加護の守護霊になっちゃった後藤の話。

1 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月06日(月)00時22分18秒
 ごま視点の話を書かせていただきます。
 現メンの話なので、総登場の予定。
 ちょこっとお付き合いください(´д`)zz
話のメインは、題名のとおり「ごまあい」コンビです。
意外とこの2人がメインの話ってないので・・・・
2 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月06日(月)00時27分08秒
 「じゃ、また明日ねー」
 「お疲れさまあ。ばいばーい」

 ・・・・これが、アタシとメンバー達の最後の会話となった。

 朝から雑誌の取材やら、レギュラー番組の撮影だとか、プッチのラジオなどいつもの
とおり、目の回るような仕事量をこなし。

 やっと家に帰れる、そんなほっとする瞬間。
 特に意識なんかしなくっても、明日が普通にくると思っていた数時間前。

 でも、アタシにその「明日」は来なかった。

 後藤真希、15歳。

 来月16歳の誕生日を迎える21世紀の夏。
 ドラマのお仕事も。
 夏のライブも。
 セカンドシングルの歌いれも。
 
 何もかもが中途半端なこの時期に、
 死んでしまいました。
  
 ・・・・あは。
3 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月06日(月)00時31分54秒
 キキーーーーッ

 耳をつんざくようなすごい音がして。

 夜道を歩いていたはずのアタシの意識は、そこから先がどうもフェードアウトして
しまったらしく。
 気がついたら、アタシは病院のベッドに寝かされていた。

 いや、そうじゃない。

 正確にいうと、ベッドに寝かされてる自分の姿を「見ていた」。
 
 頭にはぐるぐる包帯が巻かれていた。
 点滴が数本、アタシの体につながれていた。
 そして、テレビでよくみる、呼吸装置のようなものがくっつけられていた・・・。

 なんで?
 アタシは何やってんの?
 ここで見てるアタシは、何?
 
 色んな疑問がいっぺんにアタシの頭に浮かんだけど。
 自慢じゃないが、アタシの頭はそんなによくない。
4 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月06日(月)00時36分29秒
 ちょっと前の記憶をたどってみる。
 
 メンバーと別れて。(今日は帰りがけに遊んだりしなかった)
 タクシーを降りて。
 あ、買いたいものがあったから、コンビニに寄って。
 家に帰る途中・・・・。

 『キキーーーーーッ』

 再生される、あの急ブレーキの音。
 一瞬感じた、周りがぐるっと急回転するカンジ。

 ああ、そっか。アタシは交通事故に遭ったんだ・・・。

 目の前でベッドに横たわっている自分の姿を見ながら、アタシはそう結論づけた。
 頭の包帯といい、体の傷といい、たぶん間違いないんだろう。

 でも、じゃあ、ココにいる「アタシ」は、何だ?

 ふと、そう思った。
5 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月06日(月)00時41分21秒
 『幽体離脱』

 そんな言葉が、唐突に頭に浮かんだ。
 去年、稲川淳二さんの怖い話にハマッてたとき?
 それともテレビか雑誌か?

 忘れたけど、その言葉は覚えている。
 人間の魂が、体から出ちゃう現象だ。・・・確か。

 ってことはなんだ!?
 今の「アタシ」は・・・幽霊か!?

 そう考えて、アタシは慌てた。
 だって、だって、ずっとこのままの状態が続いたら・・・
 
 死ぬんじゃないか?

  
 そして、気付いた。
 寝ているアタシの周りに立っている家族が、いちように暗い顔をしていることに。

 当然のことながら(?)、誰も病室のはじっこに立っている「アタシ」の存在に
は気付いていなかった。

6 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月06日(月)00時46分38秒
 う〜ん、まずいぞ。
 非常にまずいぞ。

 寝ているアタシは、真っ青を通り越して紙のように白くなった顔。
 ホントに、ほっといたら死んじゃいそ〜だ。

 『ど〜なるんですか〜』

 不意に、タンポポりかちゃんの声が聴こえた・・・気がした。
 そんなこと考えてるバアイじゃないのに。

 少し焦って、アタシは寝ている自分の体に、幽霊(ということにしておく)の自分
の体を重ねてみた。
 けど、なんにも変わらなかった。

 チェッ。戻れるかと思ったのに。

 さて、どうしようかと。
 そう思った瞬間。


 ピー・
 

 無情な、機械音が、無機質な病室に鳴り響いた。
 もともと静かだった病室が、さらに静かになった気がした。

 あちゃー。
7 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月06日(月)00時59分16秒
 こんなシーンは、テレビで何回も見たことがある。
 でも普通は、最後になにか、感動的なこと言って。

 んでもって、静かに息を引き取るってのが、筋じゃないか?

 アタシ、なんか何にも言わずに、さっさと死んじゃったよ。
 
 自分が死んだ当事者で、しかもその瞬間を見てしまったにもかかわらず。
 アタシはなぜか、普通の精神状態を保っていた。
 
 ちょっと、話が急展開すぎて、マイペースなアタシの脳みそが、ついていけないん
だろう。あっはは。(笑ってる場合でもないけど)

 でも、そんな能天気な思考は、そこで中断された。

 「残念ですが・・・8月6日、午前1時00分。ご臨終です」
 白衣を着たお医者さんが、小さな声で言った。

 周りで暗い顔で立っていたアタシの家族。
 お母さん、お姉ちゃん2人、ユウキ。

  お母さんがアタシの「死体」にすがって、声を押し殺して泣いていた。
 こんなお母さんの姿を見るのは、初めてだった。

 お父さんが死んだときも、ここまでは泣いてなかったもん。
 単に、子供の前でだったから自制してたのかもしれないけど。

  
8 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月06日(月)01時04分10秒
 でも、とにかく。
 アタシの心は、家族に対する申し訳なさでいっぱいになっていた。

 勝手に死んじゃって、ごめんなさい。
 しかもなんだか、アタシは成仏もしていないようです。

 ああ〜、どうしよう。
 ホントに死んじゃったよ、後藤真希。

 この場では多分、アタシが1番冷静だった・・・と思う。
 明日っからの仕事、どうしよう?

 そんなことを考えていた。
 仕事人間だなあ、アタシ。
 ちょっと自分を褒めてあげようか。

 でも、目の前で泣き崩れる家族を見ていたら、なんだかそんな気分にもなれず。
 ただひたすら、バツの悪い気持ちを抱えていた。

 そして、病室の外が少し騒がしくなってきた。
 人数がいるみたいだ。
 ・・・友達か、親戚か、メンバーか。

 とにかくこの場を離れたくて、アタシはドアに向かった。
9 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月06日(月)01時09分14秒
 生きていたときと同じように、ノブに手をのばしたけれど。
 アタシの手は、するっとノブをすり抜けた。

 多少予想はしてたけど、やっぱりちょっとショックだった。
 自分の目には、(幽霊の)アタシの腕も手も足も、ちゃんと見えるのに。
 
 やっぱりアタシは、幽霊なんだなあ・・・と再確認してしまった。

 アタシはドアを開けるのをあきらめて、ドアにぶつかっていった。
 難なく、すり抜けた。
 ちょこっとだけ、楽しんでいる自分に気付いた。

 でも、病室の外もやっぱり、暗い雰囲気がただよっていた。
 いや、暗いというよりもうお通夜みたいだった。

 当たり前か?人が死んだんだから(アタシだけど)。
 そこにいたのは、私の今1番の仲間たち。

 家族よりも一緒にいる時間の長いメンバーたち。
 モーニング娘。の面々が、顔を連ねていた。

 ただし、みいんな、顔を伏せていたけど。
10 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月06日(月)01時15分09秒
 「今、・・・ご臨終ですって・・・言ったね」
 カオリが、小さく、それは小さな声でポツリ、と言った。
 辻と加護以外のメンバーの肩が揺れた。

 「うそ・・そんな・・・」
 絞りだすような甲高いこえで声を出したのは梨華ちゃんだった。
 その隣では、よっすぃが長いまつ毛を伏せて、震える手で梨華ちゃんの手をぎゅっと
握ったのが見えた。
 「絶対、嘘だよ。ごっちんが死ぬわけない」

 よっすぃは目を潤ませながら、それでも震える声できっぱりと言った。
 ありがと、よっすぃ。
 でも、後藤は死んじゃったみたいだけど、やっぱり。

 なっちとやぐっつぁんは、2人とも壁にぴったりと背中をつけて、両手で顔を覆って
いた。
 しゃっくりを上げてるようにも見えた。泣いてくれてるのかな。

 不謹慎かもしれないけど、ちょっと・・・うれしいな。
11 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月06日(月)01時19分41秒
 圭ちゃんは、じいっとドアの方を見つめていた。
 いつもは強いその視線が、今日は曇っていた。うつろなカンジだ。

 辻と加護は、『ご臨終』の意味がわからなかったのだろう。
 みんなの顔色をうかがって、所在なさげにウロウロしていた。
 それでも、みんなの態度で少しは察したのかもしれない。

 目が2人とも真っ赤になっていた。

 卒業したメンバーもいた。
 裕ちゃんは、イスに腰掛けて、歯を食いしばってるように見えた。
 泣くのを、必死にこらえているってカンジだった。

 そして。
 アタシの視線が1人の前で釘付けになる。

 ・・・市井ちゃんが来ていた。
12 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月06日(月)01時24分16秒
 アタシの心臓は、体があったらきっと高鳴っていただろうな。
 市井ちゃんの姿を見れて、それだけでアタシはうれしくなっていた。

 でも、そんなアタシの心中とは裏腹に。
 市井ちゃんは呆然とした様子で、廊下に立ち尽くしていた。

 慌てて家を出てきたって感じで、服の組み合わせが、センスのいい市井ちゃんに
してはイマイチだった。
 いや、そんなことはどうでもいいけど。

 ただ、こんな再会はやっぱり。
 もっとちゃんと。
 市井ちゃんとは、歌番組とかで・・・できればソロ同士とかで、共演したかったな。

 なんでこうなっちゃったんだろ。

 ようやく、アタシの心に。
 「死んだ」という実感が沸いてきて。
 急激に、アタシの心が冷えていくのが分かった。




13 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月06日(月)01時31分34秒
 「後藤・・・」
 市井ちゃんが、床のあたりに目をやりながら、ぼそり、と呟いた。
 今までアタシが聴いた、どの“後藤”の呼び方よりも。

 その名前は、悲しみに満ちて聞こえた。

 ごめんね、市井ちゃん。
 後藤は、今、返事ができないよ。

 なんだか、無償に悲しくなってきて。
 アタシは、病室から出てこなければよかったと、今さらながら後悔した。

 市井ちゃんの声に反応したのか。
 それとも、やっと真実を理解したのか。

 ウロウロしていた加護が、病室のドアの前に立った。
 そして、涙をぽろぽろとこぼしながら。

 「・・・後藤さ〜ん・・・」

 今にも消え入りそうな声で、言った。
 だんだんと、泣き声が大きくなった。

 ごめんね、加護。
 頭、なでてあげらんないな、いつもみたく。

 ドアにもたれかかって泣きじゃくる加護を見ながら、アタシはものすごい無力感
に襲われた。

 今のこの時間が早く過ぎることを、強く。
 とても強く、願った。

14 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月06日(月)05時30分34秒

…どうなるんでしょうか?おもしろいっす。
期待してまっせ〜♪
15 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月06日(月)20時48分22秒
ごまあいコンビ好きです〜♪
期待してます!
16 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月07日(火)19時55分30秒
>>14さん、
>>15さん、
ありがとうございます!
かなりいきあたりばったりで書いてるんで、どうなるか自分でも分かりません(藁
最後までお付き合いいただけたらうれしいですvv
17 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月07日(火)20時02分49秒
 時間は経って、朝になった。
 
 メンバーは、朝になる前にマネージャーにうながされて帰って行った。
 なんだか、いつもはうるさ過ぎるくらい賑やかなメンバーなのに、怖いくらいにみんな
静かだった。

 どの顔にも、疲れきったような色がにじみ出ていた。

 あ〜、何も、アタシ深夜に死ぬことないじゃんねえ・・・。

 モーニング娘。の忙しさは、アタシだって本人だ、もちろんよく知っている。
 まして今は、夏のライブツアーだって真っ最中だ。
 こんなときに、こんな知らせで。

 皆に、悪いことしちゃったな。

 死んだのは自分だけど。
 アタシの心の中は、死んだことへの悲しみよりも。
 家族や、メンバー達を悲しませたことへの謝罪の気持ちでいっぱいだった。

 ごめんなさい。
 ごめんなさい。

 夜の間に、何回そう言っただろう。

 決して聞こえるはずのないその言葉を。
18 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月07日(火)20時13分42秒
 家族は、まだ病院に残っていた。
 その場にいるのも辛いので、アタシはフラフラと病院の中を彷徨っていた。

 少しだけ、ドラマの中の病院を思い出していた。
 こんなときでも、アタシにはまだ死んだ実感はない。

 そして、看護婦さんが控える部屋に辿りついた。
 別に目的があって探していたわけじゃないけど、なんとなく、明かりのついた部屋
があったから入ってみた。

 部屋には看護婦さんがウトウトした様子で、イスに腰掛けていた。

 きっと。ものすごく忙しいんだろうな。
 アタシみたいに、深夜の患者さんとか、いっぱい来るんだろうし。

 ちらっとその看護婦さんに目をやったあと。
 アタシは、つけっ放しになっているテレビに気がついた。

 今は朝6時半。
 ニュースがやっていた。

 普段はニュースなんてみないアタシだけど、今回ばかりは別だった。
 アタシの目は、テレビに釘付けになる。
 正直、それでもまだ、アタシは実感なかったけど。

 周りは明らかに、確実に、「後藤真希」の死が。
 なかったことにしてくれる筈がないことを。

 アタシにまざまざと見せ付けてくれたんだ。
19 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月07日(火)20時24分15秒
 『後藤真希、交通事故死!!』
 『突然の悲報!ゴマキ死亡の知らせに、メンバーは!?』
 『モー娘。解散!?』

 予想していなかった、とはいえないけど。
 反応早いな、テレビって。

 それが、アタシの感想だった。

 無神経そうなニュースキャスターとかの喋り方に、ちょっといらいらしつつ。
 アタシはテレビを見つめ続けた。

 テレビでは、娘。のメンバー相関図とかを出して。(卒業メンバーもいれて)
 解散の危機だとか、ずーっと説明していた。
 アタシがLOVEマシーンから入ったときの、年表みたいなのとか。
 いろいろ、
 いろいろな資料をそろえて、アタシが「死んだ」ことについていっぱい説明してた。

 もちろん、アタシは全部知っている内容だったけど。
 少し客観的に、自分を見ている気がした。

 テレビではさらに、号外を出している街の様子も流していた。
 ・・・って、エエッ!?
 号外まで出てるの!?

 大げさじゃないかなあ。やだなあ。

 テレビでは、たいていの人が、
 驚いて目を丸くしたり、
 言葉を失ったり、
 涙を流してくれたり、
 とにかく反応がすごかった。


 
20 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月07日(火)20時31分45秒
 直接、アタシと面識のない他人でさえ、こんなに反応が激しいんだから。
 親しい人が死ぬっていうのは、相当、ショックなものなんだろうな。

 家族や、メンバー達の顔を思い浮かべながら、アタシはそう思った。

 ニュースでは、どこの番組もアタシのことを流していた。
 局によって、その内容はちょっとずつ違ってたけど。
 それでも、画面の右下とか、はじっこの方に、

 『後藤真希死亡!』

 という文字が、ずっと出ていた。
 嫌な気分だ。
 だって、アタシは死んだっていう実感がないんだもん。

 なんだか、アタシが「死んだ」っていうことを、無理やり思い知らされてるみたい
だし。
 いや、死んでるのは分かってるけど。

 でも、天国に行くわけでもないし。
 地獄に行くわけでもないし。

 姿が回りに見えてないだけで、
 ものに触ることができないだけで、
 アタシ自身は、何も変わらないからだ。

 アタシは、どうすればいいんだろう?
 一体、神様は、アタシになにをさせたいんですか?
21 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月07日(火)20時40分46秒
 ちょっと、上を向いて神様(?)に呼びかけてみたけど。
 やっぱり何も変わらなかった。
 上には、真っ白な天井が広がってるだけだった。
 
 あーあ。

 ほんとにどうしよう。
 誰かと、話でも出来れば、少しは気も晴れるのに。

 アタシは、しつこく解散とかについて話し合ってるニュースにうんざりして、テレビ
から目を離した。
 ちょっと不安になった。

 確かに、モーニング娘。はどうなっちゃうんだろう?
 今まで、メンバーが減ることはあったけど、それは本人の意思による「卒業」だし。
 アタシは娘。が好きだから、無くなってほしくないけど。

 メンバーが「死んで」、ユニットを続けていくことができるのかな?
 廊下でお通夜みたいになってたメンバーを思い出して、アタシは考えた。

 大丈夫だよね。
 きっと、大丈夫だよね?みんな強いもん。アタシは知ってる。

 加護。

 加護は、大丈夫なんだろうか?
 さっきまで、1番激しく泣きじゃくっていたのは、加護だった。
 最年少だからっていうのもあるけど。

 アタシは、特に加護が不安だった。 
22 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月07日(火)20時50分24秒
 教育係をやっていたからていうのもある。
 年下組みで、よく一緒にいたからっていうのもある。
 だけど、アタシが加護を不安に思っているのはそれだけの理由じゃなかった。

 加護は、あまり激しく感情を表す子じゃないんだ。
 
 楽しいこと、面白いことにはすごく素直に反応するけど、
 嫌なこととか、
 怒ったときとか、
 悲しいことには、あまり感情を示さないところがあるんだよね。

 ぐっと、唇をかみしめて。
 涙を流すのをこらえてるのを、よく見ることがあった。

 加護は、負けず嫌いだから、あんまり泣き顔は見せないから。
 そんなときは、黙ってそばについててあげて。
 ころあいを見計らって頭をなでてあげれば、ニコッて、さいっこうの笑顔を見せて
くれる。

 それで、いつも終わってきたんだ。

 あんなに泣きじゃくる加護は、初めて見た。
 
 大丈夫かな?ほんとに、加護は大丈夫かな?
 そればかりが気になった。

 無神経はテレビのリポーターとか、雑誌記者とかが、加護のことを傷つけたりする
ようなことを言わなければいいけど。

 真剣に、そう思った。

 アタシの足は、自然に事務所へと向かっていた。
23 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月07日(火)20時59分43秒
>>17-22、更新です。
しかし、文章がめちゃくちゃですね・・・(汗
後藤は死んだ実感があるんだかないんだか。
まあ、初小説ということで勘弁してやってください(w
24 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月08日(水)11時53分59秒
( ´ Д `)<あたし死んじゃったのぉ?ごめんねぇいちーちゃん
加護のことを心配するごっつぁんいいね!!なかなか読みやすくて良い感じよ
がんばってね!!
25 名前:名無しを名乗る者 投稿日:2001年08月13日(月)00時26分12秒
更新はまだでしょうか?
ごまあい好きなんですよお〜、楽しみにしてます
26 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月18日(土)21時10分32秒
えっと、軽い放棄ですか・・・
27 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月19日(日)19時16分05秒
続き楽しみに待ってマス!
28 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月21日(火)00時13分37秒
 ふわふわと。
 アタシの足取りはとても軽い。・・・心はとても重いけれど。

 事務所の前には、予想通り。
 ごった返す報道陣の数々。

 う〜ん、すごいなあ。
 我ながら、「モーニング娘。」という存在感が世間に与える影響の大きさを、アタシは
物分りがよくないなりに、思い知らされた。

 他に、明らかに報道陣とは違うカッコの若い人たちがいるのも分かった。
 きっと、ファンの人なんだろう。
 聞かなくたって、目をはらして座り込んでるのみれば、それくらいは分かる。

 アタシのために(もしかしたら他のメンバーのファンかもしれないけど)、ここまで
来てくれるってのはなかなか感動だ。

 そんな人たちにはちょっと申し訳ない気もしたけど、とりあえずは、加護だ。

 アタシは、報道陣の人たちの中を、まっすぐに進んだ。
 
29 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月21日(火)00時19分49秒
 事務所の玄関に、新しい張り紙がしてあるのに気付いたけど。
 アタシは気にせずに扉をすり抜けた。

 どうせ、書いてあることなんて想像がつくし。

 何度も通いつめた事務所の中を。
 アタシはもちろん、迷うことなく「娘。」の部屋へと向かう。

 あっちこっちに張られたモーニング娘。のポスター。
 真ん中で笑っている、後藤真希・・・このアタシ。

 ここから、アタシはいなくなるんだ。
 手で、自分を隠してみた。変な感じ。

 アタシはポスターから目を離して、階段を昇った。
 部屋は、すぐそこだ。

 事務所のあちこちで、電話がりんりんと。
 ひっきりなしに。
 それはそれはうるさく鳴っていたけど。
 ・・・事務所の人には悪いけど。

 とりあえずは、加護だ。

 アタシは心の中で謝って、それらも無視した。
30 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月21日(火)00時26分36秒
 やぐっつぁんが作った。
 「モーニング娘。の部屋」と書かれたかわいいプレート。

 今は、朝の8時半。
 みんなは、家に帰されたはずだけど。
 アタシはなぜか、メンバーがみんな、ここにいると直感で思った。

 扉の向こうは物音一つしないけど。
 きっと、いる。

 そして、扉をすり抜けたアタシが目にしたものは。


 ・・・ほうら。やっぱりね。

 それぞれに、イスに腰掛けた、メンバーの姿。
 それぞれに、真っ赤に目を腫らした、メンバーの姿。

 普段は絶対に見たことのないような、重苦しい雰囲気だ。
 もちろん、原因はこのアタシなんだけど。

 ・・・やっぱりこんなの、見たくない。見たくないよ。

 幽霊であるアタシが、痛みなんか感じるはずはないと思うけれど。
 胸が、痛いな。

 
 
 
31 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月21日(火)00時34分59秒
 みんなの服装は、昨日・・・いや、正確に言えば今日の夜。
 アタシが“死んだ”病室の前に来たときと同じ服装のまんまだった。

 あの後、みんな家に帰らなかったんだ。

 マネージャーに、事務所に行くよう言われたのか、自分からここ来たのかなんて、
アタシには分からないけど。

 そして、加護は。
 座っていた。
 イスではなく、床に。

 ナニやってんの、加護は!
 アタシは心の中で軽く怒ってみた。聞こえないことは分かりきってるけど。

 どうしようもなく、もどかしい。
 自慢の怪力で、引っ張り上げてイスに無理やりでも座らせてやりたいけど、それも
無理な話だ。

 他のメンバーも、周りに目を向けてる余裕がないんだろう。
 目は開いているのに、心ここにあらずといった感じなのだ。

 それに、ここには裕ちゃんも。
 市井ちゃんも。
 来ていなかったから。

 こういう場面で、みんなに喝を入れる人がいないんだから、仕方がない・・・のかな。
32 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月21日(火)00時41分28秒
 部屋の中をぐるっと見回して。
 アタシは再び、加護に目を戻した。

 彼女の黒目がちなつぶらな瞳は、いつものような活発そうな明るさはなく。
 ただ、どんよりとしてあらぬ方向を見つめていた。

 『加護』

 呼びかけてみたけど、反応はない。

 『加護お!』

 さっきよりも意識して、声を大きくしてみたけど、やっぱり何の反応もない。
 
 どうしてなの?
 アタシは、ここにいるのに。

 誰か、アタシの声、聞こえないの?
 悔しいな・・・何にもできないなんて。

 ねえ、カオリ。
 霊感強いんでしょ?アタシに気付いてよ。

 ねえ、なっち。
 いっぱい怖い体験してるんでしょ?アタシのことは分からないの?

 ねえ、よっすぃ。
 いつもみたく、アタシの考えてること、感じとってよ・・・。

 どれを取っても、無理な問いかけ。
 だってアタシは、幽霊だから。
33 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月21日(火)00時47分40秒
 自分が、混乱しているのが分かる。
 アタシ、何を考えてるんだろう。
 何がしたいんだろう?

 ・・・加護が心配で、ここで来たのに。
 結局なんにもできていないじゃないか。

 加護だけじゃない。
 いつもとは違う、沈んだメンバー達の姿が、アタシにとっては何よりも辛いんだ。

 でも、どうしようもない。
 見守るだけ。
 今できるのは、見守ることだけ。

 誰かがアタシに気付いてくれたら、そうしたら。
 言いたいこと、いっぱい言えるのに。

 『ありがとう』
 『みんな、元気出して』
 『アタシは、平気だから』
 
 『モーニング娘。は、ずっとなくさないで。がんばって』

 みんなにとっては気休めかもしれないけど。
 でも、言いたいんだよ。今のみんなよりは、元気がでるかもしれないじゃん?
34 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月21日(火)00時59分26秒
 がちゃっ

 不意に、部屋の扉が開かれた。
 顔を伏せていたメンバー達が、一斉に扉を振り返る。

 ただ、加護だけは何の反応も示さなかったけど。

 「・・・裕ちゃん・・・紗耶香」

 圭ちゃんが、それこそ搾り出すような声で呟くように言った。
 入って来たのは、裕ちゃんと市井ちゃんだった。

 どこへ行ってたんだろ?
 2人とも、暗い顔で、さらになんだか険しい表情だった。
 アタシは場違いにも、ピンチランナーの市井ちゃんの演技を思い出す。

 あの頃は、楽しかったよなあ。映画、大変だったけど。
 
 ・・・と、それどこじゃない。
 思い出に浸りそうになったところを、アタシは慌てて打ち消した。

 「みんな・・・、落ち着いて、聞いてな」

 裕ちゃんが、口を開いた。
 みんな、少し顔が強張って、裕ちゃんの次の言葉を息を止めて待っている。

 「今、うちと・・・紗耶香、つんくさんと話してん」
 「裕ちゃんだけじゃ、頼りないからね」
 
 裕ちゃんの言葉を受けて、市井ちゃんが冗談めかして言ったけど。
 その冗談に笑うような余裕は、みんなにはなかったみたいで。

 市井ちゃん自身も、言葉の割りに表情は相変わらず暗かった。
35 名前:名無しです 投稿日:2001年08月21日(火)01時02分18秒
涙が…
ごっちんはみんなにどうやって存在をしらせるのでしょうか…
すごい期待してます。
更新頑張って下さい〜
36 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月21日(火)01時07分46秒
 『そうそう、裕ちゃんって実は抜けてるとこ、あるんだよね』

 誰もつっこまないから、アタシが市井ちゃんに向かってちゃんとフォローしてみた。
 市井ちゃん、たまに空回りするんだもん。
  
 そして、裕ちゃんは、言いにくそうに、顔しかめて。
 案外はっきりした口調で、言った。

 「つんくさんはこう言ったんや。
  『後藤は死んでしまったけど、モーニング娘。は何も変わらへん。
   もちろん、世間が予想するような解散もなしや。
   世間はな。解散なんて望んでないねん』・・・」

 解散は・・・ない。そう言ったよね?裕ちゃん。

 「それから、これからのスケジュールに、変更はないって。後藤のことばっか
  聞かれるかもしれないけど、テレビにも出るって。ライブのやるって」

 裕ちゃんが口をつぐんでしまったので、代わりに市井ちゃんが言葉を続けた。
 でも、市井ちゃんが言い終わるかどうかのときに。

 今まで死んだように動かなかった加護が。
 
 ふらり、と立ち上がったのだ。 
37 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月21日(火)01時12分09秒
>>35さん、リアルタイムですね!初めてですよ、ありがとうございます〜
今回更新がだいぶ遅れてしまいましたが、レスくれた方々、どうもすみません!
これからもがんばって進めますので、よろしくお願いします。

 ということで、>>28-36、更新です。なんだか全然話が進んでませんが・・・(汗
38 名前:35です 投稿日:2001年08月21日(火)01時43分23秒
すみません!!
じゃまをしてしまいました!
ホントスミマセンでしたm(__)m
まぁ〜たり頑張って下さい〜

加護もぉ〜頑張れぇ〜(涙)
39 名前:あぅ 投稿日:2001年08月24日(金)21時40分10秒
応援してます!がんばれ〜!
40 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月25日(土)12時06分24秒
「なんやねん・・・なんやねん、それ!!」

 加護の甲高い声が、狭い部屋に響いた。
 裕ちゃんと市井ちゃんに向けられていたみんなの視線が、一斉に加護のほうにむけられる。

 ギョッとしたような、驚いた顔。

 「なんやねん・・・。つんくさんのアホ・・・アホ・・・!!
  つんくさんなんて、大バカの大バカの大バカものやっ!!」

 肩を震わせながら、加護は甲高い声で叫んだ。

 ・・・その声は、まるで悲鳴のようにも聞こえた。
 加護?いったいどうしちゃったんだよう。

 突然の加護の変貌に、アタシはもちろん、メンバーみんなが呆然となる。
 1人、冷静そうなのは、

 「加護」

 市井ちゃんが、加護にゆっくりと歩みよって、その肩に手をかける。
 でも、加護はそれを拒否するように、その手を振り払う。
 
 目にいっぱい、涙をためて。
41 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月25日(土)12時13分20秒
 「後藤さんは、もういないんやで・・・」

 か細い声で言ったあと、加護はヘナヘナと。
 また床にぺったりと座り込んだ。

 「つんくさん、おかしいわ・・・。なんで、なんで、なんで、モーニング娘。は
  変わらない、なんて言えるんや・・・。

  後藤さんがいないのに、なんで今までと何も変わらないんや!」

 目にいっぱい溜まっていた涙が、いくつもの筋をつくって、加護の白いほっぺたを
伝って落ちていく。

 加護。
 もういい。
 もういいよ。

 でも、アタシの呼びかけはやっぱり届かない。

 「後藤さん、もういないんやで・・・?死んでしまったんやで・・・。
  なんで、そんなんで歌なんか歌えんねん。
  なんで、そんなんでテレビで笑えんねん・
  うちは・・・、うちは」

 加護はもう、誰かにしゃべってるって感じではなくって。
 一人、自分に言い聞かせてるように見えた。

 
42 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月25日(土)12時20分38秒
 なんだか。
 誰も、声をかけることもままならないような雰囲気の加護に。

 みんな、心配そうに口をつぐんで、その動向を見守っている。
 そして市井ちゃんは。
 さっき加護に手を振り払われたことなんて、まったく気にする様子もなく。

 誰よりも一番、加護に近いところで、彼女を見守っていた。

 加護の小さな小さなその背中は。
 か細く、小刻みにずうっと震えている。

 「ずっと・・・」

 それでも、加護は。
 必死に、必死に。声を絞り出して語り続ける。

 「背中、ばっかり見てきてん。後藤さんの、背中、ばっかり見てきてん・・・。
  うちが、どんなにがんばっても・・・
  後藤さんには。追いつけへんねん・・・」

 アタシは、加護の言葉に。
 その言葉を一言だって聞き漏らさないように。
 ただ、その姿を見つめ続ける。

43 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月25日(土)12時29分23秒
 「後藤さんは、後ろ振り返らん人やから。いつも、前見て進む人やから・・・、
  うちが必死に、ついてってることなんて気付いてくれへんかった。
 
  うちのペースに、あわせてくれはることも、ずっとなかったんや。
  それでも・・・」

 アタシの心が、また、痛む。
 加護が、そんなふうにアタシのことを見てたなんて。
 気付かなかった、気付いてやれなかった、なんて馬鹿なアタシ。

 「うちは、後藤さんの。
  そんな背中が・・・好きやってん・・・」

 誰かが、ヒックとしゃっくりを上げた。
 泣き虫な辻が、顔を真っ赤にして、口元を歪めて。
 必死に泣き声を上げるのをこらえているのが、目に入った。

 すでに、その目元からはぼろぼろと。
 大粒の涙が零れ落ちていた。

 加護は。
 同じように、涙を流しながらも、それでも。

 言葉をつむぎ出すその動作を、やめようとはしなかった。

 その姿が、痛々しくって。
 なんとか、落ち着かせてやりたいけど。

 『加護、もう、いいよ』
 『その言葉だけで、十分だよ』

 背中じゃなく。
 ちゃんと、正面から話しかけても、聞こえないんだね。


44 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月25日(土)12時42分48秒
 「新メンバー、入るのが決まって。
  うちもやっと、先輩になるんやって。少し、後藤さんたち、先輩たちに・・・

  近づけるって、
  そう、思って、
  うれしくって・・・」

 ボタボタっと、加護の瞳から、また新たな涙が生まれては。
 またすぐ滴となって床へとすべり落ちていく。

 アタシは痛む心を抱えながら、叫びそうになる気持ちをおさえて。
 加護の姿だけに目を注ぐ。

 「ホンとは、ずうっと・・・」

 いつの間にか、遠巻きだったメンバー達が、加護のすぐまわりに、円陣を組むように。
 集まってきていた。

 どの顔にも、悲しみによる涙のあとと。
 徹夜のための、疲れがにじみ出ていたけど。

 加護に向けられる、心配そうなその視線は、確かに。
 メンバーだけが分かる、あたたかい温もりがあった。

 「安倍さんや、矢口さんみたいに・・・年が違うても、普通の友達みたいに」

 なっちとやぐっつぁんが、目を伏せて、互いの手を握る。
 そして、なっちがそっと加護の背中をなでた。

 「飯田さんや、保田さんみたいに・・・信頼されてるお姉さんみたいに」

 カオリと圭ちゃんが、そっと涙をぬぐって。
 圭ちゃんが、加護の肩を軽くたたいた。

 「よっすぃや、りかちゃんみたいに・・・何でも話せる、親友みたいに」

 よっすぃとりかちゃんが、しゃっくりを上げて。
 加護の手を軽く、握った。


 

45 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月25日(土)12時53分48秒
 「・・・市井さんみたいに」

 加護は、自分のかたわらに立つ市井ちゃんに、まっすぐに目を向けた。
 涙に濡れた、その瞳。
 市井ちゃんも、また。
 優しい目で、加護を見下ろす。

 「誰よりも、誰よりも後藤さんが、大好きな市井さんみたいに・・・」

 加護の声が、涙のために、途切れた。
 市井ちゃんの手が、加護を勇気付けるように。
 そっと、加護の頭をなでた。

 かつて、アタシにしてくれていたように。
 そして、アタシがいつか、加護にしていたように。

 『ありがと、市井ちゃん』

 ああ、もう。
 なんで、市井ちゃんには、分かっちゃうかな、アタシが今してやりたいこと。

 「・・・うちかて、なりたかった。なりた・・・かったんや。
  妹やなく・・・、同じように。
  おんなじように、見てほしかったんや・・・」

  
 ああ・・・

 アタシと、同じだ。
 アタシいつか、市井ちゃに対して、思っていたことそのもの。

 『妹扱い、しないでほしいな』

 言葉に出しはしなかったけど。
 仲良さそうな、圭ちゃんと市井ちゃんを見るたびにとか。
 妹みたいとか、実際に市井ちゃんい言われたときとか。

 アタシも、いつも思っていたことを。
 加護も、思っていてくれたんだ。

 
46 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月25日(土)12時59分26秒
 興奮すると、関西弁の出る、加護。
 
 辻がカオリに甘えてると、アタシのところに甘えにくる、加護。

 歌の練習に行き詰まると、アタシに聞きにくる、加護。

 ホテルの部屋に、辻と連れ立って遊びにくる、加護。

 ミニモニ。の格好で、アタシのソロを応援しにくる、加護。

 ドラマの台本を覗き込んでは、真似して遊んでる、加護。


 ああ、こんなにも。
 こんなにも。
 思い返せば、加護は、こんなにいっぱい、アタシのそばに。

 気付いてやれるはずだった。
 気付いてやるべきだった。

 
 加護は、こんなにも、アタシのことを。
 「後藤真希」のことを。

 ・・・慕ってくれていたのだと。


47 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月25日(土)13時09分17秒
 「なんで・・・、
  なんで、死んじゃったんや・・・後藤さん・・・」

 ズキッ

 その言葉は、今のアタシには、何よりも辛い言葉だ。
 何もしてやれないことを、嫌というほど分かっているから。

 「加護はまだ・・・、いっぱい、いっぱい、教えてほしいこと・・・」

 もう、その後は、言葉にならなかった。
 今度こそ、加護は激しく泣き始めたからだ。

 高い、泣き声。
 誰にすがるでもなく。
 ただ、身を小さく、小さくして。

 『ごめんね、加護。
  死んでからでないと、そういうことにも気付かない馬鹿な先輩で、ごめんね』

 『アタシ、馬鹿だから。言ってくれなきゃ分からないんだよ』

 『だけど、正直、アタシ加護に何教えたらいいかなんて、分からないんだよ』

 笑顔なら、加護なんて人に教えてもらうまでもなく。
 十分、魅力的で、かわいらしいし。

 仕事に対する情熱とか、努力の仕方なら。
 誰よりも、なっちが1番だし。

 自分の出し方なら。
 やぐっつぁんのトークとか、加護自身だって、ものまねっていう武器がある。

 歌に関してなら。
 みんなが認める、圭ちゃんの存在があるでしょ?

 
 ほらね。
 ・・・自分の取柄なんてまったく分からないほど、
 アタシは加護に、尊敬されるような人間じゃないんだ。

 『だから、加護』


 泣かないで。



48 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月25日(土)13時19分18秒
>>40-47 更新です。

あっちこっちに誤字脱字が目立ちまくりですが、なにとぞご容赦ください(汗
なんだか、めちゃめちゃ暗い内容になってますが、
お付き合いしてくださっている方々、本当にありがとうございます。

レスついてるとめちゃめちゃやる気が出ます!・・・更新遅いですが(苦笑
49 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月25日(土)13時41分23秒
後藤は見てるだけなんですか?
50 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月25日(土)14時40分09秒
>>49 名無し読者さん。
さっそくレスありがと〜ございます!

後藤はですね・・・まだ今の段階では、見てるだけですが(ネタバレ??)
「守護霊」というのが話の柱なので、そこからまた話は進みますよvv
51 名前:あぅ 投稿日:2001年08月29日(水)02時00分47秒
切ない話だ・・・。応援してます!
52 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月30日(木)22時44分09秒
 泣きやまない、加護と。
 心配そうにその姿を見守るメンバーと。
 それを見つめ続ける、このアタシ。

 何もできない。

 ・・・だって、どうしたらいい?こんな場合。
 アタシのことなんて誰も気付いていないし。
 アタシの声は誰にも聞こえないし。

 もう、どうしたらいいか、分からなくなっちゃったよ。

 泣けたらいいのに。
 思いっきり泣いたら、ちょっとは心が軽くなるってこと、アタシは短い人生経験の
中で、学んできた。

 だけど。
 アタシが、カラダを持たない幽霊だからか。

 アタシが、涙を流すことはできなかった。

 もともと涙腺は弱いほう。
 こんな場面だったら、まず間違いなく、泣き出してるはずなのに。

 
 大泣きしている加護に、何もしてやれず。
 他のメンバーのように、一緒に泣いてやることも出来ず。

 ただ、見下ろしているばかりのアタシって、第三者から見たら(まあ、見えるはずない
んだけど)なんて冷たい奴なんだろう。
53 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月30日(木)22時52分35秒
 この場所にいることが。
 なんだかとても、悪いことのように思えて。

 アタシの心は、さらに暗ーくなっていく。

 「やだあ・・・ごとー・・・、さん、っっくぅ・・、死ぬの・・・やだあ・・・」

 それは、加護の独り言。
 アタシに重くのしかかる、何よりもきつい、言葉の攻撃。

 
 『しょーがないよ、死んじゃったものは』

 アタシのあきらめは、いい方で。
 どうしようもないことは、「仕方ない」の一言で片付けてきた。

 でも、今回は。

 さすがに、そんな能天気で片付けてしまうには、いささか問題が大きすぎた。
 カラダを持たないアタシはいいけれど。

 このままじゃ、アタシよりも先に。
 メンバー達のほうが、参っちゃいそうだ。・・・特に、加護。
 加護は、本当にやばいんじゃないか?

 だって、こんなに精神が不安定そうな加護は、見たことがない。
 武道館ライブのトキだって、ものすっごく緊張はしてたけど、こんなに泣きじゃくる
ことはなかったし・・・。

 
 ・・・あ。

 アタシの脳裏に、一つの思い出が蘇った。
54 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月30日(木)23時02分34秒
 それは、今年の4月。
 裕ちゃんが卒業するときの、ハナシ。

 まさに、裕ちゃんが卒業してしまう、その前日に。
 加護が、夜遅い時間・・・もう午前を3時間ほど過ぎたころに、アタシの部屋に
一人でやってきたことがあった。

 いつも、辻と連れ立っている加護の珍しい行動に。
 アタシは少し、面食らいながら、後藤が起きてなかったらどうするつもりだったの?
などと呑気なことを言いつつも加護を部屋に招きいれた。

 しばらく、アタシと加護は。
 加護の持ってきたお菓子やら、ジュースやら、(なんでこう、太るってことを考えない
行動をしてしまうんだろうか・・・)を食べながら。

 しばらく、たあいもない話をした後。

 中澤さん、もういなくなっちゃうんですね。

 加護が、寂しそうに言った後。
 アタシのベッドにさささっともぐりこんで。
 
 ちいさく嗚咽を漏らしていたことがあった。


 あの時。

 アタシは、どうやって加護を泣き止ませたんだっけ?
 布団にもぐりこんだ加護の頭をなでてやることは出来ないし。

 
 ・・・!
 そうだ。思い出した。
55 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月30日(木)23時12分31秒
 『加護』

 呼びかけは、聞こえないけど。
 アタシは、あの時の自分の行動を再現するべく。

 いまだ泣きじゃくっている加護に近づくと。

 その小さな背中に、アタシは腕をまわして。
 後ろから、包み込むような体制になった。

 もちろん、その腕が、実際に加護を抱きしめてあげることはできないけど。
 加護も、アタシの存在に気付くはずはないけど。


 『大丈夫』

 『加護、大丈夫だよ』


 『アタシは、ここにいるからね』

 
 心持ち、腕に力を入れる。
 アタシ自身、加護の体に直接触れることはできないのだけど。

 加護の背中にまわしているアタシの腕は。
 なにかふんわりと。
 あったかいものを抱えているかのような、感じがした。

 そして、もう一度。


 『大丈夫だからね』
 


 「・・・後藤さん」


 加護が、はっきりと、言った。
 その声は、さっきまでのように、震えてもなく。
 錯乱したようすもなく。

 ただ、いつものように。


 アタシの名前を呼ぶ、声。
56 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月30日(木)23時23分00秒
 加護の声のトーンが変わったことに。

 メンバー達が、気付いたようすはなかった。
 ただ、それよりも。

 「亜依ちゃん!」

 辻が、おびえたような声を上げると、四つん這いの体制のまま、加護に近寄る。
 他のメンバー達も、不安げな表情で、加護の周りに集まった。

 加護の首が、カクン、と落ちた。
 そのまま、彼女の首は、舟をこぐようにゆらゆらと揺れている。

 「・・・寝てる?」

 よっすぃが、加護の顔を覗き込みながら、驚いたような声を上げた。
 梨華ちゃんも、よっすぃの声に、慌てて加護の顔に自分の顔を近づける。
 「ほんとだ・・・」

 そして、気の抜けたような、声。

 ありゃま。

 アタシが抱きしめたら、寝ちゃった?
 ・・・んなわけ、ないか。


 それでも。
 あんな状態で、心に負担をかけるよりは、ずっといい。
 とりあえず、加護は落ち着いたわけだから。

 アタシは少し、安心して、加護から離れた。


 みんなは、加護がただ寝てしまったのだと分かると。
 ほっと、安堵の表情を浮かべた。

 きっと、みんなだって泣きたいくらい、大変な精神状態のはずなのに。
 加護が、あんな状態だったから。
 ただならない状態だったから。

 
 ほんとに、モーニング娘。ってやつは、我慢するヒトばっかりだ。
 
 
57 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月30日(木)23時34分30秒
 それにしても。

 さっきの加護の声は、どうしたんだろう。
 いつものように、アタシにまとわりつくときの、声。

 あんなに泣いていたのに?

 ひょっとして、あの瞬間だけ、アタシの存在に気付いてくれたんだろうか。
 それだったら、うれしいんだけどな。


 「ねえ、みんな」

 不意に、アタシの考えは中断される。
 いや、その声は別に、アタシに対して向けられたものじゃないんだけどね。

  
 「こんなとこに、加護寝かせとくわけにいかないから、どっかに運んであげようと
  思うんだけど」

 そう言ったのは、市井ちゃんだった。

 まったく、ホントに気が利くっていうかなんていうか・・・。
 何だか、後藤が死んだっていうのに怖いくらい冷静な市井ちゃんのようすに、ちょっと
ばかり不満の気持ちもあるけれど。

 この際、冷静なヒトがいてくれるのは、第三者としてこの状況を見てるアタシから
見ても、必要なことに思えた。

 「・・・あ、そう・・・だね。でも部屋・・・空いてるとこ、あるかな・・・」

 カオリが、腰を浮かしかけながら、ぼんやりとしたように言った。
 まだ、思考回路が正常に動いていないようだ。
 まあ、カオリの場合、珍しいことじゃないけど。

 「スタッフの仮眠室は?」

 こちらは、さっきよりも多少落ち着いたようすの、圭ちゃん。
 やぐっつぁんとなっちが、ああ、それがいいね、と賛同してうなずく。

 「分かった。じゃあ市井が運んでくるから。そのままちょっと加護のようす、
  見てるよ」

 市井ちゃんは立ったまま、みんなをぐるっと見回して言った。

 「あっ、手伝いますよ」

 よっすぃが、のろのろと立ち上がりながら言った。
 その声に、いつものような覇気は感じられない。

 市井ちゃんは分かってるのか、よっすぃに首をふってみせて

 「市井ひとりで大丈夫だよ。みんなはこれからが大変なんだから。
  休めるときに、休んでおきな」


 う〜ん、かっこよすぎるよ!市井ちゃん。
58 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月30日(木)23時40分14秒
 顔色が蒼白に近いメンバー達を気遣っている、市井ちゃん。
  
 自分だって、そんなに顔色よくないのに。
 この場で1番元気そうなのは、むしろ死んでしまっている、このアタシ。

 だけど、市井ちゃんは。
 昔っから、自分よりも他人を気にしちゃうんだよね。
 でもアタシは、そんな市井ちゃんだったから、大好きだったんだけど。

 
 そうこうしているうちに、市井ちゃんは加護をなんとか背中におぶると。
 ちゃんとみんなも、身体休めておくんだよ、と言い残して。
 割としっかりした足取りで、部屋から出て行った。


 とたんに、部屋に訪れる、静寂。


 気まずい。居辛い。


 大丈夫か、こんなにメンバーがいるんだし・・・。

 アタシはあまり深く考えることもなく、市井ちゃんと加護の後を追って、部屋を
抜け出していた。
 
59 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月30日(木)23時51分45秒
 ・・・と。

 部屋を出た直後。
 アタシはふと、気になることを思い出して、再び部屋へと引き返した。

 さっきと変わらぬ、静かな部屋。


 アタシは、とりあえず、入り口から一番近いところに座っている、なっちに目をむけた。
 なっちのチャームポイントとでも言うべき笑顔は。
 とても見ることなどかなわぬ様子で。

 肩を落として、わずかに震えているなっちは、まるで捨て犬のようで。


 アタシは、なっちに近づくと、さっき加護にしたように。
 その背中に腕をまわして、抱きしめるような体制をとる。

 もちろんそれは、アタシの思い過ごしであると思うけれど。


 『なっち・・・聞こえる?』


 ぐらっと、なっちの身体が、前のめりになる。

 「・・・なっち!?」

 異変にいち早く気付いたやぐっつぁんが、とっさになっちの身体を抱きとめる。
 そして、その顔を覗き込み、

 「・・・あれ、なっちも・・・?」


 寝ていた。なっちも。

 でも、さっきと違うのは、「アタシ」の存在に気付いた様子はないということ。
 
 ごめん、なっち。
 別に、眠らそうと思ったわけじゃなくって・・・その、アタシに気付いてくれる
と思ったからで・・・。



 『あれ?』


 そこまで考えて、アタシは変なことに気付いた。
 偶然とは思うけど・・・けど。

 なっちも加護も、アタシが抱きしめたら・・・寝ちゃった?


 そんな、馬鹿なあ!!

 
60 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月31日(金)00時04分17秒
 なっちを抱えているやぐっつぁんを横目で見ながら。
 アタシは今度は、辻に近づいた。

 もし、これで同じことが起こったら。



 ・・・どうしよう。別に考えなんてないけど。


 でも、とりあえずは、試してみたい。
 純粋に、好奇心に突き動かされて、アタシは今度は辻の後ろにまわった。

 加護の連れていかれた床の上で、辻もまた、座り込んで呆然としていた。
 涙もしゃっくりも止まっていたけど。
 辻だって、まだたったの14歳だ。
 こんなことになって、ごめんね。


 アタシは、心の中で辻に謝ると、そっと背中から抱きしめてみた。
 

 ぐらりっ


 辻の身体は、大きく揺れて。

 そのまま、隣に座っていた梨華ちゃんのほうに、ゆっくりと身体を倒した。
 「きゃっ?」
 という女の子らしい悲鳴とともに、びっくりしてうろたえる梨華ちゃん。

 辻の身体を両手で支えて、その顔を見て、

 「みんなあ、ののも・・・寝てますう・・・」
 と、何故だか泣きそうな声で、言った。



 一方、アタシは。


 気付いてしまった・・・自分の力に。


 抱きしめると、その相手を眠らせることができる・・・らしい。


 『それじゃあ、結局は自分のこと気付いてもらえないじゃーん!!』

 アタシの心の絶叫は、むなしい一人ツッコミとなった。
 ああ。
 一体アタシは、どうなっちゃうんだろう。


 神様、ホントにもう、勘弁してください。

 ・・・泣き言すら、言う意味もないんだけど。 
61 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年08月31日(金)00時16分35秒
>>52-60 更新しました。

ようやく、話がちょっと動き出しました・・・。(ホッ
あぅサン、レスありがとうございます!
どんどん話が暗くなっちゃって、どうしようかと思っていましたが・・・。
そろそろ切ない感じから変わってくるかも?しれません(w

お付き合いいただけたら、幸いです。
62 名前:(・x・)ノ 投稿日:2001年08月31日(金)19時45分53秒
ごま・・・どうなっちゃうのですカ?
そして、ちゃむとあいぼんとの関係は・・・

先が気になるっす〜
63 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月31日(金)22時38分11秒
なんかシリアスな話だけど、
ちょっと面白い部分もある・・・。
好きです、この小説。頑張ってください!
64 名前:名無し読者は溢れちゃう 投稿日:2001年09月01日(土)02時18分32秒
おもしろい。

眠っちゃうって…幽体離脱してたりして。
後藤が、「はっ!」と上見たら3人ともぷかぷか浮かんでいたら笑うな。(w
65 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月05日(水)21時31分01秒
 「んふふふふ。だいぶ、混乱しているようだね」


 その声は唐突に、背後から聞こえてきた。

 眠ってしまったなっちと辻を見下ろしながら、アタシは半ば呆然として、その原因を
つくった自分の手をまじまじと見つめていた。
 その時。

 妙なその男の声に、アタシはばっと振り向いた。
 他のメンバー達が、今の声になんの反応も示さないことを見ると、今の声は間違い
なく、アタシに向けられたものだ。

 振り向いたその先にいたのは、年の頃30〜40歳くらいに見える、男の人。
 黒いスーツに、かちっと固められたヘアースタイル。
 いわゆる、ただの・・・

 『誰、おじさん?』


 アタシの発した質問に、目の前のその“おじさん”は、大げさにがくっと体制を
崩してみせた。

 「はっはっは。おじさんはひどいなあ・・・」
 おじさんはくしゃっと顔を崩して、頭をかきながら、言った。

 「仮にも、天使の僕にむかって」

 さらりと、流すように言いのけたその言葉に。
 アタシの顔は、思わずぽかんとなる。

 『はあ?天使?』
 
 驚きのあまり、アタシの声は邪険な響きを放つ。
 っていうか、あんまりにも、うさんくさすぎて・・・。

 ただ、なんだかもう。
 どんな展開でも、アタシはあまり驚かなくなってきてしまっていた。
 
 だって、なんでもありだ。この世の中。(決して、ヤケクソじゃないぞ!)
 
 



66 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月05日(水)21時39分05秒
 「そう。僕は天使だ」

 にやり、と笑いながら、そのおじさん(天使とはいまいち呼べない)は、アタシが
うさんくさそうに眺めるのを気にする様子もなく。
 何がおかしいのか、口元を緩めて、アタシを見ている。

 (なんか、気持ち悪いなあ・・・ニヤニヤしてるし)

 「おっと、気持ち悪いなんて言わないでくれよ。これでも僕は繊細なんだから」

 ・・・おや。考えてること、読まれちゃったみたい。
 変なおっさんだけど、アタシの姿が見えてることといい、アタシと話をしてること
といい、ただのおじさんじゃなさそうだ。

 「だから、天使だって言ってるじゃないか。
  ・・・それにしても、心が読まれてるってのに大した落ち着きようだね。
  やはり、君は大物だよ。はっはっはっは」


 ほんとに何がおかしいのか。
 目の前の男はおなかをかかえて笑っている。

 (イライラしてきた・・・)

 さっきまでのシリアスな気持ちはどこへやら。
 いきなり現れたコメディアンぽいこの男のせいで、アタシの心にとげとげしたもの
が生まれてくる。

 加護のようすだって気になるのに。
 自分の変な力のことだって気になるのに。

 アタシはなんで、こんな変な男に付き合ってなきゃいけないんだろう。
 


67 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月05日(水)21時54分17秒
 アタシの表情が心底、機嫌の悪そうになったせいか。
 それとも、単なるきまぐれのせいか。

 おじさんに、ようやく真面目な表情が浮かんだ。
 そうして。
 アタシのことをまっすぐに見つめて、

 「いつまでも笑ってる場合じゃなかったよ。今から君に、大事なことを伝えるから
  よく、聞いてくれよ」

 (だったら最初っから本題話してよね!)

 アタシの的確なツッコミは。
 絶対に聞こえてるはずなのに、おっさんはそ知らぬ振りで、話を続ける。

 「君は、死んだ。そのことについては、君ももう理解していると思う」
  
 あまり触れられたくない話題に、おっさんはいきなり踏み込んできた。
 でももうこの際、開き直りが肝心だ。
 アタシは、素直にこっくりと頷いた。

 「・・・うん。最初はちょっと混乱してたみたいだけどね。ただ、後藤真希くん、
  君の場合、自分が死んだと理解してからまったく取り乱すことなく、ごく平然
  と自分の“死”を認めることができた。
  これは、幽霊となってしまった人間には、珍しいことなんだよ」

 ・・・?
 今の、おじさんの言葉に。
 アタシは、1つの疑問を持った。今の・・・

 「そう。君が気になったとおり。人はね。死んだらみんながみんな幽霊になって、
  この世にとどまるわけじゃないんだよ。
  普通はね、死んだ瞬間に、すぐまた次の人生が始まるんだ。つまり、
  
  死んだ瞬間に、別の生物として、この世に誕生するわけさ。まあそれが、
  必ずしも人間として生まれ変わるんじゃないけども」

  
68 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月05日(水)22時03分17秒
 ・・・はあ。
 何だか、いきなりそんなスケールのでっかい話、されてもなあ・・・。

 ようするに、人が死んだら、すぐまたどっかの生き物・・・
 犬だったり、
 猫だったり、
 はたまたイグアナになっちゃたりするわけかな?

 ・・・と、待てよ。
 じゃあ、アタシは何で・・・アタシのままなんだろう。

 「そう。そこに、疑問はいきつくだろう」
 
 おじさんは、まるでアタシが自分で結論を出すのを待っていたかのように。
 ゆっくりと頷きながら、アタシの目をまっすぐに見つめた。

 その表情に、さっきまでのおちゃらけた様子はなく。
 あくまで、真剣に。
 アタシの顔を、見つめている。

 (ちょっとだけ、信用しても、いいかな・・・)

 なんだか、漠然と、そう感じた。

 「今、君が疑問に思ったとおり、人に限らず生物はみんな死んだら別の生物として
  生まれ変わるのが普通なんだ。まあ、君らの世界でいう“輪廻転生”ってやつだね。

  でも稀に、その転生ができない者もいるんだよ。それはまあ、色んな理由がある
  んだけど・・・、そういった人達がね、俗にいう幽霊って存在と呼ばれるんだ」

 う〜む。
 なんだか、話が難しくって、ついてくのがやっとだぞ。 
69 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月05日(水)22時16分43秒
 アタシの心をまた読んだのか。
 おじさんは、少し苦笑いを浮かべると。
 
 「・・・とまあ、こんなところは省いてもいいだろ。
  つまり、だね。君も、その幽霊なんだよ!」

 ・・・。
 おじさんは、アタシをびしっと指差して言ったけど。
 
 『そんなこと、もう知ってるっつーのお!!』

 
 アタシの心からの絶叫は、あっさりと無視された。

 「でまあ、何が言いたいかっていうとだね」

 ちくしょう。
 このオヤジめ・・・。

 「君が幽霊になってしまったのは、この世に未練があるとか、そういった気持ちの
  面の問題じゃない。それは死んだ直後の反応から見ても、間違いない」

 『じゃあ、なんで?』

 ああ、しまった。普通に聞いてしまった。
 こんな怪しげなおじさん、何を信用しちゃってんだろうか、アタシ。

 「後藤真希、15歳。職業はタレント、アイドル。・・・だったね。
  しかも、君はなにかと世間の期待を集めるようなオーラを持っているようだ。
  それが、いいことでも悪いことでもないけども」

 何がいいたいんだろうか。
 アタシが芸能人であることと、幽霊になったこと。何の関係があるんだろ?

 「要はね。君の魂が、常人よりもはるかに大き過ぎたんだよ。普通に、転生できない
  くらいにね。
  もともと大きなエネルギーを持った魂が、15歳という若さで死んでしまったため、
  魂は別の生物に生まれ変わることもできず、この世に残ってしまったんだ」
70 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月05日(水)22時24分12秒
 ・・・ええ〜!?

 じゃ、なにさ?
 アタシが死んで幽霊になっちゃったのって、アタシ自身のせいってことお?

 しかも、魂が普通の人より大きすぎたからって・・・
 
 
 『そんなのアタシ知らないよおおおおお!!!』


 「ま、そりゃそうだろうね。だけど、現に君はこうしてこうやって幽霊になってるし、
  さっき知ったと思うけど、君には変な力がある。

  ・・・ほら、幽霊の君が抱きしめただけで、彼女たちは眠ってしまったろう?
  普通の魂の人にゃ、無理な話だ」

 おじさんは、やぐっつぁんの肩によりかかっているなっちや。
 りかちゃんとよっすぃの2人に支えられている辻を見ながら。

 最後に、アタシに視線を戻して言った。

 『・・・アタシは』

 『どうすればいいの? この先・・・』

 この時ばかりは、アタシも真剣だった。
 このまんまで、幽霊のまんまで、
 誰にも気付かれず、
 誰とも話せず、
 
 そんなの、いくら能天気なアタシだって、耐えられたもんじゃない。
71 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月05日(水)22時34分47秒
 「うん。それが今回の本題なんだ。
  僕が今回君のもとへ来たのは、そのことについてなんだけど。
  
  ・・・このまま今の状態が進めば、君は確実に自我を失い、単なる浮遊霊となるか、
  ・・・怨念でがんじがらめの地縛霊となるか・・・だ」

 『そんなの、どっちもやだよ』

 「まあまあ、最後まで聞いてくれよ。それで僕らがオススメしたいのはだね。
  誰かの“守護霊”になることだ」

 『ほえ?守護霊・・・?』

 予想もしなかったその言葉に。
 アタシの意識は惹きつけられる。なんだかちょっとワクワクしてきた。

 「そう。守護霊だ。そうすれば、自分の役割・・・目的がはっきりと分かっている
  から、少なくとも君の自我が消えることはない」

 それは、アタシがアタシのままでいられるってことだよね。
 うん、いいじゃん。
 
 ・・・でも、

 『守護霊になったら、その・・・憑いてる人が死ぬまで、ずっとくっついてなきゃ
  いけないの?
  その人が死んじゃったら、アタシはまた、こうやってただの幽霊に戻っちゃうの?』  
72 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月05日(水)22時49分19秒
 アタシの口をついて出た言葉に。
 おじさんはもうすでに、その質問を予想してたかのように何度もうなずいて。
 またその口を開いた。

 「君が守護霊になって。そして、少しずつ、魂が小さく小さくなっていくのを待つ
  んだ。そうすればいつか、君も・・・生まれ変われる。

  待つしかないんだよ。
  君が自我を失わないように、『後藤真希』のまんまでいるんだよ。
  そうしたら、時がくれば、自然に転生することができるから」

 彼は、「天使」と名乗るそのおじさんはそう言った。
 
 (時がくるまで待つしかない・・・)

  うん。それしかないんなら、それでいいじゃん。
 今までが、走り過ぎたんだ、きっと。

 ここいらでちょっと、ゆっくりするのも悪くないかな。

 アタシの気持ちが固まるのは、自分でもびっくりするくらい、早かった。
 単純なのかな、アタシって。
 ・・・まあ、そんな複雑な心を持ち合わせる自覚なんてないけどね。

 「やっぱり、君ならそう、すぐに決断できると思ったよ」

 おじさんは、今までずっと真剣だった顔に笑みを浮かべて、次の瞬間、
ふいっと宙に浮かんだ。

 
73 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月05日(水)22時59分41秒
 !?
  
 思わずぎょっとしておじさんを見上げるアタシ。
 だって・・・いかにもサラリーマンっぽい普通のおじさんが、宙に浮かんでるんだよ?
 ちょっと、怖かったりする。

 「それでだね。守護霊というのは、原則的に身内の人間には“憑けない”ことになって
  るんだ。・・・で。
  僕らの決定事項を伝えよう。君が“憑く”人間はもう決まってるんだ。
  それは・・・、君のごく近くの人間で、まだほかの守護霊の憑いていない、人間
  に限られるんだけど」

 アタシに近い人・・・市井ちゃん!?
 もしや、アタシ、市井ちゃんの守護霊になれるの!?

 ・・・それはマジでうれしいぞ。


 けど。
 現実なんて、そう簡単にうまくいくもんじゃない。・・・たとえ、死んだ後でも。

 「君が守護霊として“憑いて”もらうのは・・・

  パンパかパーん!!ずばり、加護亜依くんだっ!!」

 
 ずるずるうううっ

 脱力。・・・した。
 な、なんだってえ!?

 まるで、ものまね大会の優勝者を発表するかのような、おじさんの言い方に突っ込み
をいれる心の余裕もなく。
  
 おじさんにさっきまでのニヤニヤ笑いが戻っているのに腹を立てる余裕もなく。

 「それじゃ、僕はこれで・・・」

 おっさんは、そう言い残して。
 ふわり、と風に乗るように。
 かき消すように、その姿を消してしまった。
  
74 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月05日(水)23時08分31秒
 『ちょ、ちょ、ちょ、
  ちょっと待ってよおーーーー!!』

 一人残され、ひたすら動揺する、アタシ。
 だって、ちょっとちょっと・・・。

 アタシ、この先どうすりゃいいの?
 加護の守護霊って・・・なんで加護なの?

 そりゃ確かに、さっきはすんごい加護の心配したけど・・・。
 
 そもそも守護霊って。何すればいいんだろ?
 ああ、しまった、そんな大事なこと聞き忘れるなんて!


 それにしても・・・なんで加護なんだろうか。

 そして、アタシは何をすればいいんだろうか。

 
 何より、この先アタシは・・・ちゃんと成仏(じゃなくて、転生っていうんだっけ?)
できるのだろうか。


 幽霊になってまで、何かと波乱含みなアタシの運命。

 はあ〜、これも運命ってあきらめるしかないのかな。
 まあ、なんにせよ、これでアタシの行くべき道は決まったわけで。


 情けないけど。
 うさんくさい天使・・・じゃない、おじさんの言葉だけを頼りに。



 アタシ、幽霊後藤真希(享年15歳)は。
 立派な守護霊となるべく。

 加護のもとへと、第1歩を踏み出した・・・のでした。



  ・・・はあ〜あ・・・。



75 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月05日(水)23時17分26秒
以上、>>65-74 更新しました。

>>62さん、>>63さん、>>64さん、レス本当にありがとうございます!
めちゃめちゃ暗い状態から、ようやく、脱出しかけました。

こんな小説でもおもしろいと言ってくださると、やる気がでまくりです。
次回更新は・・・また近いうちに(笑
76 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月11日(火)04時26分08秒
イイ話だなあ。
これから守護霊ごまと加護ちゃんの物語が始まるんですね。
更新は近いうちに(w お願いします。
77 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月14日(金)00時24分33秒
続きまだかなぁ〜
78 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月18日(火)21時28分21秒
まてますよ〜!
79 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月19日(水)22時44分08秒
 〜加護視点より〜

 
 目がさめたのは、見慣れない部屋やった。



 「加護・・・?目、覚めたの?」

 ぼんやりとした頭をふりながら、うちがのそのそと起き上がると、頭の上から若い
女の人の声が聞こえた。

 うちはやっと、そこで自分がベッドに寝かされていることに気付いた。

 「・・・ここは・・・?」

 聞くまでもなかった。周りを見て、二段ベッドがあるのに気付いたからや。
 うちの知ってるうちで、こんな部屋はいっこしかない。

 ・・・事務所の、スタッフルーム。

 そして、そのことに気付くと同時に、うちは、気付きたくなかった現実にも、
気付かされてしまった。

 「市井さん・・・」

 横に立っている女の人、つまりは、モーニング娘。の卒業生。
 あの後藤さんが、尊敬して、大好きだった、市井さんの名前を、うちは呼んだ。
80 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月19日(水)22時51分33秒
 市井さんは、うちの声に。
 「ん?」と優しい声でそう答えて。

 うちのそばに、ぐっと膝をおって、顔をのぞきこんできた。


 「どうした、加護?」


 優しい声に、どうしようもなく、うちは泣きたくなる。




 市井さんとの接点は、ほとんどなかった。

 うちら・・・4期メンバーが入ってすぐに、市井さんは卒業してしまったし。
 後藤さんや、矢口さんや、保田さんたちは。

 市井さんが卒業した後も、連絡を取ってたみたいやけど。

 うちらにとっては、やっぱり市井さんはどこか、遠い人で。

 
 ・・・それでもやっぱり、とても、尊敬できる人で。


 だから、市井さんが卒業したあとに、会うことなんて、ほとんどなかった。

 たまに、楽屋とかに顔を出しても、市井さんはすぐに、先輩メンバーにかこまれて
しまって、しゃべることなんてできへんかった。

 まともに、顔をあわせて、二人っきりでしゃべるのは、今回が初めてや。


 ・・・けど。


 市井さんの顔は優しくて。
 市井さんの声はあったかくって。



 そして何より、『市井さん』の存在そのものが、後藤さんをイヤデモ思い出して
しまうから。



 やっぱり、うちは、泣きたくなるんや。



81 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月19日(水)22時56分54秒
 「大丈夫か?泣きたいなら、泣いていいんだよ。
  ここには、ほかに誰もいないから」


 市井さんが、そう言って。
 うちの頭をぐりぐりなでた。


 さっきも、そうしてくれたことを、うちは思い出した。


 そして、後藤さんのことも。




 頭をなでてくれるのは、後藤さんの役割だったから。


 『ゴトーもね、よくこうやって、市井ちゃんに頭なでてもらったんだあ』


 後藤さんの声が、うちの頭の中でぐるぐるまわる。

 そっか。
 今のうちみたいに、後藤さんもこうやって、市井さんに頭なでられてたんやな。


 そう思ったら。

 やっぱり、どうしても、市井さんには勝てないと思って。



 ちょっとだけ、市井さんがズルイ、と思った。







 ・・・後藤さんは、もう、いない、のに。



82 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月19日(水)23時05分10秒
 「・・・、全部、夢やったら、よかったんです・・・」

 うちがぽつり、とつぶやいた言葉に。

 市井さんは、「?」って顔をして。
 
 それから、「ああ、分かった」って顔になって。
  

 「そうだね」


 と、小さく、答えてくれた。


 ひっく、

 

 さっきあれだけ泣いたのに。

 また、うちの目から、涙がぼろぼろ、こぼれてきた。

 「うぇ・・・っく、ひっ・・・く」
 
 思わず、うちの口からも、泣き声が出てきてしまう。

 



 さっきの、メンバーたちの、顔とか、
 市井さんがここにいることとか、
 つんくさんの言葉とか、
 事務所におしかけてきた、ほうどう関係の人たちの姿とか、




 ここに、後藤さんがいないこととか、





 どうしても、辛いことばかりが、次々頭に浮かんできて、
 涙が、止まらんねん。





 だって、思い出すこと、一つ一つが、


 『後藤さんが死んだ』




 ってことを、何度も、何度も、
 
 うちに、思いこませようとしてるみたいに感じるから。






 
83 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月19日(水)23時13分43秒
 ひっくひっく泣いてたら。
 市井さんが、うちの頭をなでてた手を戻して。


 いきなり、うちのことをぎゅっと、抱きしめた。



 「よしよし」



 そして、子供をあやすみたいに、(まあ市井さんから見たら、うちなんてまだまだ
子供やけど)ポンポンとうちの背中をたたきながら、言った。


 うちは、なんだかお母さんに抱っこされてるみたいな気分になって、目をつぶった。

 
 「辛いよね・・・これが、現実なんだもんね・・・」
 うちを抱きしめたまま、市井さんが、独り言みたいに呟いた。

 うちの顔は、市井さんの胸の中にあるから、市井さんの顔は見れないけど。

 その声は、今まで聞いた、どの声よりも。


 とても、とても。



 哀しく、響いた。




 「加護?今から言うこと、あんまり気にしないで聞いてくれる?
  なんかちょっと、ネガティブ入っちゃうかもしれないから。

  あ、ネガティブは石川の専売特許か」


 市井さんはそう言って、うちを抱きしめる手に、すこおし、力をこめた。
 うちは、「せんばいとっきょ」の意味はわからへんけど。

84 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月19日(水)23時27分40秒
 「市井はね・・・最初、後藤が『死んだ』って聞いたとき、まさかって思った。
  病院行って、お医者さんが『ご臨終です』って言ったときも、

  そんなはずない!って思ってた。
  後藤がさ、あの後藤がさ、そんな簡単に死ぬわけないって。

  よく圭ちゃんと二人で、後藤は殺しても死なないよね、なんて、ふざけて・・・
  アイツのこと、からかったりも、してたんだよ」



 市井さんの声が、少し、震えていた。
 うちは、なんにも言わないで、ただ、市井さんの言うことを聞いてた。


 「なのに、とんとん拍子に話は進んじゃう。
  まわりの大人は、感情がないんじゃないかって思うくらい、淡々と物事を進めてて。
  ・・・悔しいことに、それはつんくさんも、一緒だった。

  『モーニング娘。は何も変わらへん』なんて、
  この馬鹿オヤジ、何言ってんだ!って思った。よっぽど殴ってやろうかとも
  思ったヨ。
  ・・・まあ、そんな元気もなかったけど」



 「だから、さっき加護がつんくさんのこと、馬鹿だアホだ言ったとき、市井はちょっと、
  うれしかったんだ。
  加護も、同じこと、思ったんだって」

 「・・・ほかのメンバーかて、同じこと、思ったはずですよ・・・」

 うちはかろうじて、声を振り絞った。
 市井さんの声よりも、ぜんぜん震えてもうて、恥ずかしかったけど。

 「そうだね・・・他のメンバーもみんな、ね」


 市井さんの声は、あくまで優しかった。・・・けど。


85 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月19日(水)23時33分35秒
 なんとなく、市井さんの言葉に、歯切れの悪いものを感じて。

 うちは、市井さんから身体を離して、その顔を見つめた。
 「・・・、うち、なんか変なこと、言いました?」

 市井さんは、苦笑した。

 「そうじゃないよ・・・ただね。
  後藤から・・・相談、受けてたこと、あるんだ」

 「相談?」

 後藤さんが、相談?
 あの人に、心配ごととか、悩みごととか、そんな風なことがあんまり合ってない
気がして、うちは驚いた。

 そんで、やっぱり市井さんに、相談してたってことに、ちょっとだけ、やきもち。


 うちかて、もうそんな子供やない。
 ・・・と思うけど。


 「後藤はさ」

 うちの気持ちとは関係なく、市井さんは話し始めた。

 
 「娘。の中でのポジションに、悩んでたみたい」


 「・・・」

 「後藤さんが・・・!?」


 あんまりに、意外だった。








 
86 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月19日(水)23時40分52秒
 「だって、後藤さんは・・・
  いっつもセンターやし、
  プッチでも連続1位とってるし、
  歌もドラマも、1人でやってるし、

  モーニング娘。の後藤真希、ゆうたら、うちらの誰よりも、有名やったんですよ!?」


 市井さんの言葉に、訳が分からなくなって。
 うちは、めちゃくちゃにまくしたててた。


 そうや。
 後藤さんは、うちらモーニング娘。のなかで、誰よりもわかりやすいところに
おったんやで?

 なんで、悩まな、あかんねん。

 でも、市井さんは、うちの言葉に。
 ゆっくりと、首を振って。


 「だから、かもしれないよ」



 と、答えた。

 「確かにあの子は、誰よりも恵まれた環境にいたかもしれない。
  こんなの、贅沢すぎる、悩みかもしれない。

  けどね、人間ってやつはさ。
  あんまり恵まれた他人をみると、許せない気持ちが沸いてくるもんなんだよね。

  後藤は、そのことを知っていた。
  そして、恵まれ過ぎた環境に、怖くなった。

  周りの人間が、離れていってしまうんじゃないかってね」




 「・・・」
87 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月19日(水)23時48分42秒
 うちは、言葉もなかった。
 その通りかもしれない、と思った。


 うちら、新メンバーは。
 後藤さんは先輩やし、何よりうちらが入ったときにはもう、モーニング娘。の顔
みたいな人やったから。

 特別扱いされてる後藤さんを見ても、
 
 うらやましい、とは思っても、

 後藤さんばっかりズルイ、とは思わなかった。・・・でも。


 先輩たちは、どうやったか?



 応援は、してたけど。
 心の中では、どう思ってたか、分からへん。


 市井さんに言われて、初めてうちは、そんなことを考えた。


 「そもそも後藤はさ、唯一たった1人で娘。に入ってきたメンバーで、しかも
  それが『LOVEマシーン』なんていう大ヒット曲がデビュー曲でさ。

  もともといたうちらよりも、先に知名度が上がっちゃったんだよ。
  まあ、それが事務所の方針だったから、後藤を責めるのなんて、お門違いも
  いいところだけど。

  やっぱり、他メンのもとからのファンとかにとっては、面白くないじゃん?
  心無い非難とかも、けっこうあったんだよ」


88 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月20日(木)00時00分05秒
 「そのころの後藤はさ、やっぱり入ったばっかで、ダンスも歌も、ド素人なわけさ。
  しかも同期がいないから、何をするにも、1人だけ遅れちゃって。

  なのに、ジャケも歌も、重要な部分、まかされてさ。
  相当プレッシャー感じてたと思うんだ。そんなこと、顔には出さないヤツだったけど。

  その上、自分に責任のとれないところで非難とか中傷浴びたら、誰だって神経
  参っちゃうでしょ?
  ましてアイツは一人で加入したぶん、その風当たりを一身に受けなきゃいけない
  立場にいたわけだし。なんだかんだいっても、辛かったと思うよ、後藤は」


  聞きながら、うちは胸のへんがぎゅっとなるのを、感じた。
  
  それでも、何も言えないうちは、黙って市井さんの話を聞いている。

 「そんなアイツだからさ、メンバーの・・・特に、プッチである市井と圭ちゃん
  以外のメンバー達に、どう思われてるかって、めっちゃ気にしてた。
  『後藤のこと、嫌ってたらどうしよう』とか、
  『後藤が入らなければよかったとか、思われてないかな』とか、
  実はアイツ、けっこうネガティブだったんだよ。

  でもまあ、アイツがそういう弱音吐くのって、滅多になかったけどね」

 そう言って、市井さんはへへっと小さく笑った。
 市井さんは気付いてないんやろか?

 後藤さんは、市井さんだけに、そういう弱いところを見せてたんやって。  
 
  
89 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月20日(木)00時08分02秒
 「後藤さんには、市井さんがいたから、大丈夫なんです」

 じょうずな言葉が思い浮かばなかったから。
 うちは、そんなことを言った。

 もっともっと、言いたいことはあるのに。
 うまく伝えられない自分に、いらいらした。

 「ありがと、加護。でもね」

 市井さんは、ふっと目を細めて、

 「後藤はね。加護たち、新メンバーが入って、ずいぶんと明るくなったんだよ。
  対等に話せる相手ができて、うれしかったんだろうね。
  辻と加護が入って、妹みたいだったのが随分とお姉さんっぽくなったし。


  それでね、だから・・・。


  安心したんだ、さっき。ああ、安心なんていったら、不謹慎だけどね。

  新メン4人・・・おっと、もう‘新’、はいらないかな?と、カオリ、なっち、
  矢口、圭ちゃんたちが、本気で悲しんでるの、見て。
  
  なんていうかな、後藤はちゃんと、メンバーに愛されてたって。
  本人が心配してるような、孤独感を感じる必要はなかったんだよって」



90 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月20日(木)00時16分37秒
 市井さんは、そこまで言って、顔を伏せた。
 長いまつ毛が、小刻みに、震えているのに、うちは気付いた。

 「市井さん・・・」


 「アイツが死ぬ前に、ちゃんと教えてあげたかったな。

  ・・・・・・

  ・・・


  後藤は一人じゃないんだよって」




 「勝手に一人で死ぬなよ、ばかやろう・・・」


 市井さんの大きな目から、涙がぽろり、と流れ落ちた。

 その、声も。
 茶色に染めた、肩まである髪も。
 膝の上で組まれた、手も。


 


 ・・・すべてが、たよりなく、震えていて。


  
  市井さんが、泣いていて。




 後藤さん、

 後藤さん、

 後藤さん、


 みんな、悲しんでるんやで?
 みんな、泣いてるんやで?




 「・・・ふぇ〜〜・・・」


 「ばか。泣くな」




 たまらず、泣き出したうちを。


 市井さんも、泣きながら。
 また、抱きしめてくれた。






 そうやって、市井さんに抱っこされたまんま。






  ・・・ずうっと、泣いた。










 

 
91 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年09月20日(木)00時33分31秒
>>79-90、以上更新です!

今回は趣向を変えて、加護視点ですが・・・また暗い話に逆戻りしてしまいましたね。
>>76>>77>>78名無し読者様、レスありがとうございました。
なんだか、早いうちに・・・と言ってた割に、期間が空いてしまいましたね(汗

見放されていなければよいのですが・・・(苦笑
92 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月20日(木)00時41分28秒
ひさぶりに覗いたらちょうど更新中。しかも結構大量に(嬉

早く好転して欲しいよ〜(泣
93 名前:コカライト 投稿日:2001年09月20日(木)21時10分05秒
おっと、更新されてる。
これからもがんばってください。
94 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月06日(土)00時54分55秒
 
 市井ちゃん。


 大丈夫、全部聞こえたよ、聞いてたよ、後藤は。

 ・・・心配してくれてたんだね。
 ありがとう。




 
 市井ちゃんが、加護を抱きしめて。
 声も上げずに泣いているのを、アタシはずっと、見ていた。

 いや、目を離すことが、出来るはずもなかった。


 かつて、

 アタシに教えてくれた1人と、
 アタシが教えてきた1人。


 2人をつないでいるモノは、確かにアタシ、後藤真希の存在なのに。



 その本人が、
 ・・・・・・死んでいるなんて。


 皮肉な、現実だ。



  
95 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月06日(土)01時00分32秒

 市井ちゃんは、泣き虫だ。
 加護も、泣き虫だ。


 そして、アタシも、間違いなく、泣き虫だった。

 ・・・・・・はずなのに。

 泣くことが、できない。
 アタシだけが、他人事のように、眺めていることしかできない。



 生きている、人への。
 嫉妬。




 市井ちゃんが加護を抱きしめているのを、見て。
 加護が、市井ちゃんの腕の中で肩を震わせているのを、見て。


 ああ、これが『生きてる』ってことなんだって。
 思い知らされてる気がして、たまらないんだ。
 アタシだって、

 泣けたら、楽になるかもしれないのに。



 辛い現実から、目をそらさないでいるのは、きっと何よりも。
 少なくとも、今のアタシにとっては、何よりも。

 辛いことだった。
 
 
 
96 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月06日(土)01時06分01秒
 
 ふいっと。

 2人の姿から、アタシは目を離した。

 
 その場を離れることはできなかったけど。
 でも、泣いてる2人の姿を見続けるのは、耐えがたかった。

 加護のそばを離れることができないのは、アタシが加護の守護霊になってしまった
そのことと、少しは関係あるかもしれないけど。



 それでも。

 普段は、人一倍元気のある、2人なだけに。
 今の状態は、あまりに、残酷で。





 
 ぼんやりと、部屋の中を見回していた、アタシの目に。
 ある物が、飛び込んできた。


 それは、一枚の、鏡。


 スタッフの仮眠室ということで、ベッドが立ち並ぶ(もちろん二段ベッドだ)この
部屋のドアの横には、身体半分が映るくらいの、割りと大きめな鏡があるのだ。


 鏡を見ると、無意識に髪の毛をいじってしまう、アタシ。


 こんな事態なのに、身についた“癖”は、アタシの腕を勝手に動かしていた。




97 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月06日(土)01時11分44秒

 『あ〜あ、ぶっさいくな顔・・・』

 前髪をちょいちょい、と直しながら。
 アタシは、少し、憂鬱な気分で。

 鏡に映った自分の顔を見て、呟いた。



 普段から、よく無表情とは言われるほうだし。
 自分でも、テレビに映ってる自分が、愛想がいいとは思わないし。
 いつでもにこやか、なタイプだとは死んでも思うはずないんだけど。



 それでも、


 アタシの目は、暗く、どんよりとしていて。
 口は、ギュッと、硬く閉じられていて。
 顔色は、もちろん、いいはずがない。



 幽霊だから、そうなのかも、しれないけど。


 少なくとも、今のこのごちゃごちゃとした心理状態が。
 アタシのこの不細工な顔を、作っていることに、関係しないことはないだろう。




 ・・・あれ?


 そこまで、考えて。
 アタシの中、一つの疑問が浮かんだ。


98 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月06日(土)01時20分34秒
 『鏡に、映ってる!?』

 
 思わず、アタシは叫んで。
 鏡の前に、身をぐいっと、乗り出した。


 そうすると、鏡の中の『アタシ』も、

 ずずいっ

 と、同じように身を乗り出して、アタシの目を覗きこんでいる。
 ・・・・・・!?

 間違い、ない。
 映ってる・・・。
 コレは一体・・・。



 鏡の中の、アタシは。

 死んだときの服装、そのまんまで。(ラブマシーンの衣装とかだったら、絶対嫌だ)

 
 迷彩柄の、チューブトップに。
 アタシにしては珍しく、マーメイドタイプのデニムのミニスカ。+サンダル。


 ああ。
 なんて、幽霊っぽくない格好なんだろう・・・。
 
 
 と、そんなことはもちろんどうでもいいことで。

 問題は。
 アタシの目から見た、自分の格好と。
 鏡に映っている、自分の格好が、間違いなく、一致していることで。


 確かに、“死んでいる”ハズの、アタシの姿が、鏡に映っているということで。
 
 もう一度。
 鏡を覗きこんだ、アタシの目に映るのは。
 同じように、アタシの目を覗き込む、チューブトップ姿の『アタシ』ので。




 あ、なんだか、ワケ分からな過ぎて、頭がクラクラしてきちゃった。

 
99 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月06日(土)01時26分47秒

 !?

 あ、そうか。

 これは、アタシだけが、見えるんだ。
 アタシが幽霊だから、自分の姿も、見えるのと同じように、鏡に映ってる姿も、
見えるんだ。


 アタシは、ぽんっと手を打って。
 唐突に浮かんだ考えで、無理やりにこの問題にそう結論をつけた。


 だって。


 周りの人間、誰1人として、アタシの姿に気付かなかったけど、
 アタシだけは、もちろん、自分の姿は、見えているから。

 自分の服装も。
 手も、指も、足も。
 随分長く伸びた、髪の毛の先までも。

  
 アタシには、全部見えているから。
 だから、鏡に映った自分の姿が見えたからって、それはそう、たいした問題じゃ
ないんだ。ないはずだ。




 それでも。


 なんだか、ワクワクするような。
 何かを期待、するような。
 この妙な昂揚感は、なんなんだろう?






100 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月06日(土)01時32分55秒

 その時。


 「加護?加護?寝ちゃったの?」


 不意に、市井ちゃんの声が、耳に届いて。
 アタシは、覗きこんだ鏡ごしに、背後の2人の姿に、視線を送った。


 市井ちゃんの腕の中で泣いていた、加護は。
 今はもう、その意識を失ってしまったようで。
 くたっと、市井ちゃんに、その体をあずけてしまっているようだった。


 ・・・無理もない。
 精神的に、一体何日分くらいの、疲労を受けたことか。
 まだ13歳の加護が、さっき起きたばかりとはいえ、相当なストレスを溜め込んで
いるのは、目に見えて分かるもの。



 「ゆっくり休めよ」

 市井ちゃんはそう言って。
 まだ涙の跡が残る、自分の頬をぐいっと乱暴にぬぐって。
 

 加護の体を、再び、ベッドの布団の上へと、静かに寝かせた。

 そして。

 優しく、掛け布団をかけてあげる、その目は。
 いつもの通り、優しくて。
 そして、市井ちゃんの、強さが溢れていて。




 思わず、見とれた。





101 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月06日(土)01時38分12秒

 アタシが、市井ちゃんの姿に見とれていたら。

 市井ちゃんが、急に、
 くっ、と顔を上げて。




 鏡の中の、アタシと。

 目が、

 合った。



 ・・・・・・・・・


 
 ・・・・・・はっ




 目が、合った!?




 トクトク、トクトク



 心臓が、動いてるはずは、もちろんないけど。


 生きているときの、胸が高鳴る感じ。
 今の心境を例えるならば、そんな感じ。



 目が合った。・・・ということは。


 市井ちゃんにも。
 アタシの姿が、
 後藤の姿が、見えてるって、ことだよね!?



 トクトク、トクトク






 目が合ったのは、ほんの数秒。

 けれど。

 アタシにとっては、長い、深い、
 そんな時間に、感じた。




 トクトク、トクトク



 鼓動は、止まらない。





102 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月06日(土)01時43分57秒
 
 ダメだ。

 期待しちゃ、ダメ。

 アタシは死んでいるんだから。
 期待が裏切られたら、傷つくのは、自分なんだから。


 『市井ちゃんには、自分の姿が見える』

 だなんて、期待して。

 
 
 偶然だったら?
 傷つくは、やっぱり、自分。



 いや、これは、単なる偶然なんだ。

 きっと、そうだ。

 
 現実なんて、そんなものだよ。




 
 期待するほど、いいものじゃない。
 現実なんてものは・・・・・・。




 わずか、数秒のその間に、アタシの思考はフル回転。
 浮かんでくるのは、マイナス思考ばかりだけれど。



 でも、アタシのその後ろ向きな考えは。
 次々と浮かんでくる、否定的な意見は。

 市井ちゃんの一言によって、
 意味をなさなく、なった。







 「・・・・・・後藤ッ!?」






 鏡の中の、アタシだけを、まっすぐ見つめて。

 市井ちゃんは。





 はっきりと、アタシの名前を、呼んだ。





 
103 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月06日(土)01時50分50秒

 全身が、総毛立つ、そんな感覚。



 
 市井ちゃんは、迷わず、アタシの姿を、
 鏡の中のアタシを見据えていて。



 呼ばれた名前は、確かに『アタシ』自身のもので。




 市井ちゃんの言葉は、確かに、間違いもなく、
 

 死んでいる、幽霊であるこの『アタシ』に、向けられたものだった。




 ゾクッ




 誰かに。

 自分の名前を呼んでもらうのは、とても、久しぶりな感じがして。
 同時に。
 それは、『後藤真希』の存在を、もうすでに自分の中では希薄になりかけていた
自分の存在を認識させてくれるには、十分すぎるほどの、威力を持っていた。



 そうだ。
 アタシは、

 『後藤』



 そうだよね、市井ちゃん。









 アタシも、市井ちゃんの目だけを見据えて。



 こくり、




 と、うなずいて、みせた。





 市井ちゃんが、少し、目を見開いた。





 

 
104 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月06日(土)01時57分46秒
>>94-103   そ〜と〜、遅まきながら、更新いたしました(滝汗


 >>92  名無しさん
    ありがとうございます。ようやく好転し始め(?)たかもしれません。
    早いとこ進めたいんですけどね・・・文才ないんで、どうも手の進み
    具合が悪いんです。

 >>93  コカライト様
    レスありがとうございます!がんばって進めますよ〜!!
    できる限りは・・・(弱気?

  最近、森版の方にも短編カキはじめましたんで、(読んでくださっている方がいたら)
 更新が限りなく遅くてすみません。。。
  あまりにこの話が予想以上に暗くなってしまったため、短編(コメディ)を書かせて
 いただいてます。
  もしよろしければ、そちらも読んでやってください。
105 名前:キャメルさん 投稿日:2001年10月07日(日)18時25分40秒
森板の方読んできました。
面白かったですよ〜!配役がうまい!
両方も書くのは大変だと思いますが、頑張ってください!

こっちの話、悲しいですねー。グッドエンディングを期待してますが、
世の中上手くは行かない気もします(ワラ
106 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月29日(月)21時20分00秒
そろそろ続きがよみたいな〜
107 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月30日(火)02時17分22秒
期待sage
108 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月30日(火)21時36分43秒
 『いちーちゃん!』

 鏡ごしに、アタシは呼びかける。



 『いちーちゃん!』
 『いちーちゃん!』
 『いち―ちゃん!』


 『後藤のこと、見えるの?』



 興奮していたアタシは、何度も市井ちゃんの名前を呼んでいた。
 鏡の中の市井ちゃんの姿だけを、見つめながら。


 なぜか、アタシは鏡の中から目を離すことができなかった。

 だって、鏡から目を離して、後ろを振り返ったら。
 市井ちゃんには、もうアタシの姿が映らないような気がしたから。

 そしてそれは、多分間違いないんだ。

 だってそうじゃなきゃ。
 アタシはずっと、みんなの側にいたんだから。
 

 ほとんど必死になって訴えかけるアタシに、市井ちゃんはふっと微笑を浮かべて

 「大丈夫。ちゃんと、見えてるよ・・・後藤。
  声も、ちゃんと届いてる」



 市井ちゃんは笑っていたけど。
 その声は震えてた。か細く、震えてた。

 
109 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月30日(火)21時44分24秒
 見えてる。
 やっぱり、市井ちゃんにはアタシの姿が見えてた。

 そして、声も。
 市井ちゃんに、アタシの呼びかけは聞こえてた。



 そんな些細なコトが、とんでもなくすごいことに感じることに、気付いた。

 うれしくて、うれしくて。
 アタシが死んでから、こんなにホッとした気持ちになったのは初めてで。
 思わず、アタシの顔には笑顔が浮かんでいた。



 「なんだよ、後藤・・・その泣きそうな笑顔はあ」


 市井ちゃんだって、泣きそうだよう。

 そう言い返そうと思ったけど、もう、そんな小さなことはどうでもよくなって。
 アタシは、市井ちゃんがこっちの鏡に向かってゆっくり歩み寄ってくるのを、黙
って眺めてた。


 そして、市井ちゃんは、鏡の中のアタシの横に並んで立った。
 鏡ごしに、二人の視線が交差する。
 
 『あはっ、変な感じ・・・』

 『後藤、背ー伸びたね』


 なんだか、いきなり話がかみ合わない。
 アタシ達は、同時に吹き出した。


 
110 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月30日(火)21時51分45秒
 『あはっ、何言ってんのお、市井ちゃん。
  後藤、もう死んじゃってるのに』

 「・・・うるさいなっ、暗くなっちゃ悪いと思って・・・、
  今、なんて話かけるか、結構考えたんだぞっ!」

 
 市井ちゃんは顔を赤くして、そう抗議する。
 その姿、
 その喋り方、
 アタシに対する、その態度すべてが。

 何も、変わっていないのに。


 アタシだけが、変わった―――ううん、存在そのものが、なくなっちゃった。



 市井ちゃんが、ふと真面目な顔になってアタシの顔を見つめる。
 「っていうかさー、後藤・・・」
 『うん?』

 あちゃー、いきなりまた暗い雰囲気に戻っちゃってるよ。
 アタシ、そんなに今、暗い顔、しちゃったのかな?


 だけど、もう。
 アタシが『死んだ』という事実は、変えようのない現実だから、
 そのたった三文字の言葉に、アタシはずっと、呪縛される。


 「やっぱり・・・、本当に、死んじゃった・・・わけ?」

111 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月30日(火)21時58分50秒
 『・・・・・・・・・』


 とっさに、アタシは言葉を返すことが出来なくて。
 市井ちゃんの問いかけに、黙って唇をかみ締めた。

 その返事は、決まってるのに。


 “そーだよ。後藤、死んじゃったの”


 そんな、簡単な一言でいいのに。

 

 
 けど、簡単な一言だけど。
 それが、どんなに重い意味を持っているか、分からないほどアタシも馬鹿じゃない。


 さっき、市井ちゃんがどれだけ悲しんでくれたか。
 他でもない、アタシ自身が見ていたんだから。

 なんて答えればいいか、分からない。


 市井ちゃんも、アタシも。



 「あっ、イヤ、あのさ・・・」

 アタシが黙りこくっちゃったのに、市井ちゃんは慌てたみたいで、少し目を見開いて
アタシの注意を向けようと、手をひらひらさせてる。

 その動きがおかしくって。
 アタシは、思わず笑ってた。・・・やっぱり、アタシの意識を惹きつけるのに、市井
ちゃんほど適した人はいない。

 だって、市井ちゃんの仕草、一つ一つが。
 気になってしょうがないんだもん。

112 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月30日(火)22時07分42秒
 「ごめんな、後藤。困らせようと思って言ったんじゃなくって・・・、
  あのさ、さっきまで市井、後藤の姿見えなかったんだ。
  けど、今は・・・見えてる。これって、どういうコトなんだろって・・・」


 うん。その通りだよね、市井ちゃん。

 同じこと、アタシも考えてた。
 だけど、答えは分からない。


 『ごめんね、いちーちゃん。後藤も、なんでか分からないんだ』

 アタシは、正直に話すことにした。
 『さっきもね。控え室に、後藤みんなと一緒にいたんだ。誰も気付かなかったけど
  それでね、今度は市井ちゃんと加護にくっついてここまできたの。
  んでもって、鏡見たのね。
  ・・・そしたら、後藤、映ってたの、鏡に。

  あれって思って・・・そしたら、市井ちゃんも後藤のコト、見てるのに気付いて。
  だから、何がどうして、市井ちゃんに後藤の姿見えたのか、サッパリ分かんない』


 「・・・そっか・・・」


 少し長ったらしい説明になっちゃったけど、市井ちゃんは真剣に聞いてくれた。
 そして、顎に手をあてて、う〜ん、とうめいた。

 「絆かな・・・」

 『へ?』

 
 そして、市井ちゃんがポツリ、と呟いた言葉に、アタシは敏感に反応した。
 今、市井ちゃんなんつった?

 「イヤ、だからさ・・・これは、市井と後藤の絆のせいかな・・・、
  なんて思ったりして・・・」

 『・・・・・・』
 
113 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月30日(火)22時19分41秒
 数秒おいて。
 市井ちゃんは、自分の放った言葉の意味に気付いたようで。

 カッと、一瞬にして顔を真っ赤にした。


 「いや違うっ、今のなし!!な〜〜しっ!!」

 そう、市井ちゃんが叫んだのと。

 『ぶははははっ!!』

 アタシが思い切り吹き出したのは、ほとんど同時だった。

 「笑うなあっ、後藤お!!」

 市井ちゃんは、もうほとんどゆでたこみたいに真っ赤になってる。
 その姿もおかしいけど。

 『いちーちゃん・・・相変わらずロマンチスト・・・ぶぶっ、
  うう・・・苦しい・・・うはははは』

 アタシは、お腹を押さえて笑う。

 まさか・・・、絆、なんていう言葉を持ち出してくるとは思わなかったからさ。
 う〜ん、市井ちゃんがロマンチストってのは前から思ってたことだけど。


 「ふん、どうせ、市井はさ・・・ロマンチストさ・・・。
  2コ下の後輩に笑われるくらいのロマンチストさ・・・」

 気がついたら、市井ちゃんが1人でいじけモードに入ってる。
 ・・・ちょっと、笑い過ぎたかな?ちょっと反省。

 『ごめんね〜?市井ちゃん』
 「もー遅いよっ。アホ後藤」
 
 『ごめんなさいってばあ〜。
  ・・・でもね、うれしかったよ?今』
  
 「嘘つけ〜!あんなに大笑いしたくせにっ」


 ・・・あ。ホントにいじけちゃってるし。

 けど、うれしかったのは本当だよ?市井ちゃん・
 “絆”なんて言葉、
 市井ちゃんに言われたんでなきゃ、効果なんてないんだから。

 
 うれしいんだよ、市井ちゃんに言われたってことが。

114 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月30日(火)22時30分15秒
 よっぽど、声に出して言おうかと思ったけど。
 今の市井ちゃんに言っても聞いてくれなさそうだから、心の中で言っておいた。


 でも、結局。
 どうして鏡ごしにアタシの姿や、声が聞こえるのか、理由は分からない。

 市井ちゃんが、ちょうど鏡に反射する辺りの位置(要は、今アタシが立ってる所だ)
に、アタシの姿を探したけどやっぱり直には見えないみたいで。


 「なんでなんだ〜?」

 って、頭をかきむしってた。
 
 アタシにも、さっぱり分からないんだけどさ・・・。
 もしかしたら。
 さっきの、あの変な(自称天使の)オッサンだったら、分かったかもしれないけど。
 いきなり現われて、いきなり去っちゃうような気まぐれのオッサンだから。
 頼りにもなんないしね・・・。


 まあ、今の時点で、その理由なんてどうでもいいんだ。

 たとえ、鏡を通してでも、市井ちゃんと対等に話ができることが、うれしい。
 市井ちゃんが、アタシを見てくれることが。
 市井ちゃんが、アタシの声を聞いてくれることが。



 そしてアタシは、市井ちゃんに、すべてを話した。

 仕事の帰りに、車にはねられたらしい所まで覚えていること。
 気付いたら、病院で幽体離脱してて、そのまま体が死んじゃったこと。
 そして、なぜか加護のことが気になって、事務所までやって来たこと。
 「天使」と名乗るオジサンが現われて、『加護の守護霊に決まった』などと言われたこと。

 
 アタシが思い出せる、全てのことを話した。
 
115 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月30日(火)22時39分30秒
 「ふうん・・・、加護の守護霊・・・ねえ」
 『うん。なんで加護なのかは、アタシも分からないけど、
  そう決まっちゃったんだ』

 「う〜ん・・・」

 市井ちゃんは、しばらく腕を組んで考えてたけど、
 「やっぱり、考えたって分から〜ん!」
 って、降参するように、両手をバンザイするように広げた。

 『いーよ、後藤ね、深く考えないことにしたから。
  今は、この現実を受け入れるしかないんだもん』

 「強いね、後藤は・・・」


 市井ちゃんがため息交じりに言った言葉に、アタシはゆっくりとかぶりを振った。
 『強くないよ』

 『後藤は、ぜんぜん強くない。そりゃ最初は戸惑ったし、
  どうしていいかぜんぜん分からなかったし、みんなに気付いてもらえなくて
  寂しかったし』

 『でもね。加護の守護霊になったことで、まだこの世に残れてるんだよ。  
  こうやって、市井ちゃんとまだ、お別れしないですんでるんだよ?
  だから、後藤は大丈夫なんだ。
  この先、どうなるか分からないけど』



 市井ちゃんは黙ってアタシのいうコトを聞いてたけど。
 アタシが話し終わると、力強い笑顔を浮かべて、アタシのことをじっと見つめた。

 「なんかさー、しばらく会わないうちに、大人になったよね、後藤は。
  うん、後藤の言うとおりだよ。
  先が分からないなんて、生きてる人間だって同じことだしさ」

 『そうっ!いいこと言うねー、市井ちゃん』


116 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月30日(火)22時50分54秒
 「おいおい、真面目に言ってるんだからさー、市井は」
 『しつれーな!後藤だって真面目にそう思ったんだよ』

 
 そうして、二人とも笑う。

 顔を見合わせることはできないけど。
 鏡を通さなきゃ、顔も見れないんだけど。


 それでも、今のアタシには、充分すぎるパワーがみなぎってる感じがした。



 正直、アタシが死んで。
 家族はおろか、誰にも気付いてもらえなくて。
 こんなに寂しい思いをして、ずーっと守護霊なんてやってくのかと思ってたけど。


 今は、こんなに心強い存在がいる。
 市井ちゃんがいる。

 たとえ、他の誰にも気付いてもらえなかったとしても、
 存在を忘れられちゃったとしても、
 名前を呼ばれなくなっても、



 市井ちゃんさえいれば、絶対、大丈夫!!!


 アタシのパワー全開だよっ!!



 『市井ちゃんっ、後藤がんばるねっ!
  がんばって、立派な加護の守護霊になってみせるからねっ!!』


 いきなり、テンションが上がったアタシに、市井ちゃんは一瞬驚いた顔をしてた
みたいだけど。
 「おう、辛くなったら、市井んとこ来いよ」

 って、そう言ってくれたんだ。

 うん。
 大丈夫。


 神様、これは、あなたの優しさですか?
 それとも、単なる気まぐれですか?

  
 ・・・とまあ、こんな感じで。

 後藤真希(享年)15歳、市井ちゃんという強い味方をゲット!して、立派な
守護霊を目指す決心を固めたのでした。
      

 ・・・うれしいよ〜♪

117 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年10月30日(火)22時55分56秒
長いこと、更新をほったらかしにしてすいませんでした・・・(アワアワ
 
>>105 キャメルさん
>>106 名無し読者さん
>>107 名無し読者さん

 レスつけていただき、ありがとうございます!

これからも不定期になりそうなんで、これからはsageてひっそり更新していこうかと
思ってます。
118 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月31日(水)01時20分58秒
待ってました!!!
119 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月31日(水)18時35分47秒
更新お待ちしてました。
ゆっくりでいいんで頑張って下さい。
120 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月01日(木)00時19分01秒
がんがれ〜
121 名前:のの好きちゃん 投稿日:2001年11月12日(月)23時03分39秒
∋oノハヽo∈ 。
 ( ´D`)<すごくおもしろいです.途中でホントに涙がでてきちゃいました・・・・!
更新、がんばってください。
122 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月13日(火)21時27分38秒
ageないで
123 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月21日(水)17時05分40秒
保全sage
124 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月22日(木)07時01分28秒
そろそろ更新の季節な予感sage
125 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月26日(月)17時54分27秒
保全sage
126 名前:やぶ医者 投稿日:2001年12月08日(土)06時38分56秒
ご臨終です。
127 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月10日(月)20時11分08秒
まってます!!
大変だとは思いますが頑張ってください
128 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年12月16日(日)00時14分12秒
ずいぶん、ずいぶん長いこと更新ほったらかしにしていて、本当に…本当に
すみませんです!!
レスをくれた方々に、本当に感謝したい気持ちでいっぱいです。
言い訳にしか過ぎませんが、実は銀板の方で、ちょうどよしごま小説を書き
初めてしまいまして…→それも、すでにスレ3本目に入るという(w
(ちょうど、この小説の最後の更新の日から書き始めたんですけども)

今さらですが、放棄していたわけではないので、またちょこちょこ始めます…
もちろんsage進行で(w

こんな超スローペースな小説にもかかわらず、レスをくれた皆様には本当に頭が
下がる思いでいっぱいです。
森板のほうは、今のところアイディアが浮かばないもので…(汗
というか、手を広げすぎです作者。ごめんなさいごめんなさい(陳謝)。

129 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年12月16日(日)00時20分55秒


 月日が過ぎるのは、とても早い。


 ・・・「死んだ」アタシがこんなこというのもなんだけど、
 最近、すごい思うんだ。


 ・・・


 『後藤真希』が、死んで。
 世の中は、割りとしばらくの間、騒いでいた・・・ように思う。
 週刊誌の雑誌には、ずいぶんとアタシの名前がでかでかと載っていたし、
 新聞紙(なんと、スポーツ紙だけじゃなくって一般紙も!!)にも出たし、


 そして、テレビだ。



 多分、マスコミが注目したのは、
 “後藤真希のいないモーニング娘。”のその後なんだと思う。

 なんとかおもしろいコメントを取ろうと、マスコミの人たちが奮闘している姿を、
アタシはいつも、加護の後ろからテレビを通じて見ていた。



 そう、いつも加護の後ろから。





 アタシが死んで。
 おそらく、1番ダメージを受けていたであろう、加護。
 そして、その加護の(なぜか)守護霊になったアタシ。


 それは、多分気まぐれなうさんくさい天使に言いつけられた、それだけの関係性であるにも、関わらず。
 アタシは今のところ、完璧、と言っていいほど、加護の後ろから彼女をずっと、見守っていた。


 ・・・そう、ずっと、ずっとだ。







130 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年12月16日(日)00時33分03秒


 アタシが死んだのは、もうすでに4ヶ月も前の話になる。
 だから―――というわけでもないけれど、アタシは充分、というにはまだ早いかも 
しれないけど…

 とにかく、「幽霊」としての生活には慣れてきていた。



 もちろん、市井ちゃん以外に、アタシに気づく人はいない。
 それは、アタシが“守護”してやっている張本人の、加護でさえ、分かっていないこと。


 けれど、別にアタシはもう寂しいとか、悲しいとか、
 そんなこと思ってはいないんだ。
 ・・・だって。


 時々、市井ちゃんが会いにきてくれるから。
 必ず、鏡(けっこう大きめなやつ)を持って。


 
 えへへっ。
 アタシはね?
 加護をずっと見守ってるっていう、「守護霊」の立場ではあるけれど。
 もちろん、加護のことはかわいいし、大事に見ていたいとは、思うけれど。


 でも、それだけだったら絶対に、辛くてやってけないと思うんだ。
 アタシは、強くないから。
 誰かに・・・そう、大切な人に。
 甘えていたいって、話を聞いてほしいって、そう思うから。


 だから、市井ちゃんの存在は、今の後藤の中で、何より・・・
 そう、加護のことはまったく別のものと考えて、その上で、何より。
 大切。




 未だに。
 アタシが、加護の「守護霊」として、何をやっていいか、だとか。
 どうして市井ちゃんにだけは、アタシの姿が見えるのか、だとか。
 大事なことはさっぱり分からないんだ。



 それに。
 アタシの死んだ原因―――もちろんそれは、車によるもの―――つまりは交通事故、
になるんだけど。
 


131 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年12月16日(日)00時42分14秒
 
 どうやら、アタシを轢いた車は、そのまま逃げちゃったらしく・・・
 いわゆる、『ひき逃げ事故』になるらしい。

 ま、アタシとしては。
 もう死んじゃった身だから、別に犯人が見つかろうが、たいした問題じゃない。
 (だって、生き返れるわけじゃないでしょ?)


 だから、今、アタシの当面の問題としては。
 加護の守護霊として、何をやったらいいのか、と。
 どうして市井ちゃんと話ができるのか、を解明すること、なわけ。


 でも、まあ。
 アタシの頭はお世辞にも―――いいとは、いえないんだよなあ。
 だから、この問題解決にはしばらく―――時間がかかりそう。


 問題といえば。
 アタシが死んだ直後の、加護は大変だった。
 つんくさんが、「モーニング娘。は解散しません」発言をしたまでは良かった。
 (だって、アタシもそれには賛成だったし)


 問題は、モーニング娘。の活動が、3日と空けないで活動をスタートさせたことだ。


 ・・・・・・


 ・・・



 その日も、アタシは加護の後ろに立っていた。(もちろん誰も気づいてないけど)


 「―――そんなの、できるわけないじゃないですかっ!!」


 マネージャーに、猛然と抗議するやぐっつぁん、そしてその後ろから、メンバーが
一致団結するように、固まって同じく抗議の目線を送っている。
 8人に減ったとはいえ(まだこのとき新メンバーは入っていなかった)、これだけの
女の子集団に睨まれるのは、とても楽しくはないだろう。

 マネ―ジャーは肩をすくませて、途方にくれているように見えた。



132 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年12月16日(日)00時58分36秒


 「ちゃんと考えてくださいよっ!!うちら、まだみんな未成年ばっかりなんですよっ!?
  特に、辻や加護なんてまだ・・・
  なのに、もう今日から収録再開するなんて、無理ですっ!!」


 やぐっつぁんに、口で勝とうと思ったら相当の修行が必要だ。(・・・と、アタシは思う)
 そのやぐっつぁんに、真っ直ぐ睨みつけられて、怒鳴られて、マネージャーはなんだか、
一際ちぢんだように見えた。


 「分かってるよ・・・僕だって、みんながとても仕事なんてできる状態じゃないことは、
  分かってるつもりだ。だけど、決めるのは僕じゃない。
  ・・・つんくさん直々の、申し出なんだ」


 神経質にメガネを直しながら、最近マネージャーになったばかりのそのマネージャーは、
弱気にそう言った。

 とたんに、メンバーは火のついたように口を開く。


 「―――つんくさんもつんくさんだよっ!!」

 はき捨てるように、圭ちゃんが言った。

 「大体、後藤が死んだときの言葉からしておかしいよっ!!
  『後藤が死んでも、モーニング娘。は何も変わらない』―――??
  何が変わらないっていうのよ、後藤がいない娘。が、以前とどうして変わらない、
  なんて言えるのよっ!!」


 それは、後藤が死んだ朝―――つんくさんが言った言葉だ。
 圭ちゃんが今いった言葉も、そのとき加護が興奮して言ったものと、意味は同じだろう。
 当の加護は、というと。

 


133 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年12月16日(日)01時08分29秒


 もはや、話に加わる元気もないのか、
 一番後ろで、みんなの影に埋もれるようにして、力なく壁に寄りかかっていた。
 その、ふっくらとした頬には、幾筋もの涙の跡が残っていた。



 夜の間中・・・つまりは、加護がメンバーと別れ、親におやすみを告げて、
1人になってからその間―――自分の部屋で。


 今まで、アタシと加護が二人で撮った写真とか、
 メンバー同士で遊んでるときの写真とか、
 アタシが加護にあげたバックだとか、服だとか。


 とにかく、今ごろ気づいたのだけど―――加護の部屋には。
 アタシとの・・・後藤真希との思い出が、あまりに溢れていて。

 ・・・

 その思い出に囲まれて、(あまりに残酷な光景だと思った、アタシは)
 加護が・・・
 小さな体で、声を押し殺して、ひっそりと泣いているのを、見ていたのだ。
 守護霊であるアタシは、見守っていることしかできなかったけど。





 だから、加護の元気がないのは、あまりにも当たり前のことなんだけど。
 でも、今のメンバーにしろ、周りを気遣う余裕がないことなんて、目に見えて分かるから。
 アタシにできることも、ないから。


 ただ、アタシは見ているに過ぎない。



 「後藤は死んじゃったんですよ!?もう・・・いないんですよ!?」

 今度口を開いたのは、なっちだった。
 「こんな状態で・・・とても、私たち、笑えません。
  歌だって歌えません・・・だって。だって、そうじゃないですか!?

  『モーニング娘。としての活動』ひとつひとつが、後藤のことを思い出させる
  んですよ!?どうしたって・・・」

 

134 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年12月16日(日)01時17分03秒

 なっちのチャームポイントともいうべき、その笑顔はすでにその表情からは
抜け落ちていて、代わりになっちはその愛らしい顔を歪ませて、
 いったん言葉をきって、


 
 「どうしたって、後藤が死んだことに、ショックを受けないでなんていられないのに」



 とても、静かな言葉だった、なっちの言葉は。


 「今でも覚えてます、なっちは。後藤が、金髪で初めて娘。と会ったときのこと」
 「初めて、一緒にお風呂に入ったときのこと」
 「初めて、一緒に海外行って、めちゃくちゃ後藤がはしゃいでたときのこと」
 「初めて、後藤の家に遊びに行ったこと」
 

 言いながら、なっちの目が涙で潤んで。
 正直、アタシも・・・泣きそうだった。泣けるはずないけど。
 だって、ねえなっち?
 アタシも、全部覚えてるんだよ?


 「ずっと、なっちと後藤は仲が・・・悪いなんて言われてて、
  でも、なっちは・・・後藤のコト、好きだった。かわいかった。
  年上だとか、先輩だとか、そういう壁のないコで・・・


  本当に、大事な仲間だったんです」


 ・・・


 なっちの言葉に。
 アタシが気づいた限りでは、梨華ちゃんがまず泣いて。
 それから、圭ちゃんとカオリが泣いて。(なっちはすでに泣いていた)

 辻も、何がなんだか分かっていないようだったけど・・・泣いていて、
 やぐっつぁんも、こらえていたみたいだけど、ついに泣き出した。


 そして、泣いていないのは。



135 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年12月16日(日)01時23分37秒


 「アタシも・・・」


 愛すべき親友、よっすぃだった。


 「アタシも、ごっちんがいないのに、歌なんて歌えません。
  テレビに出るなんて・・・」

 よっすぃが目を伏せて、長い睫毛が、彼女の顔に陰鬱をつくった。
 やっぱり、美形なんだよなあ、よっすぃは。


 「一緒にいるのが、当たり前だったんです」

 語尾が震えている。



 「アタシ達、4人がメンバーになったとき・・・まず最初になじんでくれたのは
  ごっちんだった。それに、アタシはごっちんの・・・ごっちんの」


 言いながら、よっすぃは目頭を押さえて、
 少しばかり、息が荒くなっているように感じた。
 加護は、未だに微動だにしない。



 「アタシはごっちんの、親友なんです」


 涙の混じった声で、よっすぃはきっぱり言った。

 「親友が死んだのに、テレビなんて出れません」



 ありがとう、そしてごめんね、よっすぃ。
 なっちも、やぐっつぁんも、圭ちゃんも。
 カオリも梨華ちゃんも辻も。


 アタシのせいで、どれだけ辛い、苦しい思いをさせているんだろう。
 そのアタシ自身は――「市井ちゃん」の存在で、ずいぶん救われているけど。




136 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年12月16日(日)01時30分53秒


 重い雰囲気だった。
 とても重苦しい雰囲気だった。


 マネージャーはそれでも、つんくさんの権力には逆らえないらしい。
 「しかし・・・」だとか何とか、もごもご、口の中で言っていた。
 それすら黙らせたのは、



 「・・・帰ってください」



 ずっと、だんまりを決め込んでいた、加護だった。
 ただ、加護が・・・今までのやり取りを全部聞いていたのかどうかと考えると、
だいぶ疑問は残るけど。



 細い、そしてとても弱い、何より―――加護が喋ったことに。

 全員がハッとしたように、1番後列にいる加護を振り返った。
 きっとみんな気づいているのだ、
 加護がとても、危険な状態にいることを。



 「どうしてここにいるの・・・どうして・・・?
  後藤さんはいないのに・・・いないのに・・・?

  どうして、後藤さんはいないんだろ・・・?
  どうしていないんだろ・・・?もう、集合時間はとっくに過ぎてるのに・・・


  どうして、代わりにマネージャーがいるんだろ・・・?
  ここはモーニング娘。の楽屋なのに・・・?
  後藤さんがいないのに、どうしてマネージャーがいるんだろ・・・」


 ほとんど、うわごとのように。
 加護はぶつぶつ、ぶつぶつと呟いていた。
 彼女は何も、聞いてはいなかった。
 そのつぶらな瞳も、何も写してはいなかった。




137 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年12月16日(日)01時41分44秒


 「・・・加護ォ!?」

 さすがに、やばいと察知したのか。
 やぐっつぁんが、ぐいっと涙をぬぐって、加護に駆け寄った。


 「大丈夫!?加護。真っ青だよ?」
 「・・・やぐち、さん?
  ・・・後藤さん、遅いですねえ・・・」


 やぐっつぁんに抱きかかえられながら、加護は弱弱しい笑顔を浮かべた。
 ヤバイと思った。隣りで見ているアタシでさえ。
 加護は限界だ。
 混乱している。
 それに―――この間と違う。市井ちゃんがいない。



 『やばいよぉ、市井ちゃん。
  ・・・どうしよう、市井ちゃん』

 心の中の呼びかけに、市井ちゃんが応じてくれるはずはないけど。


 『さすがに・・・笑えないことになっちゃったよ』




 いつのまに、加護の中で。
 アタシの存在は、それほどまでに大きくなっていたんだろうか?
 確かに、他の(加護にとって)年上のメンバーの中では、懐かれていたと思うけど。

 それはあくまで、「メンバー同士」の範ちゅうであって。

 ここまで、加護がアタシを・・・慕っていてくれたことには、
 正直言って気づかなかった。



 ・・・だけど、そんなものなのかもしれない。
 誰かを、大事に思ったり、大事に思われたりするってことは。
 加護が、何がきっかけでそこまで「後藤真希」を大事に思っていたのかは知らないけど。 
 

 きっと、加護にとってアタシの存在は人より少し、大きかったのだろう。
 だから、それだけのショックを受けてしまっているのだろう。


 


138 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年12月16日(日)01時51分39秒


 だけど、まだ幼い加護の精神は、それだけのショックに耐えうる器が、できて
いないかったのに違いない―――とても、残酷なことに。



 「後藤さん・・・後藤さん・・・早く、来ないと・・・
  番組、始まってまうで・・・?歌かて、後藤さんのパート、他の人にとられたら
  イヤやろ・・・?」

 「加護、もういい、もういいよ!!」

 やぐっつぁんが、加護を抱きしめるその腕に力を込めたのが分かったけど、
それでも加護はまだまだ、話すのをやめようとはしない。


 もう、充分目に涙がにじんでいるのにも、関わらず。



 「・・・後藤さん・・・後藤さん・・・?
  聞いてますの?もうすぐ、新メンも入ってくるんやで・・・?
  遅刻なんてしとったら、かっこ悪いやないですかあ・・・」


 必死に。
 加護がつむぎ出す言葉に、アタシはまた、胸がしめつけられて。
 『加護、もういいよ』


 ―――さっきの、やぐっつぁんのセリフは、まんまアタシの気持ちを代弁したものだ。
 『加護、もういい。もういいよ』―――


 アタシは、ずっと壁際に立って、その成り行きを見守っていたけど。
 とうとう、見ていられなくなって・・・加護の痛々しい姿が。


 そっと、彼女の歩み寄り―――やぐっつぁんに触れないように、加護にだけ、腕をまわして。
 アタシの両腕で、包み込むように加護を抱きしめた。
 分かっていたから、自分の変な力が。


 すなわち。

 「・・・加護?」

 やぐっつぁんの腕の中で、いきなりクタッと身体を預けて眠りに入った加護に、
アタシは心の中で謝った。(・・・ごめんね)





139 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年12月16日(日)02時00分44秒


 少々強引だとは、思うけど。
 でも、こうでもしなきゃ、加護の精神がおかしくなっちゃうだろう。

 充分すぎる、ショックを受けているのに、それでも加護は。
 決して、自分からは睡眠をとろうとはしないから。
 疲れだって、ピークを過ぎている。(それはきっと他のメンバーもそうだろうけど)



 それに、アタシが幽霊であるこの身体で。
 何かできることといったら、それくらいしかないんだもの。
 ・・・市井ちゃんがここにいない、今の状態では。



 「これでも?」

 眠ったままの加護を抱きしめたまま、やぐっつぁんが再び口を開いた。


 「こんな、加護の姿を見ても・・・仕事をさせようと思いますか?」


 強い意志、強い目。強い口調。
 その強気さが、やぐっつぁんの最大の、武器だね。


 「きっと、マスコミは喜んだとしても」
 「世間の人は、どう思うんですかね―――?」


 やぐっつぁんの腕にいる加護を、支えるように腕を伸ばしながら。
 よっすぃも、マネージャーに対して、言い放った。

 もはや、この場で、「仕事をしろ」というのは、悪者にしかならないだろう。

 みんなが、やばい状態だ。
 みんなが、限界な状態だ。
 こんな状態で、仕事をしたとして―――満足のいく内容に、なるはずはない。




140 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年12月16日(日)02時11分45秒


 ・・・・・・


 ・・・



 そして、アタシが死んでから約2週間という異例の長さで―――(アタシが娘。でいたとき、
こんなに長い休みなんてもらったことはなかった)、メンバーには休暇が与えられた。

 とはいっても、休みが明けたそのとき、晴れ晴れとした表情のメンバーはいなかったけども。




 休み明けの最初の仕事で、新メンバー(なんと4人もいた!)と対面し、
その後は、順調に仕事は進んでいた―――少なくとも、表面上は。



 4ヶ月という時間は、悲しみを癒えさせるにはまだまだ短いかも、しれなかった。
 まだまだ、メンバー同士で、涙を見せ合うこともあった。
 アタシは、いつでもそれを、見ていたけれど、やっぱり何もできなかった。


 悔しいのは、何もできないことにすでに慣れ始めた自分に、だった。




 加護は。
 すでに、前のような「異常」な状態からはすでに脱していたけど、それでも。
 テレビでも、以前のような明るいキャラクターも健在していたけど、それでも。
 新メンに、しっかり仕事を教えるような、先輩の一面も見えてきたけど、それでも。




 夜になって、自分の部屋に帰ると。
 時々、1人で泣いていた。



 決して、泣き喚くでもない、アタシの名前を呼ぶでもない。
 ただ、机に向かって、イスに座って。
 小さな両手で、顔を覆って。


 まるで、見えないはずのアタシに、泣き顔を隠すかのように―――
 息をつめるようにして、泣くのだ。




 
141 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年12月16日(日)02時34分35秒


 その度、逃げ場のないアタシは。
 ただ、加護の涙がおさまるときを待つ―――その繰り返しだった。



 そして、アタシは。



 

 最近の市井ちゃんは、時々娘。の楽屋を訪れるのが習慣になっていて。
 このときも、市井ちゃんは特に用事があったわけじゃないけど、と言いながら、
フラッと娘。の楽屋に立ち寄ってきた。
 
 (用事なら、アタシに会うっていう理由が、ちゃんとあるんだけどね。
  そんなこと、他のメンバーに言えるはずはないでしょ?)


 なんだかんだで、アタシと市井ちゃんが二人っきりになったとき、
 ようやく市井ちゃんは鏡のそばに歩いていった。


 「・・・よっ、後藤。元気か?」

 『元気なはず、ないでしょ。死んでるんだから』
 「そりゃそーだ」

 市井ちゃんはカラカラ笑った。
 市井ちゃんだけは、もうちゃんと「大丈夫」なんだと思った。


 それともただ、こうやってお話してるから、アタシが死んだって実感が沸かないだけかな?
 ただ、市井ちゃんの演技がうまくって、アタシが騙されてるだけなのかな?



 どちらとも、言い切ることはできないけど。
 今、アタシが幽霊となった状態で、頼りに出来るのは市井ちゃんだけだ。

 そりゃ、生きてるときも、かなり頼っていたことは、否めないけど、さ。



 でも、今はとにかく加護の問題があって。
 話を切り出さなきゃ、始まらない。


  
 『あの、さ・・・加護の、ことなんだけど』
 「―――!」


 ふっと、市井ちゃんの表情に真剣味が帯びた。








142 名前:ヒューマニスと 投稿日:2001年12月16日(日)02時40分34秒
というわけで、ようやく更新です >>129-141
長編用なのにも関わらず、しょっちゅう字数制限でひっかかります…(汗

たくさんレスをいただき、つくづく投げ出しちゃいけないなーと思いました。
銀板の方はかなりハイペースで書いてたんですけども。その分こっちが…(ニガワラ
ただ、放棄はしませんので、sageてひっそり進行していきますので。

こんな駄文でも、待っていてくださる方がいることに感謝しつつ、退散します。
>レスくれた皆様、ありがとうございました&本当にごめんなさい!!

  
143 名前:名無し 投稿日:2001年12月16日(日)04時05分53秒
やったー!!更新されてる!
この話大好きなんで、ずっと待ってました。。。

銀板のよしごまってもしかして、あの(略
とにかくどちらも応援してますんで、がんがってください!
144 名前:名無し 投稿日:2001年12月16日(日)04時06分07秒
やったー!!更新されてる!
この話大好きなんで、ずっと待ってました。。。

銀板のよしごまってもしかして、あの(略
とにかくどちらも応援してますんで、がんがってください!
145 名前:名無し 投稿日:2001年12月16日(日)04時08分54秒
あああああ〜!!
二重投降のうえageてるし…
スレ汚し、すみません本当に…厭だ…
146 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月16日(日)05時20分29秒
待ってますよー。
加護ちゃんを救ってください
このままじゃかわいそうすぎる(涙
147 名前:名無し梨華 投稿日:2001年12月17日(月)00時46分00秒
んふふ♪
やっぱりこの作者さんでしたか♪
そーかなーとは思ってました。
「よっすぃ」って書いてるし。

どっちも楽しみにしてます♪
148 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月15日(火)10時31分19秒
更新期待sage
149 名前:ケン 投稿日:2002年01月26日(土)20時26分58秒
この話いいですよ。
感動しました!
がんばってくださいねー。
応援してますよー。
150 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月02日(土)22時42分32秒
150GET!!!!
機体sage
151 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月22日(金)23時48分04秒
がんばって下さい
応援してますよ。
152 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月07日(日)00時43分53秒
待機
153 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月09日(火)13時19分20秒
頑張って下さい
154 名前:kimy 投稿日:2002年04月18日(木)14時43分56秒
頑張って下さい、いつまでも
待っています。
155 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月19日(金)00時03分17秒
いつまでも待っていますよ
ぜひ頑張って下さい!
156 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月25日(木)13時16分58秒
Hozem
157 名前:名無しさん。 投稿日:2002年05月03日(金)13時13分15秒
作者頑張れsage
158 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月06日(月)22時17分33秒
ガムバレ
159 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月06日(月)22時17分45秒
ガムバレ
160 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月11日(土)19時37分17秒
hozen
161 名前:(´ー`●) 投稿日:2002年05月13日(月)06時19分51秒
ガムバッテ! 通して読むとやっぱり涙が・・・(汗
162 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月01日(土)19時11分23秒
保全。
作者さんがんばっておくんなまし。
163 名前:通りすがりの書き人 投稿日:2002年06月24日(月)20時56分43秒
そろそろ保全
164 名前:名無し 投稿日:2002年07月04日(木)18時08分12秒
そろそろ保全
165 名前:隠れファン 投稿日:2002年07月13日(土)07時42分51秒
もう半年以上になるけど、作者さんの「絶対放棄はしない」
という言葉を信じてさらに保全。
166 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月05日(月)01時16分49秒
保全します
167 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月26日(月)20時50分22秒
『メンバーは大丈夫かな。特にあいぼんは私によくくっついてきてたから』
月刊ザ・テレビジョンより引用(ちょっと違うかも)
ってわけで保全。
168 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月16日(月)03時25分04秒
保全
169 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月24日(火)05時31分34秒
あいごまももうあんまり見れないのか…
保全…
170 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月26日(木)10時17分33秒
作者さんはもういないんですか?
171 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月03日(木)10時34分54秒
( ´ Д `)<作者さ〜んいないの〜
172 名前:ななし 投稿日:2002年10月14日(月)21時43分50秒
保全
173 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月27日(日)10時25分12秒
続きが読みたいですーーーー
174 名前:ナナシ 投稿日:2002年11月10日(日)00時23分37秒
保全
175 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月02日(月)16時41分14秒
保全
176 名前:名無し 投稿日:2002年12月19日(木)15時18分08秒
もうダメかな〜
177 名前:隠れファン 投稿日:2002年12月19日(木)20時15分34秒
前回の更新から1年過ぎちゃった。残念だけど
そろそろ許してあげようか?
178 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月22日(日)23時43分32秒
もうちょっと待ってみよう
179 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月31日(火)16時10分26秒
保全
180 名前:隠れファン 投稿日:2002年12月31日(火)23時36分20秒
びっくりした・・・。思いっきりあがってたから
ちょっと期待しちまったぜ!
181 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月11日(土)18時57分51秒
保全レスだけで40ぐらい使うのもすごい気がする
ッてことで 保全
182 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月29日(水)15時42分57秒
なっちの言葉に思わず涙が流れそうでした。
作者さん、戻ってきてください。
  保全
183 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月17日(月)14時05分46秒
保全
184 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月19日(水)23時41分13秒
1年以上に渡って、読者が保全してくれているにもかかわらず、全くレスが無いってのはどういうことだ?
もしかして、作者はもうこの世にいないのか?
185 名前:隠れファン 投稿日:2003年03月02日(日)08時47分30秒
本当に逝っちゃったとか・・・
186 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月21日(金)15時49分27秒
保全
187 名前:名無し 投稿日:2003年04月20日(日)16時07分17秒
保全
188 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月14日(水)11時25分12秒
保全
189 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月19日(月)06時05分40秒
信じて保全
190 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月20日(火)16時01分37秒
あげるなよっ

一瞬心拍数上がっただろ!
191 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月12日(木)02時07分53秒
2001年っていつだっけ?と今思っちまったよ。
192 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月27日(金)02時53分05秒
とりあえず保全
193 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月20日(日)20時40分10秒
無駄な気もするが保全
194 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月10日(日)22時50分04秒
念の為、保全
195 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/10(水) 09:32
まだまだ保全
196 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/11(土) 23:18
一応保全・・・しとこう。
・・・信じて待つしかないのか。
197 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/11(火) 02:25
月一保全
198 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/03(水) 10:56
保全

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