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■■■出撃!!かおりん帝国■■■

1 名前:A. 投稿日:2001年09月05日(水)14時41分01秒


ーー第37代皇帝カオリンーー

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出撃命令を出すカオリン皇帝
2 名前:A. 投稿日:2001年09月05日(水)14時54分06秒
↑URL間違い

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3 名前:A. 投稿日:2001年09月05日(水)18時23分19秒

ーー序章ーー

その帝国はその世界の半分を支配していた。

その支配地の半分は、その帝国の直接の領土であり、あとの半分は、帝国の属国及び保護国て構成されていた。

その帝国の皇帝は神として崇められ、その威光ははるか地の果てまで及んでいた。

帝国傘下の諸王国は、毎年正月になると使者を帝都に送り朝頁していた。

朝頁したものは金銀財宝に留まらず、多くの美しき少年、少女が送られてきた。

その皇帝に捧げられた少年らは皇帝の護衛や小姓となり、少女らは後宮に入り皇后の世話係などになった。
4 名前:A. 投稿日:2001年09月05日(水)23時06分43秒

いくら帝国傘下の国々から送られて来た少年、少女たちとはいえ、かつては敵国でもあったはずのそれらの国の人間を、なぜ皇帝は自分の身近に置いておくのか?

ある日、夕食の食前酒に毒を入れられることもありうるのではないか?

これは帝国の伝統としてそうしているわけなのだが、その理由は、帝国の征服理念に基づいている。初代皇帝ヴィリノブの格言「国を従わせるは人を従わせるにあらず、国を従わせるは心を従わせることなり」この言葉を歴代皇帝は様々な解釈をしてきたが、第11代皇帝ハリムントは、この言葉を「国を支配するには、人を信じること」というふうに解釈し、戦で攻め落とした城の人間を、自分の住む宮殿の警備に就かせたのが、この伝統の始まりであった。
5 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月05日(水)23時15分52秒
ハリムントは敢えて旧敵国の人間を自分の護衛にさせることによって、その国から選ばれた人間及び、その人間を選出した国民に対して『責任』を負わせたのであった。

歴代皇帝は少年、少女及び少年、少女を連れてきた使者に対して言うのであった。

「貴国のことを信じておるぞ」

この言葉は、帝国傘下諸国にとって何よりの圧力となった。

もちろん、皇帝たちにとっても気の抜けない毎日を強いられた訳ではあるが・・・・・。




6 名前:A. 投稿日:2001年09月05日(水)23時28分19秒
それらの美しき少年、少女の中には、時に実力を認められて出世するものもいた。

その世話係の少年は、とても頭の回転の速い少年であった。

常に皇帝の考えを読み、皇帝の行動よりも数秒早く動き、先回りして皇帝の望む行動をするのであった。

第36代皇帝アグナルト二世は、その少年シン・ウガンをたいそう気に入り、やがてウガンを自分の護衛につかせた。

ウガンは頭の回転が速いだけでなく、知識も豊富で、皇帝が政務のときに何かわからないことがあると、ウガンはすぐさま皇帝にかけより耳打ちしていった。

皇帝はやがてウガンを自分の側近にした。
7 名前:A. 投稿日:2001年09月05日(水)23時51分10秒
大臣たちは政務のときに、つねにウガンに皇帝が何かを尋ねている様を見て、ウガンのことを陰でこう呼んでいた

『ジョンソン二世』・・・・・と。



マスター・ジョンソンとは、第14代皇帝ユーカリに仕えていた占星術師で、皇帝にとても気に入られていた。

やがてジョンソンは皇帝を後ろ楯として宮廷で権勢を振るうようになり、帝国の政務・外交にことごとく介入し、宮廷に於いては私利私欲をむさぼった。

しかし、ユーカリが死に、ユーカリの長男タムタムが皇位を継ぐと、後ろ楯を失ったジョンソンは宮廷に居場所を無くし、やがて国外へと逃亡した。

マスター・ジョンソンは消息を絶った。



8 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月06日(木)07時15分01秒
シン・ウガンは皇帝アグナルト二世の基で、ますますの出世を遂げていった。

皇帝の側近から北辺国境隊長、サク州長官、回廊総督を経て、そして遂に帝国議会の議長にまで登リ詰めた。
9 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)07時33分45秒
シン・ウガンの議長就任に際しては、議会内から激しい反発が起こった。『外国人である者を議長の座につけるな!』しかしこのように抗議をする議員たちも皇帝の威光には逆らえず、皇帝に推されているシン・ウガンの議長就任を拒否することはできなかった。

シン・ウガンは議長に就任した日、心の中で、皇帝に対する永久の忠誠を誓った。「貧農の出である自分が、帝国議会の議長という最高権力の座につけたのは、すべて皇帝陛下のおかげだ。この御恩はこの身が朽ちるまで忘れることはない」

ウガンは、この時初めて涙を流したという。

しかし、このウガンの皇帝への忠誠心は、やかて帝国を暗黒の時代へと導くことになる。


10 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)10時13分37秒
ウガンは議長の座に就くと、反体制分子の摘発にのりだした。「帝国をあやうくするものは、すべて消してしまわなければならない」。そう考えたウガンは、ありとあらゆる手段を使って不穏分子を捕えていった。

脅迫、密告、買収、おとり、盗聴、拷問、怪文書、やがて帝国内の不穏分子は次々と捕えられていった。

しかし捕えられて者の中には反体制活動とは全く無縁の無実の罪の人々も多く含まれていたようであった。
11 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)10時21分36秒
帝都の中央広場では、毎日『反逆者』たちが、ろくな裁判を受けることもなく処刑されていった。広場の石畳は処刑された者の血で赤く染まっていった。

この行き過ぎた摘発行為に対して、帝国議会でも議員たちから反発の声があがった。が、しかし、その異義を唱えた議員たちもやがて捕えられ、広場の石畳をさらに赤く染めるに至った。
12 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)10時26分45秒
帝国内に議長に逆らうものはいなくなった。このウガン議長による恐怖政治は数十年の長きにわたって行われた。

しかし、この恐怖政治にも終わりのときがきた。

ウガン議長の後ろ楯となっていた皇帝アグナルト二世が崩御したのだ。
13 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)10時35分54秒
ウガン議長は後継者として議長と気心の通じた皇帝の四男ルクソルを皇帝に据えようとしたが、宮廷内の議長に対して反発する勢力は皇帝の長女カオリンを即位させようとした。

この後継者争いは、血で血を洗う争いとなった。

この両者の争いに終始付を打ったのは、本来後継者となるべき皇太子であった長男と、次男、三男の両皇子であった。
14 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)10時48分11秒
この三人の皇子は、ウガン議長の陰謀により、長らく地下牢に閉じ込められていたのだが、この後継者争いの混乱に乗じて、牢からの脱出に成功していたのだ。

3人の皇子は牢から脱出すると、すぐさま長女カオリンの所へ行き、カオリンを皇帝に即位させるために三皇子で血判書を作成し、これをあらゆるメディアに乗せて帝国内に公布した。

裁判所はこの公布を承認し、議会もまたこれを承認した。

議長は窮地に追いこまれた。
15 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)10時56分50秒
この結果を知った四男ルクソルは国外へ逃亡しようとしたが、国境の手前で討伐隊に包囲されてしまい、もう逃げられないと観念したルクソルは、その場で毒を飲んだ。

帝国には千数百年ぶりの女帝が誕生することとなった。第37代皇帝カオリン。

これがこの物語の主人公『カオリン』である。



16 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)11時17分34秒
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出撃命令を出すカオリン皇帝
17 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)11時29分00秒


ーー反乱軍ーー

「委員長!!」
カオリンは行政委員長を呼び寄せた。

「何でしょう陛下」背が高く、鋭い顔つきの男、TK行政委員長がカオリン皇帝に歩み寄った。

「ウガン議長はどうなった?」
ウガンはルクソルが自殺した後、裁判にかけられていたのだ。
「もう議長ではありませんよ、ウガンは」

「そうか、長いこと議長の座にいたからな、予が生まれる前から議長だったからな、つい使ってしまった」
カオリンの中では『議長』といえばウガン。ウガンといえぱ議長のままであったようだった。
18 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月06日(木)12時07分49秒
「判決が出ました『国外追放』です」

カオリンは目を細めた『国外追放』は決して恩情措置などではない、死刑よりも恐ろしい刑罰なのだ。

「これをご覧下さい」委員長はテレビを点けた。

テレビの画面には、馬の背に仰向けに縛られているウガン元議長の姿が映った。

「苦しそうだな・・・・・」カオリンはウガンの姿を見て言った。
19 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)12時15分51秒
ウガンは苦しんでいた。太陽が容赦なくウガンの顔を照りつけていた。

髪の毛も髭も真っ白の老人であったが、からだは黒く筋肉質で、身長は2m近い大男であった。

「議長殿は誠に怪物であるかも知れぬ・・・・・」

ウガンは、太陽の日差に苦しみながらも周囲を大きな目で睨みつけ、自分を見つめる者たちを威嚇していた。
20 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)12時20分00秒

「このあと議長はどうなるのだ?」

カオリンは委員長に尋ねた。
「とりあえずこのまま辺境の『華峡関』の門まで連れて行きます」

「あの状態のままでか?」

「そうです」
21 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)12時26分52秒
華峡関といえば帝国領の最辺境・・・・・カルカス山脈を越え、ムール砂漠を渡り、ダイダロ湖を挟んだ向う側にある関所だ。

「そこに着くまでに死んでしまうのでは?」
皇帝は言った
「死んでしまうかもしれません」
委員長は顔色ひとつかえずに言った。
22 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)12時37分36秒
馬に縛られたままのウガンは、長い長い旅に出た。

山を越え、砂漠を越え、湖を越え、そしてようやく華峡関についた。ウガンはすっかり衰弱しきっていた。

「まだ生きていたのか・・・・・」

ウガンをここまで連れてきた執行人たちは、ウガンの生命力に驚いていた。おそらく今まで彼らが運んできた囚人は、ここに到着した時点で生きてはいなかったのであろう。
23 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)12時44分48秒
執行人たちは、関所の門を開けた

門の向う側には暗黒の森が口を開けていた

執行人たちは馬に縛られたままのウガンを馬ごと門の外へ出し、馬に目隠しをし、そして馬の首を森の方へと向け尻を思い切りムチで叩いた。

「ビシッ!!」

目隠しをされた馬はウガンとともに、暗く巨大な森へと消えていった。
24 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)12時53分46秒
「その後どなるのだ?」
カオリンは委員長に尋ねた。

「その後は、崖に落ちるか、沼に沈むか、獣に喰われるか、或は辺境の蛮族アスカの連中に捕まって生きたままはらわたを喰われるか・・・・・」

カオリン皇帝は身をブルッと震わせた。




25 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)13時59分21秒
「陛下!!」
ある朝TK委員長が血相を変えてカオリン皇帝のもとへ飛び込んできた。

「どうした!?」
ヘッドから飛び起きたカオリンは叫んだ。
「どうしたというのだ!?」

「申し訳ありませんハァハァ やられましたハァハァ」
委員長は息を切らせながら言った。
「なにが“やられた”というのだ!!」

「申し訳ありません 囲まれました・・・・・都が囲まれました!!」
26 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)14時15分09秒




話しは一か月前に遡る。

辺境のモーニングシュタットで反乱軍が結成されたというのだ。なんとその首謀者は死んだと思われていたウガン元帝国議会議長だというのだ。

『モーニングシュタット』とうのは、辺境にあるおたずね者のたむろしている集落なのだが、この町はおたずね者だけでなく、帝都を追われた者、帝国に不満を持つ者などもいる大集落である。もう千年以上の歴史を持つ暗黒都市であった。

国境警備隊も恐れてここを訪れることはなかった。
27 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)14時26分29秒
この町にウガンがアスカ族の大軍を率いてやってきたのだ。そしてモーニングシュタットの住民に反乱を促し、モーニングシュタットの住民とアスカ族の連合軍『共和国連合』を結成したのだ。

ウガンはその共和国連合の意志決定機関『共和国会議』の議長に就任した。

その規模は、総勢200万人を越す大軍団へと膨れあがった。
28 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)14時36分43秒
この情報を得た帝国政府は、直ちに千隻の戦艦による討伐隊を組織し、モーニングシュタットに向かわせた。

この討伐隊は、昼間でも『夜になった』と思わせるほど空を埋めつくす大艦隊であった。

討伐隊の隊長、M提督は、「我々が到着するとき、敵は自らの過ちに気づくであろう」と絶対の優位を認識していた。
29 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)14時53分47秒
この大討伐隊の強襲の情報を得た共和国連合の最高司令官マリ王子は『多勢に無勢』と判断。モーニングシュタットを離れる決意をし、これを共和国会議に報告した。ウガン議長もこの報告を承諾した。

共和国連合は、辺境の町モーニングシュタットを放棄し、さらに最辺境の地である大森林地帯『真夏の森』へと逃げ込んだ。

マリ王子「これは『逃亡』ではない、『潜伏』である」

討伐隊も『反乱軍』を追って真夏の森へと急行した。
30 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)15時56分21秒
しかし、ここで不気味な事がおこった。

討伐隊が消息を絶ったのだ。

M提督からの通信「真夏の森へ掃討作戦を開始します」という連絡を最後にプッツリと音信が不通になったのだ。
31 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)16時02分31秒




「囲まれただと!? なぜだ!? 反乱軍は辺境にいるのではないか!?」
カオリン皇帝は激しい口調で委員長を責めた。

「申し訳ありません してやられました。どうやら反乱軍は森に逃げるフリをして、森づたいに遠回りして都までやってきたようなのです」

「・・・・・」

共和国連合という『反乱軍』に包囲された帝都は、恐怖のどん底に叩き落とされた。

32 名前:A. 投稿日:2001年09月06日(木)23時43分58秒
モーニングシュタットを放棄する共和国軍

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共和国連合軍最高司令官マリ王子「我々は勝利を急がない」
33 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月06日(木)23時49分19秒
↑URL間違い

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34 名前:A. 投稿日:2001年09月07日(金)18時34分58秒

ーー包囲ーー

討伐隊が出撃してから1ヶ月後、帝都に悪夢が訪れた。

辺境にいたと思われていた反乱軍が突如、帝都近くに姿を現し、都を包囲したのだ。反乱軍の最高司令官マリ王子は、カオリン皇帝との会談を帝国に要求した。

マリ王子「1週間以内に、この要求が満たされなければ、帝都の位置は、後の歴史家が遺跡で確認するにとどまるであろう」

反乱軍兵士ゴマ「王子がひと吹きすれば、都はタンポポのように吹きとばされるであろう」
35 名前:A. 投稿日:2001年09月07日(金)18時44分07秒
帝都でクーデターが起きた。反乱軍の脅しに恐れをなした一部の兵士が、皇帝を捕えようと宮殿に攻め込んできたのだ。

しかしカオリン皇帝はみつからなかった。皇帝は、宮殿の隠し部屋に潜んでいた。昔、占星術師のマスター・ジョンソンが隠れていたとされていた俗にいう『ジョンソンの避難部屋』で、暴動が収まるのをじっとまっていた。
36 名前:A. 投稿日:2001年09月07日(金)18時52分24秒
しかし、皇帝が見つからないことに腹を立てたクーデター兵たちが、宮殿に火を放ってしまったのだ。隠し部屋にも居られないと判断したカオリン皇帝は、危険を承知で地下通路を通って帝都の外に出ていった。

しかし都の構造に詳しい反乱軍は、地下通路の出口で待ち構えていた。

カオリン皇帝は共和国連合に捕えられてしまった。

マリ王子「ようこそ皇帝陛下。真夏の光線は陛下には少しまぶしいですかな?」




37 名前:サザエオールスターズ 投稿日:2001年09月09日(日)18時53分58秒
小説あぷろだに画像をアップしないこと。
次やったらそれなりの処置をとる。以上。
38 名前:A. 投稿日:2001年09月12日(水)17時50分41秒

ーー代わりの皇帝ーー

共和国連合に捕えられたカオリン皇帝は、マリ王子に吐きすてるように言ったる

「たとえ予の首をはねても、まもなく討伐隊が帰ってきて、きさまらをひとり残さずあの世に送るであろう」

この言葉を聞いて、マリ王子は笑いをこらえきれない、といった態度を示した。

「何がおかしい!!」

マリ王子「いいものをみせてやろう 連れてこい!!」

王子の部下たちが、うしろ手に縛られた一人の男を連れてきた
39 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)17時56分35秒
「この男に見覚えはないですかな 陛下?」

カオリン皇帝は愕然とした「M卿・・・・・」

その男は反乱軍討伐隊隊長サー・マイルズ提督であった。

「誠に残念でしたな皇帝陛下・・・・・しかし陛下にはまだお役目が残っておりますぞ、陛下の親愛なる帝都の民の命をまもらねば・・・・・」

そういって、マリ王子は降伏文書を差し出した。

40 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)18時03分21秒




一方帝都では、TK委員長が、親衛隊を使ってクーデターを鎮圧した。

しかし帝都では、皇帝が敵に捕えられたという噂がひろがっていた。

このままでは兵士の士気に影響を及ぼすと考えたTK委員長は、宮廷ですれ違ったひとりの少女に目を止めた。

41 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)18時05分56秒
「女、名は何という」

「はい、サヤリンと申します しがない肉屋『プッチモ』の娘であります」

「よし いまからお前がこの帝国の皇帝だ!!」


「えっ!?」



42 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月12日(水)18時41分38秒
これって、あるホームページで公開されていたのと同じですよね?
作者さんも同じなんですか?

でもこの話好きでした。名前とかわかんなくて、一回見たきり見失ってたんです。
続き期待してます!
43 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)20時33分08秒
>>42 同じ人です 珍しいですね僕のHPを知ってるなんて 或いわ「ハイルかおりん!!」の常連さんでしょうか?

すぐに続きを書きますので期待してて下さい
44 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)20時38分56秒
サヤリンは困惑した、自分は皇帝の親族でも何でもないのになぜ?

「たとえ国民は誤魔化せても、この宮殿の人間はごまかせません わたしの顔も素性も知っていますから」

TK委員長「みんな、今の話しを聞いたか?」

宮廷の閣僚、兵士、使用人が一斉に振り返った。

「こちらにおわすは我らの神聖にして最も偉大なる王サヤリン皇帝陛下である!!」

45 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)20時43分40秒
全員かニヤリと笑ったそして・・・・・

「皇帝陛下万歳!!」

サヤリンはあっけにとられたる

「皇帝は血縁ではない いかに国民に愛されているかだ、少なくとも君はこの宮殿では愛されているようだ」

サヤリン「国民や兵士に、果たしてわたしは愛されるでしょうか?」

「心配しなくていい 我らが君を見違える程偉大で美しい皇帝に・・・・・いや神にしてくれよう」

46 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)20時46分22秒
「わたしが神に・・・・・」

委員長は手をパンパンと叩いた すると髪結と仕立て屋が彼女を担ぎ上げて、奥の部屋へと連れ去ってしまった。



47 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)20時49分55秒
フロアで元帥が委員長に言った。

「委員長、これからどうするおつもりですかな?」

「カオリン皇帝を救わねばなりませんな、早くしないと反乱軍の策略にはまって降伏してしまうかもしれない」

TK委員長は、共和国連合の議長の謀略を恐れていた。

48 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)21時32分15秒
「皇帝ってどんなひとなんですか?」

サヤリンは、女仕立て屋アヤッペに尋ねた。

アヤッペは忙しそうにサヤリンの身体のサイズを計りながら答えた。

「そうねぇ ふつうの人だと思うけど・・・・・」

「短所とかなかったんですか?」

「短所ねぇ う~ん 怒りっぽいところかな?」
49 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)23時48分31秒
「ええ そんなぁ こわ~い」

「どうして?」

「だってぇ 皇帝がいない間にあたしが勝手に即位したらさぁ もし皇帝がまだ生きてたとしたらすっごい怒るとおもうの もしそうなったらあたし殺されちゃうわ」

アヤッペは呆れた、という顔でサヤリンに言った

「もう そんなに皇帝を恐がってたら『ジョンソン二世』って呼んじゃうよ」

50 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)23時55分22秒
アヤッペは、かつて皇帝を恐れるあまり、国外へと脱出した占星術師マスター・ジョンソンにサヤリンを例えた。

まだ仕立て屋アヤッペがサヤリンの身体を計り終えていないのに、今度は髪結がサヤリンにあゆみ寄ってきた。

髪結は、帝国No1.の美容師「アヤノコウジ」だった。

しばらくアヤノコウジはサヤリンをみつめていたが、なにか閃いたのか突然サヤリンの長く美しい髪をバッサバッサと大胆に切りまくった。

サヤリン「うわぁぁぁぁぁぁー やめてくださーい!!」
51 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月13日(木)00時04分01秒




宮殿の地下室では、カオリン皇帝を救出するための作戦会議が開かれていた。

TK委員長と将軍たちが帝都インペリアルシティの見取図を囲んでいた。

帝都を包囲している反乱軍は大きく3つの師団で構成されている。まずルル将軍の率いる黄色師団、ダニエル将軍の率いる紅組師団、そして最高司令官マリ王子の率いる青組師団・・・・・情報部の情報が正しければ、皇帝はマリ王子の青組師団にとらえられているはず・・・・・」
52 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月13日(木)00時04分59秒
TK委員長は少し不安そうに言った






53 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)05時31分32秒
帝都の北側には『フクヤグチ』という険しい山があり、そこにはカラスを操るといわれる魔女「ユーコ・ララ」が棲んでいた。

二人の帝都の情報部員が彼女の家を訪れた。そして皇帝救出の協力を要請した。

魔女は要請を拒否した。
「なんでウチがそんなんせなあかんねん」

男達は金をちらつかせた
「いくら欲しい?」

「はんっ!帝国の金なんぞ欲しゅうないわい! おとといきぃ!!」

54 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)05時39分05秒
「もし聞き入れてもらえなければ、今すぐここで死んでもらいますよ」
そういって男は銃を取り出した

「殺せるもんなら殺してみい!うちはなぁ そう簡単には死なへんでぇ!!」

魔女が本気だと感じたエージェントは銃をしまった。そして彼女に何が欲しいのか尋ねた。

「そやなぁ・・・・・まあ考えとくわ それよりなぁ うちなぁカオリン皇帝の顔知らんのや、ちょっと見せてくれんか?」
55 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)05時45分11秒
男達はカオリン皇帝の写真を見せた
「はあぁぁぁー なっかなかの男前やなぁ」

男達はハッとした
「おとこまえ? あっ間違えた!こっちだった」
男は間違えて出したサヤリン皇帝の写真を引っ込め、カオリン皇帝の写真を見せた。

「あっ こっちが皇帝なのね ふ~ん・・・・・」
魔女ユーコは皇帝の写真をみつめながらニヤリと笑った

56 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)05時51分29秒
帝都ではサヤリンの皇帝に即位するための式典が大々的に行われようとしていた。美しい色白の『美少年』に帝都の全女性がため息をついた。

「ホント キレイね! あれが女の子なんて信じらんない」

サヤリンはそんな大衆を見下ろしながら『神』への階段を昇ろうとしていた。

57 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月26日(水)00時05分27秒
サヤリンは、皇帝の証である『皇玉』を持って式典のその会場に現れた。

演壇についたサヤリンは、持っている玉を付きびとに渡すと、そっとマイクに向かった。

脇にはTK委員長が立っていた。

会場の群衆が静まり、やがてみんなは新皇帝の『お言葉』待つ態勢に入った。

しかしサヤリンはそれから暫く何も喋らずに、ただ、うつむいて机の表面を見つめていた。

58 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月26日(水)00時10分41秒
じっと待つ聴衆。

しかし、それでも喋り出さないサヤリンに、だんだん群衆が苛立ちはじめた。

それからさらに何も語らぬサヤリン。群衆のイライラが遂にピークに達したそのとき・・・・・。

「みなさん!!」

皇帝の言葉にきき耳をたてる群衆。

59 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月26日(水)00時17分54秒
「我々は今、野蛮で無慈悲な敵に囲まれている。が、しかし・・・・・」

TK委員長がニヤリと笑った。

「帝国は決して国民を死なせない! 帝国はかならずこの包囲網を壊滅させる! 帝国は常に国民と共にある!」

意外な言葉にキョトンとする群衆。

TK委員長は、会場をゆっくりと見回すと、パチパチ、と、拍手をした。
60 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月26日(水)00時24分57秒
そして、それにつられるようにしてちらほらと会場から拍手が、やがて会場全体が大きな拍手に包まれていった。あちらこちらから「皇帝万歳!」と叫ぶもの、あるいは涙を流すものもいた。

そして・・・・・

TK委員長「皇帝陛下・・・・・万歳!!」

群衆もこのかけ声に応えた
「万歳!! 万歳!! 万歳!!」


61 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月26日(水)00時31分05秒
マリ王子は、なかなか降伏に応じないカオリン皇帝に悩まされていた。マリ王子は議長から「早くサインをさせろ!!」と強く示唆されていた。

野蛮なアスカ族は、「皇帝なんか殺してさっさと都に攻め込んじまえ!!」と言う有り様。

「アスカの連中は帝都を焼け野原にするつもりか? それじゃダメなんだ」

『国家』を知らないアスカ族に、マリ王子は苛立っていた。





62 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月29日(土)17時05分47秒
マリ王子はアヤッペに話し掛けた。
「どうやらサヤリンは本当に皇帝になったようだな」

「そうですね」

「皇帝になった、というよりさせられたんだな、あの男に」

「TK委員長ですか」

マリ王子は不安になった。サヤリンの即位は一時的な、仮のものだと思っていたが、どうやら本格的なもののようだ。

すると今、我々の手元にあるカオリン皇帝はどうなるのだろう?降伏文書にサインをしても無効になるのだろうか?

もしかしたらカオリン皇帝はもう死んだものとみなしているのか?
63 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月29日(土)17時38分29秒
「あの男にやられたな。おそらく自分が皇帝のように振る舞いたいのさ。サヤリンを操り人形にしてな」

「しかしTK委員長はすでに帝国政府No.2の地位を手に入れてると思うのですが、『実質No.1』とも言われてますし・・・・・」

「カオリンが邪魔だったのさ。あいつはもともと議会で『青年将校』と呼ばれてた国粋思想の持ち主だ。リベラルなカオリン皇帝とは元々ソリが合わなかったのさ」

マリ王子は何かを次々と『気づいた』ようだった。

「おそらくあのクーデター騒ぎもあいつが仕組んだんだ・・・・・『皇帝救出?』それもウソだ。おそらく皇帝に忠実な将軍たちや情報部を取り込むための小芝居だな」
64 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月29日(土)17時43分35秒

「アヤッペよ、もし私がお前に暗殺命令を出したとしたら、その対象はサヤリンではないぞ、彼女にはまだ利用価値がある。殺すのは委員長の方だ!!」

「はいっ!!」

マリ王子はTK委員長が、かつてウガン議長の側近だったことを思い出した。
65 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月29日(土)18時22分00秒




黄色師団のルル将軍の陣地に、マッドサイエンティストのDrつんくが訪れていた。

また新しい戦闘メカを持ち込んできたのだ。

ルル「なにぃ このコキブリみたいなのぉ!?」

つんく「もぉ ゴキブリちゃいますよ、よく見て下さいカニですよカニ!『カニ型ロボット』なんですよこれは!」

ルル「かに?蟹ってこんなに足があったっけ?」
66 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月29日(土)18時27分43秒
つんく「もーイジワル言わんといて下さいよ。ホンマ“ズルい女”やなぁ。ほらハサミもちゃんとついてるでしょう」

ルル「これであの城壁も崩せるのか?」

つんく「もちろんですとも閣下。名付けて『クラブマシーン』」

Drつんくは自慢気にカニのからだをポンッとたたいた。

巨大な蟹は、不気味に目を光らせた。

67 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月29日(土)23時33分19秒
帝都のトラックドライバー『ワダ』は思った。

インペリアルシティーが反乱軍に包囲されてからというもの運送業は大繁盛だ。現金よりも現物のほうが重宝にされる。今や巷では『物々交換』が大流行り! 特に食料がね。今日も銀行にトウモロコシ、不動産屋にジャガイモ、テレビ局に牛乳etc・・・・・帝都にはなぜか農場なみに食料があふれている。これもカオリン前皇帝の『自給自足政策』のおかげかな?

「今度は宮殿に衣料品か、アヤッペさんにまた会えそうだ、ウフフ」ワダの運転するトラックは宮殿の裏門に入っていった。
68 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月30日(日)07時38分26秒
「まいにちご苦労様」アヤッペは帰ろうとするワダにそう声をかけた。
「ありがとうございます」

アヤッペはワダに一枚のメモを渡した。「これは?」

「あとで読んでね。メモは少し長いけれど、でも最後まで読んでよね・・・・・」
69 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月30日(日)07時44分55秒
ワダは顔が赤くなった。「あっ、はい、わかりました」ワダは慌ててメモを胸ポケットにしまった。

「それから・・・・・」

「はいっ?」

「『交通事故』には、くれぐれも気をつけてね・・・・・」

アヤッペはそう言うと、ワダの鼻先で人差指をゆっくり左右に振り、そして鼻の頭のところでピタッと指を止めた。
70 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月30日(日)07時50分38秒
ワダはその指を暫くジッと見つめた。
「わかました」





トラックは宮殿を出て少し離れた所までいった。
「アヤッペさんは僕に気があるのかな?」

トラックを止めてワダはメモを開いた。
71 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月30日(日)08時01分42秒
紙にはあの大人びたアヤッペ嬢には意外なほど可愛らしい文字で、そのメモは書かれていた。

『今日の午後2時45分に裏門の2番ゲートから5台の黒いクルマが一列になって出てくる。そして後ろから2番目のクルマにはTK委員長が乗っている・・・・・』

「なんだこりゃ?」

そしてメモの最後には赤く大きな文字でこう書かれていた。
『交通事故には気をつけてね』

そこまで読み終わったとき、突然ワダの心臓が高鳴りだした。
72 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月30日(日)08時08分18秒


時計を見た

2時30分・・・・・急がなければ

「急ぐ?・・・・・俺は一体なにを急ぐんだ?」

トラックは転回すると、宮殿に向けて猛スピードで走り出した。信号はすべて赤であったが、そんなことはお構いなしだった。

「俺は・・・・・俺は・・・・・どこに向かって走っているんだ?」
ワダの全身から汗が吹きでてきた。
73 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月30日(日)08時26分29秒
トラックは交差点という交差点をまるで高速道路を走るかのごとく徐行もせずに突っ走っていった。人間も何人か跳ねとばしてしまったようだ。

「止めてくれ!止めてくれ!!」

トラックはタイヤを切りつけながら、宮殿の裏門に滑りこんできた。

「・・・・・2番ゲート・・・・・5台の黒いクルマ・・・・・後ろから2番目のクルマ・・・・・あれだ!!」

トラックが轟音をあげて、黒い車の列に突っ込んでいった。
74 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月30日(日)08時29分42秒
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ドッシュワァァァァァァァァァァーン!!!!!

トラックと黒いクルマは粉々に砕け散った。





75 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)14時58分06秒
フクヤグチ山では魔女ユーコが夕飯の支度をしていた。

「今日は死神カラスがよう鳴くわ、だれかエラいさんが死んだかもしれんなぁ」

魔女がそうつぶやいた時、玄関に情報部のエージェントが訪れていた。

「あっご苦労はん、どうやった?受け入れてもらえたん?」

「はい、承諾されました」

「よっしゃ!!」
76 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)15時02分26秒
「サヤリン陛下とのディナーですね」

フクヤグチ山にカラスは鳴きつづけていた。





TK委員長は、ゆっくりと黒いクルマから下りてきた。TK委員長は死んではいなかったのだ。委員長は自分の前を走っていたクルマが大破したのを見て側近につぶやいた。

「やっぱりな・・・・・」
77 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)15時10分19秒
「委員長は、このことを知っていたんですか?」

「いや、そういう訳ではないのだが、最近宮殿のコンピューターに頻繁に何者かが侵入している形跡があってね、誰だかわからんが、もしや、と思ってね。スケジュールと少し違う行動をしていたんだ」

「反乱軍のしわざですかね、やっぱり」

「そうかも知れん、これは恐らく催眠術をかけられたんだろう。このトラックの運転手の会社に連絡して、今日のこの運転手の行動をすべて聞き出してこい。そしてこいつに関わった人間を片っ端から連行するのだ!」

「わかりました」
78 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月03日(水)23時42分15秒




アヤッペは腰まで水に浸かりながら、暗い地下水道を進んでいった。

「まさか失敗するとはな・・・・・あいつの嗅覚にはかなわないね・・・・・まあいい誰かがきっとあいつを殺ってくれるわ」

アヤッペはいつにもまして増水している水道に苦しまされていた。

「はあっ、はあっ、はあっ・・・・・このカドを・・・・・はあっ・・・・・曲れば・・・・・はあっ・・・・・外に出れる・・・・・はあっ」

79 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月03日(水)23時48分11秒

後ろからは追っての迫る音が近づいていた。

「急が・・・・・はあっ・・・・・急がなきゃ・・・・・はあっ・・・・・」

しかし神は彼女に味方しなかった。

前方からも追跡者の声が迫ってきていた。
「こっちだ!逃すな!!」

アヤッペは足を止めた。そして懐からゆっくりとピストルを取り出した。

「もうちょっと・・・・・生きたかったな・・・・・」
80 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月03日(水)23時51分42秒
アヤッペは少し微笑んだ。

しばらくして、一発の銃声が地下水道に響いた。







サヤリンは驚いた

「私と同じくらいの歳ですよね?それで少佐ですか・・・・・こんな可愛らしい女の子が・・・・・」
81 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月03日(水)23時56分56秒
元帥「女の子扱いしてはいけませんぞ、“彼”は立派な軍人です。陛下にふさわしい護衛、そして守護神となるでしょう」

サヤリン「少佐殿、名はなんと申す?」

少佐「はいっ!!『ナッチ』と申します」

ナッチ少佐はサヤリン皇帝に敬礼をすると、きつく結んだ唇を、さらにきつく結んだ。



82 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)02時50分55秒
食堂では、サヤリンとナッチが一緒に食事をしていた。

当初はサヤリンが食事をしているときにサヤリンを護衛するためにナッチ少佐が背後に立っている、という格好であったが、サヤリンがそれでは背後にジッと立っているナッチ少佐が気になってしょうがないというので、拒否する少佐を無理矢理同席させてしまったのだ。

後の歴史家はサヤリン皇帝を『暴君』と呼ぶであろう。

食堂の扉を誰かがノックした。

ナッチ「誰だ!?」
83 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)02時56分28秒
魔女「うちや 約束どうりディナーに来たで!」

ナッチは懐からサッと銃を取り出した。

サヤリンはそれを見て手を伸ばし、ナッチ少佐に銃をしまうよう諌めた。

ナッチ「しかし・・・・・」

サヤリン「大丈夫、知っている人だから・・・・・どうぞ入ってください」

魔女ユーコは扉を開けて食堂に入ってきた。そして魔女は食堂を見回した。「シケたとこやな」
84 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)03時05分15秒
サヤリン「外には守衛とか兵士がたくさんいたと思うのですが、一体どうやってここまでこれたのですか?」

魔女はフフンと鼻で笑った。「ウチは魔法使いや、ホウキ一本あればどんな濠や城壁や兵隊がおってもピュンと飛んでこれんねん」

サヤリン「なるほどね」

魔女「まったく お客さんが来よったで、茶でもださんかい! ドン臭いやっちゃな」

サヤリンは慌ててシェフに言った「わたしと同じのをお出しして 早く!」
85 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)07時01分21秒
「まったく シケた料理しか出さんの! これならタバコ屋の裏のマズイお好焼のほうがまだマシや!!」
そういいつつ魔女は額に汗しながら口に料理を放り込んでいた。

サヤリン「あのー・・・・・ディナーは約束を果たした後、と聞いていたのですが・・・・」

「うん? 知らんなぁ、うちはいつでも『キッチリ笑顔で前払い』や」

「そうなんですか・・・・・」

魔女は料理をほおばりながら、思わぬことをつぶやいた。
「どや、『真の皇帝』にならへんか?」

「えっ どういうことですか!?」
86 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)07時03分25秒
「カオリンなんかべつに救わなくてもええんちゃう!?」

魔女は上目づかいでサヤリンを見た。





87 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)09時36分49秒
ゴマ二等兵は、自分の体には少し大きすぎる銃を持ちながら、あか組の支配地域であるインペリアル・シティの城壁の南側を巡回していた。

「この壁の向うに、帝国に苦しめられている民がいるのだ。早く突入して彼らを解放させなければ・・・・・」ゴマはそんなはやる気持を押えられずにいた。

濠の向う側にある城壁に何か動いているものがあった。

「ネコかな?」しかしいくらネコでもこの高い城壁を登れるはずもない。ゴマは銃をそのネコらしきものに向けた。すると・・・・・
88 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)09時40分50秒
「モォォォォォ~ォ」

「なんだ ウシか」

ゴマは深く考えることもなく、牛らしきものが壁をこえるのを見守っていた。





89 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)09時49分17秒
宮殿では魔女がディナーのトリュフをほおばりながらサヤリンに話しかけていた。

「つまりやなぁ・・・・・モグモグ・・・・・つまり皇帝というのはやなぁ・・・・・ウグッ・・・・・なかなかいいポジションやということや・・・・・ウグッ」

「いいポジションというのはどうゆうことでしょう?」

「この国の皇帝はな、結構あそんでられんねん。難しい政治のことは全部委員長がやってくれまっしゃろ・・・・でも皇帝には権威があるから政治以外の事ならなんでも好き放題や、はやい話しがアホでも皇帝にはなれんねん」

「そうかもしれませんね・・・・・」
90 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)09時55分24秒
「この国にはな、ジャニーズ系のエエ男がイッパイおるねん・・・・・だからな毎日そんなのとお茶会やったらオモロイちゃうんかゆーことや」

「そんなことしたくありません!!」

「なんや この肉屋の娘は!! まいにちニワトリの首シメとるほうがオモロイんかい!?」

「別に楽しんでやってる訳じゃありません!」

「あっ ホンマにニワトリ絞めとったん?」
91 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)10時02分51秒
側にいたナッチ少佐はたまらずこう言った。
「ユーコ殿、さっきから陛下の前で失礼ですぞ!出ていってもらおう!!」

「なんや!うちを追い出すんかい!!」

「そうです!!」

ナッチ少佐は魔女を叩き出そうと魔女に近づいた。

すると魔女はサッと両腕を前に出した。「あっ!!」

なんと魔女はナッチ少佐の乳房を鷲掴みにしていたのだ。ナッチはこの突然の出来事に体が動かせなくなっていた。
92 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)10時15分08秒
「エエ乳しとるやん。でもブラジャーぐらいしとかんとアカンでー」

「イヤァァァァァーァ!!!」
ナッチは恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にして墨にうずくまってしまった。

「はっはっはっはっ!! 魔女のちから思いしったか!!」

魔女はそう言うとサッとサヤリンのほうに向き直った。「しゃーないな じゃ約束どうりしますわ。ディナーもいただきましたからなぁ。カオリン皇帝の居場所を透視したるわ・・・・・なんか皇帝が身につけていたもんとか貸してくれんか?」

サヤリン「カオリン皇帝が身につけていたものですか・・・・・ちょっと待って下さい今取りにいかせますから」

「あっ エエ エエ いまアンタが身につけとるもんてエエわ」
93 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)10時21分50秒
「えっ!? でもこれは全部アタシのためにつくった特注だから皇帝と全然関係ないと・・・・・」

「一個だけ関係あるねん」そういって魔女はサヤリンにゆっくりと近づいた。

「あっ・・・・・何を・・・・・」

魔女はサヤリンにそっと唇を重ねた。



94 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)10時32分24秒
アスカ族のリーダー、ギンナン将軍は笑いながらマリ王子に話しかけた。「ハハハハハ 殿下の言ってる事か私にはよくわかりませんな」

マリ「発電所や水道の重要性がか?」

「さようです。そんなものがなくても暗くなれば火をともせばいいし、水が欲しければ井戸でも川でも汲みにゆけばよいのです。わざわざこんな不便なところに人が住んでいるのが間違いなのです」

「もう君らアスカの連中と話すのは疲れたよ。ギンナン閣下に文明と政治について理解して頂くにはあと千年ほどかかりそうです」
95 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)10時40分07秒
「はっはっはっはっ あなたがたモーニングシュタットの人々は我々のことを野蛮だと思ってらっしゃるが、とんでもない。いつでも我々は多くのことを理解していますぞ はっはっはっはっ」

そう言ってギンナン将軍はマリ王子の部屋を出ていった。

マリ王子は疲れ切った顔で護衛の者に話しかけた。

「アスカの連中には折りを見て森に帰ってもらおう。この戦いの意味も知らんヤツとはとてもじゃないが手は組めない」

マリ王子はため息をついた。



96 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)11時36分57秒
「やめて下さい!!」
サヤリンは魔女を突き離した。

魔女は言った。「これでやっと皇帝の居場所が透視できるわ」

サヤリンはそれを聞き、魔女に対して怒った。
「なんなんですか! どうしてアタシのクチビルがカオリン皇帝のなんですか!? この唇は正真正銘あたしのです!!」

「そのベニが皇帝のやねん。わからんか?」

「クチベニ・・・・・!?」
97 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)11時42分22秒
魔女は静かに目を閉じた。どうやら何かを脳裏に映し出しているようだ。

「みえるでみえるで、カオリンがハッキリみえるで。プレステ2よりハッキリみえるで」

「どうなんですか?」

「どっかの建物に一人でおるなぁ・・・・・かなり落ち込んどるようや」

「・・・・・」

「これはどこやろね・・・・・どこだかわからん、窓とかも全部クギが打っておるから外の風景とかも全くわからんわぁ」
98 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)11時48分07秒
ナッチ「マッタクもう 役に立たない魔法使いね!!」

「あっちょっと待って! 壁になんか落書があるわぁ」

「なんて書いてあるの?」

「あいあい傘やね。『ナッチ&サマナイ』って書いてあるわぁ」

「ナッチ?それって少佐のことかしら?」

ナッチ少佐は顔から耳まで真っ赤になった。
99 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)12時37分10秒
ナッチ「あっあっあっ・・・・・カオリン皇帝の居場所がわかりました! 西の谷にある士官学校の合宿所の倉庫です!」

「サマナイって、サマーナイト大尉のことかしら。あの美男子で有名な・・・・・」

「さっ・・・・・さあ」

「西の谷の合宿所ってたしか男子のみのとこじゃ・・・・・」

「そっそんなことどうでもいいじゃないですか 早く助けに行きましょう!」

サヤリンはふと周りを見た。

今さっきまでそこにいたはずの魔女が姿を消していた。



100 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)13時38分57秒
サヤリンからカオリン皇帝が捕えられている場所の報告を受けたTK委員長は、既に『御前会議』を開く決心をしていた。

会議室には都にいる全ての元帥、将軍が集められていた。

ナッチ「自分も入らせて下さい!」

会議室に入るサヤリンと一緒にナッチ少佐も入ろうとしが、委員長に止められてしまった。

「君はいい、外で待っててくれ」

しかしナッチはどうしても会議の内容が知りたくてしようがなかった。
101 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)13時45分26秒
ナッチ「自分は陛下の護衛です! 入らせてもらう!」

ナッチは中にはいろうとしたが、すぐに委員長の側近につまみ出されてしまった。

追い出されたナッチは少し憤慨したが、建物の隅に隠れると何やらポケットから機械を取り出した。

「まーこんな事もあるんじゃないかと思って、サヤリンのお尻に盗聴器を仕掛けておいたんだな。う~ん あったまいい!!」

ナッチはイヤホンを耳につけた。





委員長「陛下 失礼ですが・・・・・」
102 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)13時49分59秒
サヤリン「んっ!? なに!?」

「後ろに虫がついているようでございます」

「ムシ!?」

委員長はサッとサヤリンの背中から何かを掴み取った。
「陛下にまとわりつく不埓な虫であります」

そう言って委員長はその『虫』を握り潰した。





「アタッ!!」
103 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)14時01分34秒
ナッチは慌ててイヤホンを外して耳を押えた。
「イタタタタッ どうしてあの委員長にはすぐにわかっちゃうんだろう あいつも魔法使いか?」

しかたなくナッチはサヤリンが出てくるのを待った。





それから3時間くらいして会議が終わり、建物の中からサヤリンが出てきた。

サヤリン「お待たせー」

ナッチ「どうだった 会議は?」

「うん それなんだけどね・・・・・」サヤリンは憂鬱そうな顔をした。
104 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)14時08分23秒
「アタシは会議の最初のところでちょこっと挨拶しただけで・・・・・そしたらあたしは別室に連れていかれて、会議が終わるまでずっとそこでお茶を飲んでただけなの・・・・・」

「なんだ、結局会議から追い出されていたんですか、それじゃ自分と同じですね」

「うん そうみたい」

「『御前会議』じゃないですよね、それじぁ」

「会議は全部委員長が仕切っていたみたいなの・・・・・そして会議が終わって、あたしが挨拶して終わりと・・・・・」

「それでカオリン皇帝を救い出すのが決ったわけだ?」
105 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)15時26分55秒
「うーん そういうことでもないみたいなの」

「どーゆーこと?」

「皇帝を救出するというよりも外にいる反乱軍に全面的に戦争を仕掛けるみたいなの・・・・・」

「あらあら 皇帝なんてどうでもよくなっちゃったんだ?」

「そうみたいなの」

サヤリンは少し考えてからこう言った。
「どう少佐殿、あたしたちだけでカオリン皇帝を救出しにいかない?」
106 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)15時33分40秒
「えっ二人たけで? ダメダメそんなの」

「どうしてよ?」

「そんなことしたら元帥に怒られちゃうよ」

「なにが元帥よ! あたしはその元帥の何百倍も偉い皇帝なのよ!!!」

「えっ そっ そんな」

「予は神聖不可侵皇帝なり あたしに逆らうのは神に逆らうことよ わかった!!!」
107 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)15時37分52秒
「いや ちょっと待って下さい もうちょっといろいろあの・・・・・」

「これ以上ウダウダいってたら『国家反逆罪』で銃殺にするわよ!!!」

「はっはい仰せのままに アイアイサー!!!」

たった二人の戦争が、今開始された。



108 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)15時48分18秒
兵士「陛下 お待たせしました」

因われの身となったカオリン皇帝のもとに夕食が運ばれてきた。

カオリン皇帝はその料理と、持ってきている共和国連合の兵士を見比べて言った。

「この食事はおそらくそなたたち兵士が口にすることのできない非常に贅沢な代物なのであろう」

カオリンは兵士のやつれた姿を見て、これが特別に作られたものであることを悟った。

「さあそれはどうでしょうかね」

「とぼけるな! これだけの素材がこの谷で手に入るとはとうてい思えん!!」カオリンは兵士を睨みつけた。

「予は因われの身になってまで王として扱ってもらいたいとは思わん。そなたたち兵士と同じものを出してくれ!」
109 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)20時26分14秒
カオリンは自分に出された豪華な料理がきっと多くの人々を苦しめているのだと思うと、とてもそれを口にすることができなかった。

「陛下が一体この料理から何をお感じになられたかは存じかねますが、お気遣いは無用です」その兵士は胸ポケットから一包の薬を取り出した。

「なんだそれは?」

「致死量はこの包の1/100です」

「どういう意味だ?」

「我々はマリ王子の命令があれば、速やかにこれを使用するよう言われてます」

「予の毒殺か?」

「様々なことに関してです」兵士はそれだけ言うと部屋から出ていこうとした。
110 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)20時33分41秒
「ちょっと待て!」カオリンは兵士を呼び止めた。

「何でしょう?」

カオリンは料理を見つめながらいった「この中には入っていないだろうな?」

兵士は少し考えてからいった「『入っていない』といえば召しあがっていただけるのですかな?」

カオリンはこの言葉にブチ切れてしまった。
「さっさと出ていけ 不愉快だ!!」

カオリンはこの豪華な料理が急に毒々しいものに思えてきた。
111 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)20時47分36秒




「もし戦闘を開始するとすれば、それは今日からかぞえて3~5日後の間ですな」元帥は作戦会議で情報部の部長と資料のやりとりをしながら委員長にいった。

「なぜそう思うのかね?」TK委員長は元帥に尋ねた。

「おそらく反乱軍どもは今日中に食料がなくなります。空腹で戦意を喪失したところをぜひ突くべきでしょう」

委員長はその報告を聞いて少し考え込んでしまった。3~5日後ではあまりにも時間がなさすぎる。攻撃の準備ができるかどうか不安になった。

「もっと後ではだめなのかね?」

「それは無理ですね。6日後には辺境から輸送してくる食料が、包囲している反乱軍に届いてしまいます」

112 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)20時56分50秒
「なるほど」

今度は情報部の部長が言った。
「それに2日後の夜には大雨が降ると予想されています。それが空腹の兵士たちを更に無気力にさせるでしょう」

委員長は納得した「腹がへっては戦はできぬ・・・・・か」







サヤリン「あ~ん お腹すいた なんか食べたい」

インペリアル・シティを抜け出したサヤリンとナッチは、カオリン皇帝を救い出すために西の谷へと向かっていたが、食料がはやくも尽きてしまった。
113 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時09分16秒
ナッチ「うっさいな さっきから! そんなデカい声を出したら反乱軍に見つかるでしょうが!!」

「あぁぁん ネギマ食べたい。ねえ少佐殿、将軍にしてあげるから焼鳥買ってきて!」

「まったく何いってんだか。そのうち『元帥にするから焼きソバぱん買ってこい』とか言いそうですね!」

「ああヤキソバパンでもいいから いまここにヤキソバパンを持ってきてくれたら元帥でも総督でも皇帝にでもしてあげるわ!!」

「マッタクもう ついに神聖不可侵皇帝の地位も焼きソバぱん以下になったか 空腹というのは恐ろしい」

グウゥゥ~

「あらっ? 少佐殿のおなかもガス欠みたいよ」
114 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時17分53秒
ナッチは顔を紅らめた。

「しょっ・・・・・しょうがないですな では食料を貰ってきます。この近くに村がありますのでそこで少し分けてもらいます。ここで待っていて下さい」

ナッチはサヤリンを残して麓におりていった。



「すみませーん 誰かいませんか?」村におりたナッチは大声で叫んだ。「食べ物を分けて下さい お金はありますから」

しかしどこを見ても村の人の姿が見当たらなかった。
「みんなどこにいったんだ?」

反乱軍を恐れて逃げ出してしまったのかもしれない。

ナッチ少佐は木陰に座り込んだ。
115 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時31分03秒
「ん?」

ナッチはふと上をみた。

「あぁぁぁぁぁ!!!」

なんと村人達は大きな樹の枝から首吊りにされていた。

「なんてことを・・・・・」

ナッチは思った。こんなことをするのは恐らくあの野蛮なアスカ族に違いないと。

すると・・・・・

「こんなとこで何をしているんだ!!」ナッチは男にいきなり後ろから羽交い絞めにされた。「ははん お前は帝国のスパイだな!!」
116 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)22時42分04秒
「おっ・・・・・お前こそ誰だ!?」

「俺はやがてこの国の支配者となるものだ!!」

マリ王子は暴れるナッチを取り押えながら言った。





帝国領の最辺境に『ジョンソン砦』と呼ばれる場所がある。

『砦』といっても海沿いの崖っぷちに無数の洞窟の穴があいている、というだけのところである。

この洞窟群には千年以上も昔に帝都を追われた邪悪な占星術師『マスタージョンソン』の末裔たちが棲んでいた。

117 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)23時45分33秒
ここになぜか魔女ユーコが訪れていた。
「おらー! 誰かおらんのかー!!」

すると洞窟の奥から老婆が出てきた。
「はいはいはいはい 一体なにを占って欲しいのかね? 金運?恋愛?仕事運?それともあれかい結婚運?」

「はんっ! あんたらの当たりもせん占いなんぞに占ってもらいとないわ!」

老婆はこの言葉にムッとした。
「なんだいその口のききかたは! じゃ一体何しにここに来たんだい!!」

魔女は腕組みをしながら言った。
「あんたらの親分『モシモシ』に会いたいんや」
118 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月16日(火)19時08分03秒
このジョンソン砦には『モシモシ』というマスター・ジョンソンの直系の子孫がいて、彼がこの集落の精神的な指導者となっていた。

モシモシは占星術師ではあるが、裏の世界では『暗黒の呪術師』で名が知られていた。

洞窟の奥からモシモシが出てきた。

「お待ちしておりましたよユーコ殿」
モシモシは魔女を自分の部屋へと案内した。

「帝国が滅びるんやて? ホンマかいな?」

「本当ですとも。ようやく我が一族の呪いが効き目を現したようです」
119 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月16日(火)19時24分03秒
魔女はモシモシの部屋を見渡した。部屋には帝国への呪いをかけるためなのか、カオリン皇帝の似顔絵が無数に貼られていた。

「おっそろしい顔やなー。これ見たらカオリン泣くでー」

カオリンの似顔絵は、どれも千年の時をこえたマスター・ジョンソンの憎しみを込めたものとなっていた。

「基本的にはなぁ ウチはそんな呪いとか予言とか信じんのよ。でもなアンタの予言はたまに当たるやん。何年か前に阪神タイガースの最下位をズバリ当てたりしょったからな。せやからもしやと思ってな」

「フォッ フォッ フォッ フォッ そんなこともありましたな」

「で、 帝国が滅ぶって、どういうことやねん?」
120 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月16日(火)19時30分22秒
モシモシの部屋には帝都インペリアル・シティの模型が組まれていた。

モシモシはその模型を指さし、そして言った。「こうなるのです」

壁に貼ってあるカオリン皇帝の絵を一枚剥がし、それを丸めて帝都の模型の中に放り込んだ。

すると丸められた似顔絵の紙から火がおこり、やがて帝都の全体を炎が包んだ。

魔女とモシモシは、その炎をじっと見つめていた。



121 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月16日(火)19時41分54秒
「あいてっ!!」

捕えられたナッチ少佐は、カオリン皇帝が閉じ込められている部屋に一緒に放り込まれた。

「誰だ! お前は!!」
カオリンは突然の同居人に叫んだ。

「申し訳ございません皇帝陛下」
ナッチはそう言って頭を下げた。

そして、ナッチ少佐は目の前にいるカオリン皇帝の美しさにしばし心を奪われた。「なんて神々しい・・・・・」

「とりあえずその縄をほどいてやろう」
カオリンはナッチの体に巻き付けられた縄をほどきながら耳元で囁いた。
「『申し訳ない』とは、一体どういうことだ?」
122 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月16日(火)20時18分02秒
「申し訳ありません 実は陛下をお救いするために帝国より密命をおびてここへ来たのですが、あえなく敵に捕えられてしまいました」

「なるほど・・・・・で、名はなんと申す?」

「はいっ!ナッチと申します。階級は少佐を戴いております!」

「ナッチ・・・・・ああ お前がそうか!?」

「えっ!? 自分を御存じでらっしゃるのですか!?」
123 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月16日(火)20時23分20秒
カオリン皇帝に名前を知ってもらえてたなんて! ナッチは天にも昇る気持だった。

カオリンは壁を指差して言った。
「ここに『ナッチ&サマナイ』と書かれているのだが、これは一体どういう意味だ?」

「あっあっあっ それは・・・・・別に・・・・・何でもなく・・・・・あっ」

ナッチは顔を紅らめた。



124 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月16日(火)20時49分05秒
宮殿前広場には、新たに志願した若い兵士で埋め尽くされた。

「さすが元帥、よくこれだけ集められたものだ」
委員長は元帥の人望に感心した。
「よし、さっそく彼らに陛下から激励の御言葉をかけていただこう」

委員長はカーテンから外を覗きながら侍女にこう言った。「陛下にここにお越しにくださるよう伝えてくれ」

しかし侍女はなにか言いづらそうにしていた。

「どうした? はやく行ってこい」

「委員長・・・・・実は」

「実は何だ?」

「いないんです・・・・・」
125 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月16日(火)22時32分05秒
「いないって・・・・なにが?」

「サヤリン陛下がいないんです・・・・・どこにも」

委員長は言葉を失った。しかしすぐに冷静さを取り戻し、そして言った。「仕方がない、影武者を使おう。顔はさほど似ていなくてもいい、背丈や体型が近いものはいないのか?」

しかし、全員が黙り込んでしまった。

「誰かいないのか?」
委員長は焦った。

すると委員長の後ろの方で誰かが何か言いたそうにしていた。

委員長の側近だった。
126 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月17日(水)19時07分55秒
「誰かおらんのか?」

その側近はためらいながら、そして躊躇しながら、ようやく口を開いた。「あの委員長・・・・・」

その側近の話しでは、実は皇宮警備隊では、かねてから皇帝の身代り用のアンドロイドを造っていたというのだ。

「カオリン皇帝が因われてしまった直後に皇宮警備隊本部は、かねてから研究を続けていたカオリン皇帝のアンドロイドを急遽、製作したのですが、まあ御存じのようにサヤリン陛下の即位によりアンドロイドは必要なくなったわけです」

「なるほど」

「しかし、イシカワ教授の提案により、そのアンドロイドをサヤリン陛下用の影武者に改造しようとゆう事になったのです」
127 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月17日(水)19時14分37秒
「なるほど、ではさっそくそれを使わせてもらおう。何か問題でもあるのかね?」

「噂では、体型はほぼ似せられているそうなのですが、まだ顔のほうがうまく出来ていないそうなのです」

「かまわん連れてこい」

その側近は急いで皇宮警備隊本部に連絡してアンドロイドを呼び出した。





委員長「ご苦労 よく来てくれた。お前に名はあるのか?」

アンドロイド「はい、名を教授から頂いております」

128 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月17日(水)19時23分50秒
「なんという名だ?」

「はい・・・・・リカ1号と申します」

リカ1号は、電子音をあげながら ゆっくりと顔を上げた。





宮殿前広場には大きな時計台があり、そしてその時計台の屋根の上では広場に集まる兵士たちをみつめるネコ顔の女『ケイ』がいた。

「いったい何がおっぱじまるんだニャー?」

ケイは携帯電話でこのことをマリ王子に連絡しようとしたが、何がおかしいのか、なかなか通じなかった。
「本当にこの『iモード』というのは使えないニャー」
129 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月17日(水)19時34分09秒




なかなか姿を現さないサヤリン皇帝に、しびれを切らしたサマーナイト大尉がついに大声で叫んだ。
「陛下!どうか我らに御言葉を下さい!お願いです!!」

委員長は数枚のメモをリカに渡した。
「だいたいこんな事を言ってくれればいい。さあ行ってこい!」

リカは軽くメモに目を通し、そしてバルコニーに向かった。

「ヘイカー! どうか御言葉をー・・・・・あっ!!」

バルコニーに姿を現したサヤリンになりすましたリカに、サマーナイト大尉をはじめ、全ての兵士が静まり、そして息を飲んだ。

リカは少し厚めの化粧をしているために彼女が影武者であるとは誰も気づかなかった。
130 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月17日(水)20時07分30秒
委員長は心配になった。出征兵士への言葉は細心の注意を払って言わなくてはならないのだが・・・・・言葉だけでなく、表情や仕草にも同じことがいえる。

果たしてアンドロイドはそこまで物事を理解出来ているのだろうか?

「我が帝国の偉大なる兵士諸君!」

バルコニーの手摺に両手を乗せたリカが、兵士たちに呼びかけた。

兵士たちは、一斉にリカ演ずるサヤリン皇帝の言葉に耳を傾けた。

その時、

悲劇は起こる。

「グサッ!!」

なんとしたことだろう リカの左胸に突然大きな矢が刺さったのだ!!

「ああっ!!」
サマーナイト大尉が叫んだ。
131 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月17日(水)22時58分37秒
時計台の上では、大きな弓を片手にもったケイが腹をかかえて大笑いしていた。
「はーっはっはっはっはっ これで帝国の兵士の士気もガタ落ちだニャー」

顔を真っ青にして委員長は叫んだ。「はっ はやく陛下をお下げしろ!!」

側近たちがリカ1号にあわてて駈け寄った。が、しかしリカはバルコニーの手摺をギュッと握ったまま離そうとはしなかった。

リカは自分の胸に刺さった矢をしばらくみつめていた。

「陛下・・・・・」
サマーナイト大尉は言葉を失っていた。
132 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月17日(水)23時09分28秒
リカは自分の胸に刺さった矢を両手で掴むと、それをゆっくりと抜きはじめた。

兵士たちは息を呑んだ。

リカは背中まで突き抜けて刺さっている矢を兵士たちの見ている前で、ジリジリと引き抜いていった。

「奇跡だ・・・・・」

ついにリカは矢を全部抜きとった。

「生きてるぞ!」

「死んでないぞ!?」

「これは奇跡だ!!」

リカは引き抜いた矢を二つに折り、そしてそれを天高く放り投げた。
133 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)03時54分24秒
「あれっ?おかしいニャー??」

リカは叫んだ「神は我らに勝利を約束されたし!!」

静まりかえっていた兵士達も、この声で我に帰った。

広場は歓声に沸きかえっていた。

「帝国 万歳!!」

後の歴史家たちの調査によれば、この時の兵士達の声は帝都の外にまで響きわたり、共和国連合の兵士たちは、てっきり帝国軍の攻撃が始まったと勘違いをしてしまったほどであったという。
134 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時13分34秒




「お待たせしました」

二人の兵士が、捕らわれの身のカオリン皇帝とナッチ少佐の閉じ込められている部屋に夕食を運んできた。

入ってきた兵士は二人ではあるが、食事を運んできたのは一人だけであった。

その兵士の持ってきた食事はカオリン皇帝の前におかれた。ナッチ少佐に対しては、まるでそこにカオリン皇帝しか存在しないかのように全く無視されていた。

それに腹を立てたナッチ少佐が叫んだ「ちょっとなんだこれは! 私を餓死させる気か!戦場で銃弾に倒れて死ぬのならともかく、捕虜収容所で餓死というのは絶対に認めんぞ!!」

カオリン皇帝も自分にしか差し出されなかった食事に戸惑いを覚えた。



135 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)23時28分44秒
兵士A「これは陛下のためだけの料理です どうぞ」

カオリン「なぜ少佐には出さないのだ? これは嫌がらせか? それとも新手の拷問か?」

しかし兵士は黙ったままだった。

「黙ってないで答えたらどうだ!!」

兵士はゆっくりと口を開いた。「少佐殿には我々兵士と同じ食事を与えろといわれています」

カオリンは最初その言葉の意味がわからなかったが、二人の兵士の様相をみて気づいた。二人とも背筋をピシッと伸ばして平常を装ってはいるが、その体はまるで使いきったハミガキのチューブのように、全く脂肪のない痩せ細った体であった。
136 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)23時37分00秒
これはもう栄養失調どころではない。餓死寸前の体だ。

そうか、もう食料なぞないのだ。ねう誰もこの場所では食べ物を口にしているものなどいないのだ。

「少佐殿」

「はいっ!?」

「予は今、食欲がない。これを食べてやってくれ」

「はっはい!!」

しかしナッチとカオリンの間に二人の兵士が立ち塞がった。

兵士A「陛下、食欲がないとは大変お気の毒です」

兵士B「しかし陛下、この食事が陛下以外の人に食されることは残念ながら許可されていません」
137 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)05時17分09秒
「誰でもいい ここにいる誰かに食べさせるわけにはいかないのか? そうだ!君達でもいい腹が空いているだろう?」

兵士A「陛下、それは叶わないことです。ご了承下さい」

カオリンは怒りと苛立ちのために顔が真っ赤になった。

ナッチ「コラーッ!!お前ら!陛下から戴いだいたものを拒否することは万死に値する大罪なのだぞ!一口喰わせろ!!」

兵士A「食事を残されましても、それは誰も口にすることはありません」

兵士B「すべて廃棄されます」
138 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)05時25分04秒
カオリンは、何を尋ねても無表情で淡々と答える二人の兵士に苛立ちを覚えた。

カオリン「お前らはどこまであの議長に洗脳されているのだ!?」

兵士二人はなおも無表情のままでこう答えた
兵士A「我々は洗脳されているのではありません」
兵士B「すべて理性によって『理解』しているのです」

この言葉を聞いて、なぜだかカオリンは悔しくなって涙が出てきた。

すると・・・・・
139 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)06時11分50秒
外からなにやら愉しげな音楽が聞こえてきた。ナッチ少佐は鉄格子ごしに外を覗くと、すると外では兵士たちが焚火を囲んで酒を酌み交わしていた。
「不思議なもんだな、食べ物はなくても酒はちゃんとあるんだな」

音楽にあわせて何やらふしだらな感じのする踊り子がおどり出てきた。

その踊り子の少女は兵士達の目の前で、肌もあらわに官能的なおどりを繰りひろげた。

「まったくフシダラな。同じ女として情けない」ナッチは踊り子を軽蔑の眼差しで見た。

ナッチはしばらくその踊り子をみつづけていた。
「どこかで見たような・・・・・」ナッチ少佐はその少女を誰かに似ていると思った。

「あっ・・・・・サヤリン」
140 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)06時18分35秒
それは森に置き忘れてしまったサヤリンであった。「サヤリンなんだか生き生きしてるなぁ」

「恋しちゃおー 夢みちゃおー モア・エッナッジッで ウッハッウッハッ!!」





黄色師団のルル将軍は、大軍を率いて移動しているアスカ族のギンナン将軍に声をかけた。「将軍、どちらへ行かれるのですかな?」

「マリ王子に頼まれましてね、都の東側に陣を構えることになったんですよ。あそこは手薄になってますからね」

「あそこは崖だけだろう、その必要はあるまい」
141 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)09時50分19秒
「わたしも最初はそう思ったのですが、王子が言うには何処からか帝国の人間が出入りしている場所があるはずだ、と言うのです。それで可能性は薄いですが、とりあえず東側も見張ろうということになり、我々アスカがその任を引き受けることになったのです」

「そうですか・・・・・」

ルル将軍は思った。帝都の東側は人里から遠く離れている場所だからちょうどいいのかもしれない。これ以上彼らに虐殺される村人もいなくなるだろう。それにいざ都への突入の際には、東側には門がないからアスカ族が都に入るのを防ぐことができる。

なるほど王子は頭がいいな。

ルル「では将軍、お気をつけて!」
142 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)10時00分54秒




サヤリンが酔った兵士の前で官能的な踊りを繰り広げていると、突然雨が降り出してきた。

兵士たちは慌てて酒樽を抱えて建物の軒先へと避難した。

せっかく空腹を紛らわすために酒を呑んでいたのに、それに水を差すように降ってきた雨を恨めしそうに兵士たちはみていた。

サヤリンも樹の陰で雨宿りをしていたが、寒さと空腹で気を失いそうであった。

そんなサヤリンに一人の男が声をかけてきた。「ネエちゃん、どないしたん?」

男はサングラスに出っ歯で茶髪といういでたちで、みるからに怪しげな感じであった。
143 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)10時17分08秒
「よおネーちゃん、ネーちゃんが良かったらワシんとこ来たってもエエで。食ういモン喰わしたるわ」

「あなたは誰ですか?」

「ワシか? ワシはなぁ どーゆーたらエエのかなぁ 天才ゆーのぉ? 天才科学者Drつんくや」つんくは傘を右手に持ち、左手でタバコをふかしながら話した。

「まあ、面倒やったら『天才』だでもかまへんでぇ」

びしょ濡れのサヤリンはつんくの声を雷の音と共に聞いていた。
144 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)10時27分42秒




「まあ とりあえずシャワーでも浴びてこいや」
Drつんくの部屋に入ったサヤリンは、ずぶ濡れになっている自分の状態に気づかされた。

「そのままほっといたら風邪ひくで、はよ入ってこいや。暖炉に火ぃつけとくから」

サヤリンはお腹も空いていたが、まずこの濡れた体を温めたかった。「ではお言葉に甘えて・・・・・」

サヤリンは勧められるがままにシャワー室に入った。サヤリンは服を脱ぎ捨て、そして温かなシャワーを全身に浴びせた。

サヤリンは、そのシャワーの気持ち良さにカオリン皇帝の救出や、はぐれたナッチ少佐の事などをしばし忘れてしまった。
145 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)10時36分51秒
Drつんくはソファーに座り、しばらくシャワーの音をじっと聞いていた。タバコをくわえ火を点けると、つんくはシャワーを浴びているサヤリンに話しかけた。

「さっきのなぁ 踊り なかなか良かったで・・・・・」

サヤリンはつんくが何か言ったな、と思ったが、シャワーの音でよく聞き取れなかった。

「何か言いましたー?」

サヤリンはシャワー室からちょこっと顔を出してつんくに尋ねた。

「んっ いやあのなぁ・・・・・まあとりあえずシャワー済ませて早よ出てこいや、メシ冷めるでぇ」

しばらくして、サヤリンはバスローブをはおってシャワー室から出てきた。
146 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)10時47分19秒
テーブルの上にはすでにいっぱい温かそうな料理が並べられていた。

「どうしてつんくさんは、こんなにいっぱい食べられるんですか? 他の人は食べられないのに・・・・・」

「まあな 外のやつらには申し訳ない思うけどな。まあうちら幹部は食いモンには困らんねん ホレ食うたれ」

サヤリンは焼鳥をひとつ取り、それを口に入れた。「うう おいひい」

つんくはチラッとサヤリンの胸元に目をやった。バスローブに包まれている白い体にまだ成熟しきっていない幼い乳房を感じ取れた。

「いっぱい食うとけ。またいつ食えるかわからんからのぉ」
147 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)10時57分50秒
言われるまでもなくサヤリンは次々と料理を口に放り込んでいった。つんくはその姿をしばらくじっとみていた。

つんくはサヤリンに言った。

「あのなぁ お前が望むんやったら『うぉーにんぐ娘。』に入れたってもエエで」

「えっ!!!」

サヤリンは驚きのあまり口から白モツを落としそうになった。

うぉーにんぐ娘。といえば帝国でもトップクラスのアイドルグループ。それに入れる!? まさか!? 「そんなこと出来るんですか?」

「できるでぇ 何でもな。近々王子が帝国の総理大臣になる。そしたら俺は芸能大臣にしてもらうからな。そしたらそいった事も出来るようなるねん」
148 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)12時27分19秒
「すっごーい! アタシうぉーにんぐのイイダさんのファンなんです!!」

「イイダ? あらあら俺はてっきりサヤリンはイチイが好きや思とったけどな」

「イチイ?アタシあの子大っ嫌い!」

「なして?」

「だってあの子ただ単に顔がカワイイってだけじゃない!!」

なるほどね・・・・・つんくはなんとなく騙されているような気持になったが、うぉーにんぐ娘。に入りたがっているサヤリンの気持を知ると、つんくの心になんともいえない思いが沸き起こってきた。
149 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)13時27分48秒
つんくはまたチラッとバスローブ姿のサヤリンに目をやると「まあ もし お前がその気やったらうぉーにんぐに入れたってもエエで」

サヤリンは口をモグモグさせながら、その話しを聞いていたが、サヤリンはずっとあることが気になっていた。

窓の外に大きなゴキブリみたいなのかいるなぁ・・・・・と。



150 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)13時37分15秒
サヤリンは窓の外を指さしてつんくに言った。「あのデカいゴキブリはなあに?」

「ゴキブリ? ゴキちゃうがな、よう見てみいカニに見えんか?カニに!!」つんくは思った。やっぱりクラブマシーンはカニには見えないのだろうか?

「で、あのデカいゴキブリは何に使うの?」

「ゴキブリちゃうゆうとるやろ!! もうエエわ・・・・・」

「なんか憎々しい感じのするロボットですね。やっぱ戦闘用なんですかね?」

「まあ、 なんゆうたらエエか・・・・・あれはまあそうやな まっ『必要悪』とでもゆうたらええんかな?」

「ヒツヨウアク?」
151 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)13時45分28秒
「そうや 使わないに越したことはない。この戦争も話合いで済むのなら、アレは必要ない。でも悲しいかな戦争ゆうのはなぁ 昔から話合いで終わった事はないねん どうしてかわかるか?」

「う~ん どうしてですかねぇ?」

「それはやな つまり双方が相手をナメてかかっとるからやな」

「はあ・・・・・そうですか」

「つまり戦争をはやく終わらせるためには片方がもう片方より圧倒的な武力を持つ必要があるねん」

「そうかも知れませんね・・・・・」

サヤリンは質問とはちょっと違う方向に話しが行ってるな・・・・・と思ったが、しかしつんくの話しに耳を傾けていた。
152 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)13時58分59秒
「つまり平和が訪れるためには一方がもう一方を圧倒的な力で倒さなければならないと・・・・・」

その言葉を言い終わるかならないかの瞬間、つんくはサヤリンをベッドに押し倒した。

「あっ・・・・・何を」

「神経戦はもう終わりや・・・・・これも『必要悪』やな!」
つんくはサヤリンにのしかかりサヤリンの両腕を押えた。
「イヤッ!! やめてっ!!」
サヤリンは抵抗しようとした・・・・・がつんくの腕力にはかなわなかった。

「さあ平和のためや!・・・・・インペリアル・シティに突入するで!!」つんくはそう言ってバスローブのひもを引いた。

その時。
153 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)15時24分29秒
トントン

ドアをノックする音が聞こえた。

「ちょっと今お取り込み中や! あとにしといてや!」

ドアの向うから声がした。「我々は『革命防衛隊』だ! 開けていただこう!!」

つんくはビクッとした。「革命防衛隊か・・・・・厄介なのがきたな」ドアをそおっと半開きにして外を見た。「なんの御用でしょう?」

外には革命防衛隊の隊長、ヒトミ大佐が隊員数名を引き連れて立っていた。「中に入らせてもらおうか?」

「別に何もないですけど・・・・・」
154 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月19日(金)17時30分40秒
「何もなければ入ってもよかろう」ヒトミ大佐はサッと右手で扉を押し開き、部屋の中へズカズカと入っていった。

大佐はテーブルの上に散らかされている料理を見た。
「ドクターは多くの兵士が飢えに苦しんでいるのを御存じですかな?」

「あっああ それなぁ・・・・・わしはイランゆうてお断りしたんやけど、王子が『先生に死なれたら困るワァ』いわれてな、もうしゃーないってシブシブ食うとんのですわ 王子から聞いてへん?」

ヒトミ大佐はDrつんくのことを嫌っていた。いつも口ばっかり達者で、エラそうにしている。いつかチャンスがあったら痛い目に遭わせてやる・・・・そんなことをいつも考えていた。
155 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)00時34分14秒
ヒトミ「食事をエサに少女を連れ込んだ、という話しを聞いておりますが・・・・・」

つんくはビクッとした。

つんくはベッドルームをチラッとみた。するとベッドルームの窓が開いていた・・・・・サヤリンは逃げている しめた!

「連れ込むなんてそんな人聞きのわるい ああ ああ そうそう昨日ね女の子に話しかけましたよ トイレどこぉ聞かれて あっちやゆうて教えよったんですわ それだけです」

ヒトミ大佐はツカツカとシャワールームに歩み寄った。そしてカーテンをサッと開けた。

シャワールームには女物の服が脱ぎ捨てられていた。

「Drは女装の趣味がおありかな?」
156 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)00時48分04秒
ヒトミ大佐はシャワールームに脱ぎ捨てられていた女物の服をつまんで言った。

「えつ・・・・ああ・・・・・そうそうそうそう そんな趣味もあったかなー」

つんくは焦った。

「我々は、共和国連合に起こる『誤り』や『ミス』を改善するようにと、議長から直々に言われている」

「ん? 『誤り』と『ミス』はおんなじちゃいまっか?」

ヒトミ大佐はテーブルに乗っている食べ物の残りを改めて見た。
「我々の革命に対する『誤った認識』は正してもらわねばな・・・・・」
157 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)07時41分14秒
「もちろん正すべきところは正しますよ・・・・・うん」

バンッ!!

ヒトミ大佐はテーブルを蹴り上げた。

「・・・・・」

「もう遅いわ!!」

ヒトミ大佐はホルダーから銃を抜くと、その銃にびっしりと弾丸の詰まったマガジンを差し込んだ。

「ちょっ ちょっと待てや・・・・・」つんくはたじろいだ。するとヒトミ大佐の両脇にいた革命防衛隊の隊員2名が、パッとつんくの両腕を掴み取り押えた。
158 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)07時49分04秒
「こらっ離せ! はなさんかい!!」

「王子に弾丸のムダ使いはしないようにといわれている・・・・・一発で逝かせてやるぞ」

Drつんくの顔から血の気が引いた。

「アホッなにさらすねん!・・・・・俺は王子に招かれた客やど!こんなことしてええんか!アカンのちゃうか!?」

「ドクター・・・・・」

「おっ・・・・・おっ わかってくれたか!?」

「ドクター・・・・・いいことを教えてあげましょう」

「なっ なんやねん?」
159 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)07時56分53秒
「戦場においてはな、『うっかり味方を撃ちこ殺してしまう』という悲劇は起こりうるものなのだよ・・・・・」

ヒトミ大佐はつんくの眉間に銃口をあてた。「ひっひぃぃぃぃぃぃ!!!」

「ハハハハハハハ!! 逝けっ!!」

その時

ドスン!!!

大きな音と振動が起きた。

「何だ!? 地震か!?」革命防衛隊は一斉に外に出た。
160 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)08時06分13秒
すると、Drつんくの造った『クラブマシーン』が勝手に動きだしていた。

つんくは叫んだ「こらーっ!! 誰が勝手に動かしとんねん!!」

クラブマシーンのハッチが開くと、中からサヤリンが出てきた「つんさんゴメンねー勝手に乗っちゃった!」

つんくはキョトンとしてしまった。「あれっ? おっかしいなーカギかけとったハズやけどなー」

「ゴメン さっきつんくさんに押し倒されたときに、ベツドのところにカギがあったの まっそーゆーこと」

「ベッドに押し倒した!?」ヒトミ大佐はつんくを睨んだ。

「ちょっと何しとん 早よ降りてこいやー危ないでー」
161 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)08時13分29秒
「ちょっ待ってね 後で返すから」サヤリンはハッチを閉めてまたクラブマシーンを動かし始めた。

「後でなんて・・・・・ダメダメそんなの降りてきなさい!『うぉーにんぐ』に入れさしたるから今すぐ降りてきなさい!!」

「あたしはもう、うぉーにんぐなんて卒業したの! これからはソロシンガーの時代よ!!」

クラブマシーンはカニ型ロボットのくせに横歩きせずにまっすぐに歩きだした。カニはカオリン皇帝の閉じ込められている倉庫へと向かっていた。

ヒトミ「まずい! あいつを止めろ!!」
162 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)08時20分41秒
革命防衛隊は一斉にカニにマシンガンを浴びせた。しかしカニはキズひとつ付かなかった。

「ダメだ! 大砲を持ってこい 大砲だ!!」

隊員たちが武器庫から大砲を引っ張ってきた。大砲はキリキリとカニの背中に焦点を合わせた。

「ちょっと待って! そんなんやめてや!」

「撃てっ!!」

大砲が火を吹いた。

大砲の弾丸はカニに直撃した。

カニは岩に叩きつけられた。
163 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)08時27分11秒
「どうだ? カニの様子は?」

クラブマシーンは胴体は無事であったが、右側の足がすべてもげてしまった。

「よしっ これで動けなくなったぞ それっ! あいつを捕まえろ!!」

革命防衛隊の隊員は一斉にクラブマシーンに駈け寄った。

しかしカニがまた動き出した。

隊員たちはびっくりして足を止めた。

クラブマシーンはなんと左側の足だけで歩き出したのだ!!
164 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)08時31分26秒
「やばいっ こっちにくるぞ!!」

「逃げろ!!」

クラブマシーンは大砲をハサミで突き差しそして空中に放り投げてしまった。

「早く王子に連絡して戦車部隊を呼んでこい! 早く!!」

革命防衛隊はその場から立ち去った。



165 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)10時43分54秒
クラブマシーンはシューシューと音をたてながら倉庫へと近付いていった。

ナッチ「大変です! 陛下 なんかデカいゴキブリがこっちに来ますよ!!」

「うん でもこれまでの流れを見ると どうやら味方のようだ」

カニは倉庫の中を窓から覗き込んだ。

カニ「カオリン皇帝はいますー?」

「あっ! その声はサヤリン よくやった早くここから出してくれ!!」

「あっ 少佐殿もいたの 焼きソバぱんは見つかった?」

「いいからはやく出せ!!」



166 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)10時50分27秒
サヤリンはクラブマシーンを丁寧に操縦しながら、カオリン皇帝の閉じ込められている倉庫の壁を切り崩していった。

共和国連合の兵士たちは何も抵抗せずにその様子をじっと見ていた。どうやら空腹と昨夜の大雨が、まだ酒の抜けきっていない体には堪えたようだ。

もはや銃を持つ力も彼らにはなかった。

取り壊した壁からカオリン皇帝とナッチ少佐が出てきた。

カオリン「ご苦労であった!!」
167 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)10時58分44秒
カオリン皇帝は、とても長いこと捕らわれの身であったとは思えない程はっきりとした大きな声で巨大なカニに話しかけた。

「おい お前 苦しゅうない 名を申せ!!」

サヤリンはカチンときた。(『ありがとう』の一言くらい言ったらどうなんだ)

「ほら 陛下もこうおっしゃっているのだ、早く名乗らんか!!」

(少佐まで何を言ってるんだか)

サヤリンは頭にきて、ついにこう言った。
「予は神聖帝国第38代皇帝サヤリンである」

ナッチは顔が真っ青になった。
168 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)13時49分19秒
ナッチ「へ 陛下お気になさらずに、後サヤリンに強く言っておきますから」

「アタシに偉そうな口きかないでよね、アンタとあたしは対等なんですからね!」

「へ・・・陛下すいません サヤリンはちょっと腹が減って気がたっているだけですから サヤリン今そっちにいくからちょっと黙っててなさい!」

カオリン皇帝は少し考えていた。そして言った。
カオリン「では37代皇帝から38代皇帝にお頼み申す」

ナッチ少佐は息を呑んだ。

カオリン「まだ、ほかの建物には多くの帝国軍兵士が捕えられている。早く解放してやって欲しい」
169 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)13時52分37秒
サヤリンも息を呑んだ。

カオリン「お願いします」

カオリン皇帝はペコリと頭を下げた。

サヤリンとナッチは驚き、そして顔を見合わせた。





170 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)14時01分56秒
サヤリンは次々と閉じ込められていた帝国軍兵士を解放していった。

彼らは久々の外の空気に嬉々としていた。

ナッチ少佐は思った。無傷の兵士はひとりもいないな・・・・・と

カオリン皇帝は一人の解放された兵士に声をかけた。「この度はご苦労であった」

「めっそうもございません。陛下の御尊顔を拝謁できて恐縮至極」

「ところで討伐隊はどうなった?」

「討伐隊がどうなったかは存じあげないのですが、おそらくまだ掃討作戦を続けていると思います」
171 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)14時09分13秒
「まだ艦隊は無事なのか?」

「自分がいたときはまだ無事でした 自分は途中から地上軍として真夏の森に入りましたので、その後のことはよくわからないのです」

「なるほど」

「しかしアスカ族とは恐ろしい連中です。自分は森にいたときに彼らに度々襲われました」

「そうか・・・・・」

「彼らはどこにもいないのに、どこにでもいるのです」

「・・・・・」

「自分は『運良く』青色師団に捕えられたおかげで助かりました」
172 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)14時18分29秒


ナッチ少佐は片足のない兵士に声をかけた。

「地雷でも踏んだのか?」

「いえ そうではありません」

「では流れ弾丸にでもあたったか?」

「いえ 違います」

「では病気?・・・・・まさか生まれつきというわけではないだろう」

「私は一時、アスカに捕えられていたことがありまして・・・・・」
173 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)14時24分10秒
「まさか切り落とされたのか?」ナッチ少佐の顔がひきつった。

「はいそうです あるときアスカの兵士が『腹が空いた』と言ったのです」

「・・・・・」

「そして私の右足を切り落として、私の目の前でそれを食べたのです」



174 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)14時32分53秒
二人の共和国連合の少女兵がカオリン皇帝に駈け寄ってきた。

ナッチ少佐はあわてて皇帝の前に立ち塞がった。

「かまわん はなしを聞こう」カオリンはナッチ少佐の肩に手を置いた。

少女A「こんにちは皇帝陛下、わたしは『のんのん』です」

少女B「こんちゃーす こーてーへーか アタイは『アイアイ』です」

「のんのんにアイアイか、なかなか可愛いな」

ナッチ少佐は思った。反乱軍はこんな小さな子供まで戦場に駆り出しているのかと。
175 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)14時43分44秒
「私たちはおなかがペコペコなんです」

「ペコペコプー」

「そうか 君達はお腹が空いているのか・・・・・でも食料は我々にもないのだ すまぬ」

カオリン皇帝は少女たちに陳謝した。

「あの塔の中にいっぱいあるよ」のんのんは帝国軍が士官学校の敷地の中に造った農業訓練用のサイロを指差した。

「Drつんくはうそつきなんです」

「ウソウソプー」

「食料を一人占めしてたのね!」サヤリンは憤慨した。

そしてサヤリンは気がついた「あっあたしバスローブのままだった!!」サヤリンはサッと胸元を隠した。
176 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)06時44分02秒
インペリアル・シティは朝もやに包まれていた。

共和国連合の刺客『ケイ』は帝都のアパートの一室で、大きな鏡の前で裸になって立っていた。
「こんなイイ女なのに、なんで世の男たちは振り向いてくれないニャ・・・・・」そう言ってケイは髪を両手でかき上げた。

ケイは大きな瞳を上目づかいにして、鏡に映る自分に視線を送った。

ケイはひとつため息をつくとブラジャーと下着を身に付けガーターを履いた。
「あの皇帝はたぶんロボットだニャ・・・・・」
昨日の、矢が刺さっても死なない皇帝の事をケイは思い返していた。
「でもなんでロボットなんか使うんニャ?」ケイは考えた。サヤリンはもしかしたらもう死んでしまったのかもしれない。暗殺か?でも誰が一体何の為に?
177 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)06時55分07秒
昔から宮殿には陰謀がはびこっていた。表沙汰にはならなかっただけで、暗殺されたと思われる皇帝も何人か過去にはあった。

宮殿は魔物の棲むところだ何が起こっても不思議ではない。それより自分はこれから何をすればよいのか? やはりあの委員長を殺しておくべきなのか・・・・・

ケイは銃を手にすると、それを脇の下のホルダーに収めた。そして自分の秘部を下着越しに軽く指でなぞると、観念したようにズボンを履いた。

その時、

「ケイさん 大変です!!」

階下で見張りをしていたケイの一味の男が飛び込んできた。「どうした!?」男はハァハァと息を切らしながら「囲まれました 情報部の連中にこのアパートが囲まれました!!」
178 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)09時01分15秒
ケイはそれを聞いても別に慌てる様子はなかった。今までバレなかったのがおかしいのだ。ケイはカーテンを少し開けて外の様子を伺った。

なるほど、建物の陰に隠れてはいるが、怪しげな男達がたしかにこのアパートを囲むように立っているのがわかる。

「面白くなってきたニャ」

ケイはニヤリと笑うと、部屋にあるダブルベッドをひっ繰り返した。するとその下にはマシンガンやらバズーカやら手榴弾やら物騒な武器が一杯詰まっていた。

「帝都を包囲している同志より、うちらが先に戦争をおっぱじめるニャ!」
179 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)09時09分39秒
ケイたち一味はそこから次々と武器を持ち出していった。ケイの部屋はアパートの二階である。一味は二階に昇るための階段の一番上の踊り場で銃を構え、階下にある扉に狙いを定めた。二階に来るにはこの階段しかない。入って来るには必ずあの扉から入るしかない。

ケイの頭の中にアヤッペの姿がよぎった。「アタシはまだ死ぬ気はないのニャ」

扉のノブがゆっくりと動いた。

一味は息を止めた。

「来たぞ!!」

一味は一斉に踊り場におどり出て、マシンガンを扉に浴びせた。
180 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)09時14分36秒
扉は蜂の巣にされた。穴だらけになった扉がゆっくりと開いた。

息を呑むケイら一味。

階下の踊り場に現れたのはなんと女の子だった!

「あっ・・・・・あれは!」

それはあのケイが矢を突き刺したロボット皇帝リカ1号であった。

リカはまるで何事もなかったかのように階段を昇ってきた。「バ、バケモン
181 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)09時27分25秒
ケイは手榴弾を口で栓を抜くと、階段に放り投げた。

リカは投げられた手榴弾を掴んだ。

ドックァァァァァァン!!!

リカは爆発で階下に落とされたが、また起き上がり階段を昇ってきた。服は爆風で吹きとばされ、リカのマネキンのような体が露わになった。

「やっぱりロボットだったニャ」

ケイは続いてバズーカ砲を取り出した。「死ね!」
バズーカが火を吹いた。砲弾がリカに直撃し、階段の下に再び叩きつけられた。煙がもうもうと立ち昇り、リカは瓦礫に埋まった。
182 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)09時37分22秒
「やった!! くたばったニャー!!」

ところが・・・・・瓦礫が持ち上がった。そしてそこから皮膚の剥がれたリカが現れた。リアルに『機械』を見せつけたリカは四つん這いになりそして階段を駈け昇ってきたのだ!

「ヒイィィィィィ!!!」

一味は逃げ出した。

ケイは慌てて自分の部屋に飛び込み、ドアを閉め、そして家具をドアの前に放り投げてバリケードを造った。

ケイは窓に駈け寄った。しかし外を見るとアパートはすでに武装した警官に包囲されていた。

183 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)09時46分59秒
バキッ バキッ

ロボットがバリケードを壊して中に入ってこようとしていた。ケイはベッドの下から大きな瓶を取り出した。その瓶にはドクロの絵が描かれていた。

「こいつをばらまいて帝国を滅ぼしてやるニャ!!」

ケイは瓶の蓋を開けようとしていた。

「ちょっと待ちや!」

ケイはビクッとして声のする方を見た。すると窓の外におどろおどろしい金髪の女が立っていた。

ここが二階であることはこの時のケイの意識の中にはなかった。
184 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)09時53分33秒
「ちょっと待ち そんなんしよったら滅ぶんは帝国だけやないで、世界が滅ぶで」

ケイは何か言い返したかったが、何も言葉が思いつかなかった。

「どや ウチと一緒にこんか?」

ケイは女をジッと見ていた。




バンッ!! リカ1号がケイの部屋に突入した。リカのセンサーが部屋をくまなく検索したが、そこにはもうすでに何も反応するものはなかった。ケイは消えてしまった。
185 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)10時25分29秒




カオリン皇帝は、捕虜収容所となっているこの士官学校の合宿所を、やがてくる共和国連合の戦車部隊を迎え撃つために、ここを『砦』に造り変えるよう兵士たちに命令していた。

この『砦』には、皇帝がおわすことを示す『林檎の旗』が掲げられた。

ナッチ「陛下、誠に心苦しいのですが、この砦では反乱軍の機甲師団は防げません。ここは我々兵士に任せて陛下はただちにここを離れて下さい。陛下お一人だけなら都までお連れできます」
186 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)10時33分09秒
カオリン皇帝はこの言葉に憤慨した。「それはできん。ここにいる兵士を見捨てて行くわけにはいかん。皇帝は常に兵士たちの先頭に立たねばならんのだ!」

ナッチも負けじと強気に反論した。「しかし陛下、万が一陛下を死なせてしまっては、この戦争は我々の敗けなのです!!」

カオリンは少し考え、そして言った。
「皇帝が死んで敗けとなるならば・・・・・」
カオリン皇帝はチラッとサヤリンを見て言った。
「皇帝が死んで困るなら、38代皇帝を連れて都に戻られるがよい」

サヤリンはビクッとした。



187 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)14時15分10秒
ゴマ二等兵は、バトロールをしている最中も時々サボッて昼寝なぞをしていた。

ゴマの所属する『あか組師団』は帝都の城壁の南側を支配していたが、いまだに最高司令官であるマリ王子からなんの指示もなく、ただ時を過ごすのみであった。

「あーあ お腹空いたな」

ゴマはもう一週間もマトモなものを食べていない。

「でも頑張らなくっちゃね。この壁の向う側にはもっと飢えている人たちがいるんだから」ゴマは、先週の集会で見た議長のVTRを思い出していた。どうやら彼女は『帝都の民は餓死寸前』という共和国連合のプロパガンダを完全に信じているようだ。

188 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)14時28分50秒
ゴマは、城壁にいる帝国の警備隊に手を振ってみた。すると向う側もこちらに手を振り返してきた。

「あの人たちとも顔見知りになってしまったなぁ」

ゴマは密かに突入などせずにずっとこのままでもいいなぁ、と思ったりもした。

「お腹は空いてるけど、なんか眠くなってきたなぁ」

ゴマはいつもの隠れ場所にむかった。大きな岩がゴロゴロしている岩場がゴマの隠れ場所。一番大きな岩にゴマは寝転んだ。樹々の隙間からこぼれてくる日差しが気持ちいい。

189 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)14時40分07秒
ゴマは寝転びながら、あるひとつの岩壁をみつめていた。その岩には文字が書かれているのだ。『書かれている』というよりは『彫られている』のだが・・・・・その文字は帝国のものではなかった。あの野蛮なアスカ族の古代文字なのだ。

おそらく千年前にアスカ族が都を包囲したときに刻まれたものなのだろう。

「なんて書いてあるのかな?」そう思ったゴマは、以前アスカ族の司祭をここに連れてきてこの古代文字を読んでもらったのだ。さすがに博学の司祭といえどもこの古代文字は難解なものであったらしく、この文字と古代書を見比べながらひとつひとつ解読していった。
190 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)14時50分10秒
これはどうやら古代アスカ人が作った詩なのだそうだ。こう書いてあった。



長い夜が終わり 朝がくる

太陽が昇り 花が咲く

花は太陽に問う 「いつまで花は花でありつづるのか」

太陽は答える 「わたしが沈むその時まで」

花は願う 「どうか永遠に沈まぬことを」

太陽は答える 「それは叶わぬこと」

花は問う 「なぜなのか」

太陽は答える 「われ花を枯らすためゆえに」

花は言う 「承知した」

やがて太陽は沈み 花は枯れた

夜になり 長い夜が始まる
191 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)15時01分26秒
この詩を読んでゴマは少し悲しくなった。司祭の説明によれば、アスカ族は現世志向が強いため、こういった詩が昔から頻繁にうたわれたのだという。

ゴマは寝転びながらそんなことを思い出していた。「太陽は沈むのね・・・・・」ゴマはそんな言葉をつぶやきながら寝てしまった。

なにか音がした。

ゴゴゴゴゴ・・・・・

「なんだ?」

ゴマはからだを起こした。するとアスカの古代文字の書かれている岩が揺れていた。

「ん!?」

ゴコゴゴゴ・・・・・

「あっ!!!」

ドオォォォォォーン!!!

岩にひびがはしり、そして砕けてしまった。粉煙がまった。ゴマは立ちあがり、あっけにとられた。
192 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)15時16分34秒
ゴマはじっと煙を見つめていた。煙の向うから何かが現れてきた。

「て・・・・・帝国軍だ!!」煙の向うには黒いジャケットに黒いブーツのゴマにとって憎むべき帝国軍の兵士の姿が並んでいたのだ!

帝国軍は昨夜の作戦会議で、古代文書をかき集めて、昔、アスカ族が都に攻め込んできたときの秘密の地下通路を発見することに成功していたのだ。その通路のかつての入口がこのアスカの詩が刻まれた岩だったのだ。

帝国軍の司令官サマーナイト大尉が叫んだ「突撃!!」

この声を合図に何千という帝国軍兵士がゴマの両脇をすり抜けていった。
193 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)15時19分40秒
「あっ・・・・・あっ・・・・・あっ・・・・・」ゴマは何かを叫ぼうとしていた。

しかし、サマーナイト大尉は叫ぼうとしているゴマの口をパッと両手で塞いだ。

「ちょっとの間だけ静かにしてもらうよ」



194 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月22日(月)09時51分47秒
カオリン皇帝はサイロを駈け足で昇っていった。「陛下!!お待ち下さい 危ないですよ!!」

しかしカオリンはナッチ少佐の言葉に聞く耳もたずにサイロのてっぺんまで昇っていった。『砦』はついに共和国連合の戦車部隊に包囲されてしまった。地面の土も見えぬ程にびっしりと戦車が砦の周りを埋め尽くした。

「なかなか良い光景であるな少佐殿」
「何言ってんですか陛下! これでもう陛下も我々も終わりです!!」

もう逃げ道はなかった。ナッチ少佐は後悔していた。せめてサヤリンだけでも都に帰しておくべきだった。
195 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月22日(月)10時20分43秒
「陛下降りてきて下さい 敵の狙撃手の餌食になります!!」ナッチ少佐は叫んだ。しかしなぜか心は虚しさに満ちていた。

自分は一体何を心配しているのだろう? まもなく戦車が我々帝国軍を皆殺しにするというのに、『皇帝が狙撃される?』だから何だというのだ。殺されるのに銃弾に倒れるのも戦車の砲弾に倒れるのも変りあるまい。
196 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月22日(月)12時07分41秒
ナッチは階段の途中でへたり込んでしまった。疲れたわけではない。無力感がナッチの足から力を奪ってしまったのだ。

「はあぁぁぁぁー」

ナッチはこれまでの自分をふと振り返ってみた。

士官学校・・・・・別に軍人になりたくて入ったわけではない。ただ都以外の別の場所にいきたかったのだ。

ナッチが子供の頃、都は暗闇に包まれていた。街のあちこちに情報部の将校がいて、通行人を捕まえては尋問し、強迫し、ときに帰らぬ人となった。
197 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月22日(月)12時14分36秒
隣人達は先を争って密告を繰返し愛国心を高め、そして毎日のようにナッチの親しい人達が処刑台に消えていった。

ナッチは逃げ出したかった。誰にも裏切られたくなかった。誰も裏切りたくなかった。だから軍隊に入りたかった。進駐軍になりたかった。そして外国に逃げたかった。

「でも・・・・・そんな暗闇の時代もいとおしく感じるのはなぜかしら・・・・・」ナッチはふと忘れかけていた女の子の言葉を使った。
198 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月22日(月)12時27分13秒
戦車の中から最高司令官のマリ王子が現れた。そして言った「帝国軍兵士諸君に告ぐ、大人しく我々共和国連合に従いなさい!!」

カオリンとナッチはこの言葉をサイロの上からじっと聞いていた。

「君達のこの行動は無謀であり無計画かつ無責任な行動である。今まで君達帝国軍兵士を手厚くもてなし世話をした我々共和国連合に対して恩を仇で返すつもりか!!」

「ふざけるな!!」サイロの上からカオリンが叫んだ。
199 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月22日(月)12時39分15秒
共和国連合、帝国軍の双方の兵士が息を呑んだ。

「言いたいことはそれだけか!!」カオリンは顔を真っ赤にしていた。

「『解放軍』と称していながら辺境の蛮族と手を組み、その野蛮人たちが帝国の民や兵士を己の快楽の為に殺戮している。お前たちの罪は千年の後まで語り継がれるであろう」

マリ王子は言った「我々の最後の心づかいも拒否されたようだな」
200 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月22日(月)12時49分32秒
ナッチはサヤリンの元へ駆け寄った。「サヤリン逃げろ!」

「どうやって!?」

「もうすぐ我々は砦にいる反乱軍の兵士を向うに引き渡す。その中に混じるんだ!」

「うんうん」

「その際自分がクラブマシーンに乗って都に向かって暴走するから、そしたら反乱軍どもはそれを追いかけるだろう。その時にサヤリンもカニを追っかけるフリをして、そのまま都に逃げ帰るんだ」

「うまくいくかしら?」

「もうほかに手はない」
201 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月22日(月)13時01分22秒
ナッチはサヤリンの手をひいた。サヤリンは言った「少佐殿はどうなるの?」この突然の質問にナッチの頭が混乱した。そんなことは頭の片隅にもなかった。「ああ 後で都に向かいますよ」これが精一杯の回答だった。

ナッチはサヤリンに反乱軍の軍服を着せた。「いいかい向う側にいったら、反乱軍側にいったらおそらく身元のチェックが行われる。その時にはこの歌をうたってやれ」ナッチはサヤリンの胸ポケットに革命歌の歌詞カードを入れた。細かいチェックが行われる前に自分があのカニで暴走するから機転を利かせて行動するようにとナッチはサヤリンに言った。
202 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月22日(月)13時05分10秒
しかしここで意外なことが起こった。

なんと共和国連合の戦車部隊が撤退を始めたのだ。

「これはどうしたことだ?」カオリンはナッチに尋ねた。「わかりません」

砦の周囲から全ての戦車が消え去った。





203 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月22日(月)13時18分04秒
作戦会議室に入ったTK委員長は、席につくと、またすぐに立ち上がった。そして室内を見渡して「元帥はまだ来ていないのか?」

将校たちも一斉に室内を見渡した。どうやら彼らも元帥がいないのに今気づいたようだった。
「寝坊か? それとも病気か? 誰か知っているものはおらんのか?」
情報部の部長がおそるおそる口を開いた。「元帥閣下は今朝、攻撃部隊に参加しました・・・・・私は止めたのですが・・・・・」
「『参加した』って!?・・・・・一人で行ったのか?」
「はい そうです・・・・・『じっとしていられない』とか言って」
204 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月22日(月)13時27分31秒
委員長はなんとなく怒る気持になれなかった。なにせ元帥は自分が生まれる前からずっと戦場に出ていた『叩き上げの軍人』なのだ。この空調の効いた総司令部では居心地が悪かったのかもしれない。



攻撃部隊の隊長サマーナイト大尉は少し気分を害していた。「元帥閣下にわざわざこの前線まで足を運んで頂いて誠に感激の至りでありますが・・・・・この部隊の指揮官はこの私ですから・・・・・くれぐれも勝手に部隊に命令などしてはなりませぬぞ!」
205 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月22日(月)13時33分10秒
「ハハハハハ! 心配めされるな そんなことはせなんだ。ただ君ら若い兵士は安易に物事を考えて行動をしてしまうことがあるでな、まっそんなときにワシが役に立てるだろうと思ってな ハハハハハ!!」

サマーナイト大尉率いる帝国軍攻撃部隊は、奇襲に成功してあか組師団をほぼ壊滅状態に追いこんでいた。



206 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月23日(火)18時45分15秒
「なぜ彼らは撤退したのか?」

カオリン皇帝はナッチ少佐に尋ねた。「何ともいえませんが、もしかしたら帝国軍の攻撃が始まったのてはないでしょうか」ナッチはTK委員長が御前会議を開いたことを話した。

カオリンは腕を組んだ「そうか委員長が指揮をとっているのか・・・・・」

「それにまもなく各国に駐留している帝国軍もインペリアル・シティに向かっているものと思われます。それも撤退した理由なのかもしれません。もしそうならば反乱軍が壊滅するのも時間の問題てす」

「そうか・・・・・」カオリンはホッとするとともに、疑問に思うこともあった。
207 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月23日(火)18時59分05秒
反乱軍はなぜあれ程の規模に膨れ上がったのであろうか。

あれだけの人数、あれだけの武器、あれだけの食料。モーニングシュタットの経済力などたかが知れている。アスカ族は絶滅寸前の退廃部族だ。この反乱軍の背後には何か巨大な組織、或は国家が糸を引いている。かねてからの敵国か過激な宗教組織か、或は帝国の同盟国か・・・・・いや議長は魔物だ、誰かに操られるような輩ではない。何が背後に存在していたも、それは議長に唆されていに過ぎないのかもしれない。

「お疲れさまです」解放されたマイルズ提督がお茶を運んできた。
208 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月23日(火)19時12分35秒
「すまぬな提督。卿は高貴な家柄の出と聞いている。茶など誰かに運ばせよ」カオリンは笑いながら言った。
「とんでもありません、陛下の前ではわたしもいち臣民に過ぎません」提督は茶をカオリンの前に置いた。

ナッチは提督に敬礼した。マイルズ提督はナッチたち若い軍人にとって伝説の人物であった。彼の姿を見れるのは希なことで、めったに人前に姿を見せることはなかった。

ナッチは以前一度だけ姿を見たことがあった。

士官学校の入学式のときにゲストとして学校を訪れたのだった。「あの時はたしか・・・・・」
209 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月23日(火)19時26分39秒
「提督、体を休まれよ、長い拘留で疲れたであろう」

「とんでもありません。この老いぼれに気遣いは無用です。このように陛下のお姿拝謁しましたら、疲れなどふっ飛んでしまいました」提督は深々と頭を下げた。

「またこの後、戦況の行方次第では提督には苦労して頂くかもやしれぬ。今、一時ゆっくり休むがよい」カオリンそう言い茶をすすった。

ナッチはハッとした。「陛下!! それを飲んではいけません!!」

「えっ!!」カオリンはカップを持つ手を止めた。
210 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月23日(火)19時40分53秒
「この男は提督ではありません!!」ナッチは叫んだ。「こいつは似てはいますが、おそらく整形です。だいいちマイルズ提督はこんなに背が高くありません。提督の身長は160cm前後なんです!!」

カオリンは額から汗が吹きでていた。「少し・・・・・飲んでしまった」

「フフフよくわかったな」ニセ提督が笑った

ナッチは銃を取り出した「おい! お前! 殺されたくなかったら解毒剤をだせ!!」

「ハハハハハ 解毒剤? そんなものはない せいぜい苦しんで死ぬんだな」そう言い男は銃を取り出した「共和国 万歳!!」男は銃口を自分の口に差し込み引きがねを引いた。

ズキュン!!

鈍い音とともに男は倒れた。
211 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月23日(火)19時53分12秒
ナッチは皇帝に駆け寄った。「陛下! 吐き出して下さい! 早く!!」カオリンは苦しそうに喉を押えていた。「大丈夫・・・・・この程度の毒なら大丈夫だ・・・・・」

カオリン皇帝は小さいとき、実の母親つまり今の皇太后に憎まれていた。憎まれていた理由はわからないが、彼女はカオリンを毒殺しようと毎日幼いカオリンの飲むスープの中に少量の毒を入れ続けていた。カオリンは日を追うごとに顔色が悪くなり痩せほそっていったが、死ぬことはなかった。

なんとにカオリンは毒への免疫が出来てしまったのだ。
212 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月23日(火)19時56分56秒
「大丈夫・・・・・だんだん楽になってきた」青ざめていたカオリンの顔は次第に血色を取り戻していった。ナッチはカオリンの生命力に驚かされた。

「これも皇太后のおかげだな」





213 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)00時21分21秒
「もう少しで壊滅できます」奇襲作戦に成功したサマーナイト大尉は元帥に言った。「赤組師団の壊滅は時間の問題です」

帝国軍の奇襲によって赤組師団の統率が不可能と判断したダニエル将軍は、赤組師団の指揮を放棄して、最高司令官マリ王子のいる青色師団へと複数の部下とともに逃走した。
「将軍が逃げたぞ!! 追えっ!!」
サマーナイト大尉が叫んだ。帝国軍はすぐさま馬を返し、ダニエル将軍を追った。将軍は薮を抜け、山を登りはじめた。
214 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ
215 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)07時46分28秒
「追えっ!」逃すな!!」大尉は剣を振るい士気を煽った。帝国軍は猛スピードで将軍を追跡した。しかしここで元帥が叫んだ。

「全軍止まれ!!」

この声に帝国軍の掃討部隊が急ブレーキをかけた。「元帥殿何をするんですか!」突然のストップに攻撃隊長のサマーナイト大尉が怒りの声をあげた。「あれほど命令したらダメと言ったでしょう! 何でこんなことするんですか!」
216 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)07時55分13秒
「大尉殿、お分りになりませんかな?」元帥はサマーナイト大尉に近付いた。大尉は近付く元帥に少したじろいだ。「な、何がですか?」

「この山の上は原っぱになっているのですが、そ原っぱのまわりにの茂みにおそらく反乱軍の戦車部隊が潜んでいます」
「なんでそんなことがお分りになるのですか元帥?」
「わかりますとも」
「だからどうしてですか?」
「『匂い』ですな」
「ニオイ?」

「ほら匂いませんか?」元帥は鼻をひくつかせた。サマーナイト大尉も一緒にクンクンと鼻を動かした。

「匂いますでしょう大尉」

「いや・・・・・別に」
217 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)08時03分41秒





帝都の南側には『勇気の丘』と呼ばれる場所がある。かつてこの場所で数々の決闘が行われた。高貴な家柄の人間が己の名誉を守る為に、立会人を立ててここで命を賭けた勝負を行ったのだ。

しかしそれも昔の話し。今では決闘は禁じられてしまい、『決闘』という文化も廃れてしまった。今この丘は雑草の茂るただの草むらになってしまった。
218 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)08時16分59秒
ダニエル将軍がこの丘に逃げ込んできた。「よしここまで来れば大丈夫だ」ダニエルはこの丘がかつて決闘場であったことは知らない。ダニエルは丘の周りを囲んでいる茂みに目をやった。一見してその茂みには何もないように見えるが、よく見るとそこには迷彩に彩られた戦車が潜み、丘をグルッと囲んでした。

その戦車の中でマリ王子はつぶやいた。「誰もこないな・・・・・」マリ王子は帝国軍がダニエルを追ってこの丘にくるものと待っていたが、一向に誰も来る様子がなかった。
219 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)08時38分07秒
「バレたのかもしれません・・・・・」ヒトミ大佐はつぶやいた。マリ王子はショックで腕を組んだままうなだれてしまった。「もう食料も弾薬もない・・・・・」数ヶ月に及ぶ包囲戦もついに途切れてしまう。もう二度と同じことはできない。

その時無線連絡が入った。「殿下 黄色師団のルル将軍から緊急の連絡がはいりました!」

「いったい何だ!?」

「はい 東側を包囲していたアスカ軍が都に突入したそうです!!」

「何!!」マリ王子は焦った。まさか崖しかないと思われていた帝都の東側に、都に入る入口があったのか? 彼らが突入したら都は血の海になる。こうしてはいられない。

「全軍出撃!! アスカに遅れをとったが我々も都に突入する」マリ王子は叫んだ。
220 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)08時56分38秒




帝都インペリアル・シティの地下には縦横無尽に水道が張り巡らされている。まだ帝国が帝国ではなく村であったときは、この地下水道は農業用の水路として使われていた。勿論その当時は現在のような立派で幾何学的なものではなく、地中を掘り地下水をみつけ、その水を横穴によって荒れ地に作られた田畑に水を送り込むという非常に原始的なものであった。

その頃の村人たちはあえて自分たちの村に名前をつけなかった。それはこの村はあくまで『仮の村』であり、いつかは自分たちが追い出された国に帰るつもりでいたからだ。

しかしその時はついに訪れることはなく、村は国になりやがて巨大な城塞都市へと変貌した。
221 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)09時10分47秒
アスカ族が攻めてきたのはその時であった。かねてからアスカの襲撃を恐れていた村人は自分たちの暮らす場所を塀や掘りで囲っていたが、しかしその時はアスカが攻めてくることはなかった。アスカ族はかつては世界を支配する大帝国を築いていたが、その当時はすでに森に潜む小数部族へと落ちぶれていた。そんなアスカの状態に帝都の民は油断していたのかもしれない。

アスカが攻め込んできたとき帝都の民は地下水道に潜り、ゲリラ戦でこれに対抗した。神出鬼没に攻撃してくる帝都の民に苦しめられたアスカ族はついに帝都を放棄して森へと帰ったのであった。
222 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)19時11分41秒


「つまりそういうことだニャ」ケイは地下水道に逃げ込んだ子供たちに話した。「ご先祖様を見習って都を奪い返すニャ」ケイは子供たちを励ました。「お父さんやお母さんはどこにいるの?」一人の子供が尋ねた。「それは・・・・・」ケイは言葉に詰まった。

「ケイ!! 何いってんだい!!」

魔女は怒鳴った。「もう都は諦めな! 言っちゃ悪いがあんたらのおとんやおかんはもう死んどるねん!!」ケイはこの魔女の言葉に慌てふためいた。「ユーコさんなんてことを・・・・・」

「ホントのことゆうとるだけや! 早よ逃げんとアンタらもアスカの餌食になるで!!」魔女は早く逃げるよう促した。
223 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)19時18分50秒
「もうすぐアスカはこの水道に毒ガスを散布するつもりや、昔みたいなゲリラ戦なんてもう出来へんでー!!」

子供たちがワッと泣き出した。

「泣くな!! ホントに恐ろしいことはこれからもっと起こるねん!!」ユーコは流れてくる死体を指差した。「みてみい」流れてきた死体は両手両足が切断されていた。「アスカはな人間の手と足が好物やねん」

それを聞いた子供たちは、顔から血の気が引いた。



224 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)19時30分43秒
「開けてもらおう!!」ヒトミ大佐は叫んだ。城壁の門兵はすでに帝国軍からアスカに変っていた。「我々は最高司令官マリ王子の部隊だ!さっさと開けろ!!」大佐は門の上に立っているアスカの兵に言った。

「まだ我々は何も話しも聞いていません。司令官には申し訳ないが、今一度我々の将軍と連絡を取って出直してきて下さい」兵士はのらりくらりと質問に答えた。

マリ王子は怒りの声を上げた。「なにが出直してこいだ!! 誰に向かってはなしているつもりなのだ!」

「危ない!」ヒトミ大佐はサッとそばにいた兵士から銃を取り上げ、そして銃弾を放った。

ズキューン!!
225 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)19時39分10秒
門の上にある鐘の陰から銃を持った兵士が銃弾にあたり、ヨロヨロと出てきてそして壁から落下した。
「今、お前らは王子を狙っていただろう!!」
「いえ・・・・・そんなことはありません」
「ウソをつくな!!」

ズキューン!!

銃弾はアスカの兵士の頭をかすめた。

「ああ・・・・・ああ」

「そっから動くな 一歩でも動いたらお前の鼻の穴がひとつ増えるぞ!!」
226 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)19時47分12秒
ヒトミは門の上の兵士に脅しをかけた。ヒトミ大佐は超一流の狙撃手であった。
「門を開けろ!! おっとお前は動くな そばにいるやつに開けさせろ!!」

マリ王子の戦車部隊は、帝都に入城した。



227 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)20時35分55秒
カオリン皇帝の砦にたくさんの帝国軍兵士が押し寄せてきた。サマーナイト大尉の攻撃部隊と帝都から逃れてきた帝国軍の幹部と兵士たちであった。

「どうしたのだ?」カオリン皇帝は尋ねた。「申し訳ありません都を守りきれませんでした」TK委員長は苦渋の表情をした。委員長は説明した。アスカ族の突然の侵入のことやその後の帝都の民の行方についてなど、「そうか帝都の民は今フクヤグチ山に避難しているのか」カオリンはそういってサマーナイト大尉やTK委員長を責めることはなかった。
228 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)20時41分56秒
カオリン皇帝は元帥の提案に基づき帝都の騒乱が治まるまで山岳地帯に一時避難することにした。元帥は言った「反乱軍が帝都で得るものは何もありません なぜならば帝都の最大の宝である『帝国の民』がもう都にはいないからです」



229 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)20時50分09秒
マリ王子率いる戦車部隊は帝都の大通りを進軍した。通りの傍らには死体が散乱していた。時々アスカの兵士がその死体をナタで切り取り貪る姿がみうけられた。

ヒトミ大佐はそんな死体を食うアスカの兵士に声をかけた。「ギンナン将軍はどこにおられるかな?」兵士は言った。「おそらく将軍は宮殿におられるのだと思います」兵士はそう言うとまた死体を貪りだした。

戦車部隊は宮殿へとむかった。帝都のありとあらゆるものが破壊されていた。「彼らは文明に対して無知であるというより、何か文明に対して憎しみをもっているのかもしない」マリ王子はヒトミ大佐につぶやいた。
230 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)21時04分37秒
戦車部隊は宮殿に入っていった。ここはかなり激しい戦闘が行われたようだった。あちこちに兵士の死体が転がっている。少年や女性の死体もある。マリ王子はヒトミ大佐と共に宮殿の中へと入っていった。入口にも死体が転がっていた。そこには体の小さい10歳にも満たないであろう少年が機関銃を片手に頭を撃たれて死んでいた。「驚くことではない」マリ王子は自分に言いきかせた。

宮殿の式典用の広間に入るとそこにギンナン将軍とその取り巻きたちがいた。将軍は大司教の座る椅子に腰かけどこからか持ち出してきた酒を飲んでいた。
231 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)21時15分44秒
床には生首が散乱し、天井からは多くの死体がぶらさがっていた。「よくこんなところで酒が飲めるものだ」

ギンナン将軍はマリ王子の存在に気づいた。「お待ちしておりましたよ殿下」ギンナン将軍は赤ら顔て言った。

「将軍、これは一体どういうことですかな?」
「ええっと 質問の意味がよくわかりませんな殿下」
「この上にぶらさがっている死体のことだ」

ギンナン将軍は天井を見上げた。「ああ あれのことですか あれは我々共和国連合を脅かす者たちです。直ちに処刑しました」
232 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)21時24分01秒
「君達アスカは敵を生かすという考えはもたないのかね?」
「しかたがありません誰一人降伏しなかったのですから」

マリ王子は天井の死体を見た。

「どうやら彼らは帝国の閣僚のようにみうけられるが」
「そうかもしれませんな」
「『そうかも』ではない。なぜ殺した?」
「それは先程も申しましたように降伏しなかったからです」

「どんな事があっても閣僚や皇族は殺すなと言ってたはずだ。一体我々は誰と交渉すればよいのだ。いやそれよりも彼らがいないとこの帝国の運営などできないのだ」
233 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)21時32分27秒
「どうすれば良かったのですかな 殿下?」ギンナン将軍は欠伸をしながら言った。

「説得するのだ時間をかけて、我々が皇帝を殺さずにいたことの理由もわからんのか?」

マリ王子は怒りに震えていた。はやくこんな野蛮な連中とは手を切るべきだったと。発電所も水道も工場も破壊し尽くされたこの都にせめて閣僚だけでも生き残ってくれればそこに帝国の技術者や知識人が集まってくる可能性があったのに、その閣僚さえいない今となってはもう帝都などただの廃虚でしかない。

「そんなことはわかってましたよ」

「なにっ!?」
234 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)21時47分00秒
「どうせあなたがたモーニングシュタットの人達は帝国の後釜に就いたら議長を担いで我々アスカを攻め滅ぼすつもりだったのでしょう」

「一体何の話しかな?」

「とぼけても無駄ですよ。我々アスカは猜疑心の強い種族でしてね殿下のベッドや風呂、殿下のお乗りになっている赤い馬にとあちこちに盗聴機を仕掛けておいたのですよ」

「何!!!」

この後約3ヶ月にわたって共和国連合は帝都で内戦を繰り広げた。しかしついに決着つかず、戦いに疲れた彼らは都を破壊し尽くした挙げ句に火を放ち森へと去っていった。





235 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)21時59分42秒
廃虚となった都に、山で避難していたカオリン皇帝と帝都の住民が帰ってきた。

都には様々な部族や民族の死体が散乱していた。「共和国連合というものがこれほどまでに多彩な人々で成立しているとは思わなかった」カオリン皇帝は自分がもう『反乱軍』という言葉を使っていないことに気づいていなかった。

すべての建物や施設が破壊されてしまった都を見てカオリンはつぶやいた。「カオリン帝国も、また最初から・・・・・カオリン村からやり直しだな」

カオリン皇帝は鍬を持ち出して言った。「さあみんな畑を作ろう」この言葉に帝都の民は従い建物を壊し、壁を崩してそして畑を作った。皇帝も自ら鍬を取り畑を耕した。
236 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)22時07分14秒
やがてカオリン皇帝はTK委員長と結婚した。

暫くしてカオリン帝国に・・・・・いやカオリン村に反乱軍を追って出撃していたマイルズ提督率いる討伐隊が帰ってきた。それは空を暗くするほどの大艦隊であった。旗艦から提督の声がした。「陛下、申し訳ありません。反乱軍の掃討に手間取ってしまいました」
カオリンは言った。「もうよい。早く降りてきて畑仕事を手伝ってくれ」カオリンは額の汗をぬぐいながら言った。



237 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)22時20分24秒
秋になり収穫の季節が近付いた。カオリンも畑仕事に向かおうとしたが、妊娠でお腹が大きくなっていたので少し手間取っていた。「陛下、何もしなくていいですから馬車に乗って下さい」TK委員長はカオリンの手を取り馬車に乗せた。「先に行っててください。今日の収穫祭に間に合わなくなりますから」と委員長は言った。

カオリン皇帝と干し草を乗せた馬車は御者の合図とともにゆっくりと動いていった。

カオリンは自分の大きなお腹をさすりながら、馬車に揺られ大きな青い空を見つめていた。

空をみつめながらウトウトしてきたカオリンは、やがて眠ってしまった。

遠くから声がした。

「へいかー!!」
238 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月29日(月)22時29分56秒
この声にカオリンは細く目を開けた。

丘からふたりの女の子が手をつないで駆け寄ってきた。それはサヤリンとナッチだった。

ふたりとももうすっかり『まきばの少女』のいでたちであった。

「へいかーこんにちわ」二人は可愛らしくカオリンに話しかけた。

「こんにちは」カオリンはやわらかく返事をした。

「へいか あのねふたりでずっとへいかの事を話してたんですよ」ナッチとサヤリンは顔を寄せあって笑っていた。

「何を話していたの?」カオリンは尋ねた。

ふたりはクスクス笑っていた。そして・・・・・

「陛下って かわいいなって」

カオリンは少し微笑んだ。







ーーー『出撃!!かおりん帝国』おわりーーー
239 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ

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