ふたりのクリスマス。

 

肌寒い朝。澄んだ空気。カーテンの隙間から差し込む朝日。
ベッドの中、目が覚めて寝返りを打つと…愛しいヒトの寝顔、のはずが。

「ちょーちょーちょー、イイカンジ!ちょーちょーちょーちょー、イイカンジぃっっ!!」
ベッドの中、目が覚めて寝返りを打つと…愛しいヒトのバカでかい声。

「ウォウウォ、ウォウウォ!ウォウウォ!フゥ!フゥ!」
「…なにしてんの?」
あたしは、隣のベッドに立ち上がって踊り狂っている愛しい運命のヒトに冷ややかな視線を送る。
「あっ!?起こしちゃいました!?」
あんなバカでっかい声で騒いどいて…起きない方がおかしいだろー。
不機嫌そうなあたしの声に気付いた彼女はダンスを中断し、慌ててベッドから飛び降りた。

「よっすぃーさぁ、朝からテンション高すぎだよ」
「だって気持ちイイじゃないですかぁ、冬の朝って。今日ライブあるし、ちゃんと振り入れとこうかなって思って」
「へぇー、それはそれは。エライエライ」
「矢口さん…なんか、怒ってます?」
よっすぃーはしゃがみ込んで、ベッドの上で上半身だけ起こしているあたしの顔を下から覗き込んでくる。

「べつに。朝っぱらから元気だなって思っただけ」
「なんか、体力有り余っちゃってて。すぐ動きたくなっちゃうんですよねー」
そう言って立ち上がると、よっすぃーは腰を左右に捻ってストレッチを始めた。

「だったら、そのへん走ってくれば?」
「あっ、そうしよう!矢口さんは?」
「…行くワケないっしょ」
隣のベッドの枕元にぽつんと置かれた、よっすぃー持参の目覚し時計に目をやる。
朝食の時間までは、まだ2時間近くもあった。

(『こうやっとけば、余裕持って起きられるじゃないですかぁ』)
昨日の夜、得意げに言いながら時計の針を10分進めていたよっすぃー。
朝ゴハンの2時間前よりもさらに10分の余裕を持って元気良く起床、隣のベッドに眠るあたしを
叩き起こすほどのボリュームで新曲を熱唱(振り付き)…恐るべし、早起き魔人。

よっすぃーといっしょに目覚める、何度目かの朝。
正確には『いっしょに』じゃなくて…決まって彼女の方が先に起きてて、後からあたしのコト起こして
くれるってのがいつものパターンなんだけど。
彼女の、異常なまでの寝起きの良さ。真冬の澄んだ空気のせいだろうか。

あの時のよっすぃーは、あきれるぐらい寝起き悪かったっけ…。
てきぱきとした動作でパジャマからジャージに着替えるよっすぃーの後ろ姿を見ながら、
あたしは…一年前に出会った『未来の』よっすぃーと、初めて迎えた朝のコトを思い返していた。

あの時は、前の晩がアレだったし…そりゃーもー、人には言えないくらい超超超超すっごいカンジだったし。
翌朝よっすぃーがなかなか起きれなかったのも、まぁ頷けるのだけど。
二人いっしょの夜を何度か重ねていても、ステキなあの夜のような出来事を一度も経験していない
今のあたしたちなら…翌朝のよっすぃーがそりゃーまー寝起きがよろしすぎるのも、まぁ頷けるか。ははっ…。

「じゃ、ちょっといってきます」
着替え終えたよっすぃーこと、吉澤 ”体力有り余っちゃってて” ひとみは、あたしを残して
部屋を出て行ってしまった。
あたしは勢い良く開け放たれたドアがゆっくりと閉まっていくのを見届ると、再びベッドに潜り込む。

ねぇ、よっすぃー。
隣同士で別々に目覚めたいんじゃない。
目が覚めたらひとつのベッドで、隣に眠ってるよっすぃーの寝顔が見たいんだよ…矢口は。

勘違っちゃって暴走しっぱなしだったあたしと、あたしの態度に戸惑いながらもずっとあたしのコトを
想い続けてくれていたよっすぃー。
そんな二人のわだかまりが解けたあの夜から二ヶ月、あたしたちの関係は…ツアー中、お互いが
一人部屋のときはよっすぃーが目覚し時計片手にあたしの部屋に泊まりに来てくれるまでになっていた。

と言うと聞こえは良い(?)が、二人の関係はあくまでよっすぃーがあたしの部屋に『泊まり』に
来るだけでその先に何があるワケでもナニがあるワケでもなく、ただ隣のベッドで眠って朝が来たら
帰っていく…という、何とも不思議なカンケイ。
これまで何度、よっすぃーのベッドに潜り込もうと思ったことか…それでも。
同じ失敗を繰り返してはいけない、よっすぃーをひかせるような行動だけは避けよう、
その決意だけがあたしのセクハラ行為にブレーキをかけていた。
だけど、そろそろよっすぃーの自主性にまかせるのも、限界かも知れない。

同じ部屋で夜遅くまでいろんな話したり、そーゆーのもすっごく楽しいけど…やっぱりなんか、
違う気がして。
それ以前に彼女はあたしのコト、どう思ってるのかな…なんて、信じていたはずのよっすぃーの
あたしへ対する気持ちまで疑いたくなってくる。

よっすぃーの顔が好き。声が好き。背の高いトコも好き。ぜんぶ好き。
そして彼女のコト少しずつ知っていくたびに、『好き』なトコもどんどんふえてってる。
よっすぃーの優しいトコ。明るいトコ。元気なトコ。そして、のんびり屋さんな性格。
数え上げたらきりが無いくらい彼女の全てに夢中になっているあたしと、一体なにを考えているのか
今ひとつ掴み所の無いよっすぃーとの温度差は、彼女のコトを知れば知るほど開いていくような気がしていた。

もしかしてよっすぃーにとって、あたしは単なる『教育係』でしかないのかなぁ…。
そんな不安を抱えながら、ズルズルとここまでやってきてしまった。

ねぇ、よっすぃー。
こんなカンジで特別な一日が終わってくなんて、そーゆーのってすごく嫌だよ。

12月24日。
今日は…二人で過ごす、はじめてのクリスマスなのに。

―――

「ねぇ、よっすぃー。やっぱ起きんの早すぎじゃない?」
あたしはさっきから目覚し時計を持ったままベッドに寝転んでなにやら落ち着かない様子の
よっすぃーに、同じく隣のベッドでゴロゴロしながら話しかける。
夕食も終えて、時刻は夜10時を回っていた。

「ん?ああ、そうですねぇー…ののはアロエヨーグルトが主食だから。あたしと違って」
「あ?何のハナシよ?」
「ん?ああ、吉澤はぁ…ベーグルですよ?」
こんな調子でさっきからよっすぃーは、あたしが話しかけてもまるで上の空。
ときどき時計を見たり、あたしの話に適当に相槌打ったりしながら、ベッドの上でゴロゴロ寝返りを打ってる。

「ねぇ…もしかしてさ、矢口と話しててもあんま面白くない?」
「ん?何か言いました?」
あたしに背中を向けて寝転んでいたよっすぃーが、顔だけこちらへ振り返って言う。

「…もういいよ」
いつにも増してぼんやりしているよっすぃーに少々苛立ちを感じたあたしは彼女と会話するのを諦め、
ベッドからおりると窓際へ歩み寄る。
暖房で温まった部屋の中でも窓の傍へ近付くと少し、ひんやりとした。

「あっ!見て、よっすぃー!雪降ってる!!」
あたしは思わず、後ろのよっすぃーに向かって叫ぶ。
カーテンを開けると、たぶんまだ降り始めたばかりの雪が部屋の明りに照らされてきらきらと舞っていた。
「うそっ!?」
窓に背を向けて寝転んでいたよっすぃーも、慌ててベッドからおりるとあたしの方へ駆け寄ってきた。

「すごいよね!ホワイトクリスマスじゃん」
「明日まで降っててくれるといいなぁ…」
あたしは少しだけ顔を上げて、隣で微笑むよっすぃーの笑顔をこっそり盗み見る。
ぜんぜんクリスマスらしくないあたしたちのクリスマスに、神様がくれたプレゼントだと思った。

「矢口さんは、来年のクリスマスってなにしてると思います?」
つい、よっすぃーの顔に見惚れてしまっていたあたしは、突然こっちを向いた彼女から慌てて目を逸らす。
「来年?なにしてるかなー、やっぱ仕」
「吉澤はぁ…」
人のハナシ最後まで聞けよ…。
自分から質問したくせによっすぃーは、あたしの答えを待たずに勝手に喋り始めてしまった。

「矢口さんと、すごしてるって思います」
不覚にもちょっとだけ、ジンときてしまった。

「仕事で」
「あ?」
なんだそりゃ、単なる予言かよ…少しでも感動したあたしがバカだった。
イブの夜。二人きりの部屋。窓の外には白い雪。
これ以上ないくらいロマンチックな状況で全てをブチ壊すようなセリフを堂々と吐ける彼女の無神経さに、
惚れた弱みとはいえさすがのあたしもそろそろキレてもいいんじゃないだろうか…そう思い始めていた。

「そんなのわかんないじゃん。よっすぃーがプッチの仕事してるかも知んないし、
矢口がタンポポの仕事してたらどーすんの?」
「ああ…そっか」
意地悪なあたしの切り返しに、よっすぃーは少しがっかりした様子で俯いた。

「あっ!じゃあ、矢口さんがプッチに入ればいいじゃないですかぁ」
「はあ?」
なにワケのわかんないコトを…冗談だろうと思いつつ彼女の顔を見上げると、その表情は真剣そのもの。

「で、代わりにごっちんがタンポポ入るの」
「いや…なに言ってんの?」
「そっか。ミニモニもあるんですよね、矢口さん」
そう言うと、よっすぃーは腕組みして何やら考え始めた。
ああ、もぅ…何が始まるのかしら、ちょーちょーちょーちょー楽しみ楽しみ。はははははは。

「そっか。矢口さんと保田さんを、とっかえっこする」
「プッチ二人になっちゃうよ?」
「えっ、三人ですよぉ。ごっちんと矢口さんを換えて、保田さんと矢口さんを換えたから」
「しっかりしてよー、矢口は一人しかいないんだよ?」
「え?………あっ!」
神様……。

「じゃあ、保田さんがプッチとミニモニ。かけもちでやればいいんだ。ねっ?」
嫌なミニモニ。だなー…。
「よっすぃー。お楽しみのところ申し訳ないんだけどさ、そんなのできるワケないんだから
いい加減バカなコト言うのやめてよ」
あたし、なんか酷いコト言ってるかも…言いながら少し胸が痛んだけど、あたしのガマンにも限界ってモノがある。

「わかんないですよ?つんくさん、こういうの好きそうだし…言ってみる価値はあると思うんだけどなぁ」
「絶対ないって」
「だって、同じ仕事してればずっといっしょにいられるし」
そう言ってくれるのはうれしいけど、矢口が大切にしたいのは来年のクリスマスじゃなくてさ。

こうしてる間にも、時間はどんどん流れていって。
もうすぐ終わっちゃうよ…あたしたちの、クリスマス。

―――

「ねぇ、よっすぃー…タンポポがカオリ一人になっちゃってるけど、いいの?」
「あれっ?今プッチ何人だっけ」
「カオ以外みんなプッチ入った。そのうち四人はミニモニと掛け持ちだけど、全員150cm超えてる」
「あれぇ?おっかしーなぁ」
あれから一時間とちょっと、二人して窓際に突っ立ったまま…あたしはどんどん膨らんでゆく
よっすぃーの、夢のユニットシャッフル計画に付き合わされていた。

「ちゃんと紙に書きながらやんないと、わかんなくなるよ?」
隣で両手の指を折って真剣に何かを数えている『運命の人』を見ながら、ふと言い知れぬ空しさに襲われる。
聖なる夜に…なにやってんだろ、ウチら。

「あーっっ!!」
「なに!?」
突然大きな声で叫んだかと思うと、よっすぃーはくるりと後ろへ振り返ってベッドの方へ走り寄る。
そして枕元に転がっていた目覚し時計を手にとると小さく頷いて、それを再び元の場所へ戻した。
枕元によっすぃーが置いたそれにふと目をやると、時計の針はちょうど12時をさしていた。
本当に終わっちゃったんだ…ふたりのクリスマス。

「矢口さん」
「っ!?」
こっちへ戻ってきたよっすぃーに突然両肩を掴まれて、あたしは思わず身を固くした。
そして恐る恐る見上げると、彼女の潤んだ瞳は真っ直ぐにあたしだけを捉えていた。

コレはひょっとしてもしかしていや、もしかしなくても、きっと。いや、ぜったい。間違いない。ついに!!
それにしても、どうして突然?なんか何の脈絡もないんだけど…まいっか。せっかくだしねっ!!
あたしは彼女の呼びかけに応える代わりに唇を結ぶと、ゆっくりと目を閉じた。

「メリークリスマス」
耳元で、とてもやさしい声が聞こえて…そしてあたしの唇は、とてもやさしい感覚に包まれた。

「12時になったら、しようって決めてたから」
唇が離れると、照れたように視線を逸らして言った。
彼女の後ろに見えている目覚し時計は、12時2分くらいのあたりをさしてる。

「あのさ、よっすぃーのクリスマスって…25日なの?」
胸のドキドキが少しだけ落ち着いたところであたしは、目の前に立つよっすぃーに疑問をぶつける。
質問された当のご本人は、きょとんとした顔で再びあたしの方へ向き直った。

「クリスマスは25日じゃないですか。全国どこでも」
「全国ってゆーか、世界中どこでもそうなんだけどね」
好きな人同士の『クリスマス』って言ったら普通は、イブのコトを言うんでないかい?
そのへんをツッコもうとしてあたしは、ある重要なコトに気が付いてしまった。

(『こうやっとけば、余裕持って起きられるじゃないですかぁ』)
もしかしてこの人…自分で時計10分進めてたコト、忘れてる?
「早く気付いてよかったぁ。ちょっとだけ遅れちゃったけど、マジ焦った」
よっすぃー、とりあえず言わないでおいてあげるけど…キミのクリスマスは、あと5分くらい先だよ?
そのおかげで矢口はクリスマスに最高のプレゼントもらえちゃったワケだから、全然オッケーなんだけど。

「あのぉ…矢口さん」
「ん?」
よっすぃーはなにやら手をもじもじさせて、上目遣いであたしのコトを見ている。
上目遣いで上から見下ろされるってのも、何か変なカンジだけど…それでも、よっすぃーはやっぱりカワイイのであった。

「続き…しても、いい?」
「えっっ!?」
つっ、つつつつつ、つづきぃぃぃーーーーっ!?
一瞬、アタマの中が真っ白になった。
そして白紙に戻った脳は、恐るべき速さでそのページを埋めてゆく。

アレの続きってコトは、やっぱし…アレよね?そーゆーコトだよね!!ねっ?ねっ?
って誰に聞いてんだ、あたしは。いや誰に聞くまでもなく、コレはそーゆーコトだ!!
裕ちゃん、聞いて!!今なにしてる?隣の部屋でみっちゃんと寂しく飲んでる?
みっちゃんがゲストで来てて良かったね!!
ヤグチはねー、これからねー、『続き』をしますっ!!!ジャマすんなよ!!そんじゃ!!

「…うん。しよっか」
あたしは今にも顔がニヤケそうになるのを必死で堪えつつ、俯き加減で呟いた。

「ちょっと待っててくださいね」
「えっ」
ニヤつくあたしを置き去りに、よっすぃーは床に座り込んで自分のバッグをガサゴソと漁り始めた。
「あれぇ?確かココに…ああ、あったあった。やっぱ書いとかないと、わかんなくなる」
そしてバッグの中から登場したモノは、ノートとシャーペンだった。
裕ちゃん…今から、そっち行ってもいいかな?

「やっぱミニモニ、一人足んないや…」
「そんなのさー、来年考えればいいじゃん。今を大切にしたいのね、矢口としては」
ムダなコトとは知りつつも、ベッドに寝転んでシャッフル作業を再開したよっすぃーに提案する。

「そういう考え方って…良くないって思います。吉澤はぁ、今より矢口さんとの未来の方が大切だし。
あはっ、ちょっとキザでした?」
「それはキザじゃなくて、バカってゆーんだよ」
「うわっ、ひっどーい!!」
シャーペン走らせる手を止めてムクれるよっすぃーを無視して、窓の外へ目を向ける。

「そうだ!矢口さんの妹って、150cm以下ですか?」
「ねぇ、よっすぃー。もうどーでもいいかも知んないけどさー…雪、止みそうだよ?」
通り雨みたいなモノだったのだろうか…降り始めてから数時間でもう止みかけている雪を見ながら、
ベッドに寝転んですっかりプロデューサー気取りの問題児に話しかけてみる。

「ええーっ!?マジで!?」
予想以上のオーバーリアクションをとってくれた彼女は、ベッドを飛び降りると窓の傍まで駆け寄ってくる。
そして両手を合わせて目を閉じると、何やら神に祈りを捧げ始めた。

「来年も、矢口さんといっしょにすごせますように」
「………」
来年、来年、ってコイツはそれしか言えないのかよ…。
あきれつつもあたしは、胸の奥がだんだんあったかくなってゆくのを感じていた。

来年もいっしょにすごせますように。
よっすぃーはきっと、本当に心からそう思ってくれてるんだよね?
彼女の言葉はたぶん、イコール、心。
あたしみたく言葉の裏にホントの気持ち隠したり、ウソついて相手の気持ち探ってみたり、
そーゆー駆け引きみたいなコトができない人なんだろうなぁ…って、思うコトにするね。

来年もいっしょに。
今よりあたしたちの未来の方が大切。
かなりずれてるけどよっすぃーが言ってくれたコト、ホントはすごく大切なコトのような気がした。

「じゃあ…再来年も、よっすぃーといっしょにすごせますように」
あたしもよっすぃーの隣に並んで、両手を合わせる。
「あはっ、再来年?」
目を開けると、あたしを見てうれしそうに笑った。

「なにー?なんで笑ってんの?」
「ううん。なんかわかんないけど…再来年かぁ。なんか、すっごい先みたいな気がするから」
「そんなコトないよ。すぐ来ちゃうよ、再来年なんか」
一向に進展しない二人の関係に苛立っていた自分が、なんだかバカみたく思えてきた。
進んでない、ってゆーのは単なるあたしの思い込みだったんだ。

「そっかぁー、すぐ来ちゃうかぁ」
だって、あの頃よりよっすぃーは…あたしの前で、こんなにも自然に笑ってくれるようになったんだもんね。

「来年もし、吉澤がプッチやってて矢口さんがタンポポやってても…仕事終わってから会えばいいんですよね?」
「そうだよ。やっとわかったの?」
「うん。わかった」
二人ならんで、雪を降らせるのを止めてしまった空を見上げる。
するとさっきまでずっと雲に隠れていた、まんまるの月が顔を出していた。

あたしは目を閉じて、心の中で手を合わせる。
ウサギさんでもいいし、神様でもどっちでもいいから…矢口のお願い、聞いてください。

来年も再来年も、ずっとずっと…よっすぃーと、いっしょにいられますように。


<Merry X’mas>