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あすりか

1 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)15時39分00秒
レイプで始まった明日香と梨華の関係。
二人の不器用で純粋な愛と青春の物語。
(羊)から流れてきました。
2 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)15時41分20秒
 一番最初に直接お話ししたのは、市井さんの卒業コンサートのときだったです。
 それまでは全っ然、興味なかったんですよ。
 だって、もう辞めちゃった人ですから、福田さんは。
 それにビデオで見たときは、コロコロした感じで、ちょっとかわいいかもって
思っただけでしたし……。
 でも実際会ってみたら、ものすごい興味がわいてきたんですよ。
 だって…ビデオのときより、ずっとやせてて……私好みだったから。
 福田さんは、それからもコンサートの時に、何度か見に来てくれて、私はずっ
と「仲好し」になるチャンスを狙ってたんです。

「福田さん、石川です〜。覚えておられますか?」
「あ、はい…どうも」
 ほんとに素っ気ない人。
 でも、目の輝きが印象的かな?
 安倍さんとか飯田さん、保田さんとかとお話ししてる横顔を見ながらそんな風に
思ってました。
 それで、福田さんがトイレに立ったのを追いかけるようにして、私も席を外し
て……。
 いよいよ作戦決行ですよ。ウフフ。

 福田さんが開けたドアが閉まる寸前に、私も滑り込んだんです。
 目の前には福田さんの背中が。間に合っちゃいました♪
 入り口のカギを締めてから背後に近づいて、さっと腕を取って……
「痛い!」
 やった♪
 この間、チャレモニでやってた合気道がこんなところで役立つなんて。
 やっぱり日ごろの行いがいいから、神様がご褒美をくれたのね♪
 さて、このまま個室に押し込んで、と。
3 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)15時45分02秒
「やめ……」
 福田さんは私に押さえられた後ろ手を、なんとか外そうとするけど、そんなこと
では私の技は外せませんよ?
「何…すんの?……」
 苦痛に顔を歪ませながらも、気丈にふるまう福田さん。
 かっこいい……。
「大丈夫。『気持ちいいこと』するだけですよ」
 言いながら福田さんの胸元のボタンを外して……。
「い、いや!」
 いやって言われてもやめないです。はい。
 あれ? 福田さん、ブラジャーの色、ピンクなんですね。
 ダメですよ。ピンクは私の色なんですから。
 だからはずしちゃいますね? ホイッ!と。
「いや〜!!」

 福田さんのおっぱいが揺れてます。
 む。意外に大きい……。乳首もきれいなピンクだし……。
 ま、まあ、私ほどじゃ……ないですよね?
 何か……むかついちゃって。
 ギュッ!
「い、痛っ、痛いっ!!」
 力いっぱいおっぱいをつかんだら、福田さん、痛さに身をよじってます。
 かわいい〜♪

 ちょっと待ってくださいよ。え〜と…もう一方の腕も持ってきて、後ろで結ん
で。はい! 出来上がり。
 はい、ここに座ってくださいね〜♪
 そんなに足をバタバタさせてもダメですよ〜。
 福田さん、顔だけじゃなくて全身が真っ赤ですよ? ほら、そのせいでおっぱい
も……。乳首なんて桜色です。まさにチェリーですね。
 ほんと、おいしそ〜♪
 パクッ!
「んっ!」
 可愛いチェリーちゃんをなめてあげたら、福田さんは全身をビクッてさせて喜ん
でくれてます。
 うふっ♪ うれしいから、もっと吸っちゃいますよ〜。
「ひ……く……っ」
 もう、そんなに身もだえしちゃって、乳首も固くなって尖ってきましたよ〜?
 福田さんのH〜♪
4 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)15時46分03秒
「いや……やめてっ!……」
 そんなこと言って〜。もうこんなにツンツンじゃないですか〜。
 ウソはダメですよ。
 そうだ! 今度は…と……。
「いやあ! 本当にやめて〜!!」
 よいしょ、よいしょ。それっ! はい、ショーツも脱げましたよ〜。
「…ふっ…う…う……」
 あら〜? 福田さん、泣いてるんですか〜?

 泣いたって私は容赦しないですよ。
 それっ!
「きゃあっ!」
 ゴッチン☆
 あら、ごめんなさい。急に足を持ち上げたら、そりゃ、頭打っちゃいますよね。
 てへっ♪ 失敗失敗。
 そんなことより福田さん、あそこが丸見えですよ〜。
 あら〜♪ かわいいお花がこんなところに。チュッ。
「ひぅっ! や…やめて〜!……お願いだから……」
 ダメです〜。やめませんよ。
 チュッチュ チュチュチュッ チュチュチュチュッ♪
「うっ…くはぁ〜っ!」
 ウフッ♪ なんだかんだ言って、福田さん、感じてるじゃないですか。目も潤ん
できてるし、相変わらず乳首はツンツンだし……。
 おまけにあそこも大洪水。

「ウフッ、可愛い、こんなに濡らしちゃって」
「駄目! 駄目…見ないで……」
 それだけ言って、福田さんはただ首を振り続けてます。
 でも見ちゃいますよ〜。
 ……うわあ〜、可愛い!
 ホヤホヤッとした毛があそこを隠してますよ。
 その奥が濡れて光ってます。花びらみたい……。
 なんだか…私もドキドキしてきちゃう。
 ゆっくり、その花びらにキスして……。
5 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)15時47分07秒
「ああっ!…い…石川さん……そんなところ……」
 私の唇が動くたびに、福田さんの体がビクッ、ビクッて震えて……。
 それにあわせて、私の体も燃え上がってきて…唇と舌の動きがドンドンとエス
カレートしてきちゃって……。
 花びらの一枚を挟むように振るわせたり。
 中心に舌を伸ばしたり。
 その上に顔を出してる雌しべを、口に含んで舌でチロチロしたり。
 福田さんは、もう「あっ! ああっ!」って声を上げて、体に走る電流に従って
のけぞることしかできなくなってます。

 さ〜て、最後の仕上げです。
 手を伸ばして乳首をクリクリッ。
「ひぃうっ!」
 お豆を舌でコロコロッ。
「はぁ〜っ…も…もうっ!」
 福田さんは今まで以上に身もだえて、のけぞって……。
「あああ!……い、いっちゃう〜っ!」
 ギュウ〜ンッて目いっぱい反ってた体が、ガクッて力が抜けて、荒い息だけが
「は〜っ…は〜っ…」って途切れ途切れに聞こえてきます。
「福田さん、今はこれだけ。次はもっともっと可愛がってあげますよ」
6 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)15時48分04秒
 あれから福田さんは、私を避け続けてるみたい。
 なんでだろう? あんなに気持ちよくしてあげたのに。
 でも、仕方ないかもしれないな。
 あのとき気がついたんだけど、福田さんはまだバージンだったみたい。
 ちょっと刺激が強すぎたかしら?
 でも…まだまだ教えてあげなきゃいけないことが、いっぱいあるんだから。
 私、福田さんと、もっともっと「仲好し」になりたいんです。
 絶対に逃がしませんよ、福田さん? ウフフッ。

 テレビ収録が終わって楽屋に戻ると、安倍さんが飯田さんに話しかけてたのを
聞いちゃいました。
「ねえ、カオリ。次のオフ、あいてる?」
「ん〜? あいてるけど…な〜に??」
「明日香がさあ、家に遊びに来ない?って」
 チャ〜ンス!!
 フフフフ…福田さん、やっぱり私たちはもう一度出会う運命なんですよ。

「安倍さ〜ん、私も連れていってくださいよ〜」
 安倍さんなら比較的お話をしやすいし、おねだりしちゃいます。
「え? 梨華ちゃん……カオリ、どうしよう?」
「ん〜〜……」
「私、福田さんとお友達になりたいんですよ〜。同い年だし『仲よし』になれると
思うんですけど〜……」
 困ったお顔をしてるけど、お人よしの安倍さんなら大丈夫。
「……わかった。梨華ちゃんも連れていってあげる。いいよね、カオリ?」
「ん〜〜〜………いいんじゃない?」
 ほらね?
 フッフッフッフ……福田さん、待っててくださいね〜。
 愛しの梨華があなたの元へまいりますよ〜。
7 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)15時49分08秒
 あっという間に当日です。
 もう、梨華は待ちきれませんでしたよ〜。ワクワクッ♪
 安倍さんたちの後ろについて福田さん宅へ。
 ピ〜ンポ〜ン♪
「明日香〜! なっちが来たべさ〜」
「いらっ…しゃ〜…い……い、石川さんも?……」
 ニコニコ顔で出てきた福田さんが、みるみる青ざめてる。
 もう、いくら愛しの梨華が来たからって、そんなに緊張しなくてもいいんですよ。
「お願いして連れてきてもらっちゃったんです〜。福田さん、よろしくお願いし
ま〜す♪」
「…………は…入って」

 部屋に入れてもらったのはいいんですけど、福田さん、ガードが堅すぎです。
 絶対に私と二人きりにならないように、安倍さんか飯田さんをつかまえてるし……。
 なかなか愛の時間がもてません。
 流石は先輩の皆さんから、「ただ者じゃない」と言われるお人ですね。
 でも私だってちゃ〜んと考えてきたんですよ♪
「それじゃ〜ねえ。明日香、また連絡するから」
「うん。じゃ、またね」
 とうとう帰る時間になっちゃいました。
 別に残念じゃないですよ。だって仕掛けはバッチリなんですもの。
8 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)15時50分09秒
 安倍さん、飯田さんとは駅でお別れ。
「私この後、寄るところがあるんで」
 駅のコンビニで時間をつぶしてから、ゆっくりと福田さん宅まで戻ります。
 そうしたら、福田さんのご両親がやっておられるお店がもう開店してます。
 ちょっと待ってると、弟さんが自転車で出ていかれましたよ。
 そうです。今、福田さんはお一人です。ウフフッ♪

 ピ〜ンポ〜ン♪
「は〜い……い、石川さん……何? どうしたの?」
 ドアの覗き窓から見てるみたい。
「ごめんなさ〜い。私、忘れ物をしちゃったみたいなんです〜」
「……本当に?」
 もう福田さん。人を疑っちゃいけませんよ。
「本当です〜。福田さんの部屋に、ピンクのハンカチを忘れちゃって〜」
「……ちょっと待っててくれる?」
 そう言って玄関を離れていっちゃいました。
 なかなかドアを開けてくれませんねえ。

 それでもしばらくしたら福田さんは戻って来ました。
「…あったよ」
「ありがとうございます〜」
 なんだか中でガチャガチャ音がした後に、ドアが開きました。
 むむ? しっかりドアチェーンがしてあります。
 ドアの隙間からハンカチだけを出してます。
「これ…」
 声も素っ気ないです。
 でも私は負けませんよ。
「ありがとうござ…あっ!」
 ハンカチを受け取ろうとして落としちゃいました〜♪
9 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)15時50分51秒
 てへっ♪ 福田さんは本当にいい人ですね。
 とっさに拾おうとしてくれて。
 でも福田さん。ちょっと不用心ですよ。
 簡単に人を信じちゃいけません。
「!!…い、痛いっ!」
 ドアから出た腕をとって、逆の手で下がった頭を押さえれば、はい出来上がり。
 そのまま腕をねじって片手でもてるようにしてから、ドアチェーンを外します。
 ささっと玄関に入って鍵を閉めます。
 さあ福田さん、やっと二人きりになれましたよ〜♪

「あ…あんた…なんで私にこんなこと……」
「だって〜…福田さんって、可愛いんですもん」
 そんな和やかな会話をしながら、ねじ上げた腕を押すようにして、福田さんの
部屋に直行です。
 そのまま決めた腕をグイッとやって、ベッドにえいっ♪
て押し倒しちゃって、あのときと同じように両手を後ろ手にしばっちゃいます。
「あんた、女同士でおかしいんじゃないの?!」
「そうですか〜? じゃあ、女同士で感じちゃった福田さんもおかしいですねえ」
 な〜んて愛の語らいをかわしちゃって。ウフッ。

 押し倒された体勢のまま、うつむきで両手をしばられてる福田さん。
 なんだか屈辱感いっぱいの真っ赤な顔。
 あの目で睨み付けられてると、私の中に燃え上がるものを感じちゃいます。
 それに、膝丈のスカートがまくれ上がって、ショーツが丸見えですよ。キュッと
しまったお尻にそそられちゃいます〜。
 今回はさっそくショーツを下ろしちゃいま〜す。
「ちょっ?! いやあ〜!」
 でも膝までね。
 これであんまりジタバタできないでしょ?
 私だっていろいろ学習するんですよ〜。
 むき出しの白いお尻がキュートです。
10 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)15時54分35秒
 さて、今度は上ですよ。
 まずは服の上から胸に手を伸ばして……。
 ベッドで押しつぶされてるおっぱいを、体ごとすくい上げるように両手で揉ん
じゃいます。
「やめてっ!…くっ……ちくしょう……」
 いや〜ん。福田さんったら、「ちくしょう」だなんて、そんなお下品なこと
言っちゃダメですよ〜。
 ほら! 私の手、福田さんのおっぱいにベストフィットでしょ?
 そのままブラジャーを上にずらしていったら、縁に乳首が引っかかっちゃった。
「いや〜……あんっ……」
 身をよじるようにして嫌がってた福田さんが、乳首から流れた電流でビクッと
反応して、色っぽい声を出しました。
「今、感じちゃったでしょ? ね、そうでしょう?」
 耳元で言うと、ますます赤い顔で荒い息をつきながら、いやいやするように首
を振る福田さん。か〜わいい♪
 そのままブラジャーを左右から引っ張って、乳首をクリクリッてして。そのたび
に、「あんっ」て色っぽい声がもれてきます。

 そのうちブラジャーの縁が乳首から外れて、プルンッて感じでおっぱい全体が
出ちゃいましたよ。
「あは〜……」
 なんだか福田さんの声、解放されたような、残念そうな複雑な気持ちみたいに
聞こえましたよ?
「ゆっくり見せてくださいね〜」
「あ…いや……」
 あおむけに体をひっくり返したら……。
「福田さん、乳首まで真っ赤ですよ?」
 ピョコンと尖った乳首が充血して口紅をぬったみたいです。
 うわ〜っ、かっわいい♪
 あんまり可愛いから、チュッてキス。
「いゃん……」
 福田さんは顔を背けて必死に我慢してるみたい。
 我慢なんてしなくていいのに。
11 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)15時58分45秒
 よ〜し!気合いを入れて可愛がっちゃいますよ。
 まずは、と。
 ツンツン真っ赤な乳首を、舌先でつついてあげて……。
 ピョコンッ、ピョコンッて舌先から逃げる乳首をドンドンと追いかけちゃいます。
「はぁ〜……」
 感じてる感じてる〜。
 じゃ、続いては両手でおっぱいをしぼるようにして、乳首をますます飛び出させちゃって……。
「…くふぅ……」
 左の乳首は人差し指でコロコロ〜ッ。
 右の乳首を口に含んで、舌先でレロレロ〜ッ。
「あ…あ…あぁんっ……」
 もう福田さんは、体が真っ赤なだけじゃなくて、体温も急上昇です。

 さ〜て、ここからが本番ですよ〜。
 下の方に手を伸ばして……。
「…!!……いやっ……駄目っ…やめて〜!」
 私の動きに気づいた福田さんが、あえぐように叫んでます。
 でもごめんなさい。やめませ〜ん♪
 ふわっとした柔らかい毛を越えていくと……あは〜♪やっぱりもうトロトロに
溶けちゃってますねえ。
 私の指が大事なところに触れると、福田さんは身を固くして、両足をきつく閉
じて逃れようとしてます。
「大丈夫…大丈夫ですよ〜」
 私は中指だけでたどっていって……割れ目に沿って滑らせて……。
 くちゅっくちゅっ。
「…いやらしい音がしますねぇ?」
 もう泣きそうなほどに潤んだ瞳を、恥ずかしそうに背けてます。
 はあ〜っ。やっぱり、可愛いな〜……。
12 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)15時59分43秒
 いつの間にか両足も緩んで、自由に手を動かせるようになってます。
 私は中指と人差し指で花びらを挟むようにして、ゆっくりと指を滑らせ続けて、
同時に親指でお豆さんを揺さぶってあげました。
「はっ!…いや…いやんっ……」
 福田さんは呼吸困難のように口をパクパク、体をビクビクさせて身もだえてます。
「気持ちいいでしょう?」
 もう福田さんは限界寸前です。

「…もっと気持ちよくしてあげます…最初はちょっと痛いかもしれないけど……
最初だけですよ」
 興奮で乾いちゃった唇をペロッとなめて、私は中指を福田さんの中へとゆっく
り……。
「!!…いっ!!……」
 首ごとギュッとそらして痛みに顔をしかめてます。
「痛いのは最初だけですから……」
 大きく深呼吸して、また中指を差し込んでいきます。
 指から逃れるためにずり上がろうとする福田さん。
 それをガッチリと押さえて、中指を最後まで差し込んじゃいます。
「っ……」
 頬をつつ〜っと流れる涙がすごくきれい……。
13 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)16時00分32秒
 そのままの状態で福田さんの痛みがなくなるのを待って、耳元でそっと「福田
さん…本当にきれいです」ってささやいて……中指をゆっくりと動かし始めます。
「はぁっ……んっ!」
 顎を上げて荒い息遣いを必死に抑えようとして……そんな福田さんに、私はもう
メロメロです。
「あぃ…いゃ……あはぁ〜……」
 今までに聞いたことのないくらいに色っぽい声。
 その声を聞くだけでもぞくぞくしてきます。

 指をだんだん小刻みに動かしていくと、
「いぁっ…あっ…もっ…もう…駄目ぇ〜!!」
 福田さんの腰が跳ね上がって、全身もビクッビクッて痙攣して……。
「くっ…はあぁぁぁっ!」
 ドサッとベッドの上に崩れて、はあ〜っはあ〜って荒い息をついてました。
「…福田さん…最高に気持ちよかったでしょう? ねえ?」
 福田さんは涙をいっぱいためたうつろな瞳で天井をみつめてました。
 私は覆い被さるようにキスをして、もう一度言いました。
「最高に気持ちよかったでしょう?」
 こくんって小さく肯いた福田さんの目から、涙がス〜ッと流れてました。
 私は嬉しくなって、もう一度キスをして……。
 私が福田さん宅を出たのは、さらに一時間後でした。
 その間はもちろん、ウフフッ。もっともっと福田さんを可愛がってあげたんですよ。
14 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時01分44秒
 あれから私たちは「梨華ちゃん」「明日香ちゃん」と呼び合う仲になった。
 と言うか、そう呼ばされていた。
 私は元々愛想の悪いヤツだから、回りからはそこそこ仲良くやっているように
見えたかも知れない。
 梨華ちゃんのことは、誰にも話していない。
 あんなこと相談できる相手もいないし……。
 それに…いつまでもこのままで済ますつもりはないから。

 予備校から帰ってきて家で一息ついていた。
「…あ〜あ」
 何故ともなくため息が出る。
 何だか落ち着かなくて……悪い予感がしていた。
 突然、携帯電話が鳴る。メールだ。
『私、明日OFFなの〜。いつものように家で待ってるからね☆☆愛しの梨華
より☆☆』
「……」
 悪い予感が的中した。

 あれから度々、梨華ちゃんのマンションに呼び出されていた。
 行けば例のごとく……「いつものように」梨華ちゃんに蹂躙される。
 耳知識ならともかく、その手の実体験に乏しい私に、梨華ちゃんに反抗する術
はなかった。
 今はまだ……。
 そう。この状況を乗り越える「何か」を見つけなければ……。
 いつまでもこのままで済ますつもりはないから。
15 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時02分27秒
 ピ〜ンポ〜ン。
「は〜い♪」
 ドアの向こうから甲高い声が聞こえる。
 ガチャッ。ロックの外れる音がしてドアが開いた。
「どうぞ〜♪」
 梨華ちゃんはいつものようにご機嫌で、私の手を取って奥へと引いていく。

 私をテーブルに着かせると、キッチンの方へととって返す。
「クッキー焼いたの〜。食べてみてくれる?」
 こういうところを見ていると、本当に女の子らしい可愛さにあふれてる子だ。
「それとも…私を食べる?」
 ……前言撤回。
 やっぱりこの子は「悪女」だ。
 それにしても、この目の輝きの妖しさは何なんだろう?
 本当に私と同い年なんだろうか?

「ねえ……ねえねえ」
 何が「ねえ」なのか。
「気持ちいいこと…しよう?」
 この子は、それ以外のことは考えられないんだろうか?
「ねえ……」
 私が黙っていると、にじり寄ってきて私の二の腕を抱き込む。
 肩に頬をすり寄せて甘えてくる。
 ここに来るといつもこうだ。
 何故なんだろう? 不思議に思う。
 最終的には私を犯そうっていうのに、何故、毎回毎回、こんな風に私を誘うのか。
 手っ取り早く押し倒せばいいだろうに。あの時みたいに。
16 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時03分25秒
 突然、目の前5センチに梨華ちゃんの顔が。
 驚いて仰け反るように顔を離すが、それでも迫ってくる。
 私が何も言わないからか、唇を尖らせて不満顔。
「…キスして……」
 目をつぶる。
 そんなことは嫌なことだ。
 ……が、このままの体勢は首が痛い。
 梨華ちゃんの肩をつかんで横にずらしながら、顔を避けるようにして立ち上がる。
 自然と梨華ちゃんの耳元を、私の鼻先がかすめる。
 瞬間、梨華ちゃんがビクッと体を震わせた。笑顔が消えている。
 今のは…何?

 急に立ち上がった梨華ちゃんは、私の手を乱暴に引いてベッドに連れていこう
とする。
「気持ちいいことしよう!」
 何だかイラついてるみたい。
 私を無理矢理にベッドに押し倒す。
 結局、最初からこうしたかったんでしょ?
 どこか冷めた目で状況を見ながらも、梨華ちゃんの手を阻むことは出来ないで
いた。
 振り払おうとはするけど、梨華ちゃんは私の手の動きの隙をついて迫ってきた。

 服の上から胸をつかまれる。
 違う。「つかむ」じゃなくて「包む」。
 嫌悪感をもっていても、「包まれた」瞬間、ほわっとした心地よさを感じてし
まう。
 きつく口をつぐんでいても、唇が合わさると何故か梨華ちゃんの舌が入ってく
ることを拒めなくなってしまう。
 ギュッと両足を閉ざしていても、梨華ちゃんの手で太股をさすられると足腰に
力が入らなくなってしまう。
 頭が真っ白になって、いつの間にか服を脱がされてしまっている。
 そして、いつの間にか梨華ちゃんも同じ姿で……。
17 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時04分26秒
 悔しいけど……私の体は、梨華ちゃんに支配されている。
 私自身も知らない、私の体のスイッチを梨華ちゃんはすべて把握している。
 梨華ちゃんに吸われて、乳首はもう限界まで立ち上がっている。日ごろじゃ見
たこともない赤みを帯びている。
 赤すぎて黒ずんでしまっているように見えるほどに……。
 「下」も同じ。
 梨華ちゃんの指をしっかりくわえ込んで、私の意思に関係なく、ひくひくと収
縮を繰り返す。
 その少し上では、梨華ちゃんの親指に「いい子いい子」されて、肉の芽が大き
く膨らんでいる。

「あ…あぅ…いゃあ……」
 誰が発しているのかと思ったよがり声。
「だ、駄目…そこは……くふぅ……」
 何ていやらしい声だろうと思った。
 その声に合わせて梨華ちゃんの指が、唇と舌が動きを早めていって……。
「…やっ……はぁっ……いっ…いくっ……いっくぅ!!!」
 私は果てた。
 へ〜。私って…あんないやらしい声も出せるんだ。
 意識が真っ白になりながら、そんなことを思っていた。

 ピンク色の視界が急速に降ってきた後、ス〜ッと意識が戻る。
 梨華ちゃんの部屋の色。
「ウフッ、明日香ちゃん可愛かったよ〜♪」
 寄り添うように寝ていた梨華ちゃんが、肘をついて上から見下ろしていた。
 私の目の前には、梨華ちゃんの形のいい耳があった。
 梨華ちゃんの耳……。
 テーブルでの不審な出来事のことが蘇ってきて……その時、チカッと私の頭の
中に光が点った。
 もしかして……。
18 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時05分20秒
 ゆっくりと顔を背けて……梨華ちゃんの耳に、フゥッと息を吹きかけた。
「イヤァッ!!」
 必要以上に驚いて逃げようとする。
 やっぱり!
 この時を逃しては駄目。そう直感して、梨華ちゃんの頭を抱き留める。

「放して〜!!」
 叫ぶのを無視してグッと引き寄せて…耳に口づけ。
「だ…だめ〜…あ…あ……」
 梨華ちゃんの体から力が抜けていくのが感じられた。
 唇で耳たぶを挟んだまま、舌でチロッとなめる。
 反対側の耳も、指でス〜ッとなぞる。
「あぅ…あ……あ…だめ…あ……」
 梨華ちゃんは、私の頭に手を伸ばして引き離そうとしているけど、その腕には
全然力がこもってなかった。

 さっきまでの私と同じ状態。
 顎を上げて口をパクパク。何とか呼吸しようとするけど、絶え間なく飛び出す
あえぎ声に、それさえもままならない。
 いつもの梨華ちゃんの妖しさは微塵もなかった。
 カプッと耳を甘噛みすると、梨華ちゃんの体全体が仰け反って、声にならない
「ヒュ〜ッ」という笛のような音を立てた。
 耳元から、つつぅ〜っと首筋へと指を這わせる。
「…いゃ…いや〜!…あ…あ…やめて……」
 弱いのは耳だけじゃないみたいだね。
 そう言えば、これまでもキス以外は首から上に触られることを避けていたように
思う。
19 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時06分31秒
「梨華ちゃん…可愛いよ」
 耳元で囁くと、それだけで身もだえる。
「…助けて……」
 かすれるように聞こえてくる言葉。
「何を?…私はただ、梨華ちゃんに気持ちいいことをしてあげるだけだよ?」
 私は…笑っていた。
 まさに復讐の笑みだ。
 腕を伸ばして触ると、そこはもう濡れていた。
 梨華ちゃんの妖しい花びらに沿って指を這わせると、クチュクチュといやらし
い音がする。

「梨華ちゃんは、もう初めてじゃないよね?」
 あえぐばかりで返事はない。
 ゆっくりと花びらの中へと指を進める。
 驚くぐらいの熱さだった。
 何かに憑かれたように蠢く梨華ちゃんの腰。
「いゃ…だめ…そこ…あぅ……」
 そんな声とは裏腹に、梨華ちゃんの「そこ」は私の指を奥へ奥へと誘う。
20 名前:名無し娘。 投稿日:2001年08月27日(月)16時06分33秒
引越し先ハケーン!
楽しみにしてますです。がんばて。
21 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)16時09分54秒
 指先にほかの部分とは違う、つるっとした感じの場所が当たった。
「はぅっ…あ…あ…だめ…だめ〜……」
 ギュ〜ンッと仰け反って、息も絶え絶え。
「梨華ちゃん、ここ? ここがいいの?」
 聞きながら、そこを集中的に責めた。
「いゃっ!…いゃっ!…だ…もうっ……だめ〜!!!」
 信じられないくらいの力で私の指が締め付けられ、梨華ちゃんは、私をはじき
飛ばす勢いで仰け反った。
 指から「そこ」が痙攣しているのが伝わってきた。
 それだけじゃない。
 梨華ちゃんの体のあちこちが、ヒクヒクと痙攣していた。

 エクスタシーに震える「女」を私は初めて目の当たりに見た。
 一種壮絶で、それでいて美しかった。
 私も…私もさっきはこんなに美しくなれたんだろうか?
 はあ〜っ、はあ〜っと荒い息をつく梨華ちゃんを見下ろしながら、そんなこと
を考えていた。
 しばらくして、涙で潤んだ目で梨華ちゃんが私を見上げた。
 私が言う言葉はこれしか浮かばなかった。
「…梨華ちゃん…最高に気持ちよかったでしょう? ねえ?」
22 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時12分05秒
「…やっぱり私、ダメな子なんです〜」
「いや、そんなことないから」
「そんなことあります〜」
 さっきからこの繰り返し。
 意識が戻ったと思ったら、いきなりシクシク泣き出して……。
「…やっぱり私、ダメな子なんです〜」
 第一声がこれだった。

「元々の被害者は私でしょ!」…とは流石の私でも言えなかった。
「ごめんね、梨華ちゃん……私、やり過ぎちゃったみたいで……」
 襲われてバージンまで奪われて、その上何故、謝らないといけないのか?
 頭の中をこの命題がグルグルと回る。
 それでも梨華ちゃんに泣かれると、本当に可哀想に思えてくるから……。
 客観的に考えると、やっぱり「悪女」の素質十分だね。
23 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時13分33秒
 なかなか泣きやまない梨華ちゃんを、なだめすかしてよくよく話を聞いてみた。
 第一の感想……「呆れた」。
 何でも、梨華ちゃんは元々から感じやすい体質らしく、特に首から耳にかけて
触られると、もう駄目らしい。
 その上に惚れっぽい性格。
 それも男女の別なく……何だかなあ。
 まあ、その両方が相まって、つき合う男、つき合う女、事に及ぶと、必ずのよう
に梨華ちゃんが先に果てちゃうんだとか。
 最初は、「可愛いね」とか言ってくれるらしいんだけど、それが毎回のこととな
ると、相手は怒って別れ話になる……梨華ちゃんの話をまとめると、そういうこと
だ。
 振られ続けてコンプレックスになったと……。

 梨華ちゃんも頑張って、私が受けたようなテクニックを磨きまくったらしい。
 つまり、私はある意味、そのコンプレックスを解消する実験台にされたという
ことだ。
 梨華ちゃん本人には、その自覚はないみたいだけど……。
 でも、そんなテクニックを身につけても、感じやすい体質が変化するわけもない
のに……。
「はあ〜あ……」
 梨華ちゃんの境遇と、そしてそれに図らずも巻き込まれちゃった私。
 やっぱり「呆れる」しかないじゃないか……。
24 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時15分00秒
 ん? そんなに惚れっぽい梨華ちゃんが、モーニング娘。に入ったってことは……。
「梨華ちゃん…娘。のメンバーにも、手、出しちゃったわけ?」
 大きく首を振る梨華ちゃん。
「…失敗しちゃいました」
 メンバーは無事か……ん? 失敗って……。
「手、出そうとしたの?」
「はい」
 何の躊躇いもない。
「……誰に?」
「中澤さん……」
 裕ちゃん?
 またそれは…すごいところに手を出そうとしたんだねえ。

「……何で? 何で裕ちゃんに…その…好きになっちゃったの?」
「最初にキスされちゃったときに……もう…愛を感じちゃって」
 あ〜…勘違いしちゃったんだ。
 キス魔の裕ちゃんらしい惚れられ方だね。
「で? どうしたの?」
 梨華ちゃんのことだ。
 流石に相手が裕ちゃんだから襲うようなことはないだろうけど、近いことはした
に違いない。
「え〜と……二回目にキスされたとき…二人っきりだったから……舌を入れたの……」
 ……何をするかな、この子は。
 頭が痛くなってきた。
「はあ……で? どうなったの?」
 私がそう言うと、梨華ちゃんはモジモジと恥ずかしがっていたけど、重ねて聞く
と、赤くなって答えてくれた。
「…反撃されて……立て続けに……いかされちゃった……」

 い…いかされた?!
「……反撃って?」
 その時のことを思い出してたんだろう。
 梨華ちゃんは、夢見るような目で中空を見つめてた。
「すんごい舌を絡めてきて…息ができないくらい……すぐに首筋とか…弱いところ、
あっという間に見つけられて……」
 あ〜…そうですか……。
 梨華ちゃん…今も半分いっちゃってるみたいな、いやらしい顔だよ。
「…それで…いかされちゃったんだ」
「はい…はっきりわからないけど…三回くらいかな…それで……」
「それで?」
25 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時15分42秒
「中澤さん、すごい妖しい目で見てて『こんなこと、もうやめや〜』って笑って
て……」
「ふ〜ん」
「それで…『もし、ほかのメンバーにこんなことしたら…』…チュッて可愛いキス
してくれて…『…言わんでも、わかるやろ?』って」
 怖っ!
「…最初の裕ちゃんで、すごい釘刺されちゃったんだ」
「はい…だからほかのメンバーには、手、出してません……」
 梨華ちゃん、すごい残念そうな顔をしてたから嘘じゃなさそうだ。

「梨華ちゃんさあ…そんなに焦らなくてもいいんじゃないの?」
「だって!…私も…誰かに愛されたいから」
 すごい寂しそうな顔だった。
 まあ、やり方はともかく、気持ちは分からないでもない。
 私もどっちかって言うと、自分の気持ちを伝えるのが苦手な方だし……。
「大丈夫。梨華ちゃん、こんなに可愛いじゃん。感じやすいっていうのも、それ
自体、別に悪いことじゃないし。焦らないで、ちゃんとした相手を見つければい
いんだよ。その〜…セ…セックス、だってさ、相手が協力してくれれば、お互い
に満足できるはずだし……」
 は、恥ずかしい!
 大体、誰かを慰めたりとか、こういうのは私の柄じゃないんだよ。
 まったく、もう……。
26 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時16分59秒
 それでも、梨華ちゃんは真剣に聞いてくれていた。
 私のへたくそな慰めでも、感動してくれたみたい。
 ちょっと涙目になってるし。
「明日香ちゃん……私…私……ありがとう!」
 私の両手をガシッとつかんで、そう言った。
「いや…あの…頑張ってよ、梨華ちゃん。私に出来ることだったら協力するし…
…あの…私たち…友達じゃない…」
 照れながら言った私の言葉に、梨華ちゃんは首を振った。
 何で?
「友達じゃイヤ!」
 え?
「私…明日香ちゃんのこと…本気でスキになっちゃった」
 はあ?!
「明日香ちゃん…私と…正式に付き合ってください。お願いします」

 梨華ちゃんの表情は、あくまで真剣。
 私をからかってるわけじゃなさそうだ。
 瞳なんかキラキラ輝いちゃって……可愛い……。
「……せ…正式って? 私たちは女同士だし、付き合うとかそんな問題じゃない
でしょ?!」
「どうして? 私が変な子だから? 私、やっぱりダメな子なの?」
 そういう言い方、何かずるくない?
「いや…別に…そんなこと言ってないじゃん……」
「だったら! お願い!」
 涙をいっぱい流して、すがるような目で私を見てた。

 こんな状況で、私にほかにどんな返事が出来ただろう。
 梨華ちゃんの表情が一変して、今度は嬉し涙をいっぱい流して、私に抱きつい
てきた。
「ありがとう! 明日香ちゃん…私…私、頑張るね……」
 嗚咽まじりに喜びを口にしていた。
 あ〜あ……私…「いいよ」って言っちゃったんだ。
 私…今後どうなっちゃうんだろう……。
 感じやすい体質のテクニシャンな女の子に抱きつかれながら、自分の将来に不
安を感じずにはいられなかった。
27 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時19分53秒
>>20
 見つけるの早っ!(藁
 どうしようか迷ったんですが、(羊)も元通りにはなりそうにないので、
思い切って移転することにしました。
28 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)16時20分49秒
 あの日以来、私と明日香ちゃんは「清く正しい交際」を続けてます。
 メールのやり取りしたり、長電話したり……。
 そしてOFFの明日は、ついにデート♪
 原宿にお買い物に行って、お昼食べて、家に戻って得意のケーキ作りを教えて
あげるんです。
 やってることは普通のお友達とかわらないけど、本当の私を知ってそれでも仲
良くしてくれる明日香ちゃんは、私にとって二人といない特別な人。
 今から張り切っちゃいますよ〜!

 明日の予定をあれこれ考えて楽しんでる私に、よっすぃ〜が近寄ってきた。
「梨華ちゃん、明日のOFF、どっか行かない?」
「ごめ〜ん。もう予定が入っちゃってるの」
「え〜…そっかあ…じゃ、あさっては?」
 あさってもOFFだけど、明日香ちゃんは予備校。一人でさびしいなって思っ
てたから…。
「あさって?…いいよ」
って言ったんだけど…そのとき、よっすぃ〜の笑顔がなんか妖しかったような…。
「ホント? じゃあ、梨華ちゃんちに迎えに行くよ」
「…うん。待ってるね」
 このごろ、よっすぃ〜はますます男の子チックでかっこいい。
 中澤さんの釘と明日香ちゃんがいなかったら、私、絶対に襲ってるね。
 はっ! いけない、いけない。
 明日香ちゃんと約束したんだから。こんな想像してちゃダメよ、梨華!
 明日香ちゃん一筋!
 I love 明日香ちゃん!!
29 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)16時21分59秒
 私が自分の中で戦ってる間に、よっすぃ〜はごっちんにつかまってた。
「よっすぃ〜、明日デートしようよ〜」
「明日? いいよ。どこ行こっか?」
「う〜んとねえ……」
 腕なんか組んじゃって、仲良く出て行っちゃった。
 いいなあ。私も明日香ちゃんと腕組んで歩きたいよ〜。
 でも明日香ちゃん、恥ずかしがり屋さんだから嫌がるかなあ?
 腕ぐらいならいいかなあ?

「石川。後藤と吉澤知らない?」
 私が重大問題に思いをめぐらしてると、保田さんが入ってきた。
「ごっちんとよっすぃ〜なら、今、仲良く出て行っちゃいましたよ」
「そう……」
 保田さんは、考えるときの癖でアゴに手をやってちょっと上を向いていた。
「どうかしたんですか〜?」
「ん〜?……石川」
「はい?」
「…吉澤には気を付けな」
 保田さんは、いっつも真面目だけど、いつも以上に真剣な顔をしてた。
「え?…よっすぃ〜がどうかしたんですか?」

 保田さんは、ちょっと入り口の方を振り返って、それから私の目を見て言った。
「…吉澤と後藤は付き合ってるんだよ」
「あ、やっぱり……」
 あの二人は本当に仲がいいし、そうかなあとは思ってたんですよ。
「それは別にいいんだ。あくまで二人の問題だしね」
 保田さんは頷きながら「いいんだ」って繰り返してます。
「ただね…後藤と付き合ってるのに、なっちとか石川とか…矢口を見るときの吉
澤の目が…妙に色っぽいんだよね……」
30 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)16時23分10秒
「そんな……」
 一瞬、さっきのよっすぃ〜の妖しい目を思い出しちゃいました。
「それで…ちょっと調べてみたんだけど……吉澤って女子校じゃない?」
「はい」
「女子校の吉澤の友達とかに探りを入れてみたんだけどさ……」
 さぐりって…保田さんは探偵さんだったんですか?!
「吉澤って…かなりの…『プレイガール』だったんだって」
 『プレイガール』?!
 何ですか〜?
「相手は女に子ばっかり。次々告白されちゃって大変だったって…それでさあ…
二股とか三股とかは普通で、告白する方もそれを承知だったって……」

 保田さんは「信じられない!」って感じで怒ってた。
 こう見えて保田さんは、お母さまに厳しくしつけられたらしいから、そういう
ことは許せないのかも。
「今は後藤と、結構マジに付き合ってるみたいだからいいんだけど……後藤を傷
つけるようなことだけは絶対に許せないから…石川も気づいたことがあったら教
えてね?」
「……はい」
 私はまだ信じられないところもあったけど、取りあえず頷いた。
「石川も誘われちゃったりするかもよ。気を付けなよ?」
 そう言ってから私の肩をポンと叩いて、保田さんも部屋を出ていっちゃって…。

 ……よっすぃ〜が『プレイガール』?…ホントかなあ?
 あさって一緒に遊ぶ約束をしたけど、それは友達としてだよね?…保田さんの
話を聞いちゃったら、何だか不安になってきちゃったです。
 そんなことを考えながら、ふと時計を見ると、予定の時間を回っちゃってました。
「いけな〜い。明日の準備をしなくっちゃ♪」
 慌てて帰る私の頭はもう明日香ちゃんとのデートのことでいっぱいで、よっすぃ〜
のことはすっかり忘れちゃってました。
31 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)16時25分17秒
 当日待ちきれなくて、約束の時間の十五分前から駅前で待ってたら、明日香
ちゃんも十分前ぐらいに来てくれて…明日香ちゃんも待ちきれなかったのかなぁ?
って嬉しくなったのに……。
「へえ。梨華ちゃんも、ちゃんと待ち合わせ十分前集合が身についてるんだ」
って感心されちゃった。
 明日香ちゃんは娘。時代の習慣で、いいことだからプライベートでも続けてる
んだって。
 やっぱり明日香ちゃんはすごいなって思ったけど……ちょっとさびしい……私
はこんなにワクワクしてるのに、明日香ちゃんはいつも通り涼しい顔なんだもん……。

 何だか悔しいから、「行こっか?」って言いながら、さっと明日香ちゃんの腕
をとって、腕を組んで歩き出しちゃった。
 明日香ちゃんはびっくりしてたけど嫌がらなかった。
 勇気を出して腕組んでよかった♪
 それからお洋服屋とかアクセサリーを一緒に見て回って、二人でピアスを買っ
たんです。
 そのとき私はおねだりしちゃって……。

「ね、お願い! 私、夢だったの」
 両手を合わせて頼み込んじゃいます。
「え〜…でも……」
「ピアス、片方ずつ交換しようよ〜。二人の記念に…ねえ、お願いだから」
 明日香ちゃんを困らせるのは胸が痛むけど、どうしても二人の記念のものが欲
しかったから、ねばりにねばっちゃったんです。
「…でも…私、ピンクのハートは勘弁してほしい……」
 私が手に持っていたのはピンク色のハート型。
 明日香ちゃんは空色の星型。
 私が好きな可愛らしい系は、明日香ちゃんは苦手。
「…だ、だったら…私、こっちの星型の黄色のでもいいから〜…お願い、明日香
ちゃん!」
32 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)16時25分52秒
 ピンクのハート型にも未練はあるけど、とにかく明日香ちゃんとの記念をつくる
ことが先決だから……。
 明日香ちゃんは、軽くため息をついて、
「…わかった。交換しようね」
「ホント?! やった〜!!」
 思わず大きな声を出しちゃった。
 うれしい! 私と明日香ちゃんの記念のピアス。
 買って、すぐに付けっこして……黄色と空色で色違いの星型ピアス。
 二人でおそろ。
 何だかちょっと……涙が出そうになって、明日香ちゃんを驚かせちゃった……。

 無理なおねだりしちゃったから、お詫びにアイスクリームをおごっちゃう。
 ストロベリーとチョコミントを買って、待ってる明日香ちゃんのところへ急ぐ。
「お待たせ〜♪ 明日香ちゃん、どっちがいい?」
 明日香ちゃんは不思議そうな顔をして、フッて柔らかく笑った。
「バニラ」
「え〜っ!!」
 バ…バニラがよかったの? どうしよう……。
「…私、買ってくるね」
「うそうそ。チョコミントちょうだい」
 いたずらっ子みたいな瞳で私を見てる。
 ひど〜い……でも…その瞳が可愛いから…許しちゃう。
33 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)16時26分43秒
 お昼はもちろんパスタよね。
 前からお気に入りだったお店に明日香ちゃんをエスコート。
 向かい合ってペペロンチーノなんかつつきあって……二人の耳には、片方が
空色、もう片方が黄色のおそろの星型ピアスが……。
 完璧っ! きのうの夜、シミュレーションした通りの二人きりの時間。
 明日香ちゃんは、そんなに口数の多い方じゃないけど、私の話をニコニコし
ながら聞いてて、時々アドバイスとかツッコミとか、豆知識とかを話してくれる。
 本当に明日香ちゃんって物知りなのにビックリする。
 一般常識なのかも知れないけど、私の知らないこと、学校じゃ習わないよう
なことをたくさん知ってる。
 だから尊敬しちゃうし……もっと大スキになっちゃった♪

 それから材料を買いこんで、お家でケーキ作り。
 ここは私の見せ場よね。
「難しいねえ」
って言ってる明日香助手を従えて、チョコレートケーキ作りに精を出しちゃいます。
 ここでも明日香ちゃんは聞き上手で、
「へえ、そっかあ。流石に上手だね…で、ここはどうするの?」
とか言われて舞い上がっちゃって、ほとんど私一人でつくってたような気が……。
 ま、明日香ちゃんに食べてもらえて、
「美味しいね」
って言ってもらえたから、いいかな。
34 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)16時27分48秒
「あ、もうこんな時間。私、帰らないと」
 明日香ちゃんの無情なお言葉。
「え〜…もう帰っちゃうの?」
「ごめんね……」
 表情には出てないけど…でも、明日香ちゃんもさびしそう……。
 でも…明日香ちゃんの会えるのはOFFのときしかないのに。
 少しでも一緒にいたいから、駅まで送っていく。
 でも、駅が近すぎて…あっという間に着いちゃった……。
「…ねえ…明日、予備校に行くんでしょ?」
「うん」
「……終わったら…会えないかなあ?…ほら、晩ご飯とかつくるし……」
 無理なことを言ってるのは分かってる。
 でも…少しでも明日香ちゃんに会いたいよ!

「…いいよ」
って明日香ちゃん。
「ホントに?!」
「うん。予備校から直接ここに来るよ。その方が近いし」
 やったあ!
「腕によりをかけて美味しいご飯つくって待ってるから!」
「期待してるよ。じゃ、きょうはこれで」
 明日香ちゃんはニコッて笑って、改札口を通っていっちゃった。
 一人で歩く帰り道は…とってもさびしかった。
35 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)16時28分53秒
 次の日。
 約束通り、よっすぃ〜が来た。
 保田さんの忠告なんて、完全に忘れちゃってた。
 でも…あんなことになるなんて……。
 きのうとは違う意味で、私にとって忘れられない日になった。

「紅茶でいいかな?」
「うん。ありがとう」
 よっすぃ〜がこの家に来るのは二回目だけど、前は矢口さんも一緒だったから、
二人きりは初めて。
 部屋の中を見渡したりして、よっすぃ〜は物珍しそうにしてる。
「ねえ…梨華ちゃん」
「なに?」
「…福田さんと…付き合ってるの?」

 薄い笑いを浮かべながら、よっすぃ〜は私の方を見てる。
「な…ど、どうして?」
 何か声がひっくり返っちゃってる。
「きのう、ごっちんと原宿に行ったら、梨華ちゃんが福田さんと歩いてるの見ちゃっ
たんだあ」
 見られてた……別に…別にやましいことは何もないけど…認めちゃってもいいの
かなあ?
「…お友達になったんだよ」
「へえ…そうなんだ……」
36 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)16時30分01秒
 よっすぃ〜は目を細めて私を見てた。
 まるで獲物を狙う狼の目のように鋭かった。
 ス〜ッて私の横に近づいてきたけど、なぜか動けなかった。
「な〜んだ。私はてっきり…もうこんなことしてるのかと思ったのに」
 言い終わるより早く、私の唇は奪われていた。
「いやっ!…やめ……あぁんっ!…いゃ〜……」
 顔をそむけて立ちあがろうとしたら、よっすぃ〜の手が私のうなじをなで上げた。
 逃げたいのに…膝に力が…入らないよ……。
「…よっしぃ〜……や…やめて……」
 そんな私の言葉なんか耳に入らないように、面白そうに眺めてるよっすぃ〜が
いた。
「へえ、やっぱり首筋が弱いんだね。そうじゃないかって思ってたんだあ」

 首筋を這うよっすぃ〜の指が動くたびに、私の体はビクッ、ビクッと震える。
 それを眺めながら、よっすぃ〜は笑ってた。
「な〜んか…面白いよね。梨華ちゃんの体って……」
 文字通り、私はよっすぃ〜に弄ばれてた。
 悔しい…悔しいけど…今の私には何も出来なかった。
「…たす…けて…よっ…すぃ…助け…て……」
 ただひたすら、よっすぃ〜の興味が私から去るのを願うだけで……。
37 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)16時30分58秒
「梨華ちゃん…もっと気持ちよくしてあげる」
 それは最悪の状況を示す言葉。
「いゃっ!…よっすぃ…やめてっ!……」
 懇願する私を無視して、抱き上げてベッドへと運ぶ。
 横たえるのももどかしそうに、すぐに耳元を中心にキスの嵐。
 逃げることも出来ず、ただあえぐだけの自分がイヤ。
 よっすぃ〜は手馴れたもので、いつの間にかショーツの中の濡れたあそこにも
手が伸びていた。
 腰から下が燃えるように熱い。
 よっすぃ〜の指が触れるたびに、熱が広がっていく。
「あっ…あぅっ…はあっ!…も…もう……」

 目の前がチカチカする。
 ダメ…感じちゃ…イヤだよっ!…こんな…こんなことで…なんで感じちゃうの!
 もう頭に霞がかかって、よく分からなくなっちゃってた。
 明日香ちゃん…明日香ちゃん…ごめんね…ごめん!
「梨華ちゃん…もう…いっちゃいなよ。ほらっ!」
 私の中に入ってた指が二本になって、すごい勢いでこすりあげてた。
「…!…くぁっ!…あ…ぁう…ぃやぁ〜っ!……」
 あっけなく、私はよっすぃ〜に屈してしまった。
38 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)16時32分09秒
 意識が戻ったときには、私は一糸まとわぬ姿だった。
「…はぁう…いゃ…あ…きゃぅっ……」
 何度も私は、いっちゃって…何度も空が落ちてきて、そして遠ざかっていった。
 ベッドの片隅には、私の服と下着が投げられてるのが見えた。
 そこには…あの明日香ちゃんとおそろのピアスも……。
 相変わらず、よっすぃ〜の耳へのキスに体の自由を奪われながら、私は必死で
腕を伸ばしてた。
 明日香ちゃんと…おそろの…ピアス。
 指にかかりそうになったときに、よっすぃ〜の指が私の充血して立ち上がった
乳首を捻りあげる。
 声も出せずに反りあがる背中……。
 それでも、焦点の定まらない視界を頼りに、ピアスを求めた。

「梨華ちゃんすごいね。さっきからいきっぱなしじゃん。気持ちいいでしょ?」
 よっすぃ〜は、簡単にいっちゃう私を、明らかに面白がっていた。
 ただひたすらに私をいかせ続けてた。
 このまま私はおかしくなっちゃうかも……本気でそう思った。
 そんな私を助けてくれたのは、明日香ちゃんだった。
 明日香ちゃんとおそろのピアス。
 やっとの思いでつかんで…握りしめた。強く握りしめた。
 手のひらから全身に痛みが走って……次の瞬間、私はよっすぃ〜を弾き飛ばして
た。

「痛ってえ……なんだよ、もう……」
 口調はとぼけた感じ。でも、私を見る目はすごく怖かった。
「もういいよ…私、帰る」
 さっさと自分だけ服を着て、よっすぃ〜は帰っていった。
 バンッていうドアの音を残して……。
 私は身動き一つ出来なかった。
 足腰にまったく力が入らなかったし、何より精神的なショックが大きすぎたから。
「…明日香ちゃん……」
 その名を口にして、私は泣き続けてた。
 私…明日香ちゃんの恋人にふさわしくないね。
 明日香ちゃん…やっぱり…私の体…ケガレちゃってるみたいだよ。
39 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時35分03秒
 予備校からの帰り、私は梨華ちゃんの家へと急いでた。
「梨華ちゃん、張り切ってるんだろうなあ」
 その姿を思い浮かべて、ちょっとほほ笑ましくなっていた。
 つきあい始めた当初は、どうなることかと思ってたけど、素の梨華ちゃんは、
とてもいい感じ。

 ちょっと単純、良く言えば素直で、ネガティブなところもあるけど頑張り屋
さんだった。
 その頑張り屋さんなところが悪く作用すると、私を襲ったようなことになる
わけだけど……。
 性に対する考え方の違いを除けば、梨華ちゃんとは上手くやっていけそうに
思う。
 昨日のデートで、梨華ちゃんの可愛いところ、いっぱい見つけちゃったし、
私自身も満更じゃない気がする。
 その…梨華ちゃんを…好きになってきてる。
40 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時35分50秒
 ピ〜ンポ〜ン……
 そんなこんなを考えてるうちに到着。
 でも、さっきからチャイムを鳴らしてるのに、梨華ちゃんは出てこない。
 ピ〜ンポ〜ン……。
「おっかしいなあ……買い物かなあ?」
 不審に思いながらノブを回すと、何の抵抗もなくドアが開いた。
「梨華ちゃん?」
 玄関から呼びかけても返事はない。
「鍵をかけ忘れるなんて不用心だなあ」
 帰ってきたら注意しなきゃ、とか考えながら、上がって待つことにする。
「お邪魔しま〜す」

 部屋の中に入ると、妙なにおいがした。
 生ぬるい感じの空気が、何となく酸っぱかった。
「何だろ?これ」
 どこかで覚えのあるにおい……。
 そのにおいの向こう側、ベッドの上に……梨華ちゃんはいた。
 真っ裸で涙を流しながら、焦点の合わない目で天井を見上げてた。
41 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時37分32秒
「り…梨華ちゃん?!」
 私の声にうつろな視線を向ける梨華ちゃん。
 梨華ちゃんの変わり果てた姿に、一瞬立ちすくんじゃって…ハッと気がついて、
梨華ちゃんの方へと近づい……。
「いやあ〜〜!!こないでえ〜!!」
 梨華ちゃんが絶叫してた。
 私を見て、叫んでた。
「だめえ〜!!!こないでえ〜〜!!」
 自分の体を手で隠すようにしながら後ずさって、ベッド際で震えてた。

「梨華…ちゃん……」
 呼びかけても、梨華ちゃんは身をすくめて嗚咽を漏らして、かすれる声で何かを
繰り返すばかり。
「どうしたの…梨華ちゃん…しっかりして!」
 ゆっくり近づいて触れようとしたとき、梨華ちゃんが繰り返している言葉が聞こ
えてきた。
「…ごめんなさい…明日香ちゃん…ごめんなさい…」
って……。
 何で? 何で謝ってるの?
「梨華ちゃん…しっかりして。私、何にも怒ってないよ。ね?」
 それでも梨華ちゃんは、涙を流して首を小さく振るだけだった。
42 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時41分19秒
 梨華ちゃんに一体、何が起こったの?
 乱れたベッド。そこからから落ちそうな服と下着。
 ベッドの中央はグショグショに濡れている。酸っぱいにおいの源。
 リビングを見渡すと、逆光に浮かび上がってテーブルの上に飲みかけのコップ
が二つ。
 私が来るまでに、梨華ちゃんのほかに誰かがいた。
 その誰かが…梨華ちゃんに……私の梨華ちゃんに乱暴した。
 状況が疑いようのない事実を、私に告げていた。

 カッと頭に血が上る。
 でも…それよりも今は、梨華ちゃんの心を助けないと。
「梨華ちゃん…」
 脅かさないようにゆっくりと肩に手を置く。
「…ごめんなさい…私…私…ケガレてる……」
 絶望を体全体で表し続けてる梨華ちゃん。
「そんなことない!…そんなことないよ、梨華ちゃん」
 肩に置いた手にグッと力を入れて引き寄せる。
 自分の気持ち、今ハッキリ分かったよ。
 私は梨華ちゃんのこと好きだよ。好きになっちゃったんだ。
「梨華ちゃんは梨華ちゃんのままだよ…私の好きな…大好きな梨華ちゃんのまま
だよ……」
 額と額をつけるようにして、梨華ちゃんの瞳を真正面から見つめる。
 一瞬、梨華ちゃんは目を背けようとしたけど、真っ赤な目で私を見つめ返して
くれた。
 今出来る最高の笑顔で、私は梨華ちゃんを見つめ続けた。

 梨華ちゃんを好きな私の心は変わらないよ!
 言葉じゃとても届きそうにないから、必死で梨華ちゃんを見つめてた。
 キッチンから、蛇口から水の落ちるポトンッ、ポトンッて音が、一定の間隔で
聞こえてくる。
 梨華ちゃんの瞳が、次々に色を変えて……。
43 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時42分16秒
 何十回、水の音が聞こえたんだろう。
「…私……」
「ん?」
 聞き逃しそうなほどに細い声。
「私…明日香ちゃんのそばに…いてもいいの?」
「当たり前じゃん……それとも…梨華ちゃん、私のこと嫌いになった?」
 ブンブンと首を振ってる。

「じゃ、何の問題もないじゃん…私も…梨華ちゃんのこと…大好きだよ」
 私を見つめる梨華ちゃんの瞳が、また涙で曇って…何かを必死に飲み込むよう
に喉が動いて……。
 そして梨華ちゃんは……私にすがりついて泣いた。泣き続けてた。
 私は…ほかに何もできないから、ギュッて強く抱いて…額にキスをしてあげた。

 梨華ちゃんを守ってあげたい。
 私の腕のなかで泣きながら震えてる、こんなに愛しい梨華ちゃんを傷つけるヤツ
は許せない!
 沸々と湧き上がってくる怒りが、胸を焦がしていた。
44 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時43分13秒
「梨華ちゃん、体洗おう。立てる?」
 梨華ちゃんは、ふるふると首を振る。
 事実、足腰の自由が利かない状態みたい。
 こんなになるまで……こんなになるまで、私の梨華ちゃんに何をしたっ!
 改めて行き場のない怒りが湧く。
「……お風呂場まで連れていってあげる。体も洗ってあげるよ」
 ポッと恥ずかしそうに顔を赤らめて、小さく肯く。
 可愛いなあ…。

 よいしょっと抱き上げてお風呂場まで慎重に運ぶ。
 お湯の抜けた浴槽に、ゆっくりと入れてあげると、何とか縁につかまって、自分
の体を支えることができた。
 シャワーの温度を調節して、上半身から下半身へと、ざっとお湯をかけてあげる。
「……梨華ちゃん、気持ちいい?」
「うん。ありがとう」
 ボディソープを泡立てて、スポンジで丁寧に梨華ちゃんの体を洗う。
 梨華ちゃんは、かなりくすぐったかったみたい。身もだえしちゃってるけど、押
さえつけるようにしてしっかり洗った。
 恥ずかしいとか言ってられない。
 柔らかい胸も、充血してるみたいなあそこも、全部、洗ってあげた。
 嫌な記憶も一緒に流れちゃえって思いながら……。

 もう一回お湯をかけてあげて、バスタオルで軽くふいてから、抱き上げた。
「明日香ちゃん、服が濡れちゃうよ〜」
「いいから。しっかりつかまって」
 何とか片手で梨華ちゃんを抱いて、あいた方の手で今度はしっかりと体をふいて
あげる。
45 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時44分07秒
 こうして間近で見ると、首筋やあちこちに乱暴に付けられたキスマークが見え
て、そこをふく手に力が入ってしまう。
「…明日香ちゃん……ダ…ダメ」
 ハッと気がつくと、梨華ちゃんが体を震わせてる。
「ご…ごめん」
「いい…大丈夫」
 力加減をしながら、全身をふいて、ソファーにそっと寝かせた。
「梨華ちゃん、着替えどこ?」
 場所を聞いて、適当に見つくろって着せる。
 取りあえずパジャマで済ませた。

 それからベッドルームに行って、シーツを外す。丸めて敷布団まで染みたもの
をふいて、洗濯機に放り込む。
 それでもまだ、酸っぱいにおいが残っている。
 きっと梨華ちゃんは、このにおいで嫌な記憶を蘇らしてしまうに違いない。
 忌々しいにおい。
 …ここで寝させるわけにはいかないな…。
 そう思いながらリビングへと戻った。
46 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時47分02秒
「どう、梨華ちゃん? 落ち着いた?」
「体、洗ってスッキリした。明日香ちゃん、ありがとう」
 ソファーの下にペタンと座ると、ちょうど梨華ちゃん の顔がのぞき込める高さ。
 何があったのか聞きたかったけど、思い出させない方がいいと思い返して、取り
あえず笑った。
「何〜? 何か可笑しい?」
「別に〜。ただ……」
「ただ? 何よ〜」
「たださ…お風呂に入れてあげるとき、梨華ちゃんが赤 ちゃんみたいで可愛かった」
「もう!」
 両手で自分の顔を覆って恥ずかしがってる。手の隙間 から見える肌は真っ赤だっ
た。

「ねえ、梨華ちゃん…」
「今度は何?」
「今夜さあ……うちに泊まりに来ない?」
 両手を顔から離して、ビックリした顔で私を見る。
「…今夜は…一緒にいたいんだ」
 この部屋で梨華ちゃんを一人になんて、とても出来なかった。
「ね? きょうはうちに泊まりなよ」
「…うん……ありがとう…明日香ちゃん…迷惑かけて…ごめんね……」
 また、梨華ちゃんが泣いちゃいそうだったから、私は
「梨華ちゃん、これからは『ごめんなさい』は禁句ね」
って言った。
 何か反論したそうだったけど、梨華ちゃんは何も言わなかった。
 って言うか、何も言えなかった。
 何故かって言うと……私がキスで唇をふさいじゃったから。
 私からした初めてのキスだった。
47 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時48分29秒
 私は「タクシー呼ぼう」って言ったんだけど、梨華ちゃんは
「もう大丈夫」って言い張るから、ゆっくり駅まで歩いて電車でうちまで行った。
 昨日のデートの時に二人で買った星形のピアス。私は、右側が空色で左が黄色。
 梨華ちゃんは、その逆。
 おそろのピアスをして、腕を組んで歩いていった。

 うちでお泊まりすることになって、梨華ちゃんは急に張り切りだした。
 少し大きめのトートバッグに、着替えとかお泊まりセットを詰めるときから、
「あれがいい」
「やっぱりこっちがいい」
とか大騒ぎ。
 うちに行くだけなのに、しっかりメークをやり直したり。
 ピンクのフレアスカートなんて引っぱり出してきて、
「ね? 似合う?」とか言って……。
 私はそこまで頑張らなくてもいいよって思ってたけど、梨華ちゃんの笑顔が見れ
て、ちょっと嬉しかった。
48 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時49分54秒
 電車に揺られて一路わが家へ。
 うちが近くなって、梨華ちゃんは急にそわそわしだした。
「突然お邪魔して、やっぱり迷惑だよね」
「大丈夫だって。今までも、なっちとか圭ちゃんとか、急に泊まっていったこと
もあるし…」
って言ったら、梨華ちゃんの目の色が変わった。
「え? 安倍さん、明日香ちゃんちに泊まったことあるの? 保田さんも?」
 ……梨華ちゃん…目が怖いよ。

 いろいろ聞きだそうとする梨華ちゃんをかわしながら、騒がしくわが家に到着。
 梨華ちゃん、結構、やきもち焼きなのかな?
 ともかく、私の部屋に梨華ちゃんを通してから、台所に向かう。
 特に連絡はしなかったけど、うちは弟がいるから探せば何かしら食べるものは
ある。
 きょうの晩ご飯はハヤシライスだったらしく、コンロの上の鍋には、まだたく
さん残ってた。
 それを温めなおしている間に、コップとウーロン茶をペットボトルごと、部屋
に持って上がる。
「ハヤシライス、残り物だけどいいかな?」
「うん……ごめんね。ご馳走するって言ってたのに……」
「今度あらためてね…それに『ごめんね』は禁句って言ったでしょ?」
 いけない!って感じで口に手を当ててる梨華ちゃんも可愛い。
 ……何だか私、急激に梨華ちゃんに、はまってきちゃってる?
49 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時51分13秒
 二人で食べるハヤシライス。
「おいしいね。明日香ちゃんのお母さん、お料理上手なんだね」
「どうなんだろ。でも、私は母さんの手料理、結構好きだけどね」
 娘。に入って、それまでの私と一番変わったのは、こんな感じの他愛もない話
が大事なんだって実感したこと。
 何の意味もないのに、話をしたってしかたないじゃん、そう思ってた。
 でもそうじゃなかった。
 娘。として、特別な場面や時間をたくさん経験した。
 手売キャンペーン、テレビやラジオへの出演、初登場一位、紅白やレコ大……
もちろん、その度にメンバーとの絆は深まった。
 だけど、楽屋や移動中の車、ホテルでの、何でもないおしゃべりの楽しさ。そ
れが感じられるようになって、やっと自分も娘。の一員になれたのかなって……。

 今もこうやって、梨華ちゃんと普通に話せることが嬉しい。
 さっきまでの取り乱した梨華ちゃんの姿が、まだ脳裡に残っているから、余計
にそう思う。
 ハヤシライスを食べ終わって、二人で台所に立って後かたづけするのも楽しい。
 ベッドの上に肘をついて寝そべって、テレビを見ながら、あれやこれや話すの
も楽しかった。
 でも……やっぱりはっきりさせておかなきゃいけないこともあるよね。梨華ちゃ
んにはつらい思いをさせちゃうけど……。

「……梨華ちゃん」
「何〜?」
 楽しそうにしてる梨華ちゃんを見ると、やっぱり言わないでおこうかと迷った
けど…言わなきゃ。
「……きょう…誰が来てたの?」
 スッと梨華ちゃんの笑顔が消えた。
「嫌なこと思い出させちゃうけど…でも、あんな梨華ちゃんをもう見たくないか
ら……そのために私に出来ることがあるかもしれないから……」
 うつむいてる梨華ちゃんが、何だか消えちゃいそうなほど、儚げで……。
50 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時51分54秒
「明日香ちゃん…ありがとう……でも…大丈夫だから……」
 何がどう大丈夫なのか。
 梨華ちゃんは何も言ってくれない。
「誰だか言いたくないなら、それでもいいけど……その人と…もう二度と会って
ほしくないよ!」
「うん……もう絶対、家に上げたりしないから…安心して……」
 梨華ちゃんは、「会わない」とは言わなかった。
 どうしても会わなきゃならない人なの?
 その人と会うたびに、梨華ちゃんは怖くなっちゃうだろうし、それにまた襲わ
れるかもしれないじゃん。
 全然安心なんて出来ないよ!

 でも、それ以上は話を続けられなかった。
 あまりにも梨華ちゃんがつらそうだったから。
「そう…本当に気をつけてよね?」
「うん……大丈夫! 明日香ちゃんがいるのに、浮気なんてしないよっ!」
 それは、梨華ちゃんにとって精いっぱいの冗談だったんだと思う。
「ははは……」
 引きつった笑顔が痛々しくて、涙が出そうだったけど、何とか笑うことが出来た。
 乾いた笑い声は、どこに響いてたんだろう?
51 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)16時53分13秒
 気まずい雰囲気のなかで、二人の間の沈黙が…重かった。
「…疲れたでしょ? 梨華ちゃん、ベッドで寝てよ。私、蒲団敷くから……」
 ベッドから降りようとする私の腕を、梨華ちゃんが引いた。
「…一緒じゃ…ダメ?」
 正直、私のベッドに二人はきつい。
 でも、今夜はそんなことはどうでもよかった。
「いいよ」
 手をつないだまま二人でベッドを降りて、それぞれパジャマに着替えた。

 二人で寝るベッドは窮屈で、肩と肩が当たってた。
 でも…それが、とても温かかった。
 私がベッド脇のライトを消して戻ると、梨華ちゃんの瞳が薄暗がりの中でキラ
キラ光ってた。
「明日香ちゃん……」
 梨華ちゃんの声が耳元で、ポツッと聞こえる。
「ん?」
「…キス…して……」
 私は返事もせずに顔を寄せて…柔らかなキスをした。
52 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)16時55分19秒
 朝、目が覚めたら一番最初に見えたのが、明日香ちゃんの寝顔だった。
 いつもはちょっと斜に構えてるような明日香ちゃんだけど、今はすごく安らか
な感じで、何て言ったらいいかわからないけど……すごく可愛らしかった。
 私を守ってくれるキュートな天使。
 その寝顔がすぐ目の前にある。
 「幸せ」って…こういうことなんだね。
 時間を忘れて、ずっと眺めてた。

 しばらくしたら、キュッて結ばれてた唇が、ほわっと開いて……我慢できなく
なってキスしちゃった。
「……わっ!…何してんの?!」
「おはよう、明日香ちゃん♪」
 流石に起きちゃった。
「おはよう…って、そ…そうじゃなくって……」
「明日香ちゃんの寝顔、とっても可愛かったよ」
 明日香ちゃん、何か言おうと口をパクパクさせながら、顔を真っ赤にさせてた。
 は〜…やっぱり可愛いよ〜。
 私の明日香ちゃ〜ん!!
「きゃっ!…駄目、梨華ちゃん!!…ぃゃん……」
 あれ? いつの間にか抱きついちゃってた。
 明日香ちゃんが逃げるようにベッドから出て、
「梨華ちゃんのH!!」
だって。
 別に襲ったわけじゃないよ〜。
 明日香ちゃ〜ん、許して〜!
53 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)16時56分07秒
 禁句の「ごめんなさい!」を連発して、何とか明日香ちゃんに許してもらう。
 それでも、トーストをかじりながらの会話は、ちょっとギクシャク。
「…梨華ちゃん、きょうはどんな予定?」
 明日香ちゃん、まだ怒ってますか〜?
 口調がつっけんどんですよ?
「十一時にスタジオ…このまま行こうと思ってる……」
 私の返事も、自然とおずおずしたものになって……。
「帰りは?」
「…夜の十一時ごろかな……」
「ふ〜ん……迎えに…行こっか?」

 え? 「迎えに」って?
「きょうも…うちに泊まっていきなよ」
 明日香ちゃんって…意外に心配性なんだね。
「ありがとう…でも…私は大丈夫だから」
「でもさあ……」
 すっごく心配そうに私を見てる。
「明日香ちゃん……心配してくれて、ありがとう」
「うん……」
 そんなに心配しないで……。
「…じゃあねえ…明日香ちゃん…うちにお泊まりに来る?」
「え?……それは…ちょっと……」
 ガ〜ン…うそ〜!…何で〜?
「…い…イヤなら…いいけど……」
 明日香ちゃん…私、泣きそうです〜。
「別に嫌じゃないけど……変なこと…しない?」
 だから、今朝のことは違うの〜!!
54 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)16時57分55秒
 明日香ちゃんの潔癖さと、人間関係では信頼が大切だってことを再確認しまし
た。はい。
 今朝の出来心を反省しながら、それでもちょっとハッピーな私。
 だって…結局は明日香ちゃん、お泊まりに来てくれるって約束してくれたんだ
も〜ん♪
 それに、きょうはタンポポの仕事で、よっすぃ〜とは会わないってことでも、
気が楽になってる。

「おはようございます」
 いつも以上に元気いっぱい、あいさつしながらスタジオに入る。
 よ〜しっ! きょうこそは明日香ちゃんにご馳走をつくるんだからっ!
 自分に気合いを入れながら楽屋のドアを開く。
「おはようございま〜す!!」
 バッチリあいさつを決めたと思ったのに……。
「おっ! 石川、朝から空回ってるなあ」
 ……矢口さん、それはあんまりです〜……。

 私はしっかり張り切って収録にのぞんだつもりだったんだけど……。
「よかったよ、梨華ちゃん。いつも以上にハイテンションで」
ってスタッフさんに言われちゃった。
 ちょっと複雑な気分……。
 でもでも、そのおかげで収録が順調に進んで、予定よりちょっとだけど早く終
わったんだから頑張った甲斐があったってことよね!
「お疲れさまでした〜。しつれいしま〜す」
 テキパキと帰り支度をして、スタジオを飛び出した。
 お家に帰る足が、こんなに軽いなんて……愛の力は偉大よね〜。
55 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)16時59分14秒
 スタジオから駅へ向かいながら、明日香ちゃんに電話する。
「もしもし〜明日香ちゃん? 私…今、スタジオを出たところ…うん!…家で待っ
てるから…うん…うん……じゃ、後でね〜……」
 よ〜し! 急いで帰って、明日香ちゃんをお迎えする準備をしなくっちゃ!
 材料は冷蔵庫の中のもので足りるから……あっ! テーブルがさみしいからお花
を買って帰ろうかな〜……。
 自分でも顔が、にやけちゃってるのがわかる。
 でもいいんです。だって幸せなんだも〜ん♪

 そんなルンルン気分で駅に急いでいたら、後ろからあの子が声をかけてきたんです。
 今、一番会いたくないあの子……。
「梨華ちゃん、待ってよ。何でそんなに急いでるの?」
「よ…よっすぃ〜……」
 いつも通りにさわやかに笑ってた。まるで昨日、何も無かったみたいに……。
 それが逆に怖かった。
 バッグを胸に抱いて、ちょっと距離をとる。
「一緒に帰ろうよ」
「……イヤ!」
「何で〜?」
 本当に不思議そうに首をかしげてる。
 もしかして…昨日のよっすぃ〜は…別人?!
 何が何だか…混乱しちゃって何も言えなかった。

「あぁ…梨華ちゃん、昨日のこと気にしてるの?」
 ……何でそんなに、さらっと話せるの?!
「突き飛ばされたこと、私、怒ってないから」
 そんなこと…全然、問題じゃない!
「今度また、梨華ちゃんちに行きたいなあ。そんとき、昨日の続き…しようね」
 何?…何を言ってるの?
 よっすぃ〜…おかしいよ…変だよ……。
 何で…そんなに普通に笑っていられるの?
「…よっすぃ〜…私…もうあんなこと…イヤ…もう…しないから」
 私の方から、はっきり断らないと大変なことになる…そう思ったから、きっぱり
言った。
56 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)17時00分48秒
「どうして?」
 どうしてって…だって…だって……私は……。
「…私……明日香ちゃんと……つき合ってるから……」
 言っちゃった。
 でも、よっすぃ〜にはちゃんと釘を刺しておかないと……何をされるか、わか
らないから。
「…だから? 別にいいじゃん」
 何? よっすぃ〜…何て言ったの?
「よ…よっすぃ〜だって…ごっちんとつき合ってるんでしょ?」
「そうだよ」
「だったら……」
「そんなの、別に関係ないよ」
 よっすぃ〜は、一点の迷いもなく笑ってた。

 うそ…どういうこと……わからないよ……。
「男の人とだったら、赤ちゃんができちゃうとか問題あるかもしれないけど…そ
んな心配もないしさ」
 だって…好きな人がいるのに……。
「私だって、今一番好きなのはごっちんかな。でも、そんなのにこだわらなくっ
てもいいじゃん」
 わからない…わからないよ…よっすぃ〜、何を言ってるの?
「梨華ちゃん、考えすぎだよ。セックスなんて、したいときに、したい相手と、
すればいいんじゃないの?」
57 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)17時02分01秒
 私は走り出した。
 後ろも振り返らずに、走って逃げてた。
 怖い……怖い…怖い……。
 よっすぃ〜の言ってることが、理解できなかった。ううん…理解したくなかった。
 私だって、明日香ちゃんに会うまでは無茶な交際をしてきた。
 でもそれは、私を愛してくれる人が欲しくて…私なりのバカな愛情表現だった。

 よっすぃ〜は違う。
 買い物に行ったり、映画を見たり……そんな遊びの延長上にあるものとして、
セックスをとらえてる。
 セックスというゲームを楽しもうとしてる。
 そんなことは、私の理解の外にあった。
 スキっていう思いや、愛という存在が伴わないセックスなんて私にとって何の
意味もなかった。
 だから…とにかく逃げ出したかった。
 そんな私を、よっすぃ〜は追いかけて来なかった。
 ただ一言、
「福田さんに、よろしくって伝えといて」
って……。
 その言葉がまた…私には怖かった。
58 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時04分18秒
「いらっしゃ〜い♪」
 梨華ちゃんが、元気いっぱいに出迎えてくれた。
「よかった〜。来てくれないかもって思っちゃった」
「何で? 行くって約束したじゃん」
「そうだけど……」
 笑顔が一瞬、つらそうに見えて…何だか不安になった。
「さ。上がって」
 私の手を引く梨華ちゃんは、やっぱり笑顔で…見間違いかなあ?

 手を引かれるままに部屋へと上がる。
 あれ?
 入った途端、昨日とは違う強いにおいがした。
 これって……お部屋の芳香剤?
「梨華ちゃん…芳香剤、買ってきた?」
「…うん……」
 かなり強烈ににおうけど…それだけ昨日のことを思い出したくないってこと
なんだろうな。
 そう思って、それ以上は何も言わなかった。
59 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時05分42秒
「うっわ〜…梨華ちゃん、すごいじゃん……」
 テーブルに並んだ料理を見て、ちょっと圧倒された。
 鳥の唐揚げにシーフードグラタン、ポタージュスープにポテトサラダをメイン
にしたサラダボール、サンドイッチ。
 デザートにはもちろん、梨華ちゃん得意のケーキ。それから果物もいっぱい。
「……どうしたの、これ?」
「明日香ちゃんのこと考えてたら、作り過ぎちゃった」
 ……梨華ちゃん…そんな言葉、そんな笑顔で言われたら……惚れちゃうってば……。

 どれから手をつけたらいいのか迷いながら、取りあえず唐揚げに手を伸ばす。
 ……そこで、部屋中にすごい殺気が漂ってることに気がついた。
 梨華ちゃん……そんなに真剣な目で見られてると、食べにくいんですけど……。
 ものすごく緊張しながら箸を口に運ぶ。

 勇気の一口。
 パクッ、モグモグ…。
「……梨華ちゃん……」
「…どう?……」
 思わず二人で見つめ合っちゃったり……。
「すごく美味しいよ」
「…ホント?」
「……本当」
 梨華ちゃんは、大きく深くため息をついて……。
「よしっ!」
 両手でガッツポーズ。
 何だかこっちまで力が入っちゃうけど…梨華ちゃんが喜んでるから、いいか。
60 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時06分55秒
 梨華ちゃんの手料理は美味しかった……けど…とにかく量が多かった。
「食べられなかったら残してね」
なんて言葉に素直に従えるはずがない。
 だって…梨華ちゃんがずっと見てるんだもん。
「…ごちそうさまでした」
 何とか目を白黒させながらも全部平らげたけど…これ…絶対に太っちゃうよ。
 トホホ……。

 それにしても…何だか今日の梨華ちゃん、すごく必死な感じがする。
 張り切ってるっていうのと、ちょっと違う感じ。
 何でだろう?
 考えてたら、梨華ちゃんがバスルームから出てきた。
「明日香ちゃん、お湯入ったよ」
「ありがとう」
「……一緒に…入ろっか?」
「え?……」

 絶句した私を見て、梨華ちゃんは笑ってた。
 からかってるのかと思ったけど……目は真剣だった。
「イヤ?」
 梨華ちゃんが近づいてくる。
 私は…それを呆然と見てた。
「私のこと…スキ?」
 梨華ちゃんは…笑ったまま……涙を流してた。
61 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時08分01秒
「梨華…ちゃん……」
 言葉が…続かない。
 泣かないで……どうしたの?……何だか…私も苦しくなっちゃうよ。苦しくて…
言葉が出てこないよ。
「私…私は明日香ちゃんのこと…スキ…大スキだよ」
 ありがとう…嬉しいよ…とっても……。
「明日香ちゃんは……私のこと…スキ?」
 繰り返し聞いてくる。
 もちろん…私も…梨華ちゃんのこと…大好きだよ……。
 そんなこと、梨華ちゃんもわかってるでしょ?
 だから、言葉には出さずに大きく肯いた。

「イヤッ!」
 梨華ちゃんが、苦しそうに首を振ってる。
 本当にどうしたの? 何があったの?
 私の気持ち…伝わってないの?
「ちゃんと言葉で言ってよ!…はっきり態度で示してよ!」
 自分の腕で自分自身を抱きしめて…よく見ると、梨華ちゃんは震えてた。
「じゃないと……じゃないと私…壊れちゃいそうだよ……」
62 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時11分35秒
 梨華ちゃんが…壊れちゃう……???
 頭の中が真っ白になった。
 そんなの…駄目だよ!…そんなことは…絶対、許されない!
 梨華ちゃんが苦しむことなんて…私が絶対に許さない。
「駄目っ!…駄目だよ……」
 もう夢中で梨華ちゃんを抱きしめた。
 梨華ちゃんを壊して体の中から出てこようと暴れてる「何かを押し込めるよう
に、ギュ〜ッと強く抱いた。

 そんな状態で、梨華ちゃんはもう一度、私に聞いた。
「明日香ちゃん……私のこと、スキ?」
って。
「好きだよ! 大好き!!……だから…壊れたり…しないで」
 私は泣いてた。
 梨華ちゃんも泣いてた。
 二人で抱き合って泣き続けた。
63 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時13分13秒
 それからどうなったかって言うと……。
 お風呂に入ってる………何故だか二人で。
 あぁ…どうしたらいいのか分からないよ〜!
 そりゃ、私は銭湯好きでよく行くよ。
 でもさあ…やっぱり違うよね。
 二人きりでさ…しかも好きな子と……は…裸同士でさ……。
 緊張するなって方が無理だよね。

 今だって、梨華ちゃんに言われるままに背中を洗ってもらってるけど……でも
さこれ、次はやっぱり…前…だよね?
「はい、きれいに洗えたよ。明日香ちゃん、今度、前向いて」
 やっぱり〜!
 梨華ちゃん、私、恥ずかしいっす……。
 こ…こういう時って、どういう風に振り返ったらいいの?
 だってさ…前を向くってことはだよ? 胸とか、ばっちり見られちゃうし…そ
れ以上に触られちゃったりするってことで……。
 かと言ってさ、自分で胸を隠したりしたら…何か…やらしい感じがするし……。
64 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時14分26秒
 梨華ちゃんはと言うと、ちょっとだけ恥ずかしがってたけど、すごくオープン
で……その…見えちゃってる……。
 それも私が困ってる理由の一つ。
 これで振り返って、向かい合っちゃったりしたら……目のやり場が……。
「明日香ちゃん? 早く前、向いてよ」
「あ、え〜と…うん……ちょ…ちょっと……」
 ちょっと何なんだ?
 自分でも何を言ってるのかわからない……。
 あぁ…本当に、どうしよ〜?!

 ムニュッ。
 へ? 何? 胸、触られてる……。
 モジモジしたままの私の胸に、背中から梨華ちゃんが手を回して、下からすくう
ように包んでた。
「嫌っ?!?」
 びっくりして胸を隠そうとするけど……胸を触ってる手を、上から余計に押しつ
ける結果に……。
「嫌ぁん…梨華ちゃん…やめて〜……」
 梨華ちゃんは、後ろから覗き込むように笑ってた。
「明日香ちゃん、そんなに緊張しないで」
「……うん」
 そのまま、梨華ちゃんに抱えられるようにして振り返った。
65 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時22分10秒
 やっぱり恥ずかしくて、顔が上げられないよ。
「…きれいなピンク色……」
 梨華ちゃんのつぶやきに、慌てて視線を追うと……じっと私の乳首を見てた。
「梨華ちゃん、嫌っ!…恥ずかしいよ」
 両腕で胸を抱くようにして隠す。
「ごめ〜ん。もう見ないから、洗わせて? ね?」
 梨華ちゃんは笑いながら、私の腕をほどいていく。

 よく泡だったスポンジで、優しく洗ってくれる。
 それはいいんだけど…優しくっていうのが、ちょっと困る。
 自分で洗うのと、違わないはずなのに、妙に艶めかしい感じがする。
 だから…その…違う意味で気持ちよくなってきちゃうから……乳首が…ピョコ
ンッて固くなって……。
 泡で隠れてるから、梨華ちゃんはまだ気がついてないみたいだけど……もう私
は恥ずかしくって、真っ赤になってうつむいてた。
66 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時23分37秒
「明日香ちゃん、流すよ〜」
 いや、それはまずいっす。
「さ…先に、私が梨華ちゃんを洗ってあげる」
って言って、スポンジを取り上げる。
 有無を言わせずに、梨華ちゃんの背中をゴシゴシ。
 梨華ちゃんは素直に、
「明日香ちゃんに洗ってもらえるなんて…うれしいっ!」
って喜んでたけど、前を洗い始めると、だんだん私と同じように、真っ赤な顔で
うつむくようになった。
 もしかして…梨華ちゃんも感じちゃってる?

 いつの間にか、二人で真っ赤になって黙っちゃって。
 無言のまま、二人でお湯を流し合って……やっぱり二人とも乳首がピンッて固
くなって上を向いちゃってた。
 意思とは関係なく感じちゃった体を持て余しながら、二人で湯船に浸かった。
 ……もやもやした雰囲気を変えないと。
 そう思ったら、何故か、さっきの梨華ちゃんの泣く姿が浮かんできた。
67 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時24分54秒
「…梨華ちゃん……」
「なぁに?」
「何があったか…教えてほしい」
 梨華ちゃんは、体ごとゆっくり私の方に向き直った。
「帰り道に…昨日の人に……出会っちゃったの……」
 シャワーから湯船へと落ちてきた水滴が、ピチャンッて音を立てた。
「また…何か…された?」
 梨華ちゃんは首を振って……湯面に波が広がった。

「…ただ……」
「ただ?」
「その人が言ったの。『セックスなんて、したいときに、したい相手と、すれば
いいんじゃないの?』って……」
 何それ?…そんなの言い訳にもならないじゃん!
 目の前にいたら、絶対にぶっ飛ばしてるね。
 私は、そいつへの怒りでいっぱいだった。
 だから、続けての梨華ちゃんの言葉は、私には予想外だった。

「…怖くなったの……自分が……」
 梨華ちゃんは、確かにそう言った。
 自分が? そいつのことが、じゃなくて?
 梨華ちゃんは、また目に涙をいっぱい、ためてた。
 寂しそうだけど、すごく真剣な視線を私に投げかけてた。
 あふれそうな自分の思いを、どういう言葉で伝えようか迷ってた。
「梨華ちゃん……」
 だから私は、梨華ちゃんの手を両手で包んで、その思いのこもった言葉をずっ
と待ってた。
68 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)17時26分55秒
 明日香ちゃんに伝えたかった。
 知ってほしかった。
 グルグルと私の中を渦巻く、この判然としない思いを。
 そうじゃないと、ここから先に進めない。そう思った。
 だけど…どう言葉にすればいいのかなあ?

 ピチャンッ。また水滴が音を立てた。
 お湯の波が広がって……明日香ちゃんの肌に当たって返ってくる。
 明日香ちゃんは、じ〜っと私を見つめて待っていてくれた。
 瞳にお湯で反射した光が映って、キラキラと輝いていた。
 きれい……凛としていて…優しくて…傍にいると安心できた。
 それを見た感じが、そのまま言葉になった。
「私…明日香ちゃんのことがスキ…生まれて初めて…本気で愛した人…だと思う…」
 明日香ちゃんは、ちょっと照れたみたいに笑ってた。
「…でも…さっき…よっ…昨日の人に言われて……怖くなっちゃって……」
69 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)17時28分33秒
「セックスなんて、したいときに、したい相手と、すればいいんじゃないの?」
 笑顔で言われたその言葉が、私の深い部分をえぐってた。
 そんなの、おかしいよ! 変だよ!!
 そう思ったけど、でも……。
 明日香ちゃんを襲ったのは、何だったの?
 心も体も傷つけて……やってることは何も違わないじゃない……。
 本当は、明日香ちゃんを自分の欲望の犠牲にしてるだけじゃないの?

 違うよ!
 確かに最初、明日香ちゃんを傷つけた。
 でも、明日香ちゃんはそんな私を許してくれた。
 そこから、私の明日香ちゃんへ本当の愛は始まったの。
 だから……。

 明日香ちゃんに許された?
 本当に?
 「かわいそうな子」って同情されてるだけかもよ?
 実はバカにされてるかもしれないよ?

 違うよ!
 明日香ちゃんはそんな人じゃない!
 確かに…私のしたことは簡単に許されるようなことじゃないけど……。
 でも、明日香ちゃんはそれでも許してくれたんだよ。
 本当に優しい心を持った人だもん!

 へえ〜…この短い期間で、明日香ちゃんの何がわかったの?
 石川梨華は明日香ちゃんを犯して傷つけた。
 確かなのは、この事実だけ。
 石川梨華っていうのは、最低のひどいヤツ。

 そうだったかもしれない……。
 でも、もうあんなことは絶対にしない。
 だって…明日香ちゃんをスキ。スキなの!
 この思いは…ウソじゃないよ。

 やっぱりワガママな子ね。
 そんな勝手な自分の思いで、また明日香ちゃんを振り回すわけ?
 自分を傷つけた相手から「スキだ」なんて言われて、付きまとわれて、明日香
ちゃんも迷惑なことね。

 そうなのかなあ?……
 私、明日香ちゃんの傍にいない方がいいのかなあ?
 でも…一緒にいたいよ……。
 どうしたらいいんだろ?
 わからない……わからないよ……。
70 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)17時33分42秒
 自分を責める心と、明日香ちゃんへの愛は本物だって信じる心。
 二つがグルグルと渦巻いて……。
 私は、何が何だかわからなくなっちゃって……とても怖かった。不安だった。
 明日香ちゃんに「スキ」って言われたい。
 愛されたい。
 私が明日香ちゃんのことをスキだって、愛してるって、明日香ちゃんに認めて
もらいたい。
 そうしないと、自分が壊れちゃいそうだった。

 思ったままを、そんな風に話して……それを明日香ちゃんは、じっと聞いてく
れていた。
「…ごめんね…明日香ちゃんに…迷惑ばっかりかけちゃって……」
 ううんって明日香ちゃんは首を横に振って……、
「梨華ちゃん…考えすぎだよ」
ってニッコリ笑ってた。
 でも、その目には…私が大好きな瞳には、涙が盛り上がってた。
「…梨華ちゃん…お風呂あがろっか…それから…伝えたいことがあるから…」
 明日香ちゃんは、私の手を引いて立ちあがった。
 ザバッとお湯があふれて……私たちが出た後には、ただお湯だけがキラキラと
揺れていた。
71 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時35分06秒
 私は馬鹿だ。
 自分で思ってた以上に。
 梨華ちゃんの話を聞いて、初めて気づかされた。自分が梨華ちゃんの痛み、苦
しみを全然、分かってなかったことに。
 自分に対して無性に腹が立った。

 メール交換したり、電話で話したり、デートしたり……。
 どんどん梨華ちゃんを好きになっていく私がいて……梨華ちゃんにも、それが
伝わっていると思いこんでた。
 きちんと言葉で、行動で、伝えたことはなかったのに……。
 私の思い上がりが、梨華ちゃんを苦しめてたんだ。
 私は本当に…馬鹿だ……。
 だから…これから私の思いを、梨華ちゃんに伝えなきゃ。
 これ以上、梨華ちゃんを不安にさせないように。

 パジャマを着た梨華ちゃんの手を引いて、ベッドに座らせる。
 …とは言え、こんなこと初めてだから、どう切り出そうか悩んじゃうよ。
「伝えたいことって、な〜に? 明日香ちゃん……」
「うん…えっと……」
 きちんと伝えなきゃ。
 こういう時は……よしっ、正座だ!
72 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時36分13秒
 ベッドの上で正座をして背筋を伸ばして……。
「梨華ちゃん!」
「はい」
 何故か梨華ちゃんも正座になって、私を見つめてる。
 深〜く息をつく私。
「……福田明日香は……」
 膝に置いた梨華ちゃんの両手を握って……緊張で声がひっくり返りそうだよ。
 落ち着くために、もう一回深呼吸。
「…石川梨華のことを……愛しています!」
 言えた……と思って、笑顔で梨華ちゃんを見ると、ポロポロ涙を流してた。

「り…梨華ちゃん?!」
「…りがと……あり…がとう……」
 …そっか……こんなにまで私は、梨華ちゃんを待たせちゃってたんだね。
「今まで、きちんと言えなくてごめん……私…本当に梨華ちゃんのことが好きだ
から……誰がどんな風に言おうと……私が梨華ちゃんを好きだって…信じてほし
い……」
 梨華ちゃんは泣きながら、何度も…何度も何度も肯いてくれた。
73 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時37分10秒
 それから……私はもう一回、大きく深呼吸した。
 まだ伝えなきゃならないことがあったから。
「あのさ…それで……あの〜……」
 ええ〜いっ明日香! ここまできて怖じ気づくな!
 一回咳払いをして……、
「…梨華ちゃんを…抱きたい……」
 ……とうとう言っちゃった。
 これで梨華ちゃんに「イヤッ!」て言われたら……ダメージ大きいよ。
 固唾をのんで待つっていうのは、まさにこういうことだね。

 でも私がこんなに緊張してるのに……。
「???」
 …梨華ちゃん、分かってない……。
 もう一回言わなきゃ…駄目?
「…明日香ちゃん……私を…抱きたい…って言ったの?」
 そう。その通り。大正解。
 梨華ちゃんの言葉に、うんうんと肯く。
「……マジで?」
 マジっす。大マジ。
 再度、大きく肯く。
「明日香ちゃん…そういうの…キライだったんじゃ……」
 ……まあそうなんだけど……。
74 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時38分36秒
「私が梨華ちゃんのことを愛してるって…それを言葉だけじゃなくて、何かで表
したいから……駄目…かなあ?……」
「ダメじゃないよ…ダメじゃないけど……私…ちょっと…怖くて……」
 そっか…梨華ちゃん、あの時のことを思い出してるんだ……私が無我夢中で反
撃した時のこと。
「大丈夫だから……今度は無茶やって、無理矢理いかせちゃったりしないから…
あの時は、窮鼠猫を噛むって感じで……今度は…梨華ちゃんを…愛してあげたい
……」
 正直、自分にそんなことが上手くできるのか自信はなかった。
 だって、梨華ちゃん以外にそんな経験ないし……。
 自信はないけど…それでも、頑張る気は充分にある。

「……わかった…いいよ。私…明日香ちゃんに抱いてほしい」
 乾いた涙の跡が、頬に流れてた。
 目も真っ赤で。それでも梨華ちゃんは笑ってた。
 私まで胸がキュ〜ッとなった。
 だから、手を伸ばして涙の跡を指で追って……。
「ありがとう…私も頑張るから。頑張って、梨華ちゃんを……」
 言いながら唇を近づけて……出来るだけの心を込めて、キスをした。
 長いキスをしながら、二人でベッドの上へコロンッて横倒しに。
 それでもまだキスしてた……今までで一番長いキスだった。
75 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時40分33秒
 最初は唇をくっつけてるだけの幼いキス。
 それでも私にとっては、すごく刺激的だった。
 梨華ちゃんの唇はちょっと薄め。下唇の方がプクッて心持ち厚めで……とても
柔らかかった。
 顔を傾けたら唇と唇がキュッてこすれて、背筋に電気が走ったみたいに感じて
いた。

 二人でコロンッて横倒しになった時に唇が離れそうになって、咄嗟に梨華ちゃ
んの肩を引き寄せて、上唇を自分の上下の唇で挟むようになった。
「んふっ…ぁん…」
 のどの奥でこもった梨華ちゃんの声。
 その声が、私の耳からダイレクトに脊髄の方へと、ゾクッと走り抜けた。
 私は何かに急かされるように、梨華ちゃんの唇を割って舌を差し入れる。
 唇の裏側に沿って動く舌。その滑らかな感覚に、何故か切なくなって…目に霞
がかかるように潤んできた。
 その霞の向こうに見える梨華ちゃんの瞳は、いつも以上に穏やかな光を宿して
いて……月の女神みたいだった。

 もう少し舌を奥へと進めると、梨華ちゃんの舌に触れる。
 始めはチロッて舌と舌がこすれる感じで、次第に絡み合っていく。
 溶け合いたい……唇と唇、舌と舌が触れ合い、絡み合って……。
 私の梨華ちゃん……私だけの梨華ちゃんになって……私に出来る限りの快感を
梨華ちゃんにあげるから。
 それ以外のことは、もう私の中にはなかった。
76 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時42分16秒
 ひたすらキスを続けながら、それ以上を求める私。
 肩を抱いていた手を少しずつ下ろして、パジャマの上から胸を触る。
「んっ…あ…いゃん……」
 ふわっと柔らかい。でも弾力のあるふくらみが、私の指の動きに合わせて次々
に形を変える。
 逆に私の方が包まれているような安心感――。
 手探りで一つまた一つと、パジャマのボタンを外して……途中でそれに気づい
た梨華ちゃんは、「私だけズルイ!」って言いたげな目で見て、私のパジャマに
手を伸ばしてきた。

 梨華ちゃんの胸がパジャマの下から見えた時、私の胸元もひやっとした空気に
さらされた。
 構わず梨華ちゃんのパジャマの上着をはだける。
 その時、私はやっと唇を離して、梨華ちゃんの乳房を直接見た。
 梨華ちゃんの肌はきめが細やかで、それが普段大切に秘された乳房では、より
一層、際立っていた。
 誘われるように、お腹の方から指を進めて次第に頂上へと動かしていく。
「…ん…くふぅ……」
 くすぐったがるように身を反らせながら、梨華ちゃんの声は確かに艶を帯びて
いた。
 もうすぐ頂上の蕾に触れる……梨華ちゃんの呼吸が不規則に早まっている……
そこで私の指は外側へと遠ざかっていく。
 引き返すように外側から頂上へ……今度は上側へ遠ざかり、そこから胸の谷間
へと動いていく。
77 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時43分58秒
 誰に教えられたわけでもない動き。
 でも直感が、いきなり頂の蕾には触れてはならないと告げていた。
「…いゃ…あぁ……明日香…ちゃ…ん……」
 今にも涙がこぼれるほどに潤んだ瞳で、梨華ちゃんは、私にもう一歩を懇願し
ている。
 乳房自体も次第に熱を帯びてきている。
 ごめんね…もうちょっとだけ…我慢してね……。
 指の動きはもう何周目かに入って、肌を触れる程度から、指の動きに合わせて
肌がついて行くほどには力を込めるようにした。
 それでもまだ、最後の一歩は踏み出していない。
 もうそこは、期待感を焦らされ続けて待ちきれずに花開く直前のようにピンッ
と上を向いていた。ルージュを引いたような真っ赤な蕾が。

「……ぁ…あぁ…明日…香…ちゃん……」
 梨華ちゃんの唇が「お願い」って動くのを見ながら…私はその可愛らしい蕾に
キスをした。
「!!…はぁぅ……あ…す…か…ちゃ…あぁっ!」
 唇が触れた瞬間、あまりに強い待ち望んだ刺激に、梨華ちゃんは頭を反らして
悶えてた。でも、その表情は満たされたように微笑んで……。
 私はもう何の歯止めもなく、唇と舌と指先でその蕾にキスし、コロコロと転が
し触れた。
「!…ぅぁん…!…ぃぁ……」
 梨華ちゃんののどからは、もう声にならない音だけが漏れていた。
 そして解放された快感が、梨華ちゃんの全身を貫いて……そのことを感じて、
私は深い満足感に充たされていた。
78 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時45分04秒
 夢中になって、梨華ちゃんの胸のふくらみに顔をうずめていた。
 私は何度も両方の蕾にキスで挨拶し、そのたびに梨華ちゃんをビクッて悶えさ
せてた。
 でも私は、ちゃんと知ってるんだ。
 梨華ちゃんには、また余裕があるって。
 だって…時々、私に向ける視線が穏やかすぎるもん。
 焦らしに焦らした後の衝撃はともかく、今はちょっと感じてるだけでしょ。
 だから、もう次に移らないとね。

「…梨華ちゃん……気持ちいい?」
 顔を上げて梨華ちゃんに尋ねる。
「…ぅん…あ…気持ち…いいよ……」
 ワインゼリーのように濡れて光る乳首の向こうに、梨華ちゃんの笑顔。
 すっと動いて、また唇にキスをする。
 やっぱり柔らかくて…好きだなあ、梨華ちゃんの唇……。
「でも…怖い……」
 本当?…丁寧にしたつもりだったけど…乱暴だった?
 ううんと首を振る梨華ちゃん。
「…今までは…何だかわからないうちに、いっちゃってたから……」
 今回みたいに、だんだん気持ちよくなるのは…初めて?
 恥ずかしそうに、
「変になっちゃう自分を見てるみたいで……怖いの…でも、明日香ちゃんがして
くれるなら…大丈夫」
 うれしい…私にその梨華ちゃんの初めてを…ください。
 コクンッて肯いてた。
79 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時46分00秒
「じゃ…もっと気持ちよくしてあげる…だから……」
 もう一度キスをして……右手を伸ばしてパジャマのズボンに手をかける。
「ズボン…脱がしちゃうよ……」
 言った時には、もうお尻とベッドの間に手を回して、よいしょっとずらしちゃう。
 キスしたままで超アップの梨華ちゃんの瞳が、ビックリして大きく見開かれたけ
ど、またすっと優しい目になった。
 片足ずつ膝を立ててズボンを下ろして膝を伸ばす。
 梨華ちゃんも協力してくれて、あっと言う間にピンクのショーツだけになる。

 ……触っても…いいかな?
 躊躇いがちに、内腿に沿って指をさかのぼらせる。
「…ぅん……」
って唇の間から声を漏らして、モジモジと足をくねらせてる。
 ショーツの上から谷間をなぞるように、すすっと指を行き来させたら……。
「いゃん……」
 梨華ちゃんが頭を反らせちゃったから、キスはそこまで。
 名残惜しいけど……体をずらして腰を覗き込むような位置に座る。
 それで……両手をショーツにかけて、さっと下ろしちゃう。
80 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時47分48秒
 さっきまでキスしてたのに、もう唇がカラカラ。
 私、すごく……興奮してる。
 だって、女の子の裸をこんなに間近で見るのなんて初めてだし……。
 梨華ちゃんはもう両手で顔を隠しちゃってる。可愛いな……。
「梨華ちゃん…力抜いてね……」
 大きく深呼吸して、厳かな気持ちで両足を持って膝立てにして……その間に頭
を入れていく。
 ドックン、ドックン……心臓が言うことを聞かない感じ。
 そんな緊張の中で、初めてみる女の子……。
 うわっ、すごい……綺麗……。

 ふわってした三角形の翳りの下側。
 プクッてした可愛いちっちゃなふくらみから、す〜って谷間があって……花びら
みたいになってる。
 何だかすごくドキドキしちゃうような赤。
 そう。
 ライブで真っ赤なライトを浴びて踊る、汗に濡れたメンバーの肌の色。
 赤く染まって、しっとりと輝くあの赤色だ。
 はっと息を呑むほど綺麗……。
81 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時49分44秒
 吸い寄せられるように顔を近づけて……見れば見るほど、すべてが繊細な花そ
のものだね。
 そう感心しちゃったよ。
 例えばこれ。谷間の一番上にちょこんってあるこのふくらみ。
 まるで、開花直前のアサガオの花芽みたいだよ……。
 ほらっ、こうやって……チュッて。
「!はぁん…ぃゃ……」
 ね?
 こうやって花芽をくつろげてやれば、花びらの先端がふわって開いて…中から
花芯が顔を出してくるんだよ? 可愛くない?

「明日香ちゃん……恥ずかしいよぉ……」
 ハッて気がついた。
 あんまりにも一生懸命に見惚れちゃってた。
 潤んだ目でうらめしそうに見てる梨華ちゃんに、ニッコリ笑い返す。
 ごめんね、梨華ちゃん。これから頑張るから。

 気持ちを新たにして……。
 もう一回アサガオの花芽にキス。
「ふぅぁ……ぁん……」
 谷間の花びらに指を伸ばして、ゆっくりと左右に広げると……トロッて蜜がこ
ぼれる。
 よかったぁ。梨華ちゃん、ちゃんと感じてくれてる。
 勇気倍増!
 躊躇ってた秘密の花園深くに、一歩を標しちゃうよ。
82 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時51分18秒
 梨華ちゃんの太腿をしっかり抱きかかえるようにして、花びらに唇を寄せる。
「ぁぅ…明日…香ちゃん……」
 待っててね、梨華ちゃん。もっと気持ちよくしてあげるから。
 つつ〜って外側の花びらに唇を這わせて……舌をその奥へと伸ばしていく。
 蜜でしっとりとした花びらの肌を、ゆるやかに伝っていくと……ジュンッて次々
に蜜があふれてきた。
 すごい……まるで清水が滾々と湧く泉だね。
 その底には、どんな女神がましますのか……。

 神聖な泉を汚してしまうんじゃないかと不安になりながら、それでも誘惑に勝て
ずに中指をそっと沈めてしまう。
 足にギュ〜ッて力がこもって……でも梨華ちゃんは、それ以上の抵抗はしなかっ
た。
 梨華ちゃんの体温を感じながら、中指は第一関節から第二関節へと沈んでいった。
 ゆっくりと指を曲げても、吸い付いたように隙間なく包まれている。
 動きを阻害するものは一切なく、そのくせ抜こうとするとキュッと引き止める。
 温かい…何故ともなく涙で目が潤んで……不意に「護られてる」って感じた。
83 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時52分28秒
 感動しながら上を見ると、梨華ちゃんが自分の指を口にくわえて声を抑えよう
としていた。
「梨華ちゃん!…私、痛くした?」
 ふるふると首を振る。
「………いぃ…の……」
 乱れた吐息と一緒にこぼれる言葉が、私に火を点けた。
 上体をグッとずり上げて、唇を胸の蕾に遊ばせる。
 中指はゆっくりと泉の底をかき回す。

 口にくわえた指なんて、すぐに役に立たなくなる。
「……ふっ…あ…はぁん…いゃ……」
 抑えようもなく声がこぼれる。
 もう、体全体に快感が走り抜けてるに違いない。
 だって…梨華ちゃんが体全体でそれを表現しているから。
 絶え絶えの吐息。
 両手は私の頭に添えられてる。胸に押し付けるように。
 反りかえった背筋。
 ピンと伸ばされた足。
84 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)17時53分19秒
「……はぁ…あっ…ぃぁん……ダメッ…ダメ〜ッ!!」
 急に梨華ちゃんが叫ぶ。
 グンッて腰が浮いて、中指がギュッて今までない力で締め付けられる。
「ぅわぁっ!……あ…明日香…ちゃん……」
 最後に私の名前を呼んで、グッタリと体を横たえて荒い息をついていた。
 私も頑張りすぎちゃったのか息が荒い。
 梨華ちゃんに寄り添うように寝て、顔を覗き込む。
「気持ちよかった?」
「ハァ…ハァ…うん……お礼…したい」
「お礼?」
 キスが降ってきた。

 梨華ちゃんの唇、気持ちいいから好き。
 ……な〜んて思ってたら、一瞬のうちにさっきと攻守交替。
「…ふぁっ……あ…駄目…あ……」
 梨華ちゃんに胸の蕾をついばまれて、中指でゆっくりとかき回されて……。
 私…私、こんなに感じちゃってたんだ。
 梨華ちゃん、すごい、すごい気持ちいいよ。
 もう、自分がどんな状況かも分からなくなって……最後に叫んで果てた。
 最後の言葉、梨華ちゃんの名前を呼んだよね?
 それだけは自信があるんだ、私。
85 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)17時54分38秒
 今また二人で、じゃれ合うみたいにシャワーを浴びてる。
 自分までいっちゃって、明日香ちゃんは恥ずかしそうにしてる。気にすること
ないのにね。
 その姿を見ながら、思い出してクスッて笑っちゃうよ。
 だってえ……さっきの明日香ちゃんが、とっても可愛くて…愛おしかったから。

 私を一生懸命に愛してくれた明日香ちゃん。
 さっきみたいに、登りつめる自分を感じながらいったのは初めてだよ。
 これまではギュンッて感じであっと言う間にいっちゃって、その後は孤独を感
じて、ただ虚しさだけが残ってた。
 でも今回は違う。
 すごく充たされて…触れ合う明日香ちゃんの存在を感じて…幸せだった。
 明日香ちゃんは、確かに愛をくれた。

 だから、私も明日香ちゃんに愛のお返し。
 明日香ちゃん、自分じゃ全然気がついてなかったみたいだけど、もう限界まで
感じちゃってた。
 きっと、一生懸命に私を気持ちよくしようとして、そのことばっかり考えてた
からだね。
 このままじゃ可哀想だなって思って……だから、私と同じようにしてあげたの。
 でもビックリしたあ。すっごく色っぽい声で、
「り…梨華…梨華ちゃんっ!!」
って叫ぶんだもん。
 でも…すごく可愛かったよ、明日香ちゃん。
86 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)17時56分54秒
「…私も……」
 明日香ちゃんが急に、ボソッとつぶやく。
「私も…自分が思ってるより…H…なのかな?」
 チラッて、上目づかいに私を見る。
 ホントに可愛いなあ。
「そんなことないんじゃない?」
って言ったら、
「…そう…かなあ?……」
 ちょっとうつむいちゃったり。

「明日香ちゃん……」
 さっきみたいなこと、明日香ちゃんにとっても初めてだったんだもんね。
 ショック…だったのかなあ?
 心の強い明日香ちゃんでも、悩むことがあるんだね。
「私のこと、あんなに愛してくれたんだもん。すごく、すごく気持ちよかった
から……それぐらい、明日香ちゃんは一生懸命してくれたんだから…女の子と
して、普通のことだよ……ね?」
 だから…気にしないで、明日香ちゃん。

「……本当に?」
「本当に。逆に、さっきので何にも感じない方が、女の子として問題だと思う」
 何だかちょっとお姉さんになった気持ち。
「そう…だよね……」
 小さく肯いてる明日香ちゃんが……初めて幼く見えた。
 いつもはすごく大人っぽいのに。
87 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)17時59分02秒
 抱きしめてあげたい!……って思ったけど、またビックリさせちゃいそうだか
ら、手を伸ばして、洗ったばかりの髪をなでてあげた。
「何?」
 明日香ちゃんは不思議そうに見上げてた。
「か〜わいっ♪」
って笑ったら、
「へへへ……」
って笑い返してくれた。
 狭いバスルームが、二人の笑顔でいっぱいになった。

 私も明日香ちゃんも、特には何も言わなかったけど……二人で一つのベッドに
入った。
 とても自然な感じで……。
「あれ? これ……」
 明日香ちゃんが見つけたのは、ベッドサイドに置いてある星型のピアス。
 二人でおそろのピアス。
 私を護ってくれたピアス。

「何でこんなとこに置いてあるの?」
「お守り……傍にあると安心できるから……」
 不思議そうに首をかしげて、「ふ〜ん」って。
 もう一回、ピアスの方を振り返った明日香ちゃんの髪から、シャンプーの香りが
した。
 私と同じシャンプーの香り。
 嬉しいよ……何でもないことだけど…すごく嬉しい。
 でも……1日だけだね。
 明日も家に…ってわけには…いかないもんね。
88 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)18時00分28秒
 私の方に向き直った明日香ちゃんは、何かに気づいたように鼻をピクピクさせ
てる。
「…私も…梨華ちゃんと同じシャンプー…買おうかな……」
って。
 ビックリした私が、「何で?」って聞く前に、表情でわかったみたい。
「だってさ……梨華ちゃんと同じ香りでいたいから……シャンプーもおそろ…
…ね?」
 明日香ちゃんも同じこと考えてたんだ。
「うん!」
「そしたら、ずっと同じ香りでいられるね」
って、クスッて二人で笑い合った。

 私の目を見て、明日香ちゃんが、ちょっと寂しそうな顔をした。
「…明日は来れないんだ……」
 ずっと一緒にいたいよ!
 でも、そんなことが無理なのもわかってる。
 だから、
「うん……」
ってだけ応えて黙ってる。

「ごめんね」
「ううん……」
 どちらともなく指を絡ませた。
 その後は…二人とも無口で…でも、つないだ手からお互いの温かさを感じてた。
 そのまま手をつないで、狭いベッドで眠った。
 ちょっと切ないまま、でもすごく幸せだった。
89 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)18時09分03秒
【閑話休題】
「引っ越ししたんだから一からやりなおすか」
そう思ったのが運の尽き。
いやぁ……長い…(藁
結構続いてたんですねぇ。
ここまでで溜め込んでる約半分くらい。
しかもそれでもまだ完結してないわけだし……。
まぁ…頑張りまっす!
90 名前:名無し娘。 投稿日:2001年08月27日(月)18時23分19秒
Welcome チャミ銀!
91 名前:名無し屋さん 投稿日:2001年08月27日(月)18時37分05秒
よかった!復活してた!!
92 名前:名無し屋さん 投稿日:2001年08月27日(月)18時44分38秒
超安心しました。・・・・ハァ・・・・
あすりかマンセー!
93 名前:某作者 投稿日:2001年08月27日(月)20時35分23秒
羊の頃から読んでました。Welcome!
書き直すのは・・・・めちゃ大変だと思うっす(w
とりあえず期待してます。。。
94 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時05分46秒
>>90
 どうも!
 チャミ銀……あ、私のことか(藁
>>91
 やっぱり、小説板の方々はレベルの高い人達ばかりなので、埋没しな
いように頑張りたいっす!
>>92
 応援してくれる人達マンセー!
>>93
 書き直すって言っても、元原稿の断片はあるので、気がついたところ
に修正を入れてるぐらいなんですよ。
 それと……もし、一時的にでも(羊)が復活した場合、ここにリンク
貼ったりしてもいいもんなんでしょうか?
95 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時09分20秒
 今日一日、私は勤労少女。
 高校中退して、やりたいことに集中できる…ほど、うちの親は甘くない。
 これも社会勉強の一環ってことで、しっかり働きに出てるわけで……。

 朝から夕方まで働いて、
「あ〜疲れた……」
なんて一丁前なセリフを吐きながら、テコテコと歩いて家に帰る。
 家に帰れば、まさにフリータイム。
 時間はあるんだよ、時間は。
 それでも、親がうるさいから、流石に二日連続でお泊まりってわけにはいか
ない。
「梨華ちゃん…きょうは大丈夫かな?」
 会えないと余計に心配になるよ。

 一体、梨華ちゃんを襲ったのって、どんな奴だろ?
 梨華ちゃんに、
「セックスなんて、したいときに、 したい相手と、すればいいんじゃないの?」
なんてことを言う奴なんて、きっと外面だけはよくって、女の子を弄ぶような男
に違いない。
 そんなことを考えてると、改めてムカついてくる。
96 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時09分57秒
 今日一日、私は勤労少女。
 高校中退して、やりたいことに集中できる…ほど、うちの親は甘くない。
 これも社会勉強の一環ってことで、しっかり働きに出てるわけで……。

 朝から夕方まで働いて、
「あ〜疲れた……」
なんて一丁前なセリフを吐きながら、テコテコと歩いて家に帰る。
 家に帰れば、まさにフリータイム。
 時間はあるんだよ、時間は。
 それでも、親がうるさいから、流石に二日連続でお泊まりってわけにはいか
ない。
「梨華ちゃん…きょうは大丈夫かな?」
 会えないと余計に心配になるよ。

 一体、梨華ちゃんを襲ったのって、どんな奴だろ?
 梨華ちゃんに、
「セックスなんて、したいときに、 したい相手と、すればいいんじゃないの?」
なんてことを言う奴なんて、きっと外面だけはよくって、女の子を弄ぶような男
に違いない。
 そんなことを考えてると、改めてムカついてくる。
97 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時10分58秒
 不意に携帯電話が鳴る。もう夜中の零時を回ってる。
 しかも相手は……非通知。
 こういうの、イタ電の場合が多いんだよね。
 どうしよう?
 迷っている間も、相手はかなりねばってる。
 ……取りあえず相手を確かめるかな。

 ピッ。
「…………」
『もしもし、福田さんですか?』
 女の子の声だ。
「…どちら様ですか?」
『あ、え〜と、吉澤です。吉澤ひとみです』
 吉澤さん? 梨華ちゃんと同期の?
『福田さん…福田明日香さんですよね?』
「…そうですけど」
 吉澤さんから電話なんて…何で私の番号知ってるんだろ?
『よかった〜。あ、突然ごめんなさい。ごっちん…後藤さんから教えてもらって
かけさせてもらいました』
 後藤さん? 番号、教えたことあったけ?
 なっちか圭ちゃんが教えたのかな?

「あ、どうも…ご無沙汰してます」
『はい…あの…電話で突然なんですけど…梨華ちゃんのことで……』
 突然、梨華ちゃんの名前が出て、私は一気にパニックになった。
「梨華ちゃんに何かあったんですか?!」
 噛みつくように尋ねる。
『いえ、そういうわけじゃないですけど…』
 何だ。よかった……。
『…でも、何かあったと言えば、何かあったと言えなくも……』
 どっちなの、はっきりしてよ!
 まったく…イライラする。
98 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時12分07秒
『気になることがあるんですけど……電話だとちょっと……これから会えませんか?』
 これから? 何なの一体?……でも…梨華ちゃんのことは気になるよ。
「大丈夫ですけど…どちらに行けば?」
『私、今夜はホテル泊なんですよ。だから……』
 私は親の目を盗んで家を出て、何の疑いももたずに、指定されたホテルへと向かっ
た。

 通りで捕まえたタクシーの中で、様々な考えが頭をよぎる。
 吉澤さんが話したいことって何なのか。
 大体、何故私に電話をしてきたのか。
 梨華ちゃんが吉澤さんに、今回のことを相談したとしても、私のことまでは話さ
ないと思うし……。

 まあ、私のことはどうでもいい。
 吉澤さんの話が、梨華ちゃんが襲われたことに関してだとしたら、もしかしたら
……梨華ちゃんを襲った男は業界の関係者なんだろうか。
 そうだとしたら、そいつのことを吉澤さんは知っているかも……。
 もちろん、
「最近、梨華ちゃんの様子がおかしいんですよ」
ってだけの可能性もあるけど……。

 まだ話も聞かないうちから、あれこれ考えても仕方ないのはわかってるけど……
梨華ちゃんのことだと、どうしてもね。
 それだけ私……梨華ちゃんのことが……。
 一人で照れ笑いなんかしてる間に、ホテルへ到着した。
99 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時12分51秒
 エントランスを入って左右を見渡す。
 流石に午前一時前ってことで人通りはなく、ロビーのソファに腰掛けた人影が
一つ。
 入ってきた私を見つけて、すっと立ち上がり近づいてきた。

「福田さん…遅くに呼び出してすいません」
 吉澤さんだった。
「ううん……気にしないでいいよ」
 私がそう言うと、安心したのかニコッと笑う。
 梨華ちゃんより、もうちょっと背が高くて、私と並ぶと頭一つくらい違う。
 自然と見下ろされる感じで……。

「部屋、15階なんで」
 エレベーターホールの方を指さして、私を案内して歩き出す。
 歩いている間も、エレベーターに乗ってからも、ずっと会話はなかった。
 エレベーターを降りた後も、二人分の足音だけが廊下に響いていた。

 ジャラッと鍵を鳴らして、吉澤さんが立ち止まる。
「ここです」
 廊下が直角に曲がった、ちょうど角の部屋。
「どうぞ」
「…失礼しま〜す」
 ドアを開けて待っていてくれる吉澤さんの脇を抜けて、私は部屋の中へと。
 背後でドアがバタンと閉まり、カチャッと鍵の下ろされる音が聞こえた。
100 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時13分45秒
「最近、梨華ちゃんの様子がおかしいんですよ」
 私たちはツインのベッドそれぞれに座って、向かい合っていた。
 吉澤さんの話の切り出し方は、想定していた中で、一番ノーマルなものだった。
 必要以上に緊張していた私は、ちょっと拍子抜け。

「……おかしいって?」
「いつもはそんなことないのに、楽屋で鏡に向かってボ〜ッとしてたり……私が
声をかけたらものすごくビックリしたり……福田さん、梨華ちゃんから何か聞い
てませんか?」
 最近ってことは、私とつき合い出してからってことだろうか?
 それにしても……。
「…何で私に聞くの?」
 吉澤さんはイタズラッぽく笑ってた。
「何でだと思います?」

 その言い方に何だか馬鹿にされたように感じて、ムッとした私は黙ってた。
 そしたら……。
「だって福田さん、梨華ちゃんとつき合ってるんでしょ?」
「……何で?」
 何で吉澤さんが知ってるの?!
 投げ出された爆弾に驚く私の表情を見て、吉澤さんは、
「やっぱり…そうなんですね」
って。
 そして、二つ目の爆弾を投げ込んできた。
「福田さん…梨華ちゃんと別れてください」
101 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時14分33秒
 何? 何て言ったの?
 別れる? 私と梨華ちゃんが?
 馬鹿なこと言わないで!
 何であなたにそんなこと言われなきゃいけないの?
 ――あまりにも言いたいことが多くて、どれも言葉にならなかった。

「好きなんです……」
 吉澤さんが?
 誰を?…梨華ちゃん?
 だから、私に別れろって言うわけ?
 冗談じゃ……。
「…福田さんのことが……」
 !!!!!
 何?…………。

 もし吉澤さんが
「梨華ちゃんのことが好き」
って言ったんだったら、私は、
「馬鹿言わないで!」
とか言って出ていっただろう。
 でも……頭の中が真っ白になって、何を言えばいいのか、どうすればいいのかも
分からなくなった。
「…福田さんのことが……」
 その言葉を聞いた途端に、私は見えない鎖につながれていたから……。

 私はただただ吉澤さんの顔を呆然と見ていて……。
 その時もっと冷静だったら、吉澤さんの目に冷たい輝きがあったことに気がつい
たかもしれない。
 でも、そんなことは全然目に入ってこなかった。
102 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時15分27秒
「だから…梨華ちゃんと別れてください」
 吉澤さんは重ねてそう言った。
「…それで…私とつき合ってください」
「な!…そんな…だって……」
 もう私は、何が何だか分からなくなってて……。
「明日香さん…梨華ちゃんのこと、本当に好きなんですか?」
 だから、吉澤さんの呼び方が「明日香さん」に変わったことにも気づかなかった。

「好きだよ!…大好き……」
「梨華ちゃんも明日香さんのこと…好きなんだと思います」
 一旦は私の言葉を、そう受け止める。
 でも吉澤さんは、私に考えさせる間を与えないほどに畳みかけてきた。
「でも、梨華ちゃんには重すぎるんです」
 重い? 何が?

「ずっとモーニング娘。のファンだった梨華ちゃんにとって、明日香さんは伝説の
存在なんです」
 嘘…だって梨華ちゃん、そんなこと一言も……。
「梨華ちゃんは言わないかもしれません……だって、憧れの明日香さんとつき合え
るなんて夢ですもんね」
 何だか自分の心が読まれているみたいだった。
「でも、だからこそ…明日香さんは梨華ちゃんにとって重すぎるんです」
103 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時16分35秒
「…でも…もしそうだとしても…そのことは私と梨華ちゃんの間の問題で、吉澤
さんとは関係ないでしょ?」
 私はやっとの思いで切り返す。
 吉澤さんは小さく首を振る。
「このままだと、いつか梨華ちゃんはつぶれちゃいますよ。一緒に仕事してる私
には分かるんです。明日香さん、それでもいいんですか?」

 …「一緒に仕事してる」…この言葉が、私に重くのし掛かってきた。
 今の私には、梨華ちゃんをただ見守ることしかできなかったから。
 黙り込む私に、そっとベッドから立ち上がって、吉澤さんが隣へと移ってくる。
「私だったらそんな心配ないです。私、明日香さんと上手くつき合える自信があ
るんです」

 はっきり言って無茶苦茶な理屈だった。
 それでも私は何も言えなかった。
 それくらい混乱してた。
 梨華ちゃんは…私にその思いを隠してるんだろうか?
 二人は分かり合えていると思っていただけに、そんな疑問が頭を渦巻いて仕方
がない。
104 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時18分58秒
「明日香さん……」
 ハッと気がつくと、吉澤さんが目を閉じて顔を近づけてきていた。
「だ、駄目っ!」
 唇がつく寸前で私が顔を反らして、吉澤さんのキスは頬に……。
「ごめん…やっぱり私……」
 私の声は震えていた……。

「…ちぇっ……」
 ふてぶてしい声に振り返ると、吉澤さんは立ち上がって背中を向けていた。
「きょうは…もういいです」
 反対を向いたままの吉澤さんの声は、妙に冷たく響いた。
 でも、こちらに向き直った吉澤さんの顔は、とても穏やかで……。
105 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時20分59秒
「明日香さんも…急なことで、混乱してるみたいだし……でも梨華ちゃんのこと、
真剣に考えてみてくださいね……もちろん私のことも……」
「…うん……」
 小さくそう言って立ち上がるのが精いっぱいだった。
 吉澤さんは、そんな私をドアのところまで送ってくれた。

「ここでいいから…それじゃ……」
 部屋のドアから出たところで、そう吉澤さんに言って、返事も待たずに歩き出す。
「梨華ちゃんに…吉澤が心配してたって、伝えてくださいね」
 背後からそんな言葉が聞こえてきた。
 それからドアが閉まって……どこからか、高笑いが聞こえてきたような気がした。
 こんな夜中に高笑いなんて……錯覚だよね。
 そう思いながら、でも確かに高笑いが耳の奥に響いてた。
 私は、自分を失ったまま家へと足を運んでいった。
106 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)22時22分56秒
 時計を見ると午前一時を回ったところ。
 仕事が終わってから、安倍さんと保田さんに、食事に誘われて。よっすぃ〜は
さっさと帰っちゃうし。
 今からじゃ、明日香ちゃんに電話もできないよ。
 …メールしとこう。朝、見てくれるよね。
 明日香ちゃんを思い浮かべながら、短い文章に思いを込めて……送信。

「あれ? 明日香ちゃん、起きてるんだ」
 すぐにメールの返信が届いた。
『メール、ありがとう……私、梨華ちゃんのこと、大好きだよ。梨華ちゃんは?』
 読んで胸がドキドキした。
 何もないのに、明日香ちゃんから『大好きだよ』なんて……初めてじゃないかな?
 嬉しい反面、どうしちゃったんだろうって不安になる。

 だから…電話しちゃった。
「…もしもし…明日香ちゃん?」
『…うん……ごめんね……』
 何で謝るの?
「どうしたの?…何かあった?」
 電話の向こうからため息が聞こえる。
『梨華ちゃん…私…梨華ちゃんに余計な気をつかわせちゃってる?』
「そんなこと…そんなことないよ!」
『そっか……なら、いいんだ……』
107 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)22時24分48秒
「どうしたの? 今日の明日香ちゃん、ちょっとおかしいよ?」
『…あのさ。きょう、よしざ………ごめん。何でもない』
 え、何? 今…吉澤って…言わなかった?
「明日香ちゃん、何かあったんじゃないの? ねえ、ちゃんと言ってよ」
『本当に何でもないよ。信じて……あ、梨華ちゃん、明日も早いでしょ。じゃ、
またメールか電話するから』
 声はさっきより明るかったけど。
 明日香ちゃん、何か…無理してない?
「…うん……絶対だよ?」
『うん。おやすみ』
「…おやすみなさい」

 今日の明日香ちゃん、絶対おかしかった。
 それに、さっきの『よしざ…』って、よっすぃ〜のことじゃ……。
 もしかして…よっすぃ〜が明日香ちゃんにまで……。
 ドンドンドンドン嫌な想像がふくらんじゃって、でも、明日香ちゃんは『信じ
て』って言ったし……。
 本当に信じていいんだよね?
 ベッドに入って、一生懸命に明日香ちゃんの笑顔を思い浮かべようとしたのに…
…明日香ちゃんは全然笑ってくれなかった。
 その日の寝付きは、最悪だった。
108 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)22時25分53秒
「おはようございま〜す」
 翌朝、収録スタジオに入ってあいさつをしながら、よっすぃ〜を捜す。
 昨日の明日香ちゃんの様子が変だった原因に、よっすぃ〜が関わりあるのか確
かめないと落ち着けなかったから。

「あ、梨華ちゃん、おはよう」
「…よっすぃ〜、おはよう」
 ものすごくすっきり爽やかな顔をしたよっすぃ〜。
 あれこれ思い悩んで寝付かれなかった私は、何となくうらやましくなっちゃっ
て。
 そんなこと思ってるうちに、よっすぃ〜の方から先に尋ねられた。
「梨華ちゃん、明日香さんから聞いてくれた?」
 何? 何のこと?
 それに……「明日香さん」って…前は「福田さん」だったのに。

「…別に何にも聞いてないけど……」
「あれ? そう……」
 ちょっと首をかしげて、「ふうん…そっかあ……」とかつぶやいてる。
 本当に何なのよ?!
「……会ったの?」
「え?…ん〜っと……明日香さんが何も言ってないんだったら、私からは言える
ことはないんだよね」
 何、その思わせぶりなセリフは!
109 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)22時27分14秒
「ねえ、よっすぃ〜…明日香ちゃんに何かしたんじゃないでしょうね?」
 柄にもなく凄んでみたつもりなんだけど……。
「いや…私からはちょっと……明日香さんから聞いた方がいいよ」
 ニヤニヤ笑ってる。
 そんな顔されたら、いくら私だってムカツクの!
 昨日の明日香ちゃんの様子がおかしかったのは、よっすぃ〜のせい。そうに決
まってる!
 でも……明日香ちゃんは、何もないよって言ってくれたし……信じたいよ。

「へえ……ずいぶん迷ってるね……明日香さん、あんまり信用ないんだ…」
 私の顔を見ながら、よっすぃ〜がこんなひどいことを言う。
「そ…そんなことないよ! 私、明日香ちゃんのこと……」
「だったら明日香さんに聞いてみればいいじゃない」
「……うん……」
 何だか、よっすぃ〜にのせられてるような気がするけど……。

 言われなくたって、よっすぃ〜なんかより、明日香ちゃんの方を私は信じるん
だから!
 にらむ私のことなんか気がつかないみたいに、よっすぃ〜は時間を確認したり
してる。
「もうリハーサル始まるよ」
なんて言って……。

 余裕の表情が、何だか憎らしい。
 よっすぃ〜は、さっさと楽屋から出て行こうとして、振り返って言った。
「あ、明日香さんに聞くときに、吉澤が『昨日はありがとうございました』って
言ってたって伝えてね」
 その笑顔は、すぐにドアの向こうへと消えていった。
 私には、よっすぃ〜が何を考えてるのかまったくわからなかった。
110 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)22時28分40秒
 その日のよっすぃ〜は、ずっとご機嫌で……私はずっとへこんでた。
 よっすぃ〜と明日香ちゃんの間に、何があったのか不安で、でも私は明日香ちゃ
んを信じていて……。
 信じているのに不安でいる自分が、明日香ちゃんを裏切っているような気がして。
 漠然と、明日香ちゃんを失ってしまいそうな思いにとらわれて……怖かった。

 だから、仕事の合間に明日香ちゃんにメールをいっぱい送った。
 でも一番聞きたいことは書けなくて……。
 我慢して、我慢して……それも仕事が終わるまでだった。
 スタジオを出た途端に、指が勝手に動いてた。

『仕事終わったよ。明日香ちゃんに会いたいなあ☆☆梨華☆☆』
 すぐに明日香ちゃんからの返事が届いた。
『私は出られないんだ。家に来る? 明日香』
 勢い込んで、『今から行く!』って返事を送りながら、駅に走っていった。
111 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)22時29分18秒
 一刻も早く、明日香ちゃんに会いたくて、会いたくて……。
 電車に乗っても、寂しくて、切なくて……。
 少ないなりにも乗っている人々は、まったく目に入って来なかった。
 明日香ちゃんだけが私のすべて。
 自分だけだと、まったく何かが欠けていた。
 不完全で、不安定な存在。
 明日香ちゃんが傍にいないと、「私」は「私」でいられなかった。

 だから、玄関のドアを開けて明日香ちゃんが出てきたときには、私はもう泣いていた。
 わけもない不安から解放された安堵感。
 明日香ちゃんに頼りっぱなしの自分の情けなさ。
 グチャグチャした思いが、私の体をめぐって……。
 それでもそこに、ただ明日香ちゃんがいてくれることが嬉しかったから。
 声もなく明日香ちゃんに抱きついて、ただ涙を流してた。
112 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)22時29分55秒
 明日香ちゃんは何も言わず、しばらくそのままでいてくれた。
 そのうち、私の背中に手を回して軽く抱きしめて、
「梨華ちゃん…」
って呼びかけて……。
 お互いに腕を相手に回したままで、見つめ合った。

 私はまだ涙を流していて、明日香ちゃんはそれをじっと見てた。
 明日香ちゃんの瞳も潤んでた。
 そして…そして……。
「泣かないで……」
 明日香ちゃんがポソッと言って、涙が伝う私の頬に、そっとキスをしてくれた。
「梨華ちゃん、泣かないで……」
 もう一度言って……柔らかく唇を合わせてくれた。
113 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)22時31分32秒
 おぼれてた。
 おぼれて、必死になってすがりついてた。
 漂う私を抱き返して、優しく包んでくれた。
 嬉しくて、嬉しくて……。
 何度も、何度も叫んだ。名前を呼んだ。
「明日香ちゃん!」
「…明日香ちゃ〜ん!」

 退いては寄せる大波小波。
 赤ちゃんのように胸に顔をうずめ、幼い子が砂場で遊ぶように指を潜り込ませ、
だだっ子のように何度も何度も求めた。
 口をついて求める内容で、その純粋な頃には戻れないことを告白しながら。

 陶酔してベッドに横たわる私。
 荒い息。
 快感の余韻に震える身体。
 その私を守るように抱いて添い寝する明日香ちゃん。
 私を見る瞳は優しくて、それでいて冷静で……寂しそうだった。
114 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)22時38分45秒
 明日香ちゃんは、ただ私を抱きしめて、私の感じる部分に指を這わせてくれた
だけだったけど、それだけで私には十分だった。
「明日香ちゃん……」
 私の声は、顔を埋めた明日香ちゃんの柔らかい肌に吸い込まれる。
 明日香ちゃんの胸は十分に大きくて、ふっくらしてて…優しく私を受け入れて
くれてた。

「ん?」
「…昨日……よっすぃ〜に…会ったの?」
 明日香ちゃんの胸が大きくふくらんで…そしてゆっくりと戻っていく。
「……うん………」
 聞きたくない気持ちも強かった……でも、それ以上に聞きたい気持ちが大きかっ
た。
「何が…あったの?」
115 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)22時39分34秒
「ヨ*ザ*サ*ニ『*カ**ン*ワ*レ*ク*サ*』ッ*イ*レ*……」
 え?
 一瞬、明日香ちゃんの言った言葉がわからなかった。
 声が音声として、頭の中をグルグル回ってる。
「ヨシザワサンニ『リカチャントワカレテクダサイ』ッテイワレタ……」
 何?
「よしざわさんに『梨華ちゃんとわかれてください』っていわれた……」
 どういう意味?
「吉澤さんに『梨華ちゃんと別れてください』って言われた……」
 明日香ちゃんと…私が…別れる……。
 言葉が意味を持って……私の心を撃った。

 条件反射のように、ブワッと目に涙がたまる。
 大声で叫びそうになった。
「いや〜〜〜っ!!!!!」
って。
 でも、それよりも早く、明日香ちゃんの腕に力がこもって、
「大丈夫。絶対、そんなことしない……梨華ちゃんを離したりしないから。ね?」
 耳からしみ込む声が、叫び声を溶かした。
 それでも涙までは止められずに、私の頬と明日香ちゃんの肌を濡らした。
116 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)22時41分05秒
 涙が止まるまで泣き続けて……明日香ちゃんは、ずっと抱いていてくれた。
「……よっすぃ〜は……何で…明日香ちゃんに、そんなこと……」
 やっと落ち着いて、私はそう尋ねた。
「…梨華ちゃんにとって、私は重すぎるからって……このままだと…梨華ちゃん
が押しつぶされちゃうからって……」
 何を勝手なこと言ってんのよ!
 よっすぃ〜に対して、そんな言葉をぶつけながらも、明日香ちゃんが何かを躊
躇っているように感じる。

「…明日香ちゃん…全部…話して……よっすぃ〜…ほかにどんなこと…言ったの?」
 明日香ちゃんの胸が大きくいきを吸い込んで……。一回、二回……六回目。
「……ごめん。これ以上は、もうちょっと待ってほしい……」
「明日香ちゃん!」
 必死ですがりついていた。
「ごめん…でも、もうちょっとだけ……もうちょっとだけ私に考えさせて……そう
したら、絶対、梨華ちゃんに話すから……絶対……」
117 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)22時41分58秒
 聞きたかった。
 明日香ちゃんが、何を心に仕舞っているのか。
 同じ悩みを私も共有したかった。
 隠しごとをされているようでイヤだった。不安だった。
 でも…私は明日香ちゃんを信じることに決めたから……。
「…絶対だよ?……」
「うん…絶対……」
 きっと、明日香ちゃんは私を守るために黙ってる。
 それで考えてるの。戦ってくれてるんだよ。
 だから…私は私なりに、その不安と戦うことにした。

 よっすぃ〜が一体、何を考えてるのか?
 私も探ってみようと思った。
 直接よっすぃ〜に聞く……のは怖いから、ごっちんに聞いてみよう。

 よっすぃ〜とつき合うなんて、かなりきつそう。
 あの時だって私、このままおかしくなっちゃうんじゃないかって、本気で思っ
たもん。
 身体がいくつ有っても足りないよね。
 あの二人が、どんなつき合い方をしてるのか、正直言って興味があるよ。
118 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)22時42分59秒
 だから次の日、楽屋でごっちんと二人きりになったのを見計らって、声をかけ
た。
「ごっちんさぁ…よっすぃ〜と……あの〜……つ、つき合ってるんでしょ?」
 私は聞かれたらマズイみたいにヒソヒソ声で聞いたのに、ごっちんは相変わら
ずアッケラカン。
「そうだよお」
 何だか聞かれて嬉しそうだし。

「…よっすぃ〜って……どう?」
 ものすごく曖昧な質問。
「やさしいよ。とっても」
 ごっちんは満面の笑みで、まるでハートマークが見えそうな感じ。
 …何か予想してたのと違うような……。

「そ、それでさあ……その〜……もう…しちゃったりなんかしたり…する?」
 もう私の顔は燃えちゃいそうに熱い。
 普通はいきなりこんなこと聞くもんじゃないよね。
 でも、よっすぃ〜の実態を知るためには、どうしてもこっちの方向に踏み込ま
ないとね。
119 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)22時44分18秒
 私と同じように、ごっちんも真っ赤。
 やっぱり……すごく激しかったりするのかな?
「…うん…ついこの間…初めて……」
 ついこの間? 初めて?
 これは意外だ……。
 よっすぃ〜のことだから、いきなり深い関係になっちゃったりしたのかと思っ
たのに。

「…梨華ちゃんも…福田さんとつき合ってるんでしょ?」
「……知ってたの?」
 ごっちんにまで知られてたなんて。
「うん。この間のOFFのとき、よっすぃ〜と一緒に、梨華ちゃんと明日香さん
がデートしてるの見ちゃった」
 ……そう…だったのね……。
「梨華ちゃんたちも…その……しちゃったの?」
 え?…私たちのこと?
 …確かに、私と明日香ちゃんは深い関係だけど……よっすぃ〜ほどじゃ……。

「そう……キス…しちゃったの?」
 キス?!
「ちょっと待って、ごっちん…しちゃったのって……キスのこと?」
「…そうだよお。梨華ちゃんと福田さんも、しちゃったの?」
「…うん……」
 ウソでしょ?
 よっすぃ〜、ごっちんには、まだキスしかしてないの?
 どういうこと?
120 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月27日(月)22時45分27秒
 ほかにいろいろ聞いてみても、ごっちんとよっすぃ〜の交際は実に清らか、さ
わやかなもので……私は何が何だかわからなくなってきて……。
 それでも確かなのは、ごっちんは本当に大事にされてるってこと。
 よっすぃ〜は、ごっちんにとっては理想的な騎士(ナイト)みたい。
「よっすぃ〜と一緒なら、どんなときでも安心だよ」
 ごっちんの笑顔は間違いなく本物だね。
 でも…じゃあ、私が見たよっすぃ〜って一体……。

 ごっちんののろけ話を延々と聞いていると、ドアを開けてよっすぃ〜が入って
きた。
 仲良さげに話してる私たちを見て、明らかにムッとした表情。
「ごっちん!」
 呼びかけながら、わざわざ私とごっちんの間を横切って、ごっちんの隣のイス
に座る。
「ねえねえ。ベーグルのおいしい店、また新しいの見つけたんだ。一緒に行かな
い?」
「よっすぃ〜、ホントにベーグル好きだねえ…いいよ。どこにあるの?」
「あのね……」
 もうすっかり私は蚊帳の外。
 肩をすくめたりなんかして、楽屋を出る。

 そしたらドアを出たところで、よっすぃ〜が追いついてきた。
 振り返る間もなく、ゾクゾクッと耳元から首・背筋へ走り抜ける強制的な快感。
「…っぁ…くぅ……」
 人影のない廊下で身もだえてる自分が…悲しい。
「…もし、ごっちんを巻き込もうなんて考えてるなら…………」
 言葉の代わりに、指が私の心に釘を刺す。
「はぁっ…ん……ぃあ……」
 懸命に首を振ると、フッと背後の気配が遠ざかって、ガチャッとドアの閉まる
音がした。
 身体を走り抜けた感覚のおぞましさを感じながら、ドアを見つめて……。
 気がついたら、腕に鳥肌が立っていた。
121 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時46分57秒
 昨日からずっと考えてた。
 ずっと…ず〜っと考えてた。
 私と梨華ちゃん……このままつき合ってていいんだろうか…って。

 女同士だからとか、そんなことはもうどうでも良くなってたけど、梨華ちゃん
にとって、私にとって、今の関係はプラスなのか……。
 ある意味、私の場合は個人的な恋愛ってことで、好きだって気持ちだけで十分
だ。
 でも、梨華ちゃんは違う。
 国民的アイドル・グループの一員なんだから……。

 梨華ちゃんが私のことを好きでいてくれることは、素直に嬉しい。
 だけど、周囲は、マスコミは、ファンはどう思うだろうか。
 特にマスコミにとって、格好の餌食だろう。
 普通の恋愛でさえタブーなのに……面白おかしく騒ぎ立てて、賞味期限が切れた
らポイッと捨てられる。

 もしそうなったら……梨華ちゃんの芸能人としての生命は絶たれてしまう。
 梨華ちゃんの夢の道が閉ざされる。
 そういう意味で、「私」という存在は、梨華ちゃんにとって常に爆弾だ。
 爆発を回避するためには……爆弾そのものを処理するしかない。
 そう。「私」を処分するのが、梨華ちゃんにとって一番安全な道……。
122 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時48分23秒
 でも……昨日の梨華ちゃんの姿を見ていると、「別れ」が、梨華ちゃんを壊し
てしまうことになりそうで……。
 どれだけ傷つけることになるのか怖くなる。
 そこまで考えて、私は自嘲的に笑う。
 本当はそれはただの口実で、自分が傷つくことが、梨華ちゃんを失うことが、
怖いだけかも知れない……って。

 不意にポロポロッと涙がこぼれる。
 頭は必死にブレーキをかけてる…けど……。
「…や…だ……やだよ…別れたく…ないよ……梨華ちゃんと一緒に…いたいよ…
…」
 思いはさらに加速して……もうどうにも止められなかった。

 涙でよく見えないけど、手探りで取り出した。
 梨華ちゃんとおそろの星型のピアス。
 このピアスは私たち二人の状態そのままだ。
 黄色と空色。
 片方ずつを取り替えたとき、心の半分も一緒に交換した。
 だからもう…一人には戻れないよ。
123 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時49分35秒
 携帯の留守電に入れたメッセージの返事。
「この間のホテルの同じ部屋で待ってます」
 吉澤さんに伝える答えは、やっぱり一つしかない。
 とても大事なことだから……電話じゃなく、直接話さなきゃ。
 私はまた、梨華ちゃんには伝えずに、吉澤さんに会いに出かけた。
 高笑いの幻聴が聞こえたあの部屋に……。

「福田さん…お待ちしてました。どうぞ」
 廊下の角部屋に招き入れられたのは、前回とほぼ同じ午前一時前。
 前回と同じように、二つのベッドに腰掛けて向かい合う。
「考えて…くれたんですよね?」
 吉澤さんは笑顔で尋ねてきた。

「うん……すごくたくさん…考えたよ」
「…それで?」
 興味津々といった瞳が、私を見つめている。
「結論から言うと…梨華ちゃんとは、やっぱり別れられない。ううん。別れちゃ
いけないと思った……」
「……梨華ちゃん…ダメになっちゃいますよ?」
「ダメになんかならないよ…ダメになんかしない。梨華ちゃんと私なら…乗り越
えてみせるよ」

 それは「私」が梨華ちゃんにとって爆弾であることを否定するものじゃなく…
…どんな犠牲を払っても…例え私が最もやりたくない「過去を切り売りする」こ
とになってでも…何としてでも梨華ちゃんだけは守る。
 そんな私なりの決意表明だった。
124 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時50分48秒
 吉澤さんは冷たい笑いを浮かべていた。
「……それは…『愛』…ってやつですか?」
 茶化すように言う。
 私は無言でそれを肯定する。
「はぁ〜あ……『愛』ね……明日香さんなら、もっと面白い答えをしてくれると
思ったんだけどなあ……」
 面白い?
 何を言ってるの?

「愛、愛、愛……『愛してるよ』なんて、みんなが言葉遊びみたいに簡単に言う
けど……『愛』って一体なんなんだ?!」
 私を馬鹿にするような、大げさなしゃべり方。
 でも、その言葉の端々に、苛立ちのようなものを感じた。
 「愛」って何なのか。
 そんなことにすぐに答えられるはずもなく、私は黙り込んでいた。

「明日香さん……」
 吉澤さんは、視線を下から上へと流す。
 私の膝丈のスカートから顔に視線が移って……。
「…私の『愛』も……受け取ってくださいっ!」
 嫌な予感がしていたけど、それでも避けることはできなかった。
 ベッドにそのまま押し倒され、組み敷かれる。
「やっ!…吉澤さん……やめて!」
 手足をバタつかせ、抱きすくめる腕から何とか逃れようとするけど、体格も体
力も違う吉澤さんを振り払うことなど出来なかった。
125 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時51分49秒
 それでも何とか引き離そうと、腕を身体の間に差し入れて、吉澤さんを押し返
そうとする。
 そんな私の抵抗が、一瞬にして硬直する。
「ガッ!……」
 空気の固まりを、そのままのどから押し出すような声。
 下半身から走り抜けた激痛に、ビクンッと大きく一度痙攣を起こして……。

「濡れてなくても、なんとか入るもんですね」
 私のあそこに、中指をねじ込んだ吉澤さんが、平然と言葉を吐く。
 激痛のために動くことも出来ず、ただそこに横たわる私。
 たくし上げられたスカート。
 ショーツのなかで、微妙に蠢く指。
 涙が、痛みと混乱を必死に覆い隠そうと、無駄な努力をしていた。

「明日香ちゃん、私の『愛』はどんな感じかな?」
 明らかに馬鹿にした口調。
「…っぁ……ぬい…抜いて……」
 苦痛に喘ぐだけで精いっぱい。
 今考えると、梨華ちゃんにバージンを奪われたときなんて、十分、愛にあふれ
ていたと思う。
 痛みが最も少ないような状況にしてくれていたから。
 今の状況は、そんな配慮なんて皆無だった。
126 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時52分37秒
「そう……」
 やれやれといった感じで肩をすくめる吉澤さん。
 無造作に指を抜こうとする。
「っは…ぐっ……い…痛いよ!…やめて!」
 指と一緒に周囲や内臓まで引きずり出されそうな鈍い痛み。
「抜いてって言ったの、明日香ちゃんでしょ。ホントにワガママなんだから……」
 好き勝手な言葉なんて上の空。
 そこにもう一つの心臓が出来たみたいに、ドクンドクンと脈打つ感じ。
 鈍痛とともに血がそこだけに集まっているような気がする。

「ふ〜ん…こりゃ、濡れないと抜けないかもね…早く感じちゃってよね」
 そう言って、闇雲に愛撫を始める。
 そこら中にキスマークをつけ、指を這わせ、撫でさする。
 こんな状況で痛み以外の何を感じろって言うのか。
 ただ一点から生じる痛みのほかは、何も私に影響を与えなかった。
127 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時53分33秒
「…ダメだ…ねえ、全然感じないわけ?」
「あんたなんか……」
 かすれた私の声を聞くために、顔を寄せてくる。
「何?」
「あんたなんか…誰も愛することなんて出来ないでしょ……」
 力ない私の強がりに、それまで冷静だった表情が一変、カッと怒りの形相に。
 一気に指を引き抜いて、その手で私の頬を平手打ちする。
 それに反撃する余裕もなく、両手で頬よりもっと痛む個所を押さえて丸くうず
くまっているだけ。

「早く出ていってよね……グズグズしてると、そのまま外に放り出しちゃうから
……」
 それ以上情けない姿を見せたくなくて、必死に身支度を整える。
 足を引きずるように歩いてドアに向かう。
「私は……梨華ちゃんへの愛を貫いて見せるわ……」
 捨て台詞なんて私らしくないけど、それでも言わずにはいられなかった。
「そう簡単にいくかなあ……楽しみに見させてもらいますよ」
 吉澤さんの言葉を背に受けながら、ドアから出る。
「…私は私なりに愛してみせる……」
 そんな最後に聞こえてきた言葉は、私の鼓膜を振るわせたけど、心には届かな
かった。
128 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2001年08月27日(月)22時55分52秒
【閑話休題2】
 ……やっと三分のニって感じ。
 まぁ、焦らずやりますか。
129 名前:名無し屋さん 投稿日:2001年08月27日(月)23時09分10秒
読み返すと、痛みを伴って心が洗われます。
130 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)06時41分36秒
>>129
 引越しして心機一転、また頑張りたいと思います。
 こちらでも宜しくお願いします。
131 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月28日(火)06時42分33秒
『あ、梨華ちゃん? 私。遅くにごめんね』
 よっすぃ〜の明るい声が耳に飛びこんでくる。
 さっきまで何回も明日香ちゃんと連絡をとろうとして、ずっと話中だった。
 そのうちにウトウトしてて……。
 明日香ちゃんかと思って急いで出たら、よっすぃ〜だった。

「…何?」
 私は、途端に不機嫌な声を出してしまう。
『明日香ちゃんじゃなくて残念だった?』
 その言い方がまたムカツクッ!
「だから何?」
 大げさなため息のあと、ガツンと来た。

『その明日香ちゃん、お返ししたから後よろしくね』
 明日香ちゃんが!
「あんた明日香ちゃんに何したの?!」
 もう私の声は悲鳴だった。
『やるべきこと』
 平然としたよっすぃ〜の声が憎らしい。
132 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月28日(火)06時43分34秒
 声を失った私にかまわず、相変わらず明るく話しつづける。
『明日香ちゃんって肌きれいだねえ。いっぱいキスマークつけちゃったよ』
「なっ!………」
『最後まで、私の指をキュッと締め付けて離してくれなかったし』
「ウソだよっ!」
 ピッと電話を切って、耳を押さえて泣いた。

 また電話が鳴って、しぶしぶとった。
『急に切っちゃわないでよ〜。ま、梨華ちゃんは明日香ちゃんの方を信じるんで
しょ?』
「……そうだよ……」
『じゃ、明日香ちゃんから聞いてね……とにかく可愛かったよ。涙流して震えちゃっ
……』
 ピッてまた切って、急いで明日香ちゃんに電話をかける。
 明日香ちゃん…明日香ちゃん……。
133 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月28日(火)06時44分25秒
 電話のコール音だけが響いて……。
 明日香ちゃん、出てよ。電話に出てくれないと、心が…心が通じないよ。
 あきらめ切れずに、ひたすら電話を握り締める。

 突然コール音が途絶えた。
「もしもし! 明日香ちゃん?!」
『……梨華…ちゃん?』
 明日香ちゃんの声の向こうから、大きな車の通り過ぎるブォ〜ンッて音が聞こ
えてくる。
「明日香ちゃん、今、どこ?」
『ここ?…どこ…だろう……』
「明日香ちゃん?!」
『大丈夫。方向は…こっちで合ってるから……ちゃんと家には帰れるよ……』
134 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月28日(火)06時45分30秒
 言ってる内容はいつものように冷静。
 だから余計に、声の虚ろさを感じて、私の胸がギュ〜ッと締め付けられる。
『梨華ちゃん……梨華ちゃんを襲ったのって…吉澤さんだったんだね……』
「ごめん! 明日香ちゃんにもっと早く言ってれば…こんなことにならなかった
のに……」
 明日香ちゃんを信じてないわけじゃなかったのに、何となく、よっすぃ〜の名
前を出しそびれちゃったのが、こんなことになるなんて……。

「ホントにごめん!…私の…私のせいだね」
『…梨華ちゃんのせいじゃないよ…梨華ちゃんは…悪くない………でも…やっぱ
り言ってほしかった…もっと私を…信じてほしかったよ…だから…今日はもう…
…ごめんね……』
「明日香ちゃんっ!」
 電話がプツッと切れて……かけ直したら、電源が切られてた。
 胸から這い上がってくる喪失感を認めたくなくて……何度も、何度もかけ直し
て……やっぱり電話はつながってくれなかった。
135 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月28日(火)06時47分06秒
 必死だった。
 明日香ちゃんを失いたくなかった。
 自分一人じゃ何をしたらいいのかもわからなかったから、とにかく電話をかけ
た。
 こんな時に明日香ちゃん以外で相談できる人は、私には一人しかいない。

「もしもし! 寝てました?」
『…もしもし、石川?…もちろん寝てたよ』
 そういう言い方をするから怖いと思われちゃうんですよ、保田さん。
 言葉には出さずに、ツッコミを入れる。

「すいません…でも、どうしても急ぎでご相談しなきゃいけないことがあって…
…」
『もう…どうしたの?』
 こんな時、保田さんは面倒くさそうにするけど、それでも必ず相談に乗ってく
れる。

 私が、明日香ちゃんとつき合ってることを話すと、保田さんは本当にビックリ
していた。
『明日香が?! あんたと?!……明日香…どうしちゃったんだろう……』
 保田さん……その驚き方はあんまりです〜!
136 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月28日(火)06時48分05秒
「で? ケンカでもしちゃったわけ?」
 やれやれといった雰囲気の保田さん。
 何て言ったらいいんだろう……。ケンカしたわけじゃないし。
 ただ…明日香ちゃんの心が、私から遠ざかった。そう私が感じたってだけで…
…。

「よっすぃ〜が……」
 初めに注意してくれた保田さんだから、このことだけは伝えた方がいいと思っ
た。
「吉澤が?! どうしたの?」
 スッと大きな瞳を細めて、鋭い表情で私を見つめてた。

 ボソボソ話す私の話を、無言で最後まで聞いてくれて……。
「…やっぱり吉澤が……」
 何か告げ口したみたいで嫌な気持ちだった。
「でも…ごっちんには本当に優しかったです。私から見ても……」
 だから、そう言ったのは、告げ口のお詫びみたいなもので……。
137 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月28日(火)06時48分47秒
「ふ〜ん…あの子も、わっかんないんだよねえ」
 保田さんも、よっすぃ〜が何を考えてるのかまでは、わからないみたい。
 そうだよね。
 ともかく今の私には、よっすぃ〜のことより明日香ちゃんの方が問題だった。

 すぐに許してもらえるかどうかはわからないけど、会いたかった。ただ、会っ
て話したかった。
 保田さんは、ちょっと感心したような顔をしてた。
「あんた…意外に健気なとこがあるんだね」
 だから保田さん……「意外に」って失礼じゃありません?
「明日香のこと……相談してみるかな」

 相談? 誰にですか?
 そっか! 中澤さんですね。
「裕ちゃんよりも、あの子の方が適任だと思うんだよね……自他共に認める『明
日香のお姉ちゃん』だから」
 誰です? ねえ、保田さん。
 お姉ちゃんって…明日香ちゃんに、そんな近い関係の人がいるんですか? 誰
ですか?
「……石川…あんた、ちょっと目が怖いって……」
138 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)14時04分54秒
 自室でグッタリしてた。
 ホテルから家まで、歩いて帰ったんだから当然か。
 もう朝日も昇っちゃってるし。
 ……梨華ちゃんからの電話。
 本当は会いに行きたかったよ。

 でも……「梨華ちゃんへの愛を貫いてみせる」なんて言っちゃって。
 自分の身さえ守れない私が、そんなこと言ったって、何の説得力もないよね……。
 情けないったら……梨華ちゃんに甘えてちゃいけないんだ。
 そう自分に言い聞かせた。
139 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)14時05分28秒
 時計を見たら七時半。
 ふと気づいて、電源を切りっぱなしだった携帯電話に手を伸ばす。
 電源を入れて、机の上に置こうとしたら、突然鳴った。
 液晶パネルには、懐かしいあの子の愛称が表示されてた。
 一瞬迷って、「通話」ボタンを押す。

『もしもしぃ? 明日香? 久しぶりぃ〜元気だった?』
「…うん……何とかね……相変わらず忙しそうだけど、なっちは大丈夫?」
『な〜んも。なっちは、いっつも元気バリバリさぁ』
「そっか……相変わらず、イモ全開ってか」
『なぁっ! ひっど〜い。イモ言うな!』
 すごく自然に二人で笑った。
140 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)14時06分19秒
 なっち。
 不思議な人だよね。
 第一印象は優等生。でも違ってた。
 感情むき出しで、笑って泣いて怒って……。
 私と正反対だった。

 なんでか知らないけど、最初っから私のこと気に入ってくれてたみたいだし。
 東京出てきたばかりのころは、道案内代わりに買い物につき合わされたり。
 何かあると、すぐに「明日香」「明日香」って。
 ちょっとうざったくて、それでも嬉しかった。
 何か…そう……お姉ちゃん…みたいだった。

『今日、午後から仕事に出るんだけどさ、それまでに料理でもしよっかなって…
…一人じゃなんだからさ、明日香、食べに来ないかい?』
 そんな風に、なっちに誘われて出掛けて行った。
 家にいても、嫌なことばっかり考えちゃうし……。
 はっきり言って、現実逃避っぽい感じだった。
141 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)14時06分58秒
 なっちの家に着いたら、もうテーブルの上に料理が並んでた。
「相変わらず家庭料理しか作んないんだね…全っ然っアイドルっぽくないんだけど……」
 肉じゃがにおみそ汁、ひじき……。
 別にいいんだけどさあ、こう…もうちょっと、パスタとかさあ……。

「なあに言ってるかなぁ、こういうのが身体にいいんだって」
「はいはい…なっち、また訛ってるよ」
「訛ってる言うな!」
 昔とちっとも変わらない会話に、安心して心の底から笑えた。嬉しかった。

「明日香……梨華ちゃんとつき合ってるんだって?」
「え?」
 思わずなっちを見つめちゃった。
 きっと私の目、まん丸だったと思う。
「…あ…その…つまり……」
 ちゃんと答えられなかった。

 別に梨華ちゃんだからってことじゃなくて、相手が誰でも、なっちにそういうことを知られるのが…恥ずかしかったんだ。
 気まずいよ。
 何て言うか……デートしてる途中で、偶然、家族にバッタリ出会っちゃった感じ……。
 悪いことしてるわけじゃないのに、「やばいっ!」って思っちゃうんだよね。
 何でだろう……。
142 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)14時07分44秒
 なっち、ため息なんてついちゃってる。
「明日香もおっきくなっちゃったんだねぇ……」
 いや…そんなに幼くもなかったと思うんだけど……。
「それも、相手がよりにもよって梨華ちゃんだなんて……」
 それはちょっと失礼って言うか、梨華ちゃんのどこが悪いの。
 少しムッとした。

「あ、ちょっと怒った? ね? 怒った?」
 興味津々って目で笑ってる。
 あんたは子どもか!
 ふんっ!だ。答えてなんかあげないんだから。
 プイッと横を向く。

「…だったらさぁ……何で電話に出てあげないの? 話し合わないの?」
 息が止まりそうだった。
 なっち……昨日の夜のことも知ってるの?
「詳しくは知らないよ…でも、梨華ちゃん、どうしたらいいかわからなくなって、
圭ちゃんに相談してきたって……梨華ちゃん……泣いてたって……」

「…ウソ……」
 泣いてた?…梨華ちゃんが?……どうしよう……。
 私が勝手に強がって、梨華ちゃんに迷惑かけたくなくて、全部、自分一人で解決
したくて……梨華ちゃんにつらい思いをさせちゃった。
 泣き出しそうな私を見て、なっちは言った。
143 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)14時08分23秒
「ウソ」
 はあっ?!
「梨華ちゃんが泣いてたっていうのはウソだよ」
「なぁっちぃっ!」
 首を絞めそうな勢いで詰め寄る。
「怒るくらいなら、梨華ちゃんのところに行ってあげな」
 私よりもっと、なっちの方が怒ってた。
「今から梨華ちゃんのところに行ってあげなよ」

 そうだよね。その方がいいよね……。
 わかってるんだぁ、そんなこと。でも…でもなんだよ。
「…今さら泣き言なんて言って、梨華ちゃん…私のこと嫌いになったりしないか
な?」
「なぁに言ってるかなぁ……」
「だって!…だってさ…私が…そんな自分…嫌いだもん……」
 うなだれる私を見て、大仰にため息をつく。
 それから何かを言おうとして……突然、電話が鳴った。
144 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)14時09分06秒
「もしも〜し…うん、なっちだよ…うん…うん…えぇ〜!…まだダメだよぉ……」
 チラッと私の方を見る。
 誰から? もしかして……。
「マジでぇ?!…しょうがないなぁ……うん、わかった…うん…それじゃあねぇ」
 受話器を置いたなっちが、意味ありげにほほ笑みながら、私に聞いてきた。
「電話、誰からだったと思う?」
 まさか! 梨華ちゃん? でも…切っちゃった……うそ〜! 謝れたかもしれな
いのに……。

 ニヤニヤしてるなっちが恨めしくて、わざと違う答え を返した。
「け…圭ちゃん…かな」
「当ったり〜!」
 何だよ〜!
 気をもたせといてさぁ…なっちの意地悪〜!!
145 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)14時09分47秒
 にらみつける私に対して、なっちは平然としたもの。
「圭ちゃんがね、貸したままのDVD、早く返せ!って」
 そんなこと、私の知ったことか!
「明日香、これ返してきてよ」
 ハイッとDVDを手渡される。
「何で私が……」
 文句を言う私の顔の前でパシッと手を合わせる。
「お願い!…だってさぁ、今日、なっちと圭ちゃん、別々の仕事だし……もうそろ
そろ出ないといけないしさぁ…人助けだと思って…ね? お願い!」

 今度は、私がため息。
 人助け…ねえ……。
「…いいけど……圭ちゃんの家に持っていけばいいの?」
「うん。ありがとね!」
 …なっちのこの笑顔に、私は弱いんだよね。
 さっさとなっちは奥の部屋。出掛ける準備を済ませる。
 一緒に部屋を出て、駅まで歩いた。
146 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)14時12分38秒
「あっ、そうだ」
 それぞれのホームに別れるときに、今思い出したって感じで話し出した。
 なっち…ちょっとわざとらしいぞ。
「圭ちゃんのところに、梨華ちゃんも来てるらしいから」
 えっ?…えぇ〜っ!!
「じゃっ! 頑張ってね〜」

「ちょっ…なっち!」
 混乱する私に、ビッと指さして言った。
「あくまで人助けだから」
 それだけ言うと、なっちはホームの階段を走って上っていった。
 ……やられた……。
147 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)14時13分14秒
 ドアの前に立ってた。
 五分くらい前からずっと。
 やっぱ入れないよ……。
 だってさあ…何て言ったらいいか…。
 まあ……
「ごめん…」
って言うしかないんだけどさ……。
 面と向かって言うとなると…勇気がいるよ。

 ガンッ。
 いったあ〜!
「明日香? ドアの前で何してんの?」
 圭ちゃん…急にドア開けないでよ……。
「大丈夫でしょ。手加減したんだから」
 おでこを押さえて涙ぐんでるのなんか全然気にした様子もない。
 ん? 手加減?!
 圭ちゃん、今のわざとやったの?
 ……ひでえ〜……。

「石川には出来ないだろうから、代わりにお仕置きをね」
 いや、お仕置きって……。
「そんなこといいから、早く!」
 二の腕をつかまれて、部屋に引き込まれる。
 そこには…梨華ちゃんが立ってて……抱きつかれた。
 なっちのウソつき。
 梨華ちゃん、やっぱり泣いてるじゃない。
148 名前:JZA−70 投稿日:2001年08月28日(火)19時23分32秒
こんにちわ。羊なんか駄目みたいですね。
こちらへ全面的に移転でしょうか?頑張って下さい。
149 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)22時02分30秒
>>148
 全面移転のつもりです。
 頑張りまっす!
150 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月28日(火)22時03分14秒
 明日香ちゃんだ!…明日香ちゃん…明日香ちゃん…明日香ちゃん……。
「明日香…ちゃん…明日香ちゃ〜ん!」
 心で思ったことが、そのまま言葉に出た。
「…梨華ちゃん…ごめ…むぐっ?!」

 明日香ちゃんが何か言おうとしたみたいだけど、構わずキス。
 もう絶対に離さないんだから。
 柔らかい…温かい……。
 泣きながら必死に明日香ちゃんを感じた。
 よっすぃ〜になんか…よっすぃ〜になんか絶対!
151 名前:名無しあすりか 投稿日:2001年08月28日(火)22時03分47秒
あすりかがあってよかった。
作者さんこれからも頑張って
あと誰か石川福田組復活させてくれ
152 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月28日(火)22時03分59秒
 パシッ!
 いった〜い!
「いい加減にしなさいよ」
 保田さん、叩くなんてひどいじゃないですか〜。
「あのねえ…ひとん家で熱烈なキスなんてしないの!」
 呆れ顔の保田さん。

 でも…ちょっと顔が赤くないですか?
「うっさいわね! 明日香も困ってるでしょ」
「…梨華ちゃん…は…話をしようよ……」
 明日香ちゃん…可愛い……保田さんと違って。
 パシッ!
 いった〜い!
 だから保田さん、叩かないでくださいよ〜。
「さっさと座りなさいったら!」
153 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月28日(火)22時04分49秒
 明日香ちゃんの話はすごく簡潔で、一言で言えば「よっすぃ〜と話してたら急
に押し倒された」……それだけだった。
 でも、私にはその光景が何となく浮かんできた。
 自分の時とオーバーラップする感じで……。

 ただただ快感に身を委ねてしまう自分の弱さへの絶望感。
 奥深くで蠢く指に抗うことの出来ない悔しさ、屈辱感。
 呼吸すら、その指の動きの支配下に置かれて、自分が自分でなくなる恐怖感。
 一人取り残されて、ベッドで天井を見上げたあの日を思い出して、肌が粟立つ
のを止められなかった。

 その間も淡々と話す明日香ちゃんだけど、余計に痛々しいよ……。
 私なんか……涙が止まらないのに。
「こら。石川の方が泣いてどうすんのよ」
 保田さんに小突かれた。
「明日香のお荷物になりたいわけじゃないでしょ?…ただでさえ頼りないんだか
ら、泣いてちゃ明日香と一緒に歩けないぞ」
154 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月28日(火)22時05分43秒
 保田さんに言われて、必死に涙を堪える。
「あ、それで思い出した…石川、なっちから伝言があったんだよ」
 安倍さんから?
 何だろ?
「『明日、大学イモ作って来い』って」
 大学イモ?
「あ、私も食べたいな……」
て明日香ちゃん。
 大学イモが好きなの?

「『なっちが、味見してあげる』ってさ」
 保田さん、何でニヤニヤしてるんですか?
「頑張んなよ。すごい小姑がついちゃったから、大変になるよ」
 小姑?!
「『明日香に相応しくなかったら、すぐに別れさせる』ってさ。元気いっぱいだっ
たよ」
 そ…そんなあ……。
155 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月28日(火)22時06分49秒
「頑張ってくれたまえ、石川君。ま、そんなことはいいんだけどさ……」
「全然よくないです〜!」
 新たな二人の危機じゃないですか!
「石川が頑張ればすむことでしょうが。……ったく、狼狽えるんじゃないの!」
 保田さんにとっては、そりゃ、大したことじゃないかもしれないけど……。

「大丈夫、大丈夫。梨華ちゃん、料理上手だったじゃん」
 明日香ちゃんが、そういうなら……うん、大丈夫かも。
「そうかもね。私、頑張る!」
「…単純な子ね……」
 ポジティブ!
156 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月28日(火)22時07分36秒
「そんなことより石川、もう仕事に出ないと間に合わなくなっちゃうよ」
「え? もうですか? いやです、もっと明日香ちゃんと……」
 パシッ!
 あ痛っ!
 だから保田さん、叩かないでくださいよ。

「仕事第一!」
「私は明日香ちゃん第一です」
 パシッ!
 いった〜い!
 保田さん、今、本気で叩いたでしょ?

「ちゃんと仕事しない奴は、明日香とつき合う資格なんてないわ!」
 そ…そんなあ……。
「…分かりましたよ〜」
 小姑……安倍さんだけじゃなかった。
 前途多難…ね……。
157 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月28日(火)22時09分55秒
「明日香ちゃ〜ん……一緒に…行こう?」
 な〜んて言って、おねだりしてみたり。
「え?!……そんなわけには…いかないよ」
 がっかり。
 …やっぱり……ダメかなあ?……。

「いいじゃん。たまには楽屋に顔見せに来なよ」
 保田さんから、思わぬ援護射撃。
「ねえ、そうしようよ〜、明日香ちゃん。お願い…お願いだから……」
「今日だけ特別にさ。ね? この子にちゃんと仕事してもらわないと困るから
さ。頼むよ、明日香」
 ああ! 神さま、保田様。
 大好きです、保田さん!……明日香ちゃんの次の次の…次ぐらいに。
158 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月28日(火)22時10分42秒
「それに……」
 じっと考え込んでる明日香ちゃんに、保田さんが話しかける。
「明日香はともかく、石川は現役メンバーなんだし、二人のこと、正式にあいさ
つがあってもいいんじゃない?……少なくとも圭織と矢口にはさ……」
 保田さんは、「どう?」って感じで、明日香ちゃんの返事を待ってる。

「…でも……恥ずかしいです〜」
「石川は黙ってな」
 何でぇ?
 私も当事者なのに〜!
「味方は…多い方がいい…かもね」
「明日香なら分かってくれると思ったよ」
 保田さんはニッコリ笑ってる。

「味方って何ですか〜?」
 保田さん、何で私の顔見てため息ついてるんですか〜?
「…石川……あんたは、明日香のことを信じてたらいいの!」
 それなら自信ありますよ!
「……明日香…呉々もよろしくね」
 …だから保田さん。何でため息つくんですか〜?
159 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月28日(火)22時11分46秒
 保田さんがタクシーを呼んで、三人で乗り込む。
 何も言わずに助手席に座る保田さんに、もう一度感謝!
「明日香ちゃん…」
 手をつないで後部座席に二人で座る。

 明日香ちゃんの手は、ちょっとひんやり冷たくて、でもだんだん温かくなって
……。
 この温かさ、明日香ちゃんの?
 それとも…私の?
 きっと、二人の、だよね?

 そんなことを思いながら、明日香ちゃんの横顔を見つめてる。
 何か考え込んでるみたい。
 …綺麗……。
 明日香ちゃんは窓の外に目をやって、ふと気づいたみたいにこっちを見て……
私の視線を受け止めてニコッて笑った。
160 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)22時18分20秒
>>151
 温かい励まし、ありがとうございます。
 頑張りますよ!
 石川福田組…これは私にはちょっと…誰かぁ〜!(藁
161 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月28日(火)22時19分04秒
 ダメだ……何か…何でか、急にウルッてしちゃうよ。
 明日香ちゃんの顔が、ユラユラッて……。
 でも明日香ちゃん…そんなに心配そうな顔しなくていいんだよ。
 幸せだから…明日香ちゃんが隣にいて、幸せ過ぎるから…だから、これは嬉し涙で……。

 つないだ手を、明日香ちゃんがギュッて握り返してくれる。
 ありがとう…明日香ちゃん……。
 私、頑張るから……ね?
 口には出さずに、一生懸命に笑った。
 安心したみたいに明日香ちゃんも笑って……二人でほほ笑んでた。
162 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)22時20分02秒
「へ?!……」
「うっそ……」
 圭織と矢口はそう言って固まっちゃった。
 圭ちゃんに連れられて楽屋に行って……圭織と矢口に、梨華ちゃんとつき合っ
てるってことを伝えた。
 そしたら…こんな反応だった。
 まあ、無理もないけど。

「何で石川…なの?」
 あんた達もそんなこと言うのかっ!
 隣の梨華ちゃんの表情が強張るのがわかった。
 だからつい二人をにらんじゃう。
「圭織…リーダーだよね?」
「へ?…あ…うん……」
 目をパチクリしてる。
163 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)22時20分55秒
「リーダーがメンバーのこと、そんな風に言ってていいわけ?」
「え?…うんと……でも…裕ちゃんも……」
 何だか大きな体を縮こませながら答えてる。
「裕ちゃんは裕ちゃん。今のリーダーは圭織でしょ? で、圭織はそれでいいと
思ってるわけ?」
「…えと…その……ごめんなさい………」

 ふむ。よろしい。
 久方ぶりにお説教もいいもんだ。
「じゃ、そういうことだから、よろしくね。行こう、梨華ちゃん」
「え?…あ…うん」
 手を差し出すと、嬉しそうにつないでくる。
 やっぱ可愛いよ……こんな梨華ちゃんのどこが悪い!

 なっちや圭ちゃんにも言われて、ちょっと頭に来てたんだよね。
 まあ…あの二人には言い返せなかったけど……。
 これでスッキリした。
 圭織にはちょっと悪かったかもしれないけど……。
「……明日香…変わらないね」
 ドアの前まで来た時に、部屋の奥の方で矢口が圭織に話しかけてるのが聞こえて
きた。

「圭織…ヒサブリに明日香に会ったのに…お説教された……」
「…ま、これで梨華ちゃんも、もうちょっとしっかりしてくれるかもよ?」
「……そしたらさあ……圭織、石川にもお説教されるようになるのかな?」
 ………圭織も相変わらずだね。
「なんでやねん!」
 矢口…そのツッコミは違うんじゃない?
 心の中だけで何も言わずに、梨華ちゃんと手をつないだまま部屋を出た。
164 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)22時21分44秒
 ドアを出たら、廊下の向こうから「あいつ」が歩いてきてた。
 昨夜のことが脳裏をよぎって……表情が強張るのが自分でも分かった。
 梨華ちゃんも、私の表情や視線に気づいて、腕をギュッとつかむ。
「明日香ちゃん……」
「…大丈夫だから……」
 そっとつぶやいてる間に、「あいつ」と後藤さんが目の前に立っていた。

「おはようございま〜す」
「おはようございます」
 先に挨拶してくれたのは後藤さん。
「…こんにちは、福田さん」
「……こんにちは」
 余裕の笑顔で「あいつ」―吉澤―が声をかけてくる。
 それにしてもムカツク。
 私がもう芸能界とは無縁だってことを、殊更強調するように「こんにちは」だ。
 よそ者が何しに来たの?ってことか……。
165 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)22時22分39秒
「梨華ちゃん、きょうは明日香さんと一緒なんだあ。いいなあ……」
 後藤さんが、私と梨華ちゃんを交互に見ながらニコニコ笑ってる。
「ごっちんだって、よっすぃ〜と一緒じゃん」
 梨華ちゃんと後藤さんが、楽しげに会話をする間も、私とあいつは探り合うよう
な目で見ているだけ。

「エヘヘ〜。お昼、一緒に食べてきたんだあ。ねえ、よっすぃ〜?」
「…うん」
 ちょっとビックリした。
 吉澤が、後藤さんを見る目の優しさに。
 こいつもあんな目をするんだ……。
 私を見つめた、あの冷たい目との違いに戸惑いを感じて、ますます、こいつのこ
とが分からなくなってた。

「…でも…やっぱりちょっと、うらやましいなあ……」
 後藤さんの視線は私と梨華ちゃんがつないだ手に注がれて……。
「明日香さん、頼りになりそうだもんね」
「え、よっすぃ〜だって守ってくれそうで頼りがいありそうじゃない」
 梨華ちゃんがそう言うと、プクッと頬をふくらませる。
「でも……私がせがまないと、手、つないでくれないもん……」
166 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)22時23分36秒
 手もつながない?
 あまりに意外で、私は梨華ちゃんと目を見合わせた。
 そのまま視線は吉澤の方に。
「手…手なんてつながなくても…一緒にいられればいいじゃん…それだけで…幸せ
だから……」
(なんてクサイことを……)
 私はそう思ったけど、後藤さんは違ったみたい。
「そ…そうだね……」
 すごく嬉しそうで……私は(知らぬが仏とはこのことか)と思ったけどさ。

 でもその一方で、吉澤のその言葉が本気だとも感じた。
 何なんだろうね…こいつは。
 誰かのイメージが重なるようで……浮かんできたのは梨華ちゃんの顔だった。
 違う、違う!!
 何でこんな奴と梨華ちゃんが……。
 慌てて、そのイメージを消し去った。

「もう…恥ずかしいから早く行こうよ!」
 吉澤が言いながら後藤さんの背中を押す。
「え? せっかくお話ししてるのに……梨華ちゃん、また後でね」
「あ、うん。後で」
 二人は楽屋に入っていって…吉澤は、最後にこっちをにらんでた。
 私は(負けるか!)って、にらみ返してやった。
167 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)22時24分34秒
 その後、私達は屋上に出た。
 梨華ちゃんが、行きたいって言うから。
「…ねえ…梨華ちゃん……やっぱ暑いよ……」
 午後の太陽が屋上のコンクリートを焼いていた。
 何とか日陰を見つけて逃げ込んでたけど、それでも暑かった。

「ごめんね……二人きりになりたかったから……」
 ほとんど体温に近い熱風が、梨華ちゃんの髪をなびかせて……見つめる梨華ちゃ
んの目が……私を求めていた。
 この目で見つめられると、もう私は何も言えない。何も出来ない。
「…明日香ちゃんが…ここに本当にいるのか確かめたいの……」
168 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)22時25分23秒
 梨華ちゃんの顔が近づいてくるのに合わせて、ちょっと上を向いて目を閉じて…
…唇を通じて一つになる。
 閉じたまぶたを通して、濃い肌色の光が網膜を刺激する。
 梨華ちゃんの好きなピンクに、二人おそろのピアスの梨華ちゃんが選んだ黄色を
混ぜたら、きっとこの色になる。
 それは今、私が生きている証となる色だ。

 私の唇をついばむようなキスは、梨華ちゃんが生きている証。
 私、梨華ちゃんの唇、柔らかくて好き。
 だから、私からキスをやめることも出来ない。
 かと言って、私の方からそれ以上は何も出来ないんだけど……。
 上下の唇の合わせ目に沿って、す〜っと梨華ちゃんの舌がなぞる。

「開け〜ごま!」
 何の抵抗もなく私の唇は開いて、簡単に侵入を許してしまう。
 でも、それでいいんだ。
 だって、梨華ちゃんは私へのフリーパスを持っているから。
 滑らかに触れ合って、私の「今」を確かめてる梨華ちゃんに、完全に身を任せて
……もう足元が不確かだった。
169 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)22時26分03秒
 そっと唇が離れて……途端に心細くなった。
「明日香ちゃん…ちゃんといたね……私の傍に……」
 その梨華ちゃんの言葉で、急に嬉しくなった。
 振り返ったそこに、求めていた母さんの笑顔を見つけた時みたいに……。
 だから、子どもが母親に抱きつくみたいに、ギュッてした。

 梨華ちゃんも私をギュッてしてくれて……抱き合って、暑かったけど…温かかった。
 ジワッて汗が出て、接着剤みたいに、交差する腕と腕、頬と頬がピタッとくっつく。
 それがまた嬉しくて、背中の方から胸の奥へキュ〜ッと切なくなる感じで……。

「…降りよっか」
「……うん……」
 名残惜しくても最高に幸せな気分で、また手をつないで歩いた。
 ……あいつを見るまでは。
170 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)22時26分53秒
 下へ通じる階段のドアを開けて、あいつは立ってた。
「へえ…お暑いことで……」
 手をパタパタさせて、ヘラヘラ笑ってた。
 視線に毒をたっぷり含ませて。
「梨華ちゃん、そろそろ衣装に着替えないと間に合わないってさ」
「…ありがとう……」

 躊躇いがちにお礼を言う梨華ちゃんの手を引いて、私は吉澤を無視して階段を
下りようとする。
「ねえ……二人とも不潔なんだから、ごっちんに近寄らないでよね」
 すぐ後ろから吐き捨てるように言い放つ。
「不潔って、何言ってんのさ!」
 無視できずに喚いちゃった。

「不潔がイヤなら、汚れてる……」
「汚れてなんかないよ!」
 数段下りたところから、にらみつける。
「汚れてるよ…あんた達は汚れた関係だよ」
 逆光を背負って、吉澤も敵意をむき出しに私達を見下ろしてた。
171 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)22時27分50秒
「キス…セックス…あんた達は、肉体でしか、欲望でしか、つながってない汚れた
関係なんだよ」
「違う!!」
 一段一段下りてくる吉澤に、噛みつくような言葉を浴びせて……私たちを抜き去
ろうとする直前に、平手を飛ばした。

 バシッ!
 腕と腕がぶつかって、悔しいけど私の手は吉澤の顔には届かなかった。
 そのまま反対に腕をひねられて、私の方が壁に押しつけられる。
 苦痛よりも屈辱感が私を支配して……それでも負けたくなくて……。
「私達が汚れてるなら、あんたは何なのさ?!」

 その言葉は吉澤に届いて、どこかを直撃したみたい。
 急激に吉澤の表情が変わっていく。殺されるんじゃないかと怯えが走るほどに
殺気を帯びて……。
「やめてっ!」
 それまで真っ青な顔をして無言だった梨華ちゃんが、必死で私をかばってくれた。
172 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)22時28分26秒
 静寂が時をせき止めて……。
 再び流れ出したときには、吉澤は意外に力なく私の腕を離して言った。
「……私は…あんた達にむかついたから……もっと汚してやったんだ……」
 それは何だか自嘲的で……急に吉澤がしぼんだように感じられた。

 私達に背を向けて階段を下りていく。
「そんなの……」
 背中があんまりにも寂しそうだったから、言うのが躊躇われた。
 それでも言ってしまったのは……何故だろう。
「そんなの……あんただって汚れてるじゃない」
 一瞬、足を止めて……すぐにまた歩き出す。
「……そうかもね……」
 聞こえるか聞こえないか…たった一言を残して、あいつは去った。
173 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)22時29分09秒
「明日香ちゃん…大丈夫?」
 無言で肯く。
 悔しくて声も出なかった。
 その上、混乱してた……あいつが最後に見せた姿に。

 あいつも寂しいんだ…何で?
 何かがおかしい。
 どうしようもなく吉澤のことが頭に渦巻いて……消しても消しても、梨華ちゃん
とイメージがダブっていった。
 どこが? 何で?
 分からない……分からないよ。

 黙りこむ私を見つめて、梨華ちゃんがそっと手をつないでくれた。
「行こう、明日香ちゃん」
 コクンと肯く。
 そのまま階段を降りて、楽屋へと戻る。
 丁度、衣装に着替え終わったメンバーがドアから出るところだった。
 圭織や矢口、圭ちゃん、後藤、それから…吉澤も。
174 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)22時29分48秒
「石川、急いでね」
「は、はい!」
 圭織にそう答えてから、心配そうに私を見る。相変わらず無言で、うつむいて
る私を……。
 吉澤の視線も感じる。
 でも、私は吉澤の顔を見ることが出来なかった。
 どんな目で見られてるのか……怖くて。

「私…行くね?」
 梨華ちゃんは急いで着替えて、それでも私に優しく声をかけてくれた。
「ん……」
 なのに私はそんな返事しか出来なかった。
 言葉にすらなってない。
 心配そうに梨華ちゃんが出ていって、私は楽屋で一人になった。
175 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月28日(火)22時30分46秒
 いろんな吉澤が浮かんでは消えていった。
 人を見下すような冷たい笑い。
 反対に穏やかな温かい笑顔。
 ゾクッとするような妖艶な表情。
 苛立ち。怒り。
 そして…さっき見た寂しげな背中。

 でも、当たり前だけど、吉澤は吉澤で。
 さっきから感じてる梨華ちゃんと重なるイメージは、そのどれでもなくて。
 だから余計に混乱して、でも、そこに答えがあるような気がして、必死で考え
続けた。
 楽屋で一人ポツンと座って、そのことだけを考え続けてた。
176 名前:JZA−70 投稿日:2001年08月29日(水)01時01分31秒
始めからまた読んだのれす。いてんがすすんで良かったのれす…(涙)
ひつじすれ、ずっとひらけなかったのれす…(;´D`)<うあ゛〜ん。
やすなち姉さんに期待してるのれす。さくしゃさんもがんばるのれす。
177 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2001年08月29日(水)07時33分07秒
>>176
 おぉっ! こちらでもお目にかかれるとは……。
 作者も嬉しいのれす(あ、うつった)
 頑張りまっす!
178 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月29日(水)07時34分35秒
 あんまり集中できないままのテレビ収録が終わって楽屋に戻ったら、まだ明日香
ちゃんは考え込んでた。
 よっすぃ〜のこと、ずっと考えてるんだね。
 ちょっと……ジェラシー……。

 解決しなきゃいけない問題だってこと、わかってるよ。
 でも、私のことも見てほしいよ。
「ねえ、明日香ちゃん」
「…ん〜………」
 もう……ちょっと泣きそうになっちゃうよ。
 ようし! こうなったら……。

 明日香ちゃんは一点集中。
 話しかけてもちゃんと耳に入ってないんだから……それなら家に連れて帰っちゃ
うよ。
「お先に失礼しま〜す」
 明日香ちゃんの手を引いて楽屋を出る。
「ちょっと石川!」
 保田さんが呼び止めるけど……。
「後で連絡します」
 そう言ってさっさと歩いていっちゃう。
179 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月29日(水)07時35分40秒
 タクシーで一気にわが家へ。
 その間も、明日香ちゃんは難しい顔して黙り込んでる。
 いいもん…それなら私にも考えがあるんだから。
 絶対に私のことだけを考えさせちゃうんだから!
 もう意地になってた。

 タクシーが私のマンションの前に停まったとき、
「あれ? 梨華ちゃんのマンション……」
ってキョロキョロしてる明日香ちゃん。
 可愛い……じゃなくて。
 今度は私の方が無言で、明日香ちゃんの手を引いて降りる。
「梨華ちゃん…私、家に帰らないと……」
 そう言う明日香ちゃんを、半ば無理矢理に部屋まで連れていった。

 グイグイ手を引いて、ベッドの前のカーペットに手をつないだまま、二人でペ
タンと座る。
「梨華ちゃん?……」
 頭の上に「?」をいっぱい浮かべた明日香ちゃんが、私の顔をのぞき込んでる。
「あんまり、よっすぃ〜のこと一生懸命に考えないで!」
 私の言葉に、最初キョトンとして……それから困った子を見る目になる。
180 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月29日(水)07時36分47秒
 わかってるよ。わかってる。
 明日香ちゃんがよっすぃ〜のことを考えるのは、私たちのためでもあるんだ
よね。
 でも…それでもイヤ!
「私のことだけ考えてほしいの!」
 何か答えようと明日香ちゃんが口を開く前に、顔を寄せた。
 真っ直ぐに明日香ちゃんの瞳を見て、ゆっくりと。

 こういう時、明日香ちゃんは絶対に私を拒まない。
 今もそう。
 大人っぽい思慮深げな瞳だったのが、急に子どもみたいな目になって私を見
る。
 それから、ちょっと上向き加減に目を閉じて……私の唇を受け止めてくれた。

 私、明日香ちゃんの唇、しっかりしてて弾力があってスキ。
 だから、ついばむように唇の心地よい感触を確かめて……。
 どこまでも明日香ちゃんを感じたくて、舌で唇の合わせ目をツツ〜ッとなぞ
る。

「おいでよ」
 誘うように唇が開いて……迷わず入り込んで明日香ちゃんを確かめちゃう。
 それでいいよね?
 だって、明日香ちゃんは私がすっごい寂しがり屋だって知ってるもんね。
 しっかり私を受け止めてくれて……もう私は自分でも止められなくなってた。
181 名前:名無しさん 投稿日:2001年08月29日(水)15時54分02秒
やっとたどりついた。ここ何日かあすりか不足で死にそうだったよ。マンセー!
182 名前:まぁち      投稿日:2001年08月29日(水)18時18分06秒
すっげーおもしれー!!!!
作者さん、がむばってください!!
183 名前:名無し屋さん 投稿日:2001年08月29日(水)22時23分28秒
やっぱり、いいねぇ・・
184 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2001年08月29日(水)22時41分25秒
>>181
 ようこそ!
 まだ復活させてる途中で、新しい部分には踏み込んでませんが、
「あすりか」は補充できたでしょうか?
>>182,183
 ありがとうございます。がむばりまっす!
185 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月29日(水)22時42分27秒
 こうして向かい合ってキスをしている間は、絶対に明日香ちゃんの頭の中は私の
ことだけ。
 だって明日香ちゃん、すごくウットリした表情をしてる。
 私だけの明日香ちゃん。
 もっともっと、私を明日香ちゃんの心に刷り込んでいくの。

 明日香ちゃんの肩に沿って指を這わせて、キャミっぽいワンピースの肩ひもを片
方ずつ落とす。
 そのまま脇の下から、ゆっくりとワンピースを下ろしていく。
 くすぐったそうに眉を寄せて体をくねらせる明日香ちゃんが、また可愛いの……。
 ずっとキスをしままで、ワンピースを腰まで下ろして、そこから手を背中の方へ
と回す。
186 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月29日(水)22時43分46秒
 明日香ちゃんのなめらかな肌をすべって、指がホックに届く。
 ホックを外して手を離すと、ストラップレスのブラが落ちる。
 それと同時に、そっと唇も離して、明日香ちゃんの顔からゆっくり下へと視線を
動かしていく。
 鎖骨の辺りから、なだらかに登って濃い桜色の頂上。そこからお腹の方へは急傾
斜。
 真ん丸の弧を描くバストの輪郭線・バージスラインがクッキリ。
 明日香ちゃんのバストって、本当に「豊かな胸」って感じで、私、大好き。

 明日香ちゃんは胸と唇が一挙に解放されて、何だか心細そうな目をして、「…
ハァ〜……」って吐息。
 丁度、私は腰を浮かせて首筋に唇を当てようとしてた。
 なのに、その吐息の艶っぽさが耳の奥に響いて、ゾクゾクッてしてカクッて腰が
落ちちゃった。
 そのまま胸に顔を埋める感じでチュッて……ふわって柔らかくて、これはこれで
いい感じ。
 でも明日香ちゃん、吐息が色っぽすぎだよ。
187 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月29日(水)22時44分43秒
「ん……梨華ちゃ…ん……」
 もうさっきまで自分が何を考えてたのかなんて、どっかに行っちゃって、梨華
ちゃんのことしか考えられなかった。
 キスを通して、唇から、胸元から、梨華ちゃんがいっぱい私の中に入ってきて、
梨華ちゃんの色に染まっていく私。
 もっと…もっと私を染めてほしい。
 他の色がなくなるくらいに……。

 そんなフワフワした頭と視界で、何とか梨華ちゃんの服のボタンを外していって、
二人で上半身だけヌードな状態。
 でも、梨華ちゃんが私の胸にキスしてるから、背中しか見えない。
 ズルイ!
 私だって、梨華ちゃんの大きくてキュッと締まった胸が大好きなのに……。
 だから梨華ちゃんの背中に覆い被さるようにして、腕を脇から伸ばして……。
188 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月29日(水)22時45分43秒
 急に光がかげったような気がしたら、ふわって胸を包まれて、いきなり乳首を
クリクリッてされて……。
「!…っふぅ…ん……」
 声は出たけど、背中から抱きすくめられてるから、ビクッと体を震わせるのが
精一杯で……。
「ん…ん…あっ!…ダメ…んぁっ…ダメ〜!!」
 ズルイよ、明日香ちゃん!

 よぉしっ……それっ!
 明日香ちゃんの腰に手を回して、引き寄せながら横倒しに。
「キャッ!」
 寄り添うように寝転がったら、私の目の前には明日香ちゃんの胸。
 私の胸は明日香ちゃんの手よりずっと下。
 一石二鳥とはこのことよね?
「もう! 梨華ちゃ〜ん」
 可愛い声を出してもダメだもん。
 いっぱい愛してあげるんだから。
189 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月29日(水)22時46分24秒
 明日香ちゃんの桜色の乳首をついばむ。
「ん!!」
 声を飲み込んで、私の肩を両手で押して仰け反ろうとするけど、私も腰に回した
腕に力を入れて離さない。
 舌でチロッて舐めると、ツンッて自己主張する乳首が舌先に引っかかって、それ
が心地いい。

 明日香ちゃんは、私の頭を抱えるようにして身を震わせてるだけ、なんだけど……。
「ふっ…あぁ…ん……あん……」
 …だから明日香ちゃん、声が色っぽ過ぎ。
 その喘ぎに直接神経を愛撫されて……私も濡れちゃってた。
190 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月29日(水)22時47分12秒
 最初は温かいって感じた梨華ちゃんの舌の温度そのままに、私の胸の突起も同化
して、その動きがゾクッとした快感と直結してた。
 梨華ちゃんの舌に置いて行かれないように、必死で後を追う突起が表面を撫でら
れて、限界を超えて張り詰めてる。

 私の意思とは無関係にヒクヒクと蠢き始めるその突起も。
「あ…ふぁ…はあっ!…ぃゃん…あふ……」
 止めど無く口からこぼれる喘ぎも。
 濡れた期待に満ちた私の女の子そのものも。
 すべては梨華ちゃんのお気に召すまま。
191 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月29日(水)22時49分16秒
 真っ白だった明日香ちゃんの肌が、あっという間に朱に染まってく。
 私の唇が動いて、肌に朱を入れていく。
 「大スキ」って文字を。
 明日香ちゃんも、それに答えてくれてる。
 一生懸命に感じて、声で、体で、「私も好きだよ」って。

 明日香ちゃんの指が髪をすき上げるように私の頭を撫でて、時に走り抜ける快感
に耐え兼ねて、ギュッと抱き込む。
 明日香ちゃん…気持ちいい?
 ねえ、気持ちいいでしょ?
 コクコクと可愛く肯くのを見て、自分自身も高ぶりながらもっと下へと手を伸ば
した。
192 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月29日(水)22時50分02秒
 フワフワと漂ってた。
 梨華ちゃんと自分しかいない世界で、重力さえも無く漂ってた。
 身体の芯がカッカと熱くて、今にも熔けそうだった。
 それなのに、梨華ちゃんの手がおへそを通り過ぎるのを感じて、こめかみに更な
る熱が走って……。

 ショーツの中を指が這い寄って来るころには、快楽を求める花の蕾は開ききって
た。
 梨華ちゃんの指は、「早く遊んで」と顔を出す小さな子の頭を軽く撫でてあしらっ
て……。
 更に指が進んだ時に、私に落雷が直撃。
 二人の世界に崩壊が起きた。
193 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月29日(水)22時50分49秒
 息を詰めてそこに触ろうとしたら、明日香ちゃんがすごい勢いで仰け反った。
 それは快感によるものじゃなくって。
「ぐっ……ごめん…痛いの…梨華ちゃん……痛い……」
 私から逃れるように転がって、丸くなって震えてた。

「あ…明日香ちゃん……どうしたの? 痛いって……」
 首を振るだけの明日香ちゃんだったけど、押さえる手が痛みの場所を示してた。
「何で?……私?…痛くした?」
 明日香ちゃんは、やっぱりふるふると首を振るばかりで……痛みに耐えてるその
姿を見ただけで、揺れる涙で目が曇っていった。
194 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月29日(水)22時52分07秒
 ジンジンと鈍痛を訴えるそこが、ヒクヒクと引きつるように震えてる。
 昨夜、吉澤の前で同じように手で押さえて丸くなってた自分を嫌でも思い出す。
 惨めだった。
 何だか吉澤に負けたような気がして……。
195 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月29日(水)22時52分39秒
「明日香ちゃん…大丈夫? まだ…痛い?」
 とにかく明日香ちゃんをベッドに寝かせて、でも、枕元でオロオロするばかり
で……。
「大丈夫…血とか出てるわけじゃないし……」
 でも…でも…まだ痛そうだよ〜……。

「…明日香ちゃん…痛いのって…よっすぃ〜?」
 どうしても知りたくて聞いちゃった。
 コクンて肯いて、明日香ちゃんはポツポツと話してくれた。
 涙が止まらなかった。
196 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月29日(水)22時53分27秒
 今朝聞いたときは「よっすぃ〜に襲われた」ってことしか話してくれなかったか
ら、そこまでひどいとは思わなかった。
 濡れてないあそこに、いきなり指を入れるなんて…ひど過ぎる。
 私なんて話を聞いただけで、もう耐えられそうにないよ。

「明日香ちゃん…ごめんね……痛いの知らなかったから……」
 でも、私最低だよね。
 明日香ちゃんの意思も確認しないで、「明日香ちゃんは、私のこと絶対に拒まな
いから」って……。
 無理やり襲ったのと変わらないよね。
197 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月29日(水)22時54分29秒
 泣かないで、梨華ちゃん。
 梨華ちゃんは全然悪くないじゃん。ね?
「そんなこと…ない…やっぱり私は…明日香ちゃんに触れちゃ…いけなかったんだ
よ」
 ポロポロ涙をこぼして首を振ってる。

「明日香ちゃんが欲しくて……こういうやり方しか…知らなくて……やっぱり私…
汚れてる…ね……」
「そんなこと…言わないで……」
 梨華ちゃんの頬に手を伸ばして、涙をせき止めようとして……でも、涙は次々に
流れてきて……。
 その姿が私の頭の中で、また吉澤とダブって見えた。
198 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月29日(水)22時55分09秒
 ベッドに横になって天井を見上げて、何か考え込んでる明日香ちゃん。
「私ね……」
 上を向いたままポツッて。
「ずっと…吉澤のこと…考えてみたんだけど……」
「……うん」
 知ってたよ。
 だからちょっとジェラシー感じて……。

「こんなこと言ったら、梨華ちゃん怒るかもしれないけど……」
 チラッと私の方を見て、躊躇ってる。
 私は小さく首を振って答える。
「…あのさあ……梨華ちゃんと吉澤が……ダブって見えるときが…あるんだよね……」

 よっすぃ〜と、私が?
「見た目とか、そんなんじゃなくて…何て言うか……陰の部分?」
「……どうせ、私はネガティブだもん……」
 いじけちゃいそうだよ…。
「いやいや、そうじゃなくって」
 明日香ちゃん、慌てちゃってる。…可愛いいなあ。
199 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月29日(水)22時55分55秒
 やばい! どうしよう!
 梨華ちゃんを傷つけちゃったよ〜。
 何て言えばいい? 何て言えばいいんだろ…。
 考えろ…考えろ……よしっ!
「わ…私が言うのはさあ…吉澤も…本当の愛を探してるんじゃないかな…って思っ
て……」

 今度は、何だかピンと来ないって顔してる。
「でも…よっすぃ〜は学校でモテモテのプレイガールだったって…あ、これは保田
さんが言ってたんだけど」
「だから…余計にそうなんじゃないかなあ……」
 あ…余計に「?」って感じ。
 私の話し方って分かりにくいのかなあ……。
200 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月29日(水)22時56分52秒
「だからね……」
 明日香ちゃん、何だか学校の先生みたいな話し方になってるよ。
「これまでは、吉澤は本当に人を好きになったりしたことがないんじゃないかなぁっ
てこと…周りから告白されてばっかりでさ……」
 ふ〜ん…それはあるかも。

「だから…そのお…快楽を得るためだけの…セックス…とか……」
 ちょっと「セックス」って言うとき、躊躇っちゃうのが明日香ちゃんの可愛いと
こね。
「……そんな吉澤が、本気で後藤さんを好きになってしまった……」
 人差し指を立てて、空中にポイントを書き出すみたいに動かしてる。指マーカー
だね。

「でも!…でも、吉澤には後藤さんを、どう愛したらいいのか分からない……」
 指のマーカーで空中の一点を指してる。「はい!ここ重要」って感じ。
「でもさあ、明日香ちゃん……そこまではわかるけど、じゃあ、何で私達に…あん
なことしたのかなあ?」
「う〜ん…そこが、分っかんないんだよね……」
 さっきまでマーカーだった指を頭に持っていって、今度は櫛がわりにワシャッと
乱暴に髪をかき上げる。
 カッコイイ!
201 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月29日(水)22時57分48秒
 ホンット、吉澤って分っかんないんだよね。
 そんなことを思って、チラッと梨華ちゃんを見たら、ほわって私のことを見てた。
 口元が何となく笑ってて……すごく…可愛かった。
「梨華ちゃん……」
「ん? なぁに?」
 あんまり可愛かったから……。

「あのさあ……あのぉ……」
「? 明日香ちゃん、どうしたの?」
 …欲しく…なっちゃったんだ。
「…ちょうだい……」
「……何を?」
 だから…その…可愛らしいもの。
「……梨華ちゃんの…唇……」
 すごくビックリした表情が…すぐに寂しそうな表情に変わった。
202 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月29日(水)23時01分04秒
「…ダメ…だよ」
「何で?!」
 だって…だってね、今、明日香ちゃんが私を見たとき、すごく純粋な笑顔だった
んだもん。
「私…汚れてるから……」
「だから! そんなことないって!!」
 明日香ちゃんが、グワッて上半身を起こした。

 だって…ちょっと触れただけで、汚れちゃいそうな…純白の笑顔だったから。
 でも、それ以上言葉にするとあまりに自分が惨めで悲しいから、首だけを激しく
振った。
「……梨華ちゃん」
 見ると明日香ちゃんが、すごい怖い顔で見てた。

「梨華ちゃん、私のこと……好き?」
「好き。大好き」
 これは即答できるよ。
 今は、それだけが私の支えだから。
「でもね、梨華ちゃん……私のこと以上に、梨華ちゃん自身のことを好きでいてほ
しいんだ」
 明日香ちゃんの厳しい瞳は、吸い込まれそうに澄んでた。
 やっぱり私なんかが触れちゃいけない……そう思っちゃうほど汚れのない瞳だった。
203 名前:焼き銀杏 投稿日:2001年08月29日(水)23時02分06秒
 私だって梨華ちゃんのことが大好きだから……。
 だからこそ、不安そうに私を見つめる梨華ちゃんに言わなきゃ。
「自分のこと嫌いな女の子なんて……魅力なくなっちゃうよ。梨華ちゃんには、
そうなってほしくないから……」
「うん…でも……」
 梨華ちゃん、ネガティブ・サイクルはもう止めようよ。

「でもじゃなくって! 『汚れてる』って…そんなこと全っ然ないじゃん! 少
なくともその時は、梨華ちゃんは相手の人のこと…好き…だったんでしょ?」
 ウルウルしながら肯いてる。
 ……そんなに可愛く認められちゃうと…嫉妬心が出てくるのは仕方ないよね。
204 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月29日(水)23時03分06秒
 思わず肯いちゃったけど……まずかったかな?
 明日香ちゃんの目が…何か…怖いよ。
「……ジェラシーは…感じちゃうけどさ……でもでも、汚らわしくはないよ! 
だって…もしそれが汚らわしいんだったら……」
 明日香ちゃん、ちょっと拗ねたみたいに目をそらして……。
「…私との…キスもさあ…汚らわしいことに…なっちゃうじゃん……」

 もう、涙を我慢できなかった。
「ごめんね…ごめん、明日香ちゃん…ありがとね……」
 何て言っていいかわからなくなってて……とにかく、そんな風に訳のわからな
い返事をしてた。
「もう『汚れてる』なんて言わない?」
 明日香ちゃんがそう尋ねたから、私は一生懸命に涙をぬぐいながら肯いた。
205 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年08月29日(水)23時05分00秒
 そしたら…明日香ちゃんがパタッてまた上半身を倒して……。
「じゃあさあ…あの……いいかな?」
 一瞬、何のこと言ってるのかわからなかったけど、明日香ちゃんの顔を見たら、
すぐに理解できた。
 だって、さっきまでと一変して、幼くって可愛い笑顔で、恥ずかしそうにモジ
モジしてたから。

「うん」
 そう答えたら、明日香ちゃん、ちょっとあごを上げて目をつぶって……ポッて
上気した感じで、私を待ってる。
 あんまりにも明日香ちゃんが可愛らしくて……すごい幸せな気分だったから、
また泣いちゃった。
 そのままゆっくり顔を近づけて…だから涙味のちょっとしょっぱいキスだった。
206 名前:名無し娘。 投稿日:2001年08月30日(木)00時00分59秒
205レス迄で、212239KBあります。
もしキリが良ければ、次のスレに移った方が鯖には優しいと思われます。
などと自治厨がましいことを言ってみたり。。。
207 名前:名無し娘。 投稿日:2001年08月30日(木)00時03分16秒
>>206
間違えた、KBじゃないバイトです。
逝ってきます……
208 名前:羊から読んでた人 投稿日:2001年08月30日(木)10時18分28秒
まぁ、元々かなりの長編として出来上がったものを移転してるわけだし。
とりあえず、移転するのれす。
209 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2001年08月30日(木)13時02分12秒
>>206
 ご指摘ありがとうございます。
 ってことで、新スレ「あすりか2」に移行です。
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=sea&thp=999142658&ls=25
>>208
 新スレに移行しつつ移転続行っす。
210 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2001年09月10日(月)10時55分04秒
以前、羊で書いた外伝をこちらでもあぷさせていただきます。
211 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年09月10日(月)10時55分45秒
 ある日の楽屋。
 安倍さんが、私の作ってきたお弁当を前に真剣な目をしてる。
 私は息が詰まるほど緊張してて……。
 保田さんはちょっと離れてて、でも鏡越しに興味津々な視線を送ってきてる。

 安倍さんは、お箸で卵焼きをつまんで…マジマジと見つめる。
 裏側にひっくり返して、またマジマジ。
 それからあらためて、パクッ。
 モグモグモグ……。

「……」
 安倍さん、何とか言ってくださいよ〜。
「…美味しいね……」
 や…やたっ!
 卵焼きは自信があったん……。
「でも、明日香は甘い卵焼きは好きじゃないんだよ」
212 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年09月10日(月)10時56分50秒
 ガ〜〜ン……。
 そ…そんなあ……。
 自信があった卵焼きが、その一言で撃沈。
 その他は推して知るべしで……。

 例えば、おにぎり。
「…ちょっとベチョベチョしてる。それに…シャケが入ってない……」
 …スパゲティー。
「そのまんま入れちゃダメっしょ。色も味もうつっちゃうじゃない。仕切を入れる
とか、レタスを敷くとかしなきゃ」
 ……ウインナー。
「タコさん…明日香に、こんな子どもっぽいの食べさすの?」

 最後には、
「小魚が入ってない!」
って怒られた……。
「カルシウムが全然入ってないじゃない。栄養のバランスは、愛のバランス。ね?」
 安倍さん…私…もう立ち直れません……。
213 名前:チャーミー石川 投稿日:2001年09月10日(月)10時58分05秒
「なっち…もうその辺で許してあげなよ」
 保田さん…優しい言葉が身に染みます。
「いきなりそこまでは、石川には無理だって」
 ……ちょっと毒も感じます。
「まあ、いいけど…このままの弁当持っていくんなら、明日のデートは中止ね」
 そ…そんなあ!
 いくら安倍さんでも横暴です〜!

「…流石にそれは可哀想だから、今晩、仕事が終わったら、なっちの家に来なさい」
 え〜っ!
 だって、今日の仕事終わりは午前1時……。
 そんな時間に何するんですか〜?
「なっちが、明日香の好きなもの教えてあげるから、一緒に作ろ?」

「安倍さん…だって明日、早出で大変だって……」
「いいから」
 大感激です、安倍さん。
「私…私、頑張ります! 頑張って作れるようになります」
 安倍さんの笑顔の向こうに、天使の羽が見えます。
「ちゃんと出来るまで、デートには行かせないから」
 ……見間違いでした。
 あれは悪魔のしっぽですね……。
 明日香ちゃ〜ん、助けて〜!!

 外伝(完)

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