「起きろ!!もう撮影始まるぞ!!」
「いって〜な!!さわんなよ!!」
「起こしてやったんだからありがたく思え!!お前なんか別にいなくていいん
だけどよ!!」
「なんだとコラァ!!」
中澤が抜けた後の娘はガタガタになっていた。中澤がいた時から娘内の仲は
確かに良くはなかったが、仕事場で表だってだすことはなかったのだ。
例えでても、
「うっさい!!ギャーギャー騒ぐなや!!」
と、中澤がすぐにとめていた。
「プロなんやから仕事場でｹﾝｶすなや!!後で勝手にせい!!」
飯田がリーダーになった今では
「うるさいな!ちょっと黙りなよ!」
と叫ぶけれども、
「うっせー!!お前は交信してろ!!口出す権利ねーよ!!」
と叫び返され、もう押さえることはできなかった。
そんな中、矢口は１人、どーでもいいと思っていた。
「裕ちゃんもやめて、結局どうなるんだろ？」
やる気さえ失っていたのだ。
「吉澤！今度触ったらﾏｼﾞやるからな！」
「あん!?うっせーよ。」
「あーﾏｼﾞうぜ〜。私もう行くから。なっち、行こうよ。」
後藤は吉澤に鋭い眼差しをむけると、席をたち、安倍と部屋
を出て行った。
「もうちょっとよっしーと仲良くしたら？せめて仕事の時ぐ
らいさ。」
「あっいいのいいの。あんなのと仲良くする必要性ないし。
それよりなっちはさ、おかし食べるのもうちょいへらしな
よ。私も結構食べてるけどなっちかなり量ハンパないよ？」
安倍は娘内の問題から目をそらすために食に走っていたのだ。
「飯田さん。いきましょ」
辻はもう加護と話すこともない。たいてい飯田と一緒に行動してい
る。
「加護!!行こうゼ。だるいな〜。」
「よっしーいっつもだるがってんな。」
「後藤がいるからだよ。あーむかつく」
「ほっといたらええやん･･ってプッチとか一緒やもんな。うちもミニ
モニで辻と一緒のときﾏｼﾞだるい。」
「矢口さん。行きましょうか？みんな行きましたよ。」
「ん？ああ梨華ちゃん･･いこっか。」
「皆もうﾊﾞﾗﾊﾞﾗですね。」
「…しかたないね。ほっとくしかないよ。」
そして保田は１人最後に楽屋をでる。
娘のだいたいのおきまりの行動パターンだ。
中澤が去る前に告げた言葉が空しく飯田の頭をかすめる。
（裕ちゃん…かおには無理だよ･･みんなﾊﾞﾗﾊﾞﾗだよ。）
撮影はなんの問題もなく終わる。娘同士数分話して歌撮りがあるが、
そんな時には仲の悪さは微塵もでない。端から見ればとても仲の良い
グループだと思うだろう。
さっさと仕事をおわらして楽屋に戻ってくる。
一番に帰ってきた後藤がドアをあける。
「裕ちゃん!!?」
「なんでいるの？」
「えっ？圭坊によばれてんけど…あっ圭坊!!なんなん？内緒やった
んか？」
最後に楽屋に帰ってきた保田に声をかける。
「まぁね。いわない方がびっくりするとおもってさ。」
それから数十分は中澤を囲んでいろいろみんな自由に雑談している。
一番イキイキしているのは矢口だ。
「ドラマはどうなの？」
「楽しいで〜 みんなめちゃくちゃ綺麗やしな〜」
久々に楽屋内に明るい雰囲気がもどった。皆中澤を特別したっていた
というわけではないが、やはり懐かしいのか、仕事で会うことも少な
からずあるのだが、今までずっと一緒にいただけに喜びにあふれた顔
をしているメンバーが多かった。
「あれ？保田さんは？」
「トイレじゃない？加護もいないね。」
「人呼び出しといていなくなってんちゃうで〜 まっいいけど。
矢口〜 なんや久しぶりやな〜 ん〜。」
「わわっ やめろ〜」
中澤のキス攻撃も懐かしさをあおる。
「あ〜矢口〜 持って帰る〜」
「ばか裕子!!矢口はものじゃないぞー。」
「ペットや ペット」
（矢口。やっぱり裕ちゃんがいると全然違うね。やっぱり裕ちゃんし
か皆をまとめられないよ。）
「かおり!!どーや？リーダーは。ちゃんとやってる？」
突然話しをふられた飯田は一瞬躊躇しながらも、
「うん。やってるよ。」
とだけ答え、目線をそらした。
「かおり？どうし･･」
｢｢バタン!!｣｣
中澤の言葉をさえぎる様に楽屋の扉が大きな音をたててひらいた。
「圭ちゃん！｣
「きゃぁ!!」
「なんや!?」
そこには血だらけの保田の姿があった。
「圭ちゃん!!どうしたの？」
「保田さん？」
あわてて皆が保田に近付こうとした。
「こないで。後ろさがって。壁際･･これなにかわかるよね？」
血まみれのナイフをとりだした。
「圭坊!!なにしてるかわかってんのか!?どういうことや？」
中澤は無意識のうちにガタガタ震える矢口を自分の後ろに回してい
た。飯田と石川は放心状態。安倍と後藤と吉澤はじっと保田を見て
いる。辻はよくわかっていないのだろう。きょろきょろしている。
「今から私の言う事は絶対だから。はやく壁際いって。あと勝手に
しゃべらないで。」
「わ、わかったわ。とりあえずみんなさがろう。」
座るとはなしだした。
「今の娘が最悪なのはわかるよね？裕ちゃんはわかってなかったか
もしんないけど。いまは楽屋だけだけどそのうち絶対仕事中にも
あらわれると思うんだよね。でたらもう終わりじゃん。私、娘は
そんな風に終わらせたくないいんだよね。」
「なにそれ？そんなのこんな風にして言う事じゃないんじゃないい
の？」
後藤が少し怒ったように言う。
「･…しゃべんなって。こうするよ？」
そういうと廊下からズルズルとなにやら運んできて、部屋の中に投
げ入れた。
切り裂かれて物となってしまった加護だった。
「キャァァァァァ!!」
石川の叫び声が一瞬遠くから聞こえる。
（あっ今気ぃ失いかけてたわ･･。なんで？圭坊本気や。殺すことに
もうためらいないわ･･。）
（加護･･あれほんとに加護なの？どうして？）
（なんで仲悪いだけで人死んでるの？）
一瞬様々な考えが各自にうかぶ。びっくりしすぎて泣くことすらで
きない。辻だけはもう気を失っていて飯田に支えられていた。
「加護は・・・」
保田が加護の体をみながら話しだした。
「一番問題だったの。何回ｹﾝｶすんな、っていったことか。教育係り
もｹﾝｶしてるから私がいってたの。加護たちがうまくいけば後藤達
も仲良くなるかもしれない。そうおもってなんども言ったわ。」
ないでって。そうしたらなんて言ったと思う？」
保田は娘のほうに目をやり淡々と言った。
「あんたにゃ関係ないって。黙って座ってりゃいいって。」
娘は皆加護のそう言い放った姿を想像した。しかし中澤は表だった
加護のそういう姿は見たことがなかったので信じられなかった。
「最後のチャンスとかいったけど、さっきまでまさかこんな姿にす
るつもりは全然なかったわ。でも、やっちゃった･･。もう後戻り
はできない。ならせめて娘をこんなままにはしておけないって思
ったんだ。」
そういうと、おもむろに立ち上がり、ナイフをふいた。
「まず、裕ちゃんなんにもわかってないだろうから説明するね。今
の娘を。後藤と吉澤、あんた達の関係言ってみて。」
突然話をふられた後藤と吉澤は目を見合わせた。
「私達の関係？ちょっと仲わるいってのじゃダメなの？」
「そうですよ。別に仲悪いだけじゃないですか!!」
「じゃぁ、理由は？」
「気が合わないってそれだけです。」
「ねぇ。私達が仲悪いってそんなだめなの？そりゃプッチの時ちょ
っと圭ちゃんに気をつかわせるのかもしんないけど･･しかたない
じゃん!!今でも仲良くするつもりなんてないよ。」
後藤は吉澤を見ながら思うがままを言った。
「…圭坊･･誰でもうまくやっていけへん相手っているで。だからっ
て･･」
実はこういう話、結構好きっす。
でもいきなり加護が死んじゃうとは・・・。
「何しゃべってんの？裕ちゃん。」
保田は中澤をにらみつける。今は話しを聞けとばかりに。
「後藤、吉澤… ほんとにもう仲良くするつもりないいんだ？これ
から何があっても･･。」
保田が加護とナイフを見ながらポツリと呟く。後藤と吉澤は慌てて、
「あっ･･ま･･まぁ、あわしてくれるんなら･･」
「一回ちゃんと話し合っていま…す」
（さすがに殺されるよりはマシだ。）との思いから、さっきまでの
強気な態度を一変させる。
「ふぅん･･そう？問題起こさないって約束するならあんた達はもう
いいわ。」
｢｢約束します!!｣｣
（なんかおかしないか？）
中澤は根拠のない不安を胸に抱いていた。
しかし、考え様とした途端、保田は次の標的に目をうつした。
「話し合ってみま･･す」の間違いです…
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