、二人の間に
沈黙が訪れることは無かった。
そのせいか、2人は今日はじめて会ったばかりとは
思えないほど、仲良さそうに見えた。
しばらく安倍の話を笑顔で頷きながら聞いていた
市井だが、意を決して聞いてみることにした。
駅前で会った時から、ずっと聞きたかったこと。
「あのさ、なっちって、付き合ってる人とかって・・・」
そう言いかけた時。
━━━ドタドタドタドタッ・・・ボテッ・・・ドタドタドタ
突然 何かが階段を駆け上がって来るような
(途中、転んだような音も聞こえたが・・・)
凄い音が聞こえてきた。
- 60 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年09月08日(土)00時33分48秒
- ━━━ドンッ!
その数秒後、あの音の正体、矢口が
恐らくさっき転んだ時に打ったのであろう
額を右手で押さえながら
凄い勢いで部屋に飛び込んで来た。
思わず、安倍と市井は扉から一番遠い壁に飛び退いた。
「はぁ・・はぁ・・・・さ・・・紗耶香・・・マズイ・・
い・・妹 帰って来た・・。
は・・早く逃げ・・・ないと・・・・」
ゼーゼー息をしながら矢口が声を振り絞りながら言う。
その言葉を聞いた途端、市井が ガバッと立ち上がり、
ただならぬ様子で、矢口にたずねる。
「や・・矢口さん・・・それは、マジっすか?」
矢口は、黙って頷く。
すると、市井の顔がどんどん青ざめていった。
- 61 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年09月08日(土)00時34分24秒
- 「や・・や・・矢口、どうしよう・・・?」
動揺しまくっている市井に矢口は、呼吸を整えながら言う。
「ふ・・2人とも今、部屋にいるから、
今のうちに逃げれば、大丈夫かも・・・。」
「お・・おう!それじゃあ なっち、また今度!」
そう言うと、市井は もの凄いスピードで
出ていってしまった。
「くっそ〜・・・アイツ、また矢口に挨拶なしで行きやがってぇ〜」
悔しそうに言う矢口に安倍は嬉しそうな声で
「亜依ちゃんとののちゃん帰って来てるんだ〜」
「うん。また、うるさいのが帰って来たよ〜・・・ごめんね、なっち。」
「いや、私賑やかな方がイイし・・・。
2人とも もう中学生だもんねぇ・・・。早く会いたいなぁ・・・。」
「はは・・・。ほっといても、すぐ来ると思うよ。
かなりうるさいから覚悟しといてね・・・。」
「うん♪」
力なく笑う矢口に安倍は笑顔で頷いた。
- 62 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年09月08日(土)00時37分10秒
- 矢口には、関西弁を自在に使いこなす亜依と
滑舌の悪さが何とも可愛い希美という、
2人の妹がいる。
大人しくしていればとても可愛いのだが、
2人ともかなりの悪戯好きで
近所では天使の皮を被った悪魔とまで言われている。
そんな2人は、市井の大ファンで、市井が家に来るたびに
”おもてなし”(本人達はそう呼んでいる)をしている。
これには、さすがの市井も困っていて、
できるだけ二人には会わないようにしているのだ。
━━━コンコン・・・・
矢口達が話していると、ノックする音が聞こえた。
「はいは〜い♪」
そう言いながら矢口が扉を開けると
そこには、制服姿の背の低い少女が2人、モジモジしながら立っていた。
どうゆうワケか、2人ともブラウスのボタンを
上3つまで開けている。
角度によっては、小さな胸を包んでいるブラが見えてしまうほどだ。
- 63 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年09月08日(土)00時38分01秒
- 「あんた等、何なのよ、その格好は!?」
2人のそんな様子を見て声を荒げる矢口にはおかまいなしで、
関西弁の亜依が、
「いらっしゃ〜〜い、市井さん」
そう言って、ズカズカと部屋に押し入った。
もちろん、顔は満面の笑みで可愛い光線大放出と
いった感じだ。
しかし、そこには憧れの市井の姿は無い。
亜依はガクッと肩を落として、
部屋の前で、しきりに髪型を気にしている
希美に報告。
「のの〜、市井さん おらんみたいやで・・」
「え〜・・?市井さん いないんれすか?
何だぁ・・・来た意味ないれす・・・。」
希美も、残念そうな声を出した。
- 64 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年09月08日(土)00時38分56秒
「あんた等ね〜・・・紗耶香がいないからって、
そんな風に言う事無いでしょ〜?
優しい、お姉様がここにいるってのに・・・」
芝居がかった声で そう言う
矢口の言葉を無視して、関西弁の亜依が矢口の肩をつかみ
グラグラ揺すりながら言う。
「姉ちゃん!何で市井さん帰したん!?
どうせ また姉ちゃんが余計なこと言って怒らせたんやろ!?
・・ったく、人がせっかく色気っちゅーモンを意識したったのに!!」
「最悪れす!!」
ブラウスのボタンを止め直しながら、すかさず希美が続く。
矢口は、小さな体をグラグラ揺らされながらも、必死に反論。
「違うっての!だいたい、いっつも あたしを怒らせるのは、
紗耶香の方だもん!」
「あ〜!お姉ちゃん、自分が市井さんと仲イイこと、
自慢したれす!!
「最悪や!
そんなんやから、朝、飯田さんに迎えに来てもらえんのや!」
- 65 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年09月08日(土)00時39分57秒
矢口は、徐々にイライラしながらも、安倍の前なので
グッと我慢して、冷静に答える。
「自慢なんかしてないっての!
だいたい、圭織は、部活の朝練があるから、
迎えに来たくても来れないいの!」
そんな矢口に、亜依は、
やれやれ、というような顔をして、
「まぁ、そーゆー事にしといたるわ。
ところで、このお姉ちゃんは誰なん?」
そう言って、安倍の方を見た。
突然、話をふられたので、安倍はキョトンとしている。
そんな姿が妙に可愛らしい。
「も・・もしかして、市井さんの彼女・・・れすか?」
安倍の容姿に危機感を感じたのか、
希美がビクビクしながら言う。
「な・・・なに!?市井さん、彼女おったんか!?
姉ちゃん、何で教えてくれんかったんや!?」
希美の言葉を聞いて、亜依は血相を変えて叫ぶ。
- 66 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年09月08日(土)00時40分35秒
-
「ちーがうっての!2人で勝手につっぱしらないでよ!」
矢口は、2人の頭をポコンと叩いて言う。
亜依は、叩かれた頭を押さえながら、
少し俯き気味でボソッと
「・・じゃあ、姉ちゃんの浮気相手・・・?」
その言葉を聞いて、希美が驚いたような声で
「うわっ!お姉ちゃん最悪れす!!
飯田さんが可哀想れす!」
「そやそや!あんなに格好イイ彼氏つかまえといて、
そりゃぁ、アカンやろ!?」
「こんな姉をもって、ののは、恥ずかしいれす」
「まったくもって、そのとおりや。」
好き勝手に話を進めていく二人に
矢口の我慢は限界に達していた。
矢口は、小さな体にス−ッと息を吸い込んで、
「いい加減に・・しなさ〜〜〜〜い!!!」
矢口の甲高い叫び声は家中に響き渡った。
- 67 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年09月08日(土)00時41分04秒
- 思わず二人は安倍の後ろに隠れる。
矢口は、そんな2人に、早口で
「あんた等、勝手なこと言ってんじゃないの!
この人は 紗耶香の彼女でも、あたしの浮気相手でもないわよ!
ホラ、北海道に住んでた頃、よく遊んでもらってたでしょ?」
亜依は、その言葉を聞いて、何かを思い出したように、
ポンと手をたたいた。
「あぁ!もしかして、なっち姉ちゃんか?」
亜依にそう言われ、安倍は笑顔で答える。
「うん、そうだよ♪
久しぶりだね、亜依ちゃん、ののちゃん。」
安倍がそう言った途端、
さっきまで、ボーっと聞いていた希美が、
突然 安倍に抱きついて、
「なっちお姉ちゃん、会いたかったれす〜〜!」
突然、抱きつかれて、よろけながらも、
「あはは♪私も会いたかったよ、ののちゃん♪」
そう言って、優しく、希美の頭をなでた。
- 68 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年09月08日(土)00時41分43秒
- 「でも、ナンでここにいるん?北海道から遊びに来たん?」
不思議そうに聞く亜依に安倍は答える。
「あぁ、私、北海道からこっちに、引っ越してきたんだよね。」
「じゃぁ、これからも遊びに来れるんれすね♪」
嬉しそうに、そう言う希美に安倍は笑顔で頷いた。
その笑顔を見て、希美は、少し顔を赤らめた。
しかし、嬉しそうな希美とは反対に、亜依は何やらブツブツ言っている。
「そうか・・・って事は、なっち姉ちゃんは、
いつでも市井さんに会いに行けるって事やな・・・。
こりゃぁ、ひょっとするとマズイかもしれんな・・・・。」
そんな亜依に気付き、矢口がつっこむ。
「ちょっと あんた。1人で何ブツブツ言ってるのよ?
コワイって!!」
しかし、矢口のつっこみには、答えず、
亜依は、安倍に真剣な顔で
「なぁ、なっち姉ちゃん。
ホンマに市井さんと付き合ってへんの?」
- 69 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年09月08日(土)00時42分17秒
- 安倍は、亜依の突然の質問に少し驚いた様子だったが、
笑いながら答える。
「まさか〜。私、紗耶香とは今日 初めて会ったんだよ?」
亜依がその言葉を聞いても、まだ腑に落ちないような表情をしていると
「もぉ、亜依ちゃんったら、何 言ってんの?」
安倍のひざに座っている希美が笑いながら言った。
そんな希美に亜依は複雑そうな表情を一瞬見せたが、
すぐに笑顔を作り、
「なんでもあらへんよっ」
そう言って自分も安倍に抱きついた。
(一瞬すっごい嫌な予感がした気がしたけど、きっと気のせいやろ・・・。
真里姉ちゃんとなら まだしも、純粋な なっち姉ちゃんと市井さんじゃぁ、
上手くいくハズないし・・・。)
- 70 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年09月08日(土)00時44分04秒
その後、4人で北海道の事や最近あった面白い話など、
思い思いに話した。
希美と亜依は、ほとんど市井の話ばかりだったけれど・・・。
「市井さんは、ホンマに格好イイで!」
「それに、優しいれす!」
「はぁ?紗耶香イジワルじゃん。
いっつも、あたしの事「チビ」ってバカにするし・・・。」
矢口は、市井について熱く語っている希美と亜依に
悪戯っぽく言う。
「うわっ!姉ちゃん、市井さんの悪口言うなや!」
「そうれす!いくらお姉ちゃんでも許しませんよ!?」
自分に対し、猛反論してくる2人に
矢口は更に悪戯ぽい笑顔でたずねる。
「じゃあ。紗耶香のどんなトコが優しいと思うの?」
- 71 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年09月08日(土)00時44分39秒
- その質問に希美は即座に答える。
「市井さん、この前 飴くれました!!」
希美の満面の笑みを前にすると、矢口は
それ、思いっきりモノにつられてんじゃん!
とは言えず苦笑する。
続いて亜依も
「市井さん、ウチのこと「可愛い」って言ってくれたんやで♪」
(アイツ、ホントに二人の性格、よく分かってるよなぁ・・・。
だいたい、付きまとわれるのが嫌なら、
優しくしなきゃイイのに・・。)
- 72 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年09月08日(土)00時45分20秒
そんな調子で、4人がガヤガヤ話していると
1階から矢口の母の声がした。
「みんな〜。晩ご飯できたから、降りていらっしゃ〜い♪」
女の子4人で集まれば何時間も話しつづけられるもので、
壁にかかっている時計に、ふと 目をやると、
もう6時30分を過ぎていた。
窓の外を見ると、
さっきまでの真っ青な空が、今は綺麗な夕焼け空になっている。
窓の外で聞こえていた子供の笑い声や楽しそうな声は、
もう聞こえなくなっていた。
- 73 名前:ぷち 投稿日:2001年09月08日(土)00時46分57秒
- =
更新終了です♪
今回は多めで・・・。
ちょっと修正していたら、思いのほか時間がかかってしまいました。
更新遅れてしまって申し訳ありません。
- 74 名前:ぷち 投稿日:2001年09月08日(土)00時48分47秒
- >>58さん
ありがとうございます。
その言葉が、一番嬉しいです♪
本当にすみません、更新遅れてしまって(アセ
- 75 名前:ぷち 投稿日:2001年09月08日(土)00時49分30秒
登場人物紹介
市井紗耶香
某女子校の高校2年生。
成績優秀、運動神経抜群
更に容姿端麗ときている為、何もしないでも人が集まってくる
学園のアイドル的存在。
しかし、その割には告白されても、
付き合ったりすることは無く、普段は矢口と行動している。
安倍なつみ
北海道から市井達の住んでいる県に引っ越してきた。
幼げな容姿だが、中身は意外と大人。
しかし、突然 不思議なことを口走ったりするところから
考えると、案外 天然なのかもしれない・・・。
矢口真里
市井のクラスメイトであり、親友。
明るく優しい性格で、クラスのムードメーカー的存在。
世話好きで、クラスの学級委員を勤めている。
しかし、学園一の人気者 飯田と付き合っている為
敵も多い。
- 76 名前:ぷち 投稿日:2001年09月08日(土)00時50分20秒
飯田圭織
バスケ部のキャプテンを務めている彼女は
市井をも越す人気を誇るアイドル。
黒髪と大きな瞳が印象的な美少女だが、
突然ボーっと一点を見つめたまま独り言を言ったりという
謎な一面をもっている。
矢口亜依、希美
矢口真里の妹で市井の大ファン。
かなりの悪戯好きで、まわりの大人を
困らせては喜んでいる。
ちなみに、双子。
- 77 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月08日(土)03時18分16秒
- 長めの更新お疲れ様です。
亜衣と希美が出て、これで登場人物が出そろったのかな?
この先どうなっていくのか非常に楽しみです。
- 78 名前:パク@紹介人 投稿日:2001年09月17日(月)13時25分41秒
- こちらの小説を「小説紹介スレ@赤板」↓に紹介します。
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=red&thp=1000364237&ls=25
- 79 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月23日(日)19時01分44秒
- まだでしょうか?まってます…。
- 80 名前:読んでる人 投稿日:2001年10月03日(水)19時15分35秒
- 更新まだでせうか?
- 81 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年10月11日(木)23時31分31秒
4人は夕食を食べる為に階段を降りてリビングへ向かった。
リビングへと続く扉を開けると美味しそうな匂いがただよってきた。
大きなリビングの真ん中に置いてある縦長のテーブルの上には、
地鶏のセモリナ揚げやオマール海老のサラダ、
キャロットスープなど さまざまな料理がところ狭しと
並べられていた。
その辺のコース料理よりも断然美味しそうだし、
色合いもとても綺麗だ。
「うっわ〜すっごいごちそうだね」
「うまそうやな〜」
亜依と矢口は目を輝かせて言った。
希美にいたっては既に食べ始めている。
「うわっ・・・」
安倍も思わず歓喜の声を漏らした。
「お口に合うか分からないけど・・・
なつみちゃんが来るって聞いてたから おばさん 張り切っちゃった♪」
安倍の嬉しそうな表情を見て矢口の母は笑顔でそう言った。
- 82 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年10月11日(木)23時32分11秒
- 矢口の母は、矢口3姉妹を足して3で割ったような
童顔で年齢の割には、とても若く見える。
友達の母親にこんなことを言うのは失礼かもしれないが、
とても可愛らしい。
「なつみちゃん、今回の学校はどう?」
「はい、なんとかやっていけそうです。」
「お母様はお元気?」
「はい、もうピンピンしてますよ♪」
矢口の母は、食事中
安倍にいろいろな質問を投げかけてきた。
しかし、それは安倍にとって決して苦痛ではなく
どこか懐かしさを感じていた。
「ちょっと、そんなに色々聞いてたら
なっち、ご飯食べられないじゃん。迷惑だよ?」
矢口は苦笑しながらそう言った。
矢口の母はそれを聞くと申し訳なさそうな顔で
「あら、ごめんなさいね、なつみちゃん。
私ったら、なんだか嬉しくてつい・・・」
「いえ、そんな迷惑なんかじゃないですよ。」
安倍は笑顔でそう言った。
その言葉は決して建前なんかではなく本心だった。
矢口の母が自分のことを本気で心配してくれているのは
分かっていたから。
- 83 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年10月11日(木)23時32分41秒
安倍は夕食後、矢口の母に
「お風呂に入ってらっしゃいよ。」
と勧められた。
自分は最後でいいと断ったのだが、
あまり遠慮しすぎるのも失礼かと思い
「お客さんなんだから遠慮しないの!」
という矢口の母の言葉に甘えることにした。
2階の矢口に置いた自分のカバンから、
持ってきた赤いチェックのパジャマと洗面具を取り出し、
もう一度上ってきた階段を降りた。
浴室は矢口家の長い廊下のつきあたりにある。
脱衣所の扉を念の為1度ノックしてみて、
誰も入っていないのを確認してから入った。
扉の先には、安倍の部屋と同じくらいの広さの脱衣所が。
安倍は、自分の家の脱衣所とのあまりの違いに
驚いた。
何でも矢口の父が
「風呂場とは、1日の疲れを落とす
一番ゆっくりできる場所というものだからこだわりたい。」
という考えから自分でデザインしたそうだ。
安倍は、そんな脱衣所をキョロキョロと見渡してから
着ていたTシャツを脱いだ。
続いてデニムのスカート、可愛らしいピンク色のブラとショーツ。
安倍は小さめのタオルと矢口の家に来る途中で買った
旅行用の小さなシャンプーとボディソープを持って
浴室への扉を開けた。
- 84 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年10月11日(木)23時33分28秒
- 安倍は、浴室で軽くシャワーを浴びて汗を流してから
浴槽に入った。
温度は少し熱いくらいだったが、それが心地よく感じた。
入浴剤が入っているのかかすかにバラの香りがする。
安倍は、温かいお湯の中で今日あったことを思い出していた。
(ふぅ・・・今日は久々に矢口に会えて良かったなぁ・・・。
それに、紗耶香とも友達になれたし・・・。
・・ん?そういえば、さっき紗耶香、何か言いかけてたような・・・。
まぁイイか。また会えるだろうし、その時に聞こうっと・・・)
そんな風に、考えていると 浴室への扉をノックする音が。
その音とほぼ同時に、矢口の高い声が聞こえてきた。
「なっち〜、バスタオルここに置いておくよ〜。」
「ありがと〜。」
安倍が答えると、
「お湯加減はどうですか〜?」
と、矢口が営業っぽい口調で聞いてきた。
「ん〜〜・・・最高ですね〜。」
安倍は、笑いながら得意の長島監督のモノマネで返す。
浴室の中なので声が響いて妙にリアルに聞こえる。
「あはは、似てねーっ!!」
矢口は、そう言いながらも爆笑していた。
- 85 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年10月11日(木)23時34分30秒
- 「あ、そーいえば あいのの が
「なっちお姉ちゃんとトランプするんだ!」って騒いでるんだけどどうする?」
矢口が突然、思い出したように言う。
もちろん子供大好きな安倍の答えは
「ん?別にイイよ♪」
「ごめんねぇ、ホント・・。せっかく遊びにきてもらったのに・・・」
申し訳なさそうに言う矢口に安倍は笑いながら
「別にイイってば〜、私も ののちゃん達と遊びたいし・・・。」
「そう言ってもらえると助かるよ。」
矢口は嬉しそうに言った。
「じゃあ、すぐ出るから 先に遊んでてよ♪」
「うん分かった。でも、もうちょっとゆっくり入ってれば?」
「いや、このままだと のぼせちゃいそうなんで・・・。
やっぱ、友達の家のお風呂でのぼせた、なんて格好悪すぎでしょ?」
安倍がそう言うと矢口は、
「あはは、それもそうだね・・じゃあ先に行ってるから。」
笑いながらそう言った。
何故か矢口の明るい声を聞くと安心できる。
きっとそれが矢口の最高の才能だ。
- 86 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年10月11日(木)23時35分09秒
- 脱衣所のドアがパタンと閉まる音を確認してから
安倍は浴室を出た。
ドライヤーで髪を軽くかわかしてから、先ほどまで着ていた
デニムのスカートと黒いTシャツをキレイにたたんだ。
赤いチェックのパジャマを着て少し紅潮した顔で
リビングに向かうと、
希美と亜依が既にトランプで遊んでいるところだった。
矢口は、ここにはいないようだ。
「あっ、なっちお姉ちゃん!」
希美が目を輝かせてそう言うと、亜依が申し訳なさそうに
「ごめんな、今始めたとこやから ちょっと待っててや。」
見ると2人は神経衰弱をしているようだ。
「うん、分かった♪2人とも頑張ってね。」
安倍は笑顔でそう言って、すぐ傍にあったソファーに
ちょこんと腰掛けた。
「絶対、ウチが勝つからしっかり見ててや!」
「ムッ・・ののが勝つんれす!!」
- 87 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年10月11日(木)23時35分51秒
- 2人のやりとりを笑顔で見ていると、
矢口が階段を降りてきた。
手にはパジャマとタオルを持っている。
安倍の姿を確認するとトコトコと可愛らしく走りながら
安倍のもとへとやって来た。
安倍が矢口の方へ顔を上げると、
「あの2人 記憶力がホントに無いから
すっごい時間がかかると思うのよ。
このスキにお風呂入ってきちゃっていいかな?」
矢口は、手を合わせながらそう言った。
「うん、いいよ〜♪」
安倍が笑顔で手をふると、
矢口はトコトコと浴室へと向かっていった。
- 88 名前:ぷち@作者 投稿日:2001年10月11日(木)23時39分53秒
- ==
更新遅れてしまい、すみません。
ちょっと、事故に遭ってしまい なかなかPCに触れなかったものですから・・。
こんな駄小説を待ってくださった方、本当にすみません。
#次の更新から、視点がちょくちょく変わって更に読みにくくなると思いますが、
お付き合いいただければ嬉しいです。
- 89 名前:ぷち@作者 投稿日:2001年10月11日(木)23時49分10秒
- 从 ~∀~ 从 復帰おめでとう〜〜♪
ヽ^∀^ノ いやいや、ありがとうございます。(ペコリ
从 ~∀~ 从 しかも、この裕ちゃんと一緒にアルバムを出すという・・。
ヽ^∀^ノ 出来れば矢口が良かったけどね・・・。(ボソリ
从 ~∀~ 从 何か言うたか?(ギロリ
>>77 さん
ありがとうございます。
えーっと、あとは後藤がちょっと登場する予定です。
あまり いい役でもないですけどね。
>>79さん
更新、遅れてすみません。(アセ
こんな駄小説なんかを待っていていただけるなんて・・・(感涙)
これからは、もっとちょくちょく更新できるよう努力します。
>>80 読んでる人さん
更新遅れてしまい、すみませんでした。
しかも、待たせたワリに話は全然進んでないし・・・(アセ
本当に、なんとお詫びすれば・・・
本当にすみません。
- 90 名前:読んでる人 投稿日:2001年10月31日(水)21時25分51秒
- ヤター!!更新されてるー!!
・・・でも、また放置状態・・・更新待ってます・・・。
- 91 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年11月04日(日)17時51分18秒
- 気付くと時刻は深夜1時。
結局あの後、矢口がお風呂から出てきたときに丁度
希美と亜依の長い長い神経衰弱が終わり、
4人で大富豪をすることになった。
かれこれ、もう20戦くらいこなしている。
「よっしゃ勝ったぁ!なっち また大貧民だね♪
さぁ、トランプ配ってもらおうかぁ?」
「うぅ・・・やっぱり あの時 2枚出しなんてしなきゃ良かったさ・・・。」
安倍がガックリと肩を落としてそう言うと、
矢口は得意げな表情で
「さぁ、今度こそ あたしが大富豪になってみせるからね!
覚悟しなさいよ!!」
そう言って 希美と亜依に向かってビシッと指をさした。
しかし、指した先にいる2人は、仲良く寄り添って可愛らしい寝息をたてている。
まさに天使のような寝顔といった感じだ。
矢口は、そんな2人に優しく微笑みかけ、そばにあった
タオルケットをかけてあげた。
そして、ふぅっとため息をつくと、
隣で今だにトランプを見つめている安倍に
「うるさいのも寝たことだし、2階行こっか。」
そう言ってスクッと立ちあがった。
- 92 名前:ぷち@作者 投稿日:2001年11月04日(日)17時51分56秒
約5年ぶりに会った2人だ。
話したいことは山ほどある。
5年という年月は。2人の少女を変化させるには十分すぎる。
一晩中語っても語りきれないだろう。
矢口家の家族がみんな寝静まった真っ暗な家の中を
2人は しっかりと手を繋いで物音をたてないよう
注意しながら歩き、なんとか「Mari’s room」と書かれた部屋にたどり着いた。
部屋に入るとフー−ッと2人は同時にため息をついて 顔を見合わせて笑った。
「ナンか 小さい頃を思い出すねぇ。」
安倍は、さわり心地の良い大きめなクッションを抱きかかえて
懐かしそうに言った。
「昔は毎日のように泊まりに来てたもんねぇ・・・。」
矢口も懐かしそうにそう言って、安部の隣に腰を下ろした。
- 93 名前:ぷち@作者 投稿日:2001年11月04日(日)17時53分26秒
*****
━━ 安倍 回想 ━━
私がまだ幼稚園に入ったばかりの頃、父が交通事故で亡くなった。
それからは、それまで専業主婦だった母が働きに出るようになったので、
まだ5歳だった私は、母が仕事から帰って来るまで
1人きりでいなければいけなかった。
母は毎日帰りが遅く、
幼稚園から帰って「ただいま」と言っても
「おかえり」という言葉が返って来ることはなかったし、
晩ご飯だって、毎日 仕事に行く前に母が作って置いてくれる
物をレンジであっためて 1人きりで食べてた。
寝る時だって、どんなに怖くても、
幼い私には大きすぎる大人用のベッドでたくさんのぬいぐみを抱いて
眠った。
それでも怖いときは、電気をつけっぱなしにしたり、
大好きな歌を歌ったりして 少しでも怖いという気持ちを紛らわしていた。
- 94 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年11月04日(日)17時54分10秒
- また、当時の私は、とても内気な性格で、
なかなか友達をつくれずにいた。
唯一の友達といえば教室に置いてあった
おせじにも可愛いとは言えないようなクマのぬいぐるみで、
いつも教室の隅の方で絵を描いたり、絵本を読んだりしていた。
そんな私に、同じクラスの園児達もあまり近付こうとしなかったし、
誰かがたまに話しかけてきてくれても、
私はどう返事をしたらいいのか分からず、俯いているだけのことが多かった。
- 95 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年11月04日(日)17時54分42秒
そんなある日、いつものように教室の隅で絵を描いていると
私に、声をかけてきた女の子がいた。
背が低くて、でも声はものすごく高い女の子。
見たことがない子だった。
きっと違うクラスなんだろうな・・・そんなことを考えていると、
「ねぇ、ナンでみんなと遊ばないの?」
その女の子は、本当に不思議そうな顔で私の顔をのぞきこんできた。
「え・・・だって・・・」
私が突然 声をかけられて戸惑っていると、
「ねぇ、あっちでみんなと遊ぼうよ。
あのねぇ、みんなでオニごっこするんだよぉ♪」
嬉しそうにそう言うと、その女の子は返事を待たずに
私の手をとって歩き出した。
「えっ・・・ちょ・・ちょっと・・・」
私はそう言いながらも手をひかれて歩く。
- 96 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年11月04日(日)17時55分21秒
女の子歩きながら可愛らしい笑顔で
「ねぇねぇ、お名前はナンてゆうの?」
そう尋ねてきた。
同い年の子とあまり話した事がなかった私は、
そんな簡単な質問にも戸惑ってしまう。
そんな私に、女の子はイヤな顔をせず、もう一度聞いてきた。
「だ〜か〜ら〜、名前だよ名前。あるでしょ?名前。」
「ある・・・けど・・」
私がボソッとそう言うと女の子は笑顔で。
「じゃぁ教えてよ♪」
そう言って人懐っこい笑顔で私の園服の袖をひっぱった。
「あべ・・・なつみ・・。」
私は 女の子にせかされ、俯き加減で小さな声で答えた。
女の子は満足そうに頷いて、
「あのねぇ、私 さくら組の やぐちまり ってゆうの。
みんな まりっぺって呼んでるから、あべなつみちゃんも
まりっぺって呼んでイイよ♪」
笑顔でそう言った。
私は幼い子特有のフルネーム呼びに少しくすぐったさを感じた。
クラスの子とすらマトモに喋れない私は、
同じ年の子に自分の名前をそんなに親しみを込めて呼ばれたのは
初めてだったんだ。
- 97 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年11月04日(日)17時55分50秒
- 「よろしく・・・ま・・まりっぺ・・・」
いきなりアダ名で呼ぶというのは照れくさいもので、
自然と声も小さくなってしまう。
でも、矢口は笑顔で頷いてくれた。
「さぁ、早くみんなのトコに行こうよ!」
そう言って、矢口は握っていた私の手にギュッと力をこめた。
ただ、それだけのことなのに私は、ナンだかとても嬉しかった。
その時の矢口の笑顔は、太陽のように輝いていた。
私達は、その日から一番の友達になった。
矢口は、私のとって初めての友達。
矢口と仲良くなってから、私の性格も徐々に明るくなっていき、
友達もたくさん増えた。
矢口には本当に感謝している。
おかげで、今では友達が声を揃えて
「なっちっていっつも笑ってるよね」って言うような
明るすぎる性格になっちゃったんだけども・・・。
- 98 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年11月04日(日)17時56分49秒
- *****
「ところで・・・さ」
安倍がしみじみと思い出に浸っていると、
矢口が意味ありげに含み笑いをしながら切り出してきた。
安倍が、なに?と首を傾げると、
「ねぇ なっち、向こうで彼氏とかいたの?」
矢口はニヤニヤしながら言った。
何て言うか、まるっきりオヤジって感じだ。
「えっ、いや、い・・・いないよぉ、そんなの!」
安倍は そんな矢口の問いに真っ赤になって首を振る。
「え〜?嘘だぁ〜。
なっちみたいな可愛くて明るい子、世の男がほっとくワケないじゃん!」
大げさに仰け反ってそう言う矢口に、
安倍は、そんなコトないって!と、手を大きく振って否定しながら
矢口の肩をバシバシ叩いた。
矢口は、笑いながら叩かれた肩を軽くおさえ
「え〜?でも何でだろうねぇ・・・。
もし、矢口が男だったら即 告るのに・・・。
やっぱアレかな、あまりにレベルが高すぎるから みんな諦めちゃってるのかな?」
矢口は、よくドラマ等で名探偵がやる指で顎をさわるお決まりのポーズをしながら
首をひねる。
- 99 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年11月04日(日)17時57分35秒
- 「いや、ホントにモテなかったから!
ナンパなんてされたのだって、今日が初めてだし!」
そう言って安倍は顔を真っ赤にして否定した。
「またまたぁ、そんなコト言っちゃって」
矢口は、そんな安倍の様子が可愛くてからかうような口調で言う。
「ホントだってばぁ〜!
てゆーかさ、ナンパとかしてるような人って
みんな もっと軽いってゆーか、あんまり物事を考えてないのかと
思ってたけど、そーでもないみたいだね。
それとも、紗耶香が特別なのかな?」
安倍は更に顔を赤く染めながら、何とか話しをそらそうと
とっさに浮かんだ市井のことを話しに出した。
- 100 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年11月04日(日)17時58分09秒
- 「紗耶香は・・・特別だよ。」
そう言った矢口の声は、心なしか悲しそうに聞こえた。
少しの間を置いて矢口は続けた。
「紗耶香は、もともとはナンパとかするような子じゃなかったから。
・・・・あのことがあるまでは・・・。」
部屋に重い空気が漂う。
「あの・・こと・・・?」
安倍が矢口の目を真っ直ぐに見て聞き返すと、
矢口は一呼吸置いてから ゆっくりとした口調で
でも、はっきりと
「やぐちの・・・せいなんだ・・・。」
- 101 名前:ぷち@作者 投稿日:2001年11月04日(日)17時58分56秒
- =
更新終了です。
また、更新遅れてしまった・・(激汗)
- 102 名前:ぷち@作者 投稿日:2001年11月04日(日)18時03分30秒
- 从 ~∀~ 从>1ヶ月も開けといて、ナニが「1週間に1度の更新を目指します」
やゴルァ!
ヽ^∀^ノ >そうだそうだ!死んでお詫びしろ!
作者 >本当にすみません。(激汗)
>>90 読んでる人さん
そうやって喜んでいただけると、本当に励みになります。
無断放棄だけは絶対にしないので、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
- 103 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月09日(金)11時30分34秒
- なんか、すっごい気になる・・・
楽しみにしてるので頑張って。
- 104 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月04日(火)13時02分34秒
- いちなち!!
めずらしい組み合わせだけに楽しみです。
頑張ってください!!
- 105 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年12月04日(火)22時12分55秒
- =
「矢口と紗耶香はね 昔 付き合ってたんだ。
矢口がこっちに越してきたのが中1のときだから、
それから高一の秋までずっと。
ホントに幸せでさ、常にラブラブで学校内で
知らない人なんていないってくらいの
アツアツカップルってカンジで・・・。
休みの日なんか朝から晩までずっと一緒にいて
お互いの家でまったりしたり、買い物に行ったり・・・。
大好きな人とずっと一緒にいられる生活、
すっごい楽しかった。
そんな毎日がずっと続くと思ってた。
・・・でも・・・・
でも、矢口がその関係を壊しちゃったんだ・・・・。」
- 106 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年12月04日(火)22時14分55秒
******
━━━━━2年前の冬
矢口は、「二人で同じ高校に行きたいね」っていう紗耶香の言葉を
励みに猛勉強して、自分の学力より大分高い高校を受験した。
やっぱり好きな人とは、ずっと一緒にいたいし
それに、学校が別々になったら、自分達の気持ちも別々に
なってしまうような気がして、すごく不安だった。
別に紗耶香を信じていなかった訳じゃないんだけど、
その頃から紗耶香は凄くモテたし・・・。
「もしかしたら」って考えると恐くてたまらなかった。
だから、あんなに頑張れたんだ。
勉強の為に、紗耶香と遊ぶ時間も減らしたし、
寝る間も惜しんで 、毎晩 参考書と格闘していた。
- 107 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年12月04日(火)22時16分27秒
その甲斐あって矢口と紗耶香は晴れて同じ校門をくぐることができた。
高校に入ってからも、矢口の予想どおり 紗耶香人気は健在で
いろんな人から毎日のように告白されていた。
やっぱり、付き合っている相手がモテすぎるというのは
ツライもので、矢口は紗耶香から報告を受けるたびにムッとしたが、
そのたびに、紗耶香がいつもは絶対見せないような真剣な顔で
言ってくれる
「大丈夫、市井には矢口しか見えてないから」
という言葉を聞くと不思議と安心できた。
そんな時、頑張って良かったって凄く感じるんだ。
- 108 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年12月04日(火)22時17分05秒
━━━━━
春だと言っても、まだまだ肌寒い朝、
市井は矢口家の大きなリビングでコーヒーを飲みながら
2階の矢口の部屋に向かって大声で叫ぶ。
「おい、矢口〜!早くしろよ、遅刻するぞぉ〜!」
「ちょっと待ってよぉっ!紗耶香、置いてかないでよっ!?」
二階から朝だというのに、矢口はいつもと なんら変わりない高い声で返事をする。
そんな矢口の言葉を聞き、市井はため息をつき、コーヒーを口に運ぶ。
「ごめんなさいね、さやちゃん。
いつもお迎えに来てもらっているのに待たせちゃって。
あの子、何度言っても めざまし時計 使おうとしないのよ。」
「あはは、いいですよ別に。もう慣れましたから♪
それに、おばさんの入れた美味しいコーヒーが毎朝飲めるんで・・・」
申し訳なさそうに言う矢口の母に市井は笑顔で返す。
しかし、そうは言っても もう時間が無い。
二人の通っている高校は矢口家から30分。
急いでも20分かかる。
このままでは遅刻確実だ。
さすがに市井も、もう待っていられないと思い、立ちあがろうとした時、
階段をバタバタともの凄い勢いで下ってくる矢口の姿が確認された。
- 109 名前:☆運命の人☆(ここから矢口視点) 投稿日:2001年12月04日(火)22時19分58秒
「紗〜耶〜香〜!マジ ゴメン!」
手を合わせて謝る矢口に紗耶香は
「あ〜、分かった分かった。とりあえず もう行こうよ。
このままじゃホントに遅刻だよ?」
とあきれた声で言う。
言葉だけ聞けば怒っているように聞こえるが、顔は笑顔。
「紗耶香やっさし〜っ」
そんな紗耶香に矢口は思いっきり抱きつく。
「あっ、矢口、今日の昼 矢口のオゴリだからねっ♪」
紗耶香は、抱きついている矢口の頭を軽く叩いて満面の笑みで言った。
「ま・・・マジっすか・・・?」
青ざめる矢口を無視して、紗耶香は「いってきま〜す!」と機嫌良さ気に挨拶して、
矢口家の大き目の扉を開いた。
矢口も紗耶香とは対照的に沈んだ声で行ってきますの挨拶をする。
- 110 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年12月04日(火)22時20分49秒
- 矢口がローファーを履くのに苦労している間に、
紗耶香は、矢口家のすぐ前に停めてある愛用の自転車の鍵を外す。
よっぽど大事なのか、その自転車には鍵が6つも付いていて、
その上、かごには『矢口&市井のラヴバイセコー〜2人の恋は加速中〜』
という恥ずかしすぎる看板が・・・。
いくら盗難防止とは言え、そんな看板は必要無いと思う・・・。
まぁ、そんなのが付いてたら誰も盗らないだろうけどさぁ・・・。
「ねぇ、紗耶香〜、その『矢口&市井の〜』ってヤツ外さない?
ナンか恥ずかしいよ」
矢口がそう言うと紗耶香は何でも無いような顔で
「はぁ?ナンでぇ?いいじゃん、これ。」
と言う。
矢口がそんな紗耶香に一発蹴りを入れて、
「もぉ・・・矢口は恥ずかしいのっ!
てか、早く行こうよ〜、遅刻しちゃうよ?」
「お・・・おいっ!遅刻は誰のせいだと思ってるんだよ!?」
紗耶香は、矢口の蹴った腰をさすりながら、そう言って
矢口を後ろに座らせて自転車をこぎ出す。
矢口は必死にペダルをこいでいる紗耶香の腰に
腕をまわして、出来るだけ密着出来るように
ピッタリくっつく。
この瞬間が、あわただしいけれど 二人のとって一番幸せな時間・・・。
- 111 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年12月04日(火)22時21分21秒
「ねぇ、矢口ーっ!」
自転車をこぎながらなため、紗耶香は普段よりも少し大きめの声で
話しかけてくる。
「ん〜〜?」
矢口が紗耶香の背中を通して響いてくる声に返事をすると
「何で、目覚し時計つかわないの?
目覚し時計つかえば 朝、あんなに慌てないですむのに・・・。」
紗耶香はそう言いながら軽快にコンビニの角を曲がる。
「え〜っ、だって目覚し時計の音って心臓に悪くない?
矢口、朝からあんな音聞くのツラすぎるもん・・・。」
矢口が紗耶香の背中に軽く頭を押しつけながら言うと
紗耶香はあきれたように
「はぁ?そんな理由なの?」
「そ・・・そんな理由とは何だ!
矢口にとっては大問題なのにっ!!」
そう言って紗耶香の体をガクガクと揺らす。
「ちょ・・・危ねーよ!」
そう言いながらも紗耶香は笑顔。
今日は本当にイイ天気。雲一つ無い青空がずーっと先まで続いている。
なんだか、どこか遠くに行っちゃいたくなるような、
そんな気分になっちゃう。
毎日、こんな天気だったらいいのにな。
- 112 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年12月04日(火)22時21分54秒
矢口がそんなコトをぼーっと考えていると、
突然、紗耶香が矢口の方をチラッと振り返って
「じゃあさ、市井が毎朝起こしてあげようか?」
そう言ってすぐ前を向いてしまった。
「はぁ?無理無理。矢口、寝起き超悪いもん。
どーやってやんのよ?」
矢口が笑いながら言うと、
自転車がキキッと音を立てて止まった。
「・・・こーやってだよ。」
そう言うと、紗耶香はくるっと振りかえって
矢口の額に軽くキスをした。
どんどん顔が赤くなっていくのが分かる。
紗耶香は、唇を離して
「どうですか、ネボスケなお嬢様?」
そう言うとニコッと笑った。
矢口は、その笑顔にドキッとしたが、それを悟られないように
紗耶香の顔をぐるっと前に向けさせた。
「もぉ、バカなこと言ってないで、早く行かないと
ホントに遅刻しちゃうでしょっ!」
「へいへい・・・」
片手で首を押さえながら、やる気の無い返事を返す紗耶香。
矢口の照れ隠しにまったく気付いていない様子で
再び自転車を漕ぎ出す。
- 113 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年12月04日(火)22時22分24秒
- 矢口は、そんな鈍感な紗耶香の腰にまわしていた腕に
ギュッと力を入れて、さっきよりも体を密着させた。
紗耶香、矢口の心臓の音、聞こえてますか?
紗耶香があんなことしたせいで矢口の心臓、
破裂しそうだよ・・・・。
もぉ・・・・紗耶香のバカ・・・・
・・・・大好きだよ・・・。
あの角を曲がれば学校は、もうすぐそこ。
二人が誰にも文句を言われず くっついていられる
時間はもう終わり。
これからは、憂鬱な授業が待っている。
でも、全然辛くなんかないよ。
だって、大好きな人と一緒だから・・・・。
- 114 名前:ぷち 投稿日:2001年12月04日(火)22時24分39秒
- =
更新終了です♪
今回から さやまり編に入ります(まだ、いちなちも動き出してないのに(アセ))
すみません、作者がさやまりヲタなんで・・・。
一応、基本的には矢口視点でいきます。
- 115 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2001年12月04日(火)22時29分48秒
- 从 ~∀~ 从<さ・・さやまりやんか!!
ヽ;^∀^ノ <み・・・みたいだね・・・
从 ~∀~ 从<こうなったら、ラブバイセコ−の「ラ」を「デ」に変えて
大笑いしたるわっ!
ヽ^∀^ノ <あんたは小学生かっ!!
>>103さん
あ・・・ありがとうございます(感涙)
そう言っていただけると本当に嬉しいです。
更新ペース激遅ですが、付き合っていただければ幸いです。
>>104さん
ありがとうございます。
いちなちって書いたこと無いんで緊張気味ですが頑張ります!
・・でも、言ってるソバからいきなり さやまり編入っちゃったけど・・・(アセ
なんか、すみません(土下座)
- 116 名前:ぷち 投稿日:2001年12月05日(水)21時15分10秒
- ☆補足説明☆
すみません、入れ忘れてたコトが・・・・。
この さやまり回想は二人が高一の時の話です。
- 117 名前:あそびにきてね〜 投稿日:2001年12月07日(金)05時11分49秒
- モーニング娘のビック裏ニュースみせまーす
\( ^▽^) マ〜メミムメモ
( ^▽^)/ マ〜メミムメモ
<( ^▽^) マ〜メミムマジカル
\( ^▽^)/ び〜む
http://www.hitoriasobi.com/nonno/tt/morning/
- 118 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月08日(土)01時19分18秒
- さやまりだぁ!!かなりうれしい!!(w
作者さん頑張ってください。
- 119 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月14日(金)05時10分52秒
- さやまりも大好きです!!
がんばってください!!
- 120 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年01月10日(木)22時23分06秒
- =
駐輪所に自転車(ラブバイセコー)をとめて
二人は並んで校舎へと向かう。
紗耶香が全速力で自転車をこいでくれたおかげで、
なんとか遅刻はまぬがれた。
この学校は、校門で先生のチェックを入れられなければ
遅刻にはならないので、あとはゆっくりできる。
「ふぅ・・疲れたぁ・・・。何か市井すっごい頑張った気がする・・・。」
そう言って伸びをする紗耶香の頭を矢口は少し背伸びをして撫でる。
「おつかれ、紗耶香♪」
「えへへ・・・じゃぁ、ご褒美のチューを・・・」
「バカッ!調子に乗るな!!」
紗耶香の頬に矢口の拳が入った。
「いって〜」なんて言いながらも紗耶香はニヤニヤ。
- 121 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月10日(木)22時23分37秒
そんな甘〜い空気を漂わせながら歩いていると、
校舎に近づくにつれて、あちこちから黄色い声が。
「キャーッ!市井さ〜ん!こっち向いてぇ〜〜!!」
「さ〜や〜か〜」
紗耶香はその声にテキトーな作り笑いで答え、
矢口は隣で俯き気味で歩く。
「キャーッ!市井さんと目 合っちゃったぁ」
「何言ってんの、今のは私を見たのよ!」
紗耶香は矢口のモノだもんっ!
なんて思いながら、困ったような顔で愛想笑いをしている紗耶香を睨んでみる。
別に紗耶香が悪いんじゃないってのは分かってるけどさ・・・。
すると、紗耶香はすぐに矢口の様子に気付いて
「ごめんね、矢口。
・・・なんか、毎日こんなんで・・・。」
なんて、本当に申し訳なさそうに謝ってくれる。
ホントにどんな時でも優しくて、どんな時でも矢口のこと気遣ってくれて、
ホントにホントに嬉しいのに、何でかつっぱっちゃって。
ついつい、意地張っちゃう。
- 122 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年01月10日(木)22時24分26秒
- 「いいよ 別に。もう・・慣れたから。」
そう言いながらも下を向いたままの矢口に
紗耶香は本当に困ったような様子で、オロオロしてる。
肩を抱いたり、頭を撫でたり。
それだけでも、ものすごい反応が。
もちろん反応したのは矢口ではなく、まわりの紗耶香ファン達。
「キャーッ!紗耶香やめてぇ〜〜〜!!」
「イヤーーーーーッ!!」
別にいつもと変わらない。
いつもどおり。
なのに、この日はちょっとだけ違った。
- 123 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年01月10日(木)22時25分00秒
「ブスのくせに紗耶香様に近付いてるんじゃねーよ!ドチビがっ!」
別に、矢口はそーゆーコト言われて落ち込むようなタイプじゃないし、
正直、顔は平均点以上だと思ってるから、普通にしてた。
結構 他校の生徒とかから告白されたりとかするし。
でも、紗耶香はその言葉を聞いた途端、
それまでの穏やかな表情から一変して、先程とは別人のような、
怒りに満ちた表情になった。
拳にグッと力を入れて、
「おい!今言ったやつ出て来いっ!
騒ぎたけりゃぁ、騒げばいい!でも、矢口のこと悪く言ったら許さないからな!!」
いつも何があっても冷静なのに・・・。
こんな紗耶香、初めて見た・・・・。
3年間も一緒にいる矢口がそう思ったくらいだ。
さっきまで騒いでいた女子生徒たちは みんな真っ青な顔をして黙り込んでしまった。
矢口の悪口を言った子なんて顔を覆って泣いていた。
紗耶香は、そんなまわりの様子を気に留めることなく、
矢口の手をとって校舎に向かっていく。
紗耶香が去った後、しばらく誰も動けなかったらしい。
- 124 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年01月10日(木)22時25分34秒
校舎内で靴を履き替えながら矢口は、皮肉っぽくボソッと言う。
「あれでファン、減っちゃったんじゃない?」
「いや、別に減ってもいいよ、
市井が自分のこと想ってて欲しいって思うのは矢口だけだし。」
当たり前のようにそう言う紗耶香に矢口は
「とか言っちゃって〜。ご機嫌とりだってのミエミエだよ?」
と、冷たく言って、さっさと教室へと向かう。
そんな矢口に、紗耶香は さっきの威勢が嘘のように いつもの情けない様子に戻って
「いや、そんなんじゃないって!マジだってば矢口〜!」
そう言って、慌てて靴を履き替えて矢口の後ろを追いかける。
そんな紗耶香の様子がおかしくて、矢口はクスッと笑った。
「なんだよぉ〜・・・?」
「なんでもないのっ!」
恥ずかしくて強がっちゃったけど、ホントはあの言葉、すっごく嬉しかったんだよ。
この時までは幸せだったんだ・・・。
あの人に出会うまでは・・・。
- 125 名前:ぷち(作者) 投稿日:2002年01月10日(木)22時27分44秒
- =
更新終了です。
更新遅いうえに、更新量少なくて本当に申し訳ありません(土下座)
4月になれば、もう少しくらいは、早くできる予定なんで・・・。
>>118さん
レス&応援ありがとうございます!
自分もさやまり推しなんで、さやまり好きな方を発見すると
すっごい嬉しかったりします。
つたない文章ですが、良ければ付き合ってください。(ペコリ
>>119さん
レス&応援ありがとうございます!
さやまり好きな方、結構多いみたいですね(感涙)
自分もさやまり推しなんで嬉しいです。
下手なりに頑張らせていただきますので、よろしくお願いします。
- 126 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月11日(金)03時28分03秒
- うぉ〜!あの人とは!?
作者さん更新おつかれさまっす!
- 127 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月16日(水)08時40分06秒
- 誰が一体さやまりを・・・
- 128 名前:ぷち改め ”イチヤ” 投稿日:2002年02月25日(月)20時00分04秒
- 飼育復活おめでとうございます。
管理人さん、お疲れ様です。
それと、読んでくださってる皆さん、更新遅れて申し訳ございません。
えーっと、一応、続きは書いてるんですけども、まだPCに打ち込んでないんです。
・・・で、その繋ぎにって言うのもヘンですけど、
オムニバス短編集に投稿しようと思っていた作品があるんですけども、
何か、書いてるうちに話が長くなっちゃいまして、
規定の25レス以内におさまらなくなっちゃったんですよ。
でも、このままお蔵入りってのも勿体無い気がするし、
30レスちょっとでスレたてるワケにもいかないし・・・。
ってことで、このスレに載せます。
ちゃんと、「運命の人」も近いうちに必ず更新しますので・・
#どーでもいいけど、コテハン変えました。
前のヤツ気に入ってなかったんで・・・。
みなさん、これからもよろしくお願いいたします。
- 129 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時00分57秒
あたしには、小さい頃からの友達がいる。生まれて初めてできた親友。
その子の名前は矢口真里。
あたしの一個上なんだけど、気さくに話しかけてくれるし、一緒にいて楽しい。
容姿も凄く可愛いらしくて、小さな体と対応している小さな顔とクリクリした可愛い瞳。
サラサラした髪の毛を撫でてあげると照れたようにはにかむ。
人当たりの良い性格で、誰とでも仲良くなれるようなタイプだ。
きっとクラスでも一番 目立つグループの中心にいて、明るい声で笑うんだろうな。
───── そう、彼女がみんなと同じように学校に行けていたなら。
- 130 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時01分38秒
病院特有の消毒液のツンとした刺激臭が鼻をかすめる。
扉も壁もみんな真っ白で清潔感あふれる小さな部屋。
誰が描いたかも分からないごく普通の風景画が飾られ、
窓際に置いてある大きくて決して寝心地が良いとは言えないようなベッドの枕元には
安物の花瓶に、今朝あたしが持ってきた花が飾られている。
その隣には写真たて。
写真の中で あたしと矢口が肩を組んで笑っている。本当に幸せそうに。
でも、あたし達の背景は真っ白。
まるで光の中にいるように。
真っ白な背景の中にあるキズや落書きが、
その写真がこの部屋で撮られたものであることを思い出させる。
その写真たての他にも壁や棚にいろんな写真が飾られている。
まだ幼いときのものもあって、たいていの写真はあたしと矢口のツーショットだ。
どの矢口も凄く幸せそうに笑っていて、
やっぱりどの矢口の背景も真っ白だった。
- 131 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時02分25秒
「───じゃあ、あたし そろそろ帰るね。もう遅いし。」
「えーっ!?もう帰っちゃうの?」
立ち上がろうとするあたしの服の袖をギュッと握って甘えた声で非難する矢口。
「もうって、面会時間過ぎちゃうし・・・。この前 看護婦さんに怒られたばっかだしさ。」
「いいじゃん。泊まってってよぉ!」
「・・お前、どこの世界に病気でもないのに病院にお泊りなんてするヤツがいんだよ・・・。」
あたしがため息をついてそう言うと、矢口は拗ねたように唇を尖らせ俯いてしまった。
あたしも矢口の寂しさは痛いほど分かるけれど、こればっかりはどうしようもない。
本当は、矢口が寂しい思いをしないように、
ずっと傍にいて矢口が眠るまで手を握っていてあげたい。
でも、そんなわけにはいかないワケで・・・。
普段 強がりで素直じゃない矢口がこんな風に甘えてくるのは、
いつも あたしが帰る面会終了直前のこの時だけ。
そんな矢口の、そんな小さなワガママすら聞いてやれない自分にもどかしさを感じる。
- 132 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時03分07秒
でも、矢口もそんなことは分かっているから、すぐに握っていたあたしの服から手を離して、
普段の様子からは想像もできないような弱々しい・・・
本当に消えてしまうんじゃないかと不安になってしまうくらい悲しい笑顔を見せる。
そして、いつもの挨拶をするんだ。
「明日も来てくれるよね・・・」
「うん・・・。」
そう言って矢口の頭をクシャッと撫でると凄く嬉しそうな笑顔を見せてくれる。
それを見てあたしは安心して帰るんだ。
病室を出ると長い長い廊下が続く。
廊下には、矢口の隣の病室に入院している女の子のお母さんが病室の前を行ったり来たりしていたり、
着替えが入っていたと思われる大きな紙袋をたたみながら歩いている学生や、
面会時間ギリギリなのに今更 病室側に向かって走っている人や、
それを迷惑そうな顔で見ている看護婦さんがいたりして、
いつもと比べると、ワリと人が多かった。
あたしは、前を歩いている男の人の後姿をなんとなく見ながら昔のことを思い出していた。
- 133 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時03分53秒
- ───────
─────
───
──
「えっ、もう帰っちゃうの?」
「ごめんね紗耶ちゃん、また明日も来るから。」
「・・・うん、分かった。」
「じゃあ、ちゃんと あったかくして眠るのよ。」
「うん。おやすみ。」
「おやすみなさい。」
ガタッと音を立てて扉が閉まる。
とたんに沈黙が訪れ、それとともにため息が漏れる。
この部屋に来て何日目だろう・・・。
いつものように発作が起きて、気付いたらこの病室にいた。
他の人にとっては、入院なんてものすごく大変なことなんだろうけど、
あたしにとっては、もはや めずらしいことなんかではなく、当たり前のようなことになっていた。
小学生ですでに入院慣れしているというのも
何だか不思議な感じがするけど・・・。
あたしの病気は、心臓が関係しているものらしくて、
しょっちゅう発作が起こってしまうのは、仕方のないことらしい。
別に病気を恨んだところで何も変わらないから諦めているけど、
やっぱりあたしは不幸だと思う。
入退院の繰り返しで友達なんて全然できないし、
もともと得意でない勉強だって全然分からなくなるし・・・。
- 134 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時04分28秒
ふと、殺風景な病室を見渡すと何だか悲しくなった。
二人部屋なのに、あたしが入院したときからずっと無人の隣のベッド。
まだ10歳ちょっとだったあたしには、そのことが寂しくて仕方なかった。
お見舞いに来てくれる人はいたけれど、みんな面会終了時間になったら帰ってしまう。
・・・ひとりぼっち。
夜は一人で眠らなければいけなくて、電気を消すのが怖かった。
静かで真っ暗な病室。広い広い病室。
闇があたしを引きずり込もうとしているような気がして、
あたしは毎晩、家から持ってきた小さな小さなペンライトを握って布団にもぐって眠った。
そうすれば、誰も入ってくることのできない自分だけの世界を作れるから。
そうしていれば、いつのまにか朝がやってくる。
いつもの朝が、いつものように。
- 135 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時06分04秒
毎朝、看護婦さんが血圧や体温を計りにやってくる。
その後、おいしくもまずくもない朝食を食べ、少し眠る。
時々、クラスの子が何人かやってきて千羽鶴や手紙を持ってきてくれる。
きっと担任に言われて、代表の子が来てるんだろうな。
大して仲良くない子もいるし。
変化といえば、それと あとは花瓶の花が変わることくらいだ。
せっかく退院できても、またすぐに発作が起こって入院生活が始まる。
初めは嫌で仕方なかった注射も、もう慣れてしまって痛みを感じない。
一生このままなのかなって諦めていた。
担当医には、成長するにつれて発作は治まっていくと言われていた。
でも、成長する前に死んでしまうんじゃないかって心配だった。
一度だけ母にそれを言ってみたら「そんなこと言うんじゃありません!」って怒られた。
その時の母の悲しそうな表情を見て、ああ言っちゃいけないんだな、って思った。
毎日こんな辛い思いをするなら死んじゃったほうが楽なんじゃないかなって思っていたけれど、
そんなことを言うとまた怒られると思って誰にも言わなかった。
- 136 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時06分40秒
意味のないことが同じように続いていく、何の変化もない毎日。
一日がすごく長く感じていたあの頃。
そんなある日、彼女に出逢った。
「ヤだ!あたし 家に帰りたい!」
いつものように朝食後のんびり本を読んでいると、突然 甲高い声が耳に届いた。
別にめずらしいことではない。
入院初日の子供には よくあることだ。
そう思っていたのに、何故かその声が無性に気になり、
気付くとあたしは、ベッドから飛び降りて横開きの扉からそっと顔を出していた。
そこにいたのは、瞳に涙をためた小さな女の子。
床に座り込んで、彼女の隣で困ったような表情をしている母親と思われる人を睨みつけている。
「真里ちゃん、そんなこと言わないで・・・ね?」
「イヤだ!あたし、何て言われたって入院なんかしないんだから!
入院したら学校にも行けなくなっちゃうんでしょ?」
あの真里ちゃんって子にとっては学校が楽しいのかな・・・
学校なんて退屈なだけなのに・・・。
そんなことをボーっと考えていると、突然こちらを向いた真里ちゃんと目が合ってしまった。
- 137 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時07分25秒
「ちょっとアンタ、何見てんのよ?」
ヤバイと思ってあわてて目をそらそうとしたが、一歩遅かったようだ。
真里ちゃんがツカツカと、あたしの方に歩いてきた。
多分、今のあたしすごいオドオドしていると思う。
そんな自分をカッコ悪いなと思いながらも前髪をかきあげて、目の前の女の子を睨みつけてみる。
精一杯の強がり。
遠くから見たときはよく分からなかったけれど、そんなに背の高くないあたしよりもはるかに小さい。
ちょっと可愛いな・・なんて思ったりして・・・。
「だから、何見てんのっつってんの!」
もう一度キッとあたしを睨んで同じ質問を繰り返す。
「別に。」
あたしは体は小さいくせに態度はデカイ彼女にぶっきらぼうに答えた。
もともと目が据わっているってよく言われるし、あたしに睨まれたら大抵の人はひるむ。
おまけに自分より背の高い人に見下ろされるってのは怖いものなんだと思う。
でも、真里ちゃんはひるむどころか、余計につっかかってきた。
- 138 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時07分59秒
「何その態度!マジでムカつくんだけど・・・。
もしかして、アンタそーゆーのがカッコ良いとでも思ってるわけ?」
「別に思ってねーよ!てか、アンタとかって偉そうに呼ぶな!」
「いや、だって あたしアンタの名前知らないし・・・。」
「市井だよ!市井紗耶香!!お前年下のくせに生意気なんだよ!」
「と・・年下のくせにって、そーゆーのホントにムカつく!そんなの関係ないじゃん!
それに、お前とかって呼ばないでくれる?
あたしには矢口真里っていう可愛い名前があるんだから!」
最悪な自己紹介。
「あぁ、一応覚えといてやるよ。どーせ・・」
「真里ちゃんっ!手続きすんだから先生に挨拶に行くわよ」
どーせすぐに忘れちゃうだろうけど と言おうとしたあたしの言葉を矢口のお母さんがさえぎった。
矢口はワザとらしく口パクで、ばーか とやって、お母さんの方へ走っていってしまった。
口に出して言えばいいものを・・・。
矢口のそんな態度に腹が立ったが、
何故だか矢口を連れて行ってしまった矢口のお母さんにはもっと腹が立った。
- 139 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時08分33秒
それが、あたし達の出逢い。
それから、矢口のお母さんは、なんとか矢口を説得することに成功したらしく、
矢口は あたしと同じ病室に入院することになった。
その日、あたしは ひとりぼっちではなくなったんだ。
初めの頃あたし達は、くだらない言い合いとかそんなことばかりしていた。
───”ねえ紗耶香、実はあたしのが年上なんだよ。”
───”はぁ、マジでぇ?小っちゃいから絶対年下だと思ってた。”
───”紗耶香、年下のくせに生意気ーっ!”
───”年下とかそーゆーの関係ないって言ったの矢口の方じゃん”
───”う・・うるさいバカ紗耶香!”
───”何だと!?チビ矢口っ!”
そうやって矢口にいろいろ言われるのは、凄く腹が立ったけれど、
小さい頃から入院ばかりでそーゆー風に騒げる相手なんていなかったから
内心すごく楽しかった。
その日から退屈で仕方なかったあたしの入院生活は一変した。
- 140 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時09分10秒
先の見えない、闇に覆われたあたしの心。
どこに行けばいいのか分からなくて、ひらすら歩き回って、迷って、それでも歩き回って。
諦めかけていた。
歩き疲れて、ひざを抱えてうずくまっていた。
矢口は、そんな暗闇に突如あらわれた一筋の光。
どんなに腕を振り回しても、どんなに泣き叫んでも
振り払うことのできなかったあたしの闇をいとも簡単に払いのけてくれた。
──── でも、それから しばらくして、もっともっと大きな闇があたしの心を包んだ。
- 141 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時09分50秒
───”ねえ紗耶香ぁ・・・”
───”ん〜?・・って、え、矢口なんで泣いてんの!?
誰かにいじめられたの?だったら あたしが・・・”
───”あたし・・・20歳まで生きられないんだって・・・”
───”・・・え・・・”
───”っ、どうしようっ、紗耶・・香、あたし・・っ、怖いっ・・・
生きたい・っ・・生きたいよ紗耶香・・・
そう言ってあたしの胸に顔をうずめて泣いている矢口の言葉が
あまりにもショックで、しばらく動けなかった。
当時のあたしは、そんなショックに耐えられるほど大人じゃなくて、
そんな時にかけてあげるべき言葉なんて思いつかなくて、
ただ、消えてしまいそうなくらい弱々しい彼女を、
放っておいたらすぐにでも手の届かないところへ行ってしまいそうな彼女を、
何も言わずに抱きしめることしかできなかった。
その存在を確かめるように。
矢口をどこかに連れて行ってしまう大きな闇から守るように・・・・。
強く、強く。
- 142 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時10分35秒
それからしばらくして、矢口は他の階の一人部屋に移って、あたしの隣のベッドは無人になった。
病室が別々になってからも、あたしは暇さえあれば矢口の病室を訪れた。
でも、あたしが病室に遊びに行っても、いろいろな検査等で
矢口と会えないことが徐々に増えていった。
たまに会えたときの矢口は、今までと同じように明るくて、
「もしかしたら 矢口の病気は治るんじゃないかな」なんて思ったりして、
あたしの心は ほんの少しだけ軽くなった。
その後、ずっと入退院を繰り返していたあたしが、
15歳になったばかりの一月中旬、
突然それまでしょっちゅう起こっていた発作が嘘のように治まった。
その日から、あたしが病院にお世話になることはなくなった。
- 143 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時11分11秒
それからも あたしは、毎日 矢口の病室を訪れた。
幸いあたしの通っている高校へ行く途中に病院があるので、
朝、一限目が始まるまで矢口の病室で過ごして、学校が終わってから面会終了まで矢口と笑いあう。
あたしにとって、矢口と一緒にいる時間が何よりも楽しく、大切だった。
日々、少しずつ、しかし確実に近付いてきている大きな闇におびえながら、
あたしは矢口と過ごせる この時間を大切にしていこうと心に決めていた。
それは、今に至るまで毎日欠かさず行われ、
もう矢口の病室通いを始めて2年が経った。
一人ぼっちだったあたしを救ってくれた矢口へのせめてもの恩返し。
- 144 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時11分47秒
──────
─────
────
───
『♪〜〜♪♪〜〜〜♪〜』
その音で、ふと我に返った。
この前、矢口が勝手に設定していた着メロ。
気付くと、前を歩いていた男の人は もういなくて、代わりに駅が立ちふさがっていた。
もう、こんなところまで来ていたんだ・・・
とりあえず、あたしは、コートのポケットから「アチャー、電源入れっぱなしだったか」と
つぶやきながら、うるさく鳴っているケータイを取り出し、その音を止めた。
『受信メール一件』
件名 :愛しの紗耶香サマ
送信者 :矢口
送信日時:02.01.19.PM10:23
紗耶香ー、明日 ナンの日か覚えてる?
- 145 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時12分56秒
病院内でケータイとか使っていいのかよ・・・と思いつつも
切符を買いながら返事を打つ。
『明日?明日はウチの学校でテストがあるけど?』
すると、いつものようにすぐ、返事が返ってきた。
『ちがーう!テストなんかよりもずっと大切なイベントがあるでしょ?』
『大切なイベント?え?何?』
『もぉーっ!いいよ覚えてないなら!矢口もう寝る!』
『ゴメンゴメン。うそだって、ちゃんと覚えてるよ、矢口の誕生日でしょ?』
『覚えてるならちゃんと言ってよーっ!いっつもそうやって紗耶香は・・・』
『忘れるわけないじゃんか。愛しのマリリンの誕生日を・・(笑)』
『なら良いけども・・・。あっ、看護婦さん来た!ごめん、もう寝るね。』
『うん。おやすみ。』
『おやすみ。』
- 146 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時13分27秒
そんな感じのメールのやりとりが終わる頃には、すでに家の前まで来ていた。
「おかえり、紗耶ちゃん。」
「ただいま。」
親は、あたしが毎日矢口の病室に通っていることを知っているので、
多少遅くなっても何も言ってこない。
小さい頃 病気のせいでずっと病院に縛られるような生活をしてきたのだから
その分、今は自由にさせてあげたいっていう考えらしい。
あたしとしては、親のその考えがとても有難かった。
- 147 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時13分57秒
階段を登ってまっすぐ自分の部屋へと向かい、ベッドにダイブ。
テスト勉強は明日、早く起きてやればいいや・・なんて思いながら
意識が遠くなっていくのを感じた。
夢を見た。
背中に真っ白な翼をもった女の子が、突然 一人で歩いている あたしのもとに舞い降りた。
その子の顔は、逆光でよく見えなかったけれど、
何故か彼女がニコッと微笑んだのが分かった。
あたしもつられて微笑む。
すると、その女の子は「ありがと。」と可愛らしい声で言った。
あたしは、何故お礼を言われたのか分からず疑問符を浮かべる。
「何が ありがと なの?」
しかし、その女の子は あたしの質問に答えず、ただもう一度微笑んで翼をひろげた。
途端に辺りが まばゆいばかりの光に包まれる。
あまりのまぶしさに自分の意思とは関係なく閉じられてゆく瞼。
しかし、その短い時間の間にあたしは見た。
さっきの女の子が光の中に吸い込まれてゆく姿を。
目を閉じていても分かる 辺りのまぶしさ。
やっとそれが止んで目を開けると、一人ぼっちだったハズのあたしのまわりには、
たくさんの人がいた。
でも、そこには さっきの女の子はいなくて、
何故か涙が頬を伝った。
- 148 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時14分35秒
「紗耶ちゃん!紗耶ちゃん!!」
母の呼ぶ声で あたしは目を覚ました。
夢の中で泣いていたせいか、目を開いても、辺りがかすんで見えた。
「紗耶ちゃん、遅刻するわよ!今日テストでしょ?」
「ん〜?遅刻ぅ〜?」
オレンジ色のカーテンからまぶしい太陽の光が差し込んでいる。
真冬の朝なのに何だかミョウに暖かくて、少し得した気分になった。
ベッドから体をおこして、思いっきり伸びをする。
まず目に入ったのはベッドの真正面に貼ってあるカレンダー。
20日のところには、ピンクのペンで「矢口's BIRTHDAY」と書かれている。
そこから少し視線を上に動かすと、そこにはワリと最近買った大き目の掛け時計がある。
それを見た瞬間 あたしの動きはピタッと止まった。
顔がどんどん青ざめていくのを感じる。
時刻は8時
始業時刻は8時30分
あたしの家から学校までは急いでも40分以上かかる。
電車を待つ時間等を計算に加えると更に時間がかかるわけで・・・。
つまり、完璧に遅刻だ。
「お母さん!何で起こしてくれなかったのさ!?」
あたしは、そう叫んで、朝食も食べずに、いつもなら一時間かかる身支度を5分ですませて
家を出た。
- 149 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時15分05秒
「すみません!遅れました!!」
あたしが学校に着いたときには既に一限目の半分が過ぎていて、
教室内には、シャーペンで文字を書いていく音のみが響いていた。
試験監督の先生が、さっさと席に着け、と顎で促す。
あたしは、あわてて自分の席に着き問題に取り掛かった。
しかし、普段の授業をまったく聞いていないうえに、
朝早く起きて・・・などという甘い考えから 前日まったく勉強をしていない人間が
簡単に点数を採れるほどテストというものは甘くないわけで・・・。
あたしの点数は、結果など返ってくる前から絶望的だった。
- 150 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時15分38秒
- そのせいで放課後には、立ち直れないくらいヘコんでいて、しばらく動けずにいた。
「ねぇ紗耶香、早く帰ろーよ」
「あっ、ごめん、今日ちょっと寄るトコあるんだ。先帰ってて。」
あたしは机に突っ伏したまま、片手を力なく上げて ゴメンとやる。
「へぇ〜、めずらしいじゃん。紗耶香が寄り道なんて。」
「ん〜〜。指輪取りに行かなきゃいけないんだよね・・・。」
「あぁ、誕生日プレゼントのやつか。じゃあ早く行ってあげた方がいいんじゃない?
朝も行けなかったんでしょ?」
「うん。そうするよ・・・。」
あたしは、けだるい体を起こして、いつも途中まで一緒に帰っている友達に挨拶をして
目的地に向かった。
あたしが指輪を予約している店は、病院とは反対方向で結構遠い。
別に、面会終了時間までに間に合えば良いんだけど、
朝 行けなかった分、できるだけ早く矢口に会いたくて 無意識のうちに早足になっていた。
- 151 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時16分12秒
「あの・・・指輪 予約してた市井っすけど・・・。」
そう言って店の人に、予約証明の紙を渡した。
確認のために見せてもらった指輪は、
あたしの希望通りの 矢口が前から欲しがっていたシンプルなデザインのもので、
きっちり『TO MARI』という文字が刻まれていた。
何か恋人へのプレゼントみたいだな。
これを渡したら矢口はどんな表情をするんだろう。
ふと矢口の喜ぶ顔が頭に浮かんだ。
『矢口、今から行くね。』
いつものように矢口にメールを打って、あたしは店を出た。
- 152 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時18分30秒
店を出ると、先程まで気持ちが良いほど晴れていた空が
厚い雲に覆われ、ポツポツと雨が降っていた。
朝 遅刻ギリギリだった あたしが天気予報なんて見ているわけもなく、
仕方なく濡れながら歩く。
病室について、すぐに渡せるようにコートの右ポケットに入れた
矢口へのプレゼントが濡れないように気をつけながら。
電車に乗って、バスに乗って、駅からまっすぐ歩いて、
雨が降っているにもかかわらず、気持ちは何だか晴れ晴れしていて。
毎日 歩いている道をいつものように歩く。
その間 考えていたのは矢口のことばかり。
いつもと同じように病室に行って、
「朝、来れなくてごめんね」と笑いながら謝って、プレゼントを渡すつもりだった。
そして、またいつものように面会終了まで いろんな話をして、
「矢口 全然19歳に見えないよ」なんて笑ってやるつもりだった。
- 153 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時19分03秒
「やぐ・・・ち?」
今まで毎日訪れた病室。
何故か部屋の中がきれいに片付けられていて、
いつも矢口が寝ているベッドには矢口の存在はなくて・・・。
イヤな予感がする・・・。
窓の外では、さっきまでしとしとと降っていた雨が、いつの間にか本降りになっていた。
「あ・・あの、矢口は・・・?」
あたしは、あわてて病室を出て、廊下を歩いていた看護婦さんに声をかけた。
「え・・あ・・・あの・・。」
看護婦さんは俯いて、言いにくそうに、あやふやに答える。
俯いているためよくは見えないけれど、心なしか表情が暗いような気がする。
そんな彼女の行動が、あたしの心を余計に不安にさせる。
- 154 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時19分36秒
別に、病室を移っただけかもしれないじゃないか。
そんな考えを闇が飲み込んでいく。
そういえば、さっき矢口に送ったメールがまだ返ってきていない。
いつもなら、すぐに返してくるのに・・・。
あたしが、矢口の話を聞いたあの日からずっとおびえていたこと。
”あたし、20歳まで生きられないんだって・・・”
泣きながら矢口が声を絞り出すように言った言葉。
何も言ってあげることのできなかった自分。
こんなこと考えたくないのに。
今は思い出したくないのに。
”明日も来てくれるよね?”
”うん・・・。”
- 155 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時20分10秒
「矢口は!?矢口はどこなんですか!?」
何ともいえない大きな焦りから、ついここが病院だと言う事を忘れて大声を出してしまった。
しかし、いつもなら迷惑そうな顔をする看護婦さんが、
一瞬ビクッとなって俯いたまま小声で
「こちらです。」
そう言って もと来た方向へ引き返した。
あたしも黙って後に続く。
エレベーターに乗って、看護婦さんが3Fのボタンを押す。
その間、あたし達は無言だった。
その看護婦さんは あたしが まだ入院していたときからここで働いていて、
昔から明るく、患者さんたちからも人気があって、
あたしの彼女に関する記憶は、笑っている姿しかない。
そういえば、よく先輩ナースから「うるさい」って怒られてたっけ。
それでも、あたし達は 無言だった。
- 156 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時20分51秒
───ポーン
3Fに到着したことを知らせる音。
その音と同時に扉が開く。
「ここを・・・まっすぐ行ったところです。」
「・・・ありがとう・・ございます・・。」
結局最後まで俯いていた看護婦さんにお礼を言って、言われたとおり真っ直ぐ進む。
暗めの蛍光灯に照らされた 他のものより細い通路。
真っ直ぐ歩いていくと、一つの部屋に突き当たった。
あたしは、小さい頃から入退院を繰り返していた。
せっかく退院できても またすぐに発作が起こって、入院生活に逆戻り。
そんな生活を送っていたから、小さい頃は家にいる時間よりも病院にいる時間のほうが多かった。
だから、この病院のことは詳しくて。
だから、あたしには分かっちゃうんだ。
さっき看護婦さんの声が震えていた理由も、
この部屋が何なのかも。
あたしは、一度ゆっくりと深呼吸してドアノブに手をかけた。
その部屋のドアプレートには”霊安室”と書かれていた。
- 157 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時21分55秒
薄暗い部屋。
入ってみると意外と広くて、その広い部屋の真ん中にベッドが置いてあって・・・。
たった一つの小さな電球が照らしているそこに
顔に白い布をかけられて、一人の少女が眠っていた。
この前、久々に外泊許可が出たときに「染めちゃった♪」と嬉しそうに語っていた
金色のサラサラしたきれいな髪。
チャームポイントだと言っていた小さな体と小さな可愛い手。
その少女は、紛れもなく、正真正銘 ─── 矢口真里だった。
白い布をとると、そこには眠っているかのような幸せそうな表情をした
あたしの大好きな顔があった。
本当に突然 目を覚まして 「ばーか、矢口がそんなに簡単に死ぬわけないだろ〜?」と
いつものように明るい声で言ってくれるんじゃないかという、
そんな淡い期待をもってしまうくらい。
そんな自然な表情。
その顔を見たとたん、今までこらえていた涙があふれた。
- 158 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時22分37秒
その日は偶然矢口の誕生日で
その日に限って寝坊して
その日に限って病院に行くのが遅れて
その日に限って雨が降って
その日はいろんなことがありすぎて
別に今日じゃなくてもいいのに
それでも今日 ───── 矢口は死んだ。
その日、あたしは初めて毎日欠かすことなく行われてきた矢口との約束を破った。
- 159 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時23分16秒
「バカ・・・何で約束守らしてくんないんだよ・・・。
そんなのズルイよ・・・。
矢口が待っててくれなきゃ約束守れないだろ?
いつもみたいに何か言い返して来いよ・・・
何で返事してくれないんだよ・・・
何で勝手にいなくなっちゃうんだよ・・・」
涙が次々とあふれる。
ポタポタと矢口の細い腕に涙が落ちる。
いつかは この日がくるってことは分かっていた。
覚悟もしていたつもりだった。
でも、こんなに早く来るとは思っていなかった。
こんなに辛いものだなんて思っていなかった。
昨日まではあんなに元気だったのに。
矢口のことだから、もしかしたら あたしに心配かけまいとわざと元気に
ふるまっていたのかもしれない。
矢口は、そーゆー子だから。
- 160 名前:光の中 投稿日:2002年02月25日(月)20時23分48秒
グイッと服の袖で次々と流れる涙をぬぐって
無理矢理 笑顔をつくって矢口の手をとり
「19歳おめでとう、矢口。」
あたしは、そう言って
今日渡すはずだった指輪を 矢口の冷たくなった小さな手の細い指にはめて、
ふっくらとした唇にそっとキスをした。
そのうち きっと 追いつくから。
君がしてくれたように
ひとりぼっちの君のもとに 僕は突然あらわれて
そして言うんだ
僕の伝えられなかった言葉を
光の中で。
何もできなかった
何故だろう 何だか恥ずかしくて、ガラにもなく照れたりして
だから今度こそ大切な言葉をつたえよう
光の中で。
fin.
- 161 名前:ぷち改め ”イチヤ” 投稿日:2002年03月25日(月)16時53分21秒
「運命の人」再開します。
遅れてしまって本当に申し訳ありません。
もう、バカかと。
お前のなかの「近いうち」は、一ヶ月以上経ってからのことを言うのかと、
お前は、こんな駄作でも読んでくださっている心優しい読者様を待たせる権利があるのかと、
小一時間問い詰めてやってください。
本当に申し訳ありませんです。(土下座)
放棄だけはしないよう一生懸命ガンガリマスので温かい目で見守ってうやってください。
- 162 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年03月25日(月)16時55分11秒
廊下からでも声が聞こえるザワザワと騒がしい教室。
「1−8」と書いてあるドアプレートの下のその扉をガラッとあけて
矢口は大声で挨拶。
「おはよーっ!」
その声にクラスでおしゃべりに夢中になっていたクラスメイト達が
一時おしゃべりを中断して、笑顔で挨拶をしてくれる。
「おはよーっ!矢口に紗耶香。」
このクラスの人達は、紗耶香に対してそんなに興味がないらしく、
矢口に言いがかりをつけてくるような子は一人もいない。
だから、このクラスは凄く過ごしやすかった。
もしかしたら、みんな矢口に気を遣ってたのかもしれないな。
「はよっす。」
後ろから遅れて紗耶香も、けだるそうに入ってきて挨拶。
みんな矢口に対してと同じように笑顔で挨拶をして、また おしゃべりに戻った。
みんな それぞれ思い思いに席を離れて、
楽しそうに自分の好きなことをしている。
朝のこの時間は勉強ばかりの学生さんにとっては、
昼食と昼休みに次ぐ大事な時間と言えるだろう。
- 163 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年03月25日(月)16時55分56秒
「何〜?2人とも またケンカしたの〜?」
矢口たちの様子を見て、すでに教室に到着していて、自分の席でのんびりと本を読んでいた
柴田こと柴田あゆみが、あきれたような口調で話しかけてきた。
「え?何で分かんの?」
紗耶香が、机にカバンを置きながら柴田に不思議そうな顔で聞く。
「だって、2人とも離れて歩いてたじゃん。
いつもは、見てるこっちがイヤになるくらいベッタリなくせに・・・。」
「べ・・別にケンカとかじゃない・・・ヨ。」
必要以上に頷きながら紗耶香も続く。
「そうそう。矢口があまりにもモテすぎる市井に妬いちゃってさぁ・・・。
まぁ、そーゆーとこが可愛いんだけど・・・。
ねぇ、どう思う?柴っちゃん。」
「べ・・別に妬いてなんかないもん!紗耶香が勝手にそう思ってるだけでしょ?
てゆーか、自分でモテすぎるとか言うようなヤツって最悪だよね?柴田もそう思うでしょ?」
- 164 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年03月25日(月)16時56分31秒
「いや・・私にふられても・・・」
2人に詰め寄られた柴田はそう言って困ったように笑った。
「そうだぞ矢口!柴っちゃんが可哀想だろ!?」
「はぁ?紗耶香人のコト言えないでしょ!?」
「ちょっと、そんなコトでケンカしないでよぉ・・・」
柴田につられて偉そうに矢口に言う紗耶香と、それにキレてる矢口、そしてそれをながめる柴田。
「そうだぞ矢口!そんなコトでムキになるなよ!」
「ムキになってるのは紗耶香の方じゃんか!」
「もぉ!2人ともケンカは・・・」
そんなやりとりを何度も何度も続けているうちに、
担任がいつものように不機嫌そうな顔で教室に来て、みんなそれぞれの席についた。
まだ、このクラスは席替えというものをしていないため、出席番号順の席に座っている。
つまり、出席番号1番の紗耶香と34番の矢口は
廊下側の一番前の席と、窓際の席の一番後ろという一番遠い場所になってしまう。
まぁこれに関しては矢口が”赤井”とか”上野”とかいう苗字の人と結婚するくらいしか
解決方法がないので、ため息をつきながらも おとなしく矢口も席に着いた。
- 165 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年03月25日(月)16時57分06秒
いつものように、退屈だけど充実した時間が当たり前のように
ゆっくりと、決して急ぐことなく過ぎていく。
今日は苦手な教科ばかりある一週間のうちで一番嫌いな日だったけれど
終わってみればそんなのは どーでもいい事だし、
昼休みには、いつものように紗耶香にパンをおごらされたけど、
そんなのも楽しかったし。
そんな風にぼんやりと一日を過ごしてふと気付くと放課後になっている。
いつもと同じ毎日だけど矢口はそんな日常が大好きだった。
「矢口ー。帰ろうよぉ」
「あっ、今行くー。」
紗耶香の催促する声に机に突っ伏してぼんやりしていた矢口は身体を起こして
トトッと扉の前で待っている紗耶香のところに走った。
「何やってたの?」
「あっ、いや ボーっとしてた。」
何気なく紗耶香の手をギュッと握りながら
ちょっと照れ気味にそう答えて歩き始めた。
- 166 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年03月25日(月)17時02分50秒
「あっ!」
「んあ?どした?」
校庭の真ん中くらいのところまで来て、ふと思い出した。
その声に驚いたように立ち止まった紗耶香が、突然大声を出した矢口に不思議そうに聞く。
「忘れ物。教室にカサ置いてきちゃった。」
「だから降らないっつったろ?こーんなに晴れてるのにさ。」
そう言って紗耶香はカラッと晴れた雲ひとつない真っ青な空を指差した。
矢口は、そんな紗耶香に頬をふくらませて
「うるさいなー、朝は降ると思ったんだよぉ。
矢口、降水確率30%以下じゃないと信用しない主義なんだって!
ゴメン紗耶香、ちょっと校門のトコで待っててくれない?」
そう言って手を合わせる矢口に紗耶香は親指で自分自身をさしながら
「ん?市井が入ってこよーか?」
「いや、イイよイイよ。そんくらい自分で行くからさっ」
矢口はいつでも自分のことを気遣ってくれる紗耶香の優しさに
自然にニヤけてしまう顔の筋肉を抑えながら、踵を返した。
- 167 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年03月25日(月)17時03分20秒
こちら側に向かってくる生徒達の波に対して反対方向に走る。
これでも、中学時代は陸上部だったから体力には自信があるんだ。
「矢口!何かあったら市井を呼べよ!」
運動部の生徒達の練習する掛け声や、楽しそうにおしゃべりをしている帰宅部の生徒達の
楽しそうな声に混じって紗耶香の心配そうな声を背中で感じながら
矢口は、あわてて教室へ向かった。
- 168 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年03月25日(月)17時04分03秒
途中クラスの友達に会って挨拶したりしながらだったけれど
比較的時間をかけずに教室にたどりつけた。
「あれぇ?柴田まだ残ってたの?」
ガラっと扉を開くと、てっきり誰もいないと思っていた教室に
バレー部の子達に混じって楽しそうにおしゃべりをしている柴田の姿を発見した。
柴田は矢口の姿を確認するとトトッと入り口のところまで走ってきた。
「うん。あたしバレー部に入ろうと思ってさ。
・・・そっちは?もう帰ったんじゃなかったの?」
「あっ・・うん、ちょっと忘れ物しちゃって・・・。
てゆーか柴田、バレー部なんか入るの?ウチの学校のバレー部って
メチャメチャ厳しいんじゃなかったっけ?」
うれしそうな笑顔で話す柴田に矢口は聞く。
「うん・・・ホント言うとバレー自体はどーでもいいんだけどね、
実はバレー部にすごくカッコイイ先輩がいるらしいの・・・。」
矢口の質問に柴田は真っ白なきれいな頬を少し赤く染めて俯き気味に答えた。
- 169 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年03月25日(月)17時06分20秒
柴田がそーゆーこと言うなんて珍しいな・・・。
そんなコトをふと思うと、矢口のイタズラ心が、、むくむくと湧き上がった。
「ねぇねぇ柴田、その人 そんなにカッコイイの?」
「うんっ!すっごいカッコイイ!てゆーか綺麗!」
おそらくニヤけているだろう矢口に、柴田は少し興奮気味に答える。
矢口はそんな柴田が面白くて、ついついからかいたくなってしまい、
少し本気っぽい低めの声で
「じゃあさ・・・矢口、告っちゃおうかな・・・。」
一瞬の沈黙。
今まで笑顔だった柴田の顔がぴしっと固まった。
- 170 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年03月25日(月)17時06分54秒
「ダメーっ!!!
矢口さんには市井さんがいるでしょ?そんなの絶対ダメ!!」
矢口の予想通り 柴田は顔を真っ赤にして凄い勢いでそう言った。
そんな真面目すぎる柴田が かわいくて、 笑いながら少し背伸びをして
柴田の頭をポンポンと叩きながら言う。
「大丈夫だって、矢口は紗耶香 ひとすじだからさっ♪
それに 柴田かわいいから絶対大丈夫だってば。」
「もう・・・からかわないでよぉ・・・。
てゆーか、早く行かなくていいの?市井さん待ってるんでしょ?」
柴田は、まだ赤いままの顔で不満気にそう言って、
傘立てから矢口の水色の傘をとって渡してくれた。
「おっ、ありがと。
それじゃぁ、矢口帰るけど、柴田頑張れよ!
あっ、モチロン部活の方もねっ。」
そう言って矢口は教室をあとにした。
- 171 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年03月25日(月)17時07分25秒
廊下に一定の間隔を置いてかけられている時計を見ると
紗耶香と分かれてから、もう20分もたっている。
ヤバイ・・・紗耶香怒ってるかも・・急がなきゃな・・・。
そう思って走り出そうとしたところで、なんとなく顔を上げるとこちらに向かって歩いてくる
女生徒達と目が合った。
なんとなく気まずくて目を伏せて歩いていると、
女生徒たちが矢口の前で立ち止まった。
- 172 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年03月25日(月)17時08分22秒
「ちょっとアンタ」
その声にふと顔を上げると、化粧濃いめの目つきの悪い三人の女生徒が
矢口のことを見下ろしていた。
名札の色を見る限りでは、三人とも一つ上の2年生のようだ。
うわっ、どーせいつものアレだろうな・・・。
矢口は慣れた口調で
「何か用ですか?」と一言言って、キッと睨みつけてみた。
すると、矢口のその態度が気に障ったのか真ん中にいたリーダー格っぽい髪の長い女生徒が
「”何か用ですか?”じゃねーよ!
とぼけてんじゃねえぞ コラァッ!!」
と大声でヤクザさながらの口調で叫んだ。
あーあ、めんどくさいなぁ・・もう・・・。
早く紗耶香のトコに戻らなきゃなんないのに・・・。
そんなことを思いつつも、一応 まったく面識のない相手とはいえ、
仮にも相手は一つ上の先輩だ。
本当なら こんなの無視してさっさと帰っちゃいたいんだけども・・・。
- 173 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年03月25日(月)17時08分54秒
「あのぉ、私、急いでるんですけど・・・。」
その言葉どおり露骨に嫌な顔をして そう言うと、
今度は右側にいる少し太り気味・・・いや、ぽっちゃりしている女生徒が大声を上げた。
「コイツ、むかつくーっ!アンタ、なんでウチらに集合かけられてんのか分かってるんでしょ?」
「アンタ、さっさと紗耶香サマと分かれてくれない?
紗耶香サマ困ってんでしょ?」
リーダーが続いて大声を出す。
やっぱり紗耶香のことか・・・。
入学して以来、一人で歩いているときにこーゆーコトがあるのは、
決して珍しいことではなかった。
もちろん紗耶香と2人でいるときは直接こーゆーことされるってのは
絶対ないんだけど・・・。
(むしろ、気持ち悪いくらい愛想笑いしてくる。)
- 174 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年03月25日(月)17時10分20秒
- そもそも入学して一ヶ月ちょっとしか経ってないのに
紗耶香は何でこんなにも人気があるのか・・・。
そりゃぁ、紗耶香はメチャメチャ カッコイイよ。
優しいし、勉強も出来るし、一緒にいて楽しいし・・・。
それであってもモテすぎじゃぁないか?
いや、それだけ紗耶香に魅力があるってコトなんだろうけど・・・
でも、彼女としては 付き合ってる人がモテすぎるっつーのも
それはそれで ちょっと・・・いや、かなりイヤなんです・・・。
だから何てゆーか、
自分が今みたいに紗耶香のことに関して呼び出しくらうよりも
紗耶香が他の女の子達にキャーキャー言われてる方がずっとツライかも・・・。
- 175 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年03月25日(月)17時10分55秒
「ちょっとアンタ シカトしてないで答えろよ!」
答えろと言われても何と答えればいいのやら・・・
多分、「紗耶香とはキッパリ別れます」とか言えば許してくれるんだろうけど、
矢口は別れる気なんてサラサラないし・・・。
てゆーか、矢口と万が一別れたとしても
紗耶香、この人たちとは付き合わないと思うんだけどな・・・。
でも、そんな事は口が裂けても言えないから、
とりあえず あいまいに返事をするしかない。
「は・・・はぁ・・・。」
でも、それが余計に三人の女生徒達の気に触れてしまったようだ。
「何だよ その態度!調子乗ってんじゃねーよ!」
その言葉と同時に矢口の視界がグラっと揺れ、
ゴスッという音とともに頭に激痛がはしった。
- 176 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年03月25日(月)17時11分26秒
リーダー格のヤツが矢口のことを突き飛ばしたんだ。
いくら女の子の力とはいえ、
身体の小さい矢口はいとも簡単にふきとんでしまった。
「いったぁ〜、何すんのよ!?」
「別にぃ〜?」
矢口の非難に、突き飛ばした張本人は何でもないような顔でニヤニヤと
こちらを見下ろして答えた。
ムカつく・・・!!
しかし、こっちは一人、相手は三人。
しかも当然のことながら向こうは全員矢口より断然背が高い。
どう考えても勝ち目はない。
いくら頭に血が上っていても そのくらいは分かった。
矢口に出来ることは、三人を下から睨みつけることくらいしかなかった。
- 177 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年03月25日(月)17時12分03秒
「ねえ、コイツさ、 フクロにしちゃおうよ。」
「そうだね、コイツ態度悪すぎだし。」
「そうだよ、こんなの中学時代シメた後藤以来だよ。」
リーダー格の意見に他の2人の厚化粧がニヤニヤしながら答える。
そんな様子を見てビクッと肩を振るわせた矢口を
まるで小動物をいじめる少年のような目つきで見下ろし、
リーダー格のヤツが、矢口の胸倉をつかもうと手を伸ばした。
もうヤだよ!
助けてよ 紗耶香!!
矢口はギュッと目を硬く瞑り、覚悟を決めた。
ただ、紗耶香の助けがくるのを願って。
「ちょっとアンタら、ひとり相手に3人がかりで何やってんの?」
- 178 名前:ぷち改め ”イチヤ” 投稿日:2002年03月25日(月)17時19分05秒
- =
更新終了です。
从 ~∀~ 从>アンタ、どんだけ時間かかっとんねん!
アンタのこの駄文が板を汚してんのが分からへんのか?
作者 >すんません。
ヽ^∀^ノ >こんなのさっさと終わらせちゃいなよ。
邪魔になるだけなんだからさ。
作者 >はい、出来るだけ急ぎます・・・(涙目)
从 ~∀~ 从>”出来るだけ”やのうて、きっぱり言えやゴルァ!
作者 >は・・はい!急がせて頂きます!!
ヽ^∀^ノ >こんなヤツだけど、やる気だけはあるんで、許してやってください(ペコリ)
>>126 さん
>>127 さん
お待たせして本当に申し訳ございません。
しかも、結局 「さやまりを無茶苦茶にした人」は、今回でてこなかったし・・・。
次回、登場する予定です。
本当に申し訳ありませんでした。
- 179 名前:読んでる人 投稿日:2002年03月26日(火)13時15分50秒
- 更新待ってました♪
放棄じゃないと判って安心しました。作者さんのやる気も判りましたし・・・
あと、さっさと終わらせよう、なんて悲しいコト言わないで下さいよ〜。
いよいよ、あの人の登場ですね、楽しみ〜。
- 180 名前:ぷち改め ”イチヤ” 投稿日:2002年03月26日(火)17時25分08秒
- すいません。
間違い発見してしまいました。
>>164 ×「それをながめる」
○「それをなだめる」
>>166 ×「市井が入ってこようか?」
○「市井が行ってこようか?」
あぁ・・確認して投稿してるハズなのに・・・。
憂だ・・・逝って来ます・・・。
- 181 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月09日(火)09時15分08秒
- そろそろ更新をお願いしたいんですが・・・
- 182 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年04月14日(日)20時15分48秒
- 「ちょっとアンタら 一人相手に3人がかりで何やってんの?」
・・・さや・・・・か・・・?
いや、だったらコイツらがこんなにおとなしいハズはない。
もし相手が紗耶香だとしたら、バレバレの言い訳を必死になって
続けるだろうし・・・
(まあ、紗耶香は単純だからそんな言い訳を信じちゃうんだけども)
・・・じゃあ、一体だれ・・・?
- 183 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年04月14日(日)20時16分20秒
ギュッとつむっていた目をゆっくり開くと
そこには、
紗耶香よりも背が高くて
紗耶香よりも髪が長くて
紗耶香と同じくらい細い・・・
そして、紗耶香みたいに顔のつくりが丁寧な
すごくスタイルの良いジャージ姿の女生徒が三人の女生徒を睨みつけていた。
あのジャージはバレー部かな・・・
そんなコトを考えながら長身の美少女を見つめていると
ふいにこちらをチラッと見た彼女と目があってしまった。
彼女は一瞬柔らかい笑みを見せ、パチッとウィンクをした。
まかせとけ・・・矢口にはそういう意味に感じられた。
- 184 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年04月14日(日)20時17分03秒
美少女は視線を三人組に戻すと、
矢口に対しての人の良さそうな笑みとはうってかわって
先程の鋭いにらみで
「ねぇ、何やってんの って聞いてんだけど・・・。」
「あ・・・いや、その・・・」
一方睨みつけられた三人組は、さっきまでの威勢のよさが嘘のように
オドオドしている。
まさに、蛇に睨まれた蛙だ。
「ヤバイよ・・・この人 6組の飯田さんじゃん・・・」
「この人にかかわったら後で三年に呼び出されるって、絶対。」
「ど・・・どうしよ・・・」
3人は何やらコソコソと言い合って
誰でもわかるような作り笑いを浮かべ
「矢口さん、これからは廊下を走らないようにね」
「私達が注意しなかったら大怪我してたかもしれないよ。」
「良かったね、私達が偶然通りかかって。」
そう言ってそそくさと逃げていった。
明らかに嘘だと分かる彼女達の捨てゼリフが彼女達をいっそう惨めに思わせた。
- 185 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年04月14日(日)20時17分43秒
「あ・・・あの、ありがとうございました・・・」
あわてて矢口は、絶妙なタイミングで手を差し伸べてくれた長身の彼女のもとに
駆け寄って、深々と頭を下げた。
「あぁ、いいよいいよ、頭なんか下げなくて。
カオリは当然のことをしたまでだからさ。」
顔を上げると彼女の顔は、さっき一瞬だけ見た柔らかい表情に戻っていた。
彼女は笑顔のまま心配そうな声で
「それより大丈夫?怪我とかない?」
そう言った。
その声は本当に矢口のことを心配してくれているようにしか感じられなくて、
何だか嬉しくなった。
「あっ、ハイ 大丈夫です。ちょうどギリギリのところで助けていただいたんで・・・」
矢口が笑顔でそう言うと美少女は心底安心したように ふぅと息をついて
「そっか、なら良かった・・・。
それじゃ、カオリはこれから部活があるから行くね。」
そう言うと体育館のほうに向かって歩き出した。
すごい親切な人だったな・・・しかもメチャメチャ キレイだし・・・
矢口はその背中をぼんやりと見つめていた。
- 186 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年04月14日(日)20時18分29秒
「あっ、そーだ。」
「えっ、ハイ?」
長い髪をなびかせてクルッと振り返った彼女に何故か慌ててしまう。
しかし、彼女はそんなコトは気にせず続ける。
「そーいやさ、名前 聞いてなかったよね。何ていうの?」
「えっと・・・矢口真里です・・・。」
普段なら 先にそっちが名乗るべきでしょ?なんて強気に言う矢口だけど、
この人に対してはなぜかミョウな緊張があって、
素直に答えてしまった。
まぁ、こっちは助けてもらった身なんだから
当たり前といえば当たり前なんだけども・・・。
「ふーん、可愛い名前だね。よろしく、真里ちゃん。」
別に名前を褒められただけであって、自分自身のことを言われたわけではない・・・
そんなコトは分かっているのに、それでも何だか照れてしまう。
「あ・・・・ありがとうございます。」
矢口がそう言って、差し出された真っ白でとてもキレイな手を握ると
美少女はニッコリと微笑んでくれた。
- 187 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年04月14日(日)20時20分05秒
「あ・・あの、先輩の名前は・・・?」
矢口的にはごく普通な質問をしたつもりだった。
名前を答えたらこっちも相手に同じコトを聞くのは全然普通なことだと思うし、
むしろ、助けてもらっておいて名前も聞かないなんてのは、
そっちの方が断然失礼だと思うし・・・。
それなのに、矢口の一言で、さっきまで女神のような笑顔だった彼女の表情がピシッと
固まった。
少しの間の後、美少女は 信じられないと言いたげに右手で自分の頭を抑えて、
「えっ・・・ちょっとアナタ、カオリのこと知らないの?」
「知らないの?って私達・・・」
初対面じゃないですか?と続けようとした矢口の言葉は、
彼女の勢いにさえぎられてしまった。
「アナタ、本当に知らないの?
学園一の美女であり、バレー部のホープでもあるこの飯田圭織様を知らないわけ?」
- 188 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年04月14日(日)20時21分59秒
バレー部ホープ・・・
じゃあこの人が柴田の言ってたすごくカッコイイ先輩かな・・・
そんなコトをぼんやり考えていると、
自称学園一の美女は矢口の肩を軽くつかむと、ため息をついて
ものすごく真剣な顔でもう一度同じ質問をしてきた。
「ホントのホントにカオリのこと知らないの?
アナタ、ホントにこの学校の生徒なの?」
「えぇ・・・残念ながら・・・。」
矢口の返答を聞いて飯田先輩は、ガクッと肩を落として、本当に残念そうに
「そう・・・。」
そう言って、ものすごく悲しそうな表情になった。
- 189 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年04月14日(日)20時22分32秒
- 「先輩ー!そろそろ練習始まりますよー!
なんか、新入部員が入るとかで・・・」
何だか悪いことをしてしまったような気になってオロオロしている矢口と
著しくテンションが下がってしまっている飯田先輩(身長差20cm以上)。
二人のもとにバレー部の一年生が声をかけに走ってきた。
まだ入部したばかりな彼女は、飯田先輩の着ているような
部ごとで指定されているジャージではなく体育で使う体操服だったけれど、
それでも彼女は部活動を心から楽しんでいるんだろうということが
活き活きした表情からうかがえた。
飯田先輩はそんな後輩に
「わかった、すぐ行くー!」
とさっきのキリッとした表情に戻って、さっき話していたときよりも少し低めの声で
答えて、体育館へと走って行った。
- 190 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年04月14日(日)20時23分06秒
途中、一回クルッと振り返って、飯田先輩は矢口をビシッと指差して
「カオリについて近いうちに思い知らせてあげるから待ってなさいよ!」
そう言って、体育館に消えていった。
矢口は、そんな彼女の後姿をただ唖然として見送った。
「変な人だったな・・・なんなんだろ・・・あの人。」
矢口が誰に言うでもなくそうつぶやいて、
なんとなく手をついた壁にある掛け時計を見ると
大分時間が過ぎていたことに気付いた。
- 191 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年04月14日(日)20時24分05秒
「ヤバイ・・・紗耶香 絶対怒ってる・・・」
矢口はあわてて紗耶香のもとへと走った。
でも、走っている間中、頭の中にあったのは飯田先輩のことばかりだった。
矢口はそのとき、あんな変な人に会ったのは初めてだったからだ、と
自分で納得していたんだけれど、
後になって、それが勘違いだったってコトに気付くことになる。
- 192 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年04月14日(日)20時30分06秒
- =
更新終了。
从 ~∀~ 从<結局、時間かかっとるやないかゴルァ!!
ヽ^∀^ノ<しかも、コイツ更新は全然しないくせに、HPとか作ってたらしいよ。
从 ~∀~ 从<それが、凝ったHPやったらええんやけどなぁ・・・
ヽ^∀^ノ<いや、それがすっごいちゃっちくてさあ・・・。
よく、あんなの公開できるよね。
从 ~∀~ 从<ちなみに、アドは
ttp://www.geocities.co.jp/MusicStar-Bass/2288/index.html
>>179さん
ありがとうございます!!そう言っていただけるとすごく嬉しいです。
もうちょっと頑張ってみますYO!
本当にありがとうございます。
>>181さん
すみません、更新遅れてしまって・・・。
できるだけ、早くしたいのですが・・・。
本当に申し訳ないです。
- 193 名前:読んでる人 投稿日:2002年04月15日(月)09時29分28秒
- 飯田さんのキャラが、なんかイイ!!
さて、いよいよ矢口の運命の人が現れましたね。
まあ、市井矢口飯田の関係の結末は判ってるんですが、
そこに行き着くまでの経緯がどーなるのか楽しみです。
- 194 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月10日(金)19時00分56秒
- なんかいいですね〜。
今日全部読みました。特に
光の中?でしたっけ?超〜感動です!
- 195 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月23日(木)17時54分33秒
- まだですかぁ
- 196 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月24日(金)13時20分07秒
- 飯田先輩かっこよくて素敵
だけどバスケ部じゃなかったのか?!
- 197 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年05月26日(日)18時35分04秒
急いで校門まで走っていくと、
そこには矢口と一緒にいるときと同じ笑顔で微笑む紗耶香と、
懐かしい制服を着た後藤…後藤真希がいた。
後藤は中学時代剣道部だった紗耶香のひとつ下の後輩で、
紗耶香にとても懐いていた。
もともと運動神経が良くて、剣道のほうもかなり良い成績を残しているらしい。
おまけにグラビアアイドルにも勝るようなルックスだ。
もし、ウチの中学が共学だったら多分毎日男をとっかえひっかえしてもおつりがくると思う。
実際、放課後になると中学の前には毎日のように後藤見たさに他校から
中、高問わず男子生徒が殺到していた。
それだけ人気があったにもかかわらず後藤は誰とも付き合ったりする気配はなかった。
紗耶香つながりで後藤と仲良くなった矢口は、一度だけそのことについて
後藤に尋ねてみたことがあった。後藤は、
「好きな人いるからさ。でもその人彼女いるんだ」
とだけいつものふにゃーっとした笑顔で言って、
相手の名前はいくら聞いても教えてくれなかった。
でも多分その相手は紗耶香なんだと思う。
そう言えば、後藤が剣道部に入ったのは紗耶香に近付くためだっていう噂があった。
後藤は護身用だって言ってたけど。
- 198 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年05月26日(日)18時35分41秒
「あっ!やぐっつぁんだぁ!!」
なんとなく楽しそうに話しているふたりに声をかけられずにいた矢口に、
後藤が嬉しそうな笑顔で手を振った。
「遅いぞぉっ!」
後藤の声に紗耶香もわざとらしく怒ったような言い方で続く。
「ごめんごめん、ちょっといろいろあって…」
矢口が笑いながら駆け寄ると後藤がニヤニヤしながら耳打ちしてきた。
「やぐっつぁーん、いちーちゃんったらね、さっきから心配そうな顔で
何回も時計ばっかチラチラ見てたんだよー。愛されてるねぇー!」
「あっ、コラ後藤!余計なこと言うなよ!」
紗耶香は後藤の後ろにまわって首を絞めるマネをした。
矢口は、後藤、ちょっと見ない間にまたキレイになったよなぁ…なんて思いながら
じゃれあっているふたりを見ていた。
しばらく3人で騒いだ後、5時のチャイムを合図にお開きにすることにした。
- 199 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年05月26日(日)18時37分06秒
「じゃあ、ごとーこっちだから…」
「ん、そっか。わざわざありがとね。写真持ってきてもらっちゃって…」
「ん〜、いいよぉ別に。愛しのいちー先輩のためだもん」
わざとらしく「いちー先輩」を強調してイタズラっぽく言う後藤の頭を
嬉しそうにクシャクシャとなでる紗耶香。
そんなふたりを笑いながら見つめる矢口。
何気に胸がチクッと痛んだけれどそんなのには気付かないフリ。
「じゃあねぇー。いちーちゃん、やぐっつぁん」
「気をつけて帰れよー!」
紗耶香にクシャクシャにされた髪を整えながら、可愛らしい笑顔でブンブンと手を振る後藤に
手を振り返して、ふたりで並んで歩く。
- 200 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年05月26日(日)18時37分48秒
しばらくぼんやり歩いていると突然、紗耶香がポリポリと頬をかきながら真剣な顔で
「そーいやさ、なんかあった?」
とまっすぐに矢口の目を見て言った。
その瞳には心配の色が見えた。
何のことについて言っているのか分からず矢口が、何が?と聞くと、
押していた自転車のスタンドを止めて、自分も立ち止まり
「戻って来んの遅かったっしょ?」と言った。
「あぁー、ちょっと…その…いろいろありまして…」
矢口が俯いてゴニョゴニョとそう言うと紗耶香は、いつもの?と言って矢口の顔を覗き込む。
紗耶香の心配そうな顔にドキッとしながらもコクンと頷く。
そんな矢口の様子を見て紗耶香は、前髪をかきあげて
「そーゆーときは、市井を呼べって言ってるだろぉ?」
なんのためのケータイだよ、と言って矢口の頭を軽くこづいた。
「いったぁー」と矢口が大袈裟に言って顔を上げると、ふいに目があって
紗耶香はニコッとすごく優しい笑顔で微笑んでくれた。
その笑顔で、さっきから胸の奥にあった不安とか後藤への小さな嫉妬はふきとんでしまった。
- 201 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年05月26日(日)18時38分20秒
「よっしゃ、矢口、後ろ乗れ、後ろ!」
紗耶香はやたらハシャギ気味でそう言ってポンポンと自転車をたたく。
「え?紗耶香、帰りは上り坂だから押してくっていつも言ってんじゃん」
「いや、今日は乗りたい気分なんだって!乗って、乗って!」
何だか子供みたいな紗耶香が妙に可愛くて、何だか妙に嬉しくなっちゃって、
「紗耶香、途中でギブアップとか無しだかんね!」
そう言って、自転車に飛び乗って紗耶香の背中に抱きついた。
自転車は風を切ってどんどんスピードを上げていく。
あわただしい朝と違った夕方のゆったりとした通学路。
「ねぇ、紗耶香さぁ、他の子には結構そっけないのに後藤にはメチャメチャ優しいよね」
「いや、市井は誰にでも優しいぞ。うん。」
「はいはい…」
おどけて言う紗耶香に冷たく対応する矢口。
「…なんつーのかなあ…後藤は妹みたいなモンだし…」
「妹かぁ…」
「何?安心した?」
「そっ…そんなんじゃないもんっ!」
おそらくニヤニヤしているであろう紗耶香の頭をぺシッとはたく。
- 202 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年05月26日(日)18時38分50秒
ふたりを橙色に照らす低い位置にある夕日を見て、
ずっとこのままでいられたらいいのに…とふと思った。
そのとき、ふたりは幸せだったのに…別れる気配なんて全然なかったのに…
別々になるなんて考えてもなかったのに…
それでも何故か妙に不安になっちゃって、
紗耶香の華奢な身体にまわしている腕にギュッと力を込めた。
さりげなくその腕に紗耶香がハンドルを握っていない方の手を
そっとそえてくれたのがすごく嬉しかった。
それから家に着くまでふたりでいろんな話をしたけれど、
何でか飯田先輩のことは言い難く感じて話題に出せなかった。
別に話しても何の問題もないはずなのに…
それでもやっぱり話せなかった。
- 203 名前:イチヤ@作者 投稿日:2002年05月26日(日)18時46分09秒
- =
更新終了です。
中学生な後藤さん登場です。
从 ~∀~ 从<あんたなぁ…大概にせえや…
作者 <ビクッ!!
从 ~∀~ 从<前の更新からどんだけ開いてると思てるんや…ああ?
作者 <す…すみません…最近忙しくて…そ…その、じ…時間がなくて…
从 ~∀~ 从<何甘えたことぬかしとんじゃゴルァ!
時間ゆうんはなぁ、誰にでも平等に24時間あるんや!
睡眠時間削ってでもなんとかせぇや!!
作者 <す…すみませんです…ごめんなさい…
从 ~∀~ 从<しかも、量少なすぎやないか?これ。
作者 <いや…区切りが…
从 ~∀~ 从<あぁ?アンタ言い訳するんか?
作者 <い…いえめっそうもございません!!
- 204 名前:イチヤ 投稿日:2002年05月26日(日)18時55分08秒
- >>193 読んでる人さん
更新遅れて申し訳ありません。
飯田さんのコト褒めてもらえるなんて・・(感涙)
飯田さんは、おそらくこのキャラのまま最後まで行くかと思われ…(w
>>194 さん
あ…ありがとうございますっ!!
あんな駄作を褒めていただけるなんて・・・(ウッウッ
実は、「光の中」に関して全く反応がなかったんで、凹んでたんですけど
194さんにそう言っていただけて、自信回復しました。
本当にありがとうございます。
>>195さん
本当に申し訳ありません。
早くしよう早くしようとは思っているんですが、なかなか書けなくて…
本当に申し訳ないです。
こんな駄目作者ですが、
もしよろしければ最後までお付き合いいただけると嬉しいです。(ペコリ
>>196さん
うあっ!本当だ!!すみません、完全にこちらのミスです!!
言われるまで気付かなかった・・・(鬱)
わざわざご報告ありがとうございました。
えっと、一応、飯田さん=バレー部でお願いします。本当に申し訳ないです。
- 205 名前:読んでる人 投稿日:2002年05月29日(水)09時02分57秒
- 後藤登場というコトで、これで市×矢関係崩壊のカギを握る人たちが揃った・・・のかな?
しかし、自転車のシーンがなんかせつないね・・・。
- 206 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)09時39分13秒
- 続き読むのが恐いっス・・・
- 207 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月01日(土)15時03分24秒
- がんばって〜!!
- 208 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月02日(日)09時58分26秒
- 楽しみっす
- 209 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年06月02日(日)18時04分21秒
──翌朝
いつものように遅刻ギリギリにハイスピードで校門を駆け抜けるラブバイセコー。
まわりからは黄色い声。
曖昧な笑顔の紗耶香と、不機嫌な表情で紗耶香の背中にくっつく矢口。
ラブバイセコーを駐輪所に置いて、ふたりでのんびり歩いていると、
突然後ろから声をかけられた。
「ちょっと、矢口…」
昨日と呼び方が変わっていることに多少の疑問は感じたけれど、
その声で、すぐに誰かは分かった。
「なんですかぁ、飯田先輩」
振り向いた先にいたのは、矢口の予想通り
一度会ったら二度と忘れることの出来ないような強烈なキャラクターをもつ飯田先輩。
- 210 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年06月02日(日)18時05分10秒
「ん…コレ渡そうと思って…さ」
飯田先輩は学校指定のカバンからゴソゴソとルーズリーフの束のようなものを取り出して
矢口に差し出した。
「…?なんですか?コレ」
「『飯田圭織完全マニュアル』。圭織のこと思い知らせてやるって言ったでしょ?」
疑問符を浮かべている矢口に誇らしげにそう言う飯田先輩。
見ると、「飯田圭織完全マニュアル」と書かれた表紙から始まり、
ざっと二十枚くらいはある紙がクリップで留められていた。
手書きみたいだし、これ書くのに物凄く時間かかったんじゃないかな…
もしかして、徹夜したとか…?
そんなコトを思いながら飯田先輩の大きな瞳の下にある隈を見つめる。
当の飯田先輩は、空をぼんやりと見つめていて、矢口の視線には気付いていないみたいだ。
- 211 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年06月02日(日)18時06分18秒
「あのぉ〜、やぐっちゃん…」
不思議なやりとりを続ける矢口達に、かけにくそうに声をかける紗耶香。
「あっ、ごめん紗耶…」
「あぁーっ!!市井紗耶香だぁっっ!!」
謝ろうとした矢口の言葉を思いっきりさえぎって、
そんなことおかまいなしで飯田先輩は興奮気味に続ける。
「うわぁー、圭織 初めて見たぁ!ホントにカッコイイんだね!」
「…どーも」
そんな飯田先輩に紗耶香は、他の子に対してと同じ愛想のない態度で答える。
- 212 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年06月02日(日)18時06分55秒
なんてゆうか、矢口、今メチャメチャ幸せな状態かもしれない…。
こんなカッコイイ二人に囲まれてるなんて…。
そんなことをぼーっと考えていると、突然飯田先輩は
「ん?じゃあ矢口が、あの噂の市井紗耶香の彼女ってこと?」
「そうですけど?」
「じゃあ、矢口には彼氏がいるってコト…?」
「そ…そうですよ…」
矢口って彼氏いなそうにみえるのかなぁ…なんて思い、軽く傷つきながら言うと
飯田先輩は残念そうな声でボソッと言った。
「なんだ…圭織、矢口のこと狙ってたのに…」
- 213 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年06月02日(日)18時07分31秒
「「はあっ!?」
飯田先輩の突然の告白に、思いっきり二人の声がハモる。
え…?飯田先輩が矢口のことを…?え…何で…?
あまりに驚いてしまって、固まっている矢口の隣で、普段あまり感情を顔に出さない紗耶香が
不機嫌そうに、怒気のこもった声で
「冗談ですよね?」
「まさか。圭織はいつでも本気だよ?
圭織さぁ、今まで手に入らなかったものってないんだよねぇ…だから、矢口も…」
「…っ、矢口は絶対に渡しませんから!」
紗耶香は、挑発的な態度をとる飯田先輩の大きな瞳を真っ直ぐに睨みつけて
大声でそう言うと「行こう、矢口」と矢口の小さな手をぐいっと乱暴につかんで、
靴箱のほうに歩き出した。
「痛っ!」
紗耶香の力が強すぎて痛みに声を上げても、普段気配り上手な紗耶香は決して力をゆるめずに
矢口の方を一度も振りかえらず、真っ直ぐ靴箱に向かっていた。
普段さりげなく合わせてくれている歩幅とは大分違う速さで歩いていく紗耶香は、
後ろ姿だけでも怒っていることが分かった。
- 214 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年06月02日(日)18時08分11秒
「ちょっ…痛いって、紗耶香!」
「あっ、ごめん…」
校舎に入ってから、やっと矢口の声に気付いて手を話してくれた紗耶香の表情に
いつもの優しい笑顔はなかった。
「あっ、そーだ。市井、ちょっと職員室よって行くから、矢口先行ってて」
「えっ、それだったら矢口も行くよ」
「いや、もう遅刻しちゃうし、矢口 先行ってて」
「でも…」
「じゃあね、矢口」
────じゃあね、矢口
そのコトバがやけに重く感じたのは、
きっと矢口の気のせいなんかじゃないと思う。
普段は、「紗耶香、嫉妬してんの?可愛い〜!」なんてふざけて言う矢口。
だんだんと遠くなっていく紗耶香の背中をぼんやりと見つめる矢口のココロに、
そんな余裕は全然なかった。
- 215 名前:イチヤ@作者 投稿日:2002年06月02日(日)18時15分56秒
- =
ヽ^∀^ノ<じゃあね、矢口
はい、更新終了です♪
>>205 読んでる人さん
そうですね。今のところ予定では、全員集合です。
ちょっと、松浦あたりを登場させようかな〜とかも思ってるんですけども…(ゴニョゴニョ
>>206さん
すみません…、ここから、さやまりがグチャグチャになっていきます…。
はぁ…何で自分はさやまりヲタのくせに
さやまりが別れる話、書いてるんだろ…(w
>>207さん
はいっ!ありがとうございます!!
こんな駄作ですが、最後まで書き上げられるよう頑張らせていただきます!
>>208さん
ありがとうございます!!(感涙)
そうやって言って頂けると、本当に励みになります!!
- 216 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月02日(日)20時13分43秒
- うわああ!!(壊)
先が気になります〜
- 217 名前:イチヤ@作者 投稿日:2002年06月02日(日)21時54分14秒
- すんません、ちょっと訂正箇所が…
>>214 の3行目。
×手を話してくれた
○手を離してくれた
本当に申し訳ないです。
何で、いつも更新した後に気づくんだろ・・・(鬱)
- 218 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月03日(月)11時43分00秒
- >『飯田圭織完全マニュアル』
メッチャ、欲しいッス!矢口さん、コピーしてくれませんか?(w
- 219 名前:読んでる人 投稿日:2002年06月03日(月)12時54分35秒
- 飯田さんが宣戦布告(?)しましたね。
これを受けて、市井がどう行動するのか、矢口の心はどう動くのか、
後藤はどう絡んでくるのか、え?松浦も・・・!?
めちゃくちゃ続きが気になります!!
『飯田圭織完全マニュアル』ってどんな内容なのかとても興味あります(w
- 220 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月24日(月)15時48分13秒
- 続き期待sage
- 221 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月27日(木)17時46分36秒
- 更新まだぁ?
まじで気になる・・
- 222 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月27日(木)17時54分36秒
- >>221
マターリ待ちましょ
- 223 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年06月30日(日)20時07分13秒
あの日から矢口と紗耶香の関係は、なんとなくギクシャクしていた。
表面上は、今までと何ら変わらなくて、毎朝ふたりで登校するし、
街中で平気でイチャイチャしたりとか、
一日の大半を一緒に過ごすのが当たり前だったりとか、
多分ハタから見たら、ただのバカップルなんだろうけど、
あの日から紗耶香はボーっとひとりで考え込むことが増えたし、
矢口もなんとなく飯田先輩のことを意識するようになっていた。
矢口にとっての初めての恋人は紗耶香。
紗耶香にとっての初めての恋人は矢口。
お互いがお互い以外の相手以外と付き合ったことがないから、
大切な人が自分以外の人と一緒になるとか、そんなことをふと考えちゃうと、
多分 他のカップルなら笑って済ませられちゃうような単純なことでも、
どうしようもなく不安になっちゃって、やたらと意識しちゃって…。
- 224 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年06月30日(日)20時07分54秒
もちろん矢口は、モテモテ紗耶香クンと付き合ってるわけだから
今回みたいな状況にはよく直面したりするし、
矢口自身もこうやって他の子からアプローチを受けたりもするんだけども、
なんだか飯田先輩のことは今までの問題とは違うんだってことを
きっと心のどこかで感じていたんだと思う。
紗耶香も矢口も。
それが一体何なのかは分からずに。
- 225 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年06月30日(日)20時08分26秒
「ねぇ、紗耶香」
「ん?」
だから、こうやってコトバに出さないと駄目になっちゃいそうなんだ。
そんなことじゃ、何も変わらないってことは十分分かっていても、
口に出さずには、伝えずには いられないんだ。
「好きだよ…」
「今日はやけに素直じゃん」
もう数え切れない程交わしたコトバ。
何度も身体を重ねたベッドの上で。
紗耶香は、いつものように憎まれ口を利きながら、矢口の身体を細い腕で抱きしめてくれた。
一定のリズムを刻む紗耶香の心臓の音を聞きながら、明日 飯田先輩にちゃんと自分の気持ちを伝えようと思った。
「私は紗耶香以外愛せません」と。
- 226 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年06月30日(日)20時09分05秒
***
翌日、図書委員の集合のために放課後残らなければいけないと言う紗耶香に
先に帰る、と告げて、矢口は二階にある二年生の教室に向かっていた。
いつもなら委員会が終わるまで、友達と喋ったりして時間をつぶす矢口だけど、
今日だけはそんなワケにはいかなかった。
「あのぉー、飯田先輩っていますか?」
柴田からそれとなく聞き出した飯田先輩のクラス。
扉から出てきた眼鏡をかけた いかにもおとなしそうな女生徒は、
「飯田さんなら部活に行ったと思うけど?」
そうそっけなく言って、そそくさと立ち去ってしまった。
「ありがとうございましたぁー」その後ろ姿にお礼を言いながら、内心ほっとしている自分がいた。
それが、さっきの女生徒が紗耶香についていろいろ言ってくるようなタイプの人じゃなかったからなのか、
飯田先輩が教室にいなかったからなのか、
矢口には分からなかった。
とりあえず矢口は、言われたとおり体育館に向かった。
2年の階になんかいると、また知らない二年生に紗耶香に関していろいろ文句をつけられそうでイヤだったので、
小走りで階段を降りた。
- 227 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年06月30日(日)20時10分28秒
体育館に向かう途中には、図書室がある。
扉が開いていて、図書室の前には誰もいなかった。
どうやら委員会は終わったみたいだった。
なんとなく中を覗くと、中には紗耶香と、隣のクラスの松浦さんがいた。
楽しそうに話している2人を見て、なんだか胸にモヤがかかったような気分になった。
松浦さんは紗耶香と同じ図書委員で、いつの間にか紗耶香と仲良くなっていた。
多分、クラスが隣同士の2人は、隣の席に座る機会とかが多いんだろう。
もちろん矢口は、紗耶香と同じ委員会じゃないし、紗耶香の友達関係にまでケチをつける気はないけれど、
それでも、なんとなく少し寂しかった。
- 228 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年06月30日(日)20時11分00秒
- 松浦さんは、ひとなつっこい性格で本当に可愛らしい顔をしていて、
なんでも雑誌の学生モデルみたいなのをやっているらしい。
相手がそんな松浦さんだからこそ、こんなに不安が大きいのかもしれない。
嫉妬なんてみっともないと思うけど、こればっかりはどうしようもなかった。
矢口に出来たのは、松浦さんのことを楽しそうに話してくれる紗耶香に、
自分の気持ちを感じ取られないように努めることくらいだった。
今、ここで紗耶香に会うと、いろいろとややこしくなるので
紗耶香に気付かれないようにさっさと図書室の前を通り過ぎようと思った。
なんとなく、紗耶香の前で飯田先輩の名前を出すのは控えたかったし、
それが紗耶香のことを傷つけるということが痛いほど分かっていたから。
- 229 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年06月30日(日)20時11分36秒
「キャッ!」
ドサっという音とともに、松浦さんの小さな悲鳴が聞こえた。
「痛っ…」
「あっ…ごめん、大丈夫?亜弥ちゃん」
「うん…」
声に反応して無意識に中を覗くと、
顔を赤らめている松浦さんに紗耶香が覆いかぶさるような体勢でいた。
長い前髪のせいで紗耶香の表情は分からなかったけれど、
二人が何をやっているかなんて一目瞭然だった。
学園のアイドル市井紗耶香とアイドル級の可愛さを誇る松浦亜弥。
ふたりは友達で、ふたりきりで委員会の仕事をすることなんかも多くて。
ここは静かな図書室。
今日は、委員会の集合があるから閉館日だと、朝のHRで伝えられているから誰も来ない。
中にいるのはふたりだけ。
誰にも邪魔されない空間。
松浦さんに覆いかぶさる紗耶香。
顔を赤らめている松浦さん。
最近ギクシャクしていた私達の関係。
素直で可愛い松浦さんと素直じゃなくて意地っ張りな矢口。
- 230 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年06月30日(日)20時12分12秒
なんだかものすごい硬い物で思いっきり頭を殴られたような感じだった。
目の前の光景を理解することが出来なかった。
それでも涙はどんどん溢れてきて、目の前がぼやけた。
まるで、これ以上続きを見ることを拒否しているかのように。
でも、視界はぼやけても頭の中に映像が残っていて、いくら頭を振っても消えてはくれなかった。
「どうせヤるなら鍵くらいかけとけ、バーカ」
矢口は誰にも聞こえないようなすごく小さな声でそう言った。
もしかしたら心の中で思っただけで、口には出していなかったのかもしれない。
そんなことも分からないくらい矢口の頭は混乱していた。
頭がズキズキ痛む。
涙が止まらない。
ココロが痛い。
気付くと矢口の足は走り出していた。
とにかくこの場から早く離れたかった。
- 231 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年06月30日(日)20時12分52秒
階段のところで聞きなれた声が聞こえた。
すごく優しい響き感じた。
「あれ?矢口じゃん、何してんの?」
目の前には、この前のことなんて忘れてるかのような態度の飯田先輩。
─── 私は紗耶香しか愛せません
「飯田せんぱぁい…」
「どしたの矢口!?えっ?泣いてんの?」
必要以上に動揺している飯田先輩。
─── 私は紗耶香しか愛せません
「あたし…もう、紗耶香のこと信じられないよぉ…」
矢口は消えそうなかすれ声でそう言って、飯田先輩に抱きついた。
紗耶香ほどじゃないけど、実際抱きついてみると飯田先輩はすごく細かった。
涙は一向に止まりそうになかった。
- 232 名前:イチヤ@作者 投稿日:2002年06月30日(日)20時27分34秒
- =
( ´ Д `)<亜弥ちゃん、ごとぉより年上なんだねぇ…。
更新終了です。
精神おかしくなりそうになりながら無理矢理書きました。
やっぱり、さやまりヲタな自分にはこの話、かなり書きづらいっす…。
ただでさえ最近さやまり不足で死にかけてるのに…(ニガワラ
そんなこんなで、更新が大幅に遅れてしまいました。
申し訳ありません。
- 233 名前:イチヤ@作者 投稿日:2002年06月30日(日)20時28分22秒
- >>216さん
すみません、壊れてまで下さったのにこんなにお待たせしてしまって。
本当に申し訳ないです。
>>218さん
(〜^◇^〜)<ダメェ〜!これは、矢口専用だもんっ!
でも、どうしてもって言うなら、そのうち…
>>219さん
こっから本当に、さやまりがグチャグチャになっていきます。
てゆーか、松浦出さなきゃよかったかも…。
余計に話がエグくなってきた…(w
『飯田圭織完全マニュアル』、自分もちょっと欲しいです(w
>>220さん
せっかく、こんな駄作にわざわざ期待sageしていただいたのに、
こんなに時間がかかってしまい、本当に申し訳ありません。
>>221さん
すみません!一ヶ月近くも開けてしまって。
本当に申し訳ないです。
しかも、今回の内容、慌てて書いたからあんまり気に入ってないし…。
本当に申し訳ありません。
>>222さん
ありがとうございます。
自分の場合、本当に更新が遅いんで、マターリ待っていただけると嬉しいです。
- 234 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月01日(月)17時39分11秒
- わたしもさやまり好きですよ〜!!
- 235 名前:イチヤ@作者 投稿日:2002年07月07日(日)03時11分20秒
- すみません、訂正部分が…。
>>223
×お互いがお互い以外の相手以外と付き合ったことがないから
○お互いがお互い以外の相手と付き合ったことがないから
すみません、毎度毎度つまらないミスをして…。
- 236 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年07月28日(日)21時35分02秒
「どう?落ち着いた?」
飯田先輩の優しい口調での問いかけに、矢口は小さくコクンとうなずく。
なんだか照れくさくて、手に持ったオレンジジュースの缶を見つめながら。
飯田先輩が、そっか…と言って笑顔でうなずいたのが分かった。
ここは、南校舎と北校舎の間にある中庭。
昼休みはお弁当を食べる生徒達でにぎわうこの場所だけれど、
放課後である今は、矢口達以外誰もいなかった。
2人で座るには少し広すぎるベンチに、お互い少し距離を開けて座っている。
遠くの方で聞こえるソフトボール部の掛け声を聞きながら、矢口は口を開いた。
目線はまだオレンジジュースを見つめたままだったけども。
「あの…すみません。先輩これから部活に行かなきゃいけないのに、矢口のせいで…」
「いいよ、別に。部活なんかより矢口の方が大事だし」
飯田先輩は変わらず優しい口調で言った。
ウソだ…。
矢口は知っている。
さっきからさりげなく腕時計をチラチラ見ていることも、
大事な試合が近いことも。
- 237 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年07月28日(日)21時35分51秒
「飯田先輩、なんであんなトコロにいたんですか?」
「あぁ、カオリ図書室に本返しに行こうと思ってたんだよね。
でも、よく考えると今日って閉館日じゃん?
いやぁ〜、図書室着く前に気付いて良かったよ。恥かくトコだった」
そう言って本を矢口に見せながら、照れくさそうに たははと笑った。
そーゆートコ、飯田先輩らしいな…と思う。
完璧に見えてどこかぬけてる。
まだ出逢ったばかりで何も知らないし、
『飯田圭織完全マニュアル』にはそんなコト書いていなかったけれど。
それでも、なんとなくそんな気がした。
- 238 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年07月28日(日)21時36分25秒
結局、バレー部の一年の子が飯田先輩を呼びに来るまで、ずっとこんな感じで
飯田先輩が一方的に話して、矢口は黙ってその話を聞いていた。
飯田先輩は、泣いていた理由やこの前のことについては一言もふれなかった。
今の矢口には、飯田先輩のその態度がすごくありがたかった。
ただ誰かにそばにいてもらいたかったから。
それが、バラバラになってしまいそうな矢口の小さくて弱い心を繋ぎとめておくための
一番の方法だったから。
- 239 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年07月28日(日)21時37分20秒
「ねえ 矢口」
飯田先輩は自分を探しに来たバレー部の一年生の子に、すぐ行くから と伝えてから
まっすぐに矢口の目を見て言った。
矢口は軽く首を傾けながら黙って続きを待つ。
「何があったのかは分からないけど…
カオリはさ、ちゃんと信じてあげた方が良いと思うよ」
飯田先輩は大きな目で矢口の目を見つめたまま真顔でそう言って、
またすぐにニコッと優しく微笑んだ。
矢口がそのまま何も言わずに黙っていると、
飯田先輩はバレー部専用の白いエナメル製のカバンを重そうに肩にかけて
「付き合い長いんでしょ?そんなことでどーすんのさ?」
そう言ってから、矢口の頭を軽くポンポンとたたいて体育館の方に駆けていってしまった。
- 240 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年07月28日(日)21時38分24秒
普段ならそんな風に言われたら、何も事情を知らないくせに…と思うところだけれど
何故か今はそんな風には思わなくて、
ただ素直に飯田先輩の言葉が嬉しかった。
中庭に着いたときに飯田先輩がさりげなく差し出してくれたオレンジジュース。
普段ならこーゆートキは缶コーヒーなんだろうけど、
高校生にもなってコーヒーが飲めない矢口は、ちょっと嬉しかった。
ずっと握っていた為か、いつの間にか手の熱で温くなってしまった残り少ないそれを一気に飲み干して、
狙いを定めて投げると、キレイな弧を描いてカランと音を立てて少し遠くにあるゴミ箱に入った。
泣き腫らした目はまだ痛かったけれど、なんとなく気持ちが軽くなったような気がした。
- 241 名前:イチヤ@作者 投稿日:2002年07月28日(日)21時41分15秒
- 更新終了です。
(〜^◇^〜)<更新量少なっ!!
>>234さん
マジっすか!?
(・∀・)イイ!ですよね、さやまり。
自分も大好きですYO!
…なんでこんなにさやまり作家の方が少ないんだろう…(鬱)
- 242 名前:読んでる人 投稿日:2002年07月29日(月)13時37分23秒
- 飯田先輩カッコイイ!
しかし矢口は『飯田圭織完全マニュアル』をしっかりと読んだんですね(w
- 243 名前:234 投稿日:2002年07月31日(水)11時19分46秒
- イチヤさんのホームページもこのまえ
いきましたよ〜。いいトコでしたぁ♪
- 244 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年08月18日(日)13時45分05秒
その日の夜、家に帰ってから矢口はずっと部屋に閉じこもっていた。
小さい矢口にはちょっと大きすぎるベッドにちょこんと体操座りをして、ぼんやりと天井を見上げる。
壁にかかっているコルクボードには、紗耶香と一緒に写っている写真が所狭しと貼られていて、
ほとんど物置状態の勉強机には、この前紗耶香が置き忘れていった分厚い小説が置いてあって、
今、矢口が座っているこのベッドの上で2人は愛を交し合ったわけで…
嫌でも紗耶香のことを考えずにはいられない、
紗耶香との思い出がいっぱい詰まったこの部屋で、矢口は先程の母とのやり取りを思い出していた。
”真里、ごはん食べないの?”
”…いらない。食べたくない”
”何? どこかからだの調子でも悪いの?”
”うるさいなっ! ほっといてよっ!!”
冷たく言ってしまった自分。
なんとも言えない悲しそうな表情をしていた母。
「はぁ〜…何やってんだろ、あたし」
ぽつりとつぶやいたそのコトバは、広い部屋にやたらと響いた。
それが余計に寂しさを感じさせた。
- 245 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年08月18日(日)13時46分09秒
『♪♪〜♪〜〜♪』
そのまま、ぼんやりと11時を指そうとしている大きな掛け時計を見つめていると、
急に、カバンに入れっぱなしだった携帯がなった。
『 LOVE LOVE LOVE 』
この着信音を設定している相手はひとりしかいない。
アイツの大好きなドリカムの曲。
友達に聞かせたら全員に「古っ!」とつっこまれた。
ゴソゴソとカバンから取り出した二つ折りの携帯をパカッと開く。
液晶には音符マークと一緒に「── 市井紗耶香」という文字が点滅していた。
矢口は、そのままパカッと音を立てて携帯を閉じて、うるさく鳴り響くそれを毛布にくるんだ。
くぐもった音がしばらく鳴り続き、すぐに止まった。
それから2,3秒の間隔を置いて3回ほどそれが続いたけれど、やぐちは一度も携帯には触らなかった。
- 246 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年08月18日(日)13時56分48秒
それから2,3分して、今度はさっきとは違う着信音が鳴った。
大好きなあゆの曲。
この前メール着信音に設定したばかりの一番気に入っている曲。
━━━━
件名: 愛しの真里ちゃんへ
送信者:市井紗耶香
本文: 今から矢口の家行くから。
寂しがりの紗耶香ちゃんを泊めてくれぃ!
━━━
絵文字も入っていない、簡潔な文章。
メール着信音は、個別には設定できないので携帯を開くまでは誰からのメールか分からないのだけれど、
なんとなく携帯を見る前から、紗耶香からだってことは分かっていた。
でも、そんな予想当たってもちっとも嬉しくない。
昨日までの矢口なら、「愛のパワーだ」なんてはしゃいでいたんだろうけれど…。
だって、紗耶香は矢口以外の女の子を抱いていたわけだから…。
矢口はこの目で見ちゃったわけだから…。
- 247 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年08月18日(日)13時57分58秒
─── ピンポーン
『ムリ』
そう一言だけ打って送信ボタンを押そうとしたところで玄関のチャイムが鳴った。
亜依と希美の嬉しそうな声が下から聞こえる。
それを聞いて、矢口は送信ボタンを押さないまま携帯を閉じた。
ほどなくして、ドアをノックする音が聞こえてきた。
コンコンコンコンコンと5回。
付き合い始めた頃に2人で決めた2人だけの合図。
「多すぎない?」と文句を言った矢口に紗耶香は「バカ、愛してるのサインだろ〜?」と
不満そうに口をとがらせて言っていた。
そんな紗耶香がなんだか可愛くて、さりげなく「愛してる」と言ってくれたのが嬉しくて、
ブツブツ言いながらも心の中がすごく暖かいもので満たされていくように感じたこと、
今でも鮮明に覚えている。
矢口が何も答えずにいると、紗耶香は勝手にドアを開けて「よっ」なんて軽く手を上げて
カッコつけながら入ってきて、
当たり前のように、ベッドに座っている矢口の隣にドカッと座った。
- 248 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年08月18日(日)13時58分34秒
メール打つの遅すぎだっつーの。
普通、家出る前に打つだろ〜?
いつもならそんな風に言うところだけれど、今は何も喋りたくなかった。
紗耶香は、黙っている矢口を特に気にすることなく嬉しそうに矢口の頭をなでる。
「おばさん心配してたよ。何かあったの?」
「……」
「何だよぉ〜、何で黙ってんのさ?答えてくれないとヤッちゃうよ?」
紗耶香の目がニヤリと光ったのが分かった。
何でコイツは彼女の機嫌の悪さに気付かないんだろう…?
やっぱり、やましいことがあるからそうやって気付かないフリしてるのかな…
ただ鈍感なだけかもしれないけども。
気付くと、真剣な目をした紗耶香の顔がすぐ目の前まできていた。
もう、さっきのふざけた表情の紗耶香ではなかった。
さっきまで他の女の子抱いてたくせに…そう思うと嫌悪感がこみ上げてくる。
- 249 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年08月18日(日)13時59分12秒
額、頬、唇、とキスをあびせながら矢口を優しく押し倒す紗耶香。
そのままブラウスのボタンに手をかけようとした紗耶香の手をつかんで思いっきり睨みつけた。
自分でも驚くくらい低い声が出た。
「他の女の子抱いた腕で矢口のコト抱くんだ?」
矢口のコトバに紗耶香は覆いかぶさったまま眉間にしわを寄せて聞き返してきた。
「はぁ?矢口、何言って…」
本当に何も知らないような顔をする紗耶香に余計に腹が立つ。
「とぼけたってダメだからね。矢口、見たんだから!」
「見たって、何を…?」
「今日、図書室で松浦さんとふたりっきりでいたでしょ?」
紗耶香は少し考えるように視線を宙に浮かべて、思い出したかのように
「あぁ、本の片付け当番だったからね。何?そんなことで怒ってんの?」
そう言って、矢口を怪訝そうに見た。
- 250 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年08月18日(日)13時59分46秒
- 紗耶香のそんな態度に物凄くイライラする。
矢口は、まっすぐに紗耶香を見て、
「…まだ、しらばっくれる気?」
低い声でそう言った。
「だから、何の話だよっ!?」
だんだんと紗耶香もイライラしてきているのが分かった。
自分が悪いくせに…
ばれそうになってるから、そうやってイライラしてるんだ。
「矢口、見ちゃったんだよ… 紗耶香が、松浦さんのコト押し倒すトコ」
「……」
「矢口だって、紗耶香のコト信じたいよ?
でもさ… そんなトコ見ちゃったら信じられるわけないじゃんっ!
ねぇ紗耶香… 紗耶香はあーゆー子の方が好きなんでしょ?
2人、お似合いだもんね。
矢口みたいに素直じゃなくて小っちゃいのなんかより、松浦さんやごっつぁんの方が良いんでしょ?
それならちゃんと言ってよ…優しくしたりしないで…。
無理矢理 一緒にいられるのなんて、
そんなの…そんなの、辛すぎるよ…」
- 251 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年08月18日(日)14時00分23秒
そこまで一気に言い終わると、涙がぶわっと溢れてきた。
紗耶香は、矢口が喋ってる間黙って矢口の話を聞いていた。
否定も肯定もすることなく。
「矢口…」
「さわるなバカッ!」
そう言って腕を払いのけようとすると、ガシッと思い切り腕をつかまれた。
普段は華奢でひ弱そうなのに、実は結構力が強かったりする紗耶香。
「ちょっと、落ち着きなよ」
紗耶香は、すごく優しい声でそう言うと ベッドに仰向けになっていた矢口を抱き起こして、
自分の隣に座らせた。
顔を両手で覆っている矢口の肩にさりげなく腕をまわして抱き寄せる。
ふと頭に、さっきの図書室での2人の映像が浮かび上がってきて身体がビクッとなった。
紗耶香は、そんな矢口の身体を更に強く抱き寄せながら優しい声で言う。
「えっとさ、矢口が何を見て誤解したのかは分からないんだけど、
多分、高いところにある本をとろうとしてバランス崩して亜弥ちゃんの上に落ちちゃったトキかな…
まぁ、それは分からないんだけど、
とにかく亜弥ちゃんとは何もないから」
- 252 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年08月18日(日)14時00分54秒
- 「…え?」
思わず俯いていた顔を上げて聞き返した矢口に、紗耶香はいつもの優しい笑顔でこくりと頷いて、
「信じてもらえないかもしれないけどさ、前にも言ったとおり
ホントに市井には矢口以外見えてないから」
そう言って、矢口の瞳から溢れる涙を親指でそっとぬぐうと、もう一度微笑んだ。
「…ホントに?」
矢口がすごく小さな声でそう言うと、顔を赤くして一瞬目を上のほうに泳がせた紗耶香は
「涙目で上目遣いなんて反則だって」
そうボソッと言って、優しく矢口の唇に自分の唇を重ねて、そのまま矢口を押し倒した。
何度も繰り返されるキス。
いつものように優しく矢口の身体に触れてくる紗耶香の少し冷たい手。
紗耶香の愛に答えながらもやっぱりどこか信用出来ていない自分がいた。
- 253 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年08月18日(日)14時01分40秒
─── 紗耶香の言ってたことは本当だろうか?
─── 紗耶香の心は本当に矢口に向いてるんだろうか?
─── それに、矢口の心は…?
─── このままで本当に良いのかな…
幸せだった2人の毎日から、何かが動き始めていることに全く気付くことのなかった矢口だけれど、
でも、どこかで嫌な予感がしていた。
紗耶香に抱かれている間矢口は、勿論紗耶香のことしか考えていないつもりだった。
ときどき長い黒髪の大きな瞳を持った美少女が頭をよぎるように感じたのは、
きっと思い過ごしに違いない。
───きっと、思い過ごしに違いない。
- 254 名前:イチヤ@作者 投稿日:2002年08月18日(日)14時13分54秒
- ヽ^∀^ノ <さやまりが…市井の大事なやぐっちゃんが…(グシグシ)
川 ゚〜゚)||<ヤグチノココロハ モウカオリノモノ
=
更新終了です。
>>242 読んでる人さん
(#〜^◇^〜)<うっ、うるさいな!べ…別にいいだろっ!?(カオマッカ)
何か、書いてるうちにどんどん飯田さんがカッコイイキャラになってく…
ほんとは、天然癒し系キャラにしたかったんだけどなぁ…(ため息)
>>243さん
なっ、あんな糞サイトを誉めていただけるなんて…(感涙)
そんなお世辞言っていただけるなんて嬉しいです。
ありがとうございます。
- 255 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年08月19日(月)18時08分06秒
- 飯田に対する気持ちを必死に誤魔化そうしている(っぽい)矢口がなんとも言えませんね。
続き楽しみに待ってます。
- 256 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月31日(土)16時53分28秒
- (・e・)ノ<ここまで読んだ…ラブラブ
- 257 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月20日(金)17時27分27秒
- 続き楽しみに待ってます
- 258 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月02日(水)21時07分05秒
あれから一月経った。
紗耶香との関係はハタから見ても明らかに分かるくらいギクシャクしていた。
鈍感で有名な柴田ですら気付いてるくらいだから相当のものだと思う。
そんな中、矢口も紗耶香もお互いの前ではそのことに気付いていないフリをしていた。
知りたくなかったんだ、自分の気持ちを。
ずっと優しくしてくれた、ずっと変わることなく愛してくれた紗耶香を裏切るのは嫌だったから。
感じたくなかったんだ、ふたりが『別れ』というモノに近付いていることを。
三年前のあの日に紗耶香が顔を真っ赤にして俯き気味に「好きだ」と言ってくれたときからずっと、
ふたりはいつまでも一緒にいられると信じていたから。
- 259 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月02日(水)21時08分23秒
- そんな梅雨真っ最中の6月のある日曜日。
水曜日からずっと降り続けている雨。
ちょっと前までは、こんな日は朝から矢口の部屋で、紗耶香とふたりでのんびり過ごしていたのに、
今矢口はひとりで近所のファミレスに向かっている。
去年の今頃、紗耶香から買ってもらった真っ赤な傘をさして。
待ち合わせの相手は紗耶香じゃない。
紗耶香の後輩 後藤真希だ。
こうして後藤と二人きりで会うのは初めてかもしれない。
昔、紗耶香も入れて3人で遊びに行ったことはあるけれど。
昨夜、後藤からメールが来た。
『明日ヒマ?ちょっと大事な話があるから二人だけで会いたいんだけど』
何の用事なのか気になりながら、別に予定はなかったので、すぐにOKした。
- 260 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月02日(水)21時10分28秒
「あっ、やぐっつぁん、こっちこっち」
ファミレスに着くと、すぐに後藤が矢口に気付いて無邪気に笑いながら手を振っていた。
窓際の一番奥の席に座っている後藤の前には、半分以上減っているイチゴパフェが置いてあった。
「あれー?後藤めずらしく早いじゃん。まだ10分前だよ?」
矢口が後藤の前の席に座りながらそう言うと
「むぅー、後藤はいつもこれくらいですぞ」
後藤はわざとらしく頬を膨らませて言った。
すごく可愛いと思った。
矢口にそんな顔見せてどーすんだよ。
「いやいや、後藤が時間どおり来るなんて初めてじゃない?」
後藤は矢口達にとって妹みたいな存在だったから中学の頃はときどき3人で遊園地に行ったり、買い物に行ったりしていた。
その度に後藤は必ず15分は遅刻してきて、時間に厳しい紗耶香に
「先輩を待たせるとは何様だ!」と怒られていた。
- 261 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月02日(水)21時12分21秒
注文を聞きに来た店員さんに矢口が「オレンジジュース」と一言言ったところで
後藤が残りのパフェを食べながら
「ごめんねー、呼び出したりして。いちーちゃんと遊ぶ予定あったんじゃない?」
申し訳なさそうに言ってきた。
後藤のコトバを聞いて一瞬心がズーンと重くなった気がした。
「いや、紗耶香最近バイト始めたみたいで。忙しそうだから予定とかは全然…」
矢口は水の入ったコップを見つめながらボソボソと小声で答えた。
「えーっ!?いちーちゃんバイトやってんの?どこでどこで?」
「コンビニだってさ」
「コンビ二かぁ…。うん、いちーちゃん真面目だから張り切ってるんだろーねぇ…」
後藤は嬉しそうに言った。
- 262 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月02日(水)21時13分25秒
- 一ヶ月前、喧嘩したあの日から三日経った金曜日、
紗耶香は嬉しそうに「バイトが決まった」と言った。
本当に、悲しくなっちゃうくらい嬉しそうな笑顔で。
紗耶香はきっと、休みの日に矢口に会わないですむようにバイトを入れたんだ。
あの喧嘩から、休みの日はバイトを理由に一度も遊んでいない。
放課後も、今までは毎日一緒に帰っていたのにバイトがある日は先に帰ってしまう。
その度に紗耶香は「ゴメン」と一言、本当に申し訳なさそうにそう言って、ニコッと笑う。
そのときの紗耶香の顔が、なんとなく矢口の知らない紗耶香なような気がするのは、
矢口の気のせいなのかな。
- 263 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月02日(水)21時14分22秒
- 「やぐっつぁん?」
黙っている矢口に、後藤が不思議そうに声をかけてきた。
「あぁ、ごめん交信してた」
矢口が慌てて笑顔をつくってそう言うと後藤は面白そうに
「こうしん?何それ?あの運動会とかでみんなで歩くヤツ?」
「あぁー、違う違う。ボーっとしてたりするとガッコの先輩がよく言うんだよね。
『ごめん、交信してた』って」
「へぇー」
後藤が興味ありげに言った。
なんとなく、飯田先輩の話をするのが照れくさく感じて、
何故か照れくさく感じて、矢口は慌てて話を変えるために言った。
「そ、そーいや話って何?」
そのコトバで、今まで笑顔だった後藤の表情が一瞬曇った気がした。
- 264 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月02日(水)21時16分01秒
もう中身のなくなってしまったいちごパフェの器の中でしばらくスプーンをカチャカチャかき回しながら
後藤はぼんやりと雨の降っている窓の外を眺めている。
外には、ひとつの傘で相合傘をしているカップルがたくさんいた。
「後藤?」
いつまでも黙っている後藤に矢口は不安になって声をかける。
後藤は窓の方に向けていた顔を矢口の方に向けて、真っ直ぐに矢口の目を見た。
後藤の大きな瞳に吸い込まれそうになる。
「あの…さ、やぐっつぁん」
いつもより少し低い後藤の声が彼女の真剣さを表していた。
「いちーちゃんと上手くいってる?」
矢口の肩がビクッと反応する。
- 265 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月02日(水)21時18分27秒
- 「えっと…別に上手くいってるなら良いんだけどさ、その…」
後藤が慌てて言っているところを見て、なんとなく嫌な予感がした。
気付くと矢口は口を開いていた。
「上手く…な…よ」
「ん?」
「上手く…いってないよ」
初めて自分の口から言った。
ずっと認めないようにしていたコトバを。
ほんの数ヶ月前までは考えもしていなかったコトバを。
「そっか…」
後藤は矢口のコトバに、ただ一言だけそう言った。
- 266 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月02日(水)21時19分02秒
- 矢口は出来るだけ平静を装って後藤に尋ねる。
「でも、なんで…?後藤のガッコでまで噂広まってるとか?」
紗耶香は中学生の頃から人気があったから、それが一番可能性あるかなと思った。
紗耶香が後藤に相談したっていう可能性もあるけど、
紗耶香が矢口以外の女の子と連絡を取っているというのは
なんとなく嫌だったので、それはすぐに頭から消した。
「いや…噂にはなってないんだけど…その…」
後藤は、矢口から視線をそらしてパフェの器を見つめながらゴニョゴニョと言いにくそうに言った。
「じゃあ、何で?」
徐々にイライラしてきた矢口は、少し強い口調で言う。
その苛立ちが、はっきり喋らない後藤に対してのものなのか、隣のテーブルで必要以上に大声で喋っている女子高生に対してのものなのか、
ずっと降り続いている雨に対してのものなのか、
それとも、矢口自身に対してのものなのか分からなかったけれど。
そんな矢口に対して後藤は決心したように一度深呼吸して話し始めた。
- 267 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月02日(水)21時19分54秒
「昨日ね、後藤 友達と夏物の服の買い物に言ったんだけどさ」
「うん」
それと紗耶香とどう関係あるんだろう…。
そう思いながらも続きを待つ。
「そのときにね、見ちゃったんだ。」
「見ちゃった?」
後藤は黙って頷く。
そして、もう一度深呼吸して、一瞬矢口の目を見て、すぐに逸らした。
その一瞬に何だかものすごい緊張感を感じた。
「…… いちーちゃんが、すごく可愛い女の子と歩いてるところを」
「…え?」
心臓がズンと音を立てて下に落ちる感じがした。
それと同時に息が出来ないくらい胸が苦しくなった。
紗耶香が他の女の子と…?
だって、昨日言ってたじゃんか、
──今日はバイトだから。
って。
- 268 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月02日(水)21時22分51秒
後藤はあいかわらず矢口と目を合わせずに、鞄から一冊の雑誌を取り出した。
「ほら、この子」
後藤は、女子中高生を対象としたその雑誌の表紙に笑顔で写っている少女を指差した。
「後藤、こーゆー雑誌あんまり読まないからよく知らないんだけどさ、たしか名前は…」
「松浦… 松浦亜弥」
声が、自分のモノじゃないみたいに震えた。
ぐっと、体中のいろんなものが瞳まで上がってきて、鼻の奥がツンとして、
こらえていた涙がぶわっと零れる。
矢口の視界は次から次から溢れてくる涙でくもった。
松浦の顔も、後藤の顔も、それから手でずっと握っていたコップも…何も見えなかった。
激しい頭痛と吐き気がした。
- 269 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月02日(水)21時23分41秒
- 後藤は、少し俯いて
「そっか…。うん、たしかそーゆー名前だった。うん…。
雨降ってたし、傘さしてたから本当にいちーちゃんかどーかは分からなかったけど…
後藤の見間違いかもしれないけど…」
後藤の声はだんだん涙声になっていた。
「っ、後藤さ、…後藤ね、相手がやぐっつぁんだから、いちーちゃんのこと諦めたんだよ…?」
次から次へと溢れてくる涙のせいで後藤の顔は見えなかったけれど、
なんとなく、涙を流しながら、それでも不器用な笑顔を必死につくっている後藤の表情が浮かんだ。
- 270 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月02日(水)21時24分29秒
─── とにかく亜弥ちゃんとは何でもないから
─── ホントに市井は矢口以外見えてないから
─── ホントに市井は矢口以外見えてないから
「ウソつき…」
「ウソつき ウソつき ウソつき ウソつき ウソつき ウソつき ウソつき
ウソつき ウソつき ウソつき ウソつき ウソつき ウソつき ウソつき
ウソつき ウソつき ウソつき ウソつき ウソつき ウソつき ウソつき」
矢口は小さな声で何度も繰り返した。何度も何度も。
いつまでも降り続ける雨のように、間を置かずに。
何度も何度も。
- 271 名前:イチヤ@作者 投稿日:2002年10月02日(水)21時28分25秒
- ( ´ Д `)<後藤、こんな役ばっか(ボソッ
=更新終了です。
もう、ホンットに更新遅くて申し訳ありません。
何度謝っても謝りきれないです。本当に申し訳ないです(土下座)
あと1,2回でさやまり編終わらせるつもりなんで…。
そしたら、あとはサクサク書けると思うんで…。
- 272 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月02日(水)21時35分35秒
- >>255 読んでる人@ヤグヲタさん
いつもいつも自分なんかにレスしてくださって本当にありがとうございます。
ものすごく励みになります。
もう少しでさやまり編終わらせますので、
よろしければもう少しお付き合いいただけると嬉しいなぁ…なんて(アセ
>>256さん
(・e・)<ありがとうニィ
こんな駄作にレスしていただけるなんて(感涙)本当にありがとうございます!!
もう少しで終わらせますので…。
>>257さん
レス、ありがとうございます。
更新遅くて、本当に申し訳ありません。
こんな駄作を楽しみにしてくださる優しい読者サマもいらっしゃるのに…。
死んでも完結させて見せますので!
- 273 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年10月15日(火)14時01分49秒
- あ、更新されてる!!
もう放棄かと思って半分諦めてましたが・・・良かった良かった。
- 274 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月26日(土)15時36分46秒
- 楽しみにまっとります
- 275 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月31日(木)21時43分43秒
後藤と会った日から3日経った水曜日。
もう昼の一時だというのに矢口は自分の部屋のベッドに横になっていた。
昨日も一昨日も学校に行っていない。
携帯も電源を切ったままこの3日間充電器にセットしっぱなし。
理由は勿論、紗耶香に会いたくなかったから。
それに、浮気されていたことにも気付かずに紗耶香を独り占めできるっていう優越感に
少なからず浸っていた自分がみじめ過ぎて、とても学校なんかに行く気にはなれなかった。
家族のみんなに心配をかけちゃってるのは本当に悪いと思う。
矢口はもともと風邪なんて滅多にひかない子だから、3日間も寝込むことなんて今までなかったし。
普段は生意気な亜依と希美なんか、ほとんど一時間ごとくらいに矢口の部屋に来て
「お姉ちゃん、何か欲しいモノない?」と本当に心配そうな顔で聞いてくる。
その度にお母さんに「真里ちゃんがゆっくり休めないでしょ」と怒られるんだけど、
それでも懲りずにやって来る2人の可愛い姿を見ると罪悪感で胸が痛くなる。
- 276 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月31日(木)21時45分12秒
- でも、風邪っていうのは案外ウソでもない。
あの日、後藤と別れた後にぼーっとする意識の中で傘をさす気にもなれずに
しばらく大雨の中濡れながら帰ったせいか、次の日 熱が39℃も出た。
まあ、今はもう熱も下がったんだけど、「まだ頭がちょっと痛いから」とお母さんにウソをついて学校を休ませてもらってる。
でも、それもそろそろ効かなくなるんだろうな…。
それからは学校に行かなきゃいけない。紗耶香とどんな顔して会えばいいんだろ…。
紗耶香はこの3日間、学校に行く前と学校が終わってからの2回、欠かさず来てくれてるらしい。
まあ、お母さんに「風邪がうつるといけないから」って言うように頼んであるから
この3日間 紗耶香と顔を合わせずにすんでるけども…。
- 277 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月31日(木)21時45分45秒
─── ピンポーン
枕を抱きながら ベッドの上に座ってぼんやりと窓の外を見ていると、玄関のチャイムが鳴った。
それから2回3回とチャイムの音は続くが誰も出る気配はない。
お母さん 買い物にでも行ってるのかな? そう思って、
薄黄色のカーディガンを赤いチェックのパジャマの上から羽織って部屋を出た。
この時間なら紗耶香は学校に行ってるから会う心配はないし、ずっと寝てばかりだったから少し動きたいというのもあった。
急ぎの宅急便とかだったら困るしね。
- 278 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月31日(木)21時47分53秒
- 「どちらさまですか?」
矢口は何も考えずにインターホンの受話器をとった。
すると、受話器の向こうから信じられない声がした。
優しくて穏やかな声。
今、一番会いたくない人の声。
「あの…市井だけど…」
「紗耶香ぁ!?」
矢口は一瞬めまいに襲われた。
何で不用意に受話器をとってしまったんだろう。激しい後悔が矢口を襲う。
しかし、今更悔やんでももう遅い。
受話器をとってしまったからには出ないわけにはいかない。
混乱している矢口の頭には、出て行かないで済むような良い言い訳なんて思い浮かばなかった。
矢口はとりあえず髪の毛を手櫛で整えて扉の前で一度深呼吸をした後、
ゆっくりと扉を開いた。
- 279 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月31日(木)21時48分54秒
「おはよ」
そこには、紺色のブレザーにチェックのネクタイ…という制服姿の紗耶香が。
久しぶりに見た紗耶香はやっぱり嫌になっちゃうくらいカッコ良かった。
太陽の光を背中に浴びながら、笑顔で挨拶する紗耶香の顔を見たら、
何故かずっと言おうと思っていた たくさんの文句が頭から消えていた。
「お…おはよ…。紗耶香、ガッコは?」
とりあえず、いちばんの疑問を投げかける。
「あぁ…ちょっと考え事しててサボッちった。んで、今から行くとこ」
「そうなんだ…」
紗耶香と目を合わせないですむように俯きながら言う。
俯いた先に、紗耶香の青色のスニーカーが目に入った。
もう1年以上前から履いてる結構高いヤツだ。
- 280 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月31日(木)21時51分22秒
- 「やぐっちゃん、風邪は? まだ治んなそう?」
「んーん、そろそろ大丈夫かも…分かんないケド…」
「そっか…」
紗耶香は安心したように言った。
いつもと同じ優しい声。
でも、なんだかいつもと雰囲気が違うような気がした。
まあ、あんな話聞いた後だからそう感じるのかもしれないけど。
それでも、なんとなくいつもと違う息苦しい空気。
「あ…あのさ、やぐっちゃん…」
「ん?」
紗耶香がその空気を無理矢理 振り払うように、わざとらしく思い出したような言い方で切り出した。
「あの…さ、お願いがあるんだけど…」
前髪をかきあげる紗耶香。
迷ってるときとかによくやる 紗耶香の癖だ。
下を向いて、足元の石を蹴りながら矢口は続きを待った。
- 281 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月31日(木)21時53分21秒
- 「あの…今日さ、7時に公園に来て欲しいんだ。あの公園に」
「はぁ!? だって矢口、風邪ひいて…」
思わず、俯いていた顔を上げる。
普段 矢口の体調とかを一番に考えてくれる紗耶香が、矢口が体調の悪い日にこんなことを言うのは初めてだと思う。
いつもこーゆーワガママを言うのは矢口の方だし。
まあ、3日間もの間 一度も顔を合わせないこと自体 今まであんまりなかったわけだけど。
「ごめん…お願い…お願いします」
「…分かった」
頭を下げる紗耶香に、矢口は小さく頷いて しっかりとした口調で答えた。
だって紗耶香が、今まで矢口に見せたことないような すごく辛そうな、悲しそうな顔をしていたから。
何か苦しいことに耐えるような表情を。
矢口の答えに紗耶香は「ありがと」と笑顔で言った。
最も、それはいつもの輝くような紗耶香ちんスマイルではなかったけれど
- 282 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月31日(木)21時54分07秒
「んじゃぁ いちー、学校行って来るわ。ごめんね、風邪ひいてるのにわざわざ出てきてもらっちゃって」
「いいよ、別にそんな…。5限目 何?」
「化学。平家先生、遅刻してったら怒るかもなぁ…」
「あぁ、みっちゃん時間に厳しいからねぇ…絶対怒られるよ」
心底嫌そうな顔をする紗耶香に矢口はイタズラっぽく言う。
「うぁー、めんどくさいなぁ…もう。怒られたら やぐっちゃんのせいだぞ!」
「なんでよぉー!?」
笑いながらそう言う紗耶香は、もう もとのおちゃらけ紗耶香クンに戻っていた。
やっぱりなんとなく いつもと違う感じはしたけども。
- 283 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月31日(木)21時55分01秒
- 「それじゃ、またあとで」
「うん、あとでね」
だんだんと遠くなっていく紗耶香の背中を見送る矢口の心から、
さっきの紗耶香の辛そうな表情はしばらく消えなかった。
空を見上げると 久しぶりにキレイな青空が広がっていた。
まさに洗濯日和といった空の下で、矢口はこれから起こることを心のどこかで予感していたんだと思う。
今日が、ふたりにとって最も重要な日になるということを。
- 284 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年10月31日(木)22時00分09秒
- =
( ´ Д `)<さやまり、次回ラストで〜す
(●´ー`●)<やっと、なっちの出番だべ
>>273 読んでる人@ヤグヲタさん
すみません、ご心配をおかけしてしまって。
大丈夫です、放棄だけは絶対にしませんので!(力強く)
こんな駄作ですが、絶対に最後まで書き上げてみせますので、もしよろしければ
読んでやってください(ペコリ)
>>274 さん
レス、ありがとうございます。
こんな駄文を楽しみにしていただけるなんて…、おせじでも嬉しいです(感涙)
更新ペース、遅くて本当に申し訳ありません。
- 285 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年11月02日(土)01時37分19秒
- 次回でさやまりは終わりですか・・・寂しい・・・。
つーか、この小説での、なっちの存在をすっかりと忘れてました(汗
- 286 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時24分02秒
紗耶香が学校に行った後、
矢口はベッドの中で 松浦さんのことを冷静に考えてみた。
ごっつぁんから話を聞いた直後は、ただ紗耶香が松浦さんと一緒にいたっていうことが
悲しくて…悔しくて…とにかく、すごく辛くて…
頭に「裏切られた」とか「浮気」とか そーゆーコトバばかり浮かんできた。
でも、よく考えると 紗耶香と松浦さんは友達なわけだから 別に一緒にいたって不思議じゃない。
まあ、それでも紗耶香が「バイトがある」ってウソをついてたってことは事実なわけだけど、
バイトが終わって帰る途中で偶然会っただけなのかもしれないし、
急にバイトが休みになったのかもしれない。
もしかしたら松浦さんも同じトコでバイトしているのかもしれない。
どれも可能性はすごく低いと思うけど、それでも ほんの小さな可能性でもそこに存在する限り信じたいと思った。
- 287 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時24分35秒
- 紗耶香が人を傷つけるくらいなら自分自身を傷つけちゃう人間だってことは
2人が付き合い始めたときからずっと変わっていないから。
それは矢口が一番好きな紗耶香の良いトコロだから。
基本的に紗耶香は不器用だから、ウソが下手だしね。
それに、さっきみたいな表情を見る限りでは、どうしても紗耶香が矢口を騙しているとは思えなかった。
矢口が、思いたくなかっただけかもしれないけれど。
約束の時間までまだ大分あったけど、もう眠れそうにはなかった。
- 288 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時25分12秒
約束の時間30分前。
もう化粧も服装も荷物も全部用意出来てしまっていた。
鏡を見ながら、髪の毛をいじっていると扉がノックされた。
「お姉ちゃん、開けますよ〜」
間延びした声で無邪気に言いながら、矢口の返事を待たずに扉を開ける希美。
3日前からずっと続いている一時間ごとの巡回の時間だ。
「ちょっ、姉ちゃん 何で服着てるん!?」
希美の後ろからひょこっと出てきた亜依が 白のカットソーに黒のミニスカ姿の矢口を見るなり叫ぶように言った。
「ちゃんと寝てなきゃダメじゃないですか!」
希美も亜依と同じように怒ったような口調で続く。
矢口は、そんな2人の妹の優しさに感動しながらも2人を部屋に座らせてから、
自分も2人の向かい側に座った。
「あのさ…、2人にお願いがあるんだけど…」
「なんれすか?」
可愛らしく首を傾けて希美が聞く。
亜依も隣でまったく同じポーズ。
- 289 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時25分47秒
「あのね、お姉ちゃん 今からどうしても行かなきゃ行けないトコがあるのよ。
だから、お母さんにバレないように上手くやってもらっても良いかな?」
手を合わせて頼み込む矢口に、2人は少し考えるようなそぶりをしてから、
厳しい口調でピシャッと言った。
「姉ちゃん 風邪ひいてるんやからダメにきまってるやろ?」
「そうれすよ、寝てなきゃダメれす」
「もう、風邪治ったからさ!…ね?」
「ホンマにぃ?」
「風邪は治り始めがカンジンなのれすよ」
なかなか許してくれそうにない二人にもう一度、手を合わせて頭を下げる。
「お願い! 一生のお願いだから!」
矢口のそんな様子に、2人は顔を見合わせた後 やれやれ… といった感じで
「しゃーないなぁ…上手くごまかしといたるわ」
「お姉ちゃん、無理しないでくらさいね」
そう言って、手を繋いで部屋を出て行った。
それから2,3分後、ずっと電源を切っていた携帯をポケットにつっこんで矢口も部屋を後にした。
- 290 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時26分21秒
矢口が公園に着くと、もうそこには紗耶香が来ていた。
公園の入り口の柱にもたれかかる紗耶香。
少し俯き気味なので、表情はよく見えなかったけど なんだかすごく真剣に考え事しているみたいに見えた。
そういえばいつからだったかな…、紗耶香がこーゆー表情を頻繁に見せるようになったのは。
すぐ目の前まで矢口が来たところで紗耶香はやっと気付いたようで、ゆっくり顔を上げた。
「ごめん、遅くなって。待った…よね?」
矢口が機嫌を伺うように聞くと、紗耶香は笑顔で首を振る。
「んにゃ。市井も今来たトコだから。てゆーか、市井こそゴメンね。風邪ひいてるのに呼び出しちゃって」
「あ〜、大丈夫大丈夫。もう風邪治ったから!」
矢口がそう言って両手でガッツポーズを作って笑顔でそう言うと、紗耶香は安心したように微笑んだ。
みんなこの笑顔にやられちゃうんだろうなぁ…。
学校の子達も、ごっつぁんも… 松浦亜弥も…。
- 291 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時26分55秒
「やぐっちゃん?」
ガッツポーズを作ったまま固まっていた矢口の目の前で手のひらを上下させながら紗耶香は呼びかけた。
「あっ、ごめんごめん。ボーッとしてた」
「おいおーい、しっかりしてくれよぉ〜。もしかして、寝すぎてボケちゃったとか?」
ハッと気付いて慌てて答えた矢口に紗耶香は笑いながら言った。
なんだとぉー!? と笑いながら出した矢口の鉄拳を紗耶香は簡単に受け止める。
そのまま自然に繋がれる手と手。
もちろん、指を絡める恋人つなぎ。
- 292 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時27分34秒
「座ろっか?」
たいして広くない公園をしばらく歩いたところで紗耶香は言った。
3人掛けのベンチに腰掛けてからも 二人は繋がれた手を離そうとはしなかった。
しばらくそのまま2人は他愛もない話をした。
矢口が休んでる間に学校であったコトや、好きな音楽の話、
紗耶香のバイト先の先輩の話、亜依と希美の話…。
なんだか、こんなふうに紗耶香と話すのはすごく久しぶりな気がした。
矢口が学校を休んでいたこの3日間だけのことでなく、もう一ヶ月も二ヶ月も…。
…あれ?そういえば何で今まであんなにギクシャクしてたんだっけ…?
- 293 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時28分14秒
「この公園さ…市井がやぐっちゃんに告白したトコだよね」
突然懐かしそうに紗耶香が言った。
「うん…。あの時の紗耶香、可愛かったなぁ…。顔真っ赤にしちゃってさ、でもクールにキメようと頑張ってて…」
「っな、そーゆーコト言うなよぉ!恥ずかしいじゃんか」
矢口がからかうような口調で言うと、紗耶香は耳まで真っ赤にして矢口から少し顔をそらした。
なんだかそんな紗耶香が可愛くて嬉しくなる。
「ねぇ、紗耶香ぁ? 矢口、あの時すごく嬉しかったんだよ?」
紗耶香に少しかがんでもらって頭をなでながら言う。
「市井もやぐっちゃんがOKしてくれた時メチャメチャ嬉しかった。こんな可愛い子が彼女になってくれるなんて…って」
紗耶香の少し照れたような口調が矢口の顔を余計に熱くする。
「そ…そゆこと普通に言うな」
小声でそう言った後、照れ隠しに 紗耶香のサラサラしたさわり心地の良い髪の毛に指を絡める。
優しい月明かりの下。
幸せな空気が二人を包む。
周りには誰もいないので、誰かに邪魔されることはない。
ずっと、こんなふうにしていたいと思った。
- 294 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時29分39秒
「…ねぇ、やぐっちゃん」
しばらくされるがままになっていた紗耶香は、矢口がやりやすいように少しかがめていた身体を起こしながら言った。
「ん? 」
紗耶香がしっかり座りなおすのを見て、なんとなく自分も座りなおしながら首をかしげる。
つながれた紗耶香の手になんとなく力が入った気がした。
「市井さ、初めてやぐっちゃんのコト見たときから、ずっと好きだったんだ」
「何ぃ〜?一目ぼれってヤツ?そりゃぁ、矢口は抜群にセクシーでプリチーだけどさぁ」
わざとらしくセクシーポーズをしながら言う矢口。
「ホントに、この子しかいない、この子しか見えない って思ったんだよね」
「ちょっ…ちょっとツッコんでよ、恥ずかしいじゃんか!」
矢口は紗耶香の肩をバシッと叩いて笑いながら言う。
「ホントに…こんなこと言うの恥ずかしいけど、この子こそ運命の人だ とか思ったりとかして…」
「…紗耶香? どしたの? 何か変だよ…?」
矢口のコトバにおかまいなしで続ける紗耶香。
ゆっくりと、はっきりと、一言一言。
- 295 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時30分29秒
- 不安になって掴んだ紗耶香の細い腕は、かすかに震えていた。
「でも…さ、やぐっちゃんにとっての運命の人は市井じゃなかったんだ…」
「な…何言ってんの、紗耶香?」
長めの前髪をかきあげて ふっと一度空を仰いだ紗耶香は、すぐに視線を矢口に戻して
すごく不器用な笑顔をつくった。
「…別れよう」
「…え?」
- 296 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時31分06秒
普段よく頭の回転が良いといわれる矢口だけれど、あまりに突然のそのコトバを理解するのには少し時間がかかった。
「な…なんで…?何でそんなコト言うの?
じょ、冗談だよね?矢口を騙そうとしてるだけなんだよね?」
矢口の発した声は、自分でも驚くくらい震えていた。
「結構、ひと月前くらいから考えてはいたんだ…。
でも、言うつもりなんてなかった。一昨日、あの人さえ来なければ…」
「…あの人?」
一瞬、松浦亜弥の顔が浮かぶ。
- 297 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時31分39秒
「一昨日、飯田先輩が教室に来てさ、そのときに言われちゃったよ。
”矢口の本当の気持ちにも気付かないのか? 自分なら矢口をもっと幸せに出来る、絶対に矢口を泣かせたりはしない”って」
「飯田先輩が…?」
ずっと胸の奥にしまおうとしていた人の名前が…それでもいつも頭のどこかでちらついていたあの人の名前が突然出てきて、なんとなく動揺してしまった。
「ホントはさ、あの時…飯田先輩が市井に宣戦布告みたいなのをしてきたときから気付いてたんだ。
やぐっちゃんの気持ちが市井なんかよりもあの人にあるってことに」
「そ…そんなコト…」
矢口の言葉をさえぎって紗耶香は続ける。
つながれている紗耶香の右手からかすかな震えを感じる。
- 298 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時33分48秒
「それに気付いていながら、やぐっちゃんを渡したくなかったから今まで気付かないフリをしてたんだ。
優しいやぐっちゃんは、自分の気持ちにウソをついて市井とずっと一緒にいてくれるって分かってたから…。
そんなコトしたって、やぐっちゃんが辛い思いをするだけなんだって…、市井自身もみじめな思いするだけだって…分かってたのにね」
紗耶香は左手で拳をつくってギュッと握り締めながら言う。
俯いているので、表情は見えない。
「市井は、誰の気持ちも考えられない ただの卑怯者だからさ…。
ごめんね、やぐっちゃん…。市井のワガママのせいで辛い思いさせちゃって…ホントにゴメン…。
駄目な恋人でホントにゴメン…」
俯いて謝り続ける紗耶香の顔を無理矢理上げさせて矢口は言う。
涙を流しながら。
一時間かけてした化粧はボロボロになっていたけど、そんなことは気にならなかった。
「そんなことない!矢口が好きなのは紗耶香だよ? 紗耶香だけだよ!」
- 299 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時35分56秒
- 紗耶香は矢口のコトバにすごく優しい笑みを浮かべて言った。
「やぐっちゃん、前に市井に言ったよね? 無理して一緒にいられるなんて辛すぎるって」
「無理になんかじゃないもん!矢口が一緒にいたいって思ってるから…」
そう言いながら紗耶香の右腕を両手でギュッと掴む矢口。
紗耶香は、そんな矢口に小さい子供に対してのような優しい口調で言った。
「もう、素直になろう…やぐっちゃん。…ね?」
- 300 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時36分31秒
- 辛いとき、誰が一緒にいてくれて安心した…?
カッコいいくせに、どこか抜けてるあの人。
大事な試合の前なのに、部活そっちのけで一生懸命に矢口を慰めてくれたのは…?
長い黒髪と大きな瞳をもつあの人。
気付いたらいつも心の中にいたのは…?
飯田…圭織先輩…。
「…ごめん、ごめんね紗耶香」
「謝ることないって。やぐっちゃんは悪くないんだからさ」
紗耶香は矢口の頭をクシャクシャなでながら言った。
…じゃあ、何で紗耶香はそんなに悲しそうな顔してるの?
紗耶香、笑顔がひきつってるよ…?
ねぇ、紗耶香…。
ごめん、裏切り者は矢口の方だったんだね…。
ごめん、紗耶香。ごめん。ごめんなさい。
- 301 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時37分17秒
- 「あの…さ、それで別れてからもさ…市井達、友達として…だから、つまり恋人として付き合い始める前みたいに付き合っていけないかな…
…いや、もちろん駄目ならあきらめるけど…」
「え…? いいの?」
思わず聞き返した矢口に紗耶香は苦笑しながら言う。
「いや、市井がお願いしてるんだってば」
涙が次々溢れてくる。
「い…良いに決まってんじゃんか」
矢口は涙を流しながら無理矢理 笑顔をつくって言う。
自分で言うのもアレだけど、無理矢理つくったその笑顔は 最近の矢口にとって一番の笑顔な気がした。
安心したように微笑む紗耶香を見て余計に涙が溢れてきた。
もうこれっきりかと思った。
もう、学校で会っても何も話さないような、目も合わせないような、ホントに他人になっちゃうのかと思った。
紗耶香が矢口のことをこんなに愛してくれたのに、それなのに紗耶香以外のひとを愛してしまった自分なんかと
友達として付き合ってくれるなんて…。
紗耶香…ホントにホントに大好きだよ。
- 302 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時38分41秒
- 「おいおい やぐっちゃん、泣くなよぉ…」
矢口の頭をなでながら情けない声を出す紗耶香。
そんな紗耶香がおかしくて、笑い声の代わりに涙がますます出てきた。
「…あっ、そうだやぐっちゃん いい物あげる。だから泣きやんでよ」
小さい子をあやすような口調で必死に語りかける紗耶香に、子ども扱いするな と泣きながら頬を膨らませて文句を言う矢口。
そんな矢口を見て満足そうに一度うなずきながら紗耶香は言った。
「10月の2人が付き合いだした記念日に結構良いプレゼントとか渡したくてバイトしてたんだけど、
もうそんなの関係なくなっちゃうから…」
紗耶香は、かばんからゴソゴソと何かを探しながら言う。
矢口は、涙でぼやけた視界の中 その様子を見守る。
- 303 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時39分28秒
- 「はい、これ…。今までの感謝の気持ちとか…さ。やぐっちゃんと付き合えて 市井すっごい楽しかったし…」
紗耶香はそう言いながら矢口に15cmくらいの立方体の箱を差し出した。
ピンク色の包装紙に黄色いリボン。
一見綺麗にラッピングされてるように見えるけど、よく見るとところどころ不恰好な部分が目立った。
「これ、紗耶香が自分でラッピングしたの…?」
「い…、いいだろぉ、別に。じ…自分でやりたかったんだってば」
矢口が、多分泣きはらして真っ赤になっているであろう目で紗耶香を見ると
紗耶香は照れたように早口で言った。
- 304 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時40分01秒
- 「んーん。嬉しいよ紗耶香」
笑いながら言うと紗耶香は頬をポリポリとかきながら照れたようにはにかむ。
矢口以外には絶対に見せない紗耶香の表情。
そんな表情もこれからは見れなくなるのかと思うと切なさがこみあげてくる。
そんな気持ちをふりはらうように、矢口は努めて明るく言った。
「ねぇ、開けてみていい?」
「もちろん」
紗耶香は、笑顔でうなずいた。
不器用なくせに一生懸命ラッピングをする紗耶香の姿を想像しながら
丁寧にリボンをほどき、包装紙をやぶかないように慎重に開ける。
中の箱を開けるとそこには、ピンク色のラジカセに形をした時計が入っていた。
- 305 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時41分12秒
- 「わぁっ 目覚まし時計だぁっ!」
「これからは市井が毎朝起こしに行くわけにはいかないからさ。
ちょっと、時間合わして鳴らしてみ?」
言われたとおり時間を合わせてみると、聞き覚えのある音楽が流れてきた。
矢口の苦手な あの心臓に悪いけたたましいベル音じゃなくて、おだやかな優しい音楽。
ちょっと紗耶香に似てるって感じた。
「…この曲、聴いた事ある…」
「ジュディマリの”手紙を書くよ”。今の市井の気持ちに一番近いかな、と思ってさ。
親戚にこーゆーの作る仕事してる人いるから無理言って作ってもらったんだ。
これでもう寝坊なんてさせないからね」
紗耶香は、人差し指を立てて笑顔で言った。
「…ありがとう、紗耶香…」
- 306 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時42分16秒
雨の日が続く六月。
そんな中で梅雨の中休みともいえる今日。
少し強めの風が雲を運ぶ。
何度か薄い雲が月を通り抜けて行く。
そんな空の下、矢口たちは ふたりにとって一番大切な時を過ごした。
オルゴールみたいな音の「手紙を書くよ」を聴きながら。
しばらく2人は手をつないで空に浮かぶ月を見ていた。
恋人としてではなく、友達として。
- 307 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時43分46秒
━━━━━
「それからしばらくして矢口は圭織と付き合い始めたんだ…。
紗耶香は何も言わずにそれまでと変わらない友達付き合いをしてくれてるけど、
そのあたりから、紗耶香 今みたいになっちゃったんだ…」
「そっか…」
”飯田先輩だったりして…”
”昔さ、矢口と中学の頃から、高一まで3年間付き合ってたヤツがいたんだ”
”そいつも結構モテてさ、まわりの子からメチャメチャ騒がれてた。だから ちょっと調子に乗ってたのかな…。”
”そいつ、気付かないうちに矢口の事傷つけてて、自分のせいで矢口が傷ついてるのに、全然 気付かなくって、
そのクセ、自分は矢口のこと一番よく分かってるなんて勘違いしてて…。”
”ホント、最低だよ…”
安倍は先程の市井の寂しげな表情と言葉を思い出していた。
- 308 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2002年11月17日(日)19時44分47秒
- 「ごめんね、長くなっちゃって…」
「んーん、紗耶香のコト知れて良かった。また紗耶香と会えるかな?」
「あー、それは大丈夫。アイツ暇人だからさ」
矢口が笑いながらそう言うと安倍もつられて笑った。
ふと矢口のベッドの枕元を見ると、ピンク色のラジカセ型の時計が置いてあった。
その時計には埃ひとつかぶってなく、時間も正確だった。
そのことから、パッと見ただけでも矢口がその目覚ましをものすごく大切にしていることがうかがえた。
その日、ひとつの運命が動き始めた。
- 309 名前:イチヤ@作者 投稿日:2002年11月17日(日)19時49分39秒
- =
(〜^◇^〜)<ごめんね、長くなっちゃって…
更新終了です。
やっと、さやまり編終わりました。
本当に、長くなってしまい申し訳ないです。
これからは、本編のいちなち編(三人称書き)になっていきます。
まだ もう少し長くなるとは思いますが、もしよろしければお付き合いください。
>>285さん
さやまり編、物凄く中途半端な終わり方になってしまいました。
申し訳ないです。
>つーか、この小説での、なっちの存在をすっかりと忘れてました(汗
正直 自分も忘れかけてました(笑
- 310 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年11月18日(月)12時25分28秒
- とりあえず「さやまり」編の終了、お疲れ様でした。
さやまり編が始まった時から、さやまりの関係がこーなるとは判っていても、
実際に関係が終っちゃうと、やっぱり寂しいですねぇ・・・。
これで現在読んでいる小説の中で、「さやまり」の話は無くなってしまいました。
またいつか「さやまり」を書いて下さいね。
では、本編も楽しみにしてます。
現在の「かおまり」のコトもちょこっと出してくれると嬉しいなぁ〜(w
- 311 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月01日(日)16時24分19秒
- さやまり好きとしては、寂しかったですが、友だちとして
仲良くしてくれるならまたそれもいいことです。
私も飯矢、少し読んでみたいものです。
- 312 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月30日(月)22時19分32秒
- 続き待ってるよ〜
- 313 名前:イチヤ@作者 投稿日:2003年01月06日(月)22時15分30秒
- 11月から2ヶ月もスレ放置して何やってたのかと、
お前は何様かと。
いろいろと御意見おありだと思います。
本当に申し訳ないです。
この二ヶ月間、三人称書きでバリバリ書いていこうと思い、
ラスト近くまでとりあえず書いてみたんですが、
なんとなく、しっくりこない…というか、ものすごく内容が薄っぺらくなってしまいました。
そこで、しばらく どうしたものかと考えていたのですが、
どうにもこうにも書けなくなってしまったので、
申し訳ないんですが、ここからは市井の一人称書きで書かせていただきます。
三人称書きにすると言っておきながら、書けないからと言って自分の都合の良いように変える
身勝手な作者をどうか許してやってください。
- 314 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月06日(月)22時16分02秒
「紗耶香っ、お昼食べよっ!」
授業の終わりを知らせるチャイムが鳴ったのとほぼ同時に、すぐ後ろの席でせっせとノートをとっている市井に
満面の笑みを向ける小さな親友、矢口真里。
教卓には さっきまで授業をしていた先生がまだ授業の道具を片付けているけれど、
そんなことは この矢口さんにとっては大したことじゃないらしい。
そんなことよりもお弁当の方が大事みたいだ。
ほら、さっきまで死にそうな顔してたのにチャイムが鳴った途端、こんなに元気になって…。
「さーやーかー、ノートなんて後で見せてあげるってば。先にお弁当にしようよぉ…」
矢口はそう言いながら市井のノートをひったくった。
矢口さん、そーゆーセリフは授業中爆睡していた人の言っていいセリフではないんじゃないでしょうか。
すぐ後ろの席に座ってる市井にはまるわかりっすよ。
そう思ったものの、口でそう言っても倍にして言い返されるのは長い付き合いで分かりきっているので、
ここはおとなしく従い、はいはい…なんて言いながら机の上に弁当を取り出す。
まぁ、弁当なんて言っても、正確にはコンビニで買ったパンなわけだけど…。
- 315 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月06日(月)22時17分05秒
- 本当は、たまにはお弁当が食べたいんだけど一人暮らしで低血圧な市井君にはとてもとても無理な話で…。
毎朝起きるのすら辛いのに弁当にまで手が回るワケない。
こんなとき、誰か作ってくれる人がいたらなぁ…。
まあ、自分で言うのもなんだけれど市井が頼めば弁当の一つや二つ作ってくれる女の子はたくさんいる。
でも、やっぱり一回作ってもらっちゃうとこれからも…ってなって、そんなの絶対断れないし、
そのときその子がすごく料理下手だったりしたら悲惨じゃんか。
まあ、はっきり断れない自分が悪いんだけど…。
そういえばこの前のなっちなら料理上手そうだよなぁ…。
- 316 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月06日(月)22時17分52秒
- 「ねぇ紗耶香、今度の日曜日ってヒマ?」
市井の机の上に、自分の身体に似合いの可愛らしい小さなお弁当箱を開きながら尋ねてくる矢口。
「日曜日?別にヒマって言えばヒマだけど…?」
なんとなく遠まわしに答えた市井に、ヒマならはっきりヒマって言えよ!とつっこみながらも矢口は嬉しそうな顔で、
「じゃあさ、なっちも入れて3人で遊ぼうよ!なっちのこと覚えてるよね?」
突然出てきた”なっち”と言う単語に何故か心臓の音が早くなる。
パッと頭に浮かんできたあの天使のような笑顔。
「あっ、当たり前だろ!いくら市井でもそんなに簡単に忘れないっての!」
そう言いながら矢口の頭をぺシッとはたく。
忘れるわけはない。あんな可愛い子のこと。
年齢よりもちょっと顔が幼くて、笑顔が可愛い。見てると危なっかしくて、なんだか守ってあげたくなるような…。
そんな年上の小さな女の子。
あんな子と付き合えたりしたら最高なんだろうけれど、何故か行動に移せない自分がいた。
ウジウジと彼女のことを想っているばかりで、ただそれだけな、そんな自分がもどかしい。
こんなこと今まではなかったのに。
- 317 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月06日(月)22時18分35秒
- 「…で、行くの?行かないの?行きたくないんだったら別に良いんだけども…」
市井にはたかれた頭をおさえながらそう言うニヤニヤ顔の矢口。
「あっ…行く、行きます!」
とにかく今は、早く彼女と会いたかった。
上手く話せる自信はないけれど、とにかく会って彼女のことを知りたいと思った。
今はまだ、ほとんど知らない彼女のことを。
「良かったぁ…きっとなっちも喜ぶよ。また紗耶香に会いたいって言ってたし」
「えっ、ホントに?」
何も考えず出た市井の言葉に、矢口は嬉しそうにうなずいた。
しかし、すぐにまたニヤニヤ顔に戻って、
「あれぇ〜、何でそんなに嬉しそうなの?紗耶香ちん」
わざとらしくそう聞く。
「べ、別に嬉しそうなんかじゃないって!矢口は勘違いしてるみたいだけど、別に市井はなっちのこと好き…だけど、
そーゆー好きじゃないんだって」
- 318 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月06日(月)22時20分19秒
- そう、ただなっちのことは友達として好きなんだ。
だって、多分 恋ってこんな感じじゃなかった気がするし。
こんな感じ初めてだし。
でも、そういえば ひとに恋するってどーゆー感じだったっけな…。
「分かった分かった。まあ、何かあったら相談のるからさ」
そう言いながら、ポンポンと市井の肩を叩く矢口。
いや、全然分かってないじゃないっすか矢口さん。
「いやぁ〜、日曜日が楽しみだね紗耶香ちん」
何故かご機嫌な矢口に、そんなつっこみを入れても流されるだけなので市井は 矢口の玉子焼きをつまみながら、そうだね、なんて答えた。
でも、なんだかんだ言って結構楽しみな自分がいた。
結局、行き先は映画館に決まった。
- 319 名前:イチヤ@作者 投稿日:2003年01月06日(月)22時30分41秒
- =
(〜^◇^〜)<早く書けよ、この駄目作者!
(●´ー`●)<早くなっちを出すべさ!
更新終了です。
>>310 読んでる人@ヤグヲタさん
毎度毎度、更新遅くて申し訳ありません。
さやまり、少ないですよねぇ…。自分的には一番好きなCPなんですけど。
さやまり書きさん( ^▽^)<カモンナ!
「かおまり」…初挑戦ですけど、この話が終わってネタがあったら書かせていただきます。
>>312さん
どうも、更新遅くて申し訳ありません。
それと、ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。
さやまり、自分も大好きなんでこのまま仲良くさせますよ。
飯矢、多分この運命の人が終わったあたりに書かせていただきます。
>>313さん
待っていただいているのに、こんなに更新遅くなってしまい本当に申し訳ないです。
こんな駄作でも待っていただいていたなんて嬉しい限りです。
- 320 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月19日(日)04時05分01秒
「矢口、遅いねー」
今日3回目のこのセリフ。
約束の時間は10時半。現時刻は10時50分ちょい過ぎ。時計の長針と短針が重なって見える。
じゃあ公園の噴水前に10時半ね。絶対遅れるなよ!
その言葉を信じて時間通りバッチリ到着した市井となっち。
しかし、約束の時間を決めた当の本人はどこにも見当たらない。
それは、決してその人の背が小さすぎて見えないとかそういうことではなく、本当に来ていないのだ。
「♪〜♪〜〜〜〜♪〜」
だんだんとイライラし始めていた市井の携帯から着信音が流れた。
ポケットから携帯を取り出してパカッとひらくとディスプレイには案の定20分前にここにいなければいけない人の名前が。
市井は、隣で時計を気にしているなっちに一言断ってから、通話ボタンを押した。
「もしもし、矢口?何やってんだよ!もう、11時になるよ?」
『あぁ〜、ゴメン。行けなくなった』
「はあ!?」
- 321 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月19日(日)04時06分48秒
イケナクナッタ
あまりに突然の矢口の言葉に市井は耳を疑った。
しかし、そんな市井にかまわず矢口はいつもと何ら変わらない明るい声で続ける。
全然悪びれることなく。むしろ楽しそうに。
『まあ、2人で楽しんできてよ。一歩前進のチャンスじゃんか」
「な…何言って…」
『じゃ、忙しいから切るね。バイバーイ』
「ちょ…ちょっ、矢口!?」
市井の呼びかけに、ツーツーという無機質な音が答えた。
あまりにもひどすぎる。自分から約束しといて、そりゃあ理不尽ってモンじゃないですか?
こんなマイペースな人間がいていいんだろうか。少なくとも市井の知り合いにはこんなことするヤツ矢口くらいしかいない。
…あっ、でも他にももう一人いるか…自分大好き超ワガママ人間が…。
- 322 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月19日(日)04時08分14秒
- 「どしたの、紗耶香?」
「あっ、いや、矢口来れなくなったって…」
心配そうな表情で尋ねてくるなっちに、さっきの矢口に対しての勢いを完全に失い、弱々しく答える。
「そっか、矢口来れないんだぁ…」
市井の答えに、寂しそうにそう言うなっち。
「どーする?今日はやめとく?」
市井がパタンと携帯を閉じてそう言うと、なっちは腕を組んでうーんとうなりながら考えるポーズ。
いや、なんか文句なしに可愛いんですけど…。
だいたい、今日の服装からしてかなり可愛い。
少しブカブカなTシャツに可愛らしいスカート。
そんなことを思いながらぼーっとなっちの様子を見ていると、突然パッと顔を上げて上目遣いに市井を見た。
それは多分、ただ自分より背の高い市井を見上げただけなのかもしれないけれど、その上目遣いはパーフェクトなものだった。
- 323 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月19日(日)04時12分25秒
- 「ねぇ、紗耶香…」
自分の顔がだんだん赤くなっていくのが分かる。
心臓の音がすごくうるさい。
ほとんど何も考えられなくなった市井は、目を合わせていられず少し視線を逸らしながら答える。
「な…、何、なっち?」
少し声がうわずっている気がする。
普段なら絶対にこんな風にはならないのに…。
「あの…さ、なっちとじゃ嫌かな?映画」
ひとり慌てている市井とは逆に、いたってマイペースななっちは少し遠慮気味な口調で言った。
「あ、いや全然嫌じゃないよ。むしろ僕からお願いしたいくらいってゆーか…あれ、何言ってんだろ…」
なっちの思いがけない言葉に更にテンパる。
そんな市井に、何言ってんの紗耶香ぁ、なんて笑いながら言ってくれるなっち。
だっててっきり、矢口が来ないなら…ってことで解散すると思ってたから…。
- 324 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月19日(日)04時13分10秒
- 「実はなっちさ、どーしても見たいやつがあるんだよね。良かったぁ…」
本当に嬉しそうにそう言うなっちを見て、なんだかすごく嬉しくなった。
微妙にイントネーションが違っているところが可愛い。
「じゃあ、行こうか。誰かさん待ってたせいで時間に余裕無くなっちゃたし」
市井がわざとらしく”誰かさん”を強調してそう言うと、なっちは おかしそうに笑った。
そのなっちの笑顔を見たとき急に
なんとなく、今すっごい幸せだって感じた。
- 325 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月19日(日)04時16分04秒
映画館は、この公園からたいして遠くない。徒歩で10分ってとこだろう。
2人で並んで歩いていると唐突になっちが
「そう言えばさ、紗耶香って矢口の前じゃ自分のこと市井って呼ぶよね?」
「あぁ〜、そうだねぇ。てゆーか普通に学校で知り合った子とかにはワリと市井かも。
クラスの子とかが喜ぶから時々 "僕"って使うくらいで」
あまりに突然 話題を振られて戸惑いながらも答える。
まあ、正確に言えば「矢口と別れた後に出逢った女の子にたいしては」なんだけれど。
つまり、もっとハッキリ言えばナンパで知り合った女の子。
- 326 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月19日(日)04時17分14秒
- 「そっか…そうなんだ…」
「どしたの、なっち?それが何か気になる?」
何で急にそんな質問をしたのか気になって、聞き返してみる。
なっちは、少しうつむき気味で
「なんかさ、その…なっちは、"僕"より"市井"の方が好きだなぁ…なんて…」
「そうなの?」
なっちが何を言おうとしているのか分からず、とりあえず続きを待つ。
「なんてゆーかさ、距離がある感じしない?」
「かなぁ?まあ、なっちが良いなら"市井"にするよ。ホントは"僕"ってちょっと使いづらいしね」
そーゆーモンなのか?とギモンに思いつつ、答えるとなっちが笑顔で返してくれた。
「うん、そっちの方がいいな」
その笑顔で完全にKOされそうになったところで、ちょうど映画館に着いた。
- 327 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月19日(日)04時18分46秒
「高校生2枚ね」
市井はそう言って、なっちが見たいと言っていた映画のチケットを窓口で購入。
「なーっち、チケット買って来たよ」
そう言ってグッズ売り場で、初めて来た場所だからか やたらとキョロキョロしているなっちに一枚渡す。
ありがと、と言って笑顔で受け取るなっちの指先に自分の指先が触れる。
まあ、実際触れるか触れないかの微妙なトコで、そんなの変に意識してなきゃ気付かないくらいだったけれど。
ただそれだけで、心臓がドクンと跳ねて、身体が硬直する。
本当に市井さんはどうしちゃったんでしょう…。
自分で自分が分からない。
- 328 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月19日(日)04時19分26秒
- 「ん〜?紗耶香どしたの?」
自分自身に問い掛けていたのと同じコトを聞かれて、一瞬ビクッとしたけれど、あくまでも平静を装いながら
「ん?なんでもないよ」
それだけ言って、ポップコーンとコーラを買う。もちろん2人分。
グッズ関係は帰りに買えば良いよね。なんて言ってごまかしながら映画鑑賞には欠かせない必需品を渡す自分。
ハタから見たらどんな風に思うんだろう。
そんな市井に、そっか…なんて言いながらエレベーターに向かうなっち。
明らかにテンパっている市井に、何の疑問も抱かないなっちもある意味すごいと思うけど…。
何故か なっちといるといつもの調子が出ない。
勿論、なっちが嫌いとかそーゆーことじゃないんだけど…。
- 329 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月19日(日)04時20分14秒
- 市井たちは、2階でエレベーターを降りて大きな扉に「C」と言う文字が書かれている部屋に入った。
幸いなことに、人気映画なのにも関わらずワリと席は空いていた。
やっぱり朝イチの上映を狙ったのが良かったんだろう。
「ねぇ、どこに座る?」
自分の予想通りになったことに一人で満足している市井に、なっちが尋ねる。
よっぽど、この映画が楽しみなんだろう。
もともと輝いている可愛い瞳が、いつも以上にキラキラしている。
「ん〜、そうだなぁ…」
いくら朝イチの空いている時間を選んだからって、まだまだ話題作のこの映画。
さすがに真ん中の方の良い席は埋まってしまっている。
結局、あんまり前の方に座ると首が痛くなるということで後ろから三列目の席に腰を下ろした。
楽しみだね、なんて本当に嬉しそうに言うなっち。
そうだね、なんて笑顔で答えるけれど、市井の心臓の音はどんどん大きくなっていた。
よく考えたら映画館の席って隣との距離メッチャ近いじゃんか。
すぐ隣には、映画の開始を今か今かと心待ちにしている 可愛らしい女の子。
年上なのに、彼女が童顔なのも手伝ってその姿は もう言いようもないくらいメチャメチャ可愛い。
- 330 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月19日(日)04時21分52秒
- 市井がひとりで理性を保つために格闘していると、映画の開始を知らせるブザーが鳴った。
徐々に照明が暗くなっていく。
「うわぁー」なんて小声で嬉しそうに囁くなっち。
まず、新作映画の予告がスクリーンに映る。
コレ面白そうかも…なんて思いながらスクリーンに見入る。
なっちの方を盗み見ると、同じように真剣な眼差しで穴が開くほどスクリーンを見つめていた。
まだ、予告なのにそんなに真剣に見てたら疲れちゃうんじゃないかな…。
そんなことを思っていると、程なくしてスクリーンが少し斜めに傾いて映画の本篇が始まった。
- 331 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月19日(日)04時23分25秒
映画の内容は、ただ淡々と変化のない毎日をこなしていくという生活に嫌気がさしている少年のクラスに
ある日、少し変わった空気を持つ少女が転校してくるというもの。
そんな少女に対しての少年の第一印象はあまり良くはなかった。
しかし、実はその少女は少年の母親の再婚相手の連れ子で、同じ家に住むことを余儀なくされる…。
そんなありきたりな話だ。
まあ正直、途中でチラチラなっちの方を盗み見ている時間の方が長かったけれど。
いや、別にそれは深い意味とかは全然なくて、
別になっちの真剣な横顔に見とれてたとか、なっちの唇が誘ってるように見えたとか、
そんなことは全然ない……こともなかったけど…。
とにかく、そーゆーことを置いといてもなっちは見てて飽きない。
- 332 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月19日(日)04時24分07秒
- ときどき、ポップコーンにのばされる細い指。
その間もずっと視線はスクリーンから離すことはない。
突然の効果音にビクッと肩を揺らすなっち。
いや、市井もたしかにビックリしたけどさ…。
小さな子供が出てくるシーンで愛しそうな表情を見せるなっち。
小さい子、好きなのかな…。
そんなコトを思いながら、なっちが公園で小さな子供と笑顔で遊んでいるところを想像。
──うん、悪くない。保母さんとか似合うよなぁ…。
途中、何度か左手の人差し指を唇に持っていき、そのままふっくらと形の良いそれをなぞるなっち。
癖なのかな…。
- 333 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月19日(日)04時25分15秒
- そんなコトを思いながら
ふとスクリーンに目をやると、制服を着た男女が屋上らしきところで抱き合っていた。
あれ?この2人 さっきまで仲悪かったじゃん、と市井が思ったのと同時くらいにエンドロールが流れ始めた。
二時間の映画がものすごく早く感じられた。
映画を作った人には申し訳ないけれど、それはこの映画が面白かったからではなくて。
いや、それもあるかもしれないけどさ。何せ人気ある映画らしいし。
まあ、ほとんど見てなかったけど…。
誰に対してか分からないけれど、なんとなく自分の中で言い訳していると、
だんだんと照明が明るくなってきた。
- 334 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年01月19日(日)04時25分55秒
- 「いやぁ…面白かったねぇ。なっち、ちょびっと泣いちゃったよ、あのラストのトコ」
興奮気味に語るなっちに笑顔で対応する市井。
正確に言えば映画の内容がほとんど分からないから笑顔でごまかすしかないだけだけれど。
映画なんかよりも、
瞳に少し涙を溜めているなっちの嬉しそうな顔を見れたってことだけで大満足だ。
なんだか間違った意味で映画の余韻に浸りつつも、
「なんか肩こっちゃったね」なんて言いながら立ち上がる。
すると、突然市井の耳に聞きなれた可愛らしい声が。
「あれぇ〜、さやタン?」
- 335 名前:イチヤ@作者 投稿日:2003年01月19日(日)04時26分42秒
- 人‘ 。‘人<自分大好き超ワガママ人間?
更新終了です。
どーでも良いけどティセラのCMのぁゃゃ可愛すぎ!
- 336 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月31日(金)15時52分42秒
- ここここここここここここここここここここここ
- 337 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月03日(月)19時00分48秒
- いつのまにか更新されてた…。
ヤグ、仕組んだ?
- 338 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月18日(火)00時23分01秒
- 楽しみにまってます。
- 339 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月25日(火)18時08分06秒
- 保全
- 340 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月10日(月)16時42分31秒
- マッテルヨ
- 341 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月26日(水)23時09分42秒
- ほぜん
- 342 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年03月26日(水)23時43分28秒
「あれぇ〜、さやタン?」」
普通の感覚を持つ人なら呼ぶ方も恥ずかしいであろうこんなアダ名で呼んでくるのは…。
振り向くと、3つ後ろの席に柴田あゆみと嬉しそうにこちらに手を振っている松浦亜弥の姿があった。
亜弥ちゃんは、1年のとき同じ図書委員で仲良くなった。
いつも積極的で前向きで自分大好きな超自己中な亜弥ちゃんだけれど、何故だかなかなか気が合う。
初めはジャンケンに負けたせいで嫌々引き受けた図書委員だけれど、亜弥ちゃんのおかげですごく楽しかった。
柴ちゃんは、1年のときに同じクラスで、よく矢口と3人で一緒に行動していた。
しょっちゅう矢口との喧嘩の仲裁をしてもらってた気がする。
2人とも、恋愛感情抜きで市井のことを友達として見てくれる、数少ない大切な人だ。
ちなみに2人は2年になってから同じクラスになって、
お互い市井の友達だという共通の話題があるということも手伝って、仲良くなったらしい。
よく2人で仲良く市井のクラスに遊びに来たり、教科書を借りに来たりする。
- 343 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年03月26日(水)23時47分35秒
- 「さやタンも来てたんだぁ」と嬉しそうな声で言いながらトタトタと可愛らしく走ってくる亜弥ちゃん。
「奇遇だねぇ…つーかさ、その さやタン ってのやめない?」
学校の外で友達に偶然会えたということに、なんとなく嬉しさを感じながらも苦笑気味に言う。
そんな市井に亜弥ちゃんはプクッと頬を膨らませて、いかにも不満そうに
「なーんでよ、可愛いじゃん。”さやタン”って」
「いや、なんつーか恥ずかしいって」
「イイもーん、さやタンはさやタンだもん。ね?柴ちゃん」
突然話を振られた柴ちゃんは、他人事だと思って「まあ、いいんじゃない?可愛いし」なんて言って笑ってる。
つーか、市井の意思は無視ですか?
まあ、こーゆー答えが返ってくるって分かってて言った市井も悪いけど…。
- 344 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年03月26日(水)23時48分21秒
- 「そんなことよりさ、さやタンの隣のその可愛い子は彼女?」
興味津々と言った感じでヒョコッと隣にいるなっちを覗き込む亜弥ちゃん。
”そんなこと”って、市井にとっては結構な大問題なんですけど… なんて意見は、当然軽ーく無視される。
「違う違う、友達だよ友達。矢口つながりの。んで、名前は…」
「はじめましてぇ、松浦亜弥ですぅー」
いや、ひとの話は最後まで聞こうよ…
自分から質問したクセに、市井の言葉をさえぎって亜弥ちゃんはなっちに自己紹介。
もちろん、完璧としか言いようのない笑顔で。
- 345 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年03月26日(水)23時49分12秒
まったく、なんて自己中なヤツなんだ…。
でも、こんな他の人がやったら絶対に腹が立つような(てゆーか、普通にキレると思う)行動が全部許せてしまうのは、
ある意味、亜弥ちゃんの素晴らしい才能だろう。
いや、それは決して亜弥ちゃんが半端じゃなく可愛いからとかそーゆーコトではなくてね。
別に市井が可愛い子に甘いからとか全然そんなことではなくて…
…いや多少はそれもあるかもだけど…
なっちはなっちで、市井がブツブツ独り言を言ってる横で、
「安倍なつみです よろしくー」
なんて、こちらも天使のような笑顔で自己紹介してる。
- 346 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年03月26日(水)23時52分26秒
亜弥ちゃんの横で「柴田あゆみです」なんて律儀に頭を下げる柴ちゃんと、
それにつられて「あっ、どーも」なんて言いながら頭を下げるなっち。
そんな2人のやりとりがおかしくて笑っていると、亜弥ちゃんが市井の服の裾をクイクイと引っ張ってきた。
「なに?」と言う代わりに首をかしげると、亜弥ちゃんが柴ちゃんとなっちに聞こえないような小声で、
「ねぇ、ホントに彼女じゃないの?」
「ホントだってば。友達友達。なっちは矢口の幼馴染で、ホントは今日 矢口も来るはずだったんだけどさ、急用が出来たらしくて…」
なんとなく”友達”という単語を強調させる。
それは、決してなっちを意識しているからではなくて、ひとの恋愛話大好きな亜弥ちゃんの性格上、
こーゆーコトはちゃんと言っておかないと勝手に話が大きくなっていくからだ。
- 347 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年03月26日(水)23時55分51秒
- 自分の気持ちに言い訳みたいに言い聞かせている自分自身に気付かないフリをしながら、
チラッとなっちを見ると、柴ちゃんと映画の感想で盛り上がっているところだった。
そんな市井に亜弥ちゃんは
「ふーん、そうなんだ…」
と、残念そうにとでも疑っているようにとでもとれるような そっけない口調で言った。
あれ?亜弥ちゃんにしては、なんかアッサリしてるな。
もっと、しつこく聞かれると思ったのに…。
そんな亜弥ちゃんの態度がなんとなく意味あり気に感じたのは多分気のせいだろう。
- 348 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年03月26日(水)23時57分15秒
- 結局、その話はそれでおしまい。
話の内容は映画の感想に流れていった。
終始笑顔で、いつの間にか 昔からの友達のように溶け込んでいるなっちに純粋に感心する。
市井もそんなに人見知りする方じゃないけど、さすがにこんな風にすぐにうちとけたりは出来ない。
やっぱりこの笑顔が相手の警戒心を解くんだろうな…。
なっちのこと嫌う人間なんてこの世にいないんじゃないか…とすら思う。
だって、こんないい子を嫌いになれるわけないじゃんか。
そんなことを思いながら無意識にボーッとなっちを見ていると、視線に気付いたのか
パッとこっちに顔を向けたなっちと目が合った。
どうかした?という言葉の代わりに、きょとんとした顔で首をかしげるなっちのその仕草に
何故かドキッとしてあわてて顔をそらしてしまった。
- 349 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年03月26日(水)23時58分17秒
どうかしてる…。
なにやってるんだろ…。
ホントに今日の市井はどうかしてる…。
いや、この前からか…。
初めてなっちと出会った日から…。
あの天使のような笑顔と出逢った日から。
結局そこで30分間くらい4人で映画の感想会をやっていたのだけれど(って言っても映画を見てなかった市井は、
ただ3人の話に適当に相槌をうっていただけだけど)
映画館の係員の人が入ってきたのであわてて部屋を出て、そのまま解散になった。
- 350 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年03月26日(水)23時59分17秒
- 「なっちさん、また会いましょうねぇ」「うん。絶対会おうね」
最後までアイドルスマイルを崩さずに手を振る亜弥ちゃんに、やっぱりこちらも笑顔で手を振るなっち。
帰り道、なっちは2人のことがよほど気に入ったのか、すごく嬉しそうに
「紗耶香はいい友達をもってるねぇ」なんて言葉を繰り返していた。
そんな彼女のことをどうしようもなく愛しく感じながらも、
それを心の奥底で頑なに認めようとしない自分がいる。
- 351 名前:☆運命の人☆ 投稿日:2003年03月27日(木)00時01分17秒
またあんな思いをしたいのか。
本気で愛した人を手放さなければならないあの言いようのない辛さ。
自分以外の人間のものになるということを認めようとしない…あの、自分でも嫌になる程の醜い嫉妬心を味わいたいのか。
なっちが、いつ自分のもとからいなくならないとも限らないじゃないか。
……矢口のように。
もう、あんな思いはしたくないんだ。
結局その日は映画を見ただけで、わりと早い時間に駅で別れた。
別れ際、見えなくなるまで 笑顔で手を振っていたなっちはやっぱり、言いようもなく可愛かった。
- 352 名前:イチヤ@作者 投稿日:2003年03月27日(木)00時18分54秒
- ( ´ Д `)<いいな…なっちは、簡単に溶け込めて…
更新終了です。
「いつもいつも更新遅いけど、今回はさすがに遅すぎるんじゃないか?ふざけんなやゴルァ!」
という意見、おありだと思います。
本当に申し訳なく思っております。
実は、1月末に交通事故に遭いまして、一ヶ月半程入院していたんです。
自転車で走っていたら突然、横から車にぶつかられまして…
もう、死ぬかと思いましたよ。
ホント、車は危ないんで運転する人も車道横切ったりする人も気をつけたほうがいいですよ。
いつ事故に遭うか分からないですから。
(〜^◇^〜)<結局、何が言いたいんだよお前は!
まあ、そんな言い訳せずに正々堂々謝れって話なんですが…
更新遅れて、本当にすみませんでした。
こうやってダラダラ書くのが顎さんにも他の作者さん達にも一番迷惑なことだということは分かっております。
今回の事故で遅れた分も急ピッチで一気に仕上げていきたいと思っておりますので、
もう少しの間、暖かい目で見守っていていただけると嬉しいです。
絶対に放棄はしませんので。
- 353 名前:イチヤ@作者 投稿日:2003年03月27日(木)00時24分00秒
- >>336さん
ととととととととととととととと
>>337さん
(〜^◇^〜)<え?仕組んだって何が?(ニヤリ
>>338さん
ありがとうございます。更新遅くて申し訳ないです。
こんな駄作を楽しみにしてくださるなんて…(感涙)
>>339さん
保全どうもありがとうございます。
更新遅れて申し訳ありませんでした。
>>240さん
どうもありがとうございます。
お待たせしてすみませんでした。
>>241さん
保全、どうもありがとうございます。
更新遅くなってすみませんでした。
- 354 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月27日(木)13時42分54秒
- 作者さん、逝かないでよかった…。
- 355 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月01日(火)00時03分20秒
- 事故にあわれたのですか。
いろいろと大変だったと思います。
身体には十分気をつけてください。
なっちと市井ちゃんがどうなるか楽しみです。
- 356 名前:356 投稿日:2003年04月13日(日)01時19分01秒
- 健康第一。ご無事で何より。
それにしても、矢口にフラれる原因(の一つ)となった松浦とも
わだかまりなく付き合える市井、ほんとうにいいやつだな。
幸せになってくれい。
- 357 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月29日(火)12時21分25秒
- 保全です。
- 358 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月25日(日)18時42分51秒
- hozen
- 359 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月12日(木)13時11分12秒
- 保全
- 360 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月08日(火)08時02分23秒
- ほぜん
- 361 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月27日(日)15時22分22秒
- 保全
- 362 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月24日(日)00時21分55秒
- 保全
- 363 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/15(水) 20:18
- 保全
- 364 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/02(火) 20:15
- 作者さん、生きてますか?
この作品、生きてますか?
- 365 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/28(日) 21:43
- 保全
- 366 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/28(水) 20:26
- 保全
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