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Starting〜パンドラの箱〜
- 1 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時07分26秒
- これは黄板で書いてた話なのですが容量などの問題で
こちらに新しく立てさせていただきます。
ではもう1度最初から最新更新分まで載せます。
- 2 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時09分01秒
―――
『ねぇ…もし明日からあたしがいなくなったら…どうする…?』
『えっ!いなくなっちゃうの!?…ヤダ!ヤダ!絶対ヤダ!!』
…………
『ねぇ…もし明日になったらあたしに関する事全部…忘れてたらどうする?』
『そんな事ありえないもん!』
『忘れちゃったら…だよ?』
『絶対忘れないもん!!』
…………
――彼女は愛するが故にその罠にかかってしまった。
――そして…大事なモノを無くす羽目になってしまう。
――けど…本当は何も無くしてなどいないのだ。
――本当に大事なモノが何か…いかに早くそれに気づけるか…
――どれだけ強い愛情を持って立ち向かえるか…
――これは愛し合う恋人達の、いや…愛する恋人の為に試練を与えられた
――1人の小さな少女の物語である。
- 3 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時10分13秒
−1−
“忘れないで…あたしの事…”
“覚えていて…あたしの温もり…”
“心はいつも…一緒だよ…”
“ずっと…愛してる…”
「zzz…ん…?何だ今の夢…あたしの声だった」
夢の中で自分の声が聞こえてきた。
その声は自分自身に訴えかけてたのではなく、他の誰かにあたしが訴えかけてる感じだった。
そして…夢の中のあたしは泣いていた。
- 4 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時13分11秒
――3月の初旬。
あたしの名前は矢口真里。18歳の女の子。
見た目はギャルだけど実は芸能人です。
日本で1番忙しい人気グループ、モーニング娘。のメンバーなのです。
そして…矢口の隣でぐっすり眠ってるこの娘も…
「zzz…」
今年16歳になるというのに…無邪気な寝顔(笑)
矢口の隣で眠ってる彼女の名前は後藤真希。
ピカピカの高校1年生だけど矢口と同じくモーニング娘。のメンバー。
その中でもメインを張ったりソロデビューが決まったりと大人気なんだ。
ちょっと妬けちゃうんだけどね。
その後藤真希があたしの恋人であり…1番大事な人なんです。
「しっかし…何だったんだろう…今の夢…」
瞳が覚めてしまったあたしはベッドから体を起こして呟いた。
今は真夜中…時計を見ると午前2時を少し回った頃だった。
いつもだったら夢の内容なんて起きたらすぐ忘れるんだけど…
何か強烈に覚えてる。自分の話し声を…自分の泣き顔を…
「んん…?」
あっヤバイ…ごっちん起こしちゃったか…
- 5 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時14分32秒
「…やぐっつぁん?どうしたの…怖い夢でも見た?」
ごっちんが瞳をこすりながら起き上がった。
「ううん…怖い夢じゃないけど…何か哀しい夢を見た気がする」
心が絞めつけられるような…
「そう…眠れないの…?」
俯いてる矢口を下から覗き込んでごっちんが聞いてきた。
「ちょっと瞳がさえちゃったかも…」
顔を上げ、ごっちんの方を見つめる。
「じゃあ……」
「ん?…!?」
ごっちんの腕が矢口の体に伸びてくる。
「後藤がずっと抱きしめててあげる」
矢口は強引にベッドに寝ころがされた。
「も〜子供扱いしてるでしょ?」
ごっちんの腕の中で軽く抵抗する。
「ヘヘ♪バレた?」
無邪気な笑顔に怒る気力も失せてくる。
「まぁいいや…じゃあ…朝まで離さないでね…?」
「うん、離さないよ…」
そう言ってごっちんは矢口の体をギュッと抱きしめた。
大好きな…大切な人の温もりで矢口に再び睡魔が襲ってきた。
そして矢口は朝までごっちんの腕のなかでグッスリ眠った。
さっきの夢の事なんか忘れてしまうぐらいに…
けど…後から考えたら、この夢の声が全ての始まりだったんだ。
- 6 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時15分56秒
−2−
「「おっはよ〜!」」
矢口とごっちんは楽屋に入るなりメンバーに元気に挨拶した。
「お〜おはようさん。なんや2人仲良くご出勤かぁ?」
ニヤニヤ笑いながら裕ちゃんがうちらのそばにやってくる。
「裕ちゃん、顔がヤラシイよ〜」
矢口はニヤけた顔の裕ちゃんにつっこむ。
「アハ♪ラブラブだから後藤とやぐっつぁんは」
そう言ってごっちんは矢口に抱きついてきた。ちょっと照れる
「はぁ…ごっちんに冷やかしは通用せんか…」
裕ちゃんは頭をポリポリとかきながら自分の椅子に戻っていった。
うちらはメンバー内でも公認のカップルで、今みたいな会話は恒例になっていた。
荷物を置いて2人でメイク室に向かう。
今日は雑誌の取材をいくつか受ける為、丸1日潰れちゃう。
でも明日は久ぶりのオフ。そしてごっちんとデートなんだ♪
嬉しさのあまり今日の仕事はいつも以上に張りきって頑張った。
うちらは仕事中、プレイベートを持ち込まないようにしてる。
だからごっちんと一緒にいられる時間は少ないんだ。
ヘヘ♪でも明日1日ごっちんといられると思うと…顔がニヤけちゃう♪
- 7 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時17分06秒
「「おつかれ様でした〜!」」
夜の8時を過ぎた頃、やっと今日の仕事が終わった。
ごっちんと途中まで一緒に帰るから2人で楽屋を後にした。
電車に乗って明日の事を2人で小声で話す。
「やぐっつぁん、明日のデート忘れちゃダメだよ?」
「忘れないよ〜大丈夫!」
「エヘヘ♪楽しみだなぁ」
「うん!久しぶりだもんね2人で出かけるの」
『次は○○…○○でございます』
「あっもう着いちゃったのかぁ」
矢口のマンションの方が都心から近い為、次の駅で降りなければいけない。
「早いよね。一緒にいると時間が経つのは…」
ごっちんがちょっと寂しそうにそう言った。
「その分明日ずっと一緒にいられるよ」
そう言ってギュッとごっちんの手を握った。
「そうだね。ヘヘ♪今夜眠れないかも」
ごっちんの大っきくて暖かい手が矢口の手を握り返す。
- 8 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時18分58秒
- そして…あっとゆう間に矢口が降りる駅に到着。
電車を降りると矢口はドアの方を振り返った。
「じゃあ明日ね〜♪」
「気をつけて帰りなよ〜!」
「やぐっつぁんも気をつけてね!」
「うん、じゃあね〜♪」
ごっちんが乗っている電車が見えなくなるまで矢口は手を振った。
見えなくなったのを確認して駅を出る。
矢口の住んでるマンションまでは人通りも多く、明るい道なので怖くはなかった。
明日の事を考えると、自然と家までの足取りも軽くなる。
いつもの帰り道でふと目の前の変化に気づいた。
あれ…何でこの道封鎖されてるの?朝まで普通だったのに…
…まっいっか。暗くてヤダけど…もう1つの道から帰ろう。すぐ近くだしね。
そして矢口はいつもは使わない道の方へと歩き出した。
でもこの時すでに矢口には見えない、運命の歯車が回りだしていたんだろう…
あれ…?ここの道こんなんだったっけ?
こんなに建物少なかったかなぁ。
……なんか…気味が悪い…でもここからしか帰れないし。
- 9 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時20分12秒
怖くなってきたから走って帰ろう!
そう思って矢口はこの道の終わりまでダッシュしようとした。
けど、その途中…不自然な程にライトが当たってるモノの存在に気づいた。
怖くて早く家に帰りたいはずなのに、何故か足がそのモノの方へと勝手に歩き出す。
そして…矢口はそのモノを覗き込んだ。
「何…これ…」
そこには小さなオルゴールくらいの箱がポツンと置いてあった。
そして、その箱の横には紙切れが1枚。
――自分の未来が見たい人へ…
――この中を覗けばあなたの未来を見る事が出来ます。
自分の…未来…?こんなの誰かの悪戯に決まってるよ。
でもちょっと興味あるかも…もしかしたら本当に見えたりして…
悪戯だったら悪戯で構わないしね。開けてみよっかな?
“ダメッ!開けちゃダメだ!!”
自分の中の何かが危険信号を出している。
けど矢口はその信号に気づく事が出来なかった。
- 10 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時21分09秒
“自分の未来…見てみたい”
そう思う矢口が確かにここにいた。
今はごっちんとすごいラブラブで不安なんてないけど…
これからもずっと続いていくのかな…?
ごっちんの気持ちが…いつか変わっちゃうかもしれない。
いつか矢口の事…好きじゃなくなるかも。
ごっちんとの幸せな未来があるのか…
“見てみたい…見ていいよね?”
いつの間にか矢口はこの箱の事を悪戯だとは思わなくなっていた。
そして…欲望に負けて矢口はゆっくりと蓋を開けた。
紙切れの最後に書かれていた警告文の存在に気づかないまま…
- 11 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時22分47秒
−3−
ゆっくりと蓋を開けると突然辺りが真っ白になった。
矢口は眩しくておもわず瞳を閉じた。
しばらくして、恐る恐る瞳を開けてみたら…
真っ白に光る空間の中のある部分だけが…蜃気楼のように歪んでいた。
何か…いる。矢口の前に…姿は見えないけど、絶対何かいる。
ここは何処なの?…何なの一体…夢?
『開けてしまいましたね…』
不意に矢口の頭の中にその声は聞こえてきた。
「!!…誰?誰かいるの!?」
立っている位置から辺りを見回してみたけど誰もいない…
『私には姿とゆうものはありません。けど私の声は聞こえてるはずです』
確かに聞こえる。けど、こんな事って…
「何?夢なの?これ…」
『すぐに理解しろと言っても難しいでしょうが…現実です。夢ではありません』
現実…って事は…あの箱は本物って訳?
「じゃあ、あなたが未来を見せてくれるの?」
『いえ…私は見せる事は出来ません』
「何?じゃあ…あれは嘘なの?」
『嘘…とゆうよりは未来は見る事など出来ない、と言った方が正しいでしょう』
はぁ?…それを嘘って言うんじゃ…
- 12 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時24分01秒
『瞳を閉じてみて下さい。…これがあなたの未来です』
言われた通りに瞳を閉じてみる。…って真っ暗じゃん!
「何も見えないけど…?」
『そうです、見えなくて当たり前なんです』
…矢口はおちょくられてるの?
「見えなくて当たり前って…どうゆう意味?」
『言葉のままですよ。未来は見た時点で変わってしまう…だから未来を見る事など出来ないのです』
「でもあの紙には未来が見れるって…」
確か…そう書いてあったはず…
『あの箱から未来を見ようとしても真っ暗な未来しか見えません』
「それじゃ詐欺じゃん!」
あたしは大きな声で何処にいるかわからない声の主に向かって言った。
『まぁ間違ってはいないですが…これは時空の番人が仕掛けた悪戯なんです』
「何…ちょっと訳わかんないんだけど。時空の番人?…じゃあ、あなたは一体誰なの?」
漫画みたいな事言われても、いまいちピンとこない…
『私は時空の番人の使い人です』
使い人…これもいまいち良くわかんない。
- 13 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時25分25秒
「ふぅ〜ん…未来が見れないのはわかった。だったらもうあたしを元の世界に帰して?」
見れないんだったらここにいる必要なんかないし。
『…帰るには条件があります』
「はぁ?条件…?何それ…」
帰るのに条件がいるの?
『紙に書かれていた文をちゃんと読みましたか?そこに書いてあったはずです』
何?何か書いてあったっけ?
そういえば…あの紙切れの最後にもう1文あった気がする…
矢口が思い出そうとしてると目の前にあの紙切れが出現した。
――自分の未来が見たい人へ…
――この中を覗けばあなたの未来を見る事が出来ます。
――“その代わりこの箱を開けたら未来が見えても見えなくても、あなたは大事な何かを失う事になります”
「…………」
今度は、はっきりと最後の1文が瞳に止まった。
『ある物を貰わなければあなたを帰す事は出来ません』
「…………」
言葉が出てこない…嫌な予感をひしひしと感じる。
- 14 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時27分49秒
『あなたは最後の警告文に気づかなかった。それも運命の悪戯なのかもしれませんが…
けど…私は箱が開けられてしまった以上、自分の仕事を実行しなくてはなりません』
「大事な…何か…?失う…?どうゆう事?」
やっとの事で矢口は声を振り絞って聞いた。
『それは…大事な記憶を失う…とゆう事です』
大事な…記憶…???
……まさか!!
『あなたには現在大事な人、つまり恋人がいらっしゃいますね?』
…頭の中が真っ白になった。そして自分の心臓が痛いくらいに早く鳴っているのがわかる。
『自分の恋人に関する記憶を消去するか…恋人の自分に関する記憶を消去するか…二つに一つ…』
何で…何で…何で……
『どちらか選んで頂かないとあなたは永遠に元の世界には帰れません』
この真っ白な何も無いこの空間に…永遠…
『ちなみに…その無くした記憶を元に戻す事は“私には”出来ません』
イヤだ…そんなのヤダよ!!
『(本当は記憶を戻す方法がありますが…それは本人次第。あなたは気づけるでしょうか?)』
- 15 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時29分07秒
「嘘…でしょ?そんな記憶を消すなんて事、出来るわけないじゃん!!」
『では…試しに簡単な記憶を消さしてもらいます。これはちゃんと後で戻しますので』
何?何が起こるの…?
“パチンッ!”
指を鳴らすような音が空間に響いた。
『あなたの年齢を教えて下さい』
「そんなの考えなくてもわか……えっ…嘘…あたし何歳だっけ…?」
何でわかんないの!?どうして…
“パチンッ!”
またあの音が鳴った。
『もう1度聞きます。あなたの年齢は?』
あっ…思い出した…
「…18歳」
本当…なんだ…これって。
『納得して頂けたみたいですね』
「……」
嘘じゃない。それはつまり…さっきの選択肢をどちらか選ばなければいけないって事だ。
- 16 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時30分14秒
「ねぇ、1日だけ時間くれないかな?元の世界で考える時間を…お願い!!」
拒否する事は出来ないってわかった。でも…せめて元の世界で考えたい…だって明日は…
矢口は何処にいるかわからない声の主に懇願した。
「……では24時間だけ与えます。24時間後にもう1度あなたの元に返事を聞きに行きます」
「ありがとう」
「もし返事が出来なかった場合は、自動的にこの空間で死を待つ事になりますので」
「…わかった」
矢口がそう返事をすると同時に、辺りは急に暗くなり元の道に戻った。
そして矢口の手には…あの箱が…
矢口はその場に呆然と立ち尽くした。
こんなの…夢なら覚めてほしいよ…
ダメ元で自分の頬をつねってみた…痛い…やっぱり現実なんだ、これって…
- 17 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時32分20秒
どうして…未来を見たいなんて思っちゃったんだろう…
どうして…後藤の気持ちを疑ったりしちゃったんだろう…
ずっと今のまま続いていけばいいって思ってたのに…
こんな事になるなんて…
自分のマンションに帰って来ても矢口の思考回路は正常に働かない。
正直、ちゃんと家まで真っ直ぐ帰ってきたのかもわからないくらいだ。
けど…無常にも時間は刻一刻と過ぎてゆく。
約束の時間は24時間後。
『カチッカチッカチッ…』
時計は止まることなく正確に時間を刻み続けてゆく。
24時間…考えるにはあまりにも短い時間だ。けど…決めなくちゃいけない…
24時間後には矢口か…ごっちんのどちらかが相手の事を忘れてしまっている。
明日は久しぶりにごっちんとデートのはずだったのに…明日が恋人同士としての最後の日になるなんて…
「はぁ……」
深いため息を吐いて頭を抱えた。
テーブルの上に置かれたあの箱が、現実だとゆう事を訴えかけてるみたいだった。
しばらくして矢口はゆっくりと立ちあがり、リビングから自分の部屋へと移動した。
- 18 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時33分27秒
矢口の部屋のドアを開けると一瞬ごっちんの香りがした。
当たり前か…数えきれないくらいこの部屋に来たんだから…ごっちんは。
あたしはベッドに座り込んで部屋を見まわしてみた。
部屋に入ると嫌ってほど目立つのが壁の写真だ。
部屋の壁のコルクボードに数えきれないくらい貼り付けてある2人の写真。
付き合い始めた頃の2人…ふざけて変な顔をしている2人…
初めてケンカして…仲直りして…泣いちゃって瞳が真っ赤な2人…
クリスマス…サンタの格好をしている矢口とトナカイの格好をしているごっちん…
矢口に頬にキスされて顔が赤くなってるごっちん…
ごっちんに抱っこされてジタバタと抵抗している矢口…
そして…とても幸せそうに微笑んでいる2人の姿…
忘れられない、忘れたくない想い出の数々…
矢口の頬に熱いものが流れ落ちる。
ごっちんとの事は全て、昨日の事のように思い出せるのに…
イヤだ…イヤだよ…
あたし…ごっちんの事、忘れたくないよ…
けど…あたしの事も忘れてほしくなんかないよ…
ごっちんに矢口の事、忘れてほしくない…
矢口は…どうすればいいの…?
- 19 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時34分26秒
−4−
『チュンチュンチュン…』
一睡も出来ないまま夜が明けた…答えはまだ出ていない。
そんな簡単に答えが出るなら、あの時あの場所で答えてるか。
ごっちんとの約束の時間は11時。あと3時間…
今日のデートが終わる時間が返事をする時になる。
同時にそれは…2人の終わりを意味する。
時間なんて…止まればいいのに…
朝陽が眩しく光る暖かい部屋で、矢口の心は凍りついてしまいそうだった。
何も考えられないままベランダへと出てみる。
街の様子はいつもと変わらない。そう…矢口が眠れないくらい悩んでても変わらず街は動き出す。
いつだったか、都内のスタジオの窓から外を眺めて2人で交わした会話を思い出した。
- 20 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時35分28秒
『後藤さぁ、あんまり都会の雰囲気って好きじゃないんだ』
『どうして?ごっちん東京育ちじゃん』
『うん、でも…こうやってビルがたくさん並んでるのを見ると…なんか寂しくなるんだよね』
『ごっちん…じゃあ寂しくなったらいつでも矢口の所においで?』
『…うん!エヘヘ〜♪』
ビルが立ち並ぶ街を見ると無性に寂しくなると言っていたごっちん。
『でもやぐっつぁんがそばにいると全然寂しく感じないよ?何でだろう…』
『そりゃ〜ごっちんは矢口に愛されてますから(笑)』
『アハ♪そうだねぇ(笑)……やぐっつぁんは?』
『ん?』
『やぐっつぁんが…寂しいって思うときは?』
『……』
矢口が寂しいと感じる時…それはごっちんが寂しいと感じる時だ。
だから…ごっちんにはいつも幸せそうな顔をして笑っていてほしい。
待ち合わせの時間まで後2時間…
- 21 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時36分24秒
ベランダの扉を閉めて部屋へと戻る。
凍りついていく心を少しでも暖める為にシャワーを浴びる事にした。
矢口の家のあらゆる所にごっちんの気配がする。
洗面所にはごっちんの歯ブラシに洗顔フォーム、そしてお気に入りのハンドタオル。
『ガチャ』
ドアを開けて中に入る。
浴室にはごっちん専用のシャンプー、リンスにトリートメント…
蛇口をひねると勢いよく暖かいお湯が飛び出してきた。
シャワーのお湯がほんの少しだけ…矢口の心に温もりを取り戻させてくれる。
一昨日の夜も矢口の家に泊まったごっちん。一緒にお風呂に入っている時の出来事が脳裏に蘇る。
『ごっちん?ちゃんと肩まで浸かってる?』
『ひゃ〜い♪…エヘへ〜』
『???こら――!ごっちん!浴槽で寝たらダメじゃん!!』
『ヘヘへ〜やぐっつぁ〜ん!愛してるよ〜♪』
『ちょっ…倒れるよ!ごっちん?もしかして寝ぼけてる?』
『やぐっつぁんは小っちゃくって可愛いなぁ』
『んぐっ!!ごっちん!矢口を胸に挟まないで――!息が出来ないよ!!』
『アハ〜♪やぐっつぁんの挟み揚げ〜♪』
『訳わかんね――!!』
……バカな事ばっかりやって…楽しかったなぁ…
- 22 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時37分30秒
浴室から出て髪を乾かし、瞳の下のクマを隠す為に軽く化粧をした。
自分の部屋へと戻って出掛ける準備をする。
携帯に財布、手帳にカメラ…いつもカバンの中に入ってる物達。
部屋の時計を確認すると待ち合わせの時間までもう1時間を切っていた。
家にいてもする事はもうない…
それなら少し早いけど…約束の場所でごっちんが来るのを待ってよっかな…
サングラスをかけてカバンを持ち矢口は部屋を出た。
玄関へと向かう途中、あの箱が瞳に止まった。リビングのテーブルの上に置いてある例の箱…
きっとデートの後ごっちんは矢口の家に来るだろうから、この箱を出しておいちゃまずい。
矢口はそっと手に取り、自分の部屋の机の引き出しの中にしまった。
再び玄関へと歩き出す。玄関のドアを開けて矢口は大きく深呼吸をした。
このドアを開けた瞬間…もしかしたら矢口の心はもう決まっていたのかもしれない…
そして…矢口はゆっくりと待ち合わせの場所へと歩き出した。
- 23 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時39分25秒
−5−
矢口は約束の時間より30分程早めに目的地に着いた。
何だか落ち着かない。待っている時間が1秒にも…1日にも思えた。
もうこうやってごっちんを待つ事も無いんだろう。
そう思うと…心臓が壊れてしまいそうなくらい痛くなった。
でも…ごっちんは何も知らないんだから…暗い顔してちゃダメだ。
ああ見えてもごっちん、勘が鋭いから…気づかれないようにしなきゃ。
じゃないと…優しいあの娘を不安にさせてしまう…
「あれ〜やぐっつぁん早いね〜♪」
街の雑踏をかき消すかのように後ろから愛しい人の声が聞こえてきた。その声にドキっとする。
ごっちん、いつもだったら時間ギリギリに来るのに…
いよいよ始まる…最後のデートが…
ちゃんと今日1日笑顔で過ごすんだよ?矢口…
自分で自分に言い聞かせて気持ちを落ち着かせた。
- 24 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時40分34秒
「…おっす!ごっちんも早いじゃん」
おでこに手を当てて矢口は後ろを振り返った。
けど…矢口はちゃんと笑えてる?自分が今どんな顔してるかわからない。
仕事用じゃない、ごっちんにしか見せない矢口の笑顔…ちゃんと出来てるかなぁ。
「…ヘヘ〜会いたかったよぉやぐっつぁん♪」
ちょっとオーバーに矢口に抱きついてくるごっちん。
「も〜昨日も会ったじゃん!ってウソウソ、矢口も会いたかったよ♪」
今の矢口を見たごっちんは……いつも通り…かな?
「今日は早く来てやぐっつぁんを驚かそうと思ってたのに、もぉずるいよ〜」
「アハハ、ごめんごめん」
うん…いつも通りだよね。
さて、これからどうしようか…と考えていたらごっちんが矢口の腕を掴んで言った。
「ねぇ先にお昼ご飯食べよ〜後藤もぉお腹ペッコペコだよぉ〜」
そう言ってお腹をさする。ハハ、ごっちんらしいや…
「いいよ、何食べる?」
「う〜んやっぱマックかな?」
「わかった、じゃあ行こう!」
そしてあたし達は人ごみをかきわけ、肩を並べてマックへと歩き出した。
- 25 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時41分14秒
「やぐっつぁん、そんだけしか食べないの?」
矢口のトレイを見て驚いたようにごっちんは言った。
トレイにはアップルパイとオレンジジュースだけしかのっていなかった。
「うん、朝いっぱい食べてきたから…」
嘘をついた。昨夜から何も食べてない…今も食欲は無いに等しい。
けど、そんな事言えるはずがなかった。
「ふ〜ん、けどやぐっつぁんはもっと食べないと背伸びないよ?」
自分のトレイをテーブルに置いて、ごっちんは矢口の頭をポンポンっと軽く叩いた。
「矢口の身長は中3から伸びてないよ(笑)」
「アハハ♪そうだったねぇ」
ごっちんの無邪気さで、少しだけ暗くなった矢口の心が明るくなっていった。
- 26 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時42分06秒
「ふ〜お腹いっぱい!ごちそ〜さま〜♪」
「いつもの事だけど…よく食べたねそんなに…」
マックシェイクにビックマック、チキンナゲット、ポテトのL…以下略。
でも…あんだけ食べてもお腹だけは出ないんだよなぁ、ごっちんって。
「まぁ食べ盛りですから♪」
「ごっちん年中食べ盛りじゃん(笑)」
「も〜ひど〜い」
ほっぺたを膨らまして怒るごっちん。可愛いなぁ…
いつもと変わらない…いつもの光景。幸せとゆう言葉がそこには溢れていた。
矢口はその瞬間を1秒1秒、大事に…大事に噛み締めて過ごした。
その後うちらは買い物をしたいとゆうごっちんの提案で渋谷へと向かった。
本当は買い物って気分じゃなかったんだけど…
でもごっちんの楽しそうに買い物する姿を見ていたら、そんな事どうでもよくなった。
- 27 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時43分43秒
「映画見よっか!いつもの映画館で」
「うん、あそこ人少ないからいいよね〜」
買い物の後、今度は矢口の提案で映画を見る事にした。
矢口達は、若者で賑わう通りから少しはずれた所にある映画館へと歩いてゆく。
館内に入るとほとんど人影はなく、4,5人がバラバラに座っている程度だった。
この映画館は今時の映画は上映してなくて、昔の映画のリバイバル上映ばかりだった。
矢口もごっちんも昔の映画が好きな訳じゃなく、ただこの何とも言えない館内の雰囲気が好きだった。
「ここに座ろう♪」
「うん」
ごっちんが指した真ん中から少しずれた席に2人で座る。
映画の本編が始めるまでごっちんは嬉しそうにポップコーンを頬張っていた。
ごっちんは映画館に来ると必ずポップコーンを食べる。
前に『実は映画見るよりポップコーン食べる方が楽しみなんだ♪』って言ってた。
こうゆう子供っぽい所があるごっちんも矢口は大好きだった。
- 28 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時44分54秒
そして、館内が暗くなり映画が始まった。
物語は、それぞれ好きな人がいる男女2人が想いを寄せている相手に振られて
お互い心に傷を抱えながらも次第に相手に惹かれてゆく、とゆうよくある恋愛ものだった。
『失恋した心を癒すのは…やっぱり新しい恋なんだよ』
『…ズルイ人…もう止められないってわかってるくせに』
『いつの間にお前の存在がこんなに大きくなったんだろう…』
『…もう…あなたしか見えないよ』
…………
この話…矢口とごっちんの関係にちょっと似てるなぁ…
矢口達の始まりも、お互い“ある人”に振られてからだったし。
あの頃ごっちんと付き合う事になるなんて思いもしなかった。
きっと…ごっちんも矢口と付き合う事になるなんて想像もしなかったはず…
実際、矢口とごっちんはライバルだったし…
でも今じゃ…矢口にとってかけがえのない大切な人。
寂しくて…辛くて…1人で眠れない夜、そばにいてくれたのはごっちんだった。
ごっちんも辛かったはずなのに…優しく矢口を包み込んでくれた。
誰かの優しさがあんなに嬉しかったのは…初めてだった。
- 29 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時45分49秒
「やぐっつぁん?泣いてる…の?」
「えっ?あっ…」
ごっちんにそう言われて初めて自分が泣いてる事に気がついた。
涙の原因はきっと…迫り来る哀しい現実に矢口の涙腺が反応したんだと思う。
「どうかした?泣くようなシーンじゃないのに…」
心配そうな顔をしながらごっちんは矢口の涙を優しくぬぐってくれた。
「……ちょっとコンタクトずれちゃっただけだから大丈夫だよ」
そのままギュッとごっちんの手を握る。
「そっか…ならいいけど」
今日、矢口は一体何回ごっちんに嘘をつくのだろう。
きっとごっちんは気づいているんじゃないかと思う。矢口がいつもと違う事に…
物思いにふけってる間に物語はいつの間にか終盤にさしかかっていた。
どうやらこの物語はハッピーエンドで終わったみたいだ。
いいよね…この2人は…きっと幸せになるために出逢ったんだね。
矢口とごっちんは……
- 30 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時46分56秒
映画を見終わって外に出ると、辺りは薄暗くなっていた。
「これからどうしよっか?」
携帯の時間を見ると、時刻は18時30分。
「やぐっつぁんち行こう!後藤がご飯作ったげる」
「…いいよ!ごっちんの料理おいしいんだよね〜」
「エヘ♪ありがと〜」
嬉しそうに微笑んでいるごっちん。
でも…その笑顔をこの後、矢口が壊してしまうかもしれない。
そして…もう2度と見れないかも…
ごっちんが止めたタクシーに乗って矢口の家まで向かった。
マンションの近くでタクシーを降りて2人で家まで歩く。
ごっちんは夕飯のメニューを何にしようかと独り言を言っている。
歩きながらふと、すっかり暗くなった空を見上げてみる。
夜空には怖いくらい綺麗に1番星が輝いていた。
ごっちんと過ごす最後の夜…カウントダウンはもうすでに始まっている。
矢口は目の前に…季節外れの桜の花びらが散ってゆくのを…確かに見た気がした。
- 31 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時48分07秒
−6−
「ごちそうさま〜」
「ごちそうさまでした」
あの後、矢口の家に来てごっちんが作ってくれた夕飯を2人で食べた。
ごっちんは矢口の好きな料理をいっぱい作ってくれた。でも…それが余計に悲しかった。
…………
いつものようにご飯を食べた後、矢口の部屋で2人でくつろぐ。
以前だったらごっちんが醸し出すゆっくりとした雰囲気を満喫できたんだけど…
今は…落ち着かない…流れてる時間が早いのか遅いのかわからなくなっている。
それでも残された時間があとわずかだって事だけはわかった。
このまま…何も言わないままあたしは決断するの?
でも…例え遠まわしに言ったとしても…ごっちんの笑顔を曇らす事になるだろう。
それでも…ごっちんの気持ちが知りたい。そう思うあたしは卑怯なのかな…
ゆっくり顔をごっちんの方に向ける。
ごっちんは部屋に置いてあるファッション雑誌を読んでいる。
- 32 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時49分55秒
「ごっちん…ちょっと聞いていい?」
「…なぁに?」
ゆっくりと雑誌を閉じ、ごっちんは矢口の方を向いた。
「もし…もし明日から矢口がいなくなったら…どうする…?」
もう心は決まってるくせに…こんな事聞くなんて矢口はズルイヤツだ。
「えっ…いなくなっちゃうのやぐっつぁん!?…ヤダ!ヤダ!絶対ヤダ!!」
ごっちんは持っていた雑誌を床に落とし、矢口に詰め寄ってくる。
「ごっちん……もしもの話だよ」
「もしもでもイヤ!後藤…やぐっつぁんがいないと生きていけない!」
「……」
ごっちんの顔がみるみる内に青ざめていく。
「ヤダよ……い…ちゃんみたいに…遠くに行っちゃわないで…独りはヤダ」
矢口を見つめるその瞳は、いつもの輝いてるごっちんの瞳からは想像も出来ないほど影のある瞳だった。
胸が…痛い…
矢口がいなくなった時のごっちんの姿は容易に想像できた。
後藤は…とても強いけど、それ以上に弱い娘だから…
- 33 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時50分51秒
「…どこにも行かないよ、矢口は…けど」
「けど…何?」
後藤の瞳には今にも流れ落ちそうな程、涙が溢れていた。
「けど、ゴメン…もう1コだけ…もし明日になったら矢口に関する事全部、忘れてたらどうする?」
「そんな事ありえないもん!」
「忘れちゃったら…だよ?」
「絶対忘れないもん!!」
涙を流すのを我慢しているのか後藤の唇は震えていた。
「…忘れちゃうんだよ」
「何でこんな事ばっかり聞くの?今日のやぐっつぁん変だよ!?」
「それは…」
“この箱の事については一切誰にも話してはいけません”
“話してしまうとあなたの存在がこの世の中から消滅してしまいます”
そう言われた事を思い出す。
- 34 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時51分41秒
「それに…どうして今日はキスもしてくれないの…?後藤の事嫌いになった…?」
後藤の瞳から大粒の涙が流れ落ちていく。
「ちがっ…」
違うよ…そんな訳ないじゃん。けど…明日になれば2人は恋人同士じゃなくなる…
後藤は矢口の事…忘れちゃう…でも矢口は後藤の記憶を覚えたままだ。
今、後藤に触れてしまえば…きっとその温もりが…矢口の心を苦しめる。
矢口の心を壊してしまう…だから何も無いまま終わりたかった。すごい自分勝手だね…
けど…前に誰かが言ってた…
“目の前で愛する人が泣いていたら…どんな理由があっても抱きしめてあげるべきだ”って…
でもその言葉を思い出す前に、もう矢口は後藤を抱きしめていた。
- 35 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時52分54秒
「今日のやぐっつぁん、ずっと様子変だったよ…いつもと違かった」
やっぱり…気づいてたんだね。
「ごめん…ごめんごっちん…」
「不安になるよ…そんな事言われたら」
激しい自己嫌悪が矢口を襲う。矢口が1番大切なのは後藤なのに…
「そうだよね、ごめん…もうこんな事言わないから」
「うっ…んぐっ…やぐっつぁん」
泣き止まない後藤をずっと…ずっと抱きしめ続けた。
例えこの温もりが今後、矢口を苦しめる原因になったとしても…抱きしめずにはいられなかったんだ。
それが…矢口の受ける報いなんだから…
いつしか矢口の腕の中で後藤は眠りについていた。
クッションを枕にしてごっちんを寝かせ、タオルケットをかけた。
しばらくその寝顔を見つめ続ける。
「ごめん…ごめんねごっちん」
そっとごっちんの頬に触れ、涙を拭う。
ずっとこのままごっちんに触れていたかったけど…もう時間がきたみたい。
- 36 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時53分58秒
大きく深呼吸をしてさっきから感じていた気配を再確認し、そして話しかけた。
「ねぇ、そこにいるんでしょ?」
ごっちんが起きないように小さな声で喋りだす。
『…気づいてましたか』
矢口の後ろから出来れば聞きたくなかった声が聞こえてくる。
「もう時間なんだよね」
『はい。答えは…出ましたか?』
「…出たよ……」
『では…返事を聞かせて下さい。どれを選びますか?』
「……恋人の…あたしに関する記憶を…消す方で」
『それでよろしいですか?』
「うん…」
最初からわかってた。後藤に辛い思いなんかさせられないって…
矢口が起こした問題だから…矢口が罰を受けなきゃ。
- 37 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時54分53秒
「あのさ…ひとつお願いがあるんだけど」
『何でしょうか?』
「この娘の記憶消した後、この娘を自宅の前まで運ぶ事出来る?」
『それくらいなら簡単ですが』
「そっか…頼んだよ」
『後1分程、時間ありますが…やり残した事があればどうぞ』
やり残した事…もう無いよ。けど…最後に言いたい事がある。
あたしは後藤の側に寄り…後藤に囁きかけた。
「忘れないで…あたしの事…」
無茶な事言ってるってわかってる。けど…
「覚えていて…あたしの温もり…」
ほんの少しでもいい…心のどこかで矢口の事覚えていて…
「心はいつも…一緒だよ…」
一緒だって信じたい。
「ずっと…愛してる…」
幾筋もの涙が頬を伝い落ちていく。
そして矢口は…眠っている後藤の唇に最後のキスをした。
- 38 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時55分52秒
唇を離した後、後藤がゆっくり目を覚まし矢口を見た。
「やぐっ…」
ごっちんが矢口の名前を呼ぼうとしたけど、それを遮るように矢口は呟いた。
「バイバイ…ごっちん……」
そう矢口が呟いた瞬間、後藤の体は白く光りそして…矢口の目の前から消えてしまった。
後藤の香りと、部屋の床に矢口があげた指輪だけを残して…
それと同時にあの声の主も例の箱も矢口の部屋から消えていった。
きっともう、後藤の記憶は消えているんだろう…
そして…まるでこれから始まる辛い日々の為に休めと言ってるかのように、矢口はその場に倒れこんだ。
矢口は今………大事な人の心を失いました…
- 39 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時57分37秒
−7−
よく覚えてないけど…こんな夢を見た。
―――
薄暗い空間の中に矢口は1人、ポツンと立っていた。
目の前には1本の道が続いていた。
そして、そのずっと先にはほんのわずかだけど小さな光が見えた。
光の中に誰かいた。でも矢口のいる位置からは逆光になってよく見えない。
光の元へ歩こうとして気づいた。道が異様に狭い。
踏み外しそうになるくらい狭い道。その下は真っ暗な闇。
どれくらいの深さかもわからない谷底。
急に足がガクガク震えだす。でも…あの光の元へ行きたい。
一歩ずつ震える足を前に押し出して歩いてゆく。
けど…道の真ん中あたりまで来た時、矢口は足を踏み外してしまった。
- 40 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)03時59分44秒
“ダメだ!落ちる!”
思わず瞳を瞑った。……けど矢口は落ちなかった。
矢口の腕を掴んでくれてる人がいたからだ。
“だ…れ?”
ゆっくりとそして力強くその人は矢口を引き上げてくれた。
暗くて顔が見えないけどすごい華奢な腕だった。
「…矢口には笑顔が似合う。矢口らしさを失わないで」
温かくて安心できるその声。
矢口は確かにその声の人物を知っていた。
「ありがとう……ちゃん」
「ちゃんと前を見て自信を持って歩いていけば大丈夫。負けないで」
まるで母親みたいな温もりがある彼女。
さっきまでは震えながら歩いていたのに…今は真っ直ぐ前を見てちゃんと歩けてる。
それは、後ろから感じる優しい視線のおかげだ。
そして矢口は…光の中へ…
“会いたかったよ…”“…やっと会えたね”
―――
よく覚えてないけど…こんな夢を見ていた気がするんだ。
- 41 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時00分38秒
−8−
朝起きて何度も何度も、夢であってほしいと思った。けど…
ジュエリーケースの上にある朝陽を浴び眩しいくらいに輝く指輪。
その指輪が何もかもを物語っていた。
―――これが現実……。
記憶を無くした後藤を見た時、矢口はどうなるんだろう。
まともに会話できる自信なんてないよ。
仕事だって…矢口は続けていけるんだろうか…?
何でもないフリして笑えるのかな…
こんなに弱気になったのは生まれて初めてだった。
それだけ自分の中で後藤の存在が大きいって事なんだけどさ。
けど一昨日から嫌って程思い知らされるのは…時間は止まらず進むって事。
もう仕事に行かなくちゃいけない時間だ。
何をどうしたいのかわからぬまま矢口は仕事場へと向かうために家を出た。
- 42 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時01分28秒
今日はもうすぐ始まるツアーのダンスレッスンの日。
事務所に集まってからみんなでスタジオまで移動する。
矢口は重い足取りで事務所内へ入っていく。
控え室に行く途中にマネージャーさんに会った。
「おはようございます」
「おはよう。もうメンバーみんな来てるよ」
みんな来てる…じゃあ…
「あの…後藤は来てます?」
「?みんな来てるって言ったでしょ?後藤も来てるよ」
…だよね。
「…そうですか。わかりました」
「???」
まともにマネージャーの顔も見ないで矢口は控え室へと向かった。
よりいっそう重くなる足取り。そして…扉の前で足を止めた。
このドアを開けたらごっちんがいる。記憶を無くしたごっちんが…
何て言ったらいいんだろう…何を喋ったら…
“初めまして”?…ヤダそんなの。絶対言いたくない。
でもその前に…みんなに事情を話さなきゃいけないかな。
矢口のせいでメンバーに迷惑はかけたくないんだけど、でもすぐに後藤の異変に気づくだろうし。
あたしは1回大きく深呼吸をしてドアノブに手をかけた。
- 43 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時02分38秒
『ガチャ』
ゆっくりドアを開け部屋の中へと入った。
「…おはよ」
「「「おはよ〜」」」
いつものようにメンバーから元気良く返事が返ってきた。
けど、聞き慣れた声が聞こえてこない。
一瞬の静寂の後、彼女は口を開いた。
「えっ…みんな知ってる人…?」
彼女はキョトンとした顔で矢口以外のメンバーを見回す。
後藤と瞳があった。でも後藤は「この人誰?」とゆう瞳をしていた。
矢口はその場に固まったまま動く事ができなかった。
わかってはいたけど…ショックだった。
目の前にいる後藤は、矢口の知っている後藤じゃない。
一緒に苦しみや悲しみを乗り越えたあたしだけの後藤じゃない。
初対面の時とは違う。あの時の後藤は全員の事を知らなかった。
けど今、目の前にいるのは…矢口だけを知らない後藤真希。
ショックで泣きたいはずなのに…何でだろう?涙が出てこない。
“本当に…本当に哀しい時って…涙は出てこないものなんだ”
あぁ…アイツが言ってた事は本当だったんだ。
- 44 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時03分51秒
「ごっちん何朝っぱらからハイレベルなボケかましとんねん」
「裕ちゃんの友達?…にしては若いか」
「はぁ?何やあんたらケンカでもしたんか?」
「意地悪しないで教えてよ〜」
裕ちゃんと後藤のやり取りが部屋に響く。
「ちょっ…本気でケンカか!?矢口、ごっちん怒らすような事したん?」
「矢口さん…ってゆうんですか…初めまして後藤です」
“初めまして”
……その言葉が矢口に追い討ちをかけた。
「後藤がここまでボケんのも珍しいね」
違うよ圭ちゃん。ごっちんの瞳が…矢口を見ていない。
「…ちょっと裕ちゃんこっち来て」
「何や何や、やっぱりケンカかいな」
「……」
あたしは強引に裕ちゃんの腕を掴み急いで部屋を出た。
- 45 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時05分00秒
人がいない場所まで裕ちゃんを連れて行った。
箱の事は言えないけど、後藤が今どうゆう状態かぐらいは言っておかないと…
「裕ちゃん、今から矢口おかしな事言うかもしれないけど…真面目に聞いてくれる?」
「何や仲直りの方法か…そうやなぁ」
「真面目に聞いて!!」
「…すまん」
矢口の真剣さを悟ったのか裕ちゃんの顔つきも真面目になった。
「さっきの後藤…いつもの後藤じゃなかったでしょ?矢口への態度が」
「あぁ」
「…信じられないかもしれないけど…後藤、矢口の事知らないの」
「はぁ!?何ゆうてんねん」
裕ちゃんは眉間にしわを寄せた。そうだよね…普通は信じられないよね。
「後藤…矢口の事だけ忘れちゃったの…記憶が無いの」
「……う…そ…やろ?そんな事ありえへんやん」
「冗談でこんな事言えないよ…」
「ほな…同じメンバーって事も?」
「うん。それに矢口と付き合ってた事も…とにかく矢口の事だけ全部忘れてるんだ」
「…マジで?」
それから裕ちゃんに箱の事以外を話せる範囲で話した。
- 46 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時05分51秒
「とりあえずはわかった。けど、矢口は何でごっちんが記憶無くしたんか…知ってるんか?」
「知ってるけど…言えない。でも後藤は何もしてない。後藤は何も悪くないんだ」
「…事故とか病気とかとはちゃうんやな?」
「違うよ」
「記憶戻る可能性は?何かの拍子に戻ったりするんとちゃう?」
「わからない…」
わかってる事は…可能性は限りなくゼロに等しい事ぐらいだ。
「そっか…じゃあメンバーにはうちから事情話すわ。矢口、何回も言いたくないやろうから」
「…ありがとう」
「それと…後藤には矢口の事教えやなあかんなぁ。一緒に活動してるんやし」
「…そうだね。でも矢口と付き合ってた事は言わないでね」
「それでええんか?」
「だって…知らない人と付き合ってたなんて言われたら後藤も嫌だろうから…」
自分で言って胸が痛くなった。
「…わかった。じゃあうちはみんなの所行ってくるけど矢口はもうちょっとここにおり」
「うん…ごめんね迷惑かけちゃって」
裕ちゃんは少し複雑そうな顔をして矢口の髪を撫で、そして部屋の方へ歩いていった。
- 47 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時06分37秒
裕ちゃんがみんなの所に戻った後、矢口はその場に座り込んだ。
どうやら待ち受けていた現実に矢口の体はついていけなかったみたい。
必死に震える自分の体を抱き抑える。
けど…ショックを受けてる半面、どこか冷静に受け止めてるもう1人の自分がいた。
先に仕事の事を優先して考えてる自分。
それはきっと…モーニング娘。としての矢口真里の方なんだろう。
でも今は何も考える事が出来なかった。
『矢口さん…ってゆうんですか…初めまして後藤です』
後藤の声が矢口の頭の中で繰り返し響き渡る。
今は心にポッカリと穴が開いた気分…ただそれだけだった。
- 48 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時07分14秒
−9−
控え室に戻るとそこにごっちんの姿はなかった。
「あれ?ごっちん何処いったん?」
ごっちんの横に座ってた圭坊に聞いてみる。
「ソロの歌収録の事でマネージャーさんに呼ばれて行っちゃったよ」
「そっか…まぁその方がええねんけど」
とりあえずごっちん以外にごっちんの事話しとこか…
「何?何か用事?」
なっちが人懐っこい顔でうちを見てくる。
「…実はなぁ」
うちはさっきの後藤の言動についてと、今の矢口の状態をメンバーに話した。
- 49 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時07分59秒
「本当…なの…?」
なっちの表情がうって変わって驚きに変わる。まぁ当たり前やな。
「あぁ、ほんまみたいや」
「じゃあさっきの後藤…ふざけてたわけじゃないんだ」
圭織は意外にもすんなり納得した。
「仕事に関してはまぁどうにかなるやろうけど…問題は矢口の精神状態やなぁ」
「矢口の気持ち考えると…ね」
圭坊が苦笑いを浮かべた。今でさえ矢口は壊れそうな瞳をしとったのに…
「今、矢口さんはどうしてるんですか?」
黙って話を聞いとった吉澤が口を開いた。
「向こうの部屋におる。顔色悪かったから少し休ませてるねん」
「大丈夫なんですかねぇ」
「さぁ…大丈夫とちゃう事は確かやけど」
…………。
- 50 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時08分45秒
困惑ぎみのメンバーを置いてうちは後藤を探しに部屋を出た。
さてと…ごっちんに矢口の事教えやななぁ。
ごっちんどこや?……おった。丁度一人やな。
「あれ…裕ちゃんどうしたの?何か用事?」
廊下の向こうからごっちんは歩いてきた。
どうやらマネージャーさんの話も終わったみたいやな。
「あのなぁごっちん話があんねん。…実は」
うちはごっちんに近寄って肩を抱き寄せた。
「なぁに?裕ちゃん」
ごっちんはキョトンとした顔でうちを見てくる。
「さっき部屋に入ってきた女の子おるやろ?」
「あの背の低い人?」
「そう…ほんまにあの娘が誰かわからん?」
「うん。わからないよ」
「そっか。あのな、あの娘は…うちらと同じモーニング娘。のメンバーなんや」
- 51 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時09分50秒
「ウソ…ほんとに!?ほんとに同じメンバーなの!?」
ごっちんは驚いてうちから体を離した。
「あぁ。圭坊達と同期や」
「ってことは…市井ちゃんとも?」
「そう同期や」
紗耶香の事は覚えてるんか…ほんまに矢口の事だけ忘れとるんやな。
「何にもわからんのか?矢口の事」
「うん…それってあたしだけが忘れちゃってるって事なんだよね」
「そうゆう事みたいや」
「そういえば事務所内に貼ってある娘。のポスターに一緒に写ってるもんね」
「何でごっちんがこうなったのか、うちにはわからへんけど…」
「…うん」
「せやけどずっと一緒におったメンバーやから矢口は。知らん事だらけで上手く付き合われへん時も
これから出てくるやろうけど、すぐにとは言わんから徐々に打ち解けていったってくれるか?」
「うん…でもあたし」
わかってる…あんたがなかなか心を開かんって事。
「徐々にでええねん」
「わかった…」
取りあえずこれでごっちんは何とかなるかな?後は…矢口しだいやな。
- 52 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時10分47秒
『コンコン。ガチャ』
矢口が部屋でボーっとしていると訪問者は突然来た。
「あの〜…」
「!!…あっ」
その声におもわず体が反応する。
ドアを開けて矢口を見ているのは紛れもなく後藤だった。
中に入り遠慮がちに矢口に近づいてくる。
「矢口さん…さっきはごめんなさい。失礼な事言って…先輩だったんですね」
「裕ちゃんに聞いたんだ…矢口の事」
「はい…」
後藤…気まずそうだな。
無理もないか…初対面のヤツと同じ空間にずっといるのは居心地が悪いだろうし。
「あの…これからよろしくお願いします」
「うん…」
そして後藤はペコリと頭を下げて部屋を出ていった。
- 53 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時11分31秒
「はぁ…」
矢口さんなんて呼ばれるのいつ以来だろ。
後藤は加入してきた時はすぐにうちらに打ち解けて…
矢口の事は最初“まりっぺ”って呼んでくれてた。今は誰も呼んでないけど。
『やぐっつぁん♪』
よく考えると、昨日まで矢口の事あだ名で呼んでたのって後藤だけなんだよね。
新メンバーは“矢口さん”他は“矢口”だし。
昔の後藤なら「こう呼んでいいよ」って言ったら素直に呼んでくれただろうけど
新メンバー達と馴染んでしまった今、一人だけはみ出る事はしないだろう。
それは仕方のない事なのかもしれない…
でも…“矢口さん”って他人行儀で呼ばれる事が後に矢口をもっと苦しめる事になった。
- 54 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時12分41秒
−10−
その後、矢口はまともに後藤と会話する事もないままスタジオに移動した。
スタジオに着いてからも大事なレッスンなので休憩時間以外は私語は禁止だ。
休憩時間、何度か後藤と目が合った。
けど…その度に後藤は気まずそうに目を逸らすだけだった。
矢口も目を逸らされるのが怖くて後藤の方を見れなくなった。
夜の9時を回り長時間のダンスレッスンは終わった。
みんなシャワールームで汗を流す。
熱くなった体に冷たいシャワーを勢いよく浴びせる。
矢口の体が寒さで震えだした頃、メンバーの何人かはもうシャワーを浴び終えていた。
少し静かになったシャワールーム。今度はシャワーの温度を熱くした。
体の震えは止まっても心の震えは止まる事はない。
このまま熱いお湯に溶けてしまえばいいのに…そんな事まで考えていた。
けどいつまでもシャワーを浴びてる訳にもいかず、矢口はシャワーを止めた。
そろそろ出ようと思いバスタオルを巻いて個室のドアを開けたんだけど…
更衣室の方から声がする。どうやら後藤とヨッスィーの2人がいるみたいだ。
矢口は出るに出られずその場で足を止めた。
- 55 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時14分09秒
「ごっちん…本当に矢口さんの事、わからないの?」
「裕ちゃんと同じ事聞かないでよぉ。ん〜わからないとゆうより…知らないんだよね初めて会ったから」
「はぁ…」
「ねぇ?あたし矢口さんと仲良かったの?」
「そりゃ仲良いも何も2人は付き合っ…」
「2人は…何?」
「…1番の仲良しだったんだよ」
「そうなんだ…ちょっと意外な感じがするかも」
「何で?」
「だってあたしと矢口さんって年離れてるじゃん?それにヨッスィーが1番話合うし」
「そのあたしが入り込めないぐらいだったんだよ…2人は」
「ふ〜ん…でも何もわからないや。そろそろ出よう?ヨッスィー」
「あっ…うん」
『ガチャ…バタン』
- 56 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時15分09秒
どうやら2人は更衣室を出ていったみたい。
ヨッスィーが気を使ってか小声で話していたので会話の内容はよくわからなかった。
いや…矢口が聞きたくなかっただけなのかもしれない。
今、後藤が一番心を開いてるのはヨッスィーだ。
最初からあの2人は気が合ってたし…ましてや同い年。話もしやすいんだろう。
もし2人がお互いを意識しだしたら…
でもヨッスィーは後藤の事そうゆう風には見てないはずだ。
わかってる…わかってるけど。
今、あの2人が一緒にいたり話してるのを聞くのは精神的に辛い。
こんな事になる前は何とも思わなかったのに…
でも…仕方のない事だ。矢口が悪いんだから。
全部…全部矢口のせいなんだから…
- 57 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時16分29秒
「…ダメだよ矢口」
突然後ろから聞こえてきた声。
「えっ?圭織、まだいたんだ…何がダメなの?」
振り向いた時、圭織はバスタオルを体に巻き真剣な顔をして矢口を見つめていた。
「圭織…何か知ってるの…?」
「ううん…よくわかんないけど。でも…このままじゃダメだと思う」
昔から圭織は突然不思議な事をよく言うんだけど…未だに理解し難い。
「矢口…あんまり自分を責めすぎない方がいいよ?でないと簡単に気づける事に気づけなくなるから」
ポンっと矢口の肩を叩いて圭織はシャワールームを出ていった。
矢口以外誰もいなくなったシャワールームにはポタポタと水滴の音が響いている。
簡単な事…?気づく…?それってどうゆう意味…
この時の矢口には圭織の言った言葉の意味が理解できなかった。
- 58 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時18分03秒
−11−
――3日後。
ツアーのパンフレット用の撮影の為、矢口達は都内のスタジオに集まっていた。
後藤と矢口の関係は相変わらずで…仕事以外で絡む事はほとんど無かった。
ユニットでの活動が主で本体での活動がほとんど無かったから。
それに後藤はソロデビューの準備に向けて単独での行動が多かったし…
このまま後藤がそばにいない事に段々慣れていっちゃうの…?
最初から何も無かったように普通の生活に戻るのかな…?
…………。
衣装に着替えてスタッフさん達に挨拶をしながらスタジオに入る。
全員で撮る場合、後藤が真ん中で左右になっちと矢口とゆうポジションの時が多い。
当然今日もその並びな訳で、しかも…
「もうちょっと真ん中に寄って?後藤さんは矢口さんの肩に手を回して?」
なんてカメラマンさんは注文を出す。
指示を受けて、ぎこちなく矢口の肩に回されたごっちんの手。
体温は同じくらいのはずなのに、すごい冷たく感じる。
矢口の肌に触れている部分がその冷たさで凍りついていくのがわかる。
- 59 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時18分50秒
「はい、みんな笑って〜笑顔笑顔!」
ハハ…こんな時でも笑顔を作れる自分がイヤになる。
でもこんなの本当の矢口の笑顔じゃない。
『やぐっつぁんの笑顔って世界一カワイイよ』
『何だよ〜照れるじゃん』
『ヘヘ♪本当のやぐっつぁんの笑顔は後藤だけが見れるんだよぉ』
『うん、それは当たってるかもね』
『…ずっと後藤にだけ見せてね』
『…ずっと矢口の笑顔を見ていてね』
…………。
本当の矢口の笑顔を知ってる人は…もう…ここにはいないんだ。
- 60 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時19分46秒
―――
撮影も無事に終わり、みんなそれぞれ帰っていく。
「矢口さん、お疲れ様でした」
「…お疲れ様……」
帰っていく後藤の後姿。
見慣れていたはずの後姿なのに、矢口はあの背中を知らない。
あの背中は矢口がいつも抱きついていた背中じゃない。
段々と遠ざかってゆく後藤の姿。
こんな状態で好きな人の後姿を見るのは辛い。
寂しさからか矢口は、ドアの向こうに消えようとしていた後藤を追いかけようとした。
けど…途中で凍りついたように足が止まる。
――追いかけてどうすんの?何を言うつもりなの?
呆然としていた矢口の耳に、スタジオから聞き慣れた音楽が聞こえてきた。
- 61 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時20分46秒
“もう一度スキって聞かせてほしい KISSして髪をなでて KISSしてねぇ笑って…”
“もう一度スキって聞かせてほしい KISSして腕を回して 抱いて抱いて抱いて Ah…”
“あんなにスキっていってたじゃない KISSして髪をなでて KISSしてねぇ笑って…”
“あんなにスキっていってたじゃない KISSして腕を回して 抱いて抱いて抱いて Ah…”
「ヤダ…聞きたくない……聞きたくない!」
矢口はとっさに耳を塞いでしゃがみ込んだ。
まるで今の自分の心の中を見透かされてるかのような歌。
つんくさん…今の矢口にこの歌は…キツイです。
後藤がそばにいない事に慣れるなんて無理だ。
こんなにも矢口の心と体は後藤を必要としている。
ねぇごっちん…矢口の名前を呼んでよ…?
やぐっつぁんって…後藤だけしか呼ばない呼び方で矢口を呼んで?
じゃないとツライよ…苦しいよ…死んじゃいそうだよ…
〜To be continued…〜
- 62 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月17日(金)04時26分11秒
- はぁ…疲れた。1時間もかかってしまった(苦笑
お引越し完了です。
次回で例の「あの人」がとうとう…(w
矢口に心に光が差し込むのか!?
- 63 名前:読んでる人 投稿日:2001年08月17日(金)06時18分15秒
- 引越しお疲れ様でした。
- 64 名前:アリガチ 投稿日:2001年08月17日(金)17時18分06秒
- 引越し、お疲れ様です。
次回でついに!?
ドキドキしながら待ってます(笑)
- 65 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月17日(金)17時31分26秒
- おお!移転したんですね!!
続き期待しますよ!!
- 66 名前:ラークマイルドソフト 投稿日:2001年08月18日(土)03時41分24秒
- 引越し、どうもお疲れ様です!
いやぁーいいですねー!
自分もこういった上手い構成にしてみたいのですが…
もしお暇がありましたら風板でホソボソやってますので診てやって下さい。
- 67 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月21日(火)22時08分08秒
- いつのまにか移転されてたんですね!!
続き早く読みたいです、応援してます!!
これからも頑張ってください!!
- 68 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月24日(金)12時05分37秒
- 続きを…
- 69 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月25日(土)02時33分52秒
- −12−
「矢口?まだ帰ってなかったんか」
廊下の壁にもたれながら下を向いていた矢口は、いつもそばで聞いている声で我に返った。
裕ちゃんはヒールの音をたてながら矢口に近づいてくる。
「帰らんのか?矢口…矢口?」
お願い…今は近づかないで。じゃないと矢口の中に溜まった気持ちが爆発しちゃうから。
「泣いてんのか…?ごっちんの事……やな」
「……」
「なぁ矢口。辛いやろうけど…前向きに考えてみ?ごっちんは矢口の事」
「簡単に言わないで!裕ちゃんに矢口の気持ちなんてわかんないだよ!!」
裕ちゃんの言葉を遮り、肩に置かれた手を矢口は振りほどいた。
「やぐ…ち」
あっ…
顔を上げて見た裕ちゃんの何とも言えない哀しそうな顔が心に突き刺さった。
あたしバカだ。矢口の気持ちは矢口にしかわからない…当たり前じゃん、そんなの。
裕ちゃんに当たったのは矢口の心が弱いから…
「ごめん…ヤツ当りだよね、こんなの。ハハ」
- 70 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月25日(土)02時34分43秒
裕ちゃんは無言で首を横に振って矢口の肩を抱き、人のいない部屋へと矢口を連れていった。
矢口を椅子に座らせて裕ちゃんは前にしゃがむ。
「ヤツ当たりしたいんやったらいくらでもウチにしたらええよ。全部受け止めたるから」
髪を撫でてくれている裕ちゃんの手がすごく温かくて…矢口は泣きそうになった。
あまりの自分の情けなさに…
「けど矢口…あんた重大な勘違いしてへんか?」
「勘違い…?何で…」
「さっき言おうとした事やねんけど
後藤は今、矢口の事忘れてるけど…矢口の事嫌ってる訳とちゃうねんで?」
「……?」
「だから…もう1度最初から始めたらええやん。もう1度矢口の事、好きになってもらったら…」
「裕…ちゃん」
「人の気持ちって簡単に変わる事もあるかもしらんけど、でも…絶対に変わらへん
気持ちってのもあると思うからさ。1度本気で好きになった相手やったら何度出逢ってもまた…
必ず好きになるはずや。うちはそう思うねん」
ちょっとクサイかな?って裕ちゃんは恥ずかしそうに頬をかいた。
- 71 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月25日(土)02時35分37秒
裕ちゃんの言葉に停止しかけていた矢口の脳が動き出す。
そういえば…矢口は待ってばかりだった。
後藤が矢口の事を思い出すのを…
これ以上傷つくのが怖くて後藤から目を逸らしてばかりだった。
自分から何も行動しなかったくせに辛い辛いって。
1番辛いのは、何も知らないまま矢口の事を忘れさせられた後藤なのに…
何で…何で気づかなかったんだろう。
今のごっちんは矢口の事忘れちゃったけど…矢口の事嫌いになった訳じゃないんだった。
ただ矢口の事がわからなくて上手く対応出来ないだけ。
もしかして…圭織が言いたかった事ってこの事だったのかな?
だったら…裕ちゃんの言う通り、また最初から始めればいい。
矢口の事、1から知ってもらえばいいんだ。
あたしはまだ何も失ってなんかいない。だから…もう1度最初から…
- 72 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月25日(土)02時36分36秒
「ありがと…裕ちゃん」
声を振り絞って真っ直ぐ裕ちゃんの瞳を見つめた。
「うちの言いたい事伝わった?」
「うん…ちゃんと伝わったよ。ありがとう」
「よかった…もういつもの矢口やな」
「ハハ♪矢口…また片想いから始めるよ!」
裕ちゃんは頷きながら優しく微笑んでくれた。
「ごっちんは恥ずかしがっとるだけや。いっぺんちゃんと話してみたらええ」
「うん頑張ってみる!…でも、もう今日は後藤帰っちゃったよね?」
「いや、この後ソロのダンスレッスンがあるってゆうとったから事務所のスタジオにおるんちゃう?」
「そっか、ありがと」
そして矢口は立ち上がった。
「行くんか?」
「うん。1歩前へ踏み出してみる」
「そっか。頑張りや!」
ポンっと裕ちゃんは矢口の肩を叩いた。
部屋を出る前に矢口は、もう1度裕ちゃんに“ありがとう”を言って事務所へと向かった。
「はぁ…ウチの片想いは実りそうにないなぁ」
〜To be continued…〜
- 73 名前:マルボロライト 投稿日:2001年08月25日(土)02時55分13秒
- ちょっとまず訂正とゆうか言い訳とゆうか…
移動するにあたって最初らへんに書き足した部分があるんですけど
余計な事したから矛盾してます。
>>4
>――3月の初旬。
3月の初旬なのに後藤が高校1年になってる。
…気にしないで頂けると有難いです(汗
>>63 読んでる人さん
ありがとうございます。
>>64 アリガチさん
どうもっす。ある事の謎は「へ?そんな事かい!?」って感じかも…
あの人の正体もそのまんまやし(w
>>65 名無し読者さん
続き…これからは辛くはならないかな?
>>66 ラークマイルドソフトさん
ありがとうございます。
でもこの話ちょっとだけ元ネタがあるんです(w
まぁ、記憶喪失と今回の裕ちゃんのあるセリフだけですけど。
>>67 名無しさん
見つけてもらえて嬉しいです。
頑張って続き書きます(w
>>68 名無し読者さん
お待たせしました。更新です。
やっぱり矢口に救いの手を差し伸べるのは裕ちゃんしかいないっす。
これでもう矢口は大丈夫かな?でも後はごっちんが…
って事でまた次回(w
- 74 名前:マルメンライト(67です) 投稿日:2001年08月25日(土)03時14分27秒
- 読者一番乗りかな?
ポジティブ矢口(・∀・)イイ!!
姉さんせつないです・・・
みんな幸せになってくれ!!
マルボロさんがむばれ!!
- 75 名前:アリガチ 投稿日:2001年08月26日(日)00時21分58秒
- あ、そうか。
圭織が言ってたのはそういう事か(バカ)
銀の方とはまた全然違いますな、特にねーさん(笑)
- 76 名前:マイルドセブン 投稿日:2001年08月29日(水)01時42分12秒
- がんばてねー
- 77 名前:マイルドセブン 投稿日:2001年08月29日(水)01時42分20秒
- がんばてねー
- 78 名前:読んでる人 投稿日:2001年09月09日(日)10時34分26秒
- 更新まだですか?
- 79 名前:マルボロライト 投稿日:2001年09月10日(月)23時01分13秒
−13−
矢口が事務所に着く頃にはもう陽が傾き始めていた。
その景色を見ていたら、ちょっとだけ泣きそうになったけど
気持ちを切り替えて矢口は事務所へと走った。
あっ…そうだ。後藤の事何て呼べばいいんだろう?
いきなり前みたいに“ごっちん”とは呼べないよねぇ。
う〜ん…一応後輩なんだから“後藤”って呼んだらいいのかなぁ。
後藤に直接聞こうか…でもちゃんと上手く話せるのか?矢口は。
「どうしたの?何か忘れもの?」
事務所に入るといきなりマネージャーさんに声をかけられた。
「あっはい。まぁそんな感じです」
適当に返事をして矢口はレッスンスタジオへ向かった。
- 80 名前:マルボロライト 投稿日:2001年09月10日(月)23時02分08秒
エレベーターの中でふと考える。
レッスン中だったら邪魔しちゃ悪いよね。
あ〜でも中のぞいて確かめるわけにもいかないし…
エレベーターを降り、立ち止まってまた考える。
そうだ!近くまで行ったら音聞こえるじゃん、レッスン中なら。
よし、ちょっと近くまで行ってみよう。
「……」
何も音が聞こえてこないんだけど…
もしかしてもう終わって帰っちゃった?
あたしはゆっくりとドアを開け中をのぞいてみる。
鏡の前には誰もいない。けど、隅のソファーに座ってる人物が…
スタジオにはうたた寝をしている後藤1人しかいなかった。
夏先生がいないって事はもうレッスンは終わったみたい。
居残って自主練習してて寝ちゃったって感じかな。
「zzz…」
規則正しい寝息が聞こえてくる。
どうやら完全に眠ってるみたいだ。
- 81 名前:マルボロライト 投稿日:2001年09月10日(月)23時03分08秒
モーニング娘。でソロデビューしているのは過去に裕ちゃんしかいない。
1人で全部歌うだけでも大変そうなのに、後藤の場合ダンスまで付いてくる。
そのハードさはソロをやった事がない矢口にはわからない。
けど本体の活動やプッチの活動に加えてのソロ活動。
並大抵のハードさじゃないって事だけはわかる。
後藤は最近また痩せた気がする。
ちゃんとご飯食べてる?ちゃんと睡眠とってる?
心配は尽きる事がない。
「…んん〜」
後藤の体が動いた。
ヤバイ…起きちゃった!?
「zzz」
起きてないみたいだ。
ふと、目の前の後藤の右手を見て矢口の心臓は止まりそうになった。
- 82 名前:マルボロライト 投稿日:2001年09月10日(月)23時04分24秒
「どうして…」
後藤の右手の薬指にはめてある指輪。
それはとても見覚えのある指輪…矢口が去年のクリスマスにあげたやつと同じだった。
さっきまで後藤は指輪してなかったのに…何で?
それに矢口があげた指輪なら矢口の部屋のジュエリーケースの中にある。
わかんない…わかんなけど、その指輪が後藤の指にはめられてるだけですごく嬉しかった。
そして、矢口は後藤が記憶を無くしてから初めて…涙を流した。
その涙は本当に…本当に静かに矢口の頬を流れて落ちていった。
涙って哀しい時だけに流すものじゃないんだね。
しばらく子供の様な後藤の寝顔を見つめていた。
けど、このまま寝かせといていいのかな?
疲れてるだろうから寝かせといてあげたいけど
まだ春先で肌寒いし、それにレッスンで汗かいただろうし。
風邪引いちゃいけないよね。
取り合えず矢口は自分のスプリングコートを脱いで寝ている後藤の体にかけた。
- 83 名前:マルボロライト 投稿日:2001年09月10日(月)23時05分24秒
後藤の寝顔を見るのはあの日――最後のあの夜以来だ。
寝顔は変わらないままなんだね。ちょっとだけ安心した…かな?
「ん〜…えっ、矢口さん…!?」
伸びをしながら後藤が目を覚ました。
かけてあるコートと矢口の存在に驚く後藤。
「あ、起きた?風邪引いちゃいけないと思って」
矢口は平然と喋れてる自分にちょっと驚いた。
もっとしどろもどろになって喋れないかな、と思ってたのに。
この調子で指輪の事、聞いてみようかな?
「あのさ…そ、その指…ぐぁっ!」
…痛ぇ!そう上手くはいかないね。緊張して舌噛んじゃった。
「あの…大丈夫ですか?」
「大丈夫、気にしないで。ねぇ、その指輪…可愛いね。自分で買ったの?」
「あ、はい。さっきお店で見かけてすごく欲しいと思ったから衝動買いしました」
「そう…なんだ」
「はい。何かこの指輪つけてたら不安な気持ちが和らいでいって…お守りみたいです」
これは偶然…?それとも―――
- 84 名前:マルボロライト 投稿日:2001年09月10日(月)23時06分39秒
「あの…どうしてここに?」
「うん、ちょっと忘れ物取りに来たんだ」
後藤に会いに来た、なんてまださすがに言えない。でも、もう1回勇気を出して言いたい事がある。
「ねぇ…途中まで一緒に帰らない…?」
「はい、いいですよ。着替えてきますからちょっと待ってて下さい」
そう言って後藤は更衣室へと走っていった。
ちょっと拍子抜け…こんなにあっさりOK貰えるなんて。
そっか…後藤は元々人懐っこい娘だったよね、最初は人見知りするだけで。
―――
事務所の玄関を出て駅まで一緒に歩く。
「へぇそうなんですか〜」
「うん、そうだよ」
まだ以前の様に上手くは喋れないけど、段々と話せる様にはなってきた。
「何か…矢口さんって喋ってみると年離れてる気がしないですね」
「そう?きっと矢口は外見だけフケてるんだよ」
「そ、そんな事ないですよ!」
アハハ。焦ってる(笑)実は思ってたな?でも、そんな顔もかわいい。
帰り道、大した話は出来なかったけど…
この日少しだけ後藤との距離が縮まった気がした。
〜To be continued…〜
- 85 名前:マルボロライト 投稿日:2001年09月10日(月)23時19分29秒
- >>74 マルメンライトさん
ありがとうございます。
姐さんはちょっと切なかったですね。
でも、姐さんも矢口の幸せを望んでいるはずなので…
>>75 アリガチさん
はい、そうゆう事です。ってゆうかそんな事!?って感じです(w
あっちはシリアスの「シ」の字も出てきません(爆)
>>76-77 マイルドセブンさん
ありがとうございます。(タバコのHN増えてるような…)
>>78 読んでる人さん
待たせて申し訳ないです(汗
かなり話の内容に詰まりました(苦笑
真面目な話は自分には向いてないのかなぁ…
次回は早めに更新出来るといいのですが。
あっ次回はノンフィクションのネタが少し混じります(ごまソロMステの話なので)
ではまた次回。
- 86 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月10日(月)23時28分27秒
- 待ってました!!
- 87 名前:マイルドセブン改めセーラム 投稿日:2001年09月16日(日)12時33分35秒
- 待ってるからね!
- 88 名前:マルボロライト 投稿日:2001年09月28日(金)22時30分57秒
- −14−
今日は後藤のソロデビュー曲のTV初披露の日。
もうすでに他の番組などで何本か歌収録は済ませてる。
けど、後藤の緊張は半端じゃないと思う。しかも生放送だし…
何もかもが後藤にとって初めての事。それは矢口にとっても初めての事。
矢口は隣のスタジオでミニモニ。の収録があったから時間が空いてる時にリハーサルを見に行った。
後藤に見つからないようにセットの裏からそっとのぞく。
仮の衣装を身につつみステージに立っている後藤。
でも…いつもの後藤らしさが感じられない。
『熱がある時だってAh悩んでたってあなたがいたから…』
リハーサルでの後藤は明らかに挙動不審だ。
カメラ目線になっても視線が定まっていない。
だ…大丈夫なのか?う〜こっちが緊張してきたよ。
- 89 名前:マルボロライト 投稿日:2001年09月28日(金)22時31分43秒
後藤はメンバーの前では滅多に弱音を吐かない。
けど、矢口は今でも覚えてる。
初めて参加したコンサート、緊張と不安で泣き出してしまった後藤を。
クールに見えたのは外見だけで中身は純粋な13歳の女の子だった。
期待されて娘。に入ったから弱音を吐きたくても吐けなかったんだと思う。
それが今回のソロデビューで初めてといっていいぐらいネガティブになっている。
『怖い…失敗したらどうしよう』
デビューが決まって嬉しい気持ちと同じぐらいの恐怖を抱いていた後藤。
同じソロの大変さを知っている裕ちゃんがずっと後藤にアドバイスをしていた。
その時の矢口は…少し離れた所から見てるしか出来なかった。
――何もしてやれない自分が悔しかった。
後藤の緊張と不安を少しでも取り除いてあげたい。
でも今その役目を果たすのは矢口じゃ無理だ。
後藤の緊張を取り除くのは…あの2人に任せよう。
- 90 名前:マルボロライト 投稿日:2001年09月28日(金)22時32分16秒
−本番10分前−
矢口は急いで楽屋へと戻った。
「辻!加護!ちょっと来て」
「「は〜い」」
そして同じくミニモニ。の収録をしていた辻と加護を呼び出す。
「あんた達スタッフさんに頼んでごっちんの応援に行きなさい」
「矢口さんは行かないんですか?」
辻が首を傾けながら聞いてくる。
「えっ、矢口はここで見てるから…」
「そうですか、わかりました」
「「行ってきま〜す」」
お気楽そうに辻と加護はスタジオへと向かった。
その気楽さに一抹の不安を覚えたけど、今はあの2人に任せるしかなかった。
頼んだぞ!?辻…加護。
- 91 名前:マルボロライト 投稿日:2001年09月28日(金)22時33分51秒
――午後8時。本番スタート。
トップバッターで階段から降りてくる後藤。
笑顔を引きつらせながら必死でカメラに手を振る。
こんな緊張してる後藤の顔は初めて見た。
きっと矢口やメンバー以外はその緊張に気づいてないだろうけど。
――そして…今日1番の緊張の瞬間。
「続いては後藤真希ちゃんで〜す」
「よろしくお願いします」
タモリさんの気の抜けた紹介でとうとう後藤の出番になった。
矢口は楽屋のテレビに映っている後藤を固唾を飲んで見守る。
「ソロ初めて?」
「初めてですね」
「段々と次の次ですよ」
「そうなんですけど…めっちゃくちゃ本当に緊張してるんですよ。
ここらへんが…胃の辺りがヤバイです」
後藤は本当にヤバそうな顔をしてお腹をさする。
「他のメンバー何か言ってなかった?」
「はい、あのね今日…
さっき圭ちゃんとヨッスィーから電話があって…そう、頑張ってね〜って電話があって」
「へぇ。あそこに来てるよ?」
後藤の言葉を遮るようにタモリさんが指をさす。タモさん顔がわざとらしい(汗)
後藤の視線をカメラが追う。その先には…
- 92 名前:マルボロライト 投稿日:2001年09月28日(金)22時34分25秒
「あ――!何でいるの!?何で???」
そう…ミニモニ。の衣装を身に纏った辻と加護の姿があった。
後藤は本気で驚いている。当たり前だ、後藤には黙ってたんだから。
「どうぞ是非こちらに。いらして頂いたんで」
「おいで♪」
遠慮気味にしている2人に優しく声をかける後藤。
ってゆうかあの2人の頭の中に遠慮とゆう文字が存在していたのか…
「いいんですか?でも矢口さんが…」
突然、加護が矢口の名前を口走る。こっこら!余計な事言うな加護!!
けど小声の為か後藤の耳には届かなかったみたい。ホッ…よかった。
「ビックリした〜」
少し緊張が緩んだ表情の後藤。辻と加護も後藤の隣に座った。
- 93 名前:マルボロライト 投稿日:2001年09月28日(金)22時34分56秒
「どうしたの?」
「あの〜隣でお仕事してたんで…ちょっと見に来ました」
後藤にマイクフォローをしてもらって加護が話す。
でもお願いだから余計な事は喋らないでね…
辻と加護を交えて後藤とタモリさんのトークが続く。
でも何か…辻と加護がトークを持っていってる気がする。
い、嫌な予感が…後藤の緊張を解す程度にしといてよ?
けど…嫌な予感とゆうのは当たるもの。
「あの〜マネできるんですよぉ」
突然加護が嬉しそうに言い放った。
そして辻と一緒に立ち上がると振り付きで歌いだした。
「「イヤだよサヨナラ〜…」」
あ〜あ…後藤より先に歌いやがった。
普通先に歌うか!?も――!初披露だっつ〜のに!!
まぁ余談だけどこの後、辻加護は矢口とマネージャーにこってりお説教される事になる。
- 94 名前:マルボロライト 投稿日:2001年09月28日(金)22時35分37秒
トーク時間が終わりいよいよ歌へ。
「後藤真希さんで『愛のバカやろう』です」
紹介と同時に拍手が沸きあがるスタジオ。
そして…スポットライトを浴び、ステージに映し出される後藤。
まだ顔は強張ったままだったけど瞳が…瞳がさっきまでと全然違う。
『――I’m Crying Crying Crying』
やっぱり…この娘は本番強いなぁ。
堂々とした立ち振る舞いは、見てる人全てを圧倒するんじゃないか…とさえ思う。
さっきまでの不安そうな表情は微塵も感じられない。
『――夜中抜け出したりAhくちづけたり幸せだったわ 過去形にしたくない』
でもその代わりに、すごくセツナイ表情で歌ってる…まるで哀しい情景が伝わってくるかのように。
もしかして…心のどこかで矢口との事、覚えてるの?
だから…だからそんなに哀しそうな顔をして歌ってるの?
『――イヤだよサヨナラ〜Ah』
ねぇ…ごっちん?
ごっちんも突然のサヨナラは…辛かったよね。
- 95 名前:マルボロライト 投稿日:2001年09月28日(金)22時36分22秒
――本番終了後。
矢口は思い切って後藤の楽屋を訪れた。
『コンコンッ』
「は〜い。どうぞ〜」
ノックをすると中から後藤の返事が返ってくる。
『ガチャ』
ゆっくりドアを開けて顔をのぞかせる。
荷物を片付けていた後藤が矢口の方を振り返った。
「お疲れ様」
「あっ矢口さん…もしかして見ててくれたんですか?」
そこにはステージで堂々と歌っていた後藤ではなく、等身大の15歳の後藤がいた。
「うん。すっごいかっこよかったよ!」
「ヘヘ♪ありがとうございます」
矢口がそう言うと、後藤は本当に嬉しそうに微笑んだんだ。
もしかしたら…いつか後藤の記憶が戻るかもしれない。
そう思えた1日だった。
〜To be continued…〜
- 96 名前:マルボロライト 投稿日:2001年09月28日(金)22時38分36秒
>>86 名無し読者さん
>>87 セーラムさん
待たせてしまいました!(w
遅くなりましたが更新です。
ノンフィクションのネタを混ぜると余計に難しくなるとゆうのが書いててわかりました(苦笑
実際のMステ発披露の日、私も話の中の矢口並みに緊張して(何でやねん!)
ビデオに撮っておいて後で見ました。生は怖くて見れなかった小心者です(w
話は変わって今週は鬱になる事が続きました。
まず、なんといってもダイバーが終わった事…
初回から聞いてただけにかなりへこみました。大復活を希望します!
後、これは自分のドジなんですがごっちんの画像の一部を誤って削除してしまった(涙
まぁ一部だったからよかったんですけどね。これから画像探しの旅に出ます(w
本当に更新が遅くて申し訳ないですがそれでも読んでくれる
読者様方には感謝です。ではまた次回。
- 97 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月29日(土)20時05分19秒
- マルボロライトさん最高〜!
こっから幸せになりますよね?
甘くなるのを期待して、次の更新も楽しみにしてます。
- 98 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月13日(土)12時27分18秒
- そ、そろそろ続きを…
- 99 名前:放浪読者 投稿日:2001年10月17日(水)02時53分27秒
- ちょっと放置しすぎでは?
- 100 名前:マルボロライト 投稿日:2001年10月17日(水)23時06分10秒
- >>98-99
今ラストまでの部分で悩んでるのでもうちょっと待ってもらえると…
焦って書くと後悔しそうなのである程度書きあがってから更新したいと思います。
本当に待たせてすいません。
- 100 名前:セーラム 投稿日:2001年10月19日(金)01時40分54秒
- きにしないで、こちらはマターリ待ちますんで。
- 101 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月22日(月)07時57分18秒
- んー…でも、まだかなぁ…
- 102 名前:名無し 投稿日:2001年10月22日(月)23時36分10秒
- この話大好きなんで早くみたいです。でもマターリ待ちます(笑)作者さん頑張って下さい。
- 103 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月23日(火)11時26分54秒
- のんびり待ってますんで…
- 104 名前:マルボロライト 投稿日:2001年10月24日(水)19時21分23秒
- −14−
今、モーニング娘。はコンサートツアーの真っ最中。
明日からは地方のコンサートなので矢口は家で荷物を準備していた。
「よし…こんなもんかな」
少しは今の生活に慣れてきたんだけど…やっぱり1人は寂しい。
この部屋にはいつもごっちんがいてくれたから、ね。
ふと部屋を見回して矢口の視界に入ってきた物。
それはあの日以来、開ける事が出来なかったジュエリーケース。
ごっちんが大切にはめてくれていた指輪が入ってる。
本来だったら矢口の元にあるはずがない物だ。
だからこそ矢口はその指輪を見る事が出来なかった。
それに後藤は新しい同じ指輪を見つけてしまった。
ここにある指輪はもう2度と後藤の指にはまる事はないのかも。
でも、もしかしたら…ごっちんが衝動買いした指輪って矢口があげたヤツじゃ…
矢口の部屋から移動したんじゃないかな。
あんな事が起きたんだから瞬間移動とかありえるかも…って。
まさか…ね。
矢口は恐る恐るジュエリーケースの蓋を開けてみた。
- 105 名前:マルボロライト 投稿日:2001年10月24日(水)19時21分58秒
「…さすがにそれはないか」
ちゃんと中には指輪が入っていた。取り出してじっと指輪を見つめる。
矢口の元に置いていくなよなぁ…切ないじゃん。
でも指輪を眺めていて以前とはどこか違う事に気づいた。
「ん?Kiss…Me……?」
あれ?何で内側に文字が彫ってあるんだ?
矢口、文字なんか彫った覚えないよ。
何?一体どうゆう事…?ん〜わかんない。
「キスしていいならしてるっちゅうの」
そういえばごっちんと最後のお別れの時…キスしたね。
まぁ矢口が一方的にしたんだけど。
何か関係あるのかなぁ。
- 106 名前:マルボロライト 投稿日:2001年10月24日(水)19時22分51秒
- ―――
ツアー先のホテルでめぐり合わせなのか…部屋は後藤と一緒だった。
付き合ってる時はほとんど一緒の部屋になる事はなかったんだ。
意外?に思うかもしれないけど、部屋割りはくじ引きで決めてたから毎回違う相手だった。
前に3回連続で加護と、その後3回連続で辻と一緒の部屋の時はさすがに疲れたけどね。
後藤と一緒の部屋になったのは久しぶり。
でも出来るだけ意識しないようにしなきゃなぁ。
前のように気まずい関係には戻りたくないし。
相変わらず…後藤は矢口の事を「矢口さん」と呼び、敬語で話す。
普通に喋ってよ?って言っても…
「だって先輩ですから…」
って頑固な所は変わっていない。
でも後藤?矛盾してるの気づいてる?
裕ちゃんや圭ちゃん、圭織になっちも先輩なんだよ?
まぁ今の矢口が一番付き合い短いから仕方ないけど。
それでも以前とは比べ物にならないくらい後藤は気さくに話しかけてきてくれた。
- 107 名前:マルボロライト 投稿日:2001年10月24日(水)19時23分21秒
「矢口さん、お腹すきません?」
ベッドに座っていた後藤が頼りなさそうな声で聞いてきた。
「いや…さっき夕食食べたとこだし」
「後藤お腹すきました…ギュルル〜」
「も〜仕方ないなぁ。マネージャーさんに何か買ってきてもらおう」
「やった〜♪」
携帯でマネージャーさんに電話して買い物を頼んだ。
…………。
しばらくしてマネージャーさんがコンビニで買った食べ物を持ってきてくれた。
すごい勢いで美味しそうにお弁当を口に運ぶ。
後藤は本当によく食べる。
その細い体のどこに入っていくの?ってぐらい。
でもまぁ食欲旺盛な後藤を見るのは好きだからいっか。
お腹がいっぱいになった後藤は機嫌良く鼻歌を歌っていた。
- 108 名前:マルボロライト 投稿日:2001年10月24日(水)19時23分53秒
「後藤?お風呂先に入りなよ。矢口は後でいいからさ」
「はい。じゃあ先に失礼しま〜す」
着替えを持って後藤は浴室に入っていった。
地方のよくわからないテレビ番組の司会者の声が部屋に響く。
つまんなかったから矢口はテレビのスイッチを切った。
急に静まり返った部屋の中。
矢口はカーテンを開けベランダへと出た。
「まだ夜風は冷たいなぁ」
Tシャツから出てる自分の腕を擦って温める。
ベランダから見た夜景は…綺麗だけどどこか哀しかった。
心が1人ぼっちの時に見るもんじゃないね。
虚しくなるだけだ。
いつか…後藤の記憶が戻ったら2人で見たいなぁ。
―――
- 109 名前:マルボロライト 投稿日:2001年10月24日(水)19時24分25秒
「お先でした〜」
部屋から声が聞こえてくる。
タオルで髪を拭きながら後藤が出てきた。
矢口が部屋に戻ると後藤はすでにベッドに潜り込んでいた。
「おやすみなさ〜い」
「後藤?ちゃんと布団かけて寝なきゃ……ってもう寝てるし。のび太かよ」
「zzz…」
布団を後藤の肩までかけて電気を消し、部屋はベッドの間にあるスタンドの灯りだけになる。
さて、と。
「あたしもお風呂入って寝よっかな」
矢口は寝ている後藤を起こさないように静かに浴室へと入った。
- 110 名前:マルボロライト 投稿日:2001年10月24日(水)19時24分56秒
- ―――
『やぐっつぁんって…背はちっちゃいのに体は大人だね』
『なっ…どこ見てるんだよ』
『ヘヘ♪裸のやぐっつぁんの全身』
『でも、ごっちんも体だけは大人だね(笑)』
『どうせ中身は子供ですよ〜だ』
『いいじゃん子供だって。現にまだ15歳なんだから』
『まぁ…そりゃそうだけど』
『…無理して大人になる必要なんてないんだよ』
『えっ?』
『子供でいられる内は子供のままでいいんだ』
『……』
『大人の時間の方が遥かに長いから…子供でいられる時間は大切にしなきゃね』
『やぐっつぁんは……大人になっちゃった、の?』
『ん〜ん。まだまだ子供だよ矢口も。だから…』
『だから…?』
『…一緒に大人になっていこうね?ごっちん♪』
『うん!!』
- 111 名前:マルボロライト 投稿日:2001年10月24日(水)19時25分33秒
「はぁ〜…気持ちいい」
髪も体も洗い終わって湯船に肩まで体を沈める。
といってもちっちゃい矢口の体の場合、鼻の下まで浸かっちゃうんだけど。
「大人…か」
矢口が大人だったら…こんな事にはならなかったのかなぁ。
矢口が大人だったら…今1人でお風呂に入ってなかったのかなぁ。
ちゃんと物事の判断が出来るくらい大人だったら…こんな事には。
今更言っても仕方ないか…時間は戻らないんだし。
…………。
そろそろ出ようか…明日も早いし。
浴槽のフチに手をかけて立ち上がろうとした矢口の耳にドアノブが開く音が聞こえた。
『ガチャ』
ん!?
!!!!!!!!!!
〜To be continued…〜
- 112 名前:マルボロライト 投稿日:2001年10月24日(水)19時27分06秒
- 遅くなりましたが更新です。
プレッシャーに弱いみたいで…いっぱいいっぱいです(苦笑
ラストはもう出来てるんだけどなぁ。
次回も期待しないでマターリ待っててもらえると有難いです。
>>97 名無し読者さん
ありがとうございます。
甘くなるかは微妙ですけどそろそろクライマックスに向かってます。
いつか書けたら過去編で甘くはしたいですけど(予定は未定 w)
>>100 セーラムさん
ほんと有難いお言葉です(涙
ん?何で100が2つあるんだろう…不思議だ。
>>101 名無し読者さん
ほんとすいません。
>>102 名無しさん
ありがとうございます。お気持ち嬉しいです!
>>103 名無し読者さん
待たせすぎちゃいましたね(苦笑
- 113 名前:マルボロライト 投稿日:2001年10月24日(水)19時29分31秒
- 訂正
−14−は
−15−の間違いです。テンパってるなぁ。
- 114 名前:セーラム 投稿日:2001年10月27日(土)10時26分46秒
- 更新お疲れ様です。
- 115 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月08日(木)00時26分03秒
- そろそろ続き期待してます(W
- 116 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月08日(木)22時03分20秒
- −16−
『ガチャ』
ん!?
!!!!!!!!!!
ドアノブが開いた音がしてその方向を見る。
そこには…少し顔を赤らめた後藤が全裸で立っていた。
な、何!?何で後藤が入ってくるの???
しかも何ですっぽんぽんでその上、顔が赤いの!?
何!?誰か説明して――!!
……けど、矢口の動揺をよそに後藤は気の抜けた声で言った。
「ごとぉもお風呂に入りま〜す♪」
子供みたいに手を挙げて舌ったらずな口調。
「はぁ!?ご、後藤!?ちょっ…あんたさっき入ったじゃん!後藤どうし…」
『ザバ〜ン!!』
矢口の声は届いておらず、無視して後藤は浴槽に飛び込んできた。
「アハハハ!飛び込んじゃった♪」
呆然と目の前の後藤を見つめる矢口。
何か…後藤、酒臭い。―――まさか!?
- 117 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月08日(木)22時03分55秒
「後藤!?あんたもしかしてお酒飲んだ!?」
「飲んでないですよ〜ビールなんて」
自分でバラしてんじゃん。
「のど渇いたからお茶を飲んだんです〜」
「はぁ…そうっすか」
なるほど…寝ぼけてたからお茶とビールを取り違えたって訳か。
でも飲んだらすぐ気づきそうだけど。
「あんたお酒弱いんだから…間違って飲むなよ」
「お酒じゃないですぅ。お茶を飲んだんですよぉ」
そう言ってバシバシと矢口の両肩を叩いてくる。
「痛い痛い!はいはいわかったよ、お茶飲んだんだよね」
「そうですよぉ。エヘヘ、矢口さ〜ん♪」
狭い浴槽の中で矢口に抱きついてくる後藤。
「う〜ん、あったか〜い…アハ♪」
後藤の肌が直接矢口の体に触れる。
心臓が…バクバクいってる。ドキドキしすぎて胸が痛い。
――付き合ってる時は当たり前の様に行われていた行為。けど…
- 118 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月08日(木)22時04分32秒
どうしよう…どうするべきだろう。
今は酔っ払ってるからいいけど、完全に酔いが覚めた時にこの状況はヤバイ気がする。
矢口の理性もそんなに長くは持たないし…
でもそんな矢口の心の葛藤を遮るように、後藤はもっと密着してくる。
体全体に感じる後藤の温もりと、耳にかかる後藤の吐息。
ダ、メだ……キス、したい。
理性を失った矢口は後藤の頬に手をかけた。
けど矢口が後藤に唇を近づけようとした瞬間、急に後藤が体を離した。
ヤバ…嫌がられた?
「「……」」
2人の視線が絡み合う。
長い沈黙の後、先に口を開いたのは後藤だった。
- 119 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月08日(木)22時05分10秒
「…矢口さん」
「は、はい」
ドクン、ドクン、ドクン。心臓が止まっちゃう程の緊張感。
「あの今、後藤…」
「……」
ドクン、ドクン、ドクン…
「…お水飲みたい」
「はぁ!?」
どうやら後藤は…全然気づいてなかったみたい、矢口の行動に。
ほっとしたやら何やらで軽く体を拭いて冷蔵庫にエビアン取りに行く。
浴室に戻って後藤にエビアンを渡し、再び浴槽に入った。
「はい、お水」
「ありがとうございま〜す!お礼です……チュッ♪」
「!!!!!」
微かに触れた柔らかい唇の感触。
天然なのか…酔っ払ってるからなのか、よくわかんない。
けど後藤は何事もなかったようにゴクゴクとエビアンを飲んでいる。
ただのお礼…か。
- 120 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月08日(木)22時05分44秒
水を飲んでも後藤の酔いは醒めなかった。
相変わらず矢口の体に密着してきて色んな話しをしてくる。
中でも矢口への質問が多かった。
「矢口さんって小さいですねぇ…体。身長いくつですか?」
「145cmだよ」
「マジっすか!?そりゃミニマムだねぇ」
「まぁミニモニ。だし」
「矢口さんは好きな人、いないんですか?」
「えっ!?」
お願いだから思いついた事そのまま喋らないでよ…対応に困る。
でも、好きな人は……目の前にいるんだよ。
「……(ボソ)後藤だよ」
「何?聞こえませんでした」
「いないよ、って言ったの」
「そうですか〜」
「…後藤は?好きな人、いるの?」
バカな質問かもしれない。
聞いて後悔するかもしれない。
でも、矢口は自然とその質問を口にしていた。
- 121 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月08日(木)22時06分26秒
「後藤はですねぇ……後藤は」
「…うん」
「え〜っと…後藤は」
「あっ、無理に言わなくてもいいから」
「…後藤は…………っく」
「ちょ…な、何で泣くの?」
「何か好きな人が…いたような気がするんですけど……わからない」
「…後藤」
「胸の奥でいつも引っかかるんです……誰かが待っているような…誰かを待っているような」
…………。
- 122 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月08日(木)22時07分12秒
- ―――
「よいしょっと…ふぅ、やっと寝たか」
後藤の体重軽いけど矢口の小さい体にはやっぱ重い。
ベッドに寝かせた後藤の横に座り寝顔を見つめる。
“好きな人が…いたような気がするんですけど……わからない”
“胸の奥でいつも引っかかるんです……誰かが待っているような…誰かを待っているような”
矢口の事…待っててくれてるの?
もう1歩、踏み出してみた方がいいのかなぁ。
ふと、ベッドの横の机の上を見ると何故か物で散乱していた。
げっ!空き缶が3本も転がってる。
ビール3本も飲んだのかよ…そりゃ酔っ払うよ。
- 123 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月08日(木)22時07分48秒
「あっ…」
寝返りをうった後藤の腕が勢い余ってベッドの外に出た。
その時、後藤の細い指からスルッと指輪が抜け落ちてしまった。
矢口は床に落ちた指輪を拾って手に取った。
「やっぱり全く同じ指輪なんだね……あれ?」
スタンドの下に指輪を持っていき眺める。
後藤の指輪の内側にも同じように文字が彫ってあった。
結構長文だなぁ…何て書いてあるんだ?
小さい文字を目を凝らして読んでみたけど…
「イ、ミテ………チェ……読めないなぁ」
もっと英語勉強しておけばよかった…単語が読めない。
この指輪にはみんな何かしら文字が彫ってあるんだろうか?
それとも何か重要な意味があるんだろうか?
――けど、矢口がその文字の意味を理解したのはこの物語が終わってからの事。
〜To be continued…〜
- 124 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月08日(木)22時08分33秒
- >>114 セーラムさん
ありがとうです。
>>115 名無し読者さん
間に合いましたでしょうか?(w
えっと後2回で終わる予定です。
もう大体話は出来ているので次更新したら最後は早いはず(w
でもどうなるか分からないのが私(苦笑
最後くらい一気にバーっと書けたらなぁ。
- 125 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月09日(金)15時44分02秒
- 待ってました〜(涙
- 126 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月10日(土)00時17分21秒
- ずっと前から読ませてもらってます。
このお話大好きです。
矢口がすごくいじらしくて……
後藤も可愛いし。
作者さん頑張ってください!!
- 127 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月14日(水)12時48分48秒
- めちゃめちゃ面白いです。
がんばってください!!
- 128 名前:名無し息子 投稿日:2001年11月17日(土)22時19分44秒
- 今日初めて読ましてもらいました♪
いやいや、おもろいの一言です!
頑張ってくださいね!応援してます
- 129 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月19日(月)23時05分15秒
- −17−
――春のツアー最終日。この日が2人の運命を決めた日となった。
“何か好きな人が…いたような気がするんですけど……わからない”
”胸の奥でいつも引っかかるんです……誰かが待っているような…誰かを待っているような“
あの日の後藤の言葉を聞いてから、矢口の後藤への想いは大きくなっていた。
もう…抑えられないかもしれない。
何かひとつでもきっかけが出来たら、矢口は想いを伝えてしまうだろう。
でも今日はコンサート最終日。
みんな気合いが入ってる。もちろん後藤も。
そんな日に告白なんかして後藤を困らせたくはない。
だから…今日だけは避けたいんだけど。
矢口も最終公演は良いコンサートにしたいし。
- 130 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月19日(月)23時05分50秒
朝、メンバー全員がコンサート会場に集合した。
まずは怪我の予防の為にストレッチ。
後藤の記憶が無くなってから矢口は裕ちゃんと組んでストレッチをしていた。
後藤はヨッスィーと。
なっちと圭織、圭ちゃんと石川、辻と加護。それぞれペアになる。
ストレッチが終わると一通りリハーサルをした。
リハーサルは何の問題も無く終了。
矢口が楽屋に戻る途中、後藤が話しかけてきた。
「矢口さん♪今日もコンサート頑張りましょうね!」
「う、うん」
「声が小さいですよ?頑張りマッスル!はい?」
「が、頑張りマッスル」
何だ?マッスルって…?
「ごっちん、頑張ろうね今日も!」
「おう、ヨッスィー!頑張りマッスル!!」
…後藤の中で流行ってるのかなぁ、あれ。
- 131 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月19日(月)23時06分22秒
リハーサルが終わってから本番の準備をするまでは自由時間。
矢口は声を出しておこうと思って楽屋から少し離れた階段へと向かった。
けど、階段から誰かの歌声が聞こえてくる。
「“……なのにくちづけ”」
この声は…後藤だ。
「“くちびるにだけ やめてよあなたの温もりが…”」
「…えらい古い歌、歌ってるなぁ後藤。しかもタンポポじゃん」
後藤に近づいて行って話しかける。
「あ、矢口さん。後藤、タンポポの歌も好きなんで」
少し照れくさそうにしながら後藤は言った。
よくカラオケ行くとタンポポの曲、歌ってたもんね。
「矢口さん、お願いがあるんですけど…」
「ん?なぁに?」
「歌ってもらえませんか?…ラストキッス」
「えっ……う、うん。じゃあ、後藤にだけ…特別に」
軽く咳払いをして矢口は後藤を前にして歌い出した。
- 132 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月19日(月)23時07分02秒
「“本当にスキだったあなたがいない 初めての恋 終わった”」
「“今夜は夢に笑顔のままで 出来ないでよ ねぇ”」
「“最後のセリフ 口に出すまで 困ってたあなた”」
「“最後のセリフ 口にしたすぐ後 なのにくちづけ”」
「“くちびるにだけ やめてよ あなたの温もりが”」
「“くちびるにだけ ずっと残ってる やさしいあなた”」
…………。
「“くちびるにだけ どんなに 忘れようとしても”」
「“くちびるにだけ ずっと残ってる 最後のあなた”」
「…ありがとうございました」
「いえいえ」
「でも、どうして最後なのに…キスしたんだろう」
「えっ?」
突然、そんな事を後藤は口にした。
「もう明日から恋人じゃなくなるのに、どうしてキスなんかしたんだろう?って。
そんな事されたら彼女は彼の事、忘れられなくなるに決まってるじゃないですか」
「……」
- 133 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月19日(月)23時08分23秒
矢口には少しだけ、その答えがわかる気がした。
もしかしたら…彼も別れたくて別れようとした訳じゃなかったのかもしれない。
何か理由があったのかもしれない。
だから最後の最後に抑えきれずキスをしちゃったのかも。
“くちびるにだけ どんなに 忘れようとしても”
“くちびるにだけ ずっと残ってる 最後のあなた”
もし、ごっちんの記憶が消えなかったとしたら…
もし、記憶が消えていたのが矢口の方だったとしたら…
矢口はごっちんにこの歌のように哀しい思いをずっとさせちゃう事になってた。
それでも…それでも最後に、キスをせずにはいられなかったんだよ。
「矢口さ〜ん!どこですか〜?」
「そろそろミニモニ。の衣装に着替えて下さいって言われてますよ〜?」
廊下の方から辻と加護が呼んでいる。
「…わかった!すぐ行くから」
「じゃあ…後藤も遅れないようにね」
「…はい」
結局、矢口は答えを後藤に告げられないままその場を後にした。
- 134 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月19日(月)23時09分35秒
- ―――
開演30分前。
恒例の娘。全員による気合入れが始まる。
「最終公演や。気合入れて行くで?」
「「おう!」」
「「「うん!」」」
「「「「はい!」」」」
「がんばっていきまー」
「「「「「「「「「「しょい!!」」」」」」」」」」
―――
後20分で開演。1曲目はミニモニ。からなので
そろそろ矢口はステージへ移動しようと思っていた。
けど、隣の楽屋が騒がしい。ドタバタと暴れてるような音がする。
何だ?辻と加護が遊んでるのかなぁ。
廊下に出てみるとちょうど圭ちゃんがいたので聞いてみた。
「何?どうしたの?」
「いや、後藤が何か探してるみたいなんだけど…よくわかんない」
そう言って圭ちゃんは首を捻る。
矢口は少し開いたドアの隙間から中を覗いてみた。
「どうしよう…どうしようアレが無いと」
楽屋では後藤が1人、必死で何かを探していた。
矢口は中に入り後藤に話しかける。
「どうしたの?後藤」
「あ…矢口さん。無いんです、指輪が…あたしの指輪が無いんです!」
そう訴えてきた後藤の瞳には涙が溢れていた。
〜To be continued…〜
- 135 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月19日(月)23時11分11秒
- >>125 名無し読者さん
あと1回ですが最後まで読んでもらえると嬉しいです。
>>126 名無し読者さん
ありがとうございます。
最後までがんばります!
>>127 名無し読者さん
ありがとうです。がんばりまっす!
>>128 名無し息子さん
ありがとうです。読んでもらえて嬉しいです。
ただ次で最終回なんですが(苦笑
やっとここまで来たと自分では達成感があります(ラストがあるやろ!)
最後はもう書けてますので2,3日中には更新します。
あと、少しだけエピローグもあります。
では…ラストでお会いしましょう。
- 136 名前:名無し息子 投稿日:2001年11月20日(火)02時13分20秒
- やはりいい小説ですね。
たくさん小説を読んだり書いたりしてきましたが、すげェいい!ですよ!
歌との共通点がなんとも悲しいですね…;;
ここまでほどの作品だと妄想を口走りたくなる??(w ̄
そこらへんはセーブして最終回楽しみに待ってます♪
- 137 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月21日(水)20時48分09秒
- −Final−
…普通だったら指輪が無いくらいで何でこんなに騒ぐんだろうって思うはず。
でも後藤は以前、指輪の事をこう語っていた。
“この指輪つけてたら不安な気持ちが和らいでいって…お守りみたいです”
ここから先は矢口の自惚れだけど…矢口があげた指輪と同じだから?
同じデザインの指輪だから無いと不安になるんじゃないかって思うんだ。
あの日、ジュエリーケースを開けて後藤にあげた指輪を見てから矢口はその指輪を持ち歩いている。
シンプルなシルバーのチェーンに指輪を通して首にかけてるんだ。
ゆっくりと首から外して指輪を掌に取る。
そして…矢口は泣いている後藤の前に差し出した。
「これ…あげる。書いてある文字は違うかもしれないけど同じデザインの指輪だよ。
それでも良ければこの指輪、後藤にあげる」
後藤にとってはニセモノの指輪になるかもしれない。
今の後藤に必要なのはこの指輪じゃないかもしれない。
けど、それなのに…後藤は笑ったんだ。嬉しそうに指輪をはめて。
まるで最初からこの指輪を探していたかのように笑顔になったんだ。
もう…どうしようもなかった。
抑える事なんて矢口には出来なかった。
- 138 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月21日(水)20時48分51秒
「好き…矢口は後藤が好きだよ。世界中の誰より後藤真希を愛してる!」
「え、矢口さん……!?」
言い終えた矢口は迷う事なく後藤の唇を塞いでいた。
「「……」」
唇を離し反応を待ったけど、後藤は矢口を見つめたまま動かなかった。
「あ、あの…」
次の言葉を矢口は一生懸命探していた。
けどその瞬間、楽屋に「ガタガタッ」と何かが揺れる音が聞こえた。
『ガタガタガタッ』
「何の音?…………キャ――!!」
「!?…ごっちん!?危なぁぁい!!!」
それは楽屋のロッカーが後藤めがけて倒れてくる音だった。
矢口の体はすぐに反応し、後藤の体を突き飛ばして庇っていた。
『ガシャン!!』
「や、やぐっ……やぐっつぁ――ん!!」
薄れてゆく意識の中で、懐かしい呼び名を聞いた気がした。
- 139 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月21日(水)20時49分39秒
夢はいつか覚めるモノ。
どんなに哀しい夢でも…いつか覚めるモノ。
長い長いトンネルみたいに先には出口が待っている。
暗い闇に覆われたトンネルにでも出口はある。
それを怖がらないで前に進んでいけば…そこに必ず答えがあるはず。
暗闇の向こうにある光の中に…
- 140 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月21日(水)20時50分15秒
- ―――
『お久しぶりです』
ん…?
『…ちょっと予想外でした。ここまで強い想いだったとは』
何?…誰の声?
『あなたが指輪の意味を理解したのか、それともただの偶然かはわかりませんが
最終条件の強い愛情、その想いは十分伝わってきました』
…箱の主?
『あの気持ちを忘れないで下さい。
ただあなたの場合、想いが強すぎて一瞬近くの時空が歪みましたが…』
何を言ってるの?どうゆう事…?
『あなたは気を失っているだけですから、すぐに意識は戻るでしょう。
その時は……も記憶が…って……でしょう』
何?…段々聞こえなくなってきた。
『(彼女が待ってますよ)』
- 141 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月21日(水)20時50分48秒
- ―――
「…つぁん…っく………やぐっつぁん!?」
何?…これも夢?
じゃなきゃ後藤が“やぐっつぁん”なんて呼ぶ訳ないよ。
「しっかりして!やぐっつぁん!!」
「えっ…」
「…やぐっつぁん!よかった…無事で」
夢…じゃない?もしかして。
ゆっくりと矢口は後藤の顔を見てみる。
泣きながら心配そうに矢口を見つめているのは…間違いなく後藤だった。
「…ご、ごっちん!?ごっちんなの!?」
「何言ってるの?やぐっつぁん…それより痛いとこ無い?怪我してない?」
やっぱり、ごっちんだ…戻ったんだ!記憶が。でもどうして…?
“その時は彼女も記憶が戻っているでしょう”
聞こえなかった最後の言葉が聞こえてきた。
じゃあ…ここにいるごっちんは、目の前にいるごっちんは…
- 142 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月21日(水)20時51分25秒
涙が溢れてきた。
目の前が霞んできた。
それでもしっかり目を開けてごっちんを見つめた。
愛しい人が矢口の名を呼ぶ。
それはあの日以前と何も変わらない光景だった。
おかえり……ごっちん。
矢口は心の中でそう呟いてごっちんを抱きしめた。
「やぐっつぁん?」
「ごっちん……よかった…また逢えて」
矢口の体にごっちんの体温が伝わってくる。
この温もりを2度と手放したくない。
「訳わかんない事言わないでよ…本当に大丈夫?体痛いとこない?」
「大丈夫だよ…だから泣かないで」
「やぐっつぁんの方が泣いてるよ」
「ハハ…矢口はずっと哀しい夢を見てたから」
きっと…ごっちんは訳わかんないだろうけど、でもずっと優しく矢口の髪を撫でていてくれた。
未来なんてわからなくていいんだ…いや、わからなくて当たり前なんだね。
今を大事にしながら生きていればそれが未来になるんだから。
- 143 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月21日(水)20時52分07秒
“ごっちん…愛してるよ”
“そんなの知ってるよ…ばかぁ”
“やぐっつぁん…愛してる”
“そんなの、知ってたよ…ばか”
そう…知ってたよ。ただ夢を見ていた間、聞けなかっただけで。
言葉なんて意味ないって言う人もいるだろうけど
2度と聞けないと思っていた言葉を聞けて、涙が止まらない程嬉しかった。
“ねぇやぐっつぁん、今夜やぐっつぁんの家に泊まってもいい?”
“いいよ”
“ねぇごっちん、今夜は長い長い夢の話をしてあげるね”
“じゃあ今夜は眠れないね”
“アハハ…寝かさないよ?”
“いや〜ん♪やぐっつぁんヤラシ〜!”
温もりが戻ったごっちんの手をギュっと握った。
そう、矢口とごっちんの未来はたった今…スタートを切ったんだね。
と、思ったんだけど…
- 144 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月21日(水)20時52分51秒
「何や今の音は!?」
裕ちゃんがすごい勢いで楽屋に入ってきて来た。
「あ、れ?」
うちらが抱き合ってるのを見て裕ちゃんはキョトンとした顔になる。
そんな裕ちゃんに矢口は目でサインを送った。
“ごっちんの記憶…戻ったよ”
“ほんまか!?よかったなぁ…矢口”
裕ちゃんの後ろにいたメンバー達にも伝わったみたい。
「でも、ラブラブな所悪いけど…いつまで抱き合ってんのや?もうすぐ出番やで」
「「あっ…忘れてた」」
「あ〜メイクもボロボロやん。早よ直してきぃ」
「「はぁい」」
矢口とごっちんは体を離して立ち上がった。
「じゃあごっちん、行こっか!」
「うん!やぐっつぁん」
今度こそ矢口とごっちんの未来はスタートを切りました。
Starting〜パンドラの箱〜
−Fin−
- 145 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月21日(水)20時53分46秒
Starting〜パンドラの箱(エピローグ)〜
あの後、コンサートが終わってからミカにうる覚えだったごっちんの指輪の英文を訳してもらった。
そこには…
“この指輪はニセモノなので本物と交換して…”
そんな事が書いてあった。
偶然にもごっちんはニセモノの指輪を無くし、そして矢口があげた本物の指輪をはめた。
そして…
“Kiss Me”
その指輪をしたごっちんに矢口はキスをした。
記憶を戻す方法を矢口は自然と行っていたらしい。
ごっちんの記憶が戻った後、指輪を見てみると文字は消えていた。
全てが偶然だったのかもしれないけど、それでも唯一
ごっちんの記憶が無くなってから矢口が失わなかったモノ。
それが“指輪”と“ごっちんへの強い愛情”だった。
- 146 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月21日(水)20時54分25秒
矢口の隣で眠っているごっちん。
これまでの話を掻い摘んでおとぎ話風にして話したんだ。
もちろん矢口とごっちんが体験した話だとゆう事は伏せて。
でも最後まで話す前にごっちんは眠っちゃった。
理由は…怒ってふて寝しちゃったんだよね(苦笑)
ごっちんの記憶はあの日のデートの前夜から再び動き出した。
多分…例の箱の主が哀しい辛い体験の記憶だけ持って帰ってくれたんだと思う。
じゃないと矢口から別れを告げられた事も覚えたままになるし。
矢口もその方がごっちんの為にも良いと思う。
けど、そのおかげでここ1ヶ月の記憶が無いごっちんは不思議そうにしていた。
そんなごっちんに矢口は言ったんだ。
「浦島太郎になってたんだよ、ごっちんは」
首を傾げながらも、あまり深く考えない性格なのでごっちんは納得してくれた(オイオイ…)
でもその代わり違う疑問が浮上したらしい。
- 147 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月21日(水)20時55分03秒
「ってゆうかやぐっつぁん!デートは!?後藤、デートしてないよ???」
あ…確かに。
デートの日からの記憶が無い訳だから、当然ごっちんはデートしてないって思うよね。
「後藤楽しみにしてたのにぃ!」
「じゃ、じゃあ今度のオフにデートしよ!ね?ね?」
「むぅ」
「あ、でも今度のオフって……」
「…3ヶ月後じゃん」
「……」
ヤ、ヤバイ(汗)
「もぉ――!やぐっつぁんのバカ―――!!」
…とゆう訳で怒って寝ちゃったんだよね(苦笑)
でも…そんなごっちんに朝、矢口はとっておきのプレゼントをあげるんだ。
ありったけの…矢口の愛情を。
抑えきれない溢れてくるこの想いを全部、全部ごっちんにあげる。
だから…その時は機嫌直してね?ごっちん。
これからは…ずっと一緒だから。
ずっと…ずっと一緒だからね。
Starting〜パンドラの箱(エピローグ)〜
−Fin−
- 148 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月21日(水)20時56分51秒
( ´ Д `)<お・し・ま・い・だ・よ・ぉ>(^◇^〜)
…お、終わった――!!
もうこんな胡散臭い設定の難しい話はイヤだ(w
記憶戻す方法も無理やりだし…アハハ。
初めは短編の予定だったのにいつしかこんな長さに…
まぁ記憶喪失ネタで短編ってゆうのが無理な話なんですけど。
この小説、最初からラストだけは決まっていました。てゆうかラストから書きました(w
多少、手は加えましたが。でも後で読み返したら書き直したくなりそう…
娘。小説で少ない「まきまり」で萌え所が全然ない上、更新めちゃ遅い(苦笑
明るく楽しい萌え萌え〜な話がやっぱり好きです、私は(w
それでもこんな話を最後まで読んでくれた読者の皆さん、本当にありがとうございました。
これからはしばらく海板の方を頑張ります。
それでは…
>>136 名無し息子さん
ありがとうございます。そんな褒められる程の小説じゃないっすよ(w
歌詞は最初「愛バカ」だけ出そうと思ってたんです。
けど書いているうちに内容が「抱いて…」「ラストキッス」に合うなぁと思って。
名無し息子さんが妄想した内容が気になりますが(w
もしかしたら期待ハズレだったかも…
- 149 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月21日(水)20時57分51秒
- ( ´D`)<ネタバレ防止のレスれす。
- 150 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月21日(水)20時58分41秒
- ( ´D`)<もういっちょなのれす。
- 151 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月21日(水)20時59分37秒
- ( ´D`)<これが最後なのれす。
- 152 名前:アリガチ 投稿日:2001年11月21日(水)22時20分34秒
- お疲れ様でした。
レスは最後にしようと思って控えておりました(笑)
あまりまきまり小説は読んだ事がなかったんですが
良いですな。
謎も解けてスッキリ致しました。
他の連載も頑張って下さいね。
- 153 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月22日(木)01時40分56秒
- いやーラストすげー良かったですよ。
もう一回最初から読み直してきまーす。
- 154 名前:マルボロライト 投稿日:2001年11月30日(金)02時43分38秒
- >>152 アリガチさん
読んでてくれたんですか?嬉しいです。
まきまり小説ってほとんど無いように思います(w
私も1つくらいしか読んだ事ないですし。
海板の方もHP作りも頑張りますよ!ただスピードは遅いですが(苦笑
>>153 名無し読者さん
ありがとうございます。
最初からっすか?読み返されると恥ずかしい(w
今、こりもせず新作を執筆中です。
よしごまといしごまの2本を書いてるんですが
連載するとしたらよしごまの方になると思います。
ただ少し似非おな趣味小説ですが(w
今年は多分無理だから来年ぐらいに始められたらいいかなと思ってます。
- 155 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月01日(土)21時43分08秒
- ラスト、感動しました!
次はよしごまですか。
期待して待っております!!
- 156 名前:マルボロライト 投稿日:2001年12月05日(水)23時10分21秒
- >>155 名無し読者さん
ありがとうございます。
考えてたよしごま以外に違うよしごま(+新メン)での話も思いついたんですが
どっちも似てる部分があってどうしようか混乱中(w
まぁまだ載せれる段階ではないので書き上がってから決めます。
多分どちらの話もあんまり見かけない小説になりそうです(w
- 157 名前:Angel Tear 投稿日:2001年12月10日(月)01時17分22秒
天使は翼にたくさんの傷を負いました。
それでも天使は今日も翼にたくさん傷を作りながら人々を見守ります。
傷ついては休み、休んでは傷つき…それでも天使は笑顔を絶やしません。
「だって…翼の傷はいつか癒えるから」
人を助けた為に命を落とした人間は、大天使から“天使になりたいか?”と判断を委ねられます。
天使になると特例を除いた以外は永遠に楽園に住む事が出来るのです。
そこで愛する人を見つけたり、地上の人々に幸せを運んだりします。
けど、自分から天使になりたいと願う死者はほとんどいません。
みんな早く成仏して次の生命に生まれ変わりたいからです。
でも、ここにいる天使は自分から天使になりたいと願いました。
- 158 名前:Angel Tear 投稿日:2001年12月10日(月)01時18分48秒
――1900年。
天使には生前、地上に同い年の大事な人がいました。
深く…深く愛し合っていました。
いつまでも幸せが続くものだと思っていました。
けど、別れは突然訪れました。
二人の目の前に居眠り運転の車が迫ってきたのです。
とっさに彼女を突き飛ばしてかばいました。
そして…
- 159 名前:Angel Tear 投稿日:2001年12月10日(月)01時19分56秒
彼女は…真希だけは生き残ったのです。
天上界でなつみは悩みました。
「今、成仏してもすぐには生まれ変われない。再び真希に出逢う事は出来ない」
同じ時代に生きられないのなら生まれ変わっても意味が無い。
それならちゃんと彼女の人生を見守りたい。
その為に天使になる事を決意したのです。
天使の思いは全ての天使の長である大天使に伝わりました。
『地上の彼女が眠りについて生まれ変わる時
お前も天使の役目を終え、一緒に生まれ変われるようにしておこう』
天使は喜びました。
けど…天使には心配な事が一つありました。
それは、彼女が生きる気力を失いかけている事。
自分がこっちに来てからの彼女は日に日に弱っていきました。
- 160 名前:Angel Tear 投稿日:2001年12月10日(月)01時21分08秒
天使はいつものように下界に降りて彼女を見に行きます。
「ひとりはヤダよぉ…あたしもそっちにいきたいよ」
彼女は来る日も来る日も泣いていました。
『泣かないで…真希』
天使は優しく彼女をつつみ込みました。
けど…天使の腕は彼女の体をすり抜けました。
天使は人間には触れられないのです。
『真希を…抱きしめたいよ』
そう言って…天使は一粒の涙を流したのでした。
- 161 名前:Angel Tear 投稿日:2001年12月10日(月)01時22分27秒
「そばにいて抱きしめてよ…なっち」
彼女は必死で自分の体を抱きしめながら泣いていました。
天上に戻り、天使は大天使にお願いをしました。
せめて温もりだけでも彼女に伝えたい、彼女に触れたい。
彼女には残りの人生を生きてほしいから…そう願いました。
『可能だが…そうすると転生する時期が四年程ずれるぞ?』
『それでも構いません。四歳くらい違っても何も変わらないから』
大天使に力を貸してもらった天使はすぐに地上へと向かいました。
まだ…彼女は泣いていました。
天使は彼女のそばに行き、そして優しく…宝物をつつみ込むように抱きしめました。
- 162 名前:Angel Tear 投稿日:2001年12月10日(月)01時23分19秒
『真希』
天使が彼女の体に触れた瞬間、彼女は顔を上げて周りを見回しました。
「なっ…ち?いるの?」
姿は見えませんが確実に天使の温もりは彼女に伝わっているようです。
『なっちはここにいるよ?ずっと真希のぞばにいる。だからもう…泣かないで』
声は聞こえるはずはありません。
けど、きっと彼女の心には届いているはずです。
- 163 名前:Angel Tear 投稿日:2001年12月10日(月)01時24分24秒
『何度でも出逢えるよ…なっちと真希は。また絶対逢えるから…見つけるから』
「…うん。絶対だからね!」
彼女の顔に笑顔が戻りました。
それを見て天使は再び天上界へと戻って行ったのです。
それからの彼女は悲しみを乗り越え、強く生きていきました。
天使は彼女の人生を最後まで見守りました。
- 164 名前:Angel Tear 投稿日:2001年12月10日(月)01時25分11秒
――そして……。
前世で悲しい恋を経験した二人は
時を越え、1999年の夏に再び出逢いました。
「あっ…」
「新メンバーになった後藤真希、13歳です―――」
歌手とゆう同じ夢を胸に抱いて…。
−Fin−
- 165 名前:マルボロライト 投稿日:2001年12月10日(月)01時26分07秒
- 以上なちごま超短編でした(w
- 166 名前:マルボロライト 投稿日:2001年12月10日(月)01時27分10秒
- このなちごま書いたの結構前だなぁ。
夏あたりに書いた気がします。
- 167 名前:マルボロライト 投稿日:2001年12月10日(月)01時28分33秒
- 羊のなちごま小説に触発されて書いたんですが
ストックの中に埋もれて忘れてました(w
- 168 名前:訂正です 投稿日:2001年12月11日(火)04時27分42秒
- >>162
>ずっと真希のぞばにいる。
→そばにいる、の間違いです。
(0´ー`0)<なっち訛っちゃったべさ。
( ´ Д `)<いいよぉ、なっちらしくて。
- 169 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月13日(木)01時51分11秒
- 聖書みたい
- 170 名前:マルボロライト 投稿日:2001年12月24日(月)23時28分09秒
- >>169
聖書ですか。読んだ事ないですねぇ聖書は。
ギリシャ神話なら読んだ事ありますが(w
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