もうひとりの紗耶香
後藤の場合
「マキ、、、あんた、また歌の最中にあたしの前突っ立ってたね。」
「ご、ごめんなさい、市井さん、、」
「サーヤ様って呼べって言ってるだろう!このバカ!」
ばし!ばし!
「や、やめて お、お願いだからぶたないでー」
「、、、あたしは何もあんたが憎くてこんなことやってるわけじゃないんだよ。
可愛いあんたが、あたしを踏みつけにしたかと思うとそれが憎くて」
「あ、サーヤ様!そ、そこは」
「おまえはいつまでもわたしのもの、そうだろうマキ?」
「は、はい、、、マキはサーヤ様のものです、い、いや、恥ずかしい」
いつものように快楽に身を沈めていく後藤を見ながら、
飴と鞭の支配が完成しつつあることにほくそ笑む市井だった。
そのひとは私がグループに入ったときは
そんなに目立った人じゃなかったんです。
「あたしが教育係り、やったげる。」って軽い感じで引き受けてくれて
それで初めて意識して、、、
いろんなことを教えてくれました。
歌の歌いかた。
誰の事を考えて歌うのか、誰のために歌うのか。
自分が何のために歌っているのか、、、
ほんと、身振り手振りで言葉ではあらわせないくらい、
他にもいろいろ教えてくれました。
そう、あのときもまだ、皆についていくだけの見習い期間中、
あたし本番中爆睡していたんです。
気がついたら控え室がもう真っ暗であの人だけが座って待ってくれてて
「あれ、、、暗い、、、」
「後藤が良く寝てたからね。待っててあげたんだ。」
「す、すいません」
「ねぇ、、、」
「は、はぁい、、、」
「2人だけの時はマキ、って呼んでいい?」
「え、、べ、別に構いませんけど、、、」
「そ、嬉しい!」
「!?」
突然顔が近づいてきて、、、そのときがあの人との初めてのキスでした。
口の中に入ってくる舌を私、何故か避けられなかったんです。
市井さんがプッチモニの合宿の途中
39Cの熱で緊急入院したとき、
心配で夜こっぞり病院に様子を見に行ったんです。
起こすと悪いと思ったんで、電気をつけないで病室にそっと入ったんですけど、、、
ベットに横になってる市井さん、高熱で頬を赤くして、
意識なくってサーヤ様、いえそんな市井さんを見ていたら、
私何がなんだかわけわからなくなっちゃって、
我慢出来なくて思わず泣いちゃったんです。
最初は口を手で押さえて声を押し殺してたんですけど、
そのうち、押さえ切れなくなって、、、
恥ずかしいんですけど、大泣きしちゃったんです。
そう、石黒さんのときみたいに、、、
そうしたら、「、、、真希?」ってか細い声が。
あたしの泣き声で市井さん起きちゃって。
だけどその声があんまり弱々しいんで私、ますます大泣きしちゃいました。
「バカ、、、何泣いてんだよ、、、あたしがこれくらいで負けるわけないだろ。」
それでも泣きやまないあたしをみて、市井さん
「ねぇ、、、ひとつお願いがあるんだけど、、、」
「ぐしゅぐしゅ、、、な、なんでしゅか、、、?」
布団から震えながらゆっくりと市井さんの腕が伸びてきて
あたしの頭を抱え込んで、引き寄せて来ました。
その力に逆らわずにいると、顔を寄せて頬と頬をくっつけたんです。
「ん、、、冷たくて、きもちいーい、、、」
「、、、市井さん、、、」
「、、しばらくこうしていてもいい?」
その夜はそうして2人で明け方まで過ごしました。
「、、、どう? 抱いてHOLD ON MEの振りはこんな感じかな?」
「んーー(ポーズを取ってみる)こんな風でいいですか?」
「ま、今はそんなもんね。コンサートまで未だ間があるから、
先を急ぐ事はないわ。」
「はーい、どうもありがとうございました、市井さん」
「(髪を撫ぜ上げながら)金髪で髪が傷まない?」
「んー 、今の所はそんなに気にならないです。
えへへ、、、ん!? んぅぅぅぅぅ」
レッスン室の隅で長いキスを交わす二人
「市井さん、いきなり、、、」
「真希ちゃん嫌?」
「えぇ、そ、(しばらくためらって)
そんなこと、、、ないですけど、、、誰か人が来たら、、、」
「足音でわかるわよ。心配性ね。胸がどきどきしてるわよ」
「あぁ、、」
「私より大きいみたい、、、くやしいわ、、、」
「そ、そんなことないです、、、はぁ、、」
沙耶香の手が後藤のトレーナーの下に滑り込み、
胸をゆっくりとまさぐりはじめた。
あのとき、初めてのコンサートを控えてダンスを全部覚えなきゃいけなくて、
毎日毎日レッスンばかりの日でした。
オフの日も家で自主練やったんです。
そんななか、初めてのコンサートが間近にせまったある日、
先生の都合でレッスンを3日ぐらい受けられない日があったんです。
家で自分で練習してたんだけど、なんか自身がなくて、、、
いつも お世話になっている市井さんに電話して相談してみました。
そしたら市井さん、
「今から後藤の家にへたれの踊り、見に行ってやるよ」
って例の高ビーな口調で行って、夕方やってきました。
その日はほかの家族が法事で出払ってて、
あたしだけ練習のため残ってたんです。
え、なにか期待してたんじゃないですって?
やだー、そんなことないですよー。
ほんと、コンサート前で不安で不安でしょうがなかったんだから、、、、
でも、、、たしかに、、、メンバーの目を盗んで キスしたり、
抱き合ったり、、、今から思うとおままごとみたいですけど、、、
そのぬくもり、、あたし嫌いじゃなかったんです。
なんとなく市井さんが迫ってくるのを待ってる気分もなかったわけじゃなかったし、、、
もしかしたら、心の奥底で なにか起こることを、
そして、、、ああなることを望んでたのかもしれない。
「うぃーっす!」
市井さんがはじめて実家にきてくれました。
「うでの上げ方がちがーう」
でこぴん。
「お前そこさっき間違えたばっかだろうが!」
パチ!平手打ち!
「お前、ホントとろいな。もっとリズムに乗れよ」
髪を捕まれて壁に打ち付けられました。
「いい加減にしろ! このボケ!」
ついに切れた市井さんがあたしのおなかに目一杯蹴りを入れてきました。
あたしはベットにふっとびそのままうずくまりました。
こみ上げくる胃液を押さえ込みながら悔しさと恐怖で涙が出てきました。
どうして、どうして、家族がいない日に、
いくら本番直前だからってこんな悪魔みたいな人を家に呼んだんだろう、
あたしってなんてばかなんだろう、、、
情けないけど、こみ上げてくる涙を抑えきれず あたし、
大泣きしはじめてしまいました。
しばらく静かな部屋に私の泣き声だけが響いていました。
「ごめんね」えぇ?
「ごめんね」あたしは耳を疑いました。
でもそれは確かに市井さんの声だったのです。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔をあげると、
そこには穏やかに微笑む市井さんの顔がありました。
さっきまでの鬼の形相が嘘だったように。
「ごめんね、痛かった、
そんなにマキに痛い思いをさせるつもりじゃなかったの、
あたし、やりすぎたみたい、ごめんね」
理性があたしにストップをかけようとします。
だけど、市井さんの菩薩のような微笑みに私は吸い込まれていきました。
「ごめんね、マキにうまくなってほしかったから、手加減するの忘れちゃった。
ごめんね、あたしのこと 嫌いになったでしょう?
でも、これだけは信じて欲しいの
マキのこと嫌いでこんなことしたんじゃないの。本当よ
おねがい、あたしのこときらいにならないで。
マキにきらわれたら、私、、、」
「そ、そんなこと、ないでしゅ、、、、私、、、市井さんに感謝してます」
涙声のあたしに
「ほんと!お世辞でもうれしいわ」
「お、お世辞じゃないでしゅ、ほんとうに、、、」
魅入られたように市井さんを見つめる私に、
ゆっくりと市井さんの腕が伸びてきました。
理性が発する警戒信号が胸の動悸と重なって消えていきます。
市井さんと唇を合わせ、口に入り込んだ舌に自分の身を任せました。
母親の母乳を貪るように、市井さんの唾液を飲み込んでいきます。
ベットに倒れ込むと、市井さんが耳元で囁きました。
「ねえ、、、、マキの一番大切なもの もらってもいい?」
すぐに意味を察したあたしは、とまどいながら小さな声で
「はい、、、」と頷きました。
そのときのサーヤ様の嬉しそうな顔は今でもはっきりと覚えています。
唇の淫らな血のような赤い色まで
こうして私は悪魔に身体を心を魂を全てを捧げました。
悦びとともに、、、
保田の場合
「さやちゃん、、」
二人きりになったとたん、
体をすり寄せてくる圭に内心市井は舌打ちした。
そんな心の内を隠すように圭を抱き寄せる。
うっすらと涙で潤んでいる圭の瞳。
不細工がもっとひどくなってるよ市井は心の中で嘲笑した。
「、、、最近、冷たい。」
「ちょっとスケジュール、ハードだったからね」
「タンポポ、落ちたとき 二人で決めたよね、必ず見返してやるって」
そうだったな、あたしがあがってく手始めに このブスを手なずけた。
「もう、さやちゃんには、、、う!」市井が圭の唇をふさぐ。
久しぶりの快楽にもだえる圭を醒めた目で見ながら、
こいつもまだ必要だからな、とあくまで計算高い市井だった。
矢口の場合
「サヤカちゃーん(はあと)」
ただ一人この部屋を知っている人間の声を聞いたとき、
柄にもなくときめく自分に気づいて、市井は苦笑いした。
最初、真里と関係を持ったのは彼女の中の大いなる野望のためだった。
そのため持てる手段の全てをつかった。
さすがにタフな市井も ふと疲れを感じるときがある。
そんなとき癒しを感じたのが 計算尽くではじめた真里との関係だった。
今、彼女はシャワーを浴びている。
出てきたら、
いつものおしゃべりな口調で今日の出来事を語りながらベットに座るだろう。
いきなりキスしたら、驚くかな?
そう想像したとき、市井の中で本能的な獰猛で熱いものがこみ上げてきた。
市井と矢口。
時を同じくして娘。になった二人。
しかし二人は違いすぎた。
母さんのような市井。
幼稚園児のような矢口。
しかし二人の実年齢(27と9)を比べるとそれもしかたがない。
そしてロリコンのつんくがタンポポに選んだのはやはり矢口だった。
「あのときはごめんなさい。私だけ先に…」
市井は少しわらって
「なに言ってんのよ。もう済んだことでしょ。
それに私もユニット持ったし」
と言った。
『あのときは後藤が入ってくるなんて思わなかったからね』
「ああ嬉しい、そう言ってくれて。
でも鼻ピアスが抜けると私たちどうなるんだろ」
心配になる矢口。
「確かにかおりにはちゃんと言葉が通じないから心配なのはわかるわ。
でもあなたには私がついてるじゃない」
と言って市井は矢口を抱き寄せる。
『もうプッチモニを超えるのはむりだけどね』
「歌って。真里」
少し赤い顔になって歌う矢口
「どこにだってあるー花ーだーけどー」
「じゃない!」
その曲じゃないと怒る市井。
「あっごめんなさい」気が付く矢口。
「こーのきーせつ大好きよー あーなーたと過ごすー夜ーが………あっ…あぁ」
その日はクリスマスイヴだったのだ。
そしてサンタを信じて眠る子供、後藤真希が寝言を言う。
「さやかお母さん…」思えば後藤は市井(1位)以外の経験がない。
紗耶香と真里と真希、その関係はSとMとM。
中澤の場合
コンコン
市井「お入り」
中澤「失礼致します」
市井「どう?調子は」
中澤「市井様のおかげで演歌も順調でございます」
市井「そう。それはなによりね。・・・・・・・・ところで、ファンはどう思うかしら、
わたしが本当は27歳で、あなたよりも年上だと知ったら・・・」
中澤「それほど、市井様がお若くてお美しい証拠にございます」
市井「ふふふ。ありがとう・・・・では、またいつもの儀式をやってもらおうかしら。
まず、私のタバコに火をつけなさい」
中澤「はい・・・」
市井「次は私のグラスにワインを注ぎなさい」
中澤「はい・・・」
市井「そうね、あなたにも差し上げようかしら。
あなたにはワインより高級な、私のお小水をさしあげるわ」ジョー・・・・・
市井「さあ、召し上がれ」
中澤「頂戴いたします」
市井「どう?お味は」
中澤「市井様のお小水、大変塩味がきいてておいしゅうございます」
市井「では、私の足元にひざまずいて、いつものように、
私に対する忠誠の言葉を述べなさい」
中澤「世界一のアーティスト市井様、私の太陽市井様、真のリーダー市井様。
どうかこれからも私めをお守りください・・・・」
市井「ふふふ。よい心がけだわ。これからも永久に私に変わらぬ忠誠を誓うことね。
真のリーダーはこの私。
あなたはただの傀儡で、私の支持をなくしたら、地位も名誉も全てを失うのだから・・・・」
スタジオを出ると、あたりはすでに暗くなっていた。
「マキ、焼き肉食いに行こうか?」
とつぜん誘いかけてきたサヤカに、マキは申し訳ないという表情で答えた。
「あの、すいません。これからユウちゃんと約束があって」
「ごめんなぁ。ウチで一緒にゴハン食べることになってんのよ」
ユウコがふたりの間にはいってくる。
「へー、ユウちゃん料理できんの?」サヤカは冷たい口調できいた。
「できるわよー、魚焼いたり」
「はは、魚だって。焼き肉のほうがいいよな、マキ?」
「魚のほうがええよな?」ユウコは鋭いまなざしで見つめる。
返答に詰まったマキは、口をパクパクさせていた。
安倍の場合
「や、やめてさやかちゃん!」
組み敷いたなつみの小さい体の震えを感じながら、
市井は無意識に舌なめずりをした。
「な、何をするつもりなの?」
「なっち、あんたがしていることしらないと思ってるの?」
「な、何のこと、、、つんくさんとはみんな」
「姉さんと随分、楽しそうにじゃれてましたなあ」
「!あ、あれは、、、」
動揺するなつみ
「あんな、年増にいいようにいじられて、ホントうれしそうに。
聞いてるこっちがはずかしくなりましたわ。」
「や、やめて!」
「あんたもまだまだおぼこですな。
本当に気持ちよいこといまから教えてあげますわ。」
「あ、あ、ああ、、、」
自分の下でうねりだしたなつみの体を感じながら、
自分の野望が五合目まで来ていることを確信する市井だった。
楽曲の善し悪しなんていうものは、ホントは存在しないんだ。
あいまいな売上げ記録、それが、曲の価値として、どうどうとのさばっている。
そして、いくつの大切な曲たちが、時間のながれのなかで、
消えていってしまったことだろう。
しかし、わたしは思うのだ。
わたしが心から愛した女たちの曲だけは、けして時間のながれにうもれさせてはならない。
だから、わたしは、今、ここに記そうと思う。
ナッチという女と、サヤカという女の物語を……。
病院のベッドに横たわるナッチは、わたしの顔をじっと見つめながら、
ゆっくりと、その小さな口を開いた。
「あのー、失礼ですけど、どちら様でしたっけ?」
『ふるさと』の敗北によって、瀕死の重傷を負ったものの、
なんとか一命を取り留めたナッチ。
しかし、ナッチの脳には障害が生じ、
歌手として芸能界にデビューしてからの記憶が、消えてしまっていた。
今朝もまた、人々はくたびれた顔をして、それぞれの目的の場所へと足を進める。
「何かついてるよ」
となりを歩くサヤカの背中から、紙切れをはがしとったわたしは、
そこに書かれてあった言葉を見て、ハッと息をのんだ。
『 お待たせしました。ゲームを再開します あみいご 』
あみいご…。
また、顔をかえて、わたしたちの前に現れるっていうの?
わたしからそのメモを取り上げると、サヤカはうっすらと不気味な笑みをうかべ、
行き交う人の波に向かって叫ぶ。
「上等じゃないか、あみいごぉぉ、出てこいよー」
「失礼します」
それまでさわがしかった事務所の一室は、
先日退院したばかりのナッチが入ってくると、急に静まりかえった。
ユーコは、食べかけの柿ピーを床にこぼす。
ふいにわたしと目が合ったナッチは、何かに気がついたような表情にかわった。
「えっ?ナッチ、わたしのこと思い出してくれた?」
ナッチはにっこりと笑う。
「はい、ドラマーとの熱愛が、発覚した方ですよね」
そして、時はながれ…、ナッチの記憶は戻らないままだったが、
金髪の少女、マキの加入もあって、『らぶましーん』は大ヒット。
「あのーアヤさん、ペッティングって何ですか?」
事務所の廊下で、ナッチは立ち止まり、とうとつに聞いた。
「イタっ!」
ナッチの背後から、ゆっくりと近づいてきたサヤカは、
勢いよく彼女の頭をはたく。
「サヤカさ〜ん」
ナッチはむじゃきな笑顔を見せた。
「サヤカさんに、バシッとなぐられるたびに、
何か大切なことを、少しずつ思い出してくるような気がします」
サヤカの口元に微笑がうかぶ。
「おやおやもっと、刺激の強いのお望みですね?そいつはこまった」
ナッチの頭を、何度もたたく彼女は、水を得た魚の表情だ。
わたしはただ、そこに立ち尽くし、
ふたりの世界に入っていくことはできなかった。
都内のスタジオの楽屋。
歌番組の収録をすませたわたしたちは、帰り仕度をはじめていた。
とつぜん、ドアが開いて、青白い顔の男が入ってくる。
男は、室内を見渡すと、くるったように叫び出した。
「おぉぉまえらのせいでなぁぁ、オレの曲が売れなくなったんだよぉぉ。
バカな聴衆は、すぐに乗り換えやがる。
おまえたちだって聴いてたんだろ?
オレの曲をさぁ…。
カラオケで歌ったりしてたんだろぉぉ」
「あたしは、聴いてねぇよ」
うっすらと、冷たい笑みをうかべて、サヤカは男のほうへ歩み寄る。
「聴きたくもねぇよ、そんなくだらねぇもん」
うむを言わさず、顔をけりつける。
壁に激突して、床に倒れこんだ男を、サヤカは容赦なくなぐりつづけた。
「サヤカさーん、やめてくださーい」
ナッチが叫ぶ。
胸ぐらをつかんでいる手を離すと、サヤカはゆっくりと立ち上がり、
タバコとライターを取り出した。
「大丈夫ですか?」
駆け寄ってくるナッチを見ると、男は怪しい微笑をうかべる。
急に立ち上がると、隠し持っていたナイフを取り出し、ナッチに突きつけた。
一瞬の静寂のあと、男はクスクスと笑い出した。
「ボクの名前をよんでくれるかい?」
ナッチは、恐怖で顔がひきつる。
「ボクの名前をよんでくれるかい?」
「……コ、コムロさん…」
「ちがーーう」
おびえるナッチに、男はゆがんだ表情を見せる。
「おもしろくない女だな。それじゃあ、思い出させてやろう」
ニヤリと笑うと、男は口から大量のCDを吐き出し、
そのまま床にくずれおちた。
スタジオの廊下に悲鳴がひびく。
ナッチの脳裏を、悪夢のメロディが駆け巡った。
びぃとぅぎゃあざ…びぃとぅぎゃあざ…。
「あみいごぉぉぉ」
何かにあやつられるかのように、男の手からナイフを奪うと、
ナッチはそれを頭上にかかげる。
ナッチの不審な動きに気づき、サヤカはタバコを投げ捨てた。
「ナッチ!」
ナッチの振り下ろしたナイフが、
間に飛び込んできたサヤカの背中を突き刺した。
「イテぇ…」よろよろと後退し、サヤカは床に倒れこむ。
そのとき、ナッチの頭の中を、サヤカと共に過ごした日々の思い出が、
悩ましくよぎった。
われにかえったナッチは、身悶えするサヤカを包み込むように、そっと抱き起こす。
「サヤカさん…」
「なんだよおまえ、目ぇ、さ、覚めたのか?」
「はい」
込みあげてくる思いは、言葉にならない。
ナッチをいとおしむように見つめるサヤカの瞳に、涙がうかぶ。
「お、おまえ、あいかわらず頭くさいよ…。
ホ、ホントは『さら』使ってないんだろ?なっ?」
しあわせそうに笑って、ナッチの頭をたたくと、
サヤカは彼女の胸にからだをあずけ、ゆっくりと目を閉じた。
「サヤカさん…、サヤカさん…」
とめどなく涙があふれだし、声にならない悲鳴をあげる。
「サヤカさーーーん!!」
涙 止まらなくても 昔のようにしかって MY MOTHER
涙 止まらないかも わがままな娘でごめんね MOTHER
FMからながれる、なつかしい曲。
わたしは、すっかり冷めてしまったコーヒーを飲み干すと、
部屋をあとにし、学校への道をいそいだ。
深い深い眠りの中、ひとりの少女が夢を見る。
あなたに会えてよかった。
ずいぶんと使い古されてしまった言葉だけど、
あなたの笑顔を二度と見ることができなくなった今、
この言葉の重みと真実を全身で感じています。
神様、もう一度だけでいいから、あの人の笑顔に会わせてください。
「ナッチ……」
あの人の声がきこえる。
でも、あの人は死んだんじゃ?
あのとき、わたしの髪をなでながら、
「頭くさいよ」という言葉を残して。
「ナッチ〜」
まただ、またあの人が呼んでる……イタっ。
頭に軽い衝撃を受け、ナッチは眠りから覚める。
顔を上げると、ベッドから上半身だけ起こしたサヤカが、呆れた顔で自分を見ている。
「あ、おはよーございます」
「見舞いにきて、寝るんじゃねぇよ」
まだ少し眠そうな目をしているナッチの鼻の穴に、サヤカは指を入れた。
「すみませーん」
ナッチのナイフによって瀕死の重傷を負ったもののなんとか一命を取り留めたサヤカ、
記憶は取り戻したがやはりどこかボケているナッチ。
ふたりの声が病室に響く。
福田の場合
「それまでは『福田さん』って呼んでたんです、私たち。
年下ですけどこの世界では先輩ですから。
でも、その日たまたま部屋が同じだったんでいってみたんですよ、
『明日香ってよんでいい?』って。
そしたら別に何の気負いもなく、『いいよ』っていってくれて。
私も『紗耶香って呼んで』っていったりして。
今考えたら不思議な会話ですけど、
その時はすごく嬉しかったのを覚えています」(モーニング娘。5+3−1より)
しかし実際は
明日香「じゃあ呼ぶね。…紗耶香」
紗耶香「待って」
明日香「えっ?」
紗耶香「やっぱりサーヤ様と呼びな」
明日香「えっ??」
紗耶香「銀杏、お前まだ13だろ。私はその倍生きてるんだよ」
明日香「……」
豹変した紗耶香に驚き言葉を失う明日香。
紗耶香「私は肉が好きなんだよ。お前肉付きはいいみたいだからな。
かわいがってやるよ」
明日香「あ、あの…」
紗耶香「これも社会勉強だよ」
その後明日香はモーニング娘。を脱退。その理由は「社会の勉強がしたい」だった。
石黒の場合
石黒が3人(市井、矢口、保田)のうちで最初に興味をひかれたのは市井だった。
それは、ちょっとしたことがキッカケだったという。
「和田さんがいて、紗耶香のことをちょっと見てたんですよ。
そしたら紗耶香、『何見てんですか?ムカつく!』っていったんですよ、和田さんに。
それで、『こいつはイケる』って。私、そういうのが大好きなんですよ(笑)」
(モーニング娘。5+3−1より)
二人きりの楽屋。
石黒「紗耶香、見てたよさっき、和田さんに…」
市井「ん?お前も見てたの?この私を」
それまでは『さん付け』だったのが突然『お前』呼ばわり。
しかし石黒はそういうのが大好きだ。そしてその日から石黒は市井に溺れていった…
市井「おい石黒、E.T.やれっ」
言われるままにE.T.の顔真似をする石黒。
市井「似てねー」
クレヨンしんちゃんの物真似で非難。
市井「おい石黒、肉」
言われるままに弁当に入っている豚肉を譲る石黒。
こんなことが1年以上つづいた…
ある歌番組の本番前。この日も弁当の肉を市井に譲る石黒。
彼女も本当は豚肉を食べたかった。しかし市井には逆らえない。
そして本番。共演者の演奏が始まる。
ナルシストのボーカル率いる5人組のロックバンドだ。
それを見た石黒の動きが止まる。次の瞬間口からヨダレが…
と同時に彼女の中で何かが変わった。
その後石黒はモーニング娘。を脱退。
深夜の闇へと消えていった。
飯田の場合
12月24日(金)
圭織と最後に言葉を交わしたのはいつだったっけ…
紗耶香はこの日27本目になる煙草に火を付けながらふとそんな事を思った。
かつて私が本気で愛した女…
娘。の中でただ1人私の思い通りにならなかった女…圭織。
ベッドには子供らしい寝顔の矢口。
その枕元に矢口には大きすぎるであろう靴下があった。
「ふっ、まだサンタを信じてるのね」
!?…何か入ってる…?…ビデオテープ……
紗耶香はビデオをデッキに差し込んだ。
映像が画面に映し出された。
女が髪を解かしている。
「これは…」
女は突然叫び出した。
ディアーー
「……」
紗耶香はこの女を知っている。
女の瞳が映る。瞳の中には『飯』の文字が…
井戸が映る
そこでビデオは終った。
12月25日(土)
「和田!」
「あっ、サーヤ様。おはようございます」
「ねぇ、ちょっと見てほしいものがあるの」
紗耶香はバッグからダビングしたビデオテープを取り出した。
12月26(日)
「和田!!」
「あっ、サ、サーヤ様。おはようございます」
「見てくれた?昨日のテープ」
「それがあの、家に帰って見ようと思ったらあの、その…
確かにカバンに入れてたはずなのに…」
「…つまり見てないわけね」
「すいません」
12月27日(月)
紗耶香はあきらめた。
昨日部屋に戻ってからずっと探し続けた
オリジナルのテープはとうとう見つからなかった。
「圭織ね…」
12月28日(火)
「圭織!」
「あっ、紗耶香。おはよう」
「お願い、圭織。助けて!殺さないで」
「えっ?何?何言ってるの。もう、紗耶香ったら。ふふふ…
それじゃ私うんこしてくるから」
「……」
呆然と立ち尽くす紗耶香。
12月29日(水)
「どうかされました?サーヤ様」
「あぁ、なっち。ううん、なんでもないわ」
紅白のリハーサル中、明らかにいつもと違った紗耶香を心配するなつみ。
「いよいよ明後日ね」
「あっ、圭織。うん、いよいよだべ」
「ねっ、紗耶香。ふふふ…」
「……」
12月30日(木)
後藤おねしょする。
12月31日(金)
紅白終了後、帰宅した紗耶香。
もう覚悟はできていた。
かつて愛した…いや、いまでも愛している圭織に命を奪われるのなら…
そろそろ時間ね…
ひとりでにテレビのスイッチが入る。
画面に井戸が映し出される。
「わかってるわ。そこから出てくるでしょ」
画面の中の井戸から女が這い出てくる。
予想通りの展開ながら、やはり恐怖に襲われる紗耶香。
女はジョジョに近づいてくる。
そして…ついにテレビからも這い出てきた。
まったく動けない紗耶香。
女は立ち上がり紗耶香に歩み寄った。
「圭織…」
紗耶香の瞳に映る圭織の姿は…あまりにも…美しい。
紗耶香の頬を涙が伝う。
「はい、これ」
「えっ?」
「紗耶香の好きな肉」
「えっ??」
「ハッピーバースデイ紗耶香」
ねえ笑って
広○涼子の場合
ねぇ、お、お願いだから、、、ねえ!」
足にすがり付いてくる裸の女を市井は冷やかに見下ろした。
ごり押しで入った有名私大にも通わず、
モデル相手に盛りのついた猫のようにやりまくり
世間にもその清純派の化けの皮がバレかけてる女。
偶然、出会ったTV局で私達をゴミ屑のように無視した女
「最近、つまんない歌流行ってるねえ。
まあ私は女優だから関係ないけどさあ」
聞こえよがしに嫌みを並べていた女
下らない優越感を振り払う沙耶香。
そんな悠長さは彼女にはない。
「例の物はちゃんと取れたの?
宿題が出来てたら御褒美をあげるよ。
小猫ちゃん。
TVキャスターの、、、」
「こ、ここに」
涼子はネガの入ったケースを渡した。
「あのおじさん、私が股間のチャック下ろしはじめたら、
白髪の頭ガタガタ震えだして、、、おフェラの間中ずっと。
最後押し倒そうとしたから逃げ出すの大変だったのよ。だ、だから、、」
「よくやったわ」
「でもそんなもの何に使うの。
表に出せる分けないじゃない。」
「あなたには関係のない事よ」
悪魔の笑みを沙耶香は浮かべ、涼子の深い部分に指を差し込んだ。
「あ、ああ」
深い吐息のようなうめき声とともに、涼子が沙耶香に抱き着く。
その姿を全裸に首輪だけの後藤が嫉妬の視線を込めてずっと見ていた。
無垢な外見とは裏腹に少女の魂は、
骨の髄まで悪魔の毒に染め上げられていた。
沙耶香に絡み付きながら身悶え、息も絶え絶えに痙攣する涼子
「す、すごい、、、大介なんかよりずっといい。
あなた、一体こんなテクどこで、、、」
その言葉を聞いたとき、沙耶香の表情に一瞬翳りが生じ、
次の瞬間、涼子の体は冷たい床に叩き付けられていた。
「気が変わったわ、今日は別の快楽を教えてあげる。
真希!わかってるわね、、、」
残酷な微笑みを浮かべながら真希は涼子の胸を思い切り踏み付けた。
「ああ、、、」
痛みと共にそれさえも涼子の体は快楽として受け止め始めた。
そう、私の野望はまだ始まったばかり。
すべてを利用して私は復讐して見せる。
そう、あの、、、、
これから始まるサバトを予感させるように、沙耶香の口に毒牙が、、、
あ○ーごの場合
扉が開く
「もう、ドリンク買うのに何時間掛かってるのよ。
ほんと、どんくさいんだから。
今度のアサヤンだってこれが最後よ。
なんで私があんなブス集団とシングル対決やんないといけないのよ。
冗談じゃないわ。
あんなB級屑の集まりと、
かりすまあみーごを比べるなんてお笑いじゃない、ねぇ、、、!?」
「あらあら ずいぶんなお話ね、あみーごさん」
「市井、、、さん、それに、2人、、、プッチモニの、、、
お、おはよう私の控え室に何のご用。
ちょ、ちょっと、
痛い!何、私の両手つかんでんのよ。
やめさせなさいよ!
市井!マネージャー呼ぶわよ!
あんたんとこの和田、土下座させてやる!」
「残念だけど、マネージャーさんは来ないわ」
「?」
「今ごろ、安倍とかおりと裕子に最高の快楽を味合わせてもらってるはずよ。
あの男がこれから一生味わえないような快楽をね。」
「何、わけのわからないこと言ってるのよ!」
「あなたにおもしろいものを見せてあげる」
「な、何よ、このビデオ、、、!!!」
「タダのエロビデオじゃない、
こんなんで今更私がおたおたすると思ってるの!?
バッカ、じゃないの!」
「よくご覧なさいな。
何人もの男に囲まれて、白い液塗れになっているブタを。
あなたがよくご存知の顔じゃないかしら?」
「?、、、!、こ、これって、そんな、そんな」
「この自分から咥えてるブタ、あなたにこんな嬉しそうな顔見せた事あるかしら?」
「そんな、、、恭子が、恭子が、、、なんで、、、」
「そうあなたのお友達、大手プロの秘蔵っ子深田さんよ。
夜の接待なら、
ともかくあなたと同じくこんな乱交まがいの接待要員からははるかに遠い存在のね」
「なんで、そんな、恭子が、こんな」
「あら、随分ショックを受けているようね。
冷たいあなたにしてはえらく友達想いじゃない。
彼女の感想聞いてみる?」
「や、やめて!」
「市井様、いえ、沙耶香様ぁーお、お言いつけにこのとおり従いました。
何とぞお慈悲を、お慈悲を、あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁ」
「!恭子! こ、これって」
「あなたとの時は彼女、こんなに激しかったかしら?
もう彼女、あみーごなんて名前すっかり忘れたようよ」
「恭子に!あの子に何をしたの!」
「本当の快楽を教えてあげたのよ。
あなたとのようなおままごとと違うね。
このあと精液と唾液をシャワーで洗ってやったら
どうしてもって泣き叫ぶから相手をしてあげたわ。
ホント、外見と同じでブタのように貪欲で淫乱ね、
彼女命令したら1時間も脚の指の間を舐め続けたわ」
「!!!」
「後藤、しっかり押さえておけよ」
「す、すみません、沙耶香様」
「こんな物を見せて、あ、あたしをどうするつもり、、?」
「あなたにもこれから同じ快楽を教えて挙げる。
恭子ちゃんとまた仲良くできるわよ」
「そんなこと出来ると思ってるの!」
「あなたの体に聞いてみるわ」
そしてコムロのラインを沙耶香が頂くわ。
扉が閉まった。
前田姉妹の場合(承前)
真希が鼻を鳴らしながら沙耶香に肌をすり寄せてくる。
機嫌の悪い時なら、
痕が目立たぬよう腹に蹴りでも入れる処だが
、
今は悪い気はしないので彼女を抱き寄せ、太股に手をよる。
構ってもらって嬉しそうな真希がふと沙耶香の持つ雑誌に目をやった。
「何を見ているのですか?サーヤ様」
「ちょっとね。」
そこには今度正月バラエティで競演する有名な女優の姉妹が映っていた。
姉はボーイッシュ、妹はしとやかだが マニアックな人気の高い2人だ。
そういう手合いは業界にも多い。ペドマニアの餌にはちょうどいいか、、、
沙耶香は矢口をそういった連中の餌にすることを無意識に避けていた。
「真希、お前はどっちがいい?」
「?」写真を見てすぐに事情を察した真希は応えた。
「ん、、愛ちゃんの方かな、
ちょっとやそっとじゃ壊れそうにないしふふふ、、、」
無垢で純真な外見とは裏腹に、
悪魔の毒牙に魂の奧まで染まった少女は無邪気な笑みを浮かべながら応えた。
SACRIFICE
な、何なの、この子は
私を左手一本で絶頂に導きいた15の少女
彼女の足下ではタンポポというメンバーの他の2人がひざまずき、
唇を絡ませあいながら「サヤカ様ー」と淫らな声を上げている。
ディレクターに言われて、取材の打ち合わせに着ただけなのに
進藤晶子はまだこれからの地獄をしらなかった、いや法悦の境か。
田中和将(GRAPEVINEヴォーカルの場合)
「サーヤ様ー!!」
・・・・・・TV局の廊下を後藤と2人で歩く紗耶香に、
65535km/hのスピードで駆け寄る男の姿があった。
「・・・・・・田中!?」
紗耶香は痛恨の表情を見せた。
不覚である。
以前雑誌上でストーカーまがいのアプローチをされて以来、
このGRAPEVINEの田中和将だけは紗耶香が唯一苦手とする男なのだ。
「後藤!!」
「了解!!ひっさーつ・・・・・・」
しかし後藤が必殺の真空回転まわし下痢を放とうとした時にはもう遅かった。
田中の腹部から伸びだした触手は既に紗耶香の左足首に達していたのである。
「クッ・・・・・・!!」
その触れられただけでこの世の物とは思えない悪寒が走るジメジメとした触手は、
田中の細い体の割には力強く、
もう片方の足で蹴り落とそうとしても少しづつ彼女の脚を這い上がってくる。
「た、田中!!こんな事してタダで済むと思ってるの!?」
紗耶香の言葉に聞く耳持たず、田中の触手は紗耶香の脚を這い上がり続け、
また田中本体もその脚で歩み寄ってきた。
「ご、後藤!!本体を・・・・・・って、エ!?」
なんと、後藤は不発に終わった真空回し下痢の反動が自分に係り、
大回転をしながら360度方向に下痢を撒き散らしつつ
明後日の方向へと飛んでいってしまったのている。
「クッ!!こんな時に!!」
「さーやーかーちゃぁーんー(はぁと)」
「イヤッ、クッ!!」
万策は尽きた。
このままでは紗耶香のマ○コは田中のビッグチ○ポに犯されてしまう!!
「どうすれば・・・・・・?」
「ハハハハハー、
まずは僕が君を使って作ったこの白いジャム(通称WHITE LOVE)を
500ml程飲んでもらおうかな・・・・・・。」
「エッ!?(前髪そろいすぎ風)ご、500gって一体アナタ何日かかってそんなに!!」
「大丈夫だよ、昨日一日で全部作ったから新鮮」
「イヤーッこの絶倫オナ男!!!!」
田中はスプーンと小瓶を取り出す。
「さー、さやかちゃん召し上がれー」
紗耶香は絶望を見ていた。
女27歳。芸能界の裏番長として力を付けていたこの私が、
こんなモーニング娘。でオナニーしてるようなネクラオタクの白ジャム攻撃に果てるなんて・・・・・・。
「ホーラ、紗耶香ちゃん飲むヨーグルトが好きなんだろう?これだって似ているじゃないか。」
「イヤーッ、今日から桃の天然水にするーッ!!」
・・・・・・紗耶香がその言葉を放ったときだった。
田中の態度が急転した。
「桃の天然水・・・・・・?邪道だ!!桃の天然水と一緒にザーメンは邪道だ!!」
なぜか力説する田中。
差し詰めコーヒーのCMのマネのつもりなのだろう。
オタクは変な事に詳しいものだ。
しかしその田中の態度の急転はIQ290の紗耶香に秘策を思い付かせた。
「た、田中!!コレを見なさい!!」
取り出したのはついさっき紗耶香がジャニオタから(脅して)取り上げた嵐の二宮の写真。
「ギャー!!ヤメロー!!俺にジャニーズの写真を見せるなぁー!!」
「フフフ、アナタの桃の天然水に対する反応を見て気づいたのよ。
アナタはモーニング娘。以外のアイドルと名付けられた物を見ると拒絶反応を起こすという事がね。
まして男はなおさら。嫌いなんでしょう?
浜崎あゆみが。許せないんでしょう?
二宮和也が。」
「ウギャーーーー。げ、外道なんだ!!
モーニング娘。以外のアイドルは外道なんだ!!」
「・・・・・・私もその意見には反対じゃ無いけどね・・・・・・。」
懐から44マグナムを取り直しながら言う紗耶香。
「・・・・・・でもね田中。
覚えておきなさい。
モーニング娘。の正式名称は・・・・・・。」
・・・・・・轟音が響く。
弾丸は大脳を貫通。
恐らく田中は痛みを感じる暇も無いまま即死しただろう。
「モーニング娘。の正式名称は『市井紗耶香様と雑魚七匹』よ。」
・・・・・・その場に居合わせた人間に、
「石黒が脱退したから六匹だろ!!」
と突っ込める人間は、誰一人としていなかったという。
小湊の場合・青色7編
物語は、新ユニット結成後の楽屋から始まる。
「つんくもよく思いつくなぁ。それともあのバカ社長が考えたのかしら。」
そうつぶやきながらも、市井はわくわくしていた。
さて、誰から始めようかしら。
英語はあいさつ程度しか話せないから・・・。
市井の視線は太シスの2人に注がれた。
元B級アイドルに元民謡歌手か。
うーん、子持ちっていうのはちょっと興味があるわね。
こうして市井のターゲットは小湊美和となった。
市井はさっそく行動を起こす。
「小湊さんよろしくぅ。気合が入るねぇ。」
「うん。市井さんよろしく。」
芸能界では年齢ではなく芸歴で先輩後輩が決まる。
そのため、小湊は市井を「さん」づけで呼んでいた。
「これから同じユニットなんだし、さやかって呼んでいいですよ。」
「え、でも急には・・・。」
「徐々に慣れてきますよ。」
「ありがとう・・・さやか。」
また始まるのね。
矢口は大きなため息をついた。