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kind of love
- 1 名前:LVR 投稿日:2001年09月06日(木)02時09分54秒
- 石川さん関連の話が増えると思います。
気分次第で、他のものも書きますが。
最初は、やぐいしです。
- 2 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月06日(木)02時11分43秒
- 「石川、今日も家くる?」
「あ……はい」
別に何も珍しくない会話。
何時からだかもう覚えてないけど、私は矢口さんの家に行くのが習慣になっていた。
「何だよ、元気ね〜なあ。まあ、話は後で聞いてやるから、帰る準備しろよ」
その言葉に、黙って頷く。
黙って、矢口さんについて行く。
たまに、これでいいのかと思う。
別に、矢口さんの家に行くことが嫌な訳ではない。
というか、好きな人の家に行くのが嫌な理由なんて見つけられない。
でも……。
- 3 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月06日(木)02時13分55秒
- 「梨華ちゃん、麦茶でいい?」
「あ、お願いします」
矢口さんは、二人きりになると必ず梨華ちゃんって呼んでくれる。
何回も聞いたけど、やっぱり石川って呼ばれるよりもこっちの方が好き。
いつもならそれで自然と機嫌がよくなるんだけど、今日はやっぱり駄目だ。
「お待たせ。テレビでも見よっか」
そう言って、テレビをつける。
ぼうっとテレビを見ながら、私は別なことを考えていた。
こうやっていつも一緒にいるけど、まだ、好きって言って貰ったことがない。
我が侭って言えばそれまでなのかもしれないけど、どうしても不安にさせる要素があった。
- 4 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月06日(木)02時14分34秒
- 「あんま面白いのやってないなあ。今日は何曜日だっけ?」
矢口さんの言葉につられて、私もカレンダーを見上げる。
不意に、カレンダーの赤い印に目が行った。
「あの印、何ですか?」
「ん、どれ?」
その印を見た瞬間、矢口さんの顔が少し曇った。
切なそうな、愛しそうな、そんな表情になる。
「……そっか。裕ちゃんの誕生日、もうすぐだったなぁ」
中澤さんの誕生日だったんだ……。
何となくは、予想がついていたけど。
矢口さんがトイレに立ったとき、一月までカレンダーをめくってみた。
何も書き込みがされてなく、綺麗なままだった。
- 5 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月06日(木)02時17分03秒
- 「梨華ちゃん……?」
トイレから帰ってきた矢口さんが、カレンダーの前に立っている私を不思議そうに見つめる。
「あの、矢口さん」
「ん、何?」
「石川のこと、好きですか?」
その言葉に、一瞬矢口さんの動きが止まる。
「そ…そんなの、好きに決まってるじゃん。何だよ、いきなり」
たぶん、本心で言ってくれてるんだろう。ちょっとだけ、顔が赤かった。
- 6 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月06日(木)02時20分08秒
- 「じゃあ、中澤さんとどっちが好きですか?」
それを聞いた矢口さんは、驚いた表情のまま固まった。
「な…何で、そこで裕ちゃんが出て来るんだよ」
口では怒った風に言ってるけど、動揺は隠し切れない。
「私知ってるんです。矢口さんが、最近まで中澤さんと付き合ってたこと」
というか、楽屋での二人のやり取りを見てれば、誰だって一度は勘ぐるだろう。
大体の人はただじゃれているだけと言う言葉にごまかされるけど、私はずっと矢口さんを見てきたんだ。そんな言葉には騙されはしない。
- 7 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月06日(木)02時21分53秒
- 「答えてください」
「……」
矢口さんの部屋を、静寂が支配する。
「……わかりました」
「え?」
俯いていた矢口さんが、弾かれたように顔を上げる。
「矢口さんが、中澤さんのこと整理できるまで、もうここには来ません」
「梨華ちゃん……」
「おじゃましました」
- 8 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月06日(木)02時22分26秒
- ずっと引っかかっていたこと。
それは中澤さんの存在だった。
私には何も言ってくれなかったけど、中澤さんの影はずっと付きまとっていた。
そして、その影は、矢口さんの家に行くたびに濃くなっていく。
確かに、矢口さんが中澤さんと過ごした三年と言う年月には、私は入っていくことが出来ないのかもしれない。
それでも、今の矢口さんに必要なのは私だという自負があったからこそ、今まで目を逸らしてこられた。
けど、あのカレンダーを見てしまってから、私はもうどうしようもなくなった。
もう、目を逸らせなくなってしまったんだ。
- 9 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月06日(木)18時16分26秒
- 前作で良い雰囲気だった二人なのにいきなり切ないですね。
期待してますので頑張って下さい。
- 10 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月07日(金)01時16分26秒
- おお、続編?が始まっている!
矢口しっかりしろぉ〜。
石川がネガティブになってるぞぉ。
- 11 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月07日(金)02時22分19秒
- 「梨華ちゃん、センターじゃん。やったね!」
楽屋でゆっくりしていると、いきなりよっすぃーが声を掛けてきた。
「うん、信じられないけどね」
そう答えながらも、視線は矢口さんのほうを向く。
あの日以来、矢口さんとは余計な会話をしていない。
たまに、矢口さんの視線に気付くこともあるけど、私はそれに答えはしない。
もう、一ヶ月以上たっただろうか。
でも、私にとってはそれ以上に長く感じる。
矢口さん……、もう疲れたよ。
- 12 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月07日(金)02時23分26秒
- 「ねえ、梨華ちゃんってば!」
「え……よっすぃー?」
「もう、ぼうっとしすぎ!」
「あ……ごめん……」
矢口さんのことばっかり考えていて、よっすぃーの言葉に気付かなかったらしい。
はあ……。もう末期症状だなぁ。
「でさあ、今日ご飯食べに行かない?」
「え、いいけど。じゃあ、ごっちんでも誘おっか?」
きっと、矢口さんはさっきの私の視線に気付いてたんだろう。
私が視線を外した途端、こちらの方をじっと見つめている。
「えっと……、今日は二人で行かない?」
「え……、別にいいけど」
「じゃあ、先に取材が終わったら、待っててね」
私がよっすぃーと話し終わっても、矢口さんはずっと私のほうを見ていた。
- 13 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月07日(金)02時24分31秒
- 「じゃあ、梨華ちゃんのセンターを祝って乾杯!」
「もう、止めてよ、恥ずかしいなぁ」
駅から近くの定食屋。
女の子二人ではいるのはちょっと恥ずかしかったけど、お客も少ないしちょっとした穴場だ。
- 14 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月07日(金)02時25分05秒
- よっすぃーの方を見ると、こちらを見てニヤニヤと笑っていた。
「どうしたの?」
よっすぃーは笑顔のまま、メニューを取り出す。
「ね、お酒頼んじゃおっか」
「ええ! 駄目だよぅ。人がいっぱいいるのに……」
「まあまあ」
そう言って、お酒を頼んでしまった。
「もう!」
「いいじゃん。お祝いなんだから」
まだ少し抵抗があったけど、ムシャクシャしていたのもあって私もいただくことにした。
すぐにほろ酔いとなり、今まで抑えてきた感情が溢れそうになるのを、寸での所で押しとどめた。
(あぶないあぶない)
矢口さんとの関係は、メンバーにも知られている節があるが、それでも今のことを誰かに相談する気にはなれなかった。
- 15 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月07日(金)02時26分22秒
- 「ねぇ、梨華ちゃあん」
よっすぃーがとろんとして目で呼びかける。
「あ、もう。飲みすぎだって。ばれないうちに止めようよ」
しかし、そんな呼びかけを無視するように、自分の言葉を続ける。
「矢口さんとなんかあったぁ?」
……!?
「や……やだなあ、よっすぃー。何で急にそんなこと」
引きつった笑みを浮かべながら答える。
やっぱり、最近の態度は不自然だったかなあ。公私は区別しているはずだったんだけど。
- 16 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月07日(金)02時27分44秒
- 「まあ、いいけどさぁ。それよりぃ、梨華ちゃんウチのことどう思ってる?」
「え? 娘。に入ったのも一緒だし、親友だと思ってるよ」
自分で言った言葉に赤面してしまう。
親友って言うの、愛の告白より恥ずかしいかも……。
「ウチは梨華ちゃんのこと好きなんだよねぇ〜。もちろん、恋愛対象として」
「はあ!?」
けど……、突然告白されるのはもっと恥ずかしい。
「も…もう、よっすぃー飲みすぎ!」
「口調はこんなんだけど、本気だよぉ」
「だって、今までそんなこと一言も言わなかったのに……」
「それはぁ、梨華ちゃんが、矢口さんと付き合ってると思ってたから」
- 17 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月07日(金)02時28分18秒
- なんか、頭の中がぐるぐる回っていた。
今までだったら、誰になんと言われても断ってこれたと思う。
でも、今は……。
私は矢口さんが戻ってきてくれると信じて、あんなこと言ったけど、なんかもう駄目みたいだよ。
矢口さんのことを信じれなくなっちゃった。
ここで、矢口さんなんか忘れて、よっすぃーと付き合っちゃった方が楽になるのかも。
- 18 名前:LVR 投稿日:2001年09月07日(金)02時40分52秒
- 森板、1レスに書き込める文字数まで少ないんですね。
320て。しんど……。
>>9 さん
あの後、こんなことになっちゃいました(w
それにしても、僕が書いた中で、唯一暗くない話だったのに、続編がこんなん……。
まあ、道草のときは、全てが曖昧だったと思うので、こんなのもありかなと。
>>10 さん
そういえば、石川さん確かにネガティブ。
でも、僕が書く話なんで、矢口さんもネガティブになっちゃうかも(w
- 19 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月08日(土)01時07分09秒
- 「……私と矢口さんが付き合ってるってみんな思ってるのかな?」
もしそうだとしたら、みんなも今の状況を変に思っているはずだった。
「さあ? 仲のいい先輩後輩にしか思っていないかも」
「じゃあ、よっすぃーは何で?」
よっすぃーはコホンと堰を一つすると、私の方をまっすぐに見ていった。
「私はずっと梨華ちゃんを見てきだんだもん。梨華ちゃんがいつも矢口さんを見てたことなんて、すぐにわかるよ」
「あ……」
――私知ってるんです。矢口さんが、最近まで中澤さんと付き合ってたこと。
同じだ。
私も、よっすぃーと同じ事をしてた。
そして、よっすぃーはずっと矢口さんを見ている私を、好きでいてくれた。
私が、ずっと矢口さんを好きだったように。
- 20 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月08日(土)01時08分22秒
- ……私は、矢口さんに愛されるために、ずっと想っていたわけじゃない。
そんなこと抜きにして、好きでいられた。
まさか、こんな簡単なことを忘れちゃうなんて。
大事なのは、私が矢口さんを今でも好きという気持ちなんだ。
「あのね、よっすぃー……」
私は、その気持ちを伝えるため、口を開いた。
「梨華ちゃん、ダメェ!!」
突然の大声に、店内の空気が一瞬止まる。
その張本人は、私たちの目の前にいた。
- 21 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月08日(土)01時08分54秒
- 「矢口さん……?」
酔いがすっかり覚めた様子のよっすぃーが、目を丸くして呟く。
「梨華ちゃん、ごめん! 私が悪かったよ!
梨華ちゃんがそうしろって言うんなら、何万回でも好きって言うし、裕ちゃんとも話さない。
だから……だから……、矢口を捨てないでよぅ……」
いつも強気な矢口さんが、涙を流しながら抱きついてきたことに、私は驚いていた。
でも、なんか……可愛い。
思わず、ギュッと抱きしめる。
「私も、矢口さんが一番好きですよ」
- 22 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月08日(土)01時09分45秒
- そう耳元で囁いた私の肩を、よっすぃーが叩く。
「ねえ、梨華ちゃん。今ので、私たちのことばれちゃったんじゃ……」
「あ……」
テーブルの上には、お酒の入ったグラス。
当然のことながら私達は未成年。そして、アイドル。
「ねえ、よっすぃー」
「ん?」
「逃げよっか」
「……だね」
よっすぃーは、おもむろに財布を取り出し、テーブルに代金を置く。
「ごちそうさまでしたっ!」
そして、矢口さんを引っ張りながら、走って定食屋を後にした。
- 23 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月08日(土)01時10分50秒
- あれからよっすぃーと別れ、矢口さんと二人きりになった。
でも、矢口さんはなかなか私を離してくれない。
「もう、矢口さん。離れて下さいよ〜」
「……ヤダ」
「もうすぐ家に着きますよ?」
「泊まってって」
ずっとこんな感じ。
仕方がないから泊まっていくことにした。
- 24 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月08日(土)01時12分08秒
- 「言っておくけど、裕ちゃんにはもう恋愛感情ないから」
部屋に入ってくつろいでいた私に、矢口さんは開口一番そう言った。
私は、それに黙って頷く。
けど、その後も矢口さんはもじもじして、何か言いたそうにしている。
「どうしたんですか、矢口さん?」
私が促すと、ようやく重い口を開いた。
「梨華ちゃんさ、よっすぃーのこと好きなの?」
「へ?」
突然の言葉に、私はいつも以上に高い声を出してしまった。
「だってさ、あの時梨華ちゃん……」
私は、定食屋での会話を思い出してみる。
もしかして、私が矢口さんに遮られた言葉を言っているのだろうか。
「ぷっ」
「ちょっと梨華ちゃん、何で笑うのさ!」
矢口さん、勘違いしてる。
ただ断ろうとしただけなのに。
- 25 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月08日(土)01時12分42秒
- 「内緒です」
「え?」
「だから、よっすぃーのこと好きかどうかは内緒」
「ええ〜!!」
途端に情けなくなる矢口さんの声。
私はそれを見て、声を出して笑う。
その後二人で、夜が更けてもずっと寄り添っていた。
ずっと望んでいた夢。
一度手に入れて、失いかけてしまった現実。
「ねえ、矢口さん」
「何?」
「もう、離さないで下さいね」
「……うん。ぐるぐるって縛っとく」
「ええ、それはやだなあ」
「赤い糸で、梨華ちゃんのココロを縛るんだ」
「……矢口さんって、意外と少女趣味ですよね」
「うるさいなあ」
- 26 名前:愛のカタチ〜赤い糸〜 投稿日:2001年09月08日(土)01時14分24秒
- 口ではあんなこと言ったけど、正直私は嬉しかった。
「信じてますから」
「うん?」
――矢口さんが結んでくれた赤い糸が、絶対にほどけないって。
その日、私たちは初めてのキスをした。
愛のカタチ〜赤い糸〜 …… 完
- 27 名前:LVR 投稿日:2001年09月08日(土)01時16分44秒
- オチ隠し
- 28 名前:LVR 投稿日:2001年09月08日(土)01時17分31秒
- オチ隠し
- 29 名前:LVR 投稿日:2001年09月08日(土)01時18分14秒
- 愛のカタチ〜赤い糸〜 終了しました。
- 30 名前:七誌の読者 投稿日:2001年09月09日(日)01時09分22秒
- いいじゃんいいじゃん(w
やぐいしで初めて萌えた(w
- 31 名前:愛のカタチ〜傍にいれるなら〜 投稿日:2001年09月09日(日)03時47分52秒
- 「よっすぃー、今日も家くる?」
「あ……うん」
別に何も珍しくない会話。
何時からだかもう覚えてないけど、私は梨華ちゃんの家に行くのが習慣になっていた。
「あれ、吉澤じゃん」
「市井さん。帰ってたんですか?」
梨華ちゃんの家に向かう途中、懐かしい人に会った。
でも、ごっちんから、市井さんは留学に行ってたって聞いてたけど……。
「夏休みだから、ちょっと後藤に会いにね。そういや、受験大丈夫か?」
「まあ、ボチボチです……」
そう言いながら、梨華ちゃんのほうを見る。
市井さんに愛想笑いを浮かべているけど、微かに表情が曇っているのを見逃さなかった。
- 32 名前:愛のカタチ〜傍にいれるなら〜 投稿日:2001年09月09日(日)03時48分26秒
- 現在の私と梨華ちゃんの関係は本当に微妙だと思う。
付き合っていると言えなくもないし、友達の延長でしかないとも言える。
ただ、私が梨華ちゃんを恋愛対象としてみているのは、彼女も知っている。
それでいて、こうやって付き合ってくれているのだから、梨華ちゃんも満更ではないのかもしれないが。
……違う。
私がただ、そう思いたいだけだ。
実際はもう、結果が出ているんだ。
「よっすぃー、そろそろ行こうか」
終わりそうにない会話に痺れを切らしたのか、梨華ちゃんが声をかける。
「あ、わかった。じゃあ、市井さん、ごっちんに勉強するように言ってください」
「おう、言っとく。じゃ、またね」
軽く会釈をすると、私たちは再び梨華ちゃんの家に向かった。
- 33 名前:愛のカタチ〜傍にいれるなら〜 投稿日:2001年09月09日(日)03時48分57秒
- 「梨華ちゃん、どうかした?」
彼女の家に着くなり、私はこう言った。
「え、別にどうもしないよ」
その問いに、彼女は完璧な笑顔で答える。
はあ……。私、最低だ。
梨華ちゃんがごっちんの事を好きなの知ってて、こんなことを聞くなんて。
とは言っても、ごっちんも市井さんも、そのことは知らない。
彼女のことだから、眼鏡をかけたその笑顔の裏に、全てをしまいこんで、誰にも気付かせていないに違いない。
私を除いて。
- 34 名前:愛のカタチ〜傍にいれるなら〜 投稿日:2001年09月09日(日)03時49分27秒
- 「ねえ、よっすぃー」
「ん、何?」
梨華ちゃんの甘えた声に、思考を一時中断する。
「キス……しよ」
「うん……」
何も考えずに、唇を合わせた。
耳には、梨華ちゃんの微かな吐息が聞こえてくる。
本当に、最低だ。
- 35 名前:LVR 投稿日:2001年09月09日(日)03時54分19秒
- 愛のカタチ二作目です。
この二作品で、愛のカタチ終了です。
今回は、「眼鏡」という話の続編ですが、読んでなくても大丈夫なように頑張っています。
>>30 七誌の読者さん
ありがとうございます。
これでやぐいし好きになってくれたら、もっと嬉しいんですが(w
でも、この話、ちょっと甘かったですかね。
- 36 名前:七誌の毒者 投稿日:2001年09月09日(日)10時28分10秒
- >>35
HNミスッタ(w
俺このHNっす。
いや いい感じっスよ。
- 37 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月09日(日)11時09分07秒
- 良い感じっす。
- 38 名前:ジョニー 投稿日:2001年09月09日(日)15時20分15秒
- 微妙な心理が伝わってきていいっス!
がんばってください!
- 39 名前:aki 投稿日:2001年09月09日(日)18時58分40秒
- おお!眼鏡の続編ですか!
楽しみです。頑張ってください。
- 40 名前:愛のカタチ〜傍にいれるなら〜 投稿日:2001年09月10日(月)00時51分10秒
- 「おはよ」
まぶしい光と、独特の高い声が私を現実に引き戻す。
「うん……おはよ」
結局あの後、私はいつもの様に梨華ちゃんの家に泊まっていった。
「よっすぃー、電話」
梨華ちゃんがいそいそと私の携帯を持ってくる。
この着信音は……ごっちんだ。
- 41 名前:愛のカタチ〜傍にいれるなら〜 投稿日:2001年09月10日(月)00時52分14秒
- 「もしもし」
『あ、よっすぃー? 市井ちゃんに余計なこと言わないで!』
余計なこと?
ああ、勉強のことか。
「大学落ちるよ」
ごっちんの言葉は軽く流して、釘を刺しておく。
『うぅ、わかってるもん。それよりさ、今家にいる?』
「なんで?」
『市井ちゃんと一緒に、遊びに行こうかと思って』
チラリと梨華ちゃんのほうを見る。
よくわからないと言った様子で、微笑んだ。
「いや、今梨華ちゃんの所」
『うっわ〜。相変わらずあっついね〜』
- 42 名前:愛のカタチ〜傍にいれるなら〜 投稿日:2001年09月10日(月)00時53分01秒
- ごっちんは、私と梨華ちゃんの仲人のような気持ちでいる。
実際、私たちがこうして要れるのはごっちんのおかげなんだけど、梨華ちゃんの気持ちを考えると、少々複雑だ。
『じゃあさ、梨華ちゃんも誘ってダブルデートは?』
「四人で?」
私のその言葉で、会話の内容が大体わかったのか、梨華ちゃんが複雑な笑みを浮かべる。
「……ごめん。ちょっと今日はゆっくりしたいかなって」
『そっか、わかった。じゃあ、梨華ちゃんによろしくね』
「うん、バイバイ」
- 43 名前:愛のカタチ〜傍にいれるなら〜 投稿日:2001年09月10日(月)00時53分31秒
- 電話を切ると同時に、梨華ちゃんが私の傍に近づいてきた。
「ごっちん?」
「うん。梨華ちゃんによろしくって」
それ以上は、梨華ちゃんも何も言わない。
その閉じられた唇に、私は昨日と同じようにキスをした。
「……よっすぃー」
「なんか、キスしたくなった」
私に出来るのは、こうやって梨華ちゃんを支えてあげることだけ。
これでも、梨華ちゃんのことは本気なんだけどな。
「ありがと」
「ん?」
突然の梨華ちゃんの言葉に、私は思わず聞き返す。
「なんでもな〜い」
そう笑って言うと、私の肩に寄りかかってきた。
「実は、私もさっきの電話で起きたから眠いんだよね」
「じゃあ、寝なよ。見ててあげるから」
「……はずかしいよ」
- 44 名前:愛のカタチ〜傍にいれるなら〜 投稿日:2001年09月10日(月)00時55分27秒
- でも、支えてあげられるのは、私だけだって言う自負はある。
ごっちんよりも近くで、こうして梨華ちゃんの肩を抱きかかえられる。
「よっすぃー、私やっぱり寝る。おやすみ」
「ん、おやすみ」
きっと、それは他の誰かじゃ埋められない場所で。
だから今は、それでいいかなって思う。
梨華ちゃんの気持ちが私に向いていなくとも、こうして、いつまでもあなたの傍にいれるなら。
愛のカタチ〜傍にいれるなら〜 …… 完
- 45 名前:LVR 投稿日:2001年09月10日(月)01時14分01秒
- うっわ、みじか(w
128kbにビビッてあっさり終わっちゃいました。
とりあえず、二組のカップルの愛のカタチを書き終わりました。
でも、容量かなり余ったから、他のも書こうかな。
>>36 七誌の毒者さん
ありがとうございます。
気に入ってもらえてよかったです。
まあ、ちょっと毒が足りなかったかなと(w
>>37 さん
ありがとうございます。
ちょっと、二作品の雰囲気が違うので、気に入らない作品もあるかもしれませんが、まあ、短いので(w
気が向いたら、最後まで読んでやってください。
- 46 名前:LVR 投稿日:2001年09月10日(月)01時15分05秒
- レスで文字制限に引っかかるとは……。
>>38 ジョニーさん
ありがとうございます。
僕は読むのが好きなんで、作者さんからレスされると嬉しいですね。
読者として、レスをありがたく受け取っておきます。
>>39 akiさん
続編でしたけど、もう終わっちゃいました(w
前作はあんなに引っ張ったんですけどね。
実を言うと、これを書きたいがために、面白くもない〜side R〜を書いてました。
お互い銀板を離れちゃいましたが、頑張りましょう。
- 47 名前:季節の狭間で 投稿日:2001年09月11日(火)13時43分04秒
- いつもの事ながら、学校へと続くこの長い上り坂は、気分が憂鬱になる。
いや、いつもはこんなに憂鬱な気分にはならないかな。
今日は四月七日。
短い春休みが終わり、今年度の始まりを告げる始業式が行われる。
休み明けの学校というイメージが、こんなに憂鬱な気分にさせているのかもしれなかった。
しかし、胸の中には、もう少しの休みを望む気持ちと対極の気持ちが確かにあった。
- 48 名前:季節の狭間で 投稿日:2001年09月11日(火)13時43分40秒
- わくわくしているの?
確信もなかったが、だからといって否定することもできない。
もしそうだとするなら、クラス替えというもののおかげだろう。
心の奥の方ではあるが、毎年恒例となっているこの行事に、どこか淡い期待を寄せている自分がいるのだ。
ふと、自分の考えに恥ずかしくなった。
誰かに心の中が覗かれてしまったようで落ち着かない。
「それにしても、寒いな」
そんな気持ちを吹っ切るように、わざと口に出して呟いた。
しかし、確かに寒い。自分では、まだ冬だと思っている。
世間一般には春と呼ばれているこの時期でも、だ。
- 49 名前:季節の狭間で 投稿日:2001年09月11日(火)13時44分13秒
- そうこう考えているうちに、学校へたどり着いた。
誰にも会わなかったが、そういう日も嫌いではない。
玄関の前には、クラスの振り分け表が張られてあった。名前を色々と見てみるが、知っている名前は少ない。
一年の頃は、自分のクラス以外の人とあまり交友関係がなかったので、それも仕方がないと思った。
一通り見て自分のクラスを確認すると、自分のクラスを見て一喜一憂している者達を尻目に玄関の中へ入り、新しいクラスへ向かい歩き出す。
- 50 名前:季節の狭間で 投稿日:2001年09月11日(火)13時45分03秒
- 教室には、まだ少数の生徒しかいなかった。
これが新しいクラスメート。前のクラスに未練はなかったが、知らない顔ばかり見ていると、やはり少し不安になってくる。
黒板に張ってあった座席表を見て自分の席に座る。
知り合いはまだだれも来ていなかった。
周りにいる者達は、以前からの知り合いと話しているようだった。
こんなものだろうな。
予想していたとおりの結果とはいえ、どこか寂しく感じた。
- 51 名前:季節の狭間で 投稿日:2001年09月11日(火)13時45分35秒
- 「ごっちん、おはよっ!」
「……!」
突然声をかけられたため、驚きで頬杖をついていた右腕が少し崩れる。
「梨華ちゃんか。なんだ、梨華ちゃんもこのクラスなの」
ようやく見つけた知り合いだが、驚かされたという恥ずかしさもあり、そっぽを向いて答える。
「ふふふ、悪かったわね」
梨華ちゃんは気にする風でもなく、笑い飛ばした。
梨華ちゃんとは一年の頃、そんなに話したという記憶がない。
だから、彼女の笑顔をこんなに間近に見るのは初めてだった。がらにもなく、少しドキリとする。
「私は同じクラスになったこと、嫌じゃないよ」
「別に、嫌とは言ってない」
梨華ちゃんの顔をまともに見れず、視線を窓に向けて言った。窓の外には、桜の木が立っている。
- 52 名前:季節の狭間で 投稿日:2001年09月11日(火)13時46分08秒
- 「あれ……?」
ふと、違和感を覚える。
「桜の木につぼみが出てる」
今の今まで気が付かなかった。梨華ちゃんは隣であきれた顔をしている。
「今頃気付いたの? いつも寒い寒いって言ってるから気付かないのよ」
そう言われると、確かに「寒い」が口癖になっていた気がする。
春を探そうなんて思ったこともなかった。
- 53 名前:季節の狭間で 投稿日:2001年09月11日(火)13時47分08秒
- (そっか、もう四月なんだよね)
当たり前のことを、改めて思い出す。
いったいこのクラスの中の何人が、桜のつぼみに気付いているのだろうか。
気付かずに、また来年を待つのだろうか。
「今年一年、よろしくね」
梨華ちゃんは突然の言葉に驚いた様子だったが、すぐに笑顔になり、「うん」と大きく頷く。
春は、もうそこまで来ていた。
季節の狭間で …… 完
- 54 名前:メッセージ 投稿日:2001年09月13日(木)02時50分29秒
- 「矢口ぃ、ミニモニいいなあ」
「そんなこといっても、駄目だよなっち。150以下しか入れないんだから」
「わかってますぅ」
私も今日も、笑顔で歌う。
これが、私の望んでいたことなんだろうか?
- 55 名前:メッセージ 投稿日:2001年09月13日(木)02時51分04秒
- 「何で止めるの!?」
興奮気味の私を、紗耶香は困惑気味に見つめる。
「ここには、私のやりたい歌はない」
しかし、はっきりとそう言った。
確かに、私がやりたかったのも、こういう音楽じゃないんだけど。
「でも、……でも、我慢すればもしかしたら!」
「そんなのできないよ。それじゃ、歌う意味なんてない」
どこまで言っても、私たちの話は平行線だった。
結局、止めるまでの覚悟をして自分の意見を言う紗耶香と、ただ止めさせたくないだけの私の話し合いが、上手くいくわけがなかったんだ。
- 56 名前:メッセージ 投稿日:2001年09月13日(木)02時52分11秒
- 「矢口さ〜ん、収録始まりますよ」
「わかった。加護は先に行ってな」
どっちの言い分が正しかったのかはわからない。
私にも芸能界を生き抜いてきた意地があるから、未だに戻ってきていない紗耶香の言葉を素直に認めるわけにはいかない。
あの日私が出した結論を、紗耶香の前で言った言葉を信るだけ。
だから私は今日も、笑顔で歌う。
「私を忘れないで下さい、本当の声を聞いてください」って。
あの時紗耶香に言えなかった想いも乗せて。
FIN
- 57 名前:メッセージ2 投稿日:2001年11月17日(土)01時07分59秒
- 今日も、何事もなく一日が過ぎた。
もちろん悪い意味ではなくて、計画通りに一日が終わったという意味だ。
布団に潜り、携帯に手をかける。
電話帳を順に見ていくと、一人の名前のところで私の指が止まった。
『矢口真理』
そう言えば、久しく連絡をとってないな。
最後の連絡はいつだったか。
少し考えをめぐらせるが、それほど難しいことじゃない。
彼女からの連絡は、ある日を境にぷっつりと途切れたのだから。
- 58 名前:メッセージ2 投稿日:2001年11月17日(土)01時08分56秒
- 私がグループからの脱退を伝えた日の、彼女の言葉を私は今でも覚えている。
でも、私はあの時辞めなくちゃいけなかった。
少なくとも、あの時の私には、それが正しい答えだった。
けど、そこで、私の考えはある疑問に行き着いた。
――私は、辞めたことで、何を得たんだろう。
空いた時間でギターを弾いて、遊び程度に曲を作って。
そして、転がり込むように出てきた、再デビューの話。
迷いはしたものの、結局その申し出を受け入れることに決めた。
- 59 名前:メッセージ2 投稿日:2001年11月17日(土)01時09分37秒
- 愕然とした気持ちになった。
私は彼女に、何を自慢できるのだろう。
一緒にいたころよりもはるかに大きくなった、彼女を前にして。
私は布団の中で大きく首を振った。
そんなことはどうだっていい。
私は、歌うことなしには生きられないのだ。
結局、歌だけが、彼女と私をつなぐ唯一の橋なのだから。
だけど、少しだけわ我がままを言わせてもらえるのなら。
こんな私の歌が、たったの一度でも、彼女に届いてくれることを願う。
それまでは、例えどんな内容の歌にだって、彼女へのメッセージを乗せ続けるから。
FIN
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