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学校の怪談
- 1 名前:WJ 投稿日:2001年08月28日(火)12時10分35秒
- 初めて小説を書かせていただきます。
娘。新旧メンバー全員登場予定の、パラレルです。
小学校が舞台で、年齢も現実とは全然違うものになりますが、
長い目で見てやって下さい☆
- 2 名前:1 【朝比奈第二小学校 創立120周年】 投稿日:2001年08月28日(火)12時17分12秒
- ハロウ市の西部、朝比奈町3丁目にあるハロウ市立朝比奈第2小学校は、
創立して今年で120年になる。
120年といえば、人間なら、すごいご老体だろう。ネコなら、
とっくの昔に化け猫に変身している年齢だ。
明治時代の初め頃に開校して以来、120年間子供たちの勉強の場だったわけだから、
それなりの歴史と伝統がある。
- 3 名前:1―1 投稿日:2001年08月28日(火)12時19分22秒
- 10月中旬に行われた創立120周年記念のお祝いの会は、在校生が明治時代から現在まで、
それぞれの時代の通学服を着て登場したり、昔の学校のスライド上映があったりして、
それなりにおもしろかった。
最後に在校生700人の子供たちは、創立120周年記念の下じきを1枚ずつもらって
家路についたのである。
学校の記念行事は、それで終わったけれど、同総会やPTA、それに先生たちは、
翌日の日曜日、市内のホテルで祝賀パーティーをやったらしい。この祝賀パーティーは
朝比奈第2小学校120年の歩みをまとめた、校誌の出版記念も兼ねていた。
- 4 名前:1―1 投稿日:2001年08月28日(火)12時21分29秒
- この校誌は、1部3000円で、希望者に配布されることになり、子供たちにも注文書が
配られたが、目下の所、児童の親からの注文は、それほど多くない。
そんななかで、6年1組の矢口真里という女の子の親は、まっさきに注文書を提出した、
めずらしいケースである。
- 5 名前:1―1 投稿日:2001年08月28日(火)12時23分00秒
- 矢口家の主人は、今年で40歳、朝比奈商店街で八百屋を経営しているが、
生まれたのも、現在店のある朝比奈町1丁目である。彼もまた、33年前、
朝比奈第2小学校に入学、6年間すごした経歴があるので、娘真里が持ち帰った注文書に、
さっそく名前を書き、集金袋に3000円を入れて持たせた。
待つこと2週間。11月の始め、娘の持ち帰った校誌をひらき、しばし思い出に浸ったものである。
さらに、巻末の卒業生名簿の中に、我が名を発見した時は、感激のあまり、大声で家族を呼び集めた。
「おい、見なよ。父ちゃんの名前が載ってるぞ。」
- 6 名前:1―1 投稿日:2001年08月28日(火)12時23分44秒
- 2階でゲームの最中だった娘の真里も、何事かをばかり、階段をかけおりてきたが、
父親の指差しているのが、卒業生名簿とわかると、がっかりした声をあげた。
「なんだよ、おいらもっとすごいとこに名前載ってるのかと思った。」
背の低いところなどは、父親そっくりの真里は、用は済んだとばかり2階へ上がりかけたが、
今度は母親にとめられた。
- 7 名前:1―1 投稿日:2001年08月28日(火)12時24分27秒
- 「真里、何てこと言うんだい。3000円もする本に、父ちゃんの名前が載ってるんだよ。
たいしたもんじゃないか。お前も、この本をよぉく読んで、自分の学校のこと勉強しなきゃ。」
「そうだ、そうだ。学校というのは、ありがたいもんだぞ。なんせ、120年の120年の伝統が
あるんだからな。120年なんて、ちょっとやそっとじゃぁ続くもんじゃない。駅前のパチンコ屋なんて
1年も続かなかったろうが。」
と、おおいに母校の自慢をはじめた途端、母親が口を開いた。
- 8 名前:1―1 投稿日:2001年08月28日(火)12時25分31秒
- 「あら、朝比奈第1小学校だって、今年で創立120年なんですよ。」
「おや、お前の学校も120年なのか。それにしちゃぁ、なんにも祝わねぇな。」
「ねぇ、ねぇ、おいら、いつも不思議だなって思ってるんだけどさ。第1小と第2小は、同じ年に
出来たんだよね。だったら、どうして中町のほうが第1で、朝比奈町のが第2になったの。」
「そりゃぁ、おめぇ・・・。」
父親は一瞬口篭もったが、やがて第1小の卒業生である、奥さんに尋ねた。
- 9 名前:1―1 投稿日:2001年08月28日(火)12時26分34秒
- 「母ちゃん、わかるか。」
「そうだね、言われてみると、おかしいね。第1の方が、人数が多かったのかしら。」
「出来た年は同じでも、月日が早かったのかも知れねぇ。ええと、第2小の方は、いつだったかな。」
矢口家が、朝比奈第2小学校の校誌を前に話し合ってた頃、学校から持ち帰った校誌を眺めている少女が、
朝比奈団地の市営住宅にいた。
- 10 名前:1―1 投稿日:2001年08月28日(火)12時28分21秒
- 顔に似合わず読書家な、この少女は、名前を加護亜依という。
この少女も真里と同じ、朝比奈第2小学校6年1組なのだが、この学校には2年生の時に転校してきた。
両親も、むろんこの学校の卒業生ではないので、普通なら校誌など注文しないのだが、
亜依がぜひとも読んでみたいと、両親を説得したのである。
自分の通っている小学校について、一通り研究しておこうという、
感心な心がけを持っているのだ。
- 11 名前:1―1 投稿日:2001年08月28日(火)12時28分54秒
- 「ねぇ、亜依ちゃん。」
横から、いとこの辻希美の声がした。この少女、ちょっとわけあって加護家に居候中だ。
「うぅん?」
亜依は、ページをめくりながら、生返事をする。
「うちの学校には、七不思議ないのれすか?」
「七不思議・・・?」
- 12 名前:1―1 投稿日:2001年08月28日(火)12時29分45秒
- 「あのね、第1小にはあるらしいのれす。ええとねぇ、1番目は、運動場のひづめのあと。
朝はやく学校に行くと、運動場に馬のひづめのあとが残ってるのれす。2番目は、体育館の鏡れす。
夜中の2時になると、鏡の中に女の子の顔が浮かぶんれす。3番目は・・・・・・」
- 13 名前:1―1 投稿日:2001年08月28日(火)12時30分37秒
- なおもしゃべりかけるいとこに、亜依は、
「そんなの迷信に決まってるやろ。うちの学校には、そんなもん本気で信じる奴はおらんやろぅ。」
冷たく応える。
「つまんないのぉ。うちの学校にも、七不思議があればいいのに・・・・・・」
希美は、いかにもがっかりしたように、ため息まじりにつぶやいた。
- 14 名前:まりお 投稿日:2001年08月29日(水)15時10分55秒
- これって・・・元ネタありますよね?
なんか読んだ覚えがある・・・
- 15 名前:WJ 投稿日:2001年08月29日(水)16時31分43秒
- なんだか長い話になりそうです。
初めてなんで、本当に手探り状態ですが、
アドバイスとか、注意とかあったら、教えて下さい。
では、今日の更新です。
- 16 名前:WJ 投稿日:2001年08月29日(水)16時35分06秒
- 14>>元ネタありますよー。
でも、私もウロ覚えなんでハッキリとは覚えてなかったりι
3人組の話だったのと、怪談の話だったと記憶してます。
元ネタ知ってる方、ご連絡下さい(笑
- 17 名前:1−2 投稿日:2001年08月29日(水)16時36分15秒
- 翌日は雨になった。
朝比奈団地から小学校までは、歩いて15分程の距離だ。
その朝、亜依と希美は同じ市営アパートに住むクラスメイト、
なっちこと安倍なつみと一緒に、学校への道を歩いていた。
なつみは、ちょっとまるまるとした体つきをしている。
行動ものんびりしているが、神経はなかなかデリケートなところがあった。
特に、おばけとか幽霊の類には弱い。
昔話の『舌きりすずめ』の絵本を見ただけで、
夜トイレに行けなくなった事もあるくらいだ。
そんななつみに、希美がまたもや、昨夜の話題を蒸し返したのである。
- 18 名前:1−2 投稿日:2001年08月29日(水)16時36分56秒
- 「ねぇ、安倍さん。安倍さんは、朝比奈第2小学校の七不思議
知ってますかぁ?」
とたんに、なつみは、その愛くるしい顔を歪めた。
「え、うちの学校にも、そんな噂あるの?」
「知らないから、聞いてるんじゃないですかぁ。」
「あぁよかった。あのね、ののちゃん、うちの学校には怖い話なんて
全然ないよ。あれは、第1小の噂なんだべ。」
なつみも、第1小の七不思議について、多少の知識があるらしい。
希美は、まだ幼いかわいらしい顔を、ちょっとふくらませる。
「七不思議があるのは、第1小だけじゃないれす。日本中の学校で
今いろんな七不思議が流行してるんれすよ。」
- 19 名前:1−2 投稿日:2001年08月29日(水)16時38分17秒
- 希美は、持っていたカサを亜依に持たせると、かばんの中から一冊の本を取り出した。
「ほらね、この本にもいっぱい書いてあるのれす。」
希美が取り出したのは、『学校の怪談』という本だった。
表紙には、恐怖にひきつった男の子の顔が、ドアップで描かれ
その背後から、髪を振り乱した女の幽霊が、男の子に襲いかかろうとしている。
「あぁ、ののちゃんも、それ読んだの?」
なつみが、うめき声をあげた。
「それすごく怖いよねぇ。なっち、その本読んでから1週間くらい
ご飯も食べられなかったなぁ・・・」
1週間食欲がなかったわりには、さして体重に変化も見られないなつみを
ちらりと見ながら、亜依はいとこに言った。
「それ、雨に濡れてまうで。はよしまっときぃ。」
- 20 名前:1−2 投稿日:2001年08月29日(水)16時39分07秒
- 「加護ちゃんも、この本読んだ?どうだった、怖くなかった??」
なつみが、同意を求めるように、亜依の顔を窺う。
「うん、最近みんながよく読んでんのは知っとるけど、ウチはまだ読んでへん。
だって、学校に出る幽霊なんて、どれもこれも非科学的やんか。
例えば、トイレの花子さんなんて、ドアを3回叩くと返事するって言うやん。
本当にトイレに住みついてるんやったら、2回叩いても返事するはずやで。
それから、トイレの便器から、しわだらけの手がでるってやつ・・・」
「あぁ、ムラサキばばぁ?第1小のトイレにもでるらしいれすよ。」
希美が勢い良く応えた。
「ののやって知ってるやろ。水洗式のトイレの、一体どこに隠れてるねん。
そりゃぁふるい汲み取り式のトイレやったら、便器の下が深い穴になっとるから
妖怪が隠れていても、おかしくないけどなぁ。」
「・・・。」
「今の水洗式じゃぁゴキブリだって住めへんのとちゃうか。」
「じゃぁ、体育館の鏡は?第1小の鏡は、午前2時になると、女の子の顔が
うかぶのれすよ。」
言い募るいとこの顔を、亜依は哀れみのこもった目つきで眺めやった。
- 21 名前:1−2 投稿日:2001年08月29日(水)16時40分01秒
- 「あのなぁ、のの。午前2時に現れても、しゃあないやん。
一体誰が見てくれんねん。せいぜい、警備員のおじさんが腰ぬかすくらいやで。
大体学校ってゆうのは、昼間子供たちが活動する場所やねんから。
もし、幽霊や妖怪が出るとしたら、昼間から出現しないと、意味ないやん。
夜中にな、二宮金次郎の銅像が歩こうが、火の玉が飛ぼうが
子供には関係ないこっちゃ。そんなんは、学校の怪談とは言えへんでぇ。」
「そんなこと言ったって、幽霊とかおばけは、夜しかでられないのれすよ。
ねぇ、安倍さん。」
希美が、応援を求めるとなつみも、こっくり頷いた。
「そうだべ。昼間っからおばけがでてきたら、誰も学校に行けなくなるよ。」
議論に夢中になってるうちに、いつの間にか正門の前に到着していた
- 22 名前:1−2 投稿日:2001年08月29日(水)16時40分31秒
- 朝比奈第2小学校には、校舎が3棟ある。
正門を入ったところにある平屋の校舎が、北校舎
その次が3階建ての中校舎
もうひとつ、運動場に面した3階建てが、南校舎と呼ばれていた。
希美は、4年1組だから、南校舎の1階だ。
亜依やなつみの6年1組の教室も、同じ南校舎の3階にあった。
- 23 名前:1−2 投稿日:2001年08月29日(水)17時32分23秒
- 雨の日の教室は、本当にうるさい。
廊下でボール投げして遊ぶ子、教室の後ろでプロレスしてる奴。
もちろん、ぺちゃくちゃとしゃべっている子もいる。
亜依となつみが教室に入ると、クラスの子供たちはほとんど登校していた。
その中で、ひときわ甲高い声でしゃべっているのが、
クラス1小柄な少女、矢口真里だ。
「だからよぅ、こいつは朝比奈第2小学校の七不思議だって!
大体、あっちが1番でこっちが2番なんて、おかしいよ。
なんか、負けたみたいじゃないかぁ!」
矢口は、昨夜我が家で話題になった、学校の名前について
しゃべっていたのだが、教室に入ってきた亜依となつみには、
そのあたりの内容が、いまひとつわかっていない。
“七不思議”という言葉だけが、聴覚を刺激した。
- 24 名前:1−2 投稿日:2001年08月29日(水)17時33分26秒
- 「安倍さん、矢口さんも、七不思議のことしゃべってはるなぁ。
いよいよ、この学校にも七不思議出来たんかなぁ。」
亜依となつみが、矢口の方に近付いていくと、矢口の隣にいた
頭の良さそうな少女が口を開いた。
後期の学級委員を務める吉澤ひとみである。
「不思議といえば、私も前から気になってたことがあるんだけど
この校舎のこと、みんな南校舎って呼ぶでしょ。それから、職員室のある校舎を北校舎って・・・。
でも、うちの学校って、方角からいうと、どっちかといえば東西に並んでるんだから、
このこうしゃは東校舎、あっちは西校舎って呼ぶのが本当じゃないかなぁ。」
「へぇ、そうなの。それじゃぁ運動場は東にあって、正門は西にあるってこと?知らなかったなぁ。」
矢口の反対側にいたお嬢様風の少女が、感心したように
その独特の声をあげた。石川梨華だ。
「うん、そいつも七不思議だな。あ、もう1つ見つかった。そぉだ。裕ちゃんのが結婚できないのも
七不思議の1つだな。きっと。あの先生、もう30になるだろ。なのに彼氏もいないなんて、こりゃあ不思議!」
矢口がけたたまいしい声で笑ったところへ、
なつみがおずおずと口をひらいた。
「あのさぁ、うちの学校にも、とうとうおばけが出たの?」
「あぁん?」
「だからさぁ、七不思議があるんでしょ?」
- 25 名前:1−2 投稿日:2001年08月29日(水)17時34分07秒
- 矢口は、一瞬そのよく活動する目玉を、ぐるりと動かした。
「あぁ、なっちの言ってるのは、こっちの七不思議かぁ。」
矢口が、両手を胸のとことにだらりと垂らして見せたので
なつみは無言で頷く。
「そぉいやぁ、うちの学校には、その手の話がないよなぁ・・・。第1小じゃ、いま流行ってるんだってな。」
「うん、あたしも聞いた―。えぇと、運動場に馬のひづめの後が残ってるんだって。」
相変わらずのアニメ声で、梨華が言う。
「・・・考えてみたら、第1小学校には怪談があるのに、うちの学校には全然ないってのも、つまらないなぁ。
おぉ―い、誰か、うちの学校のお化け話、知らないかぁ――?」
矢口が低い背を精一杯に伸ばして、教室内を見渡したが
誰も返事をしない。
「ちぇっ、やっぱりね。なんか、こう、背中がゾゾ――ッてなるような幽霊の噂でも、あればいいのに。」
- 26 名前:1−2 投稿日:2001年08月29日(水)17時34分40秒
- と、それまで発言を慎んでた亜依が、えへん、と咳払いをした。
「矢口さん、そんなに言うんやったら、七不思議を作ったらええねん。朝比奈第2小学校の七不思議を。」
「作るって言ったって・・・。あんなもの、勝手に作るもんじゃないだろぅ。」
「んなこたぁない!どうせ、おばけとか幽霊なんて、現実には存在せぇへんねんから。
第1小の七不思議だって、多分あそこの子供らがこしらえて、言いふらしてるだけやわ。」
「そぉか。ってことは、あたし達が作って、宣伝すりゃいいんだな。」
亜依が大きくうなずいた。
そして、それまで矢口たちの会話には全く無関係といったポーズで
おしゃべりしていた―2人の世界を作っていた、と言った方が
正しいかも知れないが―少女たちが、側によってきた。
「ねぇ、ねぇ、朝比奈第2小学校の七不思議を考えるんだったら、あたしすごい話知ってるわよ。」
6年1組最強のコンビと呼ばれている、市井沙耶香と、後藤真希が
ゴキブリホイホイに誘い込まれるかのごとく
ぞろぞろと矢口の周りに吸い寄せられてきたのだ。
- 27 名前:WJ 投稿日:2001年08月29日(水)17時36分12秒
- 今日の更新は、ここまでです。
明日、主要人物が全員でてくる予定。
感想、注意など、よかったら教えて下さい☆
- 28 名前:1-3 投稿日:2001年08月30日(木)12時56分01秒
- その日の放課後、6年1組の教室に残ったメンバーは
矢口真里、加護亜依、それに吉澤ひとみに石川梨華
そして、どう間違ったのか根っからのおばけ嫌いの安倍なつみも
座りずらそうに、イスに腰掛けている。
その向かい側には、市井沙耶香、後藤真希といった朝のメンバーに
保田圭、飯田圭織が加わっている。
「あのね、カオリはオカルトに詳しいんだ。それから、圭ちゃんはお話作るのがうまいから・・・。
あたし達がアイディアを出したら、怖い話に仕上げてくれると思う。」
市井沙耶香が、圭織と圭をスカウトしてきた理由を説明する。
「それじゃぁ、第2小の七不思議を考えよぉ。」
矢口がしゃべりだすのを、圭が手で制した。
「ちょっと、その前に教えて欲しいんだけど、誰か第1小の七不思議、性格に記憶してる人、いる?」
と、後藤真希が手を挙げた。
- 29 名前:1-3 投稿日:2001年08月30日(木)12時57分10秒
- 「はい、あたし友達が第1小にいるから教えてもらってま――す。1つめ、朝運動場に、馬のひづめのあとが残っている。
しかし、馬の姿を見た者はいない。2つめ、体育館の壁にかかってる鏡には、午前2時になると、女の子の顔が浮かぶ。
今鏡は、交通事故で死んだ少女の遺族が寄付したもので、鏡の少女も、その子の幽霊だと言われている。
3つめ、校門の近くに松の木が植えてあるが、西側につきだした枝のしたを歩くと、なんとなく首が吊りたくなる。
この枝では、昔何人もの人が首吊り自殺をしている。4つめ、旧校舎の2階のトイレには、ムラサキばばぁがいて
時々お尻をなでる。」
「えぇと、そのトイレって、女子トイレなの?」
ひとみが、真面目な顔で質問したので、真希はちょっと顔を赤らめた。
「え?さぁ、どっちかなぁ・・・友達に聞いておくね。5つめ、理科室にある人体模型が、夜になると歩き出す。
6つめ、音楽室のピアノがひとりでに鳴りはじめる。7つめもあるんだけど、これを喋ると崇りがあるので
話さないことになっていま―――――す。」
真希が着席すると、圭が口を開いた。
「あんまりたいしたことないわねぇ。もっと怪奇なのと思ってたけど・・・。
うちの学校のは、もっと怖いのにしましょうよ。」
- 30 名前:1-3 投稿日:2001年08月30日(木)12時59分11秒
- 「あたし、いつか本で読んだことあるんだけど、校舎の階段を登っていると、
上の方からボールが転がってくるの。ポーン、ポーン、と一段一段弾んで落ちてくる音がするのね。
でも、ボールは見えないの。音がするのに・・・。」
市井沙耶香が、低い声で喋りはじめた。
「誰もいない校舎の階段って、ちょっと不気味でしょ。それに、踊り場があるから
1番上まで見落とせないし・・・。」
「だけど、音だけじゃぁ、あんまり怖くないんじゃないの。」
圭が反論した。
「本当にボールが転がってくるのよ。ドッジボールくらいのがね。で、下で受け止めた途端、
それはボールじゃなくて人間の生首だった・・・。」
「あぁ、それ怖そう・・・。」
圭織が、両手をほっぺたにあてた。
「うん、こいつはおもしろいな。ボールかと思って受けとめたら、ずしりと重くてさ。
おまけに、血だらけの顔が、にたーって笑ったりして・・・。」
ひとみが薄気味悪い声をだしたものだから、圭織は大柄な体をゆすった。
「やめてよ、カオリ階段上がれなくなる。」
オカルト少女にしては、圭織は怖がりだ。
しかし、この話はけっこう迫力があるので、七不思議の一つに
加えることになった。
「ねぇ、どこの階段にする?」
沙耶香がみんなを見まわす。
「中校舎にしようよ。中校舎の南側の階段・・・」
圭織が、即座に提案した。いくら創作でも自分達がいつも利用する階段に
生首が転がるのは、いやだと言うのだ。
- 31 名前:1-3 投稿日:2001年08月30日(木)13時00分45秒
- 「じゃぁ、次は?」
沙耶香が、みんなを見まわした。
「あたしは、赤ちゃんの幽霊が怖かったなぁ。」
梨華がぽつり、ぽつりと喋りだした。
「誰もいないはずの部屋でね、赤ちゃんが遊んでるんだって。」
「それ、座敷童子ちゃうの?」
亜依が質問する。
「ちょっと違うのよ。座敷童子は、3つか4つくらいの子供でしょ?
これはね、まだはいはいしかできないくらいの、ほんとの赤ちゃんなの。
そんな赤ちゃんが、部屋の中にぽつんと座っててね。ひとりで、キャッキャッ笑って
遊んでいるの。なんとなく、不気味だと思わない?」
「そうだねぇ、幽霊って普通大人が多いもんね。」
真希も、こっくり頷いた。
「でも、部屋の中に出現したら、やっぱり座敷童子を連想させるから、つまらんで。
いっそのこと、運動場にしたらどうや?ほら、今日みたいな雨の日に、運動場の真ん中で
何人もの赤ちゃんが遊んでるんや。見ているうちに、その赤ちゃんが、ぞろぞろぞろぞろ
校舎のほうに向かって、はいはいしてくるんや。」
みんなは、思わず窓の外に目をやった。
さっきから雨足がひどくなり、運動場全体が、煙って見える。
人影一つ見えないグラウンドは、いつもの運動場と、全然違って見えた。
「いいねぇ。最初はやっぱり、泣き声が聞こえてくる事にしようよ。
それで、ふと窓の外を見たら、小さな生き物が蠢いてるの。良く見ると。それがみんな
裸の赤ちゃんなのね。うん、怖いというよりも、幻想的だねぇ。」
真希は、すっかり気に入ったようだ。
「それに、こんな怪談やったら昼間でも目撃可能やろ。うちは、学校の怪談は
昼間の出来事、子供たちが体験できひんかったら意味無いと思うねん。」
「そぉねぇ、夜中の2時にでるおばけじゃ、しょうがないもんね。」
- 32 名前:1-3 投稿日:2001年08月30日(木)13時01分25秒
- と、今まで黙っていた矢口が、ぴょんと立ち上がった。
「おいらのも、真昼間だぜぇー。あたしさぁ、いつだったか腹こわしてさ、トイレに
行ったのね。そいで考えたんだけど、もしいまドアの上からおばけがのぞいたら
怖いだろうなって・・・。トイレのドアや壁って、天井までないっしょ?間に50cmくらい
隙間があるじゃん。あそこから、そうだなぁ・・・おばぁさん――――じゃなくて
おじぃさんのお化けがいいや。うん、つるっぱげのおじぃさんが覗くんだ。」
「それはある意味、1番怖いかもねぇ、いちーちゃん。」
「・・・そうだな。」
「でも、それいいじゃない。そうね、こうしましょ。」
圭が、みんなを見まわす。
「トイレに入っていると、ドアをノックされる。入ってますって答えても、
またノックするの。それで、大きな声で、入ってますって答えたら、天井から
おじいさんの顔が覗いて、まだですか―――。」
「こわっ。何、圭ちゃんもしかして、経験あるんじゃないの。」
沙耶香が、半分顔をしかめて、半分笑って言った。
この話も、もちろん採用することになったが、問題はどこのトイレにするか
ということだ。南校舎や中校舎のトイレは、利用者が多くて、誰も信じないかも
知れない。北校舎の職員トイレの隣にある子供トイレは、普段あまり利用者がないから
怪談には、最適だろうということになった。
- 33 名前:1-3 投稿日:2001年08月30日(木)13時01分58秒
- 「これで3つ、できたわけだね。」
沙耶香が、誰ともなしに、そう言いながらあたりを見まわす。
教室の中は、いつの間にかすっかり薄暗くなり、妖怪や幽霊が出現しても
おかしくないようなムードになっていた。
ふいに、教室のスピーカーから、女のすすり泣きのような音が聞こえて
みんなはギクリと身体を固くした。
女のすすり泣きはすぐに止み、下校時間を教える『家路』のメロディーが
静かに流れ出した。
「・・・テープのノイズやな。カセットのスイッチを押した時、録音されてないとこがまわったんや。」
誰も質問しないのに、亜依が勝手に解説をしてくれた。
- 34 名前:WJ 投稿日:2001年08月30日(木)13時04分10秒
- 今日の更新終了です。
なんだか、思ったより長い話になりそうですι
- 35 名前:名無しです 投稿日:2001年08月31日(金)01時15分09秒
- 新ジャンルですね!期待してます。
しかし、6年1組の最強コンビ、市井&後藤・・・(w
なぜ最強なのか、ちょっと気になる今日この頃。
- 36 名前:名無し読者 投稿日:2001年08月31日(金)07時40分58秒
- 沙耶香→紗耶香ね
- 37 名前:WJ 投稿日:2001年08月31日(金)15時26分33秒
- >>35
ありがとうございます(^o^)丿
でも、期待にこたえられるか・・・ι
市井&後藤コンビは、話の中では
あんまり語らないと思います。
でも、最強(笑
>>36
ご指摘ありがとうございます_(._.)_
娘。たちは、名前の細かいところが難しいι
では、今日の更新です。
- 38 名前:1−4 投稿日:2001年08月31日(金)15時27分33秒
- 11月ともなれば、瀬戸内海に面したここ、ハロウ市も日の暮れが早い。
まして、雨の日ともなれば尚更だ。
4時半の下校時間に校門を出ると、もうあたりはすっかり黄昏手いた。
なつみと亜依は、雨の道を朝比奈団地へと帰って行った。
ひょんなことから生まれた“朝比奈第2小学校の七不思議を考える会”は
本日、3つの不思議を考え出した。
朝他派、残りの4つを創作するため、各自がこれはと思う怪談を
考えてくることになっている。
「加護ちゃん、またね。」
なつみが市営アパートの入り口へと、駆け込んだ後
「亜依ちゃん〜」
と、舌っ足らずな声が聞こえてきた。
- 39 名前:1−4 投稿日:2001年08月31日(金)15時29分21秒
- 「おぅ、のの〜。今帰ってきたんか。」
「うん、友達と遊んでた〜。安倍さんは?」
「今さっき帰ったとこやで。何か用でもあったんか?」
希美は、しばらくなつみの住む、2号館の入り口に目をやっていたが
やがて、じろじろと、いとこの背中あたりを眺め始めた。
「おかしいのれす。」
「なにが・・・?」
「さっき、亜依ちゃんと安倍さんが一緒に歩いてたでしょ。
そのとき、2人の背中に、黒いものがしがみついてたんれす。」
「黒いもの・・・??」
「赤ちゃんみたいにね、両手で肩のところにしがみついてるみたいに・・・」
亜依は、あわてて首を見回したが、残念ながら、自分の背中は見られない。
「今はなにもいないれす。」
「目の錯覚と違うんか。2人とも傘さしてるから、背中のあたりに影ができてたんやろう。」
「そうかなぁ。だけど、頭もあったし、足もあったよ。両方の足で
この辺のとこをはさむようにしてた。」
希美が、亜依の脇腹をつつく。
- 40 名前:1−4 投稿日:2001年08月31日(金)15時29分56秒
- 「赤ちゃんねぇ・・・。そういえば、さっき学校で赤ちゃんの幽霊の話してたんや。」
「赤ちゃんのゆうれい?」
「あ、そうや。ののもアイディア出してや。今度、うちらで第2小の七不思議
考えることにしたんや。今日3つほど考えてんけどな。」
「へぇ、すご〜い!ののにも教えて欲しいのれす。」
「とにかく、家に帰るで〜。」
いとこを促しながら、亜依は2号館の方に目をやった。
アパートの窓には、はやくもちらほら、明かりがともりはじめている。
「さっきの赤ちゃんの話やけど、安倍さんにはせんほうがええで。怖がりやしなぁ。」
3号館の入り口に向かいながら、亜依はいとこに忠告した。
- 41 名前:1−4 投稿日:2001年08月31日(金)15時30分41秒
- “朝比奈第2小学校の七不思議を考える会”は、翌朝の教室で
はやくも2回目の会合をもった。
メンバーのほとんどが、昨夜睡眠時間を削ってまで考えた怪談を
友達に披露したくて、いつもよりはやく登校してきたからだ。
全校児童のトップをきって学校にやってきた矢口に、20分ほど遅れてやってきた
真希が、教室に飛び込んでくるなり、話し掛けてきた。
「ねぇ、聞いてよ。あたし、昨夜すっごく怖い話考えたんだよ。
プールに出る幽霊なんだけどさ、プールの水面にね、人間の手首だけが何本も
つきだして、そいで岸に立ってる人間に向かって、おいでおいでするの。
ねぇ、怖いと思わない?しかも、プール一面に100本くらいの手首が
のぞくの。それも、みんな青白くて、中には腐りかけて骨が見えてるのとか・・・。」
真希が反応を見るように、じっと矢口の顔を覗き込んだ。
矢口は、こっくり頷く。
「うん、怖いなぁ。そいでさぁ、岸に立ってる奴は、プールに引き込まれるんっしょ?」
「そう。それで、また手首が一本増えるわけ。」
話しているうちに、圭織が登校してきた。
- 42 名前:1−4 投稿日:2001年08月31日(金)15時31分56秒
- 「おはよぉ〜何か考えた?」
真希が質問すると、圭織が頷いた。
「カオリは、自分の体験談にしたの。」
「そんな体験あるの?」
「まぁね。カオリ、運動会の練習の時、気分が悪くなって保健室で寝ていたことがあったでしょ。
あの時、おかしな夢を見たの。自分の体から、血が流れ出してく夢・・・・・・。
気分が悪くなって倒れた時、膝小僧を擦りむいたのね。別にたいした怪我じゃなかったんだけど
気を失ってる間も、傷が痛かったんじゃないかなぁ。夢の中では、その傷口から、たらたら血が
流れ出してね。シーツが真っ赤になったの。あぁ、こんなにシーツ汚したら、まずい。
早く起きなくちゃと思うんだけど、血がどんどん流れ出て、身体が動かないのよ。
それで、夢の中でもう1回気絶しちゃったの。」
- 43 名前:1−4 投稿日:2001年08月31日(金)15時32分39秒
- 「ふぅん・・・。でも、夢でよかったねぇ。」
「そう。でももし、これがほんとなら、すごく怖い話でしょ。保健室のベッドに
寝ているうちに、血がどんどん流れ出してしまうのって・・・。」
「怖い、怖い。自分にも、それがわかってるんだけど、身動きできないわけでしょ。
で、先生が気付いた時には、ベッドは血の海になっていて、その中で死んでる。
つまり、呪いのベッドってわけね。」
「そう、そのベッドに寝かされると、誰もが血が止まらなくなるのよ。
吸血ベッドの恐怖・・・・・・。」
- 44 名前:WJ 投稿日:2001年08月31日(金)15時34分35秒
- 今日の更新はここまでです。
明日明後日は、もしかしたら更新できないかも
知れません。
なるべく毎日更新目指します(笑
- 45 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月04日(火)20時44分35秒
- 元ネタはズッ○ケ三人組ですな
是非ともシリーズ化して欲しい……なんて思ってみたり
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