インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板

ちょこっとFantasy

1 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時21分32秒
妄想物語
2 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時22分22秒
「ま、まいった!」

そう言うと床に膝をついたままの女は、目の前にいるもう一人の立っている女に頭を下げた。
立っている女の手には剣。
その女は自分の足元にあるもう一つの剣をしゃがんで拾い、膝をついたままの女の目の前に差し出した。

「いつまで座ってるんや…騎士団長がみっともないで?」
「そうやね…相変わらず強いわ。かなわん」

膝をついて座っていた女はようやくゆっくりと立ちあがった。
3 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時23分32秒
ここは、「ブレゼル」という国の騎士専用の訓練場。
周りからは剣と剣がぶつかりあう金属の音が鳴り響く。

膝をついていた女は剣を手に取ると、腰につけていた鞘に収めた。

「さ、行こか」

女はそう言って、もう一人の女を先導しながら、訓練場から出た。
長い廊下を歩く二人。
やがて、一つの部屋の前にやってきた。
女は部屋の鍵を開け、中にもう一人の女を招き入れた。

「ま…そこら辺適当に座ってや」

そう言うと女は自分専用の豪華な椅子に深く腰掛けた。
4 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時24分23秒
「なあ裕ちゃん、ほんまに騎士団に入らへんの?…あんなに強いのに。もったいないで」

豪華な椅子に座った女は、もう一人の女にそう言った。
もう一人の女…中澤は間髪入れずに答えた。

「入らへん…なんでかと言うとな」
「なんでかと言うと団体行動が嫌なんやろ?」

中澤は言いたい事を先に言われて少しムッとした表情をした。

「いっつも同じ事いってるやんか」

騎士団長の女はそう言ってケラケラと笑った。
5 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時24分55秒
「そんな事はええけど、今日はなんでオレを呼び出したんや?みっちゃん」

中澤は照れ隠しなのか、急に強い口調になった。

「あ、そうやった」

騎士団長の平家は、深く座っていた椅子に浅く、前のめりぎみに座り直した。
6 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時25分51秒
「今日呼び出したんはな、実は一つお願いがあるんやけど」
「お願い?」

中澤は訝しげな顔で平家を見つめた。
平家はそのまま気にせず、話しを進めていった。

「えーとな、最近のキルラーの話、知ってるか?」
「知ってるで。なんか物々しいんやて?」
「そうなんや」

キルラーはブレゼルからそれ程離れていない、いわば隣国だった。
民主主義国家のブレゼルに対して王制をひくキルラー。
両国の間には微妙な緊張があった。
7 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時26分45秒
平家はそのまま話しを続けた。

「キルラーは厳戒態勢らしいんや。軍備増強もしてるらしい。こっち…ブレゼルには何の通達も無しにな」
「ブレゼルとしては見て見ぬふりってワケにいかんのや」
「で…偵察したいんやけど、騎士団が動くと色々マズいんや」

黙って聞いていた中澤はそこで言葉を挟んだ。

「つまり…スパイしろと?」

平家は小さく頷いた。
8 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時27分35秒
「民間の旅行者を装ってな。裕ちゃんは腕も立つし、頭も切れるし適任かと思ってな」

中澤は両腕を組んで、「う〜ん」と唸った。
それを見て平家は、さらに前のめりになり小声で話した。

「これはあやふやな情報やけどな…なんでも魔物が出るらしいで?」
「裕ちゃんそういうの好きやろ?興味あるやろ?」
「魔物と戦って自分の腕試してみたいやろ?」

中澤は平家をまじまじと見詰めながら言った。

「みっちゃん…いつから商売人になったんや」
9 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時28分38秒
「まあ、そりゃそうやけどな」

中澤はそういうと一つ大きく伸びをした。

「裕ちゃんもこのままプーやってるワケにいかんやろ?」
「プーって言うな!自由人やねん!」
「自由人ね」

平家はクスクスと笑った。中澤はあからさまに不機嫌そうな顔をし、立ちあがった。

「分かった。ええで。でも、一人で行くんか?」

平家も立ちあがった。

「いや、助手をつけるで。助手も民間人やけどな」
「そか。分かったで。ひき受けた」
10 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時29分25秒
平家は椅子から離れて、ドアの方へ歩いていった。
中澤はまた一つ伸びをした後、ゆっくりとドアに向かって歩いた。
平家がドアを開ける。

「じゃ…ほんま頼んだわ」

平家の言葉に中澤はゆっくりと頷いた。
そしてそのまま部屋を出て、廊下を歩いて行く。
廊下を歩きながら、内心思った。

「面白くなってきたで…」
11 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時30分55秒
長い長い廊下をあちこち曲がりながら、沢山あるうちの一つの廊下の終わりまでやってきた。
そして、目の前にあるドアを開けると、そこは広大な空間に大量の本。
ここ、国立図書館はさっきまで居た騎士団の建物と繋がっていた。
いや、ブレゼルの国立の建物はすべて隣接して建てられていて、すべての建てものに外へ出なくても行けるようになっていた。

中澤は目がくらむ程沢山ある本には目もくれず、真っ直ぐに一つの本棚へ向かった。
そこから、迷うこと無く一冊の本を取り出した。
そして、空いてる席を捜し、ゆっくりと座った。

目の前にあるテーブルに本を置き、頬杖をつきながら本を読む。
お気に入りの大昔の物語…魔物やら冒険やらが書かれた本を夢中で読みふけっていた。
12 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時31分55秒
どれほどの時間が立ったのだろうか。中澤は時間など忘れて本の世界に引き込まれていた。

「…ちゃん。裕ちゃん」

どこからかかすかに自分を呼ぶ声がする。本に夢中だった中澤はようやく声に気がついた。
声が気になって顔を上げてみた。

「うわ!!」

中澤は突然大声を出した。
すぐ目の前…テーブルを挟んだ反対側に、身を乗り出すように中澤の顔を覗きこむ顔があった。

「しー!!図書館では静かに」

その女は口に人差し指をあててそう言った。
中澤が周りを見まわすと、いくらかの人が迷惑そうな顔をしてこっちを見ていた。
13 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時32分37秒
「な、何やってるんやなっち」

中澤はバツ悪そうに体を縮め、囁くような声でそう言った。

「何って…さっきから呼んでるのに気づかないし」
「あ…悪い」

安倍は立ちあがり、テーブルをぐるりと回って中澤の隣りの席に座った。
14 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時33分28秒
「ね、みっちゃんから話聞いた?」

中澤は安倍の言葉に驚いた。さっき聞いたばかりなのになぜもう知ってるのだろう。
不思議そうに安倍の顔を見る中澤を見て、安倍は笑みを浮かべた。

「みっちゃんがね…きっと裕ちゃんはOKするからって。先になっちにも話しがきたの」
「じゃ、じゃあ…助手ってなっちか?」
「そういう事だね」

中澤は本を閉じ、上を向いて「ふぅ」とため息をついた。
15 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時34分31秒
安倍の事は良く知っていた。随分古い付き合い…腐れ縁だった。
天然ボケの魔法使い。そしてかなりドジ。
勿論、安倍の事は嫌いじゃない…から、今まで付き合ってきたのだが…でも、また安倍が助手とは。
中澤は今回の仕事がドタバタ珍道中になるのが目に見えていた。

「どうしたのさ?」

安倍は不思議そうな顔をしていた。

「いや…なんでもないねん」
16 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時35分19秒
「あ、そうそう。助手ってね、もう一人頼んであるんだって」

安倍はそう言うともそもそとポケットから何やら紙切れを取り出した。
中澤は黙ってその様子を見ていた。

「なっちはね、治癒系の魔法しか出来ないから…癒し系って言うの?」
「だから、すっごーく強力な攻撃系の魔法使いをね、頼んでくれたの」
「凄いらしいよ。ブレゼルでも最強だって」
「えーと…名前は…かご、加護亜依さん」

中澤は思った。
よく一息でそこまで話せるな…と。
17 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時35分56秒
「で…その加護さんは何処におるん?」

中澤は安倍が呼吸している間に言葉を挟んだ。

「えーとねー…国立魔法学校…学校?…学校って!?そんな若いんだ!」
「なっち…あんた、みっちゃんにちゃんと話し聞いてきたんか?」

安倍は首を横に何回か降った。
18 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時36分47秒
やっぱり、というような表情を浮かべる中澤。

「ままま、国立魔法学校ならなっちの母校だし。とりあえず行ってみようよ」
「なっちの母校っちゅーのは全然関係無いと思うけどな」

中澤はそう言うと立ちあがった。そして、本を元あったところへ返しにいった。

「ま、待ってよ!」

安倍は焦っているのかバタバタと足音を立てながらついてきた。
周りの人々が迷惑そうな顔で見る。

「なっち…図書館では静かにな」

そう言われて「ぷう」と頬を膨らませる安倍。
中澤と安倍は、図書館を出て国立魔法学校に向かった。
19 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時37分38秒
また、長い廊下を歩き今度は国立魔法学校までやってきた。
ドアを開け中に入っていくと、通路の左側に小さな窓があった。
その窓を覗きこむと中は事務所のようになっていて、誰かが仕事をしているようだった。
事務所の人はこちらに気づいて、小窓までやってきた。

「あ、ここは任せて」

中澤が事務所の人に声をかけようとすると、安倍が割って入ってきた。

「あの、飯田先生お願いします」

すると、事務所の人は頷いてまた奥の方へと行ってしまった。

「なんや、知り合いがおるんか?」
「うん。なっちの同級生がね、ここで先生やってるんだ」
20 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時38分22秒
事務所の人が戻ってきて、「しばらくお待ち下さい」と言った。
言われたとおり待っていると、通路のずっと向こうの方から背の高い長い髪の女が現れた。
不機嫌そうな顔。その女は目の前までやって来た。

「なっち…何の用?」
「久しぶりなのにイキナリ何の用って!」

中澤はすぐに悟った。
この二人は相性悪そうや、と。
21 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時39分05秒
中澤は睨み合う二人の間に割って入った。

「こんにちは。中澤と申します。実は人を探しているのですが…加護亜依って人なんですが」

飯田はようやく中澤の存在に気づいたようで、軽く会釈をした。

「失礼しました。私はこの学校で教師をしています飯田と申します」
「中澤さんですね…加護の事は平家さんから聞いています。どうぞ」

そう言って飯田は通路の奥に向かって歩き始めた。
黙ってついていく中澤と安倍。
22 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時39分59秒
「どうぞ」

そう言って飯田は通路の途中にある一室に二人を招き入れた。
中には小さなテーブルを挟んでソファーが向かい合わせに置かれていた。

「どうぞ…おすわりになってください」

飯田に言われた通りソファーに腰掛ける二人。
飯田も二人の座る反対側に腰掛けた。

「で…加護を旅に連れていくという話しですよね?」

座るなり飯田は話を切り出した。

「そうなんです…みっちゃ…いや、平家に聞いてるそうで」
「ええ、聞いてます」
23 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時40分56秒
「この学校の生徒さんなんですか?」
「そうです」

飯田はそう言うとため息をついた。
中澤はため息の意味が分からなかったが、そのまま話を続けた。

「何でもブレゼル最強とか」
「ええ。間違い無く最強でしょうね。教師である私よりもずっと…」
「そんな凄いんですか」
「ええ。だから…というワケじゃ無いんですが、手に余る子でして」
「手に余る?」
「なにせ教師よりも優秀ですからね…教師も何も言えないんです」
「はぁ…」

中澤はようやくため息の意味が分かった。と、同時にますます行く先が不安になってきた。
24 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時42分26秒
「実はですね、私は加護の親代わりでして」
「親代わり?」
「ええ…加護は、辻という子と一緒に私が面倒を見ているんです」
「孤児なんですか?」
「そうです。二人とも」

「加護がなぜ、あれほどの魔力を持っているのかまったく分かりません」
「言い方が悪いかもしれませんが、突然変異としか思えません」

飯田はそこまで話して黙ってしまった。

「突然変異…」

安倍がポツリと呟いた。
と、同時に突然チャイムが鳴った。

「…授業が始まります。ご一緒にどうぞ」

中澤は頷き、立ちあがった。
中澤と安倍は飯田に導かれ部屋を出て、また通路の奥へと歩きだした。
25 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時43分16秒
「で、その子を連れていって、授業の方はいいんですか?」
「授業の事はご心配無く。というよりも、私達から加護に教える事は無いのです。」
「…むしろ、旅に出て色々経験してきてくれる事を期待します」

飯田先生は突然立ち止まった。
それに合わせて中澤も立ち止まる。背中に安倍がぶつかった。
安倍の方を振り向く中澤。安倍は、バツ悪そうにうすら笑いを浮かべていた。

「こちらです。どうぞ」

そう言って飯田先生はドアを開けた。
26 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時44分05秒
飯田に続けて中に入ると、そこには沢山の子供たちがそれぞれの机に座って授業を待っていた。
始業の挨拶をし、飯田による魔法の授業が始まった。

中澤たちは教室の隅に立ち、授業の様子を眺めていた。

「魔法とは、人間界に本来ありえない力を実現するものです」
「その力とは、精霊によるものです」
「魔法使いとは、精霊の力を借りる契約をしたものを指します」
「魔法使いの力量や相性によって契約出来る精霊も異なります」
「魔法使いは、精霊の力を借りる変わりに、自分の霊力を精霊に分け与えます」
「ですから、魔法使いの力量の限度を越えた精霊と契約すると、命に係わります…」
27 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時44分44秒
ぼーっと授業を眺める中澤を見て、安倍は笑った。

「裕ちゃん…意味分かってる?」
「全然分からへんがな…」

中澤が魔法に関して無知なのを十分知っている安倍。
安倍は得意そうだった。

「何か分からない事があったらいつでも聞いてね」
「なんか…ヤな感じやな」
28 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時45分32秒
中澤は意味の分からない授業が退屈で、眠くなってきた。
と、その時、安倍が顔を近づけてきて耳打ちした。

「ね…あそこ見て」

中澤が安倍の指差す方を見ると、隣同士の席に座った二人の女の子が何やら話していた。
いや…一人だけが話しかけていた。

「ねえ、起きてよ。まだ授業中だよぉ」
「…ん?」
「起きてよぉ。また怒られちゃうよぉ」
「もうお昼?」
「違うってば…まだ授業中だって」
29 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時47分36秒
寝ていた方の女の子は突然何やら机の中をがさがさとやった後、小さな箱を取り出した。

「ま、まだお昼じゃないよぉ!お弁当しまって!!」
「え〜お昼じゃないのん?」
「亜依ちゃん、まだ授業中だよぉ!」

中澤と安倍は唖然として目を合わせた。

「亜依…加護亜依ってアイツか」
「そうみたい…」

飯田が授業を中断し二人の女の子のところまでやってきた。

「加護…まだお昼じゃないよ」
「はいっ」
「ちゃんと授業聞いて」
「はいっ」
「返事だけじゃダメだよ」
「はいっ」

飯田は呆れ顔をしたまま、また教壇へ戻った。
加護は、ペロッと舌を出して悪戯っぽく笑った。
その姿を見ていた中澤と安倍は顔を合わせて唖然としていた。
30 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時48分50秒
授業が終わると、飯田に連れられて中澤と安倍はまた元の部屋に戻った。
飯田はため息を一つついた。

「あんな調子なんです」
「いつもですか?」
「いつもです…」

中澤は頭が痛くなってきた。

「ですが、魔法使いとしての能力は絶大です。それは保証します」
「お昼休みになったら、お話してはいかがですか?」

中澤は飯田の言葉に頷いた。

「そうしますわ」
31 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時49分42秒
「隣りの子は?」

安倍が突然声を出した。

「あの子は、辻希美。ききわけの良いいい子です。能力はいたって普通です」
「じゃ、あの二人が…」
「そうです。私の面倒見ている二人です…まるで姉妹のようだったでしょう」

中澤は頷いた。

「加護は…辻には全面的に信頼をおいているようです。私の言う事は聞きませんが…辻の意見は素直に聞き入れます」
32 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月11日(土)12時50分44秒
お昼になると、中澤と安倍の二人は先ほどの部屋を出て二人だけで教室に向かった。
教室に入ると仲良く弁当を食べている加護と辻を見つけ、二人の席に向かった。
出来る限りにこやかな顔で話し掛ける中澤。

「えっと、加護亜依ちゃん?」

加護は驚いた顔をして、箸をとめた。

「そうやけど…オバサン誰?」
「オ、オバ…」

中澤の笑顔は一気にひきつった。安倍の笑い声が背中ごしに聞こえた。
隣りにいた辻が焦った。

「亜依ちゃん!失礼だよぉ!!」
「失礼ってなんでや?」

中澤は…ひきつった笑顔のまま、口に出さずに心の中で思った。
「この…くそガキっ!」
33 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年08月12日(日)09時57分44秒
BAD板時代から読んでました。
続き楽しみです。
34 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月15日(水)02時49分08秒
楽しみに待ってま〜す。
焦らせるわけではないですが、すごく続きが待ち遠しいです。
35 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月15日(水)20時10分00秒
>>33-34
ありがとうございます。
36 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月15日(水)20時10分43秒
37 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月15日(水)20時11分47秒
↑区切り線のつもりでした…
38 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月15日(水)20時18分39秒
「じゃ、行くで」

翌日の朝、中澤、安倍、加護の三人は大きな荷物を持ち、ブレゼルの街のはずれにいた。

「すまんな…頼むで」

平家が中澤に手を差し出した。
中澤は何も言わず、その手を握った。
そして、安倍ともにキルラー行きの馬車へと乗り込んだ。
39 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月15日(水)20時24分21秒
「加護!行くで!早ようしいや」

加護は見送りに来た辻と飯田に囲まれてなかなか動き出そうとしなかった。
不安げな辻と楽しそうに笑う加護。
そんな二人を見つめている飯田。

「ホントに…大丈夫?」
「大丈夫だって!ののちゃんにちゃんとおみやげ買うてくるから!」
「いや、そうじゃなくて」
「大丈夫やて!」
40 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月15日(水)20時31分45秒
「早ようしいや!」

中澤の声が一段と大きくなった。
加護は中澤達の方を一瞥し、辻の方を向きながら少しずつ後ずさりしばじめた。

「ののちゃん、お弁当作ってくれる約束覚えてる?」

辻は小さく頷いた。

「帰ってきたら頼むで!ニンジンは抜いてなー」

加護はそういうと辻に背中を向け、馬車まで走ってきた。
中澤が手を差し出し、加護がその手を掴んで勢い良く馬車に飛び乗った。

「じゃ、お願いします」

中澤がそう言うと、キルラー行きの馬車は勢い良く走り出した。
41 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月15日(水)20時37分51秒
加護は馬車から身を乗り出して大声で叫んだ。

「おみやげ待っててなぁ!」

そして辻の姿が小さくなって見えなくなるまで手を振っていた。

馬車は勢い良く走りつづけ、ブレゼルの街はどんどん小さくなり、やがて見えなくなった。
加護はようやく馬車に備え付けの椅子に座った。
加護の表情を見て中澤が話しかけた。

「寂しいんか?」
「そんな事ないで!」

加護は、ムキになって否定した。
42 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月18日(土)01時54分54秒
…どの位走っただろうか?
もう日も暮れて辺りは暗くなってきた。
馬車に長時間揺られた三人はぐったりと疲れていた。
特に会話も無い。

「友達は、ののちゃんだけなんや」

突然、加護が話し始めた。
黙って加護の顔を見つめる中澤。
加護は、俯いたまま続けた。

「みんな…加護の力を怖がって友達になってくれへん」
「加護かて普通が良かったんや…好きでこんなんになったんやない…」
「ののちゃんだけが仲良くしてくれるんや」
43 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月18日(土)02時02分24秒
加護は突然涙を流し始めた。
中澤は、そっと加護の頭を撫でてやった。

…泣き疲れたのだろうか、加護はそのまま眠ってしまった。
中澤は望まない力のために苦しむ加護を不憫に思った。

「ツライだろうにな…がんばれよ」

暗闇の中を馬車は走りつづけた。
44 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月25日(土)13時56分18秒
更新まってます。
45 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月28日(火)18時26分26秒
中澤がふと気がつくと、馬車は霧の中に止まっていた。
どうやら眠ってしまったようだった。
中澤の腕に抱かれながら、加護も熟睡していた。

加護を起こさないよう、ゆっくりと手を離し身を起こして外を見てみた。
まわりは真っ白でよく見えない…が、うっすらと大きな壁のようなものが見えた。

「着いたんか」

中澤はそう言うと大きく背伸びをし、まだ寝ている安倍と加護をそっとゆすった。

「着いたで。起きや」
46 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月28日(火)18時29分35秒
まだ寝ぼけたままの二人を無理矢理馬車から降ろし、荷物を持たせた。
呆然としたままの安倍と加護。
あまりに間抜けな顔をしているので中澤は少し噴出してしまった。

「さ、行くで」

中澤は二人の前をゆっくりと歩きはじめた。
目の前に見える大きな城門に向かって。
47 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月28日(火)18時34分42秒
城門をくぐる所で、立っていた門番に止められた。
三人をじろじろ見まわし、強い口調でどこから来たか、目的は何かを聞いてきた。

「ブレゼルから…旅行ですけど」

中澤は平然と、いやむしろ驚いたフリをして答えた。

「なんでこんなに厳しいんですか?」

中澤に逆に問い掛けられて、門番は少し動揺したようだった。

「通っていいぞ」
「どうも」

中澤は門番ににこやかな顔で軽く会釈をし、城門をくぐってキルラーの街へと入っていった。
48 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月28日(火)18時40分01秒
整然と並べられた建物と、碁盤の目のような道路。
そして自分達の足音しか聞こえない程静かな街。
霧がかかっているせいもあるのか、初めてきたキルラーは無機的な印象だった。

「静かだね…」

後ろから安倍の声がする。
小さな声だったが、周りが静かなためによく聞き取れた。
中澤は振りかえらず、そのまま歩きながら答えた。

「厳戒態勢っていうのは本当みたいやな」
49 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月28日(火)18時48分04秒
歩き続けると、ようやく人がまばらではあるが現れ始めた。
しかし、みんな元気が無いように見える。
中澤はそれとなく観察しながら歩き続けた。
商店も何も、建物はみな扉を閉め、窓もカーテンが閉められていた。

「なんや…ののちゃんにおみやげ買うてこうと思ってたのに」

加護が飽きれたような声で言った。

「で、どこに泊まるのさ?」

安倍がそういうと中澤は立ち止まり、後ろの二人の方を振り向いた。

「今から探すんや」

安倍と加護の二人は驚いて唖然とした顔をした。
50 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月28日(火)18時54分12秒
と、その時大きな行列が三人の方へ向かってきた。
…どうやら軍隊のようだ。
三人は道路の端に寄って、行列が通りすぎるのを待った。
行列はみな、非常に厳しい顔をしながら無言で歩いていた。

その中で、一人だけ馬に乗っている人物がいた。
厳しい表情の行列の人達とは対照的に無気力な表情。
しかし、身につけている物からして位の高い人物である事はすぐに分かった。

「魚ちゃんや!」

突然加護がそう叫んだ。

「そうだよね。魚顔だよね!」

安倍が続けて言った。
51 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月28日(火)19時00分12秒
馬上の人物は二人の声に気づき、ゆっくりとこちらを見た。

「…あ、ヤバ…」

加護はそう言って中澤の影に隠れた。
馬上の人物は馬を止めた。

「ほら〜余計な事言うから!」
「安倍ちゃんだって言ったやんか!」
「あ、安倍ちゃんって…なれなれしい!」

大声で言い争う二人を背に、中澤は馬上の人物を眺めていた。
その女は…最初は無表情だったものの、中澤達を見て微笑んだ。

「なんや…愛想ええやんか」
「そんな事より安倍さんって呼びなさいよ!」

中澤はゆっくりと女に向かって会釈をした。
52 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月28日(火)19時11分44秒
「何かお困りですか?」

馬上の女はにこやかな顔で話しかけてきた。
中澤は答えた。

「ええ…泊まる所を探してます」
「それなら…ここを南に真っ直ぐ行ったところに大きなホテルがあります」
「分かりました。ご親切にどうも」
「親衛隊の後藤に紹介されて…と言えば泊めてくれるはずです」
「ありがとうございます」

中澤はまた会釈をした。
馬上の女…どうやら後藤というらしい…は、会釈を返して馬を歩かせはじめた。

三人は行列を見送った後、後藤に教えられた通り南へ向かって歩きはじめた。
53 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月07日(金)10時00分41秒
早く更新しないかなー。
期待して待ってます。
54 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月09日(日)22時27分26秒
自分も待ってます。
55 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月11日(火)18時54分49秒
>>53,54
すみませんでした…
56 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月11日(火)18時59分38秒
ほどなくしてホテルを見つけた三人は、受付をすませ、部屋に入りようやく落ち着いた。
部屋は広く豪華で、ちゃんと三人分のベッドがあり、落ち着いた照明と花などが綺麗に飾られていた。

「疲れたよ…」

安倍は荷物を置くなり、そのままベッドに沈み込んだ。
そして、あっという間に眠ってしまった。

中澤は、荷物を一旦整理し、窓ぎわにある高そうなソファーにゆっくり腰掛けた。
57 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月11日(火)19時03分26秒
窓の外を見つめても、濃い霧のせいかはっきりと風景が見えなかった。
中澤はぼんやりと先ほど出会った軍隊の事などを考えていた。

「一体なんなんやろ…」

ふと気づいて部屋を見回すと、ベッドに安倍が一人で眠っていた。

「加護?」

中澤の呼びかけに誰も答えなかった。
58 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月11日(火)19時07分15秒
「ま、ええか」

中澤はゆっくりと立ち上がり、ブレゼルからわざわざ持ってきた愛飲の酒のビンを取り出した。
そしてそれをそのまま口にくわえ、一気に喉に流し込んだ。
ビンを持ったまま、またソファーに腰掛けて外を見る。

中澤は、いつしかウトウトとしはじめた。
59 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月11日(火)19時09分50秒
「…さん!」
「大変やぁ!」
「中澤さん!!」

中澤は耳元の大声に驚いて目がさめた。
まだ頭がハッキリしない。

「な、なんやねん…」
「中澤さん!!大変やて!!」

大声を出していたのは加護だった。
60 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)17時25分59秒
けだるそうに体を起こす。
そんな中澤を急かすように加護は興奮ぎみに話した。

「そ、外見てや!」
「だからなんやねん…幽霊でも見たんか?」

中澤は窓から外を眺めてみた。
相変わらず濃い霧。

「何も見えんやんか」
「良く見てや!」

やれやれ…と思いながらじっと窓の外を見つめてみた。
61 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)17時34分24秒
よく見ると、濃い霧はぼんやりと赤く光っていた。
全体的に、しかし赤色が強い所と弱い所があった。
中澤はまだなんなのか分からなかった。

「なんで赤くなってんねん」
「街が燃えてるんやて!」
「燃えてる?」
「見たことも無いような鳥みたいな人間みたいなのがいっぱいおんねん!」

中澤はようやく事態が飲み込めてきた。
手にもったままだった酒ビンを床に乱暴に落とし、立ち上がった。

「変な生き物が街を襲ってんねん!」

Converted by dat2html.pl 1.0