のの太郎とかごや姫・のの太郎とかごや姫2

 

のの太郎とかごや姫

 

*昔々、あるところに(関西)、おじいさん(つんく)、おばあさん(中澤)がおったそうな*
「ちょぉまちぃ〜!!だれがおばあさんやねん!!頭かち割るどぉーーーゴラァ!!」
*もとい、キッツイお姉さんがおったそうな。*
「何か、まだ引っかかる感じがするわぁ〜。ま、ええか。」
*さて、ある日、おじいさんは山へ芝刈りに、おば・・・、キッツイお姉さんは
 川に洗濯に出かけたそうな・・・。*

「はぁ〜、つんくさん、洗濯機買うてくれへんかなぁ・・。ま、こんな時代やし無理やな。」
しぶしぶ洗濯板とたらいで衣服を洗いはじめる中澤。
「あたた、このかがんだ状態で服洗うのメッチャキツイねん。」
中澤が川で洗濯していると川上からあるものが流れてくるのを見つけた。

「なんやぁ〜?・・・・・・おわんやな・・・・。」

そう、おわんが流れてきたのだ。
しかし、おわんの中には何かが入っているようだ。中澤はそのおわんを拾い上げた。

人だ!!

「はろぉー。ゆうちゃん。拾ってくれてありがとっ。オレ、一寸ヤグチっ。」
いきなり人らしき親指程度のものが中澤に話し掛けてくる。
「うわっ!!キモっ!!」
おわんをそのまま、川に投げ戻した。
流されながら矢口は何か、必死に叫んでいる。
「おい!!ゆうこ!!お前覚えとけーー!!ヤルどゴラァ!!!」
ながれゆく矢口に中澤は手を振った・・・・。
「じゃぁなぁーー、ヤグチィー。バイバーーーイ。」
「さてさて、ゆうちゃんは洗濯の続きでもしますかねー・・・・、って、何やアレ?」

「今度は桃かいなぁ!?で、でも・・・でかっ!!」
「思ったねんけど・・・、なんで桃が川から流れてくるねや?わけわからん・・・。」
矢口同様、放っておこうかと考えたが、ひとまず持って帰ることにした。
「おもっ!!でかい以上に重いなぁー。腰痛にひびくでぇー。」

「あー、きっついなぁーー芝刈り・・・。こう、ええ機械が通販で売ってへんかなぁーー。」
切り株の上でタバコを一服するつんく。
「そういえば、今、筍(たけのこ)シーズンやなぁ・・・。取っとくか?でもなぁ中澤料理下手やしなぁ-。」
竹やぶにナタを持ち入って行くつんく。
「おっ。ごっつうええ筍あるやん。こいついただきやなぁー。」
ざくっ、ざくっ、ざくざくざく。
「でや!イイ型やろぉー。」
“ぽいっ!!”持ってきた篭に放る。

「イタッ!!」

「な・・・なんや?さっき何か言うたような気が・・・。幻聴かなぁ?ボケたか?わしぃー。」
もうひとつ、切り取りにかかる。
ざくっ、ざくっ、ぱき、ぱきぱき。
“ぽいっ!!”

「イダッ!!痛い言うとるやろーー!!おっさん!!」

(今度は幻聴なんかじゃない・・・、明らかに人・子供の声だ。)
(わしは切り取った筍を2回あの篭に投げてん。それと「痛い」はどう関係が・・・?)
(た・・・、たけのこがしゃべったぁーー!?)
「いや、なら切った時「痛い」やな。ということは・・篭!?」
そぉーっと篭を覗く、そこには小さな着物を着た女の子が入っていた。
「な、なにしてん?」
「なにしてんやないやろぉー!つんくさん、ひとまず謝ってーな、めっちゃ痛かってんでー。」
「それはえろうすまんかったなぁー。」
何故か謝る。勝手に入ってたその女の子が悪いのに・・・。
「ちょぉ、きいたってー、ウチなぁー身寄りあらへんねん。
お願いやからつんくさんちの子にしてーなぁー。」
「いや、その前に聞いときたいんやけど、何でわしの名前知っとんねん?」
「そんな堅いこといわんで、たのんますぅー、な、なっ?なっ?」
「せやけどなぁー、家にはおっかないオニババがおってなぁー、食われてまうで・・。」
「何で、そんなオニババとつんくさん暮らしてんの?」
「なんでやろ・・・、年近いからかなー。」
「理由になってへんよ、つんくさん。」
「んー、どーやろうなぁー。まーうちら子供おらへんさかい、べっつにええかな。」
「やったー、おおきにーつんくさーん。」

 

「ただいまー。今帰ったでぇー。」
「あ、おかえりつんくさーん。今日なぁ、すごいことあってんでー。」
「おう、中澤ぁー、わしもなぁーすごいもん持って帰ったんやでぇー。」
「なに?なに?」
「ほいっ、筍や。」と筍を差し出す。
「あーー!!旬やもんねー。今日は、たけのこご飯やなぁー。」筍を受け取る。
「あと・・・。」
「あと?」
「人。」
といって篭から女の子を取り出して渡す・・。
「つんくさん、いつから誘拐犯になったんですか?」と受け取る。
「話は、こいつから聞いてくれや、わしもよぉーわからん。いきなり篭にはいっとった。」
「このひとがつんくさんが言うてたオニババ・・・。」
(ボコッ!!)
「何やて?」
「イダァ!!・・・あ、こ、この方がつんくさんのきれいな奥様ですね。」
「そうやでぇー、口の聞き方に注意しよなー。」つんくが苦笑い。
「で、あんた、なんて誘われてつんくさんについてきたんやぁー?」
「んー、ウチなぁ、目ー覚めたらなぁつんくさんの篭におってん・・。」
「捨て子かい!!」
「よぉー考えたらなぁー、ウチなぁー、親の顔も覚えてへんのー。」
「でなぁー、中澤ぁー、この子家で育てよう思ってん。親出てきたら返せばええし。」
「またつんくさんの奇抜な発想ですかぁー。」
「おねがいしますぅー、ウチをここに置いてくださーい。」
ふかぶか中澤に抱きかかえられながら2人に頭を下げる。
「しゃーないわ、つんくさんと、この中澤おねぇさんがあんたを育てたるわ!!」
「ほんま?メッチャうれしい。おーきにっ、きれいなおねーさん。」

「で、中澤ぁー、おまえのすごいことって何や?」
畳の上に女の子を置くとあるものを重そうに持ってくる。
「ま、つんくさんよりすごくあらへんけど、みてーな、このでかい桃!拾ってきてん。」
「ほんまや、いやーでっかいなぁーってアホ、拾い食いするつもりなん自分!?」
「でも、よぉー見てもどこも腐っとらへんよぉーつんくさーーん。」
「そーゆー問題かい!?」
その刹那、中澤の手の中にあった桃が暴れ出した。
「きゃっ!!」
足元に大きな桃が落ちる。
「いだあ”ぁぁぁぁーーー!!」
おもわず苦痛に顔を歪め、叫ぶ中澤。
なおも、ゴロゴロと動き回る桃。
「この家呪われとったんかー、変な家に拾われたなぁー・・。」
畳の上でため息をつく女の子。
「ちょっ、つ、つんくさん!あの桃なんとかしたってーなぁ、男やろぉー。」
「知るか、そんなキッショいもん拾ぉーとくるお前が悪いんや無いか!!お前がなんとかせぇ!!」
腹をくくったのか中澤は家の奥から包丁を持ってくる。
「よ、よっしゃ、こ、この包丁で桃かち割って黙らしたるわ。」プルプルプル
それを聞いて驚いたのか桃は転がり逃げようとする。
「オニババというよりヤマンバやな・・・。」

中澤の様子を見ていた女の子がボソッとつぶやいた。
中澤の耳にその言葉が聞こえ、女の子を睨みつける。
「あんたも頭かち割ったろかぁー!!ゴラァ!!」
「ぎゃぁーで、でたーー!!ごめんなさーい!!」
「謝っときー、このおねぇちゃんにマジでやられるでぇー!!」とつんく。だいぶ経験があるらしい。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・。」ガタガタガタ、ブルブルブル
「わかったらええねや、ほんま口の聞き方注意した方がええで。」
と言って、桃に向かう。
いつのまにか転がっていた桃は部屋の角に追い込まれていた・・。
「天誅ーーーー!!!」
ザスッ!!包丁で一撃!!途中まで刃が進む、しかし次の瞬間、ぱっくり割れ中から、
裸の女の子があらわれた。
「怖かったれすよぉ〜、もうちょっとでののはヤられると思いました。てへてへ。」

「人ーーーー!???」つんくと、中澤と着物の女の子は驚き叫んだ。

「一部始終聞いてたのれす。ののもここの家の子にしてくらはい。」
「今日はなんて日や・・・。」
へなへなとへたり込む中澤。

「ま、一人も二人もかわらへんやろ。この二人2〜3歳のくせに、よぉーしゃべるしな。」とつんく。

「やったー、のの嬉しいのれす。」
裸の女の子は言う。
今日、色んな事があり過ぎて頭を抱える中澤を尻目につんくはテンションがあがる。
「自分ら名前ついとんのかぁー?名前。」と二人に目をやるつんく。
「ののはののと呼ばれていた記憶だけあるのれす。」と裸の女の子。
「ウチは名前も何も記憶あらへんねん。」と着物の女の子。
「ほな、おっちゃんええ名前つけたるわ。」
「んー・・・。ブツブツ・・・。」といいながら家の中を歩き回るつんく。
「よっしゃ、お前は篭の中におったから“かごや”やな。
で、“のの”ゆー名前覚えとったお前はひねって“のの太郎”やな。うんうん決定。大決定やな。」
「のの女の子れすぅー。」とシクシク泣き始める。
「泣きたいんはウチの方やでー・・・・。」と中澤。
「つんくさーん、うちの家計きびしーんですよぉー・・・。」
「だいじょうぶやて、人間何とかなるもんやでー。」とつんく
「ホンマ、つんくさんのポジティブシンキングにはついてけへんわ・・。」
と頭を抱え込む中澤。

*そうして、おじいさんと、おば・・・、キッツィお姉さんは二人を育てたそうな。*

……10年後

「ちょっと〜、ののぉ〜、かごやぁ〜ちょぉ来たってー。」
と、2人を呼ぶ中澤。

「何れすかぁー裕子おねーさん。」
男の子っぽい服を着て庭から戻ってくるのの。
「何やねん!きっつぃわぁー、便秘なおらへん。」
と、トイレから出てくる女の子の格好をしたかごや。
「かごや、あんたなぁー、今から便秘やと早死にするでぇー。」
「もう、お通じ3日出てへんねん。あかんよなぁー・・・。」
「で、なんれすかー裕子おねーさん。」
どうやら2人に中澤は「裕子おねーさん」と呼ばしているらしい。
「あんなぁ〜ちょぉ、2人でおつかい行ってきたってー。」と中澤は風呂敷と金を渡す。
「いいれすよ。」
「何で2人で行かなあかんのー?いっつもどちらかに行かしとるやん。」とかごや
「あわ、あわ半俵買うてきて。一人やと重いやろ。」
納得という感じで2人は頷く。
「つんくさん夜に帰ってくるさかい、出来れば夕方ごろ帰ってきてほしいねん。出来るだけな。」
「ほな、行こっか、のの。」
「うん、行こう、かごちゃん。」
と家を出て行く二人。
玄関で中澤が手を振る。
「気ぃーつけて行ってきーやぁー。」

「「はーい」」

人里離れたつんく家からふもとの村まで米を買いに行く二人。
手をつなぎながら歌を歌いあう。
「「じーぶーんをしーんじぃーてゆくのだぴょーん。 カッカッ。」」
「こぉーいをしーちゃいましぃーた。」
「あっ、のの、その歌知らないれすぅー。かごちゃんどこで覚えたのれすか?」
「ひみつやで。」
「ののに意地悪しないれくらはい。えっ、えぐっ、えぐっ・・・。」
「泣くなや、ののちゃん。この歌はなぁー、タンポポの曲やでぇ〜。」
「ぐすっ。そ、そうなんれすか?一つおりこうになったのれす。てへへ。かごちゃん頭いいのれす。」
「ウチはののより村におつかい行っとるからよぉー知っとんねん。」
「村は進んでるのれすっ。」
そんな会話をしながら、ふもとの村にたどり着く2人。
「すごいれす、すごいれす、今日は人が多いのれす。」
「ほんまやなぁー、今日は人が特に多いなぁー。」
ののが何かに気がつく。
「なんれすか?あの人だかりは。」
「ああ、あれはなー幕府からの連絡とか見てる人だかりやで。」
「ののたちも見ましょお!!」
「でもなぁー、ちょぉ背ぇ足りんくて見えへんなぁー。」

「じゃぁ、肩車するのれす。」
と、どちらがどちらを肩車するかをじゃんけんで決める。
「「ミニモニグー!!モニモニ!!」同時に手を出した。
「勝ったのれすぅー。のの勝ったのれすぅーてへてへ。」
「しゃぁーないなぁー。ののちゃん乗りぃ〜。」
と、負けたかごやはののを肩車した。
「ののぉー、何て書いてあるんやぁ〜?早よぉ読んでーなぁー!!」
重くて必死。
「・・・を・・・した・・・、金100両を・・・える。えっ、えぐっ、ひっく。のの読めないれすぅー・・。えぐっ。」
「あ”−!!もう、ほな、ちょっ、代わってーな。」
と、ののを降ろすかごや。
上と下を交換した。
「何やぁー?鬼を退治した者に、金100両を与える。幕府。」
かごやを降ろすのの。
「さすが、かごちゃんなのれす。頭いいのれす。」
「ののちゃん、もうちょぉ寺子屋で真面目に勉強したほうがええで・・・。」
「てへてへ・・・。鬼退治はお金になるのれす。」
「逆になぁー、こーやって幕府が一般人に頼むゆー事は幕府にも手におえへんてゆーことやで。」
「難しいのれすか?鬼退治。でも家は貧乏なのれす。」
「せやなぁー、100両あったらしばらく幸せに暮らせるやろうなぁー。」
と、米屋にしゃべりながら向かう。

米屋に到着。
「おじさーん。あわ、これだけくらさーい。」
と、お金を差し出す。
「おっ、つんくさんとこの双子やなぁー、珍しく双子でお使いかぁー。」
「「はい、そうです(れす)。」」
2人は世間的には双子になっているようだ。
「ほい!!重いでぇー、あわ半俵ね。あ、おまけでひえ、3升(2.1kg)付けたるわ。」
「おおきにぃーおっちゃーん。ダイッスッキやでぇ〜。」
かごやは人を乗せるのがうまい。
「ありがとうございますれす。」
「いやぁ〜、おべっかうまいなぁ〜かごちゃんは。よっしゃ、おっちゃん小豆0.7升(1kg)も付けたろ。」
「あ、ありがとうございますれすぅ〜。」

2人は必死にふもとの村からつんく家へ担架運びであわ、ひえ、小豆を持って帰った。

「「ただいまぁー。」」
もうすっかり日が落ち、二人の帰りは夜になっていた。
「おう、おかえり。おそかったやんか〜。腹減ったでぇ〜。」とつんく
「おそかったなぁ〜、まあええわ。でやった?あのロリコン米屋まけてくれたか?ん?」と中澤
「値切れへんかってんけど、ひえ3升、小豆1升もらってん。」
「お〜、ようやったなぁ〜、秘伝「ほめ殺し」がうまくいったみたいやん。」
「ほ、ほめごろしってなんれすか・・・?」
「あー、のの太郎、そんなこと知らへんでええぞ。こっち来ぃー。」
とののを外にいるつんくが呼び寄せる。
ののはつんくっ子。かごやは中澤っ子だった。(おじいちゃん子、おばあちゃん子のようなもの。)

「かごやぁ〜、今日は秘伝「流し目」教えたるからなぁ〜。」と食事の支度を始める中澤。
「ほんまぁ〜?つんくさん引っ掛けた必殺技教えてくれるん?」と家事の手伝いをするかごや。
「引っ掛けたなんて人聞き悪いでぇー、かごやぁ〜。」
「ほななんで姉さんらくっついてん?」
「年近いからかもなぁー。」
「理由になってへんよ、ねぇーさん・・。」

そのころつんくとののはたいまつを点け剣術の修行をしていた。
「ええか、のの太郎。世の中生きていくにはなぁー、1に歌、2に歌、3に歌そして4に剣術やで。」
「はいっ、つんくさん。」
と木刀を持って向かい合うつんくとのの太郎。
「一つ聞いてもいいれすか?つんくさん。」
「なんや?」
「何でののだけ剣の練習なんれすか?」
「それは、あれや!強い女がおってもええやん。せやろ!?そんな女になってもらいたいんや。」
「はいっ。」(なんか言いくるめられた気がするのれす。)
「かかってこい、のの太郎!!」
「はいっ!!」
面の体勢に入るのの。
見事につんくに横に交わされ、足を引っ掛けられ転ぶ。
「痛いれすぅー。えっ、えっえぐっ。ぐすっ。ぐすっ。」
そのとき、家から中澤が出てきた・・・。
「おーい、つんくさーん。ののー。飯出来たでぇー。」
「ひっ、ひぐっ。ん?ご飯食べるのれすぅーーー!!てへへへ。」
ご飯となると元気になるのの。走って家の中に入って行く。
「ゲンキンやなぁー、ホンマ。」あきれた感じでつんくも家に入って行く・・・。
4人は夕飯を食べた・・・。

 

就寝時間
つんく&中澤とのの&かごやはそれぞれの部屋で床に就く。

のの&かごや部屋にて
「なぁ〜、ののちゃん、今日の鬼退治の話しあったやん。」
「んー?」
「今日なぁ〜、ちょぉ考えてん。ホンマに鬼退治しよかなーって。」
「うん。」
「でなぁ〜、明日つんくさんと姉さんにそれを言おう思ってなぁ〜。」
「うん。ののも鬼退治手伝うれす。」
「もちろんやん。ウチら2人で鬼退治するんやで。」
「鬼をやっつければ家は幸せに暮らせるのれす。」
「問題はいろいろあんねん、まず旅費、次に力やで。」
「力は大丈夫れす。のの、つんくさんから剣術習っているのれす。」
「習ってるゆーてもたかが知れてるやろぉー。」
「そんなことないれす。つんくさんは昔、有名な剣豪だったって言ってまひた。」
「うそっぱちやで、ねーさんからはそんなこと聞いたことあらへんし・・。」

「ののはつんくさんを信じてるのれす。ののも弟子だから強いのれす。」
「さよかー、ほな、それはののちゃんに任すとして・・・・金やな。」
「かごちゃんは今いくら持ってるのれすか?」
「村で拾ったり、こづかい取っといたりしとったから100文くらいあるでー。」
と、小遣い袋を取り出し中身を見せる・・・。
「ののそんなに無いれすー。」
小引き出しをあさり、袋を出す。
「んーと、1.2.3.4.5・・・・16文れす。てへてへ。」
「笑い事や無いでののちゃん。16文て・・・うどん4杯分やん。」
「そういえば、これはお金れすか?神社の入り口で綺麗だから拾ったのれす。」
「??・・・!!おおっ!!これ一分銀やん。ど、どないしたん?これ。」
「留め金か何かだと思ってまひた。高いれすか?」
「うちの100文と同じやで。なんや、ののちゃん知らんうちに金持ちやな。」
「てへてへ、これでお金は大丈夫れすか?」
「これで220文くらいやな。ま、こんなもんでええやろ。」
「かごちゃん頭いいれすから、お金係するのれす。」
「おう、わかったでー、ならののちゃんは剣士さんやな。」
「はいっ。のの剣士なのれす。」
「ま、後はようけつんくさんたち説得するだけやな。ほな、もう寝よか?」
「はい、れす。」
2人は就寝した・・・。

つんく&中澤部屋にて
「つんくさん、今日なぁー、かごやとののが村であわ買うてきたやん。」
「ああ・・。」
「でなぁ、鬼が巷でまた暴れてるんやて・・・。」
「さよかー、あん時の子供かもなぁ・・・。」
「つんくさん、なんで殺らへんかったん?全部。」
「あばれとるのは大人の鬼だけ・・・、せやから子供は殺せんかってん・・。」
「つんくさん・・・。」
「子供は悪うない。せやろ?」
「せやな。言う通りやで。」
「あの子供・・・もう大人の鬼になったやろな・・。わしをメッチャ恨んでんちゃうかな・・・。」
「つんくさん、ウチなー、あんたについて来て正解やとおもっとるでぇー。伝説の唄って踊れる剣豪やし、やさしいし。
あの子ら育てるの決めたん、それが引っかかったからやろ?やっぱつんくさんはええ男やな・・・。」
「せやけど、もうおっさんやで・・・。」
「鬼退治始まるんやろなぁ・・、また・・。」
「わしはもうこりごりや、あのとき親鬼の死体の近くで泣き叫ぶ子鬼が忘れられへん。親になってよぉわかったで・・・。」
「つんくさん・・・。」
「ほな、もうねるわ、裕子、火ぃー消したってーな。」
「ハイ・・・。」
ろうそくの火を消す中澤。

2人も就寝した。

 

「かごや!のの!いつまで寝とんねん、起きぃー。」
中澤に起こされた二人。
寝ぼけながらののとかごやは顔を洗いに行く・・・。
二人が顔を洗いに行き、中澤は2人の布団を片付ける・・。
ふと、2人の小遣い袋に目が行く・・・。
「あいつら、どんくらい持ってんやろ?うち小遣いすくないし、いくらも・・・。」
と、中身を見て驚く。
「100文近くあるで・・・。ま、かごやはしっかりしとるからな・・・。持っててもしゃーないか。」
「ののはもってへんや・・・うそ!?」
驚いた・・・。かごやより軽い袋の中に一度もくれた事のない一分銀が入ってる。
「こんな金どこから・・・。」
無計画なののがこんなに持っているわけがない。
問いただしてみる必要がると中澤は思った。
「ちょっとー!かごや!のの!ちょぉ来ぃー。」
顔を洗い終わって戻ってくる二人。
「あんたら、何でこんなに持ってるんや、お金。2人とも100文近く持ってからに。」
「かごはぁー、貯めたり、ひろったりしてん・・。」
「ののはどないやねんな、一分銀やなんて・・・・。」
「神社の入り口で拾ったのれす。」

「ほんまやな、のの。ホンマに拾ったんやな?どっかから盗んだんちゃうな?」
わって、かごやが入る。
「ちょぉ、ねーさん、待ってーな。ののはこれがお金やって知らんかってん。留め金か何かとおもーてひろってきたんやて。」
「のの・・・、盗んでなんて・・・ひっく、ひっく・・ないれす。」
「・・・さよか、なら、ごめん謝るで。でもな、あんたらお金拾うたら、ねーさんかつんくさんに言わなあかんで。
ま、ねーさんがひろーても役所には届けへんけどな・・・。」
ののたちを一度でも、疑った自分に自己嫌悪を感じた中澤はなおも謝罪の弁を述べる。
「ほんま、うたぐってわるかったなぁー。家がビンボーやから心配してもうてん。
せやけど、心配いらへんかってんな。ごめんなー、かんにんしたってーのの、かごやぁー。」
「大丈夫よなぁーのの?」とかごや
「はい、れす。ぐすっ。ひっく、ひっく。」
「あんなぁー、ねーさん、話あんねん。」
「なんや、かごや。」
「ウチら、鬼退治に行きたいねん。な、のの?」

「はい、れす。ぐすっ。ひ、ひっく。」
「なに言うてんの?」
二人の言っていることが飲み込めない中澤。
「ねぇさん、あかんかぁ〜?」
中澤の様子をうかがうかごや。

「あかん。」
冷静かつ落ち着いた表情でに答える中澤。

「何でれすか?」やっと、治まったのかののが聞く。

「誰が鬼退治に行くんや?」
つんくがのっそり、のの&かごや部屋に入ってきた。
「つんくさんもなんか言うたってください。」と、中澤

「ええよ、気が済むまで旅して来ぃ〜。」とつんく
「ええのつんくさん?」と喜ぶかごや
「つんくさん!!何言うてんですか!!」
「かわいい子には旅をさせろ・・・やろ?」と、つんく。
「また、つんくさんの奇抜な発想ですか?」と呆れと怒りの顔をした中澤。

「ちょぉ、待っとりーな。」と、つんくは自分の部屋から何かとってくる。
「これ、脇差(わきざし)やで、ほんもんや。ののにはこのくらいの軽さがええやろ。これ、やるわ。」
「つ、つんくさん!?」驚いた顔をする中澤
「これは本物や、ホンマに必要な時だけ抜くんやで。」
「は、はい!れす。」と脇差を受け取るのの。
「持ち金の話聞いとったで、家は貧乏やからやれへんけど、それくらいあれば何とかなるやろ。」
「つんくさん・・・、ホンマに行かす気ですか・・・。」と目に涙をためる中澤。
「ああ、本気やで・・・、わし。」
「もし、この子達に何かあったら・・・ウチ生きていかれへんですよぉ〜。」
しまいに泣き出す中澤。
普段、強く怖い中澤が涙を流すところを見た2人は動揺を隠せないでいた。
「ええか、人は決めたことはつき通すんやで。」とつんく。
“こくっ”と頷くことしか出来ない二人。
「善は急げや。今すぐ用意せぇ、のの太郎、かごや・・。」
「・・・・・・・」何も言わず涙を流し続ける中澤

旅立ちの準備をした2人。
玄関まで見送るつんく。中澤は出てこない・・・。
「ま、元気でがんばるんやぞ。手紙は金があったら書くんやぞ。」
「「はい・・・。」」
出かけようとした時、中から目を腫らした中澤が出てきた・・・。
「これ、持ってきぃー、朝食もまだやろっ・・。」
あわのおにぎり数個とたくわん1本を二人はもらった。
「げんきでなぁー・・・、ぐすっ。」
二人をまとめて抱きしめる中澤。
「つらくなったら、いつでも帰ってくるんやでぇ・・・。」
ののは触発され涙でグジュグジュになっていた・・・。

そして2人は旅立った・・・。

見えなくなるまで手を振るつんくと中澤。
「いってもうたな・・。」
「つんくさんが行かせたんやないですか・・・。ぐすっ、ぐす。」
「さて、わしも行くかな・・・・。」
「へ?」
「あの2人で行かすわけないやろ!?わしがバレへんようにつけてくで・・・。
それにな、やつらにはよぉこの世の中を見せてやりたいしな。せやから行かしたわけでな。
まぁ、鬼のところまでは行けへんやろな・・・。えらく長い旅やし、途中で諦めるで。それまでやな。」
と、奥から刀を持って武士スタイルになってやって来た。
「つんくさん・・・、やっぱつんくさんやね、行ってらっしゃい。ウチ、何とかつんくさんいない間この家守るさかいな。」
「すまんな、裕子。いっつも迷惑かけてばっかりやな。ホンマ堪忍な。」
「家は待っとかんと、手紙受け取れへんしな。」
「おう、ほな、行ってくるで。早う行かんと見失うしな。」
「つんくさん・・・。」
2人は口づけを交わした。

そして、2人の後を追ってつんくも旅立った・・・・。

 

「ぱっぱっぱっぱっ踊ろう騒ごう。ぱっぱっぱっぱっぱぱぱだぴょ〜ん。」
唄いながら2人はまずふもとの村まで降りていく。
「かごちゃん。本当に鬼退治に出てよかったんれすかねぇ〜。」
「ののちゃん。ウチが嫁にいってもうたらどないすんねん。」
「それはさみしいれすぅ〜。」
「せやろ?せやから鬼退治に出てよかってん。」
「わかったれす。納得したのれす。」
(何かまた言いくるめられた気がするのれす。鬼退治と結婚,関係あるれすか?)
「ま、ねぇ〜さんには寂しい思いさせるわな・・・。」
「そうれすね、ねぇーさん可哀想れした・・・。ぐすっ。」
「ほら、ののちゃん。泣かんといてーな。鬼退治して親孝行しよな。」
「はい、れす。ぐすっ。」
「2人じゃアカンのかなぁ・・・。」
「なにがれすか?」
「仲間ふやさんと鬼には勝てへんかなぁーとおもうてな?」
「友達ほしいのれすっ。」

ふもとの村にて。

「ほな、ののちゃん。ここで何処に鬼がおんのか情報収集やで。」
「はい、れす。」
「ひとまず二手に別れよな。一時間後に例の立て札の前やで。」
と、2人は知っている村だけに二手に別れて情報収集を始める。

一人になるかごや。

「せやな。やっぱ役所やろ。」
と、村に唯一常駐している役人に話し掛ける。
「お役人さん。ちょぉ聞きたいねんけど・・・。」
「なんや?迷子かぁ?つんくさん家の娘ぇ〜。」
「おっさん、ウチいくつに見えんねん!?これでも13やで。」
「そうか〜。それはえろうすまんかったなぁ〜で何や?」
「そうそう、鬼って何処におんねん。」
「鬼かぁ〜?つんくさんが殺りに行くんか?」
「ちゃうちゃう。ウチとののが行くねん。」
「もぉちょぉ冗談うまくならなやってけへんでぇー。ハハハ。」
「えーから教えてぇ〜なっ!!」
「しゃぁないなぁ、うるさくてかなわんわ。ほれ、地図。これ見ぃ〜。」
地図を覗き込むかごや。
「ええか。わしらがおんのはここや。で、鬼がいるとこはここ。」
「何や。近いやん。」
「アホ。こー見えてもメッチャ遠いねんで。」
「どんくらい?」
「せやな〜、寝ずに歩いて10日くらいやな。」
「遠っっ!!!」

「よぉーわかったか?」
「よぉ〜わかったぁ〜。」
「ま、しかも鬼がおんのは鬼ヶ島ゆー島やしな。」
「なぁ、お役人さん。その地図くれへん。」
「これかぁ〜?」
「うん、地図。」
役人に地図を渡される。
「つんくさんが使うんやろ?持ってけ、持ってけ。」
「いや、べつに・・・。」
「えぇーえぇー。わかっとるがな。」とニヤける。
「おおきにっ!!」
かごやは役所を出た。

「??何やってん?さっきのは・・・???」
首をかしげ歩くかごや。

ふと、むこうから何かに追われ泣きながら走ってくるののがいた。
「かごちゃ〜〜ん!!!たすけてくらさ〜い!!う"わ"〜〜〜〜ん"!!!!」

ののに盾にされた。
向かってきたのはすこしふっくらした女の子だった。
「なっちにそのあわおにぎりくれだべさーーーー!!!」
「何やねん!?強盗か?あんた。」

「ただお腹減っただけだべさ・・・・・・」
"ばたっ"ふっくらした女の子は倒れた。

「ちょぉ!アンタ!?行き倒れかい!?シャレにならへんがなーー。」
半身を起こさせるかごや。
「ゴメンだべさ。3日何も食べてないべさ。何でも言うこと聞くから食べ物くれべさ。」
「何でもか・・・。!?何でもやな!?何でもゆうたな!?」
「何でもべさっ。「死ね。」とか止めてほしいべさ。それ以外なら・・・。」
「ののちゃん!!」
「なんれすか?かごちゃん。ぐすっ。」
「このブタにとりあえず、あわおにぎり2個やって。」
「ブタじゃないべさー。「なっち」っていう名前があるべさーーー。」
「いらへんの?」目の前であわおにぎりをちらつかせる。
「ごめんだべさ。ブタでも何でもいいべさ。あっ。ありがとう!!」
あわおにぎりを受け取る。すると口に運ぶなっち。
あっという間にあわおにぎりが消える。

「はぁ〜、久しぶりの食い物はうまいべなぁ〜。」
「ちょぉ、聞いてええか?なっち。何処から来てん?」
「なっちか?なっちは北のほうから来たべさ。迷子の果てに、ここに来たべ。」
「迷子れすか?なっちしゃん、私はののれす。よろしくれす。」
「ののちゃん、よろしくべさ。さっきはごめんだべさ。こわがらしちゃったべ。」握手。
「ウチはかごやや。」
「かごちゃんでいいべか?」握手。
「でなぁ〜、ウチらと鬼退治にいかへんか?」
「鬼退治?鬼やっつけるんだべか?」
「そのとおりれす。」
「この地図のこの島におんねん。」と地図を出す。
「かごちゃん。その地図どうしたんれすか?」
「役所のおっちゃんにもろうてん。」
「わかったべさ。なっちも行くべさ。そのかわりにご飯を与えてほしいべさ。」
「ま、ウチらそんなに金あらへんから待遇悪いで・・・。」
「かまわないべさー。食べ物があればなっち幸せだべさー。」
「やったー、友達が出来たのれすぅ〜。」

なっちが仲間になった。

「なっち、なっちは年いくつなん?」
「なっちはねぇ〜19だべさ。」
「「19!?」」
「ののちゃんとかごちゃんはいくつだべさ?」
「「13やで(れす)。」」
「ののちゃんと、かごちゃん双子みたいだべさ。」
「ま、双子ということになっとるけど、厳密にはちゃうねんけどな?」
「???」
「友達になったことれすし。ゆっくりわたし達のことを教えてあげるのれす・・・。」

自分たちの今までのいきさつを話すののとかごや・・。

「かごちゃんと、ののちゃんは捨て子だったわけだべか?」
「ま、そんなもんやな。」
「でもすごいべさー、その育ててくれたつんくさんと中澤さんっいう人に感謝するべさ。」
「あの。なっちしゃんは何れ迷子になったのれすか?」
「・・・・・。」黙るなっち。
「あ、いわれへんのやったら無理して話さへんでええで。」
なっちは遠くを見てゆっくり話しはじめる。

「なっちは蝦夷人だべ・・・。」

「えぞじん?なんれすか?」
「きいたことあるで。ウチらと同じ顔しとるけどウチらと違う民族のことや。
その蝦夷人のなっちがなんでここにおんねん。蝦夷人は雪がいつも降ってる北のほうに住んどるとつんくさんゆうてたで」

「幕府は蝦夷人狩りを最近はじめたべさ。なっちはその蝦夷人狩りから逃げてきたべさ・・・。
逃げて逃げて・・・。そのうち両親とはぐれたべさ。お父さんとお母さん・・・心配だべさ・・・・。」

「なっちしゃん可哀想れすっ!!可哀想れす!!ぐすっ、ふぇっく、ひっく。」

「泣かないで・・・。ののちゃん。ののちゃんは優しいね。」
なっちはののを抱きしめる。

「ほな、鬼退治したら100両もらえんねん。分けたるからその金で親捜したらどーや?」
「ほんとだべか?なら、がんばるべさ。鬼退治したら親捜すべさっ。」
「がんばりましょうれす。」
「行こか?まだまだ遠いで鬼ヶ島は・・・。」
三人は鬼ヶ島に向け旅立つ・・・。

 

 

2001年×月×日

「はい、OK!!」

「おつかれさまでしたー。」
頭を下げる女の子
「ゴマキちゃーん。よかったよぉー。」とディレクター
「そうですかぁー?ありがとうございますぅー。」

彼女の名前は後藤真希。アイドルグループモーニング娘。のメイン。
今日はソロデビューにつき一人でロケ。

ふと、後藤のケータイが鳴った。
カバンからケータイを取り出して見る。

"山下"

「うざっ!!」
"ピッ"着信拒否。
「一度スノボ行ったからって調子こくなっつーの!!!」
(やばっ。トイレ行きたくなってきた。)
「マネージャ。トイレ行きたい。」
「真希ちゃん。こんな田舎ですぐトイレがあるわけないでしょ?我慢してよ。」
「でもヤバイし・・・。」
「しょうがないなぁー。すいません。この近くにトイレありますか?」
「ああ、さっきADが近くの寺の便所借りてたよ。」とディレクター
くわしく場所を聞き後藤はトイレに向かう。
「これかー、トイレ。くさっ!!!」
木製の戸を開け用を足す。水洗ではなかった。
「ふー。」
下着を上げ、戸を開けようとするが開かない・・・。
「ちょっとぉー、どーゆーこと!?ねぇっ!!ドッキリ?これぇー。」
すると便器の中から光があふれ出し光に包まれる。

「きゃあああぁぁぁぁ!!!!!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
気がつくと後藤は道端に倒れていた。
「ここ、どこ・・・・?日光江戸村?」
呆然とする後藤。

 

「鬼退治の旅もたのしくなって来たのれす。」
「せやな。2人だとちょぉ不安やったもんな。」
「なっち、うれしいべさ。蝦夷を離れてから友達がいなかったべさー。」
「ウチらもや、友達おらへんのは。3歳からののと一緒やけど、ふもとの村は子供おらんかったし。」
3人は会話をしながら隣村までの山道を進む。

「この地図によるとなぁー、もうすぐ村やで。おっ、見えてきたでー、あれや。あれ。」
「今日は、あの村の安宿に泊まろな。」と、後ろにいるののとなっちに話し掛ける。
「なっち、お金ないよ。」
「わかっとるでー、食物めがけて必死な姿見とったら誰でもな。あれ、のの?なにボケッとしてん。」
「かごちゃん・・・、あれ・・・。」と指差すのの。
「何やねん」と、振り返るとまばゆい光が目の前に広がる。
「!!!!!!」
あまりのまばゆさに目を閉じる3人。

「ここ、どこ・・・・?日光江戸村?」

3人の目の前に変な格好をした女の子が現れた・・・。
「!!!のの!!刀抜け!!襲ってくるかも知れへんぞ!?」
「はい!!れす。」
ののは脇差を抜いた。

その女の子が3人に気が付き話し掛けてくる。

「あれっ。なっちにののちゃんにかごちゃん。何でそんな格好してるの?変だよ。ハハハ。」

「!!!!!」
「何でアンタウチらの名前知っとんねん!!!妖術か?」
「アハハ、マジこれドッキリ?アハハハハハ。」
「何やねんドッキリって!?わけのわからへんもんを抜かすなアホッ!!」
「なんか、今日のかごちゃん言い方キツクなーい?怒るよ、後藤マジで。」
「かごちゃん。この人私達を誰かと勘違いしている見たいれすよ。」
「勘違いなわけないじゃーん。加護亜依、辻希美、安倍なつみでしょ?」
「ほら、やっぱり人違いしているのれす。」
「それにしても変な格好してるべさー。布きれ腰に巻いて足出して恥ずかしくないんだべか?」
と、ゴマフアザラシ柄のミニスカートを指差して言う。
「なにいってんの?わけわかんない。フツーじゃん。つーかそっちこそ何でそんな格好してんの。」
「何でって、こっちこそ普通れすよ。」
「ほな、アンタは南蛮人か?それとも妖怪か?どっちやねん。」
「なにいってんの?日本人に決まってんじゃん。」
「かごちゃん、なんれすか?ニホンジンて。」
「わからん。とにかく人みたいやな。」
「ひとまずさー、その刀下ろしたほうがいいべさ。敵意はないみたいだべさ。」
「ところで、ねぇ、かごちゃん、なっち、ののちゃん。今何してんの?」
「今から鬼を退治しに行くのれす。」
「鬼退治かぁ〜、まるで桃太郎みたいだね。あはは・・。」
「なんれすか?モモタロウって。ののはのの太郎れすっ。」

「まあいいや、ねぇ、鬼退治に後藤も連れてってよ。」
「これ以上増えてもなぁ・・・。金が底ついてまうわ。」
「お金ならあるよぉー。」と財布の中の札を見せる・・。
「偽札作りは犯罪やで。」
「偽札じゃないよぉー!!!!ほんものだよぉ〜。」
「子供と思ってなめてかかるな、アホッ。いてまうぞ!!金っちゅーのはこういうもんゆーねん。」
袋から10文程度つかんでみせる。
「あはは、そうかー時代劇のロケかーーー。そーだね、それなら使えないね。アハハ。」
勘違いしたまま納得する後藤。
「何処で取ってるの?カメラ。おしえてよぉ〜。」
「なんれすか?カメラって???」
「本気でいってんの?ののちゃん?」
「いつでも本気れすよ、ののは・・・。」
「え?ってことは・・・。いま、安倍なつみ、辻希美、加護亜依のそっくりサンと話してるって事?」
「何言ってるんだべさ。そんな名前の人たち知らないべさ。」
「うそ・・・・。いま、もしかして江戸時代・・・・?」
「なんやねん?江戸時代って・・?ま、江戸ゆうたら幕府があるわな。」
「もしかして・・・、後藤・・・、江戸時代に来ちゃったの・・・?」
「だから何やねん?江戸時代って・・・?」
「イヤアアアアァァァァ!!!!」

 

頭を抱え込んでしまう後藤。
「もしかして・・・、この子神隠しにあったのかも知れないべさ・・・。」
「神隠しってなんれすか?」
「摩訶不思議な妖術で、人が消えてしまうことやで。」
「やっぱりかごちゃんはおりこうなのれす。」
「おそらく、この子は未来から来たのかも知れへん・・・。」
「ぐすっ。ひっく、ひく、ひっく。そうかもしれない・・・。後藤、未来から来たのかもしれない・・・。」
「この布・・・。なんの柄れすか?」スカートを指差すのの。
「ひっく、ひっく、ひっく。ゴマフアザラシ・・・。」
「じゃぁ、ごまちゃんって呼ぶのれす。ののとごまちゃんは今日から友達なのれす。」
やれやれという顔で顔を見合わせるなっちとかごや。
「せやな、ごまちゃんは今日からウチらの友達や。」
「ひっく、ひっく、ひく。あ、ありがとう・・・。ひっく、ひっく。」
「どうするべさ。こんな目立った格好じゃ、キリシタンと間違えられて打ち首もんだべさ。」
「ほな、そこの村で、着替えやごまちゃん。」
「うん、ひっくひっく、ひっく。ありがとう、みんな。」

後藤が仲間になった。

 

「こんな着物着たのはじめてぇ〜。」
浮かれてはしゃぐ後藤。
「ごまちゃん、悩み事とかあらへんやろ。」
「あるよぉ〜。ソロデビューで、一人で唄うの大変なんだから・・・。」
「"そろでびゅー"ってなんれすか?」
「あんまり詳しいこと聞かないほうがいいべさ。未来の言葉はわかんないのがとうぜんだべさ。」
「ウチらそんな金あらへんねん、よかったら、ごまちゃんの着てた服、質屋入れてええか?」
「んー、いいよぉ、いつ帰れるかわかんないし。」
ということで、質屋に服を質入した。
珍しい生地、柄、形ということであってか、50文程度になった。

「ふう、ま、ええ金になったんちゃうかな?」
「のの、今日歩き疲れたのれす・・・・。どこか泊まりましょう。」
「宿だべか?」
「宿?民宿?旅館?ホテル?」
「"ほてる"ってなんれすか?」
「気にしたらあかんで、のの。」
安宿を村中捜し歩き、やっとの思いで安宿を発見。

「4人で32文やね。」と、宿屋のおばちゃん。
かごやは32文を支払う。

部屋に入る4人。
「なんか、出そうだね。」
「なにがれすか?」
「お化けだよ。」
「ののいやれす〜。こわいれすぅ〜、こんなところに泊まれないれすぅ〜。ひっく、ひっく。」
「ごまちゃん、このコ怖がらせんといて、メッチャ泣き虫やねん。」
と、ののの頭をなでるかごや。
ののはがしっとかごやにしがみ付いている。
「今日は夕飯なんだべさ?」
「山菜うどんやで。」
「うどん〜??蝦夷にはないべさ〜、うまそうだべさ〜。」
「うどんか〜、そばないの?」
「ごまちゃん、関西人はうどんやで。」
「タバコでも吸おっかなぁ〜。」と、マルボロをとりだす後藤。
「変な、たばこれすねぇ〜、煙管がないのれす。」と、興味深深に後藤の様子を見るのの。
口にタバコをくわえ、ライターで火をつける。
「ふぅ〜〜。」煙を吐く。

「・・・・・・・・・・・・・・・・妖術れす。ごまちゃん妖術使ったのれすーーーーー!!!!」
2人で話していたなっちとかごやがそれを聞いて後藤の方を見る。
「あはははは、妖術?なにそれ?これはね、ライターっていうんだよ。」
と、3人の目の前でライターに火をつけたり消したりしている。
「妖術やな。未来人はすごい術を取得しとるもんやな。すごいわー。」
「すごくないよ、ただ、ここを押すだけ。」
「それが、あると、火種にこまらないべさ。」
カチカチ面白そうにライターに火をつけてみるのの。
「あんまりやりすぎると、ガスなくなっちゃうよ。」
「"がす"ってなんれすか?」
「ま、使いすぎると使えなくなるってこと。」と、ののに対して説明。
「そうなんれすか・・・。じゃあ大切なものなんれすね。」と、後藤にライターを返す。
「なんか、心強いな〜、ごまちゃんは。」
「そんなに期待されても困るんだけど・・・。」と、照れる。

「そういえば、私らとそっくりな人が未来には居るっしょ?ごまちゃんが見間違えるほどの。」
となっち
「うん、名前も、顔もそっくり。本当にみれば見るほど似てるんだ・・・。」
「未来へ帰れるのれすか?」
首を振り「わからない。」という後藤。
「きっと帰れるべさ。神隠しに遭ったのは何かこの時代に使命を果たさせに来させられたべさ。」
「だといいけど・・・。」と、しんみり。
「だいじょうぶだべさ。なっちも蝦夷からはるばる幕府から逃げてきたべさ。」
「蝦夷?・・・・・、あ、北海道かぁ〜・・・。今のなっちは未来の「なっち」の先祖かも。」
「その、未来の「なっち」はきっとわたしの子孫だべさ。」
「ののも、「ののちゃん」の先祖れすか?」
「ウチも「加護ちゃん」の先祖なんかぁ?」
「きっとね。だって、マジそっくりだからさ。」
ののが障子をあけ夜空を見上げる。
「今日は満月れすよぉ〜。」
「まんげつかぁ〜、最近満月なんて、みてないなぁ〜。」と、見上げる後藤
「満月はなんかきれいだべさ〜。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
黙って、満月を見ようとせず部屋の奥にいるかごや。
その様子に気づくのの。
「どうしたんれすか?かごちゃん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「かごちゃん?」と後藤。
「どうしたべさ?」
「かごちゃん?気分悪いれすか?」

「ウチな・・・・。」

 

 

「ん〜、1日しかたってへんのにメッチャ寂しいでぇ〜この家。」
一人つぶやく中澤。
「ま、4人家族がいきなり一人になってもうたら当然やなぁ〜。」
茶をすする。
「ぷはぁ〜、まずっ。」

"チリーン、チリーン"

「なんやぁ?鈴の音が聞こえてくんでぇ〜。」
と、中澤は外へ出てみる。
「何にもあらへんがな・・・・。」
あたりを見渡したがそれらしき原因もなにもない。
「お、今日は満月かいなぁ〜、晴れてよぉ〜見えんでぇ〜お月さん。」

「!!!」

「なんや?目の錯覚か?なんか月から何者かが近づいてくるような・・・。」
目を凝らす中澤。
なにやら月から宙に浮いた人がこちらに向かって来る。
「錯覚ちゃうがな!!うわっ、こわっ!!!何でよりによってこんな日に・・。かぎ閉めて寝よ。」
中澤は家に入り戸という戸に施錠をして、布団にもぐりこむ。
「メッチャ怖いでぇ〜、何やねん。ウチが何したっちゅ〜ねん。ああ、神さんお願いウチを助けて。」
鈴の音は次第に近づいてきた。
"チリーン、チリーン、チリーン"
(こわっ!!こわっ!!こわっ!!こわっ!!)
身体が震えてくる。

"どんどんどんどん"
「たのもぉ〜。」
と、男性の声が玄関あたりから聞こえてきた。

(うわっ、ホ、ホンマに来おった!!!こわっ、か、かみさま〜〜〜。)

"どんどんどんどんどん"
「たのもぉ〜。」

(妖怪がしゃべっとるぅ〜、ウチ何もしてへんよ。ネコババやら年齢詐称はするけどっ!!)

「美男子春画集ありますよ。」

「はいは〜い。」と、飛び出して戸を開けてしまった。
(あかん!!釣られてもうた。)

男性が数人並んでいた。
「夜分申し訳ない。姫はおられますか?」

「はいっ?」

 

 

「ウチなぁ〜、月から来てん。」
「何のことれすか?」
「ウチなぁ〜、この大地に降り立って10年後の最初の満月に月にかえらなあかんねん。」
「どういうことだべさ?」
「月に帰って嫁に行かなあかんねん。」
「よくわからないのれす・・・・。」

「まるで、かぐや姫だね・・・。」後藤がつぶやく。

「!!!!・・・・・・・・なんでウチのホンマの名前知っとんねん。」
「未来の世界にね、こんな話があるんだ・・・・。」

『昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいてね。おじいさんはある日、竹やぶに竹を刈りに行ってね。
すると竹やぶの中の1本の竹の節が光輝いていて、その竹を切ると赤ちゃんが中に入っていて、
その子を家に連れて帰り「かぐや」と名前を付けて育てたんだって。
そしていつしか、大人にかぐやは育って、ある十五夜の満月の時月から迎えにきて、月に帰っていったって言う話・・・・。』

「そうか、そんな話が未来にはあるねんな。それ、きっと、ウチの事やで・・・。」
「そんなれすっ、か、かごちゃん月に帰ってしまうんれすか?いやれすっ、いやれすっ。」
「ウチはな・・・、実はつんくさん家もらわれた時「記憶無い」言うたけど、実はあんねん。」
「10年後ウチは月に帰る事知っててん・・・・。」
「いやれす!!いやれす!!いや!いや!いや!」取り乱すのの太郎。
「ののちゃん、きいてーな、話の続きがあんねん。何で?ここにウチがおるかわかるか?」
「そんなのっ!!わからないのれすっ。」
「ウチはな、つんくさんが、中澤姉さんが、ののちゃんがだいっすっきやねん。せやからウチは、今日家から飛び出した・・・。
一緒に居たい気持ちはウチも同じやねん・・・。」
「つまり、運命から逃げたわけね・・・。」と後藤。
「うん。どのくらいののちゃんとみんなと居られるかわからへんけど、一緒に居たいねん!!!」
「みんな、色んな事情を持って今にいたってるわけだべさ。」
「ののっ、ぜったいにかごちゃん離さないのれすっ。ひっく、ひっく。」
「おおきに、ののちゃん。でも、信じてくれるかなぁと思ったねんで。」
「おかしくないのれすっ。ののは桃から生まれました。ごまちゃんは未来からきたのれす。なにもおかしいことなんてないのれす。」
「そうだべさ。おかしくないべさ。」

「夕食お持ちいたしました〜。」仲居がやってきた。
ちゃぶ台に山菜天ぷらうどんを4つ並べ去っていく。

「うまそうだべさ、まず、夕食にするべさ。」
「はいれす。」
「せやな。」
「おいしそー。」

4人はちゃぶ台を囲んで夕食。

「うまっ。」
「おいひぃ〜、江戸時代ってこんなうまいうどん食べてたんだぁ〜。」
「未来のうどんはまずいべか?」
「まずいよぉ〜、マジで。」
「食べ物食べてると幸せれすぅ〜。」

夜はふけていく。

 

 

「そんな・・・、かごやが月からきたって言いよるんですかぁ〜?」
「左様。無論、姫を育てていただきそれなりの御礼はするつもりである。金がよろしいかな。」
「いやです。たとえ、月からかごやが来たとしても帰せません。」
「タダとは言ってござらん。金ならば好きなだけ用意して進ぜよう。」
「金なんて要りません。かごやも帰しません。あの子は・・。かごやはウチとつんくの子です。」
「ならばいたしがたない、無理やりでも連れ帰る所存である。」
「今、かごやなら家にはいませんよ。あの子は旅に出ました。」
「なんと・・・、むむ。隠してはいかんぞ、皆の者、家の中を探せ!!」
「「「はっ。」」」
家の中をくまなく探す月の者達。
「見つからん・・・姫が心変わりになられたということか・・・。」
「だからおらへんゆうてるやろ、しかも何やねん!家ん中荒しおって、なんやねん心変わりって。」
「月の王家につたわる慣わしの一つで生まれて嫁ぐまでの10年は大地で育つように決められておる。
姫は10年後に月に帰るのを楽しみにこの大地に降り立ったのだ。姫がこの日を忘れるはずがない・・・、もしや、無理やり奉公に出したのか?」
「そんなわけないやん!ふざけんなや!!そしたら旅立つ時ウチが泣くはずないやろ!!進んであの子らは旅立ってん!!」
「そんなばかな。姫は自ら旅立ったというのか・・・。それが真実ならば、探さねばならぬ、婚式は近いのじゃ、何処へ姫は旅立ったというのだ?」

「言えへんよ。死んでもな。」
「・・・・・、くっ!!皆の者、さがせ、さがせ、近場から遠方まで探すのじゃ!!」
「「「はっ。」」」外へ出て行く。
「われわれは月の民、夜のみこの大地に降り立つことが許された民。時間がないのじゃ。失礼。」
月の民は家を出て行った・・。

「かごや、迎えに来るのがわかってて家を出たんやな・・・。ほんま、これでよかったんやろか?」

「かごや・・・。」

 

「そうか、そういうことやったんか・・・。」
かごや達の部屋の隣に宿泊したつんくは隣の部屋に聞き耳を立てていた。
「・・・・・、そうすると、いま、中澤のところに月のもんが来とるっちゅーわけやな。」
「ま、中澤が口を割るわけないなぁ、あいつホンマにかごやのこと好きやし・・・。」
「いざ来たら・・・・、わしが守ったらなあかんな。本人が帰ることを拒否しとるわけやし・・・。」
「また、刀に錆びを作るはめになるとは・・・・。」
やたら独り言が多いつんく。

「あん、あっ、いい、んんっ。」
反対隣から喘ぎ声が聞こえてきた・・・。

「・・・・・・・・。」
反対側の壁に聞き耳を立てるつんく。
「旅はこういうのがあるからええよな。ははっ。」
アホだ・・・・。

 

「さ、出発だぁ〜!!」
「行くべさ行くべさ、目指せ鬼ヶ島だべさ〜。」
4人は宿を出た。
「4人での旅は楽しいれすぅ〜。」
「せやな、ちょぉお金かかるけど楽しいやんな。」
にぎやかに歩いていく。
山道を歩いていると、前方にまばゆく小さい玉状の光がのが現れる。

「またあの光なのれすっ!!」
「ごまちゃん!!あの光や!!あの光が現れた時、ごまちゃんが目の前に現れてん!!」
「あの光に飛び込めば帰れるかもしれないべさ!!」
「うん!短い間だったけどありがとう。たのしかった!!」
光の玉の方向に走っていく後藤。
光は後藤が飛び込む直前に光を放ち消えた。
そこには一人の女性が・・・。

後藤は自分が帰れなかったことよりもその女性が目の前に現れたことに衝撃を受けた。
「か・・・、かおり?かおりも神隠しに遭って来たの?」
そう、その女性は飯田圭織にしか見えなかった。
その女性は後藤に気づく。
「ワタシハ未来カラ、タイムスリップデ来タアンドロイド"飯田圭織モデル"デス。」
喋り方はあまりにも機械的。
「うそっ。かおりでしょ?ねぇ・・・かおりだよねぇ?」
「ワタシハ2000年前後ノモーニング娘。ト言ウアイドルグループノ飯田圭織ヲモデルトシタアンドロイドデス。」
「うそだよ・・・、そんなの。じゃぁ、自分が機械だって証拠見せてよ!!」
「イイデスヨ。ミテイテクダサイ。」
腕がもげて銃口が腕から見える。
すると、空に銃口を向けマシンガンを十数発打つ。
"どどどどどどどどどどどどどど"
「ワカッテイタダケマシタカ?」
「・・・・・・・・わかったよ。かおりじゃないんだ・・・。」
「ワタシノナマエハオナジク"カオリ"デスケドネ。」
「名前は同じなんだね・・・。」すっかり落ち込む後藤。
「いつから来たの?」

「ワタシハ2121年カラ来マシタ。」
「なんや?アンタも未来から来てん?」かごやが割って入ってくる。
「ソウデス。2121年ニハ、タイムマシーンガカイハツサレテイマス。」
「ごまちゃんが来たのは2001年れすよね?100年後から来たのれすか?」
「私ハ、鬼ノDNAヲ採取スルタメ、未来カラヤッテ来マシタ。」
「ごまちゃんは偶然、この時代に放り込まれた。カオリさんは未来からやってきたべさ。」
「なんや、カオリさんは帰る方法しってんやろ?」
「ハイ。私ハ任務ガ済ミ次第帰リマス。」
「ごまちゃんは自分の未来に帰りたいのれす。どうすればいいれすか?」
「2001年デスカ?今データ処理シマス、少々オ待チクダサイ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「15日後、鬼ヶ島北ニ2001年ヘノ入リ口ガ開キマス。ソレデ帰ラナケレバ百年後マデ帰レマセン。」
「ごまちゃん、よかったな、それで帰れるで。」
「うん。帰れるんだ、後藤帰れるんだ。」
「のの、さっきからカオリサンの言っている事がわかりませんれす。DND?データ?」
「ほっといていいべさ、未来人の会話はわからないのが当然だべさ。」
「のの、未来人は誰でも妖術使いだとわかりましたれす。ごまちゃんもカオリさんもすごいれす。」
「あんた、カオリさんゆーたな、どうやねん?ウチらこれから鬼退治いくねん、カオリさんも来へん?」
「イイデショウ、ワタシモ目的ハ似タヨウナモノデス。」
「でもどうするべか?食費がかさむべさ。」
「カオリさんも分入れると5人分やな・・・、せつないわぁ〜。」

「ワタシハイリマセン。ワタシハアンドロイドデス。人間デハアリマセン。ナノデ食ベ物ハイリマセン。」
「どうゆうことれすか?食べもの要らないのれすか?食べることは生きがいなのれす。」
「ののちゃん、カオリは機械なんだよ。」と後藤。
「機械れすか?なんれすか?その機械って。」
「ん〜。」と、後藤は田んぼに目をやり、ふっと思いつく。
「喋って、動いて、戦って、頭のいい『かかし』みたいなもんだよ。」
「わかったのれすぅ〜!!ののも理解できましたぁ〜、かかしさんは食べ物食べないれすぅ〜。」
「あ、そうか、そんなもんなんやな。」かごやも納得。
「なっちもわかったべさ。」
「よっしゃ、5人でがんばってこか?」
かごやはみんなの前に手のひらを下にむけて差し出す。
すると、後の4人もその上に手を重ねた・・。
後藤が、「がんばりまっ・・・。」
「「「「「っしょい!!!」」」」」

「?なんや?」とかごや
「?なんか、しってるような・・・。」とのの
「?不思議な感じだべさ。」となっち
「?息ガアイマシタネ。」とカオリ
「?・・・・ホントに後藤江戸時代に来たのかな?」
首をかしげる。

カオリ(アンドロイド)が仲間になった。

物陰からつんく・・・。
「ねぇ、わらって?」

 

カオリを仲間に加えた一行は『なつかしの村』にたどり着く。
「なんで、ここはなつかしの村ってゆーんれすか、かごちゃん。」とのの
「わからへんよそんなん。」と、かごや
村を進んでいく一行。
ふと、目の前から人が歩いてきて通り抜けざまに

「こんにちは」と言ってくる。

「!?福田明日香だぁ〜!!!」と後藤がびっくり。
「なんやねん?ごまちゃんは未来人やろ、んなわけないやん。」
「そうかな〜ホントそっくりさん多いね。なんかなつかしいよぉ〜。」

今度は赤ちゃんを抱えた女性が通り抜けざまに

「こんにちは」

「あやっぺだよぉ〜!!!」と後藤がまたびっくり。
「かんちがいれすよぉ〜。ごまちゃん。」
「そうかなぁ〜、あまりにも似すぎ・・・、なんだろ?ドッキリじゃないよねぇ〜。何かなつかしいなぁ。」

今度はボーイッシュな女性が前方から通り抜けざまに。

「こんにちわ。」

「いちいちゃ〜ん!!」後ろを付いて行く後藤。
「あっ、ごまちゃんがついてっちゃうべさ。」
4人で後藤を引き止める。
「いちいちゃ〜ん!!!」
「イマノヒトモ見間違イデスヨ。」
「そんなことないよぉ〜、いちいちゃ〜ん!!!」
「最近疲れ溜まり過ぎなんやって、ごまちゃんは・・・。」
「そうなのかなぁ〜、でも、本当に懐かしい人に会った気がして・・・。」
「ある意味この村の名前のまんまかも知れへんけどな。」

この後、5人は、はたけ、まこと、しゅう、たいせー、小湊(元T&Cボンバー)、信田(左同)
のそっくりさんと遭遇したらしい(後藤曰く)。

その後ろのつんくは・・。

「おっ、はたけ、まこと、たいせー!!ひさしぶりやなぁ〜。」
「なんや、鬼退治以来やんか?」と、まこと
「なんや、今は何しとるん自分。」とはたけ
「ああ、ちょぉな・・・。」
「また鬼退治やろ。幕府の立て札みたで〜。」とたいせー。
「んー、せーかくに言うとちゃうんやけど、ま、そんなもんやで。」
「何や、今回わしら連れてけへんのんか?」とはたけ
「おう、すまんなーはたけぇー、今回はわしが退治しに行かへんねや。」
「???どうゆうことやねん??」まこと。
「ま、細かい話は後やで、わし忙しいねん。ほなさいなら。」
「ほなな。」と手を振るたいせー。
走ってかごや達の後ろをつけるつんく、何かを思い出したかのようにはたけたちに振り向き

「たいせー、まこと嫁大事にせーよ、しゅうによろしくなぁ〜、あとはたけ、はよ嫁さがせ!」

「うっさいわーボケー!!お前こそ中澤大事にせぇ〜!!!」と叫ぶはたけ。
「あいかわらずやね。」とまこと
「しゅうさっきまでいたんやけど何処いってんやろ?」とたいせー
その近くで、しゅうは16歳くらいの女の子をナンパしていた・・・。

 

「あー疲れた!!本当に疲れた。」
宿についてすぐ倒れこむ後藤。
「ここホンマにやっすいわぁ〜、5人で30文やでぇ〜。田舎やからやな・・・。」
「のの、二日目のおとまりれすぅ〜。」と、はしゃぐ。
「お風呂入ろうだべさ。」
「いいねぇ〜はいろうよ。」
「ののもはいるのれすぅ〜。」
「ほな、5人でわいわいがやがやしようや。」
「うん、たのしそうだべさ。」
「ワタシワイイデス。」
「なんでれすか?」
「ワタシハ機械デス、計器等々ガ故障シテシマイマス。」
「あ〜なるほどぉ〜。」一人だけ納得する後藤、年代が近いだけに納得しやすい。
「どういうことだべさ、カオリがお風呂は入れないのは。」
「つまりね、この動く喋るかかしさんは、水に漬けると壊れちゃうんだって。」と後藤が解説。
「さよかぁ〜、その「あんだろうで」(アンドロイド)って何かめんどくさいんやな。」
「のの、カオリさん可哀想れす。お風呂は気持ちイイのれす、ご飯の次にすきなのれす。」
「じゃぁ、この部屋の留守番をカオリに頼むべさ。泥棒が来たら妖術使うべさ。」
「了解シマシタ。」

4人は留守を頼んで風呂へ行く。

一人部屋に残るカオリ。
「太陽蓄電池補充モード始動、補助電力供給システム作動、定格出力30%削減、省電力モード。」
「温度検知システム停止、超高感度システム停止、高度聴力システム60%削減、認識度50%削減」
「記憶装置稼動速度50%削減、警備システム始動、超音波検知システム停止・・・・・・・・。」
どうやら太陽エネルギーのない夜では省エネが必要のようだ・・・。

湯船につかりながら
「何か今日の風呂は狭いなぁ〜・・・。」と後藤。
「のの、今日も複雑なのれす。ごまちゃんも、なっちも、かごちゃんもおっぱいが大きいのれす。」
「そんなへこむなや。ののちゃんもきっと大きくなるでそのうちな。」
「そうれすか?でもどうやればそんなに大きくなるのれすか?」
「牛乳飲めば大きくなるで〜。」
「うそれすっ!!かごちゃん牛乳キライなの、のの知ってるれす。」
「ま、気にすることないべさ。大きいなりに苦労するべさ。おっぱいは。」
「ごまちゃん、さわってもいいれすか?」
「えっ?いいよ。」
興味ありそうに、一番大きいごま乳を触ってみる。
「やわらかいれすぅ〜。かごちゃんのは張りがあって少し硬いれすぅ〜、このくらいが男の人好きれすよ、きっと。ごまちゃんはいいれすね。こんなやわかいと赤ちゃんも喜ぶれすよ。」
「ちょっと、ののちゃんっ。あ、だめだって、そんなにもんでないのっ!」
と、ののの手を振り払う。
「なんでれすか?」
「それは・・・、もっと大人になってから知りなさい!」と、後藤。

「ののは十分大人れすよ。」とムキになる。
「そ〜お〜?満足に生えそろってないじゃ〜ん。」
「うっ、なのれす。でも、気持ちは十分大人なのれすっ!」
「ののちゃんもあと少しでいい女だべさ。」となだめる。
「そーやで、時期とゆーもんはいつか来るもんやで、急ぐ必要ないで。」
「そうれすね、気にしないれす。」
「かごちゃん、追っ手は今日もかごちゃんを探し回ってるべか?」と心配そうに話し掛ける。
「・・・、月の民は月夜にしか大地には降り立てへんのや。せやから、おそらく今日は雲っとるから無理やと思う・・・。晴れた時は必死の思いで探しまわっとんちゃうんかな・・・。」と俯く。

 

そのころつんくは・・・。
風呂場の外でかごやたちを覗きしていた・・・。
「なんや、かごやええ身体になっとんの・・・、ののはまだやけど他のコはええな・・・へへへ。」

そのとき、女性の釜焚き番に覗きをしているところを発見された。
「きゃぁぁぁ!!!!の、のぞきぃ〜〜〜、だれかきたって〜!!!」
「やばっ!!にげろ!!!」
逃げ足の速いつんくは辛くも逃げ切った。
闇夜なため、顔が割れずに済んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
年には勝てない・・・。
「しっかし、普通に覗きしよう思ったら、娘が入浴時とはおもわへんかった。堪忍や、のの、かごや。」
「待てよ、かごやの話によると月のモンは月が見えてへんとその地に降りたてんゆうてたな・・・。」
「今日は大丈夫見たいやな、明日は雨やし・・。」
近くの河原で鳴くガマガエルの鳴き声を聞きながらそういった。

 

脱衣所にて・・・。
「のぞきやって!!タダで見せてもうた〜最悪や、見物料払えっちゅ〜ねん。」
「のの、なんか傷付きました・・・。やなかんじれすぅ〜、ぐすん、ぐすっ。」
「この時代が江戸でよかった。後藤のすんでる世界じゃ本に載っちゃうよ・・・。」
「蝦夷と違って、みんな敏感すぎだべさ・・、風呂場に囲いは蝦夷はないべさっ。」
「「「なっちはすごいよ(れす)《やん》」」」
「そんなことないべさっ、みたけりゃ見るべさ。」
ある意味尊敬をする3人だった・・。

 

翌日。
「はぁ〜、雨かぁ〜・・・。もうだるいなぁ〜。」と後藤
「雨は適度に降るのがいいのれす、野菜が育つのれす。」
「傘買わなあかんな・・・・。」とかごや
「カオリ・・・コワイ。」
「ん?カオリ今普通に喋ったべさ。」
「ほんまや、なんや、普通に喋れるんやないか。」
「カオリ雨ノ日駄目ナノ。壊レチャウヨ。」と顔を曇らせる。
「そっか、カオリ機械だもんね、雨で壊れちゃうよね。かごちゃん傘5人分買ってこようよ。」
「そっか、あでろうでん(アンドロイド)は水に弱いんやったな。ほな、万屋いってくるわ、行こ、のの。」
と言って、ののとかごやはなつかしの村の万屋に向かった。

万屋にて。
「あ"あ"〜〜も"う"、あめに相当やられたでぇ〜。」ぬれて不機嫌なかごや。
「のの、雨の日も曇りの日も好きれすっ。かごちゃん連れ去られないれすっ。」
「さよか、なんかうれしいわ。」と、笑みがもれる。
「何や?買い物か?お嬢ちゃんら。」と店員
「ああ、傘買いに来てん。おっちゃん5本くれへん?」
「さよか〜、5本で20文やけど、そんなにもっとらへんやろうから、15文でええで。」
「お、おっちゃん、おおきにぃ〜、うちらめっちゃたすかってん。」
「助かったのれす、ありがとうなのれす。」

2人は万屋を後にした・・・。

 

そのころ、宿屋待機中の3人は・・・。
「何か、おなか痛くなっちゃった・・・、ゴメン、なっち、カオリ、トイレ行ってくる。」
「トイレって何だべか?」
「今ノ言葉デ言ウ「便所」ダヨ。」
後藤はトイレに向かった。
「しっかし、カオリちゃんと喋れるならなんで普通に喋らなかったんだべか?」
「今省電力モードナノ。ダカラ言語能力ガ落チルノ。」
「何言ってるかわからないべさ・・。」
「簡単ニ言ウト雨、曇、夜ハ喋リ方ガ変ワルノ。」
「なるほどだべ。」

そこにつんくがやってきた・・・。
「なぁ、なぁ、あんたら旅人みたいやけど、これから何処行くんや?」
「なっちらだべか?いま鬼退治に行く旅をしてるべさ。」
「そうか、偉いな、そういうコ偉いと思うわ、何夜か感動したで、ほな、おっちゃんが小遣いやるわ。」
「そんな、いらないべさ、知らない人にもらうことはいけないべさ。」
「ええねや、ええねや、ほれ。」と、なっちに渡す。
「・・・、でもわるいべさ。」と返そうとする。
「とっとけって、しばらくいらんほど飯食えるで。」
「ほんとだべか、ほんとに一杯食べられるべか?なら、ありがたくいただくべさ。」
と、食べ物がからむとまったく判断能力がなくなるなっちだった。
「ほな、またな。」と、宿を後にするつんく・・。

しばらくすると後藤が帰ってきた。
「どうしたの?誰かと喋っていたみたいだけど・・・。」
「お金もらったべさ。」
「えっ、だれに?」
「知ラナイ人デシタヨ。」
「あ、っそう。」

そして、のの、かごやも傘を差して帰ってきた。
「ただいまぁ〜傘こうてきたで。」
「かごちゃん、知らない人にお金もらったべさ。」
いきさつを話すなっち。
「なら、もらってええんちゃう?ウチらの旅の資金になるし、いくらやったん?」
「なっちも、良くわからないべさ。」となっちの手から、かごやの手へ・・・。
一分銀が4枚・・・。

「!!!!!!!なんやこれぇ〜〜!!!」
「ののもびっくりなのれす。」
「そんなにすごいの?」と後藤。
「すごいなんてもんやないで、これでうどんがなぁ、数百杯くえんねん。」
「それすごいべさ、すごいべさ。」
「ほんまにもらってええもんやろうか。」
「でも、その人もう出ていっちゃったべさ。」
「さよか、ならええわ、ほないこか。」
5人は傘を差しながら再び鬼ヶ島を目指し旅立った・・・。

 

そのころつんくは

「4分銀はあげすぎやったかな・・・、鬼退治したときの残りの報酬金がのこっとったからな・・・。」
「あと、財布ん中5分銀しかあらへんがな、もっと家から持ってきたほうがえかったかな?」
「ま、見物料っちゅうことで4分銀やな、一人一分銀ゆうことで・・・、さむっ。わしも傘買わな。」
つんくも万屋に向かう。

万屋にて
「傘一本19文やな。びた一文まけへんで・・・。」とよろずや店員
「・・・・・高っ。」

 

 

つんく家を出発してから5日。
「和蘭町やでっ、もう海が見えるでぇ〜〜〜。」
「ん?オランダ町?オランダ町?」と、首をかしげる後藤。
「ののも初めて聞く町なのれす。」
「南蛮人がよくそこの町の港に物々交換しに来よんねん。」
「ふーーーん、そうなのれすか。また一つお勉強になったのれす。」
「この町とな、長崎とか、なんとかっちゅーとこしか南蛮人と交流あらへんねん。」
「あ、鎖国かぁ〜。」納得する後藤。
「さこく?なんれすか?」とのの
「海は久しぶりにみたべさ〜、魚釣るべさぁ〜。」と、海に向かってかけって行くなっち。
「今日ハ、晴レテイマスネ、充電最好調デス。」
「また、カオリが堅い喋り方に戻っちゃったよ・・・。」と後藤
「ほな、なっち追っかけて、ウチらも海行こか?」
「うん。」
「はいれす。」
「ソウデスネ、浜辺マデナラ。」
4人も海に向かった。

「海だべさ、海だべさ、蝦夷の海は荒々しかったべさぁ〜。」
「ん〜〜、ホンマの海っちゅ〜〜んはこないなもんなんやな。」
「そうれすね。何か生臭い匂いがするのれす。」
「それは潮の香りだよ、ののちゃん。」
「そうなんれすか、ごまちゃん。のの、また一つおりこうになったのれす。」
「ナンデショウ?アレハ・・・・。」
と、カオリが沖の方を指差す。
「なんや、海のごみかなんかみたいやけど・・・。」
「カオリ、望遠システムは付いてないの?」と、後藤
「ツイテマス、ワスレテイマシタ。望遠装置作動、目標確認、ズーム1200%」
「何が見えるんだべか?」
「・・・・、ドウヤラ舟ノヨウデス。4人程度乗ッテイマス。」
「なんや、ふねか。カオリ、海っちゅーんは舟があって当たり前なんやで。」
「そうなんれすか?またのの、おりこうになったのれす。」
「ののちゃん、お馬鹿すぎやで。」
「どうでもいいべさそんなこと。でもなんかあの舟近づいているみたいだべさ。」

舟の姿がどんどん大きくなってきた、するとやがて人影が確認できるようになってくる。
「なんや?出会ったころのごまちゃんみたいな格好しとるで。」
「そんなぁ〜、あんな格好してないよぉ〜。もしかしたら外人さんかも。」
「がいじんさんってなんのことれすか?」
「ん〜、海の外から来る人のこと。」
「何や、南蛮人のことかいな。・・・って南蛮人があの舟で今向かって来てんかい!?」
「なんだべさ。南蛮人があの舟で来てるんべか、南蛮人は小さい舟でああやって来るんだべか?」
「ちょぉ、かくれて見ーへん?何されるかわからんし。」
「何かされてしまうんれすかのの達。いやれす、こわいれす!!」
「せやから、隠れるんやん。」
5人は岩の間に隠れ様子を見る。

舟が着岸
「モウ最悪!!ダニエルノセイデ船ガ沈没シタンダカラネ!!」
「what!?you say English!!」
「アヤカ、ソンナニ怒ラナイノ。danielle be cool.」
「I wanna go home. oh my got!! why?why?why?」
「私ガ何故ッテ言イタイヨォ〜レファー・・・。タダ貿易ヲシニjapanニ来タダケナノニ・・・。」
「幸イ、オランダtownハ近イラシイケド・・・。ドッチ行ケバイイノカナ?ミカワカル?」
「ワカラナイ・・・。ワカラナイヨォ・・・。」
「oh,my got!! it is over!!over!over!over!we will dead!!」
「オチツイテ、ダニエル。ヒトマズ人ヲ見ツケヨウ。」
「人ッテjapaneseデショウ?yellow monkey ニ助テナンテイエナイヨ。」
「アヤカ、コノ際proudハ捨テマショウ。japanese使エルノハ、ワタシトアヤカダケナンダカラ。」

「どうやら女の子の南蛮渡来の人みたいれすねぇ〜。」
「なんやぁ、あのしゃくれとデブ喧嘩しとるみたいやなぁ〜。」
「害もなさそうだべさ。」
「ココナッツ娘。だよ。まちがいないって!!」
と言って、後藤は南蛮人4人のところへ向かってしまう・・・。
「またごまちゃんのソックリさん勘違いやで、ウチらもいこか?」
「のの、ごまちゃんほっとけないのれす!!」
「コノ時代ニ、2001年訪問者ハ後藤サンノミナノデス。」
「何れ、分かるのれすか?」
「統計的ナデータ処理デ、10年ニ、一度ノ割合デ、人ハタイムスリップシマス。」
「とうけいてき?でーたしょり?たいみゅしゅりっぴゅ?な、なんれすか?」
「ソノ時代時代ニオイテ何人行方不明ニナッタカノデータヲ収集シ分析シマス、スルト、
後藤サンノミガ、コノ時代ニナル計算ガデマス。」
「のの、お馬鹿さんらから、カオリさんの言ってる事が分からないのれす・・。」
「ツマリデスネ・・・」
「もうええやん、ごまちゃん追いかけな。」
「そうれす、ごまちゃんをほっとけないのれす。」
ののたちも、後藤を追っていく。

「ダニエル!ミカ!レファー!アヤカ!あなたたちもっ、この時代に迷い込んだんだね!?」

驚いた表情をする南蛮人4人。
「何故私タチノ名ヲ知ッテイルノデス?」とアヤカ。
「ハジメマシテ、japanノ方デスネ?」とミカ

「そんな・・・、また、後藤の人違い?」その場にへたり込む後藤。

「またかんちがいやったんか?」とかごや
「うん・・・・。でも、この時代の人たちはひどいよ。こんなに知り合いに似た人が多いなんて・・・。」

「ワタシタチ、何カシマシタカ?」とミカ
「いいのれす、気にすることはないのれす。」
「南蛮さんだべさ。でも、よく言葉喋れるべさ。」
「私ハ、japaneseトオランダノハーフデス。」
「ハーフ?ってなんれすか?」
「ココノ国トオランダノ国ノ人トノ間ニデキタ子供ノ事デスヨ。」とカオリ
「トコロデ、私タチノ話ヲ少シ、聞イテモラエマセンカァ?」とミカ
顔を見合わせる日本人とアンドロイド・・・。
「なんやねん?お金の話以外やったらきいたるわ。」
「ヨカッタ。ワタシタチハjapanニ来ル途中ニ、遭難シテシマッタノデス。
ヨカッタラ、オランダ町ヘノ行キ方教エテクレマセンカ?」と、アヤカ
「のの達もそこに行くのれす・・・、一緒に行きましょうっ。」
「ののちゃん、なんか、人当たりよさそうやな・・・。絶対敵つくらんやろな、一生・・・。」
「アリガトウゴザイマス。オランダ町ニツイタラ、オ礼ヲサテテモライマス。」とミカ。

外人4人はその海岸に舟を捨て、のの達と一緒にオランダ町へ向かう・・・。
「後藤、もう、この時代の人に期待するのやめよう・・・。みんなソックリさんだもんね・・・。」凹。

「ほら見えたで〜〜、アレがオランダ町や。」と指差すかごや。
「町は大きいのれす!!いっぱい家があるのれす!!」とかけって行くのの。
「なっちもおなかへったべさぁ〜〜!!」とののの後を追いかけていくなっち。
カオリと外人4人はコミュニケーションをとっている。
「どうしたん、ごまちゃん?」
「ん?なんでもないよ。平気だから・・・・。」
「大丈夫か?なんて言ってへんのに「平気だから」は、ないやろ・・・。不安なんか?」
「・・・・・・・。うん。本当に後藤は帰れるのかな・・・・。」
「カオリが言った事を信じるしかあらへん。それにウチらだっておるやん?淋しい時は
ウチらが励ましたるし、そばにいるでっ。」にかっと笑う。
「ありがとう、あいぼんっ。ひ、ひぐ、ひぐっ。」かごやに泣きながら抱きつく後藤。
「ごまちゃん・・・。ウチ、あいぼんちゃうでっ。まぁ、ええけど・・・。」と頭をなでる・・。
外人4人と、カオリに先に行ってもらい、その場で慰めるかごや。

ののたちと外人4人は、オランダ町についた・・・。

「アリガトウゴザイマシタ。何カ、困ッタ事ガアッタラ、コノ町ニイルノデ、何デモイッテクダサイ。」
「もうお別れなのれすか・・・、ひぐっ。ひぐっ。さみじぃれずぅ〜〜。ひぐっ、えっ、えぐっ。」
「短イ間アリガトウ。ノノチャン、ジャンケンピョンノ歌教エテクレテアリガトウ・・・。」とミカ。
「なっち、おなかいっぱいに食べたいべさ、ミカさん。」
「スクナイケド、コレデナンカタベテクダサイ。」とアヤカから20文もらった。
「ありがとうだべさ、ありがとうだべさ。ののちゃん食べにいくべっ。」と、腕を引っ張るなっち
「のの、まだここにいるのれす。えぐっ、ひっく、ひっく。」
「あそ、じゃぁ、なっちは、このお金でなんか食べてくるべさぁ〜。」と、町中に去るなっち。
「アッサリシテマスネ・・・。」とカオリ
「ツメタイダケネ」とアヤカ。

そこに、後藤とかごやがやってくる。
「かごちゃ〜〜んっ!!うわ"〜〜〜ん!!」とかごやを認識するなり抱きつくのの。
「どないしてん?ののちゃん。」
「ここで、えっ、お、お別れれすって、ひぐっ、ひぐっ。」
「それはしょうがないんやで。ここまでのお付き合いなんやから。」
「でも、でも、せっかくおともだちになったのれすぅ〜〜〜っっ!!うわ"〜ん。」
「よし、よし。ウチを守ってくれる剣士さんが来ないに泣き虫でどないするのっ?」
「ひっく、そうれした、最近ののは泣き虫なのれすっ。がんばるのれす。」
「ののちゃん。泣かないようにがんばろうね、後藤もがんばるから。」
「はいれす。ひっく、ひっく。ぐすっ。」

3人とアンドロイドは外人4人と別れた・・・。

「ところで、なっちはどこいってん?」

「うまいべさっ、うまいでさっ、うまいべさぁ〜〜!!おかわりっ!!」
「おきゃくさーん、堪忍やでぇ〜、一刻中にうどん15杯以上食うたらただゆうたけど、
もう20杯目やで。こっちが商売あがったりやがな・・・。」
「まだ、一刻過ぎてないべさっ。もっともってくるべさぁ〜〜!!。」
「とほほ・・・(泣)。うどんもう一丁・・・。」
「この薄味風味がたまらないんだべさ。帰りになんか20文で買って帰るべさ。」

 

 

「まだ姫は見つからんのか〜!!」
「申し訳ございませんっ・・・。」
「うぬぬぬ・・・、婚式の儀は近いというのに・・・・・。さがせ!!もっと広く探すのじゃ!!」
「「「「「はっ。」」」」」と、再び外へでる月の民の部下

「毎晩毎晩、家に来て朝方まで居座るのやめて欲しいんですけど・・・。」と中澤
「あなたが姫の行方を吐けばよろしいのである!!さすればここには二度と来ぬ。」
「あほくさ、ウチもう寝るわっ。」
「うぬぬぬ・・・、姫は何処におられるのか・・・。そもそも、何故このような家に・・・。
姫が哀れでならぬ。しかも、こんなあばずれ女に舐められ・・・。」
その刹那。中澤は何処からか包丁を持ち出し、月の民の後ろへ回り、のど元に当てる。
「誰が、あばずれ女で、フケババアで、胸なしやねん!!ホンマ殺るどゴラァ!!」
「そ、そこまでは言ってないです。す、すいません、調子に乗りすぎました・・。」ガタガタブルブル。
「次ぎ、なんかゆうたら、干物にしたるぞ!!ウチはもう寝る!!はよ出て行け!!」
「は、はい・・・。失礼します・・・。」ガタガタガタ・・・。
月の民は中澤家から恐怖に耐え切れず出た。
(あの機敏な動き・・・、ただものでなかったか・・、あの女・・。怖かったなぁ・・・。)

「かごやぁ・・・、ののぉ〜〜・・・、つんくさ〜〜ん・・・。メッチャ辛いでぇ・・・。ぐすっ。」

 

一方のの達は・・・。
「安宿あってよかったのれすっ。でも、布団がなんか湿ってるのれす。」
「それはしょうがないべさ。安いからだべさ・・・。ののちゃんも食うベか?」
「なんれすか。それは・・・?」と、タコの足をもらうのの。
「タコだべさぁ〜〜、タコの丸焼き。うどん食べたついでに買ってきたべさぁ、うまいべさぁ〜〜。」
「タコはね、海で取れるんだよ。ののちゃん。」と後藤
「そうなのれすか・・・、のの、またおりこうになったのれす。てへてへ。」
「ここまで来たら後もう少しやで・・・。あと8日くらいでなんとか・・・。」と地図を見るかごや。
「たこさんおいしいのれすっ!!たこさんおいしいのれす!!タコさん何処で捕まえるのれすか?」
「釣るんだべさ。」
「釣りれすか?のの、ザリガニさん取った事があるのれすっ。」
「じゃぁ、明日、海で釣りするべさ〜〜!!」
「はいれすっ。楽しみなのれすっ!!」
「明日ハ、晴レテルヨ。絶好ノ釣リビヨリ。」と省電力モードのカオリ
「じゃぁ、決定なのれす。大決定なのれす!!ふぁいなろあんしゃぁー(ファイナルアンサー)れす。」
「たくさん、お魚さんは取れるれすか?カオリさん。」
「データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ・・・。」
終いには煙が立つカオリ・・。

「ゴメンれす、かおりさんゴメンれす。そんなに気、気にしないれくらさい・・。」
「データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ、データナシ・・・。」
「うわ”〜〜ん!かごちゃーん!!カオリさんがカオリさんが壊れてしまったのれすぅ〜〜!!!」
「大丈夫だよ。家のテレビと一緒で叩けば・・。」
後藤はカオリの頭を殴った。
「システムビジーデス、システムビジーデス、システムビジーデス、システムビジーデス、システムビジーデス、システムビジーデス、システムビジーデス、システムビジーデス。」
「もっとこわれちゃったのれすぅ!!ひっく、ひくっ。カオリサーんしっかりしてくらさ〜い、うわ”〜ん。」
「おっかしいなぁ〜。」
カオリの頭をもう一回殴る後藤。

「再起動シマス。」
半身起こしてたカオリが倒れた。
「うわ〜〜ん!!かおりさんが氏んでしまったれすぅ〜!!!」
すると、いきなりカオリは再び半身起こしてあたりを見回す。
自分を見ながら泣いているののに気が付くカオリ。
「ノノチャン、ドウカシタノ?」
「うわ”〜〜ん!心配したのれすぅ〜〜!!」
と、カオリに抱きつくのの。カオリはののに対し・・。
「明日ハ、晴レテルヨ。絶好ノ釣リビヨリ。」
「はいれす。ひっく、ひっくカオリさんもいっしょやりましょうっ!!」
「ほっ、治ってよかったわ、せやけどののちゃん、ウチら鬼ヶ島に・・・ま、えっか。ええとしよう。」

 

相変わらず隣の部屋で聞き耳を立てるつんく・・・。
「明日は釣りか・・・。道具買って来なあかんがな・・・。」
まるっきり、旅行気分です中澤さん・・・・。

深夜近くに一人で宿を出て来たかごや・・・。
『ほな、ウチ風呂はいってくるわ・・。』
そう言って外へでた・・・。
「ウチの選択はホンマにこれでよかったんやろか・・・。」
月を見つめるかごや・・。
この大地に降り立ってから10年間一度も母上の事を忘れた事が無い・・。
(お母さん・・・、優しかったなぁ〜、おかあさん・・・。親に反抗するウチの事、どう思ってんやろ。)
「きっと不良娘やとおもっとるやろな・・。」
海辺にいつしかたどり着くかごや。
海面に映り出される月はなんとも幻想的だった・・・。
その月を見つめるかごやの視界が歪んで来る・・。
「ひっく、ひぐっ、ウチやって、ウチやって・・、泣きたいねん!!ホンマはホンマは・・・。」

(どうしたらええか分からなくなって、ねーさんの家出たんや。)
いつもは強いそぶりを見せるかごや、しかしその内面はやはり13歳の女の子だった・・。
(ののや、ねーさん、つんくさんのことは大好きや・・・。ホンマに感謝してる・・・離れたない。
せやけど・・・、ウチは月の王家の娘・・。月に居るお母さんやお父さんに会いたい・・・。)
既に実父実母についての記憶はぬくもりのみになってしまっていた。十年間がそうさせたのだろう。
(鬼退治が終わったらどうなるんやろ・・・?ウチは月のモンに捕まえられ、月に帰る・・・・。そしたら
親には会えるが、のの達に一生会うことが出来ない・・・。そんなの嫌だ・・・。ののは、ののは、
ウチにとって、ウチにとって・・。)
再び視界のゆがみはひどくなる。
「ひぐっ、え、えっ。ぐすっ、ぐずず、ひぐっ。」

「かごちゃん!!」

呼ばれたほうを振り向くとそこにはののが居た・・・。

「かごちゃんがお風呂行った後、ののがすぐ行ったらかごちゃんが居なくて、探したのれす!!」

「なんや、ぐすっ、心配性やなぁ〜・・。」
涙を見られないように背を向けるかごや。
一生懸命袖で涙をぬぐうかごや。

「かごちゃん・・・。」
と後ろからののに抱きしめられる・・。

「のの、何気なく気が付いてたのれす。もしかしたらかごちゃんは本当のお父さんお母さんに会い
たいんじゃないかって・・・。ののはののの本当のお父さん、お母さんの事はわからないのれす。
だけど、かごちゃんにはお父さんお母さんの思い出があるのれす。さいきん、かごちゃん、元気ないなって思ってたのれす、悩んでるんだったらののに話して欲しかったのれす。それにののは
かごちゃんの決めた事には賛成するのれす。それが・・・。」

「妹としての私の役目だと思うから・・・。」

再びかごやの涙腺が緩んだ・・・。
「ひっく、ご、ごめんなぁ〜、いつからかウチはののの事頼りないと思っててん。せやからウチがしっかりせなアカンて意地張ってがんばっとったんや。ひっぐ、せやけど、ホンマに強いんはあんたなんやな・・・。ゴメンな、のの、堪忍やで・・・。」

振り返り、ののの胸で号泣するかごや。

散々に泣いたあと・・。
「まだ、夜は寒いれすよ、かごちゃん。一緒にお風呂入ろ?」
「せ、せやな。からだ、冷えて、もうたわ。」
にかっと笑いあうののとかごや。

(だいすきだよ、のの・・。)
(かごちゃん・・だいすき・・。)
二人は手をつないで宿屋に帰った・・・。

冷え切った体を湯船で温めるかごやとのの
かごやは風呂場から見える月を見ていた・・。
「ウチなぁ〜、ホンマは大地に降り立ったときなぁ、早よぉ10年たたへんかなって思っててん。」
黙って聞くのの。
「ウチはきっと、ホンマのお父さんとお母さんが好きやったんやろなって思うねん。」
「ゆっくり決めればいいのれす・・・、かごちゃんの未来はかごちゃんが決めるのれす。」
「せやな・・・。」
「ののはもし、かごちゃんが月に帰っても寂しいれすけど・・・、かごちゃんが幸せになれる
ならと思って我慢できるのれす。」
「でもな、月に帰りたいって気持ちもあるけど・・・、ウチはののや、つんくさん、ねーさんと
生きていきたいともおもっとんねん・・。」
「月に帰ったら、お嫁さんにかごちゃんは行くんれすよね・・?」
「せやな。相手は、同じ月のもう一つの王家の息子さんや・・、政略結婚やねんけどな。」
「そうなのれすか・・・。」

「もう、生まれたときからウチの運命は決められとった・・・、3歳で大地に降り立ち、
月の王家の習わしで10年大地で過ごし、10年後に月へ帰り、そして結婚・・。」
「ウチは、決められた運命には従いたくなかったんや。ウチの人生はウチで決める・・。
でも、だんだん期日が迫ってきたとき月を見る度、親への気持ちがこみ上げてくんねん・・。」
「・・・・・・・・。」
「それに耐えきれなくなって、ウチは悩んどった・・。いや、今も悩んでるんやけど、ののと地元の村で
鬼退治の掲示板を見たとき、ウチはつんくさん家から出ようと思ったんや・・・。少しでも、
考える時間が欲しい、少しでも気が紛れる時間が欲しいってな。」
「かごちゃん・・。もっと、寄っていいれすか?」

ののは湯船の中を移動しかごやの隣に来る。
「もう寄ってるやん。」
「おねぇちゃん・・・。」
かごやの肩に体を任せるのの・・。
(やっぱ、ののとは離れられんな・・・、ほっとけへんもん。堪忍や、お父さん、お母さん・・・。)
改めて月を眺めるかごやだった・・・。

 

翌日すっかり、元に戻ったかごやはリーダーシップを取る。
その様子に、微笑むのの・・。
「ほな、出発しよかぁ〜。」
5人は宿を出た。
「おなかいたぁ〜い・・・。」
「どうしなのれすか?ごまちゃん?」
「後藤、今日から生理みたいでさッ・・・。」
「生理ってなんれすか?」
「月一でマ○コ(アイドルなので自粛)から血がばーって出る奴・・。」
「何や、月経かいなっ・・・。」
「それは辛いのれす・・。ののも4年前から始まったのれす・・・。のの、初めて出たとき
「氏んじゃう!氏んじゃう!」って大泣きしたのれす。」
「そんでなぁ〜、ねーさんがなぁ〜赤飯炊き出したら、ケロリとしてんねん。」
「ねーさんがお祝いしてくれたのれす。赤飯はおいしいのれすっ。でも
まだ出血して祝ってもらうのがののよくわからないのれす・・。」
「昔からあるんだね。そう言う儀式。でもね、それはののちゃんが大人の女の人になってる
証拠なんだよ。」
「のの、まだおっぱい大きくなってまへんよ?ダカラ、まだののは子供なのれす。で、おっぱいの
大きいなっちさん、かごちゃん、ごまちゃんは大人なんれすね・・。ねーさんはおっぱいが
ないれすから、まだ子供なのれすね。」

「へっくしょ〜ん!!うい〜、ばかやろぉ〜。」
「誰か噂しとんのかぁ〜・・・、あー暇や。」
特に何をするでもなく茶を中澤はすすっていた。

次第に海が見えてくる・・。
「今日は、釣りをするのれすっ。」
「なっちは魚を食べるべさぁ〜。」
「でも、竿はどうするの?釣竿。」
「ま、海で行けば釣具屋が貸し出してるやろ・・。」
5人は旅の途中で休憩を入れる意味で今日1日は海で楽しむらしい・・・。

釣具屋にて・・・。

「こんにちわぁ〜。」

「なんや?客かいな・・・、えろうべっぴんサン揃ってからに・・・。で、なんや?」
釣具のお爺さんがのそのそっと出てくる。
「おっちゃん、釣具5組を貸して欲しいねん。今日釣りやるさかいな。」
「あと、えさが必要なのれす。」
「岸釣りかいな?」
「はい、れすっ。」
「ほんなら、この竿とこの竿と・・・。」おじいさんが適当に竿を選び出す。

「竿5組と、餌やったな・・・。餌いろいろあるけど何がええねや?」
と、餌箱らしいものを持ってきてのの達に見せる・・・。
ミミズから何からどれもエグイものばかりだ・・。
のの硬直・・・。
「どれにしようかな・・・。」とごそごそっと餌をいじくる後藤。
ギョッとした顔で見るのの・・。

「ご・・・まちゃん、だ、だいじょうぶれすか?」

「ん?なにがぁ〜?」
後藤はミミズを手に握れる限界まで掴みののに近づける。
「Φε#ΘΨ?'@&%??うわ"〜〜ん!!こわいれずぅ〜〜!!!」
その場で大声で泣き出すのの・・。
どうやら、相当ミミズが怖かったようだ・・・。
そして、ののはかごやに抱きつき、かごやは優しく慰める・・。
「ののちゃん、おどろかしちゃってごめんねぇ〜。」
「ぐすっ、ぐすっ。ひ、ひっく、ひく。だ、大丈夫なのれすっ・・・、のの強くなるのれす。」

そして、5人は気を取り直して釣具屋を出て、岸に向かった。釣りをするために。

岸は釣り客でいっぱい。メディア、エンターテイメントが発達していない時代。
釣りは海辺の人々の趣味であった。

「何や、ぎょうさん人がおるやん。」
「あ、あそこがあいてるよ。」
10メーターほどのスペースを指差す後藤。
「あそこならええかもな。」
5人はそこに座った。
もちろん、ののは針にミミズを後藤につけてもらい、各々海に釣り糸をたらす。

そこに食べ物の行商人が現れた・・。
人々がつりに没頭しているところに、食べ物を売りに来たのだ・・・。
ドームの野球観戦中、ビールを売り歩くおねぇさんのようなもの。
綺麗な女の子だった・・。

「ヨッスィ〜のゆで卵とベーグルいらんかねぇ〜。オランダ風ベーグルだよぉ〜・・・・。」

後藤はその声と、言葉にすぐその女の子を見た。
(よっすぃ〜だ・・・。でも・・・、またそっくりさんだろうな・・・。)
ようやく、事態を受け止められるようになってきたらしい・・。

その女の子は売れ行きが悪いのかうろうろ5人の後ろを行ったりきたり。

「無視かい!!あーそうですねっ、こんなちょい役に出してくれてありがとうございました!!」
逆ギレ。
女の子はふてくされながら去っていった・・・。

「なんやねん、あのねーちゃん。わけのわからん捨てセリフ吐きおって・・。」
「なんか、のの達に恨みでもあるんれすかねぇ〜・・・。」
「2121年デモ人ノ心ノ完全解析ハ出来テイマセン。」
(よっすぃ〜のソックリさん・・・、バイバイ・・・。)
「魚、引っかかるべさぁ〜〜!!何やってるべさぁ〜〜!!早く引っかかるべさぁ〜!!」
ここには、魚類に逆キレする人がいました・・・。

「おっ!!かかったべさぁ〜〜!!おおきいべさぁ〜〜。」
と、座っていたなっちが突然立ち上がった・・・。
しなる竿、一人では釣り上げられない様子。
「おもいべさぁ〜〜。」
今にも折れそうな竿。
「ののも協力するのれす!!」
4人はなっちを手伝った。
「きっとデカイべさ!!鮭だべか?絶対釣り上げて食べるべさ〜!!」

そこに釣り上げられたのは・・。

「「「「「?????」」」」」

     人

鎧を着た人が釣り上げられたのだ。
口にはなっちの餌を食ったと思われる魚をくわえている。
そのまま、釣られて岸に降り立つ鎧の人。
初の言葉は・・・。
「なんやねん!ウチの狙った魚横取りしおってからに!!」
なっちが反撃。
「何いってるべさ!!魚はなっちのもんだべさ!!針咥えてるべさ!!」
「ウチはなぁ!!鎧を着込んで、自分の体を重くして巣潜りしてんねん!!
岸でちんらたら針下げとんのとちゃうわ!アホッ!!」

「みッちゃん?平家のみッちゃんでしょ?」
「何ゆうとんねん!!確かにウチは平家の子孫やがな、せやけどそないな
名前ついとらへんわ、アホッ!!」
(また、人違いか・・・。)
「落ち武者かいな・・・。」とかごや
「うっ!!誰や!!今、ウチに落ち武者ゆうたんは!!自分か!!」
落ち武者はかごやに掴みかかる。
「わかっとるんなら、聞くなやアホっ!!いて込ますぞ落ち武者!!」
「なんやと!!喧嘩うっとんのか自分!!血ぃ見さすで、ハゲ。」
「落ち武者れす・・。」
「落ち武者だね・・・。」
「落ち武者だべさ・・・。」
「オチムシャ・・・。」
「落ち武者、子供相手におとなげないで・・・。」
「落ち武者落ち武者ゆーなぁ!!先祖が勝手に戦で負けたんやー!!ウチには何にも関係あらへんがなぁー!!そのおかげでこないな、魚とりで生活立てるハメになるんやぁー!!」
彼女は発狂しながら走り去った・・・。

「いっちゃったべさ・・・。」
「かごちゃん、強いのれす。口げんか強いのれすっ。」
「まぁな、ねーさん直伝の奥義の一つ「平家イジメ」やで・・・。」
「デモ、チョットヤリスギタ気ガシマス・・・。」

しばらくすると、落ち武者がとぼとぼ戻ってくるではないか・・・。
「あんなぁ〜、そのウチが咥えてた魚くれへんかなぁ〜・・・、ウチもう3日間何も食べてへんねや。」
「これはなっちが釣った魚だべさぁ〜、いやだっち。」
「頼む、お願いしますっ。一生のお願い。」と土下座までしてくる。
態度の急変に皆が驚いた・・・、魚一匹にこんな事が出来る人がいるものだろうか・・・。
「なっち、くれてやったらええがな、その代わり・・・。」
ニヤッとするかごや。
「ホンマですかぁ〜、くれるんやったらなんでもしますぅ〜。」
「なっち、この場面見たことがどこかであるべさ・・・。」
あんただよ。
「鬼退治しに行かへん?あんた、剣術多少できるんやろ?」
「はいっ?」
「だから、鬼退治・・・。付いて来たら、幕府からの報奨金1両わけたるがな。」
「ほんまですか?やります、やります、やります、やらせてください!!」

落ち武者(平家)が仲間になった。

 

「いやぁ、ホンマ、ええ人たちに釣り上げられてウチ幸せもんやでぇ〜。」
態度を一変して落ち武者は一行に取り入られようとしている。
「ほんで、落ち武者は剣術多少できるんか?」
「それなりにですけど・・・ね。だてに刀ぶら下げとんのとちゃいますわ、ねぇさん。」
「なっちとごまちゃんとかごちゃんは何も武器持ってないべさ・・・。」
「ウチはええねん。ねぇさん秘伝の「女の武器」持ってるさかいな。」
「じゃぁ、なっちとごまちゃんに武器を買ってあげるのれす。」
「せやな、あと数日で鬼ヶ島にいける予定やしな。」
岸で、竿をたらしながら、話している6人。

「おーーーい!そこの女の子達ぃ〜。」

「なんや?なんかウチらの事呼ばれた気がするでぇ〜・・。」
あたりを見回すかごやと他4人。
「誰もいないみたいだよ。気のせいだって・・・。」と、後藤

「きいてんのかぁー!!発情期の雌犬どもぉ〜!!」

「なんか、メッチャ馬鹿にされてますやん、ウチら・・・。」
「口の悪い人れすねぇ〜!何処にいるのれす!!隠れてないで出て来るのれす!!」
「海ノ方カラ聞コエテキマス・・・。」

「逃げも隠れもしてねぇよ!!ここだ!馬鹿女どもー!」

カオリの言うとおりに5人は岸から海のほうを見る。
すると、小さい亀が泳いでいるのが見える・・。
この亀にはさらに小さい人が乗っているではないか・・。

「「「「「人ぉ〜〜〜〜!???」」」」」

「おっ、やっと気が付いてくれたかな?オレ、一寸ヤグチっ!!」
のんきに手を振ってくる。

「何や、アホ!!!人の事馬鹿にしくさってからに!!いてまえ!」
「そうれす、悔い改めるれす!!」
6人は岸からヤグチを狙って投石を始める。

「うわっ!!やめろ!!アブねぇって!!聞いてんのか、おい!やめろゴラァ!!」
ののが投げ放った石がヤグチに直撃・・。
「いだっ!!」

                   沈

残された亀はどこかへ泳いでいってしまった・・・。
「ふう!落ちたな、自業自得やで、ホンマ。」
「なんかキッショイいきもんでしたねぇ・・・。」と落ち武者
「ののを怒らせると怖いのれす・・・。」
「何がしたかったのかなぁ・・・・?」
「わかんないべさ・・・。知らないほうが幸せって事もあるべさ。」
「せやなっ、せやせや、魚一匹しか取れへんかったけど、気分も晴れたしな。」

一方別の岸で釣りをしているつんく・・・。
「ワハハ、やたら釣れるでぇ〜ここ、もう笑いがとまらんわっ。」
大漁らしい・・・。

 

「ん〜、もう帰ろかぁ〜、結局一匹しかかからんし・・・。」
「ののももうあきらめたのれす・・・。」
6人は帰る準備をし、釣具屋に向かう。
その途中・・・。

「のーろま、のーろま!!亀のアホォ〜。」
どうやら子供たちが一匹の大きなウミガメをいじめている・・。
突付いたり蹴ったり・・・、やり放題。

「あ、あの子達亀をいじめてるのれす。ののは許せないのれす!!」
子供たちのほうへ走っていくのの・・。
「正義感だけは強いね、ののちゃん。」
「ホンマやね。やたら命だけは昔から大事にするコやで・・・。」
「ほな、ウチらも行きましょうや。」と落ち武者
「弱いものいじめはよくないべさっ。」
5人はののを追って子供たちのもとへ・・・。

「こらぁ〜、弱いものいじめはいけないのれす!!今すぐ止めるのれす!!」
「なんやねん〜自分!!」鼻垂れ小僧1
「やんのかよ!ゴラァ!!」と大きな棒を構える鼻垂れ小僧達。
「その気なら、ののも容赦しないのれす!!」
ののは脇差を抜いて構える。
「錆びになりたいのはどいつれすか!?それとも全員れすか!?」
その動作にビビった子供たちは・・。
「「「うわぁ〜に、にげろぉ〜!!」」」
鼻垂れ小僧3人は一目散に逃げ出した・・。

「だいじょうぶれすか?亀さん・・・。」
脇差をさやに戻し亀をなでるのの。
そこに到着する5人
「ののちゃんすごいべさぁ〜!!」
「なんや、のの強ぉなったなぁ、なんやか嬉しいでぇ〜ウチ。」
「すごいね、ののちゃん、やる時はやるんだね。」
「てへてへ、照れるのれす。」
恥ずかしそうに、ののの活躍をほめられ照れる。

「亀ガ泣イテイマスヨ・・・。」
「きっと、ののちゃんが守ってくれて嬉しかったんやろな・・・。」と落ち武者
「のの、そんなにえらい事してないれす。」
と再び亀をなでるのの・・。
何かを訴えかけるかのように全員の顔を見わたす亀・・・。
「乗って欲しいのれすか?」
「ののちゃん、何を言ってるべさ。」
「亀さんがそう言ってる気がするのれす・・・。」

「あ"−−−−−−−!!!」

「何や、ごまちゃん、いきなり叫んでからに・・・。」
「あ〜〜〜、そーね、そうかもね。」
「もったいぶってないで早く教えるべさ。」
「浦島太郎だよっ。」
「"うらしまたろう"ってなんれすか?」
「あのね・・・。」

『昔々、あるところにね。浦島太郎って言う人がいてね、ある日海に釣りに来たらね。いじめっ子に亀がいじめられていたんだって。その亀を助けたら、その亀が御礼に「竜宮城」に連れて行くって言うんだって。でね。その人は亀に乗って海のそこへ行って、竜宮城で厚くもてなされたって話・・・。』

「その先は忘れちゃった・・・。」

「乗れって言ってるのれすか?亀さん?」
すると、ウミガメは分かっているかのように首を縦に振る。
「ウチも乗ってってええか?」とかごや。
亀は再び首を縦に振る。
「もしかしたら、話の続き思い出すかもしれないから後藤も乗っていい?」
亀は後藤を見て首を縦に振る。
「ワタシハアンドロイドデス、ココデ帰リヲ待チマス。」
「なっちもつれてくべさぁ〜。おいしいもの食べられるべさぁ〜。」
亀はなっちを見ると首を・・・・横に振った。
「なんでだべさぁ〜〜〜〜!???」

「ほな、ウチつれてってーな。」と落ち武者
亀は落ち武者を見ると首を・・・・横に振った。
「あ"あ"!?なめとんのかゴラァ!?このクソ亀!!」
「人物見てきっと決めたんやな・・・。」
それ以上いわない毒舌かごや。
「なら、なっちも人で判断されたべか?」
「なっちは・・・・・。ま、気にせん方がええで。」
3人は亀に乗った・・・。そして、亀は海に・・。

「「「いってきまーす。」」」と亀に乗って手を振る3人

「はぁ〜・・・、行ってしまったべさ・・・。」
見えなくなって一言漏らすなっち。
「はよぉ〜帰ってくるんやろな・・・。」
「おなかへったべさぁ〜・・・。」
「せやな、しっかし魚一匹しかあらへんし・・・。あんた金は?」
「なっちは持ってないべさ。管理してるのはかごちゃんだべさ。」
「はぁ〜、かねおいてけー!!あほー!!」
海に投石する落ち武者。
「なっちは、竿があるから釣りを続けるべさ・・・。」

「なんや、また遭うたなぁ〜。」
なっちたちの元につんくが現れる・・。
手には籠いっぱいの魚を持って・・。
「先日ハアリガトウゴザイマシタ。」
「おっ、ねぇちゃん覚えとってくれたんか?」
「ハイ・・・。」
「自分ら、何しとるんや?こないなところで・・。」
「ワタシタチハ、亀ニ乗ッテ遊ビニ行ッテシマッタ友達ヲ待ッテイマス。」
「さよか〜。」
ふと、つんくの籠をじーっと見ているなっちと落ち武者に気が付くつんく。
「なんや?よぉ釣れとるやろ?欲しいんか?」
「そ、そないなことあるわけ無いやん・・、なめんといて、ウチ一応、いいところの娘・・・・・」

「欲しいべさ・・。」
「正直が一番やで。ほんなら全部やるわ。」
「ありがとうべさぁ〜!!!」
「おおきに・・・。」
2人は頭を下げ、釣られてカオリも頭を下げた・・。
「ほな、おっちゃんもう行くわ、ほな、さいなら・・。」
3人の元を去るつんく。

「やったべさぁ〜!!夕飯にありつけたべさぁ〜!!」
抱き合って喜ぶ二人。
すでに夕方になっていた・・。

 

亀に乗って海の中を進む3人・・。
「こんな事ホンマにあるんやな・・・。」
「不思議れす。水の中で息が出来るのれす。」
「浦島太郎の続きってどんなんだったっけ・・・。思い出せない・・・。」
「ま、少し楽しんだら、すぐ帰ればええやん。」
「うん。そうだね。」

次第に・・海底が見えてくる・・・。
うっすら、建物が見えてきた・・。
「おおっ!!本物の竜宮城だぁ〜、おっきぃ〜!!!」
「でかっ!!ホンマにでかっ!!」
「すごいのれす、すごいのれす。」

竜宮城到着・・。

竜宮城の扉を3人は押し開いた。
空気がある。どうやら、ここは、陸と同じのようだ・・・。
そこには・・・。

「ホイっ、今日は2組目のお客様ですねっ。チャーミー乙姫ですっ!!いらっしゃいっ!!」
「肌黒っ。」
「えっ!?なんのことなんですかぁ〜・・。私肌黒いですかぁ〜?そうなの?」
と、ウミガメ亀達に問うチャーミー
「・・・・・」目を合わそうとしない亀1。
「・・・・・」目を合わそうとしない亀2。
「そんなぁ〜、チャーミーって色黒だったのぉ〜・・・。」
「でも、チャーミーさん、綺麗なのれす。かごちゃんも姫れすが、チャーミーサンのほうが綺麗れす。」
「ありがとうっ!チャーミー嬉しいですっ!ポジティブにがんばりまーす。」
「ああ、そうやね。確かにウチには色香なんかあらへんしねっ。」
(またソックリさんだ・・・。でも、浦島太郎の続きって・・・・???)
「今日はおもてなしをさせていただきますっ。お料理をもってきてぇ〜っ。」
タコとイカが船盛を持ってくる・・。
「すごいのれす、お魚さんがいっぱいお刺身さんなのれすっ!!」
(???竜宮城のお姫さまなのに船盛ぃ〜??いいの?仲間こんな風にして・・・?)
「さっ、たべてくださいっ。チャーミーからの亀を助けていただいたお礼ですっ。」
(現実ってこんなもんなんだねぇ〜、後藤ショックだなぁ〜・・。)
「これから鯛やヒラメの舞い踊りをみてくださいっ。ではご歓談をっ、フェ-ドアウトォ〜っ、チャオ〜」

鯛とヒラメがチャーミー姫によって会食中ののの達の前に放り投げられる。
空気があるこの空間で鯛やヒラメは床の上をビタビタ跳ね飛んでいるだけの舞い踊り・・・。
「・・・・・・苦しんでるんちゃうの?」
「なんか、ご飯がまずく感じるのれす。」
(げんじつって・・・げんじつって・・・・。)
しばらくすると、鯛とひらめは跳ね飛ぶのをやめて口をパクパクするだけになった。
「・・・・・・・・・・・・・・なんやねん?」
完全に鯛とヒラメは動かなくなった。
それを見計らって。チャーミーがまた現れ鯛とひらめを拾い竜宮城から外に放り投げる。
「楽しんでもらえましたかぁ〜?鯛やヒラメさんたちの命がけの舞い踊りっ。」
「「「はぁ・・・・。」」」
そうとしかいえない3人。
船盛の箸も止まる・・・。
「お口に合いませんでしたかぁ〜?なら別の魚を用意させていただきますっ。」
「いや、い、いいのれすっ。の、のの達、そ、そんなにおなか減ってないのれすっ。ね、かごちゃん。」
「ま、そやなっ・・・ハハっ、ハハハハ・・・。」
「そうですかぁ〜、チャーミーチョット残念です・・・。」
(がっくりこられてもねぇ〜・・・食べる気起きないよ・・・。)

 

浜辺にて
「帰ってこないべさぁ〜・・・。」
「何遊んどんねん奴ら・・。」
「モシカシタラ何カアッタノカモシレナイヨ。」
すでに、夜を迎えていた・・・。
「だいじょうぶだべさ。なんかあったらごまちゃん妖術使うべさ・・・。」
「おしっ、魚内臓も取ったし、串に刺したし、塩水で洗ったし、あと火やな・・。」
「ここらへんに枯れ草はあるんだべか?無いと熾せないべさ・・。」
「せやなぁ〜、昨日雨ふっとったからなぁ〜しけてるかもしれへんで・・・。」
と、枯れ草、枯れ枝を集めてくる落ち武者。
「火ナラアルヨ。」
カオリの腕がもげ重火器のようなものが覗く・・・。
その刹那、勢いよく火炎が吐き出されあっという間に火が付く・・。
「!!!!!」腰を抜かす落ち武者。
「すごいべさぁ〜、やっぱカオリはみらいから来ただけあるべなぁ〜。」
「・・・・・・・なんやねん。ちょぉ、驚かさんといて、ホンマ心臓に悪いで、自分・・。」
再び重火器を腕にしまうカオリ。
「なんや、ねぇちゃん妖怪かなんかか!?」
「案山子だべさ。」
「どう見ても案山子には見えへんけどなぁ・・・。」
首を傾ける落ち武者。
「落ち武者も、カオリも火の近くに串魚を立てるべさ!!」
「はいはい・・。」

そして、2人は夕食に魚の塩焼きを食べた・・。

「いつ帰ってくるのやろ?」
「わかんないべさ。そのうち帰ってくるべ。」
「行ッテカラ、ダイブ経ツヨネ・・・。」
「せやなぁ〜・・・。」
ぼけーっと外を見つめる3人。
「ほな、どないしよか・・・。家くるか?」
「でもいつ帰ってくるかわからないべさ・・。」
「カオリガ見張ッテオクヨ。落チ武者トナッチハ人ダカラ寝タホウガイイヨ・・。」
「カオリさん、あんた寝ない気なん?」
「カオリは案山子だべ。いつも宿行っても寝ないべさ、一刻も。」
「ホンマかいな。自分ホンマに妖怪ちゃうんやろな!?」
「平気ダヨ、カオリ寝ナイヨウニ出来テルモン・・・。カオリ、アンドロイドダモン。」
困ったような表情をして外を焦点もあわせず喋るカオリ。
「ま、ええわ、ほな、明日またここに来るから見張っといてーな。」
「ウン、ワカッタ。」
「じゃぁ、カオリよろしくだべさ。」
と、2人はカオリに手を振り去っていった。

「サミシイナ・・・・。ホントハカオリ、淋シガリヤナンダヨ・・・・。」

棒に火をつけ松明の代わりにしながら夜道を歩く2人・・。
「落ち武者の家はどんな感じの家だべか?」
「せやな、自然味溢れる家やで・・・。」
海岸沿いを歩く2人
「家帰ったら、魚の残りを食うでぇ〜。」
「もちろんだべさ。」

「着いたで〜、ここやで家の御殿は・・・。」

      洞窟

「た、たしかにし、自然味溢れすぎだべさ・・・。」
驚き引き気味ななっち。
「せやろ、勝手にウチ住み付いてん。」
「これじゃ、野宿と一緒だべさ・・・。」
「・・・・・、ウチはホンマは上流階級の娘やってん、せやけど・・。ホンマは
こないな生活したないねん。もっとマシな生活したいねん。せやから今日、ホンマ
あんたらと出会えてよかったって思ってん。鬼退治に協力すれば1両もらえる。
安い長屋が借りられるやんか!!そしたら、こないな生活ともおさらばやねん!!」
「切実な問題だべさ・・・。なんか、落ち武者なりの考えがあるのがわかったべさ・・・。」
「分かってもらえて嬉しいわぁ、ホンマ、おおきに。」
(でも、野宿とやっぱり一緒だべさ・・・。)

 

三時間くらい何だかんだ言って竜宮城に居る3人。
ふと後藤があることに気が付く。
(なっ、なにぃ〜!!まっ、まさか!?)
「あ"−−−−−−−−−−−−−−−−−!!!!」
「な、なんやねん。ごまちゃんいきなり叫びおって・・・。」
「何か思い出したのれすか?」

後藤の腕時計の針が恐ろしいくらい速く回っている。
秒針は既に読み取れない。
「これって・・・。もしかして、ここから帰ると100年後?」
「どうゆうことやねん!?」

『浦島太郎には続きがあって、竜宮城から帰ると100年くらいあとになってるんだ。それで、自分の家はもう無かったんだ・・・。』

「なんではよ、思いださへんねん。」
「そんなこといわれたって、後藤・・思い出せなかったんだも〜ん。」
「うわ"〜〜ん!!」
パニックになって泣き出すのの・・。
「でも、それにしては時計の針の回りが遅いかも・・・。」
「ハイっ、チャーミーがお答えしまーっす。ここは外部の人間が入らないときはいつも一刻を1単位として4の指数倍でここは時間が流れていまーっす。で、ですね、外部の人間が訪れた時だけここは
時間が止まり、その逆に陸が4の指数倍するんでーっす。わかっていただけましたぁ〜?」
「わ"がら"な"い"れ"ずよ"ぉ"〜〜の"の"頭わ"る"い"れ"ずも"−−−−ん"!うわ"−−ん!!」
「チョット待って、今後藤計算するから・・・。ここには3時間くらい居るよね・・・。」
「陸時間でいう3刻位居ますよ、皆さんは。さっきのお客さんはもっと居ましたけど・・・。」
「私たちが1時間ここに居ると、陸は4時間・・、2時間で・・・16時間・・・、3時間で・・・64時間!?」
「ど、どうゆうことやねん!?」
「つまり、陸じゃもう、3日位経ってるんだよ!!は、速く帰ろう!!後、後藤か、帰れなくなっちゃう!!」

「あら、もう、おかえりなんですかぁ?じゃぁ、チャーミーがお土産をあげますっ!!」
小箱を差し出すチャーミー乙姫。
「いらない、開けるなっていうんでしょ、あけたら後藤たちおばあさんにさせられちゃうんでしょ!?」
「えっ!?そ、そんなこと・・、な、ないですよぉ〜・・。」
タジタジチャーミー。
「じゃぁ、後藤たちの目の前で開けてみてよ。」
「え!?あ、その、そうそう、こんなんじゃなくて、もっといいお土産を・・・。」
と、玉手箱を竜宮城の外に放り出すチャーミー・・・。
「図星やな・・・。」
「じゃぁ、お土産に鯛とヒラメの舞い踊りを見てってください!!」
「さっき見たやん。魚の生殺し・・・。」
「チャオー!!」
チャーミー乙姫は手を振って、奥に行ってしまった・・・。
「ほな、いそがな!!」
「うん。」
「亀さん、のの達を元の陸に返して欲しいのれす・・。」
涙いっぱいに溜めながらの懇願。
亀は首を縦に振る。

そして、陸に帰っていった・・・。

 

陸はののたちが去ってから4日目の朝を迎えていた・・・。
「もう、心配の域やで・・・、もう、4日目やぞかえって来ぃーへんの・・・。」
「まさか、氏んでしまったんだべか・・・。」
「もう、結局朝やし・・・、魚は切れとるし、ウチら飢え氏にやなぁ〜。」
「生体反応ハアリマスヨ。確認ガ出来ル範囲ニ近ヅイテ来テイマス。」
海岸に座っているカオリは嬉しそうに左右に揺れながらリズムをとっている。
「ホンマかぁ〜?どこにおんねん・・。」
海の遠くの方を眺める落ち武者・・・。
その刹那、海面からのの達が現れる。
「ほんとだべさぁ〜〜〜!!おーい、ののちゃーん!かごちゃーん、ごまちゃーん!!」
思いっきり手を振るなっち。
「あんた、ホンマに妖怪かなんかちゃうやろな。」
「ワタシハアンドロイドデス・・・。」
「ようわからんがな、なんやねん「だんでんどろでろりん」(アンドロイド)って???」

「おっ。やつら待っとってくれたらしいな。」
「カオリさんとなっちと落ち武者なのれすぅ〜〜!!わーい。」
思いっきり手を振り返すのの達・・。

着岸。

「オカエリ、ノノチャン。」
「たらいまなのれす、カオリさん。」
カオリに抱きつくのの。
「サミシカッタヨ・・・・。」
「ののも早く会いたかったれす。」
腕を組んで離さないのの。

「うちら、どのくらいあっちに居った?」
「4日目の朝やで、今。」
「さよか、ごまちゃんが帰れるにはあと・・・、あかん、絶対的に間にあわへん。」
「そんな、後藤・・・、帰れないの・・・?そんなのやだよぉ、やだ、やだやだやだ・・。」
その場に泣き崩れる後藤
「会いたいよぉ〜、えぐっ。みんなに会いたいよぉ〜、おかあさん・・・おねぇちゃん・・
ひっく、ひぐっ。ユウキぃ〜。えぐ、えっ、よっすぃ〜・・りかちゃん・・ひっく、辻ぃ〜、加護ぉ〜、
ひぐっ。圭ちゃん、圭織・・、なっち・・・・・市井ちゃん
ひぐっ、えっ、ひぐっ・・あいたい・・。会いたいよぉ〜〜〜!!」
「のの、考えがあるのれす!!絶対に未来にごまちゃんを戻すのれす!!」

 

「お願いしますれす!!ごまちゃんが、ごまちゃんが未来に帰れなくなってしまうのれすっ!!」
「ウチからも、ウチからもお願いします!!」
頭を下げるののとかごや・・。

「ワカリマシタ、アナタ達ハ恩人デス。協力シマスデス。」
「ありがとうございますれす!!」
「ホンマ、おおきに、おおきにっ、ほんまに・・ほんまに・・・。」
感謝の涙を流すかごや、のの

一行はオランダ町大使区に来ていた。
常にオランダ人が駐在する居住区だ。
「用意デキルノハ、6人乗リノ船ガ限界デス・・・。」
「それでも、かまへん、ホンマおおきに、ミカちゃん!!」

「他ノ方ハドウシタノデスカ?」とアヤカ。
「今、武器買いに行ってん。」
「ののハ、この脇差があるのれす。かごちゃんは「女の武器」があるのれすっ。
カオリは妖術があるのですっ。」
「女ノ武器?」
「ま、いろいろあんねん。」
「トコロデ、新シイ人ガ増エタヨウナ・・・。」とミカ
「あ、ウチ落ち武者!よろしくなぁ〜。」
落ち武者と認めた・・・。

そこに、買い物から戻ってくるなっちと後藤。

「ののちゃぁ〜〜ん、かごちゃ〜ん。」
手を振るなっち。

ほんの数十分離れただけなのに久しぶりだといいたそうな感じに大きく手を振るのの。

「ごまちゃん、なっち、何を買うてん?」
「これっ!!」
なっちが取り出したものは・・・。

  鍬

「なっち・・・農民一揆しにウチら鬼ヶ島行くんやないで・・。」
「何言ってるべさ!!蝦夷人は戦う時はいつもこれだべ!!」
「のの、これが戦う武器だってはじめて知ったのれす。また一つおりこうになったのれす。」
「ののちゃん、それはおりこうになったのとちゃうよ・・・。」
「で、ほな、ごまちゃんは何買うてん?」

「ご、ごまちゃん・・・、なんやねんこれ?」
「えっ!?後藤これ武器だと思ってたよ・・。だって、これを人の首に巻いて
引っ張ると人が死んじゃうんだよぉ〜。」
後藤さん・・・必殺系時代劇見すぎです・・・。
「のの、また知らなかったのれす、未来人は物知りなのれす。」
「ののちゃん・・・、知識を吸収する事はええで、せやけど必要なものだけ吸収せえよ・・。」
苦笑いのかごや。

「もうしゃぁーないな、もう時間あらへんし、もう出発せなあかんし、ほな、行くか。」
6人はミカの案内で、貸してもらえる船のある港に行った・・。

 

いよいよ、鬼ヶ島れすね・・・。
ののはこの旅にでて本当によかったのれす・・。
この旅に出て色んな事を知った、そして色んな友達に出会えたのれす。

ののと一緒で食べる事が大好きななっちさん。
なっちさんはののより大人れすが、食べ物の事になるとのの以上にガメツイのれす。
でも、大好きな友達なのれす。早くなっちさんのお父さんお母さんが見つかるといいのれす。

色んな事を教えてくれるカオリさん。
ののに、カオリさんはいろんなことを教えてくれたのれす。
寺子屋では習えないほどたくさんの事を教えてくれたのれす。
(ま、ののは寺子屋の勉強は嫌いれすが・・・。)
でも、カオリさんは鬼退治が終わったら帰ってしまうのれすね。
でも、またいつか遭えると信じているのれす・・・。

未来から神隠しでやってきたごまちゃん。
ごまちゃんもののにいろいろな事を教えてくれたのれす。
ごまちゃんも鬼退治が終われば帰ってしまうのれす。
でも、ちゃんと帰って欲しい・・・、帰って未来の友達、家族と幸せに暮らして欲しいのれす。
別れるのは淋しいれすが、ごまちゃんが居るべき世界に帰るべきだと思うのれす。
だから、ごまちゃんを送ってあげたい・・・。

出会ってから少ししか経ってない落ち武者さん。
元お金持ちとは思えないほどお金と食べ物に意地汚い人なのれす。
でも、なっちさんに聞いたのれすが、洞窟暮らしは嫌れすね。
早く普通の生活をさせてあげたいのれす・・・。

そして、のの の大好きなおねぇちゃん。
ののは今まで、かごちゃんのこと今まで何でも知ってると思ってまひた。
けど、ほんとは何も知らなかったのれす・・・。
ののはこの旅が終わる時、かごちゃんの決意を聞くのれす。
ののはかごちゃんがどんな答えを出しても賛成してあげるのれす。
ののたちの元に残るか、お月さまに帰るか・・・。
ののは、もし、お月さまに帰ることをかごちゃんが決めても賛成するのれす。
それでおねぇちゃんが幸せになれるのなら・・。

だから、ののはのんすとっぷ(ミカちゃんに教えてもらったのれす)なのれすっ!

 

「おとうさん、おかあさん・・・・。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『なっち!!』
『おねぇちゃん!』
『お父さん!!お母さん!!』
蝦夷を追われ、地獄の業火を逃げまどうなっち達一家。
生きおちついたのは、今でいう山形県あたり・・・。
『みんな生きていて良かったべさ・・』と、なっち
家族で山の山林の奥に小屋を建てた。

人目につかないこの場所は、蝦夷人たちには隠れ住むには絶好の場所だった・・・。
しかし、人目に付く事はいつかあるはずで、ある日近くの村の村人に
山林奥で蝦夷人が生活する事が知られ、そして・・・。
『なっち、どうやら本土人達にここで私たちが住んでいることが知られてしまったようだべ。』と父
『何でわかったべさ・・・。』
『私、今日川で洗濯してたら、本土人と目が合ってしまったべさ・・。』
妹の告白だった・・・。
『という事だべ、もうっここも離れなければならんべ。』と父
『それで、お父さんと相談して、家族移動していたら、いつか、また人目についてしまうん
じゃないかって思って、家族散り散りになったほうがいいという事になったべさ・・・。』と母
『でもそれって・・。』
『いつか、生きていれば再び会えるべさ!』と、姉
『おねぇちゃん!!そう信じなきゃ、私だって離れられないべさ!!』と、涙を流す妹
『再び会えることを信じて、みんなそれぞれ行くしかないべ!!』
と同じく涙する姉。

『ひぐっ、ひぐっ、んぐっ。なっちはやだよぉ〜。なっちはみんなが好きだから離れられないべさぁ〜!!』
外から、松明の火が20以上見えてくる・・・。
どうやら村の人間がやってきたようだ。
『なっち、踏みとどまっている暇は無いべさ!!もうやるしかないべ!!』と父
『いつか、再び会えることを信じて・・・。』母
「ひぐっ、んぐっ。はぁ〜っ。わ、わかったべさ・・ひぐっ。』

そして、家族5人は家の外へ出る・・。
『絶対、生きていてね・・・。』
お互いを抱きしめある家族。

『あそこだ!あそこに蝦夷人がいるぞ!!』
松明はだいぶ近づいていた・・。
『なっち、あんたはよく食べる娘だから心配だけど、がんばるべさ!!』
こくこくと、頷くなっち。

そして、家族5人は離れた・・・、再会を信じて。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「絶対に会える・・・。」
海を眺めながらそう誓うなっち。
手には石の首飾りを握り締めて・・・。

 

「絶対に帰るんだ・・・。」
(なっち、かおり、やぐっつあん、圭ちゃん、よっすぃ〜、辻・加護、お父さん、お母さん、おねぇちゃん
ユウキ・・・、そして市井ちゃん。)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「後藤、ソロおめでとう。よかったよ「愛のばかやろう」。いい曲じゃん。」
「うん、一生懸命振り付けとか、歌覚えたんだよっ。」
市井の腕に抱かれながらそんな会話をする後藤。
BGMは「愛のばかやろう」。
「さっきから、何回も繰り返して聞かないでよ・・・・。」
顔を赤らめる後藤。
「なんでだよ。いいじゃん、ここ私ん家だし・・・。」
「だったら、せめてネットで落とした奴CD−Rで焼いて聞かないでよ。CD買ってよ。」

「金欠。」と、苦笑いの市井。
むすっとする後藤。
「今だったら、後藤の写真ステッカー付いてるのに・・・。」
「それだけくれよ。鏡とかに貼っとくからさ。」
「ヤダッ!」
そんなふてくされた後藤を見透かしたような目をした市井はタバコを取る。
もちろんマルボロ。
そして、Zippoで火をつけ一服。
後藤も市井から貰い、一本取り出し火をつける。

けだるそうに市井は立ち上がり下着その他の衣服を着はじめる・・・。
「ねぇ、今度いつ会える?」
「それはこっちが聞きたいよ。後藤のほうが忙しいじゃん。」
と、再び苦笑いの市井。
「そっか、オフもらえそうだったら、またメールかTELするね。」
と、後藤も下着身に付ける。

「いつから、こんなに生活に差が出たんだろうな・・・。」
そう窓の外を見つめる市井。
後ろから市井を抱きしめる後藤。
「わかってるくせに・・・・。」
そう言い放つと、市井は振り向き・・・・。

唇を重ねた・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「絶対に帰らなきゃ、あの市井ちゃん(ひと)の元へ・・・。」

 

ホンマ、ここまで来たんやな・・・。
ウチは、この旅に出て、いろいろな事を知って、いろいろホンマ悩んだ・・・。
せやけど、ののがウチの悩みを吹き飛ばしてくれたんや・・・。
3歳の頃から一緒にいるのの。
たくさんの溢れ出しそうな思いで達・・・。
いつも、ウチがおねぇさんやったな・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「のの、ほら、立ちぃ〜。」
「ひぐっ、ひっく。ここどこれすかぁ〜、ののたち迷子になってしまったのれすぅ〜。」
当時八歳。中澤に頼まれ、山にいるつんくの元へ弁当(イカリング)を届けるように言われていた・・。
案の定、山中で迷うのの達・・。

「うわ”〜ん、ののたち、熊さんや狼さんたちに食べられちゃうのれ”ず〜〜!!」
「そないな事あらへん、大丈夫やて!!」
根拠も無くそう言った。
「おねぇちゃんが悪いんだよぉ〜!!ふっく、おねぇちゃんが、おねぇちゃんが「帰り道変えよう」
なんていう゛がら゛〜〜〜。う゛わ゛〜ん!!」
「なんやねん!!全部ウチのせいかいな!!よぉ〜けわかったっちゅーねん。好きにしぃ〜、
ウチもい、行く!!」

ののを置いてきぼりにするかごや。
遠くの方から「う゛わ゛〜ん!!」と泣き声が聞こえてくる。
(しらへん!ののなんて!!)
ずんずん、森の中を突き進むかごや。
すでに、日は山の下へ沈もうとしていた。
あたりはうっそうとし、野鳥の鳴き声もさらに多く、大きくなったように感じる。

「のの・・。」
(もしかして、怖い思いしてんちゃうやろか・・・?)
(何ゆーてんねん!ののなんかもう知らんゆーたやん!!)
進む足が止まり、後ろを振り向く・・。
急いで来た道を戻るかごや。

「あっ!!」

ドテッ

「痛つつ・・・。」
ひざを擦り剥くかごや、そんな事を気にとめようともせず再び走り

(おった、よかったぁ〜。)
相変わらず、しゃがみこんでののは泣いていた。
かごやはそっと微笑み
「かえろ?」と手を差し出す・・・。
「うんっ。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そないなこともあったなぁ・・・。

のの、ウチは、ウチは・・・・・・

 

2121年
「アンドロイドTYPE01S22-5飯田圭織モデル001よ、今回のミッションは、
江戸時代に存在したといわれる鬼のDNA採取だ。」

「了解。」

「現在の基本スペック、稼動状態を説明せよ。」

「CPU、9T(9×10の12乗)Hz。メモリ0.1Tバイト、稼動状態100%デス。」

「では、江戸時代の服を着てもらおうか。」
なにやら、えらそうな男が服を手渡す。
「了解。」
着替え出すカオリ。
「着替え完了。」

「今回のミッションは、TYPE01S22-5飯田圭織モデル001の擬似感情のテストでもある。
出来るだけ、多くの人とふれあい、感情も学べ。」

「了解。」

「人間的返事をせよ。」
「ハイ、ワカリマシタ。」
「スマイルも忘れずにな・・。」
「ハイ。」ニコッとするカオリ。

「では、タイムマシーン転送ルームに乗れ。」
「ハイ。」

シャワールーム大の空間に入るカオリ・・。

<準備は完了か?>
「ハイ、所定位置ニスタンバイシマシタ。」

<カウントダウン、10,9,8,7,6,5,4,3,2,1、GO!!>
光に包まれるカオリ。

『か・・・、かおり?かおりも神隠しに遭って来たの?』
『ワタシハ未来カラ、タイムスリップデ来タアンドロイド"飯田圭織モデル"デス。』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ソウシテ、ミンナニ出会エタ・・・。
カオリ、人ト話スノガ、コンナニ楽シイッテ思ワナカッタ・・。

コレガ

      タノシイ?

      ウレシイ?

ソノ中間。コレガ喜ビノ感情・・・。
ミッションガ終ワッタラ、2121年ニ帰ル・・・・。
コレガ

      サミシイ?

      カナシイ?

何気ナク、「ヒトノココロ」ガワカッタキガスルヨ・・・・。

アリガトウネ・・・・、ノノチャン、カゴチャン、ナッチ、ゴマチャン、落チ武者・・・。

 

「あ〜、ホンマ腹減ったわぁ〜。」
落ち武者はボケーっと海を眺めていた。
           
             落ち武者編以上。

「ちょぉ、まちい〜〜〜!!!ウチにも何か言わしてーな!!想わせてーな!!ウチに
エエカッコさせてーな!!ウチかて上流家庭からの衰退とか、お話になりそうなモンが
ぎょーさんあるっちゅーねん!!てんこもりやっちゅーねん!!」

             落ち武者編以上。

「そんな・・・、せっしょうな・・・。ぐすっ。まるでオチやん。」

ピンポーン。正解です。

 

「ガンバッテネ、ミンナ。」
「ホンマ、おおきに、ミカちゃん。」
6人はミカに別れを告げた・・・。

そして、船は出航した。
「この地図を見ると、この方向でええと思うねんけど・・・・。」
「モウ少シ、左カナ・・。」
「カオリさん、何で分かるれすか?」
「GPSノヨウナモノデス。」
「なんれすか?じーぴーえすって。」
「・・・・、トニカク、今ノ位置ガ分ワカルノ・・・。」
「そうなんれすか?さすがれすね。」
「ほな、位置確認はカオリに任すとしよう!!ウチらは必死こいて船こぎや。」
「「「「「おーっ。」」」」」
6人は息を合わせて船をこぐ・・・。
次第に周りは海となり、陸はうっすらと望むほどになっていた・・・。

その頃つんくは・・・。
一人用の舟に乗って、のの達を追いかけていた。
「3分銀も払ってもうたがな!!」
ぎーこ、ぎーこ・・・。
「あかんなぁ〜、さすがわしが男でも6:1やと追いつかへんわー。」
ぎーこ、ぎーこ・・・。
「せやけど、行き方はわかるからええねんけどな・・・。」
ぎーこ、ぎーこ・・・。
「もう、11年前になるんやな・・・。」

 

11年前。
「ここが鬼ヶ島やなぁ〜。」
当時つんくは二十歳だった・・・。
「つんく、ここには10人程度の鬼がいるらしいで・・。」とまこと
「10人で・・・1000両か、エエ話やな・・・。」とはたけ
「せやけど、なんぼの人間が鬼に殺られとるかしっとんのか、自分ら。」としゅう
「なんにんやねん。」
「そないな事も調べてへんのか、つんくぅ〜。そうやな、ざっと、100人は殺られとる。」
「なんや、案外少ないんやな・・。」
そして、船は鬼ヶ島に着岸した・・。
「ほな、やりますか?」
「ウチら、シャ乱Qを世の中に知らしめたろ!!」
5人は鬼ヶ島に上陸した・・・。

重い門を押し開く5人

開いたそこには男女10人ほどの鬼がいた。
既に、金棒を持ち構えている。
「なんや、鬼ってもっとでかいもんやともっとった・・。」
一番背の高い鬼は2mを裕に超えるが、低い鬼は180cm程度の背丈だった・・。
「おっしゃ、今日が、自分ら鬼の年貢の納め時やぁ!!」
5人は一斉に刀を抜いた。
鬼達とシャ乱Qの交戦が始まる・・。

鬼は強かった・・金棒と刀を交じり合わせると火花が散り、刃がこぼれてしまう・・。
確かに鬼は強い。しかし、剣豪と呼ばれたつんく率いる武術集団シャ乱Qはそれ以上だった・・。
1人2人と鬼を切り捨てていく。
このような修羅場をいくつも潜り抜けてきたシャ乱Q。
完全に無心で退治をしていると思えた・・。

交戦が始まり20分。
鬼の数はもはや、3人となっていた。
一番大きい鬼と、つんく。その次に大きい鬼としゅう、たいせー。鬼女とはたけ、まこと
「何故、氏を望む、人間たちよ!」
「別にのぞんどらん、ちゅーねん!!明日を信じるからこそ今を信じてんねん!!」
「下等な生き物よのぉ!!」
「俺には、若い妻がおんねや、そいつとの幸せのために今戦かっとんねん!!。」
「おろかな、金のために命を捨てる!!ほんに人間とは下等な生き物よのぉ〜〜!!」
大きな鬼は再び金棒を振り上げ、つんくの頭へ振り落とす。」
ガシーン!!

つんくもこれに反応し、刀を盾にし両手で刀を支えた。
(なんやねんこいつ、さっき切り捨てた鬼とえらい違いや!!こいつがここで一番強い奴か!!)
圧倒的に一番大きい鬼は強かった、つんく一人では手におえないほどに。
かといって、2人掛かりでしゅう・たいせー、はたけ・まこともやっとのようだ・・。
そのとき、鬼女の断末魔が叫ばれる。はたけとまことが勝負を決めたのだ。
その刹那、大きな鬼は、その断末魔に気をとられた。
(今や、今しかない!!)
その刹那的隙に、つんくはラストチャンスとばかりに金棒を交わし・・・
首をはねた。

静寂とシャ乱Qの荒い息が空間を独占する。
一番強かった鬼の死に残っていた鬼も気をとられ、それをチャンスとばかりに
しゅうとたいせーも勝負を決めた。

その刹那、奥の扉から子鬼が飛び出してくる・・・。
そして首の無い鬼のそばに寄り添い大きな泣き声を上げた・・。

「なんや、まだおったんかいな・・・。1100両やな。」とはたけ。
はたけは、その子鬼に近づき刀を抜き振り上げ、そして振り下ろす。
その刹那
つんくも刀を引き抜きはたけの刃を止めた・・。
「なんやねん、つんく!!」
「もうええやろ、はたけ・・・。十分賞金はとったっちゅーねん。」
「せやけど、こいつ生かしとったら、また何年後か暴れ出すで!!」
「かまへん!そんときは、そんときや・・・・、ゴメンなお嬢ちゃん・・、ホンマ堪忍や。」
どうやら、つんくが首を跳ねた鬼は子鬼の父親だったようだ・・。
泣き続ける子鬼を尻目に、殺した鬼たちの角を一本一本切り取っていく。
幕府に献上するのはこの鬼の角・・。
他の角とは奇異で、専門家が見れば鬼の角だと分かる。
角一本あたり100両。そのためにシャ乱Qは鬼討伐に出かけたのだった・・。

船で鬼ヶ島を出るとき、つんくは殺人を、この仕事を続ける事をやめると心に誓い、
いつまでも、鬼ヶ島が見えなくなるまで見ていた・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
せやな・・・、この機会を与えてくれたんはののとかごやなのかもしれへんな・・・・。
ぎーこ、ぎーこ、ぎーこ・・。

 

船をこいで数日経った夜、目指す鬼ヶ島は目前となっていた・・・。
体力、気力はこの船出で相当削られたが目的の場所を見つけたとたん、回復してきたようだ・・。
「あれが、鬼ヶ島・・・・。」
「いよいよ来たのれすね・・・。」
「ホンマやな・・・。」
おどろおどろしい島はのの太郎たちを歓迎しているようにも見える・・。
「今日、ゴマチャンハ後5時間後ニ鬼ヶ島ノ北位置ニ行カナケレバナリマセン・・。」
「カオリ、具体的な場所はわかるんか?」
「少々オマチクダサイ・・。データ処理ヲシマス・・・。」
カオリが困った顔をする、コレガカオリのデータ処理中の顔だ・・。
「鬼ヶ島ノ鬼ノ館ノ中デス。」
「ごまちゃんを未来に帰すには鬼を退治せなあかんわけやな・・。」
「鬼を倒すのれす!!ごまちゃんも帰れるし、のの達もお金が入ってナッチさんも、落ち武者も、
かごちゃんも幸せになれるのれす。それに鬼を退治すれば平和になるのれす!」
そして、1時間。やっと、着岸というところまできた・・・。

 

波がそれほど荒いとはいえないが、着岸を波が邪魔をする・・。
「のの、縄とってーな。」
「はいれすっ。」
かごや、中澤直伝の投げ縄。
(使用用途:いい男が現れた時に逃がさないため編み出した、本来は男に使う技である。)
かごやは岸の岩に、縄を引っ掛け外れない事を確認する。
「ほな、わたるで・・・。」
かごやが先陣を切り、おっかなびっくりの、のの。
堂々と平気にこなす後藤。
甲冑を着込んでるのに縄を使わずジャンプで船から岸に飛ぶ落ち武者。
平家さん・・・、あなた日○江戸村のスタッフですか?
「なっち怖いべさ!!」
それもそのはず。船と岸の間には2メートルくらいの幅がある。
「なっちには無理だべさ!いいかげん認めるけど、やっぱなっちはデブだべさ!!渡れないべさ!!」
岸の向こうでかごやが
「のの、例の・・。」
「はいれすっ。なっちさん、これが食べたくないれすか?」
ののの懐から鮭の干物が出てきた。

なっちはそれを見たとたん船から3回ひねり宙返りでののの目の前に降り立つ。
「くれべさ。」
手をなっちが差し出すので、びっくりしたののは素直に渡す。
「うまいべさ、うまいべさ、蝦夷を思い出すべさ・・。」
太ったケイン・コスギだな・・・、なっち。
しかし、この時点でののたちは気づくべきであった。
そう、誤算がすでに始まっていたのだ・・・。

「最後、カオリやな。」
カオリは、びくびくしていた。
擬似的であるが感情を持っているカオリ、
極端に水を嫌い、足場の悪い船から、岸に渡ろうとしている。
「カオリ、コワイヨ!!」
「大丈夫やで。ウチらがついとるから。」
「ウン!!」安心したように答えるカオリ・・・。
船の角に足をかけた時に事は起きた。
カオリは見た目以上に重かったのだ。
人間サイズにして、2121年最新コンピュータ搭載、銃器などの武器搭載、太陽発電等々で、
その姿からは想像できないほど、彼女くらいのサイズ人間の5倍の重さがあったのだ・・。
そして、船は彼女が渡りきる前に転覆した・・・。
カオリを道ずれに・・。

「「「「「!!!!!」」」」」
「カオリさん!!」
そう言って、間髪入れず海に飛び込んだのはののだった・・・。
ドボーン・・。
「のの!!あかん!!」
「ののちゃーん!!」
「ののさーん!?」

 

海中にて、暗い海をカオリを探して必死に潜るのの・・・。
(早く見つけなきゃ、早く見つけなきゃ、カオリサン氏んじゃうのれす!!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
[通常システム稼働率95%減、浸水ニヨル緊急ブラックボックス保護機能作動。緊急停止マデ20秒]
(氏ニタクナイナ・・・、カオリモット皆トオ話シシタカッタナ・・・・。アーア、ミッションモ失敗ネ。)
[緊急停止マデ10秒]

「くわぉるいさん!!!」
(ノノチャン?)
ようやく、沈んで行くカオリにとどいたのの。
必死に手を差し出し、カオリの手を掴む。
しかし、カオリはののが握った手を離した・・・・。
ののはカオリを見た・・・彼女は何かを喋っているようだった・・・。
(アリガトウ・・・・ノノチャン。)
カオリがそう言ったのを、ののは読み取った・・。
「がおりづぁん!!ごぼぼ、ごぼごぼごぼ・・・」

沈んでいくカオリは穏やかな顔をして「サヨナラ」とつぶやいた・・・。
そして、カオリはののに向かって、バイバイと手を振っていた・・・。

気が遠くなっていくのの・・。息を吐きすぎていたのだ・・・。
(カオリさん・・・・、のの、眠いよ・・・・。)
(ののも・・・・・カオリさんのところに逝くね・・・・・・。逝ってもいいでしょ?)

その刹那、誰かにつかまれ急上昇していくのの・・。
(誰・・・・・・・・・・な・・・・・の・・・)
その後、ののは気を失った・・。

海面から姿をあらわすののと落ち武者・・・。
「はよぉ、あげたってーな!!気ぃ〜失ってんねん!!このままやったらののちゃん危ないで!!」
縄を垂らし、落ち武者を捕まらせ、ののと落ち武者ごと引き上げる。
「ごめん、カオリまで無理やった・・・。」
「・・・、しゃぁないよ・・。」
「ののちゃん、だいぶ水のんでんねん、はよ介抱せなっ。」
「のの・・・。」と抱き上げるかごや。
「・・・、!!息してへん!!どないしよう!!いやや!!いやや、いややぁぁぁぁ!!!」
「・・・。後藤に任せて・・。」
そう言うと、後藤はののを寝かせるように言う。
かごやはパニックになりどうしたらいいか、混乱していた。
「いいから!ねかせるの!!」

後藤はののを寝かせて空道を確保させる。
かごやはそばを離れずただ、涙を流しながら「ののっ。ののっ。・・・」と手を握って離さなかった。
後藤は、脈があるのを確認し、心臓マッサージを始める。
「えっと、あばら骨の中心の終わりから指二本分・・・。」
両手をののの胸の上に重ね5回強く押した。そしてすぐに生きを確認、しかしまだ息ない・・。
後藤はののの鼻をつまみマウスtoマウスを始める。
重ねあわされる、ののと後藤の唇・・・。
再び呼吸の有無を確認し、心臓マッサージを始め、またマウスtoマウス。
「おねがい、かえってきて・・・。」
涙を流しならが心臓マッサージを施す後藤。
「おねがい。息して、ののちゃん・・。」
再びマウスtoマウス
「ののちゃん!かえってくるべさ!一緒においしいもん食べようべさ!!」なっちがののに叫ぶ
「のの、おねがいやから・・・、また、ウチに笑顔見せてぇ〜な・・。おねぇちゃん寂しいやん・・。」
必死に手を握るかごや、多くの涙が頬を伝う・・・。
「何やねん、せっかくここまできて、氏ぬなら、鬼にヤられればええねや!!」と落ち武者
再び、心臓マッサージを繰り返そうとするそのときだった・・・。

「げほっ、ぐえっ、ごぇっ。げふっ・・。」

ののは息を吹き返したのだ、多量の水や汚物を吐き出すと同時に
「ののっ!!!」
かごやはすぐにののを抱きしめる・・。
「げふっ。お・・・おねぇちゃん?ここどこぉ?おねぇちゃん、何で泣いてるの・・・?」
笑顔と涙でくしゃくしゃになった顔で
「アホっ。」
とだけ言って、かごやはまた深くののを抱きしめた・・。

 

やっと事態を把握するのの・・・。
「カオリさん、海の中でののに「サヨナラ」っていってたのれす・・。手を掴んだのに、
カオリさんその手を離して、ののに手を振ったのれす・・・。」
服を着替え、熾した火の近くでののは身体を温めながらそう言った・・・。
「のの、カオリさんを助けられなかった・・・。」
涙が一筋ののの頬を伝う。
「助けられなかったよぅ〜、ひぐっ、ひぐっ、ひぐっ。」
かごやの肩に顔を埋めるのの・・。
「きっと、大丈夫やて・・・。カオリさん妖術使いやで・・・、絶対に氏なへんよ・・・。」
根拠の無い返事をするかごや・・。
一生返ってこないだろうとわかっていても、そう言うことしか出来なかった・・・。
「ここまでして、ひぐっ、鬼退治する必要があるのれ、ひっく、すか、かごちゃん・・・。
ののには、もう分からないのれす!!」
そのとき、かごやが頬を引っ叩いた。
「何めそめそしてんねん、そんなのの、おねぇちゃん、嫌いや。のの、最近強くなったなぁ、って思っててんけど、勘違いやった。ウチのためにこの旅をするのでも、のののためにこの旅をするのでも
ないねん・・・。ごまちゃんにはもう時間があらへんねん。ウチらは、ごまちゃんを未来にかえさな
アカンねん!!」
そういうと、ののをかごやは抱きしめた。

「あの建物が鬼の住む家なんだね・・・。」
「せやな・・。」
「みんな、いいよ、無理に鬼退治しなくても・・・。後藤が一人行けばいいんだから。」
「ごまちゃん・・。」
「だって、みんなの重荷になりたくないよ・・。後藤は自分の力で帰るから・・。」
後藤は立ち上がり、鬼の館へ向かった行く。
「うちもいきますわ。金欲しいねん。長屋住まいしたいねん。」
と、立ち上がって後藤の後を追う
「なっちも行く。お父さん、お母さんを探すにはお金が必要だべさ。」
「・・・・うちらもいこうか?一途、カオリといつか会えんねん・・・。」
「・・・、はい、れす。」
5人は鬼が住む館へ向かった。

 

大きな門の目の前に立つ5人。
「ほんとにいいの?」
「ウチら、こうなったのも何かの縁やしな。誰もがそれ何の理由をもってここに来てんねん。」
「せやな、うちもここにきてみんなと出会えたしな。ののも社会勉強になったと思うし・・・。」
「そうれす、いっぱいの人に出会えたのれす。なっちさん、ごまちゃん、落ち武者、
そしてカオリさん・・。みんなは忘れられない友達なのれす!!」
「最後の大仕事だべさ・・。」
かごやはみんなの前に手のひらを下にむけて差し出す。
すると、後の4人もその上に手を重ねた・・。
後藤が、「がんばりまっ・・・。」
「「「「「っしょい!!!」」」」」
「いこう!みんな!!」
5人は大きな扉を総掛かりで押し開いてゆく・・・。
重い音を立てながら扉は開いた・・・。

中は廊下が続いていた・・。
壁には乱立して壁から突起するろうそくと松明・・・。
5人はそれぞれ武器を構える。
ののは脇差を抜き、落ち武者はなまくら刀を抜く。
「ほっとけあほ!!ウチは金ないねんから、刃こぼれしてしまうんじゃ・・。」
なっちは鍬を構える。
後藤は糸を引き口にくわえ指でピンと糸をはじいた。
だから、見すぎですよ、後藤さん・・・。

 

奥に5人は進んでいく、特に罠は仕掛けては無かった。
「かごちゃん!この扉、漢字で何かここにかいてあるのれす!!」
廊下右側にある扉を指差す・・。
「ののちゃん・・・、それは客人用便所って読むんやで・・・。」
客が来るのか鬼の家・・・。
とうとう、5人は目の前の扉に突き当たる。
「ええか?」
「ええで。」
身構える4人扉を開く落ち武者。

中には一人の鬼が椅子に座り読書をしていた・・。

「来たね、人間ども・・・。」
本とメガネを置き立ち上がる鬼・・・。
(圭ちゃんそっくりだ・・・。圭ちゃんそっくりの鬼と後藤は戦うの?)
「なんや、鬼というより鬼瓦みたいやな、自分。」
「うるさい!!顔のことは言うな!!」
鬼は手元にある金棒を掴む。
身構える5人
「生きて帰れると思うなよ、人間ども。女の鬼だとなめて掛かると後悔するぞ!!」
「オマエモナー!!れす!!」

180cmもあろうかという鬼は、金棒を振り上げる。
「どいつからだ?殺られたいのは??」
「あかんわぁ〜、ウチの女の武器使えへんなぁ〜相手が鬼女やったら・・・。ほんまがっくりや。」
「きいてんのか!?人の話!!どいつからだって聞いてるだろう!!」
「落ち武者さん、ののたちで掛かりましょう!!」
「なっちもやるべさっ!!」鍬を構える。
「後藤は、後藤は・・・、糸引っ掛ける柱がなーいよぉ〜!!」
つまり、戦力2.5人ってところですか?

落ち武者が先陣を切って、切りかかる。
交わるなまくら刀と金棒。
しかし、その衝撃は強く、落ち武者は壁に弾き飛ばされる。
「痛゛っ!!」
「そんなもんか、その刀はお飾りのようだな・・・。」
不適な笑いを浮かべる鬼。
続いてののが飛び掛る。
落ち武者同様、弾き飛ばされる。
「ぎゃうっ!!」
(強いのれす・・・。のの達こんなのを倒そうとしてたのれすか?無理なのれす、私達じゃ・・。)
「蝦夷の力見せてやるべさ!!」
なっちは鍬を振り上げ、鬼の頭めがけて振り下ろす。
しかし、鬼は金棒を振り鍬の柄をへし折った。
「やばいべさ・・!!!!」
その刹那、鬼のこぶしがなっちの顔面に衝撃を与える。
廊下の上を転がり飛ぶなっち・・。
「「「「なっち!!」」」」
「ペッ!!いたいべ・・・。頭がぐわんぐわんするべさ・・。しかも歯が折れたべさ。」
むくっと起き上がったなっちは、2,3本の歯を吐き出し、口角から血を垂れ流しながらそう言った。

「ゆるせない!!」
後藤は、かばんの中から粉を取り出し、鬼に向かっていく。
「危ないで!!ごまちゃん!!戻ってきぃ〜!!」
届かないかごやの声。
「丸腰で来るとはおろかな!」
後藤は鬼に向かって小麦粉を投げた!!
「!!!、なんじゃ?目潰しか!?・・・・!!!」
その隙に、後藤は左手に持っていたライターを着火!!
鬼の顔のあたりで小さい爆発が起きる!!
「後藤パーンチ!!」
ひるんだ鬼の左頬に鉄拳炸裂。
「すごいれす!!ごまちゃんの妖術れす!!」

《※後藤が行なった行為は小さい粉塵爆発です。良い子の2ch住民は真似しないように。》

しかし、鬼はヨタヨタとするだけで、倒れない。
「熱いし、少し効いたね・・・。髪の毛縮れちまったよ!!」
と、鉄拳で後藤にお返し。
なっち同様転がり飛んだ。
「いたい、痛いよぉ〜・・。いちいちゃーん。」
血ヘドを吐く後藤。
「遊びはこれまでだね・・。一人づつ、殴り殺してやるよ。」
5人は恐怖に慄いた、自分達がここに来てしまったことに深く後悔をし・・・。
じりじりと、かごやに詰め寄る鬼。
「まずはお前からだよ・・・。」
金棒を振り上げ・・・。
「キャァァァァァーーーーーーー!!!!!」

 

その刹那、扉が開き、脇差が飛んでくる。
辛くも交わす鬼。
振り上げた金棒を下ろし、扉の方を目視する。
「ちょぉ、まってーな、その娘。わしの娘やねん。」
そこに姿を表したのはつんくだった・・・。
「「つんくさん!!」」
「あーーーー!!あの時のひとだべさー!!」
「ほ、ほんまや!!なんや!?あの人ののちゃんと、かごちゃんの親父さんやったんか?」
「ホンマよぉ、ここまで来たなぁ〜、のの、かごや・・・。えらいで。」
(つんくさんのそっくりさんだ・・・。でも、黒髪にチョンマゲ似あわねぇ〜。・・つーか、歯が痛い・・。)
「また一人、氏にに来たのか、人間とはおろかなものだ・・・。」
「わしは、別に戦いに来てへんねや。」
と、つんくは袋を取り出し、その中から出したものを鬼に向かって投げる。
「受け取れ、おじょうちゃん!!」
受け取った、鬼。
手のひらを見ると、鬼は顔をゆがめ涙を流し始める・・・。
「いつかかえさなあかんと思ってたんや・・・。」
膝をつき号泣しはじめる鬼。
「どういうことやねん・・・?つんくさん・・。」
「わしは、11年前にこの鬼の親を含めた10人の鬼を殺したんや・・・。」
「そう、今回のように鬼の討伐のためにな・・・。」
「そんな・・・。のの達そんなこと聞いたことないのれす!!」
「すまんなぁ、のの、かごや・・。忘れたかった過去やねん・・・。せやけど、わしはののとかごやが鬼退治に行くと決めてから、あの時のことを誤らなあかんなと思って、ひっそりついてきてん・・・。」
「そうか・・・、お父さんとお母さんを殺したうちの一人なんだな・・・。待っててよかった、この時を・・・。」

鬼の表情が殺気立つ。
手のひらにある二つの角を握りしめ
「復習してやる。殺してやる!!この日のために私は陸で暴れてきたんだ!!」
つんくに金棒を振り上げ向かってゆく鬼。
肩に金棒を振り落とす!!
「ぐぅっ!!」
「「つんくさん!!」」
その衝撃で地面に沈むつんく。
「何故刀を抜かない!!」
「ゆうたやろ、わしは戦いに来たんやないと・・・。わしはあの時の罪の償いに来たんや・・・。」
再び、肩を押さえながら立ち上がるつんく。
「ふざけるな!!」
金棒を振り回し、横からつんくの顔をはじき飛ばす。
右へ吹っ飛ぶつんく。
しかしつんくはなおも立ち上がる
「ねぇちゃん・・・、こないなもんじゃ人は殺せへんで。てっぺんから本気で振り落とさな・・。」
「うあ"ぁぁぁ!!!」
つんくの真上に金棒を振り上げる鬼。
つんくは氏を覚悟した。

振り落とすその刹那。
ののが刃で金棒を止める
「のの太郎・・・。」
涙を目に浮かべながら・・・、
「やめてくらさい・・・。つんくさんがどんなことを鬼さん達にしたかはわからないれす。ひっく、
でも、でも、つんくさんは・・・、つんくさんはののの大好きなお父さんなのれすっ!!」
「どけぇ!!」
再び金棒を金棒を振り上げ落とす鬼。
しかし、またののは、その金棒を脇差しで受け止める。
「これ以上、お父さんを傷つけるつもりなら、ののは鬼さんを切るのれす!!!」
その強い意志に後ずさり、金棒を落とす鬼。
鬼は立ったまま泣いていた・・・。
「私にも・・・、その強さがあったなら・・・、お父さんとお母さんを守れたかもしれない・・・。」
「すまん、ホンマに堪忍やぁぁぁ!!」
土下座するつんく。
そのときだった。鬼の肩に激痛が走る。
矢が鬼の肩を射抜いていたのだ・・・。
「つ・・・。」
苦痛に顔をゆがめる鬼。

だ、だれだ!!」
矢が放たれた方向を見る6人。
「姫様!!ご無事ですか!!」
そこには月の民5人が弓を構えていた・・・。
「さ、この場は任せ、姫様は私と月に帰りましょう!!」
「き、きさまらぁ〜!!」
金棒を拾い上げ今度は月の民に向かう鬼。
「構え!!放て!!」
矢を放つ月の民。
その刹那!!
かごやが鬼の目の前に飛び込んだ・・・。
「!!!!」
「かごや!!」
「かごちゃん!!」
口角から血を流しながら
「痛いがな・・・・、あほっ・・・。」
と、倒れた・・・。

 

立ちすくむ月の民、かごやの元へ走り寄る5人。
「かごちゃん・・・。」
抱き起こすのの。その頬には涙が伝う。
「なんやのの。何また泣いてんねん・・・。」
「何故だぁ!!」
と、問う鬼。
「なんでやろ?・・・、多分ウチな・・、思うねん。これから先、お父さんは罪を一生かけてつぐなわなあかんし、鬼さんも・・・、その償いをうけなあかんと思うたからやと思う・・・。」
「そんなために自分の命をなげうったのか!?」
「あかんか・・・?人間は・・・、ホンマの人間はちゅーもんは・・・、そーゆー熱い・・・、心・・・
持って・・・んねん・・・。せやから・・、人・・・を・・・嫌い・・になっ・・て欲しく・・・ない・・ねん。」

「のの・・、ごめんなぁ〜・・・、おねぇちゃん・・・おねぇちゃん・・・ののの花・・嫁姿・・・、
見てあげられ・・・へんかった・・・。ホンマ・・・、堪忍や・・・。」
「ひぐっ。ひぐっ。おねぇちゃ〜ん。」

「ごまちゃん・・・、見送ってあげられへんで・・・、ホンマごめんなぁ〜。」
「んぐっ。んぐっ。」首を横に振る後藤。

「なっち、見つかるとええな、・・・おとうさん、おかあさん・・・。ウチの分まで見つかったら、
親孝行してな・・・。」
「わかったべさ・・、ぐすっ。」
涙を袖で拭う。

「落ち武者・・・、短い間やったけどおもろかったで・・・、自分。」
「あほ、あんたの方がおもろいっちゅーねん。おいしいとこ持っていきおってからに・・・。」

「おとうさん・・・、先立つ娘。の不幸をお許しください・・・やね。」
「ホンマに親不孝やな・・。」
「あはは、ホンマやね。ウチ・・、親不孝やね・・・。」

「月影さん・・・、あんたら何も悪くあらへんから。ウチが・・、勝手に飛び込んだだけやから・・・。
それと・・・。月におるお父さんと、お母さんにホンマごめんなさいって・・・ゆうといてーな。」
「はっ!!!」
「月影さんはな・・、ウチが3歳になるときまで教育係してくれた人やねん・・・。」

「なんや、メッチャ・・・、ええカッコ出来た・・・、気がするで・・・。最後にねーさんの顔が
見たかったわぁ・・・。何か、ホンマ疲れたで・・・。ウチ・・・もう寝るわ・・。」
「おねぇちゃん!!」
「そ、そないな顔せんといて・・・。生まれ変わっても、いつまでもののと・・・一緒やから・・・。
や・・・く・・そ・・・く・・・やで・・・。」
ニカっと笑い小指を立てる。
「うん。ぐすっ。やくそくれす。」
二人は指切りをし、そのままかごやは永久の眠りについた・・・・。

「おねぇちゃん・・・。生まれ変わってもののとずーっと一緒だよ・・・。」
静かにかごやを寝かせるのの・・・。
そっと矢を抜く・・・。

涙にむせぶ9人を後目にののは立ち上がり脇差しを抜いた・・・。
そして、鬼に向かって刀を振り落とす。
「!!!」

角が飛んだ・・・。
「これで鬼さんも鬼じゃなくなったのれす・・。かごちゃんのためにも人として
生きてほしいのれす・・・。」
「・・・わかった。」
「よかったら・・・、家に来てくれへんか?鬼さん・・・。家で一生使って罪を償いたいねん・・。」
「それは、いやだ・・・。」
「たのむ。かごやの願いでもあんねん。」
「おねがいしますれす・・・。」
「・・・・。」
何もいわず考えた様子で首を縦に振る鬼。
「それに、いつでもわしを殺したかったら殺せるしな・・・、一緒におれば・・・。」
「そうだな・・・。」

その刹那。光のゲートが9人の前にまばゆい光を放ち姿を現す。

「・・・・。」
何もいわずに立ち上がる後藤。
そして、のの達の方を振り返る。
「ごまちゃん。本当にありがとうなのれす・・・。」
抱きしめ合うののと後藤。
「元気でね。ののちゃん。」
「はいれす。未来に帰ってものの達のこと忘れないれくらさい・・・。」
「うん、忘れない。忘れようとしても忘れられない・・・みんなのこと!!」
「なっちも忘れないべさ・・・。」
「ウチもな・・・。」
「お嬢ちゃん。あんた一番胸ででかかったで・・・。」
「???」
「ずまなかった・・・、顔殴って・・・。」
「大丈夫だよ、圭ちゃん。気にしないで。」
「なんで私の名を知っている!?」
「勘・・・かな?」
ニコッと笑い手を振って後藤は光に向かう・・・。
「バイバイ!!」
手を振って光の中に後藤は消えていった・・・・・。

 

「私たちも・・・、帰ろうなのれす・・・。」
「せやな。ほな、帰ろうか?」
「私は・・・。」
「一緒に来たらええよ、鬼さん。角がなけりゃ、大女なだけやし・・。」
「角どうするれすか?」
「・・・、いらない・・・。命をかけてこの娘。が教えてくれた。もう私は鬼として生きない・・・。」
「ほな、角はどうしてもええっでゅーことやな。」
と、切り落とされた角を拾い上げるつんく
「姫様・・・。」
と、かごやに近寄る月の民
「ののがお家へつれて帰るのれす・・。」
「そうですか・・・。わかりました・・。我々は月に帰ります。失礼。」
そう言って、月の民は先に去っていった・・。
「かごちゃん。一緒に帰りましょうなのれす。」
ののはかごやを担いだ・・・。
「かごちゃん。重いれすよ・・・。もう少し痩せた方がいいのれす・・。」
その、のの の姿が痛ましく思えた・・・。

船で鬼ヶ島を出る・・・。

去り行く船で・・・。
「さよなら、昔の私。さよなら・・・お父さんお母さん・・・。」
そう、去り行く鬼ヶ島を見て圭はつぶやいた・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後、尾張藩にて鬼の角を献上したつんく。
つんくは再び英雄と呼ばれた・・。
手にした100両のうち49両をのの達が、50両をなっちに、1両を落ち武者に
内訳した。

「元気でね。れす。なっちさん。」
「うんだべさ・・・。沢山手紙出すべさ・・。絶対に家族を見つけるべ・・・。」
「ねぇちゃん、もぉちょおやせたらええ女になるで・・・。」
「なっちは食べる事が好きだべさ、いつまでも食べ続けてやるべ・・。」
「さよか。」
苦笑いのつんく。
「ウチも行きますわ。もう、家決まったし・・・。」
「落ち武者さんもがんばってくらはい・・。」
「あんたもな・・・。」

そうしてのの・つんく・圭は落ち武者、なっちと別れを告げた・・・。

それぞれの道を歩むべく・・・・。

 

「おかわりください、ねーさん。」
「あんたよぉ食うなぁ〜!!」
「いいじゃない、私の角で生活成り立ってるんでしょうが!!」
「その代償に娘を亡くしてんけどな!!」
「??のの太郎は何処いってん?」
「え、つんくさん知らんのですか・・・?ウチもしらへん。圭ちゃん、あんた何処行ったか知ってん?」
「かごやちゃんの所じゃないの?」
「さよか・・・。」

月光に照らされた丘・・。
その上に一つの墓石が立っていた。
そのそばにひとつの人影がある。
「おねぇちゃん。今日は満月だよ・・・。キレイだね。」
「おねぇちゃん、あそこに住んでたんだよね・・。」
頬には一雫の涙が伝う・・。
「ごめんね、のの強くなるね・・。」
袖で涙をぬぐうのの。
「見ていてね、おねぇちゃん。」

 

[緊急システム解除、空間確認、酸素30%弱。通常空間ト認定。再起動開始。」

「ココハドコ・・・?」
「あっ、起きましたねぇ〜。ようこそ海底の都、竜宮城へ!!チャオ〜チャーミ−乙姫ですっ。」
「ドノクライ寝テイマシタカ・・・?」
「そんなに経ってないですよぉ〜。でも、運がいいですねっ。たまたまチャーミーが狩りに
出ていて、貴方を見つけたんですよぉ〜。」
「助ケテクレテアリガトウ・・・。」
(電子時計ガメチャクチャダ・・、壊レタカナ?全システム稼動率35%ダシ・・。調子悪イナ。)

「疲れてるみたいですね、チャーミーがお料理をつくってあげまーっす。」
チャーミ−は返事も聞かず水槽からはまちを取り出す。
ビタビタ跳ねるはまち。
「もう!少しは静かにしなさい!!」
“ドスッ”はまちの頭に包丁を就き立てるチャーミ−。
「なんなの?なによっ。静かに出来るんじゃなぁ〜い♪うふふ」
それは殺したっていうんですよ、チャーミ−・・・。
「ハイ、どうぞっ、チャーミ−特製船盛ッ。」
「・・・、タベラレナイヨ・・・。」
「あらっ?貴方も食べないんですか〜、それはチャーミ−悲しいです。」
「ゴメンナサイ。カオリアンドロイドナノ・・・。」
「???神奈川県横須賀市[アンドロイド]ってなんですか?それ」
「ナンデモナイヨ。カオリ帰リタイ・・・。」
「そうですか・・・、それは残念です。じゃぁ亀さん、送ってあげてっ。」
亀が現れる。それに乗るカオリ。
亀は動けない・・・。

「見た目以上に体重があるんですねぇ〜。もう数匹用意して差し上げますっ。」
そした2匹の亀に跨って立ち、五匹の亀の手綱を掴まされるカオリ。
おぼ○ちゃま君だ・・・。懐かしいな・・・。
「ヘケケッ・・・。」
「チャオ〜、またきてくださいねぇ〜。」
手を振るチャーミ−。

外はやはり海だった。しかし、体内に浸水してこない・・。

陸にあがるとそこは
「???ココハ・・・?」
近代的になった陸に驚かされるカオリ。
ホバークラフト状のスクーターに乗った子供がカオリを発見し近づいてくる。
「あれ?アンドロイドじゃん。今耐水用アンドロイドが発売されてるんだ・・・。」
「アノ、今、西暦何年デスカ?」
「何言ってんの?壊れてるのかなぁ〜?2121年だよ。」

「モドッテキチャッターーーーーーーーーー!!」
カオリ、鬼のDNA採取失敗。

 

「ん・・・・・ん?」
「目が覚めた?」
「うん・・・えっ?」
後藤は飛び起きる。
そこにはロケバスの中だった・・。
「20分待っても来なかったから様子見に行ったら、真希ちゃんトイレの中で倒れてるんだもの、
ビックリしちゃった・・・。」
「そう・・・。」
歯は折れてない・・・。口の中も切れてない・・・。
(夢だったのかな・・・?)
ふとカバンの中を見る。
「あっ!!」
「何、真希ちゃん?」
不思議そうに顔を見るマネージャ。
「あ、なんでもない・・。」
中にはボロボロになった糸が入っていた・・・。
(夢じゃなかったんだ・・・。みんな・・・、ありがとう・・・。)

数日後
都内テレビ局楽屋
「亜依ちゃ〜ん。」
「ののぉ〜♪。」
「ちゅーしましょぉ〜。」
「え〜やだぁ〜♪」
辻・加護を暖かく見つめる後藤の姿があった・・。

「辻・加護っ。」
後藤は辻と加護に声をかけた。
「一生、2人は離れちゃ駄目だよ。ずーっと仲良しでいてね。」
2人は顔を見合わせ後藤に言う。

「「うん!!」」

 

〜完〜

 

のの太郎とかごや姫2

 

プロローグ

*のの太郎とかごや姫の鬼退治からおよそ二年の月日が流れたある日のことじゃった。*
*その日はのの太郎は家族と居候は昼食の準備をしておったそうな。*
*そのとき、のの太郎の家に光の玉が現れ、突如、その光の玉は光を放ち家は光に包まれた。*
*そして、その光の中から、人が現れたそうな*

 

2121年

「アンドロイドTYPE01S22-5飯田圭織モデル001よ、今回のミッションは、
江戸時代に存在したといわれる不死鳥のDNA採取である。」

「前回の失敗を踏まえ、耐水・飛行機能に改良した。このミッションでは更なる擬似感情を開発するミッションも兼ねている。」

「了解シマシタ。」

「基本スペック、稼動状態を報告せよ。」

「CPU、10T(1×10の13乗)Hz。メモリ0.5Tバイト、稼動状態100%デス。」

その時、タイムスリップステーションにEメールが受信された音が室内に響く。
担当者らしき人物は、そのメールを開封し、そのメールを読む。
おもむろに、カオリに更なるミッションが加わる事を説明する。

「後もう一つ、ミッションが緊急的に決まった。」

「アンドロイドTYPE01S26-2加護亜依モデル001の存在がなくなりつつある、
これはおそらく、飯田圭織001が過去へタイムスリップした影響と思われる。
この原因究明と、解決もミッションとする。このミッションは口外してはならないとのことだ。」

「了解。」

「加護亜依モデルは、現在開発中で6年後完成予定であるが、我が国のアンドロイド開発史上
最高作品であるとともに100億ドルの経費をかけた最コストアンドロイドでもある。
このアンドロイドが存在がなくなることは我が国の大きな損失となる、必ずやこのミッションだけでもクリアするのだ。」

「了解。」

「スマイルを忘れずにな。」

「了解。」
カオリはニコッと微笑む。

「では、江戸時代の衣服に着替えなさい。」
カオリは服を渡され、その服を着た。

「では、タイムマシーン転送ルームに乗れ。」
「ハイ。」

シャワールーム大の空間に入るカオリ。

<準備は完了か?>
「ハイ、所定位置ニスタンバイシマシタ。」

<前回のタイムスリップ年代との誤差は±5年以内である。タイムスリップ完了後、年代、時間、場所を確認せよ>

「了解。」

<カウントダウン、10,9,8,7,6,5,4,3,2,1、GO!!>
光に包まれるカオリ。

そしてカオリはのの太郎の家に現れた。

 

2001.8.19

24時間テレビ24「愛は地球を救う」放送後の深夜。
打ち上げが終了したあと自宅に帰宅した加護。
「ただいまぁ〜。」
靴を脱ぎ、自分の部屋へと戻る。
バックを投げ、ベッドに飛び込む加護。

「疲れた…。ふう。」
仰向けになり、天上を見つめる。
「今日も生きてた…。」
そうつぶやく加護。
蛍光灯にむけて手をかざす。
ほんのり指先が血が通っている事がわかる。
「生きてる…。」

(最近、ウチはおかしいねん。なぜか身体が消えんねん。)
(なんていうか、透明…。自分の存在が消えそうで…。)
枕を取り寄せ枕を抱きしめた。
(ウチ…どうなってしまうんやろ…。)
不安なまま、疲労に負け、そのまま加護は眠りについた。

そして、加護はその深い眠りの中で夢を見た。

夢の中で加護は白い空間の中でふわふわ浮かんでいた。
その時、加護の耳に声が聞こえてきた。

「ウチを助けて…。」

「だれ?」
その言葉に答える加護。
「ウチはあんた、あんたはウチ…。」
「どういうこと…。」
「ウチ…氏んでもうてん…。ウチが氏んだ事で、あんたのいる世界にも影響が起きとる…。」
「…………。」
「あんたしか…ウチを助ける事は出来へん…。ごまちゃんと一緒に…。」
そのあと、声はぷっつりしなくなる。
「ねぇっ!!どうゆうことやねん!!ねえっ!!ねえっ!!」
夢の中で一生懸命叫んでいるとき、目覚めは訪れた。

朝日が窓に差し込んでいる。

「朝か…。」

「なんやったんやろか…。」

加護は、起き上がりトイレへ向かった。

洗面台の前に立ち蛇口を捻り軽く水をすくい顔を洗い、次に石鹸をとり、あわ立てる。
そして、今度は石鹸の泡で丹念に顔を洗う。
そして、泡を水で流し再び鏡を見つめる。
その刹那、自分が透け始めた。
「!!!!!!」
自分の手を見るとやはり洗面台が手の向こうから透けて見える。
再び鏡を見ると徐々に透度は濁っていき元に戻る。
「どうして…。」
その場に蹲り自分を強く抱きしめる加護。
「どうなってまうの…ウチ。」

やがて、仕事に出かけなければならない時間となり、加護は着替えて収録のためテレビ東京へ向かった。

電車の中で

(あの声はなんやったんやろ…。ウチはあんた…、あんたはウチ…。)
(夢なんていつもろくに覚えてへんのに…。)
(この身体の事も何か関係があるんかな…。)
(あの声は…ウチの声にようけ似てた…。)
「あ〜〜〜わからへん!!」
そう声を大きくしてドアの窓から見える東京の景色に叫んだ。
(ハッ…!!恥ずっ!!)
周りは冷ややかな目で加護を見ていた。
顔を赤くしながら電車を乗り過ごした。

テレビ東京の控え室にて

いつもと変わらない風景、いつもと変わらないメンバー
「ハァ…。」
加護は憂鬱さにため息を吐く。
いつもはそんな事を一切気にとめないメンバーが珍しく声を掛けてくる。
「どした?加護。」
「ああ、ごっちん。なんかねぇ、憂鬱。」
(言える訳ないやん、第一信じないし…。)
「ははぁ、恋かな?恋をしちゃいましたか?」
ニタニタする後藤。
「んな分けないでしょ。」
「んじゃぁ、生理だ。」
「ちがいますぅー。」
「なんだぁ?おねぇさんに言ってみな。」
(しつこいなぁ…、ののと遊ぼっ…。)
加護は立ち上がり、辻を探す。
「のの〜?」
居ない、というより楽屋にはいつのまにか後藤と2人っきりだ。
(なるほど、話し相手が居−へんからか…。)
諦めて加護は、椅子に座りなおす。
「加護舐める?リンゴ飴。大丈夫変なの入ってないよ。」
(入れられていても困る…。)
「ありがとう。」
飴を袋から一つ取り出し、口に放り込む。
飴を包んでいたビニールを丸め近くのゴミ箱に投げる。

外れた…。

(なんやかツいてないなぁ…。)

加護は立ち上がってゴミを入れなおそうとしたその刹那

ゴミ箱の中が光り、その光は楽屋を包み込む

「!!!!」
「きゃぁぁぁぁ!!!」

(この白い空間…夢に出てきた空間に似ている…。)
「なに?ここ…。」
そこには夢と違い後藤が居た…。
「わからない…。」
その時、夢同様、声が聞こえてきた。
「ウチはあんた…。あんたはウチ…。」
「だれやねん!!夢にも出てきて!!しかもこんな事しよって!!」
叫ぶ加護。
「夢ってどういうこと…?この声、加護の声じゃん。」
「えっ…。」
(確かに似てる…。せやけどウチじゃない…。)
「久し振りやね…。ごまちゃん…。」
「ほえっ…?」
その時、2人の間に光が集まり、人型に具現化していく。
中から姿を現したのは加護そっくりの和服を着た少女だった。
「かごやちゃん…?」
「そう、よお覚えててくれたなぁ、ごまちゃん…ウチやで。」
加護は事態が把握できない。
自分が後藤と話している。
でも自分じゃない。

ふとこちらを向く少女。
「驚かせたやろ…。」
驚いた、しかし思わず首を左右に振る加護。
「さよか、詳しくあんたに説明するで、加護亜依ちゃん。まぁ、ごまちゃんも聞いてくれへんか?」
「うん…。」

「ええか?あんたはウチの生まれ変わりや。あんたはウチ、ウチはあんた。」

「ウチは、実は本来の寿命よりちょお早く氏んでもうたんや…。ちょっとしたことでな…。」

「そんでなぁ、ウチが早く氏んでもうたから未来に支障が起きてんねん…。」

「あんた、今、時々体が透けるやろ?」

「!!!!!」

「あたりやね…。ほんでなぁ、本来生まれ変わる年が氏ぬ時間が早うなってしもうたから、ずれてもうてん…。
つまり…あんたの存在が消えかけとる…そして別の時代にウチは生まれ変わろうとしてんねん…。
せやけどなぁ加護ちゃん、あんた消えたないやろ?」

コクッと頷く加護。

「ウチも同じやねん。ウチもののと同じ時代に生まれたいねん…。」

「のの…?」

「そう、のの…。あんたの親友や。前世ではあんたと、ののは姉妹なんや…。」

「信じられない…。」

「信じられんのも当たり前な話やな。せやけど、これからの頼み事頼めんのは、あんたとごまちゃんくらいしか居−へんねん。」

信じられない、しかし事実、自分の身体は透け始めている。

「何をすればええの?」

「頼まれてくれるか?」
コクッと頷く加護。
「ごまちゃんは…?」
「もちろん後藤もだよ。だって、もしかしたら後藤が過去に行った事がかごやちゃんを氏なす原因になったかもしれないんだ。
後藤にも手伝う責任があるよ。」

「おおきに…。」
頭を下げるかごや。

「ある鳥を見守って欲しい…。ずうっと…ずうっと…。ウチがあんた達をウチの時代のある場所に飛ばすから…。」

「ある鳥…?」

「赤い…炎のように赤い羽根の鳥。その鳥を見守っておいて欲しい…。」

「そんなん良くわからへんよ…。」

「もう…せ…めいし…じかん…あ…ねん。」
うっすらと消えていくかごや。
「ウチ…のの…い…ねん。」

「きこえないよ!!」

かごやが消え去り、何もない空間に戻る。

そしてその空間は突如としてどこかの森の中という空間に変わった。

そう、加護と後藤はどこかの森の中に立っていた。

 

アンドロイド

光が一通り消え去り、やっと視界が元にもどって来るのの、圭、なっち、中澤、つんく。
そこには、カオリが立っていた。
「…?…カオリしゃん!?」
「ハァ〜イ、ノノチャン元気?」
手をふるカオリ。
ののは久し振りの再会に思いっきり抱きつく。
「生きて、たんだ…。んぐっ、んぐっ、よかった〜〜〜うわ〜〜〜〜ん!!!」
あまりの感動に泣くのの。
「カオリモココニ居ルノガ不思議。」
「どうして助かったべさ?」

そう、ののとなっちは2年前、後藤、落ち武者、かごや、とともに鬼退治の旅出かけた仲間であった。
その旅において、姉かごやは不慮の事故的に氏に、カオリは鬼ヶ島一歩手前で、海に落ちたまま行方不明になっていた。

「カオリネ、チャーミー乙姫サンッテ人ニ助ケラレタノ。」
「えっ!?チャーミーしゃんに助けられたんれすか?」
「シッテルノ?」
「ののとかごちゃんとごまちゃんで亀に乗って行った時にあった人れすよ。」
「知リ合イ?」
「はい、れす。そのあとも何度か会ってるれすよ。」

「ああ、あの時のお嬢ちゃんや。」
つんくが会話に入ってくる。

そう、つんくもカオリには面識があるのだ。

「ああ、未来人でこの時代に神隠しに逢うて来た子やろ。確か。」
とののから旅の話を聞いていた中澤も会話に加わる。
「ちがうべさ、その子はごまちゃんだべ。年取るっていやだべさ〜。」
「何やと!?氏ぬか?ブタ。」
昼食の準備のため中澤が手に持っていた菜切り包丁が光る。
「う、うそだべさ。まだまだ若いべ、ねえさんは…ハハハ…。」
冷や汗をかくなっち。
「ははぁ、動く案山子の子だね?」
「そうれすよ、圭しゃん。」

「よろしく、あたし圭。」
と手を差し出す。
「ア、ヨロシク。」
握手を交わす2人。
「冷たい手だねぇ、さすが動く案山子。」
「ん〜、ホントのカオリしゃんの名前があるんれすけど、思い出せないれす…。え〜っと、え〜っと…。」
やっと、ののが出した言葉は
「そう!『あんこどろどろ』れすよね?」
カオリは困った表情をし
「『アンドロイド』ダヨ、ノノチャン。」
「あ、そうともいうのれす、てへへへ。」
舌を出して苦笑い。

「うち、裕子。ねぇさんでええわ。ののの母親やで。」
「ヨロシクデス。」
「あ、改めて言うわ、わしつんく。ののの父親や。」
「ハイ、ワカリマシタ。」

「カゴヤチャンハイナインデスカ??」
辺りを見渡すカオリ。
「えっ…。」
言葉を失うのの達。
ふとののが…。
「…いるれすよ。今からいる所にカオリしゃんを案内してあげるれす…。」
「ワカリマシタ。」
「のの、カオリしゃんと2人で行ってくるれす。」
そう、家族に告げるのの。
「さ、さよか…。気をつけてな…。」
2人は、かごやの墓のある丘へ向かった。

 

「ここれすよ。ここに、かごちゃんは眠っているれすよ。」
かごやの墓の前に来たののとカオリ。

「ドコニ寝テイルノ?」

「ここれすよ。」
墓を指差すのの。

「…………。」
「…………。」
見つめ合うののとカオリ。

「氏ンダノ…?」
「…………うん。」
「イツ…?」
「カオリしゃんが海に落ちた後れすよ…。」
「………ソウ……。」
「もう二年前れす。もう淋しさには慣れたれすよ…。」
その刹那、カオリをみていたののは少し驚いた。

カオリが泣いていた。

正確に言えば水滴が目から流れ出したのだ…。

「カオリしゃん…?」

「ノノチャン…コレガ悲シイッテ感情ナンダネ…。何カガ目カラ溢レテクルヨ…。」
無表情であるがアンドロイドカオリは確かに泣いていた。

「カオリしゃん…戻ろうれす。ののあまりここに居たくないれすよ…ののも辛いれすよ。」
そう言って、ののはカオリの服を引っ張った。

 

再び家に戻ったののとカオリ。
そして、今回やってきたわけをカオリが説明し始める。
「今回ハ不死鳥ノ細胞ヲ採取ニ来マシタ。」
「不死鳥の細胞採取ってなんだべさ?」
「不死鳥トイワレル鳥ノ一部ヲ持ッテ帰ルコトデス。ソレデ、マタ一緒ニ旅ヲシテイタダケレバト…。」
「へぇ〜、不死鳥探しか。面白そうだね。」
興味を持つ圭。
「無理ニトハ言イマセン。」
「のの行きたいれすよ。探してみたいれす。」
「…イイノ?」
「いいれすよ。友達れすもん。」
「ノノチャン…アリガト。」
「じゃぁ、なっちもついて行くベ。旅先でうまいもん食べたいべさ。」
と、なっちも旅の同行に参加意志を見せる。
「そうすると、あたしも護衛役でついて行こうかな。」
圭も賛同する。
「さよか…。まあええやろ。今日はうちに泊まって明日から旅に出ればええ。」
「…ま、可愛い子には旅をさせろやな。」
旅立ちを了承するつんくと中澤。

そうして、つんく宅に一泊カオリはする事となった。

 

夜中

のの達が寝静まった頃、つんくと中澤は茶の間でお茶を啜っていた。
「つんくさん…。2年ぶりに旅に出てまうんやなぁ、あの子達。」
「せやなぁ…今度は危ない事ないやろ。」
「…………かごやが氏んで…もう3年忌を迎えるんやね。」
「…まぁな。」
「あの子…ホンマに居ないんよなぁ…。」
「…………。」
「ウチ…、あのコを忘れかけてるんちゃうかな…。」
「裕子…。」
「忘れたない…。せやけど…。」
「もう、その先は言うなや、もう寝よや。」
つんくは茶の間をでていった。

その頃、ののは夢を見ていた。

白い空間…。

ふんわりと体が浮いている。
「???」
その時、何処からか聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「のの…、のの…。」
辺りを見渡すのの。
周りを見渡しても白い空間でなんら変化も無い…。
「おねぇちゃん…?」
「せやで、ウチや。かごややで…。」
「どこにいるのれすか!?」
「ウチはいつでもののの傍におるで…。いつも見守っとるで…。」
「おねぇちゃん!!どこ!?ねぇっ。どこなの!?」
ののは必死に叫び辺りを見渡す。
「カオリについって行ってーな。お願いやで…。ほなな…。」
徐々に弱まるその声…。
「おねぇちゃん!!行かないでっ!!行かないでっ!!」

「行かないで、やだっ、やだぁ〜!!」

「ののちゃん!?どうしたべさっ!!」
身体をゆすられ、飛び起きるのの。
既に外は朝になっていた。
「夢れすか…。」
「ドウシタノ?ノノチャン。大丈夫?ウナサレテタヨ。」
「うん…。大丈夫れす…。」
じっとり汗ばんでいる額を拭うのの。
(何だったんれすか…。一体…。)
その時、居間から中澤の呼ぶ声が聞こえてくる。
「のの〜、なっちー、圭ちゃん、カオリさん飯やで〜!!」
「はいっれすぅ〜♪」
「いくべさっ!!」
ののとなっちは「飯」という単語に即座に反応し、勢い良く居間へ駆けて行った。
「ドウシタンデショウ?」
「さぁ?」
あまりのゲンキンさに首を傾げる圭とカオリだった。
無論2人が首を傾げる間にも既になっちとののは飯を掻き込んでいた。

 

旅行

「ん…。」
元小人のヤグチは朝の日差しに目を覚ました。
「おはようございますっ。ヤグチ。」
そう、耳元でささやくのはヤグチの恋人、千年鶴ヨッスィー。
2人は再び同棲しておよそ2年過ごしていた…。
「ん〜、眠いよぉ〜。」
「おきてっ、ヤグチっ。」
「だってヤグチ低血圧だも〜〜ん。おきれないよぉ〜。」
ヨッスィーは立ち上がり、少しあきれ果てた様子で仁王立ち。
そして思い切って、ヤグチの掛け布団を剥ぎ取る。
「おきてくださいよぉぉぉやぐちぃぃぃ〜〜〜!!今日から旅行でしょぉ〜〜〜〜???」
「いいよ、明日しよ。ヤグチ眠いんだもん。」
掛け布団を剥ぎ取ってもまだ寝ようとするヤグチ。
「起きない気ですかっ!?」
また、ヤグチは睡眠に入る状態のようで返事を返さない。
「…………。」
(絶対起きてもらうんだから。今日は2人で楽しみにしていた旅行の日なんだから。)

ヨッスィーの周りから煙が舞い上がり、ヨッスィーは千年鶴の姿に戻った。

(おきろっ!!おきろっ!!)

なんとヨッスィーは、くちばしでヤグチの頭を突き始めた。
「いたいっ!いたいっ!わかったよ、起きるよ。だからやめてよ、ヨッスィー!!」
さすがに目覚めるヤグチ。

だるそうに、寝ぼけ眼で起き上がる。
「起きないからって、そのくちばしはずるいよぉ〜。いたいよ〜。何でいつもヤグチが起きないと突くのぉ〜。」
少し不満そうな顔。
再び人間の姿に化けるヨッスィー。
「だって、今日は二人で決めた旅行の日でしょぉ〜。
ヤグチ、いつも2人でどこかへ行こうって日になかなか起きないじゃないですかぁ!!」
「ごめんごめん。ヤグチ今度からちゃんと起きるようにするよ。」
(それいつも言ってるよ、ヤグチ。)
あえてその言葉はいわない。ヨッスィーはいつでもヤグチのことを信じているから。
「ご飯出来てますよ、ヤグチ。食べましょ。」
「うん…。その前に顔洗ってくる…。」
ゆらりと立ち上がると、ヤグチは家の外へ出た。
「ふぁぁぁ〜〜ふしゅっ。」
大きく口を開きあくびをし、目を擦る。
ヤグチは、1年半前に設置した井戸に桶を放り紐で引き上げる。
汲まれた水で顔を洗った。
「うひゃ〜〜、つめて〜〜〜。」

さっぱりした。

「手ぬぐい忘れた…。」
玄関まで戻りヨッスィーを呼ぶ。
「ヨッスィー、ヨッスィー。ちょっと手ぬぐいもって来て。」
すると、奥からヨッスィーが手ぬぐいを持ってくる。
「またわすれたんですかぁ〜。しっかりしてくださいよぉ〜。」
微笑みながらヨッスィーはヤグチに手ぬぐいを渡す。
「アハハハ…ごめん…。」
ぬれた顔をふき取るヤグチ。
「ありがと。」
と、手ぬぐいを渡し返した。
また微笑むヨッスィーは奥に戻っていく、その後姿を見つめるヤグチ。
「幸せ…か。」
そう小声でつぶやいた。

 (今は…、ヨッスィーには前みたいに毎日のように機は織らせてはいない。
ヨッスィーの反物技術が世間に認められ、一反の単価が今は高くついている事もある。
それにヤグチはもう、ヨッスィーが鶴だって知っているから、深夜に機を織らせることもない。とっても健康にいい生活をしている…。
昼働いて、夜は愛し合って寝る。毎日が平凡だけど充実した日々。こんな毎日が嬉い。
毎日ヤグチは浪人で傘作ったり、時折来る警護の仕事をしたり、暇なら家の前の畑を耕して、生活に必要な野菜を作る。
これが幸せ…これこそヨッスィーと築いている幸せ。)

そう思いながらヤグチはニタニタして朝食をとっている。
「ヤグチ…?何ニタニタしてるんですか?」
不思議そうにヤグチを見るヨッスィー。
「いや、なんか、幸せだなって…。」
「幸せ…。うん。私も幸せだと思います。」
ヨッスィーもご飯を口に含み微笑んだ。
「すきだよ、ヨッスィー。」
「!!ゴホンゴホン、な、なんですか、いきなり。」
「いや、言ってみたかっただけ。」
「私も好きです…。」

2年経っても未だ熱い2人である…。

食事を終えた2人。

「んじゃあ出かけようか、旅行に。」
「はいっ。」

そう、今日は1ヶ月前から計画を練り決めた旅行に出かける日なのだ。
予定は4日間、東にある温泉地への慰安旅行である。

「じゃあ、お願い、ヨッスィー。」
「はい。」
ヨッスィーは風呂敷の中から小槌を取り出した。
服を脱ぎだすヤグチ。
「何か恥ずかしいね。服脱ぐのは夜だけでいいとおもうんだけど。」
そして全裸になる。
「な…なにじっと見てるの、ヨッスィー!!」
「あ、いや、あのすいません。」
頬を赤らめる2人。
「早く小さくしてよっ!!」
「えっ、あっ、はいっ。」
慌ててヨッスィーは小槌を振りだす。
「小さくなーれ、小さくなーれ。」
とヤグチに向かって24回振る。
すると、ヤグチの身体は一寸程度の大きさとなった。

「ヨッスィー、服っ、服っ!!」
「あっ、はいはい。」
引き出しから小さな小さな服を取り出しヤグチに渡す。
ヨッスィーが12年前に作った、当時小人だった頃のヤグチの服である。
ヨッスィーは風呂敷に大きい時のヤグチの服を一着、小槌と旅の資金を入れ首に下げる。
ヤグチが着替え終わったのを確認すると、ヨッスィーは千年鶴の姿に戻った。
「のってください。」
「うん。」
ヤグチは千年鶴によじ登り、乗った。

「安上がり旅行出発だぁ〜!!」
と、ヤグチは拳を高く上に突き上げた。
そして、小人ヤグチと千年鶴ヨッスィーは旅行をするべく大空へ飛び立った。

 

当てもなく森の中を歩く後藤と加護。
(これは…夢?)
「ねぇ、ごっちん…。これ、夢だよね…?」
「たぶん夢じゃないよ…。」
「夢だよ、これ。」
そう言って加護は自分の頬を抓る。
「いたい…。」
「ね?」
「でも、夢だよ。さっきまで楽屋にいたんだよ。」
「実はね。後藤はこの世界に1度来た事があるんだ…。」
「えっ?」
「たぶん同じ世界…ううん。きっとここは数百年前の日本…。」
「うそだぁ〜。」
「本当だよ。たぶん、かごやちゃんが今回はここに呼んだんだと思う。」
「ねぇ、ごっちん…あの子、本当に加護の前世なのかな…。」
「後藤はそう思うよ。かごやちゃんは後藤が前にここに来て、始めて会った女の子で、
一緒に旅をして、娘。そっくりの女の子たちに出会って…その旅の時に氏んじゃったんだ。」

「氏んだって…。」
「後藤がこの時代に来たせいで…きっとかごやちゃんは…。」
「その話が本当なら、何でこの時代にごっちんは来たの?」
「わかんない…。その時「愛ばか」出した頃でロケやってて…、トイレ行きたくなって、
近くのお寺のトイレ入ったら光に包まれて、この時代に来てた。」
「どうやって帰ってこれたの…?」
「うんとね、旅で出会った圭織そっくり22世紀から来たロボットの女の子に帰り方教えてもらったんだ。それで、帰れた。」
「じ、じゃあ、その方法で帰ろうよ…。こんなわけのわからない所に居たくないよ…。」
「無理…。このままじゃ加護が消えちゃうから、かごやちゃんの言ってた通りにしなきゃ…。
それに帰るって言っても、その圭織そっくりの子が何時何分のある場所に行けば帰れるって教えてくれたから帰れたんだ…。」
「そんな…。」
急に歩きを止めた加護。

「わかんないよ!!」
蹲る加護。
「加護…。」
「だってそうじゃん!!いきなりこんな所連れてこられて!!何を信じたら良いの!!もうわかんないよ!!」
次第に加護の涙が瞳から溢れてくる。
「加護…。」
「帰りたいよぉ〜…帰りたい…。お父さん…お母さん…。」
肩に手を添える後藤。
「大丈夫だよ。何とかなるから。きっと…。」
そっと加護の隣に座り、後藤は小さく震える加護の身体を包んだ…。
「よしよし…。」

 

藩主

「まだか!!まだ不死鳥は見つからぬのか!!」

「ユウキ様、お言葉ですが不死鳥なぞという存在するかどうかわからぬものなど見つかるわけがございませぬ。」

「ばか者!!朕はごほっ、ごほっ、不治の病なるぞ!!朕の病を治すには不死鳥の血が必要なのだ。
兵を増やせ!増やすのだ!!見つかるまで貴様も帰るでないぞ!!」

「はっ!!」

廊下へ出る家臣。

「ユウキ様も困ったものだ…。不死鳥なぞどこにいるものか…。
まったく医者もただの風邪と花粉症が続いているだけと言っておるのに…。」

愚痴をこぼす家臣。

「はて、どうしたものか…。我が藩は小さい…。そんなたわごとで兵を出せるものか…。」

途方に暮れた家臣は庭の池に泳ぐ鯉に餌をやる。

「アメンボはいいのう…。自由気ままで…。」

「アメンボ?そうか、その手があったか。」

そして家臣は4人のくノ一を呼び出した。

家臣の目の前に現れたくノ一。

「くノ一メロン組、只今参上しました。」

「よく来た。めぐみ、あゆみ、雅恵、あと…?」

「瞳です。」

「そうそう、そうであったな。ふははははは。」
笑ってごまかす。

「急な命令とは何用でございますか?」
リーダー格のめぐみが問う。

「うむ、実は不死鳥を捕らえてきてほしいのだ。」

「「「「ハァ!?」」」」

「殿のご命令だ。」

「またあのボンボンの気まぐれかよ!!」
「ったく短小包茎のくせに。」
「つーか不死鳥って何?」
「さあ?」

「ごほんっ!!私語は慎め。わしも殿にはほとほと手を焼いている。」

「で、不死鳥は何処に?」

「古い書物では、紅い羽をした不死の鳥が富士の山に住む。という記述がある。
そこに出向いて捕らえてきてほしいのだ。やってくれるな。」

「富士!?あたしパス!!樹海で死にたくない。」
一番乗りで断る雅恵。
「あ〜、私も空気の薄いところはちょっと無理ですね。」
続いてめぐみも断った。
「私冷え性だから駄目。」
そう言って、瞳も断った。

「私は…。私は…。」
焦るあゆみ、なかなか言い訳が見つからない。

「言ってくれるな、あゆみよ。おぬしの10倍能力に賭けておるぞ。」

「えっ、え〜〜〜!?」

がんばってーと言いたそうに歩みに向かって小さくてを振る3人。

「ひ、ひどい…。わ、わかりましたっ!!行けばいいんでしょ、行けば!!」

「うむ、わしは別荘に身を隠すことにしよう。頼んだぞ、捕まえるまで帰ってはならぬ。」

「はぁ〜〜。」
気の抜けた返事をするあゆみ。

そうしてくノ一メロン組のあゆみは富士山へ向かった。

(ついでだから実家でも帰ってみようかな。)

 

出発

朝食を食べ終わったのの達。
まったりとした空気が流れている。
「でも、どこに行けばいいべさ、不死鳥探すっていってもわからないべ。」
「そうだねぇ、わかんないねぇ。カオリさん知ってるの?」
「ワカリマセン。」

「「「「…………。」」」」

「あ。」
「ん?なんかわかったんれすか?圭しゃん。」

「あのね、鬼ヶ島戻れば関係する本が見つかるかも。」
「鬼ヶ島でどこにいるかわかるんだべか。」
「まあね、あたしの家でそんな記述のある本を読んだことあるんだ。」
「じゃあ、また鬼ヶ島に行くれすよ。」
「たぶん、家はあのまんまだと思う。利用価値のない島だからね。」

そうして、4人は旅の支度をした。

「じゃあ行ってくるれすよ。ねぇしゃん。」
「そっか、ほなな、のの、圭ちゃん、あと、カオリさん。」
そういって玄関まで見送る中澤。

ふと、圭が
「あ、根暗呼んだほうが早いね。」
と言った。
「チャーミーしゃんれすか?」
「そうだよ、あいつ呼んで飛んでいけば早く鬼ヶ島行けるし。」
「そうだべ、呼ぶべさ。一緒に逝ったら楽しいべ。」
「だいたい2年経ってるから、多分呼べると思う。」
「オ礼モ言イタイナ。」

そこで、圭は家の中へ戻り大きなホラ貝を持ってくる。

「埃かぶってる。」
圭は、パッパッと軽くホラ貝に付いた埃を払い、ホラ貝を吹いた。

 

チャーミー3分クッキング

竜宮城にて。

チャーミー乙姫は今日も料理を作っていた。
歌を歌いながら。

「人間ってシャララララララ〜♪」
どうやら今日は鍋物らしい。
水槽でスイスイ泳ぐ鯛。
「変われぬものですかぁ〜♪」
水槽に手を突っ込み、鯛をつかんだかと思えば水中で鱗を剥がしている。
もがく鯛、彼は必死。
「心じゃなんとかしようとは〜♪」

バリバリ。ガリッガリッ。

水中で包丁をうまく使い鱗を剥いでいる。
その隣ではだしのよく取れた鍋が火にかけられふつふつとしていた。

「思ってはいるけれどぉ〜♪」
歌を歌いながらも水中で鯛の鱗を綺麗に剥ぎ終わり、
「自分にいろいろいいわけてぇ〜、足踏みしている〜♪」

鍋に放った。

生きたままですか!?

だしが効いた鍋の中で口をパクパクさせ泳ぎ、跳ねる鯛。

「人間ってシャララララララ〜変わらぬものですかぁ〜♪」
苦しむ姿をほほえみ、眺めるチャーミー乙姫。

徐々に弱っていく鯛。

「人間ってシャララララララ〜♪」

ぷっかり浮いた。

「簡単にできちゃったよ♪」

火力を強めるチャーミー乙姫。

「今は...そんな気がする...ふふふふふ♪」

その時、チャーミーの耳だけにホラ貝の音が聞こえた…。
「ん〜もうっ!!せっかく作ってたのにぃ〜♪」
と菜箸を放り投げる。
「捨てちゃえっ!!」

バコーン!!

チャーミーは思いっきり大きな調理中であった鍋を蹴っ飛ばした。
床に流れるスープ。
「あんた達っ!!片付けときなさいよっ!!」
自分で散らかしておいて亀たちに命令するチャーミー。
「ちょっと出かけてくるわよっ♪もうっ、圭さんたらっ♪」
そういうとチャーミーの周りから煙が立ち昇り、その中から海王竜が姿をあらわした。

「行ってくるわねっ♪」
チャーミーは勢い良く、竜宮上を飛び出した。
残された亀たちは恐怖と戦いながら一生懸命に雑巾がけしたという。

海面から飛び出すと、天気は悪天候であった。
「雨降りそうね♪猛スピードで行っちゃおうかしら♪うふふふ♪」
空を高速度で飛ぶチャーミー。

飛んで2時間

「あらっ♪あれはヨッスィーとヤグチさんね♪」
そう、千里眼を持つチャーミーは旅行をしているヨッスィーとヤグチを見つけたのだ。

そして、徐々に近づくとヨッスィーとヤグチもチャーミーに気が付いた。
「ヨッスィー、あれチャーミーだよっ。挨拶していこうよ。」
「ハイっ。」

「ヤグチさ〜ん、ヨッスィ〜♪」
アニメ声で近づいてくる海王竜、奇妙だ。
「よっ、チャーミー、久しぶり。どうしたの今日は。」
「久しぶりですねぇ〜♪今日はぁ〜圭さんに呼ばれたのぉ〜♪」
「へぇ〜、じゃあこれからののちゃんの家へ?」
「そうですよぉ〜♪ヤグチさんたちはどこへ行くんですかぁ〜♪」
「これから、ヨッスィーと旅行っ。ね?ヨッスィー。」
「はいっ。」
しゃべる鶴。これも奇妙。

「いいなぁ〜旅行。チャーミーも誰かと二人っきりで行きたいなぁ〜♪」
「早くいいひと見つけなよ、いい年なんだから。」
「チャーミーも一応昔はいたんですよぉ〜、素敵な人…。」
「へぇ〜。」
驚くヤグチ、意外だと思ったようだ。

やがて、雨がぽつぽつと降ってくる。

「やばっ!ヨッスィー雨降ってきちゃったね。チャーミー早く行ったほうがいいよぉ〜。」
「はいっ♪では、また♪」
「バイバイ、またね。」
そう別れを告げ、各々目的の場所へ飛んでいったと思われた…。

別れを告げてまもなくヤグチ達の後方に雷が落ちた。
「!!!!」
驚き身を低くするヤグチ。
「こわっ…。」
とヤグチが振り返るとチャーミーが地上へ落下していくではないか。
「ヨッスィー!!もどって!チャーミーが雷に!!」
「はいっ!!」
円を描き方向を来た方向へ向けるとチャーミーが地上に落ちたドシーンとした音が響いた。

「カッケー!!」
「カッケーかよっ!!」
ヨッスィーはチャーミーが落ちたと思われる森へ向かった。

 

待つ女達

「こねーなぁ…根暗…もう7時間も過ぎてる…。」
「ホントどうしたんれすかねぇ〜。」
「前方空中生体反応は鳥類シカナイヨ。」
「来るまで待つ気なん?その貝吹けばどこにおっても来るんやろ?」
中澤がボーっと待ち続ける4人に話し掛ける。

「なっち達も行ける所まで行けばいいべさ。途中で合流すればいいべ。」
「そうだね。その方が効率いいかも、待っているよりね。」
そして、荷を持ち始める4人。
その時、家の中からつんくが出て来た。
「のの!持ってきぃ〜。餞別や。」
小さな袋をののに向かって投げる。
ジャラっという音がする。
ののが中を確かめると5両ほど入っていた。

「つんくしゃん…。こんなに…。」
「ええから…な、中澤。」
「せやな、大目に見るわ。」
「んじゃあ、行くべか?」
「ソウデスネ。」
なっちの言葉に頷く3人。

そうして4人はつんくの家を旅立った。
今回の旅立ちは誰の涙も無く晴れやかだった…。

見えなくなるまで手を振るつんくと中澤。

「行ってもうたなぁ…。」
「そうやねぇ…。」

「ほな、わしも準備しよかな。」
「あ…。」
「何や?中澤。」
「つ、つんくさん!!牛が空飛んどる!!」
空を指差す中澤。
「なに寝ぼけたことゆーてんねん…。」
と、その指差す方向をみるつんく。

「どこや…?ん?」

ドカッ!!

「ぐ…は、謀ったな・・・中…。」

バタッ。

「裕ちゃんの勝ちやで、今回はウチがついてくでぇ〜♪」
その場に蕎麦打ち棒を放り、まとめておいた荷を担ぎのの達の後を追った。

2時間後

「あたたたた…。やられた…。」
頭を擦りながら起き上がるつんく。
「今度はわしが留守番かぁ〜、覗きができんがなぁ…。」
「まったく、油断も隙もあらへんなぁ…さすが元くノ一や…。」
そして、つんくはとぼとぼと家の中に入っていった。

 

楽園

暗い森の中を歩き続ける二人。

「もう疲れちゃったよ、ごっちん…。」

「もう少し歩こうよ、加護。」

「どこに向かってるかもわからないんだよ、ウチら…。」

「でもさ、歩いてれば何か見つかるよ…。」

「見つかるって何を?」

「わかんないけど…。」

「わからないのに…?」

「あ…。」

「なに?ごっちん。」

「前…。」

「前?」

そう、森の中の広場に二人は出たのだ…。
その広場には自然なものなのかわからないが、
りんごの木や葡萄の木、桃の木、柿の木が果実を実らせながら生えていた…。

「スゴイ…。」
驚きを隠せない二人。
ふと加護が、
「ごっちん、お腹すいたね。食べれるかな…あれ…。」
とりんごの木を指差す加護。
「人のものかもよ…。不自然じゃない?こんなに果物の木だけ生えてるのって…。」
「でも、食べて見つかったら謝れば良いよ。頭下げれば許してくれるよ、ごっちん。」
結構ちゃっかり者の加護。
「そうだね。」
と近寄ってりんごの木を見る。
「食べられそうだね…。」
後藤はりんごを二つほどもぎ取ると、軽く拭いて加護に一つ渡す。
「あ〜あ、ごっちん取っちゃったぁ〜。」
「別にイイよ、後藤が二つ食べるよッ。」
取り返そうとする後藤。
そのてを逃れようとふざける加護。
「ごめん〜うそぉ〜〜。」
食べ物にありつけたせいか、笑顔が戻る二人。
二人は試しにそのりんごをかじってみた。

「「…………。」」

「「すっぱぁ〜〜〜〜い!!」」

バタバタする二人。
「天然のりんごかもしれないよ。でも天然だったとしたら、こんな味なのかなぁ。」
「あ、ごっちん見て…あれ…。」
「どしたの?加護。」
「洞窟…。」
その広場の先には大きく口を開けた洞窟があった…。

 

scar

「チャーミー!!」

その身体は深く傷つき、森の中に落ちていた…。
ヨッスィーから下りるヤグチ。
「ヨッスィー!!ヤグチを元の大きさに戻してっ!!」
とすぐさま服を脱ぎ捨てるヤグチ。
「はいっ!!」
ヨッスィーはすばやく人間の姿に化ける。
すばやく
「大きくなれ!大きくなれ!」
と24回小槌を振った。

大きくなるヤグチ。
「ヨッスィー!!先にチャーミーの様子見に行って!!」
「あ、ハイ!!」
すばやく、風呂敷の中にある服を着込むヤグチ。

「チャーミー!!カッケー!!じゃなくって、大丈夫!?」
「…………。」

「どう?ヨッスィー!」
着替えたヤグチもチャーミーの元に来る。

そのチャーミーの様子を見たヤグチは
「ひどい…。」
ともらした…。

「うぅ…ヤグチさん…痛いよぅ…。」
「チャーミー!?わかる!?ヤグチだよっ!!」
「…うん…。」
「どうしたらいいの!?どうしたら、どうしたら。ああ!もうわかんないよ!!」
取り乱すヨッスィー。
「落ち着いてヨッスィー!!ねぇっ!!チャーミー!!人の姿になれる!?」
冷静にヤグチはチャーミーに大きな声で呼びかける。
「うん…やってみる…。」
そういってチャーミーは深く呼吸をすると…その身体は収縮し人の形になった…。
「や、ヤグチ!!あ、あれ!!」
「何!?それどころじゃないよ!!」
とヤグチが振り向くと、ヨッスィーが小さな小屋を指差していた。
「よし、ヨッスィー!!チャーミーをあそこの運ぼう!!」
「はいっ!!」
そして二人はその傷ついた身体を必死に小屋の前へと運んだ。
戸をドンドン叩くヤグチ。
「すいません!!すいません!!どなたかいらっしゃいませんか!?」
ドンドンドンドン。
返事がない。
戸を引いてみるヤグチ。

開いた。

「よし、運ぼう!!」
中に入ると、布団やその他生活道具が有った。
「この際、命が最優先だからココを使わせてもらおう!!」
その傷ついた身体を、その布団の上へと寝かせる。
「…痛いよぅ…。」
「大丈夫だよチャーミー!!」
そう言ってヤグチはチャーミーの手を握り、あたりを見渡す。
そして、ヤグチは手ぬぐいと桶を発見した。
「ヨッスィー!!ちょっとヤグチ河探して水汲んでくる!!チャーミーを看てて!!」
「はいっ!!」
そうして、ヤグチは立ち上がった。
すると
「ヤグチさん…ヨッスィー…ごめんね…。」
「いいよ、チャーミー。しゃべっちゃダメ。」
そうヤグチが言うとチャーミーはコクッと頷いた。

そして、ヤグチは河を探しに小屋を出た。

小屋の中の二人。
鶴と竜…。
その二人には、他が知らない過去があった。

「ヨッスィ…。」

「ダメだよ喋っちゃ…。」

「ヨッスィ…。助けられるの…2度目だね…。」

「チャーミー…。」

「あのころ、私はまだ千年鶴じゃなかったね…。」

「うん…。でも…あの時も私を助けてくれた…ヨッスィーがいなきゃ…今の私は…生きてなかった…。」

「そんなこと…。」

「ヨッスィー…いや、ひとみちゃん…。いつかお礼が…言いたかったんだ…。
あの人に出会えたのも…、今ここにいるのもひとみちゃんのおかげ…。」

「ううん。そんなこといいよ…。だから…喋っちゃダメ…。」

「うん…。ただ…あの時のお礼がいいたかったんだ…。」

「チャーミー…。」

「身体…痛いよぉ…どうなっちゃうのかな…。」

「大丈夫だよ、チャーミーはさ、こんなに長生きしてるんだもん…これからも長生きするよ。」

「ふふふ。長生きかぁ…、さすがに…今日は罰が当たったのかも…。」

「チャーミー…。」
(また、生きたまま魚でもさばいたの…?)

「ヤグチさん…早く戻ってこないかな…。」

そのころヤグチは必死に森の中で河を探していた。

森の中を河を求めさ迷い歩くヤグチ。
(早く河を見つけなきゃ、チャーミーがチャーミーが…)
しかし、森の中は一層に暗さを増していた。
(恐いなぁ…。でもチャーミーの命がかかってるもん…。)
懸命に自らを奮い立たせる。
(歌でも歌おう…気がまぎれるし…。)

「あるぅ日〜、森の中〜熊さんに〜♪……」

その時ヤグチの目の前で雑木が揺れ大きな影が現れた。

「出会った〜〜〜〜〜!!!!」

そこには大きな黄色の熊がいたのだ。

「グルルル…。」

目が合うヤグチと熊。
熊はよだれを垂らしている。

「イヤーーーーー!!!!」

一目散に逃げるヤグチ。
しかし、熊も追ってくる。
(ヤダ!!食べてもおいしくないよ!!ヤグチなんておいしくないよ!!)
「そうだ!!小槌!!あ゛−−−−−!!」

(置いてきちゃった……。)

「いたっ!!」

転んだ。

身がすくんで動けないヤグチ。
じりじりと近寄る熊。
「グア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛−−−−!!!」
熊は立ち上がった。
「きゃああああああああ!!!」
目をつぶり思いっきりヤグチは叫んだ。

「…………。」

ぬるっ。

(?????)
「!!!!!」
そっと眼を開けると熊はヤグチの頬を舐めていた。
その時、女の子の声が聞こえた。
「こらっ、しげる!脅かしちゃダメだよ。」
そこに現れたのはマサカリを担いだピンクのおかっぱ頭の女の子だった。
「????」
わけがわからないヤグチ。
「驚かせたでしょ?私、亜弥太郎、亜弥でいいわ。あなたは?」
そういいながら、熊を撫でる亜弥。
「お、おれ、一寸ヤグチ…。」
「よろしくね、ヤグチさん。久しぶりに人に会った。」
そう言って、亜弥は手を差し伸べてきた。
手につかまり、立つヤグチ。
「この子は、しげる。蜂蜜好きの熊でね。おとなしくて、気が弱いから熊の中で仲間はずれにされてるの。でもね、私の友達なんだ。」
「はぁ…?」
ふと、亜弥はヤグチが持っているものに気がつく。
「あ、それ私の家の桶でしょ?もしかして泥棒?」
作り笑顔で微笑む亜弥。

「あ、いや、違うの!!これは、その、友達が雷に当たっちゃって、重傷で…、
森の中で偶然見つけた小屋にその子運んで…それで、水汲みに、これ借りて…。」
「ふ〜ん。うそじゃないようね。しげるは嘘ついてる子噛むから。」
そして、ヤグチは思い切って亜弥に聞いてみる事にした。
「あの!!ここら辺に医者いませんか!?」
首をかしげ、手をひじに当て、片方の指を立てて頬に軽くノックさせながら目線を泳がす亜弥。
「う〜ん。いないよ。でも、ここら辺落雷受ける人多いんだ。しげるもね、ここにハゲあるでしょ?
、落雷受けたんだ。けど、この通り。私が看病して治して元気だよ。」
「じゃあ!!」
「いいよ、これから水と薬草取りに行こう。一刻を争うんでしょ?」
「うん!!」
「じゃあ、しげるにのって。しげる、鼻と耳がいいし、私の言うことわかるから。」

そして二人はしげるに乗って、薬草と水の有る場所へ向かった。

(チャーミー…待っててね…。)

 

宿屋

夜も遅くなり、宿に泊まることのなったのの一行。
「えー!?カオリ、もうお風呂には入れるんだべか!?」
「ソウダヨ。一緒ニハイロウヨ。」
「わ〜い。カオリしゃんの背中流すれすぅ〜♪」
「そっか、じゃあ行こうか。」

……………………………

「悔し涙ぽろり〜♪」
のの達より先に風呂に入っていた中澤。
「ふぅ〜♪ええなぁ〜、気持ちええわぁ〜。旅最高!!やな。」
手ぬぐいを顔に当て汗をふき取る。
その時、風呂の窓に人影が…。

覗きだ…。

(!!!覗きかいな。お銀みたいやなぁ〜♪せや、なんか演技したろかな?)
「あっは〜ん♪」

悩殺ポーズ。

外から、
「オエッ!!」
と聞こえ、人影が消えた。

「ちょお!なんやねん!!「オエッ!!」ってええ年の女の入浴姿みて「オエッ!!」かいな!!
いてまうどゴルァ!!」
後の祭り。
「何やねん…ウチまだイケとるがなぁ〜胸あらへんし、水弾かへんけど十分な色気もっとるッちゅ―ねん…ぐすん。」
そう中澤が凹んでいると、脱衣所から聞きなれた声が聞こえてくる。

「誰か入ってるみたいれすねぇ〜♪」

(!!!アカン!!ど、どこに隠れよう!?)
あたりを見渡す中澤、しかし隠れられそうな場所が無い。
「一か八かやな!!元くノ一の力見せたるわ!!」

ガラガラガラ…。

「誰もいないみたいだべさ。」
「おっかしいれすねぇ〜、確かに服は有るんれすけど…。」
「まぁ忘れたんでしょ。とにかくはいろうよ。」
中に入り、身体を洗い始める4人。
「カオリしゃん細いれすねぇ〜♪ののお腹出てるれすぅ〜。」
「ソウ!?軽量化サレタカラカナ?」
「けいれうか…?何れすか?」
「ダメだべさ、ののちゃん。カオリの言葉の意味なんて考えたら。」
「そうれすね。気にしないれす。てへてへ。」
その時、天井を見ていたカオリがあるものを見つけた。
「ア…。」

天井に中澤がへばりついていた。
必死の形相でカオリに向かって首を振っている。
(人物認識中…。データ無。ヨッテ無視。)
化粧が落ちて、なおかつ鬼気迫る中澤の顔は誰だかカオリには認識できなかった。

そして、十分湯船に浸かった後、風呂を出た4人。
風呂の戸を閉めると同時に、

ドシーン!!!

何かが落ちる音が響いた。

「なんの音れすかねぇ?」
「さぁ?」
脱衣所で4人はそんな会話をして笑っていた。

(イタタタタ…、思いっきり腰打ってもうた…。)
腰を擦る中澤。
「年かなぁ…、昔はこんなん平気やったのに…。」
改めて、自分が年老いたことを痛感する中澤。

……………………………………

浴衣を着て、部屋に戻るのの達。
「おっ、ご飯が出てるべさぁ〜!!!」
「ホントれすねぇー!!食べるれすぅ〜。」
それぞれ御膳の前に座る。
「「「「いっただきまーす。」」」」

行儀が悪いのの。
がっつくなっち。
箸の使い方がいまだによくわからないで苦戦中の圭。
凝視して、江戸時代の食事のデータを取るカオリ。
4者4様で食事を行っていた。
ふと相向かいの圭がののを見て気がつく。
「ののちゃん…、大事なところ見えてるよ…。」
片足を立てて食べていたののの大事な部分が丸見え。
江戸時代の女性に下着をつける習慣は無かった。
「てへへへへ…。」
といって、正座するのの。
「もうちょっと女の子らしくしたほうがいいべ…、ののちゃん。」
「なっちもね、お膳の周り食べかす散らばってるよ。」
「アハハだべぇ〜。」
「あ、カオリしゃん!!食べないならののがもらうれす!!」
「なっちがもらうべ!!」

そうして、夜は更けていった…。

深夜。

ののは再びあの夢を見ていた…。

白い空間。ののはその中に浮いていた。

「のの…。」
どこからとも無く聞こえる姉・かごやの声。
「おねーちゃん!!どこなの〜!?出てきてよぉ〜!!」
必死に叫ぶ。
「ごめんなぁ…のの…。」
「出てきてよぉ〜…寂しいよぉ〜〜!!」
「ウチは…アンタの傍にいる…がんばって旅をしーな…。」
「おねぇちゃ〜ん…のの辛いよ…。」
「何弱音はいとんねん…、みんなおるやん…なっち、カオリも圭ちゃんも…。」
「でもおねーちゃんがいないもん!!」
「………せやな、けど…。」
何かを言いかけ、そのままその声は聞こえなくなった。

「おねーちゃん!!やだよ!!おねーちゃん!!」

飛び起きるのの。

「また…夢れすか…。」
ふと窓を見ると満月が顔を出していた…。
「んぐっ、ひっく、おねぇちゃぁん…。」
泣かないと誓ったはずなのに涙がこぼれるのの…。
「ドウシタノ…?」
その声にびくっとする。

「カオリしゃん…な、なんでもないれすよ…。てへてへ…。」

「オイデ…サミシインデショ…。」

「……うん……。」
そう言って、ののはカオリの布団の中に潜り込んだ。
そっとののを包み込むカオリ。

「カオリネ…人間ジャナイカラ…気持チトカヨクワカラナイケド…ノノチャンガ寂シイッテ、分カルキガスルンダ…。」

「カオリしゃん…。んぐっ、ふぐっ、うわ〜〜〜〜〜ん!!」

「ヨシヨシ…泣テイイヨ…。」
カオリはののを抱きしめ頭を優しく撫でた。

(ドウシテコンナニ悲シイノカナ…。)

その泣き声はしばらく続いたが、やがて寝息に変わった。

 

洞窟

「あそこに人が住んでいるかもね…。」
「行くの?ごっちん。」
「もちろん。だってりんご勝手に食べちゃったし。」
「そうだね。でも恐い人だったら?」
「その時はその時だよ。」
「そっか。」
二人はりんごをかじりながら、洞窟の中に入っていった。
中は真っ暗闇。

キキキキキキキ…。

「きゃっ!」
「おおっ!!」
思わずその得体の知れない鳴き声に身を伏せる二人。
「大丈夫だよ加護。たぶんコウモリ。」
「かえろ〜よ〜、恐いよー…あ、待ってよごっちん!!」
後藤はそんな加護の言葉を聞かずに中へ進んでいった。
すると、先のほうに日の光ではない明かりが見える。
どうやら炎による明かりのようだ。
「やっぱり人いるみたいだね。」
「うん…。」
二人が少し進むと少し広い空間に出た。
その時
「誰や!!」
と、二人を見つけたその洞窟の住民が叫ぶ。
その声にびくっとする二人。
ふと、その住民と後藤の目が合った…。

「「…………。」」

「「あーーーーーー!!!!」
「落ち武者ぁ〜〜〜!?」
「ごまちゃーーーん!?」
「なんだー、落ち武者じゃ〜ん。驚かせないでよー!!」
「こっちがビビったッちゅーねん!!」
「何でこんなところにいるの!?」
「それはこっちのセリフや。未来に帰ったんちゃうんかい自分。」
「う〜ん…。また来ちゃった。アハハハ…。」
「アハハやないやろ〜。で…その後ろに隠れ取るん誰やねん?連れか?」
「あ、ほら、加護。挨拶しな。」
「うん。」
そう言って、後藤の後ろから顔を出す加護。
「こんばんわ…。」

「………!!!!!で、出た〜〜!!ナンマンダブナンマンダブ…。」
手を合わせ必死に拝む落ち武者。

「アハハハハ。」
笑い出す後藤。
「何や!?何がおかしいねん!?」
「だって、この子かごやちゃんじゃないよ。」
「へ…?」
「似てるでしょ?」
「まぁ…。」
あっけに取られる落ち武者。
「この子がね、かごやちゃんの生まれ変わり。つまり私と同じ未来の子。」
「どうゆうことやねん?」
「うん、長く話せば長くなるけど…この子が未来からかごやちゃんに呼ばれてこの時代に来たの、後藤はついでかな…?」
「なんや、また大変そうやな…。あ、ほかの奴は??」
「みんなとはまだ出会ってないんだ…。落ち武者がいるってことはあれからそんなに経ってないよね。」
「さよか…、あれから2年くらいたっとるで。あのな、鬼退治してな、ウチ報酬に
1両もらったねんけど、スリにおうてなぁ…で、また洞窟暮らしやねん。アハハハ。」
「そっか、2年か…。あ、りんごもらった。」
「ええよ、別に。ウチがここ住みついた時にはすでに生えとったもんやし。まだぎょーさんあるしな。」
「平家さんそっくりだね…。」
ふと落ち武者の顔をジーっと見ていた加護が後藤に話し掛ける。

「ああ、この人ね、落ち武者って言うんだけど、後藤と前旅をしたひとなんだ。
多分みっちゃんの先祖か生まれ変わりだと思うよ。」
「ふ〜〜ん。」
納得する加護。
「誰やねん、そのみっちゃんって。」
「なんでもないよ。」
「まあ、ええか。で、なんの為にこの時代に連れて来られたん?」
「んとね、赤い鳥を見守ってくれってかごやちゃんに言われたのよ…
どこに居るかわかんないんだけど気づいたら二人でこの森にいたんだ。」
「ふ〜ん…。赤い鳥か…。ん!?もしかして、この先に居る鳥ちゃう!?」
「し、知ってるの!?」
「お、教えてください!!」
「ああ、まぁちょおついて来ぉ〜。」
そう言って落ち武者は洞窟のさらに奥へと二人を案内した…。

「「うわぁ〜〜…きれ〜〜〜い…。」」
その鳥を見たとき加護と後藤は同時にその言葉が出た。

そこには真紅の羽をした一匹の鳥が蹲っていた…。

 

village “natsukashi”  

「ごめんね…。二人とも…。」
「ううん。しょうがないよ、彩ちゃん。」
「私、いつかここ出なきゃって思っていたから…。」
何もない家で彩、明日香、紗耶香はそう話していた…。

「ここも売りに出したし…。」

そう、彩の父は万屋主人で、明日香、紗耶香はその万屋の使用人になっていた。
しかし、半年前彩の父親は流行の奇病で倒れ、そして先日息を引き取ったのだ…。

品物はすべて下取りされ、家の権利書も譲渡され、数日後には使用人二人は出て行かなくてはならなかった。
娘である彩は2年ほど前に結婚をし、この後、旦那の家に住むことになっているが、
明日香と紗耶香には何処にも行くあてが見つかっていなかった…。

「ごめんね…二人の再就職先見つけてあげたかったんだけど…もう、私には何の権力も無くて…。」
頭を下げる彩。

「そんなこと無いよ、今まで明日香も私も生きてこれたのは彩ちゃんや、
彩ちゃんのお父さんが私達を雇ってくれたからだもん。ね、明日香。」

「うん。そうだよ。私も18だよ。自分のことなんて自分で決められるもん。」

「明日香…紗耶香…ごめんね、本当にごめんね…。」

重い空気と彩の赤子の声だけがその部屋を支配していた…。

「そうだ、あのね、少ないけどこれ、退職金。」
彩は風呂敷から2両を取り出した。

すべて売り払ってたった2両…。

彩の父は死後大きな借金を残していった…。
それは土地、家、商品、家具すべて売り払って2両程度のすずめの涙ほどしかない遺産となった。

「いらないよ。こんなの…。」

「私も要らない…。」

二人はその事情を知っている。
彩の父親が死ぬ直前まで二人は経理と営業を担当していたのだから…。

彩は二人がこの金を受け取り拒否するのは分かっていた。
けれど、こうなった以上自分にも責任はあると思っていたのだ。

「お願い…。もらってよ…。」
二人に1両ずつ押し付ける彩。

「いらないよ!!こんなの!!」
そう叫び、明日香は1両を床に叩きつけ、外へ飛び出していった…。

「明日香!ちょっと待って!ごめん、彩っぺ今はもらえない。」

紗耶香は彩に1両を渡し返すと、そのまま明日香を追った。

「まって!明日香!!」
呼び止めようとするが、明日香は加速して走っていく。
紗耶香も見失うまいと、明日香を追って走った。

そして二人は、ヤグチ、亀吉と別れたあの川の土手に来ていた。

やがて疲れたのか走りを止める明日香。
やっとその明日香に追いつく紗耶香。

「はぁ、はぁっ、速いよ…。明日香…。」
息切れ切れな二人。
「…………。」
黙る明日香。
「はぁっ、はぁっ、彩ちゃんだって…辛いんだよ…。
けど、そうするしかないって思ったからああしたんだと思う。」
「…………。」
「ちょっと?明日香?きいてんの!?」

「ねぇ、ここでヤグチと亀吉を見送ったんだよね…。」
突然川を見つめながら喋りだす明日香。
「はぁ?」
「ヤグチは、自分の力でヨッスィーって女の子を見つけ出したんだよね。大きくなるって夢も叶えてさ…。」
「それが…?」
「私達はさ…。単に行き場がなくて彩ちゃんの家にお世話になっていただけなんだよね…。」
「…………。」
「私もさ、自分の将来考えるころだなって思ってたんだ、最近…。」
「明日香…。」

「私ね、お母さん探したい…。私を捨てたお母さんを探したい。ただ、ひと目でもいいから私のお母さんを見てみたい…。」
「…………。」
「最近、夢に出て来るんだ…。顔のない女の人が小さな頃の私に『ごめんね。』って言って去っていくの、
でもその女の人の頬は涙で濡れてるの…。私は「大丈夫だよ、私強いもん。」
っていつも答えてるんだ…。恨んだ事もあった、自分の運命を呪った事もあるよ、
でも、私お母さんを求めてるんだって分かったんだ…。」
「明日香…。」
明日香は泣いていた。
紗耶香には涙を見せぬよう背中を向け、でも身体は震えて、声は涙声になっていた、しかし明日香は語ることを止めない。
「もう私たちは旅立つべきなんだよ。彩ちゃんから、なつかしの村万屋から…。
お世話になったのに、ここまで生かしてもらったのに、お金なんてもらえないよ。
なのに、お金押し付けてきて急に悲しくなっちゃった…。」
「だって、それは…。」

「うん。分かってる…でも、従業員と雇い主の娘である前に私たちは友達だもん。」
「そうだね…。そうだよ…お金なんて要らないよね!!よし、お金の変わりに酒でも奢ってもらおう!!」
「…うん!!」
「これからのみんなの旅立ちの宴やろっ!!」
「うん!!」

………………………………

「すいません。どなたかいらっしゃいませんか?」
そのころ、万屋に一人の女性が尋ねてきた…。
「すいません、ウチはもう店たたんでいまして…やっていないんですけど…。」
たずねてきた女性に対し、店は閉店したことを告げる彩。
「あの、違うんです…。私今、人を探しているんです。娘を…。」
「娘さんですか…?」
「はい…、18歳くらいの女の子で…明日香って名前で…。」
「!!!!」
驚く彩…。
「ここのお宅に、同じ名前の同い年くらいの女の子がいると聞きまして…。」

「はい…、今ちょっとでてるんで、お待ちになってください…。」
「はい…。すいません。」
中に通される女性。
(明日香の母親…?十数年も頬って置いていまさら…?)
少し怒りに似た感情を持ちながら急須でお茶を注ぐ彩。
「どうぞ…。」
お茶を女性に出す。
「すいません。」
と頭を下げる女性
「あの…、他人のことを口を挟むようですけど…なんで小さい明日香を置いてったんですか?」

「……それは…、あの子は妻子ある男性と私の間に出来た子で……。」
「そんな理由で捨てるんですか?子供には関係ないじゃないですか!?」
徐々に怒りに充ちてくる彩の口調。
「はい…本当にあの子には申し訳ないことをしたと…謝っても謝っても許されることではないのは重々承知なんです…。」
「なら、なんでいまさら!?」
「あの子を置いていった後…。がむしゃらに私は働いてやっと店をもてるようになったんです…
そうしてやっと、落ち着いた時無性にあの子の事が気になって…。」
「そんなの、身勝手ですよ、貴方の!!」
「はい…。でも…あの頃はあの子を育てられなかった…。育てられなかったんです!!
迎えにいく事をいつも考えて、うっ、うっいつも…働いていました…。」
ついに泣き始める女性…。
「…………。」
怒りと情けが心の中を混同する彩はこれ以上責めるのを止めた。
(責めても何も変わらない…。明日香が来るのを待とう…。)

そのころ、のの一行はなつかしの村に来ていた。
「ん〜。いいれすねぇ、この感じ。懐かしいれす。」
「そうだべねぇ〜、ゴマちゃん元気だべかぁ?」
「ゲンキダトオモウヨ。今アンドロイド“後藤真希”モデルハ活躍中ダヨ。」
「なんで、あの子あたしが圭って名前だって知ってたんだろうね?」
「ん〜、のの前聞いたんれすけど、未来にものの達とそっくりの子が似た名前なんだそうれす。」

「あ…。明日香さんと紗耶香さんだべ。」
その時、なっちは明日香と紗耶香を見つけた。
「ほんとうれすぅ〜。明日香しゃ〜ん!!紗耶香しゃ〜ん!!」
手を振って二人の元へ掛けて行くのの。
その声に気づく明日香と紗耶香。
「あれ、あの子…ほら、ヤグチの友達の。」
「あー、どうしたんだろ?お〜〜い。」
手を振り返す紗耶香。
「元気れすかぁ〜?」
「ん?まぁ。ね、明日香。」
「うん。元気だよ。ののちゃんだっけ?元気?」
「はい!!ののはいつも元気れす、のんすとっぷののれすよ。てへてへ。」
なっち達もののに遅れ合流する。
「久しぶりだべ。」
軽く握手を交わすなっち。

「今日はみんなどうしたの?」
「ん〜なっち達は旅の途中だべ。」
「旅?何処行くの?」
「ひとまず鬼が島向かってるべ。」
「そっかぁ〜。もう夕方だし、宿決まってるの?」
「まだ決まってないべさ。」
「じゃあ、万屋に泊まっていきなよ、今日は宴会やる予定だから。」
「ちょっと、紗耶香。」
「いいじゃない。宴会は楽しい方がいいでしょ?」
「まぁ…。」
「食べ物出るれすか?」
「ん?たくさんでると思うよ。」
「なら、いくべ!いくべ!いくべ〜!!」
「いくれす、いくれす、いくれす〜〜!!」
圭はあきれ返った表情をしていた。

 

手当て 

「戻ったよ、よっすぃー!!チャーミー!!」
ヤグチが小屋の扉をノックする。
勢いよく扉を開けるヨッスィー。
「おかえりなさ…く、熊!?カ、カッケー!!!」
「カッケーじゃねーよっ!!あ、ここの小屋の家主の亜弥ちゃんと、熊のしげる。
亜弥ちゃん、この子、ヨッスィー。ヤグチの恋人。」
「はいー、亜弥ですぅ〜よろしく〜。」
「どうも。」
と亜弥とヨッスィーが握手を交わす。
「で、チャーミーの具合は!?」
「それが、なんか、さっきから意識がなくて…。」
「急ぎましょう。」
中へ入る二人、しげるは外で番犬代わり。
中へ入りチャミーを見た亜弥は
「これはひどい…。」
と、もらした。
「どうなの!?チャーミーの具合。」
「悪いよ、かなり…、ちょっと急いで服脱がせて。」
そう指示されヤグチとヨッスィーはチャーミーの服を脱がす。
するとその身体には無数の火傷が各所に見られる。

「「!!!」」
絶句のヤグチとヨッスィー。
「ヤグチさん。そこの棚にお酒があるから取り出して。」
「…………。」
あまりのショックに亜弥の言葉が聞こえないヤグチ。
「早く!!」
「…あ、うん。」
ヤグチが棚を開けると、そこには酒瓶が有った。
すぐさまに酒瓶を渡すヤグチ。
亜弥は酒瓶の栓を開けると酒を口に含み、チャーミーの火傷に向かって噴きつけた。
「ンガァァァァァァ!!」
無意識の中で、あまりの激痛に叫び暴れるチャーミー。
「ヤグチさん、ヨッスィーさん押さえてて!!」
「「はい!!」」
なおも酒を一口含んでは、チャーミーの火傷に吹きつづける亜弥。
チャーミーは全身を激しく酒を逃れようと動く。
「我慢して!!チャーミー!!生きなきゃ!!生きなきゃ!!あの人のためにも生きなきゃ!!」
そう叫ぶヨッスィー。
「あの…人…?」
ふと、チャーミーに意識が戻る、それは更なる激痛の始まりでもあるが…。
「そう…あの人にもらった命…あの人の代わりにも生きなきゃ…。」
視点が定まらないチャーミーがそうつぶやく。続けて、
「続けてください…チャーミー生きてなきゃいけないんです…。」
そう、亜弥に頼むチャーミー。

「分かりました。意識が戻るって事は無意識以上に激痛が伴うはず…がんばって耐えてね。」
その亜弥の言葉にチャーミーは深く頷く。
「ヤグチさん、ヨッスィーさんよく押さえていてくださいね!!」
「「はいっ!!」」
そして、再び亜弥は酒を口に含みチャーミーの身体に吹き付ける。
「イッ…!!!ぐぅうぅぅううううう。」
チャーミーは必死に激痛と戦い身体を硬直させる。
「がんばってチャーミー!!」
その言葉に頷く。
「そこにある、薬草を全部あの棚に入ってるすり鉢で擂ってください!!」
「はいっ!!」
亜弥に命ぜられたヨッスィーは、棚からすり鉢とすり棒を取り出し、
ヤグチたちが獲ってきた薬草を放り、急いで擂り始める。
(チャーミー…がんばってね…、あの人の変わりに生きなきゃ…。)
涙を流しながらヨッスィーは必死に薬草を擂った。

………………………

長い長い夜が明けた頃…、やっとの事で処置が終わった…。
「ひとまず、これで処置終了です。後はチャーミーさんの体力次第です。」
亜弥はそういった。
「大丈夫だよね…きっと…。」
そうつぶやくヤグチ。
その肩に手を添えるヨッスィー。
「大丈夫ですよ、チャーミーは死ぬわけにはいかないんです。」
「うん…そうだね…。」
正直、ヤグチはチャーミーとヨッスィーの間になんらかの関係が有り
「あの人」という言葉に引っ掛かりを持っていた。
ただ、今はそんなことを気にしている暇はないと、その事は触れない事にした。
「今日は始まったばっかりです、ヤグチさん。栄養のある食べ物を取ってきましょう。」
亜弥は鉞を担ぎながらヤグチに話し掛ける。
「あ…うんっ!!」
そして、ヤグチと亜弥は食べ物を探しにしげるに乗って出かけ、ヨッスィーは看病に当たった。
寝ているチャーミーの手をそっと握るヨッスィー。
(大丈夫だよね…きっと大丈夫…。)

窓に差し込む太陽の光が眩しかった。

 

never die? 

「きれいやろ?」

「「うん。」」

「この鳥なぁ。ウチを呼んどったんかもしれへんねん。」
落ち武者はしゃがみ込むと、不死鳥を撫でる。

「どゆこと?」

「ウチは、ホンマ運に見放されとってん…。」

……………………………

「あ゛−−−!!もう゛!!どないなっとんねん!!この森!!」
落ち武者は富士の樹海を彷徨っていた。

2日後…。

倒れた。
正確には動く力も無くなって躓いてこけた。

(アカン…ウチ死ぬんか?)
視界がぼやけてくる。
(埋蔵金…。アホやなぁ…噂、真に受けて…。)
「ハハハハハ…死体や、死体がころがっとる…。」
躓いたのは白骨化死体。
「死んでたまるかアホッ!!」
落ち武者は立ち上がり、頭蓋骨を蹴っ飛ばした。
「神も仏もあるかヴォケェ!!神に見放されとっても負けへんぞ!!」

その時だった。

目の前に真紅の羽をした鳥が落ち武者を見ていたのだ。
「なんやねん!!見物料取るで!!自分!!」
鳥に向かってキレた。
すると、その鳥は少し飛んでは止まって落ち武者を見る。
「なんや!?ついて来いゆーことか?上等じゃヴォケェ!!」

……………………
  
「ほんで、いつの間にかここに来てん。人がいーへんのが難点やけど、
本来ウチ一人モンで孤独やったから、ここは楽園やと思うねん、ウチにとって…。」
不死鳥の身体を擦り
「それに、ゴマちゃんにも、そこの子にも会えたしな。」

「「うん。」」
お互いに笑いあう3人。

「でもなぁ…。」
「なに?落ち武者。」
「なんかなぁ。この子元気ないねん、最近…。」

 

village “natsukashi” 2

「「ただいまー!!」」
万屋の戸を開くと同時にそう言葉を放つ紗耶香と明日香。
すると、奥から神妙な面持ちの彩が出てきた。
「おかえり。」
その様子に、明らかにおかしいと気づく二人。
「どうしたの?」
「ちょっと、明日香来てくれる?」
と手招きする彩。
不思議に思いながら彩の元へ向かう明日香。
その時、紗耶香が
「ねぇ、ほら、この子達、覚えてる?彩ちゃん。」
そう言って、のの一行を中に入れる。
「あ、ヤグチの…。」
「そう。でね、今この子達鬼ヶ島向かってるんだって、もう夕暮れだし泊まってってもらおうと思って…。」
そう聞くと、彩は少し考えて
「いいよ、泊まって行って貰いな。」
と、答えた。
その言葉に喜ぶのの一行。
「で、何?彩ちゃん。」
尋ねる明日香。
「あ、ごめんね、あのね…。」
彩は明日香に母親らしき人物が今、万屋に来ている事を耳打ちした。
「わかった、奥にいるんだね…、会ってみる。」

そして、明日香は、奥に入っていった。
「あ、紗耶香。」
「何?」
「その子達に客間使ってもらって。あと、客間案内したら、ちょっと居間に来てよ。」
「うん。じゃあ、みんな、客間に案内するね。」
「はい、れすっ。」
彩は明日香と母親らしき人物のいる居間へ向かい、紗耶香はのの達を居間に案内した。

客室に通されるのの一行。
「広いれすぅ〜!!この前の宿のお部屋より広いれすよぉ〜♪」
広い客間で大はしゃぎするのの。
「ゆっくりしてってね。」
と人数分お茶を差し出すと、紗耶香は彩のところへ向かった。
「どうも、ありがとうだべ。」
「アリガトウゴザイマス。」
と頭を下げるカオリ、圭、なっち。
その時、ののはバシバシ何故か柱を叩いて喜んでいた。

廊下を居間に向かって歩く紗耶香。
すると、彩が今の前の中庭で池をしゃがみ込んで眺めているのに気がつく。
「彩ちゃん?」
そう紗耶香か呼びかけると振り返る彩。
彩は泣いていた。
「紗耶香ぁっ!!」
紗耶香に抱きつく彩。
「…どうしたの?」
「………あのね。今…明日香の母親をね、名乗る人が来ているの…。」
「えっ…?」
身体を離すと涙を袖でぬぐう彩。
「今、明日香その人に会ってる…。」
「そうなんだ…。で、何のために来たの?その人。」
「…迎えに来たんだって…、やっと人並みに生活できるようになって明日香を迎えに来たって…。」
「それって、その人のワガママじゃん…。生活できなかったからって置いてって、今更…。」
「うん…、私もそう言ったんだ…。」
深くため息をつく二人。
ふと
「ちょうど良かったのかもね。」
と紗耶香は言った。
「えっ…?」

紗耶香は川原での明日香との会話を思い出していた。
「明日香ね、さっき飛び出したときね、この先の事二人で話し合ったんだ。」
「うん…。それで?」
「明日香…お母さん探したいって言ってた。」
「そうだったんだ…。」
動揺を隠せない彩。
両親の居ない明日香の気持ちを彩はわかってあげていられなかったのだから…。
「私も、何か見つけなきゃ…。」
「紗耶香…?」
遠くを見つめる紗耶香が彩には遠くの存在に見えた。
「さっきね、お金はやっぱり要らないって二人で決めたんだ。それなりに私たちも蓄えはあるし。
でね、今夜、私と明日香の旅立ち祝いの宴をやってもらいたいなーって思ってさ。3人じゃ
つまらないかなぁと思ってたところに、偶然ののちゃん達に会ってさ、あの子達も一緒にどうかなぁ
ってつれてきたんだけど…。ひとまず、明日香の事が先だよね。」
そう気丈ににかっと笑う紗耶香。
「うん。」
その笑顔に元気をもらい、微笑を作って彩は頷いた。

2時間が経った。

彩と紗耶香は宴会の料理を作っていた。
「話すことたくさんあるんだろうね…。」
彩は呟く様に喋る。
「そうだね。10数年の時間を埋めなきゃ、それに謝罪もあるだろうし…。」
紗耶香も同様に呟くように喋る。
「2刻ばかりじゃ、到底埋まらないよね…。」
「まぁね。」
棚を開ける彩が酒がないのに気がつく。
「あ、お酒切れてる…。ちょっと紗耶香、買ってきて。」
「うん。どのくらい買えばいいかな?」
「景気よく15本くらいで良いや。」
「多いよー、それぇー。」
「だって今日は宴会でしょ?」
「まぁね。ふふふふふ。」
二人は笑い合った。
その時、話しを終えたのか、明日香が調理場にやってくる。
「明日香…。」
明日香に気づく2人。
「帰ったよ、あの人。今日、近くの宿屋に泊まるんだって。」
「…そうなんだ…。」
少し明日香は大きく息を吸い込む。

「私ね…あの人のところに明日行く…。」
「「えっ…。」」
突然の決断に驚く二人。
「まだ母親なんて感じがしないけど、ひとまず一緒にいて感じてみたいの…この人が
お母さんなのかなって実感…。許すのはそれからだけど…。」
「そっか、それもひとつの選択かもね。」
「あ、二人で酒買ってきてよ。一人じゃたくさんで持ちきれないだろうから。」
そう言って、彩は明日香に金を渡す。
「うん。わかった。」
「いこ、明日香。」
「行ってらっしゃい、気をつけてね。」
そう言って、彩は明日香と紗耶香に軽く手を振る。
「「いってきます。」」
二人も軽く手を振り返した。

その時、客間では
「おそいれすよっ!!お腹が背中にくっつきそうれすよッ!!」
「それはないべ〜、どう見てもポッコリ出てるべさぁ、ののちゃんのおなかぁ〜。」
「いったれすねぇ〜!!なっちしゃんも人のこと言えないれすよっ!!」
「なっちはお腹と背中がくっつきそうなんていってないべさぁ〜。」
「ううぅ…うわ〜〜〜ん!!ガオ"リ゛じゃ゛〜〜ん゛ナッヂしゃんがいじめるれずぅ〜〜!!!」
ののはカオリの後ろに隠れる。
「ダメダヨ喧嘩ハ。フクロウノ話シスルヨ。」
「それは勘弁だべさ。」
「あたしも聞きたくない。」
「の"の"も"嫌れずぅ〜!!」
「ナラ喧嘩ハ辞メナサイ。」

「「はい。」」

そして宴は始まった。

乾杯の台詞は彩だった
「それではぁ〜♪みんなの旅立ちを祝してカンパーイ!」

「「「「「「カンパーイ!!!」」」」」」

「ふぅ〜。」
「うめぇ〜。」
などと口々に酒を飲んで言葉を吐く。
「なんか、辛いれすよ。お酒ってこんなもんれすかぁ〜?」
「そうそう、そんなもんだべさ。もっと飲むべさ。」
そう言いながらののに手酌するなっち。
もう一つの片手では茶碗を見ずにうまく箸でご飯をつかみ口に放っている。
「ののもご飯食べたいれすッ。」
酒を注がれてひとまず酒をまた飲むのの。
「なっちは、ご飯お替りだべ。」
彩に茶碗を差し出す。
「食べるの早いれすよッ。ののに酒飲ませてそのうちにお替りして
沢山食べるなんて汚いれすよッ!!」
駆けつけ3杯目を煽るのの。

「ご飯も、お酒も沢山余ってるからバンバンお替りしていいよ。味噌汁もあるから。」
と、彩がご飯を盛ってなっちに茶碗を返す。
「んがんがんがんが!!」
なっちに負けまいとムキになってご飯を掻き込んで酒で流し込むのの。
そんなののを見ながら耳打ちしあう紗耶香と明日香。
[大丈夫なの?ののちゃんにあんなに酒のませちゃって]
[い〜んじゃないの?めでたいんだし。]
その時、お膳に並べられたおかずとご飯をもくもくとたいらげていた圭が立ち上がった。
「どうしたんれすか?圭しゃん…?」
ほんのりぴんくなほっぺをしたのの。
「ちょっと、一人で飲んでくる。」
そう言って、酒瓶を1本とホラ貝を持ち出して外に出て行った。
「どうしたべさ…?」
「サァ…?」

そして、圭は中庭に出た。
ふと、池を覗くと池に月が映し出されている。
しゃがみ込んで水面の揺れる月を肴に酒を飲む。
「ん…?」
圭は池を凝視した。
水面には月の他に万屋の屋根も映し出されているのだ。
(屋根に誰か居る!!)
とっさに振り返り屋根を見る圭。
その屋根に居る人物は圭からは月明かりに背を向けているので影になってよく見えない。
その人物は飛び降りると同時に圭の口をふさいだ。
「!!!!!」
神業的速さに鬼である圭が何もすることが出来なかった。
その人物は、静かに圭に耳打ちする。
「…ウチや。」
(ね、ねえさん!?)
「ちょお静かにしてくれへんか?さわがんでほしいねん。」
コクコクと頷く圭。
そうすると、口をふさいだ手を離す中澤。
「ここやと、具合が悪い。ちょお外出てーな。」
「うん。わかった。」
そう圭が答えると、再び4mほどの高さにある屋根に飛び乗る。
「!!!!!!」
(す、すごっ!!)

驚きを隠せない圭。
中澤は圭に「アッチアッチ」と指差して口パクする。
その指示に従い圭は、万屋の裏口から出た。
「ねぇさん?」
周りを見渡す、すると、上から中澤が降ってきた。
「おぉっ!!」
ビックリする圭。
「驚かしてすまんな、ちょお見つかると具合悪いねん。」
「なに?よく分けわかんないんだけど?」
「う〜ん。まぁ、お忍びで保護者しに来た。」
「保護者って…ずっと付いてきたの?」
「ん?まぁなぁ、まぁ小旅行の気分で。」
「小旅行ねぇ〜。他の子に気づかれるとまずいの?」
「まぁ、あんたに気づかれるのもまずいわな。ウチの事黙っといて−な。」
「ああ、わかった。もう一つ質問していい?」
「なんや?」
「鬼の私が何も出来なかった…。姉さん何者?」
「ウチか?元くノ一やで、忍びや。」
「へぇ〜、初耳だよ。」
「当たり前やで、娘にも言うとらん。知ってるんはつんくさんくらいやで。」
「ふ〜ん…。」
元忍者と聞いて妙に納得する圭。
考えてみれば、中澤がキレた時の尋常ではない速さを裏付けする事ができるからだ。

「今度はこっちが聞くで。珍しく外で物憂いかぼし出しとったん自分?」
「う〜ん、ちょっとねぇ〜…あ、酒あるからさ、飲みながらでも話すよ。聞いてくれる?」
と、中澤の目の前に酒瓶を見せる。
その途端、恋に落ちたようにときめいた表情をする中澤。
「うんうんうんうん、聞く聞く聞く、飲む飲む飲む!!!」
少しあきれた表情をする圭。
「ゲンキンだねー、ねーさんも。似てるよ、ののちゃんと。」
「あ、さよかぁ〜?アハハハハ。」
そして二人は、何気なく歩き川へ出た。

「「カンパ〜イ!!」」

湯飲みと酒瓶をぶつける二人。
土手の石に腰掛け、酒を飲む。
中澤は酒瓶を口から外すと
「うまっ!!うまっ!!うまぁ〜〜〜〜っ!!!!」
発狂。
そんな中澤をケラケラ笑う圭。
「ホント酒がすきなんだねぇ、姉さんは。」
「当たり前やがな。酒のない生活なんか考えられへん。」
そう言って、また酒瓶に口をつける中澤。
「で、なんやねん。聞いてほしい、ゆー話は?」
「う〜ん。ちょっと待って。」
と圭は立ち上がりホラ貝を口につけて吹いた。
静かな夜に鳴り響くホラ貝。
「…………。」
再び座る圭。

「???」
「根暗の事なんだけど…。」
「おう…まだ会うてへんようやな。」
「そうなんだ…、なんかあったのかなって心配でさ…。」
そんな圭の言葉を聞いて、いきなり中澤は笑い出した。
「アハハハ!!なんやねん?いつもあんなにバカにあの子の事しとんのにどないしたん自分?」
「うっさいなぁ〜、いいじゃんかぁ〜。」
そう言って、空に湯飲みを中澤に突き出す。
湯飲みに酒を注ぐ中澤。
「心配なん?」
一口ぐいっと飲むと圭は
「うん。気になってしょうがないんだ。」
と、遠くを見て言った。
「へぇ〜〜。かわっとるなぁ。」
「姉さんだからゆうけどさ、根暗は私の育ての親みたいなモンなんだよ…。」
「へ?」
「だから、親みたいなモンなんだよ、根暗はね。」
「どゆことやねん?」
「まぁ、すこし話せば長くなるけど…聞いてくれる?」
「まぁな、酒もあるしな、聞くで。」
「ありがと…。」
そして、圭はチャーミーとの出会いのことから話し始めた。
「私が根暗と出会ったのは…

 

チャーミーと圭 

13年前…。
圭は父親の骸に寄り添い大きな泣き声をあげた。
「まだおったんかいな…。1100両やな。」
刀を振り上げるはたけは、そのまま圭に振り下ろす。
その刹那、つんくがはたけの刃を止めた。
「なんやねん、つんく!!」
「もうええやろ、はたけ…。十分賞金はとったっちゅーねん。」
「せやけど、こいつ生かしとったら、また何年後かに暴れ出すで!!」
「かまへん!そんときは、そんときや…ごめんなお嬢ちゃん…ホンマ堪忍や。」

そして人間達は骸の角を切り取り去っていった。

「お父さーーーーーん!!おとうさーーーーん!!うわああああああ!!!」
泣いても泣いても涙が止まらない。
そしていくら泣いても娘に優しかった父は帰ってこない…。
「おとうさーん、おとうさーん!!」
静かな空間…圭の泣く声のみがこの空間を支配する。
「うわ”ああぁぁぁぁん!!うわ”あああぁぁぁぁあん!!」
何が何だかわからない。
ただ目の前の惨劇の悲しさが圭を泣き叫ばせる。
そんな時間がいつまでも続く…永久かとも思われるほど圭はひたすらに泣き続けた…。
幼き圭、父の愛、母の愛が必要なこの時期に両方を同時に目の前で失った…。

そして、数日経ち、やがて涙も出なくなった…。
ボーっとただ圭は父の骸を、母の骸を眺め、骸の傍に居た、夜になれば骸の傍で寝た。
異臭がするようになっても、圭は何も言わず、感じず、骸の傍に居た。

「何か食べなきゃ…。」
身体は正直だった。
食べる事を拒否していたが、身体は限界に来ていた。
しかし、食べ物ですらすでに腐っていた…。
そんな時、父達が集会に使っていた部屋であるものを見つけた。
それは飾られてあった大きなホラ貝。
何故か圭はそのホラ貝が気になった。
(確か…これ、お父さん達が困っている時に吹くものだよって言ってた…。)
圭は、そのホラ貝を手にとる。
幼き圭にはそのホラ貝は大きく、両手で持たなければ支えていられなかった。
思い切って、圭はホラ貝を吹いてみた。
吹いたといっても、吹き方がよくわからない。
空気が抜けるような音がした。

「…………。」

ホラ貝を元の場所に戻した。
何も起きない。
「何も起きないよ…。」
そう呟いた時だった。

鬼の館の門が開く音がした。
(???)
その音に気がつき、集会部屋から出る圭。
そこには、惨劇を見渡す天女のような綺麗な女性が立っていた。
「あ…。」
圭に気がつく女性。
怯える圭は後退るが壁にぶつかる。
圭に近づいてくる女性。
恐くて圭は瞳を閉じた。
しかし、その刹那、
圭が感じたものは、暖かさだった…。
女性は圭を抱きしめていた。

「???」

抱きしめられた事に動揺する圭。
そんな圭の頬が濡れる…
何事かと女性を見上げると、その女性は泣いていた。
「辛かったね…恐かったね…。」
その女性はさらに強く圭を抱きしめた。
何故か枯れたはずの涙が圭にこみ上げてきた。
そして、再びその女性の腕の中で圭は大声で泣いた…。

何故かその女性は圭に優しかった…。
そんな女性に対し、何故か心が開いていく圭。

「おねーさんは、何て名前?」

「乙姫…チャーミー乙姫。あなたは?」

「私、圭。」

「圭?」
少し、その名前を聞いてチャーミーは驚いた顔をした。

「いい名前ね。好きよ、その名前♪」

「うん。私も気に入ってるよ。」

「私の愛していた人も圭って名前だった…。」

「へぇ〜そうなんだ。」

「素敵で強い女性だった。貴方もそういう女性になってほしいな。」

「その私と同じ名前に人どうしてるの?」

すこしチャーミーの顔が曇った。
「お空にある星の一つになったんだよ。」

「ふ〜ん。」

「圭ちゃん。」

「なに?乙姫さん。」

「圭ちゃんのお父さん、お母さんもおじさんたちもお星様になろうとしているんだよ。」

「え?」

「ここにお父さん、お母さん、おじさんたちを居させちゃだめ。」

「どうして?」

「今、圭ちゃんのお父さんお母さんはどうしてる?」

「寝てる…。」

「そうだよね、また起きるかな?」

首を横に振る圭。
もう何日も起きてはいない。
圭はもう気づいていた…もう二度と父や母は目覚める事が無い事を…。

「お星様にしてあげるとね。夜、圭ちゃんに会いに来てくれるんだよ。」

「ホント?」

「うん。ホント。夜、お空にいっぱいお星様があるのはね、一つ一つが誰かのお父さんや
お母さん、大切な人でそのお父さん、お母さんとかがいつも子供や大事な人に会いに来てるからなんだよ。」

「じゃあ、圭のお父さんお母さんも夜会いに来てくれるの?」

「うん。もちろんだよ。チャーミーの大事な圭って人も会いに来てくれてる…。」

「どうしたら会えるの?」

「ちゃんと寝かせてあげるんだよ。土の中で。」

「どうして?」

「お墓って知ってる?」

「うん。」

「お墓って言うのはね、土の中に寝かせた人が星になって、会いに来てくれますようにってお願いするものなんだよ。」

「そうなんだ。」

「そう。会いたいでしょ?こうやって寝てるお父さん達じゃなくて。」

「うん。」

「じゃあ、お墓作ってあげようよ。そしたらお父さん達、圭ちゃんに会いに来てくれるよ。」

「うん。」

そして、チャーミーは鬼の骸を埋葬する為に鬼の館の近くに人数分の穴を掘った。
その穴に一体一体、鬼の骸を寝かせ、埋め、その上に大きな石を一つずつ置いた。
墓の前で手を合わせる二人。
あたりは夕闇に包まれていた。
するとチャーミーが
「ほらっ、もう会いに来てくれたよっ。」
と空を指差した。
「ほんとうだぁ。お父さんかな?お母さんかな?」
「さぁ?どっちだろうね?」

夕闇れに輝く一番星だった…。

……………………………

「それからしばらく、根暗は傍にいてくれたんだ。いつもご飯を作ってくれて、
いつも一緒にいてくれた。鬼語も教えてくれたのは根暗だった。
やがて本を読み始めて根暗が、海王竜だって知ったんだけどね。あのとき幸せだったな…。」

「そうなんや…堪忍や…。」
中澤は自分の夫がしたことの大きさに言葉をなくす。
「ううん。もういいよ、そんなこと。考えてみれば、私たち鬼も人間達にやってきたこと。
お互い様。」
「すまんな、ホンマ…。」
「今はつんくさんにも、姉さんにも、ののちゃんたちにも感謝してるよ…。」
「圭…。」
「ほらほら、もっと飲んで。まだ入ってるんでしょ?酒。」
「お、おう。」
そう言って、酒瓶に口をつける中澤。

「そんでさ、仲良くなったのはいいんだけど、10歳の時かな?大喧嘩してさ、根暗と。
鬼ってのは気が強くてね、口は悪いし、根暗はいじけ癖なもんだから、でてっちゃったんだよ。」
「なんや?あっけないなー。」
「まぁ、ホラ貝吹けば来てくれるんだけど「2年おきにしてくださいッ!!」って言って帰っていくんだよね。
まぁ、私もそのころには狩りも出来たから食うには困らなかったからね、
そんな呼ぶことも無かったんだけどね。まぁすでにその頃から立場も逆転してた。ふふふふ…。」

「ハハハハ。10歳のジャリに舐められとるとはアホウやな。」

「だけど…大事な存在なんだよね。本当になんかあったのかな…。」
圭は立ち上がり、石を拾って川に向かって投げた。
「ねぇ、ねーさん。」
振り返る圭。
中澤は酒瓶を抱えて寝ていた…。
「寝るの速ぇ〜〜〜。」
しょうがないので、圭は中澤を担いでなつかしの村の宿屋に向かい、宿屋に中澤を置いて万屋に戻る…。

帰る途中。
「根暗…返事くらいしろよ・・・どうしたんだよ…さみしーじゃんか…。」
ホラ貝を擦りながらそう呟いた…。

万屋に戻った圭。
「ただいまぁ〜。」
客間の障子に手をかけ、開く。

「ハァ???」

(?????)

客間を開けて圭は驚愕する。
「どうなってんの?」
そこには全員があちらこちらに物を散らかし酔いつぶれて寝入っていた。
散乱する酒瓶、御膳、おわん、お皿、食べかす…

服ッ!?

何故か全員、服を脱ぎ捨てスッポンポンだった。
何が行われていたのか、起こしてみるが要領を得ない。
結局、全員の布団を圭一人が敷いた。
当事者であるはずののの達に、翌日になっても
昨晩、何が行われたのか覚えている者は誰一人いなかった。

そのころ…。
「行かせてっ!!お願いっ!!」
「だめだよ、チャーミー!!動いちゃダメっ!!」
必死にチャーミーを押さえるヤグチとヨッスィー。
「あの子が呼んでるのっ!!あの子がお腹を空かしてるのっ!!行ってあげなきゃ…行ってあげなきゃ…。」
なおも、チャーミーは二人掛りで押さえているにもかかわらず、起き上がろうとする。
「あの子って誰?」
「圭ちゃんだよっ!!あの子お腹空かしてるのっ!!一人ぼっちで寂しがっているのっ!!」
その言葉に答えるチャーミー。
「そんなわけないじゃん。圭ちゃんはもう大人だし、ののちゃんのところに居るじゃない。しっかりしてよ、チャーミー!!」
「あの子、まだ小さいのにっ!!…チャーミーがっ、チャーミーが居てあげなきゃ、ご飯作ってあげなきゃ…。」

「過去が混同してる…。」
と、亜弥が呟き、棚から粉の入った瓶を取り出し、中の粉末を手に少量出す。
そして、亜弥はその粉をチャーミーに嗅がせた。
すると、チャーミーはその粉を嗅いだと同時に眠りについてしまった。
「!!!!な、何したのっ!?亜弥ちゃんっ!!」
少し剣幕を立てるヤグチ。
「眠り薬です。ここらへんでよく取れるきのこから生成します。人体に害はないですよ。」
そう答える亜弥。
「そうなんだ…ごめん、ありがと…。でも、どうしたんだろ…過去と今がごっちゃになって…。」
「心配ですね…。」
ヤグチ同様、不安そうなヨッスィー。
「多分。熱のせいで朦朧としているからだと思います…ここからは交代制で看病しましょう。
私たちが倒れたらダメですから…。」
「そうだね…じゃあ最初はヤグ…
と言おうとした時、ヨッスィーが
「私がやります。二人とも食料や、薬確保で大変でしたでしょうから…。」
と言った。

「そう…。わかった、ヤグチと亜弥ちゃん仮眠とるから。」
「ハイ。」
「ヨッスィーさん。もし、また暴れ出したら、この粉使ってください。」
「うん、わかった。」
ヨッスィーは、亜弥より眠り薬の瓶を受け取った。
そして、ヨッスィーはチャーミーの看病に当たり、ヤグチと亜弥は布をかぶって
小屋の隅でそれぞれ蹲るように眠りについた。

ヨッスィーはチャーミーの額に濡れた手ぬぐいを当て、眺める…。
(ヤグチさんが起きたら、私はののちゃんの所へ行って、この事を伝えよう…。)

 

洞窟暮らし 

ののたちが、宴をし、矢口が懸命に看病に当たっていた日。

「もう3日目か…。」
ふと、加護が炎を見つめながらつぶやく。
「だね。」
同意する後藤。
「果物ばっかだね、最近。」
「だね。」
その会話を聞いていた落ち武者が膝を叩いて立ち上がった。
「うしっ、今夜は焼肉でもしよか!?」

「「…………。」」

「だめだよ!あの鳥は!」
「そーだよ!後藤たち見守って居ろっていわれたもん。」

そんな必死な形相で言う二人を前に笑う落ち武者。
「アハハハ、んな事あるかいな、狩してくるねや、狩。」
「なんだぁ〜。びっくりしたぁ〜。」
ほっとする後藤と加護。
「落ち武者が焼肉とか言い出すとマジで食べそうなんだもん、あの鳥。」
「なんやて!?命の恩鳥食うかぁ、あほっ!ほな、もう夕方やし行ってくるさかいな。」
そう言って外へ出かけようとする落ち武者。
「「いってらっしゃ〜い。」」
手を振る二人。
落ち武者も同様に手を振って洞窟を出て行った。
「何捕って来るかな?」
「さぁ〜?何だろうね。前は海で魚咥えて捕まえてたよ。」
「ホンマ?」
「うん。」

………………………
3時間後。
外はすでに夜になっていた。
「ただいまぁ〜。」
「「おかえり〜。」」
「どうだった?」
後藤はわくわくしながら落ち武者にたずねる。
「ん?ほれ。」
と落ち武者は後ろ手に隠していたものを見せる。

蛙。

それは大きな蛙だった。
「「!!!!!!!!」」
「おいしいでぇ〜。鳥肉みたいやで。」
そう言って、落ち武者は炎の中に蛙を放る。
顔が引き攣る後藤と加護。
「ん?どないした?」
ニヤニヤしながら落ち武者は二人に問う。
「お、落ち武者が全部食べていいよ…。後藤いらない…。」
(食べられるわけないじゃん…蛙なんて…。)
「加護もいいです…。」
「なんや、二人とも。焼肉食いたいゆーとったやんか。」
「で、でも、蛙だよ?」
「せやで、蛙さんやでぇ〜、ゲコゲコ♪一人で食べてまうよ、ええの?」
と言いながらしゃがみ込み、木の枝で火の中の蛙を転がす落ち武者。
「「あげる。」」
そう聞くと、含み笑いをする落ち武者。

「くくくくく…。そーゆーとおもっとってん。3刻もかけて蛙一匹なわけないやん。」
すると、落ち武者は立ち上がって洞窟の入り口へ行くと何やら引きずってきた。

猪?

「でや、猪さんやでぇ〜、いのししブヒブヒ。乱闘の末やな。苦労したで。」
「すごいねぇ、落ち武者やるときはやるんだ。」
感心する後藤。
「やろ!?」
誇らしげな落ち武者。
「…………。」
驚いた顔をして終始猪を見つめる加護。
「ほな、さばいたるからな。」
そう言って、落ち武者は再び外へ猪を引きずっていった。

ぶしゅっ!!ぐしゅっ!!どぶっ!!ずぶっ!!

そして、血だらけになって落ち武者は戻ってきた。たくさんの肉を抱えて。
「ほな、焼肉やで、焼肉♪」
後藤と加護は苦笑いした。

この後、3人は肉の味だけしかしない焼肉を食したという。

 

それぞれの旅立ち

そして、それぞれの旅立ちの日はやってきた…。

既に、明日香の母親は万屋にやって来ていた…。
万屋の前で別れの挨拶を交わす彩、明日香、紗耶香。
「元気でね、明日香…。」
「うん、彩ちゃんもね。」
「たまには…手紙出してね。」
「うん。紗耶香も手紙頂戴。」
「うん。もちろん。」
笑顔の三人、涙は見せず笑顔で明日香を見送る。
「そういえば…。」
「何?明日香。」
「ののちゃんたち大丈夫かな?」
「何か、頭痛くて動けないとか言ってまだ寝ているみたい。」
「そっか。私も少し痛いな。ハハハ。んじゃあ、もう行こうかな。じゃあね。」
そして、明日香は目線で母親に合図を送る。
すると、それを追うかのように
「明日…がんばるんだよ。」
彩からの送る言葉。
「がんばれ。」
紗耶香からの送る言葉。

「うん!!」
涙がこみ上げて来る…。それを振り払うかのように
「じゃっ!!またね!!バイバイ!!」
そう言って明日香は手を振って去っていった。
手を振る紗耶香と彩。

親子の姿が見えなくなるまで二人は手を振り続けた…。
「行っちゃったね…。」
「そうだね…。」
「さて、ののちゃん達起こして、ご飯の準備しなきゃ。」
「うん。」
肩を組み、万屋の中へ入る二人。

既にヤグチと亀吉を見送って涙した幼い二人ではなかった。

10年以上の時が二人を強くした…。

そして二人が戻ると、のの達が着替えていた。
「あ、彩しゃん、紗耶香しゃん。おはようれす…。」
屈託の無い笑顔と、軽い頭痛に顔をゆがめながら挨拶するのの。
「おはよう。頭痛いの大丈夫?」
「はい、大丈夫れす。れも頭悪いのが治った方がいいれすよ。」
「あはは、そう。」
ニガワライな紗耶香。
ふと彩が
「朝食の準備してくる。紗耶香はみんなと布団片してて。」
と言って台所へ向かった。
「わかった」
了承し、紗耶香はのの達と布団を片付ける。
「ネェ、ののちゃん。」
紗耶香はののを呼び寄せる。
「???」
不思議そうな顔をしてののが紗耶香の元へ来る。
そしてののと紗耶香はひそひそ話を始めた。
「あのね…。」

朝食を終えたのの達。
そして、一通りの挨拶を終えのの達は万屋の入り口に出る。
「あれっ?まったく、紗耶香何してるんだろう、見送りって時に…。」
あたりを見渡す彩。
しかし、その時紗耶香の姿が無かった。

すると、ののが慌てた様子でこういった。
「ああっ!そうれすっ!もう挨拶済ましたれすよ!!薬屋いくからって出かけたれすよっ!!
ね、なっちしゃん!?」
いきなり話を振られるなっち。
「へ…?そんなことあったんだべ…ゲフッッ!!」
ののの鉄拳がなっちの腹部に直撃。
「と、とにかく挨拶していったれすから、もうのの達行くれすよっ!!」
「そんなことな…ブヘッ!!」
再び、ののの鉄拳が何かを言いかけたなっちの腹部に直撃。
「あ、っそう…。」
強引に押し切られた感じで納得する彩。
「じゃあ、また今度れす。ホントありがとうれす。」
ののは彩に頭を下げる。
「いえいえ、こちらこそお構いしませんで…。」
彩もののに頭を下げ返した。
そして、なっち、カオリ、圭も頭を下げて万屋を後にした。

歩きながらなっちが不満を言う。
「なんだべか!?人に話し振っておいて殴るのは納得いかないべさ!!あともう少しでオチるところだったべっ!!」
少し頭にきているようだ。
「ごめんれす、なっちしゃん。そうするしかなかったんれす。
だってカオリしゃん鉄で出来ているれすし、圭しゃんは鬼れすからののの攻撃はろくに効かないれす。
手ごろなのはなっちしゃんなのれすよ。」
言い訳になっていない言い訳。
「なんだ、そうだったんだべか〜あははぁ〜、選ばれたんだべねー。」
何故か、そんな理不尽な理由に納得するなっち。
「そうれすよっ。てへてへ。」
(アホウれすね、なっちしゃん…。ののよりアホウれす。)

そして、なつかしの村を出ようという時、後方から声が聞こえた。

「まって〜〜!!」

その声に後ろを振り向くのの達。

すると紗耶香がこちらへ向かってくるではないか。
ののはニンマリし
「来たれすね、紗耶香しゃん。」
と言った。
「どういうことだべか?」
不思議そうに、ののの顔を見る3人。
そこに息を切らして荷を背負った紗耶香が走ってきた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ。ごめん、遅れた…。」
片手でゴメンとジェスチャーする紗耶香。
「紹介するれす、紗耶香しゃん。のの達と一緒に今日から旅をするれす。」
「「「ハァッ!?」」」
驚く3人。
「はぁ、はぁっ、よ、よろしく。」
朝日の照らし出す紗耶香の希望に満ちた笑顔が眩しかった。

そのころ万屋では、
「ヤラレタ…。」
今には一枚の書置き。

『彩ちゃん。私ね、自分のやりたいことを探すために、ののちゃん達と旅に出るよ。突然でゴメン。
だって、見送られるの苦手だから…。本当にやりたいこと見つけたら、また会いにくるねっ!! 
 紗耶香   』

「なんだよ…バカ…。」

 

ヨッスィー

「ヤグチ。おはよう。」
寝ぼけ眼なヤグチにヨッスィーは朝の挨拶。
「んっ…おはよう…今度はヤグチの番だよね?」
目を擦りながらヤグチは確認をとる。
「ハイ、そうですよ、ちゃんと寝ないで看病してくださいね。」
「うん。ヨッスィーはちゃんと寝るんだよ。」
返事が無い。
「ヨッスィ〜?」
「私…。今からののちゃんの家へ行ってきます。亜弥ちゃんの時間が終わる前には帰ってきますから…。」
「無理だよ。ヨッスィーずっと寝てないじゃん。ヨッスィー倒れちゃうよっ!!
亜弥ちゃんの終わったらヤグチがやるから、そこまで寝ていきなよっ!!」
その言葉に首を横に振るヨッスィー。
「いいんです。今からヤグチから元気をもらうから。」
「へ…?」
その刹那、ヨッスィーは自らの唇をヤグチの唇に重ねた。

「ん…。」

閉じる瞳と瞳。
少し長く感じる時間。
そして自然と唇は離れた…。
視線と視線が交わる。
顔を赤らめる二人。
「げ、元気もらいました。ご馳走様でした。」
「いえいえ、こちらこそ…。久しぶりで、こっちも元気もらいました…。」
そして、すっと立ち上がるヨッスィー。
「じゃ、行って来ますね、小槌持って行きます。帰り乗せて来るかもしれないんで。」
「うん。わかった。気をつけるんだよ、ヨッスィー。」
コクッと頷くと、ヨッスィーは風呂敷に小槌を包んで首に下げて外に出た。
そして、ヤグチも外へ出る。
「じゃ。」
そう言って、千年鶴の姿に戻るヨッスィー。
大きく翼を広げ、羽ばたき大空へ飛び立った。
見えなくなるまでヤグチはヨッスィーを見送る。
その時、番犬代わりのしげるは目の前で起きた出来事に混乱していた。
「グ…?ガ…????」
蜂の巣をかじり付きながら。

大空を飛ぶ鶴。
さすが、千年生きているだけあり、方向を見失う事が無い。
そして、飛び続けることおよそ2時間。
すると、ヨッスィーの視界につんくの家が見えてくる。
(あそこだったよね…。)
高度を下げ、つんくの家の前に降り立つヨッスィー。
周りを見渡して人気がいないことを確認する。
ヨッスイーはすばやく煙を立ち上げ人化した。

ドンドンドンドン。
つんくの家の戸を叩く。
「すいませーん。」
ガラガラガラガラ。
すると、つんくが戸を開け、中から現れた。
「押し売りはお断りやでー、しつこいと切り捨てるでー。」
押し売りだと思い、はじめからヨッスィーを見ずにそう言って戸をしめた。

ドンドンドンドン。
「つんくさーん!!急用なんですよー!!」
ガラガラガガラ。
「一文やるから帰れ。」
またヨッスィーを見ないで1文を放り、戸を閉めようとする。
すかさず、また閉められては困るヨッスィーは戸が閉まる寸前にとの間に足を挟む。

が、閉める勢いが良すぎた。

ガズッ!!

「痛ッてぇぇぇーー!!」

再び戸を開くつんく。
「何や!!しっつこい押し…、お、鶴のヨッスィーやないかい。どないしてん自分?ヤグチ元気か?」
「気付くの遅いですよ!!つんくさん!!」
ヨッスィーは足を擦り苦痛に歪めた表情と怒った表情の混ざった顔つきで喋った。
「で、なんやねん、押し売り始めたんか?」
「ち、ちがいますよっ!!ののちゃん達いますか!?」
「ああ、わし以外ここには居ぃーへんぞ。」
「は!?何処行ったんですか!?」
「なんやか、不死鳥探すゆーて、旅立ってもーたわ。」

「いつですか!?その旅立った日。」
「せやなぁ、4日前やな、確か。」
(私たちがチャーミーとあった日だ…。それでチャーミーは呼ばれて…。)
「で、今何処に!?」
「ん〜、鬼ヶ島に不死鳥の本あるゆーてなぁ、ひとまず鬼ヶ島向かったはずやで。もうなつかしの村あたりちゃうか?」
何故かニヤニヤ話すつんく。
「ありがとうございます!!さようなら!!」
そう言って、ヨッスィーはすぐさま鶴の姿に戻って空へ飛び立った。

「…何や、せわしないお嬢ちゃんやなぁ、わしの話し相手になってくれればええのに…みすたぁ〜む〜んらい〜と♪君に誓うよぉ〜♪」
そんな歌を口ずさみながら、とぼとぼと家の奥へ戻っていった。

再びヨッスィーは大空をなつかしの村へ向かって飛ぶ。
(なつかしの村って言ったら、彩さんの家があるところだよね…何か知っているかも…。)

ヨッスィーは飛びながら考えていた…。

(何で不死鳥を探すたびなんて始めたのかな…?)
その理由を記憶の中から探る。
(もしかして…でも、もう2年は経とうとしているはず…。)

(確か…2年前にののちゃんと血の繋がっていないお姉さんが死んだって言ってたけど…。)

(!!!まさか…。蘇生の儀を…?でも、そうだとしても絶対的に条件の三つ目が足りない…。
不死鳥を見つけても条件の一つ目と二つ目がそろっていたとしても…3つ目がそろわなければ蘇生の儀は行えない…。
ただでさえもう二年経とうとしているから二つ目だって満せるかどうか…。)

ふとヨッスィーの記憶にある情報が引っかかる。
(確か、その死んだお姉さんは…月の民!!月の民で女の子というなら間違いなく月の王家に慣わしでやってきた王家の娘…。
なら有り得る、もし彼女の御霊がこの世に残っているのなら3つ目も満たす事が出来るのかもしれない!!)

(だとしたら、急がなきゃいけない、急がなきゃ!!)

(不死鳥の居場所を正確に見つけ出すにはチャーミーの千里眼が必要なんだから。)

ヨッスィーの体調は絶不調だった。

身体が重い。
頭が重い。

だが、疲れ果てた身体にムチを打つかのように、速度を上げた。
やがて、なつかしの村が視界に入ってくる。
万屋を見つけ出すと、ヨッスィーは万屋の中庭に降り立った。
あたりを見渡す。
誰も居ないのを確認すると人化した。

「すいませーん!!」
大声で中庭から呼びかける。
それは奇妙な行為で、普通なら尋ねるなら店の正面か、自宅側の玄関からである。
すると、不思議そうに今の障子を開き、中庭を覗く彩の姿があった。
ヨッスィーに気付く彩。
「あ…、えーっと、ヨッスィーさんだよね?ヤグチの恋人の…。」
「はい、すいません中庭からで…。」
「いえいえ、で、どうしたんですか?」
「あの、ののちゃん達見ませんでしたか!?」
「ああ、今朝まで家にいたんだけどね、もう出たよ。」
「そうですか…。」
「ゴメンね、何か役に立てなかったようで…。」
「いえ、助かりました。」
ふと、彩がヨッスィーの顔を心配そうに窺う。
「急ぎなの?何か、顔色悪いよ、真っ青だよ…。」
「いえ、全然平気ですよ。急いでますんで、では、また。」
そう言って鶴の姿に戻ろうとしたが、突然ヨッスィーにめまいが襲った。

揺らぐ視界。
手招きする睡魔。
重くのしかかる頭重。
遠のく意識。

「ちょっ!!ヨッスィーさん!?」
そう聞こえたのを最後にヨッスィーは意識を失い倒れた。

 

夢 

夜、加護と後藤は洞窟の中、焚き火の近くで身を寄せ合い眠りについていた。

その眠りで、再び加護はあの夢に中に居た。

………………………

「また、ここ…。」
あたりを見渡す。
相変わらずの空間。
その時の加護の目の前に光が集まりだし、人型になる。
姿をあらわしたのは、やはりかごやだった。

「ホンマすまんな、毎回毎回お邪魔してもーて。」
「いや、別に…。」
ウリ二つの二人、違うといえば服くらいの違いだろうか。
「よお、見つけてくれたなぁ〜。ウチが出来るのは、あんたらをこの世界に呼ぶだけやった。
ホンマおおきに。」
感謝の弁を述べ、かごやは加護に向かって頭を下げた。
「あの…後どれくらい、あの鳥を見てればいいん…?」
「ののが…ののがあんたと出会うまでや。」
「どうして?」
「ウチが生き返るには、詳しい事は言えへんけど、ののとあんたがあの鳥の傍におらなあかんねん。」
「そうなんだ…。」
「堪忍やで、もうのの達は、あの鳥を探しに旅に出てるさかい。」
「うん…。わかった…。ねぇ、のの達って…?」
「せやな、ウチの仲間達かな。あんたの世界でもあんたの友達としている連中の前世の奴らやで…。まぁ例外もあんねんけど。」
「友達…。」
このとき加護は、辻、安倍、飯田、保田、矢口、吉澤、石川の事を思い出していた。
「あかん。もう時間やな…ほな、またな。もうあんたが目覚める。」

………………………

「えっ…?」

かごやの姿が消えた、いや、焚き火の消えかかった小さな炎が見える。
加護が目覚めたのだ。
ふと隣を見ると、加護の肩に寄りかかって寝息を立てる後藤の姿があった。
消えそうに小さくなった火の中に、手元にある木の枝を放った。
(会ってみたいな…前世のみんなに…。)

「お、起きたか。」
ふと、その声の方向に目をやると、落ち武者が甲冑を脱いでいた。
「おはようございます。」
「おはよう。」
目を擦る加護。
「せや、あんた風呂入りたない?」
「へ…?あるんですか?こんなところに…。」
落ち武者はその質問にニタニタして答える。
「今朝なぁ、小川見つけてん。その小川で顔を洗おうとしたらなぁ、妙に温かくてなぁ、
おっ、と思うてなぁ、元をたどっとったら見事温泉を見つけたんや…。どや、行かへんか?」

「はい、行きます!」
コクコクと二度頷き、輝くような笑顔で答える加護。
女の子が風呂に入れないことは男の数倍以上に苦痛だったのだろう。
「あ、ごっちん起こさなきゃ…。」
横で寝ている後藤を揺さぶる。
「ねぇ、起きてー。お風呂は入りにいこうよ、ごっちん。温泉あるんだって。ねぇっ。」
すると後藤は不機嫌そうに
「ごとぉ〜…ねむいからぁ〜まだねてるぅ〜〜〜。」
しかめっ面で目を開けずに答える。
「ほっといたらええやん。起きたら教えたらええよ。」
「そうですね…。」
加護は後藤にをそっと横に寝かせ、地面に
『温泉行って来ます。加護』
と書いて、落ち武者と温泉に向かった。

そして、加護と落ち武者が出かけたすぐ後、後藤が何気なく起きる。

「ん〜〜!!」
伸びをする。
そして、肩あたりをポリポリ掻き、大きな欠伸をした。
「あれぇ〜?かごぉ〜?おちむしゃぁ〜?」
あたりを見渡す。
どうやら先ほどの会話のやり取りを覚えていないようだ。
2度目の欠伸。
その時、地面のメッセージに気付く。

「……。そういえば、そんな事言ってたかも…。」
場所がわからないので追うわけに行かず、何をするでもなく立ち上がる後藤。
もぎ取られ、集められた果実の中から柿をチョイス。
改めて、よく拭いて柿を眺める。
「不思議だよね…季節関係なく果物が木に綯っているなんて。」

かじる。

シブイ。

飲み込む。

「しぶっ…。」

ひとまずそんなことは我慢して、洞窟の奥に入っていく。
そこにはあい変わらず紅い羽の鳥が居た。
後藤はしゃがみ込んでその鳥を撫でる。
「何で、何も食べないの?」
ふとした疑問。
なぜなら、この鳥が後藤達が来た時から何も食べていない。
正確に言えば、食べているところを見たことがない。
別に後藤たちが監禁して食べ物を与えないわけでもない。
食べそうなものを取ってきて、与えようとするものの口にはしないのだ。

(まさか、食べないって事は…。)
「しないよ。…とか?」
含み笑いする後藤。

「するよ。…とか?」
小ウケ。

「ファ(略…アハハハハ!!!)
笑い転げる。

鳥の表情はよくわからない。
でも、明らかに目の前で一人、勝手に馬鹿笑いして騒いでいる後藤はその鳥にとって迷惑だろう。
しかし、その鳥は興味ありそうに後藤を見ていた。
「ん?何か顔に付いてる??ああ、魚顔は元からね。」
また馬鹿笑い。
耐えかねて、その鳥はそっぽを向いた。

ウケてるのか…?鳥。

 

ザ★プチモビクス木曜日

夕方、オランダ待ち少し手前の村にたどり着くのの達。
「今日も歩き疲れたれすね…。もう宿に泊まろうとするれすかね。」
「そうするべさぁ〜。腹減ったべさぁ〜。」
「まぁ、二日酔いでよくここまで歩いたよ、みんな。」
「カオリハ、オ酒デエネルギー変換機能使ッタカラ調子イイヨ。」
「あ、宿見つけたよ!!」
先頭を歩いていた紗耶香が振り返り前方を指で示した。
「じゃあ、そこにするれず。」
そして、全員の同意を得て、宿屋に入る。

「イラッシャ〜イ。」
髪を掻き揚げ、低姿勢で対応してくる店主。
「5名様で?」
「はい、れす。」
「当店は前金となっとります。」
「はい、れす…。」
袋を取り出して、財布を探す。

「…………。」

汗をかき始めた。
さらにののは、袋の奥に手を突っ込む。

「…………。」

袋をひっくり返す。

のの太郎’sアイテム

そこら辺の石
お守り
一味唐辛子

醤油

さびた釘
ワラ人形

「ないれすっ!!ないれすよっ!!ののの財布がないれす!!うわ゛〜ん!!!」
泣き出すのの。
「なんや、冷やかしかいな。」
にこやかだった店主は態度を変えた。
「何処で無くしたべさぁ〜!!ご飯食べれないべさぁ〜!!」
「わ゛がら゛な゛い゛れ゛ずよ゛〜〜〜!!う゛わ゛〜〜ん!!」
「どんな財布?」
優しくののの頭を撫でてののに聞く紗耶香。
「赤べこのやつれ゛ずよ゛〜〜!!うわ゛〜〜ん!!」
「!!!あれ財布だったの!?」
驚く紗耶香。
「シッテルノ?」
「う…うん。私が万屋出るときに客間においてあった…。」
「ぞれ゛れ゛ずよ〜〜!!う゛わ゛〜〜ん!!!」

つまり置き忘れ。

「前から言いたかったんだけど、赤べこは財布じゃなくて貯金箱だよね…。」
鋭い圭のツッコミ。
「なっちもそう思ってたべ。」
「でも、どうするの?今日はひとまず私が出すけど。」
そういって、紗耶香は財布を取り出し、「いくらですか?」と金を払った。
「どうするべさ…4両もの大金。誰か取りに行くべか…?」
「「「「…………。」」」」
その時、口を開いたのはカオリだった。
「カオリ取ッテクルヨ。」
「ひっぐ、ひっぐ。遠いれずよ?」
ののは目を擦りながらカオリに聞く。
「ダイジョーブ。カオリ空飛べルノ。」
「え…。そうなんだべか…?謎が多いべなぁ、カオリは。」
「ウン、カオリミステリーガールダヨ。ジャア取ッテクルネ。」
「ひぐっ、気おつけてれす。」
外へ出るカオリとのの達。
すると、カオリは目を閉じる。
その刹那、カオリの足の裏から気体が噴出し始めた。
徐々にカオリの身体が浮かぶ。
あっけにとられる4人。

「イッテキマス。」
笑顔で手を振ると、カオリは空高く飛び、あっという間に彼方へ消えていった。
「ねぇ、なっちさん。あの人何者…?」
なっちに尋ねる紗耶香。
「さ、さぁ…?ひとまず、案山子らしいべ…。」
「案山子…。」
そして、4人は宿屋でカオリの帰りを待つこととなった。

 

いつか大空の下で 

「行かせてよぉ〜!!」
再びチャーミーは、圭の元へ行こうと起き上がろうとしていた。
「だめですよ!!チャーミーさん!!」
必死で押さえつける亜弥。
「いつまでチャーミーを閉じ込めるつもりなのっ!!放してっ!!放してったらぁ〜!!」
その、騒ぎに睡眠を取っていたヤグチが目覚める。
「ん〜〜?…どうしたのっ!?ダメだよ、チャーミー寝てなきゃ…。」
ヤグチも加わりチャーミーを押さえつける。
「ヤグチさ〜ん。この人何とかしてくださいよぉ〜!!チャーミーは圭ちゃんに呼ばれてるんですよぉ〜!!」
「だめだよ!!チャーミーは大怪我負ってるんだよっ!!」
「だいじょうぶですよぉ〜!!放してっ、お願い!!」
なおも押さえつける手をどかそうとする。
「ダメっ!!」

バシッ。

乾いた音が響く。

「ゴメン、チャーミー…。」
「痛い…痛いですよ…。ヤグチさん…ただチャーミーは…。」
「それも分かるよ、分かる。でも、今ヨッスィーが代わりに圭ちゃんのところに行ってるから。」
「…ホントですか…?」
「ホントだよ。もうすぐもしかしたら圭ちゃん連れて戻ってくるかもしれないから。」
「ハイ…分かりました…。寝ます…。」
素直に言う事を聞いてくれた。
その、ヤグチの言葉に安心したのだろう。
しかし、一方でヤグチは不安を抱えていた。
(ヨッスィー…遅くない…?もう亜弥ちゃんの時間終わるよ…。何かあったのかな…。)
不安に狩られるヤグチは窓の外を眺めていた。
外には綺麗な夜空が広がっていた。
(早く戻ってきてよぉ〜、ヨッスィー寂しいよ…心配だよ…。)

 

溢れちゃう...BE IN LOVE 

「あ゛〜!!う゛〜〜。」
夜、後藤は落ち武者、加護と温泉に入っていた。
「いい湯だねぇ〜。何で起こしてくれなかったの?二人とも。こんないい温泉があったのに。」
「何でって、アンタが『まだねてるぅ〜』ゆーたからやんなぁ?加護ちゃん。」
「そうだよ、ごっちんが起きなかったからだよ。」
激しく同意の加護。
「アハハ…そっか。」
ニガワライ。
そんなニガワライしている後藤を見てくすくす笑う二人。
「何か、急に仲良くなってるね。落ち武者と加護。」
「ん?まぁな、なぁ、加護ちゃん。」
「うん。ね、落ち武者。」
そして、また二人でくすくす笑う。
「???何だよぉ〜、後藤に教えてよぉ〜。」
「「ひ・み・つ。」」
「後藤のけものぉ〜?ごめん〜、起きなかったのが悪かったのは認めるからぁ〜。」

言えるはずが無い…。

何故なら、仲良くなった理由は温泉へ向かう前に後藤のバックに入っていた眉毛書きで
後藤の顔に落書きしたことなのだから。

しかも、まだその落書きの顔のまま。

「「アハハハハハハハハ!!!」」
「なんだよぉ〜!!」
一人後藤は膨れっ面。

 

黄色いお空でBOOM×3 

夕方、夕日に向かって飛ぶカオリ。
オレンジの空は次第に暗くなり始めていた。
夜に備え省電力で飛行するカオリは、万屋につくのに1時間ほどかかった。
飛ぶカオリを見たものは口々に「妖怪」「天女」と彼女を呼び語り継いだという。

万屋の前に降り立つカオリ。
「スイマセーン!!彩サーン!!」
戸を開くと同時に彩を呼ぶ。
すると、彩が奥から出てきた。
「あ、カオリさん!ちょうど良かった。上がってください。」
「???」
「はやくはやく。」
そう手を引かれ中へ入っていくカオリ。
「ののちゃん達は?」
「モウ『桂』トイウ宿ニ宿泊シテマス。」
「じゃあ、カオリさんだけ取りに着たんだ、お金取りに。馬で?」
「ハイ、取リニ飛ンデ来マシタ。」
「飛んで??」
「ハイ。」

「まぁ、とにかく、今、ののちゃん達を探している人が倒れて寝てるのよ。」
そういって、客間に通す彩。
すると、そこには布団で寝ているヨッスィーがいた。
「誰デスカ?」
「ん〜、ののちゃん達の友人なんだけど、知らない?」
「カオリハ知ラナイケド、ソノ名前ヲ聞イタ事アリマスヨ。」
「そっか、カオリさんは直接の知り合いじゃないんだね。でね、ののちゃん達を探してるみたいでね、
急用らしいんだけど、倒れちゃったのよ。」
「ソウナンデスカ…。」
「あ、これ、赤べこ忘れ物でしょ?」
そう言って、彩は赤べこの貯金箱を渡す。
「ドウモ。」
ヨッスィーの傍に座る2人。
「何か疲労によるものらしいんだ。医者が言うには。」
すると、カオリはヨッスィーの手を取ると脈を測りだす。
「コノ人、人ジャアリマセンネ。」
「!!!何で分かるの!?」
「コノ周期ハ…鳥…。」
「すごい…当たってるよ…。このひと鶴だよ。」
「ダイブ疲レテイルヨウデスネ。栄養剤ヲ投与シマショウ。」
「へ…?」

すると、カオリの腕のあたりがパカっと開き中から注射器が出てくる。
「ちょ、ちょっと…。」
止めようとする彩を無視し、カオリはヨッスィーの腕に注射を施す。
「ジツハ不死鳥ガ弱ッテイル時ノタメニ栄養剤を持タサレテイタノ。鶴ニモ効クハズ。」
「あ…そう…。カオリさんも人じゃないみたいね…。アハハ…。」
彩の顔が引き攣る。
「ハイ、アンドロイドデス。」
ニッコリ返事。
「あんこまみれ…?」
「ナンデモイイデスヨ。ヒトマズ目ガ覚メルノヲ待チマショウ。」
「はぁ。」

そして二時間。

「う…ん…。」
目を覚まし、ヨッスィーはだるそうに起き上がる。
「目が覚めた?ヨッスィーさん。」
「あ、すいません、なんかこれ…。」
そう言って、布団に目をやる。
「ハジメマシテ、カオリデス。」
「は、はじめまして。」
ヨッスィーはポカンとした表情をする。
見ず知らずの人物が目の前にいるのだから。
「誰?」とでもいいたそうなヨッスィー。
そこで彩がカオリの紹介を始める。
「この人、今、ののちゃん達と旅をしているカオリさん。」
「ドウモ。」
「あ、どうも。」
頭を下げ合う2人。
「カオリさんも看病してくれたんですよ。」
「あ、ありがとうございます。」
正座しなおしてヨッスィーは頭を下げる。
「イエイエ…。トコロデノノチャンヲ探シテルッテ聞キマシタケド?」
「あ、そうだその事があったんだ。」
自分の使命を思い出すヨッスィー。

「実は、チャーミーが今大怪我負っていて、圭さんに会いたいって言ってるんです。」
「チャーミーサンガ?」
「知ってるんですか?」
「エエ、命ノ恩人ノ方デス。」
「一刻を争うかもしれないんです。だから早くののちゃん達のところへ行かないと、
この事を伝えないといけないんです。」
「ソウデスカ。ワカリマシタ。立テマスカ?」
「あ、はい。」
ゆっくりヨッスィーは立ち上がる。
すると、カオリはヨッスィーに背を向けしゃがみ込んだ。
「あの…?」
「乗ッテ下サイ。」
「は…?」
「『おんぶ』デスヨ。」
「あ、はい。重いですよ。」
ヨッスィーは要領を得、カオリに負ぶさるヨッスィー。
「スイマセン、彩サン。障子開ケテクダサイ。」
「はい。」
言われた通り、彩は障子を全開にする。
目の前には中庭。
「ヨッスィーサン。赤ベコヲ持ッテテクレマスカ?」
カオリは赤べこをヨッスィーに渡すと。背負ったまま立ち上がる。

「ジェットエンジン最大出力!!」
そう叫ぶと。再び足元から噴射が始まった。
「サヨウナラ、アリガトウゴザイマシタ。」
とカオリは彩に告げると、一気に部屋を飛び出した。
そして、あっという間にヨッスィーを背負ったまま遠く彼方へ飛んでいった。
「!!!!!」
一瞬の出来事に彩は腰を抜かした。
こげくさい…。
畳が焦げていた。

アンドロイド飛行上の注意1
畳の上ではジェット噴射しない。

そのころ、空を飛んでいたヨッスィーは
「カッケー!!はえぇぇぇ!!」
大騒ぎだった。

 

LOVEマシーン

「うまいべ!うまいべ!うまいべ!うまいべー!!」
「ほら、そこ!食べ物食べて発狂しない!!」
夕食。発狂するなっちを注意する圭。
「うまいれす!うまいれす!うまいれす!うまいれすー!!」
「そこも!発狂しない!!」
「「ごめんれす(だべ)…。」」
「まったく、今日は宿なんだから静かにしなさいよっ!!ふたりともっ!!紗耶香ちゃんを
見習いなさいよ!!静かに食べてるじゃないのっ!!」
「アハハハ…。」
紗耶香はニガワライ。しかし、こう続けていった
「何か楽しいね、こういうの。」
「そうかな?いつもこんな感じだよ、私たち。」
首を傾げる圭。
「あ゛−−−!!なっちしゃんが!!なっちしゃんがのののカマボコ食べたれすぅ〜〜〜!!」
「ん〜〜?食べ残しじゃなかったんだべかぁ〜??」
「の゛の゛おたのじみに取っておいだれずよぉ〜〜!!うわ〜〜ん!!」

そのころ、隣の部屋で聞き耳を立てていた中澤はため息をついた…。
「ハァ…我が娘ながら相等情けないで…。」
そして、酒瓶を煽った。
「酒が足りん…酒が足りんぞおおおおおお!!」
暴れ。
蛙の子は蛙。

その時、のの達の部屋に何かが飛び込んできた。
障子を突き破り現れたのはカオリだった。
「カオリしゃん!?」
誰かを背負ったカオリは皆に
「タダイマ。障子壊シチャッタ。エヘヘ…。」
と、笑顔で言った。
「なに背負って…!!!ヨッスィーさんだべっ!!!!」
「アハハ…どうも…ヨッスィーです。」

がくっ。

気を失った。
高速度移動はヨッスィーに負担をかけたようだ。

その時、ヨッスィーが手にもっていた赤べこが落ちて

ガシャン。

割れた…。

「う゛わ゛〜〜ん゛!!!赤べこが死んじゃったれずぅ〜〜!!!」
そんな大泣きなののを無視して、全員でヨッスィーを布団を敷いて寝かせた。
何事かと、現れた店主に謝り、障子代ともう一人分の宿泊費を払い、障子戸を変えてもらった。

「でも、どうしてヨッスィーさんを連れてきたべか?」
カオリに尋ねるなっち。
「アノネ、万屋ニ居タンダヨ。」
「それで…?」
「ナンカネ。圭サンニ用ガアルンダッテ。」
「わたしに?」
「ソウ。彼女ガ言ウニハ、今、チャーミーサンガ大怪我負ッテイテ会イタイッテ言ッテルッテ。
ソレヲ伝エニ来タヨウデス…。」
「ほ、本当なの?それ…?」
動揺する圭。

「そんな…嘘に決まってるよ…根暗がそんなこと…うそだ!!うそだ!!」
「落ち着いて!!一先ずヨッスィーさんが目を覚ますまで待とう?」
紗耶香は冷静になるよう圭を諭す。
「もしかして…いくらホラ貝吹いても来なかったのは…。」

「そうです…。」

「へ…?」
目を閉じていたヨッスィーがゆっくり目を開く。
いつの間にかヨッスィーは気を取り戻していた。
そして、ヨッスィーはチャーミーの事の真相を語りだす。
「4日前、私はヤグチと旅行に出かけました。安上がりにしようと、ヤグチは小槌で
小さくなって、私は鶴の姿に戻り、ヤグチを乗せて移動してました…。その時、チャーミーと
空の上で会ったんです…。」
「まさか…。」
「チャーミーは「圭さんに呼ばれたの♪」ってうれしそうに答えていました。そんな会話をしている時、
雲行きが怪しくなって来たんです。」
「それで、どうしたべさ…?」
「それで、適当に話を切り上げ、私はチャーミーと別れました。でも…その時…チャーミーに…
雷が…。」
「嘘だ…。そんなこと…。」

信じられない。
圭にはその話が信じられない。
「うそだよ!!根暗が!!根暗がっ!!だとしたら、私のせいじゃない!!私のせいで!
私のせいで根暗は、根暗は…。」
一滴の涙が圭の頬を伝う。
力なく膝から崩れ落ちる。
「私のせいだ…。ん…ぐっ…ぐぅぅぅぅ!!!」
その涙は畳の上に雫として落ちた。
頭を抱える。
チャーミーとの思い出が頭を幾重にもよぎっていく。
「根暗ぁ…。根暗ぁ…。」
絶望のどん底…後悔、表現の仕様の無い感情が圭の心を埋め尽くした。

「早く、会いに行きましょう。」
そう言ってまだ完全でない体で立ち上がるヨッスィー。
ヨッスィーは、続けて言う。
「圭さん、悔やむのは、会ってからにしてください。カオリさん、まだ飛べますか?」
「ウン。」
「じゃあ、今すぐいきましょう。」
「デモ、カオリ2人モ背負エナイヨ。」

「大丈夫です。これがありますから。」
そう言ってヨッスィーは小槌を取り出した。
「カオリさん、これをみんなに向かって「小さくなーれ」といいながら24回振ってください。振る回数とその言葉の数は同じでお願いします。」
「ウン。」
ヨッスィーからカオリが小槌を受け取ると、言われたとおりに
「チイサクナーレ、チイサクナーレ………。」
24回その言葉と同時に小槌を皆に向かって振った。
すると、カオリ以外全員が1寸程度の大きさになった。
「ナルホド、コレデ運ベバイイワケダネ。」
理解すると皆の荷と服も1/24にして全員に持たせ、着させて、全員を頭の上に乗せた。
「飛ブヨ!!シッカリツカマッテ!!」
そう言うと、再び外へジェット噴射で飛び出した。
畳を焦がし、障子を突き破って。

 

ミニモニ。バスガイド

カオリの頭の上で5人は今後の事を話していた。
「チャーミーしゃんはきっと大丈夫れすよ…。」

「そうだべさ。なんたって竜だべ。」
口々に圭を元気付けようとする。
その言葉に、圭は力なく無言で頷いた。

「あの…。」
そこにヨッスィーが話を切り出す。

「何れすか?」

「何で、みんなは不死鳥探しているんですか…?」

「それはカオリが探しているからだべ。その手伝いみたいなもんだべさ。」

「なんだ…ののちゃんのお姉さん生き返らせるためじゃなかったんですね…。」
そう呟くヨッスィーの言葉にののが尋ねた。

「へ…?どういうことれすか…?」

「知らないんですか?不死鳥のこと…。」

「知らないべ…。だから鬼ヶ島にその関係の本を取りに行ってるべさ。」

「実は、皆さんが探している不死鳥は人を生き返らせる能力があるんです。」

「「「「!!!!!」」」」
驚く4人。

「といっても、誰もが生き返れるわけではありません。不死鳥は富士山に居るんですが
以前上空であった時、彼女、不死鳥はこういっていました。『生き返らせるには、最初の大前提に
不慮の死で寿命より早く死んでしまった者のみその対象でなおかつ、3つの条件が必要。』だと…。」

「3つだべか…?」

「はい。その三つとは、1つ目は死者の家族と生き返らせたいと願う気持。2つ目は死後2年以内のその対象の魂。
3つ目はその死者の本来寿命を全うした時の生まれ変わりの生きている人間。
これを不死鳥の元に集めなければならないらしいんです…。」

「うそ…。」

「本当です。てっきりののちゃん達が不死鳥を探していると聞いて、お姉さんを生き返らせるものだと思っていました。」

「生まれ変わりの者って未来から呼ぶ事だべ…?そんなの無理だべさ。」

「無理でしょうね…、普通は。でも、可能なんですよ…ののちゃんのお姉さんなら…。」

「かごちゃんが…れすか…?」

「はい、ののちゃんのお姉さん、かごやさんは月の王家の娘ですよね?」

「そうれす…。」

「月の王家の一族は不思議な力を持っています…。その一つ目に過去・未来の人間を自分の時代に呼ぶ能力、もう一つに夢に現れる事。この二つの能力を持っているんです。おそらく、転生段階に入る前なら、魂となっている今でもその能力は健在だと…。」

「!!!!!」
おどろくのの…。
ののの中で夢の中の出来事がフラッシュバックする。
そして、やっと夢の中の出来事が理解できた。

「でも、人が死に次の転生段階に入るまでの猶予はちょうど二年。それから数百年の時間を経て、新しい命に転生します。」

「あと2日だべ…。かごちゃんが死んだのは2年前のあさってだべ…。」

「そこで、チャーミーの千里眼が必要になるんです…。時間が有りませんからね…。
チャーミーはどんな場所のどんな物も見つけ出せる。チャーミーも不死鳥とは面識がある
はずですし、富士の樹海の中でも普通に探すより数十倍容易くなるはずです…。」

「のの…最近夢でかごちゃんの声が聞こえるれす…。カオリしゃんについていってほしいって…。」

「夢に現れたんだべか?」

「はい、れす。もしかしたら、かごちゃんはもう生まれ変わりをこの時代に呼んでいるかも知れないれす…。」

「そうかもしれないべ…。」

「ののは…。」

「ん?だべ。」

「ののは!!私は!!お姉ちゃんを生き返らせたい!!お姉ちゃんに人生のすばらしさを…
幸せを…生き返らせて教えてあげたい!!」

「そうだべ。そうするべっ!!」

「てか、ののちゃん普通に喋れるんだね…。」
様子を伺って黙っていた紗耶香が口を開く。

「てへへ。ほんとうはね。でも、秘密………れすよ。」

そして、圭も口を開いた。
「でも…根暗次第だよね。根暗が動けないなら…私はそばに居てあげたい…。」

「いいれすよ。圭しゃんとチャーミーしゃんがどんな関係かよくわからないれすけど
きっとののとかごやしゃんと同じ絆を持っている気がするれす…。一緒に居てあげてくらさい。
のの達4人でも不死鳥を見つけるれす。」

そのとき、前方を見ていたヨッスィーがカオリに声をかけた。

「あそこです!!あそこの森にチャーミーはいます。」

「了解!!」

そして、カオリはチャーミーとヤグチの居る森にたどり着いた。

 

Say Yeah!-もっとミラクルナイト−

その頃、亜弥の小屋でチャーミーは大きな発作を起こしていた。

激しい動悸。
胸をかきむしる動作。
苦しさによるもがき。
薄れ行く意識。
例えようの無い身体の動き。
ただひたすらチャーミーは「圭ちゃん」と連呼する。
滝のように流れる汗。
蒼白な顔色。
食いしばる歯。
焦点の定まらない見開いた瞳。

亜弥とヤグチには何もする事が出来なかった。
押さえようとすれば苦しさのあまりチャーミーはその腕を弾く。
異常なチャーミーの腕力。

その時、小屋の戸が開いた。

「根暗っ!!」

圭はチャーミーの元に駆け寄り、手を握る。
「根暗っ!!私だよっ!!圭だよっ!!」
そう強くチャーミーに呼びかける。
すると、圭がやって来たのが分かったのか、険しい表情は多少緩む。
「圭ちゃん…ごめんね…。」
「そんなことない!こっちこそ…こっちこそ…ごめん…お母さん…。」

「っく…うれしい…初めて…呼ばれちゃった…。何?…ぐぅっ…泣かなくても…いいよ。」
震える手で圭の涙を拭う。

その刹那、再び大きな動悸がチャーミーを襲った。
「う゛ぐぐぐぐがががががががぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「お母さんっ!!」
「はなれてっ!!今すぐ!!この小屋からっ!!出てって!!ああああああああ!!!」
そう叫ぶチャーミー。
「やだっ!!離れないっ!!」
圭は見た…チャーミーが竜の姿に戻りつつあるのを…。
腕や顔が鱗に覆われ始め、糸きり歯は鋭さを増し牙へと変わっていく、
身体は徐々に大きくなって来ていた。
「いいから出なさい!!お母さんの言う事たまには聞いてよっ!!」
その言葉に涙でぐちゃぐちゃになった顔で頷く。
そして圭は立ち上がり、亜弥とヤグチに「出よう。」と言った。

小屋を出る三人。
そこには、曇った表情をした5人と熊が居た。
「ど…うだべか…?」
心配そうに圭に尋ねるなっち。
「…………。」
その時、小屋の木材の軋む音がした。
その音に、皆が小屋を凝視する。
その軋む音はさらに大きく、多くなる。
あと退る8人。
その刹那、窓から強い光が溢れ出した。
その光の強さに、思わず瞳を閉じる。

その光の中で
何かが張り裂けるような音。
大木が倒れるような音。
大きな物が落ちる音。

が響いた。

その音に瞳を開くと

小屋が全壊していた。
そして、その光の光源は空高くに舞い上がっていた。

「「「「「「「「「!!!!!」」」」」」」」」

その光源は徐々に光を失うと、実体が見え始める。
そこには海王竜が居た。

「グオオオォォォォォォォンンンンン!!!!!」

海王竜は雄叫びを上げた。
その時、のの達の目に前になにかが降って来る。
それは、およそ10m程の透明なそれでいてゴツゴツした様でグロテスクな所々崩れているものだった。
海王竜は、静かに下へ下りると人化した。
そこには落雷前と何一つ変わらないチャーミー乙姫がいた。
「チャオ〜♪チャーミー乙姫でっす♪」
呆気にとられる8人と熊。
続けて彼女はこういった。
「怪我したついでに脱皮しちゃいました♪もう元気ですよ♪」

「バカッ!!」

バキッ!!
圭の鉄拳炸裂。

「痛いですよぉ〜♪圭さ〜ん♪」

「お前なんて氏ねっ!!」

バキッ!!

「イタイ〜♪ぐすん♪」

「本当に心配したんだぞっ!!」

バキッ!!

「だってぇ〜♪」

バキッ!!
バキッ!!
バキッ!!

「バカッ!!」
圭はチャーミーを強く抱きしめた。
「ばかっ…ばかっ…。」
耳元でそう呟く。
「ごめんね…圭ちゃん…。」
チャーミーも呟いた。

立ちすくむ亜弥。

「い…家が…。」

 

NON STOP

「のんのんのんのんっ!のんすとっぷ!!」
焚き火を囲みながら、皆の前で歌を披露するのの。

焚き火に亜弥の家の木材を放る。

「ごめんなさぁ〜い♪亜弥さん、家壊しちゃって…。」

「アハハ…いいですよ、あんな小屋。風が吹いても壊れそうでしたから。」
完全に亜弥の顔は引き攣っている。
そんな時、カオリがチャーミーに声をかける。
「アノ、チャーミーサン。」
「あ、どうも♪はじめましてぇ〜♪チャーミー乙姫でっす♪」
(ハジメマシテ…?)
『初めまして』とはどういうことだろう?
カオリは記憶をめぐらせた。
その結果、出た結論は、まだカオリを海底で見つけていないというものだった。
(ソッカ…マダ、カオリハ海ノ底ナンダ…。)
「アノ、カオリッテイイマス。ヨロシク。」
手を差し出し、握手を交わす。
「あ〜♪貴方がぁ〜♪話は聞いていますよっ♪2年前に海で溺れて居なくなっちゃったんですよね♪」

「ア、ハイ。」
「助かったんですかぁ〜♪良かったぁ〜♪」
「イエ…。アナタニ助ケラレル予定ナノ。」
「へ…?」
カオリは、チャーミーに自分は未来からやってきたアンドロイドだと説明をし、この旅が終わった
あと鬼ヶ島の海底で、カオリを見つけてほしい事、そして、そのカオリが目覚めたとき、初対面を
装ってほしい事を頼んだ。

「わかりましたぁ〜♪カオリさんそっくりの人を海底で拾って、竜宮城で目を覚ますまで置いといて、
目を覚ましたら初対面を装えば良いんですね♪」
「ハイ。」
「二人だけの秘密♪ですよねぇ〜♪うふふふ♪」
「いや、聞こえてるし。」
圭の突っ込み。

その頃、焚き火を挟んで反対側でヤグチは、なっちからののの旅の事情を聞いた。
「ふぅ〜〜ん…。そんなことがあるんだ…。」
「そうだべさ。その生き返りの可能性に賭けてるべ。」
「ねぇ、ヨッスィー。」
「はい?」
「ヤグチ達も一緒に手伝おうよ。」
その言葉に微笑むヨッスィー。
(言うと思った…。)
「はいっ。あ、ちょっとチャーミー。」
「なぁに?ヨッスィ〜♪」
「ちょっと、不死鳥について教えてもらえる?」
「うん。いいよっ♪」
チャーミーはなっちの隣に移ってきた。
「チャーミーは不死鳥を知ってるの?」
ふとしたヤグチの質問。
「まぁ、彼女はぁ〜♪始祖鳥に近い存在でぇ〜♪チャーミーと一緒で超長生きですよっ♪
何度か上空で会ってお話したことがありまっす♪」
「すごいれすね♪」
ののも話を聞こうとチャーミーの隣に座る。

「え〜っと、さっきなっちさんがヤグチさんに説明してたのと同じ事を言っていましたぁ〜♪
あとは、富士の樹海の洞窟のどこかに住んでるって♪それと、蘇生の儀式は前例が
2度ほどしかないって言ってましたぁ〜♪」
「2度れすか…?」
「ハイ♪そのうちの一つは卑弥呼さんだったらしいですよぉ〜♪それで、滅多に条件が揃わない
って言ってましたぁ〜♪」
すこし、落胆した表情をするのの。
「大丈夫だべさぁ〜。かごやちゃんは月の民だべぇ〜。」
「あ、そうなんですか♪なら可能かもしれませんね♪」
「そうれすか。それでもののはのんすとっぷれすよ!!絶対にかごちゃんを生き返らせるれす。」
「そのいきだべっ!!」

全員でかごやを蘇生させる事で意志を固める。
亜弥は悩んだようだが家が無い以上、ついて行くしかなかった。

その夜は疲労や深夜になる為、その焚き火の周りで野宿する事となり、不死鳥探しは朝日を待ってと言う事になった。

 

モーニングコーヒー 

運命の朝がやってきた。
まぶしい朝日が9人を照らす。
「いよいよれすね。」
ののは精悍な面持ちをしていた。
そんなののの肩に手を掛ける紗耶香。
「かっこいいよ、ののちゃん。」
必ず、かごやを生き返らせると言う気持が表情に表れているのが全員に伝わっていた。
ののが全員を見渡すと、それぞれが笑みや頷きで返してくる。
そして、全員が立ち上がった。
「いくべさ。」
「行コウ。」
「いきましょう♪」
全員が輪になった。
ののがその輪の中央に手を差し出す。
全員が手を重ねる。
「がんばってぇ〜〜いきま…」

「「「「「「「「「っしょいっっ!!!」」」」」」」」」

それぞれが、目的の地へ向かうべく荷を担いだ。
チャーミーは海王竜に化け、ヨッスィーも鶴に化ける。
カオリはジェット噴射を始めた。
ヤグチは小槌で小さくしてもらい、着替えてヨッスィーに飛び乗る。
そして、他5人はチャーミーに乗る。
その時、亜弥が
「あのっ!!しげるを連れて行きたいです!!私といつも一緒に居たから…。心配で…。」
と、言った。
しかし、チャーミーは全快であるのだが、5人を乗せ、さらに熊を載せるのは大きな負担になる。
そこで、ヤグチが口を開いた。
「ねぇっ!!小さくすればいいじゃん!ヤグチみたいに。」
「…そうれすね!そうするれすっ!!」
そして、ののはヤグチから預かった小槌を取り出し、チャーミーから降りると、
小槌を「ちいさくなーれ。」と24回しげるに向かって振った。

当のしげるは相等混乱していたようだ。

そのしげるはヨッスィーの背にののに摘まれ、乗せられた。

「いくれすよっ!!」
そういって、ののはチャーミーに飛び乗った。

「いっきますよぉ〜♪」
アニメ声でチャーミーはふわりと浮かび、富士の樹海へ向かって飛んだ。
それについていく、カオリとヨッスィー。
「ねぇっ!ヨッスィー。」
ヤグチがヨッスィーに話し掛ける。
「なんですかぁ?」
「ののちゃん、強くなったよね。」
「そうですね。ホントそう思います…。」
「わかるかぁ〜しげるぅ〜。」
ぽんぽんしげるの頭を叩く。
「グガァァァア!!」
「うおっ!!こわっ!!」

やはり猛獣でした…。

その日、同じ頃、恐れていた事が加護を襲っていた…。

その日の朝は寒く、遅起きの後藤でさえ、その寒さに起きた。

「おはよう、ごっちん。」

「ん〜〜。おはよう、加護。寒いね…。」

「そうだね。さむいね。」

「ホンマやでぇ、今日は昨日と打って変わって寒いわぁ〜。」
落ち武者は消えかけた焚き火に枝を放って、火力が強くなるのを待った。

そんな時。後藤が加護の異常に気づいた。
「加護っ!!手が消えっ…。」
「ん・・・? !!!イヤァァァ!!」
そう、加護の身体は再び透け始めていた。
その透けは徐々に全身に広がっていく…。
何かから身を守るように、自分の身体を抱きしめる。

「だいじょうぶ!?加…?あれっ…?加…」
『加護』の言葉が出てこない。
もう、後藤は1年半近く付き合っているメンバーなのに名前が出てこない。
同じく、その症状は落ち武者にも現れていた。
「どないしたん!?か………??」
「どうしようっ!?落ち武者っ!!この子の名前が出てこないよっ!!後藤ボケちゃったの!?」
「いや…ちゃうで…ウチも出て来ぃーへん…。」
「いややぁぁぁ!!ウチ、ウチ…どうなってまうん!?ウチ…ウチ…ウチの名前は…何?
ウチの名前何?」
その症状は当の加護にも及んでいた。
必死に頭をめぐらす。
自分が何者なのかと言う証拠を必死に探した。
その時、彼女を救ったのは、後藤でも、落ち武者でもなく、
自分が書いた後藤への地面のメッセージだった。

 

上海の風 

「速いなぁ〜、奴ら…。ホンマ追いつけへんわぁ〜。」
上空で中澤は舞っていた。

忍法、大凧の術。

風に任せるしかないこの忍法は思うように追いかける対象を追う事が出来ない。
まさに風任せ。

「あかんわぁ〜。っておいっ!!やめぇっ!!カラスッ!!」
冗談抜きに、カラスは凧を突っつき、穴をあけていく。

「あかんて!!あかん!!あかん!!あ゛あ゛あ゛〜〜〜!!!」
バランスをなくした。
「だからゆうたやろおおおおおお〜〜〜!!カラスなんかの女房にはならへんぞおおお!!」

「って、これだけかいなっ!!」

後藤は震えた加護に何と声を掛けたらよいか分からなかった。
ただ、明るく「温泉行こっか。」と誘った。
その言葉に力なくコクッと頷く加護。
後藤は加護に生きているという感覚を与えたかった。
暗い洞窟ではわからない、外界の森のざわめき、風、鳥の鳴き声。
それを感じる事で加護がそこにいるという感覚を与えたかった。
温泉へ着くと、服を脱ぎ入浴をする3人。
後藤は腕に描かれていた加護の名前が消えぬよう、湯船に腕が浸からないよう気をつけた。

「ねぇ…ごっちん…。」
あれからずっと口を閉ざしていた加護が口を開いた。
「何?」
「あの赤い鳥、本当に加護を助けてくれるのかな…。」
「…………。」
確証はない。
ただかごやの言う事を信じてここまでやってきた。
あの紅い鳥に今はすべてを賭けるしかない。

 

あなたの髪の香り 

「あんなぁ、加護ちゃん。」
そこに会話に加わる落ち武者。
「今は、あの紅い鳥にアンタの運命賭けるしかないんやろ?言うても何もはじまらへんで。
待つしかないねん。その助かる時を。」
「そうだね…。」
また再び加護は口を閉ざした。
「すまん。言い過ぎた…。」
その言葉に加護は首を横に振った。

そして気不味い雰囲気で温泉を上がり、3人は洞窟へと戻っていった。

洞窟に戻る3人。
無音が空間を支配する。
その時だった。
足音が入り口から聞こえてくる。
何者かがやってきたのだ。
「だれやっ!?」

その落ち武者の質問に、その人物は
「ここにいるのね、不死鳥は…。」
そう言い放った。
その人物の姿が焚き火の明かりに照らされた。
くノ一メロン組、あゆみだった。
「居るんでしょ?赤い羽根した鳥。温泉でのさっきの話、聞かせてもらったよ。渡してちょうだい。」
「なんやねん自分!?」
刀を抜く落ち武者。
落ち武者は殺気をあゆみに感じた。
「素直に渡さないと命はないよ。」
そう言って、背中の刀をあゆみは引き抜く。
「誰かが渡すかヴォケ!!こっちは人の命がかかっとんねん!!」
「そう…渡さないつもりなの。じゃあ死んでもらおうかな。」
構える落ち武者とあゆみ。
間合いが詰まる。
「ゴマちゃん!!加護ちゃん!!あの鳥抱えてはよ逃げェっ!!」
「…で、でもっ!!」
「ええから!!はよせーや!!」
「…うん!!」
奥へと向かい不死鳥を抱えてやってくる二人。
「させるか!!」
その二人を追おうとするあゆみ。
そのあゆみの目の前をふさぐ落ち武者。

「邪魔だっ!!」
刃が交じる。
「今や!!逝けッ!!」
二人はコクんと頷くと、二人は洞窟を飛び出し、森の中へと消えていった。
「くそっ!!武士のなれの果てみたいな滑降しやがって!!」
「うっさいヴォケ!!これでも元は名家の娘やぁ!!」
幾度と交わる刀。
木霊する金属音。
少しでも気を抜けば殺られる。
(ごっつー強いなぁ、こいつ…馬鹿力ゆーのはこー言う奴の事いうんか?アカン腕しびれてきた。)
「埒があかないね…バイバイ、なれの果て。」
あゆみは懐から何かを取り出すと地面にそれを叩きつけた。
その刹那、煙が多量に発生し、洞窟内は煙に包まれた。
「くっ!!何も見えへん!!」
走り去る足音だけが洞窟内に響く。
落ち武者も追おうとするが出口が見えない。
やっと出口に出たとき、既にあゆみの姿は見当たらなかった。
「すまん…ゴマちゃん、加護ちゃん。何とかして逃げてーな…。」
刀を地面に突き刺す。
やるせない思いが、自分の不甲斐なさがそうさせた。
その時、落ち武者を大きな影が覆った。

見上げた。
そこには大きな竜と鶴と人が飛んでいた。
それは徐々に落ち武者に近づいてくる。
「!!!!く、来んなや!!ホンマ来んなぁ!!」
腰が抜けて逃げる事が出来ない。
這ってでも逃げようとする落ち武者の耳に聴きなれた声が聞こえてくる。
「落ち武者ぁ〜〜ののれすよぉ〜〜〜。」
(化け物に知り合いなんておらへん!!おらへん!!)
「落ち武者ぁ〜〜!!なっちもいるべさ〜〜!!」
「カオリモ居イルヨーー!!」
(…へ………?)
改めて振り返り、凝視する。
空を飛んでいた人物はカオリで竜にはののとなっちが乗って手を振っている。
竜は地上に降り立つと、のの達を降ろす。
のの達は落ち武者の元へ。
「ビックリしたれすよ、不死鳥の居るはずのところから落ち武者が出てきたんれすもん。」
「落ち武者、2年ぶりだべさ。連絡無いと思ってたらこんなところにいたんだべか〜?」
「ヒサシブリ、カオリ生キテルヨ。」
知っている面々…懐かしさを感じる。
気付けば、落ち武者の周りには9人の人物と熊が居た。

「!!せや!!ゴマちゃんと加護ちゃんが!!追われてんねん!!」
「…?どういうことれすか…?ごまちゃんって…あのごまちゃんれすか…?」
「せや、ゴマちゃんや!!あんな、ゴマちゃんとかごやちゃんの生まれ変わりの子がこの時代に
来てんねん!!そんで今、何やかようわからん忍者の女がここに居た紅い鳥を不死鳥だせゆうて、現れて、二人は紅い鳥抱えてそいつから逃げとんねん!はよ探さな危ないで!あの二人!!」

「やっぱり来てるんれすか。生まれ変わりの人・・・。」
「やっぱり・・・?どーゆー・・・」
「とにかく話は後だべさ!やばいんなら助けにいかないとだめだべ!!」
「うん、れす!!」
そうして、10人は森の中に入った。

 

Baby Cry 

後藤と加護は森の中を迷走していた。
何度も後ろを振り返る。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ。」
足が止まる二人。
「まいたかな・・・。」
「さっきの人・・・柴ちゃんに似てた・・・。」
「何故か、この時代に知ってる人のそっくりな人が多いんだよ。善人悪人問わずね。」
「不死鳥ってこの鳥のことなのかな?」
「多分・・・。良くわかんないけど・・・。」
「!!!!」
「どうした・・・?加護・・・?!!!!」

「ご歓談の所おじゃましまーす。」
2人の目の前であゆみが木に寄りかかっていた。
あわてて加護は後ろ手に鳥を隠す。
「渡して貰いましょうか?」
刀に手をかけ詰め寄る。
(どうしよう・・・このままじゃ加護も危ない・・・。)
「加護!!逃げて!!後藤にここは任せて!!」
「やだっ!!ごっちんの側にいるっ!!離れないっ!!」
「おねがいっ!!ここで加護も殺られちゃったら何も意味なくなっちゃうよっ!!」
「やだっ!!やだよっ!!」
加護の頬に大粒の涙が伝う。

「大丈夫、後藤は死なないよ。いい子だから・・・後から駆けつけるから行きな。」
後藤はニコッと笑って見せた。
「うん・・・。絶対約束だよ・・・。」
そう言って、加護は走っていった。
「どけぇっ!!」
刀を抜いて後藤に迫る。
一か八かの賭に出た。
ポケットからデジカメを取り出す。
(お願い、動いてっ!!)
電源を入れると、電池マークが1/3以下の表示をしていた。
「おねがーいフラッシュ!!」
フラッシュ機能が発動。
「ぐああっ!!」
一瞬にしてあゆみの視界を奪った。
「くそっ!!妖術か!!」
目を閉じたまま刀を振り回す。
そんなあゆみを後目に、後藤は加護の後を追った。
あゆみの視界はなかなか回復しない。
至近距離でのフラッシュと10倍能力故に感じる光度は人の十倍の明るさで受けたのだ。
視界が回復した頃には後藤の姿も見失っていた。

「また見失ったか・・・。でも10倍聴力があるしね。」
あゆみは耳を澄ました。
2つの走る音が右側から、10人の足音が左側から聞こえた。
「なんだろ・・・?この大勢の足音・・・。まあいいか。」
後藤と加護の足音にする方向を確認し、後を追った。

そのころ加護は絶壁に行き止まっていた。
「あかん・・・絶壁や・・・。」
振り返る・・・、戻ることが出来ない。
今にもあゆみが現れそうな気がして、足が戻ろうとしない。
その時、人影が木陰から現れた。
「!!!!」
身を強ばらせ、その人影を凝視した。
「はやいよぉ〜加護ぉ〜。」
後藤だった。
「ごっちんっ。」
加護は後藤だとわかると、走って抱きついた。
「良かった・・・。」
後藤は頭をなでる。
「へへへ。一発食らわしてやったからね。」

「一発?」
「これ。」
加護にデジカメをちらつかせる。
「おねが〜いフラッシュ!!ってね。」
後藤はニカっと笑った。
それにつられ、しばらく笑みの無かった加護も笑った。
「でも、安心してらんないね。また逃げないと・・・。ここもあぶないよ。」

「その通り。」

「「!!!!!」」
再び二人の前に木陰からあゆみが現れた。
「同じ手はもう食らわないからね。」
刀を振り上げる。
その刹那。
「あぶないでぇ〜〜!!!!!!」
上から声がした。
上を見上げるあゆみ。
「???」
大凧が降ってきた。
「うわああああーーー!!!」

衝突。

 

I Wish

「あいたたた・・・。」
衝突した人物が起きあがる。
「だいじょうぶかぁ?あんたぁ〜。」
倒れてるあゆみに声をかける。
あゆみは気絶していた。
10倍能力ゆえ人の10倍長く失神する。
「あかん、気絶しとるアハハ・・・。」

「ゆうちゃん・・・?」
「中澤さん・・・。」

「ん?呼んだか・・・?」
二人に気づく中澤。
「・・・。!?かごやか!?かごやなんか・・・?」
中澤には加護はかごやに見え、
二人には自分の時代の中澤裕子に見えた。

その時、のの達が森の中から現れた。

「あっ!!ねーさんもいるべっ!!」
「おあっ!!見つかってもーた!!」
身を隠そうとする中澤。
しかし、もう完全にバレている。
そして、なっちが加護に気づく。
「その奥にいる子・・・もしかして・・・かごちゃんの生まれ変わりの子だべか・・・?」
ののが加護の前に立つ。
「この子が・・・。探したれすよ・・・。」
ののと加護が出会った・・・。

その刹那、不死鳥が光を放った。

全員がそのまぶしさに目を閉じる。
再び目を開くと全員が白い空間にいた。
不死鳥は加護の手を羽ばたき、離れると、人の姿になった。
その姿は後藤とうり二つだった。
「待ってましたよ・・・みなさん。」
「ご、後藤が・・・。」
驚く後藤。
「ああ、姿借りてます。」
そう答える不死鳥。
「だて、だいたいのことは察しが付いています。この加護亜依さんの前世を蘇生させたいのですね?」
「そうれす・・・。れも・・・かごちゃんの魂がそろってないれす・・・。」
「いますよ、貴方の側に・・・。」
「???」
「あなたをかごやさんはずっと側で見守っていたようですよ。」
そう不死鳥が言うと、ののの隣に光が集まり始めた。
その光は、人型になり、それはかごやの姿になった。
目を開くかごや、ののと見つめ合う。
「ひさしぶりやな・・・のの・・・。」

「かごしゃんれすか・・・?本当に・・・かごしゃんれすか・・・?」
「せや、ウチや・・・のの。」
「おねぇーちゃぁん・・・ひぐっ、んぐっ。」
涙が溢れる。
会いたくて、会いたくてどうしようもなくて、どうにもならなかった人物が
今、ののの目の前に現れたのだ。
ののは抱きつこうとした。
しかし、かごやの身体に触れることが出来ない。
「ウチ、まだ魂やしな。」
ニカッと笑うかごや。

不死鳥が話を切り出す。
「それでは、蘇生の儀を行います。加護さん・・・貴方の髪の毛を一本ください。」
「あ・・・はい・・・。」
加護は言われたとおり、髪の毛を一本引き抜くと不死鳥に渡す。
「では、簡単に説明します。正確に言えばかごやさんを生き返らせるのでなく、
加護さんの生きた身体の一部より加護さんと全く同じ身体を作り、その身体にかごやさんの魂を入れます。
その際かごやさんの生き返りを願う祈りの力がその身体と魂を融合させるのです。それで蘇生の儀が完成します。」

なっちが不死鳥に尋ねる。
「なっち達も祈っていいべか?なっちたちも力になりたいべ。」
「構いませんよ。条件の一つに家族としたのは、故人に一番思い入れの強いのが家族であるとという推測の上で条件付けですから、
別段他人でも、何人でも祈る気持ちが強ければ構いません。」
と不死鳥は答えた。
「ミンナデ祈ロウヨ!!ミンナデカゴヤチャンヲ生キ返ラセヨウヨ!!」
そのカオリの呼びかけに、全員が頷き、「うん。」と答えた。

「では、始めます。」
不死鳥が目を閉じる。
不死鳥に握られた髪の毛が光り始める。
手のひらを広げると光った髪の毛は光を発し始め、どんどん大きくなる。
その光は徐々に人型となり、加護とそっくりな裸体となる。
新しいかごやの身体の出来上がりである。
「これで、身体が完成しました・・・。では、かごやさん・・・。その身体に入ってください。」
「はい。」
かごやはゆっくりと加護から作られた身体に歩み寄り、その身体に入った。
「これからは、皆さんの祈りが必要となります。目を閉じて祈ってください、念じてください。
彼女が生き返ることを、身体と魂が融合することを・・・。」

全員が目を閉じ、祈った。
かごやの蘇生を、融合を・・・。

全員が祈ってしばらくの時間が過ぎた。
「はい、もう結構ですよ、皆さん。融合は完成しました。」
そして、不死鳥はかごやに話し掛ける。
「かごやさん。目を開いてみたください…。」
その言葉に反応し、瞼をゆっくり開く。
「かごしゃん…。」
かごやは自分の今の状態を確かめた。
手の平を見て、開閉を繰り返す。
感触がある。
そんな感触を確かめていると、ののが抱きついてきた。
「良かったれす…。良かったれすよっ!!ひぐっ、ひぐん、う゛わ゛〜〜〜ん!!!」
「アホッ。強ぉなる約束したやんか…何泣いとんねん…。」
かごやもののを抱きしめる。
暖かい感触。
触れたくても触れられなかった妹の感触、妹の香り。
「らって…らって…うれじぃんだも〜〜ん!!」
「せやなぁ…ウチもうれしい…。こんなうれしい事ははじめてやで…のの…。
ウチもう、ののとは離れへんよ…。二人、人生全うして死ぬまで…。」
「うんっ!!」
皆が涙した。
そこには美しい姉妹愛が有った。

「かごや…。」
そう呼ばれて振り返る。
そこには涙でぐちゃぐちゃな中澤が居た。
「ただいま、ねーさん…。」
「おかえり。」
中澤もかごやを抱きしめた。
「さて、今から私の能力で後藤さんと加護さんを元の時代の元の場所へ戻します。」
そう話を切り出した不死鳥。
「もうれすか…?のの、ゴマしゃんともっと話がしたかったれす。」
「しょうがないべさ…。また会えて良かったべ…。」
「ソウダネ。」
ののとかごやは、加護と後藤に感謝を述べる。
「ありがとうれす、加護しゃん、ゴマしゃん…。」
手を振り「いえいえ。」と答える後藤。
「楽しかったですよ、いろいろあって辛い事もあったけど…。」
そう答える加護。
「ホンマおおきに、二人とも。加護ちゃん…、ホンマ迷惑かけたなぁ。もう大丈夫やで、あんたの命も繋がった。」
「ううん。加護ね、前世からみんなと一緒なんだなって知れてよかった…。ありがとう。」
「本当にそっくりれすね。のの、生まれ変わってもかごしゃんといっしょれすか?」
「うん。一緒だよ、一番の親友だよ。」
「そうれすか。よかった。」

「もうそろそろ、よろしいですか?」
「あ、はい、お願いします。みんな、元気でね!!」
手を振る二人。
そして光に包まれ、二人は元の時代へと戻っていった。
(バイバイれす…。ありがとうれす。加護しゃん…ゴマしゃん…。)

 

LOVE センチュリー

「元の世界に戻しますね。」
そう言うと、不死鳥は白い空間から元の森の中に空間を戻した。
「ありがとうれす、不死鳥しゃん。」
「ホンマ、おおきに。」
「いえ、仕事ですから。それでは、私は新天地を目指して旅に出ます。」
そして、不死鳥は鳥の姿に戻り羽ばたくと空高く飛び立った。
「アッ!!チョトマッテー!!羽チョーダイッ!!」
しかし、既に不死鳥は遥か彼方に飛んでいた。
後の祭りかと落胆していた時に、赤い羽根が一枚降って来た…。
それを手にとるヤグチ。
「はい。」
ヤグチはその羽をカオリに渡す。
「アリガトウ。コレデ、ミッション終了。ソレジャカオリモ帰ルネ。」
「カオリしゃんも、もう行くれすか…?」
「ウン。マタ会エルトイイナ。」
その言葉に頷くのの達。
「ジャアネ、バイバイ。」
そう言って、カオリは目の前に光のゲートを出現させ、その中に消えていった。

「ねぇっ、ヨッスィー。ヤグチ達も、もう行こうよ。旅行の続きしようよっ。」
「はいっ。」
「じゃあね、みなさん。ヤグチ達ももう行きます。」
二人はのの達に頭を下げた。
「また、会いたいれすね。遊びにきてくらさいよ。」
「ウチらも遊びに行くさかいな。」
そして、ヤグチは小さくなって、ヨッスィーは鶴に化け、ヤグチを乗せると飛んでいった。

「あのぉ〜、私としげるはここ住みやすそうなんで、残りますぅ〜。」
しげるに乗った亜弥がのの達に言う。
「ウチも残るわ、ここ住み心地ええしな。」
落ち武者も残る事を告げる。
「そうれすか、元気でがんばってくらさいね。」
「ところで、落ち武者1両もう使ったんだべか…?」
素朴ななっちの質問。
「アハハ、スリに遭うてもうた。」
「ついてないれすね。」
笑い合うのの達。
「ほな、あんた、ここらへんの地理教えたるさかい、着いて来ぃ〜。」
「あ、わたしですかぁ〜。」
「他に誰がおんねん、熊に乗ったあんたやがな。ほな、みんなまたな。」
そう告げて、二人と熊は森の中に消えていった。

残ったかごや、のの、チャーミー、圭、中澤、なっち、紗耶香。
「でも、なんでねーさん、ここに居るんだべかー?」
「そうれすよっ!!なんで居るんれすか?」
ニガワライの中澤と圭。
「あっ、圭しゃんもグルれすかっ!?」
「まぁ、ええやん。ウチは大凧で旅行しとっただけ、偶然ってことにしといてーな。」
ごまかす中澤。

「じゃあ、もうそろそろ、帰りましょう♪」
「そうだね、つんくさん暇してるだろうしね、根暗、化けな。」
「はいっ♪」
チャーミーは海王竜に化ける。
全員がチャーミーの背に乗る。
「あ、どないしよう、あの伸びてる人。」
中澤があゆみに気付く。
「ほっといたらえーよ、ねーさん。」
「せやな、ええとしよう。」

そうして、のの達も戻るべき場所へ帰っていった…。

 

エピローグ1 

数日後。
チャーミーは鬼ヶ島の海底を泳いでいた。
「何処ぉ〜♪カオリさんは何処ぉ〜♪」
一緒に探すように命ぜられた亀たちはやる気がなさそうだ。
その態度に気付くチャーミー。
「あんたたちっ♪亀鍋にしちゃうわよ♪」
びくっとする亀吉。
急に亀たちはいそいそと探し始める。
その時、チャーミーがあるものを発見した。
「ん?あれかしらぁ〜♪」
それは、やはり、カオリだった。
手を突き上げたまま、沈んでいた。
「ほらっ、あんたたちっ♪ボサッとしてないで、その人を竜宮城に運びなさいよっ♪」
亀にカオリを運ばせる。
「えっと…。これで目が覚めたら、他人の振りよねっ♪」

そして、目覚めたカオリは2121年に地上に戻る事になる。

 

エピローグ2 

ののとかごやは月夜に丘に来ていた。

「ここれすよっ、かごしゃんの寝ているところは。」

「何やか不思議やな、ウチのホンマの身体はここに眠っとる。
せやけどウチはここで今も生きとる…。」

「そうれすね。」

ふと、夜景を見つめるかごや。
「みんな、元気にやっとるかなぁ。」

「きっと元気れすよ、みんな…。」

「なぁ、のの…。」

「なんれすか?」

「今夜、一緒の布団で寝よな。」

「うん♪」

 

エピローグ3 

加護と後藤は元の時代、テレビ東京の楽屋に戻ってきた。

「戻ってきたね…、ごっちん。」

「そうだね、戻ってきちゃったね…。」

「ねぇ、ごっちん。加護ねぇ、やりたい事があるんだけど…。」

「何?」

加護は後藤に耳打ちした。

数ヵ月後。

「やったね、ごっちん。やっと、うちらの企画やってもらえるね♪」

「そうだねっ。」

手に握った台本のタイトルに目をやる。

『ハロモニ劇場  のの太郎 と かごや姫』

 

〜完〜