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今田耕二 投稿日: 2001/03/01(木) 03:19

■■−寝袋の中の裸女 中澤裕子篇− ■■

島田は目をらんらんと光らせていた。その目はじっと路地をみつめていた。
早く夜になってくれ。彼はいらいらしたが、沈みそうな太陽はなかなか沈んでは
くれず、路地裏の狭い空間の上にわずかに見える空には白い雲が茜色に染まって、
その色を変えようとはしなかった。
 
島田は1ヶ月前にこの内海荘アパートにはいった。入居したその日の夜に窓を開けた
彼は、向かいのマンションの窓側に立っている一人の娘を見た。それは中澤裕子で
あった。その時の一瞬の衝撃を島田は忘れ難い。彼女はすぐに窓を閉めてしまったが、
その瞬間垣間見た、テレビで見た印象とは違う彼女の整った美しい顔立ち、Tシャツ
とホットパンツ姿の色気たっぷりな肢体は、彼の網膜に焼きついた。
一瞬の出来事ではあったが一人のファンを暴走させるには十分強烈な瞬間であった。

島田はそれ以来中澤の生活パターンを徹底的に調べるようになった。島田は毎夜のよう
にカーテンの隙間からマンション前のひっそりとする路地を見つめ裕子の帰宅時間、
睡眠時間を調べ上げた。その中で島田は、深夜になると裕子が一人でビールを買いに
コンビニに出かけていくということに気づいた。初めは裕子を一目見ていたい、
物陰からでもいいから見ていたいというファンの通常の欲求の筈であった。しかし
毎夜のように裕子を覗き見しているうちに、欲求はエスカレートし、生身の中澤裕子
に触れて見たいと思う感情を抑制することが出来なくなっていた。

太陽はようやく西の水平線に沈んでいった。茜色だった空はダークブルーに変わりつつ
あった。<夜になるまで待とう。今夜こそ決行だ>彼はようやく心を決めた。

午前0時30分すぎに、裕子はコンビニから戻ってきた。
「中澤さん!」
いきなり呼びかけた。彼の声はすっかり上ずっていた。
「はあ?」
勝手知った場所で。自分の住む場所と目と鼻という安心感からか、
中澤裕子は恐れを知らぬ者のように、笑みを浮かべた顔をして平気でこっちを見た。
島田の目の前に裕子の美貌の顔があった。湯上りのさわやかな女の匂いがして
彼の手の触れるところに、ダッフルコートに包まれた官能的な女の肉体があった。
「ぼくと、一緒に暮らしてください」
彼は逆上して、自分が何を言っているのかわからなかった。裕子は彼の
逆上ぶりを見破った。裕子ははじめて危険を察知して、
「いやだわ」
と叫んで逃げようとした。彼はすでに手にしていた登山ナイフの刃を立て、
裕子の腕を握り、ナイフの刃を彼女の咽喉にぴったりとくっつけた。
「きゃあっ!」
裕子は咽喉から笛のような声を立てた。ヒヤリとする刃の感触が、全身の恐怖
となり、裕子は動かなくなった。足がすくんでしまったのだ。

「声を出すとあぶないよ」
彼は己の凶暴さに酔ったように、にやりと笑って裕子に凄んでみせた。
裕子は蒼白となり、持っていたコンビニの買い物袋を落としそうになった。
「さあ、来い!」
押し殺した声で裕子に命令し、彼は登山ナイフをいっそう強く押し当てた。
裕子は怯え、意思を失ったように彼にひきずられるまま、内海荘アパートの
玄関に連れ込まれた。
島田は略奪者の歓びにふるえていた。
「二階にあがるんだ!」
彼は虜になった中澤裕子に荒々しい陵辱を加えようとする野蛮な戦士のようだった。

逆上というのはまさにこういう状況をいうのだろう。頭に血がのぼって、彼の凶暴性
は剥き出しとなり、こめかみはずきずきとしてきた。登山ナイフを裕子の咽喉に押し当てたまま、島田は裕子を内海荘アパートの二階の自分の部屋に連れ込んだ。
裕子は全身をがたがたと震わせていた。その震えは大型のバイブレーターでも当てているようで、裕子を抱え込んでいる島田にもはっきりと感じらえた。
「そこに座れ」
島田は命じた。裕子は訳がわからぬまま乱雑に散らかった畳の上に横座りとなった。
裕子は真っ青な顔をしていた。髪が濡れているのは風呂あがりのせいだが、額に
浮かんでいる汗は冷や汗なのだろう。それにしてもシャンプーの香りを漂わせた髪と
みずみずしい素肌は男心をそそってやまない美しさを持っていた。
濡れた髪、化粧を落としても冴えかえっている彼女の美貌、長い睫毛、肉感的な唇、
さらに豊かな乳房や、横座りして盛り上がってみえる腰つきが、彼に女の
存在を強烈に実感させた。
「おれは島田というもんだ」
しゃがれ声でぎこちなく自己紹介した。彼が腰を落とすと、裕子は怯えて後ずさりした。登山ナイフを一応は鞘におさめた。
「なあ、お前はモーニング娘の中澤裕子だろ。俺はいつも見ていたぜ」
彼のぎこちなさは、余計に昂じた。彼は自分で何を言っているのかもさっぱり
わからないような状態になってきた。

「おれの女になって一緒に暮らしてくれ」
島田は唐突にいった。一緒に暮らすという言葉を口にしただけで、頭にどっと血が
のぼってくるのを感じた。
裕子の震えはまだ止まらず、裕子は気味悪いものでも見るような目つきで島田
を見ていた。
彼はうわ言のように繰り返した。裕子はこの男が何者で、いったい何を
言おうとしているのか見当がつかなかった。だが、島田が
言葉を繰り返すたびに、おぼろげながら事情が飲み込めてきた。
すこしずつ裕子は落ち着きを取り戻してきた。それにしても何と乱暴な。
登山ナイフを咽喉に突き付けるなんて。
落ち着いてきて真っ先に裕子が考えたのは、どうすれば、この部屋から脱出
できるかということだった。逃げ出さなくてはいけない。裕子は部屋の
様子をうかがった。窓がある。しかし窓からは逃げられない。飛び降りでもすれ
ば一生障害者になってしまう。ドアからしか逃げ道はない。ところがこの島田
がこのドアを背にして座っているのだ。
「私、帰らせてもらいます」
裕子は躊躇したが勇気を出して言った。裕子にとっては腹立たしさの方が
いっそう強まっていた。彼女は立ち上がりかけていた。
「帰るわよ」
その一瞬に島田は裕子にいきなり平手打ちを食わせた。
「ひゃっ!」

裕子は頬を打たれ、その突然の痛さが脳天を突き抜ける思いがした。裕子は
大声を上げようとしたが、肝心の声が出てこないことに気づいた。
行動は平手打ちだけではなかった。彼はひるんだ裕子を押し倒した。
「こいつ!」
倒れた裕子に馬乗りせんばかりの勢いで、彼は襲い掛かり、その胸元を掴んだ。
一気にコートを脱がせた。ブラウスはビリッという音と共に裂けた。
ぽろりと裕子の弾みのある胸とブラジャーが見えた。裕子はあわてて手で覆い
ながら、それでも逃げたい一心で、ドアのほうへ膝で進んだ。島田は裕子の後ろ
へ回り、裕子を羽交締めにする格好となった。そして腕を後ろにねじ曲げた。
<あっ!痛いっ!>
それでも裕子の声は声とならなかった。スカートの裾がまくれて、筋肉が
程よく付き締まった太腿が丸見えだった。乳房も両方ともが見えそうになって
しまっている。
島田は裕子の腕を後ろにねじ曲げたまま、膝の力で彼女の体を押すようにして
押入れの前までつれてきた。裕子に逃げられないように用心しながら、空いた
右手で押入れをあけた。押入れの上段は乱雑な布団の積み重ねだが下段は
ガラクダの山だった。そこから島田は登山道具をそろえた時買ったロープを
すばやく取り出した。取り出したロープの結び目を歯でほどき、裕子のうしろ
手にぐいと力を入れた。早いところ裕子が逃げ出さないように、縛り上げねば
ならない。完全に裕子は自由を奪われた。

彼は目を血走らせ、彼女を両方の手をうしろにとらえ、ロープで縛った。
「何すんのよ!」
「うるさい。黙ってろ!」
島田は遠慮しなかった。裕子を縛りながら、征服感が込み上げてくる気がした。
それはまさに快感だった。
裕子の自由を完全に奪ってしまうと、島田は裕子の乱れた着衣に手をかけ、肩を
ひん剥いた。
裕子は体を硬直させた。彼は後ろから両手を出してブラジャーの中に手を入れ
、乳首が上を向いて弾みのある、格好のいい乳房に触った。
「いやっ!だれか助けてぇ!」
やっと裕子に大声が出た。
慌てた島田はタオル掛けからタオルをひっこ抜くなり、そのタオルで裕子にサル
グツワをかませた。
「あ、ウゥウゥ」
裕子はもがき、唸り声を上げた。
「声をあげると殺すぞ」
反抗されればされるほど、彼は自分の気持ちが凶暴になって行くのを知った。
再び登山ナイフの鞘を払い、ナイフの刃で裕子の首をひたひたと叩いた。
「おとなしくするなら殺さない。」

裕子は絶望的な気持ちになった。咽喉は渇き、拒絶反応を示すように裕子は
下半身の裂けた唇が、自然と収縮するのを自覚した。島田はおおっぴらに
裕子の後ろから乳房を触りはじめた。まるで乳房の重みを計るように両方の
手ですくうように楽しんだかと見ると、島田の手はつまんだりさすったりして
裕子の乳房の弾み具合を堪能した。
<いやだ、いやだ>裕子は心の中で拒絶し、反発したが、快感とは関係がなくても
小さな乳首が硬くなり勃起する、裕子は全身で恥ずかしく思った。
「胸に触られるといい気持ちだろ。」
島田はのっそりと立ち上がって縛られた裕子の前に回った。
<きゃっ!みられる>
着衣はすっかり前がはだけていた。太腿はまるだしでベージュ色のパンティが
見えていた。島田は好奇の目をひらかせて、彼女の膝に手をかけ強引に
ひらこうとした。その刹那に裕子は後ろにひっくりかえりながら、男を蹴った。
本能的な裕子の防衛のための攻撃だった。島田はしたたかにあごを蹴られた。
「この野郎!」

鎮まりかけていた島田の怒りの感情は煽られてたちまち燃え出した。
裕子の服をナイフで切り裂き、一気に衣服を引き剥いだ。
あっという間に裕子をほとんど生まれたままの姿にした。
次に足を縛ろうとして、彼ははたと気づいた。裕子の足首をそろえて縛ったのでは
肝心なあの行為ができない。島田は本や新聞紙を積んである床の間まがいに立っている
床柱に、裕子の右足首をロープでしっかりと縛りつけた。
これで大丈夫だ。彼はしたたり落ちる汗を手の甲でぬぐった。今度はゆっくりと
左の足の膝と足首を持ち、裕子の股ぐらをひらこうとした。裕子は太腿に
力をこめて抵抗した。手を放した島田は、登山ナイフをとりあげ、刃で裕子の
乳房や太腿をぴちゃぴちゃと叩いた。
「殺されたいのか?お前」
次に彼が脚をひらかせようとするとぴくっと裕子は痙攣したが、裕子はおずおずと
なされるままになった。島田の目前に、恥毛に縁どられた女の秘所があった。