★★ 『ハロプロ』バトルロワイヤル★★

 

200X年、日本に革命が起こり国名が日本民主主義人民共和国に変わる。
赤く染まった革命独裁政権の魔手は最初にブルジョワ芸能界に伸びた。
『ハロープロジェクト』も解散に追い込まれラストコンサートの
ツアーバスに乗り込むハロプロメンバー達の顔も冴えない・・・
コンサート会場に向かうバスは方向を逸れメンバー達が「?」と
感じ始めた時、催眠ガスがバス内に充満した・・・・

 

 

気付いた時には何処の学校か分からない教室の椅子に座っていた。
気を失っている時にセーラー服に着替えさせられ首には金属製の首輪を
はめられたメンバー達の目の前には布製のバックが置いてある。
何時の間に教壇に立ったツンク♂が「はいはい、オハヨウサン」
パンパンと手を叩きながら「今から君達に殺し合いをして貰います。
ってかな、総書記様がアイドルは3人ぐらいでええちゅってな、
こないな事になったんや、俺も逆らえへんねん。」
パンと手を合わせ「たのむ、3人ぐらいになるまで殺し合ってくれ」
ざわつくメンバー達に「なんや、文句あんのか?」その時シェキドルが
2人で立ち上がりツンク♂を非難し始めた。
ツンク♂の両手が振り下ろされ2人の額にサバイバルナイフが
突き刺さる。崩れ落ちるシェキドルを冷ややかに見下ろし
一番甲高く悲鳴を上げるレフアにリモコンを向けスイッチを入れる。
ボン!と首輪が爆発しレフアの首が落ちる、
「ええか!明後日にはその首輪が爆発する、そうなる前に殺し
あうんや!そのバックには武器とか色々入っとる!!
さあ!出て戦うんや!!GO!GOGO!GOOOO!!!!」
口々に何かを叫びながら教室を飛び出す『ハロプロメンバー』達・・・
アイドルの頂点を目指す戦いが始まった・・・・

    シェキドルの2人死亡
    レフア死亡

 

「ナンデー、ワタシガー、コンナメニー?」泣きながらダニエルは
走った。引退してたし国籍も違う、最後のコンサートと言う事で
少しでも役に立てばと参加したのだ。「ココハ、ドコ・・・?」
砂利道に佇み辺りを見回す。「ダニエル?」茂みからチョコンと
顔を出したのはアヤカだった。
「アヤーカー!」今でも文通をする親友の出現にダニエルは
アヤカの胸に飛び込む。両手を広げて向かい入れるアヤカの右手には
鈍く光る釜が握られてるが気にならない。
ザクリと背中に刺さった釜にダニエルは暫く気付かなかった、
口から地の泡を吹き崩れるダニエルの笑顔は固まったままだ、
無表情のアヤカは静かにその場を離れた・・・

     ダニエル死亡

 

教室を出るとき吉澤は保田の脇腹を蹴りつけた。「な・・なに?」
目をむく保田に「バックに入ってる地図を見な!」今度はボディに
パンチを入れ「東にある海岸で待つ・・・」言いながら
吉澤は走り去る。
保田の目にある種の光が宿った。
海岸に先に着いた吉澤は砂浜に打ち上げられてたボロ船の櫂を
拾い上げ自分の武器のサバイバルナイフで握りやすいように
グリップを削った。ゆうに3mはある櫂を2mぐらいに割り保田を待つ。
暫くして保田が現れた「ちょっと吉澤!どうゆうつもりなの!!」
保田の手には日本刀が握られていた。
「フン、あんたが目障りなだけだよ・・・・子泣き爺はあたしが貰う!」
走り寄り吉澤が櫂の木剣を保田の頭めがけて振り下ろす、
脇に転がり避け保田は日本刀を突きつけたがサッと後ろに引いた吉澤には
届かない「やるねっ」保田は上段にかまえた。櫂の重さに自然と下段に
かまえる吉澤。
バシャバシャと波しぶきを上げ波打ち際をはしる2人。
吉澤が下段から足を狙い木剣を振る、ジャンプ一番、保田は木剣を避け
脳天に日本刀を打ち込む、「殺った!」思ったが
吉澤の木剣は振り上げられ、振り下ろす日本刀の刃を木剣の先端で
受け止めた。メリメリと二つに割れる木剣に日本刀の勢いが止まり
引き抜けなくなる。狼狽する保田に吉澤は背中に隠し持った
サバイバルナイフを心臓に突き刺した。
心の臓を流れる真っ赤な鮮血を返り血に浴び「ウオォオォォ!!!」
吉澤は勝利の雄叫びを上げた。
目を見開き死んでいる保田の目をそっと右手で閉じ吉澤は
日本刀を拾い上げる「コレは貰っておくよ」
悲しげに聞こえる声は波に消された・・・・

   保田ケイ 死亡

 

(絶対最初に私が狙われるんだ・・・)後藤は4K四方の島の南側の
山の中腹にある山寺の境内に座って震えていた。
(殺られる前に殺らねば・・・)後藤の武器は赤色のアイアンナックルだ
それを両手に嵌めてカチカチと鳴らす。
セーラー服の上着だけは皆と一緒だが、赤い鉢巻を巻き、赤いブルマー
を穿かされていた・・・後で気付いたがノーパンだった。
(なんで私だけ?)自分だけ目立つ格好をしている。
狙われると思い一番最初に教室を出た。
走りまくって着いたのがこの寺だった。
(誰か来た!)寺へと続く石段を誰かがゆっくりと登ってくる。
「見つけた・・・」立ち上がる後藤と目が合ったのはT&Cの篠田だ。
T&Cもラストコンサートとの事で今回だけ復活したのだ。
篠田は石段を駆け上がり、後藤めがけて前転をしだした「なっ!?」
側転をいり混ぜて後藤の前で前方宙返りの大ジャンプをする、
篠田の踵には刃が仕込んでいた。
それで『大回転踵落とし』を仕掛けたのだ。
だが、技におぼれた篠田の踵落としは後藤の前髪をかすめただった。
ダンッ!!と木の階段に踵の刃が刺さり抜けなくなる。
「うおぉおぉぉお!!」絶叫とともに後藤は文字通りの鉄拳を
篠田の顔面に叩き込んだ。
グシャリと鈍い音とともに篠田の顔は潰れた。
そのまま馬乗りになり、何度もパンチを叩き込む。
篠田の顔面からでる血飛沫を浴びる後藤の顔は泣きながら笑っていた。
撲殺された篠田の刃つきのスニーカーを履きこみ後藤はまた
境内に座り込む、「何時でも来な・・・」ピクリともする筈もない
篠田の死体を見ながらカチカチと鉄サックを鳴らす。
後藤の目の色が変わり始めた・・・・

     T&C篠田 死亡

 

「お腹空いたね・・・」加護と手をつなぎながらトボトボと
歩く辻が呟く、辻のバックには大量のお菓子が入っている。
「これ食べていいかな・・・」加護に聞いてみる。
「あかんて、バックには武器が入ってるて言うたやろ、
毒かもしらへんで・・・」さっきから何度も交わされる会話だ。
「ノノのお菓子が武器なら絶対毒やて」
アスファルトの道を手をつないで歩く2人に「いたぁ!」
と声を掛けたのは石川だった。「リカちゃん!」歓声をあげて
喜ぶ辻と加護に石川は抱き合って喜んだ。
「これからどうしようか?」歩きながら3人はこれからについて
話し合う。石川は辻のお菓子を見つけ、取り上げ、ポリポリと
食べながら「食べないの?ノノ?」と聞く。
「毒かも」と言おうとした辻を加護が目配せして止めた。
石川の反応を見るためだ。
食べ始めて5分ぐらいした時、石川の腹がギュルギュル鳴り出した。
「うぅ〜」とうめき石川がしゃがみこむ。
「ノノ!何食べさせたの?」お腹をおさえながら怒る石川に
「勝手に食べたのはリカちゃんだよ!」と応じる。
「こ・・・殺すつもりなの?!」石川は自分のバックに入っていた
スタンガンを取り出し、辻、加護に向ける。
だが我慢できずに茂みに入り込む。
辻のお菓子には強力な下剤が塗り込まれていたのだ。
急に怖くなり脱兎のごとく逃げ出す2人。
「やっぱり毒だったんや!」「・・・うん・・・」
石川が茂みから出たときには2人は消えていた。
しかし、またお腹をおさえてしゃがみこむ、
石川を襲う下剤の効果は半日は続くのだ。

ピンポンパ〜ン♪島内のスピーカーからツンク♂の声が響きわたる。
「どや、おまえら、ちゃんと殺し合ってるか?今までに俺が殺した
シェキドルとレフアの他にダニエル、保田、篠田が死んだぞ!!
もっとやらにゃあかんな!そこでワイは数人の隠獣を投入する事
にした!隠獣ちゅうぐらいやからコイツ等はエグイで〜!
まあ、きばって生き残れや!生き残った奴が真のアイドルや!!
ああ、それから言っとくがな、民家が点在してるけど入るなよ、
入れば首の爆弾が爆発する仕組みや注意せいよ」
島内に散らばる娘達はさらに動揺した。

道路はヤバイと思った、辻、加護は森に入ってサラサラと流れる
河原を歩いていた。「止まって!」茂みから飛び出して2人に
リボルバーの銃口を向けたのは新垣だった。
ブルブルと震える新垣に「落ち着きや」と加護が声を掛け
「お菓子あげるから」と辻がお菓子を差し出す。
首を大きく左右に振り「あたしは新入りだから一番最初に
狙われるんだ!」と引き鉄をひいた。
パーンと乾いた銃声が鳴り辻の頬を銃弾がかすめた。
「なにすんのや!!」加護が辻の前に立ち両手を大きく広げ
「撃つんなら、まず、うちを撃ちや!ノノには手ぇ出させへんで!!」
「・・・アイボン・・・」強がって見せても膝が震える。
新垣も震えながら「う・・・撃ってやる・・・」
ワァーッと声を上げながら引き鉄をひこうとする、
が、新垣の後ろから手がニュッと出てリボルバーを毟り取る。
「なっ?」振り返る新垣パーンと容赦のないビンタをして
ふっ飛ばしたのは、何処かで見た事のある顔だ。
「あっ!ガオレンジャーのシルバー!!」指差す辻をギッと睨み
「ちがうわ!ドアホが!!」と吠える男は押尾マナブだった。
珍走団のリーダーで、薬中、女優食い、等の悪さで
このゲームに投入された押尾には、生き残れたら芸能界に戻れる
との条件が示されている。「全部食っていいんだな」
押尾は芸能界には未練はないがアイドル達を食いまくれるこのゲーム
に進んで乗り込んだのだ。

ズカズカと新垣に近づき、馬乗りになり、セーラー服を
ビリビリと毟り取る。叫びながら哀願する新垣にリボルバーを
突きつけ「騒ぐな、撃つぞ!」と凄む。
「クックックックク・・たまにはこんなガキもおつなものよ」
ガッチリと新垣を押さえ込み「オラァ!」と叫びながら
犯しだした。バッとリボルバーを辻、加護に向けて
「次はおまえ等だ覚悟しとけ!」と凄む唇は歪んでいる。
しだいに新垣に夢中になる押尾の目を盗み、後ずさり、
辻、加護は逃げ出した。
「ちっ、まあいいか、女どもは、この島にはいっぱいいるからな」
逃げた2人の遠くなる後姿を見ながら腰を動かすこの男は
まさに淫獣だった。

茂みから新垣を犯す押尾をビデオで盗撮する男がいる。
第二の陰獣、田代だ!!
芸能界を干された田代は生き残れば復帰できると言われ
このゲームに参加した。
武器はビデオとデジカメと覚醒剤だった。
「武器にならねえよ!」
1人で突っ込んでみたが悲しくなった。
(盗撮しまくって生き残ってやる!)
田代は心に誓った。

「ちっ、やっぱガキはつまらねえな!」
事を終えて立ち上がりざまにリボルバーで射殺した
新垣を見下ろし、押尾は吐き捨てた。
新垣は押尾に陵辱されている最中にずっと
「加護さん、辻さん、ゴメンナサイ・・・」
と念仏の様に呟き続けていたのだ・・・・

   新垣リサ 死亡

 

また1人寺への石段を登ってくる人影が見えた、立ち上がり
身構える後藤、だが、現れたのは弟のユウキだった。
「あんた・・・」言葉を失う姉に「なんだ?その格好は・・・
コスプレかよ」と声を掛け近寄る、「アネキ・・・さっき放送で
言ってた陰獣の1人は俺だよ・・・」
その言葉にまたファイティングポーズをとる姉を右手を上げて制し
「俺は戦いに来たんじゃない・・・まあ、戦うって条件でこのゲームに
参加したんだがな・・・」 「それじゃあ、なに?・・・」
「俺はある人を探しに来たんだ・・・最後にアネキに会えて良かったよ・・
生き残れよ、アネキ・・・」
ユウキの姿が消えても後藤は立ち尽くしたままだった・・・

小川と高橋は砂利道の脇の茂みに隠れて獲物が掛かるのを待っていた。
小川の武器はスコップだった、高橋と一緒に逃げた小川は
共闘を持ちかけた。砂利道に幅いっぱいに30cm程の穴を掘り
道の途中で見つけた薔薇の棘を穴に敷き詰め落ち葉と砂で
カモフラージュした。
「いた〜い!」「誰だよ!!」「取れねーよ!この棘!!」
口々に喚くのは罠に引っかかったメロン記念日の
村田、斎藤、大谷だった。
茂みから飛び出した小川はスコップで3人の頭部を殴り失神させた。
「愛ちゃん、早く!!」オドオドする高橋に激をいれる、
「やらなきゃこっちが殺られるんだよ!!」 「でも・・・」と
まだ躊躇する高橋が持つ武器の濃硫酸の薬瓶をひったくり
「もう!私がやる!!」叫びながら伸びている3人の頭に振り掛ける。
激痛に悲鳴を上げ飛び起きる3人の顔は煙を上げ溶け出す、
「い・・・行くよ!!!」目の前に広がる凄惨な断末魔に
血の気を失う高橋の手を取り、走り出す。
「こうしなきゃ・・・こうしなきゃ駄目なんだ!!」
自分に必死に言い聞かせ夢中でその場から逃げる小川と高橋・・・

  メロン記念日 村田、斎藤、大谷 死亡

 

安倍と飯田は森の中にある洞窟を見つけ中で隠れていた。
「どうなるんだろ・・・私達・・・」
メソメソと泣く飯田の頭を撫でて
「大丈夫だべさ・・・まったくもう
ヘナチョコリーダーなんだから〜」
と、精一杯の笑顔で慰める安倍・・・
安倍にはなにかしらの予感があった、
「きっと誰かが助けに来てくれるよ、
それまでの我慢だよ、ねっ、カオリ」
きっと、きっと・・・・

アスファルトの道路を演歌の前田は1人歩いていた。
前田だけは衣装の振袖を着ていた。
こんな格好で走れるはずがない、教室を出たのも一番最後だった。
前方からベンツがトロトロと走って来て30mくらい手前で止まる。
パワーウィンドーが開いて顔を出したのは稲垣メンバーだ。
「お〜い、俺だよ〜♪」笑顔で手を振る稲垣メンバーに
(助けが来た)と思った。「そこで待ってて今、車を着けるから」
共演した事もない大物アイドルの言葉を素直に信じ笑顔で頷く。
ベンツは走り出す、スピードは落ちない、いや、さらに加速する、
フロントガラスに映る稲垣メンバーは笑っていた。
跳ねられ宙を舞う前田は(これで良かったかも・・・)と思った、
このゲームに勝ち残る自信など最初からなかったのだ。
道に横たわる前田を見て「車さえあれば絶対に勝てる!)
勝利への自信を確信にかえてゲラゲラ笑い出す稲垣メンバー
第四の陰獣である・・・・・

    演歌の前田 死亡

 

岬にある灯台に矢口は身を寄せていた、武器のライフルを抱きかかえ
灯台の上から辺りを見下ろし伺う、「ミカちゃんだ・・・」
身をかがめキョロキョロと辺りを伺いながらミカが灯台に近づく
「ミカちゃん!!」手を振り叫ぶ矢口に驚いたミカは
間髪いれず手榴弾を灯台の上にいる矢口めがけて放り込んだ。
「わっ!!」足元に落ちカラカラ回る手榴弾をとっさにミカに投げ返す。
「矢口さんゴメンナサ・・・」言いかけたミカの足元に
投げ返された手榴弾が転がる。
ミカは矢口だと判っていたなら手榴弾を投げてはいなかった、
ミカはミニモニリーダーの矢口を頼って探していたのだ。
ポケットに何個も入れていた手榴弾も誘爆しミカは
木っ端微塵に吹き飛ぶ・・・・
「ミカちゃん!!」壁に身を屈めて爆風を防いだ矢口が
顔を出しミカを探す。
だが、ミカは跡形も泣く消えていた・・・・

    ミカ 死亡

 

小川と高橋の前に日本刀を持った吉澤が物陰からユラリと出てきた、
「な〜んだ、おまえらか・・・」ザッと地面に日本刀を突き刺し
「それで?やるのか?どっちだ?」と聞く。
ガクガクと震える高橋の背中をドンと押し
「愛ちゃん!逃げるんだ!!」と小川が叫ぶ。
「でも・・・」 「いいから!早く!!」
スコップを持って身構える小川に
「ほう、殺る気まんまんってとこか・・」
と、日本刀を地面から抜きざまに小川に投げ込む、
腹の中心に刺さる日本刀を見て小川の表情が固まる。
吉澤はユラユラと揺れるように小川に近づき日本刀を抜き
そのまま小川の首を刎ねた。
ゴロンと転がる首の上に胴体が崩れ落ちた。
「これは使い物にならない・・・」スコップを高橋に放る、
「おまえも殺るかい?」高橋は腰を抜かし失禁していた。
涙をボロボロと流し首を左右に振る高橋に
「じゃあ、消えな・・・」と顎をしゃくってうながす。
這いながら逃げる高橋を無表情に見詰め、
「あれでは・・・死ぬ・・・」と呟いた。

    小川マコト 死亡

 

「アヤ・・・何処にいる・・・」森を走り抜ける男はシンヤだ。
妻の石黒アヤを探し出し生き残る、シンヤはその為に第五の陰獣になった。
娘。を引退したメンバーも今回のツアーはかり出されていた。
シンヤと子供を残し笑顔で家を出た妻を想うと胸が張り裂けそうになる。
妻のアヤの居所はしっている、シンヤは探知機を持っていた。
「キャー!!」悲鳴が聞こえた。森を抜け河原にでる。
妻のアヤに覆いかぶさり包丁を振り上げるのはメロンの柴田だった。
「うおぉおぉぉおお!!」叫びながらシンヤは柴田に体当たりを
かませる、転がる柴田を無視して妻を抱きかかえる。
「大丈夫か?・・・」 「あなた・・・」
シンヤは愕然とした、アヤの体は切り刻まれ血だらけになっていた。
ドンッ!!シンヤの脇腹に鈍い痛みが走る、柴田が体ごと包丁を
突き刺したのだ。「グオッ!」シンヤのパンチが柴田の顔面を
とらえる、吹っ飛ぶ柴田に頭ほどの石を抱え歩み寄る。
柴田は最後を悟ったのか手を合わせ目を閉じた、
柴田もアヤとの格闘で腿の動脈を切っていたのだ。
シンヤは一瞬ためらったが石を振り下ろした、グシャリと潰れた
柴田にいちべつもくれず脇腹に刺さった包丁を抜き取った。
ヌラリと出た包丁はシンヤの内臓を破壊していた。
愛する妻を抱きかかえ「すまんかったな・・・」と語りかける、
アヤの呼吸は止まっていた、「俺もすぐ行くわ・・・」
妻の唇を指でなぞり最後の口付けを交わす。
そのままシンヤは動かなくなった・・・・・

    シンヤ    死亡
    石黒アヤ   死亡
    メロンの柴田 死亡

 

「本当は私が一番なのよ!」平家ミチヨはモーニング娘。特に
オリジナルメンバーと松浦アヤを探していた。
出し抜かれたとの思いが今でもくすぶっているのだ。
(ここでも負けたら本当の負け犬よ)
山道を歩いているとザザザザーと転がり落ちる人影が見えた、
「松浦だ!」走って歩み寄ると、松浦は「イタタタタ〜」と
腰に手をあてがい尻餅をついたいた。
「あっ、平家さん」ペロリと舌をだしニッと笑う松浦を見て
「何やってんの?」と思わず声を掛けてしまう、さっきまでの
憎しみも何処かに消えて、手を差し伸べ松浦を抱え起こす
「本当にあんたは天然なんだから・・・」
松浦の埃をパンパンとたたきおとす。
平家の首にアイスピックが突き刺さった、「ごめんなさい平家さん」
ペコリと頭を下げる子悪魔は処世術を知っていた。
倒れた平家の心音が無いことを確かめ、平家の武器を探す。
「?・・ない・・?」平家は武器を持っていなかった、
探し出して説教だけするつもりだったのだ。
「天然なんだ平家さんて・・・」
松浦はスキップをするように山道を駆け下りた・・・・

    平家ミチヨ 死亡

 

波飛沫を見下ろす断崖絶壁の崖に立ちソニンは自らの命を
絶とうとしていた。革命が起きたとき、これで全て平等で自由な
国が出来ると喜んだ、だが、事実はまったくの逆であった、
国民は階級に分けられ全ての自由は奪われた。
その上層階級に自分が組み込まれているのを知り愕然とした。
引き止める党幹部を無視してこのツアーに参加した、
皆に謝りたかったのだ。
ソニンのバックにはあらゆる武器が入っていたが全て海に投げ捨てた。
結局みんなには謝る事が出来なかったが命を捨てる事によって
革命を支持した事を償いたかったのだ。
「ソニン!!」振り向くとゼーゼーと肩で息をきらせるユウキが立っている
「ユウキ・・・何故ここに?・・・」
「どうでもいいだろ、そんなこと・・」と言いながらユウキが近づく
「死ぬ気か?」何気なく聞くユウキにソニンはコクンと頷いた。
「そうか・・・」ユウキはソニンを優しく抱きかかえ
「じゃあ俺も付き合うよ」と何か言いかけたソニンの唇にキスをした。
「このゲームに参加したからには誰かを殺さないと生き残れない・・・
だが俺には人を殺すことは出来ない・・・」
ソニンは涙を流し、ただウンウンと返事をするのがいっぱいだった。
波間に消える2人の影・・・・
2つの命は美しく散った・・・・

     ユウキ 死亡
     ソニン 死亡

 

「やぐちぃ!どこなのぉ!!」中沢は矢口を探していた、
メンバーの中で信用できるのは矢口と安倍だけだった。
この2人を探して一緒に戦って生き延びるつもりだ、
なかでも矢口には秘めた特別な想いがあった。
名前を呼びながら探していると
草むらからブビビーピ〜という音と異臭がしてきた。
「オエッ、なんなの?この臭い?」
武器のボーガンを構えて音がする方に草を掻き分けて進む、
「見ないで!中沢さん!!」ペロンとお尻を出して用を足して
いたのは石川だった。
「お〜、臭い臭いと思ったら石川かよ」
鼻を指でつまみ侮蔑の笑みでニヤニヤと声を掛ける。
それでも石川の排便は止まらない、
「いつまでしてんの?バカじゃない!」と聞く中沢に
「止まらないんです〜」と答える。
ゲラゲラ笑い出す中沢にムッとした石川は
「三十路のおばちゃんのくせに笑うな!!」と声を荒げた。
中沢の表情が変わる・・・

「カッチーン!頭に来た、アンタ今の状況が解っていないようね!」
とボーガンを石川のテンプルにあてた、
「わっ!ゴメンナサイ!!」ビビった石川のお尻がゆるみ
ビチャッと激しく大便が出る、水のようにゆるいソレは
飛沫を中沢の足にかけた。
「汚い!!」中沢は思わずボーガンの引き鉄を引いてしまった、
「あ・・・アンタが悪いのよ!」言い捨てて立ち去る中沢・・・・
しゃがみこんだまま撃たれた石川はそのまま前のめりに倒れ、
高く突き出したお尻の肛門からピュルピュルと黄色い
噴水を出しながら絶命した・・・・
この世で一番恥ずかしい死であった・・・・
ガサガサと草むらから現れたのは田代だ、
「さ・・最高傑作を撮った・・・」
死んだ石川の大便まみれの尻と性器をアップで撮影して
「お・・・俺は神に近づくかもしれない・・・」
と尻を舐めだした・・・・

    石川リカ 死亡

 

走って逃げるアヤカの肩に押尾の放つ銃弾が当たった。
転げるアヤカに覆いかぶさり痛んだ肩を鷲掴みにする、
「ぎゃあぁ!!」叫ぶアヤカの喉に噛み付き千切る、
喉から出る鮮血をゴクゴク飲み「うめぇえ!!」
アヤカの下着を剥ぎ取り一気に挿入する、
「ぎゃはははは!俺が出るまで生きてろよ!!」
狂った淫獣、押尾はここは天国か?と思った。
ただアヤカでまだ2人目だ・・・・
全然食いたりねえ・・・
発射する瞬間、首を絞めアヤカの断末魔を楽しんだ。
アヤカの持っていた釜で首を刎ねた、
アヤカの生首を持ち茂みに声を掛ける。
「おい!居るんだろ!田代!!」
ガサガサと田代が出てくる、
「おまえ、俺を追いかけろ!良い物見せてやるよ!
その代りちゃんと盗撮しろよ!判ったか!!」
黙っている田代に「ちっ、さえねえ奴だな・・・
まあいい、これから最初のチビの首をコイツで刎ねに行く・・・
そこを撮影するんだ!いくぞ!!」
自分が殺した獲物の首を持ち歩くつもりの押尾は
河原に撃ちすえている新垣を探しにいく田代を伴って・・・

   アヤカ 死亡

 

島内を田の字に走るアスファルトの道路を稲垣メンバーは
グルグルと回っていた、「くそっ!」
たまに道路を横切る娘を見るが、すぐに森に消える。
イラつく稲垣メンバーの前方に青いスポーツカーが止まった。
「なんだ?」発進した青いスポーツカーは加速し
みるみる近づいてくる・・・・
「面白い・・・」唇を歪めて笑う稲垣メンバーの目に狂気が宿る、
ベンツを急発進させ「この頑丈な車に勝てるか?」
アクセルを踏み込んだ。

まこっちゃんは死を覚悟している。
本当の妹の様に可愛がっていた娘達が訳の判らぬゲームに参加させられ
しかも、悪名高い陰獣どもの餌食になるかもしれないと思うと
居ても立ってもいられなかった、陰獣を殺す決意のもと
青いスポーツカーに乗り込んだのだ。
アクセルを踏み込むほど青いマフラーが揺れる、
車の助手席にはニトロが積み込んである、
陰獣全員を轢き殺すつもりだったが目の前のベンツに
乗り込む稲垣メンバーに背を向ける訳にはいかなかった。
「死ねぇぇえ!!稲垣メンバァァア!!!」
ぶつかる瞬間、走馬灯のように
娘。達の後ろで青い服を着て踊ったバックダンサー状態の
恥ずかしかったハロプロコンサートを思い出して苦笑した。

大音響とともに2台の車は大破した、
モクモクと上がる黒煙が稲垣メンバーの顔を形作った・・・

    まこっちゃん 死亡
    稲垣メンバー 死亡

 

道端にあるお地蔵様に一心不乱に手を合わせて拝んでいる
紺野アサミを見つけ「アサミちゃ〜ん!」と声を
掛けたのは高橋アイだった。
「こんな所に居たらヤバイよ!さっきも私、吉澤さんに
殺されそうになったんだから・・・」
「私は最初からここに居ましたが誰にも見つかりませんでしたよ」
と紺野は動こうとしない。
「お地蔵様に助けてもらうようにお祈りしてるんです」
高橋はあきれて「なに馬鹿なこと言ってんのよ!さあ、逃げよ」
と手を取ったが手を振り解いて、また拝み始める
困り始めたときパカパカと馬に2人乗りした
カントリー娘。がやって来た、
「ヤバイかも・・・」高橋の予感は的中した、
カントリーは拳銃を持っていたのだ。
高橋は茂みに隠れたが紺野はお祈りの真最中だ、
カントリーは紺野の前で馬を止め馬上から拳銃のねらいを定めた。
「待ちな!!」と声を掛けたのは木の上にいた市井サヤカだった。
市井は木の上に隠れて熱心に拝む紺野をずっと見ていたのだ。
「お地蔵様を熱心にお祈りする無抵抗の子供をおまえ等は撃つのかい?」
市井を見上げ「じゃあ、おまえが相手になるってのかい?」
「いいぜ!」言うなり市井は木の枝の様に隠していた吹き矢を吹いた、
毒針がカントリーあさみの喉に刺さり昏倒させた。
しかし市井はカントリーりんねに向けて吹いた2発目の毒矢が
はずれ絶体絶命になる「Theエンドだな・・」
りんねが市井に拳銃を向ける、その時茂みから「わあぁあ!!」
と声を上げ高橋が飛び出し薬瓶を開けて濃硫酸をりんねにかけた。

「サンキュ、助かったよ」市井は高橋に礼を言う、
「い・・いえ、とんでもないです」ペコリと高橋が頭を下げた。
「しかし、何時までお祈りしてんだろうねコイツ・・・」
その時、紺野はスクッと立ち上がりペコリと頭を下げ
「初めまして、今度モーニング娘。に入った紺野アサミです。
一生懸命頑張りますのでどうぞ宜しくお願いいたします」
と自己紹介しだした、市井はポリポリと頭を掻き、
「おかしな奴だな・・・まあいっか、なあ、これから一緒に
行動するか?」と聞く、2人は顔を見合わせ
「宜しくお願いします」とまた頭を下げた・・・・

   カントリーあさみ 死亡
   カントリーりんね 死亡

 

辻と加護は矢口と飯田を探すことにした、
幼い2人には頼ることの出来る大人が必要だった。
手をつなぎ海岸を歩き2人の名前を呼びながら岬に着いた。
灯台に居座り続ける矢口に辻と加護の声が聞こえてきた、
灯台から顔をだし辺りを見ると辻と加護がキョロキョロと
辺りを見回している「あいつら・・・・」
自分の名前を呼び続ける2人に矢口は胸が熱くなった、
「辻ぃ!加護ぉ!!こっち、こっちぃ!!」
手を振り2人を呼び寄せる。
「あ〜!いたぁ〜!矢口さ〜ん!!」
口々に喜びを爆発させながら灯台の階段を上ってくる。
「おまえら・・・よく生きていたな・・・」
矢口は顔がグシャグシャになり目と鼻から大量の涙と鼻水を
出して嗚咽した、「矢口さん汚な〜い!」
そう言う辻と加護も泣いていた・・・・
矢口は自分を頼る2人の子供を命に代えても守ることを心に誓った。
「そんでね〜、飯田さんも居た方がいいと思うの〜」
「そうだよ、捜そうよ!まだ生きてるよ絶対!」
矢口は悩んだ確かに飯田はタンポポからの付き合いで
気が合うし信用できる、しかし辻、加護より
頼りなく見えて合流したあとが心配だ・・・・
そこまで考えてハッと気付く、そんな飯田をほおっておけない・・・
「よし!行こう、カオリを捜しに!」 「おぉおお!!」
3人は立ち上がった・・・

押尾は洞窟を見つけて覗き込んだ
「おい、出てこいよ!居るのは分かってるんだ!」
安倍は聞き覚えのある声に胸が高鳴る
「押尾くん・・・?」
「お〜、ナツミか・・・出てこいよ・・・」
押尾の顔がニヤリと歪む、
(助けが来た)ナツミは本当にそう思い飯田の手を取り洞窟から出た、
「!!!なっ!!!!」そこにいたのはナツミの知っている
押尾では無かった。「ひぃ!!」飯田は目を見開き座り込んだ。
押尾は新垣とアヤカの生首を持っていた、
「おまえらも、こうなりたくなかったら俺の言うことを聞くんだ!」
とナツミの足元に生首を放り投げる、
「まず、ナツミ!おれのコイツをしゃぶるんだ」
ファスナーを開け、そそり立つ物を見せつける。
ナツミはフラフラと押尾に近づき跪く、
押尾を見上げる目は涙に濡れていた。「お〜いい目だ!」
ナツミは押尾のモノを咥え喉の奥までいれた、
その瞬間ナツミは渾身の力で歯を立て押尾の男根を噛み千切った。
「うぎゃあぁぁああ!!!」
激しい絶叫とともに押尾は股間から血を噴出した。
悶絶し、転げまわる淫獣を横目に飯田はナツミの手を取り
「逃げるんだよ!ナッチ!」と走りだす。
飯田に手を取られ引きずられるように走るナツミは
魂が抜けた様に何やらブツブツ呟いていた・・・・

「た・・田代・・いるんだろ・・・助けろや・・・」
血を大量に失い地面に大の字になっている押尾は田代を呼んだ。
茂みからビデオをまわしながら田代が現れた、「なんだよ」
田代が初めて押尾と口をきく「しゃべれんなら、さっさと助けろ!
つかえねえな・・・」その言葉に田代は押尾の股間に蹴りをいれる、
「ぎゃっ!!」グリグリと血の噴出口を踏みつけ
「口のきき方間違ってねえか?」と押尾のポケットに手を入れ
リボルバーを取り出す、「な・・なにするつもり・・だ・・」
無表情に押尾の股間に向けて引き鉄をひく、パンパンパン!
弾は3発しか入っていなかったが3発とも股間を貫く。
「ぐがあぁぁああ!!!」押尾への地獄タイムが始まった。
田代は馬乗りになり何発も殴りつける、
「てめえに俺の気持ちがわかるかぁ!!いつもいつも何かに
怯えている俺の気持ちがぁああ!!!」
あまりにも続く拷問に押尾は悲鳴をあげた。
「ひいぃいぃぃい!やめて!もう・・・やめてぇ!・・・
助けて下さい・・・田代さま・・・」
立ち上がり顔の形さえ判らなくなった押尾の顔面を踏み潰す。
「止めるかよぉ!」叫ぶ田代の股間は激しく勃起していた。
押尾の顔に射精をし小便をかけ、道の途中で見つけた
ダイナマイトを押尾の口に押し込む・・・・
無言で導火線に点火してカメラを構え安全な場所まで移動した。
今まで生きてきた分の地獄の苦しみの中で
押尾は爆発とともに吹き飛んだ。
「ザマアミロ」田代は神になったと思った。

    淫獣押尾 爆死

 

「やったあぁ!俺は神になったぞぉ!」
田代は両手を上げて雄叫びをあげた。
「ふ〜ん、それじゃあ、本当に神にしてあげる・・・」
木の陰からユラリと吉澤が現れる、
「な・・・なんだよ〜、おまえは・・・」
動揺する田代に吉澤は無言で近づき日本刀を上段に構えた。
「ひっ!ひぃいぃぃ!!」それが田代の最後の言葉だった。
吉澤の魔剣は田代の脳天から胸の辺りまでを真二つにした。
ドサリと倒れた田代の胸に横に落ちていたビデオカメラを
拾い上げ、そっと置いた。
「これが一番大事なんだろ・・・・」
吉澤は音も無く霧とともに消え
パチンと刃を鞘に入れる音だけが聞こえた。
田代は本当に神になった・・・・・

    盗撮神田代 神になる

 

「しかしアイツの馬術は凄かったな・・・」
市井が言うアイツとはリンネの事だ、
高橋がかけた濃硫酸は、リンネが一緒に馬に乗っていた
毒矢で昏倒し落馬しかけたアサミを自慢の怪力で盾にして避けたのだ。
木の上にいた市井は3発目の毒吹き矢をリンネに向けたが
リンネはクルリと馬の下に回り、馬の腹にしがみついた。
濃硫酸で煙を上げながら落馬するアサミを捨てて逃げた。
砂煙を上げながら消えていく馬上のリンネを
市井はボーゼンと見送った。
歩く3人に夕日が迫った。
「そろそろ日が沈む・・・やばいな、寝倉を早いとこ探さなきゃ」
日が落ちて誰かに襲われたら3人の内、誰かは死ぬ、
「モタモタしてられない、行くよっ!」
市井は高橋と紺野に声をかけた・・・・

   カントリーりんね 死亡していなかった

 

「はい、少ないけどコレ食べな・・・」
矢口は辻、加護にオニギリを1個づつ与えた
バックの中には1人3個のオニギリが入っていたが
辻、加護はお昼の内に全部食べたのだ。
「矢口さんは?」聞く加護に
「いいのいいの、さっさと食べな」と手を振る、
「美味いでしゅ・・・オニギリワッショイ・・・」
感激して変な事を口走る辻を(ハァ?)という顔で見る矢口・・・
結局、飯田には逢えなかった、暗くなり、また灯台に戻ってきたのだ。
(明日は探しだしてあげるよカオリ・・・)
「寒くなってきたよ」と揉み手をしだした2人に
「こっちにおいで」と2人の肩を抱き寄せて座る、
「こうすると少しは温かいだろ」
3人で身を寄せて座りながら窓に映る星空を見る、
「あ・・・あのね・・・」
何かを言おうとする矢口の目からポロポロと涙が落ちるの見て
「ど、どうしたの?矢口さん・・・泣いちゃヤダヨ・・・」
と加護も涙目になる「泣いちゃダメです」辻も涙目だ。
矢口はポツリ、ポツリとミカの事を話し出した・・・
話し終わった時には号泣していた。
加護は何も言わず、矢口の頭を撫で続けた。
辻もポロポロと涙を流しながら必死で矢口の手を擦った。
「あ・・あんなぁ・・・」と加護が言う
「明日は飯田さんを絶対見つけて仲間にしよう・・・
そしてミニモニに飯田さんを入れよう・・・ねっ」
「そ、それがいいです、あいぼんナイスアイデア!」
と辻も応じる、
「あ・・アホ・・・ミニモニは150cm以下って決まってるだろ・・・
入るんなら辻、アンタがタンポポに入るんだよ・・・・」
矢口の突っ込みに辻、加護は顔を見合わせてニッとした・・・

見た事も無いでかい木が有った、その根元に腰を下ろし
ガタガタと震える安倍を飯田は後ろから優しく抱きかかえていた。
「ナッチ、大丈夫、大丈夫だよ。私がずっと一緒にいるから・・・」
震えながらも、何度も何度も頷く安倍、
ヘナチョコだった飯田にもリーダーとしての自覚がでてきた。
「見てよ、満天の星空だよ・・・きっと他のメンバー達も
見てるよ、朝になったら探しに行こう、きっと皆も同じ気持ちだよ
皆で力を合わせてなんとかしようよ、ねえ、ナッチ・・・」
安倍も飯田と一緒に星空を見上げる・・・
朝までには震えは止まりそうだ・・・・

河原で馬を藁で洗うリンネ、「おまえだけだよ・・・」
馬に語りかけるその瞳は輝いていた。
ジャリッと背後で砂利を踏む足音が聞こえた。
振り向くと其処には福田アスカがダラリと立っている。
福田は青い鉢巻を巻きセーラーの上は皆と一緒だが
下半身は青いブルマを穿いていた。
手には青いアイアンナックルを嵌めている。
とっさに拳銃を向けるリンネが
「コレが見えないのか!!」と叫ぶ、
「見えるよ・・・」
福田の目は拳銃の引き鉄を握るリンネの指だけを見ている・・・
パーン!「なにっ!」確かに撃ち抜いたはずだった、
だが、撃ったのは福田の残像だった、
福田は引き鉄を握るリンネの指の筋肉の動きを見て弾丸の軌道を
読んで避けたのだ、この暗闇の中で・・・・
パン、パン、パン、パン、全ての弾を避けた福田に
「ちくしょう!!」と拳銃を投げつけ跳びかかる。
怪力の持ち主のリンネは組んで戦えば勝てると踏んだ。
リンネが福田の胸ぐらを掴んだ、瞬間、リンネの体が宙を回転し
頭から落ちる。福田は相手の力を利用して自分の上半身を捻った
だけだった。「これが合気だ・・・」
脳天から地面に落ち「ぐうぅぅ・・」とうめくリンネの喉に
グサリと足の爪先を入れて息の根を止めた。
福田の家は合気道の道場をしていた。
物心ついた時から柔術をたしなむ福田は合気の達人だった。
福田が去った河原に残された馬は何時までもリンネを舐めていた・・・

    カントリーりんね 今度こそ死亡

 

「これからどうしましょうか?中沢さん?」
松浦に声を掛けられ「うっさい、今考えているんだから・・・」
偶然道で出会って一緒に行動してはいるが
中沢は全く心を許してはいなかった。
それは松浦も一緒で一種の緊張感が2人を包んでいた。
(ちっ、失敗した・・・これじゃ眠る事も出来ない・・・)
離れる時はどちらかが死ぬときだと2人とも思っていた。
お互いを警戒しつつ、それを顔に出さず、
朝まで眠れぬ夜を過ごす事になる2人・・・・
(松浦がオシッコする時を狙うか・・・)
と考える中沢に松浦も
(おばさんがオシッコをする時がチャンスね・・・)
と同じ事を考える。
「松浦、オシッコ行かないの?」
「中沢さんこそ行ってくださいよ」
朝まで漫才が続くかと思うとゲンナリしてくる中沢だった・・・

また一人、寺への石段を登ってくる人影に後藤は緊張する。
目の前に立ったのは福田だった。
赤と青、色違いだが全く同じ格好の2人・・・
お互い声も掛けず歩み寄る、
だが、ある距離になると歩みが止まる。
これ以上踏み込む時が戦いの始まりを意味していた。
永遠とも一瞬とも取れる時間を見詰め合い時が止まる・・・
出会った時がどちらかが死ぬ、どちらが光でどちらが影か・・・
今まで交わる事の無かった2つの星・・・
戦いの時がせまった・・・・

昨日までの後藤だったら実力的には福田の足元にも及ばないだろう。
いや、実力は今でも到底及ばない。
だが今日一日で後藤は劇的に変化した、
全神経が研ぎ澄まされ、毎日のダンスレッスンにより
鍛えぬかれた、しなやかな肉体は120%の力を発揮する。
最初に拳をくりだしたのも後藤だ、
しかし、単なるストレートパンチは如何に剛拳でも空を切るだけだ。
福田は紙一重で全てのパンチを避ける。
後藤はパンチをするふりをしてフェイントをかけ
バクテンと共にサマーソルトキックを仕掛ける、
が、福田はその足を取り合気で地面に後藤を叩きつけた。
顔面から落ちるのを寸でで腕を十字にクロスして直撃を避け
畳み掛ける様に踵を落としてくる福田の攻撃を
横に転がりながらかわした。
立ち上がりパンパンとセーラーとブルマに付いた砂を払い
改めて構え直す後藤に「実力は解った次は腕を外す」
と福田は宣言した。

「ふざけるなぁあぁああ!!」渾身の鉄拳を出す
後藤の右ストレートを横に避け拳が伸びきった所で手首を掴み
合気によって捻り返す。
ゴキンと音がして後藤の右肩がダラリと伸びた。
「ぐあぁああ!!」激痛に後藤が叫んだ。
宣言どうり外された肩を押さえ「次はどうすんのさ?」と聞く。
「次は左をいただくか・・・」と応じる福田に
「左?へっ、それはないねっ!!!」
後藤は体をひねり右肩ごとまた右の拳をぶつける、
少し驚いたが先程の攻防で後藤のリーチを見切った福田は
またもや体を後ろに引き紙一重で避ける。
だが、後藤の鉄拳は福田の顔面を捕らえ鼻をへし折った。
肩を外された後藤のリーチは10cm程伸びていたのだ。
しかも伸びきった肩が戻された時、脱臼した肩も元の位置に嵌まった。
右肩をグルングルン回し拳を突き出し
「今度は私が見せてやるよ」と少しオーバーに振りかかる。
ボタボタと鼻血が流れる折れた鼻を指で直し
福田の目が据わり始めた・・・・

ブンと音を出す後藤の剛拳を目の前で両手でガッチリ受け止めた。
受け止められた後藤の拳が開き福田の右目を覆う、
「掴まえた・・・」後藤は左手で自分の右手に拳を打ち込む、
ガチンと右の鉄サックと左の鉄サックが火花を散らした。
福田の右目は潰された。
間髪置かず視力が無い福田の右に回り込み、
前方宙返り宜しく『回転踵落し』を福田の脳天に叩き込んだ。
踵に仕込まれた刃に頭を割られ声も無く崩れ落ち
福田は絶命した・・・・
何度も大きく呼吸を繰り返す後藤の姿は
死闘の壮絶さを物語っていた・・・・・

    福田アスカ 死亡

 

モーターボートで島に向かう岡村は
「今、行くからな、待っとれ・・・」焦燥感でいっぱいだ。
革命を嬉々として伝える『Nステ』の久米と『23』の筑紫は
ハロプロの出来事も嬉しそうに伝えていた。
TVインタビューで「結果をお楽しみに」と話すツンク♂が許せない。
ツンク♂を殺す絶対・・・
次は多分俺たちが『お笑いBR』として粛清の対象になるだろう。
其の前に『妹分』の、いや『岡村女子高』の生徒達を助けたる。
あいつ等は今、固まって、団結しあって俺が来るのを待っとる。
コネを使いこの島の場所を掴んだ岡村はモーターボートで
潜入しようとしていた。「まじっすか!岡村さん」
島に到着するまで相方の矢部は愚痴っていた。
なんだかんだ言っても着いて来た相方に感謝しつつ
「よっしゃあぁあ!!着いたぞ!!」と船から砂浜に降りた。
その時ボートの船底がガタガタと音がして魚等を入れる
ボートに備え付けているボックスがバーンと開き
「うぅおおぉぉおぉお!!!」と江頭2:50が現れた。

ビックリして腰を抜かす岡村と「ハァ?」と唖然とする矢部に
「おまえらぁ!水臭いぞぉ!!なんで俺を呼ばない!!」
と矢部に「とう!」とヒップアタックを仕掛ける。
「いいかぁ、政府は俺を殺したくて殺したくて仕方ないんだよぉ!
だからおまえらをずっと尾行してたんじゃないかぁ!!」
「ハァ?なんでそんな事解るんすかぁ?」
「ばぁか、矢部!俺にはビンビン伝わるんだよぉ!!
だからぁ、殺られる前に殺るんじゃないかぁ!!!」
興奮する江頭を制し岡村が「判りました江頭さん。じゃあ俺は
ツンク♂が居る学校に潜入するから、江頭さんと相方は
娘達を探して集めて下さい。」
「集めてどうすんのや?」と矢部、
「馬鹿か?おまえは。『岡女』は学校に集合!!決まりやないか!」
「いよぉおおぉおしぃ!!そうと決まれば俺は紺野を探す!!」
「なんでですの?」と聞く矢部にニヤニヤ笑いながら頷くだけの江頭。
「うわっ!気持ち悪るっ!!」それでもニヤける江頭を無視して
「とにかく!集めたら集合なっ!江頭さん、紺野だけじゃ
あきまへんで、ちゃんと他の娘も集めな・・・・なっ!」
岡村は話を切り上げて「じゃ、作戦開始じゃ!ゴー!」
3人はそれぞれの想いを秘めて散った・・・・

朝日が昇ってきた、
身の軽い岡村は猿のごとく森を駆け抜ける
「なっ!!?」途中で足を止める、田代の亡骸を見つけたのだ。
「田代さん!」近寄って「なんて事や・・・」
二つに割れた田代の頭部を見て「娘だけやないんや・・・」
手を合わせ「ナンマイダ・・・」と拝み一礼してその場を離れる、
「待っとれよ・・・」森を走る岡村が何かを感じ足を止めた。
吉澤が幽鬼の様に佇んでいる・・・・
「吉澤か・・・・?」聞いてみる、
吉澤は答えずヌラリと日本刀を抜き無言で近づき岡村を袈裟斬りにする、
「わっ!」寸前でかわし木に跳びつき猿の様によじ登る、
「なにすんねん!!」頭上で喚く岡村に
「木の上の猿は斬れん・・・」と音も無く消えた・・・
「えらい事になってるでぇ・・・」
岡村の頭に絶望の文字が浮かんだ・・・・

目の下に真っ黒な隈を作って中沢と松浦は岬を歩いていた。
かなりの神経戦である。
「あんた、いつまでくっ付いてんのよ!」
「中沢さんこそ、そろそろ離れて下さい。」
「あ"あ"ぁん?何言ってんのよ!」
「そっちこそ何言ってんですかぁ?」
中沢はそろそろ限界である。
灯台の上から加護が遠くで言い争ってる中沢と松浦を見つけた。
「矢口さん、大変です、ちょっと早く来て下さい!」
「あぁん、なに?」「早く早く!中沢さんとアヤちゃんがいます!」
「なにぃ!」急いで、まだ寝ている辻を起こし
遠くで言い争う2人を観察した。
「なんか喧嘩してるね・・・」怪訝そうに辻が言う
「ほんまや・・・朝っぱらから何しとんねん・・・」
中沢が武器の様な物を松浦に向けた
「おいおいおい、本当かよ!」矢口が「止めに行くよ!」
と2人を伴い外に出た。

「裕ちゃん!!」叫んだが遅かった。
心臓を打ち抜かれて松浦は絶命していた。
走り寄って「裕ちゃん何したんだ!!」と叫ぶ!
矢口を見て中沢は「やぐちぃ、探したんだよ、何してたの!」と怒る。
近寄ろうとする中沢に矢口は「動かないで!!」とライフルを向ける。
とっさに中沢もボーガンを構える。
「なに?なんなの?」と怒る中沢に
「なんなのもないよ!なんで松浦を殺したの!!」
「違うの!!松浦が悪いの!!」
「今まで一緒に行動してたんでしょ?」
「そ・・・そうよ・・」それを聞いた矢口はさらに身構える。
「やぐちぃ、聞いてよ!私はアンタを探してたんだよ!」
「でも一緒にいた松浦を殺したっ!!」
中沢は言葉を失う・・・・
「そんな人と一緒にいられない!!こっちには子供が2人いるんだ!!」
非難の眼差しで見詰める辻と加護を中沢は悲しげに見る。
「わたしは・・」言いかけてまた言葉を失った。
(矢口!私はアンタを好きなのよ!愛しているのよ!!)
言える訳がなかった、その代りボーガンを向けて前に出る、
「う・・動くなって言ったでしょ!!」
無言で近づく中沢の目からスーッと涙がこぼれる・・・
「撃ちなさいよ!!!」中沢が叫ぶ。矢口は撃てない。
中沢は自分のテンプルにボーガンを向ける。
「アンタが撃たなきゃ自分で撃つわ・・・」
「なっ!?」ライフルを放し自分に走り寄る矢口を見ながら
中沢は自らの命を絶った・・・・
追い込まれても自分の本心を話せなかった中沢・・・
「裕ちゃん!!!」矢口の涙の叫びがいつまでも響いた・・・・

     松浦アヤ  死亡
     中沢ユウコ 死亡

 

「なんで俺こんな事してんねん・・・」矢部は後悔しだした。
山道を歩く足も重い、第一人影さえ見当たらない。
「本当に居るんかい?」疑念さえ浮かび始めた時
目の前に3人の少女が歩いて来るのが見えた。
市井と高橋と紺野だ。向こうもこちらに気付き歩みを止めた。
「おう、おうおう!」と手を振る矢部に市井が吹き矢を向ける。
「なんでやねん!俺は助けに来たんやで!」
手を上げ立ち止まる矢部に
「この島には陰獣と言う刺客が投入されたんだ、アンタが違う
と言う保証はない」と市井が応じる。
「ハァ?ふざけんなや!殴るぞ!」ズカズカと近づき
市井の吹き矢を取り上げてゲンコツで高橋の頭を殴る。
「いった〜い!なんで私が・・・」怒る高橋に
「これが本気のツッコミや!」と応じた矢部は睨みつける市井を
殴れなかっただけだ。
「いくで」と言う矢部に「どこに?」と聞く市井。
「仲間を探しにや、まだおるかもしれへんからな・・・」
そう言う矢部の前に紺野がチョコンと出てペコリと頭を下げる、
「紺野アサミです。宜しくお願いします」
ポリポリと頭を掻く市井・・・
「おう、おまえが紺野かい?江頭さんが探してたでぇ」
「江頭さんがですか?」ニコッとする紺野。
「知っとんのかい?」ハァ?とする矢部に
「はい、以前、励まされました。」と紺野は答えた・・・・

ピンポンパーン♪ツンク♂の島内放送だ。
「おはようさん!みんな元気かー?ワイは元気やでー!
そうとう居なくなってワイは嬉しいでー!
ひとつ良い事教えちゃる!地図に寺が載っとるやろ!
そこに行ってみい、おもろいもん見れるでー!」
寺の境内に座っていた後藤が立ち上がる、が、また座り直す。
ツンク♂の煽りだった・・・

暫くすると案の定、寺への石段を登ってくる3人の影が見えた・・・
後藤を見つけ「ごっちんだぁ」と声を掛け近づく、
しかし、すぐ福田の死体を見て止まる、
「篠田!!」篠田の屍を見て叫んだのは稲葉だ、
「なんでー?」小湊も続く、
「アンタガヤッタノ?」と後藤を見据えるのはルルだ。
「殺るしかないだろっ!!!」叫ぶ後藤がファイティングポーズをとった。
ザザッと3人が後藤を囲む、正面に立つ小湊に後藤が突っかかる。
トンファーを持つ小湊が後藤に振り込む、
横から跳んで来るトンファーを身を屈めて避け
そのまま心臓に鉄拳をいれた、『ハートブレイクショット』だ。
ろっ骨を折られ心臓の動きを一瞬止められた小湊は
血を噴きながら体が硬直する。
「はっ!」ジャンピングニーを顎にいれて小湊の体が少し浮いた所に
ハイキックを首に叩き込んだ。
ゴキンと首の骨を折り小湊を絶命させクルリとルルを向く。
「ヤルネ!」ルルは持っていたヌンチャクを投げ捨て構える。
ルルは中国拳法をたしなむ。
「キエェェエエ!!」走りながらジャンプキックを仕掛ける、
ブルースリーばりのキックを後藤は両手をクロスして亀の様に身を丸め
ガッチリ受け止めブロックする。
ザザッと砂煙をあげ突っかかるルルの拳と脚の連激を
身を丸めブロックし続ける後藤は体を沈めると同時に
足首を狙い下段廻し蹴りをする、脚を払われ腰をしたたかに打ち
呻くルルの顔面に後藤の鉄拳がめり込む。
大の字に倒れたルルの首に踵の刃を刺し込み留めをさした。

「次ぃぃい!!」キッと睨む後藤にビビッた稲葉は
「ひいぃぃ!」と尻餅をつき失禁しワタワタと逃げ出す。
寺から逃げ出そうとする稲葉の前にユラユラと立つ影がひとつ・・・
吉澤だ・・・吉澤は腰を沈め鞘に入れた日本刀を腰にためる、
稲葉は目を剥き「どけぇぇええ!!」と突っかかった、
刹那、吉澤の魔剣が光る弧を描き稲葉の首を刎ねた。
パチンと刀を鞘に入れると同時に稲葉の首と胴体が崩れ落ちた。 
吉澤の居合抜きに目を見張る後藤・・・・
「よっすぃ〜・・・」後藤は初めて複雑な表情をみせた・・・・

     T&C稲葉  死亡
     T&C小湊  死亡
     T&Cルル  死亡

 

「わぁあ!!」林の中から急に跳び出してきた岡村に
飯田は腰を抜かし、安倍は武器の柳葉包丁を構える。
「待て待て待てぇ!俺だ俺だ!!」
「お・・岡村さん・・・?」
「なんでここに?」と聞く2人に
「アホかっ!!おまえ等を助けに来たんやないか!!ぼけっ!!」
「なんで、怒られなきゃならないの?」と飯田が抗議する。
「ほ・・・本当・・なの?」涙目の安倍に
「あ・・当り前やないか・・・」
安倍はチョコチョコと岡村に近づき、
岡村の胸にチョコンと額をくつける「な・・なにすんねん・・・」
ドギマギする岡村に「・・・ありがとう・・・」と安倍、
「と・・とにかくや」と安倍の肩を掴み、そっと引き離し
「今から俺は学校に偵察に行く!おまえ等どうする?」
安倍と飯田は顔を見合わせて「行く!!」と声を合わせた。

学校と校庭を一望する小高い林群に身を潜め3人は伺う、
「なんや?誰もおらんやないか」
「なんかシーンとしてるね」「逃げたのかな?」
そんな会話をしているとバラバラバラとヘリコプター音が聞こえてきた。
「ヘリや・・・」校庭に降りついたのは軍用輸送ヘリだ。
中から1人大柄の白いコートを着た人物が出て来て校舎に消えた。
「正面から行くのはまずいな」と思案していた岡村が
「よっしゃ,俺は校舎の裏から潜入するわ、おまえ等はここで
隠れて待ってろや」と動き出す。
安倍と顔を見合わせ飯田が聞く「大丈夫なんですか?」
「まあ、ヤバイと思ったら逃げてくるわ、おまえ等もヤバイと
思ったら俺に構わずに逃げるんやでぇ」と林の中に消えた。
安倍は飯田の腕を取り「どうする?どうする?」
と不安を隠せないでいた。

「ほんまに誰もおらん・・・」校舎に潜入した岡村は
シーンとする校内を足音を殺す為、裸足で歩いていた。
「?・・なんか音がする・・・」2階に上がり音がする教室を
窓からソーッっと覗いた「!!!」声が出そうになるのを
口を押さえて我慢した。
教室の真中で2人の男女が交わっていた。
ツンク♂にまたがり激しく腰を動かすのは和田アキコだった。
必死な形相で耐えるツンク♂をよそに和田は
「♪もーおぉ、なぁやみふよう!あなぁたぁのかみきっとはえてくるぅう♪
よろこびしんじだきぃしぃめよぅお♪リィーブイーズゥワァンダフゥーウ!♪」
と近年の自分の大ヒット曲を熱唱しながら腰を振る、
「も・・もう、あきまへんわ・・・」死にそうな顔で訴えるツンク♂に
バチンとビンタをし「なに言うとん!まだまだやでぇ!オマエの名前の
後ろに付いてるオスのマークはなんの為にあんのや!!」
と一括する。
岡村はその場をそっと離れ(ツンク♂も大変や・・・)
と少し同情した。

少し離れた教室から会話が聞こえてきた。
パソコンに向かい何かを打ち込んでいるタイセーと数台ある
TVモニターを見詰めるハタケだ。
「あいつ等・・・動かんな・・・よしっ!俺が行くわ・・・」
と画面に映る砂浜を見ながらハタケはバズーカを背負い出て行く。
「ちっ、ハタケめ、アキオから逃げやがったな・・・」
和田が来てからハタケは「よし、陰獣として俺が行く」
と急にソワソワしだしたのだ。
「アキオより陰獣を選んだか・・・・」ぼやくタイセーの肩に
手を置いたのは和田だった。「どないした?」全裸の和田に
戦慄を覚えながら「な、な、な、なんでもないっす!・・・
そ・・それより、このモニターを見て下さい!」
と寺を映し出すモニターを指差す。「なんや?」
「は・・はい!テストに合格した3人がいます。死ぬ前に
捕獲したほうが良いと思いまして・・・・」
「ほう、まあ死んでても構わへんけどな・・・どれ、リスト見せてみぃ」
とタイセーが差し出すリストをみて「ふん、こいつ等か・・・」
と和田は教室を出て行く「あっ、タイセー、ツンク♂は暫く動かれへん
から、そっとしたってや・・・」
ニヤリと白いコートを着ながら和田は笑った。

バラバラバラと音を立て飛び立つ軍用輸送ヘリを見ながら
「助かったぁ・・・」と胸を撫で下ろすタイセーの首に
クルクルと釣り用のテグス糸が巻きつきキューと絞める、
タイセーの顔がみるみる紫色に腫れ上がり泡を吹き出す。
岡村の顔を見る事も無くタイセーは息絶えた。
「本当に誰もおらんで・・・」
パソコンを操作しようとする岡村の背中から腹かけてに穴があいた、
腹にネットリと付く自分の血液を手に取り
「なんじゃあ!こりゃあ!!」と叫び振り向く、
腰に手を当てたツンク♂は教室のドアから身を出し
サイレンサー付きの銃を岡村に向けていた。
そのツンク♂がそのまま前のめりに倒れた、背中には柳葉包丁が・・・
安倍が口に手を当て目を見開いている、背後で飯田が肩で息をしていた。
「岡村さん!!」駆け寄り岡村を抱き寄せる安倍、
その安倍にツンク♂がリモコンを向けた。
「なっち!!」叫ぶ飯田を無視してツンク♂はスイッチを押した。
はたして、安倍の首輪はカチリと鳴り壊れて床に落ちた。
落ちた首輪を見る安倍に「おまえ等の・・・勝ちや・・・」
とツンク♂は飯田にもリモコンを向け『解除』と書かれたスイッチを入れた。
「どうして・・・?」と聞く安倍に「・・・このゲームは表向きには国民に
恐怖を植え付ける為に組まれたプログラムや・・・しかし・・・
もう、充分やろ・・・本来の目的も達成しそうだし・・・
あとは・・・好きにしいや・・・」ツンク♂は事切れた・・・
安倍の手を握る岡村のが続ける
「なんやそれ?・・・安倍、飯田・・・砂浜に俺達が乗ってきた
モーターボートが有る・・・それに乗って逃げや・・・大丈夫や・・・
俺はあの世に逝っても・・おまえ等を見守っとるで・・・・」
握る手がダラリと落ち静かに息を引き取る岡村を安倍は何度も揺らす、
「岡村さん!岡村さん!!・・・岡村さん!!!」
誰も居なくなった校舎に安倍の声だけが響いた・・・・

    タイセー 死亡
    ツンク♂ 死亡
    99岡村 死亡

 

「お寺に行った方がいいんじゃない?」と聞く辻に
「罠に決まってるだろ!」と矢口、
飯田を探して海沿いを歩き砂浜に出た。
「うおっ!矢口さんボートが有るよ!!」と加護がモーターボートを
見つけてボートに走った。「使えるんじゃないコレ?」
うんうんと頷く辻に「でもなぁ、この首輪がなぁ・・・」
と矢口は言い「それにカオリもまだ見つかってないし・・・」
と口ごもる、誰もが思って口に出せない『死んだかも・・・』との言葉。
「よしっ!ここでちょっと待ってみるか?」
矢口の提案に「賛成!!」と辻、加護も同意する。
暫くすると人影が見えた・・・・

「矢口さんあれっ!」と辻が指差す先には
最後の陰獣ハタケが立っていた。
バズーカを抱えているハタケを見て
「なんじゃあ!あれはっ!!」と後ずさりする。
ハタケがバズーカを構えた、「伏せてっ!!」
矢口が叫び辻、加護も従う。
ガァアアァン!!と大音響と共に発射されたソレは
矢口達の頭上はるか上空を抜けて海に落ちた。
「なっ!」ハタケは動揺した、今までバズーカなんて撃った事が無いからだ。
しかも次の弾をどうやって装弾したら良いかも解らない。
それを見ていた加護は立ち上がりハタケに向かって走る、
近づき「ハタケさん!」と言って自分のバックをハタケに投げた。
ハタケが受け止めたのを見届け急いで戻り「矢口さん!今やっ!!」
と矢口にバトンタッチした。
「おう!!」矢口は立ち上がりライフルを向けた。
加護のバックを開けてハタケの顔色が変わる、
バックの中には加護の武器のダイナマイトがごっそりと入っていたのだ。
ライフルの発射音と共にハタケは爆発し跡形も無く消えた。
爆風に吹っ飛び転がる矢口を辻が受け止めた。
「大丈夫ですか?矢口さん!!」心配する辻に
親指を立ててニッと笑う矢口の顔はススで真っ黒になっていた。
「ハハハハハ・・・矢口さん変な顔〜!!」ムッとする矢口、
笑う辻と加護は泣きながら笑った。

    ハタケ  死亡

 

「よっすぃ〜・・・」後藤はなにか言おうと唇を動かそうとするが
言葉が出ない。ずっと親友の吉澤を待っていた・・・
ガリガリと地面を刀で引っ掻き吉澤がユラリと近づく、
「もう・・・」と吉澤が言った
「戻れないよ、私とアンタは人を殺しすぎた・・・
ここで生き残ってもアイドルに戻れる筈が無い・・・・」
スウと吉澤が下段に構える。
後藤も構える、ポロポロと涙を流しながら・・・
「せめて最後は美しく死ね・・・」言いながら一歩踏み出す吉澤、
そのとき、「何やってんの!!アンタ達ぃ!!」
石段を駆け上ってきた市井が叫んだ。
「市井ちゃん・・・!」後藤の動悸が激しくなる。
「楽しいのかよ!そんな事やって!!」市井は涙声だ。
楽しい訳がない、後藤の膝がガクガク震える。
「おまえら!やめんかい!!何やっとんねん!!」
吹き矢を持つ矢部も続き、ズカズカと近寄る。
「だ・・ダメ矢部さん!その人は・・・」高橋の言葉は遅かった。
矢部の肩口から脇腹に抜けた吉澤の魔剣は
吹き矢ごと矢部の体を二つにした。
ズルリと落ちる矢部の上半身に「邪魔をすれば切る・・・」
と言葉をかけ、吉澤は改めて後藤に向かう。
「なにを・・」言いかける市井に「市井ちゃん!!」と後藤が遮る
「邪魔しないで・・・」悲しげに言う後藤に市井は言葉を失った。

改めて対峙する魔人と超人、最初に動いたのは魔人吉澤だった。
下段から振り上げる日本刀を後ろに跳び寸ででかわす、
刀の切っ先が後藤のセーラーを切り、鋭い剣圧が白い肌の薄皮を
切り裂く、後藤の胸に赤い線を刻み吉澤の魔剣は鋭さを増した。
吉澤の懐に入れない後藤は避けるので精一杯だ。
後藤はクルリと吉澤に背中を向けて脱兎のごとく駆け出す、
「なっ?」30mぐらい離れると立ち止まり、ゆっくりと振り向く。
後藤の目には今までにない決意が込められ赤く燃えた。
切り刻まれたセーラーをビリビリと脱ぎ捨て
形の良い胸が露わになる、「よっすぃ〜!これが最後だっ!!!」
後藤は全力で吉澤に向かって走った。
吉澤は(死ぬつもりだな・・・)と理解した、
所詮日本刀と素手ではリーチが違う、全力で走ってくる後藤に
何か策が有るとは思えなかった。
吉澤の目が据わり上段に構える。

後藤は吉澤が上段に構えるのを見て勝利を確信した。
近くで戦えば上下左右から振り込まれる日本刀をかわすだけで
精一杯だった、しかし刀の軌道さえ解れば・・・・
「うおぉおおぉ!!」後藤は右ストレートを叩き込む、
振り下ろされる吉澤の魔剣に向けて・・・
ガキィーン!!後藤の鉄サックを受けた吉澤の日本刀が折れた。
すかさず左の拳で吉澤の剣を叩き落す、「終わりだぁああ!!」
叫んで右の拳に捻りを咥えて吉澤の胸骨の中心に鉄拳を叩き込む。
吉澤の顔は殴れなかった・・・・
ピシィと吉澤の胸骨にヒビが入る、そのまま右肘を曲げ
同じ所に肘を叩き込んだ『猛虎硬爬山』だ。
胸骨を粉々に砕かれ5m程吹っ飛び、ガクリと膝をつく吉澤に
後藤は走りこみ低い弾道のジャンピングニーを決める、
後藤のシャイニングウィザードに首を折られ吉澤は絶命した。
後藤はそのまま5、6歩フラフラと歩きペタリと座り込み
顔を両手で覆い声を出して号泣しだした。

「後藤!!」叫びながら市井は走りより後藤を抱きしめる。
「いいんだ、もう、いいんだよ・・・」頭を撫でながら
優しく語り掛け、鉄サックを外す。
「市井ちゃん・・・」市井の胸に顔を埋め嗚咽する。
その時、「このやろう!マコちゃんを返せ!!」叫びながら吉澤の躯を
蹴り続ける高橋が見えた。
「うわあぁぁああ!!」後藤は市井を突き飛ばし高橋に向かって走り、
恐怖に顔を引き攣らせる高橋の顔面を掴み、
そのまま走り寺の御神木に高橋の後頭部を打ち付けて殺した。
立ち尽くす紺野をキッと睨み、紺野にも突っかかる。
「うおおぉぉおお!!」木の陰から出てきたのは江頭だ。
「こんのぉぉおお!!」叫びながら紺野の前に立ちはだかり
両手を広げて紺野を守った。
「どけぇええ!」後藤は江頭のミゾオチに貫手を突き刺す。
手首まで入った貫手は江頭の内臓を潰した。
口から血を吹きニヤリと笑った江頭は後藤の胸にしゃぶりつき
そのままズルズルと崩れ落ちた。
「江頭さん!」紺野は倒れた江頭の体を揺する。
「こんのぉ・・・いきろ・・よ・・・」笑顔のまま江頭は死んだ。
紺野を見下ろす後藤の殺気は消えない、
「なにやってんだよぉ!!」市井は言い様の無い悲しみの中で叫ぶ。
後藤はピクリと振り上げた拳を止めた。
「アンタいったい何やってんだよぉ!!そのまま何の抵抗も
出来ない子供を殺すのかよ!!オマエそんな人間だったのかよ!!!」
後藤はガクガクと震え立ち尽くす、
フラフラと市井は後藤に近寄り抱き寄せる。
「おねえちゃん・・・・」いつも心で市井を呼んでいた言葉を
後藤は無意識に出した・・・・
心臓に小型のナイフを刺されても「おねえちゃんゴメンね・・・」と囁く、
市井は後藤に刺さったナイフを抜いて後藤に持たせ自分の心臓に刺させた。
ゆっくりと崩れ落ちる2人の姉妹・・・・
市井は後藤に「ごめんな・・・守れなくて・・・」と言い、
紺野に向かって「アンタは・・・生きるんだよ・・・」と言って
18年の人生の幕を閉じた・・・・・

     99矢部  死亡
     高橋アイ  死亡
     江頭2:50  死亡
     吉澤ヒトミ 死亡
     市井サヤカ 死亡
     後藤マキ  死亡

 

紺野は境内に散らばる死体を並べ、寺内に有った線香を一本づつ
躯の脇に置き手を合わせていた。
その時バラバラと音を立て軍用輸送ヘリが飛んできて上空でホバリングする、
見上げる紺野の目の前にハシゴが下りてきて、白いコートを
全裸に羽織っただけの和田アキコと軍服を着た男が2人降りてきた。
「ほう、凄いな・・・」和田は部下とおぼしき2人に
顎で命じ、後藤、吉澤、福田の死体をヘリに運び込ませる。
「あの・・・」声を掛ける紺野に和田は「ふ〜〜〜ん」と少し感心したように
「この惨劇の中でオマエだけ生き延びたのかい?」と聞いた。
黙っている紺野を無視し3人の遺体を運び終えた2人に
「おい、この子供も連れて行くぞ」と声を掛けた。
屈強な男に脇に抱えられても抵抗もしない小動物の様な紺野を見ながら
「流れるままに生き残ったか・・・・面白い拾い物かも・・・・」
和田はニヤリと笑い例の大ヒット曲を歌いながらハシゴを上った。
ヘリ内で部下の男の上で腰を振る和田をなるべく見ない様にしながら
「あの・・・これからどうなるんですか?」と聞いてみる。
紺野の質問を無視し「オマエもやるか?」とますます激しく
腰を振る和田に、正面の壁を見ながらプルプルと首を振った。

「あ〜〜!!矢口さん!!飯田さんと安倍さんが来ましたよ!!」
喜ぶ辻に「お〜〜!!来たっ!!」と目を丸くして喜ぶ矢口。
加護はもう走りこんで飯田に跳び付いていた。
「いままで何してたんだよ!」と手を取って喜ぶ矢口に
「そっちこそ何してたべさ〜!」安倍も涙ぐんで喜ぶ。
「あれ〜、首輪がない!!」「なんで〜〜?」
辻と加護の質問に飯田がリモコンをポケットから取り出し矢口に向けた、
「わぁああ!!!」腰を抜かす矢口に『解除』スイッチを押した。
カチリと音がしてポロリと外れる首輪を見て飯田はウインクをした。
「この〜!ビックリしたやん!!!」怒る矢口に笑い出す飯田。
「取ってぇ〜!」「早く早くぅ〜!」せがむ辻、加護の首輪も外してやる。
5人は今までの経緯を話しあった。
「そっかぁ、ツンク♂さんが、あとは好きにして良いって言ったのかぁ」
考え込む矢口に加護が「じゃあ、もう帰ろうよぉ」とせがむ、
「でも、まだ生き残ってる人もいるんじゃない?」と言う飯田に
「そうなんだよねぇ・・・・」と安倍、「お腹すいた・・・」こちらは辻だ、
結局、話し合いはつかずリーダーの飯田が悩みに悩んで
帰る事に決めた。夜になるとまた、何が起こるか判らないし
帰ってから事務所の社長に話して何とかしてもらう事にしたのだ。
ギャーギャー騒ぎながら、四苦八苦しながら、モーターボートの
エンジンをかけ、ボートにあった地図と睨めっこをして
何とか島を離れた。

 

  ーーーエピローグーーー

 夕日が赤く染まる・・・・
本当はこれからどうなるのだろう・・・・
誰も知らないし、答えられない・・・・
はしゃぐ辻、加護を「あぶない!」と本気で怒りながら
矢口はチラリと飯田と安倍を見た・・・
黙って微笑む飯田と
「だ・い・じ・ょ・う・ぶ」と声を出さず唇を動かす安倍・・・・
操舵する矢口も何故か笑っていた・・・・
波飛沫を上げるボートは赤い夕日に消えていった・・・・

 

ーーー新章、新たなる戦いーーーー

 モーニングジャンプを繰り返すファンに手を振って応え、
スポットライトを浴びる吉澤は『Mr.Moonlight』を熱唱する、
ぼんやりと目を開けた吉澤は、長い夢を見ていたと思った、
(今日のコンサートは何処でやるんだっけ・・・)
気だるく右脇を見ると後藤がベット寝ていて、こちらを見ていた。
「ごっちん・・・?」白い部屋に計器類(ん?病院・・・?)
左脇には同じくベットから上半身を起こし窓の外を
見ている福田がいた・・・・
「気が付いたね・・・・」後藤は微笑んでいた、
後藤の顔を見てポロポロと涙が出てきた・・・・・
何故生きているのかは解らない・・・・
だが、後藤の笑顔は吉澤には辛く、とてもきつかった。
なんて言えばいいのか分からず毛布を頭からかぶった。
毛布をかぶったまま「どうなってるの・・・?」と聞いてみる。
「わからない・・・」後藤も2日前に目を覚ましたのだ。
福田はチラリと2人に視線を落として、また窓の外を見る、
カチャリとドアを開けて入ってきたのは紺野だ。
「おまえ・・・」声を掛けた吉澤にペコリと頭を下げ
「気が付いたんですね・・・良かった」とニコリと笑う。
「3人全員が目覚めたので今から説明したいと思います、」
3人には最新の医療技術が投入され蘇生させられたのだが
ナノマシンやらニューロンのたんぱく質解析やら聞いた事も無い
言葉が並び吉沢は手を上げて紺野の説明を遮った。
「つまり、生き返ったんだな・・・でも、オマエはなんで
そんなに詳しいんだ?」紺野はニコリとして
《はい、それは私も脳改造を受けましたから・・・》と応えた、が、
唇は動いてない、声は頭に直接響いた感じがした。
《私達は死んだ事になってます・・・・もう、モーニング娘。には
戻れません、私はテレパシストとして、あなた達に情報を
送る役目になっています・・・・》
驚愕する吉澤、いや、後藤と福田も目をみはっていた。
《私だけではありません、あなた達にも見合った力が与えられています、
それは戦いながら解っていくでしょう・・・》
「どういう事だ・・・」後藤が聞く、
「その前に、」と今度は声を出して紺野はテレビのスイッチをいれた。
ブンとブラウンカンがなり映り出たのは生き残った
5人のモーニング娘。だった。
聞いた事も無い新曲をニコニコと熱唱するメインの安倍、と娘。達・・・
《彼女達は洗脳されました・・・もう、私達の事も忘れたでしょう、
私達が洗脳されないのは、まだ実験段階だからです》
吉澤にしてみれば紺野も洗脳された様に見えた。
「これから、一週間後、私達は陰獣として新しいプログラムに参加します。
私達はチームを組んで、戦います。私がテレパシーで遠距離から
情報を出しますので、それを自分の判断で戦い抜いてください。」
「また、戦うのか・・・・?」と吉澤、
「紺野のテレパシーで・・・?」後藤が話を繋ぐ
「トランシーバーとか有ればいいんじゃないの?」
紺野は微笑み「全て実験です」と答え《最強の人間兵器を作る為の・・・》
とテレパシーで付け足す。
「あんたは?」初めて福田が口を開いた「あんたも洗脳されてんのか?」
「されてませんよ」はずむ声とは裏腹に言い様の無い悲しみの感情が
3人の胸にせまった《私がニコニコしているのは政府を油断させる為です。
あなた達と私で、いつかは革命政府を倒したいと思ってます。ですが、
今は時間も情報も有りません。だから、今は政府に従う振りをして下さい》
ニコニコとする紺野に
「くそっくらえ・・・だな・・・」吉澤がニヤリとする。
「同感・・・」後藤も応じる「で?その戦う相手って誰なんだ?」
福田は窓の外を見たままだ、だが唇は薄く笑っている。
「ジャニーズ。正確に言えばスマップ、トキオ、キンキ、V6,嵐
滝沢、それに何名かの芸能人も加わるはずです。
ですが、気を付けて下さい。何名かは肉体強化手術を
既に受けてます。特に稲垣メンバーはもう人間では有りません・・・」
ペコリと一礼して紺野は出て行く。《あなた達は3ヶ月も眠った
ままだったんです。少し体を動かしていた方がいいと思いますよ》
脳内に聞こえてくる紺野の声に「まじ・・・?」と吉澤。
「しゃあない・・・しばらく紺野の言う通りにするか・・・」
ベットの上で座りながら背伸びをする後藤が
「あっ、そう言えば、ちゃんと自己紹介してなかったね・・・」
と福田に声をかけた・・・・・

異様な島が有る、4k四方のその島は、かつて炭鉱で栄えた。
廃鉱となり全ての住民は去った、町が有りデパートが有り
商店街が有り高校が有る、しかし全てが廃墟と化している。
軍艦の様な形をしたその島を軍艦島と呼んだ。
ボロボロの高校の2階の教室にジャニーズが集結していた。
眠らせられて連れて来られたのだ。
全員学生服を着せられていた。
何事かと騒ぐV6と嵐、キンキ。
しかし、スマップ、トキオ、タッキーは無言だ、
ダラリと椅子に座る姿はこの事を知っていたかの様だ。
その目は据わり異様に鋭い・・・・
チャイムが鳴り校内放送が入る。
「あ〜、おほん、ごほん、うぅうん、え〜、聞こえるか?おまえ等、
ワイや、和田や!」和田アキコのだみ声が響いた。
V6,嵐、キンキがざわつく中、和田の説明が始まる、
説明を聞きながら木村拓哉の唇が歪み吊り上る。
その目は異様にギラついている、獣の瞳だ・・・・

説明の内容でハロプロの時と違うのは、
首輪の解除リモコンを3人の陰獣が持っている事、
したがって、生き残る為には陰獣を殺さなければいけない事、
ジャニーズのメンバー同士の殺し合いは構わないし、
もちろん協力も構わない、とにかくリモコンを陰獣から
奪い取らなければいけないと言う事だった。
「窓の外を見てみい!」だみ声がスピーカーから吠える、
V6,嵐、キンキがゾロゾロと外を見るため窓から身を乗り出す。
「あいつ等は!!」光一が叫ぶ「死んだって聞いたぞ!!」
校庭に佇む3つの影は後藤、吉澤、福田だ。
「見たか!あいつ等が陰獣や!女だからって容赦すんなよ!!
殺すか殺されるかや!おまえ等に残された時間は24時間や!
その間にやらねば、おまえ等の首はボンッや!!
さあ!!行くんや!!時間は無いでぇぇええ!!!」
和田の煽りが終わるとブツンと放送が切れた。
シーンとする教室、最初に声を出したのはキンキの剛だ、
「ど、どうする・・・相手は女の子だぞ。ちょっと脅せば
リモコン渡すんちゃうか?」その言葉に皆が同意しかけた時
「ひゃはははぁはぁああ!!」甲高く笑った香取真吾がブワァと跳び
嵐の桜井の胸を激しく蹴りつけた。
目を見張る他のメンバー達。
香取の蹴りを受けた桜井は5mも吹っ飛び窓から校庭に落ちたのだ。
「わぁああ!!」それを合図に蜘蛛の子を散らす様に
自分のバックを持って逃げ出す男達、教室のドアの前に立って
青く光るチタンブレードを持つ滝沢は目を剥いて笑い「ひゃはっ!」
とV6の森田に斬りかかる。金髪に染めた滝沢の髪が揺れる、
森田の首が飛び教室の真中に落ちた、それを拾い上げ
首から滴る鮮血をゴクゴクと飲む稲垣メンバー。
反対のドアでは山口達也がキンキの堂本光一と堂本剛の首を
それぞれの手で掴み上げ、物凄い握力でブシューと潰した。
「逃がすかよっ!!」仲居が叫び指から伸びる妖糸を嵐の大野に
巻きつける、動けない大野に木村の日本刀が胴と下半身を切り離した。
「ぎゃはははぁははぁ!!祭りじゃあぁぁああ!!」
V6の三宅の喉に鋭い牙で噛みつき食いちぎり長瀬智也が叫ぶ、
惨劇が始まった・・・・

和田の放送を聞きながら「私達リモコンなんて持ってないよ」と後藤、
「ちっ、煽りやがって・・・」吉澤も頷く。
リモコンを持ってるのは紺野だ。
その紺野は学校の屋上に設置された頑丈なコンクリートで出来た
司令塔に和田と一緒に居た。
司令塔との会話は紺野のテレパシーだけなので和田に聞かれる事は無い。
後藤の格好は例のごとく赤い鉢巻、セーラーの上着、ブルマーと
指の出る赤いグローブ、まるっきりコスプレだ。
グローブの中には拳に合わせた軽量アルミ合金が入っている、
靴の踵には意思によって跳び出す刃が仕込まれていた。
吉澤はセーラー服でそのまま佇む姿はとびっきりの美少女だ。
しかし、その手に持つ日本刀はチタン合金を打ち抜き作った
何を斬っても刃こぼれ一つしない現代の名刀だ。
福田は白い鉢巻を巻き、赤い袴姿は一見巫女さんを思い出す。
武器は持たない、磨き抜かれた柔術が武器と言えばそうなる。
そのとき、《始まりました》と紺野がテレパシーを送ってきた。
窓から落ちてきた嵐の桜井が3人の前でバウンドして事切れた、
香取に蹴られた胸は見事に陥没していた。

「これは・・・?」目を見張る吉澤に
《言ったはずです、肉体強化手術を受けてるメンバーがいると・・・》
紺野の声が響く、「誰なんだ?そいつは?」後藤の問いに
《今、暴れているのは、スマップ、トキオ、滝沢・・・
この人達があなた達と同等の力を持っています・・・》
「多すぎないか?」吉澤が声を張り上げた。
《しかたありません、私もそこまでの情報は与えられてません・・・
あっ、今、隣の和田さんがニヤニヤ笑ってます》
ガクリとする吉澤、「アキオなんてどうでもいいの!もう!!」
後藤はプーとホッペタを膨らませた。
「それより・・・」初めて福田が口を開く「これからどうする?」
顔を見合わせる後藤と吉澤に「私は消える・・・一対複数では
こちらに分が悪い・・・なにかあれば紺野を通して情報を
交換できる・・・」そう言って福田は学校を後にした。
福田の後姿に手をニギニギして見送る後藤に
「さあて、私達もどうする?ごっちん」と吉澤、
まだ少しわだかまりはある、と言うより、前の様に何も考えず
無邪気にはしゃぐ訳にはいかないだろう・・・・・
しかし、やはりかけがえの無い親友だった。
「一緒に行動しようよ!」ニンマリ笑う後藤に
「やっぱりぃ?」と同じくニンマリする吉澤・・・・
《私も、そのほうが良いと思います。それより早く其処を離れた
方が良いですよ・・・そろそろ奴等が出てきます・・・》
紺野は頬杖をついて微笑みながら思念を送った。
「て、隊長も申しております」おどける吉澤の手を取り
「行こう!」後藤の声も弾んでいた・・・・

「きゃははははぁ!!初めて人を殺したぜぇ!!」
腹を抱えて笑う香取に「うん、楽しかった」興奮する草g、
「で?どうする・・・」聞く松岡に「そうだなぁ」と
リーダーを見る国分。「別に・・・ここから出たら敵同士って
事でいいんじゃない」言う長瀬に「じゃあ、そういう事で・・・」
と手を振り出て行く滝沢・・・「ふん、きまりだな・・・」
木村の言葉でノソリと各々教室を出て行くメンバー達、
ゴロゴロと死体の転がる血だらけの教室に不気味に佇む稲垣メンバー。
その稲垣メンバーがおもむろに窓に向かって走り出し
2階の窓から校庭に飛び降りる。
片膝を付いて着地した稲垣メンバーはそのまま走り森に消えた。
バラバラに散らばる怪人達・・・・
軍艦島は不穏な空気に包まれ始めた・・・・

    嵐     全員死亡
    近畿キッズ 2人とも死亡
    V6    全員死亡

 

《福田さん付けられています・・・》町の路地を歩く福田に
紺野の思念が入り込む。
福田は無視をした、分かっていたから人気の無い所を探して
細い道に入り込んだのだ。
10m四方のコンクリで出来た開けた場所を見つけ立ち止まる、
無言のまま振り向く福田の視界に、壁に手をかけ
ニヤニヤ笑うトキオの松岡が立っていた。
ベロンと舌を出し両手を広げ威嚇する松岡が
「ひゃははは、こんな女が陰獣かぁ?アキオもふざけた事するぜ!」
舌なめずりをしながら「リモコンを奪う前に肉でも食らうか・・・」
一気に3mも跳び、福田に跳びかかった、はずだが、
同じ軌道で元の場所に頭から突っ込んだ。
ガバリと立ち上がり「今、なにをした?」と聞く松岡の額からは
ドクドクと血が流れている。
首を少し傾げて「べつに・・・」と福田はそっけない。
みるまに顔を真っ赤にし鬼の形相で突き出す松岡のパンチやキックは
福田に取られ、駒のように廻され、硬い地面に体を叩きつけられた。
その場所から一歩も動かない福田を見て、
「うがぁあああぁぁああ!!!」叫ぶ松岡の筋肉がモコモコと
盛り上がり学生服がパンパンになった。
ビリビリと学生服をやぶり「なめんじゃねえぇぞぉ!!」
叫びながら掴みかかる松岡の鼻の穴に小指を掛けて体を捻り
『鼻穴一本背負い』で投げ飛ばす。
5mも吹っ飛んだ松岡は壁に打ち付けられ頭から落ちた。
顔面が血まみれになる松岡の顔には鼻がついてなかった。
小指についた鼻をピンと飛ばし、足の爪先を喉に突き刺し止めを刺した。
《やりましたね、福田さん!》紺野の思念をまたしても無視し
その場をそっと離れる福田アスカは小指を袴で拭った・・・・

    トキオ松岡 死亡

 

木村タクヤはある予感がして町の中心にあるデパートの屋上にいた。
この建物が島で一番高いからだ。
風で長髪をなびかせ腕組みをする木村の目が光る、
2機のヘリコプターが島に向かって来たからだ。
その内1機はデパートの上空30mの所でホバリングしている、
もう1機は学校の有る方角に消えていく。
木村は背中にさしてある日本刀の柄に手をかける。
木村の日本刀は刀の部分が1.5mもある長剣だ。
ヘリから4つの影が飛び降りる、新たなる陰獣だ。
その落ちてくる陰獣に木村の長剣の一振り、
落ちた4匹の陰獣は木村の周りに着地した、
だが、その内3匹の陰獣は「ぐぅあぁ!!」と声を上げて転げまわる。
自分の半径3mにある物は全て斬る木村の妖剣は
3匹の陰獣の足首を全て切断していた。
「今のが『燕返し』・・・」残りの1匹に静かに話し掛ける。
着地した姿勢のまま燃える目を木村に向けるのはダ・パンプのイッサだ。
足首から大量の血を流し息を引き取っていく他のメンバーをチラリと見て
「おい、後ろで踊る小汚いバックダンサーは死んだぜ・・・」
と、余裕の木村に「へっ、その余裕が何時まで続くかな・・・
もう1機のヘリにはオマエの女房が乗ってるんだぜ・・・」
とニヤリと笑うイッサ。
木村の顔色が変わった。
「どういう事だ!!」叫ぶ木村を無視してイッサはデパートの
屋上から飛び降りる。
「逃がすかよっ!!」木村の長剣が弧を描き光った、
そのまま背中の鞘にキン!と長剣を収めて木村はデパートを後にした。
物凄い跳躍力で道路に着地したイッサ、
しかし着地した瞬間イッサの首がゴロリと落ちた。

    ダ・パンプ 全員死亡

 

《大変です、早く学校に戻って下さい》紺野の声が慌てていた。
「どうした?」バス停でのんびりと世間話をしていた
後藤と吉澤が同時に聞いた。
《今、高校に1機のヘリコプターが向かっています、そこに
モーニング娘。の5人が乗っています。》
紺野の話が終わる前に2人は走り出していた。
「どういう事?」聞く後藤に《イケニエです。あなた達とジャニーズが
集結するように・・・・》
「くそっ!」吉澤が吐き捨てる。
走る2人の前に1つの影が立ちはだかる、
怪力の持ち主、山口タツヤだ。
「よっすぃ!アンタは学校に行って!」 「でも・・・」
「いいから!!」後藤の目の色が変わる。
自分の横を走り抜ける吉澤を無視して、山口は後藤と対峙する。
「悪いけど急いでるんでね・・・」言いながら後藤は
山口の顔面にパンチを叩き込む。
ギィィン!と音がして後藤のパンチは弾けた、「なっ!」
顎を引いて額で後藤のパンチを受けた山口は、
何事もなかった様に顎に手を当てニヤニヤしている。
「紺野ぉ!!」叫ぶ後藤に紺野が答える
《そいつの骨格は要所に金属が埋め込まれています。それと
メンバーの中では最大の筋力を持っています・・・》
「OK!!」後藤は戦法を切り替えた。
ジャキン!と踵から刃が出る、そこに山口のパンチが跳んできた。
十字ブロックで受け止めたパンチはブロックごと
後藤の体を5mも吹っ飛ばした。
ジンジンと痺れる両腕をブルブルと振り、首をゴキゴキ鳴らし
「やるじゃん・・・」と後藤は改めて構えなおす。
ズカズカと踏み込む山口は力任せに大振りのパンチをくりだす。
当たれば致命傷になるパンチを全て避け
ソバットで踵の刃を山口の腹に叩き込んだ。
「がっ・・・!!」ザクリと切れ、血を流す腹を押さえ
「オマエ・・・刃物、仕込んでたのか・・・卑怯だぞ・・・」
と山口はチンプンカンプンな事を聞く。
「フン・・・」と無視し後藤は脚の連激を山口に叩き込んだ。
切り刻まれ全身から血を出して倒れる山口に
「骨を断たずに肉を切る・・・・これも戦法よ・・・」
と後藤は、失血し息絶える山口にウィンクして
学校に走り向かった・・・・

   山口タツヤ 死亡

 

海上を飛ぶ、陰獣が乗り込む3機目のヘリ・・・
しかし操縦士の操縦ミスにより爆発炎上、海の藻屑になる・・・
乗り込んでいたのは小汚いドラゴンアッシュだった・・・

  ドラゴンアッシュ 三行で全員死亡

 

「おい、紺野、アスカさんは何してんだよ・・・」
走りながら聞く吉澤に《今、福田さんは国分と戦っています・・・
ププ・・・・》何故か紺野は吹きだした・・・

福田は公民館の体育館の中で国分と向かい合っていた。
福田の合気道で投げ飛ばされた国分は服を脱いで
白いブリーフ一丁になる。
「ソレは脱がないのかい?」と聞く福田に「うるさい!!」
と応じ「うおおぉぉおお!!」と全身に力を入れた。
見る間に真っ赤になる国分の全身から大量の汗が吹き出た、
ポタポタと床に落ちる汗は妙に滑っている。
「へへへ・・・これでオマエは俺を掴む事が出来ないぜ・・・」
国分はツカツカと歩み寄り、福田の袴の襟を掴む、
その手首を掴む福田の手がヌルリと滑った。
国分の全身を覆う大量の汗は油の様に滑り、
全身をテカテカと光らせていた。
「おりゃ!!」と福田を背負い投げにして体を床に叩きつける、
だが、受身を取れる福田にはダメージが無い。
「どうだぁ!!」勝ちどきを上げる国分にヤレヤレと立ち上がる福田、
「また投げられたくなかったらオマエも袴を脱ぐんだな・・・」
ニヤつく国分の白いブリーフはちっちゃく勃起していた。
「服は掴めるんだな・・・」と福田は国分のブリーフを
小馬鹿にした様に見詰める。
「な・・・なんだよぉ!」国分は顔が真っ赤になり、
逆にニヤつきだした福田に「バ・・・バカにするなぁああ!!」
と掴みかかった。
福田はヒョイと避け、ちっちゃく勃起する男根をブリーフごと掴み
「坊や、ネンネの時間だよ・・・」と手首を捻る。
ちっちゃい男根を中心に国分の体は回転して
床に顔面をしたたかに打ちつけた。
ヨロヨロと立ち上がる国分に再度『短小ブリーフ捻り』を仕掛け
昏倒させた。
「ありゃ!?」2度の『短小ブリーフ捻り』で脱げた国分の
ブリーフには、ちっちゃい男根がくっついていて、ミニ根が千切れた
国分の股間はピューと血の噴水が吹き出ていた・・・・
立ち去ろうとする福田の脳内に
《待ってください、その脂汗は使えます》
と紺野の声が響いた・・・・


 国分タイチ  恥ずかしがってブリーフを脱がなかった為  死亡

 

校庭に下ろされギャーギャー騒ぐ娘。達を見つけて
吉澤は胸を撫で下ろした。
「良かったぁ!!」駆け寄る吉澤を見て
「あんた誰?」と矢口。
「誰って・・・」言いかけて吉澤はやめた、
洗脳によって娘。達は他のメンバーの事を忘れているのだ。
「と、とにかく!此処にいちゃヤバイんだよ!!」
吉澤がどう説明して良いのか分からずにいると、
ピンポンパンポーンと島内のスピーカーから和田のダミ声が響いた。
「おーい!聞こえるかー?おまえ等だらしないなー!!
松岡と山口と国分は死んだぞー!!
(小さい声でボソリと)あとダパンプとドラゴンアッシュも・・・
どや!!元モーニング娘。の三人は強いやろ!!気ィひきしめやぁ!!」
「元モーニング娘。・・・?」5人が怪訝そうに吉澤を見る、
吉澤の表情は微妙だ・・・放送は続く、
「そんなオマエ等にやる気が出るように『イケニエ』を用意した!
高校の校庭に来てみぃ!若い娘がぎょうさんおるでぇ!!
好きにしてええねんど!!まあ、きばりやっ!!」
ブツンと放送が切れた。
不思議な顔をする5人に「聞いたか!アンタ等は生贄なんだよ!」と吉澤、
そこに紺野から《校内の2階の教室に入って下さい、そこに殺された
ジャニーズの武器の入ったバックがいっぱい有るはずです》との思念。
「説明は後だ!とにかく校内の2階の教室に行く!!」
辻、加護のケツを蹴り、5人を追い立てる吉澤が振り向く、
そこには工藤シズカ、浜崎アユミ、鈴木アミの3人が立ちすくんでいた。
「アンタ達も来るかい・・・?」聞く吉澤に、
「誰がっ!!」とムキになって答える浜崎。
彼女達にはモーニング娘。対する意地とプライドがあった。
「わかった・・・」吉澤は少し悲しげに答え
5人を追い立てて校内に消えた・・・・

娘。達が校舎に消えて、どうしたら良いかと佇む3人の前に
校門から歩いて近づく影が一人、
金髪に黄色いTシャツに半ズボン・・・・
「た・・滝沢君・・・」鈴木アミが少し驚きながら声を掛けた。
温泉旅行以来、音沙汰が無かったかつての恋人は
「アミ・・・久しぶりだな・・・」とアミの腕を取り
強引に唇を奪った。
物凄い力でアミの自由を奪い抵抗できない体をまさぐる。
「う・・ううぅぅん・・」滝沢の指使いに感じはじめるアミを
信じられない表情で見るシズカと浜崎。
トロンとした目でキスを貪りながら2人を見るアミに、
「な・・なにしてんのよ!こんな所で!!」
とシズカが抗議の声を上げる。
キスを貪る滝沢の目の色が変わり、右手に持ったチタンブレードが
青い閃光と共に唸った。
ボトリと落ちるシズカの首に悲鳴を上げてペタリと腰を抜かす浜崎、
しかし、アミは滝沢の為すがままに体を艶かしく捩り、
ついには歓喜の声を上げ始め地面に手をつき
丸いお尻を滝沢に突き出す、「い・・いれてぇ、滝沢くぅん・・・」
ニヤリと下卑た笑いを浮かべてスカートを捲くりパンティを下ろし
滝沢は無言のまま挿入した。

「あぁぁああ・・・あぁあああ!!!」絶叫するアミの
腰をガッチリと押さえながら滝沢は激しく腰を振り
涙を流しながら2人を見ている浜崎に
「何処にでも行けよ・・・長瀬が何処かに居るから探すんだな・・・」
と声を掛けラストスパートのグラインドを開始した。
なにかを叫びながら逃げていく浜崎を見送り、
事を終えたアミは滝沢の腕に絡みつき「へへへ・・・また、
元のようになれるの・・・?」と聞いた。
「オマエ次第だな・・」答える滝沢に「いい事思いついたよ」
と工藤シズカの首に何かを細工する。
それを見た滝沢は「いいねえ!ナイスだよアミ、流石、俺の女だよ!
これを見た木村の顔が見物だよ・・・」と言って校舎に目をやる。
それに気付いたアミは「あいつ等は後でいいじゃん・・・
それよりも・・・もっとしてほしいなあ・・・」
と甘える。「じゃあ、他の場所に行くか・・・」と滝沢は
アミを連れて校門から消えた、アミは滝沢を娘。と遭わせたくなかった、
会えば必ず娘。達を犯す・・・それは耐えられなかった・・・

  工藤シズカ  死亡

 

息を切って校庭にたどり着いた木村が見たものはシズカの首だった。
ガクリと膝を突いて首を抱きしめる・・・
目からは血の涙が溢れた。
「よぉしぃざぁわぁああぁああ!!!」
木村の絶叫が木霊した。
シズカの頭には小さな白い旗が刺さっていた、
パタパタとはためくその旗には『吉』と書いてあった。
どす黒い殺意を胸に秘め、
木村は首を抱きしめたまま、そっと高校を離れた・・・・

2階の教室に着いた娘。達は教室内に転がる死体の山を見て
悲鳴を上げた。
「だまれ!!!」教室に跳びこみ吉澤は、バックを
廊下で震え上がっている5人に次々に放り投げる。
「その中に武器が入っているから、それを持ってその廊下の
奥に有る美術室に行くんだ!!!」
呆然としている辻の前にドサリとバックが飛んできた。
足元に落ちたバックが開いて中にあるお菓子の袋が見えた。
「あっ・・・」見覚えがあるそのお菓子は辻の記憶を
少しづつ戻していく。
計十数個のバックを廊下に投げ込み廊下に出た吉澤は
まだ騒いでる4人に溜め息をつく、
「これ・・・見た事があるよ・・・」
お菓子の袋を取り上げる辻の声に吉澤は振り向き
肩を掴み「ノノ!思い出したの?」と揺する。
吉澤の顔を見上げる辻は涙ぐみ「・・・よっすぃ・・・?」
とぼんやりと答えた。
その時加護が「ああ〜!!!」と廊下の天井を指差しペタリと尻餅をついた。
吉澤が天井を見て「わあ!」とビックリする。
「美味しそうな物もっとんなぁ・・・」とヤモリのように天井にへばり付き
長い舌をペロペロ出してるのは城島リーダーだ。
「き・・・気持ち悪る!!」思わず声を出す矢口に
「誰が気持ち悪いねん!!」とベタリと廊下に着地して
「オマエ等がイケニエかぁ?」とニヤつき
「お嬢ちゃん食べちゃおうかなぁ」と辻の頭をナデナデする。
「やめな・・・」吉澤が日本刀の鞘で城島の手を払う。
「ほう、物騒な物もっとるやないけ」と険しくなる城島に
「やめて、ハイ、コレあげるから・・・」と辻はお菓子を差し出した。
「ええ子やなぁ」お菓子を受け取りボリボリ食う城島、
「これ食ったら次は辻ちゃんだよ」不気味な笑みを浮かべる
城島の前に吉澤は立ちはだかり日本刀をヌラリと抜いた。
《今、後藤さんが学校に着きました・・・もう少しでそちらに
向かいます・・・》紺野の思念通信が飛んできた。
少しホッとした吉澤の前にいる城島が腹を押さえてしゃがみこんだ。
「?」とする吉澤に「おまえ・・・なに食わせた・・・・」
うめく城島に辻が「毒だよ!!」と答える。
城島は右手を上げ「ちょ・・ちょっとタンマ・・・トイレ行かせてや・・」
我慢の限界が近づいて来ている様だ。
「阿保か・・・」上段に構える吉澤の前で城島はズボンを脱ぎ始める。
「あかん・・でそうや・・・」
その時「よっすぃ!!お待たせ!!」と廊下の向こうから
後藤が手を振り走ってきた。

城島が「でる・・・」と言った瞬間、吉澤は日本刀を
振り下ろした、こんな所で出されたら堪らなかったからだ。
しかし、体を二つにされた城島の肛門からは
ブシューと音がし黄土色の飛沫が飛び散り
走ってきた後藤の全身にかかった。
「ぎゃあぁあ!!」全身が黄色く染まり後藤は昏倒した。
「ごっちん!!」吉澤は叫んだが近寄れない、
それどころか後ずさりをする。
城島のウンコは鼻がもげそうな位、激臭がするのだ。
「紺野!どうすんだ!!」と聞く泣きそうな吉澤に
《と・・とりあえず美術室に5人を連れて行って下さい、
美術室は出入り口は1つです、バリケードを作って武器で武装すれば
敵もそう簡単には入って来れないはずです・・・》
「ごっちんは!?」
《歩いて10分ぐらいの所に川が有ります、吉澤さん、あなたが
後藤さんを背負って連れて行って洗うんです・・・・
そうしないと多分後藤さんは目覚めません・・・・》
吉澤は天井を仰いだ・・・・
《急いでください》煽る紺野に
「わかったよ!!」と投げやりに答え「おまえ等!早くバックを
持って奥の美術室に行くんだ!今の見たろ!化けもんが
あんた等を狙ってるんだ!!」刀の鞘で加護の尻をペンペン
叩きながら追い立てる。
「よっすぃ・・・なんでそんなに強いの・・・?」
辻に「なんでだろ・・・?」と曖昧に答え
「美術室に入ったらみんなでバリケードを作るんだよ・・・
私はごっちんを洗ってくるから、それまで我慢してな・・いいね?」
と頭を撫でてやる、「それと・・・皆にも思い出すように
話してみて・・・」ニコっと笑う吉澤に
「うん・・・でも出来るかなぁ・・・頑張ってみるよ・・」
自信なさげな辻にガッツポーズをしてみせて
「頑張んだよ」と励ます。
美術室に入ったところで飯田が「あんた・・いったい誰なの?」
と聞いてきたが「・・・あんた達の仲間だよ・・・詳しくは
ノノに聞いてみな・・・それよりまずはバリケードだ!!」
なにかが込上げてきたがグっと我慢した・・・

リーダー城島  死亡

 

《もう少しです・・・頑張って下さい・・・》
紺野の応援に「ふるはい!(うるさい)」と答え
辻から貰ったティッシュを鼻に突っ込んで後藤を背負って運ぶ
吉澤もウンコまみれだ。
敵に出遭わない事を祈りやっとの思いで川原に着いた。
後藤の服を脱がし、自分も脱ぐ、
そっと後藤を川に沈め丹念に洗ってやる。
「ごっちん・・・」綺麗な体に目を奪われたが
「いかんいかん」と首をふりまた洗いだす。
しかし何時の間にか後藤にキスをしてしまう・・・・
《なにやってんですか!》紺野にとがめられハっとする。
「わ・・・わるい・・・」頭を掻く吉澤の首に
何時の間にか起きていた後藤の腕がまわった。
「よっすぃ・・・今・・キス、したね・・・」
後藤の目が潤んでいた。
2人の鼓動が早くなり、吉澤はもう一度後藤の唇に自分の唇を重ねた。
《もう!やめてください!》紺野の声も聞こえなくなった・・・

「いいねぇ・・・2人はそんな仲なのかい?」
ガサガサと繁みから出てきたのは草gツヨシだ。
ハっと身を起こす2人の裸の美少女に
「どうぞ、俺にはかまわないでいいから続きをやってよ・・・
それとも俺も混ぜてくれるの?」と半分本気でちゃかす。
「だれが!!」 「ふざけるな!!」
少し顔を赤らめた2人が応じ、後藤はファイティングポーズをとる。
「やっぱ、やるのか・・・」ニヤニヤする草gは四肢を踏ん張った。
「ほう、アンタもやはり人では無くなったか・・・」
日本刀を抜き構える吉澤が「ごっちん、私がやるよ・・・」
と後藤を制した。
草gの主な間接からは刃がニュっと出ていた。
「切り刻んでやるぜ・・・」肘から出てる刃をペロリと舐め
「しゃあぁあ!!」といきなり吉澤の間合いに詰め寄る。
吉澤の一振りを左肘の刃で受け止め右肘の刃で吉澤の首を狙う、
身を屈めて避ける吉澤の顔面に膝から出ている刃が襲う。
これを体を捻って避け日本刀の柄の部分で草gの鳩尾に打ち込む。
よろける草gは「やるねぇ」と感心したように構えなおす。
「ふん・・・」吉澤の目が据わり
まだ距離のある草gに上段から一閃、
瞬間、草gの額はパンと割れた。
鋭い魔剣の一閃は鎌イタチの様に草gの表面の肉を1cmほど切り込んだのだ。
「な・・・なんだ・・・?」額から血を流し動揺する草gに
無言で近づき首を刎ねる、吉澤の剣技の見事さに
後藤は目を丸くして見入っていた。
「あっ・・・」草gの刃に胸をかすめて赤い線ができている
形の良い胸を「よっすぃ・・・可哀想・・・」
と後藤が血のにじむ線にそって舐めあげる・・・・
《もう!いいかげん止めてください!!》
紺野の声はまたしても2人には届かない様だ・・・・・

    草gツヨシ  死亡

 

商店街の目抜き道理を浜崎アユミは
なにやらブツブツ呟きながら歩いていた・・・・
(バチが当たったんだ・・・・・)
カウントダウンコンサートで足の不自由なファンに
立っていないのは感じが悪いとハマヲタを煽り
泣きながら付き添いの母親と一緒に出て行く少女を
ニンマリと笑って見送った自分を今更ながら悔やんだ。
胸にぶらさがる長瀬とのペアのネックレスを握り
(神様・・・トモヤと逢わせて下さい・・・・)と祈った。

・・・・商店街の中央でへたりこんで座る浜崎・・・・

その目が見開きキラキラと輝きだす・・・・
涙が止めどもなく溢れてきた・・・・
商店街の外れに陽炎の様に立つ影・・・・
「トモヤァ!!」長髪が揺れる背の高い影は
間違いなく長瀬トモヤだった・・・・

「ア・・・アユミか・・・?」
フラフラと立ち上がり自分の名を叫ぶ浜崎を見て長瀬は動揺した。
牙が生え、人の生き血に餓えるヴァンパイアに改造された自分を
愛する浜崎に晒したくはなかった・・・
牙は隠す事はできる、しかし血を渇望する体は
浜崎を抱き締めた途端にその本性を現わすだろう・・・
立ち尽くす長瀬に夢遊病者の様に近づく浜崎・・・・
長瀬は見た、浜崎のはるか後方にキラリと光るオートバイを・・・
そのオートバイは、いきなりエンジン音を轟かせ
商店街を加速する。
「走れ!!アユミィ!!」長瀬が絶叫する。

浜崎はエンジン音に気付き振り返ると
みるみる近付いて来るバイクが見えた。
足がすくみ、立ち止まる浜崎が最後に見た物は
羽が生えたバイクと其れに跨る・・・・
ジャキンと翼を広げた様に飛び出した刃は浜崎を2つにした。
(・・・やっぱり罰が当たったんだ・・・・ゴメンネ・・・・)
上半身が宙を舞い、女の子に謝る浜崎アユミ・・・
千切れたネックレスが飛び長瀬の足元に落ちた・・・

   浜崎アユミ  死亡

 

「アユミィイイ!!!」足元に落ちたペアのネックレスを、膝をつき、
両手で拾い上げ、愕然としている長瀬の10m程手前で
バイクは弧を描き停車した。
カシャリと翼の様に広がった刃が車体に収まる流線型の
そのバイクは、銀色に煌めき、ヘッドライトは
何かの目の様に赤かった。
「・・・誰だ・・・オマエ・・・?」怒りで目が赤く染まり、
口が裂け、牙を剥き出しにする怪人長瀬・・・
質問するのも無理はない、
バイクに跨るその男は仮面を被っていた。
黒いライダースーツに銀色に光る胸のプロテクター、
同じく銀色のライダーブーツと長手袋、
風になびく銀マフラーの上にあるのは
虫をモチーフにした様なシルバーの仮面・・・・
その男は質問には答えず
「この祭りは俺の手で決着をつけた・・・」
仮面の大きな赤い目の奥で、男の本当の目が光る。
「なに訳の分らねえ事言ってんだ!!」
叫ぶ長瀬を無視して
「だが俺の本当の祭りはこれからだ・・・」
バイクを降りた男のシルバーのベルトのでかいバックルが
チカチカと光りだした・・・・

バリケードの前で立ち、辻は一生懸命説明をしていた。
しかし言葉足らずのつたない説明は何を言っているのか判らず
「なに言ってんのか分かんねえよ!」
矢口の言葉に遂に泣きだす。
慌てた矢口が「わ〜!分った分った!・・・ゴメンゴメン・・・」
と安倍と加護の3人でメソメソする辻をなだめる。
一緒になだめようとした飯田の頭に
《目の前のバックを開けて下さい・・・》と声が聞こえた。
「な・・・なに・・・?」
キョロキョロと周りを見回したが誰も居ない。
《バックを開けて下さい・・・》また聞こえた。
「なんなの・・・?」間違いなさそうだ、聞こえたのだ。
恐る恐るバックを開けてみると赤いライダースーツと
赤い仮面が入っていた。
《それを着てください。それはアナタ自身と他の3人を守る事ができる
強化スーツです・・・》
ライダースーツを手に取り「あなたは誰なの・・・?」と聞いてみた。
《私は紺野といいます・・・》
何処かで聞いた事のある様な声・・・・
何処かで聞いた事のある様な名前・・・・
いつも皆から何かと交信していると揶揄される飯田の
初めての本当のチャネリングだった。

「なに着てんの?カオリ・・・!」安倍が目を丸くする。
矢口は口をアングリと開ける。
赤いライダースーツには白いモコモコした胸のプロテクターと
ぶっといベルトが付いている。
白い手袋とライダーブーツを履き、ピンクのマフラーを巻いた。
「飯田さん、カッコイイ!!」
泣いていた辻も泣き止み、加護と一緒に目をキラキラさせて
手をたたき歓声を上げる。
「コンノ様からお告げがあったんだ・・・・」
と飯田は手に持った仮面を被る。
仮面からウィーンと機械音が鳴り、ベルトがチカチカと光りだした。
自動的にスーツと仮面がピタリと付き露出していた首を守る。
仮面の後ろからは長い髪がサラサラと舞った。
「コンノ・・・サマ・・・?」 「なに、それ・・・?」
安倍と矢口がポカンと顔を見合わせ、
同じ表情でまた飯田を見た。
「そう、コンノ様・・・」と飯田。
安倍と矢口は開いた口が塞がらない。
辻が「神様だよ!モーニング娘。の!!」と思い当たる伏しが有る様に
声をあげた。
辻は紺野が死んで、神様になって飯田に降りて来たと思ったのだ。
「分かるの?辻・・・」と飯田は辻を抱きしめ頭をナデナデする。
「とにかく!私がナッチ達を守るから!!」
飯田の言葉には力強さがみなぎっていた。
安倍と矢口は、ずっと表情が固まったままだ。
1人でゴソゴソと全部のバックを開けていた加護が
「・・・無い・・・」とガックリと肩を落とす。
加護もライダースーツを装着したかったのだ・・・・

「くっそう!」長瀬のパンチは全て仮面の男にさばかれる、
「ちっ!」長瀬の跳躍は男の頭を越え、男の背後に回り
羽交い絞めにした。
口がガバっと裂け男の喉元に噛み付く、しかしスーツに
守られた喉は長瀬の牙を通さない。
「ふん!」男は肘を背中にいる長瀬にあびせ
「はぁ!!」振り向きざま長瀬の胸にパンチを叩き込んだ。
5mも吹っ飛び「ぐぁ!」と口から吐血する長瀬・・・
男がグっと突き出す拳には浜崎とのペアネックレスが握られていた。
拳に力を入れるとボロボロとネックレスが崩れた。
「・・・き さ ま・・・」
凄まじい形相で睨み付ける長瀬に
「終わりだ・・・」と仮面の男は腰を屈め両足に力を込める。
ベルトのバックルが激しく光りだす・・・
「とうぅ!!」男のジャンプは4mも跳躍し回転し錐もみしながら
長瀬の腹をえぐり蹴った。
どてっ腹に大きな穴が空いた長瀬は崩れ落ち、
意識が遠くなりながらカチャリと仮面を外す男の顔を見た。
「・・・も り・・・」
その言葉を最後に長瀬は絶命した・・・
森カツユキは強化手術を受けてはいない。
科学の粋を集めた強化スーツにより怪人長瀬を倒したのだ。
この島にいる全ての人間を殺し生き残れば
衰退の激しいオートレース界に莫大な資金が入る予定になっている・・・
寂しげな表情の森カツユキは
バイクに跨りエンジン音を轟かせその場を後にした・・・

   長瀬トモヤ  死亡

 

《飯田さん、廊下に出て下さい、敵が来ました・・・》
また、お告げがきた。
「はい、コンノ様・・・」飯田がスクっと立ち上がる。
「なに、カオリ?」 「またお告げ・・・?」
矢口と安倍が呆れた様に聞く。
「うん・・・でも、大丈夫、私が守ってあげるから・・・」
辻と加護の頭を撫でて
ライフルを持つ矢口とボーガンを持つ安倍に
「い・・・行ってくるネ・・・」とバリケードをかきわけ出ていく。
「お・・・おう・・・」 「・・・大丈夫・・・?」
さすがに不安になる矢口と安倍・・・
手を振り美術室を出る飯田はガクガクと震えていたのだ。
「あっ・・・あの人は・・・」
飯田は廊下の向こうに立つ香取シンゴを確認した・・・
《飯田さん、彼をスマップの香取シンゴと思ってはいけません。
彼はあなた達を殺しに来た敵です・・・》
「は・・・はい・・」
飯田は自分の格好を見てゲラゲラ笑い転げている香取にゆっくり近づいった。
膝がガクガク震え、仮面の奥の顔は
顔面蒼白でドっと汗が吹き出していた・・・・

川のせせらぎが聞こえる・・・・
滑らかな大きな石の上で溶け合っていた体をネットリとした
汗の糸を引きながら気だるそうに離す・・・
そのままゴロリと横になり、大きく息をつきながら後藤の手をつなぐ・・・
日がわずかに傾きかけている・・・
どれ位、時がたったのだろうか・・・
ボンヤリと見上げている空に雀が飛んでいる・・・
一線を越えてしまった事には後悔はしてはいないが
これから先の事を考えると少し不安で切なくなった・・・・
たぶん、隣の後藤もそうなんだろう・・・
チラリと見ると後藤は微笑みながら、こちらを見ていた・・・
「・・・おんなじだヨ・・・・」同じ事を考えていたのだろうか
後藤は言いながら唇を重ねてきた・・・
「あっ・・・」止めども無く込み上げてくる切ない感情に身を委ねる・・・

急に目を見開きガバっと上半身を起こす吉澤に
「わっ!・・な・・なに・・・?」とビックリする後藤。
「こ・・紺野!!どれ位たった?」慌てる吉澤に
《・・・フーッ、やっと終わりましたか・・・
もう、一時間以上経ってますよ・・・》呆れ声の紺野。
まだ乾いていないセーラー服をバタバタと着る吉澤に
「いったい、どうしたの・・・?」聞く後藤に
後藤のセーラーとブルマを投げつけ
「話は走りながらするよ!とにかく着て!!」
「あっ・・!」後藤もなんとなく気付いた、
気絶してからの事は解からないが、吉澤の慌てぶりから
やばそうなのは分かった。
《今、香取シンゴが校舎にいます・・・》
「わわわわわ・・・ごっちん!!早く早く!!辻達が死んじゃうよ!!」
吉澤は泣き顔だ、後藤の顔も蒼くなる。
「痛てっ!」慌てすぎた後藤はブルマを穿く足が
ゴムに引っかかっり、つんのめって倒れたのだ・・・・

「な・・・なにが可笑しいの!!」
笑い転げる香取に飯田は突っかかった。
「ギャハハハハ・・・なんだ?オマエのその格好は・・・あ〜腹いてぇ」
腹を擦りながらユラリと起き上がる香取の目は
明らかに飯田を小バカにしている。
「まあ、笑わせてもらった分、楽に死なせてやるよ・・・」
言うなり飯田の腹に蹴りを打ち込む・・・
人間の内臓をもメチャメチャに破壊する威力を持つ
香取の前蹴りをまともに受けふっ飛び、ゴロゴロと転がる飯田・・・
しかしスーツの力か、「い・・いった〜〜い・・・」
と、お腹を押さえ立ち上がる飯田を見て、香取の表情が変わった。
「おまえ何者だ・・・?」
「だ・・・誰だっていいでしょ・・・」
「ほう・・」ブワっと香取が跳び飯田の前に立ちパンチの連打を浴びせる。
「キャ〜!!」飯田は悲鳴を上げ頭を抱えて丸くなって防御した。
「なんだオマエ?本当は弱いのか・・・?」
香取は飯田の髪の毛を束にして掴み「おぉりゃあぁああ!」とブン投げた。
転がる飯田はメソメソ泣きながらも、また立ち上がった。
「なんか、だんだんムカついてきたぜ・・・・」
香取は唇を歪ませ目を剥く。
《飯田さん、そのスーツは貴女の能力を限界を超えて発揮します、
計算では10倍以上になるはずです・・・動かしたい筋肉や関節に
意識を集中して力を溜めるんです・・・》 「で・・・でも・・・」
《貴女なら出来ます!モーニング娘。のリーダーでしょ!》
「コ・・・コンノ様・・・」
「うん?・・・なんだ・・・?」香取はズカズカ踏み込む歩みを止めた、
飯田のベルトが急に光りだしたのだ。
「わあぁぁあああ!!!」叫びながら飯田が突進してきた。
どんな攻撃があるのかと身構える香取に、飯田は構わず頭から突っ込んだ。
「ぐわっ!!」なんの策も無い、ただの体当りに香取の体は吹っ飛び、
美術室のドアをぶち破り、机と椅子で作ったバリケードに突っ込んだ。
「きゃ〜〜〜〜!!」娘。達は悲鳴をあげた・・・・

高校の屋上にある、ドでかく分厚いコンクリートの箱の中に
紺野と和田がいた。
島内のいたる所に仕掛けられたカメラが、10台以上あるモニターに
映像を映し出している。和田はニヤニヤと笑いながら見ていた。
「明日までかからんな。」チラリと午後3時を回る時計を見て和田が言う。
その時、部屋全体が震えだした。
「な・・・なんや?」屋上に有るカメラが映すモニターに目をやる。
「い・・稲垣メンバーや・・・」
コンクリの壁に両手をくっ付けている稲垣メンバー。
「や・・やばいで・・・」バイブレーターの様にブルブル震える
コンクリートの壁・・・
その壁が砂の様にザザーと崩れた。
稲垣メンバーの手から発する超振動はどんな物体の細胞をも揺らし破壊する。
崩れた壁から現れた稲垣メンバーは自身の超振動により
着ていた学生服が崩れ素っ裸になっていた。
「あなたは・・・!?」紺野は目を見張った。
何処かで見た事がある女体・・・・
『ヘアヌード写真集』を男子が見せてくれた時があった・・・・
その時、綺麗だな〜、と思った裸体・・・・
稲垣メンバーの首の下にあるのは、菅野ミホの体だった・・・・
「このぉガキャァア!!」
和田がリモコンを稲垣メンバーに向けてスイッチを入れた。
だが、爆薬が仕掛けられた首輪は超振動で崩れ落ちていた・・・
知らずに何度もスイッチを押す和田の首に
稲垣メンバーの手が巻きついた。
「おまえ等は俺から全てを奪った・・・・」
稲垣メンバーの狂気の源が解かり愕然とする紺野・・・・
和田の体が振動し始めた・・・・

   和田アキコ  死亡

 

★★ 『ハロプロ』バトルロワイアル★★

《みなさん・・・お別れの時がきました・・・・》

紺野の声に森を抜け、走る吉澤と後藤の足が止まる・・・・

学校に向かい歩いていた福田が足を止める・・・・

「コンノ様・・・」香取をふっ飛ばし、肩で息をする飯田が
キョロキョロと辺りを見回す・・・・

「なに?この声!」 「変な声が聞こえる・・・」 「うそっ!!」
安倍、矢口、加護が口々に声をだし顔を見合わせる・・・・

「アサミちゃん・・・生きてたの?」辻が天井を見上げる・・・・

《もう少しで私は死にます・・・でも、その前に私の想いの全てを
あなた達に伝えます・・・・紺野アサミはモーニング娘。になって
少ししか経ってなかったけど・・・幸せでしたよ・・・・
だって、普通の人の何倍も濃い時間を皆さんと過ごせたから・・・・
ありがとうございました・・・・これが私の最後の能力です・・・・
あっ・・・辻さん・・・私の能力引き継いでネ・・・・・・・》
小さくバイバイと声が聞こえた・・・・・

娘。達全員がその場に立ち尽くし、跪き、うなだれた・・・・
紺野の今まで歩んできた15年の人生全てが入り込んできて、
涙が止めども無く溢れた・・・・
紺野の記憶の最後に、ちっちゃく手を振る紺野の笑顔が見えた・・・・

和田を超振動で溶かした稲垣メンバーは紺野の首に
回しかけた手を止めた・・・
能力を使い果たし、紺野はこ息切れていた・・・・
その死顔は安らかに笑っていた・・・・

  紺野アサミ  死亡

 

「紺野ぉぉおお!!!」記憶を取り戻した飯田の前に
ガラガラとバリケードを崩し立ち上がる香取シンゴが見えた。
「ああぁぁああぁあ!!」仮面から涙が流れ、ベルトが光りだす。
「うわぁぁああ!!こんのぉぉおお!!」
物凄いダッシュで香取に跳び込みマッハのパンチを繰り出す。
香取の胸から入り背中から抜けた拳をズルリと抜き取り、
飯田は顔を覆い、その場で泣き崩れた・・・・
美術室から出てきた安倍、矢口はワァ〜とカオリに
抱きつき一緒に泣いた・・・・
天井をボ〜と見詰め続けている辻を
加護はヒックヒックとしゃくりあげながら見ていた・・・・

   香取シンゴ  死亡

 

ペタリと腰を落としエグッエグっとしゃくりあげる後藤・・・
「私が悪いんだ・・・全部、私のせいだ・・・」
吉澤は掛ける言葉が見つからない。
やさしく肩に手を置き「・・・そんな事ないよ・・私だって・・・」
慰めるのがやっとだった・・・
確かに最初にキスをしたのは吉澤だったが、誘ったのは後藤だ・・・
1時間余りのタイムロスが悔やまれた・・・
しかし、ここで誰が悪いなどと話し合ってる暇が無いのは確かだ。
学校にいる娘。達の安否が気にかかる。
「立って、ごっちん・・・辻達の命が危ないんだ・・・
助けなきゃ・・・そして、仇を討とう・・・・」
しゃくりあげる後藤を抱き起こし、うながす。
「よっすぃ・・・稲垣メンバーは私にやらせて・・・・」
泣きながらも後藤の決意は固いようだ・・・・

福田の歩く道の両脇にあった巨木が福田めがけて倒木した。
余裕で走り抜けて避けると目の前に仲居マサヒロが立っていた。
木の根元が綺麗に切断されているのを見て
「アンタがやったのかい?」と聞く。
ニヤっと笑い仲居は左手の人差し指を福田に向けた。
何かの糸に巻かれた様に福田の袴がシュルシュルと締まる、
ツカツカと歩み寄り右のボディブローを福田に叩き込む。
「うっ・・・」崩れ落ちそうな福田の袴の上から
胸をギュっと鷲掴みにし揉みしだき
「なかなかデカイじゃないか・・・」と仲居は今度は股間に手を伸ばす。
仲居の左人差し指から伸びる見えざる極細の妖糸は
福田を縛り動きを封じた。
「くっ・・・」立ったまま身動きできない福田は
胸と股間をまさぐられ、顔が赤みを帯びてきた。
「ははは・・・感じてきた様だな・・・それでは体を
見せて貰おうか・・・」
仲居の妖糸が今度は福田の袴と下着だけを締め付け切り落とす。
「ほう、素晴らしいねぇ・・・」
福田の体は全身が火照り、汗なのかローションを塗った様に
テカテカと光り輝いていた。
コリコリと勃起した乳首を弄り、股間に伸びた指が激しく蠢く。
歯を食いしばって我慢していた福田の唇から
「うっ・・・くぅう・・あっ・・ああぁぁああ・・・!!」
たまらず喘ぎ声が漏れた。
「オマエの体は凄いな・・・全身がぬめってるぜ・・・」
ヌルヌルと滑る肌は仲居を夢中にした。
福田を押し倒し、下半身を露出して覆いかぶさる。
「いくぜ・・・」と福田の秘貝に挿入する。
ちょっと遊びで弄るだけのはずだったのだが、
福田の体がそれを許さなかった。
「あぁぁああ!!・・・い・・いいぃぃいい!!」
身動きが取れず、仲居の思うがままに翻弄される福田は
腰を自ら動かし、お腹を波打たせ仲居を喜ばせた。
「ひゃはは・・いく瞬間にオマエを切り刻むぜ・・・」
仲居の腰の動きが早くなる・・・
「・・・いいわ・・・好きにして・・・あぁああ!」
縛られていた腕の妖糸が緩むと、福田は仲居の首に腕をまわし唇を貪った。
「い・・いくぜっ!・・・最後に昇天しながら・・・死ねぇぇえええ!!」
「ああぁぁああ!・・い・・いくわ・・いっちゃうぅぅうう!!!」
瞬間、仲居の妖糸が縛っていた福田の体を切り落とす・・・
だが、ボトリと落ちたのは仲居の首だった。
喘ぎながら仲居の首に廻した腕には見えざる仲居の妖糸が握られていた。
巨木さえ切り落とす仲居の妖糸・・・
しかし国分の『脂汗』に滑り、福田は切れなかった・・・
福田の体は最初から塗っていた国分の『脂汗』で滑り光っていたのだ。
「サンキュ・・・紺野・・・」
体に塗り込め、と嫌がる福田に
強硬に自分の意見をごり押しした紺野に感謝した・・・・・

   仲居マサヒロ  死亡

 

「・・・!!!・・・」戦慄が背中を抜ける・・・
まだ少し快楽の余韻が残る福田は背後から浴びせられる強烈な殺意に
体が動かない・・・・
ゆっくりと振り向くと、そこには木村タクヤがいた。
背中の日本刀の柄に手をかけ「・・・吉澤は何処だ・・・」
仲居の死体には目もくれない・・・
「・・・知らないね・・・」
福田は日本刀を握る木村の手の筋肉だけを見ていた。
ピクリとかすかに動く筋肉を見て福田は後ろに跳んだ。
「・・・な・・・!」
着地した瞬間に左足首が無いのに気付き愕然とする福田・・・・
無言の木村の手には鈍い光りを放つ長剣が握られている、
木村の放つ必殺の『燕返し』は福田の反射神経をも凌駕したのだ・・・
フワリと跳んだ木村はそのまま長剣を福田の脳天に振り下ろす、
しかし、福田は跳んでくる長剣を両手でガシっと挟んだ。
『真剣白刃取り』で掴んだ刀を合気で捻ると木村は瞬間手を離す、
捻り終わった刀の柄を再び掴みそのまま福田の心臓に長剣を突いた。
「・・・ぐ・・・」血の泡を吹き
崩れ落ちる福田は木村にしがみ付き、胸に手の平をつけ
最後の合気を叩き込んだ・・・・
ピシリと木村の胸骨にヒビをいれて福田は絶命した。
(紺野・・・アンタに逢えるかな・・・・・)
薄れる意識の中に紺野と笑顔でお喋りする自分がいた・・・・

    福田アスカ  死亡

 

かすかに痛む胸を押さえる木村が振り向く、
銀に煌めくバイクが爆音と共に加速してきた。
構える木村の頭上をバイクが飛び越えた。
木村は構えたままだ、痛む胸が長剣を振り込むのを躊躇させた。
停止したバイクに乗り込む仮面がチラリとこちらを向いた。
だがエンジンをふかし、そのまま学校に向かって消えていく・・・
見覚えがあるシルエットに
「アイツも来たのか・・・・」
木村も学校に向かう。
吉澤も其処にいる・・・・
妻の仇を絶対に取る・・・
木村の目的はそれだけになった・・・・

「福田さんが死んだよ・・・」
辻がふいに声をだした。
「えっ、分かるの?ノノ・・・」
加護が聞いた。
「うん・・・なんかね〜・・・分かるの・・・」
自分の胸を指差し
「ここにね、アサミちゃんが居る様な気がするの・・・」
他の4人も、何も言わず黙って顔を見合わせて頷く。
「飯田さん、校庭にバイクの男が来るよ・・・」
飯田は辻の頭を撫でて
「分かった、やっつけてくるね・・・」
と美術室を出た。
記憶を取り戻した娘。達は各々武器を持ち
自分達の意志で美術室に立て篭もる。
「カオリ・・・アスカの仇をとって・・・」
矢口は先ほどの飯田の戦いを見て、飯田は無敵になったと思った。
生きていたと思った福田が死んだ・・・
このプログラムの過酷さを思い出して
唇をギュっと噛み必死で涙を堪える安倍・・・
「わっ!」加護がビックリした声を出した。
「・・?・・」とする矢口と安倍に
「な・・なんでもないです・・・」と手を振る。
辻が加護に向かって口に指をあて「シーー」とする。
クスクスしだした子供達に(またか・・・?)と呆れ顔の矢口と安倍。
《すごいね〜》 《おもしろいね〜》 《みんなには内緒だよ・・・》
辻と加護は、紺野が皆の為にと辻に託した能力を使い
辻のテレパシーで楽しいお喋りしだしたのだ・・・・・

校庭に乗り着けたバイクを降りる森カツユキの
目の前に同じ格好の仮面が立っていた。
「・・・女か・・・?」
赤い仮面の後ろから流れるような髪の毛がサラサラと揺れている。
「・・・大丈夫か・・・?」
ガクガク震える飯田を見て、これから殺す相手だと解っていても
変に心配になってしまう。
「だ・・大丈夫じゃなかったら、どうなのよ!!」
飯田は目の前の仮面の男を見て、絶対勝てないと思い急に怖くなった。
多分同じスーツだ・・・・だとしたら相手の方が強いに決まってる・・・・
それに、さっき香取に勝った時も、どうやって勝ったのかも
よく憶えていない・・・・
いろんな考えが頭をグルグル回り、体が震え、吐き気さえした。
しかし、もう逃げられない・・・・
闘わなければならない・・・・
みんなの為に・・・そして、リーダーとして・・・・
震えながら間寛平の様に構えるへっぴり腰の相手に
「俺はお前に恨みなど無いが・・・死んでもらう・・・・」
森が構える、相手の腰が引けてるとはいえ同じスーツを着ている、
油断は禁物だ・・・・
「し・・死んだら化けて出てやるから〜〜!!」
わぁあ!!と泣き声を上げながら走ってきた飯田は
森を子供のようにポカポカと殴りだした。
ボーゼンとする森・・・・
まるで小学生のケンカだ・・・・
片手で飯田の拳を振り払い、パンチを胸に叩き込む。
ドーン!と吹っ飛び転がる飯田は泣きながらも立ち上がる。
「・・ふう・・それでも、防御力だけは流石だな・・・」
森は腰を沈め、両足に力を込める・・・
「可哀相だが、決着をつけさせて貰う・・・」
ベルトが光りだした・・・・
「わあぁぁあああ!!!」
いきなり飯田がダッシュした・・・
「なっ・・・!」
腰を沈めてジャンプの体勢になっていた森は虚をつかれた。
(あのベルトだ!!)
飯田は光るベルトを見て直感的に、それを壊さなければ、と思い
さっきのヘナチョコパンチとは別物の
マッハパンチを森のベルトに叩き込んだ。
ザザッ!と砂煙を上げ、森の体が後方にずれる・・・
ベルトのバックルが壊れ、バチバチと火花が上がり
青い電気が放電した・・・・

「な・・なんだアレは・・・?」
「仮面ライダーが戦ってるよ・・・」
学校に駆けつけた吉澤と後藤は、校庭で闘う2人のライダーを見た。
「あ・・あれ・・赤いライダーは飯田さんだよ!!」
後ろ髪を振り乱してパンチを放つ飯田は
ベルトが壊れ、力を出せない森を圧倒していた。
ついに森に馬乗りになりパンチをボコボコ当てている飯田に
2人は駆け寄った。
「カオリン!もう死んでるよ!!」
マウントのポジションから力無くポカポカと拳を叩き続ける飯田に
後藤は声をかけた・・・
森の仮面は割れ、顔の半分が見えていた・・・・

      森カツユキ 死亡

 

ペタリと座り込みメソメソ泣く飯田の仮面を外し
「大丈夫だから・・・」 「飯田さんは悪くないから・・・」
分るような分らないような慰めの言葉をかける・・・
その時、吉澤の雰囲気が一変した。
「ごっちん・・・ごっちんは屋上に行って・・・・
稲垣メンバーをたのむよ・・・・」
スクっと立ち上がり、校門の方を振り向く・・・
ユラリと立ち尽くす男は木村タクヤだ・・・
木村の凄まじい殺気は吉澤に向けられていた。
「・・・よっすぃ・・・」
後藤の声に黙って頷く吉澤・・・
「・・・分った・・・負けないでね・・・」
吉澤の決意を感じた後藤は、力の抜けた飯田を背負い校舎に消えた・・・

「誰か来たよ・・・」
辻の声に矢口と安倍は緊張した・・・
しかし辻はバリケードを抜けて廊下に走り出る。
辻を追いかけて一緒に出て行く加護・・・
「わっ!ば・・ばか!!」
矢口と安倍も武器を手に慌てて廊下に飛び出た。
廊下の中程に2人の人影が見えた。
「な・・なんなの・・・?」安倍が絶句する。
チタンブレードを肩に掛けニヤつく滝沢・・・
滝沢は鎖を持っている。
ジャラリと音がする鎖の先は全裸の鈴木アミの首に巻かれていた。
「ひゃははは・・・お前等も、この様にしてやるぜ・・・」
どんよりとした目のアミの顔は殴られ青アザができ、腫れ上がり
股間からは足首にかけて血が滴っていた。
「な・・なんて事を・・・」
矢口は蒼ざめ、加護が目を丸くしてボーゼンとしている。
「・・・酷いです・・・」
一番前に立つ辻が滝沢を睨みつけた。
「おっ、辻ちゃん・・・いい表情だねぇ・・・」
滝沢が一歩踏み込んだ・・・
「もう、やめるのです!!」辻が叫んだ。
「なぁに言って・・・・」滝沢の言葉が詰まった。
・・・ドクン・・・心臓が鳴った・・・
言い様の無い感情が滝沢を包み込んだ。
「あ・・あぁ・・あぁ・・・」何故か涙が流れ出した。
この感情の源は何なのか・・・・
辻の真っ直ぐで純真な心をぶつけられ、自分を見失う滝沢・・・
いや、本来の自分の心を取り戻す滝沢・・・
理性を取り戻し、罪の意識にさいなまれワナワナと震えだした・・・
紺野の能力を受け継いだ辻の『スピリッツアタック』は
滝沢の人格を破状させた。
ボトリとブレードと鎖を落としボーゼンと涙を流す滝沢に
矢口と安倍がライフルとボーガンを向け
「うわぁああぁああ!!」と叫びながら撃った。
同じく何かを叫びながら滝沢の前に出て両手を広げて
滝沢をかばう鈴木アミ・・・・
矢口と安倍は、かまわず撃ち続ける・・・・
ライフルの弾が切れ、連射式のボーガンの矢が切れても
カチカチと引き鉄を引き続けた。
自分が『スピリッツアタック』を仕掛けた事さえ解からない辻は、
蜂の巣になって倒れた2人を悲しげに見つめた・・・・

      滝沢ヒデアキ  死亡
      鈴木アミ    死亡

 

2階の廊下で背負っていた飯田を下ろし
「みんなの所で待っててね・・・・」
と後藤は屋上に向かった。
はたして、稲垣メンバーは居た・・・・
コンクリートの床が割れて草が至る所に生えている殺風景な屋上には
似合わない真っ白なコンクリートで出来た司令室の前で
黙って突っ立っている全裸の稲垣メンバーを見て自分の目を疑う後藤。
女性の・・・菅野ミホの体を持つ稲垣メンバーに
「・・・あ・・あんた・・は・・」言葉が出ない。
「俺には・・・何も無い・・・殺すなら・・殺せ・・・」
空を見上げる稲垣メンバーは、首に刻まれる
自分と菅野の体を繋げる傷跡をさすった。
恋人を殺し、自分を改造し蘇生させ、全ての人生を奪った
和田を自分の手で殺した稲垣メンバーは、
自分の人生の幕を閉じる為、屋上で陰獣が来るのを待っていたのだ・・・
「・・・わかった・・・」
後藤は静かに歩み寄り、腰をため拳を握り、大きく振りかぶった。
虚無に包まれ身じろぎもしない稲垣メンバーの胸の中心に
無言で渾身のパンチを叩き込む。
断末魔の声も上げず、吹っ飛ぶ稲垣メンバーは
屋上の柵を吹き飛ばしながら校舎の外に落ちた・・・

「紺野・・・こんな所にいたの・・・」
頑丈なコンクリートに包まれた指令室内で、
安らかに眠るように死んでいる紺野を抱きかかえ
「みんなの所に行こう・・・」
優しく語りかけ、後藤は屋上を後にした・・・・

    稲垣メンバー  死亡

 

風が吹き、砂埃が舞う校庭の真ん中で、吉澤と木村タクヤは対峙した。
「私に用が有るようだが・・・」
聞く吉澤の足元に、木村が小さく白い旗を投げた。
ポトリと落ちた旗の真ん中に『吉』と書かれた字を見て
(これが原因か・・・)と思った。
もちろん吉澤には見覚えは無いが、
違うと否定するのも面倒だ・・・・
「問答無用・・・」
長剣を抜き、構える木村に
吉澤もヌラリと日本刀を抜き構える。
今までの敵とは明らかに違う・・・・
吉澤は長剣を持つ木村が、自分を上回る剣技を持つ力量が有る
戦士だと解かった・・・・
鈍い光を放つ長剣の周りの空気が歪んで見える・・・
妖気漂う木村をまとう空気に、吉澤の足はジリジリとさがる・・・・

その時「よっすぃ〜!!」と後藤が叫び
娘。達がバタバタと校庭に出てきた。

「・・!!・・」
一瞬気を取られた吉澤に木村の長剣が跳んで来た。
ギン!と鈍い音と共に木村の上段を吉澤の日本刀が受ける。
Xの字に絡む二本の刀・・・
文字通りの、つばぜり合いに吉澤は離れる事が出来ない・・・
吉澤は直感した、離れれば負けると・・・
離れた瞬間に何かが起こる・・・
何が起こるかは解らないが、確実に死ぬ・・・
「よっすぃ!負けるな!」 「頑張れ〜!」
口々に応援する娘。達の声も遠くに聞こえだした・・・
吉澤の神経が研ぎ澄まされてきたのだ。
木村の顔しか見てないが、ライフルを構える矢口が見えた・・・感じたのだ。
「矢口さん!手を出さないで!!」
吉澤の叫びに「・・・なっ・・!?」何か言おうとする
矢口を後藤が制した。
「大丈夫・・・絶対勝つよ・・・」
後藤の声も乾いていた。

もう何も聞こえない・・・
これ以上無いほど吉澤の神経は研ぎ澄まされ、集中した。
・・・瞬間・・・見えた・・・木村の次の手が・・・
ギリギリと音を立てぶつかり合う刀を体と共に離し、
吉澤は後ろに跳んだ。
キン!と乾いた音がした・・・
足首を刎ねる木村必殺の『燕返し』・・・
電光石火で足首を狙う木村の妖剣を吉澤は返したのだ。
距離を置く吉澤を見て、木村は胸に手を当てた。
福田にヒビを入れられた胸骨が、今の全神経を賭けた一撃で痛んだのだ・・・
「やるな・・・」木村は喉まで込み上げた血を飲みこんだ・・・
「・・?・・」5mも離れている吉澤が目を閉じて
上段に構えてるのが見えた。

全身の細胞全てが集中した時にだけ出せる技・・・
吉澤は全身全霊を賭けて日本刀を振り下ろした。
ピシリと空気が鳴った・・・・
吉澤の魔剣の軌道上の空気がずれた・・・
ずれた空間に木村が居た・・・
次元を切り裂く次元刀は木村を2つに裂いたのだ・・・
崩れ落ちる木村と同時に吉澤もフラフラと倒れた。
「よっすぃ〜!!」
後藤達が駆け寄ってきたのが、なんとなく分かった・・・・

     木村タクヤ  死亡

 

どれくらい眠ったのだろう・・・
吉澤が目を覚ました時には、校庭に夕闇が迫っていた。
目の前に後藤の顔があった。
「あっ、気がついたね・・・」後藤が微笑む・・・
後藤の膝枕は気持ち良かった。
飯田と安倍と矢口は、紺野と福田の遺体を並べて座り、うつむいている。
辻と加護は・・・・アッチ向いてホイで遊んでいた。
「来たみたいだよ・・・」後藤がうながす。
バラバラと音を立てて近づいてくる
ヘリコプターが遠くに見えた・・・・・・

その日を境にモーニング娘。はブラウン管から姿を消した・・・
騒いだファンも、いつしか娘。達を忘れる・・・・
一年後には革命政府の圧政に国民の怒りが爆発し
各地でクーデターが起きる・・・・
雪崩を打つ様に赤い政権は崩壊した・・・・

 

  ーーーちょっと長いエピローグーーー

    ーー 二年後 ーー

都心から少し離れた、海に面した小さな町がある・・・
小高い丘に海を一望でききる
洒落た住宅街があった・・・・
『飯田二輪店』の前には銀色に煌く流線型のバイクが止めてある・・・
その隣には小さいが、お洒落な洋食屋があった。
『レストランぷちモーニング』
ランチの忙しい時間が終わり、カウンターで一息ついている
矢口が顔を上げる・・・
カランカラン・・と入ってきた客に
「いらっしゃ・・・なぁんだ、カオリか・・・」
と、ため息・・・
「ヨォ!!」と手を上げて入ってきた飯田に
「なにアンタ、またその格好?」と、あきれ顔だ。
例のライダースーツを着込んだ飯田は
「コーヒー」と言ってドッカリとカウンターに座った。
「なになに、また変な格好で来てんの?」
厨房から出てきた、可愛いコックさんの安倍が
「まあ、マスクを被ってないだけマシかぁ・・・」
と、こちらもあきれ顔だ・・・
「仕方ないだろ・・・仕事帰りなんだから・・・」
飯田は、たまに警察に協力して凶悪犯逮捕に出かけていた。
平和になったとは言え日本はまだ混沌としていた。
マッドサイエンティスト達が散らばり
犯罪組織を形成したりしているのだ。
「このライダースーツって私しか使えないらしいんだよ、
最初に着た人の組織に共鳴するんだって」
得意気な飯田に
「ハイハイ・・・もうミニにタコが出来たよ・・・
その自慢話しは・・・・」
と、矢口がコーヒーを差し出す。
「そろそろ、かな・・・・」
安倍がチラリと壁掛時計を見ると、それを見計らった様に
「おはようございま〜す!!」と辻と加護が入ってきた。
店の看板娘は学校が終わると店を手伝いに来る。
と言っても、飯田の店に辻、この店の二階に加護が住んでいるのだが・・・
辻の能力は何時の間にか無くなっていた・・・
と言うより、どんな能力かも良く解からないままに忘れてしまったのだ・・・
5人で話す話題は、いつしか後藤と吉澤の話しになる・・・
「何やってんのかねぇ〜」遠くを見詰める安倍に
「死んでんじゃないの・・・」と、飯田。
「アホか・・・」矢口は何時もツッコミ専門だ。
あの日・・・以来、会ってない・・・・
連絡も無いし・・・居場所も分からない・・・・
でも、絶対生きている。
それだけは確信している娘。達・・・・
辻と加護は・・・アッチ向いてホイで・・・遊んでいた・・・・

 

海沿いの町を走るハーレーに乗る2人の美女・・・
ハーレーを操る吉澤の腰に手を回していた後藤が
トントンと吉澤の肩を叩く。
「・・?・・」とする吉澤が後藤の指差す店の看板を見た。
『飯田二輪店』と『レストランぷちモーニング』
ハーレーを止め「・・・あれは・・・?」
全国を気ままに旅をしていた2人が偶然見つけた小さな店・・・・
「入ってみる?」聞く後藤に
「もちろん!!」吉澤は胸がドキドキした・・・・

・・・カランカラン・・・・・

「いらっしゃいませ〜〜!!」
懐かしい声が響いた・・・・・


   ーーーー完ーーーーー