067

名無し娘。suzuka 投稿日: 2001/06/06(水) 23:05

俺の名前は田仲昌(たなかまさし)
至ってフツーの高校生だ。(2年)

今日も普通に学校から帰ってきて普通に夕食を食べていると、

父「なあ昌、大切な話があるんだ。」

 何か改まった感じで俺に話し掛けてきた。

昌「何?」
父「実はな父さんの親友が火事で亡くなってしまってな……」

 そういえば最近、親父は葬式があるって言って出て行った記憶がある。
 親父の親友だったのか……

昌「ふーん…」
父「それで娘だけ残ってな……」
昌「娘だけ?他は?」
父「他の家族も死んでしまったよ……」
昌「はぁ…………」

 俺はまだ親父が何が言いたいのかさっぱり分からなかった。

昌「……で大事な話ってなんだよ?」
父「ん?ああそうだったな、
 実はなその生き残った娘さんを引き取ろうと思ってな。」
昌「引き取る?!」
父「いや、引き取るって言ってもただここに住ませるだけだ。
  養子とかそんなことじゃない。」
昌「(何だ……)その娘の親戚とかは?」
父「それも考えたんだが彼女が高校を卒業するまで
 ここにいさせようと思ってな。」
昌「(高校生なんだ…)俺は別にいいけど?」
父「いいのか?良かった安心したよ。てっきり反対すると思ってたよ。」
昌「母さんはいいの?」
母「ええ、別にかまいはしないよ。」

 家族が一人増えるというのに僕は何て軽率な発言をしたのだろうと思う。
 もしかしたら何か下心かあったからかもしれない……

 しかし、その日は何も考える事無く床についた。

―そして次の日の朝、

 俺は学校へ行く直前にふとこう訊ねた、

昌「ねぇ………その娘っていつここに来るの?」
父「えっと………いつだっけ?」

母「………あっ、今日じゃないっけ?」
昌「きょう!!」
父「ああ、そうだったな。」
昌「え、ええええ……」

母「ほら、早く学校に行きなさい、昌。」
昌「え、あ、う、うん………」

 今日やって来るという言葉に激しい動揺を覚えながら学校へ向かった、
 もちろん授業なんて耳に入りはしなかった。

 そんな精神状態のためかあっという間に放課後を迎えた、

昌「じゃあな。」
友人A「も、もう帰るのか……?じゃあな……」

 俺は授業が終わると同時に学校を飛び出し家へ向かった、
 まったく道草をせずに真っ直ぐ家へ帰った。

昌「母さん、来た?」
母「早いね?どうした?」
昌「来たの?」
母「まだだけど?」

 俺はその言葉を聞き一目散に自分の部屋へ向かい滅多にしない掃除を始めた、
 まるで自分を落ち着かせるように………

 そして数時間後、

母「ご飯よー」

 我を忘れ掃除をしていたためか、かなりの時間がたっていたようだ、
 掃除を終わらせ慌てて1階の食卓へ向かった。

母「掃除終わったの?」
昌「終わらした。」
母「綺麗にしといた?」
昌「したよ。」

 母親の邪険な質問をかわし、ドキドキしながら食事をとっていると……

 ガラガラ、

父「さぁ、入って。」

 どうやら親父と一緒に来たみたいだ。
 俺は早くどんな人か見たくて出迎える母親と一緒に玄関へ向かった。

父「紹介しよう、吉澤ひとみさんだ」

 俺は一瞬自分の耳を疑った、

昌「…えっ?」
吉澤「あっ!」
母「??何驚いてるの、知り合い?」

 そりゃ驚くよ……吉澤とは同じクラスなんだから………

昌「……」

 何で俺、自分の家で吉澤と一緒に飯食ってるんだろう、
 すっげぇ不思議な感覚。

母「へぇ、昌と同じクラスなの」
吉澤「1年の時から一緒なんですよ。」
父「しっかし昌と同じ学校だ何て知らなかったなぁ」

 親友の娘の事ぐらい知っとけよ、
 って言うか今まで親を通じて吉澤と知り合うことがなかったことが
 不思議でならない。
 ホントに親友だったのかよ……

昌「…ごちそうさん」
母「あら早いわね。」

 俺は母親の問いを無視して自分の部屋へ向かった。

昌「全く何で吉澤と一緒なんだよ……」

 俺は自分の部屋に入りベッドに倒れこみながらこう呟いた。

昌「(あーっ!イライラするなぁ…)」

 実のことを言うと俺は吉澤が嫌いだ、
 別に理由はない。
 何と言うか…………………生理的に嫌い。
 なぜか。

 だから1年の時も全くといっていいほど話していないし、
 2年の今でも話した記憶なんて俺の頭の中には存在しない。
 嫌いと分かった時からずーっと無視してきた。

昌「(…周りには内緒だよな………)」

 同級生の中には吉澤がいいと言うやつがかなり多い、
 確かにやつのルックスは学校の中でずば抜けていると俺でも思う。
 でも俺は嫌い。

 俺と吉澤がひとつ屋根の下で住んでいる事はいつかばれる事とは思うが
 なるべくばれるのは先延ばしにしたい。
 ばれた日には大変なことになるのは容易に予想がつくからだ。

昌「(……ど…うしよ……………………………)」

 俺はそんなことを考えてるうちに眠りについてしまった。
 まあ卒業するまでの辛抱だ………

―そして次の日の朝、

母「2人とも行ってらっしゃい」
吉澤「行って来ます。」
昌「ああ。」

 俺の家はあまり人目のつかない辺鄙(へんぴ)な所にある、
 そのおかげで吉澤が俺の家から出るところを見られずにすんでいる。
 "不幸中の幸い"という言葉を身を持って学んだ瞬間だ。

吉澤「じゃあ学校でね。」
昌「…ん。」

 俺は適当な返事をして自転車を走らせた。
 俺は自転車で登校、アイツは電車で登校、お互い登校の手段は違う。

―そして学校、

 俺は自分の席についてふと思った、
 そういえば吉澤は最近、1週間くらい学校を休んでいたような気がしたし、
 それと、持ち物が異様に真新しいような気がした。

昌「(あと、吉澤の家が火事になったって噂が立ってたしな……)」

 あと他にもいろいろ周りが何か言っていたが覚えていない、
 別に興味はないから。

昌「……(なんだぁ?)」

 何か周りの女子が俺のほうを見てニヤニヤしている。
 俺の顔に何かついてんのか?

昌「(まあいい……寝よ。)」

 あと1分くらいで授業が始まるというのに俺は眠りについた。

―6時間目、

 今の時間は自習、みんな課題を適当に終わらせ喋ったり、
 一部の男子は大貧民をやっている、
 6時間目のせいか帰るやつも出てきた。
 俺は朝買ってきた雑誌を読んでいた。

 とそこに一人の女子が俺に近づいてきた。

某女子「ねぇ、田仲君ってさぁ、よっすい〜と一緒に住んでるんだって?」

 この一言に多少騒がしかった教室は一気にシンとなった。

 ………は?何でもうばれてんだ?

昌「…何で知っているの?」
某女子「え、よっすい〜から聞いたんだけど」

 ………あの馬鹿オンナ、何喋ってんだ。

某男子「えっマジ!吉澤?!」
吉澤「うん、ホントだよ。」

 吉澤のこと一言に教室が沸いた、
 と同時に俺の周りに一気に人が集まってきた。

昌「(……何してんだよ…)」

 俺は人ごみの僅かな隙間から吉澤を睨んだ、
 が、吉澤は笑顔で返してきた。

 もちろん俺はむかついた。

 授業が終わると同時に俺は周りからのくだらない質問から逃れるため
 即家へ帰った。

「何で住んでるの?」
 アッチ(吉澤)に聞けよ。

「変なことすんなよ」
 お前がな。

「俺も住んでいいか?」
 帰れ。

「もうヤッたか?」
 氏ね。

 …………やれやれ、

昌「帰ってきたらちっと言っとかねぇとな…」

 台所で麦茶を飲みながら吉澤の帰りを待っていた。

 とそこに、

吉澤「ただいまー。」

 どうやら帰ってきたようだ、

昌「おい、テメエ何ここに住んでるって喋っているんだよ。」
吉澤「え?悪かった…?」
昌「ワリィーに決まってんだろ!迷惑なんだよ!」
吉澤「だって…どうせばれるじゃん……」
昌「だったら言っていいか俺に断りを入れるのが筋だろ!」
吉澤「…………ごめん…」

 俯いている吉澤を横目に俺は、

昌「どけよ。」

 と言い、吉澤を突き飛ばし2階の自分の部屋へ上がった。

昌「全くバカがいると疲れるなぁ。」

 俺のイライラは初日から募る一方だった。

 吉澤が家に来て1ヶ月ちょっと経った。

昌「(何だ家でも話さなきゃいいんじゃん)」

 俺は吉澤が家に来て少々戸惑い気味だったが、
 学校のように無視しとけば何て事ない。

 夜、俺は自分の部屋で1学期の期末テストに向けて勉強していた。

昌「(よ〜し、おしまい。)」

 俺は適当にテキストを片付け、今日の勉強を終わらせた。

 と、

 コンコン♪

昌「あ〜?だれ?」
吉澤「………私です、入ってもいい?」

 あ?何だ?

昌「何のよう?」

 俺はドア越しから吉澤に質問をぶつけた。

吉澤「勉強……教えて欲しいんだけど……」

昌「ワリィ俺今終わったんだ、もう寝るから明日学校で誰かに聞いてくれ。」
吉澤「ちょっとだけだから…お願い……」
昌「ヤダ。おやすみー」

 俺は吉澤の懇願を無視しそのままベッドに入った。

吉澤「(………今日もだめだった……何で話してくれないんだろう…?)」

 そんな吉澤の必死のコミュニケートもいざ知らず俺は眠りについた。

 だから俺は吉澤が嫌い、気づけよ。

 そのテストも終わり俺は部屋で一息ついていた。

昌「(…ん〜こんなもんか)」

 俺は赤点を取らない勉強を心がけているためいい点は取っていない、
 別に大学なんて行く気ないし。

吉澤「ねえ、テストどうだった?」

 部屋にいる俺に吉澤が声をかけてきた、

 あ、部屋のドア開けっ放しだった。

昌「別に〜」
吉澤「え〜教えてよぉ。」

 くどい。

吉澤「…まあいいや………でも部屋綺麗なんだね。」

 と、吉澤が俺の部屋に入ろうとした、

昌「勝手に入ってくんな。」
吉澤「じゃあいい、入って?」

 もちろん俺の返答は

昌「やだ。」

 いつまでも俺にまとわりつく吉澤がうざかったので
 俺は吉澤の事などお構いなしに部屋のドアを思いっきり閉めた。

 バン!

吉澤「キャッ!危ないでしょ!」

 そんな吉澤の抗議も無視し、俺はパソコンをいじっていた。

 気付けよいいかげんに。

 そして夏休みに入った。
 よく考えたら休み中にもかかわらず吉澤と顔を合わせなきゃならないなんて
 何てことだ。

昌「(………9時か…………)」

 俺は9時ごろ起きて洗面所に向かった。
 朝起きたら顔を洗いに洗面所へ行くのが俺の日課だ。

 ガラガラ、

吉澤「キャッ!」

 なんとそこには裸の吉澤がいた。

昌「(え?え?)」

 俺はあまりもの突然のことに慌てて洗面所を出た。
 洗面所のドアを閉めこう尋ねた。

昌「おい、何でお前がいるんだよ?!」
吉澤「ご、ごめん……シャワー浴びてたの……」
昌「はぁ?」

 よく考えると吉澤は悪くないのだが寝起きというせいもあってか
 なぜが俺はかなり腹が立った。

 バーン!

吉澤「(ビクッ!)」

 俺は無言で洗面所のドアを思いっきり蹴り、また自分の部屋に戻って寝た。

 俺のイライラは頂点に立とうとしていた。

 もちろんそれから吉澤は朝、シャワーを使わなくなった。

 来るべき日がきてしまった、

 それはまだ暑い夏の日だった。

昌「ただいまー」

 俺はゲーセンから帰り荷もつを置きに自分の部屋へ向かった。

吉澤「あっ………お帰り…」

 なぜか俺の部屋には吉澤がいた。

昌「何してんの?」
吉澤「いや………あの……その…」
昌「お前なに人の部屋に勝手に入っているんだよ!」
吉澤「あの……ご…」
昌「黙れ!俺はお前の部屋なんか入ったことネエゾ!」

 ついに俺はブチ切れた、もう止まらない。

昌「俺の部屋に用があるのなら俺に一言言うのが筋だろ!」
吉澤「そんなこといってもダメって言うくせに……」
昌「ウッセェ黙れ!だからって黙って入るやつがあるか!」
吉澤「……ごめ…」
昌「大体テメエは何様のつもりだ!居候のくせに!」
吉澤「……」
昌「独り身になったら国から生活保護を受けるなりすれば一人で生活できるだろ!
 お前がここに来るって分かってれば俺は絶対に反対していたからな!」

 まだ続く、

昌「大体テメエはなれなれしいんだよ!俺はお前が大っ嫌いなんだよ!」
吉澤「…何で私をきら………」
昌「うるせェ!嫌いなものは嫌いなんじゃあ!出てけ!」
吉澤「……謝るか…………」

 パーン!

 俺は吉澤が喋っている途中にもかかわらず吉澤を思いっきり殴った。

昌「うるせェ!まだなんか言うか!?」
吉澤「………」

 吉澤は無言のまま出て行った。

 そういえば右手で目のあたりをこすっていたような気がした。

 そしてその日の夜のことだった、

母「ひとみちゃん、ご飯よ〜」
吉澤「……具合が悪いのでいいです。」
母「そう?風邪?」
吉澤「…いや、そうじゃないんですけど……」
母「う〜ん…じゃあなんかあったら言ってね」
吉澤「はい………」

父「どうしたの?ひとみちゃん?」
母「何かねぇ具合が悪いからいらないって」
昌「………」

 多分俺が原因で来ないのだろう。

母「そういえばなんか目を赤く腫らしていたけど……」
父「ほう…おい昌、お前何か知らないか?」

 ドキッ、

昌「……目に虫でも入ったんじゃないの?」
父「そうかぁ?」
母「そうかも知れないねぇ、ひとみちゃん我慢してるかもしれないし」
父「じゃあ…後で目薬もっていってやれ」

 親父は俺に向かってそう言った。

昌「やだよ、母さん行けばいいだろ。」
母「別に私じゃなくても……」
昌「俺じゃなくてもいいだろ?ご馳走さん、風呂入るわ。」

 俺は母親の言葉を無視し風呂場へ向かった。

 吉澤と全く話さなくなって(顔も殆ど合わせていない)数ヶ月たったある日、

某女子「ねーよっすぃ〜、田仲君って家ではどうなの?」

 昼休み、教室の前の廊下を通ったところこんな会話が聞こえてきた。

吉澤「う〜ん……とね………」

 どうせ馬鹿にしたことを言うのだろう、
 だって俺が馬鹿にしたようなことをしているのだから。

某女子「学校じゃあ本ばっか読んでて暗いよね〜」

 うっさい。

吉澤「えーそう?結構いろんなこと知っているから
  知識の幅が広いくてすごいと思うけど。」

 雑学系の本ばっか読んでるからな俺。

 ……………………え?

某女子「んーまー確かにたまに話すと”何でこんなこと知っているんだろ”
   っていうのあるよね。」
某女子'「そうそう、確かにすごい時あるよね。」
吉澤「でしょ〜。」

 …………何で吉澤が俺のフォローしてんだ?

吉澤「学校じゃああんなんだけど、家では優しいよ。」
某女子「えー、田仲君よっすぃ〜のこと好きなんじゃない?」
某女子'「逆だってば、1年時の“あれ”以来よっすぃ〜の方が……」
吉澤「も〜何言ってんのよ!」

 1年の時の“あれ”?
 ああ、あのことか、そんなくだらないことで吉澤が俺のこと好きになるかっつーの。

某女子「でも学校ではあんまり話してないよね、田仲君と。」
吉澤「ああ、ちょっと私が昌君に失礼なことしたから。」
某女子'「何したの?」
吉澤「言えるわけないじゃ〜ん。」

 何で吉澤は俺に対してこんなに好意的なんだ?
 わけわかんねぇ。

 さて、さっき出てきた1年の時の“あれ”と言うのは……

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 去年の今頃、ちょうど3時間目が体育で4時間目が始まった直後のことだった。

某女子「あれ?財布がない?!」
某女子'「あ、私も!?」

 クラスの殆どが財布やウォークマンなどのいわゆる貴重品を盗られていた。
 俺もMDウォークマンが取られていた。

担任「おい何やってんだ、授業始まってんぞ。」

 そこにうちのクラスの担任が入ってきた、
 もちろんクラス全体でこの盗難事件を担任に伝えた。


担任「そうか、じゃあ体育の時間ここの教室に来たというやつはいるか?」

 クラスの女子全体が吉澤の方に目線を向けた。

担任「お前3時間目の途中にここに来たのか?」
吉澤「はい……カードを取りに……」

 クラス全員の目線が痛いほどに吉澤を見つめる、
 担任が少し考え込んだあと…

担任「吉澤、ちょっと教務室まで来い。」

 その言葉にクラスの疑いの目が完全に吉澤に向けられた時のことだった、

昌「先生、それなら吉澤の荷もつをチェックした方が早いんじゃないの?」

 と俺はこう言った。
 もし吉澤が犯人ならまだ身近なところに盗品を置いてあると俺は思ったからだ。

昌「それで盗品が出てこなかったら吉澤を連れて行く必要はないんじゃない?」

 また担任が少し考え込んだあと、

担任「そうだな田仲の言う通りだな、吉澤いいか?」

 こう担任は吉澤に尋ね、早速吉澤の荷もつ検査に入った。

担任「自分の物があったと言うやつはいるか?」

 しかし誰の物も吉澤の荷もつからは出てこなかった。

高山「別にさぁここにおいてあるとは限らないんじゃない?」

 と俺の隣の席の高山が喋った。

昌「じゃあどこにあるんだ?その荷もつは?」
高山「そんなのどうにでもなるだろ。」

昌「そりゃそうか…………………あ、そうだお前カッター持ってるか?」
高山「カッター?ああほらよ。」

 高山はポケットからカッターを取り出し俺に手渡した。

昌「どうも。」

担任「………吉澤、一応教務室に来てくれ。生活指導の先生と話し合うからさ。」
某女子「先生別にいいんじゃない?何も出てこなかったから。」
担任「いやな、別に吉澤が犯人であろうと犯人じゃなかろうと
  高山の言う通り学校のどこかに盗品があるかも知れんからな。」
某女子'「じゃあよっすぃ〜は別にいいんじゃない」
担任「いちおうだ、いちおう。」

 そう言い、吉澤が立ち上がろうとしたその時、

昌「ねー先生、面白いこと発見したんだけどさぁ、ちょっといい?」

 俺は吉澤を連れて行こうとした担任にこう言った。

担任「何だ田仲?」
昌「俺の鞄のチャックってさぁ、ちょっとコツがいるのよ開けるのに。
  たぶん犯人はそのことを知らないで俺の鞄のチャックを
  開けようとしたんだろうね、
  3Cmくらいで開かなくなってそのままにしているから。」

 まだ俺の話は続く、

昌「それで豪を煮やした犯人は何か刃物を使って俺の鞄を斬って中身を
 物色したみたいなんだ。」

 こう話すと担任がおれの鞄を手に取った。

担任「…確かにチャックはこれ以上開かないな………
  …………コリャヒデーなぁ、バッサリ斬られてるよ。」

 担任が確認すると俺は再び話し始めた、

昌「それで俺の鞄の中からそのときに
 使ったと思われる刃物の破片が出てきたんだ。」

 俺はその破片を担任に見せた。

担任「ああ本当だな、カッターか何かの破片だな。」

昌「その破片がさぁ…………………
 …………なぜが高山のカッターの欠けている所とピッタリ合うんだよね。」

 クラス全体が虚を突かれたのか、シンとに静まった。

担任「どれどれ………ああ、ピッタリだな。」
高山「……」

 と、某女子が高山の隙をついて高山の荷もつを物色し始めた。

高山「テメェ…何してんだ!」
某女子「(ガサゴソ………)ねぇ、このMD誰の!?」

昌「………あ、俺のじゃん。」

 この俺の一言に暮らす全員が騒ぎ始めた。

高山「お…俺じゃない!!」

 その口ぶりには明らかに動揺の色が見られていた。

担任「なあ高山、言い訳はじっくり教務室で聞いてやるから来い。」
高山「ふざけるな!…俺じゃあ………」

 担任は半ば引きずるように高山を連れて行った。

某女子「田仲君すっごーい!どうして高山が犯人って分かったの?!」

 クラスの大半が俺の方に目をやり、聞き耳を立てていた。

昌「ん…確かアイツ常時カッターを持ち歩いていたし……
 あとカッターが入っていた右ポケットを
 やたら気にしていたように見えたからかな……?」

某女子'「でも何でよっすぃ〜が犯人じゃないと思ったの?」

昌「もし吉澤が犯人なら身近に置いてある荷もつに
 盗品が入っていると思ってたが何も出てこなかった。
 ここのクラスの大半が被害を受けていたから30〜40人近くの財布とかを
 持ち歩くのってどうしても鞄にでも入れないと隠しておけないだろ?
 それに犯人が自分の目に付かないところに盗品を置くとは考えられないから。」

吉澤「何で?」

昌「だって自分の目に付かないところに置いてあったら
 “誰かに見つかるかもしれない”っていう
 心理が働くと思ったから盗品は犯人の身近なところにあると思ったの。」

全員「ああ……」

 ため息にも似た感嘆の声がクラス全員の口から聞こえてきた。

某女子「でもカッターを持っている人なんていっぱいいるのに何で高山だったの?」
昌「やつの左手にちっちゃい“血豆”があったからかな…」
某女子「血豆?」

昌「うん、何かチャックで挟んだみたいな痕があったし、
 2時間目には無かった血豆が出来ていたし、
 こいつカッターを常備しているし…………といろいろ重なったからかな…」

某女子'「はぁぁ………こりゃすげー、参ったよ。」
吉澤「田仲君かっけー」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 …とまあこういう事があった、

 それから俺はクラス全員に話し掛けられるようになった。
 吉澤に至っては俺のことを“昌君”と呼ぶようになった。
 普通、名前に“まさ”があると苗字やあだ名で呼ばれるものなんだけどね。

 例:中居正広(中居君)・田代まさし(マーシー)

 …でも時が経つに連れてこのことはみんなの頭の中から消えていったみたいで
 だんだん1人2人と俺に話し掛けなくなっていった。

 でも吉澤は変わる事無く俺に話し掛けてきた。
 しかし、冒頭に言った通り俺は吉澤が嫌いだったから
 あまり俺の方から話し掛けていない。
 今に至っては殴る始末だ。

 別にこのことだけで吉澤が俺を好きになるとは考えにくいけどなぁ………

 ねぇ?

 それから月日が経ち年が明けた―

吉澤「昌君楽しみだねー修学旅行。」
昌「……ん………あ…あ………」

 3日後に沖縄への修学旅行を控えていた、
 俺と吉澤はその準備をしていた。

吉澤「ねぇどうしたの?具合でも悪いの?」
昌「……ああ……チョッとな。」
吉澤「…大丈夫?風邪?」
昌「だったら3日もありゃ治るから大丈夫だろ。」

 俺は少し体調が悪かった、でも別に気にしていなかった。

 そして次の日の朝、

母「まさしー!どうしたのー?」
昌「……何か具合悪い…」
母「えーっ?どれどれ……」

 母は右手を俺の額に当てた。

母「うわっ!何よこの熱!」

 母はすぐに1階に下り、体温計を取りに行った。

吉澤「どうしたんですか?」
母「何か具合が悪いみたい、先に行っていて。」
吉澤「えーっ……修学旅行近いのに大丈夫かな…」
母「まぁただの風邪でしょ、当日には治るわよ。」
吉澤「…そうですね、行ってきます。」

 俺も母親も吉澤もこの発熱を軽く見ていた。

 んが、
それでも僕は残り僅かな正常な意識で、ついに病院へ検査に行った。

「脈拍も血圧も異常だよ!?一体何をやったら君みたいな
 若い者がこんなに・・・とにかく、入院の手続き取って下さいよ!?
 いいですね!?」
「出来ません・・・」
「な、なんだって!?君、そこまで衰弱して何を言っとるんだね!?
 金の問題じゃないんだぞ!こら!聞いとるのか!・・・」

僕は医者の再三の注意にも耳を傾けなかった。自分でも体が異常な状態
なのは分かっていた。だが、一番異常だったのは、それを分かって尚
入院を拒んだ自分の意思だった。いや、意思と言うより感覚なのだろうか。

医者「あーっ………これはインフルエンザだね。」
昌「え゛。」

 俺と母親は病院にきていた、もちろん学校は休んだ。

母「じゃあ2日後の修学旅行は……?」
医者「行くもんじゃないねー。」

 アイタ。

母「…修学旅行行けなってさ。」
昌「はぁ……じゃあ診断書もらった?」

 俺の学校はインフルエンザにかかった場合は“登校停止”となり、
 公欠として処分されるのだ、
 その際、学校に診断書を提出しなければならないのだ。


 そして家に到着し俺はすぐに寝た、
 別に行けなくてもいいや、
 どうせ公欠になるんだし………………

 ふと目がさめた、
 …………………もう7時過ぎたのか……

 俺は関節が痛いのと高熱を我慢し1階へ降りようと部屋のドアを開けた、

 ガタッ(パサッ)、

昌「(ん?紙…?)」

 ドアに何か紙が挟まれていたのか開けたと同時に床に落ちた。

昌「(………手紙…?)」

 ―昌君へ、
  インフルエンザだって?残念。
  修学旅行行けないんだね……………
  一緒の班だったから楽しみにしていたのに……

  オット、\(^_\)ソレハ(/_^)/コッチニオイトイテ

  インフルエンザ、よ〜く休んで治してね。
 
  P.S
  ノートいつでもいいから見せてあげるよ。

  吉澤ひとみ

昌「………」

 何かスゲェ向こう気ぃ使ってるような…

昌「……………………まあいいや………寝よ。」

 吉澤の手紙を適当にその辺に放り投げ俺は再びベッドに横たわった。

―修学旅行の前日、

 1階のトイレに行ったとき両親と吉澤が話し込んでいたのが見えた、
 当然だろう。

 実は明日から両親も町内会の旅行でいないのだ、
 つまり、この家には明日誰もいない…………というのが
 本来の予定だったのだ。

 風邪程度ではなく、インフルエンザという病気にかかってしまった俺を残して
 旅行に行けないと思い話し込んでいるのだろう、
 さてどうするのか?

 まあ別に独りでも何とかすれと言うのなら何とかする、
 別に全く動けないというわけじゃないのだから(でも全く動けないに近い)

 修学旅行は4泊5日、町内会の旅行も4泊5日、
 どちらかが早く帰ってくるというわけでもなく、
 同時に帰ってくるのだから厄介なんだろうと思う。

 まあでも多分母親が残るのだろう、
 ごめんなさい……………母さん……………

 母親に謝罪をしつつ俺は眠りについた。

―翌日の朝、

 俺は重い体を引きずりながら1階へ降りた、

昌「(ふう……母さんごめんな………)」

 今回の町内会の旅行は母親が行きたがっていた四国四県だったから
 ムチャクチャ鬱である。

昌「(何て言おうかな……)」

 俺は階段をやっとで下りながら母親に述べる謝罪の弁を考えていた。
 しかしこの体調じゃあうまい言葉が浮かばないのだが…

 1階に到着、

昌「………誰もいないや…」

 何だ?俺を置いてみんな行っちまったのか?
 ………まじかよぉ。

 俺はふてくされながらトイレに入った。

昌「……まさかみんな行っちまうとはネー。」

 母親は残ってくれると思っていた俺はものすごく裏切られた気分だった、
 しかし今の俺の体調では落ち込んでいる余裕もなかった。

昌「関節痛いよー」

 きしむ関節を我慢し俺は用を足していた。

 と、

 ガラガラ

昌「……?玄関を開ける音?」

 と同時に“ただいま”という声が聞こえた、
 何だちょっと出かけてただけか、あせったじゃん my mother.

 俺はほっと胸をなでおろしトイレを出た。

昌「どこ行ってたの、かあ………………………………えっ……………?」

吉澤「あ、起きたの?ちょっと待ってねご飯用意するから。」

 ………………何で吉澤がいるんだ?
 今ごろは飛行機の中じゃあ…………………………??

昌「ちょっと待てよ。」
吉澤「ん?何?ご飯いらないの?」
昌「違うよ。お前修学旅行はどうしたんだ?」
吉澤「…………いいの。」

 やや俯き加減の吉澤が少し気になったが、
 俺は構わず吉澤に質問をぶつけた。

昌「お前楽しみにしていただろ?何で行かないんだよ?」

吉澤「…………授業料納入に回したの……積立金。」
昌「えっ・……」

 ヤバ、何かいけない事を聞いたような………

昌「あ…いや……わる…」
吉澤「いいの別に、昌君と一緒じゃない修学旅行なんて興味ないし。」

 え?

吉澤「アハハ、あんまし気にしないで。」

 何だジョークか、
 ふう…

吉澤「ほら、ご飯用意するから横になって待っていてよ。」
昌「あ………うん………」

 吉澤に言われた通り俺は居間のほうへ足を運び横になって待っていた。

昌「(アイツそんなにやばいのか………)」

 何か吉澤の懐事情を知ってしまった様でちょっと俺は鬱気味だった。

 と、

吉澤「お待たせ―できたよー。」

 吉澤がお粥を持ってきた。

 何だお粥か、
 まあ病人だから仕方ないな。

昌「(さて食いますかな…)」

吉澤「はい、あ〜ん。」

 (・・?) エッ。

 ………………何やってんだコイツ、
 飯ぐらい食えるっちゅーに。
 そもそも俺が(^O^)アーンとでもやると思ったか。

吉澤「どうしたの?食べないの?」
昌「……食うけどさぁ、ちゃんと独りで食えるよ。」

 俺は吉澤の持っていたれんげを取り上げ自分の手でお粥を食べた。

昌「ご馳走さん。」
吉澤「あら、もう食べたの?」
昌「食欲はあるから。」

 俺は片付けを吉澤に頼み自分の部屋へ向かった、
 やっぱり横になっていないと何かと辛い。

昌「ふう………動くのはやっぱ辛いなぁ…」

 と、

 コンコン

昌「何?」
吉澤「………………入ってもいいかな…?」

 別に断る理由も無かったので俺は

昌「入れよ。」

 吉澤に入室を許可した。

昌「何だ、吉澤?」
吉澤「あ………あの……」

 なぜか吉澤はもじもじするばかりでちっとも話そうとしなかった。

昌「何だよなんか言えよ。」

 俺の部屋で突っ立ったままの吉澤をせかした。

吉澤「ん…とね………身の回りは私がするから…昌君しなくていいから…」

 何だそんなことか。
 別に俺はするつもり無いって言うか、出来ん。

昌「分かってるよ、お前に任せたよ。」
吉澤「うん、分かった。」

 そう言うと吉澤は出て行った。

―そしてその日の夜、

昌「じゃあ寝るわ。」

 俺の部屋にいた吉澤にこのことを伝え、部屋の電気を消そうとした

 が、

吉澤「ちょっと待って。」

 そう言い吉澤は自分の部屋へ向かった。
 何だ?

吉澤「…よいしょ……」

 吉澤は自分の部屋から布団を持ってきた、
 なぜ?

吉澤「私、昌君の部屋で寝るね。」

 なにぃ?

吉澤「一緒の部屋で寝れば、もし昌君が夜中に何かあっても大丈夫でしょ?」
昌「………別に大丈夫だよ…お前自分の部屋で寝ろよ。」
吉澤「何よ、なんか私がここで寝るとなんか悪いの?」

 …って言うかさぁ、男と一緒に寝るって抵抗感無いのかい?
 俺はあるんだよ。
 (俺がお前になんかしたらどうするんだよ……・………しねぇけどさぁ…)

昌「何か…………やだ。」
吉澤「そんな子供みたいなこと言わないの、体調悪いんだから…」
昌「………」

 何かいつものように吉澤に強いことが言えない……
 体調悪いからかな…

吉澤「はい、寝よ寝よ。(プチッ)」

 吉澤は電気を消し、そのまま眠りについた。

 最初俺は寝付けれなかったが、しばらく時間が経ったらいつの間にか寝てた。

昌「(………………ん………今何時だ…?)」

 夜中俺はふと目がさめた。
 吉澤は寝てる。

昌「(………体が………)」

 急に体が痛くなり、熱っぽくなった。

昌「………うっ…………」

 あまりもの辛さに思わず声が出てしまった、
 やばい。

吉澤「…………………………どうしたの……?」

 俺の声に気付いたのか吉澤が起きた。

昌「……………」

 あまりもの苦しさに吉澤にかける声が出ない。

吉澤「……だから言ったじゃない………どこが悪いの?」

 急に体が痛くなり、熱っぽくなったことを何とか吉澤に説明した。

吉澤「……ちょっと待ってね……水枕換えてくるから………」

 そう言い、吉澤は俺が枕にしていた水枕を持っていった。

昌「………………………………………(早く来ないかな)…」

 実際4分くらいで吉澤は帰ってきたのだが、
 俺はその4分間が非常に長く感じられた。

昌「(早く来てくれ…………吉澤……)」

吉澤「はい、換えてきたよ。」

 吉澤が帰ってきた、待ちわびたよ。

 そして吉澤は汗だくの俺の顔・体を濡れたタオルで拭き始めた。
 別にそこまでしなくてもいいと思ったのだが、今の俺には喋る気力も無く
 吉澤のされるがままだった。

吉澤「すごい汗だくだよ…………着替えないと……」

 そう言うと吉澤は手早く俺の上半身を裸にし、着替えさせ始めた。
 俺はまるで着替えが出来ない幼稚園児みたいに吉澤に服を着せてもらっていた。

 さすがに下まではやらなかったみたいだ。

吉澤「あとは?」

 もうここまで来たら吉澤にとことん甘えよう………って言うか俺は何も出来ない。

 俺は体の痛い所を伝えその所を揉んでもらい、
 なおかつおでこに当てていたタオルを変えてもらっていた。

昌「………………うっ………」
吉澤「大丈夫だよ、私がいるから。」

 とまあ俺が苦しむたびに吉澤が間髪いれずに声をかけてきた。

 そんなことを吉澤は俺が眠るまで続けてくれた。

 ―そして朝

昌「(……………朝か…)」

 カーテンから漏れる日差しで俺は目がさめた。

昌「(…………痛くない…)」

 まだ熱はあったが、体の痛みはすっかり引いていた。

昌「(……吉澤は……………………………………?)」

 ではその吉澤はと言うと

吉澤「(……スー………………スー………)」

 自分の布団ではなく、俺のベッドに寄りかかって寝ていた。

昌「……………………悪かったな吉澤…………………ゆっくり寝てくれ…」

 俺は寝ている吉澤に声を掛け、ベッドに寄りかかっている吉澤を布団まで動かした。

昌「おやすみぃ…………」

 俺は吉澤を起こさないようにそぉーっと部屋を出て行った。

 俺は独りで朝食を取り、居間でくつろいでいた。

昌「ふぅ……………」

 一体吉澤は何時ぐらいまで俺の面倒を見ていたのだろう?

昌「…………?」

 わかんねぇ、分からないことだらけだ。

昌「そもそも…………」

 そもそもなんであそこまでして俺のことを………

昌「…………わかんねぇ…」

 だよな、分かるわけねェよな…

 そんな悩んだって分かるはずが無いことを考え悩んでいると…


吉澤「まさしく〜ん………いるの?」

 吉澤が起きてきたようだ。

昌「おう、起きたか。」
吉澤「朝食は?」
昌「食ったよもう。」
吉澤「ごめん…………起こしてくれればよかったのに…」
昌「何言ってんだよ………いいよ、もう。」

 さすがにこの時ばかりは吉澤を責めるわけにはいかなかった。

昌「悪かったな、夜中に……」
吉澤「ううん、病気なんだから仕方ないよ…」

 ………ん?そういえば俺、

 吉澤にわびを入れたことって……初めてだよな…

吉澤「で、体のほうは大丈夫なの?」
昌「いや、まだ熱のほうはある。
 でもな、体の痛みもお前のおかげで無いし、
 さっき座薬入れたから熱のほうも何とかなるだろう。」
吉澤「そう…………よかった。」

 ほっとする吉澤を見て俺は胸の詰まる思いがした。

 なぜだ?

昌「寝てろよ………あんまり寝てないんだろ。」
吉澤「ううん平気、大丈夫だから…」
昌「そんな無理したら今度はお前が体壊すぞ。」
吉澤「そーなったら今度は昌君に面倒見てもらおうっかな?」
昌「ハハハ………そうだな…」

 ………吉澤に対しての態度が変わりつつあった俺だが、
 会話中はずーっと吉澤の胸ばかり見ていた。

 何でかって?

 ………………だって2つほどなんか“突起物”があったんだもん………

 その後俺の熱もだいぶ下がり平熱近くにまでなり、
 その日の夜のことだった。

昌「俺寝るわ。」

 体の痛みも引き、熱も下がったが、さすがにまだ普通に生活は出来なった。

吉澤「まってぇ〜」
昌「ん?なんだぁ?」

 俺が2階に行こうとしたら吉澤が呼び止めた、

 と同時に俺も吉澤に言うことがあったことを思い出した。

昌「あのさぁ、まだ復調とはいかないけどもう大丈夫だからさぁ……」
吉澤「うん?何?」
昌「お前はもう自分の部屋で寝ろよ。」

 まぁ一応そう言ってみた。

吉澤「何いってんのよ、まだ不安があるんだから昌君の部屋で寝るよ。」
昌「……って言うかさぁ、お前にインフルエンザが移ってないか不安だよ…」

 インフルエンザの俺に付き添っていたのだからそう思っていたというのと、
 移らないようにという意味で俺はこう言った。

 だが、

吉澤「へーっ、心配してくれてんだぁ……」
昌「(………そうとらえるのかよ…)」
吉澤「と・に・か・く、まだ完治してないんだからね!」

 そして今日も吉澤は俺の部屋で寝た。

 んでもって3日目の朝、

 お昼過ぎ、吉澤は買い物に行き、俺は1階の居間でテレビを見ていた。

昌「(また離婚かぁ………また暴露本出すの?)」

 とまあこんなことが日常茶飯事な芸能ニュースを俺は見ていた、

昌「(………………………………ファ〜…)」

 こんなくだらない物を見ていたら俺は眠くなってしまった、

 俺はすかさずテレビを消し、そのまま寝転がり眠りについた。

 ………………

 どれくらい時間が経ったんだろう…

 しばらく経って俺は寝転がったままだが目がさめた。

昌「(……………………………ん……………毛布…………?)」

 俺の体には覚えが無い毛布がかけられていた、

昌「(…………あーっ……吉澤がしたんかな……)」

 と思いながらふと右を見た。

 俺は眠気と体調の悪さが吹っ飛んでしまうほど驚いた。

昌「(な、な、な、な、何で一緒に寝てるんだよ!)」

 何と俺の横には吉澤が寝ていたのだ、
 しかも同じ布団で寝ていたのだ。

 ………道理でなんか布団がちっちぇーなーと思ったわけだ……………

 今俺は右を向いている、吉澤は左を向いて寝ている、

 つまり今は互いに顔を合わせて寝ているのだ。
 その距離は息がかかるくらい近い。

 
昌「(……………ドキッ……………ドキッ…)」

 不思議と俺はドキドキしていた、
 まだ体調悪いのかな………………………………

昌「おい、起きろよ。」

 俺は吉澤にだけ聞こえるような小さな声で吉澤に呼びかけた。

吉澤「(……………スーッ……………スーッ)」

 だめだ反応が無い。

昌「コラ、起きろ。」

 俺は吉澤の頬を人差し指で軽く突っついた。

 プニプニ、

吉澤「うーん…………」

 あ、右を向いてしまった。

昌「(くッそー、起きねーなー……………………そうだ。)」

 こーなったら“あそこ”突っついて強制的に起こしてやる。

 俺はその“あそこ”を突っついた、

吉澤「…………ぅん……」

 ん?どうやら起きたみたいだ。

昌「おい起きろよ。(ツンツン)」
吉澤「あっ……………やめ……………あっ!」

 おれは手を緩めず続ける。

昌「毛布はありがたいけどさぁ、一緒の毛布で寝るなよ。(ツンツンツン)」
吉澤「あっ…………だって……うッ……………あっ、止めてよ〜」

 毛布からなかなかでない吉澤に豪を煮やし、
 俺は指が入るくらい強く突っついた。

昌「早く出れよ。(ズボッ!)」
吉澤「あっ!痛いってば!」

 あ、ヤバ、

 指が入りすぎた………( ̄□ ̄;)!!

吉澤「やったなー、仕返しだぁー!(サワサワ)」

 今度は吉澤が俺の“あそこ”をくすぐってきた。

昌「ば…………バカ!何すんだよ!」
吉澤「だって昌君もやったじゃん!」
昌「そ……それはお前がここで寝てるからだろ!」

 ひとつの布団の中で俺と吉澤の攻防が始まった。

吉澤「さっき痛かったんだからね!(サワサワ)」
昌「ぐはっ!や……止めろ…」
吉澤「倍返しにしてやるぅ〜(サワサワサワ……………etc)」
昌「うわぁー!やめろー!やめてくれー!」

 俺は吉澤の猛攻に耐え切れず、
 布団から出てしまった。

昌「はぁはぁはぁはぁ………」
吉澤「ふーん………昌君って“あそこ”弱いんだねー」
昌「だ、誰でも弱いわい……」
吉澤「フフフ………今度から“あそこ”を攻撃すればいいんだね……」
昌「バ……………バカか……………」

 そして吉澤はその場から去った。

 ………え?“あそこ”ってどこかって?

 フフフ…………とっても感じる“あそこ”ですよ…………

 その日の夜のことだった、

昌「(…………うーん……)」

 ……………何か体が重い……

昌「(何だろう…………………………………ハッ!)」

 何と吉澤が俺の上に乗っかっていた。

昌「な、何してんだよ!」
吉澤「……………」

 吉澤は右手で俺の左手を、左手で俺の右手を握り締めてきた。

吉澤「………………」
昌「んー!………………んー!」

 吉澤は自分の唇を俺の唇に重ねてきた。

 俺は必死に逃れようとするが、
 うまく力が入らず吉澤に押さえ込まれていた。

吉澤「………………」

 吉澤は俺の上半身を裸にし、顔を下へ下げていった………………

昌「(………………ん?)」

 何か、体が軽いなぁ………

 パチッ(目を開けた)

昌「(……………………あれっ?吉澤は……?)」

 俺のベッドにいるはずの吉澤はいつものように俺の部屋で寝ていた。

昌「(……………………夢か……?あれは……)」

 脱がされていたはずの俺の服もちゃんと着たままになっている、

昌「(………………それにしてもリアルだったな………)」

 俺の体にはまだ吉澤の唇・頬や胸にあたった吉澤の髪の毛・
 吉澤の体の感触が残っていた。

 実際はどうか分かんないけど。

昌「(…………………………何なんだろう………うーん……)」

 今まで吉澤が夢に出て来た事なんて1度も無かった、

 何でこんな形で吉澤が出てきたんだろう……………

 4日目の朝、

昌「(うーん……………)」

 俺はあの夢について考えていた。

昌「(…………ん?そういえば…)」

 俺はふとあることが思いついた。

昌「(願望夢……………?)」

 願望夢……その名の通り本人の望んでいることが夢となることである。

昌「(まさかね…………………)」

 確かに夢であったようなことはしたいが、
 吉澤としたいとは1度も思ったことは無い。

 まぁ、夢に出て来た体がたまたま吉澤だったという事にしておこう。

吉澤「何ボーっとしてんの?」
昌「うわぁ!」

 突然吉澤が俺の顔を覗き込んできた。

 なぜかは分からないが、俺は顔がカーッと熱くなっていった。

吉澤「どうしたの?顔が真っ赤だよ?」
昌「…何でもねぇよ。」

 俺は顔をそむけ、フテ寝のようにその場に寝転がった。

吉澤「顔が赤かったけど…熱でもあるの?」

 吉澤は右手を俺の首筋に当ててきた、

 …………夢と同じ手の感触だった…………

昌「…………………無いよ。」
吉澤「そうだね、別に高くないね。」

 俺は何故かずーっとドキドキしていた。

 今日は何か知らないけど吉澤の顔を見ることが出来なかった。

 見るたびに俺の心臓の鼓動が早くなってしまう。

 その日は殆ど吉澤と顔をあわせないようにしていた、

 向こうが何か話して来ても顔を合わせないように話し、
 飯を食べている時も他の時もそうしていた。

 そうしないと何か調子が狂う、

 っていうかドキドキして正常でいられない。

吉澤「昌君、先に部屋に行っているよ?」

 そして寝る時間になり、吉澤がこう俺に尋ねてきた。

昌「ああ…そうしてくれ。」

 もちろん俺は吉澤の顔は見ないでこう答えた。

 吉澤が2階へ行った後も居間でずーっとテレビを見ていたのだが、

 …いつの間にか俺はそこで寝てしまった。

―で、5日目の朝、

 ウ〜ン…………………

 ………………………暑い。

 …………………なんか顔にあたってる…………………

 パチッ

昌「(……………………………$&’#=%&’$’!!!!)」

 ……………………………………………何で吉澤が隣で寝てるんだよ……

 そのせいか俺と吉澤の顔は舌を伸ばせは届く距離にあった。
 ………………って言うか頬……あたってる……

昌「(………毛布が多い……)」

 なるほど、暑いのはそのためだったのか。ワリィ吉澤。
 
 
吉澤「…………ん………」

 と、吉澤が寝返りをうった。
 
昌「(…ドキッ………)」
 
 ………………………唇……………触れそうなんですけど………

 ……キス…………………しちゃおうかな……………………

 俺は再び目を閉じ、寝たふりをすることにした。
 意図的なものではなく、あくまで不可抗力に見せかけるためだ。

昌「(……………よし、この位置だな。)」

 俺は頭の中に焼き付けた吉澤の唇の位置に自分の唇を移動した。

昌「(…………………………ドキドキ)」

 そして寝返りを装って自分の唇を吉澤の唇に近づけた。

 フッ、

昌「(あ、あたった……)」

 僅かながら自分の唇に柔らかい物が当たったのが分かった。

昌「(…………どうしよう……この状態……)」

 俺はこのままにしておくか、もっと行くかかなり悩んでいた。

 と、

吉澤「………う〜ん…」

 俺の考えを嘲笑うかのように吉澤は反対側を向いてしまった。

昌「(う〜ん、残念………)」

 ドキドキドキ……………

 …………………気付いてないよな………………たぶん………

 そして夕方、両親が帰ってきた、
 俺と吉澤の5日間はこうして幕を閉じた。

 今日1日、吉澤から別に何も言われていないのでたぶん、
 気付かれていなんだろう……

昌「おい吉澤、何で2階で寝なかったんだ?」

 今日の朝、俺が疑問に思っていたことをたずねた。

吉澤「ん〜、だって何時になってもなかなか来ないから、
  1階に下りてみると寝てるんだもん。
  だから風邪ひかないように布団かけて、いつ昌君が起きるか待ってたら………
  いつの間にか寝ちゃった。」

昌「あっそう。」

 俺はそっけない返事で返した。

吉澤「何それ―、人が親切でやったのにぃー。」
昌「一緒に寝ることがか?」

 俺がこう突っ込むと、

吉澤「(スタスタ……………)」

 黙って吉澤が近づいてきた、

昌「な、何だよ……?」

 と、吉澤は俺の耳元でこう囁いた。

吉澤「“キスしたくせに”」

 ブッ、

昌「は、はぁ………?」
吉澤「(にやぁ〜)」

 吉澤は不敵な笑みを浮かべ俺の部屋を後にした。

昌「(……………………しまったぁぁぁぁぁぁぁ!)」

 俺は独り顔を真っ赤にし、明日からどう吉澤と接していいか悩んでいた。
 次の日、
 俺たち2年生は旅行休みのため今日も家にいた。

昌「(う〜ん、今日は何してようかな……?)」

 外の天候は晴れ、俺の体調も8割くらいまで復調、

 そして、

 吉澤と顔を合わせたくないという理由がある。

昌「(よし、今日は午後から出かけよう!)」

 そう心に決め俺は昼飯を口の中に押し込み、出かける仕度をしていた。

 と、

吉澤「どっか行くの?」
昌「見りゃ分かるだろ。」

 吉澤の質問に投げやりに答えた俺はそのまま出かけた。

吉澤「………………そんな言い方しなくても……」

 俺の投げやりな答え方に少々膨れ気味だった吉澤、

 もちろん俺はそんなことに気付くわけがない。

 俺はとりあえずいろいろなところへ行き、
 今はゲーセンにいた。

昌「よし、まずはスリルドライブ2だ!」

 俺はアメリカコースを選びさっそく走行、

 ドン!キャアー!!ファーオーファーオー(事故です。)

昌「(゚д゚)ウツー」

 ………まだまだだね………………

 よし、気を取り直してファイナルハロン2だ!

昌「男なら大逃げだ!」

 意味無くハイテンションな俺は、大逃げのミラクルアクセルを選択し、
 距離は2400mを選びスタート!

(実況)山本直也「スタートしました。………
       まずハナを奪ったのはミラクルアクセル」

 実況のとおり俺はスタートで一気に加速し
 そのまま10馬身以上はなしてハナを奪った。

 折り合いもばっちり、ペースもばっちり、
 そのまま600mのハロン棒を通り過ぎようとしていた、

昌「(………いけっ!)」

 まず1発鞭を打ち手綱をしごいて直線を向かえる、

昌「(いけや (゚Д゚) ゴルァ! )」

 400m過ぎたらもうひたすら鞭連打、
 後は先頭でゴールするのを祈るばかり。

昌「うりゃぁ!」

 2馬身くらいに縮まりはしたが俺はそのまま先頭でゴールした。

昌「はぁ……はぁ……はぁ……………………バテたな……」

 よく考えたら俺……………………インフルエンザだったんだ…………

 10分ほど休憩を取り、俺はUFOキャッチャーへ向かった。

昌「(あー、取れるなぁ…)」

 うん、今日は調子が(・∀・)イイ!

 スーパーホーススーパージャンボぬいぐるみ名馬シリーズなど、
 取りまくりだ。

 ヒソヒソ……

昌「(ん?)」

 何か後ろから声が聞こえてきた、

昌「(くるっ)」

 気になり後ろを振り向いたが、
 すでに誰もいなかった。

昌「(ちっ、人のプレイにいちいちケチつけんなよ。)」

 人のプレイを見るのは別にいいのだが、

 「あっ」とか言われたりするのは非常に腹が立つ。

 ケチつけんのならお前が見本見せろや (゚Д゚) ゴルァ!

 人形を取るだけ取った俺はそれを鞄に無理やり詰め込み、
 ある筐体へ向かった。

田中信夫「徹底追跡!ザ・警察官 新宿24時!」

 うん、田中信夫かっけー。

 俺は身につけているものを全て鞄の中に入れ、
 鞄を筐体の横に置き、少しストレッチをしながらプレイに入った。

昌「(オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!)」

 ちょっとスタープラチナが入りながらも俺はステージを先へ勧めていった。

 松山重信捕まえたー!(名前はうろ覚え)

 リチャード捕まえたー!

 電車ん中逃げ回ってるやつ捕まえたー!(名前知らん)

 2人捕まえたー!(李と誰だっけ?)

 カーチェイス全部捕まえたー!(名前ないよね?)

昌「(よし、地下駐車場だー!)」

 バキュン、うぉぅぉ……………

田中信夫「プレイヤー殉職」

昌「(゚д゚)ウツー(゚д゚)ウツー(゚д゚)ウツー(゚д゚)ウツー」

昌「(く、くそ……なかなかやるなぁ〜)」

 俺は気を取り直しつつ先へ進んだ。

 そして、

 L.A.P.D前路上だー!

 組長覚悟ー!

 パン!

組長「うおぅ…」

(デデデデッ♪デデデデデデ♪)

―極道会組長逮捕、ご協力ありがとうございました。―(だっけ?)

昌「ヨッシャー!」

???「おおー!!」
昌「??」

 クリアと同時にどこかで聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきた。

 誰だ?

吉澤「すごいねー(( 0^〜^0 )//゛゛゛パチパチ)」

 俺の後ろで吉澤が拍手をしていた。

昌「なんだよ、何でいるんだよ?」

 独り俺のプレイ姿を見ていた吉澤に対し、
 俺は吉澤にこう言葉を投げかけた。

吉澤「んー?小母さんに聞いたら“ここのゲーセンにいると思う”って
  聞いたから来たの。」

 う、読まれてる………

吉澤「でもうまいねー、何でも。」
昌「UFOキャッチャーのとき後ろにいただろ?」
吉澤「うん、すごすぎ。」
昌「あっそ。」

 しかし言葉とは裏腹に俺はちょっぴり嬉しかった。

吉澤「ねーぇ、これからどうするのぉ?」
昌「帰る。」
吉澤「じゃーさぁ、買い物に付き合ってくれない?」

 もちろん俺の答えは……

昌「やだ。」

 そう言い、俺は出口に向かって歩き始めた。

吉澤「あ、待ってよぉ〜」

 慌てて俺を追いかける吉澤、

吉澤「ねーぇ、お願い〜」
昌「やだ。」

 ねだる吉澤を無視し帰ろうとしたら、

吉澤「ふん!もういい!昌君のバカッ!」

 吉澤は怒ってどこかへ行ってしまった。

昌「(……何怒ってんだアイツ…)」

 怒っている吉澤には見向きもせずに帰ろうとした。

 あ、

昌「(誰の手帳だ…?)」

 俺の足元に手帳が落ちていた。

 俺はその手帳を家に持ち帰り、
 自分の部屋で眺めていた。

昌「誰のだろう……?」

 と何も考えずにパッと開いた。

 ○月×日、今日から昌君の家に住む事になった(0^〜^0*)ヤッタネ!
 だって…………ずっと好きだった人とひとつ屋根の下で住むんだよ〜
 嬉しい〜!

昌「………あ、吉澤のじゃん。」

 いくらなんでも人の手帳を見るのは失礼と思い、
 吉澤の部屋に置いておこうと思った。

 ………しかし、見てぇ…

昌「うーん……どうしよう…」

 ………………………………………………………あ、そうだ、

昌「アイツさっき俺に“バカ”って言ったから、その罰としてこの手帳を見よう。」

 ……かなり強引に理由をつけて俺は再び吉澤の手帳を開いた。

昌「えーっと………」

 ○月×日、今日昌君に殴られちゃった……( 0T〜T0 )エーン…
 何か昌君は私のこと嫌いみたい……何でだろう……
 私はこんなに昌君が好きなのに……

昌「…………ああ、そういえばそんなことがあったなぁ。」

 吉澤を殴った時の事ってあんまりよく覚えてないや。

 ○月×日、うふふ……今日から昌君と2人っきり(ハァト
 小母さんにねだって看病してもらえることになった〜( 0^〜^0 )vイエイ!
 ………5日間も2人きりだから…もしかして………………
 (/。\)イヤン!ハズカシイ…………

昌「バカかこいつは。」

 呆れながらも俺は次のページをめくった。

 ○月×日、今日昌君と一緒に寝てたら……………………………
 キスしてた( *^〜^* )ポッ
 何か当たってる感じがして目を開けたら………キャッ

昌「ぶっ、」

 あのやろー起きてたのかー!

 一通り読み終えた俺は手帳を吉澤の部屋に置こうとした。

昌「…………………………ん?」

 俺はふと何かを思いつきもう一度手帳を開いた、

昌「…………………………………………………………あっ、」

 俺はあることに気がついた、


昌「日記に必ず俺の名前が……………ある………」

 もう一つ、

昌「……………否定的な内容の日記がが少ない………」

 >>326 のやつぐらいだ、否定的な内容は。

 >>338-339 の言う通り吉澤は家が火事になったから家に来たんだった、
 日記には火事のことや亡くなった家族の事なんて全く書いていない。

昌「思い出すのが嫌なのかな…………?」

 そういえば学校や家で暗い顔をしてる吉澤って俺は見た事無いなぁ。
 よくまあ、あんな長く虚勢をはれるものだ。

 あと、

昌「…………………………“好き”って単語がやたら目立つな………」

 俺は嬉しいと言うかちょっと複雑な気分だった。

 そして吉澤が帰ってきた

吉澤「ただいまー」

 俺は間髪いれずに吉澤に話し掛けた、

昌「吉澤ー、これお前の手帳かー?」

 俺はさも、持ち主を知らないかのように吉澤に尋ねた。

吉澤「あ、そうだけど……どこにあったの?」
昌「そこの椅子の上に置いてあったぞ。」

 もちろんウッソー♪

吉澤「ふーん……ありがとう。」

 吉澤は手帳を受け取り2階の自分の部屋へ行った、

吉澤「………………!?」

 ダダダダ!

昌「(おぉう、何だ?)」

 顔を真っ赤にし、やや息を切らしながら吉澤が戻ってきた、

吉澤「もしかして昌君これ見たぁ!?」

昌「えっ?」

 ご存知の通り俺は隅から隅までじっくり観賞したのだが、

昌「(もし正直に言っってしまったら………)」

 多分俺は鉄パイプで後頭部を殴られ、山中に埋められしまうだろう。
 そんなことにならないためにも……

昌「いや………見て…………無いよ…」
吉澤「え゛〜!!」

 なんだその“え゛〜!!”ってのは?!

吉澤「ホントにぃ〜?」
昌「見てねぇっつーの!」
吉澤「(ジーっ)」

 まるで吉澤は俺を確かめるかのように見つめた。

 (-_-)ウウム、このままではイカン。
 そんな俺も負けじと…

昌「何?俺に見られるとそんなに不都合なの?」
吉澤「当たり前じゃん!」

 吉澤は顔を真っ赤にしながら俺に向かってこう言った。

昌「あれ?何で顔真っ赤にしてんの?」
吉澤「うるさーい!」

 うーん……何か面白くなってきたな…

昌「気になるなぁ〜、あとで見ようかな?」
吉澤「ダメーーーーーーーーーーー!!!!」

 吉澤は外まで響かんばかりのデカイ声を発した。

昌「って言うかさぁ、何が書いてあんの?」
吉澤「ヤダ、教えない。」
昌「要約ぐらいでいいから教えてよ。」
吉澤「ヤーダッ!!」

 まるでダダッコのように吉澤は拒否をした。

昌「えっ?そんなにやばい事書いてあんの?」
吉澤「うるさい!$&%)(’=)$%’&%’$!!!」

 もう興奮しすぎて何言ってるか分かりません。

昌「まあいいや、あとで見よーっと。」
吉澤「!#&%&)(=)(〜=(%!!」

 何か吉澤が俺に向かって何か言っていたようだったけど、
 サパーリ分からないので無視してその場を後にした。

 もう見たから見ねぇけどさっ。

 そして冬も終わろうとしている3月半ばの頃だった、

 夜、俺と吉澤は吉澤の部屋で話しこんでいた。

吉澤「外、雨ひどいねー。」
昌「そうだな…」

 吉澤の言う通り、外はうるさい位の強い雨が降っていた。

 と、

 ブツッ、

吉澤「あっ、」
昌「……」

 停電だ、ブレーカーが落ちたかな?

吉澤「……」
昌「………」

 真っ暗になってしまったため何をしていいかお互い分からず、
 ただ黙るばかりだった。

 ピカッ……

 ドーーーーーン!!!

吉澤「キャッ!!」
昌「うわっ。」

 突然体に響かんばかりの強い雷が落ちた。

 ドサッ、

昌「(ヮッ)」

 きゅ……急に体が重くなったような気が……

昌「…吉澤はなれろよ……」

 皆様御察しの通り、吉澤が抱きついてきた。

吉澤「………」

 俺の言う事など気にも留め無いか、痛いぐらいに力いっぱい抱きついている。

昌「おい、よし……」

吉澤「何を言ってるのよ!」
昌「………?」

 突然、吉澤がしゃべり始めた、

 ……いつもと様子が違うみたいだ。

吉澤「私だけ逃げるなんてできない!」

 ……?

吉澤「早く私と一緒に逃げよう!?」

 ………まさか、

吉澤「いやぁ…………………」
昌「吉澤?」

吉澤「…えーん………えーん……」

 まるで幼い少女のように吉澤は俺の胸で泣き始めた、

 …もしかしたらフラッシュバックか、これは?

昌「俺はお前を置いて行ったりなんてしないぞ。」
吉澤「うっ……ヒック……」
昌「もう独りにはしないからな…」
吉澤「………ヒック…」

 なぜだか俺は吉澤がとてもいとおしく感じ、ギュッと抱きしめた。

 その後聞いた話では、吉澤が火事にあった日は今日みたいに雷が鳴っていたとの事だ。

 それからどれくらい時間がたっただろう、
 うるさいくらい激しく降っていた雨も、今では穏やかに降り注いでいた。

昌「………」

 吉澤はいまだに俺の胸にしがみついていた。

昌「吉澤ー……」
吉澤「………スーッ……スーッ…」

 泣き疲れてしまったのか、吉澤は静かに寝息を立てていた。

昌「ありゃぁ………」

 俺は半ば呆れながらもどこかで安心していた。

昌「………よいしょっ……」

 俺は吉澤をベッドまで運び、布団をかけてその場を後にしようとした。

 グイッ、

昌「ん?」
吉澤「………」

 寝てると思われていた吉澤が俺の服を引っ張っていた。

吉澤「・……一緒に寝よ…」

昌「うえっ?!」

 思わず俺は素っ頓狂(すっとんきょう)な声をあげてしまった。

吉澤「ち、違うよ!……怖いから………その……」

 吉澤は布団で顔を隠しながら慌ててこう答えた。

昌「ふーん、」

 と、俺はふと思いついた、

昌「何が“違う”の?」
吉澤「えっ……」

 吉澤の顔は布団に隠れているが、
 それでも吉澤がもじもじしているのは手にとるように分かった。

昌「オラオラ、何が違うんだよ?」
吉澤「……(カーッ)」

 なお俺は責める、

昌「……じゃあ独りで寝ろよ。」

 俺は部屋を出ようとしたが、

吉澤「ダメーッ!」

 吉澤は俺の服を引っ張って制御した。

吉澤「……昌君の意地わるぅ………うぇ〜ん!」

 あ、泣いちゃった。

吉澤「えっ……えっ……」
昌「んな事ぐらいで泣くなよ…」
吉澤「だって……だって……」

 泣きながらふて腐れる吉澤にやや呆れ気味の俺だった。

昌「……分かったよ、寝てやるから泣くなや。」
吉澤「ホント!?」

 吉澤は布団から顔を出し、満面の笑みを浮かべた。

昌「ああ、待ってろ、今布団持ってくるからな…」

 と、俺は自分の部屋から布団を取りに行こうとした。

吉澤「ああん、違う〜。」

 再び俺の服を引っ張り俺を引きとめた。

昌「ぅおっと………じゃあどこで寝るんだよ、俺!?」

 まだ3月、布団無しで寝るにはあまりにも寒い、

吉澤「……」
昌「オイ、」

 しばらくたって吉澤は恥ずかしそうに口を開いた…

吉澤「“一緒に”寝よって言ったじゃん…」

 俺はこの吉澤の一言に“ハッ”とした、

 まっ………まさか……

吉澤「ここ………」

 吉澤はそう言い自分の右側にクッションを置いた、
 枕の代わりということか?

昌「ホントに寝ていいのか?」
吉澤「(コクッ)」

 う〜ん…据え膳食わぬは男の恥と言うのはこういう事を言うのかな……?

昌「……分かったよ、寝るよ…」

 冷静に言ったつもりだが内心は心臓がバクバクだった。

吉澤「……ありがとう…」
昌「……」

 俺は吉澤の隣に寝た、
 吉澤に背を向けるのも何だと思い、俺は顔を右向けた。

吉澤「……」
昌「……」

 俺は徐々に落ち着きを取り戻し眠りに付こうとしていた。

昌「(ウトウト……)」

吉澤「…ねぇ」

 ぅん?

吉澤「……こっち向いてよ…」

昌「ん〜?」
吉澤「……」

 俺はなぜ吉澤が呼び止めたと言う事より、
 もう少しで寝れそうだった所を起こしたと言う事にやや腹を立てていた。

昌「……?」
吉澤「……」

 すると、心なしか吉澤が近づいてきたような気がした。

昌「(スッ)」

 俺は吉澤となるべく体をくっつけないように少し離した。

吉澤「……れるの?」
昌「えっ?」

 と、吉澤が何か呟いた。

吉澤「どうして離れるの……?」
昌「はぁ?」

 俺は吉澤の言っている意味が良く分からなかった、
 くっついているとなかなか寝付けないと思うのだが……

吉澤「……あたしの事………嫌い…?」
昌「えっ??」

 (-_-)ウウム、意味が分からない……
 俺はどう答えていいか悩んでいると、

吉澤「もうちょっとくっついて寝たい……」

 ブッ、

昌「……」

 あまりもの事に呆れていると、

吉澤「女の子がくっついて寝たいって言ってるんだぞ、受け入れないと嫌っちゃうぞ!」
昌「じゃあ嫌えよ。」

 もう相手にするのが嫌になったので再び眠りに付こうとしたら…

 コツン☆

昌「アタッ、」
吉澤「何で昌君っていっつもそうなの……?」

 と、吉澤が自分のおでこを俺のおでこにくっつけてきた。

吉澤「そうやって無気力を装ってるくせに人が隙を見せると………キスするし…」
昌「だったら寝てる振りすんな、ボケェ。」
吉澤「何で寝てる振りって言い切れるのよ?」
昌「何が“何か当たってる感じがして目を開けたら………キャッ”だよ。起きてたんだろ?」

 ……

吉澤「…ちょ……ちょっとなんでそんなこと知ってるの〜!」
昌「……( ̄□ ̄;)!!」

 俺はあまりにの間抜けさに声がでてこなかった。

吉澤「やっぱり手帳見たなー!」

 …姉さん、事件です。

昌「ああ見たよー、誰のかなーって思って。」

 まあいいや、しゃべっちゃる。

昌「見たらまぁ………」
吉澤「何なのよ、何よ?!」
昌「……ベーつにぃ〜( ̄ー ̄)ニヤリッ」

 俺は意味深な笑みを浮かべた。

吉澤「な……え〜&%#&$%’)(&$”%$”#)(&)(=!!」

 姉さん、吉澤が壊れました。
 部屋は暗いですけど吉澤の顔が真っ赤なのが分かります。

吉澤「$%$&%’&’)……じゃあ…………いや〜!!」

 全壊ですな。ヽ(´▽`)/

吉澤「じゃあ…………るよね…?」

 …なるほど、吉澤の言いたい事は何となく分かった、
 しかし私はそんなにやさしくありませぬ。

昌「何が?」
吉澤「………知ってるよね?」
昌「何が?」
吉澤「“あのこと”知ってるんだよね?!」
昌「えーと、“あのこと”とは何ですか?」
吉澤「………むー!」

 いやぁ、おもろいよ吉澤君。

昌「物事はハッキリ言ってくんないと良くわかんないよ?」

 俺がこう言うと、吉澤はもごもごしながら話し始めた。

吉澤「………きだって事…」
昌「あ?」

吉澤「好きだって事!!」

 「バカヤロー今何時だと思っているんだ!」
 と、ヨソから怒号が飛んできそうなくらい吉澤は叫んだ。

昌「……」
吉澤「……(耳まで真っ赤)」

 と一呼吸置いた後、

昌「……分かったよ…吉澤…」
吉澤「………」

 吉澤は何か複雑な表情をしていた。

昌「お前がベーグルを好きな事ぐらい。」
吉澤「……(ん〜!)」

 ・・・・・・・・・・・ブチッ・・・・・・・・・・・

 ん?

吉澤「昌君のバカー!("TεT((○=(0`〜´0メ)」

 ヤパーリ失言でしたか……

吉澤「(0`〜´0)プンプン!」

 ありゃ…ご立腹です……

昌「……(今のうちに…)」

 今のうちに俺は吉澤のベッドから脱出しようと試みた。

 ガシッ、

吉澤「どこ行くの?」
昌「トイレ。」

吉澤「……嘘つきー。」

 あら?

吉澤「一緒に寝てくれるって言ったじゃん。」
昌「いや〜………でも〜………」

 怒らした男と寝たいか?吉澤君よぉ〜?

昌「……じゃあ、」

 ベッドを出ようとするが、吉澤が俺の服を掴んで自由に動けない。

昌「おい離せ………(ん?)」

吉澤「………(ポロポロ…)」

 ……あら、また泣き出しちゃった…

昌「……?吉澤……?」

 さっきとは明らかに様子が違っていたので思わず吉澤の元に戻った、

吉澤「……お願い…甘えさせて……」

 吉澤が泣きながら懇願してきた。

吉澤「もう辛いの……独りでいるのが…」

 んん?

吉澤「小父さんも小母さんもとっても優しい、でもやっぱり素直に甘えられない。
  ……でもね本当は誰かに甘えたいの…」

 …確かにそうかも知れない、家族がいないんだからな。

吉澤「…だから好きな人に甘えたいの……いっぱい………」

 話し終えると吉澤はさらに泣き出した、

昌「…吉澤ごめんな……俺…気づかなかった…」

 俺はそっと吉澤を抱きしめた。

吉澤「えっ……えっ……」

 俺達はそのままベッドで横になった、

昌「オヤスミ………」

 俺は吉澤を抱きしめたまま眠りに付いた…

 それからと言うもの俺と吉澤の間で何かが変わったような気がする。

 別に……その……付き合っているとかそんなんじゃなくて、

 今までよりも親しくなったような感じがする。

 前みたいな喧嘩も無く毎日を平穏に過ごしている。

 ……あ、そういえば3年になってから吉澤が自転車通学をするようになった、

 何で電車通学やめたんだって聞いたら、

( 0^〜^0)<ダイエットのためだよ〜

 だってさ。

 だったらいちいち、俺と同時刻に家を出なくたっていいのになぁ…


 え?何?本当に付き合ってないのかって?

 そうですよ、

 別にキスとかしていないし、前みたいに一緒に寝たりとかしてないし……

 …………

 ……すいません、2回ほど寝ました…

 そして1学期の期末テストも終わった7月―

吉澤「…ねぇ、ホントに大丈夫なの?」
昌「大丈夫だってば。」
吉澤「もー人事だと思って……」
昌「人事じゃないってば。」

 吉澤君、しつこいよ。

昌「まー、気持ちは分かるけどさぁ…」
吉澤「だったらそんな事しないでよ〜!」

 吉澤がこう言うのも無理は無い、
 それは数ヶ月前のことだった。

吉澤「ねぇ昌く〜ん、」
昌「あ?」
吉澤「最近ね、ちょっとくどかれるんだけどどうしよう?」
昌「誰に?」
吉澤「サッカー部のキャプテンの今井って人。」

 あらまぁ。

昌「何、お前はそいつの事気に入っているのか?」
吉澤「そんなわけ無いじゃん!私は……私は………」

 冗談で言ったつもりなのに……
 本気にしないでよ、吉澤君。(^^ゞ

昌「あーそー。断れないの?」
吉澤「…断ってもしつこいの。」
昌「あー、最近家にも電話かかってこない?」
吉澤「そう、小母さんにはいないって言うように言ってあるけど…」

 それは大変だ。

昌「……しょーがねーなー、俺が何とかしてやるよ。」
吉澤「ホント!」
昌「ああ……まぁ何とかな。」

 そのときの吉澤のミョーに嬉しがってる顔が今でも忘れられない。

 そして…

昌「おい今井だな。」
今井「あ、何だよ?」

 一言だけしか聞いていないけど……
 ……性格悪そ〜

昌「お前吉澤に言い寄ってるらしいな?」
今井「テメェにカンケーねぇだろ?」
昌「ある、俺の家にまで電話をかければな。」
今井「それのどこが迷惑なんだよ。テメェにはカンケーねぇじゃん。」

 …こいつバカだ。

昌「分かったよ……そこまで言うのならここは1つ勝負と行きませんか。」
今井「はぁ?」
昌「7月の球技大会のサッカーで直接対決してお前が勝ったら好きにせい。
 その代わり俺が勝ったら吉澤から手を引け、いいな?」
今井「何でそんな事しなきゃなんねーだよ?」

 …しょーがねーなー………煽るか、

昌「もしかしてサッカーで俺に負けんの嫌なの?」
今井「んなわけねーだろ!テメェみてーなど素人なら楽勝だ。」
昌「じゃ、受けろよ。サッカーで俺に勝つ自信があるのなら。」
今井「そんなんでいいのか?ただ貰いだぜ。」
昌「受けるんだな?」
今井「ああ、いいぜ、せいぜいがんばれや。」

 ホッ……バカで助かった…

 …とまあこういう事があったのです。

 サッカー部のキャプテンとのサッカー対決だなんて確かに
 無謀なのかもしれないなぁ……

 …吉澤にとっては。

昌「しんぺーするな、新田がいるから大丈夫だよ。」

 新田とは同じクラスで中学も一緒だった、
 奴はサッカー部でFWをやっている。

吉澤「でも………」
昌「まっ、大船に乗ったつもりでいろよ。」

 俺はそう言い残し第1試合に向かった。

吉澤「あっ……」

 虚をつかれた吉澤は俺を追いかけることなくその場に立っていた。

吉澤「(本当に大丈夫かな……)」

 吉澤の心配は募る一方だった。

 1回戦を1―0で勝った俺達はトーナメント表を見ていた。

昌「ふーん……」

 今井とのクラスとは順当にいけば決勝で当たることになる、
 あいつら勝ち上がってこれるかな?

 ……え?俺のポジション?
 俺はGKをやってるよ。

吉澤「危なかったじゃん、負けたらどうすんのよ!」

 何で勝ったのに怒ってんの……

昌「トーナメントなら1―0で勝とうが100―0で勝とうが一緒だろ?」
新田「まあな…リーグ戦ならそうはいかんが……」
吉澤「…((((( 0`〜´0)プン!」

 膨れっ面のまま吉澤はそのままどこかへ行ってしまった。

新田「何?ひとみちゃんと何かあったの?」
昌「べーつにー、」

 そう言い残し俺はその場を後にした。

新田「(………ふーん…)」

 新田は何か怪しげな顔をしていたが、俺は大して気に留めなかった。

 その後俺らは何とか勝ちあがっていった。

 そして準決勝、決勝、3位決定戦が行われる3日目に突入していた。

 準決勝をPKで何とか勝ち(4―1)、
 決勝は1試合平均得点約4点の今井とのクラスとなった。

新田「やあ、ひとみちゃん」
吉澤「あ、新田君。」

 3位決定戦が行われている時、新田が吉澤に接触していた。
 ちなみに俺はその場にいない。

新田「ねぇ、田仲と何かあったの?」
吉澤「(ギク!)別に……」

 吉澤はモロ顔に出していた、

新田「ははは……田仲に聞いても同じ答えが返ってきたよ…
  あと、その“ギク”とした表情もね。」
吉澤「……」

 吉澤は恥ずかしさのあまり下を向いてしまった。

新田「まぁ…差し支えなかったら僕に話してくれないかなぁ?
  田仲って何でも独りでやりたがるからさ……」

 新田の素直というか前向きな態度に吉澤は心打たれたのか、

吉澤「……実はね………」

 吉澤は新田に今井の事を話し始めた。

新田「はぁ……なるほどねぇ…」

 吉澤の話を聞いて新田はなぜか呆れ顔だった。

新田「相変わらず自分勝手だな、今井は。」
吉澤「えらいジコチューなんだけど…」
新田「ああ、サッカーでもそうよ。トップ下のくせにゲームメイクしないもん。」

 …ったくどーゆートップ下だ?

新田「まぁでもこれで今回やけに力が入っている田仲の理由が良く分かったよ。」
吉澤「はぁ……」
新田「アイツって人の為に何かしようって奴じゃないんだけどなぁ……?」
吉澤「ん……まぁ…そうだよね…」

 ハイハイ、そーです、そーです。(投げやり)

新田「……あいつも変わったな…
  ひとみちゃんの為にまたサッカーをやるなんて…」
吉澤「え?昌君ってサッカーやってたの?」
新田「知らないの?」
吉澤「うん。」

 新田は驚いた表情を見せていた。

新田「……アイツは………すごかったよ…」

 新田が俺の過去を吉澤に話し始めた。

新田「中学の時アイツと出会ったけど……凄かったよ1年から。」
吉澤「即レギュラーって事?」
新田「そっ、1〜3年まで1度たりとも正GKの座を譲らなかったからな。」
吉澤「へーっ………ってなんでサッカー辞めたの?」

 確かに誰でもそう思うだろう、

新田「……3年の時の試合中に相手のFWと接触して右膝が壊れたんだ。」
吉澤「……」
新田「それで復帰が難しいからってアイツはサッカーから手を引いたんだ。」

 多分、吉澤は俺が右膝にしているサポーターに気が付いていると思うけど…

吉澤「……そうだったの…あの怪我…」
新田「知っているでしょ?一緒に住んでいるのなら?」
吉澤「うん……小母さんに聞いた事があるんだけど
  “中学の時怪我したの、あの子には問いたださないでね”
  って言われたことあるの……」
新田「…アイツな怪我してからとたんに周りの先生や友達が離れていったからな…
  見ていて気の毒だったよ……」
吉澤「そっか……」
新田「……」

 とお互いに少し黙り込んでいると…

吉澤「………昌君ってGKとしてそんなに凄かったの?」
新田「ああ、アイツは中学の時公式戦・非公式戦を含めて
  ずーっと“無失点”だったからな。」
吉澤「えっ!む……無失点?!」

 まぁ……DFも良かったのもあるんだけどね……

 そして3位決定戦も終わり、いよいよ決勝戦となった。

 他の種目も終わっていたせいか、校舎から試合を見るもの、
 グラウンドに来て試合を見るものと大勢いた、
 もちろん吉澤はグラウンドにいる。

 俺たち11人は円陣を組んでいた。

新田「みんなちょっといいか?」
昌「どうした新田?」
新田「ひとみちゃんから聞いたんだが、この試合に負けるとひとみちゃんが
  今井に取られてしまうそうだ。」
昌「いっ!?」

 俺にかまわず新田は話を続けた、

新田「そういう訳で田仲はこの試合は絶対に負けられないんだ、
  2人の為にもみんな絶対に勝とうぜ、いいな?」
9人「オウ。」

 俺は事がばれてしまいかなり赤面していた、

 が、

新田「おい、田仲、お前から何か無いのか?」

 新田は冷静に俺に話を促した。

昌「ん、ああそうだな…」

 仕切り直し、俺はみんなに話し始めた、

昌「いいか、特に変更点は無い、DFはいつものように頼む。」

立浪「えっ?今井のマークはどうするんだ?」

 190cmある立浪から疑問の声があがった、
 奴は今回スイーパーをやっているからそう思ったのかもしれない。

昌「かまわん、マークは1人でいい、
 その代わりペナルティエリア内をしっかり固めて
 奴等にペナルティエリア内でシュートを打たせないようにしてくれ。」
立浪「でもよー……」

 立浪が何か反論をしたが、俺は間髪いれず、

昌「ペナルティエリア外はフリーで撃たせてかまわん、
 俺が全部止めるからDFは絶対にペナルティエリア内で
 シュートを打たせないでくれ、今井でもフリーで打たせてかまわん。」
立浪「大丈夫か……それで…」

 不安がる立浪らを見て新田がフォローに周った、

新田「田仲は決勝まで1点も取られて無いんだ、
  ここまで来たら田仲の意見を尊重しようぜ。」

立浪「……分かった、頼むぞ田仲。」
昌「OK任せな、
 こっちの攻撃は多分数えるほどしかない、少ないチャンスを逃すなよ。」
新田「分かってるって、パスが回ったら俺が決めてやるよ。」
昌「よし、ここまで来たんだから勝っちまおーぜ!!」
全員「オウ!!」

 掛け声とともに俺達全員は自分のポジションについた。

今井「みんな上がれ―!」
立浪「もどれー!」

 一気に立場が逆転した、立浪ら10人が一気に戻り、
 今井ら10人が一気に上がろうとしていた。

今井「(よし!)」

 今井がボールをトラップしようとした瞬間……

立浪「あっ、」
新田「!?」
吉澤「いけーーーーーーー!」

昌「どけや!」

 いつの間にか(他人からしてみれば)上がっていた俺は
 今井の所まで走りこみ、

今井「うわっ!」

 半ば強引に今井からポジションを取りそのまま打った、

 バシッ!

敵のキーパー「あっ!」

 バサッ!

 俺の打ったシュートはそのままゴールに突き刺さった、

審判「……」
昌「審判!どうなんだ!?」

 ピィーーーーーーーーーーーー

審判「ゴ…ゴールイン…」

 や…やったぁー―!!!

10人「よくやった!田仲!」

 バシバシバシ……

昌「いて…いて……」

 フィールドにいた10人と応援でグラウンドにいた同じクラスの奴らから
 俺は手荒い祝福を受けていた。

新田「GKが決めるなよ、俺らFWが形無しに見えるだろ。」
立浪「んな事言ったらMFやDFも形無しだろ。」

 なんだい、俺が決めたら悪いのかい!

吉澤「もー、そんな事言わないでよ〜!」

新田「ひとみちゃんがそう言うなら止めようか〜」
立浪「だね」

 氏ね。

吉澤「でも、ホントに勝つとは思わなかった…」
立浪「俺も正直驚いたぜ、1回戦〜決勝まで無失点だからな。」
昌「DFがよく守ってくれたのもあるぜよ。」

新田「…よく考えたら決勝ってお前独りで決めたようなもんだな。」
立浪「…そうだな、守って、PK止めて、最後は自らのシュートでVゴールだもんな。」

 まあそう言うなよ、照れるジャン…ヾ(´▽`*;)ゝ"エヘッ

新田「GKが点を取って、FWが点を取れないなんて…………」
立浪「面子丸つぶれだ………」

 結局それかよっ!!

 そして表彰式も終わり、みんなそれぞれ家路つこうとしていた。

吉澤「えへへへ………」

 駐輪場に向かう途中、吉澤の表情は終始緩みっぱなしだった、

昌「何だよ気持ち悪りぃな……」
吉澤「エー……だってぇ〜……( *^〜^*)ニタニタ」

 気持ちわりー、

昌「……あっ、教室に忘れもんしたから先行っていいよ。」
吉澤「ううん、ちゃんと待ってるからね。」
昌「そっ、じゃあ。」

 そう言い残し、俺は学校へ引き返した。

吉澤「(…ちゃんと一緒に帰ろうね)」

 と、吉澤が再び駐輪場に向かって歩き始めた瞬間、

今井「おい、刺されたくなかったら俺について来い。」
吉澤「ひっ!」

 今井が吉澤の背後からナイフを首筋に突きつけてきた、

 ……不運なことに付近には誰もいない。

今井「こいっ!」
吉澤「いやっ……(ハラッ)」

 吉澤は今井に連れ去られた……

昌「(タッタッタッ………)……いねーし。」

 戻ってきた俺は吉澤がその場にいないことに少々がっかりしていた。

昌「ん?……これって…………吉澤のハンカチじゃあ…」

 道端に落ちていたハンカチを俺は拾い駐輪場へ向かった、

昌「……あれ?吉澤の自転車あるじゃん………」

 先に帰ったわけじゃないんだな……
 トイレ?

昌「……だったらハンカチなんて落とすかな………?」

 うーん……どこ行ったんだ?

 俺は吉澤を探しに辺りをうろついていると、

新田「あれ?まだいたの?」
昌「ああ、吉澤見かけなかった?」
新田「いや……どうした?」
昌「実はな……」

 俺は新田に事情を説明した、

新田「………ちょっとついて来い、田仲」

 新田が急に駆け足で走り始めた、

昌「おい、どこ行くんだよ?」

 俺も慌ててついていった。

新田「…ひょっとしたら………サッカー部の部室にいるかもな…」

昌「?何でだよ、何で吉澤がそんなとこに?」

 俺は新田の仮説の意味がよくわからなかった、

新田「……サッカー部でな、マネージャーが定期的に辞めては
  入っているという実情をおまえは知っているか?」
昌「はぁ?知らん。」
新田「そうか……」

 まだ新田の言っている事がよくわからなかった、

新田「…今井のやつが食っているんだよ」
昌「フーン、」

 別に今井の容姿を考えれば別に不思議とは思わなかった、

新田「でな、半ば強引に食われたやつがやめて行ってるんだよ。」
昌「へー……」

 ………っておい!

新田「あいつはそう言う癖(へき)があるからひょっとしたら……」
昌「嘘だろ!?何でだよ!?」
新田「素人と思っていたお前にサッカーで負けたのがよほど悔しかったんじゃ…
  それかどうしてもひとみちゃんを………」

 ピキッ!

昌「ふざけんな!そうだったら絶対にとめるぞ!」
新田「当たり前だ!」

 俺達2人は猛ダッシュでサッカー部の部室へ向かった。

吉澤「嫌!……離して!……」
今井「うるせぇ!黙れ!」

 今井は吉澤の上に乗りナイフを突きつけてた、

吉澤「ひっ!」

今井「そうだよ、そのままおとなしくしてな!」

 今井は抵抗する吉澤を押さえつけながら
 右手で持っているナイフで吉澤のYシャツのボタンをちぎり始めた、

吉澤「…ヤッ………」
今井「動くな!刺すぞ!!」

 吉澤は恐怖におびえながらも必死に抵抗していた、

吉澤「そんな事してどうなるか分かってるの!?」
今井「フン、知らねぇな!」

 吉澤の悲痛な叫びも届かず今井の行為は止まらなかった、

今井「今のお前に選択権はないんだよ!大人しくしていろ!」
吉澤「いやぁ……………」

 今の吉澤になすすべが無いが、それでも必死に抵抗していた、

吉澤「昌君助けてー!!!」

 バン!

今井「(えっ?)」
吉澤「…あっ!」

昌「呼んだか?」
新田「(……やはりここか…)」

 部室のドアを乱暴に開けたら二人がいた。
 新田の言うとおりだったな……

今井「て…てめぇら……」

 と今井が起き上がり俺達に襲いかかろうとしたが、

新田「氏ね!今井!!」

 パシン!!

今井「うぎぁぁ!」

 新田の左足が今井の顔面にそのまま決まり、
 今井はその場に崩れた。

昌「……来い。」
吉澤「昌君……」

 俺はその隙に吉澤の手を引っ張り、
 急いで部室から脱出した。

昌「大丈夫か、吉澤…?」
吉澤「………うん。」

 と言うものの、吉澤はべそをかいており、
 体が震えていた。

新田「どうする?誰かに知らせるか?」
昌「オウ、教務室まで直行だ。」

 俺達3人はこの事を知らせに教務室まで向かおうとした、

今井「あ゛ーー!!!」
昌「何!」

 クチャッ…

昌「ぐはっ………」

 突然背後からナイフを持った今井が突っ込んできた。
 振り向きざまの俺の左胸を捕らえ、
 俺はどす黒い血を流しながらその場に倒れた………

新田「田仲ァ!」
吉澤「キャァーーー!!!」

 平日の昼下がり、吉澤の悲鳴が辺りに虚しく響き渡った。

 ドサッ、

 昌はそのまま仰向けに倒れこんだ、
 コンクリートをどす黒い血が染めていく……

吉澤「いやぁ………」
新田「今井!テメェ!」
今井「吠えろ、どうせお前らは何もできやしまい…」

 今井が一歩歩くたび新田と吉澤の二人は後退する、
 そんなやり取りが数歩続いたあと、

吉澤「……あんたなんか絶対に許さない!」

 新田の後ろに隠れていた吉澤が急に前に出た、

吉澤「何年…いや、何十年経とうがあんたなんか絶対に許さない!
  今後あんたが幾ら払おうが、いくら頭を下げようが絶対に!
  私の………私の大事な昌君の命を奪ったことを絶対に許さない!!」

 吉澤は気が狂ったかのように今井に向かって泣き叫んだ、

今井「……うるさい……お前も死ね…!」

 今井は静かにつぶやくと今井は吉澤に向かって突進してきた、

吉澤「(…………昌君…!)」

 吉澤はもう駄目だと思いとっさに目を伏せた―

 カラン!カラン……

今井「え…?」

新田「あっ!」

吉澤「…………(パチッ)……えっ?!」

昌「ちょっとおイタが過ぎるぜ今井ちゃんよぉ?」

 そこには今井のナイフをキックで弾いた昌が立っていた、

昌「フン!」

 バキ!

今井「ガッ!」

 昌は背後から今井の髪の毛をつかみ、フラミンゴ頭突きをかました。

昌「新田!(バシ!)」

 昌は今井を蹴り、今井はそのまま前へ倒れようとしていた、

新田「……往生せいや!(バチン!)」

 新田は倒れこんできた今井の顔面を思いっきり右足で蹴った、

今井「ゲハァ!!」

 新田に蹴られた今井はそのまま動かなくなった。

昌「うわ〜痛そ〜…」

新田「……お前…何で………」
吉澤「……」

 2人とも俺が立っていることに目を丸くしていた。
 特に吉澤は驚きと戸惑いと喜びが混じっているような複雑な表情をしていた。

昌「え?ああ、これ。(ビチャ)」

新田「……何だそれ…?」
吉澤「…?」

昌「トマトジュースだよ、紙パックの。」

 俺はYシャツの胸ポケットからグチャグチャのトマトジュースを取り出した。

新田「……なーんだ…」
吉澤「(ヘナヘナ…)」

 2人とも脱力感でいっぱいだったみたいだ、
 吉澤はそのまま座り込んでしまった。

昌「………フーッ…………神様に嫌われちまったか…」

吉澤「……バカァ…………エーン……エーン……」
新田「あーあー、泣かしちゃった」
昌「うるせー、こっちはトマト臭いんじゃあボケェ。」

 しばらくすると警察がやってきた、
 どうやら物影から見ていた学校の生徒が通報したとの事らしい。

 その後俺は病院→警察の行き来で半日潰れた、
 別に怪我も泣く至って正常。

 でもオマワリの話が長かった…………(;-_-) =3

 そんな訳で家に到着したのが日も当に沈んだころだった。

昌「あ゛ー、疲れた………」

 俺は飯も風呂も適当に済ませ部屋でお休みの準備をしていた、

昌「(今日はいろんな事が一遍に有り過ぎたな………)」

 私はもう疲れました、

 いざ就寝…(プチ)←(電気を消す音)

 …

 ……

 ………コンコン、
 ギィー……

昌「………(「誰」って言わなくても分かるけど…どーせ……)」

吉澤「………」

 お気付きの通り吉澤が真っ暗な部屋に入ってきた、
 そして黙って俺のほうに近づいてきた…

 ………今日はまだいろんな事がありそうです……(−−;

 吉澤は俺が寝ているベットまで近づいてきた、

昌「………?」
吉澤「………いい?」
昌「……………いいよ。」

 ハッキリ言って何が“いい”のかよく分からないが、
 とりあえず“いい”って言っておこう。

吉澤「……(スルスル)」

 と吉澤は俺の寝ているベットに入ってきた、

 ……そう言うことだったの…………

昌「………」
吉澤「(ガシッ)……ありがとう…昌君……」
昌「え……ん…まぁ………」

 正直言って何て受け答えして言いかさっぱり分からなかった、
 吉澤が俺の左腕にしがみついてきたので俺の頭の中はパニックだった…(゜゜;)

吉澤「もう絶対に昌君から離れない……」
昌「…(ドキドキ……)」

 吉澤はとてもシリアスな顔をしているが、
 俺は吉澤の頬と2つほどなんか柔らかい感触が左腕にあったので
 吉澤には大変申し訳ないが俺は激しく興奮していた。

吉澤「………昌君………………」
昌「…………??」

 あれ?
 何で目を閉じるの………?(^-^;

吉澤「……」

 う〜ん、どうしたのかな?
 目を閉じちゃって?

昌「……!?」

 そうか寝ちゃったんだね、
 お休み吉澤……

 ……

 ………

 んなわけないですよね……

 左腕から伝わってくる吉澤の徐々に速くなっていく鼓動が
 俺をますます焦らせていく。

昌「……(ーー;)どうしよう…」

 俺は数十秒ほど悩んだあと、

昌「…ええい!ままよ!」

 思い切って俺も目を閉じた。

 ……

吉澤「……(昌君……)」

 吉澤は目を閉じたまま待っていた……

吉澤「……」

 ………

吉澤「……(昌君?)」

 なかなかアクションを起こさない俺に剛を煮やした吉澤は
 思い切って目を開けた、

吉澤「(パチ)………・…Σ(0^〜^0;)ええ!」

昌「……………(-_-) zzz」

 ……俺は寝てしまった………
 色欲を上回るほど俺の睡眠欲は勝っていた。

吉澤「………(なんでぇ〜……昌君…)」

 …………

 ゴ、ゴメンナサイ……(((((((^^;;;

 そして夏休みに入った、

昌「オラー、早く起きんかい!」
吉澤「…う゛〜ん………」

 毎朝俺は吉澤を起こすのが日課になっている、

 朝飯は母親が作って仕事に行くので別に問題は無い。

昌・吉澤「御馳走さまー。」

 食後は各自の仕事につく。

 俺は掃除とゴミ出し、
 吉澤は洗濯と食器洗い、
 後は2人で洗濯を干す。

 それが終わったら昼飯までマターリ………

 ………

 …………

 としたいのですが……

 ある日の午前中―

 シュクダイチュウ…φ(.. )       (0^〜^0 )ア、マサシクンダ

 ……φ(.. )   (0^〜^0 ))))))))))))

 ワッ!φ(ーー;(*^〜^* )マサシクーン

 ハナレナサイ!φ(;ーー(*^〜^* )イヤ

 こんなのが毎日のようにある………

 い…いやだ………

 ある日の午後―

昌「(ガサゴソ…………パク……)」

 俺はカロリーメイトを咥えながらTVを見ていた、

吉澤「何食べてるの?」
昌「こへ(これ)。」

 俺はカロリーメイトの箱を吉澤に見せた、

吉澤「いいな〜……私にもちょうだ〜い。」
昌「ほーほれいっほんひかないほ(もーこれ一本しかないよ)。」

 俺の言葉を聞き吉澤は一瞬あきらめかけたが………

 とその時、

吉澤「(パク)……モゴモゴ……もーらいー。」

 何と吉澤は俺とは逆の方向から食べ始めた、

昌「はってにふーなひょー(勝手に食うなよー)。」
吉澤「(パクパク……)」

 吉澤はどんどん食っていき、だんだん短くなっていった。

吉澤「……ふふふ…………」

 吉澤は怪しい笑みを浮かべた、

昌「はんだひょ…(何だよ…)?」

吉澤「カロリーメイトと一緒に昌君の唇も食べちゃおうかなー?」

 (・・;)ドキ

吉澤「…プッ、何まじめな顔してんの、冗談だよ。(*^〜^* )ニッ」

 ………(ーー;)コノコムスメハ…

 ある日の夜―

 俺はベットに寝転がってマターリしていた、

昌「………」

 ダダダダ…

吉澤「もう寝るの?」
 
 風呂から上がってきた吉澤が俺の部屋に来た、

昌「……」

 俺は面度臭かったので返事もせずマターリしていると、

吉澤「(ドン)返事ぐらいしたっていいじゃん!」

 突然吉澤がベッドに上がりこみ、
 前かがみになりながら俺の顔を除きこんだ、

昌「(……何だよいちいち………)……ブッ!」

 俺は思わず吹き出してしまった、

吉澤「何なのよ―!?」

 ……だってさー

 …………乳…見えてるんだもん…
 パジャマのボタンをちゃんととめてないから………

 吉澤は最近、パジャマのボタンをちゃんととめずにいるから始末が悪い。

 しかもブラをしていないみたいだから(たまに2つほどとんがっているから)
 プルプル動くのがよく分かって………思わず(;´Д`)ハァハァ
 前かがみになった日にはもう………(;´Д`)ハァハァ

 だから一緒に寝ていると、
 朝起きたときに“乳頭”がまれに  ̄O ̄)ノオハー
 しているときがあって………朝から(;´Д`)ハァハァ

 だからある日こう言ってやりました。

昌「おい、お前そんなかっこうしているから乳見えるぞ。」
吉澤「やーだぁ〜、昌君のエッチ」

 ヾ(- -;)ナンデオレガワルイノヨ…

吉澤「そんな所を気にしているの〜?」

 当たり前じゃボケが。

吉澤「何?昌君触りたいの?」
昌「サワラシテモラエルナラナ。」

 正常な男子としての返答をしてみました、

吉澤「うーん………」

 何で悩むのよ……?

吉澤「…1日3回キスしてくれたら考えてもいいよ。(*^〜^* )キャッ」
昌「断る。」

 ……(-_-)チョットモッタイナカッタナ…

 そしてお盆が近づいたある日の事―

 ピンポ〜ン♪

昌「はーい。」
( ´ Д `)ノ<こんにちは〜昌ちゃん。
昌「おお、来ましたか、真希ちゃん。」

 毎年うちにはお盆に後藤家が来る。
 別に後藤家とは血縁関係がそんなに深いわけではないが…

吉澤「何なの?」
昌「数日前に親父が言っていたじゃん、聞いてたろ?」
吉澤「フーン…」

 吉澤は何か気に食わない顔をしているようだったが、
 俺は特に気にせず真希ちゃん達をもてなす準備を手伝っていた。

真希「あ、あなたが吉澤ひとみさんですか?」
吉澤「え、ええ……」
真希「3日間よろしくね〜」
吉澤「あ…どうも……」

 吉澤は相変わらず表情は険しいままだった、
 俺は緊張しているのかな?というぐらいしか思わなかった。

昌「あ、そうだ。
 この3日間は真希ちゃんと一緒に寝てくれな。」

(;0^〜^0)<え゛え゛〜!

昌「今までお前の部屋を真希ちゃんが使っていたんだからな。」
真希「いやなら昌ちゃんのへやで寝てもいいけど〜…」

(メ0`〜´0)<ダメ〜!昌君の部屋はダメ〜!!

 ……いや、そこまで怒らなくても………

 真希ちゃんが家に来てから
 俺は真希ちゃんと一緒にいる事が多くなった。(当たり前だけど)

 吉澤は真希ちゃんに警戒を強め独りぽつんとしていた。

( ´ Д `)ノヽ(´▽`)/       ......(0^〜^0;)ポツーン…

 そんなことが続いたある日のことだった、

昌「………アハハ…」
真希「………だね…」

ナニハナシテンダロウ…(;0^〜^0)‖

 吉澤は俺の部屋の前で聞き耳を立てていた、

 もちろん、俺たちはそんな事は気がついていない。

 と、

真希「………もっと強く突いて……」
昌「………痛くないのか……?」
真希「………いいの………突いて…」

(;*^〜^*)

昌「行くぞ……………フッ!」
真希「いたぁ!」
昌「だから言っただろ…………やめるぞ?」
真希「あ〜いいの………痛いけど気持ちいいから続けて………」
昌「……………分かったよ、知らないぞ…」

 キーッ!コノヤロー!(メ*`〜´*)=3

 バタン!

 吉澤は俺の部屋のドアを開けた。

昌「ん?」
真希「えっ?」

吉澤「………」

 部屋の中にはうつ伏せになった真希ちゃんと、
 真希ちゃんの腰を指圧していた俺がいた。

昌「何だよ?顔赤くして?」
吉澤「……」

 バタン!

 再び吉澤はドアを閉め出ていった、

昌「????????」

 と、

真希「ふ〜ん、(ニヤニヤ)」

 真希ちゃんが不適な笑みを浮かべ、俺を見ていた。

昌「何だよ?」
真希「ううん、べ〜つにぃ〜」

 うそつけ。

 …その夜、

真希「ねぇ、ちょっといい?」
吉澤「……何ですか?」

 二人は吉澤の部屋にいた、
 もちろん俺はいない。

真希「昌君の事好きでしょ?」
吉澤「ブッ!べ、べ、べ、べ、べつにぃ〜……」

 吉澤には明らかに動揺の色が見られていた、

真希「ふ〜ん、じゃあ私、昌ちゃんと付き合おうかな〜?」
吉澤「な、何で!?」
真希「別に血のつながりも薄いし………あなたが別にそう思ってないのなら…」

 しかし、

吉澤「ダメ!そんな事許さない!昌君は誰にも渡さない!!」

 吉澤は怒りをあらわにしてで真希ちゃんにむかって反論した。

( ´ Д `)<あははははは〜
(メ*`〜´*)<何がおかしいんだよ!?
( ´ Д `)<やっぱり好きなんじゃん。
(メ0`〜´0)<あーそうだよ!文句あるの?!

( ´ Д `)<う〜ん………無いよ。
(;0・〜・0)<へっ?

( ´ Д `)<ゴメンネ、私そういう気無いの。
(;0・〜・0)<じゃあなんで……?
( ´ Д `)<あなたが昌ちゃんの事を好きかどうか知りたかっただけなの
       嘘をついてゴメンネ。
(;0^〜^0)<はぁ………

( ´ Д `)<昌ちゃんって女の子に対してはぶっきらぼうな所があるよね?
(;0^〜^0)<ええ………
( ´ Д `)<あれって嫌いだからって訳じゃないんだよね、逆だと思う。
( 0^〜^0)<逆……?
( ´ Д `)<うん、何だかんだ言っても昌ちゃんはあなたの事を
       特別視してると思うよ。
(;*^〜^*)<え゛え゛〜!!

( ´ Д `)<口では邪険に扱われているかもしれないけど、
       態度はそうじゃないんじゃないの?

(;*^〜^*)<(そう言えばこんな事→“φ(;ーー(*^〜^* )”
        をしても口では怒られるけど…そのあと何もされないや…)

( ´ Д `)<だから昌ちゃんと接するときはその辺を
       頭に入れといたほうがいいよ。
( 0^〜^0)<は、はい!

( ´ Д `)<ふふふふ………昌ちゃんをよろしく。

 ―そして真希ちゃん達が帰ることになった

( 0^〜^0)/~~<ごっちんバイバーイ!
( ´ Д `)ノ<じゃあねー、よっすぃ〜

昌「???」

 コイツらいつの間に仲が……?

 ……

昌「(………まあいいか…)」

 俺は気にもとめず、真希ちゃん達を見送ったらそのまま部屋に戻った。

 タンタンタン…

吉澤「昌君!」
昌「何だよ?」

吉澤「今までごっちんこと相手にしていたから今度は私の番!」

 ………

昌「はぁ………?」

吉澤「何なのよ、そのつれない態度!?」

昌「……(う〜ん)………」

 何か、吉澤怒ってるみたい……

 ………そうだ、

昌「………ちょっと俺の近くまで来いヾ(^^ヘ)」
吉澤「なーにぃー?」

 俺は目の前に来たふて腐れた吉澤にキスをした、

 チュ

吉澤「………( *・〜・*)」

 あら?意外な反応ダネ。

昌「どう?これでいい?」
吉澤「………」
昌「?いいの?」
吉澤「う、うん……」

 う〜ん、てっきり俺は
 (ノ*^〜^*)ノ<きゃー

 ………なーんてなるかと思ったがまあいい、

昌「(スタッ)」
吉澤「………どこ行くの?」
昌「トイレ。」

 その後は別になんとも無く俺は寝ようとしていた。

 バタン

吉澤「ねぇ……昌君……」

 いつものように吉澤が部屋に来た、

昌「ん〜?」
吉澤「今日の………ア…アレって………」
昌「(……いつもと様子が違うな………)」

 吉澤っていっつもなんか男っぽくて
 ( 0^〜^0)<かっけー
 な〜んて言ってるやつと思っていたけど…

 吉澤もおセンチになることがあるんだなぁ。

昌「あ〜……ただの気まぐれだ、あんま気にするな。」

 別に深い意味は無いのよ……アレは、

吉澤「ん………そう………」

 相変わらず吉澤はうつむいたままモジモジしていた、

昌「……(う〜ん………)」

 ……あ、そうだ。

昌「後2回キスしたらどうなるか覚えてるかー?」

 なんか吉澤の様子がおかしいので、俺はほぐすためにチャチをいれた。

吉澤「うん…………そのことなんだけど……」

 んー?

吉澤「その……触るだけで……いいの…?」

 なにぃー!?

昌「ま、ま、ま、ま、待てよ、そーんな事言ってると
  お前の貞操を破っちゃうぞぉー?」

 ……

吉澤「……」
昌「……」

吉澤「私は………………かまわないよ………」

 な

 ( ̄□ ̄;)ナ、ナニィー!!

昌「………」
吉澤「………」

 吉澤の一言に俺の部屋が水を打ったように静まり返った。

 ……

昌「あ、あまり軽率な発言はしないほうがいいぞ…」

吉澤「…ケイソツジャナイモン……」

 吉澤が下を向いたままポツリとつぶやいた、

昌「(うーん………)」

吉澤「……ねぇ…」
昌「ぅん?」

吉澤「……私の事………嫌い………なの…?」

昌「イヤー……あのー………そうじゃなくてぇ〜………」

 別に俺は吉澤と「したい」なんて今のところ思っていない、

 ………と言ったところで吉澤は納得してくれるだろうか?

吉澤「………」
昌「………?」

吉澤「(モゾモゾ……)」

 ぁ、コラ!

 パジャマのボタン外し始めるんじゃないよ!(;°°)

昌「こ、コラ…」

 俺は慌てて吉澤の両腕を押さえた、
 パジャマのボタンが上から2つ外れていた、

吉澤「……なにするのよ、離して…!」

 そりゃーこっちのセリフだ。

昌「いやだね、もっと自分を大切にしな。」
吉澤「してるもん!……してるから昌君と………昌君と……」

昌「…………なぁ吉澤、」
吉澤「なによ?!」

昌「……もっと俺のこと信じてくれよ、
 俺はお前の元を離れたりしないよ、
 ………だから、もっとじっくりやっていこうよ……」

吉澤「だって………だって……」

 吉澤は駄々をこねるばかりだった、

昌「焦るなよ、じっくり…さ………」
吉澤「………」

 ………

吉澤「………わかった…」

 ふう (;^_^A ………なんとか片付きましたな…

吉澤「じゃあ私昌君と一緒に寝る!」
昌「ヘッ?」

 そう言うなり俺は強引にベットに連れ込まれた、

吉澤「えへへへ………」

 やっぱりこうなるのですな…(ーー;)

 そしてその後も吉澤とは何とも無く夏休みが終わった。

 ……

昌「なんだよ!その目は!?」

 ……(疑)

昌「だーかーら、何もしてないってば!」

新田「お前誰と話してるんだ?」
昌「うおおおおお!」

 いきなり話掛けるんじゃないよ、新田君。

新田「お前誰と話していたんだ?」
昌「ま…まぁ細かいことはいいじゃないか。」

新田「……まぁいいか、それよりお前、放課後暇か?」
昌「放課後?ああ、」
新田「じゃあ、今日ちょっと付き合ってくれ。」

 新田の行動が読めないまま俺は首を縦に振ってしまった。

 ―そして放課後、

吉澤「昌くーん、かえろぉー。」
昌「わりぃな、今日ちょっと用事があるんだ、」
新田「おい行くぞ、」

 そう言い残し、俺達二人はそさくさと学校を後にした。

吉澤「(…どこ行くんだろ?)」

 ……俺も知らん。

新田「着いたぞ、」
昌「着いたぞって……ここ…」

 着いたところは近所にある社会人チームのサッカーグラウンドだった。

新田「俺さ、部活を引退した後もここに通っているんだ。」

 ……

昌「……で、俺にもやれってか?」
新田「話が早いな!やってくれるか?!」

 …

 ……まぁ別に断る理由もねぇーしな…

昌「…役に立つかわかんねぇぞ、俺。」
新田「お前なら大丈夫だって!球技大会見て確信を持った!」

 あ……あんなのでか…?

新田「もうチームメイトや監督・コーチに話はつけてあるから安心しろ。」

 手を回すのが早いですな、

新田「お前なら絶対に通用する、俺と2人でこのチームで天皇杯を目指そうぜ!」

 確かにここのチームは毎年天皇杯に出てるが……

 ……いっつも1回戦負けだ。

新田「監督、約束どおり連れてきました。」
監督「ああ、君が田仲君かね、新田君から話は聞いているよ。」

 ほんとだ、話がついているようだ。

監督「君は進路は決まっているのかね?」
昌「……いいえ…まだ…」
監督「そうか、もし活躍できたらここに入団できるかもしれないからがんばってな。」

 気が早いなこのオッサン、

昌「なあ新田、何でこんなところでやる気になったんだ?」

 近くにはいろいろクラブチームもあるから俺は気になり尋ねた。

新田「ここさ、昔海外に行った選手いただろ?」

昌「……そうだっけ?」
新田「表沙汰になっていないけどそうなんだよ。」

昌「……で?」
新田「お前鈍いな、実はその名残で今でも海外からのスカウト陣が
  ここに来るんだぜ、ってことは海外のプロチームからお声が
  かかるかもしれないんだぜ。」

 なるほど、“灯台下暗し”って感じですな、
 
 こんな近くにあるチームなのに知らなかった。

昌「ただいまー」

 午後7時ごろ俺は帰宅した、

母「遅かったねー、どうしたの?」
昌「うんとねー……」

 今までの経緯を話した、

母「お前またサッカーやるのかい?」
昌「まだわからない。」
母「はぁ?」

昌「とりあえず社会人LVで通用することが今日わかった。
 でも社会人LVどまりなら続けるつもりは無い。」

母「その言いぐさだとプロにでもなる気かい?」
昌「なれるんだったらまたやろうかな…と。」
母「フーン。」

 ( ´_ゝ`)フーン って…おい!

父「プロになったら楽させてくれよ!」
母「そうねぇ、いいわねぇ。」

 よくねー。

 ……

 そして月日は経ち12月、

 俺は人生の岐路に立たされることとなる。

昌「ただいまー」

 練習を終え、俺はいつもの様に帰って来た。

 ……見なれない靴がある…誰か来てるのかな?

母「昌、お客さんだよ。」
昌「誰?」
母「いいから。」

 俺の問いに答えようとせず、手招きをするばかりだった、

昌「?」
客「こんばんは、昌君。」

 …誰?

客「私のことは知らないのかな?」

 知らんって。

 俺の表情を見て察知したのか名刺を俺に手渡した。

昌「“ハンブルグ”スカウティングマネージャー 奥寺……」

奥寺「私は過去にドイツでプレーしていたことがあるんだよ。」
昌「……あ、」

 そう言えば昔、そんな事聞いたことがあるような気がした…

奥寺「知っているかね、私の事?」
昌「え、ええ…」
奥寺「そうか、まあいい、話を戻そう。
  ドイツに来ないかね、田仲君。」

昌「ドイツ………ですか……?」
奥寺「君は才能はあるが実績が無い、
  このまま日本にいてはチャンスはほとんど与えられないだろう。」

昌「…………そうですね…」

奥寺「それなら私がハンブルグに入団させる、
  君は2年……いや1年もあれば十分上でプレーができるようになる。」
昌「1年………ですか……?」

奥寺「君の適応能力は練習を見てわかった、ほかと比べて吸収力がケタ外れだからだ。」
昌「はぁ……」

奥寺「君は川口を超えられる逸材だ、日本にいては時間がまず足りない。
  私と一緒にドイツに来てくれ!」

昌「………」

 こう海外への移籍の話が持ち上がるのは正直俺は希望していた、

 しかしいざ話が持ち上がるといろいろ考えてしまい、

昌「………少し考えさせてもらえませんか…」

奥寺「私は構わないよ、」

 ほっとしたのもつかの間、

奥寺「ただし、来年の1月中までに話を決めてくれないか。」
昌「……分かりました。」

 俺はこう言うしかなかった。

 今までの俺だったら多分、

昌「行きます。」

 とほぼ即答だったに違いない。

 俺が一番ネックになっていることと言えば……

吉澤「おかえり〜、誰か来てたけど…なんかあったの?」

 ………コイツなんだよな……

昌「えーあーうん……」

 なんて言おうかな……

吉澤「?どうしたの?何かあったの?」

 あったけどさぁ………

吉澤「なに?」
昌「うーん……と………」

 あーどうしよう……

吉澤「何よ、ハッキリと言いなさいよ!ハッキリと!」

 ………しょうがない……いつかは言わなければならないことだ…

昌「……ドイツに来ないかって言われた…………」

吉澤「え……………」
昌「……」

 その場の空気が一瞬固まった、

 ……

昌「……」

吉澤「よ、よかったじゃない。」

 え?

吉澤「諦めかけたサッカーがまたできるんだから……」
昌「………?」

 あれ?予想と違うなぁ…

吉澤「しかも海外でしょ?いいなぁ〜。」
昌「え、うんまぁ……」
吉澤「ドイツ行くんでしょ?がんばってね。」
昌「う、うん……まぁ…」

 んんん?

吉澤「じゃあね、昌君。」

 吉澤は俺の部屋から出ていった。

昌「んんんんんん?」

 吉澤の言動に目を丸くするばかりだった。

昌「……?」

 俺は吉澤の言動がいまいち理解できず、
 再び吉澤を尋ねるために吉澤の部屋へ向かった。

昌「(コンコン)吉澤〜?」
( 0^〜^0)<なに〜?

昌「あのさぁ……ほんとにそう思ってるのか…?」
( 0^〜^0)<もー何言ってるのよ。

昌「俺は吉澤の正直な意見が聞きたいんだけど……」
(;0^〜^0)<正直な……?

昌「うん……聞かせてくれ………」
(;0^〜^0)<………

 俺はうつむいた顔をふと上げてみた、

( 0T〜T0)<………やだよぉ……

昌「………吉澤……」
吉澤「やだやだやだ!昌君と離れるなんてヤダ!」

 吉澤は今までと180度変わって駄々をこねる様に叫んだ。

吉澤「昌君のことを考えるとどうしても反対できない………
  でも本当のことを言うとヤダ!」

 吉澤は叫びながら俺の胸に飛び込んできた。

昌「(おっとっと…)………そうか……」

 そんな吉澤を俺はやさしく抱きしめた。

 正直、吉澤の本音が聞けた俺はどこか安堵感を覚えていた。

それからと言うもの俺は悩みっぱなしだった。

 吉澤のことを考えるとドイツに行くとは言いにくい。

 しかし、俺にデカイチャンスが訪れるにはもう無いだろうと思うと……

昌「う〜ん………」

 毎日毎日そんな繰り返しだった、
 考えては悩み考えては悩み、そして唸る日々………

―そして約束の期限まで1週間とせまったある日

昌「……吉澤、ちょっといいか?」

 俺は吉澤を手招きし、部屋へ呼び寄せた。

吉澤「何、昌君?」
昌「まぁ座れよ。」
吉澤「う、うん。」

 俺は一息つき、吉澤にこう告げた。

昌「俺と一緒にドイツに行かないか?」

吉澤「えっ………」
昌「……」

 一瞬気まずい空気が流れる…

 やはり無理なことを吉澤に言ってしまったのだろうか……

吉澤「いいの……」
昌「えっ?」

 俺の予想に反して吉澤は好意的な返事を返してきた。

吉澤「あたし嬉しい………ほんとにほんとにいいの?!」
昌「う、うん………」

吉澤「……嬉しい…」

 吉澤は“フッ”と優しく俺に抱きついてきた、

 俺はそんな吉澤を両腕で支えた。

昌「吉澤、感慨にふける前にまだ関門があるぞ。」

 すばやく吉澤の引き離し1階へ降りるように促した。

昌「親を説得しに行くぞ。」

父「ふ━━( ´_ゝ`)━━ん」

 ふーん…っていわれても………

父「良くも無いし悪くも無い。別に俺らが反対する理由も無いし、
 賛成する理由も無い。」

 じゃあどうしろって言うんだよ!?

父「って言うかさぁ、昌がドイツに行くってなったらひとみちゃんは
 ここにいる気ないでしょ?」
吉澤「えっ?!」

 ありゃ…………やっぱそうなるのかな……

父「まっ、どうせ早かれ遅かれいつかはこうなるだろうと思っていたし…」

 どきどき……

父「いいよ、別に。」

昌・吉澤「(やったぁ……!)」

 俺たち2人は互いの顔を見合わせ喜びを噛み締めていた。

父「ただし―」

 やっぱり何か条件があるんだろうなぁと思っていたけど………

吉澤「“ただし”何でしょうか?」

父「おまえら結婚しろ。」

昌「はぁ?」
吉澤「ええ!!」

 父親の一言に俺たち二人はパニックになった。

昌「じょ…冗談はやめろよ!」
父「バーカ。俺は本気だよ。」

 ど……どうやら本気らしいな……

父「二人で海外で暮らすならそれぐらいの覚悟を持ってほしい。
 どうせいつかそうなると思うから、今のうちに入籍しろ。」
昌「で、でも……」

 いきなり結婚すれと言われて、「ハイソウデスカ。」
 といきなり言えるわけが無い。

父「学校を卒業してからで言いから日本で済ませてくれ。
 それができないのなら二人でドイツに行くのは無しだ。」

昌「うーん…………」

 俺は思わずその場で唸ってしまった、

 が、

吉澤「私は構いません。」
昌「うそぉ!」
父「ほら、ひとみちゃんもそう言ってるんだしそうすれや。」

 ……

昌「ぐ………」
吉澤「昌君……」
父「どーすんだホレ?」

 ………

昌「あ゛ー分かったよ!結婚するよ!!
 これで文句ねぇんだろ!」
吉澤「( *^〜^*)ポッ」
父「おう、じゃあちゃんと日本にいる間に入籍しろよ。」
昌「分かったよ!」

 ……

 何か親父にいいようにやられたような気がする……

さて、すっかり忘れてしまったことがありました、

 奥寺さんの了承を取っていなかった……

奥寺「どうだね?返答を聞こうか。」
昌「あ、あのですねー………」

 俺はドイツに行く条件として吉澤を連れて行くことを告げた。

奥寺「……」
昌「………」

 ……だめっぽいな…

奥寺「はっはっはっ……まさか本当にこうなるとは……」

 (゚Д゚)ハァ?何言ってんだこのオッサンは?

奥寺「いやね、新田君に
  “ひとみという女の子と一緒に行ける事が条件だと言われますよ”
  って言われたもんでね…」

 ( *゚o゚*)ハッ、新田の奴め…………

奥寺「別に構わないよ、キチンとサッカーをやってくれるなら。」
(;0^〜^0)ホッ……

 その後特に問題もなく無事に話し合いを終えた。

 俺は順調に練習を重ね、日付はとうとう卒業式を迎えようとしていた……

―卒業式当日、

昌「(早くおわんね―かなー)」

 別にこの学校に未練もくそも無い俺にとっては
 卒業式なんぞ退屈なだけだった。

 まぁ学校の一番の思い出がナイフで刺されたことだから(笑)

A教師「卒業生退場」

 あ、やっと終わった……

 俺は何の感動もなく歩き始め教室へ帰ろうとしたら

新田「ちょっと来い。」
昌「どこ行くんだよ?いったん教室に帰ってからでいいだろ?」

 渡り廊下で新田が俺の手を引っ張った、

新田「つべこべ言わず来なさい。」
昌「あ〜。」

 新田に強引に引っ張られ、図書館に連れて来られた。

新田「よし、これに着替えろ。□ヽ(^^ ) 」

 ……(゚Д゚)ハァ?それって…………?

昌「それってタキシードに見えるんですが……」
新田「ファイナルアンサー?」

 ………

昌「ファイナルアンサー。」
新田「……」

 ……ネタはいいから早く言えよ。

 …

新田「正解!と言うわけで早く着ろ。」
昌「(´ヘ`;)はぁ……」

 俺は訳もわからず取り合えず着た。

新田「おお、いいねぇ。」

 ……何か計ったかのようにピッタリなんですけど………

新田「よし、行くぞ。」

 また新田に強引に引っ張られ、今度は体育館に連れて来られた。

 正確に言うと扉が閉まってる正面口の渡り廊下に連れて来られた。

昌「あ、おまえ何してんの?」

 俺の横にはウエディングドレスっぽい格好をした吉澤がいた。

吉澤「……わかんない………昌君こそ…」

 お互いにハテナ顔で見合っていると体育館から、

―それでは新郎新婦の入場です!

 えっ?!

(*^^)//。・:*:・゚'★,。・:*:♪・゚'☆ パチパチパチパチ…

 体育館の扉が開くと同時にいっせいに拍手が起こった、

 もちろん“あの”曲もかかっていた。

昌「(あれ?卒業生もいる…)」
吉澤「(在校生も保護者もいる……)」

 俺達二人は訳もわからずステージへ行くよう促された。

生徒会長「お二人とも驚かせてすみません。」

 まぁな、

生徒会長「私たち生徒会は“ある”筋からお二人が結婚するという情報を掴み、
    ごく一部の人間でこの式の計画を立てていました。」

 ( ´_ゝ`)フーン…………

 あれ?俺誰かに言ったかな……?

生徒会長「1週間後には日本を離れ、ドイツに行ってしまう二人のために
    盛大とはいえないですが、結婚式をここで行いたいと思います。」

 体育館からは割れんばかりの拍手が起こった。

昌「(まっ、最後だしこういうのも)」
吉澤「(いいのかな……)」

 俺達二人はアイ(愛?)コンタクトでこの式に参加することを同意していた。

生徒会長「新郎・田中昌殿。
    あなたは吉澤ひとみを妻として受け入れ、
    一生愛しつづけることを誓いますか?」

 えっマジで?(^^;)そんな事言うの?

昌「えっ…………と…」

 俺が言葉に詰まっていると、

新田「言わないと違う奴に取られるぞ!」

 新田が野次ってきた。

昌「よーし、誰か俺の代わりに誓う奴いるかー?」
??「俺は誓うぞー!!」

 このやり取りに体育館から笑いが起こった、

 が、

ムー!ナニイッテルノヨ!(メ*`〜´*)―c<―_‐))))))イテテ…ジョウダンニキマッテルダロ…

 いけね、怒られちったい。ヾ(´▽`;)ゝ

生徒会長「で、どうなのよ?」

昌「(イチオー)…誓います。」

 “いちおー”が聞こえたのか、吉澤は一瞬 (メ0`〜´0)ムッ としたが、

生徒会長「新婦・吉澤ひとみ殿。
    あなたは田中昌を夫として受け入れ、
    一生愛しつづけることを誓いますか?」
吉澤「誓います…」

 (おおおお……)

 吉澤が間髪いれず答えたせいか、
 体育館からは小声で感嘆の声があがっていた。

生徒会長「それでは誓いのキスをしてください。」

 ( ̄□ ̄;)!!!

 会長のこの一言に体育館は奇妙な歓声が沸きあがった。

昌「(こーゆーことはまずいんじゃないの?)」
生徒会長「大丈夫です。このことは校長先生・教頭先生に了解を得ていますので
    心置きなく誓いのキスをしてください。」

 ウソ……

( *^〜^*)<ねぇ、恥ずかしいから早くしちゃおうよー

 ぐ……

昌「(……分かったよ、すりゃーいいんでしょ!すれば!)」

 俺は半ばヤケクソ気味で吉澤にキスをした。

 チュ

 (*^^)//。・:*:・°'★,。・:*:♪・°'☆ パチパチ……

 なぜか体育館からは拍手が起こった。

 そして退場となった時、吉澤は持っていたブーケを放り込んだ、

吉澤「えい!」

 ウォー!!!(バキ!ガス!パキ!)

 オイオイ………(^^;)

 結婚式とは裏腹に俺はそこで“修羅”を見た。

―そして1週間後、旅立ちの日がやってきた。

父「まぁいつでも帰ってこいよ。」
昌「俺はプロになるまで帰ってくる気は無いよ。」
母「そうかい、じゃあ何年かかるかなぁ……」
吉澤「すぐに帰ってきますよ!」
新田「だといいけどな。」

 俺達5人は空港にいる、
 父・母・新田の3人が見送りに来てくれた。

昌「よし……じゃあ行くわ。」
吉澤「そうだね…」

母「元気でね……!」
新田「プロになって帰ってこいよ!俺も負けねぇからな!」
父「ひとみちゃんと仲良くするんだぞ。」

 親父、それは保障できんな。

吉澤「何か言った?(ギロ)」
昌「いいえ〜べつにぃ〜………」

―そして飛行機はドイツへ向け離陸した、

吉澤「やっぱり今度日本に帰ってくるときはプロとして、日本代表として?」

昌「それもいいな………けどな、もうちょっと違う形のほうがいいな。」
吉澤「違う形?」
昌「そっ、違う形でな……」

―そして数年後、俺は公約どおりプロになり日本に帰ってきた。

実況「今日はここ国立競技場でトヨタカップが行われます、
  右にエンドを取りましたのがブラジル・サンパウロ。
  左にエンドを取りましたのがドイツ・ハンブルグです。」

解説「いやでも今回はかなり見ものですよね〜」

実況「そうですね〜、日本人選手がスタメンで参加していますからね〜」

新田「よう久しぶりだな、田中」
昌「ああ、何年ぶりだろうな?」
新田「まさかこういう形で対戦で再開するとはな……」
昌「ああ……そうだな……」

実況「サンパウロにはFWの新田瞬、ハンブルグにはGKの田中昌、
  それぞれのチームに日本人選手が名を連ねております。」

解説「サンパウロは新田を中心に圧倒的な攻撃力で勝ちあがってきたチーム、
  対するハンブルグは圧倒的な守備力で勝ちあがってきたチームです。
  特にGK田中の評価はドイツ……いやヨーロッパではかなり高く、
  SGGK(スーパーグレートゴールキーパー)と呼ばれるくらい
  評価が高いですからね〜」

実況「二人とも高校までは無名の選手ですから驚きですよね〜」

解説「ええ、田中選手は日本代表に選ばれるのが確実視されてますから
  見ものですね。」

(※結婚しましたが、吉澤は吉澤でいきたいと思います。)
吉澤「昌くーん!」
昌「おう、応援よろしくな。」
吉澤「うんもちろん!希美もほら応援しなさい!」

∋oノハヽo∈
  ( ´D`)<ぱぱがんばるのれす〜

昌「おう!」

実況「さぁ、選手がそれぞれポジションつきました。」

 ……

 ………

 ピィーーーーーーーーーーーーー!

実況「今笛が鳴りました。サンパウロのキックオフでゲームが始まりました。」

新田「いくぞ!田中!」

昌「来い!新田!」

吉澤「がんばれー!昌くーん!!」

〜 END 〜