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めぐる気持ち
- 1 名前:aki 投稿日:2001年08月13日(月)12時35分49秒
- 近頃ここの存在を知っていろいろ小説を読ませてもらったんですが
自分でも書いてみたくなったので書かせてください〜。
初めてなので緊張してますがどうぞよろしくお願いします。
ジャンルは学園モノです。
- 2 名前:aki 投稿日:2001年08月13日(月)12時41分36秒
- 風の強い屋上。
そこには一人の少女がいた。
肌に心地いい風が腰辺りまである長いストレートの
つやのあるさらさらの髪を空にたなびかす。
それはまるで空を漂う一つの布のように鮮やかだ。
少女は手すりにもたれかかるようにして前を真っ直ぐみつめる。
ただ静かに。
- 3 名前:aki 投稿日:2001年08月13日(月)12時52分05秒
- しばらくすると静かな屋上に階段をうるさく登ってくる
音が響く。
ドアを乱暴に開ける音がしたかと思うと高校生にしては少し(かなり?)
小柄のショートカットの少女が屋上に姿を現した。
「やっと見つけた・・・。」
はぁはぁと息を切らせ呆れたような口調で少女はそう呟く。
空を見つめていた少女は屋上の来訪者に静かに振り向く。
「矢口センパイ。」
「少しはあたしの身にもなってよ。会議だって知らなかったの?」
「・・・・。」
「知ってるんなら来てよ、もう。」
「ごめんなさい。」
ショートカットの少女は他に何も言わず「行くよ」と言って屋上
から出て行った。
少女はその姿をしばらく見やると静かに歩き出した。
- 4 名前:aki 投稿日:2001年08月13日(月)13時30分28秒
- 昼休みでざわめく廊下を通り抜けある教室のドアを開ける。
その教室にいた全員がドアに向かって振り向いた。
「続けてください。」
少女はそれだけ黒板の前に立つ少女に言うと静かに教室の大半を占める
大きな机の隅の席に腰をかける。
教室にいた生徒もほとんど気に求める事もなく続ける。
- 5 名前:aki 投稿日:2001年08月13日(月)13時45分16秒
- 「今年の文化祭についてだけど・・」
黒板の前に立つ進行役の少女、安倍なつみが話を再会する。
「今年の文化祭について。亜依ちゃん今日何曜日かわかる?」
「え〜と、月曜日だっけ?あれ、火曜日?う〜月曜日にしちゃえば?」
「・・・火曜日だよ。」
矢口がやれやれといった感じでそう2人に告げる。
「今日は火曜日。矢口さんに飽きられてしまった。」
「あんたねぇ。」
「ますます飽きられモード。」
「加護ぉ!!」
たまらず声を上げる矢口。その反応が加護をおもしろがらせているとは
知るよしもなく。
「・・・やぐち。」
安倍が矢口に声をかける。
「え?」
- 6 名前:aki 投稿日:2001年08月13日(月)13時46分28秒
- 矢口が辺りを見渡すと会議どころではなくなってしまったらしい。
決して小さいとはいえない声で三人はやり取りしていたせいだが。
「ご、ごめん・・。」
矢口が気まずそうに安倍に謝る。
安倍もふぅと息をつく。
「矢口さんが会議を止めた。今日の天気晴れ。」
「亜、亜依ちゃん・・・」
「あんたたちでしょ〜!!」
矢口が加護を追いかけ出す。
加護はキャーと楽しそうに逃げ出す。
「今日はもう終わり。明日にしよ。」
安倍はそれだけ三人に言うと片づけ始める。
屋上から帰ってきた少女、後藤真希はそんないつもの光景を
眺めていたがしばらくして後藤も席を立った。
- 7 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月13日(月)15時19分06秒
- なんかよさそう
- 8 名前:aki 投稿日:2001年08月13日(月)19時23分06秒
- あ、ありがとうございます(T−T)
レスくれるのってこんなにうれしいもんなんですね。
- 9 名前:aki 投稿日:2001年08月13日(月)19時51分03秒
- 後藤はどこか行く当てもないので自分の教室へ向かう事にした。
生徒会役員専用の教室を抜け自分の教室へと向け歩き出す。
後藤自身はただ普通に歩いているつもりだがその容姿と
「生徒会長」という肩書きですれ違うたびに振り向く生徒は多々。
後藤は鈍感なのか違うのかそれに気付く事はない。
階段を下り一階下の自分の教室へと向かう。
- 10 名前:aki 投稿日:2001年08月13日(月)19時52分25秒
- 自分の教室のある階の廊下を歩いている途中、後藤の視界に
ある少女の姿が映った。
肩より少し長いぐらいの髪、クラスメートと話しながら歩いているが
見るからにお嬢様といった感じである。
(ドキッ)
後藤は微かに胸の中でときめいた音に気付いた。
目の前からその子を入れ三人がやって来る。
後藤は歩く事も忘れ立ち止まってしまった。
前からやって来る三人は後藤に気付く事もなく楽しそうに笑いながら
歩いてくる。
すれ違う寸前後藤とその少女の目が合った。本当に一瞬だけ。
しかしそのまますれ違う。
スッとすれ違ったが後藤にはとてもその瞬間が長く感じられた。
二人の間に風が流れる。
後藤はすぐにはそこを動く事はできなかった。
胸の中で確かにドキドキとときめいている。
しかし今の後藤にはそんな自分の状態に気付く事はなかった。
- 11 名前:aki 投稿日:2001年08月13日(月)20時07分48秒
- 「あれ?後藤さ〜ん?」
聞き覚えのある声に後藤は振り向いた。するとそこには社会担当の
保田と保健室の中澤がいた。
「保田先生に中澤先生。」
2人はゆっくりと後藤に近づく。
「どうしたの?こんなところでぼんやりと突っ立っちゃって。」
保田が社会の教科書やら地図帳やらノートやら持ち後藤に話し掛ける。
「さぁ・・・・何してるんだろ、私・・。」
自分に向けられた質問に逆に答える前に考えてしまう。
「なにそれ?それはいいとして矢口は??」
「矢口先輩なら、さっきまで生徒会室で一緒だったけど。」
「生徒会室?それじゃあたし行ってくるわ〜それじゃ圭ちゃんまたな〜」
「だから学校にいる時は止めてってーのに。」
中澤は聞くが早く心弾ませ生徒会室へと向かっていってしまった。
ちょうどその時学校の昼休みの終わりを告げる鐘が鳴る。
「あ、時間だわ。ちなみに次あたし後藤の教室だから。」
「そうですか。」
後藤には保田の言葉や中澤との会話はあまり頭には入っていなかった。
表情はほとんど変わる事がないがその心の中を埋め尽くすのは
今さっきの少女のことだけだった。
- 12 名前:aki 投稿日:2001年08月14日(火)12時51分29秒
- 需要がなさそ・・・。
- 13 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月14日(火)12時58分39秒
- ちゃんと読んでます。がんばってください。
- 14 名前:レイコ 投稿日:2001年08月14日(火)13時05分49秒
- 読みました!かなり期待してますよ〜
自分ではいしよしを主に書いてるんですけど、いしごまも好きなんですよねぇ。
がんばって下さい!!
- 15 名前:aki 投稿日:2001年08月14日(火)13時17分32秒
- 昼休み開けの社会の授業も終わりHRも早々と終わる。
特に部活にも入っていない後藤はそのまま自宅へ帰ることにした。
鞄に物をしまい教室のドアの方を見るとそこには矢口がいた。
「どうしたんですか?」
足早になる事もなくただのんびりと矢口の元へ歩いていく。
「明日はちゃんと来てよ。昼休みに。」
「あぁ、明日もか・・。」
「返事は?」
「はい。」
「いっつもそう言ってこないほうが多いんだから・・・。」
矢口は呟くように愚痴をこぼす。
後藤はそんな矢口を気にすることもなく昇降口に向かう方の
廊下に目をやる。
するとそこには昼休みの少女がいた。
(ドキッ!)
胸の中で確かにときめく音に気付かず少しだけ後藤は狼狽する。
- 16 名前:aki 投稿日:2001年08月14日(火)13時18分06秒
- 動揺したのかしばらく動く事ができなかったが突然後藤は側にいた
矢口の腕を掴む。
「な、なに!?」
突然の後藤の行動に矢口は声を上ずらせてしまう。
「あの子!あそこにいる髪が方ぐらいまででお嬢様って感じの
知ってます?」
後藤にしては珍しく声を上げる。
「同学年ならともかく後輩の名前なんて・・・・」
矢口はそう抗議しながら後藤の言う人物を探す。
「あぁ、あの子なら知ってるよ。石川梨華って言って有名じゃない。」
「有名?」
「うん。だってあの子バレーボールのエースの吉澤ひとみと付き合ってるって
噂じゃない。」
「付き合ってる・・・?」
後藤は今の矢口の言葉に先ほどとは違く疑問も含まれるような
言い方で復唱する。
「それにしてもあんたが他人に興味示すなんて珍し・・・わっ、
中澤先生だ・・それじゃあたしそろそろ行くから。」
矢口は反対側の廊下からやって来る中澤に気付くとすたこらと
どこかへ言ってしまった。
矢口の行動、言動にほとんど気にすることのなく後藤はただそこに
立ち尽くしてしまった。
「付き合ってるんだ・・・・・。」
誰に言うまでもなく誰にも聞こえないぐらいの独り言を
呟きながら。
- 17 名前:aki 投稿日:2001年08月14日(火)13時20分42秒
- レイコさんに名無し読者さんレスありがとうございます(T−T)
自分に対するレスってすごくうれしいです。
頑張ります!
- 18 名前:aki 投稿日:2001年08月14日(火)14時19分52秒
- 後藤は自分でもよく分からない複雑な気持ちを抱えながら
とりあえず変える事にした。
(石川梨華・・・・付き合ってる・・・)
今さっき知ったことを心の中でゆっくりと復唱する。
(なんだろうこの気持ち、意味わかんない・・・。)
矢口が言う通り後藤は石川梨華という人物に少なからず興味を
抱いていた。
後藤は今まで他人に興味を示す事などないに等しかった。
誰に束縛される事なく束縛することもなくいつでもどこへでも
行ける風でありたかった。
こんな気持ちになるのも初めて。
そんな今抱くこの気持ちに戸惑う。
(意味わかんないよ・・・)
周りから見れば差ほど変わらない様子だろうが後藤は
心の中ではまるで迷路に入り組んだような感覚だった。
- 19 名前:aki 投稿日:2001年08月14日(火)14時20分36秒
- そんな後藤を余所に明らかに二組の足音が、あまり気を配っていない
大きな足音が後藤に近づいていた。
「後藤さ〜〜ん!!」
「亜依ちゃん、走ると先生に怒られるよ〜」
そのまま全力疾走の加護に注意しながらも一緒に付いてくる辻の2人組みが
後藤に向かって走っていた。
「こら〜!廊下は走らないの!!」
保田がいるのも関わらずしかも注意を受けているにも関わらず
走ることを止めない2人。
しかし今の後藤はそのことにすら気付く様子もない。
- 20 名前:aki 投稿日:2001年08月14日(火)14時30分26秒
- 加護がそのまま後藤の後姿に向かって抱きつく。
後藤はそこでやっと気が着いた。
「加護に辻ちゃん。」
「後藤さんの姿見つけたから走ってきたんですよ〜。」
「そっか。」
加護は後藤から離れ辻と加護はゆっくり歩く後藤に並んで歩く。
「今から帰るんですか?」
「・・・・・。」
「明日も昼休み集まるらしいですよ。」
「・・・・・。」
- 21 名前:aki 投稿日:2001年08月14日(火)14時31分20秒
- ただぼんやりとどこを見ているのかさえも分からない後藤に加護と辻は
顔を見合しひそひそ話を始める。
『どうしたんやろ、後藤さん。』
『わかんない・・・。疲れてるのかなぁ。』
2人はもう一度後藤の顔を見てみたが
さっぱり変わらずただぼんやりと黙々と歩いている
「後藤さ〜ん。」
「・・・・・。」
「ごっち〜ん。」
「・・・・・。」
そんなことをしながら三人は昇降口へ着いてしまった。
「後藤さん、あたしたちまだ帰りの支度してないんでここで分かれます。」
辻が後藤の目の前に出て少し大きめの声で告げる。
「え?あ、うん。それじゃね。」
後藤は唖然とする2人を残して帰路へ着いた。
加護と辻はしばらく後藤の後姿を見つめてしまう。
「どしたんだろ、後藤さん。」
「さぁ・・?」
2人は首を傾げながら自分の教室へ向かっていった。
- 22 名前:aki 投稿日:2001年08月14日(火)14時36分04秒
- 疲れた・・・。
なんかわかりづらくなっちゃったんですけど加護と辻は
書記です。5と6はノートに書き込んでる情景です。
遅い付けたしすいません。。
- 23 名前:aki 投稿日:2001年08月14日(火)19時32分20秒
- 翌日の水曜日
昼休み
後藤にしては珍しく生徒会室に向かっていた。
いつも全員が揃う時間帯よりも10分ぐらい早い。
廊下を歩いていると後藤の視界に生徒会室のドアの前で
屈んで中を望んでいるような加護と辻の姿があった。
ちょうど2人の背中がこちらを向いているので後藤の姿に
二人は気付かない。
後藤は静かに2人の後ろについてみた。
「うわっ抱き合ってるで。」
「亜、亜依ちゃん止めようよ〜。」
「しっ!」
「2人とも何してるの?」
後藤が普段通りの話し方で後ろ向きの2人に話し掛けた。
「「!?」」
2人は声は出さないがかなり驚いている表情をした。
- 24 名前:aki 投稿日:2001年08月14日(火)19時33分07秒
- 「驚かさないで下さい・・。」
「なんで中に入らないの?」
後藤は言いながら2人と同じように生徒会室の中を見てみた。
するとそこには矢口が後ろから安倍を抱きしめるようにしていた。
「ちょ、ちょっとやぐち!!」
「少しぐらいいいじゃん。」
「みんなが来たらどうするの・・?」
「その時はその時で・・・。」
矢口が抱きしめる力を強めるのが見て分かった。
そのまま後ろから首筋にキスをする。
「あっちょっと〜!」
「・・・・・・。」
後藤は黙ってはいるが少なからず驚いたように目を丸くしている。
「というわけでなかに入れないんですよ。」
辻が付け足すように説明をする。
「すごいなぁ、辻ちゃんあたしたちもやらへん?」
「な、なにを・・・!!」
にこにこしながら加護が辻にいい寄る。
「・・・それじゃ、また来るわ。」
後藤はそれだけいうと二人を残し来た道をまた戻り階段を登っていった。
- 25 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月14日(火)20時11分28秒
- こんなのがあったのか。
知らなかったっす。
面白いですねー。
続きに期待してます。
- 26 名前:aki 投稿日:2001年08月14日(火)20時22分34秒
- 生徒会室のある階を一回上に行くと屋上になる。
後藤はガラッと音を立てて屋上のドアを開けた。
屋上にはまばらに数人の生徒が居た。
風が少し強く長い髪がなびく。
後藤はいつものように屋上の手すりに肘をついた。
空は晴れているが雲が所々にあり地上を暗く明るくさせている。
後藤はいつものようにただぼーっとした。
綿飴のような雲が太陽を隠しまた暗くなった時、一層強く風が吹いた。
- 27 名前:aki 投稿日:2001年08月14日(火)20時36分10秒
- 25<ありがとうございます。(TT)
励みにあります。未熟ですけど頑張ります!
- 28 名前:aki 投稿日:2001年08月14日(火)20時41分12秒
- 上の「な」ですね。しかもさん付けもしないで
すいませんでした。(++)
- 29 名前:aki 投稿日:2001年08月14日(火)20時59分55秒
- 風に髪が流れ後藤は顔の前に来た髪を手で耳にかけた。
雲は太陽を隠しながらゆっくりと流れる。
体制を変えずただ前を眺める。
そんな中小さく足音が聞こえたような気がした。
「あの・・・・。」
気まずそうな小さな声が明らかに自分に話し掛けられているのに
気付き後藤は静かに振り向いた。
するとそこにはまぎれもなく石川梨華がいた。
行動には出さないが心の中では後藤は動揺していた。
あまりの突然の事に言葉が出ずただ見つめてしまう。
「・・なに?」
後藤がやっと最低限の言葉を出すと同時に太陽がまた雲から顔を
出しはじめる。
それと同時に周りも暗さが引いていき光が辺りを照らし始める。
まるでなにか演出でもしたかのように後藤には目の前の少女の
姿が鮮やかに映し出されていた。
- 30 名前:aki 投稿日:2001年08月14日(火)23時36分42秒
「ハンカチ、取って貰っていいですか?」
言いずらそうに俯き加減で石川は後藤に尋ねた。
辺りを見渡してみるとバーバリーのかわいいハンカチが
後藤の横にぽつんと落ちていた。
後藤はおもむろにそれを拾うと目の前まで来た少女に手渡した。
胸の中で響く鼓動、それを確かに今感じていた。
(なんだろう、この気持ち・・・。)
「ありがとうございます。」
明るい日の光に照らされる目の前の少女に対しての気持ちに
困惑する。
後藤はそのまま元の手すりに肘を着き寄りかかる姿勢に戻った。
そして右手を自分の胸に添える。
- 31 名前:aki 投稿日:2001年08月14日(火)23時37分47秒
- 「あの、後藤真希さんですよね?」
「そうだけど・・・?」
接触が終わったと思った石川がなおそこに存在し自分に話し掛けて
来たことにびっくりしながらも振り向き答える。
「なんで私のこと知ってるの?」
「凄く有名だから・・・。知らない人は居ないと思いますよ。」
「そうなんだ・・。」
有名。
この言葉に後藤は少しだけ反応した。
有名だから私の事を知っている。
有名だから。
そんなこといったらあなただって充分・・・・。
昨日の矢口の言葉が脳裏によみがえる。
「あの、私Bクラスの石川梨華って言うんですけど・・・」
「知ってる。」
石川が言い終わらないうちに後藤が言葉を返す。
「え?」
「あなたも有名だから・・・。」
- 32 名前:aki 投稿日:2001年08月15日(水)00時02分56秒
屋上のドアにびたりと張り付く影二つ。
「なんか良いムードじゃない?」
「亜依ちゃん、早くしないと怒られない?」
「大丈夫大丈夫。それよりもなんか絵になってるって言うか・・。」
「怒られても知らないからぁ・・。」
呟くように愚痴をこぼすと辻も一緒になって屋上の光景を見始めた。
そう2人はあの後生徒会室に居た安倍と矢口に盗み見をしていた事が
ばれ後藤もどこかへ行ってしまったと告げると連れ戻すように怒られたのだ。
そして今ここにいるわけになる。
『連れ戻してこ〜い!!』
そう怒鳴られたにもかかわらず今さっきと一緒の体勢で見る2人。
「明らかに後藤さん様子がいつもと少し違う・・・。」
「そう?」
「なんか余裕がないって言うか・・・。」
「そろそろ行かないと不味いんじゃない?」
「ダメ!矢口さんだって安部さんと一緒の方が嬉しいやろうし
後藤さんのためにもこれでええの!」
「よくわかんないけどわかったぁ。」
加護の説明に辻はなんとなく覚悟を決めた。
- 33 名前:aki 投稿日:2001年08月15日(水)00時19分34秒
- 「そうですか・・?」
石川はどうして有名といわれたのかいまいち分かっていないようである。
(なんでこんな言い方したんだろう。)
後藤は自分に問い掛けていた。
普通に話せばいいのにどこかとげのある会話になってしまう。
「今何してたんですか?」
石川はそんな後藤の気持ちを知るよしもなくただ
明るく話し掛けてくる。
「ただぼーっとしてただけ。」
後藤の中の鼓動は最初に比べると徐々にだが収まって来ていた。
「風が気持ちいいですよね。」
石川も後藤の横に並ぶようにして手すりにつかまる。
後藤は前を見る石川の横顔を見つめた。
髪が風に泳ぐ。風から運ばれてくる良い香り。綺麗な肌。整った輪郭。
収まりかけていた鼓動が元に戻ってくるのを感じる。
「どうかしたんですか?」
視線を感じ首を傾げ尋ねる石川に後藤はすぐ視線反らせた。
「なんでもない・・・。」
そんな後藤の様子に石川は頭の上にクエスチョンマークを浮かばせる。
後藤の顔はかすかにだが赤らんでいた。
- 34 名前:ラークマイルドソフト 投稿日:2001年08月15日(水)01時03分13秒
- これからの展開が楽しみですね!
ガムバテーください。
- 35 名前:aki 投稿日:2001年08月15日(水)12時25分17秒
- 34、ラークマイルドソフトさん<
ありがとうございます(TT)
頑張ります!
- 36 名前:aki 投稿日:2001年08月15日(水)12時37分25秒
- その後後藤と石川は二言三言話し分かれた。
石川は教室に戻るため屋上を後にし後藤だけ屋上にとどまっていた。
まだ胸がときめく。
あまり突然の事で思考回路は順調には回らなかった。
顔を上げ空を眺める。
いつもと同じ風景。
しかしいつもの退屈な回るような毎日とは違う。
この胸のときめきがそれを証明していた。
- 37 名前:aki 投稿日:2001年08月15日(水)12時51分40秒
- しばらくして加護と辻が姿を現し後藤は生徒会室に
戻った。
しかし昼休み終わりまで残りほとんどない。
当然矢口に三人は怒られた。
そしてまた明日に持ち越しになる。
矢口の説教を右から左へと聞き流し後藤はさっさと
自分の教室へと向かっていった。
教室に着くとクラスメートに手紙を渡された。
一学年下の生徒かららしい。
内容は放課後体育館の裏に来て欲しいとのことだった。
後藤にとってこういう手紙は初めてのことではなかった。
当然いつも行くことには行ってるが結果は同じ。
手紙をポケットに入れた時ちょうど授業の始まりを告げる鐘が鳴った。
- 38 名前:aki 投稿日:2001年08月15日(水)13時02分57秒
- 付けたしです。
石川と吉澤と後藤は同じ学年で加護と辻がその一学年下、
安倍と矢口が一学年うえです。
実際とかなりかけ離れてますがご了承ください(++)
- 39 名前:aki 投稿日:2001年08月15日(水)13時18分54秒
- 水曜日なので全体的に早く終わる。
後藤は授業が終わり放課後になると体育館の裏へ向かうことにした。
廊下はいつもより部活の生徒でにぎわっていた。
体育館まで行くまでに生徒会室の前を通る。
すると生徒会室のドアの前で中をのぞいているショートカットの
ボーイッシュな印象の体育着を着た生徒が居た。
その生徒がふとこちらを向き近づいてくる。
「生徒会長の後藤真希さんですよね?」
「そうだけど・・・?」
「良かった、生徒会室に誰も居ないみたいだから困っちゃって。
これうちの部活でやる文化祭の出し物の内容です。」
目の前の男の子のような少女は手に持っていたレポートのようにまとめた
用紙を後藤に差し出す。
後藤はそれを受け取った。
レポートの表紙にはバレーボール部という大きな文字で書かれていた。
「バレーボール部・・?」
後藤の口からは自然とその言葉が発せられたいた。
顔を上げ目の前の少女の顔を見ようとした時見てしまった。
体育着の胸のところにローマ字でしっかりとかかれている名前を。
「Hitomi Yoshizawa」という名前を・・。
- 40 名前:aki 投稿日:2001年08月15日(水)13時27分40秒
- 「それじゃ、よろしくお願いします。」
吉澤はそれだけ言うと後藤を残して走っていった。
「吉澤ひとみ・・・。」
今見た名前を復唱する。
身長もあってバレーボールのエース。
男の子のような印象でかっこいいと言う言葉が良く似合う。
「有名になるわけだわ・・・。」
お嬢様のような印象の石川梨華、おしとやかで可愛くスタイルもいい。
まるで正反対のような2人。
それが余計にお互いの魅力を引き立てているようにも思える。
後藤の心の中は不思議なくらいに静寂を秘めていた。
後藤はあの日、石川とすれ違ってしまったことに複雑な思いを
抱えた。
- 41 名前:aki 投稿日:2001年08月15日(水)14時25分16秒
- 後藤は心の中を占める複雑な思いを残し
体育館裏に向かった。
そこには少女が俯き加減に立っていた。
こちらの姿を確認し顔を上げる。
「手紙くれた人?」
「あ、はい!私です・・。1−Aの松浦亜弥っていうんですけど・・。」
肩につくぐらいの髪の可愛いらしい子だった。
「あの・・私、後藤さんのこと見た時から好きになって・・・!」
「・・・・・。」
少女には悪いが後藤には今さっきの出来事が頭の中を占めていた。
- 42 名前:aki 投稿日:2001年08月15日(水)14時26分11秒
- 「見た時から。」
(私も初めて見た時からだ・・・。)
相手の言葉に自分の思いを重ねてしまう。
「付き合って欲しいんですけど・・。」
「ごめんね・・。私は・・」
後藤はここで言葉を詰まらせてしまう。
いつもなら誰とも付き合う気がないで終わるのだがどうしても
口からその言葉は出なかった。
「好きな人居るんですか?」
おずおずと少女は私に問う。
「・・・・・。」
その言葉に後藤は黙ってしまった。
好きな人。
私はあの子のことが、好きなの・・・?
「私諦めませんから・・・!後藤センパイの事、本当に好きだから・・・。」
そういうと少女は後藤を残して校舎へと走っていってしまった。
誰に束縛される事なく束縛することもなくいつでもどこへでも
行けるような風でありたかった。
後藤の今まで心に秘めていたそんな考えとは裏腹に毎日をいろんな
感情が駆け巡っていた。
- 43 名前:aki 投稿日:2001年08月15日(水)14時27分57秒
- 急きょ松浦が出ることになりました。
しかも加護と辻と同じ学年です・・。
ご了承ください・・。
- 44 名前:aki 投稿日:2001年08月15日(水)14時48分09秒
- 体育館を後にし後藤は自分の教室に鞄を取りに戻る事にした。
水曜日はほとんどの部活が活動する曜日のため盛んである。
廊下を歩いていると向こう側から歩いてくる中澤と保田の姿があった。
向こうも気付きこちらに手を振る。
後藤はそれをただぼーっと眺めていた。
「どうしたん?なんかいつもに増してぼーっとしてるけど・・・。」
「中澤先生、いつもに増してって・・・。」
「どうかしたん?」
「・・・・・。」
なんでもない。
ただ一言言えば言いのにそのまま後藤は黙ってしまった。
「なんかあったんか?」
答えない後藤に保田も首を捻る。
「なにかあったらいつでも来いや。そのためにもいるんやからな、あたしは。」
「ありがとうございます。」
中澤の言葉がそのまま心に染みた。
後藤は少し頭を下げて中澤に御礼を言った。
「授業が眠いんなら寝にきてもいいしな?」
「先生、それは不味いんじゃないですか?」
「そう堅いこと言ったらあかん。」
その後、後藤は保田、中澤と軽く言葉を交わし別れた。
中澤のなにげない言葉は後藤の心に残り確かに重くなった心を
軽くさせていた。
- 45 名前:aki 投稿日:2001年08月15日(水)18時36分02秒
- 初めて書くのでいろいろ文章的におかしい
ところとかあったら注意くれると嬉しいです。
よろしくお願いします。m(__)m
- 46 名前:aki 投稿日:2001年08月15日(水)19時18分50秒
- 木曜日。
いつものように昼休みの生徒会室。
今日はなんとか全員が時間通りに集まる事ができた。
文化祭まで時間はあるが毎年直前になるとすごく忙しくなるので
今年は余裕を持って準備をするに決めていた。
日に日にいろいろな事が決まっていくが後藤は会議に出席はするものの
いつもぼーっとしていた。
安部の進行に辻が決まっていく事をノートに書き込んでいく。
することがないわけではないのだが加護は隣の矢口の腕をちょんちょんと
つついた。
「矢口さん。」
極力小さな声で加護は矢口に話し掛ける。
が、矢口はわざとなのかそれに答えない。
「矢口さん!!」
小さめの声でだが少し強めに呼びかける。
「なによ・・。」
しょうがなく矢口も答える。
矢口は加護と話すとどうしても止まらなくなるのですぐには
応答しなかった。
「なんか後藤さんの様子変じゃありません?」
「そう?」
矢口は目の前に座る後藤を見てみる。いたって変わった風には見られなかった。
- 47 名前:aki 投稿日:2001年08月15日(水)19時38分19秒
- 「とにかく変なんですよ。」
「確かにこの頃真面目に出席はして入るけど・・。」
「なんか切羽詰ったような・・・。つまり私が思うにはですね。
後藤さん好きな人ができたんではないかと思うわけですよ。」
「後藤に!?」
少しだけ声が大きくなってしまったが机が大きく後藤とは離れているせいか
向こうは気づいていない。
「そういえば・・・あの子珍しく他人に興味を持ったような感じだったわ。」
「誰にですか?」
「石川梨華に。」
「私たちが昨日屋上の後藤さんのところに行ったときも石川先輩
といたんですよ!?」
やや加護の声が大きくなる。
「え?」
「ずっと覗いてたんですけどそのときの後藤さんいつもの
余裕がなかったっていうか・・・。変だなって思ったとき昨日のも
含まれます。」
- 48 名前:aki 投稿日:2001年08月15日(水)19時38分49秒
- 「それじゃあ、本当に・・・。」
矢口は加護の言葉に再び後藤を見てみる。
はたからでは普段通りに見える。
しかしあることに矢口は気がついた。
「ん?ちょっと待ってよ。あんたたち昨日やけに遅かったけど
そんなことしてたの!?」
「あ、いやその昨日のはちょっと急にお腹が痛くなっちゃって・・・・。」
「嘘つけ!!」
二人は気づいていないが普段ぐらいの声の大きさになっている。
「もう時効ですよ!!」
「開き直るなよ〜!」
「やぐち・・・・。」
安部が呆れた風に矢口の名前を呼ぶ。
「ちょっと待ってよ。今のは加護がぁ!」
「もとはといえば矢口さんがあんなことしてるからぁ!」
わざとらしく加護が矢口に反論する。
安部と矢口の顔がぼっと赤くなる。
「か、加護〜!!」
加護はすたこらと生徒会室を後にし逃げていく。
「あ、あいつ・・・。」
辻も複雑な笑顔でノートを閉じる。
後藤はといえば、何か考える事もなくただぼーっとしていた。
- 49 名前:aki 投稿日:2001年08月15日(水)19時42分18秒
- 物語の展開が早い・・・??
- 50 名前:aki 投稿日:2001年08月16日(木)16時21分35秒
- 移転??
- 51 名前:とりあえず更新 投稿日:2001年08月17日(金)12時59分20秒
- 授業が終わり日も暮れ始め紅い夕日が校舎を染める放課後。
後藤は帰りの用意をした後すぐには帰らず音楽室にいた。
音楽関係の部活がないため音楽室はがらんと静寂を保っている。
後藤はグランドピアノの椅子に腰を掛けた。
おもむろにピアノのふたを開ける。
今は止めてしまったが小さい頃習っていたためピアノは結構弾ける。
知っている曲をゆっくりと弾き始める。
題名は忘れてしまったがどこか物悲しいようで静かだが躍動感を秘める
不思議なメロディ。
ただ後藤はピアノを弾く事に没頭する。
そのため後藤は気付かなかった。
小さな物音に。
ただピアノを弾く事に没頭する。
こんなに夢中になってピアノを弾いたのは後藤自身も初めてに近かった。
後藤の指がふと止まり流れていたメロディが途切れた。
人の気配を感じ後ろを振り向く。
音楽室に自分だけじゃない事に気付いたのだ。
- 52 名前:aki 投稿日:2001年08月17日(金)13時10分41秒
- 「・・・・・。」
後藤は後ろを振り向いたがその後何も離せなくなってしまった。
そこには確かに人がいた。
向こうもこちらを見つめたまま黙っている。
「あ、ご、ごめんなさいっ!廊下を通ってたら音が聞こえて・・・・。」
ふと気付いたように向こうが話し出す。
後藤が会いたくもなく会いたいとも思う人物。
後藤は黙ったまま椅子から腰を上げる。
「あ・・ピアノ、止めちゃうんですか・・・・?」
残念そうにその人は後藤に問う。
「邪魔なら戻りますから・・・・続けてくれませんか?」
こちらの様子を伺いながらそう尋ねる。
「・・・・・。」
後藤はまたピアノの椅子に腰を掛けた。
「・・邪魔じゃないよ。」
ピアノに手を戻しそう後藤は呟いた。
その言葉を石川は聞き逃さなかった。
- 53 名前:aki 投稿日:2001年08月17日(金)13時26分42秒
- 後藤は今さっきの続きを弾き始めた。
石川は後藤の横に行き後藤の指を見つめる。
「あのさ・・・見られると下手になっちゃうんだよね。」
石川の熱心な視線に悪いとは思ったが後藤は口を挟む。
「え?あ、ご、ごめんなさい!!」
石川はそう謝ると音楽室の中を歩いたり窓から外を眺めたりした。
後藤はその姿を見やりピアノを弾く事に戻る。
「あの・・・覚えてますか?私にこと・・・。」
「覚えてる。」
ピアノを弾いたまま後藤はそれだけ答えた。
「屋上のとき・・なんで私のこと知ってたんですか?」
「・・・・・・。」
後藤はピアノを弾く事を止めなかったが心の中で微かに
変な緊張が産まれる。
ピアノを弾く指も今さっきのようにうまく動かなくなった。
「先輩が言ってたの。あなたと・・・・吉澤ひとみは有名だって。」
後藤は彼女に嘘をつくのは嫌だった。
明確にではないが本当の事を言う。
それだけで石川はなんで後藤が自分の事を有名といったのか分かったようだった。
- 54 名前:aki 投稿日:2001年08月17日(金)14時09分25秒
- 「そう、なんですか・・・。」
少し落ち気味の声で石川はそう答える。
後藤はその石川の様子には気付かなかった。
弾いていた曲を弾き終わり指をピアノから一旦離す。
「・・・なんで今日この時間まで残ってたの?」
後藤は自分から初めて声をかけた。
早く話題を、この空気を変えたかった。
「それは・・・ちょっと人を待ってて。」
「そう。」
後藤はまた違うメロディを弾き始める。
ゆっくりとした暖かい優しい曲。
気付くと石川は自分の所に戻っていた。
「・・・なに?」
その石川が自分の顔を見つめているのに気付く。
「あ、なんでもないです。なんでも・・・。」
そういうと石川はさっと顔を背けてしまた。
石川はそのまま音楽室の時計を仰ぎ見た。
「そろそろ私行きます。すいません、なんかお邪魔しちゃって・・・。」
「邪魔なんかじゃないよ。」
後藤は今度ははっきりとした声で告げた。
「それじゃ、失礼します。」
石川は頭を下げ後藤に背を向けゆっくりと歩き出す。
「・・・・。」
後藤は黙っていたがふと椅子から立ち上がり後ろ向きの
石川の右手を掴んだ。
「後藤さん・・・?」
石川は突然の後藤の行動に少し驚く。
後藤自身も自分の突然の行動に石川以上に驚いていた。
「ピアノ、聞きたくなったらいつでも言って。弾くから・・・。」
今、口から出た言葉を後藤は自分の言葉かと一瞬疑った。
- 55 名前:aki 投稿日:2001年08月17日(金)14時22分37秒
- あの後石川はその言葉を聞き慌てながらもまた思いっきり御礼を言うと
音楽室から出て行った。
後藤はピアノのふたを静かに閉める。
後藤はピアノはあまり好きではなかった。
親に言われてあまり興味もなかったのに始めたから。
でも今日だけは違かった。
『あなたのためなら・・・。』
今さっきの言葉にこの言葉が繋がる。
普段なら言おうと思った事もまぁいいかで終わることも
珍しくない後藤だが今日は伝えたなきゃと思った。
伝えたいと。
その気持ちが後藤が予想もしなかった行動を自分がすることになった。
今日始めてピアノが弾けて良かったと感じる。
そして始めて自分に対しての敬語が嫌だった。
今までは敬語を使われることに対して何にも思わなかった。
逆に他人と距離ができていいと思ったのに。
しばらくして後藤も夕日に染まる教室を後にした。
- 56 名前:aki 投稿日:2001年08月17日(金)14時27分57秒
- 感想とかいろいろくれたらうれしいです(^^;)
黙々と書いてるのもなんか寂しいもので・・・。
- 57 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月17日(金)14時41分47秒
- おもしろい。いつも読んでますよ。
- 58 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月17日(金)17時18分39秒
- おもしろいです♪
ごっちんのやる気のなさの表現がすっごい上手いですね。
自分も書いてるのですが勉強になります。
梨華ちゃんとよっすぃーの関係がホントか噂だけなのかちょっと気になる…
これからも頑張ってくださいね〜
あっ…ちょっと気になった事が…
『安部→安倍』です…
- 59 名前:aki 投稿日:2001年08月17日(金)19時00分00秒
- 57:名無し読者さん 58:名無し読者さん
>あ、ありがとうございます〜!!
すっごくうれしいです。
他の作者さんたちが書き込みを見て感動してることが
同じ立場になるとすっごく分かります。
頑張ります!
58:名無し読者さん
<間違えてたようです・・。注意してくださってありがとうございます!
- 60 名前:aki 投稿日:2001年08月17日(金)19時21分38秒
- 〜石川視点〜
木曜日の放課後
石川は補習で居残りをしている吉澤を待っていた。
今日は部活動をする部は少ないため校舎はがらんとしている。
夕日が校舎に立ち込め余計に校舎はただの入れ物のようにも思えた。
補習が終わるまで残り約一時間。
することもないので石川は校舎をただぶらぶらしていた。
そんな時どこからともなくピアノの音が石川の耳に届いた。
どこか物悲しくて静かで、でもそれだけじゃない不思議なメロディ。
本当に小さな音なのにそれは確かに石川を傾けさせ耳に残る。
「音楽室?」
その音は今いる階の上から聞こえてくる。
この上には音楽室があった。
まるでピアノの音に誘われるように導かれるように石川は音楽室にたどり着いた。
まちがいなくここからメロディは奏でられている。
いつもなら入るか止めようか迷う石川だったがその時は
何も思わずドアに手を掛けた。
- 61 名前:aki 投稿日:2001年08月17日(金)19時59分39秒
- ドアを後ろ手に閉め静かに入ると音楽室にはドアに
背を向ける形で椅子に座りピアノを演奏している人物がいた。
腰まである少しだけ茶を帯びたさらさらな髪。
その背中に石川は見覚えがあった。
夕日の立ちこむ音楽室でただピアノを弾く事に没頭する姿に
石川はただ目を奪われる。
- 62 名前:aki 投稿日:2001年08月17日(金)20時00分21秒
- ピアノのメロディがスッと止まり、彼女は後ろを振り向く。
夕日を逆光として浴びこちらに向き直る。
石川の目にはその姿がとても神秘的に、完璧な物に映った。
胸の中で高鳴る気持ち、そのまま何も話せなくなってしまった。
向こうも黙ったまま何も話さない。
石川はふと瞬間的に我に戻る。
「あ、ご、ごめんなさいっ!廊下を通ってたら音が聞こえて・・・・。」
考える間もなく口から言葉が飛び出す。
彼女は黙ったまま椅子から立ち上がってしまう。
「あ・・ピアノ、止めちゃうんですか・・・・?」
自分が入ってきたことにより演奏が中断され石川は
言葉を続ける。
「邪魔なら戻りますから・・・・続けてくれませんか?」
ただ音符を鳴らして奏でるメロディじゃない。
確かに何か気持ち、想いのような物が込められていた。
石川はそのメロディをまだ聞きたいと思い、自分のせいで
止めてしまった事が悲しかった。
遠く離れていても良いから聞きたかった。
少しネガティブな気持ちが石川の心の中を侵食していく。
しかしその気持ちは小さな一言で消え去る事になる。
「邪魔じゃないよ。」
侵食し始めた闇を一筋の光が一瞬にしてかき消すし広がる。
たったその一言が石川にはこの上なく嬉しかった。
- 63 名前:aki 投稿日:2001年08月17日(金)20時16分48秒
- ↑「かき消すし」←「かき消し」です。
- 64 名前:aki 投稿日:2001年08月18日(土)18時06分02秒
- 後藤が椅子に座りなおしまた今さっきの曲の続きを弾き始める。
石川は後藤の横に行き後藤の軽やかに動く細く長い指を見つめる。
「あのさ・・・見られると下手になっちゃうんだよね。」
指の動きに見とれていると後藤が気まずそうに石川に告げる。
「え?あ、ご、ごめんなさい!!」
石川は謝るとすぐにピアノのそばを離れ音楽室を歩き
窓から外を眺めた。
今さっきから気の利かない自分の行動に少しだけ気を落とす。
「あの・・・覚えてますか?私にこと・・・。」
音楽室に入ってから他愛ない会話ばかりしていたので石川は聞いてみた。
「覚えてる。」
間髪いれずすぐ答えた後藤に石川は安心し、嬉しかった。
「屋上のとき・・なんで私のこと知ってたんですか?」
あの時疑問に思ってそのままだった事を尋ねた。
しかし後藤はピアノを弾きながら黙ってしまう。
聞いた直後、ピアノのメロディが少し安定感がなくなったような感じがした。
- 65 名前:aki 投稿日:2001年08月18日(土)18時25分07秒
- 「先輩が言ってたの。あなたと・・・・吉澤ひとみは有名だって。」
後藤の言葉を聞き今度は石川が少し黙る。
少しだけ、ほんの少しだけ期待してた。
でも返ったきた答えは違かった。
自分でも知っている。
2人のことが周りに結構知られていることを。
でもそんなこと2人には関係なかった。
気にも求めなかった。
2人でいられればそれでいいんだから。
でも今日だけは違った。
なんとなく、無意識のうちに石川は後藤といる時は
ただの石川梨華としていたかったのだ。
なぜかは分からないけど。
「そう、なんですか・・・。」
石川はただそれだけ答えた。
- 66 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月19日(日)13時10分53秒
- 梨華ちゃん複雑ですね。
- 67 名前:aki 投稿日:2001年08月19日(日)14時19分55秒
- 曲が弾き終わり静かな音楽室に戻る。
「なんで今日この時間まで残ってたの?」
初めて石川は後藤に話し掛けられたがすぐにそれには気がつかなかった。
なんとなく音楽室には気まずい雰囲気が流れる。
「それは・・・ちょっと人を待ってて。」
自然と「吉澤」という言葉を石川は避けた。
言ったらこの雰囲気がまだ続くと思った。
「そう。」
後藤は気にとめることもなく新しい曲を弾き始めた。
ゆっくりとした暖かい優しい曲。
まるでこの雰囲気を和ませるように。
無意識なのか考えてしたことなのか分からない。
でも石川の気持ちを和ませ暖かい物が心一杯に伝わってくる。
石川は静かに後藤の横に戻り後藤の横顔を見つめた。
(ドキドキ)
胸の中で確かにときめく音。
この気持ちは初めてじゃない。
屋上であった時も同じだった。
- 68 名前:aki 投稿日:2001年08月19日(日)14時22分42秒
- 66:名無しさん
>文章から石川の複雑な気持ちを感じてくれたことが
嬉しいです!
これからもよろしくお願いします。
- 69 名前:aki 投稿日:2001年08月19日(日)14時50分02秒
- 「なに?」
後藤が石川の視線を感じ尋ねる。
「あ、なんでもないです。なんでも・・・。」
ぽ〜っと見つめていた石川だが後藤の言葉にはっと
我に返り後藤に返事をするとそのまま背を向ける。
(な、なに紅くなってるのあたし・・・。)
頬が少しだけ紅潮しているのに動揺しつつ思い出したように
石川は時計を仰ぎ見た。
すると時計は吉澤の補習の終わる時間を少しだけ超えていた。
(うそっ、もうこんな時間なの。よっすぃー、怒ってるかな・・・。)
「そろそろ私行きます。すいません、なんかお邪魔しちゃって・・・。」
「邪魔なんかじゃないよ。」
今さっきとは違う、はっきりとしていて綺麗で透き通った声。
「それじゃ、失礼します。」
後藤の言葉と今までピアノを弾いてくれた事、今までの音楽室にいた分
全部に対し石川は頭を下げた。
その頬をまた少しだけ紅くなっていた。
石川は後藤に背を向け歩き出す。
音楽室のドアの前までちょうど来たときその右手が
後ろに吸い寄せられた。
それはまぎれもなく人のぬくもり、後藤の手だった。
「後藤さん・・・?」
突然の行動に石川の心の中ではまたドキドキとときめき始める。
「ピアノ、聞きたくなったらいつでも言って。弾くから・・・。」
石川の呼びかけにしばし黙っていた後藤だが静かに口を開きおぼつかない
が石川に気持ちを告げた。
石川は一瞬なにを言われたのか理解できなかったが途端に頬をぼっと
紅くさせひたすら頭を下げ何度もお礼を言い音楽室を出た。
- 70 名前:aki 投稿日:2001年08月19日(日)14時50分42秒
- 石川視点が多すぎるでしょうか・・?
- 71 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月19日(日)16時33分33秒
- いや、いいと思うよ。多すぎないよ。
- 72 名前:aki 投稿日:2001年08月20日(月)20時18分02秒
- 音楽室を出て石川は校舎をとぼとぼと歩いていた。
その頭の中には今さっきの出来事だけが占めている。
なぜ音楽室を後にしたのかその理由さえはるか遠い忘却の彼方。
頭の中で今さっきの後藤の言葉が止め処なくくるくると回りつづける。
『ピアノ、聞きたくなったらいつでも言って。弾くから・・・。』
思い出して冷め始めていた頬がまたぼっと紅潮する。
(顔が熱い・・・。)
熱くなった頬を石川は両手を当て冷ます。
自分の中で完璧なイメージのある彼女がいくらか緊張しているようだった。
そんな一面も見れて驚きとそれ以上の嬉しさが心の中に込みあがる。
気付くと吉澤の補習を受けている教室のある廊下を石川は歩いていた。
「梨華ちゃん〜??」
聞き覚えのある声に俯き加減の顔を上げるとそこには鞄を持った吉澤の
姿があった。
- 73 名前:aki 投稿日:2001年08月20日(月)20時25分28秒
- 71:名無し読者さん
>レス有難うございます!
ちょっと疑問に思ったんですが意見くれて嬉しかったです。
とても参考になりますv
- 74 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月20日(月)20時34分15秒
- この雰囲気すごい好きですよ。頑張ってください。
期待してます。
- 75 名前:aki 投稿日:2001年08月20日(月)20時48分54秒
- 74:名無し読者さん
>ありがとうございます!!
頑張ります!!
- 76 名前:aki 投稿日:2001年08月20日(月)21時03分51秒
- 廊下の向こうから吉澤が二つ鞄を持ってこちらに駆けて来た。
「よっすぃー・・・。」
「教室に鞄だけだったから探してたんだけどどこ行ってたの?」
言いながら吉澤が鞄を石川に手渡す。
「音楽室に、行ってたの・・。」
石川は言うか言わないか迷った。
しかし吉澤に嘘はつきたくなかった。
「音楽室に?忘れ物でもしてたの?」
「ううん。そうじゃないんだけどね、ちょっと・・・。」
石川は自然と後藤と会った事を言いたくなかった。
後藤と自分だけのことにしておきたかった。
「?」
吉澤も石川の少し違う様子に首をかしげる。
そんな吉澤に石川が話し掛ける。
「待たせちゃった?」
「ううん、今終わったところだから大丈夫だよ。」
「良かった。」
「ごめんね、待たせちゃって。それじゃ帰ろっか。」
吉澤が前に出てそう催す。
「うん・・・。」
石川は何故か心の中でズキッと胸が痛むのを感じた。
2人は歩き出し夕日も落ち出し暗くなりだした校舎を後にした。
- 77 名前:aki 投稿日:2001年08月20日(月)21時36分11秒
- 金曜日
今日もいつもと変わりなくお昼の生徒会室。
文化祭の出し物の内容を記入した紙がいろいろな部活から
結構生徒会役員の下に集まってきたためだ。
自分のクラスに生徒会役員がいると部活の人間はほとんどが
彼女たちに渡す。
加護と辻も一年だけで形成されている部活などから紙を受け取っていた。
「これで全部?」
いつもの教室のほとんどを占めるU字型の机の一部に全員が揃う中
矢口がみんなに確認する。
「「全部出しました!」」
加護と辻が揃って言葉を返す。
「あたしも全部出したよ。」
安倍も続いて答えた。
「後藤は?」
「・・出した。」
後藤の受け取っていた紙にはバレーボール部の物も含まれていた。
ちゃっかり加護と辻は目ざとくそれを発見している。
「それじゃ、今日はこれだけにしよっか。明日はこれ全部チャックするから
ちゃんとみんな来てよね?」
「「は〜い!」」
加護と辻が答えたはいいが肝心の答えが返ってこないため黙って矢口は
そっちを見る。
「はい。」
視線を感じ一つ遅れた返事を後藤は返す。
「それじゃ、かいさ・・」
「後藤先輩!!」
矢口が『解散』と言い終わる本当に直前それを遮る声が生徒会室に
響いた。
- 78 名前:aki 投稿日:2001年08月20日(月)21時40分06秒
- ※ここでちょっと※
石川の吉澤を呼ぶのを「よっすぃー」か
「ひとみちゃん」のどちらか迷ってどちらが良いか書き込みしよ
うと思ったんですが小説のテンポが悪くなるかも知れないと思った
ので「よっすぃー」にしてみました。
あと矢口が後藤をそのまま呼んでますが変じゃなければ
幸いです。
- 79 名前:名無しです 投稿日:2001年08月21日(火)03時02分21秒
- ぜんぜん変じゃないですよ〜
やぐちたまにテレビでそのまま呼び捨ての時ありますからね。
これは…梨華ちゃんのココロは確実にごっちんの方に…?
どうなるのでしょ…
毎日毎日お疲れ様です♪
毎日が楽しみに(w
この調子で頑張って下さい〜
- 80 名前:aki 投稿日:2001年08月21日(火)12時15分14秒
- 79:名無しさん
>ありがとうございます!!
とっても励みになります!
これからの展開も昨日かなり思いついたので期待に答えられれば
嬉しいです!
- 81 名前:aki 投稿日:2001年08月21日(火)12時25分30秒
- 生徒会室のドアを勢いよく開けると同時に叫んで入ってきたのは
なんと松浦亜弥だった。
お昼を一緒に取ろうとたわいない会話をしていた加護と辻。
紙を整理し何気ない会話をしていた安倍と矢口。
四人は突然の来客に目を丸くする。
「お昼、一緒に食べませんか?先輩の教室行ったら生徒会室だって
言われて来たんですけど・・・・。」
そんな四人の様子に構うことなく松浦は後藤の元に寄り明るい表情で
話す。
その様子を加護と辻が『?』を頭の上に浮かべ混乱する。
(どういうこと!?さっぱり状況がつかめへん!!)
(あの人、確かAクラスの・・・)
後藤はいつもお昼を買って食べるにしろ食堂で食べるにしろ
一人で食べている。
その方が気楽だからだ。
そして生徒会長でありその容姿、性格から周りも無意識に後藤からは
一歩引いている。
周りは一人でいる後藤に特別さを感じそれに納得してしまっているのだ。
「別にいいけど・・・・。」
「「!?」」
後藤の返事にますます加護と辻は首を捻る。
矢口や安倍とたまにお昼を一緒に取っているのを見たことはあっても
それ以外の人とお昼を一緒にする後藤は初めて見るし聞くからだ。
当の本人後藤はというと誘われれば断る理由もないのでOKしただけ。
「良かったぁ!もしかしたら断られるかなって思ってたんです。」
本当にほっとしたような口調で松浦は胸をなで下ろす。
「お昼これから買うんだけど・・・。」
「お供します!」
後藤は生徒会室にいる四人に軽く挨拶しそのまま松浦と一緒に生徒会室を
出て行ってしまった。
加護と辻はただその光景をぽかーんと揃って眺めていた。
- 82 名前:aki 投稿日:2001年08月21日(火)13時03分50秒
- 後藤と松浦のいなくなった生徒会室。
それはまるで嵐の去った後のように静かになっていた。
「な、何!?今の!?誰あの子!?」
はっと気付いたように加護がしゃべり出す。
「今の子、確か一年Aクラスの松浦亜弥ちゃんだよ。」
「加護と辻と同じ学年とは思えないねぇ。」
辻の言葉に矢口が口を挟む。
「矢口さん、それどういう意味ですか?」
「べっつに〜。」
加護の問いただすような口調に楽しそうに答える矢口。
「それはともかく!いつからあの2人お昼食べる仲になってたの!?
石川先輩は!?」
「後藤は別に避けてるんじゃないよ。みんなが思い込んでるだけ。」
安倍が紙をチェックしながら言葉を返す。
「確か松浦さんって石川先輩と同じテニス部だよ。」
「なんやそれ!?」
「それがどうしたのさ。いいじゃない後藤が誰と食べようと。」
「後藤先輩が好きなのは石川先輩じゃないんですか!?」
「加護のただの思い違いじゃないの?」
「そうなのかなぁ・・・。」
矢口の言葉に少し勢いをなくす加護。
「本当のことなんて結局はその人たちだけにしか分からないんだから・・・
ってあれ?」
隣にいた加護がいつのまにか消えていた。
「のの!お腹すいたから食べながら考えよう!」
「あ、待って〜。」
するとさっさと加護と辻はお弁当を持って生徒会室を出て行ってしまった。
「加護も懲りないなぁ。」
「元気一杯で可愛いじゃない。」
「まぁ、ね。」
安倍がにこっと笑いながら言う。
なぜか矢口は目をそらして答えた。
「うちらはどうする?お昼。」
「ここでいいんじゃない?静かだし。」
「ん、そだね。」
「それにここが一番落ち着くし。あたし達の時もここで矢口がさぁ・・・」
ぼっっと頬を紅くする矢口。
「それ以上言わないでよ、それはぁ。」
矢口の反応に楽しそうに笑う安倍。
「後藤もうまくいって欲しいね。」
「後藤なら、どうなっても大丈夫でしょ。ちょっと不器用だけどね。」
- 83 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月21日(火)13時10分58秒
- やぐなち好きなんで、そういうからみや馴れ初めが見てみたいのですが。
勝手な要望ですいません。
- 84 名前:aki 投稿日:2001年08月21日(火)13時50分50秒
- 土曜日
授業は午前中で終わるが昨日の残りがあるので今日もお昼を取り
居残り。
松浦は今日も後藤を誘っていた。
後藤も別に断る理由もないためOKする。
「先輩、天気も良いみたいだし屋上で食べませんか?」
屋上という言葉に後藤は少なからず反応する。
「屋上は、ちょっと・・・・。」
後藤はなんとなく屋上は嫌だった。
初めてあの人と言葉を交わした屋上だけは。
「あ、いいんです。別にそんな・・・。それじゃ教室で食べましょう!」
後藤が気まずそうに断る言葉に松浦は両手を前に出し必死に言葉を返す。
2人はそのまま松浦の教室でお昼を取る事にした。
土曜日はほとんどが学校が終わるとすぐに家に帰る生徒や部活などで
さっさと食べていってしまう生徒が多いため人が少ない。
松浦の教室にも人は一人もいなかった。
後藤が松浦の席で食べ松浦はクラスメートの席を借りる形で食事を取る。
後藤は自分からはほとんど話さなかった。
その分松浦がいろいろなことを話す。
本当に楽しそうに、嬉しそうに。
そんな松浦の様子にこの前の言葉もあり少しだけ後藤は胸が痛くなる。
「松浦さん・・・。」
「はい!!?」
突然初めて名前を呼ばれ松浦は変な答え方になってしまった。
「あのさ、お昼誘ってくれたりするの嬉しいし私はあなたのこと
好きだけど・・・でも松浦さんの気持ちには、私は・・・・。」
後藤の言葉に松浦は膝の上の手を軽く握り締める。
「分かってます。先輩の気持ちは・・・でも私、すごく好きなんです。
本当に。だから・・図々しいかも知れないけど先輩が振り向いてくれるまで
私待ちます。・・・・ダメですか・・・?」
必死に松浦は自分の気持ちを後藤に伝えた。
その必死さは後藤にしっかりと伝わっていた。
「ダメじゃないよ・・・。ありがとう。」
近頃やっと後藤は自分の気持ちが分かり始めていた。
これから先、目の前の彼女に振り向く事があるかないか分からないが
今は松浦との関係はこのままで良いと思った。
「そんな、お礼なんて・・・。」
松浦は今さっきと同じように後藤を気遣い言葉を返す。
そんな松浦の様子に後藤は優しく微笑んだ。
一瞬だけのその後藤の様子に松浦も気付く。
2人覆っていた少し張り詰めてしまった雰囲気は一瞬にして消え去った。
- 85 名前:aki 投稿日:2001年08月21日(火)13時56分00秒
- 83:名無し読者さん
>矢口と安倍の馴れ初めもいずれ書こうと思い
それを感じさせるような会話をさせてみたのですが
書くとなるとこの話の外伝的なものになると思うので
かなり後になると思います。
まだどういう話にするのかも全然おぼろげなので・・・。
レス有難うございますv
- 86 名前:aki 投稿日:2001年08月21日(火)14時11分11秒
- 「あ、今日うちの学校でバレーボールの試合あるらしいですよ。」
「そうなんだ。」
今さっきの会話から後藤と松浦の間には前より壁がなくなっていた。
「なんかうちの学校も結構強い方らしいんですけど今回は相手の学校も
すごく強いらしくて。」
後藤も自分のクラスメートでバレーボールがどうとか話していたのを思い出した。
「応援がすごいらしいですよ。私のクラスの子も行ってる
みたいなんですけど・・・・。」
バレーボール部といえば思い出す人物が一人後藤にはいた。
その人がいるのも応援のすごいのに入ってるんだろうなとふと思う。
「食べ終わったら見に行ってみませんか?あ・・でも・・・・。」
松浦が言葉を濁すのを感じそれが何かも察しがつく。
「1時半に集まる予定だから大丈夫だよ。」
後藤の言葉に松浦はとびきりの笑顔で答えた。
- 87 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月21日(火)14時41分11秒
- 後藤と松浦が食事を取っている頃、加護と辻もお昼を取っていた。
「今日は何時集合か分かる?」
「1時半だよ。」
「それならまだのんびりできるな。」
加護は時計を仰ぎ見て食べ終わった袋を片し出す。
「ところでのの、知ってる?」
「なにを?」
辻も今パンを食べ終わり片し始める。
「今日はバレーボールの試合がある。」
「うん。」
「バレーボール部といえば吉澤先輩。」
「うん。」
「吉澤先輩といえば石川先輩。」
「うん。」
「だから見に行こう。」
「うん、いいよ。」
「石川先輩のことは職員室で前会った事あるから知ってるんだけど
吉澤先輩のことあまり知らないんだよね。」
「私、前部活見学の時見たことあるよ。」
「どんな人なん?」
「ショートカットでね、男の子っぽいボーイッシュな感じだった。」
「そうなんだぁ。・・・それにしても後藤先輩って恋人がいる人
を好きになっちゃったのね。」
「そうだね。」
加護が丸めた袋をぽいとごみ箱に投げる。
袋は綺麗に弧を描きごみ箱に入った。
「そろそろ行こっか。」
「うん。」
辻も袋をごみ箱まで行き捨て飲みかけのジュースを持ち加護と教室を後にした。
- 88 名前:aki 投稿日:2001年08月21日(火)14時41分41秒
- 上の名前忘れました・・・。
- 89 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月21日(火)17時51分27秒
- さわやかな感じで、一言、「おもしろい!」毎日楽しみにしてますよ。
これからも頑張ってください。期待してます。
- 90 名前:aki 投稿日:2001年08月21日(火)18時07分50秒
- 89:名無し読者さん
>ありがとうございます(T_T)
さわやか!うれしいです!頑張ります!
- 91 名前:aki 投稿日:2001年08月21日(火)18時17分15秒
- 加護と辻が教室を出て体育館に向かう廊下の方に目をやると
なんとそこには後藤と松浦の姿があった。
「のの!伏せて!」
「へ?わっ!」
加護の言葉を理解するまもなく体を下に沈ませられる。
「ど、どうしたの?亜依ちゃん。」
「後藤さんと松浦さんがいた!!・・・・もう大丈夫だ、行こっ!」
加護は後藤と松浦の姿が見えなくなったのを確認すると立ち上がり
その後も奇妙な行動を取っている。
「何してるの?」
「見つかったらないように尾行するの!早く!」
「体育館は?」
「そんなのあと!」
加護はそれだけ言うと後藤と松浦の消えていった廊下を猛ダッシュし始める。
「あ、待って〜!」
加護を追いかけるため辻も静かな廊下を走り出す。
- 92 名前:aki 投稿日:2001年08月21日(火)18時34分37秒
- 後藤は体育館に行くのに対し心の中で少しだけためらったが
行く事にした。
石川梨華と吉澤ひとみをセットで考える事は極力やめようと思ったのだ。
体育館に近づくごとに中のざわめきが少しだけ耳に届く。
廊下をただ歩いていた後藤だがスッと止まり後ろを振り向いた。
「どうかしたんですか?」
「・・・・ううん、なんでもない。」
後藤はなにやら視線を感じ振り向いてみたがそこには誰も居なかった。
またしばらく歩くと目の前に体育館のドアが現れた。
中からは微かに知っている名前の声援が届いた。
- 93 名前:aki 投稿日:2001年08月21日(火)18時55分34秒
- 教室をいかにも怪しく歩く姿二つ。
「もしかして体育館に向かってるんかな?」
「待って〜。」
さっさと歩いていく加護に一生懸命ついていく辻。
「亜依ちゃん、歩くの速い〜。」
「静かに・・・・おわっとぉ!!!」
「なに?わっ!!」
加護が突然止まり余所見をしながら歩いていた辻は思いっきり加護の背中に
顔からぶつかる。
「後藤先輩、勘が鋭い・・・。」
角を二人が曲がろうとしたとき後藤がちょうど後ろを振り向いたのだ。
とっさに二人は角の手前で息を潜める。
「鼻、思いっきりぶつけた。」
辻は涙目になりながら鼻の頭をさする。
しばらくすると後藤と松浦はまた歩き出した。
二人に気づくこともなく。
「ふぅ、危なかった。」
「鼻が痛い・・・。」
「この先は体育館しかないし、目的地は一緒やったんやな・・。」
「なにしてんの?」
「なにって尾行を・・・」
「あ、亜依ちゃん・・。」
「へ?」
辻の言葉に振り向くとそこには矢口と安倍がすぐ後ろに位置していた。
「わわわっ!!」
そのまま後ろに加護はのけぞってしまう。
「尾行?誰を?」
「い、いつから・・・?」
「二人が立ち止まったところから。尾行もいいけど時間は守ってよ?」
「大丈夫です、それでは急いでるんで!」
加護は安倍とぶつけた鼻について話していた辻の手を取りそのまま
風を切り走り去ってしまった。
「なにあれ?」
「さぁ?」
- 94 名前:aki 投稿日:2001年08月21日(火)19時15分15秒
- 体育館に入ると声援がすごかった。
「吉澤センパ〜イ!!」
その声援に後藤はやっぱりと心の中で密かに納得する。
体育館ドア近くにいた生徒は後藤と松浦の姿に気づき少しだけざわめく。
「上で見ませんか?」
体育館に入ってすぐある左右二つの二階への階段へ上がり後藤と松浦は上から
眺めることにした。
体育館の真ん中にネットを張りネットの先には審判が高い椅子に座っている。
自分の学校の方を見てみるとそこにはバレーボール顧問の保田の
姿もあった。
肝心の試合の方見てみるとうちの学校が相手チームより少しだけ
負けているようだった。
そのせいか声援も半端ではない。
「吉澤先輩の声援すごいですねぇ。」
そう体育館には絶え間なく「吉澤」という言葉が響いていた。
- 95 名前:名無しです 投稿日:2001年08月21日(火)23時40分37秒
- ごっちんのよっすぃーとの出会い…(ちょっと違うか…)
これからどう動いていくのか気になります…
頑張って下さい〜
- 96 名前:aki 投稿日:2001年08月22日(水)13時53分15秒
- 後藤と松浦に続き加護と辻も体育館に入り体育館ドア付近にいた
生徒の話に聞き耳を立て二人も上へと続いた。
「見つからないように伏せてぇ。」
「わかったぁ。」
加護の注意を聞き辻と加護は身を沈め後藤たちとは
反対側の方の柵になっていないところに身をおいた。
「あれ?加護に辻やんか。どうしたん?」
下ばかりだった視線を2人はその声に一斉に顔を上げる。
「「中澤先生!」」
「なんや、そんなおどろかんでもいいでしょ。」
「ど、どうしてここに?」
「そりゃ一応けが人が出たときはあたしの出番になるし、まぁ
試合を見にね。」
「はぁ。」
「はぁってなんやそれ。それにしてもなにしてるん?」
「そうだ!向こう側に後藤先輩います?」
加護の言葉に中澤は前を見て確認する。
「いるで?松浦も一緒見たいやけど・・・。とうとう後藤も
付き合ったんか?」
「やっぱり誰が見てもそう見えるんだ・・・。」
中澤の言葉に辻が呟くように言葉を漏らす。
「のの!あたしはこっちから見るから、ののはそっちから見て。」
「わかったぁ。」
ちょうど角の壁のあたりから顔だけ出して柵から下と後藤たちを
覗く2人。
「探偵ごっこか?」
中澤の言葉はとりあえず無視する二人。
- 97 名前:aki 投稿日:2001年08月22日(水)13時57分53秒
- 95:名無しさん
>レス有難うございます!
後藤と吉澤の接触するのはあまり頭になかったんですけど
この後入れてみようかなっと思いました。
頑張ります!
- 98 名前:aki 投稿日:2001年08月22日(水)14時30分58秒
- 後藤は手すりに両肘を置き下の眺めていた。
試合は未だに平行状態。
相手の学校がわずかに点数を上まっていた。
吉澤はエースだけあってよく目にとまる。
きついスパイクを受けたり打ったりとしている。
ふとここでうちの学校からタイムアウトが要求された。
一旦試合が30秒間中断される。
バレーボールのコーチが手早く指示を出す。
それを吉澤も真剣に耳を傾けていた。
全員にひとまず指示するとコーチはレシーブを中心に
していた生徒の元に行き指示を出す。
それをただ後藤は黙って見ていた。
そんな時ふと後藤の視界に飛び込んできた物があった。
それはスポーツタオルを手にもった石川の姿だった。
応援に来ているドア付近の生徒達からは見えない場所に彼女の姿はあった。
吉澤が石川の元に行きタオルを受け取り汗を拭う。
(ズキッ)
後藤の心の中で静かに響く低い音。
吉澤になにやら声をかける石川の姿は真剣そのものだった。
「・・・・・・。」
(あんな顔するんだ・・・。)
吉澤と話す石川の表情は真剣な物から時にほころんだり優しい表情になる。
それは出会ったばかりで無理はないが後藤には見たことのない表情。
「あ、やっぱり梨華先輩も来てたんですね。私、先輩と同じテニス部なんですよ。」
松浦が後藤の視線に目をやり話す。
「そう、なんだ・・・。」
なんとか松浦に言葉を返す。
しかしその時の後藤の言葉は誰が聞いても沈んだ声だった。
- 99 名前:aki 投稿日:2001年08月22日(水)14時41分47秒
- 後藤の今までとは少し変わった様子に松浦も気付く。
石川と吉澤を見つめる後藤の横顔を覗くとそれは悲しそうな切なそうな
ある意味納得したようないろんな感情が入り組んだ表情。
後藤の瞳には石川と吉澤の姿ともう一つ憂いを秘めているようだった。
その後藤の横顔を時間を忘れてように見つめてしまう松浦。
(もしかして・・・・後藤先輩の好きな人って・・・・・・。)
松浦の心の中にそんな考えがよぎる。
心の中に産まれた予想に松浦も複雑な気持ちになり表情になる。
後藤はそんな松浦に気付く事のなくただ黙って二人を見ていた。
表情を変えないまま。
時間はいつのまにか30秒過ぎ試合が再開される。
後藤の視界にはただ吉澤に声をかけながら送り出す姿が映っていた。
- 100 名前:aki 投稿日:2001年08月22日(水)14時42分54秒
- 最初の頃、字数制限ばっかり引っかかってたんですけど
どうなったんでしょう?
とりあえずいつのまにか祝100回
- 101 名前:aki 投稿日:2001年08月22日(水)14時59分09秒
- そんな後藤の表情、様子に気付いてのは松浦だけではなかった。
加護と辻もその表情をちゃんと捕らえていた。
しかし後藤たちとは違いちょうど石川達の上に位置するので後藤が
なにを見て今の表情になっているかさっぱり分からない。
「亜依ちゃん、後藤先輩・・・・。」
「うん、何見てるんだろう・・・。」
辻がなにを言いたいのか全部聞き終える前に理解する加護。
「そうだ!ちょっと、中澤先生!!」
加護は小さな声で隣で手すりに肘を置き眺める中澤の名前を呼ぶ。
「ん?なに?」
「あの、ちょっとお願いを聞いて欲しいんですけど。」
「なに?言っとくけどあたしは矢口一本だからね。」
「違いますよ!!この下!ちょうど下ってだれがいるか分かります?」
「この下?ちょっと待っとき・・・。」
中澤が少しだけ身を乗り出し顔を下にやる。
「吉澤がいるで?」
「吉澤先輩だけ?」
「ううん、石川と一緒にいる。」
「「!!」」
その言葉に加護と辻が反応する。
「のの、聞いた?」
「うん。」
2人はまた後藤に目をやる。
「この先輩の表情、火曜日に廊下で会った時も屋上に石川先輩と
いた時も今と同じ表情してた・・・・・。」
「うん・・・・。」
「先輩、やっぱり・・・・」
そこまで加護が言いかけたとき試合を再開する合図が体育館に響く。
2人は後藤の様子ばかり見つめてしまい松浦の様子には気付かなかった。
- 102 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月22日(水)16時32分17秒
- 毎日更新なので楽しみで仕方ないですね。辻加護コンビや矢口となっちもすごく
うまく表現されててとてもいいと思います。
大変ですが、応援してますので頑張ってください。
- 103 名前:aki 投稿日:2001年08月22日(水)17時02分06秒
- 102:名無し読者さん
>レスありがとうございます(T_T)
やることなくて気が付くと書いてしまって。
最初のころはもちょっと間を空けて書いていったほうがいいのとか
一日でこんな更新してしまっていいのかとも思ったんですけど
ありがとうございます!頑張りますのでよろしくお願いします。
- 104 名前:aki 投稿日:2001年08月22日(水)17時42分13秒
- 試合は再開されたが形勢は逆転しない。
後藤の目にはもう試合の事よりも石川ばかりが映っていた。
まるで自分のことのように応援する石川。
それをただ黙って複雑な想いで見つめる後藤。
松浦はずっとその後藤の横顔をなんとも言えない気持ちで見ていた。
「・・・先輩、あともう少しで1時半になりますよ。」
「え?あ、本当だ。」
松浦は声をかけにくかったが今の後藤の表情もいつまでも見ていたくなかった。
松浦の言葉に後藤は自分の腕時計を確認する。
後藤の顔からはすっと今さっきの表情は消える。
その様子にあの表情は石川に向けられていた事に松浦は確信を抱く。
「それじゃ行こうか。」
後藤の言葉を最後に二人はその場を離れ体育館から出て行った。
- 105 名前:aki 投稿日:2001年08月22日(水)18時19分03秒
- 「そろそろ行かないと間に合わなくなるよ。亜依ちゃん。」
辻の言葉と同じぐらいに後藤と松浦もその場を離れる。
「うん、それじゃ見つからないようにまた後から行こう。」
「あんたらさっきからなにやってんの?」
中沢が二人に口をはさむ。
「秘密です。」
「あっそ・・・。」
いやに真剣な二人にもう中沢は呆れ顔になってしまっている。
「・・・・行こう!」
「うん!」
後藤と松浦が二階を後にするとすぐにその後ろについて行く。
その二人の後姿は怪しい極まりない。
「これからが試合の醍醐味やっちゅうに。何しに来たん?あの二人・・・。」
そんな中沢の独り言を背に加護と辻は後藤と松浦が体育館から出て行くのを
二階から確認すると二人も音を立てないように静かに階段を下りていく。
二人も体育館を出て行きまた校舎側のドアに辻が手をかけてとき・・・
「!伏せてぇ!!」
「へ?わぁっ!」
後ろにいた加護が突然辻を制止しそのまま辻は加護に静められるように
二人は身をドア前で沈めた。
「ど、どうしたの!?」
「すぐ前の廊下にいるっ!」
小さな声で加護が辻に説明した。
「本当に?」
「見れば分かるよ。」
校舎側のドアは上半分が少しだけかすみの入ったガラス窓になっている。
二人はガラスのところまで目の位置を持っていき覗いた。
「あ、本当だぁ。」
「ね。」
はっきりとは確認できなかったが二人であることだけはしっかりと分かった。
- 106 名前:aki 投稿日:2001年08月22日(水)21時56分17秒
- 「これから私、生徒会室に戻らないといけないんだけど
松浦さんはどう・・する?」
後藤は隣に松浦の姿がないのに気付く。
途中まで言いかけ後ろを振り向いてみると少し後ろに俯き加減で
立ち止まっている松浦の姿があった。
「あ、すみません・・・。」
「・・・・どうかしたの?」
松浦のいつもと少し違う様子に後藤は心配そうに声をかける。
「いいえ!なんでもないんです・・。大丈夫です・・。」
「・・・・・。」
「私のことは気にせず先輩は生徒会室行ってください。
私は帰りますから・・・・。」
「うん・・・。ごめんね。」
「いえ!そんな・・・。気にしないで下さい。」
松浦の様子が少し気になったが後藤はこれ以上気を使わせてしまうのも
悪いと思い「それじゃ、行くね。」と一言告げると後藤はそのまま
生徒会室へと走っていった。
松浦は後藤の走って行く後姿を見つめていた。
姿が見えなくなるまで。
- 107 名前:aki 投稿日:2001年08月22日(水)22時33分08秒
- 「さっぱり何言ってるか聞こえへん!!」
「亜依ちゃん〜。そろそろ時間やばいよ・・・。」
依然として校舎側のドアのガラスから覗く二人。
「だいじょう〜ぶ、大丈夫〜。」
「なにを根拠に・・・・。」
「ん?後藤先輩行っちゃったよ。」
「それじゃ、あたし達も!」
辻は加護の言葉に加護の手を取り立ち上がる。
「ぐぎがっ・・・!!」
「どしたの?亜依ちゃん。」
完璧に立ち上がった辻の横で加護は膝に手を置き屈んだまま。
「脚がしびれた・・・。」
「・・・・・・。」
その後、加護の脚のしびれが取れるのに結構の時間を費やした。
- 108 名前:aki 投稿日:2001年08月23日(木)14時59分35秒
- 文章読み返してみると結構ミスがありますね・・。
- 109 名前:aki 投稿日:2001年08月23日(木)15時18分32秒
- 後藤の腕時計は既に1時半を超えていた。
今までは遅れていても焦ったり走ることなどしなかったが
なぜか近頃は前しなかった行動をよく取る。
今さっきの事もそうだ今までは気付いたとしても他人の心配なんかしなかった。
でも自分は松浦に声をかけていた。
(どうしたんだろ、私・・・・・。)
松浦と出会ってそのひたむきさにも影響を受けているだろう。
(でも違う・・・・。)
全てはあの日、あの人に会ってから。
(あの時から、私は・・・・。)
そんなことは充分後藤自身も気付いていた。
走らなくても走ってもどうせ遅れているのに後藤は走ることに
何かをぶつけていた。
『石川と吉澤をセットで考える事はやめる』
そんな気持ちも20分かそこらで崩れ去ってしまった。
自分が石川を知る以前から2人は一緒にいて、同じ時間を過ごして。
自分の知らないいろんなことを吉澤は知っている。
後藤は息を切らせ、走っていた足を止めた。
- 110 名前:aki 投稿日:2001年08月23日(木)15時40分12秒
- 後藤は息を荒く切らせながら少し俯いた姿勢で誰もいない静かな
廊下の壁をドンッと叩いた。
何かを訴えかけるように何度も叩く。
息を切らせたまま後藤は壁に手を置いたまま叩く事をやめ壁に寄りかかった。
「どうして・・・・・。」
誰にも聞こえないほどの小さな声で後藤は呟く。
「どうして、あの時・・・・・」
どうしてあの日、屋上で彼女と出会ってしまったのか。
どうしてあの時自分は屋上に行ってしまったのか
どうしてあの時、風が吹いたのか。
(なんで出会っちゃったの?こんな気持ちになるぐらいなら・・・・)
こんな想いするなら知らないままでよかった。
あの時、あの場所で彼女に会ってからどうでもいいただ同じことを
繰り返す日々が一変してしまったんだ。
「どうして・・・・・?」
問い掛けても当然の如く何も答えは返ってこない。
静かな廊下、冷たい壁はあの日以前、以降ずっと同じ。
なにも変わらないはずだった自分の心。
それはいつしかあの日を境に変化を遂げていく。
一方的のような運命の歯車は後藤の理性とは裏腹に募っていくばかりだった。
- 111 名前:aki 投稿日:2001年08月23日(木)16時03分14秒
- しばらく気持ちを落ち着かせやっと生徒会室に後藤がたどり着いたのは
時すでに2時5分前。
生徒会室のドアに手をかけようとしたとき生徒会室のすぐ横の階段から
上ってくる二つの姿が後藤の目に入る。
「2人とも、どうしたの?」
「「・・・遅れちゃいました。」」
加護はあははと気楽そうに笑い、辻は怒られるのを確信しているのか
母親に怒られる前の子供のような表情をしている。
実はあの後松浦の姿が廊下から中々いなくならないので
2人は外からここまで周って来たのだ。
加護のしびれた脚のせいもあって時間がかかってしまったというわけ。
ふと加護の頭の中に疑問がよぎる。
(あれ?後藤さんあの後走ってたのになんで今ごろ生徒会室に着いてるんだろ・・・?
あそこからなら走ったらぎりぎりには着くだろうに・・・。)
「入ろうか。」
後藤の言葉に加護は頭の上のクエスチョンマークをぱっと消し去り
三人は一緒に安倍と矢口の待つ生徒会室に足を踏み入れた。
- 112 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月23日(木)17時10分05秒
- すごくいい!これからもがんばれ、akiさん。
- 113 名前:aki 投稿日:2001年08月23日(木)20時02分08秒
- 112:名無し読者さん
>ありがとうございます〜(T_T)
励みになります!頑張りますね!
- 114 名前:aki 投稿日:2001年08月23日(木)20時49分34秒
- 生徒会室にはすでに矢口と安倍の姿があった。
生徒会室に入ってきた三人を待っていたのは矢口の怒りの表情。
三人はこっ酷く叱られようやく落ち着いたのは予定時間より30分遅れた2時だった。
五人は各自いつもの席に座ると昨日の続きを再開させた。
紙を提出した部活をチェックし校舎のどこに何の部活が来るかなどや
無理な出し物がないかなどを確認する。
時間はあっという間に過ぎ一時間が過ぎた。
「遅れた分、取り返すように!」
矢口と安倍は10分の休憩時間を設け矢口は三人にそういい残すと
二人は休憩を取りに出て行ってしまった。
三人は今出ているだけの個々の部活の予算を三等分にし電卓片手に計算し始める。
「「「・・・・・・。」」」
生徒会室に電卓のカタカタという飾り気のない音が響く。
「きゅう〜けいっ!」
加護が言いながらペンで紙に数字に記入し電卓から指を離すと両手を上げ
のびをした。
「・・・・・・亜依ちゃん、いいの?」
辻も一段落し紙に合計の数字を記入し加護に話し掛ける。
「だってまだ三枚もあるんだよ?今日一日で終わるわけないない。」
「・・・・・。」
そうこの学校は部活の数だけは結構の数がある。
定番のものからほとんど部員はいないけどとりあえず成立している
部活。
そのおかげで提出されているだけの部活でも三等分にして一人四枚。
矢口にこっ酷く怒られ反省しまくった辻。
もう絶対遅刻なんかするものかと心に決めた。
加護はというと反省はしているようにも見えなくはないが少しだけ
後藤のように慣れてきてしまっているのではないかと辻は疑ってしまう。
- 115 名前:aki 投稿日:2001年08月23日(木)21時03分38秒
- 「私、トイレ行ってくるわ。」
後藤も一枚目の計算を終え用紙に書き終わると二人にそう言い椅子から
立ち上がる。
「え?あ、あのいいんですか?」
辻が呆気に取られたような面持ちで後藤に尋ねる。
「何が?」
「外、出ても・・・・。」
「トイレぐらい良いでしょ。」
それだけ言い残し後藤も生徒会室から出て行ってしまった。
「・・・・・・。」
(この二人って・・・・・神経が太い?)
後藤と加護の様子に辻は言葉をなくす。
なんとも思っていないのか、ある意味変なところで二人は似ているのか
それとも自分が変?なのかなどいろんな疑問を少しの間だけ抱えてしまった。
- 116 名前:aki 投稿日:2001年08月23日(木)21時54分47秒
- 後藤も出て行き加護と辻だけになった生徒会室。
辻は一人、二枚目の紙の計算に取りかかっていた。
加護はというと教室の窓から外を眺めている。
「あ、負けちゃったのかな・・・うちの学校。」
体育館の校庭側に位置する横に大きく開放する戸が開け放たれているため
ここからでも様子をうかがえることができた。
そこには泣いているのか肩を落とす生徒がほとんどだった。
「・・・・・・・。」
その光景をなんとなく加護はしばらく眺め、ふと辻の方に振り返った。
「のの・・・。」
「ん〜なぁに?」
電卓をおぼつかない様子で打ちながら加護に答える。
「・・・あのさ。」
「うん?」
辻は電卓から指を離しペンを持ち直し紙の一番下辺りに数字を記入する。
「ごめんね。」
「何が?」
ようやく一区切りがつき辻は加護の言葉に向き直る。
「うちのせいで遅れて怒られちゃったし・・・。ののは時間言ってて
くれたのに。それにいろいろな事付き合ってもらってるし・・・。」
申し訳なさそうに言う加護に辻はしばしその姿を見つめてしまった。
それ以上何も言わない加護に辻は加護の両手を握り言った。
「ののが好きで亜依ちゃんに付き合ってるだけだよ。怒られたのは
怖かったけど・・・楽しいもん、亜依ちゃんといて。」
辻は優しく暖かく加護の目を見つめそう告げる。
「のの・・・・。」
「だからそんな事気にしないで。」
「のの・・・・!」
加護は辻に前から抱きついた。
「あ、亜依ちゃん!?」
「大好き!・・・・ありがとう。」
心から想いを伝えるように加護は辻に静かに囁いた。
- 117 名前:aki 投稿日:2001年08月23日(木)22時01分09秒
- 107の辻の「あたし達も!」って台詞は変かもしれませんね。
辻と加護って自分のこと「あたし」って呼んでないですよね・・・?
あと上の文
申し訳なさそうに〜見つめてしまった。
の後に
こんな加護の姿を見るのは辻にとって初めてだったからだ。
を付けたしです。
たいした事ない差ですがいちいちすいません。
- 118 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月24日(金)04時04分14秒
- ここまでの分一気に読ませてもらいました。すごくいい感じです。
ごっちんの気持ちがこの先どう動いていくのか楽しみです。これからも頑張ってくださいね。
あと、一つ気になったんですが飯田さんだけ出てないような・・・。
彼女の出番はあるのでしょうか?
- 119 名前:aki 投稿日:2001年08月24日(金)12時39分30秒
- 118:名無し読者さん
>レスありがとうございます!
これからも頑張りますね。
そうなんです。飯田は出そうとも思ったんですが(実はキャラクターも
考える事には考えたんですが)どうも存在が薄くなりがちで・・。
入れるタイミングもどう動かしたらいいかなど考えた挙句入れませんでした。
これからも出てこないんです・・・。すいません・・・。m(__)m
- 120 名前:aki 投稿日:2001年08月24日(金)13時11分18秒
- 同じ頃の屋上
「試合負けちゃったみたいね。」
安倍と矢口は屋上でのんびりしていた。
当然ここからも体育館の様子を窺い知れる。
「本当だ・・・・。」
矢口の言葉に安倍も体育館の方に目をやる。
しばらく二人はその光景を静かに見ていた。
「矢口さぁ。」
「うん?」
「結構厳しいよね、あの三人に。」
前を向いたまま安倍は矢口に声をかけた。
「怒りたくて怒ってるんじゃないんだけどね。」
「いいの?休憩取らせてあげなくて。」
「あの三人があたし達もいないのに素直にやってるとも思えないけどね。」
苦笑を交えながら矢口が言う。
「そっか。」
「・・・・・あたし達が卒業したら本当にあの子ら自分達だけで
やっていかないといけないし。あの子達にとって叱ってくれる人も居なくなっちゃう。
怒れるのも『今』だけ、だからついね・・・・。」
静かに矢口が切ないような優しいような表情でそう呟く。
その横顔を安倍は横目に見つめる。
「矢口らしいね。」
「そう?」
「そうだよ・・・。ちゃんと考えてるところが。」
そういうと安倍は隣にいた矢口に寄り添い少しだけもたれかかった。
「何?突然。」
少し動揺したような矢口の様子に安倍は微かに微笑む。
「少しの間だけ!」
矢口とこの場所でこうする事ができるのも『今』だけだから。
少しの間だけでもより多く今を感じていたい。
今を大切にしたい・・・・。
- 121 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月24日(金)13時19分32秒
- すんごく面白いっつーか、ワクワクします。
更新が早いのも嬉しいです。
かなり楽しみにしてるので、がんばっていって下さい!!
- 122 名前:aki 投稿日:2001年08月24日(金)13時27分29秒
- 121:名無しさん
>ありがとうございます!嬉しいです(T_T)
頑張りますよ〜。
ただ近頃自分もいしごま小説読みたいなって思いこの頃・・・。(ボソッ)
- 123 名前:aki 投稿日:2001年08月24日(金)13時46分18秒
- 同じ頃加護と辻、矢口と安倍がそれぞれの場所でしてる事など
知る由もなく後藤はというとトイレから出て手を洗っているところだった。
土曜日の午後。
ほとんどの生徒は校舎に見当たらないため静まり返っている。
後藤はわざと生徒会室からすぐにあるトイレには行かず同じ階でも
生徒会室から遠いトイレに足を運んでいた。
廊下に出てゆっくり歩いていると後藤の視界にこの廊下の窓からちょうど
この校舎の向かいに立っている体育館が映った。
「・・・・・・。」
そこからはうちの学校のバレーボールのユニフォームを着た生徒達が
姿がうつむき加減にタオルを泣いているためか顔に当てていた。
後藤はそれを見て自分の学校が試合に負けたんだと理解する。
バレーボールのコーチらしき先生や保田がそんな生徒達の
肩を抱き慰めていた。
その中には吉澤も。
泣いている生徒が大半の中、吉澤は涙一つ流さずみんなを
励ましている様子だった。
後藤はいつのまにか立ち止まってその光景を眺めていた。
ただ静かに。
- 124 名前:aki 投稿日:2001年08月24日(金)14時09分32秒
- 「・・・・・後藤は?」
矢口と安倍は10分と少し経ったところで生徒会室に戻っていた。
「後藤さんなら・・・・・その、トイレに・・・・。」
言いにくそうに小さな声で辻が電卓を扱いながら不審がる矢口に答える。
「トイレ!?」
信じられないような表情を矢口は浮かべる。
その横で安倍は思わずぷっと吹き出してしまった。
「なっち・・・・・。」
「ごめんごめん。」
笑ったまま安倍がしかめっ面の矢口に謝る。
その時ちょうど後藤が生徒会室のドアを開け中に入ってきた。
「あ、トイレですよ。」
矢口と安倍の姿に気づきとりあえず後藤は自分の行動に弁護する。普段どおりだが。
その姿に矢口は呆れて物も言えなくなってしまう。
「しかも辻は偉い。二枚終わらせてまだ頑張ってる。それに比べて加護と後藤は
まだ一枚・・・・!?」
ため息をつきながら矢口が小言をこぼすように呟く。
「矢口さん、10分でこれ全部終わりませんよ。」
「だからってサボってんなよぉ!」
安倍の笑いは止まらないまま辻も矢口の様子に少し笑ってしまう。
「あ〜あ、あんた達が真面目にやってるとも思わなかったけどさ・・・。
少し、ほんの少しだけ期待してたあたしが馬鹿だったわ。」
「矢口さん、気を落とさないでっ!」
「しょうこりもなくお前なぁ!!」
二人の様子に安倍と辻は一斉に笑い出し加護も一緒に笑う。
矢口も呆れたようだがその様子に軽く笑みを浮かべ後藤も
少しだけ静かに微笑む。
生徒会室には久々に五人の笑い声が響き満たしていた。
- 125 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月24日(金)15時58分13秒
- 矢口の性格がいいですね。三人を思って怒って、そしてなっちがうまくフォロー
してて、なちまりのいいところを存分に引き出してると思いますよ。
- 126 名前:aki 投稿日:2001年08月24日(金)17時00分36秒
- 125:名無し読者さん
>ありがとうございます!
雰囲気が伝わっている事がとても嬉しいです。
- 127 名前:aki 投稿日:2001年08月25日(土)20時54分37秒
- あれから終わっていない部活の予算の計算を改めて五等分にして
計算し、それをまた間違っていないか確認するため計算したりした。
中には三度目でようやく計算があったものやそれ以上やってやっと
できた物もあり結構な時間がかかってしまった。
やっと終わった頃には時計の針は4時半を指していた。
「疲れたぁ・・・・。」
「疲れたねぇ。」
小さく言った加護の言葉に安倍が伸びをしながら答える。
やっと作業が終わった頃には全員机に突っ伏したり椅子に反れるように
もたれかかったり疲れがにじみ出ていた。
「今日はこれで終了〜。」
矢口が言うが全員すぐに動こうとはしない。
「お腹空いたぁ。」
辻が目を潤ませ呟いた。
「今日はみんな本当にがんばった。」
滅多に言わない矢口の褒め言葉に加護、辻、そして後藤は素直に嬉しかった。
少しだけ表情も元気になる。
外はもう陽が傾きかけていた。
- 128 名前:aki 投稿日:2001年08月25日(土)21時39分53秒
- あれから五人はしばらくの間休憩し、軽く机の上を整理して
生徒会室前で別れた。
加護と辻はそのまま一緒に帰り安倍と矢口は今日みんなで計算した
紙などを教室のロッカーに入れるために戻ったため今後藤は一人だった。
矢口と安倍に一緒に帰らないかと誘われたが断った。
ほとんど一人で帰っているが今日は特に一人が良かった。
土曜日の黄昏時。
土曜日のせいか平日の今と同じ時間に比べると今日はなぜか特に
寂しい雰囲気を漂わせていた。
しばらく四人と別れた後生徒会室の前でぼーっと立っていたが後藤は
ゆっくり廊下を歩き始めた。
今日は今までの土曜日の中でもとても長く、いろんなことがあったように
感じた。
夕日が目に眩しい。
後藤は窓から降り注ぐ夕日に目を細めふと下に視線を向けた。
今日、何度目になるだろう。
体育館にすぐ隣の校舎の裏で二つの姿が後藤の目に映ってしまった。
制服姿の吉澤が石川の胸の中で顔を埋めていた。
その様子に吉澤が泣いていることが窺い知れる。
石川はただ吉澤の肩を抱き髪を優しく撫でていた。
負けて落ち込む部活のメンバーを励ましていた吉澤、その姿は
今は感じられなかった。
バレーボールのエースとか先輩とか関係ないただ試合に負けて
しまった吉澤ひとみとしてその姿を石川に晒していた。
たぶんそんなことができるのも吉澤にとって石川ただ一人なのだろう。
- 129 名前:aki 投稿日:2001年08月25日(土)22時09分03秒
- 心の中でまたズキズキと響き始める音。
あなたに出会ってから何度目だろう。
静かに後藤は自分に問い掛ける。
「いいかげんに勘弁してよ・・・・・。」
後藤はその場から逃げるように静かに立ち去る。
そのまま階段の踊り場の静かな暗い場所に息を少し切らせながら
身を置く。
俯き加減の体勢で後藤は額に右手を頭を抱えるように当てる。
自分が彼女に出会ってしまったのは、
彼女に他の人とは違う特別な感情を抱いてしまったのは
何度も今日あの2人の姿を目にしてしまったのは
ただの偶然なのかそれとも神様のいたずらなのか。
偶然にしては出来すぎているこの一週間の出来事。
それはどれもただのいたずらと呼べるほど後藤にとって可愛らしい物じゃなかった。
- 130 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月25日(土)22時47分46秒
- 何か切ないな、後藤が。
- 131 名前:aki 投稿日:2001年08月26日(日)16時54分08秒
- ふと後藤は頬を流れる熱い物に気付く。
「涙・・・?」
後藤の頬に一筋の涙がつたう。
後藤にはそれがすぐに何かわからなかった。
何年ぶりだろう、涙を流したのは。
悲しい、悔しい、つらい、そんなはっきりとした感情の中での
涙じゃない。
いろんなものが入り組んだ涙。
今日のことだけじゃない今までのこと全てに対しての複雑な気持ちが
形として現れた。
「馬鹿みたい、私・・・・。」
涙を拭わないまま後藤はあることを決心した。
(もう忘れよう。)
ただの同じ学年の生徒として彼女を見れば楽になれる。
たぶん今よりずっと。
この日、後藤は俯きながら自分の感情を殺す事を決心した。
後藤の頬にはとめごなく涙がつたい、一粒、二粒と真珠のような
涙を静かな階段の踊り場にこぼした。
- 132 名前:aki 投稿日:2001年08月26日(日)16時56分10秒
- 130:名無し読者さん
>切なく書くことに頑張ったんですが感じてくれて
とても嬉しいです。
本当に後藤、切ないです・・・。
- 133 名前:aki 投稿日:2001年08月26日(日)17時26分48秒
- 日曜日
今日は特別にテニス部は部活があったため松浦は学校に来ていた。
日曜日の部活動は出席するかは自主性の上いつもより少し早く来たため
ほとんど部員は集まっていなかった。
とりあえず部活には足を運んだものの昨日の後藤の表情が松浦の
頭から離れずにいた。
ほとんど人のいない中に松浦は彼女を見つける。
テニス部の部長のため日曜日でもいつも早く来ている。
昨日見た後藤のいつもと違う複雑な表情をさせていたのはたぶん石川なのだろう。
絶対とは言い切れないが少なからず確信している。
まだ部員は全然集まっていない。
松浦はおもむろに石川に向かって歩き出した。
今日早く来たのは部活のためだけじゃない。
石川先輩と、なんでもいいから話しがしたかったから・・・。
- 134 名前:aki 投稿日:2001年08月27日(月)19時26分35秒
- 「あの・・・・。」
松浦の呼びかけに石川は後ろに振り向いた。
「亜弥ちゃん、どうしたの?」
「・・・・話が、あるんですけど・・。」
松浦はそれだけしか言わなかった。
2人は部活の中では先輩、後輩関係なく仲が良かった。
石川はいつも明るく話し掛けてくれる松浦の雰囲気がいつもと少し違うのに
気付き疑問に思ったが何も聞かず松浦の後に続いた。
人のいない校舎の廊下の一番端の静かな場所に松浦は石川を連れてきた。
着いてからもしばらくは松浦は石川と顔を合わさずにいた。
石川もその間何も喋らなかった。
「あの、先輩・・・・・。」
ふいに振り向いて松浦は言い出そうとする、がここからうまく言葉が出てこない。
「どうしたの?」
石川も松浦の様子に首をかしげる。
「・・・・・。」
話し出そうとして口を開くがそのまま止まってしまう。
「昨日、バレーボールの試合に石川先輩来てましたよね?」
静かにゆっくり松浦は言葉をつなげる。
「うん、行ってたよ。亜弥ちゃんも来てたの?」
「私、後藤先輩と一緒に見に行ったんです・・・・。」
「・・・・そう。」
松浦は自分が「後藤」と言った時あきらかに石川がいつもと違う、
少しだけ動揺したように視線が泳いだ様子に気付いた。
「私、石川先輩のことも好きだけどそれ以上に本当に本気で後藤先輩のこと
好きなんです・・・。石川先輩は・・・後藤先輩のことどう思ってるんですか?」
松浦の突然の言葉に石川は少しだけ黙る。
「・・・・・どうして私にそんなこと聞くの?」
松浦が制服の裾をぎゅっと握り締めた。
「・・・・後藤先輩が見てたんです。昨日の試合を見てる間ずっと
石川先輩を・・・。」
「・・・・・・。」
「切なさそうな悲しそうな、うまく言えないけどいろんな感情が
入り組んだような複雑な表情で・・・・。」
「ただ私がいた方を見ていただけじゃない?」
話を転回させるような口調で石川が言うが松浦は首を左右に振る。
「違います・・・。後藤先輩は確かに石川先輩を見てた。吉澤先輩と
一緒にいる先輩を見てからあの表情になってました。」
「・・・・・・。」
石川はそんな松浦に何も言えなくなってしまう。
- 135 名前:aki 投稿日:2001年08月27日(月)19時28分19秒
- 「たぶん後藤先輩は・・・・・。」
「え?」
小さく誰にも聞こえないぐらいに呟いた松浦の言葉は石川の耳には届かなかった。
「石川先輩は後藤先輩のことどう思ってるんですか?」
「私は・・・・・・。」
そのまま石川は黙ってしまった。
「あたし、本当に後藤先輩のこと好きなんです!!」
松浦は黙ってしまった石川に背を向け立ち去る間際にそう告げると
戻っていった。
「あたしは・・・・。」
石川はその後姿をしばらく見つめ視線を下に向けだれに言うまでもない
自分への疑問を投げかけていた。
- 136 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月28日(火)03時11分16秒
- 今日初めて発見して一気に読みました。
クールな後藤の心の震えの描写が見事ですね。
更新楽しみにしてます。
- 137 名前:aki 投稿日:2001年08月28日(火)12時36分20秒
- 136:名無し読者さん
>レスありがとうございます(T_T)
頑張りますよー!!
- 138 名前:aki 投稿日:2001年08月28日(火)12時52分23秒
- 石川視点
日曜日の部活も石川は部長という肩書きがなくてもいつも真面目に出席する。
今日もどの部員よりも早く学校に来ていた。
さほどやらなければいけないこともないので石川は自分のラケットを取り出して
ラケットの状態を確認していた。
「あの・・・・。」
後ろから聞き覚えのある声に石川は振り向いた。
「亜弥ちゃん、どうしたの?」
石川は松浦とは年齢を感じさせないように仲が良い。
いつももう少し遅く来る松浦の姿に石川は少し驚いた。
「話が、あるんですけど・・・・。」
どうして今日こんなに早いのか聞こうとも思ったがいつもと様子が
違くどこか深刻そうな松浦の雰囲気に石川は何も聞かず松浦の
後に続き二人は人のいない校舎の廊下の一番端の静かな場所に来た。
立ち止まったが松浦は石川に背を向け何もアクションを起こさない。
石川は松浦の様子に疑問を抱いたがあえて自分も何も話さなかった。
「あの、先輩・・・・・。」
ふいに松浦が自分の方に振り向き口を開くがまたしばらく黙ってしまった。
ただ黙っているのではなく何か言おうとして言えないように。
- 139 名前:aki 投稿日:2001年08月28日(火)13時18分09秒
- 「どうしたの?」
石川は松浦が話せないでいるのを分かり少しでも話せれるように催す。
「・・・・・。」
松浦は口を開いたがやっぱり言葉が後に続かないでいた。
そのいつもと明らかに違う松浦の様子に石川は松浦にとって大事な話
なのだろうと感じた。
「昨日、バレーボールの試合に石川先輩来てましたよね?」
松浦が静かに話し出す。
石川は一瞬昨日の事を話す松浦に自分の考えは思い過ごしかと思った、が
その考えもすぐに取り消される。
「うん、行ってたよ。亜弥ちゃんも来てたの?」
重くなりがちな雰囲気に石川は普段どおりに話した。
「私、後藤先輩と一緒に見に行ったんです・・・・。」
石川は「後藤」という松浦の言葉に少なからず反応した。
石川は近頃松浦と後藤が小さな噂になっているのは自分のクラスメート達が
話しているのを耳にしていたため知っていた。
しかし今の今まで本気にはしなかった。
後藤にまつわる噂は今回に限らずいつものことだから。
そしてどれもそれは信憑性のないただの「噂」だけだったから。
松浦の言葉に今度は石川が固まってしまい言葉が出なくなる。
「・・・・そう。」
やっと出た言葉は必要最低限の言葉。
「私、石川先輩のことも好きだけどそれ以上に本当に本気で後藤先輩のこと
好きなんです・・・。石川先輩は・・・後藤先輩のことどう思ってるんですか?」
松浦は続けて咳を切ったように言葉を続ける。
松浦の真剣な気持ちは石川の心にもちゃんと届いていた。
しかし突然の告白に石川は頭の中が真っ白になってしまう。
自分でも考えようとして今まで考えてこなかった質問。
今いきなり言われて明確な答えを返せるほど単純でもないと感じている。
「どうして私にそんなこと聞くの?」
混乱しまくっている頭でなんとか慎重に言葉を選び石川は尋ねてみた。
- 140 名前:aki 投稿日:2001年08月28日(火)13時33分50秒
- 石川は松浦が制服の裾をぎゅっと握り締めたのに気づいた。
「後藤先輩が見てたんです。昨日の試合を見てる間ずっと石川先輩を。」
予想もしなかった松浦の言葉に石川は黙り視線を下に変えうつむいた。
(後藤さんが、ずっと私を・・・?)
「切なさそうな悲しそうな、うまく言えないけどいろんな感情が
入り組んだような複雑な表情で。」
石川は自分の胸がときめくのに気づく。
松浦の言葉の意味がわからなくなる。
それは一体どういう意味なのか。
後藤さんが一体どういう気持ちで自分を見つめていたのか。
「ただ私がいた方を見ていただけじゃない?」
石川が話を展開させるように松浦と目を合わし言う。
まるで自分にも尋ねるように、納得させるように。
松浦は石川と視線を通わせすぐに俯いて首を左右に振る。
「違います・・・。後藤先輩は確かに石川先輩を見てた。吉澤先輩と
一緒にいる先輩を見てからあの表情になってました。」
確信しきっている松浦は石川の言葉を完全に否定する。
石川に映る松浦の表情は寂しそうな納得したような遠い目をしていた。
「・・・・・。」
自分の考えを完全に否定する松浦の言葉、寂しそうな様子に石川は
それ以上何も言えなくなってしまう。
- 141 名前:aki 投稿日:2001年08月28日(火)13時45分24秒
- 二人の間に少しの間だけ沈黙が流れたが松浦がその沈黙を破る。
「たぶん後藤先輩は・・・・・。」
誰に言うまでもない確信している考えを松浦は小さく呟くように口から
こぼした。
「え?」
石川は頭の中が真っ白になっているせいもあり松浦の言葉を聞き取れなかった。
松浦は石川に今のを言い直さないまま言葉を続けた。
「石川先輩は後藤先輩のことどう思ってるんですか?」
松浦がはっきりとした口調で今さっきの言葉を再び石川に正面から訪ねた。
「私は・・・・・・。」
いくら問い掛けられても今の自分にはどうにも答えられない。
「あたし、本当に後藤先輩のこと好きなんです!!」
松浦はそれだけ石川に言い残すと背を向け走っていってしまった。
石川はその後姿をしばらく見つめ俯いた。
「私は・・・・。」
突然の松浦の告白に自分の気持ちが絡み合った紐のように入り組み
全く分からなくなる。
石川は自然と言葉を口から漏らし迷路のような自分の気持ちの中で
必死に自分に問い掛けた。
- 142 名前:aki 投稿日:2001年08月28日(火)13時47分22秒
- 135の石川の台詞はあたしじゃなくて私ですね。
それと台詞が少なく文章だらけで読みにくいと思います。
すいません・・・。
- 143 名前:aki 投稿日:2001年08月28日(火)14時17分01秒
- 部活もほとんど部員は一年生しか集まらず特別何かやらなければいけないことも
ないので各自の自主練となった。
石川は部活をするにも全然身に入らなかった。
そのまま時間は過ぎ去り部活もいつもより少し早く終わる事にした。
松浦は部活が終わるとすぐに帰ってしまった。
一年生が石川に挨拶をして変えるがその間も石川はぼーっとしながら
ただ答えていた。
全員が帰ったのを確認して石川も帰路につく。
その間もずっと何も考える事はできなかった。
(後藤さん、試合見に来てたんだ・・・・。)
重要な部分は後回しにしてまず小さな事から整理していく。
(よっすぃーと一緒にいる所、後藤さん見てたんだ・・・。)
それから段々自分は昨日体育館にいたあの時何をしてたのか考えようとするが
自分の行動をあまり覚えていなかった。
(どういう所見られてたのかな・・・。)
自分があの時何をしてたのか、後藤の目にどんな自分が映っていたのかが
石川は気になった。
『私、石川先輩のことも好きだけどそれ以上に本当に本気で後藤先輩のこと
好きなんです。』
今さっきの松浦の言葉が鮮明に頭の中を過ぎる。
『石川先輩は後藤先輩のことどう思ってるんですか?』
「私は、どう思ってるんだろう・・・・。」
いろんなことを知った今の石川には自分の気持ちの答えを
見つけることは無理に等しかった。
- 144 名前:aki 投稿日:2001年08月28日(火)15時24分38秒
- 月曜日の朝
松浦は早くもなく遅刻でもない一番廊下がにぎわう時間帯に登校していた。
廊下を歩き自分の教室へと向かう、途中見慣れない人物が自分の教室の前に
立っているのに気づく。
その彼女がこちらに気づいた。
松浦は走って彼女にもとに行った。
「おはようございます。」
松浦はどぎまぎしたような様子で頭を下げた。
「おはよう。わざわざ走らなくても良かったのに。」
「いえ、そんな・・・・。」
そう、松浦の教室の前にいたのは後藤だった。
廊下にいた生徒達も後藤の姿にざわついていたが松浦と一緒にいるのに
なんとなく今さっきより静かになっている。
「ちょっと、良い?」
「あ、はい。」
後藤はそれに気づいてか違うのか松浦に尋ねた。
松浦は急いで教室の机の上に鞄を置き後藤の後に続いた。
廊下の生徒達はただ二人を呆然と眺めていた。
- 145 名前:aki 投稿日:2001年08月28日(火)16時20分38秒
- 二人はこの校舎にある講堂の前に来た。
ここはあまり使われないため静かで生徒もいない。
「あのさ・・・。」
「はい。」
後藤が自分の教室の前にいたことでも混乱していた松浦だが次の後藤の言葉に
ますます混乱する事になる。
「付き合わない?」
付き合う?
付き合う!?
「・・・・・え?えぇ!?」
後藤の突然の言葉にしばし目を丸くしたまま止まってしまったが
今の言葉を考えに考え後藤の前で出した事もない声を上げた。
「初めて見た。松浦さんの驚くとこ。」
後藤は松浦の様子も余所にいたって普段通り。
「つ、付き合うって私がですか!?後藤先輩と!?」
「松浦さん以外いないじゃない。嫌かな・・?」
「い、嫌なんてそんな!・・・そんなわけないじゃないですか・・・。」
嫌なわけない。
ずっと本当に好きだった人から付き合おうって言われたんだから。
でも後藤先輩は・・・・。
(後藤先輩は石川先輩が好きなんじゃないんですか?)
心の中で詰まる疑問。
それは松浦の口からはとても発せられる事はできなかった。
「良かった。」
「・・・・・でも、どうして・・?」
松浦が疑問に感じたのは石川だけの事じゃない。
ついこの前までははっきりと気持ちには答えられないって言ってたのに・・・・。
後藤は小さく呟いた松浦の言葉を聞き逃さなかった。
「好きになったからだよ。松浦さんのこと。」
「・・・・・私のことを、好きに?」
松浦は後藤の言葉だけではふに落ちなかった。
だってあの時の後藤の表情、昨日の石川の様子からして二人は
あの時が初対面じゃない。以前にも出会っているはず。
それなのにどうして・・・・?
松浦の様子に後藤も首をかしげる。
嬉しい。嬉しくてしょうがないはずなのに。
どうして・・・?
「ちゃんとした理由じゃないかな・・・・?」
後藤が黙ってしまった松浦に話し掛ける。
「いえ・・・・。嬉しいです。とても・・・。」
その時ちょうど学校のホームルームを告げる鐘の音が響いた。
「戻ろうか。」
後藤の言葉に二人は途中まで一緒に戻り分かれた。
松浦には後藤の言葉の真意が図る事ができなかった。
- 146 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月28日(火)17時15分53秒
- あややもきついなあ。好きだけど、後藤の本心がわからないわけだし。
複雑な人間関係や心理状態をうまく表現していて素晴らしいと思います。
- 147 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月28日(火)18時21分04秒
- 今ふと思ったんですけど、中澤先生は矢口となっちのこと知ってるんですか?
いや、少し気になって。
- 148 名前:aki 投稿日:2001年08月28日(火)19時01分05秒
- 146:名無し読者さん
>ありがとうございます〜(T_T)
とっても嬉しいです!励みになります!
147:名無し読者さん
>中澤は二人のことは知ってますね。知ってることにしようと思います。
親が子供を見守るような感じで中澤を描きたいですね。
やっぱりどこか上の視点からこの全員を見ている風に書きたいです。
- 149 名前:aki 投稿日:2001年08月28日(火)19時23分54秒
- その後、松浦が教室に戻るとさっそくクラスメートにいろんな事を聞かれた。
付き合ってるのか付き合ってないのか。
YESと言えば後藤に迷惑をかけるかもしれないと松浦は思ったが
NOとはっきり言う事もできなく曖昧にクラスメートに返事をしていた。
そのまま勝手に付き合っているとクラスメートは勝手に解釈しているようだった。
当然それはすごい速さで学校中の(特に一年の)噂になる。
それはもちろん一年生の加護と辻の耳にも入る。
御昼休み
またいろんな部活から文化祭の紙をあちこちもらい、計算するため
今日も集合する事になっていた。
「「矢口さ〜〜ん!!!」」
矢口は生徒会室に入ると同時にそう叫ぶいつもの二人の姿にふうとため息をつく。
「なっちが計算してるんだから静かにしてよ。」
「一大事です」
矢口の隣では安倍が手馴れたように電卓を使い計算中だった。
加護と辻は安倍の姿を確認し慌てて声を潜めた。
「なんなの?一体」
「ちょっと知ってますかぁ!?」
加護が矢口の両肩を前からつかみ前後にゆする。
「なんなのよぉ!!」
「後藤先輩が松浦さんと付き合ってるって噂ですよ!!」
辻が横で付け足す。
「噂でしょ。」
「いや、それにしては信憑性が高いらしいんですよ!」
「後藤が誰と付き合おうがあたしには関係ないわい!」
「!?」
加護が矢口の言葉に思いっきり仰け反る。
「か、仮にもあたし達は生徒会役員の仲間であって・・・。後藤先輩の
一大事なのにそれを関係ないだなんて・・・矢口さんそういう人だったんですかっ!」
「あのなぁ!後藤だって子供じゃないんだからっ!」
「つまりですね。矢口さんに何をしてもらいたいかって言うと・・・。」
まとまりそうにない二人の会話に辻が多少無理のあるやり方で辻なりに実行した。
「後藤さんに聞いて欲しいんです。本当かたんなる噂か。」
「自分達で聞きなさいよ・・・。」
「こういう役はやっぱり矢口さんでないと。」
加護が断言するように矢口に向かって答える。
「あのね・・・・。」
「はぁ、やっと終わった。あ、加護に辻来てたの。」
安倍は結構な声を出していたにもかかわらず加護と辻に今まで気づいていなかった。
加護と辻も気にすることなく再度安倍に軽く挨拶する。
「そういえば後藤は?もう結構な時間だけど・・・。」
安倍が辺りを見渡し言う。
安倍の言葉に矢口も気がついた。
「そういえば・・・後藤は?」
「「さぁ?」」
- 150 名前:aki 投稿日:2001年08月28日(火)19時34分54秒
- 加護と辻も顔を見合す。
その頃の校舎裏
後藤はといえば相変わらず呼び出しを受け告白を受けているところだった。
「あの、私後藤さんのこと好きで・・・付き合ってもらえませんか?」
後藤の目の前にいる少女は同学年の二年生の違うクラスの子だった。
「ごめんね、私付き合ってるんだよね。」
「それって、噂になってる一年生の松浦さん・・・?」
「そうだよ。それじゃあね。」
後藤はそれだけ言うとそのまま立ち去ってしまった。
松浦の心配するようなことは全く気にしてないようである。
(そういえば今日も生徒会室に集合だっけ。)
後藤は校舎に戻り廊下を歩いている時にそのことに気付いた。
- 151 名前:aki 投稿日:2001年08月28日(火)19時51分05秒
- 後藤は慌てる事もなく生徒会室までいつものように歩き
あの時の遅れたことに悪びれる様子もなく生徒会室に入った。
四人の視線が後藤に向けられる。
しかし後藤はしれっとした様子で気にする事もなく椅子に腰をおろす。
「ちょっと後藤!遅刻したのに何もなしかいっ!」
矢口がいつものように後藤を叱る。
「ごめんなさい。」
後藤は謝るには謝ったが誰が聞いても感情のこもってない殺風景な
飾り気のない返事。
その様子に矢口と安倍が同時に表情を変えた。
加護と辻も三人を囲む生徒会室の雰囲気がいつもと違く張り詰めたように
なる物を感じた。
「トイレ行ってきます。」
後藤は軽く息を吐き出しそれだけ返事も聞かず生徒会室からまた出て行こうとしてしまった。
「ちょっと待って!」
矢口が後姿の後藤を止めた。
「何ですか?」
「・・・・・あんた、一年の松浦さんと付き合ってるって本当なの?」
「本当ですよ。付き合ってます。それが何か?」
後藤はそれだけ言うと今度こそさっさと生徒会室から出て行ってしまった。
- 152 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月28日(火)19時53分47秒
- 後藤!それでいいのか!
- 153 名前:aki 投稿日:2001年08月28日(火)20時13分08秒
- 後藤のいなくなった生徒会室。
後藤が出て行ったしばらくも沈黙が流れていた。
「なっち・・・・。」
「うん。後藤の今の・・・。」
矢口の言葉に何かわかっている安倍はすぐに答える。
「どうか、したんですか?」
辻がなにやら深刻な面持ちの矢口と安倍に話し掛ける。
「後藤の今の、見た?」
「なんか、いつもの後藤さんらしくなくて少し怖そうな・・・。」
「そう。あれはね、後藤が生徒会長になって初めてここに来た時あたし達が
見た後藤そのままだわ・・・・。」
「初めて?」
「後藤はね、今では前より雰囲気も落ち着いてきたけど初めてあの子がここに来た時
それはもう人なんか全く寄せ付けないような一歩引かせるような感じだったのよ。」
安倍が矢口に続いて説明する。
「あたし達も少しづつあの事近づいていって、加護と辻のような元気爆発みたいな
二人が来て近頃あの子も変わってきたかなって思ってたんだけど・・・。」
矢口の言葉を最後に四人は黙ってしまった。
「何か、あったのかな。後藤さん。」
加護が心配そうに小さな声で言葉を漏らす。
「そういえば矢口さん。ちゃんと聞いてくれましたね。」
「頼まれたからじゃないよ。たぶん、何かあったとしたらその辺のことかなって
思ったから・・・。」
辻の言葉に心持ち沈んだ声で矢口が答える。
「後藤があれじゃ、松浦さんも可哀想だわ。」
安倍の言葉に矢口も頷く。
その後後藤は生徒会室に戻る事はなかった。
- 154 名前:aki 投稿日:2001年08月28日(火)21時04分34秒
- 152:名無し読者さん
>レス有難うございます。
本当にそれでいいのかって感じですよね。
- 155 名前:aki 投稿日:2001年08月29日(水)13時13分32秒
- 後藤はそのままトイレには行かず屋上へと向かった。
なんとなく屋上に足が向いた。
屋上には人がいなかった。
立体的な雲は青空に所々に浮かび太陽の光が時々顔を出す。
後藤はいつものように屋上の手すりに肘をかけただ前を眺めた。
風が髪をたなびかせ肌に気持ちいい。
後藤は軽く一回深呼吸をした。
「これで良いんだよね・・・・。」
松浦に対しての気持ちは偽りはない。
あの子といると楽しい。
そして、これ以上報われない片思いに傷つきたくない。
元からただの自分の片思いで相手は自分のことをなんとも思ってないんだろうし。
後藤は自分の行動に答えを付け納得しようとした。
だから気付かなかった。
あの時のように後ろからの足音に。
風が一際強く屋上に吹いた。
後藤は横に流れる髪を手で押さえる。
(あの時も、確か今と同じ事が・・・・。)
ふいに思い出してしまう記憶を後藤は首を左右に軽く振り拭った。
これ以上思い出してしまわないように。
しかし後藤は気付いてなかった。
これは逃れられない運命だって事を・・・・。
- 156 名前:aki 投稿日:2001年08月29日(水)13時38分28秒
- 「あの・・・・。」
聞き覚えのある声、それは後藤にとって今は聞きたくない声でもあった。
恐る恐るゆっくり顔を振り向かせる。
「・・・・・。」
後藤の気持ちとは裏腹にそこには石川の姿があった。
突然の事に後藤は言葉も出ない。
笑いたくなってくる。
普通とは言えないほどあまりにも出来すぎているから。
「何?」
後藤は心の動揺を抑えわざと冷たく言い放った。
「土曜日、試合に来てたんですか?」
「松浦さんと行ったけど。悪かった?」
「いえっ。ただ・・・私、後藤さんが来てること気付かなくて・・・。」
後藤はだんだん心の中でムカムカする物が湧き上がってくるのを覚えた。
こっちは忘れたくてしょうがないのになぜそれを今石川の口から
聞かなきゃいけないのか。
2人の間にしばし沈黙が流れる。
「えっと、その・・・・・。」
石川は何か言いたそうで話し出さなかった。
「何なの?用がないんならもう行くけど。」
後藤が手すりから離れようとする。
「・・・・後藤さんは、亜弥ちゃんと付き合ってるって本当なんですか?」
石川は意を決してはっきりとした口調で後藤の目を見て尋ねた。
その質問に後藤はしばらく何も言わず石川を見つめた。
そして一度ため息を吐き言った。
「もう今日で何度目になるだろう、その質問。・・・・関係ないじゃん、あなたには!」
後藤は少し強めに石川に言いその場を離れようとした。
「・・・関係ありますよ!!」
石川は後藤の言葉に少しだけ黙ったがふいに後藤と同じぐらいの口調で
言い返した。
後藤も石川の言葉に反応し少し驚く。
「どういう意味よ、それ・・・。なんであなたが関係してくるのよ。」
「気になるから・・・。私は・・・・後藤さんのことが、好きだから。」
躊躇うように石川が後藤に告げた。
突然の石川の言葉に後藤は驚くが石川が躊躇いながら言ったのも気付いた。
- 157 名前:aki 投稿日:2001年08月29日(水)13時45分51秒
- 「気になるから関係していいの?私のことが好きってなにそれ。
ただの憧れなんじゃない。生徒会長って言う立場への。・・・・意味わかんない。」
後藤は突然の石川の言葉に動揺する自分へも言い聞かせるようにして言った。
「・・・・・。」
石川は後藤の言葉を最後に何も言わなくなってしまった。
「それじゃ、私もう行くから。」
後藤はそれだけ言い残し屋上を後にした。
屋上から出て階段を後藤は降りていく。
「意味わかんない・・・。」
心の中でズキズキするような痛い鼓動。
それと同時に自分でもはっきり分かるドキドキするときめく鼓動。
胸を手で押さえる。
早くこの動揺している心が落ち着くように。
- 158 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月29日(水)13時49分56秒
- すごいお気に入りの作品なんだけど、読んでて心が痛いなあ。
後藤、幸せになっておくれ。
- 159 名前:aki 投稿日:2001年08月29日(水)13時56分03秒
- 石川視点
石川は後藤が生徒会室から出て屋上に向かう階段の方へ消えていくのを
目にした。
考える前に足が動いた。
石川は後藤の向かった方へと急いで追いかけた。
屋上に着くとそこには今でも覚えてるあの時の情景そっくりだった。
あの時からだ。
あの時初めて後藤を見て胸が高鳴った。
石川は後藤の後姿に静かに歩いていった。
あの時の屋上の時ぐらいに2人の距離が縮んだ時偶然か何かの演出か
あの時そっくりの強い風が横から流れた。
- 160 名前:aki 投稿日:2001年08月29日(水)13時57分27秒
- 158:名無し読者さん
>ありがとうございます〜(T_T)
レスくれると一番頑張る気になります!
- 161 名前:aki 投稿日:2001年08月29日(水)14時11分10秒
- 「あの・・・・。」
自分の呼びかけに目の前の彼女はゆっくりと振り向いた。
後藤は振り向いたがそのまま言葉を発さない。
石川自身も考えるより早く行動してしまったので頭の中で全く
昨日の事も自分の気持ちも整理がついていない。
「何?」
後藤の口調は冷たいものだった。
今目の前にいる後藤の様子は石川が本当に最初後藤を生徒会長として
見かけたときの印象に近かった。
クールで、どこか人を寄せ付けないような雰囲気。
「土曜日、試合に来てたんですか?」
石川は少し後藤の様子に気になったが何か聞かれたため整理のついていない
頭の中から昨日の松浦の言葉を言った。
「松浦さんと行ったけど。悪かった?」
「いえっ。ただ・・・私、後藤さんが来てること気付かなくて・・・。」
今まで自分が接してきた後藤とは違う様子、態度に石川は少し不安になる。
何か自分は悪い事をしてしまっただろうか。
それとも後藤に何かあったのか。
しかしいろんな考えが頭を巡る中後藤の「松浦」という言葉に何が聞きたいのか
おぼろげに頭の中で浮かび始める。
石川がそう頭の中で必死に考えている中後藤も何も話さず二人の間に
沈黙が流れる。
- 162 名前:aki 投稿日:2001年08月29日(水)14時22分31秒
- 「えっと、その・・・・・。」
石川は後藤に何を聞きたかったのかとりあえず頭の中で整理がつき
尋ねようとするが言葉がうまく出てこない。
「何なの?用がないんならもう行くけど。」
後藤の口調は今さっきと変わらず冷たいままだった。
今までは冷たい中にも何か暖かいものがあるように石川は感じていた。
後藤が手すりから離れその場から離れようとする。
今言わなければいけない。
今言わないと後で絶対後悔する。
今しかない。
「後藤さんは、亜弥ちゃんと付き合ってるって本当なんですか?」
石川は意を決し後藤の目をまっすぐ見つめはっきりとした口調でそういった。
必死になって言った石川だが後藤はすぐには答えず見つめる自分をしばらく
黙って見つめ返した。
そして一度ため息を吐き言った。
「もう今日で何度目になるだろう、その質問。・・・・関係ないじゃん、あなたには!」
後藤の強めにそう言うと屋上を後にしようとする。
『関係ないじゃん、あなたには!』
強めに言われた最後の後藤の言葉に石川はただ心がムッとしたのを感じた。
- 163 名前:aki 投稿日:2001年08月29日(水)14時36分52秒
- 「関係ありますよ!!」
その場を離れようとする後藤に石川はそう言い放つ。
後藤も少なからず驚いているようだが頭で考えず感じたまま出た言葉に
石川自身が一番驚いた。
「どういう意味よ、それ・・・。なんであなたが関係してくるのよ。」
驚く間のなく後藤がすぐに言い返す。
「気になるから・・・。私は・・・・後藤さんのことが、好きだから。」
後藤のことが気になる。
それは石川にとって本当の事だった。
松浦から聞いた後からずっと頭から離れない。
しかしその後に続いた『好きだから』と言う言葉には石川自身も
自分で言ったにもかかわらず何かはっきりしない。
口からふいに出てしまった言葉だがその好きがどういうものなのか
石川も全くと言っていいほど分からないでいる。
「気になるから関係していいの?私のことが好きってなにそれ。
ただの憧れなんじゃない。生徒会長って言う立場への。・・・・意味わかんない。」
後藤の言葉が石川にはずしっと心に刺さる。
憧れ?
この気持ちはただの『生徒会長』に対しての憧れなの?
「・・・・・。」
石川は後藤の言葉にそれ以上言葉が続かなくなってしまった。
「それじゃ、私もう行くから。」
後藤はそんな石川の様子に構うことなく屋上を後にしてしまった。
「ただの、憧れ・・・・?」
自分の入り組んだ気持ちの中で問い掛けてみるが答えは出てこない。
後藤のいなくなった屋上で一人石川は立ちすくんでしまった。
- 164 名前:aki 投稿日:2001年08月29日(水)17時48分32秒
- その頃の松浦
松浦はお昼も簡単に済ませ昼休み生徒会室へなんとなく向かっていた。
そんな時ちょうど同じ廊下に石川がいることに気付いた。
昨日のこともあり少し話し掛けづらく松浦もそのまま止まってしまった。
石川は立ち止まって何かを見ているようだった。
(何見てるんだろ・・・・?)
松浦も同じ方を見てみると生徒会室から出てきたらしき後藤がそのまま向こう側の
屋上に行く階段へ消えていくところだった。
後藤がいなくなると石川も駆け出し後藤の向かった先に向かっていった。
「・・・・・。」
松浦は石川の後姿をしばらく見つめていた。
どうしようか迷った挙句こちら側のもう一つの屋上の出入り口から様子を見てみることにした。
(後藤先輩、どうするつもりだろう・・・。)
静かな屋上までの階段を登りながら松浦は思った。
松浦には後藤の行動の真意が分からずにいた。
土曜日のお昼を一緒に取った時までは好きな人がいるように思えた。
たぶんそれは石川なのだろう。
後藤はたぶん石川と吉澤の関係は前から知っていたはず。
だけどそれに関わらず石川に好意を寄せていたはず。
そしてそれでもいいから松浦も後藤に気持ちを伝えた。
自分の事を知ってもらって、振り向いてくれるのはずっと先のことだと思っていた。
(なのにどうして・・・・?)
考えながら階段を登っていると気付くと屋上の出入り口のところまで来ていた。
松浦は屋上に出て見えないようにドアのすぐ横のところに壁にもたれかかるように
立った。
- 165 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月30日(木)09時50分02秒
- このままではみんな幸せになれない!梨華ちゃん言ってしまいましたね。
- 166 名前:aki 投稿日:2001年08月30日(木)12時56分18秒
- 風が一際強く屋上に流れ松浦の髪がなびいた。
松浦は後ろ向きになっているため首だけ出して二人の様子を伺ってみる。
するとちょうど2人が接触し話しているようだった。
何を話しているのか詳しい事は分からなかったが二人の表情は窺い知れる事が出来る。
後藤は冷たい雰囲気を放ち石川は話すことに必死なようだった。
後藤の表情はとてもあの時石川を見つめていた時とは違っていた。
松浦が土曜日後藤とお昼を取った時の優しい表情は微塵も感じられなかった。
2人の会話は進んでいるようだが中身が一向に分からない。
松浦は一旦元の壁にもたれかかる姿勢に戻った。
その時だった。
「後藤さんは、亜弥ちゃんと付き合ってるって本当なんですか?」
石川のはっきりした口調の言葉は少し離れているこちらにも風に運ばれ
きっちり松浦の耳に入った。
松浦はとっさにまた後ろに振り向く。
後藤は、質問を受けた後もすぐには答えなかった。
2人の会話に松浦も心の中でドキドキと緊張していた。
- 167 名前:aki 投稿日:2001年08月30日(木)13時08分21秒
- 後藤は一度軽く息を吐くと言った。
「・・・・関係ないじゃん、あなたには!」
最初の方がよく聞き取れなかったが強く言い放った最後の部分は松浦にも
よく聞き取れた。
松浦は今のような感情をあからさまに表に出した後藤は初めて見る。
石川は後藤の言葉にしばし黙ってしまう。
その後藤の台詞、様子に松浦はある事を察する。
(もしかして後藤先輩は・・・・・)
心の中でそう呟いていると後藤は屋上を後にしようとしているところだった。
「関係ありますよ!!」
はっきりとした声で叫んだ石川の言葉は今さっきより屋上によく響いた。
出て行こうとした後藤も立ち止まり少しだけ驚いているように見える。
「・・・・なんであなたが関係してくるのよ。」
今さっきのように最初の方がよく聞き取れないがこれだけははっきりと聞こえた。
「気になるから・・・。私は・・・・後藤さんのことが、好きだから。」
幸か不幸かさわやかに屋上に吹いた風は石川の言葉を途切れることなく
松浦の耳に届けた。
(石川先輩・・・・・・)
今度ははっきりしない口調で少し躊躇いながら言う石川の様子に
松浦も気付き気持ちを察する。
- 168 名前:aki 投稿日:2001年08月30日(木)13時13分39秒
- 「気になるから関係していいの?私のことが好きってなにそれ。
ただの憧れなんじゃない。生徒会長って言う立場への。・・・・意味わかんない。」
後藤の言葉がはっきりと耳に届く。
しかし松浦にはそれが石川だけに向けられているとは思わなかった。
石川は後藤の言葉を最後にそれ以上何も言えなくなってしまう。
後藤はそのままさっさと屋上を後にしてしまった。
石川は一人屋上で立ちすくんでいた。
「ただの、憧れ・・・・?」
石川の小さく呟いた言葉は松浦の耳に微かにだが届いていた。
松浦は首を戻し壁に寄りかかる姿勢にまた戻った。
そして青い空を仰ぎ見る。
「後藤先輩は・・・・・」
松浦はそれ以上言葉は発さずしばらく空高く遠くを眺めていた。
- 169 名前:aki 投稿日:2001年08月30日(木)13時16分55秒
- 165:名無し読者さん
>これから一体四人はどうなるのでしょう・・・。
楽しみにしていてください。
頑張ります。
- 170 名前:aki 投稿日:2001年08月30日(木)13時18分28秒
- 屋上でのシーンの三人の視点が多くてしつこい・・・?
- 171 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月30日(木)13時21分00秒
- リアルタイム!しつこくないですよ。それぞれの心情もわかるし。
これからもむっちゃ楽しみにしてますよ。
- 172 名前:aki 投稿日:2001年08月30日(木)13時38分29秒
- 松浦はしばらくして屋上を後にした。
階段を下りて廊下をとぼとぼ歩いていると前に鞄を持った後藤の姿があった。
後藤も松浦の姿に気付き手を振る。
「どこに行ってたの?教室に行っても居なかったから探してたんだけど・・。」
「あ・・・ちょっとトイレに・・・・。」
「そっか。これから一緒に帰らない?」
後藤は松浦の言葉をそのまま受け取り疑う事など微塵もしなかった。
「・・・・・すみません、私もう少し残ります。ちょっと、用事が会って・・・。」
松浦は少しだけ黙った後言いずらそうに後藤に告げた。
「待ってようか?」
「いえっ、いいです。先輩も遅くなっちゃうし・・・。一人で大丈夫ですから・・。」
「そう?それじゃまた今度ね。」
「はい、すみません・・・。」
「ううん、気にしないで。それじゃ。」
後藤はそれだけ言い階段を下りていった。
話している間ずっと後藤と目を合わせられなかった。
松浦は後藤の姿が見えなくなるまで眺めていた。
後藤と別れしばらく経った後松浦はある場所に足を向けた。
なぜかは分からないけど松浦はあそこに向かった。
- 173 名前:aki 投稿日:2001年08月30日(木)13時39分49秒
- 171:名無し読者さん
>ありがとうございます!!
こちらもリアルタイムで読んでいただいていてとても嬉しいです(T_T)
頑張りますよー。
- 174 名前:aki 投稿日:2001年08月30日(木)13時46分02秒
- 松浦が向かった先、それは生徒会室だった。
今ちょうど教室の前に松浦は立っていた。
ここには一度土曜日に後藤をお昼を呼ぶために来ている。
たったそれだけ、一度来ただけの場所なのに松浦はここに惹かれるように
来た。
中からは微かに紙の擦れる音や人の気配がする。
松浦は生徒会室のドアを静かに開いた。
- 175 名前:aki 投稿日:2001年08月30日(木)14時01分01秒
- 中には矢口と安倍と加護と辻、後藤を除いた全員が生徒会室には
揃っていた。
松浦の突然の姿に四人は驚いた顔をしている。
「あの・・・・・。」
松浦の様子は誰が見ても落ち込んだような暗い雰囲気だった。
加護と辻はこの前の松浦との差に一際驚いた表情をする。
矢口は松浦の様子に何かがあったのだと察し安倍と顔を見合す。
安倍も矢口の行動にただ頷いた。
「加護と辻、今日はもう終わりにしていいよ。」
「え?」
突然の矢口の言葉に辻が聞き返す。
「後はなっちとあたしでやっとくから。おつかれさん。」
加護と辻は矢口の突然の言葉にあたふたしどうしていいものか困っている。
その二人に安倍が視線と言葉を出さず口だけ動かして合図した。
(悪いけど席外して。)
安倍が二人に悪そうに言うとウィンクをした。
加護と辻は同時に深く頷くとそのまま生徒会室から出て行った。
今日の後藤のこともあり二人は生徒会室の様子を覗くなどせずそのまま
矢口の言葉に素直に従った。
- 176 名前:aki 投稿日:2001年08月30日(木)14時01分50秒
- とりあえず今はこれだけ・・・。
一日の更新が多すぎるですかね。(−−;)
- 177 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月30日(木)15時09分07秒
- そんなことないっすよ!!
読み手としては嬉しい限りです。
- 178 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月30日(木)16時49分26秒
- 面白い!
いよいよクライマックスかな?
- 179 名前:aki 投稿日:2001年08月30日(木)18時17分18秒
- 177:名無しさん
>レスありがとうございます(T_T)
更新しすぎて読みにくくなっちゃうかなって思ったんですけど
大丈夫なようで嬉しいです。
ありがとうございました!
178:名無しさん
>一言面白いと言ってもらえてとても嬉しいです。
徐々にクライマックスに入りつつありますね。
- 180 名前:aki 投稿日:2001年08月30日(木)18時49分51秒
- 加護と辻が出て行き生徒会室は矢口と安倍と松浦の三人だけになった。
「一年の松浦さんだよね。どうしたの一体。」
静かな生徒会室の中で矢口が一番に口を開いた。
「すいません、いきなり来たのにわざわざ気を使ってもらっちゃって・・・。」
「いいのいいの。ドントウォ―リーよ。」
「珍しく間違えなかったね、矢口。」
「五月蝿いな。ほっといてよ。」
矢口と安倍のやりとりに松浦の表情も少しだけ暗いものから明るいものになった。
「で、何かあったの?」
矢口が松浦に向き直り言う。
「後藤先輩のことでちょっと・・・・・。」
「ん、後藤のことなら何でも言って。あの子の事なら他人事じゃないしね。」
「ありがとうございます・・・。」
願ってもいなかった矢口の言葉に松浦は心底ほっと安心した。
松浦はゆっくりと話し始めた。
「今日、朝学校にきたら先輩がいて付き合わないかって言われたんです。」
矢口と安倍もただ黙って松浦の言葉に耳を傾ける。
「すごく嬉しかった。ずっと好きだったから。でも後藤先輩は・・・・・」
松浦はそこまで言いかけて俯いてしまった。
「すみません・・・。」
「大丈夫。ゆっくりでいいから・・・ね。」
安倍が松浦の肩に手をやりそう声をかけた。
「土曜日、先輩と一緒にバレーボールの試合見に行って分かったんです。
後藤先輩が誰が好きなのか・・・。ずっとその人の事を見てたから・・・
私の気持ちには答えられないって言ってたし私もまだ先輩との関係はこの
ままでいいんだと思ってた・・・。だから先輩の言葉にすっごく混乱したんです。」
「でも今さっき分かったんです。後藤先輩は石川先輩のことをまだ・・・・
好きだけど諦めたんだって。屋上で本当はすごくつらそうだったから・・・。」
松浦の頬を涙がつたう。
「松浦さん・・・。」
「先輩の目を見ることできなくて・・・。気持ちが痛いほど伝わってきて。」
矢口はそっと松浦を前から抱きしめた。
「後藤先輩のこと好きだけど、私一体どうしたらいいのか分からなくなってきちゃって・・・・。
「分かった。もういいから・・・大丈夫だから。」
矢口は泣き出してしまった松浦を優しくそして少し強く抱きしめ髪を撫でた。
松浦も矢口の肩に顔を当てる。
生徒会室にただ松浦のしゃくり上げる声が響いた。
- 181 名前:aki 投稿日:2001年08月30日(木)19時04分05秒
- 今重大なことに気付きました・・・。
この屋上の出来事から今まで昼休みの話だったのに
後藤が帰っちゃいました・・・。
うっかり時間が経っちゃって放課後の話と勘違いしちゃいました。
なので149のお昼休みを放課後にすれば差し支えないと思われますので
そゆことにしちゃいます。
ご了承ください(T_T)
すいません・・・。
- 182 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月30日(木)22時24分22秒
ドンマイ♪ドンマイ♪期待してまっす!
- 183 名前:aki 投稿日:2001年08月31日(金)12時25分59秒
- 182:名無し読者さん
>ありがとうございますっ!
気を取り直して頑張りまっす。
- 184 名前:aki 投稿日:2001年08月31日(金)12時38分51秒
- 石川はあの後しばらくして屋上から校舎に戻るため階段をただぼーっと
しながら下りていた。
「あれ?梨華ちゃん?」
階段を下りている途中に前の廊下に吉澤が姿を現した。
「よっすぃー・・・。」
「一緒に帰ろうと思って探してたんだよ。今まで屋上にいたの?」
「うん、ちょっと・・・・。」
石川のいつもと少し違う様子に吉澤は首をかしげる。
しかしこれ以上問い詰めるのも気が引けた。
「帰ろうか?」
「うん。鞄、取ってくる。」
石川は吉澤にそう言い教室に鞄を取りに一旦戻った。
いつもと明らかに違う石川の元気のない様子に吉澤は疑問を感じること
しかできなかった。
- 185 名前:aki 投稿日:2001年08月31日(金)12時59分37秒
- 生徒会室ではあの後しばらく矢口の肩で泣いていた松浦だったが
今はもう泣き止み体を起こしていた。
「ごめんなさい・・・・・。」
松浦が涙を指で拭いながら言う。
「いいのいいの。さっきから言ってるけど気にしなくて言いからね。」
涙で矢口の制服の肩の部分は少ししわになってしまっていた。
「泣いて少しは楽になったかな?」
「はい。」
「泣くことは悪いことじゃないからね。心が楽になるから。」
安倍が松浦に優しく言った。
「なんか・・・・ありがとうございました・・・。この前一度しか会ってないのに
いろいろ迷惑かけちゃって・・・。」
「いいのいいの。今日来てくれて、頼ってくれて嬉しかったし。
今日に限らずいつでも来ていいから。」
矢口の言葉に松浦は小さく頷いた。
「私、そろそろ行きます。」
「ん、もう人もほとんどいないだろうから大丈夫だろうね。」
松浦が立ち上がり矢口と安倍は生徒会室のドアのところまで見送る。
「・・・・後藤はさ、見た目と違って本当は意外と精神的にもろいと思うんだよね。
傷がつきやすいって言うかさ。しかも不器用だから・・・。不器用なりに
考えてやってることだと思うんだよね。・・・だからって許してあげて
とは言えないけど。その辺分かってくれると嬉しいかな。」
「はい。」
松浦は矢口の言葉に笑顔で答えた。
「松浦さんも自分の中で抱え込みすぎないでちょっとはぶつけてもいいと思うよ。
ぶつかり合って初めて分かることもあるしね・・・・。それじゃ、また明日ね。」
松浦は挨拶をするとそのまま帰っていった。
安倍と矢口は松浦の姿がなくなるまでその姿を見送っていた。
「良かった。最初すごく落ち込んでたみたいだから心配してたけど
表情が明るく戻って。」
「そうだね。」
安倍の言葉に矢口が頷く。
「これから、どうなるかな・・・。」
軽く息を吐き矢口は小さくそう呟いた。
- 186 名前:aki 投稿日:2001年08月31日(金)13時49分32秒
- 火曜日の放課後
石川は自分では気付いてはいないが誰が見ても落ち込んでいるような
雰囲気だった。
もちろんそれに吉澤も気付いている。
2人はお昼を取った後図書室に来ていた。
石川が借りていた本を返すために。
別に今日でなくてもいいのだがぼーっとただなんとなく石川は
図書室に来た。
図書室には人はほとんどいなかった。
この学校の図書室はとても広く静かで今日は特に落ち着いていた。
石川は本を返した後すぐには帰らずぼーっと本棚を眺めながら歩いていた。
石川の明らかに普段では考えられない様子に吉澤は昨日以上に首をかしげる。
- 187 名前:aki 投稿日:2001年08月31日(金)13時58分09秒
- 「梨華ちゃん。」
「・・・・・・。」
応答なし。
「梨華ちゃんっ!」
「・・・・・・。」
いまだ応答のない石川に吉澤は少し呆れてしまう。
吉澤は息を軽く吸い込んだ。
「お〜いっ!!!」
図書室にしては少し大きめの声。
しかし人は周りには見当たらず図書室の出入り口にも遠いのでたぶん迷惑は
辛うじてかかっていない様だった。
「わっ、どうしたの?そんな大きな声出して。」
やっと吉澤の声に反応しこちらに向いた。
「・・・・さっきから呼んでたんだけど・・。」
「え?ごめん、気付かなかった・・・。」
「・・・・梨華ちゃん、何かあったの?」
「え?」
吉澤の突然の言葉に少し動揺気味に石川が反応する。
「何かあったんだ。悩んでるの?」
「別に・・・。」
吉澤の言葉に石川は目をそらし答えた。
「嘘だ。なにもないわけないよ。・・・・あたしには言えないの?」
「なんでもないの・・・・本当に。」
隠し切れてないのにいまだ隠す石川に吉澤は少しいらついた。
ふいに石川の腕を取り図書室の書庫のドアを開け少し乱暴に石川を中に入れた。
- 188 名前:aki 投稿日:2001年08月31日(金)18時02分24秒
- 「よっすぃー!?」
突然の吉澤の行動に石川はただ驚くことしか出来ない。
石川に続いて吉澤も書庫の中に入った。
中はそんなに広くなく古ぼけた貸出し禁止などの本が置かれていて薄暗い。
吉澤は石川を壁に押し当て前に立って真っ直ぐ目を見据え言った。
「この頃変だよ。梨華ちゃん・・・。」
「え・・・?」
「一緒にいるときもなんか考え事してるみたいに上の空だし、聞けば
ただなんでもないで終わらせちゃうし・・・。」
「・・・・・。」
石川は吉澤の目を今度は気まずそうにだが見返す。
「ただの思い過ごしとは思えない。・・・・もう一度聞くけどそれは
あたしには言えないことなの?」
「・・・・・・」
石川はまた目をそらししばらく黙ってしまった。
後藤への自分の気持ちは吉澤には言えないことだから。
石川にはなんとも言うことができなかった。
- 189 名前:aki 投稿日:2001年08月31日(金)18時04分18秒
- いしよし派の方々すみません・・。
- 190 名前:aki 投稿日:2001年08月31日(金)19時38分50秒
- 黙ってしまい何も答えない石川に吉澤のいらだちは募るばかり。
「梨華ちゃん・・・・・。」
「ごめん、私・・・・。」
訴えかけるように吉澤は石川の名前を呼ぶが石川には答えることは出来なかった。
石川はそれだけしか答えられずただ顔を背ける。
すると突然吉澤が石川を再度壁に強く押さえこんだ。
「よっすぃー!?」
「・・・・・。」
石川の言葉には答えずそのまま吉澤は石川の唇を奪った。
「んっ・・・・!」
強引に吉澤が石川の唇を奪う形になる。
舌を入れてただ貪るように深くキスをする。
石川は突然の吉澤の行動にただ強く目をつぶった。
やっと吉澤が唇を離したとき2人の間には糸が引く。
石川の息も少しだけ荒くなっていた。
なお吉澤は行為を続ける。
石川の耳に軽くキスし首筋に唇を這わす。
「んっ・・!よっすぃー!・・・待って、お願いっ!」
我を忘れたように吉澤は行為を止めない。
石川の言葉がまるで届いていないようだ。
石川が抵抗を少しだけ止めた時その頭の中をある人物の姿が横切った。
- 191 名前:aki 投稿日:2001年08月31日(金)20時05分55秒
- それは昨日から、いや屋上で初めて言葉を交わしたときから
ずっと離れない彼女の姿。
初めて会話をした直前の屋上での姿、遠くを見つめる整った横顔。
音楽室でまた偶然にも会ってピアノを演奏することに没頭する様子。
今でもすぐに思い出せる、音楽室で彼女が言ってくれた言葉。
『ピアノ、聞きたくなったらいつでも言って。弾くから』
『邪魔じゃないよ。』
出会って間もないが今まで思い出が鮮明に石川の頭の中を過ぎる。
その時その時は決して長いものではないけれど大切なあの人との想い出。
『ただの憧れなんじゃない。生徒会長って言う立場への。』
昨日の言葉があの時のまま鮮やかに石川の頭をよぎった。
軽くつぶっていた目を石川ははっきりと開けた。
(違う、そんなんじゃない。私は・・・・)
しばらく吉澤の行為をただ黙って抵抗せず受けていた石川だが体を愛撫する
吉澤の手をそっと止めた。
(私は、あなたのことが・・・・)
「止めて・・・・。」
小さくだがはっきりと石川は吉澤に告げる。
手をつかまれた後も吉澤はそのまま行為を続け止める事をしない。
- 192 名前:aki 投稿日:2001年08月31日(金)20時06分27秒
- 「止めてっ!」
石川は両手を押し出すように前に出し吉澤を拒否した。
「梨華、ちゃん・・・?」
「ごめん、私・・・・。もうよっすぃーとは・・・・。」
目を幾分潤ませ石川は吉澤に告げる。
「気付いちゃったの・・・。気持ち・・・自分の気持ちに・・・。」
石川の頬を一筋の涙が流れる。
それはそのまま二粒、三粒と床に落ちた。
「ごめんなさいっ!!」
そう言い残し石川は吉澤を置いて書庫から、図書館から飛び出していった。
- 193 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月31日(金)20時23分37秒
- まず石川が自分の気持ちに素直になりましたね。
- 194 名前:aki 投稿日:2001年08月31日(金)23時32分33秒
- 石川は図書館を飛び出し走った。
頬をつたう涙を軽く拭い、あてもなく走った。
昼休みだが図書館近くはいつも人は少ない。
石川の心の中はもはやいろいろなことが駆け巡っていた。
自分の気持ちに気付いたこと、吉澤への気持ち、さまざまな想いが
心を巡る。
自分でも気付かないほどそれぐらい自分があの人に深く溺れてしまっていること。
どれだけ彼女に自分がのめり込んでいるのか、どれだけ彼女の存在が
自分の中を占めているのかを思い知る。
『石川先輩は後藤先輩のことどう思ってるんですか?』
あの時の松浦の言葉に今の自分ははっきりと答えることができる。
戸惑いやためらうことなくはっきりと。
まるで磁石のように見たときから惹かれていた。
- 195 名前:aki 投稿日:2001年08月31日(金)23時33分19秒
- 図書館のある廊下を抜けそのまま屋内の体育館のある方へ走る。
もはや周りが見えなくなっていた。
自分のことで精一杯で辺りを見渡す余裕もない。
今にも涙が溢れ出しそうになる。
それをただ必死に石川は押しとめていた。
ドンッ!
廊下を曲がった時石川は何かにぶつかった。
「あたっ、なんや!?」
聞き覚えのある声、それはいつも自分を冗談を交えながらいじってくる
彼女だった。
「ん?石川か?・・・・どないしたん。」
いつもと違う様子の石川に中澤もいつものようには接しず顔を覗く。
「せん、せい・・・!」
石川は中澤に抱きついた。
こらえていた涙が後から止め処なく流れ出す。
中澤は石川の様子に少し戸惑ったがすぐに石川を両手で抱きしめた。
中澤のぬくもりはとても温かく優しく感じられた。
- 196 名前:aki 投稿日:2001年08月31日(金)23時39分44秒
- また間違えたぁ!
186の1行目、「放課後」は「昼休み」です。
前回の間違いのせいで迷ってしまい直し忘れました・・・・。
- 197 名前:aki 投稿日:2001年08月31日(金)23時45分03秒
- 193:名無し読者さん
>ですね。
吉澤が可哀想なことになってしまいましたが・・・。
- 198 名前:なつめ 投稿日:2001年09月01日(土)04時07分26秒
- 楽しく読ませてもらってます。すごい先楽しみです。
佳境ですね、それにしても更新早くてすごいです。
ところでsageでいく事にしたんですか?
- 199 名前:aki 投稿日:2001年09月01日(土)12時44分48秒
- 190:なつめさん
>ありがとうございますっ!
特別やることとかなくてなんとなくPCに向かって書いてるから
更新ばっかなんです(^^;)
なんとなく昨日はsageな気分だったんです。なぜか・・。
- 200 名前:aki 投稿日:2001年09月01日(土)13時15分20秒
- あの後中澤は石川をとりあえずなだめすぐ近くの保健室に連れて行った。
保健室には幸い誰もいなく石川は保健室の真中にある椅子に座った。
「はい、ココア。」
「すいません・・・。」
中澤は湯気の立つ紙コップに入ったココアを石川に手渡す。
石川はそれを息で覚ましながら少しだけ口をつけた。
中澤も自分の席に戻り一緒にココアをすする。
少しの間だけ保健室に会話がなくなる。
「言いたくなかったら別にいいけど何かあったんか?」
「・・・・・・。」
中澤の言葉に石川はすぐには答えられなかった。
中澤も石川の様子にそれ以上聞かなかった。
「・・・私、気づいたんです。自分の本当の気持ちに・・・でも・・・・。」
そこまで言いかけたところで石川の目には再び涙が溢れて来る。
石川はそれを軽く指で拭った。
「ゆっくりでいいから・・無理しなくていいからな。言えることだけ、
言いたい事だけ話せばいいから。」
中澤の言葉に石川が深く頷く。
ちょうどその時五時間目の授業を知らせる鐘が学校に響いた。
「五時間目、サボる?」
「はい。」
優しく笑う中澤の言葉に石川も軽く笑い答えた。
- 201 名前:aki 投稿日:2001年09月01日(土)13時42分40秒
- 「あ、圭ちゃん?うちやけど石川次の授業休むから。それじゃな。」
中澤は次の石川のクラスの担当である保田に質問させる間を与えず
伝えるだけ伝えさっさと電話を切ってしまった。
「なんか言ってたけど切っちゃった。」
石川はそんな中澤の様子が楽しく笑う。いつのまにか心も落ち着いていた。
しばらくして石川は中澤に今さっきの事から今までのことを話し出した。
吉澤の事も後藤の事も名前ではっきりとは言わず曖昧に話した。
しかし中澤にはそれが誰かすぐに分かった。
うまく整理して話すことができなかった石川だが自分の気持ちをありのまま
話し、中澤にはちゃんとそれは伝わっていた。
「私、どうしたらいいのか分かんなくなって・・・・。自分の気持ちを貫いたら
私の今好きな人も私が好きになってしまった人の事を好きな人も傷ついちゃう・・・・。
でも、分かっててももう・・・・」
中澤は石川の言葉を真剣に聞きそしてゆっくりと口を開いた。
- 202 名前:aki 投稿日:2001年09月01日(土)13時43分18秒
- 「自分の気持ちを貫く事で誰かが傷つく。そやな、そうかもしれない。
でもな、自分の気持ちに嘘ついてこれからも今石川が付き合ってる人と接して行けるか?
・・・・好きって気持ちは頭で考えてするものじゃないと思うけどな・・。」
「・・・・・。」
中澤の言葉が石川には深く心に刻まれる。
「自分の気持ちに素直にならないと本当に大事なものをなくすんとちゃうかな・・・。」
「・・・なくす・・・・?」
中澤が軽く頷く。
「無くしてからじゃ、遅いんやで・・・。」
中澤の事が心に響きそれは徐々にあることに対しての決心の気持ちを
固めさせられる。
「私・・・・・」
決心はゆっくり勇気へと変わる。
「私、嘘つきませんもう自分の気持ちに・・・。伝えます、気持ち・・・!」
迷いのないはっきりと心を決めたような石川の口調に中澤は優しく微笑んだ。
「頑張るんやで。応援してるからな。どんな時でもあたしはいつもここにいるから
安心して行っておいで。」
中澤は石川の頭をくしゃっと撫でた。
その手は石川にはとても暖かく感じた。
- 203 名前:aki 投稿日:2001年09月01日(土)14時06分57秒
- 火曜日は五時間目で授業は終わり。
中澤は石川の鞄を保田に取ってきてもらうため電話した後
石川を残しどこかに行くことにした。
「ちょっと出てくるな。なんだったらベッドで寝ててもいいし。」
「はい。」
中澤は石川に声をかけたあと保健室を後にした。
向かった先は学校の屋上。
彼女がいるのはいつも限ってそこだから。
中澤は彼女の様子を知りたかった。
屋上のドアを開く。
そこにはやはり彼女がいた。
風が少し強いがそれも関係ないように手すりに肘をかけ前を見つめている。
中澤は白衣を風に棚引かせ彼女に声をかけた。
「後藤ー!」
屋上にはよく声が通った。
彼女、後藤はすぐに後ろを振り向いた。
「なんだ、先生か。」
「なんやそれ。誰だと思ったん?」
中澤が後藤の横に並ぶ。
後藤は中澤の言葉に答えなかったが少しだけドキッとした。
何か見透かされてると思ったから。
それに対する答えも自分の気持ちも。
二度も同じ場所で出会えば嫌でも敏感になってしまう。
- 204 名前:aki 投稿日:2001年09月01日(土)14時07分39秒
- 「生徒会室まえに矢口達が集まってたけど行かなくていいんか?」
「・・・・サボる。」
中澤は後藤の様子が少し違うことに気付いた。
初めて自分が出会った頃のように少し冷たい。
後藤は中澤は少し苦手だった。
いつも上から自分を含める学校の生徒達を見つめていて見透かしているから。
何もかもお見通しのように感じられる。
そして中澤の取る行動一つ一つが何か意味を持っているから。
どうしてこの人の前では少しだけ心の鎧を取られさらけ出される。
- 205 名前:aki 投稿日:2001年09月01日(土)14時21分02秒
- 「なにかあったか?」
中澤が後藤と同じ方向を眺めながらそう言った。
その言葉に後藤は思わず前を眺めている顔を外し中澤の顔を見てしまう。
「そんなびっくりせんでもいいでしょ。な〜んでもお見通しよ先生は先生だから。」
「・・・・何それ、何もないよ、別に。」
「嘘はあかん。嘘は身を滅ぼすで?」
「・・・・・・。」
中澤の何か的を射る言葉に後藤は少しだけ動揺する。
言葉が心に刺さる。
「別にあんたから何か話してくれるとも思ってなかったから別にいいけど
一つ忠告しとくわ。」
「・・・・・。」
中澤の言葉を黙って聞き逃すように興味ないようにできるだけ後藤は自分を演じた。
「自分の気持ちにはたまには素直になりな。それが大事な時なら尚更やで?
嘘の仮面を自分につける事で傷つくのは周りも含めまれるってこともよう覚えとき。」
「・・・・・。」
- 206 名前:aki 投稿日:2001年09月01日(土)14時21分48秒
- 後藤は黙っているが中澤の言葉が嫌に心にちくちく刺さり痛い。
「それと自分を偽って一番傷つくのは遅かれ早かれ自分自身やで?
・・・・もし今のあたしの言葉に何か少しでも感じるんだったらちゃんと
考えるんだよ。」
中澤はそう言うと後藤を残し屋上を後にした。
中澤が階段を下りて行く音が微かに屋上にも届く。
「素直に・・・?」
中澤が出て行った屋上で後藤が今さっきの言葉を小さく呟く。
「もう手遅れだよ・・・・・とっくに・・。」
表情を変えないで後藤はただそう呟いた。
- 207 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月01日(土)14時26分05秒
- 手遅れなんかじゃない!梨華ちゃんが待ってるぞ。
- 208 名前:aki 投稿日:2001年09月01日(土)18時45分31秒
- 後藤は屋上を後にし鞄を取りに教室に戻り一年の松浦のクラスに向かった。
「松浦さんいる?」
教室の近くの子に後藤は聞いた。
その子は慌てながら教室の奥の方の松浦を呼びに行った。
ざわついていた教室が少し静かになる。
松浦はその子と話し後藤の姿に気付く。
後藤は軽く手を上げた。
松浦も急いで教室の鞄を取り後藤の元に駆け寄った。
「帰ろ?」
「はい。」
松浦ははっきりとそう答えた。
2人は一緒に教室を後にする。
昨日のことから松浦は心に決めていたことがあった。
松浦の表情は昨日の矢口達と会う前とはうってかわるほどしっかりしていた。
- 209 名前:aki 投稿日:2001年09月01日(土)19時36分23秒
- 「話が、あるんです。」
松浦は廊下で少しだけ前を歩く後藤の制服の裾を掴みそう告げた。
「何?」
「ここじゃちょっと・・・。着いて来てくれますか?」
松浦はそう言い後藤をある場所へと連れて行った。
そこは放課後にも関わらず人のいない静まりかえった場所。
松浦が後藤から告白された講堂前に来ていた。
後藤もそのことに微かに気付く。
「話しって、何?」
講堂のドア前に2人は向かい合うように立った。
「ここ、後藤さんが私に告白してくれた場所ですよね。」
「・・・うん。」
「私、後藤さんのこと今でも本当に好きです。」
「・・・何が・・・言いたいの?」
後藤は松浦の少し違う様子に疑問を抱く。
「だから・・・・後藤さんには嘘をついて欲しくないです。私にも、後藤さん自身の
気持ちにも。」
「・・・・・。」
松浦は後藤の目を真っ直ぐ前から見つめた。
その目にはなんの迷いもなく力強い物が感じられる。
「先輩、本当に好きな人いるんじゃないんですか?」
松浦ははっきりとそう言った。
- 210 名前:aki 投稿日:2001年09月01日(土)19時50分20秒
- 松浦の突然の言葉は後藤を充分に動揺させた。
「いないよ・・・・。」
後藤は松浦から目を離し答えた。
「嘘です。先輩は・・・」
「違う!私は・・・」
松浦の言葉を予測し言い終わらないうちに後藤は松浦に視線を戻しそう言いかけた。
しかし真っ直ぐな松浦の目を見て後藤の口からは言葉が出なくなってしまう。
「私、先輩と土曜日、一緒に試合見に行った時に気付いたんです。
先輩のその人を見つめる表情に・・・。」
「・・・・・。」
後藤は松浦の言葉に何も言えなくなってしまう。
「昨日私、見ちゃったんです。屋上で・・・。」
後藤は自分を見つめる松浦と視線を合わせる事が出来ないでいた。
松浦は関係なく話を続ける。
「先輩は好きだけど諦めたんですよね。石川先輩のこと。」
「そんなこと・・・・・。」
「自分の気持ちに素直になってください。」
松浦の言葉に今さっきの中澤の言葉が鮮明に思い出される。
『自分の気持ちにはたまには素直になりな。それが大事な時なら尚更』
後藤はふいに松浦に視線を戻し強く言った。
「だからって!今更素直になったとしたってもう遅いんだよ・・・。」
- 211 名前:aki 投稿日:2001年09月01日(土)19時53分45秒
- 「あの後泣いてました。石川先輩。」
松浦の言葉に反応し後藤はドキッとした。目の色も変わる。
「・・・そう。」
後藤は平静を装って涼しく答えたつもりだが松浦はそんな後藤の様子にも気付く。
「遅くなんかないです。・・・私は本当に後藤先輩のことが好きです。
だから、これ以上自分を偽って欲しくない・・・。」
松浦は必死に平静を保っていたが必死に押しとめていた涙が頬をつたった。
『嘘の仮面を自分につける事で傷つくのは周りも含めまれるってこともよう覚えとき。』
後藤は松浦の涙に気付いた。
それと同時に中澤の言葉が鮮やかに思い出し、その言葉の意味を改めて深く
気付かされる。
後藤は松浦を強く前から抱きしめた。
「先輩!?」
「ごめん・・・・ごめんねっ・・。」
「・・・・・。」
「私、松浦さんの気持ちも考えないで自分の考えだけで行動してて・・・。
最低だ・・・・。」
「そんなこと・・・・・」
松浦は無言で後藤の胸の中で首を左右に振った。
- 212 名前:aki 投稿日:2001年09月01日(土)19時54分52秒
- 「でもね、弁解してるように聞こえるかもしれないけどあの時松浦さんに
好きだって言った気持ちに嘘はなかったの・・・。」
「松浦さんのことは本当に好きだと思った。たぶんあの人に出会ってなかったら
私は・・・」
「それは違いますよ・・・。」
松浦は後藤から離れまだ潤っている目で後藤を見つめ言った。
「2人が出会った運命なんですよ。最初気付いた時からお似合いだと思ってました。」
松浦はにこっと笑って後藤に言った。
「行って下さい。私は一人で帰ります。」
松浦は完全に後藤から体を離し鞄を持ち直し言う。
「松浦さん・・・・。」
「後藤さんを好きになれて良かった・・・。心からそう思います。」
松浦はそう言い残し後藤を置いてその場を後にした。
後藤はずっと見つめていた松浦の後姿を、見えなくなるまで。
- 213 名前:aki 投稿日:2001年09月01日(土)19時57分26秒
- 207:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
いよいよクライマックスになりそです。
- 214 名前:aki 投稿日:2001年09月01日(土)20時58分04秒
- 204の一番下の行のところ「どうして」のところ後に「も」が
抜けてますね・・。「どうしても」です。
しかし212の7行目「出会った」のあとに「のは」が抜けてる・・・。
まずいですね・・・。むむむ(ーー;)
- 215 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月01日(土)23時29分47秒
- 更新早くて嬉しいです。
いしごま大好きなので、いつも読ませてもらってます。
しかし、もうすぐ終わっちゃいそうですね(寂)
頑張って下さい。最後まで見届けさせてもらいます。
- 216 名前:aki 投稿日:2001年09月01日(土)23時52分23秒
- 215:名無しさん
>レスありがとうございます〜(T_T)
とても励みになります!
私もいしごま大好きなんですよ〜。それで書いちまいました。(^^;)
書いてる途中は何ともなかったんですが終わりそうで私もなんか
寂しいです。頑張りますよっ!
- 217 名前:aki 投稿日:2001年09月02日(日)12時36分11秒
- 屋上の後、中澤はまた保健室へと戻っていた。
「あ〜、やっぱり階段はキツイ。はぁ、疲れた。」
中澤はそうぼやきながら保健室の中に入った。
「運動不足ですよ。ところでどこに行ってたの?」
保健室からは聞き覚えのある声が中澤を迎えた。
「圭ちゃん。」
「どこ行ってたの?」
「屋上。」
「何で?」
「ちょっとね。」
中澤は保田に曖昧に答え保健室を見渡した。
「石川は?」
「石川なら鞄持ってどっか行ったよ。帰ったんじゃない?」
「そっか。」
「?」
中澤の行動、発言に保田はただ首をかしげる。
「なぁ、圭ちゃん。今日飲みにいかへん?」
「え?今日は特別に仕事もないから別にいいけど。」
「それじゃ決定。」
すると中澤は白衣を脱ぎロッカーに入れ帰り支度をする。
「もう行くの?」
「そうよ、圭ちゃんも早よして。」
「?とりあえず分かった。」
保田も帰り支度をするため職員室に一旦戻り保健室を後にした。
「うまくいくといいな。あの2人も・・・。」
帰り支度をしながら中澤は一人の保健室でそう呟いた。
- 218 名前:aki 投稿日:2001年09月02日(日)12時41分33秒
- 保健室の机の上を忘れ物がないか確かめた時、小さな紙が置かれていた。
「ん?」
それには文字が書いてあった。
紙を取り上げて読んでみる。
『今日は本当にありがとうございました。先生の言ってくれたこと忘れません。
とっても嬉しかったです。』
紙の下には「石川より」と書かれていた。
中澤は軽く微笑むとその手紙をポケットの中に入れた。
「これだから先生は辞められヘンな。」
中澤はそう言い残し保健室の明りを消して保健室を後にした。
- 219 名前:aki 投稿日:2001年09月02日(日)12時49分10秒
- 石川は保田から鞄を受け取った後すぐに保健室を出て行った。
向かった先は吉澤の教室。
ドア近くで吉澤の姿を探すとすぐに見つかった。
「よっすぃー!」
吉澤が石川の呼びかけに振り向く。
吉澤は少し複雑な表情をしていた。
「一緒に帰ろ。」
石川は真っ直ぐ吉澤を見つめそう言った。
「うん。」
吉澤も真っ直ぐな石川の目、今さっきとはうって変わってしっかりした表情の
変化に気付く。
何かを察したが吉澤はただ頷くことだけにした。
- 220 名前:aki 投稿日:2001年09月02日(日)13時25分31秒
- あの後からしばらく何も話さなかった。
そんな中石川が口を開いた。
「公園に寄って行ってもいい?」
学校を出て学校のすぐ近くには木の多い公園がある。
以前にも2人でここに来たことはあった。
石川の言葉に吉澤はただ「うん。」とだけ言葉を返した。
石川の少し違う雰囲気には気付いていた。
そして今さっきの五時間目の授業の間吉澤も考え決めていたことがあった。
「話が、あるんだ。」
前を歩いていた石川が前を向いたまま吉澤からは後姿のままでそう言った。
「・・・・何?」
吉澤の少し置いた返事に石川が吉澤の方にくるっと鞄を後ろに持ちながら振り向いた。
石川は少しだけ視線を下にし俯いた。
「私、よっすぃーのこと大好きだった。心から。一緒にいて楽しくて、
優しくて・・・。だからよっすぃーに告白された時は本当に嬉しかった。」
「・・・・・。」
「今も大好き。すごく、すっごく大好き・・・・」
吉澤は石川の言葉を切なそうに見つめる。
太陽の横の木々の間から入ってくる光の加減で俯き加減の石川の表情は
あまりよく見えなかった。
しかし石川の瞳からは涙が流れ下の地面に落ち湿らす。
- 221 名前:aki 投稿日:2001年09月02日(日)13時26分46秒
- 吉澤には石川から流れ落ちていく涙が太陽の光を反射しとても綺麗な物に映る。
「でもね・・・・よっすぃーのこと大好きなのに、大好きなはずなのに
ある人が会うたびに心を占めていくの・・。」
「梨華ちゃん・・・・。」
「よっすぃーのことが一番なはずなのに、好きなのにどうしようもなく
惹かれちゃうの。」
吉澤は必死に涙をこらえようとする石川に近づき寄り添い肩に手をかけた。
「胸が痛くて、苦しくて・・・・でも先生に言われたの。自分の気持ちに嘘ついて
よっすぃーとこれからも付き合っていけるのかって・・・。」
「梨華ちゃん・・・・」
吉澤は石川を前から強く抱きしめた。
「自分の気持ちに素直にならないと大事な物なくすって・・・・。よっすぃーの
こと大好きだけど・・・だけど私の心の中を一番占めるのはあの人なの・・・・。
自分の気持ちもう誤魔化せないっ・・・・。」
石川は吉澤の胸の中でしがみ付くように泣いた。
「ごめんねっ・・・・好きになって、くれたのに・・・。」
「もういいよ、分かってる。梨華ちゃんの気持ち、だから泣かないで。」
吉澤は強く、石川を抱き返す。
- 222 名前:aki 投稿日:2001年09月02日(日)13時45分47秒
- 石川は泣いたまま吉澤の顔を見上げた。
「大丈夫だから、分かってるから・・・・だから最後に・・・」
吉澤は石川に顔をゆっくり近づけた。
「よっすぃー・・・・」
言葉と近づいてくる吉澤に石川は意味を理解し目をつぶった。
2人にとって最後のキス。
それは涙が混じった甘い味だった。
それは今までの中で一番長く感じられ一番切ないものだった。
吉澤は唇を離すとふいに石川から体を離した。
「会いに行ってきなよ。その人に気持ち伝えなきゃ。たぶん待ってるよ。
その人は梨華ちゃんのこと・・・・。」
吉澤の言葉に石川は深く頷いた。
「応援してるよ。うまくいくように。だから頑張って・・・・」
「よっすぃー・・・・。」
「私は大丈夫だから・・・。私もてるみたいだしっ。」
吉澤は軽く笑いながら言った。
石川はそんな吉澤の言葉に表情がほころぶ。
「笑ってる梨華ちゃんが一番可愛いし私が一番好きな梨華ちゃんの表情だった。」
「よっすぃー・・・」
「それじゃあね。」
吉澤はそう言うと石川に背を向けて歩き出した。
- 223 名前:aki 投稿日:2001年09月02日(日)13時46分18秒
- 2人の距離が離れていく。
「ありがとうっ・・・・!私、よっすぃーと出会えてよかった。」
石川がはっきりと大きな声で吉澤の後姿に告げた。
吉澤は振り向かず石川に後ろを向いたまま黙ったまま右手を上げそれに答えた。
石川は吉澤のその姿を見、涙を拭うとしばらくして公園を後にし走り出した。
- 224 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月02日(日)14時39分58秒
- お互いやっと正直になっってうれしいっす。
- 225 名前:aki 投稿日:2001年09月02日(日)18時03分53秒
- 石川がいなくなった公園で吉澤は石川が走っていくのを振り向かず
耳に確認すると両手を真上に上げ伸びをした。
「あ〜あ、もしかして失恋っていうの?これ。」
傾きかけた夕日が目に染みる。
一人でいるとだんだん気持ちが昂ぶってくる。
必死に押さえていた物が自分の意志に関係なく出てこようとする。
- 226 名前:aki 投稿日:2001年09月02日(日)18時04分39秒
- 「吉澤っ!!」
予想もしなかった自分を呼ぶ声に吉澤は振り向いた。
すると公園の入り口辺りに青いオープンカーに乗った中澤がこちらに向かって
手を振っていた。
助手席には保田もいる。
「先生・・・!?」
中澤は車から降りると吉澤の方に近づいてきた。
そして何も聞かずただ吉澤の頭をくしゃっと撫でた。
「もうええんやで。よく頑張ったな。」
中澤の言葉が吉澤の心にそのまま染みた。
「うっ・・・先生・・・」
その言葉がかけられると同時に吉澤の必死に堪えていた想いの留め金が外れた。
「思う存分泣き。明日は祝日やし今日は付き合うで。」
中澤は吉澤を優しく抱きしめ頭を優しく撫でながら言った。
保田はといえばよく状況がつかめずにいた。
しばらくして二人は車の元に行き運転席に中澤が、後部座席に保田と
吉澤が乗り込んだ。
三人を乗せた青いオープンカーはあてもなく走り出した。
- 227 名前:aki 投稿日:2001年09月02日(日)18時06分12秒
- 224:名無し読者さん
>ですね。だんだん終わりに近づいてきます・・。
最後までお付き合いください。m(__)m
- 228 名前:aki 投稿日:2001年09月02日(日)18時15分27秒
- 後藤は松浦と分かれ一人校舎の中をあてもなくただ歩いていた。
松浦の言葉が後藤に深く刻まれ後藤はもう自分の気持ちに嘘をつかないことを
決心した。
それはここまでしてくれた松浦のため、そして自分のためにも。
傷つくかもしれない。
でも怖がるのはもう止めた。
日が傾きかけ夕日が校舎を少しだけ紅く染めていた。
授業が終わり放課後のため結構時間が経ち生徒はほとんど見当たらない。
「・・・あっ!」
後藤はあることを思い出しひらめき思わず声を出してしまった。
あの時彼女に会った時と今はほとんど状況が同じだった。
あてもなく歩いていた後藤だがすぐにある場所へと歩き出した。
彼女と二度目出会ったあの場所へ。
- 229 名前:aki 投稿日:2001年09月02日(日)18時28分51秒
- 石川は吉澤と別れた後学校に向かって走っていた。
彼女がまだ学校にいるとは100%言える事ではないのになぜかそこに
石川は走った。
ちゃんとした理由が思い当たらないがなぜかも分からないけど
あの人はまだ学校にいると石川は少なからず確信していた。
夢中になって走る。
学校の門が視界に現れ、門を抜ける。
笑顔で送り出してくれた吉澤のため、心のどこかに感じていた疑問を
改めて言葉にして尋ねてくれた松浦のため、そして勇気をくれた中澤のためにも
石川は自分ができる最大限の事をしようと心に決めていた。
自分の気持ちにやっとはっきりと気づいた今その最大限の事とは一つだけだった。
学校に入り校舎を石川は普段したこともない速さで走りぬけた。
息を切らせながら石川は走った。
(あそこに・・・・・)
走り出した時から校舎に戻ってきた時から走りながら石川の目的地は
決まっていた。
彼女と出会ったあの場所へ。
その場所を疑うことなくただ石川は走っていた。
- 230 名前:aki 投稿日:2001年09月02日(日)18時30分22秒
- やばいです。終わりそうです。
なんか私も寂しい。(+_+)
- 231 名前:aki 投稿日:2001年09月02日(日)19時51分17秒
- 石川は階段を上った。
頭の中には何も考えることは出来なかった。
ただ夢中になって階段を駆け上っていた。
バンッ!
石川はすごい勢いで屋上のドアを開け放った。
その音は静かな屋上によく響いた。
石川は急いで屋上に出ていつも彼女がいる手すりの部分を見た。
「・・・・・・。」
そこには誰もいなかった。
石川が望むいつもの彼女の後姿も。
風が寂しく屋上を通り抜ける。
自分の予想しなかった現実に何も考えられなくなる。
確信に近いほど信じきっていた事が現実とは違い頭の中が一気に真っ白になった。
あまりのことに言葉も出なくなりただそこに佇んでしまう。
「あっ・・・う・・・・。」
彼女の姿は屋上のどこを探しても見当たらない。
石川にはまるでそれだけのことがとても心にダメージを与える。
涙が次第に頬をつたいこぼれ始める。
まるで今までの、この一週間の出来事は夢のことのようにも思えてくる。
全ては夢で目が覚めれば何もかも残っていなくて。
目が覚めてしまったことで彼女とまるで永遠に会えなくなるのかとも思って
しまい心が勝手に追い詰められる。
「うっ・・・・」
言葉にならない。
ひどい喪失感に襲われる。
涙だけが溢れてくる。
- 232 名前:aki 投稿日:2001年09月02日(日)19時52分42秒
- そんな時石川の耳にある音が届いた。
屋上の開けっ放しになっていたドアから。
それはピアノの音。
「このメロディは・・・・・」
そう、このメロディは始めて聞くものではない。
あの時、音楽室で聞いたメロディ。
自分が導かれるように音楽室に誘われた時の曲だった。
でも全てがあの時と同じじゃない。
それは確かに石川に向けられている物だった。
自分がどこにいるのかを、そして何か気持ちを伝えるようにそのメロディは
石川の耳に届く。
急いで石川は屋上を後にした。
そして向かった。
彼女の待つ音楽室へ。
- 233 名前:JAM 投稿日:2001年09月02日(日)22時20分20秒
- この小説好きだったから、終わるのは
ものすごく寂しいですけど
物事には必ず終わりがありますからね。
ラスト、期待しまくってますよぉ〜。
頑張って下さい。
- 234 名前:aki 投稿日:2001年09月02日(日)23時31分41秒
- 233:JAMさん
>レスありがとうございますっ!
小説好きだといってくれてとても嬉しいです(TT)
明日で書き終えるつもりです。
最後まで気を抜かず頑張りますよっ!
- 235 名前:aki 投稿日:2001年09月03日(月)16時31分45秒
- 自分の求める人はもう学校に残ってないかもしれない。
自分のやってることはとてつもなく無駄かもしれない。
でも後藤は音楽室でただあの時の曲を奏でていた。
やるまえから諦めることはもうしない。
もう逃げない。
どうしてあの日あの時自分は彼女と出会ってしまったのか考え責めたこともあった。
でも今は違う。
彼女と出会ってからいろいろな感情が自分の中にあることに気付いた。
それは自分が忘れかけていた物。
自分の気持ちを気付かせてくれた人のためにも
後藤はピアノを弾いた。
ただ一人のためだけに。
- 236 名前:aki 投稿日:2001年09月03日(月)16時51分21秒
- しばらくしても自分の求める人は現れない。
実際には少ししか弾いていないがそれがとてつもなく長い物に後藤には
感じられた。
『あの後泣いてました。石川先輩。』
松浦の言葉が後藤の脳裏を微かに通り過ぎる。
彼女をまぎれもない自分の言葉で傷つけた。
どんなに弁解しても、やっと本当のことに気付いたとしてもそれは
拭い去れない自分の行為。
もしかしたらもう手遅れなのかもしれない。
松浦は送り出してくれた。
まだ間に合うと応援してくれた。
でも、もう手遅れでなくした後だったら・・・?
後藤のピアノを弾く指に力が入らなくなってきた。
メロディが弱い物になる。
しかし後藤は弾くことを止めなかった。
「可能性なんて・・・・最初から1%でもあれば充分だよね・・・・。」
そう呟きながら。
- 237 名前:aki 投稿日:2001年09月03日(月)17時45分59秒
- 石川は音楽室に向かう途中気付いた。
傾きかけた夕日が校舎を紅く染めるこの状況。
そして音楽室から漏れるあの時のメロディ。
それは全てがあの時2人がであったままのことに。
まるで後藤の気持ちがピアノの音に変換されて聞こえるようだった。
ここにいる。
そして会いたいと。
石川は音楽室のドアをあの時とは違く勢いよく開けた。
「・・・後藤、さんっ・・・!」
ピアノは椅子が音楽室のドアの方向に向かってセットされている。
自分の求める人が、見たかった後姿がやっと見つけることが出来た。
石川はそれだけで心から安心し、それと同時に涙が込み上げる。
音楽室の勢いよく開けた音と石川の言葉に後藤はすぐに振り向いた。
ドアからの風と振り向いたため後藤の髪は綺麗に横に流れる。
「石川さん・・・・・・」
初めて彼女の名前を呼びそして後藤は立ち上がった。
後藤の心の中を侵食し始めて不安はまぎれもなく自分の目の前にいる彼女の姿に
一気に消え去った。
- 238 名前:aki 投稿日:2001年09月03日(月)17時47分13秒
- そして後藤は石川が息を切らせながら涙を流していることに気付く。
「後藤さんっ!」
石川は涙を拭わないまま後藤に走り寄りそのまま前から抱きついた。
後藤は石川をしっかりと抱き止めた。
2人はお互いの存在を確かめるように強く抱き合った。
「会いたかった・・・・・!」
石川が心からそう言葉を漏らした。
「ごめんね・・・・」
後藤は石川を抱きしめながらそう呟いた。
石川が後藤の胸の中でそれを否定するように首を左右に振った。
「私、自分の気持ちから逃げてた。傷つくのが嫌で自分の気持ちを偽ってた・・・・。」
後藤は言いながらまた優しく、そして強く石川を抱きしめた。
「本当はずっと好きだった。初めて見かけたときからずっと。」
「私も、屋上で後藤さんを見たときからずっと惹かれてました。」
2人はお互いを抱きしめる腕を少し緩め、向かい合うように立った。
「キス、してもいい?」
後藤の言葉に石川はただ黙って頷いた。
- 239 名前:aki 投稿日:2001年09月03日(月)17時47分55秒
- 夕日が降り注ぎ紅く染まる音楽室の中で2人は初めてのキスをした。
軽く重ねるだけのキス。
それは2人の心を充分に満たす。
後藤は静かに唇を離した。
そしてまた強く抱きしめてはっきりとした口調で言った。
「好きだよ。」
静かな音楽室に後藤の言葉は綺麗に響いた。
- 240 名前:aki 投稿日:2001年09月03日(月)18時35分57秒
- 祝日の翌日の木曜日
授業が全て終わり生徒が帰り支度する石川の教室。
ざわつく教室のドア付近にそのクラスメートではない彼女が顔を出した。
教室が少しだけ静かになる。
石川がそれに気付きその方向を見、彼女の姿に石川も気付いた。
「帰ろっ。」
教室の注目が注がれる彼女、後藤が石川に向かって手を振ってそう言った。
「うん!」
石川は鞄を持ち後藤の元に行き一緒に教室を後にした。
教室全員が状況がわからず言葉を何も発することができなくなるが2人はそんなことに気にすることもなく仲良く出て行った。
2人が出て行った後の教室はしばらくしてどっと気付いたように今のことに
ざわめき始めた。
- 241 名前:aki 投稿日:2001年09月03日(月)18時37分10秒
- 「日曜日、どこか行きませんか?」
「それは別にいいけど・・・敬語やめない?」
2人は校舎を出て今は学校の門に向かって校庭を歩いているところ。
「あ、ごめんなさい・・・。」
「謝らなくてもいいけどさ。」
「あっ。それじゃ、後藤さんもちゃんと私の名前呼んでくださいよ。」
石川が思い出し後藤に言う。
「え?」
「あの時以来呼んでくれないし・・・下の名前では呼んでもらったこともないです。」
後藤は少し考え石川の言う通りだということに気付く。
「そういえばそうかも・・・。でも私のことも後藤さんって呼ぶじゃん。」
「・・・・本当だ。」
少し考え石川もそのことに気付く。
- 242 名前:aki 投稿日:2001年09月03日(月)18時37分41秒
- 「前見ないで歩くと転ぶよ。」
「え?・・・きゃっ!」
石川は話す事に夢中になってしまい全然前を向いていなかった。
後藤の言葉を合図にしたように石川が前につんのめる。
地面に衝突するかと思ったその時
ふわっ
本当にそう言い現せるほど倒れかけた石川を後藤が前からソフトに優しく支えていた。
「言ってる側から・・・・気をつけてよ、梨華ちゃん。」
「ありがとう・・・・って、あっ!」
後藤の言葉に気付いた時にはもう後藤は前を歩き出していた。
そんな後藤の様子に石川は心の中が暖かくなり嬉しくなった。
「待って〜。」
石川は後藤の後姿に向かって走り出す。
- 243 名前:aki 投稿日:2001年09月03日(月)18時47分48秒
- そんな2人の光景を上の生徒会室の窓から見つめるのは松浦亜弥。
松浦は2人の本当に楽しそうな姿を、そして後藤の表情を見て
窓に肘をつけながら嬉しそうに見守るように眺めていた。
「うまくいったみたいね。」
松浦の後ろから矢口が窓から2人の姿を見つけ言った。
「はい。」
「良いの?」
「・・・・良いんです。私、石川先輩も後藤先輩も大好きだから・・・。」
言いながら言葉とは裏腹に松浦の目は少し潤む。
松浦はそれを軽く指で拭った。
「いい顔してるね、後藤のやつ。」
矢口は言いながらそんな松浦の頭を軽く撫でた。
「はい。」
松浦も微笑みながらそれに答える。
2人の目には幸せそうな後藤と石川の姿が映っていた。
- 244 名前:aki 投稿日:2001年09月03日(月)19時03分06秒
- 「しばらくここに置いてくださいっ!」
吉澤は勢いよく保健室に入るなり中にいる中澤にそう告げ保健室に入った。
「一体どうしたん?」
机の上でなにやら書き事をしながら中澤が入ってきた吉澤に聞いた。
「なんかすごくて。あっという間に噂広まったみたいでうるさいんです。」
走ってきたのか少し息を切らしそう吉澤が答える。
「あらま、それはあかんな。そう言うことならいつでも来てええよ。」
「ありがとうございます。」
吉澤は中澤にお礼を言いながら校舎側の椅子に座った。
「あっ・・・・」
吉澤は小さく呟いた。
校庭に後藤と石川の姿を見つけたからだ。
2人の楽しそうな姿に自然と吉澤の表情も優しい物になる。
「どうしたん?・・・・お、あの2人うまくいったんやん。」
「見たいですね。」
「複雑?」
中澤の言葉に吉澤は首を横に振り言った。
「いいえ。全くって言ったら嘘だけど・・・私、梨華ちゃんのことは本当に好きだから
どういう形であて幸せになって欲しいです・・・。」
「そっか。」
吉澤の言葉に中澤はしばらく置き答えた。
三人を見つめるしっかりとした吉澤の横顔に中澤も優しく微笑む。
- 245 名前:aki 投稿日:2001年09月03日(月)19時05分02秒
- 後藤と石川は手をつなぎ2人一緒に学校の門をくぐった。
つなぐ手はまるで2人の通じ合った気持ちを表しているようだった。
出会えたことに、出会え結ばれた運命に感謝する。
決して互いを離さないと誓い2人はたくさんの人に見守られながら結ばれた。
〜end〜
- 246 名前:aki 投稿日:2001年09月03日(月)19時15分50秒
- 終わりましたぁ〜〜!終わっちまいましたっ!
こんなに長くなるとは書き始めたときは思ってもいませんでした。
ストーリーは結構書きながら出来上がっていってだいたいの骨組みも
完成してたんですけど途中真中辺りで少し変更があったんです。
ちょうどバレーボールの試合後辺りが変わりました。
後藤が石川のことをあきらめようなんて思っても見なかったです。
最初の予定していた物より少し波乱が多くなった気がします。
書いた後結構これいれとけば良かったなど思ったり最初の方では書いてた物を
間違えて消したりと結構大変でしたが読んでくださっている皆様のレスなどにも
励まされここまで書くことができました。
途中皆様の期待に答えられるかと思い緊張した時もありましたが
ここまでお付き合い下さいました読者さん全員にお礼を申し上げます。
ご愛読ありがとうございました。
- 247 名前:名無しです 投稿日:2001年09月03日(月)19時51分39秒
- お疲れ様でした。
ホントいい作品でした♪
吉澤も最後にふっきれたようなイイカンジの感情が書いてあり、
モテモテぶりも書かれてありホントよかったです。
最後の245レスの言葉もジンと来ました(^^)
次の作品も、もし書かれるなら楽しみにしています。
ホントにお疲れ様でした。
- 248 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月03日(月)19時59分31秒
- おわっちゃったよ。大好きだったんで複雑です。
急なんですがこのはなしのやぐなちは書く予定はないですか?
出会いとか付き合ったきっかけとか現在の二人とか。
いしごまもすきなんですがこの話のやぐなち大好きなんで。
無理なお願いすみません。
- 249 名前:レイコ 投稿日:2001年09月03日(月)20時10分58秒
- お疲れ様でした!
毎日楽しみにしていました。
内容はもちろんですが、自分的にはごっちんのキャラがすごく魅力的でよかったです。
次回作期待しております。
- 250 名前:aki 投稿日:2001年09月03日(月)20時31分29秒
- 247:名無しですさん
>ありがとうございます(TT)
読者としてだと分からなかったですが書いてみてレスくれるのは
いくら貰っても嬉しいです。
次回作はもうちょっと軽い感じでコメディチックなものを書こうかと
思ってます。本当にありがとうございます〜(TT)
248:名無し読者さん
>勿体無いお言葉ありがとうございます〜(T_T)
やぐなちの話はすこ〜し考えてはあります。
書くとしたら二人の出会いあたりだと思うますね。
お願いしてくださって嬉しいです(^^)
主役ではない二人も好きになってくれてとても嬉しい限りです。
249:レイコさん
>ありがとうございます〜(T_T)
内容も自分の描いた後藤も気に入ってもらえて嬉しいです。
次回作も今回のように楽しく書きたいですっ!
レイコさんも頑張ってください^^
- 251 名前:aki 投稿日:2001年09月03日(月)23時43分47秒
- 244の最後「三人」じゃなくて「二人」です。
焦って書いた物で間違えちゃいました。(++)
- 252 名前:aki 投稿日:2001年09月04日(火)14時23分31秒
- やぐなちの話が昨日結構ストーリーが浮かんできたので
書こうと思ったんですがここにはこれ以上書かないほうが良いですかね?
移るとしたらたぶん風板だと思います。
これからもよろしくお願いします。
- 253 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月09日(日)02時35分22秒
- お疲れさまでした。
毎回楽しく読んでました。
ここの小説ってセリフ重視が多いんだけど、この小説は地の文に結構力をいれていてすごいと思いました。
あとよくこれだけたくさんの人物を動かせますよね。脱帽。
次回作も期待しとります。
- 254 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月09日(日)05時59分29秒
- うんうん。おもしろかった。
今日一気に読んで徹夜しちゃいました。
私も次回作アンド外伝きたいしております。
- 255 名前:aki 投稿日:2001年09月09日(日)12時59分35秒
- 253:名無し読者さん
>レスありがとうございます(T_T)
とっても嬉しいです。もったいない御言葉たくさん
かけていただいてもうかなり嬉しい限りです。
改めて読んでいただいているって感じてとても感激です。
これからも頑張ります。
254:名無し読者さん
>徹夜!嬉しいです(T_T)
レスって本当に励みになります。
これからも頑張ります!
レスが二つも付いているうえ嬉しい御言葉とても感謝です。
これからも頑張りますのでよろしくお願いします。
- 256 名前:aki 投稿日:2001年09月09日(日)13時48分51秒
- ちょっと思い出して再度お礼。
253:名無し読者さん
>最初書いていた頃台詞がすくなくて文章だらけで
読みにくいかなとか重たいかなと思ったときがあったので
レスうれしかったです。
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