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『実況ハロープロ野球2001 延長10回裏』
- 1 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)14時56分49秒
- プロ野球を題材にした小説『実況ハロープロ野球2001』の続きです。
金板から移ってきました。
登場人物は、ハロプロメンバー+福田・石黒・市井です。
- 2 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)14時58分22秒
- 「よく…あたしの前にノコノコ顔を出せたわね…?」
遠征先のホテル…石黒彩の部屋…
試合終了後の石黒彩の荒れようは、今シーズンで1番激しかった。
石黒彩はグローブをダッグアウトに叩き付けると、
ベンチを散々蹴り上げてロッカールームに消えた。
そして、ロッカールームから聞こえてくる激しい物音が鳴り止むまで、
誰も近寄ることが出来なかった。
そんな状態だったから、その場で声をかけることは、とてもじゃないが出来なかった。
もちろんホテルへ向かうバスの中でも…
かといって、そのまま謝罪1つしないわけにはいかない…
だから、今こうして石黒彩の部屋に出向いたのだが…
台詞のキツさとは相反して、意外にも落ち着いた様子…
というか…なんか変だった…
部屋が真っ暗だし…
「まぁ、取りあえず入りなさいよ…」
石黒彩は、部屋の電気を点けるとあたしを部屋の中に招き入れた。
- 3 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)14時59分16秒
- 部屋が明るくなって初めて気が付いたことがあった。
石黒彩の目の周りが赤い…
まさか…泣いてたなんてことないわよね…
「あの…中澤さんは…」
「今、外に出てる…
何よ…あんた裕ちゃんに用があって来たの…?」
石黒彩は、不機嫌そうな顔でそう言った。
「あの…石黒さんに謝ろうと思って…
今日はすみませんでした…」
「あれだけ大口叩いといてあのざまだもんね…
呆れるにも程があるわよ…
石黒彩は、あたしに背を向けて窓辺に近付くと窓を開けながらそう言った。
台詞はいつも通りイヤミな感じなのだが、トーンが違う。
そして、そう言ったきり話が続かなかった。
正直…散々罵られる覚悟で来たんだけど、拍子抜けだ。
悲愴感漂う表情を見せたり、素直にリードに従ったり、泣き腫らしたような目…
思えば、今日は『らしくない』って思わせることが多かった。
- 4 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時00分06秒
- 石黒彩は窓の外を眺めたまま、あたしは立ち尽くしたまま…
無気味な静けさが、その部屋を支配していた。
「あの…あたしが言うのもなんですけど…
今日みたいなピッチングを続けていれば、絶対勝てますよ…
あたしも、もっと努力してキャッチングを磨きますから…
石黒さんが安心して投げられるように…
だから、落ち込まないで頑張りましょうよ…」
深い意味合いを込めてした発言ではなかった…
重苦しい空気を変えたかった…ただそれだけだった…
「何を…?」
「え…?」
「何を…頑張れって言うのよ…?」
突然、石黒彩が口を開いた。
「これ以上…何を頑張れって言うのよ…?
知ったふうなこと言ってんじゃないよ!!
それに…誰が落ち込んでるって!?
あんた、調子に乗るのもいい加減にしなさいよ!!」
- 5 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時00分49秒
- いつもの石黒彩が戻ってきた…
あたしの方に向き直ると、見慣れた鋭い視線であたしに詰め寄った。
「だいたい、今日は誰のせいで負けたと思ってるのよ!!
ノコノコ部屋まで来て、何を勘違いして述べてんのよ!!」
確かに、ちょっと調子のいい発言をしてしまったかもしれない…
謝りに来といて、あんな脳天気な発言をしたのだから、怒るのも無理はない気もする。
でも…今の石黒彩の発言の中で、どうしても納得がいかないことがあった。
「ちょっと…待ってくださいよ…
今日負けたのは、あたしのせいだって言うんですか…?
それは…おかしいですよ…
確かに敗戦の大きな要因だと反省してますよ…
でも…勝つのも負けるのもチーム全員の力を合わせた結果じゃないですか…?」
「今のあんたみたいなことを言うんだろうね『盗人猛々しい』ってのは…
あんたがパスボールしなきゃ勝ってたのよ!!」
「なんで…そんな考え方しか出来ないんですか…?
ひょっとして…いつも負けるのは他人のせいだと思ってるんですか…?
自分にも原因があると考えられないんですか…?
そんなんだから勝てないんですよ!!」
- 6 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時01分31秒
- 石黒彩のあまりにも傲慢な態度に、遂にあたしはキレた。
だけど、キレたのはあたしだけじゃなかった。
石黒彩はあたしをベッドの方向に突き飛ばすと、目の前に立ちはだかって吠えた。
「あんた、そこまで言ってただで帰れると思ってないでしょうね!!
本当にあんた達ってムカツクよ…
いっつも…いっつも…目障りなんだよ…」
「もう…そっちこそいい加減にしてくださいよっ!!
あたし達が何をしたって言うんですか!?
そこまで言われなきゃならない理由は、なんなんですかっ!?」
「理由…!?
理由なんかどうでもいいのよ!!
ムカツクもんは、ムカツクのよっ!!」
石黒彩のこの発言は、あたしを落胆させると同時にさらなる怒りを引き起こした。
理由もないのに、あんな扱いを受けるのは納得出来ない!!
「何よ…それ…
そんなことで…あんな扱い受けて納得出来るわけないじゃないっ!!
ふざけるのもいい加減にしなさいよっ!!」
- 7 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時02分13秒
- 「そうやって躍起になってんのがムカツクんだよっ!!
どんくさいくせに必死になったり、オドオドしてるくせに刃向かってきたり、
ヘラヘラしてるくせに陰では目の色変えてたり…
脳天気に『努力!努力!』なんて言ってんじゃないよ!!
努力してれば、なんでも実現出来るって思ったら大間違いなんだよっ!!
決められた運命を変えようなんて思い上がりなんだよっ!!」
「何を言ってるのよ!!
そんなわけないじゃないっ!!
努力したって…結局手に入らないものだってある…
そんなこと分かってるわよっ!!
でも…何もしなかったら絶対に手に入らない…
だから、努力するのよ…
手に入れたい明るい未来があるから、努力し続けるんじゃないのっ!!
そのために、どんなことがあっても我慢してきたんじゃないのっ!!
いつか…あんたにも認めてもらえるからって…
あんたに…
あんたにっ…
あたし達が、今までどんな想いで練習してきたかなんて分かんないわよっ!!」
言い終わって、鼻をすすった。
知らない間に涙が溢れてきていた。
あたしっていつもこうなのよね…感情が抑え切れなくなると、すぐ涙が出てくる…
- 8 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時03分03秒
- 「何、泣いてんのよ…バッカじゃないの!?」
なんなのよ…この女は…?
あたしが自分の想いを全部ぶつけてるのに、それだけで済ませようって言うの…
人をバカにするにも程がある…
絶対に…逃がさないわよ…
「逃げてるんですか…都合が悪いから…?
意外と…意気地がない人間なのね…石黒彩って…
言っておくけど、紗耶香はあんたが思ってるような弱い娘じゃないから…
あんたなんかより紗耶香の方がずっと勇気があるからっ!!」
「黙んなさいよっ!!」
パシーンと乾いた音が部屋に響き渡った。
右の頬がジワーッと熱くなった。
「あんたにあたしの何が分かるっての!!
黙んなさいよっ!!」
「分かるわけないじゃないっ!!
そうやって、ただ怒鳴ってるだけで…逃げてるじゃないのっ!!
何よ…ムカツク、ムカツクって…
そうやって逃げてるあんたの方がよっぽどムカツクわよっ!!」
- 9 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時03分34秒
- 「黙れって言ったでしょ!!」
部屋の中に、先程より一際大きな音が響き渡った。
今度は左手で左の頬を思いっきり叩かれた。
はっきり言って、ものすごく痛い…
そして怖い…
感情の昂りも手伝って、後から後から大粒の涙がこぼれてきた。
でも…この場は絶対に退けない…
退いちゃいけないんだ!!
「暴力を振るえば大人しくなると思ったら大間違いよっ!!
あんた最低よっ!!
大事な利き腕で人を殴るなんて…
あんたなんてプロ失格よっ!!
あんたみたいに逃げてばかりの負け犬には、絶対に屈しないから!!」
時折、鼻をすすりながらではあるが、視線を逸らすことなくそう言い切った。
くしゃくしゃの泣き顔だけど、絶対に逸らさない。
どれだけ殴られても、どれだけ罵られても…絶対に屈しない…
最初で最後のチャンスかもしれない…
『保田圭』を知ってもらい、『石黒彩』を知るための…
- 10 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時04分13秒
- 「誰が…負け犬よ…
あんた…本当にいい加減にしなさいよ…」
「どんなにすごんだって怖くないわよっ!!
あんたがすごんだり暴力を振るうのは、逃げてる証拠だから…
まともに話し合うこと出来ないんでしょ!?
そんなの負け犬じゃないの!!」
石黒彩の動きが完全に止まった。
紅潮しきった顔をこちらに向けたまま、その場に立ち尽くした。
「立場…逆転ね…」
あたしは手で1回涙を拭うと、石黒彩を睨みつけて言った。
「こんな状態になるなんて、思ってもみなかったでしょ…
でも…こうなった…
あたし…あんたのこと絶対に変えてみせるわよ…」
今、石黒彩はあたしの思わぬ抵抗に完全に動揺している…
お互いの溝を埋めるチャンスを引き寄せた…
そう思った…
「無理よ…あんた変えられなかったじゃない…」
- 11 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時04分43秒
- 冷めた表情…石黒彩が久しぶりに口を開いた。
「ずいぶん偉そうなこと言ってくれたじゃない…
ふざけないでよ…
変えられなかったじゃない…
あんた…あたしのこと変えられなかったじゃないの…」
何故だか圧倒された…
いつもの鋭い視線ではない…
冷めた表情で、淡々と話をしているだけ…
言ってることの意味もよく分からない…
でも…何故だか圧倒された…
「何を言ってるの…?」
「あんたは、あたしの運命を変えられなかったって言ってるのよ…」
「どういうこと…?」
石黒彩は、あたしが背もたれていたベッドの向かいのベッドに腰掛けると、
ゆっくり話を始めた。
「あたしには負け運があるのよ…」
- 12 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時05分31秒
- 「実家にさ…面白いもんがあるのよ…
たくさんの賞状…
本当に笑っちゃうわよ…
全部さ…
2番なの…
ずら〜っと全部2番なの…
甲子園もあと一歩のところで逃した…
プロに入ったらドラフト2位…
どう…笑えるでしょ…?」
そう言って石黒彩は、鼻で笑う仕種をみせた。
「あたしはね…
1番になったことがないのよ…
ここぞという時には、絶対に勝てない…
どんなに汗を流しても…
どんなに涙を流しても…
報われたことなんてなかった…
だから…
いつしか、努力なんて信じられなくなった…
人間の運命はすでに決定づけられている…
『努力!努力!』じゃ変えられない…」
- 13 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時06分11秒
- 「努力すれば報われるなんて嘘っぱちよ…
その人には、潜在能力があったのよ…
努力さえすれば報われる運命だったのよ…
そして…
努力しても報われない人間ってのは…
能力がないのよ…
そういう運命なのよ…
あたしはそう悟った…
でもね…
往生際が悪かったのよ、あたしは…
まだどこかで期待してた…
今までのは、ほんのちょっと間が悪かっただけ…
自分は、スロースターターなんだって…
強く心の中で思うようにしてきた…
自分が、努力しても報われない能力のない人間だなんて…
認めたくなかった…
プロに入って1番になることで、証明したかった…
あたしは負け犬じゃないって…」
- 14 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時06分42秒
- 「でも…結局は、自分の逃げられない運命を痛感するだけだった…
みっちゃんの故障で、手に入ったと思った開幕投手の座…
まさか…なっちが手にするなんて、思ってもみなかった…
そりゃ北海道は広いけどさ…
『安倍なつみ』なんて名前…聞いたことなかったわよ…
それが、今やチームのエース…
その座を争っているのは、あのダジャレ中国人…
エース争いに名乗りを上げることも出来やしない…
1勝…10敗…
10敗だってさ…
二桁負けるピッチャーなんて…
プロじゃないわよ…
あたしにとって今日の登板は最後のカケだった…
どうしても勝ちたかった…
あんたにリードを任せることで、意地もプライドも捨てた…
でも…勝てなかった…
最後の最後で、またツキに見放された…
あんたなんかアテにしたあたしがバカだったんだけどさ…
あれだけチームの調子が良かったのに、あたし1人だけがまた勝てなかったのよ…
もう…
諦めたわよ…
あたしは努力をしても報われない能力のない人間…
はっきり理解出来た…」
- 15 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時07分26秒
- パチ…パチ…パチ…
急に石黒彩は、目の前で力ない拍手をしてみせた。
「よかったわね…
あんたがさっき言った通り形勢逆転じゃん…
あんた達の勝ち…
悔しいけど、あんたも矢口も実力が付いてきたわよ…
市井もすっかり明るくなってきたじゃないの…
でもね…勘違いするんじゃないわよ…
それは、あんた達が努力を続けてきたからだけじゃない…
もともと潜在能力があった…
努力すれば報われる運命だった…
そして、あたしはどう頑張っても負ける運命だった。
ただ、それだけのことよ…
あたしは、自分のことを負け犬だとは思わない…
確かに負け続けてはいるけれど、負け犬じゃない…
最大限の努力はした…
最後まで逃げないで投げ抜いた…
だから…」
「黙り…なさいよ…」
尚も話を続けようとする石黒彩を制するようにあたしは言った。
- 16 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時08分24秒
- 「黙んなさいよ!!
大人しく聞いてれば、何を言ってるの!?
ふざけんじゃないわよ!!
2番の賞状が並んでて何がおかしいのよ!?
あたしなんか賞状なんてもらったことないわよ!!
甲子園に出れなかったら、そんなにヘコまなきゃいけないの!?
あたしなんか高校中退してハンバーガー売ってたわよ!!
ドラフト2位の何が不満なのよ!?
あたしなんて12位で、もちろん契約金もなかったわよ!!
それだけ恵まれてて何が不満なのよ!?
何が負ける運命よ!!
あんたがそんなんで負けたなんて言ってたら、あたしの人生は何なのよっ!!
バカにするにも程があるわよっ!!
それに、何を言い訳なんかしてるのよっ!!
情けないと思わないのっ!?」
もう我慢が出来なかった。
何を話し出すかと思えば、結局は逃げ口上…
そんなのもう聞きたくなかった。
- 17 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時09分28秒
- 「ぶっちゃけた話…
あたし…あんたが負けるのは、ちゃんと理由があると思う!!
今日の試合で言えば9回裏…
同点にしてもらった直後、絶対に先頭バッターを出しちゃいけない場面で、
先頭の緒方さんを、簡単にフォアボールで出塁させたわよね…
疲れもあったと思うわよ…プレッシャーも…
でも…そんな逆境に打ち勝つ力が勝利を呼ぶんじゃないの?
運命のせいなんかじゃない!!
あんたは、負けるべくして負けた!!
今までもきっとそうなのよ!!
努力をし尽くしたような言い方だったけど、まだ努力の余地があるんじゃないの…?
いい加減、自分が負けるのを他人のせいや運命のせいにして逃げるのは止めなさいよ!!
上辺だけ強がってみせてないで、本当に強い人間になったらどうなの!?
1番になることだけが強い人間だって証明にはならないわよ!!
プライドばっかり高くて、自分の殻に閉じこもってるからそうなるんじゃないの!?
意地だとか、プライドだとか、体裁だとか…
そんな下らないもの大事にしてるから、いつまでたっても変われないのよ!!
ちょっとは、明日香を見習いなさいよ!!
何事にも囚われることなく、マイペースに自分の信じた道を歩いてるじゃないの!!
明日香を見て恥ずかしいと思わないの!?」
- 18 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時10分10秒
- 「うるさいわね…
だから…あんた達は目障りだってのよ…
明日香のことだって…
イライラ…イライラ…するのよ…
分かってるのよっ!!
そんなことはっ!!
もう…消えなさいよ…
これ以上…あんたと話し合うことなんてない…」
黙ってあたしの話を聞いていた石黒彩が、苦し紛れといった感じでそう言った。
そして目を閉じると、ベッドに仰向けのまま倒れこんだ。
完全に戦意を喪失した様子だった。
確かに、今日は様子がおかしかった。
でも…まさかこんなに抵抗することもなく、弱い姿をさらけ出すとは思わなかった。
勢い余って、ちょっと言い過ぎたのかもしれない…だいぶ興奮してたし…
急ぐことはなかったのかも…
もっと言葉を選ぶべきだったのかも…
一方的に他人に干渉して、傷付けただけかもしれない…
あたしって…こんなふうに後から後悔することって多いのよね。
だから…紗耶香が、あんなふうになる気持ちも分からないではないのよね…
- 19 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時11分01秒
- 結局…お互いの溝は埋まらなかった。
でも、石黒彩の本質に少しだけ触れられたような気もする。
溝は逆に深まったのかもしれないけど、
いつの日か、溝を埋めるためのきっかけになるかもしれない。
あるいは、石黒彩が思い直してくれるきっかけになるかも…
なんて気休めかなぁ…?
確かに、人間って簡単に変われるもんじゃないからなぁ…
この人、頭カチカチみたいだし…
「あの…今更なんですけど…
いろいろ失礼なこと言ってすいませんでした…
でも…石黒さんらしくないって思ったんで…
あたしが、こんなこと言うのも変かもしれないですけど…
強くてかっこいい女でいてください…
それと、よかったらみんなで1番になりませんか…?」
ひょっとしたらと思って聞いてみたんだけど…
「今更…どの面下げて言ってんのよ…
バッカじゃ…ないの…」
ダメだこりゃ…
あたしは、深いため息を1つ残すと部屋を退出した。
- 20 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時12分35秒
- 「彩っぺ…大丈夫か?
おみやげ勝ってきたで、広島焼…
一緒に食べへんか…?」
彩っぺが、1人にしてほしいと言うので、
なっちとみっちゃんと一緒に外出していたのだが、彩っぺはベッドに臥せったままやった。
「何や…?
まだ泣いてるんか…?
ええ加減にしい…」
どうやら彩っぺは、あれからずっと泣き続けていたらしい。
顔を埋めた枕の下から微かに嗚咽が聞こえる。
「しょうがないやろ…
勝負事なんやから…負けることやってある…
次回、まとめてリベンジしてやったらええねん…
彩っぺらしくないで…
な…この次、勝とう…
焦ることなんてない…」
そう言って、泣き続ける彩っぺを引き起こした。
「良かったら…相談に乗るよ…」
- 21 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時13分30秒
- 案の定、泣いていた彩っぺやったけど、
あたしの顔を見ると、さらに取り乱した様子で泣き始めた。
時々しゃくりあげながら、顔をくしゃくしゃにして大粒の涙を流す彩っぺ…
普段の堂々とした姿からは、到底想像出来る姿ではない。
そんな彩っぺを、そっと抱き寄せて頭を撫でる。
「何や…人の顔見るなり、そんな泣かんでもええやろ…
どうしたんや…彩っぺ…?」
彩っぺは、嗚咽をあげながらも精一杯に言葉を紡ぎ出す。
「裕ちゃん…あたし…何がなんだか分からなくなっちゃった…
もう…分かんないよ…
どうしたらいいのか…
あの娘達を…見てると…自分が情けなくって…
ねぇ…どうしたらいい…
どうしたら…いいと思う…裕ちゃん…?」
人間、誰だって弱い部分はある。
『あれだけ強がってたクセに』なんて思わへん…
むしろ、ありがとうな…
ようやく見せてくれたな…
あれから、ずっと気になってたんやで…
今日は…とことん相談に乗るよ、彩っぺ…
- 22 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時14分51秒
-
- 23 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時15分22秒
- 翌日は、移動日だった…
石黒彩の様子は、いたって普通に見えた。
いや…見せていたんだろうと思う。
ちょっぴりガッカリする面もあったんだけど、正直ホッとした。
昨日の力無い姿が、気になっていたからだ。
この日、石黒彩があたし達にコンタクトを取ってくることはなかった。
でも…
広島遠征から戻ってきた翌日は、本拠地で阪神3連戦。
その日…あたし達3人は、石黒彩に呼び出しを受けた。
練習前、ロッカールームに早めに来るように伝言があった。
「いったい…何だと思う、圭ちゃん?」
「分からない…
ひょっとしたら、広島遠征のあの夜の報復かもね…
もし…そうだったら2人ともゴメンね…」
「あの日はビックリしたよー
いきなり顔を腫らした圭ちゃんが部屋に入って来るんだもん…」
そんなやりとりを2人としている時に、ガチャリとドアが開いて石黒彩が入ってきた。
- 24 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時16分07秒
- 「なんて呼んだらいいのよ?」
ロッカールームに姿を見せた石黒彩は、椅子に腰掛け3人の顔を見回すと突然そう言った。
たちまち頭上に浮かび上がったハテナマーク。
「あの…どういう事ですか…?」
矢口が恐る恐る尋ねる。
「何をビクビクしてるのよ。
あんた達のこと、なんて呼んだらいいのかって事よ。
ホラ、そっちから言いなさいよ」
石黒彩は何気ない様子でそう言うと、左端の紗耶香を指差した。
再び、頭上に浮かび上がったハテナマーク。
3人でお互いの顔を見合わせた。
「これからよろしくやっていこうってんだから、フレンドリーな呼び方のほうがいいでしょ。
さぁ、市井から順番に答えなさいよ」
思いも寄らない石黒彩の言葉…
これは夢だろうか…?
- 25 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時16分53秒
- 「あの…じゃあ『紗耶香』でっ!!」
「えーっ!?…うーん…じゃあ『真里っぺ』で…アハッ…アハハハハハ…」
紗耶香はちょっと嬉しそうに…
矢口は『いいのかなー?大丈夫なのかなー?』って感じで石黒彩の問いに答えていた。
あたしはどうしよう…
別に『保田』でも構わないのよね…
構わないけど…
「えっと…『圭ちゃん』で…」
石黒彩が、あたしの瞳をジッと見つめる。
「一応…この2人には、そう呼ばれてるから…」
「そう…ならそれでいいわよ…
『紗耶香』、『真里っぺ』、『圭ちゃん』ね…」
石黒彩は、淡々と話を進めていく。
嬉しそうな紗耶香とは対照的に、矢口はどこか浮かない表情。
たぶん、あたしも同じような表情をしているだろう。
妙な緊張感が、その場にはあった。
- 26 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時17分45秒
- 急に、石黒彩が椅子から立ち上がった。
「さて、それじゃこれからよろしくね。
あたしのことは『彩っぺ』でいいから…
じゃあ、紗耶香…
ランニングに行くから、あんた付き合いなさいよ」
「はいっ!!彩っぺ!!」
着替えの終わった石黒彩と紗耶香が、ロッカールームを出ていった。
「ねぇ、圭ちゃん…どう思う?
何か企んでるのかな?
散々、言い争いになったんでしょ?
普通の神経だったら、考えられないよね?」
「う〜ん…
取りあえず話は平行線だったし、そんな簡単に人間って変われないと思うけど…
あの人なら考えられなくもないような…
そんな気も…ちょっとだけ…」
あたし達2人は、突然の石黒彩の奇行に正直なところ戸惑っていた。
- 27 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時18分26秒
- 「紗耶香は大丈夫かなー?
ノコノコ付いて行っちゃったけど…
早速、『彩っぺ』って呼んでたし…矢口は心配だよー」
「あの娘、簡単に信用してたのよね…
じっくり話をしてみると、大人びて冷めた感じがあったし、
自分でもそう言ってたんだけど、ああいう素直で可愛らしいところもあるのよね…
やっぱり…相当嬉しかったんだろうね…
紗耶香のためにも、本当であってほしいけどね…」
「あのまま石黒彩にくっついてたら、悪い影響がありそうで心配じゃない?
ねー、どうする?
石黒彩みたいに豪快に笑いながら登場するようなキャラになっちゃったら…」
「ちょっと想像したくないわね…
でも…考え過ぎじゃないの?
あたしは荒療治かもしれないけど、案外いい影響があるような気がするけど…」
「そうかなー?
話は変わるんだけどさー
圭ちゃんは、あの中澤裕子も変わる可能性があると思う?」
- 28 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時19分08秒
- 「あたしは、中澤裕子は最近いい感じになってきてる気がしてたけどな…
ほんの少しだけど…
だから…あたし的には、石黒彩の問題さえクリア出来ればOKだったんだけど…
レギュラーになったらバッテリーを組むことになるしね…」
「本当にー!?
矢口は、石黒彩は我慢が出来るけど中澤裕子は勘弁って感じだけどなー
石黒彩は喜怒哀楽がはっきりしてて人間味があるけど、
中澤裕子は、なんか人間味を感じないんだもん…
説教の時とかさー」
「そんなことないと思うけどな〜
でも、分からないじゃない。
もしかしたら変わるかも…
『真里が側にいないと裕子死んじゃうっ!!』とか言うようになるかもしれないじゃない。
それで矢口もさ〜
『裕子が側にいないと真里死んじゃうっ!!』とか言っちゃってさ〜」
「うわっ、キショッ!!
ちょっとやめてよー圭ちゃん!!
そんなことあるわけないじゃん!!」
ちょっと悪乗りし過ぎたかな?
おかげで矢口からキツイ悪乗りの返礼を受けることになった。
- 29 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時20分34秒
- 「もーっ!!
そんな気持ち悪いこと言うならさー
矢口だって言っちゃうからねー!!
『彩っぺがいなくなったら圭泣いちゃうっ!!』とか言って抱き着いたりしてさー
圭ちゃん、ボロボロ泣いちゃってさー」
矢口はニヤニヤ笑いながら、そんな想像するのもおぞましいシーンを演出してきた。
「ちょっと、やめなさいよ〜!!」
「フン、圭ちゃんが先に変なこと言うから悪いんじゃん」
そんな下らない言い争いをしてると、ロッカールームのドアが開いた。
「何や…楽しそうやな…」
「「お…おはようございます…中澤さん…」」
思いも寄らない中澤裕子の登場…
慌てて2人であいさつをした。
- 30 名前:回想くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時21分14秒
- 「ん…おはよう…今日も頑張ろうな…」
いつもと同じ台詞…
でも…
今日は、なんか柔らかい印象を受けた。
特に最初の台詞なんか、いつもはもう少しイヤミに聞こえるのに…
もう、言われただけで恐縮しちゃうような…
でも…ちょっと違った。
矢口は、どう感じたか分からないけれど、あたしはそう感じた。
石黒彩の急激な変化…
中澤裕子の微妙な変化…
本当だったらいいな…
みんなで力を合わせて優勝を目指せたらいいな…
そのために…
もっともっと頑張ろう…
明るい未来を目指して…
- 31 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時22分03秒
- 「よっしゃ〜っ!!」
5番の吉澤がバットを高々と放り投げた。
吉澤らしく角度のある打球が、レフトスタンド最上段にゆっくりと吸い込まれていった。
一塁にヒットのカオリを置いて、今シーズン第1号ホームラン。
8回の裏、2点を追加して10対1となった。
9回の表を抑えれば、開幕2連勝が決まる。
このまま普通に彩っぺが投げてくれれば、全然問題はないだろう。
ただ勝つだけなら…
しかし、あたしにとってはそれだけじゃないのよね…
「だはははははっ!!市井紗耶香参上っ!!」
こっちは、真剣に考え事をしてるってのに…
頭が痛くなってきた…
「ちょっと、無視しないでよ圭ちゃん。
せっかく来てやったってのにさぁ…」
誰が呼んだってのよ…
誰も呼んじゃいないわよ!!
- 32 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時22分56秒
- 「あんた何でこんなところにいるのよ…?」
「ブルペンが暇でさ〜
ルルのダジャレ大会も始まっちゃったし…
プププ…可哀想にりんねちゃん…」
「確かに今日は大勝してるけどさ…
何があるか分からないじゃないの…
ブルペンに戻りなさいよ!!」
「そりゃ、そうだけどさぁ…
彩っぺが投げてるんだよ。
決めるときは、きっちり決める人だから大丈夫でしょ…
圭ちゃんがリードしてるんだし…
なんかさぁ〜暗いよ圭ちゃん。
吉澤の出迎えもしないで、何やら考えこんじゃって…」
「吉澤の出迎えもしないで、何やら考えこんでるんだったらあの2人も一緒じゃない!!
あたしに構わないで、あの2人のところへ行きなさいよ!!
あたしは真剣に考え事してて忙しいんだから!!」
そう言ってあたしは、ダッグアウトの奧でボーッと座っているカオリと村田を指差した。
- 33 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時23分42秒
- 「いや…
あの2人のは、圭ちゃんのとちょっと意味合いが違うからさ…
かなり入り込んじゃってるみたいだから、たぶん相手にしてもらえないし…
相手をする自信もないし…
どったの?
ムキになっちゃって?」
「市井ちゃ〜んっ!!」
吉澤を出迎え終わった後藤が、紗耶香に飛びついてきた。
その勢いはすさまじく、ベンチがひっくり返るんじゃないかってぐらいだった。
「バカっ!!何やってんだよ後藤っ!!
危ないだろっ!!
怪我したらどうすんだよっ!!」
「アハハッ、ゴメ〜ン市井ちゃん。
それよりさ〜
今日は後藤、猛打賞なんだよ〜」
この娘は、本当に反省してるのかしら?
2人とも怪我したらチームがどうなるか、ちょっとは考えなさいよ!!
- 34 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時24分26秒
- 「後藤は、チームの主軸なんだから、今日の展開じゃそれぐらい当然っ!!
あっ!!そう言えば圭ちゃんも猛打賞じゃん。
圭ちゃんの場合は、滅多にないことだから誉めておこう」
ぷ〜っと頬を膨らませる後藤を尻目に、あたしに向かってパチパチと拍手をする紗耶香。
あんた、バカにするのもいい加減にしなさいよ!!
「圭ちゃんばっかりズルイよ〜
同じ猛打賞なのに…」
頬を膨らませてた後藤が抗議する。
「同じ猛打賞でも価値が違うの!!
圭ちゃんは、自分の仕事をきっちりこなして猛打賞。
後藤は、猛打賞でも全力プレーを怠ってんじゃん」
「そんなことないよ〜
全力プレーしてるよ〜」
「あたしの目は、ごまかせないよ後藤…
後藤なら捕れる打球だったのに、ちゃんと追わないで簡単にヒットにした打球があった」
厳しい視線を向ける紗耶香に対して何かを感じたのか、後藤は視線を少し逸らした。
- 35 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時25分03秒
- やや間を置いて、後藤が口を開く。
「ひょっとして…6回表の石井さんのフェンス直撃のツーベースのこと〜?
あれは…無理だよ〜」
「無理じゃないっ!!
後藤ならフェンス際で追い付く!!
少なくても村っちゃんなら追ってるぞ!!
それなのに、打球が飛んだ瞬間に諦めてクッションボールを狙いにいったろ!?
挑戦する気持ちがないんだよっ!!」
意外と細かいところをチェックしてるのね〜
もちろん紗耶香の気持ちも分かるけど、後藤の判断も決してまちがいとは言い切れない。
追い付くかどうか微妙なところだし、結果はセーフでもクロスプレーになったからね。
でも、後藤があのプレーを迷わず挙げたってことは、本人に思い当たる節があるのよね。
昨日も思ったけど、最近の紗耶香は後藤に厳しいような気がする…
前みたいにベタベタするのではなく、努めて距離を置こうとしているように見える。
紗耶香なりにいろいろ考えがあるんだろうけど、
話が急過ぎて、バランスを取ってあげないと後藤も可哀想な気がする…
今も必死に反論はしているけれど、パワーがないのよね。
動揺してるんだよねきっと…
突然の紗耶香の変化に…
- 36 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時25分39秒
- 「ねぇ、紗耶香…ちょっと厳しいんじゃないの?
プレー的には、そんな問題はないと思うわよ」
「圭ちゃんが、そんな甘いこと言うとは思わなかったよ…
そりゃ、並の外野手ならあれでもいいさ…
でも、後藤のポテンシャルを考えたらあれは怠慢プレーだよ!!
例えば、圭ちゃんが後藤と同じ能力を持った外野手だったとしたらどうさ?
圭ちゃんなら絶対に必死で追うよね!?」
そりゃ追うけどさ…
あたしが、今言いたいのはそういうことじゃないのよね…
「いいよ…もう…後藤が悪いんだから…
ゴメンね、市井ちゃん…気をつけるよ」
言葉の内容とは裏腹に、ぶすっと不機嫌そうな顔であたし達の前から立ち去る後藤。
それを無言で見送る紗耶香。
「紗耶香の考えは分かるけど、急にあれじゃ後藤も戸惑うわよ」
「あたしも急ぎたくないけどさ…あの甘ったれは、あのぐらい言わないと分からないよ。
昨日、ああいうこと言ったって全然分かってないんだから…」
そう言って、紗耶香は深くため息をついた。
- 37 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時26分16秒
- 「矢口ぃ〜っ!!好っきやで〜!!」
「ふぎゃっ!!ちょっと離してよ、裕ちゃーん!!」
凡打してダッグアウトに戻ってくるなり、裕ちゃんが抱き着いてきた。
「離しまへん!!離しまへんで〜!!
裕ちゃん、矢口が側におらへんかったら寂しくて死にそうやねん!!」
分かったから離してよー
なんかキャラがちょっとおかしいよ、裕ちゃん…何さ?『離しまへん』って…
昨日ちょっと冷たくしたら、今日はアプローチが強烈なんだもん…
「ちょっと裕ちゃん…真面目な話があるんだけど…」
いいタイミングで、小湊さんが助け舟を出してくれた。
その言葉に、裕ちゃんは渋々あたしの体から手を離した。
「ちょっと待っとってな、矢口…すぐ戻ってくるから…」
裕ちゃんは、そう言うとベンチから重い腰を上げた。
その時の優しい目が、柔らかい表情が、あたしの体をその場に縛りつける。
うん…待ってるよ、裕ちゃん…
- 38 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時26分56秒
- 「お楽しみのところゴメンね、裕ちゃん」
そう思ったら呼ぶなっちゅうんや!!
なんて…ちょっと思ったりもするのだが、締める時はきちっと締めなアカン!!
「大事な話ってなんや、小湊?」
「明日の先発どうするのかなと思って…もう決めてるの?」
なるほど…そのことかいな…
「もう決めた!!明日のお楽しみや!!」
そう言って胸を張るあたしに、一瞬だけ小湊が目を丸くした。
こいつのこんな表情は滅多に見れるもんやない。
ちょっと得した気分…いや、何かに勝ったような気分や。
「自信あるみたいだね…
まぁ、巨人戦を前にして何とか2つ勝てそうだし、いい状態でぶつかれそうだからね」
「いや…1つだけ頭の痛い問題があるんやな…ちょっとお灸を据えないとアカン」
そう言ってバッターボックスに目を向けると、小湊は納得したように頷いた。
- 39 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時27分28秒
- 「あれ、ごっちんどうしたの?」
「ん〜別に〜」
市井ちゃんのところから逃げてきたあたしに、よっすぃ〜が声をかけてきた。
「別にって、何かあったような顔してるよ…
さっき、あたしのホームランを出迎えてくれた時と全然顔が違うもん」
よっすぃ〜が、隣に座ったあたしの顔を心配そうに覗きこむ。
自分では、怠慢プレーだなんて思っていない。
一生懸命プレーしてる。
あの場面では、あれが最良のプレーなんだ…
手を抜いてるように見えるのかもしれないけど、そんなことない…
市井ちゃんまで、そんなこと言うなんてガッカリだよ…
何さ…急におかしくなっちゃって…
納得がいかなくてイライラが募る。
きっとそういうのが表情に出てるんだろう。
でも、たぶんそれだけじゃない。
自分の中の焦りや迷い…
市井ちゃん…そんなにあたしを追い詰めないでよ…
- 40 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時28分04秒
- 「ねぇ、よっすぃ〜
6回表にさ〜、石井さんにフェンス直撃のツーベース打たれたの覚えてる?」
「んぁっ!?あ〜、あれね〜覚えてるよ…」
「もしさ〜、よっすぃ〜がセンター守ってたらどうしてた〜?」
「そうだな〜、たぶんごっちんと同じだな〜
村田さんやごっちんぐらいの足があれば追うかもしれないけど、
あたしの肩ならセカンドタッチアウトを狙った方がいいかな〜って…」
「よっすぃ〜の…肩なら…ね…
そうね〜、そうだよね〜」
「どうしたの…突然…?」
「市井ちゃんに怒られちゃってさ〜、手を抜いてるって…」
「え〜!!そんなことないよね〜、そう見えるだけでごっちん一生懸命やってるよね?」
「市井ちゃんは…後藤のことそういう目で見ないよ…それは分かってるんだけどさ〜
まぁ、いいや…ゴメンね、よっすぃ〜変なこと聞いちゃって…」
目を白黒させるよっすぃ〜を尻目に、あたしは深くため息をついた。
- 41 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時29分03秒
- 「あの人、何かあたしに恨みでもあるのかしら?
ねぇ…圭ちゃん」
打球の消えたライトスタンドを見つめながら、彩っぺがぼやく。
「彩っぺ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」
9回の表、ワンアウトランナーなしの場面で、3番の小川さんにまた1発を浴びた。
2打席連続、今度はスクリューボールをライトスタンドへ叩き込まれた。
打たれたのは、本当に甘いボールだった。
いわゆるストライクを取るために、置きにいったボールというやつだ。
『繰り返さなきゃいいのよ…』とか言っといて繰り返してるじゃないの!!
ちょっと〜、せっかくのチャンスなんだから真面目に投げてよ!!
10対2だから、大勢に影響はない…
しかし…
「せっかく追い込んだってのに、何であんな甘いボール投げるのよ…
三振を取るチャンスだったのに…
ねぇ、彩っぺ…あと2人だけど慎重に投げてよ…
絶対に連続三振で終わろう!!」
- 42 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時29分45秒
- 「何で?
別にアウトになりゃ、何だっていいじゃないの…
何かあるわけ…?
そう言えば、途中からやけに三振を狙いにいくリードするようになったわね…」
出来れば教えたくなかった。
でも…不信感を持たれたまま投げさせるわけにもいかない…
「あのさ…今いくつ三振を取ってるか知ってる?」
「さぁ?そんなの数えてないから…」
「実は14個取ってるのよね…
それで…あと2個取ると…セ・リーグ記録に並ぶの…
1試合の奪三振数が…」
「そんなこと…別に関係ないじゃないの…」
思った通りの反応…だから教えたくなかったのよね…
「何で?一応、名前が残るのよ…
金田さんとか、江夏さんとか、そうそうたるメンバーの中に『石黒彩』って…」
彩っぺは、涼しい顔でマウンドを均している。
- 43 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時30分55秒
- 「話は変わるんだけどさ〜」
変えないでよっ!!
「辻は、どっか調子が悪いのかな?
昨日も今日もバットを1回も振らずに三振してるじゃない…
試合前は、元気そうだったのに…」
そう言って彩っぺは、この回の守備からベンチに下げられた辻に心配そうな視線を送る。
確かにちょっと心配なのよね…
って…ちょっと、彩っぺ!!
「ちょっと!!話を変えないでよ彩っぺ!!」
「圭ちゃん…あたしは、別に球史に名前を残そうとか、タイトルを取ろうだとか、
そういうことで野球をやってるわけじゃないのよね…
自分らしいピッチングをして、チームの勝利のために貢献出来ればいい…
そのために矢面に立って、泥をかぶる覚悟も出来てるのよね…」
- 44 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時31分44秒
- そんなこと知ってるわよ…
いつからか、そんな風にカッコイイこと言い出すようになっちゃって…
何よ!!
急に別人になっちゃって!!
何を考えてるか分からないわよ!!
周りの人間が戸惑うじゃないの!!
いいじゃないのチャンスだから狙えば!!
それじゃなきゃ…
あたしの気が済まないのよっ!!
でも…そんなこと彩っぺに言えるわけがなかった。
これは、あたしが一方的に抱えてる想いだから…
無言で彩っぺを見つめることしか出来なくなったあたしに、彩っぺが微笑みかけた。
「そんなに怖い顔で睨まないの…
そんな顔するから、みんなに『怖い』って言われるのよ…
狙うつもりはないけれど、結果的にそうなれば別に結構な話じゃないの…
圭ちゃんのリードに真っ向から逆らうつもりなんてないわよ…
ただ、記録とかにこだわり過ぎて、ポカをやらかす危険性を言いたかったのよ」
悔しいくらい正論なのよね…
人の気も知らないで…
- 45 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時32分22秒
- 思わずガックリと肩を落とした。
4番の鈴木尚典さんのバットコントロールはさすがだ。
外角のスクリューにしっかりバットを合わせてきた。
当たりは良かったが、サード矢口の真正面へのゴロ。
矢口は、このゴロを難なく裁いてファーストのカオリへ転送。
ツーアウトとなった。
あと1つアウトを取ればゲームセット。
開幕2連勝。
何も問題はないはずだ。
マウンドに駆け寄って彩っぺの労をねぎらい、みんなと握手する。
そしてダッグアウトへ…
裕ちゃんと握手して、ベンチ入りメンバー全員で勝利の喜びを分かち合う。
それだけで、チームとしては何も問題はないんだ。
でも…あたしにとってはそれだけではなかった。
今となってはもう手遅れだけど…
- 46 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時32分58秒
- 彩っぺとバッテリーを組むようになって気付いたことがあった。
彩っぺには、本当に負け運があるかもしれない…
彩っぺが投げた試合は、不可解な負け方をすることが多かった。
彩っぺが降板した途端、8点差をひっくり返されたり…
突然、予報にない大雨が降ってきて、降雨コールド負けしたり…
『おい!!そんな跳ね方するか!?』
っていうようなイレギュラーバウンドが決勝点に繋がったり…
数え上げればキリがない。
本人は、『あたしの努力が足りないせいよ』なんて笑って見せるんだけど…
ああいう負け方を実際に目の当たりにすると、あたしも内心穏やかじゃない。
力なくベッドに倒れこんだ彩っぺを目にした時に残ったしこりが、大きくなった。
あの時、あたしはただ自分の想いをぶつけることで頭の中が一杯だった。
彩っぺが抱えていた苦悩…流してきた汗や悔し涙…
そういうの全部無視して…自分の考えだけを一方的に押し付けて…
本当にあれでよかったんだろうか…?
焦らなければ、何か最善の方法があったんじゃないだろうか…?
あたしは彩っぺをただ傷つけて、どうしようもないところまで追い込んだのかも…?
その結果が今の彩っぺの姿かもしれない…
あたしは…彩っぺの人生を無理矢理に変えてしまったのかもしれない…
- 47 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時33分49秒
- ちょっとした罪悪感みたいなものを、あたしは密かにずっと抱えてきた。
そんなの考え過ぎだと自分でも思う。
でも…おおらかにマイペースに自分の世界を広げ続ける彩っぺを見てると、
『彩っぺは本当にそれでよかったの?』って気持ちが沸き上がってくるのよね…
あれだけ…1番になることにこだわっていたから…
ちょっとした罪ほろぼしのつもりだった。
思いがけずに巡ってきたチャンス。
彩っぺを1番にするための…
でも…結局ダメだった。
5番の中根さんを三振に取っても15奪三振。
彩っぺの自己記録を更新するだけだ。
また、モヤモヤを引き摺ることになっちゃったなぁ…
- 48 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時34分24秒
- カウントワンツーからのスクリューボールはワンバウンドになった。
5番の中根さんは、このボールを振りにいって空振り。
あたしは、ボールを後ろに逸らさないように必死でこのボールを止めた。
この時…
あたしの頭の中に禁断の思想が芽生えた。
それは、自分のポリシーを否定する行い。
野球人として…
人間として…
許されるだろうか…?
でも…
罪を犯してでも彩っぺを1番にしてあげたい気持ちはある…
そのぐらいしないと贖罪出来ない気もする…
あたしって…
本当にバカよね…
- 49 名前:実況くん 投稿日:2001年08月16日(木)15時35分29秒
- 『さぁ、9回の裏ツーアウトランナーなし。
マウンド上には背番号21番、左のエース石黒彩…
今日はここまで15奪三振…
あわや1試合最多奪三振のリーグ記録を更新するかという素晴らしいピッチングでした』
『今日の石黒選手は、本当に素晴らしかったですね。
小川選手に2発打たれはしましたが、完璧な内容だと言っていいと思います。
1試合最多奪三振のリーグ記録に関しては惜しかったですね』
『栗山さんから記録の話が出ましたが、リーグ記録は16個…
並べば94年の桑田以来8人目という記録でしたが、惜しかったですね落合さん?』
『この回マウンドに上がった時点では14個で、記録更新の可能性もありましたけどね…
まぁ、記録なんて狙うとロクなことはないですよ…』
『バッターボックスの5番中根へのカウントはツーエンドツー。
最後の1球になるか?
スクリューボール!!
空振りっ!!
あっと!?キャッチャー保田がボールを逸らした!!
中根は振り逃げだっ!!
ゲームセットかと思われましたが、保田がボールを逸らしました。
キャッチャー保田の珍しいパスボールで、思わぬランナーが一塁に生きました』
- 50 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時36分17秒
- 「ちょっと驚かせないでよ…
圭ちゃんがパスボールするなんて思ってないから、ビックリしたじゃないの…」
普段なら嬉しいこんな台詞も、今のあたしにはちょっと辛い…
自分を納得させたつもりだったが、今は胸にポッカリと大きな穴が開いたような気分だ。
全力プレーが信条のあたしが手を抜いた。
わざと後ろにボールを逸らした。
そう言えば…
紗耶香と後藤が全力プレー云々で揉めてたわね…
紗耶香は、今のプレーをどう思ったかな…?
みんなは、どう思ったかな…?
わざとやったなんて分かったら、みんなはどう思うかな…?
後悔の波が一気に押し寄せてきた。
変な汗が吹き出してきて、全身に鳥肌が立った。
大袈裟だって思われるかもしれないけど…
あたしにとっては、それだけ重要なことだったんだ…
今…改めて気が付いた…
- 51 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時36分54秒
- 「ちょっと!!どうしたのっ、圭ちゃん!!」
肩口の辺りをバシンと叩かれた。
かなり強く叩かれたので普段なら『痛ぇ〜っ!!』と叫ぶところだが、
体を震わせたまま、何の反応も出来なかった。
彩っぺは、そんな様子がおかしいと思ったのか、訝しそうにあたしを見つめた。
「ひょっとして…わざとパスボールしたの…?」
無言で頷くあたしを見て、彩っぺは呆れ顔になった。
「なるほど…
振り逃げ三振なら、もう1個三振を取るチャンスがあるってことか…
それで、わざとパスボールしてみたのはいいんだけど、
自分の信念を曲げてやっちゃったもんだから、ヘコんじゃったってところでしょ?
あっちゃんじゃあるまいし、下らないこと考えないの!!
いったい、何やってんのよ圭ちゃんは!?」
本当に…
あたしは何やってるんだろう…?
- 52 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時37分29秒
- 「さっきも言ったじゃない!!
記録だとかどうでもいいって!!
気持ちはありがたいんだけどさ〜
圭ちゃんが手を抜いて落ち込む姿を見てまで、記録達成しても嬉しくないのよね!!
何でそこまで記録にこだわるわけ!?
圭ちゃんらしくないじゃん!!」
「彩っぺは…本当にいいのかなって…」
「あぁん!?」
あたしがポツリと呟いた言葉に対して、彩っぺが眉をひそめた。
全くわけが分からないって感じだ。
「彩っぺ…急に今みたいに変わっちゃったよね…
本当に…それでよかったのかなって…
彩っぺが変わってくれたおかげで、周りの状況が変わってあたし達は本当に救われた。
でも…あの日…あたしが彩っぺを追い詰めたんじゃないかって…
彩っぺの人生を無理矢理に変えちゃったんじゃないかって…
だから…せめて1番になってほしいって…」
- 53 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時38分06秒
- 「バッカじゃないの!!
だから、圭ちゃんは暗いって言われるのよ!!
そんな堅く考えてどうするのよ!!
だいたい何で圭ちゃんに人生を変えてもらわなきゃいけないのよ!!
変わったのは、あたし自身の努力のおかげ!!
圭ちゃんは、そのきっかけをくれただけ!!
そんな思い上がった口を叩くのは、100万年早いわよ!!
下らないこと考えないの!!
圭ちゃんは、
『そこまでやらなくっても…』ってみんなが思うぐらいにムキになってればいいの!!」
彩っぺが吠える。
でも…その目は、あたしのことを心配してくれていて、
言葉は悪いけど、あたしのことを熱く励ましてくれていた。
「あのさ…
あたし、自分らしさを失ったとは思ってないから…
どう、あたしそんなに変わった?
石黒彩が、大事にしている部分は全然変わってないわよ!!
とびっきりかっこよくて、強い女になりたい!!
ただそれだけなのよ!!」
- 54 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時39分07秒
- 「あまりこういうことは照れくさくて言いたくなかったんだけどさ…
それで圭ちゃんの気持ちが楽になるんだったら、全然そんなのは問題じゃない。
圭ちゃん達には、心の底から感謝してる…
自分のまちがった世界観を見直すきっかけをくれた…
だから…気にしないでよ…」
真面目な顔でそう語った彩っぺ。
そう…
そう言われてみればそうだ…
彩っぺは彩っぺだ…
最初の頃こそ、ぎこちなくあたし達に接していたけれど、すぐに『らしく』なった。
とびっきりカッコよくて、強い女になるために彩っぺはいろいろ吸収していた。
そして…
彩っぺは、その答えを見つけられたのかもしれない…
だって、今の彩っぺは強くてかっこいいって思えるもの…
「じゃあ、最後の1人を片付けるとしましょうかね…
はいはい、テンポよく投げたいんだから戻った…戻った…
圭ちゃんらしいリードとキャッチングをヨロシクっ!!」
そう言って背を向けた背番号21は、とても頼もしく思えた。
- 55 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時40分02秒
あんまり好きじゃなかったのよね…
あの娘達のことは…
目障りで…目障りで…
何故かって…?
あの娘達が、歯を食いしばりながら必死になってるのを見ると、
自分が惨めに思えたからよ…
自分が目を背けていたものと、必死に戦っているあの娘達が妬ましかったのよ…
自分が弱い人間だってことは、あたし自身が一番分かっていた。
だから、強い人間になりたかった。
誰が見てもかっこいい人間になりたかった。
でも…あたしはどうしようもなく臆病だった。
弱いくせに強がって、自分の周りに高い壁を築いた。
出口のない憂鬱な毎日…
目指すものには手が届かない…
その中にいることは、かっこ悪いことだと分かっていたのに…
見せかけの心地よさに…
あたしは…
なんて…かっこ悪かったんだろう…
- 56 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時40分58秒
- あの娘達が、ぶ厚い壁にヒビを入れてくれた。
あたしが、その壁を打ち破りやすいように…
裕ちゃんは、煮え切らないあたしにずっと手を差し伸べ続けてくれた。
外の世界に導いてくれた…
外の世界はどこまでも広がっていて、あたしを魅了した。
眩し過ぎて、気恥ずかしさもあったけど…
あの娘達は、あたしを受け入れてくれた…
明るい未来が…
あたしにも見えてきた…
だから…
心の底から感謝してる…
みんなで一番になろうじゃないの…
あんた達の明るい未来に…
手を貸すよ…
この石黒彩が一肌脱ぐよ!!
- 57 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時41分39秒
- 打球が、三塁側ダッグアウト方向に飛んだ。
サードの矢口とショートの石川がこのボールを追う。
ダッグアウトに入りそうかなっていう打球…
ツーストライクまで追い込んでたし、無理して捕らなくてもいいって少しだけ思った。
次のボールで三振を取るチャンスが出てくるから…
彩っぺにああ言ってもらえて気は済んだんだけど、チャンスはやっぱりチャンスだから…
せっかくだから、やっぱり1番になって欲しかった。
だが、石川がボールを追った瞬間、イヤ〜な予感がした。
矢口は、危険を感じたのと打球を冷静に予測した結果、追うスピードを緩めたんだけど、
石川は、ダッグアウトも気にせず猛ダッシュでボールを追いかけた。
追って、追って、最後は足をもつれさせながらすごい勢いでダッグアウトに飛び込んだ。
しばらくして横浜の選手に助け起こされた石川。
掲げたグラブの中に白いものがチラッと見えた。
こういう時に限ってなんなのよ…
そのファインプレーは…
まぁ、石川らしいけどね…
打つ人がきちんと打って投げる人がしっかり投げて、あたし達は開幕2連勝をものにした。
- 58 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時42分21秒
- 「あれだけ言ったのに、まだヘコんでるの?
所詮、下らない小細工したってこうなるのよ…
そんな怖い顔しないの…
いいプレーしたのに、石川が可哀想じゃないの…」
「別に怖い顔なんてしてないわよ!!
石川に腹を立ててもいないし…
そんなわけないじゃない…
ちょっとヘコんでるのは、当たってるけど…
やっぱり…1番になれないんだね…
彩っぺは…」
「圭ちゃんもしつこいわね…
いいじゃないの…そんなことはどうだって…
下らないこと気にしてると、また暗いって言われるわよ…
明るぅいっ未来にぃ〜っ♪
ってね…
それにしても…さすが圭ちゃんの弟子だ。
圭ちゃんそっくりだもん…」
あたしと握手を交わしながら、彩っぺはニヤニヤ笑った。
「何よそれ…どこが似てるのよ…?」
- 59 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時43分23秒
- 「何言ってるの?
『そこまでやらなくっても…』っていうぐらいムキになるところがそっくりじゃないの。
今は圭ちゃんもちょっと大人になったけど、昔の圭ちゃんにそっくり。
なんかさ…昔のことをちょっと思い出すよ。
パスボールなんかもあったしさ…あの頃は、よくポロポロ逸らしてたわよね〜」
彩っぺは、そう言ってあの頃を懐かしむように遠い目をした。
なんかちょっと悔しいなぁ…
こっちは嫌な思い出だってあるのに、自分だけ勝手に思い出を美化しちゃってさ!!
なんか、半分人生を達観しちゃってるんだもんな…
どう努力したらあの人間が、この人間になるのかしら…?
「あの頃は『石黒さん』が怖くて怖くて…」
「何よ…イヤミな言い方するじゃないの『保田っ!!』…何か文句あるの?」
あたしの些細な口撃になど、彩っぺが怯むわけがない…
「あの時のあたしは若かったのよ!!」
そう言って彩っぺは、全く悪びれることなく豪快に笑った。
- 60 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時44分06秒
- 第4話 明るい未来に… 〜奪三振ショー〜 完
- 61 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時44分55秒
- 今回に関しては、お詫びをしないといけないと思います。
せっかく読者の皆さんに盛り上げてもらったにも関わらず、期待を裏切ってしまったようです。
本当に申し訳ないです。
そして、それにも関わらず読んでくださった方、ありがとうございました。
この小説を書く前にラストまでの流れは、ほぼ決めてました。
今回のエピソードはその中で第2話に当たり、最初から書こうと決めていたものでした。
(第1話〜第3話までは、安倍編として第1話の扱いでした。
長くなったので、急遽区切って吉澤編、市井編っぽくしてみたって感じですね)
今回の石黒編(保田編?)は、自分にとって1つの賭けでした。
自分の力量では、不安のある内容だったし…
あまり人気がないと思われるキャラを中心に話を進めなければいけないし…
イヤな雰囲気のシーンも出てくるし…
面白みのある場面をなかなか作れないし…(ギャグ不足にも悩みました)
- 62 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月16日(木)15時45分34秒
- でも…思い切って、自分の書きたいものを書かせていただきました。
思い描いたものを丁寧に書きたかったので…
(最初からsageで書くべきだったとは思うんですが…)
いきなりなっちが投げる巨人3戦目を書いたり、
市井をメインで書くという考えもあったんですけど…
自分の中でそれは逃げだっていうのがあったし、
今後も人気のあるキャラばっかりをメインに出来ないと思ったので…
読者の方々、それぞれがいろいろ違和感は感じたと思います。
その理由はさまざまでしょうが、
期待を裏切ったこと、不快な思いをさせたであろうことをお詫びいたします。
以上…お詫びと言い訳でした。
本当にかっこ悪いな…(w
- 63 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月16日(木)16時07分29秒
- いやー、待った甲斐があってすごく読み応えがありましたよ、今回は。
でも残念なのが700レス・・・。
100レスするなら後藤でお願いします。
- 64 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月17日(金)03時00分51秒
- いや〜、良かったですよ今回の話。
しばらく更新が無かったんでどうしたのかな〜と思っていたのですが一気に更新っすね!!
新しい板で心機一転頑張って下さい。
- 65 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月17日(金)21時15分37秒
- 楽しかったです。作者さんの思うように書いてください。
それが楽しみなんですから
- 66 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月18日(土)02時36分21秒
- 良かった。面白かったよ。
- 67 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月18日(土)09時07分49秒
- 面白かったです。
ところでみんなはパワプロやってるの?
ハロプロ球団作った?
http://ton.2ch.net/test/read.cgi?bbs=gameover&key=998091904&ls=50
- 68 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月19日(日)00時54分11秒
第5話 〜ドッキドキ!初登板〜
このドキドキは、なぜ止まらない?
プロのマウンドにも、慣れた。
フォークもコツをつかんだ。
ストレートのスピードも、だいぶ早くなったし…
バッターに、向かっていけるようになった。
それなのに…
このドキドキは、なぜ止まらない?
そして…
このドキドキは、なぜ気持ちいい?
今までにないこの感じ…
また…
味わいたくなった…
- 69 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月19日(日)00時55分23秒
- 横浜ベイスターズとの開幕カード第3戦…
スターティング・メンバーが、信田ヘッドコーチから発表されていた。
1番から順々にメンバーが発表されていく。
あたしは、後ろの方でその発表に耳を傾けていた。
しばらくして、小さなどよめきが起こった。
昨日までと変わらぬ名前が読み上げられる中で、ちょっとした変化があったからだ。
「7番 セカンド 柴田」
思いがけないところで名前を呼ばれた柴田さんは、一瞬返事が遅れた。
ビックリしてちょっと目を見開いた柴田さんが印象的だった。
そっかぁ〜、やっぱり厳しいんやなぁ〜
開幕から2試合しか経ってへんのに…
結果が出ないと…すぐに試合に出られへんようになるんやなぁ〜
スタメンを外された辻ちゃんは、今にも泣きそうな表情で俯いている。
…可哀想やなぁ〜
そんな辻ちゃんが気の毒で、なんだかやりきれない気持ちになった。
でも…
すぐに人の心配なんてしている場合ではなくなった。
- 70 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月19日(日)00時57分15秒
- さっきとは比べものにならない大きなどよめきが起こった。
ん!何なんやろ?
辻ちゃんのことに注意を払っていたから、どよめきの原因が分からなかった。
慌てて周りを見渡すとみんなの視線があたしに向けられていた。
えぇ〜っ!!いったい何なん!?
「松浦っ!!」
信田さんが、ちょっと強めの口調であたしの名前を呼んだ。
ちょっと不機嫌そうな様子…
なんか怒っているようにも見える。
やっばぁ〜い!!きっと、話を聞いてへんかったのを注意されたんやぁ〜っ!!
「ごめんなさぁ〜いっ!!これからは気をつけますっ!!」
そう頭を下げた途端、周囲で大爆笑が起こった。
訳が分からずキョロキョロ辺りを見回していると、隣にいたりんねさんが教えてくれた。
「まちーらが…先発だってさ…よかったね、おめでとう…」
先発っ!?
ええぇぇええ〜〜〜〜〜っつ!!!!!
- 71 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月19日(日)00時59分38秒
- 突然やってきた…
チャンス…!?
ピンチ…!?
開幕戦に投げた安倍さんも含めた10勝トリオは、巨人戦の先発が決まっている。
左のエースの石黒さんは、昨日投げた。
故障した左のダニエルさんの代わりのピッチャーが、第3戦に登板ということになるのだが、
この1つ残った先発の椅子については、まだ中澤さんからの発表がなかった。
だから、選手の間ではいろいろな憶測が流れていた。
一番有力視されていたのは、ランナーは出しても意外と打たれ強いあさみさん…
昨シーズン何度か谷間での先発をこなし、実績もある。
他には、チームNo.1の速球を持つレファさん…
スタミナとコントロールに難があるが、彼女も谷間での先発経験がある。
同じルーキーからは、クセのある球でバッターをかわし、マウンド度胸満点の末永さん…
あまり注目はされていなかったんだけど、オープン戦で結果を出し評価が高まっていた。
チーム事情から言えばありえないし、冗談半分だとは思うんだけど、
福田さんやりんねさんの名前も挙がった。
一応、あたしの名前も挙がったんだけど、ルーキーだし…
他の人に比べて経験も少ないし…
まさか…自分が投げることになるなんて…
この時から、あたしのドッキドキな1日が始まった。
- 72 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月19日(日)01時00分40秒
- ひえぇぇえ〜〜〜っ!!
顔が真っ青やぁ〜〜〜っ!!
化粧室の鏡に自分の顔を映してみたら、そこには能面みたいに張り付いたような顔…
意識的に笑おうとしてみるのだが、引きつってうまく笑顔がつくれない。
最悪だ…
心臓の鼓動も、ものすごく早くなっていて、なんだか落ち着かない。
それに、なんか胃がしめつけられるような感じで気持ち悪い…
さっきまでリラックスしていたというのに、
先発が決まったらどうしようもないくらい緊張してきた。
どうしたらええねん…?
「亜弥ちゃ〜ん!!ここにおった〜ん!?
保田さんがなぁ…探しとったでぇ〜!!
なんかなぁ…打ち合わせするって…」
賑やかな様子で化粧室に入ってきた加護ちゃんだったが、
振り返ったあたしの表情を見て言葉を詰まらせた。
そして…眉の下がった心配そうな表情で、あたしの顔を覗きこんできた。
「亜弥ちゃん、どうしたん?顔が青いよ…」
- 73 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月19日(日)01時01分41秒
- 言われるのも当たり前やなぁ…
「加護ちゃんっ!!もう、めっちゃくちゃ緊張してきてんねんっ!!
もう、どうしよ〜〜〜っ!!怖いよ〜っ!!」
全身を襲う緊張感に耐えきれず、加護ちゃんに抱き着いた。
加護ちゃんは『ほ〜っ!!』と叫び声をあげあがらも、
小さい体であたしを受け止めてくれた。
「大丈夫っ!!亜弥ちゃん、大丈夫やで…
加護も〜っ、最初はなぁ…もう、めっちゃドキドキやったわ!!
おとといも…めっちゃ緊張したし…
でもなぁ…怖いだけじゃないねんで…
ドキドキだけじゃなくてなぁ…なんていうかなぁ…ん〜?
楽しいこともあんねん…
だから、がんばって〜、亜弥ちゃん…
先発出来てうれしいんやろ…?」
嬉しいでぇ…
嬉しいねんけどぉ…
とにかく、めっちゃ緊張しておかしいねん…
このドキドキは…何で止まらへんのやろなぁ…
- 74 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月19日(日)01時02分53秒
- 「亜弥ちゃん!!亜弥ちゃん!!
手のひらに人って書いて3回飲むといいよ〜
飯田さんがなぁ…
教えてくれたんやで〜
それでもダメならなぁ…
よっすぃ〜か、後藤さんにおまじないしてもらったらええねん…
めっちゃ効果あんねんで〜」
とにかく加護ちゃんは、一生懸命だった…
必死に、あたしの緊張をほぐそうとしてくれていた。
ホンマめっちゃ嬉しいわぁ!!
さすがに、おまじないしてもらうってのは気が引けんねんけど…
人って書いて飲むのはやってみるわ…
少しでも、落ち着いた状態でマウンドに登れるように…
あたしの記念すべき初登板だから…
明るく元気に、自分らしいピッチングをしたい…
松浦亜弥っ!!
どうしようもなく緊張はしておりますがっ…
みんなの期待に応えられるように頑張るぞっ!!
- 75 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月19日(日)01時04分00秒
- >>63
レスありがとうございました。
『700レスの娘。!』の件についても、お詫びを言わないといけなかったですね…
最初からうやむやにするつもりはなかったのですが、事情が事情だったもので…
お申し込みいただいた方には、本当に申し訳ないとは思うのですが、
今回はなかったことにしていただけますでしょうか?
100レスについては、『う〜ん、どうしようか?』って感じですね…
>>64
更新出来なかったのは、遊びに行ってたからです。
だって…海と山がオイラを呼んでたんだもん!!
それと多少は、このままバックレようかなって気持ちもあったりしました。(w
(笑いごとじゃねえか…)
すんません…レスありがとうございました。
>>65
暖かいレスありがとうございます。
そうは言っていただいても、いろいろ気を遣っちゃうんですよね…
変なことを気にし過ぎるのかもしれないけど…
とにかくありがとうございました。
>>66
レスありがとうございます。
あまり更新中に評価は得られなかったけど、
自分では気に入っていたので、そう言っていただけて救われた気がします。
>>67
レスありがとうございます。
PSの2001を買ったのですが、
空いた時間はコレに費やしているのでほぼ手をつけてないです。
でも、この小説はPSの2000開幕版で作ったデータを元に書いてます。
- 76 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月19日(日)23時24分48秒
- 「泣いてたってダメだよ…
辻っ…
悔しかったら、もっと練習しなさい…」
そう厳しい言葉はかけながらも、優しく辻を抱き寄せるカオリ…
そんなカオリの胸に顔を埋める辻…
そんな見慣れた2人の光景をダッグアウトから見ていたら、圭ちゃんがやってきた。
「大丈夫かな〜松浦…?
あの娘…顔が真っ青だったよ、裕ちゃん…
打ち合わせをしている間、ずっと深呼吸とかしてたし…
まぁ…初登板だから、しょうがないけどねぇ…」
「ホンマか…?
そりゃ、問題やな…
これ見てみ…」
先程、交換してきた横浜のメンバー表を渡すと圭ちゃんの目が一瞬大きく見開かれた。
「げっ!!
まさかと思ってたけど…
どうせなら、昨日『番長対決』でもしてくれればよかったのに…
どうする…対抗してアホの裏番でも先発させてみる?」
- 77 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月19日(日)23時27分21秒
- 「アホか!!
たぶんスライドやろうな…
森監督になって、チームとしては門出の開幕カードや…
いきなり3連敗は出来へんのやろなぁ…
今日は、横浜さん必死やで…」
「いきなり、そんな無茶するかなぁ?
えらい迷惑なんですけど…
まぁ、しゃあないか…
さ〜て、それじゃあ亜弥ちゃんのボールでも受けてこようかな〜
今日の『あやちゃん』は、性格は素直そうだから、それだけは助かるよ…」
急に、圭ちゃんが立ち上がった。
今更、あたしが心配することもない…
圭ちゃんが、きっとうまくやってくれる…
結果が出る前から、あれこれ心配しても仕方あらへん…
良くも悪くも…
野球は、筋書きのないドラマやからな…
- 78 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月20日(月)23時11分49秒
- 「大丈夫か、松浦!?
リラックス!!リラックス!!」
ルーキーながら、第3戦の先発という大役を任された松浦…
ブルペンの様子は、もう最悪だった。
ストレートは、肩に力が入り過ぎているのかボールが上ずっている。
フォークは、指に引っかけて暴投の連発。
『もう見ちゃいられない!!』って感じだった。
でも…
この市井さんには、その気持ちよく分かりますぞ!!
初登板の時って、不安で不安で仕方ないんだよなぁ…
あの小高いマウンドに立った瞬間…
まるで自分のものじゃないみたいに、体が動かなくって…
周りにみんながいるって分かってはいても…
ひとりぼっちになったような気がして…
あの頃のあたしには…
笑うことなんて出来なかった…
だから…
少しでも力になってやりたい…
- 79 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月21日(火)23時04分46秒
- 「市井さん、どうしましょうっ!?はっきり言って大丈夫じゃないですっ!!」
真っ青な顔は気掛かりだが、意外に元気そうな様子なので少し安心した。
まぁ…無理はしてるんだろうけどね…
「なんとか…
中澤さんのっ…皆さんのっ…
期待に応えたいと思ってるんですけどっ…」
うわ…力入ってるぞコイツは…
だから…あんなピッチングになるんだよ…
「オマエはさぁ…力の入り過ぎだよ。
まずは、リラックスしてだねぇ…
後は、圭ちゃんが要求したボールを思いっきり投げ込めばいいのだよ…
期待に応えようとかさ…そう大袈裟に考えんなよ。
気楽にいこう!!気楽に!!
なっ!!」
と肩をポンと叩いてみるのだが、こんなありふれた激励でリラックス出来るわけがない。
でも、大丈夫…
何の策もなく、無謀な勝負を挑む市井さんではありませんぞ!!
待ってろ松浦!!
今、この市井さんがリラックスさせてやるからな!!
- 80 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月22日(水)23時16分41秒
あぁ〜あ〜 ♪
ああああぁ あぁ〜あ ♪
あぁ〜あ〜 ♪
ああああぁ あぁ〜 ♪
意気込みもむなしく…
目の前には、さらに表情を強張らせた松浦が立っているわけで…
とっておきのギャグだったのに…
どうやら…
ハズしてしまったわけで…
逃げ出したい気持ちを、少しでも紛らわせようと…
『北の国から』で現実逃避を図っているわけで…
マズイぞ…
あたしのクールなイメージが、松浦の中で崩れてしまったんじゃないだろうか…?
どうしたらいい…?
どうしたら…
このままじゃ…何のために登場したのか分からんぞ!!
- 81 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月22日(水)23時18分43秒
- 「だはははははっ!!
ま…松浦には、ちょっとハイレベル過ぎたかな!?
何だよ…そんな顔すんなよ…
いつもみたいにさぁ…
元気ハツラツな姿が見たいなぁ…
『元気ハツラツ!!オロナミンC!!』
なんちゃって!!
だはははははっ!!」
左手を腰に当て、右手を突き出して豪快に笑う。
しかし、辺りに自分の笑い声がむなしく響くのみ。
松浦のすがるような視線が痛い…
まったくどうしたことだ…?
最近こんなのばっかりだ!!不調にも程があるぞ!!
それにしても…
今のは何だ!!
いくら焦っていたからとはいえ…
自分で言うのもなんだが、もう最悪だったぞ!!
あたしゃオヤジかっ!!
そんな時…
突然、乙女の大事な部分に衝撃が…
?!…おほ〜うっ
- 82 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月23日(木)02時38分59秒
- さ、さむいよ〜(涙)
俺の中の市井ちゃん像が壊れていくぅ〜(w
- 83 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月23日(木)06時21分26秒
- >>81
最後の一行大いにワラタ
どんなギャグで松浦を凍り付かせたのやら…(w
- 84 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月23日(木)14時17分09秒
- 乙女の大事な部分て・・・
- 85 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月23日(木)23時25分16秒
- 恥骨にメガヒット!?
身をよじりたくなる衝撃に思わずビクンと腰を引いた。
うわっ!!
何だ!?何だ〜っ!?
誰か助けて〜〜〜〜〜っ!!!!!
市井なんか襲ってもつまらないっスよ〜〜〜〜〜っ!!!!!
痛みも少々あったが、正直怖さの方が大きかった。
突然、背後からあんな部分をコツーンとやられたらパニックにもなる…
『うわ〜〜〜〜〜っ!!』と大絶叫を残して、その場にしゃがみこんでしまった。
恐る恐る後ろを振り返ってみるとそこには…
黒目がちであまり大きくない目をパチパチさせながら、
あたしの顔を訝しそうに見つめる加護がいた。
「ほ〜っ!!ビックリした〜っ!!」
加護は、胸に手を当てながら驚きの声をあげた。
ふと…その足下に目を移すと、今までそこにはなかったはずのバットが転がっていた。
オマエっ!!それはこっちの台詞だ〜〜〜〜っ!!
そしてっ!!何だそのバットはっ!!
まさか…オマエ…
それで…
- 86 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月23日(木)23時27分55秒
- 「加護っ!!
オマエ、ふざけんなよっ!!
襲われるかと思ったじゃんか!!
メッチャクチャ怖かったぞっ!!」
「キャハハハハ…
市井さん…驚きましたか〜?
亜弥ちゃ〜ん、市井さんビクッてしてたよ〜
ビクッて〜
見た〜?」
そう言うと加護は、目を細めて屈託なく笑った。
松浦も、釣られたようにクスクスと笑い出す。
「市井さん…かわいいですぅ〜」
キッと松浦を睨む。
睨まれた松浦は、両手で口を押えながら少々オーバーに首を竦めてみせた。
あたしはゆっくりと立ち上がり、加護の方に向き直る。
まだ…
ちょっとジンジンしてたりするんだよ…
あの部分が…
これは、許せませんよ!!
- 87 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月23日(木)23時30分05秒
- 「オマエ、ちょっとこっちに来い!!」
ユニフォームの背中をちょいとつまんで引き上げた。
加護は、よろよろと爪先立ちの姿勢で堪えながら、許しを請う。
「ゴメンなさ〜い…もうしません…
もうしませんから〜」
このイタズラっ娘め!!
悪ふざけにも程がある!!
今まで被害報告はいくつか聞いていたけど、こんなにひどいとは思わなかった。
一度、きついお灸をすえてやらないとダメだ!!
まったく後藤のバカは何を教育してんだ!!
そのまま、嫌がる加護を無理矢理に引き摺っていこうとしたら…
「やめてくださぁいっ!!」
背後からキーンと甲高い声。
耳を押えつつ振り向くと、頬をプクッと膨らませた松浦があたしに鋭い視線を送っていた。
その時の松浦の顔は…
さっきまでの青ざめて不安そうな顔ではなかった。
グッと上がった眉…
強い意志を感じさせる力のある瞳…
これから先発のマウンドに登るのにふさわしい顔だった。
- 88 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月23日(木)23時31分50秒
- >>82
とっくに読者の皆さんが持つ市井ちゃん像は破壊しつくしたかと思ってましたが…(w
すみません…適度にさむいのが思い浮かばなかったので…
(あれ書いた時にちょうどCMがやってたんですよ…実は…)
>>83
最後の1行は、いろいろ書き直したりしたので笑ってもらえてよかったです。
>>84
乙女の大事な部分…
『いまどき、この表現はねえダロ』って気もしますね…(w
レス本当にありがとうございました。
とりあえず…ホッとしました…
- 89 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月25日(土)02時55分41秒
- すげえなあ。
いちーちゃん編で読ませて、
あやや編で笑かして。
書いてる人、一人なの?って思うくらい
幅があるんだもん。
いやー、すげえっす!!
- 90 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月26日(日)06時46分25秒
- 「市井さんっ!!
加護ちゃんを離してあげてくださいっ!!
きっと…
きっと…加護ちゃんは…
あたしのこと心配して、リラックスさせようとしてくれたんですっ!!
ねっ、加護ちゃん…
そうだよね…?」
加護は、しばらくあたしの顔を不安げに見上げていたが、少し遠慮がちにコクリと頷いた。
「亜弥ちゃんは…
ずっと顔が真っ青で〜
まだ…キンチョーしてたみたいだから…
加護が〜
なんとかしてあげたかったんですよ〜
だって…
加護が初めての時は〜
後藤さんが、キンチョーしないようにやさしくしてくれたから…
今度は加護が〜
亜弥ちゃんをキンチョーしないようにしたかったんですぅ…」
モジモジしながらそう言うと、加護は俯いてしまった。
あたしは、少々あっけにとられた。
この悪名高いイタズラっ娘が、そんなこと考えるなんて思わなかったからだ…
- 91 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月26日(日)06時47分14秒
やるじゃん…
後藤…
あたしの知らないところで…
ちゃんと先輩やってるんだな…
- 92 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月26日(日)06時53分13秒
- 「オマエ、もうちょっと方法を考えろよ!!
あんなこと絶対にやっちゃダメだ!!
その…何ていうか…ビックリするだろ!!
まぁ…加護の気持ちは分かったから、練習に戻れよ…村田リーダーに怒られるぞ!!
後な…後藤の言うことをちゃんと聞くんだぞ…
世話をかけさせるなよ…」
「はいっ…
市井さん、本当にゴメンなさい…
亜弥ちゃん…頑張ってなぁ…」
自由を手にいれた加護は、あたしに深々と頭を垂れると、
松浦に声をかけて素早くこの場を立ち去った。
そんな様子を見ると、自分もちょっと怖がられてるんだなと思う。
まぁ…厳しいこと言うからな…
「市井さん…ありがとうございましたっ!!」
松浦が胸に手を当てながら、ホッとしたように言った。
本人じゃないからなんとも言えないけど、ちょっとはリラックス出来たんじゃないかな?
取り敢えず、今の表情のままマウンドに上がってもらえば安心だ。
- 93 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月26日(日)06時54分48秒
- 「まぁ…いろいろ脱線はしたんだけどさ…
今みたいな顔でマウンドに上がれば大丈夫だよ…きっと…
とにかく、諦めずに5回まで頑張れ!!
余計なことは考えなくていいから…
5回まで頑張ったら、市井達がなんとかしてやる!!
最後に市井がウイニングボールを渡してやる!!
マウンドの上で孤独を感じることもあると思うけど…
みんながいるからな…
絶対に諦めるなよ!!」
『はいっ!!』と力強く頷く松浦に安心した。
ほぼ、普段の松浦と言ってもいいだろう…
まぁ…実際に公式戦のマウンドに上がると、そうもいかないんだけどな…
その時、『松浦〜っ!!』と叫びながら、圭ちゃんが駆け寄ってくるのに気が付いた。
イカン!!
大事な忠告を忘れていた!!
「最後に1つアドバイスだ…松浦…
圭ちゃんの前では、どんなことがあっても絶対に涙は見せるな…
多くは語れないが…それだけは絶対に守れ…
恐ろしいことが起こるからな…」
それを聞いた松浦は、わけがわからないといった感じで首を捻った。
- 94 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月26日(日)07時02分10秒
- >>89
レスありがとうございました。
もちろん一人で書いてますよん。
夏休みが明けた後、忙しくてなかなか思うように書けないんで、
誰か書いてくれたらなぁって思うこともありますけどね…(w
久しぶりにまとめて書けそうなので夜も更新する予定。
- 95 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月26日(日)10時25分42秒
- >圭ちゃんに涙は見せるな
見せたら松浦の選手生命に関わるかも(笑
- 96 名前:実況くん 投稿日:2001年08月26日(日)23時47分55秒
- 『UFAハロープロジェクトと横浜ベイスターズの開幕カード第3戦の模様を、
オレ流解説の落合博満さん、熱血先生こと栗山英樹さんの解説でお届けいたします。
お二人ともよろしくお願いします』
『『よろしくお願いします』』
『さて、両チームの先発投手は意外な選手が発表されました…
ここで両チームのスタメンをご覧いただきましょう。
まずは、先攻の横浜ベイスターズから…
1番 ショート 石井琢朗 背番号5
2番 センター 金城龍彦 背番号2
3番 サード 小川博文 背番号23
4番 レフト 鈴木尚典 背番号7
5番 ライト 佐伯貴弘 背番号10
6番 ファースト ズーバー 背番号49
7番 セカンド ドスター 背番号4
8番 キャッチャー 谷繁元信 背番号8
9番 ピッチャー 三浦大輔 背番号18
いや〜、落合さん…『ハマの番長』三浦がこの第3戦に出てきましたね?』
『2戦目に投げなかったんで、中日との1戦目に回すのかと思ってましたがね…
森さん、やるね…どうしても落とせないってところでしょ…』
- 97 名前:実況くん 投稿日:2001年08月26日(日)23時48分55秒
- 『一方、UFAハロープロジェクトのスターティングメンバーです。
1番 ショート 石川梨華 背番号1
2番 レフト 加護亜依 背番号0
3番 センター 後藤真希 背番号5
4番 ファースト 飯田圭織 背番号7
5番 ライト 吉澤ひとみ 背番号10
6番 サード 矢口真里 背番号8
7番 セカンド 柴田あゆみ 背番号25
8番 キャッチャー 保田圭 背番号9
9番 ピッチャー 松浦亜弥 背番号34
こちらはドラフト1位ルーキーの松浦できましたね、栗山さん?』
『ええ…ハロプロは、ダニエルが故障して先発が1枚足りなかったんですよね。
一体、誰で穴を埋めるのか注目されていたんですが、松浦選手できましたね』
『それから落合さん…セカンドが辻じゃなくて、柴田ですね…
これはどういうことでしょうか…?』
『1つはルーキーを先発させるに当たって、バックをしっかりしようってことでしょ…
後は、ここ2試合の辻のバッティングの状態が悪いからでしょうね…
腰が引けてて、バッティングになってませんよ…』
『さぁ、松浦の投球練習も終わり、これから1回の表の横浜の攻撃が始まります』
- 98 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月26日(日)23時50分21秒
- 公式戦初のマウンドに上がった松浦は、やはり緊張の面持ちだった。
マウンドに上がるまでは、意外な程リラックスして見えたのだが、表情が硬くなった。
「やっぱり…実際にマウンドに上がると、また違いますね…
なんだか…マウンドがいつもより高く感じます…」
顔を引きつらせながら、松浦はそう言った。
何度か大きく深呼吸を繰り返し、手のひらに人と書いて飲み込む仕種をする。
「最初から飛ばしていこう松浦…
5回まで持たせればいいからね…
後は、明日香や紗耶香達がなんとかしてくれるから」
「はいっ、保田さん…
市井さんからも同じことを言われました…」
そう言って松浦は、健気に笑顔を作ってみせた。
「どんどん打たせちゃっていいからね亜弥ちゃん…
矢口達、しっかり守るからさー
まぁ、一人…危なっかしいヤツはいるけどさー」
矢口がニヤニヤ笑いながら石川をチラッと見た。
これに石川が反応しないわけがない。
- 99 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月26日(日)23時51分22秒
- 「何言ってるんですかぁ、矢口さん!!
石川だってしっかり守りますよ!!
ねっ、亜弥ちゃん…大丈夫だからね…」
「さて…どうだか…?」
「矢口さぁ〜ん!!
ねっ、柴ちゃん…大丈夫だよね…?」
「えっ…!?
う〜ん…どうかな…
たぶん…」
「えぇ〜っ!?柴ちゃぁ〜ん!!
飯田さん…石川、大丈夫ですよね…?」
「石川っ!!オマエ、ゴチャゴチャうるせぇんだよっ!!
あややの気が散るでしょ!!」
「そんなぁ…飯田さん、大丈夫だって…言ってくださいよぉ…」
「ハイハイ…大丈夫、大丈夫…」
「飯田さぁ〜ん!!」
賑やかで結構…
松浦…この賑やかな先輩達がしっかり守ってくれるからね…
- 100 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月26日(日)23時52分26秒
- 初回から、横浜がこの試合に賭ける意気込みを見せつけられた。
トップの石井さんは、初球を三塁線へセーフティバント…
矢口は俊足の石井さんに備えて、浅めの守備位置をとってはいたが完全に意表を衝かれた。
慌てて前進して打球を処理したが、一塁へは投げられなかった。
「チクショー!!亜弥ちゃんゴメン!!」
悔しそうに叫んだ矢口が、マウンドの松浦に歩み寄る。
手に持ったボールを渡し、一言二言声をかけてマウンドを後にする。
「金城さん!!
今の石井さん、ルーキーに対しておとな気無いと思いませんか!?
まさか金城さんまで、送りバントなんてみみっちい事しませんよね!?」
あたしの牽制の言葉に金城さんは、耳を貸さない。
真剣な表情でマウンドの松浦をグッと睨んでいる。
こりゃ、相当気合い入ってるわね…
どうだろう…やっぱり送りバントしてくるのかな…?
あたしが横浜の監督なら、1〜2球松浦の様子を見たいところだけど…
まぁ、スチールはしてこないだろうけどね…
左バッターボックスに入った金城さんからは、今のところバントの素振りは見えない。
- 101 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月26日(日)23時53分28秒
- 圭ちゃんから、バントシフトの指示が出た。
圭ちゃんには、いろいろ考えるところがあるんだろうけど、矢口はこれで正解だと思う。
横浜は、どうしても勝ちたいだろうから先制点は大事だ。
圭ちゃんの肩があるからスチールは危険だし、フォークを投げる松浦にエンドランも冒険だ。
森監督なら、手堅く送りバントで得点圏にランナーを進めてくるだろう。
素直にやらせて、たとえ一死二塁になっても構わないと思った。
まずは、1つアウトを取ってあげたほうが松浦も安心する。
さっきは意表を衝かれて失敗したからなー
お返しにセカンドで刺してやりたいけどなー
初球…
金城さんは、一瞬だけバントの構えを見せたがバットを引いた。
高めに外れた山なりのボールが、圭ちゃんのミットに収まった。
恐らくフォークの投げ損ないだろう…
圭ちゃんも難しい要求しないで、ストレートで素直にやらせりゃいいんだよ…
金城さんのバントだってそんなにうまくないんだから…
「圭ちゃーん、どうせ送りバントなんだからさー!!
素直にやらせりゃいいよー!!」
結局…松浦に余計な神経を使わせて、歩かせたりするのが一番怖いんだ。
- 102 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月26日(日)23時54分54秒
- 正直なところ…
ランナーが気になって仕方がなかった。
自分のフォームはゆったりした2段モーションで、クイックもうまく出来ない。
よくルルさんに『松浦のは、全然クイックになってないヨ!!』って怒られる…
いくら保田さんの盗塁阻止率が高いとはいえ、
ピッチャーの協力無しにはランナーは刺せない。
だから、うまくスタートを切らせないように何度も何度も牽制をした。
「あやや!!
バッター勝負!!バッター勝負!!
気にすんな!!」
あまりにしつこい牽制に声を荒げたのは、横浜ベンチではなく飯田さんだった。
頭では分かってんねん…
たぶんスチールはないやろうし…
素直に送りバントさせて、矢口さんや飯田さんに任せたらええねん…
そうは思うんやけど…
気になんねん…
ふぁ〜ぁ…
マウンドに上がった時から復活したドキドキは止まらへんし…
まだ…緊張してるんかなぁ…?
- 103 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月26日(日)23時55分52秒
- 2球目のストレートは外角高めに大きく外れた。
金城さんは、またバントの構えからバットを引いた。
ダメだぁ…
ランナーが気になって…
ちょっとスタートを切るような音が聞こえるだけで、めっちゃ気になんねん…
タイムがかかり、一塁ランナーの石井さんと一塁コーチの高木さんが何やら相談してる。
これが、また…気になんねん…
そんな石井さん達の様子をジッと見てたら、飯田さんがマウンドにやってきた。
「あやや、ランナー気にするなって言ったでしょ!!
送りバントさせて、ワンアウトランナー二塁で充分なんだから…」
「でも、でもぉっ!!
簡単にスタートを切らせるわけにはいかないじゃないですかぁっ!!
スタートを遅らせれば、二塁で刺せる可能性も出てくるし…
石井さんはすごく足が速いし、あたしはクイックが苦手だから気になっちゃって…」
「だからって、石井さんをチラチラ気にしててもしょうがないでしょ…
あのね、あやや…
隣の畑は豪華に見えるの…
例えばね…
カオリの実家の向かいのおじいちゃんがねジャガイモ作ってたの…」
!?…
- 104 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月27日(月)00時04分00秒
- >>95
レスありがとうございました。
さて…松浦さんは、保田さんの毒牙にかかってしまうのか?
久しぶりにたくさんの量が書けた。
と言っても自分は時間がかかる方なんで、たいしたことない量ですけどね。
りんね編までなかなか大爆発させられないんだけど、
たまに小爆発はさせておきたいので久しぶりの電波ネタ…
- 105 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月27日(月)23時55分19秒
- あたしのハテナ顔をよそに、飯田さんの話は続く。
身振り手振りを交えて熱っぽく語るのだが、話の意味はよく分からなかった。
「カオリね…じゃがバタが大好きなのね…
知ってる、じゃがバタ?
メチャクチャおいしいから!!
だからね…すごくうらやましかったの…向かいのおじいちゃんが…
だって…カオリの家には畑なんて無かったから…
そんなカオリに、よくおじいちゃんはジャガイモをお裾分けしてくれたの」
そこまで話し終えた飯田さんの目から、一粒ポロッと涙がこぼれ落ちた。
「でもね…そんなやさしいおじいちゃんだったのに…死んじゃったの…」
そう言って鼻をすすりながらも、更なる涙がこぼれ落ちないように宙を見上げる飯田さん…
あくまでも気丈に振る舞おうとする飯田さんはカッコイイと思うのだが、
相変わらず話の先が見えない。
とはいえ、自分のことを心配して声をかけてくれた優しい先輩が泣いているのだ…
これは、慰めないわけにはいかないだろう。
「飯田さん…よく分からないですけど…泣かないでくださいっ!!
きっと…そのおじいちゃんも飯田さんのこと応援してると思いますっ!!」
- 106 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月27日(月)23時57分27秒
- 「カオリ…泣いてないよ…
でも…
ありがとう…あやや…
逆に励まされちゃったね…」
飯田さんはそう言って、両手で目をこすった。
「結局ね…
カオリが何を言いたかったかって言うとね…」
ふむふむ…
「石井さんのことは…気にしないように…
『ジャガイモだと思いなさい…』
ってことなの…」
えぇ〜〜〜〜〜っ!!
何でやねんっ!!
やがて…試合が再開されたが、
石井さんのことより、飯田さんのジャガイモ話のほうが気になってしまった。
- 107 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月28日(火)00時02分05秒
- 3球目…
ジャガイモがスタートを切った。
気にするなと言われても、ジャガイモが二塁に向かって走りだしたのだ…
そりゃ、気になるのも仕方ないだろう…
あちゃー!?
まさかスチールやなんて…
急いで投げなアカン!!
気持ちばかりが先走って、フォームはバラバラ…
あたしの手から放たれたボールは、とんでもないところに飛んでいった…
保田さんが慌ててボールを追う。
石井さんは、二塁を回って一気に三塁へ…
「ゴメンなさい…保田さん…」
「偉い偉い…ちゃんとカバーに来てるじゃないの…
あんた、意外に落ち着いてんのね?
ランナーを気にする余裕もあるみたいだし…」
ホームベース上…
あたしが頭を下げると、保田さんはそう言った。
落ち着いてる…!?
そんなことあらへん…
こんなに…心臓がドキドキしてんねんで…
- 107 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月28日(火)00時06分50秒
- 3球目…
ジャガイモがスタートを切った。
気にするなと言われても、ジャガイモが二塁に向かって走りだしたのだ…
そりゃ、気になるのも仕方ないだろう…
あちゃー!?
まさかスチールやなんて…
急いで投げなアカン!!
気持ちばかりが先走って、フォームはバラバラ…
あたしの手から放たれたボールは、とんでもないところに飛んでいった…
保田さんが慌ててボールを追う。
石井さんは、二塁を回って一気に三塁へ…
「ゴメンなさい…保田さん…」
「偉い偉い…ちゃんとカバーに来てるじゃないの…
あんた、意外に落ち着いてんのね?
ランナーを気にする余裕もあるみたいだし…」
ホームベース上…
あたしが頭を下げると、保田さんはそう言った。
落ち着いてる…!?
そんなことあらへん…
こんなに…心臓がドキドキしてんねんで…
- 108 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月28日(火)07時38分48秒
- 飯田らしさは出てるけど少し物足りなかった
飯田が背番号7なら安倍は?
今後も楽しみにしてるので作者さん頑張って
- 109 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月28日(火)14時09分10秒
- 新メンバーが入りましたね。この話にも出てくるんですか?
でも、出すんだったらシーズン始まってるからトレードで獲得か、
二軍から昇格になるのかな。
これからに期待です。頑張ってください。
- 110 名前:名無しです 投稿日:2001年08月29日(水)01時34分22秒
- あややのキャラがホント上手ですね〜
すっごいわかりやすいです♪
ん〜ん…ホント巧い上手い美味い甘い旨い〜
すっごい楽しみなんで頑張って下さい〜
- 111 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月29日(水)23時25分14秒
- 正直…
油断していた。
スチールは絶対にないと思ってた。
でも…甘かった。
どうやら、何度も牽制球を投げる間にモーションを盗まれたらしい…
完璧にスタートを切られた。
冷静に考えてみれば、隙だらけだったのよね…
ゆったりして大きな投球フォーム…
あれで、クイックで投げてるつもりなんだから頭が痛い。
ランナーを気にかけて、ボールが荒れてるし…
あれでは、例えモーションを盗まれていなくたって、スチールは考えられなくもない。
横浜としては、ルーキーの立ち上がりの動揺に付け込みたかったはずだ。
そこに気が付いていれば、対処の仕様もあったのに…
ゴメンね…松浦…
4球目…
スクイズを警戒して、内角高めにストレートを要求したのだが、僅かに外れた。
いいボールだったんだけど、結局はボール…
この時、横浜ベンチに動きはなかった。
ストレートのフォアボールでノーアウト三塁一塁…
ピンチが広がった。
- 112 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月29日(水)23時27分15秒
- マウンドに内野陣が集まった。
やっぱり、矢口が心配した通りになったじゃん…
初球から、素直に送りバントをやらせればよかったんだ…
そんなことを思いもしたが、終わったことをほじくり反しても仕方がない。
このピンチを凌ぐことを考えるのが第一なんだ…
「矢口はさー
揺さぶってくるだけで、結局スクイズはないと思う。
いくらなんでも、初回からルーキー相手に恥ずかしくて出来ないでしょ?
高校野球じゃあるまいし…
カウントを悪くすると、それこそ付け込む隙を与えるからさー
亜弥ちゃん…真ん中でもいいから、思い切ってストライクを取ろう!!
もし、スクイズしてくるなら勝手にやらせりゃいいよ!!
ウチ等がなんとかするし、アウト1つでも取れれば充分だよ!!
まだ序盤なんだから、1点ぐらい何とかなるって…」
自らピンチを招いて恐縮している松浦を励ますように、ポンと肩を叩いた。
その時…
圭ちゃんが鋭い視線をあたしに送りながら、ゆっくりと口を開いた。
「何よ…『恥ずかしくて出来ない』って…?
矢口…相手は勝つために必死なのよ…
そういう下らない感情抜きにして向かってきてるのが、あんたには分かんないの…?」
- 113 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月29日(水)23時29分38秒
- 「そりゃ…1点ぐらい覚悟しなきゃいけないケースだけど、考え方が甘いんじゃないの?
昨日は打線が爆発したけど、今日は三浦さんなのよ…
その1点が致命的になったらどうすんのよ!!」
圭ちゃんらしいと思った。
でも…
「三浦さんだって、今日調子がいいなんて限らないじゃん!!
ハマの番長だか園長だか村長だか知らないけどさー!!
圭ちゃんこそ何をビビってんのさ!?
そんな慎重になり過ぎてたら、相手に好き放題やられるよ!!
矢口は、そんなの絶対にイヤっ!!
だいたいさー
圭ちゃんは、亜弥ちゃんがプロ初登板のルーキーだっていうの忘れてるんじゃないの!?
なっちや紗耶香が投げてるんじゃないんだよ!!
いきなり難しい要求をしたって出来るわけないじゃん!!
亜弥ちゃんが、どんな気持ちで今マウンドの上にいるか分かってないんじゃないの!?」
『圭ちゃんが松浦の気持ちを無視している』と本当に思っているわけではない。
圭ちゃんはどうしようもないくらい真面目だから、チームの勝利優先なんだよね…
例え、松浦のことを気にかけてたって、心を鬼にしちゃうんだよ…
昔、そういうのが原因でチームから浮き上がっちゃったこともあったもんね…
もうちょっと…ホドホドってことを知るといいと思うんだけど…
とにかく今は…もうちょっと柔軟に考えるべきだよ…
圭ちゃん…
- 114 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月29日(水)23時32分48秒
- ひえぇぇ〜っ!!
保田さんと矢口さん…喧嘩始めてんでぇ〜っ!!
どうしたらええねん…
って…
とにかく止めさせないとっ!!
言い争う2人を両手で制するように間に割って入った。
「止めてくださいっ!!
2人とも、止〜め〜て〜くださぁ〜〜〜〜〜いっ!!!!!」
体の底のほうから振り絞るように、声を張り上げた。
その甲斐あってか、2人の口論は収まった。
2人は耳を押さえて、あたしのことを黙って見つめていた。
むむむ…
参ったでぇ…間が持たへん…
「止めてっ…亜弥のために…争わないでっ!!」
そう叫んで自分で自分の肩を抱くようにしながら、足下に視線を落とす…
芝居がかったあたしの様子に矢口さんは唖然…
保田さんは呆れたように口を開いた。
「見たでしょ…
この娘、ああ見えて案外落ち着いてるのよ…」
- 115 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月29日(水)23時56分33秒
- >>108
貴重な意見ありがとうございます。
今回の飯田さんは、自分でもちょっと物足りないと思いました。
飯田視点で交信させるという従来の方法を排除したらどうなるか?
という実験的な意味合いもあったのですが、見事に失敗でしたね。
ネタ自体もパンチが弱く、昇華しきれなかったのもありますが…
ちなみに安倍さんの背番号はエースナンバー18番です。
レスありがとうございました。
>>109
新メンバーは一応出す予定ですが、急ぐこともないと思ってます。
何名かはいいインスピレーションが湧いてますが、
まぁ、じっくりキャラを把握して…それからですね。
出すなら終盤ですし…
ちなみに今年のルーキーでファームからの昇格という設定になると思います。
レスありがとうございました。
>>110
松浦さんのキャラ大丈夫でしたか?
内面の表現を関西弁(インチキ)にしたり、
ちょっと特殊な書き方をしたと思っていたので心配だったのですが…
とりあえず喜んでいただけたようで嬉しいです。
レスありがとうございました。
頑張ります!!
- 116 名前:名無し@110です 投稿日:2001年08月30日(木)02時54分53秒
- あややのキャラ全然大丈夫ですよ〜
実は自分も姫路なんですが、
けっこうこの辺っていったらインチキ関西弁使ってますんで(w
そういえば…
もし時間とかあれば…去年のみんなの成績とかを知りたいなぁ〜って(w
なっちのは書いてありましたが、他のみんなは…
結構気になってます(w
もし時間があって、気が進んだらでいいですんで♪
これからも頑張ってください〜
- 117 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月30日(木)23時56分29秒
- >>116
『名無し@110です』さん、レスありがとうございました。
過去の成績については、本編中で必要に応じてちょろちょろと出すかも…
まぁ、キャラによってですけど…
そういうデータは公開しない方がいいという方もいらっしゃるかもしれないので、
あまりおおっぴらには書けないかもしれませんね。
半分、自己満足の部分ですし…
でも…気に留めておきます。
書きたい気持ちもありますので…
- 118 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月30日(木)23時58分08秒
- 「ゴメンなさぁい…」
申し訳なさそうに頭を下げ、小さくなってしまった松浦…
矢口は、松浦がだいぶ硬くなってると思っているようだが、あたしはそうは思わない。
周りがよく見えてるし、腕もしっかり振れている。
そして何より、ピンチのこの場面であんなちゃめっ気を出す余裕がある…
紗耶香のプロ初登板に比べれば、全然落ち着いている。
少し難しい要求をしても大丈夫だと思っている…
ただ…いらんことに気を回し過ぎるのよね、この娘は…
ランナーを気にしちゃって…
そういう意味では、矢口の言う事ももっともなんだけど…
『矢口がこの状況を楽観している』と本当に思っているわけではない。
矢口は、どうしようもないくらい負けず嫌いなのよね…
とにかく勝負に対するこだわりは、半端じゃない…
表立って努力をするタイプではないし、
おちゃらけたイメージがあるので誤解されやすいが、真面目な努力家なのよね…
矢口は、チームのムードをすごく大事に考えてる…
みんなをリラックスさせ、気持ちで負けないように発破をかけようとしてるんだ…
でもさ…矢口…
あたしとしては、もうちょっとみんなに危機感も植え付けたいのよ…
今日のベイスターズは目つきが違う…
矢口にも分かってるんでしょ…?
- 119 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年08月30日(木)23時59分49秒
- 亜弥ちゃんを中心に、みんなしてただ無言で立っていた。
気まずい空気がその場に流れていた。
梨華ちゃんは、オロオロした様子であたしと圭ちゃんの顔を見比べている。
カオリは腕を組んだまま目を閉じて、何やら考え事をしている様子だ。
たぶん…
この様子だと…
いや…
ちゃんと現状についての考え事をしてくれているよ…
きっと…
圭ちゃんとあたしは、お互いに視線を交わしたまま…
多分…お互いに分かってるんだよ…
何が最善の策なのか…
でも…お互いに意地っ張りだからさ…
引っ込みがつかないんだよ…
ね…
圭ちゃん…
そんな時、今まで何か言いたげにモジモジしていた柴っちゃんが口を開いた。
「あの〜
ちょっと…いいですか…?」
- 120 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月01日(土)23時45分42秒
- みんなの視線が柴田に注がれた。
正確に言うとカオリ以外だが…
自分が思っていた以上に注目を集めてしまって、照れくさくなってしまったのだろうか?
みんなの視線を一身に浴びた柴田は、はにかんだ表情を浮かべた後、口籠ってしまった。
そんな柴田を石川が後押しする。
「どうしたの?
柴ちゃん…
何か言いたいことがあったんでしょ…?」
「うん…」
柴田は、伏せていた目をあたしと矢口にチラチラッと向けると意を決したように話を始めた。
「あの…
保田さん、矢口さん…
喧嘩なんて…しないでください…
今は…そんなことをしている場合じゃありません…」
ゆっくりと…
時折…
視線を泳がせたりしながらではあるが、はっきりと柴田はそう言った。
- 121 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月01日(土)23時48分35秒
- 「保田さんの言うことも…
矢口さんの言うことも…
よく分かります…
すごく大事なことだと思います…
でも…
なんて言うか…
みんなが、同じ気持ちじゃないとダメだと思います…
バラバラじゃダメなんです…
個人個人でいろいろな考え方があると思います…
でも…
チームとして戦っているんだから、1つの統一した考え方が必要です…
個人的に納得いかないこともあると思いますけど、時には自分を殺すことも必要です…
柴田は…そう思います」
今、一番冷静に…
そして、客観的に…
この状況について考えているのは、この柴田かもしれないわね…
こう言っては悪いと思うけど…柴田は少々影が薄い。
いい選手なんだけど、目立たない。
堅実だけど、派手さがなく地味なイメージを与える守備。
特別、速くも遅くもない足。
粘り強く意外にも勝負強いんだけど、ひ弱なイメージを強く与えてしまうバッティング。
バランスは取れているんだけど、どこか物足りないって感じてしまう。
それに…
柴田は、自分をアピールするのが下手なのよね…
- 122 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月01日(土)23時51分27秒
- レギュラーを掴んだ辻は穴も多いが、それを補なうのに充分なセールスポイントがある。
決して下手ではないんだけど、大雑把でポカが多過ぎる守備。
師匠の教えを頑なに守るように振り回し、三振の多いバッティング。
でも、魅力溢れるセールスポイントがちゃんとある。
昨シーズンは、1番を任された俊足。
そして…
豪快な一発長打。
小さな体からは想像出来ない怪力で、天まで届けとばかりに高々とホームランを打ち上げる。
昨シーズンは、東京ドームでスピーカー直撃の認定ホームランも記録した。
その印象は強烈で、エラーや三振のマイナス部分もご愛嬌にしてしまう。
それに…
辻は、アピールが上手いのよね…
あの涙は反則気味だもの…
まぁ…
そんなこんなで不遇なポジションにいる柴田なんだけど、
今は、この娘がこの場にいてくれてよかったと心の底から思った。
もし、これが辻だったら頭の上にハテナマークを浮かべて首を傾げているだけだもんね。
この娘なら、あたしと矢口の想いを汲んだ上でみんなをまとめてくれる…
そう思った。
- 123 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月01日(土)23時53分42秒
- 「じゃあ…柴田。
あんたは、この場面をどうしたらいいって考えてるのよ?」
保田さんが、ぶ然とした表情であたしにそう問いかけてきた。
あの大きな目を逸らすことなく、あたしを凝視してる。
参ったな…
保田さんのことを否定したわけじゃないんだけど…
出過ぎたマネをしちゃったのかな…?
でも…
我慢が出来なかったんだ…
これだけは…譲れない…
あんな想いは、もうしたくないよ…
グルッと一周みんなの顔を見回した。
みんなが、あたしのことを興味深げに見つめている。
- 124 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月02日(日)00時02分20秒
- 「中間守備で、1点覚悟でいいと思います…
これは別に、安易にセオリーに従うってことじゃないんです…
保田さんの言う通り、今日の横浜は昨日までとは目つきが違います…
きっと…勝つために、何でもやってくると思います…
ダブルスチール…スクイズ…
亜弥ちゃんの動揺を誘うために、いろいろ動いてくるかもしれません…
でも…そんな相手に振り回されないように、あたし達はド〜ンと構えましょう…
相手が何をやってきても、確実に1つずつアウトを取るんです…」
亜弥ちゃんと梨華ちゃんは、ウンウンと軽く頷きながら真剣に話を聞いてくれている。
飯田さんは、相変わらず目を閉じて腕を組んだまま…
保田さんと矢口さんは、顔色一つ変えずにあたしの話に耳を傾けている。
- 125 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月02日(日)00時04分08秒
- 「これは柴田の考えなんですけど…
構えは見せても、さすがにスクイズまではやってこないと思います…
相手は、まだミスを誘えると思ってるはずです…
みすみすワンアウトを与えるような作戦は、考えられません…
ケースバッティングの出来る小川さんなら、強攻しても1点取れる計算は出来るし…
矢口さんの言うように、ストライクを先行させたほうがいいと思います…
大量失点だけ防ぐ方法を考えましょう…
とにかく…1点で抑えるんです…
そして、取られた1点は絶対に取り戻すんです…
みんなの力を合わせれば、絶対に取り戻せます…」
話を終えて、再びグルッとみんなの顔を見回した。
「すごぉ〜い、柴ちゃん!!さっすがぁ!!」
「柴田さんっ、カッコイイですっ!!」
2人とも…
本当に分かっているのかな…?
特に亜弥ちゃん…
酷なようだけど、亜弥ちゃんに頑張ってもらわないといけないんだよ…?
- 126 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月02日(日)00時05分43秒
- 2人の様子に一抹の不安は覚えながらも、矢口さんに視線を移した。
あたしの視線に気付いた矢口さんも、あたしにチラッと視線を送ってきた。
「矢口は、それでいいと思うよ…」
矢口さんはそれだけ言うと、今度は保田さんにチラッと視線を送った。
それに気付いた保田さんが、ゆっくりと口を開きかけたその時…
「カオリはさ〜、感動した!!
何て言うかさ〜
柴田が、そんなカッコイイこと言うと思わなかったよ!!
『こりゃ、1本取られたな』って感じじゃん!!」
飯田さん…
あたしは逆に飯田さんに1本取られそうです…
- 127 名前:名無し@110です 投稿日:2001年09月02日(日)23時20分34秒
- >>117
そうですね…自分はちょっとそういう成績関係好きだったんで、
つい書いてしまいました…(汗
スミマセン
ちょろちょろの成績出しに期待してます(w
さて、ここからのあややのピッチングに期待♪
小川を押さえても、鈴木佐伯と続く左に…
- 128 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月02日(日)23時33分17秒
- 「何だ…
カオリ、話を聞いてたんだ…
矢口…てっきり交信中かと思ってた…」
「してねえよ〜!!
ちょっと…考え事してただけじゃんかよ〜!!
バカにすんないっ!!」
「何を考えてたんですかぁ、飯田さん?」
矢口の発言に対して口を尖らせたカオリだったが、
石川の問いかけに『よくぞ聞いてくれました』って顔になった。
「カオリはさ〜
どうしたら2人の喧嘩を止められるか考えてたんだよ…
2人ともお互いに自分の意見を主張して埒が明かないでしょ…
そういう時はさ〜、先に手を引いたほうが勝ちなんだよ!!」
また始まった…
せっかく、まとまりかけてたのに…
なんか回りくどそうだし…
- 129 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月02日(日)23時34分22秒
- 「ねぇ、カオリ…
それ長引く?
いい加減にしないとタイムが長いって怒られると思うんだけどさー」
「ん〜?
長引くかも…
でも…まぁ、ちょっと聞いてよ!!
短くしてみるから…」
カオリは、矢口のジト目にも全くめげない。
「あのさ〜
母親だって言い張る2人がね、1人の子供をね〜引っ張りっこしたの…
そしたらさ〜ある偉い人がね、子供が痛がった時に手を離したほうが本当の母親だって…
先に手を離したほうが、本当にその子供のこと考えてるんだって…
だから…さっきの喧嘩も先に手を引いたほうが勝ちだったんだよ…
よく言うでしょ…
『負けるが勝ち』って…
はい…
ちょっと短くしてみた…
どう、矢口…?」
今回は相当自信があったのだろう…
話を終えたカオリは矢口に対して、勝ち誇ったように顎を突き出し胸を張ってみせた。
- 130 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月02日(日)23時36分28秒
- そんなカオリを冷ややかな目で見上げつつ、矢口のちょっとした攻撃が始まる。
「珍しく少しだけ分かりやすかった気もするんだけどさー
びみょーに『えっ!?』ていう謎な部分があるんだよねー
例えば…さっきの矢口と圭ちゃんの場合…
まぁ…別にあれは喧嘩なんかじゃないんだけどさ…
『痛い』なんて誰も言ってなかったから、手を引くことなんて出来ないじゃん!!
わけ分かんねーよ!!」
そう言った矢口の顔には、意地の悪い笑みが浮かんでいる。
カオリの顔に少し苦渋の色が浮かんだ。
小さな矢口が大きなカオリを手玉に取ってやり込めるこんな場面は、日常よくあることだ。
まるで『トムとジェリー』みたいで微笑ましい。
まさに『仲良くケンカしな』って感じだ。
しばらくして、カオリが苦し紛れにポツリと呟いた。
「カオリの心が痛かった…
聞こえなかった…?カオリの心の叫び…」
ダメだ…こりゃ…
『キャハハハハッ』という矢口の笑い声が辺りに響いた。
- 131 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月02日(日)23時38分04秒
- カオリはよっぽど悔しかったのか…
目が合った瞬間、ビクッと肩を震わせた石川に目を着けた。
「石川っ!!あんた歯を食いしばりなさい!!」
無理矢理、殴って『痛い!!』とでも言わせる気だろうか?
今更そんなことして何になる!?
慌ててみんなでカオリを取り押さえた。
もう…何のために集まったのか段々分からなくなってきた…
カオリはカオリ流に何とかしようとしてたのは分かるんだけど…
最後に声をかけて解散しようと思ったら、思い出したように突然叫び出すし…
「あ〜っ!!
さっきの話ちょっと思い出した〜っ!!
なんとか裁きって言うんだよね…
何だっけな〜?
岡…?
なんとか岡…?
岡…岡…
二岡?」
バカッ!!どうでもいいことで口を挟まないでよ!!
だいたい…何で『二岡』に裁かれなきゃいけないのよっ!!
むしろ『二岡』を裁きたいわよっ!!
その後、一声かけて解散したのだが、柴田のやりきれない表情が印象的だった。
- 132 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月02日(日)23時39分35秒
あの…
みなさん…
柴田の言ったこと…
ちゃんと…
覚えてますか…?
- 133 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月02日(日)23時40分49秒
- 再開後の初球は、思わず目をつぶりたくなるボールだった。
待球のサインが出ていたのか、予想外の絶好球にビックリしたのか分からないが、
小川さんが見逃してくれたので助かった。
でも…このストライク1つは安心した。
単純にストライクを先行出来たのもそうなのだが、
松浦の意志をはっきりと確認出来た意味合いもあるからだ。
よしよし、いい娘だからこのままバッターに集中してちょうだいよ…
2球目、ボールでいいつもりで要求したスライダーが奇跡的に外角いっぱいに決まる。
小川さんはこのボールに手が出せず、宙を見上げた。
ちょっと、ちょっと〜いいじゃないの!!
松浦に浮ついたところがなくなったのが大きい。
どうやら腹を括ってくれたようだ。
思った通りランナーが松浦を揺さぶりにかかるのだが、バッターに集中してくれている。
簡単にミスを誘えると見当をつけていた横浜は、当てが外れたというところだろう。
とにかく…追い込んで小細工をやりにくくしたのは大きい。
ここまでの結果は、松浦の覚悟がもたらしたと言っても言い過ぎじゃない。
ここからは、あたしの覚悟も必要になる。
- 134 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月02日(日)23時42分03秒
- ここで横浜ベイスターズの3番『小川博文』というバッターについて考えてみる。
オリックスから移籍してきたこの選手は、
全ての打順を経験し、全ての打順でホームランを打つという異彩を放つ経歴の持ち主だ。
つまり、どんな状況にも対応出来るバッティングをする選手だということになる。
実際に公式戦で2試合対戦してみて、あたしはすごく手強い印象を受けた。
とにかく追い込まれるまでは、思い切りがいい。
ホームランバッターではないけれど、小力がある感じだ。
そして追い込まれた後は、しぶとく状況に応じたケースバッティングをしてくる。
バッティングの質としては粗いタイプなのだが、とにかく最後まで油断が出来ない。
森監督が、大きな信頼を寄せるのも頷ける。
柴田の言う通り、ここはもう小川さん任せだろうな…
あたしも覚悟を決めるべきだ…
浮ついた気持ちでリードしていい場面じゃない…
みんなで覚悟を決めるんだ…
ねぇ…矢口、柴田…
- 135 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月02日(日)23時43分20秒
- 今後のリードについて思考をめぐらせる。
オーソドックスに攻めるなら、1球外に外してから落とすところだけど、
これは小川さんの予想の範疇だろうな…
松浦のフォークがしっかり決まれば問題ないんだけど…
昨日、決め打ちで甘いスクリューをライトスタンドへ叩き込まれたのが印象に残ってて、
嫌な予感がするのよね…
スコアラーからのデータだけでは、分からないこともある。
レフトへ引っ張ってのスタンドインはともかく、
まさかライト方向へスタンドインさせるとは思わなかった。
思った以上にリストが強いし、追い込まれてからの決め打ちがうまいのが分かった。
脆いところも充分あるんだけど…
さて…
どうしよう…
裏をかくことにこだわるのか…?
正攻法でいくか…?
迷いを振り払って、松浦にサインを送る。
サインに頷いた松浦が、セットポジションから投球モーションに入った。
- 136 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月02日(日)23時53分45秒
- >>127
『名無し@110です』さんが謝る必要はありません。
こちらこそ読者に気を遣わすようなレスをして申し訳ないと思ってます。
ちょっとした脱線も終わり、いよいよ試合再開です。
レスありがとうございました。
- 137 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月04日(火)23時13分50秒
- ズバーンと心地よい音をたてて、ボールがミットに収まった。
今日、ここまで投げた中で一番球威のあるストレート…
その余韻に浸りながら、主審のコールを待つ。
「ボール!!」
際どいコースの判定に、一瞬の間があったけれどそう判定された。
いいコースだったんだけどな〜
見事に逆球だったけど…
要求したのは内角低めのストレート。
3球勝負で小川さんの裏をかくつもりだった。
しかし、実際にボールがきたのは外角低め…
結果オーライなんだけど、複雑な心境だ。
何で逆球になったのかが問題なのよ…
大丈夫なのかしら…?
見せかけの三塁ランナーのスタートが気になったのかな…?
覚悟を決めなければいけないのに、松浦のことが信頼しきれていない…
そんな自分をちょっと情け無く思った。
- 138 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月04日(火)23時20分09秒
- 3球勝負に思わず力が入った。
ボールは、保田さんの構えたミットと逆の方向へ…
この投球の際、三塁ランナーの石井さんがスタートを切ったが、
気にしないように心掛けた。
結局、動揺を誘う程度のものだったようで、小川さんはスクイズの素振りも見せず、
ランナーは三塁に戻っていた。
とにかく…
バッターに専念せなアカン…
ランナーの執拗な揺さぶり…
横浜ベンチから、コーチを通して頻繁に行われるサインのやりとり…
本当は、気になって気になってしゃあないねん…
胸がドキドキするのも直らへんし…
でもなぁ…
これ以上、ルーキーやって甘えられへん…
難しい要求をされているんとちゃう…
やらなアカンねん…
保田さんから出たサインに頷く。
セットポジションから大きく足を振り出し、投球を開始する。
手首のスナップを充分にきかせる事を意識しながら、思いっきり腕を振る。
保田さんのミットめがけて…
- 139 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月07日(金)00時27分22秒
- 一瞬のどよめきが拍手に変わった。
「柴田様様やな…」
「ウチやったら、もっと華麗に決めとったけどな」
ニッと笑ったあっちゃんの歯が、キラリと光る。
さっきまでハラハラしとったクセによう言うわ!!
まぁ、あたしも正直ホッとしたんやけどな…
カウントツーワンからバッテリーはフォークボールを選択した。
小川さんはこれをしぶとく打ち返し、その痛烈な打球は広く空いた一二塁間へ…
思わず頭を抱えたくなるこの場面を救ったのは、セカンドの柴田だった。
ベース寄りの守備位置から小柄な体を目一杯伸ばして打球に飛びつくと、
普段おっとりして見える柴田からは想像し難い素早さで起き上がり二塁へ送球。
二塁ベースカバーの石川が、一塁へ転送してダブルプレー。
この間に、サードランナーがホームを踏んで先制点を奪われたが、
立ち上がりのピンチを最少失点で切り抜ける芽が出てきた。
皆が口々に柴田の好プレーを称え、惜しみ無い拍手を送った。
そんな中…
ふと手前のベンチの奧の方を見やると、辻が俯き加減でポツンと座っていた。
- 140 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月07日(金)00時29分30秒
- ぶっちゃけた話。
可哀想やな…
とは思う。
辻のことは、もう可愛くて可愛くて仕方がない。
眉を下げ、時折不安そうにキョロキョロ周りを見渡したりなんかしてるのを見ると、
もうめっちゃ抱きしめたくなる。
裕ちゃんが悪かった!!
堪忍やで〜
って感じだ。
でも、辻の将来…
チームの将来のことを考えたらそうも言ってられないのだ。
目先の問題として週明けの巨人3連戦のこともある。
辻のバッティングは絶対に必要なのだ。
表向きは守備重視の柴田起用ということにしてあるが、本当は…
今の辻には…
グラウンドに立つ資格があらへん…
- 141 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月07日(金)00時32分14秒
- ツーアウトを取って、ランナーも居なくなって油断したわけではない。
…と思う。
打ち取ったはずの打球だった。
でも、ショートの後方へポテンと落ちた。
一塁ベース上で鈴木尚典さんがポンと手を叩く。
ルーキーのあたしからポテンヒットを打ったのが、そんなに嬉しいんやろか…?
ツーアウトでランナーが一塁。
初球から簡単に走られた。
保田さんは二塁へ送球することが出来ず、得点圏にランナーが進む。
また完璧にスタートを切られてしまった。
何やろ…?
自分じゃちょっと気づかない様な変な癖でもあるんやろか…?
後々考えると何と呑気だったことか…
この時のあたしには保田さんや柴田さんが指摘する『横浜の本気』が、
本当に理解出来ていなかったのだ。
ピンチを迎えていた時の気持ちの張りが完全に失われていた。
付け込む隙を与えてしまっていた…
佐伯さんに対して2球目を投げた直後、
タイムをかけた森監督がベンチから主審に向かってゆっくりと歩み寄ってきた。
- 142 名前:名無しです 投稿日:2001年09月07日(金)11時27分01秒
- あちゃぁ〜…
でも、森監督…そんなに心理作戦にでなくても…
グランドに立つ資格のない辻の活躍?あるのか期待です
更新頑張ってください〜
- 143 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月08日(土)03時02分05秒
- 森監督は主審に何ごとか抗議すると、ダッグアウトに下がっていった。
その直後、4人の審判が物々しい雰囲気であたしを取り囲む。
まるで、このまま手錠をかけられて連れて行かれそうな空気だった。
「言いがかりや!!
キャンプの時にちゃんと確認を取ってOKをもらってるんやで!!
それより向こうの先発ピッチャーのインチキ二段のほうが悪質やろ!!
松浦のは、二段モーションちゃう!!」
本人は、しっかり二段モーションのつもりなんやけどなぁ…
まぁ、もちろん違反投球に値するようなことはしてへんつもりやけど…
中澤さんは、あたしのピンチにすぐにダッグアウトを飛び出してきてくれた。
森監督の抗議は、あたしの投球フォームに対するものだった。
あたしの二段気味のモーションの中で動作が完全に停止して見える瞬間があり、
『違反投球でボークじゃないか?』と抗議してきたのだ。
この半ば言いがかりとも言える抗議に、中澤さんが黙っているわけがない。
- 144 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月08日(土)03時03分35秒
- 「だいたい…
こんないたいけなルーキーが、そんな違反行為すると思いますか!?」
中澤さんは声を荒げて、4人の審判に同意を求めるように訴えた。
自分のために必死に抗議をしてくれている中澤さん。
『自分もなんとかしなきゃ…』って思った。
両手を頬に添え目を閉じてチュッとアピールしてみたのだが、これが余分だったらしい。
中澤さんに、ものすごい目で睨まれてしまった。
その目はこう語っていた。
『アホッ!!おまえは余計なことすんなっ!!』
おかしいなぁ…?
いたいけなルーキーを強調してみたんやけどなぁ…
期待する側とされる側の想いの『微妙?』なズレ。
それは、何を以て生じたのだろうか…?
プロは技術だけじゃない。
備わった技術を活かすための気迫・集中力・判断力・その他諸々…
全てが高いレベルにあって初めて本当のプロと言えるのだ。
この時点でのあたしは、まだプロ野球選手には程遠かった。
本当のプロ野球選手に敵うわけがなかった。
- 145 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月08日(土)03時04分57秒
- その光景を見つめながら、あたしはダッグアウトの中で歯噛みした。
カチャカチャとスパイクを鳴らしながら、
5番の佐伯さんが悠然とダイヤモンドを一周している。
アホか…
あいつは、いらんことに気を回し過ぎや…
集中せぇ…
集中を…
とは言え、無理もないのかもしれない。
あれだけ執拗に神経をかき乱されては…
抗議が終わって試合が再開されても、横浜の松浦に対する攻撃は続いた。
タイムをかけて打席を外すのは序の口で、
松浦を指差して審判に一声かけたりしていた。
それら一連の攻撃がチクチクと松浦に効いていたのだろう。
5球目の投球前には、セットポジション中に肩がピクリと動いてボークをとられた。
そして、問題の5球目…
真ん中高めに入ったストレートをセンターバックスクリーンに叩き込まれた。
ツーランホームランで2点を追加され、初回から3失点。
大きなビハインドを背負うことになった。
- 146 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月08日(土)03時06分05秒
- 「すみません…あたし…最悪ですね…」
松浦は、さすがにうなだれた様子だった。
なんとなく視線をダッグアウト方向に泳がせてみると、
ブルペンにあさみと末永が慌てた様子で走っていくのが見えた。
松浦には、もう少し頑張ってもらわないといけない。
「そんなことないよ松浦…
中にはさ…初登板の時にストライクが入らなくなってフォアボールを連発してさ、
マウンドの上で大泣きしちゃった奴もいるんだから、
それに比べれば全然大丈夫だよ…」
「えぇ〜っ!!誰ですかぁ…?」
松浦はつい先程までの落ち込み具合も忘れたように、あたしの話に興味を示してきた。
たぶん…
こういうところがこの娘のいいところでもあり、悪いところなのよね…
きっと…
- 147 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月08日(土)03時09分52秒
- 「本人の名誉のために名前は出さないけどね…
そいつはさ、松浦…
最初の頃は本当にどうしようもない奴だったのよ…
マウンドの上でガクガク震えちゃってさ…
でもね…そいつは、負けなかったんだ…
自分の夢に向かって一生懸命だったんだよね…
時間はかかったけど、弱い部分をちゃんと克服して夢を掴んでみせた…
マウンドは、あの娘が自分を表現出来る場所になった…
今ではマウンドの上で生き生きしてる…
なっちがよく言うんだけどさ…
マウンドはピッチャーが自分を表現する場所なんだってさ…
あんたは、マウンドで自分を表現出来てる?
あのざまが、あんたの全てだと思いたくないけどね…」
松浦は、軽く頬を膨らませながら首を激しく横に振った。
「あんなのあたしの全てじゃありませんっ、保田さんっ!!」
「マウンドの上で表現したいものがあるのならよく考えな…
そのために何が足りないのかを…
とにかく、今は諦めないで頑張ってよ…
3点が限度だよ…」
松浦のおしりをポーンと叩くと、あたしはマウンドを立ち去った。
- 148 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月08日(土)03時14分57秒
- >>142
松浦にはちょっと試練を与えております。
辻にもですけどね…
レスありがとうございました。
- 149 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月09日(日)00時21分15秒
- 「いっ…きしっ!!」
豪快なクシャミの音がブルペン中に響いた。
その音を生み出した張本人である紗耶香が鼻を啜り上げる。
「ビックリしたよ〜
どうしたの…風邪〜?」
「おっかしいな…?
風邪なんか引いてないんだけどな〜
誰かが市井のこと噂してるのかな?
きっと、そうだ…
そうに違いないっ!!
モテる女はつらいなぁ〜
だはははははっ!!」
いいな…紗耶香は…
何の悩みもなさそうで…
『はぁ〜』っと一つため息をついた。
「何だよ、りんねちゃん?
ため息なんかつくなよ!!
愛弟子の松浦が打たれてガックリきてるのは分かるけどさ…
こんな時こそ、教育係のりんねちゃんが励ましてあげなきゃ!!」
紗耶香の言葉は、あたしの胸にグサリと突き刺さった。
- 150 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月09日(日)00時23分42秒
- 先程まで紗耶香と2人きりで静かだったブルペンは慌ただしくなっていた。
あさみと真己ちゃんが、急ピッチで肩をつくり始めている。
中澤姐さんと小湊さんの判断は、正しいと思う。
飽きっぽくて集中力に欠けるまちーらは、一度ああなると収まりがつかない。
きっと、自分の投球フォームが気になって仕方ないんだろう。
ルーキーのまちーらは、試合中に技術面及び精神面の不具合を修正する術を知らない。
このままズルズルと失点を重ねる可能性がある。
可哀想だけど…
まちーらはここまでだ…
そんなことを考える自分が怖くなった。
一瞬、背筋がゾクッとした。
あたしは、まちーらの登板前に何の言葉もかけてやらなかった。
いや、やれなかった…
それは、何故だろう…?
まちーらのことを妬んでいたのだろうか…?
いや…違う…
まちーらでよかったと思った。
『まちーらなら…』って…
- 151 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月09日(日)00時25分46秒
思おうとした…?
- 152 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月09日(日)00時28分18秒
- もし…
そうだとしたら最悪だぁ…
りんねは、まちーらが打たれるのを心のどこかで願ってたのかなぁ…?
「おい!!
りんねちゃん…
立てよ!!
ボ〜ッとしてんじゃないよ!!」
紗耶香の声に急に現実に引き戻された。
「何…?紗耶香…」
「『何…?』じゃないよ!!
チェンジだよ!!
行ってこい!!」
突然の紗耶香の剣幕に驚いた。
肩をつくっていた2人も、投球を止めてこちらに視線を送ってきた。
「何処へ…?」
「松浦のところに決まってんじゃん!!
いいから行けよ!!
何でもいいから励ましてやれよ!!
教育係のりんねちゃんが言うからこそ、伝わるものってあるだろ!!」
あたしは、紗耶香の剣幕に押されるようにノロノロと立ち上がった。
- 153 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月09日(日)00時30分09秒
-
まったく!!
だいたい分かるんだよ!!
何も言わなくったって!!
りんねちゃんは考えてることが顔に出るんだから!!
この間…
あれだけ言ったのに…
もっと…しっかりしろよ!!
大丈夫だって…
言ってたじゃんか!!
りんねちゃん…
もっと…
自分のピッチングに誇りを持とうよ…
何でそうなっちゃったのさ…?
- 154 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月09日(日)00時32分01秒
- タオルを首からかけてベンチに座っていたまちーらは、
中澤姐さん、小湊さん、ルルの3人に囲まれていた。
時々、軽く頷きながら、3人の話に耳を傾けている。
その表情は真剣そのもので、いつも『力があるな』って感じる目はまだ死んでいなかった。
よかった…落ち込んでなくって…
そう思えたことに少しホッとした。
「あの…姐さん…
まちーら交代なんですか…?」
「りんねか…
今…それを話し合ってたとこや…」
中澤姐さんはあたしにチラッと視線を送ると、ぶ然とした表情でそう言った。
まちーらもあたしに気付いたようだ。
「りんねさぁ〜ん」
目を細め頬を緩ませると、嬉しそうにあたしに手を振ってきた。
そんな無邪気な様子を見せるあの娘は、今のあたしにとって天使であり悪魔でもあった。
- 155 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月09日(日)00時35分01秒
- 「正直…交代させようと考えとる。
あんな状態では、何点入るか分からへん。
これ以上弱点を晒け出すと、今後の登板にも影響が出てくるしな。
とりあえず…いろんな意味で勉強になったやろ…」
「でも、でもぉっ!!まだ投げたいですっ!!
あたしは、まだあのマウンドの上で自分を表現出来てませんっ!!
このままじゃ納得出来ませんっ!!」
「うっさいわ!!
あのな、松浦…
バッターはそれこそ命張って、ピッチャーとの真剣勝負に臨んでるんや!!
それを相手の作戦とはいえ、いらんことに気を回しおって…
バッターの覚悟に対して、タメ張れてへんよな!!
打たれるのは当然とちゃうんか!?
そんなんで、自分を表現するもクソもあるか!!」
「今度は絶対に大丈夫ですっ!!
バッターに集中出来ますから…
信用してくださいっ!!」
まちーらは必死に中澤姐さんに食い下がっていた。
しかし、中澤姐さんは、そんなあの娘を鼻で笑ってこう言った。
「甘いで松浦…
あたしは、選手を信頼はしても信用はせえへん…
今シーズンからそう決めたんや!!
優勝するために!!」
- 156 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月09日(日)00時37分48秒
- 「信頼だって簡単にしてもらえると思っとったら大間違いやで…
信頼は自分で勝ち取るもんや!!
なっちだって、明日香だって、紗耶香だってみんな自分で勝ち取ったんや!!」
「それなら、あたしにも結果を出すチャンスをくださいっ!!
お願いしますっ!!」
まちーらは、そう言って懸命に頭を下げた。
何度も何度も頭を下げた。
でも、中澤姐さんは首を縦に振らなかった。
「誰もチャンスを与えんとは言ってへん!!
でも、今日はダメや!!
信用はもちろん、信頼も出来へん!!」
中澤姐さんの言うことは正しい。
りんねも信頼は自分で勝ち取るもんだと思う。
まちーらは、これから自分の手でチームメイトの信頼を勝ち取らないといけないのだ。
- 157 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月09日(日)00時40分39秒
- 他のメンバーもまちーらと中澤姐さんのやりとりに注目を始めた。
好奇の目に晒されながらも、まちーらは必死に頭を下げ続ける。
「お願いしますっ!!
あたしの初登板なんですっ!!
このままじゃ悔しくて悔しくてっ!!」
まちーらに肩入れする人間は出てこなかった。
別にあの娘が嫌われているとか、そういうことではない。
中澤姐さんの言うことの正当性をみんなが認めているのだ。
ピッチング内容から冷静に判断すれば、
傷口の広がらないうちに交代させてやったほうがいいと誰もが思う。
だから、敢えて静観を決めこんでいるのだろう。
そして…
あたしも同じようにまちーらに対して静観を決めこんでいた。
紗耶香に促されるようにここへ来たが、あたしはあの娘に一声もかけていなかった。
これで…いいのか…?
誰もがまちーらに対して、不安を抱いていた。
信頼を寄せて再びマウンドへ送り出す気持ちにはなれないのだ。
- 158 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月09日(日)00時42分36秒
- りんねも…そうなの…?
まちーらのこと信頼してやれないの…?
あの娘のことなんて…りんねには関係ないの…?
やっぱり…
あの娘のこと妬んでたのかなぁ…?
打たれればいいなんて…考えてたのかなぁ…?
キャンプの時からずっと、りんねのこと慕ってくれてたのに…
すごくいい笑顔を見せてくれたのに…
元気をもらってたのに…
りんねは何もしてやれなくていいのかなぁ…?
りんねの心の問題は、あの娘には関係ないのに…
りんねは、あの娘のたった一人の教育係なのに…
最悪じゃん…
その時、顔を上げた松浦の目から一粒、光るものがこぼれ落ちるのが見えた。
- 159 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月09日(日)00時45分16秒
「お願い…します…
投げさせて…やってください…
りんねが…責任を取りますから…
りんねは…まちーらを信頼してますから…
お願い…します…」
周囲が大きくどよめいた。
あたしはダッグアウトのコンクリートに頭をこすりつけて、
何度も何度も、まるで壊れたレコードの様に『お願いします』を繰り返した。
目の前のコンクリートには小さな水たまりが出来始めた。
りんねは…まちーらのこと信頼してます…
絶対に頑張ってくれます…
あの娘は、いつも明るくて元気で…
りんねは…いつもパワーをもらってました…
妬んでなんかいません…
打たれればいいなんて…思ってません…
本当です…
ずっと応援してました…
『頑張れ、まちーら!!』って…
本当に本当です…
だから…あの娘に投げさせてやってください…
お願いします…
- 160 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月11日(火)00時39分44秒
- どきどき。
- 161 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月14日(金)00時09分05秒
- 「これで開幕戦のなっちに続いて2連敗だねぇ…
いやぁ、本当に選手想いのいい監督さんだ…」
「うっさいわ!!しゃあないやろ!?」
皮肉をたっぷり込めてニカッと笑う小湊に悪態をついた。
ホンマ…しゃあないやろ…
まさか、りんねがあんなに取り乱すとは思わなかったんやもん…
それは予想だにしない光景だった。
あたしの目の前には、土下座をして泣きながら松浦の続投を嘆願するりんねがいた。
背中を激しく上下させ、必死に言葉にならない声をあげていた。
- 162 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月14日(金)00時10分07秒
- りんねには、ドラフト1位ルーキーである松浦の面倒を見させていた。
いわゆる教育係というやつだ。
だから、あの場面でりんねが出てくることはまったく考えられない話でもない。
でも、松浦のために泣き崩れるりんねの図はあたしには理解し難い光景だった。
りんねは、我が道をいくマイペースタイプで人づき合いがあまり上手なほうではない。
動物づき合いは上手なほうだが…
特別に仲が良いメンバーと言えば、カオリぐらいしか頭に思い浮かばない。
別に特別仲が悪いメンバーがいるわけでもないし、
それなりにみんなとやっていけているようなので問題視することもない。
あまり深い付き合いを好まないタイプなのだろう…
そう思ってたから、その光景が理解出来なかったのだ。
ルーキーの年に、比較的仲が良かった2人の選手がシーズン途中で退団した時も、
だいぶショックは受けていたが、ここまで泣き崩れることはなかった。
その場にいた全員が、一種異様なりんねの姿に圧倒された。
結局、情にほだされる形であっさり2連敗。
開幕戦のなっちの時よりあっけなかった。
- 163 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月14日(金)00時11分08秒
- 「なぁ、小湊…おまえは変やって思わなかったか…?」
りんねの事がどうも腑に落ちない。
「さっきのりんねのこと…?」
さすがに小湊は察しがいい。
あたしの問いかけに的確に反応してきた。
「そんなにあいつら仲がいいようには見えへんかったけどな…
あんなりんねは初めて見たし、ちょっと気になってな…
小湊はりんねと同じB型やろ…
そこらへんの気持ち分からへんか?」
「う〜ん…よくわからないなぁ…
りんねは、あたしやみっちゃんなんかと違って内にため込むタイプだからねぇ…
教育係やってて情が移ったんじゃないかな…
可愛くなったんじゃないの…?
松浦のことが…」
いつもより若干歯切れが悪い小湊だったが、なんとなく納得してしまった。
小湊の言葉は、いつもあたしの心の中の迷いを断ち切ってくれる。
この時もあたしはそれで安心してしまった。
『りんねも成長したもんや…ええことやで…』ぐらいに呑気に考えていた。
- 164 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月14日(金)00時12分17秒
- 「あたしも一つ聞きたいことがあるんだけど…」
小湊が少々戸惑い気味の表情であたしに声をかけてきた。
「何や?」
「何で今日の先発を松浦にしたの?
あの娘は大事に育てるように上から言われてたんじゃないの?」
それは小湊が試合前から聞きたくて聞きたくて仕方がなかった質問だと思う。
松浦の先発は、あたしが昨日決めた。
今日の先発に選ばれたピッチャーは、ローテーションの一角を担うことになる。
優勝を狙うチームにとって重要な問題だった。
コーチ陣…特に小湊とはよく話し合うべきだったろう。
でも、あたしはそれをしなかった。
あっちゃん達は『ええんちゃう』って了解してくれた。
小湊は何も言わなかったが、ちょっと渋い顔をしていた。
小湊は、あさみを推していたのだ…
- 165 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月14日(金)00時13分46秒
- 「何や…松浦じゃアカンかったか?」
罪悪感はもちろんあった。
『投手陣のことは一任する』と言ったくせに、あたしが独断で決めてしまったからだ。
小湊には、本当に申し訳なく思う。
でも、平静を装った。
指揮官としてどんな時でもドッシリと構えていたいからだ。
視線を感じると思っとったら、村田があたしのことジーッと観察してるしな…
まったく…
あいつはいったい何を企んでるんやろ…?
あたしの開き直りともとれる言葉に対して、小湊が口を開きかけた瞬間…
「もぉ〜っ!!中澤さん!!
ひどいですよぉ〜!!
ずっと待ってたんですよ〜!!」
う〜む…
本当にこういう時は、たのもしいと思うで…
その人物は、小湊との会話を邪魔するようにあたしの前にやってきた。
甲高い声でプリプリ怒っているのはトップバッターの石川だった。
そう言えば…
すっかり忘れとったわ…
- 166 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月14日(金)00時22分36秒
- >>160
どきどきしながら待っていてくださってありがとうございました。
ちょっとの間、仕事のほうが忙しくて更新出来ませんでした。
なんせ9月ですから…
言い訳にはなりませんけどね。
前は忙しい時でもちゃんと更新してましたから…
とにかく頑張らないといけませんね。
存続の危機はちゃんと感じてるので…
- 167 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月14日(金)01時54分43秒
- 野球は詳しくないんですけど、いつも楽しみに見てます。
あまり無理せずがんばってください。(ん、矛盾してる?
- 168 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月15日(土)02時53分52秒
- 石川には、バッターボックスに向かう前に1つ指示を出していた。
三浦大輔の二段モーションにクレームをつけるように言っておいたのだ。
やられっぱなしで黙っているあたしではない。
『目には目を、歯には歯を』ってやつだ。
とは言え、簡単に動揺を誘えるような相手だとは思っていない。
事を荒立てることに意味があるのだ。
今まで、なぜか『一連の投球フォームの範囲内』として、
うやむやにされてきた三浦大輔の二段モーション。
これを厳しく裁定し直してもらう機会をつくれるかもしれない。
あのモーションが規制されれば、今後三浦大輔を攻略しやすくなる。
もちろん松浦にも影響は出るだろうが、あの娘はまだこれからのピッチャーだ。
違反投球の疑いをかけられるようなフォームに固執することもない。
より良いフォームに直せばよいのだ。
いいフォークを持ってるし、小手先のごまかしなど必要ない。
1球目を投げたところで石川にタイムをかけさせて球審にアピールさせ、
その後あたしが出ていって抗議をする予定だった。
でも、りんねのことに気を取られていてすっかり忘れていた。
ほったらかしにされたことを石川はむくれているのだろう。
- 169 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月15日(土)02時55分52秒
- 「それでどうだったんや…?」
とりあえず石川に話を聞いてみることにした。
「中澤さんに言われた通り、タイムをかけて抗議したんですよぉ…
そうしたらぁ…
あっ!
そう言えば、中澤さん、聞いてくださいよぉ…!
初球はストレートだったんですけど、これがまた危ないボールで…」
「余計なことはええ…抗議したら何だって!?」
大袈裟な身振りを交えながら、
あくまでもマイペースに話を続けようとする石川を急かした。
「えっ!
抗議の話ですか…?
『違うよ』って言ってました。
『二段モーションじゃないよ』って」
何やそれ!!
もう黙認することに決めてるってことかい!!
ちゅうか石川っ!!
おまえ、そんなニコニコしとる場合とちゃうで!!
- 170 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月15日(土)02時57分42秒
- 「石川は…それで納得して引き下がってきたんか…?」
「えっ!
…あの…まぁ…
だって、中澤さんが出てこなかったし、
早くバッターボックスに入るように怒られちゃいましたから…」
どうしたものかとしばらく考えた。
経験が少ないんだから仕方ないと言えばそれまでなのだが…
まだまだこういうレベルなんやな…
当たり前やけどな…
「あのな石川…
あたしが何で抗議をしろって言ったか分かるか…?」
石川は首を捻り、ちょっと考える素振りを見せていたが、やがて…
「う〜ん…
よく分かりません。
って言うか1つどうしても聞きたいことがあるんですけどぉ…」
「何や…?」
予想通りの答えに落胆しながらも、石川の言葉を待つ。
「二段モーションって何ですかぁ…?
石川、まずそれが分かりません」
- 171 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月15日(土)02時59分41秒
- 頭を抱えたくなった。
でも、ここで癇癪を起こしても仕方がない。
この娘には根気よく野球について教えていくことが必要なのだ。
そもそも石川は、今この場にいること自体が奇跡と言っても差し支えない選手だ。
入団させることを決めたのはあたし自身だし、
こうやって使うからにはある程度のことは我慢することに決めている。
とにかく、石川の向上心には頭が下がるものがある。
自分の技術や知識が足りないのを充分承知しているから、
日々がむしゃらに努力している。
『効果的にやっているか?』と聞かれると首を捻りたくもなるが…
石川は教えられたことに対しての吸収が早いので、確実に進歩してきている。
それだから期待を込めて試合で使う。
やはり実戦…それも一軍の公式戦が一番勉強になるからだ。
どうしても今は、そのルックスゆえに周りから人気先行型のように言われてしまう。
石川自身も辛いだろう。
しかしいずれは、その誰にも負けない強みを活かして中心選手になってくれるだろう。
練習量に裏付けられた確かな技術と野球頭脳が備われば、
いつかみんなをアッと言わせる日が来るとあたしは期待している。
今は我慢なんや…
- 172 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月15日(土)03時04分15秒
- 「あのな石川…
あれ見てみ…」
そう言ってマウンド上の三浦大輔を指差した。
石川の視線があたしの指先を追う。
「ほら、一度降ろしかけた左足をもう一度上げとるやろ?
あれが二段モーションや」
「なるほど…
あれが…
あれ…?
そう言えば、亜弥ちゃんもあんな感じでピョコっとやりませんか?」
「ん…
あいつのも二段モーションやな…
まぁ、あそこまで酷くないけどな…
程度の問題じゃないんやけど…
あれをやられるとバッターのタイミングが取りづらくなるやろ?」
「そうですか?
結局は、来たボールを打ち返せばいいんだから関係ないんじゃないですか?」
簡単に言ってくれるで…
まぁ、野球に関して常識に囚われないで済むところが石川のいいところやけどな…
- 173 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月15日(土)03時06分18秒
- 「投球モーションの途中で動作を止めるとボークになるのは知ってるよな?
それで、あのモーションはボークの疑いがあるから禁止しようってなっとるんや。
まぁ、アマ側から規制するように強く言われてるのに、
プロ側の審判部が徹底しきれないんやけどな…
松浦のも本当は直したいんや…
真剣勝負に反するような気もするし…」
「あの人は、禁止されてることを何で平気な顔でやってるんですかねぇ?」
石川がまったく何気ない様子で、三浦大輔を指差す。
おまえ…ホンマに普通の人が聞きにくいことを平気で聞くな〜
こいつなら、
本人の顔を覗きこみながら『何でなんですかねぇ?』って聞ける気がするで…
- 174 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月15日(土)03時18分24秒
- 「何でやるかって言えば、そりゃ勝つためやろな。
あのな石川…
ピッチャーが力のあるボールを投げるのに重要なポイントの一つに、
足を上げた時に、軸足にきっちりと体重が乗るかどうかってのがあるんや。
体が早くバッター方向へ流れて、体重を軸足に乗せ切れないピッチャーは、
足を上げたところで、ああやって静止することで軸足に力を溜めるんやな。
そうせえへんと力のあるボールが投げられへんのや。
でも、モーションを途中で止めるのは思いっきりボークになるやろ?
だから足を動かして止まってへんように見せるんや。
バッターのタイミングも取りづらくなるしな。
違反スレスレのところを狙う苦肉の策やけどな。
それも全て、バッターを打ち取って勝つため…
夢を売るのがプロやけど、現実的な話をすれば生活もかかっとる…
みんな必死なんやで。
執拗に松浦を揺さぶってみたりな。
勝つために姑息な手段を使わなならんこともある。
それが正しいかどうかって問題は確かにあるけどな…
まぁ…
そんな話はええわ…
とにかく3点リードされとるんや。
よう考えんとな…
なぁ、石川?」
- 175 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月15日(土)03時27分11秒
終止あたしの話を真剣に聞いてくれた石川。
その石川が持つ情熱と、あたしの教えようとしていることは相反するものに思えた。
何だか話を続けるのが辛くなってきた。
ただ純粋に、力と力、技術と技術のみをぶつかり合わせることが出来たら、
どんなに素晴らしいだろう?
しかし、あたし達がやっているのは悲しいかな職業野球。
1つ1つのプレーに対して結果が求められる。
この石川には、あたしの話はどう聞こえたのだろうか?
- 176 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月15日(土)03時36分44秒
- >>167
レスありがとうございます。
野球が詳しくないにも関わらず読んでくださる読者がいることは、
とても嬉しかったです。
(まぁ…自分もたいして詳しくないですけどね。
適当なことばっか書いてる…
逆に詳しい人が読むほうがキツイ作品になってるでしょうね。
本当に申し訳ない)
次回は、ちょっとメインのストーリーをちらつかせるところまで書ければいいなと思ってます。
意外な2人を…
無理かな?
- 177 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年09月15日(土)23時11分30秒
- 石川って、そんな凄い選手なんだ〜。
わくわく
- 178 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月16日(日)01時01分47秒
- ぶ〜っ!!
三浦のあんちゃん、ちぃ〜っとは加護に打たしてくれてもええのに〜!!
加護の苦手なとこば〜っか…
亜弥ちゃんのために打たなアカンのに〜!!
2番バッターの加護は、不満げにマウンド上の三浦大輔を睨みつけた。
ワンバウンドになるフォークを空振りしてカウントツーエンドツーと追い込まれた。
実は加護は、マウンド上の三浦大輔とはちょっとした知り合いだったりする。
でもチームの誰にもそのことは話していなかった。
なぜかと言えば、かっこ悪いからだ。
昨シーズン10打席の対戦機会があったが、ヒットは1本も打っていない。
それどころか6個の三振を奪われてカモにされていた。
もちろん知り合いだから打てるというものではない。
その人となりは知っていても、弱点を知っているわけではないからだ。
それなのに加護は『知り合いのくせに打てへんかったら笑われる』
という強迫観念に囚われているのだ。
他人からすれば『なんで?』って思うことを、とにかく加護は気にするのだ。
- 179 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月16日(日)01時03分36秒
- マウンド上の三浦大輔は、加護の弱点をよく心得ていた。
初球は、人を喰ったようなスローカーブから入った。
わずかに外れてボールになったが、それでも充分だった。
加護の顔色が変わったのを確認出来たからだ。
加護はバッターボックスに立った時、確実にヒットを狙うことだけを心掛けていた。
何としても松浦のために点を取るつもりでいた。
ここで『チームのために』とならないところが加護らしいのだが…
まぁ…それはさておき、
とりあえず確実に出塁することだけを考えていたのだ。
しかし、三浦大輔の初球スローカーブにそんな殊勝な考え方は崩された。
も〜っ!!
加護が、あんちゃんのこと打ってへんと思ってバカにしてぇ〜っ!!
センターから左方向に向いていた加護の意識が、ライトスタンドへ変わった。
時に情緒不安定ともとれる加護の『静』と『動』の二面性。
スイッチは完全に切り替わっていた。
- 180 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月16日(日)01時04分57秒
- 「加護ぉーーーーーっ!!
大振りすんなーーーーーっ!!」
ダッグアウトから矢口の激が飛んだ。
「あいつ本当にアホだよ!!
あれは絶対に一発狙ってるよ、圭ちゃん」
憤慨する矢口を隣に座っていた保田がなだめる。
「まぁまぁ…加護の場合は、三味線スイングの時もあるから…」
加護は、本来バッテリーとの駆け引きが上手いバッターだ。
普段の様子から考えるとそぐわない冷静な観察眼を持っていて、
バッテリーの裏をかくことを得意としていた。
でも、この場面は違った。
加護は、三浦大輔に対して意識過剰だった。
自分を制御することが出来なくなっていた。
すっかり見下ろされたピッチングをされていたのだ。
- 181 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月16日(日)01時06分09秒
- 外角のボールを続けられて、
これをファールするうちに加護はジリジリとベース寄りにおびきだされた。
加護の大振りはまだ続いていた。
冷静に考えれば、
加護のパワーで外角いっぱいの球をライトスタンドへ強引に運ぶことなど無理だ。
でも、そんな判断もつけられなくなっていた。
最後は内角にズバッとストレート。
手が出せなかった。
加護にとってこれほど不本意な結果はないだろう。
急遽、第3戦の先発を言い渡された三浦大輔の立ち上がりは万全ではなかった。
開幕投手を小宮山に奪われた悔しさを晴らし、
チームの危機を救うべく彼はマウンドに上がった。
しかし、その気迫が少々空回りして投球のバランスは崩れていた。
打ち取りはしたが、1番の石川には球が荒れてフルカウントまで粘られた。
ストライクとボールがはっきりした不安な内容だった。
でも、加護が出てきたことが彼を冷静にさせた。
彼にとっては、それほどやりやすい相手だったのだ。
緩急を使い、丹念にコーナーをつく本来のピッチングで加護を翻弄した。
これで、彼は調子の波に乗った。
- 182 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月16日(日)01時07分31秒
- ネクストバッターズサークルであたしは少し不機嫌だった。
カオリ…
何をイライラしてるの…?
あの娘達、何にも考えてないんだもん!!
梨華ちゃんと加護ちゃんのこと…?
うん…
石川はボール球に手を出すし、加護は振り回すし…
自分がしなければならないことが分かってないんだよ!!
しょうがないよ…
まだまだ2年目の選手なんだよ…
ゆっくり失敗しながら覚えていけばいいんだよ…
そんな甘いこと言ってたら、勝てるものも勝てなくなるよ!!
じゃあカオリはどうだったの…?
2年目にそんなチームプレイなんて考えられる選手だったの…?
……
ふとバッターボックスに視線を移した。
3番の後藤は三浦さんのスライダーに見逃し三振に倒れた。
- 183 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月16日(日)01時09分38秒
- 後藤は、何だか冴えない表情で戻ってきた。
右肩に担いだバットをトントンと弄びながら、『ふぅ〜っ』と大きく息をはいた。
「後藤…
ストレートを待ってたの…?」
「ん…
まぁ、そんなとこ…」
後藤の答えは、そっけなかった。
「そっか…」
後藤が、急にふにゃっと表情を緩めた。
「アハッ、ヤマが外れちったよ…
カオリ頼むよ…
後藤…
今日打てないかもしんない…」
そう言い残すと、後藤は足早にダッグアウトに下がっていった。
後藤まで…
なんとか流れを変えないといけない…
- 184 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月16日(日)01時16分46秒
- >>177
石川さんは現状、凄い選手ではありません。
きちんと足を引っ張ってくれるタイプの選手です。
中澤監督が見抜いた才能が開花すればいずれは…?
レスありがとうございました。
結局、書く予定だったところまで書けなかった。
明日は休みなので頑張りたいですけど、筆がのるかどうか…
- 185 名前:@名無し 投稿日:2001年09月16日(日)02時14分45秒
- ごっちんが元気ないのは他にも原因が?
このまま第三戦は三浦大輔相手にダラダラいくのか、それとも…ラッキーガールが…?
先が楽しみです〜
更新楽しみにしてますんで頑張って下さい〜
- 186 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月16日(日)09時39分36秒
- 教育係の保田さんの指導は?(w
後藤どうしたんでしょう?
- 187 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)16時38分43秒
- こういうときに頼りになるのはやっぱりカオリ!
……だといいな…
- 188 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月16日(日)16時58分04秒
- 元来、娘。のムードメーカーは飯田だから何かやらかしてくれるだろう
- 189 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月17日(月)00時15分41秒
- いつもなら試合開始早々にブルペンに引き蘢ってしまうのに、
この日は、たまたまダッグアウトにいた。
理由は別にない。
誰かに『何で?』と聞かれれば、
『別に…ここに居たかったから…』としか答えようがない。
更に、もれなく『あたしの勝手でしょ…』までセットで付けてしまうかもしれない。
まぁ、それはさすがに良くないと思ってるから飲み込むだろうけど…
ダッグアウトの中では、ちょっとした事件があった。
りんねちゃんが、亜弥ちゃんの続投を涙ながらに嘆願したのだ。
その光景に誰もが息をのみ、胸を熱くさせた。
正確に言うと、あたしを除いてだが…
- 190 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月17日(月)00時16分34秒
- 誤解のないように言っておくが、別にその光景を冷ややかに見ていたわけではない。
りんねちゃんの行動の裏にあるものを感じ取っていたから、複雑な気分だったのだ。
もちろん、それはあたしの思い過ごしなのかもしれない。
でも、何かが引っ掛かってそういう気分にはなれなかったのだ。
どうも、あたしにはこういうのが多い。
純粋に感動を楽しめないのだ。
以前はそんなこと考えもしなかったのだが、
誰もが一様に感動するものに対して、一人だけ感動出来ないのは情けない気がする。
まぁ、純粋に感動出来たとしても、それを素直に表現する術も持っていないのだが…
- 191 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月17日(月)00時17分29秒
- マウンド上では、亜弥ちゃんが必死にマウンドを守っていた。
流れ落ちる汗を拭いもせず、バッターに向かっていく。
彼女は二死からヒットを許し、またランナーに揺さぶられていた。
スタンドのファンは、そんな彼女を後押ししようと大声援を送る。
ルーキーながら逆境にけなげに立ち向かう姿が、ファンの心を捕らえたのだろう。
なっちのプロ初登板をちょっと思い出した。
最初は小さな1つの声援だった。
東京ドームでの巨人との開幕戦。
それは巨人ファンひしめくライトスタンドから送られた。
そして回が進むごとに、その声援はだんだん大きくなり、
やがて徐々にスタンドのあちこちに広がっていった。
それは異常な光景だっただろう。
巨人ファンが、なっちの応援をしているのだから…
何度もピンチを迎えながら、胸が透くような速球でなっちは巨人打線に立ち向かった。
打線の援護もなく、小さな体で孤軍奮闘。
それは敵味方関係なく、野球ファンの心を掴む快投だったのだ。
未だにUFAファンではないけど、なっちは応援しているという野球ファンは多い。
- 192 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月17日(月)00時18分53秒
- プロ野球を『感動ファクトリー』と定義するとしたら、
なっちや亜弥ちゃんは、良き生産者ということになるだろう。
それに比べてあたしはどうだろうか…?
ポーカーフェイスで淡々と投げる姿は、人々に感動を与えまい。
そんなあたしは落ちこぼれの生産者なのだ。
そして、あたしは消費者としても落ちこぼれだ。
亜弥ちゃんが必死に投げているのを見て、
感動するよりもまずフォームのバラツキのほうが気になっていたのだから…
ハン…本当にあたしは嫌なやつだ!!
そして、どうしようもなくバカだ!!
こんな下らないこと考えて…
「ねぇ…」
心の中で毒づいたあたしに誰かが声をかけてきた。
上を見上げると、意外な人物がそこに立っていた。
「ねぇ、福ちゃん…ちょっといいかな〜?」
そう言ってふにゃ〜っと笑いかけた人物は…
後藤真希…
- 193 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月17日(月)00時19分57秒
- 「何か用…真希ちゃん…?」
「アハハッ、別に用ってほどでもないんだけどさ〜」
とは言え、彼女が用もないのにあたしに話しかけてきたことなど一度もない。
どうやら、彼女はあたしが苦手らしい。
あたしの方は、彼女に対してまったくそんな意識はない。
むしろ、多少なりの親近感は持ち合わせているのだが…
まぁ、あたしのことが苦手なら苦手で仕方ない。
それについて、とやかく言う必要もないし、特に構えることもない。
いざ隣に座った彼女は、ソワソワと落ち着かない様子だった。
意味もなく『アハハッ』と笑ってみたり、足を忙しなく組み換えたりして、
なかなか話を切り出そうとしない。
これでは埒が明かないのであたしから声をかけた。
「あたしで相談に乗れることなら乗るけど…」
「本当っ!!いいの〜っ!?」
そう叫んで、パッと顔を輝かせた彼女を見て思った。
こりゃ、確かに可愛いわ…
- 194 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月17日(月)00時21分15秒
- 「あのさ〜
後藤、福ちゃんに1つ聞きたいことがあるんだよね…」
「何…?」
「福ちゃんさ〜
市井ちゃんと仲いいじゃん…
よく話するよね?」
「まぁね…」
「最近さ〜
後藤のこと何か言ってなかった?」
なるほど…
それでわざわざ…
「さぁ…何も聞いていないけど」
「本当に…?」
彼女は、すがりつくような目であたしの目を見つめた。
「真希ちゃんに隠し事なんかしても、あたしにはメリットなんてないから…」
それを聞いた彼女は、諦めたように視線を逸らすと、表情を緩めた。
「そっか…そうだよね〜
ごめんね、福ちゃん…疑って…
それでさ〜
悪いんだけど、後藤が福ちゃんに市井ちゃんのこと聞いたの内緒にしてくれる?」
あたしが頷いたのを確認した彼女は、ゆっくりと席を立った。
- 195 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月17日(月)00時22分34秒
- 『これから反撃や!!』と思ったのも束の間。
あっという間にその糸口は断ち切られてしまった。
4番のカオリが打席に入る前、なんとか突破口を開いてもらうように頼んだのだが、
カオリはこの願いを聞き届けてくれた。
コンパクトなスイングで一二塁間を破るチーム初ヒットを放った。
しかし、5番の吉澤は初球の外角のスライダーを引っかけてゲッツー。
好調の6番矢口も当たりはよかったのだがセカンドライナーに倒れた。
本当にあっという間の出来事だった。
「何も出来なかったね、裕ちゃん」
「まったくやな…
吉澤も初球からいくような球とちゃうのにな…」
愚痴をこぼしながら、しのちゃんとお互いに顔を見合わせた。
今日の三浦大輔の調子は、いいと判断していた。
ストレートが走っているので、スローカーブを思い切って使ってきていた。
コントロールもよく、最高に近い状態だろう。
まったく頭の痛いところやで…
- 196 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月17日(月)00時23分34秒
- ブルペンでは、りんねちゃんとレファが投球練習を開始していた。
少しりんねちゃんのことは気にかかっていたのだが、
ピッチングのほうに影響はないみたいだったので安心した。
今日は却って投げさせてあげたほうが、りんねちゃんにはいいだろう。
「今日は重役出勤じゃんか…
いったいダッグアウトで何を話してたんだよ…」
隣に座るなり、紗耶香が真剣な目であたしを睨む。
こりゃ面白い…
「何のこと…?」
「後藤と何か話してただろ?」
「さぁ…どうだっけ…」
「はぐらかすなよ…」
こんなやり取りを楽しめるのは紗耶香ぐらいなので、
もっと続けたいところだったが、これ以上は紗耶香が本気で怒るだろう。
それだけあの娘に関しては、紗耶香は真面目に考えているのだ。
- 197 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月17日(月)00時25分15秒
- 「こんなところから見えるの…?
すごいね…」
ブルペンの中から自軍ダッグアウトの中を確認してみたが、
あたしにはとてもどこに誰がいるかなんて認識出来なかった。
「そんなことはどうだっていいんだよ…
いったい後藤と何を話してたんだよ…?」
「教えられない…」
「何で!?」
「真希ちゃんと約束したからだよ…
本当は、話をしたことすら言わないようにって約束したんだけど、
思わぬところにデビルアイの持ち主がいたから…
とにかく…これ以上は絶対に言わない!」
紗耶香の顔が、苦虫を噛み潰したような表情に変わった。
あたしの頑固さをよく知っているからだ。
- 198 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月17日(月)00時26分58秒
- 「なぁ〜頼むよ、明日香ぁ」
それでも紗耶香は諦め切れなかったようだ。
あたしのアンダーシャツを掴んで駄々っ子のように揺さぶってきた。
「ダメ!離せ!」
「ねぇ、あ〜ちゃ〜ん…」
「ダメ!ダメ!ダメ!」
「ねぇ〜ん明日香ぁ〜ん」
「キショイ!ヤメロ!」
「教えてくれないなら…市井…死んじゃおっかな…」
「死ね…」
「もう泣いちゃお…エーン、エーン…ねぇ、心配にならない?」
「おととい来やがれ!」
ネタが尽きたのか、紗耶香は大きなため息をはいた。
「チェッ、本当に頑固なやつだな…可愛くないぞ!!」
そう言って紗耶香は苦笑してみせた。
あたしはそんな紗耶香にいつもの控えめな微笑みを返した。
そうだよ紗耶香…
あたしは可愛いげのない嫌なやつなんだよ…
- 199 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月17日(月)00時36分52秒
- >>185
从 ~∀~ 从 ホンマ、ラッキーガール現れへんかな〜
>>186
( `.∀´) 石川さん…?あんた、あたしに恥をかかせたわね!!
\(^▽^)/ 例の顔だけは許してくださぁ〜い
>>187、188
[ ゜皿 ゜] 任せなさい!!
みなさまレスありがとうございました。
久々の返信レスAAスペシャルでした。
- 200 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月17日(月)23時50分16秒
- 「集まれ〜!!ちょっと…みんな集まって!!」
3回の裏の攻撃前、飯田の呼び掛けでダッグアウト前に円陣が出来た。
「カオリは悲しかった…
全然ダメ…
このままじゃ三浦さんにいいようにやられるよ!!
みんな悔しくないのかよ〜!?
はいっ…みんなこっち注目〜!!
人っていう字はね…
こうやってお互いに助け合って出来てるの…
こっちの棒がね…
変な方向に向いてたら人っていう字にならないの…
分かった…?」
「矢口からもちょっと言わせてもらっていいかなー?
あのさー
なんか打線なのに『線』になってないって感じ?
いちいち個人攻撃はしないけどさー
みんなで打線が『線』になるようにしようよ。
そのために自分に何が出来るかよく考えようよ」
それぞれ表現の仕方は違うが、伝えようとする想いは同じだった。
どっちが分かりやすいかなんて関係ないのだ。
- 201 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月17日(月)23時52分36秒
- 飯田と矢口に続いて、ヘッドコーチの信田の指示が飛ぶ。
「カオリと矢口の言う通り。
今日の三浦は、それぞれが勝手なバッティングしてたら掴まえられないよ。
まず狙い球を決めよう。
走っているストレートとスローカーブは捨てて、比較的甘いスライダーを狙おう。
右バッターは無理に引っ張らないこと。
センター中心に打ち返してプレッシャーをかけていこう。
それと球数を増やすことも考えよう。
ほぼスクランブル登板のはずだから、調整が充分でない可能性があるからね。
とにかく早めに1点取ろう!!
じゃあ一発気合い入れて!!」
メンバー全員の手が中央で1つに重なる。
「頑張っていきま〜っ…」
『しょ〜いっ!!』
矢口の声に続けて、大きな声が響き渡った。
その時…
メンバーそれぞれが気持ちを引き締め逆転への意欲をみせる中で、
後藤の表情だけは曇っていた。
- 202 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月18日(火)19時39分31秒
- 後藤・・・
心配だ・・・
- 203 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月19日(水)00時21分41秒
- 「くそ〜っ!!あれ入ってるのかよ〜」
三浦さんの外角高めいっぱいのストレートに三振に倒れた保田さんが、
納得出来ないといった表情で戻ってきた。
あたしは、これから公式戦初の打席に立つことになる。
ちょっと複雑な気持ちだ。
なぜなら『この回ランナーが出たら代打を出す』と中澤さんに言われていたからだ。
もう1回投げられるのは嬉しいのだが、チームの状況を考えると手放しで喜べない。
円陣を組んだ直後の攻撃だったが、2者連続三振。
三浦さんのピッチングの前にムードを変える1打は出なかった。
りんねさんのおかげで中澤さんにチャンスをもらえたのだが、
どうもしっくりこなかった。
点は与えていないし、初めての三振も奪った。
それなりに成果はあった。
ランナーに揺さぶられながらもバッターを抑えられたのは、今後につながるし、
快心のストレートで谷繁さんから奪った初の奪三振は、一生忘れられないだろう。
それなのに…何かが物足りなかった。
- 204 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月19日(水)00時24分46秒
- 保田さんの言葉…
『あんたは、マウンドで自分を表現出来てる?』
りんねさんの涙…
『りんねが…責任を取りますから…
りんねは…まちーらを信頼してますから…
お願い…します…』
ぐるぐるぐるぐる…
頭の中で渦巻いていた。
あたしは…
りんねさんが期待してくれているようなピッチングをしてへん…
自分らしいピッチングを…
って言うか…
何が自分らしいピッチングなのかもよう分からへん…
でも…
このままマウンドを降りたらアカンような気がすんねん…
みんなに迷惑かけておいて…
何にも出来へんのは…
悔しいねん…
そんなの…松浦亜弥とちゃうねん…
- 205 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月19日(水)00時26分07秒
- 三浦さんには、開幕戦のなっちさんに対して感じたような気迫があった。
『っしゃぁ〜っ!!』とうちのチームの斉藤さんみたいに吠えるでもなく、
ガッツポーズをすることもない。
でも、強烈な迫力を感じた。
勝利への執念もしくはエースのプライドみたいなものが、オーラとして立ち上っていた。
この人もなっちさんも、チームの看板を背負うエースなんやな…
そして、チームのためにその証を示さなアカンねんな…
三浦さんは、
左バッターボックスに立ったピッチャーのあたしに対しても手を抜くことがなかった。
スローカーブやフォークも交えて、普通のバッターと同じような攻めをしてきた。
三浦さんの気迫に対する谷繁さんの応えのリードだろう。
エースの三浦さんがマウンド上で表現するものに対して、
その球を受けるキャッチャーの谷繁さんが最大限のリードで応える。
そして、そのリードに込められた想いはチーム全体に伝わる。
『絶対に勝つんだ』という強い想い…
だから…今日の横浜は手強いのかもしれへん…
- 206 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月19日(水)00時27分32秒
- ほんのちょっとだけど、胸の中でわだかまっていることがあった。
それは、意地っ張りな自分にとってどうしても譲れないことで…
みんなにメッセージを送るなんて、おこがましいんだけど…
自分の想いを表現したい…
やられたまんまは…悔しいねん!!
- 207 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月19日(水)00時34分50秒
- >>202
( ´ Д `) レスありがとう…心配かけてゴメン…
すっきりしない展開になってますが、そろそろ第5話も締めの方向で…
第6話は 〜悔し涙 ぽろり〜 の予定です。
- 208 名前:202 投稿日:2001年09月20日(木)20時19分15秒
- 面白いな〜
9回裏同点で後藤のサヨナラホームランで市井に白星がつくって展開もあったら嬉しいです
- 209 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月21日(金)00時02分08秒
- 「ちょっと松浦…大丈夫なの?
気持ちは分かるけど、無理するとピッチングに響くわよ。
攻撃はあたし達に任せて、あんたはピッチングのことだけ考えなさいよ」
4回の表。
マウンドに立った松浦は、ハアハアと息を切らせていた。
つい先程、セーフティバントを試みて全力疾走したからだ。
少しでも荒れた息を整えようと、深呼吸を繰り返している。
もう『情けない!!』の一言だ。
投げるので精一杯の状態の松浦に、攻撃の心配までさせているのだから。
自分のふがいないバッティングに腹が立った。
「保田さんっ!!
あたし悔しいんですっ!!」
何なの…あんたは唐突に?
そりゃ、あたしだって悔しいわよ…
松浦は、その立派な逆八の字の眉毛をキッと吊り上げ、ぷくっと頬を膨らませていた。
落ち込んだり…張り切ったり…
忙しない娘だ…
いったいどんな動力源で動いているのかしら…?
- 210 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月21日(金)00時03分55秒
- 「せっかく続投させてもらってるのに…
結果を出せてないじゃないですかぁ!!
自分らしいピッチングなんて出来てませんっ!!
このままじゃ…りんねさんに恥をかかせちゃいますっ!!」
何てよく出来た娘なのかしら…
りんねがうらやましい…
突然、脳裏に浮かんだ我が愛弟子の顔。
\(^▽^)/ウフッ恥をかかせちゃいましたぁ!
くっ…
そのうち…
そのうち…きっと…
あたしが見捨てたら…誰があの娘のこと面倒見てやれるってのよ…
そんなあたしの心の声も知らずに松浦の話は続く…
「あたし…やられた分は絶対にやり返したいですっ!!
やられっぱなしは…あたしらしくないですっ!!」
そう言って、松浦が視線を向けた先には、この回の先頭打者5番の佐伯さんがいた。
- 211 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月21日(金)00時12分51秒
- >>208
レスありがとうございました。
この先どう試合が展開していくのか…
いろいろ想像していただけると嬉しいです。
203で『奪った奪三振』なんていう恥ずかしい間違いがありましたね…
どうも失礼いたしました。
自分で後で読んでみて興醒めしちゃいました。
- 212 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月21日(金)15時46分19秒
- この小説での、保田教育係就任のエピソードとか
石川入団のエピソードが知りたいです。
第7話は『計算違い?」
- 213 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月22日(土)23時57分32秒
- 試合開始前からあたしを苦しめ続けていた胸のドキドキ感…
5番の佐伯さんを打席に迎えた途端、それは最高潮に達した。
右に左に体を捻る。
そして前屈。
さらにキューッと心臓を締め付けようとする何かを追い出すように大きく息をはいた。
こんなドキドキなんて関係あらへん…
気にするな…
気にするなぁ!!
まっつうらぁ〜!!
ここに立っていられることを単純に楽しめばええねん!!
そして…
その喜びを体全体で表現するんや…
ありのままの自分をぶつけろ!!
出来るやろぉ?
このままじゃ悔しいやんかぁ?
やり返さなアカン!!
よぉ〜しっ!!
いくで!!
いくでっ!!
いくでぇ〜〜〜〜っ!!
松浦亜弥っ!!
いっくでぇ〜〜〜〜っ!!
- 214 名前:実況くん 投稿日:2001年09月22日(土)23時59分42秒
- 『ズバンと快速球っ!!
144km/h!!
佐伯、見逃してワンストライク!!
前の回の攻撃で全力疾走した後だけに心配されたんですが…
落合さん、影響はないと見ていいですか?』
『若いから体力もあるし大丈夫でしょ…?
あれで疲れたなんて言ってたらベテランに怒られますよ…
却ってあれで余計な力が抜けたんじゃないかな…』
『そうですね。
僕も落合さんのおっしゃる通りだと思います。
マウンドでピョーンと飛び跳ねるような感じが戻ってきてますね。
キャンプで見た時に、若々しい感じですごくいいなって思ったんですけど…
それと…今のは、あまり二段モーションっぽくなかったですね』
『その辺はどうなんですか、落合さん?
コーチから何らかの指導があったんですかね?』
『体重移動がいいタイミングで行われて、投げ急いでいる感じがなくなったね…
おそらく指導があったんでしょうね…
もし、自分で意識して修正してきたとしたら、ものすごいルーキーですよ…
もちろん、指導されてすぐ修正出来るのも、すごいことですけどね…』
- 215 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月23日(日)00時01分16秒
- 松浦のフォームが変わった…
軸足の踵を上げピョーンと跳ね上がった後、
二段気味だった左足の振りがスムーズなものになっていた。
きれいにバックスピンのかかったボールが、要求通りのコースに決まった。
まっすぐ…
まっすぐなボールだ…
変わっていたのは、フォームだけじゃなかった…
- 216 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月23日(日)00時02分36秒
- 早いテンポからの2球目は、内角膝元付近へのボールになるスライダー。
佐伯さんのバットは、かろうじて止まった。
松浦はボールを受け、サインを確認すると、すぐさま第3球目を投げ込む。
手元でストンと落ちる快心のフォークに今度は佐伯さんのバットが回った。
ピョンピョン跳ねる松浦のテンポに佐伯さんは堪らずタイムをかけた。
ゆるりと素振りを繰り返し松浦を焦らそうとする。
しかし、松浦はこれに動じない。
第4球目も要求通り。
球威のある内角高めのストレートをファールさせた。
これで、今の松浦のフォークなら簡単に三振が取れるわね…
1球遊ぶことなんてない…
今の松浦のテンポも大きな武器なんだから…
松浦にフォークのサインを送る。
すぐに頷いて投球開始と思いきや…
松浦は首を振った。
- 217 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月23日(日)00時05分23秒
- 「どうしたの…?
せっかくいいテンポで投げてたのに…」
一応そんな聞き方はしてみたが、例のごとく眉毛をキッと吊り上げ、
ぷくっと頬を膨らませたこの娘が、何を言い出すのかは予想出来ていた。
「ストレートがいいですっ!!
ストレートを打たれたから、ストレートで三振を取りたいですっ!!」
やっぱりかよっ!!
「あのね、松浦…
つまらない意地を張ってもしょうがないのよ。
あんたのフォークなら確実に三振が取れるんだから…
チームの勝利が優先なのよ…」
「イヤですっ!!」
カ〜ッコ悪いよ チームのためなんて
い〜じゃん い〜じゃん 自分のためで!!
た〜のしく行こうぜ!!一度の人生!!
人生 人生 英語でラ〜イフ!! ♪
( `.∀´)『つまり、ライフカードってことなのね…』
って…
あんたは『中村俊介』か!?
そして…
何であたしが『マギー司郎』なのよっ!!
- 218 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月23日(日)00時06分32秒
- 「松浦…
これ以上…
点は与えられないのよ…
せっかく調子も上がってきたっていうのに…
何でこんなところでわがまま言うのよ…
フォークでいこう…ね?」
「イヤですっ!!」
カ〜ッコ悪いよ チームのためなんて
い〜じゃん い〜じゃん 自分のためで!!
た〜のしく行こうぜ!!一度の人生!!
人生 人生 英語でラ〜イフ!! ♪
( `.∀´)『結局、ライフカードってことなのよ…』
だから…
何であたしが『マギー』なのよっ!!
って言うかそれどころじゃないわよっ!!
「松浦っ!!」
- 219 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月23日(日)00時08分13秒
- 「保田さんっ!!
勘違いしないでくださいっ!!
ただのわがままじゃありませんっ!!
やり返さないとダメなんですっ!!
それを皆さんに…
皆さんの心に刻みつけたいんですっ!!」
甘いよ…松浦…
みんな悔しいのよ…
やり返したいのよ…
それは分かってるのよ…
でも…気持ちだけじゃどうにもならないこともあるんだよ…
状況を把握しなさいよ。
焦らなくてもチャンスはある。
ここは…全然そんな意地を張る場面じゃない。
でもさ…
今日が初登板のルーキーのくせに…
チームのエースみたいなこと言っちゃって…
何て言うか…
りんねが、あんなにしてまで続投させようとするんだもんね…
たいしたもんだわ…
ちょっと妬けちゃうわよ…
- 220 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月23日(日)00時09分24秒
- 「あんたの言ってることは、ちょっとした思い上がりよ!!
気持ちは分かるけど、話が自分中心なのよ!!
周りが見えてない!!
あんたが首を振った時点で、佐伯さんはあんたのストレートを読んでるのよ!!
そこにストレートを投げるのが、どんなに危険なことか分かってるの!?」
「でも…抑えてみせます…
ストレートで…
だから…」
さすがの松浦もあたしの剣幕に口籠った。
なんだかんだ言っても葛藤もあるのかもしれない。
ただ、あたしのことが怖かっただけかもしれないが…
まぁ、あんまりイジメるのも可哀想か…
ピッチャーを育てるのもキャッチャーの仕事だしね…
何より、こういうまっすぐな情熱ってのは気持ちいいじゃない…
慣れてくると、技術の方に目が行って忘れがちになるからね…
- 221 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月23日(日)00時10分44秒
- 「根拠のない自信なんか誰も信じないわよ!!
でも…まぁ…
分かった…
またりんねに泣きつかれても困るからね…
その代わり…組み立てを変えるわよ。
それでもいい?
それと言っとくけど、いつもこんな調子で事が運ぶと思ったら大間違いだからね!!」
「はぁい!!
よいですっ!!」
一転、松浦の顔がパッと明るく輝いた。
この瞬間、何か騙されてるような気持ちになるのよね…
まぁ…
いいか…
松浦の情熱に期待しましょうか?
ねぇ…
りんね…
- 222 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月23日(日)00時19分53秒
- >>212
石川入団のエピソード及び保田教育係就任のエピソードは、
石川編でお見せできるでしょう。
第7話というわけにはいかないっすけどね…
『計算違い?』のタイトルはどっかで使わせてもらうかも…?
第5話を書き終えるつもりだったけど無理でした。
試合中に松浦のフォームが変わるのは実際は問題ありますね。
1球1球変えるような悪質なことはないので御容赦をって感じですけど…
- 223 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月23日(日)09時30分01秒
- お〜、更新されてる〜。
そろそろドラフトの季節ですね〜。
石川編ってのがあるんだ〜。楽しみだな〜
- 224 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月24日(月)00時03分01秒
その瞬間…
ずっと心臓を締め付けていた何かがシュワ〜ッと溶けていくような感じがした。
勝利者だけが得られる開放感?
とにかく体が軽くなったようだ。
興奮で背筋がゾクゾクッとしてきて…
何がなんだか分からなくなって…
気がついたらマウンドの上でピョーンと飛び跳ねていた。
『やったぁ〜!!』なんて叫びながら…
すごい!!
すごいっ!!
すごぉ〜いっ!!
もう、めっちゃすっきりやぁ〜
こんな時に不謹慎やけど…
気持ちええわぁ〜
- 225 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月24日(月)00時04分13秒
- 「もう1度聞いてもいいかな…
何で今日の先発を松浦にしたの?」
マウンド上で飛び跳ね、喜びを表現する松浦を見つめながら小湊はそう聞いてきた。
「インスピレーションやな…」
「インスピレーション…?」
小湊は怪訝そうな顔をあたしに向けた。
「まぁ…
大連勝が始まるようなインスピレーション〜
イェイ!イェイ!
幕が上がりさえすればもう あと楽勝〜♪
ホンマかいな〜♪
…ってとこやな」
ノリノリのあたしを小湊は冷ややかに見つめる。
「たまに裕ちゃんが分からなくなるよね…
昔はこんなじゃなかったもんねぇ…
あのさ…
ズバリ聞くけどさ…
ひょっとして…上から松浦を先発させるように圧力がかかったんじゃないの?」
一瞬の沈黙…
- 226 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月24日(月)00時05分50秒
- 「アホ!!
あたしがそんな圧力に屈するような人間やと思うか?」
ニヤリと口の端を歪めながら、小湊を横目で見やる。
小湊は鼻で一瞬フッと笑うと、ニカッと八重歯をチラつかせた。
「そう…
それなら困るなぁ〜
何の相談もなしに勝手に決められちゃぁ〜
一応、投手陣については全権を委ねられてるんだけど…
裕!・ちゃん!・にっ!・頼!・まれ!・てっ!!」
「おまえ…
そんななぁ…
あぁ〜〜〜〜っ!!
ええ…もう分かった!!
悪かった!!
あたしが悪かったっちゅうねん!!
ただな…
うまく言えへんけどな…
ピンと来たんやな…
あの目を見た時にな…
こいつなら…やってくれるんちゃうかなって…」
- 227 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月24日(月)00時07分40秒
- 「目…?」
「ん…加えて言うならあの眉毛やな…
あの辺のパーツがな…
何か…こう主張しとるんやな…
『負けないぞっ!!』って感じでな…」
眉を吊り上げ、頬を膨らませて松浦のマネをしてみた。
「やめときなよ、裕ちゃん…素材が違うよ…」
「まったくや…勘違いしたらアカン」
しのちゃんの言葉にあっちゃんが頷く。
失礼な!!
あんたらにもその言葉そっくりそのまま返すで!!
「何だ…
『信用も信頼も出来ない』とかボロクソに言ってたのに、
そんな目であの娘のこと見てたんだ?」
「あのな小湊…
確かに信頼は出来へんけど…
めっちゃ期待はしとる!!
松浦に限ったことやない…
これっぽっちも期待してへん選手なんて…
1人もいないんや…」
- 228 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月24日(月)00時08分51秒
みんな、それぞれいいところがあるし…
めっちゃ努力してる…
それに何より…
みんなのこと…大好きやもん…
- 229 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月24日(月)00時10分15秒
- 「亜弥ちゃーん!!
ナイスピッチング!!
この調子でいこー!!」
矢口さんの明るい声がグラウンドに響く。
「はぁ〜い
皆さぁ〜ん!!
元気出してぇ…いきましょうっ!!」
佐伯さん、ズーバーと2者連続三振。
ここにきて初めてプロのマウンドに立った実感がわいてきた。
やっぱりよそ行きやったんやなぁ…
でも…
これからは…
『負けないぞっ!!』
『明るく元気に頑張るぞっ!!』
第5話 〜ドッキドキ!初登板〜 完
- 230 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年09月24日(月)00時21分46秒
- >>223
ドラフトの季節か…
近鉄のマジックは3だし…
開幕と同時期に始まった小説なのにね(w
惰性で続いてるような感じは否めないのかもしれない。
もうちょっと頑張らないとね。
もっと危機感を!!
- 231 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月24日(月)18時46分26秒
- 辻って何かあったの?
- 232 名前:202 投稿日:2001年09月28日(金)18時31分18秒
- 再開キボンヌage
- 233 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年10月07日(日)00時08分07秒
- ちよっと間が開いてるので状況報告。
放棄じゃありません。
誰も心配などしてないとは思いますけど…(w
1話分完結させて一気に更新しようと思ってます。
途中での放棄は絶対にしないけど、
打ち切りは考えなきゃいけないかなっていう危機感があるので、
腰を据えて出来るだけ面白いものを書きたいなってことで…
どのくらい時間がかかるかよく分からないけど…
現状30%ぐらいかな?
まだレスをくれる方もいるし、
読んでくれてる人もいると信じて頑張って書いてますのでワガママをお許し下さい。
予定変更で第6話は『〜愛、届いてますか?〜』になると思います。
本編の更新が滞る間、以前ちょっと要望があったので、
過去の成績、年棒推移も付けた選手名鑑でも張ろうかと思ってますがどうでしょう?
賛否両論あると思いますが…
>>231
( ´D`)ののにも何がなんだか分からないのれす…試合に出たいのれす…
>>232
( ` ◇´)作者もいっぱいいっぱいなんでもうちょっと待っといてな…
- 234 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)00時09分14秒
- あれあれ、かれこれ一週間以上更新がないんですけど・・・楽しみにしてるのに。
作者さ〜ん、どういう事情か分からないですけど、再開してください。
お願いしま〜す。
- 235 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年10月07日(日)00時09分43秒
- ( ● ´ ー` ● )近鉄・ヤクルトともリーグ制覇おめでとうだべさ!!
( `.∀´)そんなことより何と言っても福浦和也の首位打者よ!!
( ´ Д `)知らない…そんな人…
(0^〜^0)やっぱり秋山だよ…秋山!!
( ‘д‘) よっすぃ〜は秋山ファンなん?
( ´D`)ののは種田さんがいいのれす!!
- 236 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)00時13分05秒
- まとめてるんだったら待ちますよ。選手名鑑など大変だと思いますが頑張って。
- 237 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月07日(日)00時19分50秒
- 作者さん、人気投票でも結構表入ってるし、みんな待ってますよ。
選手名鑑楽しみにしてます。
- 238 名前:代打名無し娘。(背番号88) 投稿日:2001年10月07日(日)00時47分09秒
- 選手名鑑も楽しみにしています。
頑張ってください。
- 239 名前:202 投稿日:2001年10月07日(日)12時26分16秒
- 待ちますよ〜
俺は
- 240 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 241 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 242 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月11日(木)01時15分45秒
- チャム復帰記念?とにかく期待してます。
- 243 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月12日(金)00時03分48秒
- 一人1スレ使う選手名鑑とは!データ多くてかなり大変そうですが頑張って下さい。
(背番号とポジションの紹介だけとか、もっと簡単なものかと思ってた…)
- 244 名前:選手名鑑くん 投稿日:2001年10月13日(土)23時02分33秒
- 11 市井紗耶香 いちい さやか
投手 1997年ドラフト10位 千葉県出身 右投げ右打ち
獲得タイトル オールスター出場回数
1999年 最優秀救援(34 SP) 2回(1999年、2000年)
2000年 最優秀救援(40 SP)
年度別成績 試合数 勝 負 S 投球回数 三振 防御率 年棒
1998年 38 1 5 0 78 2/3 54 5.84 440
1999年 48 3 6 31 56 63 3.38 1200
2000年 51 2 2 38 62 48 2.47 4200
通算 137 6 13 69 196 2/3 165 4.07 8200
球種
ストレート(MAX152km/h) シュート カーブ SFF(紗耶香ボール?)
寸評
UFAが誇る抑えのエース。
昨シーズンは51試合で51交代完了と最後までマウンドを守りぬいた。
シュートやスローカーブを交え打たせて取る投球術を覚えて安定感が増したが、
魅力は何と言っても150km/hを超える球質の重いストレート。
悲願の優勝に向けて3年連続のタイトル獲得は最低のノルマ。
- 245 名前:選手名鑑くん 投稿日:2001年10月13日(土)23時03分41秒
- 13 福田明日香 ふくだ あすか
投手 1997年ドラフト3位 東京都出身 右投げ右打ち
獲得タイトル オールスター出場回数
1998年 最優秀中継ぎ投手 1回(2000年)
(21.15 ポイント)
年度別成績 試合数 勝 負 S 投球回数 三振 防御率 年棒
1998年 68 8 5 5 84 1/3 45 2.46 740
1999年 12 2 0 0 14 2/3 10 0.00 3200
2000年 38 1 0 0 41 25 1.10 3200
通算 118 11 5 5 140 80 1.80 6800
球種
ストレート(MAX132km/h) カーブ シンカー シュート スライダー
寸評
昨シーズンは、完璧なセットアップで『福田神話』を築いたサブマリン。
主に僅差での勝ちゲームと登板は限られたが、その分結果を残してみせた。
ボール半個分の出し入れが出来る抜群のコントロールと多彩な変化球が持ち味で、
安定感はチームNo.1。
今シーズンもストッパー市井へのつなぎ役を完璧に果たしてくれるだろう。
- 246 名前:選手名鑑くん 投稿日:2001年10月13日(土)23時04分55秒
- 14 レファ Lehua Sandbo
投手 1999年入団 米国ハワイ出身 左投げ左打ち
獲得タイトル オールスター出場回数
なし 0回
年度別成績 試合数 勝 負 S 投球回数 三振 防御率 年棒
1998年 -- - - - -- -- --- ---
1999年 38 1 3 0 44 2/3 41 4.04 1300
2000年 45 2 6 1 61 68 4.57 1500
通算 83 3 9 1 105 2/3 109 4.35 1500
球種
ストレート(MAX153km/h) スライダー
寸評
チーム最速のストレートと高速スライダーが魅力だが、
一本調子になって松井、高橋、金本らの強打者に痛打を浴びる場面も目立った。
コントロールの乱れから崩れることがあり、やや安定感にかけるが、
ダニエルの出遅れで先発・中継ぎと貴重な左腕としての期待は大きい。
来日3年目となる今シーズンこそ満足のいく結果を残したい。
- 247 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年10月13日(土)23時19分34秒
- >>234、236、237、238、239
レスありがとうございました。
本編は現状50%ぐらいの出来です。
頑張ってますのでもう少しお待ちください。
>>242
ヽ^∀^ノ市井の華麗な復帰を祝うはずだったのに作者のアホが失敗したんだよ!!
>>243
レスありがとうございました。
選手名鑑については、やるときは徹底的にやる主義なので…
とりあえず3名のみ選手データを貼らせていただきました。
他の選手については徐々に貼っていきたいと思います。
(データはもう出来ていて寸評を書くだけの状態になってます)
テストスレを散々荒らしたのはわたしです。
どうも申し訳ありませんでした。
- 248 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)23時12分03秒
- まあ気楽に頑張って・・・
くれるよね・・・?
- 249 名前:選手名鑑くん 投稿日:2001年10月20日(土)23時57分22秒
- 17 平家みちよ へいけ みちよ
投手 1997年ドラフト1位 三重県出身 左投げ左打ち
獲得タイトル オールスター出場回数
なし 1回(2000年)
年度別成績 試合数 勝 負 S 投球回数 三振 防御率 年棒
1998年 28 1 9 9 42 2/3 26 5.92 1300
1999年 42 2 8 4 70 36 5.01 1500
2000年 70 6 2 0 59 42 2.75 1500
通算 140 9 19 13 171 2/3 104 4.46 3200
球種
ストレート(MAX137km/h) スライダー シュート スクリュー カーブ パーム
寸評
先発、抑えと期待を裏切り続けたかつてのドラフト1位がようやく結果を残した。
必殺のクロスファイヤーを武器にした速球派の面影は今はなく、
変化球中心の技巧派へと変身。
左の貴重な中継ぎとしてチーム最多登板、初のオールスター出場も果たした。
左不足の投手陣にあって今シーズンもかかる負担は大きいと予想されるが、
気持ちのこもった投球で期待に応えたい。
- 250 名前:選手名鑑くん 投稿日:2001年10月20日(土)23時59分55秒
- 18 安倍なつみ あべ なつみ
投手 1997年ドラフト6位 北海道出身 右投げ右打ち
獲得タイトル オールスター出場回数
1998年 沢村賞(16勝6敗 防2.47 158K) 3回(1998年〜2000年)
1998年 最優秀新人(16勝6敗 防2.47 158K) *2000年はファン選出
1998年 最多勝利(16勝)
1998年 最多奪三振(158K)
年度別成績 試合数 勝 負 S 投球回数 三振 防御率 年棒
1998年 28 16 6 0 204 158 2.47 540
1999年 31 15 10 0 211 170 3.28 4600
2000年 27 11 10 0 181 124 3.68 7600
通算 86 42 26 0 596 452 3.13 8600
球種
ストレート(MAX148km/h) カーブ スライダー
寸評
UFAのエースとして3年連続の2ケタ勝利を挙げたが、内容は物足りなかった。
エース復権をかける今シーズンの秘策は縱に鋭く落ちるスライダー。
ルーキーイヤーの輝きをもう一度。
- 251 名前:選手名鑑くん 投稿日:2001年10月21日(日)00時01分25秒
- 19 アヤカ(木村絢香) きむら あやか
投手 1997年ドラフト8位 兵庫県出身 右投げ右打ち
獲得タイトル オールスター出場回数
なし 0回
年度別成績 試合数 勝 負 S 投球回数 三振 防御率 年棒
1998年 25 2 9 0 108 76 5.00 500
1999年 27 5 9 0 142 98 3.80 1200
2000年 26 13 9 0 140 101 3.92 1800
通算 78 20 27 0 390 275 4.18 3800
球種
ストレート(MAX144km/h) カーブ シンカー スライダー
寸評
昨シーズンは自身初の2ケタ勝利、チームの勝ち頭となる13勝を挙げた。
ダイナミックなアンダースローから繰り出される速球と変化球は威力十分だが、
被本塁打はリーグワーストの25本と課題も残した。
今シーズンは連続2ケタ勝利でエースへ挑戦。
- 252 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年10月21日(日)00時03分26秒
- >>248
もちろん!!
現状、60%かな?
ちょっと詰まってまると言えば、詰まってますね。
あんまり進行状況はよくない。
でも、ちゃんと書いてますんで…
( `.∀´)シリーズ第1戦、古田さんの中村さんへのリードは見応えあったわね。
( ● ´ ー` ● )石井さんは、よく期待に応えたべさ…さすがエースだね。
从 ~∀~ 从 第2戦は、いてまえ打線の反撃に期待や!!
( ‘д‘)福本さん…爆笑解説、期待しとったのに…
( ´D`)第2戦でゲストに加わって盛り上げればいいのれす。
( ´ Д `)よっすぃ〜はどうするの?
(0^〜^0)秋山の出てないシリーズなんて興味がないから行かない!!
(〜^◇^〜)秋山かよっ!!…っていうか何故、秋山…?
- 253 名前:傍観者 投稿日:2001年10月23日(火)21時01分59秒
- 秋山→元西武→埼玉→よっすぃ〜 ってことですよね?(w
なっちはパワプロのサクセスでSP,STがAで
MAX160q/h,シュートとチェンジアップがMAXの投手でした。
やっぱエースは偉大ですね
- 254 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月24日(水)00時12分41秒
- 福本さんは全国ネットでは余所行き解説になってしまうためあんなもんです。
- 255 名前:通りすがり 投稿日:2001年10月29日(月)07時42分10秒
- 僭越ながらお話と選手名鑑を元にして
PS2001で選手作成させていただいてます
某スレのチームも作成したのでそれと対戦させたいです
お忙しいでしょうが作品・選手名鑑共に期待してます
今後も頑張ってください
- 256 名前:選手名鑑くん 投稿日:2001年10月30日(火)23時32分13秒
- 20 ダニエル Danielle Delaunay
投手 1998年入団 米国ハワイ出身 左投げ左打ち
獲得タイトル オールスター出場回数
なし 0回
年度別成績 試合数 勝 負 S 投球回数 三振 防御率 年棒
1998年 25 3 13 0 134 1/3 88 3.89 1500
1999年 24 7 8 0 141 1/3 82 4.33 1500
2000年 21 6 9 0 104 66 4.15 3200
通算 70 16 30 0 379 2/3 236 4.13 3000
球種
ストレート(MAX146km/h) シュート スライダー SFF
寸評
シュートを武器に左バッターには無類の強さを誇った貴重な先発サウスポー。
大胆な内角攻めの結果、与えた死球15個はリーグNo.1。
熱くなりやすく、走者が出ると冷静さを欠いて打たれる場面が多く見受けられた。
昨シーズン終盤の戦線離脱の原因となった左ひじ痛の影響で開幕に間に合わない。
後半戦の復帰を目標に、まずは故障箇所の完治を。
- 257 名前:選手名鑑くん 投稿日:2001年10月30日(火)23時34分09秒
- 21 石黒彩 いしぐろ あや
投手 1997年ドラフト2位 北海道出身 左投げ左打ち
獲得タイトル オールスター出場回数
なし 0回
年度別成績 試合数 勝 負 S 投球回数 三振 防御率 年棒
1998年 34 7 15 2 197 2/3 152 3.23 1200
1999年 27 9 9 0 178 2/3 168 3.83 2200
2000年 27 9 10 0 162 1/3 166 3.27 4400
通算 88 25 34 2 538 2/3 486 3.44 5200
球種
ストレート(MAX147km/h) スクリュー
寸評
性質の異なる数種類のスクリューボールを操るUFA一の奪三振マシーン。
牽制とクイックが巧く保田とのバッテリーで盗塁は1つも許していない。
勝ち運に恵まれない面もあり昨シーズンも2ケタ勝利に一歩届かなかったが、
連敗ストッパー役5回など要所での好投が光った。
激しい好不調の差をなくし2ケタ勝利と奪三振王で優勝に貢献を。
投手陣の支柱的存在。
- 258 名前:選手名鑑くん 投稿日:2001年10月30日(火)23時35分43秒
- 23 斉藤瞳 さいとう ひとみ
投手 1998年ドラフト2位 新潟県出身 右投げ右打ち
獲得タイトル オールスター出場回数
なし 0回
年度別成績 試合数 勝 負 S 投球回数 三振 防御率 年棒
1998年 -- - - - -- -- --- ---
1999年 49 2 2 1 65 2/3 29 3.84 800
2000年 28 10 6 0 138 72 3.13 1200
通算 77 12 8 1 203 2/3 101 3.36 3200
球種
ストレート(MAX142km/h) カーブ スライダー SFF
寸評
ルルに代わってローテーション入りの昨シーズンは2ケタの10勝と大ブレイク。
速球派の多い先発陣にあって独特のドロンと落ちるカーブが武器の軟投派だが、
気迫を前面に押し出すピッチングは力強さも感じさせる。
完投0、最長投球回が7回0/3とスタミナの面で不安があり、
福田、平家、市井の強力リリーフ陣の恩恵を一番受けた投手だとも言える。
課題を克服して真に頼れる存在へ。
- 259 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年10月30日(火)23時38分03秒
- >>253
( ● ´ ー` ● )MAX160km/hはすごいべさ。
(0^〜^0)その通り!!何気にちょっとした伏線だったりして(w
>>254
( ´D`)ケッ、肝っ玉の小さい野郎なのれす。
( ‘д‘) のの…そのキャラやばいって…福本さん、すんません…
>>255
从 ~∀~ 从そう言ってもらえると作者も選手名鑑の貼り甲斐があると思うで…
皆様、レスありがとうございました。
1週間に1度は状況報告をしたいと思っていましたが、休日出勤地獄だったもので…
すんませんでした。
現状は65%ぐらいかな…先週は正直あまり書けなかった。
今シーズンも終わってしまいましたね。
ヤクルト球団の皆様、日本一おめでとうございました。
近鉄は残念でしたが、この悔しさが来年に繋がることを期待しております。磯部〜!!
各球団の選手の皆様、今シーズンも胸の熱くなるプレイの数々ありがとうございました。
- 260 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月10日(土)16時19分49秒
- 初めてレスさせていただきます
初めの頃から読ませて頂いていますが
深い内容に読み込ませられます
これからも頑張ってください
- 261 名前:モーヲタ家族 投稿日:2001年11月13日(火)18時23分48秒
- 先日、全部読ませてもらいました。
野球小説の中じゃ1番いいです。
特に石黒と保田のからみは最高でした。
大変だとは思いますが、更新待ってます。
- 262 名前:傍観者 投稿日:2001年11月17日(土)17時11分43秒
- 更新待ってますんでがんばってください
- 263 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月01日(土)22時44分51秒
第6話 たんぽぽ 〜愛、届いてますか?〜
あたしの愛は届いてますか?
- 264 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)22時46分03秒
「保田さぁん…
石川、絶対にヒットが打ちたいんですけど…
どうしたらいいですか…?
何かヒントください…」
石川…
あたしはドラえもんじゃないのよ…
先発の松浦は、4回の表を三者三振で乗り切った。
小気味よいテンポから、佐伯さんには渾身のストレート。
両外国人には落差のあるフォーク。
その勝負球はバットにかすらせることもなく、まったく危なげなかった。
初回から3回までとは打って変わって、頼もしさすら感じさせた。
明るく元気に躍動するルーキーの姿は、メンバーに一層の奮起を促したようだ。
カオリは3回の裏に続けて円陣を組んで、みんなに熱い激を飛ばした。
その話を聞くメンバーの表情は、3回の時より真剣さが増していた。
各々が松浦の好投に何かを感じ、
その勢いを反撃に繋げなければいけないと感じているのだ。
石川も…
そういうことが感じられるようになったんだ…
- 265 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)22時47分15秒
- 松浦の快投に加えて、4回の裏は1番から始まる好打順。
ゲームの流れを引き寄せるポイントとなるイニングだと言ってもいいだろう。
逆に、ここで点が入らないと、三浦さんを完全に調子に乗せてしまうことになる。
このまま完封を許してしまうかもしれない。
1点でもいいから、とにかく点が欲しい。
そのためにトップバッターの石川の出塁は必須条件なのだ。
安易にアドバイスを求めてしまう石川の姿勢は頭が痛いところだが、
ゲームの流れを掴めるようになったことは素直に誉めてあげたいと思う。
普段、空気が読めない奴だと頭を抱えることが多いので正直ホッとする。
そして、石川があたしを頼ってくれたことをちょっとだけ嬉しく思った。
まぁ、あたしに頼らなきゃいけないほど追い詰められてるってことかもね…
やらなきゃいけないプレッシャーからか石川の表情は暗い。
頼りなく眉を寄せ、上目使いで訴えかけるようにあたしを見てた。
情けないとは思わない。
成長したからこそ味わっている苦しみなのだ。
今までの石川だったら脳天気にホイホイと打席に向かっていただろう。
- 266 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)22時48分44秒
- 「石川、野球はクイズじゃないから…
ヒントなんてないわよ。
あんた、他人に聞く前にちょっとは自分でどうしたらいいか考えなさいよ!!
それが一番大事なことなんだから!!
『分からないことは誰かにすぐ聞け!!』って教えたけど、
自分で考えもせずに何でもかんでも手当りしだいに聞いてばっかりいると、
誰にも相手にされなくなるわよ!!」
「ごめんなさい…
保田さん…」
あたしの叱責を受けた石川は目線を落とし、謝罪の言葉を口にした。
よく見ると体が小刻みに震えている。
緊張のためか、あたしへの恐怖のためか分からないが…
ちょっと言い過ぎたかしら…?
まぁ…
ついね…
いつものクセで…
- 267 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)22時49分49秒
- 「石川…
あんたヒットを打たなきゃいけないと思っているようだけど、
この場面はフォアボールでもいいんだからね…
『出塁すること』
これが今のあんたがやらなくちゃいけないことなんだからね。
ボール球は絶対に振らないこと!!」
素直じゃない自分に少しだけ呆れた後、石川にアドバイスを送った。
石川はボールをバットの芯で捉えるのが巧い。
これだけはチームの中でもトップクラスだと思う。
しかし、どうしようもなく悪いクセがある。
ボール球も打ちにいってしまうのだ。
当然、ボール球は打たないように何度も何度も言って聞かせた。
でも、未だに直らない。
来たボールは打ち返すという行為が、体に染み付いてしまっているようなのだ。
『頭では分かってるんですよぉ…
でも…
どうしても体が反応しちゃうみたいなんですよ…』
あたしが注意をする度に石川はそう言って、いつも首を捻っている。
- 268 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)22時51分10秒
- 石川のその日の打撃成績の善し悪しは第1打席の内容に大きく左右される。
最初に1本ヒットが出ると2本、3本とヒットが続くことが多い。
打席でも余裕が出来るのか比較的ボール球は振らなくなる。
まぁ、だからこそヒットが出るとも言えるんだけどね…
この『ポジティブ梨華ちゃんモード』の時は安心して見ていられるし頼もしい。
問題は凡退した時だ。
一度、調子の波に乗ると手がつけられないが、落ち込みも激しい。
特に三振した時は目も当てられなくなる。
結果が悪ければ悪い程、考え込むし余裕がなくなってボール球に手を出す。
4タコ覚悟の『ネガティブ梨華ちゃんモード』だ。
今は明らかに『ネガティブ梨華ちゃんモード』に移行しようとしている。
- 269 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)22時52分23秒
- 石川への相手バッテリーの攻め方は一貫している。
ボールになる変化球、それもかなり外した球で勝負してくる。
キャッチャーが捕れないような球まで振ることもあるのだから当然の攻め方だ。
今の石川が、これを徹底されれば100%抑えられてしまうだろう。
ただ、振ると分かっていても明らかにボールになる球を投げるのは勇気がいる。
1球でも見逃されれば、かなり投げにくくなるだろう。
ここに唯一、石川が付け入る隙がある。
ボール球をしっかり見送ってバッテリーにプレッシャーを与えなければならない。
ボール球を振りはするが、石川の選球眼は決して悪いわけではない。
ストライクとボールの判別はしっかり出来ている。
落ち着いて、好球必打を心掛けてくれれば絶対に出塁のチャンスはある。
そして、それは何もこの打席に限ったことではない。
今後、石川がプロとして大成するために出来なければならないことなのだ。
- 270 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)22時54分30秒
自分を信じて自分の運命は自分で切り開きなさい!!
そのために自分がしなければいけないことを考えなさい!!
手は貸すから…
あんたが、どうしようもなくてんぱった時には手は貸すから…
あんたが、あたしを必要とするなら…
手は貸してあげるから…
- 271 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)22時55分54秒
- 目を伏せたまま黙ってあたしのアドバイスを聞いていた石川が不意に口を開く。
「バッターボックスに立つと…
急に余裕がなくなっちゃうんですよね…
大丈夫かなぁ…?
自信ないなぁ…
ボール球、振っちゃいそうだなぁ…
それに…
円陣を組んだ時にスライダーを狙えって言ってましたけど、
もしスライダーが来なかったらどうすればいいんですかねぇ…?
スライダーが来ても空振りしちゃったり…
『ミラクルスイング』とか『ポジポジバント』とか…
あったら教えてください…
こういうこと言っちゃう自分が情けなくて…
大嫌いなんですけど…」
- 272 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)22時56分57秒
- 「バカヤローっ!!
しっかりしろいっ!!」
この期に及んで、まだ弱音を吐く石川を叱りつけた。
伝わらない…
伝えられない…
そんな苛立ちもあったのかもしれない。
みっちゃんが『プリンときれいな形しとる』と絶賛するおしりをぺち〜んと叩いた。
「すいません…」
石川は俯いて、ますます体を竦ませてしまった。
- 273 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)22時58分07秒
- また…
情けない姿を見せちゃった…
保田さん…
きっと石川のこと呆れているだろうな…
口を開けば思わず出てしまうネガティブワードの数々。
保田さんが怒るのも無理はない。
自分の役割が重要なことは、あたしだって充分承知している。
絶対にヒットを打たなければいけない。
プレッシャーで体が震えた。
落ち着こうと目を閉じれば最悪の結果の映像が繰り返し頭の中でリプレイされる。
バッターボックスに向かうのが怖くなった。
心の中で『ポジティブ!!ポジティブ!!』って自分自身に言い聞かせた。
それは弱い自分を奮い立たせるための、あたしにとって恒例の儀式。
でも…
体の震えが止まらない。
悪いイメージが払拭出来ない。
バッターボックスに向かって歩を進めることが出来ないでいた。
- 274 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)22時59分38秒
出来れば保田さんに相談なんてしたくなかった。
でも、福ちゃんはブルペンに行っちゃったし、
ひとみちゃんは矢口さんとお話してた。
飯田さんも中澤さんとお話してたし、柴ちゃんは探しても姿が見当たらなかった。
結局…
保田さんしか…
いなかったんだ…
弱音なんて吐くつもりじゃなかった。
でも、ポロポロポロポロ…
出るわ出るわで自分でも呆れるぐらいだった。
- 275 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時00分55秒
本当に…情けない…
『石川梨華』なんて…
大嫌い…
もう…死んじゃいたい…
- 276 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時02分00秒
- 保田さんに叩かれたおしりが熱い。
ジンジンと痺れるような、その感覚は確固たる生の証。
自分が生命を持った存在であることを、この時は恨めしく思った。
今の自分は死んでいるに等しい。
きっと覇気のない顔をしているだろう。
死んだ魚のような目をしているだろう。
今の自分はバッターボックスに立つべきではない。
きっと保田さんが許さないだろう。
「保田さん…」
意を決して顔を上げたあたしに保田さんは…
- 277 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時02分57秒
「大丈夫…
愛してるわよ…」
- 278 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時04分04秒
え……?
- 279 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時05分04秒
- それは保田さんの口から出るとは思えない言葉…
冗談でもそんなこと言わないだろうっていう言葉…
保田さんの口から出た思わぬ言葉に、あたしは固まってしまった。
保田さんは、大きな瞳であたしの顔を凝視し続けていた。
その顔はどことなく怒っているようにも見える。
「あんた…
変な意味にとってないでしょうね…?
師弟愛よ…師弟愛…
まぁ、一応ね…」
「師弟愛…ですか…?」
ピンと来なかった。
思わず聞き返してしまった。
これもまた保田さんの口から出るとは思えない言葉だ。
- 280 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時06分11秒
「バカ!!冗談に決まってるだろ〜!!」
しばらくの沈黙の後…
保田さんはそう言って、にたぁ〜っと笑った。
なんだ…冗談なんだ…
笑えない冗談。
保田さんは、あまり冗談やギャグを言わない人だ。
少なくとも、あたしはそんなの一度も聞いたことがない。
ロッカールームで、みんながオヤジギャグ大会で盛り上がっている時も、
保田さんは1人で黙々とスコアラーさんからの資料に目を通していたりする。
そんな保田さんが、なんで冗談なんて言ったのだろうか?
別に…面白くもなんともないのに…
保田さんの冗談とやらは、どこに面白味があるのかよく分からなかった。
それどころか保田さんの冗談は、あたしを余計に惨めな気持ちにさせた。
- 281 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時07分25秒
「どうした?」
突っ立ったまま無反応のあたしの肩を保田さんがポンと叩いた。
「いや…何て言うか…
ビックリしちゃって…
保田さんこそ…
どうしちゃったんですか…?」
保田さんはあたしの問いかけに目線を下げ何事か考えるような素振りを見せた。
「まぁ…
結局、あたしも負けず嫌いなのよね…
それだけよ…」
それがあたしの問いかけに対する保田さんの答え。
何が何だかよくわからない…
負けず嫌いって…
密かにオヤジギャグ大会に参加したかったってことなのかなぁ…?
みんなの前でオヤジギャグを連発する保田さんを想像してみた。
- 282 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時08分18秒
( `.∀´)フトンがふっとんだわよっ!!
- 283 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時09分13秒
( `.∀´)梅はうめ〜のよっ!!
- 284 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時10分15秒
ああ…
なんて、恐ろしい想像をしてしまったのかしら…?
バカ!!バカ!!バカ!!
梨華のバカっ!!
あの保田さんが、こんなこと言うわけないじゃない!!
人間って…悲しすぎるわ…
こんなくだらない妄想に耽ってしまうなんて…
あぁ、神様…
こんな愚かで弱い石川に救いのお言葉を…
- 285 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時11分21秒
( `.∀´)/(0°−°0)/ 逝ってよし!!
- 286 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時12分21秒
保田さん…
福ちゃんまで…
やっぱり…
やっぱり石川なんて…
- 287 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時13分55秒
ぺち〜ん!!
「ボケ〜ッとしてんじゃないわよっ!!」
「あ痛っ!!」
おしりがヒリヒリしている。
さっき叩かれたのと同じ場所だ。
「あんた、人に泣きついてきたくせに話を聞いてないなんて、どういうこと?
本当にやる気あるの!?」
「ごめんなさい…
さっきの保田さんの言葉…
気になっちゃって…」
- 288 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時15分05秒
- 保田さんの表情が険しくなった。
「だから…あれは冗談なの!!
あんたがこの世の終わりみたいな顔してるからちょっと言ってみたのよ!!
くだらないことに気をとられてるんじゃないわよっ!!
それとも何?
あたしが冗談を言うのって、そんなに大層なことなわけ?」
「そ…そんなことないですけど…
ごめんなさい…
保田さん…」
それ以上…返す言葉はなかった。
結局のところ、あたしが保田さんに無理をさせていたのだ。
- 289 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時16分13秒
やっぱり…
保田さんに相談なんて…
しなけりゃよかった…
- 290 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時17分05秒
- 「保田さん…石川の話を…
聞いてください…」
先程、保田さんの『冗談』に遮られてしまった言葉。
今度は絶対に…絶対に…絶対に…言っちゃおう。
そうすれば楽になれるもの…
誰にも迷惑をかけなくても済むもの…
そう思っていた。
でも、また保田さんに遮られてしまった。
「あんたこそ、あたしの話をよく聞きなさいよ!!
いい石川?
もう細かいことはゴチャゴチャ言わないわよ!!
いつもあたしが言ってるわよね!?
『好球必打!!』
この意味をよく考えなさい!!
あんたが、この世界でやっていくのに一番大事なことなんだから!!」
- 291 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時18分18秒
- 『好球必打』…
保田さんから耳にタコさんが出来るくらい言われ続けてる言葉。
でも…
あたしは、ほとんど実践出来ていない。
ボール球を振ってしまう。
ののだって振らないようなボールも振ってしまう。
でも…
保田さんの言いたいことは、よく分かってるんです。
保田さんのアドバイスを無視してるつもりなんてないんです。
実践したくても弱くてダメダメな石川は、あれが精一杯なんです。
だから…
無理です…
無理なんです…
悔しいけど…
情けないけど…
今の石川には無理なんです…
- 292 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時19分57秒
- 再び顔を上げる。
『今度こそ…』
そんな想いで口を開きかけたその時…
「それからさ石川…
あんた、自分で自分を愛してあげられなくなったらおしまいだよ…
『情けない』とか…
『大嫌い』とか…
自分で自分を卑下するのは、やめなさいよ…
あんた、まさか『死んじゃいたい…』なんて思ってないでしょうね?
そりゃ誰にだって、そう思っちゃうことはあるんだけどさ…
誰も認めてくれなくても、せめて自分だけは自分を認めてあげたいじゃない…
信じてあげたいじゃない…
『ポジティブ!ポジティブ!』ってうるさいのは少しムカツクんだけど、
そうやって自分に言い聞かせるのは大事なことだと思う。
人間って…
変われるんだよ石川…
自分を信じて努力を続けていれば…」
保田さんは、あたしの肩に手を回すと耳元でそうアドバイスしてくれた。
「とにかくバッターボックスの中では落ち着いて『好球必打』…
それだけよ…」
そして、目線を下げやや間を置いてから…
- 293 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時20分53秒
「期待してるから…」
- 294 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時22分00秒
保田さんは最後に、そうぶっきらぼうに言うと背中をポンと押してくれた。
今まであたしが向かうことを躊躇していたバッターボックスへと…
- 295 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時23分26秒
右ピッチャーの三浦さんに合わせて左バッターボックスに立った。
ほぼピッチャーと正対するような極端なオープンスタンス。
バットを正面で構えて内股でグッと腰を落とす。
あたしが打席に入って構えると、何故かみんなが笑う。
矢口さんや飯田さんには『オマエの構えはキショいんだよ!!』って…
そんな感じで、いつもからかわれる。
あいぼんやののには、よくモノマネされてしまう。
『見て〜見て〜これ梨華ちゃ〜ん!!ポイントは小指〜!!』って…
これが、しっかり小指まで立てちゃって悔しいぐらい完璧なのだ。
保田さんも、あたしの構えを見てあまりいい顔はしない。
基本を重んじる人だからだ。
何か言いたげだったが、黙認してくれていた。
『あんたが、それで打ちやすいなら別にいいわよ…』って…
- 296 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時24分19秒
ひょっとしたら…
『相手にされてないのかな…?』って…
『嫌われてるのかな…?』って…
ちょっと思っていた。
いろいろ野球のことを教えてくれる時も怒ったような顔をしているし、
何度か気絶させられたし、失敗してもあまり叱ってくれないし…
あいぼん達には、ちょっとしたことでもちゃんと厳しく注意してるのに…
『期待されてないんだ…』って…
『あたしの教育係になって迷惑してるんだ…』って…
そう思っていた。
- 297 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時25分28秒
『無理です』ってはっきり言おうと思っていた。
『石川は自信がありません…
代打を出してもらえるように中澤さんに頼んでもらえませんか?』って…
そう保田さんに言おうと思っていた。
プレッシャーから逃げ出すつもりでいたんだ。
野球選手になってから…
うまくいかないことばっかりで…
いっぱい怒られて…
いろんな人に迷惑かけて…
『自分は、なんてちっぽけな存在なんだろう…』っていつも思うの…
『情けないなぁ…』って…
はっきり言って自信がないの…
『あたしみたいなダメ子ちゃんなんていらないんじゃないかなぁ?』って…
- 298 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時26分38秒
-
それでも…
こんな石川のことを期待してくれている人がいたの…
保田さんだけじゃない…
家族のみんな、監督の中澤さん、コーチ、チームメイト…
石川のことを励ましてくれたの…
見守ってくれていたの…
『どんな人間だって自分のことを信じて見守ってくれている人にとっては、
かけがえのない存在なのかもしれない』ってちょっと思った…
『だから不必要な人間なんていないんだ』って…
『もっと…自信を持っていいのかな?』って思えたんだ…
- 299 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時27分31秒
『期待してるから…』
保田さんのそのぶっきらぼうな一言が、あたしに力をくれた。
今まで一度も言ってもらったことのない言葉。
もう表現のしようがないぐらい嬉しかった。
『保田さんが期待してくれている』
その事実を知った途端、みるみる勇気が湧いてきた。
体の震えが収まった。
頭の中で繰り返しリプレイされていた悪いイメージも、もうない。
今では出塁を果たして一塁ベース上で『ホイ』を決めているイメージだけが、
頭の中で繰り返しリプレイされるようになっていた。
- 300 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時29分52秒
ポジティブ!!ポジティブ!!ポジティブ!!ポジティブ!!
ポジティブゥ〜!!
絶対に出塁するのよ!!
石川なら、やれるわ!!
だって…
石川は、保田さんの弟子なんだから!!
期待されまくっているんだから!!
- 301 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時31分00秒
三浦さんの初球。
フォークボールだろうか?
叩き付けてワンバウンドになったその球は明らかなボール球。
でも変化球の苦手なあたしにとっては絶好球に見えた。
あたしは変化球が、ちょっと苦手だ。
ストレートは多少速くても目が付いていくのだが、変化球はそうはいかない。
いろいろな種類があるし、同じ球種でも人によって変化のしかたが違うので、
スイートスポットに当てるのが難しいのだ。
レディポジションから左肩を引き上体をひねってテイクバックに移行。
上体をひねればひねるほど体を戻す回転のパワーが増すから思いきり左肩を引く。
非力なあたしが強い打球を打つための重要なポイントだ。
右足を踏み出し体重移動をしながらインパクトへ。
膝を柔らかく使いながら体全体の回転で三浦さんの足下めがけ打球を弾き返した。
- 302 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時31分57秒
「えいっ!!」
石川の気合いの声とほぼ同時に快心の打球音。
打球音より石川の声のほうがよく響き渡ったのはなぜだろう?
三浦さんの初球は、おそらくフォークボール。
低めを狙い過ぎたのか、はたまた力んだのか?
とにかくワンバウンドになった初球を石川がバットの芯で捉えた。
バットが体に巻き付くような大きなフォロースルーでセンター前へ運んだ。
見事に出塁を果たしてホッとしたのだろう。
石川は一塁ベース上でスタンドのファンに向かってホイッとアピールをしている。
出塁してくれたのは嬉しいのだが、複雑な心境だった。
- 303 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時32分47秒
『好球必打!!』って言ったのに…
想い届かずか…
石川…
結果オーライなんて…
いつまでも続かないよ…
あんたがいくらバットに当てるのが上手くても、
ボール球はヒットにするのが難しいんだ。
基本やセオリーってね…
やっぱり大事なんだよ…
特に、これからのあんたには…
いい加減に分かってよ…
- 304 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時33分52秒
-
たぶん…
石川は、後藤や吉澤のようなチームの主軸を張れるバッターにはなれないだろう。
頑張っているのは認めるが、そういうレベルに達するのは正直言って難しいと思う。
しかし、それでも構わないのだ。
全員が主役である必要はない。
脇役だって必要なのだ。
例え目立たなくても当たり前のことが当たり前に出来るのが大事なんだ。
脇役だってチームを支えられるんだ。
石川の歩むべき道は後藤や吉澤のような賑やかなメインストリートじゃない。
普段は目立たなくて使わないけど困った時に便利な裏道なんだ。
あたしが歩んでいるのと同じ道なんだ。
石川がどうしても1番になりたいのなら脇役の頂点を目指せばいい。
それが石川がこの世界で生きていく唯一の道なんだから。
- 305 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月01日(土)23時35分45秒
あたしが責任を持って日本一の名脇役にしてあげるから…
いい加減に…
理解してよ…
ねぇ…?
石川梨華ちゃん…
- 306 名前:選手名鑑くん 投稿日:2001年12月01日(土)23時37分19秒
28 りんね(戸田鈴音) とだ りんね
投手 1997年ドラフト5位 北海道出身 右投げ右打ち
獲得タイトル オールスター出場回数
なし 0回
年度別成績 試合数 勝 負 S 投球回数 三振 防御率 年棒
1998年 51 2 7 0 69 1/3 42 4.68 640
1999年 58 3 2 2 74 53 4.74 1200
2000年 66 9 0 1 81 61 3.33 1400
通算 175 14 9 3 224 1/3 156 4.21 2900
球種
ストレート(MAX140km/h) スライダー
寸評
一発病を克服し平家同様3年目の大ブレイク。
一時期噂された持ち前のパワーを生かした野手転向説も吹き飛ばす活躍を見せた。
サイドハンドからの直球と大きなスライダーは右の強打者達を大いに苦しめた。
課題は左打者対策。
シンカーを覚えれば投球の幅も広がる。
- 307 名前:選手名鑑くん 投稿日:2001年12月01日(土)23時38分56秒
29 あさみ(木村麻美) きむら あさみ
投手 1999年ドラフト6位 北海道出身 右投げ右打ち
獲得タイトル オールスター出場回数
なし 0回
年度別成績 試合数 勝 負 S 投球回数 三振 防御率 年棒
1998年 -- - - - -- -- --- ---
1999年 -- - - - -- -- --- ---
2000年 35 3 5 0 56 2/3 17 4.13 500
通算 35 3 5 0 56 2/3 17 4.13 1200
球種
ストレート(MAX139km/h) カーブ シンカー
寸評
1年目は谷間での先発もこなし3勝5敗とまずまずの成績。
ランナーは出しても意外に打たれ強く、要所を締める投球が印象的だった。
球威、制球、スタミナとバランスはとれているが、今一つ物足りない。
全体的なレベルアップと何か一つアピールするものが欲しい。
現状ではダニエルに代わる先発候補の一番手。
- 308 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月02日(日)00時02分02秒
- >>260〜262
レスありがとうございました。
勝手に更新を止めたり再開したりで本当に申し訳ないです。
全部書き上げてから更新するという話でしたが、
触りの部分だけ更新させていただきました。
さすがに罪悪感が出てきたので…
書く時間がないわけでなく少しずつ書いているのですが、
構想がいろいろ膨らんできて、かなり時間がかかりそうです。
朝令暮改を何度も繰り返して、
適当なことをやっているような印象を持たれてしまうかもしれませんが、
自分なりには真剣に取り組んでいるつもりです。
3話連続失敗は、どうしても避けたいので…
次回の更新はいつになるか分かりませんが、
また頃合を見てストック分を小出しにする予定です。
- 309 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月02日(日)00時30分14秒
- 更新お待ちしてました!
やすいし師弟コンビは面白いなあ。すれ違いだけど(w
野球はあまり詳しくないんですが、この話はキャラが良く出てて好きです。
それといつもの事ながら、空白行とレスの切れ目による間の取り方が絶妙ですね。
感心してしまいます。
まったり待ってますんで、次もがんばってください。
- 310 名前:モーヲタ家族 投稿日:2001年12月03日(月)17時55分35秒
- 作者さん最高!
3話連続失敗なんて、誰も思ってませんよ。
楽しみに待ってます。頑張って下さい。
- 311 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年12月06日(木)12時53分25秒
- あんまり自分を責めないほうが良いですよ。
頑張って下さい
- 312 名前:平家派 投稿日:2001年12月07日(金)23時29分07秒
- やすいし最高!
みんなの言う通り、失敗なんかじゃないですよ。
頑張って下さい。
- 313 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月24日(月)01時24分00秒
- 待ってたかいがありました。
- 314 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時25分52秒
- 次レスから始まる物語は『実況ハロープロ野球2001』本編とはまったく関係ありません。
ここまでの話の続きは海板の『実況ハロープロ野球2001 延長11回裏』にて更新いたします。
- 315 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時27分10秒
『マッチ売りの少女? 〜LIGHT MY FIRE〜 』
「ジングルベ〜ル ジングルベ〜ル
す〜ず〜が〜鳴る〜♪」
っとくらぁ…
今日は楽しいクリスマス!!
みんな楽しいクリスマス!!
クリスマスったらクリスマス!!
それそれ市井だ!!クリスマス!!
Go!Go!市井!!
Let’s Go!市井!!
う〜ん…イマイチ盛り上がってこないんだよな…
- 316 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時27分58秒
「そ〜れ そ〜れ そ〜れ それっ!!
そ〜れ そ〜れ そ〜れ それっ!!
1・2・3・Go!
ウッ!! ハッ!! ウッ!! ハッ!! ウッ!! ハッ!!
ウッハッ!! ウハハハッ!!
恋しちゃおう イェイイェ〜イ
夢見ちゃおう イェイイェ〜イ ♪」
いいぞ!!
なんだか楽しくなってきましたぞ!!
体も暖まってきたし…
やっぱコレなんだよ!!コレ!!
ここで思いっきり笑ったりなんかしちゃったりして…
きっと、もっと楽しくなるはずさ!!
「だはははははっ!!」
腰に手を宛て雪がチラチラと舞い散る寒空に向かって高笑い。
ふがっ…?
- 317 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時28分44秒
い〜っきしっ!!
鼻の穴に雪が入ってしまった。
大きなくしゃみに驚いて道行く人々があたしの方を振り返る。
「ぶはははっ!!面白ぇ〜っ!!」
垂れてしまった鼻水をすすり上げていると、けたたましい笑い声が起こった。
目の前で涼しげな目許をした少女が全身を震わせて大爆笑している。
「今の見た愛ちゃん!?
ぶはははっ!!
何かさぁ、ちょっと前から見てたらさぁ!!
1人で歌ったり踊ったり、突然バカ笑いを始めたかと思ったら、
鼻水なんか垂らしちゃってんの!!
看板なんて首からぶら下げちゃってさぁ!!
いひっ!!いひひひひひっ!!」
「麻琴ちゃん、そんな笑うたら悪いやろ〜ぉ。
あの〜ぉ〜
ごめんなさい〜
彼女、これでも悪気はないつもりなんで〜ぇ」
バカ笑いを続ける少女の隣で連れの少女が申し訳なさそうに深々と頭を下げた。
- 318 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時29分29秒
「そう、そう、そう…
悪気なんてないのっ!!ホントにっ!!
たださぁ、あんまりにも面白かったからさ。
ぶはははっ!!
あっ、やばっ!?
ついつい、いやホントごめんねっ!!
いひっ!!いひひひひひっ!!」
連れの少女のフォローも無にするバカ笑い。
一瞬、こいつの体に火をつけてやろうかと本気で思った。
「あ…あの〜ぉ〜
あ…あたし達、これからお仕事なんで〜ぇ。
本当にごめんなさい〜
じゃあ、失礼します。
ほ…ほら、麻琴ちゃん…い…行くで〜ぇ」
あたしの僅かな殺意に気がついたのだろうか?
連れの少女は元々強張ったようなその顔を更に強張らせると、
未だにバカ笑いを続ける少女をひきずるように、この場を立ち去ろうとした。
「いひっ…いひひひひひっ…!!
ちょっとっ!!ちょっと待ってよ、愛ちゃんっ!!
ねぇ…あたし、それ買ってあげますよっ!!
困ってるんでしょっ!?」
少女は満面の笑顔で、あたしの足下に積まれた商品を指差した。
- 319 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時30分09秒
「1個いくらなんですかっ!?」
「おまえには、これが見えないのか?」
首から下げた看板を指差した。
『市井印の徳用マッチ』
世界最大!?のキングサイズボックス!!
8種類の香り付き!!
特別価格 ¥10,000 (税別)←要注意!!
愛がいっぱい詰まってるよ
「またまた、ご冗談を…そんなもの売れるわけないじゃないですか!!
あなたって本当に面白い人ですねっ!!
ぶはははっ!!いひっ!!いひひひひひっ!!あ〜、お腹痛っ!!」
「だはははははっ!!
おまえは…冗談で、こんなものを首からぶら下げて立っていられるのか…?」
負けずにバカ笑いを返した後、看板を見て大受けする少女に低いトーンで尋ねた。
少女のバカ笑いが止まった。
怪訝そうな表情で、あたしの目をジ〜ッと見つめている。
負けずにあたしも少女の目をジ〜ッと見つめ返した。
- 320 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時31分01秒
「うわっ!!やばいっ超本気だっ!!
愛ちゃん、逃げろっ!!
それじゃっ、いろいろ本当にごめんねっ!!
仲間が待ってるんで…どうもしっつれいしました〜っ!!」
少女は連れの少女の手を引くと一目散に逃げ出した。
「バカヤロー!!売れないってどういうことだよ!!
楽しそうにバカ笑いしやがって!!
こっちは真剣勝負なんだよ!!夢がかかってるんだぞ!!
絶対に売ってみせるからな!!」
脱兎のごとく逃げる少女達の背中に向けて声を張り上げた。
でも、なんだか空しい。
まるで負け犬の遠吠えみたいだった。
あの娘達…
中学生ぐらいに見えたけど…仕事だって言ってたな…
仲間が待ってるって…
言ってたな…
せっかくのクリスマスなのに…
同情する気持ちはなかった。
『自分のほうが大変なんだぞ!!』っていうことではない。
『うらやましい…』って気持ちのほうが強かったのだ。
- 321 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時31分48秒
べったりと体を寄せ合わせて、いちゃつくカップル。
子供を真ん中に仲良く手を繋いで歩く家族連れ。
パーティーの買い出しといった風情の学生達。
みんなクリスマス特有の装飾に彩られた街を楽しそうに歩いていた。
でも、そういう人達を見ても『うらやましい…』なんて思わなかった。
アイドルだったのかな…
あの娘達…
仕事だって言ってたけど…
キラキラ輝いていたな…
楽しそうだったな…
- 322 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時32分23秒
強い風が吹き抜けた。
肌に強く突き刺さるような冷たさ。
ポッカリ開いてしまった心の隙間を通って寒さが体全体に染み渡る。
「うぇ〜っ!!寒ぃ〜っ!!」
ちぇっ…
何だよ…
せっかく…盛り上がってきてたのにさ…
全部…
吹き飛んでっちゃったじゃんか…
1人だけ祭から取り残されてしまった寂しさ…
それを改めて感じた…
- 323 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時32分59秒
あ〜あ…
それにしても何で売れないんだろう…
『市井印の徳用マッチ』…
手作りなのに…
『こりゃ世界最大なんじゃねぇか?』って思えるぐらいのでかさなのに…
一箱で8種類もの香りが楽しめるのに…
特に『しょうが焼き定食の香り』と『味噌田楽の香り』は自信あるのにな…
愛だって、いっぱい詰まっているはずなのになぁ…
常軌を逸したサイズの『市井印の徳用マッチ』の箱を抱え悲嘆に暮れた。
- 324 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時33分37秒
まさか世の中のニーズに反しているのか?
うんにゃ…そんなことはあるまい!!
ちょっと売り方を変えてみるかな?
「マッチ売りの少女でぇ〜っす
マッチ売りの少女はいかがですかぁ〜ん」
ウインクと投げキッスの嵐。
そして自分の実力を遥かに超える市井比127%のしなをつくり街行く人々を挑発した。
その調子で呼びかけること、ものの3分。
「ちょっと…お嬢さん…」
企業の部長さんといった感じのおじさんが、さっそく声をかけてきた。
よっしゃ!!
楽勝!!
あたしは心の中でガッツポーズを決めた。
- 325 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時34分24秒
「ぎえぇ〜っ!!危なかったぁ〜!!」
乱れた呼吸を整えるべく深呼吸を繰り返した。
くそっ!!あのエロおやじ!!
マジ危ねぇ〜
危うくマッチじゃなくて市井の体に火がつくとこだったじゃんか!!
どうやら少女売春だと勘違いされたようだ。
ホテルに連れ込まれそうになったところを必死に逃げてきた。
どうも媚びを売りすぎていたみたいですぞ!!
嘗められないようにしなくちゃな!!
却って、こういうほうが自然でいいかもしれないな…
「マッチいか〜っすか〜?、マッチいか〜っすか〜?
え〜っと…マッチ一本火事の元〜、とにかくマッチいか〜っすか〜?
安いよ〜安いよ〜」
「あ…あのぉー」
声をかけ続けること30分。
今度はリヤカーを引いたタヌキ顔の少女に声をかけられた。
よっしゃ!!
楽勝!!
あたしは再び心の中でガッツポーズを決めた。
- 326 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時35分08秒
「ヘイ、らっしゃい!!
何にしやしょうか!?」
「あ…はい…
あのぉー、あのぉー
…
あのぉー
…
あのぉー」
その少女は視線は真直ぐにあたしに向けているのだが、どこかオドオドしていた。
『あのぉー』ばかりで話が進まない。
「お客さん、もしよかったら実演しやしょうか?
見ていてくださいよ、このマッチ実は香りつきなんすよ!!
こうやってシュッって擦るとですね…
…ん!?
うぎゃぁ〜っ、こいつは『ドリアンの香り』だったぁ〜っ!!」
突然、周囲を包むフルーツの王様ことドリアンの香り。
実は美味らしいのだが、匂いは鼻が曲がりそうなくらい臭い。
まるで、う○このようなその香りに思わず悶絶した。
「違います…あのぉー、お客さんじゃ…ないんです…」
臭気に耐えられなくなったためか少女は『あのぉー』以外の言葉を初めて発した。
- 327 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時35分44秒
客じゃない…?
正直、ガッカリした。
それを敏感に感じ取ったのだろうか?
再び黙り込んでしまった少女。
申し訳なさそうにあたしを見つめている。
そんな少女を見ていたら逆にあたしのほうが申し訳なくなってきた。
なんだか…ほっとけないような感じなんだよなぁ…
思いつめたような顔してるし…
マッチを使って焼身自殺でもしかねない雰囲気なんだよなぁ…
よし市井が根気よく話を聞いてみてやるか!!
「客じゃないなら何で声をかけたのかな?」
「…………」
少女は唇を噛み締めたまま答えようとしない。
質問を変えてみよう。
「ねぇ、さっきから気になってるんだけど後ろのリヤカー何?」
そう聞いてみた瞬間、少女の顔がパッと輝いた。
- 328 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時36分23秒
『あはぁ…』っと表情を緩ませた少女。
もたもたとリヤカーに被せていたシートをめくり始めた。
あたしの質問には答えずに…
作業を終えた少女は、あたしに向かって再び『あはぁ…』っと微笑んだ。
「あのぉー、手作りの小型6連装ミサイルランチャーなんです…」
先程までのオドオドした様子から一転。
少女は誇らしげに冷たく黒光りしている商品の説明を始めた。
そうとう自信があるのだろう。
「これ、手作りなの…?」
「はい…頑張って…作ってみました…
手が…荒れちゃったんですけど…」
そう言って差し出してきた手は傷だらけ。
少女の努力と苦労がうかがえた。
チクショーこいつは絶対に売れるぞ!!
ランドセルタイプで持ち運びも便利だし、100万円の超お買得価格もイイ!!
おまけに、あの手を見たかよ!?
愛もいっぱい詰まっているじゃんか!!
- 329 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時37分11秒
「…で、何であたしに声をかけてきたの?」
「あのぉー、あたし…紺野って言います…
実は…隣で一緒に商売をさせていただきたいんです…
度胸をつけようと思って始めてみたんですけど…うまくいかなくって…
あたし…大きな声が出せなくって…
努力したんですけど…
なかなか勇気が出なくって…
人の気を引くことが出来ないで…困っていたんです。
そんな時にあなたを見かけて…あたし…『すごいなぁ』って思いました。
あなたには…人を引きつける魅力があります…
勉強させてください…」
プププ…嬉しいこと言ってくれるなぁ…
「あたし…大きな夢があるんです…
そのために、まず自分を変えたい…
充分な力をつけたい…
努力をしなきゃいけないんです…
今の自分じゃ、夢に挑戦する資格もないと思うんです」
一見弱々しい印象のこの少女が持つ芯の強さ。
それを垣間見た気がした。
「あたしだってそうさ…
いいよ…
一緒に頑張ろう…」
- 330 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時38分07秒
「あのぉー、惨めなぐらい…まったく売れませんね…?」
2人で並んで商売を始めてから、だいぶ時間が経ち人通りも少なくなってきた。
にもかかわらず、あたし達の商品はただの1個も売れる気配がない。
「おっかしいな〜クリスマスなのに何で売れないのかな〜?
こんなはずじゃなかったのにな〜」
「えぇ…こんなはずじゃ…ありませんでした」
あたしの言葉を受けて紺野が沈痛な面持ちで、そうポツリと呟いた。
「市井さん…実は…あたしの夢って歌手になることなんです…
このまま…こんなこと続けてて本当にいいんでしょうか?
いつまでたっても一歩も前に進めないような気がしてきました…」
「気持ちは分かるけどさぁ…もうちょっと頑張ろうぜ…
だって…自分で決めたんだろ?
『まず自分を磨き上げて…それから夢に挑戦する』って…
ここで諦めたら中途半端だぞ…今は我慢が大事なんじゃないかな…?」
「いえ…違うんです…なんて言うか…
穴の開いた風船を必死でふくらませているような…
そんな気がしてきたんです…」
穴の開いた風船…!?
顔に似合わず、ずいぶん洒落たことを言うやつだなぁ…
- 331 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時38分50秒
「ゆ〜うやけ〜 こや〜けの〜あか〜とん〜ぼ〜
お〜われて〜みた〜のは い〜つのひか〜 ♪」
何を思ったのだろうか?
突然、紺野が歌い出した。
微妙に音程の狂いまくった『あかとんぼ』…
歌手になりたいって…ちょっと待てっ!!
そりゃまずいだろっ!!
それは他人事ながら、慌てずにはいられない代物だった。
「おまえっ!!度胸つけるより歌の勉強が先だろっ!!」
「いえ…完璧です…
歌は…」
何食わぬ顔でそう言った紺野に呆れ果てて頭を抱えたその時…
「ええやん!!ええやん!!
ビビビッと来たで〜!!
お嬢ちゃん、デビューさせたるで〜!!」
嘘ぉ〜ん!?
- 332 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時39分47秒
何だ!?何だ!?この強引な急展開は!?
金髪に色メガネ、サンタの衣装に身を包んだ30代と思われる男性。
トナカイの着ぐるみに身を包んだおでこが印象的な小柄な少女。
突如、現れた奇妙な2人。
「ちょっとっ!!いったい何なんだよっ、あんた達!!」
「何で分からへんねん!?
俺がサンタのつんく♂で、こっちがトナカイの新垣やんか!!
うぅ…ホンマ悪いなぁ、新垣…もう、そんな役しか残っとらんかったんや…」
「悔しいですけど〜、あたし絶対に泣きませんっ!!」
なんのこっちゃ?
はっ!?
ま…まさか…強引にオチをつけようとしているのでは…?
何だ!? 何が起こる!!
爆発か!?やっぱり爆発なのかっ!!
チクショーっ、そういうことかっ!!
ミサイルランチャーなんて出てきたところから変だと思ってたんだ!!
あたしも、どういうわけだかマッチなんて売ってるし…
しか〜しっ!!
やらせはせんっ!!やらせはせんっ!!やらせはせんっ!!
やらせはせんぞ〜っ!!
- 333 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時40分38秒
「市井さん…お別れです…」
あたしの動揺をよそに、紺野は晴れ晴れとした表情で語り始めた。
「あたし…デビューが決まってしまいました…
やっぱり…あれこれ思い悩むより行動ですよね…
思い切って歌ってみて…本当によかったと思います…
だって…
歌いたかったんですから…心の底から…
『勉強しなきゃいけないな…』って思うことは…たくさんありました…
だから…いっぱい悩みました…
きちんと段階を踏むことに、こだわっていましたから…
思えば…難しく考えすぎていたのかもしれません…
『足りない部分は、これから頑張るようにしてもいいのかな』って…
今は思います…
夢を叶えてからだって、ずっと勉強ですもんね…
とにかく…あたしは歌うことが大好きです…
みんなの前で歌うことが…
今は、それだけで…その気持ちだけで…いいと思います…」
うるさい!!うるさい!!うるさ〜いっ!!
急に何を言い出すんだよ、おまえはっ!!
何を言わせてるんだよ、あたしはっ!!
なんだよ、なんだよ!?急にキラキラしやがって!!
- 334 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時42分56秒
「市井さん…このミサイルランチャーを、あなたに差し上げます…
溜まったストレスを発散するもよし…
腐り切った世の中を修正するもよし…
もちろん売っていただいても結構です…
あたしには…もう必要ないものですから…
それでは…どうもお世話になりました…
市井さんは市井さんで頑張ってください…
紺野は、そこでまた頬を緩め『あはぁ…』っと微笑んだ。
「あたしは…『モーニング娘。』で頑張りますから…」
もーにんぐむすめ…?
モーニングムスメ…!?
モーニング娘。…
か…
- 335 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)20時57分23秒
- >>309
レスありがとうございます。
空白行とレスの切れ目に関しては、いろいろな効果を考えつつ工夫しているつもりなので
誉めていただけると嬉しいです。
>>310
レスありがとうございます。
いろいろ思うところはあるのですが、とりあえず頑張ります。
>>311
自分を責めているわけではないのですが…
とりあえず頑張ります。
>>312
身に余るお言葉ありがとうございました。
やすいしの今後にご期待ください。
>>313
レスありがとうございました。
そう言っていただけると、とりあえずホッとします。
クリスマス特別短編の続きは海板の『実況ハロープロ野球2001 延長11回裏』にて…
チクショー失敗したなぁ(w
- 336 名前:ハロプロくん 投稿日:2001年12月25日(火)21時28分00秒
ヽ^∀^ノクリスマス短編の続きへのリンク!!
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=sea&thp=1009091849&st=33&to=41
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