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捨て猫ユウコの物語

1 名前:kei 投稿日:2001年09月08日(土)00時14分18秒
初めまして、keiです。板への小説書き込み初挑戦です
マターリと、sageながらやっていきたいと思います。
なにぶん、行き届かない点は多いと思いますが、大目に見てやってください。
2 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)00時16分52秒
うちは、ユウコ。捨て猫や。ほんまは、ちょっと前まで、つんくさんの飼い猫やっ
たんやけれど、なんか知らんけれど、捨てられてもた。・・・。あかん、思い出す
と悲しくなる。前向きに生きよう。
実はなぁ、こういうしがない世の中やけれど、ネコ一匹生きていくんは、そんなに
難しくないんやで。ご飯とか、意外とみんなくれるし。結構、可愛がってもろてる。今日も、今から、まりっぺという女の子のところに、ご飯もらいに行くねん。
3 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)00時18分24秒
「にゃぁ」
あかん、おらへん・・・。まだ帰ってへんのかなぁ。なんか、こうやって、人を待
っているのって、なんか、寂しいわぁ。いつまで待っても自分のもとへ帰って来ぉ
へん気がして仕方ない。あかん、涙出てきた・・・。
「うにゃぁぁ」
「あれ、ユウちゃんじゃん。もしかしてずっと待ってたの?」
あ、まりっぺ。帰ってきたんや!
4 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)00時19分58秒
「でもさ、いつも思うんだけれど、あんたってさぁ、ホント鈍感だよね。矢口が帰
ってきたの全然気付かないで、自分の世界入ってんだもんね」
グサッ(^^;)
まりっぺは、うちを抱え上げながら、ガチャガチャッとカギをはずして、部屋の中
に入っていく。
「ほぉんと、馬鹿ユウコ!」
グサッ!グサッ!(^^;;)
ホンマ、この娘は、口が悪いなぁ・・・。でも、ホンマはすごい優しい娘。うちは
知ってんねん。
5 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)00時20分58秒
部屋にはいると、留守番電話のランプが、チカチカ点滅しているのが見えた。どう
やら、誰かからのメッセージが入っているみたいだ。そう思った瞬間・・・
「キャァー、彼からのメッセージだぁ!」
まりっぺは、そう叫ぶと、荷物ともども、うちのことも、放り投げた。あ、だんだ
んと壁が近づいてくる・・・
ドンガラガッシャンシャーン
「うんにゃぁぁ!!」
6 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)00時21分31秒
前言撤回や・・・
7 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)00時23分09秒
「おい、馬鹿ユウコ。喜べ! 今度の日曜、デートだぜ、デート!」
おうおう、人様・・・。もとい、ネコ様を投げ捨てておいて、デートのご自慢
ですか? なかなかいい身分ですネェ。うちは、メッチャ、痛いっちゅうねん! 
まりっぺなんか知らんわぁ。
「うにゃ!」
そっぽを向く。
「あれ、ユウちゃんどうしたの? なぁに、怒ってんのぉ! さっき、放り投げた
ことだったら、スマン! 謝るからさぁ!」
まりっぺは、うちの頭をなでながら、さっきのことを謝る。でも、うちは、そんな、
まりっぺの手を、前足で払いのける。いまいち、この娘は、うちがなんで怒ってい
るかに気付いて無いみたいや。
8 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)00時24分52秒
「ムッ!」
明らかに、まりっぺの表情が変わったのに、うちは気付いた。
「何、その態度! チョーむかつく! もう、ユウちゃんなんか、
知らないから!!」
そう言い捨てながら、まりっぺは、部屋から出ていこうとする。
うちの目から、涙があふれそうになった。
「ふみゃぁぁぁぁ」
我知らず、情けない鳴き声が、口からもれる・・・
まりっぺは、つと足を止め、振り返る。
9 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)00時26分25秒
「ふにゃぁぁぁぁ」
ごめん、ごめん、ごめん、うち、一人になりたないねん! まりっぺに彼氏出来た
ら、うち、また一人になる。それがイヤやねん! だから、すねててん! ホンマ
に、ホンマに、まりっぺ、怒らしたかったわけちゃうねん。だから、だから、
だから・・・
うちは、必死に叫んでた。ネコのうちの言うてることなんか、まりっぺに届くはず
もない。それでも、必死に叫んでた。
「ユウちゃん、ゴメンね」
ふっと、うちの身体が持ち上げられた。涙で曇った目を上げると、まりっぺの腕の
中に抱きかかえられていた。
「にゃぁ?」
10 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)00時28分02秒
「寂しかったんだよね」
まりっぺが小さくつぶやく。
「大丈夫だよ。あたしに、彼氏が出来ても、ユウちゃんは特別だから。あの日の
こと覚えてる? ユウちゃんと、あたしが最初に出会った日のこと・・・」
温かいまりっぺの胸に抱かれながら、あの日のことを思い出していた。
雨の日やった・・・。つんくさんに捨てられてから1週間くらいたった雨の日。
うちの心も土砂振りやったあの日。ただ当てもなく歩いていた。身体が冷たかった
けれど、そんなことはどうでも良かった。心の整理もある程度はついていた。捨て
られてもたもんは、しゃーないやん。でも、ツラカッタ・・・
11 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)00時30分18秒
「おい、ネコ! どうしたんだ?」
頭の上から、元気のいい声が聞こえてくる。ふと見上げると、赤い傘をさした、
目のパッチリした、ちいちゃな女の子が、しゃがみ込んで、うちのことをのぞき
込んでいた。
「ほれ、なぜか持ってる、猫じゃらし!」
女の子は、うちのことをからかうかのように、猫じゃらしを左右に振る。しかし、
なんで、こんなもの常備してるんや?(^^;)
ふん、何が猫じゃらしやねん。うちは、・・・右! 今そんなんで、・・・上! 
遊んでる、・・・下! 気分やぁ! ・・・も一度右! ないっちゅうねん!! 
はぁはぁはぁ、いかん、うちは、落ち込んでるねん! なんで、猫じゃらしにつら
れてまうねん! あぁ、ネコって悲しい生き物やわぁ・・・(;;)
12 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)00時31分30秒
「よぉし、元気出たか?」
猫じゃらしにじゃれつく うちのことを見ながら、女の子は微笑む。
「初め見たとき、今にも死んじゃいそうな顔してたからさ。心配になって・・・」
へぇ、そんなん顔見ただけでわかるん? へぇ、すごいやん。
「なんか、少し前のあたしと同じような顔してたからさぁ」
・・・ネコとおんなじような顔ってどんな顔やねん
13 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)00時32分39秒
・・・! ちゃうわ! ツッコミどころ間違ってる。それって、うちと同じような
「死にそうな顔」してたってことやん。この女の子にも、なんかあったんや!
「おい、馬鹿ユウコ! 何があったかは知らないけれど、人生、イヤイヤ猫生、
前向きに生きないとダメだぞ!」
!? なんで、うちの名前知ってんの? でも、馬鹿は余計ぢゃい!
意外そうな顔しているうちに気付いたのか、女の子はうちの首を指さす。
あぁ、そうか、うち、確か首輪に名前「YU−KO」って、刺繍されてたんや。
14 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)00時33分45秒
「もし、行く当てがないんだった、うちにご飯食べに来なよ。もっとも、うちは
アパートだから、あまり、長居させてあげられないけれど・・・」
うちは、あまり気が乗らなかったけれど、他に行くところないし、お腹もすいてた
ので、この女の子の部屋に行くことにした。実際、少し、この明るい女の子に惹か
れていたのかも知れない。じっとしていることを肯定と受け取ったのか、女の子は、
うちを抱え上げた。その瞬間----
15 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)00時34分23秒
女の子はうちを抱きしめたまま、その場にしゃがみ込んでしまった。
なんやぁ、行くんちゃうんかい? それに、どーせ、抱かれるんやったら、
オットコマエの方がいいんや・・・け・・・れ・・・?
「うぇ、うぇ、うぇ・・・」
泣いてるん? 女の子は声を殺して泣いていた。
16 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)00時35分14秒
そのときの女の子がまりっぺやった。今でも、なんで、まりっぺが泣き崩れたのか
は知らない。ただ、この瞬間、一人の人間と一匹の猫が心を通わせたということだ
け。あれから一ヶ月弱。うちは、まりっぺの明るさに心を少し救われた気がしてい
る。多分、心に傷を負っているのにも関わらず明るく努めようとする強さも分けて
もらったのかも知れない。
17 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)00時36分18秒
「今晩一緒に寝ようか?」
まりっぺの声で、我に返る。まりっぺの腕の中や。
なんやぁ、ふだんは大家がうるさいから、お泊まりはでけへん言うてんのに。
・・・。へへっ。なんか、メッチャ、嬉しいなぁ・・・。あぁ、でも、言うとくで、
うち、今はネコやけれど、ホンマはタチやからな・・・(*^^*) 
あぁ、そんな話とちゃうんか。
18 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)00時37分21秒
次の日の朝、目覚めると。まりっぺの姿はなかった。仕事に行ったんか。
はぁぁぁぁ! ねむっ! しかし、うちネコのくせに、まりっぺが朝起きて仕事に
行ったの、全然気付かへんのも考えもんやな。こりゃ、たしかに、「鈍感」いうて、
馬鹿にされるわ。朝御飯も用意して仕事に行ったみたいやから、ありがたく頂いて
いこう。小窓から、うちが出られるようにしてくれてるし。ほんま気の利く、
ええ女房役やな。うちが、人間やったら、ホンマに放っとかへんのにな。
19 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)00時38分21秒
まりっぺの部屋を出て、トットコと道を歩いていたら、後ろからイヤぁな声が
聞こえてきた。
「ネコさんなのれす!」
あちゃぁ、またあの娘や! つかまったら、面倒やから、速攻逃げよっ! 
うちは、駆け出す・・・。
「まつのれす!!」
ムンギュッと、うちの尻尾を引っ張る。
「ふにゃぁぁ!」
20 名前:ななーし。 投稿日:2001年09月08日(土)02時56分13秒
なんだかめっちゃ楽しそうなお話ですね。
がんばってください。
21 名前:kei 投稿日:2001年09月08日(土)23時11分35秒
>>20
ありがとうございまぁす。板小説、初なので、レスもらえるとやっぱり
嬉しいです。
では、今日も、バァーンと、いってみよ!
22 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時12分56秒
「つかまえたのれす」
あぁあ、朝から最悪や。この娘、うちのこと可愛がるんはエエんやけれど、
手加減なしやからな・・・。もうちょっと、あんた、動物との接し方考えや(--;)
「かわいいのれす」
そう言いながら、うちの頭を強引になでる。そのたびに、うちの頭が左右に振られる。
23 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時14分16秒
ちょっと、・・・右! もうちょっと、・・・左! 優しく、・・・右! 
なでられへん、・・・左! のか?、・・・右! 多分、・・・左! 
悪気は、・・・右! ないんやろう、・・・左! けれど、・・・右! 
こんなこと、・・・左! 続けてたら、・・・右! 首、・・・左! 
折れるっちゅう、・・・右! ねん!!、・・・ゴキッ!!
24 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時15分25秒
ゴキ!? 今、ゴキっていわへんかったか? 折れたんか!? 折れたんか!?
女の子の手が止まっている。顔を見ると、力の抜けたようないつもの笑顔している。
でも、口元が引きつっているのをうちは見逃してへんでぇ! 
あんたにも聞こえたんやな? ゴキって! 聞こえたんやな!? 
「ふにゃぁぁぁぁぁぁぁ(断末魔の叫びや!)」
のわぁぁぁ! もう、あかん! 目がかすんできた。うちは死ぬんや。
短い人生やったなぁ。やっぱ美人薄命ってホンマやってんや。
あぁ、この場合、美猫か・・・。まあ、どっちでもいいわ。あぁ、意識が遠のく・・・。
25 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時16分23秒
うん? なんやかんや言いながら、いつ意識なくなるんやろ? 首折れてから結構時間経つどぉ。およ?
目を開けると、はっきりと景色が目に入った。どうやら、目をつむってたから、
目の前が真っ暗に感じていたらしい。
視界には、後ろを振り返っている少女の姿が目に入った。彼女の視線の先には、
同じセーラー服を着た別の少女が立っていた。
「ゴキっや! のの、なに焦ってんねん! いくら無茶やってるって言うても、
そう簡単に猫の首が折れるわけないやろ? あたしの冗談やん」
26 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時17分39秒
「あ、ハゲちゃんれすか?」
「ゴルァ! 誰がハゲやねん!!」
ハゲちゃん(?)は、光速で間合いを詰め、思い切り、ののと呼ばれた少女の頭を
はたく。
「いてててて、ちょっといいまちがえただけなのれす。あいちゃん、
そんなにおこっちゃダメなのれす」
「おい、フツー、そんな言い間違え方せんやろ? わざとやろ、わざと!?」
27 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時18分41秒
「まづいのれす。あいちゃんには、じょーだんがつうじないのれす。
なんとかごまかさないと・・・」
「なにゴチョゴチョ言うてんねん?」
「あいちゃん、じかんみるのれす! もう、がっこうはじまっちゃうれすよ!」
「おう! ホンマや。のの、急ぐぞ」
「へいっ!!(ごまかせたのれす)」
28 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時19分36秒
なんや、なんや、この小娘どもは? うちを馬鹿にしとんかぁ? 
うちの知らんところで、話すすめよってに。しかも、なんで、
うちまで学校に連れていかれなあかんねん! 放せぇ!! 
あかん、この、ののっていう娘、しっかりつかんでて、逃げられへん。やめろ! 
うち、学校嫌いやねん!!
29 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時20分44秒
「そういや、そのニャーニャーうるさい猫、なんでまだ抱えてんねん?」
「このネコさんは、のののネコさんなのれす。うまれたときからいっしょなのれす。
だから、どこにいくときも、いっしょなのれす」
「・・・。さっき拾ったんちゃうんかい? でも、なんか、ものごっつぅ、
抵抗してる気がするんは、気のせいかぁ?」
「にゃぁぁぁぁ!!(放せ言うてるやろぉ!)」
30 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時22分22秒
なんだかんだで、学校に連れてこられてもた。今は、のののカバンの中に
入れられて、机の横にかけられている。うち、ホンマ、学校嫌いやねん。
なんか、おるだけで、こう、ジンマシンが・・・。あかん。精神衛生上、
良くないわ。とっとと逃亡や。
ののは・・・? あいぼんの机に遊びに行ってる。なんか楽しげに話している。
エエ友達なんやろうな。よー考えたら、うち、あんまり友達おらへんな。・・・。
・・・まりっぺ。
あかん、無性にまりっぺに会いたくなってもた。まりっぺは、
どこで働いてるんやろう・・・
31 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時23分27秒
二人は、おしゃべりに夢中になっているし、こっちに気付いてへんみたいや。
チャンスは今やな。
うちは、カバンから飛び出して、教室、そして廊下へと走り出した。
「あぁ! のののネコさんが、にげたのれす!!」
あかん、ののが気付くの早やすぎや! 追っかけてくる! あの、廊下の角、
曲がったら、全速力や!!
32 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時24分18秒
! 人!! うちが気付いたときには、角を曲がってくる人間にぶつかってた。
「きゃぁぁ!」
「ふみゃや!」
うちは、敏捷なネコやから、ぶつかってはねとばされた瞬間、受け身をとって、
さっと、着地する。相手の方は、ぶつかった衝撃よりも、いきなり飛び出してきた
うちに驚いて、廊下に尻餅を付いている。
33 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時24分53秒
「わーい、ネコさんつかまえたのれす!」
着地の瞬間、ののが追い付き、うちのことを抱え上げる。
そして、その瞬間、衝突した相手と目があった。
!! まりっぺ!
「・・・ユウちゃん?」
34 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時26分13秒
うちの視界には、スーツに身を包んで、廊下にしりもちついた、まりっぺの姿が
あった。まりっぺって、先生やったんや。
「あ、せんせい、おはよーごぜーます」
「あぁ、辻さん、おはよう。・・・。ところで、そのネコ、辻さんのネコ?」
ちゃうでぇ! ちゃうでぇ! 今は、うちは、まりっぺのモンやでぇ!!
「へい! うまれたときからいっしょなのれす!!」
・・・。なに言うてんねんな、コイツァ!!
35 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時27分21秒
「そうなんだ。ユウちゃんて、てっきり野良猫だと思ってた」
まりっぺの瞳に、一瞬寂しげな色がよぎる。
ちゃうねん。ちゃうねん! このガキがぁ!!
「ユウちゃん? なんれすかそれ?」
「このネコの名前だよ」
まりっぺはそう言いながら、うちの首輪を指さす。
36 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時28分06秒
「ちがうのれす。このネコさんはユーコなんてなまえではないれす」
少し小首を傾げながら何か考えているのの。
「そうれす、このネコさんのなまえは、ナカザーさんなのれす!」
ぶっ!!
どこをどう考えたら、そんな名前がでてくんねん! アホやろ、おまえ!?
「てへてへ・・・」
37 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時29分45秒
「いくぞ!なのれす、ナカザー!」
なんか、このガキに呼び捨てされたり、命令されるの、すんげぇ、ムカツくの
なんでやろ・・・。
ののは、まりっぺを置いて、教室に戻っていく。うちは、ののに抱えられながら、
ずっと、まりっぺのことを見ていた。まりっぺも、ずっとうちのことを見ている。
ちいちゃい身体が、さらに小さくみえた。
多分、それは、横に、大女がいたせいやろう・・・。えっ、ちゃうって?
ちなみに、その大女もうちのことをジッと見つめていた。
38 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時31分09秒
ふたたび、のののカバンの中に入れられた。なんか、いろいろショックで、
もう一度逃げ出そうという気が起こらない。しばらく、大人しくしているつもり・・・。
「あぁ、ジョンソンが来たぁ!!」
生徒たちが、一斉に騒ぎはじめる。ドタドタっと、みんな自分の席に着く。
ふと見上げると、教壇には、さっきの大女と、まりっぺが並んで立っていた。
しかし、アンバランスやぁ・・・。
39 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時32分28秒

「ジョンソンて言っちゃダメって言っているでしょう! ちゃんと、カオリン先生
と呼ばなきゃ、ダメェ!」
カオリンは生徒たちに向かって、そう言い、今度は、ののに対して注意する。
「辻ぃ! あんた、学校にネコ連れてきていいと思ってんの? すぐに、
捨ててきなさい!」
「うぇぇ、カオリンせんせい。ごめんなさいなのれす。でも、ナカザーは、
のののネコさんなのれす。すてたら、かわいそうなのれす」
ののは、泣きそうな顔で、カオリンに反論する。
40 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時34分26秒
「うるさい! 辻、あんた、カオリンに逆らう気!?」
「ふぇ、ふぇ・・・」
「飯田先生、ちょっと言い過ぎじゃ。次回から、連れてこないということで、
今回は・・・」
まりっぺが、すかさずフォローを入れる。
「副担任は黙っていなさい!」
カオリンは、ピシッと言い放つ。その瞬間、まりっぺの顔がひきつったのを、
うちは見逃さんかった。
横から、まりっぺがカオリンをギッと睨む。その瞳は、こう言ってた。
「矢口はあんたのこと大嫌いなんだからね! ちょっと、矢口より立場が上の役
やってるからって、調子ぶっこいてんじゃねェぞ、電波ロボのくせに! ボケェ!」
うん、確かに、そう言ってた。うちの勘違いやない! 間違いないでぇ!!(^^)
41 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時35分32秒
カオリンは、まりっぺの睨みなんか、まったく意に介さない様子で、
ののへの注意を続ける。
「はい、そのネコは没収。カオリンが連れて帰ります」
教卓から、ネコ用のケージを取り出す。なんでそんなモン常備してんねん? 
あいかわらず、この女、謎やわ・・・。
42 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時36分59秒
うちは、有無を言わせず、のののカバンから、カオリンのケージに移し替えられる。
その瞬間を狙って、逃げようとした。だがしかし・・・。
(おやめなさい。悪いようにしないから、黙って入りなさい!)
うちの頭の中に直接声が響いた。うちは、驚きのあまり、動きが止まる。ふと、
見ると、カオリンが、うちのことをじっと見ている。
海のように深い瞳の色をしている。思わず吸い込まれそうや・・・。
その一瞬の躊躇が命取りやった。完全に、ケージの中に入れられて、
カギまでかけられてしもうた。完全に逃げられへん。ユウコ一生の不覚や! 
43 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時38分32秒
ふと、周りを見回してみると、まりっぺは、カオリンに不満げな表情を見せながらも、
うちのことを心配げに、見つめている。立場的に、現状をどうしようもないのだろう。
ののは、うちを取り上げられて、今にも泣きそうや。この娘には、散々な目にあわされて
いるけれど、こうしてみるとちょっと可哀想な気もする。
あいぼんは、カオリンの横暴に少し切れかかっている。ジッと睨んでる姿は、
うちでもちょっとビビってまう。なかなかの迫力や。
44 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時39分27秒
当のカオリンは、そんな周りを気にとめる様子もなく、マイペースである。
「矢口ぃ、あと任せた」
そういいながら、うちの入ったケージを持って教室から出ていく。
「飯田先生、ちょっと!!」
恐ろしいくらい、マイペースな人や。この女の頭ってどうなっているんやろう・・・。
45 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時40分05秒
(別に、普通よ)
!! またや! また、聞こえてくる! 犯人は、やっぱり、カオリンか!?
うちは、ケージの中から、ギッとカオリンをにらみつける。
(そんなに睨まないでよ。なんか、カオリンが悪いことしているみたいじゃない?)
やっぱ、あんたなんか?
(そうよ)
なんで、うちの話しかけられんねん?
(知らないわ)
知らないって!?
46 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時41分15秒
(知らないものは、知らないの。カオリンだって、なぜこんな能力があるのか
知りたいくらいだわ)
テレパシーか・・・。
(おそらくね。昔から、宇宙と交信できたから、その延長線じゃないの?)
ぶっ!! 宇宙と交信するのはホンマやったんかい!(^^;)
で、うちになんのようやねん。用もなかったら、うちをこんなところ閉じこめたり
せんやろ? まさか、可愛いネコを閉じこめて虐めるってのが趣味ではないやろ?
47 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時42分43秒
(・・・・。あぁ、それもいいかもね)
おい! 変なタメすんなや! マジでビビるやろが! 特に、あんたが言うと
冗談に聞こえへんところが恐いねん。
(あなたが、辻につかまって大変そうだったらから、助けてあげたんじゃないの。
もうちょっと感謝しなさい。あのままだと、ホントに辻に連れて帰られて、
矢口のところには戻れないわよ)
!! なんや、まりっぺとの事もばれてるんかいな・・・。
(さっき、廊下で二人がぶつかったときに、二人の声が聞こえてきてね。・・・
別に聞こうとしたわけじゃないのよ)
48 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時44分15秒
なぁ、ところで、カオリン。そろそろ、手の内あかしいや。
(!!)
今、ビクッとしたやろ? やっぱ、なんか隠してんねんや。
(・・・・・・)
都合が悪くなると、ダンマりかい? うちも、ダテに年齢とってないで。なんか、
裏ありそうやから、カマかけたら、案の定引っかかりおった。もう、チャッチャ、
吐いてもた方が楽になるでぇ。
49 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時45分17秒
(・・・・・・)
なぁ、レギュラー一年分プレゼントっちゅうのでどうや?
(!! 馬鹿にしないで! カオリン、そんな安くない!)
あちゃぁ、逆効果か・・・。
(ハイオクじゃないとダメェ!)
50 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時46分30秒

・・・。
期待通りのオチかよぉ。鬱や氏のう・・・
51 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時47分47秒
(あなた、以前つんくさんのネコだったユウコさんでしょ?)
!! なんで、つんくさんの事!? あんた、いったい何者?
(ごめんなさい、今が多くは語れないわ。ただ、あなたがユウコさんなのかどうか、
つんくさんの飼い猫だったかどうか、確認しておきたかったの)
ちょっと、待ちぃ! それって、かなり勝手やぁ! 
ケージの蓋がパカッと開く。ケージから、うちを引っぱり出すカオリン。
さっきから歩きながら話をしてたけれど、知らないうちに、学校の校門のところ
まで来ていた。
52 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時49分00秒
(さぁ、お行きなさい。そして生きるのです)
久しぶりの地面を満喫しながら、カオリンの方を振り返る。もうなにも語らない
意志がはっきりと見える毅然とした態度でうちのことを見ていた。
一瞬、そのカオリンをキレイだと思ってしまった自分がいた。
あかん、あかん、うちには、まりっぺという者が・・・。
その心の動きを捉えたのだろう、カオリンは、くすりっと微笑む。ちょっと、
ハヅカシカッタ・・・
53 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時49分55秒
しかし、この娘、絶対、まだ何か知っているはずや。
つんくさんの何を知っているっていうの? ・・・。マークや。
この娘をマークしてたら、もしかしたら、つんくさんのところへ帰れるかもしれへん! 
でも、捨てられたうちが帰ってもしゃーないんやなぁ。
いまさら、つんくさんの事考えても・・・。
(ユウちゃん・・・)
うちの迷路にはまりかけた思考を遮るかのように、カオリンの声が頭に響く。
54 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時50分45秒
(今はなにも言えないけれど、自分を信じて! そして、つんくさんの事も・・・)
つんくさんを信じる? なに? それって、つんくさんは、
うちを捨てたんちゃうって事なんか!?
55 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時52分08秒
(あ、そうだ。矢口って、今、副担任なんだ。だから、メチャメチャ忙しくって、
あんまりユウちゃんの相手できないでしょ? もし、矢口がいないときは、
カオリンの部屋に遊びに来てもいいよ。担任て意外とヒマなんだ。それに、
矢口のアパートの近くだから・・・)
あからさまに、話をずらされた・・・
でも、たぶん、これ以上食い下がっても無意味なのは分かってた。
56 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月08日(土)23時53分15秒
カオリン、ありがとうね・・・。
うちは、それだけ言うと、カオリンを後ろに残して、一人、フラフラと歩き始めた。
なにも、分からんかった。ただ、いろいろなことが、頭を駆けめぐっていた。
そして、胸が苦しかった・・・。
57 名前:ななーし。 投稿日:2001年09月09日(日)13時13分49秒
これからどんな展開が!!
しかし、普段はカッコいい中澤センセなのに矢口が絡むと(笑)
すみません、めっちゃやぐちゅー好きです。
58 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月09日(日)23時16分48秒
それから一週間が経過した。
59 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月09日(日)23時17分46秒
あの日以来、まりっぺには会っていない。カオリンの話では、副担任の仕事が
忙しくて、ほとんど学校に泊まり込みで作業をやっているらしい。仕事場の学校
には行けないし、まりっぺの仕事が一段落つくまで、大人しく待っていることに
した。
60 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月09日(日)23時19分42秒
うちが、ののの飼い猫やっていう誤解は、カオリンが解いておいてくれたらしい。
やっぱり、まりっぺはショックやったみたいで、カオリンから事情を聞かされた
ときは、ホッと胸をなで下ろしていたらしい。まりっぺも、うちに早くゆっくり
会いたいって言うてくれてたらしい。嬉しいことや。
61 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月09日(日)23時20分54秒
じつは、この一週間の間に、うちは新しい出会いをしていた。
なっちっていう、少しポッチャリの・・・いやぁ、なんちゅうか、
あまり痩せているとは言い難い、ていうかぁ、少しだけ太ったぁ、
うーん、もう書いてまえ! 批判覚悟や! うちは恐ないでぇ!! 
まあ、要は、ブタ! ・・・あぁ、言うてもたぁ(^^;)
62 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月09日(日)23時22分11秒
数日前のこと。相変わらず、いろいろなことを悩んでいた。ホンマに辛かった。
何も分からない状態って、実は、自分にとって良くない事実が分かったときよりも、
すごく辛いモノやって知った。正直、中途半端な状態に追いやったカオリンの
ことを少し恨んだ。少しだけやけどね。
63 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月09日(日)23時23分14秒
カオリンが用意してくれた食事も食べずに、町の中をうろうろしていた。
いくら悩んで苦しくっても、空腹感は感じるもんやねんな。とある公園で、
ボーっとしていた。目の端に、太った女の子が映っていた。
別に見るわけでもなく見ていたら、その女の子はベンチに腰掛け、
袋から次々と食べ物を出してくる。
64 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月09日(日)23時24分26秒
グルルルッ!
あ、お腹の音や。つい、食べ物に、うちのお腹が反応してもたみたいや。
そのお腹の音が聞こえたのか、それともジィッと見ているうちのことが気に
なったのか、その女の子----なっちはハンバーガーをパクつきながら
一言こう言った。
「あげないべさ」
65 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月09日(日)23時26分12秒
・・・どあほっ! 誰がいるかい! うちは、ブタに恵んでもらうほど、
落ちぶれていーひんわ!!
あぁ、でも、ハラ減ったなぁ・・・。カオリンは今仕事中やし。
当然、まりっぺもそう。今晩まで待つしかないかぁ・・・。
そう考えてたら、目の前にハンバーガーのハンバーグを突き付けられた。
右手でパクパク食べ続けながら、左手でハンバーグを一枚差し出している。
「にゃぁ?」
「あげるべさ。そんなに恨めしそうな目で見られたら、なっちも食べにくべさ」
66 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月09日(日)23時27分44秒
おう! なんや、自分! ブタのくせにエエところあるやんけ! まあ、この際、
悩みは置いといて、腹ごしらえや! うち、牛肉大好きやねん。
「あ、ひとつ言い忘れたべさ。あくまでも噂だべが、牛肉とミミズの肉って、
食感がすごい似ているらしいべ。そういや、一時期、ミミズの肉が入ってるって
大騒ぎになったべなぁ・・・」
・・・・・・・・・・・・・・。
「なんだ? 食べないべか? もったいないだべさ」
なっちは、左手のハンバーグを、そのまま口の中に運ぶ。
67 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月09日(日)23時28分59秒
えぇ!?
「少し考えたら分かるべさ。ミミズの身体から砂を吐き出させる手間を考えたら、
素直に牛肉使った方が安いべ。そんなの常識だぁ。だまされるヤツはアホだべ」
・・・・・・。こんのぉ、ぶたぁぁぁぁぁ!
「冗談だべ。冗談のわからんネコだな。思い切り、目が怒りで充血してるべさ」
当たり前やぁ! ここまで馬鹿にされて、怒らんわけないやろが! このぉ、ブ・・
「機嫌直すべさ。他にも御馳走はあるべ・・・」
68 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月09日(日)23時29分53秒
なぁんや、もう、なっちさんも、お人が悪いわぁ。あるんやったら、
さっさと出さんかいなぁ!
「ほれ、栄養満点の・・・」
69 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月09日(日)23時31分01秒
バナナ・・・
70 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月09日(日)23時32分21秒
うっきぃぃぃぃぃぃ!! このぉ、ブタなっちめぇ! 丸焼きすんどぉ、われぇ! 
おんどれ、わざとやってんやろーがぁ! うちは腹減って、メッサ、機嫌悪いっちゅうねん! 
もう、死にさらせ!!
71 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月09日(日)23時34分29秒
うちは、怒りで我を忘れて、なっちに飛びかかった。
「脇が甘いべさ」
おもむろに、なっちは右手を突きだしてくる。
!! 突っ張り!? カウンターか? 避けられへん!
どかっ!!
・・・・・・・
ふふ、なっち、なかなかやるなぁ。あんたの・・・勝ち・・・や・・・わ・・・
どさっ
72 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月09日(日)23時35分15秒
「うーん、やっぱり、バナナは旨いべさぁ」
何事もなかったように、なっちは、バクバクとバナナをたいらげていく。
って、うち、ここのシーン、気絶してるから、ホンマは説明でけへんねんけどな。
73 名前:kei 投稿日:2001年09月09日(日)23時45分19秒
>>57 ななーしさん

やぐっつあんは、重要なキーパーソンになる・・・はずです。
多分(まだ考えていない・・・)
この小説、「やぐちゅう」ではないですが、やぐちゅう寄りなので、
楽しんでもらえると幸いです。
でも、しばらく、やぐっつあん出てこないかもぉ・・・(汗)
74 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月10日(月)09時39分31秒
出来たら娘。全部(新メンは置いといて)と絡んでほしいな(w
更新毎日めちゃくちゃ楽しみにしています。
75 名前:kei 投稿日:2001年09月10日(月)23時24分43秒
>>74 名無し読者さん

ありがとーごぜーます(^^)
最新メンの4人は、よく知らないので(名前すら覚えていない)ムリっすね。
ただ、裕子姐さん脱退時の9名は出します! 逆に言えば、姐さん以外の
脱退メンバーは出てきません。ごめんなさい。でも、要望が強ければ・・・
では、今日もいきまぁす!
76 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月10日(月)23時26分54秒
それからも、毎日、なっちは、公園の同じベンチに座って、何かを食べていた。
やはり、死闘を演じた二人、何か引き合うものがあったのだろう。それから、
急速に二人の間の壁はなくなっていった。
「ん? あれは死闘ではなく、なっちの一方的な勝利だべさ?」
あんた、うっさいわ! うちのネコ缶あげるから、ちょぉ、だまっとき!
「ネコ缶、旨いべさぁ(^^)」
77 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月10日(月)23時28分32秒
今日もなっち来てる。
いつものように、なっちの座るベンチの横にちょこんと座る。
別に、二人で何かするわけやあらへん。ただ、座っているだけ。
強いて言うなら、なっちがバクバク何か食べて、うちが、それを横で見ている・・・。
あ、言うとくけど、うちは欲しいわけちゃうからな!
「ふぅ、ホントに、ユウちゃんは意地汚いべ・・・。仕方がないから、
このお肉あげるべさ」
・・・。あんたに、「意地汚い」って言われたないわぁ。最悪やわ。
でも、貰えるモンはもらっとくでぇ(^^)
あかん、うち、だんだんとプライド無くなってきている気がするわ。
78 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月10日(月)23時30分05秒
「旨いっしょ?」
なっちは、うちにお肉食べさせながら、満面の笑顔を作る。
メッチャ、旨いわぁ。うち、あんたのことホンマ大好きやで。
なっちにもらったエサを食べ終わって、ふと、顔を上げて、なっちの方を見やる。
「・・・」
なっちは、顔を硬直させて、一点をジッと見つめている。その瞳は、
深海のように暗く、そして濁った輝きをしていた。
79 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月10日(月)23時31分03秒
うにゃ? うちは、いぶかしげに、視線の先をたどる。
そこには、長い髪を風になびかせつつ、こちらにやってくる少女の姿があった。
「なっち、お久しぶりぃ!」
少女は、笑顔を浮かべながら、なっちに手を振る。
「あぁ、ごっちん! 元気してただべか?」
うちは、ふっと不安を感じ、なっちの方を振り返る。満面の笑顔だ。
眼からは、先ほどの暗い光は消え去り、いつものキラキラが戻っている。
80 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月10日(月)23時32分21秒
「なんだべ? 学校の帰り?」
なっちは、ごっちんの制服姿を見ながらニッコリと微笑む。
「うん・・・」
一呼吸おいてから、ごっちんは続ける。
「なっち。なんで、学校辞めちゃったの?」
なっちは、相変わらず、顔から笑顔を絶やさず、頭をコリコリとかく。
「なっちは、学校嫌いだから・・・。えへへ、こうやって、気楽にお菓子
食べている方が性に合ってるべさ」
81 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月10日(月)23時34分25秒
ごっちんは、なっちの周りの菓子類やファーストフードの袋を見て、そして、
なっちの身体をチラリと見て、悲しそうな表情をする。
「さらに太ったっしょ? えへへ、なっちは食べるの好きだから・・・」
急に、ごっちんは、なっちのむくんだ手を握りしめ、地面を見つめながら、
小声でつぶやくように話しかける。
「今でも、ゴトーは、なっちの友達だよね?」
「・・・」
なっちは、一瞬言葉を失っていた。うつむいている ごっちんの視野には
入らなかったが、うちは、なっちの眼に憎しみの陰がチラリとよぎるのを見逃さんかった。
82 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月10日(月)23時35分47秒
「当たり前だべさ!」
太陽のように明るい笑顔を振りまく。
「うん、そうだよね。また、昔のように一緒に遊びに行こうね」
ごっちんは、自分に言い聞かせるかのようだった。そして、なっちの手を離し、
「もう行くね」というと、その場を去っていった。
「・・・」
なっちは、去りゆく ごっちんの後ろ姿をずっと見つめていた。
暗く、冷たい瞳で・・・。
83 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月10日(月)23時37分33秒
うちは、なっちのそんな瞳を見ていると、言いしれぬ不安感に襲われた。
ただごとやないんや・・・。
うちは、なっちの太い足に身体を一擦り、こすりつけて、ニャァと鳴いて、
バイバイの挨拶をした。そして、なっちに気付かれんように、さっきの少女、
ごっちんの後を付けはじめた。
84 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)23時11分32秒
 しばらく、ごっちんの後を追って、歩き続けた。10分くらい歩いたころ、
ごっちんは、重そうな鉄の表戸を開き、一軒の家に入っていった。
いや、家というのは正しくない。邸宅といえるほどの大きな建物やった。
・・・・・・でかぁ〜。
うちは、口をあんぐり開けながら、正直な気持ちを口に出した。
85 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)23時12分26秒
金持ちのお嬢ちゃんかい・・・。
うちは、ごっちんの顔を思い出しながら、そういや、お嬢様っぽい
端正な顔している娘だったと思った。
何はともあれ、なっちとごっちんの間に何があったんか、確認せなぁな。
そう心でつぶやくと、うちは、軽く一跳躍し、ごっちん邸のレンガ塀に飛び乗る。
86 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)23時13分34秒
塀の上で、ふたたび考える。
うちはなんで、こんな事に首突っ込んでいるんやろ・・・。
べつに、なっちともここ数日のつきあいなだけやし、ごっちんに至っては
今日初めて顔を合わせたのだ。二人のことを調べて、どうこうできる立場でもない。
それに、うちは、つんくさんの事で悩まないといけないことも多い。
あまり、二人にかまっている時間がないはずだ。
でも、逆に、つんくさんの事を考えたくないから、こうやって、
他人のことに干渉しているんかなぁ・・・。
・・・。よう分からへん。
87 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)23時14分24秒
まあ、考えてもしゃぁないわ。今は、うち自身が出来ること、
しようと思うことをただするだけや。
そう思考に結論づけると、近場の大木の枝に飛び移る。
ガサガサっという音が、屋敷に響く。
その音を聞きつけて、何匹かの真っ黒のドーベルマンが、ゆらりと現れ、
大木の下に集結する。
88 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)23時14分57秒
ふふん。お約束やね。お屋敷にはドーベルマンて、ドラマの見過ぎちゃうんかぁ?
うちは、犬たちを小馬鹿にするように、尻尾を振りながら、また別の木に移る。
それを何度か繰り返すうちに、屋敷の屋根に到着した。
犬たちは、うちの姿を見ながらも、どうしようもなく、悔しそうに、
うなり声を上げているだけやった。
89 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)23時15分45秒
イタズラ心から、もうちょっと、からかってやろうと思ったが、
そんな場合でもないので、ひとまず、ムクムクとわき上がる気持ちを抑えて、
本来の目的である、ごっちんの部屋を探した。
90 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)23時16分34秒
屋根づたいに一回りする前に、目的の部屋を見つけた。
さほど広くはないベランダにスタッと降りる。
ご都合主義のようだが、窓に掛かったカーテンは、
覗くにはちょうどいいくらいの隙間があいていた。のぞいちゃろ(^^)
うちは、そっと窓に近寄り、カーテン越しに覗く。
おぉぉぉ! ちょうど、ごっちんの着替え中や! 
なんちゅう、お約束な世界やねん!
91 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)23時17分35秒
しかし、ホンマ、あれやなぁ。ごっちん、大きいわぁ・・・。
ジュルジュル・・・。
うちは、エロオヤヂかい!と自分にツッコミながらも、目が離せずに、
ちと興奮気味や。あまりにも興奮しすぎて、前に乗り出して、
窓ガラスにゴツンと頭をぶつけてしもうた。
あちゃぁ・・・。
音にビクッて反応した、ごっちんは、とっさにシーツを身体に巻き付けながら、
窓の方を凝視する。
92 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)23時18分50秒
当然、ごっちんの視線の先には、照れ笑いしたうちがいた。
音の犯人が、ネコだと理解したごっちんは、頬の緊張をゆるめて、窓を開け、
うちを招き入れてくれた。そして、着替えを終える。
「なに? どこのネコちゃんなの?」
うちの前にしゃがみ込んで、うちの顔をのぞき込む。
「にゃぁぁお!」
93 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月13日(木)23時40分46秒
ごっちんは、しゃがんだまま、脚に腕を回し、抱え込むような体勢で、
小首を傾げる。何か記憶をたどっているようだ。
「あれ? もしかして、さっき、なっちと一緒にいたネコちゃんじゃないの?」
「にゃぁ!」
「あれあれあれ? ゴトーの言っていること分かっているの?」
「にゃぁ!」
94 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月13日(木)23時41分40秒
ごっちんは立ち上がり、「そんなわけないか・・・」とつぶやき、
ちょっと待ってて、というジェスチャーをしながら、
自分の部屋から出ていってしまった。
ふぅ、うちは、ちゃぁんと分かっているんやけれどね・・・。
分かってへんのは、人間たちの方やねんで・・・。
まあ、でも、分かってるのばれるのも困るから、おフザケはこれくらいやな・・・。
95 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月13日(木)23時42分24秒
ごっちんは、すぐに部屋に戻ってきた。手には、軽く暖められたミルクの入った
お椀があった。
せや、食いモンは、なっちにもろうてたけれど、何も飲んでへんかったな。
ごっちんナイスや!
ふぁぁぁ、のど乾いてるときのミルクはサイコーやな。・・・。
まあ、ビールにはかなわへんけど・・・。
うちは、試しに、ごっちんに、目で「ビールくれ!」と催促してみた。
ごっちんは、ジッと見つめるうちを見つめ返して、ニコッと笑うだけやった。
あかん。こいつ、全然分かってへんわ。今度、カオリンに直接たのもっと。
96 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月13日(木)23時43分16秒
うちがミルクを飲んでいる間、ごっちんは、ずっとうちの身体をなでていた。
「ネコちゃん、なっちのこと知っているでしょ? 彼女とは、高校の先輩後輩で、
とっても仲良しだったんだ」
寂しそうに沈んだ瞳で、うちのこと見ながら、ポツリポツリ話し始める。
うちは、一心不乱にミルクを飲むふりをしながら、耳はダンボで聞いていた。
「なっちは、すごく輝いていたよ。みんなの人気者で、ゴトーも大好きだった。
あたしの憧れの人だったんだ。だから、なっちと友達になれたときは、
すごく嬉しかった」
97 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月13日(木)23時43分47秒
「もしかして、なっちが学校辞めたの、ゴトーのせいなのかなぁ・・・」
「こんなにも、なっちのこと好きなのに、なっちはゴトーを嫌いなんだ・・・」
ごっちんは、うちの身体に顔を埋めた。泣いているのが分かる。
この二人の問題は、一筋縄でいきそうにないようや。
問題はなっちか・・・。
98 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月13日(木)23時44分33秒
もうこれ以上、ごっちんから得る話がないと確信すると、このあと、どうやって
二人の心を通じ合わせたらいいのか思案しはじめた。
本当なら、もう、いますぐに屋敷を出て、行動に移りたかったんやけれど、
一人悲嘆にくれて涙するごっちんをおいて行くわけにもいかへん。
気持ちが落ち着くまで、彼女につきあうことにした。
99 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月15日(土)23時23分44秒
翌日、うちは、道を歩きながら、今後どうするか、思案に暮れていた。
いまいち、いい手段が思いつかない。
しかし、こうやって、人のことで頭を使っていると、自分のことで悩まなくてすむ。
本心から、二人のことをどうにかして上げたいと思うのは、正直な気持ちやけれど、
やっぱり、どっかで、自分の心をくじかないための、逃げとして、
二人のことを考えているというのも、否定でけへんやろう。
100 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月15日(土)23時24分44秒
なんか、向こうの交差点、なんか、騒がしいなぁ・・・。
うちは、変な胸騒ぎを感じて、耳に全神経を集中させる。
かすかに、通行人らしき声がいくつか耳に入ってくる。
「おい! 女の子が車にひかれたぞ!」
「救急車、救急車!」
「あれ、いきなりつまづくように、車道に飛び出してきたんだよ、俺見たよ!」
101 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月15日(土)23時25分33秒
胸騒ぎは、その会話を聞いてさらに強くなる。
なんでや? なんでこんなにドキドキすんねん!?
そう思い、その交差点に向かおうとすると、前方から、サングラスをかけて、
顔にスカーフを巻いた、太った女性がドタドタとこっちに向かって走ってくる。
明らかに、顔を隠している風である。
全体的なシルエットから、うちは、一人の娘の名前が頭に浮かんだ。
102 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月15日(土)23時26分33秒
なっち・・・。
103 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月15日(土)23時27分14秒
そう確信があったわけではない。
太った女性なんか、世の中にはいっぱいいるし。
ただ、その時のうちは、わけもなく、なっちだと思っていた。
そして、まずは、交差点の状況が気に掛かり、とりあえず、交差点に向かう。
そこで、うちが見たものは・・・。
104 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)01時08分20秒
うっ!!
うちは言葉を失う。
大騒ぎになっている交差点には、真っ赤な血を流して倒れている
ごっちんの姿があった・・・。
なんなんや、これは・・・。
ごっちんの側には、バンパーがイビツにひん曲がった軽自動車が、止まっていた。
車の後ろには、黒々としたブラックマークが強く地面に刻み込まれている。
そして、真っ赤な血。ごっちんの青白い肌。うちには灰色に見える世界の中で、
この三色だけが強烈に視界に入る込んでくる。
105 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)01時09分33秒
そんな、うちの視界に、また別の赤色が飛び込んでくる。救急車の赤色灯である。
騒然とする交差点から、ごっちんの身体を連れ去っていく。
ピーポーピーポーという乾いた音とともに。
うちは、居ても立ってもおられず、救急車のあとを追いかけていた。
必死に追いかけながら、ごっちんの顔を思い出す。
たった、一晩だけの飼い主だった。
でも、その短い時間ながらも、いろいろな表情を見せてくれた。
すねた顔、泣き顔、びっくりした顔、落ち込んだ顔、そして、笑い顔。
浮かんでは消える。
106 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)01時10分34秒
そして、なっちの顔も浮かんでくる。どれもこれも、笑顔だった。
太っているものの、愛らしい顔、いつも笑みを浮かべている口、
高くはないけれどかわいらしい鼻、そして、いつもキラキラしているお星様のような瞳。
そして、先ほどの挙動不審ななっちらしき女性の姿が頭に浮かぶ。
うちは、なっちの笑顔を思い浮かべながら、叫んでいた。
107 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)01時11分09秒
なっち! あんたなんか、あんたがやったんかぁ?!
108 名前:Gripen 投稿日:2001年09月16日(日)08時17分04秒
ずっと、ROMってましたが、いきなり急展開ですねえ。
ここで、猫語が理解できる圭織が出てくるんでしょうか?。

それにしても、圭織ってほとんどの小説で電波出してるみたい(w
109 名前:kei 投稿日:2001年09月16日(日)23時23分13秒
Gripenさんへ

ネコ語飯田は、この小説のキーパーソンです。って、矢口の時もそう言わなかったか(w
いろいろと書きたいことが多くてまとまらないので、文章、展開、内容
メチャメチャですが、読んでもらえて嬉しいです。
では、今日も行ってみよ!
110 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時25分14秒
救急車は、UFA病院に到着し、担架に乗せられた ごっちんは、病院の中に消えていく。
それを見たうちは、当然、ごっちんの後を追い、病院に入ろうとした。
しかし・・・
「おい、こらっ! ねこが入るんぢゃない!」
そう言われて、入る早々、病院関係者に追い出されてもた。
当然ちゃぁ、当然な気もするが、なんか、うちは割り切れへん・・・。
111 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時26分02秒
仕方がないので、病院の敷地内にある、小さな広場に向かうことにした。
小さな噴水なんかもある、ちょっとした公園で、ベンチには、ジィチャンや
怪我をした人たちが、憩っていた。
まあ、こんなところにおっても、しゃぁないのはしゃぁない。
でも、ごっちんの事は心配やし。
なんとか、中に入って、ごっちんが無事なのを知りたかった。
112 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時27分24秒
噴水前の芝生の上で、忍び込む手段を考えていた。
「なんで、こんなところにネコが居るんだ?」
虚をつかれる形で、後ろから声がかけられる。
もっとも、うちに話しかけたというより、大きい独り言という方が近い。
うちは、声の方をふりかえる。
113 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時28分16秒
!!!!!! ガメラァ!!
114 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時29分12秒
思わず、口をあんぐり開け、叫んでしまう。
目の前のガメラには「にゃぁぁ!!」としか聞こえんはずやが、驚きのあまり、
身体をケイレンさせて、目を白黒させている様は、理解の範疇だったらしい。
「おい! 人の顔見て、驚いてんじゃねーよ!」
115 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時30分15秒
いや、しかしやな。これを驚かんで、なにを驚くっちゅう話やで・・・。
いやぁ、なんですなぁ。今の時代、ガメラでも、服着て歩くんですなぁ・・・。
しかも、イッチョマエに白い医者の白衣着くさりおって!
ふと、想像してみる。この女ガメラが、怒って、口から火を噴くシーンを・・・。
116 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時30分59秒
ぷぷぷぷぷっ!
思わず、吹き出してしまう。あまりにもすごすぎる画だ。
死ぬまでに一度は見てみたいシーンの中に加えておこう。
「なんか、あんた笑ってねぇか?」
女ガメラは、うちの前にしゃがみ込み、顔をうかがう。
必死で、笑いが漏れるのをこらえる。
117 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時31分42秒
「ま、いっかぁ。ちなみに、自己紹介まだだったよな。あたしは、保田圭。
この病院の医者をしている。ま、こう見えても偉いんだぞ」
なかなか、律儀なヤツや。ネコのあたしにまで、ちゃんと挨拶するなんて。
しかし、フツーの神経で考えると、ちょっと、おかしなヤツかもね。
やっぱ、ガメラやからか?
118 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時32分43秒
「あんた、患者さんの飼い猫かい?」
圭ちゃんがうちに訊ねる。しかし、うちとしても返答に困る。
人間の言葉なんか理解しているから、うちが頷いたり、首を横に振るのは簡単だ。
正直、カオリンみたいな特殊技能を持っている人間でなくても、
これで、ある程度の意志疎通は出来る。
ふと、愛しいつんくさんの事を思い出す。
彼とは、こうやってコミュニケーションを取っていたのだ。
119 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時33分50秒
ふと我に返る。
しかし、それは、つんくさんに、うちを受け入れる土台があったからや。
この女ガメラ圭ちゃんにそれがあるとは思えない。
多分、うちが人間の言葉を理解しているのがバレると大騒ぎになるだろう。
それに、圭ちゃんだって、うちがレスポンスを返すと思って、話しかけていないのは明白や。
ここはダンマリが最良やな。
120 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時34分48秒
そう判断すると、適当に、圭ちゃんをあしらいはじめた。
で、予定としては、このまま、圭ちゃんが立ち去ってくることを望んでた。
駄菓子菓子!
このガメラ、何を思ったんか、「ネコが病院のなか自由に歩いてたら困るから・・・」
などとほざいて、うちのことを捕まえて、監禁・・・。
おーい、ちょぉ待て! そんなんされたら、ごっちん探せへんやんけ!
121 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時35分52秒
なんか、段ボールみたいな箱につめられて、どっかに運ばれる。
おいおい、なんで、うちみたいな、スーパァ素早いネコ様が、いとも簡単に捕まるねん!
はっ!! やっぱ、こいつ、人間ちゃうんか? 
ガメラなら、うちでも負けるかもしれへん!!
・・・。いや、今はそんなこと言って遊んでる場合やないわ。
なんとか、せぇへんと。
122 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時37分05秒
しばらく、運ばれている感覚が続き、どこかに、トスンッと箱がおかれた。
箱の上部から、強い光が射し込んでくる。どうやら、箱が開けられたようや。
一瞬のまぶしさに目を細める。
箱をのぞいているのは・・・。ま、もう一々驚くネタはエエやろ。圭ちゃんや。
圭ちゃんは、手を伸ばし、箱からうちを抱えて外に出してくれた。
123 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時37分58秒
「狭かっただろ? ごめんな。病院の中ウロウロされるとさすがに困るんだ。
ここなら、自由にしていいよ。あたしの専用の部屋だから」
うちは、部屋の中を見回す。
大きな本棚がいくつか設置されており、分厚い本が所狭しと並べられている。
そして、机には、カルテとか、コピー資料が山積みされている。
棚には、何か分からない大小さまざまな小瓶がおさめられている。
すみには、簡易ベッドらしい、仮眠のための設備もおかれていた。
さほど大きい部屋ではないだけに、ものが多くて、非常に雑然とした印象を与える部屋だ。
124 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時40分09秒
ふーん、医者の研究個室みたいなもんかぁ・・・。
でも、こんな部屋があてがわれるくらいだったら、かなり、優秀な、
立場の強い医者なんだろう。
「どーでもいいんだけれどさ、いま、外科の方は大騒ぎらしいよ」
圭ちゃんは、うちに話しかける。もちろん、ほとんど独り言みたいなもんや。
「あ。あたし、内科部長だから。まあ、こっちはこっちで、最近、
未解明の病気が流行し始めて、困ってるんだけれどね。
あ、あんたにも関係あるんだよ」
そういって、圭ちゃんは、うちに向かって笑いかける。
125 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時41分20秒
「そうそう、さっき、外科の方に、交通事故の女の子が運び込まれたんだよ」
!!!
うちは、ビクッとする。
ごっちんや!
「なんだか、聞いた話によると、誰かに突き飛ばされて、道路に飛び出して
轢かれたんじゃないのかって・・・。って。どうしたんだよ?」
うちは、知らずのうちに、圭ちゃんの腕に手をかけて、身体を乗り出していた。
126 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時52分37秒
「もしかして、あんた、その事故の娘に関係あるネコか?」
圭ちゃんの大きな目がうちの瞳に映る。
「そうだな、タイミングとして、その娘が運び込まれた直前に、
あんたが来たんだもんな・・・」
圭ちゃんは、つと、目をそらす。
「すまんな。心配なのは分かるけれど、病院の中を歩かせるわけには行かないんだ。
下手すれば、あんたの命に関わることになるかも知れない・・・」
・・・? なに言ってんの? うちはよーわからへん。
127 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時54分02秒
「あたしたちもよく分かってないんだ。でも、分かって無くても、
危険性があることはさせられない。だから、しばらくここに居な」
圭ちゃんは席を立ち上がり、部屋を出ていこうとする。
うちは、必死で後をついていこうと駆け出す。
「待ち! ここから出たらだめ。あたしが、その娘のこと聞いてきて上げるから。
それに、今、おそらく手術中で、いっても無駄足だよ」
128 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時55分14秒
いまいち、圭ちゃんの言っていることはよく分からなかった。
ただ、状況が見えない以上、下手に動くことは出来へんやろう。別に、死ぬのは恐くあらへん。
でも、つんくさんに会えへんまま、死ぬのは恐いんや。
出来れば、嫌われていてもかまへんから、もう一度会うてから死にたいわ。
そんなことを考えながら、数時間がたった。
129 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月18日(火)23時48分10秒
圭ちゃんが戻ってきた。
「えーっと、たしか名前、ユウコだったよね。えー、ユウちゃんでいいか」
そう前置きしながら、圭ちゃんはうちに話し始める。
「ユウちゃんの飼い主・・・なのかな? えー、後藤真希さんは、大きい
事故だったけれど、命に別状はないわ。手術も成功よ。
意識ももう取り戻して、はっきりしているわ」
うちは、ホッと胸をなで下ろす。そして、さらに知りたい話を待つ。
130 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月18日(火)23時49分29秒
「ただ、問題なのは・・・」
圭ちゃんが続ける。
「意識も戻ったから、早急だけれど、外科の方が警察の人の面談を許可したらしいの。
で、警察が聞き取りしたところ、後藤さんの回答が「自分でつまづいて飛び出した」
というものだったのね」
うちは、ジッと、圭ちゃんの目を見つめる。
「そうね、多分、ユウちゃんも、おかしいと思っているんでしょうね・・・。
あの事故を見た人の話だと、彼女は、ある女性・・・
しかも太った女性に突き飛ばされた、という証言があるのよ。
もちろん、証人の見間違いという線もあるけれどね」
131 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月18日(火)23時49分59秒
うちは、頭をガツンと殴られるような衝撃を感じた。
・・・太った女性。
うちも、騒ぎが起こった直後、見た。おそらく、なっち。
うちの中に、黒い疑念がムクムクと膨れ上がってくる。
でも、なんで、それなら・・・
132 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月18日(火)23時50分46秒
「それならなぜ、後藤さんが「自分で転んだ」って言っているかよね」
その通りや!
「おそらく、考えられるのは、仮説として二つ」
言葉を一度区切る。
「ひとつは、本当に、単なる事故。証人は勘違い。後藤さんに不注意による転倒による事故」
さらに、もう一度、言葉を区切る。
言っていいものかどうか一瞬迷っていたようだが、言葉として姿を現した。
133 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月18日(火)23時51分40秒
「二つ目は、後藤さんを殺そうとしていた誰かが存在し、
そして、なぜだか分からないけれど、後藤さんが、その人をかばっているってこと」
134 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月18日(火)23時52分49秒
おそらく、二つ目やろう。うちの脳裏に、なっちの暗い瞳の色が思い出される。
なっちはごっちんの事を憎んでいた。
そして、ごっちんは、それに気付いていて、なっちがそうなったのを自分のせいだと思っていた。
しかし、なんで、こんな最悪のシナリオになってもてんや。
途中で、引き返すことも、留まることもできたはずやのに。
135 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月18日(火)23時53分28秒
ごっちんが、真実を黙っているって事は、まだ、あの娘はなっちを想っている。
まだ、大切な友人やと思ってんねん。
もう手遅れ? そんなことあるかい! まだいけんねん! まだいけんねん!!
136 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月18日(火)23時54分05秒
まだ、いける!!!
137 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)23時43分18秒
うちの目の端に、開いた窓が映った。
その瞬間、うちは、窓から外に向かって飛び出していた。
飛び出た瞬間、3階からのダイブだったことに気付いた。
しかし、そんなことにかまっている余裕はない。
今は、時間がないねん。もし、うちの黒い予測が当たってたら、
なっちもまともな状態やないはずや。
138 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)23時43分53秒
スタッと地面に着地するが、微妙に脚をひねったようだ。鈍い痛みが走る。
上の方で、圭ちゃんの叫び声が聞こえる。予想外の行動に驚いたのだろう。
しかし、かまっているヒマはない。
脚の痛みには目をつぶって、駆け出した。
おそらく、なっちはそこにいる! 確信めいたものを感じながら走り続けた。
139 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)23時44分49秒
うちとなっちの初めて出会った公園。
うちとなっちが、いつも一緒にいた公園。
そして、あのベンチ・・・。
ベンチには、座っていなかった。
しかし、ベンチの裏に何か大きな影が見えた。
手遅れなんか!? 不安が心をかすめる。
140 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)23時45分30秒
ベンチを軽く飛び越え、ベンチの後方に着地。
そこで見たものは。
・・・・・・・・・・・・
なっち、なんでやねん。なんでそんなことすんねん!!
待っときやぁ! すぐ人呼んでくるかなぁ!
!!
向こうから人の話する声が聞こえてくる。
うちは、ベンチ裏から飛び出し、声のする方に走り出した。
141 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)23時46分54秒
「ふえー、カオリンせんせ、怖いのれすぅ。いつものののこと怒るのれす」
「まあ、ののもたいがいやけれどなぁ・・・。しかし、ジョンソンの横暴ぶりは、
ちと許せんわな」
「今日は、もうこのまま帰って、寝るのれす」
「なんや、今日は下校時の寄り道せーへんのか?」
142 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)23時47分56秒
げっ!! この中坊2人組か!? ・・・。しゃぁない。いまいち頼りないけれど、
他は誰もいいひんし。こんな事やっているうちにも、なっちは!
「にゃぁぁぁ!!!!!」
「うぉ!! びっくりした!」
「???? あ、ナカザーなのれす」
ののは、うちを捕まえようとする。その手を逃れて、付かず離れずのタイミングで、
ののとあいぼんをベンチ裏まで誘導する。
143 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)23時48分42秒
「ナカザー、逃げちゃダメれす。どこ行くんれすかぁ?」
「オイ、のの、お前もどこいくねん!」
「!!! ・・・・・・・」
「どしてん、のの?」
「あいちゃん、やばいのれす。これ見るのれす」
ののは、自分の足下を指さす。
「!?」
あいぼんも、一瞬硬直する。
144 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)23時49分26秒
彼女たちの目の前には、右手にナイフを握り、左手首から赤い血を流し続けている、
なっちの姿があった。
「に、逃げるのれす!!」
「・・・ボケッ!! 救急車や! 119番に電話せぇ!!」
「へいっ!!!」
ののは、あいぼんの大声に、大きく反応し、公園内の電話ボックス目指して走り出した。
その間、あいぼんは、なっちの腕に自分のハンカチを巻き、手首をしっかり押さえはじめた。
145 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月24日(月)23時11分02秒
「あいちゃん! 救急車、すぐに来てくれるそうれす!」
「おう!」
しばらくして戻って来たののに目をやることなく、あいぼんは止血を続ける。
うちは、なにもでけへんで、そばで、心配そうに見ていた。
ののも、そばにしゃがみ込み、うちを抱きかかえながら、あいぼんの作業を見ている。
146 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月24日(月)23時12分02秒
なっちの、顔は土気色やった。いつもの血行のよい、ピンクっぽい色は見る影もなかった。
「あいちゃぁん、この人、なんで、こんな事したんれしょうか?」
「知るかい! 人にはいろいろ事情があんねん。死ぬほど辛いことがあったんかもしれへん。
でも、うちは、そんなん認めへん。自分で自分殺すなんて許さへんで!」
「・・・・・・・」
あいぼんの瞳は強く光っていた。その気迫に押されて、ののは黙りこくってしまう。
そうこうしているうちに、遠くから、救急車のサイレンの響きが聞こえはじめた。
147 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月24日(月)23時13分01秒
救急隊員が駆けつけ、なっちを救急車に運び入れ、二人に話しかけている。
ののは、青ざめた顔であいぼんの腕にヒシッとしがみついている。
あいぼんは、毅然とした態度で、救急隊員と話をし、首を横に振っていた。
おそらく、関係者ではないということと、救急車に同乗しない旨を伝えたんやろう。
そして、すぐさま、救急車は、公園を飛び出し、最寄りの病院に向けて走り出した。
148 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月24日(月)23時13分58秒
うちは、二人に感謝の気持ちを込めて、彼女たちの脚に身体をこすりつけ、
そして、救急車の反対方向に走りだした。
なっちの連れて行かれた病院の予想はついている。
それに、発見が早かったのと、あいぼんが応急処置をしてくれたおかげで、命に別状はないやろう。
でも、なっちがあんな事をしたんは、十中八九、ごっちんの件が絡んでいるはず。
なんで、ごっちんを車道に突き飛ばしたんか、そして、なっち自身も自殺という道を選んだんか?
149 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月24日(月)23時14分45秒
そして、あの二人の心の溝を埋めるためにはどうしたらいいんか?
150 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月24日(月)23時15分32秒
やっぱり、あの娘の助力が必要だと感じた。
病院内に侵入するためにも、人間の助力は必要や。それで、うちの考えが分かり、
うちの声となって、動いてくれる人間が・・・。
そう思いながら、時間的に、まだいるだろうと、学校にやってきた。
そして、意中の人物を職員室で見つけ、簡単に経緯と、協力して欲しいと言うことを伝えた。
151 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月24日(月)23時16分49秒
「えー、やだ。カオリン、面倒くさぁい!」
おいおい、声に出すなよ。周りに他の先生いるやろ? 
うちと話してたら、変な目で見られ・・・おや? 誰も無関心か。
まあ、普段からこんなんなんやろうな、この娘は。
(普段からこんなんって、どういう意味よ)
いや、ちゃうがな。今そんなこと話してる場合ちゃうねん。
ホンマ、お願いやから、協力したってぇな。
(その二人って、ユウちゃんの友達なの? 最近知り合っただけの赤の他人でしょ? 
なんで、そこまで関わろうとするのよ?)
152 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月24日(月)23時17分32秒
・・・・・・。
わからへん。でも放ってはおけへんねん。
(・・・・・・・・)
なぁ、かおりん。ちょっと、病院まで行って、様子見に行くだけやん。
(ねぇ、ユウちゃん。もしもだよ。自分の命を投げ出しても、二人を助けたいと思う?)
え? なに言うてんの?
(だから、もしもの話!)
153 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月24日(月)23時18分26秒
・・・・・・・。
うちは、死にたくないわ。当たり前やん。たとえ嫌われていても、
つんくさんにもう一度会うまでは絶対死なへん。
でも、だからと言って、自分の目に映る人を助けへんで、見て見ぬふりなんかでけへん。
多分、つんくさんかて、そうすると思うで?
(やっぱり、ユウちゃんにとって、つんくさんの存在って大きいんだね)
当たり前や! たとえ、見捨てられたとしても、うちの一番大切な人やもん。
154 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月24日(月)23時19分23秒
(いいよ。協力して上げる)
ホンマか!! よっしゃ! やっぱり、カオリン、最高やぁ!!
(でも、ひとつ条件ね。病院内では、絶対勝手な行動を取らないこと。
それと、気分が悪くなったらすぐに言うこと)
・・・・。それ二つやで!
(・・・・。そんなこと、どーでもいいの! 行くよ!)
そう言って、カオリンは、うちのことをカバンに乱暴に入れる。
イテテテテッ。もうちょっと、優しいしいやぁ!
155 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月24日(月)23時20分27秒
ただいま、カオリンに運ばれながら移動中。
うちは、少し考え事をしていた。
あの病院、何か問題あるんやろうか? 
圭ちゃんも、カオリンと似たことを言っていた。
病院をうろつくと、うちの命が危険だって・・・。なんなんやろう。
うちの知らないところで、なんか起こっているんやろうか・・・。
156 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月29日(土)23時09分14秒
(着いたよ)
カオリンの声で、思考が中断される。
カバンのファスナーが開かれる。それと同時に、病室のドアも開かれた。
「お久しぶり、後藤さん」
「あ。飯田先生。お久しぶりです」
なんや? この二人知り合いかいな?
(後藤さんは、中学時代、カオリンの生徒だったの)
157 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月29日(土)23時09分47秒
「あれ? ネコちゃんも一緒? このネコって飯田先生のネコだったんですか?」
「違うわよ。ところで、怪我は大丈夫なの?」
「あ、はい。どうもご心配をおかけしました。
てへ。ゴトーって昔っからドジでしたから、今回も、転んじゃって・・・」
「うそ」
「え・・・?」
「ウソついちゃダメよ」
158 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月29日(土)23時10分29秒
ごっちんの顔がこわばる。
「え・・・。なに言ってるんですか先生? ゴトーわけ分かんないですぅ」
声もうわずる。
カオリンはジッとごっちんを見つめている。ごっちんは耐えきれなくなり目をそらす。
「あ、先生、そろそろ帰ってもらえます? ちょっと、あたし、疲れちゃった。
事故の後だし、絶対安静にしてなくちゃいけないし・・・」
カオリンの視線を拒むように、ベッドに横になり、頭からシーツをかぶる。
「そうね。ごめんなさいね。それじゃ、お大事にね」
159 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月29日(土)23時11分00秒
カオリンは、素直に病室を後にした。
(ユウちゃん、あなたの読みは正しかったようね)
え? それじゃ・・・。
(激しいガードがされていたけれど、一瞬だけ、彼女の思考が見えたわ。
後藤さんを突き飛ばしたのは、やっぱり、あなたの言うなっちさんのようね)
それやったら・・・
(なっちさんもこの病院に入院しているんでしょ? 行くわよ)
160 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月03日(水)23時47分20秒
そして、なっちの病室前。
あ、カオリン。ここから、うち一人で行かせてくれへん? 
それと、ごっちんをここに呼んできて・・・。
カオリンはコクリとうなずく
おおきに。
カオリンは、うちをカバンから出して、なっちの病室のドアを開き、中に放ち入れた。
161 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月03日(水)23時47分54秒
うちは、スタンと病室の中に入り、ベッドの方を見やった。
なっちは、ベッドに腰掛け、放心していた。手首には白い包帯が巻かれている。
うちは、かるく「なぁおぉ」と鳴いてみた。
なっちは、うちに気付き、うちの方を見やる
「・・・・。ユウちゃん・・・」
「にゃぁぁぁ!」
162 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月03日(水)23時48分42秒
うちは、なっちに近づき、そして、なっちの太股の上に飛び乗る。
なぁ、なっち。うちで良かったら、いくらでもあんたの心聞いたるで!
「くすっ。もしかして、心配して、来てくれたの? ユウちゃんて、不思議なネコだよね。
聞いたよ。なっちの第一発見者ってユウちゃんなんだってね」
なっちは、うちの背中をなでながら、話しかけてくる。
「ユウちゃんがいなかったら、なっち、シンデタかもね・・・」
なっちの手の動きが止まる。
163 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月03日(水)23時49分19秒
「バカ・・・。どうして、あのまま死なせてくれなかったのよ・・・」
164 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)00時13分53秒
うちの耳に、暑い滴を感じた。
泣いてんのかぁ? なんで、そんなに苦しんでんねん。なぁ。
「なっちは・・・。なっちは・・・。なっちは、人殺しなんだよ」
なっちは、うちのことを抱きしめる。
165 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)00時14分26秒
「なっちは、子供の頃からみんなのアイドルだった。
小さな時から、みんなから可愛いって人気者だったの。
それは、高校に行ってもそうだった。みんながチヤホヤしてくれたわ。
男子からは当然人気者で、女子からも妬まれたりもしないで、
いつでも、学校中、町中のアイドルだったのよ」
166 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)00時15分00秒
「でもね、ある時を境に、変わったの。
後藤が、あらわれてから・・・。
あいつ、学長の娘で、お金持ちで、生まれ持ってのスター性の持ち主で・・・。
なっちの無いもの全部もってた。
そして、なっちが長い間かけて築いてきたものを一瞬にして、奪い去っていったんだ」
167 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)00時15分43秒
「だから、あたしは後藤のことが大嫌いだった。
でも、後藤は、なっちのそんな気持ちも気付かないで、いつもあたしにベタベタくっついてきてた。
でも、後藤が近くにいれば、みんなもあたしを見てくれる。
後藤と一緒にいれば、なっちも人気者のままでいられる。
だから、なっちは、後藤と一緒にいることを選んだんだ」
168 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)00時16分23秒
「でも、そんなの耐えきれなくなったんだ。
結局、なっちは、太陽の後藤の光を受けてでしか光られない月だ。
そう思うと、悲しくて、やるせなくて、もう、どうしようもなくなったんだよ。
だから、高校を辞めて、ただ、後藤から離れたかった。
ただ、ただ、逃げたかった。太陽の届かない、そんな場所に行きたかった」
169 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)00時17分08秒
「後藤のことを考えると、心がかき乱されて、何かしていないと不安で。]
そんなとき、何かを食べていれば、気持ちが落ち着いたんだ。
だから、不安な気持ちを消すかのように、ただ、ただ、食べることに専念してた。
そしたら、ドンドンと太っていって、ドンドンと誰からも相手にされなくなって。
きっと、これも後藤のせいなんだって考えてた」
170 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)00時17分56秒
「でも、後藤はわざとなっちを苦しめていたんじゃない。
そんなこと分かってた。こんなの単なる逆恨みだ。
分かってる。
そんなの分かってる。
でも、逃げたはずなのに、ふたたび後藤がなっちの前に現れた。
今のなっちを見て、哀れんでいた。蔑んでいた。そんな後藤の視線が怖かった。
この恐怖から逃げるために、何かしないといけないと思った。
そして、気がついたら、後藤の後を付けて、タイミングを見計らっている自分がいた」
171 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)00時18分35秒
「そして・・・・・・・・」
172 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)00時19分19秒
「あたしは後藤が嫌い! 
なっちを苦しめる後藤が嫌い。
全て悪い後藤が嫌い! 
あいつなんかなっちの前に現れなきゃ良かったんだ。
なんで、あんなヤツ生きてるの? 
だから、なっちは殺したんだ! 
初めから存在してはいけなかった後藤を殺したんだ。
これって悪いことなの?」
173 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)00時20分11秒
「後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、
後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、
後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、
後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、
後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、
後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤、後藤!!!!!!!!!!!!」
174 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)00時20分51秒
「キライ、キライ、キライ、キライ、キライ、キライ、キライ、
キライ、キライ、キライ、キライ、キライ、キライ、キライ、
キライ、キライ、キライ、キライ、キライ、キライ、キライ、
キライ、キライ、キライ、キライ、キライ、キライ、キライ、
キライ、キライ、キライ、キライ、キライ、キライ、キライ、キライ」
175 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)00時21分50秒
なぁ、なっち? それがあんたの本音なんか? ホンマの気持ちなんか?
うちは届かないはずの問いかけをしてみる・・・
176 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時24分13秒
「ちがう」
177 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時24分47秒
「ちがう。ホントにキライなのは、なっち自身。あたし自身」
178 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時25分23秒
「ちがう、ホントに殺したかったのは、なっち自身。あたし自身」
179 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時26分13秒
「本当は死んじゃいけない娘だったのに。
死ななきゃいけないのは、なっちだったのに。
なっちが助かった。
なんで助けたんだよ。
馬鹿ユウコ! 
助けなきゃいけないのは、後藤の方だろ? 
なんで、後藤じゃなくって、なっちを助けたんだよ!! 後藤だろ? 
なんで、なっちを助けたんだよ? あのまま死なせてくれたら良かったのに!」
180 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時26分49秒
「大好きな後藤を殺してまで、なっちは生きてなんかいけないんだよぉぉ!!」
181 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時27分25秒
なっちの声は、ほとんど叫び声に近いものになっていた。
ホンマはなっちの事を抱きしめて上げたいんやけれど、抱きしめられている。
大きな体をしているくせに、子猫のように寂しく震えている。
もう、ええんやで。苦しまんでもええんやで。
ごっちんにも、あんたの気持ちが届いているはずやねんから・・・
182 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時28分00秒
「なっち。ゴトーも、なっちのこと大好きだかんね・・・」
183 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時28分56秒
後ろで、声が聞こえた。
でも、なっちに抱きしめられて視界のふさがれたうちには、後ろは見えなかった。
でも、誰がやって来たのか、分かっていた。
ふっと、なっちの力がゆるまり、うちは、腕の隙間から、外に抜け出し自由になった。
自由になり後ろを振り返ると、車椅子に乗ったごっちんの姿があった。
彼女の顔は、涙でクシャクシャになっていた。
でも、晴れやかな笑顔やった。
184 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時30分02秒
「ご、後藤。あんた、生きてただべか・・・?」
「当たり前じゃん。このゴトー様、つまずいて転んで車にかすっただけでは、死にませんことよ!」
「なに言ってるんだべ! 事故の原因は・・・!!」
「ねぇ、なっち! 
ほんと、ゴトーってドジでオッチョコチョイだから、いつもボーっとしているから、
よく、つまずくんだよね。いやぁ、今回は、さすがに、車道に転んじゃって、大変だったよぉ!」
185 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時30分58秒
「違うんだべ。後藤、違う・・・」
「違わないよ! ゴトーはなっちのことが好き。なっちもゴトーのことを好きでいてくれる。
それだけで、いいじゃない?」
ごっちんは車椅子をベッドに近づけ、なっちの手を取る。
そして、包帯の巻かれた手を包み込むように、しっかりと握った。
186 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時31分38秒
「なっち、ゴメンね。
ゴトー、知らなかったんだ。
なっちが、こんなにまでプレッシャー感じてたこと・・・。
でもね、違うんだよ。みんなのアイドルは、なっちだけなんだよ。
ゴトーは単に、お金持ちで、学長の娘だから、みんなチヤホヤしてくれるだけ。
みんな、そんな表面上だけでゴトーに接してくる。
でも、そんなみんなの中、本当に優しくしてくれたのは、なっちだけ。
だから、ゴトーはずっとなっちと仲良くなりたかった」
187 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時32分26秒
「なっちと、仲良くなれたときは本当に嬉しかったんだよ。
でも、それが、なっちを苦しめてたんだね。
ゴトー、馬鹿だから、そういうのよく分からなくって・・・。
ホントにゴメンね」
「なに言ってるだべか? 謝らないといけないのは・・・。
うんにゃ、謝ったって許される問題じゃない! なっちは、なっちは・・・」
188 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時33分09秒
「なっちと、ゴトーの間には、なにもなかった! それでいいじゃん。
それでも、なっちがゴトーのために、何かしたいって言うんだったら、
ひとつ、お願いを聞いて!」
「?」
「痩せて・・・ね」
「痩せる・・・んだべか?」
「そう! ゴトーの憧れだった、いつも輝いていた頃のなっちを、もう一回みたいな! 
今のなっちって、おデブちゃんだもん」
189 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時33分49秒
「・・・・・・。後藤、あんたもはっきり物事を言うだべなぁ・・・。
フツー、そんなこと、本人の前で言うか?」
「悔しかったら、早く痩せて、ゴトーのことを見返してみたら? クスッ」
「こいつ!」
なっちは、ごっちんのことを殴るまねをする。
二人とも、涙にまみれたままやけれど、さわやかな笑顔が戻っていた。
190 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時34分19秒
雨降って、地固まるか・・・
もう、この二人は大丈夫やな。
今は、二人の世界や。うちは邪魔モンやな。とっとと退散するか・・・。
うちは、ベッドから、フロアに飛び降り、そして、部屋を後にした・・・。
191 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時35分30秒
人間ていろいろあるんやなぁ。
つんくさんと一緒にいるときは、つんくさんだけが、うちの世界やった。
全てやった。
でも、こうやって、今いろいろな世界にふれてみると、さまざまな世界があることに気付く。
192 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時36分19秒
(ユウちゃん、そろそろ、ここから出よう。もうするだけのことはしたでしょ?)
あ、カオリン。ホンマありがとうな。
(あの二人を救って、ユウちゃん自身は救われた?)
ふふ、カオリン、相変わらず、きついなぁ・・・。救われるわけないやん。
ただ、あの二人のために何かをしてあげられたという自己満足だけや。
193 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時36分54秒
でも、人間の複雑な心っていうのは垣間見れた気はするわ。
(なぁに、言ってんのよ。ユウちゃんだって、かなり、フクザツよ)
うちは、カオリンの大きな瞳を見つめた。
そして、小さく呟いた。
194 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)23時38分08秒
少しは、彼女たちと関わって、うちは、成長したかなぁ・・・。
(少しは・・・ね。でも、まだまだなんじゃないの。
少なくとも、つんくさんと会える段階ではないわね・・・)
!! やっぱり、カオリン、何か知っているんやね?
(さ、かえろ!)
・・・・。
あからさまに、話変えられた。ま、焦ってもしゃぁないわな。
うちが少しずつ、変わっていって、そして、周りも変わっていく。
そして、一歩一歩、確実にいろんなモノが近づいてくる。
その中に、つんくさんもいるはずや。
195 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月23日(火)01時50分48秒

 更新がんばって〜!!
 毎回チェックしている作品なんです!!
 つんくと裕ちゃんどうなるか・・
 気になる〜!!
196 名前:kei 投稿日:2001年10月24日(水)00時50分00秒
>195

すみません。ただいま、超多忙につき、少し更新さぼってます(^^;)
でも、応援されると、寝る時間削ってでもやろうかなぁて気になりますな。
近日更新しますね。
197 名前:しぐれ 投稿日:2001年10月25日(木)02時18分09秒
期待していますよ。
198 名前:kei 投稿日:2001年10月27日(土)00時44分21秒
でわ! 久しぶりの更新いきます
今回、初の直接アップ。いままで、ためていたのを、逐次アップしてたのだけれど、
今日は時間の関係もあり、直接書いていきます。
失敗が許されませんな・・・(汗) 
ちなみに、寝る時間削りにかかっています(笑)
199 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月27日(土)00時54分26秒
なぁんて、偉そうなこと言ってた、うちが試されるときがやってきた。
あの二人の和解劇から数日後のことやった・・・
200 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月27日(土)00時56分59秒
なぁ、かおりん。二人のお見舞い行こうやぁ!
うちは、カオリンの足下にじゃれつきながら、可愛くお願いしてみる。
「だぁめ! 病院には行かないって、あれほど言ったでしょ?
それに、ユウちゃんが行っても、なんの役にも立たないじゃない?」
201 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月27日(土)01時00分22秒
いや、役に立つとか、たたんとかそういう問題ではなくて、だな。
やっぱ、あの二人、気になるやん。いちおー、うちも、二人の仲直りに
一役かったんやからなぁ。なぁ、なぁ、カオリン。
「もう、うるさいわね。行かないって言ってるでしょ?」
おうおう、そんなこと言っててエエんか? なんか、カオリン、うちが病院行って
まずい理由あるんやろ? 
そんなん、うちには関係あらへんから、うちは、一人でも勝手に行くで?
それでもエエんか?
202 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月27日(土)01時02分20秒
カオリンの表情がピクリと動く。
うちは心の中でにやりと笑む。
「勝手に行ったら・・・」
さらにマズイやろ? それやったら、大人しゅう、うちを連れていかんかい?
「・・・・・・」
カオリン沈黙。故障か?(笑)
203 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月27日(土)01時05分26秒
「分かったよ。連れていけばいいんでしょ!」
おっしゃ、おっしゃ! ええ娘やなぁ。
カオリンは、うちのことを、手提げカバンに入れて、出かける準備を始めた
「あの娘たちの入院しているのは外科だから、いいか・・・」
何気なく、独り言で、ボソッと呟いたカオリンの声が耳に入った。
ちゅうことは、内科の方に、なんかあるんかなぁ・・・?
204 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)06時32分38秒
ちゅうことで、場面は病院へ。
ごっちんもなっちも、二人とも元気そうだった。
あの事件は、確かに不幸なものやったけれど、結果として、この二人の関係を
確かなものにしたという意味では、良かったのかも知れない。
205 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)06時36分16秒
二人との面会を終えて、カオリンに連れられて、病院を出ようとしていたときに、いきなり、
後ろから大きな怒声が聞こえてきた
「こらぁ! そこのあなた!! なんでネコなんか連れてきているの!!!」
ダダッと、駆け寄る足音が聞こえ、カオリンの肩を後ろからムンズとつかんだ。
「いたぁい!」
カオリンが叫ぶ。
206 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)06時39分00秒
カバンの中から、声の主を見上げると、意外にも、見覚えのある顔やった
圭ちゃんや。
相変わらず、すごい顔をしている・・・。
207 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)06時46分26秒
「ちょっと、いたいから、放してくださいよ」
カオリンは、きつい口調で圭ちゃんに言ったが、顔を見るとそんなに怒っているようではない。
「病院内にネコを連れ込むなんて・・・」
「分かってます。事情は分かっています」
注意をまくしたてる圭ちゃんの言葉をさえぎるように、カオリンが言葉を差し込む。
「今日は、知り合いのお見舞いという理由もあったんですが、
実は、保田先生に会いに来たってのもあるんです」
208 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)06時51分36秒
「??」
圭ちゃんは、不思議そうな顔をする。
「このネコ、つんくさんのネコなんです」
カオリンは、圭ちゃんの目をまっすぐ見つめながら、はっきりとした声で告げた。
「!?」
圭ちゃんは、少し驚いた顔をしながら、うちを眺める。
そして、新たに何か気付いた顔をする。
「あ、もしかして、あんた。この前の、大ジャンプのネコか?」
 
209 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)06時59分22秒
「そうかぁ、つんくさんのねぇ・・・」
ふたたび、話をカオリンの方に戻しながら、呟いた。
「じゃぁ、あなた・・・、えっと?」
「飯田です」
「あぁ、飯田さんは、だいたいの事情は知っているのね」
「はい、つんくさんから、大まかな範囲では聞いていますから・・・」
「それでは、この病院に、ネコを、ユウちゃんを連れ込む危険性は・・・分かりますよね」
210 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)07時05分12秒
「はい、ごめんなさい。でも、ユウちゃんの心は、つんくさんでイッパイなんです。
保田先生、何とかならないでしょうか?」
「・・・。ムリね」
圭ちゃんは、冷たく言い放つ。
211 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)07時07分45秒
なんや?なんや?
また、うちの知らんところで、訳のわからん話になってきてるがな。
圭ちゃんは、つんくさんの居所知っているんか? なんか、そんな口振りやな。
よっしゃ!!
なぁなぁ、カオリン・・・。
うちは、カオリンに話しかける。
212 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)07時11分40秒
「えぇ! それはダメじゃないの?」
エエから、エエから、一回頼んでぇな。
「うん・・・」
他から見れば、いきなり独り言を話し始めた、カオリンをいぶかしげに見ている圭ちゃん。
確かに、うちら二人が話していると分からなければ、かなり不気味やろう・・・。
「保田先生。少しお願いがあるんですが」
「なに?」
213 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)07時16分33秒
「このユウちゃんを、二、三日預かってもらえないでしょうか?」
「はいぃ?」
いきなりの申し出に、圭ちゃんは、妙に甲高い声を発する。
「なんでそうなるのよ?」
「いやぁ、ユウちゃんが、圭ちゃんの所に行きたいって言うものだから・・・」
「はぁ? ネコが、そう言うの?」
おーい、カオリーン。もうちと、まともな交渉できへんのか?
思い切り、圭ちゃん、怪しんでいるやんけ。
214 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)07時22分15秒
「まぁ、別にいいけど。まったく知らないネコでもないしさ」
・・・。この話の流れで、OKする圭ちゃんも圭ちゃんやなぁ。
「あたしの研究室の中だったら、安全だしね。
下手に、このまま病院内をウロウロされるよりは、マシね」
そして、うちは、カオリンから、圭ちゃんに受け渡された。
215 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時14分48秒
うちは、圭ちゃんに抱かれながら、思案を巡らす。
うちは、やっぱり、つんくさんのことを追いかけているんや。
たとえ捨てられたとしても、うちが、つんくさんを想う心に変わりはない・・・。
216 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時15分30秒
人を好きになるって難しいことやと思う。
なっちもごっちんも、お互いのことをキライだったわけではない。
なっちは、ごっちんの影におびえた。そ
れは、もともとごっちんのことを好きだったからこそ、その怯えが、なっちの心を歪めたんや。
人を想う心って、時として、道を踏み外すと、憎しみに変わるモンやねんな。
もしかして、うちも、心の奥底で、つんくさんのこと憎んでいるんやろうか??
217 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時16分11秒
ごっちんは、ただ、なっちのことだけを思っていた。
その思いが、なっちを苦しめているとは知らずに・・・。
でも、全ての事実を知った後も、なっちを受け入れた。なっちの心を受け入れた。
なっちの全てを受け入れた。自分を傷つけようとした人間、傷つけた人間を許した。
もし、うちも、つんくさんのことで、知らない事実を知ったときに、それを受け入れられるんやろうか? 
もしくは、そのとき、つんくさんのことを受け入れられるんやろうか?
218 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時16分44秒
「おんやぁ? このネコ、なんか考え事しているみたいだなぁ・・・」
みたいやのーて、ホンマに考え事してんねん! 
あんたにはわからんくらい、深い悩みやっちゅうねん!
「もしかして、つんくさんのこと考えてたりして・・・」
圭ちゃんが言う。
思い切りビンゴやで、それ。
219 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時17分17秒
「でもね、いくら考えても、つんくさんには二度と会えないよ・・・」
ボソッと、暗い声で、圭ちゃんが呟いた。
!?
どういうことやねん?
うちは、圭ちゃんの真意を探ろうと、ジッと、圭ちゃんを見つめる。
220 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時18分42秒
「ユウちゃんて、ホントに不思議なネコだよね。
なんだか、あの飯田さんとも話している素振りあったしね・・・。
あ、もしかして、人の言葉分かるとか? ・・・まさかね」
いや。そのまさかなんだけれど・・・ね。
221 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時19分30秒
「もし、ホントに、言葉が分かるんだったら、これだけは覚えておいて・・・」
圭ちゃんは、いったん、言葉を区切る。
そして、瞳に何かの決意のようなものを色作りながら、うちの方を向いて、はっきりと断言した。
「ユウちゃん、あなたは、つんくさんに捨てられたの! 嫌われて、捨てられたの! 
だから、さっさと、つんくさんのことは忘れなさい。
そして、つんくさんの元に帰ろうなんて考えちゃダメよ! 分かった?」
222 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時20分16秒
がーん!!
うちの頭の中で、大きな鐘の音が鳴り響く。
その音が、身体中に響きわたり、くらくらとする。気持ち悪い。吐きそうや。
あかん、視点がぼやけていく。ショックのあまり、気が遠のく。
分かっててん。そんなこと、分かってるって! 
捨てられてん。うちは、捨てられてん! 嫌われてへんかったら、捨てられるわけあらへん。
そんなの当たり前や! ちょっと考えたら分かるわ!
223 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時20分49秒
でも、うちは、つんくさんの元に帰りたいねん! 嫌われてても帰りたいねん! 
忘れられるわけあらへん! 忘れられるんやったら、こんなに苦しくない!
あかんのか? うちは、こんなこと考えたら、求めたらあかんのか?
圭ちゃんかて、強く想う人くらいおるやろ? この気持ち分かるやろ?
224 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時21分37秒
「ユウちゃんはね、つんくさんに対する依存度が強すぎるんだよ。
だめだよ、そんなんじゃ。
今のユウちゃんは、つんくさんの存在がないと生きていけないでしょ? 
今の、ユウちゃんの生きる糧っていったら、つんくさんに会えるかも知れないってとこでしょう?」
いったん言葉を区切り、一言一言をかみしめるように、話を続ける。
225 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時22分41秒
「それじゃ、つんくさんがいないと、ユウちゃんは死んじゃうの?」
・・・・・・
「外科の患者の安倍さんのように死を選ぽうとするの?」
・・・・・・・・・・・・・
「つんくさんに会えたら、死んでもいいって思ってる?」

「ユウちゃんの命って、そんなに軽いモノなの?」
226 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時24分27秒
「生きているのは、ユウちゃん自身なんだよ。
なぜ、自分一人で生きようって思わないの? 
ユウちゃんの人生、つんくさんは関係ないじゃん。
確かに、飼い主だったかも知れない。
とてもいい人だっていうのは、私も認める。
でも、ユウちゃんはユウちゃんなんだよ。
つんくさんは、その中の一部かも知れないけれど、ユウちゃんの全てではないはず。
なぜ、そこまで、全てをかけようとするの?」
227 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時25分30秒
圭ちゃんかて、この人やったら、命かけられるっていう人おるやろ?
うちは、それがつんくさんやねん!!
228 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時26分20秒
たぶん、うちの言った言葉は理解していないはずやけど、圭ちゃんは横に首を振る。
「私は、一人で生きてきた。そして、これからも一人で生きていく。
誰にも頼らず、自分の力だけで・・・。
だから、誰にも依存なんてしないし、自分の全てをかけようなんてサラサラ思わない。
自分は自分なんだ。
自分一人で立つしかないんだよ。
誰かに支えてもらったら、それは自分じゃないんだ」
229 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時27分26秒
「だから、ユウコ! お前も、一人で、立つんだよ!! 
つんくさんのこと、忘れて、一人で生きていくんだよぉ!!」
230 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時28分11秒
コノヒト、イッタイ、ナニヲイッテンネンヤロ・・・
231 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時29分07秒
うちの脳は完全に麻痺状態やった。
圭ちゃんの言っていること、さらには、圭ちゃんが誰なのかも理解していなかった。
ただただ、苦しかった。
ただただ、この場から逃げ出したかった。
なにも考えられない頭よりも、身体が先に反応した。
232 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時30分28秒
朦朧とする意識の中、うちは、圭ちゃんの手の中から、飛び出していた。
そして、病院の中から・・・。
気が付いたら、見知らぬ、街の中を歩いていた。トボトボと・・・。
つんくさんの情報を知りたくて、圭ちゃんにくっついてみたけれど、分かったのは、
今まで認めたくなかった事実。
分かっていたけれど、敢えて見ない振りしていたモノを目の前に突き付けられて、
結局パニックになってもた。
233 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)23時31分09秒
うちは、ホンマに捨てられてんやなぁ・・・。
んで、捨てられたにもかかわらず、いまだに、つんくさんを引きずっている。
うちは、うちは・・・・・・・・・いったい、なんなんやろう?
234 名前:undefined 投稿日:2001年10月31日(水)16時37分26秒
気になるぅ・・・
最初っから、ずっとレスせずに読んでましたが、あまりにも気になって。。。
作者さん、これからも楽しみにしています。
235 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月01日(木)14時15分31秒

 楽しみにしてます。
 つんくと裕ちゃんどうなるんだろ?
 あ〜気になる〜
 更新楽しみにして待ってます。
236 名前:kei 投稿日:2001年11月01日(木)23時29分11秒
応援ありがとうございます
さて、つんくとユウコ姐さん、どうなるんでしょ?
みなさんの期待に添えるようなエンディングを迎えられるのでしょうか?
ちなみに、次回から、新章突入で、今まで出ていなかった最後の二人の登場です。
よしいしファンの方、期待していてください
237 名前:kei 投稿日:2001年11月02日(金)23時21分09秒
例の一件以来、ふたたび、まりっぺの部屋でお世話になっている。
最近、仕事の方も一段落が付き、部屋にいる時間が長くなった。
「えー! そうなんだ! すごいよね。・・・・。だめじゃん、そんなの! 
・・・・。あぁ、あぁ、そうだよね。・・・・。けどさぁ、それって・・・」
うちは、まりっぺのそばで、大きなあくびをする。
まりっぺは、部屋にいる時間が長くなったけれど、いっつも電話ばかりしている。
238 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)23時22分29秒
うちが、暇そうなのに気付いたのか、まりっぺは、右手で携帯を持ち、
しゃべりつつ、左手で、うちの背中をなで始める。
うちは、少し考え事をする。
この前、圭ちゃんに厳しいことを言われた。
圭ちゃんの言っていたことが正しいのかは分からない。
ただ、今、こうやって、まりっぺの部屋にいるのは、
今度は、まりっぺに依存しているんかもなぁ、なんてふと思った。
239 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)23時23分06秒
それじゃ、まりっぺは、うちにとって、つんくさんの替わり? 
つんくさんがいなくて、捨てられて、寂しいから、まりっぺの所に来ている?
うちの脳理に、イヤァな思考がよぎった。それを懸命にうち消そうとする。
240 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)23時23分42秒
「ええぇ!」
いきなり、まりっぺの大きな声で、思考が中断される。
ふと、見上げると、まりっぺの表情が曇っていた。
「でもぉ・・・」
力のない声で、反論している。
しかし、その後、渋々と頷く。
「うん・・・。わかった・・・」
241 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)23時24分23秒
「んじゃね、バイバイ」
そう言って、まりっぺは、携帯の「HOLD」ボタンを押す。
唇を真一文字に結び、顔をうつむけ、床のカーペットをジッと凝視していた。
髪の毛の結びからほどけた金髪の毛が、まりっぺの表情を隠す。
そして、何かを決意したかのように、ふたたび、携帯のアドレスメモリーを検索する。
携帯を耳に当て、静かに目をつむった。
「あ、よっすぃ?」
242 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)23時25分01秒
数時間後、うちは、まりっぺの部屋から、連れ出され、別の女の子の部屋にいた。
まりっぺは、その部屋を去るとき、うちに対して、こう言って去っていった。
「ゴメンね、ユウちゃん。2、3日の辛抱だから・・・。
それに、よっすぃ、とってもいい娘だから、きっと良くしてくれるはずだから。
だから、ごめんね!」
243 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)23時26分01秒
うちには、いまいち、状況が上手く飲み込めてへんかった。
まあ、もともと、うちは野良やから、別に、まりっぺの部屋から追い出されるのは、
しゃぁないと納得もできる。
うちを置いておけへん理由がでけたんやろう。
逆に、こうやって、別の世話してくれる人間を探してくれるのは、非常にありがたい。
ただ、なんか、まりっぺの態度に釈然としないものがあった。
なんか、そこがメッチャ気になって仕方がない。
また、何か起こってんのか?
244 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)23時26分45秒
「よう! 名前、ユウちゃんていうんだね? 数日の間だけれど、よろしくね!」
ショートヘアの元気があるのか、ボーっとしているのかよく分からない娘。
それが第一印象だった。
「あたしさぁ、ネコって飼ったことないから、よく分からないんだけれど、
ま、テキトーでいいよね?」
・・・。あんまり、テキトーにされるのも困るんやが・・・
245 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)23時28分36秒
なんか、話では、このよっすぃの部屋は、大家がそんなにうるさくないらしいから、
別に、泊まっていってもいいらしい様子や。
まぁ、まりっぺにしばらく会えへんのは寂しいが、しばらく、
このよっすぃ宅でお世話になるか・・・
246 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)23時29分10秒
そんな感じで、一人ごちていたら、いきなり、部屋に、
「ピンポーン、ピンポーン!」という呼び鈴の音が響きわたった。
よっすぃの表情が一瞬こわばる。
しかし、それは一瞬で、自分の頬をパチリと平手で打ち、さわやかな笑顔を作り、
「はぁい!」という声共々、廊下を走り、ドアを開く。
247 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)23時29分47秒
「よっすぃ! 今日も来ちゃったぁ!」
妙に高いアニメ声がドアから聞こえてくる。
うちは、ヒョイッと部屋から顔を出す。
みると、ドアには、見るからに美少女系の女の子が立っていた。
満面の笑顔でよっすぃを見ている。よっすぃの表情は、ここからでは、
背中を向けているので見えないが、多分笑顔なんだろう。作った・・・ね。
248 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)23時30分30秒
「リカちゃん、明日も早いんだから、家でゆっくり休んでおかなきゃ・・・」
「もう! よっすぃって優しいんだから! 
でも、大丈夫だよぉ。よっすぃに会った翌日は、絶対元気なんだから!」
一瞬、よっすぃの顔に浮かんだ迷惑そうな表情に気付かないかのように、
リカは靴を脱ぎ、ずんずんと部屋に入ってくる。
249 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)23時31分05秒
「あ! よっすぃ、ネコ飼ったんだ」
リカは、うちのことに気付き、黄色い声をあげる。
「そのネコ、矢口さんとこのネコなんだ。事情あって、
少しだけ預かることになったんだよ」
「ふーん。矢口って、例のおチビさんだね?」
口元に、人差し指を当てながら、リカは、小首を傾げ、可愛いポーズを作る。
250 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)23時31分50秒
「リカちゃん、ダメだよ。そういう言い方したら・・・」
「ふーん・・・。それじゃ、幼児体型? ブスギャル? 騒音女?」
リカは、絨毯にチョコンと可愛らしく座りながら、えげつないことを言い続ける。
「リカちゃん・・・」
よっすぃはその横に腰掛けて、少し戸惑いげにリカを見つめる。
251 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)06時12分00秒
リカは、満面の笑顔をよっすぃに向ける。
「せっかく二人の時間なんだから、あんな金髪バカの話はいいじゃない? 
もっと楽しい話しようよぉ」
「あ。・・・そう、そうだね」
「よっすぃ、今日ネェ・・・」
リカは、話し始めながら、そっと、よっすぃの手に、自分の手を重ねる。
252 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)06時12分37秒
「あ」
よっすぃは一瞬とまどいげに、手を引っ込める。
そのときのリカの表情が曇ったのを見逃さなかった。
「あぁあ。そうそう。せっかく来てもらったのに、お茶も出さないで、ゴメンね。
ちょっと待ってて。お茶入れてくるね」
よっすぃは、逃げるように席を立ち、キッチンに飛び込む。
253 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)06時14分00秒
なんとなく、部屋には、うちと、リカっていう娘だけが取り残された。
よっすぃがいなくなると、リカの表情が一瞬にして、能面のような冷たい表情に一変した。
「なんで、猫なんかいるのよ。あたしたち二人の時間なのに・・・」
リカは、低い声で呟いた。
地の底からわき上がるような、ドス黒さをあらわにした声の調子に、
うちは一瞬身の縮む思いを感じた。
254 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)06時14分44秒
その恐怖感は、すぐに現実のものとなる。
リカは、ムンズッとうちの頭を手でつかみ、そのまま、
手のひらにグッと全体重を乗せてきた。
!!!!!
うちは、とっさの身体の反応で、首を引っ込め、
すんでの所で頭がペシャンコにされるのを未然に防いだ。
255 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)06時15分40秒
こいつ、マジかよぉ!
うちは、リカの顔を見上げる。
氷のように凍てついた冷たい表情をしていた。
まあ、正直、これくらいで、ペシャンコにあるようなことはないやろうけれど、
間違いなく、この娘は、うちに危害を加えるつもりで、あんなことをやったのは間違いない。
256 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)06時16分31秒
・・・・・・・・。
もしかして、普段から、石川のこと、キライや、キライや、言い続けてるから、
その復讐なんか? いや、まあ、それは、また別の話やけれど・・・な。
257 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時19分38秒
「あ、よっすぃ!」
かわいいティーカップに入った紅茶を持って入って来たよっすぃに気付いたリカは、
一瞬のうちに表情を変える。
「紅茶でいい?」
「よっすぃの入れてくれたモノならなんでもいいよぉ」
満面の笑顔や。さっきの表情、態度はなんやってん。
恐ろしいくらいの二面性やな・・・。
258 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時20分14秒
二人は、紅茶をすすりながら、おしゃべりに花を咲かせる。
内容っていうたら、たいした話ではない。
女の子がよくするような、世間話である。
でも、こういう他愛のない話ってのが、いっちゃん、盛り上がんねんな。
259 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時20分54秒
アッという間に二時間くらいすぎた。
うちのことは、ほとんど無視やね。
リカは、うちの存在自体を嫌悪しているようで、すでにいないモノとして扱っている。
よっすぃも、リカとの会話をそれなりに楽しんでいるようで、
普段はいないはずのうちの存在はあまり気にかけていないようや。
260 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時21分43秒
すでに12時を回っている。
さすがに、よっすぃは時間を気にしはじめている。
「ねぇ、リカちゃん。結構時間、もう遅いよ?」
「・・・・・・・」
「あんまり、遅くまでいると、明日の仕事に差し支えるよ」
「・・・・・・・」
261 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時22分15秒
今まで饒舌に話していたリカの口が突然に閉じる。
そして、悲しそうな瞳で、よっすぃを見つめる。
「え? それって、もう帰れってこと? あたしがいたら邪魔?」
「え・・・」
よっすぃも口ごもる。
「よっすぃは、あたしのことキライなんだ・・・」
今にも泣きそうな表情をしているリカ。
262 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時22分51秒
「いや。えーと、そういうことじゃなくって・・・」
どもるよっすぃを、リカは潤んだ瞳で黙って見つめる。
「リカちゃんと、一緒にいるのは楽しいよ。話してても楽しいし。
でも、あんまり遅くまでうちにいると、明日、リカちゃんが大変じゃん」
「うん・・・」
「ね? 明日の仕事のためにも、今日は戻ってゆっくり休んだ方がいいよ。
それに、うちに遊びに来るのは、いつでもできるじゃん」
263 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時23分28秒
リカはコクリとうなずく。
スッと立ち上がり、よっすぃに近づき、両手で彼女の手を握りしめる。
ビクッとするよっすぃ。
「よっすぃは、あたしのこと嫌ってないよね?」
リカは、おもむろに、訊ねる。真剣な眼差しや。
「え? ・・・うん、当たり前だよ」
リカに握られた手を振り払うことも出来ずに、居心地悪そうに、手を揺らす。
264 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時24分24秒
「あたしのこと好き?」
「え?」
「よっすぃは、あたしのこと好き?」
「・・・」
「なんで、黙るの?」
リカは、真っ直ぐに、よっすぃの瞳をのぞき込んでいる。
「あたしのことキライなんだ・・・」
「いや、そんなこと・・・無いよ」
よっすぃは慌てて否定する。
265 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時25分17秒
「それじゃ、好き?」
「うん。好きだよ」
よっすぃは、たぶん、リカの言っている「好き」は特別な意味を含んだ「好き」だと
理解しながらも、返答は「友達」として「好き」だというニュアンスで言ってみた。
それが、リカに伝わるかどうかは別として・・・。
266 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時25分57秒
「ほんと? あたしも、よっすぃのこと大好きだから! これで、相思相愛だよね?」
よっすぃのニュアンスは伝わっていなかったみたいや・・・。
リカは、ニコッと微笑みながら、握っていたよっすぃの手を思い切り引っ張った。
その反動で、よっすぃの体勢が大きく崩れ、リカに身体に寄りかかる形になる。
「わ!」
よっすぃが、悲鳴を上げて、よろけそうになった瞬間、唇に温かい感触を感じた。
「!?」
267 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時26分50秒
よっすぃが目を白黒させながら、目の前を見ると、まぶたを閉じたリカの顔のアップがあった。
2、3秒後、リカの顔が離れる。
「よっすぃの唇って柔らかい」
「・・・・・・」
「それじゃ、おやすみ!」
「・・・・・・・・・・・・」
268 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時27分49秒
しばらく後、その場に沈んでいるよっすぃの姿があった・・・。
「あぁ! どうしよう、中澤さん!!」
うちに向かって、悲鳴に近い声をあげるよっすぃ。
いや、今は、物語の性質上、「ユウちゃん」て呼んでぇな。
「あたし、前々からおかしいとは思ってたんだよ。
ゼッタイ、リカちゃんのあたしを見る目が違うって! 
でも、でも、このままじゃ、レズじゃん!」
まあ、ご愁傷様って言うしかないわなぁ・・・。
269 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時28分24秒
「しかも、いきなりキスするか?」
でも、それは、よっすぃが悪いわぁ。だって「好き」って言うてるんやもん・・・。
「あたしは、フツーの男の子の方がいいモン!」
そりゃ、うちかて、男の方が好きやで。
「このままじゃ、ヒジョーにまずいことになりそうだ!」
いや、すでに手遅れとちゃうんか?
270 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時29分02秒
「なんとしてでも、リカちゃんの誤解を解かないと・・・」
解けるんかぁ?
「でも、リカちゃん、思い込みとか激しそうだからなぁ・・・。
はっきり、誤解だって言うと何しでかすか分からないからなぁ」
せやな。最悪、自殺したりとかして・・・。
自殺?
うちは、ふと、なっちのことを思い出す。
・・・。それだけは止めんとな。
271 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時29分45秒
これも、何かの縁やな。何が出来るかわからんけれど、うちに出来ることするか。
最悪の結果を見るのは、もうたくさんや。
不幸なんは、うちだけで充分や。
もし、うちが何かすることで、この二人にいい結果がおとずれるんやったら、
出来る限りのことはしよう。
そう考えるにいたり、ふと「ククッ」と自嘲する。
272 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時30分50秒
自分の気持ちの整理すら出来ないヤツが、他人様のために何かする?
ホンマに、そんなこと出来ると思ってんの?
それに、いいヤツぶっているけれど、何かすることによって、
より悪い方に向かうってこともあるんとちゃうん?
それやったら、何もせぇへんほうが、何倍もマシとちゃうんか?
大好きな人から嫌われるようなヤツが、人のために何か出来るなんて
思い上がりとちゃうんか?
嫌われモンは、しょせん嫌われモンや。
捨てられっ子は、自分を否定されてんねん。なんもでけへんのとちゃうんか?
273 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時31分20秒
次から次へと、負の感情がわき上がる。
堰を切ったダムのように、マイナスの思考が一斉に流れ込んでくる。
一緒に、自分の存在すらも流されてしまいそうな錯覚に襲われる。
必死に、必死に、その流れに抵抗する。
そうしないと、本当に、自分がここからいなくなってしまいそうになる。
すんでの所で、踏みとどまった感じである。
頭がくらくらする。
274 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時31分55秒
圭ちゃんが言ってったっけ?
うちは、一人で生きていかなきゃいけない。
これくらいで、流されそうになってしまうようでは、まだまだやな・・・。
みんなだって、いろいろ悩みや苦痛を抱えて生きているんや。
うちかって、頑張って生きていかなあかんねん。
そんで、出来ることをする。それが、うちの生き方や!
275 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月04日(日)23時32分01秒
一晩、葛藤した翌日、うちは、ある娘のもとに向かっていた。
そう、うちの言葉を理解する娘のもとに。
276 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月04日(日)23時32分42秒
うちは、カオリンを探して、学校の校内を歩いていた。そしたら、聞き覚えのある、
舌足らずな、おっとりした声が聞こえてきた。
「あ、ナカザーれすね!」
おいおい、あんたも、物語の流れっちゅうもん考えなよ。
うちは今は「ユウちゃん」なの。
しかも、呼び捨てにすんな、ゴルゥァ!
277 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月04日(日)23時33分15秒
「ナカザー、ののの悩みを聞くれす!」
いつものように、一瞬にして捕まる。こうなったら、逃げることは難しい。
しかし、あんたの悩みなんて、どうせ、今日のおやつ、アロエパフェにしようか、
アロエヨーグルトにしようか、なんていうレベルやろ?
今、うちは、あんたの悩みにつきあっているほど、ヒマちゃうんやで。
278 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月04日(日)23時33分53秒
ののは、妙に真剣な顔つきをしている。
「あいちゃんて、しっかりしているれすよね?」
いきなりの問いかけに、虚をつかれた感じになる。
……。うーん、せやなぁ。あの娘はしっかりもんやからなぁ……。
「それに引き替え、ののは、全然ダメれすよね?」
ののは、うちのことをギュッと抱きしめる。かすかに身体のふるえが伝わってくる。
意外にも真剣な話なので、正直、少し驚いた。
279 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月04日(日)23時34分37秒
「あいちゃんは、ののよりも大人なんれす。
いつも、困ったことがあったら、ののは、あいちゃんに頼ってばかり。
ののが出来ないことも、あいちゃんならすぐに出来てしまう。
なんでも出来るあいちゃんと、何もできないのの……。
ののって、ほんとにダメな娘なんれす」
280 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月04日(日)23時35分17秒
「この前の、安倍さんの事件の時も、あいちゃんは、冷静で、スピーディな対応をしてました。
それなのに、ののは、ただ、オロオロするだけで、何もできなかったれす。
ののって、ホントにダメな娘れすよね」
……。でもなぁ、のの。それは、ちゃうで。ののは、ののやん。
あいぼんとはちゃうやん。
281 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月04日(日)23時35分51秒
「辻は辻でしょ? 加護じゃないんだから!」
いきなり、うちの思っていたことと同じことを言葉で表現する人物が現れた。
うちは、ハッとなって、後ろを振り返る。
「矢口センセ……」
ののは、小さく呟く。
そこに立っていたのは、まりっぺやった。
282 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月04日(日)23時36分47秒
「たしかに、加護はしっかり者だよね。それは、確かに、彼女のいい所。
でも辻だって、いいところいっぱいあるじゃない? 
辻の天真爛漫さで、みんな明るい気持ちになっているのって、気付いている? 
それに、誰に対しても変わらない優しさ。
ちょっと、ユウちゃんの扱い方は、ハードだけれど、
でも、辻がいい子だって分かってるから、ユウちゃんも大人しくしているんじゃないの?」
283 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月04日(日)23時37分18秒
せやで。ののは、ええ娘やって、すごい優しい娘やって、うちは知ってる。
そうちゃうかったら、うちの歯と爪で、ののは病院送りやっちゅうねん!
ののは、ののの良さがあるねん。他の誰かと比べたりするもんちゃうって。
ののの優しさは、うちの折り紙付きやで。もっと自信持ったらええねん。
284 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月04日(日)23時38分19秒
「辻の良さは、辻にしか出せない。
加護のいいところが、自分にないからって、落ち込むことじゃないんだよ。
全然、ダメな娘なんかじゃない。
辻にはあって、加護にないモノだって、イッパイあるんだから。
あんたは、笑顔の方が、辻らしいよ」
「ホントれすかぁ?」
まりっぺの言葉に元気づけられたのか、ののの表情に笑顔が戻る。
ただ、いつもの力の抜けたような笑顔だけれど。
それでも、瞳には、元気な色が戻っていた。
285 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月04日(日)23時38分56秒
「センセェ、ありがとうれす!」
そういって、元気に、この場を去っていった。
ここには、うちと、まりっぺの二人が残された。
しかし、さすが、先生やな。ええ事いうやんか。
まあ、うちもおんなじ事考えてたんやけどな。
286 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月04日(日)23時39分35秒
まりっぺは、向こうをずっと見つめている。
うちの方からは、まりっぺの後ろ姿しか見えへん。
あれ? なんか、うち、まりっぺの気に障ることしたっけな?
なんか、無視されてるみたいやわぁ。
なんや?なんや? うちの可愛いい顔が見られへんていうんか?(笑)
287 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月04日(日)23時40分07秒
「ユウちゃん……」
まりっぺは、相変わらず、うちに背中を向けたまま、うちに話しかける風でもなく、小さく呟く。
そのとき、いきなり冷たい突風がうちを襲った。
さむっ!!
いきなりの強風に身を縮める。
288 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月04日(日)23時40分41秒
「ユウちゃん、あのね……」
ふたたび、同じような言葉を繰り返す。
そして、沈黙。
「にゃぁぁ?」
うちは、奇妙な間に耐えきれずに、意味もなく、鳴いてみる。
そして、ふたたび、冷たい風が吹き、うちの身を包む。
今度の風は、身体だけではなく、心をも冷やしそうな冷たさである。
289 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月04日(日)23時41分16秒
「なんでもない!」
まりっぺは、それだけ言うと、うちを振り返ることなく、そのまま、走り出して、この場を去っていった。
?? なんやねん? 訳わからへん……。まりっぺ、昨日の電話から、なんか変やわ。どうしたんや?
290 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月04日(日)23時41分55秒
うちは、大きな疑問を心に抱えながら、まずは、自分のすべきことを行うことにした。
大きな不安感を消すかのように……。
291 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月05日(月)11時24分12秒
まり…っぺ…?!
どうしたんや、むちゃ気になるやん。んなとこで止めんといてぇ〜〜
作者さん、殺生な。でも、続き、楽しみにしています。
292 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)00時06分26秒
おっす、かおりん!
「ん? ユウちゃんじゃない? どうしたの?」
職員室で、ボーっとしていたカオリンに声をかける。
たぶん、宇宙と交信していたのかもね。
「いちおう元気そうじゃない? それともカラ元気?」
……。なかなか鋭いところを突いてくる。さすがカオリンっていったところやな。
293 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)00時07分10秒
「保田医師から少し話は聞いたわよ。
結構きついことを言われて、逃げ出してきたんだって? 
保田先生、心配していたわよ」
まあ、そのことも、気になっていることではあるんやけれどね。
「他にも、心配事あるの?」
今は、うちのことはええわ。悩んでもどうしょうもないことばっかりやし。
それよりも、もう一回協力して欲しいことがあんねん。
294 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)00時07分59秒
「また、誰かの問題にちょっかい出しているの?」
まあ、そんなところや。
「今回、カオリン、パァス!」
なんでやねん!
「だって、面倒くさいもん」
まぁた、それかい! あんたっていう娘はぁ!
295 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)00時08分32秒
「どうせ、つんくさんだったら……とか、甘っちょろいこと言うんでしょ? 
前回は、ユウちゃんがそれで、何か前向きになれるんだってらいいと思ってた。
でも、保田医師と話をして、ユウちゃんがつんくさんを追いかけることは、
やっぱり危険だって事に気付いたの。
つんくさんの存在が行動原理で動いているユウちゃんには協力できない」
296 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)00時09分08秒
…………。
一瞬、うちは言葉を失う。
この沈黙を、カオリンはうちが否定できないという風に理解したのか、
うちのことを無視して、自分の作業に戻っていった。
でも、うちは、思った。
たしかに、うちの行動は、つんくさんの存在が大きいと思う。
つんくさんならどう考えるか? つんくさんならどうするか? 
もしかしたら、この一歩でつんくさんに近づけるんとちゃうやろか?
そんなことを考えてた。
297 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)00時09分48秒
でも、今は、ちょっと違う気がする。
つんくさんがおらへんから、うちはガンバらなあかんねん。
一人で生きていくためにも、なんか自分で出来ることをせないかんねん。
つんくさんやったら、どうするか?やのぉて、うちやったらどうするか? どうしたいか?
うちは、もう最悪の結果は見たくない。だから行動すんねん!
298 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)00時10分29秒
カオリンをチラリと見る。うちの気持ちは届いていないみたいや。
今は、自分のこの気持ちを人に上手く伝えられへんわ。
自分自身、よぉ分かってへんし。
しゃぁない、まずは、うち一人で、何とかやってみるかぁ……。
299 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時17分31秒
その日の晩。
最良の解決策を見いだせないまま、よっすぃのアパートに戻ってきた。
多分、昨日と同じような状況になるんやろうなぁなどと思いつつ。
しかし、予想は大きく外れた。
扉の前に皿にこんもりと注がれたキャットフードが置かれている。
扉のそばにある磨りガラスの小窓を見ると、部屋の中は真っ暗である。
器用に、ドアノブを回し、扉を開けようとするが、カギがかかっている。
300 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時19分06秒
呼び鈴は……。鳴らす必要はないやろう。
うちはピーンッとひらめいた。よっすぃは逃げたんや。
彼女も有効な打開策が見つからず、今日、リカと顔を合わすと大変なことになると予想し、
そうならないように、どこかへ逃げたんやろう。
クスッ! 困ったことや、イヤなことがあったら、即、逃げる。
なんか、うちとそっくりやぁ……。
でも、もう、うちは逃げへんて決めたんや!
301 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時19分46秒
ん? 足音が聞こえる。こっちに向かってくるようや。
うちは、素早く、物陰に隠れて、足音の方に神経をとぎすます。
あっ! リカや。なんか鼻歌を歌いながら、嬉しげに、よっすぃの部屋を目指している。
そして、扉の前で、立ち止まる。
ピンポーン!
呼び鈴を鳴らす。
一呼吸おいてから、もう一度……。
ピンポーン!!
302 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時20分23秒
中から人の動く気配がしない。
リカの鼻歌も止まり、いぶかしげに小窓を覗く。もちろん、中は見えない。
コンコン!
リカは、軽く扉をノックしてみる。
「よっすぃ! リカだよぉ!」
すこし、イライラしたようなトーンで扉に向かって話しかける。
303 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時21分06秒
ドンドンドン!!
激しく扉を叩く。
「よっすぃ!! 開けてよぉ! なんで、意地悪するの!!」
甲高い声で、扉に向かって叫ぶ。そして、何度も何度も扉に拳を打ち付ける。
「ちょっと! 静かにしてよ!」
隣の住人が顔を出して、リカに注意を与える。
「うるさぁい!!!」
リカは、ヒステリックなキンキン声を隣人にぶつける。
リカの剣幕に圧倒された隣人は、「なによ!」みたいな顔をしつつも、
部屋に引きこもってしまう。
304 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時22分10秒
まじ、怖ぇぇ!!
正直に告白するわ。この時のうちは、かなり、リカの迫力にビビってた……。
鬼気迫るものがあったのやろう。
305 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時23分07秒
うちは、物陰から、のぞいていたんやけれど、あまりにも、乗り出しすぎて、
身体を出しすぎてしまっていた。
そんで、思い切り、リカと目があってしまった。
「!!」
リカは驚いた表情をしながら、言葉を発する。
「あ! 昨日の猫!?」
げげぇ! 今、この娘に会ったら、何されるかわからん気がする……
306 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時23分56秒
トコトコッとこっちに寄ってくるリカ。
「ねぇ。よっすぃ、どこに行ったか知ってる? あたし、嫌われているのかなぁ?」
チョコンと、うちの前にしゃがみ込みながら、悲しげな瞳をうちに向けながら訊ねてくる。
深い悲しみにおおわれたその瞳からは、今にも大量の涙があふれてきそうや。
うちに対する仕打ちや、さっきの気迫からは想像できないくらいに、
打ちひしがれた表情をしている。
307 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時24分39秒
すごい感情のアンバランスな娘やと思った。
おそらく、自分でもそのコントロールは出来ていないのやろう。
せやから、ここまで、自分の感情に振り回されて、自分自身もしんどい思いをしている。
それに、誰かを想う気持ちっていうたら、うちも極端に走りそうになるのは理解できるし……。
そう考えると、ちょっと、このリカっていう娘に、同情というか、共感に似たものを感じていた。
308 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時25分36秒
「よっすぃと、あたしは、幼なじみなんだよ」
リカは扉の前にへたり込みながら、誰に話すでもなく、ぽつぽつと語りはじめた。
「あたしって、可愛くて大人しい子だったから、子供の時、良くいじめられていたんだ」
……。フツー、そんなこと自分で言うか?
「男の子からもよくからかわれたり、イヤガラセされていたんだけれど、
女の子からのいじめがひどかったなぁ……。
やっぱ、可愛いあたしに嫉妬してたんだろうな」
………。多分、その性格の方やと思うが。
309 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時26分09秒
念のため、付け加えておくけど、これは、リカは冗談で言っているわけやないで。
真剣に話してるんやからな。
310 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時27分38秒
「いじめられたとき、あたしは何もできなかったんだ。反抗したら、
もっといじめられると思ってた。怖くて、ただ泣いているしかできなかった。
でも、そんなときに、優しくしてくれて、いじめっ子たちに、
猛然と立ち向かっていってくれたのが、よっすぃだったんだよ。
昔から、よっすぃは、背も高くて、ケンカも強かったんだ。
男の子とも、平気でやり合ったんだよぉ」
涙のたまった瞳をこちらに向け、ニコッと微笑むリカ。
子供時代の記憶をたどり、その世界に浸っているのやろう。
311 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時28分28秒
「あたしの初恋の人。いつでも、あたしを守ってくれた。
いじめられたとき、いつもあたしを優しく抱きしめてくれた。
子供の時から、よっすぃの胸の中は、あたしの一番安心できる場所。
女同士とか、関係ない。あたしは、よっすぃが好きなんだ。
でも、よっすぃはあたしのことキライなのかなぁ? 
でも、よっすぃ、あたしにキスして、好きだって言ってくれたんだよ?」
……。いや、その後半部分は、大きな勘違いというか、思い込みやでぇ。
312 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時28分59秒
「よっすぃの気持ちが、分かんない」
うちは、あんたの頭の中が一番わからんわぁ。
313 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時29分43秒
まあ、ちと、問題ある気もするけれど、この娘は悪い娘やないねん。
根が純粋やから、真っ直ぐに伸びすぎているだけやねん。
なんとか、してあげたいなぁ。まずは、よっすぃが逃げている状態をなんとかせなな。
たとえ、リカにとって辛い結果になっても、ちゃんと対面させなイカンやろう。
314 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時32分32秒
うちは、よっすぃを探しに出かけた。リカは、そのまま、扉の前でしゃがみ込んでいる。
ずっと待っている気なんやろう。健気やなぁ。
でもよっすぃは、どこに行ったんやろう……?
その瞬間!!
315 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時33分03秒
タタタッタタタッタタッターンタタタッターン!タタタッターン!!
ズッチャズッチャ
ターンタタタターン!タータンタータターン
316 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時33分38秒
なんや?このテーマ曲は……? 
おぉ! 満月を背景に、電柱の上に誰か立っている!! しかも、稲光がぁ!!
と、虎のマスクを付けて、マントをひるがえしながら立っている!
あ、あれは! タ、タイガージョー!!
……なんで、タイガージョーやねん!! 話ちゃうやろぉ!
317 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時34分44秒
「何をしている?」
虎マスクのタイガージョー(?)が、頭上から訊ねてくる。
え?え? いやぁ、よっすぃを……探しているんやけど
「馬鹿モーン!」
バキィィィ!! 
電柱から飛び降りつつ、思い切りグーでパンチぃ。イテェ!
「よっすぃは、こんな所にはいない!! よっすぃは、加護の所だ!」
318 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時35分16秒
ちゅうか、カオリン、何してんねんな?
マスク付けても、声は、めっさ、カオリンのままやんけぇ!!
「な、何をいう! カオ……いや、あたしはタイガージョーだ!! カオリンぢゃない!!」
いや、もうカオリンや言うてるやん……
「う、うるさい! 後悔したくなかったら、さっさと加護の所に行くのだ! 以上だ!!」
そう言って、タイガージョー(?)は、忽然とその場から消え去る。
319 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時35分55秒
……。おい、作者! ちょっと、遊び過ぎやで!! 
あんまり、しょーもないことしていると、ユウちゃん怒んでぇ。
まぁ、ええわ。
このことは、後でカオリンに問いただすとして、急いで、加護の家にむかわんと。
320 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時36分54秒
そして、あいぼんの家。
窓からのぞくと、あいぼんとよっすぃが何かを話している。
「よっすぃ、ダメやで、そんなん。逃げたって、なんの解決にもならんて」
「いや、分かっているんだよ。加護ちゃんの言うことは、すごくよく分かるんだ。
でも、顔を合わせると、なんか、変な感じになりそうで……。
あたしだって、リカちゃんのこと友達として、すごく好きだし、
これからも、関係を大切にしていきたいと思ってるんだよ。
でも、会っちゃうと、リカちゃんのペースにズルズル引きずられそうで」
321 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時37分24秒
「でもな、よっすぃが逃げていると、リカちゃんはもっと辛い思いすんで?」
「うん……」
「これは、リカちゃんにちゃんと言わないといけないことやで。
お互いの今後のためにも、よっすぃがしっかりせぇへんと、あかんのちゃう?」
「うん」
よっすぃは、大きく首を縦に振る。
322 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時38分07秒
「ありがとう、加護ちゃん。うん。全部、自分でも分かってた。
心の中で、逃げちゃダメだって、ずっと思ってた。
苦しいのは、あたしだけじゃないんだ。
リカちゃんだって、今頃、あたしの気持ちが見えなくって、苦しんでいるんだよね。
二人の関係って、はっきりさせないといけないことなんだ。
あたしのためにも、そして、リカちゃんのためにも!」
323 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時38分49秒
さすがは、あいぼんや。しっかりしているわ。
よっすぃも初めから全て分かってたんやな。
ただ、リカの気持ちを傷つけたくないと思って、二の足を踏んでたんや。
でも、それが間違いやって気付いて、自分の気持ちを相手に伝える勇気って、
大事やって分かったんや。
人間関係ってほんま複雑やなぁ。
誰もなんも、悪くないのに。みんな、幸せになりたいだけやのに……。
324 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時39分28秒
さて、うちに出来ることは、よっすぃを促すことやな。
コンコンと身体を窓に軽くぶつけて、存在をアピールする。
「うん?」
あいぼんがうちに気付く。
「あれ? 矢口さんのネコじゃない?」
「あぁ、ののが気に入っている矢口先生のネコか……。でもなんで、こんな所におんねん?」
あいぼんが、窓を開けて、うちを招き入れる。
325 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時39分58秒
うちは、颯爽と中に入り、よっすぃのズボンの裾を軽くくわえ、クイッと引っ張る。
「どうしたの?」
よっすぃは意味は分からず、ちょっと困った表情をする。
それとは対照的に、あいぼんは、何かを気付いた素振りを示した。
「よっすぃに来いって言っているんや。このネコ、ちょっと不思議なネコやねん。
以前も、同じようなことあったんや」
326 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)23時40分34秒
そうや。さすが、あいぼんや!
うちは、部屋を飛び出し、二人が、追いかけてくるのを確認しながら、
よっすぃのアパートを目指した。
そう、リカが泣きながら、座り込んでいる、扉の前に……
そして、うちに「死」の宣告を与えることになる、あの場所へ…………
327 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月24日(月)02時05分15秒
そろそろ続きを・・・
328 名前:kei 投稿日:2002年01月07日(月)00時20分55秒
思い切り放置していた・・・。滅茶苦茶忙しいモンで・・・
多分、これからも頻繁に更新できませんが、確実に終わらせますので、
まずは、少しだけ、更新・・・
329 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月07日(月)00時23分39秒
そして再び、よっすぃのマンション前。
うちは軽く、息を整えながら、マンションの廊下を静かに歩く。
後ろからは、ちゃんとよっすぃとあいぼんの二人が付いてきている。
扉の前には、リカが三角座りで冷たい廊下にへたり込んでいる。
顔は脚に伏せられていて、表情が見えない。
うちは、目の前にチョコンと座り、「ニャァ」と鳴いてみる。
330 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月07日(月)00時24分27秒
リカはうちの鳴き声に反応し、気だるそうに、ゆっくりとしたスピードで、顔を上げる。
うちと視線が交差する。
ドロッとした白濁した瞳をしている。瞳からいっさいの感情が消えていた。
その瞳を見て、言いしれぬ不安感を感じながらも、うちは、小さく鳴きながら、
後ろにいる二人を振り返る。

331 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月07日(月)00時25分00秒
それにつられるように、リカもゆっくりと首を上に上げる。
今度は後ろに立ちつくすよっすぃと視線が交わった。
しかし、相も変わらず感情の消えた濁った瞳のままだった。
「り……リカちゃん?」
よっすぃは、微妙な間合いに耐えきれず、リカに声をかけた。
「よっすぃ?」
リカは疲れ切った声ながらも、かすかに明るい響きを込めたトーンで答える。
その青ざめた表情にも、赤みが差し始めている。
332 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月07日(月)00時25分39秒
「おかえり、よっすぃ……。ずっと待ってたよ」
リカはスローな動きでゆっくり立ち上がる。身体の軸を失ってしまったかのようにフラフラしている。
目の焦点も定まっていない。
うちの胸に、先ほどから言いしれない黒い不安感がつのっていく。
今日、二人を会わせたのは間違いでなかったか?
知らずのうちに、うちの筋肉に緊張が走る。すぐに次の行動をとれるように無意識に構えている。
333 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月07日(月)00時26分22秒
「よっすぃ、あたしのこと好き?」
脈絡もなくリカはよっすぃに問いを投げかける。
よっすぃの表情が硬く凍り付く。
リカの視線の先はよっすぃを見ているが、しかし、その瞳にはよっすぃは映っていないかのようである。
よっすぃは、軽く深呼吸をし、リカの視線を受け止める。
334 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月07日(月)00時27分35秒
「ごめんね、リカちゃん。あたしは、リカちゃんがあたしを想ってくれているのは嬉しいけれど、
その気持ちには応えられないよ。友達としては好きだよ。でも、それ以上には……多分なれない。
でも、一番の友達だよ!」
よっすぃの言葉が耳に入っていないかのようにリカの顔に表情はない。
ただ、ジッとよっすぃを見つめている。
そして、何を思ったのかいきなり満面の笑顔がリカの顔に浮かんだ。
張りのある元気な声をよっすぃに投げかけた。
335 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月13日(日)18時13分54秒
「そっか。やっぱダメか。よっすぃは、あたしを一番には想ってはくれないんだ。
くすっ。何となくは分かっていたけれどね。ふふふ」
あいかわらず、よっすぃを見つめ続けるリカ。
リカの心境と声の調子のアンバランスさにうちの心臓は変な高鳴りを感じる。
このアンバランスさが全てを狂わせていく気がして仕方がない。
336 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月13日(日)18時14分31秒
「でもね、よっすぃは、あたしのモノになるんだよぉ」
337 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月13日(日)18時15分22秒
瞬間、うちの全身に戦慄が走り、大きくジャンプしていた。
リカは、ただこう言っただけやった。まだ、何かしたわけではなかった。
ただ、うちは、何かに背中を押されるかのように、リカと、よっすぃの間に、飛び出していた。
そして、飛び出したうちの目に映ったのは、リカの焦点の定まっていない二つの瞳。
先ほどの気の抜けた身体からは想像もできないほどの素早いリカの動き。
リカの右手に握られた白銀の薄く研ぎ澄まされたナイフ。
そして、耳にしたのは、よっすぃやあいぼんの割れた叫び声。
338 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月13日(日)18時15分58秒
感じたものは、腹部に広がる激痛。い、いたい……
339 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月13日(日)18時16分28秒
失いつつあるモノ……。それは、うちの、イノチ…………
340 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月13日(日)18時18分39秒
つんくさぁん…………………
341 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月15日(火)21時59分53秒
待ってました!お疲れ様です。
裕ちゃん猫大丈夫!?
どうなるのか…楽しみです。
342 名前:kei 投稿日:2002年01月17日(木)23時18分34秒
応援ありがとうございます。
一時期のピークも過ぎ、小説書いている余裕が出来たので、このまま一気にラストまで、
駆け込みたいと思います。
稚拙な小説ですが、最後までおつきあいいただければ幸いです。
343 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時20分02秒
あぁ、なんか真っ暗やなぁ……。
あ、そうか。うち、刺されてんや。ほんま、石川も無茶するわ。
それで、うち死んだらどーすんねんて! 
って……、うち、ホンマに死んでもたんやろうか? 
でも、なんか、フワフワしてええ気持ちやわぁ。
もう、なんかどうでも良くなってきたわ。
つんくさんに会えへんかったのは心残りやけれど……。
344 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時21分23秒
うちの目の前が次第に明るくなってくる。
周りの喧噪も耳に入ってくる。
ん? なんかおかしいなぁ…。
うちは、大きな違和感を感じる。
よっすぃのマンション部屋の前の通路にいた。
そして、上から、みんなを見下ろしている。
345 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時21分56秒
呆然として心ここにあらずと廊下にへたり込んでいるリカ。
うちを抱えて「救急車やぁ!!」と叫んでいるあいぼん。
電話を求めて部屋に飛び込んでいくよっすぃ。
そして、真っ赤な血を腹部から流し続けて、グッタリとしているうち……。
346 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時22分38秒
そうかぁ……。俗にいう幽体離脱ってやつやな。
てことは、ホンマにもう、うち死ぬんや。
でも、自分の死に顔見るってのも、なんかアレやなぁ……(笑)
347 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時23分13秒
再び、目の前が真っ暗になる。
うちは、覚悟を決めた。
その瞬間、うちの脳裏をまりっぺの笑顔がかすめた。
でも、もう消えて行くだけのうちは、その笑顔を頭の中から振り払うことしかできなかった
348 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時24分08秒
みたび、目の前に光がかかげられる。目を開いても、いきなりの眩しさにしばらくは焦点が合わない。
ゆっくりと視界が戻ってきて、目に入ったのは言葉では表現できないくらいの美しい光景やった。
眼前いっぱいに広がるお花畑。赤、青、黄色。さまざまな色を輝かんばかりに発している花たち。
とても現世とは思えないほどの美しさを誇っていた。
349 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時24分38秒
……。そうか。ここはもう現世やないんや……。
350 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時25分48秒
天国か……? それやったら、ここまでの神々しい光景も理解できるわ。
ふーん。それやったら、なんでも思うことが叶うとか? 
天国やったら何でもありやろう?
うち、人間の姿になりたぁい!!
351 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時26分50秒
なぁんてね。
世の中そんなに甘くないわ。いまいち、ここが天国かどうかも怪しいのに…。
そう思いながら、うちは頭をかいてみた。前足で……? 
いや、これ前足やあらへん! 人間の手やん!!
うちは、自分の身体をすみずみまで見てみた。
間違いない。うちは人間の姿になってる。
352 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時27分40秒
近くの湖に自分の姿を映してみた。
キレイに染め上げられた金髪のショートヘア。
ブルーのカラーコンタクト。
丁寧にケアされた長い爪。
白く透き通る肌。
スレンダーな肢体。
うちが、ずっとイメージしていた理想の姿やった。
353 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時28分26秒
うちは、我知らずに、自分の身体をキュッと抱きしめていた。
たとえ、ここが天国でも、たとえ、自分が死んでいたとしても、
ずっと念願だった人間の身体を手にいれたんや。
ただ、ひたすら、人間の身体の自分が愛おしかった。
354 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時29分10秒
そして、最後の願いは、ただひとつ。つんくさんに抱きしめて欲しい。
それ以外は何もいらない。
うちの命すらも……。
355 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時29分46秒
「おい! おねぇちゃん、こんなところで何してんだ? 
早くいかねぇと、迎え人を待たせることになるぞ」
356 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時30分25秒
不意に背後から声をかけられ、ビクッとなる。
後ろを振り返ると、白髪やヒゲを蓄えた老人が立っていた。
「迎え人?」
うちは、老人を見上げながら、聞いたことのない言葉を繰り返した。
357 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時31分47秒
「なんだ? 何も知らないのか?」
「はい。ていうか、ここがどこなのかもよく分かってへんし……。
ここって、もしかして天国なんですか?」
老人は、ヒゲをさすりながら、優しい笑顔をうちに向ける。
「いい線まで行っている。しかし、ここはまだ天国ではない。
あの世とこの世をつなぐ、中間世界ってところだな。
ここをもう少し先に進めば、川があり、その川を越えれば、あんたのいう天国ってヤツよ」
358 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時32分37秒
「あ、もしかして、三途の川?」
「そうとも呼ばれているなぁ。
そこに、死んだ人間をあの世から迎えに来る人がやってくる。
それが、迎え人じゃよ。
あんたに縁のあるモノが今頃、川に到着して、あんたが来るのを待っているじゃろうて……。
あんまり待たせるのも良くないぞ」
「へぇ。誰が来るんやろう?」
359 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時33分23秒
うちは、心の中で迎えに来そうな顔ぶれを浮かべてみた。
ママが来てたら、人間になっているうちを見てビックリするやろうな。
「おじいさんは誰が迎えに来るんですか?」
「ワシは、先に逝ったカミさんだろう。
生前はあまり一緒にいる時間がなかったから、
せめてあの世では、ずっと一緒の時を刻みたいもんじゃわ」
360 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時34分25秒
うちは、この老人と一緒に前に進みはじめた。
老人に、うちの正体を明かしたら、かなりビックリしていた。
あまりそういうケースはないって言ってた。
でも、よほど思いが強いと、天国に行くまでに、強い思いは具象化するそうや。
この老人、ここに来るのは二度目なんやって。
以前は、川を渡ることなく、再び、現世に戻ったとか。
それで、いろいろと詳しいみたいや。
361 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時35分11秒
「おぉ、あそこだ」
老人は、少し先を指さした。
確かに、大きな川が目の前に広がっていた。
なんか、イメージとして、三途の川って、もっとオドロオドロしているんかと思ったら、
この周りの光景にもピッタリなくらいキレイに澄んだ蒼い川やった。
362 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時36分25秒
さらに、前に進んでいくと、川岸に何艘かの小舟が停まっていた。
迎え人の待つ渡し船なんやろう。
「おお! みちよぉ!!」
363 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時37分24秒
隣にいた老人は、小舟の中でにこやかに手を振る女性を見つけると、一目散に走り出した。
さっき言ってた奥さんなんやろう。
そして、奥さんは手をさしのべ、そして老人はその手をつかみ船の中に乗り込んでいった。
二人は手をしっかり握りしめ、そして、船はゆっくりと動き始める。
もう帰ってくることのない片道の旅。
霧に包まれ、しばらくすると見えなくなった二人だったが、
見えなくなるまで二人の表情は幸せそうやった。
364 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時38分25秒
ハタとうちは、自分の迎え人のことを思い出す。
当然、うちにも迎えは来ているはずや。
うちは、それぞれの船を見ていく。うちの縁ある人の乗っている小船。
少なくともネコの乗っている船はあらへん。
もしかして、うちみたいに、人間の姿になってたら厄介やなぁ……
なんて思いながら、探し続ける。
そして、一艘の小さな木船をみつける。
365 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時39分09秒
うちは、その小舟に乗っている人の姿を見た瞬間、心臓のトクントクンッの刻み音が早打ちだした。
その人は、うちに背中を向けていた。その顔をしっかりと見えたわけではない。
だんだんと、胸が苦しくなってきた。
見慣れた、その後ろ姿。いつも見ていた。見間違うはずもない。
うちは、その船の前で立ちすくんでしまった。
それでも、船の人は……、うちの迎え人は、こちらを振り返ろうとしない。
何か言葉を発すれば、心臓までが口から飛び出しそうな気がした。
366 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時42分02秒
周りの船の迎え人は、笑顔で船に向かってくる人たちを迎えている。
でも、うちの迎え人は、頑なにうちを拒んでいるかのようや。
その背中が、うちを拒否していた。
うちのことを嫌ってるから? 
うちのこと捨てるほどキライやったから?
そして、その人がここにいる現実。それも、うちは信じたくなかった。
それが分かっただけに、うちは、その人の名を呼ぶことが出来なかった……。
367 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)23時42分34秒
「つ……、つ………………」
368 名前:341 投稿日:2002年01月18日(金)02時29分51秒
更新おつかれさまです!
つ・・つ・・・
ラストまで駆け抜けて下さいね。
続き楽しみです。
369 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)02時49分00秒
どうなるのか・・・まったく先が読めません(w
終るのは・・・残念。
姐さん猫お気に入りだったのに。
姐さんが猫になってる小説読むのこれで3つめです。姐さんって猫になりやすい人みたい(w
最後まで頑張ってください。
370 名前:kei 投稿日:2002年01月19日(土)02時58分30秒
>368
ありがとうです。今日も更新いきまぁす。でも、まだ終わりぢゃないよ。

>369
ありがとうです。作者の私も、まったく先が読めません(←おい!)
え? 姐さんネコって、他に二つもあったんすか? 
斬新なアイデアだと思ったのに(w 
またどこの小説なのか教えてくださいね
371 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時00分57秒
語りべ・飯田圭織
372 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時03分43秒
その病室には、すでに7人の少女が集まっていた。
医師の保田圭、高校生の安倍なつみ、後藤真希、社会人の吉澤ひとみ、石川梨華、
中学生の加護亜依、辻希美。
存命装置を取り付けたケースに入れられたユウコを取り囲むように7人は腰掛けていた。
彼女たちも皆が健康体なわけではない。
なかには、身に傷を持つ者、心を弱らせている者、いろいろである。
それでも、今日は集められたのだ。
373 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時04分24秒
「ナカザー、かわいそうれす……」
ののは、ケースの中で、息を弱らせていくユウコの姿を見て、悲しそうな声をもらす。
「ああ。メッチャ、痛そうや。全部、あいつが悪いねん」
あいぼんは、吐き捨てるような言い方で、リカを見やる。
「……………」
374 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時05分02秒
リカは、沈鬱な表情でうつむいている。目は正気を取り戻していた。
自分のしたことを顧みて、心を痛めているのであろう。
「ゴメンね、ゴメンね」
リカは、誰に謝っているのか、ただ、ひたすら、同じ言葉を繰り返していた。
「リカちゃん……。大丈夫だよ」
よっすぃは、リカの手をしっかり握り、その目は、包帯で巻かれたユウコの姿を見ていた。
375 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時06分02秒
「後藤、大丈夫べか?」
車椅子に少し疲れた表情を浮かべながら腰掛けるごっちんを心配し、なっちが声をかける。
「ダイジョブ、ダイジョブ」
心配かけないように、笑顔で答えるごっちん。
「飯田先生も、無茶させるなぁ。
なにも、まだ完治していない後藤まで呼ぶ必要ないのに……」
「ううん。ユウちゃんは、ゴトーたちにとって大切なネコちゃんだもん。
ユウちゃんにとって生きるか死ぬかの瀬戸際だもん。出来るだけのことはしたいよ」
376 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時06分59秒
圭は、イスに腰掛け、一人考え事をしていた。
(手術は成功した。予想以上に傷は深かったが、最高の獣医を手配できたのが、救いだったな。
後は、ユウちゃんの生きようという意志が全てのカギが……。
でも、明らかに、状態は悪化しているわね)
窓から病院の中庭が見えた。ユウコと初めて出会ったあの日のことを思い出していた。
377 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時08分02秒
しばらくして、病室のドアがガチャリと開いた。
ドアを開けて中に入ってきたのは、カオリンであった。
皆の視線が一斉に集中する。
そして、カオリンも皆をぐるりと見渡し、分かっていたことを確認するかのようにポツリと呟いた。
「やっぱ、矢口は来ていないか……」
378 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時09分46秒
ドアをガチャッと閉め、一呼吸おいてから、ゆっくりと話し始めた。
「今日は、集まってくれてありがとう。
もう、なんで、呼ばれたか分かっていると思うけれど」
カオリンは、7人の娘たちが頷くのを見て、再び言葉を続ける。
「ユウちゃんの命は、もう今日がギリギリだと思う。
だから、みんなの力を貸して欲しいの。
ここにいるメンバーって、みんな、ここしばらくの間、ユウちゃんに関わってきた娘たちなの。
カオリンも含めて……。
今、カオリンたちがユウちゃんを連れ戻さないとダメなの。
本当なら、飼い主であるつんくさんに頼みたいんだけれど……」
379 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時10分42秒
「なんやぁ? 飼い主がおるんやったら、あたしらがやるよりも、
飼い主の思いの方が届くんちゃうんか?」
「あいちゃん。ナカザーの飼い主はののれすよぉ」
「ちょっと、お前がしゃべると話ややこしくなるから、だまっとけ!」
あいぼんは、ピシャリとののの言葉を封じる。
380 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時11分34秒
「そうだよね。そのつんくさんって人はどこにいるの?」
よっすぃがカオリンに訊ねる。
カオリンは、険しい表情を作り、言葉に詰まる。
「ダメだよ、飯田さん。
あたしたちに協力を求めるんだったら、ちゃんと真実を話さないと。
それとも、あたしから、言ってあげようか?」
圭が、おもむろに口を挟む。
カオリンは、ゆっくりと首を振り、皆に姿勢を正し、
心を決めたかのように言葉を紡ぎはじめた。

381 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時12分14秒
「つんくさんは……、ユウちゃんの飼い主のつんくさんは……。
もう、この世にはいないんだ」
382 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時13分04秒
捨て猫ユウコ
383 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時13分38秒
うちは、その場に固まって動けへんかった。
船上の人は、ボソボソとささやくような声をかけてきた。
「ユウコか?」
うちの両の目から、ポロポロと涙があふれる。
ずっと聞きたかった声や。
うちの追い求めていたものが、今ここにあるんや。
でも……。なんで?
384 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時14分11秒
「つ……。つんく……さんなん?」
うちは、涙でつまる声を抑えながら、その人の名を呼んだ。
今まで、何回、何十回、何百回、何千回、何万回、心で叫んだ名前やろう。
でも、この一回の重みにはかなわない。
385 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時15分46秒
「あぁ……そうや」
その人……つんくさんは、やっと、うちの方を振り返った。
386 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時16分31秒
つんくさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!
387 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時17分09秒
せっかく、人間の姿になれたのに。
せっかく、きれいになったのに。
せっかく、会えたのに。
388 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時17分50秒
うちの顔は、涙でクシャクシャやぁ。
あぁ、つんくさんに、変な顔見せてもた。また、嫌われるかなぁ……。
うちは、つんくさんを見上げてみる。
つんくさんは、優しい笑顔でうちを見てくれている。
うちも微笑んだ。そしたら、変な泣き笑いになってしもうた。へへへ、あかんわぁ。
389 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時20分01秒
「ユウコ、ほんま、ゴメンな。独りにしてしもうて……。でも、しゃぁなかってんや」
つんくさんは、相変わらず、微笑んだまま。
うちも、微笑んでいる。
「ううん。ええよ。今、分かったわ。この場所で、つんくさんに会ったから。
なんで、うちは、捨てられたんか……。なんで、離れ離れになったんか……」
「そうか。お前は、昔から頭のいいネコやったからなぁ」
390 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)03時20分48秒
そして、つんくさんの表情が厳しくなった。
うちの心が、サワサワと騒ぎはじめる。
「そしたら、俺が、次に何を言いたいか、分かるよな?」
うちの心が、サワサワと騒ぎはじめた。
391 名前:341 投稿日:2002年01月19日(土)04時56分19秒
更新最高!
ラストなんかこないでいいです。
ずっと続けて欲しいくらい好きです、この小説。
やっとあえたんですね(涙
392 名前:kei 投稿日:2002年01月21日(月)23時21分43秒
341さんへ

応援ありがとうございます。作者冥利に尽きます。
あと数回の更新でエンドを迎えますが、全力で書かせていただきます。
耳より情報(?)として、「捨て猫ユウコの物語」の次に、また、姐さんネタの
新小説がスタートするらしいです(←なぜ伝聞?)
また、そっちも読んでいただければ、幸いです。
393 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月21日(月)23時23分56秒
語り部・飯田圭織

「死んだの?」
ごっちんが躊躇いがちに訊ねる。
「病気でね……」
カオリンが感情を押し殺したような声で答える。
「そこら辺の話は、保田医師が詳しいよ。だって、担当医だったんだもん」
皆の視線が、一斉に圭に注がれる。
394 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月21日(月)23時24分51秒
圭は、皆の視線や気持ちを抑えるかのように、両手でさえぎる。
「半年くらい前の話だったかな。一人の男性が、救急車で運び込まれた。
それが、ユウちゃんの飼い主のつんくさんだったんだ。
単なる過労として一時は診断され、日常の生活に戻っていったんだけれど……」
「違うかったんだべか?」
「あたしは、はなから単なる過労という上の意見には疑問を持っていた。
それで、個人的に、つんくさんの血液とか細胞片とか検査してたんだ」
395 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月21日(月)23時25分31秒
圭はいったん言葉をとぎる。
そして、再度口を開いたときには、聞き慣れない病名を皆に告げた。
「ヒトネコ型感染tvウィルス……」
「???」
事前に説明を受けていたカオリン以外の5人の頭の中はクエッションマークで埋め尽くされた。
396 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月21日(月)23時26分30秒
「まだ日本では確認されていなかったウィルスなんだ。
一言で言えば、ネコと人に相互に感染する病気。
致死率、人で20%、猫に関しては100% 
いまだ、決定的なワクチンは開発されていない。
少し前、日本動物病院医師連盟の研究会で話題になっていたんだ。
世界中のネコが全滅するかも知れないって……。
あたしは獣医じゃないけれど、少なからず、人間にも影響する病気だったから、
興味を持ってみていたんだけれど、まさかね……つんくさんの血液から、
ウィルスが発見されるとは思っていなかったよ」
397 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月21日(月)23時27分18秒
「じゃぁ、ゆうちゃんは……?」
リカの手をしっかり握りながら、よっすぃは、心配げに圭にたずねた。
「大丈夫。つんくさんの決断が早かったから、ユウちゃんにはうつっていないよ。
でも、その結果、二人は離れ離れになるしかなかった。
つんくさんが、ユウちゃんに生きて欲しいと思っていたから、ユウちゃんを手放したんだよね」
カオリンは、圭の言葉を受けて、コクリとうなずく。
398 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月21日(月)23時27分56秒
「つんくさんは、ユウちゃんを捨てることを決めた日、カオリンにこう言ったんだ」
カオリンは、手を胸に当て、静かに目をつむった。
カオリンの記憶に、つんくの病気により、少し頬のこけた顔がよみがえってきた。
399 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月21日(月)23時29分10秒
「飯田。もう俺は、ユウコと一緒にいてやることが出来へん。
俺自身、明日も知れない身なんや。
まだ、死ぬって決まったわけやないし、保田医師の話では、致死率自体もそんなに高くないし、
ワクチンさえ完成すればふだんの生活に戻れる。
そうなったら、ユウコも手元に戻すことが出来るんや。でも、いまはあかん。
今、ユウコを俺のもとにおいとったら、ユウコの身に危険が及ぶ。
俺は、どうなるかわからへん。でも、ユウコには、ずっと生きといて欲しいんや。
ははは。単なる親バカ、飼い主バカや思われるかも知れへんけれど、俺の最後の願いや。
せやから、頼むわ。こっそり、ユウコのこと見守っといてくれや。
そして、機会があったら、伝えといてくれ」
400 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月21日(月)23時29分42秒
カオリンは、つんくの言葉をみんなの前でそのまま繰り返し、そして、一呼吸おいた。
401 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月21日(月)23時30分54秒
「生きろ…………って」
402 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月22日(火)01時18分26秒
「それが、つんくさんの遺言になった。
それから数日後、日頃のハードスケジュールによる過労も重なって、容態が悪化。
帰らぬ人となったわ。最後まで、ユウちゃんのことを心配してたそうよ」
403 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月22日(火)01時19分25秒
ここで、カオリンは、言葉を止めた。目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
誰も語らず、シーンとした部屋。
なっちが、その沈黙を破る。
「ユウちゃんは、つんくさんの死を知っていたんだべか?」
カオリンは、ゆっくり首を振った。
「カオリンは話していないし、保田医師もユウちゃんには捨てられたとしか言っていないみたいだね。
つんくさんから離れた頃のユウちゃんだと、後を追いかねなかったからね。
今だって、微妙なんだよ」
404 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月22日(火)01時20分18秒
「どういうことなんれすか? 今も……って?」
「みんなに出会って、ユウちゃん自身も大きく成長したと思う。
でも、それでも、ユウちゃんの行動原理は、つんくさんなんだ。
いまだ、つんくさん離れが出来ていない。
この状態のままで、ユウちゃんは、こっちの世界に戻ってこれるのか……。
つんくさんの死を知ったら、そのまま、あっちの世界にいってしまいそうで……」
再び、病室は、沈黙に包まれた。
405 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月22日(火)01時20分58秒
捨て猫ユウコ

うちは、何も言えずに、つんくさんの顔をジッと見つめていた。
つんくさんは、表情は険しかったけど、声は優しく、うちに語りかけてきた。
「俺は、お前を迎えに来たわけじゃないんや」
でも、言っている内容は、きつかった……。
406 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月22日(火)01時21分38秒
「なんでなん? うちのこと迎えに来てくれたんちゃうん? 
うちのこと捨てたんちゃうんやろ? 
理由はわからへんけれど、つんくさん死んでもて、それで、うちら離れてもたんやろ? 
それやったら、もう、はなさへんて言うてぇや! 
天国で二人で暮らそうって言うてぇや!」
うちは、無我夢中やった。つんくさんの表情が、ウソや冗談を言っているものでなかったから……。
407 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月22日(火)01時23分00秒
つんくさんは、無情にも首を横に振る。
「お前はまだ死んでいないんや。来た道を引き返せ。そしたら、現世に戻れる。
それがお前にとって一番なんや」
「ちがう!!」
うちは、自分でもビックリするくらいの声をあげていた。
408 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月22日(火)01時23分48秒
「うちにとって、一番なんは、つんくさんと一緒におることや。
つんくさんに抱きしめてもらうことや。そしたら、なんもいらへん。
うちは死んでもかまへ……」
「ドアホォ!!!」
いきなりなつんくさんの感情に、うちの身体はビクッと震える。
つんくさんの目を見ると、非常に怒っているのが分かる。正直、すごく怖かった。
でも、ここで気持ち的に負けたらアカンと思った。
そして、真っ向から、つんくさんの瞳に挑戦して、グッと見返した。
409 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月22日(火)01時24分40秒
「うちかって、いろいろと考えたわ。
いろんな娘たちに会ったし、時には厳しいことも言われたし、
時には、うちが行動して状況を打開したこともある。
ホンマ、いい経験やったよ。つんくさんといたときでは、思いも寄らない経験。
ホンマ、世界は広いって思うた。
うちの世界は、つんくさんだけやないんやなぁって……」
「それやったら……」
つんくさんが、うちの話を受けて、何か言おうとした。
でも、うちはそれをさえぎる。
「でも、それは関係ないねん」
410 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月22日(火)01時25分47秒
「うちは、見てきた。人間て、ホンマに弱いんやって。
葛藤やいろいろな物に苦しんでいる娘たちを見て、うちは思うてん。
うちは、つんくさんおらんようになって、すごい悲しかったし、辛かった。
でも、つんくさんはどうやってんやろうって……。
もし、ホンマに捨てられたんやったら、べつに、うちのことなんか
どうとも思ってへんやろうとも思った。でも、違うかった……

つんくさん……。うちがおらんでも大丈夫なんか?」
411 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月22日(火)01時26分36秒
一瞬たりとも、うちはつんくさんの目から視線をはずさなかった。
つんくさんの瞳にかすかに動揺の色が走る。
「なに言うてんねん! お、おれはぁ……!」
「うちがおらんでも寂しいないんか? 
うちは、つんくさんがおらんかったら、メッチャ寂しい。
もし、つんくさんが、うちを必要としてくれるんやったら……」
「アホかい! 俺の都合で、ユウコの命を奪えるかっ!」
つんくさんは、顔をそむけて、うちから視線をはずした。
412 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月22日(火)01時27分45秒
「つんくさん! 一緒に行こう! 今までの分取り戻そうよ! 
そして、これからは、ずっと、ずっと、ずっと一緒やで!!」
「……………」
つんくさんは、黙ったままや。うちのことで悩んでいるんかなぁ。
そんなん悩まんでいいんやで。うちは、自分で決めたんや。
うちは、つんくさんと一緒やったら、それでええねん。
そして、つんくさんも、うちのことを必要としてくれていれば……。

うちは、つんくさんの乗る船に、手をかけた。
自らも、乗り込むために……。
そして、乗り込んだ瞬間、うちは、もう、戻ることが出来へんようになる。
天国への片道切符。つんくさんとともに……。
413 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月22日(火)01時28分20秒
語り部・飯田圭織

「カオリ! ユウちゃんの心拍数がまた下がってるよ!」
圭が、計器の数字が下がっているのを指さしながら叫ぶ。
「まずい。このままだったら、ホントにやばいよ!」
8人の表情が一気にこわばった
「ところで、こんな緊急事態なのに、なぜ、矢口さんが来ていないんですか? 
矢口さんて、ユウちゃんの今の飼い主じゃなかったんですか?」
よっすぃは、悲痛な叫び声に近い声をあげる。
414 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月22日(火)01時29分16秒
「矢口は来ないよ。というよりも、来れないんだ。
あの娘は、ユウちゃんに「サヨナラ」したんじゃないのかなぁ」
カオリンは、ユウコを見つめながら、答えた。
「じゃぁ、あたしの部屋にユウちゃんを預けたのも、そういうことなんですか?」
よっすぃは信じられないという顔をしながら、呟いた。
「ユウちゃんに語りかけるには、矢口の協力が欲しいところだけれど、
仕方ないか……。あたしで、やれることはやらないと……
ね、ユウちゃん」
415 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月22日(火)01時30分30秒
カオリンは、無言のまま、真剣な表情で、ゆっくりと、
ユウコの入れられた生命維持装置のケースに手をかける。
皆は、彼女の動きに無言で注目している。
そして、ケースを開き、息絶え絶えのユウコの前足を両手で優しく包んだ。
「たぶん、もう、あまり時間は残されていません。
今から、カオリンが、ユウちゃんに語りかけるアンテナになります。
だから、みんな、思いを伝えて……」
416 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月22日(火)01時31分17秒
9人いる娘のうち、8人の想いが、いま、ユウコに降り注ぐ。
417 名前:341 投稿日:2002年01月22日(火)04時32分38秒
す…すごい耳より情報…楽しみに待ってます。
が、ということはこれも本当におわっちゃうってことで…
矢口の事もかなり気になるんですが、
やはり裕ちゃんの行動が…。
ラストまで駆け抜けてください!!
418 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月22日(火)14時12分10秒
裕子を助けて・・・
でも・・・つんくのもとに居るほうが・・・幸せなのか?
なんかどっちのラストになって欲しいのか・・・読んでて???になっちゃった(w
とにかく裕子猫の幸せを〜!!
新作かなり期待してます。
419 名前:kei 投稿日:2002年01月23日(水)00時29分22秒
今日は、次回作の準備をしていたので、「捨て猫ユウコ」の更新は今日はナシです。
すみませーん。先に、返事だけ、書かせてもらいます。

341さん
 今の計算では、あと2回でエンドです。多少の変動はあるかも知れませんが。
 最後まで、応援ください。

418の名無し読者さん
 わたしも、途中から、どちらの方がユウコにとって幸せなのか悩みました。
 今回のテーマは、非常に難しいです。ついうっかり、こんな難しいネタで
 書き始めてしまいやした。もう、そりゃぁ、墓穴です。
 ただ、結論は、ユウコ自身が下すと思います。彼女自身の幸せのために。
420 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月23日(水)23時20分25秒
捨て猫ユウコ

うちは、舟のヘリに手をついて、グッと、身体を舟の中に引き上げようとした。
(ゆうちゃぁん!!)
舟に乗り込もうとするうちの身体が止まる。
「つんくさん、何か言うた?」
つんくさんは、頭を左右に振り、怪訝そうな顔でうちを見ている。
後ろを振り返る。でも、誰もいない。
(ゆうちゃん。行っちゃダメだよ!!)
頭から足のつま先まで、一気に電流が流れたような衝撃に襲われる。
「カオリンなんか?」
421 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月23日(水)23時22分16秒
(ユウちゃん。聞こえてる? ちゃんと届いているか分からないけれど、
カオリンの気持ち、伝えるね。そして、みんなも気持ちも……。

ユウちゃんにとって、つんくさんが一番なのは知っているし、あたしたちの中でも、
やっぱ、矢口だろうけど、カオリンなんか、しょせん、
みんなとをつなぐパイプ役でしかないのかも知れないけれど、
でも、カオリンだって、ずっとユウちゃんのことを見てきたんだよ。
ユウちゃんにとって大切なつんくさんだけれど、
死んじゃったつんくさんなんか選ばないで! 
生きているあたしたちを、そして、カオリンを選んでよ!! 
ユウちゃんのいない毎日なんて考えられないよ。ダメだよぉ。
ユウちゃんがいないと、カオリン駄目だよぉ。お願い。行かないでぇ)

かおり………。ホンマ、おっきな子供やなぁ……。
422 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月23日(水)23時24分12秒
(ユウちゃん? 行くんだべか? なっちも、一回、天国行きかけたけれど、
あそこは、美味しい物なにもないべさぁ。絶対、なっちと一緒にいた方がいいっしょ?
もう、意地悪しないからさぁ……。ちゃんと、ユウちゃんの欲しい物、何でもわけて上げるべさぁ。
最近、後藤に食事制限されているから、いろいろと余っているんだ。
早く帰ってこないと、全部腐っちゃうんだべさ。
もう、このまま帰ってこないなんて、なっちは、絶対許さないよ。
食べ物を粗末にする娘は、なっちは絶対許さないっしょ。許さない。本気で許さないんだかんね。
なっちを助けておきながら、ユウちゃんは、行くなんて許されないっしょ? 
絶対許されないよ。許されない。
だから! 一緒に、美味しい物イッパイ食べるんだべさ!)

なっちぃ………。あんたは、やっぱり食べることやなぁ……。
423 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月23日(水)23時25分34秒
(あぁあぁ〜。ユウちゃん聞こえますかぁ? えーっと、あたしなりに色々と考えてみましたぁ。
で、ゴトーの結論。やっぱり、ユウちゃんと別れたくないです。
今まで、ユウちゃんがいなくなるってこと、想像したこと無かったけれど……。
いるのが当たり前だったから、いない方がおかしかったから。
ユウちゃんのいない毎日って、やっぱり、変だよ。ゴトーがゴトーでいられるのも、
もしかしたら、ユウちゃんの存在があるからかもしれないんだよ。
ユウちゃんがいなくなったら、ゴトーはゴトーじゃなくなるかもしれない。
駄目だよ。そんなの。
色々とあって、なっちと仲悪くなったときも、ユウちゃんがいたから、救われたんだよ。
おかげで、今は、なっちといい関係築けている。いわば、なっちとゴトーの後見人なんだから、
その責任果たすことなく、いなくなるなんて、そんな無責任なのは、やっぱユウちゃんじゃないんだ。
だから、戻ってきてよ)

後藤………。うちがいてもいなくても、後藤は後藤やで。
424 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月23日(水)23時27分02秒
(ユウ……。いや、中澤さん。生きるってこと、前に進むってこと、
あきらめたらアカンのと違うんやないんですか? そういうのって、
中澤さんが言いそうな言葉やん。なに、あたしみたいな、ガキに言われているんですか? 
恥ずかしくないんですか? 確かに、今、中澤さんは、つんくさんの存在で、
全てを捨てようとしてるんかも知れないです。
でも、そんなん、実は、言い訳のようにしか、あたしには見えへんの……。
今の、中澤さんは、前向きに生きていくことを放棄しているように見えてしまいます。
ネコにあこがれるのも変やけれど、ずっと、あたしのあこがれる、中澤さん、
ユウちゃんのままでいて欲しいんや。だから、ホンマ、お願いやから、戻ってきて……。
このまま、行ってしまわれると、あたしは、イヤやねん!!)

加護………。ほんま、ここしばらくで成長したなぁ。
425 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月23日(水)23時28分04秒
(ナカザーさん、痛くないれすか? 苦しくないれすか? 
ののは、胸が痛いれす。心が苦しいれす。
ナカザーさんと、離れ離れになることを考えると、ののの胸は悲鳴を上げています。
心が叫び声を上げています。ののには、難しいことはよく分からないれす。
ナカザーさんみたいな、大人な人の考えることは複雑れす。
でも、こんなののにも分かることは一つだけあります。
ののは、ナカザーさんと一緒にいて楽しかったれす。
ナカザーさんに遊んでもらえて、幸せれした。ののは、失いたくないんれす。
これからも、いっぱい、いっぱい、遊んでくらはい。行かないでくらはい。
その為らったら、ののは、大嫌いな牛乳も飲めるようにします。だから……)

辻ぃ………。いつまでも、その純粋さは忘れたらあかんでぇ。
426 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月23日(水)23時29分08秒
(ごめんなさい、ごめんなさい、本当にごめんなさい。
全ての原因はあたしにあるんです。あの時のあたしは、本当にどうかしていました。
こんなこと謝ってもすむ、問題じゃないけれど、一言だけ言わせてください。
こんなことになって、中澤さんは、あたしのことキライかも知れないけれど、
あたしは、大好きです。尊敬しています。そりゃぁ、ちょっと……、だいぶぅ……、
すごく……、怖いと思うこともありますけど、でも、本心から一番好きなのは、
中澤さんなんです。
あたしに刺されて、黙って行っちゃうなんて、中澤さんらしくないですよぉ。
早く戻ってきて、バンバン仕返ししてください。かんだり、ひっかいたり……。
ちょっと、想像すると怖い物もあるけど、ポジティブ、ポジティブ!!!)

石川ぁ……。ホンマ、調子ええなぁ、でも、そういう石川がうちも好きやで。
427 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月23日(水)23時30分28秒
(吉澤っす。リカちゃんとの一件は、本当にかばってくれて、ありがとうでしたっ。
でも、その結果が、こんなことになってしまって。ホントに、なんて言ったらいいのか……。
あ、でも、あたしの知っている中澤さんだったら「裕ちゃん、こんなんでは死なへんでぇ!」
とか言って復活しそうっすね。っていうかぁ、ホントちゃんと復活してくださいよ。
こんな、弱ちゃっている中澤さん、あたし、見てられないっす。辛いっす。
あたしたちにとって、中澤さんていう存在は、大きいんです。
だから、早く戻ってきて、あたしたちに、大丈夫だってところ、見せてください)

吉澤………。うちは、そんな大きくないでぇ、自分らの方が、よっぽど大きいわ。
428 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月23日(水)23時32分05秒
(ユウちゃん。多分、他のみんなは精一杯引き止めているんだろうけれど、
あたしは、そんなことしないよ。決めるのはユウちゃんだもん。
だから、あたしは、ユウちゃんの気持ちを優先させたいんだ。
変に引き止めて、迷わせたくないんだ。
ユウちゃんが、あたしたちではなく、別の選択肢をとったのなら、それもいいと思う。
行くって決めたんだったら、それもいいと思う。
ユウちゃん自身、悩んで出した答えだったら、それが、一番だと思うから……。
じゃぁ、サヨナラは言わないよ)

圭坊………。アリガト。
429 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月23日(水)23時33分29秒
(…
ウソだ! そんな気持ち、全部でたらめだ! あたしだって、「行くな」って言いたいんだ! 
しがみついてでも、本当は、行かせたくないんだよぉ! ゆうちゃぁぁぁぁぁぁぁ……)

圭坊の叫び声は、徐々にフェードアウトしていった。
8人の言葉が、胸に突き刺さる。
ただ、矢口はこの中にいなかったのが気になっていた。
そういや、この前、変な別れ方したっけ……?
つんくさんと一緒に行くって、決めた決心が大きくぐらついているのが感じた。
うちの決心て、そんな簡単なもんやったんか! うちは自分自身に喝を入れた。
430 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月23日(水)23時34分57秒
でも、そんな心の揺れをつんくさんには見破られたようやった。
「ええんやで、戻っても……。今やったら、まだ間に合うわ」
つんくさんは、優しい笑顔で言う。
その笑顔をさえぎるかのように、うちは、はげしく首を横に振る。
「ええねん! うちの答えは、一つだけや!」
そして、一度は止めた動きを再開し、再度、舟に乗り込もうとした。
もう、完全に乗り込もうとしたとき……。
誰かに、肩をムンズとつかまれて、動きを止められた。
431 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月23日(水)23時36分01秒
「なんやぁ!! カオリン、まだ言いたいことあるんかぁ! 
うちは、自分で決めてん! もう、迷わさんといてぇ!!」
その手を、パシリッと振り払いながら、その反動で、後ろを振り返った。
「!!」
うちは、完全に硬直してしまった。
そこにいたのは……。
一度は手を振り払われながらも、まだ、しっかりと手を握っているのは……。
その大きな瞳から、大粒の涙を流しながら、ただ、無言で首を横に降り続けていたのは……。
432 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月23日(水)23時36分42秒
矢口ぃぃぃぃ!!
433 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月23日(水)23時37分38秒
「うん。もう、ユウコの気持ちは決まったな」
つんくさんは、今まで見せた笑顔の中で、一番の笑顔をうちに見せた。
うちの記憶に永遠に残る最高の、そして最後の笑顔。
そして、その瞬間、つんくさんと舟の周りを白い霧がおおいはじめた。
「つんく……さん?」
「もう、ええわ。ありがとうな、ユウコ。
お前に、一緒に行こうって言ってもらえたとき、ホンマに嬉しかったわ。
あぁ、俺も独りやないんやなぁってな。でも、危うく、俺は、選択を誤るところやったわ」
434 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月23日(水)23時38分50秒
つんくさんは、矢口を見る。
「お前らが、ユウコを引き止めてくれんかったら、俺は、あのままユウコを
あっちの世界に連れていってしまうところやったわ。
そして、一生、俺は、後悔していたと思う。ホンマ、ありがとうな。
他のメンバーにも、そう伝えておいてくれ」
まりっぺは、悲しそうな瞳をしたまま、コクリとうなづく。
「ユウコ……。今度こそ、ホンマにお別れや」
「イヤヤァ。つんくさん。また、うちを置いて行くんかぁ?」
「あぁ。また置いていくねん。迷いのあるお前を連れていけるほど、
あっちの世界は甘くないんや。それに、ユウコには、俺がおらんでも、
現世で、最高の仲間たちが待っている。大丈夫や」
435 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月23日(水)23時39分50秒
うちらの間を分ける霧はさらに厚さを増す。
だんだんと、つんくさんの姿も見にくくなっていく。
うちは、我知らず、霧の中に走り込みそうになった。
それを、まりっぺは、グッと腕を引っ張り、引き止める。
そして、再び、首を横に振る。
もう、つんくさんの姿が見えへん………。
「なぁ、ユウコ。また10年後、20年後。お前が天寿を全うしたとき、
またここに来たら、今度こそ、ちゃんと迎えにきてやる。約束や。
だから、それまで、精一杯、生きてくれ。俺の分まで………」
436 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月23日(水)23時41分39秒
そして、再び、霧が晴れたとき、その場所には、舟もつんくさんの姿もなかった……。
うちは、まりっぺの手をしっかり握ったまま、その場に泣き崩れた。
全てを涙で流すために。
全てをきれいに流して、そして、現世に、みんなの待つ現世に戻っていくために……。
437 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月23日(水)23時42分20秒
サヨナラ、つんくさん。そして……ありがとう……………
438 名前:341 投稿日:2002年01月24日(木)03時07分23秒
おおっ!やはりこっちをえらびましたね。
何故ここに彼女がいたんでしょう?
謎…あぁ、残り少なくなってしまう更新…
がんばってください。
439 名前:kei 投稿日:2002年01月24日(木)23時27分45秒
作者です。今回、終章です。長かった物語も本日で終わりです。
読んでくださった方、ありがとうございました。
稚拙な文章で、書き切れていない部分も実は多く存在します。
このラストで、読者様のご支持、ご納得をいただけるかは分かりませんが、
最後まで、ご堪能いただければ幸いです。
440 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月24日(木)23時29分53秒
捨て猫ユウコと9人の娘たち

うちは、目を開いた。どこかの病室みたいや。
目の前には、まりっぺの涙でクシャクシャになった顔があった。
ネコの姿のうちは、まりっぺに抱きかかえられて、
そして、右前足をしっかり手で握りしめてくれていた。
「にゃぁぁぁ……」
まだ、傷は痛い……。力無く鳴き声を上げてみる。
「ユウちゃん!!」
まりっぺは、目をパッと開き、嬉しげに声をあげる。
他の娘たちも、うちとまりっぺの周りにドヤドヤと集まる。
441 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月24日(木)23時31分03秒
「ユウちゃん! 戻ってきたんだね!」
「さっそく上手いモン食べにいくっしょ!」
「ゆうちゃぁぁん!!」
「ナカザー、もう痛くないれすかぁ?」
「完全復活っすね!」
それぞれが、思いの言葉をうちに投げかける。みんな、ひどい顔や。
誰一人、涙で頬が濡れていない者はいなかった。
みんな、アホやなぁ……。うちなんかのために、泣いてくれでもエエのに……。
ほんまアホばっかりや。ホンマにありがとうな。
442 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月24日(木)23時32分00秒
「ユウちゃん! なんで勝手に死んじゃおうとするんだよ! 
矢口、すごい悲しかったんだぞ。このぉ、馬鹿ユウコ!! 
もう、放さないかんね! 絶対、絶対、ずっと一緒だよ」
そうやなぁ、最後、まりっぺが手を握っていてくれなかったら、
うちは、向こうの世界に行っていたかもなぁ……。
うーん。でも、なんか引っかかるのはなんでやろ。
「チッチッチッ! 駄目っすよ。
もう、矢口さんに、ユウちゃんは任せられないです。
それに、いまの飼い主の権利は、あたしにあるんすよ。お忘れですかぁ?」
よっすぃが、まりっぺから、うちを奪いながら、権利を主張する。
443 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月24日(木)23時33分24秒
「そうだよねぇ。矢口の彼氏、ネコ嫌いで、もうユウちゃん飼ってられないって悩んでいたよね。
それで、今日も来るの遅れたんでしょ? ていうか、来ないつもりだったんでしょ?」
「あわわわわぁ……。なんで、カオリン、そんなこと知ってんだよぉ」
「宇宙の大いなる意志が教えてくれました(笑」
「またぁ、わけの分からないことを!! あぁ、違うんだよぉ。ユウちゃん! 
もう、彼とはさっき別れてきたんだよ。
だって、ユウちゃんを認めてくれないなんて、矢口、やっぱだめだもん。
矢口にとって、ユウちゃんが一番なんだよぉ! 
のわぁぁ! そんな目で見ないでぇぇぇ!(汗」
うちは、まりっぺを困らせようと、わざと、ジト目で見つめる。
444 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月24日(木)23時34分13秒
「まあ、飼い主の権利云々の前に、誰が一番、ユウちゃんの気持ちを理解できるかが大切ね。
その点、カオリンが一番だよ。だって、ユウちゃんとお話しできるんだモン」
そう言いながら、カオリンは、よっすぃの手から、うちをもぎ取る。
他のみんなは「はぁ?」って顔をしている。
「ねぇ、ユウちゃん?」
カオリンがうちに話しかけてきたけれど、ここは敢えて無視。そっぽを向く。
「はい、却下!!」
ごっちんがすかさずツッコミを入れる。
445 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月24日(木)23時34分59秒
そして、なっちがうちをカオリンから取り上げる。
「ユウちゃんは、美味しい物好きなんだべ。
誰のところにいて、一番美味しいもの食べれるか考えるべさ」
「それに、ゴトーと一緒にいたら、毎晩、ゴトーの着替えシーン見られるんだぞ。
てぇことでぇ、ユウちゃんは、なっちとゴトーの共同管理と言うことで……」
あ、あかん! うちの食欲と性欲を見事に突いてきた、見事な連係プレーや!
446 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月24日(木)23時36分14秒
「ちょっと、待つのれす! みなさん、大きな勘違いをしているのれす。
ナカザーとののは、生まれたときから一緒なのれす。
もともと、のののネコさんである、ナカザーの所有権を、
みんなが主張するのはおかしいのれす。
そう言うのを、ホンマツテントーというのれす!」
「あたたたた……。また、こいつそんなこと言っとたんかぁ? 
それやったら、あたしも一枚かむわぁ。
ののが、飼うって言うんやったら、あたしも、一緒に飼う。
でないと、ののが、なにするか分からへんからな」
そう言いながら、なっちの手から素早く、うちを奪い取る。
447 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月24日(木)23時37分04秒
イタタタタ……。まだ、傷ふさがってへんし、うち、多分、絶対安静やと思うでぇ。
「もう、子供は黙ってな。ユウちゃんは、まだ、体力回復していないんだから、
こんな風に、周りで騒いでいたら、傷にさわるだろ?」
おぉ、さすが、圭ちゃん。いちおー、医者だけはあるわ。
めっちゃ、まともなこと言っていて、心強いわぁ
「だから、ユウちゃんは、あたしが研究室に連れていって、
そこでずっと面倒見ます」
448 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月24日(木)23時37分49秒
「ちょっと待ってくださぁい! そもそも、今回の発端はあたしにあったんですよぉ。
ここは、あたしが、ユウちゃんの面倒見るべきだと思います!」
リカが、手をシュッパと上に突き上げながら、堂々と断言する。
「それに、着替えシーンだったら、あたしは、後藤さんより自信ありまぁす!」
あ。またワケの分からないことを……。その瞬間、ごっちんに蹴飛ばされてる……。
449 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月24日(木)23時38分37秒
9人の娘たちが、ワイワイと、意見を主張しあっている。
誰が、うちの面倒を見るかってことで、誰も、譲らない。
うちは、その喧噪から、コソッと抜け出した。
傷は完治していないし、体力的にも、動かない方がいいと思う。
でも、無性に、外の空気に触れたかった。
生きているってことを実感したかったんかもしれへん。
病院の屋上をめざした。
外は、すでに、夕暮れにさしかかっていた。
450 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月24日(木)23時39分35秒
しばらく、そこで、うちは、一匹、たそがれていた。
そしたら、背後で、人の気配がしたので、振り返ってみた。
そこには、笑顔をうちに送っている9人の娘たちがいた。
その中で、代表して、カオリンがうちに話しかけてきた。
「ユウちゃん……」
あんな、カオリン。うちの飼い主は、つんくさんただ一人やから。だから……。
「うん、分かっている。他の娘たちも、ちゃんと分かっているよ」
9人の娘たちは、うちを見て、コクリとうなずいた。
ありがとうな、みんな。
ホンマ、みんながうちを受け入れてくれると言ってくれたとき、メッチャ嬉しかったで。
451 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月24日(木)23時40分08秒
うちは、捨て猫ユウコやから……。
天国に行って、つんくさんの元に帰るまでは、うちは、捨て猫のままやから。
うちの飼い主は、つんくさんだけやから……。
452 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月24日(木)23時42分07秒
うちの言葉が、みんなに届いているのか、みんな再び、笑顔のまま、うちにうずいてくれている。
「ユウちゃん、いこっ!!」
まりっぺが、うちを抱え上げる。そして、うちの前足に手を添えて、軽く握ってくれた。
残り8人、うちを囲むように集まった。
そして、9人の娘たちの笑顔に囲まれて……。
いま、うちと9人の娘たちの新たな生活が始まる。
453 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月24日(木)23時43分40秒
--了--
454 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月25日(金)18時11分09秒
お疲れ様でした。
感動のラストでした。(w
新作の姐さん主演作品心よりお待ちしております。
455 名前:341 投稿日:2002年01月25日(金)18時50分23秒
お疲れサマですた。すごくいい終わり方でした。
かなり堪能させていただきました。
次回作も期待しています。
456 名前:kei 投稿日:2002年01月27日(日)04時56分42秒
作者のタワゴト

以下、くだらないことを書いているので、興味ない方はとばしてください。
今回の作品「捨て猫ユウコの物語」は、本当に難産でした。
途中、完全に更新がストップしていたのは、途中にも記したように、
超ハードな日々が続いていて、物理的に、書き進めるのが不可能だったということもあるのですが、
気持ち的にも、文章やストーリーがなかなか思い通りにならなくて、
半分、ぶん投げてしまっていたところもありました。正直な話……。
ですから、このまま、スレが消えてしまってもいいや、と思っていました。
そんなとき、久しぶりに、気になってスレを見てみると、読者様の応援メッセージがあり、
「読んでくれている人がいるのに、責任をここで放棄するわけにはいかない」と思いなおし、
何とか、ラストまでこぎつけることが出来ました。

457 名前:kei 投稿日:2002年01月27日(日)04時58分22秒
物語中、時間的な問題、ストーリーの流れ上の問題、レス500以内におさめるという問題等から、
割愛したエピソードもあり、全てを書き尽くしたわけではないです。
また、機会があれば、外伝、番外編的なノリで、書いていければいいかなぁと思います。
そして、計らずとも、次につなげられるような終わりになってしまいました。
某有名作家さんの「三毛猫ホー○ズ」のように、「捨て猫ユウコ」もシリーズ化
出来れば、楽しいっすね。妄想はふくらみます(w
では、今回は、白板だったので、次回作は、赤板で、スレを立てようかなぁ……。
今の予定では、長編書くと疲れるので(汗)、裕姐さんの短編でいくと思います。
では、数少ない読者様。本当に、応援ありがとうございました。
次回の作品も読んでいただければ光栄です。
あ、そうそう。最近思ったこと。裕姐さん、なんか、太ったと思いません? 
え? 幸せ太りっすかぁ?(w
458 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月28日(月)02時14分13秒
赤板チェックします。
姐さん11月〜12月は確かに太ってたけど・・・今は元に戻ったような・・・(w
去年撮影分の放送分が今流れてる(w
もうちょっとしたら元に戻ると・・・

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