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DOLCE VITA

1 名前:ING 投稿日:2001年08月06日(月)16時43分03秒
吉澤を主に中心とした、学園物です。
色々なカップリングが出てくると思います。
文章が乱雑な部分が多いかと思いますが、
どうぞ宜しくお願いいたします。
2 名前:Lesson1 投稿日:2001年08月06日(月)16時49分00秒
「えー、あんたが好きなのってアイツだったの?」
「・・う、うん・・・」
「やめときなよー、遊んでるって一目でわかるじゃん」
「うん、知ってる・・・でも・・」
「まぁ確かに顔はいいけどさー」

彼女たちの視線の先の人物は長身で、色白の美少女。
・・・金色に近い色のやや長めのショートカット。
耳たぶに光る、3つのピアス。
印象的な、大きな瞳。
それが、梨華の憧れる彼女であった。

「・・・まっ、梨華の気持ち次第だからしゃーないけどさ。頑張んなよ!」
「うん、・・・頑張るんだけど・・」
「そうやって落ち込むからダメなんだってば。じゃっ、あたし先行くからっ」
「・・・あっ!・・もう、あゆみぃ・・」
3 名前:Lesson1 投稿日:2001年08月06日(月)16時55分18秒
――――― どうしてあんなに遊んでるのかなぁ?・・・あの人。
 いつだって、1人でいて。友達っていうのは作ろうとはしないの。
 数学の授業になると、決まって屋上に行って・・タバコを吸う。

・・・・・だけど・・・

 昼休みだけは、彼女は1人ではいなかった。
 彼女だけの、テリトリーのような屋上で毎日違う女の子といるの。

・・・・知ってるよ、あたし。ずっと見てるんだもん。

 時折見せる、髪をかき上げる仕草。タバコ吸う時に顔をしかめるのも、
 目を細めて黒板を見てるのも、冷たい目をしてるけど・・ホントは
 すごく、優しいってこと。・・・全部、知ってるんだよ?

だけど、・・・届かないの。あなたには。
だってあなたは・・色んな女の子から人気があって。
いつだって、どこかしらで誰かがあなたの噂をしてるんだもの。
・・・・あたしなんて、相手にもされない。

視線すら、もらえない・・
4 名前:Lesson1 投稿日:2001年08月06日(月)17時05分29秒
「ねぇ」

ふと、教室の隅から声がする。
けだるげで、少し低めの声。
―――――彼女、だった。

「・・・はっ、はい!何ですか?」
思わず、声が上擦る。
「帰んないの?」
そう言われて、教室を見回してみる。
・・・・教室には、すでに二人だけしかいなかった。

「・・・あ、もう・・帰るけど・・」
「・・ふーん・・・」
床に座っている彼女は、立っている梨華の全身を
上から下へと、ゆっくり視線を移らせていく。
まるで、見定めるかのようにして。

・・・そんなに見られたら・・、緊張するじゃない・・

「・・吉澤さん、は帰らないの?」
「あたしは真希待ってっから」
――――真希、と言うのは彼女の幼なじみの事である。
友達を作らない彼女にとっての、唯一の友達らしき存在・・
梨華は、いや、梨華だけではない。
彼女に思いを寄せる、多くの少女は真希の事が羨ましかった。
彼女はなぜか、真希にだけは心を許しているような素振りを見せるから。
・・・・ただ、そんな気がするから・・・
本命なのかと何度も噂される。

―――――ずるいな、後藤さん・・
5 名前:Lesson1 投稿日:2001年08月06日(月)17時17分18秒
「・・あんたってさー・・、結構カワイイよね」

気がつけば、彼女は目の前にいた。
近すぎて・・ほんの少し、怖い。
綺麗で大きな瞳を、こんなに近くで見たのは初めてで。
何だか、吸い込まれていきそうで・・

「前から目ェつけてたんだけどさ。あんたカタそうだからやめたんだ」
「・・・・え・・あの・・」
カタそう。
見た目は真面目そうに見える梨華。
そんな言葉を、何度聞いたことがあっただろう?
・・あたしだって・・普通なのにな・・

「・・・ん、でも。・・カワイイよ。・・マジに」


二人の距離が、彼女の言葉を境に縮まっていく。
・・・唇が、迫る。・・・・避けられない。
二人の距離は、あと数センチ。

「・・・よ、吉澤さ・・・」

声を遮るかのように、口付けられる。
――――苦い。・・苦い、キスだった。

けれど、いつの間にか目を閉じていた自分。

冷たい。・・・どうして、この人の唇はこんなに冷たいんだろう?

その口づけは、随分と手慣れたもののようで。
舌が、滑り込んでこようとする。
それは、あくまでも自然の行為のように。
6 名前:Lesson1 投稿日:2001年08月06日(月)17時28分17秒
「・・・やっ!ちょっと!」

胸を叩いて、彼女のことを拒否する。
いや、彼女を拒否したのではなかった。
その「行為」と、「唇」を拒否したのだ。

唇を離した途端、彼女はチッと舌打ちをして梨華から視線を外す。

「使えねーの」
「・・え、あ、あの・・ごめんなさ・・あたし・・」
「オコサマは、早く帰んなよ」
ひどく、その言葉に傷付いた。


「ひとみー!お待たせ、帰ろっ」
気まずい雰囲気の中に廊下側の窓から顔を出した人物。
・・・・真希だった。
「おっせーよ、お前」
軽く、視線をそちらに向けながら彼女は吐き捨てるように言う。
「ごめん、日直でさ。・・・・あ、・・邪魔、しちゃった?」
申し訳なさそうに、梨華の顔をひとみの顔を交互に見る。
・・・様子を伺うように。探るように。
「あー、いーって。何もない」
「・・・・」
何もない、わけじゃないでしょ?
・・・どうして、あなたはそんな風に言うの?
後藤さんだから?・・・ねぇ・・

「あー、アンタまた何か変なコトしたんじゃないの?」
「は?」
「ダメだよー、こんな純情少女に」
・・純情・・少女。
違う。
純情少女なんかじゃない。・・・あたしは・・あたし、は・・
7 名前:ING 投稿日:2001年08月06日(月)17時29分47秒
処女作となります。
どうぞ、宜しくお願いいたします。
基本的に、毎日更新でいこうと思っています。
8 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月06日(月)17時59分42秒
たらしのよっすぃ〜がいい感じ!
更新大変でしょうけど頑張ってください!!

一つだけ「・・・」じゃなくて、「…」のが見やすいよ。
9 名前:nanashi 投稿日:2001年08月06日(月)22時23分14秒
つかみばっちりです!
続きがすっごい気になる…
2人のこれからどのようになっていくのかも気になりますけど、
ごっちんの役どころも結構気になるかも…

頑張って下さい〜
10 名前:Lesson 2 投稿日:2001年08月07日(火)10時45分01秒
教室を出て、靴箱へと向かった時。
…何度も、何度も自分の唇を舐めた。
さっきのキスを思い出すかのようにして、確かめる。

煙草の、味。

そんな味だった、ひとみの唇。
「……っ………」
何故か、涙が出てくる。
目の前の靴箱に手をかけて、俯いて涙をこらえる。

好きなのに。
こんなにも好きで。
あのキスが嬉しかったはずなのに…
どうして、拒んでしまったの?

やっぱり、弱虫で1人じゃあたしは‥何にもできないのね。

泣いちゃ負けだって、分かってる。
こんなことであの人を好きになるの絶対にやめたくない。
だって、ずっと目で追っていたんだもの。
まだ、好きなんだもの。

キュッと唇を噛みしめて、前を向く。

絶対に、負けたくなかった。
あたしの恋は始まったばかりなんだから…
11 名前:Lesson 2 投稿日:2001年08月07日(火)10時52分25秒
――――――

「何したの?あの子に」
すっかり日の暮れたいつもの帰り道。
遠くで、どこかの学校のベルの音。
発情期の猫が喉を鳴らしている。
いつもの、道。
そんな中で真希の声が響いた。

「……何もしてない。キスした、だけ」
「ふーん…あーゆうのもタイプなんだ。オールマイティーじゃん」
「…まさか。最も苦手とするタイプ」
「アハッ、だと思った」
低いトーンでのやりとりが続く。
今日はやけに、風の強い日だった。

頬に髪が絡み付く感じが何となく心地よくて、真希はフッと微笑む。

「…じゃー、何で手なんか出したの?面倒くさい事、嫌いなんじゃなかった?」
「………何となく」
髪をかき上げて、ひとみはサラリと言った。
「…変なの」
何となく、なんて。
今までそんなことなかったじゃん。
自分にとって、メリットのある女にしか手を出さない、って…
そうじゃなかったっけ?
12 名前:Lesson 2 投稿日:2001年08月07日(火)11時02分09秒
「やーっぱよくわかんないよ、ひとみの考えること」
ニヤニヤと笑いながら、顔を覗き込む。
そうすると、決まってすぐに視線を反らすひとみ。


「ってゆうかさー……」
「…何?」
ふいに、二人の肩が近付く。
――――違う。
意識的に、「近付けた」のだ。
……ひとみの方から。

「……真希」
グッと、力強く肩を抱き寄せる。
そうして彼女を固定する。
自分の腕から、すり抜けていかないように。

真希の、長い髪が勢いよく揺れた。

「………んっ……」
冷たい。
生暖かい。
――二つの唇が、重なり合った。
求めたのは、ひとみ。

突然のことに目を閉じることもできなかった真希は、顔を歪める。
13 名前:Lesson 2 投稿日:2001年08月07日(火)11時08分29秒
「…また?おとついもしたじゃん」
二人の間の、暗黙の了解の合図に思わず漏れる不満。
「たまってんだよ、最近」
「…どーでもいいけど…、アタシなんかとヤって楽しいわけ?」
―――楽しい?
そう聞かれても、Yesとは言えないかもしれない。

ただ、…一瞬でも心を満たすきっかけが欲しいから。
いつも空っぽの自分の心が、ほんの少し、埋まる気がするだけ。
……それだけ。

「…いーじゃん、気持ちよかったら」
「まー…アタシは別にいいけどさ」
近くにある、駐車場の影へと引き込む。
人通りの少ない路地に、置き捨ててある車。
まして、こんなにも既に暗くなった夜道。
14 名前:Lesson 2 投稿日:2001年08月07日(火)11時52分38秒
「……んっ…はぁっ…」
「言ってる割には感じてんじゃん、自分」
細い指先で、その豊満な胸に触れるだけで甘い声を出す。
「ねぇ」
「……んっ、んっ…」
乱暴に、下着を上へずらされる。
――くい込むワイヤーさえもが、今は感じる。

「ん?どこがイイんだよ?」
「…あっ!はぁ…っん…」
強気な物腰で、真希をなじりながら頂上で自己主張する突起を強く摘む。
あまりにも冷たい、ひとみの手。指先。

首筋に、ゆっくりと舌を這わせていく。
その度に真希の鼻をくすぐる、ひとみの髪の煙草の匂い。
――――分かっては、いる。
こんな興奮しない行為に意味なんてないこと。
だけど……頭を仰け反らせ、髪を乱して感じる真希の姿を見ると、
脳が何かに犯されていくかのように、動きを止められない。

「ひと、み……アタシ……」
ガクガクと震えて止まらない膝。
必死で背後のブロック塀を後ろ手に掴む。
それを、伝えたがっているのか
何度も口を開きかけるものの、その度に刺激されて
………また、ハマっていく……
15 名前:Lesson 2 投稿日:2001年08月07日(火)11時58分29秒
――――「…んっ、んっ…や、ぁっ……ぅはっ!」

溢れ出す蜜を、指で受け止める。
それが、隙間からこぼれていく……
「…もうイッちゃったの?」
「……はぁ…はぁ……」
荒い息を繰り返す真希を、ただ冷めた目で見つめる。
そして、口付ける。

自分の濡れた指先を己の口に運び、それを味わう。

真希は、ひとみのその癖が嫌いだった。
―――――自分の。
それを見るだけで、自己嫌悪に陥るようだった。
その、意味もない行為に。
16 名前:Lesson 2 投稿日:2001年08月07日(火)12時11分30秒
――――
――

「ひとみってさー…」
「ん?」
再び、家路につく二人。
「何で、あたしには意地悪なの?」
「何が?」
「エッチする時」
そうだよ、あたしとする時はいつも意地悪じゃんか。
「別に…フツー」
「ウソ。他の子とする時は絶対違うよ」
「何で?」
「うちのクラスの柴田が言いふらしてたもん。優しい、とかって」
「………あんなの」
ひとみが、少し慌てているように見えて真希は何だかにやけてしまう。
いつも不機嫌で、感情なんて出さないこの人が。

「ぶっちゃけ、何人とヤってるわけ?」
「……真希だけ」
「アハッ、冗談きっつー」
「マジだって」

「じゃぁ……信じとく」

そんなこと、あるはずないけど。
17 名前:Lesson 2 投稿日:2001年08月07日(火)12時19分59秒
「……でも今日、いつもより激しかったね」
「は?」
「ひとみ、いつもと違った」
視線を、真希の方へ向ける。
それを否定するように。
「………ね」
「…んなことないよ」


――――――嘘だ。
あたし、分かってる。
何で今日、激しかったのか。…分かるよ。
多分、ひとみは自分で気付いてないだろう。
…けどあたしは、分かる。
ひとみは……きっと、ひとみは………


「何ボーっとしてんの」
「あ、ううん!別に、何もないよっ」
「………変なヤツ」
そう呟いて、フって笑ってくれた。

その顔が、好きなの。
ねぇ、ひとみ…
もっと笑ってよ。
アタシじゃ、ダメなの?
笑ってよ、ねぇ。

――好き。

あたしは、ひとみのことがずっと好き。
幼なじみなんて立場を使って、卑怯だってわかってる。
ひとみを好きな他の女の子よりずっとずるいって。
だけど、やめられない。

何気ない一言。仕草。あたしを呼ぶ声。
強がってるけど、ホントは…優しいこと、知ってる。
いつだって、モテまくりで何股もかけてるひとみ。

………追いつきたくて。
並んで、歩きたくて……
18 名前:ING 投稿日:2001年08月07日(火)12時25分46秒
>>8  アドバイス、有り難うございます。
   確かに、…の方が読みやすいですね(w
   とにかく、吉澤を極力黒く黒く頑張っております。
   更新頑張りますので、宜しくお願いいたします。

>>9  そう言って頂けると、すごい嬉しいです。有り難うございます。
   ごっちんの役どころはちょっと微妙ですよね(w  
   そして、ちょっと辛い感じになってしまうかもしれません。
   今後も宜しくお願いいたします。
19 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月07日(火)12時29分58秒
すごいおもしろいです!!
続き期待してます。
20 名前:8 投稿日:2001年08月07日(火)14時20分35秒
なんか余計なこと言っちゃってすいません。
でも読みやすくなりましたね(w
黒いよっすぃ〜…
一体何人とやってんだ!?
続き期待!(w
21 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月07日(火)23時21分47秒
ごっちん…せつねえ(泣)
22 名前:Lesson3 投稿日:2001年08月08日(水)22時19分13秒
「……んっ…」
ゆっくりと、ベッドの上で寝返りを打つ。
一糸まとわぬ姿で寝ている彼女にとって、この瞬間は至福の時。

―――――ひとみの朝は、遅い。

「お嬢様…お嬢様…、もう1限目が始まる時間でございますけれど…」
「………わかってるよ、うっせーな…」
「そう申されましてももう、お時間が…どうぞ、早く…」
ブチッ!
繋がれた内線電話をコードごと引っこ抜く。

1限なんかかったるくて出てられねーっつーの…
大体、うっせーんだよ。
仕事もろくにしない、バカ程いるただの家政婦のくせに。
「……あー…、けったくそわりー…」

だだっ広い部屋の中。
数十人と雇う、家政婦の声がこんな所まで聞こえてくる。
―――窓を開けると、眩しい程の光。
今日ってこんな晴れてんだー…
目を細め、ぼんやりと空を見上げる。
些細なことに少しだけ、感動。

「失礼いたします」
「……っもー…わーかったって、起きてるから…」
「おはようございます、ひとみお嬢様」
「…………あ、…はよ…」
23 名前:Lesson3 投稿日:2001年08月08日(水)22時53分23秒
彼女を見るのには、少し視線を下げることが必要。

部屋に入ってきた彼女は―――新入りの家政婦、真里だった。
真里は、ひとみの会社の取引先の令嬢だったものの、
近年の不景気で会社が倒産し、一家は路頭に迷いかけたのである。
そこで、情にもろい性格のひとみの父親が真里を家政婦として
迎え入れたのである。

「今朝はいかがですか?体調は…」
「…敬語使わなくていいよ、別に」
「……そういう訳には…」
「…いーじゃん、ヤってる仲なんだし」

真里の頬が赤くなる。
「あれー、黙っちゃうの?」
にやけた顔で、真里の顔を覗き込む。
「せ、制服と朝食置いときますんで」
なるべく、ひとみと視線を合わさないように
その場から離れようとする。
―――こんな関係、口にされるなんて。
24 名前:Lesson3 投稿日:2001年08月08日(水)23時11分01秒
「真里―――」
それを、引き止めるようにして愛しそうに名を呼ぶ。
それが一つの作戦。
後ろから抱きしめて、ベッドに引き込む。

「…もう、やめっ……」
「……いーから」
乱暴に唇を奪ってみる。

「………しよ」

耳元で、低い声で呟く。
「……ダメッ、です!あたし、仕事中…」
「いーからさ、そんなの」
白いレースのエプロンの紐を手際よく解く。
ワンピースの胸元の、3つのボタン。
それさえ開ければ、こっちのものだった。

「……ぁんっ、もう!ダメです!!学校でしょっ!?」
乱れた服装を直しながら、真里はちょっとばかり強気な口調で言った。
そう言った瞬間。上体を起こした、瞬間だった。

ひとみの目が、一瞬にして変わる。

「………ふーん、いいんだ…あたしにそんな口聞いて」
「え、あの…」
「いいの?あたし、ここの主人なんだよ?」
「それは、そうですけど…でも」
「ねぇ、逆らっていいわけ?」
「ごめ、ん…なさい……」

「クビにされたら困るんでしょ?……ほら、言うこと聞きなよ‥」
25 名前:ラークマイルドソフト 投稿日:2001年08月09日(木)04時03分14秒
黒よしに弄ばれるヤグたんハァハァ…
26 名前:Lesson4 投稿日:2001年08月09日(木)23時06分18秒
着ているワンピースの上から、その胸の部分を鷲掴みにする。

「……痛っ…」
歪む、真里の顔。
「アンタ、これ…」
明らかに彼女の胸にはガードというものがなかった。
一枚の布を隔てて、中はすぐに……
「ふーん…ノーブラなんだ」

一瞬驚いたものの、動じないといった様子で再びそれを揉みしだく。
「硬くなってきてんじゃん、ねぇ…」
「…っん‥やっ、はぁ‥」
「コレ」
「ひゃぁっん!…やっ、んぅ…」
硬くなったソレを、強く摘む。
ワンピースのそこだけが尖った、妙な嫌らしさだった。

「この硬いの、何?…ねぇ、感じてんでしょ?」

体は、その指使いに正直だった。
けれど、身体の下のシーツを握りしめて耐える。
――――攻撃に、忠実になっちゃダメっ…!
なるべく、神経をそれだけに集中させないように。
あとは、自分の理性との戦い。

「…どっ、して‥こんな、ことっ…!」
涙混じりの声で、訴えかける。
自分の「ご主人サマ」に。
「……どうしてかって?‥」
ゆっくり、頷く。

「真里が可愛いからに決まってんじゃん‥」

耳元で囁かれて、また赤くなる自分。
嘘。そうやって、色んな女の子に悪戯してるんでしょ?
27 名前:Lesson4 投稿日:2001年08月09日(木)23時28分23秒
「…あの、アタシのこと…、スキなんですか?」
初めて、抱かれた夜だった。
アタシはそう尋ねた。
すると、あなたはゆっくりと視線をアタシに向けて。

「……スキだよ」

って、耳元で囁いた。
瞬間にアタシは悔しい程、あなたにハマってく気がしてた。

こんなことされるの、わかってる。
わかってるのに、アタシはあなたを起こしたくてたまらない。
毎朝、部屋に向かう長い廊下を歩くのがドキドキして。
これだけはアタシだけの特権って思うと、すごく嬉しくて。

―――――
――

「ねぇ‥っんっ…」
「ん?」
「アタシ、の‥コト‥好きぃっ‥?」
指が、自分の中に埋め込まれていくのがわかった。
痛い。痛いけれど、何かがこみ上げてくる。
それがわかるから切ない。

低い声で、囁く。
いとも簡単に、好きと言う言葉を。

「真里が起こしてくれる時が、一番シアワセ」
そう言って、柔らかく微笑む。
ずるいよ。
あたしの、ご主人サマ。
こんなにハマっちゃった、よ?
一番幸せなんて、嘘に決まってる。
信じるアタシはバカになるんでしょ?
ひどいよ。


「……嘘、つきぃっ‥!」
指を突き上げられた瞬間に―――小さく、呟いた。
28 名前:Lesson4 投稿日:2001年08月09日(木)23時36分32秒
――――――

「行ってらっしゃいませ」

5人ほどの家政婦に頭を下げられて、家を後にする。
………やっぱ、朝からは疲れる。
体がだるいのを感じながらも、きちんと学校に向かう。
それは、一つ確認したいことがあったから。

ふと、腕の時計に目をやるとすでに11時を回っていた。
「……3限、ぐらいか」
口に出してそう呟く。


あいつ―――今日、来てっかな。
あたしのこと、怯えた目で。軽蔑するような目で見やがった。
さっきまであたしの噂をしてたくせに。
笑うとあんなに可愛いのに。
何であたしには笑顔を見せてくれないんだよ。

「……けっ…」
女に、拒まれたことなんてなかった。
このあたしが。初めて拒まれるなんてことされた。

あいつは、あたしのことを絶対に好きだって確信していたのに。
どうして行動の移すと怖がるんだよ。
女って、よくわからん。
自分も女だけど、自分のことだって理解できない。

けど、あたしが今一番理解できない女=――――石川、梨華。
29 名前:Lesson4 投稿日:2001年08月09日(木)23時41分03秒
「あら、おはよう。吉澤さん」
わざとらしく、声を明るくした教師の声。
教室に入ると一気に視線が自分へと注がれる。
この瞬間が、一番キライ。

列の最後尾の窓側。
そこが自分の席だった。
「おはよ」
鞄をかけようとすると、待っていたかのように
隣の席のやつが微笑む。何を思って、こんな笑ってんだろ。
それを疑問に感じつつ、軽く頭を下げた。

席について、最初に視線を移らせる。
あたしより二つ斜め前。
姿勢を正して、まっすぐに黒板を見つめている。

あいつは、ちゃんと来ていた。
30 名前:ING 投稿日:2001年08月09日(木)23時49分44秒
>>19 そう言って頂けると、本当に嬉しいです。有り難うございます!

>>20 いえいえ、そんなことありません!アドバイスを頂けるのは
   とても有り難いですし、勉強にもなりますので…
   よっすぃーは一体何人とやってんでしょうか?(w
   それは、作者にすらわかりません(w

>>21 そうですねー、ごっちんはちょい寂しい役所かも(w
   でも自分はごまも好きなんで、幸せにしますよ、絶対に!(w

>>25 ヤグは今回家政婦なんですよね(w
   思う存分、ハァハァして下さい(wこんな駄文ですが…

今回は、Lesson5もまとめて更新しておきます。
もし、読んでおられる方がいらっしゃればまた感想お願いします。
こんな作者は、実はヤグと加護、ちゃむヲタ(w
31 名前:Lesson5 投稿日:2001年08月09日(木)23時56分30秒
「……げっ‥」
思わず、声を漏らす。
周りが騒がしい休み時間。
ふとポケットに手をやると、あるはずのタバコ。
それが、箱は空であった。
取り出してみても、やはり空は空であった。
「っ!」
軽く舌打ちをして、その箱を片手でグシャリと握りつぶす。

タバコがない。
一番、苛立ちを感じる事態である。
妙なところでガキなのが、ひとみである。

真希にでももらうか――
そう思いつき、席を立ち上がる。
吸わないくせに、何故かタバコを常時持っている真希。
何であいつ持ってんだ?
そう、疑問に思ったことはあって。
聞いてはみたものの、本人曰く「そんなの言えな〜い!」
だそうだ。
32 名前:Lesson5 投稿日:2001年08月10日(金)00時03分41秒
「吉澤さん」

立ち上がった瞬間に、背後から声をかけられる。
独特の、鼻にかかっような甘くて高い声。

あいつだ。

直感で、そう悟った。
立ち止まって、一応は答えておく。
「……D組」
「ふーん、何しに行くの?」
「………は?アンタに関係ねーじゃん」
「ま、それはそうなんだけどね」

今日のこいつは、随分と強気なようだった。
いつもビクビクして、おどおどして。
あたしと接することすらなかった奴なのに、何故か。
「ね、今日…お昼一緒しない?」
突然の、誘い。

昼の誘いなんて、絶えないひとみにとっては
ただの誘いの一つ。
けれど、今日の誘いは何だか違う気がした。
自分の中で、何かが動き始めている。
歯車の向きが変わっているようで。

「……別に、いいけど」
「ほんと!?じゃあ、屋上で待ってるねっ」

弾んだ声。
待ってる、という声が、
昼まで、ひとみの耳にこびり付いて。
離れなかった。
33 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月10日(金)00時25分48秒
めちゃおもしろいです!!
続き期待して待ってます。
34 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2001年08月10日(金)00時30分09秒
たまらなくイイ小説ですね
石川が吉澤を変えていく…なんてことに?
35 名前:ラークマイルドソフト 投稿日:2001年08月10日(金)02時44分38秒
いや〜イイ感ズですね〜!
36 名前:Lesson6 投稿日:2001年08月10日(金)22時35分58秒
「――真希、呼んでくんない?」
入り口付近の席に座っていた少女に、声をかける。
ドアの上側には「1‐D」の札が。
声をかけられた少女は、何故だかちょっと驚いた様子で。
ひとみの姿を見るなり見る見るうちに頬を赤くした。
そして、答える。明らかに嬉しさを含んだ声で。
「後藤さんなら、その真ん中の席にいるからっ」

少し、首を伸ばして教室を見回す。
真ん中の席。
――――いた。
机に突っ伏して、眠ってる奴が。


「真希」
呟くような声で呼んでも、図太い彼女は目覚めない。
「おい、真希ってば」
けど、愛しい人の声ならば…

いつだって、目覚められるよ?

「ひとみ‥」
その姿を見て、真希はだらしなくフニャっと笑った。
「何て顔してんだよ、お前」
微笑しながら、額を小突く。
「…ひとみが来ると周りがうるさいんだよねー‥ホラ」
――――そういえば、何となく視線がこちらへ集中しているような気がする。

「外、出る?」
Noとは、言わせない。
そんな表情で、ドアの方を指さす。
行く場所は、もちろん。
ひとみのテリトリーの、屋上。

37 名前:Lesson6 投稿日:2001年08月10日(金)22時57分51秒
ドアを開けると同時に、柵の所まで走って身を乗り出す、真希。
目を閉じて、髪が流れに吹かれているのに心地よさを感じる。
遅れて、ひとみもそこに並んで立つ。

「で。…何だったの、用は」
「タバコ」
「え?」
「タバコ、ちょーだい」
平然としたように言う。

だけどそれも、もうすでに慣れたこと。
別に真希は、戸惑ったりも怒ったりもしない。
「…どーせ、そんなことだろうと思ったよ」

半分あきらめたように、ポケットから箱を取り出す。
そして片手で、ひとみの方へそれを向ける。
「サンキュ」
箱を見て、微笑んでお礼を言ってくれる。
だけどそれはあたしに対しての微笑みって言うより
タバコが手に入ったことの、微笑み。
虚しさなんて、何度感じたか分からない。


トントン、と箱の上で一本取り出したそれを叩いてから火を付ける。
「……っはー…」
それから、大きく一つため息。
立ち上ってく煙に、顔をしかめる。


「ね…今日、朝からしてきたでしょ」
勝ち誇ったような真希の笑み。

「は?」
「髪」
「……え?」
「髪、女の匂いがする」
38 名前:Lesson6 投稿日:2001年08月10日(金)23時08分25秒
「今日の朝の相手、誰よ?」
「……いーじゃんか、誰でも」
遠くを見つめて、吐き捨てるように言う。

「ねー…いつになったら、やめるの?」
「何が?」
「こういう、こと」
さっきまで横顔を真っ直ぐに見つめていたけれど、
少しバツが悪そうに、視線を自分も遠くへとスライドさせる。
「…こういうことって?」
「何人もの女と、することじゃん」
「別に…真希に関係ないじゃん」
鼻で笑って、サラッと受け流す。
それが、たまらなくイヤ。

アタシは―――いつも、ひとみのことをわかってる人間でいたい。
ひとみの気持ちとか、考えてることとか、理解していたい。
関係ない、なんて。関係ないなんて、一番言われたくない…

けど。
やっぱり、
ひとみの一番のスキが、誰よりも欲しい。

「ワガママ、言ってもいい?」
「うん?」

「ひとみ」
「あ?」
「……もう、アタシ以外の人のこと見ちゃ、イヤ」

「何?」
「見ちゃ、やだよ」
39 名前:Lesson6 投稿日:2001年08月10日(金)23時19分18秒
「は?――何言ってんの?何であんたに指図されなきゃなんないわけ?」
視線を真希へと戻す。
あまりにも、冷たい視線。
自分のテリトリーに入ってくるな、と言わんばかりの。
そして、何て鋭い。

どうして?――――どうして、そんな目をするの?


「……なっ、なーんて、ねっ。ちょっと言ってみただけ」
声が震えてる。
怖かった。
ひとみの目に真っ直ぐに追いつめられるのが。
あんな、冷たい目に。
「何だよ。しょうもない冗談言うなよ、お前」
ほんのちょっと、笑って。
ひとみの目は、いつもの色に戻った気がした。

「ね、…きょっ、今日さ。お昼…一緒しない?」
少しぎこちない誘いだったかもしれない。
だけど、イヤだったんだ。
こんなイヤなひとみ、覚えておくのが。
怖いんだよ。
自分の中に、何度も蘇ってきそうで。
早く、―――早く、消してしまいたいの。
あたしの中に刻み込まれてしまう前に。
埋め込んでしまいたいの、さっきのひとみを全部。

だから、もう少し………一緒にいたい。


40 名前:Lesson6 投稿日:2001年08月10日(金)23時36分54秒
「あー…、今日はダメ」
あいにく今日の昼は、先約が。
「誰かと、食べるの?」
軽く頷く。
隣から真希の視線を感じながら。

「誰と?」
「―――石川」
「石川さん、って昨日の…」
……………やだ!
やだよ、ダメ。
石川さんは、ダメだよ。
だって、ひとみは―――

「ね、お願い!…断ってくんない?アタシ、ひとみに相談があるのっ」
「相談?」
「うん、すごい重要な悩みなんだよねー‥、ねっ、お願いっ!」
「お願い、って言われても…」
懇願するような眼差しで見つめられる。
「帰る時、聞きゃいーじゃん」
「今っ、今がいいの。今じゃなきゃ、ダメなのっ」


「―――何だよ、妬いてんのか?……ん?」
そう言って、必死で訴える真希の肩をいつものように抱き寄せる。
唇を寄せて耳元でグッと、低くそう囁いて。
「違っ、違うよ」
「素直に言えばいーじゃん、ホラ」
「ほんとに…違う、だから、お昼‥」


「………んっ!」
唇が、ぶつかり合う。

「まだ言う?」
「……ダメ、お昼ぅ…」

ダメなの、石川さんは。
石川さんとだけは、二人にならないでよ。
ねぇ、お願い……
41 名前:Lesson6 投稿日:2001年08月11日(土)00時05分27秒
「……お願い…」
3度目のキスを終えても、
彼女の「お願い」は途切れることがない。


「―――あたしがしつこい女キライなの、知ってんだろ?」

唇をギュッと噛みしめて、目を潤ませて。
ひとみの頬に触れながらゆっくり頷く。
父親に諭される小さな幼児のように。

頷いた、瞬間。
4限終了のベルが鳴る。

「あたし、ここで待ち合わせだから」
頬に触れていた指が、ビクッと震える。
それは無意識に。

ここから、出て行け。

そう言わんばかりの視線を、アタシへ向けた。
邪魔者を排除するかのように。

「わかった、じゃ行く。…帰りね」
「ん」


振り返った途端に、涙が溢れる。
走って、階段へ向かう。
声を出さないように、音を立てないように。

泣かないで―――泣かないでもいいじゃん、アタシ。
別に嫌われたわけじゃない。
何も不安に思わなくたって、別に変わんない。
気ままで、面倒くさいことがない関係。
そのままなだけじゃん。

「………ひっ、とみぃっ‥」

その場に、思わずしゃがみ込む。
心を、閉ざさないで。
そんな冷たい目しないで。


あたし以外に…大切な人を、作らないで―――

42 名前:ING 投稿日:2001年08月11日(土)00時10分21秒
章によって長さがものすごく違うのは気のせいです(w
字数制限、512文字はキツイ……(涙

>>33 そう言って頂けると、ほんと嬉しいです!有り難うございます!
   頑張って更新していくつもりなので、これからも宜しくお願いします。

>>34 有り難うございます、嬉しいです!そうですねー、石川は…
   いい仕事してもらいますよ、多分…(w

>>35 有り難うございます、そう言ってもらえるのがほんと何よりです。
   これからも、宜しくお願いいたします!

43 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月11日(土)09時46分36秒
よっすぃ…ひどい…でもうらやますぃ〜(w
ごっちん…せつねぇ〜(泣)
44 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)10時30分20秒
やべえ…泣けてきた・…。
ごっちん…
45 名前:ラークマイルドソフト 投稿日:2001年08月12日(日)03時22分02秒
たまにはこういうゴチーンもいいですね〜!いや…うん…いいわ〜!

46 名前:Lesson7 投稿日:2001年08月12日(日)21時04分47秒
真希の背中を見送った後、更にもう一本。
煙草を取り出して、火を付ける。

何か、様子が変なのは気付いていた。
―――だけど、気付かない振りをしたのは
相手が、真希だったから。
それが何よりの理由だった。


「ひとみちゃんっ!」
―――は?……ひとみちゃん、だぁ?

振り返ると、眩しいほどの笑顔。
陽に透ける茶色がかった髪と擽ったそうに向ける視線。
「…………あ、あぁ…」
「ごめんね、待たせちゃって。早く食べよっ!」

何だ、この女。

最初は、そう感じた。
妙にテンションが高くて
自分の話ばっかして。
妙に自分に媚びる。
何度か歯がゆい気持ちがした。

―――ケド。
何となく、見てておもろい。

そう感じる。
47 名前:Lesson7 投稿日:2001年08月12日(日)21時27分15秒
終始、ひとみは梨華の話には耳を傾けながらも頷く事しかできなかった。
ただ今までの女と、少しだけ違うのは表情があること―――
そんな中、永遠に続くように思われた昼休みの終わりの鐘が鳴る。

「―――あ、チャイム鳴っちゃったね…行かなきゃ」
話に夢中になっていた梨華は、急に思いついたように散らばった
弁当箱の蓋や、箸箱などを片づけ始める。

そうして。

「それじゃ、あたしは行くけど」
ハンカチでしっかりと、片付けたそれを結びながら
視線を合わせないままに梨華は言った。
「……あたしは、もう少しここいる」
「………そう?わかった」
若干、言葉を返すまでに「間」があった。

「それじゃ、ね。ひとみちゃん」


「――――――んっ…!」
突然の衝撃。
柔らかくて、甘いそれがひとみの唇にぶつかる。
弾力のある独特の感触。

「ちょっ、あんた…」
「それじゃっ!」

――――何だよ、何なんだよ。
相手の女から、先に奪われるなんてこと…
今まで一度だってなかった。

正直、戸惑った。
アイツといる時の自分は、おかしい。
どうしても、ペースが狂わされるんだ。


アイツと、いる時は――――
48 名前:Lesson7 投稿日:2001年08月12日(日)21時34分11秒
やっちゃった、やっちゃったよ―――あたし。

あんな事しちゃっても、良かったのかな?
1人であんなにいっぱい喋っちゃって良かったのかな?

ホントは、すっごく。すっごく、緊張して。
声が震えそうなのを必死で堪えてたの。
少なくとも、もう絶対「オコサマ」なんて
言わせないの。「使えない」なんて…
絶対に思って欲しくないし、言って欲しくもない。

だから、頑張った。
いっぱい喋った。
最後にキスをした。

あたしを、あの人の手の中に入れて貰うために―――

そんなことばかり、考えていたから。
あっと言う間に5限の授業は過ぎてしまっていた。
あたしとしたことが。板書したものも何も写してない。
上の空になっちゃって。

慌てて、ノートを広げた…
その時だった。
49 名前:Lesson7 投稿日:2001年08月12日(日)21時49分16秒
「梨華っち〜!呼んでるよー」

ふと、ドア側の生徒から自分を呼ぶ声がかかる。
何気なく視線をそちらへ送ると―――
立っていたのは、自分が……憧れて止まなかった存在。
羨ましくて、何度も嫉妬した彼女。

真希だった。
その姿を見て、小走りで戸口へと向かう。

「……ごめんね、いきなり来ちゃって」
「う、ううん‥そんなこと」
「っていうか、喋るの…初めてだし」
ひきつった笑いをしているのを、梨華は見逃さなかった。
違う。いつもの、この人の笑顔はもっと――
もっと、溌剌としてて。本当に嬉しそうに笑う。どうして…?

「今日、さ。…ひとみと昼食べたんでしょ?」
「あ、うん…そうだけど……」
何だか悪いことをしているようで、遠慮がちに答える。
先ほどから真希は、一切梨華とは視線を合わせないまま。
「単刀直入に聞くんだけど…」
「うん、…何?」

「――――ひとみのこと、好きなの?」
50 名前:Lesson7 投稿日:2001年08月12日(日)22時21分18秒
視線を泳がせる。
自分の脳内に、いくつもの答えが浮かんでくる。

好き、微妙、分からない、好きじゃない、気になるだけ……

「あの、…あたし、は…」
口ごもっていると、次の瞬間に視線に気付く。
さっきまで遠くを見ていた筈の真希が、
まっすぐに自分を見ていることに。

「い、今は……わからなくて、その…何て言うか…」

「何だ」
「―――え?」
「好きじゃないんじゃん」
「違、好きじゃないってわけじゃなくて…あの、」
うまく言葉が出てこない。
嘘なのに。
本当は、気になって気になって仕方なくて。
毎夜、その思いに胸が痛くなる。
そんな―――ありふれた恋心を抱いているくせに。

「良かった、安心したよ」
「待って、そんな一方的に…」
安堵の表情を浮かべる真希に、梨華は些か不安を覚える。
いつの間にか、手が真希を引き止めるような仕草を取っている。

「だって、言えないんでしょ」

強い物腰。
呆れたような目線。
「言えないんでしょ、ひとみを好きって」
言えない、…一番弱い所を2回も繰り返して言われる。

「そんな、あたし…言えない訳じゃない」
持ち前の負けず嫌いさ。
それが、自ずから殻を破って出てこようとする。
51 名前:Lesson7 投稿日:2001年08月12日(日)22時46分37秒
「とにかく。アタシは、堂々と好きって言えない人なんかヤだから」
イヤ?
………何に対して?


「あんたなんか、ひとみを好きになる資格ない」

――――好きになる、資格がない。
資格?
好きになるのに、資格なんているの?
理由さえ、いらないじゃない。
好きになるのなんて。

「そんなっ!そんなこと言われたって…あたし、やめないんだからっ!」
去っていこうとする真希に、必死で抵抗を試みる。
いつの間にか、拳を作っている自分。

だって。
もっと、好きになるって決めたから。
それに…「ひとみちゃん」以外に
好き、なんて言葉を宣言したくはなかったの。

「あたしは認めないからー」
そんな梨華の言葉すら受け流して、気のない返事をする真希。

―――――戦いが、始まる。
そんな気がしてならなかった。
密やかに何かが足音を忍ばせて…近付いてくるようで。
52 名前:ING 投稿日:2001年08月12日(日)22時51分24秒
>>43 >>44 ごっちんねー…切ないけれど、単純なのが彼女です(w
   もうすでにこの章では立ち直ってるし(w
>>45 そう言って頂けると嬉しいです〜。なるべく新鮮なごっちんを・・(w

MUSIX!見ながらやってたら、投稿時間にものすごい差が・・(w

53 名前:ラークマイルドソフト 投稿日:2001年08月13日(月)01時02分35秒
愛しいよっすぃ〜はお昼御飯何食べたんだろう〜?
54 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月14日(火)13時54分44秒
>>53
梨華ちゃぁ〜ん(w

55 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月23日(木)23時32分47秒
期待して待ってるっす・・・
56 名前:パク@紹介人 投稿日:2001年08月27日(月)05時36分55秒
こちらの小説を「小説紹介スレ@金板」↓に紹介します。
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=gold&thp=994402589&ls=25
57 名前:Lesson8 投稿日:2001年08月27日(月)15時31分38秒
「…はぁ!?」
家に帰って、開口一番。
今日は何度この一言を口にしたことだろう。

「だから、お願い!…お姉ちゃんっ!!」


―――――
―――
――

いつもは、自分に対してだけはすごく反抗的な亜弥。
「あたしは、お姉ちゃんのことは好きになれないと思う」
………そう言われた事を思い出す。

父の、浮気相手の子供。
その母親が、亜弥が12歳の時他界して。
それ以来、彼女は家に住み着いたのだ。
実際、浮気相手の子供と言えども楽天的で遊び好きな
ひとみの母親は、亜弥の事を気に入っていた。

真面目で、女らしくて。
今時珍しい、日本の正しい中学生みたいなタイプ。
品行方正でいつも成績も良く、愛想も良い。
この家に住んでから、すっかり娘という居場所をひとみから奪った。
揃って夕食をする時はいつも微笑みながら両親に話しかけ、笑わせて。

だから、だ。
だからひとみのことを嫌うのだ。
間違った生き方。
いい加減な人。
楽な方にばかり逃げてる。

あの人は……最低。

ずるいんだ。
私なんかよりずっと楽をして。

いつしか、そんな思いばかりが植えついて
亜弥は、ひとみには冷たい態度をとるようになったのだ。
それは……両親の前、以外の場所で。
58 名前:Lesson8 投稿日:2001年08月27日(月)15時38分14秒
どうしてあたしが。

……当時のひとみは、何度もそう感じていた。
本当なら、邪魔者になる存在は亜弥のはずなのに。
何故か、家庭の中ではいつの間にか自分だけが―――
異物のようで、邪魔者のようで。

父親は、亜弥のことばかり可愛がる。
母親だって、ひとみの姿を見れば小言ばかり。

あたしは、何も悪いことはしていない。
外見こそ不良っぽいものの、ひとみは成績はトップクラス。
通っている高校だって両親の指図するままの、名門。
何も文句なんて言われる筋合いはない。
―――だから、こんな風に遊んでも何も言われないはずなのに。



そんな、亜弥からの突然の「お願い」
59 名前:Lesson8 投稿日:2001年08月27日(月)15時53分36秒
「だからね、あたしを大人にして欲しいの」
膝より少し下ぐらいのスカートの丈のセーラー服。
黒いセミロングの髪。どこからどう見ても…真面目なお嬢さん。

「ってゆうか…珍しいじゃん、あんたがあたしにお願いするなんて」
半分、戸惑いを隠せないながらも苦笑いをしてひとみはそう言う。
「ホントは、お姉ちゃんにはあまり頼みたくなかったんだけど…」
唇を噛みしめる。

「あたし、こんなに真剣に人を好きになったのって初めてなの」
亜弥の、意中の相手。
それは……ひとみが一番よく知っている彼女。
――――真希。

窓から見つめていた。
いつもいつも、嬉しそうに笑顔を浮かべるあの人を。

気に入らなかったことは一つだけ―――
あたしが嫌いな「お姉ちゃん」が隣にいること。
一生懸命考えた。どうして、あんな奴といつも一緒にいてあげてるのか。
それに、「お姉ちゃん」に向けるあの視線。
時折、切なそうに。そして、優しそうに。
心の底から嬉しそうに浮かべる、笑顔。

あたしが、この人と違ってあの人が惹かれる理由。
それは、この人の外見でしかない。

きっと、真希さんは―――不良っぽい人が好きなはず!

そんな、少女のささやかな想い。
初めての恋。
少しでも、あの人に近付きたいって。

視線に写るだけでもいい。
だけどそれは……もう少し、可愛くなってから。
60 名前:Lesson8 投稿日:2001年08月27日(月)16時03分47秒
「真希、さんって―――どんな人なの?」
着ている制服を、亜弥の前でも少しのためらいもなしに脱ぎ捨てるひとみ。
下着姿になった自分の姉を見て、決まり悪そうに亜弥は視線を反らす。
「……真希?」

怪訝そうな顔で、俯く亜弥に視線を向ける。
「いつも一緒に帰ってる人。……幼なじみなんでしょ?」
「何であんたがそんなこと知ってんだよ」
「真里ちゃんに、聞いたの」
ひとみの頭の中に今朝の真里の姿がよぎる。

「ねぇ、お願い!お姉ちゃん……あの人、紹介して?」

いつもは、冷たい態度しかとらない亜弥。
それが自分にお願いしている。
しかも……好きな相手は、自分の手の中の人物。

ひとみの頭の中に、一つの考えが浮かぶ。
こいつに敗北感を感じた、過去の自分。
―――あたしは、それを忘れた事なんて一度もない。

本当の娘という事実を、踏みにじられたような屈辱。
どれだけ、家庭内で居心地が悪くなったか。


こいつのせいで。


「――――別に、いいよ」

口の端だけを上げて、ひとみは微笑んで呟いた。
61 名前:Lesson9 投稿日:2001年08月27日(月)16時17分45秒
「ほんとっ!?」
パッと表情を明るくさせて、亜弥は顔を上げる。
「ん、約束取り付けるよ」
「………嬉しい」
呟いたのは、あまりの嬉しさに絶えきれなかった自分を隠しておくため。
こんな姉に自分の、はしゃぐ姿なんて見られたくない。
本当は、座っているベッドで転げ回りたいほど嬉しいのに。

ひとみは、下着姿のままで自分の鞄から携帯を取り出す。
メモリーから出したのは、勿論真希の名前。


「もしもし、……真希?」
珍しく、ひとみはすぐに事を行動に起こした。
いつもは口では言うものの、実行なんて結局しないことが多いはずなのに。
それが――――ひとみの考えの全てを物語っている。

亜弥はそれを勘づくほど、大人ではない。

「今度の日曜。――家来ていいってさ」
「家に、…行くの」
家に行けるなんて。
家に行けるなんて。
会えるだけでも嬉しいのに……
あの人の私生活を見ることが出来る。

大嫌いな人が一緒だけど、たまらなく嬉しい。
62 名前:ING 投稿日:2001年08月27日(月)16時30分58秒
>>53 >>54 自分もお昼御飯気になるな〜(w

>>55 お待たせして申し訳ありませんでした!これからも頑張ります。

>>56 こんなので良ければ、いくらでも紹介して下さい(w

松浦、初登場です(w
かなりイヤな奴っぽいですが、強烈な吉澤の復讐が・・
あと、新メンも登場させるかも知れない。
でも何か年が若すぎて出しにくいんだよな〜・・
63 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月27日(月)22時51分01秒
>>62
待っておりましたよ〜!更新されてて凄くうれしいです!!
黒よしの今後の行動が非情に気になるっす(w
64 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月28日(火)02時16分28秒
更新待ってました。
よっすいー怖いね(w
あやごまってのも新鮮で萌え。
65 名前:Lesson9 投稿日:2001年08月28日(火)12時20分18秒
ひとみの家からは、割と近い真希の家。
正味、歩いて5分程度だ。
ラフな格好でろくに化粧もしないままのひとみとは対照的に、
一方の亜弥はバリバリに気合いの入った格好。
昨日開けたばっかりのピアスの穴。
メイクだって、覚え立てだけど一生懸命に仕上げた。

「きっと、今日の私なら大丈夫…」

鏡の前で目を閉じて、三回そう唱えるのが亜弥の癖。
気合いを入れるときはいつだってそう。
そうすれば、いつものように勇気が湧いてくるから…


――――

「あ、いらっしゃーい」
インターホンを鳴らして、まもなく真希がドアの前まで迎えてくる。
もう緊張して緊張して心臓がおかしくなっちゃいそう。
いつも見ているだけだったあの人と…言葉を交わすことができるんだから。

「これ、……妹」

ひとみは、隣で立っている亜弥に視線を向けて真希にそう紹介した。
「はっ、初めまして!…松浦、亜弥です!!」
真希はそんな亜弥に優しく視線を向けた。
――――ひとみの、妹。

ひとみを、こんな風にした張本人。
ひとみの居場所を奪った子。
ひとみの…妹?


あたしが、あんたを好きになれると思う―――?
こんなにひとみが大事なあたしが。
66 名前:Lesson9 投稿日:2001年08月28日(火)12時38分44秒
真希の家に入れてもらい、真希の部屋で真希のティーカップで
真希の入れてくれた紅茶を飲んで、真希と一緒に話をしている――
何て幸せなんだろ。
今まで見ていただけのあの人とこんなに進展があるなんて!
あぁ、どうしようどうしよう…
自分じゃちょっと気付かないような変な癖、もしあったならどうしよう?
自分をこの際忘れるぐらい、はしゃいじゃって良いのかな?

「亜弥ちゃんは、中学3年だっけ?」
そんな亜弥の胸中とは裏腹に、真希は何のためらいもなしに話しかけてくる。
「あ、…はい!、そうです!!」
「ひとみとは……仲良いの?あんまり話聞かないけど…」

「――――え?そ、それは、あの……」
少し、焦りを見せる亜弥。
好きな人の前では、いつだって可愛い子でいたい。
そう思うのが普通の女の子でしょ?
お姉ちゃんだって、わかるでしょ?
私の、気持ち。
いつも、可愛くて優しくて…そんな女の子でいたい。

ここぞとばかりに、亜弥は懇願するような眼差しでひとみを見つめた。

お願い、お姉ちゃん。
こんなところで嫌われる訳にはいかないの。
うまくごまかして―――

ひとみと、目が合う。
懸命に目だけで訴え続ける亜弥。
ひとみはしばらく、その目を見つめる。


「仲良くなんかないよねぇ」
そう呟いて、ひとみは姿勢を正す。
勝ち誇ったような、笑み。
眉をつり上げて、唇の端だけで笑う。


ねぇ、覚えてんの?
あんた、一度こうやってあたしを見たことがあったよね。
4人で食事をしてる時。
父さんがあたしのことを罵って。
母さんまで説教を初めて。
「亜弥を見習いなさい」
そう言った時。

こうやって笑ったでしょ?あんた。
―――――忘れてるとでも思ったの?


「え?……仲良くないの?」
本当は、知っているくせに。
亜弥とひとみが仲なんて良いはずがない。
知っているはずなのに、まるで知らないような振りをして
驚いた素振りを見せる真希。

「あっ、あの―――」
視線を泳がせる。
見えている真希の顔が滲む。
顔が熱くなってくる。
67 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月28日(火)19時14分03秒
松浦ピンチですね・・
今までのことがあるからしょうがないのかな・・・・?

それにしてもよしごま怖すぎです(w
68 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月29日(水)01時25分07秒
ちょっといい気味だと思った自分は、もう、完全に話に引き込まれているらしい。(w
続き期待してます。
69 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月30日(木)01時03分11秒
あ!オイラもいい気味だとおもっちまったい(w
70 名前:Lesson10 投稿日:2001年08月30日(木)23時45分11秒
どうすればいいんだろう?
どうしたら、この状況を切り出せるんだろう?
そんな思いばかりが胸を交錯する。


―――――ほんとは、気付いてたんだ。
後藤さんが嬉しそうな笑顔を浮かべる視線の先には、
必ず「お姉ちゃん」の姿があったから。
恋する女は、そんなことに敏感で。
妙なことに鈍感になって。
そして、好きな人のために必死になる。

頑張ったのに。
後藤さん好みの女になれるように、頑張ったのに。
台無しだ……


「……あの、お手洗い借りてもいいですか?」
2人の視線が、自分のことを責めている。
重すぎる沈黙。
それに耐えきれなくて、今にも
涙がこぼれそうで、とりあえずこの状況から脱したかった。

「どうぞ、突き当たりにあるから」
「ありがとう、ございます…」
71 名前:Lesson10 投稿日:2001年08月30日(木)23時50分29秒
「―――あーぁ、あの子きっとトイレで泣いてるよ?かーわいそっ!」
部屋の扉が閉まった途端、真希はおどけた顔でひとみを覗き込む。
「……いいんだよ、アイツなんか」
「策士だねぇ、ひとみってば」
「自分だって十分ノッてたじゃん」
思わず、笑い合った。
鼻に寄った皺。ひとみの、ほんとの笑顔を久しぶりに見た気がした…


「――――真希」
「ん?」
まだ、少し笑いを含んだままの声で返事をする。
ひとみに、真希って呼ばれる瞬間。
その瞬間が、一番好き。
だってその度に近くにいるって実感できるから、さ。

「――しちゃおっか?」
72 名前:Lesson10 投稿日:2001年08月30日(木)23時57分29秒
「……えぇ?、何言ってんの!?」
「今、ここで」
段々と、2人の距離が近付く。
これが策士ひとみの作戦。
いつだってそう。
誘ったら、Noなんて言わせた試しがない。
イヤだって言うのは逆にしたい印だよ、なんて言うんだ。
真剣なその目が、またアタシを惑わせる。

「ダメだよ、亜弥ちゃん…もう戻ってくるってば」
「いーじゃん、あんなのほっとけば」
「そういうわけにはいかない――――」


「カラダは、もうすぐ正直になるよ?」

策士ひとみは、どうやら彼女に見せつけたいらしい。
見せつけたいって言っても、どうせアタシのことを好きではない。
ただ、腹いせに利用されるだけ。
そうでしょ?

アタシは、道具でしかない。
ひとみの欲求を満たすための道具。
それを受け入れるための器。

それでも、ひとみの口づけは心地よくて。
恥ずかしいぐらいに、感じていて。

それって、どうしてかな?
いくら考えても、わからない。
73 名前:ING 投稿日:2001年08月31日(金)00時06分43秒
>>63 >>64 待っていて下さる方がいるなんて…!ちょっと感動です!!
     松浦は、私的には好みの顔なんですがね〜。悪役?(w

>>67 そうなのです。実際にも組むと怖そうなので(w
   あの2人の並びって、実はいしよしより最強な気もする…

>>68 >>69 作者的にも、ちょっと松浦はいい気味なのです(w
     もっとこの話しに引き込まれちゃって下さい!!!(w

しかし、いしよしが一番好きなんだけど最近気になるのは
ほんっとに後藤と吉澤っていっつも隣にいますね。
テレビ的な並びじゃなくて、全員でのロケとかの時常に(w
ある意味、辻加護より鉄板かもですね(2ch語?)
私的に気になるのは、ポッキー新CMラストの全員揃うとこ。
吉澤が後藤の肩に手を回してるんですよ(w
気になった同志、いらっしゃったら語りましょう!!(w

そして、石川の隣には最近常にヤッスーが……キャァァァッ!!!
74 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月31日(金)05時13分15秒
>>73
そのとおり!よしごまは鉄板なんです。
というわけでこの小説もよしごまに…(w
ごっちんカワイソウ。。。
75 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月31日(金)11時31分43秒
>>73
>私的に気になるのは、ポッキー新CMラストの全員揃うとこ。
自分も気になりましたー。
みんな絡まずに普通に立っているのになんで二人だけ?って。
よしごま、ついに事務所公認か?(笑)
76 名前:ま〜 投稿日:2001年09月01日(土)23時08分04秒
黒い吉澤良いな〜!!
そんな吉澤に一途な後藤も・・。ちょっとかわいそうだけど。藁
でもイイっす!やっぱ吉澤に後藤は良く似合うな。
以前ハロモニで後藤が吉澤にじゃがバター食べさせた時が一番萌えた。藁

>>73
>>そして、石川の隣には最近常にヤッスーが……キャァァァッ!!!
( `.∀´)<それってどういう意味よ!!!
(;^▽^)<いや、どうって言われても・・・。
77 名前:Lesson11 投稿日:2001年09月02日(日)16時29分21秒
自分の中から、熱いモノが溢れ出てくるのがわかった。
それが、伝って流れ込んで、下着を湿らせる。

「………イヤ…」

小さく呟いても、彼女には通用なんてするハズもなかった。
ブラウスのボタンが外れていく。
目を閉じていても、ひとみの動きを察知していた。
自分の意志とは裏腹に体が反応する。
―――たまらなくなって、顔を背けた。


その瞬間、だった。



「なに、………やってんの?」
籠もった部屋の空気の中に、通る声。
入ってくるのは、「あの子」でしかない―――


今までアタシに触れていたひとみの表情が変わったのが、分かった。

78 名前:Lesson11 投稿日:2001年09月02日(日)16時40分38秒
「……何やってるの?」
彼女は、同じ質問をもう一度ぶつける。
2人にではなかった。―――ひとみ、だけに。
目線が鋭かった。直感で、アタシは気付いたんだ。


この目に、ずっとひとみは責められ続けてきたって…


「何って…言えって言うわけ?」
しばらく、彼女を見つめてからひとみは視線を反らし鼻で笑った。
ひとみの目を、捕らえようとずっと追いかける「妹」。
「私がすぐ帰って来るっていうの、わかっててしたんでしょ!?」
「…………そうだ、って言ったら?」
アタシの存在なんて、すでにどうでもいいかのように進められる会話。
ひとみの鋭い視線が再び、亜弥ちゃんへと注がれる。

わかってたけど。
外れたボタンを慌ててかけ直す自分は、ものすごく
滑稽で、みじめだった……


「諦めな」
「――――――最低」
吐き捨てるように、「妹」は言った。

「私、知ってるんだから。あんたがどれだけの女とこんな事してるか!」
声が一層高くなる。
「どれだけの女とこんなことしてるか」なんて。
わかってることだけど、耳を塞ぎたい気持ちになる。
79 名前:Lesson11 投稿日:2001年09月02日(日)17時03分35秒
「ここで全員の名前上げてもいいんだから!」
「――――やめてっっっ!!!」

言おうとして、息を吸い込んだ彼女にストップをかけたのはアタシだった。
聞きたくなかった。
ひとみから、直接聞くのと他人から聞くのとでは違う。
アタシは、いつだってひとみのことを理解してる女。
気楽で、気ままでややこしい事なんてない関係。
そこらへんの遊ばれてる「だけ」の女とは違うんだから。


――――それを、ずっと信じさせて欲しい。


「………真希?」
涙目になったアタシを、ずっと見つめていたのは
意外にも、ひとみの方だった。

「ご、ごめん……何か、変だね」
「変なのはそっちじゃん、どうしたんだよ?」

「何でも、ないの。―――何でもないから。今日はもう、帰って?…ね?」
昼休みの屋上のひとみが、無意識のうちに蘇ってくる。
しつこい女はキライ。
うっとおしくて、湿っぽい奴はキライ。
何を考えているのかわからない女は、キライ。


「亜弥、先帰ってて」
「いいんだってば、ひとみ。……帰ってよ」
「……亜弥」

ひとみが、もう一度彼女の名前を呼んだとき。
「妹」は唇を噛みしめて、部屋を出ていったのだった。
80 名前:Lesson11 投稿日:2001年09月02日(日)17時13分48秒
どうして、「妹」が素直に帰ったのか。
もしかして、最初からアタシをそんなに好きじゃなかったのかもしれない。
それとも、嫌われたくなくて早く出ていったのかもしれない。
アタシがひとみのことが好きなのを、気付いていたのかもしれない。

でも、アタシは理由はどれにも当てはまらないと思う。
彼女がおとなしく出ていったその理由―――


「真希」
「―――何で、残んの?帰っていい、って…」
「じゃあ、何で泣いてんだよ?」
いつもにはない、優しい口調だった。
その眼差しに、アタシはますます涙がこぼれそうになる。
「何でもないって言ってるじゃん、心配なんかしないで」
優しくされると、もっと好きになる。
それがアタシを苦しめてるんだよ。
安物のドラマじゃないけど、ひとみはそれを分かってない。


「―――――だって、こんなまま…帰れない」

「………ひとみ…?」

切ない目だった。
初めて、見たの。
こんな目を初めて見た。

優しく、アタシの頬に流れた涙を拭ってくれた。
アタシの髪をゆっくりと撫でて、そのままその手を頬に添える。
81 名前:Lesson11 投稿日:2001年09月02日(日)17時23分45秒
いつの間にか、ひとみはアタシのすぐ側まで来ていて。
気がつくと、みつめあったアタシ達の距離はわずか数センチ。
たった今まで、すごい剣幕で亜弥ちゃんを見つめていたのに…
今はその視線が揺るぎなく、アタシだけに向けられていた。


「―――真希」
存在を確かめるかのように、ギュッと抱きしめられる。
まるで大事な物みたいに。
「どしたの?……ひとみ…」
そう問わずにはいられない。
ひとみは一度だって、こうしてアタシを抱く事なんてしなかった。
エッチだって何だってそれはただの「行為」でしかなかった。
ただ黙って、アタシの胸で目を閉じて呼吸を繰り返すひとみ。



「―――――寂しいの、あたし」
「……え?」
「寂しい」

寂しい?

「あたしは、居場所がない。家族なんていない。愛してくれる人さえ、いない」
ポツリポツリと、ひとみは消え入りそうな声で呟く。
82 名前:Lesson11 投稿日:2001年09月02日(日)17時31分10秒
「真希が、いなくなったら―――あたし、行くとこないじゃんか…」

言葉を聞いた瞬間に、体がひとみを強く抱きしめていた。
弱くて、今にも壊れてしまいそうで、
そんな姿を初めて見たから、反対にアタシの涙がこぼれた。

嬉しくて。
愛しくて。


もっと、彼女を感じたい。
「――――――ひとみ」
お願いだから、もっと心を開いてよ。
どんなに今アタシがあなたを愛しいか分かる?

尚もアタシにしがみついてくるひとみ。

最初は、どうすればいいかわからなかった。
嬉しい戸惑いだったんだ。
慰めればいいのか、キスすればいいのか。
もっと、抱きしめたらいいのか。


そっとアタシは、彼女の前髪を持ち上げて自分の唇を
彼女のそれに押しつけた。
83 名前:Lesson11 投稿日:2001年09月02日(日)17時53分12秒
キス、じゃないんだ。
それはもう既に。
頭の中が痺れていく感覚。

確かめるように、それをこすり合わせ吸い付いて咬む。
「……う…ん…」
ひとみの鼻から息が漏れた。
自分が主導権を握るのは、初めての経験。
そして、ひとみにとっても多分初めての、経験。
唇の内側の粘膜を丹念に舐めていく。
「ん、はぁ……」
愛しくて、愛しくて。
それが、少しでも伝わって欲しい。

だから、あえてこの後は踏み込まない。
唇で、感触を確かめ合った。

「………っは……真希…」
苦しそうに息を漏らして、唇が離れる。
頬を赤くしたひとみがたまらなく可愛くて、
アタシは、視線を合わせて微笑んだ。

「立場、……逆転しちゃったね、今日は」
耳元でそう囁いて、ひとみの反応を楽しむ。
何もかもが、何か新鮮だった。
嬉しかったの。

愛しくて、愛しくてもうたまんないよ。
大好きだよ、大好き――――ひとみ。
神様お願い。もう、どんでん返しはなしにしてね?



そう祈っていた、アタシ。
だけど、アタシはまだ――――

本当のひとみを、知らなかった。
84 名前:ING 投稿日:2001年09月02日(日)18時01分14秒
>>74 と、いうわけでよしごま甘系にしてみました(w
   けれど、よしごまの甘いのも今回で見納め…
   あぁ、ごまちゃんが……

>>75 ですよね!気になりますよね、あれ!(w
   しかし次の話からはよしごまは…(しつこい w)

>>76 自分もあのシーン激萌えです!(w
   よしごまって、どうもごま→よしって感じですよね。

何か内容が急展開すぎる気もしますが…
(^▽^)<理解してくださーい!
↑何か違うよなぁ‥顔文字覚えたいんですけど(w

85 名前:ING 投稿日:2001年09月02日(日)18時06分22秒
(0^〜^0)<あ、あと花板で新しいの書き始めたんで宜しくお願いしま〜す
↑ん?デカすぎるような…
86 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月03日(月)07時46分42秒
み、見納めなのか…(涙)
「本当のひとみ」っていったい…。

あと、花板も読ませて頂きます!
87 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月10日(月)00時34分03秒
か、書いて下さい。
待ってます。
88 名前:ろくでなし 投稿日:2001年09月10日(月)14時31分21秒
続きが読みたいっす
89 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月18日(火)06時24分28秒
待ってます。。。
90 名前:パスカル 投稿日:2001年09月20日(木)09時42分55秒
続きに超超超超超期待!
91 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月24日(月)11時01分01秒
更新きぼん
92 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月26日(水)09時12分47秒
やっぱよしごまじゃないのか…
でも続き期待。
93 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月29日(土)15時33分49秒
待ってますよ。
94 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2001年10月04日(木)01時28分08秒
続きが気になる
95 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月05日(金)14時19分44秒
帰ってきてー
96 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月07日(日)09時28分32秒
続きキボーン
97 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月13日(土)16時03分42秒
待ってます。帰ってきてー。
98 名前:名無し 投稿日:2001年10月17日(水)00時06分47秒
更新まてます…
99 名前:名無し 投稿日:2001年10月17日(水)00時25分45秒
なんとなく 落ちてきてたのになぁ・・・。
でも、ウチも 更新待ってます・・・。
100 名前:七資産 投稿日:2001年10月19日(金)00時54分27秒
帰ってきて〜
期待sage
101 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月21日(日)17時33分37秒
待ってますよぉー。。。
102 名前:Lesson12 投稿日:2001年10月23日(火)21時08分35秒
「……んっ、んっ…やぁっ…!」
滴り落ちていく愛液。それを受け止めるひとみの指。

ここ数日、ずっとそんな日が続いていた。

暇さえあれば、どんな場所でも。
コンビニの裏。駐車場。公園……快楽を貪りあうアタシ達。


「……ぁんっ、…も…ダメ…」

もう一度、声を上げた瞬間だった。
ひとみが咄嗟に何かを察知したように、ハッと視線を上げる。
その動揺がアタシにまで何となく伝わってきて。



「―――聞いた?今の…」
「…ヤッてんじゃないの!?」
「だよね、絶対!」


――――ヤバイ。

アタシの口を抑えて、ただ状況を探ろうとするひとみ。

自分のおかれている状況。
体育館の、一番奥のトイレ。
狭い個室内にはさっきまでは、荒く繰り返す呼吸が響いていて。
壁にもたれかけて、大きく足を開かされた自分の滑稽な姿。
第3ボタンまであけられたブラウスと、ずらされた下着からは
突起したそれがはみ出していて。

――まるで、強姦されているかのよう。

「ヤバイよ……」
もし、上から覗かれでもしたら。
鍵でも開けられたら。
先生なんか呼ばれてしまったら。

見られちゃ、ヤバイ。
103 名前:Lesson12 投稿日:2001年10月23日(火)21時26分10秒
「って言うか、誰だと思う?中」
「――吉澤でしょー…」

ヤッてる=ひとみ、思わずアタシは吹き出す。
最も、多少は複雑な気持ちだったけれど。
今、目の前にいるのは……アタシ。そう思うと満足できる。

「何笑ってんだよ」
小声でひとみがアタシの顔を覗き込む。怪訝そうな顔をして。

「……アハッ!だってぇ!ひとみが…」
「―――バカッ、お前声デカ…!」

時、既に遅し。


一瞬、静まり返ったその女子トイレ。
「後藤じゃん?うちのクラスの…」
「……なーんだ、面白くなーい…アイツ、ヤリマンなんでしょー?」
「男も吉澤も自分のもの、ってか」
「――やめなって、アンタ…聞こえるよ?」
「いーじゃーん!……」

「せいぜい楽しんでねー!…アハハハッ」


けたたましい足音。
「全部聞こえてるっつーの――」
肩を竦めて、力無い表情でひとみは苦笑いをした。
アタシの中で、吹っ切れないことが一つ。

「………アタシがヤリマンなんて…信じてないよね?」

根拠のない噂。
「アタシ、男となんかヤッたことないよ!?」
必死で弁解をする。
「ホントに、ひとみ以外となんてアタシ―――」
104 名前:Lesson12 投稿日:2001年10月23日(火)21時36分32秒
「……ねぇ、ひとみ………」
肩に手をかけようと、ブラウスに指が触れた瞬間に
ひとみの身体が拒絶するかのように、ビク付いたのがわかった。

「……謝らなくていいよ。別に、真希が誰とヤろうがあたしには関係ない」

関係、ない?―――関係ないの?
「一緒に帰ったらまたうるさいからさ、先行く」
振り向きもせずに、ひとみは鍵を開けて気だるげな足取りで歩いて。
気が付いた時には彼女の足音は既に聞こえなくなっていた……

冷たいのには、慣れていた
………けど、サ。
ここ最近、ずっと……優しかったから………
辛かった。

アタシ、一人で勘違いしてるのかな?
愛されてるとか、ひとみにはアタシしかいない、とか……
また、涙。

溢れて、アタシの頬を濡らしていく。
乱れた制服と、湿ったままの自分の……それ。

「………アタシ、って、何なの……っ!?」
本当はちっとも愛されてなんかなかったの?最初から?
この前の言葉は彼女お得意の、口からの出任せ?

一人で、舞い上がってたなんて。
バカ、だ。バカ、バカみたい――――アタシ。

外れたボタンを直す自分はあまりに惨めで、見失った自分がそこにいた…
105 名前:ING 投稿日:2001年10月23日(火)21時39分03秒
お待たせして申し訳ありませんでした!!
今日から復活いたしますので、宜しくお願いいたします。

たくさんのレスが頂けて、本当に嬉しかったです!
ありがとうございます!!!!
106 名前:Charmy Blue 投稿日:2001年10月23日(火)21時51分36秒
待ってましたぁ!復活おめでとうございます!
107 名前:名無しくんつ 投稿日:2001年10月23日(火)23時03分00秒
復活だー。INGさんこれからも頑張ってね。応援してまーす。
108 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月24日(水)21時57分45秒
祝復活!!
もう半ば諦めかけてました。
マジ嬉しいです。

それにしてもごっちんかわいそう…。
109 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月26日(金)23時25分25秒
更新されとる よしごまエロ萌え〜
110 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月01日(木)15時32分07秒
待っとりまっせー
111 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月10日(土)11時26分27秒
続き期待してます
112 名前:Lesson13 投稿日:2001年11月10日(土)22時15分33秒
そろそろ、片付けなくてはならない。

自分を取り巻く全ての女。
その微笑みが、メモリーから名前を出す度に浮かんでくる。
抱いたのが数十人もの数に上っても、一度抱いた女の顔は絶対に忘れない。
それが、自分だった。

甘い言葉を囁いて、腰に手を回して。
口付けて、舌を入れるだけで自分に絡んでくる女は皆服を脱いだ。
女って、何て簡単な生き物なんだろう。
その度に自分の行動に自嘲しながらも、どこかでその行為に及ぶ
相手の女のことをあざ笑っているような気さえした。

一体私は何がしたいんだ?
最も、性欲なんてモノは一度だって感じたことはなかった。
快楽を求めることはあっても、それは欲とは違う種類ものであるようで。


本当は、人を好きになったことなんてないのかもしれない。
――――ただ、真希を失いたくないと思ったのは事実。
寂しさを紛らわせるために、繋ぎ止める為に、真希を抱いてるのも事実だった。
もし、真希を抱くことがなくなれば。
真希は自分の元から消えていく気がして、ならなかった。
113 名前:Lesson13 投稿日:2001年11月10日(土)22時26分48秒
そうだった。
他の女と、真希が違うのは支配するということ。

何を―――――?


「好き」と言う言葉。
それを、自分の口から語る時はいつも寒気が走る。
一体、何を好きなんて言っているのだろう?その女の躰?存在?
「好き?」と尋ねられると、「好きだよ」と答える。
それを口にするだけで、満足する女。何を愛と呼ぶんだろう?

どうして、こんな私に女は夢中になるのだろう――?

失いたくない、と思うのは好きという感情なんだろうか?
涙を溜めて、喘ぐその姿。
真希?
何となく放っておけないと思うのは、好きという感情なんだろうか?
あの笑顔。
石川梨華?
憎くて、憎くてたまらなくて。大嫌いなのに、憎みきれない。
亜弥?

一体、私は………
114 名前:Lesson13 投稿日:2001年11月10日(土)22時45分44秒
自分の身体に対して、大きすぎるそのベッドにただ身を預けて。
考える。
ただ、ひたすらに。
広すぎる部屋は、やけに無駄な空間ばかりが大きくて。寒い。


「お嬢様」
ふいに、声をかけられてドアの方に視線をやる。
「………真里」
小柄なその身体の後ろからは、探るような目でこちらを見ている亜弥の姿。
それに小さく舌打ちして、真里に手招きをする。
「入ってもいいんですか?」
問いかけに、小さく頷く。
頷いた瞬間に、嬉しそうに浮かべたその笑顔が余りに愛らしくて。
思わず、目を細める。

跳ねるように早足でこちらへ向かってくる背後で、
重いドアが、音を立てて閉まろうとしていた。
隙間に見えたのは、やっぱり亜弥の姿。
「………アイツ…」
小さく呟く。
ギュッと、唇を噛みしめてこちらを見ているのが分かった。

――――バタン…
115 名前:Lesson13 投稿日:2001年11月10日(土)22時57分53秒
「良かった、何か考え込んでたから入っちゃいけないのかと思いました」
身を起こした自分の隣に腰掛ける。
小さな身体は、ベッドに腰掛けると床に足も付かなくて。
やや大きめのメイド用のユニフォームが、自分の心の何かを擽る。
………これが欲望なんだろうか?
それなら、私は真里のことが好きなのか?
疑問ばかりが、浮かぶ。

「……可愛いな、真里は」
そう言って、真里の頭を自分の胸へと擦り寄せさせる。
「お嬢様…」
頬を赤く染めて、自分を見上げる一途なその瞳。
子猫のように、今度は自分から擦り寄ってくる髪の香り。

「さっき、何考えて…た、んですか?」
言った後にしまった、という表情をしたのを私は見逃さなかった。

そう。
自分の考えを探られることは、一番嫌い。
テリトリーに入って来る女というのは、嫌い。
それを語ったことを、思い出したのだろう。

「…ごめんなさい……」
多分、私はまた冷たい視線を彼女に向けたのに違いない。
瞬間に、彼女の頬がビクッと動いた。

いけない。ポーカーフェイスを崩しては。

「……真里のこと、考えてた…」
微笑んで、そう言うと。
真里は、寂しげな笑顔を浮かべてまた私の胸に顔を擦り寄せた。
116 名前:Lesson13 投稿日:2001年11月10日(土)23時11分54秒
「……」
しばらくその匂いを感じて。
隙をついて、身を屈ませ首を曲げて唇を奪う。
半開きの真里の唇は、生暖かくて。冷たい、自分のそれと重ねると心地良い。
そのまま、目を開けて反応を確かめてみる。

フランス人形のように、緩やかに伏せられた睫毛と。
金色の髪。悩ましげに鼻から漏れる息。
私のカッターシャツをギュッと掴んで離さない、掌。

「………はぁ…」
唇を離すと、途端に甘い息を吐き出す。
私は、そのまま後ろ向きに倒れ込んで腕を広げた。

「来いよ」

戸惑った表情。
「…抱いて欲しくて、ココに来たんだろ?」
どうしてそんな、泣きそうな目をする?
「あたし、そんなつもりじゃ……」
「じゃぁどんなつもりだよ!」
言葉を荒げて、身を起こしそのまま真里の肢体を押し倒してベッドに沈め込む。
怯えた目。

何故、こんな風にしてしまうのだろう?
真里の怯えた目を見る度に、いつもそう思っているのに。

私はサディスティックな笑みを浮かべて、痛いぐらいに彼女の腕を握った。
117 名前:Lesson13 投稿日:2001年11月10日(土)23時26分42秒
「……待って、ホントに…」
私の事を知りたがる女は、大抵抱いて欲しがる女ばかりだった。
こんな夜に。
わざわざ仕事が終わってから訪れる真里。
抱くことをせずして、何をする?
もしくは、抱かれることを望んで来ていなければ何の為にここへ来た?

白い首筋に顔を埋める。
「…抵抗すんのも、ここまでだよ」
そう呟いて、太股へと手を滑らせる。
「………んっ、…や、だぁ……」
口では否定しても、唇からは正反対に吐息が漏れていく。
また、目尻には涙が溜まっていた。

「……抱かれたくて、来たんじゃないぃ…」
唇を噛みしめて、下へ下りていった私の手を止めるその腕。
「あたしは……」
だけど、抵抗は虚しいだけだった。
やがては愛撫に溺れて。
はしたない声を上げて、何度も果てる。
それでも、まだ抵抗しようとするなんて。

上等。


なかなか美味なようで。
今夜は、たっぷり君を味わおう――――

118 名前:ING 投稿日:2001年11月10日(土)23時33分43秒
不覚にも作者自らageてしまいましたが、
ここでは、基本的にはsageでお願いします。

>>106 >>107
有り難うございます。これからも頑張りますので、宜しくお願いいたします。
>>108
後藤はどうやら切ない運命を辿ることになってしまいそうです・・
お待たせして申し訳ありませんでした。更新ペースが非常に遅くなって
しまっていますが、これから少しずつ頑張っていこうと思っています。
>>109
有り難うございます。エロに萌えて頂けると、何か嬉しいです(w
まだまだ未熟なもので…もっと萌えるエロを書ける作家になりたいものです。
>>110 >>111
お待たせして申し訳ありませんでした!一応、更新いたしました。
119 名前:Another Lesson 投稿日:2001年11月11日(日)00時04分23秒
お風呂に入って、清めた身体。
鏡の中の自分と睨めっこしながら、自慢の黒髪を念入りに梳かす。

私、可愛い……よね?

染めた髪は、すぐに戻した。
ピアスの穴も、すぐに塞いだ。
お化粧道具だって、友達に全部あげてしまった。

「私には、化粧とかピアスとか……やっぱり似合わないや…」
そう呟きながら、折り畳み式の鏡をパタンと畳んだ。
あの時。
憧れて、多分好きだったはずの後藤さん。
なのに。
なのにどうしてか、あんな事が怒っても涙一つこぼれなかった。

それよりも、気になったのは。
大嫌いなあの人のこと。

何度か、あの人が女を連れているところを見たことはあった。
隣の部屋のあの人の部屋からは、いかがわしい声が聞こえてきたこともあって。
それを意識して、胸が高鳴ったことを覚えている。
そういうのに興味を持った自分が恥ずかしくて、情けなくて。
思わず、涙が出た。

けれど――――

あの時、実際にあの人の腕に抱かれた後藤さんを見て。
すごくドキドキして。
身体が熱くなって。

居ても立っても、いられないようだった。


120 名前:Another Lesson 投稿日:2001年11月11日(日)00時16分36秒
じゃぁ、私はあの人のことが好きなの―――?

そんなはずはない。
あの人は、ずるい人。
私みたいに努力なんかせずに、何でもやりこなして。
本当の娘だから、わがままだってし放題。

分かってる?
―――本当に怒ってくれる親こそが、親だってこと。
私なんて、所詮他人に過ぎない。

褒められて、褒められて褒められて。
いい子ばかりでいる自分。臆病な、私。居場所がなくなるのが辛いだけ。
パパは、私のことが可哀相だから私を褒めるの。父親は、自分なのに。
伯母様だって、私のことを哀れんでいる。
捨てられたら孤児院に行くだけの私を。

だけど、あの人だけは違った……

正面からぶつかってきてくれる。
本音で、私に接して本心で私を憎んでいる。

憎まれるべき、私の存在を。

だけど、どこかいつも優しい。
憎んでいても、優しい。
121 名前:Another Lesson 投稿日:2001年11月11日(日)00時22分44秒
わからない。

あの人のことが、好きなのか。嫌いなのか。
―――いや、嫌いなの。
嫌い。
嫌いだけど、どうしてこんなに気になる?

気がつけばいつもあの人の部屋の前ではわざと大きな音を出したり。
あの人が学校に行くまで、ノロノロして電車を合わせたり。
こんなの、バカみたいじゃない。
どうして?

どうして、こんなに思ってるの?――

大嫌いなはずなのに。
大きな瞳と、金色の髪と、涼しげな香り。
本当は、憧れてるのかな?

好きになんかなりたくない。
だけど、追ってしまう。
あの人を。


―――――ただ、ひどいあなたを……
122 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月12日(月)07時07分38秒
まさか、あややの気持ちが・・・
意表を付かれました。次回更新、ゆったり待ってるっす。
123 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月12日(月)20時11分21秒
うわぁ、めちゃ面白い!!うまい!!
自分的にはよしごまに落ち着いて欲しいけど
どうなるんだろ?続き楽しみに待ってます♪

124 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月18日(日)15時29分57秒
続き待ってます
125 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ
126 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ
127 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月09日(水)23時38分39秒
帰ってきてください待ってます。
128 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月13日(日)14時49分20秒
続き待ってます。
129 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月11日(月)14時46分11秒
こっちも復活してください。
130 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月21日(木)14時31分37秒
作者さん、また書いてください待ってます。
131 名前:名無し読者。。。 投稿日:2002年03月10日(日)04時08分40秒
待ってますよ〜!この小説好きなんでお願いします。
132 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月28日(木)15時48分41秒
作者さんお願いします書いてください。
133 名前:Lesson14 投稿日:2002年03月29日(金)17時57分55秒
「真里、…」
三度ほど名前を呼んだところで、真里はゆっくりと目を開けた。
「おはよ」
笑顔でそう囁く。
「…おはよう、ございます」
「今日はいつもと反対じゃん、ね」
だって、いつも起こして貰ってるから…
そう言葉を続けようとした瞬間に、唇に暖かい感触。
突然の衝撃に、私は思わず目を閉じることも出来ずにいた。
「…真里」

「…ごめん、なさい…我慢できなかったから…」
その言葉に何かこみ上げる物を感じて、私はぎゅっと真里を抱きしめた。
小さなその身体は、私の身体に溶け込んでしまいそうなぐらいに。
134 名前:Lesson14 投稿日:2002年03月29日(金)18時04分33秒
どうして誰かを抱きしめていると、安心感を覚えるのだろうか?

真里だから?
いや、そんなことはないだろう。きっと。
真希を抱きしめても、心のどこかでほっとしている自分がいるのだから。

「お嬢様」
「…ん?」
「あたし、昨日の話…忘れません」
昨日の話?

「話なんかしたっけ?」
…うろ覚えだ。
またいつもの癖で、口からの出任せなのかもしれない。
自分という人間がわからない、私は。
それが、自分。
そうやって生きてきたから余計に器用になってしまったのだろう。きっと。

「言ったじゃないですか。私は弱い人間なんだ、って…」
「弱い、人間?」
「だから真里がいてくれないと多分生きていけないよ、って」
言ったところ、夢を見る少女のように真里は目を輝かせてそう告げる。
135 名前:Lesson14 投稿日:2002年03月29日(金)18時07分59秒
「あたし、…」

言ったのかも知れない。
言っていないのかも知れない。

いや、多分言っただろう。―――真里だけではなく、どんな女にも。

「あたしだけは、絶対お嬢様の側にいますから」
消え入りそうな声で呟く。
「――うん」
「絶対、お嬢様の味方ですから」
その言葉には、誠実な響き。

「…ありがと」

乾いた声で、そう言って。
最後にもう一度ゆっくりと口づけた。
136 名前:Lesson14 投稿日:2002年03月29日(金)18時18分23秒
―――
――



「梨華、聞いた?…あの話」
「…あの話?」

生徒玄関で、靴を履き替えているとあゆみがそう声をかけてきた。
表情からして多分、「ひとみちゃん」の話なのだろう、
と言うことは安易に察しが付く。

「何かね、吉澤がついに本命決めたー、とかって噂」
「…何それ」
勿論、聞いたことのない噂だったのであたしは思わず眉をしかめた。
「らしいよ」
肩を竦め、声を顰めるあゆみ。
「…どういうこと?本命って」
137 名前:Lesson14 投稿日:2002年03月29日(金)18時27分40秒
「昨日の3限、数学だったじゃん?」
「あぁ、うん」

「その時に、体育館かどっかのトイレで吉澤が…ヤッてたんだって」
「…」
事実、「ひとみちゃん」がヤッてたなんて話は幾度も聞いたことがある。
だからそれが、何なの?
一つ一つ、いちいち区切って言うあゆみが少しじれったかった。

「その相手がD組の後藤真希だったらしいんだけど」
「…後藤、真希……」
その名を口にするだけで、この間の状況が鮮明に蘇る。

「ひとみのことを好きになる資格なんかない」

あのまっすぐな瞳で、責められて。
「ひとみちゃん」のことを素直に好きと言えなかった私―――
どうして後藤真希は私を標的にしたんだろう?
「ひとみちゃん」を取り巻く女なんていくらでもいるし、私なんか足下にも
及ばない美形の人と「ひとみちゃん」が一緒にいるところなんて何度も見た。
なのに、どうして私?
ライバルになんて値しないようなはずじゃない。容姿も、彼女との距離も。
どうして?
今更ながら、そんな疑問がまざまざと浮かび上がってくる。

「ちょっと梨華!聞いてんの?」
138 名前:Lesson14 投稿日:2002年03月29日(金)18時31分40秒
「――要するに、後藤真希が本命ってこと?」

あゆみは何かを確認するように、ゆっくりとその言葉に頷く。
「……」
ショックか、と言われればショックだった。
けれど、どうしてもそれは現実味を帯びていないような気がしてならなかった。
「ねぇあゆみ…その噂、って…誰から聞いたの?」
「…誰から、って…あたしはD組の子から聞いたけど」

でも噂だからねぇ、とその後に続く言葉も聞かずに
私の足はD組へと向かっていた。
139 名前:Lesson14 投稿日:2002年03月29日(金)18時36分40秒
「違うよ」
「…」
「アタシじゃない」

気怠そうに、窓外のグラウンドの方へ視線を投げて彼女はそう言った。
「大体何でアタシがそんな噂流さなきゃなんないワケ?」
「…でも、あなたぐらいしか考えられなかったから」
そう口にすると、鼻で笑って。
「アタシがひとみの本命はアタシだなんてバカみたいな事言うわけないじゃん」
自惚れにも程がある、と言って彼女はまた鼻で笑った。

どうして私が後藤真希に噂を流したのはあなただ、と言ったのかは分からない。
ただ、直感でそう悟ったのだ。何の根拠もない。

「ひとみはね」
「…」
「ひとみは、本命なんかいないの。この世のどこにも」
140 名前:Lesson14 投稿日:2002年03月29日(金)18時43分10秒
「あんたには言っとくべきだと思うから、話してあげる」

相変わらず今日の彼女は、私の目を見て話そうとはしない。
その事からして不自然だとなぜか感じてしまう、私。
「何?」
「ひとみは、関係持った全ての女にふと弱味を見せるんだ」
「……弱味?」
こくんと頷いて、彼女は言葉を続ける。

「私は弱い人間だとか、独りぼっちだとか、置いてかないで、とか」
私はまず、その事に驚いた。
あのポーカーフェイスを崩して、涙を浮かべてそんなことを言うのだろうか?
縋り付いてそんなことを言うのだろうか?
それで相手の心を捕らえて、離さなくしてしまうのだろうか?

「特に抱いた時なんかは必ず、ね」
「…抱いた、時…」
「あんたってひとみとまだ、なんでしょ?」
まだ、って。
頷くと
「やっぱりね」
「…」
勝ち誇ったような笑み。
「言ってたもん、ひとみ。純情少女だ、って…」
141 名前:Lesson14 投稿日:2002年03月29日(金)18時50分13秒
純情少女。

その言葉に私は、どれだけ傷付いたろう?
どれだけ涙しただろう?
打ちひしがれて―――

「じゃあ、まだその弱味ってのは聞いたことないわけだ」
「…そりゃぁ、まだ」
「抱かれりゃ分かるよ。きっと」
「……」
「それを言われたら――終わり。イコール、本命なんかじゃないってこと」

どういうこと?

…不可解だ。
どうして弱味を見せられたら、終わりなの?

「最も、ひとみ自身はそれに気が付いてないけどね」
「私――分からない」
「傷付きたくなかったら、あんたも早く身を引いた方がいいと思う」
「……私、そんなの分からない」
「…はぁ?」
142 名前:Lesson14 投稿日:2002年03月29日(金)18時56分37秒
「どうして弱味を見せたら本命じゃないの?どうして、分かるの?」
「…分かるんだよ、アタシは。ずっと見てきたから」
「弱味を見せるのは本当はひとみちゃん自身が弱いからなんじゃないの?」
「……」
「あなたは、何にも分かってない」

ビクッと彼女の睫毛が、揺れた。

「分かった振りしてるけど、あなただって結局ただひとみちゃんを…」
「…分かってる。アタシはひとみのことを誰よりも知ってる!」
口調が荒げる彼女。
どうやら、動揺が隠せない様子だった。
私だって自分が一体何を言っているのか、分からない。
ただ感情のままに突っ走っている。

「違う」


「…じゃぁ、何?」



「あなたは、ただの女。ひとみちゃんのことを好きな他の女の子と同じ」
「…あんたに何が分かるんだよ!」
「分かんないよ!」
「――」

「私は分からないから、知るの」
143 名前:Lesson14 投稿日:2002年03月29日(金)19時07分29秒
「何それ…一体、どういう…」

彼女がそう口にした瞬間だった。
「どした、の?」


「―――ひと、み…」
144 名前:ING 投稿日:2002年03月29日(金)19時08分46秒
長い間お待たせして申し訳ありませんでした。
新しく、頑張りたいと思いますので宜しくお願いします。
レス返しは次の更新時に・・
145 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月30日(土)16時54分58秒
作者さん、お帰りなさい。続きを楽しみにしてます。
146 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月31日(日)11時27分11秒
復活してる!!
ずっとまってました
147 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月31日(日)14時50分23秒
作者さんお帰りなさい!ずーっと待ってました!
また読めると思うと嬉しいです。
148 名前:Lesson15 投稿日:2002年04月07日(日)13時26分31秒
「ひとみ…」


‥聞かれた…?

一瞬にして、全身から血の気が引いていくのを感じ取った。
まるで、ひとみの全てを知っているかのように勝ち誇った表情で
梨華に語った自分。それを、見ていた…?聞かれた?

アタシがひとみの何を知ってるの?ねぇ、何を知ってるんだっけ?

こんなに、偉そうな事を言えるほどアタシは特別な存在だった?
ただひとみを好きなだけの他の女と変わらないんじゃなかった…?

アタシだって、例外なんかじゃなかった。


ふと、目の前の石川梨華にもう一度視線を注いだ。
その肢体。
細いのに変に色気のある身体と、ためらいがちな口元。真直ぐな黒い瞳。
アタシが戦うべきは、この相手?

…ひとみが選んだのは、この相手?
149 名前:Lesson15 投稿日:2002年04月07日(日)13時41分37秒
「おはよ、真希」
「…あ‥お、おはよ…」
「何どもってんだよ、お前」
「…あはっ、ごめん」
「変なヤツ」

軽く口元を上げて、呆れたような声でアタシを。

事もあろうか、ひとみは目の前にいる石川梨華など全く視界に
入っていないかのような態度。
…どうして?
ひとみは、石川梨華のことが好きなんじゃなかった?ねぇ。

ねぇ、どうなの?…ねぇ。


「…真希、ってば!」
「……え?えっ、あ、ごめ…」
「今日何かおかしくない?寝惚けてんの?」

「や、そんなことな…っ、ん!」


不意打ちとは、正にこんなことを言うのだろう。
ぐいっと引き寄せられて、急にぶつかった唇の感触は妙に鮮烈。

「…っ、ちょ、ちょっとひとみ…!」
焦った様にちらり、と石川梨華に視線を送ると
呆然と立ち竦んでいるだけで。

ひとみはひとみでニヤリ、と人の悪い笑みでアタシから離れようとしない。
「…ちょ、っと…離れてよ…」
「何でだよ。いっつもやってるじゃん、こんな事」
「で、でも…」
「ん?…何だよ、文句あるならもっかいやっちゃうよ?」
150 名前:Lesson15 投稿日:2002年04月07日(日)13時50分10秒
「あの、わたしは…これで」

タイミングを計らったかのように、石川梨華はおずおずと口を開いて
アタシにそう声を掛ける。
瞬間に、抱きしめられた腕から何かが伝わってきた。
…それは…、不安?迷い?…それとも……

サクセン、セイコウ?


「あれー、行っちゃうんだ」
「…、え?」

そのひとみの声に、石川梨華は足を止めて顔だけをこっちに向ける。
相変わらずひとみに抱かれたままのアタシは、身動きせずに
ただ事の起こりを見つめていることしか出来ずに。
151 名前:Lesson15 投稿日:2002年04月07日(日)14時44分05秒
「…もっとイイコト、見せてあげようと思ったのに」
「何、言って…」

「ね、真希」
耳元で囁いて、ゆっくりと首筋に舌を這わせる。


…やっぱり、アタシは道具なんだ。

この人の。
道具。
石川梨華に何らかの感情を与える為の。
妹の亜弥ちゃんに、何らかの感情を与える為の。
いずれも、多分は…嫉妬と言う名の。

アタシは道具。
欲望を満たす為の。安心する為の。煙草を貰う為の。


一生、この人の道具なんだ。
152 名前:Lesson15 投稿日:2002年04月07日(日)14時58分00秒
それでもいい、傍にいられるだけで。
それだけで満足。

…なんて、結局安っぽい感情ばかりが湧き上がって自嘲する。

一体何だったんだろう?この16年間。
いつか、振り向いてくれる。いつか、いつか絶対に。私の元へ戻って来る。
信じ続けていたのに、結局運命は運命でしかないのだろうし、

それがアタシの…宿命であり。
やるしかないんだろう、もしアタシへの試練ならば。


「真希?」
「…ん?いい、よ…続けて?」
「…」
一瞬ひとみは、驚いたような表情になったけれど。それは本当の一瞬。
すぐに手を進めようとする。
「…、ぁ…っん」
どうしてだろうか?
見られていると思えば思うほど、触れられればいつも以上に快感だった。
それが、石川梨華だと思えば思うほどに。
いつもならこんな事で、声を上げて感じたりはしないのに。
153 名前:Lesson15 投稿日:2002年04月07日(日)15時06分32秒
「そんなこと見せて、わたしが…最低とか言うの、望んでるんでしょ?」
「…、はぁ?」
「安心して。そんなの、わたし慣れてる」
ひとみの手が、止まる。

「純情少女なんかじゃ、ないし」


石川梨華は、アタシ達から目を反らし吐き捨てるようにそう口にする。
「…アンタ……」
「ね、ひとみちゃん。今日もお昼一緒しよ?」
今度は明るい声色。
微かにひとみが、戸惑いを感じているのが読み取れる。
面白いぐらいに。

もう完全に、アタシの存在なんて…

ね。


「約束。屋上で、待ってるから」
言い残して、石川梨華は駆け出して。
消えた、みたいに。
あっと言う間に、後姿が見えなくなっていた。

彼女は何を感じていたのだろうか?

アタシには、それがちゃんと分かってる。


純情少女なんかじゃない、それが何を意図していたのかは
きっとひとみには分かっていないだろう。
154 名前:Lesson15 投稿日:2002年04月07日(日)15時15分07秒
「随分強くなっちゃったね、あの子」

アタシは、若干乱れた制服を直しながらすっとひとみの腕から離れた。
「……」
行き場を失ったその手は、宙を彷徨って。
不思議そうにアタシを見つめるその目は、やっぱり戸惑っていて。

「…アタシ達が何話してたか、聞いてた?」
「…いや、何も」
「そ、か」
「…真希、」
「アタシも教室戻んなきゃ。単位そろそろやばいんだ」
笑顔を浮かべて。
相変わらずに戸惑った目をしているひとみから、視線を反らさずに。
「また、帰りにね」
「…、あぁ…」



アタシは胸に、ある決意を秘めていた。
155 名前:ING 投稿日:2002年04月07日(日)15時24分19秒
>>122
松浦もこれから結構、重要な役割を果たしてくれます。
出るのはもう少し先ですが…レス返しが遅くなってすみません。
>>123
ありがとうございます!そう言ってもらえると本当に嬉しい限りです。
これからの展開はよしごま的には結構痛め、かもしれません。
>>124
ありがとうございます、遅くなって申し訳ありません。
>>127>>128>>129>>130>>131>>132
本当に遅くなって申し訳ありません。
こういうレスは本当に励みになりました。嬉しかったです。
これからは頑張りますので、宜しくお願いします。

156 名前:ING 投稿日:2002年04月07日(日)15時27分49秒
>>145
本当にお待たせして申し訳ありませんでした。ありがとうございます。
これからも宜しくお願い致します。
>>146
ありがとうございます!お待たせしてごめんなさい。
これからもどうぞ宜しくお願いいたします。
>>147
お待たせして申し訳ありませんでした。
拙い文章ですが、これからもどうぞ宜しくお願いいたします。
157 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月07日(日)23時18分47秒
お?梨華ちゃんポジティブっすね!
これからのいしよしが気になります。
158 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年04月08日(月)22時28分39秒
待っててよかった・・・。
(0^〜^0)<お帰り!待ってたYO!!
ごっちんに負けてない、強いいしかーさんもいいですね。
159 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月23日(火)15時16分20秒
INGさん頑張ってください。
160 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月08日(水)15時20分52秒
すんばらしい
161 名前:くわばら。 投稿日:2002年05月08日(水)15時31分39秒
面白いです。続きを待ってます。
162 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月10日(金)01時00分44秒
初めて読みました。すごく面白いです!
この先が楽しみ&とっても気になります。
163 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月18日(土)15時55分51秒
今一気に全部読みました!!
かなり面白いですね。
こうゆう展開好きです。
続き期待してます。
164 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月23日(木)18時52分03秒
作者さん、続き期待してますよー
頑張ってください。
165 名前:Lesson16 投稿日:2002年05月26日(日)10時16分53秒
昼休み、屋上、待ってる―――


薬品の匂いと、指導用に作られたと見られる原子のモデル。
扉には鍵。化学準備室、と書かれたプレートはどこか古びていて。
理系人間の少ないこの学園にとっては必需性の低いこの部屋。
掻き上げてもしつこく垂れてくる前髪に、少しばかり苛立ちを感じた。

「…いい加減授業出なよ、吉澤ぁ」
呆れたような声で、帳面を付けていた女は目線だけを上げてそう言う。

赤縁の眼鏡にロングのストレート。すらりとした長身に栄える白衣。
言わば、この学園の教師陣の中でマドンナであり、ドンとも言える存在の
飯田先生は、幾度となく私と噂を立てられた女の一人でもある。
「今日は出る気分じゃないんだよ」
金属製の実験器具を指で弄りながら、私はその視線から目を反らした。

彼女の目は苦手だった。
全てを見透かされているようで、見抜かれているようで。
どうも、まっすぐ見られない。

「いっつもそんなこと言って…」
口元に笑みを残し、彼女はペンを置いた。

166 名前:Lesson16 投稿日:2002年05月26日(日)10時30分55秒
「圭織」
「…せんせーでしょ?」
「先生……、圭織」
もう、と小さく呟きながらも微笑む彼女の横顔。
どことなく儚げで、繊細な憂いを含んだその瞳はやはり読めない。
「何、どうしたの?」
「……」
何を伝えたかったのか、忘れた訳じゃない。
別に、何を伝えたかった訳でもない。

「――なーんか、今日の吉澤は吉澤じゃないみたいね」
「…そう?」
ゆっくりと頷いて、椅子から立ち上がり彼女が近付いてくる。
迫ってくる距離に私らしくもなく妙に胸が高鳴った。息が切れる。

「何を言おうとしてたか、当てたげよっかー…」

白衣下のシャツの隙間からその豊満な身体の一部がちらり、と覗き。
「ちょ、な、に…」
そればかりが目に付いて、尚更彼女と視線を合わせる事が出来ない。
顎を指でゆっくりとなぞられていくのに呼応して、背筋がびくっと震えた。




167 名前:Lesson16 投稿日:2002年05月26日(日)10時39分47秒
「圭織さ…、ほんとは嬉しかったんだ」
「何、が?」
「吉澤とよく、噂になってんじゃん」
そうだった。
授業をサボる時は大抵は屋上か、ここにいる。
保健室じゃなくて、こんな寂れた準備室なんかにいるから噂になるんだ、と
真希に言われたことがあった。保健室の中澤先生にも言われた。
「たまにはあたしも噂立てられたいわ、こっちにも来ぃや」
と、独特の関西訛りで皮肉っぽい笑みを浮かべた彼女が思い出せる。

「ねぇ」
「…」
「どうなんだっけ、…あたし達」

「皆、ここで何してると思ってんのかな…」
「…っ、ちょっ…圭織っ、…」
唇が近付く。
しなやかな腕が、私の首にゆっくりと回される。
168 名前:Lesson16 投稿日:2002年05月26日(日)10時49分09秒
「――いい加減にしろよっ…!」

声を荒げ、私は彼女の身体を引き剥がす。
きゃっ、と小さく叫び彼女は後ろの机に手を付いた。
「……」
「…ごめん」
我に返ったのか、視線を床に這い回らせてそう呟く声が掠れている。
「どーか、してる…」
「…」

「らしくないのはどっちだよ」
そう口にすると、圭織は自嘲するように眼鏡の蔓を上げる。
「…言えてる」
「何だよ、それ」
相変わらず、前髪はしつこく垂れてくる。

「何かおかしいんだ、圭織」
気のせいか、その瞳は潤んでいるように見えて。
脆く崩れ去ってしまいそうだ。

「ちゃんと、決めてたのに」



「あの日、たった一度だけ、って決めてたのに…」
169 名前:Lesson16 投稿日:2002年05月26日(日)10時57分34秒
「……」



迫ったのは、私の方からだった。
最初は抵抗した圭織を、黙らせる為に強引に口付けると
彼女はあっさりと堕ちた。
最もそれは媚薬、というハンデがあってのものだったのだが。
涙を溜めて、生徒の私に縋り付いて強請る彼女を
何度も詰って、焦らして、言葉攻めにして、私のものにした。

どうしても、手に入れたかった。
抱いてみたかった。
特別、好きだった訳じゃない。ただミステリアスな魅力に触れたかった。



「こんなこと言うの、恥ずかしいんだけど」
「…、ん」
「忘れらんないの」
記録したばかりの帳面の頁が音を立てて捲れていく。
圭織の髪が靡く。
「吉澤、見る度に思い出しちゃって」
「…」
「欲しく、なる」
170 名前:Lesson16 投稿日:2002年05月26日(日)11時07分40秒
「圭織…」
「…ね、…おかしい、でしょ?」
「……なぁ、圭織」
「ほんと、変だよ。圭織。こんなこと…」
肩を掴んでも、何かにとり付かれた様に言葉を止めない。


「―――生徒っ、好きになるなんてっ…!」


「…圭織」
「やだよ、圭織!毎日毎日暗い準備室であんたのこと待ってるっ…の」
「どうしたんだよ」
「だけど、待たずにはいられなくてっ…」
段々声が高くなっていく。大きな瞳から今にも涙が零れ落ちそうだ。

「何があったんだよっ…!」

一際、声を大きくして私は圭織に口付けた。
「…よ、し…」
「―――私が好きなら、素直にそう言えばいーんじゃんか…」
「……」
ゆっくりと指を滑らせて。首元に舌を這わせる。
171 名前:Lesson16 投稿日:2002年05月26日(日)11時15分51秒

誰が、一体ここへ来たのか。

大体の察しは付いている。


今日、私が屋上で。
昼休み、屋上、待ってる―――
172 名前:ING 投稿日:2002年05月26日(日)11時20分44秒
>>157
梨華ちゃん、積極的かつ負けません。
いしよし的にはこの次の更新が進展あり、かも…
>>158
お待たせして申し訳ありませんでした!これからも宜しくお願いします。
ごっちんに負けてませんよ〜。実はごっちんの方が弱いかも?
>>159
頑張ります、有難うございます!
>>160
本当にその一言を言って頂けると…
嬉しいです。有難うございます。
>>161
ありがとうございます。更新、遅れ気味ですみません。
>>162
有難うございます!これからも頑張るので宜しくお願いします!
>>163
次はこんな展開になってしまってすみません(w
相変わらずエロ作品…
>>164
更新遅れ気味でごめんなさい!これからも頑張るので
どうぞ宜しくお願いいたします。
173 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月26日(日)17時40分10秒
おお〜っ、待ってましたぜ。
すごく好きな作品なのでうれしいです。黒い吉澤イイ!
この先の展開楽しみにしてます。
174 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月26日(日)18時32分42秒
( ○`ー´)y−~~

黒ヨスコ・・・最高っす。
175 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月26日(日)18時59分04秒
待ってました!!!お帰りなさ〜い
いい意味で期待を裏切られました!(w
かおよし?よしかお?もなかなか面白いですねぇ〜、いい感じです。
エロ歓迎!!(w
またこの先の展開期待しております。がんがってください。
176 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月26日(日)19時24分08秒
待ってました!かなりいいですね〜。
期待してますよん。
177 名前:ING 投稿日:2002年05月26日(日)19時41分32秒
申し訳ありません、170と171の合間が抜けてます。追加です。

>>170-171

「…、やめ、っ…」
「やめて、とか言っちゃうの?」
「ん、…んっ…」
私の手の動きに、少しずつ我を忘れてゆく腕の中の彼女。
その体温が徐々に上昇していくのは、容易に分かった。

「今日、…ねっ…」
「……ん?」
「今日…、A組の生徒が…来たの」
絶え絶えの息の下、ぽつり、ぽつりと圭織はそう口にする。
「A組?」
真希の線は、最初に消えた。
準備室に来るということは、大体が私のファンの連中。
度々、圭織は嫌がらせを受けていたらしいと言うことを風の噂で耳にした。
何も話さない圭織。私を笑顔で迎え入れる圭織。…何も聞いてなかった。

「その子、ね…吉澤のこと、本気、なんだってよ…」
「…ふぅん…」
「こんなの慣れてるはずなのに、何か気になっちゃ…って」
膝丈の麻のスカートの裾からゆっくりと手を忍ばす。
イヤ…、と小さく吐息だけで反応する彼女。

「悔し…っか、っ…!…」
「もう、いいから。圭織…」
「圭織…、不安になっちゃ…て、」

「いいから、集中して」


耳元で甘く囁く。
次第に、力の抜けていくその身体を支えて。

口付けた。
178 名前:くわばら。 投稿日:2002年05月27日(月)02時38分11秒
お、再開してますね!
更新ご苦労様です。続きが読めて嬉しい限りでございます。
179 名前:更新の前に… 投稿日:2002年05月27日(月)16時45分17秒
更新に随分と間があいているので、ここで主要登場人物の紹介・復習。


吉澤ひとみ(16) 主人公。彼女のプロフィールはあえて書きませんね(w

石川梨華(16)  吉澤のクラスメイト。成績優秀。風紀委員。

後藤真希(16)  吉澤の幼馴染。両親は離婚し、荒れた家庭環境。

矢口真里(18)  吉澤家の家政婦。そこに至る経緯はL3を参照願います。

松浦亜弥(15)  吉澤の異母姉妹。母親は既に死去。父に引き取られる。

飯田圭織(23)  吉澤・石川・後藤らの学校の教師。教科は化学。

柴田あゆみ(16) 石川の友人。情報通。

中澤裕子(27)  吉澤・石川・後藤らの学校の養護教諭。別名、姐御。


以上が主要登場人物です。後にまた色々新キャラも増えていくかと… 

180 名前:Lesson17 投稿日:2002年05月27日(月)16時52分51秒
―――先生、…飯田先生。

―――…どうしたの?あなた、A組の生徒でしょ?

―――はい。……実は、先生に聞きたい事があって…

―――何?授業の質問?

―――違うんです。…その、吉澤さん、の事で…

―――吉澤の事…?


―――先生と、吉澤さんは…どんな関係なんですか?


―――…どんな、って…別に何もないけど。

―――本当に?

―――本当だってば



―――わたしは、本気ですから。



――――本気…?


181 名前:Lesson17 投稿日:2002年05月27日(月)17時02分57秒
  ―――吉澤のこと、本気、なんだってよ…――


軽く舌打ちをする。
「…何だよ、本気って……」
本気、と本気じゃない境目なんてあるのだろうか?

まだ昼休みまでは1時間近くあるというのにも拘わらず、
私は準備室からまっすぐ屋上へと向かった。
ブレザーの胸ポケットから、残り数本しかない煙草の箱を取り出す。
「…今月、何箱目だっけな……」
何度となく真希からやめろ、と言われ続けてもう2年。
一ヶ月あたりに吸う本数は年々減るどころか、増えるいっぽうだ。

苛立ちを消す為に
自分の存在をぼやけさせる為に

そして
182 名前:Lesson17 投稿日:2002年05月27日(月)17時03分49秒



  ―――もう2度と、アイツを思い出すことがないように…
183 名前:Lesson17 投稿日:2002年05月27日(月)17時06分49秒

忘れられなかった。


離れなかった、あの笑顔も。声も。肌の匂いも。唇の感触も。

香水を変えてもアイツの匂いは消えない。



恋なんて、一生出来ないと

思っていた。
いや、


思っている。


アイツが消えないから。



184 名前:Lesson17 投稿日:2002年05月27日(月)17時11分49秒
ぼんやりと空を見上げては、ゆっくりと煙を吐き出す。

息が詰まる。
アイツを、思い出すだけで呼吸困難に陥る。


あの痛みがまた、私を襲う。


想っても、想っても叶う筈がない。
叶ったところで成す術もなければ、愛し方も分からない。
もう、笑うのはやめて欲しい。
頑張れ、なんて問い掛けるのはやめて欲しい。



置いて行かないで。


私を、置いて行っちゃ嫌だ―――




185 名前:Lesson17 投稿日:2002年05月27日(月)17時25分19秒


「ひとみ、将来何になりたい?」

「なっちはね、天使みたいな人になりたいんだ」

「真っ白な羽と人のことを、妬んだり羨んだりしない心が欲しい」


なつみは


生まれつき、少し脳に障害を持っていた。
「知恵遅れ」と母親に罵られ、父親に蔑まれ、家庭内暴力の標的。
6つ違いの妹からも、散々な目に合わされていた。

彼女は、実際は私より4歳年上だった。

特殊学級に在籍するには、知能レベルが他より極めて高く、
かと言って普通学級に属せば、勿論他の人よりは格段に劣る。
その上、元々身体が弱かった彼女は持病の喘息を抉らせて2年も学校には
通うことが出来なかった。その為、学年を落として私と同級生。

小学校の頃は、さすがに4学年も落として通っていたせいもあり
同級生の間でなつみは、賢い方だったらしい。

私が彼女と出会ったのは、中学2年の時だった。




186 名前:Lesson17 投稿日:2002年05月27日(月)17時33分39秒
なつみが軽度の障害者だということを知ったのは、ずっと後のこと。

彼女は勉強こそ出来ないものの、作文などでは常に賞を貰っていたし
外見も、小柄で可愛らしく全くの健常者とちっとも変わらない。
言葉を交わしていても、違和感はなかった。

ただ、ひとつひとつの会話の間だけは異様に長い。

考える時間が必要だからだ。
彼女は宿題を終えるのに、人の倍近く時間がかかっていて
私はいつも、「のろまだなぁ」なんて茶化して笑ってやった。


「あの人と付き合っちゃダメだよ。何かあの人、おかしーじゃん」
真希はそう言って私を咎めては、なつみと一緒に居ることを阻止した。
構わなかった。
誰が、何と言っても一緒にいたかった。


187 名前:Lesson17 投稿日:2002年05月27日(月)17時42分03秒

なつみに初めて口付けた時、


彼女は頬を赤らめて、ずっと下を向いたまま困ったような表情をしていた。
愛しくてならなくて。もっと、もっと、一緒にいたくて。
そのまま、ぎゅっと彼女を抱きしめた。


「ねぇ、ひとみ。…好きってどんな気持ちのことゆーの?」


私の腕の中で、あったかい、と口にした後なつみはそう呟いた。
「…好き?」
「なっちね、たぶん、人から好きって思ってもらったことないんだ」
親に愛されない子供。
必要とされない子供。
それが自分だ、と前に話していたことを思い出す。

「そんなこと…あるわけないじゃんか……」




188 名前:Lesson17 投稿日:2002年05月27日(月)17時48分37秒

「いいの、ほんとのことだから」
「…なつみ…」


「だから、教えて?…好き、ってどんな気持ちなのか」
「……」

「ひとみが、なっちを一番に好きになる人になって欲しいな」



涙が出た。
なつみには、不思議そうな顔をされたけれど。
それはあまりにも無垢で。純粋な。

例えるならば、荒っぽく触れれば壊れてしまう硝子細工のように。



「ずーっと、ずーっと、一緒にいたいな。ひとみと、二人で」

「いやなことみーんな忘れられちゃうんだもん」



「なっち、たぶん今ひとみに恋してるんだよね。…きっと」


きっと。

189 名前:Lesson17 投稿日:2002年05月27日(月)17時56分37秒


私は、なつみを


傷つけた。

その日私は、天使の羽根を片方折ってしまった。



部屋のベッドに寝転んで、無防備に微笑む彼女を、

押し倒して。
嫌がるのを、無理矢理に口付けて。



傷つけた。

私は、天使の羽根を片方折ってしまった。




もう2度と私には心を開かなくなったなつみ。

誰にも、心を開かなくなったなつみ。




気がつけばなつみは、どこにもいなくなっていた。

190 名前:Lesson17 投稿日:2002年05月27日(月)18時03分34秒
「頑張れ、ひとみ!」


「頑張れ」

「頑張れ」


それがなつみの、口癖だった。
帰り際に別れるときはいつもそう口にして、拳を作った。
「何を頑張るんだよ!」
笑って、軽く。
笑い合って。





なつみがいなくなって、私は初めて真希を抱いた。

抵抗するどころか、何度も何度も私の唇を求めては
真希はずっと「アタシのこと、好き?」と問質しては、安心する。

真希だけでは飽き足らず、いろんな女を抱いた。
どれだけの数を抱けばなつみが消える?どうすれば私の身体から消える?

煙草を吸った。
飲酒もした。
クラブにも行った。
バイクにも乗った。
髪も染めた。
ピアスの穴を開けた。
親に反抗した。



何をしても、なつみは消えなかった。

191 名前:Lesson17 投稿日:2002年05月27日(月)18時09分15秒

音を立てて、風が私の髪をゆっくりと靡かせていく。
校庭の生徒達の笑い声が聞こえる。


私は、存在している。



なつみの笑顔も、声も、全て。全て。
一緒に過ごした時の1カットが、全て綿密に鮮烈に。思い出していた。


「…何で、……」

身体が小刻みに震えだす。


あの日私は、天使の羽根を片方折ってしまった。



192 名前:Lesson17 投稿日:2002年05月27日(月)18時17分48秒
遠くの方で、授業の終わりを告げる鐘の音が聞こえたような気がした。



――――好きってどんな気持ちのことゆーの?




どうして?
どうして、いとも簡単に好きだなんて云える?

なつみのあの言葉を汚して、好きだと口にする。


好きなんて気持ち、分からない。
ましてや、人を好きになることなんて出来ない。

人を好きになったことなんてない。
一体私は何がしたいんだ?誰かを好きになりたいの?
行き着く先は、いつも同じ。
一度だって、抱いた女に「好きだ」と口にしないことはなかった。

結局、探してるものは見つからない。




193 名前:Lesson17 投稿日:2002年05月27日(月)18時19分48秒



「ひとみちゃんっ!」


あの日私は、天使の羽根を片方折ってしまった。



「ごめんね、お待たせ」



好きなんて気持ち分からない。
人を好きになったことなんて、ない。


194 名前:ING 投稿日:2002年05月27日(月)18時27分12秒
少し、長めに更新致しました。なっちファンの方ごめんなさい(w

>>173
ありがとうございます!
今回の吉澤はあんまり黒くなかったですね(w
こんな展開になってしまいました…
>>174
ありがとうございます!本当にそう言って頂けると嬉しいです。
次回からまた吉澤は黒くなっていくかと…(w
>>175
ありがとうございます、エロ歓迎してもらえて良かった(w
拙いエロですが(ww
飯田先生はもう少し後にまた登場します。
>>176
ありがとうございます!
これからも頑張るので、どうぞ宜しくお願いいたします。
>>178
更新がずっと遅れ気味になってしまって申し訳ありませんでした。
これから頑張りますので宜しくお願いします。
195 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月27日(月)20時47分53秒
お〜すごい…
この小説はまだまだ奥が深そうですね。
先が読めないところがいいです。
作者さん、がんがって!!
そして、黒よし大歓迎(w
196 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月27日(月)22時00分14秒
よしこの意外な過去が…気になりますねぇ。
これからも期待してます。
197 名前:たろ 投稿日:2002年05月28日(火)02時11分06秒
読んでて胸がズキズキしました。
そうか、そういうことがあったんですね〜
これからどうなっていくのか、とっても楽しみにしてます。
198 名前:Lesson18 投稿日:2002年05月29日(水)17時09分25秒

「…どうしたの?」

声を掛けても全く無反応の彼女を覗き込んで、もう一度呼びかける。
「具合でも悪い?」
重くも、何ともない不自然な沈黙。
髪を乱す風。今日は随分と、風の強い日だ。屋上だから尚更だろうか。


「…ねぇ、ひとみちゃん?」
彼女の目には、多分「わたし」は映っていない。その先は何かの面影。

――前にも見たことがあった。こんな目の色をしていたことを、思い出す。









199 名前:Lesson18 投稿日:2002年05月29日(水)17時15分03秒

ちょうど、こんなふうに風の強い日だった。
突然降り出した霧雨に、わたしは鞄を頭に乗せて家までひと走りしようと。



200 名前:Lesson18 投稿日:2002年05月29日(水)17時27分25秒

走りかけていた時だった。
通りかかった、堤防の隅にそれとなく視線をやった。


「…お前、捨てられたの?」

どんどんと地面を濡らして、雨足は早くなっていく。
雨音で声が途切れ途切れにしか聞こえない。
気が付くとわたしは、足を止めていた。

(―――…吉澤、さん?)


教室での彼女はいつも無愛想で、ぶっきらぼうで、目付きも悪くて。
わたしは、彼女が嫌いだった。怖かった。心のどこかで、見下していた。
バカみたい、本当は弱いくせに。歯向かっちゃって。遊び人。卑怯者。
みんなどこがいいの?どこがかっこいいの?

201 名前:Lesson18 投稿日:2002年05月29日(水)17時52分41秒

中学時代から、ずっと優等生と呼ばれて育ってきたわたし。

そうやって生きているのが一番楽な方法だから。
目立たないように、目を付けられないように、反感を買われないように。



「お前シロ、ってゆーの?…の割にはきったねーな」

薄汚れた子猫を抱いて。目を細めて。いとおしそうに見つめるその姿は、
間違いなく吉澤さんだったけれど、教室での彼女ではなかった。


「…捨てられたなんて、私とおんなじじゃん」

呟いたその声。
どこか、遠くを見つめていた。ずっと彼方を。面影を。

「人間だって猫だって、…置いてかれちゃたまんないよ」
傘を持っていれば、彼女をいれてあげられるのに。
場違いなことを思っていた。

ただ呆然と立ち尽くして、わたしはその姿を追っているだけだったけれど
何だかとても切なくて。哀しくて。
彼女が、儚いものに見えていた。

「…一緒に帰ろっか、シロ」



202 名前:Lesson18 投稿日:2002年05月29日(水)18時00分59秒

本当は、わたしも彼女をずっと好きだったのかもしれない。
他の子と同じように、ドキドキしていたのかもしれない。

彼女が何かしでかす度に、普段は興味のない噂話に耳を傾けていた。
もっと彼女を意識するようになっていた。
わたしなんて、眼中にあるはずがないのにどこかで期待していた。



「えー、あんたが好きなのってアイツだったの?」

「やめときなよー、遊んでるって一目でわかるじゃん」

分かってる。
知ってる。

違う。

ほんとうの、あの人は―――


203 名前:Lesson18 投稿日:2002年05月29日(水)18時07分30秒


「…おい、……おいってば」

その声でわたしは、はっと引き戻される。
「あ、…ごめん…何かわたしの方がぼーっとしちゃってた」
「何だよ、白昼夢?」
「自分の方が上の空だったじゃない、さっき」
「……」
一瞬、言ってはいけないことを言ってしまったような気がした。
すぐ後に妙な緊張感が走ったからだ。

「何でもいいけどさ、さっさと食べよ」
「…あっ、うん!」


204 名前:Lesson18 投稿日:2002年05月29日(水)18時17分45秒

「…ねぇ、…聞いてもいい?」
水筒のお茶を汲みながら、わたしはゆっくりと尋ねる。
「何?」
間髪置かずに答える彼女に至っては、全く警戒していない様子で
随分と前とは違って、穏やかに見えた。

ただ、その奥に寂しさが見え隠れしているような気がすることは除いて。


「おうちで猫とか飼ってない?」
「……はぁ?」
何でそんなこと聞くわけ、と吐き捨てるように呟いてわたしの入れた
お茶を一息に飲み干す。
「いいじゃない、教えてよ」
「……飼ってるけど」
何故か、嬉しかった。

「正確に言えば妹が、だけど」
「…そうなんだ…」
「たまたま、拾った猫でさ。欲しいっつーからやった」
「妹さんがいたなんて知らなかった」
「別にあんたに話してなかったから知らなくて当然なんじゃないの」
「……それは、…そうですね…」

少しの沈黙の後、急にひとみちゃんが吹き出した。
「やっぱあんたって、どっか変だよな」
笑いの意味が分からなくて、とりあえずわたしは苦笑い。




205 名前:Lesson18 投稿日:2002年05月29日(水)18時27分27秒

淡々とした、画用紙に描かれたような会話。

このままずっと、この時が続けばいいのに…
もう何度、こんな思いを胸にしたことだろう。一瞬が永遠になれば。
もしも彼女のこの笑顔が、わたしだけのものだったら。
わたしが彼女をいつもこんな風に笑うひとにしてあげられたら。

「…こんなに笑ったの、いつぶりだっけ……」
ひとしきり笑った後、彼女はそう呟いた。


「アイツといる時は――ずーっと、笑ってばっかだったのに…」

アイツ?
過去形?

「…アイツ、って?」
「……や、何でもない」

「何?誰なの?」
「何でもないって」

「何でもなくないじゃんか、教えてよ」

わたしは、調子に乗っていたのかもしれない。
いつもより優しい彼女に。
冗談っぽい軽い口調で、詰め寄って面白そうな表情で追求する。
――それが、彼女が一番嫌いな行為であることだったなんて気にもかけず。

「ねぇ〜、誰なのぉ?」



206 名前:Lesson18 投稿日:2002年05月29日(水)18時31分02秒

「――何でもないっつてんだろ!」

語気を荒げたひとみちゃんに、背筋がびくっとしたのを感じ取る。
「…あんた、何様のつもりだよ…偉そうに」
「……あ、あのっ…」
扱い方を知らない訳ではなかった。
踏み込んではいけないところを、知らない訳ではなかった。
分かっていたのに、怒らせた。

「…私のことが好きなら、もう二度とそんな事すんな」


207 名前:Lesson18 投稿日:2002年05月29日(水)18時40分19秒

ぐしゃり、と潰れた煙草の箱だけを残して
振り返りもせずに、彼女は校舎の中へと消えていった。

背中を追いかけようとも、引き止めようともわたしがしなかったのは


たぶん、「アイツ」のせいだ。
―――アイツといる時は、ずーっと笑ってばっかだったのに…


どこまでも無機質な涙がゆっくりと、筋を作っていく。
感情のない涙だった。
強く言われたことへのショックでもなく、恐怖とかそんなのでもなかった。
ただ、涙だった。
どこまでも、どこまでも流れるのは涙。


それは憐れみの涙だったのかもしれない。

もしくは、切なさの涙だったのかもしれない。



何気なく、他愛なく、交わしていた会話の1つ1つをゆっくりと噛締めた。
わたしの言葉に対する全てのひとみちゃんの返答。仕草。瞬き。
先生のこと、この学校のこと、さっきの授業のこと。
「…ひとみちゃん……」



「好き」


わたし、きっとすごく彼女が好きなんだ。



208 名前:ING 投稿日:2002年05月29日(水)18時46分12秒
なかなかいしよしは進展してくれません(w
次回は、やっと加護が登場予定です。

>>195
先、読めないですか。結構アリガチかなぁ…と自信を
失くしていたので、そう言って頂けてかなり嬉しいです。
ありがとうございます。今回もあんまり黒くなかったですね…(w
>>196
ありがとうございます!ご期待に添えられるか分かりませんが、
出来る限り頑張って書いていこうと思いますので宜しくお願いします。
>>197
そうなんです、そんなことがあったんですよ…(w
ありがとうございます!全力で頑張ります!
209 名前:ING 投稿日:2002年05月29日(水)18時51分31秒
訂正です。

>>201
反感を買われないように→反感を買わないように
>>203
210 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)21時31分15秒
お〜何か心にグサッと…きますねぇ。
ほんとにこの先どうなっちゃうんだ〜
すごい気になります。
作者さん続きも期待しております!
加護は登場に期待…(ワクワク
211 名前:Lesson19 投稿日:2002年05月30日(木)18時56分32秒

「ひとみ!」

呼ばれて、ゆっくりと振り向いた。
傾く陽を見ていた。夏が近いから、昼が長い。私の嫌いな昼が。
「…真希」
「遅くなってごめんね」
やんわりと微笑んで私の顔を覗き込む真希の髪に、そっと触れた。
「中間の成績悪くってさ。呼び出されちゃった」
一瞬、いつもとは違う私の仕草に真希は戸惑いの表情を見せた。
けれど、別段気にかけていない風を装っているのだろう。

だめだな、真希は。
まるっきり心ん中全部、わかる。

「そ、か」
「……うん」
「もっと頑張って勉強しなきゃ」
「ん。…分かってる」
「人の事、言ってらんないけど」



「…何か、あった?」

真希の瞬きの回数が、いつもより多い。
一本一本丁寧に手入れの行き届いている髪を、指で遊ぶ。
呼吸の度に、ゆっくりと胸が上下している様を見つめていた。
「…答えてよ」
見てばっかいないで、と付け加える。

「や、別に何もなかったから」




212 名前:Lesson19 投稿日:2002年05月30日(木)19時23分05秒

「…だから、答えなかった」

「―――…うん」
真希は、それ以上問い詰めたりはしなかった。
この間の一件が効いたのだろうか。

「もう夏だねー…」


思い出したかのように、目を細めてそう呟く。
「…うん」
会話が進まないのはいつもの事。低いトーンでのやりとりはいつもの事。
物足りなく感じるのは気のせいだ。

あの女の声が高すぎるだけ。

「いい夏になればいいな」
視線を私の方へ向けて、言うのは何かの暗示。

「今年は、行こうね」
「……何処に?」

「去年は受験で行けなかったけど、一昨年まで毎年行ってたじゃん」
屈託なく、真希は笑う。

「海だよ、海」
「――海…」
噛み締めるように、繰り返す。

213 名前:Lesson19 投稿日:2002年05月30日(木)19時31分37秒


一昨年の夏は、まだなつみがいた。


真希と地元の友達数人とで計画した、海行き。

私は、なつみを誘おうとは思わなかった。
なつみも、行きたいとは口に出さなかった。
「約束」をしていたから。

夏は、二人っきりで海へ行こうね。



あの時は、今よりもっと幼かった。子供だった。
軽い口約束と絡ませた指。

友達と行った海へ、ちょうど一週間後になつみを連れて行った。
水玉模様の水着を着て、浮かれていたなつみ。人は珍しく少なくて。
余計にそれが、嬉しかった。何もかもが楽しかった。
夕方から降り出した雨。
そのせいで人が少なかったのかな、なんて言葉を交わしながら。

ずっと雨に降られていた。
濡れることなんて、全然構わなかった。

笑っていた。

214 名前:Lesson19 投稿日:2002年05月30日(木)19時37分44秒
「あの時、面白かったよねー!ひとみがさー…」


「―――やめよう」

頬を、僅かに紅潮させて声を高くして喋ろうとした真希に呟いた。
「…何で?」
「海の話は、したくない」
「……」
分かっている。
いい加減、ひきずってもいられない。
影ばかり見せて、いいことなんか何もない。


それでも私は純粋な優しさに触れたことがあるから、優しさが分からない。
真剣に好きになったことも、好きになられたこともあるから

愛し方が分からない。


「…やっぱ変だよ、今日のひとみ」

215 名前:Lesson19 投稿日:2002年05月30日(木)19時43分06秒

夏が近付く度に、なつみを思い出す。
七夕も、夏祭りも、八月の誕生日も夏だったから。

どうしてだろう?
最近はずっと、思い出すこと少なかったのに。
今日の昼休みの前から、何か聞くたびに聞くたびに思い出してしまう。

なつみの髪はもっと柔らかかった。
昼が好きだった。
夜になんて、なって欲しくなかったし、暗闇は嫌いで。


「今、アタシのこと見てないでしょ?」


ふいに鋭い視線を向けられて、私は思わず身を強張らせた。
「…真、…」
「もういい。…帰ろ、早く」
「……」
216 名前:Lesson19 投稿日:2002年05月30日(木)19時53分13秒


帰り道、真希は何度も笑った。
いつものように無邪気に、転がるように声を上げて。何度も。

「…ただいま…」
「お帰りなさいませ」
真里ではなく、最近顔を覚えた新米の家政婦が出迎える。
「真里は?」
「今日は午後から実家に帰るとかで、2・3日休暇とったみたいですよ」
「…ふぅん……」
朝の笑顔を思い出して、何となく胸が締め付けられた。


「っ…」
自分に舌打ちをする。
壁を殴りながら階段を一段一段上っていく。
自分のこんな感情に、腹が立っていた。何にも動じないはずなのに。
「…バカじゃん、こんなの」
洒落にもならない。


「――あははっ、もー!亜弥ちゃんってばー…」
「あいぼんこそー!…」


217 名前:Lesson19 投稿日:2002年05月30日(木)19時57分44秒

突き当たりの亜弥の部屋から、話し声がする。
…確か"あいぼん"、という愛称には聞き覚えがあった。

「あいぼんはね、本当は優しい子なんだよ」

「前だってね…」

「あいぼんはいい子なんだってば、ひとみ」


それも、そのはずだった。


"あいぼん"は―――なつみの、6つ違いの妹。
218 名前:Lesson19 投稿日:2002年05月30日(木)20時24分42秒


勢い良く扉を開いた私に、二人は揃って目を見開く。

「…お姉ちゃん…?」
「ひとみさんっ!?」

戸惑いの声と、明らかに嬉しさを含んだ声。
私は眉根に皺を寄せたまま、ゆっくりと彼女を見据える。
―――多分、間違いないだろう。
昔はもっときついイメージだった。面影は今でもやはり残っている。
黒目がちの瞳と、笑う時にキュッと上がる頬。


「…亜弥、――誰?」
わざとかまをかけて、私はそう尋ねる。
「……学校の部活で一緒の、後輩のあいぼん…」

「初めましてっ!加護亜依って言います!」


「…加護……?」
――なつみの名字と違う。
「はいっ!」
「あいぼん、お姉ちゃんのファンなんだって」
私から視線を外して、亜弥はそう口にする。
「ひとみさんが中学の時から、ずっと私ファンだったんです!」
「……それは、…どーも…」




219 名前:Lesson19 投稿日:2002年05月30日(木)20時29分36秒

いいことを、思いついていた。

多分それはものすごくいいこと。
外堀からばかり攻めても、城主は切り落とせない。
正面から攻めなければ城主は落ちない。
…けれど

小さい頃から、回り道をするのが好きだった。


もう二度と会えないなつみ。私の中では、一度死んだなつみ。


その存在の意味を確認する為にも、
ずっとひどい目に合わされていたなつみの痛ましい笑顔の報いの為にも、


私は、やる。





220 名前:ING 投稿日:2002年05月30日(木)20時37分24秒
吉澤が再び黒くなっていきます…

>>210
ありがとうございます!ご期待に添えられるかは分かりませんが
頑張って書こうと思いますので、よろしくお願いします。
221 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月30日(木)20時54分27秒
何だかヨスコが黒いのを通り越して痛いっす。(^^;;
何より自分自身を深く傷つけてるのが痛い。
加護がなっちの妹っていうのが今までにない設定で新鮮ですね。
では続き楽しみにしてます。
222 名前:くわばら。 投稿日:2002年05月31日(金)04時13分33秒
はらはらわくわくどきどき。
あいぼんは利用されちゃうのかしら(:_;)
223 名前:たろ 投稿日:2002年05月31日(金)07時04分20秒
黒い吉、いったい何をするつもりなんだ?
わ〜〜〜〜〜気になる気になる…
作者さんがんがってください。
224 名前:nanasi 投稿日:2002年06月05日(水)21時10分27秒
いやぁ〜おもしろいです!
たまたま目に止まって一気に読ンじゃいました。
続きメチャメチャ気になります。作者さん、先を読ませない様に展開させるストーリー
お見事でございます! 頑張ってくださいね
225 名前:かやま 投稿日:2002年06月14日(金)13時30分03秒
おもしろいですね〜。
友人関係とかが割と現実に近い感じなのに独自の世界が出来てますよね。
いやぁ〜尊敬です。
続きお待ちしてます。
226 名前:Lesson20 投稿日:2002年06月19日(水)17時21分39秒

「…ごめんね、何か」

外は、いつの間にか雨が降り始めていた。
真っ赤な傘は、二人で1つ。私と彼女。
「何でですか?」
「…いや、何か私なんかが送ることになっちゃって」

亜弥は、ピアノのレッスンがあるとかで「ごめんなさい」と何度も口にして
代わりに例の彼女を、亜依を送って行くように頼んできた。
快く受け入れた私を、きっと亜弥は不審に思っていることだろう。

「何言ってるんですかぁ」
亜依は肩を竦め、はにかみながらちょん、と肩を小突いて来た。
「いや、こんなんが送って行くんじゃ嫌かなー、って思って」
最初に下手に出て、女を優越感に浸らせるのは一種の癖であり、技だった。
確信犯。そんな言葉が自分にまでも当て嵌まるとは。
罪の意識からないなんて、とことん私は悪い女なのだろう。

「嫌なわけ、ないです」
「…そう?」
「明日、学校で皆に自慢しちゃうもん」
雨足が速くなる。
それでも私達の歩調はそのまま。

「…ほんと言うと、亜弥ちゃんがピアノでちょっとラッキー、かな」
悪戯っぽい笑みを浮かべて、その黒い瞳に私を映す。

227 名前:Lesson20 投稿日:2002年06月19日(水)17時23分52秒

いける。
多分、私はこの少女を…いや、この女を



堕とすことが、出来る。


228 名前:Lesson20 投稿日:2002年06月19日(水)17時37分19秒
夕刻であるせいか、雨のせいか、極端に人通りは少なくなってきていた。

「雨、強くなってきましたねー…」
「…そうだね」
「すみません、送ってもらっちゃって」
「いーっていーって。ほんと、気にしないで」
「すぐそこなんで、もうここまででいいですよ?」

「……いや…」
「…?…」
「…ちゃんと、送って行く」



「ほら、もっとこっち入んなきゃ濡れるよ」
私はぐいっと亜依の肩を引き寄せた。
きゃっ、と小さく声を漏らしたその姿は明らかに戸惑っていた。
「あ、あの……」
「いーから、もっとこっち寄りなって」
「……」
少しずつ、私から徐々に距離を縮めていく。
亜依の身体が少し強張っていることが分かった。鼓動は聞こえそうな位に。


229 名前:Lesson20 投稿日:2002年06月19日(水)17時43分33秒
「何?恥ずかしいの?」
頬に紅くして、亜依は俯く。
おかしいぐらいに新鮮で、おかしいぐらいに純粋。

壊したい。


私を想う気持ちから、何から何まで全部。
この女の夢を全て壊してやりたい。

それが、最初になつみを傷付けた代償になるのならば。



「かわいーね、アンタ」

身を屈ませて、俯く亜依と視線を合わせた。
「…可愛く、なんかないです…」

「ねぇ」
「……?」


「キスとかしちゃっても、いーかなぁ?」
230 名前:Lesson20 投稿日:2002年06月19日(水)17時57分39秒

「…吉澤、先、…」
「…黙って」

そっとそのまま彼女を抱き寄せて、耳元で囁く。
「目、閉じて」
「…」
「ほら、早く」
例えるならば、薄く色づき始めた蕾のような彼女。
夏の雨の日に感じる、独特の雨の匂い。少し濡れた髪。
「怖くなんかないから…」
「……」
すっと息を吸い込んで、亜依は静かに目を閉じた。


途端に、小さな唇と自分のそれを重ねる。
最初はゆっくりと、少し長めに。震えていた。肩も、睫毛も、唇も。
一度唇を離し、啄ばむように何度か味わって。
「…舌、入れていい?」
前髪を掻きあげてやって、泣きそうな瞳にお願いをする。
「先、輩…」
「……大丈夫、気持ち良くしたげるから」
「……」




231 名前:Lesson20 投稿日:2002年06月19日(水)18時14分33秒

「誰かに、見られるかも…」
「……いーじゃん、見られたって」
「…でも……」
「亜依は私とこうしてること、嫌?」
首を振る仕草が、可愛かった。

「…じゃぁいいじゃん……」

幼いその中の領域を私が犯していく。壊していく。満たしていく。
その言葉だけが背筋をビリビリさせる。
「…ふ、…ぅっ…」
亜依は僅かな間だけなのにも拘わらず、既に苦しそうに息を漏らす。
ぎゅっと抱きしめると、答えるように私にしがみ付く。

「…先輩……」
「亜依の口ん中、甘い味、した」
「…ゃ、…」
「ど?…気持ち良かったでしょ?」
「……」
「今日は、ここまでね」


"今度逢った時は、もっと気持ち良い事してあげる"



「ここからは、一人で帰ります」
「…うん」

「また、会って下さい」
「うん」
「また、お話して下さい」
「ん」
「また、どこか一緒に行って下さい」
「うん。行こうね」
「それから、それから……」

「またキスして下さい、でしょ。亜依…」


再び下りる彼女の目蓋。
口付けるのは、私。

232 名前:Lesson20 投稿日:2002年06月19日(水)18時22分51秒

ひどく、疲れていた。
慣れない口調で、なるべく優しく亜依を導くことには。


「……なつみ…」


一体、君は何処にいる?

もう随分と、君の事を忘れたよ。
柔らかい頬も、唇も、髪も、声も、癖も。思い出せない位。

君を思い出そうとする度に、あいつが邪魔をする。
 "ひとみちゃん"
ねぇ、お願い。
頭の中があいつで一杯にならないうちに、早く、私の前に現われて。

切り札の1つは、落された。
今日、私に堕ちた女がひとり。


「…長期戦になるかもしれない」

「それとも、すぐかもしれない」


壊してやる。


何もかも、奪ってやる。


233 名前:ING 投稿日:2002年06月19日(水)18時23分27秒
更新しました。ちょっと急いでるのでレス返しは次回に…
234 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月21日(金)00時22分16秒
黒ヨスコ面目躍如。
次回、楽しみにしてます。
235 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月23日(日)13時49分57秒
痛い…
けどおもしろいです!!!
この小説かなり好きなんでこれからもがんがってください。
236 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月17日(水)14時11分27秒
更新お待ちしています。
INGさんガムバッテ
237 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月22日(月)18時01分45秒
INGさん、頑張ってくださいね〜!
オイラも更新待ってまふ。。
続きが気になる…
238 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月22日(木)14時48分04秒
( ^▽^)<続きが読みたい!

       が読者の本能!!
239 名前:さう 投稿日:2002年08月25日(日)15時19分30秒
吉澤「ねえ、ごっちん今日渋谷行こ!」
石川「ねえあたしもいい?」
吉澤「うんいいけど」
後藤「いいよ〜行こ!」
渋谷についた
吉澤「ね!この水着どう?」
後藤「いいんじゃない?」
240 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月28日(水)02時28分23秒
>>238
はげどん

この作品大好きなもののひとつだったので放置はカナスィ。。
241 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月09日(月)14時16分04秒
INGさん頑張ってください。待ってますよ。
242 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ
243 名前: 投稿日:2002年09月10日(火)13時07分25秒
すみません。 間違って、書き込んでしまいました。
削除依頼は出しました。 ほんとうにごめんなさい。
今から、お話の方を読ませていただきます。

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